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福本参考人 私は福木と申します。
YS11の
国産機が
開発されるということは、わが社といたしましても非常に瀞ばしいことでありましたので、及ばずながら、
設計の当初から今日まで、微力ではありますが、御協力を申し上げてまいったつもりでございます。この
航空機が非常なよい
性能のもとに
運航に供せられるということにつきましては非常に
期待をいたしておる次第でありますので、その
製造を容易ならしめるような、それに
効果が多いような御
措置のとれますことは、もちろん反対すべきでなし、喜ぶべきこととして
賛成を申し上げたいと思います。ただ、この
措置が金融を容易にし
製造に貢献をされるであろうということは断じて疑わないところでございますが、
わが国の
国産機開発ということに関連いたしまして、これを
使用いたします
ユーザーの
立場といたしまして、従来及ばずながら御協力申し上げてきた
体験に基づきまして、その
前提となるべきこと及びこれに関連いたしたことにつきまして、御
要求によりまして、いささか愚見を申し述べさせていただきたいと思います。御質問があればさらに申し上げることといたしまして、時間が少ないようでありますから、簡単に
問題点のみに触れておきたいと思います。
第一は、
ユーザーとしての
航空会社というものが
飛行機に対する態度はどういう
考えを持っておるということを御承知願いたいと思います。これは申し上げるまでもありませんが、その
会社に使うところの
飛行機の
適否というものは、その
会社の
死命を制するものであるという観念のもとにわれわれは
飛行機を選択してまいったのでございます。敗戦後
航空再開の当初にあたりましては、
全日空といたしましては、採算もほとんど
期待できないダブという小さい
飛行機から始めて、ヘロン、
ダグラス・スリー、コンベア、
バイカウント、
フレンドシップ、
ボーイング、現在まで
飛行機だけでも七、八種類くらいなものを逐次
使用してまいったのでございますが、その
適否がいかに
会社の
経営の
死命を制するかということを実際上
体験してまいったものであります。したがいまして
飛行機を購入いたすということは、自己の持っておる
路線並びにその
路線の
条件あるいは
会社の
技術能力その他の点を十分勘案いたしまして、最も適当なる
飛行機を自由に選択さしていただくということが
経営上は最もよいことであり、欠くべからざることであると私は
考えておるわけであります。したがいまして
国産機の
開発ということにつきましては、抽象的に申しましても、第一はやはり優秀なる
飛行機の
製造ということが基本にはなりますが、それには絶えずこれを
活用、
運用をする、
ユーザーの利益になるか、あるいは十分なる
効果が上がるか上がらぬかということを絶えず
表裏一体となって勘案しつつ
製造されるということが
前提とならなければ、せっかくでき上がった
飛行機もまちまちになる結果、十分なる
効果を発揮できないということがないとも限らぬと思うのでございます。そういう意味合いから、よその例を申してみましても、
飛行機さえよければ、たとえ
自国の
国産機を
自国で使わなくても、
十分外国に売れた例はございます。現に
全日空が使っておりますところの
フレンドシップのごときは、ただいまのところ百八十九機つくっておりますが、そのうちで
自国で使っておるのは十五機であります。しかもその十五機のうちの十二機は
空軍が使って、そうして
実績を積み、
効果を発揮さして、そして
外国へどんどん売っておるのでありまして、
全日空といたしましても従来これを購入をし続けて、ただいま二十五機を保有しておるようなわけでございますが、かように、
先ほども
製造会社の
社長さんからもお話がありましたように、
国内の
使用の
実績というものはまだこの
飛行機にはないのでございまして、われわれも
オリンピックの
聖火輸送に、従来
予定しておりました
フレンドシップをやめて、あえて
YS11というものに
期待をして十分なる用意を整えてやった結果、
機体もりっぱであることが証明されたのであります。しかしながら
お客をお乗せして
運航するという段になってきますと、従来
全日空のとってまいりました施策から申しますと、
相当の
実績を積んだものを――その証拠がないものの
飛行機を買ったためしはありません。何となれば、これは非常な大きなリスクを伴うものでありまして、
外国の例を見ましても、当初の十機や十五機は、
政府の財政の影響のきわめて大きい個所においてこれが
開発の担当をされておるというのが事実でございます。したがいまして、
全日空は
卒先をしてこれを
運航に供したいという熱望と、現にそれをやりつつありますが、非常なる不安を
感じておりますのは、そういう
実績をまだ積んでいない
飛行機でありますので、どの
程度、いつごろになったら安心をして
お客さんをお乗せしてよいかというポイントをつかむことは
相当関心の高いところでございます。私は
機体の
優秀性を断じて疑っておるものではございませんが、不幸にして
YS11は私はその点については、
日本航空さんは
モデル路線の都合によって
YS11の
使用からは最近関係がないような
立場に置かれておると承っております。また
空軍と申しましても、
わが国の
事情もあるのでございましょうが、多量に
YS11を御注文なさってこれが
実績を積まれるということもまた今後に残されておる問題のようでございます。
開発使用については、純然たる
民間資本による
航空会社であります
全日空が一手に承っておると申しては
潜越でありますが、そういう
立場に置かれております。
私は
前提としていろいろ申し上げたのは、新しい
飛行機というものに対する
航空行政というもののあり方から
考えまして、われわれははたしてこの大きなる使命を現状のままで担当していってよいのであろうかどうかという心配すら持っておるようなわけでありますので、すみやかに総合的な
航空国策というものが樹立されまして、そのほかに
計画、
販売計画なり
製造計画が立てられるならば、現在の
事情でもはや
わが国におきましては
幹線は
ボーイングに
機種は統一されておりますから、その余の
飛行機というものは
YS11に
期待する以外にはほかに道がないのでありますから、この点は
需要が増加し、
運用の
条件さえそろうならば、必要に応じて幾らでも、私は
国内における
販売は可能となり、またそれ以外のものを買う
余地もない、かように
考えておるわけでございます。ただ、
国内の
機種の見通しをつけますのにも、
飛行機の
稼働率というものが十分でありません場合には、これは働く
場所、働く時間が少ないわけでありますが、不平にして、
わが国の
ローカル空港というものは
相当整備されつつありますけれども、
運用時間が非常に少なくありまして、朝少し弔いとか、晩方日没以後になりますと、
運航をしても、
ローカル空港の
運営はとまってしまっておるよらなわけでありまして、稼働する
場所は一般の
需要要求に比較しまして、きわめて
範囲の狭いものに相なっております。かように
飛行機自体は
製造が十分可能になって、多量に
製造ができましても、それを使う要件というものが、もう少し
製造と
使用とが
表裏一体の基盤の上に立っていくならば、もっと大きくなるのではないかという
考えを持っております。
私は繰り返して申し上げますが、今回とられておる
措置はきわめてけっこうな
措置であり、
YS11の
開発につきましても、焦上の中から
国産機をつくり上げようという当時の
措置といたしましては、あれ以外には方法がなかったかもしれませんが、今後
製造を容易にされるとともに一そう力を入れてもらいたいと思いますのは、
価格の問題をもう少し
考えていただいたらどうかと思うのであります。なるほど、
全日空といたしまして現在
使用いたしております
フレンドシップ並びに
バイカウントは、エンジンも同じ系統でありますし、非常によく似た
飛行機でございます。なるほどスピードなりあるいは座席の点からいえば、ほぼ
価格は似合ったような
価格と存じますけれども、これの
活用の面における
価格というものにつきましては、
先ほど申しましたように
各種の
条件が
前提と相なりますので、私は
製造をされるその機構の問題につきましても、なお改善の
余地があるのじゃなかろうかというような
感じを抱いております。と申しますのは、当時としては
技術を集め、いろいろの点もありますが、十分存じませんけれども、
積み重ね方式のような
価格になっておるのじゃないかと思いますが、私は、国際的にこれが
競争場裏に勝とうと思うならば、まず
国際価格に見合うものを設定して、その
範囲内でつくれるかつくれぬかを
考えることも一つの行き方じゃなかろうかというような
感じも抱いております。
これはちょっと立ち入ったことを申し上げて恐縮でありましたが、
ユーザーの
立場といたしましては、これによって
会社の永続をはからねばならぬ重大なる問題でありますので、一応この点にも触れて、りっぱな
飛行機が安く手に入りますようにできますことを、
本案の通過とともに念願をいたしまして、私の所見を終わります。