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1965-02-26 第48回国会 衆議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十六日(金曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 内田 常雄君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君  理事 田中 龍夫君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 板川 正吾君 理事 加賀田 進君    理事 中村 重光君      稻村左近四郎君    浦野 幸男君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       小沢 辰男君    海部 俊樹君       黒金 泰美君    田中 榮一君       田中 正巳君    田中 六助君       中村 幸八君    長谷川四郎君       三原 朝雄君    石野 久男君       五島 虎雄君    桜井 茂尚君       沢田 政治君    島口重次郎君       田中 武夫君    楯 兼次郎君       山崎 始男君    麻生 良方君       山下 榮二君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局次長) 今村  昇君         参  考  人         (日中総合貿易         連絡協議会会         長)      岡崎嘉平太君         参  考  人         (日立造船株式         会社取締役)  井上 信雄君         参  考  人         (東洋エンジニ         アリング株式会         社社長)    阿部 喜一君         参  考  人         (日本貿易会専         務理事)    谷林 正敏君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 二月二十六日  委員村上勇辞任につき、その補欠として稲村  左近四郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員稻村左四郎辞任につき、その補欠とし  て村上勇君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商に関する件(日中貿易に関する問題)      ————◇—————
  2. 内田常雄

    内田委員長 これより会議を開きます。  通商に関する件について調査を進めます。  本日は、さきの御決定に基づき、日中貿易に関する問題について、参考人として、日中総合貿易連絡協議会会長岡崎嘉平太君、日立造船株式会社取締役井上信雄君、東洋エンジニアリング株式会社社長阿部喜一君、日本貿易会専務理事谷林正敏君、以上四名の方に御出席をいただいております。  参考人各位におかれましては、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがたく存じます。  会議を進める順序といたしまして、最初に、各参考人方々にそれぞれのお立場から大体十分程度の御意見をお述べいただき、次に、委員から質疑がありますので、それに対しましても忌憚なくお答えを願いたいと存じます。  なお、発言順序は、かってながら委員長においてきめさしていただきたいと存じます。また発言の際には、必ず委員長許可を得てから発言していただきますようお願いをいたします。  それでは、まず岡崎嘉平太君から意見を承ることにいたします。岡崎参考人
  3. 岡崎嘉平太

    岡崎参考人 日中総合貿易連絡協議会会長をいたしております岡崎でございますが、中国側と折衝いたしますのはこの資格ではありませんので、高碕事務所代表ということでございます。御了承願っておきたいと思います。  日中総合貿易をやっております理由とかその要点を述べますと少し長くなりますので、ただいま問題になっておりますいわゆる吉田書簡関係する点にしぼって、あるいはそこをスタートとして申し上げまして、あとは御質問によってお答えしたいと思います。て御承知のように高碕事務所廖承志事務所の双方から貿易連絡員を東京、北京に派遣しようという話がきまりまして、昨年の八月に向こう側から三人の代表、二人の随員が参りました。それに対して日本側から送りますのがたいへんおくれておったのでありますが、三人だけ選定いたしまして派遣することになりました。この三人とも向こうの要人と顔見知りでありませんので、私が高碕事務所責任者である関係上、紹介に連れてまいりました。紹介が終われば、旧正前でもありますので、早く帰ってくるつもりでおりましたが、到着いたしました翌日、北京におります日本新聞記者廖承志事務所責任者廖承志先生との朝めし会における記者会見吉田書簡の問題が取り上げられたというので、新聞記者諸君の一人が帰りに寄って、これはたいへんな問題になりますよということを伝えたわけであります。この問題については、倉敷ビニロンプラント輸出のときから、政府において輸出入銀行資金を使わすことに多少の難点があって行き悩んだこともありますので、吉田書簡があれば幾らか問題になるということは承知しておりましたけれども、大体三十九年じゅうにその問題が終わるように漏れ聞いておったのでございまして、金融日本の国内問題だから、よく説明すればわかってくれるだろうというくらいに思っておりましたが、その後廖承志事務所幹部連、これは廖承志さんを含め向こう対外貿易部の幹部との会合、会談、あるいは廖承志さんと私の会談南漢宸さん、これは国際貿易促進委員会会長でありますが、との会談、それからこれらの人との宴会、いずれもこの問題を取り上げられまして、日本やり方の改善を要求されたのでございます。最後に陳毅外交部長にあいさつしたついでにその話がまた出まして、強く日本やり方を変えてくれという話でございました。  それらを総合して簡単に申し上げたいと思うのでありますが、日本アメリカとの関係については、われわれは何も言うことはしない、干渉する立場にもないし、しない。日本台湾との関係については、言いたいことはあるけれども、これは日本の意思ばかりでできているわけではないので目をつぶってきた。将来も、日本台湾とに関する限りのことならどんなことが起きても目をつぶるつもりでおるんだ。日本わが国すなわち中国との関係は、先年松村先生、高碕先生が来られて、積み重ね方式友好を漸次高め、国交回復に持っていこうじゃないかというお話があったので、われわれもこれに同意して、気長に国交回復を待つことにしておるのだ。その一つ積み重ねである貿易も幸いに順調に進んで、昨年は三億一千万ドルに達したということで、たいへん喜んでおった。ところが、ニチボービニロンプラントに、ニチボー日本輸銀資金を使わしてもらいたいということを申し出たのに対して、日本政府は、吉田書簡があるから使わすことができないといって拒否したそうだが、これは単に日本の国内問題ではなくて、台湾介入によって、日中の貿易台湾が干渉し、そうして日中の積み重ね方式に水をさす、わが国に対して差別待遇をすることになるので、われわれとしても黙っておるわけにはいかない。強く抗議を申す。こういうことでは積み重ね方式にもひびが入って、非常に残念なことになる。聞くところによると、日本金利は高くて、巨額なプラントになると、輸銀の安い金利を使わないと欧州競争ができないそうじゃないか。そうすると、わが国日本から買いたいけれども、高いものをみすみす買うわけにはいかないので、自然欧州のものを買わざるを得ない。これは岡崎さんも了承してもらいたい。そうなると、せっかくの積み重ね方式、ことに貿易がうまくいかないというのは、積み重ね方式がくずれることになるんじゃあるまいか。もう一つ言っておきたいことは、わが国計画経済なんである。日本約束をすると、どうも日本のは約束の成立するまでに時間がかかる。しかもその期限がきても、また延期延期ということをいわれるのだが、欧州の場合には、話が早ければ一週間くらいでできてしまうのだ。ある程度は日中友好のために待つけれども、あまり待つと計画経済が狂うので、担当者責任もあって、そういつまでも待つことはできない。こういう意味を含めて、ひとつ日本政府においても日中貿易に対するいろいろな施策のことを考え直してもらわなければ、積み重ね方式もうまくいかぬのじゃないかということが、三、四人の責任者のことばの総合したものでございます。その中で、私は、金融問題というのは、これはもちろん国内問題であって、日本低利金融をするのは必ずしも輸銀だけではない。ほかに自分の知っている方法でも、一つ二つあるのである。そのどの方法をとるかということは日本の自由である。しかもどの金融機関を使うということは、あなたの国との契約にも入っていないことだから、これはひとつ日本側にまかしてもらいたい。中には金融機関を使わないプラント輸出さえあるのだから、全部これはまかしてもらいたい。こういう話をいたしましたが、軍人であり外務大臣である陳毅さんが、案外この内容をよく知っておりまして、いやそれは知っているのだ。金融問題は日本の国内問題であるということはよく知っておるのだけれども、そのことを言っているのじゃないのだ。台湾介入によってわが国との貿易差別待遇する、そうして積み重ね方式をくずすというようなことをされることについて自分抗議を申し込んでいるのだから、この点を誤らないように日本皆さんに伝えてもらいたい、こういうお話が重ねてございました。金融が国内問題であるということも十分御承知でありますし、また、自分たちとの積み重ね方式のくずれることはがまんならない、それが台湾の指図によって差別待遇をされるというのが特にがまんならないという点を強調しておられるということを十分に認識したわけであります。  これが今度の問題の骨子でございますが、この積み重ね方式をやろうという中には、人事の交流とか、貿易の増進というようなことが含まれております。中国はいまプラント輸入プラントをつくる計画を非常にたくさん持っておりまして、これが日本から輸出できなくて、かりに全部欧州から買うようなことになりますと、将来日本からの商品輸出が非常に困難になると思います。プラント輸出いたしますと、それからつくる商品は、将来日本からは、あるいは各国からも出なくなりましょうけれども技術輸出とか、あるいはその工場の部品が引き続いて輸出されるとか、また、技術交流をすることによって将来次へ次へと人間往来がふえる。その人間往来に伴う貿易もできることになりますので、貿易立国でやっていかなければならない日本民族の将来を考えますと、このニチボービニロンプラント輸出ということは決して小さなことではない、こう考えるのであります。また、金融問題が契約の中に入っておりませんので、将来に問題を引いて、輸銀を使わなければビニロンプラントは買わないというようなことをいっておるわけでもないのでありまして、もっぱら第三国の介入によって日中貿易に水をさす、中国に対する輸出差別待遇をすることががまんができないといっておる点を、皆さんにおかれましても御注意願いたいと思うのであります。  一応私の御説明を終わります。
  4. 内田常雄

    内田委員長 次に、日立造船株式会社取締役井上信雄君より意見を承ることにいたします。井上参考人
  5. 井上信雄

    井上参考人 日立造船井上でございます。  この問題の全船的な背景なり中国側意見は、いま岡崎さんからお話がありましたので、私は日立造船の今度の船に問題をしぼって少し御説明申し上げたいと思います。  私ども会社は、昨年十一月十六日に北京に私が参りまして、先方中国機械進出口公司との間に貨物船一隻の契約を締結したのであります。簡単に契約内容を申し上げますと、船は一万二千トンの貨物船一ぱい船価は約十二億、支払い条件は、引き渡しまでに三割、残り七割を引き渡し後五年の延べ払い金利は五分五厘、支払い保証中国銀行のLCとLG、こういう姿で契約したのであります。引き渡しは大体来年の五月ごろを予定して、ただこの契約発効を、輸出承認条件として二月十五日までということで、期限を切って契約したわけでございます。この契約内容は、延べ払い条件の七割、五年なり、金利なり、あるいは保証問題、すべて日本政府が現在認めている線であり、われわれとしてはこの問題で普通の一般の船の輸出と同じように輸出承認建造許可輸銀融資を当然得られるものという考え方で安心しておったわけであります。  そこで一言、船の延べ払い輸出輸銀融資という問題について、簡単に一般論を申し上げたいのですが、船というものは国際的な商品であるという意味は、大体価格が世界的に一定しておる商品であります。したがって欧州日本、おしなべて船価が大体一定のものである。ところが日本は御承知のとおり市中銀行金利か約九%ぐらいで、非常に高いものであります。したがって、この金利資金をもって建造していく限りでは国際的に競争が困難である、また建造資金のボリュームの点においても、市中銀行にこれをゆだねることは非常に無理がある、この二つ理由で、現在日本では船舶輸出については輸出入銀行市中銀行協調融資、大体六%ぐらいの金利にならして国際競争をやっておるわけであります。このことは過去、船が大量に輸出されておるわけですが、この船全部がこれによって輸出されていることも明らかでありますし、またわれわれとしても、輸銀融資というものなしに船舶を建造し輸出することは考えていないわけであります。ただ輸銀融資の必要な時期が、実際の契約発効なり輸出承認と時間的にずれている。したがって普通造船契約書の場合には、輸銀融資というものは条件にしないのが通例になっておるわけであります。しかもこの輸銀融資という問題は全く国内問題の建造資金の調達問題であるために、相手方との間の契約書というものには入れないのが通例になってやっておるわけであります。この理由で、船舶延べ払い輸出というものと輸銀融資というものとは、法律的な解釈は別といたしまして、実際は表裏一体のものであるということでわれわれは考え、また過去の船全部がこの考え方で行なわれてきたわけであります。つまり輸銀融資問題というのは、根本的には輸出振興の政策上できて、また実行されているものであって、これはあくまでも輸出振興の国内的の問題である。決して相手方への援助といったものではないわけであります。日本政府輸出振興輸出承認を与えるということは、法律的な関係は別として、輸銀融資を伴うということは当然の姿としてわれわれ造船業界としては考え、理解しておるわけであります。  以上の背景で、当社としましては、今月の十五日までに正常な形においての輸出許可をいただくよう、つまり輸銀融資をたてまえとした輸出承認をいただくように努力してきたわけであります。ところが一月の終わりになりまして、新聞紙上にありましたようなニチボービニロンプラントの問題に関連しまして、当社船舶に対しましても輸銀融資の使用が認められないというような話が出ました。この問題をめぐって中国側から、いわゆる中日貿易原則である互恵、平等、無差別という原則からいたしまして、先ほど岡崎さんの言われたような吉田書簡による台湾問題の中日貿易への介入とかいうような問題、具体的には延べ払い輸出輸銀融資を適用することを主張してきたということで、この問題が解決されずに、この、うちの契約というものが実際に発効しなくなってきた。私ども会社としましては、単にこの小さい船一ぱい輸出ということではなくて、将来の残された唯一の市場である中国に対する船舶輸出、これのスタートになる船として非常に重点を置いて造船業界では考えていたわけで、これを二月十五日をもって打ち切るということは忍びないということで、二月中日ごろから中国側といろいろ折衝しまして、これの打開策をどうするかということを当社としてやったわけであります。その結果、二月十四日になりまして先方から、正常な輸出ということを条件に、二月十五日を三月末まで契約の失効を延ばすということを申し、妥結したわけであります。  この先方から来ました電報にもありますとおり、先ほど岡崎さんの言われたとおり、決して向こう輸銀融資というものに触れていないわけであります。ただ、いわゆる正常な船舶輸出の形においてこの契約発効させねばいかぬという表現をしているわけです。正常なる船舶輸出ということは、私が申しましたとおり、いわゆる一般船舶輸出における輸銀融資の問題、これを意味していることは、中国側の声明なり私のほうの駐在員の折衝によっても明白なことでありまして、この意味で、現時点では政治問題に端は発しているにしろ、実際には輸出承認輸銀融資というものが具体的に実現しないと、三月三十一日をもってうちの契約は無効になるという形に今日なっておるわけであります。現在、中国がすでに英国、オランダ、フランスに対して五隻の同じような貨物船契約しておるわけです。そのほか、中国のいわゆる第三次、五カ年計画に盛られておる船をめぐって、すでに西独、イタリア、スウェーデンあたりがこの船の受注を働きかけておる。こういった状況で、私ども貨物船一隻の問題でなくて、日本中国向け船舶輸出問題に私どもの船の成否がかかっておるというふうに、われわれ造船業界としては理解しておるわけであります。  結局、結論としまして、私どもとしては輸出振興上から中国向け船舶輸出が行なわれる。したがって、それに伴った国内問題としての輸出許可輸銀融資許可というものは当然これに付帯するものというたてまえで、一般延べ払い輸出船におけると同じように、この問題を三月三十一日までに解決していただきたいということを強くお願いしているわけであります。  以上、大体私のほうの船舶輸出に関連した経過と先方考え方の大略でございます。
  6. 内田常雄

  7. 阿部喜一

    阿部参考人 私、ただいま御紹介にあずかりました阿部でございます。  私ども会社は、三十六年の五月に東洋高圧と申します肥料会社から出まして、プラント建設を目的にしてつくられた会社であります。何分まだ創立早々でございますので、内地にも地盤を持ちませんが、化学工場建設に当たっておりますので、後進国に対してはかなりの実績を持っております。それで中共に対しては約三カ年ぐらい前から、私のほうの最も得意といたしまする肥料工場のうちの尿素工場建設について働きかけておったのであります。それで去年の二月二十四日から三月の四日まで、私のほうの常務の坂田をやりまして、いろいろ交渉させました結果、大体、君のほうの尿素プラントは世界的の水準まで達しておる、それで覚え書きを交換しようじゃないかということになりまして、大体の趣旨は、日本側が所有しておる尿素製造技術設備見積もりに関しては初歩的な了解を得た、今後、日本側技術設備に対して興味を持っている、こういうことをその覚え書きにうたっております。それで大体一九六四年の第一・四半期に、中共側から視察団を組織して、そして日本に来て実際の工場の様子も見、そして契約を一段と進めようじゃないか、こういうふうなことを覚え書きにうたっているわけであります。ところが、突然にいま日立さんとニチボーさんの契約について問題が起こったやさきに、二月十四日でありまするが、高碕事務所に、私のほうに伝えてくれというふうな意味で、一九六五年の肥料計画というものは非常に急いでいる、ところが、吉田書簡によってニチボー並びに日立造船さんの契約がなかなかうまくいかない、肥料計画が、大体君のほうと了解点には達しているのだけれども、そのままに推移すれば非常に自分のほうの計画にそごを来たすので、一応これをキャンセルしてくれないかというふうな意味電報がまいったわけであります。われわれのほうといたしますると、何も契約したわけでありませんから、ちょっと意外な感じに打たれたのでありますけれども、まあ私たちといたしますと、だいぶ向こうのほうは、私たち尿素プラントは買いたい考え方が濃厚なことは、この電報によってもわかっているのであります。先ほども日立造船さんから言われましたとおりに、われわれといたしますと、肥料プラント、また化学工場プラントを外国に輸出するという立場に立ちますと、どうしても後進国ということになります。後進国は、私たち実際にインドとかパキスタンとか韓国、台湾にも輸出しております。ソ連にも、この間問題になりましたが、尿素プラント輸出しております。しかし、後進国だけでは、われわれのほうは今後の貿易になりませんで、どうしても共産圏にも輸出さしてもらわなくちゃいかぬ、こういう立場に立ちますときに、どうしてもいま日立造船井上さんがおっしゃったとおりに、必ずしも輸銀でありませんでも、輸銀ベースの安い利息でなくては欧州なんかとの競争が不可能になるということは事実であります。私、うぬぼれではありませんが、私のほうの尿素プラント技術は世界的の水準に達しておると確信いたしております。しかし、値段を安くする、しかも延べ払いの期間を長くするということが、今後欧州と太刀打ちする意味からいいますと絶対必要条件であると私思います。それがコマーシャルベースにいま九分とかなんとかいうお話がありましたが、大体そういう線ではわれわれは見積もりをして、できないのであります。そういう点から申しますと、どうしても輸銀でなくても輸銀ベースまたはそれ以下の金利をつけてもらわぬことには、今後この貿易界に立ってプラント輸出するということは不可能に近いものじゃないかと私考えます。そういう点からいいまして、今度の問題は、共産圏に対する貿易に対しては非常な問題を残すんじゃないか、私はそう考えますので、ニチボーさん、日立造船さんのものがぜひ輸出可能になりまして、ひいては私たちのほうも契約ができますことを念願いたしております。  今後の肥料プラント中共に対する輸出は、私たち全貌はまだわかりませんが、これが私たちがいまやっておりまするプラント一つ二つじゃないと私思います。非常に数多いものが今後輸出できるのじゃないか、こう思っておりますので、ぜひこれを実現さしていただきたい。私も台湾に対して非常な好意は持っております。しかし思想問題とそれから貿易の経済問題とは、おのずから違うじゃないか、こう考えておりますので、この点はぜひ割り切ってやらざるを得ないのじゃないか、私はこう考えております。  それから、向こう電報に対しては、私たちのほうはいましばらく待ってほしいということを強く要望はいたしております。向こうからまだ何らの返電もありませんが、電報を打ち、最近また手紙も出そうかと考えております。そういう事情でございますので、簡単でありますけれども、私ども立場を述べました。
  8. 内田常雄

    内田委員長 次に、日本貿易会専務理事谷林正敏君から意見を承ることといたします。谷林参考人
  9. 谷林正敏

    谷林参考人 私が日本貿易会専務理事谷林でございます。  本日御出席の、ほかの参考人各位は、日中貿易そのもの関係しておられまして、対中共貿易、対中国本土貿易というのを非常に専門的に日夜扱っておられる方々であります。私のほうの貿易会といたしましては、単に日中のみでなく、アメリカでもイギリスでも西欧各国、つまり世界全体との貿易に関しまして、いろいろ会員諸君の希望をまとめて政府に申し上げ、あるいは政府から各会員にそういうことを伝えるというようなことをやっておりまして、全般の見地から日中貿易ということを若干考えてみたいと思うのであります。  日中貿易に関しまして日本においていろいろ問題が起こっておりますが、東西貿易というもの、つまり中共あるいはソ連、東欧という、こういうものを入れました東側の国々、西側いわゆる自由圏諸国というものとの貿易、この東西貿易というものは最近非常な発達を見ておるのであります。一九六三年の西側輸出は約五十五億ドル、輸入は五十八億ドルになっております。六四年の数字はまだ私知っておりませんが、これもアメリカあたりでは昨年末すでに数字を出しておると思います。相当これよりも進んでおると思いますが、とにかくこういうぐあいに、現在は約百十ないし百二十億ドルぐらいの輸出入がございました。これは年々進んでおるのであります。  ただ、この東西貿易というのを全体の見地から見てみますと、その中で東欧圏、ソ連中共が占める位置が若干違っております。大体のところ、東西貿易の約半分は東欧圏と西側諸国との貿易でございます。残りの二分の一の四分の三がソ連との貿易、残りの四分の一が中国との貿易、こういうことになっております。なぜこうなっておるかと申しますと、それは地理的存在、おのおのの地理的地位というものが非常に大きな影響を持っておる。東西貿易に最も力を入れております西欧諸国は、すぐ隣のやはり東欧圏というものに取引上の食指が動くのは当然でございます。次はソ連でありますが、中共は何といってもそれらの国とは遠いということが一つございます。もう一つの問題は、アメリカ中共を敵視しておるということがもちろんございますけれども、大きな理由は地理的あるいは過去の歴史、伝統というようなものがそこに左右しておることは当然でございます。  そこで今度日本立場というものを考えますと、これらの諸国とは大いに違う点があると思います。すなわち地理的の関係からいいましても、従来の関係からいいましても、一番その中で関係の深いのはやはり中国本土でございます。  ここで戦後の世界各国がその輸出入を伸ばしていく上において、外の国との関係で特に強く考えておる点を申し上げますと、戦後にこれらの国が考えておるのは、従来、つまり戦前の本国と植民地というような関係ではなく、やはり近いところにある後進地域と先進地域とが手を結ぶということによって、その国の輸出を伸ばし輸入を伸ばしたいということであることは御承知のとおり。つまり西欧諸国はアフリカがその対象でございます。アメリカは中南米がその対象でございます。ソ連は東欧圏がその対象になっておるというような関係からいうと、当然日本は東南アジアというものをその対象にして、これと有無相通じ、そうしてその輸出入を伸ばすということが必要だと思うのでございますが、ただ最近になりますと、こういうような関係だけでは将来の人口増加あるいは経済程度向上に関してなかなかまかない切れない。これでは行き詰まりになるのだというような気が各国にも一非常に起こってきたと思います。  そこで起こってまいりましたのは、各国ともいわゆる共産圏というものに対して、現在の国際的約束ごとの許される範囲においてその相手を広めようということだろうと思うのであります。これが西側から東側に対してその輸出を伸ばし、その必要のために輸入も伸ばすということだと思うのであります。一方、東側の国々の状態からいいますと、これは一つソ連それ自身の国内の経済向上、後進地域開発ということに伴いまして、外からいろいろな物資を入れたい、設備その他のものを入れたいというときに、なかなかソ連圏の中ではまかない切れない。そこでこれは西側から入れようというのが一つ起こってくる。これが最近ソ連が非常に外から物を買うということが起こってきたことであります。もう一つは、いわゆるソ連、東欧圏と合わしたコメコンの中におきまして、最初はソ連というものを中心にして、その他の東欧圏はこれの一つ計画のままに動いていくというような体制であった。いわゆるソ連は工業国としてだんだん発展していくけれども、その他の国のあるものは長らく農業国というような地位にとどまらざるを得ない。あるいは工業としても軽工業品をつくれというような一つ計画の中にいたのが東欧圏諸国としては非常に不満になってきた。われわれもやはりある程度の国としてのやり方を考えなければいけないというようなことで、そういうような東欧圏諸国はやはり西欧に対して関係を結んで、これらとの輸出入によって自分の国自体の経済の向上をはかろうとしたのであります。  第三の理由、これ以下が中共取引との関係になりますが、いわゆる中ソの関係でございます。中ソの関係は御承知のように数年来悪くなっている。悪くなってから、従来中共に対してソ連からいろいろ経済援助をしてもらう、あるいは中共のものをソ連のほうで買うというようなことがだんだんなくなるし、薄まったのであります。そのときに、ソ連西側に呼びかけていろいろ直接物を買い売りする。中共のほうも外に対して関係を持とうとする。それが当然中ソの関係の牽制にもなるというようなことで、貿易がそこでふえてきた。  それから第四は、先ほど西側諸国で申しましたと同じであります。市場の拡大のためには、ソ連圏だけでやるということは非常につまらないことであるから、それと同時に外にも出ようというようなことがございまして、東西貿易というものはだんだん進んできたのであります。こういう中にありまして、西欧諸国がいろいろとこれに売り込みをはかっておるというようなことで、最近一番大きな問題となりましたのは、昨年の九月、イギリスがソ連に対し三千万ポンドの設備を売り込むにあたりまして十二年のクレジットを置いたということでありますが、そのようなものを契機といたしまして、西欧諸国はいろいろそういうことを考えておるというようなことで、西欧諸国が東西貿易に対する熱意というものは非常に強いのでありますけれども、ただ先ほども申し上げましたように、その強さは東欧圏が第一であり、ソ連は第二であります。中共は何といってもそれほど強いものではないかと思うのであります。  そこで、問題はアメリカでありますが、アメリカは御承知のようにココムというようなものを各西欧諸国にも呼びかけて、そうしてそれによってソ連圏あるいは中共へ物を売るということにいろいろ規制をしておる、あるいは中共との関係は特に敵国関係で非常に厳重にしておるというようなことで、アメリカ東西貿易のほうは非常に進まなかったのでありますが、国際収支が悪くなるにつれまして、一昨年あたりからアメリカにおいても強く、共産圏貿易を進めようじゃないかという話が起こってまいりました。ただアメリカにおいて起こってまいります場合には、どうしてもその共産圏貿易というものは、北鮮とかあるいは中国本土であるとか北ベトナムであるとかキューバというようなものは除いたその他の共産圏貿易に対して、われわれはもっとこれを促進することを考えてもらいたいというようなことでありました。一昨年夏に開かれましたワシントンにおける貿易促進会議においても、非常に強くこれに対する要望が出たのであります。ところが、それからだんだんたちまして昨年になりますと——その前に、昨年の初めに全米商業会議所は決議を政府に出しまして、やはり同様に今後東西貿易をもっと進めるべきだということを言ったのであります。その場合にも、先ほど申しました中共、北鮮、キューバ、北ベトナムは除いております。そこで、そういうような熱意が非常に強く、アメリカ政府としても東西貿易という対共産圏貿易をどうやって進めようかということが非常に強くなりました。昨年の六月にアメリカでは民間の代表者、銀行の代表者、学識経験者を集めまして公聴会を、アメリカの議会の国際関係委員会が開いております。で、これは昨年の十一月にレポートを出しておりますが、そのレポートによりますと——その前に政府関係者これは関係各省の大臣つまり長官それから輸出入銀行の総裁を個々別々においでを願って、そうして政府としての意見を聞くヒヤリングを求めた会でございます。ただ、それだけでは十分でないので、ここで民間及び銀行家あるいはいまの学識経験者から意見を徴するということであります。それを見てみますと、その中に、もちろんソ連とやる、東欧とやるというような意見は非常に強いのでありますが、やはり中共とやるべしというような意見もそこに出ております。今後いろいろなことを考えますと、そういう意見がだんだん強くなるのではないか。ただアメリカにおいては、国民感情としてそこにいろいろ乗り越えられない感情がございますので、そこに問題はあるかと思いますが、いろいろそういう点が今後進展してくるのではないか、こう考えております。  日本といたせば、そういうような世界の考えがある、日本輸出を伸ばさなければならない、経済協力もしなければならないというときに、やはり一番大事なのは、日本に近いマーケットというものを確保するということでありまして、東南アジアも必要であるけれども中国本土も必要である、台湾ももちろん必要である。ただそういうようなところと貿易を進めるにあたりまして何としても必要なのは、やはり摩擦が起こらないやり方だと思うのであります。その点で私は非常に遺憾に思いますのは、昨年以来中共との関係において、いろいろな点で、摩擦が起こらなくてもいいように私どもが考えておる事柄に、両方から摩擦が起こる。そこにいろいろな問題——実は政治的な問題もございますから、関係者の御苦心のほどは重々お察しできるのでありますが、何かその話し合いをするときに、もう少し各般の情勢をよく考えて、あとでこういうことが起こったらこういうことは考える、あるいはこういうことを言われたら、これまでは言ってもしょうがない、この点はわれわれも覚悟しようというような点に、もう少ししっかりした考えを持ってやっていただきたい。  それからもう一つは、これは民間の御関係者でもありますが、事がはっきりきまらないうちに、あまり外にいろいろなことを騒ぐ——騒ぐおつもりはないと思いますが、これが公表される。実はそれが、十のうち九はきまっておったが、最後の一がきまるところに非常に問題があるのだというような場合には、そこまでもきまったところで外に出るというような御配慮が必要かと思うのであります。そういうような御配慮をここに加えられまして、そうして、ココムできめられた国際的約束の中で私どもがやるならば、これは台湾はもちろんけっこうでありますが、中国本土とのわれわれの貿易も一進める必要があると思うのであります。  最後に一言、私は簡単に申し添えたいのは、日本としてあるいは世界として、先ほども申し上げましたように、貿易の分野を広げるという必要性についてであります。それについて非常に大きな必要性は、人口の増加ということを私どもは考えなければならないと思うのであります。昨年の夏に、国連において世界人口統計が出たのでありますが、そのときの統計によりますと、紀元二千年に至りますと世界の人口は倍加するということであります。たとえば、現在三十二億五千万ぐらいの人がいるとしますと、これが倍になる。六十五億あるいは六十八億というような世界人口が、いまから三十四、五年の間にここに出現するということであります。その大半は後進地域であります。東南アジアのエカフェ地域において、その間に増加する人口は二十億といわれているのであります。こういうように増加する人口に対して、食糧はどうするか、あるいは生活程度はどうするか、生活必要物資はどうするかということで、必ずそこに物資というものの必要性がある。たとえばアメリカ農務省で研究いたしました、紀元二千年における世界の食糧需給はどうするかという文章を見ますと、その中にこういうことが書いてあります。東南アジア地域では、今後必要とする米麦などの主要食糧、こういうような食糧を供給するためには、現在程度の割合で外から輸入する、この輸入量は非常に多いけれども、現在東南アジア地域で自給しているその率は九五、六%と書いてございますが、それをそのまま続けて、紀元二千年のときにそういう程度であり得るためには、現在東南アジア地域が輸入しておる肥料の二十倍の肥料が要る。こう書いてある。二十倍の肥料を東南アジアに供給する国はどこであろうかというようなことを考えますときに、やはり日本というものが相当大きくそこにクローズ・アップされる。もちろんこれは肥料のみではありません。いろいろな物資がそこに行く。そうすると、そういう物資を後進国に供給し、そのためにいろいろな物資の生産の必要性が起こるときに、やはり輸入源として、大きなソースをさがしておくことが必要だ。その場合に、何といっても日本に最も近い中共、あるいはそれはソ連でもよろしゅうございますが、そういう国の重要性というものが非常にある、私はこういうように考えますので、やはりこの際中国貿易というものは、摩擦の起こらさないようなやり方でだんだんと進めていただきたい、こう考える次第であります。
  10. 内田常雄

    内田委員長 以上で一応参考人方々意見の陳述を終わります。  次に、参考人に対する質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。板川正吾君。
  11. 板川正吾

    ○板川委員 参考人に伺う前に、本日の参考人を呼んで意見を聞きたいということの中に、ニチボー関係者を呼びたい、こういう申し入れをしたわけです。本日、ニチボー関係者が出席をされない。しかし、新聞等によると、ニチボーの社長は、二十三日には上京して総理と会っておる、こういう報道もあります。欠席した理由が、どうも事務局に聞いてもわからない。そうすると、どうも一番の当事者のニチボーは、政府に——この問題は政府関係の事項らしいから、政府だけに話をすれば、あとは国会はどうでもいいんだというような趣旨で欠席しておるんじゃないかと思う。国会はいわゆる国権の最高機関であるということを無視しておる感じがして、まことに遺憾だということを一番最初に言っておきます。  岡崎さんに伺いますが、御承知のように、きょう、きのうの新聞報道によると、政府の態度に若干の変化があるということが報道されております。政府筋の見解によればということで、変化が見られるような報道がなされておりますが、この内容を御存じですか。
  12. 岡崎嘉平太

    岡崎参考人 知りません。
  13. 板川正吾

    ○板川委員 これは報道ですが、こういうことを言っております。ニチボービニロンプラント輸出については、あくまでも民間ベースでやる。その場合に、金利のマイナス面が十億ほどある、これは日銀が別途に、そのシンジケートだかのめんどうを見ることによって、その点の問題を解消するように取り扱う。第二として、日立造船輸出延べ払いの問題については、三月三十一日までということじゃなくて、若干おくれるが、輸銀の扱いをするようになるだろう。三として、今後はプラント類の輸出は、一切といいましょうか、輸銀扱いとするたてまえをとる。こういうような趣旨が政府の筋から流れて、けさの新聞、きのうの夕刊、きのうのテレビ、けさのテレビ等で報道されておるのです。実はきょう始まる前に、通産大臣なりに報告をしていただいてからと思ったのですが、いろいろの関係でできません。そこで、そういう伝えられるような内容であれば、いま中国日本との問題になっておる問題ですね、これは解決するだろうと考えられますか、どうですか。
  14. 岡崎嘉平太

    岡崎参考人 私はあまり政治家でありませんですけれども、政治的見解を述べますと、どうもそういうことはあまりよくないと思うのです。事実であればいたし方ありませんけれども、日立及びそれ以後のプラント輸銀を使わせるということができるならば、なぜニチボーだけに使わせられないのか、そういう細工をする必要はごうもないような感じがいたします。
  15. 板川正吾

    ○板川委員 そうなんですね。吉田書簡を御承知と思うのですが、なぜ政府がそれにひっかかっているのか、実はわれわれにはわからないのです。吉田書簡内容は、中国向けプラント輸出については、池田総理も民間ベースでやるように検討するということを約束した。いずれにせよニチボービニロンプラント輸出は三十九年中は許可しない方針とのことです、こういう内容のようですね。ですから、この吉田書簡内容がかくのごとくであれば、いまの政府ビニロンプラント輸出許可しないと約束したのじゃない、検討すると約束したのであって、許可しないと言ったということじゃないし、いずれにしろニチボーのピニロソプラントは三十九年中は許可しない、こういうことであって、そう一切輸銀扱いはさせないと言ったわけじゃないのですね。だから政府が、いまの池田内閣当時のそういうような話し合いの内容——しかも私信ですからね。国会に報告されたわけじゃないんだし、いまの内閣がそれに拘束される理由はないと実は思っておるわけです。そういう点は中国側では百も承知じゃないか、そういうことを向こう承知しておるからこそ、政府が今度、佐藤内閣の姿勢としてあれを輸銀扱いさせないということは、台湾政府のその後のさしがねじゃないか、差別待遇をすることは何としても承知できない、こういうことでないかと思うのですが、この吉田書簡について岡崎さんはどういう見解をとっておられますか。
  16. 岡崎嘉平太

    岡崎参考人 私もいまお話のありましたような内容に、実は昨年から漏れ聞いておったのでございます。ところが本年になってそれが内容が違うように聞いておりますので、実はびっくりしておるわけなんでございますが、何か解釈の問題とか、途中で口頭でもう少し違った約束がされているんじゃないかという気がいたすのでございます。先だって来新聞に発表されましたのもそういうことなんでございますから、どうも私ども従来理解していたことを現在問題になっていることとは違っておることだけは私自身も感じておるわけです。吉田書簡がそのままであれば、そのように実行してもらえば問題はなかったんじゃないかと思うのです。  それから民間ベースという問題とか輸銀ベースとかいう問題を非常に内容がわからずに使われておるんじゃないかと思いますが、輸銀を使うことが政府ベースだというように考えるのはちょっとわれわれには解せない。輸銀当局に聞きましても、あれをつくったときのいきさつからいえば、あれ自身が民間ベースだというように感じておるんじゃないかというように思いますので、政府資金の援助ということをしてもらっては困るというところから起こったといたしますと、先ほど井上さんからの話もありましたが、ある程度の延べ払いがはたして相手方に対する資金援助であるかどうか。いま貿易界のみならず、国内の販売でも、ある程度の延べ払いというのは、援助ではなくて販売競争から起こってきた販売方法ということになっておりますので、こういう理解を改めておきませんと、今後の問題にも影響があるということを痛感しておる次第であります。
  17. 板川正吾

    ○板川委員 そうなんですね。輸銀は、日本一般金利が六%なり八%なり一〇%である、外国じゃ四%なり五%である、だから政府輸出を奨励するというたてまえをとるならば、どうも金利の高いものでは、特にこういうプラント輸出の場合には金利が問題ですから、外国並みに金利を四%なら四%にして、そして外国と対抗できるような同じ水準にするという純経済的な、いわゆる民間的なベースなんですね。ただ、この二国間協定で十七、八年も政府が協定して後進国工場をつくってやるとかという場合には、だれが考えても、プラントを十七、八年で払っていいということになると、これはある程度の経済援助だし、また、それはそういう趣旨が要ると思うのです。しかし一般西欧並みで五年なり七年なりという程度は、販売の条件で、割賦販売と同じようなもので、これは決して政府の援助ではないのです。それから輸出の申請にしても、申請書の中には、別に輸銀を使うとかどうとかいうことは、何ら記載事項ではない。しかしこれは記載事項ではないが、輸銀を使いたいといったら、これを拒否するという理由は全くない。これは輸出奨励のために無差別に門戸を開放して、どこにも差別なしに貸してやるのがたてまえだ。だから、そういうたてまえからいうと、いま政府が考えておるニチボービニロンプラント輸出については輸銀は使わせないが、そのかわり金利の十億円ほどは、別途にその貸した銀行に日銀が考慮して実質的損害を与えないようにしようという扱いは、この理由が実はわれわれもわからないから、こういった、いまの伝えられる政府の態度では、この中国との問題は解決がむずかしいのではないかという感じがするのでありますが、ほかの参考人の中で、これに対する御意見があれば承っておきたいと思います。なければけっこうです。——それでは日立造船の方に伺いますが、その伝えられる内容ですね。三月末までには、どうも輸銀の取り扱いをさせるわけにはいかないというようなことが伝えられております。しかし桜の花の散る時分かどうか知らぬけれども、とにかく三月三十一日ではなく、若干時期をおくらせてもいいではないかというような説がありますが、そうした場合に、この三月末の契約というものはどういうことになるだろうか、その見通しについて見解を述べていただきたいと思います。
  18. 井上信雄

    井上参考人 この問題は、先ほど私が御説明した中にもありましたけれども輸銀融資を必要とする時期というのは、たとえて言いますと、うちの船でいうと、ことしの夏ごろから発生するが、輸出入銀行というのは、たてまえとして融資時期の来たときに融資を決定するというようなたてまえになっておるわけであります。そこのところは、政府筋のほうに、実際の融資の必要ということで、いまお話のあったような、三月過ぎてから融資の必要なときにおろすのだというような声明になっておるように思いますけれども、この問題はちょっと特殊なスタイルで、三月三十一日までに輸銀から融資の金が出る、輸銀融資が行なわれることがはっきりしないと、この契約自体は成り立たないというところに、実際の融資必要時期と融資許可とに、少し考え方にズレがあるんですけれども、これは中国側考え方と実際の輸銀やり方とにズレがある。簡単にいいますと、要するに三月三十一日までに輸銀融資をするんだという声明があれば、この契約は成り立つ。けさの新聞にあるような、将来輸銀を考えるというような時間のズレがあっては、ちょっとこの契約は成り立たないと私は見ております。
  19. 板川正吾

    ○板川委員 私、もう一点だけ岡崎さんに伺いますが、さき中国プラントの西欧諸国との取引状況と、将来さらにそれがどういう規模で発展するだろうかというプラント輸出の市場面としての中国の実情といいましょうか、そういった点を、あちらへ行って折衝の過程でおわかりでしたら、参考までに説明してほしいと思います。
  20. 岡崎嘉平太

    岡崎参考人 私たち碕事務所の者は個々の商談にはタッチしないようにつとめて警戒しておりますので、詳しいことは存じませんが、中国側計画しておるプラント輸入というのは、非常にたくさんあるそうであります。最初に、一昨々年高碕さんなんかと参りましたときには、もうすでに十ばかり名前をあげて、私はほとんど忘れましたけれども、こういうものをさしあたりやろうと思っているんだが、日本が売ってくれるだろうか、売ってさえくれれば全部を日本から買いたいのだ、こういうことを言っておりました。最近、輸出入組合でしたか、調べて政府に出されたのをちょっと見ましたが、非常な数にのぼっております。欧州からも始終来て、持ち込んで話しているということも向こうからも言っております。ですから数が非常に多いということは間違いないことであります。そして今度われわれが参りました最初のときに、向こう対外貿易部の副部長——部長は葉季壮さんという年寄りですが、ほとんど出てこられないのですが、この盧緒章さんが実力の大臣と同じ仕事をしておられますが、岡崎さん、第三次五カ年計画にはプラントが非常にたくさんになっておるのですがね、こう言っておりました。そしてそのときにも、どうも日本との交渉は時間がかかってしょうがない、こういうことを言っておりましたから、やはり今後売ろうとすれば、エンジニアリングさんがおやりになったような三年越しというようなことではこれからはいかないんじゃないかと思うんです。向こうは、早いのは一週間ぐらいできめるそうです。  それで、いまのお答えで、ちょっといま参考までに申し上げたいと思うのです。私は金融は国内問題だということを十分強調しておきませんと、誤解があっちゃいけないと思いまして、いまの井上さんのお答えにも関連するので御参考までに申し上げておきたいと思うのですが、輸出入銀行金融輸出入銀行融資するということを政府が御決定になることはないと思うのです。そうすると、もう輸出入銀行というものは政府になっちまうんです。そういうことはないので、輸出入銀行に交渉することをとめられることはあり得ても、交渉したその結果、必ずしも融資しろとか、するなということを言われることはないと思うのです。それは輸出入銀行の権限ですから。実は輸出入銀行へ行って聞いてもみたんですが、政府がとめられるということは行政措置ですから、それはほかの銀行だって市中銀行に行って、おまえあの会社融資しちゃいかぬぞということを言われれば、行政的圧力はかかりましょうけれども、そういう権限が政府にあるわけじゃないと思うのです。融資しろという権限もなければ、融資するなという権限も政府にはないと私ども承知しておりますし、輸出入銀行もそう解釈しておられます。それを頭に置きまして中国側に言っておきましたのは、もう輸出入銀行資金は使わせないと政府が言えば、行政的にはみなそれに従うでしょう。しかし輸出入銀行にタッチしたからといって、コンタクトしたからといって、輸出入銀行が必ずしも融資をするものではない。ですから政府に向かって——私はニチボーとして話をいたしましたが、たとえばニチボー輸出入銀行のほうに話をしますぞと言って、政府がそれでもよかろう、こう言って、ニチボー輸出入銀行に話をしてみる、これはニチボーに貸すということを約束するのじゃない。だから今後こういう問題があったところで、たとえばニチボーが何かのことで対外的に資金が要った場合、そこに政府介入しまして、かりに輸銀資金を使わせないと言ったり、あるいは輸銀資金を使ってもいいと政府が言ったとしても、これは輸銀がそれを貸すか貸さないかということとは別問題なのですよ、そういうことをくぎをさしておるわけであります。ですから、井上さんのほうでも、政府が三月三十一日までに輸銀の金を出すという決定をすればいいとお考えになっていると、問題は違う。ですから、あらかじめ輸銀お話しになっておいて、三月三十一日までに輸銀の内諾を求めておおきにならないと、政府が決定をすることではございませんから。これは政府も御存じでありますし、それから輸銀のほうも十分知っていることであります。中国側にもその点はよく話をしておきました。ですから、政府輸銀にコンタクトする、とめるのは、権限はないけれども、政治問題としてやったかもしれません、しかしそれを解いたからといって輸銀融資するとは限らない、こう申してあるのでありまして、そうじゃありませんと、すべて輸銀融資、非融資ということが政府が決定するようにとられますと、輸銀も迷惑ですし、また政府がやってよろしいと言ったら、その全部の資金輸銀が出さなければならないということになると、これは非常に困るのであります。
  21. 板川正吾

    ○板川委員 輸銀の取り扱いを私も聞いたのでありますが、内容の不確実な、信用のないものを融資するかどうかは別問題として、ニチボーさんのような場合、信用のあるものが輸出をする場合には、従来、その取り扱いをさせないということは一つもなかったそうですね。問題があれば政府がその資金のワクを出しますから、予算の範囲内でと、こういう一つの制約もありますが、しかし予算がないから、資金のワクがないから貸さないということも過去になかった。もしそういう状態にあれば、今度は資金をふやして、ワクを拡大して輸出を奨励していこうということですから、信用がなければ別として、信用があるものに対して輸銀の取り扱いを拒否したということはない、こういうことだそうであります。ただ、私、いま中国プラント市場としての問題を岡崎さんに伺いましたが、これは谷林さんにもその点について、資料なり材料があれば説明をしていただきたいと思います。
  22. 谷林正敏

    谷林参考人 いま御質問がございましたけれども、私は、それにお答えすると同時に、前に申し上げましたことに若干つけ加えさせていただきまして、いまの輸銀云々の件についても、ちょっと私の意見を申し上げたい次第であります。  私、先ほど申し上げましたのは、東西貿易は進めるべし、中共との貿易もやれ、これは一つの国際的約束の範囲においてやるべしということを申し上げましたが、そのときに、どうも従来これをやり始めてからいろいろな点で問題点が非常に多かった。たとえば台湾との間のいろいろな約束、いま言われることも実際の内容、どういうお話があったか知りませんが、そこでかりに輸出入銀行を使わないという話がどういう形式下で起こっておりますかというと、台湾としては輸出入銀行を使う、そのことについて、これは困るということを言っている。そういうことで、輸出入銀行はそういう申し入れがあったから——これはそう言わなくとも当然背後にありますが、それだから中国本土との取引においてこれを使ってはいけないという論議が出れば、当然中国側から文句が出る。それで私は、このようなことをやるときにはもっと慎重にこれをやっていただきたいということでございます。先ほど、たとえば輸銀を使ってもこれは差しつかえないのじゃないかというお話がありましたが、私もまさにそう思います。ということは、ガットで輸出補助をしてはいけないという取りきめがありますが、その中で一番大きな問題になっている直接税の還付でございますが、その場合に間接税の還付は全然問題にしておらない。同じように金利というものがある程度そこで救われても、それが非常に大きな差があれば別ですけれども、これは問題にならない。たとえば、先ほど申し上げましたイギリスが三千万ポンドソ連に対して融資をするという場合におきましても、これはやはりイギリス政府としての輸出保険制度というものの恩恵が直接なり間接なり入っておるという点で、私はそういう点は問題ないと思いますが、この台湾との関係においては、もとに政治という問題が出てくる。かりに政治問題があり、台湾中共日本あるいはアメリカというような関係が入っておりますと、それがすでに前提となっていろんな話し合いがここに出てくるものですから、それが単なる経済論で、貿易関係のみでは進み得ないということは、私は重々わかる。しかしこういうような情勢になって、一方が何か言い——これもある程度以上は、当然日本がやっていいことまで制限されるということは、両方のほうに言いたいことでありますけれども、ある程度両方がものを言っておる場合において、一方との約束あるいは話し合いに違うようなことを言いますことは、また状態を悪化するという問題になりますので、これは、いろいろいい解決方法をとられることはけっこうでありますけれども、はっきりして、問題がまた再び蒸し返されないような程度でぜひやっていただきたい、こう考えるのであります。  それからいまの御質問、つまり中国は今後ももっといろいろな設備、そういうようなプラント類を買うだろうかということは、私は、あの国は従来そういう点はおくれておるので、日本からいいそういうものの供給があれば買うと思うのであります。ただ、中国本土と日本とのそういう関係を今後進めていくためには、現在非常にたくさんの隘路があると思うのであります。これは実際お売りになっておる方、そういう商談をなさっておる方は、あるいはそれほど痛感なさらないかもしれません。あるいはある点についてはわれわれ以上に痛感しておられるかもしれません。たとえば先方の市場の内容がわからない。それから向こうとこっち、つまり日本から先方に行く場合に、中に入る入国の自由、あるいは中で方々歩いて見るというような自由がないというようなことは、今後プラントその他を向こうに入れる場合に非常に大きな問題があると思う。つまりある企業はこういうものを入れたいと思う。しかし先方では、一体どの程度この産業が進んでおり、これができればどの程度の需要があるだろうかというようなことも事前によく調査されて、初めて商売というものは進むのでありますが、現在ではそういうようなものもない。あるいは国が国交を認めておらないから、そこにいろんな問題が出たときに、国と国、政府政府との間のいろんな解決がむずかしいというような問題もここに加わってはおります。しかし、かりにこういうことを横に置いておいても、現在の状態でも、もう少し日本から先方に行き、先方の事情もよくわかるというようなことを基調にして、そして今後プラント類なりあるいはいろいろなものを先方に売り込むということが必要ではないか、私こう考えております
  23. 内田常雄

    内田委員長 次に中村重光君。
  24. 中村重光

    中村(重)委員 岡崎さんに伺いますが、吉田さんの書簡が日本政府を拘束するというようなとんでもない話になってきた。中国は、この吉田書簡なるものが今度問題になる前に、この書簡が台湾に送られていたことを知っておったのでしょうか。その点どうなんでしょうか。
  25. 岡崎嘉平太

    岡崎参考人 知っておったかどうかは、全然向こうで言ったことがありませんからわかりませんが、知っておったろうという感じはいたします。日本でも吉田書簡が出ているということは相当わかっておりましたから、そういうことがもう日本関係者の間にわかっておれば、大体それは向こうは知っております。日本の業者が知っておればそういう話をいたしますから。それと同時に、先ほどお話がありましたように、三十九年が済めばいいんだというくらいのこともおよそわかっておったのではないかという感じがいたします。それが四十年になってああいう問題になったものだから、特に大きく取り上げられたのではないかといいう感じが私にはいたします。しかし想像でございます。
  26. 中村重光

    中村(重)委員 いまの書簡の内容ですが、あなたが触れられたのですが、御承知のとおり、橋本官房長官は吉田さんの書簡に対しては関知しないと言った。総理は拘束されるんだと言う。その後予算委員会あるいは商工委員会においての外務大臣、通産大臣の答弁にあたってニュアンスがだいぶ違う。どういったような答弁がなされたかといいますと、輸銀を使わせないのは当分の間と言っている。あるいはいまあなたからお話がありましたように、三十九年だけが拘束されるんだというようなことも伝えられている。それからニチボーだけにこれを使わせない、その他には関係がないんだということを言っている。委員会ではその点ははっきり言っていませんけれども、伝えられるところによりますと、ニチボーだけだ、その他には別に関係はないんだということを言っている。そうでなく、全体のプラント輸出輸銀を使わせないということも伝えられている。ところが先ほど板川委員から申し上げましたように、けさの新聞に載っているところを見ると、ニチボーだけはいけないんだ、しかし、時間的な関係がありますが、日立の場合においては使わせるというようなことも言っている。まちまちなんです。その点、あなたはどういうようにこの書簡の内容を理解しておられましたか、御承知でしたら聞かせていただきたい。
  27. 岡崎嘉平太

    岡崎参考人 私は書簡を実は見たことも一ありませんし、ただ人から伺っているだけなんでございますから、先ほど板川先生がおっしゃった程度に理解しておるだけでございます。総理が国会で、金融の問題、国内問題だから台湾にも拘束されないし、中国からも拘束を受けない、自主的にやるんだということを言われ、台湾の大使にもそう言われたという、これも報道でございますが、私はそれを信頼して、そのとおりに実行してもらえばいい、こう考えておるわけであります。ですから、それらの結果、日立さん以降は輸銀を使わすんだ、こうおっしゃっておるならば、それもよろしい、それならばついでにニチボーも自主的にお使わせになったらいい、こう考えるわけで、佐藤さんの二つの、国会におけるお話と魏大使に話されたという、つまり自主的にきめるんだという線で貫いていただいて、そしてそれを国内問題として扱っていただければ、何かそれですべて解決するような気がしております。そこに政治的配慮を加えられて台湾介入を許したという結果を見せられると問題が残ると思います。
  28. 中村重光

    中村(重)委員 そこでまた関連してくるのですが、台湾に対して一億五千万ドルの長期借款を認めたということ、これとこの輸銀の問題の解決、これが何か結びつけかのように政府は考えているということが新聞に伝えられている。ところが、こういうことがさらにまた中国に対して新しい刺激を与えてくるのではないかという心配も出ておるようであります。こういう点に対してはあなたはどういうようにお考えになっていらっしゃいますか。
  29. 岡崎嘉平太

    岡崎参考人 これは最初に御説明いたしましたように、日本台湾との関係、これは私の注釈でありますが、中国側から見れば、もう一種の亡命政権にすぎない、それを中国代表であるかのごとく日本が取り扱っておるのは非常におもしろくないという感じを持ってはおるのでございましょうが、先ほど申しましたように、日本台湾とに関する限りのことなら、何をやっても自分たちは目をつぶっていくつもりだ、こう言っておりますから、あの問題もちょっと話してはおりましたけれども陳毅氏はそれをとがめるようなことばは出しませんでした。ですから今後起きても、不愉快ではあっても、日本台湾だけのことについては言わないと思います。
  30. 中村重光

    中村(重)委員 それから、先ほどあなたがお答えの中で、西欧との成約が非常に順調にいっている、一週間くらいでできる、日本の場合は非常に時間がかかるということですが、これは政経分離だとかいうようなことで、民間ベースでやらせる、もろもろのネックがあると思うのです。特に日本の場合、そういう契約に時間がかかるというような点は、どういうところにあるのか、具体的なことを御承知でございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  31. 岡崎嘉平太

    岡崎参考人 一つには、政府の内諾を求めようとする。これは標準外決済になりますから、どうしても政府の内諾といいますか、許可が要りますから、それで政府に内諾を求める作業もあると思います。特に私自身が関係して経験いたしましたのは、倉敷ビニロンの場合も、ほかは済んでおっても、その問題で長くかかります。ですが、いま東洋エンジニアリングさんの尿素のときには、どうして長くかかっているかは存じませんから、阿部さんから事情をお聞きくださるほうがいいのじゃないかと思います。
  32. 阿部喜一

    阿部参考人 三年前と先ほど申しましたけれども、三年前に話があったので、その間交渉が続いたという意味ではございません。去年、坂田の参りました二月二十四日でしたか、それから商談が始まっているのですけれども、ちょうど約一年になります。とにかく一年と申しましても、長い間それがずっと長引いていたというのは、ニチボー関係が解決して、それから日本視察団をよこそう、こういうことになっておりましたので長くなりましたので、特別そこにほかの事情があるわけではないのです。ただ三年前に云々と申しましたのは、その間、中絶したわけなんです。だから私たちのほうの長くかかったのは、特別な事情があるわけじゃありません。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 井上さんにお尋ねいたしますが、私どもの質問に対して政府側が答弁しておるのは、あたかも業界が努力さえすればこの問題は解決するかのごとく答弁をしているのです。企業努力でひとつ解決をしてもらいたい、盛んに業界に働きかけをしておるけれども、なかなか業界がこれに対してうんといわない、そういったような答弁をしているのですよ。しかし私どもは、いかに業界が努力をしてみても、この問題は政府の姿勢を変えない限り解決のできるものじゃないのだ。岡崎さんから先ほど中国側考え方お話がありましたことでもはっきりしておるわけです。具体的には、それじゃどういうことをやっているのかといいますと、シンジケートなりを通じてやるとか、いろいろけさの新聞に出ていたような、金利を安くしてやるという具体的な考え方でもって業界の皆さん方にお話政府側からあったのではないかと思いますけれども、そこらあたりの、業界と政府側との間にどのような交渉が進められ、また可能性のことについてもいろいろと分析されたと思いますが、そういう点について、差しつかえなければ経過をお聞かせ願いたい。
  34. 井上信雄

    井上参考人 いまお話しの企業努力という問題は、われわれ経済的にこれを受け取っておるわけですが、船の輸出の場合には先ほど——今度の問題は、いまの御質問とはちょっと離れますが、大体輸出入銀行云々という問題がこういうふうな問題になるということは実は考えてもいなかったし、従来ともこれは確かに岡崎さんのおっしゃったとおり、政府許可事項でもない全くの国内問題であるということで、いままで一回もこういったことに政府輸出入銀行融資を云々されたこともなかったわけですが、今度は特殊事情でこういうことになったのです。企業努力によってこの問題をコマーシャルベースで解決するということは、一般論としては確かに金利問題の解決策はほかにもあるかもしれませんが、しかし現在の日本貿易の状況においては、輸出入銀行というもの以外に、こういったものの方法としては見つからない。唯一の存在である輸出入銀行だけをたよりにいままでやってきた。したがって、何らかの方法といわれてもわれわれとしてはできない。どうしても輸出入銀行にたよる以外に方法はないということであります。われわれとしても、われわれメーカーですから、金利問題さえ解決すれば採算はとれる、いろいろ方法は検討しましたけれども、いずれの方法もいろいろ問題があってむずかしい。結局、もともとの金利問題にまた戻ったというのが実情でございます。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 谷林さんにお伺いしますが、アメリカ東西貿易に、国内法の一部改正をやって緩和をして、積極的に参加してくるという態度を打ち出された。共産圏に対するアメリカの進出ということは、日本貿易に相当な影響を及ぼしてくるのじゃないかと思います。そこらあたりに対しての考え方をお聞かせ願いたい。
  36. 谷林正敏

    谷林参考人 アメリカは、いますぐに共産圏に対してアメリカの中の法律をかえて、そこに進出するということまで具体的に考えておりません。ただ、アメリカとしては、民間なりあるいは政府なりが考えて、どうしてももう少し共産圏のほうに進出しなければならない、それにはいまおっしゃったように、あるいは法律の改正が必要か、あるいはアメリカ輸出入銀行の規定をもう少し緩和するか、どういうことがいいだろうという点をいろいろ検討しておるのでございます。きのうあたりの新聞で見ますと、先ほど私が申し上げました国際関係委員会を最近また開きまして、そういう点についての公聴会を一週間くらい開いてまた態度をきめるということをいっております。ただ、法律的な制限は、中国との貿易についてはもちろんございますけれども中国に踏み切る、あるいは北鮮に踏み切るということがあれば、そういうほうに向きますけれども、現在はそれ以外のところにということである限り、私はそれほど法律との関係はないと存じます。ただ、しいてあげれば、ココムの禁止物資をもう少し緩和する、これは何回か緩和されてきましたが、これをもう少し緩和するというようなことかと思うのであります。ただ実際問題として、非常にそういう日本との競争という点で心配なのは、最近アメリカとカナダとの間で結ばれました、これは一月十六日に両国間で結ばれた米加自動車協定というのがございます。この米加自動車協定というのは、自動車の、あるいは部品の輸出入に関する限り、アメリカとカナダは関税がなしに両方が自由貿易地帯のようにこれをするというようなことがありまして、その場合に、たとえばアメリカが現在では出せない地域に、アメリカのある製品を出そうとするときに、カナダのマーケットを通って出るということも考えられる。アメリカは最近大統領以下、もう少しいろいろこれを考えなければいけないということを言い出したのは、小麦をソ連に前は出しておりません。おらなかったのをいろいろやっておるうちに、西独がソ連に対して小麦粉を、それほどの量ではありませんが、三十万トンですか、六十万トンですか、非常に少量でございましょう。それを出した。しかし、それは西独にアメリカが出した小麦から出たものである。それならば自分のほうが一生懸命にそっちに出さなくても、ほかの国がそこに出せば同じじゃないかというようなこともありまして、マーケットを広げるためにいろいろ分野拡大につとめておるということが実清でありまして、いま御質問のように、中の法制をかえるということまで決心したのではない、こう考えております。
  37. 内田常雄

    内田委員長 山崎始男君。
  38. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 この吉田書簡という問題が大きくクローズアップされましたのは、岡崎さんが代表でお行きになった本年に入ってからの問題だと思うのですが、日立さんや、東洋エンジニアリングさん並びに谷林さんのお三人は、岡崎さんが代表でお行きになって、吉田書簡そのものが大きくクローズアップされました以前に、そういう吉田書簡というものがあったということを御存じであったかどうか、お知りにならないでいらしたのか、その点ちょっとお三人からお聞かせ願いたいと思います。
  39. 阿部喜一

    阿部参考人 私はその内容はよくわかりませんが、吉田書簡があったという事実だけは知っておおりました。内容は存じません。
  40. 谷林正敏

    谷林参考人 私は、何かあの当時新聞にそういう吉田書簡というものが向こうに提出され、いろいろ話し合いがあったということは、当時吉田さんが行かれたときに新聞に出たような記憶はございますが、それ以外のことは全然知ってもおりませんし、その内容が一体どんなものかというようなことについて、われわれが検討をするというような関心もございませんでした。
  41. 井上信雄

    井上参考人 先ほど阿部さんがおっしゃったとおり吉田書簡というものは内容はもちろん知りませんけれども、あるということは知っておりました。プラントについて何かの手紙が出ておるのだろう。しかし船の場合、解釈上プラントとも思っておりませんし、何かプラントについてのある取りきめ程度のものだと思って、船のほうとしては、知っておりましたけれども別にこれに影響されるということは考えてなかったわけであります。
  42. 山崎始男

    ○山崎(始)委員 どうも私たち国民の立場に立って考えますと、吉田さんがそういうふうな書簡を出したのはずいぶん前だろうと思うのです。そしていまお三人からお聞きいたしますと、そういうものがあったということは聞いているけれども内容は知らない。多額の経費を使われて中共までお行きになって、せっかく契約をされ、また、いままさに契約一歩前にこぎつけられて、相当御苦心なさったと思っております。それがたまたま本年になって岡崎さんがお行きになってはじめてそれが大きくクローズアップされてきた、そういうふうな台湾の政治介入では、そういう差別待遇という立場からいってがまんできぬのだ、この中共考え方が初めてそこで大きく世間の問題になったと私たちは考えます。これはだれが考えても吉田書簡そのものが、先ほどわれわれの委員のほうから話しておりましたが、三十九年度中は輸銀を使わせないように考慮するというような意味内容だった。岡崎さんも、自分もよく内容は知らないがあるいはそれ以外に口頭でもって吉田さんが何か約束しておるのじゃないか、そういうこともないとは限らぬ、あるのじゃないかということも考えられるというような意味のことを先ほど言われたと思うのでありますが、常識から考えますと単なる私文書、なるほどあのときにお行きになったのは親善的な、池田内閣のときにいわば池田さんの特使というような立場であったか、法律上の点はよく知りませんが、その人が書簡を出されたのです。その書簡そのものはだれが考えても、私らでも私文書だと考えます。その私文書をたてにとられて、中共がそういうふうなことを突然言い出したような印象を逆に私は受けるのです。突然言い出した。その間に相当な時間があったのですから、しかも貿易会専務理事であられる人、大資本である皆さん方がお行きになるには、あらゆる情報をとられ、中共とのプラントをやるのにどういうふうな隘路があるか、当然私は御調査になってお行きになった、こういうふうに解釈いたしますが、いま聞いてみますると、吉田書簡そのものの内容をよく知らないのだ、当然輸銀で扱ってもらえるものだという日立さんのほうの先ほどの御意見のとおり、だれだってそういうふうに思うだろうと私は思います。それが私文書であるべき性格のものが、どういう原因か、岡崎さんが行かれて初めてそれが公的に表立って出てきた。そうして先ほどのお話じゃございませんが、通産大臣にお聞きしても、何が何やら非常に含みのあることばはかりでよくわからない。また最近の佐藤総理の答弁じゃございませんが、最近になってこれは国内問題になった、国内問題として処理をするのだというふうにずいぶん変ってきておるように思うのでありますが、それならば、どうしてこういうような不幸な問題に発展したのか、実は私はよくわからないのです。でありますから、当分の間、当分の間という通産大臣のお活を聞きましても、おそらくその間に、その吉田書簡に基づいて台湾政府了解工作をとる期間をかせいでいらっしゃるのではないかというふうにわれわれは考えられるのです。そうすると吉田書簡の表面上の文面だけから見ると昭和三十九年度中という——それも使わせぬのだというのではなくて、台湾の御趣旨に沿うように考慮しようという意味にわれわれは解釈するのです。あるいはひょっとすると岡崎さんがお行きになったときに——いま岡崎さんに中村委員が、先方吉田書簡内容は知っておったのかという質問をしておりましたが、あるいは中共台湾ですから、同じ民族が二つに分かれてああいう不幸な状態になっておりますが——あるいは口頭でもって吉田さんが何か固い約束をしておらないとは限らない。特に同一の民族ですから、表面上は敵身方ではありまするが、あらゆる諜報機関が活動して、これはおそらくつうつうとんとんで抜けてしまっておると思うのです。何かそこに、佐藤内閣が最近やや前向きになりかけたとはいうものの、そういうふうなビニロンプラントの問題だけで、そういうふうに大きく向こうから強い政治的な発言を申し入れられたということには、かなり深いものが私はあるのではないか、こういうような気がしてまことに遺憾に思うのですが、その点について、岡崎さんはおそらくその消息を少しは知っておられると思う。先方が、吉田書簡というものによってこういう差別待遇を受けたらいかぬ、われわれはとうてい是認できないと言い出したときに、あなたはその点を突っ込んで、当時吉田書簡内容は一体どうなんだというふうに、中共にお行きになりましたときに、吉田書簡そのものでお話しになりましたでしょうか、それともお話しにならなかったでしょうか。
  43. 岡崎嘉平太

    岡崎参考人 いまの御発言の中で一つ訂正さしていただきたいと思うのですが、私も先ほど板川さんのお話のように内容を理解しておるが、それが昭和三十九年をこえて生きているというのは、何かほかの人か口約束でもしたのではないかと申しましたのは、それが吉田さんという意味ではございません。ちょうど昨年の九月ごろ張群さんが来ておられますし、その機会に何か話が出たくらいに想像しておるのでありまして、その根拠はございませんので吉田さんではございません。  それからいまのお尋ねの点ですが、陳毅外交部長以外は、ほかの政治問題はほとんど話はされません。もっぱら経済問題だけなんです。そうして陳毅外相は、時間があったとみえて、いろいろほかの話もしておられましたけれども、この話をされるときも、問題はいま申しましたようにわが国差別待遇をする、その問題にしぼっておられました。しかし、その話をされる態度は、非常にやわらかいんですよ。御承知のように陳毅さんというのは、からだの大きい、顔の大きい、口の大きい人ですから、あれでがーっとやると、あるいはかまれるんじゃないかと思うような顔になるんですけれども、非常になごやかに話をしておられるのです。ですから悪意を持つとか、やっつけてやろうというような気持ちじゃなくて、そしていつでも溶ちてくるところは、これじゃ積み重ね方式がだめになるじゃありませんか、こういうことなんです。それから葉季壮さんは、この当面の責任者でもありますから、たびたび声を落として、しかも強く、何とかこれを岡崎さん解決してください、そうしないとうまくいきませんよ、そういう話しっぷりなんです。ですから、内心は日本中国との関係を盛り上げていこう、時間をかけても盛り上げていこうというときに、そのことは口にされないけれども台湾介入によって両国間に水をさされるのはやり切れないという感じを出しておられるわけです。ですから、私はこの問題を、どちらがいいとか悪いというよりも、第三国の介入によって両国の間に水をさす、それを日本が許すのはいかぬのじゃないかという感じを非常に強く受け取りました。それから、日本に帰りまして、いろいろこの問題を聞いてみましても、どうも、どうしてこの四十年になってこういうことになるのか、だれもわかっている人がありませんし、それからうすうすいまのお話のように向こうも知っておったとしましても、あるいは四十年になったら問題はないくらいに思っておったんじゃないかと思います。私も出発するまでは、むろんうまくいくと思って行きまして、私の出発している留守にこの問題があって、大きく向こうが取り上げたように感じたわけでございます。私も寝耳に水、しかし根拠がないわけではないなとは感じましたけれども、実はこんなになろうとは思いませんでした。ですから内容を確かめなくても、どうして日本で四十年になってこれが問題にになるのかと、私自身が自問自答するほうでございますから……。しかし、その手紙の内容というのは、ほんとうは外務省以外には、ごらんになった方があれば別ですけれども、私どもも実は見ておらぬわけでございまして、何とも申し上げかねるのであります。
  44. 内田常雄

    内田委員長 最後に石野久男君。
  45. 石野久男

    ○石野委員 じゃ、一言だけお尋ねいたします。問題は、どういう形にしたら、せっかく積み上げ方式でやってきた日中貿易というものを広げていけるかということを、われわれは考えるわけなんです。そこで、政府にしても輸銀の問題については、いろいろ頭を痛めているようでございます。輸銀の問題についても、輸銀の貸し出しが第三国の干渉でやらるべきでないという政府の所見も、私たち同感に思っているわけなんです。  そこで、お尋ねしますが、先ほど井上さんは、企業努力で、輸銀を使わないではやはりなかなか輸出はできにくいんだというような御趣旨のことも申しておりました。私もそうだと思うのです。そこで、政府が考えているように、輸銀を使わすという方式について、必要な時期になってから金は出してやるように考えましょうということと、それから井上さんが言われるように、契約の前に輸銀が使えるということがはっきりしているかどうか、それが非常に問題なんだということを先ほど申されました。この点について、中国側で、どういうように日本政府が手だてをしてやろうとも、輸銀を使わすことに対してチェックをするというような形であった場合には、なかなか契約の成立ができないんじゃないだろうかというように、いままでの事情から見ますと私どもは考えるわけです。その事情は、先ほど岡崎さんのお話しになったように、輸銀融資というものとの関連性は、何といっても第三国の介入によって日本政府がチェックをするようになってきたのだという、そういう先入観といいますか、ものの見方が現在あると思うのです。そういう事情でありますと、岡崎さんが先ほど申されましたように、政府輸銀の貸し出しについては干渉はしない、輸銀自体が貸し出しするか貸し出ししないかは自由なんだ、こういうことは一応わかっておりましても、中国の側からすると、この時点では、輸銀がかりに企業調査とか、何かの関係で貸し出しする条件がなかなかないのだというような理由輸銀の貸し出しを拒否しましても、中国の側では、客観的に見てあの企業がこれだけの商売をやるならできそうなのに、そういう理由をつけるのはおかしいじゃないかというものの見方をしてくるだろうと思います。  そこで私は、一つだけお尋ねしておきたいのですが、いまの段階では何よりもまずあまりいろいろな手だてをしないで、まず中国との商談がきまる場合には、もう輸銀は従来の吉田書簡とかあるいは佐藤の発言あるいは橋本の発言というようなことを考慮しないで、とにかく商談が成立する、企業間の話し合いのできた場合には輸銀の貸し出しが行なわれるというような、こういう事情でないと、なかなか中国との取引というものは困難なんじゃないだろうか、こういうように私どもは考えるわけなんです。こういう見方は非常に平面的な、機械的な見方なのかどうなのかということを、私はまず一つお聞きしたい。  それから第二番目には、従来の佐藤発言とかあるいは橋本発言などというものがいろいろございまするし、それから吉田書簡なんというものがまだ現存しておるわけです。吉田書簡内容については、大体三十九年度で期限切れだと見ておったのが、それが延長してこういう形になってきた事情があるわけですが、こういう事情の中でやはり政府のいまのような手だて、特に通産大臣は先般私の質問に対して、日立さんでもあるいはその他の企業におきましても、企業努力でやれるはずなんだということをおっしゃいました。それからまた利子の問題については、輸銀の利子とかあるいは貸し出し期限に近づくような形で解決すればいいじゃないかという考え方も申されております。こういうような政府考え方に対して、中国の側では契約の際に抵抗をしてこないだろうかどうかということです。もっと端的に言いますならば、そういう考え方はやはり台湾に顧慮を払っているのだ、台湾介入に対して頭を使っておる結果出てきているものだというふうな判断をするんじゃないだろうか、こういうように私は思うのでございますが、そういう点もまた私の思い過ごしなのだろうかどうか、こういうふうに私は事情がわかりませんからお聞きするのですが、この点はひとつ岡崎さん、それから井上さん、それからまた阿部さん、皆さんそれぞれの立場がありましょうし、しかも業者のほうとしては直接自分が仕事に当たっていることでございますので、それぞれの立場から、ひとつ私のいまの質問に対して御所見を承れればけっこうだと思います。
  46. 岡崎嘉平太

    岡崎参考人 かりにニチボーに限って申しますと、ニチボー輸銀との関係、それとその扱い方について中国がどう考えるかということは、御説のとおりだと思います。しかし問題としては、輸銀を使うというようなことが何も契約に入っているわけじゃございませんし、さきにもお話し申し上げましたように、国内問題だからこれはこっちにまかしてくれということははっきり申しております。それはわかっていると言っているのでございますが、ただそのときに、向こうも言っておりますが、ニチボーの原社長が輸銀を使おうとしたけれども使わしてもらえないということを言ったじゃないか、その使わせないのは、台湾介入だということがわかってくると、この問題は、ほかの方法をやられたのでは台湾介入を排除したということになりませんなと、つまり台湾介入を排除するということをわれわれは希望するのだが、その希望をいれてもらう証拠というのは、二チボーに関しては少なくとも輸銀を使わしてもらうことだ、こういうことを言っておりました。ですから、何を使わそうということは、先ほど申しましたように、総理が、国内問題だ、台湾に遠慮も要らない、中共の考えを聞く必要もないことだ、自主的にきめる、これでけっこうだと思うのですが、しかし、いまの問題を政治問題として扱う限り、あるいは外交問題として扱う限りは、ニチボーには輸銀を使わせなければいけない、こう私は判断しております。そして、それがもうできない段階ではなくなっておるんだ、こう考えております。そこで、先ほど谷林さんが最初のお話の終わりごろに、業者のほうもあんまり先走っていろいろのことを言わぬほうがいいとおっしゃったことは、実は当たっておるのでございます。実は輸銀を使わないでやっている小さなプラントもございまして、たまたま輸銀の問題が出てきたものですから向こうが気にとめたので、これがなければ輸銀の問題も全然出なかったと思うのです。しかし、それは吉田書簡があるということか——ですから自然にどこかでやはり芽は出てきたろうと思いますけれども、今後全部自主的にやるんだという総理のお話をそのまま実行して、これは輸銀を使わなければ輸出ができないんだから輸銀を使わそうと決心されればこれはもうよろしいし、それから今後のプラントの中には——自己資金でやる人も現におるのです。私知っておるのです。それから市中銀行のほうへ先に割引にいくのもございます。出てくると思います。あるいは最後に手形を日本銀行に持ち込む人も出てくるだろうと思いますが、そういうことは今後は日本自体でやってけっこうだと思いますが、いまの問題を解決するのは、どうしても輸銀を使わなければならぬようになっておるような気がいたします。しかしほんとうに吉田書簡といいますか、台湾介入は今後は排除するのだということがきまってしまいますれば、やはり日本政府もいろいろ苦境に立っているのですから、何とか便法を考える余地はないかと言われれば、われわれもそれは一応考えることは考えますけれども、そんな回りくどいことはやらなくても、もうこれだけもんでしまえば関係方面みんな了解するのじゃないかと思いますから、なるべく表門から短い道を通ったほうがきれいにいくのじゃないかという感じがいたしております。
  47. 井上信雄

    井上参考人 輸銀融資問題というのは、これは全く先ほどから出たとおり国内問題で、輸銀融資するかどうかということは、これは輸銀の総裁がきめることであります。しかも相手によって、あるいは造船所によっては輸銀は貸さないという場合もあるわけです。したがって、この問題が全く輸出の手だてとしての話であるべきものが、こういった間違った問題になっておる。これは日本政府のほうが輸銀を使わせるとか使わせないとかいう問題をおっしゃっているところにも問題があると思うし、あるいは吉田書簡にそういった輸銀を使わせるとか使わせないということが伝わったとおりあるとすれば、これもわれわれから見れば非常におかしいわけです。そこへ中国側がまた、輸銀とはいわないけれども輸銀を使わせろ。すべて輸銀問題というのは全くこういった政治に介入される問題でないのに、今日不幸にもこの問題の焦点になっておるというところが、われわれメーカーから見ると非常におかしいわけなんですが、いま岡崎さんの君われたとおり、おかしいにしろ、この輸銀という問題を解決しないと残念ながらこの問題は根本的に解決しないという現実の問題として岡崎さんの言われたとおりなんで、われわれはいつも輸銀という問題がこういうふうな政治なり政府なり国なりの間に問題になっていることが根本的におかしいと思うのですが、まあ非常に特殊なケースとして、これはそういう理論だけでは解決しないわけです。問題を解決するための方法として、やはりしかたない、輸銀問題を解決しなければだめだという非常に変形的なものだと私は思います。
  48. 谷林正敏

    谷林参考人 私は、いまの御質問の方のその前の方のおっしゃいましたことで、ちょっと訂正しておきたいことがございます。私は最初に申し上げましたように、日本貿易会というものは世界全般の貿易ということを考えておる、それが、その中で日中貿易がどうかということについて意見を述べよということできようここに参りましたが、私自身中共中国に行ったこともございませんし、実際のそういう取引を私のほうの会員の中の者がやっておって、そしてそれをわれわれのほうに持ち出したということもないのでございます。そういう点で申し上げておきます。  それからいまの問題でございますけれども、私は最初に申し上げましたように、この問題が最初に起こったときにおそらく輸銀の話が出た、輸銀の話が出たときに、それは国内の金融の問題だから政府がどうこうという問題ではないというので私は片づけるべきだったと思いますが、話のいろいろな関係で、そのときに輸銀というものがたまたま台湾との間にかりに出たといたします。私はわかりませんが、出たといたしますと、それが今日尾を引いていろいろな問題になっておると思うのであります。ただこういう場合になりますと、実際のやり方としては輸銀が表面に立たないで、たとえば国内のいわゆる市銀というものが協調融資的に何かする。何かするということは、非常にこまかくいえば、それじゃその先に市銀自身の資金が困る場合にはどうするか、それは市銀自身の資金の融通の方法、それをまかなう方法としてあるいは輸銀にいくかもしれない、あるいは日銀にいくかもしれない、そのほかの方法をとるかもしれない。そういうようなことによって、実際これを受けられた企業のほうでは、輸銀経由と同じような金利負担でできるような方法を考えて、そして今回のことを救うということが一番いいんじゃないか。そうでないと、これは単に横から見ただけの感じで申しわけございませんが、中国のほうがこう言う、それに対して台湾のほうにはこういうことをやるということでいきますと、それが一面だけが出る場合には、やはり事が紛糾することがさらにひどくなる。だから、もし何かの方法をかりにとられるとするならば、こういうことでやればあなたのほうのメンツあるいは言い分というものも侵されないんじゃないか、あるいは他の国のいろいろな制肘を受けてやるわけじゃないかということがお互いにある程度わかるようにしてこれから進まれるのが一番いいんじゃないか、こうちょっと考えるので、それを申し添えておきます。
  49. 阿部喜一

    阿部参考人 いま皆さんの三人のおっしゃったことに大体尽きると思います。私も、今度のケースは輸銀を使わなければ解決しないんじゃないか、こういうふうにほのかに聞いております。私自身もそう考えております。  それから輸銀ベースという問題でございますが、私先ほど申しますとおりに、欧州あたりと血の出るような競争をやって見積もりをするのでありまして、今後もコマーシャルベースでは私たちプラント輸出は不可能である、こう考えております。そうでなければ、ただ見積もりするだけで、実際にはそのプラントはとれないというのが現実であると思いますので、今後はかりに輸銀を使わなくても、何らかの形で輸銀ベースというふうなものでなくちゃ競争はむずかしいんじゃないか、こう思いますので、その点もつけ加えておきます。
  50. 石野久男

    ○石野委員 ありがとうございました。皆さんの御意見一つになっておりますので、非常によくわかりました。  委員長にひとつお願いしておきたいのですが、参考人方々の御所見は、今次の場合、ニチボーさんあるいは日立さんの場合、この段階におきましては、もう輸銀というものを切り離したほかの方法ではなかなか困難だということは、はっきり所見が出ているようでございます。あとひとつ理事会等で、この問題を政府に対して的確に処理するようにおはからい願いたいと思います。
  51. 内田常雄

    内田委員長 参考人の各位におかれましては、長時間にわたり御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  次会は、来たる三月二日火曜日午前十時より理事会、十時十五分より委員会を開会することとして、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十九分散会