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1965-04-30 第48回国会 衆議院 社会労働委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月三十日(金曜日)   午後二時四十一分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 河野  正君    理事 八木  昇君 理事 吉村 吉雄君       伊東 正義君    亀山 孝一君       倉石 忠雄君   小宮山重四郎君       田中 正巳君    中野 四郎君       橋本龍太郎君    藤本 孝雄君       松山千惠子君    粟山  秀君       山村新治郎君    亘  四郎君       淡谷 悠藏君    伊藤よし子君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       松平 忠久君    八木 一男君       本島百合子君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君  出席政府委員         大蔵事務官         (理財局長)  佐竹  浩君         厚生政務次官  徳永 正利君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君         社会保険庁長官         事務取扱    大山  正君         厚生事務官         (社会保険庁年         金保険部長)  実本 博次君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁調         整局物価政策課         長)      丸山 英人君         厚生事務官         (大臣官房企画         室長)     網野  智君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 四月三十日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として稻  村隆一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員稻村隆一君辞任につき、その補欠として滝  井義高君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月二十八日  理学療法士及び作業療法士法案内閣提出第一  〇七号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第二号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第三号)      ————◇—————
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。吉川兼光君。
  3. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 私の本日の質問は、大会派に阻止されて、幾日間もたなざらしにされました上にようやく許された発言でございます。しかも時間の制約があるようでございますから、法案の大綱についての質問しか行なうほかはない事情にありますので、どうかひとつ、なるべくは政府委員でなく、直接大臣から御答弁をお願い申し上げたいと思います。  今回の厚生年金保険法改正案は、労働者老後保障を厚くし、おくれておりますわが国の所得保障を少しでも前進させるという見地から見た場合、そのこと自体にはだれも反対するものではないと私は信じます。ただ、改正案内容をしさいに検討してみますと、なおおびただしい疑問が残されているのでありますから、もし原案がこのまま成立することがあるといたしますならば、羊頭を掲げて狗肉を売るとまではいかないといたしましても、いわゆる隔靴掻痒といいますか、きわめて未熟、不徹底なものがあり、労働者の真の要求にこたえるものではないと断ぜざるを得ないのであります。  そもそも年金制度長期保険制度でありますから、この制度の基本的な柱は特にしっかりしておかなければならぬと思うのであります。その年金制度の主要な柱の一つに年金額の問題があると思うのでございますが、政府におきましてもこの点に注目され、盛んに一万円年金を宣伝いたしておるようでございます。政府がこの案で一万円という額を打ち出しましたのは、今日の時点において年金額としては一万円を妥当であると考えられるのか、あるいはまた、政府はあるべき姿としての年金額幾ら考えているのか。つまり現在二万五千円の労働者年金額としては、一万円あれはこれが妥当であるというふうに考えているのかどうか、その点についてまずお聞きしておきたいと思うのであります。
  4. 神田博

    神田国務大臣 ただいま吉川委員から、政府が御審議をお願いしております厚生年金法案につきまして、この考え方についてはまことに同感だ、しかし、どうもその内容検討すると、まだやり足らぬというか、隔靴掻痒の感なきにしもあらず、一万円年金が、一体理想としてこれでいいという考え方で出したのかどうかというような意味お尋ねと承ったわけでございます。御承知のように、年金額幾らがいいかということは、これはいろいろ計算のしかたもあり、議論もあるだろうと思っております。しかし、政府といたしましては、ちょうど年金改定期にもなっておりましたし、物価変動等もございまして、これらをいろいろ勘案いたしまして、できるだけ労働者老後生活保障いたしたい、そこで一万円年金というものに踏み切ったわけでございます。一万円年金と申しましても、従来の改正前に比べますと、少なくとも二倍半をこえるような給付になるわけでございまして、これは、政府といたしましてはやはり相当あたたかい心を持ってやった、こういうふうに考えております。しかし、将来の問題といたしましては、スライドの問題もございますし、いろいろまた改定の時期等のくることも申し上げるまでもないと思います。とりあえずというわけではございませんが、一万円年金に踏み切ったということは、私は、この厚生年金労働者老後保障としては相当注目すべきことではなかったか、こういうふうに考えております。
  5. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 そこで、現在年金を受給されております人たちにとりましては、当面支給されるところの年金の額が一番問題であることは申すまでもありません。しかし、いま保険料を盛んに支払いつつありますところの労働者にとりましては、いま支給される年金額よりは、将来の年金額のほうがより重要でありますことはもちろんであります。底の浅い日本経済の中にありまして、これから十年先もしくは十五年先の貨幣価値の下落、生計費の上昇など、生活程度変動に伴いまして、年金額は依然としていまの一万円の給付にくぎづけされているということであるといたしますならば、これはだれでも非常な不安を感ずると思うのであります。したがって、十年先、十五年先になってはたして幾ら給付が受けられるかということは、若き被保険者である労働者にとりましては、共通する関心事であるわけであります。かつてビバリッジでございましたか、すべての社会保障の根底には、貨幣価値の合理的な安定保持の問題が横たわっていることを知るべきであるという名言を吐いておるのでありますが、そこには、年金制度というものは本質的にスライド制でなければならないという大原理が横たわっていると私は信ずるのであります。  今回の政府案によりますと、このスライド制規定は全くの訓示規定でありまして、何ら具体化されておらず、それこそきわめて抽象的な条文が示されているにすぎません。政府は一体具体的にはスライド制をどのように考えているのか。つまり消費者物価指数スライドさせるのか、賃金指数スライドさせるのか、それとも生計費指数スライドさせるつもりなのか、この辺のことをはっきりと聞いておきたいと思うのであります。  さらに、あわせてお開きしておきたいのは、このようなスライド制についての条文を、単なる訓示規定にとどめて具体化を持たしていないことは、せっかくのキャッチフレーズであります一万円年金なるものも、現在の若い労働者にとっては魅力は半減することは、先刻も申し述べたところでありますが、なぜ、スライド制規定訓示規定としたのか、その意味をあわせて御説明願いたい。
  6. 神田博

    神田国務大臣 ただいまお尋ねございましたように、年金の問題は、将来に向かってやはり実質的価値を維持していくということが大きな課題だと思います。この点にいま吉川委員が触れられましたことはまことに適当なお考えで、私ども全く同感でございます。そこで、スライド制を訓示的だけにして、なぜ実質的にそういうことが加味されるような制度がとられなかったのかということでございますが、いまお述べになりましたように、スライド制をとるといたしましてもいろいろなとり方があるわけでございます。これらをどういうように組み合わせてどのようにとっていくかということは、これは検討を要する大きな問題だと思っております。スライド制は採用したかったのでございますが、本法案を御審査願うまでにはその結論を得なかったというのが実情でございます。しかし、政府といたしましては、実質的価値をひとつ高めていこうということで、物価資金等に比して相当大幅な、先ほども申し上げましたように、現在の規定の二倍半以上に相当するような一万円年金にしたということでございます。  そこで、将来の問題でございますが、将来に向かってはいまのスライド制検討いたしたい。それからまた、日本の国力というものは、私は、時に一退するようなことがございましても、一歩後退二歩前進と申しましょうか、だんだん前進していくという見方をいたしております。そこで、将来ともこの年金の問題をそのつどひとつ改定期等におきましては考慮いたしまして、実質的な価値を上げるように考えていきたい、こういう考えでございます。スライド制は、直ちにいま御期待せられたようなことはとり得なかったのでございまするが、その価値を高めたということと、将来において十分検討いたしまして、そうしてりっぱな制度をもり立てていきたい、こういう考えでございます。
  7. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 ただいまの何ら具体性のない御答弁では、私は満足はいたしません。私どもが納得できないような、具体的な説明がこの時点において政府にできないといたしますならば、私は、五年ごと保険料検討される時期において、年金額についてもこれと並行して当然に再検討すべきであると思いますが、この点はいかがでございましようか。
  8. 神田博

    神田国務大臣 五年ごとに再検討するということは、いままでもそういうような考え方でやってまいりましたことは先ほど来申し上げたとおりでございます。将来につきましても、当然そのような考えをもちましてあたたかい心でひとつ考えてまいりたい、全く同感でございます。
  9. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 ひとつ考えてまいりたい、という御答弁では答弁にならないと私は思いますが、これ以上お尋ねしましても水かけ論になりそうでありますから、この問題はその辺でいいでしょう。  次に、減額老齢年金制度でありますが、これは本案の中には簡単に、すみやかに検討を加え別の法律をもって定めるというふうになっておりますけれども、これまたはなはだ具体性を欠いていると思います。政府は、一体この法案をつくる作業、つまり法律をもって定めるということの作業を、いつから始めていつごろに終わる目途でおられるのか、さらに、その内容についていかなることを考えているのか、おおよその構想でよろしいので御説明を求めておきます。私は、少なくとも公務員並みの一年につき四%程度減額年金制度とすべきではないかと考えておりますが、この点についてもあわせて御所見を伺いたいと思います。
  10. 山本正淑

    山本(正)政府委員 減額老齢年金考えろということは、審議会におきましても意見が出たことでございまして、私ども、それにつきましていろいろ具体案検討いたしたのでございます。しかしながら、現時点におきましてこの具体案法律改正案として出すに至りませんでしたので、その書を法律に明記いたしまして別に法律をもって定める、要するに、次の厚生年金法改正の、一般的に考えられております五年を待たないで別に法律で定めたい、こういう趣旨でございます。それは、実は減額老齢年金というものは公務員等にもございますが、勤務体制から申しまして、公務員をやめますと再び公務員になるというのは通例でございませんが、厚生年金におきましては、その法律適用事業所単位でございまして、五人以上の従業員のおる一業所事業所単位適用がされております。したがいまして、大企業におきまして五十五歳の定年制によってその企業をやめるという場合におきましても、ほとんど大部分は他の中小企業で働く。厚生年金の側から申しますれば、相変わらず厚生年金の被保険者になっているという実態が非常に多いわけでございます。そういう意味におきまして、五十五歳定年制というものと見合いまして減額年金考えますと、一回減額年金支給が決定して直後にまた厚生年金適用事業所に就職する、こういった事例が非常に多くて、そのつどさらにその支給を停止するといったような複雑な処置を要するという問題があるわけでございます。そういう意味におきまして、共済組合にとられているような減額年金というものが実態に合っているか、あるいはまた、厚生年金の被保険者就業実態に即しまして、特別なものについては、たとえば病弱であるとかいったような特別なケースで、そういった人たちがかりに五十五歳定年等でやめて再び職につかないといったような種類の方について一種の年金考えて、六十歳になれば本来の年金、要するに減額されない年金支給するというような方法もまた考えられるわけでございまして、そういうような、たとえば五十五歳から終生何割か割り引いた年金を算定した減額年金でいくか、あるいはまた六十歳までは一定の減額される年金でいって、六十歳になるともとの年金に返る方法をとるか、そういった問題、あるいはまた再就職というものがしょっちゅう起こるので、そういった場合にすべての被保険者について減額年金というものを考えたらいいのか、特別なものについてさっき申しました第三種類年金というものを考えたほうがいいか、かような問題が検討としては残っておりまして、この問題につきましてはなお労使の意見も十分聞きまして、できるだけすみやかな機会にそういった年金措置を講じたい、かように考えている次第でございます。
  11. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 私の持ち時間はたいへん少ないので、御答弁はなるべく簡潔に要点だけをお伺いしたい。大体私どものわかっておると思われることは、詳しくお触れいただかなくてけっこうでございます。  そこで、保険料率の問題でございますが、今般は一挙に男子は千分の五十八、女子は千分の四十四に引き上げることになっております。これは旧来の料率に比べまして、三倍とまではいかないけれども、ざっと計算しても約七〇%に近い大幅な引き上げではないかと思います。先日もどなたかが質問の中で触れておったようでございますけれども、特に女子に対する料率は、男子のそれに比べましてどうも負担が重いように受け取れますが、この点はいかがでございましょうか。
  12. 山本正淑

    山本(正)政府委員 現行料率について申しますと、男子女子との負担の割合が、少し女子に重いではないかという意見も成り立つわけでございますが、今回の改正料率におきましては、男子につきましては本来千分の七十五を取らなければならない計算になりますが、修正積み立て式で千分の五十八ということになっております。女子につきましては、千分の五十七を取るという本来の料率を、所定的に千分の四十四ということにいたしておりまして、男子は約七割の増、女子は六割弱の増と相なっております。これは数理計算上かようになるわけでありまして、特に女子につきましてはいろいろ御意見がございますが、通算老齢年金という制度ができておりまして、いかなる場合にも年金支給される仕組みに相なっておりますので、そういう意味におきまして、この料率は、数理計算男子の五十八に見合うものといたしまして四十四という数字が出てくるわけでございまして、特に女子について過重な計算になっているわけではございません。
  13. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 現在の保険制度修正積み立て方式のたてまえであります以上、給付を増額するためには、幾ばくかの保険料引き上げはやむを得ないことと思います。しかしながら、保険料は、私どもから見ますどうも高過ぎる、むしろ不当とさえ思われるような大幅引き上げを行なっておきながら、国庫負担はそのまま据え置いて全然上げていないということは、まことに片手落ちな措置であるといわざるを得ません。聞くところによりますと、厚生省におきましては、当初の原案では国庫支出を百分の二十としておったやに聞いておるのでございますが、また社会保険審議会等の答申の中にも、当面二〇%にすべきであるということが、はっきりと打ち出されておるのでありますが、厚生省が当初の百分の二十の案を引っ込めて、いまの御提案のような百分の十五にとどめたというのはいかなる理由に基づくものでありますか、ひとつ隠しのないところをはっきりと大臣からお答えを願いたい。
  14. 神田博

    神田国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、厚生省といたしましては、いま吉川委員お尋ねになりましたような考えをもちまして政府に折衝いたしたわけでございます。これは、正直なところ、私の大臣がやったことでございますが、御承知のような財政事情等もございまして、そこがなかなかうまくいかなかったということでございます。そこで、いろいろこの案につきましてどうするかという省議等で考慮をされたわけでございますが、やはりこの際、これは非常に遺憾なことではあるけれども政府全体として財政上の問題でやむを得ないとして、これだけで一万円年金が葬られるということはまことに残念だ、こういうようなことで提案をされたというふうに聞いております。そこで私の代になりまして、それをそのまま、また御審議願うようなことになったわけでございますが、これは、それらの点をさらに御相談をいたしたわけでございますが、国会審議の途中にいろいろとまた御意見が出るだろうから、そういう点もひとつ勘案してみようじゃないか。問題は労働者老後を守る、これは非常に、吉川委員隔靴掻痒の感だとは言われましたが、私どもといたしましては、現下の情勢下におきましてはやはり相当な大幅の改善案である。そこで、それだけ手直しのために全体が延びるということはまことに遺憾だから、そのまま、またこれを御審議願って、審議の途上にいろいろとまた議会側皆さん方の御意見もおありと存じまして、そういうことも予想しながら実は御審議願っている、こういうことでございます。
  15. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 ただいまの大臣の御答弁の中には、全然異なる意味の遺憾ということばが二つ使われたようでありますが、しかし、なかなか含蓄に富むものであります。国会審議の過程において云々と言われましたのは、私なりに解釈いたしますならば、修正されるもよかろうというか、またはやむを得ないというか、そういうふうにとれる御答弁でありまして、最善ではありませんが、次善としては私どももその御答弁は、しかと承っておくことにいたします。  一体政府は、四十年度の予算におきまして、厚生年金受給者に対して一般会計から幾ら支出を決定しておりますか。さらに、スライド実施に伴いますところの追加費用は、およそどのくらいの額になると思いますか。その追加費用は、私は当然国庫補助で見るべきであると思うのでございますが、政府は、また保険料のような形で被保険者負担させるつもりをしているのではありませんか。この二つの点につきましてお聞きしておきたい。
  16. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御承知のように、年金保険におきましては、国庫負担給付負担でございまして、現在の受給者の状況から見まして、昭和四十年度の予算額は約五十七億円、給付費の一制五分相当額でございます。  それから、今回の改正既裁定年金にまでさかのぼりますので、御指摘のように、年金のベースアップということに伴う追加費用という問題があるわけでございます。これは先ほども御指摘のありましたスライド制という問題とも関連いたしましての一番大きな問題でございまして、今回の改正に際しましての追加費用というものは、保険料率の具体的な千分の五十八という中には含まれておりません。これは将来の問題として、暫定料率でありますので、その特定料率の中には追加費用は含まれておりません。
  17. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 保険料は今後次第にその額を増していくものと思うのでございますが、そのピークは何年ごろで、大体負担額幾らぐらいになる見込みか、お調べがついておればお聞かせ願いたいと思います。
  18. 山本正淑

    山本(正)政府委員 保険給付費は、年金制度が成熟するに従いまして急速にふえてまいります。昭和四十年度におきましては五百四十一億円の見込み額でございますが、それが昭和三十七年には給付額年間で一兆円になりまして、昭和八十年に二兆円、昭和九十年に約三兆円、それが大体ピーク時に相なります。年間年金給付額でありまして、その昭和九十年におきまする保険料、現存の千分の五十八を基礎といたしまして、かりに五年ごとに千分の五ずつ上げていくと仮定いたしまして、その際における保険料の年額は、昭和七十年度では六千九百億、昭和九十年度では七千二百億と相なりまして、約三兆円の給付をまかなう費用のうち当該年度保険料収入は七千二百億、こういうことに相なります。
  19. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 私どもがこのたびの法案を読んで感じますことは、年金給付を一万円にしてやるから、保険料を大幅に上げるのは当然であるというふうに受け取れるのでございますが、そもそも国は保険者でありまして、しかも強制保険であります。さらに、長期保険であります。国はもっと国民に対して保険者としての積極的な意欲を示すべきではないかと私は思うのでありますが、いかがですか。また、そのことが国民の協力を得るゆえんであるとも考えるのであります。そのためには、この際に国庫負担をどうしても増すべきであると思いますが、この点につきましては、先刻大臣からも含蓄のあるお答えがございましたけれども、重ねて国庫負担を増すべきであるかどうかということについて、簡明直截な、そして具体的な御答弁をいま一度伺っておきたいと思います。
  20. 神田博

    神田国務大臣 吉川委員の、こういう社会保障政府相当発言権もあるのだから、大幅に保険料負担したほうが、このことを運んでいく、この制度を育成するに非常に有力な手がかりと申しますか、社会保障としての当然のことではなかろうか、こういうようなお尋ねに承りました。私も、こういう制度を打ち立ててりっぱにこれを貫いていくということは、政府として勤労者に対する大きな施策でございますので、できるだけ政府が持つべきものと考えております。しかし、御承知のように、同時にまたこの年金制度は、勤労者自体もまたしあわせなことでもあり、また営経者側にとりましても、これは非常な稗益するところが多い問題でございます。そこで、そういう観点に立ちますと、一体政府がどの程度持つべきものか、あるいはまた経営者はどの程度持つか、労働者は一体どの程度持つかというようなことについても、それぞれ私は意見のあるところだと思います。私どもといたしましては、そういう点もなお一そう検討いたしまして、どういう姿が一番あるべき姿であるかというようなことを、変えていくにはひとつ十分勘案して、そうしてしっかりしたりっぱなものを打ち立てていきたい、こういう考え方でございます。
  21. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 使用者負担につきましてはしばらくおくといたしまして、労働者保険料負担のことについてで断りますが、申すまでもなく、これは岸生年金だけではありません。労働者は、健康保険料失業保険料も強制的に納めさせられているのでございます。したがって、厚生年金保険料をきめる場合、このことをあわせ考えてもらわなければならぬと思うのであります。特に健康保険は、いま総報酬制の採用ということが問題になっておりまして、審議会の結果を見なければわからないのですが、これは神田厚生大臣御自身によって意図され、提唱されていることはもう明らかなことであります。そこにかてて加えて、今回また厚年保険料が上がるのであります。   〔委員長退席、井村委員長代理着席〕 保険料を取るほうは別々の制度によって取るのでありますけれども、納めるほうは、労働者も、そして使用者もこれは同じでありますけれども、同じさいふの中から納めなければならないのであります。大臣は、一体今度の改正案労働者負担としては過重とはお考えにならないのかどうか、また、いま申し上げましたように、労働者の各方面におけるこの種の負担相当量なり合っておるのでありますが、大臣はこれらの調整について特に御考慮になったことがありますかどうか、この機会に伺っておきたいと思います。
  22. 神田博

    神田国務大臣 いま御指摘がございましたように、健康保険あるいは失業保険等もございまして、そういう負担のことも考え、また厚生年金負担等をかれこれ勘案いたしますと、労働者負担が特に高いというようなことを感じないかということでございました。これは先ほどお答えを申し上げましたように、年金制度労働者老後をできるだけ厚く見ていこうということでございますから、老後どれだけ見れるかどうかということとも関連する問題だと思います。そこで、それは別といたしまして、この段階において労働者側の負担をどの程度がいいかということにつきましては、これは議論があると思います。そこで結論から申しますと、先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては千分の二十くらい政府負担をしたい、そしてその負担した分に見合うものは労働者負担軽減にしたいというような考えで意図いたしましたわけでございますが、それがいろいろ政府部内をまとめるにつきまして、思うようにいかなかったということにつきましても先ほど申し上げたとおりであります。しかし、それらの点は、先ほどお答え申し上げましたように、この審議の経過によって十分また皆さん方の御意向の反映もおありになるのではないか、こういうような一つの考えもないではないわけでございまして、その点もしかるべく御考慮を願いたいと思います。
  23. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 大臣、いま千分の二十とおっしゃったのは百分の二十の間違いでしょう。——それでは具体的に聞きますけれども、二万五千円の収入がある勤労者にとって、いろいろの保険税が課せられておるわけでありますが、一体それらの労働者負担する限度はどの、くらいとお考えになっておりますか、ひとつお聞きしておきたい。
  24. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御承知のように短期保険長期保険、失業保険と三つの保険料負担が出るわけでございまして、現行法におきましては、三者合わせまして、男子の場合千分の百十二というものが労使で折半されております。今回厚生年金が千分の三十五から五十八に上がりますので、合計いたしまして千分の百三十五、これを労使で折半いたしまして、労働者負担というものは千分の六十七・五でございますか、かように相なるわけでございます。したがいまして、二万五千円にその料率をかけた額ということに相なるわけでございますが、これは他の公務員共済では、御承知のように、男女を問わず長期保険部門につきましては千分の八十八、労使折半ということになっておりまして、その他の共済につきましても、おおむね労使合わせまして千分の五十前後ということになっております。したがいまして、一般労働者につきまして千分の百三十五の労使折半が過重になっておるというふうには私ども考えておらないわけでございまして、むしろ一般公務員よりは、他の共済組合よりは負担割合は少ない、かように考えておるところでございます。
  25. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 そういう御答弁を伺っておりますと、私は時間をかけても議論をしなければならなくなりますが、あとにもう少し聞きたいことがありますから、時間の都合もあり、残念ながら飛ばして先に進みましょう。  労働者負担できると自分で考えております額の限界については、同盟会議などから労働者の要望として数字が出ておるのでございます。この数字を見ますると、厚生年金保険料はまず千分の五十から五十五程度まで政府案から引き下げてもらわなければならないというものでございます。いま政府が言っております千分の五十八、これは男子に関することでありまするが、それを最高千分の五十五に引き下げる。また、女子に対しましても、千分の四十四というのをこの男子の数字に見合うように引き下げる。こういうような要求が、いま労働者を代表する労働組合の要望として公にされておるのでありますが、これらの点につきまして、大臣はどういうお考えをお持ちでございますか。
  26. 神田博

    神田国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、これは国会でひとつなお十分御審議願いたい、こういう幅を実は考えております。
  27. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 このたびの法案の一つの中心は企業年金との調整の問題であると思いますが、これは言うまでもなく、公的な年金でありますところの厚生年金と私的年金である企業年金との混合制度をとったところに問題があると私は思うわけでございます。もちろん積み重ね方式になっておりますが、現在企業年金というのは、これは言うまでもなく退職金を年金化したものであります。つまり企業年金は、年金とはいうものの実際は退職金の性格を持っているものでございます。退職金と本来年金制度ということで出発をいたしましたところの厚生年金と、制度の上で一本化するということは非常に問題があるのは申すまでもありますまい。一体、この矛盾をどういうふうにお考えになっておるのでしょうか。
  28. 山本正淑

    山本(正)政府委員 厚生年金と民間の企業年金との調整でございますが、企業年金の成立にはいろいろの種類のものがあるわけでございますが、現実に税法上の優遇措置昭和三十七年度に講ぜられましてから企業年金が急速に発展してまいりまして、このまま推移いたしますと、企業年金のほうが主体になって、厚生年金がいわば従といったような形になりかねないという現状にありまして、そこに機能と機能の重複があり、負担の重複がある。同じ老後保障の性格を持っている面があるわけでございまして、その意味におきまして、公的年金たる厚生年金を大幅に引き下げる機会に、調整が可能な限度において調整をするほうが、負担の重複あるいは機能の重複というものを考えまして適切な措置であるという立論から、今回一定の条件を備えたものについてのみこの調整を考えるということを考えまして、この大幅な厚生年金引き上げと見合ってその措置を講じた次第でございます。
  29. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 御答弁の趣旨はわからないでもない点があるわけでございますけれども、私的年金制度というものとそれから公的年金制度というものは、もちろんその性格が根本的に違います。特にこの私的年金でありますところの企業年金というのは、いまも御答弁の中にありましたように、企業別で実に千差万別、いろいろと異なっておるものでございます。しかもこれは、企業内における使用者労働者との協調あるいは闘争の結晶としてでき上がったものが少なくないのであります。これが公的年金と同一制度になるということによって、公私の年金がお互いの定額を肩がわりするような結果にもなると私には想像されるのであります。一面から見すまと、厚生年金の定額性というものを政府自体がここにおいて認めたことにもなりかねないと思いますが、この点いかがでございましょうか。
  30. 山本正淑

    山本(正)政府委員 現在の厚生年金が、御指摘のように定額部分と報酬比例部分で構成されておりまして、今日の賃金のうちの格差といった面から見ましても、定額部分の持っている意味というものが、非常に大きな意味があるわけでございます。さような意味におきまして、定額部分を今後充実していかなければならないという点は、私どももさように考えておるのでございます。企業年金との調整によりまして報酬比例部分だけが調整をされるわけでございます。報酬比例部分は、いわば労使の掛け金が本人に返ってくるという性質のものでございまして、そういう意味におきましては企業年金との調整が可能でございますが、御指摘のように定額部分の持つ意味というものは非常に重大でございますので、厚生年金全体として、やはり定額部分と比例部分を含めて、老後保障にふさわしい年金額に将来していかなければならないと思います。その意味におきましても、定額部分の充実につきましては今後とも十分配意してまいりたいと思っております。
  31. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 御答弁は私の質問とはうらはらなもので、満足するものではありませんが、時間がないので次に移ります。  私は、もともと積み重ね方式そのものにもかなりの疑問を持っておるのでございますが、かりに、どうしてもそうしなければならない、やむを得ないものといたしまして、少なくともこの異なったものを混合制度にすることはいかがかと思うのであります。つまり二つの年金は全く異質の制度でございますから、調整年金規定するというのは、厚生年金保険法とは別個に新たな法律を制定することにして、厚生年金保険法とは別な法律検討され、きめられなければならないものであると考えますが、この点はどのようにお考えでございましょうか。
  32. 山本正淑

    山本(正)政府委員 年金制度は、定額年金であると仮定いたしますと、ただいま御指摘のようなふうに別個のものとして考える。これはイギリスにおいて考えておるような方式でございますが、たまたま、わが国の厚生年金が、定額部分と報酬比例部分という二つの要素によって成り立っている。そうして現実に税制適格年金というものが非常に普及している。これについてはいろいろの種数があって、労働者の保護についても必ずしも万全が期せられてないという現状でございますので、厚生年金に入っておったと同様に、企業年金で代行されましても、最終的には厚生年金が責任を持つ。政府厚生年金の額というものは、最終的に政府保障するという形によって企業年金との調整をやっておりますので、その点につきましては遺憾なきを期している、かように存じておる次第でございます。
  33. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 最終的に政府の責任だから遺憾なきを期しているというような議論は、これはとりもなおさず官僚独善で、私はそういうふうには思いません。調整年金につきましては、保険審議会等におきましても、また制度審議会などにおきましても、労働者側の意見というものが政府から十分に考慮されておらない、吸い上げられておらないというふうに私ども承知いたしております。同盟会議等におきましても、労働者側の意見が十分に出ていないということを、これまた公にいたしておるのでございます。そこに私どもは、この調整年金に関する法律は別に制定するものとし、もっともっと念を入れて検討を加えることにして適当な機関にそれぞれ諮問し、またそれらの審議機関の内容労働者意見や要望などを十分にそしゃくできる仕組みとして、そこで議を練りに練った上で結論を打ち出しても決しておそいものではない、こういうふうに考えておるのでございます。当局の御傾聴を要望しておいて、これに対する御答弁はもうよろしいでしょう。  次いでお聞きしたいのは、厚生省はすでにブロック単位に厚生年金基金設立事務説明会というようなものを開いておるようでございますが、現在どの程度のことを行なっているのか、また将来どの程度の規模の企業にどの程度普及するものと考えておりますか。御存じのように、健康保険組合は法律の上では三百人以上となっておりますが、実際には千人以上の企業にしか許可をしておらないという現状等から見て、私はこのことをお尋ねするわけでございますが、ひとつ具体的に。
  34. 山本正淑

    山本(正)政府委員 今度の厚生年金基金の設立に際しましては、幾つかの厳格な要件があるわけでございますが、その規模につきましては、さしあたり発足当時におきましては一企業一単位で千人、かように考えております。いろいろ御意見もあるところでございますので、なおこの規模につきましては、発足後将来にわたっては実態に即して検討していきたい、かように考えております。  それから、これがどれだけできるかということでございますが、その見通しは、非常に条件も厳格でございますので、どれだけできるかという見通しはつきませんが、かりに健康保険組合が設立されておる事業所におきましては、このすべての条件を満たして厚生年金基金ができると仮定いたしまして約千カ所、そうして被保険者数にいたしましては、厚生年金保険者は現在約千八百万人でございますが、そのうちの、いま千カ所かりにできるといたしまして四百万件見当ではないか、かように考えます。
  35. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 厚生年金の積み立て金についてお尋ねいたしますが、昭和三十九年の十二月末をもちましてたしか一兆円を百億円くらいこえておると思うのでございます。本案によりますとさらに保険料は大幅に引き上げを行なうのでございますが、標準報酬の引き上げを行ないますと、言うまでもなく、積み立て金は年々ばく大なものを加えていくと思うわけでございます。この膨大な積み立て金を、今後いかなる運用方法をもって運用せんとするものでありますか。私は、積み立て金でございますからして、被保険者である労働者の福祉の面に優先的に、しかも大幅に還元すべきものと思うのでございますが、これは大蔵大臣にでもただすべき筋合いと思いますけれども、この際特に所管大臣である神田厚生大臣の御所見と、対大蔵省関係における御決意のほどを聞いておきたいと思うのでございます。この厚生年金の積み立て金につきましては、大蔵省は厚生省くみしやすしとして、この金の別途利用を考えておるだけでなく、現にそのように行なわれておることは、大臣も御存じのとおりでございます。私は労働者の血と汗のかたまりである積み立て金の性格から見ましても、これはすべからく特別会計とすべきものと考えます。できるだけ早く、いわゆる区分管理に移しまして、いま私が申し述べましたように、積み立てた者への還元的な方面に重点的に使わるべきものと思うのでございますが、神田大臣の明快な御答弁を伺っておきたいと思います。
  36. 神田博

    神田国務大臣 いま吉川委員お述べになりましたことは、私も同感でございます。御承知のように、この問題につきましては、ただいま資金運用審議会でございますか、そちらで御審議を願っていまして、どの程度そうした方面の還元融資にやるかということを検討いたしております。たぶんわれわれが念願している範囲まで、そういうようなことに相なろうかという目下努力をしている最中でございます。御趣旨に全く同感でございます。
  37. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 大臣、これは失礼な言い方になるかもしれませんが、当然過ぎるほど当然である国庫負担の百分の二十という厚生省原案すら、大蔵省で押し返されて現状維持にとどまるというようなあなたの弱体ぶりでは困りますよ。法律さえ許せば、この積み立て金は厚生省によって管理されてもいい性質の金でございます。どうかただいまの大臣の御声明を強力に推し進め、必ず実効をおさめてもらいたいということを、この機会に強く希望いたしておきます。  そこで、女子の脱退手当金につきましてお尋ねいたしますが、第三十九国会でございましたか、通算年金制度を創設するための関係法律の一部を改正する法律というものによりまして、昭和四十一年十月三十一日まで認められているのみでございますが、厚生省はそれ以後認めない方針のようにも聞いておりますが、それはどういうわけでございますか。私は、本人の希望によっては、当然通算年金繰り入れでなく、脱退手当金を支給すべきだと思います。それは、婦人労働者の平均在職年数というものがきわめて短いからでございます。それから女子の平均在職年数というものがどのくらいなのか、この際伺っておきたいと思います。
  38. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御指摘のように、国民年金制度ができましてから通算老齢年金制度に棚なりまして、女子につきましても、厚生年金の被保険者であって、あとやめましてもあるいは国民年金の強制被保険者となり、あるいはまた厚生年金の被保険者の妻になる、いずれの場合におきましても、厚生年金に加入いたしておりました期間の年金額が算定されまして老齢年金として支給される仕組みになっておりますので、その際におきまして脱退手当金というものは暫定措置として残すが、今後の問題としてはすべて年金として算定される、かようなことに相なりまして、そういうたてまえで進んでおるわけでございます。女子の在職年数、厚生年金の在職年数はどれくらいかという点でございますが、私どもの統計によりますと、平均いたしまして約六年ということに相なっておりまして、この六年の期間につきましては、将来女子については国民年金厚生年金との通算年金、あるいは厚生年金共済組合等の通算年金として支給されるたてまえに相なっておりますので、退職手当金は暫定措置というふうに考えておる次第でございます。
  39. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 その暫定措置とする考え方には、私も必ずしも反対ではありません。そこで、政府は盛んに通算年金のことをおっしゃいますけれども、通算年金となりました場合に、厚生年金、特にこのたびは給付改正されるわけでございますが、厚生年金において受くべき権利ともいうべき給付共済組合の場合は別として、特に国民年金に通算された場合の権利の間に、つまり給付金の間に相違がないような考慮が払われておりますかどうか。なぜこれをお尋ねいたしますかと申しますと、この法律が成立しますと国民保険厚生年金保険とでは給付の額が相当違うことになりますからして、その点についての十分なる御配慮があるかどうかということを、この際はっきり伺っておきたい。女子は、結婚のために厚生年金よりの脱退を余儀なくする場合が多い。したがって、いま私がお尋ねしていることは、いわゆる妻の座を確保するために重大なかかわりを持つものであります。
  40. 山本正淑

    山本(正)政府委員 厚生年金共済組合との通算の際には厚生年金のベースで算定されるわけでございまして、御承知のとおりでございます。国民年金厚生年金との通算に際しましては、厚生年金の期間は厚生年金のベースで算定され、国民年金の期間は国民年金のベースで算定されます。さような意味におきまして、現行国民年金年金額が十分でございませんので、今回の厚生年金改正が実現いたしますればそこに格差が大きく出るわけでございますが、この格差は、両制度の問題として国民年金制度を充実することによって格差ができるだけ少なくなるように、あるいはなくなるようにという方向で考えていくのが筋であろう、かように考えております。
  41. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 私は、冒頭に申し上げましたように、今回の改正案にはなお、たくさんの疑問があるわけでございます。一々詳しく聞いているには、与えられた時間が足りません。ただ、このたびの政府案は、せっかく社会保障制度審議会や社会保険審議会などの答申に取り上げております事柄が、政府案にはほとんど尊重されておらない点を、この際指摘しなければなりません。このことについては、先日来各委員から質問がありましたことで、たとえば五人未満の事業所について強制適用としなかった点などもその一つであります。重要なことだけに、その点についてあらためてお尋ねをしておきたいと思います。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕
  42. 山本正淑

    山本(正)政府委員 社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会におきまして御答申をいただいた項目のうちで、今回の法律改正で十分取り上げることのできなかった点があることは御指摘のとおりでございます。先ほど質問がございましたスライド制の導入についても、いわゆる本格的なスライド制の導入にまでは至っておりませんけれども、あるいはまた、制度審議会等におきましてはその他十項目ほどにわたりまして御意見が出ておるのでございますが、その御意見の中には、何と申しましても厚生年金制度だけで解決できない問題、各制度を通じて考えなければならない問題もあります。特に例をあげますならば、妻の座の確立といったものにつきましては、各種の年令制度を通じての大きな基本問題でもございますので、そういった問題、あるいは先般来御議論の出ております五人未満の事業所への適用といった問題につきましても、積極的に解決できるものから解決していきたい、かような政府の態度でおるわけでございます。
  43. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 ただいまの御答弁は、できるだけ急速に実現が見られるよう、大臣はじめ当局の御努力を要望しておきます。  最後にお聞きしておきたいと思いますのは、今回の改正案は、昨年の第四十六国会審議未了となりました案とほとんど変わっていない、若干附則を手直しした程度にすぎないものを再提出しておるわけでございますが、第四十六国会審議未了となりました理由を政府はどのようにお考えになっておるのか。政府は、第四十六国会で流れたままの本案を、修正しないで本国会を通過できると思っているのか。もっとも、先刻来大臣からやや含蓄のある御答弁はありましたけれども、最初からあらかじめ修正を考え提案されるわけではないでしょうから、これを修正しないままで成立するものというふうに考えておられたのであるかどうか、大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  44. 神田博

    神田国務大臣 ただいまのお尋ねにつきましては、先ほど吉川委員からお尋ねがあったわけでございます。御承知のように、御審議願っておりますこの法案を準備いたしましたのは丁昨年でございますから、昨年の通常国会から御審議をお願いしておるというようなことでございまして、昨年はついに御審議を見ずに終わったようないきさつでございます。そこで、今年こうして御審議を願っておるわけでございますが、私どもといたしましては、当時よりだいぶ日もたっておりますし、また情勢も変わっておることも申し上げるまでもないと存じております。御審議の経過によりまして、ある程度の幅を持ちまして御審議をお願いいたしたい、こういう含みも持っておるものでございます。多少の心がまえと申しますか、とにかく非常に労務者もこの一万円年金の成立を待望しておるようでありますので、その期待に沿いたい。そのためには、ひとつ譲るべきものは譲ると申しましょうか、また御審議の際にりっぱな成案がございますればひとつ参考にしていただきたい、かように考えております。
  45. 吉川兼光

    吉川(兼)委員 政府に対する質疑は以上で終わりますが、私はこの機会にひとつ委員長に申し上げておきたい。それは、今回の本案の改正は、いわゆる厚生年金制度の構造的な改正であるという点におきまして、私は、千九百万に近い被保険者にとりましてはきわめて重大な問題をはらんでおると思うのであります。本委員会における審議の模様を見ていますと、これはひとり委員長のみの責任とは言えないかもしれませんが、はなはだ審議が非能率でございます。これは自民、社会二大政党の委員会運営にその責任がある、と申すべきであります。私は、でき得べくんばこういう問題は、中央または地方におきまして公聴会を開いて、広く国民または関係者の声を聞くぐらいな配慮が必要と思われるのであります。何しろわれわれ少数党では、委員会理事会等における発言も思うにまかせないことでありますから、会期末の迫っているいまとなりましてはそういう時間的余裕はないと思いますけれども委員長は衆議院各種委員会の中でも名委員長で通っておる方でありますから、今後の本委員会の運営には特に御配慮をわずらわしたいと思います。本案には私は反対でございますが、先刻来の神田大臣の御答弁は修正もあえて拒まないというふうに理解されますので、私は相当の修正を行ない得る可能性があるように考えるものであります。各党の間で十分な意見の交換が行なわれて、寄り寄り修正が施されますならば、私どもは必ずしも反対せんがための反対をするものではありません。委員長にはそのあたりのことを御考慮の上、残されたわずかの会期ながら、本案が労働者のためによりよく修正されて委員会を通過することができますよう、名委員長の従来にまさる円滑なる委員会の運営が必要であると思います。時間の関係上、私がなお質問し残しました点につきましては、これからの委員会運営の面で委員長の特別の御配慮を仰ぎたいということを希望申し上げまして、質問を終わります。
  46. 松澤雄藏

    松澤委員長 八木昇君。
  47. 八木昇

    八木(昇)委員 できる限り、わが党の滝井委員並びに八木一男委員質問に重複しないようにとは思いますが、その質問を全部私も聞いていなかったために、若干重複するような面が出てくるかもわかりませんが、御了承願いたいと思います。  最初に、少し数字的な点をお伺いしたいと思うのであります。今度この厚生年金改正に関連しまして、基金が設立になり、その基金に対しては若干の二千四十三万円という助成が出るわけであります。私は、今後非常に使用主並びに労働者保険料が増大するのに比べて、国の補助というか、国庫負担というか、そういうものがあまりにも少な過ぎるのではないかということを感じますので、それに関連いたしまして数字的なことを若干お伺いしたいと思うわけであります。  まず、今後十カ年間の数字について、おおよその把握をしたいと思います。各年度を追うて全部の数字を知りたいのですが、時間がかかりますので、本年度と五年後、十年後というように三つに分けまして、保険給付額はどういうふうに推移していくか、昭和四十年度、昭和四十五年度、昭和五十年度ということになりますか、ちょっと数字を言ってくれませんか。
  48. 山本正淑

    山本(正)政府委員 昭和四十年度におきましては、今回の改正法楽が五月一日で実施されるということを予定いたしましての数字でございますが、まず保険料収入が三千四十九億円、それから国庫負担が約五十七億円、給付費が三百七十七億円、かように相なっております。それから円十五年度の見込み額でございますが、保険料収入は約四千億円、国庫負担は現行で約百五十億円、給付費が約九百五十億円、それから昭和五十年度でございますが、五十年度で保険料収入が四千七百億円、国庫負担が約二百九十億円、給付費総額が約千九百億円、かような見込みに相なっております。   〔委員長退席、井村委員長代理着席〕
  49. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、今度は積み立てを毎年していくわけですね。その積み立てば、まだ給付が少ないですから、年々増大をしていくわけですね。そうしますと、積み立て金の累計は昭和四十年度末で幾らで、昭和四十五年度末で幾らになり、五十年度末で幾らになるか、その数字からちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  50. 山本正淑

    山本(正)政府委員 積み立て金の総額は、昭和四十年度末の見込み額が一兆四千四百二十億円であります。四十五年度末が三兆六千百億、それから五十年度末が六兆四千億と見込んでおります。
  51. 八木昇

    八木(昇)委員 そうなりますと、これは二十年も三十年も先ということは私は一応申しませんけれども、これからわずか十カ年の間を考えただけでも、本年度末一兆四千四百二十億円という膨大な積み立て金になるのが、十年後には六兆四千億という実に膨大な額になるわけです。さらにその十年後、二十年後、こうなっていきますと、たいへん膨大な額になるわけでございます。ところが、このうち国庫として負担をする金額は、昭和四十年度でわずかに五十七億円、昭和四十五年度でわずかに百五十億円、昭和五十年度に至ってもわずかに二百九十億円、こういうことになりますと、昭和四十年に例をとりますと、三千四十九億円というものが、その半分は使用主が出して、残りの半分は労働者が出す、これだけばく大な保険料を出すのに、国が負担する分はわずか五十七億円とすれば、金額面で比較をしますと二%にも満たない。ところが、一方において使用者労働者保険料が一挙に増大する。これでは使用主や労働者から著しい不満が出るのは当然であろうと思うのでございますが、この点どういうお考えでしょうか。表面現象だけは、いかにも年金給付額に対する一五%相当国庫負担するというような表現であるために、表は何かしらん一五%は国が負担をして、残りの八五%を労働者と使用主が負担するようなふうにしろうとは即断いたしますけれども、数字からいいますと、断然問題にならぬ。この辺のところについて、厚生省としては当然御不満があると思うので、その辺どうお考えになっておられるか。
  52. 山本正淑

    山本(正)政府委員 国庫負担保険料との関係でございますが、御承知のように、国民年金におきましては拠出時の負担に相なっておりますので、その年の保険料の二分の一額が毎年国庫負担として予算に計上されるしかけになっております。厚生年金におきましては、この国庫負担給付時の負担ということに相なっておりますので、したがいまして給付が大幅に出てまいりますと、国庫負担の額もおのずからふえてまいります。たとえば、およそピーク時と考えております昭和九十年度を見てみますと、保険料収入といたしましては七千二百億円で、そのときの国庫負担額は四千四百億円、かような数字に相なるわけでございます。それは国庫負担負担方式が違いますので、年金給付が大幅に出てまいりますと、その保険料でその間の積み立て金の利子がつくわけでございますが、国庫負担の場合には、その利子相当分をそのときになって負担する形になりますので、保険料の七千億に対して国庫負担が四千四百億、かような形に相なります。それが、現在は年金受給者が少ない、したがって給付の総額も少ないという現状からいたしまして、現段階における数字の上では、一割五分の国庫負担がこれだけの金額にしかならないという形に相なっておりますが、それは、総費用の中で国が一五%負担するという計算に相なっておりますので、数理的には、拠出時負担でも給付負担でも負担する額は変わらないわけでございますけれども、方式が違っている結果、かようなふうに相なっております。
  53. 八木昇

    八木(昇)委員 それについての意見はあとで述べますが、その前にもう一つ数字を聞いておきたいと思います。  今度の政府改正案によりますと、保険料のかけ方が、従来は標準報酬月額三千円から三万六千円までの二十等級でございましたものを、今度は七千円から六万円までの二十三等級に標準報酬月額を変え、しかも保険料率を、千分の三十五でございましたものを千分の五十八にさらに引き上げる、こういうことになっておるわけでございますが、この改正案が通った場合、去年に比べてことしは、大ざっぱに考えて、掛け金は総平均して大体何倍くらいになるのでしょうか。人によって違うと思いますが、使用主並びに労働者が払い込まなければならない保険料の額ですね。
  54. 山本正淑

    山本(正)政府委員 現行料率によります昭和三十九年度の負担と、それから改正案によります昭和四十年の負担と、その比較においてどれだけの負担増になるかという御質問かと存じますが、御指摘のように、個々人については違うわけでございます。もちろんこの改正がございませんでも、毎年賃金の上昇に伴いまして自然増がございますので、その自然増も改正の分と含めましてどれだけ負担になるかと考えますと、保険料といたしましては、総額におきまして約七割増、改正分だけといたしましては約六割増、かように算定されます。
  55. 八木昇

    八木(昇)委員 それは結局、労働者の賃金は年年ベースアッブをします、また物価も上がりますから、当然労働者の賃金もそれだけ名目金額はふえていかなければならぬ、こういうことを予想してみますると、これは十年後の昭和五十年あたりになりますと、七割増や六割増ではなかろうと思います。標準報酬月額が、今度の改正案そのままと仮定して、それから保険料率はさらに段階的にまたふやしますから、そうなりますと十年後のときには何倍ぐらいになっておりますか。
  56. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御承知のように、保険数理の計算は静態的に算定されるわけでございまして、定期昇給というものは算定の基礎に入りますが、ベースアッブあるいは物価変動というものは数理計算の中には、将来の問題は入りません。したがいまして、賃金の上昇率が平均的に十年後あるいは五年間にどうなるかという要素は入っておりませんので、その点で比較することは非常に困難だと思います。いま申しましたような静態的な状態における数理計算ということに相なっておりますので、そこで現実問題といたしましては、御指摘のように、たとえば五年間の再計算ということが行なわれますと、五年間に賃金水準というものが変動いたしておりますので、その変動というものは、五年間の再計算においてその変動した結果というものがあらわれて、そうして給付がそのままといたしますと保険料率幾らになるか、また給付改定をいたしますと別問題でございますが、そういった再計算の際における検討はいたしますが、物価なり賃金の上昇を将来にわたって見通して保険料を算定するということに相なっておりませんので、あるいは御質問の趣旨に沿った御答弁ができないのじゃないかと思います。
  57. 八木昇

    八木(昇)委員 正確にはあるいはできないかもわかりませんが、要するに、この保険料負担額が一年一年と増大していくということは明らかです。しかもそれは、相当のカーブでもって増大していくということは明らかだと思うのです。ところが、政府負担額は、昭和四十年でわずか五十七億円、昭和四十五年で百五十億円、昭和五十年でわずかに二百九十億円、こういうことは非常な片手落ちだと私は思うのです。去年とことしと比べただけでも、使用主並びに労働者保険料負担額は千二百億からふえるわけですね、来年は千四百億くらいふえるかもしれない、再来年は千五百億くらいふえるかもしれない。ところが、政府負担はわずかに五十何億円というようなことで、これは使用者労働者が納得するはずはないと私は思うのでございますが、そういった点について、一体厚生省はどうお考えになっておるか、そうして大蔵省方面と折衝をせられたはずであるけれども、どういうことでやむを得ず納得をせられたが、ひとつ厚生大臣からお答えいただきたいと思います。
  58. 神田博

    神田国務大臣 この法律の創設のいきさつを私まだ十分調べておらないのでございますが、先ほど来、政府委員八木委員お答え申し上げておりますとおり、当該年度給付費の一五%ということになっておりますから、初めから同じようなつき合いでやっていったほうがいいのか、いまのような制度でやっていったほうがいいのか、どっちがいいかという根本論じゃないかと思うのですね。いろいろ議論があったことと思いますが、当時どういういきさつでございましたか、実は私よくつまびらかにいたしておりませんので、詳しいことは政府委員からお答えさせたいと思っております。ただ、いまお聞きしておりますと、四十年度は非常な勢いでふえるようでございますが、四十五年は、五カ年間で約千億しかふえていないようです。四十年度が三千四十九億、四十五年度が四千億、五十年度が四千七百億、あとの五年度で七百億円しかふえていない。政府負担のほうは、四十年度が五十七億で、五年後に三倍の百五十億にふえる。五十年になると六倍の約二百九十億ですか、そういった計算になりますが、最初のときに、これはどうしてこういうことを選んだかということじゃなかろうかと思うのであります。詳しいことは政府委員からひとつ答弁させたいと思います。
  59. 山本正淑

    山本(正)政府委員 先ほど申し上げましたように、国民年金におきましては、制度の創設当時から保険料の二分の一相当額国庫負担とする、しかもそれは拠出時に入れるということで毎年度予算に計上されておるわけでございまして、それと同じ立て方をいたしますと、昭和四十年度は保険料収入が三千億余でございますから、国庫負担は一割五分といたしましても、四百五十億から五百億ぐらいの国庫負担の計上がされることになるわけでございますが、これは制度の立て方の問題でございまして、先ほども申し上げましたように、後年度におきまして国庫負担は、やはり当初積み立てておったといたしますればその後において積み立て金に利子がつく、その利子相当分を含めまして給付の一割五分として計上されますから、後年度になりますと、国庫負担保険料の割合というものはずっとふえてくるということは、先ほど昭和九十年度の例で七千億と四千億というような数字になると申し上げた次第でございまして、これは制度の立て方をどうとるかという問題になりますと、厚生年金制度におきましてはたまたまそういった制度の立て方がとられておるので、これは実は審議会におきましてもそういった意見がございました。国庫負担は、他の制度とあわせて拠出時負担にするのがわかりやすいのじゃないかという意味におきましてそういう意見もございましたが、結果的には同じことであるので、現在の時点においては、やはり制度創立以来の立て方を踏襲していくということになった次第でございます。
  60. 八木昇

    八木(昇)委員 結果的には同じだとはいっても、労働者や使用主に与える実際的な響きというものは、これは非常に影響が大きいので、使用主はある程度理解力があるとしても、幾千万の労働者はそういうことを理解しませんから、そういう点に今日この問題が非常に紛糾しておる一つの理由もある、こう思うのです。それから国民年金の場合に、いまお話しのように保険料の二分の一を政府がばんと持っているのに、こっちのほうは保険料の何分の一ということでなくて、給付分の一五%、しかも金額にすればたった五十億ぽっちじゃないか。現実にいまの時点でそうであることは明らかですから、ここに相当難点がある。したがって、これはいまからでもおそくないと思うのですが、やはり保険料の何%というようなことは考えられないか、あるいは将来そういうことに変える意思あるいはそのような方向で努力する意思はないか、これは厚生大臣からお答えいただきたいと思います。  それと、もしそれができないにしても、そういう給付の一五%とか二〇%とかいうようなこととは別に、相当金額、金額で何百億くらいは当面政府が出すというようなこと等についてどうお考えであるか。そういうような方法も将来の問題として考えられないか、こういう点。  それから、ついでに引き続いてこれは大蔵省の理財局長にお伺いをしたいのですが、厚生省給付の二〇%の国庫負担があるものと、当然そう考えておったものが、ついに大蔵省のほうでそれを一五%に値切ってしまったということについては、将来政府負担が、給付額の増大と見合って急速に増大するというような事態を予想したものですから、当面は一五%でわずかの金であるけれども、これを二〇%にすることは困難だろう、そういう事情が勘案されて、当初考えられておった二〇%を値切ったのではないか、こういうふうに私ども考えるのですが、その点どう考えるか、それぞれ御答弁願いたい。
  61. 神田博

    神田国務大臣 八木委員のいまのお尋ねでございますが、御承知のように、どちらがいいかは議論があったんだと思います。しかし、いまも例示されましたように、労働者者に与える影響、労働者が単純に考えて協力するには遠回りな制度じゃないかという、この気持ちの持ち方ですね、これは私もそのとおり理解できます。しかし、何しろ二十年間このような制度でやってまいりますと、いま直ちにこれを国民年金制度と同じような政府負担制度にいたすということは、なかなか財政上むずかしいんじゃなかろうか、こういう考えをいたすのでございます。しかし、いまも申し上げましたように、使用者ももちろんでございますが、労働者の気持ちを考えますれば、そういうようなわかりやすい制度にするということも、政治としてはこれはたいへん大事なことだと考えております。国家財政に余裕ができるような場合に、この制度国民年金と同じような方向になるような打ち合わせをするということは、私は妥当なことじゃなかろうか、こう考えております。
  62. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ただいま八木先生から、給付費補助の割合につきましての査定にあたってのいろいろの事情はいかがなものであったかというお尋ねでございますが、実は給付費補助の問題は主計局の所管でございまして、私の所管外でございますから、所管のほうからひとつお答え願いたいと思います。
  63. 八木昇

    八木(昇)委員 しかし、大体のところはわかるでしょう、その間の事情というものは。
  64. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 先生御承知のように、所管事項というものはきわめて明確に区分されておりまして、私は実は関係がないものでございまして、その間の事情は私つまびらかにいたしておりません。
  65. 八木昇

    八木(昇)委員 主計官を要求しておったのですが、何かちょっと事情でおくれるとかいう話でございますから、やむを得ないと思います。一応了解します。  そこで、そういうふうな政治的な判断というか、そういうのも私はまずいと思うのです。そういう点は、確かにこの問題が非常に紛糾する一つの種をつくっているということは明らかでございますから、これは将来十分お考えをいただきたいと思うのでございます。  そこで、私は、こういうふうにして年々ばく大な積み立て金が幾何級数的に増大していく、この積み立て金の運用問題について少し聞きたいと思いますが、結局、政府財政投融資計画との関連ということについてお伺いをしたいと思います。  本年度の財政投融資計画を見ますと、総額で一兆六千二百六億円になっておるわけですね。この一兆六千二百六億円のうち、資金運用部資金から約一兆六百億ばかりまかなうわけですね。その資金運用部資金の一兆六百三十九億円のうち、この厚生年金の積み立て金が三千二百六十億円、こう相なっておるわけです。こうなってきますと、本年度財政投融資計画の一番主要な部分、主力を占める部分というのが郵便貯金と厚生年金ということになるわけです。本年度ですらかくのごとしですね。そうすると、年数がたっていきますと、厚生年金の金が政府財政投融資のもうほとんど主力を占めていく。積み立て金が十年後には一兆四千億になるのですから、この比率でどんどん資金運用部に厚生年金の積み立て金が入れられて、それが財政投融資計画で使われるということになれば、財政投融資の金というのは、労働者の将来の生活安定のために、物価高をも顧みずに涙をのんで年々、何十年の将来に向かって積み立てていく金が、もう政府財政投融資計画のほとんど主力を占める、こういうような事情というものについて相当に問題があるということはお考えにならないでしょうか。その点からまず伺いたいと思いますが、これは大臣と大蔵省のほうから……。
  66. 神田博

    神田国務大臣 年金の運用を一体どうするかということは、いま八木委員の非常な御関心でございますが、これはもう当然のことだと思っております。私どもも、この年金の運用というものは、やはり労働者にできるだけ還元できるような施設に回るべきものである、そして公共の福祉を補っていく、こういう問題だと考えております。今日、御承知のように財政投融資のほうにたくさんまいっておりまして、厚生省の関係においてはわずかに二五%というようなものでございまして、それだけではとうていこの年金の目的と相沿っておるようにも考えられないから、ひとつ大幅にこちらのほうに増すようにという折衝は続けております。ただしかし、この間、御承知のように資金運用審議会でございますか、こちらのほうでその点につきまして十分検討いたしております。おそらくわれわれが要望しておるような結果になることと期待いたしておりますが、その結果待ちと申しますか、審議会審議の経過を待っているという実情であります。
  67. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 昭和四十年度の財政投融資計画全体が一兆六千二百億円でございまして、そのうち厚生年金の分によるもの三千二百六十億、これまさに先生の御指摘のとおりでございます。この数字から見ましても、財政投融資計画の原資のうちで約二割というむのが厚生年金に依存をいたしておる。そのほかに郵便貯金で三千八百億、これは二割強でございます。さらに公募債、借り入れ金等において約四千億円、これは大体二割五分以上でございますが、そういうようなことで実は構成されておるわけでございます。したがいまして、今日の財投原資における厚年の比重というものは、なかなか重要でございます。さらに、将来を展望いたしました場合に、この厚生年金の占める割合というものは、御指摘のように徐々にふえてまいるということは考えられるわけでありますが、ただ、ここで、先ほど年金局長からもお話がございましたが、昭和四十年度における保険料収入は三千二百四十九億円、これに対して十年先の昭和五十年度における保険料収入は四千七百十三億円でございます。その間十年間における増加は約千五百億円、つまり増加分として見ますと、その間平均いたしますと、十年間で千五百億ですから、まあ単純に計算すれば百五十億円ずつふえていくということであろうかと思います。百五十億ということは、三千二百億円に対しまして約五%ということに相なろうかと思います。したがって、この正確な年率計算を出してみませんと正確な数字とは申せませんが、まあごく大ざっぱに見て、年率五%ぐらいでふえていくということであろうかと思います。一方において、財政投融資計画というものは、先生御承知のように、昨今大体年率約二〇%くらいのテンポで拡大をいたしておる。したがいまして、必ずしも今後の財投計画、はたして二〇%の率で伸びるかどうかは、これはまあ問題でございます。問題でございますけれども、そこは全体として見た場合に、はたして先生のおっしゃるように、財投というものはほとんどあげて厚年の原資によるという姿には、これはなかなかそう簡単にはなるまい。まあ将来相当長期の先を見通しました場合に、確かにこの依存する割合というものは、パーセンテージとして上がってくるであろうということは考えられます。また、私どもといたしましては、そういう意味で厚年原資というものを非常に重視しておるわけでございます。  そこで、先生のお尋ねは、こういう厚年にかなり、二割という部分を依存していくということが非常に問題ではないかとおっしゃいました。まあ問題というのはどういう意味か、実はいろいろ考えておったのでございますが、先生のお尋ねの主眼点は、やはりそういう貴重な勤労者からのいわば強制的に拠出されるところの掛け金を運用するものであるから、その運用にあたってはよほど慎重を期さねばならぬ、同時にまた、国民経済全体にとってこれが有意義に使われなくちゃいかぬし、また勤労者生活向上、生活環境の改善といったようなものにこれが還元されてきて、国民生活水準の向上というものに役立つように使われていくべきであるという、おそらく御指摘ではなかろうかと思うわけでございますが、そういう意味におきましては、今日におきましても財政投融資計画全体が、実はそのような観点で運用を厳重に規制いたしておりまして、いやしくもそういう大目的からはずれるような運用のないように、私どもも実はより慎重を期しておるわけでございます。今後ともその点は十分に生活環境整備あるいは国民経済全般の安定向上ということにこれが寄与するように運用をしてまいらねばならぬ、かように考えておる次第でございます。
  68. 八木昇

    八木(昇)委員 ちょっと伺っておきますが、私もその辺のところはしろうとでよくわからないからなんですが、厚生年金の積み立て金は、本年度末で一兆四千四百二十億円ですね。積み立て金は一兆四千億ある。本年度厚生年金特別会計から資金運用部に入れる分は三千四十九億円、こういうことになるわけですね。昨年は、同じく厚生年金からは二千百八十億円資金運用部に入れてますね。ということは、これはどういう関係になっていくのでしょうか。年々そういうふうに入れていくわけでしょう。去年も入れているわけですね。その前年も入れているわけですね。そうしますと、この厚生年金の積み立て金は一兆四千四百二十億円ですけれども、しかし、昨年資金運用部に入れたやつはまだ資金運用部の管理下にあるわけでしょう。そうしますと、厚生年金の特別会計自体が現におのれのところで持っておるという金は幾らぐらいであって、資金運用部にいってしまっておる分は幾らぐらいになっているのでしょうか。その辺がよくわからないのです。
  69. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 三十九年度のお話が出ましたから、三十九年度について申し上げますと、三十九年度の予算額におきましては、保険料収入その他の歳入が二千四百四十億円、一方保険給付その他が二百二十二億円、そこでその間の収支差額が出てまいります。二千二百十八億円というものが収支差額として特別会計に出てくる。そのうち資金運用部に預託されておるのが、先ほど申しましたように二千百八十億ということでございまして、これは三十九年度中に発生いたしますところの収支差額の大体九割相当額と、それから実は三十八年度の分がずれてまいります、三十八年度中の発生収支差額、それの約一割を足したものが二千百八十億円ということで、これが運用部に預託を新たにされてくるということでございます。  そこで、四十年度についても同じようなことになりまして、三十九年度のつまり残りの一割と、それから四十年度中に発生する収支差額の九割相当額、それが合わさって出てまいりまして、そこで三千二百六十億円というものが預託されてくる、こういうことでございます。
  70. 八木昇

    八木(昇)委員 そうしますと、結局一兆四千四百二十億円のうち、そのもう大部分というのは資金運用部に預託されておるわけでしょう。
  71. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 過去のものは、先生御指摘のように、もちろん全部預託されておるわけでございます。それがすでに運用をされておるということでございます。
  72. 八木昇

    八木(昇)委員 だろうと思うのですよ。そうなりますと、十年後の昭和五十年は、厚生年金は六兆四千億円の積み立て金になりますね。そうしますと、実際は労働者のベースアップやその他を見込まずに、労働者の賃金ベースが現在のままで昭和五十年にいった場合の積み立て金が六兆四千億でしょう。ですから、実際にはもっとベースアップしていきますね、生活水準が向上していきますから。そうなると、保険料額もふえていくわけでございますから、実際には、十年先には六兆四千億ぐらいのことじゃないと思うのですよ。もっとばく大なんですよね。それが十兆円なのか十五兆円なのか、あるいは物価が実際変動したりしておれば三十兆になっておるかもしれない。そうしますと、かりに十年後積み立て金が二十兆円だとしますと、二十兆円のうちの九割近くの十八兆円からの金というものは資金運用部に預託されておるという姿になるのですか、その点、どうですか。
  73. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 これは今度の法律改正で、いわゆる調整年金制度というものが提案されておるわけでございます。その調整年金制度を別にいたしまして、それ以外のもの、これは全額資金運用部預託でございますから、おっしゃるように大部分のものが運用部に預託されてくるという形になります。
  74. 八木昇

    八木(昇)委員 そういうことで大体わかりましたのですけれども、そうなりますと、これはやはり膨大なものですね。これは労働者が月々の零細な給料の中から、老後を目ざして若いうちから天引きで積み立てる金というものが、実に十何兆円も十年後には資金運用部に預託されておる。そのうちわずか二割五分しか還元融資がなされないで、残りのものは一体どういう方面に融資をされるかというと、資金運用部の資金計画、この財政投融資計画で資金運用部の金の回される方面を見てみますと、いろいろな方面に回されておりますね。たとえば国有鉄道に、本年度は資金運用部から六百四十五億円回される、あるいは国立学校にも回されますし、あるいは北海道東北開発公庫——九州や西日本の人に何の関係もない北海道東北開発公庫にも、本年度資金運用部から七十億も貸し出されるし、それから開発銀行には千三十三億円貸し出される。開発銀行というものは、みんなこれは大企業ですね。電力会社なんかが、開銀を通してどんどん発電所を建設するということになるわけです。あるいは輸出入銀行には九百十九億円、あるいはほかにいろいろございますが、たとえば電源開発会社には資金運用部から二百二十八億円、こうたっておる。それから商工中金というようなのに例をとりますと、これが三十億円、それはほとんど全部企業家に貸し出される、あるいはその内容をあげつらえば切りもございませんが、そういう方面に実際は貸し出されていくというようなことは、これは大問題じゃありませんか。その点、厚生大臣としても、これは徹底的に大蔵省と折衝をしてもらって、将来の増大ということを考えると、還元融資二五%なんというようなことではきっと納得しませんよ。その点の決意をひとつこの際述べておいてくれませんか。
  75. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 財政投融資計画の運用でございますけれども、実は使途別分類というものを設けまして、特に年金資金等につきましてその使途を明らかにすべきであるという御要望がございましたのに対して、現在年々使途別分類表というものを作成いたしております。その中で見まして、年金資金等が、これは国民年金も含めまして、四十年度約四千億円、三千九百六十七億円、この使途を見ますと、住宅でございますとか生活環境の整備、厚生福祉施設、文教施設、それから中小企業の金融関係、それと農林漁業の金融関係、こういったようなものに合わせて約三千億円、つまり全体のうちの大部分が、そういう住宅以下非常に国民生活に密着をいたしました分野に運用をされておるわけでございます。それ以外のものを見ましても、国土保全あるいは災害復旧といったようなもの、道路あるいは運輸、通信とかいうようなものに運用されております。そこで、先はどお話がございました開発銀行にも運用されておるのではないかということでございますが、それはこれではございません。そこで商工中金も、これは中小企業の金融として実に重要な役割りをになっておるものでございます。そのようなことでございまして、この運用を見ますと、要するに年金資金以外の資金の運用等を全部含めてみましても、やはり住宅その他国民生活に密着する部分というものに対する運用は非常に多いわけでございまして、全体の六割近いものがそういったものに運用されておる。なかんずく年金資金等における運用割合というものは、全体の比率に比べて相当高くなっております。そういう点は、実は私どもも、先生いろいろ御指摘のようなことをかねてから頭に遣いで、この運用の適正を期しておる次第であります。
  76. 神田博

    神田国務大臣 厚生省で還元融資を扱っておる金額は二五%でございまして、いまお話しのとおりでございます。だいぶこの資金の需要が多うございまして、申し込みが大体二倍半ないし三倍、最近は三倍を上回るというような趨勢でございます。ですから、二五%では非常に不十分なわけでございまして、増額したいという要望は毎年大蔵省に申し入れてあるわけでございます。先ほどお答え申し上げましたように、一体厚生省として還元激賞をする所要の金額はどの程度がいいのかというようなことにつきまして、いま資金運用審議会でございますか、御検討をいただいている際でございまして、相当増額になるのじゃないかということを期待しておるような実情でございます。
  77. 八木昇

    八木(昇)委員 先ほどの私の質問の基幹産業や輸出振興関係にも回っているのじゃないかという点は、私ちょっと見落としておりましたからそれは訂正をいたしますが、しかしながら、地域開発であるとかあるいは国土保全、災害復旧、道路、運輸、通信、こういうような方面にも相当多額の金額が回っているという実情等につきましては、われわれとしては非常に了解しがたいところがあるわけであります。そこで還元融資二五%というわけで、本年度は、厚生年金の積み立て金の中から資金運用部に入れた金のうち八百十五億円が還元融資対象というようなことになっているようでございますけれども、その中身を伺いたいと思うのです。たとえば地方公共団体関係等について、水道とかそういったふうなことまでも還元融資ワクの中から融資をしておるというようなことを聞くわけなんですが、その実情はどうであるか。それから、たとえば医療公庫に七十億円貸し出す、これは還元融資分の八百十五億円の中の金であり、七十億まるまるそうだというのですが、これは一体どういうところへ貸し出しておるか、その実情等について非常に私ども不満に思います。
  78. 山本正淑

    山本(正)政府委員 ただいまお話しのように、昭和四十年度におきまして、還元融資のワクの二割五分、総額が八百十五億でございまして、その内訳は、年金福祉事業団に三百五十四億、特別地方債が三百二十四億でございます。  それから、まず最初に御指摘の、水道等に入っておるのじゃないかという点は、実は一般地方債というのが当初から残っておりまして、今年度におきましても五十億という一般地方債分がこの還元融資のワクから充当されておるわけでございまして、その中に上水道、下水道、この二つの分が、全体のごくわずかのパーセントでございますが、五十億円というもので入っておるわけでございまして、これが不都合じゃないかという点でございます。私どもといたしましては、従来の経緯からいって、一般地方債でも国民生活に密接に関係し、被保険君の福利になるものがあるのじゃないかということで、一般地方債というものが入っております。ただ、そういった、性格的にはいろいろ異論のあるところではあるけれども、やはり一般地方債に充当する分はなくしていきたいという方向で考え、そしてその方向でだんだん減らしてきているわけでございます。  それから、そのほかに御指摘の医療金融公庫、これは厚生年金で六十二億、国民年金で八億、合計七十億が充当されておりますが、これは医療金融公庫への融資の二分の一級でございます。この点につきましては、御承知のように、病院、診療所の整備という問題はきわめて被保険者の福利に関係の深いところでございまして、年金福祉事業団におきましても、厚生福祉施設の中で病院、診療所に融資いたしております。それからまた、特別地方債によりましても地方公共団体の病院、診療所の整備に融資をいたしておりまして、同じような病院、診療所の中で私的な病院、診療所は、あげて医療金融公庫から融資が受けられるということになっておりまして、医療関係を考えますと、病院がどういう種別であるかということによって取り扱いを異にするというのは適当でないということで、やはり医療金融公庫の融資につきましては、一般債が七十億、特別地方債が七十億というような、二分の一ずりということで特別地方債を充当しているわけでございます。これはあげて病院、診療所というものが、被保険者の直接の福利にきわめて重要な関係があるものであるという観点に立っての配分でございます。
  79. 八木昇

    八木(昇)委員 これは厚生省として、そういうあり方を妥当だとお考えになっているんでしょうか。積極的に妥当だとお考えになっておるかということなんですが、労働者に対する還元融資という意味からすれば、これは当てはまらないと私は思うのです。水道なんかに金を出すのが労働者への還元融資であるとか、あるいは県立病院とか国立病院なんかに毛貸し出すわけでしょう、それが労働者への還元融資だとかいっても、それはもう還元融資にならない。私は電力会社に昔つとめておりましたが、電力会社の場合にはちゃんと重力会社の病院があるわけです。九州電力病院というふうなものがあるのです。そうすると、結核患者とかその他全部、国立病院やら県立病院には一人も入っておりません。全部九州重力病院に入院している。それは国立病院や県立病院に、なるほど勤労者相当おるかもしれませんけれども、ぼくらのようないなかの県の国立病院といえば、患者はほとんど農民と商売人の人が大多数なんですね。その人たち厚生年金の掛け金なんかしている人たちじゃないですから、そういうのを還元融資の小へ入れるということ——大蔵省は、それはそういうことを入れたいと思うでしょうけれども厚生省として積極的にそういうあり方は妥当だという答弁は、私はいただきかねる。しかもそういうような方面に還元融資の名のもとに解釈を拡大して、そういう方面にむしろ広がっていっておるのじゃないかという印象を持ちますから、これは大臣、いまのような、こういうものまでをも含めて還元融資だという考え方に、積極的に厚生省も賛成だというわけですか。
  80. 神田博

    神田国務大臣 還元融資の命の割り振りの先が、どうもその趣旨に沿ってないじゃないかということを例をあげてのお尋ねでございますが、これは私はいろいろ議論があるのじゃないかと思うのでございます。と申しますことは、御承知のように労働省あるいは経営者政府、三位一体の積み金でございますが、これはやはり国全体から見て環境の整備もしなければならぬとか、公衆衛生の問題も考えなければいかぬ、あるいは教育の整備、さらにまた、いまお話しもございましたような病院等の整備もしなければならぬというような、国としてやはりもう少し高度な考えを持つべきものじゃないかという気がするのでございます。その中のたとえば緊急度合いと申しましょうか、そういう意味から考えまして、いま何といいますか、戦後の荒廃したところから立ち上がろうという際の日本といたしましては、バランスのとれた投資ということが必要なんじゃなかろうか、こう思うのでございます。ことに水道等のごときは、いろいろ御議論もあるようでございます。しかし、そういうことも、やはり私は、特に厚生省生活環境の整備というようなことも重大な役割りを持っておりますので、そういう高い視野に立って考えていく、また整備をしていくのにもバランスのとれた整備をしていく、こういうようなことになりますと、決してこじつけた理屈でなしに、それはそれなりの理由があって、しかも資金の総額において度合いをそれぞれみんな尊重してバランスのとれたような運用をしておる、こういうふうに考えておるわけでございます。しかし、個々のことになりましていろいろ御議論になりますと、あるいは八木委員のおっしゃったようなことになる場合も私はなしとしないと思います。しかし、決して言いわけするわけでもございませんが、政府政府一体として調和のとれた投資先、しかも回収の問題も考えながら、しかも労働者の福祉というものを重く考えながらやっておる、こういうことだと考えております。
  81. 八木昇

    八木(昇)委員 大臣の御答弁ですけれども、それは高い視野に立って広く厚生関係のものに金を貸し出さなければいかぬということは、それもありまするが、それは厚年の積み立て金もどんどんふえていくわけですし、資金運用部に厚生年金から預託する金額もどんどん増大をしていくわけですから、それの中でやるべきものであって、いわゆる労働者への還元融資分と称せられるわずか二五%のワク内の中に入り込んできて、そうしていまのように水道事業やら県立病院やらに金を貸し出すものまで、労働者への還元融資だという考え方の中に含めるということは、これは少なくとも厚生省としては強硬に、そういうことはけしからぬという立場で、もうぜひやってもらいたいと思うのでございます。  そこで、私もよくその辺の事情を知らぬのですが、労働金庫とか、それから最近労働者住宅協議会というのが非常に各地で積極的に行なわれております。労働者が住宅に困っておりますから。こういう方面に金が貸し出されておるでしょうか。この厚年の積み立て金の金が、実質的にその方面に回って貸し出されておるものがあるかどうか、そして貸し出されておるとすれば、どういう経路を経てどのぐらいの金額か。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 神田博

    神田国務大臣 さっきのことでもう少しお答え申し上げますが、水道は、御承知のとおり人口の少ない町村については国民年金のほうの資金を充当していく、人口の多い都市等については厚生年金のほうの資金を出す、こういうようなことで、なるたけ労働者のおるほうにそういうものを向けていこう、こういう意図であることをつけ加えて申し上げます。  それから、あとの問題につきましては、政府委員から答弁いたさせます。
  83. 山本正淑

    山本(正)政府委員 還元融資の融資先といたしまして、私ども一番関心といいますか、積極的にやってまいりたいと思っておりますのは、やはり現段階におきましては何と申しましても住宅でございまして、住宅の資金は年金福祉事業団につきましても相当金額を増額いたしておりまして、今年度は、三百五十四億の厚生年金の資金のうち、二百三十五億というものを住宅に充当することにいたしております。これは、先ほど先生御指摘のように、還元融資のワクの二五%の額といたしましても、これを何に充当していくかということは、やはり緊要度を考え、また需要を考えていかなければならぬと思っております。そういう意味におきましてやはり重点をだんだん明確にいたしまして、真に労働者の福祉ということを考えて、その方向に持っていくという考え方は、基本的には持っておるのでございます。ただ、現段階におきまして、住宅資金といたしましては借り入れ主体というものに問題があるわけでございます。資金の貸し付けでございますから、やはり借り入れ主体が、返還能力といった面についても十分能力のあるものでなければならないわけでございます。さような意味におきまして、労働者の住宅で、労働者だけで構成されております団体に対する融資は、現段階においてはそれほど多くはございません。その主体は主として労住協、それから生活協同組合を通じまして申請のあるものでございまして、この諸団体におきます受け入れ体制というものは、まだ十分整備されてない段階でございます。ただいまもございましたような協議会がつくられまして、今後におきましてはその受け入れ体制が急速に整備されるものと期待いたしておるのでございますが、現在までのところは、住宅につきましても、あるいは病院につきましても、あるいはまた労働会館といった施設につきましても、主体といたしましては労住協、生活協同組合、あるいは会館等につきましては財団法人を労働組合単位に設立いたしまして、そして会館をつくっておる、こういうような状況でございまして、本年度は、これら純粋に労働者の団体に対する融資総額は大体十億円見当というふうな状況でございます。
  84. 八木昇

    八木(昇)委員 最初述べられた数字をちょっと聞き漏らしたのですが、労住協に対しては幾ら貸し出されておるか、それから労働金庫に貸し出しがされておるかどうか、それから労住協への貸し出し等は、年金福祉事業団を通じて貸し出してあるのでしょうか、その辺のところをちょっと説明してください。
  85. 山本正淑

    山本(正)政府委員 各団体ごとの区分表はちょっといま持っておりませんが、労住協に対します融資は、年金福祉事業団を通じての融資でございます。  それから、先ほど本年度と申し上げましたのは三十九年度の間違いでございます。
  86. 八木昇

    八木(昇)委員 それは幾ら……。
  87. 山本正淑

    山本(正)政府委員 それが住宅、療養施設、厚生福祉施設、合計いたしまして三十九年度約十億円でございます。  それから労働金庫、これは金融機関でございますので、労働金庫は経由する金融機関としては市中銀行と同じように扱われておりますけれども、労働金庫に対する、要するに金融機関に対する直接の資金の貸し出しというものはございません。
  88. 八木昇

    八木(昇)委員 すでに時間がきておるようでございますから、間もなく打ち切りたいと思うのですが、私は、労働金庫へ貸し出しをしないということについての理由というのはよく納得がいかないのです。これは労働者からこれだけの掛け金を取って、そうして積み立てが十年後には十何兆円にもなろうかというようなときに、労働者の金融機関である労働金庫に相当の貸し出しをやるのは当然であると私は思うのですけれども、どういう機関を通してどうするかとか、それからいろいろなそういうような点はあるでございましょうけれども、これは大蔵省の考えとしても厚生省考えとしても、将来とも労働金庫への貸し出しということは考えておらぬということでしょうか。将来ともそれはむずかしい問題だ、困難だというふうにお考えでございましょうか。現在まではやむを得なかったとしても、もうすでに労働金庫も金融機関として完全に基盤を確立しまして信用も博しておるわけですから、これはぜひともやってもらいたい、そういうふうに実は考えておるわけでございます。その点、どうでございましょうか。
  89. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御承知ように、還元融資の窓口といたしましては、年金福祉事業団が創立されまして、年金福祉事業団が資金運用部に入りました資金を借りて貸すという形をとっておりまして、還元融資の拡充につきましても、年金福祉事業団の資金を拡充し、あるいはその貸し出しの項目なり対象というものを拡大していく方法が妥当であるのではないか、かように考えております。労働金庫につきましては、私詳しくその性格を実は承知いたしておりませんけれども、一般の市中銀行と同じ金融機関としての性格があるといたしますと、金融機関に資金を貸すということは相当問題があるのではないかと考えられます。
  90. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ただいまのお話の点は、年金福祉事業団から労働金庫へ融資をしてはどうかということでございますと、年金局長お答えのとおりですが、それ以外の方法と申しますと、おそらくは運用部からの直接融資ということをお考えかと思いますが、もしそういうことだといたしますと、これは制度的にもできませんし、将来ともそれを行なう意向はございません。
  91. 八木昇

    八木(昇)委員 制度その他はいろいろ研究していただいていいわけですから、実際に貸し出されればいいわけです。そこで、いまの年金局長の御答弁は、労働金庫に対する認識が非常にないということで、はなはだもって遺憾ですが、通常の金融機関と全く違うわけです。大蔵省御存じのとおりです。これは労働組合でないと出資者にもなれないし、そして労働組合もしくはその労働組合に所属しておる組合員個人しか、金を預けることも借りることもできない。すべてこれは労働金庫法によってそのように規定されておる。労働者のための福祉機関でございますから、通常の信用金庫とも違うわけです。そういうものでございますから、これは厚生省の側からも、今後とも積極的に働きかけていただきたいと思います。  そこで、質問はこれで終わりますが、一番最初の問題に戻りまして、最終的に要望して終わりたいと思います。私は、今度の政府厚生年金改正法案の中で一番問題点は、調整年金という制度を設けておる点だと思いますが、この調整年金について質問する時間が全然ございませんでしたから、これはもう取りやめますが、しかし問題は、その調整年金という制度がくっついておるからだけで私どもはこれに反対しているわけではないのですよ。その調整年金問題がかりになかったとしても、いまの政府原案には私どもは非常に不満があるわけです。なぜかと言いますと、実際に民間の労働者の職場に行って、ひざを突き合わせて仕事場で昼休みなんかに雑談をしてごらんになるとおわかりになる。長期積み立て制度というものに対する根本的不信感がある。これは私は当然だと思うのです。というのは、戦争の時期、それからそのあとあたりに非常に異常な物価高というものがきたことは、これはもう特別異常な事態でございますけれども、かりに戦後の時期の問題を除いたとしましても、戦争中の時期、たとえば大正十年ごろから昭和十二、三年ごろまでの十数年間に一体物価が何倍になったかということを考えると、戦争中のときの十何年間にどんどん物価は上がっているでしょう。それから戦後を考えましても、昭和二十五年ごろ、日本の経済が一応落ちついてから後、四十年までの十五年間考えたって、物価は上がる一方でしょう。貨幣価値は下落する一方なんですね。そこで生命保険やらその他の保険制度労働者がいやというほどこれを感じているわけです。長期の積み立て金をしましても、そうしてもらえるときには幾らの金がもらえるといっても、いざもらうときには、ほんとうに全然問題にならぬ貨幣価値になってもらうという、この実際の理屈抜きの経験から、こういう厚生年金のような長期の積み立て金に給料から天引きで掛け金をする、しかも一挙に今度は相当掛け金額は上がるということについては、もう根本的な不信感がある。特に青年、それから壮年の中でも私どもぐらいの四十二、三歳以下ぐらいの年齢の層には、圧倒的に年をとったら一万円くれるとか一万五千円くれるとかいうけれども、当面掛け金がうんとふえることにはもう反対だ、いまから十五年や二十年後、一万五千円とか何とかいったって、もうそのときの一万五千円はいまの千円の値打ちもないものにきっとなっているに違いないということは、みんな本能的に知っています。でございますから、その点が一番問題だと思う。そうすると、その不信感を納得させるためには、方法は二つしかないのです。一つは、給付にあたってスライド制を採用するということ、それからもう一つは、結局政府相当政府としての負担金を出すということ。この二つが伴っておりませんと労働者は納得しないのですよ。どうしたって納得しない。ところが、その二つとも何らの保証がないでしょう。先ほどから言いますように、その負担金というのはたった五十何億円しか出さない。そうして保険料収入年間三千何百億円も取り立てる。こういうことでは労働者説明しようがないですよ、納得しろといったって。ですから、やはりその点を根本的に考えて、ほんとうに心底からそうだろう、野党の諸君が言うのはもっともだということを、ほんとうにまじめに考えていただきたい。そうしないと、いまのこの段階ではこの法案は通るかもしれないが、将来相当の問題になりますよ。必ず混乱します。その点をひとつ十分お考えの上今後に処していただきたい、そういう点を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  92. 松澤雄藏

    松澤委員長 吉村吉雄君。
  93. 吉村吉雄

    ○吉村委員 たいへんおそくなりましたけれども、重要な法案でもございますので、いままでの同僚委員質問等についてもいろいろの用件でこれをつまびらかに聞く時間もないような状態でもありましたから、できるだけ重複を避けながらお尋ねをしていきたいと思うのです。  まず初めに、現在のわが国の社会保障制度全般にわたって、特にこの場合には所得保障制度についてでございますけれども制度がばらばらに存在をしておる、こういうことが非常に問題になっておることは、大臣も御承知のとおりかと思うのです。しかもその歴史的な経緯から見まして、制度給付それ自体がまたばらばらになっておる。そのばらばらの中でも、低所得階層に対するところの給付というものがむしろ劣悪である、こういうところにいまの所得保障制度の根本的な欠陥があるのではないかというふうに考えます。そこで、従来までも各関係の審議会あるいはこの委員会等におきましても、これらの制度の統一、そして全国民が同じように政治の恩典が受けられるようにする、こういうことが望ましいということが強調をされておったわけでございますけれども、今回の厚生年金法改正にあたって、いま私が申し上げましたような所得保障制度の統一への方向という角度から考えてみまして、どういう役割りを果たすのか、あるいは厚生大臣は、これらの制度の統一という方向について、どのような将来に対する展望あるいは構想をお持ちになって臨んでおるのか、そういう将来の計画、構想についての責任者であるところの厚生大臣の見解をまず明らかにしていただきたい、こう思います。
  94. 神田博

    神田国務大臣 わが国の社会保障制度が、だんだん年を経るに従って整備してまいったわけでございますが、何しろあの荒廃した中から立ち上がった経緯でございまして、その後立ち上がったとはいうものの、まだまだそう年数もたっておらないことでございますし、いろいろな施設もまだ不十分な際でございますので、社会保障制度だけを先行して十分なものに仕組むということが至難であることは、これは申し上げるまでもないと思います。そういう意味におきまして、いま吉村委員がいろいろ御指摘されまして、まだ十分でないというお考えは私も同感でございます。しかし、ただいまも申し上げますとおり、その十分でないものの中から緩急よろしきを得て、できるだけひとつ整備してまいりたい、こういう考えのもとに今回もこの厚生年金制度を御審議願っているわけでございます。この厚生年金制度の御審議につきましても、一昨年成案を得たような次第でございまして、昨年御審議を願った、しかし昨年はとうとう御審議をしていただく余裕がなかった。これをこの段階で十分整備して御審議願うのは筋かと思いますが、そういう私どものほうでも余裕がなくて、そのまま御審議を願ったというわけでございますから、いろいろ御不満の点があることは、私もおっしゃるとおりに考えております。そこで、先ほどお答えを申し上げておるわけでございますが、この場でひとつ御審議願いまして、そうしてできるだけ十分なものにいたしたい、こういう考えでございます。そういう意味におきまして厚生年金制度をできるだけ十分なものにしたい、前向きでひとつ皆さんの御審議に御協力と申しましょうか、御審議をお願いしてまいりたい、かように考えております。
  95. 吉村吉雄

    ○吉村委員 抽象的な言い方でございますけれども、私はいまの社会保障制度というものが、歴史的な過程を考えてみまするとばらばらになっているということについては、これはやむを得ないものがある、こういうふうには考えません。しかし将来の方向については、できるだけどういう職域、どういう地域に住んでおる者でも政治の恩典というものは公平に受けられる、こういうような制度というものを確立をしていくというのが、為政者として当然の責任であるというふうに思うわけです。ですから、それぞれの制度の中身というものを改善していくということと同時に、全体の歩調をどう合わせていくかということが大切なことではないかというふうに考えておりますので、いまお尋ねをしている事柄は、社会保障制度の責任者としての厚生大臣は、それらのばらばらの諸制度というものを、どのころを目途として統一ある方向に持っていくのかということについての構想あるいは具体的な計画、こういうものがあってしかるべきではないか、こういうふうに考えますので、それらの構想については一体どうお考えになっておられるかをお尋ねしているわけです。
  96. 神田博

    神田国務大臣 大事なところをお尋ねいただいているわけでございます。私どもといたしましては、いまお述べになりましたようなことにも同じような考えを持っておりますので、目標といたしましては、昭和四十五年を目標にいたしましてものごとを進めてまいりたい、それまでにバランスのとれたような、いわゆる社会保障制度の各柱を——いま現に立っているものももちろんでございますが、立ってないものも立てて、そうしてできるだけの肉づけをしてまいりたい。昭和四十五年には一かどの社会保障国家としての日本の姿というものを顕現したい、かように考えております。
  97. 吉村吉雄

    ○吉村委員 昭和四十五年といいますと、あと五年しかないわけです。いままでの社会保障制度審議会の答申なりその他関係審議会の答申、あるいはこの答申に対する政府のその後の施策、こういうものを見てまいりますと、今日までの段階で私はたいへんおくれておると思います。ですから、いま厚生大臣から明確に、昭和四十五年度を目途にしてという答弁がございました。だとしまするならば、それを具体的に推進していくためには、厚生各自体に計画というものがなくてはならない、このように考えますけれども、その点については相当詳細な計画をお持ちだというふうに理解してよろしいですか。
  98. 神田博

    神田国務大臣 大体省議におきまして四十五年を目途として一応のまとまった姿にしたい、こういうことでございまして、大体そういうふうにお考えを願ってけっこうだと思います。
  99. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私は、委員会のいろいろの議事録を見て非常に遺憾に考えますのは、そのときそのときの大臣が、そのつどたいへん適切な答弁をしておる。答弁自体は適切でありますけれども、それが次の国会になりますと、同じような議論が繰り返されておるということを、ここ何年来繰り返している。こういうことが、私は、日本の政治に対する国民の不信感の原因になっているというふうに思うのです。困難があるならば困難がある、こういうところが困難なので実現ができないのだ、こういうようなことを明確にして、国民に対して理解を深めていくというのが国会のあり方だろうと私は思うんです。ところが、遺憾ながら、いままでの質疑応答の状況を見ますると、そのつどそのつど、その時間を適宜に切り抜ける——というふうに言っては語弊があるかもしれませんけれども、そのように勘ぐられてもしようがないような答弁に終始しておって、実際には具体的に答弁内容が実現をされていかない、こういうふうになっている例が非常に多いのを私は遺憾に感じておるわけです。いまの日本の政治にとって一番大切なことは、私は、与野党の政策の議論の前に、政治全体に対するところの国民の不信感、こういうものがあるのではないかというふうに考えるものでございますから、その不信感の原因というものを追及していくと、政府の言っておることに対して信用が置けない、こういうことが一番大きな原因になっている。それをまた追及をしていきますと、国会におけるところの大臣答弁というようなものが、そのつど式になっているというところに根源があるように思いまするので、ひとついまの答弁については、大臣も、ややあとのほうは、そういうことを目途にしてというふうに濁されました。それは目途でありますから、そのとおりにならなかったという答弁をするのかどうかわかりませんけれども、一応こういう席上で答弁をされる、あるいはその計画をお持ちになっておるということであるとするならば、あなたがおかわりになっても、それは次の大臣にはっきり申し伝えられて、そうして一定の方向で進んでいく、こういうような立場をとってもらわなければいけない、こう思います。特に社会保障の政策の問題は、私は一つの政策というふうには考えていないのでありまして、社会保障というものの充実は政治本来の眼目ですらある、このように考えますので、社会保障全般の問題についての責任ある答弁については、言うたことに対して具体的な行為を通じて裏づけをしてもらう、裏打ちをしてもらう、このように特に私は冒頭に要望をしておきたいと思うのですが、どうですか。
  100. 神田博

    神田国務大臣 たいへん大事なことに触れておられまして、私もそういう考え方をもちまして昭和四十五年度と申し上げておるわけでございます。しばしば省議等も開いておりまして、何といってもこれは今後の日本の経済的な伸びということにも関連してまいることでございますが、われわれといたしましては、一定の伸びの係数も政府として一応考えておる点も発表しておりますから、そういうことを基準といたしまして、そうして社会保障もその線に沿った、しかも社会保障制度審議会の答申や勧告もございますので、これら一連の線を四十五年に鼻づらをそろえたい、こういう考えであります。まあ一つの例をとりまして毛、児童手当のごときはまだ発足いたしておりません。こういうものも新しい大きな柱でございます。そういうものを考えながら、そうして四十五年には体系的にも、あるいは実質的にも一かどの社会保障国家として均斉のとれたものにいたしたい、こういう考え方で省議を進めております。しからば一体その内容は具体的にどうだ、こうお話がございますと、まだそれは作文化しておりません。作文化しておりませんが、そういうことを意図しながらいま検討を進めておる、こういう段階でございます。
  101. 吉村吉雄

    ○吉村委員 次に第二の事柄を、これもまた前提として厚生大臣お尋ねをしておきたいのですけれども、毎年度の国の予算編成にあたりまして常に問題になりますのは、各省が五〇%なら五%増しの予算要求をするというような方向で予算編成がなされる。その中で最終的に各関係の大臣が交渉をしてきまる。その割合が、前年度の予算に比較をして伸び率何%というようなことになるわけですけれども、初めに申し上げましたように、社会保障という問題は、広義の意味で申し上げまするならばもっと重要な施策でございますから、そういうような各省の一つの行政、こういうものよりも、もっと高度の立場からこれをながめていく必要があるのではないかというふうに考えます。  そこで、毎年毎年そういうような予算のぶんどり競争の中にこれらの諸政策があるということについては、私はそれは誤りではないか、こういうふうに考えるわけです。たとえば国の予算の三〇%なら三〇%、あるいは四〇%なら四〇%、二五%なら二五%、こういうものについては、ここ当分の間は、五年なら五年、六年なら六年というものを社会保障という方向に充てるべきであるという大原則をまず確立する、そうして中身の問題については、関係の審議会なり委員会等で十分どういうふうに配分をするかという検討をする、こういうような予算編成方向というものをとっていかなければ、どうしても政治的な力に左右されてしまって、そうして本来の社会保障というものが伸びていかない、このように考えられます。他の政策の開運はありますけれども、最優先的に考えていかなければならない。人の生まれてからなくなるまでの国としての責任の問題でございますから、もっと何%というものをきめて、目標年次まで定めてそのワク内で議論をしていく、こういうようなシステムを確立することが必要ではないかというふうに思いますけれども、厚生大臣はどうですか。
  102. 神田博

    神田国務大臣 いま吉村委員の、お尋ねと申しますよりも御意見でございますが、そういう考え方も、私は一つのよりどころのある大事なことだと思っております。来年度の予算編成をことしはどういうふうにするか、まだ十分論議されておりませんが、私は、厚生省予算は、昨年も予算編成の方針につきまして申し上げたのでございますが、特に昨年は就任早々でございますから、十分まだ論議の資料も整ってはおりませんでしたが、ここ数年間厚生省予算に対する態度というものは、いまあなたが言われたような相当の決意を持ってやらないと、これはなかなか社会保障の伸びが足らないのじゃないかという感じをいたしております。ことに、児童手当を一本出すということだけでもこれは大きな問題でございますし、それから、医療問題の解決にいたしましても、特に来年度は国民年金改定期に当たっております。そういう問題が出てまいっております。その他いろいろ環境整備の問題にいたしましても、あるいはまた精神衛生なり肢体不自由というような方面の問題、いろいろとらえまして四十五年を目途とした考え方を持ってまいりますと、相当大幅な予算の増額というものが想定されるわけでございます。そういうことを念頭に置きまして十分な施策を整えまして、また準備をいたしまして、そして手落ちのないようにいたしたい、これが私、来年度に対する心がまえじゃなかろうか、こんなふうにいま考えております。来年度予算編成までにはまだ相当時間がございますが、そういう点を明らかにして、そして社会保障制度が十分ひとつ——だいぶ国も伸びたわけでございますから、その伸びたのに比例して、日本もおとなになった、ほんとうに社会保障制度そのものにおいてそういうような感じを、もう予算書をめくったらすぐわかるというようなことにするには、いま吉村さんが言われたような考え方は私は必要だ、こう考えております。
  103. 吉村吉雄

    ○吉村委員 これは、厚生大臣に就任をされた方々は常にそういう心がまえで事に当たるだろうと思いますけれども、同じように、各省大臣も自分の所管する省の予算をよけいにしたいという気持ちをお持ちになるだろうと思うのです。そこで、私は、内閣全体として社会保障というものに対する認識がどうあらねばならないのか、そのときの政府の方向としてどういうふうにすべきであるかということについては十分検討をされて、そうして各省の予算よりも最優先的にこれを考えていく、しかもそれを年次的に、計画的に考えていくという、そういうシステムを確立しなければ、毎年毎年予算折衝にあたって、大臣が、これはこういうふうになりました、ああいうふうになりましたという繰り言を繰り返すだけになってしまうだろうと思いますから、その点はひとつ大臣、いつまで大臣になっておるかわかりませんけれども、ぜひそういう方向でその実現方に努力を願いたいと思いますし、与党の社会保障に熱心な先生方が非常に多いわけですから、与党としてもそういう立場で努力をしてもらわなければならない、このように考えております。  それから、具体的に中身の問題に入っていきますけれども、非常に時間が制限されておるようなあんばいですから、はしょらざるを得ないのですけれども、少しく時間が超過することは、委員長のほうにまず了承を求めておきたいと思うのです。  昭和三十七年に、社会保障制度審議会のほうから、いわゆる社会保障についての答申と勧告がなされたわけでございますけれども、これらの答申と勧告のうちで、所得保障政策の分野についての内容、これらについて指摘している事項は一体何と何と何か、これをひとつお尋ねしたい。
  104. 山本正淑

    山本(正)政府委員 三十七年度の時点における社会保障制度審議会の答申並びに勧告につきましては、今後における社会保障のあり方並びに問題の整理の方向というものが提示されておるのでございます。特にこの中におきましては、わが国の社会保障の中では所得保障に対する施策が不十分であるということが力説されておるわけでございまして、その面につきましては、四十五年度を目途といたしまして、まず低所得者の所得保障意味におきます生活保護費の引き下げという問題、それから年金制度に関しましては、おおむね厚生年金国民年金という二本立てでいって、そうして昭和四十五年度にはやはり生活保護の基準を当時の時点の三倍にするという意味において、厚生年金国民年金についても、それぞれの定額年金は三倍というめどが出されております。それから児童手当の問題もございますが、そういった所得保障制度の確立という方向と同時に、特に年金制度におきましては、貨幣価値変動に伴う年金の実質価値の維持につきまして、スライド制についての一つの明確な考え方が出ておる、かように理解いたします。
  105. 吉村吉雄

    ○吉村委員 厚生大臣、いま年金局長から、それ以外にもありますけれども、主要な点については答弁がありましたが、これらの点について、この答申と勧告に対する厚生大臣考え方はどういうものですか。
  106. 神田博

    神田国務大臣 いま山本君が述べたとおりでございます。私といたしましても、社会保障制度審議会の答申と勧告を十分尊重いたしまして、そして大いに施策を立ててまいりたいと思っております。ことに、御承知のことでございましょうが、中期経済計画を立てておりまして、これは四十三年までの指標になっておりますが、この中にも、社会保障の裏づけとして振替所得等につきましても十分配慮いたしておる際でございますので、その辺につきましては十分ひとつ検討いたしまして、できるだけのことをいたしたい、かように考えております。
  107. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ことばの上でできるだけと言われても、実施されていなければどうにもならないので、そこらにあまり力こぶを入れておっしゃらないようにしてください。力こぶを入れる話なら、これはだれでもできるわけですから。  そこで、厚生大臣は、今度の医療費の問題でたいへん御苦労をなさっておると思います。これはたいへんなことになったと思っているだろうと思うのですが、これは厚生大臣だけではなしに、政府全体が頭痛の極だと思います。その根本的な原因は何かということを考えてみますると、中央医療協の審議会というものに対して、やはり軽視をしておったというところに私は根本的な原因があるだろうと思うのです。しかし、私はこの点についてはあまり多く触れません。いま厚生大臣答弁によりますと、社会保障制度審議会の答申あるいは勧告、こういうものについては十分その内容を尊重して、実現をするように努力をすると、こう力こぶを入れ言いました。今回の厚生年金保険法改正にあたりまして、昨年の四月十六日に答申がなされておるのでありますが、この答申の中で幾つかの重要だと思われるもの、たとえば七項目のスライド制の問題、あるいは五人未満の事業所労働者適用、あるいは日雇い労働者適用、調整年金制度については云々、慎重に取り扱う、こういうような答申がなされておるのでありますが、特に第七項のスライド制の問題について私はお尋ねをしたいと思うのです。これは同僚議員も再三にわたって質問を展開されましたけれども、何といいましても、いま所得保障制度の中で一番国民の不信を買っておりまするのは、社会保険主義をとっており、わが国の所得保障制度のもとでは、わずかの賃金の中から、わずかの所得の中から貴重なお金を積んで、そうして今日の段階になると、その当時期待をしたようなことが全然実現をしていない。いわゆる老後生活保障というものはとうてい満足させることのでき得ないような少額の年金しかもらえなくなっている。これが一番不満の種になっておる、批判の種になっておる、このように言って差しつかえないと思うのです。ところが、今回の厚生年金保険法改正にあたりましても、審議会でもその点は十分に考えてやりなさいという答申があり、あるいは三十七年の答申、勧告におきましても、具体的にこれらの点については円陣において見なければならないであろう、こういう勧告もなされておるのでありますけれども、今次改正案の中では、勧告なり答申の趣旨というものがほとんど生かされていないように見受けられますけれども、こうなってまいりますと、厚生大臣幾ら力こぶを入れて答申については尊重するとかなんとか言われましても、具体的な施策の面になるとそうならない。これではやはり国民政府に対する不信感というものは決して解消しない、このようになると思いますけれども、答申と、それから今度の改正案に対するところの政府考え方というものはどうなのか、ひとつ大臣の御所見をお聞かせ願いたいと思います。
  108. 神田博

    神田国務大臣 吉村委員から、社会保障制度審議会の答申を厚生年金法改正案に対しては盛られておらない、特に、その中でスライド制の問題は、現下の物価高騰といいましょうか、経済の変動といいましょうか、労働者に与える不利益あるいは不安と申しましょうか、そういうことを考えると非常に親切を欠いておる、妥当でないという御意見でございますが、これは私もそういう考えを実は持っておりまして、何とかこれに入れたいという念願でございましたが、御承知のように、昨年の四月に答申をちょうだいいたしまして、すでに法案化されておりまして提案いたしたわけでございますが、御審議を見ることができない。その後、昨年の暮れに至りまして、もう一度根本的に検討を加えてお願いしようかどうしようかというような配慮がございましたが、結局議会も接近しておりまするし、社会保障制度審議会におきましてもいろいろ案件がふくそうしている関係もございまして、国会にひとつ御審議をお願いして国会の場で検討を願おう、こういうようなことでお願いしているわけでございます。ただ、このスライド制の問題は、私どもといたしましては、そういう意図十分でございまして、そういう仕組みにいたしたいということで検討を加えたことは事実でございます。ただ、その過程におきまして十分な成案を得なかった、今回は、一応次の段階にひとつ成案を得たいということにいたしまして、しかし資金の上昇よりも非常に上回る成案を得てひとつ御審議願う、こういうことにいたしたわけでございます。  また、政府負担の、国庫負担の増大というような問題等につきましては、御審議の際に十分ひとつ御検討願って、そうしてお進めしていただきたい、こういうふうな考え方でございます。
  109. 吉村吉雄

    ○吉村委員 経企庁の物価政策課長さんがおいでになっていると思うのですが、ちょっとお尋ねしておきたいのですが、私の理解が間違っておるかどうか別ですけれども、私の調べた範囲では、日本物価政策というのは、明治九年から昭和三十八年までの間に千九百十三倍かになっている。ところが、この同じ期間でアメリカでは二・四倍くらいにしか増大していない。それからイギリスのごときは、一・六倍ぐらいにしか増大していないということをある資料で見たのでございますけれども、経企庁では、この日本物価変動と先進西欧諸国の物価変動というものについて、二、三の例でいいのでありますけれども、どのようにとらえられているか、お尋ねいたしたい。
  110. 丸山英人

    ○丸山説明員 お答え申し上げます。  ただいま、非常に長期にわたっての日本物価の動向についてお尋ねがございましたが、ただいま手元に長期にわたっての資料はございませんものですから、最近の点につきましてお答え申し上げておきたいと思います。  日本物価は、最近、三十五年度くらいまでは比較的落ちついておったのでございますが、御承知のとおり、三十五年度ごろから急激な上昇をいたしておるわけでございます。ヨーロッパ……。
  111. 吉村吉雄

    ○吉村委員 いま、年金制度の問題ですから、ここ一、二年来の物価変動の議論をしても私はしようがないのです。したって、相当長期の問題についてお尋ねをしているわけですから、少なくとも厚生年金が発足をした昭和十五、六年ごろから今日までの変動を明瞭にしてもらわなければ、議論にならないわけです。——調べている間に年金局長にちょっとお尋ねいたしますけれども、それはひとつ調べて答弁していただきたい。  年金局長、先進諸国の二、三の例でいいのですけれども、このような所得保障制度に対して、明確なスライド制というものをとっている国はどれくらいありますか。
  112. 山本正淑

    山本(正)政府委員 明確にスライド制をとっている国は、厳格な意味におきましては比較的少ないのでございますが、主要な国について申し上げますと、フランスにおきましては、平均被保険者の賃金を基準といたしまして、前年度の平均の被保険者賃金がどういうふうに変化したかということを、比率をとりまして、   〔委員長退席、藏内委員長代理着席〕 そうして、これによって年金額を調整するという措置が講ぜられております。それから、その他の国におきましても、厳格にスライドということでなしに、政策的に慣例として年金額を調整するという措置を講じておる国は、西欧諸国においては相当多いのでございまして、その場合におきましては、あるいはデンマークのごとく、小売り物価指数というふうにとってある国もあるし、あるいはまたスウェーデンのごとく、年金物価指数というものをつくりまして、そうしてこれが変動いたしますと政策的に、あるいは一年の場合もあれば二年という場合もありますが、この変動の率がある程度上がりますと調整するという措置を、それぞれ自動的ということでなしに講じておる、こういうことになっております。
  113. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私もいろいろ調べてみましたけれども、外国の場合でもスライド制を明確に規定している国というのは数少ない。これは先進西欧諸国の場合には非常にこの社会保障制度、その中での所得保障制度というものは進んでおるのにもかかわらず、なぜ一体こういう基本的な重要なことがないのかということを検討してみましたところが、先ほどの経企庁に対する質問と関連をするんですけれども、それらの国々の場合には、物価変動というものが日本ほど激しくないということが私は主要な原因だろうと思うんです。日本の場合にスライド制がこれほど問題になるということは、やはり物価変動というものが非常に激しい。そのために、自分たちが貫重なお金を積んだ、その貨幣価値というものが全くゼロになってしまう。こういうことからくる不満、あるいは将来の方向に対するところの不信、こういうことがスライド制を要求する最大の原因になっていると思うんです。私は、この点については外国との比較で議論をするわけにはいかない、日本固有の特徴的な問題である、だとするならば、日本所得保障制度の中で、まず最も重点的に取り上げなければならないのはスライド制の問題ではないか、このように考えざるを得ませんので、特に外国の例をお聞きしたわけです。それを具体的に例証をするために、いま外国の物価変動日本物価変動とをお尋ねしておるわけですけれども、専門の企画庁がそういうことについて十分に知られていない、こういうことでは、私ははなはだ不満です。私が調べた範囲では、大体昭和十年か十一年を起点といたしますと、昭和三十八年度で四百二十何倍かに物価は上がっておる。しかもこれは公称でございますから、生活必需品あるいはその他のものを全部含めてそういっておるわけですから、庶民が最も必要とするところの、生活に一番大切なものの物価はもっともっと上がっておるという実情にあるだろうと思うのです。こういうような国においては、私は、それこそスライド制というようなものをきちっと確立をしてやらなければ、これは所得保障制度にならないのではないか、こういうふうに思いますので、特に冒頭からこのことを問題にせざるを得ないわけです。したがって、社会保障制度審議会等におきましてもこのことについて特に強調され、この物価変動の原因というものについてまで述べられまして、この整理原資については国が見ざるを得ないのではないかということを明確に勧告、答申をしておる、こういう実情にあるだろうと思うのです。  ところが、今度の改正案によりますと、その答申あるいは勧告というものの精神に何ら沿っていない。現在の被保険者の掛け金率の増大によって年金額を多くする、こういう方式をとられているだけだ。だとするならば、これは勧告なり答申の精神に全く相反しまするし、日本所得保障制度というもののあり方から考えてみて、私は、この改正案は根本的に誤りをおかしているのではないか、こういうふうに考えるのでありますけれども、この点は一体どうでしょうか、大臣
  114. 神田博

    神田国務大臣 誤りかどうかにつきましては、幾らか議論があると思います。問題は、国情が違っておるという関係ではなかろうかと思います。
  115. 山本正淑

    山本(正)政府委員 実は今回の年金改正に際しまして、一つの問題は、年金額幾らにするかという問題が、政府部内におきまして非常に議論されたわけでございます。これはもちろん審議会におきましてもいろいろ御意見がございました。そこで、スライド制という問題も、昭和二十九年に法律改正がされました際に、もしも物価スライドというような規定があったといたしますと、その後における物価の上昇というものは三十数%でございまして、物価だけによりますと、昭和二十九年を起点といたしますと、それほどの年金額にならないのでございます。そこで、制度審議会の勧告もございまして、今回の年金改正については、まず年金額を充実するということに最重点を置きまして、そうして既裁定年金も同時に引き上げを行なうということによりまして、実質的に物価スライドはオーバーして、賃金なり消費支出の上昇というものに見合う年金額引き上げるということに重点を置いたのでございます。そういう意味におきましては、今回の改正時点に立ちましては、それ以前の諸般の指標というものを十分考えて、上回る年金額考えたわけでございます。問題としては、先生が御指摘のように、その際における整理資源というものを国が負担していないじゃないかという一つの問題、それからもう一つの問題は、いま申しました意味におきまして、スライド問題というのはむしろ今後の問題としての課題である、こういうように考えるわけでございます。そこで、第一点の整理資源問題につきましては、制度審議会の勧告は十分承知いたしております。ただ、この問題は各制度を通じまして非常に重大な問題でございまして、スライド並びにスライドに伴う原資の補てんというものをどういう形において、どういう負担で処理すべきものであるかということは、問題の解決ができておりませんので今後の問題として残っておる。保険料率につきましては、厚生年金が現在におきましては修正積み立て方式といわれる方式をとっておりまして、暫定料率になっておりますので、そういったものを一切含めますと、料率といたしましては相当高いものになりますけれども、さしあたり千分の五十八まで引き上げるという案につきまして、これは先般も申し上げましたが、現在年金受給者が少ない関係上、既裁定年金引き上げましても、いわゆる整理資源的なものは比較的少額であるという実情もございます。そういう意味におきまして、御指摘のようにやはりスライド制を確立するということになりますと、そのスライドに伴う原資の負担をどうするかという問題が解決されなければならない、そのように考えておりまして、その問題は、今回まず二万円年金という年金額引き上げを行ないまして、そしてその他の問題も含めまして将来の課題としてさらに検討を進め、結論を出したい、こういう考え法案提出したわけでございます。
  116. 吉村吉雄

    ○吉村委員 年金額を増額するところに重点を置いたというお話でございますが、それはそれなりに私はいいだろうと思うのです。いま国民生活に非常に関係のある、しかも所得保障制度の中では中核的な役割りを果たしておる厚生年金法の大改正の時期にあたって、年金額の増大ということはもちろん大切なことでございますけれども、同時に、この法案提案され、世上で問題になって以降、一番議論の焦点になっているのはスライド制の問題である。そのために、世論というものはむしろこういうやり方をするために分断をされている、こういう傾向すらある。年金額は増大をするけれども、その負担は今日の被用者、今日の被保険者負担をする、こういうやり方になっているわけです。したがって、社会保障制度審議会で答申をし、勧告をしておるところの整理資源については、それは当然国が負うべきである、見るべきであるということについては顧みられていない。こういうことに対する不満というものが、この法案審議にあたって、いろいろな批判の対象となって波乱の原因になっていると私は思うのです。そこで、いま局長からいろいろ答弁がありましたが、それは将来の問題だ、将来の懸案としてこれを検討していきたい、他の制度にも関連がある、こういうお話でございますが、もとよりこれは他制度に全部関係をする基本的なものですから、そのことば自体を私は否定しようとはしない。ところが、昭和三十七年にすでにそういうことについては勧告なり答申なりがなされておって、政府はこの答申と勧告については尊重してこれを実施していきたいという答弁は、再三にわたってこの委員会でなされているはずなんです。だとするならば、それから三年を過ぎた今日の段階において、あとまた将来の懸案事項ということでやっていきたいと幾ら局長が言われましても、私はそれはあまり信頼するわけにはいかない、こういうことになるのではないか。私どもがそのような気持ちであるということは、この適用を受ける多くの国民が、やはり同じような考え方でこの問題をながめておるということになるわけです。したがって、私は政治に対して責任を持つという政府の立場からするならば、たとえばこのスライド制についていまのような答弁をするとするならば、何年くらいまでの間にどうするという明確な計画と責任ある答弁がなされなければ、従来のとおり漫然とまた引き延ばされていくという不信感、あるいは疑惑を与えるだけにとどまってしまうという心配をせざるを得ないわけであります。ですから、ただいままで答申と勧告がなされてから二年有余が過ぎた今日においても、将来の問題として検討する、こういう態度については、私はどうしても納得するわけにいかない。本気になってこれと取り組んでいたということに私は理解をするわけにいかない。しかし、これは過ぎたことでございますからやむを得ない。大臣がいないので非常に残念ですけれども、これはあとで大臣が来たらお尋ねします。だとするならば、この所得保障制度の中核的な役割りを果たすところの厚生年金保険法改正にあたっては、むしろそのような重要な問題について法律の中に明確に規定をするとか、あるいはその責任ある期限なり何なりというものを明確に方針として示すとか、こういうことが必要ではないかというふうに思うのですけれども、その点は一体局長としてはどうですか。
  117. 山本正淑

    山本(正)政府委員 このスライド問題の基本の一つには、やはり国民長期年金制度に対する信頼の問題があるということは、私もそのとおり考えるわけでございまして、そういう意味におきまして、従来の年金額というのが非常に低かったのが、一万円年金を実現いたしますと、その面におきましては、やはり年金というものは経済生活の推移に作って政府としては引き上げるものであるという証明になると思っておりまして、その意味における信頼という点では、年金額を大幅に引き上げることによって一つの信頼を確保し得る方途である、かように確信いたしております。  それからスライド問題というものにつきましては、これは先生も御理解願えると思いますが、非常にむずかしい問題があるわけであります。実はこの問題につきまして、私どもといたしましても事務的には一つの案を持ちまして、事務当局案といたしましては、厚生年金引き上げに際しまして、将来の問題として、要するに報酬比例部分は賃金の上昇というものがある程度反映するわけでございますが、定額部分は物価の上昇も賃金の上昇も反映しない、そういう意味におきまして、答申、勧告にもございます趣旨を体しまして、定額部分については何らかの具体的なスライド措置を講じたいという案も出しまして、そして政府部内のいろいろ意見交換もやったのでございますが、今日の段階におきましては、基本的にスライド問題並びにそれに伴う原資をどうするかという問題が解決しなければ、やはり定額部分だけスライドするという案もとりがたいという結論になりまして、今回の改正にその点を入れることができなかったわけでありますが、そういった案を私どもとしては一つの案として検討の結果考えたという段階にきておりますので、今後は積極的に、社会保険審議会でございましたか、最後の答申の中に、権威ある調査会をつくって検討すべきであるという点も出ておりますし、そういった意味も体しまして、もちろん積極的に取りかかっていきたい、かように考えております。
  118. 吉村吉雄

    ○吉村委員 局長の考え方は私はわかりました。しかし、大臣お尋ねしたいのですけれども、いろいろやりたいと思うことはあるだろうと思うのです。私どももこうしたいと思うことがたくさんある。しかし、お互いの生活の中でやろうと思ってもできないというのが今日の実情です。しかし、しないで済む問題とぜひともしなければならない問題とがある。年金制度の中で、所得保障制度の中で一番重要なのは、今日の日本の情勢の中では、スライド制というものはやろうと思ってもできなかったということで済まされる問題ではない。もっと自分を断崖のふちに置いて、いついつまでにはしなければならない、こういう立場をとらなければ、やはり来年になっても再来年になっても、同じような答弁を繰り返さざるを得ないのではないかということをおそれる。ですから、いままでのことはやむを得ないとしましても、この段階になって、スライド制の問題については、たとえば二年なら二年以内に関係の審議会審議を経て確立をするとか、一年以内にやるとか、こういう方針を明示することによって、初めて所得保障制度に対するところの国民の今日までの不信感というものの幾ぶんかを払拭することができる。こういうふうになるのではないかと思いますので、スライド制が非常に重要な要素を占めているということを大臣も認められ、あるいはまた年金局長も両三にわたって認められ、検討の段階に入っておるとするならば、むしろこの際、私はみずからをこの断崖のふちに立たせる、そういう意味で、厚生省全体としては、これに対する結論はいつごろまでに出すということが必要ではないかというふうに思うのですけれども、そういうことについて一体大臣は——私の希望としては一年なら一年以内、こういうことでやってもらいたいと思いますけれども、期限を切って実現するという責任ある態度を示してもらいたいと思いますが、どうですか。   〔藏内委員長代理退席、委員長着席〕
  119. 神田博

    神田国務大臣 厚生年金スライド制につきまして、たいへん御熱心な御要望でございます。これは、私も先般来お答え申し上げておりますとおり、スライド制そのものについては私も賛成なんでございます。ただ問題は、いろいろ他の制度との関係のことも考え、それも一つ見ながらということでございまして、非常な熱意を持っておりますから、なお一そう前向きでひとつ検討してまいりたい、かように考えております。  そこで、いまお話しのございました一年以内でやるか二年以内でやるかというようなことにつきましては、これは十分御趣旨はわかりますので、私もそういう考えでございますので前向きでとにかく検討する、かようにひとつ御了承願いたいと思います。
  120. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういう答弁は、私は何回も何回も聞いておるから、申し上げておるのです。人間には怠惰な一面がどうしてもできる。やろうと思ってもできないということもある。しかし、いままでの経緯を考えてみて、どうしてもしなければならない立場にみずからを追い込めなければできないであろう。社会保障制度審議会からの答申というものはいつ出ました、三十七年ですよ。そしていま、所得保障制度の中での中核的な役割りを果たそうとするところの厚生年金法改正にあたってもまだできないで、検討の段階になっておる。非常に重要なことであるということは認められておるけれども、これまた二年過ぎた、二年半過ぎた今日まだ検討の段階だ、こう言われるのです。しかし、各制度に関係をする問題だということもわかります。しかし、本来であるならば、たとえば共済あるいはその他の制度全体は、厚生省で全体として統括してやっていくというのが本筋のあり方だろうと思うのです。ところが、いままでの歴史的な経過もあって、それはできないでおる。こういう中にあっては、厚生省が管轄をし、しかも所得保障制度の中の中核的な役割りを果たそうとするこの厚生年金法改正にあたっては、むしろそういう御趣旨をはっきり打ち出して、初めてほかの制度というものはそれについてくる、こういうふうにもなるはずだと思います。関係する制度があることは私も承知しておりますから、いまこの時期でどうこうと言うわけにはいきません。必要なことは、あなたが一体いつごろまでにこの答えを出すかということ、その態度を明確にすることが、いま持っておるところの不信感というものを少しでも払拭することになるのではないか、こういうことを申し上げておるのでありまして、前向き前向きというお話はもう七、八年前から聞いている話ですから、そこはもっと責任のある言明、そういう態度を示すことが、今日最も大切だということを私は申し上げておるのです。
  121. 神田博

    神田国務大臣 御趣旨は私もよく了承の上で申し上げておるのでございまして、私も、自分で申し上げるのもはなはだどうかと思いますが、人さまからは実行向きだと言われておる。その私が、前向きで検討いたします、こう申し上げておるのでございますから、そのようにひとつ御了承願いたいと思います。
  122. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういう態度では私は了承はしませんけれども、前向きということばで、少しはやる気になっておるということくらいは了承します。しかし、私は、いままでのことばからするならば、この問題についてはもう少しきちっとした態度を示すべきだと思うのです。前向きというのは、ことばの上ではたいへんよく聞こえますけれども、もっと責任ある立場に自分を追い込まなければやれないような条件があるだろうということを、私は前提として申し上げておるのですから、いまの答弁では私は納得しかねますけれども、時間もないので、この点については私の意見を開陳するだけで、特に善処を求めるようにしたいと思う。  次に、保険給付の問題について若干具体的に触れておきたいと思います。  まず、年金局長お尋ねをしますけれども、国家公務員あるいは地方公務員、公共企業体の職員は、それぞれの共済組合の老齢年金の平均額というものはどれくらいになっておりますか。
  123. 山本正淑

    山本(正)政府委員 昨年の数字でございますが、昨年現在で平均の受給老齢年金額は、国家公務員共済組合の場合は月額約一万四千円、それから地方公務員共済組合は一万四千八百円、公共企業体の職員で一万一千六百円、それから農林漁業団体共済組合は三千九百円、私立学校共済組合の職員は一万二千六百円、こういった年金受給額の平均に相なっております。
  124. 吉村吉雄

    ○吉村委員 今度の改正案による厚年法に基づくならば、老齢年金というものは、平均して大体——これは基準が必要ですけれども、現在支給になっておる方々に対する改正後の年金の平均額はどのくらいですか。
  125. 山本正淑

    山本(正)政府委員 現在厚生年金受給者につきましては、一般の受給者はおおむね八千円台、これに家族一人につき四百円加わりますが、坑内夫のごとき勤続年数の加算のある者につきましては九千円台、かように考えております。
  126. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そうなってまいりますと、現在の国公、地公あるいは公企体職員の年金に対して、農林漁業は問題にならないくらい低いのでございますが、これは改正前の平均額をとっているからやむを得ないと思いますが、これと比較してみましても、改正後のものは八千円ということでございますから、これまたたいへん差がついたままになるわけです。これは国公、地公あるいは公企体職員と民間企業労働者の場合を比較しますと、賃金の場合については、民間の賃金と国公、地公、公企体の職員の賃金についてはなるべく均衡をとりなさいということが法律上明記をされておる。そういうものと比較をして、公務員の場合には、二万円年金だとたいへんPRにつとめられておりますけれども、現実には八千円前後のものにしかならない。これではまだまだ均衡がとれた姿にはならないのではないか。極端な言い方をしますと、国公、地公の場合の八〇%くらいですか、その程度にしかなっていないということですから、そういう状態では、私は、所得保障制度の中核であるところの厚年の年金額としてはきわめて少ない額、こう言わざるを得ないと思うのですけれども、この点は、均衡上一体どのように考えていますか。
  127. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御承知のように、公務員共済と厚生年金とを比較して考えますと、厚生年金につきましては、一つは、制度の発足以来の年数の経過がようやく昭和三十七年に二十年になったということでありまして、要するに勤続年数というものが通常の労働者の勤続年数と合っていないわけでございまして、やはり成熟期に達すると、三十年なり三十五年の勤続というものが通常の状態になる。さような状態になってそういった比較、公務員共済の場合におきましては、大体勤続年数からいいましても定年制はございませんけれども、五十歳前後で退職するといたしますと、やはり二十五年なり二十七、八年ということになる、こういった勤続年数の問題がございます。と申しますのは、今回の改正は二十年勤続、年数加算がつきまして三十年が一万五千円、こういう算定になっておりますから、本来からいえば、大体勤続年数が同じような比較ができる際において年金額がどれだけになるかという比較をしないと、勤続年数によって差があるということによる違いがあると思います。しかしながら、御指摘のように厚生年金は、一つには、定額部分のほかに報酬比例というものがあって、報酬比例というものが過去の報酬額の平均額ということでいっている。他の共済制度におきましては最終賃金を基準としている。こういった立て方の違いからの差というものが現実にあるわけでありまして、そういった面につきましては今後さらに相互の給付のバランスというものをとっていく方向で考えなければならない、かように考えております。
  128. 吉村吉雄

    ○吉村委員 年金局長、そうしますと、いまの答弁の趣旨は、地公、国公、公企体職員の勤続年数あるいは給与、こういうものが厚年の年金受給者に比較して条件の違いがある、こういうことでございますけれども、それらのものを差し引いて考慮に入れたとしても、この八千円平均という今次改正案というものが、他の制度に比較して給付は劣悪ではないかという気がしているわけです。時間がありませんので、私はその数値的なことをいま申し上げようとは思いませんけれども、そのような私の理解のしかたというものは間違っていますか。
  129. 山本正淑

    山本(正)政府委員 さっき申し上げましたような諸条件を比較いたしましても、現段階、今度の改正によりましても、公務員共済と厚生年金と比べましては、やはり公務員共済よりは劣っておる結果になっておると思います。
  130. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私はそういう点がたいへん問題だと思うのです。一万円年金、二十年勤続二万五千円、平均一万円というこのPRがたいへんされておるのですけれども、現実にはそうならないということは知られていない。これは滝井委員からも指摘された点ですけれども、私は、このような制度改正にあたっては、国民全般に制度内容というものをもっと親切に知らしめないと、それこそ期待だけが大きくなって、実際に受け取るときには、一万円もらおうと思ったのが七、八千円だということになると、これは政治に対する不信感となってあらわれる、こういうことを心配するから、特にこの点は強調をして申し上げておるわけです。さらに、従来日本国民の間に残っているものの考え方というものは、官庁に勤務するものと民間につとめるものとの間には差があっても当然だというようなものの考え方がいまでも残っておる。これは制度の上にも残っておりまするし、あるいは待遇の上においても残っている点があります。こういうものをやはり変えていかなければ、新しく生まれ変わった日本ということにはならない、こういうふうに考えますので、いま年金局長お答えをいただきましたけれども、今度の一万円年金と称する改正案についても、なお他制度に比べてみるとその給付が劣悪なことは明瞭でございますから、これはできるだけ近い将来にこの均衡をとる方向に改めてもらわなければならないというふうに思います。特にこの厚年の場合で特徴的なことは、私は定額部分があるということだと思うのです。これは他制度に比べてみまして非常にいい点だというふうに思います。しかし、この定額制度につきましても、五千円という数字だけでは私はどうしてもまだ安心ができるというものではない、このように考えます。社会党としては、御存じのように、少なくとも定額部分というものは生酒保障的な要素を持つものでありますから、八千円ということを社会党案としては提案いたしておるのでありますけれども、この定額部分について、全般の引き上げと同時に定額部分については特に最重点的にこれを考慮しながら今後の改善検討に当たる、このようにしていかなければならないと思いますけれども、この点はどのように考えますか。
  131. 神田博

    神田国務大臣 社会党提案内容も拝見いたしました。年金でございますから、多いことに越したことはございません。政府といたしましても、やはり幾らにするかということにつきましてはいろいろな議論がございまして、八千円もあり、一万円もあり、いろいろあったわけでございますが、いろいろな事情で今回のような案になったわけでございます。国家の経済の上昇に伴いまして、そして逐次改定して上がっていく、こういうことを期待しておる次第でございます。
  132. 吉村吉雄

    ○吉村委員 時間がたいへんおそくなってきましたので、はしょらざるを得ないのですけれども、大事な点だけはやはり聞いておかなければなりませんから。  その次にお尋ねしたいのは、障害年金の事柄です。障害年金は、第一級については基本年金額の百分の百二十五、このようになったわけですけれども、これによりますと現行よりは相当額上回ります。しかし、ここで私は比較して議論をしたいと思うのですけれども、三級については最低保障というものが六万円というふうに定められております。ところが、一級についてはそういう保障額というものがない、こういうふうになっておるのですけれども、少なくとも障害年金というようなものについては、各級ともにその人の給与のいかんにかかわらず、最低の額はこのくらい、こういうものがあってしかるべきではないか、こう考えるのですけれども、一級については最低保障額的なものがないというのは一体どのような理由に基づいておるのですか。
  133. 山本正淑

    山本(正)政府委員 今回、障害年金につきましてもまた遺族年金につきましても、最低五千円という最低保障をいたしたわけでございますが、これは先ほど来議論となっております一万円年金というものが、現在の老齢年金受給者につきましては一万円に達しないケースが多いわけでございますが、遺族年金につきましては、せめて一万円年金をずばり実現いたしたいということで、現在の受給者についても一万円の二分の一の五千円というものを最低保障いたしたわけでございます。障害年金につきましては、御承知のように一級障害年金は老齢年金を基本として算定されるわけでございまして、現行法では、老齢年金に月額千円を加算するという形で障害年金はとられておるのでございます。今回はそれを改めまして、二五%増しということにいたしたのでございまして、これによりまして、年金額引き上げと同時に、障害年金には相当、他の共済制度等ともにらみ合わせて、一級障害年金は充実したと考えております。三級障害年金は、御承知のように老齢年金額の七割でございまして、今回は七五%というふうにいたしましたが、老齢年金額の七五%相当額が五千円を下回るケースも、机上と申しますか、数字の上ではあり得るという計算になりますので、そういう意味におきまして、遺族年金の最低保障を置きましたと同じ意味におきまして、もしも月額五千円を下回る三級障害年金があっては均衡がとれないという意味におきまして、同様な最低保障を実施いたしたわけでございます。一級障害年金につきまして最低保障という御意見は、むしろ一級障害年金は老齢年金を基本とするということにいたしまして、その加給額を二五%増しといったような形がいいのか、それともむしろ加給金のほうを相当額ふやしたがいいかという御議論は審議会等でもございましたが、そういったような方向での御議論はございましたが、最低保障につきましては、やはり立て方が老齢年金を基本とするという立て方でございますので、最低保障ということを考えなかった次第でございます。
  134. 吉村吉雄

    ○吉村委員 老齢年金を基準にしてこの百分の百二十五というものを考えたということはわかりました。しかし、障害年金制度のようなものについては、どういう人がどうなるかわからない。障害の程度によって、これは一級、二級となっているわけでしょう。だとするならば、かりに百分の百二十五が妥当だとするならば、その額に満たないものについては百分の百二十五を保障する、こういうものがなくては、障害という非常に不時の災害にあった者に対するところの所得保障というものにならないのじゃないか。したがって、これは三級と同じような考え方の最低保障額というものは、設けるのが妥当ではないか、こういう障害というようなものにこそ設けるべきではないかという気がしてならない。百分の百二十五ということは、大体現行の点から言いますと、二十年勤続、三万五千円で、一カ月一万二千五百円ということに基準から言いますとなるでしょう。しかし、それだけをもらえるという人は、あなたも先ほどから答弁をされておりますように、なかなか今日の段階ではないわけです。そうしますと、一級障害程度人たちが、それはもう一万円なり一万二千円なりのお金がもらえないで、そうして生活をするということは非常に困難だという人も条件としてはあり得る、こういうふうになるだろうと思います。ですから、私は、この一級の障害についても、当然にこの最低保障額というものは設けられなければならないはずのものだ、こういうふうに考えるのです。ところが、いままでの法律のたてまえ上、こういうような形になったのではないかというふうに思いますけれども、ここはひとつ、そういう障害を受けて今後生活をしていかなければならない人に対する所得保障なんですから、最低額だけはこのくらいは見てやるということはどうしても必要ではないか、このように考えますので、これは今後といっても、私は改正時期までたいへんだろうと思いますから、この国会でもしでき得るならば、このところは最低保障額というものを新たに設けたい。それによって財政的なものは、私はそう負担が多くなるというものではないだろうと思うのです。ただ、そういうようなものの考え方というものがこの種の制度にはどうしても必要だ、このように考えるのですけれども、どうでしょうか、これは。
  135. 山本正淑

    山本(正)政府委員 現在の年金制度は、やはり障害年金につきましては老齢年金を基準として算定しておるわけでございます。そういう意味におきまして、先生の御意見も突き詰めてまいりますと、二つの考え方があるわけでございまして、一つは、一級障害年金については、障害年金というものを切り離して最低保障というものが考えられないかという御意見と同時に、もう一つの考え方は、老齢年令を基本といたしておりますので、老齢年金に最低保障額を考えるという考え方も起こり得るわけでございます。そういった点については、これは御意見の分かれるところでございまして、障害年金は、特に一級障害者については特例の扱いをすべきではないかという意見も実は審議会でも出ました。そういう意味におきまして、障害年金の扱いを一級の者についてはさらに分厚いものに加算をしていくという方向も二つございますが、現在の立て方から言いますと、やはり老齢年金そのものに最低保障額というものは考えておりませんので、老齢年金を基本としての何制増しということにならざるを得ない、かように考えております。
  136. 吉村吉雄

    ○吉村委員 なるほど老齢年金には最低保障額というものは明記はされていませんけれども、定額部分というものは、前からの質疑応答を聞いておりますと、最低保障額的な性格を持っておるという答弁をあなた方はなされております。また、私どももそういうものであるというふうな気がします。したがって、それを引き上げなさいという主張を私どもとしてはしておるわけです。ですから、所得保障制度なんですから、そういう場合に、障害を受けてこれから生活をしていく人が、最低一体どのくらい生活費を必要とするのかというようなことを考えてやることが、温情ある制度の立て方ではないか。百分の百二十五にして、いままでよりはふえるということだけでいいんだ、こういうものの考え方ではいかぬではないか、こういうふうに考えますので、特に私は強調しておるのですけれども、ここは意見の分かれるところだということでございますが、そういうことには、私はそれこそ最低保障額というものはあってしかるべきだ。そういうものの考え方が、この三級というものにもやはり出てきておる。だとするならば、障害年金については各級ともに、その人の障害の程度に応じて、幾らくらいの年金というものを国が制度の上で保障するというものが当然あってしかるべきものだということを特に強調しておきたいと思うのです。私は、この点は、これからの審議の過程でも、与党の皆さんともよく相談をした上で、もし賛成が得られるならば、かように改めるべきだという気持ちを持っていますので、そのことを申し上げて、時間も切迫してまいりますから、この点は質問を終わります。  それから、これは参考までにと言ってはあれですけれども——いま一つ、その前に加給年金です。加給年金の額というのは、これは改正前と同じ案の四百円、一年で四千八百円、こういうふうになっておるのですけれども年金額全体を上げなければならないというものの考え方は、当然、加給年金額についても引き上げなければならないという考え方に通じなければならないと思うのです。ところが同じだというのは、これはどういうわけなんですか。
  137. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御承知のように、各種の年金制度におきまして、加給金のある制度とない制度があるわけでございます。厚生年金におきましては加給金という制度がありまして、現行は四百円でございます。この問題につきましては、もちろん私どもも、加給金の引き上げという問題も検討いたしました。また、審議会におきましてもこの議論はございましたが、むしろこの問題は、どちらかといいますと、やはり妻の年金といったもの、妻の座の確立という意味におきまして、厚生年金の中において妻の年金制度をつくるべきじゃないかという意見も出てまいりまして、これは国民年金との関連等で非常にやっかいな問題がございますが、将来妻の年金というものをどう考えていくかということば検討しなければならない問題でございまして、その際において、妻の年金というものをどういうふうに処理していくかということの開運において加給金の問題も考えてはということになりまして、今回の改正におきましてはその引き上げを見送った次第でございます。
  138. 吉村吉雄

    ○吉村委員 年金局長答弁が非常に巧妙なんですけれども、他制度との関係ということから見ますならば、私は、この加給金制度というものは他の制度にはないということはわかります。しかし、そういう観点からすると、年金額全体も他制度に比較してまだ安い、こういう問題もあるわけですね。だから、それぞれの制度の中に特徴がある。これはいまたいへん問題になっておるところですけれども、しかし、制度全体を考えてみて、私はいまの時点考えるならば、年金額を増大をするというそのものの思想は、この厚年法の立場に立つ限り、加給金というものも同じように増大をするということにならなければ、思想が一貫しないのではないか。そこの議論になるとこれは将来検討する、妻の座を年金制度の中でどう確立するかということの中で検討をします、こういう答弁、あるいは他制度との開運でこれはやれなかった、こういう答弁になったのでは、そのつど他制度というものが、ある場合にはあなた方に都合よく使われ、ある場合には悪く使われるということになってしまうので、こういう答弁のしかたは私はあまり感心をしないのです。ですから、この年金額を増大をしなければならないという厚生年金というものは、非常に低い、したがって、これを何とかするという立場に立てば、その制度に包含をされる全体の問題を引き上げていくという思想で一貫しなければ首尾一貫しない、こういうことになるではないかと思うのですよ。ですから、これは厚生年金制度の中での特徴的な部分、こういうように私は考えておりましたけれども、この特徴的な部分を伸ばすことが、将来統一をする場合において、制度の統一といいますか、そういうような場合において困るということもあるかもしれませんけれども、その場合には、その場合において全体の視野からこれは検討をされるということなんですから、現状においては、やはり加給金というものは同じように増額をしていくということがなくては、厚生適用者としてはやはり不満が残る、このようにならざるを得ないと思うのです。しかし、原案がこういうふうになっているので、どうもあなた方の立場としては、いまどうにもしようがないということだと思うのですけれども、本来国会というのは、そういうことについて討議をされる、討議した上でこれはそのほうがいいのじゃないかということについては修正をする、こういう心がまえ、態度というものがなければ、国会審議というものは私は何にもならないと思っているのです。私のいま言っていることが間違っているかどうかは別です。しかし、審議をして、この点は政府のほうもあるいは与野党も一致をしたという部分についてはこれを修正する、こういう心がまえがなくては、幾ら議論をしてもどうにもならぬじゃないか、このように私は考えますので、いまのこの加給金の問題については、厚年の制度という立場からして、厚年の年金というものがきわめて少ない、それと同じように、四百円というものも少たかったということになるわけですから、そちらを上げればこちらも上げなければ、これは改善策というものにならない、こういうことを申し上げなければならない、こう思うのです。これは大臣、こまかいことのような顔をしておりますけれども制度上から見れば大きな問題だと思うのです。先ほどの障害年金の問題、あるいはいま申し上げておる今度の加給金の問題等について、もっと一貫したものの考え方で処理してもらいたいと思うのですけれども、見解はどうですか。   〔委員長退席、齋藤委員長代理着席〕
  139. 神田博

    神田国務大臣 吉村委員お尋ねでありますが、いろいろこの案をつくる際に配慮いたしたわけでございます。あなたと同じような意見を持つ者もございまして、いろいろ取捨選択といいますか、なかなか議論がございまして、まとまったところでこれをやったわけでございまして、お聞きをいたしておりましても、改正するほうが相当の理由があったというようにも、私感じておるわけでございます。今回はやむを得なかったというようなことで、ひとつ御了承願いたいと思います。
  140. 吉村吉雄

    ○吉村委員 まあ大臣はおそらくそこまで検討しないでいたでしょうから、今回はやむを得ないという結論になったのかどうか疑わざるを得ないと私は思うのですけれども、いま申し上げたような議論が審議会であったかどうかは詳しく私は読んではみませんでしたけれども、やはりそういう立場で原案というものは出されるべき性格のものではなかったか、こう思うのですよ。ですから、これは五年ごとにまた改正の時期ということなんでしょうけれども、そういう時期を待たなくとも、こういう点についてはひとつ改正の方向で努力をする、改正をする、こういう立場をとってもらいたいと思いますけれども、どうでしょうかね。
  141. 山本正淑

    山本(正)政府委員 加給金の問題につきましては、私ども原案を作成します際にもいろいろ議論した点でございます。特に妻の扱いという問題は、妻の年金という問題は刑にいたしましても、諸外国におきまして、老齢年金受給者に妻がある場合においては妻の割り増し年金というものが出ておるわけでございまして、そういう意味におきまして、私どもは、筋から申しますとやはり定額ということではなしに、夫の老齢年金の何割増しといったような加給金といいますか、妻の加算というものを考えるのが将来の方向ではないかと考えておる次第でございます。たとえば老齢年金の三割増しとか五割増しといったような形で、妻のある場合の措置が講ぜられるというようなことが将来望ましい形じゃないかと考えている次第でございまして、そういった点も含めまして加給金のほうを今後どう扱うか、加給金の増額というような形でいくか、あるいはまた、本来の老齢年金額の何割増しといった形でいくか、いずれかにいたしましても、やはり妻のある場合につきましては、老齢者の生活考えましてさらに前進するような方向で当然考えたいと存じております。
  142. 吉村吉雄

    ○吉村委員 年金制度上の妻の座というもの、位置をどういうふうにするかという問題は非常に大きい問題ですから、それはそれなりに十分検討されることはけっこうです。検討した結論が出るまでの間といえども年金額を増額する以上は、加給金というものは同じ割合で増額をしておかなければならなかったはずだということを、この際強調しておきたいと思うのです。  それからいま一つは、法案の六十三条でございますけれども、失権の事項ですが、この中で、十八歳未満の人たちは、この法文全体で見ますと、これは事実上の養子となった場合には失権ということになるように見受けられるのですけれども、他の共済年金制度の中ではこのようなことはないように見受けられるのですけれども、これは私の理解が間違っていますか。
  143. 山本正淑

    山本(正)政府委員 この六十三条の改正は、これは国民年金の例にならいまして、直系血族の養子となった場合には、従来は厚生年金では失権しておったのを、国民年金の例にならいまして失権しなくなるような扱いにしたということでございます。
  144. 吉村吉雄

    ○吉村委員 従来は失権であったものが失権でなくなるということですか。これはそういうふうに理解できないのじゃないですか。そういう答弁なら、私はそう理解いたします。  給付の問題については、この機会にいろいろお尋ねしておかなければならないことがたくさんあるのですけれども、だいぶ委員長代行者のほうが気をもんでいますから、あと二、三十分で整理をしなければならないわけですが、そこでその次は、問題になるところの調整年金の関係でございますが、これは同僚議員からたくさん質問がありましたから、あまり重複をしないようにお尋ねをしたいと思うのです。  調整年令制度というものを必要とする、あるいは必要としないということについては長い議論が戦わされたわけでございますけれども、言いかえますと、労働者側あるいは資本家側との間に意見の対立があって、そうしてどうにもこの答申というものができ得ない状態にまで追い込まれた。したがって答申の中身というものは、慎重に対処をしなさいという形になって出てきた。ところが、これを今度の改正で取り入れるということになったわけです。幾つかの問題がありますけれども、私は重複を避ける意味でぜひお尋ねをしておきたいのは、そのような労使の対立があったのにもかかわらず、あるいは審議会のほうで意見一致を見ることができなかったのにもかかわらず、なおそれでも調整年金制度というものをここに採用しなければならなかった根本的な理由というものは一体何ですか。
  145. 山本正淑

    山本(正)政府委員 いろいろ事情なりいきさつがあるわけでございますが、簡単に申しまして一万円年金を実現する、こういうこととの関係におきまして調整年金をやることが必要であり、適切である、こういう結論に達したわけでございます。
  146. 吉村吉雄

    ○吉村委員 これは簡単と言いましても、その答弁では簡単に過ぎると思うのです。一万円年金というものを実施をするために調整年金制度が必要だったという事務的な話では、私は話にならぬと思うのです。一万円年金にする方法であっても、何も調整年金を採用しなくても、やる気になればできる方法はたくさんあるわけです。ですから、意見の対立があったのにもかかわらず、なおかつこの制度をこの時期に改正案の中に織り込まなければならなかった厚生省としての根本的な考え方は、一体何なのかというのです。
  147. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御承知のように、民間の企業年金というものが、昭和三十七年の税制の優遇措置以来、いわゆる税制適格年金として急速に普及してまいりました。そうしてこの勢いというものが、厚生年金制度を改善していくということにつきまして、負担なり機能の重複という面からいたしまして非常に関係があるわけでございまして、そうして一方におきましては、企業年金として充実していけば厚生年金には期待しなくてもいいといったような考え方も生まれてきているわけでございます。これは企業年金が普及するといいましても、やはり厚生年金として、千八百万人近い被保険者を擁しておる公的年金制度からいたしますと、企業年金が、ことばは悪いのですけれども独走いたしまして、公的年金の充実することが非常に阻害されるということはたいへんなことでございまして、そういう意味におきまして、またそういった傾向があらわれるのも、一つには厚生年金というものの給付が非常に不十分であるという結果とも関係があるわけでございます。そういう意味におきまして、今回の改正においては大幅な年金額の充実を実現するということに最重点が置かれまして、そうしてそれを充実するためには、厚生年金企業年金との間の負担の重複、機能の重複といったものを調整していくことが必要であるという結論に達した次第でございます。
  148. 吉村吉雄

    ○吉村委員 だいぶ苦しい答弁でございますけれども、言わんとする趣旨はわかったような気がします。企業年金制度というものがどんどんと普及をしていったために、厚生年金制度を改善しようとする熱意というものが薄れるという傾向が生まれてきた、こういうお話でございます。そういう風潮の根本的な原因というものは、企業側の負担というものが、二つの制度に対して負担をしなければならないので、負担が増大をするということが大きな原因の一つだと思います。ところで、企業年並制度というものがどんどんと普及をしてきたということについて、厚生省が責任を持たなければならぬ理由はあるのですか。
  149. 山本正淑

    山本(正)政府委員 これはどういうふうな角度から考えるかということでございますが、端的には、やはり公的年金制度であります厚生年金内容の充実が、昭和二十九年に現行制度になりましてから、賃金水準あるいは生活水準というものが急速に上昇しておるにもかかわらず、厚生年金の大幅な給付改善ということが行なわれてなかったという意味におきましては、そういった関連があるわけでございます。
  150. 吉村吉雄

    ○吉村委員 厚生年金制度というものがもし内容が充実をしておれば、私は企業年金というものはこんなに普及しなくて済んだと思う。あなたの先ほど答弁を裏返しすればそういうことになるわけです。そうしますると、企業年金制度というものがこんな状態に普及をしてきた、それが普及をすればするほど、厚生省が統括するところの厚生年金制度というものの内容充実に対する無意というものが資本家の側で欠けてくる、こういうところに、あなた方が統括する厚年の充実というものができ得ないような条件が生まれてくるのでこういうことになるだろうと思うのですけれども、そうなってまいりますと、私は、この調整年金制度をここの時期で採用しなければならなくなったところの最大の政治的な責任というものは厚生省にあると思う。厚生省がもし厚年というものの内容充実に本気になって、もっと以前から取っ組んでおって、厚年の充実というものが労働者全体あるいは資本家全体から期待をされるという状態がもっと前から生まれておったとするならば、いまこのような調年の問題というものは生まれなくて済んだはずだと思う。ところが、所得保障制度というものの内容を充実していく責任を持っているところの厚生省が、そういうことに対して怠慢であった。怠慢であったから、企業家はどんどんと労務政策上その企業年金というものを制度化してきた。こうなってくると、両方のお金の負担というものができ得ないということが生まれてきた。だから調整年金制度というものが必要になった。こういう三段論法になってくるとするならば、事ここに至るところの最大の原因というものは、やはり厚生年金制度がきわめて内容が劣悪があったというところに問題がある。劣悪に放置しておった原因は一体何なんだ、これは厚生省の責任ではないか、きわめて大きな政治的な責任だと私は思う。調整年金制度についてこれほど該当の労働者が反対をし、そうして大きな問題になって、厚生省は、所得保障制度の中におけるところの厚年の問題については、労働者生活の将来の保障という立場に立って事に当たらなければならない責任があったはずである。だとするならば、いままでのやり方、今日の混乱の責任というものはむしろ厚生省自体にある、こういうふうに考えざるを得ないと思うのですけれども、どうですか。これは大臣答弁を願いたい。
  151. 神田博

    神田国務大臣 厚年法の改正が十分でなかったために調整年金をしなければならぬ、この責任は厚生省にあるのではないかというようなお尋ねでございましたが、これは私は考え方じゃないかと思います。そういう見方も一つの見方だと私は率直に認めます。しかし同時に、厚年法の改正がおくれたということは、やはりそれなりの理屈があると私は思います。ということは、日本企業が全都そろって伸びておりますれば、これは私はわりあいに厚年法の改正も楽であり、また、いまのような企業年金考え方も、そういった問題も数がふえなかったと思います。企業のアンバランスと申しましょうか、大、中、小あるいは零細等の企業があることは御承知のとおりでございまして、まあ大企業が異常な伸び方をした。そこでそういう退職金を年金化したというような問題、そこで厚生年金は、早いに越したことはございませんが、多小おくれたためにそういう問題が起きたという事実は私は認めますが、だから非常に悪いんだというふうに見るのは、私は議論があるんじゃないかと思います。私は、どちらかといいますと、私の個人の考えを申し上げると、厚生年金一本がいいと思っております。しかし、これは今日そういうことを申し上げることはいかがかと思いますから、このことばは取りやめますが、退職金が年金化して、そうして調整をはかったということも、ちゃんと労使が一致して、そうしてそういう制度をしきたいという場合に私は認めようということでございまして、やはり私は本則は厚生年金一本だと、こう考えております。最近特に企業の倒産等の例を見ましても、年金制度というものはやっぱり国が責任を持って、そうして手厚い保護をすべきものであって、それに加えるものがあるからこれはいいとか悪いとかいう問題ではないんじゃないか、こう私は考えております。年金関係としては、私は個人の考えを申し上げれば、一本で十分なものをやるということが筋だと思います。ただ、そのことが、いま吉村委員がおっしゃったように、どうもおくれたからそういうことになったのじゃないか、これは一つの見方だと思います。決して私はその見方が誤っておるという考えは持っておりません。それはやはり一つの有力な見方だと思っております。しかし、だからといって、厚年にはやっぱり厚年の手がけなければならぬ段取りがございまして、そういうアンバランスが一つあったのじゃないか、こう考えております。しかし、それは悪いことかといえば、つくられた制度でございますから、必ずしも悪いときめつけるのもいかがか、こういうふうに感じております。
  152. 吉村吉雄

    ○吉村委員 厚年一本のほうがいいということをいま言われましたけれども、それは取りやめるみたいな話もしましたけれども、取りやめる必要はないのですよ。そういうことに対しては、私は厚生大臣が職権を大いに使ってもらわなければならぬと思う。ところが、審議会の答申というものが川ないような医療費の問題等について、あなたは職権告示みたいなことをする。そういうときに職権というものを非常に乱用するから、いまのような事態になってくる。今度の調整年金の問題については、慎重に扱いなさいという答申が出ているのですよ。しかも大臣のいまの見解からするならば、厚年一本でやることのほうが正しいという見解を表明しておる。だとするならば、私は、この調年の制度というものをこの改正の時期に取り上げるということは、いまのあなたの答弁からするならば矛盾撞着もはなはだしいということになる。もしいまのあなたの答弁というものがうそだとするならば別ですよ。ほんとうだとするならば、そうおれは思っていたんだけれども、非常にその考え方というものを押し通すことができなかったという他動的な原因というものがあったと見なければならない、このようになると思うのです。私は、そういう点をたいへん問題にしなければならないと思っています。  実は七時までとかなんとか言っていますから、これは根本的な問題ですからもっと議論をしたいのですが、やむを得ないからはしょらざるを得ないのです。この問題については、あなた方の根本的な理解のしかたというものは、労働者保護の立場に立ったところの考え方ではない。もし労働者保護の立場に立ってこの所得保障制度というものを考えるとするならば、労働者が納得するまでこれは議論をしてしかるべき問題だ。ところが、調整年金制度というものを必要とするというのは、労働者に対立をする状態にあるところの資本家側だけの意見だったのです。そうでしょう。そういうものを、しかもあなたのいまの答弁からするならば、厚年一本でよかったとすら言っておる。だとするならば、私は先ほど含みのあるような表現をしましたけれども、あなたがそういう考え方を持っていても、なお調年制度というものを今度の改正に取り入れなければならなかったということは、資本家側の意向というものがあったからだということを裏書きしているにすぎない、こういうことになるでしょう。こういうような考え方でこの制度というものを改変するという立場は、これは厚生省という労働者国民全体の生活を守っていく立場の人のとるべき策ではないだろうと私は思うのです。もしそれがどうしても意見が合致をしないとするならば、審議会の答申どおり、いましばらく検討の時期を置くとかなんとかいうことは、あなたの裁量からすれば当然できたはずだと思うのですけれども、そういうことをしないところに根本的な誤りがあるというふうに、私はこの際申し上げておかなければならない。同時に、厚年制度というものが充実さえしておれば、こんな問題は起こらなくて済んだはずなんですよ。この調整年金制度ができたり、あるいは企業年金制度というものがいまある状態、これはどういうことかというと、先ほど大臣は非常に矛盾した答弁をしておるのですけれども、経済の成長に従って大企業が伸びた、こういうことが原因だなどという話をしましたけれども、だとするならば、なおさら中小企業、零細企業労働者の保護の立場に立って、厚生省というものは事に当たらなければならないはずなんです。そうでしょう。そういうことをやっていないのだから、あなた方のやり方というものは、私はやはり間違っておるというふうに言わざるを得ない。しかもこの厚年制度の問題については、確かに昭和三十九年ですか、これが改正の時期ではあったはずです。しかし国会における議論というものをずっと見てまいりますと、厚生年金年金額というものはきわめて劣悪であるということが世上問題になって、厚生省としては、三十九年にならなくてもこの点については改正をいたしますということを国会で再三答弁をしています。そういう状態から考えてみますると、この厚生年金制度というものの充実のために積極的な姿勢を示さなかったところに、いまこのように混血する最大の原因がある。こういう点については、当時厚生大臣ではなかったわけですけれども厚生省全体として、私は大きな責任を感じてもらわなければ困るということをこの問題については強調して、あとは、具体的な幾つかの問題については同僚議員が触れましたから、多くを申し上げません。  その次は、これも基本的な問題だけお尋ねしておきますけれども、基金制度ができるということになりますと、基金を発足せしむるかどうかということは、法案内容によりますと、被保険者といいますか、従業員の過半数の同意を得て発足せしめることができる、こういうふうになっております。そこでお尋ねをしたいのは、この退職金制度というものは、一体労働条件というふうにあなた方は理解をされておりますか、この労働条件という意味は、労働基準法上あるいは労働組合法上の労働条件というふうに、退職金というものは理解をしておりますか。
  153. 山本正淑

    山本(正)政府委員 団体交渉によってきめるべき性質のものであると考えております。
  154. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私の尋ねておるのは、退職金制度のあり方をどうこうしようということは、労働組合法上、労働基準法上の労働条件であるかどうかということです。あなたのいまの答弁は、団体交渉によってきめる、こういう答弁ですけれども、だとするならば、基準法上、組合法上の労働条件というふうに理解をしていいのですね、いまの答弁は。
  155. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御説のとおりでございます。
  156. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そうしますると、企業年金というものは退職金の変形の形できたという、こういうふうに説明をされておりますけれども企業年金については、あなた方は、いま私が退職金について質問したことに対してと同じような意味で、どう理解をされますか。
  157. 山本正淑

    山本(正)政府委員 企業年金はどういったような性格のものであるかということは、企業年金の性格、実態によると思います。退職金というものは退職金としてありまして、そうしてそれと別個に企業年金という性格のものもありますれば、また一部はそういったものであり、かつまた一部は退職金の年金化したものであるといったような性格のものもありましょうし、企業年金自体にはいろいろの種類のものがある、かように考えております。
  158. 吉村吉雄

    ○吉村委員 企業年金というものが急速にここ二、三年で普及をしてきたということは、どういう歴史的な経緯を経てきておるかということについては局長も御存じのとおりだと思います。退職金の年金化という経過、過程を経て企業年金制度というものが非常に普及をしてきた。あるいは税法上の特典というものもあったでしょうけれども、いずれにしましても企業年金制度を持っておる。そのほかに退職金制度を持っておる。こういうところもありますけれども、この企業年金の発展過程というものを考えてみますると、退職金の年金化という過程を経てきておる。このように私は理解をしておるのですが、この理解は間違っていますか。
  159. 山本正淑

    山本(正)政府委員 先生がいまおっしゃられましたような要素のものもあるわけでございますが、現在の税制適格年金を見てまいりますと、月額にいたしましてあるいは千円だとか二千円だとか、そういった税制適格年金もあるわけでございまして、そういったものがはたして退職金の年金化したものであるかどうかという点には疑問を持っております。
  160. 吉村吉雄

    ○吉村委員 もっとすなおに聞いてもらいたいのですけれども企業年金というものが普及をしてきた、あるいは適格年金というものがどんどん普及をしてきたということの経過を振り返ってみますと、退職金というものは一時にお金が出るというようなことから、これを年金化していったほうがいいのではないかという思想が使用者の中に生まれてきた。そのことは、労務政策の観点からもそういうことが当然にして生まれてきたわけです。これを否定するわけにはいかないと思います。だとしますならば、時間がありませんからあまりやりとりはしませんけれども、そのような形で発展をしてきた企業年金制度というものは、いまの実態から考えてみましても、それをどういうふうに内容を改めるかというような事柄についても、労使の交渉の中で行なわれているという例が非常に多い。これは否定できないでしょう。
  161. 山本正淑

    山本(正)政府委員 おっしゃるとおりであります。
  162. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そこで、これもはしょらざるを得ません。  そこで、今度の調整年金制度というものは、現在そういう歴史的な過程を経て存在するところの企業年金というものと厚生年金の報酬比例の分というものを調整するということになるわけです。だとしますると、この内容をどうするかということは、本来の意味で言うならば、私は、労働者の労働条件でなくてはならない、こういうふうに言わざるを得ないと思う。ところが原案によりますと、これがそういうものにとらえられていない。従業員の過半数によってこれを発足せしめるかどうかという形になっておる。この点については与党のほうともいろいろ話をしておりますけれども、しかし、この原案考え方のとらえ方というものは、労働者の労働条件的なとらえ方をしていないということは根本的に誤りであると思うのですが、どうですか。
  163. 山本正淑

    山本(正)政府委員 その点につきましては、審議会等の経過におきましてもいろいろ論議のあったところでございまして、先ほど私が申し上げましたように、退職金の年金化したものもあればそうでないものもあるわけでございまして、全額事業主負担によって別個の年金としてのものもあるわけでございます。そういう意味におきまして「被保険者の二分の一」、法律上はそういう表現を使っておりますが、現実に労働組合の意見があって、そして労働組合が反対である場合には認可の際に認可しない方針でいくという方向で考えておる次第でございます。
  164. 吉村吉雄

    ○吉村委員 時間がなくなったので、いまの答弁も私はきわめて不満です。問題のとらえ方が、第一、根本的に間違っておるという意味で非常に不満です。それは行政指導とかなんとかいう問題ではなくて、労働者の労働条件というものを国がどういうふうにとらえるかという意味での考え方は、私は非常に不満だということを申し上げておきますが、それに基づいての代議員会の代議員の選出とかあるいは理事の選出、こういうものは、今後の運営にあたって私はたいへん問題が生ずると思うのです。使用者が選ぶところの代議員あるいは理事、あるいは加入員が選ぶところの代議員あるいは理事、こういうものは同じ事業所労働者というものを二分する形を招来する危険性を持つのです。ですから、これは作文上の問題よりも実体論としてはそうなってくる可能性があるので、もっとこの点を私は議論したかったのですけれども、時間の制約がありますから、これは他日に譲っても——また与野党の折衝ではよくなっているような情報もありますから、これは他日に譲ることにいたします。  最後にお尋ねしたいのは、今回の改正で、旧令共済の組合員であった者についてはその期間の年金受給資格を通算すれば年金がつく、こういう人については期間を通算するというふうに改正になろうとしております。それで私は他の制度内容を調べてみましたら、地方公務員、国家公務員、公企体の共済、これらについては今度の改正内容、旧令共済はもとよりでありますけれども、旧軍人期間の通算というものも行なわれておる、こういうふうになっております。だとしまするならば、今度の改正で、私は、旧令共済の期間を通算するというところまで進んだとするならば、他の共済と同じように、軍人期間についても当然それは通算の対象にするということなくしては、どうも根本的な解決にならぬじゃないかというように考えておるのですけれども、これはどうでしょう。
  165. 山本正淑

    山本(正)政府委員 旧軍人の期間も厚生年金の期間に通算するという問題は非常に重大な問題でございまして、もちろん今回の改正に際しましても、そういった問題について議論を重ねたところでございます。ただ、確かにおっしゃるとおり共済組合におきましてはそういった措置が講ぜられておりますが、厚生年金におきまして旧軍人期間を通算するということは、従来は厚生年金の通算年金ができていませんでしたので、脱退手当金をもらって脱退した者については、そのまま年金期間というものは消えておるわけでございます。こういった、本来厚生年金の被保険者であった期間についての脱退手当金をもらって消えたという期間をどうするかという問題も、重要な問題として起こってくるわけでございまして、旧軍人といたしましては、それまでは厚生年金の被保険者と何ら関係のなかった期間になる人もあるわけでございます。そういうふうな観点におきまして、総合的にさらに検討を要する問題である。簡単に旧軍人の期間を算入した、その部分は国庫負担するというようなことならば問題の解決は簡単でございますけれども、やはり費用負担を伴う問題であり、そういった意味におきまして、従来脱退手当金をもらって期間を消しておるといった人の扱い等をも含めましてさらに将来検討いたしたい、かような考えでございます。
  166. 吉村吉雄

    ○吉村委員 これもはしょらざるを得ないのですけれども、私は、こういった所得保障制度というのは、その職域とか地域によって異なったところの待遇、給付、こういうものをつくるようなことをなるたけ少なくしていくということが必要だと思うのです。ところが、国公、地公、公共企業作の共済組合では、一たん脱退をした者については、脱退一瞬金をもらって脱退した者についても旧期間というものを通算する措置を講じているほか、旧軍人の期間についても、これを通算することによって年金受給ができるとするならば、これを通算できるというふうにしてあるのです。ところが、これは官公庁の場合にそうであって、民間の場合にはそうできないという理屈はない。吉のものの考え方であるならば、官尊民卑のものの考え方でしたからそれでよかったかもしれません。しかし、国民年金の今日の状態においては、農民の出身だからとか、民間の企業に働いておったからといって、官公の労働者と違う取り扱いをしなければならないという理屈はどこにもないと思うのです。だから、それはそれぞれの他の共済組合のほうではそういう整理資源まで含めて通算をしておるのですから、厚年の場合といえども、民間企業に働いたそういう人たちについては、できるだけ恩典ある措置を講じていく、同時にそれが制度間の均衡ということに合致をしていく、こういうことにならなければならないはずだと思いますので、これまた時間がありませんから、私の意見は強調しておくにとどめますけれども、十分これは検討していただきたい、このように要望をしておきます。  以上で終わります。
  167. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる五月七日、金曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後七時十一分散会