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1965-04-27 第48回国会 衆議院 社会労働委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十七日(火曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君    理事 河野  正君 理事 八木  昇君    理事 吉村 吉雄君       伊東 正義君    熊谷 義雄君       坂村 吉正君    田中 正巳君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       橋本龍太郎君    松山千惠子君       粟山  秀君    山村新治郎君       伊藤よし子君    小林  進君       滝井 義高君    八木 一男君       山口シヅエ君    山田 耻目君       本島百合子君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君  出席政府委員         大蔵事務官   佐竹  浩君         (理財局長)         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君  委員外出席者         議     員 八木 一男君         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      竹内 道雄君         専  門  員 安中 忠雄君     ――――――――――――― 四月二十四日  一酸化炭素中毒症に関する特別措置法案(阿具  根登君外一名提出参法第一四号)(予) 同月二十六日  家内労働法案八木昇君外十二名提出衆法第  三一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  厚生年金保険法の一部を改正する法律案八木  一男君外三名提出衆法第二六号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第二号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第三号)      ――――◇―――――
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これより会議を開きます。  八木一男君外三名提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。
  3. 松澤雄藏

    松澤委員長 提出者より提案理由説明を聴取いたします。八木一男君。
  4. 八木一男

    八木(一)議員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題と相なりましたわが党提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由並びに内容の大綱につき御説明を申し上げます。  社会保障制度発展、確立は近代国家趨勢であり、その要件であります。わが国はその経済力に関しては世界有数の域まで達しておりながら、社会保障制度に関してはその制度に欠陥が多く、その内容が不十分であり、総体的に見てきわめて不完全なものであることははなはだ遺憾であり、憲法第二十五条第二項の義務を全うしていない歴代の保守政権の責任はきびしく追及されなければならないと信じます。  ことにその傾向は、所得保障制度、なかんずく老齢を主軸とする年金制度に濃厚であり、その中核であるべき厚生年金制度は全く不完全なものであります。その欠点は数多くありますが、そのうち重要な諸点をあげてみますと、第一に、年金額がきわめて貧弱で、現在支給されている年金額平均は、現在の低水準生活保護一級地の一人当たり平均額より下回る状態であり、所得保障としての機能をほとんど果たしておらないことであり、第二に、国庫負担がきわめて少なく、その他の部分積み立て金方式をたてまえとし、かつ労使折半負担であるため、給付の低額であるのにかかわらず労働者負担が過重になっていることであります。第三に、スライド制が確立していないため、物価変動によりこの制度を通じて実際上の収奪が行なわれていることであり、第四に、五人未満事業所労働者日雇い労働者が適用されておらず、最も所得保障必要度の多い人たちが、労働者でありながらきわめて低水準国民年金制度の中に放置されていることであり、第五に、その積み立て金管理運用について労働者が関与できず、労働者福祉のために運用されいる部分は九牛の一毛にしかすぎないことであります。  このような諸欠点をなくし、本制度を真の所得保障制度とするよう改正することの緊要なことにかんがみ、わが党は本改正案提出いたした次第でございます。  まず第一に、年金額については、今日までの急速な経済成長生活水準向上物価上昇の実態に即し、人口老齢化趨勢を体して、労働者の老後の健康で文化的な生活保障するに足る老齢年金として、平均月額平均標準報酬二万五千円、被保険者期間二十年の場合)一万六千円(同じく四十年の場合月額三万二千円)年金実現をいたそうとするものであります。  第二に、国庫負担率を二倍に引き上げ(第一種保険者の場合現行一割五分を三割に)、さらに積み立て金方式を修正し、賦課方式をさらに多く取り入れることにより、給付額増大に対する保険料引き上げ最小限度にとどめ、さらに現行保険料労使折半負担を改め、使用主七割、労働者三割とすることによって、低賃金物価高に悩む労働者保険料引き上げることなしにこの年金額引き上げを実行しようとするものであります。  第三に、スライド規定物価並びに消費支出水準の両面につき明確に規定し、物価変動による労働者の実質上の損失をなくし、かつ生産力増大による国民的配分増加老齢者を中心とする年金受給者に及ぼそうとするものであります。  第四に、五人未満事業所について直ちに強制適用とし、日雇い労働者厚生年金制度適用についてはすみやかに検討、別に法律の定めるところにより実施されるべきものとしようとするものであります。  さらに、積み立て金については、わが党は本来労働者のものであるとの見解に立ち、その管理の方法を変え、その運用については、労働者代表を過半数の委員とし、残りを学識経験者関係官庁代表者をもって構成された強力な権能を持つ審議会において方向を決定し、主として労働者福祉のために活用せられるべきものであるとの見地に立っているものでありまして、右に関しては別の法律案提出いたすことを考えておりますことを明らかにいたしておきたいと存じます。  以下、さらに具体的に本法案のおもな内容について、すでに本国会提出を見ております内閣提出の同名の法案と対比しつつ、御説明を申し上げたいと存じます。  第一に、基本年金額引き上げについてであります。まず定額部分につきましては、現行月額二千円を八千円(政府案では五千円)に引き上げ、さらに被保険者期間二十年以降は一年につき四百円(政府案は二百五十円、加算は三十年まで)を加算することとし、これによって三十年では月額一万二千円(政府案七千五百円)、四十年では月額一万六千円(政府案三十年と同じく七千五百円)となるようにいたしております。  また、報酬比例部分については、現行平均標準報酬月額に被保険者期間一月当たり乗ずる率千分の六を千分の十六(政府案千分の十)に引き上げることといたしております。  第二に、老齢年金支給につきまして、受給期間を満たしている者で受給年齢(第一積、第四種六十歳、第二種、第三種五十五歳)に達した者には、被保険者であっても老齢年金支給することにいたしております。政府案では六十五歳以後老齢年金額の八割を支給しようとするものであり、在職中年金支給に関しても本案のほうが完全になっております。  第三に、繰り上げ減額年金制度並びに繰り下げ増額年金制度については、すみやかに検討された上、別に法律の定めるところにより実施されるべきものといたしております。政府案においては、前者につき同様の内容がございますが、後者についてはございません。  第四に、障害年金及び障害手当金の額の引き上げについてであります。一級障害年金につきましては、現行基本年金額月額千円を加算する方式を改め、基本年金額の百分の、戸二十五相当額引き上げ、三級障害年金につきましては、現行基本年金額の百分の七十を百分の七十五に引き上げるほか、さらに月額八千円(政府案では五千円)の最低保障を設けることとし、また障害手当金につきましては、現行基本年金額の百分の百四十を百分を百分の百五十に引き上げることにいたしております。  第五に、遺族年金につきましては、妻についての年齢制限及び若年停止を撤廃し、さらに年金額については月額八千円(政府案では五千円)低保障を設けたことであります。  第六に、任意継続保険者について、新たに被保険者期間中の事故に基づく障害年金障害手当金及び遺族年金支給することとしたことであります。  第七に、スライド制に関してであります。年金額については、総理府統計局において作成する毎年の家計調査年報における消費支出総額年平均または総理府統計局において作成する毎年の消費者物価指数年平均が、年金額が定められた年の前々年に比して一割以上の変動があった場合は、遅滞なく改定されなければならないといたしてあります。政府案は、わが党案年金額改定という明確な表題に対して、年金額調整という字句を用い、かつ、その内容に関しては、わが党案ごとく放置怠慢が絶対に許されない明確な表現とは異なり、行政解釈によってスライド実施が放置される危険性を多分に含んだものであります。  第八に、標準報酬につきましては、最近の賃金水準の実情に即し、現行の三千円から三万六千円までの二十等級を、七千円から十万円(政府案六万円)までの三十二等級政府案二十三等級)に改めたことであります。  第九に、国庫負担率改定であります。現行法第八十条第一項に規定されている保険給付に対する国庫負担の率をおのおの倍にしようとするものでありまして、一例をあげれば、その第二号に規定される最も一般的の場合の国庫負担率が一五%でありますのを三〇%にしようとするものであります。政府案においてはこの国庫負担増率を含んでおらないわけであります。  第十に、保険料率についてであります。本案給付大幅改善は、国庫負担大幅増額を同時に行なうものでありますが、それとともに、従来の修正積み立て方式に対し、大幅に賦課方式を取り入れ、保険料引き上げ最小限度にいたしたいと考え、第一種保険者一般男子)については現行の千分の三十五を千分の五十八に、第二種被保険者(女子)については現行の千分の三十を千分の四十四に、第三種保険者坑内夫)については現行の千分の四十二を七十二に、第四種被保険者任意継続保険者)については現行の千分の三十五を千分の五十八にそれぞれ引き上げることにいたしますが、保険料労使負担割合について現行使用主五割、労働者五割でありますのを、使用主七割、労働者三割と改めますもので、労働者保険料現行とほとんど同じ割合に相なるわけであります。たとえば第一種保険者の場合、現行法では労働者保険料が千分の三十五の五割、すなわち千分の十七・五であるのに対し、本案では千分の五十八の三割、すなわち千分の十七・四に相なります。  さらに、五人未満の被保険者を使用する事業主については、その保険料負担分の七分の二を免除することとしております。  政府案においては、給付金額増額本案よりはるかに少ないわけでありますが、国庫負担増率並び賦課方式大幅導入に踏み切っておらないため、本案と同率の保険料引き上げ内容であり、労使保険料負担区分変更をいたしておりませんため低賃金、高物価に悩む労働者に約七割増の保険料値上げをすることに相なるわけであり、さらに五年ごと料率引き上げを予定いたしておるわけであります。  第十一に、既裁定年金引き上げについてであります。現に支給中の年金所得保障趣旨から見て著しく低水準にあるところから、既裁定年金につきましても今回の改正方式を適用いたし、改正後の計算例によってこれらの年金額を大幅に引き上げることといたしております。  第十二に、旧陸海軍工廠の工員などの旧令共済組合員であった期間厚生年金の被保険者期間に算入し、通算老齢年金に準じた特例老齢年金支給することとしたことであります。  以上で本案内容の主要な項目の御説明を終わるわけでございますが、対比して御説明をいたしました政府案にはいわゆる調整年金制度の諸規定がございますが、本案にはございませんことを明確にいたしておく次第でございます。  政府案にございます民間企業年金との調整制度は、所得保障制度の根幹をなすべき厚生年金保険の半分に当たる標準報酬比例部分民間管理に移し、所得保障の将来を大きく誤まるものであります。この制度実現によって、将来ばく大な金額に達する厚生年金保険積み立て金の約半額が信託会社または生命保険会社を通じ間接に事業主資本家事業資金として利用されることになります。この制度がなければ政府運用すべきばく大な資金がなくなることになり、さらにわが党が前々から主張いたしております本来労働者のものであるべきばく大な資金資本家の実際上の支配下に持ち去られることになり、全く不当なことであると考えるものであります。この調整制度実現をいたしますと、事業主事業資金借り受けの利益を得るため企業年金の創設に異常な関心を示すことになり、その結果、現在労働者の具体的に必要としている退職一時金制度が圧迫される結果を招来し、さらに全額使用主負担である退職一時金が労使負担をたてまえとする企業年金に代替されることになって、労働者負担増加という結果を招来することが憂えられております。また、企業年金制度労働者の権利を抑圧する労務管理の目的のため悪用されるおそれがあり、さらに年金給付の格差が増大し、年金保障拡大への意思が分断され、厚生年金全体の発展が阻害され、さらに将来の大きな課題である公的年金制度の一元化がますます困難になるわけであります。  わが党案がこの調整制度のような公的年金方向を大きく誤るものを含まず、純粋に厚生年金制度ほんとう所得保障への道を進めようとするものでありますことをぜひ御理解をいただき、熱心に御審議の上、すみやかに満場一致御可決くださることをお願いを申し上げまして、御説明を終わる次第であります。      ――――◇―――――
  5. 松澤雄藏

    松澤委員長 次に、内閣提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  6. 滝井義高

    滝井委員 先日、厚生年金審議にあたって、労使公益、それぞれ意見一致を見た四つ問題点について質問をいたしました。それは定額分引き上げスライド制料率国庫負担、これらのものについて御質問申し上げたのですが、神田厚生大臣はその四つ意見一致を見たものだということでしたが、実はもう一つ意見一致を見たものがあるわけです。それが落ちております。それは資金管理運用でございます。これは政府もお認めになるでしょうね。
  7. 山本正淑

    山本(正)政府委員 積み立て金運用方式改善という項目が入っておりまして、五項目でございます。
  8. 滝井義高

    滝井委員 したがって、資金管理運用の面については、労使公益意見一致を見ておる問題でございます。  この際、あらためて委員長お願いをいたしておきたいのは、先日の私の質問の中で、日本年金制度あり方に対する見解あるいはスライドに対する最終的な処置のしかた、こういうものについては、一厚生大臣だけでは明確な答弁ができなかったわけです。そこで大蔵大臣なり総理の出席を要求しておいたわけですが、きょうは予算委員会があるからできませんが、機会をあらためて、理再会で御相談になって、重要な問題でございますから、ぜひひとつ御出席を要求していただきたいと思います。  そこで、きょうは、残っております資金管理運用の問題、それから労使それぞれ鋭く意見の対立をいたしました調整年金の問題、二点について、できるだけ要点を集約して御質問を申し上げたいと思います。なお、時間があれば逐条的なことに入るのですが、この年金の問題は、勉強すればするほど、今回の政府案というものは非常に多くの疑問をはらんでおります。したがって十分ひとつ時間を与えていただいて、五年に一回の歴史的な大改正でございますから、与党も周章ろうばいをすることなく、十分腰を落ちつけて審議をしていただきたい。それが民主的な国会あり方だと思います。われわれは、場合によっては連休をやることもやぶさかでないですから、審議をすることが重点で、休むことが重点ではない。通すことが重点でなくして、やはり不明な点を十分解明することが問題ですから、そこで意見一致を見て、厚生大臣がそのことを忘れておりました資金管理運用について御質問申し上げます。  まず第一に、昭和三十九年末における積み立て金の現状は、一体どうなっておるのかということでございます。すみやかに大蔵省理財局を呼んでおいていただきたい。きょうは大臣の要求はしておりませんから、役所だけは誠意を持って来ていただきたいと思います。
  9. 山本正淑

    山本(正)政府委員 厚生年金積み立て金の現在高でございますが、昭和三十九年十二月末現在におきまして一兆百四億円でございます。これが一番新しい数字でございます。
  10. 滝井義高

    滝井委員 三十九年十二月末で一兆百四億円、そうすると、今度の法律改正によって四十年度末には幾らになりますか。――それではこの質問はあとに関連してきますから、すぐ事務当局で手分けして調べておいてください。それは一兆四千幾らくらいになると思います。ひとつ末端までの数字を明らかにしておいていただきたい。  そうしますと、厚生年金の収支の状況です。三十七年の実績によりますと、収入が千六百六十六億円。私が質問をしたいのは、千六百六十六億円の中で一体保険料収入幾らで、運用収入幾らで、その他の収入幾らか。これは三十七年はわかります。三十七年は、違っておったら違っておると言うてください。千六百六十六億の中で保険料収入が七割四分、それから運用収入が二割四分、その他が二分、支出は百五十億で、給付が九四%、その他六%、こうなっておるのです。これは厚生白書に書いてあります。それがほんとうかどうかわかりませんが、私が知りたいのは、厚生白書は三十七年までしか出ていないのです。三十八年、三十九年、四十年度の見込みは、収入支出というものはわかっておるわけですから、その収入保険料収入運用収入、その他、それから支出のほうは、百五十億という額がどの程度にずっと増加をしてくるか、これが知りたいわけです。まずその実績の三十七年度は千六百六十六億が、いま私の読んだようなことで間違いないか。三十八年、三十九年の状態は一体どうなのか。
  11. 山本正淑

    山本(正)政府委員 三十八年から申し上げますが、三十八年では、決算額保険料収入が千四百十四億でございます。それから運用収入が五百二億でございます。その他一般会計よりの受け入れ等、合計いたしまして、収入合計が千九百四十二億でございます。それから給付費のほうは百八十九億でございます。  それから三十九年では、これはまだ決算はいたしておりませんで、予算額でございますが、保険料収入が千七百八十九億でございます。運用収入が六百二十億、それから国庫負担等、合計いたしまして、歳入合計が二千四百三十九億でございます。それから歳出のほうは、保険給付費が百八十六億、その他合計いたしまして、歳出合計が二百二十一億でございます。  四十年度の予算でございますが、これは法律改正を五月から実施を見込んでおりまして、保険料収入が三千四十九億、それから運用収入が七百八十七億でございます。国庫負担等、合計いたしまして、歳入合計が三千八百九十三億でございます。それから歳出のほうは、保険給付費が三百七十七億でございまして、その他含めまして、歳出合計で四百三十九億と相なっております。
  12. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この厚生年金国民年金の現在の一万円年金ができたままでいきますと、ピーク時には一体幾らになりますか。
  13. 山本正淑

    山本(正)政府委員 ただいま手持ち資料厚年だけでございますので……。いま先生の御質問は、積み立て金ピーク幾らになるかということでございますか。――昭和百年で三十四兆八千億でございます。
  14. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それは支払いがあるから、支払いも差し引いてそうなるのですか。
  15. 山本正淑

    山本(正)政府委員 もう少し詳細に申し上げますと、昭和百年で保険料収入が七千二百七十億、利子収入が一兆八千六百三十三億、国庫負担が四千五百八十七億でございます。そして合計いたしまして、収入が三兆四百九十億、これが保険給付費の一年間の総額でございます。そして積み立て金の残といいますか、積み立て金総額が三十四兆八千九十四億円、かようになっております。この積み立て金利子がいま申しました一兆八千六百三十三億、かように相なっております。
  16. 滝井義高

    滝井委員 これで四十年度末の積み立て金がわからないだけで、三十九年度末一兆百四億円、その後における収入支出の大体の実績予算がわかってきたわけです。これだけの基礎数字がわかりますと、初めて本論の積み立て金運用に入ることになる。   〔委員長退席小沢(辰)委員長代理着席〕 今回の改正は、平準保険料率をとらずに、暫定保険料率をとっておるわけです。したがって、この暫定保険料率をとる限りにおいては、法律の八十一条の四をごらんになると、八十一条の四で「保険料率は、保険給付に要する費用予想額並び予定運用収入及び国庫負担の額に照らし、将来にわたって、財政の均衡を保つことができるものでなければならず、且つ、少くとも五年ごとに、この基準に従って再計算されるべきものとする。」こういうようになっているわけです。そこで、保険給付に要する費用予想額がまず問題、予定運用収入が問題、国庫負担という三要素があるわけです。この中で私がいま御質問を申し上げようとする点は、積み立て金運用の問題です。この運用の問題については、これを別に区分をして運用心なさいという点については労、使、公益、三者みんな意見一致を見ているのですが、その区分管理については、政府ほおぶりをして何も言っておらぬわけです。これは一体どういうことになるのかということです。いま神田厚生大臣は、医療費問題で答申を間違ってたいへんな大やけどをしておるわけです。諸葛孔明秋風五丈原じゃないけれども、神田厚生大臣の病があついということを、きょうの朝日の天声人語の中にも書いておる。私もそうだと思う。秋風索莫まさに丞相病あつい状態です。また大事な年金でこういうことをやる、一番大事なところを。区分管理をしなさいと言うのに、区分管理をせずに、ほおぶりでいっておるのです。これは特別勘定でやりなさいということだったはずなんです。それを力で押しつけて、やっていないので。一体厚生省はこれにどう対処し、大蔵省は一体こういう答申をどういうように見ているのか。またこういうやけどをしたいのかということです。
  17. 山本正淑

    山本(正)政府委員 ただいまの御質問にお答えをいたします前に、先ほどの四十年度末の積み立て金予想額を申し上げておきます。厚生年金でございますが、一兆四千九百七億円の見込みでございます。  そこで、積み立て金管理運用につきまして、これは今回の厚生年金改正の案を審議会に諮問いたしましたときもそうでございますが、国民年金制度を創設します際に各審議会から意見が出ておりまして、ただいま御指摘のように、特別勘定の設置という御意見が出てまいっております。今回の改正に際しましても、その趣旨区分管理という点の御意見が出たことは、ただいま御指摘のとおりでございます。現在厚生年金積み立て金は、御承知のように資金運用部に預託されておりまして、そうして財投計画の中で配分されておるわけでございます。現在は、厚生年金だけでなしに全体を含めての年金資金のほか、郵便貯金等と一括されまして運用財源になっておりますが、国民年金制度ができます際に、その資金運用について厚生大臣といたしましては特別勘定の設置ということを主張してまいりまして、その結果、政府部内におきまして話し合いのついたのは、従来はやっていなかったが、使途別分類表をつくって、そしてどういう方面にどれだけ資金がいっておるということを明確にすること、並びに厚生年金積み立て金の性格にかんがみて、この資金運用する部門というものは国民生活の安定ということに重点を置く、かつまた、その毎年の資金増加のうちの二五%を還元融資に使おうという方針がきまりまして、その線で今日までまいっておる次第でございます。  今回の改正に際しまして、審議会からもいま御指摘のような意見が出てまいりまして、厚生省といたしましては、特別勘定の設置による区分管理という点を主張いたしまして、その結果政府部門で話がきまりまして、この問題は非常に重大な問題であるので資金運用審議会にかけて、そしてその意見をいただくということに相なりまして、昨年の春、資金運用審議会に特別委員会をつくって、この年金積み立て金管理運用についての意見をまとめてほしいということに相なっておりまして、ただいま資金運用審議会におきまして審議中でございます。
  18. 滝井義高

    滝井委員 山本さん、社会保険審議会は、三者とも区分管理しなさいという、これは答申はまとまらなかったけれども、その意見一致は見ておるわけでしょう。見ております。ところが、意見一致を見なかった企業年金法律に持ってきておりますよ。持ってきておるくせに、資金というものは国家的見地から運用しなければならぬということで、これは区分管理をいままでの意見ではやっていなかった。資金運用審議会意見は、そういうことをやっていなかった。ところが、今度企業年金は、国家的な見地でなく外でやらせるのでしょう。おかしいじゃないか。矛盾しておるじゃないか。いままでは、厚生年金が一本のときに、定額部分報酬比例部分が一本のときは、外に持っていってばらばらに運用してはいかぬ、国家的見地から資金運用部で一本でやらなければいかぬと言っておった政府、いわばそれは政府意見であった。ところが、調整年金なんかつくってはいけませんぞという労働者意見が強くて、意見一致を見なかったものを法律に持ってきて、しかも、いままでの政府は、資金運用管理は国家的見地から一本でなければいかぬと言っておったのに、企業年金の分については社外でやらせるわけでしょう。今度こういう矛盾だらけの法律を出しておるのです。そしてこれは多数で押し切る、これはいわゆる法治国家における民主的な運用機関を無視しておる、民主的なルールを無視しておるという法律なんです。それを私は言っておるのです。だからこれは、事務当局のあなたを責めてもしようがない。ほんとうは総理大臣を呼んでもらって私は責めなければいかぬ、大蔵大臣を責めなければいかぬところです。いままでは、われわれが二割五分をふやしなさい、特別の管理区分をつくりなさいと言っておったときに、みんなそでにしたでしょう。そでにしておって、どこか見えざる手がぴしゃっと頭をたたくと、あるいは政治資金につながっておったかもしれませんけれども、ちょっと頭を突っつかれると、いつの間にかそういうことをやってしまった。ぼくはそういうやり方がいかぬと言うのです。これは全く野党の主張を無視しておるやり方ですよ。だからこの問題は、小沢委員長代理に要求しておきます。ぜひひとつ総理を呼んでもらいたい。いままで一本で運用しなければならぬと主張しておった大蔵大臣なり総理の主張したことと、全く違ったことを今度の法律はやっております。山本さんは事務当局として、良識を持っていまの点について答えてもらいたい。事務当局としては、これは確かに違っておったのかどうか。これはあなた方事務当局の補佐が大事だから、あなた方事務当局としてはどう考えておるか。
  19. 山本正淑

    山本(正)政府委員 こういった資金運用につきましては、もちろんいろいろの観点からの意見があるわけでございますが、この年金積み立て金の性格というものからいたしまして、一面におきましては、資金の安全確実な運用ということが一つの要素でございます。それから、この資金運用というものは、保険料率あるいは給付額というものに関連する問題でございますので、できるだけ有利に運用するという要素があるわけでございます。この二つの要素を満たしながら、預託者の利益になるような還元融資という要素をかみ合わせていくという基本的な考え方に立っておるわけでございまして、そういう意味におきまして有利確実な運用ということを考えながら、この資金も毎年相当膨大な額になってまいってきておりますので、拠出者の意向というものも考えまして、明確な形においてこの資金の使途が、国民生活の安定向上といった面から見てどういうふうな面に運用されておるかという意味におきましても、この特別勘定を設置して、年金資金というものは、別途に他の資金区分して管理するのが適当であろうと私は考えておりました。私どもといたしましては、そういう方向の主張は相変わらず続けておるわけでございます。
  20. 滝井義高

    滝井委員 私が言いたいのは、いままで一元的に国家的な見地から運用すると言っておった政府が、どうして今度は企業年金を外で運用することを許しますかということです。  その前にちょっと聞いておきますが、企業年金幾ら許すのですか。今度企業年金を連結して基金をつくりますね。基金をつくったら、それは全部資金運用部に入れますか。入れないでしょう。一体幾ら資金運用部に入れるのですか。  それから大蔵省来ていますね。
  21. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 資金課長が来ております。
  22. 滝井義高

    滝井委員 資金課長じゃだめです、理財局長に来てもらわなければ……。  幾らですか、先にそれをひとつ。
  23. 山本正淑

    山本(正)政府委員 調整いたしました企業年金資金につきましては、現在の方針では、政府の報酬比例代行分の資金積み立て金、これは完全積み立てでございますが、その三分の一は財投供与をする、こういう方針に相なっております。
  24. 滝井義高

    滝井委員 三分の一は財投供与ということになると、三分の二は自主運用を許すわけですね。そうすると、三分の二については労働者の二割五分が減ることになるわけです。三分の二に対する二割五分が減ることになる。そうしますと、自主運用の三分の二の半分、すなわち三分の一は労働者運用を許しますね。これは全部労働者の金なんですよ。企業が基金に委託したら、その金は全部労働行に入るものなんで、企業に返るものじゃないのです。これは当然許すでしょうね。
  25. 山本正淑

    山本(正)政府委員 厚生年金基金、これは調整された企業年金でございますが、厚生年金基金の資金のうち、先ほど申しました財投供与というのは該当分の三分の一という方針でございます。なお、これと同様に、この資金のうちで政府がやっておりますと同じように、還元融資と同じ性質の趣旨の融資を認めていきたい、かように考えております。
  26. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その半分は許しますかというのです。御存じのとおり、いまの二割五分というのは非常にでたらめなんです。直接労働者福祉に還元することでつくったものが、そうなっていないわけですよ。これは、はなはだしきは国立病院に持っていったり――この前から言っておるように、国立病院に二割五分の還元融資のワクの中から貸すわけでしょう。あるいは一般地方債、特別地方債に持っていったりしているわけです。そういう点、非常にけしからぬことをやっておるわけです。いま日本の就業人口の六割が雇用労働者ですから、何でも時っていったら雇用労働者福祉に間接には関係がありますよ。たとえば今度は公害の事業団にまで時っていくのですから。そういうことをやれば、どこまでいったって、労働者福祉に関連するといえばやれるわけですよ。それは国立病院に待っていく、公害防止事業団に持っていく、一般地方債に持っていく、こういうようにたくさん持っていっておるわけです。特別地方債はもちろんのことです。こういうものに持っていって、労働者が自分で労働金庫を通じて労住協をつくり、住宅を建てたいと言っても、それにはちょっぴりしかいかぬわけでしょう。そういう点、非常に矛盾してきているわけです。もちろんこれは安全確実に、有利に運用しなければならぬから、だれにでも貸すわけにはいかぬけれども、それだけのうしろだてがきちっとしておれば、これは貸さなければならぬわけです。そういうことがやられていない。しかも使途別分類表なんといういいかげんなものをつくって、われわれをごまかしているわけです。あなた方もごまかされている。だからこれは厳重に特別区分をしてくれと言っても、なかなかやらない。いま三分の二は還元融資を許すというが、幾ら許すのです。三分の一、すなわち半々にするかどうかということ。これは企業年金でやれば、当然そのくらいしなければならぬわけです。
  27. 山本正淑

    山本(正)政府委員 厚生年金基金の資金につきまして、還元融資と同様の性質の融資というものをやるようにいたしていきたいと考えておりますが、その割合をどうするかという問題は、一つには全体の資金運用の利回りという問題もございますし、それから、先般来申し上げましたように、政府の代行部分にプラスアルファがついておりますので、その全体の、プランアルファのついた部分も含めてその何割といったようなきめ方をしたほうがいいか、あるいはまた代行部分ということで限定して、その何分の一といったきめ方がいいかということは、全体の利回り、採算の問題も考えましてその割合をきめていきたい、かように考えております。
  28. 滝井義高

    滝井委員 法案を通すまでに、ひとつこれをきめてもらいたいと思うのです。きめますか。こんな大事なことがペンディングの問題では通せませんよ、こういう画期的なものですからね。資金課長おりますか。あなたのほうはこれをどうするつもりか。私のほうはあなたに賛成なのです。こんなものを民間の会社にまかせることはだめなのです。あなた方はいままで一元的にやってきたのだから、いつ一体君子豹変したのかということです。そうでなければ、これは当然一元的に運用するという形に持っていかなければならぬ。しかしそれを民間にやらせるというならば、その中で自主運用を許すならば最低半々ですよ、これは実際は全部労働者のものになるんだから。それを会社の設備投資とか運転資金なんかにこれを使おうとするからこそ、こんな企業年金をつくるのです。そういう高い戦略戦術をもってつくっておるのだから、やはりわれわれもそういう戦略戦術を持たなければならぬ。すなわち半分半分だ、これは最低のつつましやかな、謙虚な要求だと思うのです。大蔵省見解をひとつ。もうこちらは、還元融資をやりますということを明らかにしているのです。しかし、どのくらいするかということは言っていない。そこでわれわれは、最低の線は半々です、そういうことさえ通らぬというなら、この法案は必要ないのです。   〔小沢(辰)委員長代理退席、井村委員長代理着席
  29. 竹内道雄

    竹内説明員 ただいま山本年金局長からお話がございました調整年金の三分の一について財投協力をしてもらうことになっておりますということ、そのとおりでございますが、基本的には、私どもといたしましては、調整年金積み立て金のうち厚生代行部分については、本来ならば全額資金運用部に預託されるということが一番望ましいことだとは考えておるわけでございます。ただ、利回りの問題その他の関係から、当面三分の一だけを財投協力をしてもらうということになっておるわけでございます。残りの三分の二の問題でございますが、御承知のように、積み立て金運用につきましては、信託契約または保険契約を結んで、そして運用するということになっておりますので、それがいかように運用されるかは、信託会社なり何なりとの契約の内容いかんによることだと存じております。
  30. 滝井義高

    滝井委員 そういうあいまいなことでは、ぼくらはこの法案審議はできません。これは労働者の金になるのですから、運営をやって――契約を結ぶのは会社が結ぶ、会社が結んでおって、労働者意見がそこに反映しないようなことでは困るのです。だからわれわれは、国会でこれははっきりしておきたい。一体三分の二のうち半分やれるかどうか。これはひとつイエスかノーか、返事を相談してください。半分くれるかどうか。二割五分は既得権があるのですよ。あるものを外に持っていって既得権がなくなるのですからね。  それで、その前に聞いておくが、七百八十七億の運用利子が入るわけです。これをもし全部こちらに入れるとすれば幾らになりますか。一元的に資金運用部報酬比例部分を全部入れてしまうということになると、七百八十七億は幾らになりますか。
  31. 山本正淑

    山本(正)政府委員 昭和四十年度の厚生年金基金の積み立て金の年度未の残は、政府相当分でございますが、百九億と見込んでおります。この百九億というのは、傾斜的に年度未までに入って積み立てられる分でございますから、百九億に六分五厘を乗じた額よりはずっと下回るわけでございますが、大体その半分のものに六分五厘を乗じたくらいが運用収入として入るべきもの、かように考えていいかと思います。
  32. 滝井義高

    滝井委員 そうすると三、四億ですね。そうすると、百九億のうちでその約三十三億程度ですね、これは資金運用部に持ってくるわけですね。そうでしょう。そうなるわけですね。そうすると、あとの残りの七十億のものが、自主運用ができるわけです。だから、そのうちの半分の三十四、五億程度をひとつ労働者にやらしてくれるかどうかということです。労働者の直接福祉に還元するものにやらしてくれるかどうか。これは被保険者の半数の同意があればできてしまうわけです。そうしますと、当然今度は、それについての運用のものを国会でかちっとしておかぬことには、なかなか労働組合はそこまでとれませんよ。だからひとつここで半分、四十年度は三十五億なら三十五億をやらしてくれるかどうか、これはもう労働者に自主的な運用をやらしてもらわなければ困るわけです。これは年金福祉事業団というものをつくってやっているのですから、それと同じように、何か民間に労働組合――総評なり全労、新産別、中立が基礎になってつくってその金を運用しておるわけですから、それはやろうと思えばできるわけですよ。問題は、基本だけをここではっきりしておけば、それから運用の技術的な問題はあとから相談したらいい。大蔵省、どうですか。いまのような抽象的な答弁では、ぼくらは引き下がるわけにはいかぬ。信託やらそれから保険会社に契約するから、まあそこにまかしておったらいいというわけにはいかぬわけです。それは事業主と信託なり保険との関係になってしまって、労働者はそこへは介入できない。ここで明らかにしておけば、今度は介入ができてくるわけです。どうですか、半分だいじょうぶですか。
  33. 山本正淑

    山本(正)政府委員 厚生年金基金の積み立て金運用につきまして、還元融資の性格を持たすということにつきましては、先ほど御答弁申し上げたとおりでございまして、それを先ほど申し上げましたように政府代行部分という計算にするか、上積みを含んだ全体の資金の何割にするかという問題、これは資金のコストの問題と関連いたしておりますので、いまここで直ちに何割ということをちょっと御答弁いたしかねますが、御審議を願っているうちに明らかにいたしたいと存じます。
  34. 滝井義高

    滝井委員 それならばもうちょっと時間的余裕を与えますから、ひとつ審議中に明らかにしておいていただきたい。こういうものは、もう去年から法律をわれわれは出しているのだ、早く審議してくださいというのならば、こういうことは一番大事なポイントじゃないですか。そのポイントを明らかにしないで審議中だなんというのは、用意不足ですよ。それならば、もう一つ、積み立て金の還元融資二割五分について、この二割五分も少ないというのは一般労働団体の世論になっているのです。当然これを三割とか三割九分に上げなければならぬ。これはかつて岸さんが総理大臣のときに、三十五年の安保の前のときに私が質問をした。当時一割五分だった。一割五分では少ないじゃないか、岸さん、あなたは戦犯だったが、またこの金を積んで戦争の準備をするのじゃないか。ちょうどそれは安保改定を控えておったときなんですよ。だからそういうことを質問した。そんなことはない、これは必ず拡大をします、一割五分ではだめだから、これは拡大をして、これを軍需調達にはいたしませんと言って、当時岸さんは大みえを切った。そうしてそのあとに二割五分になった歴史的経過があるんですよ。そこであれから十年たった。十年たってもなお二割五分というばかなことはない。なぜならば、さいぜんから申しますように、三十八年に千四百十四億の保険料が入って、運用が五百二億入ったでしょう。その前の年の三十七年には、千六百六十六億円のうちの運用の利率は三割四分です。ところが、これが三十八年には保険料が千四百十四億円で、運用は五百二億ですから、これは総収入の千九百四十二億に五百二億を見てみますと、三割をちょっと割るくらいです。しかし、これが運用益がだんだんふえてきているわけでしょう。三十九年は六百二十億になるし、四十年は七百八十七億と、だんだんふえてきているわけですから、当然労働者の分も、還元融資もふえなければならぬわけです。ところが、それはちっともふやさぬで、十年間同じですね。ですから、ことしはひとつ五年に一回の改定の時期ですから、いわば五周年記念ですよ。当時からいえば十月年記念になる。だから、やはり記念に二割五分を三割くらいにしなければならぬ。それは当然ですよ。記念記念にはそれぞれ赤いもちを配ったり、それから援護法では、妻の人には去年二十万円差し上げたし、ことしはまた三万円の、弔慰金しかもらっていない人には特別の年金類似のものを差し上げることになった。ですから、これだって同じですよ。一生懸命生産に寄与している労働者諸君にも、それは十周年になったら、二割五分を五%くらい上げて、三割くらいにするのは当然ですよ。それをやっていない。ですから、政治にヒューマニズムがないと私は言うんですよ。どうですか、三割にする意思があるのか。
  35. 山本正淑

    山本(正)政府委員 その前に、先生ただいま御指摘になりましたが、二割五分の金額は、毎年の保険料の三割五分だけでなしに、運用利子を含めまして、積み立て金の増額される純増の二割五分という算定をいたしておりますので、昭和三十六年度におきましては、厚生年金の還元融資の二割五分相当額が二百六十億円でございましたが、三十七年は三百三十億、三十八年は四百十五億、三十九年は五百四十五億、四十年は八百十五億と、かように還元融資の二五%の絶対額というものは大きく伸びておるわけでございます。それは先ほど申しましたように、運用収入の増を含めまして、積み立て金の純増を基準にいたしまして算定いたしておりますから、さように相なっている次第でございます。   〔井村委員長代理退席、小沢(辰)委員長代理打席〕  そこで、還元融資の割合が現在の割合で適正かどうかという問題でございますが、これは需要の状況あるいは世の中の変化に伴いまして、二割五分で固定的でなければならないというふうに考えることは適当でないと考えておりまして、この還元融資のワクが現在の二割五分でいいかどうかという問題も含めまして、資金運用審議会の特別委員会でただいま御審議を願っておる次第でございます。
  36. 滝井義高

    滝井委員 資金運用審議会審議会とも言うんですけれども、審議会は諮問機関であって、やはりこういう大事な問題は国会で決定しても差しつかえないわけです。  そこで、なるほどあなたは、二割五分は運用益も加えてやると三百三十億が四百十五億になり、五百四十五億になり、八百十五億になるとおっしゃったけれども、ところが、今度七割五分のほうを見てみると、まだそれより大きくなってきている。七割五分のほうを忘れている。したがって、二割五分の増大のカーブが大きいか、七割五分の増大のカーブが大きいか――七割五分のほうがはるかに大きいです。そこで、七割五分のほうもうんと増加しているんだから、そのうちの五分をそっちにやって三割と七割にする。これは唇歯輔車、車の両輪の形になっている。片方の小さい輪のことを言わずして、大きい輪のことを先に言わなければならない。したがって、その大きい輪のほうの七割五分から五分だけこっちへ移しなさい。そうすると、これは両々相まって、だんだんかたちんばの車が少しはかたちんばがなくなる、こういうことなんです。当然のことですよ。使途別分類表なんと言ったって、こんなものちっとも魅力がない。だから、いま一挙に区分管理というものができなければ、二割五分をまずふやしなさい、そうして二割五分をふやしてこの区分を、還元融資なり特別融資の融資をする区分において、特別地方債とか、あるいは一般地方債とか、国立病院とか、公害防止事業団、こういうものは入れたらいかぬ。これは一般財源でやるかあるいは資金運用部でおやりになったらいい。労働者の側は住宅とか厚生施設とか、こういう緊急のようなところを先にやりなさい。いわゆる社会開発面におけるおくれた面を重点的に、しかもそれが直接個人の福祉に関連し、密接に結びつくという公共性の強いところにやっていきなさい、こういうことなんです。それは国民の日常生活の充実、向上を目的とする、その効果が直接的なもの、その性質が公共的なものというのが、当時国民年金の還元融資をやるときの三条件ですよ。そういうことから考えても、これは審議会審議会と言わず、こういうところを思い切って出してもいいんです。これはだれも文向言うておらない。審議会というのは、医療費みたいに相対立したときに審議会にかかってやるんです。こういうものは対立も何もない。対立するとするならば、大蔵省と国民が対立するだけなんだ。だから、やはり三割は当然出すべきだ、労働者の金だから。それを何か権力で変な方向に引っぱっていくから問題がこじれる。だから、この答申を読んでも、区分管理労働者のほうに持っていきなさい、直接運用しない、そういう意味のことをほとんど書いている。(「国全体の金だ」と呼ぶ者あり)国全体の金なんだと言いますが、そんなことはないですよ。年金というやつは、国が出しているのは一割五分出しているだけですよ。どうですか、二割五分は上げる意思がありますか。私たちは、これは当然上げてもらわなければいかぬわけです。この前岸さんが一存でやったのですね。ここで答弁した。だからあなた方が答弁できなければ、いまでも佐藤総理に来てもらって、これは私やりたいです。委員長、総理を呼んでください。予算委員会ばかりが国会じゃない。ちょっと五分間来てもらったらいい。上げる意思があるのですか。資金運用審議会で修正するまでこの法案待てというなら待ちますよ。結論を出すまで待ってくれというなら待ちます。そんな、いつの日にか結論が出るかわからぬものを待っていたら、法案を通すわけにいかぬですよ。どうですか。資金運用部大蔵省も、あなたのほうも、二割五分を上げる意思があるかどうかです。
  37. 山本正淑

    山本(正)政府委員 本年度の資金といたしましては、先ほど申し上げましたように、厚生年金の還元融資のワクは八百十五億と相なっておりまして、前年度に比べまして二百六十億ほどふえておるわけでございまして、今日の資金需要、将来の資金需要というふうな観点から、この還元融資の対象範囲あるいは還元融資額の絶対額というものは、資金需要の面ともにらみ合わせて検討していくということが適当ではないかと考えておりまして、資金ワクは絶対に二割五分でなければならないとは考えておりませんし、この問題につきましては、御指摘のような前向きで考えていくべきものである、かように考えております。
  38. 滝井義高

    滝井委員 厚生省は前向きで考えるということですが、理財局はどうですか。――理財局長に来てもらわないと困るな。局長さん委員会に来れぬようなことでは話にならなぬ。われわれが下手に出ておれば、与党というのはほんとうに横柄ですよ、こういうふうに協力しているんだから、当然呼ぶべきじゃないですか。
  39. 小沢辰男

    小沢(辰)委員長代理 ただいま参りましたから……。
  40. 竹内道雄

    竹内説明員 ただいま地元融資の二五%部分がふえておるけれども、七五%部分はもっとふえておるじゃないかというお話があったわけでございますが、年金資金の総体の額がふえてきたわけでございますから、二五%の金額がふえるのと全く同様の割合で七五%の部分がふえているわけでございまして、特に二五%の部分がよけいふえたとか、七五%の部分がよけいふえたとかいうことはないと存じております。ただ、財政投融資資金全体から見ますと、年金資金の財投資金中に占めます割合がだんだんふえてきておりますので、還元融資の二五%部分というものは、財政投融資資金の伸びに比べまして、その伸び率よりも還元融資の伸び率のほうが高いというのが最近の状況でございます。したがって、運用資金全体の運用という点から見ますと、二五%の割合をふやしたらどうかという御要望のあることは存じておりますけれども、全体の資金運用ということから考えますと、二五%を上げるかどうかということについてはかなり慎重に考える必要があると存じております。
  41. 滝井義高

    滝井委員 その答弁をするならば、何でいまごろ企業年金との調整年金をつくって外に持っていくかというのです。財政資金が非常に苦しいというならば、外に持っていかぬで百何徳も全部持ってきたらいい。これは一元的に運用したらいい。その一元的な運用はやめて、百九億を外に置いてその三分の一で御遠慮したわけでしょうあなた方は、七十五億だけは外で運用させることにしたわけです。これはことしは百九億だけれども、来年、再来年になったらウナギ登りに大きくなっていくのですよ。へまをすると、このほうがふえていく。率が高くなるのですよ。だから私に言わせれば、なるほどことしの厚生年金の原資の見込みは三千二百六十億そして去年は二千百八十億、ことしは千八十億増加している、そのうちの二百六、七十億を還元融資に回すという、しかし、残りの八百億程度は、今度は国家資金のほうに回すのですからね。資金運用部運用計画に入れてしまうが、同時に、還元融資として資金運用部に当然入らなければならぬものが食い込んできているわけです。国立病院とかその他に食い込んできているのです。そして食い込みながらも、一方においては、自主運用民間に許しておるということは筋が通らぬじゃないかと言うのです。そういう民間に許すだけの余裕があるならば、二割五分をふやしなさいという理論だ。私の論理はちっとも間違っていないと思う。あなた方は、民間に許さないのだ、それだけ国家資金は不足しているのだから労働者も二割五分でがまんしてください、額はふえておるんじゃありませんか、これならわれわれも、そうですかと下がりますよ。ところが、今度は、報酬比例部分企業年金調整して、そして自主運用民間会社に許すというからこそ、そういう余裕があるならば二割五分を三割にしなさい、十周年じゃないですか、そういうわけです。私のほうは論理は通っておる。あなた方のほうは通っていない。(「前提が狂っておる」と呼ぶ者あり)前提が狂っておるわけじゃない。これはどうですか。われわれは、二割五分を絶対にふやさなければいかぬと思っているのです。そんなものでもふやさぬというなら、この法律はそう簡単に通すわけにはいかぬということになる。いつも私が言うように、野党が政府にものを言って、われわれの意見を幾ぶんでも、与党が予算編成のときにやり得なかったものを前進させようとすれば、これは法律を人質にとってやる以外に方法がないと思うのです。それはあなた方御存じのとおりです。そのときにからだを張ってがんばる以外にない。それが野党の精神だと思う。最近のことばで、一寸の虫に五分の塊ということではなくて、五分の虫に三分の塊ということがはやりだ。虫は一寸になり得ないで五分しかない。だから三分の塊を発揮している。理財局長が来たから、ひとつ名答弁を聞かしてください、二割五分を三割にふやすという……。
  42. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 滝井先生に申し上げますが、たいへんおくれてまいりまして失礼いたしました。  ただいまの先生のお尋ねの点でございますが、大体、いわゆる調整年金なるものを設けて、それの運用をある程度一元運用からはずして、自主的に運用させるということは従来の考え方に反するではないか、こういう御指摘でございます。その点につきましては、私どもも全く同感でございます。私どもといたしましては、調整年金部分はそのうち二つに分かれまして、当然厚生年金の相当分、つまり代行と称しておりますが、厚生年金を代行しておる部分と、そのほかに企業としてさらにプラスアルファをつけておやりになる部分と、二つに分かれると思うのでございますが、その厚生年金代行相当分の運用につきましては、これはたてまえとして、全額運用部預託もしくは政府の指定する各種銘柄の政保債等に運用をしてもらいたいということを考えておるわけでございます。厚生省当局との間におきましても、基本的な了解はそういう線でいたしております。ただ、これは制度発足早々でございますので、一体どの程度の調整年金というものができるのか、これは先生十分御承知のように、調整年金を設けるか設けないかということは、それぞれの企業あるいは企業における労働組合職員のいわば自主的判断によるものでございますから、そこの選択の自由が残されておる限り、はたしてどの程度調整年金というものは設けられるのか、これはわかりません。そこで私どもとしては、先ほど先生がお示しになりましたような金額は一応の推計でございます。この程度はできるかなという厚生当局の推計があるだけであって、いざふたを開いてみたら、はたしてどれだけ調整年金を設ける企業があるのか、これはわかりません。そこで、そういう空なものを対象にして議論をいたしてみてもあまり始まらぬような感じもいたしますけれども、しかし、この調整年金設置に対する要望も、また一面においては非常に強いことは滝井先生もよく御承知のとおりだと思います。そこで実際にはある程度のものは設けられるのじゃないか。設けられた場合に、何ぶんにも初年度でありますとどうしてもやはり数は少ないし、金額的にも少ないだろう。そういたしますと、これをいわゆる基金に入れまして、その基金の運用信託会社あるいは生命保険会社というようなものに限って行なわせるという形になっております関係上、信託に運用いたします場合に、やはりそこに信託報酬というようなものも取られなければならない、生命保険に回します場合にも、やはりそこに一般保険料的なものも徴せられるというような事情もありまして、基金そのものの採算というものが、はたして、どの程度になり得るか。これはある程度の規模に達しませんと、採算に乗りにくいという問題もあろうかと思います。そういうような問題もいろいろ考慮いたしまして、制度発足の草創の間においては、これを全額運用部預託ということもなかなか実情としてはむずかしい面もあろう、そこであくまで基本は全額財政投融資協力という形でありますけれども、一応そこに経過措置と申しますか、過渡的な措置をとりまして、とりあえず三分の一ということに実はいたしておるわけであります。しかし、これはあくまでとりあえずの措置でありまして、調整年金の進みぐあいいかんによりまして、積み立て金増加の実情に応じまして逐次率を上げてまいる、そして終局的な目標といたしましては、滝井先生も御指摘のように、全額財政投融資という形を考えておるわけでございます。これが第一点であります。  次に、第二点でありますが、二五%というものをこの際引き上げるべきではないかというお尋ねであります。この点につきましては、先生も先刻御承知のように、実は昭和三十六年の運用改正の際、現在の二五%という率が定められたわけでありますが、それ以前はもっと低い率だった。それをどうするかというので、当時御承知のように資金運用審議会にはかりまして、いろいろ御意見があったわけでありますが、結局それの結論として二五%という線が出まして、それをもって今日実行いたしておる次第であります。それはそれなりに一つの理由を持った率であったと思います。ただ、先生御指摘のように、その二五というのは絶対なのかということになりますと、それは必ずしも絶対のものとは思いません。さらにそれが引き上げられるのがいいのか、あるいは場合によっては引き下げられるのがいいのかという問題もあろうかと思います。また同時に、いわゆる還元融資と称しておりますが、これは非常にことばの定義があいまいであります。どうも滝井先生にこういうことを申し上げるのは釈迦に説法のようなことで恐縮でありますが、ほんとうに還元融資とは何ぞやということになりますと、これはいろいろな説がありまして、きわめて狭義な説から、かなり弾力性のある説までいろいろあって、きめ手が押えにくい実情にございます。そういうこともございますので、一体率を引き上げるということと範囲を広めるということが並行していった場合にどうなるか、あるいは率は低いが範囲をしぼっていくという場合にどうかというようなことをいろいろ考えますと、なかなか単純にいかない面もあるのではないかと思う。しかしながら、一方において、今回御審議いただいております法改正積み立て金の相当な増加が見込まれる現在においては、三十六年当時に比べてかなり情勢も変わってきたというおりからでもありますので、かたがた厚生省からもいろいろ御要望がございます。そういう意味で、この際ひとつ、もう一回資金運用審議会においてこの点の問題をいろいろ御審議いただいてはどうかということで、実は昨年来資金運用審議会の中に厚生年金特別委員会というものを設けまして、そこでただいま先生御指摘のような問題をも含めて、特別勘定というような点も前に問題になっておりましたが、そういうようなものの是非とか二五%というものの是非、その他等々を含めまして実は現在御審議をいただいておる最中でございます。ただいままでのところではまだ最終的な結論を得るに至っておりませんけれども、これはできるだけ早い機会に結論をちょうだいしたいと思い、鋭意御審議お願いしております。そういうような状態でございますので、私どもとしましては、二五%が絶対だなんということは一つも申しておりません。これはこの特別委員会の御答申等を見まして、十分また厚生省とも相談の上でしかるべく処理してまいりたい、かように考えております。
  43. 滝井義高

    滝井委員 あなたが来る前に歴史的な経過を私が述べたのです。三十五年は一五%だった。一五%のときに厚生年金改正法が出て、岸総理を呼んでやったのです。そして岸総理に、さいぜんもここで言ったように詰めたところが、岸さんは、一五%は必ず増額をいたします、こういう言明をした。そしてその後に資金運用審議会にかかり、が然社会保障制度審議会等の問題になって、当時、三十五年十月の社会保障制度審議会はどういうことを言ったかというと、短期、長期を問わず、積み立て金は一元的にやりなさい。それは短期のもので失業保険の積み立て金が相当ふえてきつつある。最近は、四十年の見通しでは、失業保険は季節労務者ないし女子がだんだん失業保険をもらうので圧迫し始めてきているわけなんです。しかし、千億をこえる積み立て金ができておる。それを一緒にしてやりなさいということが一つ。それから、いわゆる資金運用部の中に入っておったにしても、社会保障積み立て金は簡易保険とは違うのだ、強制貯蓄みたいなものだということを厳に区別しなさい、そういうことを言っている。そして管理運用することが当然だ。国家資金の運営のために年金というものはつくられたのじゃないのだ。社会保障の前進と拡充のために年金制度はつくられているのだから、それを間違ってはいかぬぞという、大蔵官僚的なセンスにちゃんと頂門の一針のとごく一本くぎを打っているのですよ、三十五年の十月に。   〔小沢(辰)委員長代理退席、井村委員長代理着席〕 私がやったのは、たぶん三十五年、岸さんが総理大臣のときで安保の前だった。そして岸さんが大みえを切って、それが導火線になって、それぞれ審議会であなたの言うように三十五年には二割五分にきまった。あれからすでに十年の歳月が流れて、私も鬢髪白きを加えました。あのころはまだ、紅顔の美少年とは言わないけれども、意気壮なるものがあった。しかし、われわれとしても、鬢髪白きを加えて年金のお世話にならなければならないような時代がきたのだから、十周年になったらそれをふやすべきだ。厚生省も前向きだと言っている。あなたも、二割五分にこだわらぬ、こう言っているのだから、もう下地はできたから、次会にはひとつ総理大臣に来てもらって、十周年記念で二割五分を三割五分にしてもらいたい。これは両者意見一致しました。山本君も前向きであると言うし、理財局長も二割五分にこだわらぬということで一致した。前進してみるということです。その点はよくわかりましたから、それはいいのです。この点は、岸総理が十年前にやっているのです。今度は弟の佐藤さんですから、血肉相分けているからそう大きな違いはないと思うのです。  時間がだんだんなくなって企業年金のところに入れぬようになるし、問題がたくさんあるから少し急ぎます。五月一日にこの法案が通って実施することは、ほとんど不可能になったわけであります。これは、最少施行期日は修正をしなければならぬという客観情勢はもう明白です。そうしますと、これは六月か七月、最も早くても六月一日になる。へますると七月か八月になる情勢ですね。一体一カ月おくれたらどの程度の穴があきますか。
  44. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 一カ月約八十億円でございます。
  45. 滝井義高

    滝井委員 その穴埋めはどうしますか。
  46. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 政府といたしましては、五月一日施行ということでいま法案の御審議をいただいておるわけでございまして、これがおくれるということは実は考えておらないのでございます。
  47. 滝井義高

    滝井委員 理財局長、それは五月一日には通るはずはない、参議院を通らなければ法律にならないのだから。だから。だからその穴埋めをどうするかということです。この法案は、へますると、いまわれわれの主張が通らなければ、参議院は社会党の藤田君が委員長ですからね。参議院はまだ法案が一つも上がっておらぬですよ。上がっておるのは清掃法、これはまた衆議院にきておる。きょうPT、OT、いわゆる機能療法士、作業療法士がくるのです。まだ参議院は一本も法律が上がっておらぬ。みんなつかえている。だからこれをやろうとすれば、厚生年金についてある程度社会党の意見を聞かなければ、衆議院を通ったって参議院は通らない。そうしますと、まず妥協して通したにしても一カ月分は穴があくのだから、それは郵便貯金や国民年金をふやすわけにいかないし、これは何か穴埋めを考えておかなければいかぬ。この前の原爆医療法だって、与党だけが修正をしてやった。これも与党だけでも修正しないとどうにもならない。一カ月約八十億の穴があくというけれども、八十億といったら小さくないですよ。これを一体どうするかということですよ。この穴埋めは主計局長ですね。これは予算編成に関係があるから、主計局長にちょっと来てもらいたい。主計官でもいいです。
  48. 山本正淑

    山本(正)政府委員 五月一日実施を予定いたしておりまして、保険料の収納につきましては、御承知のように五月分は六月に収納されるわけでございますので、前回の例によりましても、五月に法案が通過いたしまして六月から実施いたしております。五月から実施いたしまして保険料は六月で入ってくる、こういうことでございます。
  49. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、遡及実施ですか、さかのぼってするんですね。ここが法案審議に重要な影響を及ぼすのです。だから、これが六月ということになると、この法案はあわてて通すことはない。五月十九日で、どうせ与党は一週間か十日はいまの状態では会期延長をします。だからあわてて通す必要はない。ここらが一番重要なんです。たとえば滝井義高がこの前四時間もやったし、きょうもまたやったからやる必要はない――私は今度、保険法をすみからすみまで勉強してきた。それでうんちくを傾けたいと思っておった。ところが、もう時間がないから上げなければならぬ。いまのようにこれは五月一日実施になっているけれども、これは五月一日実施でなくても、この法案をそのまま通せば、六月に保険料を取るのですから、五月にさかのぼりますということならば、あわてて審議することはないのです。
  50. 山本正淑

    山本(正)政府委員 五月一日実施でございまして、率直に言って現実に保険料が入ってくるのは六月、こういうふうに申し上げた次第でございます。
  51. 滝井義高

    滝井委員 だから、この法案が衆議院を通るときには、五月一日を過ぎておっても、五月一日の実施を修正もしなければこのままやっておっても差しつかえないんですね、こういうことを言っておるわけです。
  52. 山本正淑

    山本(正)政府委員 実施期日を御修正になるかどうかということにつきましては、私から答弁するのは筋違いかと存じますが、五月一日から実施できるように御審議を願いたい、かように思います。
  53. 滝井義高

    滝井委員 五月一日に実施できるように御審議を願いたいじゃない。現実に原爆医療法は、社会党がぐずぐず言っておるうちに、与党だけがかってに修正案を出してしまった。齋藤さんがさつとやった。それで、これは修正しなくてもいいですか、ここが今後の審議にとって非常に重要なところなんです。もしこれが、五月一日を六月一日にしたために八十億の穴があいて財政上どうにもならぬということならば、これは一つの重要な、社会党としては戦術上のきめ手にも使い得るのです。ところが、そうじゃなくて、これは五月一日で通しておいてもらっても、それは修正しなくてもけっこうです、それはどうしてかと言うと保険料は六月に取るのですから、さかのぼって五月分は取ります、こういうことになれば、与党のほうもあわてなさるな、いまの山本年金局長の言うとおりになる。これはまさに王手飛車取りなんです。それが一番大事なところです。八十億の穴があいたのを、これを強引に追及して追加予算を出させなければならぬ、予算を修正させなければならぬ。それをやらせまいとするならば、いま言ったように、六月一日に書きかえなくてもこのままでよろしいと言うならば、ゆっくり審議をさしてもらうという条件です。それならいい。私は正直だから、もろ刃の剣のことを言っておる。ここらあたりはどうですか。あなたの答えによって、われわれは妥協する道も知っておれば、戦う道も知っておる。
  54. 山本正淑

    山本(正)政府委員 五月実施の問題が、保険料の徴収の問題だけに焦点をしぼられたようでありますが、私どもといたしましては、五月分の年金額というものを、もちろんこの五月既裁定年金改定いたしますので、五月分の受給者が待っております五月分の年金額から改定した額で支給いたしたい、かように考えておりますので、私どもといたしましては、やはり五月一日から実施できるようにとお願いする以外にないわけでございます。
  55. 滝井義高

    滝井委員 そうじゃなくて、法律論を言っておるのです。法律論で、もし五月十日にこの法案が参議院を通るときには、九月一日実施ということを直さなくてもよろしいか、こう言っておるのです。
  56. 山本正淑

    山本(正)政府委員 法律的には、かりに五月十日に通過するといたしまして、五月一日適用は差しつかえないと理解いたしております。
  57. 滝井義高

    滝井委員 それでは、これは審議をゆっくりやってもいいということになるのです。  これから本論の企業年金なんです。いままでは厚生年金積み立て金の問題をざっとやってきたのです。もう少し堀り下げてやらなければならぬのですがね、非常に国民生活に密着しているのですから。そこで、今度は労使双方意見の対立のあった問題、すなわち企業年金についてです。一体いままで、企業というものは、こういう年金のものの考え方はなかったわけです。年金のものの考え方が出てきたのは数年前からなんです。具体化したのは三十七年の法人税法の改正です。その前は、今部退職金は一時金でくれておったわけです。ところが、今回、なぜ一体一時金は年金化されなければならないのかということです。この根本論をまず明白にしておいてもらう必要がある。議論の発展はここからくるのです。何も自然発生的に、退職一時金を企業が年金化する必要はない。年金化するからには、それだけの企業は、企業なりに見て利益がないとやらないはずなんです。そこで、なぜ一体一時金の退職金を企業は年金化されなければならなかったのか、こういうことです。それからさいぜん理財局長は、こういう制度ができて海のものとも山のものともわからぬ、これは発展するかどうかわからぬので、まあとりあえず三分の二は自主運用、三分の一は資金運用部資金に入れてみて財投運用に入れる、こういうことでございました。実は三十七年度は、五百かそこら辺しか企業年金はなかった。いまはたぶん一千四、五百、去年は二千くらいになっているじゃないかと思うのです。非常に伸びてきている。そこで、一体その一時金はなぜ年金化しなければならないのか、その根本のところを、もうあと時間が三十分くらいしかないんだから、簡単にざっと言ってください。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 山本正淑

    山本(正)政府委員 企業年金は、いまもお話しのように、現在では、税制適格年金では二千をこしておるようであります。退職金が何ゆえに年金化されなければならないかという問題は、これは学者の説もいろいろあるわけでございます。私どもとしましては、現実に企業年金というものが現在税制適格年金になっておりますもの等は、ほとんど、御承知のように有期年金でございますが、また年金化したということによって、退職金がなくなっているという場合に限らないと存じております。退職金は退職金、一時金は一時金としてあって、税制適格年金も並立しているという現状が多いと存じておりますが、退職金と年金との関係において、年金が何ゆえに年金でなければならぬかということは、これは労使の話し合いの問題でありまして、私どもは、どうなければならないというふうには考えていないわけでございます。
  59. 滝井義高

    滝井委員 昔から呼び水というものがあるんですね。呼び水というのは、その水をずっと流すために、やはり水を少し入れてやる。迎え酒ですよ、二日酔いのときに経験があるでしょう、そのあなたのいまの意見だと……。ただ、われわれの側から言うと、多々ますます弁ずる、退職金もあってよろしい、企業年金もよろしい、厚生年金もあってよろしい、これを三つもらえば、われわれ天国ですよ。しかし、三つ合わせても最低の生活保障できないようなものであったらば、これは地獄ですよ。いま地獄になりそうな形が出てきつつあるわけで、心配しておるわけです。そこで、いまのお話ではちっとも一時金がなぜ年金化されなければならないのかということの答弁にはならないわけです。企業と労働組合のことだからどうぞ退職金もつくりなさい、それから有期の年金もおつくりなさい、私たちは一万円年金をやがて五年後には一万五千円、二万円にしますよ、そういうふうに聞こえるのです。しかし、鳥のさえずりのようにはならぬわけですね。現実は、御存じのとおり退職金が年々増加するから、これを何とかひとつやめたいということが、年金化の起こった大きな原因でしょう。三十七年に起こったのはそうじゃないですか。――返事せぬようであるから、そこで少し標準報酬等級引き上げ、それから保険料率引き上げ、これで大体企業の負担は幾ら増加しますか。今度の一万円年金をやった場合に、企業の負担は一体幾ら増加しますか。
  60. 山本正淑

    山本(正)政府委員 保険料引き上げ並びに標準報酬のワクの改定によりまして、先ほど申し上げました保険料が増額されるわけでございますが、その金額は、今回の法律改定によりまして一千百三十三億の増を見込んでおるのであります。したがいまして、折半でございますから、それぞれの半額が労使の負担ということに相なるわけでございます。
  61. 滝井義高

    滝井委員 もしそれを今度は企業年金にしますと、社会保険控除が増加をしますね。それから法人税、事業税のはね返りがありますね。こういうことで、もしこれを企業年金に切りかえたら、企業はどの程度もうけることになりますか。これを企業は計算しておるはずですよ。そのそろばんの上に立って、これらを調整年金でやるかどうかということをきめていくわけですね、企業というものは。そうでしょう。もし厚生年金でやっておったほうがずっと安くつけば、みな厚生年金のほうに入れておくわけです。ところが、法人税や事業税を計算し、それから社会保険の控除を計算してみて、企業の負担分が、厚生年金にいくよりか適格年金にしたほうが安いということになれば、それにやるわけです。商売人ですから、そろばんをはじきます。私だってそれははじきますよ。その計算をしておりませんか。
  62. 山本正淑

    山本(正)政府委員 御承知のように、企業の掛け金は損金計算になりますこれは厚生年金保険料につきましても、さように相なります。それから本人負担があります場合には、所得税におきまして保険料控除があるわけでございますから、その意味におきましては、企業年金になったからどうこうというふうにはならないと考えなければならないと思います。ただ、税制適格年金との違いはございまして、税制適格年金につきましては、企業の負担するものは損金勘定にはなりますが、税制適格年金積み立て金につきましては、一・二%の特別法人税が賦課されておりますが、今回の調整年金につきましては、それは免除するということになっておりますから、その違いはございますが、保険料負担の面からいきますれば、それぞれ損金なり保険料控除ということで、政府の場合と変わらないことになるわけでございます。
  63. 滝井義高

    滝井委員 そこらの議論をすると少しこまかくなりますから、これはあとで個人的に聞かしてもらいます。  そこで、今回適用除外をされた調整年金というのは、老齢年金報酬比例部分だけですね。そうすると、その場合に遺族給付障害年金、これはどういう形になりますか。
  64. 山本正淑

    山本(正)政府委員 今回の調整にはいろいろ意見がございましたが、老齢年金報酬比例部分につきましては、労使の掛け金がそのまま本人に返ってくるというしかけになっておりますので、その部分のみについて調整を認めるということは適当であると考えたわけでございます。さような意味におきまして、老齢年金定額部分政府で管掌し、かつまた遺族年金障害年金につきましても、これは発生度合い等はやはり広い範囲において考えるのが適当であるということで、遺族年金障害年金政府で管掌することに相なっております。したがいまして、企業年金調整年金の被保険者でありましても、政府厚生年金の被保険者と二重の資格を持っておりますので、遺族年金障害年金支出される際には政府から支出される。そしてそれに所要の保険料も、政府管掌の分と老齢年金定額部分と合わせて支払う、かようなしかけになっております。
  65. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、第一種の被保険者でいえば、これは特例になって千分の三十三の保険料の中に、遺族分も障害年金もみな入っていますね。
  66. 山本正淑

    山本(正)政府委員 調整される際には、千分の五十八が千分の二十五と千分の三十三になっておりまして、千分の二十五は、報酬比例部分の完全積み立ての方式によりまして計算した保険料の一〇〇%額でございます。それから三三%は、これは暫定保険料率であります。政府の管掌します、政府に払い込むべき三三%は暫定保険料率でございますから、二五と三三の意味は違いますが、内容といたしましては、三三の中に定額部分遺族年金障害年金が入っております。
  67. 滝井義高

    滝井委員 それは十分科学的な、数理的な検討の結果そうなっておるわけですね。そうしますと、調整年金の受給資格期間を満たさずに脱退をしますね。滝井義高なら滝井義高受給期間を満たさずに基金から脱退をする、その者の積み立て金管理運用、それから被保険者期間の通算の措置というのはどういうことになりますか。滝井義高が基金に金を積んでおったわけです。そうして私が脱退していくわけですね。その場合の滝井義高分の積み立て金管理運用はどういう形になるのかということ、それから同時に、被保険者期間の通算というものはどういうことになるのか。
  68. 山本正淑

    山本(正)政府委員 法律では百六十条でございますが、基金の加入員で中途脱退する者につきましては、百六十条の四行目でございますが、「政令で定める期間に満たないものをいう。」こういうのがカッコ書きでございます。政令で期間を定めまして、それ以内の加入期間であって基金を脱退するという中途脱退者につきましては、その源資を連合会に移しまして、そうして窓口が複雑にならないように処置する、こういう処置を講じております。したがいまして、たとえば五年勤続で移ったという場合におきましては、五年後政府管掌の事業所に勤務するということになりますれば、その時点以降におきましては政府管掌の被保険者としての扱いを受け、そうして基金に加入いたしておりました五年間の分について、年金額については連合会から将来支給されることに相なり、そうしてそれに必要な源資は、正確な数理計算によりまして連合会に移管される。そうしてその場合に、五年たった際にプラスアルファがある基金につきましては、プラスアルファの部分は原則として本人の希望により一時金の支給を受ける、かようなしかけを考えております。
  69. 滝井義高

    滝井委員 連合会の資金は、これは運用管理の対象になるのですか、だれが運用するのですか。私の言っているのは、中途脱退者の積み立て金というものは連合会に移ります。そうすると、その運用管理がまた問題になってくるわけです。それで一体だれがやるのかということです。これは全部大蔵省資金運用部に移してしまうわけですか。
  70. 山本正淑

    山本(正)政府委員 連合会に移管されました資金は、連合会において運用するということに相なっております。
  71. 滝井義高

    滝井委員 ところが、今後、御存じのとおり、いままでのような終身雇用、年功序列の賃金体系がだんだんずれていくと、産業別の移動が激しくなっていくわけです。そうすると、連合会の基金の運用が、資金運用部に全部入れてしまうのかと思った、いわゆる一元的な国家管理になるかと思ったが、連合会が運用するわけですね。そうすると、その場合に労働者部分はどうなるのですか。労働者と関係ない、事業所とも関係ない連合会が一緒に運用していく、こういう形になってしまうのですか。
  72. 山本正淑

    山本(正)政府委員 法律によりまして、連合会の資金運用は基金の規定の準用をいたしておりまして、百五十九条の三項、四項がございます。そうして基金の場合と同じように、信託会社または生命保険会社と信託、保険の契約を締結しなければならない。基金と同じような資金運用をいたすというふうに相なっております。
  73. 滝井義高

    滝井委員 こういうところが、理財局長、抜けておるわけですよ。こういうところは、事業主と関係なくなっちゃったわけですからね。当然一元的にあなたのほうに持ってこなければならぬわけです。ところが、やはり外に置くわけでしょう。これは何も関係ないわけです。だから、こういうように非常にわかりにくい。私たち、これを読んだけれどもさっぱりわからぬのですよ。事務的にも実に複雑になるわけです。これを今度は連合会で運用するわけです。そうすると、危険なところが二つ出るのです。どこが二つ出るかというと、まず基金というものが、山陽特殊鋼みたいに、ああいう大会社だって倒れる状態が出るから、ばたっといく場合がある。連合会だってこれは怪しいものです。わからなくなっちゃう。そういうように、これは御存じのとおり、最近の会社の状態を見ると、資金繰りが非常に苦しいのでこの年金の基金をダシに使って、各信託会社なり生命保険会社から金を借りるのが出てくるわけでしょう。一つの会社で、Aという会社にも企業年金の約束をするし、Bという信託会社にもやっておるのがあるのですよ。それはどうしてやっておるか調べてみたら、みなそれぞれの会社から金を借りるのですから、その顔つなぎにやらざるを得ない。そうでしょう。そういうのがあるでしょう。あるかないか、先にちょっと答えてください。
  74. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ただいまのお尋ね、連合会の分は抜けておるじゃないかというお話でございます。私、先ほどお答え申し上げました調整年金基金のいわゆる運用問題につきましては、基金のみならず、連合会を含めて当然考えておるわけであります。
  75. 滝井義高

    滝井委員 連合会を含めるといっても、ここは「連合会は、政令の定めるところにより、信託会社又は生命保険会社と、年金給付に関して信託又は保険の契約を締結しなければならない。」という義務規定になっておるわけですよ。そのことは、ここでやはり運用してもらうということになってしまうのですよ。
  76. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 その点は、基金も全く同じでございます。
  77. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、基金は、もう明らかに三分の一はあなたのほうに持っていくんだ、こうなっておる。そうすると、あとは三分の一なんというのは自主運用をする必要はないわけだ。主はないのですから、もう事業主とは切れてしまったのです。そうすると、さっきと同じことというのは、三分の一だけ持っていって、三分の二はどうしますか。三分の二は全部労働者のためにやっていいということになる。そういう意思統一をはっきりしておいてもらわないと……。
  78. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ちょっといまのお話を承っておりますと、滝井先生のお考えの中に、いまの信託契約との関係において、ちょっと私どもが理解しておりますところと多少違っておられる点があるのかなという、これはよくわかりませんが、疑問でございます。基金につきましては、運用信託会社に対する信託または生命保険に対する生命保険の契約をやりまして、その運用は、つまりそれ以外のところには持っていけないということを法律規定しておるのです。そこで私どもが申しておるのは、その次の段階を言っておるわけでございまして、信託契約なり何なりで入ってまいりまして、その信託財産というものは、これは御承知のように信託会社が分別経理されております。その分別経理されておるところの運用をどうするかというところにきて、先ほど私が申しておるように、いわゆる厚生年金代行相当分の運用は、全額運用資金預託なり、あるいは大蔵大臣なり厚生大臣が相談をしてきますところの政府保証債、その他の銘柄の債券類に充てるべきものであるというふうに考えておるわけです。  そこで、連合会についてはどうかというと、連合会もまた同じように、つまりその運用信託会社または生命保険会社との契約に限られておる。そこで、その受け入れられたところの信託財産、これまた連合会の信託財産というものがあるわけですね。これは基金の信託財産と同じことでありまして、その信託財産につきましても、いまの厚生年金代行相当部分については、たてまえとして全額財政投融資に協力していただく。しかしながら、さしあたり三分の一、こういうことを考えておるわけでありまして、その点は、基金につきましても、連合会につきましても、全く同じことを考えておるわけであります。その点、先生はどうも基金だけを言っておるのじゃないか、連合会は抜けておるじゃないかとおっしゃるのですが、私どものほうは、少しもそれは抜かしておりません。
  79. 滝井義高

    滝井委員 私が言うのは、基金と連合会とはもう間接の関係になっておる、基金は直接ですよ。しかし、連合会というのは、いま言ったように、滝井義高がA会社をやめてB会社に行くといったときに、A会社のものは連合会に積んでくれる、こういうわけですから、A会社と滝井義高とは直接関係なくなったわけです。そこで、そのA会社分の積んだものについては、あなたの言うように三分の一を資金運用部に持っていって、あとは自主管理はやる必要はない。その分については、全部資金運用部に持ってきたらいいのです、こう言っているのです。
  80. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 その点、私もそういうふうにできれば非常にいいと思っております。先生がおっしゃるとおりいけばいいと思いますが、そこはなかなか、連合会のいわゆる信託財産のいろいろ運用も、その加入者の利益を確保するような形で運用されていかなければならない。そういうことになりますと、その点は基金における運用と同じ問題があるのじゃないか。そういうことで、これは基金と連合会というものは同じように見ていって、いまのお話は、あくまで三分の一というのは暫定の話でございます。どうも先生は、私どもが未来永劫に三分の一でやるのじゃないかというふうに多少お考えになっていらっしゃるのじゃないかとちょっと思ったのですが、そうじゃなくて、私どもは、三分の一というのはほんの暫定措置であって、それは究極は全額になるわけです。基金も当然全額なる、こういうことです。
  81. 滝井義高

    滝井委員 あなたの言うのは希望だけれども、なかなかここにおる与党の委員はそうは言っておらぬ。とりあえずいまそれは三分の一だなんということを絶対言わない。やはり三分の一は当然資金運用部でやる、しかし残りは全部自主運用だと、はっきり――あなたの答弁の前段のほうは、私、きょうあなたから初めて聞いた。山本局長も、そんなことはこんりんざい、あなたが来る前までは言わなかった。それはだいぶ違っておるわけです。  それから、もしこの企業の年金がつぶれた場合、会社がつぶれる、基金がつぶれる、これは当然そうなるわけです。そうすると、その制度の受給既得権者の保障というものは、一体どういうようにして救ってくれるのか。御存じのとおり、小規模企業共済事業団というのが今度できるわけです。これは別に法律で定めるということになって、まだ救済の方法ができていないのですよ。これは百四十五条の解散ですね。百四十五条をごらんになると、百四十五条、六条に書いておるわけです。その場合に、基金の事業の継続不能という場合があるわけです。この基金の事業の継続不能の場合というのは、一体どういう場合を言うのか。それから解散した場合の、その既得権者の保障というものは一体どうしてやってくれるのか。こういう法律をつくるものだから勉強をうんとしなければならない、こういうつまらない心配をうんとさせてもらう、ほんとうにありがた迷惑ですよ。しかし、これは大事なところだから聞いておかなければならない。百四十五条です。
  82. 山本正淑

    山本(正)政府委員 法律百四十五条の解散理由の、基金の事業の継続不能という号でございますが、基金は、その資産運用はあげて信託会社、保険会社との契約によって、みずから資産運用資金運用はいたさないわけでございますが、法人格として特別の基金というものを設けまして、独立の公法人としての権利主体を明らかにいたしておるのでございます。この二号に該当する一番通俗的な場合は、その基金をつくった会社が破産したといったような場合が、端的に第二号の基金の解散、事業の継続不能による解散という事態に当てはまるわけでございます。基金が解散いたしますと、その被保険者政府の管掌に入ってくるわけでございまして、会社は解散して、その同系統の会社で非常に小規模な会社の従業員として残るという場合でも、基金を解散いたしますと、これは政府管掌の厚生年金の適用事業所になりますので、その時点から厚生年金のほうの被保険者になるわけでございます。そういたしまして、法律の四十四条の二、一〇九ページでございますが、その第三項によりまして、厚生年金基金が解散した場合におきましては、基金におりました加入員の期間は、政府の管掌する厚生年金保険の被保険者期間とみなしまして、政府ベースの年金支給する、かように相なっております。
  83. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは健康保険における健康保険組合が解散をしたら全部政府管掌に移る、原則はそういう形になるわけですね。その場合に、基金と会社、そうして会社は信託なりから金を借りておった、そして会社はつぶれた、そうすると、生命保険なり信託と基金との関係はどうなるのでしょうか。会社に金を貸しておるけれども、それは全然関係がなくて、信託は連結する部分、いわゆる調整部分については政府管掌のほうに持っていかなければならぬ義務があるのですか。
  84. 山本正淑

    山本(正)政府委員 かりに基金が、基金の資産管理運用についてA信託銀行と契約しておる。そのA信託銀行が、基金の親会社にどういう債権債務の関係がありましても、基金の資産には何ら影響がないわけでございます。ですから、政府に移ります際にはその基金から資産を持ってくる、こういうことになるわけであります。
  85. 滝井義高

    滝井委員 約束の時間がきましたからそろそろやめますが、たくさん問題があるのです。勉強すればするほど、わからぬところがたくさん出てくる。厚生年金制度年金積み立て金は、大蔵省資金運用部にやりますね。それから調整年金関係の年金基金は、信託会社あるいは信託銀行、生命保険で分散保管されることになるわけですね。この間、年金積み立て金運用面においてそれぞれ条件が違うわけです。その場合の適正妥当な基準と円滑な連絡調整というものは、一体どうしてやるかということです。それは滝井義高が、初めのうちは政府だけで全部だ、A会社からのときは政府管掌の厚生年金、その次はB会社に移る、そして今度はB会社は信託会社だ、今度はC会社になったら生命保険になっておった、これは全部ぱっぱっぱっと動いていくわけです。それが一人、二人動いているのじゃなくて、何十万、何百万動いておるわけですから、年金そのものから言うと、一人一人の資金運用コストが非常に違ってきているわけです。この間の連絡調整というものは、きちんと一つの基準を設けていたしておかないと、非常に問題が出てくるような感じがするのです。それは何も起こらぬでしょうか。
  86. 山本正淑

    山本(正)政府委員 政府管掌の厚生年金の場合と、それから厚生年金基金の場合には、生命保険会社の契約の場合と信託銀行の契約の場合におきまして、運用益というものは違うわけでございます。それからまた、資金管理コスト等の面においても違いがあるわけでございます。ただ、この調整年金をつくりましても、被保険者については、厚生年金におります厚生年金の被保険者の場合と同程度の最低の保障は、いかなる場合においても、会社がつぶれようとどうしようと保障をいたしておりますので、被保険者保障という意味におきましては何ら変わりがないわけでございます。そこで、資産の運用につきましてはそれぞれ若干の高低がある。そして資産が非常に有利に運用されます際には、その運用されました部分についてはその被保険者の利益になるという形に相なっておりますから、被保険者の立場から言いますと変わりがないわけであります。
  87. 滝井義高

    滝井委員 そこがちょっとわからない。有利に運用されればいいのだが、不利に運用されればプラスアルファ分がパーになってしまったということだってあり得る。というのは、運用益というのは給付額の中に二割、三割を占めているわけですから、この運用のしかたによっては、あなた方が二割くらいプラスアルファとしてつけ加えておっても、これがゼロになることだってあり得る。私はここを言っているわけです。そうすると、運用のうまいところに預けたのとへたなところに預けたのとでは、長期にわたるものですから雲泥の差が出てくるのです。そこを心配しているのです。どうもこれは、考えてみればみるほど、図を書いていろいろやってみるけれども、私は五枚くらい疑問点を書いてきたのです。いま、一枚の半分だけ疑問点を言ったので、全部克明にやってみたが、実にわからぬ。きょうは、委員長もやめろと言っているからやめますが、また機会があったらやらしてもらいます。  最後に、私はちょっとお尋ねしておきたいのは、生命保険会社の最近における資産運用の問題、生命保険は年々一割くらい伸びていますが、営業用の不動産とか不安定な株式投資に非常に金がつぎ込まれているわけです。そうすると、基金は、安心だ安心だと言うけれども、もとの運用してもらう信託はとにかくとして、生命保険会社に預けた金が営業用の建物になったり、不安定な株式相場をどんどんやって、そうして大損したらどうにもならぬわけです。こういうところにも小さな気持ちを痛めなければならぬことにもなるわけです。しかも、御存じのとおり、いまの企業年金は、生命保険会社は二十人以上――百人以上が信託ですから、零細企業を相手にしているわけです。零細企業が連合すれば、今度は調整年金をやることができるわけです。そうすると、生命保険会社の資産運用について、相当しっかりしたギャランティーをもらっておかなければ安心しないのですよ。これは、好きこのんで生命保険会社と契約を結んだ個人とは違うわけです。企業が責任を持って集団的にやるわけでしょう。その企業は、自分が金を借りなければならぬからいいかげんに一あなた方、答弁しなかったけれども、二つも三つもやっているところがあるのですよ。そういうものをやめさして、どこか一本なら一本にきちっとしてもらわなければならぬ。二つも三つも仏心多情じゃ困るのですよ。その点、どうですか。
  88. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 滝井先生は、非常に生命保険会社の資産の運用について御懸念をお抱きのようでございますけれども、しかし、御承知のように、生命保険会社大蔵大臣が監督をいたしております。厳重な検査をいたしております。同時に、生命保険会社の責任準備金の資産運用につきましては、先生十分御案内と思いますけれども、運用基準というものを定めまして、これを大蔵省が十分厳重に監督をいたしております。したがいまして、生命保険について、そういう資産をそこなう、あるいは保険加入者に迷惑を及ぼすことは絶対にないという体制で大蔵大臣はやっておりますから、どうぞ御心配なく。
  89. 滝井義高

    滝井委員 理財局長は御心配なくと言うけれども、先日大蔵委員会で、資産運用が非常に不安定だという御答弁を大蔵大臣がしているのです一よ。あなたはそう言うけれども、いまちょうど、厚生年金の四十年度末の積み立て金と同じ程度に生命保険の資産が一兆四千億あるのですよ。これは大蔵委員会でも、最近営業用の建物や何かがデラックスになっていく、そんなことでは困る。さいぜんあなたが言われたように、政府保証の公社債をひとつ買ってくれ、こういうふうになかなか生命保険会社は言うことを聞かない。そして株式の投資をやる。いま率を見てごらんなさい。それはもう一割以上になっているのじゃないかな。営業用の不動産や不定安な株式投資というものがおそらく二割かそこらくらいいっておると思うのです。いまちょっと私、数字はわかりませんが、だから理財局長は大みえを切られるけれども、大蔵大臣は、いやこれはそういう方向じゃいかぬとおっしゃっているのだから、その点は注意しておいてもらわぬと、事務的に非常に複雑になった、基金と連合会ができる、そしてその上に、今度は生命保険会社は零細な金を集めて、不安定な運用をしておるということになると、企業年金というものはいいことは一つもない。どこに一体魅力があってこんなものを出したか、非常にふしぎに思うのですよ。それなら税制適格年金をもう少し優遇してやって、一・二%の特別法人税のほうを今度はまけてやろうというなら税制適格年金でまけてやって、しばらく税制適格年金状態を見ていって、そうして世間的に見て労働者も、なるほどこれはもう各会社みんなやった、少なくとも日本の大企業は全部税制適格年金をやったんだ、しかもそれは、税制適格年金はいまのように非常にアンバランスがあるでしょう、私税制適格年金のことが少しあるのですけれども、調べてみると全部アンバランスです。はなはだしいのは、二十五歳以上でなければだめだというのがある。非常にアンバランスです。ですから、そういうアンバランスなものをまず戦線を統一して、一つの企画のもとに税制適格年金をつくって、そうしてその結果足並みをそろえたら、この足並みのそろっている企業年金を報酬比例分にくっつけていく、代行する、こういう形になると足並みがそろう。いまラッパを吹いておるけれども、踊っておらぬ、足並みがそろっておらぬですよ。だから、やっぱり足並みをそろえてからやるほうがいいというのが、私の結論です。しかし、まあたくさんありまけれども、委員長が言いますからこれでやめます。
  90. 松澤雄藏

    松澤委員長 この際、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十分開議
  91. 松澤雄藏

    松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。八木一男君。
  92. 八木一男

    八木(一)委員 内閣提出厚生年金保険法の一部改正案に関しまして、厚生大臣並びに政府委員の皆さんに御質問を申し上げたいと思います。  まず第一に、厚生年金保険法改正案提出されたときに、当然現行厚生年金保険制度がいろいろな欠点を含んでいる、それについて直さなければならないという観点で御提出になったわけでございますが、その際に、現行厚生年金保険制度でどういう欠点があるか、どういう点が不備であるかという点について御研究になったはずだと思います。大臣の考え方として、現在の厚生年金保険制度にどのような欠点があるか、主要な点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  93. 神田博

    神田国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、御承知のように、非常に給付の額が少ないというのが一番目立った欠点であろうと思います。物価の上昇、賃金の上昇がございまして、年金額がその目的を達するわけにはまいらない。そこで、この際思い切って二万円年金に踏み切ろう、こういうことで、これが私は今度の改正の一番の眼目だと思っております。  その他の点につきましては、少々ございますが、政府委員より申し述べさせます。
  94. 八木一男

    八木(一)委員 政府委員はけっこうです。いま一番主眼点をおっしゃいました。それ以外に、厚生年金制度について相当重要なことがたくさんあろうと思います。そういう問題について、どの点が重要で、どういう問題点があるということの大臣の御所見をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  95. 神田博

    神田国務大臣 重ねてのお尋ねでございますが、御承知のように、先ほども申し上げましたように、二万円年金をとって物価の上昇とか賃金の上昇に見合わせてやるというほかに、人口構造が老齢化してまいっておりますから、この老齢化に対応したような制度を立ててまいりたいという問題、それからまた、これは将来の問題になると思いますが、国民のすべてを入れて、厚生年金国民年金の二本立てでございますけれども、事業所の五人未満等についてもできるだけ入れるような措置を考えたい、こういうような考えを持っておったわけでございます。
  96. 八木一男

    八木(一)委員 いま、くしくも厚生大臣年金局長からいろいろ説明を受けられまして言われました五人未満事業所労働者厚生年金を適用するという問題、この問題について何ゆえに今度具体化をされなかったか、その理由を伺いたいと思います。
  97. 神田博

    神田国務大臣 今度間に合わなかったおもなる理由は、事務的な問題が私は多かったのじゃないかと思っております。事務上の処理が、五人未満に適用した場合に、全部漏れなく拾い入れることができるかどうかという問題じゃなかったかと思っております。これは国民健康保険の場合もそうでございますが、五人未満を適用したいということは厚生省の従来からの持論でございますけれども、なかなこれが思うようにならぬということの第一の問題は、これを事務的に把握するのが非常に困難じゃなかろうかという問題、それからその次に出てくる問題は、私は予算問題が伴うと思っております。
  98. 八木一男

    八木(一)委員 では、五人未満事業所厚生年金を適用するべしという考え方は、はっきり持っておいでになるわけですか。
  99. 神田博

    神田国務大臣 これは、将来においては、私はぜひそういうふうにいたしたいというかたい持論でございます。
  100. 八木一男

    八木(一)委員 厚生省として、五人未満事業所を入れることを意思決定しておいでになるのですね。
  101. 神田博

    神田国務大臣 いまの段階で、厚生省として省議でそういうことをはっきりきめたというような手続はとっておりませんが、いつも会議等におきまして、そういう方向にこれは持っていきたい、こういうことでございまして、従来からの不変の原則と申しますか、考え方でございます。
  102. 八木一男

    八木(一)委員 考え方は前向きみたいな考え方をしておいでになりますけれども、五人未満事業所にこのような社会保険を適用すべしということは、すでに社会保障制度審議会においても何回も答申をされ、またこのような同種の社会保険制度のときに、必ずそういうような附帯決議が衆議院、参議院でついておる。したがって、社会保障の各制度の大部分を掌握しておられる厚生省としては、その点について十分な準備がすでにされてなければならない。事務上の点でということがほんとう理由であれば、厚生省がその責任を果たしていないということだ。五人未満事業所に適用しなければならないということはわかっておる。そのときに、事務上のいろいろの問題点があることは初めから予想されておる。それもすでに七、八年前からの問題である、それをまだ事務上の問題で今度法案に盛れなかったということであれば、厚生省全体の非常な怠慢だ。それに対して責任をとらなければならない問題になろうと思います。それについて厚生大臣は責任をどう考えておられるか。
  103. 神田博

    神田国務大臣 申し上げますまでもなく、五人未満の企業は、これは非常な零細企業ということだろうと私は思います。そこで、労働者の移動も非常に多い。また地位も不安定だというようなことで、調査のもとをつくるのに非常に骨が折れておるのじゃないか、こういうことだろうと思います。言いかえれば、それだけこういうところに年金制度をしいて、そして地位の安定をはかるということが前向きの姿勢だと思います。しかし、その根本にはやはり零細企業もある程度自立といいますか、そういう態勢がないと、労務の移動なんか、つかみにくい問題があるわけでございます。それからまた、帳簿の整理というような問題。ですから、厚生省自体の事務上の問題だけでなく、零細企業そのもの自体の帳簿上の問題もある、事務上の問題もある、こういう問題を含めての意味で私は申し上げたつもりでございます。八木さんのお考えになっておられることも私は同感でございまして、できるだけ早く取り上げまして、これはこれとして、またさらに健康保険の場合にもこれはどうしても取り上げていかなくちゃならない、私はこういうふうに考えておりますので、十分前向きで検討を進めておる、こういう段階でございます。
  104. 八木一男

    八木(一)委員 いま移動が多いとかなんとかおっしゃいますけれども、厚生年金給付という問題は、どこの事業所に行っても、民間の零細事業所から零細事業所に移っても、あるいは零細事業所から中くらいの事業所に移っても、大企業に移っても、被保険者にとっては、完全に通算されることになっておりますから全然問題がない。ただ、移動のときに保険料をどうやって徴収するかという問題だろうと思います。それからまた、被保険者がいるのに保険料を納めないような事業所があっては困るという問題であろうと思います。それは、先ほどおっしゃった健康保険の問題も、一緒にやられるということも考えられると思います。健康保険の問題ですと、これは労働者はすぐ気がつくわけです。隣の事業所では健康保険証があって、そしてただで見てもらっておるのにこっちにはない、それから自己負担を伴う国民健康保険証でいかなければならぬ、こんなばかな話があるか、すぐこういうことは気がつきます。ですから、強制適用すれば、労働者、被保険者というものはすぐ完全に把握できる。だから、移動で把握できないというのは、しようとする気がないからです。すぐにできることです。こんな事務の手続は、関係の山木君なり、また健康保険と一緒にやるなら小山君なり、優秀な厚生官僚が頭をしぼれば三日間でできるのです。三日間でできないようなものだったら、六カ月かかったってできないのです。こうやってこうやれば徴収できるわけなんです。すぐできるのだから、ひとつそれを調査をされて、今度の厚生年金保険法は当然自由民主党の方も熱心でありましょうし、われわれも熱心ですから、この不完全きわまる厚生年金法の一部改正案を、そういう点で政府のほうも準備の決心を固めておるということだったら、すぐこの改正案を修正することができるわけです。そういう点で、きょうただいまからでも木腰を入れていただきたい。厚生年金保険法は、政府としてはその点は手抜かりであって非常に申しわけありません、議会の努力でそれが直るようにしていただきたいと、ただいまからでも一生懸命頼みに来られれば、皆さんのほうも、法律案の貧弱なやつがそれだけましになるわけです。しかし、すぐそれをやるには、議員は非常に優秀な人がたくさんいるけれども、計算したりいろんなことをやるから、役所でやらなければできない。自由民主党の人が修正案を出されるためにも、きょうからでもすぐかかって、あしたの夕方でもこういう方法だったら五人未満は適用できます。それについての費用負担については、田中角榮君がどんなことを言っても説得をして、閣議でそういうことが了承を得られるようにする。そのくらいの決意を示さなければ、いままで一生懸命考えているなんということは全部うそである、これから一生懸命やるということも全部うそであるということになろうと思います。それについての厚生大臣の決心のほどを聞かしていただきたいと思います。
  105. 神田博

    神田国務大臣 いろいろの御懇切な御注意をいただいたわけでございますが、まともに考えておりますことは事実でございます。しかし、役所といたしましてもこれはなかなか大きな仕事でございまして、そう簡単に、八木先生のおっしゃるようなぐあいに早くまとまってくるような性質のものでございますと、おしかりも受けないでどんどんお願いできるわけでございますが、従来ともそれぞれ検討しながら実際に取っ組んでおるわけでございますが、何しろ、先ほど来も申し上げましたような日本の産業構造の内容の変化するときでございますものですから、その実態の把握ということがむずかしい。いまのお話のように、それをやらないから実態把握ができないのだという議論もあり得ると思います。八木さんのおっしゃったように、やるという腹をきめてやればむしろ実態がつかめるのであって、やらないからつかめないのだという議論も、私は一つの考え方だと思います。しかし、御承知のように、役所というものは、これは八木さんにそういうことを覆うと釈迦に説法になるかもしれぬが、実態をつかまえないとなかなか予算化することがむずかしいわけでございまして、あるいは法律化することがむずかしいわけでございまして、そういう点で悩みがあり、解決がおくれている、こういうことだと思います。なお一そう十分な資料が整うように督励いたしましても努力いたしたい、こう考えます。
  106. 八木一男

    八木(一)委員 予算の問題などは、これはかなり大づかみに、いつもほかのこともやっておられるわけです。たとえば厚生省の関係で国民年金法をつくったときに、年金支給人員が大幅に狂った。狂ったけれども、われわれはそう追及しなかった。国民の福祉のためにいいことを一生懸命出した。急いで出したから計算の基礎が狂った。そういうような問題は政治上そう追及さるべきものではない。狂ったというのは、金がなくなったわけではない、予算が少し狂っただけだから、そういうことはわれわれは国民の立場においてそうきびしくは言いませんが、それにかこつけて、しなければならないことをなまけることは、これは徹底的に追及しなければならない。きっちり人数をつかまなければ予算化できないというようなことを言ったら、どんなに精密にやったって、十人や二十人や三十人の狂いはあります。その狂いがあるために制度が進まないというような、なまけた政治は許されない。政治のほんとうの要諦はそういうことです。必要なことは準備をできるだけ早くする。精密にすることはいいです。しかし精密と称して、精密にできないからその問題はまたあと回しだということは、大事な政治の問題としては許されない。ところが、いままではそれがさかさまになっておる。十分な調査ができないから、大事なことだと思うけれどもこれはできませんということで、社会保障制度が停とんをしておる。いまからでもやればできますよ。いろいろな統計で、労働者の人数はどのくらいという統計は出ているわけです。そこから民間の企業の人はどのくらいだ。とにかく労働者の概数は出ているわけです。民間の企業の概数も出ているわけです。別な方向でいえば、たとえば一人でも二人でも雇って商売をしたり工業をするときには、認可が必要なんです。そっちのほうからでもつかまえられるわけです。どこにどういう事業所があるかということが、わからないはずはない。わからないとしたら、政府間のいろんな連絡が悪い、怠慢であるということでわからない。やろうとすればできるのだ。それについて、直ちに始めて五人未満事業所に適用するならば、どういう人数であって、どれだけの本年度予算が必要である。来年、再来年はどれだけ必要だということを、あしたの質問までに、ひとつ概数を出していただきます。
  107. 神田博

    神田国務大臣 お尋ねでございました事業所の数から申し上げますと、厚生年金の適用の事業所が、全国で五十万所でございます。それから厚生年金の被保険者が千七百万人、こう言われております。いまお述べになりました五人未満事業所ということになりますと、大ざっぱにいって全国百万、こう言われております。従業員、被保険者になるべき者が二百万人。一事業所二人ぐらいのことでございますから、それぞれいかに零細だかということがわかるわけです。それで先ほど申し上げたように移動が多い。それからおやじのどんぶり勘定でやっている。そういうわけで、帳簿その他の記載がなかなか明瞭でないというような問題、しかし考え方としては、八木さんもお話しになったように、むしろそれであるからやるべきだという考え方は私も同感なんです。これはわが党の考えであることは間違いないわけです。しかし御承知のように、こういうふうに事業所の数があまりにも多い、そこで調査するのに時間がかかる、こういうことでございます。それからまたその調査も、やはり指導を兼ねて調査をしないと、完全な資料というものは得られないのではないか、こういうことでございます。とにかく明日までというわけにはまいりませんが、せっかくこういうお話が強力に出た際でございますから、さらに再検討して急がせる、そういう考えをもってひとつ新たなる決意で検討を進める、こういうことにいたしたいと思います。
  108. 八木一男

    八木(一)委員 大体そういうふうに出ておりますでしょう、事業所は大体百万くらい、労働者はたしか、私の調べでは二百二十七万くらいになると思います。私どものほうでも、こんなことは実を言うとわかる。  それからさっき予算上の問題をおっしゃいましたけれども、予算上の問題というのは、事務費を除いたらほとんど要らないのです。これは通算年金制度がありますから、厳密に言えば、ほかにそういうことで何らか具体的に要ることはまれに出てくるかもしれませんけれども、とにかくまれの点は除いて、これから厚生年金に五人未満事業所労働者を入れた場合に、基本年金がもらえるようになるのには二十年かかる。その間の障害とか脱退の何とかいうような前に支給されるもの、それはある程度の年限をすれば発動をするとしても、少なくとも来年、再来年や何かの金は要らないわけです、いまの厚生年金制度をそのまま適用することになれば。ですから、予算上の問題と厚生大臣はおっしゃいましたけれども、予算上の問題なんか心配ないのです。これは田中角榮君が社会保障にどれだけの熱感を示すかどうかは別として、もし頑迷固陋であっても、神田さんが一生懸命やられれば一発でこれはきまる。大体来年は要らないんです。田中さんは来年の予算額を心配なんかしてないです。だから先のことまで要らない。来年は給付費が大体要らない。再来年も要らない。その次でも要らない。いまのところ予算上一つも心配ない。あと事務上だけなんです。そういうことをあなたは気がついておられたかどうか。厚生年金を多くするために、あなたも言っていられるように、五人未満の適用をすべきだという考え方を持っていられた。持っていられた以上、予算には関係なくて、ただ事務手続をすればいい。しかも日本社会党のような第一野党は、前から、制度さえよくすれば会計上いささかの善意によるつじつまの合わないことに対して、何か非常に寛容であったという前例があるわけです。だからそんなことでいじめられることはない、いいものをやろうとするときには。悪いものをやろうとするときには、徹底的に、ありとあらゆるところ追及するけれども。ですから、あなたが、ほんとうにこれをやるべきだという考え方があって、やる気があれば、今度の改正案に盛れたわけです。あなたが予算上と言われましたけれども、予算上どういうむずかしさがあるだろうか、もう一回はっきり言っていただきたいと思います。
  109. 山本正淑

    山本(正)政府委員 五人未満事業所に適用するに際しましての問題は、一番大きな問題として事務的な問題がございます。先ほども大臣から御説明申し上げましたように、現在の厚生年金の適用事業所の約倍くらいのものになるのではないか、これは審議会の過程におきまして、これを適用する場合にどれだけの専務費がいるのかという資料提出を求められまして、現在の試算では約七千八百人の職員の増が要る。そういたしまして、大体四十億円ないし五十億円の事業費を要する、こういう御説明を申し上げてございます。それから、もちろん厚生年金の適用、これは被用者保険でございますので、健康保険の適用ということも同時に解決すべき筋であると考えておりまして、御承知のように、五人未満事業所の職員、これは賃金も非常に安いわけでございまして、そういった影響というものも、健康保険についてはあることを考えなければなりません。厚生年金につきましては、御指摘のように給付は直ちに大幅に出るものじゃございません、将来にわたってでございますが、もちろん保険料支払いというものは確保しなければならぬと思います。
  110. 八木一男

    八木(一)委員 いまの御説明のあったことは、別に間違いじゃありません。ただし、さっきの御答弁にもありましたように、給付費に関しては、それはほとんど要らない。事務費の点は、これだけ大ぜいの人がいるから四十億ほどかかるといわれる。それは反面、これだけ二百万人というようなほんとうに低賃金の、年金保障が一番必要な人がほうり出されているわけですから、それに関する事務費というようなものは、これは四十億あろうと八十億かかろうと、やらなきゃいけないわけです。それよりも、厚生年金保険必要度が少ない人に対していままで事務費を出しているわけです。一番必要な人をいままでほったらかして、その人たちに対して申しわけない、これから四十億くらいの事務費を出すのはあたりまえだ。しかも二百万の対象人員だから、一人頭の事務費なんかちょっとです。こういうことは、田中角榮君がものわかりがいいか悪いか知らないけれども、もしかりにものわかりが悪くても、神田さんがそれを説明すればすぐうんと言うはずです。佐藤さんだってわかるはずです。そういうことで、すぐにも取りかからなければいけないはずですのに、いままで自分はほんとうはそういう気持ちを持っておらなかった、だからこういう金額についても、厚生大臣は自分では御答弁になれなかったという問題だろうと思う。いろいろ忙しいことはわかっておりますけれども、やはり医療問題のほかに年金の問題、これは厚生省の扱う問題として二つの柱の大きな一つの柱ですから、もう少し熱意を持ってやっていただきたいと思います。  それから、この問題がどうして放置されたらいけないかという問題について、医療の問題も特別に必要ですけれども、この年金の問題に特殊性があるように私は思います。それについて厚生大臣なり、もしあれでしたら山木局長でもけっこうですから、御説明願いたい。
  111. 山本正淑

    山本(正)政府委員 医療の問題は、もちろん現在被用者の健康保険と国民健康保険との間に給付の格差があるという意味におきまして問題になるわけでございます。年金制度につきましても、御指摘のように、厚生年金国民年金との給付の差があるという結果になりますと、そういった大きな問題になるわけであります。特に年金制度におきましては、何と申しましても老齢年金が中心の課題でございます。しかも老齢年金につきましては、一定の期間の資格期間というものが年齢と同時に必須の条件になっておりますので、さような意味におきましてできるだけ早い機会に適用して、そういう事業所につとめておる人が老齢に達した場合に、資格期間を満たしておくということが必要ではないか、かように考えております。
  112. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣のお考えをお聞きいたします。
  113. 神田博

    神田国務大臣 いま年金局長の言われたとおりに私も記憶いたしております。  それからもう一つ、先ほど五人未満の点についていろいろお話がございましたが、これは御承知のように、この年金の原案というものは、昨年の通常国会にこれは御審議願ったわけでございまして、その後再検討いたしたわけでございますが、時間の余裕もなく、むしろ国会の御審議を願っておる間で、与野党でひとつ十分な御意見調整もしていただくほうが独善にならぬではないかというような考え等をもちまして、昨年通常国会審議未了になったものをそのまままた重ねて御審議を願っておる、こういう実情であることも、これは申し上げるまでもないことでありますが、そういう経過をたどっております。五人未満については非常に熱意があるのだということだけは、おわかりになっていただきたいと思います。
  114. 八木一男

    八木(一)委員 山木さんと、それからの答弁とに関連して質問を続けたいのですが、厚生大臣がほかのほうに触れましたから、そっちに切りかえて質問したいと思います。  実は去年出された法案については、本会議においてわが党の八木昇君が質問をされたはずであります。そこでわれわれの考えは全部言っております。五人未満労働者のことも、日雇い労働者のことも言ってあるはずであります。それから社会保障制度審議会においては、少なくとも私の提案に対して全員が賛成して、五人未満に適用すべし、日雇い労働者にも適用すべしという答申案が出ております。各審議会答申を尊重しなかった結果、いま厚生省としては問題が出ておる。これは腹の末までしみ通っておられると思う。それは何回も出しておるのですよ。そういう問題について出ておるし、出ておる問題をその次に再検討のときに入れないというようなことは、これは非常に怠慢です。調整年金というようなよけいなものを入れて、その問題にばかり頭がきているから、ほんとう厚生年金の大事なものを、よいものにするためのことを全然忘れて、ときどき思い出しても忘れたようなかっこうをしている。なぜ勇敢に厚生年金ほんとうによくするためのことを盛らないのか。各審議会でいつも言っているのです。それからこの議会の附帯決議でも、ちゃんとこれは出ているのです。前を繰ってごらんなさい。何年間の問題ですよ。ですから、前に出ているから、御検討を願いたいと思います、そういうような弁解をなさらずに、御自分並びに厚生省の怠慢をほんとうにじっと見詰められて、それを一刻も早く取り返すためには、いろいろの慣例がどうあろうと、どうなかろうと、国民のためにマイナスを少なくするためには、きょうからでも決意をして、あすからでもこういう方法でできる――私は質問しますから、こういう方法でしたらできると思います、そういうことを言われたならば、自由民主党の先生方も日本社会党のわれわれも、民主社会党の人も共産党の人も、その点についてはいいじゃないか、社会党案が通るか政府案が通るか、両方とも時間切れになるかわからないけれども、もし通るとしたならば、五人未満だけでも修正して入れようじゃないか、また五人未満が入っている社会党案をそのまま可決しようじゃないかということになって、あなた方の誤りがそこで正されるということになる。ひとつあしたまでに具体的に、こういうふうな条文に変えたらこうできる、こういう制度にしたらこうできる、大蔵省については説得の自信があります、そういうことをちゃんと答弁できるようにして来ていただきたいと思います。御決意をひとつ伺っておきたい。
  115. 神田博

    神田国務大臣 八木委員の御提案は十分検討してみたいと思っております。
  116. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、山本さんの御答弁のほうに関連していきますが、私も知っていることですけれども、厚生大臣から伺いたかったのを山本さんがかわりに答えられた。所得保障には、そういうように資格期間がなければ基本的年金が完全にもらえない、その前の問題で通算年金の問題がありますけれども、二十年をこえるところで非常に不利になっている、そういう条項があるわけです。ですから、早く資格期間に通算をしないと、厚生年金保険のような、所得保障を一番必要とする人たちにとって非常に不利なことが起こる。ですから、じんぜん日を送ることは許されない。ほんとうの正しい政治家としてはそういうことになる。たとえば十九年でとまったならば、昔は、十九年の問題については国庫負担分が入らない、使用主負担分が入らない、労働者の払った保険料に数理計算をして、一つの同じ一組の中の人が、だれが何人死んだか、そして遺族給付をどういうふうに出したか、だれが何人けがをしたか、傷害が起こったか、傷害給付をどうしたか、そういう数理計算を全部して、その分を引いた残りに五分五厘の利息をつけた計算をしてくれますけれども、また通算年金の原資にしてくれますけれども、とにかく二十年と十九年では大違いであります。国庫負担が入らなかったり、それから使用主分が入らないという計算になっていると私は理解をしております。間違っておればまた御訂正願って、私も勉強し直しますが、二十年と十九年の間には非常に差があるということになる。そうでなくても、格段のがくんという差がないとしても、今度の厚生年金保険法案にあるように、たとえばだんだんに、何といいますか、定額分についてくる、一年について二百五十円増す、これはほんとうに貧弱な乏しいものだと思いますけれども、そういうような条項も定額分についてはある。それから標準報酬比例部分については、月の総数に定数をかけますから、それだけ長ければ長いほど多くなるというふうになっておる。ですから、がくんとしたところが一番こたえる。そうじゃないところでも、一年多いか二年多いかでずいぶん違うわけです。ほかの日の当たる産業に従事しておられる労働者の方々は、こういう要件を満たせる条件にある。ところが五人未満事業所の人は、これを満たすことがいまできない。政府がなまけて、おくればせにやっても、それだけは損になるということになりますから、一刻も猶予はならない。それをやはり政府にも人員の制限があって、これは毎年毎年出さなければいけないのに、なまけて何年かに一回しか厚生年令法案を出していない。この怠慢は非常に指摘さるべきだけれども、少なくとも何年目かの大改正政府が思っている――われわれとしては大改正ではなくて、中改正か小改正くらいだと思いますけれども、そういうような改正の時期にそれを出してこない、まことに怠慢だ。それについて、その怠慢はどうやって克服するという決意をひとつ聞かしていただきたい。われわれ国会においてやるということとは別に、もし何らかの事故で国会でできない場合においては、政府はこの怠慢、国民に対する十分にやらなかったことの責任をどうとるか、一刻も早くということはどうなるのか。たとえば臨時国会に直ちに出す、補正予算にそれを組む、そのようなテンポでどうあってもやるという決心があるかどうか。国会をもっと早くやるかもしれないけれども、もし国会がそういう高情にならなかった場合に、政府自体次の臨時国会改正案を出すか、補正予算を組むか、それについての決心を承らしていただきたい。
  117. 神田博

    神田国務大臣 いまお述べになりましたことは、なかなか重大なことでございます。また、ごもっともな点であることも、先ほど来私がお答えしたとおり、十分検討いたしまして、またそれぞれの機会に御答弁を申し上げたいと思います。
  118. 八木一男

    八木(一)委員 それについて、あしたまた私は厚生年金保険法質問をさせていただきたいと思います。厚生大臣質問いたしますから、あしたまでに十分決心を固められて、大蔵大臣を説得され、佐藤さんを説得されて、臨時国会には必ず五人未満を入れる改正案を出す、それから予算は組むという答弁のできるように、ぜひやっていただきたいと思います。できない場合には、これはほかの問題についても言われているように、審議会の結論を非常に無視し、軽視し、各委員会の附帯決議も軽視した、厚生省自体そういう意見を聞かなくてもやらなければいけないことを、非常になまけているということで徹底的に追及しなければならないと思います。そういう努力を願いたい。  そこで、皆さんがほんとうに努力したけれども大蔵大臣が承知しない、佐藤総理大臣が承知しないということであれば、そのときそれを明らかにしてほしい。そのような頑迷固陋な人に対しては、その方向を正すようにわれわれ質問を展開しなければならない。ですから、あなたがなまけてあした答弁できないのか、ほかの人がそれを理解できなくて答弁できないのか、それについてもあしたは必ず明らかにしておいていただきたいと思う。それについて、はっきり約束を願いたいと思う。
  119. 神田博

    神田国務大臣 検討いたしまして、明日適当な機会に御答弁申し上げたいと思います。
  120. 八木一男

    八木(一)委員 適当な機会に御答弁でなくて、あした必ず私は質問しますから、あなたがなまけてできなかったのか、それとも佐藤さんが承知しなかったのか、田中さんが承知をしなかったのか、それをあしたはっきりしてもらわなければいけない。あなたがなまけたならばあなたを徹底的に追及します。ほかの人がわからず屋で承知ができないならば、その人たちをわからせるために徹底的な質問を展開しなければならない。ですから、その点、責任の所在はあなたであるか田中さんであるか佐藤さんであるか、それをあしたはっきり答えていただきたいと思います。
  121. 神田博

    神田国務大臣 お答え申し上げます。  いろいろごもっともなことでございまして、御趣旨は私もよくわかるわけであります。明日責任ある答弁をしろということでございますが、私もできるだけは御期待に沿いたいとは思いますが、しかし、御承知のように政党内閣でございまして、私ども言いかえれば出先機関で、こういう重大なことでございますから、党のそれぞれの組織にやはり相談をする必要があると思います。また、いまお述べになったように、財政当局あるいはまた総理にも御相談しなければなりません。明日御満足のいくようなお答えができるかどうかはお約束はできませんが、意のあるところだけは十分了としていただきたいと思います。
  122. 八木一男

    八木(一)委員 熱心な意思を発表していただいて、その点、厚生大臣の熱意を信じたいと思います。ただ、この問題はこの法案審議に非常に関係がありますので、その答弁いかんによっては、法案審議をわれわれ非常にスムーズにやりたいと思っておりますけれども、それがそれだけの時間よけいに要するということになろうと思いますから、法案審議の促進を要望しておられる厚生省としては、この御自分の要望にもあわせてしっかりやっていただきたいと思います。
  123. 松澤雄藏

    松澤委員長 この際、本会議散会まで休憩いたします。    午後二時三十分休憩      ――――◇―――――   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕