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1965-04-06 第48回国会 衆議院 社会労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月六日(火曜日)    午後一時十九分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 橋本龍太郎君    理事 河野  正君 理事 八木  昇君       熊谷 義雄君    田中 正巳君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       中野 四郎君    藤本 孝雄君       松山千惠子君    粟山  秀君       山村新治郎君    淡谷 悠藏君       伊藤よし子君    滝井 義高君       八木 一男君    山口シヅエ君       山田 耻目君    本島百合子君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         防衛施設庁長官 小野  裕君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    藤本  幹君         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君  委員外出席者         専  門  員 安中 忠雄君     ――――――――――――― 四月六日  理事橋本龍太郎君同日理事辞任につき、その補  欠として藏内修治君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  労働関係基本施策に関する件(駐留軍労務者  に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  理事橋本竜太郎君より理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松澤雄藏

    松澤委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  これより理事補欠選任を行ないたいと存じますが、その選任委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松澤雄藏

    松澤委員長 御異議なしと認めます。よって、藏内修治君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 松澤雄藏

    松澤委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを許します。八木昇君。
  6. 八木昇

    八木(昇)委員 駐留軍に雇われておるところの従業員といいますか、労務者の問題について若干質問をいたしたいと思います。  私が申し上げるまでもなく、駐留軍労働者が非常に不安定な雇用関係にあって、そうして日本国内のどの労働者に比べても、基本的な権利について、いろいろとその権利を剥奪されている状態にあることはすでに御承知だと思うのでございますが、そこでこの問題に関して質問をいたしたいと思うわけであります。  その前に、そもそも日米安保条約に基づくいわゆるアメリカ軍基地という問題ですね、これについてお伺いをしたいと思いますが、一体、日米安保条約に基づくアメリカ軍基地というのはどういうものであるかということを、防衛施設庁長官見解を承っておきたい。
  7. 小野裕

    小野政府委員 安保条約に基づいて米軍に提供しておる基地でございますが、これは、条約の上では、御承知のように施設区域ということばを使っております。現在、それぞれの施設一つずつ分けて考えますと百五、六十カ所ございます。これはそれぞれ番号をつけまして、FACナンバー何号というふうに区別してございますが、百五、六十ケ所で、面積にいたしまして約一億坪でございます。それがどういうふうに使われておるかと申しますと、一つはキャンプ、兵舎、そうした居住場所を含めました施設の一群がございます。それから飛行場、これが一つグループでございます。それから演習場射撃場というような活動をする場所、これが一つグループになります。このほか倉庫というようなグループもございますし、通信施設というようなものもございます。それから住宅施設というような分類もございます。そういうようなものを合わせて百百五十一カ所であったかと存じますが、そういう基地状況になっております。一がいに基地と申しておりますが、倉庫もあれば港湾もあり、演習場もあり、兵舎もあり、住宅もある、こういう状況でございます。
  8. 八木昇

    八木(昇)委員 私のお伺いした趣旨は、その基地というものの性格という点についての見解を実は承りたいと思っておったわけです。日本法令とそれから基地との関係といいますか、いわゆるそういうアメリカ軍施設区域というものに対して、日本法令は及ぶものであるかどうか、簡単にいえばそういう点についてです。   〔委員長退席蔵内委員長代理着席
  9. 小野裕

    小野政府委員 米軍に提供しております施設区域の中も、原則としては日本法令は及ぶわけでございますが、実際の問題として、提供しました施設区域内は管理権米軍側にございます。そういう限りにおいては、日本法令も実際上適用がされなくなるということがあり得るわけであります。一般法令適用があるかないかにつきましては、地位協定の各条にそれぞれ、たとえば税金の問題であるとか、あるいは交通権の問題であるとか、いろいろございますが、原則的には、そういう地位協定で特に規定をしましたもの以外は一般日本国法令適用になるという原則でございます。実際上管理権を持って支配をしておるが、ある区域内、境界の中というものについては日本法令が及びがたいものがある、こういう状況でございます。
  10. 八木昇

    八木(昇)委員 そうしますと、私も法律のことはあまり明るくないのですが、いわゆる租借地なんかとこの基地というものとは一体どういうふうに違うのか、同じものであるのか、あるいはこの法令適用という意味においては治外法権などということばもあるのですが、そういうふうなことと現在日本にあるアメリカ基地というものとの解釈上の違い、そういう点をお述べいただきたい。
  11. 小野裕

    小野政府委員 ただいまのお尋ねは、実は私ども責任を持ってお答えできるといいますか、むずかしい問題でございまして、外務省あるいは法制局等の御見解伺いたいと思うのでありますが、私ども了解しておる範囲では、租借地でもございませんし、治外法権区域でもございません。あくまでも日本の領土、領域でございまして、いわゆる施政権というものは日本側にあるわけであります。ただ、提供ということで、しかもその内容が、完全に管理権を渡してあるという意味において日本法令がそのままに適用できない場合がある、こういうふうに私ども了解しております。
  12. 八木昇

    八木(昇)委員 そうしますと、いまの御答弁は非常に明確だとは思うのでございますが、いわゆる米軍基地というものは租借地ではない、また、いわゆる治外法権というような区域でもない、これは米軍基地といえども日本施政権の及ぶ範囲内にあるんだ、原則として日本法令適用されるべきものである、そういうことですね。
  13. 小野裕

    小野政府委員 原則としてはそのようでございますが、実際には、地位協定によって米軍特権を認めたものがございます。これはいわば特別法と申しますか、そういう意味特権を認めたものは特権を認める。また、実際特権を認めないでも不実上日本側法令が及ばない場合がある、こういうふうに申し上げたいと思います。
  14. 八木昇

    八木(昇)委員 以上の点は、いわゆる米軍施設区域そのものについてでございましたが、今度はその米軍に使用される労働者の問題になってくるわけであります。昔は、アメリカ軍に雇われる労働者は、アメリカ軍の直接雇用であったわけでございます。その後、これは間接雇用になって、日本政府雇い主になる。それから、いわゆるアメリカPX関係など諸機関に働く労働者についても、現在は新安保条約以来日本政府雇い主ということになっておる、いわゆる間接雇用に変わっておる、こういうふうに思うわけでございます。このアメリカ基地そのもについてすら日本法令原則として適用されるということになっておるし、今度は、アメリカ軍に使われる労務者労働条件その他については、直接雇用から日本政府雇用ということに切りかわったとするならば、これは当然、この駐留軍労務者各種労働条件については日本国内法によってその労働条件が定められなければならないというふうに考えるわけですが、そうでしょうか。
  15. 小野裕

    小野政府委員 ただいまお尋ねの前段のうちに、米軍基地で働く労務者は、全部日本側雇用して提供する間接雇用になったとおっしゃいましたが、まあ事実そういう形でございますが、そうでなければならないというわけでもございませんで、直接雇用もあり得るわけでございます。  いま後段のお尋ねの、日本政府雇用労務者について、日本労働法規が完全に適用されるかというお尋ねにつきましては、たてまえとしては日本労働法規を尊重しなければならない、これは条約土地位協定で約束をしております。そのたてまえでは、日本労働法規労働慣例というものは尊重すべきものである、これは米軍も納得しております。ただ、実際の問題として、ああいう特殊な部署でございますので、一般の民間と必ずしも同じにいかない部分がございますので、そういう点については特別な例外もあろうかと思うのであります。たてまえとしては、できるだけ日本労働法規労働慣行基準として働いていただきたい、こういうふうになっております。
  16. 八木昇

    八木(昇)委員 特別の例外というのはどういうことでしょうか。そういう特別の例外云々というようなことを言われるわけですが、もともと地位協定そのもののどこの条文によって、日本法令を守るということが保証されておるか。日本政府側日本法令を守ろう、こう思っておっても、相手側アメリカ軍日本法令を守らなければ、これは一方交通で問題にならないわけです。
  17. 小野裕

    小野政府委員 ただいま私、申し上げました御説明で、あるいははっきりしなかった点があるかと思うのでありますが、労働関係労働者雇用あるいは労働条件保護のための条件その他労働者権利というものについては、日本国の政令の定めるところによらなければならないという条約でございまして、それに基づいて米軍側とは細部の協定をしておるわけであります。ただ、一部いろいろな手続関係につきまして、たとえば、まあ解職であるかというような場合について、これを救済する手続というようなものにつきまして別途の取りきめがあるわけであります。
  18. 八木昇

    八木(昇)委員 一部の例外といいますか、この地位協定の十二条の正項の表現をかりますると、「相互間で別段の合意をする場合を除くほか、賃金及び諸手当に関する条件その他の雇用及び労働条件労働者保護のための条件並びに労働関係に関する労働者権利は、日本国法令で定めるところによらなければならない。」という意味は、一部の例外ということはあり得る、その例外を別段の合意によって認めるということはあり得るが、それはきわめて例外的である、すうっとこの条文を読めば当然そういうことになるわけです。その一部の例外というのは一体どういう場合をさすかといえば、私は、それはアメリカ軍軍事機密をスパイしておる、あるいはアメリカ軍の公安上著しい害悪を及ぼしておるというような場合以外には考えられないと思うのですが、その点、どうですか。
  19. 小野裕

    小野政府委員 ただいまおっしゃいましたとおり、別段の合意というのは、同じ十二条のその次の第六項で、ただいまの解職の問題に関連したところが、ただいまではできておる合意の唯一のものでございます。
  20. 八木昇

    八木(昇)委員 そうしますと、この十二条六項というのは、どういう場合のことをさしておるわけでしょうか。「合衆国軍隊又は、適当な場合には、」云々、これはどういう場合をさしておるわけでしょう。
  21. 小野裕

    小野政府委員 この六項の規定の中心になりますものは、やはり身分の問題に関連しまして、たとえば解雇されました場合に、これに対する不服あるいはいろいろな救済措置という問題に関連しまして、こまかく規定してあるわけでございます。
  22. 八木昇

    八木(昇)委員 これは、合衆国軍隊によって不当に解雇されたと日本政府が判断する場合のことを言っておるのですね。合衆国軍隊によって不当に解雇される場合というのは何をさしておるのか。たとえば合衆国軍隊が一個師団なら一個師団おった、ところが軍縮なら軍縮によってその一個師団アメリカに全部引き揚げた、そうしてもういなくなったという場合に、そこに働いておった労働者五百人なら五百人を解雇したという場合は、不当な解雇にならないでしょう。それは一応正当な解雇といわなければならぬ。この第六項というのは、不当なる解雇をされたと日本政府が認めた場合の手続を書いてある。そうすると、一体米軍によって行なわれる不当解雇というのは何をさすか。予想される不当解雇は何であるか。
  23. 小野裕

    小野政府委員 ただいまお尋ねの、たとえば部隊の縮小、閉鎖等によってその基地労務者が要らなくなったというような整理の場合は、これは不当な解雇、不当な解職にはなりません。いろいろ、解雇できるような場合につきましては、かねて基本労務契約その他の協定によりまして解雇できる場合等もきめてあるわけでございますから、そういうような了解の線をはずれて、その理由のないのに解雇をするという場合が一般の不当な解雇でございます。ただいまお尋ねのような特殊な事情の場合もないわけではございませんが、要するに、お互いに協定を結んでおります基本労務契約の線に沿わない解雇ということになれば、すべてこれは不当な解雇になろうかと思うのであります。
  24. 八木昇

    八木(昇)委員 その説明は違いはしませんか。
  25. 小野裕

    小野政府委員 失礼いたしました。ただいまの十二条六項の適用は、この条項についての合意された議事録によりますと、「第十二条6の規定は、合衆国軍隊が使用している施設及び区域内の軍紀維持撹乱を含む安全上の理由による解雇の場合にのみ適用されることが了解される。」こういう了解になっておりまして、私、うっかりいたしまして失礼いたしました。
  26. 八木昇

    八木(昇)委員 あなた、防衛施設庁長官がこういう基本的なところの認識を欠いておいて、そうして日本駐留軍労働者のあなた雇用主ですぞ、それが基本的な点の認識を欠いておいて、そうして駐留軍労務者労働基本権が守られるなんということはナンセンスです。これは即座に答えられなければならぬ問題です。私、いま質問してちょっと驚いたのですが、もうこういうことはすぱすぱと答えられると思ったのですが、おっしゃるとおりなんです。最初の答弁を間違うておりましたと言って、訂正された答弁のとおりなんですね。私もしろうとですが、ほんの二、三日ですらすらと読んできただけではっきりする。それはこの地位協定に関するところの合意された日米間の議事録の第十二条において明確に書いてある。いわゆる地位協定「第十二条6の規定は、合衆国軍隊が使用している施設及び区域内の軍紀維持撹乱を含む安全上の理由による解雇の場合にのみ適用されることが了解される。」こう書いてある。すなわちこの十二条6というものは、結局軍紀を乱した、軍紀維持撹乱をはかった、そういう行動をやった駐留軍労務打についてのみこれを適用する、これは明確ですね。そうしますと、結局先ほど来のお答えに基づきますと、駐留軍労務者は、日本政府に雇われておる労務者に関する限り、すべて日本法令によって労働条件は守られる、しかし一部の例外がある、その一部の例外は十二条六項による例外である。その十二条六項は何であるかというと、軍紀を乱したという場合に首を切られる場合があり得るということになるわけですね。この十二条六項の事項以外は、日本国内法によって労働条件は守られなければならぬということになるわけだと思うのですが、そうでしょうか。
  27. 小野裕

    小野政府委員 たてまえとしてはそういうことでございます。
  28. 八木昇

    八木(昇)委員 そのたてまえとしてはというのは、どういう意味ですか。
  29. 小野裕

    小野政府委員 労働条件あるいはいろいろな雇用条件につきましては、なるほど法規保護はございますが、その法令範囲内における弾力性というものは、各職場あるいは各職域によりましていろいろあるわけでございます。ぴたりと同じ規定で同じ作業ということにはまいらない、そういう意味で多少の弾力性があると申し上げたわけであります。
  30. 八木昇

    八木(昇)委員 いや、それは作業内容とかなんとかいうことは問題にならないでしょう。結局相互間で別段の合意をする場合、すなわち十二条六項の合意の場合以外は、日本法令適用を受けなければならぬということじゃありませんか。それ以外に何かあるのですか。作業の違いなんというのは、あらゆる産業、あらゆる企業のあらゆる職種においていろいろあるわけです、駐留軍労務者の場合。
  31. 小野裕

    小野政府委員 どうもことばが足らなかったかもしれませんが、法令という段階におきましては、これは守られるべきものであります。
  32. 八木昇

    八木(昇)委員 それでわかりましたが、法令といわれる限りにおいては、これはもう当然、結局軍紀撹乱するというような場合、それに関連するような場合以外は日本法令が守られなければならぬというお答えでございます。ところが実際は、日本法令が守られていない例が多々あるのですね。それは私が言わなくても大体御存じだと思いますが、実は多々ございます。いまの保安解雇と称するものについてもそうでございますが、ほかの実際の問題、たとえば労働時間の問題とか休日の問題、時間外労働の問題、あらゆる面で実は日本法令が守られていない。その問題は実はあとでここで指摘してお伺いをいたしたいと思いますが、いま申し上げました、先ほど来質疑をしておりますところの十二条六項に基づく解雇の場合も、実際にはこの地位協定どおりに行なわれていないと私は思うのです。従来、アメリカ軍保安解雇と称して首を切った場合は、一体どういう場合に首を切っているのですか。この日米地位協定合意議事録には、「施設及び区域内の軍紀維持撹乱を含む安全上の理由による解雇」、こういう表現になっておりますが、駐留軍労務者についてこういうことをやった例があるのでしょうか。ずいぶん保安理由にして首を切られた労務者が過去にたくさんあるようでございますが、一体どういう人が切られておりますか。
  33. 藤本幹

    藤本政府委員 ただいまの御質問解雇理由でございますが、十二条六項のいわゆる軍紀維持撹乱ということにつきまして、裁判上の問題としてはまだ事例がございませんが、いわゆる保安上の基準というものにつきましては、どういう場合にそういうことがあるかということにつきまして、契約内容を読んで御説明申し上げます。  この基準といたしましては、aとして、「従業員が、妨害行為若しくは諜報行為を行ない、軍機の保護に関する諸規則に違反し、又はそれらのための企画若しくは準備をなすこと。」bが「従業員が、A側保安に直接的に有害であると認められる政策を採用し、又は支持する破壊的団体又は会の構成員であること。」cが「従業員がaに定める諸活動に従事する者又はbに定める団体若しくは会の構成員と、A側保安上の利益に反して行動するとの結論を正当ならしめる程度まで、常習的に又は密接に連繋すること。」ただいま申し上げました基準の中におきまして、A側と申しますのは米軍側のことでございます。
  34. 八木昇

    八木(昇)委員 いまの答弁は、日米労務基本契約条文を読み上げられたのであって、私の質問への答えにはなっていない。具体的にずいぶん駐留軍労務者保安解雇をされたのですが、一体どういうケースで首を切られたかということを実は聞きたかったのですが、それは施設庁長官、不勉強ですな。これは一人の労務者にとっては重大な人権問題ですからね。自分の死活に関する問題ですが、質問にすぱっと、こういうような前例がございました、ああいうふうな理由で首を切られた人がございましたくらいのことが答弁できなくちゃ、これは実際に労務者のことを真剣に考えているとするなら困ります。これも私の聞き及んでおる範囲では、たとえば正式の共産党員であると無条件に首切るのですね。それから秘密に共産党に属しておるという場合でも、わかれば即座にに保安解雇です。それから共産党員でなくても、共産党あたりと相当緊密な連繋があるとみなされる場合は首ですね。共産党員であるというだけの理由で首を切られるような契約ではないと私は思うのです。実際にその者が諜報活動をやったり、実際にその者が軍紀妨害をやったりという具体的事例がなくては、保安解雇をせらるべきではないと思いますが、それは一歩下がるとしましても実際には組合活動を熱心にやっておるという理由で首を切っておりますね。これは諸機関に雇われておった人の例ですけれども、卑近な例をあげますと、昭和三十年の事例ですからちょっと古いですが、昭和三十年に特別退職金の闘争を全駐労がやった際に、そのときの組合幹部七名を首切った、それはいわゆる先頭に立って戦ったために。これは一種の組合弾圧です。こういう例がある。それで、このことは明らかに不当労働行為であるということで神奈川県の地労委に提訴をした。そうしたら、そのとおり申し立てが通ったわけですね。そして、これは不当なる解雇であるから職場へ復帰せしむべきである、同時に、その間の賃金を支払うべきであるという地労委救済命令が出たが、米軍がこれをけった。とうとう従わない。当時はまだ米軍の直接雇用でございましたから、地労委命令米軍がけったので、今度は日本裁判所地労委そのものが訴えた。そうしたならば、それはもうそのとおり不当労働行為であるけれども、しかし日本アメリカに処罰をするということはできないというような地方裁判所決定だったらしいんですが、こういうように、この例外の運用についても、実際は、合意に達したところの議事録確認事項どおりに行なわれていないじゃありませんか。その辺の事例と、それから日本政府としての見解をひとつ述べていただきたいと思います。   〔藏内委員長代理退席松澤委員長着席
  35. 小野裕

    小野政府委員 米軍側としては、協定の、あるいは議事録の線に沿って考えておると私どもは信じておるのであります。また、私どももそのようにさせるように努力をしておるのでありますが、個々のケースについて、あるいはそうしたところで見解の相違と申しまするか、認定の違いと申しまするか、異存の出るケースも間々起こっておることは承知しております。しかし、できるだけ間違いのないように持っていきたい、こういうことでございます。
  36. 八木昇

    八木(昇)委員 いま大船PX保安解雇事件についての事例を言うたんですけれども、こういうような場合は、日米地位協定十二条六項によるところの正当なる保安解雇ではない。アメリカ軍は十二条第六項を悪用しているというふうにお考えになりましょうか。
  37. 小野裕

    小野政府委員 ただいまお尋ねの例は、おそらく大船の問題かと思いますが、当時の契約関係は直接雇用でございましたので、地位協定規定そのものには直接関係はないかと思うのでございますが、ただ、それにいたしましても、米軍の処置が適当であったかどうかということについては紛争になってきておる。そういう場合に、労働委員会あるいは裁判所等で御決定、御判定がありました場合は、それを尊重するのは当然でございます。
  38. 八木昇

    八木(昇)委員 もう一つ伺いいたしますが、アメリカ間の十二条六項の解釈は非常にシビアーです。そこで、たとえばある政党に属しているとか、米軍施設内ではなくて施設の外で政治活動をするとかいうようなことは、十二条六項による保安解雇理由にならないと私は思うのですが、政府としてはその辺どういうふうにお考えになっておるか。  もう一つは、昼の休憩時間に組合幹部組合の一報、指令を伝達するとか、その他そういうようなことをやることについても、米軍がそれをにらんで事実上やらせていないし、それをあえてやろうとすれば保安解雇するというようなことも、十二条六項に当てはまらない米軍の違法な行為であると私は思うのでございますが、そういった点についての日本政府の厳然たる解釈、態度というものを示してもらいたい。
  39. 藤本幹

    藤本政府委員 お答えいたします。  ただいまの御質問基地内におきますところの組合活動でございますが、先生のおっしゃいますとおり、休憩時間中の組合活動につきましては軍の許可を得てやるというたてまえになっておりまして、職場によりましては非常に厳格にする場合もございますし、職場の担当者の考え方によりましてはかなり自由にやらせるという、いろいろな点がございますが、いずれにいたしましても完全に自由な瞬間がとれないという場合のあることは確かでございます。この点は、やはり軍隊という特殊な事情もございますので、ある程度はやむを得ないのではないかというふうに考えております。
  40. 八木昇

    八木(昇)委員 それは基地の囲いの外に労働者を集めてやる場合はどういうふうに考えられるか。  それから、政党に属しておるということだけをもって首切りの対象にすることについてはどうであろうか。  また、基地の外の一般の地域において政治活動や選挙運動をするというな事柄について、一体どう考えておるか。
  41. 藤本幹

    藤本政府委員 ただいま御質問のございました基地外におきますところの各個人の行動につきましては、特段の制約はないものと考えております。
  42. 八木昇

    八木(昇)委員 ところが、いま申し上げますように、大船の場合は、アメリカ軍に直接雇用をされておった場合ですらこういう地労委決定が出ておる。今日間接雇用になっておるときにそういう事柄が起こると、それは文字どおり地労委も地方裁判所も、その解雇は不当であり、職場へ復帰させろという決定が出ることは明らかです。そうすると、それにもかかわらずアメリカ軍は、一回保安解雇をした者について実際に復職をさせた例はないんじゃないかと思うのです。それじゃ一体どうしてくれるかという日本政府の権威は、全くゼロじゃありませんか。政府の権威だけではない、日本労働委員会並びに日本裁判所の権威はゼロだ。米軍によって文字どおり踏みにじられておるわけなんです。一体これについて対策、手段はないのであるか、一体今後どういうようにするつもりであるか、その点。
  43. 藤本幹

    藤本政府委員 確かにおっしゃるとおり、保安解雇につきましては、裁判所あるいは労働委員会決定、判決がございましても復職の機会が与えられないわけでございますが、これにつきましては、従来の段階といたしましては、やはり駐留軍という関係でわれわれとしてはやむを得ないと思っておりますが、かような裁判所の判決なりあるいは労働委員会命令等につきましては、日本政府といたしまして、それに従って雇用するというかっこうに現在はなっております。
  44. 八木昇

    八木(昇)委員 一回駐留軍によって解雇されたものであって、日米協議をした結果、復職が認められたという前例が一つでもございますか。
  45. 藤本幹

    藤本政府委員 正確にお答えできませんですが、保安解雇以外の問題でございましたら、あるいはあったかと思いますが、大体においてございません。
  46. 松澤雄藏

    松澤委員長 本会議散会まで休憩いたします。    午後二時一分休憩      ――――◇―――――    午後四時二十五分開議
  47. 松澤雄藏

    松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きま  す。質疑を続けます。八木昇君。
  48. 八木昇

    八木(昇)委員 本会議が始まる前の委員会の際にいろいろ質疑をしたわけでありますが、その結果明らかになりました点は、要するに駐留軍に働く労働軒についても、日米相互間で別段の合意をする場合を除くほかは、日本国内法適用がなされるものであるということでございました。その日米相互間で別段の合意をする場合というのは、地位協定十二条六項でそれを示してある、そうして十二条の六項の適用は、いわゆる駐留軍の秘密を守ることその他のそういう保安関係に関する部門に限られるのだということが、大体明らかになったと私は思うのであります。そこでこの十二条六項は、そういう保安関係解雇の場合についてこれが示されておるということでございましたが、保安関係解雇の場合であって、この六項に示されておるような手続による協議がととのった例はない、こういうふうにお答えになったように思いますが、そのとおりでございましょうか。
  49. 藤本幹

    藤本政府委員 さようでございます。
  50. 八木昇

    八木(昇)委員 日米間のこの協議の結果、アメリカ駐留軍が一応解雇を申し渡した者の中で、保安関係解雇以外については復職が認められた例があるかもしれないということでございましたが、この保安解雇に関する限りは復職を認められた例がないということであるとするならば、事実上第十二条六項というものは全く有名無実、こういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  51. 藤本幹

    藤本政府委員 ただいまの御質問の十二条六項につきましては、ここに書いてございますように、復職のできない場合、やむを得ない場合には、定められた期間の範囲内におきまして賃金その他の補償と申しますか、給料の支払いを米軍がするということになっております。
  52. 八木昇

    八木(昇)委員 いや、十二条六項というものは、保安上の理由でもって労働者が首を切られた場合は、日本国政府は、その首切りが不当である場合、労働委員会決定もしくは裁判所決定を待ってその決定駐留軍側に通報する、そうしてそれに対して駐留軍は、その通報を受けてから七日以内に、今度は逆に日本側に通報する、そうして両者が協議を始めて、実際的な解決方法を見出すために協議をしなければならぬ、こういうことになっているわけですね。ところが、この協議が、いまだかつて一度もととのうたことがないとおっしゃるわけでしょう。ということは、日本労働委員会決定があり、裁判所決定があって、アメリカ駐留軍命令が幾ら発せられても、事実上はそれは全く無効であって、第十二条六項というものは死文にひとしい、こういうことになるわけでしょう。
  53. 藤本幹

    藤本政府委員 先ほどの私の説明が不十分でございました。協議のととのったことがないというように申し上げましたのは、旧契約――旧契約と申しますのは、地位協定が新しくなる前に現在の基本労務契約の改定がございまして、三十二年の十月でございましたか改定をいたしました、それ以前のいわゆる旧契約でございます。そのときのいわゆる保安関係の案件につきまして、ととのったものはございません。新協定――新協定といいますか、新協定以後におきまして確定いたしました保安関係のものはまだございません。裁判などで長くかかっておる、そういうことでございますので、私が先ほど申しましたのは、旧契約時代の保安解雇関係でございます。新契約に入りましてからは、地位協定以後の事案といたしましては、裁判上の確定したものはまだございません。
  54. 八木昇

    八木(昇)委員 新協定になってからはそういう事例はないわけですね。しかしこれは、旧協定の時代にこれができなかったということからこれを類推すれば、これは今後も非常に困難だと思うのでございますが、その点について防衛施設庁考え方が何らかあってしかるべきだと思のです。この十二条六項の(a)(b)(c)(d)というこの定めは、やはり将来は改定せらるべきものだと私は思うのですが、戦後二十年もたったわが国において、こういう定めがあること自体おかしゅうございますし、この定めがあるにもかかわらず、この定めの精神が全く生かされていないということについて、これはどういうふうにお考えであるか、それから今後、これが改定交渉等をやる御意思がおありであるかどうか、その点を確かめておきます。
  55. 藤本幹

    藤本政府委員 私から申し上げられますことは、現在の状態におきましては、この条項につきまして、駐留軍隊という事情がございますので、保安に基づくところの解雇というものにつきましては、復職させることは非常にむずかしいのではないかと考えております。それ以外のいわゆる解雇の問題につきましては、当然復職させることになっております。ただ、この保安の問題だけは、軍隊という特殊事情がございますので非常にむずかしいのではないかと考えております。
  56. 八木昇

    八木(昇)委員 それはどうもいただけないですね。それは保安解雇の場合、正当なる保安解雇と一応認められるような場合、たとえば駐留軍に働く労働者がスパイ活動をやったとか、あるいは駐留軍に働く労働者が何らかの軍紀の破壊活動を実際にやったとかいうような場合には、労働委員会日本の司法裁判所も、これは不当解雇であるという判定は出さないはずなんです、実際にそういうことをやった場合には。ところが、ここの十二条六項に得いてあるところは、日本労働委員会やそれから司法裁判所が、これは保安解雇に当たらない、保安解雇せらるべき趣旨のものでないという決定を下した場合について規定があるわけでしょう。それすらも、相手方が駐留米軍である以上、どうにもしょうがないんだという防衛施設庁の態度ですか。そんなばかな話はありません。よろしゅうございますか。もう一回言いますがね。正当なる保安解雇ならば、日本裁判所はそれを認めるんですよ。保安解雇に当たらないような解雇をやったという場合に、日本労働委員会や司法裁判所が、それは不当な解雇であるからして、現職復帰をさせなさいという決定を出した場合の手続についてここに書いてあるのでしょう。それすらも米軍がはねるという現状に対して、それはやむを得ないという日本政府の態度ですか。
  57. 藤本幹

    藤本政府委員 ただいまのお話のように、保安解雇理由につきましては非常にむずかしい事情もございます。おっしゃるように、裁判所なり労働委員会決定がそれに該当しないという事案があるわけでございます。そういう場合におきましても、日本側でその事態の中からやはりそれは該当するのだということの決定が最終的に行なわれた場合には、われわれといたしまして、それをさらに復帰させるということは非常にむずかしいのではないか。ただいま先生のおっしゃったように、いわゆる正当と申しますか、これは当然、配慮さるべき性質のものでないというものでこういう事案が今後出るという場合におきまして、復職の問題につきましては、私の現在の立場から申しますと非常にむずかしいと申し上げましたわけでございますが、十分この点につきましては、先生のお話を尊重いたしまして検討させていただきたいと思います。
  58. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで、これは労働大臣にお伺いをいたしたいのでございますが、ただいま施設庁のほうの答弁は非常にあいまいでございます。そこで実際には、日米地位協定十二条六項に基づくいわゆる保安解雇というものが、非常に幅広く適用されているわけです。事実は特定政党と近しい関係にあるというだけで首を切られます。それから組合活動を非常に積極的にやって、そうしてストライキを指導したというような場合にも、保安解雇として首を切られておるというような事例が多々あるわけでございますが、そういうような事柄は明らかに不当なる解雇であると私ども考えますし、実際労働委員会やらあるいは日本裁判所が、それは不当解雇である、保安解雇条項に該当しないという判例を下した例がたくさんあるわけです。そういう場合にとるべき日本政府のあり方として、労働省としてはどうお考えですか。現行の地位協定は非常に不満足なものであるとお考えにならぬですか。
  59. 石田博英

    ○石田国務大臣 詳しいことは私も承知しておりませんが、私の理解しておる範囲では、地位協定の十二条六項において保安解雇が不当であると裁判所なり労働委員会が認定いたしました場合においては、一定期間、一年間を限って賃金の支払いをするということがあったと思います。したがって、その条項に従って処置せられるべきものだと考えておる次第であります。
  60. 八木昇

    八木(昇)委員 それは保安解雇、不当なる保安解雇と思われるような事柄が行なわれた場合の手続に、(a)(b)(c)(d)と項目が分かれているわけですね。その(d)の項目に当たるわけです。しかしながら、本来の考え方というものは、(c)の条項で両者協議をして、そこに結論を見出すということが本来なんですね。(d)というのは、それでも合衆国政府が納得をしないという場合に、一年間を限って金を出す、こういうわけでございますから、実際から言いますと、十二条六項というものは、ほとんど大半が死んでいるのではないかということをわれわれ考えるわけです。そういう意味合いにおいて、これはやはり戦後二十年もたっておるし、駐留軍に働く労働者といえども労働者として働く権利というものがある。占領軍の恣意によってどんどん首を切られてはたまらぬわけですから、これは現行の地位協定内容のままにおいても、実際運用において改善せられるべき余地があると思います。それと同時に、近い将来これが改定の主張をさるべきではないか、特に労働省の立場としては、そういう主張をすべきではないかと思うのです。
  61. 石田博英

    ○石田国務大臣 その最後の(d)項目を実施する前に協議をしなければなりませんし、それから裁判所決定されたことが実行されるように、日本政府としては本条約の趣旨に基づいて努力すべき義務が当然あると思っております。そういうことを一生懸命やれば、正確にやればこの協定で――私どもこの協定が守られることを期待しておるのでありまして、この協定を現在の段階で改定すべきか修正すべきかという点については、まだ検討はいたしておりませんが、ただ数カ月前に、九州の板付あたりで、いわゆる地位協定上の解雇予告なしに馘首が行なわれたというようなことも聞いておりますので、そういうこととあわせて実情を調査の上、検討したいと思っております。
  62. 八木昇

    八木(昇)委員 時間もございませんから先へ急ぎますが、先ほど来防衛施設庁答弁にありましたように、実際は、この(c)項による協議がととのうたという前例は実は一つもないのでございます。保安解雇の場合については。保安以外の場合で協議のととのった前例は多少あるそうですか、保安解雇については前例がないということから考えましても、これは十分前例等を研究していただいて、今後積極的に前向きの方向で、労働者の利益を守るという立場から前向きの方向で努力を願いたいと思います。  そこで、少し具体的な点に入りたいと思いますが、この日米間の労務基本契約というものと日本国内法である労働基準法との関係、これはどういうことになりましょうか、労働省の基準局長あたりから御答弁いただきたいと思います。
  63. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御指摘の点でございますが、労務基本契約そのものと、それが就業規則に化体したと申しますか、変わったという場合とがあると思います。内容的には、労働基準法に抵触しているかいなかという点についての検討問題がございますが、この労務基本契約を作成いたします際に検討したことでございますが、基準法には抵触しないというふうに考えておるわけでございます。それが今度は、駐留軍従業員就業規則というものがつくられまして、その基本契約内容がほとんどそれに盛り込まれるという形が、現在行なわれておるわけでございます。特に昨年の七月に労働省でも指導いたしまして、施設ごとに就業規則を作成いたしましたような次第もありまして、その就業規則作成及び届け出の際にあたりましては、内容を検討しておる次第でございます。
  64. 八木昇

    八木(昇)委員 これは労働省で非常に苦心をして、無理にそういう解釈にしたんじゃないかと私には感ぜられるわけなんですが、実際幾つかのところを見ていきますると、この労務基本契約で定められてある事柄のうち、日本基準法に抵触すると考えられる部面が幾つかあると私は感じておりますし、それからまた、駐留軍労働者の就業規則につきましても、今度は逆に基本労務契約より下回っておると申しますか、そういう部門もあるように見受けまして、その間が非常に混然としておるという感じを実は私は持っておるわけでございます。  そこで具体的に幾つか伺いたいと思いますが、まず第一に、就業規則というものは事業所単位につくられるわけでございますが、この駐留軍労働者の問題に関する限りは、就業規則については全国全く同一の文句のものに実はなっておる。そうしてその就業規則の条文の中に、事ごとに基本労研契約に基づいてというようなことが随所に出てくるわけでございます。これは日本政府が雇い入れる労働者についての就業規則としては問注いではないか、就業規則のそういう形態ということ自体に問題があるのじゃないかということを私は感じておりますが、その点はいかがですか。
  65. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御指摘のように、就業規則の作成は、労働基準法八十九条に基づきまして使用者がその義務を負うわけでございます。その就業規則は、範囲といたしましては、労働基準法の適用事業場という考え方がとられております。したがいまして、駐留軍従業員の就業規則を作成いたしますにつきましても、各施設ごとにそれぞれ就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る手続をとらしておるわけであります。ただ、その内容が、駐留軍従業員全般に共通な内容のものとして考えられる部分が相当あり、それがたまたま各施設ごとに届け出られた就業規則の内容になっておるということは事実でございます。しかしながら、始業、終業その他施設ごとに特殊な事項につきましては、それぞれ各施設の事情を考えまして特殊な規定を定めておるというふうに私ども承知しておる次第でございます。
  66. 八木昇

    八木(昇)委員 たとえば給与の支給日等につきましては、これは就業規則で明示すべきじゃございませんか。
  67. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御指摘のように、事業場ごとに毎月きまって支給する給与の支給日というようなものにつきましても、就業規則の中に盛り込むように指導いたしてまいった次第でございます。
  68. 八木昇

    八木(昇)委員 駐留軍労働者のための就業規則には、支給日が明示をしてございませんですね。こういう書き方なんというものはないでしょう。「第十七条 毎月支給される給与は、その月の一日から末日までの分をその翌月十日又はその頃に支給する。」なんというような、ばかな就業規則はないでしょう。「その頃に支給する。」なんという……。
  69. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 駐留軍従業員につきましての就業規則作成の実情をもっと詳しく申し上げますと、形式的にいわゆる就業規則と称するものと、それからその付属文書的に基本労務契約と、それから当該事業場において毎月きまって支給する給与の支給日、それから当該事業場の就業計画といったようなものを全体として就業規則としてとらえておるわけでございまして、たまたま就業規則と名づけておる文書そのものに、いま申しましたもののことごとくが網羅されていないという点について、判断をいたします際にややこしい面がございますが、法的には一応就業規則、それに付属しましたところの付属文書を総括して就業規則として扱い、届け出がなされるというふうに私どもは理解いたしております。その中に、いま申しましたように給与の支給日という事項につきまして、いわゆる就業規則と名づける文書そのものには入っておりませんが、付属文書的なものとしてそれに付加されているというように承知いたしておる次第でございます。
  70. 八木昇

    八木(昇)委員 日本の普通の国内の企業において、そんなふうなことが私はあるとは思わないのですが、これは当然就業規則によってぴしゃりとせらるべきでございまして、労働者は生活設計というものを常に立てなければならぬ。今月の給料は十一日にもらうということが明示されておらなければいけないから、法はそのことを命じておるわけですね。就業規則において月々の給与支払い日はいつ何日ということを規定しろということになっておるわけでございまして、それを規定づけ得ない理由が何かございますか。就業規則上これが明示できない理由が何かございますか。
  71. 藤本幹

    藤本政府委員 給与の支払い日につきましては、ここに書いてございますように、原則的に十日というふうにきめられてございますが、各部隊の施設あるいは職場によりまして給与計算の時期がそれぞれ多少違いますので、この就業規則の中で一律にできませんので、原則的な日にち十日というものは入れてございますが、あるいは十一日、十二日という場合もございます。それはそれぞれの職場におきまして、そういう趣旨のことを別に周知させるようにいたしております。
  72. 八木昇

    八木(昇)委員 それは理由にならないですね。就業規則というのは、各基準監督署ごとに、それから各職場ごとに定められておるのですから、そこの職場が十一日なら十一日とその就業規則に規定すればいいし、ある職場が十日ならば十日と規定すればよろしい。これはどうしてできないのですか。
  73. 藤本幹

    藤本政府委員 各事業場ごとに監督署に届け出る別紙には、みな日にちが明示して出されてございます。
  74. 八木昇

    八木(昇)委員 就業規則に別紙なんというのは、大体おかしいじゃないですか。これは基準局長、そういうものがあるのですか。こういう重要な事項について、別紙に規定しているなんというのは――給料がいつもらえるかというのは、労働者にとっては基本的な問題ですよ。極端に言いますと、あした給料がもらえると思っていたものを、三日先、四日先に延ばされたといえば、その日暮らしの労働者は干上がってしまいます。だから就業規則の第十七条で、「翌月十日又はその頃に支給する。」というばかな規定のしかたはない。
  75. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 法律問題を離れまして、労働者にとっていずれが便宜であるかという点につきましては、一本の就業規則の中にもろもろの労働条件が明示されるという姿が便利であろうと思います。ただ法律的には、たとえば職員には職員規則があり、臨時職員には臨時職員の規則がありといったように分かれておったり、あるいは常雇い工でありましても給与規程は別に作成しておるという例は、御承知のように一般の事業場でもかなりあるわけでございます。法的には、そういったもろもろの規定を一括いたしまして、全体を一本として見ましたものは当該事業場の就業規則となるものと解しておりますので、法律的に見ますれば、就業規則の付属文書になっておるけれども、法的性格は就業規則である、かように解せられますので、法律的観点から申しますれば、こういう形態も可能であるわけでございます。ただ、いずれが便宜であるかどうかということにつきましては、いろいろ考え方があろうかと思います。
  76. 八木昇

    八木(昇)委員 それで法律上適法であるかどうかということについては、かりに適法だとしましても、これは就業規則の本来の目的から言ってあまり望ましくないという意味に理解をしたわけでございます。そういう点は、ひとつ防衛施設庁のほうにおきましても将来十分御勘案願って、労務行の方からのいろいろな強い要望もあると思いますが、前向きで御検討いただきたいと思います。  そこで、先ほど基準局長の答弁に漏れておるのでございますが、この就業規則の中に、在日合衆国軍隊決定したときとか、在日合衆国軍隊が必要とするときとかいうような文句が幾らも入っておる。それからまた、基本労務契約第何章節何条如何項により云々というふうなことなんかが、あちこちに入っておるのでありますが、これは私はおかしいと思うのです。本会議前の質問のときにも明らかにしましたように、これは特段の例外を除いては国内法適用であるということになっておる。その特段の例外というのは、駐留軍という特殊性を認めて、そうしていわゆる保安解雇という特段の例外ということがあり得る。しかし、それ以外は、これは地位協定上明らかに日本国内法適用すべきものである。雇い主日本政府である。こういうことから言いますならば、就業規則に在日合衆国軍隊決定したときなんというのが随所に入れば、アメリカ軍が必要とするときには思うさまどんなことでもやれる。あしたは休日だけれども、どうもベトナムの情勢が険悪であるからして、あしたみな出てこいと駐留軍が言うたらば来なければならぬ。国内法規である就業規則に、こういうことが随所にうたわれておるというのはおかしいと思いませんか。
  77. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 たとえば休日などの例をとってみますと、労働基準法では、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。」週に一回与えるという規定がございます。それをこの規則について見ました場合に、「作業上必要なとき、又は緊急の場合において在日合衆国軍が決定したとき」という文書が休日に関連して出てくるわけであります。このこと自体が違法か適法かという問題につきましては、これは休日の予告をする場合または振りかえ日を指定して変更する、その特殊の場合を規定したものであって、一般の聖業場においてこれこれの場合というふうに規定するのと変わらないというふうにも考えられるわけであります。ただ、御指摘のように軍隊でございますから、そういった休日変更頻の度が非常に多くなりまして、労働者に対して非常に酷な結果になりはしないかという、休日を与える場合の運用の問題がそこに出てくるかと思います。そういうような観点から、労働基準法の各条章が適正に順守される限りにおきましては、基準法違反の問題、こういう規定の定め方の問題につきましては、多少別な次元から判断してもいいというふうに考えておる次第でございます。
  78. 八木昇

    八木(昇)委員 私もいまの局長の御答弁のように考えるのです。それは相手が軍隊のことでございますから、やはり通常の工場や鉱山の場合と違うというような場合なきにしもあらずと思います。と思いますけれども、その軍隊が必要とするときに日本政府側に、雇い主側に、それは連絡が当然あるはずでございます。そして日本防衛施設庁関係機関が、アメリカ駐留軍の意を受けていろいろなことをやるというわけでございますから、就業規則そのものにアメリカ駐留軍が必要とするときとか、アメリカ駐留軍がどうこうというようなことを入れることは、少なくとも望ましい形態でないということは言えるのではないか。また労働省のほうも、はっきりは言われないが、そういう気持ちがあらわれておると思うのですが、これは施設庁としてはどうお考えでしょうか。
  79. 藤本幹

    藤本政府委員 就業規則のそれぞれの規定におきまして、在日合衆国軍隊決定したときという表現がございますが、基本労務契約におきまして、いわゆるそれぞれの職場におきますところの指揮、監督、訓練等は、直接軍がやるというかっこうになっております。また軍が決定をする場合におきましては、先生のおっしゃったように、当然事前に日本側に連絡がございまして、日本側の労務管理機関との間に協議を行なった後に決定をするという形をとっております。
  80. 八木昇

    八木(昇)委員 実際にそういう形をとっているのですから、就業規則の中に米軍の地位というものをこういうふうに明確にうたい込むということは、日本政府の雇い入れる労務者については日本法令でいくのだということを、ほんとうに文字どおり今後とも推進していこうとする政府側の立場であるとするならば、これはおかしいですよ。ですから、その点はぜひとも私の要望するような方向において今後ともやっていただきたいと思います。  実は時間がゆっくりあると、各条項にわたって私の予定してあるものだけでも実は二十七項目ございまして、これは非常に残念なんでありますけれども、この委員会外の適当な時期に施設庁と話し合う機会もあろうかと思いますので、きょうはできるだけ省略をいたします、時間も五時を回っておりますから。しかし、問題はたくさんあるのです。それは休憩時間の利用の問題もございますし、それから抜き出して申しますと、駐留軍労働者の時間外勤務についてもございます。駐留軍労働者の場合には、労働時間を四十時間から四十八時間の間なんという定め方をしておる。そして通常は四十時間働いておるが、四十八時間をこすまでは、時間外労働賃金は払わないというようなことになっておるということ自体も問題がございます。それから、これはちょっと御答弁をしていただきたいと思いますが、時間外労働をやる場合に、駐留軍当局が必要とする場合には無条件にやらせていいことになっているようですね。日本国内基準法によりますと、労働組合の承認を得て、もしくは労働組合がない場合には、職場の四分の三ですか、以上の労働者を代表する人の承認を得て、いわゆる三六時間外協定というものを結ばなければ、時間外労働をやらせてはならぬということになっております。駐留軍労働者の場合には、いやおうなしに、そうして時間外労働の時間につきましても、極端に言うと無制限に時間外労働をやらしていいようなことになっておるようでありますが、その点いかがお考えでしょうか。
  81. 藤本幹

    藤本政府委員 ただいまの時間外労働に関する問題は、就業規則の十一条に関連する御質問だと思いますが、この十一条の規定は、先生のおっしゃいました基準法の三十六条の協定を前提として、この基準法にのっとりまして実施するというたてまえになっております。実際の問題といたしましては、現在まだ、いわゆる三六協定というものは、組合従業員代表等との間に協定がととのっておりません。これにつきましては、早急に協定を成立させるように努力したいと思います。
  82. 八木昇

    八木(昇)委員 ということは、その協定締結に至らざる間は、時間外労働をさせないということですね。
  83. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 先生の御質問の趣旨の中に、労働基準法に違反する問題と基準法を上回る基準内における変更の問題、二種類があろうかと思うのであります。そこで週四十時間就業しておる、こういうことになりますと、労働基準法の四十八時間より有利な労働時間になっております。三十六条によりまして、労働基準法三十二条第一項に定めます労働時間をオーバーする場合に、三六協定を結ばなければ労働基準法違反、こういう問題が起こりますけれども、その点につきましては、駐留軍従業員労働時間は必ずしもその点につきまして違反を生ずるかということにつきましては、違反だというふうにきめつけるわけにはいかない点もあろうかと思います。しかし、いずれにいたしましても所定労働時間を上回る超過勤務をさせます場合には三六協定という制度がございますから、ただいま藤本務部長が答えましたように、協定を結ぶのが正当であろうと考えるわけであります。  また超過勤務手当につきましても、労働基準法のたてまえは、法定時間をこえた場合に割り増し賃金を払うべしという基準法上の義務が生じます。しかし、それを上回る定めといたしまして、法定ではなく所定の労働時間を上回った場合においても、割り増し賃金を払って何ら法律上は差しつかえないわけであります。そういった問題として扱うかどうかという問題がございます。  なお、支払いの実態等につきましては、常時の監督を通じましてさらに掛算してまいりたいと思います。
  84. 八木昇

    八木(昇)委員 いまの点はごもっともだと思います。だから週四十八時間以上になった場合は、これはいやおうなしに時間外賃金を払わなければならない、これはもう当然でありますが、しかし四十八時間以上の時間外労働をさせる場合等につきましては、やはり当然三六協定という制度がなければならないわけでありますから、そういった問題については、先ほどのお答えがございましたようにひとつ善処を願いたいし、その三六協定がないままに時間外労働をさせるということは、もしそれが事実行なわれるとするならばこれは違法である。その点は、少なくともひとつ厳に慎しんでもらいたいと私は考えるわけであります。  ただ、先ほど基準局長が言われたのと少し実態が違うといいますか、問題があるというのは、四十時間から四十八時間の間の労働時間だというふうにしておりますけれども、これは始まるときと終わるときというのが明確でないのですね。通常の場合には、八時に出勤して、昼休み三十分で、午後何時に退勤するというわけでございますが、これが不確定なんですね。毎日の労働が、何時に出てきて何時に帰るというようなこと等につきましても、不確定だというような事情があることを御承知おきを願いたいと思うのです。  そこで、あと二、三でとどめますが、一つは年次有給休暇の問題です。休暇のとり方につきましても、駐留軍労働者の場合には労働基準法どおりになっていない。労働基準法によりますと、これはもう労働省が希望するときに休暇を与えなければならぬということが、非常に明確化されておるのです。その点についてどうお考えであるか。それからもう一つの点は、年次有給休暇というものは労働者権利です。そうすると、たとえば解雇をされる場合に、きょうが四月六日でありますが、五月末日をもってあなたはもう出てこなくてよろしい、首を切ります、少なくとも解雇予告が一カ月前にありますから、解雇をされる場合にはあらかじめわかるわけですね。その場合、その人の年次有給休暇があと十二日間残っているというような場合に、十二日間は休ませないのですね。日本国内の企業に雇われておる労働者の場合には、これは当然の権利として十二日間休むわけです。それはどういうわけですか。その点もやはり基準法にもとるのじゃないかと考えますが……。
  85. 藤本幹

    藤本政府委員 基準法上の問題につきましては基準局長からお答えいたしますが、実際問題といたしましては、確かに先生のおっしゃったように、年次有給休暇の取り扱いにつきましては、従来駐留軍従業員の場合におきましてはいわゆる月例休暇制度をとっていたような関係もございまして、そういう考え方が、ある時期においては残ったというような状況もございます。実例といたしましても、いま先生のおっしゃったような実例がございましてトラブルが起きているわけでございまして、この年次休暇の手続につきましては、さらに基準法の趣旨に合致する具体的な手続を明確にするように現在協議中でございます。
  86. 八木昇

    八木(昇)委員 明確にするように協議中だということでございますから、ひとつぜひともその方向において解決をしていただきたいと思います。  今度は休暇の取り方につきましても、この駐留軍労働者の場合には、従業員は休暇の始まる日から四十八時間前、すなわち二日前に監督者にその休暇をとる手続をやらなければならぬということになっておりますし、その場合には、それを承認するかしないかというようなことは一切米軍側にその権利があるというような形で、その承認、不承認あるいは振りかえ日を指定する等の措置については、就業規則は明らかでございません。そういう点につきましても、労働基準法三十九条にいうところの有給休暇は必ず与えなければならぬのだ、それが与えられない場合というのは特殊の例外の場合だけを認めるという三十九条との関連において、これもやはり問題だと私は思うわけであります。これらの点につきましても今後御努力を願いたいと思います。  それから安全衛生に関する面とか、寄宿舎生活の自治あるいは寄宿舎生活の秩序、こういう問題につきましても、実際いろいろ話を聞いてみますると、日本の法の命じておるとおりになっていないようであります。これらにつきましても、ひとつ十分今後改善に御努力を願いたいと思います。  ほかにもまだたくさんございますが、その辺は省略をいたしますが、もう一つの点は、労働基準監督官は実際問題としてどうしておるのでしょうか。駐留軍施設の中で労働者が実際に働いておるような現場等々に立ち入って検査をするなどというようなことが、時には行なわれておるのでしょうか。
  87. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 一般の監督以外に、特に検査業務としまして、ボイラ検査等安全規則のたてまえから実施しなければならないという問題がございます。こういったものにつきましては、その必要のつど検査を行なうというような次第でございます。ただ、検査を行ないますにつきまして、監督権限はございますけれども、特殊な施設でございますので、基本労務契約第十七条の規定によりまして、十分連絡をとって措置しておるというのが実情でございます。
  88. 八木昇

    八木(昇)委員 実際にいろいろ制限を受けるというようなことはございませんか。
  89. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 労働基準法の面から、いまの検査業務とか、そういう問題につきましては理解があるようでございまして、検査は実施しておるというふうに私ども承知しております。許認可事務の認定等につきましても、施設内に入りまして調査をするという問題が生じますが、これにつきましても、その調査を実施したという報告を受けておるような次第でございます。ただ、港湾荷役とか林業とか建設とか、そういったものは一般産業と比較してどうかと申しますれば、これは検査の頻度その他は低いということは事実であるということを率直に申し上げておきたいと思います。
  90. 八木昇

    八木(昇)委員 最後に、労働大臣にお伺いもしとうございますし、要望もしたいのでございますが、これは本会議が始まる前の質問のときにいたしましたが、労働大臣がそのときにお聞きになっていないと思うのでありますが、実は大船にありますPXに雇われておりました駐留軍労働者の人で、そのうち組合の役員をしておられた七名の方が――これは相当古い事例でございますが、昭和三十年に全駐労の特別退職金闘争の際に四十八時間ストライキをやりまして、あわせて労働協約の締結とか公死傷病休暇制度の確立を戦い取るために、闘争体制の強化をはかったことがあるわけです。臨時大会を開きまして、その体制の強化をはかったわけであります。そういう事態に対処するために、当時駐留軍当局が、保安解雇に名をかりて七名を解雇したという事件がある。そこで、保安解雇というのは、スパイ行為とか、軍紀の破壊行為とかいうような場合に当てはまる解雇であって、こういう組合活動をやったという理由でもって、解雇することは違法であるということで、神奈川地方労働委員会が原職に復帰せしむべきであるという命令を出したわけです。ところが、これに駐留軍が従わない。そこで神奈川地労委はそのことを今度は裁判所に持ち出しまして、裁判所決定が、最近の昭和三十七年四月に出されておる。これは明らかに解雇は不法であり、不当であるけれども、しかし、その当時雇い主アメリカ軍機関であるので、日本国が米国を処罰することはできないということで、これはどうにもならぬ、こういうことになっておるわけです。新安保条約になりましてから、こういうPXあたりに働く人も駐留軍の直接雇用でなくて、今日では日本政府がこれを間接雇用することになっております。旧協約時代は軍の仕事をしておる人の場合は間接雇用で、諸機関に働いておる人は軍の直接雇用になっておりました。ところが、今日では諸機関に働く人も間接雇用になっております。でありますから、今日、こういう事件が起こったときには少なくとも一年間分の給与の保障を受けるわけですね、先ほど来の答弁によりますと。ところが、それ以前でありましたために、実に気の毒な状態に放置されておる。そこで、これにつきましては、これは法令上はいろいろ窮屈に解釈すれば問題があろうと思いますが、何らかの救済措置――駐留軍への職場復帰がもし不可能だとするならば、何らか金の面ででもこの救済措置がはかられてしかるべきである。地労委並びに日本裁判所が不当な首切りであるということを認定しておるにかかわらず、そのままおっぽり出されるということで、そのまま日本政府が見すごすというようなことは許されぬのじゃないか、こういうふうに考えるのでございますが、労働大臣として何らかこれの救済について動いてもらえないかということであります。
  91. 石田博英

    ○石田国務大臣 いま御承知のごとく、安保条約の改定のおかげで、それに伴って地位協定その他が改められたものでありますから、これから先はこういう問題は起こらないと思います。しかし、その以前に行なわれた事件についていまお話がございましたが、制度上どういうようなことができるか検討をいたしてみたいと思っております。
  92. 八木昇

    八木(昇)委員 これは関係労働者の方からも問題を持ち出してくる機会があろうと思いますので、ひとつ極力善処していただくようにお願いを申し上げたいと思います。  そこで、最後に要望を労働大臣並びに防衛施設庁にするわけでありますが、先ほど来のお話のように、現在ある就業規則はやはりいろいろと不備な点がある。これを改善する方向において努力しているというお話でございますので、ひとつ今後ともねばり強く労使で話し合いを続けて、現在の地位協定、それから現在の基本労務契約のワク内におきましてでも、いまの就業規則よりはもう少し改善できる面が相当あるのではないかと思います。その点は、ぜひとも誠意を持ってこれが改善に努力していただくようにお願い申し上げる次第であります。  それからなお、本来はちゃんと駐留軍労働組合という組合があるわけでございますから、就業規則のほかに、本来は労働協約が結ばれなければならぬわけです。ところが、その労働協約が結ばれるについて一番のネックとなっております点は、組合活動の問題がネックとなっております。すべて軍側の許可を得なければならぬ。それは、なるほど軍側の許可というものは必要だと思いますが、もうどんなことでも、ピンからキリまで許可を得なければならぬというような、そういう労働協約の結び方をやろうとしましても労働者はうんと言えないわけです。でございますから、軍のこの許可というものを得なければならぬ部面があるとしても、しかし、もう少し労働組合活動の自由が認められる極限まで、駐留軍に働く労働者といえども認められ得べき労働組合活動の極限まで、その点は施設庁当局としても十分考えていただきたい。そうしてそこに労使間の一つの歩み寄りができるならば、労働協約のほかの条項はずばっと話がつくわけです。その点努力していただいて、ぜひひとつ労働協約が結ばれるように誠意を示してもらいたいと考えるわけであります。  時間が非常におそくなっておりますので、非常にはしょって質問しましたが、私の気持ちをおくみとりいただいて、善処方をお願いいたしまして私の質問を終わります。
  93. 松澤雄藏

    松澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明七日、水曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時二十四分散会