○
河野(正)
委員 いま
淡谷委員の御
指摘になった点について、
関連をして一言お伺いをいたしておきたいと思います。
戦争という
一つの
要素が
精神病あるいは
神経症にどういう
影響をもたらすかという点が、これは
一つのキーポイントになると思います。元来これは当時の
日本の
国軍の基本的な
考え方だと思うのですけれども、
戦争という
要因が
精神上に及ぼす
影響というものが非常に少ないのだというふうな
一つの観念に私は立っておったと思うのです。ですからこれは正直申し上げますが、はたして実際
現状がそうであるかどうかということについて、私も若干経験を持っておるわけです。そしてその当時、いろいろ
制約がございますから、非常に明確な
表現は使わなかったわけでございますけれども、しかし、私は、
西部戦線の際にも言われておりますように、やはり
日本の当時の皇軍ですね、
国軍の中にもやはり
クリークスノイローゼというものはあり得る。要するに
戦争というものの
一つの
モメントというものが
精神上に及ぼす
影響というものはかなりあるのだということを、ある種の統計を通じて当時の
軍医団の
雑誌にも若干論文を発表いたしております。もう少し明確に
表現したいわけであったわけですけれども、いろいろ出時の
制約等もございまして、非常にゆるやかな
表現でやっておりますけれども、当時
日本の
軍医団の
雑誌もやはりそれを掲載いたしておるわけです。だから、
戦争という
モメントというものが
精神上に及ぼす
影響が非常に大きいということを科学的にも否定することはできないと私は思うのですよ。それが
一つ。
もう
一つは、
戦争前から、
軍隊に
入隊する前からあったのかどうかということが
公務傷害になるかならぬかという
一つの条件になってきますけれども、しかし、当時の
入隊させるいろいろな基準がありますが、その際にやはり
精神病という
既往症があれば当然その当時でもチェックしておったと思うのです。私も当時
軍医でそれぞれ
身体検査等をやって、いろいろ
既往症などの
調査をして、そしてそういう前歴がある人は
軍隊に入れぬ、そういうたてまえを一応とっておったと思うのです。ですから、そういうたてまえをとっておったとするならば、やはり
軍隊入隊後新しく起こってきた
精神異常というものは、やはり
戦争という
モメントによって起こってきたという
判断を下すのが私は至当ではなかろうか、こういうふうに思います。そういたしますと、
一つは、
入隊以前からあったとかなかったとかいう問題は、もうすでに
軍隊に
入隊させたという
一つの事実から、私はそれは当然考慮さるべきだと思いますし、それからもう
一つは、当時は
日本の
軍隊でいろいろやかましく言っておったけれども、やはり
クリークスノイローゼというものはあり得る、
戦争によって
影響を受けた
神経症と
精神障害というものはあり得るという科学的な
調査があるわけでありますから、私は
淡谷委員が御
指摘になりますように、この点は単に
社会保障的な
意味だけではない、やはりそういう事実というものは明らかに
証明されるわけですから、そういう
意味からもやはりこの問題については
淡谷委員御
指摘の方向で善処されることが私は妥当だ、こういうふうに考えるわけでございますが、そういう、ただ
社会保障的な
意味だけではなくて、やはりそういう
科学的根拠があるということについてはどういうふうにお考えでございまするか、ひとつ明確にお答えを願っておきたいと思います。