○小林
委員 この問題は、率直に言いますが、
一つには基本的な人権侵害の問題がありますよ。
あとでこの
法律論印はやります。
それから第二番目には、いまも、もろもろの欠陥があるように言われたけれ
ども、厚生
行政、
業務行政はこのままの状態でいいのかということだ。おっしゃるとおり事故が起きるまで厚生省は何ら責任がない、薬事法によってこの事件の経過における何らの指示監督もできないというがごときことは、裏を返せば、この事件の過程において、人体実験をやられていかに人間が殺されたところで、厚生省のいまの
行政では手も足も出ないということになるのだ。そういうことが、一体理屈として認められるかどうかという問題です。
第三番目には、やはり企業のあり方だ。これはきわめて人間軽視の思想です。利潤追求なんだ。ほかの会社よりも早く利益をあげて早くもうけたいというその目的は、ただ
一つ会社の利益追求で、その目的のために人間がモルモットにされて、かくまでも軽視せられているということだ。この薬という企業をこうした形で一体野放しにしておくのがいいかどうかということは、多くの問題がありますよ。なお言えば、厚生省と薬屋との
関係、結びつきです。これも私は
あとで具体的な例をあげて申しますけれ
ども、薬屋と研究機関との結びつきの中には、目に見えない——私は汚職があるとか、あるいは贈収賄、があるとかいうまでは確信を持って申し上げるわけではございませんけれ
ども、それに近いような醜悪な幾重のからくりが行なわれておる。厚生省の
業務局に薬屋の監督をさせることは、強盗の番をどろぼうにさせるのと同じだ、こういうことを極言しておる者がある。私はそのことばが極言であるかないか、
あとでいろいろ申し上げますが、ただ、いまも言うように、
大臣はこの問題は事件として済んだとおっしゃる。そのことばだが、あなたはまだ実態をちっともつかんでおりませんよ。
大臣、事件は済んだなんというものではないのです。済んでいないのですよ、あなた。そういうふうにあなたが、人間の生命がこれほど軽く扱われている問題を、もう事件として終わりましたなどというような形で報告を受けて、そして軽くそれを流そうとされるから、問題が、いつまでたったところで真相が究明されていかないのです。私、申し上げましょうか。十月十五日に人体実験がされて、その薬を知っていますか、私、説明してあげましょうか。私はいまここにこの薬を持ってきませんでしたけれ
ども、黄色い色をした八つ入りの袋です。一枚八つのシール製のものなんです。これが八つ入っている。朝三つ飲ませるのです。それから昼飯に二つ、夕飯に三つ飲ませる。八個ずつ、これで一日分ですが、入っている。それを、百八十七名の人体を二組に分けて、片方には、同じ色をした、同じ形をしたものだけれ
ども、それはにせものなんだ、にせものを飲まして、そして半分には新薬を飲ました。それも、飲ませるためには二週間分飲ませなくてはならぬといって、それを十四枚持たせた。八個の十四枚ですから百十二個です。その百十二個を社員に飲ませたわけだ。片方のほうは、同じものを十四枚渡したが、これは色つやは同じでも
内容はにせものだ。そういう人体の実験をしたわけなんです。その中で、たった一人、男の社員が、一体これは副作用がないのですかと聞いたときに、薬品学術部第二課長佐々木信元なる者が、副作用はない、こう言っているんです。飲みたくなかったけれ
ども、社員という身を拘束されているしがない身の上であれば飲まざるを得ない。精神的拘束力の前に彼らはやむを得ずして飲んだ。ただ一人飲まない社員がいたんです。これはこの新聞にも報道されているごとく、飲まなかった社員はその後上役と衝突いたしまして、上役のおぼしめしよからず、彼は非常に迫害、圧迫を受けるという形になっている。ほかの人は飲んだんです。ところが飲んでたった一日もおかないうちに、もはや症状が出た人がありますよ。十六日、飲んでもう症状が出てきた。その症状は何ですか、その自覚症状は何ですか。私、読みましょうか。私は全部調べてあるんだ。第一番にくるものは頭の重さです、頭重。次が頭痛です。目まい、全身倦怠、脱力感、肩のこり、熱感、発熱、食欲不振、吐きけ、腹部膨張感、次には心窩部痛、腹痛、下痢、便秘、発しん、黄だん、掻感、咽頭痛、耳鳴り、腰痛と、こういうふうにずっと病状があらわれてきた。いいですか、
大臣。その結果どうもぐあいが悪いからと言って苦痛を訴える人があっても、まあ二、三日でなおるだろうから、薬はそのまま続けていってくれ。やめさせないのですよ。そのとき名古屋では、病院のお医者さんに頼んで診察をしてもらったんだけれ
ども、そのお次者さんも中止を命じなかったのです。そこに
一つ、私は重大なまた
医療行政の欠陥があると思う。やめさせない。続けて飲んだらそのうちになおるだろう。いいですか。そういうようなことをやってきたものですから、とうとうたまらなくなって、途中でやはり社員が、会社には悪いと思いながらも、苦しいものでありまするから、ついに途中で服薬をやめたのでありますが、その結果、東京
関係で十三名が入院した、名古屋
関係で四名、計十七名が入院したのでありまするけれ
ども、先ほどお話しのとおり、そのうちの一名、宣伝課の内田美穂子さん、長野県出身、まだ未婚者にして二十四歳、花なればまさに咲かなん女の盛りであります、その未婚の女性が二十四歳にして
死亡しているんです。病名は骨硬化症、ガンの骨髄転位です。入院いたしましたのが
昭和三十八年の十一月十三日、
死亡いたしましたのが三十九年二月二十七日です。こういうような結果なんですよ。こればかりではないのですけれ
ども、あなたはこういう実情を一々お聞きになりましたか。問題はもう終わっているなんて簡単なものではないのですよ。この現実の
重要性というものをあなたに認識していただかなければ、結果に対する
処置というものはできないから、私はここで説明しているのです。いいですか。それに対して会社では、この人の
死亡に対して、これはいまの抗ビールスとは
関係がない、こう言っている。
関係はありませんか。厚生省
業務局長は、会社の宣伝どおり、彼女の
死亡はモルモット人体実験と
関係がないと
考えておられるかどうか、あなたの調査の結果をお聞かせ願いたい。