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1965-03-16 第48回国会 衆議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十六日(火曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 河野  正君    理事 八木  昇君 理事 吉村 吉雄君       伊東 正義君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    田中 正巳君       竹内 黎一君    中野 四郎君       橋本龍太郎君    松山千惠子君       粟山  秀君    山村新治郎君       淡谷 悠藏君    伊藤よし子君       小林  進君    多賀谷真稔君       滝井 義高君    八木 一男君       山田 耻目君    本島百合子君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君         国 務 大 臣 高橋  衛君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         文部事務官         (大学学術局         長)      杉江  清君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      川原 英之君         労働政務次官  始関 伊平君         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大宮 五郎君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業訓練局         長)      松永 正男君         自治事務官         (大臣官房参事         官)      宮澤  弘君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁調         整局調整課長) 長橋  尚君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    山下 元利君         文部事務官         (初等中等教育         局職業教育課         長)      河上 邦治君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 三月十二日  委員竹内黎一君辞任につき、その補欠として西  岡武夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西岡武夫辞任につき、その補欠として竹  内黎一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月十一日  原子爆弾被爆者医療等に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第二〇号)  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出第六五号) 同月十五日  清掃法の一部を改正する法律案内閣提出第一  二〇号)(予) 同日  理学療法士及び作業療法士制度化に伴う経過措  置に関する請願綾部健太郎紹介)(第一四  四三号)  同(古井喜實紹介)(第一四四七号)  同(田川誠一紹介)(第一四七〇号)  出かせぎ者の生活擁護に関する請願沢田政治  君紹介)(第一四五九号)  同(石田宥全君紹介)(第一五五九号)  同(小林進紹介)(第一六六八号)  同(松井誠紹介)(第一六六九号)  同(栗林三郎紹介)(第一七三一号)  電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法  の規制に関する法律の廃止に関する請願外四件  (八木昇紹介)(第一四六〇号)  戦争犯罪裁判関係者補償に関する請願田中  龍夫君紹介)(第一四七一号)  戦災による傷病者及び死没者遺族援護に関す  る請願秋田大助紹介)(第一四七八号)  同(逢澤寛君紹介)(第一四七九号)  同(亀山孝一紹介)(第一四八〇号)  同(木村武千代紹介)(第一四八一号)  同(小枝一雄紹介)(第一四八二号)  同(武市恭信紹介)(第一四八三号)  同(永田亮一紹介)(第一四八四号)  同(濱地文平紹介)(第一四八五号)  同(藤本孝雄紹介)(第一四八六号)  同(山口喜久一郎君外一名紹介)(第一四八七  号)  同(森下元晴君紹介)(第一四八八号)  同(山手滿男紹介)(第一四八九号)  同(本島百合子紹介)(第一七三五号)  同(山下榮二紹介)(第一七三六号)  健康保険改悪反対及び医療保障確立に関する請  願外一件(井岡大治紹介)(第一五五八号)  同外二件(栗原俊夫紹介)(第一六五七号)  同(中村高一君紹介)(第一六六七号)  同外三件(岡本隆一紹介)(第一六八二号)  同(今澄勇紹介)(第一七〇九号)  同(受田新吉紹介)(第一七一〇号)  同(細谷治嘉紹介)(第一七一一号)  同外十五件(三木喜夫紹介)(第一七一二  号)  同(茜ケ久保重光紹介)(第一七六七号)  日雇労働者健康保険制度改善及び老後保障に  関する請願下平正一紹介)(第二六八三  号)  同(松井誠紹介)(第一七二二号)  同外百七十二件(武藤山治紹介)(第一七二  三号)  同(安井吉典紹介)(第一七二四号)  同外二件(岡良一紹介)(第一七七六号)  同外三件(村上喜一紹介)(第一七七七号)  同(山中日露史紹介)(第一七七八号)  日雇労働者健康保険改善及び厚生年金適用に関  する請願下平正一紹介)(第一六八四号)  同(黒田寿男紹介)(第一七二五号)  同(五島虎雄紹介)(第一七二六号)  同(田中武夫紹介)(第一七二七号)  同外三件(八木一男紹介)(第一七二八号)  同外三件(山崎始男紹介)(第一七二九号)  同(和田博雄紹介)(第一七三〇号)  同(江田三郎紹介)(第一七六八号)  同(岡本隆一紹介)(第一七六九号)  同外二件(東海林稔紹介)(第一七七〇号)  同(楯兼次郎君紹介)(第一七七一号)  同外三件(永井勝次郎紹介)(第一七七二  号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一七七三号)  同(松井政吉紹介)(第一七七四号)  同(山口丈太郎紹介)(第一七七五号)  季節、臨時労働者失業保険打切り反対等に関  する請願下平正一紹介)(第一六八五号)  原爆被害者援護法制定並びに原爆症根治療法  研究機関設置に関する請願井岡大治紹介)  (第一七一三号)  同(栗林三郎紹介)(第一七一四号)  同(黒田寿男紹介)(第一七一五号)  同(五島虎雄紹介)(第一七一六号)  同外六十一件(武藤山治紹介)(第一七一七  号)  同(赤松勇紹介)(第一七七九号)  同外一件(井岡大治紹介)(第一七八〇号)  同(安井吉典紹介)(第一七八一号)  同外九件(山内広紹介)(第一七八二号)  同外六件(山口シヅエ紹介)(第一七八三  号)  同(吉村吉雄紹介)(第一七八四号)  原爆被害者援護法制定等に関する請願多賀谷  真稔君紹介)(第一七一八号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一七一九号)  同(細谷治嘉紹介)(第一七二〇号)  同(松本七郎紹介)(第一七二一号)  同(河野正紹介)(第一七八九号)  同(田原春次紹介)(第一七九〇号)  医療根本的改善に関する請願五島虎雄君紹  介)(第一七三二号)  同(三木喜夫紹介)(第一七三三号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一七八七号)  理学療法士制度化に伴う経過措置に関する請願  (竹山祐太郎紹介)(第一七三四号)  精神衛生法の一部改正に関るす請願外五件(岡  良一紹介)(第一七八五号)  同(堂森芳夫紹介)(第一七八六号)  老後生活保障のため年金制度改革に関する請  願(吉村吉雄紹介)(第一七八八号)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これにより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林委員 きょうは労働大臣に対して社会労働委員会といたしましては初めての御質問を申し上げるわけでございますので、十分な時間を拝借いたしたいと思ったのでございまするけれども、参議院の予算委員会もあるそうでございますので、私のほうもごくかいつまんで主要な点だけ羅列的に御質問をいたしたいと思います。その点ひとつ御了承をいただきたいと思うのであります。第一番目には春闘の問題であります。第二番目は労働災害の問題、三番目には最低賃金制の問題、四番目は職安行政、五番目は中高年者訓練を主にいたしました職業訓練行政、第六番目には現在問題になっておりまする山陽特殊製鋼にからむ社内預金の問題であります。その他、最後にはILOの中央交渉問題等を含めまして概括御質問申し上げまして、あとはまたわが党の委員諸君がそれぞれ専門的に掘り下げて追及してくれるはずでございますので、以上逐次御質問を申し上げたいと思います。  第一番目に春闘の問題でございまするが、いよいよ明十七日を期しまして時間内の闘争、ストライキが、総評中心とする公労協、中立労連によって行なわれようといたしております。これに対しまして、資本家側はどうも今日の情勢は非常にきびしい不況の中であり、大幅の賃上げは認められない、過熱といわれた設備投資を動かさなければ経済がどうにもならない、自転車操業で危険な景気の様相を示している中で無理な作業を続けている情況である、とうてい労働者の大幅の賃上げには要求に応じられないと言い、これに対して、労働者側は、こう物価高の中で生活を防衛するためにはどうしても六千円から八千円、同盟会議のほうでも四千円から六千円の大幅の賃金値上げはどうしても必要である、こういう要求を出しているようでございます。経営者賃上げには応じられないと言っておりますけれども、その行き詰まりをどうして克服するかということについては一つ回答を与えていない。ただ賃金だけを押えようとしているだけであって、賃金を上げなかったならば一体日本経済はどうなるかということについてさえも回答を与えていない状況である。だから、経営者の言い分には納得できないということでお互いに高い姿勢で激突の様相がだんだん近づきつつあるのでございまするが、これに対して労働大臣の御所見をまず承っておきたいと思います。
  4. 石田博英

    石田国務大臣 ただいまいわゆる春闘は主として賃金中心といたしまする労働条件を主題といたしまして行なわれつつあるときであります。したがって、労働大臣といたしましては、わが国経済実情及び企業実情等労使双方とも良識を持って十分勘案して平和裏に解決されることを望むところでございまして、この進行中に特別の所見を述べることは差し控えたいと存じます。  それからもう一つ設備投資の過剰その他についての経営責任の問題でございますが、これはむろん現在の経済界実情産業界実情を見ますときに、たとえば同一種類の作業を非常にたくさんの企業が行なう。この間ドイツのある経済学者がやってまいりまして、ドイツ繁栄の最大の原因は何かと聞くと、同じ事業を二社以上がやらない、バイエルがアスピリンをつくれば他の薬会社アスピリンをつくらない、自動車も二社以上はつくらないというような経営道義が今日のドイツ繁栄の基礎だと申しておりました。こういうことを聞いて、私は感銘を非常に深くいたしました。先般、アンプルかぜ薬が事故を起こしましたときに、調査をいたしますと、アンプルかぜ薬をつくっている会社が二百社もある、こういう状態ではやはり経済の健全な発達を行なうための経営者道義的責任というものを考えなければならぬ点が非常に多いだろうと思います。以上もまた過当競争でありますけれども、たとえば、そのために数千億円にのぼる広告費が使われておるというような問題も考えなければならぬ問題だと存じます。経営者もこの段階に至ってそういう問題について何と申しましょうか、経営者としてのディグニティと申しますか、それをもう一度考え直す時期に来ていると考えている次第でございます。と申しましても、悪いは悪いで、それはそれで直しながら、労使双方の協力によって直していってもらうよりしょうがないのでありまして、そういうことも含めて良識ある処理が望ましいと考えておる次第でございます。また賃金購買力となって経済活動の源泉になることは、これはもう言うまでもないのであります。しかしながら、それもまたわが国のように原材料外国から輸入しておる国におきましては、単純にそうは言えない部面もございます。国家経済の動向とにらみ合わせて良識ある決定が望ましいと申しておることはその意味にもかかっておるのでございますが、ただ特に公共企業体等におきましては法律に禁ぜられております争議類似行為等はやらないようにして、調停あるいはやむを得ない場合においては仲裁裁定完全実施ということによって、平和のうちに国民に迷惑をかけないように処理されることが望ましいことだと思っておる次第でございます。
  5. 小林進

    小林委員 大臣から具体的に支障のない程度の御高説を拝聴いたしました。特に同一業種を二社以上の過当な競争をやらぬようにしたのがドイツ繁栄のもとであるというようなことは、非常に傾聴に値する御意見だとありがたく拝聴いたしました。ただ現在の過当競争に基づく在庫品の過剰は、いわゆる自転車操業だから、設備を過大にしたけれども遊ばしておくわけにいかぬ、金利も働かなければいかぬ、そういうことで利益を度外視して、原材料を食ってものをつくっておる、在庫品がたまっておるというのでありまして、労働者の側からいえば、賃金を上げて在庫品労働者消費することによって経営が上向くじゃないか、経済が上向くじゃないか、それに対して日経連前田専務等は、いまも大臣が言われたように、材料外国から買ってくるのだから、消費が続いていけばやはり材料不足でまた輸入をふやさなければならない、だから購買力上昇は好ましいことではないのだ、そのために賃金を押えるのだと言われていますけれども、そこまでわかっておるなら、何も自転車操業むりして品物をつくる必要はないのであって、これはみずからの欠点を補うて人の賃金値上げを特に押えようという牽強付会の言だと思う。それほど材料が大切であり、輸入が大切であるならば、在庫品をふやすまでのむちゃな作業を繰り返して材料を食いながらつくる必要はないのでございまして、そこら辺はまた大臣からも日経連諸君等に詳しく教えていただかなければならないと思うのでございます。そういうことと関連いたしましても、春闘をやる労働者立場から私は御質問申し上げるわけでございます。  国労の組合員生活実態調査、これは狭い範囲でありますけれども、その資料が出ておりますからここで申し上げるのでありますけれども、それを見ますと、本人の月給だけでかろうじて生活を保っておるのがその管内で三四%、共働きの家庭が四二%、奥さんが内職をしている家庭が二四%、その人たちはいずれも月にして九千二百七十円のベースアップをしていかなければ食っていけぬ、こういう調査をした資料があるのであります。これは総評太田議長等も、日経連や経団連の経営者代表と話をしたときにも、現に労働者家庭においては七割の共かせぎや内職家庭がある、こういうことを言っておるのであります。私は、これからの春闘なんかを論ずる場合には、労働者家庭生活がどういうように変貌しておるかということは重大であると思います。労働者の中には当然そういう資料があると思うのであります。現在のわが日本労働者の中でどれくらいが内職をやって、どれだけが共かせぎをやっているかという資料をお示しいただきたいと思います。
  6. 石田博英

    石田国務大臣 名目賃金消費者物価、それからそれを加味いたしました実質賃金、これは昭和三十五年以前におきましてはおおよそ五%程度名目賃金が上がっておりまして、昭和三十六年以降は一〇%前後以上上がっておりますが、しかし昭和三十六年以降は消費者物価も多いときには七・一%も上がった年もありますので、実質は悪いときでは二・七%程度上昇にとどまっております。そういうことで、消費者物価上昇は困ったことでありますけれども、名目賃金もまたかなり上がっておりますので、微弱ではございますけれども、実質賃金上昇しておるように思っております。しかし、内職等の関連につきましては、資料がいま関係者に用意があるなら事務当局から説明いたさせます。
  7. 大宮五郎

    大宮政府委員 勤労者世帯につきまして総理府統計局で毎月家計調査を行なっておりますが、それによりますと、家計調査対象になっております平均世帯人員は四・一七人程度であります。そのうちで世帯主を含めまして収入を伴う仕事に、ついております者が一・五人ぐらい、したがいまして、勤労者である世帯主以外に一世帯につきまして平均〇・五人くらいの共がせぎの人員がおるという関係になっております。それからその収入につきましては、世帯主収入が約四万七千円くらいに対しまして、世帯主以外の有業者の収入平均して約五千七百円ほどございます。大体そのような数字になっております。
  8. 小林進

    小林委員 私はこの総理府統計について非常に疑問を持っております。だから私は労働省に聞いたのです。こんなものを総理府に聞くくらいなら、私は何も労働大臣質問しませんよ。こういう総理府統計なんか、あとで申し上げまするけれども、これはサラリーマンの三十九年の家計調査なんです。総理府調べ対象は人口五万人以上の都市、勤労者世帯などというこういうものの統計によりますと、まず実収入の動きを見ると、この勤労者の一カ月の平均賃金が六万三千三百九十六円だという。いまあなたの言われたこれはその中から全部税金なんか差し引いて四万七千何ぼだ。これは古い。あなたの統計は古い統計だ。いまわが日本サラリーマンの家計が六万三千三百九十円なんて、前年より一一・七%多いなんて、こんな数字なんかどこから持ってきたかわからない。あと労働省に聞きますよ。一体日本労働者賃金平均幾らくらいか、あとで聞きますが、こういうことをあなたは総理府統計そのままを言っている。労働省は勉強足りませんよ。労働者の扱いをしながら、しかもいまの世帯主以外の収入が五千五百円だ、〇・五人だなんて総理府統計そのままを持ってきて説明をしている。あなた、そんな統計調査部なんて要らない。そんなことなら、大臣統計調査部なんてやめさしてしまいなさいよ。いまの労働者は、労働者立場から、いまは全部七割近くは内職をやったり家内職業に従事したり共かせぎしたりしていますとしばしば言っているけれども、そういう重大なポイントはあなたは一つも押えていない。もっとも個人の家庭へ入りますと、内職をしているとかあるいは共かせぎをしているなどということは若干隣近所に恥ずかしいということで、奥さま方がないしょでやっていることもあるけれども、そういう実態を正しくとらえるというのがあなた方の仕事じゃないですか。だめです、そんな統計は。これはひとつ大臣あとでいま少し労働者の正確な実態をとらえるように御指示をしていただきたいと思います。  それで私は、日本労働者が一体どんな生活状態にあるかということを、あらゆるジャーナリズムの統計を調べてみた。ここにありますけれども、あなたの暮らしは前年に比べてどうか、こういう調査を、これはちょっと古くなりますけれども、三十五年の十月には総理府がやっている。総理府統計では、苦しくなったというのが一七%、楽になったというのが一八%、これは三十五年の十月だから古いものだ。三十六年の三月には朝日新聞がやっている。苦しくなったというのが三一%、楽になったというのが一四%、三十六年の十月、同じく総理府がやっておられる。苦しくなったというのが三二%、楽になったというのが一四%、三十七年の三月には毎日新聞がやっている。それには、苦しくなったというのが四一%、いいですか、楽になったというのがたった七%ですよ。三十七年の十一月には読売新聞がやっておる。それによると、同じく苦しくなったというのが四一%、楽になったというのがわずかに三%である。それから今度は三十九年の六月に朝日新聞がやっておられる。あなたの暮らしは前年に比べてどうですかという質問に対して、苦しくなったというのが四二%、楽になったというのが一〇%です。これが国民の、いわゆる労働者世論調査に基づく素朴な気持ちですよ。総理府、毎日、読売、朝日、この六回の調査に、いずれも毎年毎年生活は苦しくなったという労働者の声がふえてきている。去年の八月ですか九月ですか、佐藤内閣が生まれたときに、世論調査をやった。佐藤内閣に一体何を望むかという質問に対して、まず半分に近い四〇何%が物価対策だ、物価値上がりを押えてくれ、生活はだんだん苦しくなってまいりましたというのが佐藤内閣に対する世論の声です。あとはもう、二番目はずうっと下がって、社会保障の充実を願うというのが一一%、中小企業や農業の対策を進めてくれというのが一一%と続いている。ほとんど生活の苦しさと物価対策世論が向いて、これは何とかしてくれなくちゃ、われわれ労働者は毎年だんだん苦しくなっていくだけだ、こういうことをいってきているのでございます。この物価値上がり生活が苦しくなっているということに対する経済企画庁の所感述べてください。いま私の言った数字に偽りがあるかどうか、それに対する経済企画庁の所感を述べてください。
  9. 向坂正男

    向坂政府委員 その世論調査の結果に対してでございますか。
  10. 小林進

    小林委員 経済企画庁にお尋ねしますが、三十五年以来の物価騰貴比率、それが国民生活にどう影響を及ぼしているか、一体どれだけ物価が上がったか、それをお尋ねしたい。
  11. 向坂正男

    向坂政府委員 三十五年以来ずっと消費者物価の上がり方は大きくなったことは御承知のとおりでございますが、しかし名目賃金の上がり方も相当大きくて、実質賃金も年々上がっているということでございます。三十五年を基準にいたしますと、消費者物価が三十六年五・三%、三十七年六・八%、三十八年七・六%、三十九年三・八%、これはすべて暦年でございます。その間五年以降の賃金上昇率は一〇%をこえる状態でございます。三十五年を基準にいたしますと、製造業現金給与総額でございますが、三十九年までに四九・三%上昇しております。それから消費者物価指数はその間二五・六%上昇しております。その結果、実質賃金は三十九年までの間に一八・九%上昇しているわけでございます。賃金年齢別あるいは企業規模別上昇率はいろいろ違うかと思いますが、総体としては消費者物価上昇率をこえて名目賃金が上がり、実質賃金上昇しているものと考えているわけでございます。
  12. 小林進

    小林委員 あなたはいま三十五年の物価上昇を言われませんでしたが、三十五年が三・六%、あとは三十六年がおっしゃるとおり五・三%、三十七年が六・八%、三十八年が七・六%、三十九年が三・八%、これは一体物価上昇比率の中に何が入れてあるのですか。ルームクーラーから乗用車から電気冷蔵庫、こういうものの値下がりもみな込みにして入れているのじゃないですか。入っておりませんか、これは。
  13. 向坂正男

    向坂政府委員 一定のウエートを計算して、そういうものも入っているわけでございます。
  14. 小林進

    小林委員 それからまた聞きますけれども、たとえばキャラメル一箱二十円、これが二十個入っいる。二十円という価格を変えないで、内容を十六個にしてしまった。いま十六個しか入っておりません。これは二十円の価格に変動がなければ実質物価上昇比率の中にこれは入ってこないでしょう。どうだ、これは入らないのですか。そういうインチキな物価指数ばかり君たちは出しているのだ。
  15. 向坂正男

    向坂政府委員 正確なことを存じませんから、あと調査して申し上げます。
  16. 小林進

    小林委員 正確なことではないのです。物価が動かなければ、あなた方の統計のこういう上昇比率の中にこれは入らないですよ。変動なしなんです。それから一体労働者生活の中に大根が五十円もしている、八十円もしていることこそ——十円の大根が五十円になれば、五倍の値上げだよ。そこへ自動車やルームクーラー電気冷蔵庫が大量生産に基づいて値が下がったところで、そのために君たちの物価上昇率が、消費者物価比率が五・六%が三・六%になったところで庶民の生活、働く労働者生活に一体何の影響があるのですか。ここにいわゆる独占資本に奉仕する企画官僚なんかの実に悪いところがある。こういう量を示すとともに質の内容も明らかにしなければだめです。いいですか。これは時間がないし、こんなことを言っているとだんだん腹が立ってくるから、私をおこらせぬようにしてもらいたい。こういうことばかりやって、そしてこういう数字でもって大衆をごまかしている。母親大会に示された家計簿——母親大会なんてあなた方はすぐばかにするだろうけれども、この人たちは真剣だ、自分の生活に直面して、生きるか死ぬかなんだ。その家計簿から物価騰貴を見ると、年間に二〇%ずつ上がっている。毎日大根を買い魚を買って生活をしている母親たちのこの家計簿の中には、毎年二〇%の物価値上がりが示されている。いいですか。それから少し資料が古くなりますけれども、日本経済新聞が都内のおもな小売り店に電話をかけて、そして物価の騰貴率を——これは三十七年の二月の十四日の調査でありまするから古くなるのですが、それにしても三十六年の八月から三十七年の二月までの間に一二・四%物価値上がりをしている、こういう統計日本経済新聞が出して新聞に発表している。そういう切実な実情に即した物価値上がりと君たちが数字を弄しているものとは全く空々寂々たるものです。経済企画庁、多額の俸給を食っているなら、もう少し実情に即した、大衆がなるほどと思うような指数を出したらどうですか。いいですか。絶対だめです。  おいおいに聞きますけれども、現在、物価の騰貴している品目は、大体、第一番目には食料品です。第二番目には公共料金、第三番目にはサービス料金、第四番目には教育費、第五番目には地代、家賃、ここで経済企画庁に御質問しますけれども、この五つの項目の値上がり比率は、三十五年から四十年の今日に至るまで、一体どれくらい値上がりをしているのか、お示しをいただきたいと思います。
  17. 向坂正男

    向坂政府委員 先ほどルームクーラー、自動車その他入っていると申し上げましたが、乗用車については入っているかどうか、ちょっと正確に覚えませんが、いずれにしましてもそのウエートは非常に小さいものでございますから、かりにそれが下がっても、全体の物価にはそれほどたいした影響はないと思います。  それからもう一つは、消費者の購入価格の調査でございますが、これも各家庭が実際に買ったものを基礎にして、それを集めて、それにウエートをかけてつくったものでございますから、特定の品物、特定の店の動きではなくて、もう少しそれは広範に総合的に調査した結果を採用しているわけでございますから、それほど実情と離れているというふうには考えません。  それからいま御要求資料でございますが、三十五年を一〇〇にいたしますと、農水畜産物、生鮮魚介類が中心でございますが、これは三十九年暦年で二九・六%上がっております。それから公共料金は一四・二%でございます。それからサービス料金が三六・五%、ただしこれは公共料金も個人サービス料も全部含んだ総合でございます。それから教育費、これはいま分けたのを探します。それからあと食料品の中で加工食料品が別になっておりますが、加工食品だけとりますと二六・九%でございます。それから民営の家賃、地代が四七・四%でございます。  以上でございます。
  18. 小林進

    小林委員 大体それは、四十年の一月一日からのおそるべき物価値上がり統計に入っておりませんな。——おりません。  そこで、それは三十九年まででありますけれども、大体政府統計というものはみんなそうなんです。非常に実情から離れるのです。特に日本の独占支配下にある皆さま方の統計のとり方というものは、いつでも実情を下回っている。だからあなた方がこういう値上がり統計を出したところで、庶民の中でごもっともだと納得するものは一人もいない。なぜ納得しないか、それはいつでもあなた方は独占や政府のほうに向いて都合のいいような統計のとり方をするからだ。私どもはあなた方の数字は信用しません。ただ参考にするだけだ。  そこで、一つ申し上げるけれども、今度の物価高の中で、食品価格の値上がりが一番深刻なんです。大根がいま一本六十円です。最近春になってちょっと値下がりして四十五円。白菜が一個百円ですよ。いま割り売りしている。そういう生活の中で——大蔵省いますか。大体大蔵省は五人家族の一日の食料の献立を、一人百六十七円ですか、夫婦と子供三人で六百八十三円ですか、そんなばかなことをいって大衆をこまかすなんて——三十九年、去年の十月二十二日、まだ大根や菜っぱが値上がりしない前に、主婦連の代表が経済企画庁の長官に会った。あなたのところの高橋君に会った。五人世帯一日分の副食分の材料費、大蔵省のカロリーは一日二千五百カロリーだが、あのときは二千二十六カロリー、二千カロリーの計算をして、いま一番安いといわれる四谷の公設市場に行って、そこで夫婦と子供三人の副食類を買った。安いのばかり二千カロリー買ったら九百三十八円かかっているのです。その材料を持ってあなたのところの経済企画庁長官に会ったときに、長官は何と言ったか。労働者がぜいたくになったから野菜が値上がりをしておるのであります、いまもそのように考えておるかと言ったら、さよう私も考えておりますと、そういう返答をしているのだ。労働者がレジャーを楽しみ、生活がぜいたくになって、安い野菜なんか食わなくなったから、だんだん野菜が値上がりをしたんだ、こういう言い方をしている。いまでもそういう考え方をしているのか。一番安い野菜を公設市場で買っても九百三十八円かかった、それをあなた方は一体どう思っているのですか。労働大臣にも聞きますれども、経済企画庁長官は労働者がぜいたくになったからそういう野菜が高くなったと言っているのですよ。
  19. 石田博英

    石田国務大臣 私がお答えを申し上げます。私は御承知のように十二時までですから、なるべく私にお聞きいただきたいと思います。  食料品価格の高騰ということが、エンゲル係数から申しましても収入の低い層に非常に大きな影響を与える、これは否定できないことだと存じます。ただわが国の産業構造というものは、近年急速に変わってまいりましたことは御承知のとおりでありしまて明治時代から大正にかけては就業人口の七割までが農民、漁民であって、他の三割が、二次、三次産業でありました。ところがいまでは第一次産業従業者は二七%くらいになりました。つまり七割の人が食料品をつくって、三割の人がそれを買って食べておったという時代と、二割七、八分の人が食料品をつくって、七割余りの人がそれを買って食べておる時代とは、農産物対ほかの生活必需品との間の価格の序列が変わってまいります。ある程度変わってくるのはしかたがない。われわれが学校で習った農産物と工場製品のいわゆる鋏状価格差ということは、今日は言えなくなりました。したがって、そういう食料品が相対的に産業構造の変化に伴って、ある程度価格が動いてくるということはやむを得ないことだと思いますが、しかしそれを最小限にとどめるのが政治でございます。したがって、その影響を最小限にとどめますためには、流通過程の改善等の施策をやっていかなければならないことは、これはもう申すまでもないことだと存じます。そういう点、及ばないところがございまして、生鮮食料品その他食料品の価格が生活にかなり影響しておる事実は、率直に認めなければならないと思います。  それからもう一つ賃金物価関係でございますが、賃金上昇はもとより望ましいところであります。しかしながらその上昇が国の経済及びその企業の生産性と並行していかなければ、賃金の名目上の上昇は決して実質上の上昇にならないことは言うまでもないのでありますが、しかしながら、と申しましても事業によって労務比率に非常な差がございます。たとえば、石油精製業におきましては労務比率はわずかに二・三%でありますが、道路運送業においては四〇%以上であります。しかし賃金の一般的上昇は、これはそういう企業の労務比率のいかんを問わずほぼ足並みをそろえて上がってくるものであり、また上がってこなければならないものであります。そうしますと、生産性の上昇で処理せられるワクの広いところと狭いところに違いが生じてまいりまして、ワクの狭いところはある程度の料金の値上げに転化せざるを得なくなってくることも、これも経済の自然の原則だと存じますが、しかしこれまたその幅をできるだけ縮めていくということが政治であろうと存じております。  そこで、一般的に申しまして、先ほどから統計上の資料材料にして議論がございました。この統計の信憑性でございますが、私はこれはどうも小林さんの御意見に違ったようなことを言うようでありますが、近年労使の間でいろいろ議論をいたします場合において、非常に大きな変化は何かと申しますと、両方とも共通の統計を使うようになったということであります。これはある意味において労使が共通の広場の上で議論ができる一つの前提であろうかと思って私は喜んでおるのでありますが、たとえば消費者物価のとり方につきましても、なるほど乗用自動車をその消費者物価の中に入れておる、こういえば、これは非常識であります。非常識でありますが、その入れ方によるのであります。これがきわめて微小な数字で入っておれば、これはやはり合理的でありまして、乗用車の価格の低下というものは大衆の生活に直接的には影響はございませんけれども、それはある意味においてはタクシーの料金あるいはそのほかにもいろいろ間接的に影響してくるのでありますから、全然〇・〇〇〇〇一%も入れてはならないという性質のものでもなかろう。したがって問題は結局入れ方にあるだろう。その入れ方についてはいろいろ議論をいたしました結果の方式によってやっておるのであります。先ほども申しましたとおり、労使双方とも大体共通の統計を使いだしてまいりました。この統計を整備し改善することはもとより必要であります。特に生産者の立場から議論をするのではなくて、消費者も含めた立場からの統計を整備するということは必要であろう。これについては整備いたさせるよう努力をさせてまいりたいと思っております。一般的に申しまして、全体的にいって、生活のある程度の内容の上昇は否定できない。その内容の上昇物価上昇とが相まって、生活の苦しさを感じさせているのがいまの実情だろうと思うのであります。しかし内容が上昇していること自体がけしからぬという議論は間違いでありまして、われわれは毎日毎日、年々に生活の内容の充実をはかりつつも、なお生産の苦しさというものを感じないで済むようにしてまいらなければならない。内容を充実させ、向上させたから苦しくなったんだという議論は、これは私は高橋長官もそういう議論をなさったとは思いません。ただ一般的に昔と同じような生活の水準をしておって、それでなお苦しいというのではないのじゃなかろうか。だんだん上昇しつつあり、生活も豊富になってきておることがやはり物価高と相まって苦しさを感じさせているのではなかろうか。しかし、それだからといって、内容の充実、上昇ということを求めていくのが、これまたわれわれの目標であることはいなめないのであります。こういう点をいろいろ御勘案いただいて、労使双方とも実効ある結果をもたらすように、良識をもって賃金問題の処理に当たられんことを労働大臣としては熱望にいたしておる次第であります。
  20. 小林進

    小林委員 大臣は大いにさわやかに弁舌をおやりになりましたが、私はまだそこまで結論を持っていきたくないのでありまして、私は序の口なんで、いまも労働者がかくのごとく物価高の中に、政府は労働者に対してこれほど冷淡ではないか、しかるに一方資本家に対しては企業家に対してはこれほど手厚いことをやっているじゃないか、資本家はこれほど利益を上げているじゃないか、だから結論においては労働者賃金をかちとらなければならないということを私は一つ一つ事例を示しながら、いま段階を踏んで御質問いたしておるのであります。そのうちの第一番目として、食料品の問題がやはりもろに労働者がその被害をかぶっておるじゃないかという序の口にいったときに、大臣はもう結論にいっている。まあ時間もなんでございますけれども、参議院にお行きになるんだったら、お帰りになるのをお待ちいたしておりまして、この問題は徹底的に究明しなければならないと思っております。  第二に、労働者が公共料金でいかに不公平な扱いを受けているかということをお尋ねしなければならない。食料の問題は終わりましょう。公共料金の公共というのは一体何ですか。公共の原則、これが私企業であり、これが公共事業であるという区別を大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  21. 石田博英

    石田国務大臣 これは企業の形態が公共性を持っておるかどうか、つまり資本形成あるいは企業の主体がどうであるかという議論よりは、その事業が公共に非常に広く、広範囲な国民生活に影響を及ぼすという意味で公共料金というんじゃないだろうかと思います。バスの料金は、バスの企業が私企業であってもやはり公共料金、こういうふうに考えております。
  22. 小林進

    小林委員 私も大臣の言われるとおりだと思う。公共は私企業に対立をしておる。利潤追求はこれは若干はあるでしょうけれども、これは原則としない。やはり大衆のために広く影響し、大衆のために奉仕をするという性格の強いものが私は公共だと思っている。だから公共料金といわれるものは、いわゆる私企業のごとき利潤追求を目的としないで、あくまでも大衆にサービスをする。大衆といえば大衆の大半を占めているのは勤労者でありますから、勤労者にサービスをするというのが私は公共料金の原則でなければならぬと思う。大臣そうでございますね。大衆に奉仕するというのが公共料金の原則だと思う。それならばお伺いいたします。この原則を大臣に認めていただかなければならぬ。一体電気料金はどうでありますか。これは古い例で昭和二十八年だけれども、労働者が使う家庭の電気料金は一キロ八円、大口の、利潤を追求する大企業が利潤追求のために使っている電気料金は一キロ一円七十銭。当時いた駐留軍に至ってはまさに八十銭。それが現在一体どのように変貌しているかといえば、現在九電力の電力料金の平均は、家庭電力が、いわゆる勤労大衆に奉仕すべきその家庭の料金が一キロ十二円、利潤を追求している、利益のために企業をしている大企業家に与える電力料金が一キロ三円じゃないですか。公共料金にして大衆にサービスするものが、大衆に三倍、四倍もの高い電気料金を払わしているなんという、こういう現実がはたして公共料金といわれるに値するかどうか。別なことばでいえば労働者の搾取だ。こういうところに搾取が行なわれているといわざるを得ないと思うのであります。  時間がないから、大臣いま一つ言いましょう。水の問題でありまするが、東京都は今度水をまた六〇%も値上げする。何もやらない東知事が値上げだけしている。値上げしか知らない知事だ。一体、その東京都の水が現実にはどうか。昨年あたりもオリンピックを前にして水がない水がないといっていたけれども、あの東京都の水の七四%は企業が使っている。利潤追求にのみ専念している大企業が七四%使っているのであって、公共料金といわれながら、大衆が使っている分というのはわずかに二五%か二六%。その家庭用の水を彼らは飲ませないようにして大企業にみな水を回したから、ああいう水のない東京都というものが生まれてきた。ちょうど経済企画庁長官が来られたから、長官、ひとつ私の演説を聞きなさい。いま、経済企画庁の重大なあなた方の経済施策の誤まりを聞いているのだ。公共料金の値上げ問題、いいですか。いま、そういうふうな水のないようなことをやっておいて、大衆をいじめておいて一体何ですか。その公共料金と銘打たれる、大衆に飲ませる水の料金が一立方メートル十一円十銭だ。それから利益のみを追求している公共性のない企業に使わしている水の料金が四円二十二銭じゃないですか。まさに三分の一近くの安い料金で使わせている。一体、そんな公共料金の値段のつけ方がありますか。労働大臣、ひとつ御所見を承りたい。ついでに経済企画庁長官もひとつ。
  23. 石田博英

    石田国務大臣 公共性のある事業、いわゆる公共料金というものは利潤追求を主目的とするものではなくして、公共に対する奉仕というものを主目的にすべきものだというところまでは全く同一であります。ただし、その場合においても、それ自体が赤字を出し企業の維持が困難になりました場合、その赤字は何かによって補てんしなければなりません。企業であろうと、企業が赤字になってやっていけなくなればつぶれるか補てんするかしなければならない。それから、自治体あるいは政府関係機関でやる場合は一般財政資金をもってこれを補っていかなければなりません。その部分はやはり多くの人々からの税金によってまかなうことであり、それはそちらにいろいろな影響となって転嫁されてまいるわけでありますから、そこにはおのずからの限界があろうかと思います。やはり、少なくともバランスをとる。利潤追求でなくとも、バランスをとるという必要があろうかと思いますが、その場合において、もし財政資金その他によって援助すべきものであるとするなら、いわゆる社会政策的な意味においてするとするならどの程度が適当であろうかという限界がやはりあろうかと私は思います。それから、私は消費者である勤労者を預っておる立場でございますから、したがって、水道料金にいたしましても電気料金にいたしましても、それは消費者であるものが一番安いことを望むのであります。しかしながら、たとえば電気料金が大口に安いという場合においては、その安い動力がその工場の生産コストに影響をしてまいりまして、そうして、それがまた大衆に返ってくる場合もあることであります。場合もあるじゃなくて、たとえば、それが輸出産業であれば外貨の獲得によってわが国経済のささえにもなるのでありますし、また、電気企業の側から申しますれば、いわゆる送電コストというものが違ってまいります。そういう点もやはりあろうかと思いますので、そういう国民経済的な観点からの料金の決定ということも私どもは容認しなければならない。要は、その両者のかね合いじゃないだろうかと私は考えておる次第でございます。
  24. 小林進

    小林委員 私は、公共料金の定義というものを、先ほどそのために大臣と議論をいたしました。前半は一致いたしましたけれども、少なくとも公共と銘打たれたものは大衆に奉仕をする——絶対に私企業に対して利潤追求を否定するものではないが、大衆に奉仕するのが企業である。その大衆というのは勤労者じゃないですか。だから、水道で言い電気で言えば、水道の水を飲ませあるいは電気を送る企業の側から言えば、公共に奉仕をしている面と私企業に奉仕をしている面と二つある。電気会社が電気を家庭に送っているその作業には、大衆という公共に奉仕をしている面と、利潤追求、お互いに経営をして利益を上げて株主に配当をやろう、重役手当もふやそうという、そういう私企業の利潤を追求している面と二つの型があると思う。だから、公共の料金という性格ならば、大衆のほうの電気料こそ安くして、電気会社が料金を上げることが必要ならば、常にそろばんを持って事業をやり、そろばんが合わなければ事業をやらない私企業にそろばんの合うような値段で電気を送ればよい。それがいかに独占企業とはいいながら、公共事業の名において大衆のほうから収奪をして利益だけを追求している。その企業会社のほう、生産会社や流通会社のほうだけ電気料金を三分の一、十分の一も安い値段で売っているという、そんなやり方が一体あるか。公共料金に名をかりたやはり階級的な収奪ではないか。労働者勤労者を痛めつけていることではないか。その企業会社が、いわゆる生産会社が公共の企業会社ならともかく、それは独占会社である。公共料金なら、電通や国鉄や何かのほうまで電気料金を高くせいとは決して言わないけれども、あくまで私企業は利益追求主義である。その私企業がもうけた利益が何かの形になって国民のほうにもばらまかれて間接的に国民が利益を受けているというのは、独占資本のかいらいになっているものの言い方であって、そんな言い方は国会の中では通用いたしません。私企業の利益を公共料金の名において裏返ししているのがいまの水道行政であり、電気行政ではありませんか。企画庁長官、どうですか。電気料金、水道料金を公共料金の名前のごとく、このさか立ちの形を逆になす意向はありませんか。それをおやりにならなければ労働者生活はいつまでたっても浮かび上がりませんよ。わからぬだろうな、私のこういうことは……。あなた方の頭じゃわからぬだろうな。どうです、答弁してください。
  25. 石田博英

    石田国務大臣 たいへん誤解もありますし、議論に私どもと食い違いがございますが、やはりまず第一、税金でだれか払う者がなければ国民大衆に還元もできないのであります。それから、先ほどから独占、独占というお話がございましたが、私冒頭に申しましたように、わが国において各産業にあまりにむだな競争があり過ぎる。つまり、非独占状態があり過ぎこるとが一つの欠点でもあります。それからもう一つは、この大口需要者に対して安い水や安い電気を供給するということは、国民経済的な意味においていろいろ役割りを果たすこともむろんでありますが、その企業自体におきましても、むろん株主に対する配当にもなり、経営者に対する賞与にもなりましょうが、その企業に働いておりまする従業員各位に対しても還元されるのでありまして、必ずしも経営資本だけに還元されるために安い料金が保証されているとは言えないのであります。私はそういう立場でもものを考える。むろん、私は消費者である勤労者を預っておる立場でございますから、私の立場からは直接消費者が安いことが望ましいことは言うまでもございませんけれども、同時に、国民経済的な観点からも考えなければならない。それからもう一つは、消費者が消費する電気や水道は労働力となって再生産されますけれども、同時に、そこにとどまるのでありますが、他の場合はそれが次の生産を呼び起こして経済の活発な活動を促すということにもなりますので、そういう点も考えなければならぬのじゃないだろうか。繰り返して申しますが、私の立場消費者をあずかっておる立場なんでありますから、安いことが望ましいことは言うまでもありませんが、国民経済的な立場というものも考えざるを得ないのだということを申し上げたのであります。
  26. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 御承知のとおり、経済企画庁立場は、消費者の立場を代表して国民生活が少しでも安定するような方向に国の全体の政策の運営を持っていきたいということでございます。したがって、ただいま労働大臣が御答弁申し上げましたような考え方、その考え方に基づいていろいろな問題に対処しておることも大体御了承願えるかと存ずるのであります。ただ問題は、たとえば電力料金という問題について申し上げますならば、これは地域的には完全に独占的な企業というふうに相なっておりますから、したがって、これを政府が公共の立場から、公の立場から規制するということは当然であります。そういうふうな観点からこれを政府の認可にかからしめておる、かように私ども判断をいたしておるわけであります。しこうして、電気料金については、通産当局がおられますが、私どもの承知いたしておるところでは、これは主としてコスト主義、つまり大電力等につきましての場合と家庭に配電する場合、それぞれそれに要するところのコスト並びにその間に生ずるところの電力のロス、それらの点を十分勘案して、そしてコスト主義に基づいて行なわれておる。ことに非常に安いところの大電力につきましては、深夜電力であるとか余剰電力であるとか、そういうふうな観点から特別に安いものが存在する、かように私どもは承知いたしておるわけであります。しかしながら、その内容の詳しい点は通産当局からお聞き取りを願いたいと思います。  しこうして、水の問題について。水はわれわれ国民生活について基本的なものでございますから、どうあっても水は量も質もまた同時に価格においても最低に確保するということは政府として当然つとめなければならぬ点であろうかと存じます。ただ日本の従来の水道に対するところのものの考え方は、外国に比べまして水道がまだ相当全国民的な需要に応ずるという状態にふさわしくなかった。したがってその発達の過程におきまして、一部の人がその水道の利便にあずかるというふうな関係からいたしまして、水道に対しましてはコスト主義で大体行なわれてきたのがいままでの経過でございます。もちろん農村等におけるところの簡易水道または特に離島等につきましての住民の負担を軽減するために補助率を引き上げておるというふうな実態はございます。  しこうして、今度は工業用水につきましては、むしろ産業政策上の立場から、またはむしろ東京とか大阪等地盤沈下の起こりた場合におけるところの——いままでは地下水によってただの水が使えた、それを、地盤沈下を押えるためにその対策としてやむを得ず新しい施設をしなければならぬ。それをただ押えるだけということにいたしますと、たいへん高い工業用水の料金になりまして、そのためにその地域の産業を全部つぶすというふうな結果になりかねないというふうな観点から、工業用水についてある程度政府が補助政策をとっておることも、これまた御承知のとおりであります。  こうしてさらに産業政策上の見地から申しますならば、農業用水でございますが、農業用水につきましては、これは小林さんよく御承知のとおり、政府が相当高率の補助を出しまして、地方公共団体もその補助を出しておりますが、ここに一トン当たり幾らというような料金の取り方をしてないということは御承知のとおりでございます。国の立場としては、何とかして産業も成り立ち、しかも国民生活に対する圧迫は何とか軽減していきたいという立場から、全体としてバランスのとれたやり方をやっていきたいというのが政府としての考え方でございます。
  27. 小林進

    小林委員 時間もありませんから、この問題はこれ以上申し上げるのを遠慮しますけれども、結論においては私は反対です。皆さん方は、産業政策上あるいは工業用水という名前で利潤を追求いたしておりますそういう私企業には電力において一キロわずかに三円、そして公共料金の名前において勤労大衆には十二円、四倍の電気料金を払わしておる。あるいは水道料金においてもしかり。公共料金の名のもとにおいて勤労大衆には一立方メートル十円、そして工業用水の名のもとに、利潤追及しておる、利益がなければ仕事をやらぬようなそういう私企業に四円の水を飲ましておる。こうして大衆収奪を一生懸命にあなた方はやりながらこれがバランスのとれたいい政策だとおっしゃるのだけれども、そういう政策がある限りは決して労働者をも国民生活をも守る政治じゃないのだから私は反対だということをここで申し上げる。時間がないから一あなた方時間がないのは、私の追及を受けないで、次から次にいきますから幸いなんですよ。  第三番目のサービス料金の問題、この矛盾追及はそれくらいにしてこれは省略いたします。  第四番目の教育費の問題を取り上げてみたいと思うのでありますけれども、三十八年度学生生活調査結果概要、その調査によると、月収六万五千円以上でなければ子供たった一人だけでも大学に進学させることができないという結果があらわれておるが、これは三十八年だから、四十年になればまた二割くらい上がりますけれども、何ですか、教育の機会均等だの、憲法二十六条ですか、法律の定めるところにより何人も平等に教育を受ける権利を有する等々うまいことを言っているが、その憲法は一つも守られていない。  労働大臣、そこでお伺いしますけれども、三十八年現在において日本労働者は、いま二千六百万以上おりますか、当時二千四、五百万といたしまして、その中で六万五千円以上の月収入を持っている労働者は一体どの程度ありますか、何%くらいありますか、お聞かせ願いたい。
  28. 大宮五郎

    大宮政府委員 お答え申し上げます。  三十八年の結果で申し上げますが、ただいま手元に持っております賃金階級別の分類が上のほうを四万円以上で一応切ったものしかございませんので、あとでもう少し上のほうから調べて申し上げますが、それによりますと、四万円以上の収入労働者は百七十一万三千人、全体の中の比率から申しますと、一四・一%でございます。
  29. 小林進

    小林委員 そこで数字がなければ、私が三十八年の数字をひとつあなたに言いましょう。時間がないから早口で言うけれども、三十八年の所得納税者の階層分布という政府が出したのがある。私でも手に入れているにもかかわらず、あなたそうういのを持っていなければだめですよ。それによれば、二十万円以下の人員が三百三十七万六千人だ。それで全労働者の二四・四%、約二五%。三十万円以下の労働者が二百九十六万七千人、二一・三%。四十万円以下の労働者が二百六十七万人、一九・二%。年収五十万円以下の労働者が百九十四万一千人、一四%。年収七十万円以下の労働者が百七十二万三千人、一二・四%ですよ。年収七十万円以下の労働者だけで九一・三%を占めているのです。全労働者の九二%近いものを占めているのです。この労働者がいまの教育行政からいえば、みんなおまえたちの子供は大学に出すなということなんだ。労働者の子供が大学を出るなんということは思い上がっている。大学には行きなさるな。憲法二十六条でいう教育の機会均等などというものは、それはブルジョアだ。これは年収七十万円以上、月収六万五千円以上のブルジョアジー、中間層以上の人間のみに許された教育の自由である。それ以下の者は行くなということを明確に示しているじゃないですか。それじゃ一体税金はどらか。税金は取る。教育の機会均等をいうならば、むしろ税金よりも子供の教育が優先しなくちゃいけないでしょう。そうじゃないですか。政府は税金だけ取っている。税金は取るが、教育費は出せないよということは、教育はあと回しだということだ。税金が先だという政治のあらわれじゃないですか。労働大臣いかがでございますか。私の言い方は少し極端でございますけれども……。
  30. 石田博英

    石田国務大臣 あらゆる人々が本人の能力に応じて教育を受けられるようにすることは望ましいことであると思います。教育の機会均等と申しましても、高等教育を受けることのできない、また受けてもあまり効果のないような程度のところまで大学へ行けということではないであろう、ただそれが、経済的理由によってはばまれるということは避けてまいらなければならないと思います。したがって、そういう意味において、経済的な理由によって教育の機会が狭められることは非常に遺憾だと思いますが、それに対しましては、たとえば育英資金の充実強化というようなことで、文部行政が対処しておることだと存じます。そういう方向で努力をすべきだと思いますが、いま一方、やはり学費というものができるだけ安いことが望ましいことはこれはむろん言うまでもありません。
  31. 小林進

    小林委員 労働大臣の御答弁は、どうも労働者に対する愛情が少し足りないようだ。しかしだれが大学入学に適しているかいなかということは、これは客観的に人間の判別なんかできるものじゃないのです。みずから主観的に行きたいというものをみんな適格者と見なければいけない。大臣も大学を出た、私も出ました。あなたはみずからを適格者だと思っているが、当時あなたを見た人たちは、石田のようなやつが大学に行くんじゃ世の中は逆じゃわい、人はそう言ったかもしれない。しかし、それはみずから主観的には私が一番大学入学の適任者だとお考えになったから大臣はお入りになったと思う。客観的に人を評して、おまえは大学へ行く能力はない、資格はないということは、この人間尊重の世の中では軽々に言えるものではない。私は、やはり行きたい人は漏れなく行けるようにするというのが教育の機会均等でなければならぬと思うので、その点大臣の答弁は了承できませんが、大蔵省に聞きます。  一体現在単身者は、何十万から課税しておるのですか。昭和三十九年度単身者では、年間十七万二千九百三十五円から課税しておる。四十年度はどうなんですか。
  32. 山下元利

    山下説明員 昭和四十年度の税制改正によりまする課税最低限は、単身者で十九万六千六百七円でございます。
  33. 小林進

    小林委員 実際、委員長、これは驚くべきですね。たった十九万六千六百七円で、これは一カ月の月給にすれば、一万六千円くらいだ。これはボーナスも期末手当も入るだろうから、ほんとうの月給だけにすれば一万三、四千円から所得税をかける。おそるべきことだ。  企画庁長官にお尋ねいたしますけれども、一体いまのいわゆる物価、所得税のあり方で、あなたは国民生活消費生活を守るとおっしゃった。それならば消費生活の問題でお尋ねいたしまするけれども、現在間接税の比重は四一・三%です。これを大蔵省は間接税を六〇%まで持っていきたいという考え方でいるのだけれども、それは税制調査会の調査の中にあらわれている。いよいよこれは大衆収奪です。だんだん大衆収奪をしていこうということを考えていらっしゃる。そこで言うが、いま大衆収奪の根本的なものはたばこだ。労働者勤労者も企画庁長官も、大蔵大臣も、労働大臣も一緒にのめるのは——労働大臣になるとそういう葉巻きをお吸いになる。もはや葉巻きは労働者のものではない。「新生」や「ピース」に至れば、これは初めて嗜好の点において平等だが、その「新生」に一体税金がどのくらいついているか、六七・七%、ピースには六七・三%税金をつけている。しょうちゅうには一体幾らの税金をかけているのか、三七・五%の税金をかけている。二級酒には四一・七%、ビールには驚くなかれ五六%も税金をかけている。しかも砂糖なんというものは、これはどんな貧しい家庭でもなくては生きていけない。そういう砂糖には驚くなかれ四九・五%。これは五〇%というと少し恥ずかしいと思って、〇・五%くらいごまかして、四九・五%という税金を大蔵省はかけている。こういう大衆課税をしていながら、しからばブルジョアのみの嗜好、娯楽としているゴルフはどうだ。企画庁長官はゴルフをやりますか。労働大臣はゴルフの批判をされたが、あれは非常にりっぱであった。さすがに労働大臣よろしいと感心いたしましたが、あのゴルフのクラブに対して、一体幾ら税金をかけているか、二六・六%じゃないですか。「新生」に六七・七%、しょうちゅうに三七・五%の税金をかけている日本の政府が、ブルジョアの遊ぶゴルフのクラブにはわずかに二六・六%の税金しかかけていない。マージャンのぱい、こういう亡国、とは私は申しませんけれども、驚くなかれ出す税金はといえば、一四・六%、しかもあなた方の奥様たちがお用いになるであろう、庶民や労働者関係のないミンクのコートなど、こういうぜいたくなものに対しては幾らの税金だ。たった一六・七%の税金しかかけていない。指輪、こんなものは庶民の生活には影響ないが、指輪に至ってはこれも税金は二八・七%、こういう税制は企画庁長官一体いいのですか。あなたはこういうのもバランスのとれた一あなたはバランスということばが非常にお好きのようでありますので、これが一体日本のバランスのとれた税制のあり方であるかどうか。企画庁長官、あなたの御意見を承りたい。
  34. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 本来、税制の問題は大蔵省または自治省の問題でございますけれども、国民生活にも関係する問題でございますから、あえて経済企画庁立場においての感想を申し上げておきますが、小林先生よく御承知のとおり、日本の戦争以前の税制は間接税がむしろ重点主義であった。それが終戦後になって直接税重点主義になってきたのは御承知のとおりでございます。  それで世界のいろいろな税制をずっと検討してみますと、英米系統が直接税中心主義でやっておる。その他の国におきましては、ほとんど間接税に重点を置いている、こういうことに相なっておるのでございます。それはその国々の国民性にもよることでもございますが、法律上たてまえとしていかに公平にでき、いかに国民生活に対して適当な税制ができましても、それが運用面においてそのとおりいくかどうかということになると、そこに非常にむずかしい問題が生じてまいっておることはよく御承知のとおりでございます。たとえば、装身具等の貴金属、これらについて、かつては非常に高い税率を持ったのでございますが、それが相当に監視を厳重にし、輸出入の取り締まりをいたしましても、これに対するところの脱税率というものは非常に大きくなる。かえってその取り締まりが困難になって、税の不公平を来たすというふうな問題を生じておることは御承知のとおりでございます。しこうしてまた酒類、たばこについて、これは私は全世界のものを調べたわけではございませんが、大体おもなる国については、私の記憶しておるところでは、日本はむしろ税率が安いという実態に相なっておることは、小林さんは外国をお回りになっておられますから、おそらくしみじみとお感じになっておられることと存じます。そういうふうに、日本の現在の税制が今日非常に悪いというふうなことは私は考えておりません。またゴルフについて申し上げますならば、ゴルフについてはOECDと申しますか、先進諸国において、——娯楽税といいますか、地方税でございますが、あのゴルフ場の施設を利用するための利用税、この利用税の標準税率が一回四百円ということになっておるのでございますが、これはだんだん日本国民所得も向上してまいりまして、一般的なスポーツになりかかってまいっておることは御承知のとおりだと存じます。もうすでにゴルフ人口は何百万をこえておるというふうに言われておるのでございますが、その何百万をこえておるところのスポーツ人口を持っているゴルフに、このゴルフ場利用税を一回四百円取って、またそのゴルフ用具について、これはたしか五〇%からの物品税をかけておると存じておるわけでありますが、むしろこれは先進国としては——私がゴルフをやっているから申し上げるのじゃございません。そういう趣旨で申し上げているのではございませんが、各国のずっとゴルフ場の利用についての税金、またはその用具についての税率等を比較いたしました場合、日本ほどこれに対して高い税金をかけている国はない、私はこう見ておるわけであります。その趣旨において日本の税制は、国民生活のことも十分考えながら、しかも税務行政が円滑に実行できるような方向ででき上がっている、かように私どもは見ておる次第でございます。
  35. 小林進

    小林委員 あなたがかって国税庁長官をやっておるときに私もしばしばその不当なる税制について陳情にいったことがあるから、あなたの考え方はわかっておるが、大体いま言われたことは賛成できません。いまの経済企画庁長官の答弁は非常に矛盾しておる。  そこで、ともかくいまも申し上げましたとおり、こういう間接税などというものも全部これは大衆収奪の形において行なわれておる。大蔵省と自治省に承りますけれども、私どもはこういう資料を実はほしいと思ったのだけれども、なかなか手に入らない、苦心惨たんいたしましたら、たまたま山形県の鶴岡市、これは生活協同組合の家計簿グループというものが、ささやかな範囲ではありますけれども、収入と税金との関係調査してくれた資料が手に入った。そこで私はこれを基調にして大蔵省と自治省にお尋ねをするのでありますけれども、これは三十六年度を基準にいたしまして三十六、七年、八年、三カ年の間にこの人たち収入がどれだけふえて所得税がどれだけ上がって、地方税がどれだけ上がったかということを、正確な数字として示してくれた。これは貴重な資料です。税金の値上がり状況というものでありますが、ちょっと読み上げます。  地方公務員A、これは家族は六人。会社員B、家族四人。地方公務員C、四人。国家公務員D、五人。会社員E、四人。国家公務員F、四人。会社員G、これは単身者です。一人。この七人がグループをなして正確な数字を出しておる。これをABCDEFGといたしまして、三十六年度の収入額からいきますと、Aは三十六年度において五十万三千六十円、それが三十七年度には五十七万七千二百五十円、三十八年度には六十八万一千六百一円、こういうことになっておる。それに対して所得税はというと、三十六年には六千五百七十五円、三十七年度には七千三百三十九円、三十八年度には一万三千六百六円となっている。住民税はといえば、三十六年度には一万五百九十円とられた。三十七年度には一万四千四十円、三十八年度には一万八千四百五十円、これくらい急激に税金も地方税も上がっておる。会社員のBは、これは三十六年度には四十四万二千八百五十九円、それが三十七年度には五十二万一千三百六十八円、三十八年度には六十五万八百八十円と収入は増していった。これに対して所得税がどういうふうに上がっていったかといえば、三十六年度には八千九百五十円、三十七年度は九千九百二十円、三十八年度は二万六百三十円、住民税は三十六年度において七千五百六十円、三十七年度が一万五千八百円、三十八年度が、これは少し下がりまして一万三千九百二十円、こういう住民税を取られている。地方公務員のCでありまするけれども、これは三十六年度の収入が四十四万五千六百九十二円、三十七年度が五十四万五百二十二円、三十八年度が六十三万二千五百三十一円。所得税において初年度が八千九百八十三円取られたのが、三十七年度において一万一千三百五十円、三十八年度には一万七千二百七十五円、住民税が三十六年度において一万八百七十円、三十七年度が一万三千六百七十円、三十八年度が一万六千八百二十円、こういう形になってまいります。これを比率でいいますと、公務員Aの場合は三十六年度の収入を一〇〇%に見ますと、三十七年度には一一四・七%、三十八年度は一一八%に収入が上がっている。これに対して所得税は三十七年度には一一一・六%、ところが三十八年度になると一八五・三%まで所得税が上げられているわけです。住民税は三十七年度は一三二・六%に引き上げられている。三十八年度には一三一・四%というふうに、収入は一一%くらいしか上がっていないにもかかわらず所得税は八五%も値上がりしている、住民税は三一%も値上がりをしているという形があらわれている。会社員のBですが、これも三十六年度を基準年度にいたしますと、収入の面は三十七年度に一一七・七%、三十八年度には一二四%と増加をいたしております。それに対し、所得税が三十七年度には一一〇・八%、三十八年度には一二六・二%、住民税が同じく三十七年度が二〇八・九%、三十八年度が一一一・九%。地方公務員のCでありますけれども、これが三十六年度を一〇〇としまして、収入が三十七年度には一二一・三%、二割一分上がっております。三十八年度には一一七%、これに対し所得税が三十七年度が一二六・三%、三十八年度が一五二・二%、住民税が三十七年度が一二五・八%、三十八年度が一二三%、以下DEFGとまいりまして、この七人を平均いたしますと、収入の面においては三十六年度と三十八年度の間において収入が二割二分、二二%伸びている。それに対して所得税はどうなっているかというと一八一・一%で八割一分、八一%所得税が取り上げられている。いいですか、大蔵省、聞いていなさいよ。地方税は三十六——三十八年度に幾らになっているかといえば、地方税は三十七年度に一四一・九%、一年間に四割一分上げられている。二年目の三十八年度に至ってこれがまた一三〇・九%、三割も値上がりをしている。これは実際の数字です。いかに日本の税制というものがでたらめで過酷であるかということを私はこの統計によって初めて知った。そうであろうという推定はしたけれども、数字がなかなかつかめないで苦労した。わずかに七人の国家公務員と地方公務員と会社員、そういう方々がつくってくれた労作でありますけれども、これは私は偽りがないと思う。この収入と所得税のアンバランスな値上げのやり方に対して大蔵省、もっとこまかい科学的な統計がありましたらそれをお示し願いたい。
  36. 山下元利

    山下説明員 ただいま先生のお示しの資料につきましては、ただいま伺っただけではそれぞれの所得の内容なりそれぞれの家族構成等もはっきりいたさない面がございますので、一がいに申し上げることはただいまはできないのでございますが、ただ三十六年から三十八年にかけましては歴年減税をいたしておりまして、私どもの資料でございますと、かりに給与所得者で夫婦子三人の場合をとりますと、もし同じ所得であるとするならば所得税の税負担は相当減少してまいっております。ただ、収入のほうがふえておりますので、もちろん所得税の累進構造からいたしまして所得税負担も上がる、これは累進によりまして高い税率のところにまいるのでございますが、ただいまの仰せのような数字になるかどうかにつきましては、さらに実際に検討してお答え申し上げたいと思います。そのようにはならないのではないかと思っております。
  37. 小林進

    小林委員 ともかくこういうこまかい自分たちの収入をあからさまに出しているのですから、私はこれは偽りだとは思わない。その結果が、三十六年度を基準にして、わずか二二%の収入の増に対して所得税が八一%、四倍くらい上がっている。住民税が三〇・九%、一・五倍くらい上がっている。こういうことをあなた方が知らないというところに実に残酷な税制制度がある。苛斂誅求があるのです。大蔵省、いま少し考えてください。いまみたいなまずい答弁をしないで、休んで考えてください。休んでいる間に、自治省、住民税に対して……。
  38. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 ただいま小林委員のお示しの数字でございますが、私もこまかい検討をいたしておりません。おそらく小林委員のお示しのような傾向であろうと思います。住民税につきましては、御承知のように課税方式に本文方式とただし書き方式がございます。それからなお準拠税率という制度がありまして、市町村によっては税率をかなり高くしていたわけでございます。この関係で、全国多くの市町村で、特に低所得者層につきましては、負担が非常に重い。おそらくただいま小林委員お示しのような数字であろうということがございましたので、御承知のように、三十九年、四十年、両年度にわたりまして課税方式を本文方式に統合いたしました。それから、税率も標準税率の五割までに押えるということで、現在その作業が進行中でございます。したがいまして、先ほどお説の、ある人の三十六年が二万何がしで、三十八年が一万八千何がし、おそらくそういうことであろうと思います。三十九年は課税方式統合の第一年目でございますので、目の子でたいへん恐縮でございますが、おそらくこの三分の二程度になっているだろうと思います。   〔委員長退席、井村委員長代理着席〕 それから、四十年度はこの完成の時期でございます。さらにこの額は減るもの、こういうふうに推定をいたしております。いずれにいたしましても、住民税につきましては問題がございましたので、ただいま課税方式の統合と税率の引き下げの作業が進行中でございます。
  39. 小林進

    小林委員 あなた方は、本文方式とただし書き方式の説明をされて、いわゆるただし書き方式がいかに残酷非情なものであったかということをいまいみじくも告白をせられた。今年度から三年計画で本文方式にやられる、けれどもその間に五割の幅を認めながら、やはり貧乏町村には五割の範囲において重い税金がかかるようにやっておられる。しかし私は、いま地方税の問題が出ましたから、大蔵省はあとへしまっておいて、地方税でお聞きしたいのだけれども、確かに本文方式でおやりになる、ただし書き方式などというので、東京都よりも私の新潟県のいなか町が七倍も大きい住民税を取られるという、そういうひどいことをおやりになったのだから、直されるのはそれでいいだろうけれども、それを直す反面、今度は一体社会保障費はどうだろうか、国民健康保険税はどうだろうか、医療費はどうだろうか。これは厚生関係だから私はきょうはあまり言わぬけれども、去年あたりの医療費は一体どうなったのですか。私の知っている町村をしばらく歩いてみたけれども、三年前では大体一世帯五千円前後であった町の国民健康保険負担額が、去年あたりの医療費の値上げで、それが一世帯大体四・二%から四・七%の標準課税だな、全国平均において七千円以上の医療費を取られておる。いま四十年度の予算を各市町村で組んでいる。大体五割から六割みんな医療費の値上げをしている。農村都市あたりの一戸平均国民健康保険料は、いわゆる所得割りを納めない均等割りだけの家庭においても一万円以上の国民健康保険税を納めなければ町村財政が成り立たなくなっている。これでいいのですか。自治省はどうですか。こういうようなことで一体住民生活が保たれるのですか。私はいま労働問題で御質問申し上げているので、労働問題とは国民健康保険は関係ありませんけれども、いかにあなた方が苛斂誅求、悪政をおやりになっているかということの例証として申し上げている。たった二割しか国民収入がふえてないにもかかわらず、三割以上の住民税をぶっかけておいて、それで住民税が今度は四月から本文方式に少し訂正をいたしますからと言えば、かわりに税金と同じような国民健康保険料の医療費を上げておる。あらゆるものをよけいにふんだくられるという形がいま積み上げられている。いかがですか。
  40. 宮澤弘

    ○宮澤政府委員 確かに御指摘のとおりでございまして、住民税につきましては先ほど御説明申し上げましたように、減税をはかっているのでございますけれども、住民税が下がりましても、御指摘のように国保税が上がってまいります。これは非常に大きな問題だろうと思います。国保税の負担は三十九年度で大体一世帯当たり七千円くらい、先ほど来お示しがございましたけれども、大体そのような数字になろうと思います。これは根本的に国保の制度自身、私どものほうは税という形で国保のことに関係をいたしておりますけれども、もう少し国保の負担制度その他低所得者層に対する制度を国全般として考えませんと、確かに御指摘のように住民税は前よりも軽減をいたしましたけれども、国保税のほうは上がってくるということで、この措置につきましてはゆるがせにできない問題だろう、こういうふうに思っております。
  41. 小林進

    小林委員 どうですか大蔵省。私はあなたの無責任な投げやりな答弁を聞きたいとは思っていない。私はこうやって地道な資料をあげてあなたにお尋ねしたのだけれども、大蔵省はいかがですか。三十六年度を基準年度にして、三十九年度まで一体平均して勤労者収入がどれだけふえて、それに対する所得税がどんなぐあいに上がっているかという明確な統計をひとつ資料でいただけませんか。
  42. 山下元利

    山下説明員 ただいま御指摘の資料資料として提出いたします。  なお、この点につきましては、ようするに所得税の負担には名目負担と実質負担とでございます。それから物価関係あるいはそれぞれの所得の伸びその他の累進税率の適用の問題がございますので、一がいには言いにくい面がございますが、ただいまのは実質負担からいたしますとこの率はまだ多少修正されなければならないのではないかと思います。いずれにいたしましてもいまの御趣旨のように資料をつくりまして提出いたしたいと思います。
  43. 小林進

    小林委員 これは今後のわれわれの国会活動には非常に重要な基本的な資料なんでありますから、大蔵省は必ずその資料を出してくれるように、あわせて自治省もやはり同じような、勤労者収入が三十六年度を基準年度にして三十九年度までどれくらい年率が上がっているか、それに対して地方税がどれくらい課税されているかできればそういう地方税だけではなく、あわせて国民健康保険税とか、あるいは教育費や税外負担の点もひとつ調査して——これは困難であればそこまでは要求いたしませんけれども、どうかひとつそれを出すように、委員長から特に両省に厳重に申し入れをしてください。
  44. 井村重雄

    ○井村委員長代理 承知いたしました。
  45. 小林進

    小林委員 これは最大限度三週間を予定して必ずひとつ出していただきたい。これは非常に参考な資料になりますから……。  大学学術局長来ていますか。——それでは大学学術局長にお伺いしますけれども、教育の機会均等ということがあるにもかかわらず、なおかつ現在、いまも申し上げますように労働者家庭はなかなか大学に上げるわけにいかない。そういう情勢の中で、あなた方は一体国立大学と県立大学、私立大学というものをどんなぐあいに評価していられるのでありますか、この際ひとつお聞かせ願いたい。
  46. 杉江清

    ○杉江政府委員 国立大学については御存じのとおり授業料、検定料きわめて低廉で、貧困者も十分その機会が与えられているわけでありますが、問題は私学にあると思います。私学においては確かに入学料金、検定料、寄付金等その他相当ありまして、貧困家庭の入学は相当な困難を伴う現況にあります。このことの根本は、大学においては設置者に国立、公立、私立の三つがあり、それぞれ設置者がその経費を負担するという原則があるわけであります。私学においては自分で大学の維持管理の経費を負担する、こういう現在の基本的なたてまえがある。そのかわり私学に対してはできるだけその自主性を重んじて、国はこれに干渉しないという原則がとられているわけです。そういうことから、私学は自分でその維持の経費を全部捻出する、こういうたてまえになっておりますと、実際問題として現在のこのような事態が生じてまいるわけです。国としては私学助成に相当の努力はしておりますけれども、原則的にはまず融資を原則とし、それから特に国の緊急な必要に応じてやっていただいておる、たとえば科学技術者養成という面に対しては、施設設備に対する補助はありますけれども、一般的に直接的な補助をいたしましておりません。こういうような方針がとられておるわけでございます。そういうことから私学の授業料、検定料が非常に高くなっておるわけでございましてそれには、私は従来のたてまえから、いいますと、場合によってはやむを得ないというべきことがあるかもしれませんけれども、しかし国民的な立場から考えますと現状は改善を要するということは多々ございます。そういうふうな見地から文部省としましても、国民立場からひとつこの問題に真剣に取り組もうということで、私学助成、私学振興に対する方策をひとつ十分この際根本的に検討しようということで、調査会も法律によって新しく設けて、この問題に真剣に取り組む段階にあるわけでございます。だから、先ほどのお話しの大学教育における国公私立に対して、どのように評価するかという点についての御質問については、これは国公私立とも大学教育を同じ意味合いにおいてになっておるということは確かに言えると思います。ただ現実にそのような差が生じておるということについては、先ほど申し上げたような、いまの国の大学教育に対するたてまえというものがあってこうなっておる。それはやはり根本的により広い立場国民立場に立って、このことを再検討する必要がある、こういう立場で今後検討を進めていく、こういうことにいたしておるわけでございます。
  47. 小林進

    小林委員 もう定められた時間でありますから、後段はまた休憩後に譲ることにいたしまして、ただ学術局長に言いたいことは、大学の授業料は今度はお上げになりませんね。
  48. 杉江清

    ○杉江政府委員 国立大学については上げておりません。
  49. 小林進

    小林委員 大学の授業料はお上げにならぬことはいいけれども、しかし現実においては機会均等と言いながら、いま国立大学なんというものは、非常に狭き門です。なかなか入れない。その狭き門をみんなあなたたちが独占している。しかもあなたたちを養うために国民は非常に大きな負担をしいられておる。たいへんな負担だ。私はしばらく文部省関係仕事はやりませんから、最近の数字はわかりませんけれども、おそらく大学の文科系の大学だけでも一人を養うのに、いまでも国家は百万円くらい出しているのじゃないか。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕 授業料を百万円くらい奉仕をしておる。それであなた方を教育して出しておる。それが官僚の卵になっておる。あなた方が国家権力を握って、そうして勤労者大衆をいじめているのだ。そしていわゆる大学閥という学閥をつくり上げて、そして狭き門にしておる。しかもわれわれのような私学などというものは今度は金が高くて入れない。全然勤労者には入れない。国立大学は一つの学閥でこれを独占しておられ、その学閥が終生を通じて特権階級として支配しつつある。そして大衆に対して門戸を開放しない。私立学校はかくのごとく授業料がだんだん上がっていく。とても勤労者労働者の子弟は学校に入れない。それが今日のわが日本のありさまなんです。労働者にとってはどこに一体機会均等があるか。どこに自分たちのかわいい子供をすなおに受け入れてくれる学校があるか。そういう問題を真剣に考えたことがありますか。しかもわれわれなんか無理して私立大学を出て、あいつは私立大学出だからと言われて、出てもみんな官僚各位から軽べつを受けながらやっておる。こういう国の形があるから、機構があるから、国家というものがすなおに伸びていかない。そういう意味において文部大臣になったつもりでひとつ教育を真剣に考えて、勤労者労働者の子弟が国立大学と同じような条件——出てくれば国家の教育だけは国立も私立もないのですよ。企業の中の教育を受け、その企業に縛られて終生を送る、そういう企業内の教育とは国家の教育は違う。出てくればみんな国家の優秀な一翼として働くんだから、その意味においては何で一体私立大学を出た者に経済的な差別を設けておかなければならぬか。この点は十分ひとつ考えて、文部大臣になったつもりで御答弁をいただきたいと思います。
  50. 杉江清

    ○杉江政府委員 先ほども申し上げましたように、その問題に真剣に取り組むということで、法律で特に調査会まで設けてこの問題を検討して、真剣に各方面の意見も聞いて、基本的な対策を樹立しよう、こういうわけでございます。
  51. 松澤雄藏

    松澤委員長 この際三十分間、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ————◇—————    午後一時二十一分開議
  52. 松澤雄藏

    松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。小林進君。
  53. 小林進

    小林委員 まだ第一問の質問の半ばにして大臣が出ていかれたので、少し執拗のようでありますけれども、第一問を続けて少し質問さしていただきたいと思うのであります。いずれにいたしましても、私どもは現在の社会情勢の中で、だんだん低賃金と労働合理化の名前でどうも労働強化が押しつけられているのではないか、こういうふうな一つの直感といいますか、予感がいたしまするので、それを私どもは裏づけといっちゃ何でありますけれども、午前中からそういう形で御質問してきたわけでありますけれども、私どもの考え方が間違っているという例証を明確に政府側からあげていただけないのが、非常に残念にたえないわけであります。私もその観点で申し上げているのでありますが、ひとつ大臣ももっと明確に私を説得していただくことをひとえにお願いをする次第であります。  ここで私が資料に基づいて次に申し上げたいのは、この池田内閣が所得倍増計画なるものをおあげになってからの賃上げ率が一体どうなっているのかということです。それと物価と税金のバランスの問題をさらに掘り下げていきたいと思うのであります。  まず、賃上げ率であります。これは昇給は除きますが、三十七、三十八、三十九年度、三年度を比較いたしまして、国家公務員は、三十七年度に六・九%、三十八年度も同じく六・九%、三十九年度が八・五%の賃上げをいたしております。春闘等を通じて彼らは戦い取ったわけです。公労協は、三十七年度が六%、三十八年度が五・九%、三十九年度が七・七六%、鉄鋼が五・七%、二・三%、七・一%、電機が六・八%、七・一%、九・八%、合化が六・二%、四・九%、九・八%、私鉄が六・六%、六%、七・八%、造船が七%、五%、九・三%、こういう形で三年間一応名目的な賃上げの率を来たしておるのでございまするけれども、これに比較して、午前中から申し上げておりまするように、物価は大体一年間、これは労働者生活に必要なものだけ取り上げた私どもの物価値上がりであります。だから政府の物価値上げ率とわれわれの値上げ率は違うわけであります。われわれの取りました、われわれの生活に身近に必要なものだけを取り上げた物価値上げ率は、一年間に二〇%、それから税金は先ほどからも申し上げましたように、これも最低に踏んで一九%の値上げを来たしております。賃金は、いま申し上げましたように、三十九年度でも一〇%までは上がっていない。これが私どもの調査に基づく物価と税金と賃金との関係でございます。日本労働者が現在受け取っておりまする賃金は、三十九年十一月現在、二万九千五百六十八円、その半数の労働者は二万円以下であるということが明らかになっているのであります。こういうような形の中で労働者はいま春闘と取り組んでいるわけでありますが、労働大臣、この物価賃金値上がりと税金との関係は、私は労働者生活が苦しくなっているということを正確に裏づけているものと考えますが、大臣いかがでございましょう。
  54. 石田博英

    石田国務大臣 決して労働者生活が現在において著しく改善され、非常に豊かであるということを強弁しようとは思っておるわけではありません。ただし、この十年間における賃金上昇率は、わが国は西ドイツに次いで世界第二位であります。それから実質賃金の比較におきましては、アメリカと比べますと、アメリカは三・九倍でありますけれども、しかしながら西ドイツと比較いたしますと、日本を一とした場合、西ドイツは一・五あるいは一・六でありまして、名目賃金比較は、日本を一といたしますとアメリカは八ぐらいになりましょうか、七近くだろうと思います。それから西ドイツと比べると二ぐらいになりますか、実質はさっき申したとおりであります。したがって、賃金の国際比較も次第に改善されつつあるように思うのであります。それから、いわゆる池田内閣の所得倍増計画出発の三十五年を一〇〇といたしました場合においては、なるほど春闘等によって上がりました重要基幹産業及び国家公務員あるいは公共企業体の賃金アップ率は、ただいま御指摘のとおりでありますが、賃金の底の低かった中小企業賃金上昇率、それがかなりの数字を示しておりますので、この三十五年から三十九年までの間に名目賃金は三十五年を一〇〇といたしますと一四七ぐらいになっているのではなかろうかと思います。物価もまた一二〇近くになっておりますので、実質賃金上昇率はむろん名目賃金上昇率にはるかに及ばないのでありますが、税金については私は承知いたしておりませんが、私はそういうふうな認識を持っております。むろんまだ十分だとは思っておりませんけれども、順次改善をしつつある。生産性と賃金との関係はこの五カ年間を全部取りますと、生産性の上昇は一四一でありまして、生産性の上昇よりは賃金上昇が上回っております。しかしながらそれは三十七年、八年において、賃金上昇率が生産性の上昇率を非常に上回った結果でありまして、三十九年におきましては、これが落ちつきを示して賃金上昇率平均一〇%程度に対して、生産性は一五くらいの指数の上昇率になっているように記憶をいたしておる次第でございます。なお、私は、棒暗記して、暗記していることを言っているだけでありますから、詳細なる数字は、事務当局から御説明いただきます。
  55. 大宮五郎

    大宮政府委員 ただいま大臣から申し上げましたとおりでございまして、賃金上昇率は午前中もちょっと数字が出ましたが、ここ四年間ほどは、年平均一〇%をこえる上昇を示してきておりまして、昨年の平均賃金の実額を申しますと、三万五千八百十二円となっております。それから、これは単身者を含めましたすべての労働者平均賃金でございまして、午前中先生のあげられました六万三千何がしの数字は、家計調査のほうから出ました世帯人員四人強の家庭における全収入でございます。勤労者の全実収入は昨年は六万三千三百九十六円でございまして、前年に対しまして一一・七%、これは先生があげられましたとおりでございます。このような所得の上昇がありましたのに対しまして、税金のほうも、これも家計調査からの結果でございますが、勤労所得税は一七・三%前年よりもふえております。それから勤労所得税以外のその他の税が一四・四%ふえております。これも大蔵省のほうから御説明がございましたように、収入がふえるに伴いまして累進税率の適用などが及んでおるという影響と思います。  大体以上でございます。
  56. 小林進

    小林委員 大体賃金上昇率に見合う勤労所得税その他の課税のお話があったのでございますが、やや午前中よりは実数に近い答弁になってきたようでございますけれども、これは大蔵省のほうにも資料要求いたしておりますから、その資料に基づいて再度また労働省と相まみゆることにいたしましょう。  いずれにいたしましても、いまの御答弁でもわかるように、これは収入よりも税金が伸びていることが明らかでありますが、われわれ庶民の生活に直接物価がどれくらいはね返っているかということはまだ出てまいりませんから、これもひとつ労働省のほうで正確に調査してください。  そこで大臣にお伺いしたいのでございますけれども、かくのごとく、勤労者や庶民の生活は電気から水道に至るあらゆるものに、われわれのことばで言えば収奪をせられている形で、別なことばで言うと大きく負担をしなければならない形で押えられながら、一方の資本家に対してはどういう政治が行なわれているか。時間もありませんから私は結論だけ申し上げますけれども、まず税金の面に至れば、租税特別措置法で大企業は年間三千百億円は最低限減税されておる。租税特別措置法だけの法律で内訳を言えば国税で大体二千億円前後、地方税で一千百億の特別な減税を見ておられる。これは庶民に与えられない、大企業だけに与えられた国の恩典であります。外国事業家がよく日本へ参りますと、これは私は経営者からも聞いたのですからうそじゃないでしょう、何よりも先に驚くのは、富士山のりっぱなことじゃない、芸者のきれいなことじゃない。日本には租税特別措置法という外国にはない特別の法律があって、大企業を特別優遇しているという点に実業家はみんな驚く。こういう話を私は聞いている。この租税特別措置法に基づく大企業に対する恩典が——大企業ということばはお気に召さぬかもしれませんけれども、一体租税特別措置法に該当する業者に与えているその特別の減税は、私の言った数字が間違っているかどうかお聞かせ願いたい。
  57. 山下元利

    山下説明員 ただいまのお話でございますが、租税特別措置は単に大企業のみのためにあるのではなく、いろいろ中小企業の合理化機械の特別償却等もございまして、必ずしも企業、個人所得の大小にかかわりなく適用されることになっておるのであります。御了承願います。
  58. 小林進

    小林委員 私の聞いているのは——大企業のみでないというようなことをあなたはさっき言ったじゃないですか。それでは、大企業中小企業との割合は一体どれくらいですか。割合を言いなさい。時間がないから私は節約して、そういう横道に入らないようにちゃんとワクをはめて質問しているじゃありませんか。総合計が三千百億円、この租税特別措置法でまけているという数字に誤りがあるかどうかということを聞いている。
  59. 山下元利

    山下説明員 地方税のことは私の所管ではございませんが、国税においては大体先生のおっしゃる数字であると思います。
  60. 小林進

    小林委員 それさえ明確になれば、私も意地の悪い質問をしようとは考えていません。国税においては二千億円の減税をされている。  次に私は言いますけれども、これは国税庁の統計だが、大蔵省の管轄だろうけれども、わが日本の法人の交際費——これは日経連の前田専務などに言わせると、どうも社会党はばかの一つ覚えのように交際費だけ問題にすると言うけれども、ばかの一つ覚えではない、納得がいかなければ何回でも質問します。日本の法人の交際費が一年間で四千五百二十億円、約四千六百億円、それに対してあなた方は一体どれだけの税金をおかけになっているか。私の調査によれば、わずかに八・七%の税金しかかけていない。九一・三%には税金がかかっていない。四千五百二十億円、約四千六百億円というと、おぎゃあと生まれた子供から、今晩は金をはたいて死んでいくというおばあさんに至るまで、国民一人当たり平均四千六百円何がしに該当する交際費を湯水のように使われておいて、それには税金はわずかに八・七%かけておいて労働者には飲み水から電気料まで多額に税金をかけてふんだくっていこうという、こういうやり方が一体公平なやり方であるかどうか。  なお、加えるけれども、広告料は一体幾らくらいになりますか。私の言ういまの交際費の総額と、なおかつ企業が行なう広告費は年間幾らか。広告費のことを話すとブルジョア新聞はいやがる。みんな企業広告費で新聞を出したり営業をしたりしているものだから、広告税の話をするといやがるけれども、この広告税は本来企業からいえばむだなものだ。この私どもの言う企業広告費だけでも年間二千九百億、大体三千億円、こういうものが全部税金の対象にならない、そのまま使われている。どうですか、大蔵省、私の数字が間違っていますか。
  61. 山下元利

    山下説明員 ただいま交際費についてお述べになりました数字は、大体さようなものかと存じております。ただ、交際費につきましては全額税金をかけるものでないことはいまさら申し上げるまでもないことでございますが、そのうち、一定の控除をいたしました。そのうちの三〇%を損金不算入にするという制度でございますが、このたびの税制改正によりまして、ただいま御審議願っておる租税特別措置法の改正案では、三〇%を五〇%に引き上げております。その点は御了承賜わりたいと思います。  なお、広告税につきましては、どのような数字か、持ち合わせておりませんのでわかりかねますが、これを損金扱いにしないかという問題につきましてはいろいろむずかしい問題もございますので、ただいま早急に結論を申し上げることはむずかしいかと思います。
  62. 小林進

    小林委員 労働大臣いかがでございましょう。これくらい恩典を受けている企業一体日本以外にございましょうか。税金において二千億円の、交際費において四千六百億円、広告費用において三千億円、これほど企業というものは国家の保護を受けているわけです。私はどう考えても労働者に対する愛情と企業者に対する愛情とはバランスがとれているとは考えない。こういう政治の中で、企業は御承知のとおり賃金を上げない。自転車操業だから賃金は上げられないという言いわけをしていらっしゃる。この言いわけは、一体労働者が納得するだけの説得力があるものでございましょうか。冒頭にも大臣春闘に対して所見をお述べになりましたけれども、春闘は別にいたしまして、この企業の中における労働者のあり方として、私どもは賃金を上げてくれない企業家の言い分に対して、納得せいと言われたところでどうして納得できるか。大臣、ひとつ率直な御所見をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  63. 石田博英

    石田国務大臣 わが国企業のいわゆる経費の中で占めておる交際費、あるいは広告費というものについていろいろ問題があろうかと存じます。これについては先ほど冒頭にも申しましたように、企業自身の、あるいは企業家自身の自制力によって、あるいは道義心の確立によって処理できるものがかなりあると思います。まあ、交際費は別でありますが、ただ広告の場合はやはりある程度は見なければならないものがあると存じますが、交際費にいたしましても、全くなくていいというものでもなかろう。ただ、この二つを考えてみますときに、日本の社会の仕組み全体の中で、たとえば寄付金その他を企業に依存する度合いが非常に多いというような社会の仕組み自体もやはり検討してみなければいけないと思います。また、祖税特別措置法によって特定産業についての優遇措置が講ぜられている。これはいかにもその企業家だけがもうけているようでありますが、その企業家だけが独立しては存在していないのでありまして、その企業にはむろん経営者と一緒に従業員もおりますし、そのほかの関係者もおるわけであります。同時に、その企業が、たとえば国際競争力を持ってまいりまするようになりますこと自体国民経済的な意義もまたあることでありまして、そのこと自体、いつも申しますように、ほど合い、ころ合いというところに問題はあると思いますけれども、全面的に否定し去るべき問題ではないように思います。ただ、それと賃上げ、こういうことになってまいりますと、春闘要求せられておりまする賃金要求額が妥当であるかどうかについては、労働大臣として現在の段階では表示しないほうが、私のたてまえとしては正しいのではないかと思うのでありまして、国民経済の動向、経済の成長の度合い等も勘案して良識を持って話し合い、平和裏にきめられることを希望する次第でございます。
  64. 小林進

    小林委員 まあ私も大臣のお言いになるように交際費を全部否定したり広告費を全部廃止せよということまで言うわけではございません。けれども、われわれ勤労所得者の中にも交際費というものがあるのですから、労働者の所得税についても大蔵省がちゃんと交際費というものを認めてくださるならばわれわれは文句を言わないが、お前たちは人間らしい交際費は許さないといって必要経費の中には認めない。そういうようなことで、そうして企業にだけ四千六百億円——中小企業が昨年一年間、今年の三月までずっと倒産をしておりますが、この中小企業が背負っている借金が四千六百億円。だから、この大企業の交際費というものは必要でない。必要でないものを納めれば、中小企業の倒産が全部救われる金額でもある。そういうようなことを無鉄砲に御許可になるから、先ほどいみじくも大臣がおっしゃったように、日本の社会環境の中で寄付金が大量を占めるというが、その寄付金が、われわれのほうにはさっぱり流れてこない。全部大政党のほうへ流れていく。間接的に雨のしずくのようにこちらにくる。そういう状態もありますから、そういう環境のために交際費が使われていることをわれわれ了承いたしておりますので、それは強引に強く否定はできない。おっしゃるお気持ちも十分了承できる。これは政党人であれば十分了承できるわけでありますけれども、ただそういうことがやはり労働者を低賃金にくぎづけさしていく、納得させる材料にはならないということを私は申し上げている。そこをひとつ為政者としては、特に労働者立場でものを考えていただく労働大臣としては、いま少し労働者立場でこれに警告を発するようにしていただきたいということがわれわれのお願いの筋でございまして、特に今年の春闘に対し日経連等は、最初申しましたように、経済は非常にきびしい、自転車操業であるということを言いながら、同じ経済団体である経団連の今年の経済に対する見通しは違っている。ここにまた労働者の納得し得ない一つの大きな穴があると思う。昭和三十九年十二月十八日、経団連は四十年度の経済の見通しというものを発表いたしております。それによれば、日本経済は高度成長から安定成長への曲りかどにかかっているけれども、景気は悪くないだろうという想定である。成長率三十九年度は一〇・七%、四十年度は七・八%、これは政府も七・五%といっておりまして、四十年度も着実に経済は伸びていく、こういうことをいわれている。第二番目に、いまの四十年度は、しかし企業の内容に立ち至れば利潤なき繁栄であるという。これは経団連あたりが編み出した実に巧みなことばでありますけれども、これも労働大臣に承りたいのでありますけれども、いまの第一面のいわゆる経済の成長、伸びていくというような期待、第二番目の利潤なき繁栄であるというこのことば、資本主義のもとにもうけのないのに経済繁栄するのだという、そういう経済学がありますか。利潤なき繁栄などとは何のことですか。こういうことは経団連の一つのごまかしである。私どもの調査によりますると、主要企業の公表利益は、三十七年度の下期で三千三十億円であります。三十八年度の上期で三千六百十一億円であります。残念ながら資料がありませんので、三十八年度の下期と三十九年度の前期の主要企業の利益のトータルはありませんけれども、大蔵省、ありましたら教えてください。三十八年度下期における主要企業の利益のトータル、三十九年度の上半期における利益のトータルを言ってもらいたい。四千億や五千億はいっているでしょう。
  65. 山下元利

    山下説明員 ただいま資料を調べますので、ちょっとお待ちください。
  66. 小林進

    小林委員 これはかくのごとくであります。かくのごとく、決して利益なき繁栄などというようなことばは許されない。ちゃんと利潤は上がっているのです。そういうこともありながら、第三番目には、同じく企業は低金利、減税政策というものを四十年度の企業のあり方として強く政府に要求いたしております。労働者には賃上げ一つやらないが、企業は減税と低金利を要求しておる。近くまた公定歩合を一厘値下げをするように政府に要望をして、おそらく政府は四月中にも公定歩合の金利を一厘お下げになりましょう。それから企業減税は今年度も法人税は税制調査会の答申どおりおやりにならない。企業減税を非常に安くやられておる。特に証券会社のように株式の配当金利で食っている者は百八十九万円まで税金がかからない。何でも金を持って遊んでいる者には百八十九万円まで税金がかからない。あくせく働いておる勤労者からは五十四万から税金を取るなどという、こういう税制のあり方は世界じゅうで日本だけでございましょう。なおかつそのほかに、企業の減税をおやりになっている。そのほか第三番目に輸出振興をやる。その輸出振興のために、今年度も国家予算において大いに経団連の手助けをやっている。経団連はこういうものも全部勘定に入れまして、四十年度におきましては大体個人消費の支出が十五兆三千億円、一二・九%の伸び、政府の支出が六兆一千億円、一三%の伸び、設備投資で四兆八千億円、四・三%の伸び、輸出で三兆三千億円、一二・二%の伸び、合計国民の総生産は二十八兆五千億円というこういうトータルの中で企業は完全に成長いたしております。利益は伸びております。こういうことを経団連は発表している。その証拠に昭和三十四、五年ごろにはなべ底景気だとか、やれ何とか不景気だと言ったけれども、今日は春闘に対してはきびしいと言うけれども、なべ底景気とか不景気だとかいう中において、ただ選別融資とか、あるいは大企業優先の資本主義的な条件で、そのはね返りを受けて中小企業だけは目も当てられないような残酷無惨な状態に投げ出されている。零細企業だけが犠牲になっておる。大企業だけは順調に利潤が伸びているというのが経済のあり方、こういう中で労働者だけ——ということは、私が言うのではなくて、経団連の「四十年度の経済の見通し」で申し述べている。そういうことでございまするので、大臣日本の景気について楽観をいたします。しかしその楽観のゆえんは、いま申し上げましたように国の財政投融資に依存しなければならない。ともかく二十八兆円のうち六兆一千億という国の財政投融資が日本経済をささえる中心になっておる。四分の一は国が見よう。国が資本を提供しておる国家資本主義の段階に日本はいま飛び込んでおる。そこでその上に乗っかって、経団連はことしもまたわが世の春を謳歌しておる。こういう状態昭和三十九年の十一月の十八日に「四十年度の経済の見通し」というものを発表せられておる。私はその発表の内容をいま説明したわけであります。こういう状態の中で労働者だけがなぜ犠牲を忍んでいかなければならないのか、いま一つ聞かしてください。
  67. 石田博英

    石田国務大臣 どうも私は総理大臣でも大蔵大臣でも通産大臣でも企画庁長官でもありませんので、こういう御質問について私が答えるのが適当であるかどうかは、これは別問題といたしまして、私も経団連の昨年の報告は見ました。それから経済の将来性についての要望意見書というものを見ますと、全体として私ども感じまする不満は、みずからの側でなすべきことについての検討が見られない。たとえば、先ほども申しましたように、過当競争を排除することについて経営者は何をするかということについて一言も触れていない。あるいはたとえば、今度の山陽特殊鋼の倒産に見られるような経営者道徳の低下。私ども学生のときに、昭和の初めたいへんな恐慌が襲ってまいりまして、企業の倒産が相次いだ。そのとき経営者はみずからの私財を投げ出すはむろんのこと、中には自殺をはかった人もたくさんある。私どもはそれほどまでに自殺までする必要もなかろうにということを感じたことを記憶しておるのでありますが、自殺をしろとは申しませんけれども、経営責任をとって私財を投げ出すくらいのことはあってしかるべきだと思うのに、まず一番最初に社内預金を引き出し、株を売るという傾向についての反省が見られない。こういうことは私は非常に不満といたしておるところであります。先ほども申しましたように、「ドイツ繁栄の基磯」という講演を聞いたことを特に痛感いたすのであります。  そこで具体的な御質問の中で、労働行政として特別の関心を持っておりまする点についてお答えをいたしたいと思うのでありますが、景気の見通しでございますが、これは私が言うことではありませんけれども、国際収支は漸次改善をいたしてまいりました。またそれに基づいて政策的な財政政策上の、金融政策上の転換も予想される。したがって、昭和四十年度がいままでより以上に悪くなるというような考え方は労働行政をあずかる者としても持っておりません。  それから利潤なき繁栄ということばでありますが、これは利潤少なき繁栄であろうと思うのでありまして、ただ資本主義社会というもの、あるいは資本主義的生産様式というものがこの半世紀以来非常に変わってまいりました。たとえば、昭和のあの大恐慌を契機としまして、その後は景気の変動はありましても、非常に恐慌現象は避けられて、資本主義社会というものがわりに順調に育ってまいってきております。これはどこに原因があるかというと、やはり社会保障の充実とそれから労働組合その他の活動による大衆講買力の安定にあるのではないだろうかと私は考えておるのであります。したがって、大衆講買力を安定させる、たとえば、景気の変動に対してそれが直ちに首切りや賃下げによって切り抜けようという最も素朴な資本主義的なやり方は、その道をふさがれて、そういうことは私は逆に申しますと、非常に一方的な立場における利潤の追求、あるいは非常に短い視野における利潤の追求ということの道がはばまれてまいりました。そのかわり大衆講買力の安定によっていわゆる過剰生産と過小消費の悪循環は一応押えられました。安定的な成長を遂げられるのでありますから、利潤率もまた当然下がってこなければならないのではなかろうかと思うのであります。そういう意味において利潤少なき繁栄、こういうことではなかろうかと思います。これは資本主義社会がよりよき体質の改善を行ないつつある方向であろうと私ども考えておるのでありますが、しかし経済繁栄のためには、むろん資本主義社会のためには一定の利潤を確保しなければならない。資本主義社会だけでなく、ソビエトロシアにおいても利潤という考え方が取り入られつつまいってきておることは御承知のとおりであります。その場合利潤の幅が狭まったことが、たとえば、労働賃金上昇とかその他に責任をかぶせることだけでなく、そこにかぶせられたものは、大衆講買力の安定というよい効果をおさめているのでありますし、他の努力によってその利潤の確保に進むべきだろう。それは冒頭に申しましたように、経営自体の反省と自粛、これによって利潤の確保を求めていく余地は日本においては特に多いように思うのでございます。そういう見方でこれからの経済を見ておることを申し上げておきたいと存じます。
  68. 小林進

    小林委員 やはり大臣労働者の側でものを考えて——若干でございます。全部とは申しませんが、見ていただいておりますものでございまするから、やや肯綮に値する御答弁をいただいて、私もやや納得をいたしたのであります。  そこで、時間もありませんから、大体資料も飛ばしまして、春闘に基づく両者の言い分というものは大体これでおさめたいのでありますけれども、結論的にいえば、かくして資本家の側は賃金が上がると物価が上がるというのを第一の理由としているけれども、それはいままでの受け答えの中でそれを事実裏づけする証明がないことは明らかである。特に十年間の生産性が上がった過去の割合を見ますと、生産性が上がった割合でこれを見ていけば、現在の物価というものは、私どもの統計だけでも四割、これは政府の統計でもそうでしょう。三割ないし四割は物価というものは下がっていなければならぬのが、一部に横ばいしているけれども、下がっている物価はない。ここにやはり企業の巧みな成長政策に基づく利潤があるのであって、これは一つの誤りである。日本経済は危機だから賃金は上げられないということは、これはいまの大臣の御答弁でも、これはもう明らかになりました。日本経済は危機だから、賃金は上げられない、この言い分も非常にあいまいとして、大衆を納得させ得ないことは明らかになりました。労働者生活は次第によくなっているから、これ以上大幅の賃金を上げられないということも、労働者生活が苦しくなっているということを裏づけする資料は幾つもあるけれども、それは、家庭内における物はふえているでしょう。それは、明治天皇のときでも、はだしで穴居生活の当時から見れば、やはり年とともに生活は上がっているでしょうが、そういう上がり方は、今日の労働者生活の楽さを証明することにはならない。その意味において、生活が楽になっていないということも明らかになりました。私はその意味において、労働者の場合を考える場合、いまも大臣が言われた資本家の側にこそ大いに反省すべき要素がまだ多量にあるということを私は明確にされたと思います。この意味において、大臣はいまの労使の戦いの中で軽々にものをしゃべらないという大臣のことばはよくわかりますけれども、どうかひとつ私と大臣との質問の中における午前中の話をよく熟読玩味していただきまして、ころ合いのときによきサポートをしていただかなければならぬ。  もう時間がないようでありますから、最後にこの物価値上げ春闘の問題に対してはこれで結論を出すことにいたしますけれども、政府は一体この労使の戦いの中に、労使協調に乗り出す意向があるかどうかということを最後にお聞きしたい。これは先ほどから慎重にお答えになっております。ちょっと大臣時間もありませんから続けて言いますけれども、日経連の前田専務理事が労使協調運動を言い出されておる、経営者側からその意向が政府に持ち込まれているという事実が一体あるかどうか。私はありとに聞いている。佐藤総理大臣はこれを受け継がれたかどうかは知りませんけれども、施政方針演説の中で、労使は話し合いをしたまえという呼びかけをしておった。それを一歩進んで、一体政府は指導するような考えがあるのかどうかということが第二点。  第三点は、経営者側から持ち込まれた話し合いの要求には、政府は進んで協調をする意向を、いまの総理大臣のことばの中にもうかがわれるように示しておきながら、同じ話し合いでも、労働者側から持ち込まれる場合には、政府はいっでもこれを拒否されてきた。将来とも労働者側の話し合いはこれを拒否し、経営者側の申し入れに対してこれを受け入れて、何らかの処置を講ぜられるという考えがあるのではないか、こういう点であります。これを伺ってこの問題を終わりにいたしたいと思います。
  69. 石田博英

    石田国務大臣 労使協調ということは望ましいことは言うまでもございいません。ただ労使関係というものは産業の興隆、国民生活上昇企業繁栄というような面においては、これは同じベースにむろんあります。しかしそれと同時に、その生産の成果、繁栄の成果というものの分配については、ときに対立するものがあることは言うまでもないのであります。したがって、その関係は対等の中にやはり適度のバランスをとりつつ、同時にそのバランスはダイナミックなバランスで、沈滞したバランスであってはならないと私は思います。主張すべきはお互いに主張しつつ、そして均衡がくずれていかないものが望ましい。私はこれをダイナミックバランス、労使の関係というものはダイナミックバランスというものをさとることが必要であると考える。それはいい結果をもたらすものだろうと思っているのであります。そのためには、やはり向こう岸同士におって自分の立場から見た主張だけをし合っておっては処理ができません。西洋のことわざにたての両面を見よということわざがございますが、ときには相手の側に立ってものを考える、相手の側のものの言い方も、主張も聞くという機会をできるだ置くということが望ましいのでありますから、政府としてはそういう機会を積極的につくるために今後も努力をしたいと存じております。ただ具体的に、それでは日経連がそういう呼びかけをした事実は新聞で承知しておりますけれども、政府に対して正式にそのあっせんなり指導をとることを申し入れた事実はございません。したがって、日経連のああいう呼びかけと総理の施政方針の演説とに直接的な関係はないのであります。しかしながら、もしそれが政府の指導によって行なうことが効果がありますならば、喜んでその指導をとっていきたいと思っておる次第であります。この場合においては経営者側から申し込れまたことであろうと、労働者側から申し込まれたことであろうと同様であります。経営者側と政府が話し合い、経営者労働者の側が話し合うということが主目的でないのでありまして、労働と経営とができるだけ多くの共通の課題について議論をしていただくことが望ましい。特に今度労働四団体で賃金問題についての調査を始められました。それに対しては政府は喜んで協力を惜しまないつもりであります。また労働四団体だけで数字を出されても新しい議論の種をまくだけでありますから、これは各経営もあるいは公共の立場にあるわれわれも参加をいたしまして、できるだけ正確な資料を集めていくことが必要ではなかろうかと存じておる次第であります。特に公共企業体及び国家、地方公務員関係の労使関係につきましては、ドライヤー調査団の提案もございまして、政府側から積極的に総評に対して定期的な会談を申し入れておるのでありまして、労働側におかれましてもひとつ政府側がせっかく申し出たことでございますから、拒絶をなさらないで御参加いただきますように、小林委員の御尽力を切にお願いいたす次第でございます。
  70. 松澤雄藏

    松澤委員長 本会議が開会になりましたので、午後三時三十分まで休憩をいたします。    午後二時八分休憩      ————◇—————    午後三時三十四分開議
  71. 松澤雄藏

    松澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。小林進君。
  72. 小林進

    小林委員 次に第二問といたしまして、労働災害についてお伺いいたしたいのでありまするが、今年の二月二十二日に夕張の炭鉱が爆発いたしまして、六十一名の生命が失われている。十七名の重軽傷者を出しておるのであります。三井三池の大爆発がございましたのが一九六三年の十一月であります。そのときには実に四百五十八名という未曽有の犠牲者を出しているのでございますが、私どもはこの三井三池の炭鉱の大爆発に対しまして、この国会を通じて政府に厳重なる警告を発した。また政府みずからも、この三井爆発に対してもろもろの約束をいたしておるのであります。しかるに、その間まさに一年四カ月もたたないうちに、同じようなこういう大きな犠牲を生み出しておる、私はこれは重大問題だと思うのであります。一回はこういう人命に関するものも許されてもしかるべきでありしょうけれども、事人間の生命に関するこういう大きな問題が、一年四カ月もたたないうちに、再び繰り返されているということは、これは私は国民の側からしても、だてや酔狂で黙視できる問題ではないと思うのであります。わが日本の政府、いわゆる資本に奉仕をする政府というものが、物の成長や物のいわゆる形づくり、利益、利潤の追求というものには、実に至厳であり厳格でありますけれども、人間の生命というものに対してはいかにこれを軽視しているかということの、何よりもの証拠だと私は思う。弁明の余地はないと私は思う。この夕張炭鉱の大爆発が本会議場で緊急問題として上程をされたときに、これは総理大臣もつつしんで哀悼の意を表すると言われておる。労働大臣もつつしんで哀悼の意を表すと言われておる。通産大臣も心から哀悼の意を表し、遺族のために何らかの処置を講じたいと言われた。私は一年と四カ月前にもそのあいさつを聞いた。そのときは私はすなおな気持で、この三池炭鉱の問題に対して政府側がつつしんで哀悼の意を表したときに、私も心からなるその気持を受け入れた。ほんとうに政府は真剣に哀悼の意を表したと私は思った。今度だけは総理をはじめ二大臣、三大臣の本会議における哀悼の意を、私は心の中で敬服しなかった。何言っているんだ。そんなお茶ら化しの話で国民は了承するわけにはまいりませんよと私は心の中で叫んだ。ほんとうに哀悼の意を表し、ほんとうに人命を尊重するということならば、一年半も待たないうちにこういう大きな爆発が二度も繰り返されるなどというはずはない。ほんとうに真剣にものを考えていればそういうことは繰り返されるはずがない。繰り返されたという事実は、いかにいまの政府、いまの日本の資本家というものが、人間というものを、人命というものを粗末にしているかという、何よりの証左であると言わなければならないのであります。この問題についてどうする。大臣、これはあらゆる委員会で論ぜられた問題と思うのでありますけれども、労働省のお立場から、ひとつ社会労働委員会でもいま一回労働大臣の所懐を聞いておかなければならない。人間の命というものをほんとうに尊重されるならば、一年四カ月もたたないうちにこんなことが二度と繰り返されるはずがないというのがわれわれの考え方であります。
  73. 石田博英

    石田国務大臣 先般の夕張の事故はまことに遺憾なことでありまして、政府全体の監督の責任はこれは免れることはできないと思っております。特に同じようなガスを中心とした問題で事故が起こっているという点について、監督行政の強化、あるいは単なる強化ではなく、その角度の再検討、基準の再検討、こういうものが必要であろうと思っております。ただ、幸か不幸か私の所管ではありません。私の所管といたしまする他の安全行政においては監督を厳重にいたして、その効果をねらってまいっております。御承知のごとく、昭和三十三年と三十五年と二度にわたりまして計画を樹立いたしまして、その実行につとめてまいりました。また昨年労働災害の防止に関する法律を御可決いただいて、それに基づいた各種団体を形成して、生産第一主義よりは人命第一主義、まず人命第一主義ということを徹底させてまいっておるつもりであります。統計上の数字を見ましても、私どもの所管のほうでは災害の数字は減ってきておるのであります。しかし所管でないからといって放置を許されないのでありますから、労働大臣の勧告権を行使いたしまして、十分連絡をとってその責めに任じてまいりたいと思っておる次第であります。
  74. 小林進

    小林委員 通産大臣来ておりますか。これは通産大臣にも関連する問題ですから、緊急ですから、三十分でも四十分でもいいから呼んできていただきたい。  そこで、労働大臣にお伺いするのですが、あなたの前任者の大橋労働大臣は、三井三池の大惨事のときにこういう声明を発表している。すなわち、この監督行政が労働省と通産省の二つに分割されているという現状、すなわち二つに分割された保安行政の一元化こそがこの災害を防止する最も具体的な策であるから、この一元化のことを早急にひとつ検討したい、こういう声明。一元化をはかるとまでは——それは大臣ですから私は慎重にかまえて言われたのだろうと思いまするけれども、この保安行政の一元化を検討するということは、やはり労働監督行政に関する限りは、労働省にこれを一元化して、もってその万全を期したい、こういう意味を持っておると思っておりましたから私どもは了承したのであります、賛成をしたのであります。そしてその一元化を早急に進められることを極力労働省に私どもは要求しておったのであります。ところがその後の状況をながめておりますると、この大橋前労働大臣の声明は何ら前進している痕跡がないのでありまして、私はこのたびの夕張炭鉱の災害と相照らし合わせて、こういうところに行政の無責任さがあるのではないか、かように考えておるのでありますが、一元化の問題についてどういうふうに処置せられておるのかお伺いいたしたいのであります。
  75. 石田博英

    石田国務大臣 私はたびたび労働行政を担当いたしておりますが、担当いたしますたびごとに、当初から保安行政というものは一元化すべきものである、生産を担当する者と、それから人命尊重の立場に立ち労働者保護の立場に立つ者と、両々違った立場でその責めに任ずべきことは、やはり一貫してやるべきものだという考えを持っておるのであります。したがって、機会あるたびごとにこの検討を呼びかけてまいりましたし、また現在でも機会あるたびごとにこの問題について検討をすることを主張いたしてまいりましたし、これからもするつもりであります。ただ御承知のごとく、鉱山保安行政が通産省にいきました経緯は、戦前からのそういう歴史的なものもむろんございますが、ちょうど戦後いわゆる傾斜生産、石炭の生産が産業復興の中心になったという時代でありました。またそういう時代にそうなったというだけに、より以上今回検討すべきものだと私はまた考えておる次第でありまして、その方向に向かって努力をするつもりでございますから、世論の御支持が得られますようにひとつ御協力をお願いしたいと存じます。
  76. 小林進

    小林委員 これは大臣が決して前大臣の主張を後退せしめるようなお話でもございませんので私どもは了承いたしますけれども、いまこの場にきてなお世論の御支持を得たい、それから考えといということではいかぬのでありまして……。
  77. 石田博英

    石田国務大臣 いや、違います。考えと方向はきまっておるのでありますが、強力な反対論があります。その強力な反対論に対抗するために世論の御支持をお願いをしたい、こういうことであります。
  78. 小林進

    小林委員 その反対論の勢力がどこにあるのか、それを突き詰める意味においても通産大臣にひとつここに来てもらいたいというのでありますが、委員長、通産大臣おりませんですか。
  79. 松澤雄藏

    松澤委員長 いま呼びます。参議院の予算委員会に出ているそうですから、いまもらいに行っております。
  80. 小林進

    小林委員 なるべく来られるように、ひとつもらってきてもらいたいと思うのであります。
  81. 松澤雄藏

    松澤委員長 一言申し上げますが、通産省から川原鉱山保安局長が来ておりますから……。
  82. 小林進

    小林委員 鉱山保安局長にもお伺いいたしまするけれども、こうした国の基本的な行政に関することはどうも局長あたりと言っては失礼でありまするけれども、これは事務屋でありまするから私は責任ある答弁ができないと思う。これくらいしばしば人を殺しておいてまだしかし監督行政の二元化、一元化について争っていなければならぬなどというところに私は問題があると思う。通産大臣が来るというのでありますから、来れば私は前の福田通産大臣の言明もここにあるので、それをひとつ追及しなければならぬと思うけれども、来るまで保安局長に尋ねますけれども、あなた方は夕張炭鉱の災害が一体どこに原因しているとお考えになっておりますか、何でこの災害が起きたのか、それをまずひとつ私はあなたにお聞きしたいと思っております。
  83. 川原英之

    ○川原政府委員 御答弁申し上げます前に、このたび夕張におきまして非常に大きな災害を起こしましたこと、まことに遺憾に存じております。この夕張の災害の原因が何であるかということにつきまして、私どもが現在までに把握しておりますものはガス爆発であろうということは一応推定いたされるわけでありますが、これがどのような経過でどういうふうなかげんで起きたかということにつきましては、なお現在鉱務監督官及び警察一緒になりまして司法捜査をもって原因を追及いたしておるところでございまして、そういう直接の原因ということでございますれば、私どもは現在調査をもうしばらくお待ちをいただきたい、かように存ずるわけでございます。
  84. 小林進

    小林委員 質のよい炭鉱ほどガスの発生率が多い、こういうようなことで、夕張の炭鉱にもこのガスの発生が多いのであなた方の監督官が事前にこの危険性のあることを警告をされておる。しかるにその警告を実施をしないでこれだけの事故を発生せしめたということに報道されておるのでありまするが、この間どうですか。
  85. 川原英之

    ○川原政府委員 その間の経過について小林先生の御質問にお答えいたしたいと思います。すでに御承知のように、本件につきましては二月十二日に現地の監督官が巡検をいたしておるのであります。その際に基準限度ぎりぎりのメタンガスがあるということを発見いたしました。これに対して坑道の拡張その他の措置をするように指示をいたしたわけであります。さらに重ねまして二十二日に札幌鉱山保安監督局に責任者を招致いたしまして、その進捗状況及びさらにその促進を指示いたしました。これが二月二十七日に坑道の切り広げができるという予定であったわけであります。ただ二十二日に再度指示をいたしましたその日に、それから数時間後に、この事故が発生いたしましたことは、まことにわれわれといたしましても遺憾に存じておるわけでございますが、ちょうどその改善工事の途中で起こった事故でございます。
  86. 小林進

    小林委員 二月の十二日にあなた方が警告をされた。しかも二十二日に札幌に招致して再度それの促進をしているさなかに勃発したということです。それではあなた方のほうではもう十分に危険は察知をされていたわけです。それを承知しておりながら、やらなかったというその罪は、これは一体何ですか。私はこの前の三井三池のときにも、鶴見事故のときにも、そういうようなことの危険を予知しながら労働者をそういう危険な場に、あるいは乗客をそういう危険な場に持っていくような経営者は、これは厳罰にして死刑にしたらいいじゃないか。そういう経営者でも社長でも死刑にしてみたら日本全国における石炭や鉄道事故はなくなると私は言ってやったのです。あなた方はどうお考えになるのか知りませんけれども、しかし私は自分で何も乱暴な発言をしているとは考えていない。これは学者の説ですけれども、初期の労働災害というものは、全部個人の責任であるというのが学説であった。それは学問の発達しない封建制度の時代にはそうであった。けれどもだんだん学問の進歩とともに、これは資本主義の合理化の責任だ、こういうことから理論が飛躍してまいりまして、最近ではもはや労働災害というものは市民法に基づくいわゆる殺人罪——労働災害による殺傷は、直接人の身体に対する加害、通常の殺人と同じ犯罪であるというのが学説ですよ。勉強していない諸君はいまは笑っていますけれども、直接人のはだに対して傷をつけたり殺人をしたりするのと同じ犯罪であるというのが学者の意見ですよ。あなたはそう思わないのですか。しかもその犯した犯罪というものは、こうやって災害を予知しながらそれを防止しないでやった災害というものは、市民法いわゆる一般刑法の犯罪以上の反社会性があるのだ。もっと悪質の反社会的な犯罪行為であるというのがいまはみな刑法学者の学説ですよ。うそだと思ったら本を持ってきてひとつ私と刑法論争をやろうじゃないか。それをいつも勉強しないでいて、生産第一主義だなんて言って、そういう災害によって生まれた殺人行為——自動車の運転手の事故で殺されたりする殺人と比較して、あなた方はそういう自動車なんかでひいた運転手は悪質の殺人罪だから悪質の事故だといって、自動車の運転手あたりは資本主義の関係では階段的な見さかいがないから、こういう気の毒な運転手というものを加害者にして罰金にしたり、監獄にぶち込んだり、殺人罪で痛めつけるが、日本の独占政府はこういうふうな大きな反社会的な犯罪を犯したものに対して、いまだかって刑罰で罰したことがないのだ。だからあなたはサボタージュをするのだ。あなた方事務官も、政府の姿勢がまともでないから、あなた方もそれに基づいてこういうことを平気でながめている。いいですか。しかしこうした労働災害によって失われる犠牲者というものは多くは労働者なのです。しかもそれによって失われておる労働者というものは、一家の家族に対する何らかの意味の責任者なんですよ。一人じゃない、必ずそこには家族というものがある。その責任者なんですよ。それからまた、この被害の原因というものは、自分が好きで道を歩いたとか、趣味で魚釣りをして間違って川の中に落ちたのではない。趣味や何かでそこにいたのではなくて自己の意思に基づかない業務命令である。いいですか、よく聞きなさい。あなた方は強制的にと言っては悪いが、生活のため炭坑の穴の中で業務命令に基づいてそういうことを履行せしめられるならば、その生命に対しても当然責任を負うのがあたりまえじゃないですか。そこにいまの炭鉱災害等に対する犯罪は社会的な犯罪の性格が当然起こってくるのです。自動車運転手の注意義務と比較対照して問題にならないですよ。いまの社会制度のもとにおいては、何べんも繰り返して言うように、自動車の運転手のような生活に直面した気の毒な者にだけいわゆる厳粛な人命尊重の義務を与えておきながら、何百名も何千名もの命について、業務命令まで出しておるこういう諸君に対して、何らの責任も負わないというこんな法律のあり方、行政のあり方があるから、一年もたたないうちに何人もの人間が殺されていくのです。一体何でこんな災害が起きたのかというその直接の原因がわかっておるのか。あなた方もいま言うように、もちろんその会社の社長、所長以下みんなが人間の命を粗末にしておる何よりの証拠だ。彼らは粗末にしておりますよ。民事上の家族のあと始末くらいでも会社の出費が高まるということであって、刑事上の責任は何もないから、生産第一主義ということでもって人間を酷使し、そうして人を殺しますよ。直接の理由はあなた方の監督が悪かった。十二日に、ガスが充満して危険だというのに、なぜそれに行政命令を出さないのか。二十二日にも再度指示があって、二十七日にそれが完成すると言ったときに、唯々諸々としてその話を聞いておったとは何事ですか。鉱山監督局は、札幌の支店だか出張所だか知らないが、それを含めて人間の命、労働者を粗末にしたということを認めますか。
  87. 川原英之

    ○川原政府委員 小林先生からいろいろとおしかりをちょうだいいたしました。決しておことばを返すわけではございませんが、私どもも決して生産第一主義というようなことで監督をいたしておるつもりはございません。もちろん今日まで保安があっての生産でございます。その意味で種々命令も出し監督も強化いたしてまいったつもりでございます。今回なぜ停止しなかったかという御質問に対しては、いま私がいろいろと申し上げますと、いささか弁解になりますので、たいへん恐縮でありますが、あの際の状態といたしまして、一・五%ないし一・六%というメタンにつきまして、これを除去いたしますためには基本的には坑道を切り広げるという工事を行ないますことがまず先決であろう、その間には、風量の増加というようなことで作業を継続できるというふうに考えたわけでございまして、事故が起りました現在、これを申し上げましてもあるいはお聞き入れにならないかもしれませんけれども、われわれとしまして決して人命を粗末にするというような気持は毛頭ございませんでしたことだけは御了承願いたいと思います。
  88. 小林進

    小林委員 世界じゅ歩いたって、事故を起こして監督官や行政官庁が人命を粗末にいたしました、事故が起こることを予知したけれども、私どもはそのまま黙って見のがしていましたなんて答弁するばか者はいませんよ。だれだってあなたと同じ答弁をする。そんな答弁だけをして問題が根本的に解決されることになるのですか。私どもはこの社会労働委員会だけでも炭鉱の爆発の問題で何回同じことを繰り返したかわかりませんよ。九州田川の上田炭鉱の爆発事件でもまだ炭鉱の中に死体が入っているのが出てこないだろう。私どもはその調査に行っている。次から次にこの社会労働委員会で隔年おきといっていいくらいあなた方鉱山監督関係の鉱山の爆発事故でとうとい人命がなくなって、同じことを繰り返しているじゃないですか。同じことを言われるあなた方もつらいだろうけれども、言うほうのわれわれも全く言うにたえぬ。こんなことは一回にしなければならぬ。そこで、通産大臣が来なければしようがない、またあと場所を変えて言うけれども、三井三池の爆発事故が起こったときにも、当時の福田通産大臣は何と言った。問題は検査のやり方である、今後炭鉱の検査は抜き打ちにやることを徹底する、いまのような各炭鉱の巡回日程をきめてやっているのは演習と同じことだ、こんなものは効果がない、こういう談話を発表して、氏みずからが、いかに通産省の鉱山監督行政が演習のまねごとのようなことをしてそのために事故が繰り返されているかということを告白している。どうしました、その後一体この談話は裏づけされておるかどうか。
  89. 川原英之

    ○川原政府委員 監督のやり方につきましてただいま御指摘がありましたが、三池の事故以来、巡回監督はすべて原則として——これはほかにいろいろ落成検査でございますとかそういう検査もございますが、検査は原則としてすべて抜き打ちでやっております。今回のタ張につきましても、これは抜き打ち検査で参りまして、先ほど申し上げましたような事実を発見いたしたわけでございます。
  90. 小林進

    小林委員 ちょっとお伺いしますが、それをおやりになるためにその後予算関係は十分でございますか。検査の予算並びに監督官の人員なんかはどうでございますか。
  91. 川原英之

    ○川原政府委員 来年度、ただいま参議院で御審議をいただいております予算におきまして、新たに鉱山の全体的な骨格を総体的に知る、そこから検査を固めていくという意味の総合検査でございますとか、あるいはこれは非常に問題がありそうだという場合にはそこに常駐いたしまして常駐の検査をやるというような検査の方法でございますとか、さらにもう一つ、問題がある場合には絶えず追跡を行なうという追跡検査の旅費を、来年度におきまして相当増額をいたしてお願いをいたしておるわけでございます。  なお、監督官の数でございますが、これはいろいろ見方もあるかと思いますが、来年度九州、北海道におきまして全体で九名、そのうち二名は総合的な監督の計画をいたします管理官でございますが、これが一名ずつ増員をお願いいたしておる次第でございます。
  92. 小林進

    小林委員 労働基準局長にお伺いしますが、労働基準法の中の安全衛生規定に違反した場合の罰則はどんなものでございますか。
  93. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 安全衛生規則の中の、条章によって違いますが、重いものにつきましては労働幕準法第百十八条によりまして一年以下の懲役または一万円以下の罰金、やや軽いものにつきましては第百十九条の規定によりまして六カ月以下の懲役または五千円以下の罰金に処する、かように相なっております。
  94. 小林進

    小林委員 労働大臣にお伺いしますが、この問題の解決のために、あなたは労働行政の一元化ということをおっしゃる。これは通産大臣が来ないから残念でありますけれども、あなたはひとつ勇気を持って徹底的に解決してください。これを解決しなければ人間の命はいつまでたったところで危険にさらされる。大体通産省というものは、生産第一主義だ。生産を担当する省なんだ。夕張炭鉱だって、夕張炭鉱の所長がこれも言っているけれども、われわれは何といったところで炭鉱マンだ、まず第一に生産を上げなくちゃいけない、労働者の安全はその次だ、生産を上げることが第一ですということを労働組合との突き上げの会場でも明確に言っている。それはそうでしょう。資本主義の社会における炭鉱の所長なんというものはそんなことを言うのはあたりまえです。しかし人間の立場から言えば、生産第一で命が第二なんと言われたのでは、たまったものじゃない。そういう考えでいる限り災害はなくならない。それを通産省は、一生懸命利益をあげる指導をしながら片一方で人間の命を大事にせいという監督行政をやったって、そんな二元行政がうまくいくはずはない。それが一番の根本的なものの誤りです。だれが一体そんなわからないことを言う反対勢力なのですか。総理大臣ですか。佐藤総理大臣がまさかそんな話のわからないことを言うわけはないと思うが、繰り返して問題が起こっているときに、労働大臣のお話を聞くと、いまでも少しも前進をしていない、反対勢力があるというような話で足踏みしているのでありますが、これは断じて勇気を持ってやってほしい。反対勢力があるならば、反対勢力とどこまでも対決しながらやらなければならぬ。この問題の解決は、人間の命に関する問題でありますから第一にやらなければならぬ。  二番目に、いま私は労働基準局長にもちょっと法文を読んでもらいましたけれども、労働基準法百十八条と百十九条、労働安全衛生規定に違反した場合、重くたって一年以下の、懲役じゃないこれは禁錮、一万円以下の罰金、軽ければ六カ月以下の禁錮または五千円以下の罰金、こういう規定ですからね。彼らは、事故が起きたら労働者に対する損害救援規定で一時金とか見舞い金なんて取られるのが痛いからこそ災害を防止しようとするけれども、人を殺した自分たちの刑事責任なんというものはちっとも負おうという気持ちがない。たった一年や半年以下。だから、私はこの前も何回も聞いた。一体経営者でそういう刑罰法規によって体刑処分を受けた者があるかと聞くと、通産省、せつながって若干ありますなんと言うけれども、ほとんどない。よほど悪質でなければ、ない。ここに私は監督法規の盲点があると思う。乱暴のようだけれども、鉄道事故が起きたら鉄道の総裁を一回ひとつ死刑にしてみろ、鉱山で四百名も八百名も死んだときには、その鉱山の社長くらい死刑にしてみろ、二度と鉱山の事故は起きない。大臣、どうですか。労働基準法のこの安全衛生の規定を改正して、もっと責任者を厳罰にするお考えはないか、お聞かせ願いたいのであります。
  95. 石田博英

    石田国務大臣 監督行政の一元化につきましては、私の考えは先ほどから申し上げたとおりであります。したがって、私の所信に向かって努力をすることはむろんであります。ただ、いろいろ違った立場もありまして、にわかにその実現がはかられないのでありますが、それまでの間は両省の間の連絡を緊密にいたしまして、最善を求めてまいりたいと思っております。要は、機構もむろん大切でありますが、人命を尊重するという気風の徹底と監督行政に当たる者の姿勢を正すことにあると存じておる次第でございます。  第二番目の刑罰規定の強化でありますが、現に、現在も夕張炭鉱の事件についても司直の手による捜査が行なわれております。これはどういう結果になるか、むろん私にはわかりませんが、行なわれておるのであります。その責任の所在は、決して基準法だけによって処罰されるものでもない。  それから私の持論でありますが、法律というものは必要最小限にとどめておくべき性質のものでありまして、法の威嚇によって行政効果をあげるということは、やはり最善の道ではないのではないだろうか。最近各国においても死刑廃止論が非常に高くなっております。やはり法治国が法をもってその行政効果をあげまするためには、すべての人々は法の威嚇によってみずからの責任を果たすというよりも、みずからが人間としての義務を感ずることから出発することが私はより正しい道でないかと思っておる次第であります。むろん非現実的な、あるいはその責任にふさわしくない罰則については、これは検討しなければならぬと思っておる次第でございますが、刑罰の重加、必ずしも直ちに行政効果があがるとは考えておらないのであります。
  96. 小林進

    小林委員 死刑論については、大臣おっしゃるとおりです。私も牧野英一の目的刑法を習って、正木亮先生の刑事政策を学んできたのでありますから、私は死刑廃止論には賛成です。賛成だが、それとこれとは大臣、おのずから別だ。労働者あたりが単なる団体交渉でわずかに威力を用いた、わずかに重役に圧力を加えたといったって、全部検事は起訴して、そうしてこれを半年、一年という厳重なる刑罰をしておる日本のいわゆる権力下におけるそういう検事構成、裁判構成が、これくらいの人を殺している者に対して、単なるこれを起訴することも裁判することもできないというこの不公平を私は言っておる。たった一人を殺して、何かどろぼうしたというだけで、勇敢に死刑にして、死刑廃止に反対している日本の裁判官や日本の検事あたりが、なぜこれほどの大きな殺人を起こして——学者はみなこれは市民犯罪と同じだと言っておる。この犯罪に対して起訴もしなければ、刑罰法規も採用しなければ、国会においてもその法律改正さえもやらないということを私は言っておる。こんな不公平なことはありません。これで労働者に時の政府を信頼せい、行政を信頼せいといったって、できるはずがない。こういうところに大きな盲点があるということ、日本のいわゆる支配者階級がどんなに自分たちの仲間に寛大であり、そして自分たちの意に沿わない労働者に対して過酷な刑罰を行なったかという、私はそれを比較対照して申し上げておる。大臣行っちゃったからしようがない、刑法論争はこれだけにしておきますけれども、それがいけないのだ。  それでは鉱山保安局長にお伺いしますが、こういう事故が起きる間接の理由としては、第一にはやはり労働組合政策が悪い。あなた方は組合問題というのは何も知らない。ただ経営者の利益を追求する仕事にもっぱら奉仕している。だから、通産省だって、同じ通産行政の中にあっても、大企業中小企業をぴたっと差別をしちゃって、大企業オンリーの通産行政を続けている。だから、中小企業が倒れたって、中小企業庁なんというのを片すみに置いて、そこら辺で処理しておけといって、中小企業者は通産行政の中にありながらもいつも日の当たらない場所に置かれておる。だから、わが社会党は、通産省は大企業の省であるから、中小企業のために中小企業省を設けろ、大企業中小企業とは利益が全く違う、通産省は中小企業者の省ではない、私どもはそれを言っておるのであります。言うからにはちゃんと根拠がある。まして、その中小企業立場も擁護する力のない、意思のない通産省が、労働行政なんかわかるわけがない。それがこういう鉱山の保安監督までおやりになるから、事故が絶えない。これを詰めていうならば三井三池の炭鉱が組合が二つに分かれたのはいつですか、一九六〇年です。一九六〇年に組合が二つに分かれて、第一組合と第二組合、御用組合ができ上がった。それからの災害の実績は一体どうです。私はここに資料を持ってきた。一九五七年には一年間でわずかに死者四名、一九五八年には三名、一九五九年には一名、それが一九六〇年に組合が二つに分かれて、通産省の指導に基づく御用組合によって経営の合理化が行なわれたが、一九六一年には驚くなかれ十七名の死者が出ている。一九六二年にはその十七名に近い十五名、一九六三年にもまた一名ふえて十六名、こうやって、第二組合とあなた方の大企業本位の合理化政策のために、年々死亡者がふえていっている。そして一九六三年の十六名の死者を出したその十一月にこの大爆発が起こって、一挙に四百五十八名という犠牲者を出したのです。だから、こういう大きな事故が起こる前には、必ず間接的に目に見えないところにこういう労働政策というものがある。第二組合を分裂して労働者の抵抗力を弱めていく。そしてまず組合を弱体化し、抵抗力を減少して、その上に生産第一主義という資本の本然の姿を露骨に押しつけている、ここから事故が生まれてくる。あなた方はそういうことを奨励はしているけれども、それを防ごうとするような考え方は通産省にはない。労働行政はゼロだ。わかりますか。そういう労働者の感覚も知らないものが、一つぽこんと鉱山保安監督に関するだけ監督権を持っていて、そして通産省の端っこのほうにその行政権を握っておいてやろうとするから、事故が絶えないのです。第一組合と第二組合ができてから事故がふえたというこの事実を、あなたは認めますか、否定しますか。
  97. 川原英之

    ○川原政府委員 ただいま小林先生の御指摘になりました死傷者の数、事故の数につきましては、先生お調べのごときであると思います。われわれといたしましても、鉱山労働者の意思を保安全体に反映いたしますために、再三これまでに鉱山保安法の改正を行なっております。第一回は、鉱山保安に関しまして各鉱山に保安委員会の制度を置きまして、保安委員に、これは同数でございますが、労働者の推薦する保安委員が参加いたしまして、保安に関する重要な問題はこの保安委員会で討議をして、それを実施に移していくという制度をとったわけでありますが、さらに昨年におきまして、前国会にお願いをいたしまして、労働者の推薦する監督員補佐員という制度を制定いたしまして、ここを通じて労働者の意思を反映させるという方向にわれわれといたしましても持っていっておるわけであります。ただそういういろいろな措置を講じまして、保安に関して一体の措置をとっていこうといたしておるのでありますが、にもかかわりませず、今回その途上においてこういう事故が起こりましたことは、先ほど来申し上げておりますように、まことに遺憾に存ずる次第であります。
  98. 小林進

    小林委員 それでは時間もありませんから、私はあなたと討論したところで最終結論が出るわけではないから私から言いますけれども、一体日本労働災害が起こる問題点は何だと思っていますか。労働時間が大体日本は長過ぎる、賃金が安過ぎる、労働時間では日本は鉱山労働が四十八時間から五十時間、アメリカは四十時間、ヨーロッパは平均いたしまして四十二時間から四十四時間の間に問題が処理せられている。長過ぎますよ。賃金が安いから労働時間が長くなり、労働者が疲れる。それから住宅の問題が実に劣悪だ。あなた方はそれを注意したことありますか。そういうような問題で私はもう鉱山局にはものを言う元気はありません。あなたも含めてそっくりひとつ労働行政の一元化のために努力しなさいよ。あなたはそのうちにまたどっかの局長にでも飛んでしまえばおれは責任がないからなんて考えたらだめですよ。いいですか。あなた方の出世のためには道は短いだろうけれども、失われた生命は永遠に返らないのだ。  そこで、ひとつ労働基準局長にお伺いいたしますけれども、一体日本の現在の災害率はどうですか、数字でお伺いをいたしたいと思うのです。一日休業八日以上の死傷、こういう関係でお答え願いたい。
  99. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 災害発生率につきましては幾つかの立場からの見方がございますが、労働者千人当たりの災害の発生率を見るという見方がございます。それによって最近の傾向を見ますると、全産業における休業八日以上の死傷年千人率は、三十五年におきましては全産業平均で二五・二でございましたが、漸次減少いたしまして、三十八年におきましては一九・二、三十九年は推定でございますが、一七・五というように低下いたしております。従来災害多発業種といわれておりました建設事業、貨物取り扱い事業、林業などにおきましても、昭和三十五年ごろと比較いたしますと、いずれも三〇%ないし四〇%の低下を見ておるということでございまして、災害実数はまだかなり多うございますけれども、千人率について見ます限りにおきましては、効果をあげてきておる。しかし絶対数においてはまだかなり死傷件数が多うございますので、私どもはこのような災害多発業種等を中心にいたしまして災害防止対策を進めておる次第でございますが、何ぶんにも御指摘のとおり災害対策企業内における組織と機械施設と労働者の行動といったような総合的なものがからみ合った関係に置かれております。特に労務管理なり、先ほどの労働時間、その他の条件とも関連いたしておりますので、災害対策の問題を一般労務管理の近代化といったような事柄とも直結させまして指導いたしておるような次第でございます。
  100. 小林進

    小林委員 比率は落ちているとおっしゃったが、それはそのとおりだ、業種がふえているのですから。けれども実際の数字は決して減ってない。私はちょっと聞き漏らしましたけれども、あなたのおっしゃった数、字の中には国家公務員や地方公務員は入っておりませんでしょう。入っておりますか。それから船員法適用の労働者も含まれていないはずだ。それから五人未満の最も小さなあなた方の労働基準局統計の中に登録してないそういう零細な業者の災害も含まっていないはずです。どうですか。
  101. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 ただいま申し上げました千人率は、労働基準法の適用のない国家公務員あるいは船員等につきましては、これを除外いたしております。ただ鉱業関係につきましては保安法規は別でございますが、労働基準法の適用がございますので、全部包括いたしまして計上いたしておるわけでございます。
  102. 小林進

    小林委員 災害の補償統計とこの労働基準局の届け出と労働災害の件数とやはり合いませんね。これはどっちがほんとうなんですか。合っておりますか。
  103. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 おそらく先生の御指摘の統計は、労災保険法の関係から見たものと、それからいま私が申しました資料との食い違いを指摘されておると思うのでございます。労災保険のほうは御承知のように、労災保険の適用を受ける強制適用事業及び任意適用事業につきまして、災害補償費を受けた者の数を基礎にいたしまして調べたものでございます。先ほど私が千人率を申し上げましたのは、労災保険の適用関係とは別に、労働基準法の適用を受けます者につきまして報告を受けました数字でございます。したがいまして、当然若干の食い違いは出るものと考えられます。
  104. 小林進

    小林委員 これは苦干の誤差じゃないのであって、これは労災保険法に基づけば、ちょっと古いですけれども、三十二年だけでも百万件をオーバーしているだろうといわれる。ところがあなた方基準局の資料でいけば、一日休業だけで七十五万円何ぼということで、二十万から二十五万の開きがある。労働基準監督局で無事故何十日だとか、非常にあなた方が事故防止のためにおやりになる。事故防止のために問題を詰めていかれるから、経営者は、労働者が事故を起こして指を折った、足を折ったといっても登録を出さないように隠していくという傾向がここ数年来の傾向なんです。そうしてみんなうそをあなた方に報告しているという、こういう危険な労働行政がまだ行なわれているということを私は言いたい。いかがですか。ないというなら私は実績でお示ししますよ。
  105. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 実数の把握といたしましては、労災保険の補償費を受けた者の実数、これは一番正確につかめるわけでございます。したがいまして、その資料に基づいて傾向を判断するというのは、一つの間違いのない判断材料でございます。しかし何ぶんにもただいま申し上げましたように、労災保険の適用を受ける労働者に限定されておりますし、それから同一労働者につきまして、好ましいことではないのですけれども、一年の間にダブって請求がなされるとかいろいろ問題がありますので、正確を期しておりますけれども、そういった事実上の多少の誤差は避けらない。   〔委員長退席、井村委員長代理着席〕 一方におきまして、保険の適用のないものをも包括しました死傷病報告につきまして、災害報告につきましては届け出をしないというのも実際上あり得ることと思うのであります。しかし統計数字といたしましては従来とっておりましたその基盤、条件とほぼ同様な形で判断をいたしまして、大勢判断をする、傾向を見るということによりまして、誤りなきを期したいと考えておる次第でございます。
  106. 小林進

    小林委員 少なくともこういう数字は断じて低目に出すべきものじゃないのでありまして、あくまでも事を正確に出して社会に警告を発するという方向でいかなければ、災害を防止するということは、きわめて困難でありますので、あなたの数字の中に、これは労災保険も同じでありますけれども、五人未満の事業所から、公務員から、船員等も、これは含まれていないのであります。こういうものも含めて、一体どれだけ労働災害というものがあるのか、できればこれもしっかりつかんで、一本の統計にして、私はもっとこの監督行政を厳重にしてもらいたいと思うのであります。  時間もないから、私は残念ながら半分ばかりにして結論を急ぎますが、最後に一つお伺いしますけれども、昨年できた労働災害防止団体法、この法律が一体どんなぐあいにいま実施せられているかということを、私どもは非常に気にしているわけです。その中で、労働災害防止計画だとか使用者団体による労働災害防止団体の活動とかいうことは、時間がありませんから省略いたしまして、第三番目の特別規制、この特別規制が一体どういう形で現在行なわれているか、私はそれを聞いておきたいのであります。すなわち、中央、地方の労働基準審議会に公労使三者構成の安全衛生部会を常設するということが、去年の法案審議の過程できめられているが、これは一体どうなっているか。  第二番目には、計画的に大幅に労働基準監督官の増員につとめて、これを有効に配置するということも、あのときの約束ででき上がっている。これが一体どういうふうになっているか。これは現在二千四百名の現監督官に対して、四十年度予算のうちには、二百名をおふやしになっているようでありますけれども、事業場は三倍にふえているのに、たった二百名ぐらいで、ほんとうに基準監督行政が満足にやっていけるのかどうか、私どもは非常に危惧の念を持っているのでありますけれども、この点はどうか。  第三番目には、労働基準監督官の採用にあたっては、広く人材を求める見地から、特別の配慮を行なうこととするという、こういう約束もあったはずであります。この中には、労働組合の幹部もときには監督官に採用する道を開くということが、これは言外に約束せられているはずでございますけれども、実際にこういうことがどうなっているか。  第四番目といたしまして、監督官に対する労働者の面接権が事実上実施せられているかどうか。すなわち、監督の際労働組合の幹部等の立ち会いを求めなければならない等の問題、労働者の申し立てがあったときには、これを優先的に取り上げなければならないというふうな約束の点、労働者から面接を求められたときは、できる限り面接して事情を聞かなければならない等の約束もできたはずでありますが、これが一体どうなっているか。  第五番目には、職場巡回のための監視員制度の改善をするということになっているが、これも一体実際の面においてどうなっているか、以上についてお伺いをいたしたいのであります。
  107. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 御指摘の点の中で、重要な問題は現在中央労働基準審議会において審議が続けられておるものが大部分でございますが、その中で、すでに決定いたして実施に移しておるものを申し上げます。  まず第一に、災害対策の問題につきまして、さらに労使が参加いたしまして積極的な審議検討を行なうようにという点につきましては、中央及び地方労働基準審議会に、災害防止部会という部会を常置の機関として設けることにいたしました。これは政令でございます労働基準監督機関令の改正を本年二月に行ないまして、これに基づきましてこの部会を常置の機関といたしました。中央審議会におきます部会は、発足いたしまして活動を開始しております。地方の労働基準局におきましては、もう法律上はできておるのでありますが、人選を終わりまして新年度早々に発足さしたいというふうに考えておる次第でございます。  また、御質問の趣旨は、労働災害防止団体法の施行に関係して、特別規制というお話でございましたが、あるいは災害防止協会の運用につきまして、参与制度の問題であるかもしれないと存じまして申し上げますと、災害防止協会の参与には労働代表も加えるようにという強い御要望があり、法律にそれを盛り込んだわけでございます。この参与につきましては、中央労働災害防止協会及び業種別労働災害防止協会におきまして、現在人選中でございます。昨年八月ないし九月にわたりまして協会が発足いたしまして、おおむね半年を経過したのでありますが、本部づくりを大体終了いたしまして、組織の整備拡大につとめております。したがいまして、参与を人選いたしまして、その御活躍を願うという段階に移行いたしますので、近く参与の人選も行なわせたいと考えております。  それから、労働基準監督官の増員の問題につきましては、新年度二百名の増員を予定いたしております。こんなわずかな数では、事業場の著しい増大に対応できないじゃないか、徴弱じゃなかろうかという御指摘でございます。私どもも汗顔の至りでございます。しかしながら、政府職員の定員増加は認めないという政府の基本原則につきまして、例外的にお認めいただいた、こういう点で、私どもも力の至らざるを痛感するのでありますけれども、労働基準行政始まって以来、定員が減ったことはございますけれども、ふえたということはあまりなかったのでございまして、特に監督官の定員増はほとんどなかったのでございますが、今回二百名を新規増員いたしましたにつきまして、今後さらにその線に沿いまして一そう努力してまいりたいと考えております。なお、人選について広く人材を求めるために、適切な処置を考えよという点につきましては、監督官の試験制度も公開試験にいたしたいと考えておりまして、目下人事院とよりより協議中でございます。  それから次には、労働者ないしは労働代表との関係におきまして、いわゆる面接権とかあるいは苦情の優先的取り上げといったものにつきまして、これは事柄は労働者自身の問題と労働組合代表の問題がございます。労働組合関係の問題がおそらく質問中心ではなかろうかと思うのでございますが、第五番目に御指摘のございました監視員制度とも関連して申し上げますと、現在置かれております安全指導員の今後における運用と関連いたしまして、労働組合代表もそれに選任してともども事業場の監督指導に寄与すべきではなかろうかという線が考えられまして、これは冒頭に申し上げましたように、現在中央労働基準審議会におきまして、そのあり方につきまして検討中でございます。相当回数熱心に検討がなされておりますが、いずれ近く結論が出るものと期待いたしております。
  108. 小林進

    小林委員 まだ問題がたくさんありますけれども、時間がありませんから、最後に一つ注文をつけて、労働災害の問題から次の問題に移りたいと思うのであります。  いま原則的に労働災害に対して国際的に承認をせられている原則が三つある。第一は生命第一主義です。これは先ほども鉱山保安局長も言われたけれども、日本の労働行政にはこの生命第一主義というのが徹底していない。これを徹底してもらわなくちゃいかぬ。これが国際的に承認された事項である。第二番目には労使の納得による対等の決定ということだ。労働災害に対しては常に労働者の意見を反映するべく労使対等の間で、そして労働災害に対する具体的な方策を決定するというこの原則が、まだわが日本においては行なわれていない。これは労働者の考え方の中にも若干未成熟な点もありましょうけれども、常に災害防止のためには労働者の意見というものは資本家、経営者と対等に反映しなくちゃならぬという方向へ問題を持っていかなければならぬ。第三番目は、いま若干お尋ねしましたけれども、監督行政への労働代表の参加です。この参加がなければ、利益だけあげればよろしいという利益追求に夢中になっている労働監督行政はうまくいくわけがない。この三つの原則を明らかに具体的に示していただかなければならないと思うのであります。この点を厳重にひとつ御要望申し上げまして、次に第三番目の問題に移りたいと思うのであります。  第三番目の問題は、最低賃金の問題であります。最低賃金の問題については、昭和三十八年と三十九年の十月と二回、中央最低賃金審議会の答申が行なわれておりまするが、これは大橋労働大臣がこの国会でわれわれに約束せられたのと、いまの石田労働大臣の全国一律の最低賃金に対する考え方は後退しておる。私はこの問題を厳重に大臣質問をいたすつもりでございましたけれども、大臣がおいでにならぬ。最低賃金問題は重要なものでありますから、これはとても事務官の答弁じゃだめだ。そこで大臣がおいでになるまで保留いたします。最賃の問題は重要ですから、これは委員長と約束して、なお私に二時間有余の総括質問の時間を与えられると、理事者間でお約束願ったそうでありますから、そのときにやります。  第四問目の問題としては、職安行政の問題について御質問をいたしたいのであります。  現在職安行政には二つの特徴があらわれておる。第一番目は非常に汚職が多いということだ。これは遺憾千万であります。第二番目は職安行政は非常に激烈になりました。職安の窓口におる職員の仕事が非常にふえておるということです。これはやはり黙視できない。汚職は憎むべし、職員の仕事の増加に基づく過重労働は何とかひとつ救済してやらなければいかぬという二つが職安行政の特徴だと思います。  まず第一番目の汚職の問題であります。一体昨年から今年にかけて全国的にこの汚らわしい汚職問題がどれくらい行なわれておるか、概括をひとつ労働政務次官からお伺いをいたしたいと思います。
  109. 始関伊平

    始関政府委員 労働省は由来涜職というような問題はきわめて少なかったのでございますが、最近に至りまして、職業安定所関係におきまして若干の収賄事件の起きておりますことははなはだ遺憾とするところでございます。  事件の起こっておりますのは秋田県それから長崎県さらに熊本県でございまして、秋田県におきましては四十六名の者が取り調べを受けまして、うち七名が起訴せられたのでございます。残余の者につきましては起訴猶予の処分が決定をいたしまして、秋田県といたしましては、事件が一段落をいたした次第でございます。なお長崎県でございますが、三名の者が逮捕されまして、ほかに任意出頭によりまして取り調べを受けた者が八名ございます。この三名の者の司法処分は未決定でございます。それから熊本県でございますが、これは天草、熊木、八代という安定所でございますが、逮捕された者が五名、任意出頭で取り調べを受けた者が四名でございまして、こちらもまだ処分が決定をいたしておりません。  たいへん遺憾な事態でございますが、労働省といたしましては、本省の関係課長に行政処分として戒告の処分をいたしました。秋田県の安定所長に対しましては減給の処分をいたしました。司法処分、起訴された者等に対する行政措置のほうはまだ決定をいたしておりません。去る二月の二十七日にこの安定所を監督いたします各府県の安定課長を東京に集めまして厳重な警告を発した次第でございまして、盆、暮れのいわゆるつけ届けのようなものも厳重に辞退するということを申し渡しました。その他マージャン等も絶体やらぬというようなことを指示いたしまして自粛の態勢を整えております次第でございます。
  110. 小林進

    小林委員 いまもろもろの人数をお述べになったのだが、私どもはそういうのは氷山の一角であるといったらこれは副大臣お気に召さぬだろうけれども、それに近い風評はわれわれはまだもろもろに聞いているのであります。けれどもそういう未確定な事項をここで述べたのでは、いたずらに人を傷つけることになるからやめますけれども、ただあなたが言われた数字の中でも、こういうことを言われている。任意取り調べの人数に比較して逮捕者が少なかったので、われわれはもう青天白日だというけれども、実際はそうじゃない。けさあたりの情報によりますと、いまちょうど就職シーズンを迎えて輸送などの業務もあるので、職安行政をストップさせるわけにはいかないから、くさいにおいがあるけれども、職安行政の円滑な運営のためにやむを得ず見のがしているのだ、こういう情報が入ってきているのです。あなたがもう完全に問題が消え去ったなどという甘っちょろい考え方ではいけませんけれども、問題はそんなことではないのだ。そこからまず一つ反省をして、まだ問題は、においは方々でありますけれども、いたいけな就職者の輸送その他あっせんのために涙をのんで泳がしているというのが今日の情勢ですということを、正しく把握していかなければなりません。  そこで一つ申し上げまするけれども、特に一番はなはだしいのが秋田県であります。労働大臣のおひざもとだ。大臣もっていかんとなす。不徳のいたすところというのでは間に合わないと思います。秋田県では九つの職業安定所の中に八つまでが家宅捜索を受けておる職業安定所の中で、人間の就職などというものは、あるいは失業保険の業務などとというものは生命の次に大切な仕事です。その職場へ、この寒風の中で雪道を踏んで食うか食われるかの苦難の道を歩みながら行く、その安定所が、九つのうちの八つまでも官憲の力をもって家宅捜索をせられている、こういう不明な官庁の歴史がいままでありましたか。いままでこういう例がありましたか。一つや二つはあったろうけれども、九つのうちの八つまでがやられたなどという、そういう話が一体どこにありますか。その中でしかも逮捕せられた者が所長において二人だ。職員が十一名、任意取り調べが私の調査によれば二十二名ということになっておる。これはたいへんなことだ。  そこで私は、職安行政そのものの前にまず文部省にひとつ伺いたい。中学校の校長先生が中学卒業生のことで業者の接待を受けた。そして「観音開きになった小型本。中身はいかがわしい絵と歌を若いた例のやつ」——「例のやつ」というのは私どもにはわかりませんが、「例のやつ」までもらっていたという事実が、これも麗々しく報道せられているわけであります。私はこれはうそじゃないかと思うのですが、真相はいかがでありますか。文部省はお調べになりましたか。この秋田の職安行政汚職の問題にからんでこういうものが出ておりますが、真相はいかがです。
  111. 河上邦治

    ○河上説明員 私のほうにとりましては、学校の先生にそういうことがあっては相ならぬと思います。したがいまして、この一月二十二日には、特に中学校の卒業生に対する就職の問題に関連いたしまして通達を出しております。なお、二十日には全国の都道府県の指導部課長会議を開催いたしまして、厳に職業指導の徹底を期そうということを絶えず繰り返しておるような次第でございます。  ただいまの問題は都道府県教育委員会、特に秋田の教育委員会等から詳細に報告がございませんけれども、なお職安等の関係から現在秋田でも若干問題が起きておるようでございまして、その点についていまあわせて調査等を県教委にお願いしておるという段階でございます。
  112. 小林進

    小林委員 お役所の中でも、文部省の行政が一番おくれているのです。あなた方は面従腹背で、両手を組んではいはいとおやりになっているけれども、腹の中では国会議員の要求質問に対しては決してまじめにおとりにならない。それを私は知っているのです。私は二十四年のときから、文部行政をやる文部省の役人が、言っては悪いけれどもはしにも何にもかからないという経験を積んできております。やはりこういうことも、やれ地方教育委員会だ、地方自治体だなどといって、あなた方はみんなひとのほうに問題をおっかぶせて、調査資料もきてないし何もきていない、目下調査中でございます。こんな巧妙な答弁がありますか。私はあなたが課長でなければおこりますよ。あなたが課長だから、これでも腹の立つのをがまんしている。そんなことで問題の解決になりますか。私はこんなことはうそだろうと思っている。うそでもいい、ほんとうでもいい、明確に答えなさいよ。私の聞かぬことを答えているが、私はただ、こんなことはないと思うがありますかと聞いている。あなた方が訓示いたしましたの、集めてどうの、そんなことをあなたに聞いているのじゃないのです。失敬千万だ。いんぎん無礼じゃないですか。質問したことに答えなさい。
  113. 河上邦治

    ○河上説明員 ただいま先生の御質問に御満足に答弁できませんではなはだ申しわけないのでございますが、その問題につきましてははっきりした実例を存じておりません。
  114. 小林進

    小林委員 あなたが知らないならばそれでよろしい。  次に聞きますが、同じ秋田県の大曲職安管内にある中学校で、業者から中学卒業生のあっせんに関係して小型の自動車の寄付を受けているところがある。こういうことがいい、悪いは別として、中学の卒業生のあっせんのために小型の自動車を業者から寄付を受けているかどうか、この事実がありますかどうか。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕
  115. 河上邦治

    ○河上説明員 ただいま私のほうにまいっております秋田の県教委の連絡によりますと、そういう詳細な事実がございませんので、はなはだ御答弁があいまいだということでおしかりを受けてどうも申しわけないのでございますけれども、三月十日にございました秋田からの連絡によりますと、六名の秋田県下の中学校の先生に不詳事件が起きて、現在六人とも書類送検中であり、県の処置といたしましては、県下の全学校に対して厳重な指導を教育長からやっているようでございます。ただいまのところそこまでは私のほうでわかっております。しかしながら、ただいま御質問の具体例につきましては、私のほうでまだ承知いたしておりませんので、はなはだ申しわけないと思っております。
  116. 小林進

    小林委員 私は資料を出たところを言いますよ。サンデー毎日の三月十四日号に載っております。私はこれを資料にして申し上げているわけでありますから、ひとつあなたもこれをお読みになってすぐ調べてください。これは個人で受けたわけじゃない。学校で受けたのですが、いいか悪いかの判断は別にいたしまして、いま非常に求人難であることは事実であります。そこで、やはり業者というものは中卒を得たいために——これは秋田県だけじゃありません。大体東北一帯にこういう業者の学校に対する運動が行なわれている。その運動の一環として、あるいは学校の備品としてテレビを寄付するとかあるいは学校の舞台の幕を寄付するとか、どんすを寄付するとかそういうようなことが、多くではございませんけれども、私どもでもまれにそういうようなことを聞いたり見たりするのであります。これは個人の汚職じゃありませんので一がいには言えませんけれども、これが好ましいことであるかどうか、文部省の見解を私は承っておきたいと思います。
  117. 河上邦治

    ○河上説明員 ただいまの問題は、中学校の卒業生の就職に関連する動機の問題であろうと思いますが、そういう問題であるならばもちろん自明の理でございます。しかしながらあるいは業者の方の中でも、あるいは学校の卒業生でございますとか、あるいは何か個人的な関係で正常な問題であるときにはもちろん差しつかえないと思いますが、問題は動機の問題であろうと思うのでありまして、この点はとくとわれわれも調査をし、あわせてこの問題は真剣に検討してまいりたいと思います。
  118. 小林進

    小林委員 その次にやはり就職の問題に関連いたしまして、子供の就職先に先生が勤務状況等を調査に行く、あるいは自分のかわいい子供の就職した企業実態等を調べに行く、私はそれも教育者として当然だと思いますけれども、やはり業者はそれを契機にして以後の就職をお願いしたい。何とか因縁をつけていきたいということで先生方に不当に——不当というよりはごちそう政策をやったり、おもてなしをしたりおみやげを持たしたり旅費を提供したりするそういう風潮もあるようであります。これも私は犯罪につながるものとは考えられないが、文部省としてはどのようにお考えになっておるか、伺っておきたいと思うのであります。
  119. 河上邦治

    ○河上説明員 中学校の卒業生に対しましては、御承知のとおり職業安定法の二十五条の二でやっておるのがほとんどでございます。九五%くらいと承知しております。したがいまして二十五条の二でいたしますと、ほとんど卒業生はその地元の職業安定機関におまかせする。しかしながら職業情報とかそういうものを先生も集められるのが学校の態度だと思いますが、そのような度を過ぎたことは厳に慎まなければならぬと思います。しかし学校の中では修学旅行等にまいりましたときに、その学校の卒業生がある企業に入っておる、それを先生が卒業後の補導の一環として、どういうふうにやっているかという、それを見ることまでわれわれのほうでいかぬということは言えないと思います。しかしながら、その間にそういう供応を受けるというようなことはもとより適当でないことでございますので、特にわれわれのほうの指導主事会議課長会議等にはそういう具体例をあげまして厳に注意を喚起しておる次第でございます。
  120. 小林進

    小林委員 文部行政については大体以上の三点を私はお伺いしたがったわけであります。私もそれがいいか悪いかということのきちっとした何はないわけでありますが、文部省においては、いま文部省のお答えになりました良識に基づいてどうか誤りなきよう、問題が拡大をしないように十分ひとつ御注意あらんことをお願いいたす次第でございます。  本論に戻りまして、労働省にお伺いいたしますが、秋田県職安における汚職の範囲は一体どんなものでありますか。私の調査によりますと、一々言う時間がありませんから、私の調査資料だけを申し上げて、これが実際かどうかをお伺いします。  まず一例といたしましては、本荘職安における職安促進係長の伊藤清君、年齢二十七歳、これがどういうことをしたかというと、伊藤メモというものが発見された。そのメモによりますと、三十八年、三十九年の二カ年で就職を依頼してきた五十三の業者から現金で二十万円、それから洋服生地その他品物で三百点のいわゆる増収賄を受けた。そういう増収賄一覧表がちゃんとメモしてある。三百点ですから多額なものです。二例といたしましては、この汚職にひっかかったものは現金で最高三十万円から、小口のもので五、六万円もらっておる。品物は多数にして枚挙にいとまなし、こういう実情でございます。三番目の例といたしましては、二人とらわれた所長のうちの一人の所長の宅では、就職に関連して贈られた清酒が七十本、ある課長の宅では高価な外国製の洋酒や衣類、洋服や和服など、贈収賄でもらったものが二つの押し入れの中にびっしり入っておる。四番目、といたしましては、湯沢職安の職業紹介係真田幸三君、年齢四十歳は、自宅の納屋のわらの下に隠していたけれども、捜査官がわらの下をあけたら四百点の品物が出てきた。贈収賄の品物が四百点、金にして大体五六十万円の品物が出てきた。五番目の例といたしまして、ある所長は——さきに言いました所長です。就職あっせんのために業者から贈られた品物を職員のためにくじ引きで分けた。私にも当たったけれども、そんなものはけがらわしいので川の中に捨ててきたと警察に言い張っていた。その言い張っていた所長の宅を捜索したら、所長個人あての贈りものがわんさと出てきた。何だここにも品物があるじゃないかと言われたら、たまたま捨て忘れたものがそれだけ残っていたのでございます。報道によればこういうへたなうそをついて刑事をあきれさせた、こういう例がある。六番目、職安の人はひどい。現地視察と称してたかりのようなことをする、そしてわいろを要求する、こういうことを業者は語っていた。第七番目、一体どういうふうにしてそういう品物をもらうのかという増収賄の手口を紹介すると、たばこ、菓子箱などの目立たないものは安定所の中で簡単にこれを受け取る。洋服地など、目立ったものは駅の一時預かり所に預けさせておいて、預かり券であとから行って品物を受け取るような、そういうやり方をしている。業者が子供の親たちと直接会って面接して、そして求人求職の仮契約をすると、選考会の席上で職安法違反だと言って業者をおどかして面接を中止させる。そこで業者はふところからのし袋を出して黙って置くと、それをポケットの中に納めてから、はて私の誤解であったかな、こういうことを一言言って選考を終わらせる。一度コネをつけると、転任ごとに必ずあいさつ状を出してせんべつの催促をする。季節ごとに手紙を出す。奥さんの洋服地まで季節ごとに手紙を出して催促している。  こういうことが行なわれている。これは私の情報であります。一日や一時間でこの知恵なんかなかなか出てくるものではありません。長い因襲の中にこういうことが行なわれてきたものと見なければならない。いかがでございましょう。こういうことが事実あったことをお認めになりますか。
  121. 始関伊平

    始関政府委員 ただいまのお話は私初めて伺いました。最初は比較的軽微なものから、だんだんと回数が重なるに伴いまして額も大きくなり、悪質なものが積み重なって今日に至ったということであろうかと存じております。先ほど申し上げましたように、労働省といたしましては、かりに軽微な事柄でも、そこからだんだん悪い結果が出てくるということを考えまして、全体として自粛の態勢を整えておる次第でございます。  なお、いまの具体的な問題につきましては安定局長からお答えをいたします。
  122. 有馬元治

    ○有馬政府委員 小林先生の御指摘の情報でございますが、私どももいろいろに聞いておりますけれども、今日まではっきりしております起訴状によりますと、最初に御指摘の本荘の安定所の伊藤君、これが金額が最高でございますが、現金にして十五万七千五百円、物品が三万六千百十円、こういう起訴状になっております。その他、いろいろ手口等のお話もございましたけれども、私どもも警察、検察当局が捕捉をしました事実以外に御指摘のようなことがあるいはあろうかと思います。したがいまして、事実はこれだけだということは決して申すつもりはございませんけれども、今回の汚職にかんがみまして、私どもとしましては、先ほど政務次官からお話がありましたように、この際徹底的に綱紀を粛正いたしまして、二度とかかる事態が発生しないように、万全の措置を講じておるところでございます。また、今日の汚職が発生したよって来たる原因はいろいろございますので、学卒の扱い等についてもこの際改めるべき点が相当ございますので、文部省とも御相談の上、改めるべき点は思い切って改善を加えていく所存でございます。
  123. 松澤雄藏

    松澤委員長 小林君に申し上げます。申し合わせの時間がすでに過ぎました。あと一、二問ぐらいでお願いいたします。
  124. 小林進

    小林委員 それでは二問で終わることにいたします。職安局長は徹底的にやるつもりでございましたけれども、委員長に協力しなければならないから二問で終わりますが、一体犯罪発生の理由はどこにあるか、政務次官。第一番目はやはり求人難です。全国的に人手が不足している。これが第一の原因です。第二番目は、いわゆる地域格差です。こういう東北地方の後進県あたりにおいては、地元産業に吸収力がない。これは政府全般で十分考えてもらわなければならぬ。  第三番目といたしましては、これは私は大臣に言わなければならぬけれども、あなたは副大臣だから特にあなたに言わなければならぬのですけれども、県内の企業と県外の産業との賃金の格差なんです。同じ人間でありましても、賃金の格差が出てくるから、地元に就職する口があっても、どうしても高いところに流れる。県外、たとえて言えば東京あたりに行きますと、現在中卒で平均一万五千円から一万六千円、しかも厚生施設が全部完備している。地元の県内でいきますと、中卒では八千円です。最高ぎりぎりのいいところに行ったところで一万三千円どまりです。そうすると、大体三千円から七千円の賃金の格差があるということで、やはり地元からのがれて県外へ就職を求めていく。求人側もそれを求めて、そういうあらゆる汚職の材料をつくりながら若年労働者を引っぱろうとする。そこで労働者として考えなければならぬことは、政府も、地域格差をなくする、新産業都市をつくると言いながら、労働省の労働行政といえば何です。私はこれは後日の楽しみにして残しておきますけれども、最賃法なんて、だんだんその格差を広げるように六種類の賃金をつくって格差をつけた。ああいう地域別格差賃金、にせの最低賃金をつくって、だんだん差を大きくするようなやり方をしている。これが全国一律の最低賃金法をつくって、秋田に就職しようと、東京に就職しようと、九州に就職しようと、最低賃金はこれだというきめがあったら、少なくともこういうおそるべき汚職、贈収賄というものを防止するにどんなに大きな力をなしているかわからない。どうですか。私の言うことにうそがありますか。これを改めて全国一律の最低賃金を実施する、政府が口で標榜している地域別の格差、いわゆる後進地域の開発というようなところで力を用いてくれたら、これはなくなる。いかがですか。これが第一問です。
  125. 始関伊平

    始関政府委員 職安の仕事は非常に困難であるのでございますが、これは中学校、高等学校の卒業生を中心にいたしまして、若年労働者の供給が非常に不足をいたしております。しかのみならず、いまの小林さんの御意見とはちょっと反対になりますけれども、お聞きしますと、企業別のサイトを離れまして、この中学校、高等学校の卒業生の賃金につきまして、客観的な一つの相場ができでおります。そこで職安といたしましては、だれをどこに振り向けるかということについての基準と申しますか、これがつけにくいということも、私は職安汚職の発生の一つの原因になっておるのだという気がします。政府で考えております地域別、産業別の雇用計画といったようなものが、この指針の一つになることを期待したいと思うのでございますが、なお、いまお話しの最低賃金制の問題も、まことにごもっとでございまして、最低賃金制と地域別雇用計画とを相関連せしめながら、地方の産業を開発いたしたい、御趣旨に沿うように持っていきたい、このように考えておる次第であります。
  126. 小林進

    小林委員 最後の一問でございますので、文部省と労働省と両方にお尋ねいたしまして、きょうのところは終わりたいと思うのでございます。  まず文部省にお伺いしたいことは、私は職安行政に違反するものではないかと思うのでありますけれども、やはり求人難に関連いたしまして、各企業家は県内あるいは求人の集約しておるような場所に駐在員というものを置いております。その駐在員というものが大体企業と従業員の家族をつなぐパイプの役割りを果たしておるのでありますが、秋田県だけでも七十人くらいいるというのでございます。それは大体元校長だとか、元教員だとか、そういう者を企業家が使いまして、子弟の関係等を利用しながら、職安を通さないで、直接そういう業者の就職あっせん等に乗り出して、人集めをやっておるということでございますが、これは労働省にもお伺いするのでありますが、これは一体職安法の違反にならないのかどうか。聞くところによると、秋田県においても何か注意をされたり勧告をされたりする例が二、三件あるそうでございますが、文部省の立場でこういう点も明確な判断のもとに処置をしていただきたいということが一つ。これは答弁はいただきません。  次に労働省でございますが、こういう職安行政の汚職問題については、いま私が申し上げました三点について、いま政務次官からも御答弁いただきましたが、ひとつ大いに抜本的な改正はするとして、次にやはり現業務に携わっている者にも、再びそういうことがないように——何か所長を全部お集めになって訓示をおやりになったそうであります。それは訓示もけっこう、盆暮れの贈りものももらうなということを御指示になったこともけっこうでございますが、それで一体抜本的な対策になるのかどうかということを私どもは懸念いたします。私はいま少し現状に打つべき手があるのではないかと思っておりますが、その点が一つ。  いま一つは、これは問題が別になりますが、最初から申し上げましたように、いま職安所というものは、私どもたまに行ってまいりますけれども、求人と失業保険をもらう者とでこの職業安定所もまるで人の山だ。あの中で職業安定所の職員諸君が全くコマネズミのように動き回っておる様子を見るにたえない。ましてこういう汚職事件簿が起きますと、士気にも影響してくるのでしょうし、気分的にも晴れないものがありましょう。悪は討つべし、善は大いに慫慂すべし。この職安行政人員不足等もこの際十分考えていただきたい。ともすると、同じ労働省の管轄の職員の中で、どうも職安行政なんかに携わっている職員には日が当たらないのではないか。能率給を入れるなり、人員をふやすなりして、もっとせいせいとした、能率的、合理的な運営と人間の増加は望めないものかどうか。私はこの点をお伺いいたしまして、この二面作戦両々相まってひとつ明朗な職安行政をやっていただきたいと思うのであります。いかがでございましょうか。
  127. 始関伊平

    始関政府委員 非常に困難で、また多忙な職安に勤務いたします職員に対しまして、たいへん御同情のあるお話をいただきましてありがたいことでございます。いまお話しのとおりでございまして、今回の予算におきましても若干の増員も実現をいたしたのでございますが、今後機会を見ましてさらに人員の整備につとめてまいりたいと存じます。それから仕事のやり方といたしまして、電子計算機の備えつけというような、仕事の機械化、能率化にもつとめてまいりたいと存じております。さらに、職安の職員の諸君を適当な他の部局に、本省も含めまして交流等を実施しまして、職安職員の士気を高めるということも適切な方策の一つであると思うのでございまして、検討いたしましてその実現につとめてまいりたい、このように存じておる次第であります。
  128. 小林進

    小林委員 お約束どおり時間が参りましたので、これで私の質問を打ち切ることにいたします。ただ、先ほど申し上げましたように、最低賃金の問題と出かせぎ労働者に関する問題、これはひとつ婦人少年局の局長にもお伺いしますが、失業保険事業の問題、中期経済計画に基づく職業訓練の問題、それから社内預金、ILO中央交渉の問題、これだけはひとつ次の機会に質問させていただくことをお願いをいたしまして、本日は委員長との約束どおり終わりたいと思います。
  129. 松澤雄藏

    松澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十七日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時二十分散会