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石田国務大臣 私がお答えを申し上げます。私は御承知のように十二時までですから、なるべく私にお聞きいただきたいと思います。
食料品価格の高騰ということが、エンゲル係数から申しましても
収入の低い層に非常に大きな影響を与える、これは否定できないことだと存じます。ただ
わが国の産業構造というものは、近年急速に変わってまいりましたことは御承知のとおりでありしまて明治時代から大正にかけては就業人口の七割までが農民、漁民であって、他の三割が、二次、三次産業でありました。ところがいまでは第一次産業従業者は二七%くらいになりました。つまり七割の人が食料品をつくって、三割の人がそれを買って食べておったという時代と、二割七、八分の人が食料品をつくって、七割余りの人がそれを買って食べておる時代とは、農産物対ほかの
生活必需品との間の価格の序列が変わってまいります。ある
程度変わってくるのはしかたがない。われわれが学校で習った農産物と工場製品のいわゆる鋏状価格差ということは、今日は言えなくなりました。したがって、そういう食料品が相対的に産業構造の変化に伴って、ある
程度価格が動いてくるということはやむを得ないことだと思いますが、しかしそれを最小限にとどめるのが政治でございます。したがって、その影響を最小限にとどめますためには、流通過程の改善等の施策をやっていかなければならないことは、これはもう申すまでもないことだと存じます。そういう点、及ばないところがございまして、生鮮食料品その他食料品の価格が
生活にかなり影響しておる事実は、率直に認めなければならないと思います。
それからもう
一つ賃金と
物価の
関係でございますが、
賃金の
上昇はもとより望ましいところであります。しかしながらその
上昇が国の
経済及びその
企業の生産性と並行していかなければ、
賃金の名目上の
上昇は決して
実質上の
上昇にならないことは言うまでもないのでありますが、しかしながら、と申しましても
事業によって労務
比率に非常な差がございます。たとえば、石油精製業におきましては労務
比率はわずかに二・三%でありますが、道路運送業においては四〇%以上であります。しかし
賃金の一般的
上昇は、これはそういう
企業の労務
比率のいかんを問わずほぼ足並みをそろえて上がってくるものであり、また上がってこなければならないものであります。そうしますと、生産性の
上昇で処理せられるワクの広いところと狭いところに違いが生じてまいりまして、ワクの狭いところはある
程度の料金の
値上げに転化せざるを得なくなってくることも、これも
経済の自然の原則だと存じますが、しかしこれまたその幅をできるだけ縮めていくということが政治であろうと存じております。
そこで、一般的に申しまして、先ほどから
統計上の
資料を
材料にして議論がございました。この
統計の信憑性でございますが、私はこれはどうも
小林さんの御意見に違ったようなことを言うようでありますが、近年労使の間でいろいろ議論をいたします場合において、非常に大きな変化は何かと申しますと、両方とも共通の
統計を使うようになったということであります。これはある意味において労使が共通の広場の上で議論ができる
一つの前提であろうかと思って私は喜んでおるのでありますが、たとえば
消費者物価のとり方につきましても、なるほど乗用自動車をその
消費者物価の中に入れておる、こういえば、これは非常識であります。非常識でありますが、その入れ方によるのであります。これがきわめて微小な
数字で入っておれば、これはやはり合理的でありまして、乗用車の価格の低下というものは大衆の
生活に直接的には影響はございませんけれども、それはある意味においてはタクシーの料金あるいはそのほかにもいろいろ間接的に影響してくるのでありますから、全然〇・〇〇〇〇一%も入れてはならないという性質のものでもなかろう。したがって問題は結局入れ方にあるだろう。その入れ方についてはいろいろ議論をいたしました結果の方式によってやっておるのであります。先ほども申しましたとおり、
労使双方とも大体共通の
統計を使いだしてまいりました。この
統計を整備し改善することはもとより必要であります。特に生産者の
立場から議論をするのではなくて、
消費者も含めた
立場からの
統計を整備するということは必要であろう。これについては整備いたさせるよう努力をさせてまいりたいと思っております。一般的に申しまして、全体的にいって、
生活のある
程度の内容の
上昇は否定できない。その内容の
上昇と
物価の
上昇とが相まって、
生活の苦しさを感じさせているのがいまの
実情だろうと思うのであります。しかし内容が
上昇していること自体がけしからぬという議論は間違いでありまして、われわれは毎日毎日、年々に
生活の内容の充実をはかりつつも、なお生産の苦しさというものを感じないで済むようにしてまいらなければならない。内容を充実させ、向上させたから苦しくなったんだという議論は、これは私は高橋長官もそういう議論をなさったとは思いません。ただ一般的に昔と同じような
生活の水準をしておって、それでなお苦しいというのではないのじゃなかろうか。だんだん
上昇しつつあり、
生活も豊富になってきておることがやはり
物価高と相まって苦しさを感じさせているのではなかろうか。しかし、それだからといって、内容の充実、
上昇ということを求めていくのが、これまたわれわれの目標であることはいなめないのであります。こういう点をいろいろ御勘案いただいて、
労使双方とも実効ある結果をもたらすように、良識をもって
賃金問題の処理に当たられんことを
労働大臣としては熱望にいたしておる次第であります。