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1965-03-11 第48回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十一日(木曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 松澤 雄藏君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 河野  正君    理事 八木  昇君 理事 吉村 吉雄君       伊東 正義君    亀山 孝一君       熊谷 義雄君   小宮山重四郎君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       中野 四郎君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    松山千惠子君       粟山  秀君    山村治郎君       亘  四郎君    淡谷 悠藏君       伊藤よし子君    小林  進君       滝井 義高君    長谷川 保君       八木 一男君    山口シヅエ君       山田 耻目君    本島百合子君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     戸澤 政方君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  坂元貞一郎君         厚生事務官         (社会保険庁年         金保険部長)  實本 博次君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君         厚生事務官         (大臣官房企画         室長)     網野  智君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 三月十一日  委員山村治郎辞任につき、その補欠として  鈴木善幸君が議長指名委員に選任された。 同日  委員鈴木善幸辞任につき、その補欠として山  村新治郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月八日  最低賃金法案井手以誠君外十四名提出衆法  第七号)  駐留軍労働者の雇用安定に関する法律案中村  高一君外十三名提出衆法第八号) 同月五日  戦争犯罪裁判関係者の補償に関する請願荒舩  清十郎紹介)(第一〇九三号)  同(中村寅太紹介)(第一一一九号)  同(福田篤泰紹介)(第一三三三号)  同(大坪保雄紹介)(第一四一五号)  日雇労働者健康保険制度改善及び老後の保障に  関する請願鈴木茂三郎紹介)(第一〇九四  号)  栄養士法第五条の二改正に関する請願床次徳  二君紹介)(第一〇九五号)  同(千葉三郎紹介)(第一三三二号)  戦災による傷病者及び死没者遺族援護に関す  る請願松田竹千代紹介)(第一一一八号)  同外一件(江崎真澄紹介)(第一二〇四号)  精神衛生法の一部改正に関する請願外五件(安  藤覺紹介)(第一一六五号)  医療労働者労働条件改善等に関する請願(稻  村隆一紹介)(第一一六六号)  戦災による死没者遺族援護等に関する請願  (荒木萬壽夫紹介)(第一一九二号)  理学療法士及び作業療法士制度化に伴う経過措  置に関する請願池田正之輔君紹介)(第一二  〇五号)  同外五件(宇野宗佑紹介)(第一四〇一号)  精神衛生法改正等に関する請願唐澤俊樹君  紹介)(第一二二五号)  同(吉川久衛紹介)(第一二二六号)  同(小坂善太郎紹介)(第一二二七号)  同(増田甲子七君紹介)(第一二二八号)  同(小川平二紹介)(第一三三〇号)  同(田澤吉郎紹介)(第一三五七号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第一三五八号)  同(倉石忠雄紹介)(第一四一六号)  衛生検査技師法の一部改正に関する請願千葉  三郎紹介)(第一三三一号)  理学療法士制度化に伴う経過措置に関する請願  外五件(長谷川保紹介)(第一四一八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 松澤雄藏

    松澤委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、厚生省戸灘会計課長より、昭和四十年度厚生関係特別会計予算の概要につきまして説明を聴取いたします。戸澤厚生省会計課長
  3. 戸澤政方

    戸澤政府委員 それでは、前回予算説明特別会計分が抜けておりましたので、本日配付いたしました資料に基づきまして、簡単に特別会計分予算を御説明申し上げたいと思います。  厚生省所管特別会計五つございまして、厚生保険特別会計、この中に政管健保日雇い健保、それから厚生年金事業勘定が含まれてございます。第二は船員保険特別会計、それから第三は国立病院特別会計、四番目がアヘン特別会計、もう一つ国民年金特別会計でございまして、この中には拠出制国民年金と無拠出福祉年金二つ勘定が含まれてございます。この五つにつきまして、簡単に注釈をつけてまいりたいと思います。  第一ページ目は、厚生保険特別会計の中の中心をなす健康勘定政管健保事業勘定でございます。歳入歳出、来年度は三千百三十三億のバランスシートになってございますが、説明の便宜上、右の摘要欄を先に簡単にごらん願いたいと思います。  四十年度は、被保険者は前年度千百七十四万人から千二百十二万人。その次の標準報酬、これが、「三十九年度」と書いてありますのは三十九年度予算でございますが、平均月額の二万三千四百四十七円が、来年度は三万四千百二十九円となっております。この報酬計算の中に、いわゆる総報酬制考え方がとられておるわけでございます。その結果、料率のほうは、現行千分の六十三を五十八に引き下げるということに相なります。次の一人当たり保険料額は、それで計算をいたしますと、前年一万七千四百五十五円から、本年は二万一千六百六十七円になるというわけでございます。その下に、一人当たり保険給付費が書いてございます。最初の一人当たり保険給付費、前年一万七千四百五十五円が本年は二万一千七百七十三円、これはその次の二つ現物給付による医療給付費現金給付費を合計したものでございますが、そのうちの一つ医療給付費について申し上げますと、前年一万五千二百十六円が本年は一万九千百四十八円になるというわけでございまして、この本年度医療給付費計算は、最近の実績もとにいたしまして、一部負担の導入による影響等計算してあるわけでございます。  それで勘定のほうにまいりまして、歳入は、保険収入といたしまして二千六百五十七億円のうち、保険料収入が、ただいま申し上げました基礎計数もとにして計算をいたしますと二千六百二十七億になるというわけでございまして、それから一般会計より受け入れといたしましては、前回説明申し上げましたとおり例年五億程度受け入れでございましたのを、本年は特に赤字対策を考えまして三十億受け入れてあるわけでございます。  次の積み立て金は、前年度でもって食いつぶして残っておりません。  次に、借り入れ金が、本年四百六十二億と多額のものを計上してございますが、この内訳は、前年度支払い未済が約二百二億出る予定でございます。この前年度支払い未済分は、一応借り入れでもって処置するという考えでございます。それから残りの借り入れ金は、支出のほうに書いてあります予備費の分でございます。予備費二百六十億を計上してございますので、もしこれを必要とするという場合には、その財源措置として借り入れをもって充てるという含みで、予備費借り入れ金に含めておるわけでございます。したがって、借り入れ金は、前年度支払い未済の二百二億と予備費二百六十億の大体合計額になっておるわけでございます。  次に、歳出のほうは特に申し上げることもないと思いますが、予備費二百六十億と、かなり多額のものを組んでございます。例年予備費保険給付費の三%足らずのものでございますが、来年度保険給付費の約一割程度の額を組んでおるわけでございます。これは総報酬制といったような初めての制度を導入するわけでございますし、その他いろいろ制度改正等によりまして医療費の見通しがはっきりとつけにくい状態でございますので、弾力ある運営をいたすために、一応こういう安全をとって相当多額予備費を組んでおるわけでございます。  次に、二ページにまいりまして日雇健康勘定でございますが、日雇健康勘定につきましては、摘要欄は、健保と同じように被保険者数が書いてございますが、一人当たり保険料は、前年五千七百六十八円が一万一千百六十八円とふえております。これは、現行段階制による保険料を、四段階に分けてその増額をはかるという考え方に立っておるわけでございます。あとは一人当たり保険給付費を書いてございますが、一人当たり現金給付費が前年度に比べて若干落ちておりますが、これは三十九年度実績が落ちておりますために、来年度予算におきましては三十八年度実績を用いて計上しておるためでございます。  それで勘定のほうにまいりまして、保険料収入が九十七億、その内訳は、大部分郵特より受け入れ、つまり大部分印紙収入による収入でございますので、その分が郵特から入ってくるわけでございます。若干、一部現金収入がございます。これがその次の保険料収入と書いてあるものでございまして、これが約十一億計上してございます。  それから、一般会計受け入れにつきましては約百億計上してございますが、手数料補てん、これは印紙売りさばきの手数料郵政特会に納める分を一般会計から補てんしているわけでございます。次の保険給付費財源受け入れとして九十六億ほど組んでございますが、これは前回も御説明申し上げましたとおり、法定補助率による給付費の三割五分のほかに、特に来年度は、赤字対策としまして三億上積みしておるわけでございます。  それから一つ飛びまして借り入れ金、これも百七十九億ほど組んでございますが、内訳は、やはり三十九年度までの累積赤字が約百三十八億ございます。それから四十年度の単年度赤字として約三十億、それから下の歳出のところに書いてあります予備費五億、そういったものを借り入れ金をもってまかなうということで組んであるわけでございます。  歳出のほうは、特に申し上げることもないと思います。  次に、三ページにまいりまして年金勘定、これは厚地年金関係でございますが、摘要欄を先に見ていただきますと、全体を通じて一種、二種、三種、四種等と書いてございますが、これは御承知のとおり、一種一般の男子、二種は女子、三種坑内夫炭鉱夫、四種は任意継続保険者でございます。平均標準報酬月額法改正後、これがそれぞれの種別に応じて増額をはかっております。これは厚生年金法改正によりまして、最高額現行三万六千円を六万円まで引き上げるというようなことによる増額がはかられておるわけでございます。次の保険料率は、そこに書いてありますとおり、一種については現行千分の三十五を五十八に、以下それぞれ増額をはかってございます。保険料率のところでカッコして特1とか特2とか書いてありますのは、一部、企業年金実施によりまして基金のほうに移るものについての料率でございます。(「カッコのパーセンテージは何だ」と呼ぶ者あり)このカッコは、企業年金実施によりまして、基金のほうでもって一部給付をするというものにつきましては、報酬比例部分基金のほうで扱いますので、政府管掌のほうで扱いますのは定額部分だけになるわけでございます。したがって、それに応ずる保険料も、一般の場合よりも少なくていいというわけでございます。したがって一種について申せば、一般のものについては千分の五十八でありますが、企業年金に一部移るものについては千分の三十三というわけでございます。  それで勘定のほうにまいりまして、保険収入は全体で本年度は三千八百九十三億でございますが、そのうち保険料収入が三千四十九億、それから一般会計より受け入れが五十六億、これは法定補助による給付費の一五%、一割五分、三種坑内夫については二〇%というふうになっておりますその額でございます。それからあとは、船員保険特別会計受け入れ、これは交渉法関係で頭を出しているわけでございます。運用収入というのは、積み立て金利子収入でございます。  歳出のほうは、特に申し上げるほどのこともないと思います。予備費といたしまして、例年給付費の一〇%を組んでございます。  次に、四ページは業務勘定でございまして、健保とか厚年等運営のための人件費その他の事務費とか、病院保養所等のいわゆる福祉施設保健施設、そういったものの運営費でございますので、説明は省略させていただきます。  歳出のところで、いろいろな保健施設とか福祉施設等かなり減額をはかってございます。これは保険料によってそういう施設運営をいたしておるわけでございますので、こういう非常な赤字状態でありますので、病院等につきましては前年からの継続事業以外は一切自粛するというような趣旨でもって、前年に比べましてかなり減額になっているわけでございます。  次に、五ページは船員保険特別会計でございます。  ここでは備考欄を先に見ていただきますと、平均標準報酬月額が、前年二万八千円から三万三千五百円にふえております。船員保険につきましては総報酬制はとりません。これは、船員保険は御承知のとおり、疾病年金等を含めた総合的な運営をいたしておりますので、総報酬制をとることは、ちょっと無理がございますのでいたしません。そのかわり、現行標準報酬最低及び最高を引き上げまして、最高現行五万二千円を十万円にまで引き上げます。そういったことによる標準報酬増額でございます。それから保険料率も、現行千分の百五十八から百九十七に引き上げをいたします。それから給付のほうにまいりまして、一般会計より受け入れのところで、備考欄にそれぞれ疾病失業保険年金業務について一般会計受け入れの額が書いてございます。疾病保険につきましては、前年一億五千万だったのを、赤字対策を含めて二億に増額に相なっております。失業保険は、法定補助率による二割五分でございます。それから年金については、同じく法定二割でございます。  それで勘定のほうを見ていただきますと、保険料収入が全体で二百二十七億、そのうち一般会計より受け入れが十億七千万というふうになっております。  歳出のほうも、特に申し上げるほどのこともないと思います。  次は、六ページへまいりまして、国立病院特別会計でございますが、診療収入といたしまして、前年度二百五億に対して来年度二百四十五億を見込んでおります。この中には、もちろん緊急是正による医療費増額等を計上しておるわけでございます。  右の摘要欄基礎数が書いてございますが、国立病院の数は八十七、それにがんセンターの分を含めてございます。国立病院につきましては八十五カ所で、入院を二万八千五百八床、外来は一日平均二万六千人というふうになっております。  それから、一般会計よりの受け入れといたしましては三十四億三千五百万を計上してございます。この内訳は、右の摘要欄に書いてありますとおり、一般経費受け入れとして三十二億七千五百万円、この一般経費のおもなものは整備費とか経営費の一部でございます。それから、看護婦養成費受け入れ一億五千九百万円。これは従来から、看護婦養成所運営費の二分の一を一般会計から受け持つということになっております。  それから歳入のところで、借り入れ金として二十五億組んでございます。前年度は二十億。これは歳出のところで御説明いたしますが、病院の中で特に各地方の基幹的な役割りを果たす病院を選びまして、これについて借り入れ金とか土地処分等によってその整備を促進するという計画を三十八年度からいたしておりますが、そのための経費でございます。  歳出にまいりまして、右の摘要欄で、病院経営費のうちで患者食糧費につきましては、一人一日当たり一般食百二十六円を百四十円と、十四円アップしてございます。この内訳は、米価の改定とか若干の内容改善でございます。その次は、施設整備費として五十三億五千万円、そのうち三十八億が、いわゆる特別整備といたしまして、三十八年度から四カ年計画をもちまして大体各県に一つずつくらいの割合で、その地方の基幹的な、中心的な病院という意味で先行投資によって整備を促進しております。これが三十八億ほどございまして、その財源としましては、そのうちの二十五億が先ほどの借り入れ金あと土地処分等による歳入を見込んでございます。その他、一般のちょこちょこした整備が十五億ほどあるわけでございます。次の看護婦養成所経費として三億一千九百万円、これは一般会計から半分、自前で半分ということになっております。四番目の国債整理基金特別会計というのは、毎年の借り入れ金利子でございます。  次に、七ページの国立がんセンターにつきましては、病院経営費として十億、施設整備費として四千万を計上してございます。  次に、八ページはアヘン特別会計でございます。これは医薬品等に用いるアヘンにつきまして、国が外国から買い入れて、これを指定する麻薬取り扱い業者に売り払って運営しているわけでございますが、歳入としましては五億九千百万円。右の摘要欄の売り払い代金、これは国が買い入れたものを麻薬取締法による麻薬取り扱い業者に売り払っておるわけでございます。  歳出は、右の摘要欄アヘン購入費として三億九千二百万円組んでございます。外国産五十七トンと書いてございますが、外国はインドとトルコでございます。国内産を一トンだけ購入しているわけでございます。  九ページは国民年金特別会計でございます。  そのうちの一つ拠出制国民年金勘定でございまして、保険収入としまして五百二十八億。そのうちの保険料収入、これは印紙収入をもってする業務勘定から受け入れてくるわけでございますが、二百六十四億。これは三十五歳まで百円、三十五歳以上が百五十円という保険料でございます。  それから一般会計よりの受け入れとして百五十一億組んでありますが、国民年金については、納められた保険料の二分の一を国の一般会計から受け入れるということになっておりますので、その分が百五十一億であります。  それからあとは、歳出のところで来年度各種年金給付額摘要欄に書いてあります。  次に、一〇ページは無拠出福祉年金勘定でありますが、歳入一般会計から受け入れる分は、全額国庫負担でありますので、一般会計からの受け入れが三百九十八億。ここで前年度に比べて三角がついております理由は、前回説明申し上げましたとおり、従来予算で見込んでおったよりも実際給付資格者が少なかったというような実情に応じて、来年度に調整をいたしたわけでございます。  歳出のほうは、給付費として右の摘要欄にそれぞれの件数、金額が書いてございます。これは今回給付改善をいろいろ考えておりますが、その分を含めておるわけでございます。  一一ページは国民年金業務勘定でございまして、これは人件費その他の事務費でございますので説明は省略させていただきたいと思いますが、ただ、右のほうの摘要欄のところに市町村交付金が書いてございます。これは国保の事務費と同様に実情から比べて非常に不足しておるという実情にかんがみまして、本年は、拠出制年金市町村交付金について申せば、前年度の一人当たり百三十円を百六十五円というように、例年に比べると大幅な増額を見込んでおるわけであります。  以上、簡単でございましたが、特別会計説明を終わりたいと思います。     —————————————
  4. 松澤雄藏

    松澤委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  5. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣及び関係の方に、厚生行政についての一般的の問題について御質問を申し上げたいと思うわけであります。  まず最初に、ただいまも特別会計予算の御説明がありましたように、衆議院においては予算が上がりましたけれども、この具体的な予算の問題について真剣に考えてみる必要があろうと思いますので、その問題からお伺いをいたしたいと考えるわけでございます。  前々から予算委員会社会労働委員会で、厚生大臣に対して、予算一般的な第一次要求に対して、昭和三十九年度から翌年度予算に対しての第一次要求は三割にとどめてくれというようなことが閣議で決定をされて、それをスタートとして予算編成が行なわれて、非常に不都合な状態になっていることにつきまして、厚生大臣にいろいろと御追及申し上げたわけであります。それについて厚生大臣は、私ども社会党の追及に対して、そうであった、そのようにやらなければならなかったと反省をしておられるようでございまするけれども、残念ながら、この間の予算委員会の答弁においては、大蔵大臣はまだ十分なる御反省がないようであります。したがって閣議において、このような非常に間違った予算編成方針について、特に大事な部門を担当しておられる厚生大臣としては、そのような誤りについて指摘をし、翌年度以降においてそのような誤りが絶対に起こらないというような御努力をされていなければ、ほんとうの責任を果たしたことにならないと思いますけれども、その後そのような御努力をされたかどうか、それに対する反応はどうであったか、それについて伺いたいと思います。
  6. 神田博

    神田国務大臣 ただいま八木委員からのお尋ねでございますが、御承知のように四十年度予算編成にあたりまして、三十九年度の当初予算に比べて三割頭打ちにしてもらいたいというような強い要請がございまして、これにつきましては、私、主管大臣として異議を申し込んで、特に厚生行政はそういうわけにはまいらないということを主張したことは、この前お答えしたとおりでございます。これは私だけでなく、各大臣からも、大体多数の方の御意見でございまして、特に私の場合は、いまお述べになりましたような事情がございますので、まだ日本としては福祉国家を建設するに相当大幅な財政支出をしないと、今日のような福祉国家をつくるんだということから念仏になってしまいますから、十分述べたわけでございます。当時、これは大蔵大臣もだいぶ苦境に立ちまして、池田総理がじきじきに、そういうことは事情としてわからぬでもないが、実際に予算編成の結果を見ますと、おおむね十数%の、一五%をこえることがなかったというような御説明でございました。ですから、三〇%に達しても、省によっては三〇%とるところもないんだから、その辺でがまんせぬかというお話がございました。しかし私どもは、トータルで頭打ちをされましても、やはりそれに制約を受けまして、それでは福祉国家建設の前提をなす社会保障その他の要求予算が、そのためにしぼられたということになると非常に健全な厚生行政を生み出すことができないということで、だいぶ、これは二日ほど議論したのでございますが、大蔵大臣も譲らない、こっちも譲らないということでございまして、最後に総理の裁定にまったということでございまして、結論はいまお述べのとおりになったわけでございます。  そこで、いまのお尋ねは四十一年度をどうするかということでございます。その後、御承知のように政局の移り変わりもございまして、今度は佐藤内閣ということで、総理そのものもかわっております。しかも佐藤総理は、社会開発を非常に構想として打ち出しておりまして、その他各般の抱負を述べておられるようでありますが、ことに私は厚生行政については御理解が深いというふうに考えておりますので、来年度予算の構想につきましては、特にいろいろの問題も未解決の点がございます。これらにひとつ燃えるような意気込みで考慮していきたい。御鞭撻をお願いいたします。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 いまの御答弁、一通りよさそうに聞こえるのですが、ほんとうにやろうという意気込みが感じられない。この前の予算委員会厚生大臣に御質問申し上げ、大蔵大臣と私が論戦しましたのは、すでにだいぶ前であります。ほんとうのお気持ちがあれば、ああいうことについて橋本官房長官から総理大臣に伝えなければならないということで厳格に縛っておりますし、橋本官房長官または厚生大臣から、直ちに閣議の問題として提起をせられなければならない問題であろう。それからずいぶん時間がたっております。もちろん厚生大臣が相当忙しいこともわかっておりますけれども、そのいま忙しい原因をつくった問題ですから、その時点でこういうふうに政府が難局に立ったという原因は、このような大蔵大臣予算編成方針にあったんだ、予算の第一次の要求について一律に頭にかぶせた方針にあったと提起をするのに最も適切なものであり、また重大な問題でございますから、即時提起をなさらなければなりません。いまの御答弁からいろいろの質問をしたいと思いますので、その点再度御質問は申し上げませんけれども、御答弁からうかがえば、まだ具体的に閣議に提起されていないとしか思えない。されておられるのであったら御答弁を伺いますけれども、されておりません。それではほんとうの熱意があるということにならない、そういう点でもっと決心を固めていただかなければならないと思います。  そこで予算面について伺いたいと思いますが、今度の四十年度予算に対する第一次要求は、たしか五千百八十六億二千八百万円という要求であったと存じます。これは前年度予算に対して三割という頭をかぶされたので、こういうことになっておるわけであります。したがって、約一千百億強のものしか第一次要求にすら出さなかったという状況にあったと考えておりますが、それは間違いございませんか。
  8. 神田博

    神田国務大臣 ちょっと政府委員から答弁させます。
  9. 戸澤政方

    戸澤政府委員 去年の八月末に正式に大蔵省に要求いたしました額は五千百八十六億でございまして、これは前年度予算三千九百八十九億のちょうど一・三倍程度になっております。
  10. 八木一男

    八木(一)委員 私の申し上げたのと数字は同じです。ですから、その差額を私は計算して、新しい増額予算の実額が一千百億強ではないかということを申し上げたのです。御答弁は伺わなくても、正確ですからそれでよろしいです。  ところで今度の査定では、結局実際の厚生省の予算が四千八百十九億であって、前年度の、これは補正を加えた数字を厚生省で出しておられますけれども増額分が八百三十億というようなことをこの前御説明になっておられます。その中で、当然増というものが五百五十億であります。したがって、結局新規のものはどのくらいかと申しますと、二百八十億という財源しかないわけであります。これは間違ったら御答弁いただきたいと思いますが、その点間違いないと思いますが、厚生大臣、一回御確認を願いたいと思います。
  11. 神田博

    神田国務大臣 その数字のとおりでございます。
  12. 八木一男

    八木(一)委員 ところがこの五百五十億の当然増が、ほんとうは厚生省は、当然増の経費については八百億を主張しておられた。ところが大蔵省から締め上げられて、それが五百五十億というふうに締めつけられた。ですから、前の一般的な要求の一千百億強、それに対して八百億の当然増をやると、最初予算要求のところでも三百数十億しか新規財源がないということになる。こまかい何億とか、十億ぐらいの数字はけっこうです、あらましのところで。それで計算は間違いないと思いますが、それについて厚生大臣の御答弁を……。
  13. 神田博

    神田国務大臣 大体お述べのとおりでございます。
  14. 八木一男

    八木(一)委員 そこで、ぜひ厚生大臣にそれを腹に入れていただいて、いま言ったことをほんとうに決死的にやっていただかなければならない。最初要求ですら、新規財源がごくわずかしかないわけです。八百億の千百億、三百億しかないわけです。ところでいま医療費の値上がり、それからその前の社会保険の赤字で、どのくらい国民の要望に従ってそれを国が国庫支出するかという問題は、たとえばこの前政府とそれからまた支払い団体の関係では、いま言った数字よりもはるかに多くの数字が最低の要請として出ているわけです。わが党が本年度の通常予算の修正として要求を出した最低の詰めたやつで、それよりもはるかにオーバーした金額になっているわけです。それは御承知のとおりです。金額を申し上げたほうがよければ申し上げますけれども、別に申し上げなくてもおわかりだと思います。厚生省の昨年度の第一の要求から当然増分を含んで新規の事業分、それが四百億前後の財源しかない。ところが、この医療費関係で、関係団体が最低のものとして要求するものがそれの一倍半以上になっている。わが党が本予算を修正する部分だけですよ。ほかの点についてはもっと意見があるのですが、この四十年の本予算を修正するだけで、詰めて詰めて詰め抜いた金額が、それよりはるか、百億近くも多い。そしてこういう問題について、これは社会保険審議会や社会保障制度審議会で結論を出して、これからやっていかなければならないわけでございますけれども、こうしたことを考えると、このように政治の状況は動いた、そして政府もその状況が当然であるとして対処する姿勢を示しておられるという状況から見ますと、それを予測しなかったことは非常に不適切であったわけです。どういう結論になるか知らないけれども、非常に膨大なお金が要ることは予測をされておった。ところが、その三割に詰めるということを押しつけられたために、その全額をそこに充てても、いまの国民が要望する最低のものにも満たない。そういうことになれば、三割に予算の頭を押えられたということによって、いま厚生省全体が苦境におちいり、政府が非常に困って反省をして取り組もう。ほんとうならばそれは四十年度予算で組まれるのが一番いい。ところが、それがほかの関係があって急ぐということで、入らないことになりました。そんな三月とか半年とかずらすのでなしに、この四十年の予算として解決されるべきものであります。それができなかったのは、こういうようなところから大きなもとが出ているわけであります。これは厚生大臣より以上に田中大蔵大臣がいかぬわけです。田中大蔵大臣は、前には五割で第一次の要求を押えておった。その次は、今度は三割で第一次要求を押えた。それでもそのワクの中で重点的なものについて考慮できるからよろしいのだということをぬけぬけとおっしゃっておる。ところが政府全体が困り、田中大蔵大臣も困っておる問題は、田中君が三割に押えたということから派生しているわけです。三割に押えた残りの金額を全部ほうり込んでも、これは足りない。そういうことはおわかりですね。そういうことを押えたのは、大体大蔵省が、自分たちが計算上——きょう大蔵省来ていますか。それでそういうように一律に五割に第一次要求をやっておった。そうすれば大蔵省の主計局の連中は計算が楽だ。実になまけた態度だと思う。自分たちが計算が楽なだけで、国政のどれが緊急に重要であるか、どれが大事な政策の中でお金が一番よけい要るかというような問題に、ほんとうに具体的に対処する道を、大まかにかぶせた網でブレーキをかけてしまっておる。五割でもブレーキはかかる。それを今度は三割でブレーキをかけた。財政が苦しいから、全体の収支を合わせなければならないということはわかります。わかるけれども、そこで重要度においてでこぼこをつけて、でこぼこの中で圧縮しなければならない。ほんとうに重要なものであれば、全体の財政額を締めようと思っても、その大事な問題については予算増額を非常にたくさんやる、不急不要のものについてはぐっと押える、そういうことで予算を編成するのが当然大蔵省としての任務だ。ところが、彼らはそれをやりやすいために五割で押える、三割で押える、三割で押えたために厚生省がとんでもなく困る事態におちいった。厚生大臣がそこで強い決心で、断じてそれは承知ができないということをがんばらなかったことについては重大な責任があり、それは痛感しておられると思いますけれども、大蔵省の頑迷固陋の態度を爆砕しなければ、こういうような具体的な、実際大事な政治が進むことにブレーキがかかります。それについてこの間予算委員会で、田中大蔵大臣神田厚生大臣と、それから総理大臣は何か渉外事項でおられませんでしたから、橋本官房長官の前で言いました。その問題について、本日の論議についてはすべて総理に即刻報告して対処をせよと言ってあるのに、橋本君はこれをなまけておる。また、ちょうどそのことを厚生大臣に申し上げませんでしたけれども、一番痛感しておられる厚生大臣が、当然閣議でこれを提起さるべきであると思うのに、まだ提起をされておらないということは、ほんとうの決心でやっておられないように見えます。ほんとうの決心でやっておられるなら、あすにでも、あさってにでも、閣議のときにこれは重大な問題であると提起をされる必要があろうと思います。そして、いかに大蔵大臣がへ理屈を言われようとも、計算が楽なために最初の五割に押え、三割に押えるというようなことは、これは大蔵省としての怠慢なやり方である、ほんとうは全部各省でこれが必要であるということを出して、それを今度内閣全体でその中からどれが一番必要か、どれは次に回していいかということをやるために、最初にワクを設けてはならないということが予算のほんとうの編成方針として示されなければならないと思う。その点について即刻強力に取っかかられる意思があるかどうか。また、大蔵大臣が何と言おうとも、あなたがそのようなほんとうの大局の立場で、これを理論的に説得をする決心を持っておられるか。また、総理大臣がまあまあというようなことを言っても、これは大事な問題であるから総理大臣もそれについて真剣に考えて、総理大臣厚生大臣の言うことがいいと思ったならば、いかに田中君が実際的な権力を持っていてもそれを押えつけろということを総理大臣に強烈に迫る決心があるかどうか。それについて伺っておきたいと思います。
  15. 神田博

    神田国務大臣 八木委員から、厚生行政を思うあまり、たいへん激烈な励みのことばをいただいて、私も非常に感激しております。御承知のように、厚生行政におきましては、八木さん専門ですから私申し述べるまでもございませんが、この社会保険その他、あるいは肢体不自由だとか、あるいは精神衛生、どれ一つ取り上げましても、巨額の金をつぎ込まないとほんとうに福祉国家としての面目を保っていけぬ。この現実の問題に当面しているわけでございます。そういう諸般の情勢を十分承知しておりますので、私はおりに触れ、閣議の前後は申すに及ばず、閣議中におきましても総理によく申し上げております。総理もまた、非常に社会開発をみずからしょって立とうという御決心でございますので、厚生行政については特に考えが深い面があると私は認識しております。八木委員から先般来のいろいろな御忠告ですとか、あるいは建言と申しましょうか、御要望と申しましょうか、これは私はおりに触れてよく申し上げておるつもりでございます。特に来年度予算編成等につきましては、私は、非常な決心をもってこういう基盤をつくらないでこれはやってはいけませんよ、総理は減税にも御熱心であるようだけれども、減税もむろん大事でございます。しかしそれ以上にいまの社会保障というものをやらなくちゃいけないと思います、同時に、児童手当の問題なんかも四十一年度に取り組もうというような意気込みを持っておるわけでございますから、厚生行政というものを、来年はひとつ、何割頭打ちというようなことでありますと、これはどなたがおやりになっても責任が持てなくなりますよ、飛躍的にここ数年伸びる、そして厚生行政の基盤づくりをひとつしませんと、ほんとうのひずみが直りません、あなたのおっしゃる人間尊重の社会開発というものは一体どこにあるかということは、もうそこが私はけじめだと思うのだということを申しております。いろいろの場合に発言いたしまして、大小漏れなく申し上げているつもりであります。今後も私は、そういう意気込みをもって自分の所信をひとつ——これは私一人が独走してもいけませんから、皆さん方の御鞭撻を得まして、そして閣議でまた同僚の御支援も十分ひとつ願わなければならぬわけでございますから、そういう前向きのかまえで努力をさらに一そう続けたいと思います。
  16. 八木一男

    八木(一)委員 いま厚生行政社会保障の問題について言われましたけれども、それが一番大事な問題でございますが、これは一般的な問題で、ほかの省にも同じ問題があると思う。たとえば交通対策ですね。それに対処すれば、人命のそこなわれるのがこれは救われる。ところが、予算という大ワクで、いろいろの要求があるから、そんなことはできないと言って大蔵省が査定する。それで具体的に対処すれば人命が救われるのを、なまけて、そのためにおくれたために、何名かの貴重な人命を失うという問題があります。いろいろな問題がありますので、総額を前年度の何割で押えるというような大蔵省のなまけた、自分たちの計算がしやすいような、そういうような予算編成の態度は断じてやめさせる。必要なものは各省が要求をする。それを、しかし全部の総ワクにおさめなければなりませんから、そのアクセントをつけたものを出して、そして最終的に集約をする。そうすれば大事なアクセントが残る。もちろん、その中で一番大事なものは社会保障の問題であると私は思いますけれども、ほかの省にも同様のことがございます。ですから、即時、できるだけ至急にその問題は提起をしていただきたい。特に提起をする時期としては、この医療費の問題がこれほど問題になったのは、政府がこれに対して具体的な金で対処しなかったことが、いわゆる職権告示という行政的な問題と兼ねて非常に大きな問題であります。その大きな問題の淵源がここにある。したがって、いまこそ大蔵省のその非常にかってなやり方に対して、それを打開するいい時期だ。大蔵大臣もかわるかもしれません。それからほかの大臣もかわられるかもしれない。しかし、そこで佐藤内閣が大蔵省のそんなかってなやり方を許さないということを決定すれば、いかに閣僚がかわっても、その問題の影響は残る。淵源は、大臣以上に大蔵省の主計局であります。そういう点で、即刻この問題を強烈に提起していただきたいと思います。  それでは、次の問題に移りたいと思います。厚生大臣は、国務大臣として、憲法九十九条によって、憲法の問題について熱心に取り組まなければならないという義務を持っておられます。条文は別に申し上げませんが、その憲法の問題の中で、いま厚生大臣としてお考えにならなければならない問題はどういう問題かというようなことを、御研究になっておられたら伺いたい。——それでは、その条文を読みます。「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」という条項であります。したがって、憲法の問題についてはこれを尊重し、擁護しなければならないから、特に国務大臣は熱心に研究されなければならない。それから、いろいろ実際上の業務がございますから、そのいろいろな勉強について時間が十分にないと思いますが、もしこれについて御研究になり、厚生大臣の職分として、それについてどういうふうになさねばならないということを考えておられた結論があったら、伺わせていただきたいと思います。いまだそれについて御研究中であって、結論がまだ出ておらなかったら、それでけっこうであります。
  17. 神田博

    神田国務大臣 いま八木委員から、憲法九十九条に示しておる国務大臣の責任をどういうふうに考えるかというお尋ねのように承りました。これは申し上げますまでもなく、法治国として、また特に国務大臣の地位にある者は、この憲法の条章に沿うように十分ひとつ努力しなくちゃならない、こういうことだと考えております。要するに、憲法制定当時の事情も十分考えまして、この現行憲法の精神を生かして、これを、たとえば二十五条の社会保障の義務でございますとか、いろいろそういうことですが、具体的にひとつ責任を持って取り上げていく。もちろん相手のあることでございますから、なかなか私の考えどおりにはまいりませんが、しかし、とにかくそういう使命というか、理想を持ちまして、そして厚生行政の伸展をはかり、同時にまた、国務大臣として全体のバランスを考えていく、こういうことでございます。
  18. 八木一男

    八木(一)委員 少し厚生大臣、かまえて答弁をせられていると思う。予算の問題や何かで私が突っつくと思って、やはりかまえておられる。そうではなくて、憲法の問題については、そういう一般の行政問題じゃないから、ずばりはっきりおっしゃっていただきたい。ほんとうにこの文言どおりやっていかなければならない。それで、憲法の中でこれは御研究になっておられると思いますが、この憲法の非常に大切な点は、絶対平和主義、主権在民による民主主義、基本的人権の尊重というふうな柱が最も大事である。その基本的人権の尊重の問題でございますが、この基本的人権の中では、いろいろ憲法学者の説によりますと、大分けにして二つに分けることができます。ことばは学者によっていろいろ違っておりますが、意味は同じであります。まず第一に、個人的基本権といいますか、いわゆる自由権、あるいは平等権というような部分一つございます。それからもう一つ、社会的基本権あるいは社会権、あるいは生存権、いろいろのことばで言われておりまするが、その後段のものがございます。前段のものは、封建主義時代から自由主義時代に変わるというときに、前の残滓を全部排除してほんとうの人権を確立するためにそういうことが世界じゅうに広まってきて、それが日本憲法においても自由権、平等権として明記をされているわけであります。その次の社会権、あるいは生存権、あるいは社会的基本権という問題は、資本主義が非常に高度に発達してきて、個人的に職業が自由であるという十分な状態で、その労働条件で働くことができない、そのために子供の教育も十分にできない、そのために食べるものも詰めなければならないというような資本主義の悪弊に対して、社会的に生存権を守っていこうということから世界じゅうにこの思想が広まりました。これがどこの国の憲章、あるいは憲法にも明記をされておる。日本国憲法においては、憲法二十五条、二十六条、二十七条、二十八条等によって、かような社会的基本権が認められておるわけでありますが、その中で一番基本的なものは憲法第二十五条です。これは私も専門家じゃありませんけれども、私なりに勉強したところによると、そういうところであります。国務大臣としては、ぜひそういう点も御勉強していただいて、そのもとに確信を持って、いろいろな行政あるいは施策を展開していただきたいと思うのです。社会的基本権というものは、具体的な問題として非常に重大な問題である。その中心の条文は憲法第二十五条である。憲法第二十五条は、「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」というふうに書いてある。この権利ということを、ほんとうに厚生大臣は真剣に考えていただきたいと思います。社会保障とか、社会福祉とか、あるいは社会開発とか、福祉国家とか、いろいろなことが言われております。しかし、その中でよく考えていただかなければならないことは、何か国民に対して善政を施すというような意味でそれを扱っている政治家がかなり多い。ところが、そうではない、社会保障の問題は国民の権利である。なまけることは許されない。このくらいでやめておくというようなことは許されない。技術的にめんどうくさいから、ここまではやるけれども、それ以外はほったらかすというようなことは許されない問題である。国民の生存権に由来をいたしておる問題であります。ところが、いままでの沿革から言うと、ずいぶんそれが侵されている。ほんとうに大事な人に社会保障がいかない。法をつくる技術上の問題で、大事な人が排除されるというような法制がたくさん残っている。それは、ほんとうの意味で憲法の条章に違反している法律であります。そういうことを直すことを提起しても、その憲法のもとに法律がそうなっているからむずかしいというような答弁がしばしば行なわれます。いままでできたものはしようがないけれども、それをほんとうの国民の権利という意識に従って直していくという努力がなければ、社会保障を担当している厚生大臣の責任を全うしたとは言えないわけであります。そういう点について、社会的基本権、国民の生存権の基本条文は憲法第二十五条だ。その具体的なものは社会保障だ。いわゆる善政の、恩恵的にものを与えるというような考え方ではいけない。これは権利の意識に基づくものとして、政府はそれに対して完全な義務を持つという考え方社会保障の問題に対処していただかなければならないと思う。それについて厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  19. 神田博

    神田国務大臣 いまの八木委員の、憲法二十五条を引用しての国民の権利を守る政府の責任の重大さというものはなまやさしいものではない、これは私も同感でございます。愛情を持って大胆にやるべきもの、私はこう考えております。決して恩恵だとか、慈善事業だとかいうような昔の考え方では考えていない。新憲法下においては、政府の責任において当然それをすみやかに実行していく、遅滞なく実行していく、こういうことだろうと私は考えております。それになお付加するような気持ちを持って、もっとアップするような気持ちを持っていくべきものだ、こう考えております。最低でこれでぎりぎりだから、これで権利を保障したのだというようなものではない。できるだけ愛情をプラスしてやるべきものではないか、こう考えております。
  20. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣のいまの御答弁に対し引き続き御質問を申し上げたいのですが、いま大蔵省の係官が見えましたようですから、先ほどの問題について、御質問ではありません、船後さんに聞いていただいて、そのような考え方で大蔵省もやっていただかなければならないということを要求をするわけです。  実は大蔵省は、数年前から、予算の第一次査定については前年度予算の五割増しにしてくれというようなことを大蔵省から提起をされて、閣議で決定をして、それをやっておられます。それからこの四十年度予算を査定する三十九年の動きにおいては、本年度は財政事情が悪いから、三割増しにとどめてほしいということを閣議大蔵大臣から提起をされて、大体そういう線で最初の第一次の要求を受けられ、それからいろいろ査定をされて、最終的に予算案を決定されたというような経緯になっております。そのことは、大蔵省にとっては非常にやりやすいことかもしれないけれども、国政全体のほんとうの動きをとめる動きになろうと思う。大蔵省にとっては、最終的にまとめるためにそれのほうが楽でありましょう。楽でありますけれども、それは五割なり三割というようにワクをきめてしまうために、それ以上に国政で緊急にアクセントをつけなければならない要請があるときに、それをとめてしまうという非常に間違った作用を有するわけであります。最終的には全部のワクの中に入れなければならない。しかし、各省でこれはどうしても大事だ、これが緊急だ、これは多くのお金がすぐ要るというようなことを、各省の中でワクをとめてしまう。大蔵大臣に言わせれば、厚生省なら厚生省の中で緊急の度合いをそこで勘案して、一番大事なものを上に出してくれというわけです。大蔵省はそれは楽です。だけれども、各省の中の何とかという問題ではなくて、国政全体ではアクセントを出さなければならない——厚生省全体で三割にとどめたならば、厚生省予算の全体のものが、もしかりに七割増しに増加をしなければほんとうに刻下の現状に対処できないときに、三割というワクをはめられたために、その中のある項目については当然対処すべき七割まで出しても、ほかのものは犠牲にしなければならないということになる。そういうようなワクが、ほんとうの意味の国政上の出すべきアクセントをとめてしまう作用を有するということになる。そうすれば大蔵省は最後の締めくくりのときに楽でありましょう。しかし、ほんとうの国政の出すべきアクセントがとめられてしまって、国政のほんとうの方向がゆがめられてしまうということになる。それについてこの前、大蔵大臣といろいろ予算委員会で質疑応答をいたしました。時間の関係で詰められませんでしたけれども、田中大蔵大臣はそれについての十分な反省をしておられないようであります。反省をさせるようにこれからまた追及をしなければなりませんけれども、その点については主計局の皆さん方ともいろいろと協議があろうと思う。主計局のほうでは、そういうことについて反省をされなければならない。厚生省に対して三割ということをやられた。厚生省は、しかたなしに三割のワクの中で計算をした。計算をしたその予算要求が、一千百億強の増額のワクしかなかった。ところが、その中で当然増が八百億あった。そうなると、四百億ぐらいしか新規財源がない。ところが医療の問題で、御承知のとおり、この問題に対処するには、最低でそのいまのワクよりもはるかに多い金額が必要であるということが国民の要望である。また、本年度予算で修正しなければならないという社会党の一番詰めた、一番少ない要求でも、それよりもはるかに金額が多いということを考えますときに、こういうような事態を招来したのは、三割という大ワクをかぶせたというところに淵源があるわけです。大蔵省としては大蔵省なりの考え方があろうと思いますが、政府全体としてそのようなワクをかぶせられたために、厚生省としては、それに対して十分な医療費の問題、社会保険の赤字の問題に対する原案をすべて押えなければならなかった。おまけに、あなた方はそれを査定までしたということが大きな政治問題になっている。事務局としては、大蔵省としては熱心にやられたのでしょうが、ほんとうの政治全体の問題としては、このものが非常に不適当であるということで、いま国政が動いておることは御承知のとおりです。そのように動いている——ほんとうは、この国政が動くものであれば、四十年度予算からこれが確定をされて、国庫支出増額をされて、そういうものが世の中の騒がしい問題にならずに、スムーズに済んだほうがずっといいわけです。そのいかなくなった原因は、三割というワクをかぶせたところに一半の原因があります。厚生省の腰が弱かったところに最も原因がありますけれども、残念ながら大蔵省が、実際的な権限で三割を押しつけたというところに一つの大きな原因があるわけです。そういう点について大蔵省としては十分に反省をされて、国政のアクセントをつけるために、そのような一律のワクをかぶせるということは、大蔵省としてはよろしくても、やりやすくても、国政全体としては不適当であるということを真剣にお考えになって、そのような毎年慣例的にやっている間違った方法を改めることを、大蔵省自体から提起されるというような御準備をなされなければならないと思うのです。あなたは国務大臣じゃございませんから、閣議で発言しろとは言いませんけれども、そのことについて田中君にすぐ厳重にそのままはっきり伝えて、田中君がそれを反省しなければ、田中大蔵大臣が国政の方向をある意味でゆがめる方向をとるものである、そのことを非常に追及されたということを、直ちにはっきりと、熱心にお伝えをしていただきたいと思います。ほかの理屈はけっこうであります。私の申し上げたことについて、はっきりと熱心に伝達する意思があるかどうか。それはあなたの義務であろうと思いまするが、それについてのみ御返答をいただきたいと思います。そのほかの文言についてはお断わりをいたします。
  21. 船後正道

    ○船後説明員 三割ワクの問題につきましては、予算委員会でも大蔵大臣から八木先生に御答弁申し上げているところでございますが、ただいまの八木先生の御意思につきましては、先生の御要望どおり大臣にそのまま伝えたいと存じます。
  22. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、もとに戻りまして厚生大臣のほうに対する御質問に移りたいと思います。  先ほど、権利の問題として社会保障の問題を考えていただかなければならないということを申し上げたわけであります。そこで具体的な問題として、厚生省は、この関係の問題について、あらゆるところで社会保険主義をとっておられるところが多い。ほとんど社会保障主義をとっておられない。国民の権利という立場に立った社会保障主義をとっておられないというところに、非常に多くの制度でひずみが出ております。その問題についてどのようなところに具体的なひずみが出ておるか、そういうようなことについて何回も私どもも追及をいたしておりますから、厚生大臣は、どういうところがこういうのでは非常にまずいというのを御研究になっておられると思いますが、それについて二、三例を示していただきたいと思います。
  23. 神田博

    神田国務大臣 ただいまお述べになりました社会保険か社会保障かという問題と思いますが、これはいろいろ議論の分かれるところでございます。また国の方針といたしましても、これはさい然たる区別がつかないことがあるように私考えております。それから、日本の社会保険制度がだいぶ沿革的に古くなっておりまして、この辺でもう一ぺん再検討をする必要があるのじゃないかというようなことも考えられるのじゃないか、こう思います。社会保障か社会保険かというような問題、これはなかなかデリケートな点もございます。私といたしましては、こういう問題をなお掘り下げてみたいと考えておりますが、いまのところ一体どこに例があるかというようなことは、実際問題になりますと、むしろ事務当局から答弁させたほうがよろしいかと思います。
  24. 八木一男

    八木(一)委員 事務当局は要らぬです。ぼくが教えてあげます。  何回も大臣に申し上げているのです。それを忘れるようなことでは困る。それを忘れておられなければいまみたいな答弁は出ませんよ。社会保障がいいか、社会保険がいいか研究するなんということばは出ないはずだ。先ほどの憲法の条章について、ほんとうの考え方を持っておられたら社会保険がいいという考え方は出ない。ただ、いま具体的に社会保険があるからそれを社会保障の精神に従ってどのように急速に転換するかということについて具体的にどう考えるかという問題ならけっこうでありますけれども社会保障を十分の一も認めたようなかっこうの答弁は出ないはずだ。厚生大臣としては出てはいけないのです。ほんとうの憲法の権利意識に基づいた、権利の条項に基づいた考え方を理解しておられないのです。憲法第九十九条の責任を全うしようという考え方がない。いままでの厚生省の中で社会保険学者がどう言おうとも、いまの沿革上補助者がどう言おうとも、社会保険でなしに社会保障でなければならない。これは国民の権利であるという考え方に従って現在のひずみを、現在の少ない点を、不十分な点を直していくという考え方の確信を持っておられなければならないわけだ。それについて確信がなしにやれば、あるいいかげんな社会保険学者が社会保険だからどうですと言ったら、そこでぐにゃぐにゃとなってしまうということになる。根本問題は腹を据えてやらなければならない。  いま、社会保険の悪い点について指摘を申し上げます。これはだれが考えても悪い点、一番変な点は、この前も申し上げましたけれども、一番はっきりわかりやすいからいま申し上げます。  たとえば、国民年金拠出年金で全盲の人が——国民年金へ二十歳に入って保険料を納めて一年たってから後に何らかの状態で失明をしたならば、国民年金拠出年金の障害給付がくるわけです。国民年金の老齢年金は三千五百円であります。一級の障害年金はそれより二割増し、四千二百円であります。月に四千二百円というものが無条件でずっと一生涯支給される。老齢年金とダブったときはまた具体的な措置がありますが、そういうことになる。それがその前に、たとえば三歳で失明をした、生まれつき目が見えないという人は、これは全然くれないわけです。障害福祉年金しかくれない、しかもあれは所得制限がついている。全部にくれるわけじゃない。拠出年金のほうの障害年金は、そういう所得制限がついてなくて無条件でくれる。一方は所得制限がついている。おまけにその金額は現在で千八百円。生まれつきめくらの人やあるいは十九歳で目の見えなくなった人と二十一歳で目の見えなくなった人と、そこに不幸の程度の差がありますか。どっちがほんとうに不幸ですか。どっちがほんとうに労働能力がないか。極端にいえば、生まれつき目の見えない人は目の見えないものとしていろいろ職業訓練をするからということがあるかもしれません。そういう理屈を言うてはいけないから先に言っておきます。十九で失明した人と二十一で失明した人とどこに差があります。気の毒な人は十九の人が気の毒です、その間目が見えないだけ。それにもかかわらず、それが支給されないという条項になっている。それはいいことだと思いますか。
  25. 神田博

    神田国務大臣 いまお述べになったような事例につきましては、私は考え方としてはもう八木委員の気持ちのとおりでございます。ただ、いろいろ現行制度で、何といいますか、従来の沿革がございましてなかなか改正がスムーズにいっていない、こういうことじゃないかと思います。そういう点は十分ひとつ、これは政府だけの問題でなく、与野党ひとつよく政府を御鞭撻していただきまして、いまおっしゃったとおりの事情でありますから、十分措置するのが当然であると思います。そういうことをいたしたいと思います。
  26. 八木一男

    八木(一)委員 では、その点は厚生大臣も御意見が同じだ、その人にも当然拠出年金の障害給付を支給すべきであるという考え方ですね、そうですね。
  27. 神田博

    神田国務大臣 そういう事情で考えていきたいと思います。
  28. 八木一男

    八木(一)委員 これは与党の先生方もお聞きですけれども、与党の先生方においてもそのことについては御反対がないと思うのです。よっぽどの方でなければ御反対はない。それで、厚生省が元気を出せばできるのです。それをできない理由、いままでしてない理由は何かというと、たとえば拠出制年金もこれを保険制度であるということを言うわけです。保険制度、保険というよけいなことばをつけて、憲法には社会保障と書いてあって、社会保険の保険の一字も書いてないわけです、保険のけの一字も書いてない。それをかってにすり変えている。かってに社会保険ということにすり変えている。社会保険というものはそういうような欠点があります。二つ、三つある。大きな欠点では、保険ということばにしばられる、被保険者ということばにしばられる、保険料ということばにしばられる、人間が人為的につくったことばにしばられる。ほんとうに気の毒な人に社会保障がいかないということになるのです。その作文によって人権が侵害されているわけです。二十になれば被保険者ではない。この法律の対象は被保険者のある一定の条件について支給することになっているから、被保険者ということばに当たらないから支給ができない、そういうことばになっているわけです。それを、ことばを直さなければいけない、そういうことなんです。保険事故ということばがある。保険事故に対して支給するというようなよけいなことを法律でつくった。そういう状態にあった人に全部支給するといえばできる。それをつくるときにいいかげんな民間の保険会社の人の意見を聞いて、かってに厚生省がやる。民間の保険会社は商売です。保険に入って保険料を払った人でなければ、死亡保険金なり生存保険金なり払ったら商売はつぶれてしまいますから、それはそういう考え方だ。国のはそういう保険を商売にするのじゃない、社会保障をやるのだ、そういうことで年金の論議が台頭した。それをすり変えて保険にしたからそういうことになる。これは保険事故、被保険者保険料、そういうような変なことばにしばられておるからそういうことが起こる、これを直さなければなりません。  もう一つ、例を申し上げましょう。共済組合というものがあります。共済組合の資格で、官公労の、いろいろと役所や何かに働いている人がある種の事情でやめて民間の事業所の職員になる。そうなると、そこでもしその人がなくなった場合であります。厚生年金法では、半年間被保険者であった人の遺族でないと遺族年金がもらえないわけです。ところで共済組合のほうは、共済組合の資格者が、全部年金をもらえる人になった者の家族でないと遺族年金はもらえない。共済の資格は十一年でできます。十一年たって、そこでなくなった場合には家族は遺族給付がある。たとえば、十一年たって民間の電力会社に、あるいは銀行につとめて、そこで半年間で死んでしまったら、その遺族には遺族年金が何もない、そういう制度です。これも両方とも被保険者でなければいかぬ、被保険者の家族でなければいかぬ、保険料を一定限度以上払ったのでなければいかぬというようなまずい貧弱な作文の法律ができたために、そういうことになっている。その人が半年たっておれば厚生年金はもらえる。半作前ならば共済年金はもらえる。職業転換したときに、三カ月目に死んだならば遺族には遺族の一切の保障がない。そういうことが全部保険事故だとか被保険者とか被保険者期間とか、いままでくだらぬ、頭の悪い人がつくった法律によってなっている。そういう問題を全部変える決心を持たなければなりません。それについて厚生大臣が積極的に取り組むかどうか伺っておきたい。
  29. 神田博

    神田国務大臣 いろいろの制度は、やはりいろいろの必要に応じて、そしてまたいろいろな審議を経てつくったのだろうと思っております。当時よくても、いま八木さんお述べになったような具体的な事例が出ると、いろいろの欠陥が露呈されていく、こういうことじゃなかろうかと思います。  そこで、私どう思うかということでございますが、やはりそういう問題は、いろいろ他にも例があるのじゃなかろうかと思います。そういうことをひとつ十分検討いたしまして、国がやはり大きな愛情を持って、そしてそういった残された未亡人、遺族の方々の処遇ということを大所高所から考えていくべきものじゃなかろうか、こう増えております。これはいろいろ法律問題もあるわけでありましょうが、いまおあげになった例からいたしますと、やはり抜けているのじゃなかろうかという感じを同じくするわけでございます。他のまたそういった具体的な例も、いろいろの事情によって私はあるのじゃなかろうかと思います。そういうことをひとつやはり調査しまして、そしてだんだん法規を整備していくということが必要ではないか。そういう点につきまして、耳に入った以上はひとつ十分調査をして、何らかの結論を得て、あたたかい思いやりをみんなに均てんできるようにする、これが私、厚生行政の進むべき道だと考えております。
  30. 八木一男

    八木(一)委員 私はその前向きに急速に熱心に取っ組んでいただくことをぜひお願いしたいし、その御答弁はけっこうです。専門家——まあ責任は持っておられますけれども、あまり別に専門家でおられませんから、こういうことを初めて聞かれたのだろうと思いますが、すべてがその淵源が保険主義からきている。ですから、社会保険というものがあたりまえだというような、いまの厚生省はじめ、たとえば労働省にもそれがあります。それから、共済のほうは各省が担当しています。そういう間違った考え方は一切払拭をする。社会保障の観念で、一番必要な人に必ず必要な給付がいくといろ観念で全部取っ組み直しをしないと、いろいろなところにひずみがある。それから、厚生省がいろいろ諮問をする人に、社会保険学者が多い。非常にりっぱな人でございますけれども、前から言っていたことはなかなか変わりませんから、そういうことではなしに、社会保険というものが社会保障を完全にやるものじゃない、社会保障の概念でこれを根本的に考え直さなければいかぬ。過渡的にだんだんそれを変えるにしても、急速にほんとうに社会保障的な考え方で変えていかなければならないということを決心されなければならない。  いまのはことばのほうで、たとえば給付を受ける条件における社会保険の欠点です。社会保険主義の欠点です。今度は給付のほうの金額その他内容のほうの欠点がまた大きい。社会保険というのは、保険料を払った割合において——保険というものは保険料を払った割合において反対の給付をするというたてまえが、普通の保険のシステムであります。これが民間の保険。ところが、社会保険とついているから、社会というのはどういう意味でつけたのかわかりませんけれども、幾ぶん社会保障的にして民間の私的保険の欠点を直そうという考え方が入っているものと解釈をいたします。国庫負担が入っているのもそういう点でありましょう。ですけれども、また社会保険の中で保険の部分が八割方占めている。社会の分はちょっと少ないのです。それをほんとうに伸ばしていかないといけないわけです。そこでいまの金額、内容の点にいくと、たとえば拠出年金では、最初出た法律案は猛烈に悪かった。たとえば、免除という制度は、社会党案のまねをしてやったけれども、免除ということに対しての章が一つもなかった。だから、そういう保険料負担にたえない人たちは、保険料をまけてもらう——免除だって、善政みたいに見えるけれども、そうじゃない。結局そういう人たちがずっとあったら、年金一つももらえない。保険料を払えないような人が老齢になったならば、あるいは死亡して家族の生活を考えるときに、一番年金の必要が多い。その一番年金の必要の多い人を年金から排除しておる、そういう法律があったわけです。そのとんでもないところを徹底的に追及したら、やっとこさっとこ、保険料を払える人に対しては、保険料の五割の国庫負担がある。払えない人にそれだけの分をしなければならないということで、わずかに百円、百五十円に対して七十五円、五十円という半分だけ国庫負担として積み立てることに、やっとこさっとこなった。やっとこさっとこなったけれども、これは全部の原資の三分の一だ。ですから、そういうふうになった場合には、六十五歳で、四十年ほど待たされて、そしてやっとこさっとこ保険料を積み立ててもらえるという、けちな、インチキな保険ですね。この三千五百円が、気の毒な人には三分の一以下になるわけです。そんなものは年金制度でない。三千五百円すら、いまの生活保護基準のあれよりも低い。四十年保険料を払って、あと五年間待たされる。そしてその少ないのが、また気の毒な人には三分の一になる。そんなものは年金じゃない。そういうところはその全体の金額を上げなければならないけれども、そのほかに、そのような一番気の毒な人の金額がさらに減るというようなこと、これがいかぬのです。これは、保険料を払った人にはたくさん払うという民間の保険原則がその中に入っているから、そういうことになる。むしろ逆に、そういう人のほうが多くするというのが社会保障の原則です。そこまでいかなくても、同額だけは絶対に確保しなければならない。それが一つもそういうふうになっていない。そういう点があるわけです。  たとえば、失業保険のほうはどうか。これは労働省の管轄ですが、五人未満の事業所には失業保険の適用がない。一番失業の危険性が多い。失業したときには、いままで給料が少ないから蓄積が少なくて、その間保険金なしに過ごすことが非常に苦しい条件にある。しかも、そういう人だから再就職も困難な情勢が多い。そういう人には失業保険金はない。五人未満にはない。五人以上でも、ある程度保険料をたくさん払った人は九カ月もらう。それに満たない人は六カ月しかもらえない。ちょっとしか払えなかった人は、不安定な企業にしかつとめられなかったわけです。したがって、賃金も少ないし、貯金もできない。その人は再就職の条件も、中高年層や何かのことでぐあいが悪い。そういう人の失業保険をもらう期間は短い。片一方のほうは長い。全然逆ですよ。そういうことは、社会保険原則というような、実にけしからぬ、そして憲法の規定にも何にもないものがまかり通って、そういうことになる。そういうような社会保険の原則をやめて、社会保障の原則に立たなければならない。失業保険は労働省管轄ですが、社会保障の大部分はあなたの管掌です。あなたは提起をして、石田君にも相談をして、そういう誤ったものを根本的に変える、そのようなことを推進なさらなければならない。それについての厚生大臣のお考えを伺いたい。
  31. 神田博

    神田国務大臣 八木さんなかなかそのほうの御勉強で非常に詳しいので、いろいろ例を引かれて、うんちくを傾けられておりますが、私は非常に勉強になりました。  やはり何といいますか、この法律のねらいというものは、いまお述べになったようなところまで手が届くようにすることが、私は究極のねらいだと思います。まだ法律も施行後日も浅いわけでございまして、不備の点が多くあろうかと思います。根本論になりますと、いますぐ年金法なり労災法なりを改正して、直ちにそういう新しいシステムを取り入れる法律に変えるということは、なかなかこれは容易でないのじゃないかと思います。何事にも原則には例外がつきものでございますが、いまのような例外は予見し得る例外なんですね。いまあなたのお述べになったようなことは、これは私は、もうそういうことがあり得ることは予見できると思うのです。その原則の例外を救う道を別途考慮するという方法をとれば、私は、いまあなたからお述べになったようなことが救済されるのじゃないか、こういうものも加えていけるのじゃないかと思います。どういう方法でこれをやるか、そのまま年金法を改正してやるのか、あるいはまた他の単独立法で除外例を設けていくのか、これは相当検討の必要があるのじゃないかと私は思います。いずれにいたしましても、いまお述べになったようなことは、私は貴重なことだと思います。それから、それは社会が進むに従って起こり得る事実です。それを見のがしていくということは、いわゆる憲法下において正しいあり方じゃない。もっと愛情のあるつかみ方をしなくちゃいけないのじゃないか、こういう観点から立つと、これはやはりこの辺で再検討して、そして補足すべきものは補足する、こういうような措置をとらなければならぬのじゃないか、こう思うわけであります。十分ひとつ検討させていただきたいと思います。
  32. 八木一男

    八木(一)委員 補足だとか例外なんということばは、別にこれは悪意で言っていられないことはわかりますけれども、そういうことじゃなしに、ほんとうにつくれば、ぱちっとできるのです。それをつくれないというのは能力がないのです。りっぱな人がたくさんいるから、つくる気だったらつくれるのです。ほんとうに原則が完全に貫かれるような立場で推進しないと、ちょっと縫い張りをしたらいいという問題ではないと思う。縫い張りも全然ないよりはましですけれども、原則的に権利意識に基づいて、完全にあらゆる人にそういうような保障を無条件でするという方向でこの問題を考える。いまの社会保険主義で、それだから何ですというような反論は一切許さない。そういう方向で問題を進めていただかなければならない。時間もないようですから先に進みます。  その次に、生活保護について伺いたいのですが、この間分科会でかなり伺いました。ですから大体は省略したいと思いますが、分科会で申し上げたことについて、厚生大臣はどのように理解され、どのように対処をされようとしているか、それをひとつ伺いたい。
  33. 神田博

    神田国務大臣 先般の予算分科会におきまして、当時八木委員からいろいろ御指摘になりました点、私は十分了承できます。しかし、当時もお答え申し上げましたように、現実の問題になりますと国家財政の関係もございまして、今年度いろいろの角度から計算いたしまして、そして一二%というようなことに落ちついたわけでございます。一二%が最低生活を保障しているかどうかということになりますと、私どもといたしましてはいろいろの角度から、これなら憲法の条章には違反しない、その最低生活は守っておる、こう考えておりますが、しかし財政が許すならもっとあたたかくしていきたいという基本的な考え方については、私も八木さんと同じで、八木さんはもっとたくさんやらなければいかぬじゃないか、一人当たりに割ってみてなかなかたいへんじゃないかということ、この気持ちは私はわかります。きのうも参議院の予算委員会においてこれが問題になりましたが、私はやはりそういうことをお答えいたしております。いま、きまったからこれは何ともしようがないというような、そういう意味で私はお答え申し上げておるのではないのでございまして、予算の決定の際に十分あらゆる点から論議いたしまして、そして結論を得たというようなことでございます。  統計等の数字の点でございますれば、また社会局長等から説明させたいと思います。
  34. 八木一男

    八木(一)委員 私の質問した意思を取り違えて答弁しておられるので困るのですが、実は生活保護全体についての諸決定について申し上げたわけです。それを具体的に直す決心をされていると期待して言ったのです。お忙しいせいもあろうかと思いますが、あれから後に厚生大臣は忙しいから御研究は十分できなくても、提起した問題については、うんうんと首を縦に振っておられたわけです。その問題についてだけはもう少し御研究になって、そういうことに対処する決心がすでについておられなければならないと思うのですが、まだばく然とした御答弁で非常に残念です。それから少し防衛的な御答弁です。一二%と一六%とまた追及されるかと思って、初めから一二、一六のことを言われた。この前追及しましたから、あまり重ねて申し上げませんけれども、そんなものは問題になりません。社会局長最初からかまえて、逃げよう逃げようという意識があるけれども、経済の見通しやいろいろな物価の見通しの問題でしょう。その問題については、十一月の二十日に政府のほうへは言って、十二月の初旬までには物価や何かの見通しについての政府の態度が確定しているわけです。その後において厚生大臣は一六%要求しているわけです。ですから、いろいろな見通しで、大蔵省と厚生省と政府全体の態度は違うかもしれません。しかし、それが見通しについて確定してから、すでに厚生省は一六%を要求しておられる。したがってそういう要素が入っておる。一六については、厚生省は確信を持っておられなければならない。これは特に憲法の条章を直接言った条文であって、健康で文化的な最低生活をする権利を有するとはっきり明記されておる。生活保護法についても、この文言をもう一回再記してある。だからこれは絶対に逃げを許されない法律です。厚生省は一六%がいいと思った。それを大蔵省が一二に査定をした。国民の基本的人権を、その分だけ大蔵省の役人どもが剥奪をしたということになる。これは憲法の条章をはっきり受けておる。ほかの問題みたいに、一生懸命やりましょう、ことしは予算がないから二千メートル道路を舗装するところを千八百メートルにとめて、来年は二百メートルやりますというようなことでは済まされないのです。健康で文化的な最低生活を維持する権利があるということを憲法に明記して、それについて生活保護でがっちりまた再記してやってあるわけです。その健康で文化的なものは一定の時点、一定の地域においては客観的なものがなければならない。その客観的なものについて厚生省は計算をされて、一六が今度四十年度は正しいとされておる。しかもそれは経済の見通し、物価の見通し等に影響がある、その点はわかります。しかし、経済や物価の見通しについて、十二月初旬に政府が確定をしておられる状態において、十二月末まで一六%を主張されておった。ところが大蔵省が一二に削った。そうなれば厚生省が確信のないものをつくったか、大蔵省が国民の権利ということを忘れて、ただ財政のワクにおさめるということだけにきゅうきゅうとして、国民の権利をそれだけ剥奪したか、どっちかになる。その問題は、この間、すべて申し上げました。もう一回申し上げると時間をとるから申し上げませんけれども、これはいかに申されても、一二がいま妥当だと思うからというのでは、弁解は通るものではないのです。これは今後の問題として、厚生省は、生活保護の要求に関する限りは、しかも経済の見通し、物価の見通しについて、確定した後の見通しについては、これだけは国民の権利、憲法の条章に従ってびた一文もまけさしてはならない。これは国民の権利に関係いたしますから一日もいけません。そういう決心でやられなければならない。今度は一六が一二にやられた経過は、あなた方が腰が弱かったし、大蔵省が無理解で、権利を忘れて憲法を侵害しているということから起こったのです。そういうことです。それについてあれだけ申し上げたのに、いままた一二%が最終的に政府が妥当と思ったから、これは健康で文化的な最低生活路線だということをおっしゃっても通らない。そういうことをおっしゃれば、どんどん強く言わなければならないことになる。こまかいことは聞きません。これは断じていかぬのです。この前も申し上げましたし、ほかの同僚委員からも追及があろうかと思いますので、いまほかの問題がありますからこれだけにしますけれども、これは断じて許されない問題であるということを銘記をされたい。  ほかの問題です。たとえば生活保護法の第四条のように、ほんとうに冷酷な条文があります。また世帯主義をとっておるために、生活保護家庭の若い働く青年が、その基本的人権がじゅうりんされ、あるいはその人の親孝行のほんとうの気持ちが実際的に抹殺をされるというような状況があります。また最低生活であるのに地域差が、東京と宮崎とを比べて十対一というような、とんでもない地域差があります。また実際に合わないような扶養義務を追及し過ぎて、生活保護のほんとうの最低の基本的生存権に対する法令が直ちに発動しない、その期間非常に人権が侵害される問題があります。そういう問題について全部申し上げたはずです。そういうように生活保護法はあらゆる点で欠点があるのです。第一条から第三条まではほんとうにりっぱな、神のごとく、仏のごとき条文でありながら、四条以下は鬼畜のごとき条文である。生活保護法のそういう矛盾を解決しなければならない。それに対して取っ組む意思があるかどうか。少なくとも本年度から作業を始めて、生活保護法の抜本的改正をやる意思があるかどうか。あなた方はそれだけの能力がなければ、われわれは生活保障法を今国会に出します。そのとおりあなた方が努力をされて、与党の賢明な方々も賛成されるでありましょうから、直ちにそれを可決されるための裏努力をされるかどうか、そういうことについて御質問を申し上げたのです。そういうことについて何ら検討をされておらない、決意もはっきり固めておられない、そういうことですと、厚生大臣としての責任はつとまりません。それについてもっとはっきりとした決意を、いま即時でもいいから固めていただきたいと思う。
  35. 神田博

    神田国務大臣 いまの要求の一六%が一二%になったということは、私決して言いわけを申し上げるわけでございませんが、われわれ厚生省の立場といたしましては、できるだけあたたかい思いやりでいたわってやらなければならぬ、そうしてこれを引き上げていかなければならぬという思いやりがあることは、御了承を願えると思います。そういう立場に立ってできるだけ有利に有利にと計算いたしますと、いま申し上げたような数字になってまいるわけでございます。それをまた財政当局のほうから考えますと、いろいろなまたそこでそろばんの打ち方も出てまいります。議論も出てまいりまして、そこで詰めた結果、一二というようなことになって御批判を仰いでいるようなわけでございますが、私は、一二でもいわゆる憲法の条章からいって最低を下回っているとは考えておりません。数字の上では幾らか上回っている。しかし一体それでいいのか、こうお問いになりますと、いや、私は決してそういうふうには考えていない。財政が許すならもっともっと引き上げて伸ばしていきたい、こういう気持ちに変わりございません。そういう意味で一六になったというのと、それが一二になったということでひとつ御了承といいますか、お聞き願いたいと思います。  それから第二の、いわゆる例外規定と申しましょうか、いろいろの除外した規定がございます。これはいまお話しのように、前段では非常な仏心でできたものが、後段に鬼のような気持ちでせっかくのものを取り上げるようになっている。この問題については、私もそういった強い正義感は持っておりまして、先般の八木委員の質問がございましたその当日、夜おそくですが、厚生省に戻りまして社会局長と、何とかひとつ、時世も変わったのだからわれわれの考え方も少し飛躍してもいいのじゃないか、これは再検討してみようじゃないか、だいぶ世の中も移り変わる、ことに激動期でございますから、地方からいろいろの事例も出てまいっております。先般も北海道で歌の会がございましたが、コンクールか何かあって、非常に家庭の事情がわかったというようなことで、それがラジオ等で、全国放送でございますから耳にして、そういうところにお金を上げた方がある。それをすぐ取り上げたというような新聞記事等もございまして、ちょうどあの当時でございました。何かいま八木さんもおっしゃったように、法律の適用があまりしゃくし的と申しましょうか、あまり厳格過ぎると申しましょうか、情がないというか、これは法律でございますから適用は厳格にすべきものかもしれませんが、しかしこれは時と場合、事とほどによりまして、私は、やっぱり法律が生きたり死んだり、あるいはあたたかみがあったり冷酷なものがあったりするだろうと思います。そういう心がまえをひとつもっとあたたかい目で考えてみようじゃないか、そうでないと善意の方々の行為というものを無にしてしまう。善意の行為、それまで国が取り上げて、一体そこで国民精神がうまく作興できるかどうか、ここでございます。私はそういう点について、これは社会局長も、全くそのとおりだ、年数もたっておるからひとついろいろよく検討してみましょう、それからまた扱い例についても十分検討しましょう、こういうようなことでございまして、前向きにやっているということでございます。
  36. 八木一男

    八木(一)委員 後段の善意、温情ということ、ことばはいいのですが、前段のほうで、厚生大臣の御性質によると思うのですが、善意だとか少しでも多くということばを一般的な行政と同じように使われるのですが、生活保護の問題では、そこのところは少しけじめを分けていただきたい。これは権利問題であって、厚生大臣の温情によって、総理大臣の温情によってという問題よりも、もっと強いものがあります。国民の生存権に基づくものであります。それで一二を少しでも多くしたい、一六にしたいというような、厚生大臣の慈悲の心でやったという問題であってはいけない。一六というものが絶対に最低生活に必要であるという考え方で貫いていかないと、温情で一六にしたということになれば、そんな温情は財政があるから困るというようなことになってしまう。そういう議論があったかどうかわからないけれども、決心としては、憲法の条章に従ってこれは絶対に必要であるものだということを貫かなければ、大蔵大臣の圧力をぱっと強くはね返すということはできない。その問題について、さらにひとつ決心を固めておいていただきたい。そういう点で一六だと言ってもあまりよくないのですよ。これは、制度審議会の三年前の答申勧告では、四十五年までに実質三倍に改定しなければならないということをいっているわけです。この二、三年、生活保護の基準は少し上がりました。上がりましたけれども、これは物価を計算するとそのとおりいってないのです。制度審議会のほうは、物価じゃなくて、少なくとも実質三倍に絶対にしなければいかぬということを書いてある。いま進行中です。その目標は一五だといっておりますが、その進行目標については十分な線を示していない。そういうことも御研究になって大蔵大臣と立ち合わなければ、大蔵大臣は何でもかんでもなたを振り回す。一六が多いと思ってもらっては困る。できるだけ温情で一六にしたなんということじゃなくて、一六は絶対に必要なんだという観念で貫いていただかなければならないと思う。  後半の問題についても、権利の問題から発生しております。実際の扱いの問題で、いまの生活保護では温情が必要でありますから、その温情的な考え方もいいのですが、温情のない人が厚生大臣になったならば、温情が変わるというものであってはいけない。制度的にそれがちゃんと確立されなければいけない。その意味で、生活保護法を改正しなければならない時期にすでにきておると思う。わが党の案については、二、三不規則発言をして、わが党の案を十分研究もしてないで反対だと言う人がおりました。その人は十分お読みになれば、賛成だとおっしゃっていただけると思います。わが党の案に対して、政府なりあるいはまた与党なりはいろいろメンツの問題があるでありましょうが、とにかくわが党の案が毎回出ておるのですから、お読みになれば十分な参考になります。その文字どおりが一番いいと思いますが、また政府としても考え方がおありになるでありましょう。大体それが一〇〇%かあるいは九九%といったものをおつくりになって、そのような趣旨で生活保護法を抜本的に直すための改正案を来国会に提出される決意をここで固めて、それを御答弁願いたいと思います。
  37. 神田博

    神田国務大臣 社会党でいい案は持っておるからこれを参考にしろという御注意は、そのまま私も勉強させていただきます。同時に、来国会に改正案を出せという御要望でございましたが、そういうこともいろいろ込めまして検討してみたいと思います。出すということをここで言い切るわけにもまいりませんし、出さぬということを言うわけにもまいりません。要するに十分前向きに検討いたしたい、こういう所信を申し上げて御了承願いたいと思います。
  38. 八木一男

    八木(一)委員 出すという決心で十分に検討して、そしてできるだけ出されるということだろうと思う。それについてもう一度……。
  39. 神田博

    神田国務大臣 法律改正は、必要によってやることは当然でありまして、これは陳情があるとかなんとかいう問題ではありません。やるべきことは当然やる。特にこれは憲法上の問題でありまして、厚生大臣は当然憲法の条章を守る義務があるのでありますから、十分検討いたしたいと思います。
  40. 八木一男

    八木(一)委員 十分検討というのは、検討でぐるぐる回りしておるのではなくて、いいものができて出したいという意思のもとに、前向きの積極的な、急速な、熱心なる検討をされるということであらねばならないと思います。それについて、もう一回重ねてはっきり、そのとおりと言われればいいのです。よけいな文句は要りません。
  41. 神田博

    神田国務大臣 法律問題になりますといろいろ原局に十分案を練らせ、またこの問題についてはやはり相当識者の意見も聞き、八木さんなんかの意見も十分参考にしていかなければならぬと思っております。それからまた省議決定とか閣議決定とか、いろいろ段階がありますから、私がここで出しますというようなことを申し上げるよりも、先ほど来申し上げておるように十分に検討いたしまして御趣旨に沿いたい、こう思っております。
  42. 八木一男

    八木(一)委員 押し問答しても始まらないので、これは別の機会に決心を固めていただくようにします。  次に、他の問題に移りたいと思います。あと医療保障と所得保障の総括的な問題をお伺いしたいと思っております。時間の関係上、医療保障の問題を先にいたします。  医療保障の問題についていろいろ問題がございます。現在非常に論議されておる問題も非常に大事な問題でございますが、それとともに、ほかにも非常に大切な問題があろうと思います。医療保障の問題点について、厚生大臣はどういう問題が大切であると思われるか。医療保障の問題です。医療制度の問題はまた別に申し上げますから、医療保障の問題についてどういうことを重点に考えておられるか、ひとつ伺いたい。
  43. 神田博

    神田国務大臣 医療保障は、私が申し上げるまでもなく、病気やけがの場合に医療が受けられることを保障するということでございまして、御承知のように、わが国の制度といたしましては現物給付ということになっているわけでございます。そこで、今日の医療保障がこの状態でいいか悪いかということになりますれば、これはまたお答えいたすわけでございますが、医療保障というのはどうだということになりますと、いま申し上げたようなことになるのじゃないかと思います。
  44. 八木一男

    八木(一)委員 医療保障社会保障の観点から申し上げますと、私どもはこう考えているわけであります。病気やけがというような問題のときに、日本の全国民に対して直ちに無条件で、無償で、医学上いま研究されている一番適切な医療が給付をされるということ、それからさらに、それだけではなしに、病気の予防までの給付が行なわれる、あるいはまた、そのあとまでも行なわれるということを完全にする方向が、一番大切ではないかと思うわけです。それについての厚生大臣のお考えを伺いたい。
  45. 神田博

    神田国務大臣 理想としてそれが究極の目標だと考えております。
  46. 八木一男

    八木(一)委員 その一番の目標にどんどん進まなければならないと思いますが、その中でそれを非常に阻害している問題が方々にあるわけであります。  時間の関係がありますから、私から申し上げます。まず一つの問題は、無医地区の問題が非常に大きな問題であります。いろいろな制度が完成されても、そばに医療機関がない、お医者さんがいらっしゃらないということであれば、どんなに法制的なものが別にあっても実際にはお医者さんにかかれない、実際には病気をすぐなおしてもらえないということ、この問題が非常に重大な問題であるということを御認識だと思いますが、それについて厚生省はどのように対処されているか。これは、あとの問題がありますから簡単でけっこうです。
  47. 神田博

    神田国務大臣 医療保障の場合の一番問題になるのは、無医地区の解消だと思います。病院の適正配置ということも大事でございますが、しかし、一番いま問題になっておるのは、いまお述べになったとおり無医村の解消だと思います。これはなかなか大きな問題でございまして、ここ数年来その方向に向きまして助成等の道を講じておりますが、なかなか解決困難な点、御承知のとおりでございます。無医地区をどうやってやるか、医者の充実をまず第一にする、あるいはまた系列病院からの派遣をするというような問題、あるいはまた山村あたりの林道の改修等によって交通網を充実いたしまして、そして医者の連絡を密にしたいというようなこと、あるいはまた、さらに一歩広げまして、島とかあるいはほんとうの僻地で道路がなかなかつけられないような場所があるようでございますので、電話等の充実ということも郵政省等もなかなかよくやってくれておりますから、そういう連絡によって重病人等の場合にはヘリコプターを出すとか、可能な限りの方途を講じてまいりたい。無医地区解消については熱心にやっておりますが、何しろ区域がたいへんでございますので、その効果が十分にあがっていないことをまことに遺憾に思っております。   〔委員長退席、井村委員長代理着席〕
  48. 八木一男

    八木(一)委員 大体いまおっしゃったような方法、それから、まだそのほかにたくさんあります。これはわが党の同志から常々指摘をして、その一部分ずつを厚生省が取り上げてやっておられるということですが、スピードが非常に鈍いわけです。それをしっかりやってもらわなければならないのですが、問題は、お医者さんなり看護婦さんなり、そういう人たちがほんとうにそういうところに行ける条件をつくることが大事だと思うのです。時間がありませんから——具体的な提案は、わが党ではたくさんあります。私も申し上げたいこともございますし、同僚委員の方には非常に熱心に研究されておる方があって、具体的な問題について積極的な提案を今国会中になさると思いますが、そういう問題があります。それとともに、ほんとうに厚みを加えるためにそういう問題に対処するとともに、たとえば無医地区の場合に、厚生省では無医地区はどういう線で考えておられるかということがあります。昔、無医村があったけれども、市町村合併で無医村というものは形式的になくなって、無医地区——無医地区というものは固定されてはいかぬ。いまお医者さんが少ない状態で、ある程度やっているからここは無医地区じゃないということになるけれども、ほんとうは無医地区の概念はもっと緻密にならなければならない。どんどん狭めていかなければならない。狭くして、これだけにお医者さんが一人あったら無医地区でないと言っておるのを、今度は、その半分くらいのところでお医者さんがいなければ無医地区だというように進めていかなければならない。あなた方は政策が進まない。進めようと思っても、いろいろ大蔵省その他の壁がある。それでそのときに、たわいもない、いまの無医地区の概念でやっていくくせがある。そうでなく、いまこれだけの距離の中でお医者さんがいなければ無医地区と言っておるけれども、ほんとうはそれの半分の面積にお医者さんがいなくても無医地区だ、またその四分の一の面積でも無医地区ということまでいかなければ、僻地の人たちが医療の恩恵に浴せないということの解決はできない。ある一定の地域に一人お医者さんがあったら無医地区でないということではいかぬ。お医者さんだって病気することがある。その人が死にかかっているときに、ほかの死にかかっておる人から診断を求められてもできない。内科のお医者さんと外科のお医者さんがいなければ対処できないことがある。私のところにも僻地がありますけれども、とにかくある程度の地域にお医者さんが一人いる、形式的にいけば無医地区でない。ところが、こっちで難産があってこっちで盲腸炎があったら、どっちかの患者を見殺しにしなければならない、そういうことがあります。無医地区という問題をどんどん詰めていく。だから、これだけ無医地区が多いのだから、これに対処しなければならぬ。大蔵省などはこっちの要求の三倍くらい出すような気持ちでなければいかぬ、そういうふうに攻めていかなければ問題は発展しない。一人のお医者さんでは無医地区だ、少なくとも各科別の三人くらいのお医者がいなければいかぬ、そういうふうに発展をさせていかなければならない。熱心に取っ組まれるのはいいけれども、本腰を入れて熱心に取っ組まれるには、そういう姿勢でいかなければものは進みません。そういう点について、はっきりと決意を持ってやられるかどうか、ひとつ伺っておきたい。
  49. 神田博

    神田国務大臣 いま八木委員がお触れになったような事情を私も十分承知しております。市町村合併が近時なかなか盛んでございますから、形式的には無医地区でなくても、実質的に無医地区にひとしいようなものがたくさんある。ことにまた、御承知のように文化が進むに従っていろいろ都市集中の弊害もでございまして、山村等、あるいは僻地等の人口が減少してまいっております。そういう意味で、医師を常駐させることを、いろいろの準備で困難とする面が出ております。しかし、そういうことも考慮に入れて対策を立てていく、こういうことでございます。先ほど来お答えを申し上げておるとおり、厚生省といたしましては、ほんとうに人間尊重といいますか、そういうあたたかい根本理念に立って、できるだけすみやかにこの仕事を完成したい、こう思っております。大蔵省に対しても厳重に、熱心に御相談しております。
  50. 八木一男

    八木(一)委員 それが一つの問題です。  それからもう一つは、医療の質の問題があります。制限診療というものは非常にけしからぬ問題であるということで、これは撤廃すべしということが数年前からいわれて、二年ほど前からかなり撤廃をされております。非常によいことであります。制限診療を撤廃されて有効な薬品がすぐ使えるということになった。それは非常によいことだ。それを今度は受けて、薬代が多いからという問題が別に出てきている。薬代が多いという問題は、薬会社がもうけ過ぎるということが一番基本であって、その問題にメスを入れていかなければならない。ところが、それがすりかえられて、制限診療を撤廃したことが社会保険の財政の赤字もとであるというような、間違った俗論がはびこったらたいへんであります。そういうことにならないように、厚生大臣は腹を固めてやっていかなければなりません。医療にしても薬剤にしても、最新の、最も人間のからだにきくもの、そういうものが直ちに取り入れられるようにしなければならないのに、この人間の命と健康の問題がなおざりにされて、金の問題が論議の表面に出てきて、本質を曲げるおそれがなしともいえないわけです。そういう点で制限診療の撤廃の問題はどんどん進めていく、薬品会社がもうけ過ぎて、財政にかかる点は当然勇敢に対処しなければなりませんけれども、それとは別に、よい薬を国民がすぐ使える、またよい処置がすくできる、そういう方向にどんどん進めていかなければならないと思いますが、いまの医療問題についてそのような間違った考え方が起こるといけませんので、それについて厚生大臣の御意見をただしておきたい。
  51. 神田博

    神田国務大臣 いまの制限診療を撤廃して、そして治療の完ぺきを期すという考え方、これはまことにそのとおりでございまして、厚生省もそういうふうに進めてきたことは御承知のとおりでございます。同時に、そのために医療費が急増する、あるいはそのために薬業者だけが利益を受けるというような片手落ちであってはいけないと思います。私といたしましては、特に最近この問題が、世論もきびしくなっておることも御承知のとおりでございます。同時に、またアンプル禍等の事故も出てまいりましたので、この機会に薬の原価というものはいかになっておるか、あるいは薬の問題がどうなっておるかというようなことも込めて、いま検討を命じている最中でございます。
  52. 八木一男

    八木(一)委員 あとの問題はけっこうなんです。どんどんやられたらいいのです。ぼくらも、薬会社がもうけることは、これはむだな費用がかからないように、そういうむだな一部のもうけのために、社会保険がほかのほうで前進できなくなる態勢にならないようにしたいと思うのですが、いま質問は医療保障制度に限っておりますので、だんだん進めていくのに時間がありますから、とにかく申し上げたことについてのお返事をいただきたいと思う。  医療問題について、お医者さんの問題なんかを聞くとまた二、三時間かかりますから、その問題にしぼって、とにかく医療保障というものは全部が医療を受けられるように、無医村なんかなくなるということが一つ大事なこと。それからもう一つは、このような内容は、最新の、人間のからだをぴたりとなおす、そうして命を完全に保つというような研究された最新のものが使える、質的なものについて完全に確保されなければならないということが一つ、それが二つ目の大事なこと。三つ目の大事なことは、医療を受ける国民が、お金の心配なしにこれを受けられるということが医療保障制度の大事な問題です。その点で各医療保険制度が全部家族も含めて十割になって、いま金がないからきょう診断を受けるのはやめるというようなことではなしに、早く診断を受けて早く病気をなおして、早く職場なり家庭なりに復帰する、元気になる、そういうことが医療保障の目標でなければならない。ですから、すべての問題について十割給付になるように進めていかなければならない。  時間がありませんから、こっちは言うだけ言います。それとともに、その給付が十割であっても一時的に金を自分で支払わなければならないということは、非常に生活に苦しんでいる国民にとっては、これは早期診断を受けることにブレーキになる要件になります。たとえば療養費払い、そういう問題であります。現物払いであれば、苦しい、腹が痛い、子供が心配だというときに、すぐ連れていってすぐ見てもらえる。そこで自分の手元に金がなければ、十割給付でなければブレーキがかかる。たとえ給付率がよくても、そこで自分の金を払わなければならないということになれば、やはりおくれる。そういう問題は基本的にいけない問題であります。ですから、療養費払いというようなこと、そういうものをなくする方向に厚生省は向かっていかなければならない。たとえば国民健康保険では各市町村でやっている。この国民健康保険の被保険者が東京に出て発病したというときには、受けられることは受けられるけれども療養費払いになる。したがって、そこで非常に重い病気になったら、何カ月間かはそこで非常にたくさんの金を自己負担をして、あとで請求してこれを返してもらうということになる、こういうことがほんとうの医療を受けることに非常に阻害になる。国民健康保険に現にそういうことはたくさんあります。そういうことをなくしていく方向でなければいけない。ところが、一部に、いまある現物払いすら療養費払いに持っていこうという凶悪きわまる考え方を持っている連中がいる。そういうようなことにならないように、現物払いの方向で進めるということについて厚生大臣は断じてそれを貫いていかなければならないと思いまするが、厚生大臣の明確な答弁をいただきたいと思う。
  53. 神田博

    神田国務大臣 八木さんから医療費のあり方といいますか、医療のあり方について、国民が完全給付である姿が一番いいというお話ですが、これはいろいろ議論もありますが、私もその点についてはそういう考えを持っております。しかしこれは、なかなか一国の財政状態と申しましょうか、いろいろ社会保障のバランスのとれた観点からいきまして、やっぱり逐次上げていく、そういう姿に持っていく、こういうことだと思います。その精神はまことにとうといことでございまして、よく気持ちはわかります。
  54. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、いま言った方向ですね、十割給付とか現物給付という方向に進められる、少なくとも、そのスピードについてはいろいろな条件がありますが、逆行さすような方向は一切とらないということでありますね。それを明確にひとつ。
  55. 神田博

    神田国務大臣 まあ、世の中というものは、一つの問題を解決するために前向きで進む場合に、一歩後退、二歩前進もありましょうし、あるいはまた大幅に増進する、あるいはまた、そこにとどまってまた前進するというあり方もあろうかと思います、そのときによりましてやり方がいろいろあろうと思います。そういうふうに考えています。
  56. 八木一男

    八木(一)委員 医療保障の方向について厚生大臣と質疑応答をして、厚生大臣の基本的な考え方を伺ったのです。それを貫くというのならいいけれども、それについて一歩後退、二歩前進である、後退を認めるようなことでは、これは厚生大臣としての資格はありません。何で後退することが認められるか、前進をしなければいけません。あなたが力量が足りないで後退するときには、あなたは力量のある人にかわってもらわなければなりません。自分に自信があるのならば、断じて前進の方向を支持して、後退させないということに持っていかなければならない。その点についてはっきり御答弁を願いたい。
  57. 神田博

    神田国務大臣 八木さんのお述べになっているお気持ちは同感なんでございますが、手段方法につきましては、そういうことを貫いていくという点についてはいろいろ方法があるだろう、こういうことを申し上げたのであります。
  58. 八木一男

    八木(一)委員 その前進の手段方法については、具体的ないろいろの方法があるかもしれません。だけれども、後退の方向はとらない、必ず前進の方向をとるということでなければならないと思う。それについてはっきりひとつ。
  59. 神田博

    神田国務大臣 その考え方は同じなんであります。しかし、目的を完遂するためにそういうようなこともあり得る、こういうことでございまして、それは何といいますか、長期展望に立ってのお話を申し上げておるわけでございます。
  60. 八木一男

    八木(一)委員 問題をはっきりしておきますが、後退は一切させないということでなければならないと思いますが、それについて。
  61. 神田博

    神田国務大臣 何といいますか、後退は私もしたいという意識で言っておるわけではありません。前進するために一歩後退、二歩前進、そういうようなことがあり得る場合も出るかもしれない、こういうことを申し上げておるのであります。考え方は同じでございます。
  62. 八木一男

    八木(一)委員 憲法を尊重して——さっき九十九条を読んだでしょう。憲法のことからずっときているのですよ。あなたはそれを尊重して前進させる義務がある。総理大臣に次いで一番大きな義務がある。その人が後退をさせないことをはっきりせいというときに、それを答弁ができないようでは、あなたは憲法違反であり、また厚生省の所管の大臣としては不適任である。直ちにやめてもらわなければなりません。後退は断じてしないということを明確に言っていただきたいと思います。
  63. 神田博

    神田国務大臣 後退はいたしませんと申し上げております。前進あるのみだが、その前進をするためにいろいろの手段がある、こういうことを申し上げておるのであります。
  64. 八木一男

    八木(一)委員 もう一回。いま聞こえませんでした。後退はいたしませんと言われましたが、そのとおりですね。
  65. 神田博

    神田国務大臣 後退はいたしません。
  66. 八木一男

    八木(一)委員 その次に、非常に時間が迫りましたので所得保障のことはあきらめて、医療保障のことについてもう少し申し上げたいと思います。  それでは、やや今度は具体的な問題に移りたいと思います。いま医療費の値上げの問題あるいは社会保険の赤字の問題で非常に問題が動いております。その問題の中で具体的に政府が非常に間違った法案のもとのものを準備をされまして、それで社会保険審議会、社会保障制度審議会に諮問をされておる。その内容について、昨年の十一月の末に、いわゆる神田・田中メモというようなものを書かれたということで、非常に問題になっておるのです。これは方々で非難されていますから、時間がありませんからそれから申し上げませんが、こういうことの中で、社会保険審議会、社会保障制度審議会がいろいろ審議をされることになるのですが、この医療費の問題の影響を非常に重大に受ける。また赤字に悩んでおるという点では、国民健康保険も当然非常に大きな要素である。その問題について社会保険審議会では三つの健保、船保、日雇健保というものを諮問案を中心に御論議になる。社会保障制度審議会にもそういう諮問にしかなっていないわけです。その点、両審議会においては大きな問題でございますから、国民健康保険についての積極的な御論議で、答申中においてもそれについて具体的ないろいろの答申が出てまいると思いますけれども、たてまえとしては健保三法しか出ておりませんので、厚生省としては何らかの方法で具体的な諮問の方法が、あるいは要請の方法でもよろしゅうございますが、国民健康保険というものが非常にいま赤字に悩んでおる。そういう問題についてもいろいろな検討をしてよい意見を出してもらいたいということを積極的に要望をされる必要があろう。それについて厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  67. 神田博

    神田国務大臣 保険三法がいま両審議会に御審議を願っておることはお述べになったとおりでございます。そこでこれを答申待ちと申しましょうか、きょうも一時半からございまして、私、一時の本会議に原爆の法律案の提案理由の説明をしなければなりませんが、それが終わりまして質疑応答に答えまして、そしてすぐ社会保険審議会に参る予定でございます。十分ひとつ大所高所から御審議願いまして、りっぱな答申を期待いたしております。答申をひとつ尊重して御審議をお願いしたい、こう考えておるわけでございます。
  68. 八木一男

    八木(一)委員 国民健康保険の医療費の見積もりを誤ったために昨年度において総計において非常に多くの見積もりの違いで、各団体が困っておるわけであります。それが総計百三十億と伺っておりますけれども、それについてひとつ数字を明らかにしていただきたい。
  69. 神田博

    神田国務大臣 国民健康保険につきましても大蔵省といまその数字で交渉をいたしております。むろんこれは健保三法と関係あるといえばある、ないといえばないことでございます。いずれにいたしましても、健保三法の答申をちょうだいいたしまして、どちらも均衡のとれた政府の財政措置をしたいということでございますが、国民健康保険はこれは御審議を願うことになっておりませんから、いまから交渉を始めております。百三十億をひとつ早く出しなさい、いつ出してくれるかということで、熱心にいま打ち合わせをしております。こういう段階でございます。大蔵省とも出すということについては原則的に了解がついておりますが、いつどういう方法にするかということについて、まだ細部の打ち合わせをやっているような状態でございます。
  70. 八木一男

    八木(一)委員 百三十億の数字を伺ったわけですが、百三十億の中で定率見積もり二割五分に当たるところの見積もりの違いが九十五億、それから調整交付金の見積もりの違いが三十二億、その他が三億、合計百三十億になる。これは見積もりの違いですよ。ですからこれはあたりまえで、大蔵省が何と言っても百三十億は絶対に出させなければいけません。それだけの問題ではないわけです。これはあなた方の見積もりの違いの数字が百三十億、最も根本的な問題がある。非常に財政の赤字という問題が恒久的にあって、それでいままで、昨年は国民健康保険の各団体が全国で平均して二六・八%保険料の値上げをしたわけです。保険料を値上げをした状態において、まだ四十年度赤字が非常に心配をされておる。四十年度においては東京においては五割、大阪においては七割というような保険料の値上げ案が考えられておるというような状況であります。ですから、前年度赤字の見積もりの狂いが百三十億はもちろんでございますが、その中で根本的に国民健康保険の赤字を出させないというような考え方で、この問題に対処しなければならない。その問題については急速を要します。ですから、いま厚生大臣は百三十億については大蔵大臣と交渉しておられるけれども、そうではなしに根本的に国民健康保険の赤字を出させない、そうして内容をよくする、地方財政を圧迫しないという考え方で、それ以外の問題について積極的な要求をしておかなければこれは問題が進みません。そういう問題についてどのように考えておられるか伺いたい。
  71. 神田博

    神田国務大臣 そういう方針のもとで厳重に交渉いたしておる、こういう段階でございます。
  72. 八木一男

    八木(一)委員 それでは百三十億以外にどのような金額を、厚生大臣としては、大蔵省が国庫負担あるいは調整交付金ということで出すことを交渉しておられるか、ひとつ承っておきたい。
  73. 神田博

    神田国務大臣 いまの段階は、百三十億ということで市町村側とも話し合いがつきましてやっておる段階でございます。それからまた来年度以降の問題についてはひとつ十分そういうことをなお繰り返さないように、前向きで相談を進めていく、こういう段階であります。
  74. 八木一男

    八木(一)委員 どんどんやれるのですか。
  75. 神田博

    神田国務大臣 ええ。
  76. 八木一男

    八木(一)委員 来年以降というような、ぼんやりしてはいけません。半月くらいの間に完全に大蔵省に調整させるような意気込みでやられるわけですか。
  77. 神田博

    神田国務大臣 半月待つまでもなくという意気込みでやっております。
  78. 八木一男

    八木(一)委員 こっちが言わないと何も出してくれないで、言ったときにはほかのよけいなことを言われる。この問題に関する限りはこっちが言わないと出してくれない。ほんとうに取っ組んでいるのかどうかわかりませんね。根本的な赤字の問題のほかにいろいろな問題があるでしょう。たとえば、医療費の値上げ分について四月から六月までしか政府は予算を組んでいられない。七月以降の分はどうするのか、事務費についてはほんとうの事務費よりずっと少なく査定をしておられるから、非常にたくさんの市町村に対する圧迫が起こる。そういうようなことをやっているから市町村はおこってしまう。いままで何十億も市町村、地方行政団体の一般財政から埋めているけれども、ほんとうにそれを埋めなければならない国がなまけているから、そういうこともやめて、国に抵抗しようか、国保を返上しようかというところまできているんだ。そういうあらゆる問題について対処をされなければならない。私が言ったことだけ返事をなさる。六月まで、七月以降の医療費の値上げ分について対処をしてない。七月以降の分についてはどうするか。事務費の差額についてはどうするのかという点については、努力をしておるのかどうか、伺っておきたいと思います。
  79. 神田博

    神田国務大臣 七月以降の分についてもこめて御相談をしておる段階であります。
  80. 八木一男

    八木(一)委員 事務費についてはどうですか。
  81. 神田博

    神田国務大臣 事務費については来年度以降の問題にしたい、こういう方針でやっております。
  82. 八木一男

    八木(一)委員 そういうことではいけませんよ。この医療費の問題については一応予算は出ている。予算は出ているけれども、その予算は、前から言ったように、あなたがぐずぐずして弱腰であって、大蔵省が権柄ずくで押えたから、こういうものは出せなかった。三割というワクがなければ、あなた方ももっと事務費はたくさん要求したでしょう。六月以降のことも要求したでしょう。押えられたからこうなった。押えたところの結果が国民健康保険の問題、医療費の問題が大問題になっている。そういうふうに世の中が動いた、あなたの大失敗を取り返すために世の中が動いてくれた。その世の中が動いてくれたときには、あなたは失敗を取り消すためにほんとうに決心してやらなければならない。国民健康保険の団体が百三十億出すのをしぶってもそれはいいです。それ以上に大切なことは厚生省はわかっておる。百三十億の当面の問題、それから六月から後の医療費の値上げ分に対する補てん、事務費の問題で毎年毎年累積する赤字、それから根本的に国民健康保険に対して国庫負担の入れ方が少ないので、ずいぶんと赤字が出ている。形式的に言えば、昭和四十年度はそう赤字はありませんと言うかもしれません。それは県、市町村がしかたなしに保険料の値上げを昨年度もやったから、そのバランスで赤字がそう出ないようになっている。そのような過酷な保険料の値上げをしているようなやり方は、国の厚生省としてはとるべきではない。国民健康保険がそのような地方住民の非常に大きな負担によって、それから地方団体を苦しめて、それでやられるということは、厚生省がなまけている。当面の問題の百三十億を直ちに、あしたでも解決する、六月以降の問題はあさってでも解決する、事務費の問題はその次にでも解決する、それから国民健康保険の赤字の問題をほんとうに抜本的に対処をして、それが出ないようにする。また家族の七割給付がどんどん進んでいるけれども、そのうちの四分の三しか国が出していない、その四分の一がまた負担がかかる、そういう問題を、負担をかけないで、七割というけちなことでなしに早く十割にするためには、ほんとうに思い切って大蔵省に金を出す決心をさせなければならない。そういう問題についてもっと本腰で徹底的にやらなければならないと思う。世の中は動いてくれている。その動きに対応してほんとうの責任を果たすためには、もっと積極的にならなければなりません。質問をしたら、このときに限り質問のことだけ答弁をして、ほかのときにはよけいなことを言う。このことは自信のない、本腰でやっていない証拠であります。ほんとうにただいまからも決心をし面して——国保団体が要求しているのは、あれは遠慮が過ぎている。あんなちゃちなものではなしに、厚生大臣としてはもっと徹底的に国保が前進する体制をつくるために、大蔵省に強い決心で当たらなければならないと思いますが、それについての決意をいまでもいいからかためていただいて、前進をしていただきたいと思います。
  83. 神田博

    神田国務大臣 聞いたことだけ答弁するようにということでございましたので、実は申し上げておったわけでございます。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕 いま交渉しておりますのは、三十九年度赤字の問題で交渉しておるわけでございます。それから四十年度は、それが解決してからひつとやる、こういうことでございます。ただ四十年度の、いまの七月以降の分は含めて御相談しよう、こういうことを言っております。  それからもう一つ、早く国保の十割給付を考えろということでございますが、厚生省としてはまず七割給付を完全実施する、これが先決だと思っております。完全実施をして、市町村にも迷惑をかけない、そのレベルアップをした上で、その七割を今度八割にするか九割にするか、そして進めて最後にどうするかということをいたしたい。いまの段階では七割給付を早くひとつ全国完全実施したい、こういろ方針でやっております。
  84. 八木一男

    八木(一)委員 具体的に事務費の問題についての御回答がないが、事務費赤字が非常に出ているけれども、これは国が地方行政団体にやらしているわけですから、そういう問題を実際の金額だけ対処しないで、地方団体に赤字をしょわせるというようなことは、国の政治としては許されない。その問題について直ちに本年度からかからなければならない。予算が通ったと言われるけれども、この予算に組んでいる社会保険関係については、世の中がこれだけ大きく動いて、根本的に考え直すということになっている。したがって、この問題も考え直す範疇に入る。この事務費の問題について、本年度から上げ方が少なかった、したがって、各地方団体についてそのような赤字をしょわせる、そういう問題について今年度からこれを解決するという努力を直ちになされなければならないと思いますが、それについてのお考えを伺いたいと思います。
  85. 神田博

    神田国務大臣 御承知のように事務費の問題も、年々上げ方が少なくてこういうような結果になったわけでございます。四十年度は、それをいままでの解決策では無暴だ、毎年十円しか上がってこなかったわけですから。そうしてようやく一人当たり百五十円まできた。これを一ペンに五十円上げて二百円にした、こういうことでございます。しかし、二百円でも足りるかといえば足りないのでございます。これをいかに上げるか、私は二百五十円くらいまで上げたいと思って努力したのでございますが、大蔵省といたしましては、なかなか一ぺんでいけないから、来年度の問題にしないか、こういうことになりまして、あの辺になったわけでございますが、いまお話もございましたので、また世論も盛り上がっておりますから、ひとつ十分努力したい、こう考えております。
  86. 八木一男

    八木(一)委員 ぜひひとつそれをことしじゅうにやっていただきたいと思います、大体だれが考えても、厚生省の発表の数字でも実態に合わないということは明らかです。国がやらしておいて、国が全部めんどうを見ると言っておいて、それを半分以下しか見ない。そして借金を負わせる。こんな無暴なことがまかり通っていいものじゃないですよ。大蔵省が何と言っても——国がお願いします、その事務費は見ますと言って、事務費が実際と全然違っている。何十億も財政の特に気の毒なところにかけている。そういうようなことが許されるというような政治はあったものじゃない。地方団体が怒るのはあたりまえですよ。そんなものは来年度ではなしに、今年度から断じて取り上げる。それを大蔵大臣が聞かなかったら、刺し違えて両方とも辞職するというところまでやらなければ、大蔵省というのはなかなか動かぬですからね。そのくらいの勢いでやらなければならぬ。そのくらいの勢いでやるかどうか。やれないなら直ちにあなたはやめてください。ほかのやれる人にやってもらいたい。あなたでいいからやってくださるならやっていただきたい。そのくらいの決心でほんとうにやるかどうか、伺っておきたいと思います。
  87. 神田博

    神田国務大臣 いろいろ激励もございましたので、御趣旨に沿う以上にやりたいと思っております。
  88. 八木一男

    八木(一)委員 時間が経過しましたので、国民健康保険の問題もまだ申し上げたいし、いろいろ申し上げたいことがまだたくさんございますし、それからまた所得保障について基本的な問題も伺いたかったのですが、時間切れになりまして、非常に残念でございますが、きょう申し上げたことで、いま申し上げた国民健康保険の問題については直ちにやっていただきたいし、その他の問題についても直ちに推進をしていただきたいと思います。  それから質問を後に保留をいたしまして、きょうはこれで質問を打ち切らさせていただきます。
  89. 松澤雄藏

    松澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十二日午前十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時四十七分散会