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1965-04-28 第48回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十八日(水曜日)    午前十一時十四分開議  出席委員    委員長 保科善四郎君    理事 天野 公義君 理事 小笠 公韶君    理事 奥野 誠亮君 理事 丹羽 兵助君    理事 重盛 寿治君 理事 日野 吉夫君       熊谷 義雄君    小山 省二君       村山 達雄君    山村治郎君       山本 幸雄君    中井徳次郎君       肥田 次郎君    安井 吉典君       門司  亮君    吉川 兼光君  出席国務大臣         通商産業大臣  櫻内 義雄君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁水         資源局長)    鈴木 喜治君         厚生政務次官  徳永 正利君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宜夫君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (企業局産業立         地部長)    馬郡  厳君  委員外出席者         議     員 中井徳次郎君         議     員 吉川 兼光君         厚 生 技 官         (環境衛生局公         害課長)    橋本 道夫君         通商産業事務官         (企業局産業立         地部場産業公害         課長)     平松 守彦君     ――――――――――――― 四月二十八日  委員川野芳滿君、細谷治嘉君及び門司亮辞任  につき、その補欠として山村治郎君、中井徳  次郎君及び吉川兼光君が議長の指名委員に選  任された。 同日  委員山村治郎君及び中井徳次郎辞任につき、  その補欠として川野芳滿君及び細谷治嘉君が議  長の指名委員に選任ざれた。     ――――――――――――― 四月二十六日  公害対策基本法案中井徳次郎君外二十一名提  出、衆法第三〇号) 同月二十二日  水質汚濁防止及び漁場荒廃対策に関する請願(  壽原正一紹介)(第二九六六号)  同(木村武千代紹介)(第三〇七九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害防止事業団法案内閣提出第九七号)  公害対策基本法案吉川兼光君外一名提出、第  四十七回国会衆法第八号)  公害対策基本法案中井徳次郎君外二十一名提  出、衆法第三〇号)      ――――◇―――――
  2. 保科善四郎

    保科委員長 これより会議を開きます。  中井徳次郎君外二十一名提出公害対策基本法案及び吉川兼光君外一名提出公害対策基本法案議題とし、順次提案理由説明を聴取いたします。  中井徳次郎君。     ―――――――――――――     ―――――――――――――
  3. 中井徳次郎

    中井議員 私は、ただいま議題となりました公害対策基本法案について、日本社会党を代表して、その趣旨説明いたします。  公害問題がわが国においてやかましく論ぜられ、重大なる社会問題となりつつあることは、天下周知の事実であります。しかるに、これが対策につきましては、ばい煙排出規制等に関する法律公共用水域水質保全に関する法律工場排水等規制に関する法律等、二、三の法律があるのみでありまして、問題の重要性に反して、その法的措置がはなはだ不備であります。したがって、それに基づく行政もてんでんばらばらで、効果の見るべきものはありません。政府は、今国会において、わずかに公害防止事業団法案提出しておりますが、これも、公害が起こってしまってからわずかの予算でそのあと始末をしようとするのでありまして、事実は微々たる対策にすぎないのであります。公害につきましては、もっと大局的見地より抜本的、基本的な立場に立って基本法制定をし、それを出発点として、各種の具体的な法案をそれに付属せしめて、その体系を整え、もって公害対策の完ぺきを期さねばならぬと私どもは考えます。そこで日本社会党はここに公害対策基本法提出いたしました。公害対策基本についてその立場を明確にして、国民生活から公害を守り、これを排除し、風光明媚、白砂青松のみごとなこの日本の国土を温存していきたいと考えているのであります。  以下、その内容のおもなるものを説明いたします。  まず第一に、公害に対する企業責任を明確にしろとうたっていることであります。公害に関するこれまでの各種調査報告等によりますと、その原因が明らかであるにもかかわらず、これが対策企業がのがれ、またはのがれんとする傾向がはなはだ強いのであります。逆に、原因を不明確にするようにつとめたり、明確であっても責任をのがれて時間かせぎをいたしたりする傾向さえ強いのであります。そこで公害に関する企業責任をここに明確にいたしたいと存じた次第であります。  第二は、したがってこのうらはらとして、場合によりましては企業営業停止まで考えていきたい。それを法文化いたしております。これが第二であります。  第三は、公害によって生じた損害の賠償その他については、その対策といたしまして、地方的処置にゆだねる前に第一次的に処置し得るごとき前進的法文をうたいました。  第四には、公害に対する国の施策はもとよりでありますが、地方住民の代表であります地方自治体すなわち市町村及び府県にも公害排除に対する行政的責任を負荷して、これに対する財政的措置は要すれば国がめんどうを見ることにいたしました。すなわち地方自治体の国と異なる面、都市計画汚物処理上下水道等の本来の諸計画を通じて、その行政的施策責任を明らかにいたしたいと思うのであります。  第五には、国はこれらの施策を進める上に、もちろん総合的かつ財政的施策を行なって、それに対する基本的事項を掲げておりますけれども、さらに、その実施機関といたしまして若干名の委員よりなる行政委員会を設置することといたしました。そのもとに各地方分局あるいは研究所を置き、さらに専門のコンサルタントを常置いたしまして、国の公害排除の万全を期したいと考えております。そうしてこの機関の構成その他については、別に法律にゆだねることにいたしておるのであります。  最後に、国は公害に対する十ヵ年計画を作成して、これを広く公表し、毎年その経過を国会に報告する義務を政府に課しております。  以上が、われわれの提出いたしました公害対策基本法案概要でございます。  何とぞ慎重御審議の上御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
  4. 保科善四郎

  5. 吉川兼光

    吉川(兼)議員 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました公害対策基本法案提案理由並びにその内容概要につきまして御説明申し上げます。  今日の公害は、特定の都市のみに見られるというような特別の現象でなく、いまや、その程度に差こそあれ、全国普遍のものとなっているのであります。この公害による生活環境の悪化は、単に地域住民の生命並びに財産をそこなうだけでなく、それが産業自体に与える経済上の損失、さらに社会全般にわたる被害という点ではかり知れないものがあるのであります。したがって、公害防止は、国民のよき生活環境を維持する上で何をさておいても早急に解決されなければならない国政上の最重要課題一つであると確信いたしますが、現実は、その施策裏づけたるべき法の整備が不十分なために、公害を全国的に野放しにする結果を招いているのであります。  すなわち、現行法制においては、第一に、公害と認定する統一された定まった基準がなく、どれが公害で、どの程度以上が規制対象になるのか全く明らかにされておりません。  第二に、公害防止に関する最終責任は、国か、地方公共団体か、あるいは企業等発生源であるのか、その責任所在が明らかでなく、そのため公害防止対策被害に関する苦情処理等が円滑に推進されない事情にあります。  第三に、公害に関する基本的事項が定まっていないため、現在の公害関連法律はすべて事後法であり、事前にこれを防止するという十分な法的措置がとれない状態にあります。  以上の諸点から、今日の事態は公害を抜本的に防止するための基本法制定を切実な問題として要請しており、本案提案する理由もまさにここにあるのであります。  次に、法案内容についてその概略を御説明申し上げます。  第一条では、ただいま申し述べましたことも含めまして、国及び地方自治体中心的責任をにないつつ公害防止公共福祉確保に当たることをこの法律目的とすることを明らかにいたしました。  第二条は、今日公害の概念がきわめて不明確である現状にかんがみ、これを一、大気汚染、二、水質汚濁、三、悪臭、四、騒音、五、振動、六、地盤沈下と六種類に分類規定し、それぞれが多数の住民の健康並びに動植物の生育を害し、もしくは日常生活の障害、経済上の損失等を招き、またはそのおそれのあるものと定義づけた次第であります。  第三条では、公害防止措置実施を国の責務とし、そのための施策を国の責任において総合的に講ずべきことといたしました。  さらに、第四条におきましても、この国の施策に準じて地方公共団体もこれに協力する責務があることを明らかにした次第であります。  第五条は、事業者がその事業活動について、公害発生防止するための装置施設設置等、その必要な措置のとるべきこと責務とし、そのため国及び地方公共団体施策に協力すべきこととしました。  なお、これら装置施設の普及については相当の費用を必要とするものもございますので、事業者責務の円滑な遂行を期するため、第七条、第十七条におきまして、法制上、税・財政上、金融上等政府の行なうべき助成の基本をここに明らかにいたしました。  これら政府の行なうべき施策具体案とその結果につきましては、第八条におきまして、これを毎年国会に報告すべきこととしております。  第二章は、国の行なうべき行政基本を明らかにしたものでございまして、第九条では、現在公害対策上最もおくれております公害実態調査公害防止科学技術研究開発等政府が率先して積極的に行なうべきこととしました。  第十一条より第十六条までは、さきの定義に述べました六種類公害についてそれぞれの公害許容限度を定め、それに伴って個々の排出及び放散等についての必要な規制基準を設けるべきことといたしました。  第十八条では、都市計画の策定に際しての公害防止配慮、第十九条では、公害にかかわる救済制度整備とその必要規定を明らかにしてございます。  第三章では、公害防止行政の総合的な一元化のため、総理府の外局として公害防止庁を設置することといたしました。防止庁の組織並びに権限等具体的内容につきましては別途法律で定めることとし、本法でその詳細を規定することを避けましたが、その基本的性格につきましては、防止行政総合企画と立案、公害実態調査並びに通産厚生両省を初めとする各省間の権限事務連絡調整を行なうことによって行政総合性積極的推進の原動力とすることが、本法にいう防止庁趣旨であることをここに明らかにしておきたいと存じます。  以上が本案提案する理由並びに法案概要でございます。何とぞ慎重審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。      ――――◇―――――
  6. 保科善四郎

    保科委員長 次に、公害防止事業団法案議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。肥田次郎君。
  7. 肥田次郎

    肥田委員 質問の前にちょっとお伺いしたいのですが、この四月十七日の日付で出された厚生省環境衛生局から出ておるところの「企業公害対策所要額の試算」、これはいままでの審議の間にすでに出ておったのなら、私が欠席しておりましたので、申しわけないのですが、そうでなかったら、この資料の二ページの終わりのほうに、「四十年度の大気汚染水質汚濁関係で五百八十二億円~六百五十七億円必要と推定される。」と、こういうものと、いままでたびたび質問しておりますところの公害対策年次計画というものとどういう関係にあるのか、御説明を願いたいと思います。
  8. 舘林宜夫

    舘林政府委員 この計算は厚生省公害課立場予算を組み立てるために多数の仮説のもとに行なわれましたものでございまして、今後公害対策のための施設面経済面から詳細な調査の結果によりまして、さらに正確な数値を組み立てるべき必要は感じております。
  9. 肥田次郎

    肥田委員 そういうことでしたら、本日はお約束によりまして、集約の意味質問を簡略にいたしますから、答えもそのつもりで簡明にお答えをいただきたいのです。  まず産業公害対策というものは、これは非常に広範囲にわたることはもちろんであります。したがいまして、この広範囲にわたるものの中でまずどれに手をうけるか、これは非常にむずかしい問題であると思うのですが、この事業団の当面の目標汚水対策に注がれておる。そしてそれから先の年次計画、いわゆる事業計画、特に計画的な年次計画といいますか、こういうものについて今日までたびたび明らかにされるように要望しておったのですが、それもまだ明確にはされておらないと思うのです。この関係についてお答えをいただきたいと思います。
  10. 舘林宜夫

    舘林政府委員 今回やや具体的にお示し申し上げましたものは、御指摘のとおり初年度の計画でございます。今後この事業団として実施すべき全体的な計画は、総括的には新産都市あるいは工業特別地域あるいは京阪神、東京、神奈川、千葉というような既存の地帯を重点的に行ない、大ざっぱな対象としての計画は考えておりますけれども、四十年度計画にお示し申し上げたような具体的な計画は、今後それらの地域公害に対しまして具体的につくってまいりたい、かように考えております。
  11. 肥田次郎

    肥田委員 そうすると、こういうことになりますか。このたび審議対象になっておるこの事業団は、そういう年次計画に基づいて計画的に必要であるということでつくるというような事業団ではなくして、何かこうほんとうににわかづくりの、これだけを目標にしてつくった事業団というようなきわめて狭義な事業団というふうに解釈をせざるを得ないのですが、そういうことでよろしいですか。
  12. 舘林宜夫

    舘林政府委員 この事業団事業対象としましては、ただいま申し上げましたような、特に必要な地域における公害対策を全面的に取り上げていくことになるわけでございますが、たとえば新産都市を例にとって申し上げますと、今後考えられるある新産都市地域産業が、いかなる種類産業がそこへ進出するかということは必ずしも今日では見通しがつかないわけでございます。進出する産業種類によりましては、発生する公害種類も違ってまいりますし、その程度も違ってまいるわけでございます。したがいまして、これを予算に組み込むようなかなりこまかい意味合いの具体的計画というものは、そういう計画が具体的に出てまいりましてから設定せざるを得ないわけでございまして、この事業団が今後ただいま申しました地域公害施策を全面的に取り上げる計画は当初から考えておるわけでございます。
  13. 肥田次郎

    肥田委員 だからいわゆる公害対策でいうものを本質的に考えたところの事業団というものではなくして、当面の汚水処理というものを具体的にやりたいということでつくられるところの事業団、あなたの言われていることと私の言っていることとは全く反対のことを言っているのです。その場の当面の問題を処置するためにこの事業団をつくったということであって、いわゆる本来の目的であるところの公害対策という大きな意味で、この事業団というものが広範囲に広がっていくという性格のものであるのかないのか、これをお伺いしているわけなんです。
  14. 舘林宜夫

    舘林政府委員 この事業団事業目的としております分野の仕事は、全面的にこの事業団が分担してまいるということでございまして、この事業団汚水処理対策に限られるとかあるいは当初計画した地域のみに限られるとかいうような狭い範囲を考えておるわけではございませんで、この事業団事業範囲仕事に関しましては、全面的に今後強力に推め進めてまいりたい、こういうことでございます。ただそれを今後昭和四十一年度は幾ら、四十二年度は幾らというような具体的な計画としては今日設定しがたいという点をただいま申し上げたわけでございます。
  15. 肥田次郎

    肥田委員 そうすると、そういう将来のいわゆる計画、今日まで質問たびごとにお伺いしておったところの年次計画というものがもう少し明確にできないのかということについては、これは不可能だ、こういうことになりますね。かりに不可能だとしても、やる意思というものははっきりあるので、こういうことになると、このやる意思を明確にする手段というものはどういう方法でやられることになりますか。一体だれがやるのですか。
  16. 島田喜仁

    島田(喜)政府委員 ただいまお話事業団というのが、今度予算が通りまして、ここで法案の御審議を願っておるわけでございます。重ねて申しますが、公害対策の中で特に過密化している、言いかえれば公害が集中的に発生している地域をとにかくこの事業団でやっていこう、こういう考え方でございます。本年度は一年間の計画でごさいますが、この事事団が発足いたしますと、事業団といたしましては、いまお話計画をつくることに非常にむずかしい点などがございますけれども、やはり年次的にその計画をつくってまいるような方向で進むことが必要だと思います。その計画事業団がつくるわけでございますが、この事業団に対しましては、通産厚生両省が指導、監督をいたしまして、その計画の面につきましても指示してまいりたい、このように考えております。
  17. 肥田次郎

    肥田委員 事業団のいわゆる能動性というものはきわめてあいまいな性格だということにならざるを得ない。いわゆる監督機関であるところの厚生通産両省から強力な指示を与えて、その指示によって事業計画を立てる。そうしてその予算裏づけが行なわれる。ここで初めて事業団といものが動けるわけなんです。事業団そのものが自分の意思で積極的に動こうという面はきわめて少ないということは、今日までの質疑の中でもわかっておるので、したがって、そういうことだけでこの事業団というものに対してわれわれが期待をしていいのかどうかということに多分に疑問がある。その疑問を解明することについてもう少し明確な答えというものができませんか。たとえば、先ほどから社会党あるいは民社党から提案のあったような公害対策基本法、こういう公害対策基本法というようなものがあって、そして国とそれから地方関係が明確に位置づけられ、そして公害性格というものが明確にされて、そしてその明確な基準の上に立ってこれらに対する措置を講ずる、こうなると、もういやおうなしに事業団も動かなきゃならないし、公害発生のその源であるところの通産省においても、それから衛生管理の大元締めであるところの厚生省においても、これらに対して積極的な動きができる、こういうことになると思うのです。柱が一本欠けている。柱が一本欠けたままで公害対策を積極的にやろう、そのために事業団が幅広い大きな目標を立てた、こういうことになっておるので、柱が抜けたところの、大黒柱のないところの事業団というものができたところで、たいして期待はできないのじゃないか、こういうことを私は言っておるわけなんです。ですから、この事業団というものは、通産省が、あるいは厚生省か、どれだけの裏づけをして、そして事業団に対して、そのときに必要な、いわゆる事業計画を立てさせるか、この積極的な意思というものは、ただ監督という面だけでは不十分だ、そういうことを私は言っておるわけなんですが、ここで、大臣も時間の関係があるようですから、この点で大臣にお伺いしたいのですが、いま私が申し上げましたように、この事業団というものが積極的に活動するためには、どうしても強力な柱がなければいけない。その柱というものは、公害対策基本法を除いてないだろう。一つ基準を明確にして、そうして公害とはいかなるものか、この公害についてはいかなる措置を講じなきゃならないか、このことが規定づけられて、初めて通産省厚生省も積極的にこれらと取り組める。そして事業団はその全能力をあげて、公害防止措置施策を講じていく、こういうことになると思うのです。したがって、大臣にお伺いしたいのは、公害対策基本法というものを、これが必要であると考えて、これらについて、この法案が通過したあとですみやかに手をつけられる意思があるかないか、このことについてお伺いしておきたいと思います。
  18. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この公害問題が本日のように取り上げるようになるまでの過程水質保全法、あるいはばい煙規制法地盤沈下に対する工業用水法、こういうことで大体三十三年ごろから逐次問題に対処して、いま申し上げたような法案が出てきたと思うのです。私の観察では、この公害問題というものが、はっきり基本法をつくるまでの各種の要件というものが完全に備わってきておるかどうかという点については、私自身それほど自信がないのです。いま言うような、三十三年ごろから逐次問題になってきた、こういうようなことでありますので、現在公害対策推連絡会議というようなものを総理府に置きまして、そして水質汚濁大気汚染、あるいは地盤沈下、その他の問題を統括していくというところまできたわけですね。遠い将来を考えますならば、基本法のようなものが、これは必要性が起きてくるかと思いますが、いまの段階ではまだそこまでいっておらない。これはただいま社会党民社党のほうから基本法の要綱についての御説明どもございました。多少私どもがテンポがおそいような立場でございますが、私としては、まだそこまでいっておらないんじゃないか、こういうふうに見ておるのであります。
  19. 肥田次郎

    肥田委員 私は勘が悪いので、大臣、繰り返してお伺いしますが、産業公害というものは実は通産省がその源なんですね。ですから、産業公害というもの、いわゆる産業上に起こるところの弊害というものが国民衛生上に、あるいはその他非常に広い範囲にわたってどれだけの影響を与えておるかということについて、仕事のほうが忙しくてそのほうはまだ十分考えておらない、だから基本法などというものは、いまのお答えですと必要はないというふうな、こういうお考え方ですか。
  20. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 工場が、ある地域一つならば、そこから出るばい煙も、公害までいかないかもしれないが、しかし、それがだんだんたくさんになって公害になってきた、こういうような発生過程がございます。同時に、そういうふうになってきたときに、そういう害を与えてはいけないというので初めて技術開発も行なわれてくる。その技術開発のほうもいまの現状で満足すべきかどうかということを考えてみると、それは不十分だと私は思うのです。それから、いま言うような、どの地域にどれだけの工場ができて、そうしてこの範囲ばい煙が出ればそれが公害だ、こういうきめ方についてもなお条件が十分でないと思うのですね。一方において公害技術も、この公害がやかましくなったから検討されておる、こういう状況ですね。それからばい煙のほうはそれとして、水質汚濁にしても、こういう状況ならば、それじゃもう一つ水質汚濁しないような技術を取り入れていこうじゃないかということで、これもいま現に開発が行なわれている。こういうことでございますから、いまそういう過程で何かものさしをつくってしまうということには非常に困難性があると私は思うのです。  大体が、この公害対策というものは、いま申し上げたように、三十三年ごろからまず水質の問題が出た、ばい煙の問題が出た、こういうことですね。また、われわれ通産省の中でも公害技術に対しての開発をいま一生懸命にやっている。こういう過程だから、その過程においてものさしがっくり得るかどうかということを考えると、なかなかむずかしい。したがって、この公害問題は各省にまたがってのいろいろな問題があるから、それは連絡協議会でひとつ見ていこう、しかし、基本法はいつつくるのか、こうなっていくと、いまの段階ではまだちょっと早いのではないか、こういう解釈なんです。
  21. 中井徳次郎

    ○中井委員 いま櫻内さんからの御答弁を伺っておりますと、一応はごもっとものようなことでもあるのですが、しかし、公害基本は、はっきり言えば、厚生省立場からいえば大いに積極的に進めていきたいし、通産立場からいえば、要するに科学技術とそれからバランスとの関係があって、特にバランスの関係でぐずぐずしているのじゃないかというふうな一般的な評価をしたくなるのです。そういうことについて、ひとつもっと深く考えていただけぬものであろうか。公害を出しているからバランスがとれるのではなくて、公害をなくしたほうがバランスがとれる場合もこのごろ出てきておる。科学技術との関係、そういうものについてもっと積極的な姿勢が望ましいのではないかと私は思うのです。どうも先ほどからの御答弁を何っておりますと、非常にむずかしいとか、あるいは研究過程であるとか、こう言いますが、これはやるかやらぬかの腹がまえが非常に大きな意味を持つのであります。一つ産業でも、ある地域においては、私はきょうは具体的に名ざしはいたしませんけれども、ガソリンの精製過程で、ちゃんと硫酸を取ってバランスのとれている会社がある、これは初めからそういう設備がある。ところが一方では、大きな企業ですけれども、そういう設備がない。いまからやるのはたいへんだからほうってある。こういうふうな関係がどうもあるように私は思うのです。ですから、バランスがとれないからほうっておくのではなくして、やはりそこに企業の怠慢というものが私はあると思うのです。ですから、基準が非常にむずかしいということはわかりますが、むずかしい、むずかしいでほうっておいては、いつまでたっても片がつかない。そこでその追い込みとして、私ども基本法というのを、これは大きな網であります、大きな網でありますから、いろいろ欠点もあろうと思います。あろうと思いますけれども、なおかつそれを出しておく必要があるのじゃないかということなのです。この点についての、私は大臣の率直な見解を伺っておきたい。これが一つ。  もう一つは、ひとつどこかでやってごらんなさい。どこかで政治としてやる。たとえば隅田川のあの汚濁をきれいにする、国がひとつ取り上げて、総理の命令で、あなたやら、厚生大臣、建設大臣等が音頭をとってやる、何億かかってもやってみる、私はできると思うのです。そういうことから片づけていく。一方は大きな網をかけて、一方は具体的にやっていく、目にものを見せる。もうその時期にきておる、私どもはこう思うのです。この二つをまずお尋ねしておきます。  それからもう一つは、何回もお尋ねするのはなんですからこれでやめるのですが、今度の公害防止事業団、これのことしの計画によりますと、何か少し工場を移転するとか汚水を少しよくするとかそういうことですが、たとえば尼崎とかあるいは川崎とか、あるいは東京でも江東地区とか、あるいは北九州のほう、悪貨は良貨を駆逐するといいますか、非常にいいところであったが大きな工場がきて居すわってしまった。だからむしろ住宅を変える以外に変えようがない。工場を変えようと思えば、何十億、何百億かかる、いわゆる住宅移転ですな。工場移転じゃなくて住宅移転だ。そういうことをこの公団は積極的に推進するのかどうか、将来においてするであろうと思いますが、ことしあたりはそういうことを考えておるのかどうか。小さい工場移転というようなこともありましょうけれども、そういうことです。そうしてそういう場合に、そういうことについて企業がどれだけ責任を持つのか。これまで行なわれておりますことは、問題が起こりますと地方自治体、市町村長や知事に陳情をする、それでいかなければ、今度は国にいく、わあわあ、わあわあ陳情しておるだけでありまして、肝心の原因を起こした大企業なんというものがなかなか言を左右にして動かない、こういうことについてやはり一定の政府としての基本的な態度をきめられる時期じゃないのか。政府が勧奨をして、そして企業にもっと積極的な協力をさせる、かなり積極的にそういうものについてやるというふうな考えを、もう出ておられると思うのですが、出ておられたら具体案を付いたいし、出てなければ大いにやってもらいたい、こう思います。  この三つの問題についてひとつ国務大臣として、佐藤さんのかわりのようなつもりで櫻内さんから御回答を賜わりたい、こう思います。
  22. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私、就任以来公害問題を、非常に重要性があるということで強く推進してまいったつもりなんです。その結果が今回の公害防止事業団というようなものに、不十分ながらもここまでまいった、こう思います。また、公害技術開発についても、本年度の予算に相当盛り込んでもらったようなわけでございまして、お話のように、公害についての一つの網をかけて、そして公害防止のためにつとめるということは当然だと思います。私もそういう心がけでいくのでありますが、ただ先ほども申しましたように、公害防止技術というものがまだほんの初歩だと思うのです。この大気を汚染するとか、水を汚濁するとかいうけれども、その水を汚濁する、大気を汚染するというものの中には、これを回収すれば有効な資源があると思うのです。しかしそれが採算的にうまくいくかいかないかというようなこともあろうかと思います。そういう点からいたしまして、皆さん方は、いま大きな網の一つとして基本法を早くつくれと言うが、私は、まだそれには基礎的な条件というものが十分でないのじゃないか、こういうことを申し上げておるわけでございます。  それから、隅田川のようなものをひとつモデルに取り上げて、積極的にやるがよかろう、これはもう御趣旨全く同感でございます。現在隅田川に対する浄化施策というものについては、これは各省にまたがっておりますけれども、相当な対策になっておると私は思います。たとえば隅田川関係公共下水道事業というものの計画としては、これが二百五十二億円、それから河川浄化事業としての利根の導水、河底浚渫等、これが四十一億六千万円、開銀、中小企業近代化資金の融資等についても十億円見当というふうなことで、政府及び地方公共団体の四十年度に予定されておる隅田川の浄化対策はおおむね三百億円ぐらいになっておるのであります。これは私のまことに概算でございますけれども、大体そんな見当になっておると思いますが、今後御趣旨を体しまして、隅田川の浄化というものを、これをモデルに積極的にやるということについては全く同感でございます。  それから、公害防止事業団の今後の施策についてのいろいろ御注文があったわけでございますが、公害防止事業団がこの法律の示す目的に沿うて、今後各種施策を講じようということについては、御説明するまでもないと思うのであります。本年度不十分であるということは、とりあえず公害が問題となっておる地域についてまず施策をやろうというようなことで、隅田川あるいは四日市市等を中心にして共同処理施設や、移転用地の造成、共同福利施設のような建設事業、あるいは融資事業としての共同処理施設工場、アパート、居住、企業の防除施設などを考えたわけでございます。今後におきましては、いま中井委員のお示しになったようなことも十分勘案しながら、この公害防止事業団の事業内容を拡充せしめていきたいと思います。
  23. 中井徳次郎

    ○中井委員 承りましたが、そこで、隅田川はたいへん経費をかけてやるというのだが、いまの見通しでは、いつごろまでにきれいになるのですか。
  24. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私、いつごろまでということは十分承知いたしませんから、担当のほうから答えさせます。
  25. 舘林宜夫

    舘林政府委員 ただいま通産大臣からお答え申し上げましたように、隅田川の浄化は総合施策でいま行なわれているわけでございまして、この事業団企業側の排水を処理する、他面、建設者の工事で利根川から水を導入いたしまして、隅田川へ大量きれいな水を流すというようなこと、並びに厚生省が隅田川の周辺の下水道を完備するという、それらの総合施策によりましてきれいにしようとしているわけでございますが、その目標年度は昭和四十八年度でございます。
  26. 中井徳次郎

    ○中井委員 これで終わりますが、いま隅田川の関係を伺っただけでも、下水道をやるとか、建設省が水をよけい流すとか、公団が二十億のうちの何億使うか知らぬが、やるとかいっています。私の聞きましたところによると、これは一つの例ですが、何でも米俵から馬ふん紙をつくる工場が隅田川のごく近所に二十軒ばかりある。米俵は一千万の東京都の住民の食糧の包装物でありますが、これはたいへん毒物を流すということが、もうずいぶん前からわかっておる。わかっておるが、それ一つができない、何ともできない、というふうなことを、私は実は聞いておるのであります。でございますから、原因がわかっておるものは、非常に多いんじゃないか。多いのになぜそれをやらないか。だから、なるべくおそいほうが業者にとってはいいんですね。それをやはり納得さして、公害を排除さすようにやるのが私は行政だと思う。わかり切ったことを何年もほうっておくというふうなことは、どうにも理解ができません。そこで四十八年というと、あとまだ八年かかるので、そんなことでやると、その間にまた汚物を流すような工場ができてくるとかなんとかいうことで、いわゆる百年河清を待つがごとし、いまのお話では十年河清を待つのだけれども、これは何省がなにする、かに省がなにするというようなことじゃなくて、変なあれですけれども、後藤新平さんのような人が出まして、大いに科学的技術を総合的にやる、新渡戸さんなんかを使ってやるというような、そういう政治が行なわれぬことにはこれはあかんぞなと思う。これは同僚の委員諸君も御賛同だと思う。そうすれば案外金はかからぬ。そこで何十億、ここで何十億という大げさなことを言って、何かもてあそんでいるような感じさえいたします。この点は特に強く――四十八年になるというふうなことじゃなくて、少なくとも一、二年の間にやるぐらいの馬力でひとつやっていただきたい。モデルケースが四十八年では全然だめです。その時分には私どもは死んでしまう。イギリスにおきましては、テームズ川をきれいにしようじゃないかというので、去年あたりから大いにやっておるということであります。思い切って二、三年でやってもらうように強く私は希望いたしまして、質問を終わります。
  27. 肥田次郎

    肥田委員 通産大臣が出かけられたので、通産大臣がおられないときに通産大臣考え方に触れなければならぬので、これはあとであなたのほうからよく言っておいてください。  私も、通産大臣の言われたことはきわめて短かったから、通産大臣の気持ちがそういうことじゃないと思うのですが、やはり本質的なものの考え方というものが非常に隔たりがあるということは感じました。それはどういうことかというと、たとえば、いま現実に通産大臣はものを考えておられるから、これらに対して規制を加えると、いわゆる生産面で大きな障害ができてきて、生産面に影響を与えるだろう、こういうところに気を使われておるだろうということはよくわかる。ところが公害対策を位置づけることについては、産業生産面の技術上の問題と、それから公害というものの性格、これは別に考えてもらわなければいけないと思うのです。これを一緒にすると、責任上どうもそれには意思を明らかにしがたい、こういうことになる。けれども産業生産上から起こってくるところの公害はこれとこれとこれは認めなければならぬということにならなければ、公害対策というものはできないと思うのです。ですから、その点についてあなたのほうではどういうふうにお考えになっておるか、これは大切なことですからお伺いしておきたいと思います。
  28. 島田喜仁

    島田(喜)政府委員 大臣の先ほど答弁された趣旨は、こういうふうに私は推定をいたします。  御承知のように、日本経済が発展いたし、産業が発展してまいりますにしたがいまして、技術の進歩とともに、公害問題というものが産業面から見ると自然に起こってくると思います。公害が起こってくるというよりも、公害発生原因というのが出てまいると思います。産業が発展しまして日本経済が発展をすると同時に、生活環境がよくなるためには、そこに起こってくる公害発生源技術的に除くことが私は基本的な対策だろうと思います。それが解決すれば産業も発展するし、生活環境に対して、社会環境に対して公害が出てこないということになると私は思います。そういう意味では何としてもまず技術を――たとえば企業から汚水なりあるいは煙害なりの公害が出てこないような対策、まずそれをそこでとめることが第一だと思う。もしこれが可能であるとすれば、産業の発展と社会環境の改善とが並立するわけでございます。ところがその技術が、遺憾ながら、努力はいたしておりますけれども、その公害発生防止し、同時に社会環境に影響を与えない程度の可能な設備というものが、経済的にもまだ発明されておらないというところに私は問題があろうかと思います。そういう問題は技術的に確かに推進がおくれておりますから、これはいろんな方法で、国も民間も含めて推進をしなければならぬ、これが第一だと思います。  同時に、今度は既成工業地帯あるいは過密地帯におきまして、すでに公害発生するような状況に実はなっておるわけですから、これはとにかく、企業はもちろんのこと、公共団体も国もあげてその公害発生の集団的に起こっておる状況を芟除しなければならぬ、こういうふうに思うわけです。したがいまして、現在起こっておる責任の問題は相当広い範囲から責任を負って、企業はもちろんでございますけれども公共団体も国もこの公害防止するためにあらゆる努力を払うという方向でいくべきであって、その点では総合的に、基本法という抽象的な議論という問題もこれはもちろん必要でございましょうし、前向きの姿勢としての考え方を織り込むということも必要でございましょうけれども、すでに公害問題につきましては、とりあえずその公害発生防止するための法律も、水の問題あるいは煙害の問題についてすでにできておるわけです。できておりますからそれをできるだけ早目に実施をする。同時にいま申し上げました技術開発も要するに前向きにやっていく。それから同時に過密の、すでに公害が集中的に発生をしている問題については、いまお話しの事業団はまだ規模も考え方予算も足りないとおっしゃるわけでございますが、その点は今後前向きに過密状況を具体的に取り除く実行舞台として今後進めてまいりたい、こういうふうに考えます。
  29. 肥田次郎

    肥田委員 きょうは質問を簡単に早く打ち切ろうと思っていたのですが、こうなってくるとなかなかそうはいかないのです。島田さん、私はあなたの言われることはわかるのですよ。わかるけれども、肝心のポイントが違っているんですよ。私らの言っているのは、産業公害というものはやはりこれを位置づけして、ちゃんと公害とはいかなるものぞということを位置づけして、それから対策を講ずるということにしなければいけないだろう、こういうものの考え方をしているのです。ですから、その責任をどららに持たすかということは、これは議論したらいいじゃないですか。企業に持たすのか国が持つのかあるいはどこに持たすのかということはこれから議論したらいいことなんです。けれども、今日産業公害というものは、これはあなた言われるような、先ほど大臣がまだそこを手をつけられないというような、おくれておるというような考え方なら私はまだいいと思う。けれども、いまあなたの言われるような考え方なら、これは本質的に違うのですよ。あなたの言われることは、非常にうまくことば巧みに長い時間をかけてぐるっと半円を描いたくらい言われたけれども、この中にあるあなたの考え方を集約すると、産業上起きてくる公害と称するものの、名前はかりに別にしておいて、産業上起きてくるものは、少々の害はあるけれども、これは当然のことなんだ、これを解決するのは技術上解決することなんだ、そして技術上まだそこまでいっていないから本来はどうこういうことは要らないんだ、こういう考え方があなたの考え方の中にある。われわれの言っているのはそうじゃない。産業上生まれてくるところのいわゆる必要悪というものはやむを得ない。生産等に伴って出てくる必要悪、どうしても出てくる害というものはやむを得ないと思っている。けれども、その害毒というものを妥当なものだとするような考え方を持ってもらっては困る。害はあくまで害として、この措置は一体生産者がやるのか国にやってもらうのか、この点は議論をしたらよろしい。けれども、出てくる害については害として認める。これは技術がまだそこまでいかないから、あるいはそれを別なものに転換をすれば――まだ採算がとれない。そういういろいろな技術面の困難があるから産業公害についてはまだ十分手をつけられない、こういう考え方は本質的に誤っておるし、これはわれわれの考えと相反する。この点ははっきりしてもらいたい。
  30. 島田喜仁

    島田(喜)政府委員 ちょっと私のことばの足りなかった点がありましたので訂正をいたしますが、私の申し上げましたのは、一例を申しますとだんだん現状転換あるいは技術の進歩とともに――具体的に申しますと、かりに重油を使ってくるようになりますと、重油をたけば亜硫酸ガスが出てくるという技術的な問題を私は申し上げたわけでございます。したがって、重油を使わないということであれば産業が進歩しない。重油を使う場合に出てくる公害問題はいかぬからこれは防がなければなりません。この考え方は全く先生と変わっておりません。ただそのときに亜硫酸ガスを煙の中から除く技術、もしくはもともと油の中から除くことができれば公害というものはなくなるということを申し上げたわけでございまして、公害防止しなければならないことはこれは当然でございまして、その責任はまず企業にあることは当然だと思います。ただ問題は、今度中小企業になりますと、中小企業は過密地帯におきまして、とにかくすでにそういうところで生産を維持していかなければならぬ場合に企業責任を負わせるといいましても、その企業には従業員もいるし、企業も成り立たないということになってはいけないから、やはり国なりその他が援助しながら今度の事業団のような対策を講じてまいりたい。したがいまして公害が発止することが当然であるとは毛頭思っておりません。公害というものが社会環境を悪くすることを未然に防ぐために技術問題につきまして申し上げたわけでございます。
  31. 肥田次郎

    肥田委員 くどいようですからあまり言いませんけれども、ある生産に携わっている人に尋ねたとします。たとえばふろ屋のおやじさんに、あなたのところの煙突からまつ異な煙が出ているじゃないか、こういう話をすると、まことにすみません、この煙でさぞ近所に迷惑をかけていることでしょう、ふろ屋のおやじさんはこう言いますよ。煙突から黄色の煙をもくもくと出している工場で働いている工員の諸君は、心から、ほんとうに空気をきたなくして、それがためにこの周囲に住んでいる人がつらい目をしているのだ、みなこう言っているのですよ。この気持ちがあればいいのですよ。この気持ちが必要なのです。道を歩いてごみを捨てる、ごみを捨ててはいけないというこの気持ちが必要なのですよ。ですからこの気持ちが必要だということがあなたのほうではっきりわかっていなければ、この公害対策というものは生まれてきませんよ。あとはいつでもそろばん勘定になってしまう、こういうことだろうと思うのです。考え方に対して変わりはないようにあなたは言われるけれども、もののとり方の時点がやはり違うと思う。湯の中に入っていて水の中に入ったら冷たいだろうという気持ち、これはわかるけれども、湯の中に入っておって水の中の冷たさというものはほんとうはわからないものですよ。あなたのことばを聞いておるとそれほどの隔たりがあると思います。私が変に邪推をして聞くのではなしにそういうように受けとれますから、その点ははっきり区別してものごとを言ってもらなければ、あなたのことばを聞くとそのまま受け継いだいわゆる直接生産面に携わっている人々がそういうふうにものをとったら困りますから、私はこの点念を押しておきたいと思います。これは大切なことです、ほんとうに基本の問題なのです。  先般も、二十四日の朝日新聞にこういうことが出ていました。たしか板橋の中学校の生徒ですが、二、三十名がふらふらになって出てきた。これは私あら読みした記憶だけですから記事とは違うかもわかりません。ふらふらになって中毒症状を起こした。たいへんだというので東京都からも衛生官が出ていってそのあたりの空気の調査をやったところが、今度はそのあくる日の新聞にこういうふうに書いてあるのです。その原因を調べたところが、そうじゃなくて、周囲でゴムを燃やして、ゴムから出てくる有害ガスが授業中の生徒に対して影響してそして中毒症状を起こしてふらふらになった、どうもそうらしい。ところが、ゴムが燃えて出てきたガスと一般の空気、ゴムならだれでもわかりますよ。あの特別なにおいというものはだれでもわかるけれども、それがゴムのにおいだとわからなかったほど、それほどその周囲の大気というものは汚染されている。これはたいへんなことだ。こういう書き方を新聞はしておるのです。だからわれわれがこの中に住んでしまっておるからそれほど気がつかないように思うけれども、実際われわれが住んでおる周囲の大気の汚染というものは、これはたいへんなものだということになる。これなんかも本質的に大気汚染というものはどこからきておるのかという、これが明確にされておらないから、こういうふうにものごとがあいまいになり、そして人間はその環境になれやすいから、苦しければ苦しい環境の中でそのままでしんぼうしておる、こういうことになっておると思うのです。ですから、私は、繰り返してお伺いしたいのは、いわゆる産業公害というものに対して、公害とはいかなるものかという、このことを規定するところの基本法――基本法ということばがあなたのほうでどうも耳ざわりなら、そうしたものに対する公害基本的な位置づけ、こういうものをやられなければ、実際に、取り締まる対象に困るでしょう、あなた方のほうで具体的にこういう施設をしろ、こういう場合にでも困るでしょう。どうもこれはぐあい悪いらしいぞ、近所から苦情がくるから何とかしろ、この程度のことにしかならない。国が大法をつくって、国が法律をつくり、この法律に基づいてこれらに対して対策を講ずる。もちろん国も講じなければならぬ、こういうことにならなければいけないと思うのです。これについては徳永次官からでもこれに対する考え方――あなたのほうは当然衛生管理立場でそうあるべきだろうと思うのですが、双方からひとつはっきりお考え方を伺っておきたいと思います。
  32. 徳永正利

    ○徳永政府委員 これまた基本法問題につきましては、総理が参議院の本会議で明確に答えておりますが、それを一応簡単でございますから読みますと、こういうことを言っております。「公害対策について基本法を設けたらどうか、こういうお話でございますが、ただいまようやく公害対策と取り組もうといたしたばかりでございまして、公害対策推進連絡会議現状を十分把握し、将来のあり方等を見きわめる、そういう際に、初めて、基本法が必要なりやいなや、かような段階になるものだと思います。もちろんただいまから研究するつもりではございますけれども、したがいまして、今日基本法をつくるとかつくらないとか、かように申すことは、やや早いのじゃないか、かように私は思います。」と言っておられますが、これを私は翻訳いたしますと、新産業都市あるいは工特地域などの基本計画設定にあたりましては公害防止の見地から十分織り込んでまいりますし、またその線で地方自治体と強力に指導してまいっております。また既存の公害地域につきましても地方自治体を指導して、また、年次計画をつくらせて公害防止の推進をはかってまいっておることも御承知のとおりでございます。公害防止関係のいわゆる既存の法律がそういうような実施と申しますか、推進力になり、規制をいたしておるのでございます。しかし、今日におきましては、公害に対する基本的な諸問題としてなお検討すべき点あるいは解明が不十分な段階にあることも御指摘のとおりでございまして、これらの根本問題の解明につきましては、早急に努力いたしまして、必要に応じて法制的な措置を講じてまいることも当然検討してまいる必要がある、かように考えております。
  33. 島田喜仁

    島田(喜)政府委員 ただいま政務次官に言われたように、そういう基本的な問題については早急に検討してまいりたいと思います。
  34. 肥田次郎

    肥田委員 それでは、この法案に対してまだまだ聞きただしておきたいことがたくさんあるのですが、この産業公害という問題については、国民あげて現在大きな問題としておるところでありまするから、いま、徳永さんや島田さんからああいう答弁がありましたので、これらに将来の大きな期待をかけて私の質問は終わりたいと思います。
  35. 保科善四郎

    保科委員長 他に質疑はございませんか。なければ、これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  36. 保科善四郎

    保科委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  37. 保科善四郎

    保科委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     ―――――――――――――
  38. 保科善四郎

    保科委員長 次に、本案に対し、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表して丹羽兵助君外八名から附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨説明を聴取することといたします。丹羽兵助君
  39. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表して、公害防止事業団法案に対する附帯決議を付すべしとの動議を提出します。  まず、案文を朗読いたします。    公害防止事業団法案に対する附帯決議   政府は、本法施行にあたつて、次の事項について措置を講ずべきである。  一、公害防止事業団による公害防止のための事業を強化するため、その事業費を大巾に増額するとともに、運用条件等の改善に努めること。  二、公害防止事業団による事業の実効性を確保するため、緊急にその改善が要請されている産業公害が著しい地域について、重点的に業務を実施すること。  三、産業公害対策の基礎となる産業公害防止技術の研究開発を強力に推進すること。  四、新産業都市、工業整備特別地域基本計画実施にあたつては、公害防止の観点から各般の施策を講ずること。  五、公害基本に関する諸問題について、すみやかに所要の法的措置等を講ずるよう検討すること。 以上でございまするが、その動議の趣旨につきましては、本法案についての審議のうちに十分尽くされておりますので省略をさせていただきたいと思います。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いして、趣旨説明にかえる次第であります。(拍手)
  40. 保科善四郎

    保科委員長 以上で説明は終わりました。  採決いたします。  本動議を可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 保科善四郎

    保科委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に附帯決議を付するに決しました。  この際、徳永厚生政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。徳永厚生政務次官
  42. 徳永正利

    ○徳永政府委員 附帯決議の御趣旨を十分検討いたしまして、御趣旨に沿うよう努力してまいります。     ―――――――――――――
  43. 保科善四郎

    保科委員長 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 保科善四郎

    保科委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  45. 保科善四郎

    保科委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十八分散会