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1965-04-14 第48回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月十四日(水曜日)    午後一時二十八分開議  出席委員    委員長 保科善四郎君    理事 天野 公義君 理事 奥野 誠亮君    理事 丹羽 兵助君 理事 南  好雄君    理事 重盛 寿治君 理事 二宮 武夫君    理事 日野 吉夫君       川野 芳滿君    熊谷 義雄君       小山 省二君    野原 正勝君       村山 達雄君    和爾俊二郎君       肥田 次郎君    細谷 治嘉君       堀  昌雄君    門司  亮君  出席国務大臣         通商産業大臣  櫻内 義雄君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁水         資源局長)   鈴木 喜治君         厚生政務次官  徳永 正利君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         通商産業政務次         官       岡崎 英城君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (企業局産業立         地部長)    馬郡  巌君         工業技術院長  馬場 有政君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      竹内 道雄君         厚 生 技 官         (環境衛生局公         害課長)    橋本 道夫君         通商産業事務官         (企業局産業立         地部産業公害課         長)      平松 守彦君         建 設 技 官         (住宅局建築指         導課長)    三宅 俊治君         自治事務官         (大臣官房参事         官)      山本壮一郎君         日本開発銀行理         事       大畠 寛一君     ――――――――――――― 四月十二日  公害防止対策強化に関する陳情書  (第八九号)  公害防止総合対策確立に関する陳情書  (第九〇号)  公害対策確立及び研究所設置に関する陳情書  (第九一号)  産業公害防止対策推進体制整備に関する陳情  書  (第一五六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害防止事業団法案内閣提出第九七号)      ――――◇―――――
  2. 保科善四郎

    保科委員長 これより会議を開きます。  公害防止事業団法案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。細谷治嘉君。
  3. 細谷治嘉

    細谷委員 せんだっての委員会におきまして肥田委員と私からお願いいたした資料をただいまいただいたわけでありますけれども、この内容をひとつ簡単に御説明いただきたいと思います。
  4. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 細谷委員からお尋ねのございました公害防止事業団年次計画でございますが、昭和四十年度におきます予算で相定いたしております事業計画並びにそれらの着手する事業の総事業費は、お配り申し上げました資料でお示しするとおりでございます。  この資料共同公害防止施設、これは隅田川、大阪、四日市等に対して二年計画で着工するということを想定して設定いたしたものでございます。次の共同利用建物は、隅田川地帯を想定いたしております。  次の地方移転用工場敷地造成、これは同じく隅田川地帯でございます。  共同福利施設は、この四十年度の計画では千葉を想定いたしております。  なお融資の分につきましては、四十一年度以降におきまして、開銀中小企業金融公庫等の業務の調整をはかりまして、融資対象となる施設を政令で定めることとなりますので、四十一年度以降は未定であります。  なおこの事業団は、企業集中地域共同公害防止施設造成、譲渡に特に重点を置くこととなっております。新産、工特等開発地域につきましては、今年度三カ所の事前調査厚生通産両名の共同で行なうことになっておりますので、その結果に基づきまして、事業団事業計画として適切なものがあれば計画的に実施していきたいと考えております。今後企業集中地域公等対策は、資金を効果的に運用して計画的に解決していくことが必要であると考えておりますので、厚生通産両省の協力はもちろん、特に地方自治体と密接に連絡をとりまして、できるだけ早く地域別公害防止対策計画を策定し、その中におきます事業団事業計画を適切に位置づけてまいる所存でございます。なお事業団が発足いたしましたあとでは、その事業実施計画事業団自身が作成いたしまして、厚生通産大臣の認可を受けることになりますので、具体的な将来の年次計画の策定につきましても、国や地方公共団体公害防止施策に基づいて積極的にみずから事業実施計画を作成することになるのは当然のことと考えております。
  5. 細谷治嘉

    細谷委員 ただいま資料をいただいて、その内容について御説明いただいたのでありますけれども、たいへん粗雑な案で、私の要望いたしました資料とはほど遠いものがございます。私が要望いたしましたのは、この政府から出ております公害対策について一日も早く年次計画を立てて解決をしなければ、新産都市工業整備特別地域における工業開発がきわめて困難な状態にあるという認識の上に立って、四十年度の予算では百億円というものを要求したわけでございますが、それならばそれなりに、きちんとしたものでないにいたしましても、一応年次計画というものは当然あってしかるべきじゃないか、その内容資料としていただきたい、こういうことであったのでありますけれども、これはただ単に総事業費幾らだ、何年計画でやるのだ、そして四一年度の事業はこれだけだ、こういうものでありまして、まことに残念に思いますが、いただいた資料もとにしまして、若干問題点についてさらに突き進んだ質問をしたいと思うのです。  厚生省のほうにお尋ねいたしたいのでありますが、この資料の三十一ページにあるわけでありますが、企業設備投資四兆円——きょうの新聞等を見ますと、四十年度は大体五兆円程度になるだろうということが書かれてあるのであります。その八〇%が生産直結施設、六〇%が公害関連企業である。そのうちの八〇%が企業集中地域となっておるから、諸外国の例あるいは必要最低限度のものとして、それに対して三%ないし五%を公害のための設備投資に使おうとすると、五百億円ないし八百億円だ。一方、積み上げ計算推計をしてみると、約六百億円ぐらいになるのだ、こういうふうに書かれております。ところが、現実には六十億か百億円程度という少額にとどまっておるのである。こういうことでございますが、まずお尋ねいたしたい点は、積み上げ計算による推計内容、六百億円として出たわけでありますから、その積み上げられた内容をひとつ教えていただきたいと思います。
  6. 橋本道夫

    橋本説明員 いまおっしゃいました数字についてお答えいたします。  私がそれを書きましたのは、昨年の予算編成の手前の段階で、公害防止事業団構想をどうして打ち出すかというときに出しました意見でございます。そういう点におきまして、公害防止事業団構想厚生省が最初発想いたしましたときには、公害対策を進めるにはどうしても資金の問題が非常に必要である。資金計画が策定される形の方向に公害対策を持っていかなくてはならないとうことを考えまして、既存の資料でいろいろ検討いたしたわけでございます。  こまかい数字につきましてはどこから出たものかということを申されますと、これは通産省産業資金部会が一般に政府刊行物として刊行されております資科を基本にいたしております。その中で千七、八百の大手の業種設備投資事業別に出しておられるのがございまして、もちろんこの問題は通産省のほうが専門でございますから、当然通産省のほうでおやりになっていることは存じますが、厚生省のほうとしましては、公害防止対策を前進させる糸口をつくるということが厚生省役割りではあるまいかということで、そこにごさいました業種の中で特に公害関連の深い業種、たとえば電力とかガスとか非鉄金属、セメント、石油精製、そういう業種を抜きまして、それらの業種設備投資数字等を荒く計算して割り出してきたのが、先生先ほどお読みになりました数字でございます。  そういう点でございまして、この問題は公害防止事業団発想いたしますときに、大まかなワク組みとして検討いたしたわけでございます。八〇%、六〇%、八〇%といいますのはきわめて荒い見当でございますが、通産省のほうで出しております資料から見ますと、三十九年度で四・三兆の設備投資というのがございまして、そのうち通産省が調べておられます企業設備投資のシェアは三七%というような数字が公刊された数字として出ております。そういうものから判り出していきまして、厚生省糸口をつくるという意味において出した資料だという点を御了解をお願いしたいと思います。  そういうわけでございまして、このワク組みを検討するというような点におきましては、政府刊行物で刊行された資料もとにしまして、公害関連企業生産関係設備投資で、しかも企業集中地域という数字からはじき出して、ほぼこれくらいではなかろうかという見当をつけてきたわけでございます。実際の額はまた別でございましょう。  その次の積み上げ計算というものについてはどういうことを考えたかという御質問でございますが、こまかな数字は一応ごかんべん願うことにいたしまして、私どものほうにはばい煙発生施設型別種類別施設数指定地域別にあがっております。この中で除害施設を必要とするものの割合というのは、ボイラーの数が非常に多うございますから実際上は少のうございます。そういう推定値等を一応私どもが使いまして、ばい煙発生施設につきましては、そのような推定値をかけていくと幾らぐらいかかろうかということでいろいろ計算いたしましたときに、ばい煙指定地域については、そのような私どもの仮説を立てたものでやれば二百億か三百億ではないかというような見当を立てたのがその数字でございます、また工場排水のほうにおきましては、工場排水の量が全体でどれくらいあるかということで、一トン当たりの単位処理に要する費用というのを、従来の実績がございますので、それをかけ合わせまして積算を出してきた数字が、先生のいまお読みになった数字でございます。これは問題の解決糸口をつくるという意味において、厚生省発想をする段階で用いたものでございまして、実施する段階におきましては、もちろんこれは通産省の側で十分この問題を検討されることと私ども存じておりますし、それによって実施計画がどんどん手直しをされていくものと思っております。
  7. 細谷治嘉

    細谷委員 これから具体的に調査もし、また、開発されておらない技術を開発していくわけでございますから、計画手直し年次計画の作成ということは必然的に起こってくるでしょう。起こってまいりましょうけれども、今日の段階において把握し得る数字として、四兆円の設備投資があった場合にはこういうようなわりあいをもっていくので、最終的には六百億円程度のものを継ぎ足さぬと外国並み公害防除施設はできない、こういうものが基礎になって四十年度は百億円というものをやっていきたい、こういうことだと思うのです。私が非常に不思議に思いますのは、その論文と、もう一つ厚生省から出た論文とがあるわけです。それを見ますと、設備投資は三兆円だ。その五%とすると千五百億円前後だ。ところが通産省資料各種資料からは、現在企業公害防除施設に費やしている金額を荒く推定してみると、五十億か百億円だ。ですから、大体現在公害投資しておるものはほぼ結論は一致します。その前提が三兆円と四兆円という違いで、それから必要なものは千五百億円前後だ、ところが別の論文では五百億円か八百億円だ、こういう数字狂いが出ております。この狂いがどこから出たかということは、私はここでは追及いたしません。私が冒頭で述べた、こういう設備投資の中で公害関連する企業はどのくらいのウェートになっておるのか、その公害関連する企業のうち、いわゆる企業集中地域に対してどのくらいのウエートになっておるかということをある程度推算いたしまして、五百億ないし八百億円が出たのですから、これが私はロジカルに出たものだと考えておる。そういたしますと、私が聞きたいのは、これがやはり今日把握できる公害関係に対する基礎だと思うのです。これに基づいて予算の要求をなさったんじゃないかと思うのです。この五百億、八百億というのは、計算をしていくとでてきます。ところが積み上げ計算によって推計したものは六百億ですから、どういう形でこうなったんだという、その積み上げられた計算内容を、年次計画を示されませんから、ぜひ私どもとしては知って、公害対策出発点として、今日の段階における基礎数字を把握しておきたい、こういうところから申し上げておるわけです。しかし、いまのお答えではたいへん抽象的でありまして、まことに遺憾であります。  それでは、次にお尋ねいたしたい点は、この六百億円という積み上げられた数字、あるいは五百億円ないし八百億円と推定された数字、それから新聞に出ております厚生省考えである、数年内には三百億円以上の資金が必要になるんではないか、今年度は二十億と、それから予算に組まれた数字通産省五億何がし、厚生省一億何千万くらいでありますから二十七、八億、こういうところでしょう。その六百億円というものと、二十億なり、いわゆる三百億円程度数年後に必要だろうというものの関係はどういう関係になっておるか、これをひとつお尋ねしたいと思います。
  8. 橋本道夫

    橋本説明員 私のしろうと的に書きましたことから非常に問題を引き起こしまして申しわけございません。いまおっしゃいました、発想していく場合にどういう考え方をいたしたかということだけを申し上げておきたいと思います。  いま三百億という数字を申しておりましたのは、公害全体の設備投資の中で、大企業のものといいますと、おそらく三分の一くらいではないだろうかということが一つしろうと頭にあったわけでございます。これは、先ほど申し上げましたような通産省産業資金部会資料から推定いたしましても、その辺の数字が一応出ておるということでございます。もう一つは、非常に大きな企業まで全部公害防止事業団がやるかどうかという点に、政府財投で見るかという点に問題があろうということを私も考えておったわけでございます。次に、開銀中小企業全融公庫公害防止事業団、これは財投関係でございますが、このうちで開銀中小企業金融公庫めんどうを見ますと、一部は自己負担金でございますので、おそらく三分の一程度ワク組みではないだろうか。その残りの三分の一程度というような考え方で、それがさらに縮まっていま申し上げましたような数字となりましたので、非常にいろいろの混乱を私の書いたものによって起こしましたことに対しましておわび申し上げます。
  9. 細谷治嘉

    細谷委員 わびるとかわびないという問題ではなくて、私が聞きたいのは、前提あるいは出発点をはっきりしたい。いまあなたのおことばで、この論文は粗雑だというようなことばを使ったのですが、これは私は相当精魂を打ち込んだ論文だと思っているのですよ。私はあとでまた言及しますけれども、これを評価しているのです。評価している中において、年次計画というのは示されませんので、こういう発想根拠になっておるわけですから、この発想についてその内容をひとつつぶさにお聞きしておくことが大切だ、こういうふうに思ってお聞きしておるわけであって、私もあなた同様に、資金的にも技術的にも困難なこの公害問題を何としてでも解決したいという熱意から質問をしておるのであって、ここで何か適当な答弁で時間を過して私の責めを果たせばいいのだ、そんな気持ちでこの問題を御質問しているわけではないのですよ。局長さん、どうも具体的にお答えがないのですが、おそらく知っているのではないかと思うのです。この内容をひとつあなたのところで回答していただけませんか。
  10. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 お説のように、この事業団を発足するにあたりまして、この事業団資金計画の規模がどの程度のものになるかということは、当然このような事業団を発足するにあたっての当初の計画の中でおおよそのめどをつけておく必要があるわけであります。ただその際に、必ずしもそれらの根拠になる数字が今日の段階で明確になるわけではございませんが、大体のめどはつけさせる、かような考え方をもっていろいろの推定はいたしたわけでございます。そのような際に、こういう設備投資のようなものの資金量はどの程度になるかということから、すでに相当の仮定が入ってまいるわけでございまして、これをお尋ねのように、三兆円とするか四兆円とするか、あるいはまた五兆円とするかによっても狂ってまいるわけでございますが、かりに四兆円くらいとはじいた場合に、それが全部公害施設を必要とするものではないということから、七割ないし八割が対象施設である。そういたしますと、その対象事業の中で三ないし五%が公害設備投資に要るという推定がまず出てくるわけであります。その比率で公害対象施設を必要とする、それだけを設けなければ公害を防除できないとかりに推定いたしました場合に、それをいかなる資金からまかなうかという、これがかなり仮定数字になるわけでございまして、原則的には企業負担において実施すべきでございますので、当然企業側自己資金でまかなうべき筋合いでございまして、必ずしもそれが公的な資金融資対象になるわけではないわけであります。これをどの程度に見るか。半分程度自己資金でまかなうか、あるいは三分の二程度自己資金でまかなうかということでございますが、かりにこれを約半分程度自己資金でまかなう、残り事業団とか開銀融資とかいうやや公的な性格の資金でまかなう。そのやや公的な資金でまかなっていく場合に、それでは単独で発電所開銀融資等を受けて独自の施設をつくっていくのか、共同施設として多数の企業が合同して事業団の金で施設をつくっていくのか、この区分がまた一つの問題であるわけであります。それを、各種仮定をたくさん入れるわけでございますが、そのような仮定推計をいたしました場合に、おおむね三百億程度になるのではなかろうか、かような数字を一応出したわけでございます。そういうことで三百億というものを推定いたしたわけであります。
  11. 細谷治嘉

    細谷委員 どうも私の言い方がまずいのかどうかわかりませんけれども、私の質問に的を射ておらぬわけです。たまたま二つの方法で計算したものが、一方は九百億から八百億と出てきた。一方、積み上げ計算によって推計したものは約六百億円と出てきて、一致したのです。私は非常に重要な結論であろうと思うのです。そこで五百億円ないし八百億円出した経過は、この説明計算してみましたら、私は正しいということを確認しました。ところが六百億円については、積み上げ計算推計という内応がわかりませんから、きょうは無理でしょうけれども、ひとつ積み上げられた六百億円の計算内容をぜひ資料として出していただきたい、こういうふうに思います。  そこで、次に進ましていただきます。今度出ております公害防止事業団法案というのは、通産厚生両省共管法案でございますし、法律となりますと、共管で運営するわけでありますので、私は縦割りの弊という問題が出はしないかというような懸念も持っております。むろんこういう公害なんという大きな問題については、各省が協力しなければならぬわけでありますけれども、へたをしますと、縦割りの弊というのが出るとたいへんなことになりますので、ここでひとつある程度具体的に両省見解、場合によっては建設省見解お尋ねをしておきたい、こう思っております。  まず厚生省お尋ねいたしたいのでありますが、大体公害問題については、代表的にいいますと、私は三つの型があると思っているのです。その一つは、企業のやるにまかせて、公害もしほうだいになったという四日市型。それから三島、沼津にみられるように、そういうことではいかぬのだ、企業の進出は絶対阻止するのだということで、他で見られないような、公害防止施設について企業側が提案してきたけれども、なおそれを拒否していった、もう何といっても公害は困るんだ、そういうそのものずばりのやり方、これはこれにも書いてあるように、オール・オア・ナッシングの方式だろうと思うのです。その中において、厚生省なり通産省の指導があったと思うのですけれども横浜型というのがあるのではないか。横浜型というのは、企業にきてもらってもいいけれども公害は起こらないように、国や地方団体がこういう条件を満たしていただけば、どうぞ企業はきてください、こういう形で具体的に企業と折衝して解決をしつつ産業計画を推進しておるという型があるのではないか。宇部市の例もその一例であろうと思うのですが、そういう型の中で、大体厚生省横浜型の考えを持っておられるのではないか。ですから、先ほど申し上げました五百億ないし八百億というものは、やはり一次的な責任としては企業に持たせていく、こういう考えに立っておるのではないかと思いますが、いかがですか。
  12. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 お話のとおり、そこにはじかれました数字根拠は、企業投資として公害防止のためにその程度資金が要るということでございまして、当然企業設備投資の一環として考えていく必要がある、もちろんそれを持つ場合のいろいろなめんどうは公的な資金で見てやるにいたしましても、企業側負担すべきものである、かように考えております。
  13. 細谷治嘉

    細谷委員 企業側が一次的な責任を負うということが確認されましたから、この論文の順序に基づいて御質問していきたいと思います。  ちょっと忘れましたが、いまのことは、通産省のほうもそうお考えですか。
  14. 馬郡巌

    馬郡政府委員 いま厚生省からお答えいただきましたように、発生源におきましてできるだけそういう公害を起すようなものを出さないような施設を講ずるということは、企業家として当然のことであると考えております。したがって水質保全法なり、ばい煙規制法におきまして、一定の排出基準をきめて、それ以内におさめるようにという法律的な規制を行なっているのは、そういう趣旨から出たものであると考えております。
  15. 細谷治嘉

    細谷委員 つまり厚生省と同じ意見だ、こういうことでございますね。  次にお尋ねいたしたい点は、現行都市計画法なり建築基準法というのは、端的に申し上げますと、工業区域、準工業区域商業区域住宅区域というような都市計画上の問題がございます。それから建築基準法公害問題に関係してまいっております。こういう点でこういうふうに書いてございます。「現行都市計画法建築基準法等で可能な規制はやはり最大限に生かして対処する努力が必要であり、すでに工場が建ちはじめているのにいまだ用途地域別決定すらも行なわず、ただ工場用地造成にのみとどまっているのはきわめて残念なことでる。」私も同感でございます。厚生省はこういうお考えに立っておるようでありますが、通産省のほうなり、あるいはこういう問題を担当しておる建設省はどうお思いなのか、お尋ねいたします。
  16. 馬郡巌

    馬郡政府委員 そのとおりだと考えております。
  17. 三宅俊治

    三宅説明員 御指摘の都市計画決定の問題につきましては、できるだけ実情をよく検討いたしまして、都市の発展の形態にうまく追随をしていく。さらに、追随するだけではなくて、先行的に地域制の成果を得るように努力するつもりでまいっておりますけれども都市計画決定ということになりますといろいろな条件を検討してまいらなければなりませんので、必ずしも十分な指定が行なわれているとは現状では言えないと思います。しかし、これにつきましては、現在の制度を十分活用して、できるだけ早い機会に用途地域制を指定していくという方向でまいりたい、かように考えております。
  18. 細谷治嘉

    細谷委員 厚生省行が中心になって行ないました四日市等に対する有名な黒川調査団の報告書というのがございます。それによりますと、都市計画、いわゆる都市改造、こういうものをやらなければならない、こういうことになっておるのでありますが、私はそういう場合に、現在の立法ではやはりできないのではないか、こう思うのです。そういう点について、厚生省なり建設省等でお打ち合わせをしたことがあるのか。またそういう立法措置を講じようと準備中なのか、この辺をひとつ……。
  19. 馬郡巌

    馬郡政府委員 黒川調査団の黒川報告によります都市改造問題につきましては、現在四日市及び三重県とも御相談申し上げまして、都市改造をどういうふうにやればいいかということを専門家を入れまして、専門家の間で検討をいただいているような状態でございます。その結果どんな結論が出ますか、それによって今後の問題の進め方を考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  20. 細谷治嘉

    細谷委員 黒川調査団の報告によりますと、この資料にもございますように、それぞれの地域の地形状況、そういう問題を勘案して、たとえば四日市ではかなりの広い緩衝地帯、その中には八時間くらいしかおられないようなものをつくらなければならぬということになっておりますから、これはたいへんな都市改造になろうかと思うのです、そういう問題について、必要があれば立法措置も講じなければならぬというおことばでございますけれども、これは莫大な費用が要るかと思うのです。そういう問題について立法措置と関連して、そういう経費の問題というものについてはどういうふうにお考えなのか、事業団との関連においてひとつお尋ねしておきます。
  21. 馬郡巌

    馬郡政府委員 先ほど申し上げましたとおり、現在都市改造をどんな形で、どういう規模のものが必要であるかという検討中でございまして、このでき上がり方によりまして、一体どのくらいの資金が要るかということも自然に出てまいります。現在の段階ではどのくらいの資金で、どういう規模の都市改造かということがまだ全然推測できないような状態でございまして、すべてこの都市改造計画について現在研究中のものができ上がりました上で、いろいろな問題を考えてまいらなければならない、こういうふうに考えております。
  22. 細谷治嘉

    細谷委員 いまのところその程度くらいしかお答えできないのだろうと思いますから、次に進みたいと思います。  この論文の「着実な前進を」という結びの段階において、こういうことが書いてあります。非常に重要な点でございますからお尋ねしたいと思いますが、「環境基準の設定」ということが書いてございます。環境基準の設定というのはどういうことなのか、これは当然法制化という問題になると思うのですけれども、これについてひとつお考えを示していただきたいと思います。
  23. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 この問題はわが国のみならず、公害問題を重要視する世界各国の重要課題でございまして、入の住む地域における環境がどの程度のものであるべきかという環境基準の設定は非常に必要でございます。そのような環境基準ができれば、その環境基準を下回るような環境の出現に対して強い規制を行なうということができるわけでございます。しかしながら、この環境基準の設定というのは非常にむずかしいものでございまして、この基準をこえれば人体にどの程度の影響があるか、それは短期の影響はなくても五年、十年そこで生活をするということであれば何らかの影響があるかもしれないということから、この基準の設定は、かりに一部の動物実験で数値ができましても、それが人間に適用できるかどうかという問題もございますし、いま一つは動物がそのような長期生育することが非常に困難であるというような点から、具体的にこれ以上は人体にきびしい影響を及ぼすというような基準は、世界各国で探究いたしておりますが、非常にむずかしい問題でございます。しかしながら、公害対策の徹底を期するためにはどうしてもそういうものが要求されるわけでありまして、そのようなものをできるだけ具体化する努力はわが国でも考えられておりますし、諸外国においても検討せられておる、かようなことでございます。
  24. 細谷治嘉

    細谷委員 確かにこれらのいろいろの調査が必要でありましょうけれども、たとえば四日市公害、亜硫酸ガス問題は、この本にも、大体多いときには一PPMくらいになっておる、こういうふうに書いてございます。いま四日市ぜんそくというたいへんなことが起こっております。これについては市で負担をしておるのです。幾らかかっておるか知りませんが、やはりたいへんな負担になっておるのではないかと思うのです。この前予算委員会の際に私は榊田厚生大臣に、市で相当の負担を行なっておるが、そういう公害、これは市の直接責任ではないですね。そういう患者に対して、一定の基準があるわけですが、治療費は一切市が見ておる、そういうのはたいへんな市の財政負担だから、やはり何らかの形で国で考えてやる必要があるのじゃないかと質問したのに対して、厚生大臣は、やはり検討をいたさなければなりません、こういうお答えをいただいておるので、その点についてはきょうは触れないのでございますが、大体において〇・二PPMか〇・四PPMくらいですと、四日市ぜんそくという症状が起こってくるのです。新聞等にも書いてありますが、あの辺の学校関係の衛生会が調べたところによりますと、そのはなはだしい公害地域の学童のぜんそく状態というのは、やはり三倍とか八倍くらいになっておるわけです。健康をそこねておる、勉強ができないというのです。そういうことで、厚生省がおっしゃるように、〇・二なり〇・四くらいのPPMになるとぜんそく状態になるということがわかっておるのですから、それ以下にしなければならぬということになると、当然環境基準の設定というのを法制化することが必要であろうと思う。環境基準というものを早急にきめていくことが、企業家対策を立てるにも都合がいいし、公害防止事業団はそういう基準をめどにして計画を立てていきますから、これも非常に大切な点ではないかと思うので、いますぐというのではありませんけれども、できるだけ早く環境基準を設定してやるべきではないかと思います。  次にお尋ねいたしたい点は、これは冒頭私の心配しておる縦割り行政の弊が出るのではないかという点でありますが、こういうことであります。文章を読みますと、私の心配は必ずしも杞憂でないという気がいたすのでありますが、「通産省は産業関係発生源対策の研究を分担して産業公害防止技術研究所計画をすすめている今日、厚生省公害衛生研究所は環境および影響の問題を」——人体への影響でしょう、「究明する機関として必要のものであるので、」ということでありますから、厚生省のほうは公害衛生研究所というのを新しく設けよう、通産省のほうは産業公害防止技術研究所計画というものを進めようとしております。これは縦割り行政の弊がこの文章に出てきておるのではないか。公害問題についての総合研究所——両者が共管であるわけですから、そういう総合研究所で、人体の影響の面から、あるいは厚生の面から、産業生産の面からということで調整をとりつつ総合研究所をつくることが正しい姿ではないかと思うのでありますけれども、これに私の心配したような二つの研究所を、厚地省の所管のもの、それから通産省所管のものをつくろうとすることが、はっきりとこの計画の中にそれぞれあるようでありますから、これについてひとつ通産次官もいらっしゃっておるのですが、通産省厚生省のお考えをただしておきたいと思うのです。
  25. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 御承知のようにいろいろな科学が発展する場合に、いろいろ連携をとらなければなりませんけれども、それぞれの分野というものがあると私どもは実は考えております。そこで私どもの産業公害防止のための研究所という考え方は、御承知のように、発生源においてまず公害が発生しないような技術を開発をして、しかもこれが工業化されて企業がそういう技術に基づく設備ができるようにすることが、私は必要だと思います。そういう関係から考えますというと、機械にも関係がある、あるいは化学にも関係がある、あるいは石炭化学にも関係があるというようなことになってくるわけであります。したがってそういう面のいわば工学的、化学的な研究ということになろうかと思います。他方、その公害が発生をした場合に、それが人体に影響する問題というのは、おそらく医学的なりあるいは生理学的な研究あるいは技術ということになろうかと思います。  どうも卑近な例ではなはだ恐縮でございますが、大学でいいますと、医学部と工学部ということになろうかと思いますが、この医学部、工学部を要するに一緒にするという考え方が一体どうかという問題もあろうかと思います。そういう意味で、もちろん連携はとりながら、総合的な判断を必要といたしますけれども、やはり工学的な部面としてのいわゆる産業公害防止研究所、あるいはこれは医学研究所あるいは病院等の関係でもあろうかと思いますが、そういう面の研究所というものが、それぞれの分に応じて、専門に応じて研究をしていくということが私どもは不合理ではない、こういうふうに考えております。
  26. 徳永正利

    ○徳永政府委員 先生いまお説のように、私は役人をやったことがないものでございますから、そういうような問題が、先生が御心配になっているような結果が生まれちゃいかぬ、また生まれるのではないかということを実は心配したわけであります。それでその点につきましては十分話も聞き、また研究もさしたわけでありますが、いま通産省からお答えがございましたように、おのおの分野が違って——それにしても、何か資料の交換とか、あるいはまた何か研究の材料の交換なんというものも出てくるのじゃないかというようなことまで詰めてみたわけでございますが、いまお話にございましたような、そういう心配もございませんし、また将来はそういうことのないように十分注意してまいりたいと思います。
  27. 細谷治嘉

    細谷委員 くしくも、私の心配しておる、こういう答弁があるのではないかと思ったような答弁が通産省からなされたのです。いまの御答弁によりますと、通産省の問題はプロダクションの問題である、ですから問題は生産技術、工学の問題なんだ、こういうことばです。厚生省のほうはこれは医療面からやるものだ。専門的にはそのとおりであります。医学部、工学部あるいは理学部ということでありましょう。それなら、なぜ公害防止事業団は一本にするのですか。通産省所管のプロダクションの問題に重点を置いた公害防止事業団というものと、厚生省の問題、公害衛生事業団なら事業団ということになさったらいいでしょう。理屈はそうでしょう。それについては共管で手を結び合って、厚生省の面とそれから通産省の面とが両々相まって、紙の表裏のようにひとつ公害の問題に取り組もうということで、共管のこの法案が出ているのでしょう。この法案をやろうとしているやさきに、研究所は別でなくちゃいかぬというのはおかしい。事業団もできて共管でやろうということでありますから、総合研究所でいくという考えに立つのが筋じゃないかと思うのですけれども、いまのおことばはそうじゃなくて、そういう厚生省の研究機関も必要だ、通産省の研究機関も必要だ。こういうことになりますと、私が心配しておる縦割り行政の考えというのが、おことばの中に明瞭に出てきておると私は理解せざるを得ないと思いますが、通産省はいかがですか。
  28. 岡崎英城

    ○岡崎政府委員 ただいまの先生の御意見は、われわれといたしましても大いに傾聴いたさなければならない議論だと思います。思いますが、現実の段階におきましての各省の行政の体制からいきますと、やはり公害問題は厚生省または通産省だけでも解決できない、やはり自治省、建設省、あらゆる方面と総合的にしていかなければならない、その総合したものを、そこでやりました各研究を総合して国としてやっていかなければならないということに、私は究極はなると思うのです。そこでただいまのところ政府といたしましては、総理府に公害対策推進連絡会議というものがございますので、そこで統制をしていただく。そしていろいろ各省ごとに研究した問題をこういうところで一つの総合的な調整をやっていくということにしていくのが、いまの体制ではいいのじゃないか、こう思うわけであります。私はそういうように思っております。
  29. 細谷治嘉

    細谷委員 いま通産次官のお答えは、やはりこれはただ単に、先ほど来御質問したように、通産省厚生省の問題ばかりじゃなくて、建設省都市改造の問題という重要な問題を含んでまいっておる。あるいは気象問題ということになりますと、これは運輸省の問題も含んでくるでしょう。気象問題、これは重要なんですよ。四日市の気象というものと、それから京葉地帯の気象という問題、横浜の気象、沼津の気象、大分の気象、みんな違う。ですから風洞実験もやろうとしているのでしょう。風向きがこうなった場合にどういう形でやるのがこの地形に合うのかという形で、金をかけて風洞実験もやろうとしているのですから、そういう場合に、一つの風洞実験をやった場合に、衛生面からくる人体への影響という面、生産面からこれはどうなるのかという見方、そういうものが全部統合されて総合的に見られなければならぬ。だからこそ、いまお答えのように、総理府に総合的なそういう推進機関というものができておる。そうなってまいりますと、私は事業団共管であるように、そして不即不離、紙の表裏のように一体になってこの問題に取り組もうということで公害事業団ができたとするならば、この産業公害防止技術研究所というものと厚生省公害衛生研究所というような、さらには建設省が建設面から見た公害防止の研究所をひとつつくろうなんということになりますと、これはもう力の分散、そして一つも総合性がないということになるわけでございますから、こういうお考えに立たないで、まとまってやろうという考えに立って事業団をつくることになったわけですから、ひとつそういう考えに立っていただかなければ、いたずらに縦割り行政の勢力争いに終始するのじゃないかということを私はおそれます。いま通産次官のおことばが、総合的にやるのだというおことばでありますから、この二つの研究機関の計画というものについては当然再検討をしていただくものと私は理解をいたしまして、次に移らせていただきたいと思うのです。  この両省から出た資料を拝見いたしますと、宇部市においてありましたように、降下ばいじんの問題については、そのやり方というのはいろいろありますけれども、逐次成功しつつございます。ところが、遺憾ながら、降下ばいじんについては成功しておりますけれども、浮遊粉じんなり、亜硫酸ガスについては、これは現在なお激増しつつある。宇部市の場合には降下ばいじんについては六分の一ぐらいになったと、こういっている。ところが遺憾ながら浮遊粉じんについては、一三%、三十九年度においては前年度より伸びたと、こう書いてあります。亜硫酸ガスもまたしかりでございます。こういう問題が今日技術的に解決しておらないのであります。こういう問題に取り組もうとして今度の予算措置もなされておるようでありますが、この技術開発をどういうふうに進めようとしておるのか、現在どういうところまでめどがついておるのか、この点についてひとつ通産省なり厚生省なり、あるいは研究所の方がいらっしゃっておりましたら、その内容をお聞かせいただきたいと思うのです。
  30. 馬場有政

    ○馬場政府委員 たとえば亜硫酸ガスでございますが、亜硫酸ガスの除去につきましては、ただいま数種の方法がある段階まできておるわけでございます。大体昭和三十七年度からいろんな方法、いろんな手段によりまして開発を始めたわけでございます。具体的に申しますと、私のほうで民間の研究に対しまして研究補助金というものを出しておりますが、昭和三十八年度に、当時の三菱造船に対しまして、マンガンとか鉄とか石灰とか、そういったものの酸化物を吹き込みまして亜硫酸ガスを除去するという方法に対しまして補助金を出したわけでございます。これはその後発展をいたしまして、中部電力の火力発電所共同で研究がその後発展しました。それから私どものほうに属します研究機関におきまして、活性炭を使います方法、あるいは石灰石あるいは石灰を使います方法の開発を始めたわけでございます。これはもう三十七年度から開発を進めております。これらのうちの活性炭法につきましては、ほかの民間の研究機関とも協力いたしまして共同研究を行ない、それが現在では東電である程度の規模のところまできております。しかしこれらはいずれも、一時間に三千立方メートルくらいの廃ガスを処理する規模で成功いたしております。たとえば発電所におきます一時間の排出量は、これは規模によるわけでございますが、通常それの二百倍から三百倍、何十万立方メートル・パー・アワーというようなところでございます。したがいまして、三千立方メートル程度のものではまだその全部をカバーするに至らないという状況でございまして、これらをそれぞれの段階に近づけようということで、少なくとも十分の一あるいは二十分の一ぐらいのスケールのところで実際の火力発電所にそれを取りつけてその効果をためすということに、いまそれをいかにしてやるかということを考えておる最中でございます。したがいまして、この問題につきましては、これはもう先生御承知のとおりでございまして、普通の、たとえば亜硫酸ガスにつきましては、もう数十年前に、非鉄金属の製錬所におきましての廃ガスから亜硫酸ガスが出て、非常にその付近に損害を与えたわけでございます。この場合には亜硫酸ガスが非常に濃いものですから、それから硫酸を回収するということが開発されて、そういう問題が非常に減ったわけでございます。現在ではほとんどそいう害がないわけでございますが、煙突の場合には非常に亜硫酸ガスが薄い、しかしその量は非常に大きいという状態にございますので、これをいかにして比較的コストをかけないでやるかということが問題なわけでございます。これはたとえば重油一トンを燃しましたときに、それを除去するのに一トンにつき千円以下ということをわれわれ目標としておるのが現在の段階でございます。以上が亜硫酸ガスについての研究の段階、それからいかにして開発してきたかということの御説明でございます。  浮遊粉じんにつきましては、この集じん機、私どもは集じん機につきまして研究をいたしたわけでございます。これは一応の成果をおさめまして、いろいろなところで、私どもは全部をやったわけではございません、電気試験所でやらしたわけでございます。したがってわりあいに荒いほうの降下ばいじんについては相当な成果をあげ、これは民間におきましてもいろいろなシャワーを使います方法とか、その他の方法が開発されたわけでございます。ところが非常に小さいもの、非常にこまかいもの、いわゆる浮遊粉じんになるものは、まだその成果を十分にあげるに至っていない。これは電気式な方法、あるいはスプレーをかけまして落とす方法、ベンチュリー・スクラッパーのようなものでございますけれども、そういうものではまだ十分にキャッチできないという状況でございます。
  31. 細谷治嘉

    細谷委員 私はせんだって四口市に参ったのでありますけれども、いまおことばのように、発電所等でかなりの公害防除についての施設をしておるわけです。あそこでは洗たくできないのです。ですから、中部電力でありますけれども発電所で全部各家庭を自動車で回って洗たくものをとってきて、発電所で洗たくをして、それをドライヤーでかわかして、そうして全部送り届けているわけですね。降下ばいじんばかりじゃないと思うのです。浮遊粉じんで白いものがどんどんよごれるのじゃないか。私は浮遊粉じんこそが、呼吸器系統をおかす非常に重要な公害上のポイントじゃないかと思うのです。亜硫酸ガスあるいは廃ガスなりあるいは酸化窒素なり、いろいろな問題についてこれから技術開発をやるようでありますけれども、当面の問題はいわゆる降下ばいじんについては技術的に電気集じん機を使うことによって解決しつつありますが、亜硫酸ガスなり、あるいは酸化窒素なり、あるいは一酸化炭素なり、あるいは浮遊粉じんという問題は、技術的にはたいへんな問題であろうと思う。まあ厚生省のお考えのように、やはりこういう問題はコストの中に入れていくというような考え技術開発をすると同時に、やはり企業自体が一次的な責任者としてこの問題と取り組んでいただかなければならぬと思うので、研究も文字どおりこれからでございますけれども、非常に重要な公害対策問題点であろうと思いますので、ひとつ早急に基礎的な研究を終えて実用できるように配慮をお願いしたい。これは特に研究者にお願いをせにゃいかぬ問題でありますから、よろしくお願いしたいと思っております。  最後に、日照権という問題が昭和三十年ごろからやかましく議論されております。民法上の相隣関係としてあるいは建築基準法上の問題としていろいろな問題が起こっておるのでありますが、まずひとつ建設省お尋ねしたい点は、この建築基準法という法律は自分のものを建てることだけの基準であって、他人に影響を及ぼすということについては一切かまわない法律であるかどうか、それをお尋ねしたいと思うのです。
  32. 三宅俊治

    三宅説明員 建築基準法の規定では、自分の敷地に家を建てるときの規定があるわけでございますけれども、その規定の内容というものにつきましては、近隣関係、それから周辺のほかの敷地にどういう家が建つかということを一応想定した規定内容ということになっております。しかしその想定のしかたにつきましては、具体的に個々的にその建築の計画がわかるわけではございませんので、つまり現在の建築法規で可能な範囲でどの程度のうちが建ち得るかというようなことを一応の前提といたしまして、自分の敷地の中における規定をやっておる、こういうかっこうになっております。
  33. 細谷治嘉

    細谷委員 もう少し具体的にお尋ねしたいのですが、建築基準法の第一条には、「この法律は」と書きまして、「最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。」こういうふうに書かれてございますから、これは当然なこととして、建てる個人だけでなくて、国民の福祉全体ということを当然考えた法律ではないか、こう私は思うのです。  それから節八条に、「維持保全」という条項がありまして、「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない」という維持保全の義務が課せられておるのです。他人が近くに建てて、どうもその建物の維持保全ができないということになりますと、これは八条の違反にならないでしょうか。自分だけよければよろしいのでしょうか。
  34. 三宅俊治

    三宅説明員 現在の建築基準法の八条の規定は、当該建築物についてのみいっておるわけでございまして、その周辺の建物自体については、その川辺の建物の建築行為がどうなされるかということを、そちら側のほうにとらえてやるということでございます。したがいまして、第八条自体から見れば、当該建築物だけについて規定されるという考え方でございます。
  35. 細谷治嘉

    細谷委員 そうなりますと、私はこの法律は、ずいぶん階級的な法律に結果としてなるんじゃないかと思うのです。お隣に金持ちが来て、たいへんなビルディングを建てたら、もう北側にあるところはどうにもならないのですね。そうなりますと、いまのような、八条というのは自分だけよければいいということでありますから、たいへんな階級的な法律だ、こういうふうに理解せざるを得ないようにもなるのです、少し進んでお尋ねしたいのですけれども、いま公団のアパートなり、あるいは建設省の公営住宅等を建てていく場合には、連棟間隔というのが厳密に規定されておりますね。これはやはり日照時間というのがやかましくいわれるわけでしょう。これはどういう基準でやっておりますか。
  36. 三宅俊治

    三宅説明員 通常の公団、公営等の場合におきましては、通常冬至における日照時間四時間というのが、一応基準になっております。これは地形の状況その他建設地の状況によりまして若干の変更はいたしておりますが、考え方はその辺にあるということでございます。
  37. 細谷治嘉

    細谷委員 たとえば連棟間隔、高さの一・八倍とかなんとかということで、アパートをずっと建てていく場合にはちゃんと連棟間隔はできております。その基準というのは、一番日の短い冬至について四時間以上の日照時間、それが建築基準法の二十八条や二十九条には、やはり日照時間の厳密な規定をしてあるのですね。家を建てる場合には、一部屋日照これくらいなくちゃいかぬぞ、あるいは、日照を受ける窓をつくっておかなければいかぬぞ、こういう規定があるわけです。ところが道路が南北に走っている場合はよろしいのです。道路が東西に走っておって、区画整理された、そうしてその東西に走っている道路の北側のほうに大きなビルディングが建てられますと、今度はその区画の北側のほうにある道路に面したところは、これはもうたいへんなことになるのです。全然日照時間がない、こういう事件が起こっております。これについて民法の相隣関係というのがあるんだけれどもしようがないんだ、こういうふうに処理されておる向きがあるのでありますが、御存じでしょうか。
  38. 三宅俊治

    三宅説明員 御指摘のようなことにつきまして、いろいろ問題が起こっておることは聞いております。
  39. 細谷治嘉

    細谷委員 聞いておって、それはそれでもうやむを得ぬのだ、民法上も建築基準法上もやむを得ぬのだ、こういうふうにお考えですか。
  40. 三宅俊治

    三宅説明員 いまの御指摘の大きなビルディングのようなものが具体的にその地域、その地区におきまする建築の法規に適合しておるということでございますると、現在のところでは、法律上私どもといたしますると、どうすることもできない。具体的に問題が起こった場合におきまして、可能な限り現地におきまする特定行政庁、つまり都道府県あるいは市におきまして、話し合いでできるものはできるだけ話し合いでやっていくというかっこうをとっております。しかしその場合に、いずれにいたしましても、相手の日照をさえぎるというビルディングがその地域、地区の建築法規に合っているということはもちろん必要なことでございまするから、これらが違反しておって相手に迷惑を与えているということであるならば、これは当然現在の建築基準法によって適法な状態に是正させるという措置はとっております。
  41. 細谷治嘉

    細谷委員 お尋ねいたしますが、ある新聞の社説に「隣人の日照を奪う高層建築」という見出しで、こういうことが書いてあります。「こうした現実を改めるには、」と書いてありまして「民法、建築基準法の改正によるか、多くの意見はあろう。また基準法の改正についても、どの地域に限るか、どの程度の日照を保護するか、問題点は少なくあるまい。しかし要は、世間一般の常識を、法もまた尊重するものでなければならぬ。」こういうふうにある新聞の社説は、この日照権の問題について主張いたしております。そこで、こういう主張に基づいて、建築基準法等について、民法の改正ということは別にしまして、いまおっしゃった、自分さえよければいいんだ、とにかく基準法というのは建てるものであって、隣がどうあろうともう知らぬことだ、こういうことでなくて、その辺も御検討をする御意思があるのかどうか、これをお尋ねいたします。
  42. 三宅俊治

    三宅説明員 御指摘のような問題につきましては、都市計画の基本的な考え方ということになるわけでございますけれども、やはり都市全体の計画をながめ渡しまして、都市計画上はたしてその地域、地区というものが、一体どういうふうに性格づけられるものであるか、たとえて申しますと、現在でも、住居地域制というものがあり、住居専用地区制というものがあり、あるいは一方商業地域制というものがあるわけでございまして、そういう地域、地区制の全般の位置づけというものを十分考えなければならない。そういたしましてその地区制を活用することによりまして、現在でもかなりなところまではそういう問題が解決し得るわけであります。具体的な問題といたしまして特に問題になりまする高層建築の問題にいたしますると、片や都市における土地の合理的な利用というような問題がございまして、逆に申しまするならば、その合理的な土地の利用というものが十分に行なわれ得るかどうかというような意味からの逆の規制もまた考えなければならないというような声も一方にはあるわけでございまして、問題を全面的に割り切ってしまうということについては非常に問題があろうかと思うわけでございます。したがいまして、やはり都市全体の立場からその地域、地区というものをよく考えて、それに適応した建築規制を行なうということが必要であると思います。もちろん現在の建築基準法によりまする地域、地区制等につきましては相当程度、活用によって御指摘のような問題は解決できると思いますけれども、さらにやはり一般的に、諸外国と申しますか欧米等の例を見ますと、やはりもっとシビアーな、厳密な土地利用規制というものが行なわれておりまして、相隣関係の規定にいたしましても、かなりこまかいところまで規定があるようでございます。もちろんわが国におきまする最近の都市の発展の状況から見まして、一躍してそういうところまで一ぺんにできるとはなかなか考えがたい点もございますけれども、できるだけ現行制度の活用と、さらには十分検討いたしまして御指摘のような点についての改正をする、つまりもっと合理的な規定になるように改正をするということは、今後十分研究を進めてまいりたい、かように考えております。
  43. 細谷治嘉

    細谷委員 確かに相隣関係という問題は民法上もむずかしい問題でございまして、建築基準法だけで片づく問題ではないと思う。建築基準法問題点もありますから、それは御検討もいただくということでありますけれども、私はこの日照権の問題に限らず、昨年ありました富山化学の爆発によって、塩素で四百数十人の住民の方が被害をこうむり、中毒し入院した、こういう事件が起こっております。そればかりではなく、それは一例でありますが、そういう例が多々あります。そういうことから現実を見てみますと、私は都市計画上住居区域と決定されておる中に、住居区域に囲まれた中に準工業地帯があったり、あるいは商業区域があったりするところに問題点がある。そこでたとえば建設省が認めておるいわゆる区域というもの、都市計画決定された商業区域、それから住宅区域あるいは準工業区域工業区域というものを見てみますると、どういうふうになっているかというと、ばかの一つ覚えのように一直線を引いておるのです。T型定木をもってきてじゃあっと引いております。道路など無関係です。直線を引いている。ですからどういうことになっているかといいますと、区画整理をやりました一こまをまん中からぶった切っております。対角線でぶった切ったものではないのです。いかにもそのときの地形によって切られておる。ですから南北に道路が走っておるとしますと、その南の側のほうの区画に大きなビルディングが建ちますと、そのうしろのほうの住宅区域は、ビルディングがないときには十分に日が当たりますけれども、もう日が全く当たらない。建築基準法上では、商業区域住宅区域という場合、両方にまたがっておる場合には、多いほうによってこれは住宅区域だ、商業区域だというふうにきまりますから、これはたいへんなことになるのです。南北に走っておる道路に面して、北側のほうは住宅区域、南のほうは商業区域だということになりますと、もう北側のほうは完全に困るわけです。どういう結果になっているかというと、それは都市計画決定がただ単にT型定木をもって一直線を引いて、そうしてせっかく区画整理で一区画できたのを、道路に面して区画ごとにこれは商業区域だとやっておけばよろしいわけでありますけれども、一直線を引いておりますから、せっかくの一こまがまっ二つに割れておる。そういうことから富山化学の問題も起こるし、またいまの日照権の問題が起こっておると思うのです。私はその都市計画上の決定が合理的に現実的になされれば、この問題は建築基準法の改正以上の効果が起こるのではないかと、こう思うのです。これについてひとつ建設省はそういう現実に行なわれておる、ただ一直線でさっと引いておるそういう商業区域なり、区域、区画の割り当てを、道路に即してやるというお考えがあるかどうかお聞きしておきたい。
  44. 三宅俊治

    三宅説明員 御指摘のような地域制決定の問題でございますが、現在建設省におきましては関係の市町村等に対しまして、地域制の再検討ということのいろいろ作業を始めてもらっておるわけであります。それにつきましてはただいま御指摘のような点も十分考慮いたしまして、できるだけ現行制度の活用によって手直しでいけるところは手直しして、環境が維持できるようにということの改正をするという方向に作業を進めておりますので、さよう御了承いただきたいと思います。
  45. 細谷治嘉

    細谷委員 この点について厚生政務次官お尋ねしたいのですけれども、いま申し上げたとおりなんです。都市計画決定、区域の決定というものを道路に即して、それはジグザグになります。ジグザグになりますけれども、規格的にきちんきちんとやっておりまして、いいかげんな曲線じゃありません。そういうことでやりますと一区画を二分するとか、違った区域になるという不合理が避けられて、こういう問題がある程度解決されると私は考えるわけでありますが、どうもやっぱり建設省は建てることばかり、通産省は生産することばかり、ばかりではありませんけれども、どうしてもそういうことにウエートが置かれますので、人の生命なり健康というものは、せっかく法律に書かれてありながら忘れがちになります。そういう問題こそ専門家である厚生省がチェックして、こういう問題についてはやはり建築基準法の精神からいっても、日照時間等をよくするために、その都市計画の線を現実に即するように道路に沿うて区画したほうがいいじゃないかという注意なり勧告を、厚生大臣から建設省にやっていただければ、健康の面から見た厚生省、建てるほうから見た、つくるほうから見た建設省、あるいは生産の面から見た通産省との間にやはり表裏一体の行政が行なわれて、住民福祉の増進に役立つのではないかと私は考える。そういうことにこそやはり専門的な知識と経験を生かすべきではないか、これは縦割り行政ではないかと私は思うのです。そういうことについてもっと積極的に、この厚生省論文の中にも、そういうことには足にたこかできるようにがんばって、通産省なり建設省と打ち合わせるのだという決意が表明されておるのですから、そういう御意思でこういう問題についても——これは私は公害だと思っておる。この中に日照権の問題は書いてありませんけれども公害だと思うのです。公害だと思って、そういう問題についても国民の生命と健康を守るという立場でおやりいただく決意をひとつ表明していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  46. 徳永正利

    ○徳永政府委員 まことに貴重な御意見でございまして、早速そういう点につきまして十分努力を払ってまいることをここに決意を表明しておきます。
  47. 細谷治嘉

    細谷委員 終わります。
  48. 保科善四郎

    保科委員長 門司亮君。
  49. 門司亮

    ○門司委員 時間もございませんので、ごく簡単に要点だけを御質問しておきたいと思います。  この法律を出される一つのポイントとして、公害の問題についてどういうふうにお考えになっているのか。これは産業公害と書いてありますから、工場対象とした公害を主とされているのか、あるいは一般公害を主とされているのか、その点を先に伺っておきたいと思います。
  50. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 この公害防止事業団が当面対象といたしております公害は、産業に基因する公害でございます。
  51. 門司亮

    ○門司委員 そういうことだとすると、公害の問題の解決は私はつかないと思う。ここに、あまり新しい文献じゃありませんが、ベルギーの一九三〇年からの統計がずっと出ておりますが、この中に書いてありますことは、公害というものは一般的には大体経済問題からくる、いわゆる会社や工場からくる問題が多いように考えられておるが、そうではない、産業活動よりもむしろ多いのは、自動車や家庭の暖房のような公衆活動からくる一般的の公害が非常に多いということが文献の中に書いてありますので、私は実はそういう質問をしたわけであります。そうだといたしますと、結局この法律で公害と認めておるのは、たとえばいま一般の公告と目されておる騒音あるいは自動車の排気ガスというようなものについてはこれの対象にならぬということですね。そういうふうに考えておいたほうが確かですね。
  52. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 先生仰せられましたとおり、公害は産業に基因するものばかりではございませんで、ことに実際住民から公害としていろいろ苦情が出る頻度から申しますと、騒音等は相当大きな部分を占めております。またお尋ねのように、最近は自動車による排気ガスという問題も非常に大きな問題となってきておりますし、河川の汚濁におきましては、し尿の不衛生な処理ということも大きな原因となっておりまして、その意味合いから産業の公害解決しただけでは今日のわが国の公害問題が即解決されるというわけではないことは、御指摘のとおりでございます。したがいまして、公害対策は全面的に各方面の施策を十分並行して進める必要があるわけでございますが、当面最も大きな国民の衛生上の問題であり、また特に急速に高まってまいっております産業公害に対して特段の施策を進めたいということで、産業公害に対してこの事業団考えたわけでございますが、その他の公害発生源に対する施策も並行して各般の措置を進めてまいることにいたしておるわけでございます。
  53. 門司亮

    ○門司委員 この法案を読んでみますと、いまの御答弁のとおりに書いてあります。われわれが心配しますのは、たとえば基地における騒音等の関係を見てみましても、すでに人間が住んでいられない、あるいは映像関係からテレビが十分見られない、ラジオが聞こえない、こういう公害がかなりあるのです。そうすると、これは産業公害だけで一体よろしいかどうかということになると、私はまだいささかもの足りないものがある、しかも産業公害の場合は、この法律のいままでの説明を聞いてみますと、あるいは工場を移転するとか、あるいは市街地の改造なんという大それたことまで言われておるようでありますが、そんなことはできっこありませんし、やれるものでもありません。いまの日本でこんな法律でそれができたら、私はどうかしていると思う。これと同じような結果が、ごく卑近な例を引いて言えば、厚木の飛行場の周辺は、飛行場をどこかへ持っていってもらいたい、さもなくばわれわれをどこかへ移してもらいたいということが、現実に起こっているでしょう。そう考えてまいりますと、この法律というものは一般の公衆に対するそういうものでなくて、私は回りくどいことはやめて端的に聞いておきますが、産業を保護しようとされるのか、公害をなくしようとされるのか、一体どっちなんですか。
  54. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 この公害防止事業団を設けまして公害防止施策を推進いたそうという基礎的な考え方は、あくまでも公害を防止するということに重点を置いておるわけでございます。基本的な考え方は、前々から申し上げておりますように、本来公害を防除すべき責任者は、その公害を発生する者にあるわけでございます。産業公害につきましては、当然企業側公害防止の努力をし、みずからの責任においてこれを解決すべき筋合いでございます。ただ、そのみずからの責任を果たしやすくするために、この防止事業団で国が融資その他共同施設をつくって譲渡しくやるという、促進をする意味合いの事業団でございまして、あくまでも企業側の努力を別途法律によって強く推進するということが基本でございます。
  55. 門司亮

    ○門司委員 だんだん幾らかわかってきたようですが、そうすると結局ある意味における、産業を保護しているもの、いわゆる工場を保護しているものと考えておいてよろしいと思います。こういう問題について外国の例をプリントしたものがここにたくさんありますが、この中から一つだけここに抜き出して見てみましても、たとえばアメリカのオレゴン州の、ザ・ダルズと書いてありますが、電力の供給規定の中には、売り手の工場が峡谷の美を損なうような行為をした場合には電力供給を差しとめるという契約条項がちゃんと入っておる。電力会社が地方の美観を損ずるようなことがあったら電力の供給を差しとめるという、強い州の法律ができております。外国の例を見てみますと、大体こういう形で、国の法律によるものもございますし、アメリカのように主として州の法律によるものもございますし、あるいはソ連の命令の中にもこういうものがございますが、主としてこれらの問題についてはいわゆる経営者側の責任に帰してこれを解決するように大体書いてあります。この法律のように、いまのお話のように、政府が手伝ってやって経営者を助けてやろうというようなものの考え方の上に立った法律は、外国の諸法令の中にはあまり見当たらぬようであります。二、三日前からいろいろ話を聞いていますと、外国の例がどうだこうだと言われますから念のために聞いておくのでありますが、私がいまここに持っておる今まで調べた範囲の資料によれば、大体工場側、経営者側にかなり強く責任が指摘してあるようであります。ところがこの法律の場合はそういうことがない。いままでも日本にはいろいろこれに関する法律がありまして、水質の汚濁に対しましても騒音に対しても、あるいはばい煙に対しても規制の法律があるけれども、しかしその法律が完全に実行されないからこういう法律をつくるのだ、こういうふうに解釈しておいてよろしゅうございますか。
  56. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 国の基本的な姿勢といたしましては、公害防止の規定を設け、その規定に従わない企業は差しとめるなり改造させるなりすれば、理論的には事足りるわけでございます。そのような強い規定に基づいて企業側が防除施設をつくればよろしい。したがって基本的な精神としては、そのような姿勢で国の施策を推進いたしたいと思っておるわけでございます。したがって、企業側が持つべき経費は当然設備投資の中で経費としてあげていくべき筋合いでございますが、確かに中小企業等で今日の段階においてはなかなか企業側で持ちかねる、即座に相当な設備投資資金を出しかねる事態も生ずるわけでございますので、そのようなものを主体といたしましてこの事業団考えたわけでございます。したがって、この事業団対象はおおむね中小企業でございます。また、それらの中小企業のすべてに貸すというわけではございませんで、に力のないような中小企業対象として考えてまいりたい、かように補助的にこの事業団が促進をしてまいるということを考えておるわけでございます。
  57. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、この法律自体を見て経費負担区分の問題が当然出てくるわけでありますが、国が施設を譲渡するというようないろいろなことが書いてありますが、施工して、そしてそれの負担は、大体それらの営業としている人たちが終末的には負担することになりますか。
  58. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 共同施設事業団がつくりましても、これは直ちに譲渡するわけでございまして、譲渡してその費用は一切企業側負担をする、こういうようなたてまえでございます。
  59. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、企業との話し合いに企業が応ずるか応じないかということについては、この法律を読んでみても別に強制的な規定はないようですが、それはできますか。
  60. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 原則的にはこの事業団が手を染めます地域は当面、ばい煙規制法あるいは水質保全法に基づいて法的規制のかかった地域を対象として進めるわけでございまして、したがいまして、企業側は法律上一定の設備基準を持たなければならないとされている地域でございまして、したがって、企業側も強い防除施設を持つための意欲を持っておるはずでございます。また、行政上も十分強い指導をしてまいる、かように思っております。
  61. 門司亮

    ○門司委員 どうもそれだけではあまり安心ができませんです。今日の中小企業の実態からいって、なるほど法律的には責任があるかもしれないが、しかしこれ以上の負担はなかなか困難だという事態にあろうかと私は思います、そこで考えられたのがこういうことで、一面から考えれば、こういうものでもこしらえてやらなければ連中やりはしないからということで、親心でやったとも解釈できる。しかし実際問題として、そう容易にこれに応じて負担をなし得るのが、一体どれだけあるかということであります。これはきわめて具体的な問題として重要な問題であろうかと思いますが、これ以上私はきょうここで議論はいたしません。これは問題が残っておると思います。  それから、あとで聞くつもりでおりましたが、問題になりますのは、産業公害という範囲の問題です。どれまでを産業公害と見ておるかということであります。たとえば問題はいろいろございます。その中で、この法律で最も私が重要だと考えるのは、地盤沈下の問題である。これは私は、ある種の産業公害であることは間違いないと思う。これに対処する方策は一体あるかどうか。これはいいかげんなことでは済まない。たとえば尼崎をどこへ持っていくかということになると、これはたいへんなことだ。こういう問題はこの中に含まれていますか。たとえばばい煙だとか汚水だとかいうやつは問題ありませんが、地盤沈下というのはかなり重要な大きな問題です。これはこの中に含まれていますか。
  62. 馬郡巌

    馬郡政府委員 この法律で産業公害と申しておりますものは、御指摘の大気汚染、廃水のほかに、騒音、振動それから地盤沈下という問題も法律的には入っているわけでございます。ただ、地盤沈下に対します対策といたしましては、すでに昭和三十一年に工業用水法を規定いたし、その後建築物の地下水くみ上げを規制する法律も制定いたしまして、地下水のくみ上げを制限ないし禁止いたしますことによりまして地盤沈下を防止したい、こういうふうに考えておりまして、そのような予算も、そういうような法律的な手段もとっておるという次第でございます。
  63. 門司亮

    ○門司委員 これは実は私はちょっと問題だと思って聞いてみたのですが、いまのようなことでは、いま下がっている地盤はどうにもならぬ。いまからくみ上げる水を規制してみたところで、もとに戻るはずがない。幾ら水を注入してみたところで、あの土地はなかなか上がるものではございません。だから、現実にそういうところに非常に大きな問題が出てきておる。これらに対して、いまのお話を聞いてみると、この法律は何ら作用しないものだ、さように解釈いたしておきます。これからできるものはある程度何とかしようという程度の法律だと、いまの答弁では解釈せざるを得ない形になってまいります。  それから、もう一つの大きな問題として聞いておきたいと思いますことは、都市改造に対するいろいろな意見を拝聴いたしまして、場合によっては都市の移転をというような話もございましたが、これは口ではそういうことが簡単に言えますけれども、さっき申し上げましたように、そういうことができるかどうかということは非常に大きな問題でありまして、今日世界のどこにまいりましても、住居関係からくる都市改造は行なわれております。たとえば東京都のように全部の家を平均しても一・七階ぐらいにしかならない、これを四階ぐらいに建て直せばよろしい、あるいは非常に住宅が粗末だ、二十年も三十年も前のバラックをそのまま置いておくことはよくないから、これを建てかえようというような観点からくる都市改造は行なわれております。しかし、都市の移転という——改造ではなく、この場合は移転であります。移転という方向に対しては、かなり思い切った予算とかなり大きな地方の自治体の決意がなければ、この法律でそんなことができるとは考えられません。しかもこの法律は、さっきからお話のございますように、単に今日の営業しておるところから出るいろいろな問題を集約して何とかめんどうをみてやろうということでありまして、私は二、三日前からの質疑応答の中でしばしば、まごまごしていると都市の移転までも考えておられるような印象を与える話を聞いているのでありますが、ほんとうにそういうことをやるというお考えですか。こんななまやさしい法律でそんなことができるはずはありませんので、そうなってくると、産業公害というのにひっかけて、各個人個人の持っておりまする所有権、住居に対する権利というようなものを全部何かの強制力で持っていかなければならぬでしょう。そういうことまでお考えになっているのか。この法律によるいわゆる都市を改造しようというのは、単なるアパートその他をこしらえてそうしてごく工場に接近している地域の諸君だけが多少移動をすることができる範囲でなければできない。私はこの法律ではとても都市改造なんというようなことは思いもよらないことだと思います。都市改造自身をどのようにお考えになっておるか、それはわかりません。いわゆる都市改造というものをどのようにお考えになっておるかということもこの機会に聞きただしたいのでありますが、時間がございませんから、後段に申し上げましたように、この法律に基づく政府構想としては、ごく接近した、たとえば工場の囲いの中にあるとか、あるいは工場と道一つ隔ててすぐそばにあるとかいう、人間の住むにきわめて不適当な場所——たとえば四日市のように、何キロかの間人間は住めないのだというので、何キロかの間家をみな取りのけてしまって、それをほかへ持っていこうということになると、たいへんなことなんです。そんなことが簡単にできるはずがない、だから、後段に言いましたような範囲で、この法律は住居の移転その他等も考えられているのだ、こういうふうに解釈しておいていいですか。  その場合に、もう一つ問題になるのは、個人の所有しておるものまでもこの法律でそういうことができるかどうかということ、そういうことについて、ひとつわかりやすく御答弁願っておきたいと思います。
  64. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 この事業団事業として行ないます移転は、一般の住居でございませんで、工場側を集団的に移転しようとするわけでございます。必要に応じてはその工場の従業員の住宅等もそれに付属して考慮はいたしましても、その公害地域の住民そのものを移転することを事業対象とするわけではございません。したがいまして、お尋ねのように、この事業団ができましても、都市改造というようなことがそれで直ちに行なわれるということにはならないわけでございまして、お話しのとおり、都市改造というようなことは容易ならぬことでございます。ただ、既存の公害を徹底的に解決するには、場合によっては一般住宅を他の地域に移転するような措置も講ずる必要があるということで、しばしばそれが都市改造というようなことばが使われるわけでございますが、このような措置は、法律を用いますか、あるいは各種の援護措置を設けますか、非常にむずかしい問題を包蔵しておることは、御指摘のとおりでございます。
  65. 門司亮

    ○門司委員 これは自治省のほうに聞いておきたいのだが、いまの答弁でだんだん私どもが危惧しておったようなことは少なくなったと思うのだが、問題になるのは、この法律で一体どこまでやれるかということが明確にされておりません。それは、たとえば汚水の処理をするにいたしましても、ある程度までは工場の汚水を全部一カ所にまとめて出すということができるかもしれない。あるいは、これも非常にむずかしい仕事ではありますが、やろうと思えばやれないことはないというのは、中小の企業をある新しい地域に移していくということは、やれないことはございません。これは成功したかしないかわかりませんが、福岡県の直方がかつて四、五年前にそういう計画を立てた事実がございます。炭鉱がああいう形になったから、事業内容を全然変えなければならぬ、いままでの機械では、ほとんど新しい産業に適しないから、機械も全部取りかえるということになれば、むしろ工場を移したほうがよろしい、新しい敷地を求めたほうがよろしいということで、直方市がやったことを私どもは知っておりますが、そういう形である程度それはやれるかもしれない。しかし、この終末処刑場はどうするつもりなんですか、これはただ単に管をこしらえて、それをどこかへ持っていけばよろしいというわけにいかない。日本の各都市で各終末処理場が完全にできておればよろしいかもしれない、それができておりません。これとの関係は一体自治省のほうはどう考えておるのですか。どういう関連でこういう法律をお出しになったのか。
  66. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 工場排水の処理に際して下水道との関連が相当大きな問題でございます。この事業団におきまして工場の排水を、共同処理施設で処理した水をどこへ注ぐかという具体的な問題でございますが、このような地域はほとんど、近い将来、あるいは今月すでに下水道が設置されておるか、されるべき地域でございます。したがって処理されました共同排水の水は当然下水道へ入れられる筋合いのものでございます。当面、たとえば隅田川でございますれば、下水道が完備いたしておりませんので、しばらくの間は終末処理されたあとの水は隅田川に流されることになりますが、やがては終末処理場の下水道へ入ってくるわけでございます。その際に下水道の終末処理能力を破壊しない程度の処理が行なわれることになるわけでございます。したがいまして、共同処理施設へ集められた汚水は第一次的な処理が行なわれ、これは完全にきれいな水にはなりませんけれども、少なくとも下水道へは投入できる程度の汚水にまで持ってきて下水道へ入れることになる、かようなことを考えております。
  67. 門司亮

    ○門司委員 どうもその辺が私どもには一向納得がいかないのです。ある一定の区域、ある一定のものはこういう共同の処理ができると私は考えます。これはやればやれるはずです。何でもない。しかしこれを処理していこうとするには、かなりめんどうなものが出てくると私は思うのです。汚水の共同処理と言っておりますけれども、これはその都市の全部のものがそこに集められるわけじゃありません。おそらく一定の区域だけしか集められない。これはたくさん集めようとすれば、東京にしても、私が住んでおる横浜などでも、何カ所かこしらえなければならない。おのおの工場がかってにありますから、ここで十の工場の水を集める、向こうで十の工場の水を集めるということは地理的に不可能です。その場合に、一つ一つ完全な処理場をこしらえられるというようなことは、実際考えられない。だからどうしても近くの下水処理場にこれを導入していって、そして市なら市あるいはその地方の一つの大きな共同の、公営ということばはどうかと思いますが、市営の共同汚水処理場へ流れ込んでいって浄化されるというような仕組みにしなければ、ちょっと考えたのでは非常にいいように考えられますけれども工場が全部一カ所にまとまっていれば何でもなくやれるのですけれども、地理的にはそんなことはできない。二里も四里も離れておって、向こうは三十軒も流しておる、こっちでは十軒あるいは二十軒が流しておる、これを何でつなぐというのですか。つなげないのです。結局は部分部分でやらなければならない。その場合に処理場までこの計画の中に含まれてやれるとは、私はどう考えても考えられないしどうしてもやはり既設の市の持っている処理場に、下水道に流し込むという以外に私は手はないと思う。そうなってまいりますと、結局日本の今日の都市の下水処理の状況からいえばこれは東京でもどうにもならないと私は思う。そういう問題については、この法律で私はやれるとは思いません。しかし、そういう問題も一体やるつもりですか。
  68. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 今日の下水道の終末処理場の能力からいたしまして、相当程度のきたない水までは、直接投入いたしましても処理する能力があるわけでございます。非常に悪質なといいますか、酸度が高いとか、あるいは、いわゆる汚濁の程度をBODと申しておりますが、そのBODの非常に濃度の高い、特殊な汚物だけを前処理をする必要があるというのが、今日のわが国の下水道の実態でございます。したがいまして、共同処理施設をつくるなり、あるいは工場側に単独に処理施設をつくらせるなりして、前処理をして下水道へ投入しなければならないというのは、工場排水の中のごく一部でございます。これらの非常にきたない工場排水は、主要な地域においては一応調査が済んでおります。それらの非常にきたない、しかもこれはごく少量であれば、すなわち非常に小さい工場でございますれば、その必要もございませんが、かなりの規模をもって相当量の排水を出す、しかも非常にきたなくてそのまま下水道へ投入すれば下水道の終末処理能力をこわすというような一部の排水に対しての手当てをする必要があるわけでございまして、それらの特殊な排水は、できるものは個々の単独の工場内に排水処理施設をつくらせて、工場独自で処理させることが基本方針でございます。ところが、工場の敷地が狭くて、お尋ねのように処理施設がつくれないというような場合に、一定の場所へ集めて処理場をつくって流させる、こういうようなことをするわけでございまして、これもお話しのように、あまり遠くへ引っぱっていくわけにまいりませんので、所々方々にそういうような共同処理施設をつくる必要が生じてくるわけでございます。このようなものに事業団事業をしてまいる、かような構想でございます。
  69. 門司亮

    ○門司委員 構想は大体わかっているのですが、しかし実施の面でそういうことをやれるかどうかということです。問題になりますのは、そうなってくると、地方の自治体との関連性が非常に大きな問題になってまいりまして、地方の自治体ではおのおの下水道の計画を立てて下水の問題を考えております。したがって、こういう事業団でやる部分に対して、地方の自治体の側から見れば二重にそういう組織ができるのではないかと考えられます。これはなぜかといいますと、工場といってもかきね一重で離れている工場地帯もありますし、かなり遠いところに工場のあるものもございます。これらをある程度やはりまとめなければならないと思う。したがって、そういうものが厳密になって、たとえばこの地域ならこの地域、一定の区域だけの排水をここに持ってくるのだということになれば、工場の汚水だけを持ってくるのだということになれば、それはそれでよろしいかもしれない。しかし、それも少し離れていれば道路は掘らなければならないし、別個の下水の管を入れなければならないと私は思う。そうなってくると、地方の自治体の立場からいうと、結局二重の施設が当然行なわれるような形が出てきやしないか。だから、この機会に聞いておきたいと思いますことは、一体どの程度の集団地域までがこの法律の対象になるかということでございます。
  70. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 いまお話のございましたような場合に、管を相当な遠距離引っぱって共同処理施設をつくる、これが事業団事業になるわけでございますが、それらの費用は地方自治体ではございませんで、あくまでもでき上がった施設、その管を含めて企業側に持たせるということでございます。したがいまして、その地方の下水道計画と地方財政の面でのダブリはございません。ただ、あまり遠距離でございますと費用が非常に高くなりまして、企業側が持ち切れないという問題がございます。したがいまして、非常に効率が悪いということになるわけでございまして、そのような場合には、そのような工場を集団的にどこか一カ所へ移転させるというようなことも考えざるを得ないと思っております。一般的にはできるだけ一カ所へ集約して処理場へ集めたいわけでございますが、お話のとおり、非常にばらばらで離れておる場合には、その処理は一カ所へ集めるということだけでは解決しないという事態は、仰せのとおりでございます。その点で工場の集団移転ということを考えておるわけでございます。
  71. 門司亮

    ○門司委員 どうも話だけはそういうことで済むかもしれませんが、地方の自治体は自分のところで出てくるそういうものの処理はしなければならないことは、法律でもちゃんときめられているのです。ただ、こういう法律のできてくるということは、先ほどから話もありましたように、現行の法律が十分に守られておらない。そこでしかたがないから、こういうものによって無理してやらなければできないのだろう、私はこういうことだと思うのです。現行の法律が十分に守られておれば、こういうものは必要はなかったかもしれない。しかし地方の自治体としてはよかれあしかれ、その地域におけるこれらの問題の処理をしなければならぬことは、当然の責任でありますからやらなければならぬ。ところが一方においては事業団でおやりになる、一方においてはそれはやれないというようなことで、私は地方の自治体からくる問題は必ずしもそう、感心したものではないと考えるが、しかしそれはそれといたしておきます。  その次に聞いておきたいと思いますことは、都市計画との関係であります。先ほど細谷君から、それからこの間佐野君からもいろいろ聞かれたと思いますが、地方の自治体の都市計画というものとの関連性はどこで結びつけようとするのでございますか。いまのお話のように、新しい地域を求めてそこに集団移転をするということになりますと、この法律だけでは済まされないと思うのです。これは建設省もむろん関係がありましょうが、一番大きな関係を持つのは地方の公共団体、これはこの法律の中で地方の公共団体と、都道府県知事と相談するというようなことがどこかにちょっと書いてありますが、そういうことで一体都市計画との関連性を、工場移転の際にどういう形で一体求められようとするのか、新しい工業の埋め立てその他でもするということになるのか、あるいは既存の土地を買収してやろうということになれば、それはいまかなり大きな問題がありますよ。それと同時に、実際の問題としてかりにそういうことが考えられたとしても、資本主義の社会で、営業する人の気持ちからは、単に公害防止のためだけに工場を移転しなければならないというようなことでそろばんが合うか合わぬかということになると、私はかなり大きな問題が出てくると思います。こういうことについてどういうお考えですか。
  72. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 確かにお尋ねの点はかなり基本的な問題であろうと思います。ことに工場移転等に際しまして、それが地方の都市計画に合わないものであってはならないわけでございまして、したがいまして本法の中にも、事業団計画の樹立にあたりましては地方自治体と十分実施計画を協議をしてやらなければならぬ、知事と協議しなければならぬようになっております。知事は関係市町村長の意見を聞いて計画に参画するようになっておるわけでございます。また中央におきましても、この法律の事前打ち合わせの際にも建設省と十分打ち合わせるという扱いをする約束をいたしておるわけでございますが、これらの事業を実際に実施していく上で地方の都市計画というものと特に関連が深くなりますのは、新産都市並びに工業特別地域の計画設定の際でございます。その際にこの事業団はどの部門を受け持つか、どのような計画を立てていくかというような場合には、特に都市計画との関連は深いわけでございます。そのようなものにつきましても、ただいま申し上げましたような計画を立てますし、また新産都市、工業特別地域の計画設定に際しても、十分それらの配慮をした上で計画設定をいたしたい、かように考えております。
  73. 門司亮

    ○門司委員 私が聞いておるのはそのことではないのです。既設のものをどうするかということです。これから計画するのは計画すればいいのですから、何も別にここに来ていけないということになればそこに行きはしません。いま方々におるんですね。既設のどうしても移転しなければなかなか問題が解決つかないようなものを移転させようという場合です。この間からの質疑応答の中に出てきております新産業都市ということをあまり言っておりません。そうなってまいりますと、これを強制する法律はどこにもない。この法律だけで強制できるかというと、この法律だけではとても強制できやしません。汚水の関係からこの工場はここに行きなさいといっても、できるものじゃない。移転の費用というものも土地の買収や何かでとてもかかるので、そう簡単には出られない。これを政府が立てかえてやるというならそれでいいかもしれませんが、二十億や三十億の金ではどうにもならない。それと同時に、さっき申し上げたように、政府がやってやろうとしても、資本主義社会のそろばん玉で仕事をしておる限り、そう簡単に工場が動くとはとても考えられない。一つ工場を動かすとすれば従業員の宿舎まで全部持っていかなければなりませんから、そう簡単にはいかないと思う。それをこの法律だけで強制できますか。
  74. 馬郡巌

    馬郡政府委員 この事業団の行ないます工場の移転に際しまして移転団地を造成して、公害地域から地方への工場移転を促進する材料にいたそうという考え方でありますが、この移転先につきましては、従来から通産省で各都道府県と御相談いたしまして、工場適地というものを選定いたしております。大体その移転先というのは、工場適地というふうに従来指定しております地域を考えております。もちろんこの工場適地を指定いたします際には、その近所の各都道府県におきます大きな都市計画と申しますか、開発計画というワク内で検討いたしておりますので、その関係で十分都市の土地利用計画等との調整はつき得るものと考えております。  なお御指摘のとおり、工場を移転させるということはきわめて困難な、非常にむずかしい問題を幾多はらんでおるかと思います、従来中小企業団地という形で過密都市から地方への移転をやってまいった例もございますが、これは非常な努力を要することでございますが、現実的には、たとえば隅田川周辺におきまして現在非常に排水の問題で困っておる問題がございますが、昨年この法案を検討してまいりましたときから、たとえば隅田川周辺の工場の方々といろいろ御相談を申し上げて、現在においてはかなりの熱意をもってこの案を進めていきたいという希望もある程度あるようでありまして、今後さらにこういうものにつきましては経営者側と相談づくで進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  75. 門司亮

    ○門司委員 私が聞いておるのは、実際にこの法律で強制ができるかどうかということなんですよ。強制ができなければ、なかなかそう簡単に動くものではありません。金を立てかえてやるといったところで、それを払う権力、見通しがなければそう簡単に動くものではありません。じっとしておればそこで仕事がやれるんですから、移転をすることのための費用はおれのほうで立てかえてあげるからあとで払えといっても、その能力がないものはなかなか行きません。この間も佐野君がかなり詳しく聞いておるようでありましたが、いわゆる一九四五年ですか五〇年にできた英国の工場配置法などずっと一わたり読んでみますと、これには英国はかなり力を入れて、しかもほとんど全部が通産大臣の権限でありますが、日本のように厚生省のことはあまり書いてありません。産業関係で移転するのであって、いわゆる工場の生産を中心として移転するのであって、こういう形の、公害を中心とした移転ではないのです。だから容易にやり得るのです。ところが公害を中心としていくということになりますと、これはさっき申し上げましたように、非常に大きな採算の関係が出てくるんですね。あの場合は公害でなくて、工場をあまり過密都市にこしらえちゃいけない、それから同時に労働者の多いようなところに工場を持っていく必要があるんだという、いわゆる生産の関係と、高度の政治性からきた一つの移転計画でありましたから、ある程度の成果を得たと思うのです。しかしこの法律は、何といっても副次的、ということばを使ってはどうかと思いますけれども、実際仕事をしている人から見れば、副次的な仕事なんですね。生産とは別な仕事なんです。いままではそういうものに金をかけなくてもいい——いいことじゃありませんが、過ごされてきた。これから先はこういう処置をしなければならない。そのために工場を移転する、移転の費用はおまえのところで払え、おれのところで一応立てかえてやるといっても、それが容易に行なわれるかどうかということについては実は疑問があるわけです。そういう安易な答弁では、一体これがほんとうに完全にできるかどうかということに、私は非常に大きな疑問を持ってくるんです。もう少し問題の核心に触れた、すっきりしたことをひとつこの機会に聞かしておいてもらいたい。もし工場をどうしても移転しなければならない、これは産業や何かの関係じゃありませんよ、こういう公害からくる一つの問題としての立地条件上、ここはいけない、これをかわれという命令を政府が出して、それをだれの費用でどういう形でおやりになるつもりなのか。その計画があるなら、ひとつこの際発表していただきたい。単に話し合いだけでできるものではない。
  76. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 ただいまお話のございましたように、この法律では移転を強制することにはなっておりません。ただ問題は、御承知のように、強制して立ちのかせることは実際問題として困難でございますので、まず移転をさせるような環境と、政府の財政投融資等による援助によりまして、できるだけそういう方向に持っていこう、こういう考え方に立っておるわけでございます。と同時に、それでは現在の段階において、たとえば隅田川の地区から工場を別のところに移転しようという盛り上がりが全然ないかというと、ただいま立地部長から申し上げましたように、そういう業種もあるわけでございます。いよいよこの事業団法がもし国会を通過いたしました暁には、その問題をさらに具体化するように、この事業団はその実行機関としてひとつ積極的にそういう方向に業者と話し合いを進めながら進めてまいりたい、こういう法律であります。
  77. 門司亮

    ○門司委員 どうもそれだけでは納得するわけにいきません。それは、産業の形というのは変わってくるんですよ。いま日本というか世界全体を通じて申してよろしいと思うことは、一つは石油に関係する化学産業だと思う。一つは自動車関連の産業だと思う。いわゆる機械産業の中でもことにエンジン関係、その次に私は原子力関係の産業だと思う。これは世界のこうした非常に大きく動いております波の中で、移転をしなければ、商売をかえなければならない実情に追い込まれている産業はかなりたくさんあると思う。新しい産業に転換をしなければならない諸君の中には、あるいはそういうことを考えている諸君がおるかもしれない。これは産業と生産の推移によって変わってきます。紡績産業が綿から糸をとるようなこと、あるいは絹糸でどうというようなことは以前の話で、いまは石油化学産業が出てきて、石油炭業の中ではすでにベアリングをこしらえている。繊維までこしらえている。こういう形で、産業の形はだんだん変わってまいります。したがって工場施設ということについては、それに即応して変わらなければならないことは当然であります。だからそういう機会にどこかへ移転しようという意見が出てくることは当然であります。もうここでこんな仕事をしておっても商売にならない、いい商売にかわりたいというのがたくさんあると思う。それらの諸君の問題は、こういう汚水関係あるいは排気ガス関係からくる移転の構想ではありません。産業自体のもたらす一つ構想だと考えたほうが正しいのである。またそうでなければならないと考える。おまえのところはこういう排水がけしからぬからどこかへ行ったらどうかなんてことで、なかなかいくものではないと思う。だからそういうものとからみ合わせの中から、あるいは移転するものがあるかもしれない。しかしいずれにいたしましても、そういう問題がかりにあったといたしますならば、そういう場合に、さっきのお話のように、都道府県、市町村の問題が当然からんでまいります。そうすると都道府県、市町村の問題というものは、単にそれだけではございません。この法律に基づく移転は、私はなかなか困難だと思うけれども、あんた方のことばを聞いておいていいと思いますが、問題になることは、都道府県や市町村はそれに対する付属したいろいろな設備が必要になってくる。道路もこしらえなければなりませんし、場合によっては学校もまたその付近にこしらえなければならない、人間がふえるということでしょう。同じようなところに置くなら、同じことです。ある程度離さなければならぬ。隅田川のこっち側にあるやつを川の向こうに持っていったって同じことですから、あるところまで移転しなければならぬ。そういたしますと、それについてくるいろいろな問題、地方の自治体の中で受け入れ体制というものがこの法律で十分にでき得るかどうか。新産業都市の問題はこういうことが当然議論される筋になっておりますから、何も問題はないと思う。もし問題があったらそっちのほうが悪い。あったほうが悪い。いわゆる既存のものをどうするかということが、現在のところ問題です。既存のものを移転させようとする地域が問題です。  具体的にもう一つ聞いておきますが、既存のこういう集団の工業地帯から、どのくらいのところに一体移転させようというお考えですか。それは単に設備だけをすればいいなら、隣に移しても設備するだけならできると思いますよ。どういう構想ですか。
  78. 馬郡巌

    馬郡政府委員 さしあたり移転先として考えておりますのは、東京から移転するところを申しますと、首都圏整備法によります市街地開発区域というようなことを考えております。
  79. 門司亮

    ○門司委員 そうするとかなり遠隔の地に持っていく、こういうことになりますよ。首都圏との関連性が出てくるということになると、一体どの辺に持っていって、どの辺に新しい工業団地をつくろうかということになるわけですね。そういうことがこの法律で容易に行なえますか。この法律の構想というか着想というか、これは何とかごまかすということばは悪いかもしれませんが、一時しのぎの当面のこう薬張りみたいな処置としては一応考えられる処置だが、実際に根本的な解決にならないと思うのです。根本的な改革をしようとするのには、かなり国の強い基本法みたいな法律があって、この法律に基づいてこうするんだということにしないと、たとえば首都圏の問題にしても、あれでいろいろな地域が指定されておっても、なかなか今日うまくいっておらない、そういう状態の中で、いまの首都圏との関連性などというものを考えて移転させるということになると、かなり遠隔の地に持っていかなければならぬ。こういうことが現実の問題としてやれますか。  これはひとつ考えておいてもらいたいと思うことは、こういう法律をつくるならつくるように、いまのお話のようなことがあるならあるように、公害基本法なら基本法というようなものをはっきりこしらえて、そして公害については事業主が責任をはっきり負う。もしその責任を負い切れなければ工場の認可をしないというような、親法がどこかにはっきりある。それに基づいて移転を強要するなら強要していくというような形がとられなければ、私はこの法律だけではどうにもならぬと思うのだが、公害基本法というような法律をおこしらえになる意思が一体あるのかないのか。
  80. 徳永正利

    ○徳永政府委員 公害対策につきまして国の基本的な方針を明確に出すことは、きわめて重要なことであろうと思います。この公害基本法的なものの構想につきましては、将来におきまして前向きの姿勢で検討をいたしたい、かように考えております。
  81. 門司亮

    ○門司委員 それからもう一つこの機会に基本的なもので聞いておきたいと思いますことは、各地方の都道府県に条例があります。この条例との関係はどうなります。この法律ができたあとの条例との関係は……。
  82. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 今回当委員会で御審議をいただいております事業団の法律は、地方の公害防止の施策に直接刺し合う筋合いの部分はあまりないと思います。公害の基本的な政策の、ばい煙の排出の規制等に関する法律とか、公共用水域の水質の保全に関する法律等において、地方で公害に関する条例を設けた場合に、その内容で地方の条例との関連を生ずるものはございますが、この事業団を設置するための当法律と既存の地方の公害に関する条例、ないしは将来そういうことを地方で条例で考えていこうとする場合の内容とは、ほとんど関連するところはないように思っております。
  83. 門司亮

    ○門司委員 私が懸念いたしますのは、この法律をつくらなければならない原因が——ここに、私のところにありますのは、神奈川県の条例と横浜市の条例と川崎市の条例と、それから各国のいろいろなものでございますが、こういうものが完全に行なわれておれば、私はこういう問題は起こらないのじゃないかと考える。ことに、ばい煙に対します法律など見てごらんなさい。幾つあるか、一つ、二つ、三つ、四つ、五つあるのですよ、ばい煙関係の国の政令あるいは法律、規則というのは。これでもこういう法律をつくらなければならぬほど、うまくいっていないのです。  そこで問題になりますのは、こういう法律をこしらえるならば地方の条例がもう少し厳格に守られるようなものにするか、あるいは地方の条例の中にこの法律をこなせるような条例を入れていく必要がありはしないかと私は考える。国はこういう法律をこしらえてきた、地方条例ではこれについて何にも考え方はない、ただ国の法律に基づく条例ができているだけだというのでは、この法律自身が完全に動くかどうかということに疑問がある。なぜ疑問があるかといいますと、条例がありますから、この条例に違反しない範囲においてちゃんとばい煙も処理されておる。汚水も処理されておる。とするならば、この法律の適用は要らないわけです。その関係はどうなりますか。この法律ができれば、これで一切を処理しようというのか。あるいは残された部分については、やはり条例改正というようなものが私は必要だと思うのだが、そういうことはございませんか。
  84. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 従来の法律とこの事業団事業との関係、あるいは地方の条例との関係でございますが、この事業団事業は国の公害防止に関する法律に基づく各種基準、あるいは地方の条例に基づきます公害防止のための基準、その基準を厳格にといいますか、定めのとおりに実施することの裏打ちの意味合いで設けるものでございまして、したがって、国の法律が法律の定めのとおり行なわれ、地方できめられた条例がその条例の定めのとおりに行なわれやすからしめるために、企業側が完全に実施するように、先ほど来申しておりますように、当然企業が独自で、自分でやるべきことでござまいすけれども、どうしてもむずかしいものをこの事業団が援助をしていくということでございまして、従来の法律、条例を十分そのとおりに行なわれるようにすることが目的でございます。
  85. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、こう解釈しておいてよろしゅうございますか。この法律ができても、条例は条例でいままでどおりでよろしいというふうに解釈しておいてよろしゅうございますか。
  86. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 別にこの事業団の法律ができたからといって、地方の条例を変えるとか、国の法律を変えるとかいうことには関係はございません。
  87. 門司亮

    ○門司委員 そうなってまいりますと、あらためて聞いておかなければならぬと思いますことは、地方にはおのおの条例があって、これにかなりの神経をとがらせて、そしてできるだけこの条例が守られるように、法律が守られるように、実は一生懸命でいまやっておるわけなんです。ところが国がこういう施設をするということになれば、あるいはこれは代行するにいたしましても、行なっていくということになれば、条例自身の適用範囲が減るとかふえるとか、これは問題なかろうと思いますが、具体的な問題として条例の実行が非常に鈍ってきはしないかと私は思うのです。なぜかといいますと、きょうまではやかましいことを言って条例に従おうとする、ところが事業団がきて来年はやるのだ、再来年はやるのだということになれば、何を好んでたくさんの費用をかけて新しい設備をするかというような問題が私は必ず起こってくると思う。それと同時に、そういうことからこの条例の実行が不可能になる危険性が出てくると私は思う。これらの問題を一体どするかということ。  それから重ねて確かめておきたいと思いますことは、今日、この法律の適用の範囲は、先ほど地盤沈下の問題がどうこう言われておりましたけれども、これから先の地盤沈下をどうするということは、こんな法律をつくらなくても、ほかの法律でも幾らでも取り締まれる。だから、この法律の適用範囲は単に工場の廃液と、それからばい煙関係である。いわゆる大気汚染の一部分ですね。これは大気汚染の一部分ですよ。さっき私がちょっと読みました世界の記録を見てみますと、煙突から出る煙の大気汚染よりも、自動車の排気ガスやその他のほうが大気汚染ははかるに多いと書いてある。これが事実だとすれば、結局はるかに多い大気汚染の部分というものは、この法律ではいかんともしがたいということになろうかと思います。それからそのほかの問題としては、結局騒音についてもこの法律ではいかんともならないのじゃないかというようなことが考えられる。それからもう一つさっき言いました飛行場その他のような問題、これは公害であることに間違いがございません。しかし、これらの問題はこの法律の適用は何ら受けられない、こういうことに解釈しておいてよろしゅうございますか。あわせて御答弁願っておきたいと思います。
  88. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 実は私どもがこの事業団をつくりました構想は、現在の法律の規定並びに地方の条例の規定によりまして、企業側が強制的に公害防止施設をしなければならないとされておることを順守するのを、この事業団がよりしやすからしめることを目標に考えたわけでございまして、もはや、金がないからそういう施設をつくらないということは言わせないといいますか、そういう場合にはこの事業団が援助するということで、大いに促進されると思っておったわけでございますが、また先生のおっしゃられたように、事業団事業量が少ないから、事業団をあてにしておったところが、事業団からなかなか融資ワクが入ってこないとか、あるいは事業団事業に取り入れてもらわなかったということを言いわけに、むしろ国の法律や条例が守られなくなるおそれがあるという御注意をいただいた点は、私どもとしても十分これから考えてまいらなければならない点かと思います。それらの点は第一に公害対策に対する姿勢が、本来企業が独自でやるべきものであるという基本的施策を強く進めるということ、並びに事業団そのものができるだけ資金量をふやして事業の範囲を広くしていく、資金が足りないというようなことのないような努力をこれからしなれけばならない、こういう点で私どもとしても将来十分考えてまいらなければならないと思います。  なお、この事業対象が大気汚染と水質汚濁防止だけであるかという点でございますが、これは法律においても、その他の公害防止に対しても対象となり得るようになっておりまして、私どもとしては、できるだけ広範囲にこの事業団事業に取り入れてまいる努力は続けるつもりでございますが、なお、問題の性質によりましては、たとえば自動車の問題というような今後大きく取り上げられるべき公害対策は、また別途の対策を国として考える必要があるわけでございまして、この事業団をつくるだけで公害防止の施策の大半がなれりというつもりは私ども毛頭ございませんで、さらに今後努力してまいるつもりであります。
  89. 門司亮

    ○門司委員 ごく概略の構想だけはわかりましたが、そうなってくると、もう一つこの機会に厚生省に聞いておきたいと思いますことは、これらの産業公害からくる個人的な損害です。これに対する賠償の責任が成立するのですかしないのですか。これはこの法律をつくる一つの根底として私は聞いておきたいと思います。いわゆる大気汚染による——先ほど細谷君から聞かれた、どこですか、宇部ですか、いままで日本で一番悪かったのは宇部だといわれておりましたが、このいわゆるぜんそく、この表を読んでみますと、大気汚染からくる人間の死亡率というのは全く正化例しているんですね。大気が非常に汚染しておったときと、こういう肺炎、気管支炎の死亡率の関係というのは、全くグラフは合っているわけですね。そうだといたしますと、この場合の事業主の責任というのは、一体どうなるのですか。これは明らかにこのグラフを見てみますと、宇部の大気汚染と肺炎、気管支炎の死亡率の関係ということで、月別、年別にずっと書いてありますが、非常に大気汚染の悪かったときは死亡率がやはり高くなっているんですね。低いときには低くなっている。全く同じようにデータが出ておる。こういう場合の問題として、個人が悪い土地に住んでおったからしかたないのだということで、賠償の責任というものはどこにもないのかということであります。
  90. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 原因が明確でございまして、たとえば工場一つでございまして、それからその周辺に何らかの人体の、あるいは洗たくの場合もございましょうし、その他いろいろの障害が生ずるかと思いますが、明確な害を生じた、それに対して損害を補償するというような問題が生じますれば、これはその単一の原因たる工場側がその損害を埋める責を負うことでございまして、法律でいえばおそらく民法上の問題になるかと思います。ただ、しばしばしいわれます公害というのは、発生源が非常に多種多様でございまして、また、その公害を出す度合いが必ずしも明確でないわけでございます。たとえばガスの種類にいたしましても、量にいたしましても、非常に複雑でございまして、それらが相寄りまして、たとえばぜんそくを起こすというような現象になりますので、理論的には加害者が当然その責に応ずべき筋合いでございますが、さて、その費用負担となりますと、負担区分、責任の範囲、場合によりますと、各家庭のふろの煙までそれに参画いたしまして、総合的に大気汚染の原因をなすというような複雑な要素でございますので、これを直ちに損害賠償という形で取り上げることは、具体的に非常にむずかしいことでございます。したがいまして、公害全体として企業側に個々に公害防止施設を負わせることは、強く国が規定すべきと思いますけれども、生じました各種の障害を、これを明らかに公害であるということの判定も容易でございませんし、また、その責任分担も容易でないという現状でございます。しかしそれは今後私どもとしては十分考えてまいらなければならぬ問題と思いますけれども、当面は非常にむずかしい問題で、ちょっとこういう方法がというわけにはまいらぬわけでございます。
  91. 門司亮

    ○門司委員 これは単に個人個人の死亡率だけではありませんで、たとえば海岸の魚がとれなくなったとか、ノリがどうなったとかいう場合の補償は、これはどうなんですか。明らかにその地帯から出てくる汚水に関係するということに間違いがないのでありまして、汚水を流す範囲というものも大体きまっておるのでありまして、家庭から出た水も汚水だといえば汚水ですが、そうでない場合もかなりある。そういうものについても、やはり従来いろいろ問題があります。足尾の鉱毒事件のような有名な問題もありますが、一体政府は、というより厚生省は、どういうふうに考えておりますか。
  92. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 このような被害の解決を法的に解決いたしますと、その障害とか、その責任の度合いというようなことをだんだん深く追及いたしますと、はっきりしないようになってしまうわけでございます。したがいまして、多くの場合、話し合いである程度補償するということが各地で行なわれておるわけであります。できるだけ話し合いによってそのようなものが円満に処理され、工場側も自覚をし、住民側もその事態を十分認識して、話し合いによって解決されることが、今日の段階では一番望ましいことでございますし、また、各地においておおむね円満に解決される方式は、その方式でやられるわけであります。たとえば熊本県における工場の排水による問題、あるいは三重県における海水の汚濁による漁業の被害の問題等におきましても、話し合いがある程度行なわれておるようでございますが、方向としては今日はそのようなことで、できるだけ被害を受けた方と工場側と話し合いで解決できることが望ましいと考えております。
  93. 門司亮

    ○門司委員 最後に聞いておきたいと思いますが、この法律で、御承知のように、問題のときには知事に相談する、知事は市町村長に、こういうふうに書いてありますが、この場合に、知事や市町村長は意見を言うことができるだけであって、拒否権がないかどうかということです。これはぶつかったときに非常に大事な問題になると私は思いますが、そういうことはどう考えておられますか。
  94. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 法律上、協議ということばが使われています。協議というのは、ほとんど協議が整わなければ計画が成り立たないということを意味しておりまして、十分都道府県知事と計画を打ち合わせていくことでございまして、また、地方自治体の知事が了承しない計画はとうてい実施はできないと私ども考えております。
  95. 門司亮

    ○門司委員 そうだとするともう一つの問題が出てまいりますのは、これはどこまでも知事が対象になっておりますが、実際は、実施の計画とそれから実施の当面の責任は、私は市町村長にあると思いますよ。その場合の市町村長は、ただ、知事から諮問を受けたらそれに対して答えるということだけじゃなくして、私はむしろこの場合は、法律の書き方としても、少なくとも都道府県、市町村と協議をしなければならないと書いたほうがいいのじゃなかったかと思うのです。これは知事に相談をして、知事は市町村長に相談すると、こう書いてある。この辺はどうもこの法律の全体から見て少しおかしいのじゃないか。どう考えても官僚的なものになっていやしないか。知事が相談さえすればどっちでもいい。私は、事業の主体は、なるほど県のやる仕事もたくさんありましょう、ありましょうが、今日の事態からいえば、やはり市町村が直接の関係者になるのじゃないですか。だから、この辺の法文は書きかえたらどうかと思いますが、その辺はどうなんですか。
  96. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 確かに法文上は知事と協議するということで、市町村長との協議というものはございませんけれども、知事はその計画に参画するにあたりましては、十分市町村長の意見を聞かなければならないことになっておるわけでございます。また、この計画遂行に際しては当然、市町村も十分その意見が通った計画でなければ実施はむずかしいことは御指摘のとおりでございまして、知事が十分市町村長の意見を反映した上で意見を述べることを事業団としても期待をし、またそうでなければこの事業はできないというつもりでおりますので、実際の運営上は十分それらの点を考えて実施をいたしたい、かように思っております。
  97. 門司亮

    ○門司委員 ちょうど約束の時間になっておりますので、私はこれ以上聞きませんが、最後に聞いておきたいと思いますことは、この法律の実施、それからこの法律の効果というようなものは、政府の見通しとしては大体いつごろからあらわれてくるかということであります、これは非常に大きな問題であります。  それからもう一つの問題は、それらの地域に対して新しく工場施設ができると私は思いますが、これはよほど規制をはっきりしておきませんと、せっかく一ぺんずっと問題を処理した。ところが、そのあとにまた、それと同じような地域に工場ができてきた。その辺にあき地があれば、やはりこれはこしらえてくる。そうなりますと、結局、この施設はしたが、またいつの間にかもとのもくあみになっておったというような現象がないとは限らない。ことに、資本主義の社会でそれを規制するいまの法律はございませんから、したがって、この計画をし、処置をした地域においては、少なくともそういうあとから工場というものは建てさせない、やらせないんだという強い規制がどこかになければ、結局イタチごっこになってしまうのじゃないかと思います。こういうことはどうなんですか。どこかはっきりしておりますか。これは私はさっきから申し上げておりますように、市町村との関係、県との関係で、密接に地方自治体との間で連絡をとっておきませんと、そういう問題が必ず出てくる。そうして、先ほどから商業地域、工業地域というようないろいろの問題がございましたが、やはり地方の都市計画の中で、この地域に新しい工場を建てようとするときにはこういう関係を持たなければならないとか、あるいは施設に加盟しなければならないとかいうような厳重なものをこしらえておかないと、結局いつの間にかもとのもくあみになって、新しくできた工場はこの仲間に入らない。こういう結果を私はおそれるのであります。そのことのために特に当該市町村の意見というものを十分聞いておかないとえらいことになる、こういう考え方をするのですが、その辺はどうですか。これは規制できますか。
  98. 馬郡巌

    馬郡政府委員 御承知のように、いま首都圏及び近畿圏につきましては、工場の設置につきまして制限法がございまして、首都圏におきましても最近その対象地域をふやしております。近畿圏におきましても近くその法律を全面的に施行することになっておりまして、そのようなことから工場の新設は原則的にはあり得ないものというふうに考えておりますし、また、たとえば隅田川の水質基準にいたしましても、今後新設されるものにつきましては特にきびしい水質基準を定めておりまして、実際上は新しく工場立地することはほとんど不可能なような基準も定めておりまして、こういう法律の運用によりまして御指摘のようなことがないような方向に持っていけるのではないかというふうに考えております。
  99. 門司亮

    ○門司委員 どうもそれだけの答弁では、あまり答弁がばく然とし過ぎておるような気がしますがね。首都圏がどうのこうのと言われるが、実際、いまの首都圏というのは何かやっていますか。首都圏の問題というのは、あなた方がお考えになっておるような、ただ地図の上に何かコンパスでぐるっとまるをかいて、ここはこうだということで世の中がやっていけると思ったら、これは大間違いですよ。私が心配しておりますのはそういうことでなくて、建てさせないという、そういうはっきりした法律があって、そうして絶対にできないんだというなら別の話ですよ。かりに工場が移転したあとには工場は建てさせないというんなら別の話でありますが、単に首都圏が、こうなっておるから、ああなっておるからというような——首都圏が守られておればいまのような公害は出ていやしない。法律が全部順守されておれば、こういう法律は要りやしない。それが順守されてないところに問題があるのであって、私が聞いておりますのは、そういうもとのもくあみになるようなことがあってはならない。せっかくこういう法律をこしらえて国が金をかけてやるというなら、一ぺんそういう地域から立ちのいたあとにはそういう公害は起こらないようにしていく。そういう一定のことを行なっている地域には、それ以外の工場は建てさせない。隅田川隅田川と言われますけれども、何も東京の隅田川対象にして法律をこしらえているわけではない。この法律ができれば、結局全国に適用されるでしょう。全国に適用されるということになると、立地条件については非常に大きな問題がある。海岸に近い地点における汚水の処理なんというものは、わりあい簡単です。しかし海岸から離れておる遠いところの汚水の処理というものは、非常にめんどうです。いいかげんなものを流されたのでは、下流の農民も困りましょうし、すべての人が困るのである。いわゆる被害の区域というものについては、立地条件によって非常に迷うのであります。だから単に隅田川だとかあるいは東京だけなら、何も私どもあまり議論する必要はないと思う。隅田川の問題にしても解決しようと思えば、ほかに解決の方法がないわけではないと考える。しかし工場の立地条件というものは必ずしもそうではない。その立地条件からくるところのこれらの被害というものは、必ずしも一定はしておりません。しかし国の法律ができた以上は、全部の府県にこれを適用しないわけにはまいりません。またわれわれもそう考えないわけにはいきません。だから私どもは聞いておるのであって、亜硫酸ガスを出す工場が悪いというなら、亜硫酸ガスを出す工場は、新しく埋め立てをするか、無人島にでも持っていってこしらえれば、大気汚染の問題はある程度解決するかもしれません。しかしそんなことは実際上やろうといったってできやしないです。ことにこの法律の適用の範囲というものが、さっき申し上げましたように、公害の全般ではないということであります。単に工場の煙突から出るばい煙関係と、そこから出る廃液関係だけしかこれには適用がない。あるいは多少振動、騒音というようなものもあるかもしれない。しかし、そういうものだけが私は今日の産業公害とは考えられない。産業公害というのは私はまだ非常に範囲が広いと思う。公害の地域というものも非常にむずかしいと思いますけれども、かなり広い。それらの問題について、いまのような答弁では私は承知するわけにまいりません。重ねて最後に聞いておきたいと思いますことは、さっき申し上げましたように、この法律ができたら、何年ぐらいの後に大体この法律の目的とする時期がくるようにお考えになっているかということであります。
  100. 徳永正利

    ○徳永政府委員 御協力によりましてすべり出す態勢にあるわけでございまして、予算の面におきましても十分なものではございませんし、いまここで大きなほらを吹くわけにもまいりませんが、まあ来年後半ぐらいからはこの実効をあげたいという決意でおるわけでございます。
  101. 門司亮

    ○門司委員 どうもそういう答弁を聞いておると何だか——これは一部分でしょう。これごくわずかな部分であって、何も日本じゅうの公害がなくなるというような問題ではないと私は思うのです。だから私が聞いておりますのは、一体この法律ができてどのくらいたてば法律の目的が達せられるかということであって、ただ予算で、二十億ばかりの金でどうにもならぬくらいは私も知っているんですよ。だからそういう見通しが一体立っているかどうかということです。  それからもう一つ、ついでにといいますか、最後に聞いておきたいと思いますことは、その他の公害ですね。その他の公害も、もし通産省にしてもあるいは厚生省にしても、ほんとうにその他の公害をなくするということを——この法律には限界がありますから、それ以上のものについてどういうふうにお考えになっておるか。  それから、通産大臣がおいでになりましたから聞いておきますが、この種の法律は実際は厚生省の管轄ではないと私は思うのです。それでは基本的には片づかぬと思う。少なくともこれを片づけようとすれば、通商産業省が出てきて産業的の立場からものの処理をしていかないと、いまの資本主義の社会においては私は困難だと思う。厚生省の仕事というのは、こういう規制をするようなものでなく、出たものをどう処理するかというようなことは私は厚生省でよろしいかと思います。しかし少なくともこういう形で生産の工程、工場あるいは事業所というものを規制していこうというのには、厚生省の力ではどうにもならぬと思う。これは厚生省の諸君には悪いかもしれませんが、データーを出されることはけっこうだと思いますが、少なくとも通産省がいわゆる産業政策の一つのあらわれといいますか、一環として、ちょうどイギリスの工場配置法はイギリスの通産省がやっておるようでありますが、そういう形でないとなかなかものは片づかないというふうに考えておりますが、通産大臣はどうなんです。私のところだけでやるというわけにはなかなかいかぬと思いますが、ものの性質は私はそうだと考えるのです。そうしないと結局突っかけもちになって、自治省も建設省もみな出てきてやるということになると結局はものにならない、こういうことになりますが、通産大臣どうですか。これはあなたのところで引き受けて一切やるということのほうが私はいいと思うのだが、そういうことになりませんか。
  102. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 公害問題の処刑についての基本的な考え方は、社会開発と経済開発の調和ということを総理からもお答えを本会議場で申し上げておると思うであります。そういう調和の見地からいたしますと、通産省厚生省共管で、役所がまず調和をしていくと非常によろしいのではないか。私どものほうの立場からする見解見解としてございます。お話しのように工場に対して協力をもとめるとかいろいろございますが、今回この法案共管として出ておるところに非常に妙味があるのではないかと思います。
  103. 門司亮

    ○門司委員 どうもいまのような答弁ではあまり妙味があるということは言えないでしょう。ほんとうに真剣に考えてもらいたいのですよ。それでは、これが一体どこから発生しているかということですよ。厚生省で発生しているのではありませんよ。これは通産省の管轄である工場あるいはその他の事業所の中から発生した問題ですよ。だから基本的にはすべてこれは通産省責任を負うべきです。社会開発ということばはどういうふうに使われるかわかりません。一九六〇年の国際連合の会議で使われた用語の意義というものはかなり広いものであって、単に社会開発ということだけで問題を片づけるわけにはいかぬと私は思う。この問題は、ほんとうの基本的な措置というのは、何といっても産業経済が中心になってこういった問題が出てきているのですから、工場を認可するとき、認可ということばはどうかと思いますが、監督する部面というのは厚生省でなくて通産省だと私は思うのです。だから所管はあくまでも通産大臣のところに置いて、通産大臣工場その他の監督をすることのために大きな一環として当然取り上げる問題だ。これを、まず役所が協調と言ったって、大臣同士は協調できるかもしれませんが、下のほうはなかなかそうはいきませんぞ。これは日本の一番悪いくせですから……。  私が最後に希望として申し上げておきたいと思いますことは、この法律の主管をどこにするかということを政府ははっきりして、少なくとも私がいま申し上げましたように、産業公害と書いておる以上は、やはり産業を中心としてものを考える、通産省がこの全責任を負ってやるべきである、そうしてそれにその他の意見も聞かれることは別にむずかしい問題でもないし、当然だと思います。そういうことだけをひとつ私ども意見としてお考えを願っておきたい。  もう一つは、これらの題についてはできるだけ基本法というような親法をひとつこしらえておいてもらいたい。そらして公害の範囲だとかなんとかいうものを広げて、全体の公害を除去することにひとつ努力をしていただきたい。この法律だけで公害がなくなったとはどうしても考えられませんので、公害自体の定義、公害自体の取り扱いというようなものを規定する基本法というものはどうしても必要じゃないかということが考えられる。その点呼についてもひとつお考えを願っておきたいと思います。  これで終わります。
  104. 保科善四郎

    保科委員長 関連質問を許します。重盛寿治君。
  105. 重盛壽治

    ○重盛委員 基本的な問題はいろいろ各委員が伺ったので私は申し上げませんが、ただ一言一言うと、この法律はつくっても、実際には動きのとれないものになってくるのじゃないか。つくらぬよりはいいかもしれない、同時にこれから新しく開拓されていく新産業都市のような場合には、あるいは若干の役立ちがある。しかし、いま隅田川云々というようなことを言われたが、この法律ではたして隅田川の周辺の水の汚濁が直ったり、工場の配転ができたりする見通しがあるのかないのか、その点をひとつお聞きをしたい。  同時に、時間があまりないから一緒にお聞きしておくが、隅田川周辺で一部の事業体が越してもよいのだというようなことを言われておったというように聞いておるが、その事業体は一体何で、どの種類であるのか。  それから援助する援助するといっても、二十億ぐらいの金で何の援助もできませんよ。しかしそういう反面隅田川周辺には、私が本会議で申し上げたように、一万戸からの弱小企業があって、これは自分の力では公害対策なんかできないような事態に追い込まれておる。それがほとんど九九%というほど追い込まれておる。こういう問題に対してどのような措置をとろうとするのか、ひとつ基本的にお聞かせを願いたいと思います。
  106. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 具体的に隅田川の例で仰せられましたのでお答えいたしますが、公共用水域水質の保全に関する法律に基づきまして、隅田川の水質の基準が昨年つくられたわけであります。一定の猶予期間を置いて、隅田川周辺の工場排水等はその基準以下に落とさなければならないことになったわけでございます。ただ具体的の問題としましては、それはなかなか容易でないわけでございまして、明治時代から長年そこに居を占めておる工場もございましょうし、住宅のほうがあとからやってきたという場合、これは相当感情問題にもなろうかと思うわけです。また昔であれば、かりに隅田川へかなりきたない水を流しましても、工場の数が少ないということから、先祖代々何ら文句をつけられなかったのに、にわかに、その数がふえたからといって、それを相当な金をかけて直さなければならないというのは不合理であるというような、工場側の感情的な問題もございましょうから、法律上の基準で単にいつ幾日からこうしなければ工場をとめてしまうというような扱いをしてみたところで、実際の解決はなかなかできないという事態が起こるであろうということを私どもは心配いたしておるわけであります。  その猶予期間は二年でございます。したがって、法律に基づいてこれを処理するということであれば単純でございます。また企業の中で、自力をもってその期間に排水処理を考える者もございましょうけれども、中には敷地一ぱいにうちを建ててしまって、処理場をつくる場所もないという事態もございましょうし、また経済的に行き詰まった者もございましょうから、実際その法律の規定どおりに運用され、隅田川がはたしてきれいになるかということは、実際上は非常にむずかしい問題であろうと私どもは心配いたしておる次第でございます。  しかしながら、これが強く実施されなければ、公害は、法律を幾つつくりましてもちっともよくならない、やはり法によって規定せられましたとおりに実施される努力を政府としてはせざるを得ないということから、法のきびしい施行を努力すると同時に、その法に従って工場側も努力しやすくするようにこのような事業団考えたわけでございます。したがいましてこの事業団は、他面法律上の強い規制をすると同時に、工場側に対してしやすからしめるという両面の意味合いをもって推進しようとするものであります。  ただ、はたしてあらかじめ具体的に考えましたとおりにいくであろうかという御懸念を先ほど来いろいろ承っておるわけでございまして、私どもとしても、この事業が非常にうまくいくというふうにするためにはかなりな努力を必要とする、実際面では非常なむずかしい問題にも逢着するであろうと思っております。今日の段階ですでに隅田川周辺の基準はできて、実施に移っておりますので、工場側も相当覚悟をいたしておるわけであります。したがって具体的に係官が各工場を歩きまして、いつ幾日までにはきれいにしなければならぬのだぞということはかなり指導をいたしておりまして、工場側においてもまた、世論の意見もありまして、相当な努力をしようという機運も高まっておるわけでございまして、そのような具体的な現実を反映して私ども計画を今回立て、事業団を発足しようとするわけであります。  それではどのような事業場がこれに該当するかということは、今日ではまだ明確には申せません。また移転する工場は何かとか、共同工場アパートは何かということは非常にむずかしい問題でございますが、非常に処理がむずかしい工場対象としてあがってまいりますものは、たとえば皮の工場であるとかメッキの工場であるとかいうものはなかなか自己処理がむずかしい対象であるということを、今日のところでは考えておるわけでございます。
  107. 重盛壽治

    ○重盛委員 いまちょうど皮の話が出たが、皮革業者の人たちなどは、私この前に言ったように、あそこでおやりなさいということを、東京都知事の名前であそこへ住みついてやれるような内約をされてあそこで始めたわけです。さればといって、その公害対策をやる自力はあの人たちにないとは言えないかもしれないが、周囲の環境からいって、下水道も満足ではないし、できないわけです。そういうような人たちを、たとえば先ほどから首都圏の中へ、どこかへ持っていくのだというようなことを言われましたが、どこへ持っていってみても、工場を持っていけば住宅ができるのはあたりまえであって、よほど最初から計画を立てて、ほんとうに抜本的な総合施策を施していかない限りにおいては、これはもうイタチごっこということになってくるわけです。だからこれは、皮革業者の場合がいい例だが、これに許したと同じようなことを、結局はどこかへ行ってやってくださいということを許すわけです。許すその辺はまた住宅ができる。その場合にいまのものを当てはめられるような体制を新しくまずつくっていくことが、何といっても必要であろうと思う。  それから東京は、下水道に流すといったって、私がこの間言ったように、下水道は二五、六%もできていないので、下水道もないような状態のときに、やはりそういう中での公害対策というものをこの人たちにやれるように奨励したって、できないですよ。メッキ工場やなんかの小さな工場は何もできない。そこでどうしても行政指導をしたり、この法律だけでなくて、都自身も協力するような体制をつくっていかなければならぬ。知事と話をするということが先ほどから何度も言われているが、だれが話をするのですか。この事業団責任者がやるのですか。それとも通産大臣がおやりになるのですか。その点一つだけ聞いておきたいと思います。
  108. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 事業団が都と相談をするわけでございます。  なお、この事業団事業考えまして、都自身も四十年度に、この事業の裏打ちの予算を相当程度組んでおるように聞いております。
  109. 重盛壽治

    ○重盛委員 私は、出発が一番大切であって、先ほど門司委員が言うように、事業団理事長か何か責任者になる人を決して侮辱するわけではありませんけれども、やはり大臣の名によってやるような形をいまからつくっておかなければ、知事との話し合いということが困難である。やはり責任者は通産大臣なら通産大臣がなる。と同時に、先ほどから言うように、各官庁のなわ張り争いの中でこういう新しい仕事をしようということは、これは一応画期的な考え方であると思うのです。したがって、これを契機として、こういう問題こそ総合施策をやり、その責任者が厚生大臣であるのか通産大臣であるのか、必ずこの法律に二人の大臣の名を並べておくというような、こういう姿の中では、私は行政指導もできないし、話し合いもできないんじゃないかと思う。抜本的な公害基本法というものをやはりつくっていくべきじゃないかと思うので、もう少し明確にこれの責任者をきめるべきではないか。何か二、三頭の馬車で乗り出すような形で、そのうちには何とかなるだろうというようなことでは、どっちも力が抜けて、大体予算の二十億かそこらしかもらえないものを、あまり一生懸命やったってしょうがないじゃないかというようなことにもなりそうな感じがする。そういうことのないように、特に大臣に御留意を願いたいと思うのです。私が特に質問する時間ではないので、私は大臣一つだけ聞いてやめます。
  110. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 公害問題については、近年に取り上げられてきたのでありまして、そのために御承知のように、この公害規制する法案にしましても、水質保全法は経済企画庁であるとか、工場排水法は各業種の所管官庁であるとか、大気汚染の関係ばい煙規制法であれば通産省厚生省というように、この公害問題がクローズアップされるに伴って、それに対応しての施策を進めてまいったのでございまして、御批判のような点は私も十分感じます。現在、これは御説明申し上げたのでありますが、総理府の公害対策推進連絡会議においてこれらの問題を調整しておるわけでございますが、いずれそういう調整過程を通じまして、もう少し責任体制を明らかにする方途の必要性が強調されてくる。やはり公害問題がまだ施策としては発足して間がないということから、御批判の点も多かろうと思いますが、今後十分御意見は尊重してまいりたいと思います。
  111. 保科善四郎

    保科委員長 堀君。
  112. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣のおいでになる時間があまりありませんから、実は中心の議題ではないのでありますけれども、ちょっとだめを押しておきたいことがありますのは、この公害防止事業団法を見ますと、理事長が一名。理事が三名以内、監事が一名、役員として認められるものは大体五名と思いますが、これまで政府がつくる事業団、公社、公団、いろんなものを政府がつくりますが、つくると、大体共管になっているから、通産厚生の退職をした人がここへ適宜入って理事長になり理事になるのではないか、こういう感じがいたします。そこで、この事業団というのはそういうことがないのかどうか。形式的にはちょいちょい、最初だけはそうでない人がいくけれども、二回からはちゃんと軌道が敷かれたようで、言うなれば、退職名のための受け入れ機関ということになりがちなんですが、この点は政府は一体どう考えているのか、御意見を承りたいと思います。
  113. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 現在全く白紙でございます。白紙でございますが、私として申し上げられることは、実は閣議におきまして、この種の団体ができる場合、その際におきましては必ず、総理をはじめとして閣議で十分意見を統一する。特に総理が裁定をする、こういうように指示を受けておるのであります。でありますから、いま御心配のような点については、今後の問題でございますので、厚生大臣並びに私が十分注意しながら対処していきたいと思います。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 答弁としては、私こういう式の質問をするといつでもそういう答弁なんですよ。現在は白紙でございます。しかし、これはできてしまうと、実はそうなっているんですね。方々のほとんどの例がそうなっている。どうも私どもはこの事業団法を見て、これは悪いことではないのですが、これから私しばらく時間をかけて議論をいたしますけれども、さっきから皆さんおっしゃるように、一体二十億円くらいでスタートをして、将来何億円の金が出るのかわからないけれども、ほんとうに日本の産業公害の対策に役立つようなものになるのかどうか。なるほど厚生省通産省としては、やりましたよという言いわけはこれでできるかもしれないし、ポストはできるかもしれない。しかし、ほんとうの意味の産業公害対策というものにこれが発展する可能性があるかどうかという点については、これから質疑の中で明らかにしますが、はなはだどうも私は心細いといま思っておるのです。せめてそういう退職者のポスト設けたと言われないような措置くらいはしておいてもらわないと、この際この事業団の問題というのはちょっと私問題があると思うのです。ですから、白紙はけっこうです。白紙はけっこうですけれども考え方としては、そういうものは充てないのだという考えであるのかないのか。これはあなたがいま所管大臣であるけれども、いつまでも所管大臣であるわけではないから、いまあなたがここで答えたとおりになるかどうかは別として、責任のある立場として、これはやはり通産大臣が発足にあたっていまのような答えをするということは、私は通産厚生の役人の古手が入るものだと理解せざるを得ない。いまのような答弁では、私はせっかく産業公害対策というものは重要なものですから推進はしていきたいと思う、いきたいと思うについては、そういう世上の誤解を取り除いておくことが最初に最も重要だと思うのですが、大臣いかがですか。
  115. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほどお答えをしたように、単純に白紙ではないわけであります。いま人選について白紙だが、しかし閣議において、こういう新しい事業団ができる場合には、その人選については総理あるいは官房長官のほうにも報告せよ、ということは、これは単純な報告だけでなくて、もう一つ、その人選に立ち入って意見がある、こういうふうに判断してよかろうと思うのであります。ただ私としてここではっきりお答えのできることは、官界から絶対にいけない、これもいまの私の立場で言っては言い過ぎではないかと思うのであります。ですから民間、官界に拘泥することなく、最も適任者を得るのだ、しかもそういう人事については内閣のほうにはかっていくのであるから、御心配の点については万々私はないもの、こう思うのであります。また、私としていま白紙ではございますが、厚生大臣と協議をする場合に、御意見の点は尊重して人選いたしたいと思います。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 これだけで問題を云々するわけではないからいいですが、やはり五名もあるのですから、これは一名くらいはともかくとして、このほとんどがそういう官界出身者で占められることのないように、これは政府としてひとつ十分配慮していただきたいと思います。  それから、この理事長及び理事その他の役員の報酬、それから職員その他の報酬は、給与及び退職手当の支給の基準というので、厚生通産大臣の承認を受けることになっておりますね。この事務費はあげて一般会計の負担でありますから、これらについてもやはり適正な基準にしてもらわないと、どうも事業団その他はややもすると一般の公務員等の基準に比べて優遇され過ぎておるような点が私ども調査ではありますから、この点等についてもひとつ十分な配慮をしておいていただきたいということを要望いたしておきます。  そこで、私、他の委員会質問をしたりしておりましたために、これまでの質問者の話を全部つまびらかにいたしておりませんけれども、まず最初にお伺いをしたいのは、現在年に四兆円ぐらいの設備投資が行なわれつつあるわけですが、それに見合って公害対策費としては大体七、八百億程度のものが使われなければ、公害の発生を防ぐことはできないというような御説明がこれまであったと思います。これからの問題は年に六百億か八百億かの問題でありましょうが、これまでにやってきた設備投資というものは、積み上げますと実に膨大な額に達しておるわけです。そこで、現在各種の法律で公告の排除の対象になる施設が全体としてはどのぐらいあって、それに対する公害防止の措置をしようと思うならば、今日現在の時点で必要な資金は、ラウンドナンバーでけっこうですが、現在これを一挙にやってしまうと仮定をするならば、大体どの程度資金を必要とするのか。今後の問題は大体六百億くらいでわかりますが、これまでの問題は一体幾らあれば一応のめどがつくのか、お伺いいたします。
  117. 馬郡巌

    馬郡政府委員 ばい煙関係につきまして、すでに指定いたしております地域で、最近指定しましたところはまだ届け出が完全に終わっておりませんが、三十九年度中に指定いたしました地区につきまして、その対象施設の総施設が九千二百三十一でございます。水につきましては、ただいまさがしておりますが、ちょっと数字見当たりません。各河川ごとにございますが、たとえば、隅田川あたりになりますと非常に大きな施設数でございまして、約二千近い数字かと思っております。  御質問の、それではこれを全部処理施設をするとすれば一体どのくらいの金が要るかという点でございますが、これは、ばい煙にいたしましても、排水にいたしましても、実は業種によりまして、また業種内部におきましても工場のいろいろな生産の原材料その他の関係で処理のしかたが全部違っておりますし、処理技術の態様によりましても、立地地点によりましても、いろいろばらばらでございます。したがって、個々の施設自体を個別の工場ごとにこまかく検討いたさなければ、これはこういう施設をする必要があるというような結論がなかなか出にくいものでございますので、全体として何億になるかということの全体的な計算はまだいたしておりません。ただ、最近の実績等から見ますと、指定されました地域におきます幾つかの例を見てみますと、これも業種によって非常に違うのでございますが、大体有形固定資産に対しまして五、六%なり、あるいは紙・パルプ等につきましては八%以上というような数字になっております。
  118. 堀昌雄

    ○堀委員 通産省では、全体のいまの設備投資に対して五、六%から八%というのですから、現在日本にあるこれまでの設備投資の総計、これは国全体となればちょっとあれでしょうけれども、私が聞きたいのは、大まかなラウンドナンバーでも、これは一体何兆ぐらいになるのか。これは兆の台なのか、千億の台なのか、五千億程度の台なのか一体どれだけほんとうに必要かというようなめども全然なしにこういうことを始めても、これはかけっくらしたら、片一方がウサギで片一方がカメとすれば、ウサギのほうは昼寝しないですよ。だから行けば行くほど格差が広がるだけであって、解決をするのは、これは百年河清を待つことになるのじゃないかというような気がするので、やはりそういうマスタープランがこういう問題を処理するためにはあってしかるべきではないかと思うのです。それはこまかい計数は必要ないのです。これは通産省厚生省でもどこでもいいですが、当面そういう法律をつくるときに基準をきめたのでしょうから、その基準をきめた中にあるもの、いまのばい煙は九千二百三十一という施設数がはっきり出るのだから、それについてはある程度ラウンドナンバーくらいは私はあってしかるべきではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  119. 馬郡巌

    馬郡政府委員 この九千二百三十一の総施設、これにつきましては実は現在すでに処理施設のあるものもございます。またその程度も非常に高度のものから、あまりそう高度でない、高級のものでないというものまで、非常にバラエティーがございます。したがいまして、個々の施設ごとに一々検討して積み上げていかなければ、実際のところ計算することはできません。したがって個々の施設をずっとながめまして、必要な改善命令を出すような準備もしておるわけでございます。その個々の積み上げを終了いたしますときでなければ、残念ながらその数字はわかりかねる、こういう状態でございます。
  120. 堀昌雄

    ○堀委員 私は昨日大蔵委員会でLPガスの問題をやったのですが、どうも最近、通産省の方に来ていただいてやってみると、やや資料関係が実は不十分なような気がしてしかたがないのですよ。やはり産業公害というものをこれから真剣にやろうというならば、私は何もきっちりしたものを出しなさいということを言っているのじゃないのです、推計でいいのですから、少なくとも推計をして、大体現状ではこのくらいだ、あとは大体設備投資がこのくらいならこうなるという、その程度の見通しもなしに、大蔵省もよくこんなことで予算要求に応じたと私は思うのですけれども、政策として問題を進める以上は、やはりその方向なりめどもなしに、何となく金が要るんだなどというようなことでは、政策にはならないのじゃないか。少なくとも科学的な政策にはなりません。だからいまないものを出せとは私は言いませんが、当委員会としてはこれを一ぺん出してもらわなければ困るのです。出してもらうについては時間をかしましょう。どのくらいあったら、それをマスタープランをもとにして出せますか。大体のラウンドナンバーでけっこうです。五千億、八千億、一兆二千億、こういうかっこうでけっこうです。いつになったら大体のめどのものが出せるのか。
  121. 馬郡巌

    馬郡政府委員 先ほども申し上げましたように、既存の施設にどんなものがあるかということをこまかく分析いたさなければならないというようなこと等もございまして、この数字はなかなか簡単には出てこないと考えております。ただ若干の例をばい煙関係で申し上げますと、鉄の工場でも、たとえば八幡とか、大手の銑鋼一貫メーカーにつきましては、一工場で数十億の金を要するというようなこともございますし、あるいは小さな鍛圧メーカー等になりますと、一億とか二億とか三億ぐらいで済むケースもございます。それから化学工場あたりでございますと、数千万円程度で済む工場もございますので、約九千ぐらいあります工場のうち、その施設の改善を要します施設が一体どのくらいあるかということでございますが、これも施設自体を改修する必要のあるもののほかに、たとえば燃焼管理をよくする、あるいは燃焼いたします原料の石炭の質をよくするとか、あるいはそういう燃焼上のいろいろな技術関係で片づくこともございますし、施設自体をかえなければいかぬというものもございますし、非常に種々雑多でございます。  それからまた、この処理施設としましても、たとえば集じん機のように、処理施設そのものの範囲のものと、それからそう集じん機にかけます前に、たとえば高温度のものは直接処理施設にかけられませんので、温度を一ぺん下げなければいけないが、その温度を下げるための施設というものがむしろ集じん施設と同じくらいの費用がかかるということで、どこまでを集じん施設に入れるかという問題もございまして、なかなか数字的にはむずかしい問題もございますので、相当の時間を要するかと思います。
  122. 堀昌雄

    ○堀委員 相当の時間を要してもやる気がありますか、どうですか。めどもなしにやるというのはやめてもらいたいと思うのです。実際はあなた方のほうにはかまえができてないですよ。私は今度、産業公害事業団には金を出すなと、大蔵省に少しぜんまいを巻いておきますから。——理財局長来ていますか。
  123. 保科善四郎

    保科委員長 理財局から竹内資金課長が来ております。
  124. 堀昌雄

    ○堀委員 資金課長、いまお聞きのような状態で、何が何だかさっぱりわからないのに、やみ夜に鉄砲を撃つようなことで予算要求がされておる。これは私、重大問題だと思うのです。厚生年金還元融資の十億にしても、資金運用部の十億にしても貴重な金です。全体の大きな計画があって、これをこうしていって、こうしていって、いつかこうなりますというのなら、話はわかります。いまの話を聞いていたら、何というか、まっ暗な道の中で、どっちへ行っていいのかわからないようなところを歩けというようなことになるのです。だから、原資自体も非常に貴重な金だし、これは開発銀行からも二十億ぐらい出るようですが、こんな無責任な政策、態度というのでは、私は金を出すのに問題があると思うのです。資金課長どうですか。全然五里霧中の中で金を出していくという出し方は、一体何を基準にして出すか。
  125. 竹内道雄

    ○竹内説明員 今回の公害防止事業団の二十億につきましては、通産省厚生省のほうとも打ち合わせをいたしまして、対象としてさしあたり四十年度に公害防止のために行なうべきものとして二十億くらいどうしても必要であるということで、二十億の予算をつけた次第でございます。お話のような全体の遠い将来の問題については、いまのところ承知いたしておりません。
  126. 堀昌雄

    ○堀委員 さっきから言っておるように、ともかくやる気があるのならやることはやってもらわなければいかぬと私は思うのです。役所は責任がありますからね。政務次官どうですか。いまの通産省の事務当局はやるのかやらぬのか、できそうにもないような話で、はっきりしないんですよ。できないならできないでいいんですよ。できないならできないでいいけれども、それではどういう角度からやるかということであっていいんです。私はこんなことは実際にやったらやれると思う。いま私が言っておるように、こまかい金額を出しなさいというのではないのです。大体の系列ごとに整理をして統計的に見る、要するにマクロで一応ものを見ようというときに、いまの話を聞いてみると、ミクロを積み上げたらどうなるのかという話をしておって、全然すり違えておるわけです。だから計画がないのです。マクロでのものの見方ですよ。計数も出なければ、計画も立たない。計画のないところに金をつけるのは私は反対です。それはどぶに金を捨てるようなもので、わけがわからない。だからその程度のかまえをちゃんとしてもらわなければならぬ。産業公害というのは簡単なものではないんですよ。政務次官、ひとつかまえをしっかりするという点については、どうですか。
  127. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 要するに、公害問題は非常に重大な問題と先生言われるわけですけれども、この公害問題は非常に複雑で、範囲が広がってきたわけです。そこで、それはどれだけ金が要るかという問題よりも、要するに公害問題の責任というのはすべてにあると思います。したがってこの問題を早急に解決するという必要性の問題と、どのくらいあるかを推計しろという問題とは、そこにおのずから開きがありますので、推計することが不可能とは思いませんけれども、その数字が出ましても、推計と実際にそれだけの公害防止施設をやるかやらないかという問題とは別だ。したがって私の考えとしては、いろいろ公害問題は、何も事業団だけではなしに、あらゆる角度からできるだけのことをしようと考えておるわけであります。したがって、この公害防止事業団のやる事業によって公害問題がすべて解決するとは思っておりませんけれども、その中でやろうとする内容は、ここに掲げてありますように、個々ではなかなかできないから共同でやるとかというように、範囲を限定して公害問題の推進に役立てたいということです。御承知のように、汚水を発生する事業場や工場にしても、あるいはばい煙を発生する工場事業場にしても、数からいえば中小企業が圧倒的に多いわけです。したがってどれだけの設備を公害防止のための設備としてやるかということは、実際問題としてはなかなか困難だろうと思います。だから先生の言われるマクロ的にある程度の勘でやるということは不可能ではございませんけれども、それが出なければ公害問題の実施についてはやる必要がないではないかという感じを私どもは実は持っておりませんので、ただいま申し上げましたようなある程度推計みたいなものを出せといえば出さないわけではありませんけれども、これはあまり実際には当たっていないことになるだろうと思います。
  128. 堀昌雄

    ○堀委員 実は公害問題というのは私何も産業公害事業団でできると思っていないのです。ただ、八幡製鉄、富士製鉄というような製鉄会社は自己資金でやっているわけです。そうするとマクロ的に、一体やらなければならない総額は幾らあるか、自己資金でやれるものは幾らあるか、開銀融資のようなことでやれるものは幾らあるか、事業団というのはどれだけのものがあるかということは何もわかっていないのでしょう。いまの九千幾らの中でどれだけが自己資金でやる能力があるかということがわかり、その次の資金の効率——事業団は金利が七分ないし七分五厘ですか、それで十年ないし二十年を考えているわけでしょう。そういうものの対象になるものと、開銀融資対象になるものと、近代化資金対象になるものと、いろいろあなた方は資金の出し方が違うじゃないですか。そうするならば、全体の一つのものがあって、その中でこれについては大体このくらいだ、これはこうだ、これはこうだということもなしに、いいかげんにこんなことをやっていたのでは、資金の効率的な運用にならないということを言っているのです。だから推計がでたらめだなんということはないのです。私が言っているのは、マクロの数字だって、そんな無責任数字を出しなさいと私は言っているわけじゃないのです。ともかく通産省数字は、私は率直に言うけれども、少しラフですよ。だから、もう少し科学的にやってもらいたい。いまの政治というものは、行政にしたって少なくとも近代的、合理的でなければならないわけです。だから、それについては基本的なものがびしっとできていない。そうして資金配分をどうするかといったって、まず金のパターンが全部違うのですから、無利子のものもあるし、事業団のもの、開銀のもの、中小企業金融公庫と、貸し付け条件その他からみんな違うのだから、資金計画を全体として立てながら、自己資金の分はこのくらいでやらせるとか、そういうプランもなしに、何となく事業団で二十億の金をつけておるということが私は気にいらないというのです。だから一応の計画めどが立てられるべきではないのか。全然立たないものならばたいへんですよ、こういう問題を指導していこうというのは、それでなくてもむずかしい仕事だから、少しきちんとしてやりなさい、こう言っているのですが、いまの企業局長の答弁、私は全然不満です。政務次官どうでしょうか。
  129. 岡崎英城

    ○岡崎政府委員 産業公害と申しますと、公害問題のうちの一部のようではございますけれども、やはり及ぼすところも非常に多いので、なかなか数字的に役所の当局として明確にあらわすということは非常に困難だと思います。それで、局長、部長の御返答があったわけですが、政治的な立場から申しますと、先生のおっしゃるとおりで、大きな目標を立てて、その部門として産業公害をどういうふうにしていくか、それに対してどういう費用を出してやるべきが至当だろう——しかし、この問題の裏の裏のほうにつきましても、お示しします以上は、相当に責任を持ってやらなければなりませんので、なかなか早急には困難と思いますが、その姿勢でわれわれは一生懸命やるということを申し上げて、御答弁にかえさせていただきたいと思います。
  130. 堀昌雄

    ○堀委員 政務次官がやるとおっしゃったので、時間はあなたのほうにまかせますが、一年あったらできますか、二年なら二年、あるいは三年かかりますか、時間はあなた方のほうにまかせます、私がやるのじゃないのだから。しかし何年あったらできるかということの答弁をもらって、そこのところで出してもらうようにしなければ解決しないと思います。何年あればできますか。  つけ加えますが、出し方は私がいま言ったように、ただ全体に出しなさいということじゃないのです。要するに九千二百三十一の事業所については、資本金その他の企業の能力に応じて、ここから上くらいは自己資金で、銀行借り入れなり何なりでやりなさい、ここからは少しちょっと無理だろうから開銀融資なりそういうものをつけましょう、さらに見てくれば、もっと能力がないのだから、これは事業団でやりましょうか、こういうふうな大体のジャンルをつくって全体を見てみたら、大体ばい煙についてはこれはこうで、これはこうだ、そうすれば今後皆さん方がいろいろな融資のワクをふやしていこうとするにも説得力のある数字になりますよ。これまでの分を整理するにはこれだけ要ります、ここから新規の分についてはこれだけを一緒にやっていきたいと思います、これなら話がずっと筋が通ってくるので、そういう形で分析を加えた推計を整理をして、今後の産業公害対策のマスタープランをつくるのにどのくらいかかるのかということをお伺いしたい。
  131. 馬郡巌

    馬郡政府委員 さしあたりといたしましては、実はいま四十年度における通産省所管の主要企業につきまして、設備投資調査と並行いたしまして、公害投資数字をまとめている最中でございますが、これはあと五月中くらいには全部集計がまとまるものと思います。御指摘のような、現在の施設についての数字ということになりますと、ただいまどのくらいかといわれても、方法論その他も研究させていただきたいと思いますので、若干の御猶予をいただいて御返事をしたいと思います。
  132. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、そのめどを立てて報告をしてもらう時期ですね。これからそういうプランをあなた方考えて、どういう調査方法でどういうふうに調査してこうやるということで、その時期からあと一年なら一年、二年なら二年と言える時期というものは、一体どのくらいあれば言えますか。
  133. 馬郡巌

    馬郡政府委員 数カ月の猶予をいただきたいと思います。
  134. 堀昌雄

    ○堀委員 なかなかゆうちょうな話で、対象が九千二百三十一しかないのですよ。ばい煙ならばい煙一つとってみて、一体どういう事業所があるかあれですけれども、これについての調査方法を検討するのに数カ月かかるなんというのでは、これはそこから先調査するとしたらどうなるのですか。私がいま聞いているのは、結論を出しなさいと言っておるのではない。要するに、調査するプランをあなた方立ててみなければ、いまから何カ月かかるのか何年かかるのかわからない、だから、まず何年かかるか何カ月かかるかを出すための要するにプランを考える時期というものは、きょうから起算して一カ月あればできるのか、二カ月あればできるのか。そんなもので数カ月かかるのなら、通産省は昼寝でもしているのかと思うのですが、その点重ねて伺いたいと思います。
  135. 馬郡巌

    馬郡政府委員 考え違いいたしましてお答えいたしましたが、大体一カ月くらいで結論を出してみたいと思います。
  136. 堀昌雄

    ○堀委員 それではそれについて一カ月でひとつプランをつくって、その時点で、国会の終わりごろになるのですが、国会の終わりにはひとつもう一ぺん委員会を開いて、これは何もこの法案だけの問題でなくて、産業公害全体の問題ですから、その時点でひとつそのプランの説明をしていただいて、そして、それから一体何年間か何カ月間か知りませんが、したら大体出せますというめどをいただいて、そして問題を少し進めていくようにいたしたい、こう考えます。  第一点はまずそれで終わりまして、時間もだいぶきておりますから、きょうはいろいろやりたいのですが、せっかくいま開発銀行等が来ておられますから、ちょっと金融関係だけを先にやっておきます。  ことしは大体二十億開発銀行の融資が予定されておるようです。通産省資料によりますと。これまでもずっと出しておられると思うのですが、過去において産業公害防止のために今日まで融資された額は大体どのくらいあるのか、その融資先は主としてどういうところ、個々の企業はけっこうですけれども、たとえば鉄鋼なら鉄鋼、企業別というか業種別でいいですが、どういう企業に対してどのくらい出されて、どういう改善の効果があったのか、この点をひとつ開銀に伺いたい。
  137. 大畠寛一

    ○大畠説明員 ただいまの御質問に対しまして御説明申し上げます。  開発銀行といたしましては、昭和三十五年度から始めまして、ばい煙、汚水等の公害防止施設を主として、いままであります工場が特に公害防止のために必要な施設をするという場合に、金融的に融資をしてまいっております。  お尋ねの第一点でございますが、三十九年度までの実績を申し上げますと、二十六件、融資の金額は九億八千八百万円でございます。なお補足いたしますと、たとえば公害防止のためにある工事費が必要であるといたしますと、その全額ではございませんで一部をお貸しして、あとは自分でその他の方法等によりまして調達していただくという考え方でいたしておりますので、昨年度末までの融資額九億八千八百万円と申し上げましたが、それによりましてできました公害防止施設の工事額は約二十七億でございます。  それから御質問の第二点の、どういう業種かというお尋ねでございますが、概括的に申し上げますと、金属鉱業関係、これはばい煙がおもでございます。鉄、非鉄金属等種々のものがございます。それと製紙、パルプ、一部の化学工業がございまして、後者は主として汚水処理関係でございます。何業何業というような分類を実は手元に持っておりませんので恐縮でございますが、大別いたしますとただいま申し上げたような分類になっております。
  138. 堀昌雄

    ○堀委員 実は通産資料によると、開銀融資の拡充ということで三十九年度は十億円、こういうふうに書いてあるのです。そこで三十九年度十億円とすれば、三十五年から始まっているのだからかなりの額が融資をされておるのか、こう思ったのです。ところがワクはあったかもしれませんが、申し込みがなかったのか、三十五年から三十九年までの累計でようやく約十億ということですね。ことしは二十億が予定されておるように書いてあるのですが、この二十億というのはワクとしては四十年度二十億予定をしておるというわけですか。それが一つ。  それからその二十億に対して融資の申し込みというのが、これはやはり向こうだって都合があるでしょうから、借りるほうも都合があるでしょうから、二十億あったらみんな手を出して借りるというものじゃないだろうと思うのです。それを累計を伺いましたけれども、三十九年十億のワクがあったけれども三十九年は一体幾ら貸し出しがあったのか。本年二十億に対して、それから推計をすれば実際はなかなかそこまでいかないのじゃないかという気がするのですが、その点はどうでしょう。
  139. 大畠寛一

    ○大畠説明員 ただいまの御質問でございますが、仰せのとおり三十九年度は十億を年度として予定いたしてまいったわけでございます。ところが申し込みが具体的に出てまいりますのがかなり時期的にずれておりまして、先ほど累計九億八千八百万と申し上げましたが、そのうち九年度の実績が十件五億二千五百万でございます。しかしこのワクと申しますか予定額はなお九年度として十億私どもはとってございました。ただいま手元でお話がありまして検討中のものが約十八件ございますので、率直に申しまして時期的なズレはございますけれども、早晩十億の予定を消化する見込みでございます。それに関連しまして五年度から始めてトータル九億何がしではないかというお尋ねの点に触れますと、実は三十五年度から始めたわけではございますけれども、五年度、六年度、七年度、八年度大体漸増する傾向でございまして、私どもとしましてもますます関心を強めておりますが、政府の施策、法令、水あるいはばい煙に関する規制の諸制度、そういうものがこの間漸次完備と申しますか、できてまいりました。それに応じまして特に八年度、九年度以来金額もふえ案件も多くなり、また私どもとしても一そう力を入れてきておるという実情にあるわけでございます。  次に四十年度のワク二十億についてのお尋ねでございますが、仰せのとおり、四十年度としましては目下二十億を予定いたしております。ただ、まだ年度が始まったばかりでございますので、具体的な申し込みが何件あってこうだと申し上げるところまでは至っておりませんけれども、諸般の情勢から考えまして、二十億が余るというようなことは少なくともないであろう、このように私ども見通しとして考えておる次第でございます。
  140. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、中小企業近代化資金による無利子貸し付け制度によって、四十年度に六億円が予定されておる。この中小企業の近代化資金による無利子の貸し付けは、償還期限が九年、据え置き一年、こうなっておりますが、これは三十九年度三億五千万となっておる。これは無利子だからおそらく借り手があるのだろうと思うのですが、これの消化状態。  それから、さっき私が触れたように、開銀は七・五%、これは償還期限がよくわからない。それから中小企業近代化資金貸し付け六億円、それから未定だけれども中小企業金融公庫から借りる金もあるし、もう一つ中小企業高度化資金というのがありますね。これがいろいろみなパターンの違うことになっているのですが、これは一体皆さんのほうでは——今度の事業団は金利はあまり安くないけれども、長期になっておる。これはどういう貸し付けの場合に、どういうところはどういうふうにするんだという、何か指導をする場合のルールがありますか。
  141. 馬郡巌

    馬郡政府委員 近代化資金によります無利子の貸し付けでありますが、三十九年度につきましてはまだ県からの報告が最終的に参っておりませんが、三十八年度で申しますと、貸し付け実績は四千四百万円でございます。これは計画に比しましてかなり下目の数字になっておるのでございます。この原因と申しますのは、実はこの近代化資金の貸し付けが、三十万から最高三百万ということでございまして、処理施設の実態から見ますと、少し金額が小さ過ぎるのではなかろうかということが第一点。それから貸し付け比率が二分の一でございまして、あとの二分の一を市中銀行その他から仰いでいたわけでございますが、その条件が比較的悪かったのではなかろうか、こういうふうなこと。それから、これは地方によっていろいろ異なってまいりますが、近代化資金の特色から申しまして、経理状況が比較的悪い、あまりよくないということも条件になっておること等がございます。こういう点につきましては今後さらに改善をはかりまして、このワクの消化につとめてまいりたいと思いますが、大体この近代化資金による貸し付け対象と申しますのは、中小企業者が汚水処理施設またはばい煙処理施設を直接みずから設置いたします資金について無利子で貸し付ける制度でございます。  それから中小企業高度化資金によります無利子の貸し付けでございますが、これは中小企業者が公害防止のための共同施設の設置に必要な資金につきましての無利子の貸し付けでございます。それからなお中小企業金融公庫からの融資でございますが、これは開銀その他と同じような、全く普通の、個別の企業でもよろしゅうございますし、共同施設でもよろしゅうございますが、それに対する融資でございます。この中小企業金融公庫につきましては、これははっきり分析して中小企業金融公庫で扱っておりませんので、従来の実績が残念ながらわかりかねております。四十年度におきましては、金額のワクは未定ということでございますが、これは現在の相談の結果は、特別のワクはつくらないで、貸し付けの基準と申しますか、そういうものを別につくりまして、ワクには別に拘泥しないで貸し付ける、こういう考え方でございます。
  142. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお話を聞いておりますと、近代化資金のほうは単位が小さ過ぎてどうも役に立たない。これが六億にふえているのですが、今度そのワクを広げられるのですか。同じことならこの金額をふやしてもあまり意味がないのじゃないかと思いますが、そこのところどうなりますか。
  143. 馬郡巌

    馬郡政府委員 これはこれから四十年度予算の実行計画に入るわけでございますので、実行計画につきまして関係省と十分打ち合わせまして、ほんとうに活用されるような方向を考えてまいりたい、こういうふうに考えております。
  144. 堀昌雄

    ○堀委員 事業団計画の中に、三億五千万円の貸し付け事業がありますね。これはちょっと私がさっき触れましたように、資料によりますと十年ないし二十年の償還で中小企業が七%、その他の企業七・五%、こうなっておるわけでございます。金利は高いけれども償還期限が非常に長いという点にメリットがあるのですが、片や無利子で十年ぐらいのものもあるということで、このいまの共同事業の問題は、おそらく事業団でも共同事業にも貸し付けるんだろうし、単独でも貸し付けるんだろうと思いますが、一体事業団の貸し付けのほうはどういう考えですか。非常に格差がありますね。無利子と七分では非常に格差があるのですが、これはどうなりますか。
  145. 馬郡巌

    馬郡政府委員 償還期限から申しますと、事業団が貸します共同施設、これは主として機械設備関係であろうかと思いますが、事業団の貸し付け期限の十年ないし二十年と申しますのは、機械設備関係につきましては十年という考え方でございます。したがいまして、中小企業の高度化資金の無利子貸し付けの九年とほぼ年数的には変わらない状態であろうと思います。なおこれは無利子貸し付けでございますが、あと資金につきましての資金手当ということもございますので、それとバランスいたしますと、そう事業団と大きな差はないんじゃなかろうかというふうに思います。
  146. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとよくわからないのですが、無利子で十年いくのと、七分で十年いくのと大差がないということは、どういうことでしょうか。
  147. 馬郡巌

    馬郡政府委員 中小企業の高度化資金の場合は、貸し付け比率が二分の一でございます。事業団の場合は中小企業関係については八〇%、八割を貸し付ける計画にいたしております。したがいまして、全体の利子負担となりますとそう大きな差はないんじゃなかろうかというふうに思われます。
  148. 堀昌雄

    ○堀委員 あと算術の問題ですからあれしますが、そういうところでいまの近代化資金か高度化資金、これは五〇%ということですけれども、それをやるなら、どうせあと借りるのは中小企業金融公庫のようなところで借りるということになると思うのですね。片一方で高度化資金が出ておるところに中小企業金融公庫が貸さないわけはないのですから、そうすると中小企業金融公庫の金利はいま幾らですか。片一方ゼロだから二分の一になるでしょう。そうすると、今度逆に八〇%が七%なら、あと二〇%はこれより高い金利になるのですね。だから片一方は七%より高くなる。片一方は少なくとも四%以下でしょう。四%くらいですか、そのくらいのことになるでしょうが、それは同じじゃないじゃないですか。ずいぶん違うのじゃないですか。おまけに事業団は三億五千万円、片一方六億と、もう一つ高度化資金のワクは一体幾ら予定しておるのですか。
  149. 馬郡巌

    馬郡政府委員 計算上は先生のおっしゃるとおりの計算になるわけでございますが、高度化資金によります貸し付けの場合は、一つ施設についての金額的基準をつくりまして、それをベースにいたしまして二分の一そのほかの貸し付け比率をきめるわけでございまして、実際の所要資金との差が常に出ておるという状態でございます。それに対しまして事業団のほうは、実際に要ります金額に対する貸し付けということでございますので、その金額は実際上の運用から申しますと、そう大差がないものに落ちつくのではなかろうか、こういうことでございます。
  150. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもあなたの話では、算術の計算でも合わないですが、私は大体数のほうだけは、池田さんじゃないけれどもきっちりしたいほうなんですけれども、どうもいまの奥歯にものがはさまっておるようで、何か高度化資金あるいは近代化資金、これはやはり業種なりいろいろな制約もあるのでしょうこれども、しかしそれにしても最初あなたは五〇%と言ったけれども、さらに低いということなんですか。実際はそんなにあまり低かったら高度化資金とか近代化資金を貸し付ける意味が今度は逆になくなってくるのじゃないですか。そんなにあとをその他融資でまかなわなければできないようなことなら、無利子だって、そんなもの意味ないですよ。それは高度化や設備近代化にならぬですよ、これはやはり通産のワクの中でしょう、この方針は。どうもあなた方のいまの答弁を聞いておると、何だか食い違っておるような気がしてしかたがないのですが、どうですか。ここのところは、いまの答弁は理論的でもないし、計算も合わないし、非常に格差があって私は納得しないのですが、二十億のうちの三億五千万円の使途について、これはどういうことですか。ほんとうに産業公害を防止するためには、できるだけ安い金利のほうがいいですね。こんなものはもうかるのじゃないのだから、もうからないのだから、安いほうがいい。私は無利子なんというのはたいへんけっこうだと思っておるのだけれども、もしいまのこういう事業団の貸し付けについて七%というのでも、それは資金運用部から借りれば六・五%だから、そこで少し幅がつけてあると思うのだけれども、真剣にやるならもう少し何かくふうがあってしかるべきじゃないか、こういう気持ちで聞いておるのですが、その点はどうですか。
  151. 馬郡巌

    馬郡政府委員 中小企業の高度化資金と申しますのは、御承知のとおり、これは協業化ということを中心にして発足しました資金でございます。したがいまして、これの運用される限界と申しますか、限度と申しますのは、やはりあくまで協業化の場合の必要な共同処理施設ということになっておるわけでございます。これに対しまして、事業団のほうでは必ずしも協業化ということではございませんで、公害処理施設ということで集まってきておるという対象上の差は出てきているということでございますが、条件につきましては、これは実際上の運用の問題でございますが、予算の運用といたしまして、高度化資金の場合におきましては、標準単価というようなものがきまっておりまして、それをベースにいたしまして二分の一という貸し付けをやっておるということで、実際上の金利というものが計算上の金利とは若干違ったものが出てくる、こういう意味を申し上げたわけでございます。
  152. 堀昌雄

    ○堀委員 その業種が違うのはわかるのですが、公害防止のためには同じじゃないのですか。協業化をしてそれの共同施設も、事業団が貸しつけるのも、それは企業自体を協業化しなくても、少なくとも公害については協業化をしたようなかっこうで、共同施設でやろうというならまあ似たようなことですね。だからそこは、いまの高度化資金にしたって、近代化資金にしたって、あなた方のほうと大蔵省くらいが相談をしてきめることだろうと思うのですけれども、もう少し事業団の問題とも関連を持って何か少し検討の余地があるのではないか、こう思いますから、皆さんあまりおそくなってもあれですから、一応これは検討を進めてもらいたい。  それから、公害防止事業団事業計画案というのを拝見すると、これはみんな何年計画かになっていて、来年度はざらっと見るだけでも、三十億以上なければ済まないような計画になっておりますね。これを見るといろいろな項目に分かれているけれども、何といいますか、ごく小さな部分にあっちにぽつり、こっちにぽつりという感じですね。今後やはり資金の効率的効果といいますかを考えるならば、さっきは非常に大きな全体のマスタープランの話をしましたが、もう少し小さくても何かここに一つ手をつけたら、それに関連をしてプランか何かなければおかしいわけですね。実質的なプランがなければおかしいのですが、これは大体何年くらいを目安にしてこの実際の計画案というのは計画をされておるのか。一年や二年だけのことでは、あっちへいってぽつり、こっちへいってぽつりでは、やったのかやらぬのかわからぬようなことになってしまうと思うのです、全体が非常に広い問題だから。そこでここに出されておるのはどこか申し込みがあっての話のようでありますから、どこどこで何々と、こういうことに初年度と二年度の分はセットですからなっているのでしょうが、二年で終わりでなくて、五年なら五年、六年なら六年として見ると、この次にはどうなってこうなってという多少のめどがこれについてなければならないと思うのですが、その分だけ伺ってきょうの質疑を終わりにしたいと思います。
  153. 馬郡巌

    馬郡政府委員 これはまだほんとうの素案でございまして、現在いろいろ話し合いをしているところでございますが、四十年度におきますこの計画共同公害防止施設の三地区と申しますのは、大阪、東京の主としてメッキを中心にいたしました、酸洗いを主とする業者を中心にいたしておりますのと、それから四日市におきます羊毛その他の廃液の処理というものを一応想定いたしております。それから共同施設建物は東京におきまして皮革か、あるいはメッキか、これは業界のまとまり方の早いほうから手をつけてまいりたいというふうに考えております。  それから工場移転用地の造成でございますが、この移転先につきましては東京近県の千葉、埼玉、茨城近県のところで、まだこれは県と具体的な話し合いをいたすまでの段階には至っておりませんが、移転します業界といたしましては染色整理、伸銅、紙・パルプというような業界を一応予定いたしております。  四十一年度は引き続き継続事業を実施する予定でございますが、ただいま申し上げましたような業種につきまして、さらに東京なり大阪なり、あるいは神戸におきましても同じような希望もありますので、そういうものを取り上げてまいりたい。できれば四十一年度にも新しくそういうものを追加して取り上げていきたいというふうに考えております。
  154. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると今度の計画というのは主として汚水処理、これは全部水のほうですね。ばい煙のほうはここには入っていない、こういうことですか。
  155. 馬郡巌

    馬郡政府委員 共同してやりますのはやはり汚水のほうが比較的やさしいということでもございますので、汚水関係が中心になりますが、ただ工場の移転用地造成をいたします場合、その造成しました土地におきます工場群に対しましては、ばい煙関係につきましても共同処理施設をつけてまいりたい、つくってまいりたい、こういうふうに考えております。
  156. 堀昌雄

    ○堀委員 まだいろいろありますし、特に公営といいますか、さっきもお話が出ていましたが、下水道その他の施設と汚水処理とかセットにならないと、汚水処理機構だけをちょこちょこつけてもなかなか問題が解決しないのではないか。そこらの境界の問題、要するにどこまでが公共事業としてそういう下水道や何かができて、どこからが公害対策になっていくのだという境界の問題等が、これはやはりだいぶ重大な問題として残されておるのです。  きょうは時間もありませんからここまでにしておきますが、ただ一つお願いをしたいのは、これは問題が非常に重要なわりにむずかしい問題なんですね。だから金をつけたら、金を何かワクをとったそれで解決するのではなくて、せっかくワクをとったらちゃんとそれが使えるようにやはり指導を強化していかなければ、これはさっき私が触れたように、現在のこの資金なんというものはほんとうに全体の中のごくわずかなもので、それすらも使い残りになるようなことでは、公害防止といってもかけ声ばかりで実際の効果が上がらないと思いますから、どうかひとつそこらを含めてやはり指導の面を強化しながら、借り手があって困る、ワクが足らないのだというようにしてもらわなければ、これはなかなか問題は解決しないと思いますので、その点もう少し何か法律を強化するとかなんとか、おたくのほうのあれには出ておりますが、運用の強化とかいうようなことがうたってありますから、いままでのところ使い残りの金があちこちにあるということは、法律の運用を強化されておらなかったと思いますので、過去は問いませんが、これからは運用を強化して、金が足らなくて困るのだという実情になるような行政指導をしてもらいたいと思います。  あとは次会に伺うことにいたします。
  157. 保科善四郎

    保科委員長 では、委員長から重ねてちょっと皆さんに要望しておきたいと思います。  公害関係の方々に、先ほど細谷委員と堀委員から要望された公害の全体のプラン、あるいは年次計画に関するこの問題は、これから公害の対策を推し進めていく上において非常に重要な問題ですから、この会期中に十分にこの問題をわれわれ検討したいと思うので、十分この委員会の要請に従って資料整備、提供されるように私からも要望しておきます。  本日はこれにて終了しまして、次会は来たる十九日月曜日、午前十時理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十分散会