運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-03-11 第48回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十一日(木曜日)    午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 保科善四郎君    理事 天野 公義君 理事 小笠 公韶君    理事 奥野 誠亮君 理事 南  好雄君    理事 角屋堅次郎君 理事 重盛 寿治君       川野 芳滿君    熊谷 義雄君       山本 幸雄君    和爾俊二郎君       二宮 武夫君    肥田 次郎君       門司  亮君  出席政府委員         通商産業事務官         (企業局産業立         地部長)    馬郡  巖君  委員外出席者         厚 生 技 官         (環境衛生局公         害課長)    橋本 道夫君         通商産業事務官         (企業局産業立         地部産業公害課         長)      平松 守彦君         参  考  人         (工業技術協議         会総合部会公害         対策技術分科会         会長)     黒川 眞武君         参  考  人         (紙パルプ連合         会公害対策委員         長)      東島 善吉君         参  考  人         (全国メッキ工         業連合会会長) 東平 孝徳君     ————————————— 本日の会議に付した案件  産業公害対策に関する件      ————◇—————
  2. 保科善四郎

    保科委員長 これより会議を開きます。  産業公害対策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げたいと思います。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、目下産業公害対策樹立のために調査を進めております。本日は、前会に引き続きまして参考人各位から御意見を承ることにいたしておりますので、各位にはそれぞれのお立場において忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  それでは、まず黒川参考人、どうぞ。
  3. 黒川眞武

    黒川参考人 私、ただいま御紹介いただきました黒川でございます。この公害問題につきまして大きく取り上げていただきましたことを、深くお礼申し上げます。私は技術屋でございますので、主として技術方面につきまして少しく申し上げたいと思っております。  御承知のように、この公害といいますものは非常に多種でございますが、昨今取り上げられておりますものは、河川汚濁大気汚染、それに騒音、振動ということが特に大きく取り上げられております。  こういうような問題が最近非常に起こってきたのは何がゆえであるか、こう申しますと、いろいろ原因もございましょうが、一つ産業高度発達による結果ではないかと存ずるのでございます。御承知のように、戦後技術革新というものが強く叫ばれました。その内容におきましてはいろいろございましょうが、私どもで特に強く感じたものが三つございます。一つは、原子力平和的利用でございます。第二番目には、エレクトロニクスの非常な発展でございます。第三番目には、石油化学を根幹とする合成化学ないしは高分子化学が非常に発展してまいった。この三つの技術が特にこの技術革新の根底をなしておるようにわれわれは感ずるわけでございます。  その中で、電子工学につきましては、一つ科学発展の手段でございますので、しばらくおきまして、この原子力平和利用、それから高分子化半発展ということにつきまして、その結果として公害というような問題ないしは工場災害というような問題が特に生まれてまいったように観察するわけでございます。それがどういう形であらわれてきたかと申しますと、たとえば東京の近所で考えますと、大都市河川汚濁、あるいは石油コンビナート地区大気汚染の問題、あるいは都市周辺騒音の問題というようなことがかなりひんぱんに起こってまいりましたことは、御承知のとおりでございます。  それで、昭和三十年ごろから昭和三十六年ごろまでの工業発展を見ますと、国民所得は二・一倍になっておりますし、鉱工業生産は二・五倍に飛躍しております。またエネルギーの消費は二倍になっております。また重化学工業率を調べてみますと、四九%程度から六五%ないし六六%程度にも上がってまいっております。このことはとりもなおさず先ほど申しました産業高度発展ということを裏書きしておるように思うわけでございます。したがいまして、民間の設備投資もかれこれ五倍に上がっております。  そんなような事柄からして、この生産技術というものが非常に発展してまいりました。もちろん国内でできた技術ばかりでなく、外国技術相当入ってまいりまして、かく発展を遂げつつあると思うわけでございます。かくして生産技術というものが非常に発展してまいりましたと同時に、それにまつわるところの公害であるとかあるいは災害であるとかいうような、安全ということ、あるいは保安ということが、遺憾ながらこの生産技術に伴って、同じような歩調で進歩してまいらなかった。これが今日いろいろな問題を起こしておる一つの大きな原因ではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。なお、そのほか人口稠密関係、あるいは都市人口が過密に集まってくるというようなこと、あるいは社会開発に対するところの間接資本がそれに伴って増加できなかった。いろいろなこまかい原因がございますが、技術的に見ますと、先ほど申しましたような産業高度発展ということになるかと思うわけでございます。  たとえて申しますと、石油コンビナートのようなものをしばらく考えてみますと、日本のように資本の蓄積の薄い国でございますと、この開放経済に対処して外国国際マーケットで競争する場合には、どうしてもこういう各企業技術的に関連を持って、集団的に製造をいたさなければ太刀打ちできない。すなわち、工場の大規模化、あるいはオートメ化が必要になってまいります。たまたまこういう石油化学工業進展とともに、第一に、石油を蒸留してガソリンから重油に至るまで分けていく工業、それからその軽い部分原料にしまして石油化学工業発展させ、重い重油分はこれをたいて発電をしていくという火力発電関係、この三者が柱となりまして、ここに石油コンビナートが形成される傾向になってまいりました。ところが、わが国の宿命といたしまして、石油について申しますと比較的硫黄の多い油を使わざるを得ないという運命にございます。したがいまして、特に重油を多く使うところの発電所は、この廃ガスの中に亜硫酸ガスないしはそれによってさらにできましたところの硫酸ガス、そういったようなものがまざってまいりまして、たまたま公害が生まれたというようなことがございます。  この石油コンビナートというものは、戦後新しく生まれまして、しかもこのコンビナートは、技術的に申しますと、関連工場がほとんど同時にスタートし、工場を完成して試運転に入るという運命にございますために、ある工場におきましては、残念ながら、無理をいたしまして、この公害防除対策に対して幾分かの欠陥があった。すなわち場合によっては第二期工事に回したというようなこともございましょうし、あるいは同時にスタートする関係試運転等にミスがございまして、それが重なり合ってあらわれたというようなこと。また、いままで工場立地につきましては、交通上の問題、マーケットの問題、水の問題、そういったようなものが備わっておれば一応工業地区であるというような判定が下されたわけでございますが、ここに予想外公害が生まれるというようなことがございまして、公害対策というものをその工業立地の中に織り込むということが忘れられておったというようなこともございますし、また工場のレイアウト、建物のいろいろの配置によって公害が起こったり非常に少なかったりするというような観念も、その当時といたしましては取り入れられてなかったというような事柄から、たまたまこういう石油コンビナート地区において、集中的に高濃度大気汚染、特に亜硫酸ガス被害が止まれたというようなことになってまいりました。  また、人口稠密の結果——わが国におきましては山岳地帯が約六〇%でございまして、平地は二〇%程度でございます。そういうために、自然住宅地工場とが入りまじって発達してきておるのが相当ケースございます。たとえば大都市におきまして、いろいろ中小企業工場もございますし、統計を拝見いたしますと、東京都で申しますと、五万五千の工場がございまして、そのうち四万は二十人以下の工場であるというような数字もあらわれております。こういうような工場が間々住宅と入りまじって発展してまいりました。そういうことで、たまたま廃水を流したり、あるいは騒音を起こしたりいたしまして、住宅の方々に被害を及ぼす。もちろんこの対策を講じておるところが大部分でありますけれども、間々そういうものがない場合、廃水が自然流れてまいりまして、そして河川汚濁するというようなことになってまいります。  一方、東京都の場合で申しますと、下水道の完成が四十八年というようなことをいわれておりますが、現在二五%程度しか完成されておりません。したがいまして、下水道による浄化ということも完全に行なわれないままに河川汚濁されてくる。あるいはまた、ミシン工場であるとか、かじ屋工場であるとかいうものがございまして、始終音を立てる、あるいは風車の音が住宅地に響く、というようないろいろなケースがございまして、問題が起きてまいります。  したがいまして、われわれといたしましては、これに対する対策といたしまして、企業の側におきましては、まず企業としてのモラルの向上をしていただきたいということを常に申し上げております。ただ生産だけに没頭するという行き方から、さらにこれとうらはらに出てくるところのこういった公害の問題に対して協力し、また同じような重要さで考えてもらいたいというように申し上げておるわけであります。現に私の聞くところによりますと、宇部市におきましては、かつては公害の非常に大きな災害が出ておったところでございますが、住民の方ももちろんでございますが、工場が一致しましてこの排除につとめまして、昨今はほとんど不平の出ない町に変わったというように聞いておりますし、最近におきましては、各産業におきましても、公害防除対策委員会というものを業界につくりまして、それぞれの立場でこれを解決するように御努力なさっているように聞いております。  次に、やはり企業の方に申し上げたいと思うのは、特にコンビナートにおきましては、現在コンビナートと申しますと、生産技術だけのコンビナートが非常に多いのであります。私どもは、それと同時に、公害防除コンビナートもつくるべきである、こういうふうに考えております。したがいまして、先般四日市に参りまして、このことを強く私は申し上げました。幸い、これによりました結果、たとえば石油工場から出ますところの硫化水素ガスをある工場へ持ってまいりまして、これをプロパン、ブタンというようなガスと化合させまして二硫化炭素をつくる。それからまた、石油を洗って出た酸スラッジといっておりますが、この中に相当硫酸的な、あるいは硫黄が入っておりますが、これをある別な工場に持ってまいりまして硫酸製造原料にするというように、いままで公害の元凶であった品物を、技術の連係によりまして、他の工場でもってこれをむしろ原料として利用していく、すなわち災いを転じて福となすというような事柄技術の進歩によりまして可能でございます。そういう機運があらわれております。  それからもう一つは、工場地区におきまして、よほど工場建物配置を考えませんと、高濃度汚染が出てくる場合がございます。いままではあまりそういうことが考えられておらなかったのでございますが、各地のこういった問題に対しましていろいろ研究してみますと、その廃ガスのようなものが風の吹く日に、むしろある工場から住宅地のほうに吹きつけてくるというような気象上の問題とからみ合いまして、高濃度汚染が出てくるということもございます。  それからまた、排水にいたしましても、一方にアルカリ性の排水が出、一方に酸性の排水が出た場合には、これを適宜勘案するならば、この両者で中和するというようなこともできますので、特にコンビナート関係におきましては、公害防除コンビナートも結成すべきだと思うわけでございます。  そのほか、わかりきったことでございますが、工場管理強化、これは首脳者が入ったところの強力な強化が必要だと思うわけでございます。  また、中小企業等につきましては、集団的に共同した防除施設をつくるということも必要でございましょうし、あるいはまた、全く新しい土地に集団移転をいたしまして、理想的な形にこれを解決していくというような事柄も必要ではないかと考えるわけでございます。  また、国や自治体に対しましてわれわれの希望するところは、まず受け入れ体制の造成ということでございます。いままでは、工場を持ってくる、そうして生産を盛んにしてもらって、繁栄を願うというような意味工場誘致というようなこともございましたが、当然これに伴いまして、いまのような公害問題ということも起こるわけでございますので、今後は事前調査ということが特にこの集団工場を誘致するような場合には必要ではないか。それには科学的な基礎のある事前調査をなすべきであるというふうにわれわれは考えております。  たとえて申しますと、大気汚染の問題につきましては、さらに高度の気象条件調査し、しかも、その気象に対しまして、煙の流れがどういうふうに流れていくか、あるいはまたどの程度までそれが拡散していくかというようなこと、あるいはまた排水の問題につきましては、薬品の投入あるいはアイソトープの投入によりまして、水の流れがどういうふうに流れていくか、そういったようなことをあらかじめ工場を想定いたしまして、調べて、そうして将来の霧がないように対処していくということが必要ではないかと思うわけでございます。  幸い、今後自治体あるいは国におきましても、広域な都市計画で、公害というものを一つ要素に入れたものが検討されるやに承っておりますし、また公害防止事業団のようなものもできるやに承っております。こういうことに対しまして、相当大きな貢献があらわれるのではないかと私どもも深く期待しておる次第でございます。  さらにまた、これを防除をいたしますのには、相当の費用がかかるわけでございます。したがいまして、これに対する金融措置、あるいは助成措置、あるいは指導というような面も一そう強化されなければならないと思うわけでございます。  最後に、もう一つ特に強調して申し上げたいことは、防除技術に対する技術開発でございます。これは御承知のとおり、非常にじみな研究でございます。従来、生産に対する技術研究は、研究者もいわゆる花盛りでありまして、みなそういうものに取っ組みたがるのであります。しかしながら、こういった防除技術に対しましては、縁の下の力持ちのように考えられまして、いい技術者もなかなか集まりませんし、またそれに対する研究費も比較的少なかったのでございます。  そういうような関係と、もう一つ大切なことは、この防除技術はいわゆる化学であるとか機械であるとか電気であるとか、そういったいままでわれわれの教育を受けた一つ専門技術だけでは解決ができないのでございまして、普通境界技術といっておりますが、化学機械、物理、気象、そういったものの混然として合わさった技術によって初めて解決されるものでございます。したがいまして、こういう境界技術については、日本におきましては——外国におきましてもそうでありましょうが、特に日本におきましては、非常におくれておるわけでございます。そこで、われわれは、今後どうしても日本においてかかる谷間にあるところのこの境界技術を特に強く振興しなければならない、そういうふうに考えておるわけでございます。  それからまた、この技術は、ただ実験室でこういうふうになったからすぐこれが役に立つという技術ではございません。やはり企業の面からいけば、ある程度経済性を持たなければならぬというような要素もございます。それからまた、ある程度の大型でやって初めてそれが実用化になるものでございます。  そういうような関係から、ことにこの社会開発の面から考えますと、こういった技術の大部分は、国で相当大きく取り上げまして、研究をしていただかなければならない問題と思います。何せこういう技術はリベートを伴わない技術でございまして、なかなか、企業お前やれといっても、ついあと回しになりまして、企業としましては生産技術、次は工業化するための化学工業技術、そういうようなものが多く取り上げられまして、その裏で、しかも重要な技術ではありますが、こういったものがとかくいままではあと回しになっていたということは争えないことでございます。したがいまして、企業も今後こういう問題を国と一緒に取り組みまして、そうして一日も早くこれを解決していかなければならないと思うわけでございます。  およそ研究というものは、ただ金をやったから研究ができるというものではございませんので、金と人でございます。ところが、いままではこういった方面に入る人は、きわめてじみな研究でございますので、少ないし、また、相当多くの有能な士を集めたくても、それができなかったのでございます。しかしながら、今後はこういった技術生産技術と相並行していかなければならないし、また早急にやらなければいけないというふうにわれわれは考えますので、過日私は工業技術院の委嘱を受けまして、そこにございますところの技術協議会の中に公害対策技術分科会というものをつくっていただきまして、そういった観点から公告防除技術の早急に必要なること、また、性質上からいって、国でこういうものを大きく取り上げてやる必要があるというようなこと、そういうような理由から、ぜひとも国でこういう研究所をつくって、その解決に一日も早く、取り組んでもらいたいという答申を出しまして、そうして今回いろいろな御努力がありまして、従来の約三倍あるいは四倍に相当するようなお金をいただいて、この予算が通れば研究を開始する段取りになったやに承っておりますが、私といたしましては、これではまだ満足いたしません。もっとこの金以外に——金相当必要でありますが、人の問題が私は重要かと思います。そういう意味におきましては、こういった境界技術、あるいはまた災害を含めました安全の技術というものをひっくるめまして、一つの独立した研究所研究者が責任を持ってやり得るような環境研究所をつくって、一日も早くこういう問題を解決していきたいと思うわけでございます。  いままでのわが国技術の進め方は、生産技術、いわゆる経済開発に重点が置かれておりますが、いまや社会開発技術にもこれを及ぼし、両者相連携しましてその技術進展に努力してこそ、完全な産業が発達すると思うのでございます。公害ないしは災害の問題は、いわば産業あかでございます。このあかを取り除いて、そしてきれいなからだにして産業発展することこそ、ほんとうのわが国産業発展する道だと心得ております。  私は技術者でございますので、政策の面には触れられませんでしたが、何といたしましても、この新しく生まれた企業に対する公害防除技術というものはまだ確立しておりません。大きく申しますと、たとえば廃ガスから出る亜硫酸ガスを経済的にとるにはどういうふうにしてとったらいいか、小さい工場から出るところの排除方法はある程度できておりますが、大火力発電所から出てまいりますところの廃ガスの中の亜硫酸ガスをいかに経済的にとったらいいかというようなことは、まだ解決しておりません。これは外国におきましても同じでございます。この解決方法といたしましては、たとえば使うところの原料のうちに硫黄をとってしまうとか、あるいは出たものをいかに安く、効率よくとるかというようないろいろな考え方がございましょう。しかし、これはまだ確立しておりません。そのほか、いろいろな有害物が出る、分析の方法であるとか、あるいは自動管理方法であるとか、そういった技術はまだまだ未解決の問題が多々あるわけでございます。そういうものをこういった研究所で十分検討していただきまして、一日も早くこの問題の解決に努力していただきたいというふうに心から念願いたしておりますので、どうぞ先生方、ひとつこの問題と真剣に取り組んでいただいて、解決技術の促進についてお力添えをお願いいたしたいと思うわけでございます。  はなはだまずいことを申しまして……。
  4. 保科善四郎

    保科委員長 次に、東島参考人にお願いいたします。
  5. 東島善吉

    東島参考人 私は、紙パルプ連合会公等対策委員長をしておりまする東島でございます。本日は、私どもがかねてから本問題についていろいろと考えておりましたことを、議会の先生方に対し開陳する機会を与えてくださいましたことは、まことにありがたく、厚くお礼申し上げる次第でございます。  私どもは、公害対策重要性というものを深く認識しておりまして、従来も誠意をもって、できるだけのことはやってまいりましたし、今後も前向きの姿をもちまして一そうこれを強く推し進めていく覚悟ではおりますが、何ぶんにも、紙パルプ工場全国に約六百以上もございまして、そのうちには中小企業に属する工場も多々ありますので、なかなか思うようにはいかぬ事情もありまして、一部には世上の批判を受けておるものもあるかと存じますが、政治家皆さま方におかれましては、どうぞ全日本国民経済発展国民生活質かさという二つの高い見地に立たれまして、よろしく御指導、御施策くださいますようお願い申し上げる次第でございます。  排水公害という問題のうちで、紙パルプ排水というものが非常に大きく取り上げられておる現状でございますので、話の順序といたしまして、まず紙パルプ業界というものがいまどういうふうにあるのかということを、本論に入ります前に、一応御参考までに申し上げたいと思います。どうぞその点だけはお許しを願いたいと思います。  紙パルプ産業は、わが国産業のうちでも、私たちとしては重要産業一つだと確信をいたしております。大正の初めごろまでは、日本の紙というものは輸入したのでございますが、漸次これが発達してきまして、自給体制がとられ、さらに最近になりましては、輸出国にまで発展してまいりまして、その発展の速度並びに度合いというものは、まことに目ざましいものがございます。昨年度、これは暦年でございますが、紙の生産高は七百三十七万トンでございまして、これは世界の第三位に位しております。アメリカ、カナダの次が日本でございます。またパルプ生産は五百三万トンでございまして、これも世界の第五位という非常に高い位置におります。またその出荷しております金額について見ますと、紙パルプ加工品を含めまして、年間約一兆円の数字でございます。そのうち紙だけでは約四千億でございます。全鉱工業の比率を見ますと、これは約六%の位置を占めております。さらにまた雇用人員を調べてみますと、原木関係も含めまして約四十九万人という人がこれに従事いたしておるのが実情でございます。  次に、紙パルプ産業として公害問題に一番関係の大きいのは排水問題でございますが、紙パルプ産業というものは、非常に水をよけい使います用水型産業と申すのでございます。皆、皆さま方も学校でお習いになったことと思いますが、水戸光圀公が、寒い水の中で紙をつくっておるのを女中に見せまして、紙は非常に大切なものだということで節約をせよと言われたことは御存じのとおりでございまして、これは昔もいまも紙は水でつくるといわれるほど水をたくさん使う工業でございます。たとえばさらしパルプ一トンをつくりますのに、水はその約五百倍、五百トンの水が要ります。また紙一トンをつくりますのにも、三百倍の三百トンの水が使われておるのが実情でございます。したがいまして、紙パルプ生産高が増大するにつれまして用水は増大し、川水の増大の結果は必然的に排水壁が増加してくるのは当然でございます。これが紙パルプ産業の宿命的な問題となっております。  その対策といたしましては、一ぺん使った水を再用水するとか、また再用することによってなるたけ水を少なくするということに努力いたしますと同時に、各種の排水処理設備をしておりますが、何ぶんにも大量の水のことでございますので、なかなか完全無欠とは言いかねると思います。今後一そう研究努力していくつもりでおります。  ただ、紙パルプ排水で一番困る問題は、色が非常に悪いのでございます。この色の悪い点が非常に問題になるところでございます。紙パルプ排水というものは、洗うということが主でありますので、強い有毒性のものではないのでございますが、見ばが非常に悪いために、一般に非常に悪い排水だといわれておりますが、われわれとしてこれは非常に困っておる問題でございます。色がないとそれで一応有毒じゃないように見えますが、御存じのとおりメチルは色はきれいでございますが、たいへんな有毒性のものでございます。また、コーヒーは色が非常に悪うございますが、皆さまも非常に好んで飲んでいらっしゃる。こういう点で、紙パルプの色の悪いのは、必ずしも色のように悪いものではないということを、私たちは常に申し上げておる次第でございます。  さらに、対策として関連します関係上、紙パルプの現在置かれています位置、実情を簡単に申し上げてみます。  紙パルプの主要原料は木材でございますが、その木材の原価に占める割合は約四割ないし五割となっております。最近わが国の原木は、外国の原木に比しまして非常に高くなっております。特に針葉樹においてはひどく割り高になっております結果、外国で割り安の原木を使って紙パルプ日本に持ってこられますと、たいへんな日本の脅威になります。それで、われわれといたしましては、自由化対策としまして、針葉樹から広葉樹や廃材チップに転換するために、ここ数年間、その設備の改善のために毎年約四、五百億の投資をして、合理化につとめてまいった次第でございます。その結果といたしまして、広葉樹、それから廃材チップの使用の割合は全原料の約七〇%というまで、非常に改良されてまいりましたが、これが他の産業と同じように、設備投資が非常に多くなりました結果、その金利償却の負担が加重になって苦しんでおります。反面、各社とも、高度成長、シェアの競争というようなことで、生産が非常に過剰でございます。過当競争のために市況が悪化して、採算が非常に悪いのが現在の実情でございます。  この間、行政指導によります設備投資の規制——これは現在も生きております。あるいは勧告操短——これは昨年三月でなくなりました。いろいろそういう手を打ってもらいましたが、依然として不況のうちにある産業一つでございます。三十八年度の決算を見ますと、総平均で、利益はわずかに三%というような非常に貧弱な産業でございます。したがって、この際わずかでも原価の要素が高まりますと、企業努力や合理化面で吸収する余地がほとんどないというような実情でございます。  以上のごとく、紙の生産高では世界第三位だといっていばっておりまして、外観ではたいへんな偉容に見える。外国から見た場合、日本の経済の発展というものには非常に驚いておるようでございますが、一度その内容についてみますと、すこぶる不安不況のものでございます。以上が、紙パルプ産業の概況でございます。  次に、公害対策の本論に入りたいと思います。ただいま黒川先生からいろいろとお話がございましたのとかなり重複する点もあるかと思いますが、どうぞあしからず御了承をお願いいたします。大体五つ六つ考えておりますが、ほとんど重複する点もあると思います。  第一は、総合的土地の利用計画や都市計画の整備確立。先ほどもございましたが、これはわれわれとして非常に重要に考えております。  最近、工場や民家が密集混在して、公害問題が急激に発達しておる状態でありますが、これは総合的土地の利用計画や都市計画が不備であったというのが一つ原因であると考えられます。今後、新産業都市工業整備特別地域における工業開発に際しましては、事前に総合的土地の利用や都市計画を十分に整備してもらいますとともに、公害防止対策を確立し、工場ができた後において再びかかるごとき公害問題が起こらぬよう御処置をされたいということを、お願い申し上げておく次第でございます。  第二の問題は、公害防止の技術開発の問題でございます。  これもただいまお話がございましたが、紙パルプ産業も同様でございます。われわれ業界におきましても、常に公害防止に対しましては大いなる関心を持って、技術的経済的可能の範囲で水質の改善に努力してまいっております。たとえば水を可及的に回収いたしまして、これを循環して使用したり、また、最後に出てまいります排水の中から繊維などの浮遊物質を分離いたしまして、さらに副産物といたしましては粘着剤、タンニン、アルコール、イーストなどをとりまして、適当に処理した上で河川に放流し、河川汚濁をなるべく少なくするように努力はいたしております。  しかしながら、公害防止技術開発生産技術と異なりまして、われわれとしましては、利益向上に直接関係がないばかりでなく、非常に多額の経費を要しますので、民間の研究に対しましても国の一そうの御助力をお願い申し上げる次第でございます。  なお、公害防止技術開発には、大規模な工業試験や各方面の学問分野にわたる技術の総合的活用が必要でありますので、民間企業のみでなく、国の研究開発強化によりましてこの積極的な御援助を願いたいと思います。今般通産省におかれまして産業公害研究部が新設されましたことは、全く御同慶に存ずるところでございます。  第三の問題は、下水道に対する社会資本の不足の問題でございますが、これはわれわれとして非常に大きな関連のある問題であります。  この下水道関係しましてまず第一に考えられますこととして、非常に密集しております都市における工場排水の問題を取り上げて申し上げたいと思います。  密集都市における排水処理については、かりに隅田川を例にとりまして、水質基準が荒川の水域で指定されておりますが、基準によりますと、PH——これは水素の指数でございますが、これが五・八から八・六と指定されております。五・八ないし八・六というのは大体中性の点でございます。上になりますとアルカリ性になり、下になりますと酸性になることは御承知のことと思います。それからBODの日間平均二〇PPM以下という指定になっております。BODということは、御存じと思いますが、これは生物化学的に酸素を要求する量でございまして、腐敗有機性の物質が非常に多いのと少ないのを示す数字でございます。BODというのは、今後の排水対策をなさる場合に非常によく出てくる事項でございます。この数字が多ければ多いほど汚染の度合いが高く、低ければ低いほど水の質はいいということであります。これが日間平均二〇という非常にシビアーな点できまっております。その次はSSと申しまして、これは水中にあります浮遊物質のことでございますが、これが日間平均約七〇PPMと指定されております。これは数字が低いほどいい排水ということになります。この水質以下ならば放流していいということになっておりますが、この水質までに処理するには、たいへんな設備とたいへんな費用が要ります。また、その敷地も相当広い敷地を要しまして、この線では実際はほとんど不可能といえるように私たちは考えております。  それから、下水道関連しまして、第二の問題は、公害防止は国、公共団体及び企業の共同の責任であるという確信を私たちは持っております。工場や家庭からの排水がいま下水道の未整備のままで河川に放流されておって、著しく汚濁しておるのであります。東京都の下水道は、先ほど申されましたように、いま約二四%しか完備しておりませんので、その他のものは無処理のままで河川に放流されております。隅田川の水質基準審議中にも、汚濁の全責任がいかにも産業排水のみにあるかのごとく報道されまして、私たち非常に迷惑したのでございますが、必ずしも工業排水だけの責任じゃございません。家庭排水その他も相当部分を占めております。したがいまして、公害対策解決には、国と公共団体とわれわれ業者、三位一体となってこれをやっていかなければならぬ、こう考えておる次第でございます。  その次に、また、下水道関連します第三の点に考えられます問題は、下水道整備が非常に緊急の問題であるということであります。わが国においては、従来下肥が肥料として使用されておりました関係上、わが国における下水道の整備というものはたいへんおくれておるのでございます。最近、化学肥料が広く使われるようになりました結果、ふん尿は遠く海洋などに投棄されておるような、非常に不衛生な処理が行なわれておるばかりでなく、家庭下水のほうは無処理のままで河川に放流されており、これが非常に汚濁原因になっておると考えております。特に隅田川のように工場と民家が非常に過度に密集しておるところにおいては、下水道の完備なくしては河川の浄化はほとんど期待できないと考えております。  また、この下水道関係しまして第四に考えられますことは、公共下水道のあり方の問題でございます。わが国下水道は、家庭下水処理を大体目的としていままでつくられてきておりまするために、産業排水については下水道へ流入する水質を規制することができるということに法律ではなっております。しかるに、諸外国においては、産業排水はほとんど無処理でそのまま下水道に受け入れてくれるか、または日本よりはるかにゆるい受け入れ基準でこれを受け入れてくれております。したがって、わが国下水道も、今後は産業排水も家庭下水同様に処理することを前提として施策せねばならぬものと考えております。このためには、下水道流入に先立って前処理を求めることができるという従来の規定は全面的に改正してもらいたいと思います。特に有毒物質だとか、非常に下水処理設備をこわすと思われるような排水は別としましても、その他の排水はそのままで受け入れてもらいたい、これを私たちは心からお願いする次第でございます。  それからまた、関連いたしまして第五番目に考えられますことは、下水道料金の問題でございます。東京都におきましては、産業排水は現行料金は一立方メートル五円となっております。これは大阪その他の都市に比べまして非常に割り高になっております。またさらにこの四月一日からこの五円を一挙に倍額の十円に上げるという案が現在出ております。ところが、紙パルプ産業は、前に申しましたように非常にたくさんの水を使いますので、十円にされたのではたいへんな影響があるのでございます。かりにこれを東京周辺の工場の例をとってみますと、一立方メートル当たり五円の下水道料金としましても、原価にはね返ってくるのは二・五%というアップになってまいります。それで、先ほど申しましたように、平均利益が大体三%くらいしかないところに二・五%のアップとなったのでは、どうにもこれはやっていけない。それがさらに十円になったのでは、都内の紙パ産業というものは全く存立ができない、こういえるのじゃなかろうかと考えております。どうぞ工場が存立できまするように、工場排水に対しましては逓減の料率を使うとか、あるいは特定料率を制定してもらうとか、適当な施策をしていただきたいとお願い申し上げるのでございます。  また、下水道に関する第六番目に考えられます問題は、共同処理方式の促進でございます。ただいまお話にございましたが、われわれといたしましても共同処理ということを考えております。たとえば北区あたりでは各個々ではなかなかできないのでございます。これを工場の立地条件によっては、付近の数カ工場が共同処理したほうが、各自で処理するよりも非常に有利な場合も相当多いと思います。今回公害防止事業団というのができまして、これらの公害防止に対し重点的に財政投資をしてくださるということになりましたことは、業界としては非常に喜んでおるところでございます。  以上をもちまして、下水道及び社会資本の不足の問題について関連した事項を申し上げて、卑見を申し上げた次第でございます。  次に、第四番目の問題は、産業の協和と公衆衛生の向上という問題でございます。  水質保全法は、産業の相互の協和と公衆衛生の向上に寄与するということを目的として制定されたものと存じます。また、水質保全法においては、工場、鉱山及び公共下水道または都市下水路から出される水の基準も定めることができることになっております。しかるに、実際はどうかと申しますと、従来の水質基準の設定の結果を見ますと、工場排水の処理については非常にきびしい規則が加えられておるにもかかわらず、都市下水の処理については、処理場のないものはそのままであり、処理場がいま計画中のところはその完成までは規制が行なわれない等、きわめて寛大な処置がとられております。これは法運用上の片手落ちとわれわれは考えておる次第でございます。都市下水による汚濁産業排水にしわ寄せさせることは、われわれはとてもたまらないと考えております。すなわち、法の運用面において立法の精神を生かされまして、どうぞ今後この法の運用を御配慮願いたいと思っております。  次に、第五番目の問題、公害防除施設への助成のお願いでございます。  従来、公害関係の一般助成制度としましては、中小企業近代化資金によりまする無利息の貸し付けや開銀融資などの制度がありまするが、この密集都市公害問題が最近非常に問題になるわけでありまして、早急にこれは改善を要請せられております。そのためには、どうぞいままで以上の長期低利の資金の貸し付けとか融資の制度をさらに必要と考えておる次第でございます。  以上、長々と申し上げましたが、最後に私は特に二つの点だけを、政治家の皆さんにお願い申し上げたいと思うことがございます。  その一つは、数十年前に工場をつくったときは、その辺は田畑だったようなものがございます。そのときには水もきれいであり、川に流してもたいして問題がなかったのでございますが、その後あとからあとからと人家ができて、稠密になり、したがって、自分が使っておった水は悪くなる、公衆衛生の立場から排水対策についていろいろ設備をしなければならぬ、負担は非常に過重になってまいります。極端な場合には、もうそこにおってもらっちゃ困る、よそに行ってくれと言われるような結果も起こり得るかと考えております。だから、観点を変えてみますと、何十年前につくった工場側から言わせれば、むしろ自分たちは被害者の立場である、私はそう思っております。そこで、かりに移転をしなければならないようなことが起こりました場合には、第一番に移転先のごあっせんを願う。また、それに対する助成をひとつお願いしたい。それから、一番問題になります移転の後のあと地の問題でございます。なかなかこれの処理がむずかしいと思いますので、国家または公共団体で適当な値段でこれを買い上げてもらうということになりますと、ほかに移転するのにしやすいのじゃないか、こういうことを考えております。この点は、ぜひひとつ御考慮をお願いしたいと思います。  それから、最後のお願いの第二は、これはまことになまいきな言い方をするなとおしかりをこうむるかもしれませんが、とにかく日本の一億の人間がたった四つの島に生活している、しかもわりかた恵まれた生活をやらなければならぬというようなこと、これは日本の最高至上命令だと思います。それには産業の発達なくしてはとても達成はできないと思います。現に昨年政府から調査を発表されましたものを見ますと、調査したときに約七割の人たちは、大体自分たちは中流生活をしておるというような回答があったという御発表がございました。これはおそらく日本産業が非常に発達したおかげだろうと考えております。しかし、産業が出てまいりますと、これはあかが出るのが当然でございまして、これに対して公害はつきものでございます。もちろん産業側といたしましては、もう最大限に公害防除に対しては施設をするべきはずのものでございまするが、そのために工場なり会社がぶっつぶれるようなことになっては、これは角をためて牛を殺すということになりますので、その辺は、お互いの環境も大事でございますが、また企業の側としても大事な問題でございますので、どうぞその辺の度合いということを御考慮くださいまして、お互いに譲り合っていくような方法でいければ、非常に日本の国のためになると私は考えております。  どうも長々とありがとうございました。
  6. 保科善四郎

    保科委員長 東平参考人、お願いいたします。
  7. 東平孝徳

    ○東平参考人 私、全国メッキ業界の代表の東平でございます。  産業公害がいまや社会的問題になりまして、国をはじめこれを取り上げて改善のために御尽力くださいますことは、私どもまことに御同慶にたえないところでございます。  しかし、この産業公害の要因をなすところの事業の側にしてみますと、この対策こそたいへんなことになるのじゃないか、かように考えております。  いまお二人から産業公害の施策につきましてはいろいろこまかくお話がございましたので、私は、ただ私ども業界の内容を御披露申し上げまして御検討をお願いしたい、かように存じております。  御承知のように、メッキは戦後の産業経済の伸びと同時に、その需要にこたえて非常に大きく伸びてまいりました。いま私ども業界全国で約三千五百といわれておりますけれども、この実態は、まことに残念なことに存じますが、つまびらかでございません。と申し上げますのは、非常に零細企業が多い。先ほどお話がありましたように、日本中小企業、小企業は大体全体の八〇%以上というようなこともございますが、メッキこそ八〇%以上の比率を持つところの二十人以下の工場が多いわけでございまして、この対策には私どもも非常に苦慮いたしておるわけでございます。  特にこの産業公害の問題となりまして、最近新聞紙上をにぎわしております東京の玉川上水における青酸カリ問題。これは多摩川だけではなく、各所にそういった問題が起きているわけでございますけれども、あまり公表されていない部分もあるようでございます。私ども業界では特にシアンを使うという面から、生物を全部殺してしまう、川の魚がすぐ浮いてしまって、その被害の状況はすぐわかる。魚が死ねば、これはメッキ工場の青酸カリではないかというくらいまでに、いま私どものメッキ業界というのが大きくクローズアップされて、社会の御批判を仰いでおるわけでございます。  大企業におきましては、この汚水排水の問題につきましても、ある程度の独自の立場で処理をいたしまして、大きく協力をいたしておりますけれども、全体から考えますと、ほとんどがいまだこの産業公害対策に手をつけておられないというのが私たちの業界の現状でございます。これから対策協議会というものでもつくって、業界指導していかなくちゃならぬのじゃないかというように、いまようやく考えておるところでございまして、まことに申しわけないわけでございますが、いかにいたしましても、零細企業が多いために、この施設をどうするかということがまず一番大きな問題でございます。零細といいましても、工場の坪数にしましてほとんど十坪から十五坪内外というくらいの非常に小さい工場で敷地のスペースもなく、こういった浄化装置をつけるにも場所がないというのが現状でございます。  私どもは、大企業のような浄化装置なんというものでなくても、これを機械的に何か処理する方法はないものかということを考えているわけでございますが、今後この問題につきましても御当局にお願いいたしまして、汚水処理装置の技術開発をお願いしたいのでございますけれども、何とか手狭なところに有効な機械の取りつけができて、そして目的が達せられるならばこれにこしたことはないというふうに考えております。  こういった関係の装置メーカーにつきましても、産業公害の重要さということから、たくさんの業者にこの研究にいま協力をしていただいておるわけでございますけれども、なかなか中小企業向けにぴたりと合うようなものがまだ出ておりません。私ども、ときおり業界で懇談会を開いて、そのきめ方をどこに置くかということを研究しているのでございますが、先ほど申し上げました二十人以下の工場においては、大体設備が五十万円内外、これより多くなっては困る。五十万円くらいで設備ができるならば、というようなことが非常に大きな希望でございます。はたして五十万円で、どのくらいの性能のものができるのか、そういった装置メーカーもときおり呼んで意見を聴取しておるわけでございます。最近になってそういったものもできるやに伺っておりますが、機械が五十万円でできても、これを管理する費用、要するにランニングコストが非常に高くついてしまう。機械は装置しましても、飾りものではありませんので、どうしても使っていかなければならないのでございますから、できるだけコストを安くできるもの、これが一番重要な問題ではないかと思うのです。こういった問題につきましても、汚水処理装置の技術開発につきましても、御当局はもとより、そういった道の先生方にも、ひとつ十分研究をして私どもが安心して使えるようなものを御推薦いただきたいと考えているわけでございます。せっかく国の助成をいただき大金をかけて設備をしたものの、あまり効果的でなかった、これではだめだというので、もう一度やり直すというような二重の負担にならないように、今後こういった装置の技術的な開発について特に私どもはお願いしたいということでございます。特に、金額は非常に少ないのでありますけれども、先ほど申し上げましたように、零細企業が多いので、この負担となるものは非常に大きなものでございます。  と同時に、設備に対して、私ども業界では、税の対象からはずしてもらいたい。要するに固定資産に繰り入れないでもらう、ひとつ経費の中に織り込んでこの設備を見てもらえぬかというような希望も非常に多いわけでございます。こういった公害対策に関する、特にいま申し上げました汚水排水の問題は決して生産に寄与いたしません。さらには管理費に非常に多くの費用がかかるわけでございますので、これが税金の対象になった場合には非常に大きな負担になるということがございますので、その点につきましても国、御当局でも十分御配慮をお願い申し上げたい、かように考えております。  国におきましては、公害防止専業団なるものをつくりまして、公害対策に対処されておるようでございますけれども、いかにいたしましても、私どもメッキというのは、いま申し上げましたように全国に三千数百工場というような散らばり方でございまして、この把握は非常にむずかしいのでございますけれども、メッキのように小さい企業個々が煙業公害問題に取り組んでこの設備をしていこうということは、非常にむずかしい。これをできるだけ私どもが組織の中に入れて、組合において指導していきたい。そうしたならば設備も改善がされていくのじゃないかというふうに考えております。この資金その他の問題については、また御当局の御指導をいただきまして行ないたいと思うわけでございます。  さらには、先ほどもお話がございましたように、公害防止事業団の中に工場アパートという項目がございまして、私どもはこの工場アパートに大きな魅力を感じているわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、非常に零細企業が多いこの一つ一つ工場にいろいろな装置を施してんても、なかなか管理する人がいない。それから非常にむだなことにもなるので、できることならば、工場アパートというものをどのくらいの基準にするかは十分今後の検討もございますけれども、十工場なら十工場収容できる工場アパートをつくって、そうして十工場から流れるところの汚水排水、それからガス、集じんの問題、こういったものを一括処理をしたならば非常に合理的にいくのじゃないか。私ども業界は近代化促進法の指定を受けて、そういった問題でも研究を進めておるわけでございますが、今回の産業公害という問題から特にこの問題を推し進めていったならば、近代化促進法と並行した非常に国の施策に合致するものができ上がるのじゃないか、そんなふうに考えております。  このアパート化によりまして、企業の経営の近代化と申しますか、特に最近では中小企業においては労働力が非常に不足を来たしております。と申しますのも、非常に企業内容の格差、こういったものがあるために、いいところには集まるけれども、悪いところにはほとんど人が集まらないというようなことがありますので、こういったアパート化をはかりまして、そして共同の教育を施す。従業員の教育はもとよりのこと、経営者の教育、そういったものもこのアパート単位にこれを行なっていったならば、過当競争もなくなるし、さらには近代化ができて企業の安定がはかられ、そして産業公害にも大きな一翼をになうことができるのじゃないか、そのように考えておるわけでございます。私ども業界があまりにも小さいばかりに、なかなか収拾が困難であるというのが現状でございまして、今後これを推進していく上においても、国をはじめ御当局の並み並みならない御指導と御助力を賜わらなければ完成できないものと考えております。  いま私ども業界のごくあらましを申し上げまして、今後の御参考に供したいというのであります。どうぞよろしくお願いいたします。
  8. 保科善四郎

    保科委員長 以上で参考人の御意見の聴取は終わりました。      ————◇—————
  9. 保科善四郎

    保科委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。角屋堅次郎君。
  10. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本日は黒川さんをはじめお三方おいでになりまして、たいへん貴重な御意見を承りまして、ありがとうございました。  時間の関係もありますので、簡単に二、三の点だけお尋ねをしておきたいと思います。  まず、黒川さんにお伺いしたいのであります。工業技術院の協議会の関係公害対策技術問題のいろいろなことを議論してこられましたので、先ほどお述べになりました話のうちで、一つ問題として、公害防除技術開発問題、これは最終的にやはり独立の試験研究機関を確立する必要がある、こういうふうなお話をなさいました。当然のことだろうと思います。  そこで、工業技術協議会等で議論が出たと思いますが、大体国でやる場合に、どのくらいのスケールのものを理論として得たのか、そして、公害も非常に広い範囲ですけれども、その機関をつくる場合に、大分けしてどれくらいのセクションに分けて考える必要があるのか、こういう点を今後の議論の問題として、詳細でなくてけっこうですから、要点をお答え願いたいと思います。  それから、日本の場合は、公害問題に対する対策相当に立ちおくれているというのが現状でございます。おそらく黒川さんあたりになれば、国際的に見て先進諸国はこういう問題で非常に進んでおるとかいうふうな、われわれがこれから議論する場合に教訓になる、そういう点についても御研究であれば、簡潔に三、三の問題についてお答え願いたい、こういうふうに思うのです。  それから、一ぺんにお尋ねして恐縮でございますけれども東島さんにお尋ねいたしたい。  先ほどお話の中で、当初工場ができて、その後人口稠密になって立ちのきをしなければならぬというようなお話をされたわけですが、具体的にどこの県のどういう地域でそういう問題が起こっておるのか。これは今後具体的事例の問題を議論する場合の参考として、一般論として言われたのか、あるいは具体的にそういう問題が、四百近くの工場のうちでどこの県どこの県に起こっておるというような事例が起っておるのであれば、そういう点についてお答えを願いたいと思います。  それからもう一つお伺いをしたいのは、私その点は直接というか、自分の地元の県では十分承知してないのですけれども、いま同僚の議員からお話がありまして、いずれこれは今後の特別委員会で面接本人から議論することになろうと思うのですが、紙パルプの場合に、特に松なんかの場合に、原木の皮もはがずにやっておる関係から、中の虫がその地域の他の山に害を与える、そして焼き捨てたり、あるいは地方自治体が補償してやらなければならぬというような事例があるように同僚から承っておるわけです。そういう問題については協会としてどういうふうに考えておるのかという点について、御承知であればお答えを願いたい。  以上、時間の関係もありますので、数点にしぼりましたが、お答え願いたいと思います。
  11. 黒川眞武

    黒川参考人 お答えいたします。  第一点の御質問では、われわれ協議会ではどのくらいの規模のこういった試験所をつくったらいいかというようなことの御質問のようでございます。この工業技術院の協議会におきまして、十数名の委員さん——これは官、民、学識経験者、いろいろございますが、そういう委員の方でいろいろな原因を探査いたしまして、その結果に基づきまして一応得ました規模を申し上げますと、この研究の内容は、先ほどの排水の問題、それから大気汚染の問題、そのほか大気汚染の中では、工場から出る煙ばかりではなく、自動車の排気も含みました大気汚染の問題、それから騒音、そういったものの研究をやるというスケールでございまして、大体予算といたしましては三年間で規模五億、それを三年間で仕立てよう、人員といたしましては、トータルで二百五十名、これが最小限度ということで当局に答申したわけでございます。  しかしながら、私どもの考えを入れさせていただくならば、先ほど申し上げました境界技術研究ということが非常に日本ではおくれております。ことにその中に入ります公害関係のみならず、工場災害というようなことを含めますと、私どもとしましてはこれの倍くらいのスケールでほんとうはやっていただきたいという、これは個人的な考えでございます。こういうことがやはり産業といたしまして非常におくれております。したがいまして、こういうものを含めました、名前は境界技術研究所でもよろしいし、社会開発技術研究所でもよろしいし、あるいは公害災害防止研究川でもよろしいのでございますが、内容的にはそういうことになってほしいという、これは個人的の意見をまじえました。  それから先ほど、外国ではどうなっておるかということでございます。これはやはり技術革新外国におきましても、日本よりは先でありましょうが、起こった関係上、これはといって十分な技術は、まだ私どもとしましてはそれを取り上げて日本にアプライ、適用したらどうかという技術はなかなか見当たりません。工業技術関係の試験所の研究員の方が二、三外国へ参って見てまいりましたが、排水の問題につきましても、ある研究所ではこういうちょっと新しいことをやっておった、ことに発酵によりまして浄化するというようなことはありますが、これは必ずしもすぐ日本には適用できないかと思います。ということは、卑近な例で申しますと、日本とヨーロッパとの食べものが違うわけです。したがいまして、そういうところから出る排水が必ずしも日本に同じではないというようなことで、今後そういうものを土台として研究しなければならぬ。それから、硫黄の問題にいたしましても、いままではやはり火力発電所といえば大体石炭を使っておった。それがエネルギー革命とでも申しましょうか、今度は五〇%以上石油のエネルギーになってきた。そういう変革がございますので、にわかに向こうの技術をまねするわけにもいくまいし、また向こう自体にもまだ完全な技術がございません。  したがいまして、その証拠といたしましては、昨年アメリカから例の経済開発の結びつきの一環としまして資源開発技術の交流をやろうということで、アメリカから時の要路の方が参りまして、工業技術院と数次にわたりまして会議をやりまして、技術の交換をやろうということで、たしか八項目程度の題目を掲げました。その中に二項目、この大気汚染それからいまの排水の処理の問題をお互いに研究して、そして情報を交換して、そして何とかこれを成立させようじゃないかということで、いませっかく両国でこの問題を研究中でございます。  そういったような機運が、日本ばかりでなく外国にもございます。しかしながら、アメリカのような国で申しますと、非常に広いものでありますから、日本のような平地が二〇%しかないようなところだと、どうしてもかたまりますが、アメリカにおきましては、かなり周囲の広いところに工場ができておるのがいままでの例のようでございます。しかしまた、ロスアンゼルスのようなスモッグの多いところでは、大きな工場重油を使うことを禁止しようじゃないかというようなことで、将来は天然ガスに変えていこうという思い切った、地方的ではございますが、政策をとろうというところもございます。したがいまして、この問題は各国ともおくれておるわけでございます。  例を申し上げますと、イギリスのような国では、DSIRといっておりますが、デパートメント・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチという、一種の省に近いものでございますが、日本でいうと科学技術庁のようなところでございましょうか、そういうようなところの研究所で、それぞれ研究所は変わっておりますが、水を専門にやる研究所と、大気汚染に対する研究所がございます。また、アメリカにおきましては、主として衛生局と申しますか、保健省と申しますか、それに属するところのラボラトリーがございまして、これは主として水の問題、それから多少大気の問題もやっております。それからもう一つは、シンシナティのロバート・A・タフト・サニタリー・エンジニアリング・センターという、こういう公害問題を解決するような一つのセンターがございまして、ここで広く水の問題とか大気の問題を取り扱っておりますし、また大学におきましても、主として西海岸の大学でございますが、そういうところが中心となりましてこの問題に取り組んでおるのでございます。ドイツにおきましても、水の研究所、それからVDIと申しまして技術委員会というものがございまして、ここでいろいろ水の問題、空気の問題、それからその他の公害問題に分かれまして、各委員会が検討いたしまして、その委員の方がそれぞれ研究所を持っておりまして、自分の研究所でやるというような対策を講じておりますし、またそのほかに、国の安全研究所というようなものがございまして、そこでやはりこの公害問題の研究をやっております。  そういうように、先進国におきましては、それぞれ水と空気と分かれて研究しておる場合もございますし、あるいはまた一緒にして研究しておるところもございますが、それぞれ二つ、三つセンターがございます。日本におきましては、残念ながらこれ専門の研究所というものはまだございませんので、ぜひともこういうものを実現していきたいというふうに考えております。  以上、お問いに対しましてお答え申し上げました。
  12. 東島善吉

    東島参考人 私はパルプの問題について御返答申し上げます。  私は、立ちのきの話は、現在これが起こっておるとは申しません。起こる懸念はかなりある、こう申し上げます。  というのは、近く都で公聴会が開かれるそうでありますが、いままで五円だったのが一挙に今度は十円に上がる。先ほど申しましたように、紙パルプ事業というものは、とにかく水を非常によけい使うのです。そうしてあと二、三年すると、従来は、この辺で例をとりますと、隅田川から水をとってそれを使って、そうして放流している。それは金はかかりません。極端にいうと、ただの水を使ってただで捨てておった。それは極端な例ですが、あと二、三年すると、工業用水は一立方メートル五円五十銭の水を使うようになります。それからいまの排水は、今度は十円になります。おそらく五円の、あるいは今度また五円五十銭の工業用水は、将来高くなるものと見なければなりません。そうしますと、かりに一日一万トンの水を使うところとしますと、かりに十五円としますと一日に十五万円、一カ月に約五百万円、年にしますと六千万円ということになります。それでは水をよけい使う工場ではやっていくのに非常に困難じゃなかろうか。  したがいまして、これは東京都の隅田川をきれいにするというか、東京都の環境衛生をよくするという点からいいますと、昔はそんないなかでよかったが、今日都になったのだから、もうそろそろよそに行かなければならぬ、これは当然そう考えるのですね。そういうときに、そういう措置がありますと、早く決心ができるのじゃないか。したがって、東京都ないし日本環境衛生を促進する上に、非常に皆さん各自が早く決心をする。私ども考えましても、かりに疎開していってみても、あと地をどうするのかなど、なかなかそうすぐには考えられないということでございます。その辺の心配があるので、私は、現在さしあたって、いまきょう起こっておるとは申し上げませんが、この懸念は十分あるということで、そういう措置ができるように将来はお願い申し上げますということを申しました。  第三の点、原木の問題ですね、先生のおっしゃるのは。(角屋委員「二宮君の話を聞いたのだが、あれは大分県ですかね」と呼ぶ)これは私は初耳でございます。  いま私たちの紙パルプ産業で、公害対策委員長として考えております公害対策の問題は、第一が排水の問題、第二が排気の問題、その次は騒音、大体そういう三つを対象にしてやっておりまして、虫がつくという話は実はまだ対象外になっておりまして、これはまことに申しわけございません。事実そういうことがございますれば、一応私どももどういう実情になっておるか調査したい、聞いてみたいと思います。虫がついて困っておるというような話は、実は初めてきょう聞いたわけでございます。そういうことでありますから、あしからず。もしもそういうことがございますれば、お知らせくだされば、私のほうも考えてみたいと思っております。それで御返事にさせていただきたいと思います。
  13. 保科善四郎

    保科委員長 門司亮君。
  14. 門司亮

    ○門司委員 簡単に一つだけ聞いておきたいのです。  黒川さんに聞きたいのですが、これは非常に迂遠のようなことでありますが、実はあなたのほうの研究されておりますのと、いま厚生省が一つ持っておる研究所、川崎にございますが、公害関係環境衛生センターがございます。これとの関連はどうなっておりますか。何か密接な関連がございますか。
  15. 黒川眞武

    黒川参考人 この工業技術院関係、通産省関係でございますが、ここにおきまして現在研究しております題目は、排水の処理の問題、それから自動車を含めた排気の処理の問題、そのほか騒音防止の問題を各担当の研究所でやっております。たとえば騒音のようなものは機械試験所、それから排水の処理の中で化学的な処理の方法東京工業試験所、それから発酵のような方法でやる場合には発酵研究所、それから排気の場合には、硫黄廃ガスの除去の問題につきましては資源技術試験所というように、各個別々でやっておりまして、もし今回の予算を通していただくならば、資源技術試験所の中に一つ公害防除対策部というような、まあ名前は私よくわかりませんが、そういう一つの部をつくりまして、そうしてそこが中心になりまして、そうして工業技術院の中に開発官という技術官を一人置きまして、それが主になって各研究所の間の調整をはかりながら進めていくというふうに私は伺っております。  そういうことで、生産の面から見た公害防除研究を通産省でやっておりますし、それから厚生省関係研究所は、おそらく今度は受けるほうの側から、衛生的あるいは医学的、そういった面からの研究をやっておられるかと思います。  したがいまして、こういうものが両者連絡を密にするということが必要でありまして、この点は特に御当局にお願いして、絶えず原局で連絡をとっておられるようでございます。したがいまして、研究が重複するというようなこともございませんし、こちらから出た結果を今度は衛生方面に投げていくということも可能かと心得ます。  ただ、私が申したのは、そういうふうにばらばらでやっておって、連絡がとれることはとれるのでございますが、研究者の側から言うと、意欲が何となく中ぶらりんになっているというような気持ちがあって、少しでも研究者の意欲を盛り立てて、少しでも早く効率的にやらしたいということで、いま私がお願い申し上げたような研究所の設備によると同時に、研究所のあり方を、流動研究所というような制度も取り入れまして、各省からも自由のそのエキスパートの研究員を、暫定的でもいいからそこに入れ込んで、そうして完全なものに研究をやっていきたいというお願いをしたわけでございます。
  16. 門司亮

    ○門司委員 私が聞きたいのはそこであります。実は、公害といえばほとんど厚生省が主管みたいな形で、講習衛生の立場から、被害者は人間でありますから、結局人間を対象としたもので厚生省の所管のような形でやっております。  しかし、実際は、通産省の関係がこれにほんとうに真剣になってくれないと、どんなに厚生省関係でやかましいことを言って研究をしても、実際の効果はあがらぬのです。あげようとすれば、両方が完全な連絡がとれて、あるいはこれにさらに地方の自治体関係も非常に大きな関連性を持っておりますので、私どもの考え方としては、そういういまの状態の中で、こういうばらばらのものでなくて、何か特別の公害に対する役所といいますか、——私は役所をこしらえることは必ずしも賛成いたしません。役人がふえるばかりであまり賛成をいたしませんが、しかし、役人をふやさなくてもある程度やれると私は思う。  したがって、最後にお聞きしておきたいと思いますことは、一本で研究のできる形のほうが私どもは望ましいと思うのですが、そういう考え方はございませんか。
  17. 黒川眞武

    黒川参考人 先生のおっしゃることは非常にごもっともだと思います。私もそういうことにしていきたいというふうに考えてはおりますが、やはりお役所の機構というようなことを勘案いたしますると、公害防除の問題というものは二つの大きな範疇に分かれると思うのです。一つは、公害を起こさないようにする、予防の技術。それと、もし公害が起こったら、それをどういうふうにして解決していくかという技術とに分かれると思うのです。したがいまして、現在の機構からいくと、どうしても起こさないようにまずしなければいけない。その技術は通産関係技術に多い。それから、起こったら、それをどういうふうにして人体に害を及ぼさないようにするか、あるいは動植物に及ぼさないようにするか、いろいろな生物化学的な面については、厚生省と申しましょうか、あるいは労働者と申しましょうか、私はよくわかりませんが、そういうところでやるべき分野だと思います。  したがいまして、そういうものがひとつ合同でやるということは、先生のおっしゃるとおり非常に強力なものでございます。しかし、国の行政のいろいろのあり方から考えまして、私は、そこまで望むのは僭越でございますが、そういった間に非常にいい連絡をとればそういうことが可能ではないかというふうに思っております。
  18. 門司亮

    ○門司委員 それで、もう一つは、突っ込んで聞いてはなはだ恐縮でございますけれども、実際私どもがこういうものを検討してまいりましても、さっき言いましたように、厚生省関係では主として防除のほうに主力を注ぎ、通産省関係ではもう少し出ないようにしたい、こういうことでございますが、これは利害が相反するのでありまして、片方はどうしても資本主義の社会で利潤を見ないわけにはなかなかまいりませんので、厚生省がどんなやかましいことを言っても、生産が成り立たなければどうにもならないという問題が出てくると思うのです。非常にむずかしい問題です。厚生省がどんなにしゃっちょこ立ちをしても、なかなか防ぎ切れない問題が出てくると思います。したがって、こういう問題をただ単に連絡協調だけのものでなくて、あなた方のほうからも、ぜひひとつ、生産面と、通産省面との関係を持っておるものと、さっき申し上げましたように厚生省関係のもの、さらにはこれに合わせるように下水道の問題が先ほどパルプ関係の方からいろいろ言われておりますが、これを実施しようとすれば、地方の都道府県やあるいは市町村がかなり大きな関心を持たなければできない。同時に都市計画関連してくる。かなり広範囲にわたるものでなければ、この完全な除去は——完全なということはどうかと思いますが、除去は困難だと思います。  したがって、ひとつ最後にお願いをあなた方にしておきたいと思いますことは、そういうふうにあなた方のほうからも、産業人のほうからも、そういう話をひとつ積極的に進めていただきたい。そして産業人みずからがひとつ立ち上がって、これを何とかなくしたいという機運が出てくれば、どんなに政府の役人がなわ張り根性があってがたがたいたしましても、私は、かなりやれる。人のほうでそっぽを向かれたのでは、なかなかむずかしい問題で、解決しにくいのじゃないかというふうに感じますので、そのことを、御質問じゃありませんけれども、私の希望として申し上げておきます。
  19. 重盛壽治

    ○重盛委員 関連して。  本日はどうもいろいろありがとうございました。新しい委員会ができて、これからいろいろと皆さんの御希望に沿うようにこの委員会を運営していくことになろうかと思います。いろいろお聞きしたいのですが、時間がありませんので、黒川さんに一つだけ御質問いたします。  いろいろ御意見を拝聴していた中に、たいへんいいことが一つある。それはいわゆる災いを転じて福としていく技術がそこまで進んできておるのだというように承ったのでありますが、そういう災いの原因となるべきものを再生産しているという工場がどこかにあるのかということ。いまは学説だけの域で、まだいっていないのかどうか。もしそういうところがあるなら、どこでやっているかを教えていただきたいと思います。
  20. 黒川眞武

    黒川参考人 先ほど申し上げましたのは、実は事実を申し上げたのでありまして、これは四日市のコンビナートの例を申し上げました。四日市にございます昭和石油工場で出ます酸スラッジと申しまして、油を硫酸で洗いましたかすがございます。それを石原産業工場へ持ってまいりまして、焼いて、そして硫酸製造する。それはもう事実やっております。成績がいいので、新聞の報ずるところによりますと、さらに拡張したいということが書いてございます。  もう一つは、やはり石油工場から出てまいります硫化水素、これはやはり硫黄を含んだくさいガスでございます。これをとりまして、パイプで近くにございます三菱油化の工場に持ってまいります。三菱油化は御承知のように石油化学工場でありまして、おもにブタンというガスを利用して合成ゴムその他をつくっている会社でございますが、一緒にプロパンというガスが余ってくる。このプロパンは、御承知のようにLPガスというようなことで使われておりますが、そのガスと先ほどの硫化水素を使いまして、そして二硫化炭素という溶剤、ベンベルグとか、そういったものの原料になりますものをつくるという計画を立てておりまして、いま着々その準備に取りかかっておるというふうに聞いております。  そういうことが今後、コンビナートでございますと近くに工場がございまして、一方の工場の廃物は案外他の工場原料に使われるような場合がありますし、また、原料に使うように努力すればおのずから道が開ける場合があるというふうに考えて、いまちょっとその点に触れたわけであります。
  21. 保科善四郎

    保科委員長 それでは、この際、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会へ御出席をいただきまして、貴重なる御意見をお述べいただきまして、たいへん参考になりました。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十七日水曜、午後零時四十五分から理事会、一時から委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時三十五分散会