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三浦参考人 プリントを用意しておきましたので、それを
ごらんいただきたいと思います。
まず
最初に、一体
騒音というのはどういうものかということから申し上げてみたいと思いますけれども、
騒音というのは、結局音がありまして、その音を
人間が耳で聞いて初めて
騒音という概念が出てくるわけでございます。つまり、うるさいと思ったり、やかましいと思えば、それがどんな音であっても
騒音になるというわけであります。ですから、考えてみますと、たとえば大きな音といわれるようなものは、大体うるさいように感じますから
騒音になり得る。それから不快な音といいますか、のこぎりの目立てのようなああいう音、あれも不快に感じますから、やはりどんな音であっても
騒音に感ずる。いろいろな、たとえば勉強しておる
子供が、隣から音が入ってきた、そうすると勉強ができにくい、そういう音もやはり
騒音になる。それから特殊な音で不快に思う人もあるわけであります。宗教上の何か、たとえば太鼓をたたく音が、そのたたいておる御本人は非常に法悦の境に入っておられても、それを聞いておるほうでは非常に
騒音として感ずるというように、いろいろな音が
騒音になり得るわけでございます。けれども、大体
機械の出す音でありますとか、そういうものが
騒音になってくる。ですから、もう一度申し上げますと、ともかく音があって、どんな音でも、それが音楽の音であっても、
人間が耳に聞いて不快であったり、仕事の妨げになったりするというものが
騒音だということであります。
それから、
あとでちょっと
振動のことを申し上げますけれども、
振動のほうは、国際的にこういう
単位ではかるのだということがまだはっきりしておりません。ところが、
騒音のほうは、幸いなことに国際的にもかなりはっきりした
測定法あるいはあらわし方というものがある。
日本でもそれが
計量法に取り上げられておりまして、一定の
測定器で
騒音をはかることができる。その
単位がホンである。これも常識的なことだと思います。
一体そういう
騒音がどういう
影響をしておるだろうかということを主にして
お話を申し上げるわけでございますが、一
ページをちょっと見ていただきますと、私どものほうでいろいろな職場をはかりましたものがずっと上のほうに並んでおります。それから下のほうに、
東京都ではかられました
道路の
騒音であるとか、あるいは
羽田空港付近の
騒音であるとか、あるいはいろいろな
工事現場の
騒音、そういうものを入れてございます。これを
ごらんになりますとわかりますように、
工場の
騒音というものもかなり大きなものがございまして、たとえは百をこえるような——百といいましてもわかりませんでしょうけれども、会話をしようと思っても、大きな声を出してもなかなか聞きにくいという
程度の音になりますが、それ以上の
騒音がかなり
工場でもあることはもちろんございます。このごろでは、一番下にちょっとあげておきましたように、
オフィスにも、
機械化した
オフィスがどんどんできてまいりしまして、その
機械化した
オフィスで、百まで達しませんけれども、かなり
騒音が出ております。ですから
オフィスでも、
騒音問題というのがかなり問題にされるようになってきている。それに比べますと、その下のほうに並べておきました
騒音というのは、場合によりますと、
飛行場の
付近になりますと百をこえるようなことももちろんある。特に基地の軍用の
飛行機が飛びますところでは、百あるいは百十なんという
数字が出ておるわけで、これは非常に大きな音になっております。それからいろいろいろな
工事に使っております
機械の音、これも近いところで聞きますと、たとえば、そこに書いてありますが、一メートルのところで聞きますと、百三十とか、そんな
数字が出ます。それが五十メートル離れても、場合によると百に近いような場合もある。そうなりますと、こういうものがかなりやかましい音としてあがってくるわけでございます。
一方、
交通騒音のほうはどうか。その次の
ページをちょっと
ごらんいただきたいと思いますけれども、これは
東京都が
青山通りではかられたもので、二十四時間とっておられる。そうしますと、
ごらんのように、夜になってだんだん
交通が静かになると下がっておりますけれども、大体七十五あるいは八十に近いような数値が出る。それからその下の点線で示してありますのが、
青山通りから五十メートル入った
住宅地なんです。そうしますと、
ごらんのように
住宅地というものは、かなり音が静かになっております。ところが、その
住宅地がこのごろいろいろ
騒音問題でやかましくなってまいりましたのは、結局こういう小さな
住宅地の
道路にまで車がかなり入ってくるようになってきたということだと思います。ですから、夜なんか寝ておったときに車が通る、そういう音がかなり問題になってくるわけです。ですから、
道路に面したところとそこから離れたところでは、かなり違う。これは
大気汚染とかなり違った
意味があるのじゃなかろうかと思います。つまり、音というものの及ぼします
範囲が、
飛行機は別としまして、それ以外のときにはかなり狭い
範囲で音が問題になっておる。ですから、場合によりますと、
公害といいますか、私の害といいますか、
公害といっても私の害というほうに近いような性質まで出ておるのが
騒音、
振動の問題だと思います。こうやってまいりますと、
騒音の源としては、
一つ交通騒音があると思います。その
交通騒音の中には、特に自動車がどんどんふえたということで、問題か大きくなってきた。それから、
飛行場の周辺では
飛行機の
騒音、それがジェットになりまして音が大きくなってきたというようなことで問題になっておるわけです。それからいろいろな
土木工事そのほかの
都市のまん中での
工事、そういうものも問題になっている。それから
一般の広告塔でありますとか、あるいは家庭で出すいろいろな音、そういうものもみんなともかく音がありますと、さっき申しましたように聞いた耳がうるさいと思えば
騒音になるわけですから、非常に広い
範囲に
騒音が存在しておるということになります。
さてそれでは、そういうものの
影響でございますが、これは先ほどもちょっと
大気汚染のときにも話が出ましたように、なかなかはっきり健康に
影響が、たとえば耳に
影響があるから問題になるのだというふうに考えますことは、私はやはり
騒音の場合もいけないのじゃないか。
最初に申し上げましたように、不快な音と
生活の妨害になるような音、そういうものが問題になるのでありまして、耳に直接
影響が出てくるというものは、特別の場合だと考えなくてはいけないのではないかと思います。
その次の図3、これはいろいろなところで引用される図でございますけれども、大阪ではかられたもので、大阪で
騒音のあるところをいろいろはかって、そのときにアンケート
調査をしておられるわけです。特に家庭の主婦の方のアンケ−ト
調査なのですが、そこで、情緒的な
影響、あるいは
日常生活に対する
影響、あるいは身体的
影響というように分けてアンケ−トの集計をされたわけです。それをまとめたものがこの図でございます。その情緒的
影響といっておられますのは、そこにちょっと書き足しておきましたように、
病気のときに騒々しくて困るとか、
騒音のために寝つきが悪いとか、あるいは腹が立ちやすい、ごはんがまずい、その
程度のことなのです。そういうものが回答の二五%にあらわれてくるのが四十から五十ホン
程度のところです。
日常生活の
障害といっておりますのは、先ほどもちょっと申し上げましたように、お互いが話し合うのに妨げになる、それから新聞が読めないというようなことですが、これでも四十ないし五十ホンというようなところからそういうことが多くなってくる。身体的
影響としては、頭が痛むとか、耳が痛いとか、
心臓がどきどきするとか、そういうような訴えが出てきておるのですが、それがあらわれてくるのが五十から五十五ホンです。先ほどの図からわかりますように、五十から五十五ということになりますと、これはかなり静かな環境ということになります。それ以上になりますと、少しやかましい、そういうようないろいろな不快な訴えが出てきておるということになろうかと思うわけでございます。その中で、先ほどちょっと耳に対する
影響ということを申し上げましたのでございますけれども、たとえば
飛行場の
付近なんかですと、百をこえるような
騒音がいたします。そういう音が常時もしもあったら、
飛行場の場合は常心あるわけではございませんが、それでも整備なんかしておりますと、四時間、五時間というような音を聞くわけでございます。そうしますと、職場でそういう音のところにさらされておりますと、耳がだんだん遠くなっていきます。これを
騒音性難聴と呼んでおるわけですけれども、こういうものは職場でも、かなりの音のあるところでも十五年とか二十年たってようやくあらわれてくるもので、したがいまして、その
騒音があるからすぐはかったら何か
影響が出てくるのだというのじゃなしに、耳に対する
影響は非常に長い間かかって出てくる。職場でも大体そういう
騒音で耳が遠くなった場合には、なかなか治療法がない。そういうものなのです。したがいまして、そういうような
飛行場の非常に大きな
騒音の中で
ほんとうに長い間暮らさなくちゃならぬという場合には、それこそ耳に対する
影響まで考えてなくちゃならぬわけです。これは特別の場合です。音の場合は大体なかなかはっきりしないけれども、不快であるというのが主になると思います。
それからもう
一つ、
住宅地で一番問題になりますのは、睡眠に対する
障害だと思います。その次の
ページをちょっと
ごらんいただきますと、これは冬のことですが、ある職場で眠れない理由を尋ねているわけですが、その中に、当時あまりいい
状態でなかったものですから、足が冷えるというような理由がかなりあがっておりますが、その次に
騒音がある。そのために眠れないというのがかなりあることがわかります。これはいろいろな
調査でも音があるとなかなか眠りにくいということが出ておると思うのです。したがいまして、
住宅地に何か音があるといたしますと、あるいは自動車が入ってくる、そして自動車のエンジンの音だけでなしに、たとえばドアをばたんと締める、ああいう音でも目がさめるような現状でございます。したがいまして、住宅の場合にはかなり睡眠の妨げになるというように、音が問題になるわけです。それで一体そういう睡眠の妨げになるような音の大きさはどのくらいかといいますと、これはいままでのアンケートなんかでも、四十とか五十という
数字が出ております。
その次の
ページには、これはちょっと実験的にやったものがありますので、それを御紹介しておるわけですが、
一つは、実験室で若い人を寝せまして、そして寝つくまでの時間を調べているわけです。そのときにいろいろ音の大きさを変えております。そうしてやりますと、たとえばその図にありますように、八十に近いような音がありますと、若い人でも寝つくまでに六十分もかかる人が出てくる。そういうところから見ると、やはり寝つくまでに四、五十ホンという
程度、それから朝目をさますのに、音を聞かせますと早く目がさめる。大きな音を聞かせると、すぐ目がさめる。ところが、四十以下の音なら若い人は四十分もかかって目がさめるということになりますが、それ以上になりますと、かなり早く目がさめる。そういう
意味で四十ないし五十ホンという
程度の
騒音がありますと、眠りに対してかなり
影響が出てくるということがこの実験からもわかります。こういう実験から出たものは、先ほどの大阪そのほかでの
調査とも大体一致したような
数字が出ておるのであります。そういたしますと、現在のそういう数値から考えますと、かなり静かな環境ということを要求しておるわけでございます。そのほかいろいろな本を見ますと、たとえば六十くらいの
騒音を聞かせると唾液や胃液が減ってくるとか、あるいはそのほかビタミンの代謝が高進するとか、いろいろなことがございますが、それらは主として動物実験あるいは実験的なものでございまして、こういう
公害の中で考えていくような場合にはなかなかそういう
騒音の直接の
影響ということをつかまえることはむずかしい。したがいまして、生理的に何か
影響がなければそれは問題ではないと言っておりますと、ほとんど何もしなくてもいいということになってしまいますが、実際は
生活の上に、睡眠はもとより、いろいろ
影響を受けておるということで、やはり
不快感あるいは
生活に対するいろいろな妨害というものを主として考えていくことが必要ではないか。
それから
飛行場そのほかの非常に大な
騒音に対しましては、これはたとえば住居の制限というようなことがありませんと、そのまわりにどんどん人が住めば必ず
影響を受けるわけです。しかもその場合には、場合によりますと、長い
騒音を浴びれば耳が遠くなるという可能性だってないわけではないということを考えますと、二つに大きく分てけ考えてみる必要があるのではないか。
影響のほうからはそんなことが言えるのではないかと思うわけであります。