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1965-02-24 第48回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十四日(水曜日)     午後一時二十三分開議  出席委員    委員長 保科善四郎君    理事 天野 公義君 理事 丹羽 兵助君    理事 南  好雄君 理事 角屋堅次郎君       宇野 宗佑君    熊谷 義雄君       小山 省二君    山本 幸雄君       和爾俊二郎君    二宮 武夫君       肥田 次郎君    堀  昌雄君       門司  亮君  出席政府委員         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君  委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房審議         官)      伊部 英男君         厚 生 技 官         (環境衛生局公         害課長)    橋本 道夫君         厚 生 技 官         (国立公衆衛生         院労働衛生学部         長)      鈴木 武夫君         通商産業事務官         (企業局産業立         地部産業公害課         長)      平松 守彦君         参  考  人         (社団法人労働         科学研究所研究         部長)     三浦 豊彦君     ————————————— 二月二十三日  委員大橋武夫君辞任につき、その補欠として和  爾俊二郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  産業公害対策に関する件      ————◇—————
  2. 保科善四郎

    保科委員長 これより会議を開きます。  産業公害対策に関する件について調査を進めます。  この際一言ごあいさつを申し上げたいと思います。本日は御多用のところ、本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。御承知のように、近時わが国において都市への過度の人口集中、鉱工業の著しい発展、交通激化等によりまして、水質の汚濁と大気汚染騒音振動等産業公害が増大いたしまして、国民の健康や生活を害し、さらには産業にも少なからぬ障害を与えておるわけであります。しかも、これらの悪影響はますます顕著になりつつありまして、大きな社会問題、都市問題となっておることは御承知のとおりであります。このような現状にかんがみまして、本委員会におきましては、目下産業公害対策樹立のために調査を進めておるわけであります。どうぞ忌憚のない御説明、御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  それでは、まず説明員鈴木国立公衆衛生院労働衛生学部長にお願いいたします。
  3. 鈴木武夫

    鈴木説明員 鈴木でございます。きょうは大気汚染人間の健康に及ぼします影響説明せよということでございますので、大至急プリントを用意してまいりまして、これを中心としてお話し申し上げたいと思います。  人間に対します影響というものは、どの範囲をもって人間に対する影響と考えるかということは、実は最初に申し上げなければならない非常に大きな問題であろうかと思いますが、その点につきましてのいろいろの討論が国会のほうで行なわれておる最中でございますので、私はとりあえず、こういうような順序大気汚染のいろいろな影響というものが市民の中からあらわれてくるのだということを、少しずつの例でございますけれども申し上げて、全部の例はとても申し上げられませんが、お許しを願いたいと思います。  まず私たち生活しておりますものの立場から申しますと、大気汚染影響というものは、まず不快感というものからあらわれてまいります。不快感というものは非常に主観的なものでございますけれども、大気汚染影響を考えます場合には、やはり重要視しておかなければならない一つ考え方ではないかということだけは、最初に申し上げておきたいわけであります。人間がどういうところへ住みたいかというときに、病気になったから悪いんだとか、あるいはその病気が悪くなるからこの空気がいけないんだとかいうことで大気汚染というものの評価をするということは、少なくとも公衆衛生立場からはちょっと厳重過ぎはしないかと思うのでございます。それで不快感というものは、御存じのように公害ということの起こりが、ニューサンスということばが示しておりますように、不快感というものはある程度の、定量化はできませんけれども、無視できない一つの要因である。それで一番最後ページ一つの例を持ってきたわけであります。これは昭和三十九年度でありますからちょっと古うございますけれども、東京の小学校の子供につきまして、大気汚染について子供がどんなふうに感ずるであろうかという調査をしたことがございます。そのときの結果でございまして内容はくどくど申し上げませんけれども、その陳情件数工場立地計画とそれから東京都の測定されておりますいろいろな汚染状態というものとの間が、この図をオーバラップしていただきますと、非常によく一致しておるのをごらんになっていただけるだろうと思います。大気汚染と申しますのは、決して産業のもとだけで起きておるのではございませんで、私たち日常生活の中からも、あるいはいろいろな活動の中からも大気汚染は起きておるのでございますけれども、現在その大気汚染の中のどの部分に重点を置くかといえば、この図が一つの例でありますけれども、どうしても産業公害ということにまずまず重点を置いてみるのだということを、最初に申し上げておきたいわけです。そこで人間の主観の問題につきましては、あまり長くなりますからこの辺でやめまして、第一ページに返っていただきます。  大気汚染の直接人間の健康に及ぼす影響と申しますものは、現在の学問の段階から申しますと、大気汚染といものが存在しておるところで、ある病気がふえるとか、あるいは病気になっておる人が症状が悪化するということは言えるのでありますけれども、大気汚染の中の一つ一つ物質がどういう具体的の影響を与えておるかということになりますと、すべての物質についてわかっておるわけではございままん。残念でありますが、まだ学問程度がそこまでであります。それでいま私たちが教科書的にお話し申し上げれば、世界各国データは、大気汚染というものが存在しておるときに、病人はどうなるのだ、あるいは病気というものはどういうふえ方をしておるのかということに尽きると思います。学界等で論じます場合には、大気汚染物一つ一つについての問題をこまかく論じなければいけませんし、日本においても将来この問題は一つ一つ大気汚染物についてどういう影響があるかというようなことをほんとうに具体的に、示さなければ、きめのこまかい対策というものは立たないと思います。しかし遺憾ながら現在のところは、一般論で申せば、大気汚染があれば人間の健康がどうなるという言い方しかまだできません。  それからもう一つは、大気汚染影響はいま申し上げましたけれども、空気中に存在いたします汚染物の種類というものは、実は無数にございます。それでその無数のものが、一つ一つの量であるならば、現在の世界各国のよごれぐあいではまず人間には影響ございません。ところがそういうものが一緒になってくると、われわれが影響として考えなければなりませんいろいろな影響が出てくるというところに、大気汚染の問題を説明いたしますときに非常に困難を伴ってくる場合がございます。ということは、裏返しますと、日本内地だけで申しましても、東京と大阪と宇部と尼崎と北九州、札幌というもののよごれは、決して同一ではないのでありまして、したがって、その中に含まれておりますものの相互作用によって人間影響が与えられるとすれば、ことによったら、ほんとうは違った形でもって影響が出てくるかもしれないのであります。そういうきめのこまかいことは、ほんとうはきょう御説明しなければいけないのでしょうけれども、時間の関係もございますし一部だけしかまだわかっておりませんので、たいへん申しわけございませんけれども、全体として大気汚染をながめた場合の影響ということで考えていくことにします。  そうすると、少なくもいま考えておりますのは、大気汚染複数存在した場合に、その複数のものがお互いに影響を強め合って人間健康障害を与えているんじゃないだろうかということでございます。第一ページに書いてございますのがこの具体的な例と申しますか、実際的な例でございまして、第一図がロンドンの一九五二年と一九六二年のできごとを示したものでございます。そのときに、一九五二年は推定死亡者が四千人であり、一九六二年には推定死亡者が三百人であった。なぜその差が出たかというのを、ロンドンの市役所のほうで報告しました例がここに書いてあるのでございます。これは一九六二年には空気中に浮遊しております浮遊じんが半分になったから、したがって人間に対する影響もそれだけ少なくなったという説明でございます。要するに相互作用という考え方からすれば、こういう説明もある程度つくわけでございます。これは大事件でございますので、いろいろ論議は別といたしまして、一つの例として示しておいていいのじゃないかと思ったわけでございます。それをわかりやすく書きましたのが第二図でございます。  第三図は、人間に対する実験でありまして、亜硫酸ガスを吸わせた場合と、亜硫酸ガス人間にとって何の影響もない生理的食塩水をまぜて吸わせた場合とでは、影響が違う。要するに亜硫酸ガスだけを吸わせた場合では、人間に対して何らかの影響が出てまいりますのが、この横線で書いてありますように一五PPMという数字であらわされる濃度くらいで出てくるのが、人間にとって何の影響もない生理的食塩水の非常にこまかい粒子をまぜてやると、一・五PPMあるいは二PPM影響が出てくるというのでございまして、要するに複数物質相互作用というものが一つ考えられるのではなかろうかという例でございます。  次のページに、大体そこで人間に対する影響はいろいろな形で出るわけでございますけれども、健康ということでほんとう心配になる影響というものを考えます場合には、口の刺激とか鼻の刺激はちょっと飛ばしまして、直接人間のいろいろな機能に対して影響が出るといたしますと、現在までのところは、呼吸器機能障害を受けるということが推定されておるわけでございます。呼吸器機能障害を受ける順序は、ここに、少し医学的なことばでございますけれども書いておきました。最初に口から入りまして肺の奥までの間に、咽頭、喉頭というところから始まりまして、気管気骨支、肺というところに順々影響を受けてまいりまして、その順々影響がだんだん慢性になりまして、そして最後には治療困難な病気慢性気管支炎とか肺気腫とかいうような、いま世界じゅうで問題になっておりますような病気が起きるのであるという、これは一つ考え方でございます。この考え方に対しまして、一つ一つ成績をいま収集しているという状態でございます。  そこで大気汚染影響あらわれ方は、その次のページの3のところに書いておきましたように、非常に急によごれてきたときに急性影響が出る場合、何かの事件がありまして、その障害があって急に空気が悪くなって急性影響が出てくる場合と、じりじりと慢性影響が出てくる場合、それから、じりじりと慢性影響を受けた人が急に空気が悪くなったために強い症状を起こす場合、それから大気汚染とは無関係でありありましても、呼吸器及び心臓疾患を持っておる人たちが、空気が悪くなりましたために症状が悪くなるという、大体このような形で影響というものはあらわれてくると思います。そして、現実にいま日本で、非常に厳重なる意味におきまして健康障害という立場で見た場合には、いままで、原因は何だかわかりませんけれども、何かの形で呼吸器及び心臓機能のおかされている人が、空気がよごれてきたために症状が悪化してきたという例が一番多いと思います。その次は、慢性症状最初のころの影響、それから、まだ肺にまで至らないで気管までの影響を受けている人がだんだんふえてきておるという形が少しずつ出てきているというふうに考えられます。  その次に書きましたのは、私は大気汚染物一つ一つについて十分な知識はないけれどもというお話をいたしましたが、ここに書きましたような物質くらいまででしたら、一つ一つ物質、個々の汚染物影響というものはわかっております。たとえば、SO2、SO3、H2S一酸化炭素とかオゾンとかいうものは、若干われわれ知識として持っております。それで例として書いたわけであります。  次のページにしるしましたのは、大気汚染初期症状といたしまして、空気が悪くなってくることによる一つ反応として、どういう姿が出てくるであろうか。病気とは申しません、しかし好ましくない反応とわれわれは思いますが、その影響東京都の学童につきまして調べた数字でございます。それを表にいたしまして、ここにピークフロー値と書いてありますのは気道空気通りにくさを示します。それですから、この数字の高いほど空気通りいいというふうに見ていただきます。そうしますと、これで簡単に申し上げますと、東京都のよごれのひどいところ、中間地区、きれいなところと、二つずつ学校を選びまして、三月間にわたりまして調査をいたしますと、よごれたところの子供は確かに空気通りにくくなっている、きれいなところの子供通りやすくなっておるし、中間汚染のところはその中間程度であるということが非常に明らかに出てきたわけでございます。それを少しこまかくいたしましたのが、下に書いたような図で示されております。これは飛ばします。  それから、空気が急によごれてまいりますと、病気が悪化する、あるいは何かの病気が出てくるであろうという一つの例としまして、次の三枚目のページ尼崎市の調査をお示しいたしました。それは、空気がよごれてくるといわゆる感冒だとか咽喉頭炎だとかいうことばであらわされます上気道及び気管支病気がぐっとふえてくるわけでございます。これは統計的に処理いたしますと、きれいなときときたないときと比べますと、確かにきたないときのほうがそういう患者がふえてくるということを証明してございます。これはあくまでも相対的なものでございまして、絶対値として申し上げません。ただ、空気がよごれてまいりますと、その翌日及びその翌々日に咽喉頭炎及び上気道あるいは気管支とかいう名前でいわれる患者がそれぞれのお医者さまにかかる人数は、きれいなときに比べますと二倍から四倍の量にふえてまいります。それは決して長い、非常にひどい病気としてではなくて、一日ないし二日の治療でたおる程度のことでございますけれども、一応そういう反応ないしは初期疾病状態と思われる患者がふえてくることは、私は事実であろうと思います。  もう一つ、いままでお話しいたしましたが、一体日本慢性影響があるかないか、これは一つの大きな問題でございます。日本大気汚染ほんとう外国並みにひどくなりましてからまだせいぜい十年でありますから、イギリスだとかアメリカで報告されておりますような慢性病気というものが多数発生するというには、ちょっと時間が短過ぎるために、そうはっきりしたことは出ておりませんけれども、しかし、それぞれの工業都市におきますところの死亡あるいは呼吸器疾患の数というものは、やはり空気のよごれと比例いたしまして高まっていることは事実でございます。それはいろいろ書いておきました。  いままで申しましたのは、ただ平等によごれた場合のことを大ざっぱに申し上げたわけでございますけれども、だんだん日本の生産が高まってまいりまして、一ヵ所から非常に大量の汚染物が放出されるということになってまいりますと、局所汚染というものが心配になってまいります。それの一番不幸な経験をいたしましたのは、やはり四日市であろうかと私は思います。その四日市の一つ状態をちょっと四ページに書いておきました。碓かに空気がよごれてまいりますと、局所汚染の起きております地区呼吸器系疾患患者が多い。そして子供と老人にその患者が多い。それから空気がよごれてくると、ぜんそく様と申しますが、ぜんそくに似たような症状あるいは気管支炎に似たような症状を起こす例が多いということを、ここに示しておいたわけでございます。  時間が参りましたので、あとはこれを見ていただきまして、御質問がありましたら受けますが、要するに、一本におきまして、大気汚染が人体に与えます影響を、一人の人につきまして初期症状から終末症状まで経験した人、あるいはその経験した人を追及した例は、いままでございません。いろいろな大気汚染影響が出てくるであろうと思われる一つの仮説的な考え方を二ページに書いておきましたが、その一つ一つ状態、方々の都市一つ一つ位置づけされるところのデータというものを、それぞれの地区が必要に応じまして、とっておるのでございまして、一人の人間初期から終わりまでいったという者はないということだけは申し上げられます。しかし、日本のいろいろな各種のデータを総合いたしますと、初期症状から終末症状までの一応の結果は得られておるということが言えるのではないかと思います。  最後にお断わりいたしますが、このデータの結果はいずれも、学問的に申しますと、相関関係であって因果関係ではないということでございます。因果関係を証明いたしますのは、今後の問題に残されている。ですから、大気汚染があって健康障害がある、何かそういう関係はありそうだ。しかし、繰り返して申しますが、いろいろな物質がどれだけの量あればどれだけの病気がはっきり出るんだという証明をするまでに十分な成績というものは、まだ得られておらないということでございます。
  4. 保科善四郎

  5. 三浦豊彦

    三浦参考人 プリントを用意しておきましたので、それをごらんいただきたいと思います。  まず最初に、一体騒音というのはどういうものかということから申し上げてみたいと思いますけれども、騒音というのは、結局音がありまして、その音を人間が耳で聞いて初めて騒音という概念が出てくるわけでございます。つまり、うるさいと思ったり、やかましいと思えば、それがどんな音であっても騒音になるというわけであります。ですから、考えてみますと、たとえば大きな音といわれるようなものは、大体うるさいように感じますから騒音になり得る。それから不快な音といいますか、のこぎりの目立てのようなああいう音、あれも不快に感じますから、やはりどんな音であっても騒音に感ずる。いろいろな、たとえば勉強しておる子供が、隣から音が入ってきた、そうすると勉強ができにくい、そういう音もやはり騒音になる。それから特殊な音で不快に思う人もあるわけであります。宗教上の何か、たとえば太鼓をたたく音が、そのたたいておる御本人は非常に法悦の境に入っておられても、それを聞いておるほうでは非常に騒音として感ずるというように、いろいろな音が騒音になり得るわけでございます。けれども、大体機械の出す音でありますとか、そういうものが騒音になってくる。ですから、もう一度申し上げますと、ともかく音があって、どんな音でも、それが音楽の音であっても、人間が耳に聞いて不快であったり、仕事の妨げになったりするというものが騒音だということであります。  それから、あとでちょっと振動のことを申し上げますけれども、振動のほうは、国際的にこういう単位ではかるのだということがまだはっきりしておりません。ところが、騒音のほうは、幸いなことに国際的にもかなりはっきりした測定法あるいはあらわし方というものがある。日本でもそれが計量法に取り上げられておりまして、一定の測定器騒音をはかることができる。その単位がホンである。これも常識的なことだと思います。  一体そういう騒音がどういう影響をしておるだろうかということを主にしてお話を申し上げるわけでございますが、一ページをちょっと見ていただきますと、私どものほうでいろいろな職場をはかりましたものがずっと上のほうに並んでおります。それから下のほうに、東京都ではかられました道路騒音であるとか、あるいは羽田空港付近騒音であるとか、あるいはいろいろな工事現場騒音、そういうものを入れてございます。これをごらんになりますとわかりますように、工場騒音というものもかなり大きなものがございまして、たとえは百をこえるような——百といいましてもわかりませんでしょうけれども、会話をしようと思っても、大きな声を出してもなかなか聞きにくいという程度の音になりますが、それ以上の騒音がかなり工場でもあることはもちろんございます。このごろでは、一番下にちょっとあげておきましたように、オフィスにも、機械化したオフィスがどんどんできてまいりしまして、その機械化したオフィスで、百まで達しませんけれども、かなり騒音が出ております。ですからオフィスでも、騒音問題というのがかなり問題にされるようになってきている。それに比べますと、その下のほうに並べておきました騒音というのは、場合によりますと、飛行場付近になりますと百をこえるようなことももちろんある。特に基地の軍用の飛行機が飛びますところでは、百あるいは百十なんという数字が出ておるわけで、これは非常に大きな音になっております。それからいろいろいろな工事に使っております機械の音、これも近いところで聞きますと、たとえば、そこに書いてありますが、一メートルのところで聞きますと、百三十とか、そんな数字が出ます。それが五十メートル離れても、場合によると百に近いような場合もある。そうなりますと、こういうものがかなりやかましい音としてあがってくるわけでございます。  一方、交通騒音のほうはどうか。その次のページをちょっとごらんいただきたいと思いますけれども、これは東京都が青山通りではかられたもので、二十四時間とっておられる。そうしますと、ごらんのように、夜になってだんだん交通が静かになると下がっておりますけれども、大体七十五あるいは八十に近いような数値が出る。それからその下の点線で示してありますのが、青山通りから五十メートル入った住宅地なんです。そうしますと、ごらんのように住宅地というものは、かなり音が静かになっております。ところが、その住宅地がこのごろいろいろ騒音問題でやかましくなってまいりましたのは、結局こういう小さな住宅地道路にまで車がかなり入ってくるようになってきたということだと思います。ですから、夜なんか寝ておったときに車が通る、そういう音がかなり問題になってくるわけです。ですから、道路に面したところとそこから離れたところでは、かなり違う。これは大気汚染とかなり違った意味があるのじゃなかろうかと思います。つまり、音というものの及ぼします範囲が、飛行機は別としまして、それ以外のときにはかなり狭い範囲で音が問題になっておる。ですから、場合によりますと、公害といいますか、私の害といいますか、公害といっても私の害というほうに近いような性質まで出ておるのが騒音振動の問題だと思います。こうやってまいりますと、騒音の源としては、一つ交通騒音があると思います。その交通騒音の中には、特に自動車がどんどんふえたということで、問題か大きくなってきた。それから、飛行場の周辺では飛行機騒音、それがジェットになりまして音が大きくなってきたというようなことで問題になっておるわけです。それからいろいろな土木工事そのほかの都市のまん中での工事、そういうものも問題になっている。それから一般の広告塔でありますとか、あるいは家庭で出すいろいろな音、そういうものもみんなともかく音がありますと、さっき申しましたように聞いた耳がうるさいと思えば騒音になるわけですから、非常に広い範囲騒音が存在しておるということになります。  さてそれでは、そういうものの影響でございますが、これは先ほどもちょっと大気汚染のときにも話が出ましたように、なかなかはっきり健康に影響が、たとえば耳に影響があるから問題になるのだというふうに考えますことは、私はやはり騒音の場合もいけないのじゃないか。最初に申し上げましたように、不快な音と生活の妨害になるような音、そういうものが問題になるのでありまして、耳に直接影響が出てくるというものは、特別の場合だと考えなくてはいけないのではないかと思います。  その次の図3、これはいろいろなところで引用される図でございますけれども、大阪ではかられたもので、大阪で騒音のあるところをいろいろはかって、そのときにアンケート調査をしておられるわけです。特に家庭の主婦の方のアンケ−ト調査なのですが、そこで、情緒的な影響、あるいは  日常生活に対する影響、あるいは身体的影響というように分けてアンケ−トの集計をされたわけです。それをまとめたものがこの図でございます。その情緒的影響といっておられますのは、そこにちょっと書き足しておきましたように、病気のときに騒々しくて困るとか、騒音のために寝つきが悪いとか、あるいは腹が立ちやすい、ごはんがまずい、その程度のことなのです。そういうものが回答の二五%にあらわれてくるのが四十から五十ホン程度のところです。日常生活障害といっておりますのは、先ほどもちょっと申し上げましたように、お互いが話し合うのに妨げになる、それから新聞が読めないというようなことですが、これでも四十ないし五十ホンというようなところからそういうことが多くなってくる。身体的影響としては、頭が痛むとか、耳が痛いとか、心臓がどきどきするとか、そういうような訴えが出てきておるのですが、それがあらわれてくるのが五十から五十五ホンです。先ほどの図からわかりますように、五十から五十五ということになりますと、これはかなり静かな環境ということになります。それ以上になりますと、少しやかましい、そういうようないろいろな不快な訴えが出てきておるということになろうかと思うわけでございます。その中で、先ほどちょっと耳に対する影響ということを申し上げましたのでございますけれども、たとえば飛行場付近なんかですと、百をこえるような騒音がいたします。そういう音が常時もしもあったら、飛行場の場合は常心あるわけではございませんが、それでも整備なんかしておりますと、四時間、五時間というような音を聞くわけでございます。そうしますと、職場でそういう音のところにさらされておりますと、耳がだんだん遠くなっていきます。これを騒音性難聴と呼んでおるわけですけれども、こういうものは職場でも、かなりの音のあるところでも十五年とか二十年たってようやくあらわれてくるもので、したがいまして、その騒音があるからすぐはかったら何か影響が出てくるのだというのじゃなしに、耳に対する影響は非常に長い間かかって出てくる。職場でも大体そういう騒音で耳が遠くなった場合には、なかなか治療法がない。そういうものなのです。したがいまして、そういうような飛行場の非常に大きな騒音の中でほんとうに長い間暮らさなくちゃならぬという場合には、それこそ耳に対する影響まで考えてなくちゃならぬわけです。これは特別の場合です。音の場合は大体なかなかはっきりしないけれども、不快であるというのが主になると思います。  それからもう一つ住宅地で一番問題になりますのは、睡眠に対する障害だと思います。その次のページをちょっとごらんいただきますと、これは冬のことですが、ある職場で眠れない理由を尋ねているわけですが、その中に、当時あまりいい状態でなかったものですから、足が冷えるというような理由がかなりあがっておりますが、その次に騒音がある。そのために眠れないというのがかなりあることがわかります。これはいろいろな調査でも音があるとなかなか眠りにくいということが出ておると思うのです。したがいまして、住宅地に何か音があるといたしますと、あるいは自動車が入ってくる、そして自動車のエンジンの音だけでなしに、たとえばドアをばたんと締める、ああいう音でも目がさめるような現状でございます。したがいまして、住宅の場合にはかなり睡眠の妨げになるというように、音が問題になるわけです。それで一体そういう睡眠の妨げになるような音の大きさはどのくらいかといいますと、これはいままでのアンケートなんかでも、四十とか五十という数字が出ております。  その次のページには、これはちょっと実験的にやったものがありますので、それを御紹介しておるわけですが、一つは、実験室で若い人を寝せまして、そして寝つくまでの時間を調べているわけです。そのときにいろいろ音の大きさを変えております。そうしてやりますと、たとえばその図にありますように、八十に近いような音がありますと、若い人でも寝つくまでに六十分もかかる人が出てくる。そういうところから見ると、やはり寝つくまでに四、五十ホンという程度、それから朝目をさますのに、音を聞かせますと早く目がさめる。大きな音を聞かせると、すぐ目がさめる。ところが、四十以下の音なら若い人は四十分もかかって目がさめるということになりますが、それ以上になりますと、かなり早く目がさめる。そういう意味で四十ないし五十ホンという程度騒音がありますと、眠りに対してかなり影響が出てくるということがこの実験からもわかります。こういう実験から出たものは、先ほどの大阪そのほかでの調査とも大体一致したような数字が出ておるのであります。そういたしますと、現在のそういう数値から考えますと、かなり静かな環境ということを要求しておるわけでございます。そのほかいろいろな本を見ますと、たとえば六十くらいの騒音を聞かせると唾液や胃液が減ってくるとか、あるいはそのほかビタミンの代謝が高進するとか、いろいろなことがございますが、それらは主として動物実験あるいは実験的なものでございまして、こういう公害の中で考えていくような場合にはなかなかそういう騒音の直接の影響ということをつかまえることはむずかしい。したがいまして、生理的に何か影響がなければそれは問題ではないと言っておりますと、ほとんど何もしなくてもいいということになってしまいますが、実際は生活の上に、睡眠はもとより、いろいろ影響を受けておるということで、やはり不快感あるいは生活に対するいろいろな妨害というものを主として考えていくことが必要ではないか。  それから飛行場そのほかの非常に大な騒音に対しましては、これはたとえば住居の制限というようなことがありませんと、そのまわりにどんどん人が住めば必ず影響を受けるわけです。しかもその場合には、場合によりますと、長い騒音を浴びれば耳が遠くなるという可能性だってないわけではないということを考えますと、二つに大きく分てけ考えてみる必要があるのではないか。影響のほうからはそんなことが言えるのではないかと思うわけであります。
  6. 保科善四郎

    保科委員長 この際、鈴木説明員にお願い申し上げます。排気ガスについての説明を補足していただきたいと思います。
  7. 鈴木武夫

    鈴木説明員 自動車の排気ガスは何と申しましてもすぐ目につきますので、だれでもおそらく何か事があるのではないだろうかということがわかるわけでございます。ところが、自動車の排気ガスと申しましても、実際は乗用車、二輪車、三輪車、四輪車、軽四輪車、それからトラック、みんな排気ガスの成分が違います。そしてその運行条件、あるいは走行条件と申しますか、それによりましてよごれものの量というのは非常に極端に変化いたします。量と性質は変化いたしますが、それならば人間に対します影響から自動車の排気ガスをどう考えるかということになりますと、実は自動車排気ガスの中にはいろいろなものが含まれておりまして、おそらくすべてのものが人間に対して無関係ではないはずでございます。ところが現在までに私たちがわかっておりますもの、その影響をとりあえずつかむことができますものは、一酸化炭素によります中毒でございます。それ以外につけ加えますと、窒素の酸化物あるいは炭化水素あるいはケトン、アルデヒドによりますものの影響はあるわけでございますが、定量的に自動車排気ガスの人間に対します影響をつかむためのいま一番やり得る方法といえば、一酸化炭素中程でございます。  もう一つ、自動車の排気ガスが出てまいりますところが私たちの立って歩いているところの高さに近いために、よごれがすぐわかる。感覚的にも感ぜられます。しかしそのよごれというものは、多数の工場から出てきます煙突のよごれが都市全体をよごすのとは違いまして、いわゆる点と線としてのよごれであって、幅の広いよごれというものはほかの工場から比べれば非常に少ないというふうに、いろいろな測定の結果出ております。東京の日比谷とか銀座だとかいうところのよごれというのは、正直に申しまして、がまんのできない程度のよごれになっておりますけれども、そういうところにわれわれが住みますと、どういう影響が出るか。市民に対しましての排気ガスの影響というものは、現在までのところまだ十分つかまれておりません。問題は、そういう自動車の排気ガスを絶えず吸う機会のあります交通巡査、郵便配達の方々、それから沿道の人があるだろうと思いますが、そのうち一番つかまりやすいのが交通巡査でございますので、これも世界各国調査がされております。日本におきましては、大阪と東京の非常に混雑した十字路で働いておる交通巡査につきましての一酸化炭素影響調査が進められておりますが、一酸化炭素は他の物質と違いまして、呼吸器から血液に流れ込みます量というものが、吸った量と非常によく比例いたしますために、血液を検査いたしますことによりまして、その人がどれだけの一酸化炭素を吸ったかということを非常にはっきりと示すことができます。これを学問的に申しますと、一酸化炭素の飽和度ということばを使うわけでございますけれども、それで調べますと、大阪でも東京でも、非常に混雑したところで働いております交通巡査は、二〇%から五%ぐらいの幅で一酸化炭素を体内にとり入れているのでございます。普通ならはこれはゼロでございます。たばこを一本非常に大急ぎでのみますと、大体五%ぐらいになります。ですから、たばこを年がら年じゅうのんでいる状態、あるいはそれ以上の状態でございまして、おそらく一部のおまりさんにつきましては、激しい頭痛による卒倒直前の、もう少し働いておったらそうなるかもしれないという直前の状態も見出されております。
  8. 保科善四郎

    保科委員長 何か御質問はございませんか。
  9. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの一酸化炭素の問題は、二〇%も空気中にある状態が続くということになりますと、かつて北満のほうで克山病というような、一酸化炭業を長期に吸飲しておる場合の心臓疾患があったわけですが、現在の交通巡査の場合、心臓その他の精密検査等では特に異常はないのでございましょうか。
  10. 鈴木武夫

    鈴木説明員 先生の言われるように、自動車の排気ガスが私たちの耐えられない程度にふえてきたというのは、ごく最近でございますので、克山病、要するに先生のおっしゃるように循環器障害、それからさらに先生は脳軟化症のほうの御心配だろうと思いますけれども、そこまではまだ至っておらないようです。ですから私、個人的意見を言わしていただけば、交通巡査のような方は定期健康診断にそれを入れることによって、将来にわたる予防をいまから考えておかれる必要はあろうかと思いますが、現在あるという報告はございません。
  11. 堀昌雄

    ○堀委員 実はここにロスアンゼルスの許容基準等が書かれておるわけでございますけれども、私も詳しくはよく知らないのですが、ロスアンゼルスではいま自動車の排気ガスについても、マフラーの中から措置をして、排気ガスを出さないような措置をとらしておるというふうに何かちょっと本で読んだことがあるのでございますけれども、これもやはりいまの情勢でいきますと、自動車の量というものがさらに年々ふえてきて、アメリカほどにはなかなかいきませんでしょうが、それに近い状況が大都市では起きてくるのではないか。そうなりますと、これも広義の産業公害だと思います。ロスアンゼルスではそれをやっておりますから、現在はそういう排気ガスによるものは非常に少ないのではないかと思うのですが、ロスアンゼルスでそういう自動車の排気ガスを吸収させるための措置をした時点は、大体どのくらいのところでそういうことをやるようになったのか、おわかりでしたら……。
  12. 鈴木武夫

    鈴木説明員 ロスアンゼルスのよごれは、そういうことをきめたのは一九六一年と記憶しております。もし間違っておりましたら訂正していただきたいのですが、一九六一年にしたわけです。そのときの状態は、私が文献で調べました範囲、私が個人で現地で経験した範囲におきましては、東京のいま一番排気ガスでよごれておると思われる状態の一倍半か二倍くらいでございます。ただ、ロスアンゼルスの場合の自動車の排気ガスのよごれというのは、堀先生御存じだろうと思いますけれども、自動車の排気ガスから出ます窒素の酸化物と炭化水素が一つの、原因になって空気中にオゾンができる。そのオゾンの濃度のほうを問題にしておるのでございます。ですから、東京状態とはちょっと事情が違うのじゃないかと思います。市民の立場から申しまして、オゾンは非常に刺激性が強いものですから、むしろオゾンで市民はいろいろ問題を起こしておるわけでございます。
  13. 門司亮

    ○門司委員 騒音のことで聞きたいのですけれども、騒音のこういう表がありますが、大体神奈川県は非常に飛行場の問題でうるさいのですが、ああいうものを地域的に測定される場合に、これとは別個な——これも基本になりますが、何時間くらいその辺を騒がしておるものを地域的に騒音のある地域というふうに判定されるのですか。ただ一点だけ毎日やかましいからということでとるのか、その瞬間だけとらえると非常に大きくなるが、それは一日に一ぺん、二日に一ぺんという場合と、片方は低くても一日じゆうぐるぐるやっている場合があろうと思いますが、そのとらえ方はどういうふうにとらえるのですか。
  14. 三浦豊彦

    三浦参考人 それははっきりはきめていないと思いますけれども、騒音の場合は繰り返しずっとあるということをかなり考えているわけであります。それの影響が出てくるわけです。ですから、たとえばどんと音がするけれども、あと一時間もずっと音がしないというのは、影響されることが少ない。それが夜出てきますと、睡眠というのはどんという音でもいけない。だから、昼間と夜とではかなり違うのじゃないかと思います。
  15. 門司亮

    ○門司委員 もう一つ聞かしていただきたい。大体そういうことになろうかと思いますが、よく飛行機のやかましい音がするということで、まごまごすると賠償問題や移転問題まで発展することがある。私も年がら年じゅうやっているのですけれども、その場合の測定単位というのは、いま申し上げましたように、これは非常にうるさいけれども、しかしぽつんと一ぺん来るだけのと、片方ではそんなにたくさんなくても、長くやって来る。いわゆる被害の状況によってこれを補償させるとか補償させないとか、いろいろな問題が起こってくる。そういうものの測定ははっきりしたものがないのですか。大体社会通念で、うるさいからやめてもらうとか、うるさいから補償をしてもらうとか、それとも一日のうち何時間こういうことがあればとか、何かきめられたものがありますか。
  16. 三浦豊彦

    三浦参考人 やっぱりそういうものははっきりしていないと思います。それから警察のほうでも、たとえば間欠的な音と連続した音、確かに連続したほうが悪いけれども、それでは間欠した音がどれだけ、何秒おき、あるいは何分おきに起きると悪いのだということは、まだやっぱりつかまれていないと思います。
  17. 保科善四郎

    保科委員長 以上で説明及び参考意見の聴取は終わりました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ本委員会に御出席をくだされ、重要な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる三月三日水曜日、午後一時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時十二分散会