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1965-05-18 第48回国会 衆議院 災害対策特別委員会 第9号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十八日(火曜日)    午後一時二十三分開議  出席委員    委員長 楯 兼次郎君    理事 小沢 辰男君 理事 田中 正巳君    理事 中山 榮一君 理事 稻村 隆一君    理事 大村 邦夫君 理事 山口丈太郎君       井村 重雄君    大竹 太郎君       志賀健次郎君    田澤 吉郎君       武市 恭信君    湊  徹郎君       森下 元晴君    井谷 正吉君       川俣 清音君    泊谷 裕夫君       中村 重光君    西宮  弘君       武藤 山治君    稲富 稜人君  委員外出席者         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房参事官)  北川 博正君         文部技官         (管理局教育施         設部指導課長) 大串不二雄君         農林事務官         (大臣官房参事         官)      尾中  悟君         農林技官         (林野庁指導部         長)      福森 友久君         通商産業事務官         (中小企業庁計         画部長)    荒玉 義人君         運輸技官         (鉄道監督局国         有鉄道部保安課         長)      筒井 謙二君         運輸事務官         (気象庁総務部         企画課長)   大見 和雄君         建設技官         (河川局防災課         長)      重兼 暢夫君         自治事務官         (財政局交付税         課長)     石川 一郎君     ――――――――――――― 四月三十日  委員松田鐵藏辞任につき、その補欠として伊  東正義君が議長指名委員に選任された。 五月七日  委員仮谷忠男君、武市恭信君、坂本泰良君及び  中村重光辞任につき、その補欠として根本龍  太郎君、松澤雄藏君、安宅常彦君及び栗林三郎  君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員中島茂喜君、西岡武夫君、岡本隆一君及び  華山親義辞任につき、その補欠として武市恭  信君、森下元晴君、泊谷裕夫君及び中村重光君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員武市恭信君、森下元晴君、泊谷裕夫君及び  中村重光辞任につき、その補欠として中島茂  喜君、西岡武夫君、岡本隆一君及び華山親義君  が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十三日  会津地方豪雪災害対策に関する陳情書  (第四一一号)  湯沢市の雪害対策に関する陳情書  (第四一二号) 同月十四日  大阪府の春雪被害対策に関する陳情書  (第五一〇号)  横手市の豪雪被害対策に関する陳情書  (第五一四号)  秋田南部内陸地帯豪雪災害対策に関する陳  情書(第五一五  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  派遣委員からの報告聴取      ――――◇―――――
  2. 楯委員長(楯兼次郎)

    楯委員長 これより会議を開きます。  この際、念のため御報告申し上げておきます。  本委員会に参考送付されております陳情書は、昭和四十年一月の北海道及び東北地方高潮災害対策に関する陳情書外五件であります。      ————◇—————
  3. 楯委員長(楯兼次郎)

    楯委員長 この際、閉会審査に関する件についておはかりいたします。  先ほどの理事会において協議いたしましたとおり、災害対策に関する件について閉会審査の申し出をいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 楯委員長(楯兼次郎)

    楯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  5. 楯委員長(楯兼次郎)

    楯委員長 次に、閉会中の委員派遣に関する件についておはかりいたします。  閉会審査案件が付託になり、その審査のため委員派遣の必要を生じました場合には、議長に対し委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 楯委員長(楯兼次郎)

    楯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、派遣委員の氏名、員数、派遣地期間その他所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 楯委員長(楯兼次郎)

    楯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  8. 楯委員長(楯兼次郎)

    楯委員長 災害対策に関する件について調査を進めます。  まず、東北地方及び新潟県における降雪による被害状況等調査のため先般現地に派遣されました委員から報告を聴取することにいたします。  初めに、山口丈太郎君から第一班の報告を聴取いたします。山口丈太郎君。
  9. 山口(丈)委員(山口丈太郎)

    山口(丈)委員 第一班の調査概要について御報告いたします。  第一班は、派遣委員田中正巳君と私のほか、地元選出議員の多数の御参加を得て、五月二日から三日間にわたり、新潟県及び福島県の雪害状況について、つぶさに現地調査いたしました結果を御報告いたします。  新潟県及び福島県におきましては、今年は三月に入っても例年になく北極の寒気が引き続き強く、このため、四月初めになっても春型の気圧がほとんどあらわれず、しばしば強い寒気の南下とともに、顕著な西高東低の冬型の気圧配置となり、季節はずれの大雪を降らせたのであります。したがって、例年降雪様相と著しく異なり、根雪は十日間も早く、しかも、融雪期である三月下旬はもとより、四月に入ってもなお大雪が続き、新潟県におきましては、二日から四日、九日から十一日と連続してふぶきとなり、三十センチから四十センチの降雪があり、また福島県におきましては、一日から三日、十日から十一日にかけてかなりの降雪があり、これら猛ふぶきが連続襲来する豪雪となり、しかも引き続く低温のため、かつて見ない積雪状態となったのであります。  特に新潟北魚沼郡、古志郡、栃尾市、南魚沼郡、福島南会津郡、大沼郡、河沼郡、耶麻郡等の山間部雪地帯は、この積雪のため、農作業のおくれや、桑樹果樹樹木被害が甚大であり、これが今回の雪害特徴となっているのであります。  積雪量のおもなるところを見ると、新潟県におきましては、四月二十日現在入広瀬村二・九メートル、守門村一・六五メートル、小千谷市、広神村一・六メートル、山古志村二・六メートル、栃尾市二・七メートル。松之山町一・八メートルであり。福島県におきましては、只見町一・九五メートル、南郷村〇・四七メートル等であります。  このままの状態で推移するときの雪消えは、例年より二十五日ないし三十日のおくれとなることは必至で、私たち現地調査いたしましたときには、いまだ一・五メートルにも及ぶ積雪があり、道路両側には約二メートルほどのところが幾ヵ所かありました。これら積雪のため、農産物の減産はもとより、林産被害も著しく、未曾有の大凶作であった昭和九年の状態を再現するおそれがあり、加えて融雪災害発生も予測され、地域住民焦燥と不安におののいているのであります。  以下、両県における雪害状況及びおもなる要望について申し上げますと、これら消雪のおくれのため、五月に入っても、水稲苗しろや葉たばこ、苗圃の設置等に支障を来たし、農作業例年に比較し約二週間から二十日のおくれを見ることは明らかであり、農民の生命は土とともにあるものであって、土を見られない農民の深刻な不安感は言語に絶するものがあります。  しかし、これら白魔にもめげず、現地農民は、散土消雪、雪割り等により、懸命に生産の準備のため努力をいたしておったのであります。特に福島県におきましては、県の農業改良普及員の寝食を忘れた懸命の努力により、共同苗しろが設置され、指導に当たっておりました。何といっても、農作物、特に稲作につきましては、時期を失してはこれこそ重大であるからであります。今後これらの稲苗移植について枯渇してしまう危険も大いにあり、また、委託苗しろによる移植について現地農民は不安を抱いておりますので、これらの対策につきましては十分なる指導を考慮する必要があると痛感いたした次第であります。  また、積雪長期にわたったため、桑樹、桐、果樹樹木野鼠、野兎による樹皮食害被害が、山間部の至るところにその被害を見てまいったのであります。これらは農家の経済に甚大な被害を与えることは明らかであります。  この雪害に対し、新潟県においては、四月二十六日、昭和四十年春季異常豪雪災害対策本部設置して、豪雪災害対策の総合的な施策を実施しておりました。対策事業としては、健苗育成対策として、共同苗しろ七十六ヘクタール、委託苗しろ二十七ヘクタール、予備苗しろ二十ヘクタールを実施し、消雪促進事業として、苗しろ千二百二十八ヘクタール、水稲本田六千八百十二ヘクタール、たばこ本圃三百二十四ヘクタール、桑園千四百六十二ヘクタール、普通畑九百九十六ヘクタールに対し、散土、灰、カーボン等資材を投入して実施しておりました。病害虫防除事業は、対象地域九百八十ヘクタールに対して、平年より一回多く薬剤散布の予定であり、予備蚕児配布施設設置事業は六百八十七箱、桑苗共同生産施設設置事業は五十八ヘクタールを予定しており、これに対する県の助成措置として、消雪促進における土取り場設置一立方メートル当たり六百円以内の補償料を、機械除雪一時間当たり二百八十円以内、共同苗しろ設置事業については、被覆資材購入費十アール当たり一万三千五百円以内、苗しろ用地借り上げ料十アール当たり六千円以内、委託苗しろの設置については、このほか、輸送費十アール当たり五千円以内、苗しろ防害虫防除事業は、農薬増高分のうち十アール当たり二百円以内、桑苗共同生産自給施設十アール当たり六万二千百円以内、予備蚕児施設一箱当たり四千二百五十円以内に対して二分の一ないし三分の一以内の助成措置を行なうことを決定しておりました。  さらに、対策本部としては、これらの対策事業指導を強力に推進するため、市町村農業改良普及所蚕業指導所農業試験所気象台等を含めた指導会議を四月七日以降数回にわたり実施し、指導班を編成して、指導体制対策事業技術対策の末端への浸透をはかっておりました。  なお、五月に入ってから、異常気象対策会議を県下五ブロックにおいて計画しておりました。  また、福島県におきましては、会津地方異常豪雪地帯に対する水稲生産対策として、助成等援助措置を講じておりました。たとえば、これら地域に対し、豪雪地域に対する農業技術職員緊急増派遣による技術指導対策援助として、本庁技術職員二名、農業改良普及員七名、現地対策指導専念普及員十名、これに要する経費は五十四万五千円、保護苗しろ設置助成として、対象地域を選定し、これは十六市町村でありますが、これらの地域に対しては保護苗しろの増設をすすめ、その増設分についてのビニール購入費に対し、市町村事業費の二分の一以上補助する場合、県は事業費の四分の一以内で市町村補助する。これに対する所要経費百四十四万八千円。保護苗しろ用地除雪援助として、県は、南会津郡、大沼郡の特定地域に対し、県有土層改良用トラクターを増配置し、保護苗しろ用地除雪を実施、その経費は原則として県が負担する。これに要する経費は五十六万一千円。県有トラクター以外のトラクターで保護苗しろ用地除雪を行なう場合、市町村事業費の二分の一以上補助する場合、県は事業費の四分の一以内で市町村補助する。これに要する経費は四十万円。以上、県はとりあえず対策を講じ、災害対策本部を県及び地方設置し、万般の諸措置を講じていたのであります。  これら雪害による応急対策として、一、苗しろ用地除雪費に対する助成措置、二、共同化しろ及び委託苗しろ設置に対する助成措置、三、苗しろの病虫害防除に要する補助措置、四、桑樹確保のための桑苗共同生産施設及び樹勢回復肥料に対する助成措置、五、農作業促進のため大型農耕機の増配、六、技術指導の徹底、七、果樹園のさく、たな等の施設復旧及び苗木の改植に要する経費助成措置恒久的対策として、一、なだれ防止林造成措置、二、無雪共同苗しろの設置に対する助成措置、以上のおもなる要望があったのであります。  次に、交通関係についてでありますが、冬期交通確保重要性にかんがみ、県、町村一体となり除雪万般努力をいたしておったのであります。私たちが参りましたときには、いまだ道路両側には約二メートルにも及ぶ残雪があり、なだれ危険個所が至るところに見られたのであります。また、今次異常の積雪量のため、国鉄会津線川口只見間は、二月中旬より運休し、五月一日ようやく開通を見る状態であったのであります。福島県においては、僻地交通途絶地域に対しては、自衛隊協力によってヘリコプターによる医師薬品生活必需品等空輸が行なわれたのであります。  これらの応急対策として、一、雪寒対策道路事業拡大強化について、凍雪害防止工事防雪工事事業大幅増額、二、市町村道除雪費補助措置、三、県、市町村等除雪機械購入費に対する国庫補助大幅増額恒久的対策として、市街地密集部落流雪溝設置、消雪施設等雪害防止事業国庫補助金交付制度確立等措置、以上のおもなる要望があったのであります。  次に、厚生関係についてでありますが、今次雪害によって交通は途絶し、さきに述べました福島県の只見町及び昭和村のごときにおいては、完全孤立状態に置かれ、しかもインフルエンザの流行蔓延は、地域住民をして恐怖と不安焦燥に追いやったのでありますが、自衛隊協力で、医師薬品等ヘリコプターによって空輸が行なわれたのであります。また、南会津郡、大沼郡の各町村医療班を派遣し、万全の措置を講じたのであります。  今後融雪期におけるなだれ洪水等による被害発生が予想されるので、これら対策に対し、防疫対策費国庫負担金早期交付並びに負担率の引き上げを行なわれたいとの要望があったのであります。  次に、文教関係についてでありますが、一、豪雪地帯指定文化財に対する高率補助、二、豪雪地帯公立文教施設整備費補助増額、三、豪雪地帯学校等公共施設除雪費補助、以上の要望があったのであります。  次に、大蔵、自治関係についてでありますが、県、市町村に対する特別交付税の配分について、また、融雪災害に伴う復旧財源確保について考慮されたいとの要望があったのであります。  次に、田畑の積雪被害面積について申し上げますと、新潟古志郡、北魚沼郡、南魚沼郡、中魚沼群、刈羽郡、東頸城郡の各郡、一メートル未満一万七千八百二十九ヘクタール、一メートル以上が二千五十八ヘクタールであり、総面積は一万九千八百八十七ヘクタールであります。次に、福島県におきましては、南会津郡、大沼郡、河沼郡、耶麻郡、郡山市の各郡市、一メートル未満六千四百六十八ヘクタール、一メートル以上が五千六百九十九ヘクタールであり、総面積一万二千百六十七ヘクタールであります。  次に、被害額についてでありますが、県側資料によりますと、まず、新潟県におきましては、国県道除雪費約六千六百五十六万円、市町村道除雪費約五千二百万円であります。次に、農林関係といたしましては、水稲減収約十五億七千五百五十五万円、たばこ減収約二千五百二十九万円、養蚕減収約一億二千八百九十万円、山林被害約二億三千万円、野菜被害及び春野菜まきつけ不能等約五千四百万円で、総額約二十一億三千八百十万円の見込みであります。  次に、福島県における被害見込み額は、土木関係といたしましては、融雪費約一億五千万円、除雪費約二千万円、砂利道補修費約二億五千万円、凍雪害防止費約四億二千万円、防雪工事費約一億四千万円、農作物関係といたしましては、麦類約四千七百万円、野菜約六百万円、果樹約六百万円、桑約四百万円であり、公衆衛生関係といたしましては約二百万円、商工関係といたしましては約九千七百万円、教育関係といたしましては約五百万円であり、総額約十三億三千八百万円であります。  今後融雪期においてこれら被害額はなお相当増加する見込みであり、両県及び関係市町村の財政困難にさらに拍車をかけることは必至であると思われるのであります。  今次被害特徴は、さきに述べましたとおり、融雪期の遅延による農作業のおくれたことであり、これに加えて、気象庁の発表によりますと、秋は早く訪れる予報でありますので、今後冷害によるところの被害に対する地域住民不安感があるのであります。これら不安感を除くため万全の対策を講ずる必要があると、このたびの現地調査に参りまして強く痛感いたした次第であります。  以上が新潟県及び福島県の被害概要であります。  なお、詳細につきましては、委員長のお手元に資料を提出いたしておりますので、それをごらんいただきたいと存じます。  この際、政府におきましても、対策を強力に推進し、ただいまの両県からの要望についてはこれを十分に取り入れられ、被害対策を早急に樹立し、これから予想される融雪時の被害及び病害型の冷害発生を最小限に食いとめるとともに、早急なる民生の安定、生産維持発展に万全を期すべきであることを強く要望いたすものであります。  以上、報告いたします。(拍手)
  10. 楯委員長(楯兼次郎)

    楯委員長 本会議終了後再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時四十六分休憩      ————◇—————    午後二時五十五分開議
  11. 楯委員長(楯兼次郎)

    楯委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  先ほど第一班の派遣委員から報告を聴取いたしたのでありますが、引き続き、第二班の派遣委員から報告を聴取いたします。田澤吉郎君。
  12. 田澤委員(田澤吉郎)

    田澤委員 第二班の調査概要について御報告申し上げます。  第二班の構成は、楯兼次郎委員長井村重雄君、田澤吉郎井谷正吉君及び稲富稜人君の五名であり、他に地元選出議員多数の御参加を得て、五月七日から五日間にわたり、岩手、秋田、山形の三県について被害の実情をつぶさに調査してまいりますとともに、青森県につきましては、途中秋田県において被害状況を聴取してまいったのであります。  最初に、災害の原因となりました各県の気象及び積雪状況について申し上げます。  まず、岩手県におきましては本年二月以降の降雪がきわめて多く、特に奥羽山系に属する西和賀地方湯田町、沢内村、和賀町において、大正四年以来最大の積雪深二・八三メートル、降雪量十四五メートルを記録し、加えて、同時期以降の気温は、最低零下八度から四度と継続して低く、融雪もまた著しくおくれ、水稲の播種期に当たる四月二十一日当時、平均積雪量二メートル前後、私どもが視察した五月八日でもなお一メートル以上の積雪政が見られ、平均〇・五メートル前後の雪に一面おおわれている状態でありまして、二月末から三月上旬にかけてピークの積雪量は、湯田二八メートル、沢内二・五メートル、和賀二・七メートルとなっております。  次に、秋田県におきましては、平年融雪期に入る二月下旬から四月初旬にかけて横手市を中心とした県南内陸及び県北阿仁地方は、二十年来の積雪深を記録し、県内の約四二%に及ぶ三十一市町村は、四十五日以上にわたって一メートル以上の積雪深を示したのでありまして、そのおもなる積雪量は、阿仁合一・五六メートル、鎧畑一・五七メートル、比立内二・四三メートル、横手一・七メートル、大曲一・六二メートル、東成瀬二・二六メートルとなっております。  次に、山形県におきましては、二月下旬から三月上旬にかけて約二週間にわたり、飯豊、吾妻・蔵王系から最上郡北部の山岳地帯及び月山・朝日山までは、三十八年一月の豪雪より多量の降雪があり、さらに三月下旬に至って、村山地方を中心とする県中部及び北部に降雪が集中し、最深積雪は平年より二週間から二十日おくれの三月五日ごろであったのでありまして、加えて、二月下旬から特に三月、四月は平年に比し著しく気温が低く、ために積雪がほとんど解けず、これは二十年来の寒さであったとのことであります。おもなる積雪量は、及至二・九メートル、新庄一・五七メートル、肘折四メートル、中村三・〇八メートル、米沢一・二三メートル、小国二・二五メートル、宮峰二・六〇メートルとなっております。  なお、青森県におきましても融雪期が約二週間のおくれとなっており、特に下北地方北部、上北及び津軽地方山間部積雪が多く、四月五日当時でなお東目屋〇・九二メートル、白石〇・七四メートル、野辺地〇・六四メートル、落合〇・五七メートル、川内〇・三二メートルの積雪があったとのことであります。  以上の各県の降雪状況を要約いたしますと、根雪が例年より約一ヵ月程度早く、消雪期に至り、なお多量の降雪を見たため、消雪期が約一ヵ月以上おくれ、さらにこの間冷温が続き積雪期間がきわめて長期にわたったのでありまして、これがため交通輸送の混乱はなはだしく、主要国道及び県道はもちろん、市町村道に至るまで一時は全く閉塞したところもあり、秋田十四名、山形七名に及ぶ死傷、建造物の倒壊のほか、なだれによる人命の保護も憂慮され、林産物の滞貨、食糧の供給の停とん等、予期せざる被害が重なり、今後の融雪による被害も含めてきわめて異常なる豪雪災害というべきであり、地域住民の民生の安定をあげてすみやかにこれが対策樹立につとめるべきであると痛感した次第であります。  次に、各県の報告による被害額について申し上げます。  まず、岩県におきましては、融雪災害の推定も含めて、被害総額八億一千万円にのぼり、このうちおもなものは、農林関係六億三千万円、土木関係一億五千万円となっております。農作物関係被害について見ますと、おもなものは、水稲被害三千六百ヘクタール、三億三千万円、牧草三千三百ヘクタール、三千四百万円、果樹九十ヘクタール、三千万円、葉たばこ百八十ヘクタール、二千二百万円、なたね百六十ヘクタール、一千百万円、大麦二百ヘクタール、九百万円となっており、林産物の滞貨は十六万立方メートル、二億三千万円、木炭六千俵、一億三千万円であり、土木関係におきましては、除雪費として一千六百万円、道路、河川を合わせて一億三千万円と相なっております。  次に、秋田県におきましては、今後の融雪災害の推定も含めて、被害総額三十六億円に達し、これは去る三十八年一月の豪雪被害額三十九億円に次ぐ戦後二番目の大規模な雪害であり、しかも、農作物被害につきましては今回のほうがはるかに大きいとのことであります。その内訳といたしましては、農林水産関係十一億円、土木関係十八億四千万円のほか、おもなものは、商工関係三億一千万円、土地改良関係二億三千万円、国鉄関係一億七百万円、陸運関係六千万円、文教関係四千万円となっております。農産物関係といたしましては、果樹のうち、リンゴの枝折れ一千八百ヘクタール、四億二千万円、ブドウとナシのたな被害九十一ヘクタール、二億七千万円、これら果樹に対する野鼠の被害は八十ヘクタール、七千六百万円にのぼり、果樹全体として五億二千万円となっております。稲作は畑苗しろ除雪費として二千四百ヘクタール、七千二百万円、牧草は一千二百ヘクタール、追播面積三百ヘクタールとして三千万円となっております。林業関係は全体として四億一千万円、このうち、造林関係で九百万本の折損があり、五千六百万円となっており、木材工業において一億四千万円、治山関係として百八十ヘクタール、二億円、林道九百ヘクタール、千四百万円、製炭関係六百万円となっております。水産関係は、漁具及び漁獲高を合わせて六千五百万円であります。土木関係の内訳といたしましては、除雪費として、県が一億八千万円、市町村三億六千万円、融雪災害としては、河川九億八千万円、道路二億五千万円、砂防七千万円となっております。  次に、山形県におきましては、直接間接の被害推定額として総額三十四億八千万円にのぼっているのでありまして、このうち、農林関係二十一億円、土木関係七億九千万円、商工関係三億六百万円、土地改良関係一億三千万円、国鉄関係八千七百万円がおもなところであります。農林関係被害額の内訳といたしましては、果樹の一億五千万円、蚕糸関係一億三千六百万円、林業関係一億五百万円、苗しろ関係六千六百万円となっており、播種遅延による減収推定額は十五億七千万円となっております。土木関係といたしましては、河川の五億八千五百万円のほか、除雪費九千万円、海岸、港湾それぞれ四千万円、道路二千五百万円となっております。  なお、青森県の被害状況についても御報告申し上げておきますと、農林関係被害総額は六億三千四百万円にのぼっており、このうち、直接的被害として、農作物関係は、なたね五千ヘクタール、一億六千余万円、リンゴ六十五ヘクタール、四千万円、牧草五百七十ヘクタール、三千四百万円に、麦類を含め、全体として二億四千万円、造林関係として二千七百万円、農地、農業用施設関係として一億五百万円となっております。間接的被害といたしましては、水稲、リンゴ、なたね、造林種苗について、労力、資材を合わせ二億六千万円となっております。  以上、各県別に被害推定額のあらましを見てまいったのでありますが、これらの数字は、県ごとに算定の方法に相違があり、とりあえず作成されました資料に基づいたものでありますことをお断わり申し上げておきますとともに、今後の本委員会調査を通じて正確な被害額が明らかにされることを期待いたしておきたいと存じます。  次に、各県においてとられました応急災害対策の実施状況等について申し上げます。  まず、岩手県におきましては、県に豪雪災害対策協議会が設けられ、随時現地指導班を派遣するなどのほか、被害状況の早急な取りまとめ、応急対策について万全を期している状況でありました。  第一に、道路交通網の確保が取り上げられ、県、町村協力のもとに、道路除雪対策として、積雪の特に多い沢内村、湯田町に対し、ブルドーザー十五台を増配車し、私どもが現地におもむきましたころは一応の開通を見ていたのでありますが、道路につきましてはいまなおなだれの危険があるとのことで、私どもが東北本線北上駅から湯田町に入るに際しましても、自動車道によらず、横黒線を利用したような次第でありました。  また、横黒線につきましては、盛岡鉄道管理局の報告によりますと、湯田ダム建設によりつけかえされた岩沢−陸中川尻間約十六キロの新線区間は、雪害の難所といわれており、防雪設備、除雪車両、機械の強化に加えて、地上警備員の増強とともに、ヘリコプターによるなだれ査察を行なうなどの対策を実施した結果、三時間以上の列車の遅延は一件のみということであり、四メートルに及ぶ豪雪にもかかわらず、雪害をきわめて軽微に食いとめ得たとのことでありました。  第二に、苗しろ対策でありますが、苗しろ除雪用ブルドーザー十七台を湯田、沢内に配車し、ブルドーザーの交代要員を確保するとともに、消雪促進カーボンブラックについては、四月十一日より十五日までに湯田、沢内、和賀に十七トン車四両を確保したとのことであります。かくして、共同苗しろ、委託苗しろの設置を強力に推進し、七十四町反の設置を見たのでありまして、特に湯田、沢内については、市町村、農業団体等の協力により、地区外に十六町五反の委託苗しろを設置したとのことでありました。  第三に、林産物の滞貨対策として、林道の除雪及びつなぎ資材、資金対策を推進するとともに、土地改良事業の促進対策として、沢内、湯田で、百八十町歩の区画整理事業についても、植え付け時期までに完了すべく目下推進中とのことでありました。  なお、今後とるべき措置として、田植え労働力の確保が問題となるのでありますが、自衛隊及び隣接市町村に対し協力方を要請するとともに、委託苗しろからの苗の運搬等需給対策については、綿密な計画に基づいてこれに当たるべく努力がなされており、このほか、融雪直後における技術対策融雪時における災害の復旧対策についても万全のかまえが見受けられ、まことに心強い限りでありました。  次に、秋田県におきましては、県に雪害対策本部が設けられ、民生の安定をはかるため、第一に交通の確保につとめ、横手市及び大曲市においては、自衛隊秋田駐とん部隊の出動応援を得るなど、全力をあげて輸送力を確立されたとのことであります。第二に、消雪を促進し、播種のおくれを防止して健苗育成をはかるために、三月十二日にはすでに農事対策が決定され、一ヵ月の間に、苗しろ作業の促進についての指導奨励、カーボンブラック十五トンの無償配布、消雪促進、苗しろ技術対策に関するチラシ十二万枚の配布、豪雪地域十七ヵ町村について、十四名一班の指導班七班を編成して消雪及び播種作業の促進に当たり、かたわら、果樹園の消雪促進指導対策を進め、四月六日より一週間、消雪週間を設けて消雪運動を展開するなど、矢つぎばやな施策が行なわれたのであります。四月十三日に至って、集団委託前代設置要綱を決定し、いち早く半額県負担の助成措置を打ち出し、かたわら、十五日より一週間を育苗技術者指導強化週間とし、豪雪十三ヵ町村について、二十一名編成の指導班七班によって技術指導を展開、さらに、二十八日には共同予備苗代設置要綱を定めて稲苗の需給調整をはかるなどのほか、五月に入って、苗しろ管理、防除、本田肥料について農家向けのチラシ十万枚を配布、県内八ヵ所において緊急技術指導を実施、その他テレビ、ラジオ、新聞等を通じて啓蒙普及をはかるなど、およそ考えられるあらゆる方法をもって、きわめて適切なる助成、指導措置がとられたのでありまして、私ども衷心より敬意を表してまいった次第であります。  なお、本県におきましては、従来より「健康な稲作り運動」が強力に推進されており、「健康な稲作り運動」推進対策協議会が設けられているのでありまして、この協議会を中心に、今後の推進対策として、田植えまでを第一次の目標として、苗しろ対策、本田対策、労働力対策に分けて、事こまかに技術の指導がなされているのでありまして、一方において、モニリア病対策本部によるリンゴのモニリア病防止についてのチラシ配布による指導等と相まって、農業技術全般にわたる指導、普及についての諸施策は、全く他の模範とされていることを申し添えておきます。  その他、被災中小企業に対する助成並びに市町村道、農業用施設被害に対する融資を行なうなど、当面する応急対策に全力を傾倒しているとのことでありました。次に、山形県におきましては、県に異常気象災害対策本部設置され、農林関係及び各種公共施設災害について、極力その被害の軽減をはかり、特に農作業等緊急促進対策を決定して、これが推進に当たっておられるのでありまして、まず、営農関係につきましては、融雪遅延による委託苗しろ、共同苗しろの設置に対する助成措置として、事業主体を市町村または農業協同組合とし、四月三十日までに播種不能の地域に対し、市町村が当該事業に要した経費または当該農協に補助を行なった額の半額を補助することといたしております。また、指導の強化対策といたしましては、融雪遅延地域農業改良普及員を動員派遣し、常駐せしめて指導の強化をはかり、技術対策については、各広報機関を通じて周知徹底をはかるとともに、要請に応じて専門技術員を派遣し技術指導の徹底をはかることといたしております。  さらに、林産関係につきましては、炭がまの被害に対し、山形県木炭協会の共済事業としての交付金を支給するほか、特に被害のはなはだしいものについては、復旧事業に対し補助金あるいは利子補給等の助成措置を講ずるとともに、木材、製材業者に対しましては、雪害特別融資について、県が三千万円を山形銀行及び荘内銀行に預託して、融資総額一億円をもって特別融資の措置を講じているとのことであります。  なお、青森県におきましても、県、市町村をあげて応急対策に万全の措置をとっておられるとのことでありましたが、その詳細は省略させていただきます。  以上、各県においてとられた措置につきまして、その特色あるところを御紹介したのでありますが、特に本年産水稲の播種及び発芽の状況につきまして、五月一日現在の農林省の資料に基づいて御報告いたしておきます。  第一に、融雪期につきましては、十日以上の遅延面積は、岩手県三千九百五十ヘクタール、秋田県七万七千二百ヘクタール、山形県四万六千四百ヘクタール、青森県七万九千七百ヘクタールとなっており、第二に、水稲の播種状況につきましては、十日以上の遅延面積は、本日換算で、岩手県二千七百五十ヘクタール、秋田県一万三千九百ヘクタール、山形県九千八百九十ヘクタール、青森県千五百ヘクタールとなっており、北日本全域で八方三千四百ヘクタール、その面積割合は七%に達しております。第三に、発芽及び苗立ちにつきましては、引き続く低温のため不良でありまして、一部地方では苗しろに再播種を行なうなどの対策を講じているところもあり、したがって、第四に、田植えもかなりおくれる見込みでありまして、十日以上の遅延面積は、岩手県九千四百十ヘクタール、秋田県一万三千八百ヘクタール、山形県千六十ヘクタールとなっており、全域で六万七千二百ヘクタール、その面積割合は五%をこえるとのことであります。第五に、苗しろの種類の変化について見ますと、東北及び北陸地方では、水苗しろが激減し、畑ビニール苗しろ、保温折衷苗しろ等の増加は目ざしいものがあるとのことであります。第六に、品種の選定につきましても、全地域にわたって晩生種を廃止して中生、早生種にかえ、ところによっては中生種を早生種にかえているとのことでありました。  私ども調査団は、県庁、市役所、町村役場等におきまして、関係者の代表の方々から被害状況及び要望事項を聴取してまいりましたほか、実際に農家に立ち寄り、長ぐつにはきかえて田畑の中に入り、つぶさに被害の実情を見、農民諸君の声を聞いてまいったのでありまして、調査の足取りに従って、現地の声及び私どもの特に感じた点について御報告申し上げます。  岩手県では、最初湯田町に参りまして、まず、一面雪におおわれた牧草地を見たのでありますが、これらの牧草は、雪腐れにより少なくとも三割減になるとのことであり、次いでこの町で第二番目につくられたという畑苗しろについて見たのでありますが、ここは四月七日に自然積雪二・四メートルであったものを、ブルドーザーで除雪し、二十四日に至りようやく土が出たのでありまして、二十八日に播種を終わり、三十日に苗しろができ上がったとのことでありまして、周囲にはなお六十センチメートルの雪があったのであります。したがいまして、町の三割程度は他町村への委託苗しろでまかなわれ、播種のおくれも早くて二週間、極早生の選択と相まって減収は免れず、また、区画整理事業につきましても遅々としてその進展を見ないとのことでありました。  次いで、沢内村に入ったのでありますが、湯田にまさるとも劣らぬ一面の雪野原が続き、融雪溝からあふれた水が道路をひたしているところが随所に見られ、陳情の会場に当てられた高等学校の渡り廊下のすのこは水に浮いているありさまでありました。播種は五月十五日ごろまでかかり、発芽は一そうのおくれが見込まれており、委託苗しろの勧誘にあたりましては、財政的な手当てはあとで幾らでもするということで強力な推進がはかられた結果、かなりの伸びが見られたとのことでありますが、設置の場所は七十キロから八十キロの遠隔の地であり、二十五台のトラックで二往復しなければならぬ苗輸送の問題や、田植え労働力の確保に腐心しているとのことでありました。  また、この村は国有林の中に村があるような状態で、畜産に関して国有林の開放が強く要望されたのでありまして、従来は無償でありましたが、三十八年の契約更改以来、四月にさかのぼって貸し付け料の支払いが要請され、困窮しているとのことでありまして、この点につきましては、林野庁の管理運営の問題に関連して、雪害の実態ともあわせ考え、何らかの措置が可能ではないかと感じた次第であります。  なお、和賀町からも、麦は雲腐れで全滅に近く、牧草は六、七%の被害であり、乳牛八百頭の飼料不足がはなはだしく、すでに十八頭を売ることになったとのことであり、二万町歩に及ぶ山林につきましても、造林の時期を失し、その対策が憂慮されていたのであります。  この地方は山間僻地でありますため、除雪をはじめとする災害対策に非常な費用と労力が必要とされ、零細な農家における経営資金も底をついていることから、天災融資法の適用及び自創資金の融資が強く望まれていたのでありますが、その査定にあたり、単に失われたもののみを基準とすることなく、むだとも思える費用のおびただしい積み重ねを十分考慮されたいとの強い要請がありましたことを付言いたしておきます。  次いで秋田県に入り、山内村におきまして、十六人の個人委託による集団委託苗しろを見たのでありますが、これまた十日から二週間のおくれであるとのことでありました。  次いで、横手市大沢地区の果樹囲におきましては、リンゴの雪折れ、ブドウだなの倒壊のほか、野鼠による被害が著しく、元来、幼木がねらわれるのでありますが、本年は、若木のみならず、十五年ぐらいの古木が根元から一尺ぐらいの高さまで周囲の皮をきれいに食われている状況を見たのでありますが、果樹は皮を一回り全部食われますと枯死するほかはないとのことでありまして、全く同情を禁じ得ないものがありました。  横手市におきましては、交通確保のため、四日間にわたり百十人の自衛隊員の出動を見たとのことでありまして、これに関連して、道路の路盤災害につきまして、市町村分をも起債の対象とし、また、末端市町村除雪機械についても補助の対象に入れてもらいたいとの強い要望がありました。  次いで、雄物川町の雄南小学校屋体全壊のあとについて現地を見たのでありますが、ちょうど夜半のできごとで、人命に異常がなかったことは、不幸中の幸いであったというべきであります。  雄物川の護岸決壊の状況につきましては、融雪時の水位の増高と強力な水流によるつめあとのなまなましさに驚きを禁じ得なかったのであります。  なお、湯沢市、大曲市当局からも、今後の稲作についての適切な指導が望まれておりました。  また、青森県からも種々の要望がなされたのでありますが、特に本県には零細な開拓地が広く、冬作物としては主として畑作のなたねにたよっているのでありますが、これがほとんど全滅のうき目を見ているとのことでありまして、冬作の指導、助成のほか、現金収入の道を講ずるなどの対策について要望があったのであります。  次いで、山形県におきましては、まず真室川、金山地区について視察を行なったのでありますが、視察数日前から好天に恵まれ、特に当日は二十度をこえる、夏を思わせるような暑さでありましたにもかかわらず、いまだにかなりの残雪が見られたのでありまして、したがって、水源地の冷水温により、あたかも冷蔵庫の一中の苗しろともいうべき状況で、苗腐れの心配もあるとのことでありました。折衷苗しろ、水苗しろにつきましては、極力水温の上昇に努力が払われており、水温上昇剤OEDの使用について指導がなされていたのでありますが、これによりますと、平均二、三度から最高四、五度の上昇が見込めるとの話でありました。播種のおくれもいまだに二〇%残っている状況であり、共同化の進展はきわめて困難で、わずかに労働力と苗との交換による共同作業が見られる程度であり、時期の失しない適切な指導が望まれておりました。  次いで川西町におもむき、リンゴ、洋ナシ、ブドウ、桃などの果樹園について視察したのでありますが、例年十二月二十日ごろの根雪が、本年は一日に降ったことなどもあって、野鼠駆除の措置がとられなかったことが、被害の拡大を見た一因であるとのことでありましたが、何しろリンゴの十年ぐらいの古木が、一面、地上から一メートル強の高さまで全くのまる裸にされていたのでありまして、中には、一本まるまる食い尽くされ、知らない者にとっては、まるでみがき柱かと見まごうほどのみごとさで、粒々辛苦ここまで育て上げ、これから収穫の期待がかけられるとき、これらの木を根元からのこぎりで切り倒し、まきにするほかはなく、しかも、これから何を植えるかと、ぼう然自失している農民諸君の姿は、全く慰めるにことばのない状況でありました。  このような野鼠による被害のみならず、雪折れ、たなの倒壊など、これらの被害に対する適切な対策、特に収入源の確保についての特段の配慮が望まれておりました。  なお、行程の都合上視察ができなかったのでありますが、本県において最も雪が深かったといわれる小国町、飯豊町をはじめ、白鷹町、高畠町及び米沢市の関係者の方々からこもごも窮状が述べられ、援助の要請があったのでありますが、特に米沢市より提起されました土地基盤整備補助対策事業の事業年度の延長に関してでありますが、積雪地帯における土地基盤整備事業は、秋の収穫後、積雪までのきわめて短期間の実施を余儀なくされているため、収穫期の長雨による取り入れ作業の遅延に加えて、例年より二十も早い降雪により、十二月初旬からは施工が困難となり、三月に入っても降雪が続いて、農耕作業の可能期は五月上旬のみという現状でありますことから、本年は例外であるといたしましても、例年、積寒地帯の補助対象事業の年度内完了はきわめて困難な状態でありますので、五月の出納閉鎖期まで事業年度を延長されたいとの要望があったのでありまして、この点につきましては、予算の繰り越し使用の措置などにより政府の善処を望んでおきたいと思うのであります。  以上、現地視察の足取りに従いまして、地元の方々の声及び現地の実情の一端を御紹介いたしたのでありますが、これを要するに、今次の豪雪災害の特色ともいうべきものは、一般の豪雪に伴う災害は言うまでもありませんが、わが国農業の根幹である稲作について、播種及び田植えの遅延を招来し、加うるに、長期予報によりますれば、本年は、将来にわたって冷温が引き続き、秋が早まるとの冷害予測が警告されていることにより、昨年の北海道の冷害が記憶になまなましい今日、農民諸君の間に、冷害ムードともいうべき焦燥感が深刻であるとの感が深いのでありまして、まず第一に、地域住民の不安と焦燥感を払拭することが肝要であることを痛感いたした次第であります。  第二といたしましては、稲作においては、消雪遅延のため、苗しろ播種がおくれ、田植え適期を逸することと、冷害のおそれによる苗しろ対策及び本田対世に関しまして、今後の気象条件の推移と相まって、病虫害の防除等、ふだん研さんを積まれた農業技術の粋を集めて、きわめて緊密なる指導が望まれるところであります。  第三に、麦類、なたね、野菜、飼料等、越冬作物に相当の被害が見受けられ、第四に、果樹の枝折れ、たな、支柱等の倒壊による被害に加えて、野鼠、野ウサギによる被害は目に余るものがあり、第五に、春蚕についても、野鼠による桑樹被害と、晩霜による被害のおそれがあり、第六に、畜産においては、越冬飼料作物に被害が多く、手持ち飼料は底をついている状況であり、第七に、林業においては、折損はもとより、造林の時期を失するなどのほか、林産物の滞貨、炭がまの破損なども顕著であったのでありまして、これらについて適切な助成措置が望まれていたのであります。  さらに第八に、経営資金について、消雪対策発生災害の復旧に多くの負担を要するかたわら、稲作はじめ各種生産上の資金が多額を要するのでありまして、経営資金の手当てが切に望まれているところであります。  第九に、農業労働力の時期的集約のため、この確保と調整を誤らぬようにするとともに、この際、共同作業の推進に力をいたす必要があり、第十に、今後の融雪の進みぐあいによっては、異常出水等による、農地、農業用施設をはじめ、道路、河川その他各種公共施設被害も予想されているところであります。  何と申しましても、東北地方はわが国最大の穀倉地帯でありまして、出来秋における収穫高の減少は、直ちにわが国の食糧政策に、ひいては国際収支に甚大なる影響を及ぼすものであることは言うをまたないのでありまして、われわれの見てまいりました現地におきましては、この異常なる豪雪にもめげず、県をはじめ市町村及び農業団体等の方々が協力一致、あとう限りの適切なる指導、的確なる措置がなされている実情は、まことに心強い限りであったのでありますが、それだけではどうしても限界があるのでありまして、現地における国の施策を待ち望む声はまことに強いものがあったのであります。幸いに、私どもが出発いたしました本月七日、佐藤内閣総理大臣は、閣議の席において、今次の豪雪災害については、政府全体の連絡協議会を設置してこれに対処したいという姿勢を示されましたことは、まことに時宜を得たものであり、地域住民の方々も大いに期待をいたしているところであります。この上は一日も早く具体的に強力な指導、救済のあたたかい手を差し伸べられ、万全の措置をとられるよう、調査団といたしましてもここに御要望申し上げておきます。  最後に、各県、市町村をはじめとする関係者の方々からこもごも陳情されました要望事項につきまして、一括して申し上げたいと存じます。  まず、当面の緊急措置として要望せられた点について申し上げます。  第一は、農林関係についてであります。  その一は、集団委託苗しろ設置、雪消し事業、成育回復、病虫害防除並びに改植、果樹だな、造林地、炭がま等の復旧に対する国庫補助金の交付。  その二は、天災融資法の早期適用と特別被害地域の指定。  その三は、自作農維持資金に基づく災害資金ワクの特別配分。  その四は、果樹及び桑樹の補植、樹勢回復、病虫害防除及び野鼠による被害に対する助成。  その五は、牧草地の雪腐れ等による被害が甚大であるため、政府管理ふすまの増配と、被害牧草に対する追播経費についての助成。  その六は、たばこの仮植床の除雪に対する助成。  その七は、農地及び農業用施設並びに林道の災害復旧に対する助成。  その八は、麦保険金及び共済金の仮渡し措置。  その九は、技術対策及び指導に要する経費並びに労働力対策に要する経費の助成。  その十は、開拓者資金の償還条件の緩和と利子の減免措置。  その十一は、土地基盤整備補助対象事業の事業年度の延長。  その十二は、国有林材払い下げ代金の納入期限の延長。  その十三は、新生拡大崩壊地の早期復旧に対する助成についてであります。  第二に、建設関係について申し上げます。  その一は、なだれ、地すべり、出水等による災害に対する早急なる査定と、すみやかなる助成。  その二は、融雪後の道路路面補修事業について、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法による緊急事業としての国庫補助の特例に関する措置についてであります。  第三に税、財政関係について申し上げます。  その一は、被災地方団体に対する特別交付税の大幅交付。  その二は、各種公共施設除雪費に対する特別の財政援助。  その三は、雪害地帯の地方団体に対する普通交付税の早期決定と繰り上げ交付についてであります。  第四に、商工関係について申し上げますと、被災地における中小商工業者の資金難打開のための政府関係金融機関の融資ワクの大幅増額と貸し付け利率の引き下げ、据え置き期間、償還期限の延長についてであります。  次に、雪害恒久対策として要望せられた点について申し上げます。  第一に、農林関係について申し上げます。  その一は、積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法の期限延長と農林業の抜本的振興対策。  その二は、豪雪地帯なだれ防止林造成事業を、後進地域の開発に関する公共事業に係る国の負担割合の特例に関する法律の指定事業に加えるとともに、国庫補助率現行二分の一を、山地治山並みの三分の二に引き上げる措置。  その三は、雪害及び消雪促進に関する試験研究体制を確立し、農業振興をはかる。  その四は、補助農業気象測所——局地観測所でありますが、それに積雪観測施設設置を行ない、積雪量の把握及び融雪状況の観測による災害の未然防止等、予防体制の確立についてであります。  第二に、建設関係について申し上げます。  その一は、積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法による指定の大幅拡大と、県に対する凍雪害予防施設及び除雪機械整備の補助金の増額とともに、市町村の整備する除雪機械及び除雪費についても補助対象に加える。  その二は、豪雪地帯対策振興費の新規予算化、並びに調整費基準事業の採択基準の緩和及び配分の適正化についてであります。  第三に、税、財政関係について申し上げます。  その一は、地方交付税について雪害地帯の実態に即応するよう積雪度補正の引き上げ、測定単位の新設並びに寒冷度補正の適正化。  その二は、固定資産税の平均価格における寒冷積雪等の補正率の引き上げ。  その三は、積雪寒冷による支出増に対し、所得税法中に積雪寒冷控除制度を創設する等、税負担の均衡をはかる税制改正と、豪雪地帯対策審議会答申の豪雪地帯の税に関する措置の早期実現。  その四は、豪雪に際して地方公共団体が行なう公共施設除雪事業に要する費用の補助に関する特別措置法の補助率引き上げと、政令のすみやかなる制定についてであります。  第四に、文教関係について申し上げますと、豪雪地帯における公立学校の建物構造を鉄骨または鉄筋づくりとするとともに、基準坪数の引き上げ、補助単価の増額と実情に即した措置についてであります。  以上、要望事項について項目のみを申し上げたのでありますが、これらの点につきましては、政府におかれまして、可能な限り、可及的すみやかに措置されんことを御要望いたしておく次第であります。  御報告を終わるにあたりまして、本調査にあたって御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝を申し上げる次第であります。(拍手)
  13. 楯委員長(楯兼次郎)

    楯委員長 以上で派遣委員報告聴取は終わりました。  派遣委員各位にはまことに御苦労さまでございました。  次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後三時四十五分散会