○
田澤委員 第二班の
調査の
概要について御
報告申し上げます。
第二班の構成は、楯兼
次郎委員長、
井村重雄君、
田澤吉郎、
井谷正吉君及び
稲富稜人君の五名であり、他に
地元選出議員多数の御参加を得て、五月七日から五日間にわたり、岩手、
秋田、山形の三県について
被害の実情をつぶさに
調査してまいりますとともに、青森県につきましては、途中
秋田県において
被害状況を聴取してまいったのであります。
最初に、
災害の原因となりました各県の気象及び
積雪の
状況について申し上げます。
まず、岩手県におきましては本年二月以降の
降雪がきわめて多く、特に
奥羽山系に属する
西和賀地方湯田町、沢内村、和賀町において、大正四年以来最大の
積雪深二・八三メートル、
降雪量十四五メートルを記録し、加えて、同時期以降の気温は、
最低零下八度から四度と継続して低く、
融雪もまた著しくおくれ、水稲の
播種期に当たる四月二十一日当時、
平均積雪量二メートル前後、私どもが視察した五月八日でもなお一メートル以上の
積雪政が見られ、平均〇・五メートル前後の雪に一面おおわれている
状態でありまして、二月末から三月上旬にかけてピークの
積雪量は、湯田二八メートル、沢内二・五メートル、和賀二・七メートルとなっております。
次に、
秋田県におきましては、平年
融雪期に入る二月下旬から四月初旬にかけて
横手市を中心とした
県南内陸及び
県北阿仁地方は、二十年来の
積雪深を記録し、県内の約四二%に及ぶ三十一
市町村は、四十五日以上にわたって一メートル以上の
積雪深を示したのでありまして、そのおもなる
積雪量は、阿仁合一・五六メートル、鎧畑一・五七メートル、比立内二・四三メートル、
横手一・七メートル、大曲一・六二メートル、東成瀬二・二六メートルとなっております。
次に、山形県におきましては、二月下旬から三月上旬にかけて約二週間にわたり、飯豊、吾妻・
蔵王系から最上郡北部の
山岳地帯及び月山・朝日山までは、三十八年一月の
豪雪より多量の
降雪があり、さらに三月下旬に至って、
村山地方を中心とする
県中部及び北部に
降雪が集中し、
最深積雪は平年より二週間から二十日おくれの三月五日ごろであったのでありまして、加えて、二月下旬から特に三月、四月は平年に比し著しく気温が低く、ために
積雪がほとんど解けず、これは二十年来の寒さであったとのことであります。おもなる
積雪量は、及至二・九メートル、
新庄一・五七メートル、肘折四メートル、
中村三・〇八メートル、
米沢一・二三メートル、小国二・二五メートル、宮峰二・六〇メートルとなっております。
なお、青森県におきましても
融雪期が約二週間のおくれとなっており、特に
下北地方北部、上北及び
津軽地方の
山間部に
積雪が多く、四月五日当時でなお
東目屋〇・九二メートル、白石〇・七四メートル、野辺地〇・六四メートル、落合〇・五七メートル、川内〇・三二メートルの
積雪があったとのことであります。
以上の各県の
降雪状況を要約いたしますと、根雪が
例年より約一ヵ月程度早く、消
雪期に至り、なお多量の
降雪を見たため、消
雪期が約一ヵ月以上おくれ、さらにこの間冷温が続き
積雪期間がきわめて長期にわたったのでありまして、これがため
交通輸送の混乱はなはだしく、
主要国道及び県道はもちろん、
市町村道に至るまで一時は全く閉塞したところもあり、
秋田十四名、山形七名に及ぶ死傷、
建造物の倒壊のほか、
なだれによる人命の保護も憂慮され、
林産物の滞貨、食糧の供給の
停とん等、予期せざる
被害が重なり、今後の
融雪による
被害も含めてきわめて異常なる
豪雪災害というべきであり、
地域住民の民生の安定をあげてすみやかにこれが
対策樹立につとめるべきであると痛感した次第であります。
次に、各県の
報告による
被害額について申し上げます。
まず、岩県におきましては、
融雪災害の推定も含めて、
被害総額八億一千万円にのぼり、このうちおもなものは、
農林関係六億三千万円、
土木関係一億五千万円となっております。
農作物関係の
被害について見ますと、おもなものは、
水稲被害三千六百ヘクタール、三億三千万円、牧草三千三百ヘクタール、三千四百万円、
果樹九十ヘクタール、三千万円、
葉たばこ百八十ヘクタール、二千二百万円、なたね百六十ヘクタール、一千百万円、大麦二百ヘクタール、九百万円となっており、
林産物の滞貨は十六万立方メートル、二億三千万円、木炭六千俵、一億三千万円であり、
土木関係におきましては、
除雪費として一千六百万円、
道路、河川を合わせて一億三千万円と相なっております。
次に、
秋田県におきましては、今後の
融雪災害の推定も含めて、
被害総額三十六億円に達し、これは去る三十八年一月の
豪雪被害額三十九億円に次ぐ戦後二番目の大規模な
雪害であり、しかも、
農作物の
被害につきましては今回のほうがはるかに大きいとのことであります。その内訳といたしましては、
農林水産関係十一億円、
土木関係十八億四千万円のほか、おもなものは、
商工関係三億一千万円、
土地改良関係二億三千万円、
国鉄関係一億七百万円、
陸運関係六千万円、
文教関係四千万円となっております。
農産物関係といたしましては、
果樹のうち、リンゴの枝折れ一千八百ヘクタール、四億二千万円、ブドウとナシのたな
被害九十一ヘクタール、二億七千万円、これら
果樹に対する野鼠の
被害は八十ヘクタール、七千六百万円にのぼり、
果樹全体として五億二千万円となっております。稲作は畑苗しろ
除雪費として二千四百ヘクタール、七千二百万円、牧草は一千二百ヘクタール、追播面積三百ヘクタールとして三千万円となっております。
林業関係は全体として四億一千万円、このうち、
造林関係で九百万本の折損があり、五千六百万円となっており、
木材工業において一億四千万円、
治山関係として百八十ヘクタール、二億円、林道九百ヘクタール、千四百万円、
製炭関係六百万円となっております。
水産関係は、漁具及び
漁獲高を合わせて六千五百万円であります。
土木関係の内訳といたしましては、
除雪費として、県が一億八千万円、
市町村三億六千万円、
融雪災害としては、河川九億八千万円、
道路二億五千万円、砂防七千万円となっております。
次に、山形県におきましては、直接間接の
被害推定額として
総額三十四億八千万円にのぼっているのでありまして、このうち、
農林関係二十一億円、
土木関係七億九千万円、
商工関係三億六百万円、
土地改良関係一億三千万円、
国鉄関係八千七百万円がおもなところであります。
農林関係の
被害額の内訳といたしましては、
果樹の一億五千万円、蚕糸関係一億三千六百万円、
林業関係一億五百万円、苗しろ関係六千六百万円となっており、播種遅延による減収推定額は十五億七千万円となっております。
土木関係といたしましては、河川の五億八千五百万円のほか、
除雪費九千万円、海岸、港湾それぞれ四千万円、
道路二千五百万円となっております。
なお、青森県の
被害の
状況についても御
報告申し上げておきますと、
農林関係の
被害総額は六億三千四百万円にのぼっており、このうち、直接的
被害として、
農作物関係は、なたね五千ヘクタール、一億六千余万円、リンゴ六十五ヘクタール、四千万円、牧草五百七十ヘクタール、三千四百万円に、麦類を含め、全体として二億四千万円、
造林関係として二千七百万円、農地、農業用
施設関係として一億五百万円となっております。間接的
被害といたしましては、水稲、リンゴ、なたね、造林種苗について、労力、資材を合わせ二億六千万円となっております。
以上、各県別に
被害推定額のあらましを見てまいったのでありますが、これらの数字は、県ごとに算定の方法に相違があり、とりあえず作成されました資料に基づいたものでありますことをお断わり申し上げておきますとともに、今後の本
委員会の
調査を通じて正確な
被害額が明らかにされることを期待いたしておきたいと存じます。
次に、各県においてとられました応急
災害対策の実施
状況等について申し上げます。
まず、岩手県におきましては、県に
豪雪災害対策協議会が設けられ、随時
現地指導班を派遣するなどのほか、
被害状況の早急な取りまとめ、
応急対策について万全を期している
状況でありました。
第一に、
道路交通網の確保が取り上げられ、県、町村協力のもとに、
道路の
除雪対策として、
積雪の特に多い沢内村、湯田町に対し、ブルドーザー十五台を増配車し、私どもが
現地におもむきましたころは一応の開通を見ていたのでありますが、
道路につきましてはいまなお
なだれの危険があるとのことで、私どもが東北本線北上駅から湯田町に入るに際しましても、自動車道によらず、横黒線を利用したような次第でありました。
また、横黒線につきましては、盛岡鉄道管理局の
報告によりますと、湯田ダム建設によりつけかえされた岩沢−陸中川尻間約十六キロの新線区間は、
雪害の難所といわれており、防雪設備、
除雪車両、機械の強化に加えて、地上警備員の増強とともに、
ヘリコプターによる
なだれ査察を行なうなどの
対策を実施した結果、三時間以上の列車の遅延は一件のみということであり、四メートルに及ぶ
豪雪にもかかわらず、
雪害をきわめて軽微に食いとめ得たとのことでありました。
第二に、苗しろ
対策でありますが、苗しろ
除雪用ブルドーザー十七台を湯田、沢内に配車し、ブルドーザーの交代要員を確保するとともに、消
雪促進カーボンブラックについては、四月十一日より十五日までに湯田、沢内、和賀に十七トン車四両を確保したとのことであります。かくして、共同苗しろ、委託苗しろの
設置を強力に推進し、七十四町反の
設置を見たのでありまして、特に湯田、沢内については、
市町村、農業団体等の協力により、地区外に十六町五反の委託苗しろを
設置したとのことでありました。
第三に、
林産物の滞貨
対策として、林道の
除雪及びつなぎ資材、資金
対策を推進するとともに、土地改良事業の促進
対策として、沢内、湯田で、百八十町歩の区画整
理事業についても、植え付け時期までに完了すべく目下推進中とのことでありました。
なお、今後とるべき
措置として、田植え労働力の確保が問題となるのでありますが、
自衛隊及び隣接
市町村に対し協力方を要請するとともに、委託苗しろからの苗の運搬等需給
対策については、綿密な計画に基づいてこれに当たるべく
努力がなされており、このほか、
融雪直後における
技術対策、
融雪時における
災害の復旧
対策についても万全のかまえが見受けられ、まことに心強い限りでありました。
次に、
秋田県におきましては、県に
雪害対策本部が設けられ、民生の安定をはかるため、第一に
交通の確保につとめ、
横手市及び大曲市においては、
自衛隊秋田駐とん部隊の出動応援を得るなど、全力をあげて輸送力を確立されたとのことであります。第二に、消雪を促進し、播種のおくれを防止して健苗育成をはかるために、三月十二日にはすでに農事
対策が決定され、一ヵ月の間に、苗しろ作業の促進についての
指導奨励、カーボンブラック十五トンの無償配布、消
雪促進、苗しろ
技術対策に関するチラシ十二万枚の配布、
豪雪地域十七ヵ町村について、十四名一班の
指導班七班を編成して消雪及び播種作業の促進に
当たり、かたわら、
果樹園の消
雪促進指導対策を進め、四月六日より一週間、消雪週間を設けて消雪運動を展開するなど、矢つぎばやな施策が行なわれたのであります。四月十三日に至って、集団委託前代
設置要綱を決定し、いち早く半額県負担の
助成措置を打ち出し、かたわら、十五日より一週間を育苗技術者
指導強化週間とし、
豪雪十三ヵ町村について、二十一名編成の
指導班七班によって
技術指導を展開、さらに、二十八日には共同予備苗代
設置要綱を定めて稲苗の需給調整をはかるなどのほか、五月に入って、苗しろ管理、防除、本田肥料について農家向けのチラシ十万枚を配布、県内八ヵ所において緊急
技術指導を実施、その他テレビ、ラジオ、新聞等を通じて啓蒙普及をはかるなど、およそ考えられるあらゆる方法をもって、きわめて適切なる助成、
指導の
措置がとられたのでありまして、私ども衷心より敬意を表してまいった次第であります。
なお、本県におきましては、従来より「健康な稲作り運動」が強力に推進されており、「健康な稲作り運動」推進
対策協議会が設けられているのでありまして、この協議会を中心に、今後の推進
対策として、田植えまでを第一次の目標として、苗しろ
対策、本田
対策、労働力
対策に分けて、事こまかに技術の
指導がなされているのでありまして、一方において、モニリア病
対策本部によるリンゴのモニリア病防止についてのチラシ配布による
指導等と相まって、農業技術全般にわたる
指導、普及についての諸施策は、全く他の模範とされていることを申し添えておきます。
その他、被災中小企業に対する助成並びに
市町村道、農業用
施設の
被害に対する融資を行なうなど、当面する
応急対策に全力を傾倒しているとのことでありました。次に、山形県におきましては、県に異常気象
災害対策本部が
設置され、
農林関係及び各種公共
施設の
災害について、極力その
被害の軽減をはかり、特に
農作業等緊急促進
対策を決定して、これが推進に当たっておられるのでありまして、まず、営農関係につきましては、
融雪遅延による委託苗しろ、共同苗しろの
設置に対する
助成措置として、事業主体を
市町村または農業協同組合とし、四月三十日までに播種不能の
地域に対し、
市町村が当該事業に要した
経費または当該農協に
補助を行なった額の半額を
補助することといたしております。また、
指導の強化
対策といたしましては、
融雪遅延
地域に
農業改良普及員を動員派遣し、常駐せしめて
指導の強化をはかり、
技術対策については、各広報機関を通じて周知徹底をはかるとともに、要請に応じて専門技術員を派遣し
技術指導の徹底をはかることといたしております。
さらに、林産関係につきましては、炭がまの
被害に対し、山形県木炭協会の共済事業としての交付金を支給するほか、特に
被害のはなはだしいものについては、復旧事業に対し
補助金あるいは利子補給等の
助成措置を講ずるとともに、木材、製材業者に対しましては、
雪害特別融資について、県が三千万円を山形銀行及び荘内銀行に預託して、融資
総額一億円をもって特別融資の
措置を講じているとのことであります。
なお、青森県におきましても、県、
市町村をあげて
応急対策に万全の
措置をとっておられるとのことでありましたが、その詳細は省略させていただきます。
以上、各県においてとられた
措置につきまして、その特色あるところを御紹介したのでありますが、特に本年産水稲の播種及び発芽の
状況につきまして、五月一日現在の農林省の資料に基づいて御
報告いたしておきます。
第一に、
融雪期につきましては、十日以上の遅延面積は、岩手県三千九百五十ヘクタール、
秋田県七万七千二百ヘクタール、山形県四万六千四百ヘクタール、青森県七万九千七百ヘクタールとなっており、第二に、水稲の播種
状況につきましては、十日以上の遅延面積は、本日換算で、岩手県二千七百五十ヘクタール、
秋田県一万三千九百ヘクタール、山形県九千八百九十ヘクタール、青森県千五百ヘクタールとなっており、北日本全域で八方三千四百ヘクタール、その面積割合は七%に達しております。第三に、発芽及び苗立ちにつきましては、引き続く低温のため不良でありまして、一部
地方では苗しろに再播種を行なうなどの
対策を講じているところもあり、したがって、第四に、田植えもかなりおくれる
見込みでありまして、十日以上の遅延面積は、岩手県九千四百十ヘクタール、
秋田県一万三千八百ヘクタール、山形県千六十ヘクタールとなっており、全域で六万七千二百ヘクタール、その面積割合は五%をこえるとのことであります。第五に、苗しろの種類の変化について見ますと、東北及び北陸
地方では、水苗しろが激減し、畑ビニール苗しろ、保温折衷苗しろ等の増加は目ざしいものがあるとのことであります。第六に、品種の選定につきましても、全
地域にわたって晩生種を廃止して中生、早生種にかえ、ところによっては中生種を早生種にかえているとのことでありました。
私ども
調査団は、県庁、市役所、町村役場等におきまして、関係者の代表の方々から
被害状況及び
要望事項を聴取してまいりましたほか、実際に農家に立ち寄り、長ぐつにはきかえて田畑の中に入り、つぶさに
被害の実情を見、
農民諸君の声を聞いてまいったのでありまして、
調査の足取りに従って、
現地の声及び私どもの特に感じた点について御
報告申し上げます。
岩手県では、最初湯田町に参りまして、まず、一面雪におおわれた牧草地を見たのでありますが、これらの牧草は、雪腐れにより少なくとも三割減になるとのことであり、次いでこの町で第二番目につくられたという畑苗しろについて見たのでありますが、ここは四月七日に自然
積雪二・四メートルであったものを、ブルドーザーで
除雪し、二十四日に至りようやく土が出たのでありまして、二十八日に播種を終わり、三十日に苗しろができ上がったとのことでありまして、周囲にはなお六十センチメートルの雪があったのであります。したがいまして、町の三割程度は他町村への委託苗しろでまかなわれ、播種のおくれも早くて二週間、極早生の選択と相まって減収は免れず、また、区画整
理事業につきましても遅々としてその進展を見ないとのことでありました。
次いで、沢内村に入ったのでありますが、湯田にまさるとも劣らぬ一面の雪野原が続き、
融雪溝からあふれた水が
道路をひたしているところが随所に見られ、陳情の会場に当てられた高等学校の渡り廊下のすのこは水に浮いているありさまでありました。播種は五月十五日ごろまでかかり、発芽は一そうのおくれが見込まれており、委託苗しろの勧誘にあたりましては、財政的な手当てはあとで幾らでもするということで強力な推進がはかられた結果、かなりの伸びが見られたとのことでありますが、
設置の場所は七十キロから八十キロの遠隔の地であり、二十五台のトラックで二往復しなければならぬ苗輸送の問題や、田植え労働力の確保に腐心しているとのことでありました。
また、この村は国有林の中に村があるような
状態で、畜産に関して国有林の開放が強く
要望されたのでありまして、従来は無償でありましたが、三十八年の契約更改以来、四月にさかのぼって貸し付け料の支払いが要請され、困窮しているとのことでありまして、この点につきましては、林野庁の管理運営の問題に関連して、
雪害の実態ともあわせ考え、何らかの
措置が可能ではないかと感じた次第であります。
なお、和賀町からも、麦は雲腐れで全滅に近く、牧草は六、七%の
被害であり、乳牛八百頭の飼料不足がはなはだしく、すでに十八頭を売ることになったとのことであり、二万町歩に及ぶ山林につきましても、造林の時期を失し、その
対策が憂慮されていたのであります。
この
地方は山間僻地でありますため、
除雪をはじめとする
災害対策に非常な費用と労力が必要とされ、零細な農家における経営資金も底をついていることから、天災融資法の適用及び自創資金の融資が強く望まれていたのでありますが、その査定にあたり、単に失われたもののみを基準とすることなく、むだとも思える費用のおびただしい積み重ねを十分考慮されたいとの強い要請がありましたことを付言いたしておきます。
次いで
秋田県に入り、山内村におきまして、十六人の個人委託による集団委託苗しろを見たのでありますが、これまた十日から二週間のおくれであるとのことでありました。
次いで、
横手市大沢地区の
果樹囲におきましては、リンゴの雪折れ、ブドウだなの倒壊のほか、野鼠による
被害が著しく、元来、幼木がねらわれるのでありますが、本年は、若木のみならず、十五年ぐらいの古木が根元から一尺ぐらいの高さまで周囲の皮をきれいに食われている
状況を見たのでありますが、
果樹は皮を一回り全部食われますと枯死するほかはないとのことでありまして、全く同情を禁じ得ないものがありました。
横手市におきましては、
交通確保のため、四日間にわたり百十人の
自衛隊員の出動を見たとのことでありまして、これに関連して、
道路の路盤
災害につきまして、
市町村分をも起債の対象とし、また、末端
市町村の
除雪機械についても
補助の対象に入れてもらいたいとの強い
要望がありました。
次いで、雄物川町の雄南小学校屋体全壊のあとについて
現地を見たのでありますが、ちょうど夜半のできごとで、人命に異常がなかったことは、不幸中の幸いであったというべきであります。
雄物川の護岸決壊の
状況につきましては、
融雪時の水位の増高と強力な水流によるつめあとのなまなましさに驚きを禁じ得なかったのであります。
なお、湯沢市、大曲市当局からも、今後の稲作についての適切な
指導が望まれておりました。
また、青森県からも種々の
要望がなされたのでありますが、特に本県には零細な開拓地が広く、冬作物としては主として畑作のなたねにたよっているのでありますが、これがほとんど全滅のうき目を見ているとのことでありまして、冬作の
指導、助成のほか、現金収入の道を講ずるなどの
対策について
要望があったのであります。
次いで、山形県におきましては、まず真室川、金山地区について視察を行なったのでありますが、視察数日前から好天に恵まれ、特に当日は二十度をこえる、夏を思わせるような暑さでありましたにもかかわらず、いまだにかなりの残雪が見られたのでありまして、したがって、水源地の冷水温により、あたかも冷蔵庫の一中の苗しろともいうべき
状況で、苗腐れの心配もあるとのことでありました。折衷苗しろ、水苗しろにつきましては、極力水温の上昇に
努力が払われており、水温上昇剤OEDの使用について
指導がなされていたのでありますが、これによりますと、平均二、三度から最高四、五度の上昇が見込めるとの話でありました。播種のおくれもいまだに二〇%残っている
状況であり、共同化の進展はきわめて困難で、わずかに労働力と苗との交換による共同作業が見られる程度であり、時期の失しない適切な
指導が望まれておりました。
次いで川西町におもむき、リンゴ、洋ナシ、ブドウ、桃などの
果樹園について視察したのでありますが、
例年十二月二十日ごろの根雪が、本年は一日に降ったことなどもあって、野鼠駆除の
措置がとられなかったことが、
被害の拡大を見た一因であるとのことでありましたが、何しろリンゴの十年ぐらいの古木が、一面、地上から一メートル強の高さまで全くのまる裸にされていたのでありまして、中には、一本まるまる食い尽くされ、知らない者にとっては、まるでみがき柱かと見まごうほどのみごとさで、粒々辛苦ここまで育て上げ、これから収穫の期待がかけられるとき、これらの木を根元からのこぎりで切り倒し、まきにするほかはなく、しかも、これから何を植えるかと、ぼう然自失している
農民諸君の姿は、全く慰めるにことばのない
状況でありました。
このような野鼠による
被害のみならず、雪折れ、たなの倒壊など、これらの
被害に対する適切な
対策、特に収入源の確保についての特段の配慮が望まれておりました。
なお、行程の都合上視察ができなかったのでありますが、本県において最も雪が深かったといわれる小国町、飯豊町をはじめ、白鷹町、高畠町及び米沢市の関係者の方々からこもごも窮状が述べられ、援助の要請があったのでありますが、特に米沢市より提起されました土地基盤整備
補助対策事業の事業年度の延長に関してでありますが、積
雪地帯における土地基盤整備事業は、秋の収穫後、
積雪までのきわめて短期間の実施を余儀なくされているため、収穫期の長雨による取り入れ作業の遅延に加えて、
例年より二十も早い
降雪により、十二月初旬からは施工が困難となり、三月に入っても
降雪が続いて、農耕作業の可能期は五月上旬のみという現状でありますことから、本年は例外であるといたしましても、
例年、積寒地帯の
補助対象事業の年度内完了はきわめて困難な
状態でありますので、五月の出納閉鎖期まで事業年度を延長されたいとの
要望があったのでありまして、この点につきましては、予算の繰り越し使用の
措置などにより政府の善処を望んでおきたいと思うのであります。
以上、
現地視察の足取りに従いまして、地元の方々の声及び
現地の実情の一端を御紹介いたしたのでありますが、これを要するに、今次の
豪雪災害の特色ともいうべきものは、一般の
豪雪に伴う
災害は言うまでもありませんが、わが国農業の根幹である稲作について、播種及び田植えの遅延を招来し、加うるに、長期予報によりますれば、本年は、将来にわたって冷温が引き続き、秋が早まるとの冷害予測が警告されていることにより、昨年の北海道の冷害が記憶になまなましい今日、
農民諸君の間に、冷害ムードともいうべき焦燥感が深刻であるとの感が深いのでありまして、まず第一に、
地域住民の不安と焦燥感を払拭することが肝要であることを痛感いたした次第であります。
第二といたしましては、稲作においては、消雪遅延のため、苗しろ播種がおくれ、田植え適期を逸することと、冷害のおそれによる苗しろ
対策及び本田対世に関しまして、今後の気象条件の推移と相まって、病虫害の防除等、ふだん研さんを積まれた農業技術の粋を集めて、きわめて緊密なる
指導が望まれるところであります。
第三に、麦類、なたね、野菜、飼料等、越冬作物に相当の
被害が見受けられ、第四に、
果樹の枝折れ、たな、支柱等の倒壊による
被害に加えて、野鼠、野ウサギによる
被害は目に余るものがあり、第五に、春蚕についても、野鼠による
桑樹の
被害と、晩霜による
被害のおそれがあり、第六に、畜産においては、越冬飼料作物に
被害が多く、手持ち飼料は底をついている
状況であり、第七に、林業においては、折損はもとより、造林の時期を失するなどのほか、
林産物の滞貨、炭がまの破損なども顕著であったのでありまして、これらについて適切な
助成措置が望まれていたのであります。
さらに第八に、経営資金について、消雪
対策、
発生災害の復旧に多くの負担を要するかたわら、稲作はじめ各種
生産上の資金が多額を要するのでありまして、経営資金の手当てが切に望まれているところであります。
第九に、農業労働力の時期的集約のため、この確保と調整を誤らぬようにするとともに、この際、共同作業の推進に力をいたす必要があり、第十に、今後の
融雪の進みぐあいによっては、異常出水等による、農地、農業用
施設をはじめ、
道路、河川その他各種公共
施設の
被害も予想されているところであります。
何と申しましても、
東北地方はわが国最大の穀倉地帯でありまして、出来秋における収穫高の減少は、直ちにわが国の食糧政策に、ひいては国際収支に甚大なる影響を及ぼすものであることは言うをまたないのでありまして、われわれの見てまいりました
現地におきましては、この異常なる
豪雪にもめげず、県をはじめ
市町村及び農業団体等の方々が協力一致、あとう限りの適切なる
指導、的確なる
措置がなされている実情は、まことに心強い限りであったのでありますが、それだけではどうしても限界があるのでありまして、
現地における国の施策を待ち望む声はまことに強いものがあったのであります。幸いに、私どもが出発いたしました本月七日、佐藤
内閣総理大臣は、閣議の席において、今次の
豪雪災害については、政府全体の連絡協議会を
設置してこれに対処したいという姿勢を示されましたことは、まことに時宜を得たものであり、
地域住民の方々も大いに期待をいたしているところであります。この上は一日も早く具体的に強力な
指導、救済のあたたかい手を差し伸べられ、万全の
措置をとられるよう、
調査団といたしましてもここに御
要望申し上げておきます。
最後に、各県、
市町村をはじめとする関係者の方々からこもごも陳情されました
要望事項につきまして、一括して申し上げたいと存じます。
まず、当面の緊急
措置として
要望せられた点について申し上げます。
第一は、
農林関係についてであります。
その一は、集団委託苗しろ
設置、雪消し事業、成育回復、
病虫害防除並びに改植、
果樹だな、造林地、炭がま等の復旧に対する
国庫補助金の交付。
その二は、天災融資法の早期適用と特別
被害地域の指定。
その三は、自作農維持資金に基づく
災害資金ワクの特別配分。
その四は、
果樹及び
桑樹の補植、樹勢回復、
病虫害防除及び野鼠による
被害に対する助成。
その五は、牧草地の雪腐れ等による
被害が甚大であるため、政府管理ふすまの増配と、
被害牧草に対する追播
経費についての助成。
その六は、たばこの仮植床の
除雪に対する助成。
その七は、農地及び農業用
施設並びに林道の
災害復旧に対する助成。
その八は、麦保険金及び共済金の仮渡し
措置。
その九は、
技術対策及び
指導に要する
経費並びに労働力
対策に要する
経費の助成。
その十は、開拓者資金の償還条件の緩和と利子の減免
措置。
その十一は、土地基盤整備
補助対象事業の事業年度の延長。
その十二は、国有林材払い下げ代金の納入期限の延長。
その十三は、新生拡大崩壊地の早期復旧に対する助成についてであります。
第二に、建設関係について申し上げます。
その一は、
なだれ、地すべり、出水等による
災害に対する早急なる査定と、すみやかなる助成。
その二は、
融雪後の
道路路面補修事業について、公共土木
施設災害復旧
事業費国庫負担法による緊急事業としての
国庫補助の特例に関する
措置についてであります。
第三に税、財政関係について申し上げます。
その一は、被災
地方団体に対する
特別交付税の大幅交付。
その二は、各種公共
施設の
除雪費に対する特別の財政援助。
その三は、
雪害地帯の
地方団体に対する普通交付税の早期決定と繰り上げ交付についてであります。
第四に、
商工関係について申し上げますと、被災地における中小商工業者の資金難打開のための政府関係金融機関の融資ワクの
大幅増額と貸し付け利率の引き下げ、据え置き期間、償還期限の延長についてであります。
次に、
雪害恒久
対策として
要望せられた点について申し上げます。
第一に、
農林関係について申し上げます。
その一は、
積雪寒冷単作地帯振興臨時
措置法の期限延長と農林業の抜本的振興
対策。
その二は、
豪雪地帯の
なだれ防止林造成事業を、後進
地域の開発に関する公共事業に係る国の負担割合の特例に関する法律の指定事業に加えるとともに、
国庫補助率現行二分の一を、山地治山並みの三分の二に引き上げる
措置。
その三は、
雪害及び消
雪促進に関する試験研究体制を確立し、農業振興をはかる。
その四は、
補助農業気象測所——局地観測所でありますが、それに
積雪観測
施設の
設置を行ない、
積雪量の把握及び
融雪状況の観測による
災害の未然防止等、予防体制の確立についてであります。
第二に、建設関係について申し上げます。
その一は、
積雪寒冷特別
地域における
道路交通の確保に関する特別
措置法による指定の大幅拡大と、県に対する凍
雪害予防
施設及び
除雪機械整備の
補助金の増額とともに、
市町村の整備する
除雪機械及び
除雪費についても
補助対象に加える。
その二は、
豪雪地帯対策振興費の新規予算化、並びに調整費基準事業の採択基準の緩和及び配分の適正化についてであります。
第三に、税、財政関係について申し上げます。
その一は、
地方交付税について
雪害地帯の実態に即応するよう
積雪度補正の引き上げ、測定単位の新設並びに寒冷度補正の適正化。
その二は、固定資産税の平均価格における寒冷
積雪等の補正率の引き上げ。
その三は、
積雪寒冷による支出増に対し、所得税法中に
積雪寒冷控除制度を創設する等、税負担の均衡をはかる税制改正と、
豪雪地帯対策審議会答申の
豪雪地帯の税に関する
措置の早期実現。
その四は、
豪雪に際して
地方公共団体が行なう公共
施設の
除雪事業に要する費用の
補助に関する特別
措置法の
補助率引き上げと、政令のすみやかなる制定についてであります。
第四に、
文教関係について申し上げますと、
豪雪地帯における公立学校の建物構造を鉄骨または鉄筋づくりとするとともに、基準坪数の引き上げ、
補助単価の増額と実情に即した
措置についてであります。
以上、
要望事項について項目のみを申し上げたのでありますが、これらの点につきましては、政府におかれまして、可能な限り、可及的すみやかに
措置されんことを御
要望いたしておく次第であります。
御
報告を終わるにあたりまして、本
調査にあたって御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝を申し上げる次第であります。(拍手)