○高橋(正)
政府委員 御
質問に答えまして、一般的に消雪の方法につきましての研究の現状並びに見通しというようなものを申し上げたいと思います。
研究の面からいたしまして消雪の方法を考えます場合に、まず第一に目標といたしますのは、どういうものから熱源をとるかということでありますが、お知りおきのとおり、たとえば雪一グラムを解かしますのに八十カロリーの熱量が要る。非常に膨大な熱量が要るわけでございます。それで、研究を開始いたします場合に、まずそういう熱源をどこからとるかという問題が出てくるわけでございますが、現在行なわれておりますものを幾つか申し上げますると、最初には、化学反応を利用いたしましたもの、あるいは結晶水を利用いたしまして雪の融解点を下げるということがございます。お知りおきのとおり、雪は塩をかけますと解けますし、食塩水というものは零度で凍らないわけでございまして、雪は自分より低い温度で凍りますものにあいますと解けてしまうわけでございます。そこで、たとえば食塩水のようなものでございますとか、あるいは最近はアルコールでございますとか尿素でございますとか、いろいろな化学薬品等を使いましてそういう方法をやっておることは、実験的にはかなり可能ということが出ておりますけれ
ども、これはやはり経費の問題がございます。したがいまして、局部的の使用しかいまの
ところではできないのではないかと思っております。
第二番目には、石炭でございますとか、あるいは重油、軽油というような燃料を燃焼させまして、それによりまして熱源を得るものでございます。これは申し上げるまでもないと思いますけれ
ども、これもやはり経費的な面が問題になっております。
それから三番目は、電流を通じまして、いわゆるジュール熱というものを利用いたしまして雪を解かす方法でございます。これはお知りおきのとおり、現在は飛行場で
滑走路の消雪に使っております。これはかなり効果があると思いますけれ
ども、先生の御指摘の農地のような問題になりますと、結局経費的な問題で適用できないことになるわけであります。
それから四番目には、地下水を利用する方法でございますが、これにつきましてはあとで少し詳しく申し上げます。
五番目におきましては、いろいろな消雪の促進剤と申しますか、こういうものを使うという方法。
大体この五つであると思いますけれ
ども、いずれも経済的な問題もございますが、私
どもが従来特に研究をいたしましたものは、最後にあげました、地下水利用によります
ところの市街地の消雪の研究と、それから消雪促進剤を用います
ところの農耕地におきます消雪の研究でございます。この両者につきましては、三十八年の一月の
北陸地方の
豪雪の際に、
豪雪全般の
災害に対します総合研究を、私のほうは研究の総合官庁という立場から、
各省庁の研究機関等を動員いたしましていろいろな研究をいたしました際に、この二つの研究を行なったわけでございますが、そのうちで一番先生の御
質問の点だと思います消雪促進剤によります
ところの農耕地の
融雪につきましては、先ほど
農林省のほうからお答えになりましたが、これは私のほうの研究促進特別
調整費を
農林省に移しがえいたしまして御研究を願ったものでございます。これにつきましては、多少問題点等を申し上げますると、研究
報告書を一覧いたしました
ところ、この研究は、まず、御承知おきのとおり、カーボンブラック、すすを雪の上に散布いたしまして、自然の雪面におきます
ところの日射量の受熱量と申しますか、熱がたくさん受け得る量をふやすわけでございます。自然の雪面でございますと、この研究によりますると、せっかく太陽の熱が加わりましても、たとえば一月では一五%、二月は三四%、三月には四〇%というように、雪自体が太陽のカロリーを吸収いたしまして利用する率が非常に低い。そこで、すすを雪面にまきまして、申し上げるまでもなく黒いものでございますので、太陽の吸収熱を多くするということ。この研究を見ますると、これは大体二月の中旬にこのときは散布いたしておりますので、このカーボンブラックの有効期限が大体三十日と考えておりますが、この結果を言ますると、三十日の期間といたしまして、カロリーで申しますると三千二百四十カロリー、一平方メートル当たりでございますが、これだけ雪面が太陽のエネルギーを吸収する量がふえておる。これに基づきまして、時間がございませんのでこまかくは申し上げませんけれ
ども、いろいろな仮定が多少加わっておりますが、計算上、雪の深さにいたしまして、一般の雪に比べまして百十六センチの雪をより多く解かすことができる。自然のまま放置いたしておきました
ところの、いわゆるコントラストのものが、減雪日数、日々に雪が減っていきます
ところの量が、雪の深さで申しまして五。六センチメートルということになっておりますので、この研究結果そのものにつきましては、
雪解けを促進いたします
ところの日数は二十一日早くなったという結果が出ております。ただ、先ほど
農林省のほうから御
説明がございましたように、いまのような技術的には一応実用化し得る可能性はあるけれ
ども、なお実用方法につきましてはいろいろな問題があるということも述べております。先ほど
農林省から御
説明になりましたことと重複するかと思いますけれ
ども、たとえばこの場合、ヘリコプターのダスターを、いわゆる農薬散布用のものを用いましたために、非常にカーボンブラックの散布の効率が悪かった、そのような点を改良しなければならないとか、あるいはカーボンブラック自体が非常に比重の軽いものであります場合には、散布がちょうど必要な農耕地にうまく当たらない。これにいろいろな材質のものを加えましたり、あるいはコーティングと申しまして、丸薬のようなものでございますけれ
ども、まわりにほかのものをつけてやるという方法もございますけれ
ども、これをいたしますと、逆に、
融雪能力と申しましょうか、解ける能力が、比重を多くするとうまく目的地には振りまけるけれ
ども、十日から十五日くらいは延びてしまうというような結果になる。そのほか、散布の時期の問題等もあるようです。
それから、先ほどお話ございました経済的な問題ということがございますが、この資料の研究結果を見ますと、当時のいわゆるヘリコプターの
作業料、それから材料費等を合わせまして九千円から一万円というようなことが書いてございます。ただ、ダスター等を改良いたしますれば、このときはたしか十ヘクタールまくのに八分くらい時間を要しておるのでありますが、ダスターの改良で時間的には半減できるということも書いてございます。それから、規格外カーボンを使えば材料も多少安くなる。ただ、規格外カーボンにつきましては、当時の研究によりましては、薬害があるかないかという検討はまだなされておりません、その点が仮定になりますけれ
ども、大体その辺が、いま申し上げました
融雪促進剤を用いる方法でございます。
それから、あとの地下水の利用方法につきましては、これは申し上げるまでもないと思いますけれ
ども、大体一グラムを解かしますに必要なカロリー、八十カロリーと申しましたけれ
ども、したがいまして、雪が一グラムを解かしますには八グラムくらい水が要る。
道路におきまして、たとえば一メートルくらい雪が降り続くといたしましたときには、新雪と仮定いたしまして、一平方メートル当たり〇・八トンくらいの水を十三度から十五度くらい、これを一晩中散水しておりますれば、一メートルくらい日に積もります雪が、全然積もらないということになっております。ただ、いま申し上げましたとおり、非常にこれも大きなカロリーが要ります。火炎放射器のようなものを用いるということも出ますけれ
ども、雪というものは、御存じのように空気が大部分で比重が少ないもので、非常に断熱的にできておりまして、瞬間的に非常に強い熱をもって与えましても、火災放射器は千度くらいになるかもしれませんが、こういうものを井水のようなもので長い間時間をかけてやる。
先生御指摘のように、そのものずばりというものはできませんで残念と思っておりますけれ
ども、私のほうといたしましても、国会の御援助等によりまして、昨年末に国立防災センターの支所といたしまして
雪害実験所を
新潟のほうにおつくりいただいたわけでございます。現在、所員まだ十一名というような、きわめて貧弱な施設でございます。今後そういう
ところを拡充いたしまして、ことしから
雪害の応用研究室というものを新設いたしまして所員を増加いたしましたが、今後とも
努力を続けたいと思います。現状はそういうことでございます。