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1965-04-10 第48回国会 衆議院 国際労働条約第八十七号等特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月十日(土曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 大橋 武夫君    理事 坂田 道太君 理事 田中 龍夫君    理事 田村  元君 理事 中野 四郎君    理事 藤枝 泉介君 理事 小林  進君    理事 多賀谷真稔君 理事 野原  覺君       荒木萬壽夫君    大野  明君       奥野 誠亮君    鯨岡 兵輔君       田中 正巳君    武市 恭信君       床次 徳二君    橋本龍太郎君       八田 貞義君    濱田 幸雄君       山村治郎君    有馬 輝武君       大出  俊君    河野  密君       村山 喜一君    安井 吉典君       山田 耻目君    栗山 礼行君       吉川 兼光君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         文 部 大 臣 愛知 揆一君         労 働 大 臣 石田 博英君         自 治 大 臣 吉武 恵市君         国 務 大 臣 増原 恵吉君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局参事         官         (第一部長)  関  道雄君         総理府総務長官 臼井 莊一君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房公務員制度         調査室長)   岡田 勝二君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         労働政務次官  始関 伊平君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君     ————————————— 四月十日  委員稻葉修君、仮谷忠男君、藏内修治君、澁谷  直藏君及び小金義照辞任につき、その補欠と  して鯨岡兵輔君、橋本龍太郎君、大野明君、山  村新治郎君及び武市恭信君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員大野明君、鯨岡兵輔君、武市恭信君、橋本  龍太郎君及び山村治郎辞任につき、その補  欠として藏内修治君、稻葉修君、小金義照君、  仮谷忠男君及び澁谷直藏君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  結社の自由及び団結権保護に関する条約(第  八十七号)の締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第五号)  地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第六号)  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第七号)  地方公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第八号)      ————◇—————
  2. 大橋武夫

    大橋委員長 これより会議を開きます。  結社の自由及び団結権保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案国家公務員法の一部を改正する法律案及び地方公務員法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野密君。
  3. 河野密

    河野(密)委員 私は、日本社会党代表いたしまして、ただいま議題となりましたいわゆるILO案件につきまして、簡単に御質問をいたしたいと存じます。  ILO八十七号条約批准の問題は、長い間の政治的懸案でありまして、佐藤総理も、施政方針演説の中において、「ILO八十七号条約について、その早期批准を期する政府方針には変わりなく、一日も早く関係案件の成立をはかり、多年の懸案であるこの問題に終止符を打ちたいと考えます。」と述べて、決意を表明されました。このことばのとおり、ILOの問題は実に長い歴史を有する文字どおりの多年の懸案でございます。歴代の総理も繰り返して同じような決意を表明されてきたのでありますが、しかし、結果においては、そのつどそのつど国民の期待を裏切って批准ができなかったのであります。  そこで、私は冒頭に総理にお伺いしたいのでありますが、ILO批准についていかなる熱意を持っておるのか。この国会中に万難を排しても批准したいというかたい決意を持っておるのか。もしそういう決意をお持ちであるとするならば、その決意を実行するについてどういう用意をお持ちになっておるか。これをまず承りたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねがございましたが、この案件は、非常に長い、数年を経過しております。しかし、私ども与党考え方、また、野党である社会党諸君民主社会党諸君などの考え方も、早期批准を希望しておられる。そういうような事態であるわけでございますので、私が施政演説で宣明したことも、この全体の意向を体して必ず今回はこれが解決できる、かような自信の上に立って私は前進をいたしておるわけであります。  ことに今回は、ILO現地調査といういろんな批判すらあるような事態もあった。その後におけるこの案件取り扱いでありますだけに、一そう、ぜひとも解決したい、私はかような考え方を持っておるのであります。
  5. 河野密

    河野(密)委員 総理決意のほどはわかったのでありますが、問題は、これを批准するについての用意いかんということであると思います。  本年一月、お話しのとおりに、ドライヤー調査団が来日いたしました。そのドライヤー調査団総理にも会っておるはずでございまするが、伝えるところによりますると、ドライヤー調査団長以下に総理がお会いになったときに、八十七号条約批准は必ず実現する、次の国会においては——というのは、この国会において——必ず実現する、こういうかたい約束をされた、言明をされた、こういうふうに伺っておりますが、これはいかがでしょうか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ドライヤー委員長からILO条約批准等について政府考え方を聞かれたわけであります。私はただいまお答えしたような政府所信を表明したわけであります。いわゆる約束ということではございません。もちろん国会審議するというそういう状況のものでございますから、審議を受け、そうして賛成を得る筋のものだ、かように考えておりますので、ドライヤー約束はいたしませんが、政府所信をはっきり申した次第でございます。
  7. 河野密

    河野(密)委員 ILO理事会出席をいたしましたILO理事原口君が帰ってきてからの報告によりますると、ドライヤー調査団に随行して参りましたジェンクス次長原口君に向かって、日本総理約束をしたのである、だからILO八十七号条約批准は間違いないのだ、総理約束が破られるはずはないじゃないか、こういうことを申しておったと伝えてくれました。これはおそらくいまの総理のことをさすのだと思いまするが、約束はしないと申しまするが、向こう側ではその立ち会ったジェンクス次長は、総理が強い言明をしたのであって、これは総理約束であるとこう解釈したんだろうと思いますが、少なくともこの国際的な舞台においていやしくも総理が言ったのだから、これは間違いのないことである、こういわれておるのであります。その総理の言ったことが万一実現ができないということになりまするならば、これは日本の非常に大きな恥辱である。私がILO報告をいろいろ聞いた中で、原口君がジェンクスから言われたというこの一言が最も強く私に響いておるのでありますが、総理はこの点についてどうお考えになりますか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの約束というそのことばは、これは不適当だと思いますし、またジェンクスさんがさように申しても、そういう約束をする筋のものではございません。だから、その点は誤解のないように願いたいと思います。  しかし、私が非常なかたい決意を持ってこの問題をぜひ成立させたい、こういう気持ちであることは先ほど来の事情でよく御承知だと思います。ことに、ただいま言われるように、国際的信用、そういう点に立ってこれはたいへんなことになりはしませんかという河野君の御意見、これがもう六年、七年もたっている、そういうこと自体に実はもうすでに不信を買うというような点がありはしないか、これを私は実は非常に心配しておるのであります。政府ジュネーヴに参りまして、そうして労働大臣が毎回この所見を表明しておる、政府大臣日本政府代表立場において声明してきた、意見を述べてきた、そういう事柄が迎えられておらない。今度また調査団まで来て、そうして政府意向を確かめた。また、この調査団が、私どもばかりでなく、組合意見も徴しておる、また関係の党の意見も徴しておる、私かように思いますが、全部が全部真正面切って反対する方はないように見受けて帰ったと思うのです。だから、今回は、いわゆる国際的信用信頼を裏切るとか裏切らないとかいう問題よりも、大局的見地に立てば必ずこの問題は各党の賛成を得るものだ。そういう意味で私は前進を続けていきたいし、また御協力をお願いしたい、かように心から思う次第でありまして、今回は何としても成立させたい、この気持ちには変わりはございませんので、どうかひとつよろしくお願いいたします。
  9. 河野密

    河野(密)委員 佐藤総理決意のほどはよくわかりました。  そこで私はお尋ね申しますが、日本国憲法によりますれば、総理の権限というものはきわめて広大であります。しかも総理は多数党の総裁でもあられる。それにもかかわらず、いままでこの問題に対して、数回の国会においてついに批准の手続をとることができるに至らなかったというのは、どういうところに原因があるのでありましょうか。私たち野党でありますが、全体の見地に立ちまして協力をしてまいったつもりであります。現に、個人のことを申してはたいへん恐縮でありますが、自民党の倉石君と私との間で協定に達した案に対しましては、私は率直に申し上げますが、池田前総理大臣もわれわれに対して御苦労さまですという声すらあったわけでありますが、それにもかかわらずこれがついに日の目を見なかった。これは一体どういうところに原因があるのでありましょうか。この原因の排除なくして、佐藤総理決意はいかに牢固たるものがあっても、はたしてその期待どおりにいくのであるかどうか、私は非常な疑いを持たざるを得ないのでありますが、この点について総理はいかなる用意を持っておられるか、承りたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでのいきさつ、これもたいへん大事なことだと思います。これをただしてみるということも今後の進め方においては必ず役立つだろう、これは河野君もおっしゃるとおりだと思います。しかし、特にその衝にあられた河野委員に対していままでの経過を私自身が説明するよりも、どうも河野さんのほうがよく御承知じゃないだろうか。私は、今回はそういう点も考慮に入れながら前進した案を御審議願う、こういう態度をとっておりますので、ただいま御懸念になりますような点も十分考慮されておる、かようにひとつ御了承をいただきたいと思います。
  11. 河野密

    河野(密)委員 それでは私は率直に申し上げまするが、自由民主党としても、佐藤総理考え方挙党一致これを支持しておる。この問題に関する限りは佐藤総理考えによって貫くことができるのだ、こういうふうに承知してよろしいですか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおり承知されて間違いございません。
  13. 河野密

    河野(密)委員 佐藤総理決意のほどはわかりました。  そこで、私は少しく内容に入って伺いたいと思います。  このILO条約批准するについては、幾つかの前提が必要であると思います。その一つは、ドライヤー調査団政府提案をいたしまして、政府もこれを受諾いたしました調査団提案なるもの、これを忠実に実行するということがまず前提として考えられることであります。第二番目に、調査団の示唆と申しましょうか、調査団提案の中に含まれているところに基づきまして、政府労働組合側との話し合いの場をつくるという、その話し合いの場をつくるために総評の側から幾つかの提案がされております。これに対して明確なる答えを出すということがまずなされなければならない点だと思います。さらに第三番目には、このILO条約批准するについて、現在提案されておりまする国内法案件というものをいかに取り扱うかという問題が解決されなければならない、こういうふうに考えるのであります。この三つの前提条件があるわけであります。  この前提条件について、まず第一に伺いまするが、政府は、ドライヤー調査団が書き残して政府提案してまいりました提案を忠実に履行するという考え方を持ち、どういうようにこれを進めておるか、これをまず承りたいと思います。
  14. 石田博英

    石田国務大臣 私が先に具体的なことについてお答えをいたしまして、あとから総理に御答弁を願いたいと存じます。  ドライヤー調査団提案は、まず第一に、八十七号条約とそれに直接関係のある公労法四条三項、地公労法五条三項の改正に注意を向けるべきであるということが一点であります。第二点目は、今度国会に提出された政府国内法改正案については、最終的な意見を言う段階ではないが、しかし提訴者意見、並びに九月に行なわれた審問の経過をかなり取り入れているものと認めるということが第二点であります。第三点は、いろいろのこの条約批准についてのむずかしくした要件、案件、それの前提には、公共部門における労使間の双方信頼関係が欠けておるということが指摘され、それを回復するために総理のイニシアによって、労使政府代表が定期的に会合して、共通課題について意見を交換することが望ましいということであります。そうして、その意見の交換の途中で、経過で、結論を得、前進が見られたならば、それは国会報告をすべきである。さらに、六月に開かられる総会には、政府代表として労働大臣総評側代表として岩井事務局長ジュネーヴへ来て、提案を受け入れた経過後の努力について報告をしてもらいたい、ということでございました。  政府は、この提案を受諾いたしまして、直ちに総評側に対しまして定期的会談を開くことを申し入れました。それに対して総評側は、五つの問題をあげて、それに対して回答してもらうことが前提である、こういうことを言うてまいりました。政府はこれに対しまして、そのあげられておるような案件を解決するためには、定期的会談をやって相互信頼関係回復することが必要なのであるから、まず定期的会談にひとつ応じてもらいたいという意思表示をいたしますとともに、提示せられました案件についての政府側答えを申し上げたのであります。一々に答えたわけではありませんが、考え方を表示いたしました。  以後しばしば意見の調整をはかり、定期的な会談をすみやかに実施すべく努力を傾注しておるのでありますが、まだ開くに至っていませんことはきわめて遺憾といたすところでございます。したがって、政府側といたしましては、まず定期的会談を行なうことが信頼関係回復する第一歩である、そしてまたそれがドライヤー提案を忠実に実行するゆえんである、こう考えておる次第でございます。  それから、関係国内法取り扱いにつきまして総評側から提案がなされました。しかしながら、これはすでに国会に提出し、御審議を願っておることでございますから、国会審議の場において御討議、御審議、御交渉をいただくことでありまして、政府としてすでに国会条約批准案件及び関係法律案を出しておるのでありますから、政府としてお答えをする範囲ではない、こう答えて今日に至っておる次第でございます。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま労働大臣答えたので、詳細御了承いただき、御理解いただいたかと思いますが、私の気持ちを率直に申しますと、とにかくドライヤー調査団が来て、そうしていろいろな提案をした。とにかく政府も謙虚な気持ちでこの問題を聞こうじゃないか、また謙虚な気持ちでこれについて協力するというか・実施する、こういうことにひとつ取り組んでいこう、こういうことでただいま申し上げたような処置をそれぞれとったわけであります。  ただいままでそれがまだ実を結んでいないという点がありますことは、まことに私、残念に思いますけれども、こういう事柄は、とにかく関係者が謙虚な気持ちで、そうしてお互いに反省もし、そしてこの提案を受け入れる、こういうことの努力をすべきだ、かように私は思っております。
  16. 河野密

    河野(密)委員 いまの、政府がいままでおとりになった気持ちの点というのはわかりましたが、問題の焦点は、政府のほうは、会合をしておる間に自然に何かが出てくるであろう、こういう考え方であり、総評の側においては、はっきりしたものを政府がまず的束をするのでなければその会談に臨む意味がないのではないか、こういうところに問題の焦点があると思うのであります。この点について、いまの点ではわれわれは納得ができないのであります。  そこで私はお尋ねをいたしますが、私たち——たちというより、私の解釈するところによると、ドライヤー提案の重要な点はこういう点ではないかと思う。まず第一に、早期批准をするということ。しかし第二に、この批准単独では相互信頼がつくれない。したがって、批准相互信頼処置とを双方とも遅滞なくやるべきであるということ。それから第三は、批准は、労使関係改善のために政府のとるべき態度中の最後のものではなく、最初のものであるということ。第四番目に、総理みずからが相互信頼改善のための定期的会合のイニシアチブをとるべきであること。最後に、これらの問題について保障がないではないかということで、国会報告するという義務と、先ほどお話のありましたいわゆるジュネーブの第四十九回総会に対して労働大臣並びに総評事務局長がともに報告をするという、こういう義務を課することによって保障措置をとりておる、こう解釈すべきだと私は思うのであります。  私がここで政府お尋ねしたいと思うのは、この批准単独では相互信頼はつくれない、したがって、批准相互信頼措置とは双方とも遅滞なくやるべきである、並行してやるべきじゃないか、こういうことであり、同時に、労使関係改善のために政府のとるべき態度中の最後のものが批准というのではなくして、批准というのは最初であって、これから問題が始まるのだ、その内容批准後において行なわれる、ほんとうに生まれてくるんだ。こういう点について、政府ははたしてどう理解しておられるのか。私の点はこの点にしぼられるのでありますが、労働大臣でもけっこうでありますが、この点どうお考えになりますか。
  17. 石田博英

    石田国務大臣 私でもよろしいそうでございますから、お答えをいたします。  まず第一に、御指摘のような提案、そのとおり私も受け取っておるのでありますが、要点は、相互信頼回復措置、これと批准と並行するということでございますけれども、まずこれを両方ともすみやかに行なわなければならないという立場から、政府は、ドライヤー提案を受諾いたしました後、直ちに定期的な会合の呼びかけをいたしました。  それの提案の趣旨は、いろいろ多くのむずかしい懸案がございます。その懸案がなぜ長い間処理されないでおったかと申しますと、それは相互信頼が欠けていることなんだ。相互信頼回復のためには、まずとにかく、人間人間の間であるから、定期的に会って、共通課題についていろいろと自由に話し合ったらどうだ。それを通じて信頼関係回復してくれば処理されるのではないか、こう私は理解をいたしておるのでございます。  それから、批准が終わりではなく最初であるということは、批准だけで、労使関係信頼回復ということが放置されるなら、それは批准ということだけでは労使関係というものが改善されるとは思わないのであるから、したがって、それを土台といたしまして、定期的会談を積み重ねることによって信頼回復しなさい、こういうふうに受け取っております。  それからもう一つは、相互信頼関係回復ということは、これは相当時間を要します。一回や二回会ったから回復するとかという性質のものではないと思うのであります。やはり、長い間の懸案でありますから、時間をかけていろいろ話し合っていく必要がある。しかし批准は急がなければならない。ともどもに時間的にあとう限り急いでやる努力はいたしますけれども、その並行という意味は、批准は始まりであるという以上はやはり批准が急がるべきである。定期的会合も同時に急ぐべきであるが、その成果はやはり時間をかけていくべきものと考えておる次第でございます。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっとふえんいたします。  私は、河野君のただいまの御意見はそのまま了承していいと、かように思いますが、ただ一言申し上げたいのは、相互信頼を欠いておるという、こういうことをドライヤー調査団から指摘されたということ、この点は、双方ともにぜひ謙虚な気持ちでこの点を反省すべきじゃないか、かように思っております。したがって、そういう意味先ほど来の第一のお答えを私はいたしたのでございます。外国の調査団にかような点を指摘されるということは、本来私ども国内の問題であるべき労使双方まことに遺憾な関係、状態が続いていた、かように認めざるを得ない。この点をぜひとも新しい観点に立って直していく、その点が最も必要なことだ、かように思います。  しかし、ILO条約批准、これはどこまでもただいま指摘されるごとく、国会審議であり、そうしてこのILO批准することによって労使間の関係に非常な一転機を見出す、これが労使双方不信感をなくす一つのきっかけにもなるだろう、こういう点に私ども思いをいたさなければならない。でありますから、いわゆる国会審議の場というものについて、この問題の重大性を十分認識していく。  同時に、国会審議外において十分労使双方がこの問題を謙虚な気持ちで取り上げていくべきだ、そうしてその不信があるならばそれを取り返していく、こういうことでなければならない。もちろん片一方で政府が非難されることもよくわかりますけれども、同時に組合側にもやはり反省すべきものがあるだろう、私はかように思います。いずれにいたしましても、そういう点で話し合いの場を設けて、そうして共通の場を見つける、こういう努力をすべきだ、かように私は考えておるのであります。  ただいまお話しのように、これがただいま並行してとかいうような表現はされておりますが、それは並行されることを私は断わるという意味じゃございませんけれども、一は国会審議の場でやるべき事柄と、一は国会審議外においても特に力をいたすべき事柄と、かように区分すべきものじゃないだろうか、私かように考えておる次第でございます。
  19. 河野密

    河野(密)委員 労使双方の間に不信感があるということは、これはおおうべからざる厳然たる事実であります。根強い不信感がある。しかし、その不信感をまいたのは一体どちら側に責任があるのか、これは私たちが大いに追及しなければならない。その反省の上に立つならば、政府態度に違ったものが生まれてこなければならないはずだ、私たちはそう考えるのであります。私が先ほどドライヤー調査団提案を要約して申し上げた中に、批准というのは最初のものであって最後のものじゃないという調査団提案ことばを特に強調したのも、そこにあるのであります。  なぜかと言うならば、政府考え方の中に、批准はいたします、批准はいたしますけれども労使の規律を規制する法律等においては従来のままから一歩も出ない提案をしてきておる、そういうところに問題があるのではないか。その態度こそ労働組合の中に抜くべからざる不信感を植えつけておる根本じゃないかと私たちは思うのであります。この点は、今度の条約批准案を通そうという熱意は私は大いに多とします。多としますが、その批准案が通りさえすれば自分たちの役目は済んだのだ、国際的な顔も立つのだと、もしそういう気持ち批准案を取り扱うならば大きな間違いである。批准というものは、批准そのものが目的でなくして、批准の後に国内労使体制を新しいものにする、労使間にわだかまる不信感というものを一掃するというところにある。その大目的を忘れているのじゃないか。私たちはその点を憂慮するからして、憂慮であればけっこうでありますけれども、あるいはそれは現実化するのじゃないか。われわれ自身も、率直に申しまして、こういう政府のやり方に対して不信感を持たざるを得ない今日の情勢というものに対して、これを反省しなければならないじゃないか。少なくともそういうことを一掃するためには、ドライヤーが勧告しておる、この批准と同時に遅滞なく相互信頼回復するような処置をとるべきだということを、実行に移さなければならない。どちらが先、どちらがあとということでなくとも、少なくとも並行してこれが進行しておるという姿があらわれなければ、われわれとしてはこの批准に対して政府が熱意を傾けておるとは了解できない。ここに問題があると思うのであります。総理大臣いかがですか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話は、政府の熱意を疑うということでなくて、あるいは労使双方の現状についての認識を双方が欠いておる、社会党の認識とあるいは政府当局の認識、そこらに差異があるのじゃないか、かように私は思いますが、そういう点がこの特別委員会を通じてさらに審議が進められることによって明確になるのだと思います。私はただいまお話しになりました点は、御意見を述べられた点は、それはそれなりとして一応筋の立ったお話のようにはお見受けいたしますけれども、もしも政府が熱意を疑われるというような点があるとすれば、それはおそらくこの認識についての相違ではないだろうか、かように私は感じたのであります。そういう点は、いずれこの審議の過程におきまして明確にさるべきじゃないだろうか、かように思います。
  21. 河野密

    河野(密)委員 ことばでなくて、私は具体的の問題についてお尋ねしなければならないと思いますが、総理のいまのことばが掛け値なしにそのとおりであるといたしますならば、巷間伝えられる何月何日までにはこの批准案を上げなければならぬとかいうようなことは、これは総理並びに政府の意図でもなく、もっともっと慎重なる審議の上に立って、院外におけるいま言うとおり相互信頼処置というものの進行ともにらみ合わせながら、国会審議を進めていくというふうにわれわれは理解できるのでありますが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  22. 石田博英

    石田国務大臣 私どもドライヤー提案を受け入れて、それに対する処置遅滞なく呼びかけておるのでございます。そしてドライヤー提案が、労使相互信頼回復するのには双方とも反省が必要である、重大な態度の変更が必要であると申しました。われわれは労使の間の話し合いの場を持つことが少なかった点を十分反省をいたしまして、その提案に基づいて呼びかけをいたしておるのでありますが、これは会談でございまして、こちら側だけ出席したのでは成立をいたさないのであります。したがって、私どもは鋭意努力をいたしておるのでございますが、まだ御出席を得られるような状態になっていないことは、はなはだ遺憾でございます。  そこで、もう一つは、国内法の問題について、この国内法内容がすなわち労使関係不信感一つ前提である、こういうお話でございましたが、この国内法は、ドライヤー提案の中にも提訴者及び審問の経過を考慮されてあることを認めるということがございましたし、また、前の国会に提出をいたしました原案にその後の審議経過並びに御議論等をでき得る限り参酌いたしたのでありまして、十分御審議を願いたいと存ずるのであります。  むろん相互処置、すなわち信頼回復処置と、それから批准の成立ということにつきましては、これはできるだけ一緒にやっていくことが望ましいのでありますが、ドライヤー提案にもございましたように、批准はまず出発である、出発はやはり先に出発しないと、途中のほうと一緒に出発するわけにはまいりませんから、出発のほうを先にいたしていただきまして、その出発を土台として信頼関係回復努力をいたしてまいりたいと存じます。  それから、国会審議につきましていついつどうするということにつきましては、政府関係することではございません。
  23. 河野密

    河野(密)委員 いまお話しのように、定期的会合はまだ開かれるに至っていないのでありますが、その予備的な会合はすでに何回か開かれたのであります。その予備的会合において、八十七号条約批准の妨げとなってきた障害、いわばつまずきの石ともいうべきものを取り除くために、幾つかの要求が労働組合側から出されていると思いますが、その内容を承りたいと思います。
  24. 石田博英

    石田国務大臣 それは五つでございます。第一は、定期的会合に文部大臣を含めること。第二は、文部大臣と日教組の話し合いを行なうこと。話し合いの結果——この話し合いの結果という意味は、定期的会合で行なった話し合いという意味であります——を文書化すること。それから、ILO関係国内法改正問題について政府・自民党、社会党で話し合うこと。公務員制度審議会で公務員労働者の団交権、スト権を審議すること。こういうことでございました。  これに対しまして、私どもは、こういうようないろいろな障害となった問題は、それは何から起こったかというと、労使関係不信感から起こっているのであるから、その不信感回復するために、まず定期的会合にひとつ御出席を願いたい。そして、これについてどう考えるか、一の定期的会合に文部大臣を含める、これは文部大臣出席するであろう、文部大臣と日教組の話し合いということは、これはその定期的会合を通じて相互信頼関係の確立と相まって処理せらるべきものと考える。第三につきましては、それは文書にしなければならぬこともあるだろうし、あるいは文書にしにくいこともあると思います。第四番目の国内法の問題については、すでに国会に提出してございますから、その国会においてひとつ各党の間でお話し合いをいただくことを望みます。それから、公務員制度審議会は公務員の、公共部門における労使関係の基本について御審議を願うものであります。こういうことをお答えいたしたのであります。
  25. 河野密

    河野(密)委員 少なくともわれわれの聞いている範囲におきましては、その定期的会合にまず出席するかしないかということを決定する問題として、第一は日教組と文部大臣との交渉、いわゆる中央交渉の問題でありまして、この中央交渉の問題を解決するということがILO八十七号条約批准するかしないかという問題の一つのかぎであると私たち考えるのであります。  この点については、いまお述べになりましたところはきわめて抽象的でありますが、そのものずばり、総理大臣は、この日教組の中央交渉——この前の国会において自民党と社会党とで協定した案についてついにこれが成立を見るに至らなかった根本の問題はここにあるのであります。——この点について、政府としてはどういう態度をもって臨まれるか、どういう処置をとられるのであるか、総理大臣並びに文部大臣の明確なる見解を承りたいと思います。
  26. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど質疑応答がありますように、政府としてはドライヤー提案というものを受諾しておりますから、いわゆる定期的な混合方式の会談に、求められれば、政府代表者の一員として文部大臣出席することはやぶさかではございません。  しかしながら、いわゆる日教組と文部大臣との中央交渉、いわゆる中央交渉というような点につきましては、これは御承知のように人事権、給与権というような点から申しましても、文部大臣は交渉の当事者ではございません。地方都道府県委員会と、各県における地方公務員であるところの教職員との間でこれは律せられるべき問題である。これは制度的の問題でもございますから、いわゆる中央交渉というような団体交渉的な取り上げ方としての文部大臣は日教組との交渉の当事者ではございませんから、私どもの見解からいたしますれば、いわゆる中央交渉ということはあり得ない、かような態度でございます。  しかし、いま申し上げましたように、ドライヤー提案というものを受諾いたしております以上、そして、この示唆のある提案というものを受諾しております以上は、文部大臣も、政府代表者の一員として出席を求められれば、これを拒むべきではない、かように考えております。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま文部大臣答えたとおりでございますが、私、この問題をめぐりましてたいへんいままでの交渉も困難を来たしておるということでありますけれども、どうも理論的に理屈を言うとただいまのような、文部大臣が言ったような理屈になるんじゃないだろうか。この点を何だか、あまり理屈を言わないで何かつくような方法はないだろうか、かように思いますが、ただいまのようなお尋ねのしかたがあると、どうも理論的に答えざるを得ない、かように私は思っておる次第でございます。ただいまのような文部大臣考え方、これまた私自身も総理として、その考え方を支持しておるのでございます。
  28. 河野密

    河野(密)委員 政府の答弁はきわめてあいまいもことしておりまして、捕捉することができないのでありますが、この中央交渉という当事者ではないと言われるそういう理屈はしばらく——私は、理屈を述べろというならば、理屈は幾らでも述べますが——それはしばらく別として、問題の取り扱いとして、ILO調査団が見えましたときに、総評からこういう質問を、再質問を出しております。   貴委員会は、政府当局と組合側相互信頼回復は、相互意見を交換し、話し合いを行うことだと示唆しています。   しかし今日迄中央交渉が、政府の一方的な拒否によって開かれていない事実、及び自民党、社会党の書記長、幹事長会談で合意に達した倉石修正案すら、政府、自民党が一方的に破棄し何等労使間の意見の交換なしに関係国内法が提出されている事実からして、貴委員会の「自主的に相互が話し合って解決せよ」という態度のみでは何等の具体的前進はみられないものと思います。   従って今や貴委員会が、地方公務員の団体を一方の当事者とする中央段階での話し合い政府をして応ぜしめる保障措置をとることが相互信頼回復への唯一の解決策であると確信致します。  こういう意味における質問書を提出いたしております。  この質問書に対しまして回答が出ておるのであります。   昨夜の質問書を提出していただいてありがとうございました。   われわれは、これは、当方が提唱した意見の交換を通じてあなた方が今後さらに政府から問いたすべき事柄一つであると考えます。なお政府はこの提案を受諾しました。われわれは、政府提案受諾が新しい情勢をつくり出したものと信じます。  こういう回答が来ているのであります。  これを見ますと、この問題について従来よりも一歩政府前進する情勢が生まれたものだと解釈しているのでありますが、私は、ドライヤー提案を受諾された政府は、その提案の中に含まれているこういう趣旨も受諾したものだといわざるを得ないと思うのであります。これはしたがって、従来と違って一歩前進をしたものと考える、ドライヤーはそういう了解をしているわけであります。おそらく政府態度にそういうことがあらわれておったと思うのであります。  政府は、愛知文部大臣は、ドライヤー委員会の調査団の前では、日教組の中央交渉もやりますとおそらくおっしゃったのではないかと私は思うのであります。そういうことじゃないんですか。ドライヤー調査団の前ではきれいごとを言っておって、国内向けは国内向けで別のことを言われるというのであれば、これは最も文部大臣らしからぬ態度だといわざるを得ないのですが、いかがですか。
  29. 石田博英

    石田国務大臣 文部大臣お答えする前にちょっと私明確にしておきたいことがございます。文部大臣ドライヤー委員長との会談については文部大臣お答えになると思いますが、ただし、私がその後ジェンクス氏その他から聞いた範囲ではそういうことは聞いておりません。  ただし、いまその前段にお示しになりました総評ドライヤー委員会の提案に対する質問書、これは卵が先か鶏が先かというようなものでありまして、われわれは、そういう不信感があるからいろいろな問題が残る、そこでその不信感を除去するためにまず定期的会談を行ないたい、人間は何度も会っているうちにお互い意思の疎通もはかれるのだ、そういうための定期的会談の提唱と受け取っており、ただいまお読み上げになりましたところでも、そういう総評の質問のような事項はその定期的会談においてお話をされることだろう、こう答えている。その定期的会談にまず最初にひとつ応じていただいて御出席いただくことが、このドライヤー提案の趣旨を生かすことでもあり、また、その定期的会談をやるという提唱をするということが政府の大きな前進である。私どもはこう理解しておりまして、まずその質問書——そうして明確に答えられた、それは定期的会談でやれと言われている。——質問書のことを先にきめなければ定期会談に臨めないというのは、私はドライヤー提案の趣旨とは違うように思うのであります。
  30. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いわゆる中央交渉について、私が、ドライヤーあるいはあの一行との間に中央交渉を認めるような話をしたのではないか、相手によってきれいごとを言っているではないか、そういうような趣旨の御質問でありますが、私は、先ほど申しましたように、いわゆる中央交渉問題というものは、制度的にもあり得ざる問題でありますし、それから、過去のいろいろな経緯からいっても、そういったようなことは取り上ぐべきものではない、これは私の信念でございます。したがって、私の見識から申しましても、さようなことを相手方に言うはずはございません。絶対に言ってはおりません。  またかりに、日教組と文部省との間の問題をどう処理するかということは、これは国内で自主的に文部大臣の責任と判断において処置すべきものでございますから、そういう点に触れて調査団等についてとやかく言うべき筋合いのものでもない、私はかような態度を堅守しておるつもりであります。
  31. 河野密

    河野(密)委員 日教組の中央交渉の問題は、先ほどから申しますように、このILO条約批准についての中心的な障害の問題になっておるわけであります。これに対してわれわれの承ったところによりますと、この問題については政府自身も前向きの態度をもって解決をするやに承っておるのでありますが、いまの御答弁を承りますと、少しも従来から進歩しておらないのでありますが、この問題について政府側は何らかの処置をとられるというお考えはないのでしょうか。中央交渉の問題が解決しないと、ILO八十七号条約批准の問題にも支障があるように私は思うのでありますが、この点についての総理大臣の見解を承りたいのです。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど労働大臣あるいは文部大臣からお答えいたしましたように、ドライヤーの示唆、提案といいますか、このことをぜひとも実行したい、こういうことでいろいろ総評側と交渉しておることは、先ほど来の政府の説明でおわかりいただいたと思います。この混合方式の話がまずできない、ただいまその点で行き悩んでおる、これが先ほど労働大臣しばしば申し上げますように、まずこの問題を取り上げられて、そうしてそういうところでお互いに組合相互間の共通の問題であるとか、また政府側で希望する公務の運営において支障のないような事柄を十分理解していただき、新しい労働慣行ができる、こういうことが望ましい姿だ、かように思っておるのでございますが、ただいま河野さんは、さらに突き進んだお話をしていらっしゃる。やはりこの問題は、長い間の紛糾した問題でございますだけに、これを取りほぐしていくことはなかなか困難だと思います。  そのためには、やはり順次まず最初からやれること、そうしてそういうところでどんな話が出てまいりますか、十分双方の理解が深まっていく、こういうような処置をまず第一にとるべきじゃないか、かように私は思うのでありまして、この混合方式を採用し、混合方式にいわゆる直接、法的な関係、責任はない、かように思いましても、文部大臣自身も政府代表としてこれに出ていくことはちっとも差しつかえないのだ、それはひとつ積極的に出ていこう、かように申しておるのでありますから、まずこういうところで混合方式による話し合い、これが一つの糸口になるのじゃないだろうか。ただいま言われますように、どうもそこまで話ができないとILO批准もむずかしくなる、こう言われては政府もち、一つと当惑するのです。ただいま申し上げますように、それぞれの筋がございますから、その段階を踏んで、そうして解決していくように努力をしていきたい、かように思います。
  33. 河野密

    河野(密)委員 政府の苦衷のあるところを了といたしまして、この問題については後刻同僚からなお触れてもらうことにいたしまして、先の質問に移りたいと思います。  昨日の新聞によりますと、政府ILO批准についての決意を固めたという新聞記事が各紙とも載っております。各紙に載っておりますから、おそらくこれはおきめになったと思うのでありますが、その中にこういうことがある。  石田労働大臣定期的会合に関する総評との折衝の経過報告し、今後の見通しについて、総評関係国内法案の取り扱いについて総評考えを示してきたが、政府としては国会で話し合うべき問題であると答えておいた、このようにまだ見解が対立するため定期的会合を早急に開催することはむずかしいと思う、しかし政府としても、今後もドライヤー提案に従ってなるべく早く定期的会合の機関を持つよう努力するが云々として、政府総評との折衝はILO案件国会審議とは直接関係はないから、衆院ILO特別委員会の審議はきょうから開始されると思う、こういうことが載っておるのであります。  この中で私にぴんときましたことは、定期的会合を早く持つように努力をするが、政府総評との折衝はILO案件国会審議とは直接関係がないから、こういうことであります。  なるほどそのとおりで、国会関係とは制度的に、あるいはその他の点について、関係があるなどと申しておるのではございませんが、この国会審議というものが進んでいく進行の問題は、当然この問題と関連を持つと思うのであります。先ほども、私は、これは同時並行的に行なうべきものであるということを申し上げましたが、これはドライヤー提案の趣旨にも反するのではないかと考えるのであります。  ドライヤーは岩井君の質問に答えて、「批准の手続は国会における審議を必要とします。相互信頼を生み出すための手続としては意見の交換を必要とします。この二つの手続を完全に同時にとるということは困難でありましょう。しかし双方とも遅滞なく成功裏に完了するよう努力が払われるべきであります。」こう言っておるのであります。これはことばのことでありますが、完全に何もかも同時にやるということはむずかしいかもしれないけれども、しかし双方とも遅滞なく成功裏に完了するようにするのだ、完了は少なくとも両方とも行なわれなければ、努力が払われなければならない、こういうのでありまして、少なくともこれは無関係であるということは言えないと思うのであります。ドライヤーはこの問題について、批准の手続をとるということと、それからこの両者の話し合いを進めるということとの間に関連性を持たせておる。政府労働組合側との話し合いについて、政府の善意を期待していると考えられるのでありますが、当事者間の交渉も同時に行なわれなければならない、こういうようにドライヤーとしては言っておるわけであります。政府労働組合側話し合いについて政府の善意を信じておるというドラヤーの立場、それから当事者間が話し合い、交渉をするということは、この問題については重要であるということを力点を置いているドライヤー考え方、そういうものに、政府のきのうきめたといわれる方針というものは大きくかけ離れておる、こういうふうに私は思うのでありますが、この点はいかがですか。
  34. 石田博英

    石田国務大臣 まず第一にお断わりを申し上げておきたいと存じますことは、きのうきめたという事実はございません。八十七号案件をぜひ成立させたいという政府決意は、総理施政方針演説にも明らかなように、もっととっくにそういう決意は固めておるのでございます。  それから、定期的会談国会審議、これはできるだけ早くそれぞれやらなければならない。同時に始めることはむずかしいかもしれないと提案にいわれておりますが、政府は、同時どころではなくして、国会に特別委員会が設けられるそのもっとさきに定期的会談の呼びかけをいたしておるのであります。これはもう政府として最大の誠意の披瀝であります。その定期的会談を開くにあたって、いろいろな懸案定期的会談で述べなさいとドライヤー委員会は申し述べております。しかしながら、それでもなおいろいろの提案について政府考えられる考えを述べてまいりましたが、その定期的会談を開くにあたって、相手方の出される——私から見ると、ドライヤー提案の中には指示されてないことだと思うのでありますが、そのことを全部聞かなければ会談に応じない、そう言っているのだから、全部聞かない政府側に誠意がないということにはならないと思うのであります。やはり、定期的会談を何度も呼びかけておるのでありますから、御出席をいただいて、そしてそこでいろいろの問題をお話し合いをいただくということが筋ではなかろうかと思うのであります。  それからもう一つは、私どもたいへんふしぎに思うのでありますが、われわれはドライヤー提案を受諾いたしました。その精神を尊重し、その指示されておる内容を忠実に遅滞なく実行するつもりであります。しかし、何もかもドライヤー提案の一字一句を法律解釈のごとく解釈して、それに支配されようとも思っておりません。その精神を受諾し、その精神をどう運営するか、日本政府決意と良識によってこれからやってまいりたいと思っておる次第でありますが、ドライヤー提案を受諾しない側からドライヤー提案についていろいろな御解釈を承る。もしそういうような御解釈をドライヤー提案についてなさるとするならば……(発言する者あり)総評の話をしている。総評は受諾されなかった。その受諾されなかった理由は、いま申しましたような点について、先ほど河野さんが申されたようなことについて明確な答えがなかったから、つまりそれが定期的会談に移されておるから受諾できなかったように思っておるのでありますが、それが逆にもし前提条件となっておるドライヤー提案であるならば、これは私はまた違ったことになるのじゃなかろうかと思うのであります。まず定期的会談——人間人間との関係でありますから、しばしば会って意見の交換をし合う間に相互の理解が深まるのだ、そこで長い間の懸案一つ一つ処理していこうじゃないかというのが趣旨でありますから、私どもはぜひひとつ会談に御参加をいただきたい。これはもう熱意を披瀝し、きわめて早い時期にやっておるのであります。  それから国会審議ドライヤー提案との間、それは確かに労使関係の正常化をはかるという意味においては共通の目標がございます。しかしながら、先ほども申しましたように、また河野先生御自身が御自覚のように、これは国会にかけられておって、国会審議することであることが一つ。それからもう一つは、やはり人間関係の改善という、かなり時間を要することと、その始まりになるべき批准とは、私は、始まりになるほうをさきに片づけるということが、その先の問題を処理するまず前提で、先のほうができなければ、始まりもできない。ほうきの柄がないのに、先だけつけて掃けという議論は、やはり柄をつけてからほうきを使うようにしていただきたいと思うのであります。
  35. 河野密

    河野(密)委員 いま石田労働大臣お答えになりました中で、私にひっかかる問題が一つあるわけであります。それは、ドライヤー委員会が定期的会合を開けといったのに対して、総評側労働組合側から、あれがやられなければいけない、これがやられなければいけないと、次々にいろいろなことを持ち出してと言われましたが、それは一体、先ほど石田労働大臣がお読み上げになったそのこと以外に次々に何かが出てきておるのですか。私はそういうことはあり得ないと思うのでありますが、それで、それに対して政府態度は、従来のとおり、ただ会合を開きさえすればいい、答えはその間に出てくるのだ、こういうこと以外に答案は書いておられないのですか。私はその点がきわめて重大だと思うのですが、現在、組合側との定期的会合を開くということのためにどういう点が問題になっているか、この点はどうなのですか。
  36. 石田博英

    石田国務大臣 次々にということばをもし使っておりましたら、訂正をいたします。そんなたくさんではございません。一回目にいわゆる五カ条の御質問が出てまいりました。その後二度目に、あとで申し上げます提案がございました。そこで、一度目の問題について非常に大きなことは、元来こういうことは定期的会談でお話し合いをいただきたいことなのだということは繰り返して申しておりますが、同時に、その中で見解を問われたことが二点ございます。  一つは、文部大臣と日教組の話し合いであります。私どものほうは交渉ということばは使っておりません。交渉は任命権者と雇用者の代表との間で行なわれる、いわゆる労働関係でいう交渉というものはそういうことと解釈しておりますので、交渉ということばは使っておりませんが、文部大臣との話し合いというこの問題は、先ほどから申しましたように、定期的会合を繰り返すことによって相互信頼回復を待って処理すべき問題だとお答えをいたしております。  それから第二番目の問題は、この関係法として提出してございます公務員制度審議会の取り扱うべき議題であります。その議題は、近代工業国家としての日本の国際的な立場にふさわしいような公共部門における労使関係を樹立するために、労使関係の基本についてひとつ御検討を願いたい、こういうお話し合いをいたしておるのであります。  そこで、いまから三、四回前の会合におきまして、その二つとともに、国内法取り扱いについてひとつ合意を見たい、この三つがワンセットである、こういうお話でございました。そこで、その国内法取り扱いの問題になりますと、すでに政府国内法を提出して、そうして一括上程を皆さんにお願いをいたして、一括審議、一括成立をお願いいたしておる立場である、これはもうすでに議会に提出されておることでありますから、政府と院外の団体と交渉してきめるべきことではございませんので、これはひとつ議会内においてお話しをいただきたい、こうお答えを申して今日に至っております。
  37. 河野密

    河野(密)委員 問題は、要するに、三つの問題に集約されておるということであります。この問題は、われわれとしては今後の国会審議を進める上においても当然考えていかなければならない問題でありますが、この問題に対する政府の答弁というものは、いま労働大臣がお述べになりましたようなこと以外に、前進するという考えは持っておらないのですか、総理大臣
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来、私、質疑応答を重ねておられるお二方の意見をいろいろ聞いて、私は私なりに判断をしておるところを申し上げたいと思います。  私は、今日の状況のもとにおきまして、まず第一に、組合側政府側承認したいことは、団結の自由という問題だと思います。団結の自由、それがILO批准の問題になっておる。これがはたしてどうなるのかということでございますが、私は、先ほど来申し上げますように、だれも、その団結権を拘束しよう、制限しようというような人はいないのですから、これは必ずその批准ができ上がるだろう。もう一つ問題がこれに関連して考えられますのは、ドライヤー調査団が指摘しておるように、日本労使関係は、外国の場合と違って、双方不信があるようだ、この点は、ILO批准とは別に、現状がそういう状態にあるということ、これはどうも謙虚に私どもも認めざるを得ないだろう、それでそれについては反省をせざるを得ないだろう、そして一日も早く労使間の不信を払拭すること、これは私は関係者一同の心からの願いだ、かように思います。  ただいま、このILO条約批准案と、この労使関係の改善と、これが同時並行だとか、先にいくとかなんとかいわれておりますが、もともとの二つが現状においてはあることなんです。したがって、そのいずれにしても、早く労使間の不信を払拭することができれば、これにこしたことはありませんから、もうすでに、石田労働大臣が申しておりますように、ILO条約批准案を国会に提出する前からこの問題と真剣に取り組んでおる。そして双方におきまして十分御理解をいただくようにしたいものだということで、いわゆる審議とは別にこの折衝を進め、大体、ドライヤーの言っておる具体的な示唆よりも、基本的に、ドライヤー調査団が指摘した双方不信、これを払拭する方法としては、まず第一に、混合方式による会合を持ってそして共通の問題を話し合うこと、それが解決への一つのきっかけではないだろうか、こういうことを言っておるので、政府もこれにつきまして忠実にそういう方向を実現すべく努力しておる。これは先ほど来もう数回にわたりまして、労働大臣あるいは文部大臣、それぞれの関係の方々からその経緯を説明しておるのであります。もちろん、まだこれが十分の効果をあげるような、実現するような段階にまで取りつかないことは、これは私はまことに遺憾に思います。これは政府といわず、関係の方々がとにかく謙虚に実情を認識してそして改善の方向への努力をすべきだと、かように思います。これは本来別々のことだろうが、双方が関連を持つように思うのでありまして、私どもが今日の日本労使関係を見たときに、基本的な問題で二つ問題がある。それは、労使双方がお互いに信頼し合わないという、こういう点が一つ問題であり、ILOの団結の自由という大原則がまだ認められておらないという、この二つをいかにして解決していこうかと、真剣に取り組んでおるわけであります。したがって、このILO条約批准の問題については、国内法というものが関係を持ってくる。これについて、先ほど来具体的にはあまりお触れにならないが、いずれは触れるというような気がまえでときどき出されておりますが、この国内法関係におきましては、私どもの願うところのものは、直接団結の自由を拘束しておるような国内法は、これはこの機会に改正すべきだ、同時にまた、私どもの希望するところのものは、どこまでも公務の運営にあたりましてそれが適正であり、そういう意味の労働慣行がここに樹立されること、これを心から願っておるのであります。この三つがただいまの問題だと思います。  また私は、同時につけ加えさしていただきたいのは、この三つの問題について、国会審議にやはりこの三つが関係はしてまいりますが、そういう場合に、一体与野党考え方なり、同時にまた、国民大多数の意向というものはどういうところにあるか、これは最も大事なことだと思います。長い間の懸案事項でありますだけに、ILOについては国民大多数の方々も理解を持ってきた。そして解決の方向へ進むべきだ、かように政府考え方を支持してくれております。また、たいへん残念なことだが、ドライヤー調査団に指摘されたこと、これは確かにそういう点があるようだということで、国民大多数のほうにおきましても、こういうものは改善さるべきだ、こういうことでございますので、私ども国会外の動向につきましても謙虚にその意見を聞くつもりであります。したがいまして、国民の中の、ただいま御指摘になる総評意見も、私どももちろん念頭に置きながら解決をしたい、こういうことで、ただいまの国内法改正を出しておりますのも、そういうようなことをも含めて、いわゆる国民の大多数の方々の支持を得る、こういうような立場でただいまの案を提案いたしておるのであります。そういう意味で、私は、これは非常な前進だ、かように思いますし、とにかく労使関係について、その基本に触れようとする、またその基本について率直に謙虚に耳をかそう、そして改善しようという、私は、このぐらい積極的ないい考え方はないのじゃないだろうか、これを後退だとかなんとか言わないで、ぜひひとつ、前進しておる、前向き、そして長い間の問題を解決することに御協力願いたいものだと、かように思います。
  39. 河野密

    河野(密)委員 総理決意のほどはよくわかりました。非常にいい考えだと思うのですが、ときどき労働大臣が、柄のないほうきを出したりして、ぶちこわしになると思うのですが……。  そこで、私はきわめて率直に申し上げますが、いまの総理のお考えでありますれば、少なくとも前向きで八十七号条約批准考えなければならぬ。結社の自由委員会の提訴者には日本の労働団体も加わっておりますが、海外の労働団体も加わっております。その海外の労働団体の述べているところを見ると、団結権というものには団体交渉権が含まれるのだ、団体交渉権を確保するためには団体行動権が含まれるのだ、こういうことを明確にいっておるわけです。ドライヤー勧告も、あれを読めば、そういろ趣旨でもって考えられておることがよくわかるのでありますが、それを日本では、団結権は認めるけれども団体交渉権は別だ、団体交渉権は認めるけれども団体行動権は別だと、こういうようなことにしてこれをこじつけようという努力をしておるところに、非常に混乱の源があると思うのでありますが、これを払拭しなければならぬと思います。そのためには、私は、少なくとも、それらの労働基本権の問題は、これは当然、学識経験者あるいはそういう人たち審議会でもって検討することが必要だ、日本の労働法全体についての再検討をすることがぜひ必要である、こう思うのであります。舌足らずの法律をたくさんつくるよりは、ほんとうにりっぱなものをつくるというかまえをすることが必要じゃないか、こう思うのであります。  そこで、これは政府側に御相談でありますが、いま提案されておる国内法改正案はいろいろな問題を含んでおります。これはあとから同僚議員が御指摘申し上げると思いますが、いろいろな問題を含んでおる。これを中途はんぱな、中間報告的なものを考えられるよりは、これを根本的に再検討するというたてまえに立って、自民党もない、社会党もない、民社党もない、各党がこれで話し合いをするというような見地に立って大乗的な取り扱いをなさる考え方は持っておられないかどうか。私は、これが、結社の自由に関する八十七号条約批准して、批准最初であって、これからすべてのものが始まるのだということの意味であろうと思うのであります。無理にこの法律——われわれは、お出しになるときからすでに反対をいたしました。卒然としてそういうものをお出しになるよりは、もっと検討されてはどうですか、各方面の意見をいれるような機会をつくってはどうですかということを申し上げたのでありますが、政府は、いろいろな事情があったのでありましょう、お出しになった。残念でありますが、私は、この段階に来ては、いまの総理考えを生かす意味においてもそういう取り扱いをすることが必要ではないかと思うのでありますが、総理大臣、いかがですか。
  40. 石田博英

    石田国務大臣 団結の自由には、むろんその裏にいろいろな、いわゆる労働基本権というものが相伴っているべきものだという原則論、これはそのとおりだと思います。しかしながら、各国におきましても、それぞれの立場、それぞれの職業において、公共の利益との関連においていろいろな制限があることもまた事実でございます。また、わが国の労使関係を規定いたしておりまする各種の法律の中に、いろいろなでこぼこがございます。このたびの国会におきましても、公共企業体における自主交渉能力の問題、そのほか公共部門における労使関係についてのいろいろな御議論がございました。政府は、その部門のうちで、このILO関係案件に一緒に提出いたしておりまする公務員制度審議会でひとつ御検討願うとお答えを申し上げてまいった問題もたくさんございます。したがって、そういうようないろいろな問題につきまして、根本的な解決をこの公務員制度審議会において御検討願いたいつもりでございます。また同時に、佐藤喜一郎氏をキャップといたしまする臨時行政調査会の答申の中にも、同様の趣旨の指示がございます。そういう趣旨もあわせてこの審議会において御検討をいただきたいと存じます。  ただ、もう一つは、いま政府が提出いたしておりまする国内法は、団結の自由の裏は、いわゆる労使不介入の原則というものも一つございます。とりあえずこの条約批准に伴って整理をすべきものを提出いたしたものでありまして、それを御審議いただきまして、そして同時に、この案件の中に含まれております問題を公務員制度審議会で学識経験者によってひとつ腰を据えて十分御検討願って、恒久的な対策を立てていただきたい、政府はその結果を尊重してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  41. 河野密

    河野(密)委員 御趣旨はよくわかりますが、私が申し上げているのは、この国会における現在出ておる法案の取り扱いとして、いま石田さんの言われたような根本的な問題の方向と逆行するような結果になるのじなないかと思われるのであります。それは、いろいろな問題になる点が——労使不介入と言われますけれども労使不介入ということばも、これはとりようでありまして、いろいろな問題がございます。そういう法律案を卒然として通すということはいかがなものであろうか。あるいは政府は、これに対する修正等についても十分考慮に入れておられるのでしょうか。そういうならばまた別なことであります。前提として国会が当然大きな修正をすることを期待しておられるというならば、これはまた別でありますが、その裏の、そうでないといたしまするならば、この取り扱いについてはもっと慎重に考慮すべきではないか、こう思うのですが、これは総理大臣、どうですか。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府は、原案を慎重審議、調査し検討して、原案を出したのでございます。原案がそのまま通過することを心から願っております。
  43. 河野密

    河野(密)委員 原案のことはもう申し上げませんが、最後に、私が政府の注意を喚起いたしたいと思いますのは、ILO八十七号条約批准いたしまする以上は、ドライヤー勧告の冒頭にも、これは日本の現在の工業の発展にふさわしい、世界からそういうことを評価されるような労使関係を樹立するような、そういうことを念頭に置きながら考えるべきだという趣旨のことが書いてございまするが、私は、労働問題を治安行政の立場から考えるという習性が、日本には抜くべからざるものとして残っておると思うのであります。この治安行政の一環として労働行政を考えるという考え方がどうしても抜けない。議論する人がそういう畑の人が多いせいもあるかもしれませんが、そういうことは許さるべきものではないのでありまして、労働行政というものはもっと新しい見地からこれを検討しなければならないわけでありまして、しかも労働法規というものは、私の知る限りにおいては、ある場合においては、労働運動に対する規制をするところから発達してきておる、しかし、労働運動の実態がそれを突き破り突き破り、突き破って、新しい労働法規が生まれる、こういう過程を経てどこの国でも労働法規というものは発達してきておるのであります。だから、それを、新しいものを突き破る力に対してどこまでも法律を中心にして押えていこう、こういう考え方をすることは、非常に大きな誤りを来たす、こういう点は十分考えに入れなければならない点だ。例をあげることは、繁雑になりますから差し控えまするが、これは労働法規の発達の歴史をお考えになればよくわかることであります。たとえば団結禁止令、あるいはル・シャプリエ法とか、あるいは労働組合法の発達の歴史とか、そういうものを見ると、みんなこれを突き破り突き破ってこれが新しい労働法規に発達してきておる。そういう考え方からするならば、治安行政の見地、治安立法の見地からだけ労働問題を考えることは間違いであるという点を十分念頭に置かれてこの問題全体に対処しなければならない、こういうふうに私は思うのであります。そういう意味合いにおきまして、ドライヤー勧告を受けたことは、われわれは名誉だなどとは毛頭考えておりません。日本国内の問題を国際的な指摘にまって解決をしなければならないというのは、不名誉なことだと考えます。これは政府もわれわれも同じことだと思うのであります。しかしながら、そういう実態にあるのはどこに原因があるか。日本の行政当局が、労働問題といえば治安問題だというふうに考える。ことに私は自民党の皆さん方に大いに考えていただきたいと思うのは、治安対策という面からだけ労働問題を考えようとしておる人が非常にたくさんいらっしゃる。これは非常に遺憾なことだと思うのであります。そういう意味合いにおきまして、このILO八十七号条約批准を機会としてそういう考え方を払拭して、新しい労働法規の分野を切り開くという絶好の機会であるという意味において、私は党派を越えてひとつの問題について取り組んでいただきたいということを最後に申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  44. 石田博英

    石田国務大臣 いまの御意見はつつしんで拝聴いたしました。ただし、もう一つどもの側から考えたいことは、そういうことを生み出す他の一方の側に、やはり労働運動を社会革命の手段と考える動きがあります。その両方が相まって私は日本の労働運動の相互不信感を招いておると思うのであります。  それから、いまの御意見十分拝聴いたしますが、そのもう一つの点は、なるほど世界各国の労働法規は、労働運動というものの高まりの中から、それを突き破って今日に至りました。しかし、わが国の現在の労働法規は、その高まったかなりな高い水準にあったものが、敗戦の結果として与えられたのであります。しかもわが国においては、現在、完全に普通一般選挙でありまして、法律の不備な点は議会で十分修正できるのでありまして、議会外の行動によってその法律の規範というものを破ることを是認するという考え方は、わが国の現在の良識が許さないものと考えます。ただし、いまおっしゃった議論は、私はつつしんで拝聴いたした次第であります。
  45. 大橋武夫

    大橋委員長 濱田幸雄君。
  46. 濱田幸雄

    ○濱田委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題になっておりますILO八十七号条約批准並びにこれに関連する国内法改正に対しての政政の基本的態度と申しますか、政治姿勢といいますか、そういうことにつきまして総理から率直な御所見のほどを承りたいと思うわけであります。私に与えられました持ち時間が非常に制限せられておりますので、なるべく時間を制約するようなつもりで今回はもっぱら総理大臣に対して質問をいたしたいと思いますので、この点を御了承いただきたいと思います。  先ほど河野委員からも言及せられましたことでございますが、このILO八十七号条約批准並びに関係国内法改正というものが国会で取り上げられましてから、すでにまる五カ年たっておるのです。もとの岸内閣当時に提案になって今日に至っておる。まだこれが最終的な解決を見てないことは、私どもお互いにまことに残念に思うのでございます。特に昨年の第四十六国会におきましては、この問題を相当長時日を使って慎重審議をいたしました。ずいぶん論議も重ねましたが、いまから振り返ってみますると、あの当時に政府提案をいたしました原案に対して、世間でいわれておりますいわゆる倉石修正案というものが取りざたせられ、その結果、議会における審議の上にいろいろの紛淆を起こしたものと私は見ております。そういうことがいろいろ原因となってついに昨年はこの重要な案件審議未了になった、これはまことに残念に思うわけであります。佐藤新内閣の手によって今回提出せられました法律案でございますが、これにつきましては、昨年のようないわゆる修正案めいた論議もいま出ていません。私は、国会審議の場におきましてこれは非常にけっこうなことだと喜んでおるものでございます。ところが、この特別委員会が二月の中旬に設置になることに相なって、しかもそれから相当の日数を経過して、やっと本日この案件に対しての実質審議に入るということになった。本国会の会期もだんだんあと余日はなくなっておりますので、どうしてもこの国会中にこの案件の処理をするということにすれば、よほどお互い努力もしたければならぬと思うのでございます。  それで、ひとつ私冒頭に伺ってみたいことがあります。この国会でいま申しますように審議がおくれてまいりましたことについて、巷間伝えられておるところでありましょうが、いわゆるILO八十七号条約批准に伴う関係法案の改正にあたりまして、政府総評の間で事前に話し合いをいたして何らかの妥結の道をさがし求めようではないかというような空気があって、そしていままでこの審議がおくれたのではないかといわれておるのでありますが、私はそういうことはないと信じたい。信じたいが、万が一でもこれまでそういうことがあったとすれば、私は、これは政府といわず国会といわず、与野党を通じてわれわれ議会人として非常に反省をしなければならぬことだと思う。先ほど河野委員から御発言があったのを承ってもわかるのですが、今日の総評の主張しておるところは、いわゆる公務員についても労働基本権を獲得する、いわゆる厳密な意味での団体交渉権を獲得する、あるいはスト権を奪回するという目標に向かって進んでおる。そういうような総評代表者と政府の首脳者との会談をいたすことに相なっておりましょうが、私、その会談自体をとかく申すのではないのです。政府総評の首脳者とよくお話をなさることはまことにけっこうだと私は思う。しかし、そのことがこの国会における議案の審議に影響があるようなことをいたしては相すまぬというふうに私は考えております。もし、このILO八十七号条約批准なんかに関連してそういう意味合いでの話し合いをする必要があれば、すでに国会に議案が提案になっている以上は、私は、やはり野党の首脳者と総理大臣が十分にお話をなさるべきものじゃないかと思うのです。それが私は本案の行き方だと思うのです。極端なことばを申しますと、国会外の勢力によって国会内における議事の進行に関与するような結果になると思うのでありまして、私は、これは議会の権威の点から考えても、よほどわれわれは考えていかなければならぬと思うのです。そういう意味合いにおいて、冒頭にまず、総理大臣の、こういう巷間伝えられておるようなことに関連しての御所見のほどを承ってみたいと思うものでございます。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 巷間伝えられるというが、実は私の耳に入っておりませんが、政府総評と話し合って、そして議案が成立したというようなことはございません。私はそんなことはないと思っております。先ほど河野委員お答えいたしましたように、この問題は、非常に長い問題でございますが、同時に、議論も非常に出尽くしておると思いますが、それだけに、今回も、審議もおくれまして、一体どうなるかという心配はございます。しかしながら、皆さん方のほうで慎重に、かつ急いで御審議を願うなら、十分この会期中に成立ができる、かように思います。この際におきましては、国際信用をそこなわないように、また同時に、わが国の労働問題、労働運動、そういうものが軌道に乗るというか、そういう意味におきましても、今回ILO批准はしたいし、また、ドライヤー調査団から指摘されたような労使間の不信というような事態を払拭する、こういうことに努力して新しい労使慣行をつくっていく、こういう前向きでやりたいと思います。その意味におきましても、今回はぜひとも議案を成立さしたい、こういうことで一ぱいでございます。どうかそういう意味の御協力を願いたいと思います。
  48. 濱田幸雄

    ○濱田委員 ただいま総理大臣から決意のほど、御所信を承りまして、私もほんとうに安心——と申すと失礼かもしれませんが、けっこうな御答弁を承ったと思いまして、感謝いたします。今後いろいろ国会におけるこの案件審議にあたりましても、いま申しましたような外部の空気もあるかとも思うのでございますから、この点は、国会審議国会外の総評方面との話し合いというものをさい然と区別して御処理をいただくように重ねてお願いをいたします。  次に、実は先ほど河野委員からるる御質問がありまして、総理、また文部大臣からも承ったことでもございますので、重ねて承るのを差し控えたいと思うくらいなことでございますが、ドライヤー委員会の日本における実情の調査、それに関連して、先ほどお話しのありましたように、政府と労働組合方面との定期意見の交換、これを政府は熱意をもって行なおうとしておりますことは、よく承りまして、ほんとうにけっこうだと思いますが、やはり私は先ほど河野委員に対する御答弁なんかを通して気にかかりますことは、いわゆるこの定期意見交換という場を通して、かねて日教組として文部大臣との中央交渉をやらなければならぬという強い熱意を持っておるのでございますが、そのいわゆる中央交渉というものを実際的に、現実的に具現していくような場を展開するでないかと、私はなお心配をしております。その点につきまして、先ほど総理大臣からも非常に強い決意を持っての御答弁をいただいたものでございますので、重ねて私は承る必要もないと思いますが、やはりこれは国民が注目しておることでございますので、もう一度総理からあらためてこれに対する御所見を承りたい。御答弁を願います。
  49. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 総理からお答えの前に私からお答えいたしたいと思いますが、濱田委員の御心配の点は私も十二分に理解できるところでございます。したがいまして、かりに、あるいは幸いに、この定期会談というものが行なわれるようになりました場合に、そうして文部大臣が求められて出席をいたします場合におきましては、文部大臣として、わが国の教育行政の根本に触れる重大問題につきましては、十分に私は意見を開陳いたしまして、関係者の方々に理解していただくように最大の努力をいたすつもりでございます。
  50. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま愛知文部大臣からお答えいたしましたので、私から申し上げることはないように思いますが、ただいままでのいわゆる日教組との中央交渉、この点につきましては、今回も交渉ということばは使っておりません。いわゆる混合方式による会見、これは政府代表者としての一員としてそれに参加するということを申してはおりますが、そういう点がもし誤解を受けるということであれば、これは誤解のないように今回はっきりいたしておきたいと思います。したがいまして、今日まで荒木あるいは灘尾、愛知三大臣が堅持しております方針、これは過去においても間違いではなかったと思いますし、今後もそのとおりが正しいことだ、かように私は信じております。もちろん、政府というものが全体の責任を持つものでございますから、そういう意味においての話し合いの機会はまたあるだろうと思いますが、これは、ただいま申し上げます混合方式という形において政府話し合いを持とう、かように申しておるのでありまして、それが今日まで実現しない、何かといろいろのうわさを生んでおるということ、まことに私は残念に思います。どうかその点誤解のないようにお願いしておきます。
  51. 濱田幸雄

    ○濱田委員 ILO八十七号の批准ということと国内法の解釈、適用に関連して、いろいろこれまでもILOにおいて日本側からの提訴もありましたようですし、これまで私ども関心を払っておる次第でございます。それについて、私実は昨年も、特別委員会の席で政府の所見を伺ったこともありますが、内閣もかわりましたので、もう一度念のために承ってみたいことがあります。  ILOに対して、日本側からも、いま申しますように、昭和三十三年以来いろいろの案件についての提訴が行なわれておる。これに対して、ILOからの報告とかあるいは勧告が出ております。そういうような勧告とか報告というものを今後われわれがどういうふうに見ていくかということが問題でないかと私は見ています。もちろん、ILOに加盟しております以上は、ILOからのそういう勧告については、これを尊重するということは当然だと思う。当然でありますが、言うまでもなく、今日ILOに加盟しております国々が百十二カ国といわれております。そのほかに、国連憲章を批准してない国で、ILO総会で加盟を認められておるのが十三カ国ある。ほとんど全世界の国々がこのILOにいま加盟をしておると思います。そういうような、ほとんど全世界の国々が加盟しておりますILOにおいて、世界的な見地に立って、労働者の待遇の改善というのですか、労働関係の秩序を維持するというようないろいろの問題を取り上げておる。このILO八十七号にしても、もちろん、その大きな一つ条約でございますが、そういうような条約締結するにあたりましても、やはり世界各国のいろいろ異なっておる国情を見ながら、しかもその最大公約数を押えて条約を策定しなければむずかしいことだということはよくわかります。そういう意味合いで、このILO条約に関連しての各国からのいろいろの提訴に対するILO自体の報告とか見解というようなものにつきましても、一つの大きな理想というものは置いておりましょうが・やはりどうしても抽象的にならざるを得ないと思うのです。ILO自体にしても、世界百何十カ国という国々のそれぞれの労務関係の実態を把握することは非常にむずかしいと思う。そこに私はいま質問してみたいと思う点がある。いろいろ勧告とか報告がありますが、それを文字どおりに国内で解釈をして、そしてそのとおりに国内法の適用をしていくべきものであるかどうか、ここに私はかねがね自分としても疑問にしておる点がある。  昨年、私は特別委員会で質問いたしたのでございますが、もちろん、先ほど申しますように、ILOの勧告とかあるいは報告そのものを尊重するというたてまえはくずしてはいけないが、しかし、具体的にこれをどこまで国内で活用していくかということになりますと、結局は、突き詰めていくと、私は、国内法の解釈なり適用については、この国会の論議を通しての政府の解釈、あるいは最高裁判所の判決、これに最終的な権威を求めなければならぬと思うのです。そういう意味合いで、繰り返して申しますように、昨年も特別委員会で質疑をいたしましたが、当時政府側の事務当局からの答弁によりますと、私の解釈で間違いないということであった。しかし、これは非常に重要な問題であろうと思いますので、あらためて総理大臣の御所見のほどをこの際承ってみたいことがあるのでございますので、どうかよろしくお願いいたします。
  52. 石田博英

    石田国務大臣 ILOで行ないました決議、勧告、これはそのままその全部を批准しなければならない性質のものでないことは、申すまでもございません。それぞれがその国情に応じて批准し得られるものを批准してまいるのでございますが、もう一つは、これは労働問題というものの一つの理想を示したものでございますから、その決議や勧告に近づくような行政努力を行なう義務がございます。それはやはりあわせてわれわれが持たなければならぬものだと存じております。それからもう一つ、特にわが国は、いわゆる近代工業国家として、いまや決して後進国ではないのでございますから、ことさらにそのILOの決議や勧告の示す理想線へ近づくような努力をしなければならぬものでありますが、その全部を直ちに批准しなければならぬものとは考えておりません。
  53. 濱田幸雄

    ○濱田委員 今回提案になっております関係国内法案でございますが、私、これを拝見いたしまして感ずる点は、前の池田内閣当時に提案されました法律案に比べましてよほど整備をせられておるように受け取るのです。率直に言って、ほとんど完ぺきに近いものでないだろうかとすら私は感じております。そういうふうに感じておりますので、今回の国内法案の審議にあたりましては、私は、法案そのものにつきましては何らもう質問をする必要もないくらいに実は考えておりますが、一つ私ぜひお伺いをしてみたい点があるのでございます。  それは、今度の改正法律案のうちにもありますとおりに、国家公務員法にしても地方公務員法にしましても、いわゆる管理運営に属する事項は交渉の対象にしないというような明文があります。私はこれをいままですなおに読んできておりますが、しかし、この管理運営に属する事項というものは一体どういうことだろうかということをいろいろ具体的に取り上げますと、かなり微妙な問題が出てくると思う。その一つの例といたしましてここで申してみたいのは、ちょうど手元にございます日本評論社で出しておる「法律時報」二月号の臨時増刊、これにILO委員審議の記録というものがございます。昨年の九月にジュネーブにおいて、ILO結社の自由委員会において、日本政府代表、労働関係代表諸君出席なさって陳述をしたものを記録に残しておられます。私は、承るところによると、去年のあのジュネーブにおける委員会での陳述というものは非公開になっておったはずで、まだその記録が正式に発表になっていないものと承知しております。がしかし、ともかくもこの「法律時報」という雑誌にその記事が相当詳細に載せられておる。そのうちで先ほど私がちょっと申したいわゆる職員団体の交渉事項と管理運営事項との関連についての記事が載っておりますので、一応私がこれから質問をいたす一つの資料として読み上げてみたいと思いますから、お聞き取りをいただきたいと思います。(「何ページだ」と呼ぶ者あり)これはいまの時報の七八ページ。法制局長官の高辻さんが当時次長のころの発言だということになっておりますので、ちょっと読んでみます。「neg。tiati。nについて」交渉についてという題目がございます。そのうちにこういうのがある。  negtiateすることができる事項は、労働者の利益−雇用条件−にかかわる事項であり、それについてわが法制上の制限はない。したがって、たとえば懲戒権の行使のように、ある事項がいわゆる「管理及び運営に関する事項」に該当するものであっても、懲戒権の行使に関する基準の設定や、懲戒事由の存否その他懲戒基準の適用をめぐる問題のように、ことが雇用条件にかかわるものであれば、そのかぎり、negtiatinの対象となる。国家公務員部門の一般職員につき、人事院規則(一四−〇の二号)は、懲戒に関する事項をnegtiateする事項から除外しているが、これとても、改正法案が成立すると、人事院規則はその根拠を失ない、制限は撤廃されることになる。非常にたどたどした読み方でお聞き苦しかったと思うのですが、要するに、たとえば懲戒処分をいたしましても、その懲戒を受けた人の勤務条件にいろいろ影響あることは事実なんです。それで懲戒処分そのものは、これは国としてあるいは地方公共団体としての管理運営事項に属することだ。がしかし、その反面やはり勤務条件にいろいろ影響があるから、その勤務条件に影響ある面において団体としての当局に対する交渉をすることはできるというような意味のものと私は解釈する。ただこの表現が、私が先ほど申したとおりに、はたして正確なものであるかどうかわかりません。これを高辻さんに対してあなたはこのとおり陳述なさったかというようなことは私は承るつもりは別にありません。がしかし、ともかくもこういう記録が日本でいま公表せられておる。そうすると、これを見て、一体今後の日本の国家公務員あるいは地方公務員なんかに対する管理運営ということについて、どういう影響を及ぼすかということになりますと、やはり私は国会においてこれを宣明する必要があると思うのです。  それで私はこれに関連して、先ほどからちょっと国家公務員法の百八条の五の三項とか、地方公務員法の五十五条の三項、今度の改正案でございますが、それに触れて申したのでございますが、ともかくもわれわれこういうような今度の改正案というものをすなおに読んでみますると、懲戒とかあるいは転勤命令のようなものは、いわゆる人事権の発動に属するようなものは、当然国とかあるいは地方公共団体の管理運営事項に属するものだと解釈する。それだから、特にこういうような国家公務員法とかあるいは地方公務員法において管理運営に属する事項は交渉の対象にしないということを明書してあるなれば、これは当然団体としての交渉の対象にすべきものではないというふうに、すなほにわれわれはいままで解釈してきておったのですが、この昨年のILOにおける陳述というものを見ますると、そこに多少あいまいな面が出てきたような気がする。言うまでもありませんが、懲戒処分にしましても、人事の異動にしましても、それぞれの公務員についてはこれは非常に身分上の影響があるのですよ。勤務条件に影響があるのですよ。私は、そういう意味合いでその勤務条件に影響があるかという面を取り上げていけば、そのもの自体はいわゆる団体交渉の対象にするということになる。がしかし、いまの日本の公務員の状態を見まして、それでいいのか。実は、もう御承知と思いますが、この問題につきましては、国税庁なんかで非常に憂慮しておることです。私も先般来国税庁の諸君から話も聞きました。国税庁では約五万人の職員をかかえておるでしょう。そうして約一万人の人々を年々異動しておる。そのいわゆる転勤命令なんかを受けた人々が、幾らこれは管理運営事項だといっても、たとえば東京におる者が鹿児島へ転勤になる、勤務条件に非常に影響があることは事実だ。だからこれは何とかしてくれというようなことで職員団体を通して当局と交渉するということになればどうなるか。私はこの点をよほど考慮していかなければ、ある意味でとんでもない影響を、公務員の職場において起こすおそれがあるというように思うのです。高辻さんの陳述というものは、まさかそういう意味ではないと私は見ています。見ていますが、これはどうしても国会において政府としてはっきりした解明をしておかなければ、将来禍根を残す点でないかと思う。そういう意味合いで、私は総理大臣のこの点についての率直な御意見を承っておく必要があるように思いますので、御答弁をお願いいたします。
  54. 石田博英

    石田国務大臣 九月のドライヤー委員会の審問に出席をいたしました政府代表として、その立場を明確にしておきたいと存じます。  先ほどお述べになりましたように、ドライヤー委員会の審問は秘密で行なわれました。したがって、その記録等は外には出ていないのであります。「法律時報」に載りました記事、あるいはそれが「法律時報」に掲載されようといたしますときに、政府はそれについて何ら関知しないし、責任をとるものでもないということは、その出版社にもむろん明確にしておきましたし、この機会に明確にいたしておきたいと存じます。  ただいま、その委員会におきまして当時の高辻法制局次長が述べました件につきましては、その以前においてもあるいはその後におきましても政府の統一見解を取りまとめまして、まとめてあります。これは高辻法制局長官からお答えをいたすのが適当と存じます。
  55. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま私の証人としてのことに関連しての御質問でもございましたので、一言申し上げたいと思います。  いま仰せのとおりに、ドライヤー委員会における問答について私が直接に触れることは避けたいと思いますが、しかし私が申したことにつきましては、これは実は当然のことながら、政府当局として十分に関係当局打ち合わせの上で言っておったことでございます。それはともかくといたしまして、いわゆる管理運営事項というものが交渉の対象とならないということは、これは明白なことでございますので、先生仰せになりますように、任免、懲戒等、いわゆる人事権の行使である処分そのものが管理運営事項として交渉の対象とならないということは、これは実はその当時から政府当局の一致した見解である、これだけははっきり申し上げていいと思います。
  56. 濱田幸雄

    ○濱田委員 ただいま法制局長官からの御発言了承申し上げます。ただ、繰り返して申すことにもなりますが、いま私が申し上げましたように、人事権の発動によって懲戒処分を受けたり、あるいは転勤命令を受けたような人々が、かりに勤務条件にいろいろ悪い影響があるからというので、苦情を申し出すとすれば、私は個人としてでも当該官庁の長に向かって話し合いをする機会も事実上行なわれてあると思うのですよ。またそのほかに、人事委員会とかあるいは人事院とかに対して苦情を申し出してこの処理を受けることもあるだろう。また、さらに進めば、訴訟事件としてこれを提訴することもできる。やはり公務員についてはいまの制度の上でそういうような救済措置が別にちゃんとあるのです。それを、いま申しますように、転勤命令を受けたからといって、自分が属しておる職員組合において当局とそれを交渉するということになると、私は、いまの日本の国情から考えまして、官公署における執務にもいろいろの影響を及ぼすものと思うものがありますので、この点ははっきり、いま申しましたように、政府としての御措置をいただきたいと思うのです。これはもういまの御答弁でけっこうだと思いますが、念のために私はつけ加えて申しておきます。  最後一つお伺いをしながら自分の所見も申してみたいと思いますが、先ほどから申しますように、この条約案と国内法改正というものはぜひともこの国会で成立をさすべきものだ。これは総理も何回も声明をなさっておる。われわれもそのつもりでこの委員会に臨んでおるものであります。ただ、ごく一部の人々の意見であるかとも思うのでございますが、この条約案と国内法改正案との処理について、この際に条約だけを成立、批准をする方向に向かって、やむを得なければ国内法改正はあとに残してもいいじゃないかというような空気がどことなしにあるように私には感じられるのです。率直なことを申しますと、実は昨年の国会中に、私は先ほども申したとおりでございますが、いわゆる倉石修正案なるものがあって、審議の面でいろいろの紛糾を起こしたのでございましたが、あのときに私は率直に考えたことは、もし倉石修正案のようなものを取り入れて国内法を成立さすようなことなれば、むしろ条約だけを通したほうがよくないかと思ったことがあります。率直にそう思いました。ところが今回は、先ほども申したとおりに、昨年池田内閣当時の提案による国内法改正案に比べまして、相当私は整備せられておるものだと思うのです。この機会にこれを通さなければ、なかなか次の機会といってはたしてどうかというような気も実はしております。そこで私申し上げることは、この際に総理としては、いわゆる右顧左べんするようなことなく、あくまでも所信に向かって進んでいただきたいと思う。また、国会といたしましても、そういう方向に向かってこの審議を進むべきものであると思うのであります。先ほどからも何回かこの点についても総理からの御発言がありましたので、御所信のほどはわかっておるつもりでおりますが、あらためて総理からの御所見を承りたいと思うのです。とにかくこの際にこの条約案と国内法案の一括成立というものを見なければ、私は議会政治に対する国民の信を失うおそれすらあるような気もするものでございますから、そういう意味合いで、よほどの信念を持って総理にはこの問題の処理に当たっていただきたいと思うのであります。非常に繰り返して申し上げますようなことでございますが、いまの点についてあらためて率直な御信念のほどを承っておきたいと思うのであります。
  57. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 河野委員にもお答えいたしたとおりでありますし、また濱田委員は今回の政府提案の原案についてもう一〇〇%の御支持をいただきまして、私たいへんありがたく思います。私はこういう問題を、先ほど来申し上げたような基本的態度に立ちまして、そしてぜひとも一気に解決したい、かように考えておるのであります。そのことがいろいろ誤解を受けやすいわが国の労使問題についても新しい転機を見出して、今後はたいへんりっぱな慣行もでき上がるのじゃないだろうか、そのことを考えまして、ただ単に法案が通過するとかいうような目先の問題だけでなしに、わが国の労使間の問題を、これを契機にして解決したい、かように私念願しております。どうか何とぞよろしくお願いいたします。
  58. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 議事進行。実は本日は予定の議事は終わったようでありまするが、今後の本委員会の議事進行につきまして一言委員長に申し上げたいことがございます。  本委員会は、委員長も御存じのように、この案件国会に提出されましたのは一月の二十二日でございまするが、それから二月の十二日に、衆議院におけるILO特別委員会が設置を見たのでございますが、そこに委員を出しましたのは、二月の十二日に民社党は即日届けております。自民党は、二月の十五日に届けております。社会党に至りましては、三月の二十日に至ってようやく届けておるというような現状であります。したがって、三月の二十二日に初めて委員会の発足を見たわけでありまして、そこで委員長は選ばれたのでありますから、それから前のことにつきましては委員長の御責任ではもちろんございません。ただ私は、このような重大な案件がかくのごとくじんぜんとして国会審議がおくれておりますということは、これは国民の期待を裏切るものであるばかりでなく、国際的な信義の上からもまことにこれは重大なものではないかと思うのであります。しかし、一方におきまして、今朝あたりの新聞の伝うるところによりますと、衆議院のILO特別委員会は十九日くらいをめどにして終わるのであるということをいっておるのでございますが、そうしますと、きょうから数えますと、わずかに十日しかありません……
  59. 大橋武夫

    大橋委員長 吉川君に申し上げますが、簡単に議事進行について御発言を願います。
  60. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 本日の佐藤総理大臣の御出席は、おそらくそうたびたびの御出席は私は不可能ではないかと思います。こういう際において、本日の質問におきまして民社党の発言が理事会で押えられて許可にならなかったということは委員長御存じのとおりであります。したがって、私はここで議事進行について申し上げたいのは、今後民社党は一党を代表して総理大臣に質問を試みなければならないものがあるのでありますから、少なくとも民社党は、ILOのこのほうの案件につきましては、自民党、社会党といずれとも違うのであります。必ず民社党の委員総理大臣に対する質問の機会を与えるように、委員長に御善処を望みたいと思うのであります。  以上、将来の議事運営についての、ないし議事進行についての発言を終わります。
  61. 大橋武夫

    大橋委員長 吉川君に申し上げます。  御要望の点につきましては理事会で御相談をいただきまして、その上で措置したいと存じますが、昨日の理事会の申し合わせにおきましては、民社党の発言について、各党ともその機会をできるだけ早めるよう協力するような申し合わせができておることをお知らせ申し上げておきます。
  62. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 資料提出をお願いいたします。  百七十九号事件に関してILO本部に提出した政府の文書、記録、情報の写しを本委員会に提出されるよう要求いたします。
  63. 大橋武夫

    大橋委員長 多賀谷君のただいまの御提案の件につきましては、これも追って理事会において御相談をいただきました上措置いたします。次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十三分散会