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1965-05-13 第48回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十三日(木曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 中村庸一郎君    理事 宇野 宗佑君 理事 上村千一郎君    理事 島上善五郎君 理事 山中日露史君       今松 治郎君    仮谷 忠男君       久保田円次君    鈴木 善幸君       中野 四郎君    藤枝 泉介君       藤田 義光君    秋山 徳雄君       田原 春次君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君  委員外出席者         検     事         (刑事局刑事課         長)      伊藤 栄樹君     ――――――――――――― 四月十二日  公職選挙法改正に関する陳情書  (第二〇〇  号)  衆議院議員選挙区変更に関する陳情書  (第三〇五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  公職選挙法改正に関する件      ――――◇―――――
  2. 中村庸一郎

    中村委員長 これより会議を開きます。  公職選挙法改正に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。島上善五郎君。
  3. 島上善五郎

    島上委員 参議院選挙がだんだん切迫してくるに従いまして、事前運動違反と思われるような好ましからぬ動きが目立ってきたように感じられます。これに対して警察庁当局では相当数警告を発しておるということを承っておりますが、警告を発しておる事情、内容、並びに今後の事前違反に対する予防措置と申しますか、防止のための措置をとっておることと思いますが、まずその点について警察庁当局から承りたいと思います。
  4. 日原正雄

    日原政府委員 事前運動容疑事案に対する警告状況でございますが、これは五月五日現在の調査ですと、二千十七件、千九百六十四名に対して警告を発しております。態様から申しますと、文書頒布文書掲示言論による事前運動、その他と分けますと、やはり文書掲示事件が千七百六十件、千七百八名ということで圧倒的に多いわけであります。文書頒布が百七十四件、百七十五名、言論による事前運動が二十一件、二十一名、その他が六十二件、六十名でございます。全国区、地方区で分けてみますと、全国区のほうが多くて千百五十四件、千百六十五名、地方区が八百六十三件、七百九十九名でございます。前回昭和三十七年施行のときと比較いたしますと、昭和三十七年のときは、五月十五日現在で総数千五十九件でございますので、今回は倍に近い警告になっております。  なお、警告した事案内容でございますが、多いものは、掲示につきましては、後援会事務所連絡所等看板及び氏名を大書したポスター、それから頒布については、他の用件とあわせて投票依頼に及ぶ内容を記載したビラとかはがき、それから言論による事前運動については、国会報告演説会等投票依頼のあいさつをするもの等が多いものでございます。  なお、今度の通常選挙につきましては、事前運動が相当活発に行なわれておるので、それらの実態を把握するとともに、警告等措置によって適正な取り締まりにつとめると同時に、さらに実態の把握につとめて、悪質かつ証拠の明白な事案についてはこれを事前に検挙する方針で臨むように指示をいたしております。
  5. 島上善五郎

    島上委員 国会報告演説会演説の際に投票依頼にまぎらわしい言論をするとか、あるいは、議員ですから、国会報告文書なり新聞なりはがきなりを出して、その際次に立候補することを予告するようなまぎらわしい文書というのがだいぶ出ているということは、私も承知しております。しかし、そういうのは、これはなかなか紙一重で、判別しにくいものがたくさんあると思うのですよ。たとえば、国会報告演説会で、本人が黙っておっても、党の幹部が行って、だれそれ君を党ではこの地区地方区として公認候補として予定しました、あるいは全国区として決定して、この県においては重点地区としてお願いすることに党として決定しました、よろしくという程度だと、これは党の政治活動とみなしていいのではないかと私は思うのですよ。これは別に実害が伴わないのですから、党の政治活動事前選挙運動あるいは投票依頼行為というものをそこまで厳格にしないでも、まあそれは厳格にすればしたでもいいけれども、これはなかなか紙一重で、警察当局判断に迷う場合が往々にしてあると思うのですよ。これは私の考えですけれども、そういう党の政治活動あるいは現職議員——議員でなくてもそうです、議員たらんとする者でもいいのですが、政治活動一般の中の一部分として紙一重と思われるものは、法律に照らして疑いはあるけれども選挙運動を非常に腐敗せしめるという意味における実害は少ないわけですから、あるいはないわけですから、私はむしろ他の実害の多いところに、半前運動の際でも、告示になってから後でもそうですけれども、むしろそこに重点を固くべきではないか、こう考えるのです。というのは、いま言ったような紙一重運動については、これは判断に迷うし、そこまでびしびしとやるということになれば、それは警察だってなかなか手が回りかねるというような問題もあると思うのですね。そういう点のお考えはどうでしょうか。
  6. 日原正雄

    日原政府委員 全く仰せのとおりでございまして、先ほど事例としてお話ししましたような事例、いずれも警告した事案でございますが、この警告はやはり紙一重段階のもの、それから事案が非常に軽微であるということで警告をいたしておるわけでございます。それが非常に多発いたしますとやはり問題になりますので、初期の段階警告をいたしてやめてもらうというような段階のものと、またお話しのように全然警告の対象にならないようなものもあろうと思います。私どものほうの重点は、やはり洗いざらいということはなかなかむずかしいのでございまして、先ほど申しましたとおり、悪質かつ証拠の明白なものについては事前に検挙をすることも考える、しかし、事前運動が相当活発に行なわれておる段階において、警告等措置で適当と思われるものについては警告を与えていく、こういう方針でおります。お話しのとおりだと思います。
  7. 島上善五郎

    島上委員 ぜひひとつその悪質なものに重点を置いてやってほしい。これは私は現在の警察力に理解と同情を持っておるわけでございますから。というのは、私の耳に入り、あるいは多少目にもとまっておることですが、バスを連ねて観光地へ案内する。温泉へ行く。まあ後援会名目で行ったり、春季何とか慰安会というような名目で行ったり、そういうのがだいぶあるようですが、つまり買収供応に類する行為、こういうものに対する警告といいますか、内偵と申しますか、どの程度にありますか。
  8. 日原正雄

    日原政府委員 結局、買収供応というような事案になってまいりますと、むしろこれはお話しのように内偵段階が多いわけでございます。この段階は、まだその内偵の結果どうなるとも報告もきてまいりませんので状況はわかりませんが、悪質なものについてはむしろ内偵方向で進む。いまのところ数字その他、報告はきておりません。そういう方向でやっておると思います。
  9. 島上善五郎

    島上委員 それじゃ、その買収供応疑いのあるものについては内偵を進めておるから、数字の上には出ていない、報告もきていない、こういうことだとすれば——私は内偵を進めていることを信用しますが、ぜひこれはやってもらいたいと思います。私の耳にも幾つか入っているのですよ。ついせんだって地方に行きましたら、地方区である人の後援会を開いて、会費二百円で折り詰めに一本木つけて——折り詰めに一本つければ、これはどう少なく見積もっても五百円です。しかも名入れの手ぬぐいを配った。これはやりそうなことですが、それにおまけがついている。たぶん二百人くらいと思って二百用意したら二百五十人ほど来て、あとの五十人にはそれがいかなかった。ぶうぶう不平を言ってかえって逆効果だ、今度はもっとたくさん用意してやらなければならぬということで準備しているという話を聞きました。主催者が二百人と思ったところが二百五十人も来るというようなことは、そういう運動やり方がある種の効果をあげておるということなんです。効果をあげておるということは、ますますそういうやり方をやるおそれがあるということですから、私はそういうことに対する内偵を進めてもらうということと、そういう動きをかりに事前にキャッチしたら、これは買収供応になりますからおよしなさい。まあ犯人をつかまえるばかりが能じゃないのですから、できることなら、そういうような動き事前にキャッチしたら、これは買収供応になるおそれがありますからおよしなさい、という程度の警言でもよろしいのですが、そういう運動に対して、動きに対して特に重点を置いてやっていただきたいということを、希望申し上げておきたいと思います。  それから、法務省に伺います。この資料によりますと、昭和三十四年六月に比べて三十七年の七月は、倍増とはいかぬけれども違反起訴人員あるいは裁判の言い渡しのあった人員有罪になった人員等見ますと、ざっと見たところでも六、七割方ふえているようです。私の心配するのは、こういうふうな勢いで来たるべき参議院議員選挙にまたふえるということであっては、選挙界がますます腐敗随落していくわけです。  そこでお伺いしたいのは、まだ裁判の決定しない人口が相当多数あるようですが、これは大がかりで関係者が多いとどうしても裁判の時間がかかることはわかりますけれども、この資料によると、たとえば衆議院議員などのときは、三十五年十一月の分もまだだいぶ裁判がきまらない。三十八年の十一月はもちろん、相当多数ありますが、こういうふうにおくれている原因は大体どういうところにあるのでしょうか。
  10. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 ただいま先生仰せのありましたように、たいへん遺憾なことでありますが、衆議院議員の総選挙につきましても、参議院議員通常選挙につきましても、回を追うごとに違反人員が増加してまいっております。特に私どもといたしまして憂慮いたしておりますのは、ただ違反人員がふえるだけでなくて、その違反全体の中に占めます買収事犯等悪質事犯の比率が増加しておるということでございます。したがいまして、私どもといたしましても、今回の選挙はぜひとも明るい選挙にしたいということで、先般も、異例ではございましたが、全国検察庁あて事前運動取り締まりを徹底するように通達を発したわけでございます。  ところで、裁判傾向でございますが、本日お手元に差し上げました資料は、実は調製を取り急ぎました関係等もございまして、若干お見苦しい点がございますので、まずおわびさしていただきます。特にこの表の一番下の注というところにございますように、従来私どもでは、選挙が行なわれましてから一年後まで裁判状況などを追跡いたしております。一年を経過いたしますと、あと個々具体的な事件について各庁からそのつど報告をとるということにいたしておりますので、先ほど御指摘の未済の人員、これは選挙が行なわれまして一年たったところでどれだけ一審が終わっていないか、こういうことであります。試みに、先ほど御指摘昭和三十五年十一月施行衆議院議員選挙について見ますと、選挙施行後一年たちましてもまだ一審が終わりませんでしたものが全体の二七%ということに相なります。これに対して、たとえば昭和三十四年六月の参議院議員通常選挙のほうを見ますと、一年たってまだ一審の裁判が終わらなかったものが一七%ということに相なっております。雑に申しますと、一年で片づかない起訴事件と申しますのが、衆議院議員につきましては大体三〇%、参議院議員につきましては二〇%、こういうような傾向を示しておるわけであります。  このように、衆議院参議院とで長くかかります割合が違いますというところからも御推察いただけると存じますが、長くかかります一つの理由として、これらの事件が一挙に大量に裁判所に押し寄せるということのために、限られた裁判官あるいは検察官の数の上の制約によりまして、ただいま申し上げましたような遺憾な傾向がどうも払拭しきれない一つ原因をなしておる。  そのほかに、やはり何と申しましても、たいへん残念なことでありますが、選挙事犯につきましては、符に裁判の確定が先へ延びれば延びますほど、現実的には右利になるということはいなめない状況でございまして、中には起訴されました後に、そうは考えたくはないのごでございますが、ことさら公判を延引せしめる関係者もないわけではないように思われるのでございます。  それからさらに、これらの選挙違反につきましては関係者が多数でございますが、あるいは弁護人も多数つかれまして、熾烈な法廷闘争が行なわれる。したがいまして、捜査中に作成いたしました志数等が弁護人被告人側の同意を得られないために、すべて証人によって立証する。一人一人の証人につきまして反対尋問、再反対尋問というようなことで、公判期日を思わず食うということで、この表にございますような結果が出ているわけでございます。  私どもといたしましても、何とかこのような状況を打開したいと存じまして、常々検察庁に対しても一そうの努力を指示しておるわけでございますが、近く検察長官会合を開催いたしまして、今次選挙取り締まり方針と合わせまして、取り締まりの結果起訴されました者の審理の促進につきまして十分協議をしまして、何らかの方策を見出したい、かように考えておる次第でございます。
  11. 島上善五郎

    島上委員 そうしますと、前回参議院について申しますと三十七年七月、衆議院について言うと三十八年の十一月の違反で一年たっても済まない者の数字は出ていますか。現在なお済まない者が相当数ありますか。
  12. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 遺憾ながらなお若干あるようでございます。
  13. 島上善五郎

    島上委員 私の伺っているのは、前回違反をやった者がまた選挙に立候補したり、あるいは選挙活動中心になったりしておるという事例が少なからずあるのですよ。同じ違反と名がついても、ほんの軽微の、過失に毛がはえた程度のものもありましょうし、意識的な悪質のものもありますから、一がいには言えませんけれども、何回違反をやっても平気のへいざで次の選挙をやり、またその次の選挙もやるという者はおおむね意識的で悪質なんですね。特にそういうものに限って裁判がまだきまらないという状態にあると、いや、おれは最後には無罪になるのだ、おれは白なんだ、何も違反をしなかったのだということを強弁して、また次の選挙もやる、立候補しあるいは選挙活動をするという傾向がないではない。そういうことを心配するので伺ったわけですが、ぜひこの裁判については、法律にもありまするように促進して、無罪になるべきものは早く無罪にしたほうがいいし、有罪になるべきものは早く有罪にして、選挙は、参議院選挙は三年ごと、衆議院選挙はおおむね二年半か三年ですけれども、その間に地方選挙がはさまって、ほとんど毎日のように選挙が行なわれておる。いま私が予想すると、かりにことしの参議院選挙、ことしの暮れか来年は衆議院解散選挙、都議会の選挙、再来年にはまた統一地方選挙、そのあくる年は参議院の三年先の選挙、その先にはまた衆議院解散だろう。こうなると毎年選挙です。そうすると、いま言ったように地方のいわゆる部落や町のボスといわれる人たちは常習犯が多いのですね。それで、選挙違反をやっても悪いことをしたという意識が非常に少ない。本人もそうだし、はたでもそういう意識が少ないということも問題ですけれども平気で重ねるという傾向がありますから、それを断ち切るためにも裁判の進行を早めるということでぜひ必要だと思うのです。まあこれはそういう意味において、いま残っておるものを早めると同時に、今後もそういうふうにひとつやってもらいたいということを強く御希望申し上げておきます。  それから、いまお話のあった、全国会議を開いて取り締まり指示をなさったということですが、その指示をされた内容のあらましについてお話し願えますか。
  14. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 多少ことばが足りなかったかも存じませんが、全国検事長検事正を集めまして、選挙に関して会議を開きまして指示をいたそうといたしますのは先月の下旬のことでございます。ところが、先ほど先生からの御指摘がございましたし、警察からも答えましたように、今次選挙につきまして相当事前運動の日に余るものがあるように思われますので、その検事長検事正の会同まで待っておっては時期を失するやもしれないということでございましたので、本年四月三十日に、特に法務大臣の命によりまして、法務省刑事局長から全国検事長検事正に対しまして、今次選挙事前運動取り締まりについてと題します通達を発しまして注意を喚起したわけであります。  その要旨は、御承知のようにこの五月、ただいま五月は明るく正しい参議院選挙強調月間でございます。このような間におきまして、一面、一部で事前連動あるいはこれにまぎらわしい遺憾な事例が少なからず見受けられるようでございますので、このような情勢の推移には十分に警戒を要するものがあると考えられるのでございます。そこで、各検察庁においては警察その他関係当局といよいよ緊密な連絡を保って、各地の選挙情勢に十分な注意を払って、違反疑いがある場合には徹底した査察、内偵を遂げましてその真相を明らかにいたしますとともに、特に悪質と認められる事犯に対しましては、事前に検挙してこれを処理するということを励行するなど、適正な取り締まりを行なって、もって明るく正しい選挙の理想の実現に寄与するように一段と配意をしてもらいたい、こういう趣旨のものでございます。
  15. 島上善五郎

    島上議員 自治省の長野君に伺いますが、明るく正しい選挙運動、これはたいへん平易なことばで、ぼくも賛成ですが、ことばはどんなによくても運動実態が伴わなければこれは何もならないのですからね。どうもいわゆる公明選挙運動と言っておったのを、明るく、正しい選挙運動という名前に切りかえ、あるいは組織とか機構を切りかえるというようなことに、これは私の受けた印象ですが、少しもたもたしておったような印象を受けて、いま、もうすでに私が指摘し、答弁にもあったように、芳しからぬ事前運動が、はっきり言うならば、横行しているようなときに、立ちおくれているのじゃないか、そのあとを明るく正しい選挙運動看板をかついでよたよたして歩いているような印象を受けますが、一体いま明るく正しい選挙運動というのは、どの程度に実際の活動をしておるかということを、大まかでけっこうですが、ひとつ伺いたいと思います。
  16. 長野士郎

    長野政府委員 お答え申し上げます。  従来の公明選挙運動という名前でやっておりました運動を、それのほかに明るく正しい選挙というような、国民のだれにでもわかるような平易なことばを用いまして、新しく運動を刷新していきたいというようなことは、ちょうど本年が第一回の衆議院選挙が明治二十三年に行なわれましてから七十五周年になっておりますし、男子に普通選挙権が認められましてから四十周年、婦人参政権が二十周年を迎えておりますので、そういう意義深い年でもありますし、この運動をさらに清新はつらつたるものにしたいというようなこともございまして、新しい名前で新しい装いをこらそうというようなことになっておるわけでございます。  それにつきまして組織がえ、あるいは名称がえで非常にもたついたような傾向はないかというお尋ねでございますが、三月ごろあるいは四月初めごろまではこういう名称が公募いたしました関係で徹底するのに少し時間がかかった点は確かにございます。ございますが、ここ四月に入りましてからは、従来そういう組織がありますから、その組織がそのままそういう形で運動を続けておるというかっこうになっておりますので、この点でひどくもたついておるということは、私どもはないと思っております。五月は、先ほどお話がありましたように、そういう意味参議院選挙強調月間にもいたしておりますし、また、そういう意義深い年を記念いたしまして、そういう意味国民選挙権重要性を認識してもらうということで、参議院選挙ということを面接に訴えるということのほかに、そういう選挙権に関する自覚を促すといいますか、そういう意味での多少じみなところもありますけれども、そういう運動中心になって、五月という月をずっと過ごしていくというかっこうに相なると思います。五月の末ごろ、あるいは六月になりますと、具体の参議院選挙というものに対して目標を据えまして、そうして終発活動を強力に進めてまいる、こういうことになるわけでございます。三月の中旬に中央におきましては明るく正しい選挙推進本部というものを設けまして、そして関係各省それから民間団体等協議連絡機関として発足をしておるわけであります。各地方にも三月の末あるいは四月の初めからそれぞれそういう機関ができておりまして、そして選挙意義を強調し、また、そういう記念すべき年でありますので、それにふさわしい行事を行なっております。  いまお話のございました事前運動等につきまして、それじゃどういう強力な手を打っておるかというお話になると思いますが、私ども現在取り締まり当局その他とも御相談申し上げて御連絡いただいたり御意見を伺ったりしておる最中でございますが、だんだんそういう時期がきたと言っちゃおかしいのでございますけれども、やはり推進本部というものが中心になりまして、また各方面に強力にそういう覚醒を促すということをやっていくほうがいい時期がそろそろきているのじゃないだろうかという気が実はいたしておるのでございます。それからまた、公務員の地位利用とかそういう問題もだんだん問題になることも当然予想されます。そこで、これは例年選挙におきましてはそういう意味関係各省とも注意を促しておるわけでございますが、特に参議院選挙についてはそういう事例が従来におきましても多く見受けられたわけでございますので、適当な時期に、事前運動の中の文書違反でございますとかあるいはその地位利用とか乱用とかというものにわたらないようなものにさせるために、そういう措置をとるような、あるいは警告を発するとかいうことを、一般的に覚醒を促すようなことも、だんだんとこれから密度を加えてやってまいりたいとうように思っております。  以上でございます。
  17. 島上善五郎

    島上委員 どうも推進本部やり方が、私をして言わしむればあまり上品で遠回しで、啓蒙運動というか啓発運動というかそういう方面重点を置いているせいか、あるいはまたその地方地方で立候補する者や選挙運動する者とのつながりとまでは言わぬけれども関係等があって、遠慮している、遠慮して遠回しにものを言っている、遠回しなことをしているというような気がするのですが、いまのことばにも出たように、だんだん近づいてきているのですから、近づいてきたらあまり遠回しなことを言ったり遠慮した措置をしておったのでは効果があがらぬと思うのですよ。それは啓蒙啓発効果などというものは目に見えないものですから、目に見えないけれども効果はあがっているといえば効果はあがっているでしょうけれども、私は、やはり悪質選挙運動というか不正腐敗選挙運動を防止するには、この明るく正しい選挙推進本部の諸君の活動に大きく期待したいと思うのですよ。それには遠回しな上品なことを言って、あるいは遠慮しておったりなんかしないで、まあ、もちろん警察権を持っているわけじゃないから警察がやるようなことはやれないわけですけれども、しかし警告すべきものは警告し、あるいは警察連絡をして、警察権の発動を要請すべきものは要請するというふうにして、いうならばかなりびしびしとやってもらわぬと、悪質違反の種はふえるばっかりで尽きないという気がするわけです。そういう点について相当びしびしやるという——これはあなたのほうはそれを指導する立場ですけれども、そういうお考えはありますか、今後。
  18. 長野士郎

    長野政府委員 先ほど申し上げました推進本部と申しますものは、中央では報道機関関係各省庁のお集まりをいただいて連絡協議をする機関になっておりますが、地方にもそういうものを設けておりますのは、ちょうどいま御指摘のありましたように、選挙管理委員会等におきまして違反実態というものがキャッチできる、あるいは警察当局からの違反実態がキャッチできる、そういう場合に相互に連絡し、あるいは選挙管理委員会等で警告を発する、そうして、それに基づいて取り締まり当局活動しやすいようにするというようなこともございまして、この連絡協議機関というものを選挙に際しまして設けるような体制をとっているわけであります。  ただ、明るく正しい選挙の推進というものの全体の運動といたしまして、これは啓発重点に置いておることは確かでございますが、選挙に際しまして各地区におきますところの推進委員というような人が非常に熱心に活動をいたしまして、そうして違反の摘発という形になるような傾向もございます。ただ、この場合に用心しなければなりませんのは、それが特定のところに対する違反の摘発になっても非常にめんどうなことになりますので、その点を公平な目で見ていくということも必要でございますので、推進本部とか連絡協議機関というものも設けまして、そうして関係機関の一致した見方で違反の是正に寄与していくというような形をとっておるわけでございます。もちろんこの選挙につきましては、そういう意味で具体の選挙になりますと、主として選挙の投票に対する関心を高めるということと、違反の絶滅を期するということが、この明るく正しい選挙中心の題目になることは言うまでもないわけでございます。そういう形をとることになると思います。  また、これは各立候補者あるいは各政党に対しましても、今後とも明るく正しい選挙という態勢で選挙運動を展開していただくようにぜひお願いしたいというので、それぞれの地域におきましてもまたそういう働き一かけをしていくように——これは例年やっておりますが、本年におきましては特にそういうことを強くお願いしてやっていくようにしたいと思っております。  従来とやり方がそれほど違うわけではございませんけれども、この違反の件数がだんだんふえていくと申しますのも、そういうことだけでいきますと、選挙実態がますます悪くなっていっているという見方もできるわけでございますけれども、一面こういう啓発というものから、あるいは国民違反に対する感度が敏感になりまして、そうして摘発というものについて、あるいは違反の是正というものについてチャンスが多くなっているという点もあるのだろうというふうに思っておるわけでございまして、そういう意味ではこの明るく正しい選挙運動というものが、テンポはのろいという御意見もあるかもしれませんが、逆に言いまして、選挙のたびごとに次第に効果をあげてきておる、徐々にではあるけれども、次第に国民の間に浸透しておるというふうに思っておるわけでございます。
  19. 島上善五郎

    島上委員 そこで自治省にもう一つ大事な問題を伺いたいのですが、高級公務員の立候補が回を重ねるごとにふえておるような気がするわけです。いま立候補制限が法的にない以上はこれは当然のことで、刑にそのこと自体は法的にはどうこう言われることではありませんけれども、高級公務員の立候補がふえるということは、地位の利用がどうしてもそれに伴うわけです。  せんだって山梨県で起こった、知事が職員に訓辞した事件がありますけれども、これなどはその端的なあらわれだと思います。その当時新聞には、自治省選挙課の話として「特定候補の名前をあげていないので事前連動にはならない。しかし選挙運動を県職員に勧奨することは地方公務員法三十六条(政治的行為の制限)に触れることは明らかなのでさっそく調べる。」これだけの談話が載っておりますが、この山梨県知事の訓辞について、その後おそらく詳細に報告がきていることだろうし、調べて実態がおわかりだと思いますが、これに対して自治省としてはどのような見解をお持ちで、どのような措置をとられましたか。
  20. 長野士郎

    長野政府委員 お話の点は、山梨県知事がことしの四月一日に、年度初めにあたりまして職員に訓辞をしておるのでございますが、その訓辞の中でお話のような問題に触れたかどうかということだと思います。  私どもがその後その速記を調べましたところ——速記と申しましてもこれは要領筆記的なところもあるかもしれませんが、新聞で問題になりましたのは、その中で「今回の参院選では、国の仕事の関係で支持する人もあるのだろうが、内部で争うようなことをせず、また、法律に触れないように注意してやってもらいたい。選挙に関心を持つことは当然ではあるが。」このあたりが問題になっておるようであります。ただ、新聞に出ました場合には、その部分の「法律に触れないよう注意してやってもらいたい。」というのが、法律に触れないよううまく運動をやれ、というような意味に近い表現だというふうに受け取られておるようでございます。この運動をやれということになるかならないかという点は確かに問題があるのだろうと思うのでございますが、「法律に触れないよう注意してやってもらいたい。」というところに多少問題があるのかもしれませんが、知事として法律に触れるようなことはいたすなという意味だというふうに考えますと、これ自身がそれほど問題になるとは思えないというふうにも考えられるわけでございますし、また逆に、法律に触れないすれすれのところでうまいこと一生懸命やれということで考えますと、これはいささか穏当を欠く発言だということにも受け取れるわけでございます。  この全体の訓辞のところを見ますと、前段の点におきまして、前回参議院選挙では、どうも職員の間に非常な迷惑がかかってきて、違反者等が出ておって非常に遺憾だということも述べておりまして、それからことし行なわれました甲府の市長選挙とか、そういうものでも何か職員間にいろいろ対立があったとかなかったとかいうことが取りざたされておるというようなことについて心配をいたしておるような言及もございますので、要するに参議院選挙に臨むにあたってもまた同じような事態が起こることを知事としては一応心配をいたしまして、そうして全体の調子から受け取りますと、注意をしてくれということを言ってるい。選挙に関心を持つことは当然であるけれども注意をしろということを言っておるというふうに、まあすなおに受け取るのが、どうもこの前後の事情から考えると、いいのじゃないだろうかというふうにも思われるのでございまして、必ずしも選挙運動をすることを奨励したというふうにまで考えることは少し問題を持って行き過ぎているところがあるんじゃないだろうかというふうに思われるのでございます。  そこで、一応そういう程度の訓辞でありますならば、表現その他が必ずしも適切とは思いませんが、それが直ちに違反だというふうに考えられないのじゃないかと考えております。
  21. 島上善五郎

    島上委員 その訓辞の何か、原稿でやったとすれば原稿なり、あるいは原稿なしでしゃべったとすればそのしゃべった全部を取り寄せて検討してみましたか、あるいは報告を受けましたか。
  22. 長野士郎

    長野政府委員 その当時、報告も受けましたし、取り寄せても検討いたしました。まあ一番正確な記録というようなものについて検討いたしたわけでございます。
  23. 島上善五郎

    島上委員 これはあたりまえのことを言っている部分もあるのですよ。何ら法に触れないようにしなさいといったようなことは……。あたりまえのことを言っているところもあるけれども、ずいぶん問題のところもありますよ。みなそれぞれの関係者が立つから関係者を有利にするように運動するのが当然だというようなこともかなり強調しているんですね。これはとりようによっては、とる人によって多少受け取り方は違うだろうけれども、大体その関係者が立候補した際に有利になるようにやりなさい、ただ、法律があるからそこのところを考えてうまくやりなさい。選挙運動を奨励し脱法行為を奨励しているとさえ、そうとさえ受け取れる節があるのですよ。ですから当時これは問題になったんですね。当時非常に問題になった。自治省選挙課の話というのは、これはどなたの話であったか、この新聞の記事が正確であったかどうかは別としまして、とにかく自治省選挙課の話でも、「地方公務員法三十六条に触れることは明らかなのでさっそく調べる。」こうなっている。それから、明るく正しい選挙運動の推進協議会においても非常に問題にしておる。それから総参加運動推進本部長の大浜英子さんの話というのも載っておって、これも問題にしておる。聞くところによれば、天野知事は告発されている。事前運動か、あるいは、詳しくは聞きませんでしたが、告発されているということも聞いている。少なくともそれほど問題になっておることは事実なんですから、その後天野知事が、まあこれは行き過ぎだったということに気がついて、誤解を解くようなことをやるとか、あるいは行動を慎んでいるとかということならば、まあ幾らかでも恕すべき点もありますが、そういう点はどうですか。自治省は注意を促しましたか。
  24. 長野士郎

    長野政府委員 その当時、この演説内容を録音いたしたものを取り寄せまして、検討をいたしました。それから知事自身に私も会いましたので、その話もいたしております。知事は、どうもそのときの状況からいいますと、まあ表現に多少穏当を欠いたところもあるというような気持ちを持っておったと思うのです。注意するというか、自分で非常に迷惑をかけたというような見方をしておられたと思います。ただ山梨県というのは何か非常にむずかしい県のようでございますが、いろいろ事件が起きたり、問題が起きたりすることが多いわけでございまして、ときどきそういう問題が提起される場合があるわけでございます。その点については、しかしそういうふうに私どもも当時の状況からいたしまして、必ずしも適当な訓辞のしかたであったとも全体として思えません点もございますけれども、全体として考えました場合には、一つの、知事として職員に対する配慮をしたいというか、そういう面もあることであるので、非常に適当な訓辞だとは思いませんけれども、ある程度誤解を受けている面もあるというふうに理解をしたわけでございます。
  25. 島上善五郎

    島上委員 いまお話があったように、山梨県というところは事選挙に関しては非常に問題の多い県なんです。秋山村ですか、というところで村長候補が二人立って、二人とも全村総買収をやったという事例もたしかあったはずです。その他幾つか事例がありますけれども選挙運動上芳しからぬ事例の多い——これは一面政争が激しいからそういうことになるということかもしれませんけれども、いずれにしても選挙運動上芳しくない事例が幾つもあるところですから、そこの知事がまたこういう誤解を生むような言動をとるということは、ますます不正腐敗選挙運動に拍車をかける結果を生まないとも限らないわけです。生むかもしれない。これに対しては私どもの立場からすれば問題点がずいぶんあります。その問題のあるところを別にここで議論しようとは思いませんけれども、その後の行動についてもわれわれは十分厳重に見ております。新聞が問題にしてくれて有名になったというような議論がないでもないようなふうに解釈されますから、私は、自治省としては適切な注意なり指導なりをする必要があると思う。今後問題が起こって抜き差しならぬようなことになってしまってからではおそいから、私はそういうふうに言うわけです。現にすぐ参議院選挙も始まりますから、十分注意をし、行動に誤りのないように指導してほしいと思います。  まあ、きょうは軽くこの程度にしておきますが、私がわざわざ、皆さんお忙しいのに、委員会の開催を要求してこういう質問をしたのは、いままでの質問でもおわかり願えると思いますが、国民参政七十五周年、普選四十周年、婦人参政権二十周年の行事を自治省が中心になって大いにやろうというこの年の参議院選挙が、史上空前の腐敗選挙であったなあということになったのでは、これはまことに申しわけないわけですから、そういうことにならぬように、少なくとも、私は一ぺんに選挙がきれいになるなどと、そうは思いませんけれども、いままで違反がだんだん回を重ねるごとにふえて、しかもその中で悪質違反がふえているという事実は、あなたがいま言ったように、考えようによっては取り締まり摘発なりが徹底したからだ、氷山の下のほうにあったやつがだんだん出てくるようになったからだ、そういう見方も、それはすればできますけれども、私はそうじゃないと思うのです。やはりすなおに、そういう違反の件数がふえ、なかんずく悪質違反がふえておる、こう見るべきであって、私は、ことしの選挙においてはもちろん警察及び検察当局に大いに取り締まりを厳にしてもらう、悪質なものの検挙もびしびしやってもらう、同時にそういう選挙違反の件数が、わけても悪質違反の件数が減るというような方向にいくのでなければならないと思うのです。そういうことを私は希望するがゆえに質問したわけですから、ひとつ自治省、警察庁及び法務省当局にぜひそういう立場から今後やってもらいたい。  特に私は先ほど来繰り返しておりますが、政治活動と区別のつかぬような、また文書違反であるかないかというようなまぎらわしいような、そして実害の少ないものを目を皿にしてさがし回るよりも、悪質違反選挙界を腐敗堕落せしめる悪質違反重点に、それも単に数をよけいにつかまえるということよりも防止するということにまず重点を置き、選挙運動に入ったならば、もちろん違反違反として摘発してもらわなければなりませんが、そういう悪質違反を防止する、悪質違反を少なくする、こういうことを重点に今後それぞれの当局において大いにやってもらいたい。私は、この選挙界を粛正するには、もちろんいま質問した皆さんの活動に待つというだけで済むものでないんで、政党自体が自粛、反省し、政党自体がそういうことをやらぬように実際の行動で示すということが必要なんで、その点についてはわれわれはわれわれとしても考えているし、おそらくは各党で協議するとか相談するとかいったようなことにもなろうかと思いますけれども、どうかひとつそういういま私が申しましたような意味で、ことしの選挙悪質違反の少ない、きれいな、明るい正しい選挙運動が実際に効果あげるような選挙運動にしたいものだという私の熱望をよくわかっていただきまして、やってもらいたいということを希望申し上げて、私の質問を終わります。
  26. 山中日露史

    ○山中(日)委員 ごく簡単に、関連いたしまして、警察庁にお尋ねしたいと思います。  先ほど法務省お話の中に、未済事件が非常に多い、裁判も非常に長引く、その原因としては、一時に選挙違反事件が殺到してくる、人手が不足だ、こういうようなことや、また、法廷における検察官あるいは弁護人との間の記述の合意がなかなかつかない、こういうようなことが裁判が延びていく原因でもあり、未済事件が起こる原因でもある、こういうようなお話でございましたが、むろん私はそれもあると思いますけれども、この事件が長引く一つの根本は、いまの警察官並びに検察官の調書の作成の形式に相当問題があるんじゃないかと思うのです。  と申しまするのは、御承知のとおり以前は予審制度がありまして、予審判事の作成する調書というのは、これはみな問い、答え、問い、答え、こういうふうに書いてありまして、被告人の弁解なりあるいは判事の問いが非常に真実に触れた調書というものができておった。当時予審判事のそういった調書にならって、警察官の作成する調書も、検察官の作成する調書も、やはり問い、答え、こういう形で昔は進んできておったようでありました。最近はそうではなくて、問い、答えというのではなくて、一方的に警察官あるいは検察官が調書をつくる。一方的にと言うと語弊がありますが、結局被告人の弁解がそのままなまで調書の上にあらわれない。警察官なり検察官の考えておる、つまりこの事件は当然違反だという先入観でその調書がつくられる。したがって、極端な例でありますけれども、何か被告人が弁解をするというと、そんなことじゃこれは調書にならぬのだといって調書をとらない。そうして警察官の満足するような誓えが出れば、そこで初めて調書というものができる、こういうような姿に現在なっておると思うのです。これが常に法廷における被告人の弁解、つまり弁護人の争う点となって事件が長引いていく。御承知のとおり、最近の刑事訴訟法では、法廷で弁護人から警察官の調書あるいは検察官の調書を否認されますと証拠力がありませんから、一々調べた証人を法廷に呼び出さなければ証拠力がないというようなことになっておりますので、それでたいへん時間がかかるわけですが、どうしてもそういった問い、答えというような形の調書の作成のしかたに変えていく必要があるのじゃないか。これをやめた理由は、問い、答えということになりますと、非常に調書が長くなる、冗漫に流れる、調書が大冊になるというようなことでそういうことになったのだと思いますけれども、やはり法廷における争いの余地をなくする点から考えても、その調書の作成の形式というものも検討していく必要があるのではないか、こういうふうに私は考えておるのです。法廷へ出ましても、私ども法廷でよく経験することでございますけれども、自分の考えと全然違っておる、そういうことは自分は言わなかったのだ、こういうことがよく言われるわけです。それで検事や警察官の作成する調書は、つまり結論はこれこれこういうことになるからこうだという結論から締めていって、たとえおまえはそういう意思がなかったにしても、これこれこういうことは結局当選する目的になるじゃないかという理屈でもって攻めていく。結局被告人は最初からそういう目的でやりましたという調書になるから、被告人はそういう考えではなかったのだというようなことで常に争っている。それがすべて証拠でもって固めなければならぬというようなことが事件がどんどん長引いていく大きな原因になっておりますので、私は、今後警察庁なり法務省がこの被疑者の調書の作成については、できるだけ法廷におけるそういった意味の弁解、言わなかったことが書いてあったというようなことで争われる余地のないような一つの調書の作成の方式を考える必要があるのじゃないか、こう思っておるのですけれども、そういう点については御検討になったことがございましょうか。これは法務省でも警察庁でもどちらでもよいのですけれども考えを聞かしてもらいたいと思います。
  27. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 現在、供述調書が、いま御指摘のような形で、一人称で供述する形をとっておることはそのとおりであります。戦前は御承知のとおり、尋問調書という系統のものと聞き取り書きの系統のものとございまして、尋問調書のほうは御指摘のように、問い、答え、問い、答え、こうなっております。聞き取り書きのほうは一人称で述べる形をとっておりまして、現在の刑事訴訟法になりまして、尋問調書の尋問権というものが明確に規定されておらない関係上、聞き取り書きのほうが発展して、いま供述調書の形になっておるというふうに私は理解しておりますが、最近——最近と申しましてももう数年前からでございますが、御指摘のように、公判廷で警察官、検察官の作成しました供述調書の任意性あるいは信憑性が争われる事例が相当ございます。こういうことを経験いたしますにつれ、調書作成方式というものをやはり一応再検討してみることもいいのではないかという空気が現在出ております。そういった任意性あるいは信用性の確保のために調書の形式を、問い、答えに改めることがいいのか、あるいはもっと科学的な方法をとったほうがいいのか、いろいろ考え方があろうと思います。それらにつきましても私どもといたしまして、現在いろいろやり方を想定いたしまして、任意性、信憑性の確保のためにどれが一番訴訟関係に信頼していただける方法であるか、この研究を続けておる次第でございます。
  28. 中野四郎

    ○中野委員 関連して。いま選挙違反で百日裁判というのですが、実質上は行なわれていない例が多分にあるのです。一番長いのは一体どれくらい年月を要しておるのがあるのですか、あなたのほうに何かお調べになったものがあれば、一言聞かしていただきたいと思います。
  29. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 昭和三十七年中に公職選挙法違反事件で第一審裁判の言い渡しがありましたものについての統計がございますので、これに基づいて申し上げます。  判決までに要しました審理期間のうち、量も数の多いのは六月以内に終結したものでございますが、中には非常に長くかかっておるのがございまして、ただいま申し上げました三十七年の統計によりまして見ますと、三年以上経過して一審判決に至ったというものが、衆議院議員選挙関係で二十七件、それから参議院議員選挙関係で五十七件あるようでございます。三年以上という統計でございまして、その上何年ということが出ておりませんが、これは私どもの経験に基づいて申し上げますと、一番長いのは四年くらいかかったのがあるのではないか、かように考えております。
  30. 中野四郎

    ○中野委員 私はちょっとふしぎに感じることがありますから一言申し上げておきます。名前を申し上げるのはかえっていけないと思いますが、地方の県会議員選挙で、この前の前の選挙だからちょうど七年くらいになりますか、三十四年の選挙違反事件を起こして、関連者が百二十何名というものが起訴をされておる。愛知県ですから、これは人の名前は申しません。そうして次の選挙で落選をされ、次にまた選挙に出られて当選されて現在おるのです。そうすると三十四年というと、もう足かけ六年ですね。いまだその裁判は継続されておるという、非常に長い事犯を承知しておるのです。ふしぎに思っておるのですけれども、こういうのはまれなんですか。あるいはそういうのは多々あるのですか。簡単に伺っておきたいと思うのです。
  31. 伊藤栄樹

    伊藤説明員 そういうケースが多々あるということは決してないと思います。きわめてまれなケースだと思います。お尋ねの件が具体的にどういう件かわかりませんが、あるいは二審、上告群、こういうところで未済になっておるのじゃないかという気がいたします。先ほど申しましたように、おおむね一審は一年以内に終わるのが多いのでございますが、ごく例外的なケースとして、そういう御指摘のようなケースがあるということは否定できないと思います。      ————◇—————
  32. 中村庸一郎

    中村委員長 次に、閉会中審査申し出の件についておはかりいたします。  公職選挙法改正に関する件につきまして、閉会中もなお調査を行なうことができますよう議長に対し閉会中審査の申し出をいたしたいと存じます。これに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 中村庸一郎

    中村委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  次に、閉会中の委員派遣に関しおはかりいたします。  ただいまの閉会中審査申し出案件が付託され、現地調査の必要が生じました際には、委員を派遣し、調査をいたしたいと存じます。  つきましては、派遣委員の人選、期間、派遣地その他所要の手続等につきましては、委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 中村庸一郎

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、この際おはかりいたします。  閉会中の理事辞任の件、並びに欠員を生じました際の補欠選任につきましても、委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 中村庸一郎

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十五分散会