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1965-06-01 第48回国会 衆議院 外務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年六月一日(火曜日)    午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 野田 武夫君 理事 毛利 松平君    理事 戸叶 里子君 理事 帆足  計君    理事 穗積 七郎君       菊池 義郎君    竹内 黎一君       濱野 清吾君    福井  勇君       三原 朝雄君    森下 國雄君       石野 久男君    黒田 寿男君       松本 七郎君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (欧亜局長)  北原 秀雄君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房外務         参事官)    西堀 正弘君         外務事務官         (大臣官房国際         資料部外務参事         官)      上川  洋君         外務事務官         (情報文化局文         化事業部長)  針谷 正之君     ――――――――――――― 五月二十八日  委員加藤進君辞任につき、その補欠として川上  貫一君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員石橋政嗣君辞任につき、その補欠として勝  間田清一君が議長指名委員に選任された。 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(日韓問題等)      ――――◇―――――
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 きょうは最後で、大臣の時間もないそうで、たった二十分しか割り当てられておりませんので、端的にお聞きしますが、日韓交渉の問題で、韓国の側から申し出の旗国主義のことで、だいぶん問題が難航しているそうですか、その後の事情を、この問題についてどういうふうになっているか、御説明願います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アジア局長から申し上げます。
  5. 後宮虎郎

    後宮政府委員 事実問題でございますので、大臣お答えになります前に経過を申し上げますと、この前の外務委員会大臣からお答えがございましたように、合意事項と必ずしも一致しないような修正意見韓国側から申し入れてまいりましたので、いろいろその後公私の会合を通じまして、そういう態度では交渉を進められないからということで強く反省を求めて押し返しておる段階でございまして、まだ遺憾ながら先方がはっきりと各点について合意事項と矛盾する点を取り下げてくるというところの確証を得るに至っておらないというのが実情でございます。
  6. 石野久男

    石野委員 時間がありませんから理論的なことはあまり言いませんが、そういう事情の中で、高杉・金会談によると、仮調印から正式調印までの日程が、およそ六月の中旬ころには正式調印にいくのじゃないかということがよく流布されております。外務省は大体そういうようなスケジュールでこの正式調印の問題を運ぼうとしておるのですか。大臣にひとつお聞きしたい。
  7. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 できればということでございます。しかし、実際問題としては、いまのような漁業問題の進捗状況では、いかにスケジュールを定めてみたところでそのとおりにいかないのではないかと心配しております。
  8. 石野久男

    石野委員 共同コミュニケを発表したときには、双方ともに非常に満足であるということを発表しておるし、大臣もそういうふうに言ってこられた。その中に旗国主義などみな入っておるわけです。それが、ただ一月もたたない間に、旗国主義については向こうから苦情が出てくる。こういう事情は一にかかって韓国内部日韓会談に対する反対の強い力があるということを証明しておると思います。私は時間がありませんからそれらの韓国内部事情がどうあるかということはここで多くを申しませんけれども、問題は、そういう事情の中で朴正煕アメリカに行きジョンソンと話し合いをする、そして日韓会談正式調印の時期を非常に急がれておるというような情報も聞いております。そのようなことから、実質的には事務折衝の中でもかたまりのないものを政治的な立場から日韓会談正式調印ということが国会の終了後早急に行なわれるとするならば、外交上非常に疑義を残し、日本朝鮮との友好関係の将来にとりましてもいたずらに問題を残すことになるのじゃないかということをわれわれは憂えておるわけです。そこで、双方に完全な意思の合致がないままに、むずかしいところがあってもあとで何とかまとめようじゃないか、正式調印だ、批准だというような会談の進め方というものは、これは私はよくないと思うのです。この際大臣に重ねて聞いておきますが、少しぐらいの考え方の違いがあってもとにかく正式調印にこぎつけて批准日韓双方で強引に押しまくってしまうというような態度を今日おとりになっていられるかどうか。この点について、特にこの問題は、休会後われわれが議会を離れて、参議院選挙のさなかにおそらくそういう双方話し合いというものは進んでいくだろうと思いまするので、私はこの辺に対する政府の明確な考え方というものを聞いておきたいと思う。大臣からひとつ御所見を承りたい。
  9. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もちろん、疑義を残したままで、当座を多少ごまかして、かけ足で正式調印にこぎつけるというような、そういう考えは私どもはとりたくない、やはり将来にそういういざこざを残さないように十分に踏み固めてまいりたい、こういう考え方でございます。したがって手間どっておる、こういう状態でございます。
  10. 石野久男

    石野委員 重ねて聞いておきますが、イニシアルを取りかわした問題でも双方見解が根本的に違っているような場合、いまのようなそういう旗国主義の問題なんかで双方見解が非常に違っている、そういうようなものが残されたままで正式調印というようなことになることは将来のためによくないとわれわれは思っておる。ですから、政府イニシアルを取りかわした問題で双方見解が根本的に違っている場合には調印なんかすべきでないというふうに私は考えるのだが、外務大臣はその点はどういうふうにお考えになっておりますか。お急ぎなのでございましょうかどうか。
  11. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 合意事項に関して根本的に違っているというふうに私は報告を受けておりません。こっちはいかにいろいろなことを考えながら取りきめたとはいうけれども、しかし、実際問題というものはそれ以上に複雑多岐な様相を示すものでございます。先般のイニシアルを取りかわした問題はごく大体の方針を定めたものである。であるから、これを補完するという意味における新たな論議は、これは喜んで応ずるけれども、補完ではなくて旗国主義の原則に多少なりとも抵触してくる、あるいはこれを修正するというような考え方は、これは絶対に譲れない、こういう考え方をとっておるのであります。根本的にもうこれを修正するというような、そこまでの何はございません。その点は御了解を願いたい。
  12. 石野久男

    石野委員 わかったようなわからないようなことなんですが、旗国主義の問題では根本的に考え方が違っていないんですね。違っていなければけっこうなんです。もし根本的に、基本的に違ってくるような場合には、政府としてはそんなことの上に立って調印などに入っていくということはないのでございましょうね。考え方の上に根本的に双方で違っているということが明確になっている場合に調印なんかしないでしょうね。
  13. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もちろんです。
  14. 石野久男

    石野委員 わかりました。では根本的に違っているような場合には調印はしないように私たちはしていただきたい。  そこで、お尋ねしますが、外務大臣は、三月十九日に韓国政府が発表した韓日会談白書を読んでおりますか。
  15. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私はまだ読んでおりません。
  16. 石野久男

    石野委員 アジア局長、どうです。
  17. 後宮虎郎

    後宮政府委員 御承知のとおり、膨大な白書でございまして、私もざっと一応は目を通したということでございます。
  18. 石野久男

    石野委員 訳抄世界週報に出ておるわけです。私はここに原本を持っております。ここで問題になるのは、私は時間がありませんから基本的な問題だけ伺いますが、基本条約関係するところで、これは韓国政府が発表しておるものです。その政府が発表しておる問題の中で、日本の側と韓国の側とで食い違いがあると思うのですが、アジア局長は、これをざっと読んで、この白書についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  19. 後宮虎郎

    後宮政府委員 もちろんわれわれの了解するところと一〇〇%一致しているというところばかりではございませんが、やはり韓国側から見た日韓交渉経緯、あるいは韓国側国民説明するときにはこの程度のことを言わなくてはいけないのかというような印象を受けたところが正直なところです。
  20. 石野久男

    石野委員 この基本条約の第二条、第三条は、外務大臣がソウルに行ってこの基本条約仮調印をしました当時からわれわれは問題にしておるところなんです。まず、この条約の第二条の「もはや無効であることが確認される。」というこの問題の考え方について、政府見解韓国の側の見解は、韓国政府が発表したこの白書によれば基本的に違うというふうに見られるわけです。アジア局長は、との白書の示している点についてどういうふうにお考えですか。
  21. 後宮虎郎

    後宮政府委員 御承知のとおり、先方は当初から、ああいう併合条約等は初めから無効であった、なかったのだという表現をとることを主張いたしました。わがほらは、それは国際先例法理にも反するのでということで、いろいろ表現につきまして最後まで話し合いがつかなかったのでありますが、最後段階で「もはや」という字句が入ったことによりまして、ともかくその「もはや」という文句にすることに両方が合意しましたことによって、法理的には、これは一たんは有効に成立したものだという日本側立場は貫かれたものだというふうに了解しております。先方国民感情その他の上から法理論以外の説明はいろいろいたしましょうが、法理諭としてはわがほうの立場は貫かれた、そういうふうに了解しております。
  22. 石野久男

    石野委員 韓国の側は、この「もはや」ということば最初からなかったのだという見解をとっておるわけです。そして白書はそのことをはっきり言っておるわけですね。ですから、局長の言うのとは違うのです。その点について局長はどういうふうに考えておりますか。
  23. 後宮虎郎

    後宮政府委員 日本側に関する限りは、いろんな経緯がありまして、結局、「もはや」オールレディという文句になりましたときに、これは一たんは有効に成立したものだという立場先方も認めての上であったというふうに了解しておるわけでございます。
  24. 石野久男

    石野委員 韓国の側はそういうようなことは言ってないのですよ。もう最初からそういうものはなかったのだということを言っておるわけです。ですから、この問題についての考え方は、これは韓国のほうではこういうふうに言っておるのですよ。「まず、該当する条約および協定に関しては、一九一四年八月二十九日のいわゆる韓日合併条約とその以前の大韓帝国日本帝国間に締結されたすべての条約協定議定書など名称のいかんを問わず、国家間合意文書はすべて無効であり、また政府間に締結されたものであれ、皇帝間に締結されたものであれ、無効である。無効の時期に関しては、無効という用語自体が別段の表現が付帯されない限り原則的に当初から効力が発生できないものであり、もはやと強調されている以上、遡及して無効である。」と、こう言っておるわけです。だから、日本政府の側と韓国の側との考え方が百八十度違うのです。根本的に違うのです。これはお認めでしょう。これは韓国政府が出しておる書類なんです。この訳文は違いますか。
  25. 後宮虎郎

    後宮政府委員 先方がそういうふうに解釈し、国民のほうにそういうふうに説明しておることは承知しております。ただ、法理論的に申しまして、たとえば、あのときに成立いたしました条約協定に基づいて韓国王室に対する待遇の問題とかいろいろなことを日本が実施してきている、それを全部御破算にしろとかなんとかいうことまでは先方も言っておりませんので、法律上の権利義務の問題としては、日本側の、一たんは有効に成立したという立場に立っているというふうに了解しているわけであります。
  26. 石野久男

    石野委員 大臣にお聞きしますが、条約を締結するにあたって、双方見解が違ったものを一つの文章として条約を締結することを、日本外務省は常に考え方の基底に置いているのでございますか。
  27. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 両方解釈が違うということはまあ万々あり得ないように仕組まれておるのでありまして、そのために、日韓両文について疑義があった場合には英文によってその疑義をただすということになっております。私どもはあくまで、法理論的には一たん有効に成立し、そして事実関係もそういうふうな経路をたどっている、そして今日においては無効になっておる、効力を失なっておる、こういうふうに解釈しております。
  28. 石野久男

    石野委員 法理論的には成立した、事実関係ではどうだこうだというような言い方はおかしいのですよ。向こう政府機関が正式に国民に対してこういうように白書を出しているわけです。これは国民に対してだけじゃなくて世界に対して出しておるわけです。その説明の中では、第二条の規定については当初から無効だということを言っておる。日本のほうではそうじゃないと説明しておる。もし韓国の側の説明が正しいとするなら、日本政府国民をだましている。日本政府説明が正しいとするなら、韓国政府韓国国民をだましている。両国政府がお互いに国民をだましながら条約を締結するということは、これは無効ですよ。こんなことはあってはいけないと思うのです。第二条は、もう明らかに日本政府韓国政府との間の見解は百八十度違っております。こういう中で基本条約がそのまま調印されるということは、絶対に許さるべきことじゃないと思う。  また、この第三条について、政府韓国政府の出している見解をどういうふうに理解し、また、見ておられますか。
  29. 後宮虎郎

    後宮政府委員 韓国側のほうは、この条文の後半のほうにあります「朝鮮にある唯一の合法的な政府」という点、そこを非常に強調して読んでいるように了承しております。
  30. 石野久男

    石野委員 韓国政府は、韓半島における唯一合法政府だということを確認する条項だ、こういうふうに言っておりますね。そうでしょう。
  31. 後宮虎郎

    後宮政府委員 そういうふうに解釈し、そういうふうに申しておると了解しております。
  32. 石野久男

    石野委員 日本政府は、この第三条に書かれておる、国連決議一九五の(Ⅲ)のようなという理解のしかたを、それではどういうふうに正式に解釈しておるのですか。
  33. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 第三条の解釈としましては、総会決議に明らかに示されているような意味において朝鮮にある唯一の合法的な政府である、こう解釈するのが正当な解釈であると考えております。
  34. 石野久男

    石野委員 この「ような」という問題については、しばしば日本政府は北の朝鮮との関係について見解を発表しているわけです。そして、南朝鮮国連決議一九五の(Ⅲ)によるところのものは、一つ限定政権としての形で説明をしてきております。そして、北においては現実人民共和国があるということも認めてきておるわけですね。したがって、一九五の(Ⅲ)のようなという問題については、これは全朝鮮半島に及ぶというような理解はしていないはずです。どうなんですか。
  35. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 限定政権というようなことばを使うことは誤解を招くおそれがあると思いますので、これは避けたいと思いますが、現実大韓民国政府施政が北のほうに及んでいないという事実はこの決議にも明らかにされておるわけでございまして、その趣旨も含めて、この第三条はこの決議を引用しているわけでございます。
  36. 石野久男

    石野委員 日本政府はしばしば、一九五の(Ⅲ)についての韓国政府施政の及ぶ範囲というものについて言明してきました。そしてまた、それは共和国の側まで現実施政の及んでいないものだというふうに見ておる。白書はどういうふうに書いておるかというと、こういうふうに書いておる。「第三条=規定されている文字そのままに、大韓民国政府韓半島において唯一合法政府であることを確認する条項で、韓国政府に対する他の制約になる疑問が提示されたこともあったが、明らかにそうでないのである。大韓民国の領土は憲法第三条に明示されているごとく、韓半島全域付属島嶼で、これが日本との関係において韓日間の基本関係条約のために制約されることもないことは明白である。」、こう書いてある。こう言っているのですから、韓国の側では、この基本条約第三条というものは、すべて韓半島全部に及ぶというたてまえで国民に納得させ、そしてまた世界にそれを訴えているわけです。日本はそういうふうには理解してないわけですね。日本は、この仮調印が行なわれるすべての問題については、今後その他の朝鮮の問題が出てくる場合のことを残しつつ話をしてきているというふうに、従来国会ではわれわれに答弁してきているわけです。  外務大臣基本条約の第三条の規定は、このように、日本の側の理解のしかたと韓国政府理解のしかたとは全く違っておる。どちらが正しいのですか。
  37. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国連総会趣旨を忠実に伝えたものとわれわれは理解しております。
  38. 安藤覺

    安藤委員長 石野さん、時間がまいっていますが……。
  39. 石野久男

    石野委員 もうあと十分あるんですよ。半からですからね。  だから、いま外務大臣国連総会決議を云々と言いましたが、私はそういうことを聞いているんじゃない。韓国の側のその第三条に対する理解のしかたと日本の側の理解のしかたとは全然違うということなんです。それをどう見るかということなんです。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 総会決議解釈の問題でありますが、われわれの解釈が正しいと考えております。
  41. 石野久男

    石野委員 われわれの解釈が正しいということになれば、韓国の側で出した白書はでたらめを言っていることになるんです。これは韓国国民にもう少しはっきり知らせなくちゃいけないと思います。韓国政府韓国国民に、日本政府理解しているものと全然違うものを白書の名において説明しておるということは間違いです。私は、きょうは時間がありませんので、他の同僚に時間を譲らなくちゃいけませんから、この問題を提起しておきますが、ここで最後一つだけ大臣に聞いておきたい。  第二条の問題に対する理解のしかたも、日本朝鮮とは全然違う。基本条約の第三条に関する問題についても、日本政府韓国政府との理解のしかたは全然違います。しかもそれはわれわれの推測じゃない。明らかにこのように韓国白書政府の名において出しております。それが明確に違っておる。こういう基本条約の基本的な考え方食い違いを基準にして、その他の条約調印が行なわれていくわけです。これは、条約調印するその出発点において双方の側における見解の違いを含みつつ、ただ何でもいいから調印さえすればいいという拙速主義をやっておると思います。これは大きな間違いです。今後この問題は、たとえば漁業権の問題、旗国主義の問題なんかもこういう点が中心になって出てきているとわれわれは思っています。漁業問題につきましても、あるいは経済の協力問題についても、在日朝鮮人法的地位の問題についても、あるいは文化財の返還の問題等についても、基本条約におけるこういう意見相違をこのままほうかぶりして調印をするなんということは許されるべきことではありません。国会はもうきょうで終わります。そうしますと、閉会中に、アメリカの要請に基づいて韓日両国が強引に調印をやらねばいかぬという朴正煕の指令が韓国政府出先官憲に出ているので、そういう中で日本政府がそのうしろに金魚のうんこみたいにくっついて、そうして調印をするというようなことがあったらとんでもないことになる。私は、外務大臣調印をする前に、こういう問題についての考え方の調整というか、意見一致がなければならぬと思うのです。ところが、憶測ではなくて、明らかに韓国政府はこれを海外に公表しているのです。この公表は最近に行なわれたものじゃないことは、先ほどアジア局長が言っているとおりなんですから、われわれはここで外務大臣にはっきりと聞いておきたい。条約調印するにあたっては、条約調印国双方意見合致がない場合には調印してはならない。意見合致のないのに調印をするということは条約の体制を整えるものじゃありませんし、また、外交方針をゆがめるものになる。日韓会談については、こういう点についてはっきりと外務大臣がその態度を明確に国民に示すべきであって、こういう見解相違について両者合致点が出ない限り条約調印批准に入るべきではないということを私は申し上げるわけですが、外務大臣所見をここで聞いておきたいと思います。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 二条、三条につきましては、たとえばこの二条の問題につきましては、もはや無効であるという問題については、両国の間で責任者の間でも相当の論議をして、それで意見一致を見た文句でございます。それを事後においてどういうふうにこれを解釈するとか、あるいはどういうふうにPRするとかいうところまでは、どうも条約上これを取りきめるというわけにはいきませんので、少なくとも、もはや無効である、こういう問題については、間違いなく両者の間で意見一致を見ておる。これと同じように、すべての条約条文につきましては、責任ある当局との間において意見一致を見て、そして条約が確定するということになる。私はさように確信しております。
  43. 石野久男

    石野委員 最後一つだけ。いまの大臣の御答弁は、話し合いをするときには意見一致たんだ、あと国民にPRする問題までについては条約上は何ともやれないからしかたがありません、こういう言い方をする。ところが、それがただ巷間伝え聞く程度ならよろしいのですよ。これは政府の正式に発表した白書なんですよ。まだ調印しない前に、国民を納得させるために韓国政府国民に出した白書なんだ。それは、いま大臣からもあるいは局長からも御答弁のあったように、日本政府韓国政府との間の意見は完全に違うわけです。だから、私はそういうことをやらしてはいかぬということを言っているわけですから、これはひとつ大臣あまりこだわらないで明確にしてほしい。韓国政府のやり方が皆さんとの話し合いと違うのならば、韓国政府韓国民に対してうそをついている。そういううそをついているようなことを許してはいけません。このことはひとつ大臣からもはっきり私どもに対して答えをいただいておきたい。これから参議院選挙に入るのですよ。こういうようなでたらめなことを言っておったら、われわれは参議院選挙において訴えなくてはいけない。日本国民にもうそをつく、韓国国民にもうそをついて、そして上のほうだけでもたもたとやってしまうということは、条約をつくるについて絶対に許してはいかぬと思うから、その点について私はもう一ぺん大臣に、意見一致をしないものについては明確にするという態度をはっきりしてもらいたい。
  44. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私ども国民に対してうそをついているとは全然考えておりませんし、今後もそういうようなつもりはもちろんありません。韓国政府韓国国民にどういうことをしていけないとかいいとかいうような、内政干渉もこれは慎むべきことであります。条約の成文に関しては、あくまで、疑問を残さないように、完全に意見一致を見たとおりにこれをしたためてまいりたい、こういうことだけを私は考えております。
  45. 石野久男

    石野委員 資料要求一つお願いします。この韓国の出した白書外務省で訳してわれわれに配付してほしい。
  46. 安藤覺

    安藤委員長 石野さん、全訳ですか。
  47. 石野久男

    石野委員 全訳です。非常に大事ですから、全訳にしてもらいたい。
  48. 安藤覺

    安藤委員長 承知いたしました。  関連事項について一間だけ戸叶里子君に許します。
  49. 戸叶里子

    戸叶委員 関連して一問だけ日韓問題で質問したいと思いますが、いま石野委員韓国白書を引用して指摘されましたように、日本韓国との間の今回の基本条約においてさえも考え方が違っている面がたくさんあるわけです。政府は、それは法律的には義務・権利というような面では別に変わりはないという立場をとっていらっしゃいますけれども、基本的考え方の違いということは大いにあとに禍根を残すと思います。そして、さらにこれを裏づけるように、先ごろ朴大統領がワシントンのナショナル・プレス・クラブで、日本に対する個人的感情を問われれば、私は日本に対する怒りを表明することをためらわない、こういうことを放言しておりますけれども政府はこのような韓国の最高の責任者ことばをどういうふうに受け取っておられるか。そういう考え方でもって一体日本韓国との間の条約が円満にいくとお思いになっていらっしゃるかどうか。根本的に怒りを持って、そして日本との条約を何とかしていこうという、そういうふうな考え方でもって、一体日本が今後韓国日韓交渉というものを進めていって、将来禍根を残すものにならないかどうか。これは根本的な問題ですから、外務大臣のお考えのほどをただしておきたいと思います。
  50. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 個人感情を言えばということでございまして、あくまで朴正煕大統領の良識を私は信じたいと思います。
  51. 戸叶里子

    戸叶委員 私は関連ですから多くを聞きませんけれども、朴大統領の良識を信頼されても、朴大統領自身が日本に対して怒りを表明するということをプレス・クラブで言っているのですよ。公言しているわけですね。こういうものを、日本外務大臣として、それでもなおかつ、朴大統領は日本に対しては信用しているのだとか、こういう気持ちでいていいものかどうか。もう一度その点をはっきりさせていただいた上で、私は関連ですからやめたいと思います。
  52. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 朴大統領はまた、他の機会において、いたずらに過去にさかのぼって感情的にものを言うべきじゃない、前向きに、あくまで建設的に考えていかなければならない、そういう意味においては日韓会談というものの早期妥結は正しいということを、しばしば言っておるのであります。実は個人感情を言えばというようなことで、私は朴大統領の経綸と良識を抹殺するような考え方は持ちたくないと思います。
  53. 安藤覺

  54. 穗積七郎

    穗積委員 きょうは最後の日でございますが、時間が非常に限られておりますので、私は近く政府が参加されるAA会議に対する政府方針について具体的に問題点をあげてお尋ねをいたしますから、各問題につきまして再質問を要しないように的確にお答えをいただきたいと思います。  まず第一に、参加問題でございますが、新聞を通じてわれわれの承るところによると、ソビエトの参加については反対の態度をいままでもとり、今後もとる方針のようでありますが、それで間違いございませんね。
  55. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いろいろ内部で研究している過程において報道をされておりますが、とにかく、いままでソ連がアジアの一国として取り扱われたことはかってないのであります。今回、第二回のAA会議に、ソ連が、その領土の面積から言っておもなる部分をアジアに所有しておる、こういう点から言って、これはアジアの一国である、したがってAA会議には出なければならぬ、出たいとも思う、こういうような意思表示をしておりますが、先般在日の大使がお見えになりまして、その本国の訓令を携行してまいったのであります。私は、これに対して、従来の事例から推しても、それからまた、アジアの国のほとんど大多数がこれはアジアの国ではないというふうに考えておるこの情勢下において、遺憾ながらソ連参加を支持することはできかねるということを言ったのであります。そういういきさつがございましたが……。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 それに対して向こうは何と言いましたか。
  57. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは聞き置いて帰っていっただけです。そのとおりに本国政府に通報をしたと思います。しかし、AA会議に出て、そしてこの問題が提出された場合にどのような態度をとっていくかということについては、その後与党との間においていろいろ論議をいたしましたが、ソ連の参加に賛成、反対の両派が対立して会議が紛糾するというような場面はおもしろくない、でありますから、日本は率先してその反対を主張することも控えたい、できるだけ会議全体が穏健円満に運営されるという趣旨において弾力性をもってこの問題をも取り扱ってまいりたいということにただいま落ちついております。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は、昨年の四月にジャカルタですでに予備会議が開かれている。それに従ってわが政府にも案内状が来ておると思うのです。ここで討議されました参加国についての基本原則については、日本外務省は大体これを了承しているわけですね。
  59. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 昨年の四月のジャカルタの準備会議においては、ソ連の参加問題は出たようでありますけれども、この問題は未決定のままに残されたようであります。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 そうではなくて、招待国をどの範囲にするか、どういう国々にするかという国別でなくして基本原則を示しているわけですね。第一回バンドン会議に参加した二十九カ国、それから、独立しつつある国々、その後独立した国、それからOAU加盟国でございましたか、それらのもの、あとはモンゴルであるとか南北朝鮮、キプロス、クエート、サモア、アンゴラ等々、これはもう昨年の予備会議できめておるわけですが、前段私が申しました、招請国をどの範囲で線を引くかという、これをも含んだ一般的な原則があるわけです。それから、仮議題も大体了承の上で――仮議題というのは結局AA会議の基本精神のことですが、これは前のバンドン十原則はもとよりでありますけれども、今度の会議の仮議題の目標の中にうたわれておる文句、それから招請国をどの国々にするかという原則、むろん日本としてはこれをも含んで招請に応じておる、こう理解すべきであると思いますが、そのことを私は伺っておるのであります。
  61. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一応はきまったようでありますけれども、なおいろいろ漏れておる部分もなきにしもあらず。そういったような問題につきましては、外相会議においてすべて決定される見込みでございます。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 ソ連のことは大体わかりました。  そこで、第二に、いま問題になってこれから討議さるべきもので一番大事なものは南ベトナムの代表の問題です。いまのわれわれから見るとかいらい政権にするか、いわゆる民族解放戦線、ベトコンを代表にするか。この前はかいらい政権がホー・チミン政府の代表と座をともにしたわけですけれども、その後今日までの経過を見ますと非常な変化が生じている。すなわち、もう南ベトナムの五分の四というものはベトコンによって支配されておる。そういうわけであるから、南ベトナムの代表はベトコンの代表をもってAA会議の代表とすべきではないか、こういう意見が出てくることは当然予想されるわけですが、それについて外務省はどういう態度をもって外相会議にお臨みになるつもりか。
  63. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外相会議において確認されることになると思うのでありますが、大体、主催地の政府は、南越政府を正式に招待するということに方針を決定しているようであります。いずれ外相会議でこれを確認することになると思います。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、日本外務省はその問題についてどういう態度をおとりになるかを伺っているわけです。向こうの予備会議とかいままでの経過でなくて、そういう議論が二十四日からの外相会議に出ることが予想されるけれども、そのときにあなたは日本政府を代表してどういう方針でお臨みになるつもりであるかを伺っておるわけです。
  65. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 別にこれに反対する理由は私はないと思いますから、もしそういう提案がありました場合にはこれに賛成したい、こう思っております。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 この問題については、実は私どもは、日本を代表する政府方針というのは全国民を含む正しい方針であってもらいたいのであります。したがって、われわれは、これに対して批判もし、意見も述べ、誤った場合にはその修正を要求する責任と権利があると思っておりますが、特に、今度の会議につきましては、政府並びに与党としても、野党の国会代表の諸君も政府代表団の正式顧問として参加してもらいたいということで、われわれ御要請も受けておるわけです。AA会議につきましては、これはもうすでに党が明らかにしておりますように、AA精神、AA会議の発展ということは正しいことであるから、もう積極的にこれを支持する。だからこそ、政府がちゅうちょいたしておりましたときも、ぜひ参加すべきであるということを言ったのであります。しかしながら、今回の第二回AA会議は、第一回のロンドン会議の場合と情勢、条件が非常に異なってきておりますので、したがって、政府の具体的な方針を伺った上でなければ、それがはたしてわれわれの期待をするバンドン精神、バンドン会議の発展になるかならぬか、まごまごすればバンドン精神の破壊になる心配がありはしないかという点を明らかにしなければわれわれの去就はきまらない、こういうわけでありますので伺っているわけでございます。  いまの未決定の参加国について、これに賛成するか反対するかということは、冒頭から大事な問題の一つでございまして、特に二十四日からの外相会議でこれは重要な議題になると思っております。いまの南ベトナムの代表をいかなるものにするかということについては、われわれもいささか意見がありまして、いま大臣のおっしゃるようにそう簡単に割り切ることもいくまい、こういうふうにわれわれは考えております。その意見を実は申し上げておるいとまがありませんので、それはやがて私どもとしては党を代表する者をあげて、政府並びに与党がどういう方針でお臨みになるか、正式にひとつ討議を始めていただきたい、こういうことを申し入れることになるだろうと推測いたします。その席上で伺いますけれども、これについてはいささか私ども意見のあることを大臣には申し上げておきたい。  次に、今度は議題の内容についてでございますけれども、第一に、深刻だと予想されますのは、ベトナム問題に対する決議案が、これは重大な決議案として当然出ることであります。提案国についても大体予想されつつあるわけでありますけれども、これはおそらくはいまからも間違いのないと思われる点は、一九五四年のジュネーブ・トリーティに従ってこの問題を処理すべきである、その時点にアメリカは返れ、すなわち停戦と撤退でございます。それを含むいまのアメリカの誤った政策に対する反対決議、停止決議、こういうものが予想されるわけでありまして、今度の会議における最も重要な議題の一つであるとわれわれは考えます。いまの情勢から見て当然なことでございましょう。したがって、政府はこの問題に対して、この議題が出た場合に、出ることがほぼ確実でありますけれども、それに対して一体どういう用意をなさっておられるのか、どういう方針で臨まれようとしておるのか、それをこの際われわれ野党のみならず全国民に明らかにしていただきたいと思うのであります。
  67. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 議題として予想されるものは数々ございますので、これらの問題につきましては、ただいま研究中であります。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 研究中はけっこうですが、だから、それを伺っているわけですよ。いかなる研究をされて、いかなる方針をお持ちになろうとしておるか、それを伺っておるわけです。
  69. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだ結論を得ておりませんので、ここで申し上げる段階に達しておりません。
  70. 穗積七郎

    穗積委員 それでは経過を伺いましょう。だって、やっているじゃありませんか。先週すでに政府方針を党でも聞いて、共同討議を始めておるでしょう。その中で、ベトナム問題と国連問題は今度の会議の一番深刻にして重大な問題である、こういうことまでも規定をして討議が進められておる。あなたは御存じないことはないでしょう、外務省の担当ですもの。一体どういうことが討議されつつあるのか。それであなたは、野党に参加しろとか超党派でいこうだのと、よく言えますね、方針もきまらないで。こういう方針でいこうと思うがどうだということで初めて誘いになるのであって、まだきまってもおらぬのに、さあ行こうじゃないかというようなことを言われるということは、想像がつかない。きまってからおっしゃい。もう現に言っているじゃありませんか、正式に。私語ではございませんよ。党代表間でそういう折衝がもう始まっているのですから。方針もなしにただばく然とそういうことを言うということは常識的に考えられないでしょう。どうせわかることですから、おっしゃったらどうですか。秘密にする必要はないことです。
  71. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 こういつたようなことはきわめて重大な問題でありまして、まだ、代表あるいは代表代理あるいは顧問、そういったような顔ぶれが決定いたしまして顔合わせもしておらないのですから、いずれ勢ぞろいをして、御相談すべきものは御相談をして、そして慎重に結論を得て向こうにまいりたい、こう考えております。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことはありませんよ。野党の代表も顧問に参加しろと言っている以上、参加するかしないかは、抽象的にはそれを願望で参加する可能性があります。しかし、今度は深刻でありますから、具体的な問題についての具体的な政府方針は一体どういうことですか。それを聞かなければ、われわれが正面から賛成できない。まつ正面に反対のようなものを持っていくことが明瞭である代表団に責任を分かつ顧問として参加できますか。それをきめるためには方針がきまらなければ……。顧問はまだきまっておりませんよ。顧問はきまったなんてかってに言っておられますが……。
  73. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 首席代表から社会党にもお願いをしておるはずでございます。こういったような顔ぶれの問題、それから議題等兼ねて、このAA会議に出席してどういうぐあいにこれに対処するかというような問題については、すべて首席代表を中心にして今後相談をまとめてまいりたい、こう考えております。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 そこで、後宮アジア局長にお尋ねいたします。  この問題については、あなたのお手元で、アジア局で大体資料その他をおまとめになっておられると思うのです。御所管はそうでしょう。だから、それのいままでの経過を、事実を報告していただきたい。
  75. 後宮虎郎

    後宮政府委員 このAA会議は、アジア、アフリカ、中近東、各地域にわたるものでございます。かつ非常に膨大な重要な会議でございますので、局のほかに事実上関係各局課から成ります委員会を昨年の秋ごろからつくりまして、そうしてそこで独立的に扱ってまいりまして、いろいろの資料の調製、各国の情報の収集等もそういうふうにやってまいりました。最近は、さらにこの委員会を事務局の形にいたしまして、局長と申しますか、正式の名前ではございませんが、一番上に牛場審議官をいただきまして、そしてその下に関係各課から事務官を集めてやっておりまして、次席をここにおります上川参事官がつとめておりますので、主管はこちらのほうでやっております。
  76. 安藤覺

    安藤委員長 ちょっと申し上げますが、参議院が審議を開始したそうでありまして、なるべく早くこっちにほしいということを言っておりますから……。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 まだ私の持ち時間は来ておりませんが、途中で残念ですけれどもあと、特に重要な点について、予想される国連問題と、それから日韓会談反対決議の出た場合と、それから特にAA諸国会議ですね。それから、もう一つは、AA会議の恒久事務局設置、これは仮議題で出ておるようですが、これに反対をしておられるようです。この理由はどういうわけで反対をされるか。以上についてひとつ一括答えてください。それで私の質問は打ち切ります。
  78. 上川洋

    ○上川説明員 ただいまの問題、大臣から御答弁がありましたように、検討中であります。
  79. 安藤覺

    安藤委員長 帆足君。
  80. 帆足計

    ○帆足委員 時間がありませんから、簡単に御質問します。  ただいま穂積君から御質問がございましたように、バンドン会議が開かれますが、これは、一つには、長い間植民地で苦しんだ国がそういう植民地的状況から脱却しようという精神、すなわち平和五原則、平和十原則に基づいた会議である。もう一つは、互いに有色人種として苦しんできた、そこで、そういう親近感をもって結びつけられておる二つの要素があると思います。私はこの二つが不可分の会議であると思いますが、外務大臣はいかがお考えですか。少なくとも精神的には平和五原則、平和十原則で結ばれる会議である、しかし、同時に、長い間植民地として体験して、民族自決、植民地解放の必要を痛感しておる諸国民の親近感、民族的親近感によっても結ばれた会議である、両面があると思っておりますが、いかがお考えでしょうか。
  81. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘のとおりと考えております。
  82. 帆足計

    ○帆足委員 だとすれば、日本は民族的親近感の点では非常に一致しておりますけれども、植民地の経験が従来ございませんで、むしろ逆にアジア諸民族に対して偏見と植民地支配をもって対処したという過去の歴史的なあやまちと申しますか、そういうことがあった点において、私は、日本政府の覚悟はよほど平和五原則、平和十原則に対して深い認識を持たれることを切に希望する次第でございます。また、その覚悟なくしては、会議に対して寄与することもできませんし、野党の協力を得ることもむずかしい。それはこの一点にかかっておると思います。  さて、そういう点から、ソ連の加入、マレーシア、南ベトナムの代表の問題が、いま穂積君から質問がありましたように問題になっておりますが、私はこれについて御参考のために若干の意見を述べたいのですが、ソビエトにおきましては、レーニンが政権を取りましたときに、民衆に平和とパンを、同時に、当時ツアーのロシアには多くの植民地がありまして、他国に対して植民的抑圧をしておる国民がみずからもまた自由であり得るはずはない、したがって、諸国民にまず民族の文化並びに政治的自治権を与えねばならぬ、そのほかに、気に食わないときは分離する権利を与えねばならぬということを強く主張した、こういう文献を私は読みました。引き続いて彼の日記の中に、きょうはスターリンという民族問題の専門家に会っている、若い革命家であるけれども民族問題に対して非常に深い造詣を持っている、彼自身がグルジア人である、こういうふうに書いてありまして、その後スターリンは民族問題という書物を書いております。彼は、日本の新聞記者に会うたびに、私はアジア人である、こういつも語っております。したがいまして、ソビエト同盟がバンドン会議に対して非常に積極的な関心を持ち、許されるならば出席したいという希望を持つことに対して、私は、全然根拠のないことである、無理無体な、論理をはずれたことを申しておるという感じはいたしません。しかし、同時に、ネール首相がかつて指摘いたしましたように、ソビエトはヨーロッパとアジアとの両方にまたがる国であって、中央政府は範疇としてやはりヨーロッパの国の一つであるというふうな解釈をいたしておりますが、これも一応常識的に理解し得る解釈であろうと思います。したがいまして、この問題につきまして、ソビエトにあるたくさんのアジア民族、タタールとか、それからトルキスタンとか、アゼルバイジャンとか、アルメニアとか、多くのアジア自治共和国があります。それらの共和国がアジアの会議に出席したい、せめてオブザーバーとして出席したい、または正式に出席したい、こういうような要求が出てくることは自然なことでありまして、そういうような自然の要求に対しまして、はなはだしく無理解態度を示すというようなことは私は好ましくないと思います。結論といたしましてはアジア諸国民の常識の線に沿うて緩急よろしきを得た結果になると思いますけれども、ソ連がただいたずらに無体な要求をしているということではないという感じを私は持っております。  それから、お尋ねいたしたいのですが、台湾はこれに参加いたしますか。また、南ベトナムの、いまのいわゆるアメリカが支持しておりますかいらい政権、あれは国際連合に入っておりますか。ちょっとお尋ねをしておきたいと思います。
  83. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 バンドン会議には参加したが、国際連合の加入国ではない。
  84. 帆足計

    ○帆足委員 それから、台湾はどういうことになっておりますか。
  85. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 台湾は御承知のとおり国連には入っております。ジャカルタの準備会議では招請国の中には入っておりません。
  86. 帆足計

    ○帆足委員 私は、バンドン会議からは、いろいろの現実の矛盾もありますけれども日本政府として学ぶべきことが非常に多いのではないかと思います。したがいまして、過去の軍国主義日本の歴史から見て、オオカミが手袋をはめて出席するというようなことにならないように、すなわち、いまわれわれは植民地を持っておりませんし、植民地開放そのものに、日本の憲法も、それから与党の皆さんも、その原則に異存はないわけでありますから、どうか政府におかれては、植民地解放、そして長い間圧迫されていた民族がいまおおらかに自治を叫んでおるという、この偉大な歴史の一こまに対して深い理解を持って対処されることを要望する次第でございます。  先日私は北海道にまいりました。そのほうの御担当の局長に質問したいのですが、沿岸貿易ということが言われますが、日本世界と貿易をいたさなければなりません。しかしまた、沿岸相互の親善を深め、近きところより貿易を拡大するということは、特にその友好を深め、また中小企業のためにも非常によいことであると思っております。先日稚内にまいりましたが、私は漁船の拿捕事件が稚内の沖合いから樺太の沖にかけてたびたびああったことを聞いております。樺太はとても遠い場所であるのに、よくぞそこまで日本の漁船が出かけていった、いかに魚のためとはいえ、やはり勇み足で度が過ぎたのであろう、どうももう少し自粛しなければならぬというような漫然たる感を持っておりましたが、稚内にまいりまして、さて海を見ますと、ちょうどデンマークのエルノシアのハムレットの古城からスエーデンを望むような風景でありまして、目の前に樺太が見えます。したがいまして、漁民諸君といたしまして魚を追っかけまして樺太沖に至るということは、潮流の関係から言いましても、また風が吹きましても、また魚の群れに心を引かれましても、きわめて自然にあり得ることである、こう思いました。また、ソ連の引き船があの沖合いで遭難いたしまして、そして救われて稚内に上陸いたしまして、手厚いもてなしを受けて、しばらく滞在して健康を回復して帰るというような話もたくさん聞きました。また、同時に、日本の漁船が遭難いたしまして、樺太の真岡、大泊、豊原等で、病院で非常に手厚い看護を受けまして、稚内の市長さんや漁業組合の代表者などがその病院に見舞いに行って、お礼にまいっているというような、心のあたたまる話も数多く聞きました。百聞は一見にしかずで、この日本最北端の町、かって間宮林蔵があそこから出かけてシベリアを探検したという日本最北端の町、その町に初めて私は外務委員としてまいりまして、多くのことを学びました。ところが、驚いたことには、ソビエトから通商代表部の人も大使館の人も、いまだかつてあの港の見学を許されたことがないということであります。どうしてそういうことになっているかと聞きましたら、あそこにアメリカのレーダーがあるからということでございました。なるほど三つ四つの白い回教徒の寺院のようなかっこうのものがございました。しかし、実際問題といたしましては、引き船が遭難いたしましたときなどはたくさん船員が上陸いたしまして、そして稚内のホテルに滞在しているのでありますから、そういうようないろいろな事例が必ずしも米軍当局または外務省当局に知られていないのではあるまいか、すなわち人跡未踏の場所のように考えられているのではあるまいかというふうに私は考えました。また、樺太と北海道の貿易におきまして非常に重要な港でありまして、将来、北樺太は寒いところでありますから、日本から冬季のたくわえ用のリンゴとか蔬菜とか、ミカンなどを輸出いたしまして、先方からワカメやコンブをとる権利を、一定の使用料を払って、もらうとか、また、ニシン、かずのこなどを輸入するというようなことも適当なことでなかろうかと思います。御承知のように、フランスはアルジェリアを捨ててから栄光がふえました。すなわち、他国の領土を占有する、地球上の一領土を占有するということも仕事には便利なことですけれども、貿易をすれば、その土地を占有したと同じように、しかも平和のうちにほとんど同じ経済的効果をもたらすわけでございます。戦前満州、朝鮮、台湾を占有していました日本が鉄鋼の産額最高七百万トンでありましたが、いまでは四千万トンの鉄鋼をつくり得る。すなわち、必ずしも領土を持たなくても、隣邦諸国と安定した友好関係があり、合理的な貿易関係があれば十分に補い得るわけでございますから、平和日本にとっては、やはり貿易ということが非常に重要でございます。したがいまして、樺太との貿易におきまして稚内の港は非常に重要でございますし、常にソビエトの高級船員諸君も稚内に大ぜいいろいろなことで上陸しておるような次第でありますから、通商代表部の方や駐日大使館の書記官・参事官諸君がときとして稚内の視察、また遭難者の慰霊祭などに出席いたしましても、そう軍事機密上の問題に触れるというようなことはない状況であることを私は現地で見てまいりました。したがいまして、ただ漫然と日本の最北の場所であるから旅行が許可されないというようなことではなくて、もう一度再検討のほどをお願いしたい。貿易上非常に重要な場所であるということをひとつお心にとめていただきたいと思う次第でございます。  それから、もう一つは、そこに島がありまして、その島は満潮時には潮をかぶって隠れてしまいますが、しかし、島は島でありますから、それから十二海里までが領海ということになって、航海が不自由になっております。この問題なども話し合いで特例を設けて、航海の便宜上ここは自由に通って差しつかえないとか、また、一定の場所は漁業あるいはコンブの採取を許すとかいうような話し合いもできると思いますから、御研究のほどをお願いしたいと思います。  以上の点について御答弁を願いたい。
  87. 北原秀雄

    ○北原政府委員 御指摘の二点につきまして、十分検討の上、この次の機会にまた御報告いたしたいと思います。
  88. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、私が申し上げましたことは、これは超党派的なものでございますから、ひとつ善意をもって御研究願うことにいたしまして、これをもって私の質問を終わります。      ――――◇―――――
  89. 安藤覺

    安藤委員長 それでは、第四十八回国会の最終日にあたり、委員長より一言ごあいさつを申し上げます。  百六十三日の長きにわたりました本国会もいよいよ最終日を迎えました。この問、委員会の運営につきましては、委員各位の絶大なる御支援、御協力により、全議案の審議を完了いたし、大過なく過ごすことのできましたことを、厚く御礼申し上げます。とともに、委員各位のこの間におけるその使命についての御熱意に対し、委員長は深甚なる敬意を表します。  簡単ながらこれをもってごあいさつといたします。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十六分散会