運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-05-07 第48回国会 衆議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月七日(金曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 高瀬  傳君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 毛利 松平君    理事 帆足  計君 理事 穗積 七郎君       菊池 義郎君    竹内 黎一君       福井  勇君    増田甲子七君       三原 朝雄君    森下 國雄君       石野 久男君    黒田 寿男君       西村 関一君    松本 七郎君       永末 英一君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         防衛庁事務官         (防衛施設庁総         務部長)    沼尻 元一君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (情報文化局         長)      曾野  明君         農林事務官         (農林経済局         長)      久宗  高君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房審議         官)      佐藤 正二君         外務事務官         (大臣官房外務         参事官)    西堀 正弘君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (経済局外務参         事官)     内田  宏君         外務事務官         (中南米・移住         局長)     広田しげる君         大蔵事務官         (関税局国際課         長)      大谷 邦夫君         文部事務官         (調査局留学生         課長)     臼井 亨一君     ————————————— 五月七日  委員石橋政嗣君辞任につき、その補欠として勝  間田清一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員勝間田清一君及び川上貫一君辞任につき、  その補欠として石橋政嗣君及び加藤進君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税及び貿易に関する一般協定貿易及び開発  に関する第四部の追加のために改正する議定書  の締結について承認を求めるの件(条約第一一  号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。  穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行について最初委員長理解をお願いしておきたいのですが、先ほど理事会で相談いたしましたとおりでございましたが、大臣がお約束よりおくれて見えましたから、それだけうしろにずれるようにお願いをいたしておきます。  連休が続きましたので、ちょっと時期おくれになりましたけれども、政府アジア外交について、最近の具体的事実とも関連をしてお尋ねをいたしたいと思うのです。  佐藤内閣外交の新しい目標としてアジア外交を積極的に推進するということでしたが、現状は、無原則、無思想のために支離滅裂というか、混乱または後退であって、池田内閣当時よりははるかに国民は不満に思い、戸惑いを感じているというのが実情であろうと思うのです。そこらの点について、具体的に少し政府アジア外交に対するものの考え方を明らかにしていただきたいと思います。  たまたま連休中でございましたが、アメリカ上院外交委員会で、これは四月七日の委員会のようでございますが、委員長フルブライト氏とそれから、反共議員との間におけるやりとりがありまして、その中で、国務次官のポール氏、次官補マッカーサー氏の非常に曲解あるいは誤った発言が行なわれて、特に、政府特使でありました松本俊一氏の公式な発言に対する誤解または誹謗、それから、わが国の世論の上において最も大きな影響力を持っておる毎日朝日両二大新聞に対しまして非常な誤解または誹謗を行なっております。これはアジア外交に対するアメリカ議員諸君の無知または無理解を表明するものであって、まことにわれわれが平素憂えておりましたことが現実となってあらわれてきている。こういうものに日本政府が災いされておるような状態では、アジア外交というものは前進しないどころか、こういうものとつき合っておる、それから独立もできない日本外務省では、これはみずからがアジア人であることを放棄しておると言っても過言ではないと思うのです。そういうことでアジア外交を唱え、私はアジア人アジアに住んでおる、だからアジア外交を積極的にやるのだと言っても、何ら通用しない。もの笑いになるだけでございましょう。  それらの点に触れましてお尋ねをしたいのでありますから、そのおつもり最初大臣から、この問題に対する経過並びにこの証言に対する外務大臣のお考え御所感をあわせて一括してお答えをいただきたい。報告を兼ねて御所感を明らかにしていただきたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 証書は、四月七日の上院外交委員会ベトナム問題についての秘密公聴会において米国ベトナム政策に対する諸外国の反響について討議された際に、フルブライト外交委員長が、日本新聞米国ベトナム政策に対して批判的であるということを指摘したのに対して答えた、それが問題の証言となったのであります。  それで、この証言全部が公表されたわけではなく、前後の関係も明らかでないのでありますが、その後の米国政府からの釈明にあるとおり、事務当局から十分な説明を受けないまま、突然の質問があったのに対して、ボール次官及びマッカーサー次官補が、古い記憶を土台にして、さような認識に基づいて不正確な証言を行なったというのが実情のように見受けられるのであります。いずれにせよ、このような証言が行なわれたことは、日本政府といたしましては、遺憾である、かように考えておる次第であります。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 それで、何か御処置をおとりになりましたか。遺憾であるということを相手に表明し、反省を求める処置を具体的に外交行為の中でおとりになったかどうか、報告をしていただきたい。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本の遺憾の意を具体的に表現するために、在米大使に対しまして訓令を出し、米国に申し入れをいたしました。その詳細については北米局長からお答え申し上げます。
  7. 安川壯

    安川説明員 この証言が報道されましたのは四月二十九日でございます。翌四月三十日に在京のアメリカ大使館が声明を出しまして、これは新聞に報道されましたので御承知かと思います。同じ日に、政府としましても、日本政府の遺憾の意を表明しますとともに先方注意を喚起するようにワシントンの武内大使訓令をいたしました。それに基づきまして、武内大使が四月三十日の午後国務省バンディ国務次官補を訪問いたしまして、このような証言は事実に反するということを申しますと同時に、アメリカ政府の高官の一部ではありましょうが、このような誤った対日認識を持っているというふうに見られるような証言が行なわれたことは非常に遺憾であるということを申し入れまして、先方注意を喚起いたしました。これに対しまして、実はそれに先立ちまして、すでに国務省が、この証言に対するアメリカ政府としての声明を出しておりまして、これも御承知かと思いますが、要するに、アメリカ政府としては、日本新聞が偏向したニュースを提供したりあるいは共産主義に支配されているというようなことは米国政府のいかなる責任ある当局者の見方でもないという声明を出しておりましたので、その趣旨を申しますとともに、日本側に対して非常な迷惑をかけたことに対して遺憾の意を表明したわけでございます。
  8. 穗積七郎

    穗積委員 いまのあれは、毎日朝日に対する誤解誹謗の分でございますね。松本特使に対する誤解誹謗の点も含まれますかどうですか。大臣から……。
  9. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いまお話ししたのは毎日朝日に対する問題だけでございます。
  10. 穗積七郎

    穗積委員 毎日朝日に対する取り扱いといたしましては、それが妥当であり正当であったと考えまして、了解いたします。  ところが、重要なのは、アメリカベトナム問題に対する理解方針が問題なんです。新聞に対する誹謗誤解は、これは派生的にたまたま苦しまぎれにボール並びにマッカーサーが頭が悪いかあるいは悪意的かで口をすべらしたのが事の発端で、それはそれで向こうが反省をし今後注意するならそれでよろしい。ところが、問題は、ベトナム問題に対するアメリカ政府あるいは国会理解並びに方針が問題なわけでございますが、それに対しては、つまり外交委員長松本俊一氏の御意見と同様であるわけです。自分意見をジャスティファイするための一つとして松本氏の発言を実は引用しておるわけですが、これに対する日本政府外務省のお考えはどうであるか、その点を明確にしていただきたいと思います。
  11. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 松本君のことばのどの点がどうなのか、松本君の意見というもの全体をいま対象にしようとしておられるのかどうか、こっちから一応お尋ねしたいと思います。
  12. 穗積七郎

    穗積委員 そういう言いのがれをされるなら、実は資料として事前になにしなければいけなかったのですが、われわれはこの四月七日の委員会のことは日本新聞を通じて承知したわけでございます。こういう事件が起きた以上、それに対して外務省はその資料を取っておられるはずである。そうであるなら当然大体同じであろうと理解いたしましたからあえて言うのですが、そういう晦渋な答弁をされて問題をはぐらかそうというふまじめな態度をおとりになるなら、あらためて伺いますけれども、アメリカ局長から、一体このときの内容は何であったか、何をもとにしてそういう発言理解されたか、そのもとを、オリジナルの情報をひとつ明らかにこの際していただきたい。大臣と私と一緒に聞きますから。
  13. 安川壯

    安川説明員 ただいまの御質問は、上院証言において松本報告内容がどういうふうに証言されたかというその資料についての御質問かと思いますが、そうでございますか。
  14. 穗積七郎

    穗積委員 そうです。そこのところを朗読してください。
  15. 安川壯

    安川説明員 私が入手しております公表されました証言には、松本特使報告内容的なことは触れておらないと私は思います。何ならここで読んでもよろしゅうございますけれども、証言の中にはここの分だけ出ております。(「ここでフルブライト氏は、「軍事的手段によってヴィエトナムで勝利をおさめられるとする米国見解は疑問であり、平和的解決のため機会をみて米国に話し、世界に訴えるのが日本の義務だ」というニューヨーク・タイムス紙所載松本俊一氏の主張を読み上げた。)」、松木特使のいわゆる新聞に出されましたお考えの分を内容的に引用しているのはこの部分だけであると思います。その他は発表されておりません。
  16. 穗積七郎

    穗積委員 フルブライト氏の意見を言えばわかるわけだ。ベトナム問題に対するのは、これと同じ意見……。
  17. 安川壯

    安川説明員 ここをずっと続けて読んでみますと、「私がこのような問題を提起するのは、米国があらゆる面で批判されているからだ。先日も私は、日本の大新聞からの抜萃を記録にとどめるよう読み上げた。その記事は、米国ヴィエトナム政策を強く批判していた。さらに今読上げた記事は、一層権威がある(七日付毎日新聞に掲載の「松本俊一特使に聞く」の翻訳抜萃を読み上げる。)。今朝のワシントン・ポスト紙にも同様の記事が出ている。それは非常に批判的なもので、私はこの問題に関して、米国考えに対する支持があるとは思えない。米国ヴィエトナム政策は、本委員会はもちろん上院も支持するものであるはずである。現在では外交委員会の中にさえ、南ヴィエトナム政策については大きな波乱がある。」、フルブライト委員長最初発言は以上のとおりであります。
  18. 穗積七郎

    穗積委員 お尋ね基準としては、そういういま局長から読み上げられましたと同様の趣旨基準に実はお尋ねをしておる。ところが、大臣はこれをお読みになっておられないのか、読んでもこれをごまかされようとしたのか、おそらくは後者の場合だと思うが、一体どんなことを言ったかわからぬから言いようがない、こう言ってお逃げになっておられるわけですね。いまお聞きのとおりです。それで事理明瞭だと思うのですね。すなわち、毎日新聞を通じて報道された松本氏の意見というものは、少なくともすべてを含んでおる。この意見というものは、実はこの間の外務委員会参考人として来ていただいた御発言によるものであると思いますけれども、この意見というものは、何も松本氏あるいは朝日毎日新聞に限らず、あらゆる新聞、あらゆるインテリ、政府以外の人はほとんどすべてこれと同様の意見を持っておる。すなわち、アメリカの対ベトナム政策というものは、考え方の根本の具体的な政策においてもすべて誤りである、効果はない、誤りであり有害であるという判断に立っておるわけでございます。フルブライト氏もそのことを指摘しておるわけですね。同様な意見であるわけです。お聞きのとおり、御理解のとおりです。きょうは、その認識の事実を確かめてからでありますけれども、時間も制限されておりますからそれを省略いたしまして、いまお聞きのとおり、御理解のいったことだと思いますから、それを基準にして、フルブライト氏の意見、すなわち彼は、松本氏の意見を引用し、これとほぼ同意見であるということを証言しておられるわけです。それに対してどういう御感想をお持ちになるか。
  19. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いま北米局長が読み上げたとおり、この松本特使の所論としてフルブライト外交委員長が引用しておるのは、軍事的手段によってはベトナムの問題は終息しない、こういうことだと思うのであります。これは私は必ずしも不同意ではありません。ああいう問題はただ軍事行動だけで問題が片づくものではない。結局は両方ともほこをおさめて平和的な話し合いによって問題の収拾がはかられなければならぬという考えは私は基本的に持っておりますから、軍事行動だけで問題が片づくものではない。何となれば、南ベトナムもまたアメリカも、北爆をやっておるけれども、北爆をやっておることは北からの絶えざる浸透を食いとめるということであり、食いとめることによって南ベトナム政治的独立と自由を確立しよう、そういう終局的な考え方に立っておるのでございますから、やはり北からの絶えざる浸透というものがやまなければ問題の収拾はつかない、こういう考えのもとにアメリカも立っておるものと考えるの、でありますから、軍事的行動それ自身一つの目的をもたらすというようなものではない、こう私は思うのでありまして、この点については、私は松本君の見解に対して必ずしも反対するものではありません。  ただ、ついでですからお答えしておきますが、ひとつ大局的な立場からインドシナ半島の三国の情勢をよく見てきてもらいたい、こういうことをお願いしたのでございまして、この事実に基づく報告は、私は松本君から伺ってこれを了承いたしました。ただ、それに基づく松本君の個人見解というものに対しては、まだ話し合ったことはない。そのことだけをつけ加えて、御了解を得ておきます。
  20. 穗積七郎

    穗積委員 フルブライト氏の意見とか、アメリカ上院における問題、そういうことを議論しておりますと遠回りになりますから、問題は、日本政府部内、日本国内における問題としてこれを明らかにいたしましょう。お互いにそのほうが有効ですから。  松本氏について数点お尋ねいたしますが、第一、彼は、前議員または元外務省の先輩であるという立場でなくて、日本政府特使として行かれた。オフィシャルなステータスを持って、しかもベトナム問題という特別な目標を持って行かれたものである。これに間違いありませんね。そういう立場に立って実はわが外務委員会は、この松本特使報告並びに意見を聞くべきであるということで伺ったわけです。オフィシャルな御意見であるとわれわれは理解しておる。しかも、場所はどうかといえば、議員の単なる非公開な懇談会ではなくて、速記をつけまして、国の内外に明らかになる衆議院外務委員会において行なわれたものである。それの御理解の上において、彼の発言内容についてどう理解しておるか。形式内容についてもう一ぺんはっきりお尋ねをするわけです。われわれは野党ではありますけれども、彼の意見日本世論を代表し、いま言いましたその中の一つである毎日朝日世論とも合致し、アメリカの良識のフルブライト氏の意見とも合致し、われわれは野党であるけれども、われわれも彼の発言というものは公正なものであるという理解に立っておる彼の意見、これに対して外務大臣はどのように御理解になっておられるか。その形式並びに内容についてもう少し正確に御回答をいただきたいと思います。
  21. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国会における松本氏の意見は、あくまでこれは私の個人意見であるということをこの国会において話しておるようであります。速記録を調べてもそういうふうに書いてあります。これは、特使としてあの情勢を見てきてもらってその事実を報告してもらう、こういうことでございまして、それ以後の所見は、松本個人所見であると当人も答えておるようであります。われわれはさように理解しております。
  22. 穗積七郎

    穗積委員 それは、彼がそういうことを言うと、外務大臣にかわって政府外交方針国会において答えるということになるので、そこで彼は私個人意見という謙譲の外交的なことばをお使いになった。しかしながら、行かれたことは、政府特使として、しかもベトナム問題について調査をするということで行かれた。そして帰られて、その立場でわれわれはお呼びしたわけでございます。そして、彼はその立場に立って、いまの資格を持ってベトナムを視察してきたということは打ち消すことはできない。これは、ことばじりまですべてが政府を代表し、政府にかわって答弁するものではない、外務大臣から聞くべき筋合いのことであるということで言われたのであって、実質的、本質的にはベトナム問題に対する——有力なる自民党員であり、元外務次官であり、前議員でもあり、わが敬愛する外務委員でもあったわけでございます。そういう立場というものは何も消えるわけじゃございません。それだから、内容におきましては、これは実に実質的なことである。それはアメリカフルブライト氏もそういう理解でやっておるでしょう、議事録によれば。個人意見であるかどうかということですけれども、フルブライト氏は、聡明にも、これは形式の問題ではなくて実質的に、これは単なる一議員ではないという理解に立って、私と同様の理解に立って、この発言を非常に権威づけ、重視しているわけです。だから、その点は、個人ということばを使ったからといって、政府との食い違いがあるとすれば——一致なら一致でいいじゃないですか。一致なら一致で認めたらいいでしょう、いい意見なら。それをいやに逃げるということは、内容が食い違っているということでしょう。そうでしょう。意見一致するが、形式だけは明らかにしておくという意味ですか。どっちでございましょうか。
  23. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは政府意見ではございません。われわれは松本氏の個人意見とは大いに違います。内容的に違う。
  24. 穗積七郎

    穗積委員 内容的に違うなら、一体どこでどう違うのか、それに対してお話し合いをされましたか。
  25. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 話し合いはいたしません。事実をひとつ観察のとおり述べてもらいたいというので、松本特使のインドシナ三国に対する情勢認識、そういうものを聞いただけであります。これに関して個人的にどういうことをお考えになるか、それは個人思想の自由であって、その考え方の自由までわれわれは縛ろうとしない。その事実の認識に基づいてどういう見解を持とうと、これは政府関係のない問題であります。それをまぎらわしい場所においてしゃべったのではなくて、はっきりとこれは個人見解であるということをしゃべっておるのですから、きわめて明瞭であると思います。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣、あなたは日本政治機構に対してはなはだしく無理解ですね。外務省からアドミニストラティブに政府特使として委任をした。そして彼は最高に重要な政治機構である衆議院外務委員会において証言をした。そのことばは当然国民あるいは内外の人々に対しての彼の責任を負った公式発言であると同時に、外務委員会において述べられた証人、参考人証言というものは外務大臣は傾聴しなければいけないのですよ。われわれが個人議員懇談会で学習するために報告を聞いたのではありませんよ。あなたはとほうもないことを言っておられますね。彼がある雑誌社座談会でしゃべったというのならいざ知らず、外務委員長が了承して、そして外務委員会参考人として公式証言をしたものに対して、そんなものはおれの知ったことじゃないということが言えますか。そういうことに対しては、外務省はそれを傾聴をし、そしてそれを参考として今後この問題に対する外交方針を決定する。そのために委員会は開かれたのである。当然のことですよ。
  27. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あまりにどうも形式的だと思うのでありますが、その席上において、松本君の、これは自分個人意見であるということを聞いて、それを了承しておられるはずでございます。もしも政府所見を聞きたいならば、総理大臣なりあるいは外務大臣なりを呼びつけてお聞きになれば、いつでもわれわれは御答弁申し上げることになっておる。それを了承して、松本個人意見として了承してあなた方は聞いている。それをいまそうじゃないと言うのはおかしいじゃないですか。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 何を言っているのだ。個人であろうと民間人であろうと学者であろうと、あるいはそれが官学の学者あるいは私学の学者であろうと、国会の権威ある正式の手続によって認められた委員会における参考人証言というものは、何も国会議員個人的に懇談会で聞いた意見ではなくて、同時にそのことは、国会のわれわれ委員会はもとより、政府もそのことには耳を傾けてこれを参考にすべきものである、そう理解するのがあたりまえじゃありませんか。個人であったかあるいはオフィシャルであったかなんということは問題ではない。外務委員会で取り上げられたということですでにその証言というものは政府並びに国会がこれに対して耳を傾けるべき政治的責任を持っておりますよ。何のために一体聞いたのだ。それを参考にしてわれわれの方針を決定をしよう、そういう敬意を表して、実は国政調査として伺っておる。外務委員長参考人に対するあいさつはちゃんとそうなっていますよ。いかがですか。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あくまで個人見解である、個人意見として聞いております。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 実は、きょうは、そのほかに、ベトナム問題自身のこと、それからマレーシア、インドネシアの調停のこと、それから、対中国の問題が遮断されたままになっているから、これをどうされるおつもりであるか、それから、あと、AA会議が十周年の式典も済みまして、やがてアルジェリアで開かれようとしておるわけですが、これに対して政府はどういう態度でお臨みになるつもりであるか、すなわち政府アジア外交の具体的なものについて一つ一つお尋ねしたいと考えておりました。ところが、きょうは大臣の御都合で時間が非常に切迫いたしておりますので、それらのことは次にいたしまして、緊急な問題が一つありますのでお尋ねをしたいわけです。  外務省並びに入管局長に御出席を願いましたが、それはマレーシア日本に留学をしておりますチョア君のことであります。これは入管局長もすでに御承知の事件でございますが、手っとり早く申しますと、これは一時反マレーシア運動をやった。すなわちマレーシア政府外交方針が誤まりであるということを彼は日本国内で主張したということによって除籍処分になって、それで、私の調べたところによりますと、去る四月十七日の全学評議会、学長主宰のものでありますが、これで私費留学生として再入学が許された。したがって、すでに翌々日直ちに学生証も大学から受け取っておる。そして正当に日本に滞在並びに留学をする基礎的な資格は獲得しておるわけです。これに対してビザが四月二十九日で切れておりますので、これの更新の手続を自動的にとる。これは形式的なことにすぎない。ところが、それを受け取りに参りましたら、条件が変わっておりまして、従来の四・一・六のステータスではなくて四・一・一六の三という変わった取り扱いになりまして、そしてしかも、条件としては、普通の留学生は一年期限であるものが、半年に削られておる。さらに重要なことは、政治活動をしないという一札を入れろ、こういうきびしい条件になっております。これは一体いかなるお考え方でこういうばかばかしいことをおやりになるのか、所管の政府機関から責任のあるお答えをこの際いただいておきたい。  それで、続いてお尋ねいたしますが、政治活動をしないということは、ややともいたしますというと、わが国におきましては、これが無制限な拡大解釈をされまして、学問、思想それから発表の自由すらこれを抑圧するという、非民主的な抑圧の条件にたまたま使われてまいりました。こういうことでございますので、この政治活動をしないとは一体いかなる内容を意味しているのか、この際明確にしていただきたいのであります。文部省の留学生課長もお見えのようですが、どちらでもけっこうでございます。御所管はどちらになっておりますか。
  31. 八木正男

    ○八木政府委員 初めに私のところからは在留期間更新の問題についてお答えいたします。政治活動云々の問題はむしろ文部省のほうでお答えいただいたほうがいいと思います。  この蔡瑞麟という留学生が去年の夏に何か問題を起こしまして、本国から外務省に対して、国費留学生の資格を打ち切り、本国に送還してもらいたいという要請がございまして、国費留学生の打ち切りは文部省のほうで処置が終わりましたし、送還の問題については法務省に対して外務省から要請がありました。私、着任の前の事件で詳しいことは存じませんが、その当時の法務省の当局者考え方は、何か若干言動に行き過ぎがあったことは事実のようだ、マレーシア政府が非常におこるのも無理はないけれども、しかし、同じ東南アジアの学生が日本での勉学の機会を望んでわざわざ日本まで勉強に来ておるという立場を尊重して、なるべく穏便にしてやりたいというところから、当時直ちに強制退去の手続はとらずにおりました。その後四月二十九日で当初の留学生の身分が終わりまして、資格が変わるわけでございます。そこで、先ほどお話のございました四・一の一六の三というのは、法務大臣が在留を特別に許可する場合の条項でございます。その場合、その期間はもちろん法務大臣がかってにきめることができます。われわれ、従来の例に徴しまして、こういうような場合にはおおむね一応半年の在留を与えまして、その間の様子、本人がまじめに勉強しておるかどうかということを見ておりまして、学業に専念しているということがわかれば、さらに必要な期間を更新するというのが従来のわれわれのいき方でございます。外国人が日本に在留するというのはあくまで日本政府の恩恵によるものでありまして、これに対して在留にいかなる条件をつけるかということは法務大臣の専管事項でございますので、われわれとしては、この場合その条件が必要であると思えば、そういう条件をつけて在留を認めるというのが立場でございます。  政治活動云々の問題については文部省のほうからお答え願いたいと思います。
  32. 臼井亨一

    ○臼井説明員 ただいまお尋ねの政治的活動という定義はどうかということでございますけれども、私どものほうでは今回四十年度新しく日本へ迎え入れます留学生に対しまして誓約書の一条項にそのことを加えたのでありますけれども、そこにはこういうふうに書きました。政治的活動というのは、たとえば政治的性格の会合への参加、論文の発表、宣言、大衆示威運動等、そういうようなものを政治活動というふうに定義づけております。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 実は、いまの取り扱いについては、先ほど言ったように問題が二つあるわけですね。一般の留学生と区別してなぜステータスを変えたかということ、それから、第二は、政治活動禁止の条項をなぜつけたかということです。学生課長、聞き漏らした点があるかもしれませんが、会合に出てはいけない、あるいは論文発表をしてはいけないというようなことになると、これはもうすでに学問・思想の自由を抑圧するものです。そんな民主国がどこにありますか。のみならず、私は、これもアジア外交の一環の中で聞いておるのです。八木局長は一方的恩恵だという考え方ですが、そうじゃないのです。彼らは、ことばの不自由、生活の相違はありながら、ヨーロッパに学ばずアメリカに学ばずに日本に学ぶということは、AAの精神、連帯の精神があるからです。その学生をとらえて、学ばしてやるのだ、一方的恩恵であるというものの考え方自身がもうどうかしておる。AA主義に反します。私は昨年の秋にキューバを訪問いたしましたときにカストロ首相とお会いをいたしました。その中で貿易並びに文化交流について隔意なき懇談があった。彼はこう言った。われわれはスペイン人です、私の父はマドリッド出身です、だから、あなた方とは風貌も違う、しかし、私たちはいま、アメリカ、ヨーロッパとの関係から言えば、アジア、アフリカ、ラテンアメリカという特別な政治的な立場に置かれておるので、したがりて、ことばの上から言っても、学問の連絡から言っても、系譜から言ってもますヨーロッパに学ぶのが一番便利であるけれども、この際は、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの中で学問、技術において非常な成功をおさめられた日本に敬意を表し、その立場に立ってぜひ日本に留学させたい、こう言った。こういうAA精神というものは、日本にとって、これからの外交をとるのに、貿易を発展せしめるのに、一体どれだけありがたいことであるか。連帯精神というものは相互の利益なんですよ。相手国に対する、相手学生に対する一方的な恩恵である、大地主がこじきに恵みを与えると同様である、ぶざまなことをする者は直ちに追い返す、そういうことで一体アジア外交ができましょうか、そういう精神で一体留学生の取り扱いができましょうか、伺いたい。  そして、文部省も思想、言論の自由を抑圧するものです。そんなばかばかしいことを一体——それなら全部の日本の学生に課すべきでしょう。なぜ区別するのですか。しかも動乱しておるアジアです。静かに好んでオーソドックスの原理だけ勉強しておれない学生は、悲しみを持って安保闘争のデモにも出れば、またはいまのベトナム問題に対しても意見を述べる。特に大学におきましては、国際関係という一つの特別な学問のコースができておる。その中でマレーシア政策についてはこうあるべきだという意見を述べることもできなくなってくる。学問の自由を抑圧するじゃありませんか。そんなことを平気でよくも言えたものだと思うのですね。それで自由主義国とは一体何だというのです。はっきり答弁してもらいたい。
  34. 八木正男

    ○八木政府委員 ことばの足りないところは非常に申しわけないと思いますが、第一の点で、技術的な点、留学生の身分の点でございますが、四・一・六を与えたのは、国費留学生として初めに入国を許可したものでありますから、その性質によりまして四・一・六を与えた。今度国費留学生の身分がなくなったので身分を変える必要があるので、法務大臣の命ずるところによって四・一・一六の三にしたわけでございます。(穗積委員「私費留学生は全部そうですか、そんなことはないでしょう」と呼ぶ)初めから私費留学生として入ってきたのじゃなくて、途中から資格が変わったわけであります。(穗積委員「同じことじゃないですか」と呼ぶ)それでけっこう勉強ができますから、だいじょうぶであります。  それから、もう一つ、先ほど恩恵ということを申したので、それがあまり適当な表現でなかったかもしれません。しかし、一つはっきり申し上げられることは、外国人がその国に入国を認められるということは確かに恩恵でありまして、いわば、家でたとえてみればお客さんのようなものでございます。お客で来ている限りは、その主人の迷惑になるようなことを慎むのがあたりまえでありまして、そういう点で、日本政府の迷惑になるようなことをするということは、車夫・馬丁のたぐいならいざ知らず、いやしくも大学で勉強しているようなインテリである限りにおいては当然の常識でありまして、そのぐらいなことができなくては困ると思うのです。  政治活動云々でありますが、もちろん、先生も御指摘のとおり、この学生が何を勉強しているか知りませんけれども、とにかく青年であり新興国の学生である限りは政治問題に関心を持つのはあたりまえでありまして、議論するなり意思を発表するなり、そういうことについて入管としてとやかく言うつもりは一切ございません。ただ、あくまで常識的に考えて、自分の勉強の機会を与えられた国に対して迷惑になるような言動をしないということを約束するということは何でもないことでありまして、学問の自由とかそういうことと一切関係ないことでございます。
  35. 臼井亨一

    ○臼井説明員 国費留学生のこういうような取り扱い方につきましては、実はフランスその他の国におきましても政治的活動を禁止している例が多いのであります。というのは、一般国民とか一般私費生とは違いまして、国費生に対しましては、文部省といたしましても、月三万円の手当、いろいろな恩典を与えております。したがいまして、それとの見合いにおきまして、やはり学内の正常化、平穏化あるいは学業に専念する、そういうようないろいろな観点から、やはりそういうような政治的活動をするのは好ましくないという観点に立って、このような規定を設けたわけでございます。
  36. 安藤覺

    安藤委員長 穗積君、時間が来ておりますから……。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 時間がなくなって困りましたね。これは、八木局長、さっき言ったように、四月二十九日で期限が切れているのですね。それで、私は、特にこれは緊急な問題として、きょうできれば円満に促進かつ解決を期待してお尋ねをしておるわけだ。そこで、あなたの御意見とここで論争するのが目的ではございませんから、取り扱いとしてお尋ねしたいのは、いままではなかったのです。他の学生にもないのですから。そして、一方において、学生として社会常識から見てあまり逸脱した者に対しては、注意を与えるなり制限を加えるなりということはあり得ることです。それはこの個人に限ったことではない。それから、いま局長もおっしゃいましたけれども、これは国費留学生だけではなくて、どの人に対しても同じでしょう。同じであるべきだと私は思うのです。日本に滞在しておるすべての外国人について、いまおっしゃる程度のことであれば、同様なんです。つまり、大学の自治という点から見れば、その学生は、さっき言ったような御承知のようないきさつで、実は除籍されましたものが、検討した結果、大学自身責任を持ってこれを再入学手続をとって、学生証まで発行しているのです。そうすれば、大学内における彼の生活、留学生としての身分については大学自身がもう責任を持っておるということです。そうであるなら、特別にこういう者に条件を、一人だけ過重の条件をつける必要はないわけでしょう。もしいま八木局長の言われたような程度のことが政治活動の内容であるとするならば、これは他の法律によって一般外国人、市民も同様に取り扱うことができるわけですから。そこで、私は提案をしたい。そうであるなら、大学で責任を持ってもらう。多少問題のあった学生である、心配だから、本人のためにも、お互いのために大学で責任を持ってもらうということで、千葉大学の留学生部長が保証人になる、あるいは、彼が止宿いたしておりますのは、私の兄も関係いたしておりますアジア学生文化会館、その関係がありますので、その私生活のほうも見ながらということで、穗積理事長の保証によって、特に気をつてけもらう、そこらが私は一番妥当ではないかと思うのです。こういうことを私は提案をいたしますから、その方法でひとつ考えていただきたい。特に私が申したいのは、ベトナム問題あるいはマレーシアとインドネシアとの関係等から見ましても、アジア地域というものは政治的に非常に混乱しておる地域です。したがって、明治維新の書生が天下国家を論じ、われわれが昭和の初めの国際的不況当時に天下国家国際を論じ、そうして意見を述べたということは、これは当然なことだ。そういう民族の理想なり目標に対して無関心である学生なんというものは、ある意味ではこれは見込みのない学生ですよ、専門学部ではどんな勉強をしておろうと。あなたでもそうじゃないですか、お互いに。昭和十八年にかかったときには、学生は鉄砲を持って戦争にまで出ておるじゃないですか。それが当時としては正しいこととして認められた政治的要求です。学問と政治とは区別すべきものだという原理に立つなら、そういう必要はないわけだ。しかも、学問から見ても、思想から見ても、当然なことだと思うのです。したがって、さっきの文部省の課せられましたことは非常に過当で、それのおそれが今年度からの留学生をいかに萎縮せしめ、非常な不安におとしいれているかという事実を私は調査して持っております。それも時間があれば注意しようと思ったけれども、それらはきょうの時間ではできませんから、他に譲って、これは政治的条件だけをはずして、そして、それにかわって、いまの責任者の日本政府に対する保証ということで、この問題は常識的にしかも円満に、アジアの有力な国家としての日本立場から考えまして、そういうことを私は代案として具体的に提案をいたします。これをひとつお取り上げいただいて、再検討の中で今後話し合いを続けていただくということを提案いたしますので、そのようにしてきょうのところはひとまずこの委員会における問答は打ち切りにいたしたいと思いますが、私の提案に対して、できれば八木局長から、検討をし、しかも話し合いの用意があるという円満なお取り扱いの御回答があればありがたい。そうでなければ、われわれとしては他の方法によって、あくまでこれは不当だとわれわれ考えますから、国内においてつまらぬけんかをしなければならぬ。特に私は敬愛する八木局長とけんかするなんということは好きでないから、どうぞひとつ理解あるお答えをいただきたいと思います。
  38. 八木正男

    ○八木政府委員 穗積先生がいろいろ留学生の問題で平素から御努力なさっていらっしゃることに対して敬意を表します。私としても、おことばのとおり、ここで先生と論争する気はございませんし、留学生は、日本まで勉強に来ておりますから、なるべく落ちついて勉強できるようにしてやりたいと思います。いまの御提案の点については、ほかのケースとの均衡もございますので、この場で御即答申し上げるわけにはまいりませんけれども、帰りましていろいろ幹部とも相談いたしまして、最善の方法でやっていきたいと思います。
  39. 安藤覺

    安藤委員長 帆足計君。
  40. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣お尋ねいたしますが、先ほど穗積委員からも質問のあったマッカーサー二世次官補国会における愚かな答弁に対する外務大臣の御所信をもう少し伺いたいと思うのでございます。  と申しますのは、ベトナムに対するアメリカ国務省認識・判断は自由でございますけれども、事実認識そのものが不十分であるということのほかに、アメリカ政策に反対するものに対して軽々しく赤というレッテルを張るというのはまことに軽率なことであると思うのでございます。幸いにしてライシャワー大使は率直に朝日新聞並びに毎日新聞に対する非礼を謝罪いたしましたけれども、いまだかって私どもはボール国務次官並びにマッカーサー国務次官自身がその証言を改めたという報告を耳にしていないのでございます。しからば、出先のライシャワー博士が謝罪いたしましたところで、御本尊が反省の色がないとするならば、これは日本の言論界に対する重大なる侮辱でありますから、そこを問いただされたかどうか、重ねて外務大臣お尋ねいたしておきたいと思うのでございます。
  41. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大筋といたしましては、たとえ出先機関であっても在日アメリカ大使はアメリカを代表しておるものでございます。これに反して、国務次官あるいは国務次官補は、これは補佐官にすぎない。全体のアメリカを代表してかような声明を出しておる以上は、これで一応満足すべきものだ、かように考えております。
  42. 帆足計

    ○帆足委員 しかしながら、新聞で読みますと、この国務次官及び国務次官補は、自分たちの証言は取り消さないと、こうわざわざ言っているわけでございますから、それでは一体何のことかわれわれは了解に苦しむ次第でございます。重ねて御答弁を願います。
  43. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 取り消す取り消さぬは向こうの委員会内部の問題であって、アメリカ大使はアメリカを代表して先般の声明を発表しておるのでありますから、それによって、われわれはアメリカ全体の意向はすでにはっきりしているのである、こう考えます。あとは個人の問題だと思います。
  44. 帆足計

    ○帆足委員 政府政策に批判的なものを軽々しく赤であると言って魔女狩りのきっかけをつくるというやり方は、満州事変以来日本の軍閥もやったことであるし、各国の非理性的な勢力のやったことでありますから、こういう人物がアメリカ国務省におるということ、しかもかつては日本に滞在もしてアジアの事情を知っているはずの人間がこういう軽薄な人物であったということは、アメリカの恥であるし、アメリカの極東政策がきわめて危険な様相を内包しておると私は思うのでありますが、外務大臣はこのマッカーサー二世の軽々しい発言に対してまことに遺憾であるとお考えでしょうか、重ねてお伺いしておきたいと思います。
  45. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これに対しては総括的に遺憾の意を表明しております。
  46. 帆足計

    ○帆足委員 私どもはまだ釈然といたしておりませんけれども、重ねて二度とこういうことのないように御注意を促す次第です。  同じことは最近ドミニカにも起こっております。アメリカはかつてグアテマラの政変に内政干渉し、パナマに対して干渉し、そして今次はまたドミニカに対して干渉いたしております。ドミニカにおるアメリカ人は約四百名といわれておりますけれども、この四百名の生命・財産を保護すると称して二万の海兵隊が上陸しておるといわれております。これに対しましてドゴール・フランス大統領は、昨日きわめて遺憾であるという意を表明したと伝えられております。また、米州会議におきます原則も、各国の政治経済形態はその民族の自治権、自主権によってきまることであって、みだりに他国が内政干渉すべきでないということが米州会議の憲章にもきめられておると聞いております。外務大臣はこの米州会議のたてまえを御了解されておられるか、また御存じであるか、そういう観点からドミニカの問題をどのようにお考えでしょうか。重要な問題ですし、こういうことが連鎖反応しては困るわけでありますから、御意見を伺っておきたいと思います。
  47. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 問題がこんとんとしておりますので、まだ終局的な見解を申し上げる段階ではないのでありますが、もちろん、米州会議は、いわゆる超国家機構ではなくて、米州に存在する各国の政治的独立、自由というものを尊重する一つの集団機構である、こう考えております。そして、アメリカは、その米州全体の世論というものに従って、その線に沿うて行動しているものと解釈しております。
  48. 帆足計

    ○帆足委員 独立国家の内部において、たとえば明治維新のような変革が起こりましたときに、幕府方であろうと、勤皇方につこうと、それは、その国民、その住民、その民族の自由であって、みだりに外部から他国が干渉すべきことでないと思います。この原則は今日国際連合で認められた普遍妥当の原則であると思いますけれども、外務大臣はどのようにお考えですか。
  49. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お説のとおりであると考えております。
  50. 帆足計

    ○帆足委員 私がマッカーサー二世の不心得をもう少し明確にしておきたいと主張いたしましたゆえんのものは、自分の国の政策に都合が悪いとみだりに他国に干渉しようとする弊害がある。たとえば、このたびのドミニカの変革にいたしましても、トルヒーヨですか、悪名高い李承晩のような政権が長らくドミニカにあって、保守、革新を問わず内外からひんしゅくを買っていたことは外務大臣も御承知のとおりであろうと思うのであります。それに対してボッシ前大統領は気骨りょうりょうたる愛国者であり、清潔な政治家であったことは世間に定評のあったところであります。それに対しまして、アメリカは最近、ボッシ大統領の進歩政策が気に食わぬ、民族自決、自主独立政策が気に食わぬというので、それに対して共産主義的という言いがかりを、すなわちマッカーサー二世と同じような言いがかりをつけまして、そしてまさに内政干渉をしようとしている。昨日の新聞報道によりますると、佐治特派員のサントドミンゴ視察の報告が載っておりますが、それに対して住民、青年たちは、ヤンキー・ゴー・ホーム、ボッシ前大統領を戻せと叫び、われわれドミニカ人はほとんどカソリック教徒である、したがってわれわれは共産主義者ではない、革命によって、わずか二、三日でカソリック信者の心を共産主義者にだれが変え得るか、われわれは民族の自由と自治を望む、こう口々に唱えている風景が述べられておりました。最近のこういう一連の事件を見まして、今日アメリカ軍部及び国務省のとっております政治的偏向には憂慮すべきものがあると考えますがゆえに質問するのでありますが、はたして、フランスのドゴール大統領は、ドミニカに対するアメリカの海兵隊の上陸は国連憲章違反であり、不当なことである、アメリカは内政干渉すべきでないと主張しておるのでございます。アジアの一国である日本外務大臣が、民族の自治の問題と民族の自決の問題に対して不感症であってはならぬと思いますのでお尋ねしたのですが、まだ情勢はこんとんとしてはっきりしないということですが、ドゴール大統領の意見に対して外務大臣はどういう御感想を抱いておられますか。
  51. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、情勢はこんこんとしておりますので、終局的な意見はなるべく差し控えたいと思いますが、私は、アメリカは米州機構においては指導的な立場には立っておるけれども、それの集団組織の運営は民主的な運営をとっておるものと考えております。
  52. 帆足計

    ○帆足委員 情勢がまだこんとんとしておりますから、責任ある立場にある外務大臣として、最終的価値判断に関することは発言を控えたいというお気持ちはわかりますけれども、しかし、今日アジア、アフリカ、中南米において民族自治、民族自決という問題はほうはいたる要求でございます。同時に、それは日本国憲法及び国際連合憲章にも一致する問題でございます。私どもはこういう問題に対して十分な理解がなければ、日本と中南米、日本アジア日本とアフリカとの貿易の円滑な推進にすら影響を及ぼす問題でございますから、外務大臣のこの問題に対する御注目を切にお願いする次第でございます。  時間がございませんから、さらにもう一つお尋ねしますが、相模原のハイツに米機が墜落いたしまして、まことにお気の毒なことにアメリカ軍宿舎におきまして数名の死傷者ができましたことは、まことに遺憾なことでございます。相模原といえば外務委員長の故郷でございますから、御注意を促したいのですが、実は二、三年前に町田にジェット機が落ちましたときの風景は実に凄愴なものでありまして、私は、そのときの風景をこうして——外務大臣、ごらんください。若い福原君という画伯にかいてもらって自分の部屋に置いておるのでございます。こういうことが二度とないようにというので当時御注意を促した次第でございます。どうぞごらんください。密集地帯に軍事基地があるということがこういう悲劇の根源でございますから、当時政府としても、危険性のある演習はなるべく山間僻地で行なうということについてお話があって、われわれもそれ々希望していたのですけれども、不幸にして、その後ジェット機の速力はますます早くなりまして、学校の授業のじゃまにもなるし、住民の安眠を妨げ、また、鶏が卵を産まなくなる、乳牛は乳の出が悪くなるというようなことにぶつかっておりますことは、御承知のとおりでございます。したがいまして、このたびのことをさらに御調査くださいまして、そして、このようなすさまじい演習は少なくとも民家の上でなくて山間僻地でしていただく。われわれは基地の撤廃そのものを要求するものでありますけれども、百歩譲りまして当面の対策といたしましても、政府としてはもっと基地対策に対して真剣になって、そのために危険を感じ恐怖を感じている住民諸君の気持ちを体して、そして相模原市長、町田の市長さんも政府に陳情しておりますから、その陳情をよく聞かれ、また、外務委員長はじめ地元議員の方々の現地視察されました結果をよく聞かれまして、適切な対策を講じていただきたいと思います。賠償のことはもとより急を要し重要なことでありますけれども、それよりも、こういう密集地帯に基地を置くということにそもそもあやまちがありまして、終戦直後はまだ焼け野原であり、広漠たる広野であった相模原でありますけれども、今日は工場地帯になり住宅地帯になっておりますから、私はここを基地の焦点として使うこと自体に無理があると思うのでございます。したがいまして、ジェット機は速力も早いことでございますから、危険な演習は山間僻地でしてもらいまして、住民の密集地帯においてこういう事故が起こることを未然に防止し得るように外務省としては折衡され、防衛庁としても案を立てられて——国民の安全保障のための基地が不安全保障になったのでは何の安全保障ぞや、こういうことになるわけですから、御注意を願いたいと思うのでございます。これに対しまして外務大臣、並びに防衛庁からも御出席でございますから、当面の対策、それから長期の対策についてお考えのほどを承り、われわれの要望をいれていただきたいと思う次第でございます。
  53. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 基地対策は、御指摘のとおり、きわめて重大な問題にだんだんなりつつありますので、御趣旨の線に沿うて万全を期したいと思います。  なお、詳細は政府委員から御説明申し上げます。
  54. 沼尻元一

    ○沼尻政府委員 今回のような事故がまたまた起こりまして、たいへん残念に存じます。このような事故が起きないように、従来とも私たち米側と接触を深めていろいろな措置を講じてきているわけでございますが、ことに昨年来、この厚木周辺並びに横田も含めまして、離着陸に際しての事故が一番多いので、滑走路前方の一定区域を住民の合意のもとに無人地帯にするというようなことで、本年はそういう予算も相当組んであるわけでございまして、今後そういう措置を進めていきたい。と同時に、米側におきましても人口棚密地帯を避けるような飛行経路になっておりますが、今回のような事故が起きましたことにつきましては、今後とも調査の結果を待ちまして十分措置をいたしたいというふうに考えております。
  55. 帆足計

    ○帆足委員 時間がありませんから、このたびの事故の原因が何であったかということ、そうして、その原因が明らかになれば、それに対する対策を一そう綿密に立てること、並びに、外務省当局としてはどういうふうに防衛庁と御相談して折衝されたか、今後のことをお考えになったか、これが最後の質問でございますから、お答え願いたいと思います。
  56. 安川壯

    安川説明員 事故が起こりました直後に米軍側から通報がございましたので、その場で遺憾の意を表明いたしますとともに、至急に原因を調査するように要求してございます。まだ原因ははっきりしておりません。先ほどから施設庁のほうから御説明がありましたように、もし定められた演習場の規則その他を無視し、あるいはそれに違反したというようなことでありますならば、さらにアメリカ側に対して十分な措置をとるような措置が必要であると思いますが、いまのところ原因がまだはっきりしておりませんので、原因が判明し次第、それに対応した措置をとりたいと思っております。
  57. 帆足計

    ○帆足委員 私は吉祥寺に住んでおりますけれども、立川の飛行場から、最近、ベトナムの事件以来、盛んにジェット機が飛ぶのでございます。吉祥寺はわがふるさと、文化の町といわれておりますが、何のためにそこを演習に使わねばならぬのか、そういうことはひとつもうやめていただきたい。それも御注意を促しておきます。  以上をもちまして、これは外務委員長のふるさとの大事件でございますから、二度とこういうことのないようにひとつ対策をお願いする次第であります。
  58. 安藤覺

  59. 川上貫一

    川上委員 外務大臣質問します。  あなたは、四月十四日の外務委員会で、ベトナムにおけるアメリカの行動は安保体制のワク内であり、それに対して日本を補給その他の基地として使用することは、安保条約のたてまえから当然のことである、こう答弁しておられます。してみれば、日本は、安保条約がある限り、アジアで引き起こすアメリカの侵略戦争には、いや応なしにそれを支持し、それに協力しなければならぬ、こういうことになるのでありますか。外務大臣の御意見を聞きたい。
  60. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 安保条約によって日本の国家の安全が保障されておるのでありますから、われわれは、安保条約のその体制は、最近のアジア情勢が急迫を告げれば告げるほど堅持すべきであると考えております。
  61. 川上貫一

    川上委員 外務大臣に聞くのですが、今日のベトナムの戦争は、だれが何と言おうとも、アメリカ帝国主義の侵略戦争ですよ。しかもアメリカは今度はドミニカを侵略し始めた。これに対しては広範な世界の人民が憤りを込めて反対と抗議の戦いに立ち上がっておることは、外務大臣が御承知のとおりであります。また、大多数の日本人民も、アメリカの凶悪きわまるベトナム侵略に反対して抗議の運動を展開しております。それなのに、外務大臣は、このアメリカに協力することが安保条約のワク内である、こう言うのであります。また、それに対して日本が軍器物資の補給その他の基地となることも、それもまた安保条約による当然の義務であると言うのである。しかも、外務大臣承知だと思うが、アメリカ軍が日本で軍需物資を調達する、これについては安保条約によって無制限である。だから、それが爆弾であろうと毒ガスであろうと、日本政府にはそれを制限する権利がないのです。これも外務大臣承知だと思う。そうすると、安保条約というものは、これに日本が縛られておる限りは、日本は、アジアにおけるアメリカの戦争に対しては、どんな場合でも必ずこれを支持しなければならぬ、必ずこれに協力しなければならぬ、必ず日本が基地になる、こういうことでありましょう。日本の安全を守るからというような答弁ではなしに、私の質問に答えていただきたい。
  62. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本の施設・区域を利用して国外に軍需物資を輸送することが安全保障条約の目的にかなう範囲の行動であるならば、これは当然これを許すべきであると考えます。
  63. 川上貫一

    川上委員 外務大臣は、アメリカベトナム侵略に日本が協力し参加することが当然だ、こういうような答弁をしておられますが、その結果どういうことが起こります。具体的な事実をちょっとあげてみましょう。現に、トラック、ジープ、これは主としてトヨタ、日産、新三菱重工その他で調達してアメリカへ提供しておる。また、ジャングルシューズは藤倉ゴム、日本理研ゴムその他で調達してアメリカに提供しておる。弾薬は富士車輌その他がこれを提供しておるし、さらに大量のナパーム弾まで供給しておる。これは、外国では、ベトナムでほうっておるナパーム弾の九二%までが日本産だとはっきり言うておる。これらはもはや世界周知の事実でありましょう。これは明瞭に、日本の安全とかなんとかいうんじゃなしに、アメリカベトナム戦争に協力し参加しておる証拠じゃないですか。これを外務大臣は、協力もせぬ、ベトナムの戦いに参加せぬと、こう言うのですか。協力し、参加しておるじゃないですか。安保条約がある限りは、アメリカの戦争に対しては日本はいや応なしにこれを支持し、これに協力し、参加しなければならぬ、これが安保条約ではないか、これを聞いておる。この答えをしてもらいたい。
  64. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカのただいまの軍事行動は極東の安全のためにやっておるのである、かような見地をとっておるのでございまして、決して侵略に協力する意味ではない、こう考えております。
  65. 川上貫一

    川上委員 そうすれば、日本は、アメリカアジアの平和と安全のためだと言いさえすれば、アメリカがどんな戦争をしようとも全面的にこれを支持し、協力するのですか。
  66. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう仮定の問題に対してはお答えできません。現実の問題としてわれわれはかように考えておる。この現実の問題外にわれわれは、仮定を置いて、そしていかなる場合でもこれに協力するというような考え方は持っていない。
  67. 川上貫一

    川上委員 仮定のことを言うておるのじゃないのです。アメリカが平和と安全のためだと言いさえしたら、必ずこれを支持し協力しなければならぬかと聞いておる。仮定の問題じゃない。
  68. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは、向こうで言いさえすればじゃなくて、はたして事実がそのとおりであるかどうかという判断をいたしまして、しかる後に協力するかしないかをきめる、こういうわけであります。
  69. 川上貫一

    川上委員 そうすれば、いまのアメリカの侵略は、あれは侵略じゃないと判断しておるのですか。
  70. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 侵略ではないと考えております。
  71. 川上貫一

    川上委員 世界の人がどう言うていますか。イギリスさえも頭が痛いと言うております。アジアで、あれを侵略でないなぞと言うてこれにほんとうに心から協力しておるのは、韓国、台湾、バンコク政府のタイだけじゃないですか。それに例外としてあなた方が加わっておる。これが日本政府です。アメリカの有名な評論家のリップマンさえ、日本政府が加わっておるのが例外である、しかしこれは政府だけであり、日本人民は反対しておると書いておるじゃないですか。アメリカの国内においても、どうだ。いま上院、下院の議員に対して、ベトナムのあのアメリカの侵略に対しては反対の抗議の手紙が殺到しておる。日本政府だけがそんなことを言うておる。  もう一つ具体的に私は聞きます。アメリカの上陸用舟艇、いわゆるLSTです。この乗り組み員、これは全員日本人である。これは外務大臣も御承知だろうと思う。ところが、アメリカはさらにこの乗り組み員数百人を新たに募集しておる。この募集に対しても、日本政府は安保条約に基づく地位協定によってこれをあっせんする義務を負うておる。負うておるのでしょう。これはどうですか。
  72. 安川壯

    安川説明員 LSTの募集に対するあっせんにつきましては、せんだって大臣が安保条約関係とおっしゃいましたが、若干誤解と申しますか、誤りでありまして、厳密に申しますと、これは安保条約ではもちろんございません。地位協定でもございません。直接日本政府があっせんをいたしておりますのは、船員職業安定法の条項で、だれからでも、外国人であろうと日本人であろうと、求人の申し出があった場合には、求職をあっせんしなければならぬということが国内法上定められておるわけでありまして、それに基づいてあっせんしておるわけであります。
  73. 川上貫一

    川上委員 それは国内法の手続だけあなたは言っておる。アメリカが申し入れをしたときに断わることができますか。地位協定によって絶対に断われない。断わったことがありますか。それなら今回断わるつもりですか。日本人を戦争に参加させるつもりですか、断わりますか。これは外務大臣に聞きたい。この申し入れがあったら断わりますか。また、現在募集しておる、これを断わりますか、外務大臣
  74. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北米局長からお答えさせますから……。
  75. 安川壯

    安川説明員 地位協定上いかなる場合にもあっせんしなければならないという義務は負ってないわけであります。
  76. 川上貫一

    川上委員 これは、事務当局は全部、断わることはできぬと言っておりますよ。あなた国会でごまかしておる。聞いてごらんなさい、政府部内の実際事務をやっておる人に。私はいいくらなことを言っておるのじゃない。断わることができないとみな言うておる。これは事をはっきりしなければだめですよ。ここをごまかすだけが政府の答弁じゃないですよ。正直な答弁を私は要求する。  それだけではないです。アメリカは、沖繩はもちろん、日本の軍事基地を全面的に利用しておる。日本の港湾を全面的にベトナムの侵略戦争に使っております。これは外務大臣承知のとおりである。これがすべてあなた方の言う安保条約のワクでしょう。平和というか安全というか知らぬが、ワクでしょう。われわれはこのことをすでに五年前から指摘してきたのです。それに対して政府は、安全保障条約は単に日本の利益だ、日本の安全のためだけだ、アメリカの戦争に巻き込まれるようなことは絶対にないと答弁しておる。アメリカの戦争に巻き込まれておるじゃないですか。ベトナム戦争に巻き込まれておるじゃないですか。さきには、アメリカの原子力潜水艦に対し、安保条約を持ち出して、その寄港を承認しました。今日は、アメリカベトナム侵略によって、この安全保障条約というものが、アメリカの侵略戦争に無条件に協力する、無条件に参加する条約であるという全貌がはっきりしたじゃないですか。これほど問題がはっきりしても、外務大臣は、この安全保障条約アメリカの戦争に全面的に参加することを強制されておる条約である、こういうことが言えますか、言えないじゃないですか。外務大臣の答弁を承りたい。
  77. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカの侵略戦争に全面的に協力するものではないということは、いまあなたがおっしゃったとおりでございます。(川上委員「私は、するんじゃないかと聞いておる」と呼ぶ)極東の平和と安全のためにアメリカはいま軍事行動を起こしておる。これをさらに詳細に説明すれば、南ベトナムアメリカ軍の北に対する攻撃は、これは北越を征服しようという気持ち、意図を持っておるわけでもない。そんな目的を持っておるわけでもない。南越の政治的独立と自由に対して北からの浸透がこれを脅かすがゆえに、排除しようというのであります。北のほうは、これに反して、南ベトナムを征服しようとしておる。でありますから、その征服に対して、これを防ごうというのが、アメリカ軍事的行動の意図でありますから、これを侵略戦争と言うのは当たらない。あべこべのことをあなたはおっしゃっておる。そして、アメリカは極東の平和と安全のためにこうして軍事行動を起こしておるのでありますから、これは安保条約のたてまえに合致するものである、かような見地からこれに協力をしておるこういう状態であります。
  78. 川上貫一

    川上委員 外務大臣の答弁は絶対に承服できない。しかし、予定の時間が来きました。約束の時間が来たので、私は時間だけは守りたいと思う。この問題については相当質問することが残っておりますから、本日はこれを留保して、私は瞬間を厳守いたします。      ————◇—————
  79. 安藤覺

    安藤委員長 関税及び貿易に関する一般協定貿易及び開発に関する第四部の追加のために改正する議定書の締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。西村関一君。
  80. 西村関一

    ○西村(関)委員 去る二月八日ガット規約の改正が行なわれまして、同時に今後南北問題の解決の具体策を検討いたします貿易開発委員会が発足いたしましたことは、ガットの十八年の歴史の中におきまして画期的な意義を持つものであると思うのでございます。そこで、第三十七条1は、先進国が可能な最大限度において低開発国産品に対する貿易障害の撤廃に努力することを規定いたしております。低開発諸国がその輸出を拡大いたしまするために一次産品に対する貿易障害の撤廃に非常な関心を持っておることは当然でありますが、国連貿易開発会議におきましても、この問題をめぐりまして低開発国側と先進国側との間で意見が対立をいたしました。第一委員会におきましては、低開発国側が団結をいたしまして、先進国の反対を押し切って低開発国側の案が強行採決せられまして、本会議におきましてようやく妥協が成立したといういきさつがございました。このように貿易障害の撤廃につきましての低開発国側の要求が非常に強いものであることがはっきりあらわれておりますが、この妥協によって成立いたしました本会議の勧告におきましても、先進国は一九六五年十二月三十一日までに最大限の前進がなさるべきであるとの低開発諸国の要望に留意しつつ所定の措置を国際連合開発の十年の終期すなわち一九六九年十二月三十一日までにできるだけ完全に完了すべきであると勧告をいたしております。もちろん勧告は法的拘束力を持つものではございません。また、国連貿易開発会議とガットとは直接の関係はないものであるかもしれませんが、昨年の貿易開発会議におきまして、わが日本政府はその準備が不足であったためでございましょうか、かなり世界の批判を受けたと聞いております。その結果でありましょうか、外務省に南北問題研究会が設けられまして、一次産品の問題、特恵問題片貿易の問題等についていろいろ検討をしておられるというふうに聞いております。このような、貿易障害の撤廃につきましては可能な最大限度において努力するというふうにありますが、貿易障害の撤廃に対する低開発諸国の強い要求に対して、わが国がほおかむりをしていくことは許されないということは当然でございます。一方、わが国は、国連貿易開発会議の本会議における勧告の採択に際しましてわが国が、日本はその経済構造、特に農業及び中小企業の分野に内在する若干の後進性のために本勧告の規定を実施するには他の先進国以上の困難を有しているとコメントいたしておりますように、一次産品の輸入の拡大がわが国農業、中小企業を圧迫することになる深刻な問題をかかえておるのでございます。わが国は、IMF八条国として、またOHCD加盟国として先進国の一員になったことは言うまでもございませんが、その反面、保護していかなければならない農業、中小企業を多くかかえております。いわゆるわが国経済の二重構造と言われます問題がございます。国連貿易開発会議におけるわが国の立場はあまり歯切れのよいものでなかったことは、そういう難問題をかかえておるからでございまして、これは低開発諸国の期待を裏切ることになったことは当然でございまして、このような問題の解決のためには、わが国の経済の二重構造の問題にまで深くメスを入れなければならないし、政府の経済高度成長政策の陰に農業や中小企業の後進性が改められることなく取り残されているという問題、政府の経済政策責任の問題がございますが、いまわれわれが本委員会において取り上げておりまするところの当面の問題として、わが国の農業、中小企業を外国の輸出攻勢からどのように保護していくかということが重大な国内問題であると思うのでございます。脆弱な国内産業の保護と低開発国の一次産品輸入拡大の要求をいかにして調整していくか、ここに非常な困難な問題があると思うのでございますが、この際この問題に対する政府のお考え方をはっきりと伺っておきたいと思うのでございます。
  81. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘のとおり、低開発諸国のわが国に対する期待と、それからわが国が国内においてかかえておる二重構造の問題とが明らかに矛盾抵触するのでありまして、この調整をいかにするかということが、きわめて困難であるが、きわめて重要な経済政策一つである、こう考えておるのであります。この問題に関しましては、外務省といたしましては、低開発諸国の要請に基づき、さらに国内対策の問題をかかえる各省と緊密な連絡をとりまして、その調整に遺憾なきを期してまいらなければならぬ。いずれにいたしましても、わが国が経済発展を今後進めていく上において、低開発国の育成というものを考えないでは、とうていこれは実現のできない問題でございますので、国内の二重構造の改善というものに相当なウエートを置きつつ、できるだけこの二重構造の矛盾を克服しながら対外経済政策というものを伸ばしていく、こういう観点に立って問題の推進をはかるべきものである、こう考えておる次第であります。
  82. 西村関一

    ○西村(関)委員 この問題に関連をいたしまして農林省にお伺いをいたしますが、国内農業を保護していくということが農林省のこの問題についての立場であると思いますが、そうでないと、野放しで一次産品がどんどんわが国に入ってくるということになりますと、わが国の農業がいよいよ衰退をしていくという結果を招くことは言うまでもございません。この点につきまして農林省は一体どういう考え方を持っておられるか。もちろん低開発国は第一次産品が主たる輸出品でございますから、わが国としてもこれをできるだけ買わなければならない。それについてわが国の農業をこの問題に関連してどのように保護していくか。たとえばスウェーデン政府が打ち出しておりますところの政策、これは、産業の構造の調整と貿易の自由について周到な農業政策の転換をはるかという意味におきまして、われわれにも一つの示唆を与えると思うのであります。これは、御承知のとおり、政策目標として、農業の生産を国内消費需要の九〇%に押える、この方針を採用いたしまして、あわせて国内の農産物の価格をできるだけ世界市場価格に近づけて設定をする、さらに、零細農民に対しましては、その農民一代限りを条件として別途現金支給を行なう、こういう政策を打ち出しております。これはもちろんわが国と事情が違いますからそのままわが国に適用することはできないかもわかりませんけれども、とにかく、この問題と関連しまして、わが国農業のあり方に対して農林省としてはどういう解決をしようとしておられますか。
  83. 久宗高

    ○久宗政府委員 御承知のとおり、農業部門におきましては数年前から農業基本法を打ち出しておるわけであります。そのときの前提といたしまして、経済の相当な成長と、また労働力の抜けていきますことも前提にいたしまして、かつ貿易自由化の風潮が相当強まる前提のもとにああいう政策を打ち出したわけでございます。御承知のとおり、現在、その構造改善を進めまして、生産性を向上する方向で一連の施策をやっておるわけでございます。構造改善には相当の時間がかかります上にスタートしまして数年の間におきます一般経済の成長が急角度でありましたので、スタートにおきまして若干足をとられまして、まだ必ずしも構造改善が十分軌道に乗っているとは申し上げられない段階だと思うのでございます。ただ、御指摘のように、その間にもどんどん、ガットにおきまして、また、お話にも出ましたような昨年のジュネーブ会議以降の情勢といたしまして、貿易の拡大、特に低開発国からの一次産品問題がクローズアップされてまいっておるわけでございます。農林省といたしましては、基本的には、やはりわが国は、非常に零細な経営であります上に、御承知のとおり、特殊な土地制度を持っておりました関係もございまして非常に分散した圃場の上に農業が営まれますので、欧米のような形の構造改善よりか、もっと非常に困難な問題を持っておるわけであります。そこで、そのような過渡期におきまして、将来の日本の農業の構造にかかわるような問題につきましては、いきなり門戸を開放してしまうことは相当困難な事情がございますので、自由化問題についてはきわめて慎重に対処してまいったわけでございます。  最近の動きとしましては、ケネディラウンドにおきましては、工業製品のほうはああいう形でスタートをいたしましたけれども、農業問題につきましては、どういう形でお話し合いを進めるか、その方法につきましてまだ十分な話し合いがついておりません。さらに、EEC・米国間の若干の確執もございまして、まだまだ交渉は相当長引くように思っておるわけでございます。ただ、それと並行いたしまして、昨年のジュネーブ会議以降出てきております一次産品の問題につきましては、しばしば御指摘を受けますように、貿易全体の構造からいたしまして、たとえば東南アジアにいたしましても相当なウエートがあるわけでございます。国々について見ました場合に貿易のアンバランスが非常に目立っておりますので、先方からの御要請も非常に強いわけでございます。しかしながら、品目別に当たりました場合に、当方の体制と申しますか、それが必ずしもそのままで先方の御要望に直ちに対処し得ない事情もございまして、相当困難な交渉が予定されると思うわけでございます。  ただ、農林省といたしましては、一次産品問題で議論されます場合に、国別に見ました貿易のギャップだけが非常に問題にされるわけでございます。かりに先方から要望のございます産品を先方の言うとおり入れたといたしましても、必ずしもそのギャップが埋まるというふうには言えないわけでございまして、非常にそのギャップが大きいわけでございます。このことは決して一次産品の輸入の問題につきましてその重要性を農林省が考えていないということではございません。いずれにいたしましても、国内体制の整備を急ぎまして処理をしてまいりたいというふうに考えております。
  84. 西村関一

    ○西村(関)委員 国内産業の保護という見地から低開発国からの一次産品輸入を拡大するということには、いまのお話のありますように困難があるといたしますならば、わが国が現在アメリカその他の先進国から輸入いたしておりますところの一次産品を低開発国から輸入するということができないだろうか。わが国の輸入は主として原料でございまして、輸入の六割から六割五分が原料品である。そのうち三分の一近くをアメリカ、カナダなどの先進国から輸入している。特にアメリカの農業の現在及び将来を考えますときに、日本の農業との関連において非常に重大な問題があると思っておるのでございますが、アメリカから買っているところの一次産品を低開発国に振り向ける、切りかえるというくふうができないものであろうか。これはそう簡単にできるとは思いませんけれども、できるものもあると思うのでございます。そういうくふうを日本政府としてはしていかなければならないというふうに考えますが、この点につきまして外務大臣はどういうふうにお考えでございますか。
  85. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘の点は全く重大な点でございます。低開発国に輸入を転換することは可能でありますが、しかし、現状においては条件付である。いろいろ品物がそろわぬとか、あるいは來雑物が多いとか、あるいは湿度がどうもまだあり過ぎるとか、あるいは輸送の問題、積み出し地の保管の問題、いろいろな点が不備でございまして、そのためにどうも買いにくいという事情がありますので、それをできるだけこちらの力をかして改善の方途に協力いたしまして、第一次産品の輸入については先進国から低開発国へと転換する、こういう政策には大いに力を入れていかなければならぬ点だと考えております。
  86. 西村関一

    ○西村(関)委員 ただいまの外務大臣の御答弁の趣旨は了といたしますが、わが国の外交方針並びに貿易構造がどうもアメリカに依存し過ぎておるという印象を受けるわけでございます。そういう点を改めて、もちろん友好親善関係を続けるということはどこの国との間においても差別があってはならないのでございますが、特に低開発国に対しましては、ただいま大臣の御答弁のありましたような配慮のもとに十分な御努力を願いたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  87. 安藤覺

    安藤委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  88. 安藤覺

    安藤委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。西村関一君。
  89. 西村関一

    ○西村(関)委員 ただいま質疑応答の中で私の意見も申し上げ、また大臣その他政府委員からの御答弁を承ったのでございますが、本件に対しまして、本件が本委員会において質疑を終了し採決に入ります前に、特に念を押しておきたいと思うことが二点ございます。第一点は、わが国の農業及び中小企業を過当に圧迫する、不当に圧迫するというようなことをしないということを政府としては十分に考えていただきたい。そのことをしないと、これはわが国の経済の二重構造のもとにおいて非常な苦境にあるところの農業及び中小企業に従事する人々を圧迫する結果になると思うのでございます。その点が一点。それから、第二点は、そのことを防ぎまするために、一次産品の輸入につきましては、その輸入いたしますところの相手国をできるだけ先進国よりは後進国へと振り向ける、そういうことに対して政府は十分な配慮を払い、また努力されたいということであります。  この点を要望して、賛成の討論を終わります。
  90. 安藤覺

    安藤委員長 これにて討論は終局いたしました。  直ちに採決いたします。本件を承認すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 安藤覺

    安藤委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 安藤覺

    安藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  93. 安藤覺

    安藤委員長 この際外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。椎名外務大臣
  94. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほどの西村委員の御指摘の点はごもっともでございまして、外国からの輸入一次産品の価格によって国内の農産物が非常な危殆に瀕することがないように万全の措置を講ずるとともに、なお、先進国から低開発国にできるだけ輸入を転換するように今後努力してまいりたいと存じます。
  95. 安藤覺

    安藤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後零時二十四分散会