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1965-04-28 第48回国会 衆議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十八日(水曜日)    午前十一時十四分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 椎熊 三郎君 理事 高瀬  傳君    理事 野田 武夫君 理事 福田 篤泰君    理事 毛利 松平君 理事 帆足  計君       菊池 義郎君    佐伯 宗義君       竹内 黎一君    野見山清造君       藤本 孝雄君    三原 朝雄君       湊  徹郎君    粟山  秀君       山村新治郎君    石田 宥全君       石野 久男君    石橋 政嗣君       河野  密君    西村 関一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安川  莊君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (情報文化局         長)      曾野  明君         文部事務官         (調査局長)  天城  勲君         農林事務官         (農林経済局         長)      久宗  高君         農林事務官         (園芸局長)  林田悠紀夫君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房外務         参事官)    西堀 正弘君         外務事務官         (経済局外務参         事官)     内田  宏君         外務事務官         (条約局国際協         定課長)    徳久  茂君         外務事務官         (国際連合局外         務参事官)   滝川 正久君         大蔵事務官         (関税局国際課         長)      大谷 邦夫君         農林事務官         (畜産局参事         官)      吉岡  茂君     ————————————— 四月二十六日  委員鯨岡兵輔君、竹内黎一君、福井勇君、三原  朝雄君及び川上貫一辞任につき、その補欠と  して保科善四郎君、加藤高藏君、前田正男君、  中村梅吉君及び加藤進君が議長指名委員に  選任された。 同月二十七日  委員加藤高藏君、中村梅吉君、保科善四郎君、  前田正男君及び加藤進辞任につき、その補欠  として竹内黎一君、三原朝雄君、鯨岡兵輔君、  福井勇君及び川上貫一君が議長指名委員に  選任された。 同月二十八日  委員鯨岡兵輔君、濱野清吾君、福井勇君、増田  甲子七君及び松本七郎辞任につき、その補欠  として粟山秀君、山村新治郎君、藤本孝雄君、  湊徹郎君及び石田宥全君議長指名委員に  選任された。 同日  委員湊徹郎君、藤本孝雄君、粟山秀君、山村新  治郎君及び石田宥全君辞任につき、その補欠と  して増田甲子七君、福井勇君、鯨岡兵輔君、濱  野清吾君及び松本七郎君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  千九百六十三年十二月十七日に国際連合総会決  議第千九百九十一号(XVIII)によって採  択された国際連合憲章の改正の批准について承  認を求めるの件(条約第二号)  関税及び貿易に関する一般協定貿易及び開発  に関する第四部の追加のために改正する議定書  の締結について承認を求めるの件(条約第一一  号)  国際情勢に関する件(ヴイエトナム問題等)      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。西村関一君。
  3. 西村関一

    西村(関)委員 外務大臣にお尋ねをいたしますが、去る二十七日、昨日の参議院外務委員会におきまして、外務大臣は、アメリカ北ベトナム爆撃理由は当然であるというお答えをなすっておられるのであります。これは、従来から日本政府は、アメリカ北爆集団自衛立場から当然である、集団自衛権という国連憲章第五十一条の解釈に従って、アメリカ北爆を妥当であるというふうに解釈をしておられるのでございますが、一体、このようなアメリカ行動に対して、国際法侵略とはいかなる事態をさすのであるか、どういう事態のもとに行なわれるのであるかという点を明らかにしていただきたいと思うのでございます。侵略というのは国家間の関係においてのみ発生するところのものであると考えますが、ベトナムの場合におきましては十七度線は存在いたしておりますけれども、しかし、これはジュネーブ協定によって暫定的な軍事境界線とされておるにすぎないのでございまして、はたして二国及び多国間の軍事行動によって一方が脅かされておるというような解釈が成り立つであろうかどうかという点が、解釈上の問題としてきわめて明瞭を欠く点であると考えるのでございますが、この国連憲章五十一条の集団自衛権の発動といっておりまする点が、はたしてどういう解釈によって成り立つのであるか、日本政府見解をお伺いいたしたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 十七度線は軍事的な一つ境界線とされたのでありますけれども、国連においては独立した二つの事実上の政権を認め、これを一つ国境線とみなされておるのでございます。さような意味におきまして、北からのこの国境を越えての浸透が絶えず継続されておる、いわゆる侵略が継続されておるという認定がそこに成立するわけでありまして、これに対する反撃は当然集団的な自衛行為である、かように解釈しておる次第でございます。
  5. 西村関一

    西村(関)委員 ジュネーブ協定によりますと、これはあくまで暫定的な軍事境界線であって、二年後には統一選挙を行なってベトナム一つになるのだということがきめられておるのであります。いま大臣の言われました、国連において十七度線が国境であるというふうに、いつどこでそういうことをきめたのですか。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約局長から御答弁いたします。
  7. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 いまのベトナムの場合だけに限りませず、国境としての法律上の性格は特にない場合でも、その境界線はあたかも武力行使禁止に関しては国境であるかのごとく取り扱う場合があるという意味で仰せられたのでございまして、たとえば、朝鮮動乱のとき、三十八度線というのは、単に米ソ間の占領区域境界線にすぎなかったものが、それぞれに政府と称するものができますと、それはまあお互いに相侵すべからずというのが国際的な常識になりまして、したがいまして、北鮮南鮮のほうに侵入してきたときには、これを国連侵略と断定いたしたことは御承知のとおりでございます。したがいまして、その線の平時的な観点から言った法律的性質と、こういうような武力行使禁止というような意味において侵すべからずという性質を持つということとは、また別個に考えるべきものかと思うのでございます。
  8. 西村関一

    西村(関)委員 ベトナム一つであるというのがジュネーブ協定に調印をした国々の見解であったのであります。現在もその考えは変わっていない。また、南におけるところのベトナム人自身も、やはりそのことを強く意識しているのであります。それをアメリカが、一体何の権利をもって、十七度線が国境であって北からの浸透があるから集団自衛立場から自衛権行使をなすということで北爆を毎日のように強行するということは、ジュネーブ協定の精神から申しましても、また国際法立場から申しましても、どうしてもこれは納得のいかない点だと思うのであります。それは、アメリカが一方的にそういうことを言っているのに対して、日本政府はこれをそのまま受け入れてこれに追随するような方針をとっているということは、世界世論、また日本国内世論にも反する点だということは、先般の本委員会における三名の参考人の公述によっても明らかなのであります。いつまでも政府がこの見解を繰り返す以上は、このベトナム戦争解決に対して日本政府が自主的な行動をするということはおそらくできまいと思うのです。やはり、どちらの側にも立たないで、アジア大国としての自主的な立場に立って紛争解決に当たるという気がまえがなければ、このむずかしい紛争解決日本が指導的な役割りを果たすということはできないと私は思うのであります。ただアメリカの言い分だけをそのままうのみにして日本政府行動するということにつきましては、はなはだ遺憾に思うのであります。大体、南ベトナムにおけるところの民衆考え方というものは、アメリカがこれ以上介入してくれるということは迷惑千万だ、東西両陣営のイデオロギーの掃きだめ場所のようになって、このような悲惨な戦争がこれ以上繰り返されるということは、ベトナム人にとってははなはだ迷惑千万だという考え方が各階層のうちに充満しておるのであります。私はユエ市においてたまたま学生のゼネストにぶつかりましたが、ユエ市を包んでおるところの学生運動の多くの横幕やら壁に書きつけてあるところのスローガン、その中には、ベトナムの問題はベトナム人の手に返せ、これ以上帝国主義支配はごめんだということばが至るところに書きつけてあったのであります。それが私は端的に南ベトナムにおけるところのベトナム人の気持ちをあらわしておると思うのであります。それを、アメリカがおせっかいをして、そうしていよいよ軍事力を強化していくということに対しましては、南のベトナム人自身も困惑の色を示しておるというのが現状だ。一部の軍人、一部の指導者を除いては、大多数のベトナム民衆はそのことを望んでいない。にもかかわらず、アメリカはますます南ベトナムにおけるところの軍事力を強化して、毎日のように北爆を続けておる。そして、その向かうところはとどまるところを知らない。その段階的な爆撃というものは、まさに一国の象徴であるところの首府ハノイにまで及ぼうとしておる。こういうことは非常に重大な問題を含んでおると思うのでございますが、いま条約局長解釈で、それはアメリカ解釈なんだけれども、一体国際法上そういうことがはたして通るものであるかどうか。また、一九五四年のジュネーブ協定というものをどういうふうに日本政府は一体解釈しているのであるか。そういう点をもう一度あらためてお伺いをいたしたいと思います。
  9. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 いまの南北ベトナム関係を単純なる内乱であるというように考えるのは、南北朝鮮の場合の関係を単純なる内乱であると考えるのと同じことになるわけでございまして、これは、単にアメリカがそう言っているとか、日本でそう申しておるとかということではございませんで、やはりこれは一つ国家国家との間の武力的な衝突に準じて考えるべきであるというのが国際的な常識であろうと私は思うのであります。平時の関係においてその境界線国境と全く同じ法律的性質のものではないということは先ほど申し上げたとおりでありますが、武力行使禁止という関係においてはそれに準じて考えるべきものであろう、これは国際的な私常識だろうと思います。  それから、一九五四年のジュネーブ協定には、アメリカ南ベトナムも結局賛意しなかったわけでございます。したがいまして、その選挙をして南北統一すべきであるということについては南ベトナムは拘束されない立場でございます。ただ、休戦協定は、これを尊重するということを南ベトナムアメリカも言っておるわけでございまして、その休戦協定に関する限りは、南北双方が同様に尊重するという義務を負うわけでございます。
  10. 西村関一

    西村(関)委員 大臣にお伺いいたしますが、一体アメリカ南ベトナムがなぜ二年後の統一選挙に賛成しなかったか。これはベトナム民衆意思に反しておる。もし統一選挙を行なえば北のほうの側が、圧倒的に強いという仮定のもとにこれを拒否しておる。南ベトナムゴ・ジンジェム政権がこれを拒否したということは、アメリカのさしがねであるということも、これは明らかであります。ベトナムの問題はベトナム人の手に返す、たとえそれがどういう結果になろうとも、ベトナム人意思によってきめられたことを他国の者がとやかく言う筋合いは私はないと思うのであります。このジュネーブ協定に対して、いま条約局長の言ったように、アメリカ南ベトナムとは調印しなかったけれども、アメリカ最終宣言を出しておる。その宣言の中においては、支配介入もしないし、武力行使しないということを明らかにうたりているのであります。にもかかわらず、現在の状態においては、アメリカが主役になって南ベトナム解放民族戦線軍と戦っておるし、また北に対する爆撃を強化しておる、こういう実情だと思うのでございますが、こういうことはアメリカのみずから世界宣言したところの最終宣言の条項にも違反するし、また、国連憲章立場から言っても、これは非常な行き過ぎであるというふうに私は言わざるを得ないのであります。この点につきまして、大臣は、それでもなおかつアメリカのやっていることは妥当であるというふうにお考えになりますか。
  11. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 休戦協定に対してはこれを尊重する、こういうことで、その問題に対してはあたかも協定の当事者と同様の立場をとっておるのでありますが、この後に直ちに北のほうから協定違反行動がとられた。これに対して南ベトナムアメリカ要請して、この排除に協力することを南ベトナム要請をいたしたのでございまして、この要請に基づいてアメリカがこれに介入をした、こういう事実でございます。
  12. 安藤覺

    安藤委員長 西村さんにちょっと申し上げますが、参議院から外務大臣出席要求が強く来ております。お気の毒ですが、ちょっと大臣をお借りいたします。
  13. 西村関一

    西村(関)委員 いま大臣が、北からの協定違反があったから南の政権アメリカ援助を求めた、そこでアメリカ援助に乗り出したのだということを言われたのでありますが、それはどちらが先であったか、アメリカ軍事援助が先であったか、あるいは北からの協定違反が先であったから頼まれてやむを得ず軍事援助に踏み切らざるを得なかったかということについては、私は議論があると思うのです。アメリカ南ベトナム介入したのは、これはフランスがまだインドシナに君臨をしておった当時からであります。フランス旗色が悪くなってきたときに、これをてこ入れしたのは、ほかならぬアメリカであります。このことは世界周知の事実なんです。そのことをほおかぶりしておいて、北がジュネーブ協定に違反したから南の政府に頼まれてアメリカ軍事援助を行なったのだということは、そういう理屈は通らない。そういうことは世界世論が許さない。アリカは、フランス時代から、フランス旗色が悪くなってきたときにこれにばく大な援助をしてきておる。そうして、さらに、バオダイ帝時代からゴ・ジンジェムを押し立てて、ゴ・ジンジエムを強化して、第二の李承晩に仕立てるという役割りをしたのも、これはほかならぬアメリカなんであります。そういうことに対して、ただ一方的に、北が協定を破ったからアメリカはやむを得ず頼まれて援助に乗り出したのだということは、これは一体どういう事実に基づいてそういうことが言えるのですか。政務次官、いかがですか。
  14. 永田亮一

    永田政府委員 どういう事実があったかという御質問でございますので、アジア局長からお答えをさせていただきます。
  15. 後宮虎郎

    後宮政府委員 そういう問題につきまして事実関係認定というのはなかなかむずかしい問題でございますが、ただ、西村先生も御承知のとおり、一九六二年のあそこの休戦監視委員会の、満場一致の報告はできませんでしたが、多数の意見としまして、北のほうからの侵略行為があったということを書いておる。これなども一つのその例証にはなるのではないかと、そういうふうに考えます。
  16. 西村関一

    西村(関)委員 これはやはりその後インド態度も変わっておることも、アジア局長御存じのところなんです。カナダだけが前の説を固執しておりますが、監視委員会インド態度も変わってきておる。インドとポラーンドはやはり北側支持しておるというふうに変わってきておるのであります。しかもそれが六二年です。それ以前のことは、何らのそういう理由になる証拠がないのです。それだけでもってアメリカ行為が妥当であると言うことは、きめて理由が薄弱だと思うのです。先ほど私が申し上げましたように、フランス時代からアメリカ介入してきているのです。そのことがずっと続いてきているのです。ゴ・ジンジエム政権が立てられたのもアメリカがこれを押し立てたということも、これはもう明白な事実なんです。その点いかがですか。
  17. 後宮虎郎

    後宮政府委員 私も実は記憶が確かではございませんが、確かに、バオダイ帝フランスと協調し過ぎる態度というものが当時ベトナム民衆支持を受けることができませんで、そのあとできましたゴ・ジンジェム政権というものについては、むしろ米国がフランスの植民地主義的な把握をゆるめるためにフランスを説得して、その過程においてでき上がってきた事実がございまして、その意味では、アメリカ支持があったということももちろん否定はできませんが、同時に、あのときバオダイのあまりにも旧体制を維持しようとずる動きに対するむしろ反対の、あの当時はフランスの植民地主義的のカムバックに対するアメリカ反対一つ政治的動きのあったことも事実だと存じます。
  18. 西村関一

    西村(関)委員 いま後宮さんの言われるようなことは、これは私も初めて聞いたようなことでありまして、そういうことはあまり一般では言われておりません。そういうことは全然なかったとは私も言えませんけれども、アメリカ外交は当時のダレス外交です。ダレス氏が考えたことは、第二の韓国をつくろう、第二の李承晩をつくろうということが、これがゴ・ジンジェムを押し立てた真意であったということは、これは世界のすべての人々が認めておると言っても言い過ぎではないと思うのであります。それを、ただバオダイが新フランス植民地主義的傾向が強いから、これを押えるために、むしろ民主的な政権を打ち立てるためにというような説は、これは私は後宮さんの新説だと思う。ダレス氏はそういうことを考えてやったのではない。ダレス氏の考えたことは、第二の韓国、第二の李承晩をつくろうというのがねらいであった。その証拠に、ゴ・ジンジェムはああいう非常に悲惨な最期を遂げてしまった。しかも、利用するだけは利用したけれども、最終的にはフランスゴ・ジンジェムを見放してしまった。そうして彼はあのような悲惨な最期を遂げてしまった。その後二年ほどの間は、南ベトナムにおいてはクーデターに次ぐクーデター政権はきわめて不安定で今日に及んでおる。テーラー大使でさえも、南ベトナムにおいてはディエンビエンフーのような軍事的な状態は現在はまだないかもしれないが、しかし政治的には非常な危機だということを言っておるくらいでありまして、そういう状態が今日まで続いてきておる。そういう事態をつくり上げてきたのはほかならぬアメリカであるということを私は申し上げておるのでありまして、そういうやり方に対して、日本政府がどこまでもこれを支持していこうということは、これは、私は、ベトナム戦争事態をどう収拾しようかということを考えなければならない日本として、きわめて自主性を欠くやり方だと思う。私は、必ずしも北側主張を、あるいは中国の主張を、そのまま日本政府が受け入れろというようなことは申しておるのではありません。私どもの立場は別といたしまして、日本政府にそういう立場をとりなさいということをいますぐに言ってもできることではないと思うのでありますが、しかしながら、あまりにもアメリカ一辺倒態度では、アジア大国としてこの紛争解決に指導的な役割を果たそうとする日本が、そういういまのような状態では、はたしてそういう歴史的な役割りを果たし得るかどうか、もう少し自主的な立場に立って、ベトナム問題の経過と現状と、それから推移を見きわめていくところの深い洞察が必要だと私は考えるのであります。そうでなければこの役割りを果たすことはできないと私は思うのでございまして、その点、いままでの政府当局の答弁に対しては、私はきわめて不満足であります。  そこで、この問題は、いつまで論じておりましても、いまのところ平行線をたどるばかりでございますが、この点についてはどういうふうにお考えになりますか。アメリカ考え方は、いわゆるドミノセオリーといわれているところによってもうかがわれますように、南ベトナム国際共産主義脅威から守っていく、自由主義陣営のとりでとしてどこまでも守っていく、南ベトナムからアメリカが撤退をするならば、南ベトナムにまで国際共産主義脅威が及んでくる、また、さらにそこからタイにもフィリピンにもマレーシアにも波及するであろう、そして東南アジア全体が共産主義勢力下に入ってしまうだろうというのがアメリカ考え方の根本にあると思うのでございますが、こういう考え方に対して日本政府は一体どう考えておられますか。
  19. 永田亮一

    永田政府委員 アメリカ考え方は、西村先生がおっしゃったような、ベトナムを赤化し、さらに東南アジア赤化勢力が及ぶことを危惧しているということを考えているかもしれません。それはアメリカの問題でありまして、われわれがこうだというお答えをするわけにはまいりませんが、しかし、日本といたしましては、そういうことのあるなしにかかわらず、やはりベトナムあるいは東南アジアの恒久平和ということを希求いたしておりますので、日本立場としてあくまでもアジアの平和に向かって少しでも寄与すればいいということを考えまして、政府のほうもその道をいま慎重に考えておるところでございます。
  20. 西村関一

    西村(関)委員 一体政府はいつまで考えているのでしょうか。いつまで模索しているのでしょうか、事態はいよいよ急迫しているときに、アジア大国として自任している日本政府が何とか自主的な解決をはかろうということは、本委員会におきましてもしばしば外務大臣が言明せられたところでございます。しかし、いつまで模索しているのであるか。もうすみやかに何らかの手を打たなければならないときではないか。AA会議の式典に出席せられた川島代表はじめ、その他の方々の見解を承りましても、東南アジア諸国日本に対する期待は非常に大きい。そういうときに、この問題の焦点になっているところのインドシナ戦争の終結のために各国がいろいろな方策をすでに打ち出している。しかし、日本は依然としてアメリカに追随する方針だけしか打ち出していない。こういうことで、はたして東南アジア諸国人々の信頼をつなぐことができるかどうかということを、私は非常に危ぶむものでございます。御承知のとおり、フランスの元首相フォール氏が日本にやってまいりまして各所で演説をいたしました。フォール演説は、いま私が申し上げるまでもなく、ベトコン民族運動であるが、次第に共産主義運動の色彩が強くなってきている、これはフランスレジスタンス運動でも経験をしたことであって、民族主義者が長い闘争の中で目的を達成するためには共産主義者になっていく傾向が非常に強いということを述べているが、いわゆるベトコン南ベトナム民族解放戦線軍がどの程度共産主義者であるかということについては、いろいろな意見がございます。そのうちの一〇%が共産主義者であって、他は共産主義者でない。アメリカベトナム白書では、ジュネーブ協定のときにすでにその核となるべきところの分子を南に残しておいたのだ、そしてまた北から思想的・軍事的訓練を受けたところのものを南に送り込んでおるのだ、それが中心なんだということを言っておりますが、しかし、それはアメリカの言い分であって、いわゆるベトコン南ベトナム民族解放戦線軍が一体どういう分子で構成されているかということにつきましては、世界の多くの識者の考え方は、必ずしもアメリカ考え支持していないのであります。フォール氏もその一人であります。これは日本政府としても独自の立場に立ってこの実態を把握するということが問題の解決の上において非常に重要なことであると思うのであります。先般帰国せられました松本特派大使の本委員会における参考人としての供述を聞きましても、その点に触れておられるのでありまして、松本氏も、いわゆるベトコンの正体は必ずしもアメリカが言っているような共産主義者ではないということを言っておられるのであります。政府が特派した松本特派大使の報告、この委員会における供述においてさえもそういう意見が出ているのでございまして、そういうところにも、日本政府アメリカ政府の言いなりになって、アメリカ政府の言い分が妥当であるというようにうのみにしていくことは、事態解決をおくらせることになり、また、日本が果たすべき役割りを果たし得ない結果になると思うのでございます。その点、フォール日本において演説をいたしました点について、特に南ベトナム民族解放戦線の本質をもっとはっきり把握して、現在の南ベトナムの問題を終息させることが大事であると思うのでございますが、そういう点につきまして、政府南ベトナム民族解放戦線軍の正体について何らか独自の考えをお持ちになっていらっしゃいますか。
  21. 永田亮一

    永田政府委員 日本政府ベトナム問題解決のためにいつまでも考えておってなかなか行動を起こさないという御批判でございますが、もちろん、アジアにおける平和、特に東南アジアにおける平和ということは、これは、ほかの国がどう言った、ああ言ったということでなしにやはり日本独自に、最も深い関係がございますので、真剣にわれわれは検討いたしておるわけであります。先日来、御指摘のフォール氏とか、あるいはロッジ氏、ロストウ氏、グリーン氏というような方々が次々とお見えになり、また、政府のほうでも総理をはじめわれわれが各人の意見を十分に聞いております。また、松本俊一先生に行っていただきまして、この松木さんの御意見というものは大きなウエートをもってわれわれも傾聴いたし、打つ手を考えておるのでございますが、ただ、ものごとの解決というものは潮どきというものがあると思います。タイミングがうまくなければ、乗り出してもなかなかうまくいかない。もちろん日本立場は決してアメリカ一辺倒ではございません。日本日本のために、日本国民の平和と安全のために、それを根本の理念に考えて検討いたしておるのでございまして、その点を特に御了承いただきたいと思います。
  22. 西村関一

    西村(関)委員 バンドンに参りました周恩来首相が第二国連問題について発言をしているのであります。これは、ベトナム問題に関連いたしましてアメリカが、核攻撃も辞さない、核攻撃もあり得るということを発言いたしましたことに対して、もはや平和維持の問題に対して何らの力を持つことのできない国連に見切りをつけて、第二国連を提唱するに至った。そのことが東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカの諸国に及ぼす影響というものはかなり大きなものがあると思うのでございます。これはわれわれも賛成をしたのでございますが、過般の部分核停の問題に対して、現在核兵器を保有しているところの国がこれを独占するということでは核戦争脅威は去らないということから中国が反対した。今度のベトナム問題に対してアメリカが核攻撃も辞さないというようなこと、また、さらに、中国がベトナム戦争介入してくるならば中国の本土といえども聖域ではないという立場から、中国に対する核攻撃もあり得るといったようなことをほのめかしておるということに対する、核兵器の威嚇に対する答えとして周恩来の発言が出てきたと私は思うのでございます。そういうことになってまいりますと、第三次世界大戦、人類みな殺し戦争にまで発展しないとはだれも保証することができないと思うのでございます。そういう問題と関連いたしまして、国連軍縮委員会は去る二十六日から実質的な討議に入っているのでございます。アメリカはフォスター氏を代表として送り、ソビエトはツァラプキン氏を、イギリスはチャルフォント軍縮大臣をそれぞれこの会議に送りまして、非常な熱意をこめてこの国連軍縮委員会に臨んでおるのであります。先般の本委員会におきまして、椎名外務大臣は、この会議日本政府としても非常に重視しているということを言われたのでございますが、一体日本政府はどういう考え方で、前段に申し述べましたような事態がいま目の前に繰り広げられておるときに、この会議に対してどういう役割りを果たしていこうとしているか。どういう陣容で、またどういう内容でこの会議に臨もうとしているか。国民は全くつんぼさじきに置かれておるのであります。私どもは国連憲章の一部改正に対して本国会に批准を求められておるのでございますが、その改正それ自体に対しては反対するところはございません。むしろ国連国連憲章の精神に従って発展強化させる一つの道だと思いますから、それは反対はしてないのでありますけれども、しかし、国連それ自体のあり方に対して、ベトナム問題に関連し、また平和維持の問題に関連して、この国連軍縮委員会に臨むところの日本政府態度はどうであるか。さらに、もう一つは、ベトナム交渉のカンボジア会議というものをシアヌーク元首が主唱し、アメリカもこれに参加するということを表明いたしておりますが、これに対する日本政府考え方はいかがでございますか。この二点あるいは三点についてお伺いをいたしたいと思います。
  23. 滝川正久

    ○滝川説明員 ただいまお尋ねございましたお話の、うちの軍縮委員会の分について簡単にお答えいたします。  軍縮委員会の代表でございますが、これはわがほうは常駐代表を首席代表としております。米英ソはそれぞれいまおっしゃいましたような有力者を本国から送っておるわけでありますが、これはいろいろ理由もございますが、一つは、この三大国がそれぞれ核保有国として最も大きな地位を占めておるし、また軍縮問題についても従来から非常な重要な責任を持った国であるというようなことから、そういう選考をしたものと思われます。わがほうにおきましては、軍縮大臣とか軍縮局長というようなものは現在おりませんので、従来からも常に常駐代表が国連総会で、外務大臣がおいでになります以外におきましては、ずっとこの問題をフォローしております関係上、常駐代表がこれに当たっておる次第であります。  それから、基本的な態度といたしましてはどういうことかという御質問だったと思いますが、この軍縮委員会は、十九総会が御承知のような状態で行き詰まりまして、軍縮に関する実質的な討議が行なわれなかったという事情を背景にいたしまして、ソ連の提案によりまして、全加盟国が賛成しまして開かれたわけでございまして、その内容は、ジュネーブで行なわれております十八カ国軍縮委員会の問題と同じでございます。ただ、ジュネーブ委員会のほうは、いわば交渉の場でございまして、これらの国が何らかの合意に達してそこで一つ協定なりあるいは自発的な軍縮の措置をとるという意味におきましては非常に適した場所でございますが、国連の全加盟国をもって構成しております今度の軍縮委員会は、期間も限られておるのみならず、関係国が非常に多いというようなことで、それぞれの所見を述べ合うというような点のほうが非常に強く出ておるわけであります。われわれ日本政府といたしましては、ジュネーブ会議における審議がはかどりまして軍縮の方向に向かって一歩でも進んでいくということを希望する次第でございまして、それを促進させる、十八カ国委員会に対して全加盟国の意思を反映させる、一般的な指針を与えるというような意味において、今次のニューヨークのほうの軍縮会議を、大臣も言われましたように非常に重要視しておるわけでございます。いずれ日本側も発言の機会があろうと思いますが、そういう基本的な態度で臨んでおる次第でございます。
  24. 後宮虎郎

    後宮政府委員 カンボジアは、御承知のとおり、三万くらいの小さい兵力しか持っておらない国でございまして、従来からその中立を各国によって保障されたいという希望を絶えず表明してきていたわけでございますが、最近におきましても、ことしの三月十五日に会議開催の要請を行なったわけであります。これに対しまして、各国の態度でございますが、現在のところ、イギリス、ソ連はもちろんのこと、これは共同議長国として受けて立ったわけでございますが、懸念されておりましたアメリカ、それからフランスは、従来からやはりこれに賛成でございまして、ほとんどの国がこれにみな賛成の意見を唱えております。中共も、一応三月十七日の陳毅外相の言明で、カンボジアの中立保障に関する新国際会議を開くことは賛成だと言っております。北越のほうも支持を与える発言をしております。インドについても同様でございます。それで、われわれのほうでも、この会議があるいは実現して、これがインドシナ問題の解決について何らかの貢献をなし得る機会になるのじゃないかということで、非常に注目しておったわけでございますが、最近、この二十四日に至りまして、シアヌーク主席が新たに演説をいたしまして、この会議につきまして、一九五四年のジュネーブ会議型の会議であることを要するけれども、ただ、この会議にはタイと南ベトナムと米国とが参加すべきでないということを明言するということを演説したという電報が実は昨日入ったわけでございまして、この演説をしました真意、バックグラウンド、あるいはどういう点、どの程度の強さがあるのか等につきまして、まだ関連情報が入っておらないのでございまして、この点、カンボジア中立会議の前途に一脈の暗影が漂ってきたというのが現在の状況でございます。
  25. 西村関一

    西村(関)委員 私の先ほどの質問の中で、第二国連の問題に対する周恩来首相の発言についてお尋ねをいたしましたが、政務次官からお答えいただけますか。
  26. 永田亮一

    永田政府委員 先ほど西村委員から、中共あるいはインドネシアが第二国連の創設を考えていると伝えられるけれども、それに対する日本政府考えはどうかというお尋ねであったと思います。国連が創設された当時の理想どおりにいま動いておらないということは事実でありまして、特に、第十九回の国連総会が行き詰まりまして、通常の審議が行ない得なかったという事態がございましたが、国連加盟国は、日本を含めて、この行き詰まりを打開するためにいま努力をいたしておるのであります。特に、平和維持活動の特別委員会は、わが国を含めまして三十三カ国入っておりますが、目下ニューヨークで会合して、この行き詰まり打開に努力をいたしております。安保理事会あるいは経済社会活動理事会など総会の補助機関としても正常に活動いたしておると思うのであります。こういうように、国連は平和維持その他の面でいまの国際政治のもとで可能ないろいろの努力を行なっておるのでありまして、国連自体が国連が創設された当時の理想どおりに動いておらないということは、これは、国連憲章やあるいは国連の機構が悪い、それに欠点があるんだということよりも、国際政治のいまの現状そのものに問題があるんじゃないかと思うのであります。すなわち、東西間の確執の問題であるとか、あるいは五大国の間の不一致というようなことをめぐって重要な国際問題が行き詰まっておる、こういう現在の情勢を考えてみますると、憲章の運営がそのために円滑に行なわれておらないとわれわれは解釈いたしておるのでありまして、国連現状においては多くの欠点は見られますけれども、こういう国際社会の実情にその原因がある以上は、ただ単に国連を批判したりあるいは国連から脱退して新しい第二国連をつくっていこうというような方法では問題の解決にならないのではないかと思います。この前のインドネシアの国連脱退についても、多くの国はこれを批判いたしておりまして、インドネシアの国連脱退を支持しておる国はほとんどないと考えております。  政府といたしましては、以上申し上げました実情に即して、国連現状国際情勢の改善のために着実な努力を続ける、このことが国連問題の解決に最も必要なことであると考えておる次第であります。
  27. 西村関一

    西村(関)委員 大臣がお帰りになりましたが、ただいま、第二国連の問題に対する周恩来首相の発言を中心といたしまして、なぜこういう発言がなされてきたか、国連の平和維持の力が十分にその機能を発揮しない、特にベトナム戦争の問題についてアメリカが核兵器の威嚇を試みておるということに対して、周恩来首相、またインドネシアにおきましても、そういう状態に対しては別の角度から第二国連をつくらなければいけないというような状態にまで踏み切らざるを得ないところに立ち至ってきておる。これは非常に好ましくない傾向であるということは言うまでもございません。国連憲章の前文に、「寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互に平和に生活し、」とうたってあります。この国連憲章の精神をどのようにしてこのベトナム戦争の終結に対してわが日本政府としては具体的に働きかけていくか。そういうことについては、加盟国全体によるところの国連軍縮委員会の開催に対する日本政府態度、またカンボジアのシアヌーク元首の主唱にかかるところのカンボジア会議に対するところの日本政府態度というものは非常に重要だと思うのでございます。ただそれが各国の演説の場に終わるとか、カンボジア会議の成果も危ぶまれるとかということでは済まされぬ。あらゆる機会、あらゆるどんな小さな可能性でも、それをつかまえて、その中に積極的な働きかけをしていくということが日本としてとるべき道ではないかと私は思うのであります。  私は最後に外務大臣にお伺いをしたいと思っているのでございますが、あと他の問題についての時間がありませんので、最後に外務大臣にお伺いすることにして、別の問題に入りたいと思います。  それは、いま日本が受け入れておりますところの外国留学生の問題であります。外国留学生の受け入れに対して日本政府としては一体どういう方針をとっておられるか、文部省から簡潔にお答えを願いたいと思います。
  28. 天城勲

    ○天城政府委員 現在、留学生の種類は、いわゆる国費によります文部省奨学金留学生、それから私費による留学生、その他いろいろの種類がございますが、特に留学生受け入れの目的といたしましては、諸外国の国際文化交流促進と友好親善をはかるということ、それから、特に東南アジア、中近東諸国につきましては、その社会的・経済的発展に寄与する人材養成に積極的に協力するということを目的といたしております。
  29. 西村関一

    西村(関)委員 その目的がはたして達成されておるというふうにお考えですか。
  30. 天城勲

    ○天城政府委員 留学生の教育は、現在、学部の学生と大学院の学生、この二つに分かれております。しかし、これらの留学生日本におきます教育につきましては、日本語の問題ですとか、あるいは寮の問題ですとか、学校における教育上の問題等、全般を考えますと、ちょうど国費留学生制度が始まりまして十年ほどになりますが、当初から見るとかなり改善されてきたとは思いますけれども、なお十分手を尽くすべき点がまだ残っていると考えている次第でございます。
  31. 西村関一

    西村(関)委員 留学生の教育につきまして、これを受け入れるについて幾つかの誓約書に署名をさせるということは当然ある。これは、一般日本人の子弟であっても、大学に入学するときにはそういうことが行なわれるのであります。しかし、その中で、最近、千葉大学の学生チョア君、マラヤから留学してまいりましたところのチョア君の問題に関連をして、一切の思想・政治活動に従事してはいけないということを一つ追加されたということを聞きましたが、それは事実でございますか。
  32. 天城勲

    ○天城政府委員 国費留学生、文部省奨学金留学生でございますが、当該国政府との関係で国内に呼んでおる学生でございますので、勉学を留学の目的の本旨として考えております。特定の政治活動等をすることについては本旨に反することでございますので、私たち、ある意味では、これは国費による留学生におきましては世界的に常識のことではないかと思っております。留学生の規則に明瞭に書いてないということで問題があるようでございますので、本年度から留学生の規定にそのことは明記いたしました。
  33. 西村関一

    西村(関)委員 いままで明記されてなかったのを今回から明記するということは、長い間、留学生制度が始まってからすでに何十年、明治の時代から今日まで来ておるのでありますが、いまに至ってチョア君の問題を契機としてなぜそういう条項を挿入せられたか。もしそういうことが必要であるということならば、何らの言論もできない。外国からの留学生は思想問題・政治問題に対して公の席上で何らの言論もできない。この政治活動というものをどういうところに限界を置くかということも問題でありますが、たとえば、先般、ベトナム戦争に対しまして、日本に留学しているところの南ベトナム学生が静かな抗議デモを行なった。平和への祈りを込めてデモを行なった。こういうことも、これは前から来ている学生ですから、そういう誓約書に署名しておりませんから制約を受けないだろうと思いますけれども、しかし、今後そういう誓約をしたならばそういうことも許されないということになると思うのです。また、送り出した国の政府が、いろいろ今日のような不安定な状態において、たとえば先ほどから問題になっておりますところの南ベトナム政権のようにネコの目玉のようにしょっちゅう変わる、その変わるたびごとに政府方針が違ってくるということになりますならば、そこから送られておるところの学生は、一々言論・思想の自由を持つことができないということで、落ちついて日本において勉学をすることができないと思うのであります。そういうことをいままでやらなかったのに、今回からそれをやったということは、一体どういう理由によるのでございますか。
  34. 天城勲

    ○天城政府委員 先ほど申しましたように、留学生にいろいろな種類がございます。国費によっております文部省奨学金留学生でございますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、特に東南アジアの諸国におきましては、その人材養成計画に協力するという考え方を持っておりまして、政府意思の入った留学生でございます。したがいまして、留学生が政治活動と申しましても、これはある意味では具体的な行動に即して考えなければならない問題でございまして、言論、思想の自由を奪うというような意味では毛頭ございません。たとえば、このたびのチョア君の問題にいたしましても、当該国政府に誓約書を入れて、帰国後公務員として働くという誓約書を持った奨学生でございましたので、当該国政府からの認定によって、政治活動はその誓約の趣旨に反するという判断が下ったわけでございます。私費留学生と、それから国費の文部省奨学金の留学生とはいささか扱いが違うことをひとつ了解願いたいと思います。
  35. 西村関一

    西村(関)委員 日本政府が費用を出して外国留学生を預かるという場合におきましても、もちろん送り出し国の意見を尊重するということは私はあり得ると思うのでございますが、しかし、問題は学問の自由ということであるのでございますから、そういうことに対して思想、信条、行動の自由を制約するような誓約書を出させるということにつきましては問題がある。それから、マレーシアのシンガポールの立法議院において、野党側の質問に答えてリー・クアンユー・シンガポール州総理が答弁をしておる。その答弁の記録によりましても、チョア君の問題に対しては州政府から正式に日本政府要請したことはないということも明らかになっているのでございまして、この点につきましては、もうきょうは時間がございませんし、委員長に約束がございますから、私はこの問題については後日あらためてもう少しゆっくり文部省の態度を伺いたいと思うのです。  私費留学生につきましては、外務省の関係の機関がある。国際学友会という留学生を受け入れるところの機関がある。この国際学友会に対して先年来幾つかの問題が起こってきておることも外務省は御存じのところだと思うのであります。特に最近は、去る四月の十九日にこの国際学友会の委員長がなぐられて負傷したというまことに恥ずかしい事件、しかも外国留学生がおる前で労働組合の委員長がなぐられて負傷したという事件があって、それがいまだにまだ解決がつかないで、警察も取り調べに入っておるというようなことであります。私は、昨日、国会の忙しい時間をさいて、この国際学友会を見に行ってまいりました。見に行ってまいりましたところが、その建物は非常に荒れておる。ガラスがめちゃめちゃにこわれておる。いつからこわれておるか聞いたら、昨年の十一月から修理していない。そういう状態ではたして大事な外国からの私費留学生を預かって教育することができるかどうか。国費を外務省を通して補助しておる、その経常費の四〇%まで補助しているこの施設がこういう状態では、私は国民に対して申しわけないと思う。また、これらの留学生を送り出しているところの国々のそれぞれの機関に対して私は申しわけないという感じがしたのであります。また、壁には、アイ・ヘイト・ジャパニーズメンと書いてある。そういう落書きがしてある。なぜそういうものを消さないのですか。そういうものをそのままに放置して、はたして留学生を預かって責任を果たすということが言えるでしょうか。しかも後宮さんもその理事の一人です。外務省のその他のおえら方も全部その役員として名簿に名を連ねておられる。そういうことではたして外国留学生日本に来て勉強している間にどういう印象を受けて帰るかということは、特に東南アジアの諸国の今後の日本とのつながりにおいて大きな関係があると私は思うのです。私はわずかな時間をさいてきのう突然見に行ったのでありますが、非常に残念でございました。環境は非常にいいところでございますが、一人のインドの留学生をつかまえて話をいたしましたところが、マネージメントとわれわれとの個人的な接触は全然ない、衛生状態はべリー・バッドだということを言いました。私は、こういうことで日本政府が諸外国から留学生を受け入れるということは実に恥ずかしいと思うのです。この点に対して外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  36. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 はなはだ残念なことでございますが、現状は、予算がどうも不足で、いろいろな施設の整備に回りかねるという現状でございますので、今後は一そうこの点に力を注ぎまして、何とか予算獲得をして施設を完備したい。これとあわせて、予算以外に他の募金等もいたす余地がないかどうかというようなこともただいま考究中でございます。
  37. 西村関一

    西村(関)委員 私は予算の問題ではないと思うのです。もし予算が必要ならば、与党の委員諸君もおられるのです。大事な仕事であるならば、予算をふやすということも、大蔵当局を説得することは不可能と思いません。予算の問題じゃないのです。外部に対して募金をすると言っておっても、その中で暴力事件が起こって、だれがほかに金を出す者がありますか。問題はもっと根底にあると思うのです。そういう根底を改めないで、予算の問題だとか外部から寄付を集めるとかいうことではないと思う。食堂のガラスがめちゃくちゃに割れておる。去年の十一月から割れたままになっておる。この冬の寒い間どうしただろうかと私は思う。そういう状態のまま放置しておいて、予算がないからということで、はたしてそれで済まされるでしょうか。衛生設備はベリー・バッドだということをインド学生が言っておる。予算の問題ではないと思うのです。留学生を受け入れるところの日本政府の心がまえの問題です。もちろんそれは民間の施設、財団法人の施設ではありますけれども、政府が経常費の四〇%を補助しておる。監督指導の責任があるのです。私は、この点に対しまして、きょうは時間がありませんから、政府の善処を強く要望いたしまして、この問題に対しての質問を後日に保留いたします。      ————◇—————
  38. 安藤覺

    安藤委員長 次に、千九百六十三年十二月十七日に国際連合総会決議第千九百九十一号(XVIII)によって採択された国際連合憲章の改正の批准について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。帆足計君。
  39. 帆足計

    ○帆足委員 時間のお約束がありますから簡潔に質問いたしますが、国際連合が現在重大な危機に面しておりますことは御承知のとおりでございます。したがいまして、この理事国並びに経済理事会の員数をふやします機会に、現在の国連の危機について十分な討論をしておくことが私は必要であるとかねて思っておりますが、世界連邦の問題に日ごろ熱心な同僚の西村関一議員から原則的な問題については非常に有益な質問並びに意見の開陳が多々ございましたので、二、三のことだけを補足質問いたしておきたいと思います。  そこで、お尋ねいたしますが、国際連盟と違って国際連合は人類の恒久平和への努力に対して数歩前進したものと思います。私は、国際連合に対してはもう世界の独立主権を持っておる国はことごとく、自動的に加盟すべき性質のものであると思うのですが、いまだに中国の加盟が認められていない。これが第一に国連をかたわにしておる根本原因であると思うのであります。もしそれ中国が好戦国であるとか共産主義国であるからとかいう理由でこの大きな国の加入を認めないならば、ある国が好戦的傾向があるとかないとかいうことは主観的判断によってきまる問題でありまするし、ある国が共産主義であることがいいとか悪いとかいうことは個人の趣味の問題でありまして、自分の思想、信条を他国に強要すること、判断の基準を他国に強要することは、そもそも私は国連憲章の精神に反することであると思うので、いずれの国も、人民がみずから選び、自決し、安定と継続性のある政府ができましたときは、その政府がその国土を代表して国連の会員になることが当然である、この問題は自動的、事務的に決定すべき問題であるとかねて思っておりますが、外務大臣はもちろんこの問題についてすなおな御答弁がいただけるとは私は予期しておりませんけれども、きわめて重要な問題でありますから、外務大臣の所信をただしておきたいと思う次第でございます。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 中共という大国がまだ国連に加盟してないことは、まことに不自然な状態、現象であると思うのであります。ただ、これには、毎々申し上げたとおり、中華民国政府というものがすでに国連に加盟しておる関係上、これとの調整において非常に困難な問題に遭遇しておる、こういう状況でございますので、できるだけ国際世論のいわゆる大勢によってこの問題の調整が適当に解決されることを、ただいまわれわれは念願をしておる次第であります。
  41. 帆足計

    ○帆足委員 私がこの短い時間に申し上げますのは、日本の外務委員会としての誠意と良識の叫びを記録にとどめておいていただきたいという念願からでございます。あえて外務大臣と論争いたそうと思っておりませんけれども、第二には、台湾、すなわち中華民国が加盟しておるから、そこに複雑な事情がある、現実においてそういう問題があることはもうだれしも承知しておりますけれども、人口六、七百万の焼きイモ一つほどの台湾が国連に加盟しておって、人口六億数千万を擁する中国が入っていない、こういうようなことで一体国連憲章尊重の教育が子供たちにできるか、私は嘆かわしい次第と思うのでございます。もしそれ、共産主義国であるから、プロレタリア独裁を主張するからいけないというのであるならば、共産主義国は他にもたくさんありまして、すでに人口二億数千万のソ連、東欧諸国に数カ国の共産主義国があるわけでございまして、理由にならぬ。むしろ共産主義国と資本主義国とがともどもに一つのテーブルを囲んで話し合い、平和を求めるというところに現代史の一こまがある。まさに、いかなる家族主義的な会社でも、今日では労働組合というものがあって、経営者と労働者とが対等の資格で話し合いつつ生産が進められ、そのために若干の能率をそこなうことがあろうとも、人の人権というものは尊重せねばならぬということで、重役のお子さんでも一応は会社に入ると労働組合の組合員になるし、選挙されて当選するならば大財閥のぼっちゃんといえど労働組合の書記にも一応はなるような今日の世の中でございます。そういうことを承知の上で国際連合というものができておるのに、中国を国連に入れてないということは、私は嘆かわしいことであると思うのでございます。一つの論理を誤れば、一波誤って万波こもごも生ずということになって、国連はその権威を保つのに苦労せねばならぬことになるのではないでしょうか。もしそれ中国を好戦国と一方的にきめつけるならば、歴史がこれを示しておるように、中国は、少なくとも朝鮮問題においては、マッカーサー元帥がまさに鴨緑江を越えようとしたときに、自国の安全のためになだれを打って義勇兵が北朝鮮の戦争に参加したということは周知のことでありまして、戦争の発端から中国がこれに関与したのでもなく、はらはらしながら朝鮮の戦争を見ていて、最後の段階にマッカーサー元帥が鴨緑江を越える勢いを示したので入ってきたということが事実であることも当然であり、建国わずか三年目の中国が朝鮮戦争の累を受けねばならなかったということは、むしろ好まざる事態に券き込まれたということが歴史の真実であることは、だれしも認めるところであると思います。しかるに、アメリカは、朝鮮戦争で十数万の青年をニューヨークに送らずに地獄に送る結果となりまして、そして史上初めての敗戦をなめましたために、これまた江戸のかたきを長崎でと筋違いのみを持ちまして、そうして中国を好戦国と言いふらしておる。今日の歴史の段階において、どこの国も武力を持っておりますから、武力を持っておる国は好戦国であるというならば、大きな常備軍を持っておる国は全部好戦国というべきであって、新日本憲法下において、陸海軍はこれを持たず、国の利害の衝突は武力をもって解決することをなさないと宣言した日本のみが大体合格点であって、他の国々はまあ好戦国と言えば全部言えるかもしれませんが、それならば、国家予算の六割五分を軍事費に使って、いまや半身不随、肝臓硬変症になっているアメリカのごときは、臨床医学者が診断したならば、その大統領の意思いかんにかかわらず、これは重大なる病的状況に陥っているという診断を客観的に下すでしょう。そういうときに、目くそうが鼻くそを笑うような理屈をつけて、そうして中国を国連に加盟させない。それにまた日本が便乗してこれは重要事項と、実は中国を入れたくないためにそういうこじつけをして、そうしてアメリカに追随している姿を見ると、私はまことに遺憾なことに思う次第でございます。  そこで、質問いたしますが、国連における安全保障理事会というのは、国連の総会に次ぐ重要な機関です。その安全保障理事会の中の五大常任理事国は拒否権を持っております。世界平和のこれが中核です。その五大常任理事国の一つに台湾の焼きイモ一つがいまだにまぎれ込んで、そうしてぶすぶす湯煙を出しているなどという風景は、まことに見るにたえない醜態であって、理性と論理を尊重する者にして不快の感を持たない者は私は世になかろうと思います。諸般の事情があって中華民国がしばらく台湾という形のまま国連にとどまろうとも、五大常任理事国の一つに台湾の焼きイモ一つがなって、そうして他の四大国に伍して意見ならぬ意見を述べておるという風景を見るときに、だれが国連を尊敬する気持ちになるでしょうか。そう言ってみたところで、外務大臣の重責にある椎名さんとしては、やはりアメリカに対する遠慮をしなければその地位が保てぬという客観条件のもとでは、この椎名外務大臣にこれ以上のことを申し上げることは礼儀を失することになるかもしれませんし、まことに遺憾なことでありますけれども、私は、国連の問題をここで審議するにあたり、しかも安保理事国の員数をふやすという問題をきょう承認をいたしますときに、一言だけはこの問題に触れなければ、どうもこっちの健康が保てないような気持ちがするわけで、精神衛生上から言っても、自衛上やはり言うべきことを言わなくちゃならぬと思うのでございます。外務大臣も答えにくいことでしょうけれども、ひとつやはり、国民としては、日本政府が何を考えてござるということを一応テストしておく必要がありますし、そして、それによってわれわれは、歴史の進化の過程において現段階にこういう内閣を持っておるこの民族の運命は日本国民として深く考えておかねばならぬ、うかうか政府に何もかもまかしておくわけにはいかないという国民反省の機会ともならばしあわせだと思う次第ですから、あえてお尋ねする次第でございます。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 常任理事国の中に中華民国が加わっておるという従来からのいきさつは、もうくどくどしく申し上げるまでもないところでありまして、その当時と現状とはだいぶ違ってきておる、その現状をつかまえて不自然であるという御議論のようでありますが、考えようによってはそういうことになるかもしれません。従来の沿革、いきさつによってかような状況になっておる次第であります。
  43. 帆足計

    ○帆足委員 私は、こういうようなでたらめが行なわれている国連の現在の機構のもとにおいて恒久の平和を保つということを国連に期待することは、残念ながら危惧の念を感ぜざるを得ないのでございます。また、外務大臣は、その当時いろいろいきさつがあって、それをいまくどくどしく追及することもやぼであるということを申しましたけれども、私は適当な機会に御注意を促したいのは、アメリカ国務省の正式の白書である対華白書を繰り返し読んでみましても、アメリカ日本が放棄した台湾を明らかに一度中華民国にこれを還付し、そしてそのための還付の式典まで行ない、台湾省の省長を任命し、完全に中国のものになっておるのでございまして、そのときの遺跡がいまも金門・馬祖として中国にくっついておるこども歴史の示すとおりでございます。しかる以上は、中華人民共和国と中華民国との二つに分かれたのは、中国の内政の問題でありまして、いわば、徳川幕府の残党が五稜郭に立てこもり、勤皇軍は本州・九州を全部現実に支配してしまったという明治維新のときと同じでありまして、もうこれは炳乎たる事実でございます。あるいはまた、源為朝が伊豆の島に流されまして伊豆の島々を支配しておるがゆえに大和の国と称する。しからば、京の都は、敷島の大和の国の朝廷は一体何と言えばいいか。伊豆の為朝が敷島の大和の国を代表して世界の舞台に出席しておって、京の大和の政府はそれが好戦国の悪名のもとに無視されておる、こういう状況でありますから、実に人口七億対七百万の問題でありますから、ばかばかしいにもほどがある。私はこういうようなことで子供の教育ができるであろうかとかねて思っておりましたところが、ついに国連の機能が行き詰まりまして、まさに空中分解の前夜にある、こういう状況であろうと思うのでございます。  そこで、私どもがそう思っていることをここで明らかにいたしまして、最後にお尋ねいたしたいのでありますが、国際連合に協力いたしますために国際連合協会というのがございます。政府日本憲法の精神と相通ずるものがある国際連合に対して敬意を表し、これを尊重するというたてまえに歴代の内閣の外交政策がなっておることは、まあことばの上だけのたてまえでないことを希望するわけでありますが、それにしても、それはよいことだと思います。しかし、それならば、民間の国際連合協会というものは、国連憲章を尊重して世界が理性と論理をもって話し合って、そして世界諸国民の友情をあたため、理解を増加し、戦争の手段によらず話し合いの手段によって、平和の手段によって万事運営する、そういう趣旨を尊重するために民間でもPRの機関の国際連合協会というのがあると思いますが、その国際連合協会に対して政府はいかなる援助をなさっておられるか、一応承っておきたいと思います。
  44. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国際連合協会の全体の連合会に対しまして年額約七百万円くらい補助金を出しております。
  45. 帆足計

    ○帆足委員 七百万の補助金を出すにあたりまして、国際連合協会の組織、運営、役員、機構等が国連憲章の趣旨を国民にPRするのにふさわしい機構になっておるかどうかを検討なされたことがございますか。
  46. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ところによって、非常に充実してやっているところもあれば、まだ、何と申しますか、あまりふるわぬところもありますが、とにかく、よく国連精神というものを体して、それを普及するということにみな一生懸命にやっておる状況であります。
  47. 帆足計

    ○帆足委員 国連協会の中央の機構も、国連憲章に沿うようなバランスを得た役員、機構、運営になっておりますかどうか。
  48. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御承知のとおり、佐藤尚武氏がこの連合会の会長として活躍しております。
  49. 帆足計

    ○帆足委員 緑風会出身の佐藤尚武氏に対して外交界の先輩として敬意を表するにやぶさかではありませんけれども、国際連合というものは戦前の国際連盟とは質的に異なっておりまして、国際連合の場合には、世界の諸国民、その三分の一はいわゆる自由主義という資本主義国、三分の一は中立その他の新興諸国、残った三分の一は共産主義の諸国、こういうバランスになっております。日本国内の政治におきましても、自民党が六としますと社会党は三、そして共産党は少数ながらやはり合法的政党としてその発言は国民から注目されております。だとするならば、国際連合の精神は、思想・信条のいかんを問わず、そしていわば三、三、三と分かれている世界の諸国が話し合っていこうという濶達な精神、冷静にして理性的な精神のもとにおいてのみそれが運用されるわけです。であるとするならば、国内の国際連合協会も、保守政党の関係の方が六ならば、革新政党の関係の方が少なくとも三ぐらいの割合、または思想的に言えば中立的な傾向の方々が三くらいの割合、そういうような構成に私はなるべきであると思いますけれども、率直に申しますと保守党連合会、それに社会党系の諸君が二、三人加わっておる、こういうようなことで、保守党の諸君だけで趣味の会をおつくりになるならば各自の会費でまかなわれればけっこうなんですが、国が一千万円近くの補助金を出している以上は、協会というものは、やはり政府がごらんになって、政府が干渉するわけではありませんけれども、しかし、協会が国連と歩調を合わせるならば、共産党の諸君の代表の方でも国連に対して理解のある方ならばこれに出席してもらい、また野党からもたくさん出席してもらい、国連憲章の精神、または一歩進んでは将来世界連邦の見通しのもとに働いておる正論の方々などの意見も協会に反映するようなくらいのお考えはあってしかるべきではあるまいか。今日の国際連合協会をあえて悪いと言うわけではありませんけれども、昔の国際連盟時代のバランスで大体できております。国際連盟と国際連合との相違というものは、第二次世界大戦の血の試練と経験によってわれわれは飛躍したのでありますから、どうも名簿を見ましても、これは三十年前の国際連盟協会ではあるまいかと思われるようなことでは、ちと七百万円の補助金は多過ぎはしないかと言われてもどうも返すことばもあるまい。私は、建設的に、国際連合協会をもっとよいものにしてもらいたい。また、公正なバランスのとれたものにしてもらいたい。また、国際連盟の時代と違って、もっと鋭い理性、寛容の精神、そういうものにしてもらいたい。率然として見て、ああこれは保守連合協会かというようなことで、その経費は自民党本部からいろいろ寄付金が大量にお入りになっているように伺っております。ですから、これは御検討を願っておきたい。決して国際連合協会の悪口を言うわけではありません。ただ、多少時代おくれになっているように思いますから、その点は御注意のほどお願いしたいと思います。  きょうは時間がありませんから、野党は時間の約束を守るという精神にのっとって、これで終わります。
  50. 西村関一

    西村(関)委員 議事進行について発言をいたしたいと思います。  実は、国連憲章の問題につきまして、わがほうから黒田委員、穂積委員の質問が残っておりますが、これは今後の一般国際情勢の質疑の中で委員長においてそれらの点を、お取り計らいくださることをこの際お願いをいたしたいと思います。
  51. 安藤覺

    安藤委員長 ただいまの西村委員の御発言につきましては、委員長においてとくと承知いたしました。今後その意味合いにおいて運営をいたします。  これにて本件に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  52. 安藤覺

    安藤委員長 これより討論に入りますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 安藤覺

    安藤委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 安藤覺

    安藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  55. 安藤覺

    安藤委員長 関税及び貿易に関する一般協定貿易及び開発に関する第四部の追加のために改正する議定書の締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。石田宥全君
  56. 石田宥全

    石田(宥)委員 私は、今回行なわれますガットの改正条約承認にあたりまして、特に今回の改正はわが国の農業に与える影響がきわめて深刻かつ甚大であると考えまして、特にその点について究明をいたしたいと思うのでありますが、外務大臣が時間の都合があるそうでありますので、最初に外務大臣に対して一、二お伺いをいたしたいと思います。  外務省は、つい先日アメリカのロッジ特使からの要請もあり、東南アジア開発計画に積極的に協力するために、アメリカ日本東南アジア関係諸国からなる新しい機関である東南アジア開発機構の設立について検討を進めておるといわれておるのでありますが、いかがでございましょうか。東南アジアベトナム問題を中心として反米感情が非常に強くなっておりまして、かつまた、日本の低開発国援助が年々減少いたしました。昨年国連貿易会議では国民所得の一%程度を低開発国援助に向けるべしとの勧告があったのに対しまして、日本はかなり減少しておるといわれておるのでありますが、どれくらいになっておるか、国民所得に対するパーセンテージをお示しを願いたい。そのために各国から強い非難を浴びておるといわれております。これでは東南アジア地域における日本の地位はきわめて不安定なものとなり、やがて反日感情を誘発することになるのではないかということをおそれるのでありますが、これらの諸点について外務大臣の御答弁を願いたいと思います。
  57. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ロッジ氏が来られまして、総理大臣と一緒に会いまして話し合いをいたしたのでありますが、その大部分の時間は、過般のジョンソン演説に示された、アジア経済協力のために十億ドルの予算請求の用意がある、あの問題を持ち出しまして、そうしてこれをいかにどういう方法で推進するかというような問題が話し合われたのでございますが、しかし、東南アジア開発機構というようなそういう具体的な形についてはまだ何ら研究されなかったのであります。しかし、結局落ちつくところは、東南アジアを中心にしてどの程度までその地域を広げていくかというようなことが漸次問題になると思うのでありますが、ただいまのところは、あの地方の軍事行動によってまだもうそれどころではないという地域もございますし、具体的に今後どういうふうにするかということは逐次きまっていくものと思いますが、ただいまの段階ではそうはっきりした形を整えたものではございません。日本といたしましても、かねがね日本としては、経済あるいは文化、そういったような平和建設の面においてアジアの一員としてできるだけ低開発国の開発に力を注いでいきたい、こういう方針のもとに従来進み来たったのでございます。でありますから、たまたま方針が合致いたしましたので、アメリカ側も日本の協力というものに非常な期待を持っておるようでございます。日本といたしましても十分にこの問題に取り組んでまいりたいと考えております。  昨年、国連貿易開発会議でございますか、あれの準備会において、先進工業国は国民所得の少なくとも一%を経済協力に振り向けるべきである、こういう決議がなされたのでございまして、日本もこれを受諾いたしたことは御承知のとおり。しかし、いまは、はっきりした数字はもし御必要とあれば申し上げますが、〇・五、六%、目標の半分あるいは半分ちょっと頭を出したくらいの程度でございます。しかもこれが、賠償がだんだん山を越してまいりますにつきまして、これを加算してのことでありますから、年々少なくなりつつある、こういう状況でありますので、この決議の趣旨に合致するためにも、あるいはまた長期的に見て日本の利益を開拓する意味におきましても、これは大いに努力して、少なくとも目標程度まで早く持っていかなければならぬ、かように考えております。  それから、日本の経済協力に対して批判が多い、不評判であるといういまお話でございましたが、御指摘のとおり、その点はあまり評判はよくございません。それはなぜかと申しますと、日本のいまの経済協力はあまりに打算的である、延べ払いをするにしても、とにかくそう非常に大きな金額でもない、それから期限もそう長くない、利率の点も、日本の国内の金利よりは相当勉強はしておりますけれども、各国と比べるとまだ高い、そして、純粋に長い目で見て経済協力をするというのでなしに、もう急いで結論を出したい、物を売りたい、あるいはプラント輸出をしたい、そういったような商業的な目的が必ずつきまとっている、各国のように、とにかく長い目で育成して、しかる後にその恩恵をともに享受しようというのではなくて、日本のはあまりに目先の商業的利益というものを追いかける、それがたまたま普通の経済行為よりも少し毛のはえたもので、経済協力という範疇には属するけれども、思い切った協力ではない、こういうのが日本に対する不評判の原因でございます。
  58. 石田宥全

    石田(宥)委員 ちょっとだめを押すようでありますけれども、ただいま外務大臣のお話では、アメリカのジョンソン大統領の演説では東南アジアに特に十億ドル程度のということであったようでありますが、新聞の伝えるところでは二十億ドルということをはっきり言うておりますし、また、日本に対しては二億ドル程度の協力を要請しようというふうに伝えられておるのでありますが、この点はいかがでしょうか。  それから、ただいまお話がございましたように、日本の低開発国援助についてはいろいろな角度から不評判であるということを大臣もお認めになりましたけれども、これは私はあとで農林大臣その他の人たちと御意見をかわしたいと思うのでありますが、今回のガットの改正で、低開発諸国の一次産品の輸入にあたっての高関税の問題がかなり問題になるであろうと思われるので、これらの点について、今後この条約を承認した暁においては当然低開発国側からわが国の第一次産品に対する高関税の問題が取り上げられてくることを予想しなければならないと思うのでありますが、これに対する大臣のお考えを承っておきたいと思います。
  59. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お答えいたします。  ジョンソンの提案は十億ドルでありますが、しかし、日本もこれに協力し、それからまたソ連の協力も期待するというようなことが書いてありますし、アジアに対する関心は、これのみならず、西欧あるいは豪州あるいはカナダというようなところも一応考えてみて、そしてそれらの国々からの応分の投資をざっと胸算用して、まあ二十億ドルくらいは、こういうことが一部権威のある方面で、きまったわけではもちろんないのでありますが、口にされたというようなことがあるいは新聞に伝わったのかもしれませんが、私はこれに対しては的確な情報も知識も持っておりません。その程度だと思います。  それから、対日期待額二億、これは少しこの問題とは違って、いまアジア開発銀行というものが爼上にのぼりつつありますが、これに対して対日期待額といたしましてあるいは二億というような数字がどこかで出て、それが新聞に出たのかもわかりませんけれども、これまた、日本といたしましてアジア開発銀行というものにどれくらいの出資をするかということもまだきまっておらないのでありますから、どうぞさよう御了承願いたいと存じます。  それから、低開発国の第一次産品の輸入については、こういったような憲章改正の問題とはもう全然切り離してすでに問題が起こっておるのであります。日本といたしましても、これは日本だけに即した問題ではありませんが、できるだけ低開発国の生産品を輸入し得るように、関税その他の貿易の障害があるならば日本もやはり考えなければならぬというような立場に立たされておるのでありますから、この問題とは切り離して、これはすでに問題にされておるのであります。しかし、これは日本の国内の産業育成の立場から慎重に考えなければならないことはもちろんでございまして、これは主として農林省のほうの所管でございますので、後刻農林大臣から適当な答弁があるかと存じますが、私からは、特にその問題はこの問題に関連しておらないということを申し上げたいと思います。
  60. 石田宥全

    石田(宥)委員 外務大臣は時間の都合が悪いそうですから、まだお尋ねしたいこともありますけれども、この程度にいたしまして、次に農林大臣に伺いたいと思います。  政府・与党は昭和三十六年に農業基本法を強行成立をはかったのでありますが、私どもは、農基法体制というものは日本農業を衰微させ衰退させるものであるとして、極力これに反対いたしました。しかし、政府と与党は、農業を繁栄させ農民の生活を安定させるものだと強弁してまいったのであります。しかし、その後所得格差は拡大の一途をたどり、出かせぎの賃金不払いや、タコ部屋問題や、行くえ不明など、深刻な政治問題社会問題になったのであります。これは農基法で定められた第二条第一項一号及び第十一条第一項に対する配慮をおろそかにしてきたことが最大の要因であると思われるのでありますが、いかがでございましょうか。従来の政府の施策は、ややもすれば国内的にのみ目を注いでまいりまして、需給関係等については、農業基本法に掲げておりますように、需要の増大するものは増産する、需要の減少するものは転換をする、こういうことを明らかにし、さらに、国際競争のあるものについてはこれを合理化する、こういうことをうたいながら、第十一条の第一項ですが、これに対する施策を怠ってきたことが、今日あらゆる面において、あとで御質問を申し上げたいと思うのでありますが、たとえばバナナの関税の問題であるとか、あるいは砂糖の法案であるとかいうように、今日不自然な高関税政策をとらざるを得ないような事態に追い込んだものではないかというふうに考えておるのでございます。こういう点についての農林大臣見解を承りたいと思います。
  61. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農業基本法 そのものが農業の衰退を招く要因になったとは私は考えません。農業のほうが伸び悩みであるということは諸般の原因によるもの、こう考えます。そういうことがないように農業基本法でいろいろな方向を規定いたしたものと私は考えています。しかし、農業基本法の方向そのものが必ずしもそのとおりにいっていないということも御指摘のとおりに私も考えます。そこで、大きい面で考えますならば、私は、農業面におきまして、国内的に生産対策から言えば適地適作ということが考えられると同時に、国際的に見ますならば、やはり国際的に農業が分業的になってくる、これは一つの趨勢だと思います。そういう観点から考えまして、やはり国内の農産物に対しましても国内生産の重要性等によりましておのずから分野が定まってくる、こういうふうに考えます。そういう意味におきましては、需要の増大するもの等につきましては生産を増強し、また、重要なる農産物につきましては自給化を進めていかなくちゃなりませんが、また、国内で特に生産ができないもの、生産をそれほど奨励しなくてもいいもの等につきましては、それほどの力を入れなくてもいい、こういうふうに考えます。そういう関係からやはり国際貿易の面におきましても対処していく、あるいは自由化につきましても対処していく、こういうふうな方針で進めてきたわけでございます。   〔委員長退席、野田(武)委員長代理着席〕  そこで、例を引かれました、バナナの関税が逆行しているじゃないか、関税の値上げというふうに逆行しているじゃないか、あるいはまた砂糖の法案等も出さざるを得ないじゃないかという御指摘のように承りました。これは、リンゴ等との競合ということがありますけれども、私は根本的な問題でないと思う。不作等の場合あるいは豊作等の場合、こういう場合にリンゴ等との競合を問題にされましたけれども、私はそれほど競合をしておるものとは考えません。しかしながら、輸入が、自由化したために相当増大してきている、こういうところから考えまして、やはり関税の面でそれをアジャストしていくという必要に迫られた。これは基本法の問題とは直接そう関係があるものではないと私は考えます。また、砂糖の問題等につきましては、国内甘味資源の自給度を増すという基本法の方針に従って甘味資源の対策の法律も出したのでございますけれども、国際的な糖価の不安定に関連いたしまして、必ずしも甘味資源の自給度を増す、あるいは価格政策が万全ではないというふうな状況に来ましたので、国内産あるいは国際的な砂糖の価格との関連におきまして国内の甘味資源を維持増大していこう、こういう方針でございますので、これなどはむしろ農業基本法の考え方の方向に沿ったようなものではないか、こういうふうに私は考えております。
  62. 石田宥全

    石田(宥)委員 具体的な問題はあとで事務当局に伺いたいと思うのでありますが、農林大臣も時間があまりないそうですから、ただいま御答弁になりました中で、漸次農業部面も国際分業の方向に向かわなければならないのではないかという御意見のようでありますが、これはある程度やむを得ないものであるかもしれないけれども、そのことが政府として明確になっておるかいないかということが私は非常に重要な問題だと思うのです。あとで伺いますけれども、畜産や果樹は成長作物だとして農民にこれを指導された。ところが、畜産が奨励作目であり、成長作目だというので畜産に飛びついたら、チキン戦争などが起こったり、あるいはえさ高でいま養鶏業界というものは非常な苦境に坤吟しておる。果樹についてもまたあとで私は詳しく事務当局から伺いたいと思うのでありますが、そういうふうに、国の姿勢が、国際分業なら国際分業で、たとえば飼料や穀物はもうすでに外国に依存をするんだとか、日本は換金作物をやるんだということを言った農林大臣もありますけれども、大体かなり長期の展望で日本の農産物というものはどこに中心を置くのかということの見通しが立っていない。農業の所得格差というものもあるけれども、そういう展望が明らかでないところに今日農民の不安があるのです。一体どうしたらいいのかわからないというのが、いまの日本の農民の実情です。農林大臣は国際分業ということをお考えになっておられるとすれば、これは一年か二年でまた変わったんじゃ困るのです。その点については一体どのようにお考えになっておるのか。果樹もおかしい、畜産ももう何かおかしい。私はあとで具体的な例をあげますけれども、米はいま国際的に不足を告げておるから、これはいいじゃないかと言うかもしれない。しかし、どうですか。農業基本法をつくったときに、もう米麦は転換作目だと極言した大臣もあるのです。現に政府は大・はだか麦の作付転換に関する法律案を出したのです。われわれはこれはもう徹夜をしてその法律案をつぶしたのです。にもかかわらず、やはり行政指導をやったから、麦作の転換は著しいものがあるじゃないですか。今年の農業白書にも明らかになっておりますけれども、三十八年の裏作の作付放棄と三十九年の春の表作の作付放棄の面積は幾らだと思いますか。三十九年度の作付放棄が幾らになったとお考えになりますか。いま農林大臣が御答弁になったような方向が少しも明らかでないじゃないですか。あなたは自信を持って、どういうものとどういうものが将来かなり長い展望でこれは成長作目だと言い切ることができるのか。これは国際的な経済上のいろいろな変転がありますから、私はそんなこまかなことを申し上げようとは思いませんけれども、国際分業の方向にあるというならば、日本は一体どういうふうな方向に農業を指導しようとしておられるのか、農政の責任者である農林大臣から伺っておきたいと思うのです。
  63. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、国際分業が、農業面におきましても、こういう自由化時代におきます趨勢である、こう申し上げました。しかし、国内で農業政策を行なう上におきましては、そういう国際的な分業ということも十分な要素として考えなくてはなりませんと同時に、国内におきましてやはり生産する、自給度を増していく重要な農産物というものをきめてかからなければならぬと思います。ものによりましては、国際競争力が弱いといたしましても、それを強めていく、こういうことによって国内の生産を進めていかなければならぬ問題があります。   〔野田(武)委員長代理退席、委員長着席〕  そういう面におきましては、申し上げるまでもなく、麦につきましては、大麦等はどうしても飼料のほうに化するようなことにせざるを得ないという段階でございます。これは食糧としての需要が非常に減っておりますから、そういう面がございますが、需要に見合って、米とか、あるいは麦等におきましても小麦等の生産を進めていかなくてはなりません。それから酪農を進めていく。そういう意味におきまして、いまの牛乳等におきましては、なま牛乳等は国際競争力も相当あるのでございますけれども、加工品等につきましては非常に国際競争力が弱い、こういう点でこれに対する支持対策等も講じておるというような現状から見ましても、また需要が非常にふえるという面から見ましても、酪農あるいは国民の需要がふえるところの畜産、それから果樹あるいはでん粉、まあ大きな線でいきますならば甘味資源の面からでん粉でございますが、そういう面はやはり自給化を進めていくという作目として見ていかなければならぬ、こういうように考えております。
  64. 石田宥全

    石田(宥)委員 どうも、いろいろのことをおっしゃるけれども、農民が農業経営をやっていく上においてこの方向をたどっていけば間違いがないのであるという自信を持てるような答弁になっていないのですね。それから、さっき申し上げたように、なるほど外国の麦は単なる食糧として以外に飼料として相当輸入もされておるが、一方輸入を増大しながら、一方においてどんどん作付放棄が行なわれておる。大臣の答弁がありませんから、私申しますけれども、農業白書では、昭和三十八年の裏作の作付放棄は百五十八万町歩です。三十九年の秋の作付放棄は、これは東大教授の並木さんが発表しておられるのだけれども、二百五十万町歩に及んでおるといわれておる。政府は、安ければ外国から輸入をする、要するに経済合理主義を貫くということを大蔵大臣は施政方針演説でも言っておるのです。そして、総理大臣は、第一次産品の受け入れ態勢を強めるということを言っておるのです。そういう態勢で経済合理主義でいくということになると、安ければ幾らでも外国から輸入をするという考え方に通ずる。安ければ外国から幾らでも輸入をするということのために、国内で、何ら災害もなければ何の支障もないにもかかわらず作付放棄が二百万町歩に及ぶといえば、日本の耕作反別は全体で六百万町歩といわれておる。それよりも少し下回っておると思うのですが、六百万町歩の三分の一程度の二百万町歩に及ぶ裏作及び表作の作付放棄が行なわれるというふうに、日本の農業を破壊しつつあるじゃないですか。これは政府は意識的に行なっておるものではないかというふうにわれわれは判断せざるを得ないのです。そうじゃないですか。経済合理主義で一貫していこうということなら、安ければ外国の農産物に依存をするが、しかし、いつまでも外国の農産物が安いとは断定できない。小麦のごときも、世界の需要が高まってくればおのずから値段は上がってくる。それが日本の食管会計に悪影響を及ぼしておる。しかし、やはり輸入の額はどんどんと増大しつつある。今度はいま食品コンビナート方式などというものが検討されておりますが、膨大なサイロがつくられて、そのうち食品コンビナートなどができると、すべてこれはアメリカやカナダの余剰農産物に依存をする。日本の食糧政策というものは、アメリカやカナダの余剰農産物に依存をする。いまは安いからいい。しかし、国際情勢が変わってきて非常に高くなった場合といえども、やはり輸入に依存せざるを得なくなるのではないか。現に砂糖がかって苦杯をなめたことがある。これは、国際的な食糧事情は、これもあとで事務当局に伺いますが、FAOあたりの報告に明らかでありますように、国際的な食糧情勢というものは漸次悪化の一途をたどっておる。そういう情勢の中に受け入れ態勢だけは万全を期している。国内の農業は破壊しつつある。耕作反別の三分の一に及ぶ作付放棄をそのままにしておく。私は、そういう問題に対して、もう少しき然たる態度、そして農民にもその方向がわかるような方向を示してもらいたいということを言っておる。どっちを向いていけばいいのか、耕作放棄はどんどんやって、そのままその外国の農産物に依存していって、しかたがないんだ、それでは私は責任は済まないと思うのです。去年は北海道が大凶作でありましたが、ことしは東北、北陸にも凶作が及びそうな徴候がすでに長期予報にも明らかなんです。大凶作が来たときに、一体たとえば米についてどこからこれは輸入ができるのですか。安いから外国から輸入するのはいいけれども、高くなっても外国に依存せざるを得なくなったときに、日本の国際収支はどうなるのですか。そういう点を勘案して、もう少しはっきりした答弁を承りたいのです。
  65. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 外国に依存しているから裏作放棄をしている、こういうようなことでは私はないと思います。それから、農民がどういうところへ目標を置くかといったらば、申すまでもなく、農産物の需要の多いもの、それを生産すればいいのでございまして、私どもは、合理主義でもって安いものをどんどん入れて日本の農業をつぶすという考えは全然持っておりません。先ほど申し上げましたように、日本で生産することが必要なものというものは、相当コストが高くても生産をさしていかなければならぬ。そのために価格政策あるいは構造政策あるいは生産政策等によってこれを支持していくということでございますから、合理主義でもって、安ければ全部輸入して、日本の農村は滅びてもいい、こういうような対策は講じておらないのでございます。だから、農民として向かうべき道は、日本の食生活上需要がふえるものを生産する。また、ふえるものにつきましては、私どもはその対策を講じて、たとえ生産コストが高いものでもその生産を続けさせ、生産コストを低める方法を講じていく、こういうことでございます。でありますので、裏作の放棄につきましては、百五十八万町歩、六十万町歩ございますが、これは輸入がふえているからということとは私は考えません。何といたしましても、日本の経済の成長過程におきまして他産業のほうに相当労働力が吸収されまして、御承知のように、三十七年七十万人くらいの労働力が出てきております。でございますから、耕作放棄といいましても大部分は裏作でございます。その原因をやはりある程度見きわめて、これは輸入の面ではございません。これは趨勢でございますし、世界各国、労働力がずっと減ってきました。アメリカのような国でも現在農業労働力が減っております。しかし、日本は、工業の発達が非常におくれておりましたので、最近におきまして急激に減ってきておる。しかし、すでにイギリス等におきましては相当の労働力が減ってきておることは御承知のとおりでございます。でございますので、この労働力を確保して優秀な労働力が農村に残っていくことが必要でございますけれども、ある程度の労働力が出るということは、これはいたしかたない。よって、少なくなった労働力におきましても日本の農業生産がやっていけるような、そしてその農業の人々が所得の面におきましても他と均衡のとれるような所得が得られるような方向に農業政策を持っていかなければならぬ、こういうふうに考える次第でございます。でございますので、一がいに、輸入がふえているから裏作を放棄したのだ、農業をやる人がなくなったんだ、こういうふうにお考えにはなっていないとは思いますけれども、その点にたいへん強調されたようでございますから、私は、輸入がふえてきているから労働力も不足し、日本の農業も硬化しているのだ、こういうようには考えておりません。それに対する対策等につきましてはそれぞれ考えておる次第でございます。
  66. 安藤覺

    安藤委員長 石田君にちょっと申し上げますけれども、農林大臣が四十分までに向こうに行かなければなりませんので、まことに恐縮ですが、この際ひとつ御了承願います。ただし、政府委員は全部残っておりますから、御質問は継続してくださってけっこうでございます。
  67. 石田宥全

    石田(宥)委員 ことばじりをとらえるようで悪いのですけれども、麦の需要は食糧としても飼料としてもどんどん伸びておるのです。しかるに作付は大幅に放棄されておる。要するに、農業基本法の第二条の第一項一号で、外国産農産物と競合するものについては合理化していくということは、それを言うのではないか。需要は伸びておるけれども、外国の安いものとは競争に耐えられないという場合に、いかにして生産コストを引き下げて外国との競争に耐え得るような日本の農業体制をつくるかということをねらっておるのだということを、この法案審議の際に強く政府は強調をしておったのです。ですから、私は、ただ外国のものが安いからどんどん輸入して、それで国内の農業を破壊するのだということを強調しましたけれども、やはり、需要がなくなっているのではない。需要は伸びているのだ。にもかかわらず、その競争力が弱いために耕作放棄が行なわれるという、これに対して政府はどれだけてこ入れをしておるか。しかも、政府は、当時は明らかに、これは転換作目なりとして断定して、大麦・はだか麦の作付転換に関する法律を出した。もう転換作目なんだと、こう言っておる。しかし、需要はどんどん伸びておるじゃないですか。ここに私は政府は非常なあやまちをおかしておったと考えるのです。そういう点については、大臣もやはり謙虚な気持ちで、当時そういう法律を出したことは間違いであったならば間違いであったということを認めて、その上に立ってそれに対する方策を考えていただかないと、ますます日本の農民は将来に自信も持てなくなってしまう、こういう点を私は指摘しておるのです。  そこで、時間がないそうでありますから簡単に伺いますが、私、日本の農林水産物資の輸入状況を見て実は驚いたのでありますが、昨年の通関ベースで輸入総額の中に占めるところの農林水産物資の輸入の額というものがどれくらいになっておるか、ひとつ大臣のほうからお示しを願いたい。
  68. 久宗高

    ○久宗政府委員 お答えいたします。  これは一九六三年の通関統計によるものでございますが、食料品だけに限定いたしますと十二億ドルで、これが約一八%になります。それから農産品、これは林産物と水産物を除いておりますが、これで申しますと約十五億ドル、パーセンテージで申しますと二二%でございます。それから、いわゆる農林水産全体を含めますと、十九億ドルで二八%という数字が通関統計によりますと出ております。
  69. 安藤覺

    安藤委員長 農林大臣は御退席くださってけっこうです。
  70. 石田宥全

    石田(宥)委員 局長さん、私は農林水産物資全体ということをちゃんと言っておるのですよ。食料品だとか、何々をはずしてという質問じゃないのです。これは私は通産省から入手したので、しかも通産省では、あとで再検討して若干ミスがあったからといって、わずかの修正までしてきておるのです。そこで、局長は六三年と言われたけれども、私のところには六四年まである。六三年の輸入の総額は六十七億三千六百三十三万七千ドル、農林水産物資の合計は二十九億九千七百二十四万九千ドル、六四年は、輸入の総額は七十九億四千四百七万四千ドル、そのうち農林水産物資の総額は三十三億六千三百九十億五千ドル、こういう数字になっております。あなたのところにもあるのじゃないですか。
  71. 久宗高

    ○久宗政府委員 お答えいたします。  いまお述べになりましたのは、一番広い範疇での農林水産物資だと思うのでございます。六四年の数字はいま手元に持っておりませんけれども、おそらく、分類されましたのは、たばこその他も全部含めまして、繊維関係も含んでの数字だろうと思います。
  72. 石田宥全

    石田(宥)委員 私は、これは本来ならば予算委員会かどこかで徹底的に、やはり日本の将来を考えた場合に論究すべき問題だと思うのです。輸入総額の約四〇%が農林水産物資で占められておるということは、さらに、また、外国の第一次産品を積極的に輸入をするという体制のもとにおいての将来の外貨のバランスというものを考えると、これは非常に大きな問題だと思うのです。私は役人さんを前にこんな議論をしても始まらないと思いますけれども、しかし、問題は日本の将来における経済上の大問題だと思うのです。これは別の機会にさらに検討いたしたいと思います。  そこで、伺いますが、先ほど農林大臣は中途はんぱな答弁をしていきました。ここで私は事務的なことを伺いたいと思うのでありますが、これは、通産省の方が見えておらないようでありますけれども、大蔵省の関税局の国際課長あるいはまた農林省の経済局参事官も参っておりますからおわりだと思いますが、昨年の通関ベースによる小麦の輸入数量と単価、それから国内価格との対比、これをひとつ伺いたい。
  73. 内田宏

    ○内田説明員 お答え申し上げます。  昭和三十九年会計年度で申し上げまして、小麦の総輸入量は三百四十二万八千トンとなっております。国別の数字もございますけれども、合計をお答え申し上げます。
  74. 石田宥全

    石田(宥)委員 プール計算でけっこうですから、価格はどうですか、国内価格との対比。
  75. 久宗高

    ○久宗政府委員 単価の正確な数字をいまここに持っておりませんので、すぐ調べてお答えをいたしたいと思います。
  76. 石田宥全

    石田(宥)委員 大体、今度のガットの改正というものについては、国内価格と国際価格との比較検討、そうして生産条件、そういうものを踏まえた上に立ってこのガット条約の改正に取り組まなければならないのです。そういうものが農林省でもわかっていないという。外務省ではどうなんですか、おわかりないですか。
  77. 久宗高

    ○久宗政府委員 もちろん調べておるものもございますけれども、いま手元にございませんので、お答えできなかったわけでございます。
  78. 石田宥全

    石田(宥)委員 それから、先ほどの外務省の参事官の答弁でありますが、小麦の輸入数量は三百四十二万八千トンと言われておりますけれども、食糧としての小麦と飼料用の小麦とははっきり分かれておる。その間線を引きにくい点もあると思うのですけれども、飼料と食糧とにまたがるもの、純粋の飼料用のもの、この区別が重要なんです。おわかりであったら伺いたい。
  79. 内田宏

    ○内田説明員 お答え申し上げます。  ただいま手元に持っておりませんので、農林当局とも十分御相談の上、資料として提出いたしたいと思います。
  80. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 えさの関係について申し上げますと、昭和三十九年度におきましては、小麦は八十八万六千トン、こういう数字でございます。
  81. 石田宥全

    石田(宥)委員 実は、そういう問題は、私のほうからあらかじめ連絡をしておかなくてもわかっておるはずなんです。これは日本貿易振興会では相当新しい資料をちゃんと出しておるのです。これを明らかにしなければ、将来の日本農業の問題、ガットとの関係における農政の問題、外交の問題が実は審議できないのです。事務的なことでたいへん時間をとって恐縮ですけれども、わからない点はわからないで、あとから資料をいただくこととにいたします。本来は事務的な問題を積み上げていって議論をしなければならぬのですけれども、あまりこまかなことはいたしませんから、あとでそのかわり資料を全部整えていただきたい。  そこで、次に畜産局長に伺いたいのでありますが、政府は、岸内閣以来、乳製品は輸入をしないということを何回も何回も、おそらく何十回も繰り返し言っておる。佐藤総理大臣もまた、先般の本会議においても、乳製品は輸入をしない、こう言っておる。しかし、昨年はアメリカから脱脂粉乳を幾ら輸入をいたしましたか。今年度は幾ら輸入の予定でありますか。
  82. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 三十九年度の脱脂粉乳の輸入量は約六万トン程度であったと思います。それから、四十年度は、ここに正確な数字を持っておりませんが、五万トン程度が入る、そういうふうに思っております。
  83. 石田宥全

    石田(宥)委員 この脱粉は乳製品ではないのですか。どうですか。
  84. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 もちろん脱脂粉乳は乳製品でございます。ただ、これは学校給食という特殊用途に飲用しておるわけです。したがいまして、農林省といたしましても、学校給食は計画的に国内産のなま牛乳によって全部置きかえる、四十五年を目途として全量国内産のなま牛乳に置きかえる、そういう方向で考えておるわけでございまして、その趣旨で、酪農振興法の改正を衆議院の御可決を願い、いま参議院の方で御審議を願う、そういう段階になっておるわけでございます。
  85. 石田宥全

    石田(宥)委員 昨年が六万トン、本年が万万トンが予想されておる脱粉というものは、国内産の牛乳の比率で見るとどれくらいの比率になりますか。
  86. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 これは、脱粉の換算のしかた、いろいろございますが、五万トンの脱脂粉乳をなま牛乳に換算いしたますと、一番わかりやすく申し上げますと、全部完全に国内産の牛乳でやるということにしますと約三百五十万石、こういうような数字が要るわけでございます。そして、六万トンの脱脂粉乳を換算いたしますと四百万石くらいのなま牛乳に換算されるかと思います。
  87. 石田宥全

    石田(宥)委員 アメリカからの輸入脱粉の値段と国内の脱粉の値段の比較をひとつ伺いたい。
  88. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 ここにこまかい数字を持っておりませんので、後ほど資料によって提出させていただきます。
  89. 石田宥全

    石田(宥)委員 大体トン当りにしてアメリカのものは約六万円、日本のものは三十万円程度だと思うのですが、どうですか
  90. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 日本の脱脂粉乳は大体三十万円前後、向こうのアメリカの脱脂粉乳は、これはCCCから無税で特別の価格で学校給食会が買っておるわけでありますが、五万円程度であろうと思っております。
  91. 石田宥全

    石田(宥)委員 こういうふうに、本来ならば、こういう問題をずっと並べておいて、さっき農林大臣と議論したような論議に発展しないと、実際の議論にならない。抽象論になるのですね。  それから、次にやはり、さっき前段に申し上げたように、乳製品は輸入しないと岸内閣以来池田さんも佐藤総理も主張しておるところの乳製品であるオーストラリアンチーズ、ナチュラルチーズ、これは三十八年、三十九年でどの程度輸入されておりますか。
  92. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 御承知のように、ナチュラルチーズは現在AAになっておりまして、三十八年、三十九年の輸入量は、三十八年が大体四千トン前後であったかと思っております。三十九年になりまして、これはナチュラルチーズとして六千トン程度のものが輸入されておるわけでございます。
  93. 石田宥全

    石田(宥)委員 私の持っている日本貿易振興会の調査によると、三十八年には六千五百トン、国内生産の二分の一というふうに書いてありますが、これは日本貿易振興会の記録のほうが間違っておるのでしょうかどうでしょうか。あまり数字に開きがありますね。
  94. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 私の記憶違いでございまして、そちらの数字が正しいと思います。大体の割合は、日本の国内チーズの半分くらいがナチュラルチーズとして輸入されておるわけでございます。
  95. 石田宥全

    石田(宥)委員 どうものらりくらり答弁で、資料がないとか、あるいは思い違いであったとかいうようなことでは、これはほんとうに審議にならないですね。委員長、それはどうです。私はやはりこういう具体的な事実を積み上げていかなければガットの改正の本論に入れないのです。そうじゃないですか。大体三十八年の輸入量は六千五百トン、国内生産の約二分の一、昭和三十四年に比較すると十四倍になっておるわけです。農業基本法ができるときにわれわれはその点をやかましく追及したのですけれども、乳製品は絶対に入れません、こう言っておったのが、日本の全生産量の二分の一の六千五百トンというチーズを輸入しておる。そうして、昨年は六万トン、正確にはもっと多いのですが、ことしは五万トンの脱粉を輸入する。一方において畜産は成長作目だといって奨励しておきながら、一方においては国内価格の五分の一程度の値段の脱粉を大量に輸入しておる。あるいはオーストラリアンチーズというようなものを大量に輸入しておる。日本の国内生産の二分の一に及ぶところの大量の輸入をやっておる。このあとで、さっきぼくが農林大臣と議論をしたような議論にならなければしっくりしないのですけれども、農林大臣逃げておるのだけれども、私は、理論としては、今度のガット改正で、低開発国の一次産品の輸入をして低開発諸国の住民の生活を向上せしめ生活の安定を期するという方向にいかなければならないという議論は、議論としてはわかる。けれども、そういう国内産と外国産と競合するものに対して、国内の農業をいかに合理化し、いかにコストダウンをはかるかということに何らの努力もしないでおいて、そうしてここで、一次産品をさらに大量に輸入をし、関税を引き下げようとするガットの改正には、私は遺憾ながら賛成するわけにいかないのです。だから、そういう点については、やはり外務大臣なり農林大臣が出たところで本格的な議論をしなければ、これは議論になりません。しかし、きょうは具体的な問題をもう少し伺っておきましょう。  それから、次に伺いたいのでありますが、オーストラリアンチーズについての関税と、それから、ニュージーランドのマトンが大量に入っておりますが、この量がどれくらい入っておるか、その単価が幾らくらいか、関税はどうか、それから、アルゼンチンでは日本向けの食用馬の奨励をやっておりまして、これはかなりの量が輸入されておりますが、アルゼンチンの馬肉の輸入の量と単価と、それから関税、この問題をひとつ伺っておきましょう。
  96. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 お答えいたします。  羊肉の輸入につきましては、昭和三十八年におきまして四万八千七百トン、それから三十九年におきましては六万一千四百トンでございます。それから単価でございますが、数字を調べまして後ほどお答えいたします。
  97. 石田宥全

    石田(宥)委員 関税、——大蔵省。
  98. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 関税率についてお答えいたします。  マトンでございますが、これは一〇%ということに相なっております。それからナチュラルチーズでございますが、これは三五%ということになっております。
  99. 石田宥全

    石田(宥)委員 アルゼンチンの馬はどうです。
  100. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 馬は一〇%でございます。
  101. 石田宥全

    石田(宥)委員 畜産局の参事官、アルゼンチンの馬はどうですか。
  102. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 いま資料を調べまして、後ほど御報告さしていただきます。
  103. 石田宥全

    石田(宥)委員 全く話にならない。こういうような状態で、日本で奨励したところの、政府がかねや太鼓で奨励したところの畜産というものがようやく盛んになってくると、外国の安い乳製品以下馬肉やマトンが大量に輸入される。さらに、チキンにおいては、いわゆるチキン戦争といわれたEEC諸国とアメリカの間に長い間の紛争がありましたが、それがおさまりますと、今度は日本に向けてこれが行なわれてまいりました。今日ブロイラーの輸入量というものは相当な数にのぼっておると思うのでありますが、ブロイラーの輸入の数量、それから単価、日本国内価格との比較、これをひとつ伺いたい。それから、日本でいま養鶏が行なわれておりますが、養鶏の羽数はおおよそ一億二千万羽といわれております。そのうちアメリカから輸入されておるものはどのくらいなのか、この数字も承りたいと思います。
  104. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 ブロイラーの輸入につきましては、御承知のように、三十八年が三千七百トンほど輸入されまして、三十九年におきましては五千六百トンくらいだったと思います。それから、関税は、三十九年四月から従来の一〇%の関税を二〇%に上げております。それから、ひなの輸入数量は、三十八年、三十九年とも大体百十万羽程度でございます。ブロイラーの価格でございますが、これは、関税を二〇%上げました関係で、大体国内の価格とバランスがとれる、そういう段階になっております。したがいまして、将来の輸入量がそうこれからさらに大きく飛躍的にふえるというような点はなかろうかと考えております。そして、国内産のブロイラーの生産量もここ四、五年急速に伸びまして、現在七万トン程度、一応これは廃鶏とブロイラーと両方合わせまして十七万トンくらいと思うのでございますが、そのうちブロイラーの分は七万トン程度と推定をいたしておるのでございます。それから、価格でございますが、一応三十八年一月から十二月の数字をとってみますと、GアンドFで鶏肉の価格は一トン当たり二十六万四千円、こういう価格でございまして、キロに直しますと二百六十円程度の価格、そういう段階になっております。  それから、先ほど申し残したわけでございますが、アルゼンチンの馬肉の輸入量は、これは三十八年一月から十二月までの数字でございますが、一応一万二千トンでございまして、単価は百十三円、こういうことに相なっております。
  105. 石田宥全

    石田(宥)委員 いま、国内で飼われておる鶏の一億二千万羽ほどの中に百十万羽ほどがアメリカから入っておると言われておるのですが、これは何か間違いでありませんか。もっと相当たくさん入っておるようですが、どうですか。
  106. 吉岡茂

    ○吉岡説明員 私先ほど百十万羽と申し上げましたのは、種鶏として一応輸入されておるものを申し上げたわけでございまして、これはまあ百十万羽程度でございますが、ほとんど大部分が種鶏として輸入されておる、そういうように私たちとしては推定をいたしておるわけでございます。それから、一億二千万と申しますのは、これは採卵鶏の全部でございまして、そのうちの種鶏というのは大体六百万程度ではないか、そういうように私たちは推測をしておるわけでございます。
  107. 石田宥全

    石田(宥)委員 この点もどうも数字があいまいです。はっきりした数字をあとでひとつお届けを願いたいと思います。そういうふうに非常に食い違っておったのでは困るのです。  それから、アルゼンチンの馬肉も、この日本貿易振興会の三十九年版によれば、一万五千三百五トン、こういうことになっております。あなたのほうの資料はどこから得られたのか、農林省のとり方、通産省のとり方、何か非常にちぐはぐなようですが、そう大きな開きがあったのでは議論になりませんよ。あとでひとつ説明に私のところへ来てください。  いまお聞きのようなことでありまして、きわめてちぐはぐで、もう議論にならないと言ってもいいくらいです。  そこで、畜産について私はいま二、三のものについてお尋ねをしたわけですが、次に、今度のくだものについて若干触れておきたいと思うのであります。先ほども申し上げたように、畜産と果樹は成長作目だということで、一番農林省が有利だ宣伝をし、盛んに増植を行なわせたところのミカンは十年間に二・六倍になったといわれておる。さらにその上に増植が行なわれておりますが、御案内のように、輸出市場がおもにカナダ、アメリカ等であったのが、スペインなどのミカンに押されてまいりました。それに、さらに、アメリカの国内でもカリフォルニア・ミカン、フロリダミカンというものが栽培され、それが最近ではかなり出始めてまいりました。こういうことになると、果樹の中で一番有利だといわれたミカンの将来の販売についての見通しが危うくなったのではないかと考えられるのです。農林省はこれに対して一体どういうふうに指導をされようとしておられるか。昨年の秋から卸売り価格は二、三割も低下しておる。しかし将来は相当の価格であり相当利益があったからあまり問題はないとしても、将来性となるとこれは非常な疑問を持たなければならないと思うのですが、これはいかがでしょうか。
  108. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 お答え申し上げます。  ミカンにつきまして実は昭和三十七年に果樹の長期見通しをつくったのでございますが、そのときに、四十六年ごろに大体供給が需要に対して七四%くらいになるであろうというような考え方を持っておったわけでございます。ところが、その後毎年の新値状況が非常にふえておりまして、その当時は大体六千七百町歩くらい毎年新植されるだろうということを考えておった次第でございますが、その後の実績を見てみますと、平均しまして九千町歩くらいになりまして、特に三十九年は一万町歩をこえるというような状況になった次第でございます。それで、昨年度におきまして長期見通しの反省をいたしまして、そういうような一万町歩程度でいくのでございましたならば大体八七%か九〇%くらいに供給がなるのじゃないだろうかという見通しを立てまして発表したような次第であります。先生仰せになりますように、ミカンの最近の著しい新植によりまして需給状況もだいぶ変わっております。本年度は、もちろん豊作でございましたので単価が下がった、あるいは果実が比較的小さかったというようなこともございまして、卸売り価格がいま仰せになりましたように下がったのでございますが、今後の事を考えましたならば、まず適地にミカンを植えるということをやってまいりますことが必要であり、しかも、それを集団化いたしまして、経営面積を大きな面積にしていく、そうしてできるだけ機械化をやってまいる、あるいはまた、今後生産されましたものの販路につきましては、従来は国内の価格が高かったものでございますから十分輸出されなかったというようなこともございますが、今後はできるだけ輸出にも力を注いでまいり、あるいは加工にも力を注いでいくというような総合的な対策によりまして、その生産にあたって遺憾のないようにやっていきたいというように存じております。
  109. 石田宥全

    石田(宥)委員 園芸局長に伺いますが、干しブドウが最近非常に大量に入ってくると同時に、干しブドウによるブドウ酒の醸造が行なわれまして、干ブドウの競争からブドウ酒の競争の段階にまで入ったといわれておるのでありますが、干ブドウの輸入の状況、それから国内の干しブドウとの価格の対比、それから関税をひとつ承りたいと思います。
  110. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 干しブドウが最近特に問題になっておりますのは、干しブドウをブドウ酒の原料に使うということでございます。それで、三十八年に干ブドウといたしまして一万五千トン程度輸入をされております。それから、輸入価格がキロCIFで百二十四円でございます。それで、千ブドウをブドウ酒に使いますときには、前年度にブドウ酒に使いましたなまブドウの数量の四%に干しブドウの数量を押えるということで規制をいたしまして、国内産のなまブドウに影響がないように心がけておるような次第でございます。
  111. 石田宥全

    石田(宥)委員 大蔵省の関税局国際課長ですか、干しブドウの関税の問題をちょっと……。
  112. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 関税というのは二通りになっておりますが、大部分五%と考えていただいてよろしいかと思います。
  113. 石田宥全

    石田(宥)委員 種類別に、大体五%というのはどういう関係とどういう関係で五%になるかということを……。
  114. 大谷邦夫

    ○大谷説明員 基本税率といたしまして、かん詰め、びん詰め等のびんものでございますが、容器とも一個の重量が十キログラム以下のものが一〇%、それ以外のものが五%ということに相なっておりますが、現実に入ってくる状況はそれ以外のものが大部分でございますので、現実の適用は五%が大部分であるということを先ほど申し上げたわけでございます。
  115. 石田宥全

    石田(宥)委員 それから、これを皆さんに伺ってもどうかと思うのでありますけれども、さっき農林大臣も言われたように、今度は砂糖法案が出されたわけです。砂糖の法案というものについては、一面においては農林大臣も言われたように国内甘味資源をつくっておる農民の保護政策ということも言われておるのでありますけれども、これは、いま政府が物価対策と取り組んでおるというときにあたって、砂糖価格が下がって、一般国民がようやくこれだけはちょっと下がって喜んでおるというときに、今度の法案というものは砂糖価格引き上げ法案と言っても過言ではないのです。この砂糖の法案というのは、バナナの問題と同じような性格があると思うのです。物価対策が非常に政府として重要な問題であるにもかかわらず、一方は高関税政策をとり、一方はいろいろなことで安定帯価格と称する価格引き上げ政策をやっておるわけですね。これは外務省の経済局参事官、それから農林省の経済局長、大蔵省にも伺いたいのでありますが、バナナの関税は、基本税率は三〇%であるのに、現実には七〇%の臨時措置を延期している。砂糖法案で砂糖価格を引き上げる、バナナは基本税率が三〇%であるにもかかわらず七〇%の臨時措置の延期をやっている。一体この目的は税収入を目的として考えているのか、物価引き上げとして考えているのか、輸入抑制として考えているのか。これは政治上のことで、本来ならば大臣考えを承りたいところでありますけれども、大臣考えは別の機会に承るといたしまして、いま申し上げた砂糖とバナナの問題についての基本的な考え方を承りたいと思います。
  116. 久宗高

    ○久宗政府委員 砂糖の問題につきましては、先ほど大臣から申し上げたようなことでありますが、基本的には国内糖価の安定が本来のねらいでございます。それから、バナナの問題につきましては、いろいろ経緯がございますが、御承知のとおり、自由化をいたしましてから急速に数量がふえておりました。また、取引の内容にいたしましても、たいへん方々から御批判をいただくようなことで、現在のところこんとんとした状況になっておるわけであります。私どもといたしましては、台湾との関係でございますが、国内の取引体制を整備いたしまして、輸入の機構も最近通産省と農林省と御相談いたしまして急速にこれを取りまとめようとしておるわけでございますが、その過渡期にございますのと、また、御承知のとおり、非常に急速な量の拡大によりまして、当初予定しておりましたよりも国内の果実等に相当の影響があるというふうに考えますので、このバナナの輸入体制が多少めどがつきますまでの間、いまの非常に高率でございますが七〇%という関税はやむを得ないと考えておるわけでございます。したがいまして、性格といたしましては、国内の他の果実の生産に非常に影響があるということでこれがはずせないのが実情でございます。
  117. 内田宏

    ○内田説明員 お答え申し上げます。  本件は農林省主管物資でございまして、外務省といたしまして農林省よりそういう御説明を受け、さよう承知いたしております。
  118. 石田宥全

    石田(宥)委員 そこで、バナナの関税を七〇%としていまの相場が出ておるわけですけれども、五〇%にした場合にどれくらいに下がるか、基本税率を三〇%に下げた場合に価格はどれくらい下がるとお考えになりますか。
  119. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 お答え申し上げます。  関税によりまして必ずしも価格がそのとおり構成されるというものではないわけでございますが、現在台湾から輸入しておりますのは一かごCIFで八ドルということになっております。それで、八ドルに七〇%の関税を加える場合と五〇%の関税を加える場合と、そこに差異が出てくるということでございます。そうして、その他はやはり非常に数量によって価格が違ってまいるということだろうと存じております。
  120. 石田宥全

    石田(宥)委員 そういいかげんに答弁をごまかすつもりかもしれないけれども、ちゃんと通産省ではこう言っておるのですよ。台湾バナナの場合、関税七〇%の場合では一キログラム当たり百二十二円四十三銭、五〇%の場合は百九円六十三銭、三〇%の場合は九十六円八十三銭、こういうふうにちゃんと数字をあげておるのですよ。それくらいのことは勉強しておきなさい。これは、関税定率法の関係や臨時措置法との関係、それから、国内でいま政府は物価問題とあんなに強く取り組んでいるというのに、一体物価引き上げのための政策をとるようなことをやっておるじゃないですか。そういうことではいけませんよ。だから、私はそれを聞いておるのです。  レモンの問題についてちょっと伺いたいのでありますが、レモンの関税定率は何%で、現在は何%となっておるか。
  121. 林田悠紀夫

    ○林田政府委員 お答え申し上げます。  レモンの基本税率が二〇%でございまして、現在の協定税率は一〇%になっております。
  122. 石田宥全

    石田(宥)委員 そうなると私どもは文句があるのです。今度のガットの改正では、低開発国の一次産品の受け入れ態勢を強化する、同時に、その関税は引き下げるという含みで改正をしようというのです。ところが、アメリカから入ってくるレモンには、関税定率法では二〇%であるにもかかわらず、それを一〇%に引き下げておる。バナナは、関税定率は三〇%であるにもかかわらず、七〇%の暫定措置をやっておる。一体これは外務省ではどういうお考えなんですか。農林省所管だとおっしゃるけれども、まさに逆行するものじゃないですか。低開発国から輸入するものの関税は下げる、先進国からの関税は上げないにしても同率ぐらいにするということが、私は条約の趣旨でなければならないと考えておるのです。しかるに、低開発国のバナナは七〇%を取り、レモンは関税定率は二〇%であるにもかかわらず一〇%に押えておる。一体、こういう矛盾したことが行なわれておって、今度のガットの改正などというものは何の意味を持つかとわれわれは言わざるを得ないのです。この点はひとつ、もう農林省は問題にならぬ。外務省のひとつ見解を明らかにしてもらいたい。
  123. 内田宏

    ○内田説明員 石田先生の御質問に対しましてお答え申し上げます。  このバナナ、レモンの問題、農林省主管としてございまして、国内政策上いろいろな事情もあると存じまして、外務省といたしましては、農林省が慎重に御検討願った結果出された御結論を尊重いたしております。
  124. 石田宥全

    石田(宥)委員 そうなりますと、もう全く農林省の責任ということを言わざるを得ないのでありまして、経済局長、ひとつ言うことがあったら承っておきます。
  125. 久宗高

    ○久宗政府委員 バナナとレモンが比較されまして、また、たまたま入っておりますところが先進国と低開発国に分かれますので、そういう御議論が出たと思うのでありますが、バナナの高率関税につきましては、もちろんこれは低開発国からの輸入という形になりますけれども、問題は少し違うと私は思っております。と申しますのは、バナナ自由化の際にも相当国内で議論があったような経緯がございまして、相当極端な増産が先方で進んでおりますので、これが意外に非常な勢いで、予想いたしましたよりも非常に膨大な数が、しかも短期間に入ってきたわけでございます。同時に、国内体制がはなはだ不十分でございまして、過当競争になっております。実態から申しますとむしろ最近では買い手市場と申しますか、こちらの需要から見ますとそれをオーバーするほどのものが増産される気配にございますので、本来から申せばわがほうがむしろ買い手市場というかっこうになる性質のものだと思うのでございます。残念ながら、非常に輸入体制が整備されておりませんために、過当競争になりまして、先ほど園芸局長から申し上げましたような買い手市場にかかわらず、たとえばプレミアム問題が出ますような事態であるわけです。そこで、私どもといたしましては、御指摘もございました物価問題ももちろんございますけれども、バナナの無秩序な輸入関係が継続いたします場合には、もちろん国内の果樹の順調な発展に阻害を来たしますし、また、このままの形でございますと台湾におきましての無秩序な増産がさらに進むおそれがございますので、つい最近でございますが、通産当局ともお話をいたしまして、急速な輸入体制の整備にかかりました。これによりましてバナナの輸入というものを国内の果樹増産とも関連をいたしまして適当な量に調整をしてまいりたいということを考えておるわけでございます。これがやはり総合的に見ました場合に果樹におきます価格対策にむしろなるわけでございまして、このままの形でまいりました場合に、国内の果樹に非常な影響があって、順調に伸びてまいります増産体制が阻害されるというようなことになりますと、これまた、長期的に見ますと、もっと合理化ができまして価格水準が長期的には引き下げられるような体制にもひびが入るというふうに考えまして、物価問題といたしましはいまのような考え方で処理いたしているわけでございます。したがいまして、低開発国だから高くする、あるいは先進国から入るものは安くするという考えでやったものではありませんで、たまたま対比されますとお話のような形になりますが、これは私は全く別の考えで対処しておるわけでございます。また、農林省といたしましては、先ほど来御指摘も受けております穀類その他の問題につきましても、低開発国のいろいろな御要望もございますし、また、最近では、長期的に見ますと、かりに需要供給の関係についていろいろな見方がございますけれども、たとえばえさにいたしましても、相当広範囲に相当多岐にわたる輸入源を持っておりませんとあぶないという考え方で、いろいろな国から入れる対策を今後考えているわけでございますし、特に低開発国のほうで価格条件なり生産条件が整ってまいりますならば、できるだけそちらから買いたいということも努力しているわけでございますので、農林省といたしましては、繰り返し申しますように、特に先進国に対して有利に、低開発国に対して高率なという考え方は全然持っておりませんので、この点は誤解を解いていただきたいと思います。
  126. 石田宥全

    石田(宥)委員 物価問題として考える場合は、これは局長のいまの答弁はなっちゃいないです。バナナというものは、栄養も高く、子供などにも非常に嗜好の高いもの。レモンというものは庶民的なものではありませんから、レモンなどはもっと高くとも国民全体から見れば大した痛痒を感じないもの。バナナというものはそうじゃなくて非常に庶民性のあるもの。そういう点ではいまの御答弁の中で物価問題としての考え方はやはり筋を通しておかなければならないと思う。そこで、レモンなどについてはもっと関税を上げても差しつかえがない、私はこう考える。しかし、バナナについては、いろいろな事情がありましょうけれども、——だから私さっき農林大臣に言ったのです。そういう事情があるから、競合するような場合における国内の生産体制を整備し、生産費を下げるような政策を行なうべきであるということを言ったのです。話が逆になるからすっきりしなくなったわけですけれども、こういう実例の基礎の上に立ってその議論に発展していけば、いかに政府が農業基本法体制をなおざりにし、かつまた怠慢であったか、農業の近代化というものに対する怠慢ぶりが明らかになると思うのです。それとの関連なしには、われわれはこのガットの改正というものに賛成することはできないのです。さっき私が言ったように、基本的には賛成すべき条約です。しかし、そういうもろもろの関係がありまして、国内の農業に深刻な打撃と影響を与えるということになると、これは考えざるを得ない。バナナのごときは、私は台湾も訪問しましたし、その他の国も聞いておりますが、関税の高いことを非難しております。今度このガットの改正が行なわれたとするならば、直ちにこの問題が出てくるであろうことは想像にかたくない。いますぐといっても、いま局長が御答弁になったような事情がございましょう。いますぐはやれない事情でしょう。しかし、いますぐやれないような情勢をもたらした政府の責任を追及したいのです。基本法ができて、畜産、果樹は成長作目だといって政府が奨励しだしてからもう五年になります。そして、改めなければならない点は少しも改まらないで、悪い面だけがかえって助長されたような形になっておる。私はその点をほんとうは外務大臣なり農林大臣に反省を促したかったのです。時間がないといってほんとうの議論ができなかったのでありますけれども、私は、日本政府としては、やはりそういう総合判断の上に立って条約にも取り組むべきであるということをかたく信じておる。今後機会がありましたならば、やはり大臣に対してもそういう点を強調してもらいたい。そして初めて、日本の農業というものの方向がどうあるべきか、農民がみずから判断して誤りなきを期していこうと努力し、勉強もするでしょう。いままでの政府の言われたことは、一口に言えば全くでたらめだったと言わざるを得ないのです。奨励をしておきながら、安い畜産物をどんどん輸入してきておる。乳製品は入れないと言いながら、脱粉を大量に入れておる。ナチュラルチーズを日本の全生産量の半分も入れておる。しかも値段は非常に安い。脱粉のごときは五分の一という安い値段のものが入ってきておる。酪農は一体立つ瀬がないじゃないですか。そういう点も総合して政府は農政なりあるいは関税政策なりというものと取り組んでおるかどうか、はなはだ私は疑問に思うのです。少なくとも農政に関する限りは行き当たりばったりで、全くどこをつかまえていいかわからない。私は、これは政府当局の責任であり、また与党の責任でもあると思うけれども、一面農林省の高級官僚の責任というものは許すことはできないと思うのです。大臣が一々そんなこまかなことを知っておるわけはないので、農林省の高級官僚はやはり一定の見通しを立てて、そして自信と勇気を持って、やるべきはやる、予算措置も要求すべきは要求する、そういうき然たる態度が見受けられないのははなはだ遺憾です。西ドイツをごらんなさい。西ドイツのグリーンプランというものは、日本もそれを手本にしたのでありますけれども、あのグリーンプランに対しては相当な抵抗があった。しかし政府は押し切った。相当な予算の増額をやって押し切った。今日、農業人口は三〇%以上も減ったけれども、農産物の生産は三倍になったといわれておる。そういう基礎の上に立って、フランス農業と競合ができるという自信を持って、あのEECの中で農産物についての取りきめを行なっておるのです。日本の農林省は何ですか。農林省の高級官僚はもっと勉強して、自信を持って与党にも大臣にもきちっと進言をして、いま私が二、三指摘をしたようなこういう矛盾をなくさなければなりませんよ。それが国の正しい政治の姿勢でなければならないと私は考える。いま大臣も次官もいないから、私は皆さんに答弁を求めようとしませんが、これはひとつ肝に銘じておいていただきたい。機会があれば、私は予算委員会その他でこの問題は何回でも議論をしなければならない問題だと考えております。  あともう一、二伺いたいのでありますが、これは外務省と大蔵省ですか、ガットの関税一般についてですが、アメリカとEECとの間で若干意見の相違がありまして、アメリカ案では一括引き下げを強く主張しておりますし、それからEEC案では一定品目の保護水準を固定させてやりたいという意見のようです。これについてのいろいろな動きが最近あるようでありますが、これの結論が出るということは容易でないとは思いますけれども、最近新聞の伝うところによると、今年の八、九月ごろまでにはほぼ何かまとまるのではないかというような報道もございます。これについての動きについて、また見通し等がございましたならば、承っておきたいと思います。
  127. 内田宏

    ○内田説明員 お答え申し上げます。  石田委員御指摘のとおり、アメリカとEECとの考え方の相違がございまして、現在ガットの中の御承知のケネディラウンドの中で農業委員会というのがございまして、ここで議論をいたしておりますけれども、まだ非常に開きが大きいものでございまして、御指摘のように九月ごろまでに妥結するのかどうかということは、いまのところ申しかねる状態でございます。
  128. 石田宥全

    石田(宥)委員 新聞ではいろいろ報道されておりますから、大体の見当はつくようなものでありますけれども、その点はその程度にいたしまして、問題はやはり例外規定としての農林水産物資の例外品目、これはやはり農林省の所管だろうと思うのでありますが、どの程度にお考えになっておられるか。これはやはり、農林省の考え方、見通しというものが一日も早く明らかになることが望ましい。しかしながら、主張はこうだと言ってもその主張どおりにいくかどうかということは別の問題でありますが、やはり、農林省としての農業保護のたてまえという点から考えて、農林省のこれに対する考え方を承っておきたいと思います。
  129. 久宗高

    ○久宗政府委員 ケネディラウンドが問題になりだしてから、御承知のように、最初は農林物資も他の工業製品も一緒に扱うということで進んでまいったわけでございますが、昨年の十一月に工業製品につきましては例外品目を関係各国が出し合いまして協議に入っているわけでありますが、農林物資につきましては、先ほど先生も御指摘のありましたような、主としてEECとアメリカとの間に相当根本的な取り扱いの食い違いがございまして、どういうルールに従ってみんなが問題を持ち寄るかという、そのルールが実はできないわけであります。そういうこともございまして、十一月以降農産物が切り離されまして、そのまま今日に至ったわけでございますが、最近になりまして、ルールをまずきめてということは非常に困難でございますので、もう少し柔軟な形で協議を再開しようじゃないかという動きが出てきておるわけでございます。ただ、私どもの感じといたしましては、どうも今日までEECとアメリカで言ってまいりました考え方の食い違いというものは相当根深いものがございまして、そう簡単にまとまるというふうには思い得ないわけでございます。また、日本側といたしましては、一貫して考えております点は、このケネディラウンドが始まりましてからの各国の動きをしさいに見ておりますと、少なくとも農林物資につきましては、相当それぞれの国がそれぞれの特殊な事情をナショナルインタレストという感じをもって強く言い張っておるわけでありまして、必ずしも、一般的に考えられておりますような、少なくとも数年前に考えられておりましたような、自由化万能という感じよりは、むしろ農産物についてのそれぞれの困難性が相当露骨に論議されまして、しかもこれはそう簡単でない、工業製品と同じような扱いはできないし、それぞれの国の実情に即して処理しなければならないのだという感じが、おのずから関係各国の間に浮かび出てきたように思うのであります。日本といたしましては、もちろん、先ほど来大臣も申し上げましたように、相当大きな農業上の変化をいま経験しておるわけでございますので、輸入量も過渡的に非常に増大しておるわけでございます。構造改善の過渡期におきましてそう簡単に門戸をあけるわけにはいかない、さような観点で、この問題には非常に慎重に対処いたしたいと考えておるわけでございますが、主張といたしましては、少なくとも現在EECないしはアメリカの間で議論されておりますのは、貿易量の拡大という問題をそれぞれ持ちまして、たとえばEEC国におきましても、輸入国と申しますよりは、やがて過剰ができて、それが輸出に向けられる場合の市場の問題があるようであります。したがいまして、日本のようにどんどん需要が拡大いたしまして貿易量が単純にふえておりますというのは非常にレアケースのように思われるわけであります。そこで、私どもといたしましては、それぞれの国内政策に各国が関与いたしまして国内政策そのものについて論議をいたすことがいまガットで問題になっておるわけでありますけれども、むしろ日本といたしましては現在まで世界貿易の拡大に非常に貢献しておるわけでございますし、また、将来の見通しといたしましても、それが急に減るとは考えられない、そういう日本の現在の貿易の見通しから申しまして、すでに相当大きく貿易拡大に貢献いたしている点を、いわば武器と申しますとことばが過ぎるかもしれませんが、そういう点の評価を一般的に認識してもらうことと同時に、また、構造改善の過渡期でございますので、特殊な分野におきまして、非常に一般的な輸入制限というような方法が問題にされますけれども、それを簡単に排除できないという事情も強く訴えまして、対処いたしたいと考えておるわけでございます。  お話の中に出ました低開発国の関係にいたしましても、現在までのところでは、単純にこれを自由化いたしましたときにおきましても、品質その他の関係がありまして、先進国と後進国が競合して扱っておるような品物につきましては、単純に門戸をあけたのでは、先進国のほうから価格もよろしいし品質もいいというようなことで入ってきてしまう問題もありまして、単純に輸入制限ということをなくなしたらすぐ低開発国の希望に沿えるかという点も、実は問題が残っておるわけでありますので、さような問題も含めまして、単にガットにおける多国間の問題のみでなく、二国間におきますいろいろな具体的な取りきめを通じまして処理していったらよかろうという考え方で対処いたしたいというふうに考えておるわけであります。
  130. 石田宥全

    石田(宥)委員 大体伺いましたが、一番大きな関係を持っております農林省のほうの考え方が何かすっきりしない面があることは、はなはだ遺憾に存じます。  私は、予定といたしましては、このあと、国連の内部において食糧問題についての諸事情を検討され、すでに発表されておる問題もありますので、そういう問題を取り上げ、そしてやはり今後の国際情勢に対する農業のあり方というものについてもう少し深く実は掘り下げたいと思ったのでありますが、大事な大臣も次官もおりませんし、また次の機会にいたします。  ただ、先ほどから申し上げておりますように、この事態があまり明らかになりませんと、今回の改正は基本的にはわれわれは賛成すべきものと了解しておりますけれども、現在の政府の姿勢の中では、きょうの質疑の中にあらわれた事情のもとにおいては賛成をいたしかねるような状況でございますので、さらに党内に持ち返りましてよく協議の上に態度の決定をいたしたいと考えるわけであります。たいへん時間をとって相済みませんでしたけれども、以上で私の質問を終わりたいと思います。
  131. 安藤覺

    安藤委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる五月七日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後二時五十八分散会