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1965-04-14 第48回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月十四日(水曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 椎熊 三郎君 理事 高瀬  傳君    理事 野田 武夫君 理事 戸叶 里子君    理事 帆足  計君       菊池 義郎君    竹内 黎一君       濱野 清吾君    福井  勇君       増田甲子七君    三原 朝雄君       森下 國雄君    石野 久男君       石橋 政嗣君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    西村 関一君       永末 英一君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安川  壯君         外務事務官         (移住局長心         得)      山下 重明君         運輸事務官         (船員局長)  亀山 信郎君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房外務         参事官)    西堀 正弘君         外務事務官         (条約局外務参         事官)     佐藤 正二君     ――――――――――――― 四月十四日  委員河野密辞任につき、その補欠として岡田  春夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として河  野密君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月十二日  在日朝鮮公民祖国との往来実現に関する陳情  書外二十四件  (第一七号)  同外二十五件  (第一一〇号)  同外十四件  (第一七二号)  同外三十五件  (第二二九号)  日中国交回復に関する陳情書  (第一八号)  沖繩祖国復帰に関する陳情書  (第一九号)  同  (第一七一号)  同外二件  (第  二二六号)  沖繩施政権返還に関する陳情書  (第二〇号)  同  (第二二七号)  沖繩住民国政参加に関する陳情書  (第二一号)  ナセル大統領及びベンベラ大統領日本訪問実  現に関する陳情書  (第一一一  号)  米原子力潜水艦日本寄港反対に関する陳情書  (第一一二号)  原水爆禁止に関する陳情書  (第一一三号)  ボリビア国サンファン日本人移住民の保護に関  する陳情書  (第一六九号)  米原子力潜水艦日本寄港及びF一〇五D戦闘  爆撃機配備反対に関する陳情書  (第一七〇号)  沖繩及び小笠原諸島施政権返還に関する陳情  書外一件  (第二二八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(日韓及びヴィエトナム問  題)      ――――◇―――――
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 外務大臣にお尋ねいたしますが、日韓交渉が仮調印をしましたあと、今日の両国の間におけるところの折衝事情等については、先般経過報告が若干ありましたけれども、その後どういうふうに進んでおるかということについて、簡単でよろしいですからひとつ御報告していただきたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一応、漁業問題、それから請求権及び経済協力、第三は在日韓国人の法的の地位、この三つの問題にイニシアルをいたしまして、そしてこれの条文取りまとめにいまかかろうとしておる、こういう状況でございます。
  5. 石野久男

    石野委員 折衝はいろいろと行なわれていると思いますが、その後における李ライン問題といいますか、李ライン問題は今度はなくなるはずなんでしょうが、漁業の問題では非常にこのトラブルが起きているようでございます。日本船韓国漁船との間に。こういう問題に対してどのような処置をされておりますか。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私もまだ事実を詳細に突き詰めておりませんが、イニシアルができたというので、日本漁船がだいぶ向うの沿岸に迫ったところに出漁をいたしたようであります。もちろん、いわゆる専管水域を約束されておる区域ではないようでありますけれども、それに対していま向こうが非常な脅威を感じて、これに対して向こうが動揺をし非難の声をあげておる、こういう状況であるようであります。わがほうといたしましては、とにかく交渉の最中でありますから、たとえそういう見通しが濃くなったとはいうけれども、従来の状況が、ここに確定的にきまったわけでもない、変化が生じたわけでもない、そういう状況であるので、慎重に行動するようにということを農林当局から現地漁業団体等に示達をしたはずであります。そして、同時に、御承知のとおり、官房長官談あるいは農林大臣談というものを発表しておる、こういう状況であります。
  7. 石野久男

    石野委員 あとのほうがちょっと聞き取りにくかったのですが、とにかく、今度の日本漁船南朝鮮漁船との間に起きたトラブルというのは、イニシアルが行なわれたその範囲における専管水域には入っていないんだ、けれども、韓国の側で脅威を感じて問題がごたごたになってきたんだ、いま外相お話はこういうようなことでございましたが、日本の船は新聞報道されているようにいわゆる韓国側水域等に入っていったりあるいはまた韓国漁船に迷惑をかけるようなそういう事実はないのだけれども、ただ韓国の側で恐怖を感じてものごとが騒がしく伝えられているんだ、こういうふうに受け取ってよろしいわけですか。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう問題について十分に実際問題として突き詰めておりませんので、どの程度まで行っておるのかよくわかりませんけれども、まあごく大ざっぱに言うと、私がさっき申し上げたようなことであろう、こう考えております。さらに、何か向こう漁船と接近して向こう漁船損傷を与えたとかいうようなことが言われておりますけれども、そういう問題がはたして事実起こったのかどうか、そういう点もまだよく調べておりません。
  9. 後宮虎郎

    後宮政府委員 大臣の御説明に事実関係補足説明を若干いたしますと、まず、あの辺に出漁しました船につきまして、船の隻数につきましては韓国側は二百隻というふうに言っておりますが、日本側調査いたしましたところでは大体八、九十隻の間くらいというようでございます。大体いま大臣の御報告のございましたように、十二海里の中には入っていない。  それから、船の損傷の問題につきましては、こちらの鋼鉄船が先方の木造船に突き当てて二十万円程度損傷を与えたと韓国側のほうでは申しております。そこで、水産庁及び海上保安庁でもこの事態を非常に重視いたしまして、損傷を与えた船がほんとうにあったのかどうか、特別に調べるように訓令も出しておりますし、それから、現場から根拠地へ引き揚げてきました船舶につきましても、そういう衝突したあとがあるかどうか、特に念入りに調べるように訓令を出しておるのでございますが、昨日の正午までのところではまだ衝突したというようなことに該当するような船は見当たらないというように海上保安庁のほうで報告いたしております。
  10. 石野久男

    石野委員 新聞報道は、非常に問題がめんどうくさくなってきておるように報道されておるわけです。いま局長あるいは外務大臣の御答弁を伺ったわけですが、そういうような事実はないということになりますると、これは日本の諸外国に与える影響から言いましても、また日本漁民立場からしても、困ったことだということになります。これはやはり政府としてもほっておくわけにいくまいと思うのだが、そういう点について政府は何とか処置しますか。大臣、どうですか。
  11. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いまアジア局長からお答えしたように、まだ事実関係がはっきりしておりません。その関係がはっきりいたしまして、これに対してどういう措置をとるか、考えたいと思います。
  12. 石野久男

    石野委員 漁業問題等については韓国の側でも非常に重要視しておるし、特に李ラインの問題については韓国の側にもこれを死守せよという強い意見があるわけです。そういう問題を中心にして韓国ではまたいろいろな問題が新しく出てきつつあると思います。いま外務大臣は、事実を調査した上で、新聞報道等が事実でない場合には何か処置するというようなお話がありましたから、私はそういうことをされるものというふうに考えましてこれ以上はお聞きしませんが、きょう第三次訪韓経済視察団が十一時に羽田を立つ、こういうふうに報道をされております。これは政府のほうでもある程度その事実も御承知でしょうし、これらの視察団はどういうような意図を持って向こう側と話をするのか、そして日韓会談内容とこの視察団との関係はどういうふうな関連づけを持っているのか、そういうことについて一応御説明いただきたい。
  13. 後宮虎郎

    後宮政府委員 いま御指摘のとおり、土光敏夫さんを団長といたします約四十名以上の団員からなる経済視察団が出発することになったのでございますが、これにつきましては、メンバーの数等について報告は受けておりますけれども、特に今度の協定——実はこれは外相会談の始まる前からの計画でございまして、たまたま時期的に外相会談イニシアルということのちょうど直後に来るようなことになりましたのですが、特に外相会談とタイミングを合わせて計画されていたものではないと承知しております。役所のほうといたしましては、計画のあることの連絡は受けておりましたが、特にこの会談の結果を実施するためとか、その予備調査とか、そういうような点については全然相談も何もやっておりません。
  14. 石野久男

    石野委員 そうしますると、この団は、今度イニシアルを取りかわした内容との関係ではない、完全なコマーシャルな立場で民間が行うのだ、そういうことになりますると、日本韓国との経済関係について当然やはりそこで取りきめられるだろう交渉内容なりあるいは貿易の額等については、このイニシアルを取りかわした内容としての、もっと端的に言えば請求権問題の内容とは全然関係のない形でこの団は話し合いを進めてくる、こういうふうに考えていいのですか。
  15. 後宮虎郎

    後宮政府委員 大体御指摘のとおりでございまして、今度の経済視察団目的が、いろいろ将来話を進めます前提となる現地事情の勉強、視察目的でございまして、具体的の商談等話し合いをすることは期待されておらないと承知いたしております。
  16. 石野久男

    石野委員 大臣に聞きますが、今度出る団は相当大きい団である。そして、この団の交渉内容というのが今度の日韓交渉関係がないのだということになってまいりますると、韓国経済事情等も考えまして、容易にこれはこのままほっておけないのではないかという考え方が出てきます。われわれの立場から言いますと、これはもっとやはり裏づけのある立場交渉しないと、すでに焦げつきの債権も相当あって、しかも韓国には外貨はほとんどない、そういうようなときに請求権にからむところのそのものが裏づけにならないで、こういう大きい団向こうに行って経済交渉してくるということは、日本国際収支の上から言っても非常に危険である、私はこういうように思うのですが、外務大臣はそういう問題についてはどういうふうに処置なさいますか。
  17. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いずれにしましても、今度の日韓会談が妥結することによって請求権問題あるいは経済協力の問題がだんだん具体化してまいるのであります。その具体化してまいりましたときに、いわゆるムードといいますか、日韓経済協力の一つの機運というものが出てくることはもう当然でありまして、これはいまから予見ができるわけであります。それで、日本経済人といたしましては、そういう問題が漸次具体化してきた場合にどうこの問題におのおのの立場というものを当てはめて協力の線に沿うて動いていくかということについて具体的にはっきりとした認識を待ちたいというのは、これは当然のことであろうと思います。でありますから、会談全面妥結を目ざしておる日本政府といたしましては、経済人がこの間に処して最も有効適切なる経済行動をとることは、これは当然のことであり、われわれもこれに期待をする次第でございます。
  18. 石野久男

    石野委員 重ねて聞きますが、経済人政府全面妥結ということに協力するような態勢でいろいろ交渉されるということについてまた期待するという外相のいまのお話は、同時に、今度の視察団というのはやはり日韓交渉の中で出てくる請求権具体化の問題についていろいろと話し合いをすることが現実の問題としてあろうと思いますし、また、それでなければ話の内容はほとんどないだろうと思うのです。そういうような話し合いをしてくるということに対する期待でもあるし、また、そういうことを政府としてもその団に要望する、こういうふうにこの団は期待を持たれて出ていくんだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  19. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはまだ早いんです。具体的に一体、全面会談が妥結された後において韓国政府はどういう問題から経済建設を取り上げるか、そのことはまだきまっておらない。韓国として五カ年計画というものはあるようでありますが、その五カ年計画というものを全面妥結の際にどういうふうにこれと結びつけて考えていくかというようなことは今後の問題である。でありますから、今度の視察団は、将来起こってくるいろいろな具体的な問題に関連してあらかじめ現地事情調査して、あるいは向こう経済人その他の意見というものを聞いて、向こう考え方あるいは実際の状況というようなものに触れて、そうして将来最も有効適切にこれに協力するという準備段階視察なのでありまして、今度具体的に何をどうするという話し合いをするために行くのではないのでございます。
  20. 石野久男

    石野委員 経済視察団がどういうような成果をあげてくるかわかりませんが、きのうのソウル放送によると、ソウルでは学生日韓会談反対運動というのはたいへん熾烈に行なわれて、激突が当局の側との間にあったというふうに言われております。この日韓会談進行というものがこういう学生運動によって阻止される状態が出てくるというような場合があるかもわからない、昨年の事情等から見るとそういうふうに患われます。いま外務省に入っている情報ではそれはどういうふうに見ておられますか。
  21. 後宮虎郎

    後宮政府委員 昨日ソウルに出張しております外務省員と電話で連絡いたしたのでございますが、大体新聞に伝えられておりますとおり、確かに人数といたしましては全体で四千名近くの動員をいたしております。そうして逮捕者も約四百名くらい出していることは新聞報道のとおりのようでございます。ただ、昨年の現地で見ておりましての感触といたしまして、昨年の赤城・元会談のころに起こったデモに比べて、勢いがそれほど強くない、それから一般民衆の合流がまだ見られないというのがきのうの夕方までの状況でございまして、現地といたしましても、この十九日の李政権を倒しました記念日のときまでの形勢が最も注目すべきであろう、そういうふうに見ておるようでございます。
  22. 石野久男

    石野委員 学生のこの日韓会談反対運動というのは、漁民のいわゆる李ライン問題についての反対運動と結合して非常に日韓会談にとってはやっかいなものになってくるのではないか、これは昨年はちょうど三月二十四日の学生運動契機として六・三の事件にまで発展していきました。いまの見通しでは、学生動きというのは、相当当局の弾圧をきびしく受けておるけれども、非常に強いようです。昨年のやはり三月、四月の段階では、当時まだ朴政権はそんなに学生運動に対してはことしほどきつい圧力をかけている事態ではなかった。しかし、それとことしを比較しますると、ことしのほうがもっと強いという情勢が出ておりますから、おそらく、私どもの見通しでは、日韓会談はこれを契機として相当去年以上の激しいやはり反対運動にぶつかるんじゃないか、こういうように私は思うのです。  そこで、これの見通しはともかくとして、大臣に承りますが、先ほど大臣はこれに期待すると言われましたが、経済人がいま、日韓会談の妥結されるその後のことをにらみ合わせながらいろいろな調査なりあるいは経済・技術の協力体制を固めるための予備調査というのですか、そういうようなものに出ておるようでございますけれども、こういうような韓国実情の中でまた経済人がいろいろな話し合いをしてくるということがかえって韓国大衆に対して悪い感じを与えるというような結果になりはせぬかというふうに私は思いますけれども、そういう点では大臣はどういうふうに考えますか。
  23. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この際日本経済人が自粛しなければならぬことは過当競争である。つまり、抜けがけの功名をいかにしてやって、そして自分だけがうまい汁にありつくかというような、もしそういうような過当競争をやるということになりますと、日韓経済協力どころか、非常な経済の混乱を起こすのでございますから、その点は大いに自粛しなければならぬと思うのでありますが、今回出かけた約四十名の人々はみなその点を十分に認識して、いやしくも全面妥結の暁においてわれがちに向こうと結びつくために競争する、あるいは他の同僚を排撃するというような、そういうみっともないことはないようにあくまで自制して、そうして韓国経済建設のためにほんとう協力してやる、こういう心組みを持った連中ばかりと私は考えておるのであります。そういう心組みを持ってまず現地情勢視察し及び韓国経済人との接触をしてくるということは、私はけっこうなことだと思うのであります。
  24. 石野久男

    石野委員 日韓会談韓国学生とかあるいは漁民等中心として猛烈な反対にぶつかって、そしてこの会談のスムーズな進行ができなくなる事情をわれわれは予測するのですが、そういう事態になったとき、いま行なわれておる交渉というのは全くむだになってしまうのですが、政府は、この韓国事情について、学生とかあるいは一般大衆反対運動実情というものについて、そういう心配を全然持っておりませんか。
  25. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはりこれは十分に理解ができないということからこれに対するいろいろな反駁が起こってくるのでありまして、これは、考えてみると、過去において日韓の間にはなはだ不幸な期間が続いておったということから来る不信感、対日不信頼感あるいは警戒心警戒感情というものがまだ全部払拭されておらないために、ためにする一部の人の使嗾に踊っているものだろうというように私は考えております。事態を正確に認識することによって、そういうことはきわめてむだなことであり有害なことである、日韓相互共存共栄のためにきわめて有害なことにすぎない、こういうことを認識すれば、こういうことは起こってこないと思うのであります。まだいわゆる対日警戒心、対日不信感というものがありまして、それに油に火を注ぐような一部の政治家使嗾によってかような事態が生じている、こういうふうに考ております。
  26. 石野久男

    石野委員 いま韓国に起きている反対運動というのが、ためにする一部の使嗾に踊らされている運動である、そういうふうに外相理解しているのですか。
  27. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局、李ラインを死守せよとか、あるいは李ラインを売った、そういう政治家はけしからぬとか、あるいは屈辱外交であるとかいったようなことでございまして、これはどうも、もし本気でそういうふうに言っているのだとすれば、これは非常に誤解である、こう考えております。
  28. 石野久男

    石野委員 私の理解するところでは、いまこれらの諸君のやっている反対運動というものは一部の使嗾に踊らされているような運動でないように思うのです。むしろやはり、韓国民は、韓国朝鮮における自立体制と統一の方向を目ざすということ、それから自分たちの自主権を確立するというようなことから、日本に対して非常な不信感を持っているという面が多分にあることと、それから韓国朴政権が行なっている政策が非常に大衆意図を無視しているということに対する反駁だ、こういうふうに私は理解している。外務大臣が言っているように、たとえば李ラインを死守せよとかあるいは李ラインを売ったとかいうような、そういり悪質な政治家の扇動に踊らされている運動だとばかしは私は理解していない。外務大臣答弁は、どうも私は、いま南朝鮮に起きている国民の朴政権に対する反対運動というものに対する正しい理解というものがないように思うのですけれども、もう一ぺんそういうような点についての外務大臣の所見を承っておきたい。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いまのデモの掲げているスローガンは、李ラインを死守せよとか、あるいは屈辱外交だというようなことを言っておりますが、その問題をとらえて私がいま申し上げたのであります。
  30. 石野久男

    石野委員 そうすると、この李ラインを死守せよとかあるいは屈辱外交だとかいうようなのは、それは一部の使嗾に踊らされているところのためにする運動だ、こういうように外務大臣は吉うわけですね。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 野党が前々からそういうことを言っておるのです。でありますから、野党の唱えておることをそのまま口移しに移して、そしてそういうことをスローガンに掲げてデモをやっているということでありますから、その間に一脈相通ずるものがある、こういう推定をするのであります。他に、ほんとうにこれは韓国のために有害であるというような、われわれが首肯し得るような根拠が一体どこにあるのか、まだそういうことをわれわれは耳にしておらないのであります。
  32. 石野久男

    石野委員 韓国で、李ラインを死守せよとか、あるいは李ラインを売ったとか、あるいは屈辱外交だというようなことを言っておる、そういう野党の言い分を口移しにして、まあ学生やあるいは青年あるいは漁民動き回っているということはけしからぬ、それらのことの中から韓国のために有害であるという実証は何もないじゃないかという外務大臣理解のしかたというのは、いま韓国に起きているところの民衆動きに対して、これは正しい理解のしかたじゃないように私は思うのです。ほんとう日韓の問題を朝鮮日本との友好関係というものの中で解決しようとするならば、もっとやはり朝鮮人考え方というものを正しく見きわめないといけないと思います。私は、そういうような見きわめ方の中からアジアに対する危機が非常に広がっていくのではないかと考えるのです。私はやはり、その外務大臣考え方というものは、これはあとでもう少し考え直してもらわなければいかぬと思います。  いま私たち日韓問題とからみ合わせて 一番心配しているのはベトナム問題なんです。ベトナム戦争の問題については、けさのニュースによりますと、ラスク長官は、記者会見をして、本土を攻撃することもあり得るということを言っておりますが、このニュースはたいへんなことになると思う。きょうのニュースによりますと、全面戦争にはならないかもしれないけれども、朝鮮戦争のときと違って中国本土を攻撃することがあり得る、こういうふうに言っております。こうなると、これは日本にとってはたいへんなことになるので、政府はこのとき何とかこのベトナム問題についてはやはり手を打つべきじゃないだろうか。私は、きょうのニュースは正しいものであるかどうか、夕刊くらいになれば出てくると思いますけれども、とにかく、そういうニュース外務省にどういうように入っておるか、そしてまた、もしそのニュースを正しく政府が入手しておるとするならば、政府はこのアメリカのベトナム問題に対する政策に対して、やはり何かの手を打たねばならないのではないか、こう考えますが、外務大臣はどういうように考えておりますか。
  33. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ラスク長官が中国攻撃もあり得るということを言ったということは、何もわれわれは知っておりません。
  34. 石野久男

    石野委員 これは、あなたが聞いてなくても、きょうのニュース日本人はみんな聞いているのですよ。外務省はもう少し情報を入れているでしょう。
  35. 安川壯

    ○安川政府委員 公式にはそういうニュースはございませんし、また新聞も、私が知った限り見ておりませんが、これは真相は調査いたします。
  36. 石野久男

    石野委員 ラジオは聞いていないのですか。
  37. 安川壯

    ○安川政府委員 ラジオも私自身は聞きませんでした。
  38. 石野久男

    石野委員 外務大臣に聞きますが、いま外務大臣は、その情報が非常におそいようで、入ってない、しかし、けさはもうどのニュースもみなそれを報道しておるわけです。おそらく夕刊にはこれは記事になって出ると思います。言うように、朝鮮戦争とは違って中国本土を攻撃することもあり得るということが事実だとすると、これはほうっておけないと思うのです。外務大臣はいまベトナム戦争についてどういうふうに考えておるか。さきに外務省が松本俊一氏を特使としてベトナムあるいはラオス、カンボジアに派遣した。松本特使は、帰ってきてからいろいろと政府に対してベトナム問題等について報告をしている。それについてどういうような報告政府は松本特使から受けておるか。
  39. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ここですべて申し上げることはできないことを遺憾といたしますが、とにかく、インドシナ三国の状況をよく見てきてくれたと思います。それで、この状況報告から直ちにいま日本として有効適切なる事態収拾の行動を起こすに足る有力な資料はどうも見当たらない。まだいろいろの情勢の推移を先守っておるという状況であります。
  40. 石野久男

    石野委員 大臣は、いま南ベトナムにおる米軍が、そしてまた日本の基地から飛び立っていく空軍が、北ベトナムに爆撃を続行しているという事実は承知しておりますね。
  41. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本から直接作戦行動を起こしておるという事実はありません。
  42. 石野久男

    石野委員 私の聞いたのは、北爆が続いておるということを承知しておりますねということです。
  43. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはもう私から申し上げるまでもなく、毎日の新聞にその報道が載っておるのでありますから、承知しております。
  44. 石野久男

    石野委員 この事態を、外務大臣は、アジアの平和のために非常に有益になるものだというふうに理解しておりますか。
  45. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一日も早く事態を収拾しなければならぬ、かように考えております。
  46. 石野久男

    石野委員 そのために、外務大臣は、何かやはり日本政府として手を打たなければならぬというふうに考えてはいませんか。
  47. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 有効適切な手段が発見されるならば、日本としてはいかなることもしなければならぬ、かように考えております。
  48. 石野久男

    石野委員 有効適切な手段は、戦争が終わってから行なうのですか。
  49. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 問題は、ただ戦争のための戦争をしているのではなくて、要するに、南ベトナムの独立と平和というもののためにアメリカが軍事介入をしておるのであります。でありますから、その見通しがつくならば、これはもうアメリカは即時軍事行動を停止すべきである、そう考えております。
  50. 石野久男

    石野委員 南ベトナムの独立と平和が確立するという見通しがつくならば即時アメリカは手を引くべきである、こういう言い方は、それではその見通しをだれが立てるのですか。
  51. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外部からの力の圧力がある限りは、南ベトナムの独立と平和はほうっておいては達成されない、こういうことは明瞭だと思うのであります。
  52. 石野久男

    石野委員 いま外部からの介入と言いましたけれども、外部からの介入というのは、ベトナムではどこのことを言うのですか。
  53. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北ベトナムの浸透作戦であります。
  54. 石野久男

    石野委員 いま北ベトナムからはアメリカに対して軍隊の侵入はあるのですか。
  55. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 われわれは例のベトナム白書というものを読んでおりますが、絶えざる人員及び物の浸透があり、またベトナムのハイノの指令というようなものが相当強烈に動いて、そしてあの南ベトナムの紛争というものがなかなか絶えない、こういう状況である、かように確信しております。
  56. 石野久男

    石野委員 アメリカの出したベトナム白書はそういうことを書いてあるかもしれないんだが、私の聞いているのは、南ベトナムに外部からの介入があれば、こういう外部の介入というのはだれなのかということを聞いている。
  57. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北からの圧力、あるいは侵略と申しますか浸透と申しますか、こういうものが全部とまればアメリカはいつでも軍事行動を停止する、そして話し合いに入る、こういうことを言っておるのであります。
  58. 石野久男

    石野委員 そうすると、いま侵略ということばを外務大臣が使われたんだが、侵略ということばについてもひとつ外務大臣意見を聞きたいんだが、そういう外部からの侵略なりあるいは浸透がなくなればいつでもアメリカは軍を引き揚げるのだ、こういうふうに言っている、こう外務大臣は言いました。そのことは、日本政府としては、ベトナムのこの戦争の危機がアジアの平和のために有益でない、だから何とかせねばならぬということに対しては、結局アメリカが軍を引き揚げるまでは何もしない、こういう考え方外務大臣は持っているというふうに理解していいわけですか。
  59. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ちょっといまの、日本の基地をどうする……
  60. 石野久男

    石野委員 大臣は基地ということを非常に気にしているのです。私はいま基地ということは言わないですよ。基地ということを全然言ってない。日本はベトナムに対してどういうような手を考えておるかということについて、大臣は先ほどから、アメリカが軍を引き揚げるのは外部からの侵略やあるいは圧力がなくなったときに引き揚げるんだ、それだからそれまで待てばいいじゃないかというふうに受け取れる大臣答弁だったから、私はここでお尋ねするのは、大臣は、そういう時期が来るまでは日本政府としてベトナムに対してもこの戦争の危機を排除するための何らかの手を打つという考え方は全然持っていないのですね、こういうふうに聞いたわけですよ。
  61. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあこの問題については、各国が、これをいかにすれば収拾し得るかということについて考えもし、あるいは考え方を発表もし、あるいはまたそのためにある種の行動を起こしておるのでありますが、依然としてこれは効果を発揮することができないままに現状になっておるのであります。問題は、要するに、北ベトナムは、アメリカが手を引けばそれでいいんだ、こう言いますけれども、アメリカは、もともと自由陣営の独立と自由、平和というものに関心を持っておる、そこへ持ってきて現地の南越の要請があったので軍事介入をしておるわけであります。でありますから、その目的がほぼ達成されるという見通しがつけば、軍事行動をする何らの理由も根拠もなくなってくる。でありますから、ただアメリカだけ手を引けということは、これは片手落ちでありまして、やはり北越なら北越も全くいわゆる浸透作戦というものを停止する、こういうことがはっきりすれば問題はきわめて容易に私は解決をするものと考えるのでありますが、それを、その一方だけを見て、そして、アメリカの軍事行動というもの、これが唯一の根元である、こういうふうに見るのは、私は、これは片手落ちである、かように考えておるのであります。でありますから、そういう情勢が続く限りにおいては、日本としても同様の考え方に大体立っておる以上は、手があるか手があるかと言ってみたところが、それはいまはさような段階ではない、こう申し上げるわけであります。
  62. 石野久男

    石野委員 いま大臣の言われたことは、アメリカがベトナムで軍を持ちあるいはいまの作戦を広げているという考え方と全く一致しておることなんです。われわれの心配していることは、アメリカが、きょうのニュースにもあるように、場合によっては中国本土を爆撃するかもしれないということを言われておる時期に、アジアの危機は非常に危険な状態になってきておる。こういう状態のときに、日本が何とか手を打たなければならぬじゃないか、特に日本政府がもしアジアの平和に対して心しておるとするならば、何とかそれをせねばならぬじゃないかということをわれわれは訴えておる。だから、心配しておるから、そこで政府意見を聞いているわけです。いま大臣答弁によりますと、アメリカの白書と同じように、それからジョンソン声明と同じことを言っているわけです。ジョンソン声明に基づいて、あくまでもとにかく無条件な交渉はしましょう、だけれども爆撃は続けますよ、こういうことを言っているわけでしょう。そういう政策政府は認めている、こういうことですね。日本の国民は、いまベトナム戦争が世界戦争になるかもしれないから、アジアを混乱のちまたにおとしいれるかもしれないから、何とかこの辺で手を打たなければならぬということを心配しているのです。政府はそういうことは全然心配していないということなんですね。私はアメリカさんと一緒に行きますということなんですね。   〔「アメリカを批判するかどうかの問題だ」と呼ぶ者あり〕
  63. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 必要があれば批判するが、必要がなければ批判しない。政治的な信念を同じにすれば、別に荒立てて批判をする必要はないと私は考えております。でありますから、とにかくわれわれは、インドシナあるいは東南アジアにおける自由陣営の政治的独立と平和というものを守るということが、これは日本にとっても大事な問題でありまして、これはあくまで尊重していかなければならぬ。これが失われるということになりますれば問題はまた違ってくるのでありますが、われわれはそういう信念のもとにこの問題の処理をあくまでやっていきたい、こう考えておるわけであります。
  64. 安藤覺

    安藤委員長 石野君に申し上げます。だんだん時間が切迫してまいりますから、どうぞひとつ質問をお運び願います。
  65. 石野久男

    石野委員 非常に大事なことなので、もう一度お尋ねしますから、大臣もあまりいろいろな理屈は要らないのです。私は政府の決意を聞けばいいのです。今度のベトナムにおけるところのアメリカ軍の北爆の継続、しかも中国本土まで爆撃するかもしれない、こういう段階において、政府としてはこれを傍観視するのかどうなのかということなんですよ。政府はそれを傍観視しないで何かそういう危機をのがれるために手を打つようなことを考えないのかどうなのかということを私は聞いておるわけですよ。
  66. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、たびたび申し上げるとおり、日本といたしましては、もうこれは対岸の火災視できない問題である。でありますから、どうすれば収拾できるか、また、その間に処して日本の役割りは何であるかということを発見するのに腐心をしておる、こういう状況であります。
  67. 石野久男

    石野委員 腐心をしておって全然手は見つからない、こういうことのようですが、先般政府の特使としてこの地方を見てこられた松本特使が毎日新聞で所見を発表しておるところによると、佐藤総理は時期を見て動くと言っておるけれども、それには準備措置が必要だ、こういうふうに言っておるわけです。佐藤総理は時期を見て動くと言っている。が、外務大臣は、打つ手は全然ありません、こういうふうに言っておられる。そうすると、これは総理と外務大臣との間ではベトナムの危機に対する考え方は全然違うわけです。そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  68. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 なかなかいい手が見つからないので手が打てないでおることは御承知のとおりでありますが、これをもう全然ないと言ってあきらめてほったらかしておくという意味ではないので、絶えずこの収拾策については各般の情勢を見きわめながらその発見に苦慮しておる、こういうことを申し上げたのであります。その点は、別に総理と私との間に考え方の相違はありません。
  69. 石野久男

    石野委員 総理とあなたとの間に意見の食い違いがないとすれば、総理はたびたび、時期を見て動くということを言っておるわけです。そうするためには、松本特使のことばをかりると、ただ言っているけれども、それはやはり準備措置をする必要があるということを言っております。松本特使の言い分では、日本のベトナム問題に対する考えがまだまとまっていない、こういうことを言っているわけです。それからまた、サイゴンの日本大使館はきわめて傍観的にこれを見ておる、こういうふうにも言っております。それからまた、日本政府は米国にもベトナム政府側にも自信を持って意見を言えということも言っている。それからまた、情報を東京で十分検討してほんとうの姿勢を固めることがこの際大事だ、こういうことを言っているわけです。それをやらないで日本が仲介しようとしたって無理だ、こういうことを言っているわけです。こういう意見は非常にすなおな意見であり、そしてまた正しい意見であるというふうに私は考えます。外務大臣はこういう意見は全然取り入れる意思はありませんか。
  70. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 問題のまわりをぐるぐる回っているようなことばでありまして、自信を持って言えとか、あるいは考えをまとめよとか、とにかくそういう確信が見つからないのでなかなか手が打てないというのでありまして、そういったような心がまえは十分に持っているつもりであります。
  71. 石野久男

    石野委員 私はもう時間があまりありませんからはしょってもう一つお聞きしておきますが、ベトナム戦争というのは「外務大臣はやはりなるべく早く終わらせるように希望しておるのでありましょうね。そのために大臣はやはり何か手を打つということも考えているのだろうと思いますが、それはそういう考え方はないかどうか。これがまず第一点。  それから、第二番目には、なるべくベトナムの戦争の中へ日本が介入していくとかあるいは関係づけられていくということはやめなければいけないと私は思う。この点について外務大臣はどういう考え方を持っておるか。そういう点で、韓国の兵隊が二千名ベトナムへ派遣されたときに、LSTに日本人が乗っていった。これは非常に重要な問題だ。今度また二個師団ぐらいの韓国の兵隊がベトナムに行く可能性があるわけです。それからまた、日本の各地からベトナム用の戦備品がどんどんと送り込まれていくためにも、やはり日本の海員がそれに関係づけられております。こういうことに対して、海員はそれを拒否するという態勢に出ておるとも新聞報道しておる。こういう問題について外務省はどういうふうに処置されるか。これを第二点として聞きます。  それから、第三点は、この前のときにも私はいろいろ質問しましてはっきりしなかったのですが、LSTに乗り組んでおる海員はいままで全く旅券も何も持たないで行っておる。ところが、きょうのニュースによると、旅券を交付するということを大体皆さんのほうで決意をしたようです。これは運輸省と外務省と民間との間でそういうふうに話をきめたそうです。そこで、私は、皆さんは戦場へ向かっていくそういう諸君に対しても旅券を出すつもりなのかどうか、これをひとつ明確にしておいていただきたい。日本の船員が戦場へ向かっていくときに旅券を出す意味はどういう意味なのかということ。  この三つの点をひとつ御答弁いただきたい。
  72. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 すでに申し上げたとおり、ベトナム問題の収拾は一日も早いことを切望しておるのでございますから、日本側といたしましてできることは何でもしたい、しかし有効適切なる方法なりあるいはタイミングというものがなかなかない、こういうことで苦慮しておる、こういうことを申し上げたのでありますが、これによって御了解を願いたい。  第二番目の問題は、ベトナムの戦争に日本が介入するというつもりはございませんが、ただ、日米安保条約のたてまえ上、この条約の義務として日本が遂行しなければならぬことは当然やるつもりであります。  それから、LST海員の旅券交付の問題につきましては、手続の問題もありますので、政府委員から御答弁申し上げることにいたします。
  73. 安川壯

    ○安川政府委員 LSTの問題につきましては、従来から大臣からも御答弁がありましたように、現状におきましては、自発的に渡航を希望する船員を政府が強権でとめなければならないほどの危険は存在しないという判断に立っております。この判断はただばく然とそういう判断をしているわけじゃございませんので、政府としましては常時情勢をよく検討している次第でございます。最近におきましても現地の大使館にも状況報告を求めました結果、現地の大使館の報告によりましても、全体の情勢としましては、一般の船舶、これは日本を含めまして各諸外国の船舶は自由にベトナムの各港に出入しておりまして何らの危険もない、むしろ各港の間の船の運航は最近ふえておる、ただし、LSTにつきましては、これは米軍の公船でございますから、必ずしも一般の商船と同一視はできませんけれども、現状におきましては非常な危険があると判断されない、特に各港におきます警戒というのは非常な厳重をきわめておって、大規模なテロというものはまず起こり得ないというふうに現地としても判断しております。そういう判断に基づきまして、自発的に希望する船員に対しては旅券を発給する。旅券を発給するということは従来からきめておった方針でございまして、現在特にあらためて決定するものではございません。
  74. 石野久男

    石野委員 大臣答弁では非常に重要な問題が出てきた。ベトナム戦線に対しては日米安保条約によって日本がやらなくちゃならないことについては積極的に当然のこととして協力するのだ、こういう問題が出てまいりました。これは、ベトナム地域というものを安保条約の関係ではどういうような地域関係に置いてそういうことを言うのか。また、この問題の処理について協力ということは、どういう意味のことを協力という内容にしておるのか。この点をひとつ大臣から御答弁いただきたい。
  75. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まず私から考え方を申し上げます。  極東の平和と安全ということが日米安保条約の対象になっておるのであります。極東の範囲につきましてはフィリピン以北ということに一応なっておりますけれども、しかし、極東の地域内に脅威を与えるような問題が極東の範囲外にその周辺に起こった場合、この根源をなくするために行動する範囲というものは必ずしも極東の地域内と限定する必要はないというのが政府の統一見解でございます。でありますから、ベトナムはフィリピン以北ではないけれども、しかし周辺である、しかもその周辺に起こった事実が極東の平和と安全に至大の影響を持つものである、こういうことでございまして、ベトナムにおける行動は、いわゆる安保体制のワク内における行動である、こう考えるのであります。したがって直接日本の施設を利用してそこから作戦行動を起こすという場合にはこれは事前協議の対象になりますが、しからざる場合にいろいろこの補給等のために日本の施設を使用するということは、これは安保条約のたてまえから日本が当然やるべきことである、こう考えております。
  76. 石野久男

    石野委員 もう時間がありませんから、あとは同僚議員に継続してやってもらうようにしますが、一つだけお尋ねしておきます。  この安保条約の問題はともかくとしまして、これはあとでもう一ぺん問題になりますけれでも、LSTの問題で、先ほど危険がないから旅券を交付するのだということを言われましたが、いまLSTに乗り組んでおる船員の行動半径というものは、大体相手国というのはどことどこなんですか。
  77. 安川壯

    ○安川政府委員 危険がないと申しましたけれども、これはいかなる場合も一〇〇%危険がないということは言えないのでございまして、そういう意味で危険がないということを申し上げたわけではございません。  それから、行動範囲でございますけれども、大体においてベトナム戦争が始まる前からLSTというものは運航しておったわけでございますが、大体韓国沖繩、フィリピン、ベトナム、タイ、場合によってはオーストラリア、ニュージーランド方面なども運航している模様でございます。
  78. 安藤覺

    安藤委員長 帆足計君。
  79. 帆足計

    ○帆足委員 ベトナムの問題につきましては、国民全部が心配しておりますから、まる一日くらいあけて夜中の十二時くらいまでこれは審議しなければ、こういう重大な難局に遭遇して、わが党のほうも事前協議も必要でなかろうかと言うておるときに——わが党のほうもいくじがないと思うのです。これは皆さんに大いに迫って、夜中の十二時くらいまで論議しなければ、極東戦略全体の問題ですから。しかるに、私はいまから二十分。まことに国民の皆さんに申しわけないと思っている次第です。  そこで、質問を続けますが、この戦火が中国に及ぶというようになったときは、当然事前協議の対象として直ちに日米委員会を開きますか、お尋ねしておきます。でないと安心できませんから。知らないうちに戦争が広がってしまったなんということで、どうして黙っておられるものですか。
  80. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どうも戦火が一体中国に及ぶというようなことを……(帆足委員「心配しているのです、だれしも」と呼ぶ)心配でしょうが、現実問題としては、いわゆる同じ心配でも杞憂というものがありまして、むだな心配ではないかと思います。   〔「ラスクが中国本土爆撃もあり得ると言っているじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  81. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣の御答弁は不謹慎だと思うのです。国民はほとんど全部がこれに対して心配しておるわけですから。そういうときに、知らないでずるずるべったりに戦局が広がるようなことがないか。それに日本の基地を使い、補給に使うようなときには、当然アメリカは他国の国土におじゃましているわけですから、あらためて相談する必要はないか。こういうことは平素から外務大臣がやはり心にとめおかれて、すわというときは直ちにライシャワーを呼び出して、そしてこれはひとつ相談してもらいたい。あらためていまから言っておくべきことではないかと思うのですが、重ねてお答え願いたい。心配でたまらない。
  82. 安川壯

    ○安川政府委員 先ほどのラスク長官中国本土の爆撃もあり得るというニュースにつきまして、ただいま入りましたニュースはこういうことのようでございます。NHKの特派員の発電でありまして、全米の新聞放送社年次総会、これは公開の記者会見ではなかったそうでありますが、ラスク、それからマクナマラ、バンディ補佐官かどちらかはっきりしませんが、そういう人たちが出席して、公開でないバックグラウンド・ブリーフィングというものを行なったそうであります。そのブリーフィングの内容が何らかの関係で外に報道されたのではないかと想像されますが、報道された内容はだれが言ったかわからないそうであります。わかりませんが、中共との全面戦争はあり得ないが、朝鮮戦争と異なり場合によっては中国本土を爆撃することもあり得ると述べた、(「ちゃんと言ってるじゃないか」と呼ぶ者あり)これはだれが言ったかわからない、これが報道であります。したがいまして、こちらでだれがこう言ったかということを判断する材料はないわけであります。
  83. 帆足計

    ○帆足委員 そういう憂うべき状況ですから、杞憂というのはやはり外務大臣の御失言だったと思います。したがいまして、戦火が中国に及ぶような段階になれば、日本の基地が間接直接に活用されておるわけですから、そのときはアメリカから当然日本国民並びに国民の主権を代表しておる政府に対して協議があってしかるべきである、政府はそういう御決意であられるかということをお尋ねしたわけです。
  84. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ほとんどあり得ないことだと思いますが、かりにそういう場合、日本の基地から直接作戦行動に出るという場合には、これは事前協議の対象になるのであります。そのときに日本が十分にそれを判断いたしまして諾否を与える、こういうことに相なります。日本の承諾なくしてみだりに施設を使うことはできない、こういうことになっております。  それから、なお、そういった場合に事前協議に至らない場合の協議につきましても、一方の要請があれば協議に応ずるということになっておりますので、ただこれを無意味に看過するということは絶対にあり得ない。
  85. 帆足計

    ○帆足委員 杞憂ということばは御失言だと思いますが、杞憂であることが望ましいとだれしも思うことでしょう。しかし、その場合に沖繩を——沖繩は現にベトナム作戦に使われておりますが、中国作戦ならば、沖繩はわが手から一応形式上離れておるからやむを得ない、こういう解釈ですか。沖繩を含んで相談なさるというお考えですか。
  86. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本国内における施設という中には沖繩は入りません。
  87. 帆足計

    ○帆足委員 それはきわめて残念なことでありまして、沖繩沖繩として孤立しておるのではなくて、日本の間接中継ぎ基地になっておりますから、私どもは当然沖繩に問題が及ぶときには事前協議の対象にしてもらいたいと思います。この点につきましては重ねて他の時間にいろいろ要望申し上げたいと思っております。  私どもがふしぎにたえないことは——ベトナム問題についてここで十分論議する時間がありませんので、今後ずっとこれは心ゆくまで政府当局意見の交換をしておかねばならぬ、こう思うのです。そのくらい重要な問題であるわけです。そこで、この戦争はベトコンと南ベトナム政府との争いに端を発しておるのですが、それにアメリカが深入りし過ぎておるというのはだれしも認めておるところで、フランスも心配し、英国ですら憂いの色を隠さず、カナダは忠言し、こういう状況で、世界の世論はこぞってアメリカがかつての日本軍国主義時代の関東軍のような歩みを続けておるということを心配しておるわけです。したがいまして、一体アメリカはだれに頼まれてベトナムの内政に干渉し、こういう干渉を引き受けておられるのか。社会主義か資本主義かということはその国民がみずから選ぶことである。たとえば、日本が共和制がいいか天皇制がいいかということは日本国民が選ぶことで、アメリカの趣味を別に押しつける必要はないのであって、ベトナムにおいて、ベトコンがいいか、またゴ・ジンジェム政権がいいか、ドン政権がいいか、チャン政権がいいかということはベトナムの国民が選ぶべきことであって、その是非判断をするジュピターの神のような全知全能の判断力をアメリカにだれも与えはしないのです。したがいまして、一体アメリカはだれに頼まれてこういうことをやり始めておるのか、外務大臣にお伺いしたい。
  88. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 南ベトナム政権の要請によってやっておる。
  89. 帆足計

    ○帆足委員 それならば、南ベトナムに頼まれてやっておるならば、一定の限界があるべきです。坊主憎ければけさまで憎いで、北ベトナムを爆撃し、また中国に累を及ぼすというような権能はないわけであって、アメリカは干渉しておる。かりに北ベトナムが浸透しておるとするならばアメリカもまた浸透しておる。外務大臣アメリカ浸透白書というのをお読みになったことがあるか。実にアメリカはひどいことをしているのです。張作霖を軍部がたたき殺したように、アメリカはゴ・ジンジェムの暗殺の張本人であるということはいまや歴史の上で明らかなことです。したがいまして、アメリカが北ベトナムを爆撃する法的根拠があるかといえば、法的根拠はないわけです。英国の労働党政府が北爆を認めたということはまことに遺憾なことであると私は思っておりますが、北爆を認めながら中国に行って仲裁のようなことをしようといって、断わられておりますけれども、私は断わられておるのもしかたのないことではあるまいかと思う。また、国連事務総長がよき意図を持って中国に行こうとしておりますが、これも、中国を国連に加入せしめずして国連が出てまいっても、そこで十分な発言力がないということも当然のことであって、こういうことがあればこそ中国を国連に加盟せしめて話し合いの共同の舞台ですべてを解決するというふうにしておけばよかったものをと痛感する次第であります。  そこで、外務大臣にお尋ねいたしたいのですが、外務大臣は一体北を爆撃する法的根拠をどのようにお考えでしょうか。同時に、アメリカが、北ベトナムが気に食わないからといって、補給路になっておるからといって北ベトナムを爆撃するならば、今度は北ベトナムはまたアメリカの補給路を爆撃するという権利が自動的に生ずるようになる、こういう循環論法になって戦局が拡大することをわれわれは心配しておるわけであって、江戸のかたきを長崎でという論法はひとつやめてもらいたいというのが私どもの願いであって、相手方に適用されるときは都合がいいかもしれませんけれども、因果はめぐるという論理に従いまして、今度はこちら側の基地にそれが影響、反作用を持ってくるということを国民のだれしも心配しておるわけです。外務大臣は、この悪循環、ビシャスサークルについてどのようにお考えでしょう。
  90. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北爆はつまり北からの継続的侵略というものに対する自衛行為である、こういう解釈でございます。でありますから…(帆足委員「逆にベトコン側から言えばどういう論理になりますか」と呼ぶ)日本がベトナムに対して軍事物資を補給する関係に立った、こういう場合には、日本は別に侵略的意思を持ってやっておるわけでもない、その行為そのものは決して侵略じゃない、こういうことでございますから、これは一見似たようなかっこうになっておりますけれども、この実態は非常に違います。
  91. 帆足計

    ○帆足委員 それは手前がってのみずからを慰める議論になるわけであって、論理というものは普遍妥当なものですから、昔のことばで言えば、因果はめぐる火の車、こういうことになるわけです。したがいまして、ベトナムの武器・弾薬・軍需物資を北ベトナムが南に多少なりとも流したというおそれがあるのでこれを爆撃するというならば、軍需物資を日本から沖繩を経て流すということになれば、その軍需物資は有害なものとして当然北ベトナムの爆撃の目標になる。どうしてこの論理を外務大臣は心配なさらないのでしょうか、重ねてお伺いしたい。
  92. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ少し冷静に考えると、北ベトナムがただ知らぬうちに経済行為によって向こうに物が流れておるというような関係じゃない。もうすでにその意思は北ベトナムの首脳者によって天下に声明されておるように、ベトナムは一体であるということで、南ベトナムのいろいろな動乱というものに対して十分に責任を持つ、むしろこれを勇気づけ、これを支持しておるというような立場に立っておることは、もうだれが何と言っても明瞭なことでございます。日本はそういう関係にはないので、ただ日本からいろいろな物資を買い集めて、そしてアメリカ向こうに補給しておる、こういうことでございまして、日本は、これに対しくその戦略に協力しておるとか、あるいは敵意を持って何がしかの行動をしておるというようなことは一切ないのであります。この点は全く違うのであります。
  93. 帆足計

    ○帆足委員 驚くべきおことばをお伺いしまして、私は日本国民のために悲しむものでございます。残念ながら、日本政府のいま置かれておる立場は、身も心もアメリカの極東戦略にゆだねて、そして日本政府の首脳部は意識的に日本の軍需資材をアメリカ軍に提供し、そしてそれが沖繩を経て爆撃に使われておる、こういう悲しむべき現状でございます。これが抽象論、一般論のときにはアメリカの圧力のためにやむを得なかったとも言えましょうけれども、こうして具体的にベトナムの民衆、農民また小学校の子供の上に日本の軍需物資に関係のある戦力、銃火を浴びせるということになりますと責任重大でありますから、この辺でとどまるところを考えて、アメリカに対して、自由世界にお手伝いしてきたけれども、こういう限界以上のことは、同じアジア人として、アジア人の頭上に日本国民がつくった軍需物資が圧力を及ぼすことは避けたい、こういう態度に出ることをわれわれは望んでおるのでありまして、外務大臣のいまの御答弁は、私はまことに遺憾であると思うのでございます。時間がありませんで、あと一、二分ですから、やむを得ませんが、同僚の委員もさらに声を大にして政府に反省を促すことでございましょう。われわれは他意があって申し上げておるのではなくて、私どものいま憂えておることは国民大部分が心配しておることですから言っているのです。きょうの朝日新聞の投書欄なんかも、外務大臣、虚心たんかいにごらんくださいまして、何とか日本がこの戦争の中に火中の栗を拾わないように、いまからでもひとつ反省され、そして日本の安全のために、日本民族、それからアジアの一員の立場に立って日本政府の態度をもう少し変えてもらいたいと思うわけであります。  時間がありませんから、ついでに一括してお尋ねしておきまして、あとは明日お尋ねしますが、日韓会談で、拿捕された日本漁船の補償のことが問題になっておりましたが、その結末はどうなったか。また、漁船の補償がありました節は、船主並びに漁民に対しまして、その過去の苦しみの償いにその賠償金が今後追加されて使われるかどうか、それを伺っておきたいと思います。  第二には、在日朝鮮人の処遇につきましては、私は、当面は、長い軍国主義の圧力のもとに民族的な偏見にさらされて、そして朝鮮の諸君の給料は同じ場所で働いても三割も四割も低いというような気の毒な状況にありますから、金融の道まで含めまして、外国の友でありますけれども、過去の植民地同化政策の償いといたしましても、よい待遇をしてあげたらいいと私は思うのです。ただ、それが永久というのでは原則にもとりますし、朝鮮の恥となりますから、ここ十年とか十五年の間は、むしろいま政府がお考えになっておる以上に、国費の一部を償いとして使っても、そのために生活が明るくなり、犯罪も減り、朝鮮の友が日本に対して旧怨を忘れて日本の国民に友情を感ずるというふうになってもらうならば、私は予算を使っていただいてもいいと思うのです。しかし、それはそういう歴史的事情によるものであって、永久のものであってはならぬと思うのです。それは政府も考慮されておられると思いますが、しかし、その場合に、災いを拡大しませんために、南北朝鮮の国民に対しまして同じような待遇をすることが望ましいと思います。政府はたびたび、それは同じように取り扱うということで、後宮アジア局長から伺っておりますが、それを重ねて明確にしておいていただきたいと思います。  最後に、この前朝鮮から金さんという少年がおかあさんをたずねてまいりました。これはかねて入国管理局長さんに御了解を得てありますが、親子、夫婦の間の問題は、朝鮮海峡を泳いで渡ってきてでも、それはやはり人情美談としてもてなすべき性質のものであって、ほんとうの親子、ほんとうの夫婦の場合には、それを断ち切ることはいけないのではないか。年に百人や二百人のそういう特別の例の場合ならば、現在すでに八万人も朝鮮の諸君がふるさとに帰って、ずいぶん在日朝鮮人の数は減ったわけでありますから、そういう特別の例に対しては人道的配慮が望ましい。このたびは、そのおかあさん自身がまた前に密入国したようなこともあって、合法性が疑わしいというようなことがあったそうですか、それもすでに日本に参って結婚しており、そして善良な生活をしておられるとするならば、母の合法性をまずきめてあげて、そしてそのむすこさんを呼んであげるというくらいのことはしてあげたい。人道に関する限りは、南北の区別なく、韓国の皆さんに対しても同じように親切にしてあげたい。前に長谷川さんが韓国に参りまして政治的に違う見解を述べたようですが、人情の上から申しますと、長谷川さんは韓国の京城などには深い思い出を持っておりますから、そういう面から彼が言ったことであろうと私は思っておりますが、人情の点から言いますと、ほんとう韓国の人でも北朝鮮の人でも同じように気の毒な立場にあるわけです。それに対してはほんとうの真心をもって処遇することが必要であると思いますから、入国管理局長、ひとつ特別の親切な人道的な計らいをしていただきたいと思います。  以上です。
  94. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 漁船の損害は、帆足さんの御質問の要旨は国内的処理の問題だと思います。これにつきましては、実情に即して取り扱っていきたい、こう考えております。  それから、処遇問題については、今後これを細部にわたって取りまとめいたしますが、御所見の点はできるだけ尊重いたしたいと思います。  第三点は他の政府委員からお答えいたします。
  95. 八木正男

    ○八木政府委員 先日の新聞に出ました金少年のことでございますが、私どもも一個の人間として非常に気の毒だと思うことは当然でございます。おそらく日本新聞を読んだ人はみんなそう感じただろうと思います。私、入管に来てまだ数カ月の未経験者でありますが、これに類する、あるいはこれよりもはるかに気の毒なケースを毎日のように裁決させられておるのでありまして、事件の報告を聞きながら思わず涙が出るようなケースが幾らでもございます。この少年が特に格段に気の毒だと私は思っておりません。ただ、気の毒なことは事実で、何とかしてやりたいということは考えております。  ただ、この場合一番困りますのは、彼が密航者であるということ。もちろん密航せざるを得なかった理由はあるのでしょうけれども、これは先生も御承知のとおり、世界各国を通じて密航の取り締まりということは非常にやかましいのでございます。その場合は、密航者をしょっちゅう積むようなことになりますと、その船ないしその船の所属する会社が将来その国の出入に関していろいろな制限を受けるようなこともあり得ますので、各国とも非常に厳重にやっております。私どものほうも規定がございまして、入管令の五十七条に、密航者を発見した船長は必ず入港する港の審査官にそれを報告しなければいけない、それから、その船長は港に停泊中その密航者が絶対に上陸できないように監視する責任があるというふうになっておりまして、少なくとも法文のたてまえから言うと、この少年は、われわれの知っているところによりますと、航海中に発見されて、入港した神戸の入国事務所に船長から報告があったわけでございまして、したがって、この船の船長は神戸入港中にこの子供が船から出られないように責任を持って監視しなければならぬということになっているわけでございます。  問題は、この少年がいかになれば幸福であるか、そのためにわれわれとしてどういうことをしてやればいいかということになるのでございますが、実はいま現地から詳細な報告を取り寄せている最中でございまして、その実庭事情などもよく存じておりませんけれども、一応伝えられるところによりますと、この子供の母親というのは、だいぶ前に、七、八年か十年ですか以前に韓国の中で夫婦別れをしまして、上の子供を——今度密航してきた子供は上の子供でありまして、それをおやじに押しつけて、下の子供を連れて日本に密航してきた。日本で屋台か何かやっているそうですか、実は私、この記事を読んで憤慨したのは、そんなに子供がかわいかったらなぜ日本に密航してきたか、そういうかわいい子供をなぜ置いてきたかということでございます。第二に、この少年はおやじと一緒に生活をしておった、したがってそのおやじの手元におった。おそらくその父親がなくなったのだろうと思います。この辺の事情もよく存じません。それから、もう一つ、われわれがこういう場合の救済措置を講ずるときの一つの考慮の対象は、韓国に身寄りがいないかどうかということでございます。これは、韓国の場合われわれ非常に困りますのは、一応本人はいないということを申し立てているが、調べてみるといるということはよくございます。そういうこともひっくるめまして、私が直接現地に指示したわけではございませんが、その意のあるところを伝えさした点は、この子供のケースは、今度のこの航海に関する限りはどうしても日本に入れてやるということは不可能である、ただ、この少年が密航を発見されて、船が日本の領海に入ったときから不法入国の罪は成立しておりますが、それを理由につかまえで強制退去というようなことはしないことにしよう、それからまた、これをかわいそうだというのでこの際船から出して不法入国者に対して私のほうから特別在留を許可するというようなことをもしやりますと、この子供は不法入国者の焼き印がついてしまいますので、したがって、短期の特別在留を許可されて日本にしばらくおった後に、これは短期でありますから必ずいつか帰らなければならぬ、そして将来母親と一緒になるために日本に来たいというときに、かつての不法入国者ということがありますと査証は出せないので、そういうことも考えまして、今度の場合はひとつわれわれは見て見ぬふりをしようということを部内で言っております。ということは、将来韓国に帰って、協定もできて、この子供が正式に旅券を持って日本に来ることができるようになった場合には、かつて彼が密航少年であったということは目をつぶって入れてやろうということに考えております。
  96. 帆足計

    ○帆足委員 それで承知いたしました。結局、未成年の子供、親子、兄弟、夫婦等について、前は軍国主義の遺産であるし、いまは南北に両断されて、民族の悲劇でございますから、人道的な御配慮を重ねてお願いいたします。法律上の手続はただいまあなたの言われるとおりでございます。
  97. 安藤覺

    安藤委員長 戸叶里子君。
  98. 戸叶里子

    戸叶委員 いま同僚の議員からベトナムの問題について真剣な質疑がかわされたわけでございますが、それに対しまして、どうも椎名外務大臣が何かぴんとこないような返事をされているのは、私はまことに残念だと思います。アメリカが八十機もの飛行機を使って北を攻撃したり、あるいは先ほど来問題になっておりましたように中国への爆撃もあり得るというような発表をしておりますような、こういう重大なときに、国民は非常な危機感を感じております。ところが、外務大臣のほうは、感度が幾らか違うかもしれませんけれども、危機感を感じるどころではなくして、その質問に対して、杞憂にすぎないこともあり得ると、こういう御答弁でございました。私はこれを伺っておりましてまことに悲しくなりました。こんなに重要な問題、アジアの平和を脅かされるのではないか、日本はどうなるのだろうという真剣な気持ちで、今日では八百屋のおかみさんでさえも、ベトナムはどうなるのですか、こういうような質問を私どもは聞かれる状態なんです。そのときに、日本政府は、まあそれは杞憂にすざませんよというような答弁を国会でされているというに至っては、私はこれはあまりにも悲しむべき不見識な答弁だと言わなければならないと思っております。もう少し真剣に考えていただきたい、こういうことを私は考えます。先ほどからの御答弁を伺っておりますと、日本としても対岸の火災とはみなされないから、いろいろと暗中模索をしているけれども確信がないのだ、こういうことを言っておりますけれども、大体危機感がないから問題の解決に当たらないと思うのです。もっと真剣に、これはたいへんだというそういうお考えになれば、そこに私は策が出てくると思う。それにもかかわらず、杞憂などという考え方を持っていらっしゃるから、暗中模索をして、ああでもない、こうでもないということになるのじゃないか。私はこの点をほんとうに国民の一人として心配をせざるを得ません。  そこで、私は、きょうの新聞等を見まして、ウ・タント事務総長がベトナムに行くといっても、あるいはまた、かつてのイギリスの外相のゴードンウォーカー氏が行くといっても、これは断わられているというような状態でありますし、また、一方において、松本大使がこの間訪問したときに、アジアの諸国は日本期待することが多い、こう言われていたことを考えてみましても、このアジア期待している諸国にこたえる意味からも、私はぜひ何らかの手を打っていただきたい。この際こそ、日本アメリカに仲介の労をとりましょう、何とか解決をいたしましょうというくらいのことは言ってしかるべきではないかと私は思いますけれども、それもおやりにならないで、しばらくは静観、暗中模索、この態度をお続けになるのかどうか、この点をもう一度確かめたいと思います。
  99. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカに対しては、戦火の拡大せざることをあらゆる機会に申し入れております。アメリカはもちろん領土的野心もないし、ほかに何ら政治的野心はない。ただ自由陣営の独立と平和・安全を守るという趣旨において南ベトナムの要請によって軍事介入をしておる。これをただ一方的にアメリカが軍隊を撤退することによって決して問題の解決にならない。その点はわれわれも同感なのであります。でありますから、やはりほんとうに終局的に戦火がおさまるというその時点を見詰めるならば、ただ一片の申し入れや、あるいは声明書等によって問題が片づくことではないのでありまして、この点に関して適切な有効なる手段方法はないか、そしてそのタイミングいかんということについて絶えず苦慮しておる、こういうことを申し上げたのであります。全然アメリカの言うなりになって、何もしないで拱手傍観をしておるのかというもし御質問であるならば、さにあらず、そういうことも申し上げておきたいと思います。
  100. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの大臣の御答弁でございますが、戦火の拡大してほしくないということをアメリカに申し入れをしているという御答弁でございました。それにもかかわらず、今日アメリカはどんどん北爆を続けております。これが戦火の拡大でないとお認めになりますかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  101. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いつでも条件がついているので、拡大をアメリカは欲しておらないけれども、侵略が継続する限りにおいては、ただ黙ってこれを受けておるわけにはいかぬ、こういうことがいつもおしまいのほうにつくのであります。これに当然のことだろうとわれわれは思う。のでありますから、一方だけ引いて、そしてあとはうしろからどんどん鉄砲で撃たれるのをがまんして逃げて帰るというようなことはない。やはり、南越の政治的な独立、平和、安全というものを、広く自由陣営のために守ろうという意思は、これはどうしてもアメリカは放棄しないのでありますから、どうしてもやはり、双方兵器を捨てて話し合いをするということにならなければいかぬ。その点が満たされなければ、これは決して円満に解決するものではない、かように考えておる。
  102. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、外務大臣のおっしゃったように、声明を出したり、あるいはそういうことで解決しようとは思っておりません。ただ、もう少し真剣に取り組んでいただきたいということを言っているわけです。  いま外務大臣の御答弁を伺っておりますと、アメリカのためにたいへん弁護をしておられますが、ところが、今度のベトナムの問題に関しては、世界の世論というものはアメリカの行き過ぎを批判をしていることは、御承知のとおりでございます。そこで、外務大臣にお伺いしたいことは、アメリカの今日ベトナムで行なっていることはすべて正しいというふうに政府は御認識されているかどうかを伺いたいと思います。
  103. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 こまかい一々の行動をせんさくする意味ではなくて、アメリカが、戦火不拡大、ただし目的は、南ベトナムの要請によって、同じ自由陣営にあるこの南ベトナムの政治的独立と平和というものをあくまで擁護しよう、こういう目的のもとに軍事行動を起こしておるのでありますから、この目的がやはり満足されるという形が出てこないうちはアメリカとしては軍事行動を捨てないであろう、こう考えておる。それで、考えが同じなら、われわれもこれに同調せざるを得ないのであります。それで、ジョンソン声明というものが今回出たのでございますが、まず北ベトナムの侵略行動をやめるという前提のもとに自分からも交渉に応じようというのが、今度はそういう問題を持ち出さないで無条件に交渉に応じようということを持ち出しておる。しかしながら、これに対しては北のほうは全然何らの反応を示しておらない。むしろますます従来の方針を強化するような形勢を示しておるのでございますから、この収拾は非常にむずかしくなった、こういうふうにわれわれは考えております。
  104. 戸叶里子

    戸叶委員 ベトナムの政治的独立をアメリカ目的としてやっていることなのだから、日本も一一せんさくをしないけれども、その点で認めているということを言われました。それならば、アメリカだけが、世界の世論はどうあろうとも、アメリカ考え方で、これはベトナムの政治的独立をはかるものである、そういう考え方でやった行為はどんなことでも是認するという立場をおとりになるかどうか。これは、私は、アメリカが正しいと思っても、他の国あるいはベトナム自身の国民の判断からは逆コースをたどっている場合があると思うのです。それにもかかわらず、アメリカがよそから来て、これはこういう目的なんですよといって押しつけたって、これはおさまるものではございません。そういう問題を、アジア人である日本の国民がわからないというところに、私はどうかと思うのです。アジアの国民であるならば、アジアの国に起きていることくらい、その解決に当たるべきじゃないですか。それを、アメリカがこう言いましたからこうですというふうな是認した立場をとっておられるところに、問題の解決はないし、日本アメリカがそう言っている以上は仲介の労は決してとれないとしか私は考えられないのです。この辺で頭を切りかえていただきたい。そうでなければどんなことになるかわかりません。ほんとうに国民は真剣に心配しているのです。どうかもう一度その点を考え直していただきたい。  そこで、私は、いままでの外務大臣の御答弁を伺っておりますと、何かいい案がないようでございます。しかし、今度はロッジさんがアジアの諸国を回ってアメリカの態度を説明しながら、日本にも来て、日本意見を聞くということが報道されました。ロッジさんが来られたときに、一体いままでのような態度でお臨みになるのですか。それとも、もう一ぺんこのベトナム問題を解決しようという意欲に燃えて、国民の危機感を解決するという立場でお話し合いになるのですか。この点の心がまえをまず伺いたいと思います。
  105. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 問題の所在はあくまで自由陣営の安全と政治的独立にあるのでございます。でありますから、そのためにやっている行為はどんなことでも全部是認するかというお話しでございましたが、必ずしもそうはまいらぬこともあると思いますが、そういう個々の行為等についてのせんさくは、私はこの際十分の資料を持っておりませんので申し上げないことにいたしますが、とにかく、この軍事行動の目的というものは那辺にあるかということを度外視して問題の解決は不可能である、かように考えております。今、ロッジ氏がずっと回ってくるようでありますが、やはり、向こう意見も聞き、そして当方の考え方も述べたいと考えております。
  106. 戸叶里子

    戸叶委員 いままでの御答弁のような考え方アメリカのロッジ氏と会うことは、私はやめていただきたい。これではアメリカの言うことをああそうですかと聞く以外にはないと思います。したがって、これからまだ日もあることですから、私は、もっとこの問題の重要性を考えて、日本として独自の形でアメリカの戦略を阻止できるような形の意見をぜひ出していただきたい。これ以上このことは言いません。  そこで、先ほど外務大臣がはからずもおっしゃいましたジョンソン大統領の声明でございますが、去る七日にジョンソン大統領が無条件で話し合いをするということの意思表示をされたわけです。その回答を北ベトナムなりあるいは中共よりまじめに待つというならば、少なくとも中共と北ベトナムで検討するだけの時間的余裕をおくべきではなかったかと思うのでございます。ところが、一日おいてすぐ大爆撃をしております。この事実を見ましても、ジョンソンの演説が平和を求めたものではないと一般に解釈をされておりますけれども、これもしかたがないと思うのです。私たちもこのことによって米大統領の真意を疑うわけでございますけれども、政府は依然としてアメリカ話し合いを求めているという態度に理解をされておりますかどうですか、この点を確かめておきたいと思います。
  107. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 従来のアメリカの態度を変えてそして話し合いに応ずる姿勢を示したものとは、あの文句からは受け取れないのであります。でありますから、アメリカの北爆というものは、やはり従来の考え方に立って、侵略が継続しておるという認識のもとにやっておるものとわれわれは判断しておるのであります。それと無条件に話し合いに応ずるということとはやはり決して矛盾するものではない、並行線をとっておるものだ、かように考えております。
  108. 戸叶里子

    戸叶委員 無条件に話し合いに応じるということと、それからいままでの態度を変えて話し合いに応じる、こういうふうなこととの矛盾はないということは一体どういうことですか。ジョンソン大統領の演説を一般の人が受け取ったのは、無条件に話し合いに応じるということだったのです。ところが、それからまる一日もたたないうちに、中共や北ベトナムが考える余裕、あるいは討議をする余裕も与えないで爆撃をしていった。これは報復手段じゃないのですよ。アメリカが爆撃をしていっているのですよ。一体これで、アメリカが何のために無条件で話し合いに応じるなどという説明をしたか、その真意が一体どこにあるかということを私たちは疑わざるを得ないのです。ところが、政府は、やはりこれはアメリカ話し合いをしようというふうに変わってきたというふうにお考えになるのか。
  109. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、従来は、まず北のほう、北方からの侵略をやめよ、しかる後に話し合いに応じよう、こういうことを言っておったのでありますが、その北からの継続的な侵略あるなしにかかわらず、そういうことにかかわらず話し合いに応じようというのが今回の無条件話し合い、こういうふうに私どもは解釈しております。
  110. 戸叶里子

    戸叶委員 無条件に話し合いに応じるのならば、話し合いに応じるらしく爆撃はやめたらいいというのが常識じゃないですか。話し合いに応じると言いながら爆撃をしていても、それでいいということですか。それじゃ話し合いの余地はないですね。
  111. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 話し合いをしようということになれば、もちろん爆撃はそのときにはやめるでしょう。しかし、これに対して何らの反応を示さず、ますますアメリカの攻撃に対しては絶対に屈服しないということを大いに揚言をしておるという状況においては、やはりこういうことにならざるを得ないのではないかと私は考えます。
  112. 戸叶里子

    戸叶委員 話し合いをしようという申しかけをしたんですね。そうしたらば、こっちで考えて返事をしようとしているうちにまた爆撃されれば、絶対にそれには応じられませんというのはあたりまえじゃないですか。その間黙って北爆しなければ、やはり話し合いに応じるという考え方も出てくると思うのです。にもかかわらず、考える余地も与えないうちに北爆していった、こういう態度なのですけれども、それでは政府はジョンソン演説後の爆撃に対しては肯定なさるのですか。これは当然のものであるというふうにお考えになるわけですか。
  113. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本は去る第二次世界戦争において平和のために話し合いをしようということを申し入れたのでありますが、それから数日猛烈な爆撃を受けた。どうも戦争というものはこういうものかというふうに私は考えておりましたが、つまり、向こうの侵略の継続が依然としてあるという場合に、話し合いの申し出をされても、それを黙って受けるということはあり得ないのではないか。でありますから、とにかく話し合いに応じよう、それについてはしばらくこっちは攻撃をしない、どんなことをしかけられても二、三日猶予する。こういうような場合ならば、これは非常に不信義な行為でありますけれども、そういうことではなしに、いままでは、まず北からの侵略をやめろ、しかる後にこちらも軍事行動をやめて話し合いに入ろう、こういうことを言っておったのを、そういう前提なしに直ちに話し合いに応じる用意があるということを一方的に声明した。でありますから、それじゃ話し合いに応ずる、ひとつ話そうじゃないかということがあれば、そういうお互いに攻撃をするということは信義に反する。ところが、それに対して何ら反応を示さず、むしろ反対に強いことを声明するということであれば、やはり従来の強度をそのまま継続しても、私は戦争道徳というものがどういうものか知りませんけれども、そういう不信義なことはないと思っております。
  114. 戸叶里子

    戸叶委員 話し合いがあっても反応を示さなかったとおっしゃいますけれども、その反応を示すだけの余裕がなかったのじゃないですか。最後的な通牒というものを出す場合には、やはりそれを討議する期間なり何なりを指定して出すのが私は常識だと思うのです。したがって、そういうこともしないで、そして話し合いの期間もおかないでおいてすぐにまた爆撃をする、こういうやり方はアメリカに誠意がない。国際的な世論をごまかすためにジョンソン声明というものをやったにすぎない。あの内容にも矛盾点はあります。しかし、私はきょうは内容をいろいろ言おうとは思いません。内容はこの次にいつかやりますけれども、そういうふうに、そのことを考えてみても、私たちはそう思わざるを得ないわけです。しかし、椎名外務大臣は、戦争中の道徳というものはどういうものかわからないと言って、何か戦争中にも道徳があるようなことも言っていらっしゃるわけですけれども、アメリカの声明というものは世論の目をごまかすためにやったのではないか、こういうふうにだれもが考えてもしかたがない、私はこう思いますけれども、日本政府としては、ジョンソン大統領の声明はベトナムを平和の方向に持っていくのにはたいへんに役立ちました、こういうふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。この辺の御見解を承りたいと思います。
  115. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだ、役立つか役立たないか、これはわからない。いまのところは役立たないように考えますが、これがあるいは将来役立つことになれば、はなはだ幸いである、こう思います。
  116. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣の御答弁ほんとうに残念です。私は日本の平和ということを考えますから、とても真剣になってこの問題と取り組んでいるのです。ところが、この問題についても、ジョンソン声明一つに対しても、外務大臣は、見識ある考え方というものをお出しにならないで、ただ、いまのところ役に立たないと思うけれども、そのうちに役に立つことがあるかもしれないなどと言う。この重大だと言われている声明に対しても見識ある答弁を承れないということは、ほんとうに残念でしかたありません。しかし、このことだけでとどまっていられませんので、もう一点伺いたいと思います。  今回アメリカは十億ドルの援助を出すが、それに関連してライシャワー大使が日本にも援助を出すように言われたということを聞いておりますけれども、それはほんとうでしょうかどうでしょうか、この点伺いたいと思います。
  117. 安川壯

    ○安川政府委員 新聞にはちょっと事実が違って出ておるようでございますが、私直接会談に立ち会いましたので、そのときの模様を申し上げますが、ライシャワー大使は、ジョンソン声明の趣旨を説明いたしまして、特に経済協力関係に重点を置きまして、アメリカは何を考えておるかということを説明したわけでございます。それについて特に向こうのほうから日本協力を要請するということはなかったわけでありますけれども、その説明に対しまして、佐藤総理は、自分としてもかねがね、東南アジアの安定には何よりも民生安定が必要である、その観点から日本は独自に貢献したいと考えておった、ジョンソン大統領の考え方は、その自分のかねがね考えておったこととも合致する、日本としてもできるだけのことをしたい、こうお答えになったのが事実でございます。
  118. 戸叶里子

    戸叶委員 それはだれが答えられたのですか。
  119. 安川壯

    ○安川政府委員 佐藤総理が答えられたのでございます。
  120. 戸叶里子

    戸叶委員 その経済援助の内容は閣議できまったということも聞いておりますけれども、きまったのでしょうか。それから、その内容は大体どういうものでございましょうか。
  121. 安川壯

    ○安川政府委員 ジョンソン大統領の声明のほうも、具体的なアメリカ計画ということに全然触れませんで、ただ、その趣旨と申しますか、精神と申しますか、そういうものをふえんして説明されたわけでございます。それから、佐藤総理がおっしゃいましたことも、ただいま私が申し上げましたことにとどまっておるわけでございまして、日本が具体的にどういうことをどういうふうにやるかというお話は全然いたしません。
  122. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣にお伺いしたいのですけれども、経済的な援助を何かなさろうとする御計画なりお考えがおありになりますか。
  123. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いわゆる低開発国に対する先進工業国としての責任は、やはり南北問題の取り上げ以来具体的な問題にもすでに発展しつつあるところでございます。日本といたしましては、財政力の許す限りにおいて、低開発国の援助、これは長い目で見ると日本のためにもなり、また広く平和確立のためにも非常に有意義なことでございますから、目の先のことを考えてただ商売をうまくやればよろしいというような考え方から脱却して、いわゆる南北問題の解決に挺身しつつあるのが日本の最近の方針でございます。最近の情勢にかんがみて、日本はさらにできるだけこの方面に一そうの努力をする必要があるということを痛感し、これらに対する施策を推進しつつあるわけでございますが、今回のアメリカからの申し出等にかんがみましても、これは全く日本政策に合致するものであると考えまして、なお、これらの問題の将来の取り上げ方あるいは推進のしかた等については十分に考究をいたしたい、こう考えております。
  124. 戸叶里子

    戸叶委員 私は低開発地域に対する援助の問題を言っているのじゃないのです。いま戦乱のまん中にあるベトナムに対しての援助をおやりになるのですかどうですかということを伺っているのです。そのことについてのお考えを伺いたい。
  125. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 戦乱によって動揺しておるといないとにかかわらず、とにかく広く、開発のおくれておる低開発国である東南アジアは言うに及ばず、その他のアジア地域に対しまして一様に経済援助をするという大方針のもとに問題を考えてまいりたい、こう考えております。
  126. 戸叶里子

    戸叶委員 この前たしか百五十万ドルの援助をベトナムにやるというときに、委員会で私どももいろいろと反対をいたしました。それは、人道的立場といいながら、一方に加担した行動をとったからです。そのときといまとはもっと性格が変わってきていると思います。今日のベトナムには、やはり国際戦争の様相をいまでは帯びてきていると思います。そういう中で一方に加担したということになりますと、他方の勢力を弱める、一方を強めるということになるわけでございまして、これは戦時国際法上から見るならばもはや中立という立場にはなり得ない、こういうふうに考えますけれども、この点はお認めになりますか。
  127. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは具体的に情勢なり事情というものに即して考えなければならぬと思いますが、御指摘のとおり、南北問題は、先進工業国が広く低開発国を援助・助成するというたてまえでございますから、できるだけそういう片手落ちのようなことのないように考えていかなければならぬものだ、こう考えております。
  128. 戸叶里子

    戸叶委員 片手落ちにならないようなものにするということは、南ベトナムにだけの援助はやらない、こういうふうにとってもいいわけですか。具体的に伺いますけれども。
  129. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 具体的にいま右左きめてしまうということは、これは少し段階としては尚早でございます。この南北問題は、広く、そういうことのない、片手落ちにならぬように、特にこっちに味方してどうこうという、そういう目をもって見られないような、もう少し高い見地からの施策でございますから、できるだけ現実に即して、しかもあまりそのために低開発国同士が仲間割れをするというようなことのないように持っていかなければならぬものだ、こう考えております。
  130. 戸叶里子

    戸叶委員 大臣のおことばを総合いたしますと、戦時国際法上から見て、中立的な立場をとらないようなことはしない、一方に加担したような援助はしない、こういうふうに私も了承いたしました。ただ、その場合に、人道的な立場から何らかの援助をするというようなことも私は許されないと思います。なぜならば、人道的な立場からするというならば、一九四九年の「戦時における文民の保護に関する条約」というのがジュネーブで持たれておりますが、その中に、赤十字国際委員会のような公平な人道的機関はその役務を紛争当時者に提供することができる、こう書いてあるわけでございまして、当然この機関を通しての人道的立場の援助をするならばわかりますけれども、日本が直接援助をするということは納得できませんが、この点もはっきりさしておいていただきたいと思います。
  131. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いまお述べになったのは戦時国際法の関係の法規のように承ったのでありますが、この際のいわゆる自衛権の発動というような形で行なわれておる問題とは直接関係がないように考えます。
  132. 戸叶里子

    戸叶委員 まだ二、三あるのですが、時間がないから質問をやめますが、ただ、いま申し上げたことを外務大臣どういうふうにお考えになっておるのか。私は自衛権の発動なんてことを言ったのじゃないのです。ただ人道的な立場で援助するということも、日本が直接いまの戦乱状態にある南ベトナムにやることは戦時国際法上から言って中立にはなれませんねということです。つまり、ジュネーブの協定で、戦争の最中においての援助のしかた、捕虜の立場に立った人にはこうするとか、文民に対してはこうするとかいうことがきめられてあるのです。だから、赤十字国際委員会を通して援助をするならば公平だけれども、そうでなければ公平にならないですね、だから公平な立場で援助をなさるならば赤十字国際委員会をお通しになるのでしょうねということを申し上げたわけです。ですから、この点をもう一度念のために伺っておきまして、私の質問は次に回したいと思っております。
  133. 佐藤正二

    ○佐藤説明員 御指摘のジュネーブ条約は、大臣お話しになりましたように、戦時国際法の問題であります。ただ、そういうような規範になるものとして、そういうふうに考えるべきだということは、そのとおりだと思います。現在の事態は、大臣もお答えになりましたように、集団自衛権の発動というような考え方に立っておるものでありますから、一方の侵略国に対しての援助はやるべきでないということは国連憲章にも書いてございます。したがって、戦時法規であるジュネーブ条約がそのままこの場合に適用できるかといいますと、ちょっとその点は疑問だと思うのであります。
  134. 安藤覺

    安藤委員長 西村君。
  135. 西村関一

    ○西村(関)委員 先ほどからの同僚委員からの質問に対する外務大臣答弁を伺っておりまして、私はなるべく政府立場理解しようという気持ちで伺っておりましたが、どんなにひいき目に考えましても納得ができません。この重大な危機に立ち至っておるベトナム問題の解決にあたって、政府がき然たる態度で解決の責任をひっかぶってやるという気がまえが少しも感じられないということを遺憾に思うのであります。外務大臣は、繰り返し繰り返し、北からの浸透をやめない限りは問題の解決にならないというアメリカの一方的な言い分を言っておられるにすぎないのでありまして、このベトナム戦争の性格が内戦である限りにおいて、北からの浸透が全然ないということは言えないのは当然だと思うのであります。同じ民族で同じ目的で北と南と相呼応して立ち上がっておるところのベトナム民族が、全然交渉がないといったようなことはとても言えないと私は思うのでございます。しかし、それと比べまして、アメリカが軍事顧問団と称する公称三万二千の軍人を送り、一日二百万ドル、一カ年七億ドルの主として軍事的な援助を南ベトナムに行なっておること、またダナン基地には三千名の海兵隊を上陸させておること、ホークミサイル、また最近には原子砲まで陸揚げしておること、さらに海兵隊を強化しようというような情勢にあること、そういう状態と比べるならば、私は比較にならないと思う。いずれが一九五四年のジュネーブ協定の精神を破壊しているかということは、これはもう世界の世論が差し示しておるところだと思うのでございます。しかるにかかわらず、外務大臣は依然として、北からの侵略をやめなければというこのことだけを言っておられるということは、非常に遺憾だと思うのです。  お伺いいたしますが、一体北爆によってこの戦争が終息されるというふうにお考えになっているかどうか。もしかりにハノイまでアメリカの爆撃の手が伸びるということになるならば、どういう事態が起こるか。もう一歩手前まで来ておるのです。先ほどは中共本土の爆撃の問題が出ましたが、その前に、一国の象徴であるところの首府であるハノイを爆撃するといったような事態がもしかりに不幸にして起こったとするならばどういうふうな状態になるかということを外務大臣はお考えになっておられるか。その点をどういうふうに受け取っておられるか。こういうことは仮定の問題だというようなことでは済まされない。今日の情勢は非常に緊迫しておるのでございます。  依然として日本政府は、LSTの乗り組み員の問題等についても、先ほどの御答弁にありましたように、旅券を出そうとしておる。生命の危険がないからと言っているが、はたして生命の危険がないと保証できるのでしょうか。生命の危険があるものに対しては従来旅券を交付していない。生命の危険がないということを一体どこで保証されるか。全然ないということは言えないということを先ほどアメリカ局長も言われたのでありますが、しかし、この警備が非常に堅固なサイゴン市内におきましても、アメリカ大使館におきましてもあのような爆破事件が起こっている。まして、海上輸送、武器・弾薬を輸送する。これは軍需品もあるということをアメリカ局長は認めておるのです。民需品もあるが、軍需品もあるということを認めておるのです。そういう危険な業務、しかも戦争に加担するような業務に従事する日本船員に対して旅券を交付するということは、これはきわめて私は矛盾撞着もはなはだしいと思うのでございます。そういう点が明確にされなければ、私は日本政府がこの問題の解決に前向きな姿勢をとっているとは言えないというふうに思うのでございます。  最後に、私はジョンソン大統領のジョンズ・ホプキンズ大学におけるところの演説を聞いて一時はほっとしたのです。そのときはほっとした。ところが、しさいにこれを読んでみると、これほどのごまかしはない、これほどの自家撞着はないということを感ぜずにはおれないのであります。これをそのまま外務大臣は受け取っておられるということは非常に遺憾なんです。一々これをきょうここで論評をすることができませんけれども、このジョンソン大統領の演説、これはアメリカ大使館から来た資料でございますが、これについて、問題の所在がどこにあるか、つまり、美辞麗句を並べておるが、衣のそでからよろいがちらちらするというのは、まさにこのジョンソン大統領の演説だと思うのであります。こういうことに対しましても、私は外務省がもう少し問題の核心に触れた検討をしていただきたいということを思うのでございますが、それらの点に対しまして簡単に外務大臣からお答えをいただきたいと思います。  関連でありますから、私はこれで終わります。
  136. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ベトナムの戦乱は、何よりもベトナム自身にとって非常に不幸なことでございます。でありますから、ベトナムをまずもって安固ならしめるということをほんとうに考えるならば、やはり、アメリカの軍事行動の軍事力の撤退、同時に北越の軍事的な行動というものもやめて、そうして話し合いに応ずるというのがほんとうではないかと私は考えております。ただ、自分のほうは従来どおりやって、相手だけのけというのは、この問題の解決のためには適当ではない。  それから、日本船員に旅券を交付するのはやめるべきだというような御意向のようでありますが、先ほどからもアメリカ局長から御答弁申し上げたとおり、大体自由意思で船員になっておる者でございまして、ただいまの戦況では、かような船に乗ってあの地域に近づくことは非常に危険であるというような状態ではない。特に、こういう平和的な仕事をする船員その他に関しては、非常に細心の注意をもって、これに些少でも損害を与えないような配慮をしておる状況でありますから、ただいまの状況では、これをやめる、その自由意思に反してこれをとめるということは考えておりません。  それから、ジョンソン演説につきましては、従来、まず北からの攻撃をやめろ、しからばアメリカの軍事行動もやめる、そうして話し合いに応ずるというのでありましたが、さような、まず爆撃を相手方にやめることを申し入れ、しかる後に話し合いに応ずるというような、いわゆる条件つきではなく、即刻話し合いに入ろうじゃないか、そういうことを言っておるのでありまして、決してこれはごまかしではない。その他の点においても、私はアメリカがいかにこの問題の収拾に真剣であるかということがわかるのであります。この問題につきましては、自由陣営のみならず多くの中立国もこれに賛意を表しこれを支持しておる、ただ反対をしておるのは主として共産圏のみである、こういう状況でございますから、これを全然ごまかしであると言うのは、いかがかと私は考えるのであります。
  137. 西村関一

    ○西村(関)委員 私は、外務大臣の御見解ではありますが、この点については時間をかけてジョンソン大統領の演説についての大臣の御所信を承りたいと思いますから、きょうはそれはやめます。しかし、このジョンソン大統領の演説の中に盛られておるところの意図が何であるか、私は、ほかの国々の人たちの論評いかんでなく、私自身の見解、私自身の良心に従ってこれをしさいに検討した。しかも、同情を持って、ジョンソン大統領の立場にも立ちながら検討してみました。しかし、いま外務大臣の言われるような御見解には、どうしても賛成することができません。大体十億ドルくらいであのメコン川の開発ができるはずがございません。十億ドルというドルの札束を鼻先に突きつけて、これで言うことを聞けというのと同じことです。そういうことでアジア人が、ベトナム人が承服するとは絶対に考えられません。そういう考え方自体アメリカの大きな間違いだと思うのであります。私はこれ以上申し上げませんが、外務大臣の御見解に対してはどうしても承服できませんので、この点につきましては次の機会に質問を保留いたしたいと思います。
  138. 安藤覺

    安藤委員長 岡田春夫君。  岡田君に申し上げますが、大臣はどうしても一時二十分に御退席にならなければならない用件がございますので、それまでに質問を打ち切っていただきとうございます。
  139. 岡田春夫

    岡田委員 時間がありませんから、私は要点だけ質問してまいりますが、まず第一に外務大臣に伺いたい点は、あなたがいままで答弁された点で国民が納得するかどうかということです。私、先ほどから聞いておりまして、これは、私が社会党で、あなたが自民党であるからといって、そういうことだけで言うのではないのですが、あなたの態度は、率直に言って、真剣さというものが全くないと思う。ずばり言って、国民を愚弄しておると思うのです。この戦争が拡大した場合、あなたは責任をとらなければならないんですよ。個人的なことを申し上げてはなはだ失礼だけれども、この前の戦争のときだって、あなたは責任があるのでしょう。もう一度あなたは責任を負うという考えなのですか。アメリカの言うことを代弁することだけで済むと思いますか。あなたは日本外務大臣ですよ。あなたは、いまのことばで国民が納得できる、そう確信を持っていらっしゃるなら、もう一度言ってください。  北ベトナムの爆撃というのは自衛権の行使である、日本政府としてそれは当然であると言うならば、ラスクが言ったかだれが言ったか知らないが、中国を爆撃するということも、当然アメリカは自衛権の行使だと言いますよ。その結果として日本の国が戦争の渦中に入ってくる場合において、あなたは、アメリカは自衛権の行使であるから当然である、こう言う勇気がおありなんですか。あなたはそういう勇気を持って、再びかつてのあなた自身の責任を繰り返すつもりなんですか。私は、社会党の立場というよりも、日本の国民の立場として、あなた自身の言っておられることには絶体承服できない。あなたはもっと責任を持っておっしゃってください。もしそういう事態になったら、あなたは責任をとるということをはっきり言ってください。まず第一にそこから伺いたいと思います。
  140. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どういうことに関連してだれが発言したかわからぬ、中共の爆撃も場合によってはあり得るというような一片のことばをもって、ただその断面だけを見て、すぐもうアメリカは中共の爆撃を考えているのだというふうにとって、しかもその場合に日本外務大臣が責任をとれるか、これはあまりに飛躍し過ぎて、どうも私もこれは何と言ってお答えしていいか見当もつかないようなわけでありまして、あまり飛躍し過ぎた、仮定に基づいてそういうことを言われても、私はこの際責任ある答弁はできないのでありますから、どうぞ……。
  141. 岡田春夫

    岡田委員 答弁はできないでしょう。国民に対して、アメリカの侵略行動を自衛権の行使であるといって日本政府がそれを支持するなんということは言えないでしょう。あたりまえの話ですよ。言えるなら言ってごらんなさい。言えないから言わないんですよ。  私は具体的な点を、こういう問題だけにあれすると時間がなくなるから進めますが、あなたは何かにつけてこう言うじゃないですか。北ベトナムが浸透しているからしかたがない、どういう証拠があるんですか。アメリカ政府が声明を発表されましたから、それが証拠だと言うのですか。松本俊一氏が帰ってきまして、あなたに北から浸透している事実があるという報告がありましたか。あなたの政府が委嘱をした代表がそういう報告をしましたか。どうですか。
  142. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 松本大使の報告内容は、私はこの際発表することは控えますが、このベトナム白書に書きつづられておるところのことが事実であるとすれば、私は、北からの侵略が継続的に行なわれておるということが言えると思うのであります。そういうことを前提として私は問題を論述しておるのであります。
  143. 岡田春夫

    岡田委員 前提としてということは、それを認めるということですよ。  こればかり議論してもしようがないから、続いて進めますが、それじゃLSTの乗り組み員に対しての旅券を発給するのですか。いつ発給するのですか。どういう旅券を発給するのですか。
  144. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  145. 山下重明

    ○山下政府委員 LSTに対する旅券は、この前の国会でもお答えしましたけれども、五、六日前に外務省に神奈川県を通じて申請が参りまして現在検討しておりますが、大体近い数日中に出す予定でおります。これは一般に船員に対して与える数次の旅券でありまして、行く先国としては、アメリカ、ベトナム、タイ、フィリピン、豪州、ニュージーランド、そういうような国を七つ八つ書きまして、その他必要な寄港地という形にして旅券を出しまして、近日中に県のほうを通じて本人に手交されることと思います。
  146. 岡田春夫

    岡田委員 じゃ具体的に伺いますが、その旅券の行く先の中にベトナムも入るのですね。それをはっきりしておいてください。
  147. 山下重明

    ○山下政府委員 ベトナムもちろん入れるつもりでおります。
  148. 岡田春夫

    岡田委員 その他必要のある国ということは入りますね。
  149. 山下重明

    ○山下政府委員 その他必要なる国というのは、普通、船に乗るときにはどこに寄港するかわかりませんので、必ず入れることにしております。
  150. 岡田春夫

    岡田委員 必要のある国の中には、ベトナムは別に書いてありますからこの中には入らないという意味ですね。
  151. 山下重明

    ○山下政府委員 ベトナムは別に書きますから、もちろんその中には入りません。
  152. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺いますが、神奈川県の県庁の外事課ですか、そこから要請があったこれの旅券申請の中にはベトナムというものを書く必要はない、そういうことをあなた指示した事実がございますか。
  153. 山下重明

    ○山下政府委員 そういうことを指示したことはありません。現実に、私のところに一週間くらい前に来た申請書にはちゃんとベトナムが入っております。
  154. 岡田春夫

    岡田委員 わかりました。それでは、旅券をあらためて発給するということは、出入国管理令の中では乗員、船の乗り組み員ですね、乗員の場合は、六十条では別な扱いになっていますね。その乗員とは違うのでございますか。
  155. 八木正男

    ○八木政府委員 船舶の乗り組み員の持っておる旅券は出入国管理令上から言いますと乗員手帳でございます。
  156. 岡田春夫

    岡田委員 そうすると、先ほど移住局長代理の言われた旅券というのは、それは旅券ではなくして実際は船員手帳だ、こういう意味ですか。
  157. 八木正男

    ○八木政府委員 出入国取り扱い上は、旅券というよりも、われわれは乗員手帳と認めます。
  158. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、旅券の中に名前がいろいろあるのですね。一つの旅券であっても、船員の場合はこの旅券を乗員手帳と言うし、われわれのほうは旅券、とこう言うわけですか。
  159. 八木正男

    ○八木政府委員 さようでございます。非常にややこしいのでございますが、ちょっとくどくなりますが御説明しますと、大体、船舶というのは、二、三世紀前あたりから非常に海上交通が発達して、同時に文明の進化に伴って、国の間の物資の輸送、人の輸送が非常にひんぱんになってきた。そこで、従来普通の外国人が旅行する場合の手続のような煩瑣な手続を船舶の乗員に期待することは無理だというので、各国とも船員に対する取り扱いが非常に楽になっておるわけでございます。たとえば、われわれの場合でございますと、飛行機で旅行した場合に、ある空港にとまる、そこの国の査証を持っていない限りはお客さんは全部飛行場の中にかん詰めされまして町には出られないのでございますが、船員というのは、世界のどこの港へ行こうと、その国の査証も何もなしにその港の中では自由に上陸が許されているというような取り扱いがございます。そこで、最近は船、航空機一緒にしまして、いま船員だけじゃないものですから、一緒くたにして、われわれのほうでは乗員手帳としております。その乗員手帳というのはどういうものかというのは、もちろん国によっていろいろな書式がございますけれども、普通の船の船員の場合は船員手帳でございます。それから、たとえば日航のパイロットとかスチュワーデスなどの場合に対しては、旅券を出しております。ただし、この旅券というのは、最初の出国のときには証印を押しまして、二回目以後は全然出入国の証印を押さない旅券でございます。したがって、外見的には普通の旅行者の持っております旅券と全然同じ形でありますけれども、取り扱い上の性質といいますか、それは乗員手帳であって、旅券とは言わないわけであります。
  160. 岡田春夫

    岡田委員 それでは移住局のほうに伺いますが、それは旅券法の適用ではないのですね。何条に基づくのか、そこら辺も伺いたいのだが、それは旅券ではなくして乗員手帳だとおっしゃるのがと、きわめてそこら辺あいまいなんですがね。
  161. 山下重明

    ○山下政府委員 われわれのほうでは、普通の旅券、数次の旅券として出しております。
  162. 岡田春夫

    岡田委員 役所によって名前が違うわけだ。一つのものを出して、片一方は旅券と言い、片一方は乗員手帳と言う、それじゃ入管局長に伺いますが、何も旅券を出す必要はないじゃないですか。前どおりに船員手帳でいいじゃないですか。手帳をなぜあなたは旅券法の旅券に変えたのですか。その理由が今度私はわからないのですが、ちょっと事情をお聞かせください。
  163. 八木正男

    ○八木政府委員 ただいまの第一の点は、普通の旅券が船員手帳と見られている点でございますが、これはもちろん外務省に旅券を申請するときに旅券として申請することはあたりまえでございます。ただ、われわれが言っておりますのは、出入国審査官が、出入国をする船の乗員の持っておる乗員手帳、それが船員手帳のかわりに旅券を持っている場合には、その旅券を船員手帳と見るということでございます。  それから、後段の点、ベトナムに行くLSTの乗り組み員に船員手帳をやめて旅券を持たせるように指導したといった点、これは私よりも船員局長のほうがよく御存じと思いますので、そちらから御答弁をお願いいたします。
  164. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 お答えいたします。  従来、外国船の乗り組み員日本人船員は、ただいまお話しの出入国管理令上の乗員手帳たる旅券の交付を申請させるようにいたさせておりました。LSTにつきましては、船員法の適用がなくなりましたときから船員手帳の受有の義務がなくなる。そこで、米軍の直接雇用になって船員法の適用がなくなったわけであります。したがいまして、日本船の船員法の適用がある者につきましては、船員法に定める船員手帳が入管令上の乗員手帳として認められておる。船員法の適用がなくなりました瞬間に、船員手帳が正規の船員手帳でなくなったわけであります。そこで、入管上はその際に一体いかなる取り扱いをするかということについて、外務省、入管局、それから私どものほうで取り扱いを相談いたしまして、入管局のほうの御解釈で、「乗員手帳船員手帳、旅券、又はこれらに準ずる文書」ということばがございまして、従来使っておりました船員手帳に、この者がLSTの乗り組み員であるということの証明をすれば、「これに準ずる文書」として出入国の際の資料になる、こういうことで、一時的にそういう取り扱いをいたしました。しかし、その後さらに検討を続けまして、一般外国船に乗り組む日本人船員と同様の取り扱いをすることが望ましいので、これを逐次旅券に切りかえていくというふうにいたしておる次第でございます。
  165. 岡田春夫

    岡田委員 これはもう少し具体的に伺っていかなければならないのだけれども、時間がないから要点だけ伺います。  大体あれですね、船員法に基づく船員手帳というのは日本船の場合ですね。外国船に船員手帳を与えて乗せるといったって、それは法的な根拠その扱いの法的な根拠をどういうふうにするのか。そこら辺ももう少し伺いたいが、あなた方が外務省あるいは法務省といろいろ話し合ってそういう扱いにすることにきめました、こういうお話は、法的な根拠の問題ではないのです。行政措置の問題ですよ。私、ずばり伺いますが、それはどういう法的根拠があるか。効力のなくなった船員手帳が法的な効力を持っておるのか。その手帳はないでしょう。そういう点、あなたの答弁の中ではっきりしてもらわなければならないのだが、もう一つある。船員手帳も持っていない者が乗っているじゃないですか。あなたが言ったそれに準ずべきどこかの文書をもらってきて、その文書で船員手帳に準ずべきものとして乗せている例もあるでしょう。ありませんか。
  166. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 船員手帳の効力でございますが、最初申し上げましたように、従来船員法の適用を受けて船員手帳を受有しておりました者が、船員法の適用がなくなりました場合に、これを返還する義務はございません。たまたまその船員手帳が、先ほど申し上げましたように、出入国管理令上日本人であること並びに船舶の乗員であることを証明する文書として、いわゆる準ずる文書として有効であるということで、これを持たせておることにしたのであります。  それから、船員手帳も何もない船員があったかどうか、いわゆる旅券も持たず、船員手帳に対してLST乗組員であることを証明しか文書、入国管理令上必要な文書も何も持たない船員がおるかどうかということについては、私は承知いたしておりません。
  167. 岡田春夫

    岡田委員 ではお調べなさい。MSTSの証明書だけで、日本人だということを確認させて乗せている例があるでしょう。ないですか。あなたが先ほどから言ったように船員手帳が効力を失った以降において、新規に採用されたLSTの乗組員はどんな証明書を出しておりますか。効力のないものに船員局は船員手帳を出したのですか。そういう例があるのですか。あるいはそういう例がないならば、発給ができないとするならば、何か証明がないといけません。われわれが調べたのでは、MSTSの証明だけで乗せているという事例があるはずです。
  168. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 ただいまの点よく調査をいたします。
  169. 岡田春夫

    岡田委員 これはやっておるとあれですから、よく調査してください。あとで伺います。  それから、伺っていきますが、こういうことですよ。MSTSの証明書というのはアメリカの証明書ですね。それを認めて準ずるということになったら、日本の国内法にアメリカの法律を入れて認めたということです。それがいまの日本政府の実態なんですよ。わかりましたか。アメリカに従属しているという本質がこういう面にもあらわれているのですよ。  あなたは通達を出しましたね。三月二十四日、員厚第七十一号、各海運局あてに通達を出しております。それを読んでください。
  170. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 岡田委員にお尋ねいたしますが、何年でございますか。
  171. 岡田春夫

    岡田委員 今年ですよ。二十年三月二十四日なんかは出していない。
  172. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 ここに持っておりませんが、件名をお知らせ願えればわかると思います。
  173. 岡田春夫

    岡田委員 言ってもいいですが、件名でなく、員厚第七十一号という文書番号も私申し上げているのです。いま質問しているのはLSTの問題ですから、LSTの問題の質問のときに青函連絡船の話なんかするわけはないのだ。あなたはLSTについて世話しろという通達を地方の海運局に対して出しているでしょう。だから、今日九日にMSTSが佐世保に行って、あなたのほうの海運局の船員職安担当の機関があるでしょう、そこへ要請に行ったわけでしょう。あなたのほうが通達を出しているから、それに基づいてそこで世話した、こういうことでしょう。ここに労働省の所管の局長も見えているが、佐世保の場合には、佐世保の職業安定所に対してもMSTSの乗員のあっせんをしてくれということがMSTSから要請があった、そういう事実がございましたでしょうね。
  174. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 ただいま御指摘の米軍の担当官から佐世保の支局長あてに、MSTSで三百八十名の船員を必要とするから御協力を賜わりたいという趣旨の英文の文書は、佐世保の支局に参っております。
  175. 岡田春夫

    岡田委員 労働省も、あなたのところに来ておりますね。
  176. 有馬元治

    ○有馬政府委員 佐世保の安定所に対して同じような協力要請の依頼文書が参っております。
  177. 岡田春夫

    岡田委員 労働省のほうはそのあっせんはどういうふうにされましたか。
  178. 有馬元治

    ○有馬政府委員 この乗り組み員は船員扱いになっておりますので、私のほうの所管ではない、取り扱いになっております。
  179. 岡田春夫

    岡田委員 職安のほうのあっせんではないのですね。では、今度はあなたに聞きたいのですが、海運局の船員職安であっせんすることになるはずですが、船員局長、どうですか。
  180. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 船員職業安定法によりますれば、船員、すなわち船員法の適用を受ける船員及び適用を受けない外国船に乗り組む人についても職業の紹介をするということが安定法にございますので、求人の申し込みがあった場合には、これを受け付けて適当な求職者を紹介をするというのがつとめでございます。ただ、現在までのところ、私どもとしては、これがLSTの乗り組み員であるということは十分想像がつきますけれども、その文言がないということ、また、普通船員を紹介する場合には、その労働条件その他必要な事項を明確に職業安定機関に求人側が明示するということでございますので、その明示を求めるようにいたさせております。と申しますのは、LSTの船員は従来全部横浜で取り扱っており、地方の佐世保等ではLSTの船員については実情を十分承知していないというふうなこともございますので、それらの点をよく確かめた上で紹介をするものは紹介をする、こういうふうに考えております。
  181. 岡田春夫

    岡田委員 局長も御存じのように、二十分しか時間がないのですから、あまり長くやられると困るので、結論だけでけっこうですが、そのあっせんはされたのですか、されなかったのですか。
  182. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 まだしておりません。
  183. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、横浜も佐世保もまだあっせんは全然しておらないわけですね。三百七十名ですか、佐世保は聞くところによると四百五十名あっせんの要請があったのだけれども、あっせんはしていない、こういうことですね。
  184. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 いまだ安定所からは紹介をしておりません。
  185. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、これはあっせんされるのですかどうですか。
  186. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 安定法に基づきまして、あっせんをつとめる義務がございますので、あっせんをいたします。
  187. 岡田春夫

    岡田委員 あっせんをするのですね。その場合に、当然、法的規定に基づいて、たとえば健康保険とかあるいは危険の手当あるいは退職手当、こういうものは含んでいる、そういうものとしてごあっせん願わなければ、これは法律それ自体には書いてありませんと言えばそれまでかもしれませんけれども、労働関係の法律全体の適用の中でやられませんと、あなた自身があっせんをされても問題になりますよ。いいですね。
  188. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 紹介をする場合には、労働条件をはっきり紹介所が把握をして、その労働条件が不当でない場合、不当な場合にはあっせんを拒否できますから、適当であると判断した場合にこれを紹介いたします。
  189. 岡田春夫

    岡田委員 そこの点非常に重要ですが、現在LSTの乗員にはいろんな諸手当というものが全然ついてない。ついてないのに、もしあなたがあっせんされたら、法に反してあっせんしたということになりますから、それははっきりしておきますよ。  ところで、あっせんするのだとお話しになったので、外務大臣に伺いますが、LSTというのは何をやる船ですか。
  190. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは荷物を輸送するものであります。
  191. 岡田春夫

    岡田委員 荷物を輸送するというのは、いろんな荷物ですね。軍事関係の荷物も輸送するのですか。
  192. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 軍事関係もあります。
  193. 岡田春夫

    岡田委員 軍事関係でないものもあるのですか。
  194. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 軍事関係以外のものもあります。
  195. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺いましょう。軍事関係以外のものはどういうわけで運べるのですか。LSTというのはアメリカの海軍の船ですよ。軍事関係以外のものはどうやって運ぶのですか。
  196. 安川壯

    ○安川政府委員 それは海軍の判断で運んでおるのだと思います。これは日本の法令に反しない限り差しつかえないと思います。むしろアメリカの軍の規約の問題であると考えます。
  197. 岡田春夫

    岡田委員 軍の規約だから、あなた方はそれをやっておるから問題だと言うんですよ。軍とは関係ない業者を外務省が世話しておるから問題なんですよ。軍の船でしょう。あなたはさっき米軍の公船と言われましたね。安川さん、米軍の公船とは何ですか。
  198. 安川壯

    ○安川政府委員 米軍の公の船であります。
  199. 岡田春夫

    岡田委員 米軍の公の船というものは軍艦も含むのですか。
  200. 安川壯

    ○安川政府委員 軍艦も含むと思います。
  201. 岡田春夫

    岡田委員 そうですね。軍艦とそうでないものとの区別は何ですか。
  202. 安川壯

    ○安川政府委員 軍艦は武装しておると思いますが、LSTは武装しておりません。
  203. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、四月九日に佐世保を出港した一一六七号のLST、四月十三日の五八七号、五四六号は完全に武装しております。あなたの解釈から言ってこれは軍艦ですね。
  204. 安川壯

    ○安川政府委員 LSTも場合によって武装することもあると思いますが、日本船員が乗船しておるLSTに関する限り、武装するということはあり得ないと思います。
  205. 岡田春夫

    岡田委員 あり得ないというのはあなたの解釈で、事実あるから聞いておるんですよ。あったらどうしますか。
  206. 安川壯

    ○安川政府委員 よく知りませんが、あるいは大砲を積んであるかもしれませんが、たまは積んでないと思います。といいますのは、日本の船員はそういう大砲を打つような資格や能力を持った者はいないと考えております。
  207. 岡田春夫

    岡田委員 日本の船員にはいないでしょうよ。アメリカの軍隊が乗る場合もありましょう。そうして大砲のたまを持っていけば打てますね。それはどうですか。
  208. 安川壯

    ○安川政府委員 確かに、LSTは、ある場合にはアメリカの軍隊を運ぶ場合もあろうと思います。たとえば韓国の軍隊も運びましたし、せんだって西村先生から、沖繩の米軍を日本人の乗っておるLSTが運んだというお話がございまして、私はそれに対して事実に反すると申し上げましたが、米軍の軍隊の輸送に日本人の船員の乗ったLSTが従事したという事実はございません。
  209. 安藤覺

    安藤委員長 岡田君、時間が迫っておりますから……。
  210. 岡田春夫

    岡田委員 時間が追っておりますから結論だけ申し上げますが、アメリカ局長の所管かどうか私はわかりませんけれども、したがって、逆にはっきり言うと、あなたの所管外のことまで答弁しているのかもしれませんけれども、いま言ったLSTの具体的な番号まであるのですから、これは私は運輸省の所管ではないかと思うのですが、これはひとつお調べをいただきたい。これは安川さんの所管ではないと思うが、外務大臣外務省の所管としては関係があるのだから、アメリカ局には関係ないかもしれないけれども、これはお調べになって御答弁いただけますか。
  211. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカ局長に答弁させます。
  212. 安川壯

    ○安川政府委員 よく調べます。調査してお答えいたします。
  213. 岡田春夫

    岡田委員 ではお答えをいただきたいと思いますが、もう時間がないので私この程度にしますけれども、最後に申し上げますが、あなた、軍需品を運ぶと言いましたね、LSTで。そうでないものも運ぶが、軍事品を運ぶと言いましたね。それから、もう一つは、運輸省が船員局のそういう形で船員をあっせんするわけですね。軍需品を運ぶ船に対して日本人をあっせんするわけですね。外務大臣、どう思いますか。これで戦争協力をしていないとあなたおっしゃいますか。ベトナム戦争に戦争協力日本が明らかにしているじゃないですか。日本の国内から軍需品を運ぶ。しかもその船を運航する船員は日本人である。それを日本政府がこれに対して世話をしている。あなたこう言って答弁しますよ。LSTは米軍の直接雇用でございますから。日本政府関係ございませんと、きっと言いますよ。そうじゃないのです。そういうでたらめの答弁をいままでやっていたのですよ。私、このLSTを取り上げたのは、去年の二月二十六日ですよ。そのときには、全然知りませんと言ったのが政府の態度ですよ。明らかに軍事協力をやっているじゃないですか。あなたは、中立国だどうだこうだなんといってさっきからうまいことを言うけれども、軍事協力をやっているのじゃないですか。アメリカの手先になっているのじゃないですか。外務大臣、お聞きなさいよ。外務大臣アメリカの軍事行動に対する協力を事実認めているんじゃないですか。これでも、アメリカが侵略戦争をベトナムでやっているのに対して日本政府協力していないと言えますか。はっきり言いなさいよ。この点ははっきりしてください。
  214. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 安保条約関係の条項に、日本船員の雇い入れに関しては日本政府がこれをあっせんするということが書いてある。これは、結局、船員の雇用条件その他に関して、個々ばらばらに雇われるということになりますと、非常に不利な場合も考えられるので、船員を保護する意味においてあっせんをしておるのでございまして、もちろんこれはすべて自由意思に基づいておる。強制的にLSTに乗れというようなことはいたしておりません。自由意思に基づいて、政府があっせんしておる。そのあっせんの意味は、雇用条件等の不利等を考えて、これを大きく保護してやる、こういう意味であります。  それから、軍需物資を輸送するのは、当然安保体制のワク内の仕事でありまして、これに従事する船員が自由意思に基づいて政府のあっせんで働いておるということは、何ら積極的な協力という意味にはならないのでございます。
  215. 安藤覺

    安藤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十五日午前十一時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時二十四分散会