○
穗積委員 御
説明を多といたします。とこが、問題の焦点の第一は、いまおっしゃった点にあるわけですね。実は、あなたは財界の御出身であり、
日本における一私企業である三菱の中における指導者ではありましたけれ
ども、今度は、民族全体を代表いたしまして、経済ではない政治の問題であり思想の問題に、公式に全
国民を代表してこの衝に当たられるわけです。そうなりますと、いまの話によりますと、
日韓会談においては、
請求権の額・内容をどういうふうにきめるか、
漁業における彼とわれとの利害
関係をどう調整するか、貿易あるいは経済協力についてどういう条件でやったならば相手とわれわれとの間の経済上にどういう利害得失が生まれるか、そういう問題として
日韓会談を
理解するならば、これは私は解決しがたいと思う。そういうことは当然入らなければなりませんが、そういう問題に触れる前に、基本の問題というものがあるわけです。それがすなわち、あなたのおことばによれば
国民感情ということばによって表現されている。われわれで言うならば、帝国主義、植民地主義の問題になってくるわけでございます。
韓国の大衆あるいはまた朝鮮全体、北朝鮮を含みます朝鮮民族三千四百万の大衆にあなたは終戦後お接しになり、そのものの
考え方、世論の動向というものをきわめられておるかどうか知りませんが、過去の朝鮮人は御存じでしょう。
わが国の帝国主義の支配下に権力と弾圧の中に踏みひしがれておりました朝鮮の人々のことは御存じでしょうが、終戦後の独立をいたしました後の朝鮮民族の世論、ものの
考え方、対日感情というものはおそらくあなたはまだつまびらかにしておられないのではないかと私は推測し、危惧を抱くわけでございます。
いまの
韓国政府は、われわれをもつて言わしめれば、
アメリカ帝国主義のかいらい政権となっております。そして平和共存すら
理解していない。アジアにおけるある
意味では
外交上のトラブルメーカーである。こういう
立場に立っておる朴政権を中心とする少数の政治的な
責任者とお会いになったときには、どういう
議論ができるかわからぬ。
請求権問題についてよりたくさん金が取れ、あるいはまた第一次産品の輸出についてより有利な協議ができ、あるいは
漁業基線、
漁業捕獲量についてより有利な条件が取れるならばいまの
国民感情を売り渡してもかまわぬということで、皆さんからごらんになれば、かの国の代表者というものは、口では理屈を言っておるけれ
ども腹の底は打算である、経済的打算に立っておるというふうにお
考えになって、したがって、いま言いましたような
請求権問題、
漁業問題、貿易
問題等々具体的にやることによって
日韓会談の基本的な正しい
妥結ができるというふうにお
考えのようですが、これは誤りであります。これではできません。いまの李外務部長官を中心とする
椎名外務大臣との間の
交渉は文書の上では一時
妥結するかもしれぬ。しかしながら、そのことによって
日韓会談が
妥結したなんと思ったら大間違いです。朝鮮全民衆の
理解と賛成がなければ、この会談は必ず政治的につまずきます。それが十余年間かかった根本の原因である。そのことについては、あなたは
国民感情ということばをもって表現された。その
国民感情についてはいろいろ
言い分があるので、過去のことは言わないで前向きで行こう、前向きも、これからの
日韓両国人民の友好的な原則について、思想上の原則について話し合うよりは、
請求権、
漁業問題、貿易
問題等々の具体的のもので処理していくならばこれは必ず
妥結する、そのほうが得だ、こういうふうなお
考えのようですが、ここが問題なんです。将来における基本的なこの友好
関係を打ち立てる思想、
国民感情の上で友好を打ち立てるためには、あえて過去のことを問う必要はないというのではなくて、過去における三十六年間の
わが国の帝国主義的支配というものをどう
理解し、今後それに対してどういう方針でいくかということを、代表であるあなたに対して一番知りたがっているわけだ。朴政権は、いま申しましたとおり、政治的偏向を来たしたかいらい政権でありますから、経済的利害得失によって取引をするかもわからぬ。そこで
妥結する可能性もあるでしょう。現にそれが進行しつつある。ところが、
日韓両国人民のほんとうの友好、いま
所信として君われた百年の大計、
両国の互恵平等、繁栄のための
日韓会談の
妥結というものは、そんなところに問題があるのではありません。
請求権の額であるとか、
漁業の基線であるとか、あるいは
漁業に対する援助であるとか、あるいはまた貿易に対す利害得失によってこれがきまるものではない。その点は、
日本のいまの政治家よりは向こうのほうがさむらいなんです。すなわち、金の問題ではない。原則の問題だ。中国にいたしましても、朝鮮にいたしましても、これが基本なんですから、そこのところは、
請求権の額であるとか
漁業その他における経済的利害得失によって会談が
妥結するのではございません。
〔
委員長退席、野田(武)
委員長代理着席〕
わが国の世論も、
新聞を中心とする最近の世論というものは、
漁業ラインをどっちが譲ったとか譲らぬとか、あるいは
請求権に伴う経済供与で民間供与の一億を三億にするとかせぬとか、それで譲ったとか譲らぬといって得をしたとか損をしたとか、そういうところに
議論を持っていっていますが、それは朝鮮民族の帝国主義植民地主義に対する感情に正しい
理解というものを
日本国民がまだ持っていないからなんです。特に政治の指導者がそのところを正しく
理解してないからです。経済界の中枢をなしておられるあなた方指導者というものがこれを
理解してないから、
日韓会談というものを誤解しておる。朝鮮人民のねらっておるところ、求めておるところはどこにあるのだということを
理解していない。だから、日中貿易におきましても、中国の原則がわからない。あれは、民間でやるか輸銀でやるかという、利子の高いか安いかの利害得失によって問題が起きているのではない。原則の問題だ。すなわち、帝国主義であるか、あるいは民族独立の自主的な方針によって臨むかということなんです。だから、あなたが
国民感情ということによって言われたこと、すなわち、三十六年間の
日本の帝国主義支配というもの、これをどう
理解し、今後これをどういう思想的
立場に立って
日韓両民族の友好提携を
考えていくか、これがあなたによって示さるべき最初の
所信であり、最初の
交渉方針でなければならないと私は思うのです。そのことにあなたはいみじくも触れておられます。
両国人民の
国民感情、ものの
考え方の一致が必要だ、それはどこにあるかといえば、過去三十六年間の
日本の朝鮮支配に問題がある、そこまでは私は全く認識は正しいと思う。ところが、あなたは、これから
交渉に臨むにあたっては、その問題について触れるというと両者の
意見が不一致になる、これは違うということですね。だから、そんなところで
議論をしているというと長引くし、問題が解決しないから、具体的に
請求権問題、
漁業問題、貿易
問題等々についてこれを解決していくならば解決が早いし、正しい
交渉の態度であるというふうにお
考えのようですけれ
ども、それではできません。こういう経済的な将来にわたっての提携は、その
関係というものは、百年の長きにわたっていかなる細部の
条約をつくっても、
条約で規制することができない。すなわち、その基礎には友好と信頼というものがなければならぬ。友好と信頼というものは、過去三十六年間の植民地主義支配というものをあなたはどう
理解しているか、すなわち、
日本国民はどうそれを
理解しておりますか、代表であるあなたに伺いたい。今後は一体それをどういう方針でいかれるつもりであるか、それを代表であるあなたに伺いたい。これがかの国の世論でございます。私は、終戦後、南には行ったことはありませんが、北の国は訪問いたしまして、そして
政府並びに民衆の方々のお
考えを実際に見、かつ伺いました。そこにおける中心もその問題です。
そこで、実は去る一月、あなたが
佐藤総理の要請に従って、いまのような御
所信によって、
交渉の最終最高の
責任者の地位をお引き受けになった。そのときに、外務省の記者クラブ、霞クラブにおいて就任後代表としての
立場で
所信を明らかにされた。そのときにもこの問題に触れておられる。すなわち、南の
日韓会談に当たるにあたって、最初に問題になるのは三十六年間の統治である、それについては国内にも
意見があり、向こうとこっちとの間にも
意見があるけれ
ども、おれはこう思うということをあなたは言われたと称せられておる。そして今度は、われわれとしては後に
お尋ねいたしますが、終戦後の降伏文書、平和
条約を中心にいたしましてこの
日韓会談の義務づけが行なわれておる。あるいは
日本と朝鮮民族全体との義務づけが国際
条約上規定されておる。それに従っていまの対朝鮮の折衝が始まるわけです。したがって、北の人民に対しましても同様の公平な原則による責任がわれわれにあるわけですね。その北に対しましては、あなたはおそるべき敵視政策、すなわち、かの国の人民
どもはわれわれに対する侵略者であるという規定をされたと伝えられておる。そのことが実はこの
交渉を最も困難ならしめ、われわれはこれに対して
反対をする。われわれが
反対をし、向こう側の北朝鮮の人民はもとより、南朝鮮の大衆の圧倒的な者がこれに
反対しておる原因はここにあるのです。よくお聞きください。したがって、私はここで、あなたがしゃべったと称せられる速記録は資料として持っておりますが、このことばじりをつかまえてどうこうということではありません。そうではなくて、われわれが危惧するところもそこにある。北朝鮮はもとより、南朝鮮の学生、労働者、インテリ等も、野党の諸君も全面的に
反対をしている。国を売るなと言っている。すなわち、先に言いました、あなたの言われた経済的な利害得失によってこれが
妥結するものではないということを証明しておるのです。したがって、いま言われた
国民感情、すなわち三十六年間の統治をどうお
考えになるか、そして、北朝鮮を侵略国としてあなたは規定されたそうですか、それをどうあなたはお
考えになっておられるか、すなわち南北朝鮮の統一問題についてどうお
考えになっておられるか、朝鮮民族全体に対する
日本民族の友好交流の責任をどうお
考えになっておられるか、これが私は基本だと思うのです。おわかりいただけたと思うのです。
そういう趣旨でございますから、私は、過去のことを言い、あなたのこの談話というものをここで取り立ててことばじりをつかもうという
考えではない。そういう精神でございますから、私の
質問の趣旨を
理解されて、あなたも
所信をもっておやりになる、われわれも
所信をもって
反対しておるのですから、堂々とひとつここであなたの
所信なるものを明らかにしていただきたい。