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1965-03-27 第48回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十七日(土曜日)    午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 椎熊 三郎君 理事 高瀬  傳君    理事 野田 武夫君 理事 福田 篤泰君    理事 毛利 松平君 理事 戸叶 里子君    理事 帆足  計君 理事 穗積 七郎君       菊池 義郎君    鯨岡 兵輔君       佐伯 宗義君    園田  直君       濱野 清吾君    福井  勇君       増田甲子七君    森下 國雄君       大出  俊君    勝間田清一君       黒田 寿男君    小林  進君       河野  密君    中村 重光君       楢崎弥之助君    野原  覺君       長谷川正三君    松井  誠君       松本 七郎君    永末 英一君       川上 貫一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 高橋  等君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         国 務 大 臣 小泉 純也君  出席政府委員         防衛庁参事官  麻生  茂君         検    事         (民事局長)  新谷 正夫君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安川  壯君         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (関税局長)  佐々木庸一君         大蔵事務官         (理財局長)  佐竹  浩君         水産庁長官   松岡  亮君         水産庁次長   和田 正明君         通商産業事務官         (通商局次長) 今村のぼる君  委員外出席者         防衛庁書記官         (防衛局第一課         長)      有吉 久雄君         外務事務官         (大臣官房外務         参事官)    西堀 正弘君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 三月二十七日  委員小松幹君及び西村関一辞任につき、その  補欠として長谷川正三君及び大出俊君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員大出俊君、河野密君及び長谷川正三辞任  につき、その補欠として松井誠君、楢崎弥之助  君及び中村重光君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員中村重光辞任につき、その補欠として野  原覺君が議長指名委員に選任された。 同日  委員野原覺辞任につき、その補欠として小林  進君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小林進君、楢崎弥之助君及び松井誠辞任  につき、その補欠として小松幹君、河野密君及  び西村関一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(日韓問題)      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  長谷川正三君。
  3. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 今朝の新聞、テレビ等の報ずるところによりますと、政府が妥結を目ざして鋭意進めておられます日韓会談において、特に在日韓国人法的地位について昨夜も徹宵折衝が続けられたというふうに伝えられております。私、先般この問題につきまして法務委員会でも一応御質問を申し上げましたけれども、いよいよこの全く煮詰まったと見られる段階に立ちまして、これから特に法的地位問題を中心に質問申し上げたいと思います。この問題は、在日朝鮮人方々はもとより、日朝友好親善を願う日本国民といたしましてもきわめて重大な関心を持って注視し、また非常な憂慮を持っておるところでありますので、この重要な段階において開かれておるこの外務委員会におきまして、率直に明快にひとつ真実を御解明いただきたいと思う次第であります。  まず、この法的地位問題につきましては、折衝がいろいろと報道される中で、永住権の問題、これがやはり非常な争点と申しますか、なかなか話し合いのつかないところのように伺っておるのでありますが、いま一番煮詰まった段階において、あるいはすでに合意に達したのかどうか、この点につきまして、どのようになっているか、まず第一に明らかにしていただきたいと思います。
  4. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 ただいまお述べになりましたように、今朝未明まで法的地位について両国外相聞政治折衝をいたしました。その結果、ただいま申し上げますような点が法的地位範囲につきまして合意に達しました。  この大韓民国国民永住権の許可は、第一は、終戦以前から引き続き日本国に在住する者であること、第二は、その終戦以前から引き続き日本国に在住する者の直系卑属終戦以後協定発効の五年以内に日本国出生をいたしまして引き続いて在留をいたしておる者、それから、ただいま申し上げました人々の子であって協定発効の五年より後に日本国出生をいたしまして引き続いて在留する者、以上の者に永住申請がありますればこれを許可する、こういうことに合意成立をいたしました。ただいま申し上げましたところによりまして永住されました者の直系卑属であって、すなわち孫とかいうような者でありますが、直系卑属であって日本国出生した者の在留につきましては、本協定の効力が発生後二十五年を経過するまでにあらためて協議をいたすことにいたしました。この協議にあたりましては、この協定基礎となっております精神及び目的を尊重するものとするということでございます。  次に、強制退去措置を受けました者の引き取りにつきましては、大韓民国政府日本国政府の要請に応じて協力をいたすことに合意成立いたしております。
  5. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 ただいま伺いますと、この問題について一応合意成立した。念のために確かめますが、直系卑属協定後五年以内に生まれた者、もちろん第一は終戦までに日本に在住した者、それから五年以内に生まれた者、それからその後直系卑属日本で生まれた者については発効後二十五年を経過するまでの間にさらに協定を結ぶ、大体こういうことでございますね。
  6. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 ただいまのお話、少し違うのでございます。終戦当時から引き続いて日本におりました韓国人及び協定発効後五年間に生まれました韓国人及び協定発効後生まれましたこれらの者の子供につきまして永住権を与える、こういうことでございます。なお、その者が引き続き日本に居住をいたすということ、これは申すまでもございません。
  7. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それから、二十五年を経過するまでに協議する際に、基礎となった精神目的ということばがございましたが、その精神目的というのをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  8. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 これは、お互いに安住し得るような精神によってこの協定が結ばれておるのでございまして、そうした精神目的に従って、二十五年の間に、それらの人以外の、結局それらの人の子供ということになるかと思いますが、直系卑属についてもう一度相談をしよう、こういうことでございます。
  9. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 安住し得るようにというのがその精神である、こういうお話でありますと、ここでは一応先ほどの五年という一つの時限を区切っておりますけれども、その後二十五年の間に協議するということの中で、さらに子々孫々まで日本に在住を認めるというようなことが、何かはっきりは出せないけれども、そういうことで含みとして了解がついているというようにも受け取れますし、その反対に、そういうことは考えていないんだという、そのために五年ということを一応区切って考えておるんだとも考えられますが、この辺がちょっとあいまいでありまして、その受け取り方によっては非常な差が出てくると思うのでありますが、そこのところをもう少し明快にお願いしたいと思います。
  10. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 結局、二十五年先になりました場合に、それらの人の子供の年齢というものはまだ成年には達していない時点だろうと思います。そうしたときまでに、あらためてそれらの人の身分を確定しよう、こういうことでございまして、たとえば、いま五年の期間内に日本国籍を取った人が子供を生みます。それがずっと終生永住権を持つわけでございます。相当長期にわたっての永住権があるわけでございます。それ以上の問題につきましては、そのときの情勢その他いろいろな変化もあることと思いますので、精神は、いま申し上げましたような精神であらためて相談しよう、こういうことでございますので、別に他意はあるわけではございません。
  11. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまの御答弁、ちょっと誤りがあったのじゃないかと思いますが、日本国籍を取得してということばがありましたが、そうではないでしょう。永住権を取得してという意味でしよう。
  12. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  13. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 そうすると、やはりいま五年を区切って永住権を得た方のその子供については、成年に達するまでは一応ともかく、それから先についてはその間に協定をするということでございますが、やはりその精神に立ってそこで協定する、こういうようにおっしゃったと思うのですが、そういうことでありますと、これはどうもずるずると子々孫々までということになるようなニュアンスもあるのでございますが、何かその辺があいまいで、一応ここを切り抜けるための表現、こういったようなあいまいさを残しておると思います。いまの御答弁でも、まあことばどおり受け取ると、これはどうやらずっと引き続いてさらにまた延長されて、子々孫々ということになりそうだとも受け取れるのですが、それをまたはっきり書かないというところに、国際情勢変化ということもおっしゃっておりますけれども、反面、日本主張としては、従来の主張から見まして、ここで実際は切るという腹をお持ちになっているともとれるのですが、ここのところをもう一つ明確にお願いいたします。
  14. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 どうも少し話が混線しておるようでございますが、成年に達するまでというのではないのでございます。協定発効後五年の間はやはり韓国国籍を持ち日本永住権を持った人の子供につきましては、終生永住権を認めておるわけでございます。二十年じゃないのでございます。そういうわけで、非常に長い先までの永住権を認めておるのでございます。それらの人の子供につきましてどうするかということは、非常に長い将来にわたることでございますので、ただいま申し上げましたような措置でいきたい、こういうわけでございます。
  15. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私も誤解をしていたのじゃなくて正しく理解をしていますが、成年に達するまでというのは、大臣がおっしゃる孫の場合を申し上げているのです。孫の代になった場合は、大体二十五年というものを区切ってもまだ成年には達してないだろう。ただ、これは個々の実例によってはどうなるか、達する者もあるのじゃないかと思いますが、これは計算してみないとわかりませんが、その者が成年に達するということで一応区切って、少なくとも成年に達するかその前に永住権を失なう、こういうことがやはりこの中に隠されておるようにも思いますが、その点はいかがですか。
  16. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 これは両国交渉にこれからよることでございます。この二十五年の間に両国交渉してきめることでございます。そのときには、いま申し上げました安住をさせるという精神にのっとって話を進めていきたい、こういうことを考えておるわけでございます。いろいろな事情の変化もその間には起こるでございましょうが、そう長い間の約束はこの際差し控えたほうがよろしいというので、その子々孫々というところまではいかないで、そのときにもう一度相談をしよう、こういう約束をしておるわけでございます。
  17. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それでは、この問題についてこれ以上言っても押し問答になりますから、一応こういう表現合意に達したということでありましょうが、念のために伺っておきますが、韓国側のこの問題に対する一貫した主張はどういうところにあったか、日本側の一貫した主張はどういうところにあったか、その点をひとつ明確にお聞きしたいと思います。
  18. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 この交渉の相手は外務大臣外相会談で相互にやりましたので、私が交渉のいろいろなことにつきましてここで申し上げても実は実感がわかぬかと思うのでありますが、韓国側はやはり子々孫々までの永住ということを希望いたしたことは、これは居留民団その他の要望もありまして、そうした要望があったことは事実でございます。
  19. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いま片面だけの御答弁だったのですが、日本側の一貫した態度、その点についても明確にお願いします。
  20. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 日本側としては、あまり長い約束というものは、国際情勢も変わることであろうし、あまり長いことは困るというので、いま申しましたようなところで話をつけたわけでございます。
  21. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 国際情勢変化というところで何かぼかしておるようですが、端的に言いますと、日本側としては子々孫々という考えはない、協定発効後五年以内に生まれた子供、並びにその次の子供について成年に達するまでには決着をつけて一般外国人並み扱いにしたい、こういうことが日本側としては一貫した態度である、こういうふうに御了解申し上げてよろしいのでありますか。
  22. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 ちょっともう一度お願いいたします。
  23. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 もう一度申し上げます。  日本側としては、この表現がこういうふうになったということの精神は、つまり、直系卑属の孫の代については、成人に達するまでの間に、つまり二十五年の間にさらに相談をしてきめるけれども、その精神としては、子々孫々ということではないので、その時期が来れば一般外国人並みに扱う、あるいはそこで日本国籍を取得して日本人となるか、あるいは本国にお帰りになるか、あるいは一般外国人として滞留するということになるか、そういうふうにきちっと区切りをつけたい、これが日本政府態度である。こういうふうに解釈をしてよろしいかと聞いたのであります。
  24. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 ただいま申しましたように、そこでピリオドを打って一般外国人と同じような扱いをするとかどうとかいうことはいま考えておらない。むしろ、この協定にありますように、その精神は、安住ができるようなところで二十五年の間に話を進めようというのでございますから、日本側はそれでぴしっと区切りをつけてしまうという考えではなく、もちろんそうした文句が入るはずはないのであります。さよう御了承願いたいのであります。
  25. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 この問題については、日韓会談全体、李ラインの問題その他、そういう問題も関連があると思いますが、特にこの永住権の問題については、在日朝鮮人の方としては非常な関心があるので、これをあいまいにしておくことは将来に非常に禍根を残すのではないかという感じがします。ことに、ここ一両日、一昨日あたりからいわゆる大韓民国国籍を持つ居留民団方々もこれに対して非常な関心を示し、東京都内でも流血の惨が起こったり、あるいは日本の警察官との衝突問題が走こったりというような事態まで引き起こしておるわけでありまして、この点については、どうもいまの御答弁だと、そういう空気を何かそらすような表現をしていながら、しかし、また反面、時期が来ればきちっとピリオドを打つのだという考えもその中に入っているような、そういう何となく煙幕を張ったような表現で、外交交渉というものはそういうものだと言えばそれまででありましょうけれども、どうもその辺がはっきりいたしませんので、再度ひとつこのところを、ごまかさずと申しますか、国民がはっきり理解できるように、明快にしていただきたいと思います。
  26. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 ただいまも申し上げましたように、合意に適しておりまする内容は、二十五年間にもう一度その地位の取り扱いについて両国相談をしよう、この協議にあたってはこのたびの協定基礎となっている精神及び目的を尊重するものとする、そういうことをはっきりと書きあらわしておるのでございます。この精神は、安住ができるような方法でやっていこう、こういうわけでございますので、その点をそういう意味で御了承願っておけばいいと思います。
  27. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまの再度の御答弁によりますと、一応こういう表現でこういう区切り方をしておくけれども、言うならば、さらに延長するか、子々孫々までの永住を認めるというようなニュアンスが感ぜられるわけです。率直にそういうふうに受け取ってよろしいのですか。
  28. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 精神はただいま私の申し上げましたようなことでこのたび話し合いが済んでおります。あとは、そのときの両国交渉によってきまることでございます。ここで、先のことをどう考えておるとかこうであるとかいうことを申し上げる段階ではないと考えております。
  29. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 それでは、問題をちょっと変えまして、いまの永住権の付与の問題につきまして、その基礎的な資料となる点をお聞きするわけですが、一応今日在日朝鮮人の方の数は約六十万というように通称言われておりますが、正確なところどういうふうにおつかみになっているか、それから、今回のこの協定によって永住権を与えられる範囲、それによる人員の想定はどのようにお考えになっているか、その点をお尋ねします。
  30. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 在日朝鮮人の数につきましては、正確なものを把握いたしかねるのでございます。と申しますのは、密入国その他の者が相当ありまして、とにかく法務省としましても登録しておりませんものですから、はっきり数をつかめない。しかし、大体におきまして六十万から七十万程度の人がおるのではないか、こういうように考えておるわけでございます。それから、韓国籍を持っておる者が何人おるか。これは、これから協定発効五年までの間に韓国籍の取得をいたした人によってきまるわけでございます。そういうことでわれわれは考えておるのでございます。
  31. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 密入国人々もあるので正確な把握はできないという御答弁ですが、もちろん何十何人までの正確な数字を私は求めておるのではないけれども、全然つかめてない、そんなばかなことがありますか。
  32. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 登録されております数につきましては政府委員から答弁させますが、とにかく相当数密入国があることは、これは御存じのとおりで、何万というもの、場合によれば五万といい、七万といい、十万もあるということも言われておるわけであります。したがって、ただいま申し上げたような御答弁をいたしたわけであります。現在朝鮮人として登録をいたしております者の数につきましては、事務当局よりお答えいたします。
  33. 八木正男

    八木政府委員 私どもの持っております一番新しい数字で申し上げますと、昭和三十九年九月末現在で外国人登録をした朝鮮の人の総数は五十七万七千百十八名でございます。
  34. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 これは外国人としての登録をした数ですね。そのうち、韓国籍をはっきり取得しておる者といいますか、それはどういう数になりますか。
  35. 八木正男

    八木政府委員 韓国籍を取ったかどうか、私どもには一々本人が言わない限りはわからないのでございますが、外国人登録をした際に受領する登録証、そこに国の名前の欄がございまして、そこに韓国と書いた人の数は、正確なこまかい数ではありませんが、二十二万余でございます。   〔委員長退席野田武委員長代理着席朝鮮というふうに書いてあるのが約三十五万くらいでございます。
  36. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 これはなかなか重大な問題が出てきたと思うのです。現在韓国という国籍を名のっておる者は、五十七万中二十二万、約三分の一で、三分の二は朝鮮というふうになっている、こういうことでございますが、もし今回の協定ができた場合には、ただいまの永住権の問題はじめ、その他これからあとで御質問申し上げるいろいろな法的地位の問題については、この五年間にさらに登録をさせるというようなお話でありますが、一応考えられることは、この二十二万がこれを取得する、これはイコールではないと思いますが、大かた言いまして、この二十二万の韓国籍を名のっておる者が取得する、こういうふうにこれは理解してよろしいのですか。
  37. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 この韓国籍を取得しておる者とそうでない者、そうでない者の中にも、必要がなくて韓国籍を取得してない者も多数おると考えております。その他の朝鮮人という中には、北鮮系もあり、全然両方関心も持たないといいますか、そうした者も相当数あるのじゃないかというふうに見ておるのでございまするが、将来の数字はもちろんわからないわけでございます。
  38. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまの御答弁は私の質問をちょっと取り違えていらっしゃると思うのです。この協定ができた場合に、たとえばいま問題になっている永住権の問題一つとりましても、この適用を受け永住権を取得する者はこの二十二万人の人である、これはこれから五年間にあらためて再登録をさせるようでありますけれども、一応いまこうなっておるのですから、原則から言えばこの二十二万の者が取得するというふうに考えてよろしいのではないかと聞いたのです。
  39. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 ただいま申し上げましたように、二十二万以外の者で、とにかく、どちらの国籍といいますか、北鮮でもない、韓国でもない、そういうことにはとにかく関与しないのだという人が相当数ある。ですから、そういう人の中に韓国籍を取る人もあるでしょうし、中には北鮮国籍をはっきりする人もある。相変わらず両方どちらでもいいんだという人ももちろんできると思うのであります。そういう意味で二十二万に限定して考えるといまの時点では二十二万人でありますけれども、二十二万に限定をして考えるという、要するにそういう数の読み方を私のほうではいたしておらないのであります。これは御質問の趣旨と違うというような御意見もあるかと思いますが、このことは正確にはっきり申し上げたほうがいいと思って申し上げているのであります。
  40. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 まだ私の質問のしかたが悪いのかもしれませんが、二十二万ということを私はきちっと言っているのではないのです。言い方を変えれば、そうすると、五年間に韓国籍で届け出た者についてだけこういう永住権が与えられる、こういうことになりますかと伺っているのです。
  41. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、合意に達した協定は、五年間に韓国籍を取得した人を含んで永住権を与える、こうなっているわけであります。
  42. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 これは、二十二万が、いまの大臣の御答弁だと、おそらくもっとふくれるんではないかということを予想をされているような口ぶりに承り、しかも、私の質問に対していまお答えになったことによって、これは合意に達した韓国籍を名のる者のみだ、こういうふうにお答えになったと思うのですが、それでよろしいですか。
  43. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 このたびの永住権協定は、結局協定成立後五年間に韓国籍を取得した人を含むことにもちろんなっておる。したがって、ただいま申し上げましたとおりでございます。
  44. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 そうしますと、この二十二万と三十五万ということを、数をそう固定的にはおとらえにならないでけっこうだと思いますが、少なくとも現在の時点で二十二万よりはるかに多いこの三十五万の人々、この人々については、日本政府としてはどうなさるおつもりですか。
  45. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 先ほど来申しておりますように、三十五万の中で相当数の人が韓国籍を取得すると考えております。そうした人々に対して永住権を与えるということは、これはもう協定のとおりでございます。
  46. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 その数の移動のことじゃなくて、一応三十五万と見られておるこの人たちについてはどういうふうにこれを扱われるのかということを聞いているのです。
  47. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 いまの協定によりますることについての御答弁といたしましては、いま申し上げますとおり、韓国籍を取得した人について永住権を与えるんだ、こういうことになっておる、その点を御答弁申し上げております。ほかの、それでは韓国籍を取得しない人をどうするかという御質問であれば、またあらためて御答弁を申し上げます。
  48. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 まさにそのとおりの質問を申し上げましたので、これはもう一ぺんひとつ明確にお願いします。
  49. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 韓国籍を取得しない朝鮮人につきましても、その特殊地位につきましては、われわれとしましては、日本人として終戦前から日本で生活の基盤を築いた人、しかも終戦によりまして自分の意思によらずしてその地位をなくした人でございますから、そうした人につきましては、そうした特殊事情を考えながら、協定成立いたしましたあとにおきまして、その居住権の問題について検討いたしていきたい、こういうつもりでおるわけでございます。
  50. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 そうしますと、この協定の中には、これはもう韓国との間だからそれは盛られていないが、精神は、在日朝鮮人の特殊事情、歴史的な特殊事情というものは全く同等であるから、同じように扱うように考えている、そういうことでよろしいですか。
  51. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 いろいろと考えねばならない問題があるのでございます。たとえば、強制送還につきましては、韓国につきましては、このたびの協定で、韓国へ送還することについて協力するということの話し合いができておる。ところが、これを北鮮の場合に考えてみますると、強制送還は受け付けません。そういうような問題とか、まあいろいろ考えねばならぬ問題もございますので、協定発効したあとにおいて考えていきたい。ただ、精神は、いま申し上げましたような精神考えて、それを基本として考えていくことは、これはもう当然のことと御了解願っておきます。
  52. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 この協定成立後に、そこからはみ出している部分の在日朝鮮人の方については、精神は同様な精神に立って具体的に考えたい、こういうふうにお答えになったように理解をいたします。それで、この点について韓国側主張としては、在日朝鮮人の方全部を韓国籍にするんだというような主張が強くあったやに聞いておりますが、その点についてはどのように了解が成立しておるのか。
  53. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、韓国籍を取得する手続を踏みました者、たとえば旅券であるとかあるいは証明であるとかいうようなものをつけて出てきたものについて、これをわれわれは韓国人として認める、こういう考えでございまして、外国から一方的に、これは全部韓国人だと話しましても、その人間に全部永住権を与えるというような、いまのそれをひっくるめて韓国人とわれわれが見てしまうということとは、これは別の問題と考えております。
  54. 野田武夫

    野田(武)委員長代理 関連質問要望がございますから、これを許します。穗積七郎君。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 関連して。いまの問題は、われわれいままで在日朝鮮人——朝鮮というのは南北含んでおりますが、朝鮮人の基本的人権の問題について取り扱った経験からいきますと、非常に大事なものを含んでいるわけです。  そこで、順を追うて二問ばかりお尋ねいたしますが、まず第一に、韓国籍、すなわち、いま交渉の相手になっておる三十八度線から南の地域の限定政府としての朴政府と今度協定を結ぶ、それを結んだ結果、その国に国籍を有する在日朝鮮人、それにのみ今度の協定による永住権が設定される。そのときに、先ほど八木局長が御報告になりましたように、三十九年の外国人登録法による登録によると、韓国という国の名を選んで自分の所属を表示した者が二十二万、朝鮮が三十五万云々ということですが、そのときに、今度協定を結んだ相手国の大韓民国、その国の国籍を持っておるかどうかということを確かめる方法、これは、三十九年の外国人登録によって、そのときに韓国と表示したことをもってこれを大韓民国国籍在日朝鮮人であると規定することはないと思うのです。おそらく、協定締結後、これが発効いたしましてから後に在日朝鮮人全体に向かって、おまえの国籍をみずから選んで大韓民国とするかしないか、新たなる形式による新たなる意思表示を求める、そのものに応じた者のみが今度の永住権を設定される大韓民国国籍を有する朝鮮人である、こういうことになろうかと思うのです。すなわち、その者が大韓民国国籍を有する朝鮮人であるかどうであるかということの認定、区別の方法、これが非常に大事なんですね。私の質問の要旨はそれですが、なぜそういうことを事あらためてこの際重要視して伺うかということになると、在日朝鮮人全体に向かって、いままで朝鮮とのみ書いた人を一々警察が呼び出して、あなたのほうの入管の指令で呼び出して、おまえはこの際こういうことになったが一体どちらを選ぶのだと、半強制的に、場合によると威嚇をもって、あるいはまた精神的な圧迫を加えながら大韓民国国籍を選ばしめることになりかねない。特に、いま法務大臣のおっしゃいましたように、思想性においても、あるいは経済的立場、あるいはまたその生活の様子から見ても、いずれにも属さない、南にも北にも属さない、そういう中間派というものが非常に多いのだということを言われた。あるいは三十九年の登録のときにいずれにも登録してない朝鮮人相当数あり得るわけですね。それらを一々居住地域の警察が呼び出して、おまえはどちらを選ぶのだ、今度こういう条約ができたんだがどうするのだというような方法をとって、再び大韓民国国籍を選ぶ者と選ばない者とを選別をする、そして、その選別にかかった者を大韓民国国民として、その者だけを認める、その者だけに永住権が設定される、こういうことになりますかどうか。  それから、もう一点、あなたがさつき御答弁なすったことに関連しておりますから、関連質問ですから一括してお聞きします。もう一つは、いま長谷川委員は非常に善意に解釈なすって質問されていましたが、そういう場合に、大韓民国国籍を選んだ者はたとえばたった十万しかなかった、あるいは八万しかなかったとしたときに、あと残りの約五十万の存日朝鮮人の取り扱いをどうするかということです。これは問題になる。そのときに長谷川委員は、今度韓国との間に協定ができたならば、その規定が大韓民国国籍に属しない約五十万の在日朝鮮人にも同様公平に援用されるのであろうと私は理解いたします。こう言われたのに対して、あなたは何ら答えていない。あなたの先ほどからの御答弁にも、これを公平かつ平等に取り扱うという精神は、私の聞き違いかもしれませんが、ございませんでした。すなわち、これらについてはあらためて検討をしたいと思う、こういうことであろうと思うのです。その検討したいという区別をする理由、そして検討したいという大体の方向はどうか。たとえば、いま言ったように、強制送還の問題について南の政権と北の政権とが態度が違うというようなことはささたることです。そうでなくて、日本国政府が、在日朝鮮人韓国国籍を選んだ以外の約五十万、大多数の朝鮮人に対して、永住権その他の基本的人権の取り扱い、それから外国への旅行の自由の取り扱い、これらが一体全部違うのか違わぬのか、そこのところは明確にしないと、こんなものは一体何のための協定であるのか、在日朝鮮人六十万に対して強迫と威嚇を与えて、無意識的な者はなるべく韓国側に政治的に組織していこう、引きずり出していこう、こういう意図が日本の法務省を中心とする一部の諸君の間に、いままでですらわれわれは経験をして非常な戦いをしてきたわけですが、そういうことが今度の取り扱いによって法的根拠を持って明確に行なわれることを危惧するから、この二つのことについて明確にしていただきたい。それでなければ、われわれはこのようなものに賛成するわけにいかぬし、このようなものは非常なる悪い協定、政治的な陰謀を含んだ協定である、こう指摘せざるを得ないわけでございますから、私の質問の趣旨も理解されて、その二点についてはっきりした答えをいただいておきたいと思うのです。
  56. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 第一点は、先ほど来申しておりますように、韓国籍を取得する手続を踏みました人について、これを韓国人として永住権を認める。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 新たにやるわけですね。
  58. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 新たにやるわけでございます。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 どういう方法でやりますか。
  60. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 これは、ただいまも申し上げましたように……
  61. 穗積七郎

    穗積委員 私は聞いていない。
  62. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 申し上げております。旅券あるいは本国政府の証明というようなことをいまは考えておるのでございます。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 それ以外のものは……。
  64. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 それから、警察がこれに関与するとか、日本政府が、おまえは韓国籍を取れというようなことを言うことは、これはもちろん考えていることでもなし、やるべきことでもないのでございます。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 やるべきことでないことをやったのだ、いままで。
  66. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 答弁をお聞きください。一々口をはさまれたらやりにくくてしようがない。とにかく、そういうことをやる意思ももちろんございません。本人の自由の意思によってやっていきたい。これは実にフェアに考えておるのであります。  いまのそれ以外の朝鮮人扱いについては、お答えしたとおりでございますが、これは特殊な地位にかんがみまして——特殊な地位というものは、日本人であったということ、また、日本人の地位から自己の意思によらずしてこれが朝鮮人になったという、いまの韓国籍を取得した人と同じような事由ということにつきましては、十分考えていく、こういうことはもちろんでございます。いまこれをどうきめるかということについては、協定成立をいたしました後においてきめたいと思いまするが、先ほど言いましたように、強制送還の問題等いろいろな考えねばならぬ問題もあるのであります。あるいはまた、北鮮につきまして、いまちょっと触れられたかと思うからお答えをするのでございますが、いわゆる往来の問題でございます。これもお触れになったと思いますから、お答えしてよろしゅうございますか。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 私の言うのは、基本的人権一般を含んでいるわけですね。その一つの例を申し上げただけです。
  68. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 これは、国交未回復国であり、わが国としましては、国家としてはその国の治安ということを常に考えてものごとを処理していくことは当然なんでございます。そういう意味から考えていきたいと考えております。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 局長、手続をちょっと聞かせてもらいたいですね。
  70. 八木正男

    八木政府委員 実は、基本原則がやっとけさ方きまった程度の進み方でございまして、この協定に基づいてどういう具体的な手続をとって永住の申請をするかということは、まだ具体的には研究しておりません。ただ、申し上げられますことは、日本政府としては、本人がこの協定に規定された期間現実に日本におったという証拠、これはわれわれのほうに外国人登録の切りかえ名簿が全部そろっておりますので、それと、それからその本人が韓国国民であるということを証明するに足る文書、その二つで判定することにしております。ただ、それを具体的にどうやってやるかという方法については、まだ詳しく研究をしておりません。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 関連ですからこれで終わりますが、そうすると、確認をしておきたい。韓国籍を持った者にのみ限って今度の協定によって成立した永住権が設定される、そのときに、だれが一体韓国籍を持った在日朝鮮人であるかということを決定するのは、過去のものによるのではなくて、在日朝鮮人全体について自発的なる再登録によって、再届け出によって、韓国籍を持つ在日朝鮮人であると確定をする、その手続はあくまで自発的なる新たなる届け出によるものである、これでよろしゅうございますね。これでいいですね。
  72. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 ただいまお述べになりましたとおりでございます。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 わかりました。そこで、実はこれは大臣によってお答えいただけばいいわけだが、政治的な配慮をされて、何をおっしゃるのかよくわからぬところがありますから、あるいは局長に法律家としてお尋ねするのがいいかと思うのです。それは、在日朝鮮人問題というのは何も今度の協定によって新しく出る問題ではございません。御承知のとおり、終戦のどきの降伏文書によって、在日朝鮮人の問題は、つまり朝鮮の独立、その国籍を持った人民の利益、人権、これらすべてはそこから出るわけですね。したがって、これは法律的に言えば、韓国籍を新たに取得した者にのみこの永住権その他の権利が設定せられるわけですけれども、本来、独立をいたしました全朝鮮国家並びに全朝鮮人民の取り扱いにつきましては、法のたてまえ、国際文書のたてまえからいきまして、差別すべきではない、同等の精神、同等の方針をもって臨むべきである、政治、思想、宗教その他の差別によりましてこの取り扱いを差別すべきではないとわれわれは理解いたします。長谷川委員が、それでいいのでしょうねと言われたのも、そこから発すると思うのです。法的なこまかいことについては、これは後に検討するということで不明確にぼかされておりますけれども、法の道理といたしましてはそういうふうに理解すべきものであり、具体的な細目の規定を考える場合に、韓国国籍を得ない他の全朝鮮人ですね、これに対する基本的な原則というものはそうあるべきだ、このように思いますが、いかがでございましょうか。それだけお答えをしてください。
  74. 八木正男

    八木政府委員 先ほど法務大臣からお答えになりましたように、われわれとしては、こういう人たちが過去において自己の意思によらずに日本人たる国籍を失ったという、同じ背景でございますので、その点から、そういう人たちに対する待遇というものも同じように考えるということは当然だと存じます。
  75. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いまのお答えで、穗積委員からも私からも念を押したことがそのとおり確認されたと解釈いたします。  そこで、私の与えられた時間がもうなくなってまいりまして、防衛庁長官も見えておって、次の質問者もおりますので、あと大急ぎでごく簡単に伺いますから、答弁も明快にお願いします。  先ほど大臣答弁の中にも、密入国その他で不明な者が五万から七万くらいいるんじゃないかというようなお話もありましたが、それとも関連しまして、現在特別在留許可を受けている方々がありますね。たとえば刑余者で特別措置を受けている者とか、不法入国、密入国というようなことで、しかし離散家族として扱われて特別在留を許されているとか、そういうような方がどのくらいおるのか、その人たちは今回の協定にはどういうことになるのか、その点をお伺いします。
  76. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 その問題につきましては、このたびの協定では何も取りきめておりません。従来どおりの扱いをいたしたいと考えておりますが、しかし、こうした協定ができました際におきましては人道的な見地に立ちまして考えていってみたいと考えておりますが、まだこれは公式にお互いの両国協定というような形で何にも話をいたしておるわけではございません。  数の問題は事務当局からお答えいたします。
  77. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 その点はわかりました。  次に、先ほど二十二万と三十五万の若干議論がございましたが、これとも私は密接な関連が今後出てくると思いますので伺いますが、かりに日韓会談がまとまったといたしますと、当然これに伴いまして国内法のいろいろ整備の問題が出てこようかと思います。その際、先般も日米間の領事条約というものができ、また現在イギリスとの間にこの問題が提示されているようでありますけれども、おそらく韓国との間にもそういう問題が当然出てくるのではないかと思います。したがって、それについてどうお考えになっているかということが第一点。特に私がこのことをお聞きいたしますのは、この領事条約の中に、たとえばアメリカとの領事条約の中では、日本にいるアメリカ人が日本で徴兵検査を受けるということや、あるいはこの犯罪人の引き渡しの問題、そういったことが含まれていると思いますが、この場合、まあアメリカやイギリスの場合は実際問題としてたいしたことはないと思いますが、六十万人もいるというこの在日朝鮮人の問題に関しまして、あるいは二十二万になりますか何万になりますか、今度韓国籍を名のってこの永住権等を得た場合に、この領事条約によって日本において徴兵検査を受ける、こういうようなことも当然起こってこようかと思うのであります。現在も、伺いますと、韓国籍を名のっている方々に、大韓民国のベトナム派兵の問題に関連して、簡単に言えば召集令状、そういった種類のものが来ているやに聞いておりますし、間違えたのか、いわゆる朝鮮という国籍になっておって、大韓民国国籍を名のっておらない人々にまで何人かそういうものが来ている、こういう事実も明らかになっているようでありますけれども、そういうものとも関連いたしまして、この国内法整備の問題として、この日韓の領事条約というようなものが、いま言ったようなことも含めて当然取り結ばれることになる方針ではないかというふうに考えますが、その点についてひとつ明快にお答えをいただきたいと思います。
  78. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 基本関係条約の第一条に領事館の設置を規定いたしておりますけれども、領事条約というものを締結するつもりはございません。実は、領事館を設置しましても、領事条約というものを締結する必要はないわけでございまして、昨年アメリカと領事条約というものをつくったのが初めてでございますが、その前から日本は世界各国に領事館というものを持っておったわけでございます。アメリカでは、イギリスとかそういう英法系の国でございますと、領事の特権が不明確な場合が多い、外交官ほどの待遇を与えてくれない場合が多いので、こういう国とは領事条約を結んだほうがいい、こういうことでいたしたわけでございまして、なお、ソ連との関係も、これもまた特別でございまして、やはり、ああいう国で外交官、領事でもいろいろ制限を加えておりますような場合には、相互主義というような観点からもはっきり権限関係を明らかにしたほうがいいだろうということでございまして、韓国との間では領事条約を締結するというつもりはないわけでございます。  それから、もう一つは、何かベトナムのことについて韓国の行政権の行使に当たるようなことを日本国内でやっているやにお話がありましたが、そういうことは国際法上できないはずでございまして、それは何かの勘違いじゃないかと存じます。
  79. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 そうすると、韓国とは領事条約を結ぶ考えはない、これははっきりそういうお答えがあったと確認してよろしいですね。
  80. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 昨年、日米領事条約の締結の当時から、さように政府の方針として申しております。
  81. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 これはちょっと重要なことでございますので、ひとつ大臣から明確に御答弁をいただきます。
  82. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 その問題は主管大臣から答弁をすることが適当だと考えますので、私からは答弁を控えます。
  83. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 大臣を呼んで答えていただきたいところですが、この時間では無理だと思いますから、保留をしておきまして、いずれ機会を見て明確に大臣からこの点について明らかにしていただきたいと思います。  なお、それに関連してもう一つ念を押しておきたいのですが、領事条約は結ばなくても、たとえばこの協定成立すれば、そして領事館ができれば、この韓国籍を名のった方について日本で徴兵検査を施行する、こういったことはあり得ますか、あり得ませんか。
  84. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そういうことはあり得ません。
  85. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 この点もひとつ大臣からも明確に御確認の答弁を後ほどいただきたいと思います。  なお、もう時間がありませんが、一点だけこの際伺っておきますが、先ほど、本協定ができましても、これからはみ出した部分の、つまり朝鮮という国籍になっておる方々についても精神は同じような精神で扱うというふうにお答えがあったわけですが、それに関連をしまして、先ほど穗積委員からも、この際韓国籍を強制するような動きがないかということをかなり詳しくお尋ねをして念を押され、そういうことはない、あくまで自由な意思に基づく、こういうような御答弁があったわけですが、それで、私はそれに関連してすでに具体的なことが起こっているのではないかというふうに感ずるわけなんです。と申しますのは、これだけ一点お聞きしておきたいのですが、日本人の女子が朝鮮の方と日本国内で結婚をされて国籍を離脱する場合に、従来どういう手続でそれが行なわれてきたか、現在どういうふうに扱っているか。時間がありませんから端的に申しますと、前は、たとえば朝鮮総連というようなところで証明書を出しますと、直ちに国籍離脱の手続を完了し、そして結婚が正式にできた。ところが、こういう扱いについて昨年の十月以降ストップされているやに聞いておるのです。そういう件が相当たまっておる、こういうことも伺っておるのでありますが、これらは、いまの日韓会談の進行と関連いたしまして、すでに、差別といいますか、そういうものがこういう形で起こってきているのではないか、こういうふうに危惧するのでありますが、この点について明快な御答弁をいただきたいと思います。
  86. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 お尋ねの場合には、婚姻の効力については、御存じのように、国際私法上、本国法である韓国の法律が適用されることは当然なのであります。そこで、最後にお尋ねになりました、特にそうした国籍の離脱の申請に対してストップしたという事実はないのでございますが、不受理をしたものが昭和三十九年においては五十七人、本年においては三月二日現在において十五人あります。その他詳細につきましては政府委員からそれらのことを御答弁をさせたいと思います。
  87. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 ただいま法務大臣から御答弁がございましたように、日本人女子と韓国の男子が婚姻いたしますと、その女子は日本国籍を持ったままで同時に韓国国籍も取得するように韓国法上なっております。そういたしますと、その婦人は二重国籍という関係になるわけであります。韓国国籍法によりますと、これは最近わかったことでございますが、韓国国籍を取得した後六カ月以内に原国籍を離脱いたしませんと、せっかく取得した韓国国籍を失う、こういうことになっておるようでございます。そこで、本来ならば、そういう規定を全く考えないで申し上げますならば、二重国籍になっておるわけでございますので、韓国国籍だけにしたいという場合には、本人のほうから法務大臣に対しまして国籍離脱の届け出がなされます。この届け出は外務大臣を経由して法務大臣に参るわけであります。問題のない場合はそのまま受理して、官報に公告いたしまして、国籍離脱の効果を発生するということになるわけであります。ただ、いま申し上げますように、つい最近わかったことでございますが、韓国国籍法上六カ月以内というような条件がついております。もしもこの六カ月を経過いたしました後に日本国籍離脱の届け出が参いりますと、もしそのままそれを日本政府が受理いたしますならば、すでに韓国のほうでは国籍を失っておるのに、また重ねて日本国籍も失うという結果になりますので、これは無国籍というふうな状態を起こすわけであります。日本国籍法ではそういう無国籍の結果が起こるようなことを防止するような措置がとられておるのでありまして、国籍法の精神もそういうふうにでき上がっております。したがいまして、六カ月経過後に出ましたものにつきましては、日本政府としてこの国籍離脱の届け出を受理するとかえって本人のために不利益になるのじゃあるまいかというので、ただいま大臣の申されました不受理の措置をいたしておるわけであります。
  88. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 私の質問したこととちょっとピントがずれておりますが、いま韓国籍を名のっておる方のことについてはそういう扱いをしておるという意味が一応わかりました。韓国籍を名のっておらない方の場合に、従来はスムーズにいっておったものが、最近ストップしておるということを伺っておるので、その点はどうなっておりますか。
  89. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 ただいまの不受理の問題と関連いたしますが、大臣も申されましたように、特にストップして押えておるという案件は一件もございません。ことに、先ほど大臣の御説明にもありましたように、昭和三十九年におきまして五十七人の不受理が出たということでございますが、それ以前には不受理の措置をしたのは一件もございません。届け出がございますれば、それは全部そのまま受理いたしております。
  90. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 五十七人、十五人というのは、韓国籍を名のった方でなくて朝鮮人全般ですか。
  91. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 ただいまの五十七人、十五人と申しますのは、韓国籍を取得した人についての問題でございます。
  92. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 そうでしょう。時間がございませんから、この点はまたあらためて明らかにしたいと思いますが、この五十七人、十五人のほかに、私の伺っておるところでは、すでに数百件が、韓国籍でない朝鮮という一応の国籍になっておる方々の問題がいま起こっておるというように伺っておりますが、その点については、あなたのほうでは全然そういうことはない、こういうふうにはっきりおっしゃっておるのですか。
  93. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 日本政府に対しまして国籍離脱の届け出がありました件につきましては、ただいま申しました五十七件、十五件以外には一件も不受理の措置あるいはストップの措置をとったものはございません。
  94. 長谷川正三

    長谷川(正)委員 いま全然ないというお話ですけれども、こういう方法でじわじわと韓国籍を強要していくというようなことを心配いたしましたので、一つの事例としてこの点を申し上げたわけですけれども、まあ全然ないということでありますから、この点についてなお私どものほうでも調査をいたしまして、さらに疑義があれば次の機会にこの点をただしたいと思います。  私の質問は以上で終わります。
  95. 野田武夫

    野田(武)委員長代理 大出俊君。  大出委員にちょっと御注文しますが、防衛長官は先ほどから来て待っておりましたが、時間がたいへん短いですから、その含みで御質問願います。
  96. 大出俊

    大出委員 時間がたいへんないようでありますから、実は前段にいろいろこまかい質問を申し上げて本論に入りたいと思ったのでありますが、ずばり承りたいと思いますので、なるべく簡略に御答弁をいただきたいと思います。  前に何回か論議をいたしたのでありますが、ポラリス潜水艦が昨年末から本年の春にかけてダニエルブーン号等を中心に七隻極東水域に配置をされることになっておったのでありますが、今日何隻どのように配置をされておりますか、御答弁を賜わりたいと思います。
  97. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 現在のところで私のほうで承知いたしておりますのは、アメリカのポラリス潜水艦は一隻であると承知をいたしております。
  98. 大出俊

    大出委員 前回の新聞発表と食い違うのでありますが、四隻という発表がございますが、そこのところをもう一ぺん御答弁願います。
  99. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 新聞にはそういうことが報ぜられたことがございまするが、これはアメリカ側の計画としてはあるかも存じませんが、現在の時点においては、先ほど申し上げましたとおり、一隻だけであると当方は承知いたしております。
  100. 大出俊

    大出委員 たいへんな食い違いがありますけれども、なぜ聞いておるかと申しますと、けさのニューヨーク・ヘラルド・トリビューン等の記事からいたしまして、ベトナムの問題等でもし中国が介入をするということであれば、中国木土を攻撃をする、このような示唆が新聞発表の面で出ているのでありますけれども、それらとの関係がありますので申し上げているのでありますけれども、時間を取りたくありませんので、この相違につきましてはあらためて質問をいたしたいと存じます。  次に、第三次防衛力整備計画が今日相当なテンポで検討されているようでありますけれども、この中で、まず一点は、今年の何月までに計画を決定されるのか。つまり、戦闘機、輸送機、早期警戒機、特に早期警戒機などというのはこの機種等から見ますとたいへん新しいものでありますが、これらのものの選定、戦闘機についてもいろいろございますけれども、これをいま防衛庁がいろいろと検討されておりまして、関係の外国製品売り込みの商社等が殺到しておるという形になっておるようでありますが、いつごろまでにおきめになるのか、まず時期的な判断をひとつお聞かせをいただきたい。  二番目に、先般の新聞にもこれは載っておりましたが、ホークの基地を東京の周辺に四、五カ所設ける、これも非常に急いでいるようであります。ところで、これは施設庁の長官に私が直接質問をいたしましたところが、施設庁長官のほうでは、確かに四、五カ所ないしは五、六カ所設定をするということで防衛局等のほうでは非常に急いでおる、ところで、施設庁のほうで、国有地でなければ反対を食うので、そういう意味での場所の選定を今日やっておって、数カ所候補地にあげている、こういう事情であることが明らかになっているのでありますが、これは一体いつごろまでに何カ所、きまっているとすればどこに、たとえば横浜の保土谷であるとか、いろいろ載っておりますけれども、どこに設定をされるのか、端的に御答弁願いたい。
  101. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 第三次防衛力整備計画の問題につきましては、私がことしに入りましてから各幕に対しまして第三次防衛力整備計画についての基本的な構想をまとめるように指示をいたしたのでございまして、その指示の内容につきましては、大体六月ごろをめどとして柱となるべきいわゆる基本的な構想を打ち立てて見ろ、こういう意味の指示でございまして、六月ごろまでにそういうような大きな柱の構想を立てさせまして、それから漸次細目にわたって具体的な問題について検討をしてみたいと考えておるのがいまの段階でございます。昨日も実は他の委員会で御質問がございまして、六月くらいまでにすべての計画が固まると、こういうように御解釈の向きもございましたが、それは誤解でございまして、六月ころまでに基本的な構想ということでございますので、いま大出委員から申されましたような戦闘機の機種とか、そういうものはもっとあとの問題になってくると考えております。  なお、さらに、申しおくれましたが、ホークの基地の問題でございます。これまた、御承知のとおり、ホークを二個大隊第二次防衛力整備計画として実施するということになっておりまして、最終年度の四十一年度までにこの残された一個大隊を東京の周辺に置くということは決定をいたしておりまするが、今日までの段階におきましては、一個大隊四カ所ということにはなっておりまするけれども、いまだ、ここが候補地であるというような、あげるまでの段階には至っておりません。
  102. 大出俊

    大出委員 念のためにもう一点承っておきたいのでありますが、この機種の選定については六月以降になる、こういうわけでありますけれども、私のいろいろ調べております範囲では、新しく出ております早期警戒機などというものは、グラマンのE2Aであるとか、あるいはYS11であるとかいうことがすでに候補にあがっている、さらに、戦闘機その他につきましても、具体的に、104J等ではまずいということで、さらに優秀なものをということで機種が二つ三つあげられている、こういう事情にあるのでありますけれども、その事の真否のほどをひとつ明らかにしていただきたいのと、もう一点、ホーク基地の問題等についても、すでに施設庁のほうでは場所の選定をほとんど進めてしまっているわけでありますから、そうなると、これについてもどうもあいまいなのでありますけれども、もう少し具体的に、いつごろということが言えていいはずだ、四十一年度でありますから、そう考えるわけでありますが、このところだけ御答弁願います。
  103. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 第三次防衛力整備計画の中に包容されるかもしれないという新しい機種の問題につきましては、大出委員から申されましたようないろいろな情報は私も二、三聞かぬではございません。また、大出委員がいち早くいろいろな情報をキャッチせられておると思いますが、空幕等の中において、あるいはまた航空界のそのほうの専門家の方々においていろいろと言われておるということはもちろんございましょうが、防衛庁が計画の中として正式に議題として取り上げて検討をいたしておるという段階ではないわけでございます。そういう点について御了承をいただきます。  さらに、ホークの問題は、先ほど四十一年度、第二次防衛力整備計画の最終年度までにはこれを実施しなければならぬと申し上げておきましたが、いわゆる今年度中にはどうしても設置の場所等を決定いたしたいというのが私どものほうの希望でございます。なおまた、いろいろと事務当局のほうであちらこちら当たっておることはあるかも存じませんけれども、まだこれを正式な候補地として取り上げて正式な折衝をするとかというようなところまでいっていないということも事実でございます。
  104. 大出俊

    大出委員 そこで、アメリカの国防次官であったギルパトリック氏が日本に来ましたのは一九六三年でありますが、彼が帰りまして記者発表いたしておる内容を、前回、前々回等、委員会で質問をいたしましたところが、なかなか答弁不明確でありますので、少々調べてみましたが、言っております内容というのは、アメリカは太平洋北部地区で日本がいろいろ多くの防衛負担を引き受けることを期待しており、これには琉球諸島も含まれ、フィリピン、オーストラリアの防衛努力を補うことが考えられているというのと、最新の長距離飛行機の発達でアメリカは極東に永久基地を必要としなくなったし、最終的には、日本はおそらく朝鮮半島の一部を含む地域をカバーするに十分な海、空軍力、こういうことで、韓国に新たな危機が起きた場合、アメリカの兵力の再増強を当てにする必要がなくなるだろうという点と、さらに、日本の海、空防衛力の重要な要素としては、中共の核戦力、これに対抗するためのナイキハーキュリーズやホークなどによる防衛組織が考えられる、これは日本がアメリカの防衛任務を肩がわりできる分野である、こういう発表をいたしているのでありますけれども、以来今日まで、ここで固まりました第三次防衛力整備計画が、いまのお話とも関連をしてどんどん計画をされ、進んできているのでありますが、ところで、今日その計画をも含めまして、ここで言うとおり、つまり、韓国に新たな危機が来ても云々だとか、日本はおそらく朝鮮半島の一部を含む地域をカバーするに足る、そういう海、空軍力を持つことになろうと、こういうわけでありますが、おおむねそういうことになりそうですが、今日の防衛庁長官が把握している防衛能力なるものは。
  105. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 いま大出委員から申されましたようなことがアメリカのほうでいろいろと言われておるし、雑誌や新聞等にもあらわれておることは、そのとおりであると存じまするが、それが直ちにわがほうの防衛力整備計画に結びつき、またその一端でも具体化しようというような考え方は、いままでのところは全然ございません。私は率直に第三次防衛力整備計画の私自身としての方向の一端を申し上げますると、そういうような大きな防衛力の増強というものは考えておらないのでございまして、陸海空にわたりまして大きな数をふやすとかというようなことは考えておりませんで、むしろ内容の質的な改善、近代化というような点にできるだけ力点を置いて改善をしていきたい、こういう程度の第三次防衛力整備計画を私は考えておるようなわけでございます。
  106. 大出俊

    大出委員 もう一ぺん聞きますが、質的な改善、こういうことで、長官が把握している限りの今日の日本の陸海空は相当程度優秀になってきている。これは長官が防衛庁においていろいろ話をされている中にも出てきているのでありますから、考え方を持つ持たぬは別問題として、今日現存をする防衛力というものは二十七万をこえる兵員にもなったのでありますから、相当なものだという評価ができる。これは何べんか告示をされたり口にしているのでありますから、うそ偽りのないところだろうと思っているわけでありまして、相当な誇りを持ってもおられるようであります。そうなりますと、私は、力そのものは、アメリカがどう言ったこう言ったは別として、つまり、そのくらいの力にはなっているのではないか、また、近い将来になるのではないか、そういうことが第三次防衛力整備計画等の計画の中で考えられている、そのくらいの規模になる、この点についてどうお考えかということを聞いておるわけです。
  107. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 相当日本の防衛力が充実をされ、力を持ってきておることは、いま大出委員からも申されたようで、私どももさように考えております。しかしながら、これをもって日本独自で防衛に対する安心感と申しますか、大体これで十分だというようなところまではいってないのでございまして、まだまだその点においてはきわめて力が足らないというふうに考えております。ただ、言えますことは、在日駐留米軍との協力、そういうようなことにおいて、日本の防衛力に在日米軍の力がプラスして、そういうことを総合的に考えてみますときに、大体国の防衛というものには安心感が持てるのではないか、完全無欠であるということは申せませんけれども、最小限度ある程度安心がいくのではないかというふうには考えておるわけでございます。
  108. 大出俊

    大出委員 まあ安心の度合い云々ということとからんで、今国会になお防衛二法案がまた出てきておったり、いま言われる第三次防衛力整備計画で一生懸命その拡大、質的改善に努力をされている、こういうことになると思うのであります。  そこで、ひとつ御質問を申し上げたいのでありますけれども、一九五三年に朝鮮におきまして国連軍の側と朝鮮人民民主主義共和国並びに中国人民共和国との間に停戦協定が成り立ちましたが、この停戦協定なるものは、今日その両者は交戦状態を純軍事的に停止をしたというだけでありますから、敵対関係ないしは軍事的に停戦をしているというだけであって、この状態と申しますものはやはり広い意味での交戦状態にある、こういう理解が成り立つと私は考えているのでありますが、あなた方のほうはどういうふうにお考えになっておりますか。
  109. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 私のほうでも軍事的な協定にすぎないというふうに考えております。
  110. 大出俊

    大出委員 そうしますと、この停戦協定の前文にうたわれておりますように、最終的な平和解決が実現をするときまでということで、純軍事的な意味での停戦を行なった、こういう性格だということがこの協定前文に規定をされている。この前文はこの協定全部を拘束いたしますから、そうなりますと、これは明らかに敵対関係である、こういう結果になると思うのであります。それに、いまの御答弁からいたしますと、おおむね違わない御解釈のようでありますから、次に進めます。  ところで、今回の日韓基本条約のイニシアルを取ったということなんでありますけれども、この基本条約の三条と四条との関連で質問をいたしたいのでありますけれども、この三条に言うところは、一九四八年国連決議の一九五(III)、これをとらえて言っているわけであります。四条のほうは(a)と(b)とに分かれているわけでありまして、(a)は、両締約国は相互の関係において国連憲章の原則を指針とするものをする、(b)のほうは、やはり国連憲章を持ち出しまして、国連憲章の原則に適合して協力するものとする、こういうふうになっているのであります。この点で、すでに外務省の外務大臣を含めての考え方は私聞いてあるのでありますけれども、ここで、まず第一点は、一九四八年の一九五(III)の決議と申しますものは、これは単独で生きているものではない、私はこういうふうに考えているのであります。この一九五号決議が基礎になりまして六三年の決議まで引き続いている、こういう理解を私はいたしておりますので、冒頭にひとつお答えをいただきたいのは、この三条に国連の一九四八年決議一九五(III)を持ち出したということ、これは、日本側がこれを認めた、こういう理解でよろしいかどうかという点をまず承っておきたいわけです。
  111. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 一九四八年の決議は六三年まで引き続き再確認されておるということは、御指摘のとおりでございます。今回の条約案でこの四八年の決議を引用いたしました趣旨は、大韓民国政府というものは、この決議にうたわれたような意味における朝鮮にある唯一の合法政府であるといことを相互に確認するということでございます。
  112. 大出俊

    大出委員 そこで承りたいわけでありますが、この四八年決議というのは単独で生きているわけではない、六三年まで引き続き決議をされている、こういうふうにいま答弁がありましたが、六三年決議に至る各種の決議の基礎をなすものである、つまり、第三回国連総会のこの決議がなければ以後の決議は出てこない、こういうふうに私は理解をいたします。つまり、第二回の国連決議では、これは三回の前でありますから、その点はひとつそのように御理解いただきたいのですが、一九四七年に第二回の国連総会の決議が行なわれております。これによりますと、国際連合の臨時朝鮮委員会がつくられまして、この委員会の国のメンバーの中にはソビエトが入っているわけであります。ところが、第三回国連総会、ここに基本条約に引用されております決議の段階では、世界の情勢が変わってまいりまして、ソビエトを締め出したわけであります。したがいまして、ここにおける同様の委員会、臨時委員会の各国のメンバーからはソビエトが抜かれているわけであります。そういう形で第三回決議が行なわれた。しかも、朝鮮の人民の大多数がというようなことで、私は朝鮮は歩いておりますから知っておるのでありますけれども、少なくとも多数であっても大多数ではない、こういう理解をいたしておりますが、大多数などということばを使ったところにも、ソビエトが締め出されたという形の政治的なやりとりがあったというふうに私は理解ができるわけであります。当時のことを想起していただけばわかる筋合いでありますが、そういう形で、管轄権、有効な支配等とからんで大韓民国政府が樹立ざれたことをこの決議では明らかにしている。さらに全朝鮮における統一という形のものを望んでいる、こういう形であります。これは一九四九年十月二十一日の第四回国連総会決議にも引き続き、ここでも、この第三回決議を尊重しという表現、さらに、この一九四八年十二月十二日の総会の宣言を想起し、という表現等によりまして、かつ朝鮮における軍事的紛争の開始に至るおそれのあることを懸念しということに続き、そういう形で、国連の側としては、朝鮮全土における統一した政権を期待し、こういう形で引き続いているわけであります。さらに、この決議は、一九五〇年の六月二十五日における安保理事会決議に引き継がれているわけであります。この安保理事会決議では、いま申しました一九四九年の十月二十一日決議と両方並べまして、この中で国連朝鮮委員会が、大韓民国及び朝鮮人民の安全と福祉とを脅威しかつ同地域における武力紛争の開始を導く、このことを指摘して、つまり、北のほうから大韓民国に何らかの攻撃が行なわれた場合に、これに対して重大な関心を払って、連合加盟各国に働きかけて重大なる援助を与える、こういうふうに、つまり、大韓民国というのは一九四八年の第三回国連総会決議にいうところの唯一の合法的な政府であるんだということから、いま申しましたように進んできているわけであります。さらにこれは一九五〇年六月二十七日の安保理事会の決議に引き続きまして、さらには一九五〇年七月の決議にも引き続き、最終的に第五回の国連総会決議として、この四八年決議がここでも基礎になりまして、つまり国連軍なるものが北に三十八度線を越えて入っていくということをこの決議はきめたのであります。そうなってまいりますと、日本がこの一九四八年決議である一九五(III)を認めたということは、言いかえるならば、今日敵対関係にあるということになる韓国とそれから朝鮮民主主義人民共和国との間、このことについて日本韓国の立場を認めた、こういう結果になる。こうなってまいりますと、これは単なる仮想敵国ではなくて、相互に協力する基本条約なんでありますから、これは直接的に敵国ということを日本政府は認めるという結果になってしまう。これはどなたがお読みになってもわかるはずでありますけれども、この決議はずっとそれに関連をして全部基礎になっているのでありますから、読んでいきますとそういう結果が結論的に出てまいります。このことについて皆さん方は説明を何らなさりませんけれども国民にとっては将来に向かっての重大な関心事であり、危険をはらむと私は考えますので、明確に御答弁を賜わりたい。
  113. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 一九四七年の決議において、ウクライナソビエト社会主義共和国がこの国際連合臨時朝鮮委員会のメンバーとして入っておるわけであります。ソ連邦ではございませんで、ウクライナでございます。しかし、ウクライナは、ここにメンバーとしてあげられましたけれども、初めから参加を拒否したわけでございまして、これは、アメリカが一向に交渉でらちが明きませんので国連に問題を持ち出したのに対して、ソ連邦が国連でこの問題を取り扱うことに反対の態度をとったために、このソ連の態度にウクライナもならったものだろうと考えます。そういうわけで、ウクライナのほうから入らなかったのでございまして、アメリカのほうがそれを締め出したというのは、歴史的な事実に反するわけでございます。  それから、現在大韓民国を承認しておる国はたしか七十五カ国ございますが、これはいずれも、この国連総会の決議の趣旨に従って、このリコメンデーションに従ってやっておるわけでありまして、日本が今回大韓民国をこの同じ国連決議の趣旨に従ってやったからといって、日本だけが北鮮側と何か特別の関係に立つようになるということにはならないと存じます。
  114. 大出俊

    大出委員 いまの歴史的事実に反するという答弁でありますけれども、結果的には同じことでありまして、政治的に米ソの間が相当険悪になった、これだけは事実であります。したがいまして、その結果としていろいろなやりとりが行なわれています。そういう関係から、いま言われた結果が出てきた。このことについては間違いがない事実。そこで、これはこの停戦協定の六十項に軍隊の撤退の問題が規定をされておりますが、今日まで米軍を大韓民国に残しているこの件について、どういう理由によるのか、もう一ぺん御答弁をいただきたい。
  115. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 国連総会の年々の決議でうたっておりますように、政治的な解決ができるまでは国連軍の目的はまだ達成されないという立場を国連がとっておるわけでございます。
  116. 大出俊

    大出委員 つまり、出てこいという呼びかけ。しかし、出ていけば結果が明らかである、こういうことで拒否をしている。つまり、政治的な関係に両者が置かれている、こういうことになるのでありますから、したがいまして、先ほどの答弁の言い方はどうあろうと、中心になるものについては敵対関係がそのまま残ってきている、これに間違いはない、こういうことになるわけであります。そういう意味で、私は、先ほど来申しましたように、この六三年決議まで引き続いていくその基礎になっている一九五を認めたということは、大韓民国並びに北の朝鮮民主主義人民共和国との敵対関係を日本が直接的に相互協力という形で基本条約の三条というところで認めた結果になる、こういうふうに考えておるのでありますが、外務大臣がいないのでまことに残念でありますけれども、この点について、防衛庁のほうは一体どういうふうに考えておりますか。
  117. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 私のほうといたしましては韓国日本との社会的な経済的な協力という点に考えておるのでございまして、朝鮮民主主義人民共和国とのそういうような関係は、私のほうでは特別責任を持ってお答え申し上げるわけにはいかないのでございます。
  118. 大出俊

    大出委員 防衛大臣が出ておられますから、ここでひとつ質問をいたしますが、二月の十三日のソウル放送によりますと、ちょうど外務大臣がソウルに行っておるこの時期にアメリカの三人の高官がソウルで合流するようになっている。このメンバーは、国務省から、メンデル・ホール極東地域の局長、特別顧問であるヨナサン・ムーアという極東問題担当の国務次官補、ジェフリー・キッチンという極東政治軍事担当副次官補、こういう方々が集まっているのでありますけれども、この事実について御承知ですか。
  119. 安川壯

    ○安川政府委員 いまおあげになりました、アメリカの高官とおっしゃいましたが、これは私も知らないくらいの責任のない地位にある人間でございまして、大臣の訪韓とは全然関係ございません。
  120. 大出俊

    大出委員 私は防衛庁のほうに聞いているんで、あとから関係が出てくるので質問をしているのでありますが、防衛庁のほうも、もう一ぺん再答弁を願います。
  121. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 いま大出委員が申されました事柄、また人物について、私のほうでは何ら承知をいたしておらないのでございます。
  122. 大出俊

    大出委員 それでは防衛大臣に承りますが、自衛隊法の三条によりますと、ここに直接間接の侵略に対する防衛出動の任務が記載をされております。それから防衛出動の待機命令という形の七十六条等もございます。そこで、前回の予算委員会で、岡田質問その他とからんで、高辻法制局長官の答弁がいろいろと行なわれておりますけれども、交戦権というものとからんで、交戦と自衛の相違という形の中で、交戦という形のものについては、武力行使の機能の態様としてもうどこまでもいけるんだ、徹底的に交戦できる、限界がない、自衛行動にはどうしてもそこには自衛権に基づくものとしての限界がある、そこが根本的に違うところだ、こういう説明をしておりまして、佐藤総理の答弁等にいたしましても前回の池田総理の答弁とはだいぶニュアンスが違う、こういうように理解をいたしますので、この自衛行動の限界について、国防会議のメンバーでもある防衛庁長官はどういうふうにお考えになりますか。
  123. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 防衛の限界は、わが国の防衛というものは、あくまでも、いわゆるみずからを守る、決して侵略を意図するものではないし、こちらから積極的に攻撃の意図を持つものではない、あくまでも日本の安全、平和を守るという立場に立っておるのでございまして、さような関係からいたしまして、自衛そのものにどこまで限界があるかということになりますと、やはりそのときの具体的な情勢でなければ、ここに明確なる一線を引くことは非常に困難な問題ではあると存じますが、考え方の基本においては、あくまでも防衛で、侵略、攻撃を意図するものではないということは申すまでもないことでございます。
  124. 大出俊

    大出委員 そこで、先ほどの基本条約の四条でございますけれども、国連憲章を指針とするという点、これについて、前回内閣委員会におきまして、私が、これはどういうことを意味するか具体的に説明をしてほしいという質問をいたしましたところが、佐藤条約局参事官でしたか、まず一点は、国際紛争を平和的手段で解決すること、二点は、侵略に援助を与えないこと、こういう回答をされておりますけれども、ここのところはその回答でよろしゅうございますか。
  125. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 第四条の一項の「相互の関係において、国際連合憲章の原則を指針とする」、これは、お互いの関係においては、国連憲章の第二条に書いてございます七つの原則がございますが、それを指針とするということでございまして、佐藤参事官は、それを読み上げようかと即したけれども、それを省略して何か二、三例示的にあげたように言っておりますが、別にそれは、そのほかの原則を排除する意味で申したわけではないのでございまして、第二条に書いてあることは全部含まれていると御了解いただきたいと思います。
  126. 大出俊

    大出委員 前回の佐藤参事官答弁と多少いまの答弁は食い違いがありますけれども、私の問題の中心点としてお聞きをいたしたいと思っておりますのは、安保条約の五条というものと、それから米国と韓国との間に結ばれております同様の条約の三条、これとの関係からいたしまして、国連憲章を媒介としておのおのの共同防衛の義務が規定をされております。この中には自国の憲法のワク内においてという文字はもちろんございます。そうなってまいりますと、共同行動が行なわれるという場合に、自国の憲法のワク内でありますから、先ほど長官に御答弁をいただこうとしたところの自衛権、自衛防衛出動の範囲というものが一つの問題になってまいります。韓国の場合には違った形で共同防衛行動がとられるという結果にこの条約からなります。そこで、今日、基本条約が結ばれる、仮調印であってもこれが将来に当然基本になるのだということになりますと、その三つの相関関係で、いずれも国連を媒体として、一条では確かに平和的手段で紛争を解決する、こうなんでありますけれども日本の場合も同様に自衛権があるという主張をしているわけでありますから、そうなると、その間における相互防衛という形の共同行動が出てくる。つまり、一九五号決議というものとあわせまして、敵対関係が明らかになっているにもかかわらず、そのことを認めるという結果になる、こういう関係が出てくると解釈をいたしております。したがいまして、前回の内閣委員会における佐藤参事官答弁からいたしますと、明らかに共同的に国連憲章を媒介として、日本の場合で言えば防衛をする、こういう形の協力関係が生ずる、こういうふうに理解をするのでありますが、防衛の衝に当たっておられる大臣はどうお考えになりますか。
  127. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 日韓の基本条約に、先ほど大出委員から御指摘のありました国際連合の憲章の指針とか国際憲章に準拠するというような意味ことばがありますが、これは、あくまでも、日本が国際連合に加盟をいたしておりまする関係上、加盟国としての当然の義務を一般的に広い意味で書いたのでございまして、それが直ちに日本韓国との軍事的な協力に結びつくものとは考えておりません。また、日韓基本条約は、経済的な社会的な協力を意味するものでありまして、いわゆる軍事面の協力というようなことには全然私のほうでは考えていないわけでございますので、いまのような、相互に韓国と共同防衛に立つ、そういうことは、日本に攻撃が加えられればそれはまたその当時の情勢によっておのずから考えなければならぬ問題でもありましょうが、共同防衛というような軍事的な面では、この日韓基本条約を全然私ども考えていないわけでございます。
  128. 野田武夫

    野田(武)委員長代理 大出君、ちょっと御注意しますが、防衛長官の時間が来ておりますから……。
  129. 大出俊

    大出委員 時間がないので長官に申し上げておきますが、このいまの意見の対立をこれから掘り下げて、実のところ言うとこれから本論なんでありますが、時間がない、こういうことであります。確かに、十二時あるいは十二時半まで、こういうお話でありますから、その意味では時間の関係もございましょう。したがいまして、最終的にあと一、二点だけ申し上げまして、別の機会に譲ります。  いま私が危惧をいたしましてものを言っておりますのは、あなた方が口の先でいろいろと答弁をされますけれども、実際には、日本の新聞各紙がいろいろなことを、私同様な危惧をしてものを言っておるのであります。つまり、二月十七日に椎名外務大臣韓国に行かれたわけでありますが、読売新聞の「編集手帳」などの中にもございますように、今回の日韓基本条約の仮調印というものは、いま私が例にあげました国連決議を媒体として一九五号というようなものを日本が認めたという結果から、米国と韓国、米国と日本、こういう形における防衛条約等の関係もきわめて巧妙にからんでまいりまして、結果的にこれはNEATOダイヤの急速の進発だ、こういう論評、理解をしている。にもかかわらず、日本政府側の答弁というのは、韓国国民感情が非常に好転をしたとか、あるいは朴政権それ自体が非常にこの妥結に熱心であるとかいうふうなことを幾つか理由にあげられて、親善友好であるということを表面に立てられて調印をしよう、こういうふうに、いかにもベトナムの戦雲を背景にして進められている前段で申しました三国の共同防衛的性格のものを糊塗して、国民にこういう形で答弁をしていることは、国民をつんぼさじきに置くという以上に、欺瞞ではないかということを指摘しておるのであります。これは私だけの危惧ではない。したがって、その点を皆さんの側がそう言い抜けないで——事実、第三次防衛力整備計画にしても、一々相関連をして、アメリカ側から打てば響くように反応が起こって、それによって進んでいる。これが歴然としているわけであります。さらに、韓国に集まった三人の高官についても、ソウル放送がうそを言っておるわけじゃない。ちょうど外務大臣が行かれる時点に合わせて合流することになっているという報道をしておるわけであります。さらに、駐日代表部その他を通じて米国の側から、しかるべき人、その名前をここであげてもしかたがありませんが、しかるべき人が来て今回はまとめなければいけないということをあらかじめ言っているということが、このソウル放送にはついている。そうなってくると、日韓会談を因数分解をすれば、米韓会談プラス米日会談である、ここまでの酷評をしている新聞もあるわけであります。そのことを皆さんの側が一生懸命あるいはとぼけてみたり、あるいは適当に答弁をしてみたりということであっては、将来に向かって国民に対していかなる責任を取られるかという問題が出てくる。この点を私は指摘をしたいのでありますけれども、時間時間ということになりますので、あらためて別な機会に論議を続けたい、このように思います。  終わります。
  130. 野田武夫

    野田(武)委員長代理 この際、午後一時二十五分から開会することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      ————◇—————    午後一時四十四分開議
  131. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  中村重光君。
  132. 中村重光

    中村(重)委員 農林大臣にお尋ねしますが、私は、かねて農林大臣個人に対しては好感が持てる人として敬意を表しているのです。この漁業問題に対して農林大臣だけは筋を通しておる、こういった感じで、比較的好感を持たれてきた、こう思うのです。ところが、昨日来の大臣答弁を聞いてみると、どうも実情を全く無視した公式論的な答弁というものがあるように感じられるわけです。昨日も大臣が同僚委員に答えられたように、この漁業問題というのは日本の漁民にとって重大な関係を持つ問題であるだけに、実情を十分尊重した形において対処してもらわなければならぬ、こう思うわけです。ところが、昨日仮調印が行なわれるであろうと一般的に予想されておったのでありますが、それが行なわれなかった、こういうことでありますが、合意に達しなかった点はどういう点であったか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  133. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 漁業交渉の点につきましては、合意に達しなかったという点はいまのところないと思います。仮調印がおくれているというのは、表現のしかた等におきまして、それから、事務的に相当いろいろな問題が含まっておりますので、事務的におくれている、こういうことでございます。
  134. 中村重光

    中村(重)委員 そういった事務的な問題だけではなくて、隻数の問題であるとかいろいろな点で、両方で交換公文を出し合ってみると、どうも内容的に相当食い違いがある、それで合意に達しなかったと伝えられておるのでありますが、その点、そういうことが事実でありますか、どうなんです。
  135. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 専管水域のきめ方等につきましても合意に達しています。それから、その外側の共同規制水域の点につきましても合意に達しています。専管水域外でございます共同規制水域及び共同規制水域外における取り締まり権、裁判権も合意に達しています。それから、隻数等につきましても、私のほうから提示したものにつきまして相手方も了承していますので、この点も合意に達しております。でありますので、私、いま合意に達しないという点を思い出さないのでございますが、何か御指摘がありますならば、それにつきまして御説明申し上げたいと思います。
  136. 中村重光

    中村(重)委員 昨日楢崎委員から強く指摘された入り会い権の問題、そういうことに対して大臣から特に話を持ち出すようなことはなかったんですか。
  137. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 入り会いの先例につきましては、他の私のほうの漁業問題の主目的がほぼ達成いたしましたので、これは、昨日申し上げましたように、相手方の主張に譲った、こういうかっこうになっていますので、そういうことに落ちついておるわけでございますから、あらためて合意に達しないということではございません。
  138. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、事務的な関係が一応整ったならば、——これは、整うということよりも事務的な処理でありますので、むしろ大臣段階ではないのじゃないか、こう思われる。そういうことであれば、昨日来いろいろ指摘された点はそのままにして、問題は疑問を残したまま妥結をする、こういう考え方の上に立っておりますか。
  139. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 入り会いの先例はもう私のほうで韓国の場合に対しましては認めないで、向こうに譲っておりますので、その点はそれできまりがついているわけでございます。その他隻数等につきましても両者の間で話がはっきりきまっております。でありますので、問題が残ったままでなく、両者で話し合って到達したところにおきまして仮調印をするという運びに相なると思います。
  140. 中村重光

    中村(重)委員 以下若干私が疑問に思っている点をお尋ねしたいと思いますが、その前に国務大臣としてのあなたにお尋ねをいたしますが、この日韓交渉というのは、日韓双方にとってどういう点がプラスになるとあなたはお考えになっているのですか。どうです。
  141. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私が漁業交渉に臨んだ態度を一応御説明申し上げたいと思います。漁業資源を保存して、そして両関係国が平等に分け合って資源をなお増していくということが、最近の国際情勢から言って非常に大事なことであり、そういうことは世界的に行なわれておる。日本とソ連との間におきましても、ブルガーニンライン等がありまして、日本の漁船は締め出されておりました。しかし、共産国家でありましても、ソ連との間に漁業交渉成立さして、そしてソ連と国交を回復した。平和条約はできませんが、そういう事情で漁業条約ができております。あるいはまた、日本の漁業が相当遠くまで行っておりますので、アメリカ、カナダとの漁業の条約もできています。これは一方的な押しつけというようなことでありますからいま改定に臨んでおりますけれども、こういうふうに日米加等の漁業条約もできておる。また、国交が回復してないところの中共との間にも、国としては漁業条約を結んでおりませんが、民間の漁業協定を結んでいる、こういうような状況でございます。そういうような置かれている日本の立場から考えまして、韓国との間は非常に距離的にも近い、漁業も日本が率としては多く、大部分は日本でございますけれども、この日韓両国におきまして、日本韓国との間の漁場において魚をとっておる、こういう事情でございます。でございますので、ソ連との関係でブルガーニンラインをなくしてそうして漁業の条約を結んだ、こういう例もありますので、韓国との間も、李ラインという一方的な国際法上も全然認められない不法不当な線を引いて、そして日本の漁業に圧迫を加えておる、ここを事実上は排除しまして、そうして魚族資源を保存しながら安全操業をできるようなことにしたほうがよい、これは、日韓国交回復がどうかこうかというよりも、少なくとも漁業だけは協定を結んで、いまのような目的、安全操業によって、そして両国が魚族を保存していく、こういうことは大事といいますか必要なことだ、こういうふうに考えましたので、漁業交渉に臨んだわけでございます。
  142. 中村重光

    中村(重)委員 請求権の問題にいたしましても、これは一方的だと言われる。内容的には一方的である。これは日本にとってはプラスだということはもちろん言えない。法的地位の問題にいたしましても、これはいろいろと問題を残しておる。さらに、貿易会談の問題にいたしましても、あと外務大臣あるいは通産、大蔵大臣にお尋ねをしたいと思いますが、これもまた、韓国国民にも喜ばれていないし、日本の中小企業者あるいは農業、そうした直接の業者は言うまでもなく、関連企業に対しても非常な圧迫を与えるというようなことが考えられる。このように問題を考えてみると、プラスの面というものはほとんどないのじゃないか、むしろマイナス面が私は非常に大きいと考えておるわけです。さらに、漁業問題だけは日本にとってプラスになるのではないかということが、李ラインの問題を中心にして考えられ、期待をされておったわけです。いま大臣李ラインの問題に触れて、国際法上不法不当なラインがある、これが非常な圧迫になっておるのだ、こういうものを除去する、そうして安全操業をするということはプラスである、そのようにきょうは言われた。私は率直な答弁であると思うのでありますが、私が先ほど公式論だと申し上げたのは、きのうは同僚委員質問に対して、李ラインというものはないのだ、ないものをあるあるということはおかしいといったような答弁をしておられた。そういうことは実情を無視した大臣のきわめて公式論的な考え方である。そういうことでこの問題の解決に当たるということは、これはとうてい日本の漁民の利益を守るということにはならないのだという考え方を強く私は持ったわけです。  そこで、いま大臣が具体的なことをいろいろとあげられたのでありますが、私は、この李ラインの問題にいたしましても、ほんとうに日本の漁民がどう考えておるか、この問題の解決に対して漁民はほんとうに喜んでおるのだろうか、漁民の声を大臣はどのように受け取っておられるのか、いろいろと大臣に対しても陳情が行なわれたと思いますので、その点に対して大臣のお考え方を聞かしていただきたいと思います。
  143. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 直接間接漁民の声を聞いておりますが、李ラインがなくなって安全操業ができるということで、ほっとしたといいますか、すなおにそのまま喜んでおるというふうに私の耳には入っておりますし、現地等からの情報もそういうふうに私は聞いております。
  144. 中村重光

    中村(重)委員 現地の情報というものが、非常に期待にこたえて漁民がこれを歓迎をしておるのだというようにお考えになることは、事実に相違しておる、こう私は思います。私は長崎県でありますから、特にこの李ラインの問題に対しましては関係を持つ業者が非常に多い。それだけに現地の実情というものをよく知っておる。しかも、その漁業者の中には、自民党の代議士の諸君すら直接漁業に携わっておる人がある。そういうような人の新聞談話というものを私ここに持っておるのでありますが、非常に批判的であるわけです。日韓交渉にあたっては日本は得るところは何もないのだ、ただ一つ漁業だけは日本にとってプラスになる面があるだろう、しかし、その内容を見てみると、漁民の一方的な犠牲によって妥結される可能性が非常に強いということを言っている。その点に対しては、昨日、漁獲量の問題あるいは隻数の問題等に対して日本の要求がそのまま通ったかのごとく答弁をしておられたこれも事実に反すると私は思う。さらにまた、日本の漁船の数あるいは漁獲量が制限されたが、しかし、一方韓国の漁獲量あるいは隻数というものは何も制限されていない。現在の実情というものは制限をする必要はないんだ、そのようなお考えの上に立っておるかもしれない。だがしかし、この漁獲量の制限、隻数の制限に伴って、それに並行していわゆる漁業協力資金というものをお出しになるわけです。これは韓国の漁業の近代化をはかるということになってくるでありましょう。同時に、韓国の零細漁民というものを育成をするんだという考え方の上に立ってこの資金も使うでありましょうし、また、水産物を輸入するということになってくる。そうなってくると、非常に韓国の漁民というものは強くなってくる。ましてや、低賃金の労働者を持っておりますだけに、短時日に急速に韓国漁業の強化というものが考えられると思うのです。そうなってまいりますと、現在はこれを規制をする必要はない、制限をする必要はないという考え方に立っておりましても、私は、そう長い将来のことではないのではないか、こう思います。したがいまして、そういう考え方の上に立って、当然韓国の漁獲量の問題あるいは隻数の問題等に対しても何らかの措置をはかることが正しい日本の漁業の利益を守ることになるのではないか、それがまた公平な行き方ではないか、このように考えるのでありますが、それらの点に対する大臣考え方をひとつ聞かしていただきたい。
  145. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 おことばを返すようでございますが、現地の表情も、ほっとしたと、こういうことであって、大歓迎だというような、私はそういう大それた気持ちは持っておりません。  それから、隻数につきましても、私のほうの要求を通したのかというのでございますが、きのうも御答弁しましたように、決して私のほうは折れないで通したということを率直に申し上げたのでございまして、それはそういうふうに御了承願います。  それから、日本ばかりそこへ入る隻数をきめ、あるいはまた漁護量等の規制もしたけれども、向こうを制限しないということは不当ではないかというお尋ねでございます。私は、共同規制水域内におきましては公平平等に漁獲をする、こういうたてまえでございますから、向こうのほうも共同規制に服するように、あるいは隻数であらわすといたしても、その隻数の船の装備等が違いますから、単なる隻数だけではなくて、実質的に日本の隻数を超過するようなことは押えるということでなければならない、そういうたてまえで事務当局におきましても進めておりますから、日本だけに制限を設ける、こういうことでは全然ございません。
  146. 中村重光

    中村(重)委員 どうもその点の大臣の認識が私は納得できないですね。専管水域にいたしましても、島と島を結びましただけに、非常に広い水域を韓国に専管水域として与えた。また、この共同水域の問題にいたしましても、共同でございますから、両方の漁業がここで操業をすることができる、こういうことになってくるのですね。いままでは、李ラインで拿捕されるという危険はあったわけですね。危険はあったけれども、相当広い水域を自由に操業することができたということであります。してみると、この共同水域が日本の漁業にとってプラスになったという認識は、私は正しくないと思うのです。その点大臣はどう判断をしておりますか。
  147. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本の操業実績といいますか、従来の操業実績を確保しておりますから、共同規制水域内においても共同水域外においても安全に操業できて、その実績を保持できるということでありますならば、これは日本漁民にとっても非常にいいことだ、こう考えます。
  148. 中村重光

    中村(重)委員 実績実績と昨日から盛んにおっしゃるのですね。ところが、その実績のとり方がほんとうに漁業者の考え方と一致しておるかということが問題なんですよ。その実績をピーク時に置くか、平均に置くか、最も低いところに置くかという、実績のとり方というものも違うのです。漁獲量の問題に対しても、あるいは隻数の問題に対してもそうなんです。そこに私は漁業者の考え方と政府考え方との食い違いがあると思う。  まあしかし、その点は平行線になりますからこれ以上は触れませんが、安全操業という問題をいま大臣は言われたわけです。ところが、安全操業という問題にいたしましても、昨日楢崎委員からいろいろ指摘されたように、禁漁区の問題については、これは沿岸国がこの取り締まりをする。これもきわめて不当である、このように私は考える。専管水域ということになってくると、それは旗国主義でなくして沿岸国主義ということにもなるわけでしょう。そこは話し合いでありますから理解をしなければならぬと思います。しかし、禁漁区を沿岸国主義ということにされたということは、これはあまりにも譲り過ぎたという感じもいたします。それから、季ラインの問題にいたしましても、非常に危険を感じることは、国防ラインとして、韓国の漁業資源保護法によってこれは残るということになるのです。これはどうすることもできないんだ、これに触れると内政干渉的なことになるということで、大臣はそういう意味答弁をしておられた。私はこれも非常に問題であると思う。どういう意味のラインであるといたしましても、公海に一方的にラインを設定をするということは、私は国際法違反であると考える。これを実質的に認めるというような行き方は間違っておる、こう思う。そういうことから、安全操業というものが百%確保されないという結果になるのではないか、そのように考えるのでありますが、それらの点に対する大臣の所見はどうでありましょうか。
  149. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先日から申し上げておりますように、李ラインというものは、漁業の線であれ国防の線であれ、私どもはこれは国際法上不当不法のものでありますから認めないという立場に立っています。しかしながら、事実こういうものを設けて私どもの安全操業を妨げておりますから、そういう妨げは全部撤去する、こういう話し合いになっております。撤去することになりますから、私どもは、これから共同規制水域あるいはその他これは公海でございますが、その他の公海においていかなる名目によりましても拿捕とか抑留とか、こういうことは許さない、また、向こうでもそういうことはしない、こういうことに相なっておりますので、私どもは、それで実質的に李ラインの撤廃というようなことは実現した、こういうふうに考えております。  それから、取り締まりの件でありますが、禁漁区において向こうが取り締まるというのはおかしいじゃないか。禁漁区ということばは新聞に出たことばでございまして、実は、私どもといたしましては、済州島と韓国本土を結ぶ間は専管水域でございます。専管水域の間に入り組んだ分だけの公海、これを専管水域並みに取り扱うということで話ができておりまするから、内水ではございません。内水でありまするというと、航行権等についても問題がありましょうし、いろいろあると思いますが、専管水域でございますので、専管水域の取り締まり、こういうことで話を進めたわけでございます。そのほかにおきましては、旗国主義といいますか、その船の属する国の取り締まり及び裁判権、これは国際的に認められていることで当然でございまするけれども、そういう取りきめをいたしまして、いままでの拿捕とか、こういうことがないような取りきめをしておるわけでございます。
  150. 中村重光

    中村(重)委員 どうもいまの御答弁はおかしい。新聞に禁漁水域として出たんだ、こういうことですね。ところが、それを妥協するという形で両方がいかにも譲り合ったというような感じを与えておる。そういう意味の説明をしてきたことは事実であります。あなたが相当突っ張った。要するに、韓国側の要求というものをいれないということで突っ張った。そこで、これは禁漁区という形において——その名詞は禁漁区という形で使われたのかどうかそれはわかりません。大臣がそう言っているのですから、大臣が言うことを信用するといたしましても、どうもそこを特別の水域として妥協したということは事実であります。そこで、よくあなたはがんばったということで、漁業者にある程度の好感を持たれたということは事実であります。でなければ、あすこへ相当な時間をかけていろいろやったということは単にお芝居だということになるのじゃありませんか。そうなるでしょう。その点どうなんですか。
  151. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御質問の趣旨がよくわかりませんが、専管水域をあの間へ設けて、その間に入り組んだ場所をできるだけ少なくして、そしてあの辺の紛争を少なくするために線を引く、入り組んだところに線を引く。これは事実は公海なんですから、入り組んでおっても。それを専管水域並みにするということで線を引く。しかし、その線は紛争を避ける意味において引く線でございまするから、なるたけ地域を狭くしよう。向こうは広くしよう、広くするよりも、もっと向こうの話から言いまするならば、直線基線を引こう、直線基線を引けば、その直線基線の外が十二海里専管水域になるわけですから、初めはそういう主張でございましたが、それはけりました。それから私のほうの専管水域並みにするという主張に応じてきましたけれども、入り組んだ公海部分につきましては、できるだけ広く向こうでは取ろうということでございまするから、私どもは、できるだけ狭く、そして紛争が起きないような限度において狭くとろうということで、両方ともそこで主張のし合う場があったわけでございます。私はできるだけ狭くしようということをつとめたわけでございますが、最初の私の考えたようにはまいりませんでしたけれども、そういうような態度交渉に進んだわけでございます。
  152. 中村重光

    中村(重)委員 専管水域、それから共同規制水域、こうなりますね。それがいままでの李ラインとこれらの間に若干水域が残るわけですね。そこを資源保護水域、こういう形で了解に達しておりますか。
  153. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどから申し上げましたように、李ラインというものは私どもは認めていませんから、李ラインと共同水域との間なんということは全然問題外でございます。でございますが、共同水域という線はお互いに今度の約束で引きますから、その外につきましては線を引いて調査区域を設けるなんということはいたしません。線を引いて調査区域を設けるなんという考え方は持っておりません。また、そういう約束はありません。共同水域内におきましても、共同水域外におきましても、資源の調査はしなくちゃならぬ、こういう話はしています。しかし、そのために線を引いてどの地域を共同調査区域にするか、こういうようなことには全然話し合いはありません。
  154. 中村重光

    中村(重)委員 あなたは、李ラインというものは認めていなかったのだ、だからして線を引いて資源保護水域というものを設けるようなことはしないのだ、こう言われる。ところが、韓国側はそうは言っていない。韓国側は、その李ラインとの間は資源保護水域としてこれを確保するのだ、こういうことを韓国国民に向かって発表しておるではありませんか。ただ単に根拠なくして指摘をしたり質問をしたりしているのではありません。私の質問のとおり、多くの漁民がここに疑問を感じている。だからして質問をしておるのです。  さらにまた、こういうことも話し合いをしておるのでありましょう。李ラインについては、日本に対する限り国防ラインとして存続させる、ただしその他の国に対しては水産資源ラインとしても存続させる、国防ラインは言うまでもないわけです。こういう話し合いをしておることは事実でありましょう。都合が悪いからといって、あなたが色をなして、李ラインというものは初めから不当不法であるから認めてないのだ、そういうことを指摘するのはおかしいじゃないかという態度そのこと自体が、あなたには公式論だと私は言うのですよ。現実に、この李ラインのために、日本の漁船が拿捕されて、漁民は不当に抑留されてきた。この事実をあなたは否定することはできないではありませんか。その点どうですか。
  155. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 おことばを返すようですが、あなたのほうが形式的だと思います。私は全然そういう話し合いをしていませんし、共同水域外におきまして、向こうが、国防ラインであろうが何であろうが、そういう線などを残しておいて、そこの間を調査をしようなどという、そういう話は全然いたしません。共同水域の線だけを引いて、その線の外あるいはうちもこれは共同調査をしよう、こういうことだけでございます。それから、国防ラインにやるとか、やらないとか、そんなことを、私の話のあれじゃありませんが、私は、そういう面でも、私のほうでは認めることはできません。それから、話し合いは全然ございませんから、その点は御了承願います。
  156. 中村重光

    中村(重)委員 この共同規制水域の外ですね、あなたは線は引かないのだとおっしゃっている。しかし、ここに資源保護水域を設ける、こういう話し合いになっていることは事実でしょう。その点どうです。
  157. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 共同水域の外に資源保護水域を設けるなんて話し合いになっていません。共同水域内におきましても、共同水域外におきましても、資源の調査をいたしましょう、こういうことでございます。
  158. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、資源保護水域の、韓国の資源保護法の関係とか、そういったような点に対する問題が残りはしませんか。
  159. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいまの御質問の点についてお答えを申し上げます。  科学的な調査をいたしまして資源保護のために必要な措置をとりますことは両国の関係漁民の将来のためにも必要なことでございますが、いまお話のような資源保護水域などというものを設定をした事実はないというのは農林大臣お答えをしたとおりでございます。ただ、広い海面でございますから、今後調査をいたします場合に、一緒に全部やるわけにはまいりませんから、両方の科学者が相寄って必要な海域から調査をしていくというようなことになろうかと思いますけれども協定上あるいは従前の合意上、そういう資源保護水域を設定するというようなことはないわけでございまして、公海上における魚族の資源保存のための調査を必要な部分から実施をしていくという考え方でございます。
  160. 中村重光

    中村(重)委員 それから、昨日も楢崎委員質問に対して大臣お答えになった点ですが、これは非常に私は重大に考えておりますのは、拿捕された漁船、それから抑留された漁民ですね。これに対する損害の問題、これは非常にあいまいであったわけですね。この点は池田内閣の当時からも相当議論されてきた問題なんです。ところが、いままで水産庁が一貫してとってきたことは、これは拿捕されるごとに一件ごとに損害を請求するということでもって韓国側に通告をしておるはずです。したがって、当然これは請求をしなければならないということになるわけですね。いままでの話し合いの中でこの点があいまいであったはずはありません。また、あいまいにすべきものではないわけです。これをあいまいにして妥結をするということは適当ではないと私は思う。したがって、昨日の楢崎委員質問に対する大臣のあのようなあいまいな答弁というものは大きな問題である、このように私は考えるので、その点もっと明確にしてもらいたいと思うのです。
  161. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は昨日もあいまいな答弁をしたのではございませんが、あいまいと理解されては私も残念でございますので、なおさらに申し上げます。  拿捕された船の損害その他につきましては、そのつど外交ルートを通じまして損害の賠償要求をいたしておるのでございます。今度の交渉におきましても、私のほうではこの要求はいたしておりました。しかし、御承知のように、日韓問題は一括解決ということでございます。そしてまた、この賠償の問題は大きな問題でもございますので、漁業交渉の場から外交ルートのほうに移しまして、そして首席会談の席上で七十二億円にのぼる損害の要求を強硬にいたしておるわけでございます。でございますので、この問題は全部の一括解決までにはこの問題のけりをつけなければならぬ性質のものでございます。一括解決をたてまえとしてやっておりますので、その場においてこれは解決を見なくちゃならぬし、見るべきものだ、こういうように思っております。
  162. 中村重光

    中村(重)委員 その問題を一括解決の場にゆだねる、そのときこれをやるのだ、請求をしておったから韓国が賠償の支払いをするのはあたりまえなんだから、こういう考え方でもって大臣はごまかそうとしておると私は思う。韓国は、この七十二億円の損害賠償なんというものは払う必要はないのだといったような非常に強硬な方針をとっておるではありませんか。一括解決の際にこの問題が簡単に解決するというような判断の上に大臣は立っていないと私は思う。いまの大臣ことばを非常に勘ぐるようでありますけれども、これはやっかいなんだから、この問題を漁業会談の中で解決しようとするとなかなか仮調印という形にいかない。そこで、これを解決しないでおいて、一括解決の中においてもこれを解決しないで、そのまま適当にごまかされるということが出てくる危険性があると私は思う。この点はもっと明確にしてもらわなければならぬと思う。  それから、一括解決ということは、請求権の問題であるとか法的地位の問題であるとか、こういうような問題は日本にとってはプラスでない、これを切り離していったのでは食い逃げされるおそれがある、したがってこれは漁業問題というものと一緒にして解決をしなければ日本にとっては不利であるという考え方の上に立っていままで話を進められてきたはずなんです。この漁業問題がまた政府の泣きどころでもあったわけです。そうでしょう。それならば、今日まで日本の漁船が拿捕され、漁民は不当に抑留されて、日本の漁民は非常に苦しんできておるのです。この漁業会談の場において何よりも先にこの問題を解決する、それがなければ仮調印なんてしないという態度を堅持するということは、私は当然ではないかと思う。しかも、あなたが良心的な大臣といわれるなら、当然このことを無視して仮調印を行なうべきではないと私は思う。その点どうなんです。
  163. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 もともと、この漁業交渉でもその他でも、本筋はこれは外交関係できめるべきものであります。しかし、漁民の問題でもあり漁業の問題でもございますので、私はこの漁業の問題に関しましてタッチしたわけでございます。そこで、賠償の問題は、従来のいきさつから言いましても、私のほうでその事実を調べ、そうして外交ルートを通じて外務省から賠償の請求をして、ずっと続けて留保してきておるものでございます。そういうことでございますので、御承知のように非常に重大な問題でもございます。でございますので、本筋の外務当局におきましてこれを解決しなくちゃならぬ大問題である、こういう立場から、外務省のほうでこれをやるということで、しかも首席の会談の中でこれを大きく取り上げて解決をしていかなくちゃならぬ、こういうふうに相なった次第でございます。そういうような事情を御了承願いたいと思います。
  164. 中村重光

    中村(重)委員 それじゃ、あなたは、あなたの話し合いの中ではこの問題に触れなかったのですか。
  165. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私の話し合いに、首席代表もおりましたし、向こうの首席代表もおりました。そうして私のほうから請求をいたしました。請求をいたしたときに、この問題は首席会談のほうで取り扱おう、こういう話になりましたので、首席会談のほうでこれを取り扱うように回したといいますか、そういうことに相なったいきさつでございます。
  166. 中村重光

    中村(重)委員 基本問題、それから、これはあとからくっつけて出てきたわけですけれども、貿易の問題、法的地位の問題、漁業の問題、すべて具体的な問題、いわゆる日韓会談の中に取り上げられた問題というものを仮調印をしていくのですね。この損害賠償の問題というものは漁業問題から切り離すことのできない重大な問題なんですよ。そういう具体的な問題を解決して、そうして最後に一括解決という形で持っていくわけでしょう。それにもかかわらず、その具体的な問題を漁業会談から切り離して、一括解決の場においてこれを解決するのだという考え方は、私どもはどうしても納得できない。それは、韓国が、賠償支払いをするから、漁業会談の中においては妥結という形の中からこれを切り離して、一括解決の際にこれを解決いたしましょう、こう言っておるなら、また考えようもあります。しかし、そうではないでしょう。非常にやっかいな問題として、あなたも頭を痛めているのでしょう。韓国はこの点に対してはどう言っておるのです。
  167. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 向こうの首席も、これは首席会談に移して話しましょう、こういうことになっておるわけでございます。
  168. 中村重光

    中村(重)委員 池田内閣のときからこの問題では非常に難航しておった。そのことを私どもは指摘をし質問をし、答弁を受けておりますから、私どもは非常に重大な問題として頭に置いているのですよ。だからあなたにお尋ねをしておるのです。しかも、池田総理は、この問題に対しては、いまあなたが言われるようなそういう考え方じゃなかったのです。これはむしろ放棄するというような考え方があった。大平外務大臣はそうじゃなかった。当然これは賠償を請求をするのだ、こう言った。だから、私は、外務委員会でこの問題を取り上げた際、政府の見解は不統一じゃないか、当然見解を統一しなさいといって、当時の大平外務大臣に統一見解を出すように要求したことを記憶しております。だから、この問題は簡単な問題じゃないのです。もし日本政府がこれを放棄した場合、それでは日本の漁民に対して政府はかわって損害賠償をするのか、現在の国家賠償法の中においてはたしてそれが可能かどうかという非常に重大な問題が私はあるわけです。だから、いまあなたが答弁されるようなことでは納得できませんし、引き下がるわけにはまいりません。当然放棄するといったようなことについてもいろいろお考えになったでしょう。放棄した場合に国家賠償法というものがはたして適用されるかどうか、それらの問題に対しての検討も加えられたでありましょう。具体的にいままでの経緯についてお答えを願いたい。
  169. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この問題は首席代表のところで外務大臣と向こうと政治折衝をすることに相なっております。何もいま放棄するとか放棄しないとか、そういうことを私が申し上げる立場ではございません。私は、放棄しないで、これを外務当局の会談に移して、折衝に移しておるわけでございます。
  170. 中村重光

    中村(重)委員 だから、韓国はどう言っておるのですか。
  171. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私はそれは承知しておりません。
  172. 中村重光

    中村(重)委員 大臣、そういう答弁で納得させようという考え方じゃ無理ですよ。
  173. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 韓国側から聞いたことは、これは首席会談の場に移そうという向こうの首席の意見でございますから、そこまでは私は話はつきましたけれども、その後向こうが払うのか払わないのかというようなことは、これはいまからの折衝の問題でございます。向こうはどういうつもりだと私に聞いても、それを答えるのは無理でございましょう。
  174. 中村重光

    中村(重)委員 首席会談の中へ移そうと向こうが言ったにしても、あなたは農林大臣ですよ、責任大臣ですよ、当然具体的な問題をあなたのほうで煮詰めていくことがあたりまえじゃありませんか。外交問題だ外交問題だというならば、何でもそれじゃ外務省でやればいい。それぞれの所管でやる必要があるものをやっておるのではありませんか。だから、これは首席会談の中へ移すんだと向こうが言ったから、そのまま、この漁民にとって実に重大な問題を、ああそうでございますかといってあなたはそれに同意をするというのはおかしいじゃありませんか。
  175. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本の外務省も日本の外務省でございます。日本の外務省で扱う筋のものを日本の外務省で政治折衝でやるということに対して、何も私はそれを拒否する理由もありません、そこの場できめていくということにつきまして。それから、私はその請求を放棄しているなんという事実は全然ございません。
  176. 中村重光

    中村(重)委員 外国との関係を外交上の問題で外務省がやるというならば、何でもやればいいわけです。そうはいかないでしょう。そうはいかないから各省でやっておるのではありませんか。しかも、この賠償を要求するんだというので、請求権を確保しているのは農林省ではありませんか。だからして、もっと具体的にこの問題に対しては話し合いをしておるはずです。しかも、自民党政府の中において、いいですか、池田内閣のときに総理大臣は、私が先ほど申し上げましたように、この請求は無理であるといったような意味答弁がなされたのです。当時の大平外務大臣考え方が違ったんですよ。そういう事実の上に立ってあなたにいろいろ質問をしておるんですよ。だから、これ以上あなたにお尋ねしてもお答えにならなければ、これはあなたに対する質問の必要がないということで私はやめるのではありません、あらためてまたお尋ねをいたしますが、これは外務大臣にもお尋ねをすることにいたします。いたしますが、どうも、韓国側が首席会談でこれをやるんだと言った、だからひとつそこに移したというだけであって、自分は放棄するというようなことを何も言っておるわけじゃない、こう言われる。しかし、相当この問題に対しては研究されただろうと私は思うのです。漁民も非常に不安を持っているのですよ。だから、放棄するということを言っていないにしても、向こうが簡単にこれに応じないというような場合もあり得ることなんだから、そういう場合にはその漁民の損害をどうして賠償するのか、こういうことについてもいろいろと日本政府としては検討されなければならぬと私は思う。もしこれを放棄するという場合において、日本の漁民に対する損害というものは国が賠償するのか、国がこれを補償するのかどうか、現在の法律においてそれができ得るのかどうか、その点に対しての考え方をひとつ明確に聞かしていただきたい。
  177. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 賠償請求をいま折衝中でございます。それが、もう放棄したようなことにして、放棄したらどうしたということじゃ、向こうではなお出さなくなっちゃうと思います。そういう意味におきましても、折衝中でありますから、その折衝の結果によって、私は、日本の漁民に対してはどういうふうにするかということは、そのときにきめます。
  178. 中村重光

    中村(重)委員 私は放棄をしろということを言っているのではないのですよ。当然請求すべしという大前提に立って私は質問した。ところが、前内閣のときにおいてそういう見解の不統一もあったので、だから現在の国家賠償法の中においての関係はどうなるのかということを私は尋ねておるのであって、何も私の質問が、向こうが賠償金を支払うということに対して、それをチェックするということにはなりませんよ。前後の関係というものをあなたもお考えになるならば、私が質問していることが不利か有利かということについては判断がつくと私は思う。しかし、あらためてまたこの点に対しては質問いたします。  それから、漁業協力資金ですが、昨日、民間協力資金の一億ドル以上、この中に漁業協力資金は入っているんだ、こういう御答弁があったわけですが、その点間違いありませんか。
  179. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 分類すればその中に入っているということは、申し上げたとおりでございます。
  180. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、一億ドル以上、これは一億ドル、以上というのはプラスアルファだと私は思う。ところが、漁業協力資金だけが九千万ドルで、一億ドルという大台からすると一千万ドルしか残っていない、こういうことになるわけです。通産省の関係で経済協力というのでいろいろ延べ払いの輸出等をやっているわけですね。それは相当の額に上ると思うのであります。これらの点に対する検討が当然なされたと思うのでありますが、この点いかがでございますか。
  181. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 一億ドル以上ということで、別に限定はございません。でございまするから、この一億ドルの中に入る場合もありまするし、一億ドルプラスアルファと、両方にまたがった中に入ることもあるだろうと思います。そういう意味におきまして、民間の協力資金でございますので、相当金が出ればなお向こうにはけっこうでありましょうが、その中に入るわけでございますので、通産省がどれぐらいとかなんとか政治的に、政府資金とは違いますので、その検討はいたしません。一億ドル以上プラスアルファの中、こういうことだけでございます。
  182. 中村重光

    中村(重)委員 しかし、政府資金でないとあなたは言われるのだけれども、輸銀資金を使うのでしょう。
  183. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 輸銀資金を使うということになる、こういうふうに思っています。
  184. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、純粋の民間べース、いわゆる民間資金ということにならないですよ。それだけに、あなたが言われるように、昨日も楢崎委員質問に対して答えておられるが、これは民間ベースでやる、民間資金だから、したがって、これが何億ドルになるか、何も日本政府には直接関係がないんだというように受け取られるような答弁をしておられる。私はそうじゃないと思う。当然輸銀資金を使うということになってくると、一億ドル以上、一億ドルという大台があるのだから、これから九千万ドルを使うということになってくると、それでは経済協力資金というものはどうなるのですか。全くこれは青天井ということになるのですね。しかし、大平・金メモで一億ドル以上ということを言った。その以上というものは幾らになるのか。以上というのは単なるプラスアルファではない、これは青天井であるから何億ドルになるのかわからないのだ、こういうようであるのかどうか。当時、大平・金メモを取りかわした、いわゆる合意した際は、少なくとも、いま大臣答弁されたように、何億ドルか、青天井でこれはわからないのだということではなかったのじゃありませんか。一応一億ドル、そこで若干のプラスアルファというものがあるというように考えておったのじゃないですか。どうですか。
  185. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 お答え申し上げます。経済協力あるいは輸出入銀行の資金の問題が出ましたので、大蔵省のほうからお答え申し上げたいと思います。  先生も先刻御承知のように、大平・金了解に関する内容は、去る昭和三十八年一月三十日に外務省より国会に提出資料として予算委員会に出されておりますが、その内容によりますと、(イ)、(ロ)、(ハ)となっておりまして、いわゆる(ハ)項でございます。(ハ)項で、「以上のほか」、以上というのは、最初無償三億、有償二億というのが、まいりまして、(ハ)項において、「以上のほか相当多額の通常の民間の信用供与が期待される。」、かようにございます。この「相当多額の」という点をめぐりまして、その後韓国側は、一億ドル以上というようなことを言いたい、それに対してこれは相当期待できるかという話がございまして、大平外務大臣も、これは両国の通常の民間貿易、しかも延べ払い輸出ということなので、将来を見通せば、これはそのくらいのものは期待できましょう、こういうことを申したのだということを、これはかねがね国会において繰り返し繰り返し答弁をいたしております。したがいまして、そこは要するに期待の問題である。つまり、どのくらい期待できるだろうか、一億ドル以上はどうだろうかというような話があって、まあそのくらいいくでしょうということを大平大臣が答えたということでございまして、特別にその一億ドルプラス幾らという明確な金額を定めて外務大臣が申しておるものでもございません。要するに、相当一億ドル以上期待できましょうと、あくまで期待でございます。
  186. 中村重光

    中村(重)委員 まあ一億ドル以上、こう言ったので、その上を何億ドルにするということを言っていない、その点は私もそのとおり理解して質問をしているのです。ですけれども、一億ドル以上ということになってくると——何も自分のふところから金を出すわけじゃないのです。やはりこれは国民の貴重な税金を使っていくのですよ。だからして、大平・金メモにおいて、無償三億ドルと有償二億ドルで五億ドル、これに一億ドル、六億ドルでこれは一応解決したのだ、その一億ドルはいわゆる民間協力資金である、こういうことで、この一億ドルというのは、国民がこれを聞くと、一億ドル以上と言っても、一億ドルと理解するのです。国民に対して、その以上を期待するのだと言ったから、これは期待なんだから何億ドルになるかわからないということで取り組むことは、私は正しくないと思う。やはり、漁業協力資金に対してここで九千万ドル使うのだとすると、今度は経済協力資金というものは、この一億ドル以上という、この一億ドルというものにとらわれてこなければならない。そういう総合判断の上に立ってこの資金の問題を考えていくということが当然ではないか、こう私は思うからお尋ねをしているわけです。文字の解釈でもっていろいろ議論しているのではない。
  187. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたように、一億ドル以上ということ、これはつまり期待である。しかも、(イ)項、(ロ)項をお読みになりますと、(イ)項の無償三億ドル、これはつまり供与期間というものは十年間にわたって供与をすると書いてございます。また、その条件は無償であるとはっきりうたっております。それから、(ロ)項をごらんになりますと、二億ドル有償援助、これはやはり十年間にわたって供与をする、しかも金利三分五厘ということで出す、こう言っておるわけでございます。なおまた、償還期限も据え置き七年を含む二十年程度。つまり、金額、金利のその他の条件、それから、いつからいつまでの間、つまりどの期間に提供するかということもはっきりうたっておるわけでございます。ところが、その(ハ)項では、そういうことは一切うたってないわけでございまして、つまり、何年間に一億ドルとか、金利はどうだということは一切ないわけでございます。これはなぜないかといえば、そもそも民間同士のコマーシャルベースによる信用供与でございます。したがいまして、韓国の輸入業者と日本の輸出業者がお互いに商談をいたしまして、その商談が成立いたしましたときにそれじゃ金利はひとつ幾らでいこうか、期限はどうしようということをあくまでコマーシャルベースで業者の間で契約をしていく。そういうものが積もり積もっていった場合に一体どのくらい期待できるでしょうかということを向こうが申して、それに対して大平大臣は、それは相当期待できましょう、こう申したわけでございます。そこは(イ)(ロ)とは全然性格が違うわけでございますから……。
  188. 中村重光

    中村(重)委員 そういうことはわかっているんですよ。ところが、いまあなたが答弁されたように、民間のコマーシャルベースだ、それは民間だから、適当に向こうと話し合って、金利は幾らにするということもきめるのだ、それがこの一億ドル以上である、こうあなたは言われる。ところが、現に政府折衝した漁業協力資金にこの太平メモにいう一億ドル以上を使ったじゃありませんか。使うことに話がついておるじゃありませんが。この金利の問題についても、いわゆる五・七%である、零細漁民に対してはそれ以下である、こう言っておる。単に民間がコマーシャルベースでこの資金を使っていくということにならぬじゃありませんか。政府話し合いを現実にやっておるじゃありませんか。こういう事実を無視して、こう協定書には書いておるのだからと言う。……文字の解釈の議論ならそれでいいかもしれない。しかし、現実の問題としてこういうことをやっているのだから、そのことを私は指摘しておるわけですよ。
  189. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 お答え申し上げます。  ただいま漁業協力資金のお尋ねがございましたので、それについてお答え申し上げますが、漁業協力の問題につきましては、先ほど赤城大臣からもお話がございましたように、いわゆる大平・金了解の(ハ)項に当たる、すなわち民間商業ベースによる民間供与のものとして考えられておるわけでございます。したがいまして、この金額がかりに九千万ドルという額が表に出ているわけでございますが、これとても政府間でいわゆる金額を協定するという性質のものではございません。つまり、九千万ドルくらいのものはできるだろうという期待を持っておるわけでありまして、しこうして、そのいわゆる供与期間とかなんとかいうものは何もございません。先方も言っておりません。したがって、何年間というものはございません。同時に、金利につきましても、ただいま何か金利も協定したのじゃないかというお話がございましたが、そういうことは一切ございません。それで、いわゆる金額、金利、その他の条件を政府間で協定するとか取りきめるという性質のものではないわけでございます。これがいわゆる(ハ)項の特色でございまして、それについては何ら協定はいたしておりません。
  190. 中村重光

    中村(重)委員 お役人間の形式論ならばそれでいいかもしれない。形式的にはそういう形で処理していくのでしょう。ところが、私どもは、事実の上に立って、実際がどう行なわれるのか、これが国民に対してどういう影響を与えてくるのかということを問題にして質問しておるのですよ。  そこで、きのう農林大臣が楢崎委員質問に対して、この資金は半分以上くらいは零細漁民のために使うだろう、こういうお答えがあったわけです。しかもそれは、新聞にも伝えられておるように、零細漁民に対しては金利は五・七%から相当下げるだろう、新聞にこれまた三・五%程度だということを伝えられている。これは純粋の民間の間の商談という形において行なわれておるのではない。日本韓国政府の間において、こうした金額の問題であるとかあるいは金利の問題であるとかいうものが話し合いがされておる。この事実の上に立って質問をしておるのですから、そういう事実の上に立ってお答えをしてもらわなければならない。だからこれと関連をしてまいりますのは、向こうの零細漁民に対して長期の低利の資金を供与するということになると、これが日本の零細漁民に対してどのような影響を及ぼすか、このことはきわめて重大でありますし、日本の水産業者、なかんずく零細漁民というものが強い関心をもってこれを見守っておるということは事実であります。だから、そういうことに対してお尋ねをしておるのでありますから、的確なお答えをしていただきたい。そういう形式的な答弁を実は求めておるわけではないわけであります。
  191. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 昨日赤城農林大臣からお答えを申しましたことも、この九千万ドルは民間信用供与である、したがって、政府自身が責任を負うという性質のものではない、ただ、前例としてその他の例を見れば五分七厘五毛程度のものがあったということを例として申し上げたわけでございます。したがいまして、先ほど来佐竹理財局長からお答えを申し上げておりますとおり、別にこれを協定文の中へ、あるいは今度仮調印をいたします文書の中へそういうことを書き込むというようなことは考えておりません。
  192. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 先ほどのお話でございますが、これは実際にどうなるのかというお尋ねでございます。これは実際には個々の、つまり向こうの輸入業者とこちらの輸出業者の間で商談を進める。その場合に、その金利はそれぞれその取引者当事者間において定まってくるわけであります。それに対して、先ほど御指摘の零細漁民の問題、これはなかなか負担能力もないということでございましょう。そういうものについてどうするかというお尋ねでございますが、これとても、政府が先ほど先生御指摘のような長期低利の資金を供与するというものでは全然ないわけでございます。そこを誤解いただきませんようにお願いしたいのでございますが、長期低利の資金として供与するものは(ロ)項の二億ドルしかございません。これは大平大臣が繰り返し国会で答弁をしておられまして、よく御承知と思います。要するに、あくまで民間資金。したがって、そういう低利のものを約束しておるものではない。そういう低利のもの、なるべく有利なものが、そういう契約が成立することを期待するという意味でございます。
  193. 中村重光

    中村(重)委員 どうもあなた方の答弁を聞いていると形式論ばかりなんだ。長期といっても何年が長期か。いいですか、二億ドル有償供与が十年だ。これが長期だ。輸銀ベースのその期間というものは短期であるという考え方の上にあなたは立っているのですか。そうじゃないでしょう。輸銀ベースというものは長期としてこれを使うのですよ。銀行に行ってごらんなさい。七年も八年も、そういう長い期間で金は貸しません。だからして、それだけ新聞に伝えておるように、三・五%の金利でもって韓国の零細漁民に貸し付けるということになってくると、これは日本の漁民に与える影響というものはきわめて大きいということは言うまでもないのです。  それから、民間関係でやるんだと言っているけれども、それでは政府は話のしっぱなしか、それをしたことは何も関係はないのかと言うと、それを受けて、形式的には民間の間にその話し合いをまとめるのだと言う。だから、実際は政府政府との間に話をすることになるのではありませんか。それをもって私どもが議論をする、問題点として指摘をするということは当然で、だからして、そういう形式的な答弁でなくて、実際上どうなるのかということで、誠意を持ってお答えをしていただかなければならぬわけです。
  194. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 中村君に申し上げます。大蔵大臣がお見えになりましたから、農林大臣に対する質問はこの辺でお打ち切りを願います。
  195. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 お答え申し上げます。  私は決して形式論を申しておるのではございませんで、全く実際的なことを申しておるわけでございます。実質的なことを申しておるのでございまして、新聞紙上等で三分五厘の金利という報道があるとおっしゃいましたが、私はそういう新聞記事は実ははっきり読んでおりませんけれども、そういう事実は全くございません。  そこで、申し上げたいわけでございますけれども、輸出入銀行を使います問題を先ほど先生御指摘になりました。これは、いわゆる通常の民間商業ベースの延べ払い輸出をいたしますときに、先生御承知のように、市中銀行の金融だけではなかなか金利が高い、そこで、国際競争の問題がございますので、輸出入銀行の資金と抱き合わせで融資をいたしておるのが実情でございます。これは、つまり、外国に船を輸出する、その他プラントを輸出する場合に、通常の民間ベースとして使われておるわけございまして、これの期限は、先生も御指摘のように、三年、五年、七年というものでございます。私の申しておりますのは、そういう通常民間ベースの契約を行ないます場合に、輸出入銀行が融資をする、今回の漁業協力はそれと同じものとしてしか考えておらない、こういうことで、それ以上の特別なものだということは全然考えられておらないわけでございます。その点はどうかひとつ誤解いただきませんようにお願いを申し上げたいと思います。
  196. 中村重光

    中村(重)委員 私は、経済協力、それから貿易会談の問題、日本商社の問題等に対して質問をする予定になっておりますが、質問を留保いたしまして、終わります。
  197. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 申し上げます。中村君の農林大臣に対する質疑はこれにて一応打ち切りといたし、大蔵大臣に対する質疑を続行いたします。農林大臣、退席してけっこうでございます。穗積七郎君。
  198. 穗積七郎

    穗積委員 大蔵大臣御苦労さまですが、あなたは、ちょっと聞いておきますが、時間はどのくらいありますか。
  199. 田中角榮

    ○田中国務大臣 四十分というお約束です。
  200. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、日韓会談の中でいわゆる請求権に関する部分について、これは外務大臣、大蔵大臣、両大臣が同時にいらっしゃってお尋ねいたしますと裏表よく事理を明らかにしていただけるわけでありますけれども、おもに大蔵大臣に関する質問だけ、しかも、時間がありませんから、整理いたしまして、そのうち数点だけお尋ねいたしたい。  あなたは直接日韓会談折衝には当たっておられませんけれども、いわゆる最近のスタートラインというものは金・大平メモ、これによってこの問題が解決されたと称しておる。それは基本線でありまして、いまもこの質疑の中に出ておったんですが、そこで、それ以後のことについてお尋ねいたします。大蔵省といたしましても、この金額並びに法源、それが妥結いたしました場合の北との関係、それから南北を含みます人民との関係、これらについては十分御検討の上で、これから最終的な承諾を与えるか、賛成するか反対するかの態度をきめられると思う。したがって、額の問題だけではなくて、すなわち、今後その決定によって他に与える影響、そういう点も十分お考えの上でこれに対する大蔵省の態度をきめられると思う。  私は順を追うてお尋ねいたしますが、まず第一にお尋ねいたしますけれども、いわゆる請求権なるもの、これに伴う処置が経済協力という金・大平メモに化けて変わったわけです。これはなぜかというと、実は国会において特に日本国民にどういう性質のものを幾ら韓国に払うということを説明することができないから、大づかみに、初めは経済援助と言ったのを、韓国の要求によって協力という名前に変えた。ところで、お尋ねいたしますが、本来これを払うべき義務上の源、すなわち、向こうから言えば請求権の権利の源であります。これは一体、人民が持っておるものでありましょうか、政府が持っておるものでありましょうか、あるいはまた政府と人民と両方が持っておるものでございましょうか、その点を第一にお尋ねいたしておきたいと思います。
  201. 田中角榮

    ○田中国務大臣 韓国国民の私人としての債権であると思いますが、しかし、その当時の債権というものは日本国民としてのものでございます。その後日本国から分離をして韓国が新しく誕生したわけでございますので、国民の財産、また国民日本政府に対する給与の未払いとか、そういうものに対しては、韓国政府日本政府との間に交渉がまとまった場合は、韓国国民韓国政府の間で話が残るわけでございまして、日本政府及び韓国政府合意が行なわれた場合には、私がいま申し上げたように、向こうの国民から日本政府に対する要求というものは消滅をするという考えでございます。
  202. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、この対日請求権の権利の源は、一切韓国政府が総括をして握っておる、韓国政府にのみ帰属するものである、このような御解釈のようでございますが、はたしてさようでございますか。いささかそれでは、国際通念から見まして、日本の大蔵大臣あるいは日本の佐藤政府はそれで納得し、そういう理解をされましても、これは外へは通用しないお考えであろうと私は思いますので、その点を念のためもう一度確かめておきたいと思います。
  203. 田中角榮

    ○田中国務大臣 請求している内容には、韓国政府のものもあり、韓国人のものもあるわけでございますが、これは一つの国家が分離をしたという特異な状態によって起こった現象であります。でありますから、現在の段階においては国民各自が日本政府に対して請求の権利を持っておるということでありますが、これは非常に確認等むずかしい問題でもございますし、両者の間にも見解の相違がございます。そういう意味で、日韓交渉がまとまって両国政府間に合意が行なわれた場合には、韓国人の持つ日本政府に対する請求権というものに対しては、韓国政府韓国国民の間に解決の話が進めらるべき問題であって、両国政府間において正式な交渉が成り立ったときに、日本政府がその後韓国国民の持つ対日請求権というものに対して責任を負わないということだと思います。
  204. 穗積七郎

    穗積委員 それはどういう法理によって、だれとだれがどこで話をされてそういうことをおきめになりましたか。
  205. 田中角榮

    ○田中国務大臣 それは国際通念上当然のことだと思います。
  206. 穗積七郎

    穗積委員 国際通念上は政府政府と言われる。しかも、韓国の場合におきましては、クーデター政権がだんだんとできまして、法律的フィクションとして、この政権は継続されたものである、サクシードされたものであるということをあえてあとのクーデター政権が強弁をいたしまして、そして李承晩当時からの国家の持っておる権限あるいは財産等はすべて今日の朴政権に継承されておるものであるということを言っておる。それが正しくあるかどうかはわれわれ大いに疑問があります。したがって、今日の朴政権の国際法上のシチュエーションといいますか、合法的な地位につきましては、これはまた別途に外務大臣あるいは総理にお尋ねいたしますが、いまの議論といたしましては、終戦直後から韓国政府に所属いたしておりました財産並びに請求権——債権ですね、こういうものがいまの政府に継承されて、対外的な関係においては、日本政府との間で話し合いをして、そこで合意に達したものはそれによって一切包括される。ところが、個人財産、個人債権、あるいはまた人民個人の持っております請求権、これは、いまのお話で、日本側としてはそれが有利でありますから、そのように解釈して、これで妥結したものだ、すなわち、日本政府がかつて請求権問題について交渉の要綱として示されたように、この妥結を見るならば、いわゆる韓国政府並びに韓国人民の対日請求権というものは完全かつ最終的に妥結するものであると解釈する、こういう方針を決定された。その方針がはたして一体いつどこで了承されたのか。その了承を無視して、韓国側の人民が自分自身固有に持っておる対日請求権というものを行使しようということに対して責任をのがれる何らの理由もこの話し合いによってできてはいない、このように解釈するのが国際法上正当かつ公正な態度であると私は考えます。したがって、ただいまのせっかくの御答弁でありますけれども、あなたは日本からなるべく少なく韓国並びに韓国人民に金を払うようにしたいという立場におられる大蔵大臣ですから、今度の交渉が妥結したならば、それによって政府並びに人民一切の対日債権は解決するものである、こういう態度をおとりになることについては、あなたのお気持ちはわからぬでもない。しかし、それを独断されまして、これ以上のものは出さないのだ、したがってそれ以外のものにも出さない。すなわち、これから問題になりますのは、特に北側にあります朝鮮民主主義人民共和国政府並びに人民に対するわれわれ日本国並びに日本政府の責任の問題、債務の問題でございますが、この義務の問題を討議いたしますために、このようなものでは、私は、国際法上、これをもってどの国にも当てはまる、どの人にも当てはまる一つの正しい法理の解釈であるとすること、あるいはそういう態度をもって臨むことは、許さるべからざる問題が将来生ずることは火を見るより明らかであると考えるわけです。そういう意味で、あなたの御主観はわかりますけれども、あなたの主観は必ずしも法律的にこれをジャスティファイすることはできない。したがって、対外的にもこれは証明することはできない。私はそのように思う。日本国民である私も、日本政府はそういう解釈をとられても、その解釈は誤りであると永久に指摘せざるを得ないのでございます。まして、請求権を持っております韓国の人民一人一人がそのようなものに服する義務は法律的に国際法上何らございません。したがって、それに対する説明をひとつもっと明快にやってもらいたい。
  207. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私は、私がいま申し上げておることが国際法上十分通用する、こういう考えでございます。もう一つは、私は日本国務大臣でございますから、日本人民の利益を代表するということでありまして、国民の利益を代表するためには最善の努力をいたしておるわけであります。しかし、それが国際法を無視するというようなことになりますとたいへんでありますが、私が申し上げたいままでの理論は国際法上も十分通用する、こういう考えでございます。あなたがいま申された中に二つございます。一つは、韓国の政権下にある南鮮の国民——人民と言われておりますが、韓国国民韓国政府の問題、もう一つは、北鮮の地域内におる北鮮国民という問題、この二つに分けておりますが、私は、韓国の施政下における国民政府の関係は、日韓両国政府において合意成立すれば、当然個人の日本に対する請求権も消滅するという考えは正しいと思います。このあとの問題は、韓国国民韓国政府の間にゆだねらるべき問題だというふうに解釈しております。北鮮に対しましては、これは現在白紙でございまして、政府もまだこれに対する見解に対しては御答弁をしておらぬわけであります。
  208. 穗積七郎

    穗積委員 私は、その国際条約上の御解釈は誤りである、かように考えます。しかし、その問題をいまここであなたと私の間で論争をしておるいとまもありませんし、それからまた、場所といたしましても適当ではございませんから、あらためて外務委員会におきまして条約論争は別個にやりたいと思う。決してあなたの説明を認めたわけではありませんから、明確にいたしておきたい。  そこで、お尋ねいたしますが、請求権に対するわれわれの日本側からの支払い、それは一体だれに払うものでございましょうか。手続上はかの国の政府を通じまして日本政府から払うわけでございましょう。しかしながら、最終的にこれを払う相手、すなわち、われわれが国を通じて相手に払う義務、相手の受け取る権利、相手から見れば権利ですが、その権利は韓国政府にのみ所属するものではございません。したがって、どういう見当によって今日は五億ドルというのが計算されておるか、これはまあ後の問題といたしまして、その五億ドルの支払いが最終的に帰属すべきもの、すなわち、その請求権を持っておる、所属しておるもの、これは一体どこでございましょうか。
  209. 田中角榮

    ○田中国務大臣 請求権の帰属ということに言及されておりますが、今度の大平・金了解というものは、そういう解決の方法をとっておりません。非常に新しい方法をとっておるわけです。有償・無償五億ドルを供与することによって、韓国人の持つ、また韓国政府の持つ対日請求権は随伴的なものとして消滅する、こういう非常に新しい、現状に適合する方針がとられましたので、この請求権の帰属というような問題に対しては、いま考える必要はないと思います。この問題は、もちろん、先ほど申し上げたように、韓国政府韓国国民との間に起こる問題でありますので、韓国政府国民の間に十分討議がなされるものと考えます。
  210. 穗積七郎

    穗積委員 だから、あなたのいまの御答弁は、先ほど私が当初に指摘いたしましたように、論理的矛盾をみずから暴露されておるわけでございます。今度の大平・金メモというものが、すなわち韓国並びに韓国人民が日本に対して持っておる請求権処理の問題として解決されたものであるならば、その名称のいかんにかかわらず、それによって解決するでしょう。そうではないのです。それでは日本国民に、五億ドルないしは六億ドルの金を払うということのいわれと、その額を決定したことが適当であるか不適当であるかということが説明がつかないので、いまのように、いささかお得意になって御説明になっておられるようでありますが、論理的には全く誤った、筋道の立たない、新たなる、すなわち有償・無償の経済供与である、こういう形式をもって解決なさいました。そうでありますならば、先ほど言ったように、元来韓国政府並びに韓国の人民が固有に持っておる対日請求権というものをこういうもので解決したとかってに解釈いたしましても、すなわち、日本政府並びにその相手であった朴政権がかってにそういう取りきめをいたしましても、これは北鮮をはじめとしてあらゆる国並びに国際法学者が言っておるごとく、こんなものはかってな決定であって、政府並びに人民が固有に持っておる対日財産請求権というものを解決した何の根拠もございません。かってなものであります。主観的な盲断でございます。したがいまして、そういう御解釈であるということをはっきりいま大臣は言われた。すなわち、財産請求権問題と大平・金会談による経済協力というものとは法理的に別個のものである、新しいものであると言うならば、韓国の持っておる、あるいは人民の持っております対日請求権というものは無解決のまま権限がそこに留保され、残置され、残っておるわけでありまして、かってにきめましたわけのわからない経済協力に関する取りきめというものを金と大平の間で結び、それを両国政府がサクシードして、これを国会を通じて無理やりに批准をいたしましても、それは、国際法上保障されておる財産請求権を、本来固有の権利として持っておるそれを、韓国政府並びに人民がそれによって消滅するなんということを佐藤さんと朴の間で幾らきめましても、何の権威もございません。何の権威もないということをあなたはいま言っておるじゃないか。決して財産請求権問題として処理したのではない、全然新たなる特異なデラックスな構想として大平が考え出してつくったのだから、したがってこれはサクシードするものではない、こう言われるでしょう。そうであるなら、私はあえて聞きたい。こんなことはきめられるならきめられますよ、多数をもってやるならば。そうじゃない。そういうことのよしあしは別個として、そうでありますならば、財産請求権の固有の権利というものは消滅いたしておりませんから、当然財産請求権の対日請求の権利というものはあくまで残る。それは、あなた方は、対韓交渉の要綱の何項でござましたか、その中でかってに、これは完全かつ最終的に副次的な効力として消滅するのだ、そのことを願望して交渉に当たった。ダラ幹であろう朴政権は、金がほしいためにこれをついに承諾をいたしまして、七億ドルでその韓国政府オーソリティーあるいは韓国人民が持っておる請求権というものを日本に売って、その金を自分のふところへ入れるわけだ。これが請求権による処理でないとするならば、このかの国に渡りました五億ドルの金というものはだれが最終的な請求権を持っておりますか。政府がそれを何に使おうと、国内においてだれのために使おうと、すなわち、ベトナムに出兵する兵隊のために使おうと、あるいは朴なり金鍾泌がめかけのためにその金を使おうと、人民は何らそれに対して異議を申し立てることはできない。そうであるならば、固有の権利を持っておる人民はそれに対しまして何らオブリゲーションを持つべきではない。法律的にもそうであると同時に、政治的にも何のオブリゲーションを負うべき理由はございません。どうでありますか。それを私は聞いておるのです。
  211. 田中角榮

    ○田中国務大臣 あなたは、韓国政府が持っておる対日請求権と、それから韓国国民日本国氏であった当時に持っておったものをどう解決しようというふうにお考えになっておるのですか。これに対しては、向こう側の要求は、御承知のとおり、五十万、九十万というような人間が、兵隊として、また日本の職員として、日本の徴用工として働き、そういう時代に当然払われるべき給料、それからなくなった場合の慰謝料とか、そういう問題をいまのドル換算でもって計算をすれば、十億ドルとも言い、十五億ドルとも言っている。われわれが考えるととてもそういうふうな勘定はできない。こういうことで対立したままになっておれば、両国の間に友好関係を結ぶことは永久にできないということであります。また、当時二十年も前のものを、その間の空襲にあっておる日本の官庁の中でそれだけの証憑を全部集めることが可能であるかどうかということは常識でわかる話であります。それで十何年間も日韓交渉が妥結を見なかったということは事実でございます。でありますから、韓国国民を代表する韓国政府との間に大平・金メモが交換をせられましたが、これは次善の行為であって、この精神に基づいて両国が妥結をし、両国の国会が批准をするという国際法上の手続がとられるならば、韓国国民政府が持つ対日請求権は消滅するというお互いの合意が法律的に処理せられた場合には、私は効果はあるということを考えるのは妥当だと思います。にもかかわらず、韓国国民日本政府に対する請求権はいつまでもあるのだ、こういう解釈は私はどうしてもとれないのであります。韓国政府との日本政府との間に三億、三億の有償・無償の協定成立することによって、韓国政府及び韓国民が持つ対日請求権は随伴的な効果として消滅する、裏返しで言うと、消滅することを前提にして二億、三億の有償・無償の供与を行なうわけであります。何も条件がなくてやるわけではありません。随伴的な効果において消滅する、消滅するならば提供いたしましょう、こういう両国協定成立をして国会で批准になれば、あとの問題は韓国政府及び韓国国民の間に解決すべき問題であって、そういうふうな条約が締結されても、なお日本政府は、かつて日本国民であった韓国人私人に対する請求権を認めなければならない、こういうような法律解釈は絶対にとりません。
  212. 穗積七郎

    穗積委員 田中さん、あなたはいまは佐藤内閣の大蔵大臣としての権限と責任を持っておる。ところが、政治的にはあなたは佐藤派の領袖として、そして非常に国際的に期待を受けておる人物です。それがこれら政治を行なうにあたりましては、一時的にこれは国民のために経済的に得だから、すなわち、李承晩はこの請求権について二十二億ドルの要求をした、ところが今日は五億ドルで済むのであるからして、そしてそれが一切解決するのであるからしてこれに賛成すべきではないかという御所論でございますが、経済的な一時的な利害得失は私は論じていない。それはあとで伺います。そういうことをおっしゃるならば、当初二十二億ドルの対日請求権の要求額が積算をされて、いまのようにだれに幾ら何に幾らということで出たときに、日本政府の大蔵省の役人がここにおられますが、それを軍令三十三号によるものと相殺いたしました結果、積算をいたしますというと韓国側の対日請求権の認められるべきものは二千数百億ドルにすぎない、そうして、とどのつまり、池田内閣当時に、積もり積もって計算をいたしましても七千万ドルをこえることはできないと大蔵省は計算したではないか。それを今日、その何千倍、何百倍、そして五億ドル、民間有償は無制限である、そうでありますならば、かの国が、最初朴政権が要求したとおり——もうすでに今日で民間供与にしても一億五千万ドルをこえると私は計算ができる。そうでありますならば、当初の要求どおり、七億ドルというものはまるまる何らの譲歩をせしめることなしにあなたは払おうとしておるのではないか。私は、その金額について妥当であったかどうかという政治的判断をいまここで論争しているのではないのです。そうではなくて、私は、政治、国際関係におきましては、あくまで国際条約の理念、国連憲章の精神にのっとって、誤りなく、公正に正しく、親切にやるべきものであると考える。そういう意味からいたしますならば、あなたは、一時的な今日の大蔵大臣として、なるべく少なく済ませたつもりであるから、おまえは何を無理解なことを言うのだ、おれは日本国の大蔵大臣として、日本人民の経済的利益のためにこれで妥結したほうが得だと思っておるのに、おまえは一体どういう立場でそういう不服を唱え、それをあばき出しておるのだ、こういうことを言わぬばかりのお答えであった。私は心外しごくです。大蔵大臣としてのみならず、お互いに意見が違いましても、私の尊敬する政治家田中角榮に対して偉大な失望を私はここで感じた。そういうことを言われたのでは、韓国人民の心ある人は、あなたを、佐藤内閣の外交政策がこのようにぐらついておる、無原則で、きのうときょうとは違い、明日はまた違う、そういうことで国際的な失笑をかっておるのは、このように佐藤内閣の中には国際的な理論、国際的な見通し、国際的な正義を踏まえておる政治家がおらぬからであるということを世間の人はみな思うのでしょう。田中さん、私はあなたの政策と違って反対党におります。しかし、あなたはこの際、佐藤さんが政権を握っておる以上、国際問題につきましても、国際路線についても、国際外交問題の処理についても、もっと正しい理論と正しい政治的正義に立って処理していただきたい。そういう意味で、あなたは額のことに転換をしておるが、いまの一体対日請求権の源並びに対日請求権を受け取るべき最終的な権利者、この五億ドルというものは一対だれが受け取るのか、だれが受け取る権利を持っておるのか、そういうことについての正しい、正義に立った、国際的な条約並びに通念に立った正しい議論をしていただくことを私は期待いたしまして、あなたの御所論は誤りであると思うので、もう一ぺん御答弁をわずらわしたいと思んうのです。五億ドルで解決することが、これでもう一切がつい因縁はないのだよ、因縁払いをするために考えたならば、おまえあまり大きなことを言って騒ぐな、騒げば日本国民のために不利益であると言わぬばかりの御注意でございました。私はその御注意をそのままお返しいたします。私は何も社会党の主張にとらわれて言っておるのではありません。固執しておるのではありません。そうではなく、あなたのために惜しむ。あなたのそういう議論をもって、この対日請求権、すなわちそれから何らの法律的なサクセッションのない金・大平会談、すなわち経済協力、これによって解決して、そうして、かってに朴と佐藤さんが、いわゆる終戦後を持っておった対日請求権、人民の請求権も含んで一切これで完全かつ最終的に消滅するのだ、そんなかってな法理解釈と政策で日本のアジア外交が進むとするならば、まさに大国主義の独善でございます。そうして利己主義でございます。それは誤りです。どうぞもう一ぺん御答弁をわずらわしたい。すなわち、私の質問はこういうことです。対日請求権の権利を持っておる源はだれであるか、ここで今度経済協力と称して五億ドル払われたときに、その金を請求する最終の権利者はだれであるか。
  213. 田中角榮

    ○田中国務大臣 対日請求権に対しては、先ほど申し上げましたとおり、韓国政府が持つものもあります。韓国国民自体が持つものもございます。しかし、この問題を一つずつ片づけていくということは、理論の上では非常によくわかるし、筋も通っておりますが、二十年前の話を、しかも向こうが言っておることは、二十二億ドルとあなたが御指摘になったとおり、そういう道行きもありました。また、ドル換算にすればどうだとか、こういうことを実際問題として一体片づけられるのか。終点が認められるのか。片づかなくてもいいんだ、こういう観念で御議論をなさっておると、両国の間には友好的な立場においてお互いが国交を回復したいいこういう考え方でこの問題を何とか片づけたい、こういうことになると、片づく道を考えなければなりません。これは一韓国だけの問題じゃないと思うのです。日ソの間に問題があっても、日米の間に問題があっても、いろいろな問題があっても、こういう解決のしかたは新しい方法ではありますが、両国合意に達することによって、随伴的な効果として韓国政府及び韓国国民の対日請求権を消滅させる、向こうの合法的な政府がこう言っているのであります。でありますから、当然、その結果として、韓国国民韓国政府との間の問題は、韓国政府国民との間で解決すればいいことであります。私たちはそういう考えをとっておるのでございます。
  214. 穗積七郎

    穗積委員 払った金は帰属はだれにいくのですか、最終帰属者、最終権利者は。
  215. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 穂積君に申し上げますが、大蔵大臣の発言が済んでから発言してください。
  216. 田中角榮

    ○田中国務大臣 この二億ドル、三ドルの払う金は韓国政府に供与するものでございますから、韓国政府の帰属でございます。
  217. 穗積七郎

    穗積委員 大蔵省の秀才たち、先ほどからこの問題について、いろいろ法理的に、あるいはまた政治的にアドバイスをして、大臣にこういうことを決定せしめようとしておられるようだが、あなた方は、いやしくも法律を考えながら、法律の権限、義務においてのみわれわれ国民の金を使っているのですよ。あなた方が出す金は大蔵省の金ではありませんよ。そうでありますならば、一体、この経済協力なるものは、何の義務によってわれわれが五億ドル払うのか、払った金はだれに帰属するのか、いまのような御議論でよろしゅうございますか。そんなことで国際的に通ると思いますか。答えてみなさい。
  218. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 事務当局へというお尋ねでございますので、お答え申し上げます。  この無償三億ドル、有償二億ドルというものは、ただいま大蔵大臣答弁のとおりでございます。
  219. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、いいですか、念のために事務当局に例をもって聞きましょう。そのことに答えていただくことが、大蔵大臣にいまの誤りを自覚せしめるために最もいいと思うから。私が戸主であります。つまり、いまで言えば戸籍の筆頭者。そして、私の住んでいる家庭の動産、不動産、財産権、債権を含むあらゆる財産の中には、家内のものもある、それから子供の名義のものもあります。そういたしましたときに、これらの請求権というものは残っていますよ。郵便貯金は郵便局に対して請求権が残っている。それは私の子供Aの名によって残っている。Bの子供の名によって銀行へいささか、五千円でも一万円でも預けておれば、その権利は残っている。それらの一切の権利を合算をいたしまして、そして私がある人と契約をする。そのときに、およそ私のところの請求権はたとえば百万あります。そういうことでありますから、これを全部支払いますからあなたと物を売ったり買ったりしましょう、そういう調印をして、そのことによって、相手銀行、相手郵便局に対して、子供たちが持っておる権利は一切消滅いたしますという契約を結んだといたします。その契約によってこの子供の権利は消滅いたしますか。大蔵省、消滅いたしますか。そういう契約に対して、郵便局へ、それは違う、おやじのやったやつはそれは誤りである、不法な契約であるということを申し立ててこの子供が郵便局へ請求に行ったら、あなたは払わせますか払わせませんか。答えてみなさい。それは消滅しません。すなわち、対日請求権は人民、国家固有の権利でございまして、決して、朴がかってに佐藤と取引をして、五億ドルで売って、これで済んだことにするよというわけにはいかぬ。人の権利です。人の財産です。その請求権の法律的な根源、すなわち請求権によって支払われました金の最終の請求権利者というものは個人あるいは財産所有者です。答えなさい。そんなばかばかしい法理論で、あとになって北朝鮮の請求権もないとか、南朝鮮のあらゆる人民の請求権がないなんということをかってにきめさしたって、それでは通りませんよ。
  220. 田中角榮

    ○田中国務大臣 子供さんの承諾を得ずしておやじさんがそういうことをしたということになれば、これはもう当然子供さんの請求を拒否するという権限はありません。しかし、子供さんに、おまえの名前で貯金をしてやるけれども、これはおやじが要るときには使うよという契約があれば、そういうことは有効であることは、これは論をまたないことでございます。あなたは先ほどから、韓国の朴政権の韓国代表政府ということを否認してかかっておられますが、しかし、そういうたてまえでなく、国が国としてこれを決定するという場合に、韓国国民の持つ対日請求権の処理に対しては韓国政府韓国国民の間に残る問題である。まあアメリカに日本国民がおった、そしてこれが事件が起きて、アメリカ政府に対しては請求する権能はもちろんございます。もちろんございますが、日本政府とアメリカ政府の間でその問題を解決をして、そして片づけた場合には、日本政府と今度その日本人との間に問題が残るので、政府とその人の間にものを片づけなければならぬということが起こるわけでありまして、国がその国の国民の持つ対外債権というようなものの代表権が全然ないのだ、こういう前提に立ってのお考えには必ずしも承服できません。
  221. 穗積七郎

    穗積委員 そうではないのです。この事の起こりは、政府並びに人民の対日請求権に源を発しておる。それはどうしても認めざるを得ないという、われわれは国際法上の義務感に立ってこの問題が出てきた。そこで、最後のとどの詰まりが、先ほど言ったように、経済協力としてこれを結末をつけようとしておる。しかし、その継承といいますか、法律的な権利義務の継承というものは何らここで証明されていない。そして、おそらくは、そういうものと解釈するという覚え書きぐらいか議定書かを交換するのでしょう。そんなことは独断です。そんな国家間の契約は成り立ちません。それによって人民の持っておる固有の財産請求権というものを消滅せしめることがないから、したがって、われわれは、これは韓国人民の対日請求権というものは法律的には解決したことにならない、別個の問題として五億ドルの有償・無償の経済供与が行なわれた、こう解釈せざるを得ない。いかがでございましょうか。
  222. 田中角榮

    ○田中国務大臣 日本政府韓国政府との合意に達して、国会の批准を得て条約としてきちんときめて、有償・無償五億ドルを韓国政府に供与しても、なお韓国国民の持つ対日請求権は消滅しない、こういう考え方は、この日韓の間に協定するものに、この協定をすることによって韓国人の持つ対日請求権は随伴的効果として消滅をする、こういう合意に達して、そしてその条項を明らかにして条約が結ばれた場合、支払いが行なわれた場合、韓国国民日本に対する請求権は消滅する、こういう解釈をとって国際法上何ら問題はない、しかも、あとに残る問題は、韓国政府韓国国民との間において解決せらるべき問題である、こういう解釈であります。
  223. 穗積七郎

    穗積委員 その考えは全く誤りであります。そういうことによって人民の固有の権利というもの、あるいは固有の請求権というものを消滅せしめるべき根拠はないと思う。しかし、これは大蔵大臣と私の間でこれ以上時間をかけて議論を継続いたしましてもこの際政治的効果が少ないように思いますので、これは、先ほど申しましたと同様に、いまの御答弁を承服しがたいものとして、続いて政府との間でこのことについての論争をいたしたいつもりでありますけれども、時間がございませんからあと一、二簡単にお尋ねをいたします。北の問題につきまして一点、それから、あと韓国側から請求してまいりました八項目以外の問題について、すなわちいわゆる請求権に含まれていない韓国側の対日請求権で残存するものがあります。そのものをどういうふうに処理するかという二点についてのみこの際お尋ねをいたしておきましょう。まだずいぶんたくさんお尋ねしなかったのだが、あなたは時間がない。時計を見てお急ぎのようですから、一ぺんに二点あらかじめ申し上げてお尋ねいたします。  今度の交渉について、あなた方のお考えによって妥結したということを仮定いたしましてながめましたときに、これは南側の政府並びに人民に対する請求権問題の解決であって、全朝鮮、すなわち三十八度線以北の朝鮮民主主義人民共和国政府並びに人民に対する請求権問題は何ら解決されたものではない。したがって、この北朝鮮政府並びに人民の対日請求権というものは原型のまま、まるまる残るものである、そういうふうに私は解釈をし、しかも、それに対して、こちら側からまたは向こう側からのいずれかの発意によりまして、この請求権処理のための交渉に応ずべきものであると私は解釈いたします。それについて、大蔵省は、田中さんは、どういうお考えで、この額についてどれほどが適当であるとお考えになっておられるか。
  224. 田中角榮

    ○田中国務大臣 北朝鮮の問題につきましては全く白紙である、こういうふうに申し上げたわけでございます。これはまだお互いの間に交渉もございませんし、向こうからも請求もございません。ございませんから、そのままにしておるわけでございます。しかし、韓国人、いわゆる北朝鮮人の対日請求権というものは消滅しておるかどうかという問題に対しては、消滅しておらない、今度の協定によって消滅をするものではないということは、これは正しいと思います。しかし、実際問題としてどうなるかといいますと、政府考えから言いますと、北朝鮮には日本主張すべき財産も相当たくさんありますので、現実問題として、両国交渉をする場合があり得ても、南朝鮮、いわゆる韓国に交付をするような状態にはならないというふうには考えております。
  225. 穗積七郎

    穗積委員 したがって、第二の私の質問であった、交渉の要求がありましたときには、即時無条件にこの交渉に応ずべきものであると私は考えますし、池田総理もかつてそういうふうなお考えを必ずしも否定されなかったのでございますが、あなたも同様でございましょうね。
  226. 田中角榮

    ○田中国務大臣 北鮮国民から要求があればこちらも考えなければならぬと思いますが、何分にも交渉する道がないわけでございます。でございますので、まあ出方待ちと申し上げるか、それ以外にはないと思います。しかし、もし北鮮政権というものが国際的にどうなって、日本との間にもいろいろ交渉が起きるということになれば、この問題は当然向こうからも要求が起きてくると思います。しかし、そのときにはこちらからも要求するものがたくさんございますので、そういうものも準備をしなければならぬだろうというふうには考えます。
  227. 穗積七郎

    穗積委員 今度の請求権問題は、いまお話しのとおり、有償・無償五億ドル、プラス一億ドル以上、これは民間融資。この一億ドルに対する政府の義務は法律的にない、政治的な道義として解釈しておる、それはすべて民間融資であるからして、利子その他の条件についてはケースバイケースに契約をすべきものである、こういうふうになっておる。そこで、今度、いまお見えになりました赤城さんがお話しになった九千万ドル以上の漁業協力資金というものも、この民間融資の理念の中へ入れる、こういうことでありますと、およそ見積もりまして、いままでに供与しておるもの、それから四千数百万ドルに及びますこげつき債権、それから、いままでに輸銀が行なっております延べ払いクレジット、こういうものをすべて入れますと、もうすでに私の計算でも一億五千万ドル前後のものになろうかと思うのです。そういたしますと、これからこの協定を結びまして日本側韓国側に与えるべき金の額は有償・無償を合わせまして五億ドル、法律的ではないが政治的な義務を負いました一億ドルの民間融資というものは、すでに今日これだけでオーバーしておる。したがって、新たなるクレジット、新たなる借款の設定、そういうものはもう義務を果たしてしまっているわけですね。それ以上新たに向こうから、この一億ドルの話し合いがあるから、これをしてくれあれをしてくれということで、義務はないけれどもそれに対して協力をすべき政治的なオブリゲーションがあるということはないわけです。その点については一体どういうふうに赤城さんとあなたの間ですでにお話し合いになって、九千万ドル以上の漁業借款というものをお認めになったかどうか、その間のいきさつをこの際明らかにしていただきたいと思うのです。
  228. 田中角榮

    ○田中国務大臣 対韓オープンアカウントの約四千五百七十三万ドルというものについては、これはひとつ期限をきめて返していただきたい、こういうことであります。これは何年になるか、とにかく返していただけるという考えであります。  それから、いままでも、いろいろな経済協力といいますか、経済協力というよりも民間が信用供与をしておるから、もうその大平・金メモによる一億ドルというようなものは終わっているんじゃないか、こういうことでございます。大平・金メモは、一億ドル以上、こういうことになっておるのでございます。一億ドル以上、これはまあお互いの友好的宣言条項だ、こういうことを私は申し上げましたが、日韓の国交を正常化せば、当然お互いの間に通商をやるわけでありますから、そういう基本的な立場に立っております。また、この漁業協力も、九千万ドルといいますが、大平・金メモによる(ハ)項に属するものだ、こういう考えでございますので、政府が責任を負えるものではないと考えます。しかし、その対韓民間信用供与に対して、向こうが望むような金利ということは、いま政府が責任を負えませんが、民間がそういうことを行なうように期待をしておるという立場でございまして、政府自身がどうするということはできないことでございます。もう対韓の民間の経済協力をしないでいいじゃないかということ、これは民間自体が自主的にやることでございまして、これから日韓の……(穗積委員「基本的には関係ない」と呼ぶ)関係がないことはありません。これは法律で信用供与に対しては輸出許可をしなければならない立場にございますので、政府はプロジェクト別に十分見まして許可をする、こういう立場であります。金利とかそういうものに対しては民間が自主的に行なうものであります。
  229. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 穂積君、時間がまいりました。
  230. 穗積七郎

    穗積委員 時間がまいりましたから、最後に一点ちょっと念のためにこれに関連してお尋ねしますが、文化財に関する向こうの側からの対日請求  それから個人の供託の済んだものがありますね、これに対する対日請求権、これはいわゆる八項目の向こうが設定してまいりました、要求してまいりました請求権の中に含まれるものではないわけです。以外のものですね。そうしますと、今度のものがあなた方の独断で、今度のこの経済供与が妥結をすれば請求権に関する一切のものが解決したと言うが、その請求権とは一体何と何だというカッコ内のものについては解釈必ずしもまだ伺っていない。何と何が解決したことになるのだということになるのですね。そうなりますと、韓国側が大体要求してまいりました八項目ぐらいのものに含まれるものではないか、こういうふうになってくる。これは、実はきょうは、請求権の中身は一体両者でどういうふうに合意に達しておるのか、請求権はこれで最終かつ完全に消滅するものであるという覚え書きで一切解決してしまうのだと言うが、その請求権の中身は何であるか……
  231. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 時間がまいりましたから、簡単に願います。
  232. 穗積七郎

    穗積委員 そういうことに対する解釈をきょう伺うことができませんでした。  そこで、最後にお尋ねいたしますが、その解釈はまたあらためて伺うことにいたしまして、それに含まれていないともうすでに世間から解釈されておる文化財並びに供託の済みましたものに対する権利、これは、五億ドル以外の対日請求権として、こちらは義務でございますが、これは残りますね。
  233. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私は日韓交渉に出ておりませんからそういうこまかいことはわかりませんが、私が大蔵大臣として理解をいたしておりますのは、大平・金メモの交換によりましてこの問題が片づけば、文化財の問題その他も全部消滅をする、こういう考え方をとっております。しかし、外務大臣がどういう状態で交渉しておるかはまだ聞いておりません。
  234. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃ、お答えがなくて、それを御了承になっておられるとするならば……
  235. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 穂積君、時間でございます。
  236. 穗積七郎

    穗積委員 大体、大臣はきょうは二時過ぎに来るという約束で、ぼくには二時過ぎに出てこいという指令があった。それをあなた、三分五分だな、——大体、そういうことを言われて、道義的に紳士的に、初めから何分ぐらいの余裕があるのだということを聞いてやっておるのに。
  237. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 四十分ということでありましたが、十分もう許しましたから、簡単に願います。
  238. 穗積七郎

    穗積委員 およそ四十分と……。あなたはわれわれのこの真剣な討議を聞いておるか、委員長は。委員長、不謹慎だぞ。
  239. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 簡単に願います。もう穂積君の質問は五十分になります。
  240. 穗積七郎

    穗積委員 そこで、その解釈は私は妥当なものであるとは考えないのです。それは外に出ると韓国側は解釈しておると私は仄聞をいたしておりますので、その点の食い違いは追って承ります。請求権の具体的内容、それから請求権外の残存する請求権の具体的なもの、これは彼とわれとの間に完全なる具体的なチェックオフが全部済まなければ、これは解決したことになりませんよ。大蔵省、よく聞いておいてください。秀才ども。そこで、それは交渉に当たられました外務省またはその他高杉代表に、これは経済人だからうかつはないでしょうが、これは二日の日にとくと承るつもりだ。その上で大蔵大臣もどうぞさっき言ったように、金を出さぬのがおれの役目だというなら、その点をはっきりしておいていただいて、あなたの理念どおりでやってもらいたい。それ以前に妥結することがないように願います。
  241. 田中角榮

    ○田中国務大臣 はい。
  242. 穗積七郎

    穗積委員 最後に一点ちょっと……
  243. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 簡単に願います。
  244. 穗積七郎

    穗積委員 非常に関連をして大事ですから、あなたにちょっと事のついでにお尋ねいたしておきますが、それは実は、日韓問題とベトナム問題は、すべて最後のねらいは御承知のとおり中国問題なんだ。きょうは中国論をやろうとは思っておりません。そこで、大蔵大臣の所管でこの月の三十一日までに日本側政府が決定をしなければならない重大な対中国問題がある。それは、ニチボーのプラント輸出を輸銀を使うか使わないか。輸銀は元来政府の指図によってやるべきものではないのです。
  245. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 穂積君、次の質問者が控えておりますから、簡単に願います。
  246. 穗積七郎

    穗積委員 私は田中さんが来るのを一時間以上待っておったのだ。そういうことであるからして、そこで、これは一ニチボーの取引の問題ではなくて、貿易全体、場合によれば、北京は、最近の日本政府日韓会談に対する態度、並びにベトナム問題に対する佐藤内閣の完全に誤った態度、それに対して、佐藤内閣の対中国政策、アジア政策というものは、かつての軍国主義の再現をするのではないか、今度の日韓会談も軍事的なエクスパンショニズムではないかと、こういう断定をしたとすると、これは単にニチボーの取取引、日立の取引、それだけではない。LT貿易全体を廃棄する、さらにつけ加えて、経済的に岸内閣当時の状態に返らぬとも限らない。そういう空気です。そこで、実はもうすでに通産省は輸銀を使うべきだということを決定して、強くそのことを要請しておる。外務省は台湾に牽制されないと言いながら、牽制されて動揺しておる。そこで、あと所管の関係から言えば大蔵大臣です。輸銀のことは、実際は権限がないにかかわらず、あるかのごとくしてチェックしておる。コントロールしておる。そのときの責任者というのはやはりあなたですね。貿易促進の義務を持っておるのは櫻内さんなんです。輸銀を使うか使わぬかの所管は行政的にはあなただ。そのあなたは、もうあと二、三日に迫ったこの輸銀を使うか使わぬかということに対して、一体どういうお考えを持ち、どういう御決定をなさるのか。きのう佐藤総理にお尋ねする大体の予定でおりましたが、時間の都合で遠慮いたしました。あなたがたまたま見えて、佐藤内閣の領袖であり、しかも日本の財政の責任者という立場におられますから、あわせてそれに対する態度と方針を国民の前に明確にしていただきたい。これは非常に心配しておるのです。日中間全体の関係に及ぼす重大な問題になってまいりましたから、どうぞ。
  247. 田中角榮

    ○田中国務大臣 ニチボーのビニロンプラントの問題も、また日立造船の問題も、契約時期が切迫をしておりましたので、輸出許可だけを通産省は与えたわけであります。でありますから、輸銀を使うかどうかという問題につきましても、その時期までにきめればいいという態度をとってきたわけでございます。でありますから、いま三月三十一日と言われましたが、(穗積委員「ごまかしてはいけませんよ、三月三十一日の重要性をあなたは御存じでしょう」と呼ぶ)三月三十一日までにはまだ日がございます。日がございますので、政府の中で慎重に検討いたしております。(穗積委員「前向きかうしろ向きか、方針、方向を示してもらいたい」と呼ぶ)非常にむずかしい問題でございますから、その間のことはあなたも十分御承知でございます。私たちも日中の貿易を拡大していく方向で努力をしておるわけでありますから、どうぞそういうことはひとつ、三月三十一日まで時間もありますし、いま政府部内で慎重に検討いたしておりますということで御理解願います。
  248. 高瀬傳

    ○高瀬委員長代理 大蔵大臣への質問は終了いたしましたから、御退席を願います。  次の質問松井君。
  249. 松井誠

    松井(誠)委員 私は、いま行なわれておる日韓交渉の中で、漁業問題だけにしぼってお尋ねをいたしたいと思います。この問題は、きのう以来多くの同僚委員からいろいろと質問がございましたけれども、問題は非常に重要でありますし、しかも問題はまだまだたくさん残っておりますので、重複を避けながらお尋ねをいたしたいと思うのです。  具体的なお尋ねをいたします前に、最初にお伺いをいたしますけれども、例の漁業協定は、最初の予定ではきょう仮調印をされる、そういう予定だということを、きのうもたしか大臣はここで言っておられたと思いますけれども、けさの新聞の伝えるところによりますと、いろいろな事情でそれが二、三日延びたと伝えられております。これはそのとおりでございますか。
  250. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そのとおりで、二、三日延びる予定でございます。
  251. 松井誠

    松井(誠)委員 延びるようになった具体的な理由というものはどういうものでございますか。
  252. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 事務的に整備する時間がございません。そういう関係でございます。たとえば、水産庁の次長もこっちのほうに来ていまして、なかなか立ち会えない、夜業をやっておる、こういうような状況で、事務的の手続でございます。
  253. 松井誠

    松井(誠)委員 それでは、具体的な意思のそごというものがあって予定どおりにいかなかったというのではなくて、全く時間的な理由だけでございますか。
  254. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 大体は時間的の理由です。ただ、表現などにつきましていろいろ意見などもあるやに聞いておりますけれども、大体は時間の問題でございます。
  255. 松井誠

    松井(誠)委員 そうでしょう。単なる時間的な理由だけなら、こういう問題が二、三日もずれるなどということはありようはずはない。ですから、やはり、具体的な作業に入ってみたら何か問題が出てきたということでなければ、この重要な段階になって二、三日延びるということはない。このことは非常に重要なんですから、ですから、それには何かやはり具体的な理由があったに違いない。いまの大臣お話ですと、時間的な理由のほかにやはり何がしかの問題があったと言われる。これは一体具体的にはどういうことか。
  256. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 具体的に私も聞いておりませんが、大体は時間的の問題です。
  257. 松井誠

    松井(誠)委員 水産庁の次長もおりますが、次長、その具体的な理由というのはどうなんです。
  258. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 ただいま農林大臣からお答えになりましたとおり、私ども事務当局としては、当初から二十七日ではやや無理ではないかということを申し上げておりまして、なるべく早くまとめるにしくはないということで二十七日を目途に作業いたしたわけでございますが、御承知のように、相手側のほうが、貿易の問題とか、その他いろいろ多忙でございますので、純粋に時間的なことがほとんどでございます。
  259. 松井誠

    松井(誠)委員 いまの答弁でも、時間だけが問題でないということは、やはりはっきりしておる。遠い話ではなくて、きのうの話で、きょう妥結をするということだった。きのうの段階でもそんなことを言っておった。ですから、時間的な余裕があるかないかぐらいのことは、そのときに当然わかるはずです。ですから、これはもう新聞に伝えられておるように、具体的な内容はわかりませんけれども、しかし、現実にその作業を進めていって問題点が新しく出てきた、あるいは案外両方の理解の食い違いがあったということが出てきたわけでしょう。それをここで言えないはずはないじゃないですか。大臣、直接あなたがお聞きになってなければ、次長は直接の衝に当たっておるわけでしょう。大体が時間の関係であるということをかりに了承するにしても、その大体以外の何がしかは具体的な問題があった。それは何なんです。
  260. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 先ほどお答えをいたしましたように、時間的な問題でございます。そのほかに何があるかとおっしゃいますけれども、まあ表現をいたします文章のことば等についても、いまもいろいろ話し合いをしておりまして、一々内容について申し上げることはこの際遠慮させていただきたいと思います。
  261. 松井誠

    松井(誠)委員 表現の問題で行き悩んでおる、その問題はいま交渉中だから発表は差し控えさしてもらいたい、最初からそのようにはっきり言えばいいのです。だから、私が聞きたいのは、これは、ほんとうにまだ交渉がまとまらない、そういう段階でならば、ある程度の秘密ということも必要でしょう。しかし、ともかく一応あの新聞で発表されたようにきまった。それは、具体的な作業に入る段階だということになれば、双方の意向というものはもうわかっておる。手のうちというものはわかっておる。手のうちがわかっておるならば、いま何もここでその点は差し控えさしてもらいたいなどと言う必要はないんじゃないですか。そういう問題ではないのですか、もっと重要な問題ではないのですか、単なる表現だけの問題ではなくて。
  262. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、この間お尋ねを受けたので、きょうあたりはできるだろう、しかしそうもいくまいということをお答えしておったのです。これはそのとおりなんです。それから、その外交文書的なものですから協定ではございませんが、やはり将来間違いがないようなふうにやろうということになりまするならば、慎重に練るというような必要もあろうと思います。私のほうの理由はあまりありません。向こうでは、下におりていない、話がおりてないなどというようなことも言っているやに聞いておりますけれども、わがほうにおいては下まで私の話は通じております。そういうようなことやら、表現技術といいますか、そういうことで幾らかおくれていることやら、また、こういうところへ出てきておりますから、たとえば水産庁次長などが出てきておりますので、その間は少し休んでおる、向こうも、ほかの用件で出ておりますというと、その間休んでおる、こういうことですから、大体は時間的な問題と、こう御了承願いたい。
  263. 松井誠

    松井(誠)委員 たとえば、基本条約の仮調印のときも、例の国連議決の「ような」という、そういう表現でずいぶんもんだということを聞いておる。それは単なる表現の問題でなしに、やはり非常に重要な問題を含んでおるわけです。それと同じことがおそらくあるだろうと思う。そうでなければ、このどたんばに来て二、三日延びるという重要な事態になろうはずはないと思う。その点あれですか、大臣、きょうは韓国の外務部長官は予定どおり帰る、そして農林部長官は残る、こういう予定になったのですか。
  264. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 外務部長官は帰ったと思います。私は直接わかりませんが、農林部長官は、きのう会って話したときに、帰るのは月曜日か火曜日、こういうことを言っておりました。
  265. 松井誠

    松井(誠)委員 こういう段階になってそれだけ延びたという理由は、もう追及をしても答えが出てきそうはございませんから、それはそれでいずれわかることでございましょうからやめておきますけれども、具体的に漁業の問題についてお伺いをいたしたいと思うのです。  われわれは、もう御承知のように、この日韓交渉について基本的には北との関係という問題が一番危険な性格だということで基本的に反対をしておる。しかし、これは、具体的に進められてきておる交渉の内容自体を見ても、非常に問題が多いわけであります。私はきょうは漁業の問題だけを中心にしてお尋ねするから申すわけではございませんけれども、この日韓交渉というのは、何かまとめるためにその犠牲を日本の漁民なり日本の漁業なりというところにしわ寄せをして、それで妥結に持っていく、具体的にこの交渉日本においてだれが利益を得るかということを考えてみると、これは決して漁民でも漁業でもない、こういう形が今度の日韓交渉の一つの基本的な性格をあらわしておると思うのです。そういうことをこれからひとつ具体的にお伺いをしていきたいと思います。  最初に漁業水域の問題でございますけれども、その問題について、例の李ラインというものが一体どうなるかという何度も質問がありましたけれども、その問題を最初にやはりお尋ねをいたしたいと思う。きょうも大臣は言っておられましたように、この李ラインというものは元来不法で認めてない、最初は政府のほうでは、そういうものは元来認めてないのだから、それを認めないというようなことを文書にあらわす必要もないというように言っておった。しかし、最近はともかくそれを合憲議事録か何かに文書化しようというところまで来ました。その文書化をする具体的な内容というのは一体どういう文言になるのですか。私はさっきのひっかかっておるという理由がこれだという意味で言うのではないのですよ。そうであるかどうかしれませんけれども、この李ラインの撤廃というようなものを議事録に残す、その表現の方法というものは一体どういうようにお考えになっているのですか。
  266. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ただいま折衝中でございますので、それを申し上げることは差し控えさしていただきます。
  267. 松井誠

    松井(誠)委員 参議院の予算委員会で大臣が御答弁になった、これは私は新聞を通してだけしか見ておりませんから、正確かどうかわかりませんけれども、ともかく専管水域外では日本の船舶の臨検なり拿捕なり、そういうものは行なわないという、そういう趣旨に書きたいという、そういう御答弁をなさったことはございませんか。
  268. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そういう答弁をいたしたことがございます。
  269. 松井誠

    松井(誠)委員 私はいま専管水域外の漁船ということばを使いましたけれども、この漁業協定の中で考えておる李ラインというのは、漁業との関係における李ライン、そのように限定をして表現をされるわけですか。私がそういうことをお伺いをするのは、これは時間の節約のために申しますけれども、御承知のように、韓国李ラインということを言っておるのは、いろいろ意味があります。資源の保護だという意味で言ってみたり、あるいは大陸だなという、そういう法理を援用してみたりしておりますけれども、さらにもう一つ、国の安全という、そういう意味でもこの李ライン主張しておるわけです。したがって、韓国ではこれを漁業だけの問題として考えてないということは、いままでの経緯ではっきりしておる。ですから、これを一体具体的にどういう文言でその撤廃をあらわすかというのが非常に大きな問題になってくる。そういう意味で私はさっき漁船と言いましたけれども、もしそういう表現をお使いになる意図だとすれば、これは全く漁業だけに限った李ラインの撤廃ということにならざるを得ない。その点をお伺いしたい。
  270. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いま交渉中でありますので、申し上げることを差し控えさせていただきます。
  271. 松井誠

    松井(誠)委員 具体的な文言の内容のことは別としまして、それでは、あらためてお伺いしますけれども、これは大臣が何べんも言われておるように、これから先は李ラインというものは事実上なくなる、その李ラインというのは、単に漁業の関係だけでなしに、国防ラインということを主張しておったその韓国の立場も含めて、その李ラインはなぐなる、こういうことを、それでは具体的な表現の内容は別として、そういう趣旨を含めるおつもりでございますか。
  272. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そういう趣旨で話をしておるのでございますが、内容等につきましては、いま折衝中でございますから、差し控えさせていただきます。
  273. 松井誠

    松井(誠)委員 ですから、二、三日延びたというのはそこのところがひっかかっておるんではないですか。そうではないですか。それでは、どっちでもいいですけれども、しかし、ともかくこの表現のしかたというのがやはり非常に大きな問題を持っておる。これは単に表現の問題ではなしに、ほんとうに李ラインというのがこれからあと名実ともに全くなくなるかどうかという、そういう問題になってくる。李ラインというものがあるばかりに、この漁業交渉で、日本は一種の人質政策みたいなものになって、ずいぶん要らざる譲歩をしておると私は思う。しかし、その李ラインというものが形を変えてもし依然として存続をする、そういう口実を与えるようなことになったのでは、全くアブハチとらず。いま大臣お話では、つまり、国防ラインがなくなるという、そういう趣旨をも含めていま交渉しておる、これはまだ交渉の途中であって最終的にはきまらないということですか。
  274. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 交渉ということばが悪いですけれども表現などでいまやっておりますけれども、それでひっかっておるわけではありません。これは簡単にきまると思います。私はまだ接触していませんが、事務当局で外交的に案を練っておる、こういうことだと思います。
  275. 松井誠

    松井(誠)委員 先ほど大臣は、どういうところでひっかかっておるかわからなかったと言っていましたけれども、しかし、きわめて簡単にまとまるということだけは御存じです。そうしますと、いまの問題は、くどいようですけれども、念を押しますが、まだそういう表現の具体的な内容というものは煮詰まっていないけれども、しかし、漁業の関係だけでなしに、国防ラインとしての李ラインもなくするということに、表現の形式は別として合意はできておる、これは間違いないですね。
  276. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 合意といいますか、向こうの国内法を撤廃するとか何とか、そういうことは合意というわけにはまいっておりません。事実上李ラインがなくなるということ、それから、逮捕、抑留等は絶対しないということ、それから、裁判権につきましては、いままで李ラインの中でやっていたようなことは絶対にやらぬ、こういうことでございまするから、実質上李ラインがなくなった、こういうふうな形になっておりますので、これをどういうふうにあらわすか、こういうことでございます。
  277. 松井誠

    松井(誠)委員 表現の問題についてはいずれわかることでありますけれども、私は基本的な態度そのものをお尋ねをしたい。合意ができたかどうかという私の質問に対して、いま、国内法の処置などについては合意の問題じゃないということを言いましたけれども、私もいまそれを具体的にお尋ねしておるのではない。参議院で大臣があるいは御答弁になったのかもしれませんが、国際法は国内法に優先するという原則を掲げることで、それはあるいはいいかもしれません。私のお尋ねしたいのは、李ライン李ラインと言うけれども李ラインには二つの面があるではないか、その二つの面を含めるという、そのことについて合意があるのかということをお尋ねをしておる。
  278. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 李ラインの二つの面ということは、私はよくわかりませんが、日本に関しましてはとにかくそういうものがないという事実に持っていくことに、合意はしておるわけであります。
  279. 戸叶里子

    戸叶委員 関連。参議院の予算委員会でも、またこの委員会でも、農林大臣お答えになりましたことは、国際法が国内法に優先するということでございました。しかし、国際法が国内法に優先するという原則は、私はまだどこにも確立したものはないと思います。そこで、個々の場合に国際法が国内法に優先するというふうな取りつけをはっきり韓国のほうにしているか、韓国のほうもわかっているかどうか、この点をやはり確かめておかなければ、必ず国際法が国内法に優先するという原則というものはきまっていないのじゃないか、こういうふうに思いますので、その点のことを念のために伺っておきたいと思います。
  280. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 国際法は国内法に優先する、こういうことにつきましては、向こうの代表も了承しています。
  281. 松井誠

    松井(誠)委員 まだ李ラインの問題は私は納得ができない。それは、韓国の中でも、この漁業の資源保護という名目あるいは大陸だなにひっかけて主張しておった李ラインというものは、これはやむを得ない、しかし、国の安全という面から、国防という面からの李ラインというものは、これはもう絶対に引くわけにはいかない、そのために、その漁業協定とは別に、独立の国防ラインについての協定を結ぶということも考えておるというような意見も韓国の中ではずいぶん聞かれるわけです。ですから、問題は二つに分けて考えるべきじゃなくて、これを解決するときには、どうしても一つの李ラインとして解決しなければならぬ。ですから、具体的に、逃げ道のないように、ただ大臣李ラインはないのだということを言われますけれども、その李ラインとは何ぞやという、その前提をはっきりさして、明文化をすることがどうしても必要だと思う。  先ほどから私の質問に正面切ってお答えになりませんので、繰り返しになりますけれども、そういう李ライン、これはもう韓国自体が李ラインのそういう性格を言っておるわけです。ですから、いまに始まったことではない。ですから、その国防ラインとしての李ラインもなくするんだということを、ともかく明文の上でわかるような形でやらなければならぬ。ですから、その前提として、そういうものについての合意がなければならぬ。李ラインはございませんということだけではなく、その李ラインは一体何かということも含めて合意がなければならぬ。どうなんですか。
  282. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私の解釈から言いますと、李ラインというものは向こうの国内法では漁業ばかりに関しておるように私は承知していますが、しかし、新たに国防ラインというものを引くというようなこともあり得るかもしれません。そういうことのないように、そういういまのお話の御懸念の点なども十分頭に入れて文書の整理をいたしたい、こう思います。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 関連。昨日も御質問申し上げたのでありますが、関連していまの点を伺います。  李ラインは、最初は大陸だなに関する管轄権の問題と魚族資源の問題として出されたことは明白であります。そうして、その後この性格が変わって、漁業独占ラインのほかに、国防ラインとしての性格ができてきたということは明らかではありませんか。それは、李宣言及びその後の韓国の口上書で明白になっております。たとえば、いわゆる国防ライン、平和ラインの考えを、一九五〇年九月二十六日の韓国のわが国に対する抗議書、あるいは一九五三年二月二十一日の大邦丸事件に関する声明、あるいは一九五三年二月二十四日韓国の内務長官の談話、あるいは一九五四年四月十四日わが国の外務省あての韓国代表部の口上書、全部これは平和ラインとしての性格を明確に出しております。知らないということはどういうことでしょう。もし農林大臣が御存じでなかったら、外務省に来ている口上書の中に十分見られるところですから、外務大臣お答えをいただきたい。
  284. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私が申し上げたのは、向こうの宣言及び内務部の法律は漁業に関してつくった法律だ、こういうふうに了解しているが、その後そういうふうに変わったであろうということも、私もそれはわかるのでございます。ただ、最初の立法当時の趣旨がそうであったろう、こういうふうに申し上げたのであります。
  285. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは私が言っていることとそのとおりなんです。最初は、いま農林大臣がおっしゃったように、国防ライン、平和ラインとしての性格はなかった。その後、私が申し上げましたようないろいろな韓国の声明なり抗議書、口上書等で明白になった。それはいまお認めになりましたから、いわゆる現在の李ラインが、漁業独占のライン並びに国防ライン、平和ラインとしての性格を持っているということは明らかであると思う。  次に、もう一つ、いまのラインでお伺いしておきたいと思います。そうすると、いまの松井委員との質疑のやりとりを聞いておりますと、国防ラインは残るんだ、韓国としては残すんだ、ただ、その国防ラインは、日本との関係においては、漁業問題についていわゆるいろいろな差しさわりがないようになるだけなんだ、そういうことですね。国防ラインは残るんだ、ただ、日本との関係においては漁業問題を中心として関係ないようになるんだ、そういうことですね。第三国等に対する問題はわからぬでしょう。
  286. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほど松井さんにお答えしましたように、御懸念の点、そういう国防ラインとして残るというような御懸念もございましょうから、そういう点まで含めて、そういうものまで絶対になくなるような表現にしたい、こういうふうに考えております。
  287. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、もう国防ラインというものは、韓国としては、日本に対しようと日本以外の国に対しようと、そういうものは一切ないんだというような形になるというのですね。
  288. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本に関する限りは、資源ラインであろうと、あるいは国防ラインであろうと、その名前が平和ラインであろうと、とにかく公海自由の原則に反するような一線を画して、そして船舶の出入をここで統制しようというようなことは一切なくなるのでございます。
  289. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、私はもう明白に申し上げておるわけです。日本に対するだけでなく、日本以外の国に対しても一切なくなるということですね。だから、それを聞いておるのです。   〔高瀬委員長代理退席、委員長着席〕
  290. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 よそのことは直接日本と関係がございませんから的確に申し上げる立場にございませんけれども、さようなものはどこの国に対してもあり得るはずのものじゃない。国際法及び国際慣行に反する。いわゆる不法不当なものでございますから、さようなことは御懸念のないように、しかるべく御了解を願いたいと思います。
  291. 松井誠

    松井(誠)委員 答弁がきわめてあいまいなものですから、こういうきわめてはっきりした問題について、ずいぶん時間をとってしまう。  私は、農林大臣にもう一度お伺いをしたいのですけれども、私の質問は、そういう李ライン、あらゆる意味李ラインというものがなくなる、表現の内容は別として、そういうことについて合意があるのかということをお尋ねをしておる。ところが、大臣は、そういう国防ラインの復活などという懸念がないように書きたいと思ってるという主観的な意図だけを表明されて、客観的に合意ができたかどうかという点についての御答弁はない。この点をひとつはっきりさしてください。
  292. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そういう話し合いというか、合意がなければ書くことはできません。書くためには合意ができているということが前提でございます。
  293. 松井誠

    松井(誠)委員 それならその点をもっとはっきり最初から言っていただけば、これほど時間をとらなかったのですが、いまの楢崎委員質問に対する外務大臣の御答弁で、ちょっとお尋ねをしたいのですけれども、第三国、この条約の締結国、その当事者以外の国にも、そういう不法な状態が起きないように、そういう配慮を含めて表現はされるのでしょうか、外務大臣
  294. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 第三国に対する関係についてはとやかく言うべき立場にございませんけれども、しかし、日本以外の国に対して、ここからここまでは入ることはできない、入ったならばどうこうするというような、もし一方的な一つのラインを想定して、そうして拿捕その他の不当な実力行使を、行為を継続しようという場合を想定いたしますと、日本に対してやはり、あるいはあやまってあるいは故意に、他の第三国に対すると同じような取り締まりをやられる危険性があるのでありますから、その限度については日本にも無関係とは言えない。さような危険性のある場合には、断固としてわれわれはこれに対して抗議し、その撤廃を求めなければならぬと考えてはおりますけれども、さようなことは、いま常識をもっては考えられないことであります。
  295. 松井誠

    松井(誠)委員 常識をもっては考えられないことがいままで行なわれてきた。だから、われれわはこういうことをしつこくお尋ねをする。確かに、いま外務大臣の言われたように、第三国に対してそういうことを許すとなれば、第三国と誤認をするというような形で、日本の漁船や日本の船舶とトラブルが起きるということも考えられる。したがって、やはり、日本の立場からだけから考えても、第三国との関係でも平静であってもらいたいし、そうでなければならぬ。それについて断固としてやる決意をここで固めておるだけでは問題が解決しない。ですから、それを具体的に向こうにも承諾をさせた、あるいはさせるということをお考えになっておるのかどうか。
  296. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今度の漁業会談の内容をごらんになるとはっきりすると思うのでありますが、一切公海の原則を侵犯するような違法な従来の考え方を改めて、そうして専管水域までずっと下がって、専管水域の外側について、全然漁労でありますとかあるいはその他の航行については何らの制約を加えない、こういう前提のもとに日本との間においては共同規制区域として、そうして、しかも、漁獲量あるいは隻数の制限、共同規制を侵した場合には、何と申しますか、取り調べ等はいわゆる旗国主義、その所属する国の取り締まりを受ける、あるいは裁判管轄権に服する、こういう点を定めておるのでありますから、こういうことを十分に考えるならば、もはや公海に対する新しい秩序というものを協力して設定しようという態度が見えるのでありまして、さような御心配は私はないと思うのであります。
  297. 松井誠

    松井(誠)委員 どうも椎名さんにお尋ねをしておると時間がずいぶん長くなってしまいますので、いずれこれは明文化されたものが出されますから、そのときにあらためてお伺いをいたしたいと思います。  そこで、この漁業水域の問題について、漁業協定の問題についてさらにお伺いをいたしたいと思いますが、今度の漁業協定で一番問題なのは、例の、農林大臣によれば、これは禁漁区域ではないということばでありましたけれども、新聞に伝えられるところによる禁漁区域という妙なものを設けたということが一番の問題であろうと思う。私も禁漁区域ということばはおかしいと思った。禁漁区域といえば、双方ともが入れないというのが普通でありますから。しかし、この設けられたいわゆる禁漁区域は、日本は入れないけれども韓国は入れる。ですから、普通に使われる禁漁区域というものとは違う。何といいますか、立ち入り禁止区域というようなものになろうと思います。こういうものを認めた一体理由はどういうわけなんです。
  298. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これも再々申し上げていますが、禁漁区域というものではないということはお話のとおりでございます。専管水域並みに扱おう、こういう話し合いでございます。というのは、向こうの韓国の半島から、低潮線で引いてもあるいは直線基線で引いても、その引いた線、それから専管水域をとります。その専管水域をとる。済州島の周辺を低潮線で線を引く。両方の線を引いてみますると、それが合致します。ですから、あの間は専管水域、ほとんど、九九%といいますか、パーセントであまり言うのはおかしいかもしれませんが、そういうふうに専管水域になります。ただ、東側と西側に入り組んだ三角形的な地帯ができます。そういう地帯で、漁場でもございますから、紛争を避けたほうがよかろう、こういう意味におきまして、そこへ線を入れて、その中は向こうの専管水域並みに扱うことにいたそう、こういう話し合いができたわけでございます。でございますので、紛争を避ける、こういう意味で専管水域並みに扱う地域ができるわけでございます。
  299. 松井誠

    松井(誠)委員 ですから、その紛争を避けるということはきのうもおっしゃいましたけれども、紛争を避けるというこの地域、二つの三魚形の地域がなぜ紛争を避けるべき地域になるのか、その理由をお伺いをしたい。
  300. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 まわりが全部専管水域で、その中が細く入り組んでおりますので、しかもこれは漁場でございますので、そこへ入ったとか入らないとか、いろいろ紛争があろうかと思います。そういうことで、なるたけ紛争を避ける意味におきまして、それから漁場でありますから、その地域はできるだけ狭い範囲にとりたいということで、そういう話し合いを進めたわけでございます。
  301. 松井誠

    松井(誠)委員 済州島周辺の専管水域、それから半島の専管水域、この二つの専管水域は接線になるのか、多少間があるのか。いま一〇〇%ではないと言いましたから、多少間があくわけです。全部は間があかなくて、南の専管水域と済州島周辺の専管水域とはダブる。ダブって、その両側に三角形のところが残る。私は、それが紛争の原因になるという、いまお述べになった理由がよくわからない。私は、むしろこの十二海里という専管水域を済州島の周辺にもつくる、あるいは半島の周辺にもつくる、そのことだけにしておいたほうがよいと思う。むしろ漁民としては、ここから先、さて陸まで十二海里かどうかということを判断するのは、それのほうがよっぽど簡便なんです。そうじゃなくて、その二つの専管水域の境目のところに両方に三角のものをわざわざ設けると、さてこれは共同規制水域になるのか、あるいは専管水域になるのか、準専管水域になるのか、そういう微妙な区別というものは漁民ができるはずはないじゃないですか。やはり、専管十二海里という簡便な方法でだけやるならば、そういうほうが紛争のおそれがない。だから、そうじゃなしに、いま大臣が言われた、この漁場を一体どっちのものにするかという、そのことが問題のためにこの禁漁区域という妙なものを設けたというのが真相じゃございませんか。
  302. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは妥協の産物です。交渉の経過を申し上げますと、もう御承知でしょうが、向こうは、済州島を含めてすりばち型に大きく直線基線を引いてくる、こういうことを強硬に去年以来主張しています。そういうことでございますから、それで線を引いた場合には、その外がまた専管水域になりますから、そんな膨大な区域をそういう国際的に認められないような線の引き方で引かれたんでは、これはいけない、こういうことから、私どもはそれを排撃いたしまして、結局、国際的な先例にならった線の引き方とするならば、いま申しましたように、半島についての直線基線を引くとして、それから十二海里をとってみたらどうか、それから、済州島は低潮線から引いて十二海里をとってみたらどうか、こういうのが国際慣例じゃないか、こういうように話を進めたので、向こうはこのすりばち型の線を引くこと撤回しました。そういう形でだんだん話が詰まってきまして、それで私のほうの引き方に大体同調してきた。ところが、同調してきたときに、そういう入り組みができておることになったものですから、その入り組みにつきましては紛争を避けようというようなこと、それから漁場でございますので、なるたけ狭い範囲において紛争を避けるような線でこれを妥協しよう。これは妥協の産物です。実際言うと。だから、そういう筋じゃございません。
  303. 松井誠

    松井(誠)委員 妥協の産物で、いま大臣の言われたような経過でそうなったということは、われわれも新聞を通して知っております。ただ、私がお尋ねをしたいのは、紛争を避けるためにというきれいごとな御答弁がありましたので、具体的にここが一体なぜ特に紛争の場所になり得るのか。むしろ、紛争を避けるためならば、先ほど言ったように、この専管十二海里という簡明な線を専管水域とする。そして、あとは共同水域の中に入れて、共同規制水域の規制のしかたの中でいろいろ考慮すればよさそうなものだ。この二つの三角形というものを共同規制水域の中に入れないで、そうかといって専管水域の中へも入れないで、両方のあいのこのような形で、いわば妥協の産物ができた。これは先ほどから禁漁区域ということばではないと言いましたけれども、正確には何という名前をつけるのか知りませんが、どっちみち普通の国際法的な慣行としては全然ないものなんですね。
  304. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは、国際法上はなくても、協定上はそういうことはあり得ます。両方で入らないという、たとえばソ連とのオホーツク海のような場合もありますし、あるいは日本側だけが入らないというようなところもないわけではございません。これは協定上ではあり得ることでございます。国際法上は、そういうことは専管水域とかなんとかいうことではなかろうと思います。扱いは、その入ったくぼみは専管水域並みに扱う、こういうことです。
  305. 松井誠

    松井(誠)委員 ですから、専管水域並みに扱うのですから、こちらは入れなくて向こうは入れるということでしょう。ですから、国際的に協約を結べばいろいろあると言った禁漁区域というものは、双方ともが資源保護のために入らない。こういうように一方的に入るのならば、これは専管水域以外にないじゃないですか。これは専管水域でなくてこういう専管水域に準ずるというような取り扱いがあるかということです。
  306. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 それは、両国が同意した場合には、これはあり得ると私は考えております。
  307. 松井誠

    松井(誠)委員 いや、国際的にいままで例があるかということです。
  308. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 先ほどから農林大臣お答えしておるとおりの事情でできましたわけでございますが、先例があるかないかというお尋ねでございますが、私どもは改正をしたいと言っております例の日米加の漁業条約で、東経何度から東のほうには入らないでほしいというような例はございます。
  309. 松井誠

    松井(誠)委員 私もその点をお聞きしたがった。その日米加の条約では、日本がいわゆる自発的抑止の原則ということで入っちゃいけない。一方は一〇〇%全然入れない。そういう例は日米加の条約にあります。あるから、日本は、そういう不平等な条約はいかぬじゃないか、自発的抑止の原則はやめようじゃないかという原則を持っておるじゃないか。それで、そういう原則に立っていま交渉して難航しているじゃないですか。これはその例にならったのですか。そういうばかな話はない。
  310. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日米加のアブステーンの地域というものは相当広い地域であります。それから、この条約が一方的押しつけのきらいのある条約でございますから、平等の立場で条約を改定しようということで折衝いたしておる次第でございます。いまの済州島との間は、それと比較いたしますならば範囲が非常に狭い範囲でございます。そしてまた、こういう狭い範囲で、先ほど言いましたように、紛争するということは両国のためによくない、いままでの李ラインのようなことをやめて、そして安全操業をお互いにしよう、こういうときにおきましては、しばらくの間、そういう紛争を避けるような地域を設けておくのは、これは両国の安全操業のためにもよかろう、こういう立場から話し合いを進めたわけでございます。
  311. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 関連。ただいまの例にあげられました自発的抑止原則、ただいま松井委員が言ったとおり、あの自発的抑止原則というのは、ある国が資源保護の措置をとっていて、そして、とっている魚族については過去に実績がない国は自発的にそこに入らない、漁獲を行なわない、これが自発的抑止原則です。いいですか。ある国がある魚族について保護の措置をとっておる、その水域で、しかも他国がそこに実績のない場合には、自発的抑止をやる、これが日米加の自発的抑止原則です。そうすると、いま問題になっておる済州島の東西のいわゆる自発的禁漁区域ですね、新しいことばで言えば。自発的禁漁区域なんということは、自発的抑止の原則の内容に当てはまらぬ。あそこは実績のあったところです。大いにとれるところです。しかも韓国は何もあそこで魚族の資源の保護をやっていないということは、全然自発的抑止の原則以下ですよ。全然無原則である。これは国際的に問題にならないです。つまり、あえて言えば、日本が初めて採用する専管水域十二海里、これのいわゆる例外措置としてあの水域を拡大したということです。全くこれは国際海洋法的に見ても問題にならない。例もない。そして、紛争をなくするということが理由なら、韓国も入れるべきではないのです。両方とも入れるべきではない。むしろ、紛争をなくしたいというのは、あなた方の交渉が難航している、その交渉の紛争をなくしたいためでしょう。どうです。
  312. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、松井委員から何か例があるかというお尋ねがございましたので、そういう例があると申し上げたわけでございますが、今回の日韓間で考えておりますことは、質的に日米加と同じだという意味で申し上げた例ではないわけでございます。先ほど来大臣から申し上げておりますような紛争の防止ということの意味は、楢崎委員がおっしゃるような意味ではなくて、韓国の本土から済州島からと引きました専管水域が重複をいたしまして、その両側に複雑な公海ができる、特に東側などは非常に細長い公海ができるわけでございます。そうすると、海流の影響とかその他のようなことで専管水域の侵犯とかそういうことがしばしば起こるということがあってはいけない、そういう趣旨でございまして、別に交渉の紛争を避けるためとか、そういう意味ではございません。
  313. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、今度の済州島の東西の措置は、こういう措置をしておっては、それよりもやや理屈のある自発的抑止、原則の廃止の問題なんか、とても日本は今後言い出し得ないのじゃないか。だから、あなた方は、済州島の東のほうはなるだけ国際的な慣行に近づけようとして百二十七度七分でがんばられた。それが妥協に妥協を重ねて、結局百二十七度十三分になったじゃないですか、直線に全く広げて。西のほうは百二十六度でがんばられておったのが、ついにそれからはみ出て筋かいに斜線を引くというような形になった。もし両方とも入らないということであったならば、あなた方が国際海洋法を守ろうとする理由の半分くらいはわれわれは認めていいです。あれをがんばり通しておれば。これは全然国際法的な慣行を無視したやり方であると言わざるを得ないわけです。どうでしょう。
  314. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日米加のアブステーンによるものは、確かに実績のないものでございます。あそこは実績のあるところでございます。そうでございますけれども、先ほどから申し上げておりまするように、交渉の経過から申し上げて、すりばち形に線を引くというようなことが国際法上の先例にもとる、こういう私のほうの見解から、私のほうの専管水域の引き方、これに向こうが同調してきましたから、そういう意味におきまして、その入り組みにつきましては、これは両方禁止区域にすればよかろうという御説でございますけれども、それは一番そのほうがいいかもしれません。しかし、そのまわりが専管水域でございますから、その専管水域の中にまた入り組んだ両方禁止水域、こういうことにしますと、これまた紛争の原因をそこに残すわけでございます。そういう意味でありますので、これは専管水域並みに最小限度にあそこをきめた、こういうことでございます。でございますから、これは国際法上の問題ではなくて、両国協定上の問題でございます。アブステーンの原則を排除することがこのためにできなくなるじゃないか、こういうような御懸念もあるようでございますけれども、アブステーンの原則とは質を異にしたもので、両方話し合いできめたものでございますので、アブステーンの原則を排除するほうはこれによって支障を来たすということはない、そういうふうに考えます。
  315. 松井誠

    松井(誠)委員 これは妥協の産物で理屈が立たないということを率直に言ってくれれば話は別だいと思うのですけれども、やはり、いまの次長のお話のように、これは紛争を避けるためなんだということになりますと、その紛争が、しかも、漁民は一体どこからどこまでがどういう海域かということがわからない、そこから来る紛争だということになると、その紛争がなくなるという時期は来ないわけじゃないですか。当分の間というのは、その当分の間というものを必要とするその間が当分の間。その必要とする理由がなくなれば共同規制水域に戻すという趣旨だとすれば、一体なぜこの禁漁区域なるものを認めるか。それは紛争を避けるため。その紛争は一体将来なくなるというめどがあるのですか。
  316. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 協定が正式に発効をいたしますれば、御承知のように、あの海域において従前乱れておりました漁業秩序が確立をしてまいるわけでございますから、そういう秩序の確立が見きわめがつきますまで、そういうふうに考えたいという趣旨でございます。
  317. 松井誠

    松井(誠)委員 漁業秩序の確立というのは一体どういうことなのですか。日本はその準専管区域には入らないけれども、すぐそばの共同規制水域までは行くわけでしょう。日本の漁業秩序を言うのですか、韓国の漁業秩序を言うのですか。
  318. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 両国の漁業に関する操業秩序という趣旨でございます。
  319. 松井誠

    松井(誠)委員 もっと具体的に答えてください。これは、当分の間というのはどれくらいの期間かというめどをつけるためにどうしても必要なのです。当分の間というのは、この条約の期限と予定されておる七年とか十年とかいうその期間とほとんど同じものだとすれば、これは実質的に専管水域を広げたというだけなんです。そうじゃなしに、その有効期限のうちでも、なおかつ、その理由がなくなれば、これは共同規制水域に戻すということであれば、一体それは具体的にはどういう理由が障害になっていまこれを設けるのか、その具体的な障害というものは、どういう順序で、つまり、漁業秩序の回復というか、整備というか、そういうものができると考えておるのか、それらをもう少し具体的にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  320. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 先ほど申し上げましたように、両国の間の漁業秩序が確立するまでということでございますし、その当分の間というのはどういうことかということは、昨日も赤城大臣お答えになりましたように、有効期間の範囲内でそういうことができるということですから、その間に両国の間の漁業秩序が確立すれば、私どもの立場ではそれは公海ということでございますので、そういう確立ができたというふうに判断をする時期までということでございます。
  321. 松井誠

    松井(誠)委員 いまの御答弁の中で一つはっきりしたことは、当分の間というそういう条件がなくなれば、これは公海に戻る。これはおそらくは共同規制水域の中に入るのだろうと思う。これはいまの私の質問とはちょっと横にそれますけれども、一応念のために念を押しておきたい。そうですね。
  322. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 現在考えております外縁の共同規制水域の中でございますから、そういうふうに御理解をいただいてけっこうだと思います。
  323. 松井誠

    松井(誠)委員 そこで、漁業秩序の確立ということでありますけれども韓国が具体的にどういう秩序をどう確立をするのかは別として、それでは、水産庁では、この朝鮮近海の周辺の漁業秩序の回復、あるいは済州島周辺の漁業秩序の確立というのは、具体的に何を意味して、どういう手順でやろうとしておるのか。つまり、漁業秩序の確立というようなきわめて抽象的なことで、当分の間というもののめどは全然つかない。当分の間というもののめどがつく限り必要な限度で、一体漁業秩序の確立はどうなったらどうなるのか、どうなったらそれは漁業秩序が確立をされたと見るのか、御答弁願いたい。
  324. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 御承知のように、いままでこの海域ではたびたび拿捕事件というようなことが起こっておりましたわけでありますが、これからはそういうものがなくなるということは、先ほど来赤城大臣からお答えをしておるとおりでございます。そういうことも過去において続いておりましたような事情とか、あるいは今度新しく協定で、必要の隻数とか網目とか光力とか、いろいろなことをきめてまいりますわけでございますから、そういうことが両国の漁民に十分熟したと申しますか、そういうような状態の判断ということだというふうに考えております。
  325. 松井誠

    松井(誠)委員 いま二つのことを言われましたけれども、一つは、拿捕とかそういういわゆる不法の事態がなくなるというのが漁業秩序の確立だ。非常に勘ぐって言えば、この当分の間というものを先に延ばそうとすれば、拿捕をやったほうがいい、韓国としては拿捕をやって漁業秩序の確立を妨げておれば、当分の間はいつまでも続くということだ。そんなばかな理屈はないでしょう。そういう意味ですか、これは。
  326. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 私のことばが足りませんで誤解をなさったのではないかと思いますが、私が申し上げた漁業秩序の確立というのは、新しく協定でできた諸規制等が十分漁民の間に熟していけばそういう紛争も避けられるであろうということを申し上げたので、もし拿捕というようなことが今後も繰り返されるというようなことがあれば、それはやはり協定の違反というような状態にもなるわけでございますから、そういうことがあるということを前提にして申し上げたわけではないわけでございます。
  327. 安藤覺

    安藤委員長 ちょっと申し上げますが、農林大臣の時間が切迫しておりますから、なるべくそこへ集中してお願いします。
  328. 松井誠

    松井(誠)委員 時間がございませんので、それではひとつ私も簡単にお尋ねをいたしますが、いまの問題はやはり残っておると思うのです。当分の間というもののめどが、いまのような御答弁では、さっぱりわれわれにもつかない。いわんや漁民にもつかないだろうと思います。  その次に、共同規制の問題についてお尋ねしたいと思いますけれども、この共同規制区域というものを設けた理由。端的にお聞きをしますが、これは一体魚族資源の保護という立場で設けたのだと私は思いますが、念のためにお伺いしたい。
  329. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 その点は、すでに赤城大臣からお答えを申し上げておりますように、二つの意味があると思います。一つは、李ラインという一方的管轄権を公海上に不法不当に向こうがやっておったわけでございますから、それを実質的になくさせるという意味で、専管水域十二海里の外では共同の漁場であって一方的な管轄権が及ぶのではないということを協定上明白にするということが一つと、あわせて魚族資源の保護に役立つ、この二つの趣旨を持っているというふうに考えていただけばいいと思います。
  330. 松井誠

    松井(誠)委員 この共同規制の原則でありますけれども、きのうの大臣の御答弁ですと、これは日本韓国とが同等な平等な扱いをする。それは、お答えになったかどうかわかりませんが、隻数においても漁獲量においもやはり同等な扱いをするという趣旨でございますか。
  331. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 昨日もお答えを申し上げましたとおり、原則として両国に平等に扱うというたてまえでございます。ただ、昨日も申し上げましたように、現在韓国の漁船の一隻当たりの漁獲能力が日本の漁船に比して格差がございますので、その点は隻数については若干の考慮を払う必要はあるであろうと考えておりますけれども、漁獲量あるいは網目、光力、船の大きさ、そういうものについては両国に平等に適用されるものというふうに御理解をいただきたいと思います。
  332. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、漁獲量は、韓国がいますぐその能力があるかないかは別として、少なくとも日本が年間十五万トンであるとすれば、この共同規制水域における漁獲量は、韓国分を合わせて三十万トン、これが、魚族資源保護のために、それだけならばだいじょうぶだということを前提にしておる、こういうように理解していいのですね。
  333. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 そういうことではございませんで、要するに、現段階では両方合わせて三十万トンということにしてございますけれども、本来ならば、資源的な科学的な調査をいたしてからそういう結論を出すべきでございますが、そういう調査を今後進めていくにつきまして、その調査が終わるまでの間放置をいたしておいては資源的に問題もございますから、少なくとも日本の現状程度でとりあえずとどめておいて、将来科学的調査が終わった上で、さらにアジャストすると申しますか、調整すると申しますか、そういう立場であります。
  334. 松井誠

    松井(誠)委員 私が冒頭に、これは一体魚族資源の保護を目的にしておるのかということをお尋ねをしましたのは、そういう疑問があったからです。つまり、魚族資源を科学的に調査をして、総ワクこれだけだ、その総ワクの中で日本韓国がこれだけ分けるという形でこの漁獲量がきまったのなら、これは話は別だ。しかし、そうじゃなくて、その科学的な調査も何にもなくて、日本の実績を基礎にして、そうして、その実績まで韓国の漁獲量がこれから伸びてくるであろう、そうすれば倍になるかもしれない、しかしそれは魚族保護という立場からは必ずしも障害にはならないという、やはりそういうめどがなければこういう措置はできないでしょう、魚族資源の保護というものを目的にする限りは。ところが、そうじゃなくて、この共同規制というものを設けたほんとうの理由は、一方的な規制というか、つまり、魚族資源の保護という、日韓両方にとってどうしても必要だというそういう目的から割り出されたものではなくて、そういう共同規制という場合における国際法的な一般の原則というものをはずしてこれがきめられたんではないか、私はこういう疑問を持つわけです。いま言われたように、いまのところは科学的な調査ができていない。将来韓国がどんどん伸びるかもしれない。伸びたときに、かりに合計二十万トンになったとする。二十万トンではとても魚族資源の保護にはならないということになったときは、一体どうするか。
  335. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 先ほど、共同規制区域を設定をすることにしました趣旨は二つあるということを申し上げたわけでございますが、たとえば網目を規制をするということは、小さな魚をとらないということでございますから、その限りにおいては、明らかに資源保護の措置であるというふうになるわけでございます。漁獲量については、すでにたびたび農林大臣からお答えを申しておりますように、それは日本の現在の出漁実績である隻数を無制限にあの海域に出ていくということでは漁業の秩序が守れませんから、それを確保した上でそれをアジャストするためのめどということで考えておるわけでございます。そのことが、反射的にと申しますか、乱獲をしないという効果を持つというふうに御理解をいただきたいと思います。
  336. 松井誠

    松井(誠)委員 反射的に乱獲をしないという効果を持つかどうかは、これからあと韓国の漁業の生産力によって左右されるわけですからね。しかし、もう時間がありませんから、私はその点はもうやめますが、この漁業水域の問題を考えても、質問はいたしませんでしたけれども、領海がまだきまらぬというそのこと自体もおかしいし、それから、国際法的に全く例のない一方的な立ち入り禁止区域というものを設けるのもおかしい。共同規制といいながら、実はそういう科学的な調査というものが何もなくて共同規制のワクをきめるということもおかしい。つまり、国際的ないろんな慣行というものから飛び離れて、あるいは無視して、こういう協定を一体なぜ急がなければならぬのかというところに根本の問題があると思う。  しかし、その点は省略をしまして、最後に一点だけ、けさの新聞によりますと、成立したといわれる貿易会談の中で、特に漁業の、これは一次産品の輸入の問題について、具体的にどういうような取りきめがなされたのか、全般のことは必要じゃございませんで、この一次産品の輸入について貿易会談ではどういう取りきめがなされたのか、その点をひとつ御報告願いたいと思います。
  337. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 和田水産庁次長からお答えいたします。
  338. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 一次産品のうちの、水産物関係についてお答えを申し上げます。  韓国側としては、ノリについて非常に強い要望がございましたが、これは、そのまま自由化をいたしましたり、大量に入れますことは、すでに御承知のように、日本のノリの生産者にいろいろ悪影響があるわけでございますから、生産者にしわのいかないような対策が講じられた上でなければ輸入はできないという考え方でございます。それから、その他の一般水産物についてもいろいろ韓国側から強い要望がございましたが、これも従前どおり日本の国内の需給事情を前提として弾力的に考えるということ以外にはないという立場でございます。
  339. 松井誠

    松井(誠)委員 いまのお話だけでなしに、けさの新聞に伝えられるところによれば、この一次産品の輸入については、もう少し成文化をされたものがあるのじゃないですか。成文化されたものはございませんか。要綱は。
  340. 中山賀博

    ○中山政府委員 会談の結果につきまして、合意議事録と、それから同時にこれを要約した共同声明、ジョイントコミュニケが出ております。
  341. 松井誠

    松井(誠)委員 その一次産品の輸入の問題のところだけをもう少し詳しく報告をしてもらいたいのです。
  342. 中山賀博

    ○中山政府委員 アグリードミニッツ、合意議事録につきましては、両国間でこれを公表しないというたてまえになっております。ただ、内容を申し上げますれば、韓国側から、特に両国間の貿易の不均衡を是正するために、先ほどお話の出ました一次産品、なかんずくノリ、それから魚介類、あるいは畜産物、あるいは米、葉たばこ、無煙炭、あるいは鱗状黒鉛とか、あるいはかんてん等について日本側の輸入の制限を緩和するように強い要望がございましたが、わが方から、これらの要望を実現するために研究しよう、そうしてまた、できるものから、そのうちいろいろな処置を考究しまして、可能なものから逐次これを実現していきたいということを述べております。
  343. 松井誠

    松井(誠)委員 一部の新聞の伝えるところによりますと、ノリの場合には二億枚以上という数字をあげたやに出ておるのですけれども、これは数字はあげないのでございますか。
  344. 中山賀博

    ○中山政府委員 先ほど申し上げましたように、合意議事録はこれを公表しないというたてまえになっておりますが、そのノリの問題につきましては、日本の市場がその輸入のために攪乱されぬようにいろいろの措置を講じ、またルートが確立するということを条件にいたしまして、二億枚から五億枚の中で努力するというようにわが方の意向を述べでおります。
  345. 松井誠

    松井(誠)委員 二億枚から五億枚の間。ほかの水産物については数量は明示をしないのですか。
  346. 中山賀博

    ○中山政府委員 原則として明示しておりません。
  347. 安藤覺

    安藤委員長 松井君、ちょっとあなたに申し上げますが、農林大臣は時間が来たのですが、よろしゅうございますか。
  348. 松井誠

    松井(誠)委員 もう十分……。  原則としての話ではなくて、ノリについては二億ないし五億という数字が出たそうですから、ほかのものについて数字を明示したものがあるかどうかという具体的な話です。
  349. 中山賀博

    ○中山政府委員 原則としてと申し上げましたのは、魚介類の輸入数量については明示はございませんが、ただ、するめにつきましては六万ピクル入るように努力することを述べております。
  350. 松井誠

    松井(誠)委員 それでは大臣にひとつお尋ねをしたいのですけれども、いま、御承知のように、韓国だけではなくて、いわゆる後進地域との貿易の不均衡の是正、いわゆる南北問題というのが非常に大きな問題になっているのですね。その韓国との貿易というのは、一体日韓交渉の一つの一括解決の中に入るということが私はおかしいと思う。これは純然たる貿易会談として、全く一括解決の方式とは別に進められるべき問題であったと思う。それを、李ラインという一種の人質政策に引っぱられて、そうして、この貿易会談が、かりにほかの低開発国から要求があったときに応ずることができないような、そういう条件で韓国とだけやったということになると、私は非常に問題があると思う。南北問題の全般的な立場から考慮されて具体的にこの数字まで出されておる、これはやはりそういう心がまえでされたんですか。
  351. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私のほうの漁業問題とこれは関連ございません。南北問題その他一般の問題からこういう話が起こって、そういう話をしているのだと私は了承しておりますから、私のほうの漁業の問題を解決するための条件とか、そういうことには全然関係ございません。
  352. 松井誠

    松井(誠)委員 これはいわゆる日韓交渉の一括解決外なんだ、しかし、外から見ておる限りは、まさに徹夜をしてまで一緒の時期に間に合わせるというのですから、これはまさに一括解決です。しかし、その点は深く追及をしませんけれども、私のお伺いしたいのは、この問題が韓国との間で人質政策のおかげであるか一括解決のおかげであるかは別としまして、ともかく、南北問題に対する日本の全体的な処理というものを誤らない、そういう配慮でなされるべきだと思うのです。農林省もおそらくこの一次産品の輸入の問題については頭が痛い。痛いだけに、やはり韓国の問題というのが悪い意味で先例になっては困るということをお考えだったと思う。だから、直接農林省が衝に当たったのではないにしても、いわばそういう意見、そういう立場をはずすなということを、これは交渉したのは外務省のようですが、そういうところへ強く申し入れをしていかれたのですか。
  353. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 打ち合わせがありましたときには、いまおっしゃるような態度で臨みました。
  354. 松井誠

    松井(誠)委員 大臣が急ぐものですから、話がちょっと飛ぶかもしれませんけれども、けさの新聞では、一次産品の輸入の問題の一番最後に、例の凍結されておりました漁船の輸出、この解除を検討するという一項が入っておるように伝えておるのです。これは間違いございませんか。
  355. 中山賀博

    ○中山政府委員 漁船の輸出の問題については、いろいろ従来から経緯がございまして、先方から強い解除の希望はございましたが、わがほうといたしましては、これを研究して、可能性を考慮するということを答えております。
  356. 松井誠

    松井(誠)委員 その解除を考慮をするというのは、もう少し言えば、具体的にはどういうことをお考えになっておるのですか。たとえば、今度の日韓交渉でいろいろな請求権の問題なりあるいは漁業協力の問題なりが解決をしたそのときに、この凍結を解除をしよう、そういう意味ですか、これは。
  357. 中山賀博

    ○中山政府委員 この漁船の輸出をとめております理由は、いろいろいきさつがございまして、ことに日本の漁船が先方によって拿捕されている、こういうような事態も考慮に入れて、これが輸出をとめているわけでございます。したがって、いろいろな条件、そういうようなことも条件の一つに入りますが、そういうものが解決すれば、普通の輸出として考えてこれを許可するということを考えているわけでございます。
  358. 安藤覺

    安藤委員長 松井君、農林大臣の時間が切迫してきているのですが……。
  359. 松井誠

    松井(誠)委員 もう一点だけ。  いまのお話では、その他いろいろの事情ということを言われましたけれども、一つあげられた日本漁船の拿捕という問題が一番大きな理由だと思います。そして、おそらくは日韓交渉というものの一括解決ができればその問題も解決をする。そうすれば、それまでは凍結をするが、そのときには解除をしますという、具体的にはそういう趣旨をここに盛ったのじゃないかと言うのです。
  360. 中山賀博

    ○中山政府委員 そのとおりでございます。
  361. 松井誠

    松井(誠)委員 この漁船の輸出の問題というのは、いままでずいぶん問題になってきておった問題でありますけれども、これが漁業協力という形で行なわれなくて、貿易会談の中で処理をされる。そうすると、こういう漁船の輸出というのは、延べ払いというのではなしに、普通の貿易のベースでいく。もう時間がないから特別にお尋ねをしないのですけれども、漁業協力というのは、一体その協力の内容は具体的には何をどういう形で協力をしようというのですか。
  362. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 漁業が盛んになるように協力をするということであります。くだいて。(発言する者あり)これから言うことを聞いてください。これから申し上げますから。すなわち、今日の韓国の漁業の状態から見まして、漁船あるいは漁具、とにかく一切の、漁業活動に資する上において設備その他が非常に低劣であるという現状にあるのでありまして、これを育成する、こういう意味の主として資金上の援助でございます。
  363. 松井誠

    松井(誠)委員 農林大臣お急ぎのようですから、最後に一点だけ、いまの貿易あるいは漁業協力の問題についてお尋ねをしたいのですけれども、御承知のように、いま日本の沿岸漁業というものは非常に不振をきわめておる。その中で、ノリとかあるいはその他のいわゆる養殖というのは、その選択的拡大ということで脚光を浴びておる。やっとそういうときに、今度はノリを二億枚ないし五億枚、数量まで明示して入れるということになる。これは、ほんとうに日本がノリが不作であって、品がすれになったから入れるというなら話は別なんです。しかし、少なくとも二億枚以上という数量を明示したということになりますと、これは日本のノリの生産漁民にとっては非常に大きな問題です。漁業協力の問題にしても、あと外務大臣にもう少し詳しくお尋ねをしますけれども、とにかく、日本の漁業、日本の漁民と競合をするという形になってくる。ですから、この日韓交渉というのは、私が最初に申し上げたように、日本の漁業や漁民の犠牲において行なわれておる。これは一体どういうわけなのか。漁業協力といっても、漁業協力で得をするのは漁民ではない。漁業協力で得をするのは、いわば日本の造船資本とかそういう資本である。漁民は漁場を狭められ、あるいは韓国の漁業の振興という形で競合者を育てる。あるいは沿岸漁民の漁獲物に競合するものが入ってくる。まさに日本の漁民、漁業の犠牲においてのこの妥結が非常に急がれておる。こういう問題について、農林大臣として内心やはり非常に大きな抵抗を感じないと、私はおかしいと思う。この点を最後でありますからひとつお伺いをして、私の農林大臣に対する質問を終わりたいと思います。
  364. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は再々申し上げておるのでございますが、かりに日韓の国交が正常化しないといたしましても、漁業の問題は解決したい。これは、共産圏のソ連とでも、あるいは中共のような国とでも、民間協定をして、漁業の資源を保存しながら安全操業をしよう、こういうことをやっておるのでございますから、韓国との間にこの安全操業が行なわれなくて、そうして十二年間もこの問題で悩んでおるというようなことは排除したい、私はこういうつもりで、漁業の問題を扱うように言われましたので、折衝を続けてきたわけでございます。でございますが、同時に、これを日本漁民の犠牲において解決する、こういうことは私は考えません。毛頭考えません。しかし、国際的な問題でございまするから、これは、南方におきましてもどこの国でも、やはり国民のよくなるということにある程度協力をするということは、これは国際場裏において日本がとってきた態度でございます。そういう意味におきまして、協力をある程度するというようなことは、これは当然だと思いますが、しかし、さりながら、日本漁民の犠牲においてこの問題の解決をはかる、こういうようなことは毛頭考えておりません。でありますので、今度の交渉におきましても、安全操業ができるように、また日本の漁民の実績を尊重しつつ、これを実現させるべく折衝を続けてきたわけでございます。ノリの問題等を具体的にいたしましたが、ノリの問題等につきましても、昨年二億買いました。これは臨時の一億にプラス一億でございます。でございますけれども、これは生産者の立場を擁護しつつやろう、こういうことでございますので、たとえば、ルートにつきましても、生産者の団体におきましてこれを輸入する、買う、そういうことにしまするならば、相当期間保管等もいたしまして、日本の生産を阻害するというようなこともない。こういうようなことも考慮に入れて、そういうことを前提としてこれは入れてもよろしいと、そういうために努力しよう、こういうことにいたしたというふうに私も承知しておりますので、そういうことはまあやむを得ないというふうに考えております。
  365. 安藤覺

    安藤委員長 農林大臣に申し上げます。御退席くだすってけっこうです。
  366. 松井誠

    松井(誠)委員 外務大臣にお尋ねをいたしますけれども、この今度まとまったといわれる漁業協定、これで、専管水域十二海里という、それをお認めになった。この専管水域十二海里というのは、必ずしも国際的に問題がなく確立されておる慣行ではない。日本は、一九六〇年の会議のときに、六海里、六海里というアメリカ、カナダ案というものに対して棄権をした。その十二海里というものを認めたくなかった。しかし、今度はこの十二海里というものを日韓交渉を契機にして正式に認めるということ、きのうの農林大臣お話ですと、よその国でこの十二海里の専管水域の要求があればその話に乗るつもりですというお答えがあった。やはり、外務省としても、これからあとよその国から専管水域十二海里という線が出れば、これはもう断わりようがないだろうと思いますけれども、そういう見通しで、つまり、ほかの対外的な、ほかの国との交渉を見通してこのような十二海里という線に正式に踏み切ったのかどうか、この点はどうですか。
  367. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 だんだん専管水域が拡張されつつあるのは御承知のとおりでございます。かような情勢下におきまして、われわれといたしましては、今回日韓会談において十二海里の専管水域の思想を取り入れたわけであります。今後他の国に対してどうするかというお話でございましたが、われわれといたしましては、国際慣行がだんだん六海里から十二海里というふうに広がってきておるということを考慮に入れつつ、ケースバイケースで問題を処理したいと考えております。
  368. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、韓国との十二海里というのは、まだ国際的な慣行としては広がってないけれども韓国との場合にはまずやりました、これらあとそういう慣行が広がっていけば、ケースバイケースでやります。逆に言えば、との問題はまだそういう慣行化されてないときの異例の措置です。こういう趣旨ですか。
  369. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今日の国際情勢から見ると、これは日本のやったことは初めてではございますけれども、異例の措置とは言えないと思います。
  370. 松井誠

    松井(誠)委員 日本としては初めてですから、日本としては異例でしょう。
  371. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本としては初めてでございます。
  372. 松井誠

    松井(誠)委員 ですから、たとえばソビエトならソビエトが領海十二海里を主張しておる。専管水域の問題は領海とは違いますけれども、専管水域の問題で、よその国がこれから十二海里説を主張したら、もう反対はできなくなるんですね。だから、そのことを覚悟の上でこのような韓国との交渉はやったのだと私は思う。そうでございますという御答弁が一番簡単でいいんだ。そうじゃないですか。
  373. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ケースバイケースで今後やっていきたいと思います。
  374. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、この韓国の場合十二海里を認めたのは、どういうケースバイケース、どういうケースでこれは認めたのですか。
  375. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ケースバイケースというのは、一般的には言えないことでありまして、具体的な問題に直面して、そうしてその状況に応じてケースバイケースで処理する、こういう意味でありますから、いまから……。
  376. 松井誠

    松井(誠)委員 だから、具体的に日韓の場合にはどういう状況があったから十二海里を認めたのですか。
  377. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 とにもかくにも、李承晩ラインというものを一方的に想定して、そうして非常に不当な実力行使をやっている。わが国はこれを排除するために実力を使っておらぬ。こういうことで、あくまで話し合いのもとに従来この処理に当たってきたのでございますが、かような状況からいたしまして、とにかく国際慣行でだんだん認められつつある専管水域の最大限をとって、そうして、このいまわしい一方的な実力行為を停止させる、かような目的を持って作業をした次第でございます。
  378. 松井誠

    松井(誠)委員 いまのお話では、それはそれなりに筋が通っている。つまり、李ラインというものがあったから、そういう特殊な事情があったから、国際慣行としては最大の幅である十二海里についても認めた、こういう意味だろうと思います。そうしますと、本来ならば李ラインというものがなければ専管十二海里は認めなかったわけだ。そういうことになりますね。つまり、李ラインというものがあった、そういう特殊なケースだからやむを得ず十二海里を認めた、裏返しにすればそういうことですね。
  379. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういう仮定に対しては、あまりお答えしないほうがいいと思いますけれども、しかし、事実こういう問題があったので最大限の幅をとった、こういうことになるわけであります。
  380. 松井誠

    松井(誠)委員 ですから、仮定とかそういう問題ではなくて、大臣自身が言われた、李ラインといういまわしい問題があるから、それをなくさなければならないのだ、それと十二海里を結びつけたのですから、当然でしょう。李ラインがあったから十二海里を認めた。そうしますと、これは、これからあとはそういう特殊な事情でなければ十二海里を認めない。だから、逆に言えば、十二海里を認めたのは、韓国の場合にはやはり日本としては異例であった、そういうことに当然論理的になるじゃありませんか。
  381. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 逆は必ずしも真ならずということばがありますが、李ラインがあったので、どうしてもこの際は十二海里に踏み切ったわけでありますけれども李ラインのようなものがない場合にはどうだ、こういう逆は必ずしも真ならず、ケースバイケースでいきたいと思います。
  382. 松井誠

    松井(誠)委員 農林大臣は、きのう楢崎委員質問に答えて、将来よその国で十二海里の申し入れがあれば、その話に乗るつもりであります。こういう答弁をされた。これは明らかに食い違いますね。
  383. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私の申すこととおそらく同じような趣旨だと思います。
  384. 松井誠

    松井(誠)委員 農林大臣は、そういうケースバイケースなどという限定はしない。限定はしなくて、日本はまさに十二海里説をとったという、そういう前提で答弁をされた。ですから、ケースバイケースというような前提ではないのです。全然無限定だ。無限定で話に乗ります。こう言った。だから、あなたの場合には、そうではなしに、これは許し得る最大限度なんだ、その最大限度はこういう事情があって最大限度なんだと言うから、それならば、ほかの国では当然もっと狭いところへ戻るというように大臣は当然前提としてお考えになっておる。明らかに農林大臣と違うじゃありませんか。
  385. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 もちろん、そういう場合には農林大臣と十分に協議をいたしまして、そうして協議のととのったところでケースバイケースで実行いたしたいと思います。
  386. 松井誠

    松井(誠)委員 ケースバイケースというのは、言ってみれば、原則がないということですよ。ところが、農林大臣の言うのは、十二海里という原則から出発するということなんだ。明らかに違うじゃないですか。そういう大臣答弁をやっている限り、これはもう何時間たっても先へ進めない。ですから、違えば違ったでいいですから、違ったなら違ったとはっきり言ってください。
  387. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いろいろ所管所管によりまして考え方も別なんで、それで、各省の間で……   〔「それはおかしいじゃないか、違うとは何だ」と呼び、その他発言する者多し〕
  388. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。   〔「閣内不統一じゃないか、何を言っているのだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  389. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  390. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そこで、この各閣僚の間で協議をして、そして協議をととのえたところでやるのであります。
  391. 松井誠

    松井(誠)委員 しかし、これはそう簡単に終わらせるわけにはいかないと思うのですね。つまり、今度の日韓交渉で十二海里という線を認める。その十二海里の線を認めるのは一体どういう意味を持つのか。日本は御承知のように海洋国だと言われておる。したがって、相手の国の領海の範囲内、専管水域の範囲内というものを日本は非常に大きな関心を持っておるわけです。そういう日本であるから、韓国で十二海里を認めるのは、一体これからあとの外交に対してどういう意味を持っておるのか、どういう位置を占めるのか、当然そういう見通しがあり、農林省なり何なりと話の統一がなければならぬでしょう。漁業をつかさどっておる農林大臣が十二海里という広い線を認めると言っておるのに、外務大臣日本の漁業に対して非常に寛容であって、十二海里は必ずしも原則じゃありませんと言う。どっちでもいいのですけれども、とにかく不統一だということが問題であります。機関が変われば意見が違うということでは、これは国会の答弁になりません。
  392. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 農林大臣答弁をよく聞いておりませんが、しかし、話には乗るという趣旨であれば、初めからにべなくこれを反対する、これをつっぱねるということじゃないと思うのです。結局、相手の主張のいかんによってケースバイケースでこれをきめる。そのためには関係各省と協議を十分遂げて、それで内閣としては政策を立てておるのであります。
  393. 松井誠

    松井(誠)委員 肝心の農林大臣がおりませんけれども、藤崎条約局長はおそらくきのうおいでになったと思う。私のいま言ったことは間違いですか。
  394. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 日本政府としましては、この漁業水域の設定は必ず当事国間の合意によらなければならないという立場をとっておりまして、これは国際先例でもそうでございます。そうしますと、この漁業水域を設定しようという国から、利害関係のある国に、こういうことをしたいがどうだろうかという話を持ちかけてくるわけであります。農林大臣の御答弁の趣旨は、そういう相談が持ちかけられたときには、一応それの話には応ずるという御趣旨と思います。しかし、それを何でも一から十まで全部認めてしまうという御趣旨ではもちろんないわけでございまして、その一々のケースで十分理由があるかどうかということを検討の上で、十二海里の漁業水域の設定に同意するかどうかを決定するわけでございます。日本政府の立場といたしましては、すべての場合にすぐ同意するような印象を諸外国に与えることは、国として不利だろうと思います。   〔「もうすでに日韓の問題で不利なことをしているじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  395. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。   〔「農林大臣の言うことと意見が違うのだから、意見の調整をしたほうがいい」と呼び、その他発言する者多し〕
  396. 安藤覺

    安藤委員長 松井君、お進めください。
  397. 松井誠

    松井(誠)委員 いまの問題は、条約局長の御答弁でありますと、これは外務大臣の意見と同じということでありますけれども、これはひとつ速記を調べてさらに続けたいと思いますので、時間の節約の意味でもう一つ外務大臣にお尋ねをしたいと思うのです。  それは、この専管水域に関係があるわけでありますけれども、きのうの話ですと、韓国は領海を何海里にしておるのか、必ずしもはっきりしないということであります。領海の範囲ははっきりしないけれども、しかし、漁業の専管水域はまずきまった。このことには間違いないですね。
  398. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 もちろん、領海と専管水域とは別でございますが、韓国がどういう領海主義をとっておるか、いまのところは非常に明らかではないのでございます。
  399. 松井誠

    松井(誠)委員 領海の範囲がはっきりしなくて、専管水域の範囲がまずきまった。専管水域は、もうきのうも話も出ましたように、事漁業に関しては、事実上、韓国の場合、日本が入り会い権を放棄したという関係もあって、漁業に関しては領海と同じである。しかし、全く領海と同じわけではないわけです。漁業以外にはやはり領海と領海の外の専管水域とは違いがあるのです。その境がはっきりしない。これは漁業協定がきまるまでにはっきりさせないまでいくつもりですか。
  400. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 専管水域の中には入らないことになりますから、特に領海の範囲をこの際韓国側にはっきりさせるように協定できめる必要はないかと思っております。
  401. 松井誠

    松井(誠)委員 条約局長ともあろう者が、そういう御答弁はおかしいじゃないですか。それは、漁船は入らないでしょう。しかし、普通の船舶は入っていくじゃないですか。普通の船舶は入っていくでしょう。普通の船舶が入っていって、どこから先が領海かわからない。専管水域の境ははっきりする。しかし、専管水域に入って、どこが領海かということがはっきりしない。漁船に関する限りは、これはもう領海と専管水域の差はないでしょう。しかし、それ以外の問題には大いに差があるわけですから、ですから、領海の範囲をきめないままで漁業協定をお結びになるのかということです。
  402. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 領海の範囲は、国際的にすべての国が合意した範囲がきまっておれば一番いいわけでありますが、各国がかってにきめることもできないわけでございまして、日本は三海里という立場をとっておりますけれども、ほかの国でそれ以外の立場をとっておる国もございます。しかし、いま先生が御指摘の船舶の航行の点につきましては、たとえ領海でありましても、無害航行の権利というものは国際法上確立しておりますので、特別の支障はないかと思います。
  403. 松井誠

    松井(誠)委員 専管水域の中と領海の中とは、つまり、韓国の取り締まりといいますか、管轄権といいますか、管轄権は、一般の管轄権は領海しかないわけですけれども、漁業以外の問題については領海の内と外とでは韓国の主権の行使のしかたが違うわけでしょう。そういうものであるのに、はっきりさせないでおいていいのかどうかということです。私がこういうことをお尋ねするのは、一体韓国は領海をどの程度に考えておるのかはっきりしない。初めから十二海里にしたかったのかもしれないし、四十海里にしたかったのかもしれない。あるいは李ラインそのものが領海だという考えだったのかもしれない。ところが、三海里が領海だということになると、韓国としては困るかもしれませんよ、いままでの例から言って。しかし、向こうが困ろうとどうしようと、やはり領海の範囲をはっきりさせなければ、せっかく国交を回復して、どこから先がさて韓国の領海でありますということがわからないままに、一体国交の回復ができるのですか。
  404. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 御意見でございますが、領海においても、無害航行をしておる限りは何ら沿岸国の官憲から干渉を受けることはないというのが国際法上の確立した原則でございまして、したがいまして、領海外であろうと内であろうと、一般の船が何ら危害をほかに及ぼさないで航行しておる限りは、全然沿岸国から干渉を受けるというようなことは起こらないわけでございます。
  405. 松井誠

    松井(誠)委員 それでは、その領海外の専管水域内、これは、漁船については、あるいは漁業については領海と同じ取り扱いをするのかもしれません。しかし、一般の船舶は領海に入った場合と入らない場合とで違うでしょう。領海の場合には臨検だとか拿捕とかいうものがある。しかし、いわゆる接続水域というものについては、それは領海と同じような主権が行なわれるわけじゃないでしょう。この専管水域というのは、国際法的にはいわゆる接続水域でしょう。明らかに違うじゃないですか。
  406. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 一般漁船以外の船舶については従来どおりなわけでございまして、これまでも韓国との間に一本の船舶が往来しておりますけれども、特別に、韓国側の領海の範囲がはっきりしてない、その関係から問題が起こったという事例もないように承知いたしております。
  407. 松井誠

    松井(誠)委員 今度きまりつつある、あるいはきまったこの漁業協定は、領海がある、専管水域がある、専管水域ではないけれども専管水域に準ずるところがある、それから共同規制水域がある。その外の漁業調査、これは地域じゃないというのですけれども、そういうものもある。一体、よその国から入って、ここからが漁業共同規制区域、ここは準専管区域、ここから先は専管区域で、さてそこから先は領海だという非常にややこしい運用をとらなければならぬ。そういうときに、いまのあなたは、領海だという主張が原因になって韓国と紛争はなかったと言いますけれども、それだけになおさら、その領海の範囲というものをはっきりさせなかったということが、逆に言えば紛争の原因だったわけでしょう。領海と考え得ないものをあたかも領海であるかのごとき取り扱いをしてきたということが問題であったわけでしょう。ですから、今度は領海はどこまでなんだ。李ラインはなくなるとする、しかし、さてそれでは領海はどこまでなんだ。漁業以外の一般の船舶の航行では大いに関係がある。当然はっきりさせるべきじゃないか。領海の範囲がはっきりしない、何でもかんでも領海にひっかけて紛争を起こしたというのがいままでの実例じゃないですか。実例があったから。領海というものがはっきりしておったから、あるいははっきりしてなかったから紛争がなかったというのじゃなしに、領海をはっきりさせないことが紛争の原因だったのじゃないですか。
  408. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 漁船と一般船舶と分けて考えていただきたいのでございますが、漁船については、李承晩ラインというような、領海にまぎらわしいようなことを言って、そのために紛争があったことは御指摘のとおりでございます。しかし、一般船舶の行き来については何らそのラインによって障害がありませんでしたし、また、領海の範囲主張韓国側がはっきりしてないということからもんちゃくが起こったこともないように承知しております。
  409. 松井誠

    松井(誠)委員 しかし、いま言われる、何でもかんでも一括解決をしようというこのときに、つまり、日本のすぐお隣の国が何海里説を主張しているのかはっきりしなくて国交を正常化しよう。これは、あなたの言われたのは、それはそれで理由はないとは言いません。しかし、逆に、なぜ一体領海をはっきりさせ得ないのか。いまあなたが言われたように、領海というのは国際的な合意がなくても一方的に宣言をできるという考え方もある。韓国はなぜ一体一方的に宣言をしないのです。宣言をしてもらわないのです。同意が要るか要らないかは別として、そういう領海というものをはっきりさせるということが——いままではかりに漁船以外の船舶については事故はなかった、しかし、これからもないという保証はないでしょう。そういういわば危険をかけてまで、領海をはっきりさせなくてもよろしゅうございますという積極的な理由があるのですか。
  410. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 海洋法会議というのを国際連合でやりましたときに、世界の各国にそれぞれの国は領海の範囲についてどういう主張をしているかということを問い合わせまして、それに答えた国と、全然答えなかった国が相当数あるわけでございますが、これは新興国に多いわけでございます。そういうケースが韓国以外にもあるわけでございます。  なお、韓国につきましては、われわれとしましては、一応三海里説をとっておるのじゃないかと思われるような事実があるということを昨日御答弁申し上げました。かりに、韓国にこの際聞きまして、はっきりしてくれるということになりまして、六海里とか十二海里とかいう主張をしましても、日本としてはこれを認めるわけにはまいらないわけでございまして、日本は三海里説をとっておるわけでございます。したがいまして、ここで無理に聞き出しまして、日本が認められない主張をされるよりは、むしろ、いままでの事実で大体三海里説をとっているのではないかということが推定されるならば、そのままにしておいたほうがこの場合としては適当ではなかろうか、かように考えております。   〔発言する者多し〕
  411. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  412. 松井誠

    松井(誠)委員 いまの条約局長の御答弁で、はからずも問題は出たと思うのです。つまり、日本は三海里説をとっておる、ずっとそれを主張してきている、しかし、韓国と正面切って話をすれば、おそらく意見は合わないであろう、そういう意味では、私はいまの局長の答弁意味があると思う。しかし、逆に、三海里説を向こうがとっておるらしいから、無理に引き出すことはやめたほうがいいなどというのは、通りませんよ。三海里説をとっておるということが想像ができるなら、推測ができるならば、三海里説で話をすればいい。話ができないのは、向こうは三海里説をとろうとしていないということがわかるからでしょう。そうじゃないですか。意見が合わないから伏せておこうということでしょう。そういうことがこれからあとの日韓の問題でいろいろな紛争の原因になるということは、常識があれば想像ができるでしょう。そういうものを伏せておこうということがおかしいじゃないですか。まさに一括解決の中に入れるべき重要なテーマじゃないですか。そう思いませんか。
  413. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 例のジュネーブ方式というものの中では六海里までは領海の主張を認めるということがあったわけでございますが、これによって六海里の主張をしておる国はありますけれども、この方式が国際的に採用されなかった結果、日本としてはまた三海里の主張に立ち返っておるわけでございます。現にソ連との間でも、この領海の主張の食い違いについて問題が起こったわけでございますが、お互いに相手方の領海の主張は認めない、自己の立場を留保するということでけりをつけておるわけでございまして、十三海里をソ連は主張しており、日本は三海里を依然として主張しておるままで、そのままになっておるわけでございます。
  414. 松井誠

    松井(誠)委員 そんなことは私も知っておりますよ。ですから、そういうことじゃなしに、意見の相違があるならば、相違があるということをはっきりさせるべきじゃないか、韓国主張というものをはっきりさせるべきじゃないかということを言っている。意見が合うかどうかは別ですよ。
  415. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 その点につきましては、漁業については特に必要はないと考えます。特に漁業協定に直接関係する問題じゃなくなっているわけでございます。それから、一般の船舶の航海については、これまでのところ支障はございませんということを申し上げておるわけでございます。
  416. 松井誠

    松井(誠)委員 何しろ一衣帯水という近いところで、しょっちゅう漁船以外の船舶もこれから往復するでしょう。そういうときに、いままでそのための紛争がなかったから、これからもないでございましょう、そんなことじゃ通らぬでしょう。しかも、李ラインというきわめて非常識な線が、先ほどのお話のとおりであるとすれば、かりにこれから撤廃されるかもしれない。しかし、それだけに、韓国としては領海というものの範囲を非常にこだわるに違いない。そのこだわった結果、十二海里が領海だ、あるいはもっと先が領海だということになって、日本は認めない、認めなければ認めなくても一方的な宣言でできるのだという考え方からいけば、そこでトラブルが当然起きるでしょう、そういう配慮がなしに漁業協定をやるというわけにいかないでしょう。私は、漁業協定だけの問題じゃないと思うから、農林大臣には聞かなくて外務大臣に聞いている。漁業だけの問題じゃないわけです。むしろ漁業にはあまり問題がない。漁業以外に問題があるのです。
  417. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 従来国際的に領海の点で争われたのはすべて漁業に関する問題でございまして、漁業以外の問題について、領海の範囲についての立場が異なったことから国際紛争が起こった事例は、私現在のところ存じません。
  418. 松井誠

    松井(誠)委員 それでは、領海を確定しないという理由としては、日本韓国とが領海の範囲について意見が一致する可能性がないのだ、あるいは意見の相違があるからこの領海は確定はしないのだという、少なくともそういう意味だととっていいですか。つまり、これからあと紛争の原因になるかどうかという問題は別として、これからあと紛争があるかないかという問題じゃなくて、いまは、何べんも言いましたように、この領海というのを積極的に持ち出さない理由は、日本は三海里をとっておるけれども韓国は三海里説ではないから、出さないのだ、だから問題を伏せておくのだという、少なくともその点はそういうように理解していいですか。
  419. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 実際のところを申し上げまして、そこまで突き詰めて考えているわけじゃございませんので、この漁業協定についてはその必要を認めなかったから取り上げなかっただけのことでございます。それが実情でございます。
  420. 松井誠

    松井(誠)委員 ですから、私はさっきから、漁業協定のために必要だということを言っているのじゃないのです。外務省として、この漁業協定で十二海里というものをきめるそのときに、この際一括解決の中に領海の範囲を確定するというその必要を感じないかということを言った。そうすると、あなたは必要がないと言う。必要がないだけでは私は納得ができない。これは私は必要があると思う。しかし、さっきのあのあなたの答弁のように、相手方がどう考えておるかということをなまじっか出すのはまずい、寝た子を起こすことになるという趣旨の答弁をされたから、それでは、少なくともこの領海を確定しないという積極的な意味というのは、両方合意がない、日本の認め得る三海里というものを韓国がとるかどうかはわからないから、意見の一致がはっきりしないからなんだというように理解をしていいかというのです。
  421. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 漁業以外の問題については領海の範囲を特にはっきりさせる必要をいままで感じたことがないわけでございまして、現実の必要がない場合には、先ほど私の申し上げたような、考慮も何もしないというほうに傾くほうに働くわけでございます。そういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  422. 松井誠

    松井(誠)委員 さっきお願いしました議事録がまだ来ておりませんので、来ました上でひとつ検討をして、相談をした上で質問を続行さしていただきたいと思います。
  423. 安藤覺

    安藤委員長 野原覺君。
  424. 野原覺

    野原(覺)委員 私は昨日外務大臣質問をいたしましたが……   〔発言する者あり〕
  425. 安藤覺

    安藤委員長 静粛に願います。
  426. 野原覺

    野原(覺)委員 昨日の私の質問の途中で、外務大臣は公式のレセプションということで、その質問は六時に打ち切られておるのであります。したがって、昨日の私が打ち切られました時点に立ち返って質問を継続していかなければならぬかと思いますので、その点からスタートして若干大事な点についてお尋ねをしたいと思うのであります。  私は昨日竹島の領土問題をお尋ねいたしまして、これに対する外務大臣答弁の途中で私の質疑が打ち切られておりますから、竹島の問題からやはり継続してお尋ねをしていきたいと思うのであります。  竹島の問題については、外務大臣は、一括解決の方針に変更ないかという私の質問に対して、その変更はございません、こういう御答弁でありました。第二点は、どのような竹島問題についての解決方法を考えておるか、こういう私の質問に対しては、国際司法裁判所に日本が提訴をして、これに対する韓国側の応訴、国際司法裁判所に係属して解決するという従来のやり方もある、けれども、このやり方だけに拘泥するのではなく、その他の方法も考えなければならぬのではなかろうか、こういう御答弁で、私とあなたの質疑応答は中断をしたのであります。そこで、私はお尋ねしますが、その他の方法を考えると申されますが、どういう方法があるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  427. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 向こうがこちらの提訴に対して応訴をした場合には問題はございません。しかし、何かの理由でこちらの注文どおりに応訴をしないという場合がもしありますならば、重ねて応訴を促す努力はいたしますけれども、これがどうしても不可能な場合には、他に適当な方法を考えざるを得ないだろう、かように申し上げたのであります。そこで、ただいまのところは、この国際司法裁判所を通じてこの帰属問題を確定するということが、ただいまわれわれが考えておる中で一番適切である、こう考えて、この方向に努力をしたいと考えております。
  428. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、その他の方法を考えるということは、あなたの答弁としてはまことにむだじゃありませんか。あなたは、昨日私に、その他の方法を考えなければならぬと、こう言った。ところが、その他の方法とは何かというと、これがまた問題になってはいけないというあなたの警戒心から、いや実は応訴の方式でいくのですと言う。それならば、これは国際司法裁判所に係属するいわゆる応訴の方式、その従来の政府の方針に変更はないという御答弁でなければならぬと思うのですが、いかがですか。
  429. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただいまのところはその方針で進みたいと思っております。これは少し先ばしったことを申し上げましたが、もしそれでどうしてもいけないという場合には他の方法も考えざるを得ない、こういうふうに申し上げたのであります。これは少し先ばしり過ぎておった。
  430. 野原覺

    野原(覺)委員 先ばしり過ぎているかどうか知りませんが、竹島問題を応訴の方式で解決するということについて、そのことは不可能でないとあなたはただいまの時点では判断をされておるか。いかがですか、そのとおりですか。
  431. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私のほうから考えますと、不可能な問題ではないと考えております。
  432. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、竹島問題については、あなたが外務大臣になられまして応訴の方式でいくかどうかについての外交折衝をやられましたか。
  433. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 従来の経過は聞いておりますが、私自身がこの問題についてまだ手をつけておりません。
  434. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたがお聞きになっておる従来の経過について御説明願いたい。
  435. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 アジア局長をして答弁させます。
  436. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 大平大臣のときから機会あるごとに国際司法裁判所で解決するということを申しております。最も最近の事例といたしましては、この間椎名大臣が訪韓されましたときも、この問題については日本としては国際司法裁判所にかけて解決することを要求しておるということをはっきり申しておられます。
  437. 野原覺

    野原(覺)委員 後宮さん、外務大臣は何らの外交折衝もしていないと言っているんですよ。あなたは、訪韓の際にこの点は交渉に持ち出したと、こう言っておる。いいかげんな答弁をしては困りますよ。
  438. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 折衝と申しますと、ことばが強過ぎるのでございまして、いろいろ向こうで懸案の話をしましたときに、竹島についてはこういう希望を持っているということを大臣のほうから申されまして、向こうは反対だと言って、それきりになった。ですから、要するに、折衝というふうなところまでまだ煮詰った話になっておらない、そういう意味でございます。
  439. 野原覺

    野原(覺)委員 応訴に対する韓国側の反対は、いまに始まったことじゃないでしょう。ところが、いまだに応訴の方式に固執をされるということには何か理由がなければならぬ。いまに始まったことではないのです。訪韓の際に、なるほどそういう話をしたら、それは困るということを韓国が言った。しかし、それはいまに始まったことじゃない。昭和二十九年じゃありませんか。日本韓国に対して口上書を提供して、そうして国際司法裁判所でこの問題は解決するのだ、こういう提案をしてから、ずっと韓国はこの問題については拒否してきておるじゃありませんか。昭和二十九年以来十一年の経過があるのです。それを、いまここで、私からその他の方法を追及されることをおそれて答弁をごまかそうとしておる。外務大臣はその他の方法に執着されておる。十一年間応訴の方式では取り上げることができなくなっておるんだからね。それでもなお、十一年間も応訴の方式を拒否してきて、しかも、あなたが訪韓の際に、あなたは話をしなかったかしらぬが、後宮アジア局長答弁によると、話をしたのだという。そうしたら、また拒否したのだという。それでもあなたは不可能でないと判断をされますか。いかがですか。
  440. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 竹島問題は、やはり日韓全面会談妥結の際に一括して、少なくともその解決の方法についてめどをつけなければならぬ問題であります。そこで、今回全面会談が進行中でございまして、この成り行きによっていよいよ竹島の問題について折衝を開始したいと考えております。
  441. 野原覺

    野原(覺)委員 地方行政委員会に外務省の局長が出席をして、社会党の華山委員質問に答えて、竹島問題は——華山委員がこれを取り上げたのは、島根県の穏地郡五箇村にあれは属する。そこで、これが地方行政で問題になった。そうしたら、いや、竹島問題は、とても応訴の方式では、向こうが拒否をしておりますから、これは第三国の仲介調停という方法を考えなければならぬと答弁をしておりますよ。このことが外務省で問題になっておりませんか。あなたが考えられるその他の方法とは、第三国の仲介もしくは調停、このことじゃありませんか。外務大臣、いかがですか。
  442. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その他の方法の一つにはなると思います。しかし、その他の方法のうちで最も適当であるかどうかは、もう少し検討してみなければなりませんが、ただいまのところは、国際司法裁判所に提訴して、相手方が応訴するという方式をとりたい、かような希望を持っておる次第でございます。
  443. 野原覺

    野原(覺)委員 時間の関係もありますから、私はこの問題だけに固執するわけにもいきませんが、いまその他の方法の中の一つとして考えられると言われた第三国とはどこですか。あなたは考えられると言ったのだからね。第三国の仲介調停というのだが、あなたが考えられるとお認めになられた第三国とはどこなんだ。
  444. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 理論上第三国ということが考えられるのでありまして、第三国の調停ということをもう一歩踏み込んで考えるということになると、その国の選択も相当重要な要素であろうと思いますが、ただいまのところは理論上考えられるというのであります。
  445. 野原覺

    野原(覺)委員 まあ理論上考えられるという苦しい答弁でお逃げになろうと思われますので、私はこれ以上追及はしません。これは武士の情けです。これはあなたははっきりアメリカを考えておる。私はいまから申し上げておきますが、アメリカが日本韓国の紛争になっておる竹島の領土問題について仲介ができたり調停ができたりするわけがない。ないですよ。アメリカは日本に気がねをする、韓国に気がねをする。結局は竹島問題をうやむやにしていこうという仲介調停だ。うやむやにすることによって日韓会談を妥結させよう。竹島問題は一括解決だといって政府はずっと答弁しておる関係上、何らかの方法をとらなければ竹島の問題を終結させることができない。で、アメリカに依頼をする。アメリカは結局これは解決し得ない。うやむやにしたまま日韓会談妥結の意図であることは明らかです。このようなばかなことは私どもは許さない。いかに竹島が無人島であるとはいいながら、日本の領土なんだ。昭和二十七年李ラインが設定されてから今日まで、ずっと外務当局は韓国に厳重抗議をしてきた経過がある。歴史的にも、国際法上から言っても、韓国の竹島占領ということは許すことはできない。このことをひとつ十分銘記しておっていただきたいと思うのであります。  そこで、次に竹島の問題でお尋ねしますが、外務大臣、竹島は現在どうなっておるのですか。どういう状態にあるのですか。
  446. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
  447. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御承知のとおり、竹島には現在約二十名くらいの韓国側の警察官が駐とんしておると承知しております。
  448. 野原覺

    野原(覺)委員 その韓国の警察官が駐とんしておることに対して、外務省はどのような抗議を何回繰り返してきておりますか。
  449. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 大体少なくとも一年に一回は正式に抗議を申しております。
  450. 野原覺

    野原(覺)委員 一番最近の抗議は、それはいつです。正確に言ってください。
  451. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 いま正確な日取りを覚えておりませんが、昨年の初めであったように記憶しております。
  452. 野原覺

    野原(覺)委員 私は実は昨年の予算委員会で竹島領有問題についての資料を出してもらいたいということで、昭和三十九年四月十日現在の外務省の書類がここに来ておるのです。あなたのほうの正式書類です。私が予算委員会で委員長を通して要求した書類です。この書類によれば、私はずっとこれを読んでみましたが、竹島問題について文書をもって申し入れをしておるのは昭和三十七年七月で終わっておる。もしあなたが言う昭和三十九年の一月が事実であるとするならば、私には正確な資料を出さなかったのである。予算委員会に出さなかったのである。いや、そうではなしに、この資料が事実であるとするならば、あなたの答弁が違うのである。一体これはどっちなのですか。
  453. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 おそらく私の記憶違いかと思いますが、よく記録を調べまして御報告申し上げます。
  454. 野原覺

    野原(覺)委員 昭和三十七年七月から今日まで足かけ四年間、そうして外務省のこの書類によれば、竹島に韓国の警備隊が二十名これを占領し始めたのは昭和二十八年である。しかも、日本の海上保安庁の巡視艇がその竹島の付近を航行すると銃撃をされておる。そのことをこの資料に書いてある。銃撃は一回や二回や三回じゃない。そういう事態にありながら、昭和三十七年七月、以来竹島問題について何らの抗議もしていない。そうして、この竹島の領土問題はあいまいにしたまま、一括解決と称してアメリカの仲介調停ということを考えて、これは一括解決だといってあいまいにしたまま日韓会談を妥結しようとしておる。このようなばかげ切った一括解決は、これはわれわれは断じて許すわけにいかないのです。  そこで、外務大臣に竹島問題でもう一点お尋をいたします。あなたはお聞きのとおり、韓国の警備隊が十何年あそこを警備して、韓国の旗を立てておる。家を建てておる。十何年です。これに日本は単に申しわけ程度に文書で抗議をし続けてきただけなんです。私は、一括解決の中でもし日韓会談が妥結をするというその事態に立ち至ったならば、これは国際司法裁判所に提訴するというのでありますから、提訴をするという時点では、この韓国の警備隊は当然退去すべきであると思う。白紙の状態に置くべきであると思う。韓国韓国の領土だと主張する。日本日本の領土だと主張しておる。これが国際司法裁判所で裁判をされるわけなんです。そういう事態が来て、日韓会談が妥結というその時点では、当然何十名かおるこの韓国の警備隊は退去すべきである。この退去を要求すべきである。退去しなければ、竹島問題についての妥結というものはあり得ないと私は思う。いかがですか。
  455. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 非常に適切な御勧告をちょうだいいたしましたが、御趣旨は十分に尊重して、この問題の取り扱いを行ないたいと存じます。
  456. 野原覺

    野原(覺)委員 竹島は日本の領土です。日本の領土を韓国の警備隊が占領しておる。この事実を黙認して、国際司法裁判所に提訴をし、つまり係属をさせる、あるいは第三国か知りませんが、仲介、調停を頼むということはあり得ない。政府考えておることは、そういう解決の方法によって一括解決ということになるわけですが、そういう事態に立ち至ったならば、当然韓国の警備隊は退去して、白紙の状態にして裁判を受けるなり第三国の仲裁を受けるなりすべきである。あなたは仰せのとおりということを言われますが、これは私はあなたの見解を明確に承っておきたい。あなたは日本外務大臣です。日本外務大臣として、日本の領土を相手国から占領されて、そうして裁判にかけるとか第三国に仲裁を依頼するとかということは、断じてあってはいけない。白紙の状態、無人島の状態に戻して、戻さなければ竹島についての妥結は断じてあってはいけないと私は思う。明確な答弁をお願いしたい。
  457. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 理論的に申しますと、必ずしも、わがほうの主張を国際司法裁判所に提訴する前提として、竹島の状態を白紙の状態に還元しなければならぬということも、私はどうかと思いますけれども、しかし、やはり国民感情もございますし、お説は尊重して、十分に考えてみたいと思います。
  458. 野原覺

    野原(覺)委員 お説尊重で十分に考えるではなしに、日本の領土であるということを主張しておきながら、退去も要求しないで、何が国際司法裁判所が有利な判決を下しますか。これは退去を要求しなさい。お説を十分に尊重して考えるということは、私の言うことがもっともだということですか。いかがですか。
  459. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 お説は尊重して善処したいと思います。
  460. 野原覺

    野原(覺)委員 そこで、次の大事な問題は李ラインです。この問題は、実はこの二日間にわたる外務委員会質問に立たれたどの委員も取り上げてきておるのであります。そのくらいこれは重大な問題であるからであります。先ほど松井委員外務大臣質問をされて、楢崎委員が関連質問に立たれたわけでございますが、その中で、外務大臣はいままでと違った明確な御答弁をされたのです。すなわち、李ラインの撤廃ということは、漁業問題が妥結をすればこれは撤廃をされる、その撤廃とは、日本だけが対象ではない、日本その他の国に対しても当然撤廃されるものと解するとあなたは御答弁になったわけです。確認しておきたいと思う。いかがですか。
  461. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本に関する限りは、従来の李ラインというものは、相手国が一方的に一つの線を想定して、そしてその内部に出入する船舶に対して権力を行使する、この行為を繰り返してきたのでありますが、わがほうは、これは国際法上不法であり、さらに不当である、こういうことで、これを根本的に認めないという態度をとってきたのでありますけれども、向こうは実力をもって漁船の拿捕をしてまいったのでございます。漁業会談が妥結いたしますれば、いわゆる専管水域というものができ、その外部は共同規制区域となり、そして、漁獲量あるいは漁船の隻数というようなものを申し合わせて、これを監視するという場合には、自国主義、いわゆる旗国主義で、相手方の漁船を監視するとかあるいは逮捕するというようなことは絶対に認めない、お互いがその国の所属する船に対して監視をするということを認め、この問題の完成に協力しておるような状況でございますから、この問題が結論を得ますれば、従来のような漁船の被害は絶対になくなる。なお、これは日本に関する問題ではございませんけれども、第三国に対してもおそらく同様の効果をもたらすものと考えております。
  462. 野原覺

    野原(覺)委員 李ラインの撤廃は、これは防衛ラインとしても存在しないし、いわんや漁業問題としても存在しない、そして、日本だけではなしに、第三国に対しても撤廃されるものと解すると、こういうことです。私はそう解するには根拠があると思う。そうあなたが解釈をされるということについては、あなたも日本外務大臣として、国会に対してあなたが独善的な、ひとりよがりの答弁をされるわけはないと思う。あなたがそう解釈されることについて、韓国も了解しておりますか。もう一度申します。あなたがそう解すると言う以上は、やはり何らかの了解が韓国からあったのでしょう。あなたが何にも韓国の了解なしにそう解するというわけのものじゃない。もしそうならば、あなたは国会を愚弄しているのだ。許すことはできませんよ、もしそうならば。かってなことはできませんよ。
  463. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 従来一方的に李ラインを想定して実力行動をとっておったことを改めて、そして専管水域を設定し、その外部は共同規制区域として、そして相互平等の立場において魚族資源の保護をはかる、これに対する監視は旗国主義であり、裁判管轄権またしかり、こういう基本的な了解のもとにこの問題を処理するということは、全く従来の態度を根本的に変えたものと私は確信しておるのであります。
  464. 野原覺

    野原(覺)委員 その確信については、韓国はもとよりこれは何らかの了解を与えておりますね。了解なしにあなたが確信するわけはないじゃないですか。
  465. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 韓国の首脳部がさような了解をしておればこそ、この会談の推進に当たっておるのでございます。
  466. 野原覺

    野原(覺)委員 非常に明確になったと思います。この点が非常に明確になった。そういうように明確にひとつ御答弁を願いたいのです。  そこで、その了解点については、それでは日韓交渉妥結のどこでこれを確認するのでございますかと農林大臣にお尋ねをしたら、農林大臣は、それは合意議事録で確認をすることになっております。この答弁を何回となくここで繰り返しておるのであります。外務大臣はこれをお認めになりますか。
  467. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 漁業会談は農林大臣におまかせしておりますので、そういう方針で臨もうとしておられると思うのであります。しかし、まだ漁業会談が進行中でございます。その方針で処理するということをおそらく述べたものであろうと私は考えております。
  468. 野原覺

    野原(覺)委員 単なる漁業会談の問題じゃないんです。李ラインの撤廃というのは外交上の重大問題です。だから、あなたに連絡なしに農林大臣が言うはずはない。合意議事録に記載されることになっております。そのように話ができております。こう答えておる。そこで、私は、あなたもこの点は知っておられるはずだと思う。この了解事項は合意議事録に記載されることになっておる、こう言っておるのだ。アジア局長よく教えてやりなさいよ。これはいかがですか。
  469. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その方針についてはもう十分に両者一致しております。それを合意議事録にこれから書こうという方針を農林大臣は話したものと考えます。しかし、まだ合意議事録はできておりません。
  470. 野原覺

    野原(覺)委員 いずれにしても、その中身は、したがって、私が尋ねてもまだ答えるわけにいかないという伏線があろうかと思いますが、しかし、合意議事録に書かれるということは外務大臣もここで確認をしたわけです。  そこで、私は合意議事録の法的効力についてお伺いをいたしますが、この合意議事録というのは、これは何ですか、国会で承認の対象になるものですか、外務大臣
  471. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国会の審議の対象にはならないと思います。なお、その法律的な根拠につきましては条約局長から申し上げます。
  472. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 合意議事録にはどういう内容のものしか盛れないとかとかいう規則があるわけじゃございません。国会には重要な内容のものは全部承認を求めるわけでございますから、断定的に合意議事録は国会に出さないことになるというふうに理論上は申せませんけれども、これまでの取り扱いといたしましては、合意議事録は国会の御承認を求めるに及ばないようなものを合意議事録に入れている、日本の例はそうなっております。
  473. 野原覺

    野原(覺)委員 そうすると、国会の承認の対象にはならない。韓国ではどうですか。
  474. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 条約、協定類で立法府の承認の対象にするかは、それぞれの憲法制度によってきまることでございまして、日本で国会の承認を得て、相手国でやらないこともあるし、またその逆のこともあるわけでございます。
  475. 野原覺

    野原(覺)委員 だから、日本の外務省に、あなたは日本条約局長ですから、韓国憲法によれば合意議事録は国会承認の対象になるかならぬかぐらいは、あなたは御答弁できないはずはない。韓国では承認の対象になるのかならぬのかと私は聞いておる。
  476. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私、いま韓国の憲法のテキストをここに持っておりませんが、しかし、大体どこの憲法でも、合意議事録とか交換公文とかいう合意の形式によって国会承認が必要かどうかはきめておらないのでございまして、その点だけでは判断できないと思います。
  477. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、この合意議事録というものの法律効果というもの、法的効力というものはきわめて軽微なものになる。国会で承認の対象にならないということであれば、この合意議事録は条約としての効力はないじゃないか、こう私は思いますが、外務大臣いかがですか。
  478. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 条約局長をして答弁させます。
  479. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 国際約束としての効果は、その一方の国が立法府に出したか出さないかによって何ら影響を受けることはないのでございまして、両者が立法府に出した条約でも、一方が立法府に出した条約でも、両方とも立法府に出さなかった条約でも、全部全く同じことでございます。
  480. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたはそういうことを言うならば、私はもっと砕けてお尋ねいたしますが、条約は国家を拘束するけれども合意議事録というものは条約ほどの拘束力はない、このことはどこでも問題になっておるじゃありませんか。けさの朝日新聞をあなた読みましたか。昨日法的地位の会談を日韓双方がやった。そこで在日韓国人永住権範囲の問題が問題になりまして、日本側としては、協定文でこれを作成するからと、こう言ったら、韓国は絶対これを承認しなかったじゃないか。朝日新聞にそう書いてあるじゃないか。協定文では困る、条約の中に永住権範囲は明記してもらいたい、こう主張しておるじゃありませんか。条約と全く同じ効力を持つのですか。これはたいへんなことですよ、あなたそういう解釈をしたら。いかがですか。
  481. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 国際約束としての効力は、その文書の形式によって左右されないということを申し上げたわけでございまして、先ほど申し上げましたように、合意議事録という軽い形式の場合には、条約よりは軽いわけでございますが、その中には、権利義務関係としてぴしっときめるような書き方でなくて、両方が、極端な場合を申し上げますと、すれ違いのことを言っているようなことをそのまま書くこともございますし、ぼんやりした精神的なような規定のしかたをすることもございますので、そういう規定ぶりによって、その道徳的拘束力しかないとか、いろいろな差異が出てくるわけでございまして、それが国会の承認を得ているかどうかによって来る差異じゃないわけでございます。
  482. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、国家を拘束する力は、そういたしますと、条約局長の解釈によれば、これは全く法律と同じ効力を持つ。それでもいいのです。ここであなたの解釈としてこれは私も銘記ておきますから。条約は国会で批准、つまり承認の対象になる、合意議事録というものは承認の対象にならない、承認の対象になる条約と同じ効力を持つのだ、こういう外務省の解釈ならば、それでもいいのですよ。しかし、これは大事な問題ですから私は聞いておるわけです。いかがですか。
  483. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 法律としての効力が同じだとおっしゃいますと、国内の法律政令の関係にひっかかってきますから少し困るのですが、国際約束としての拘束力は同じである、こういうふうに御了解いただきたいと思います。
  484. 野原覺

    野原(覺)委員 そこで次に進みますが、私が第三にお尋ねしたい大事な点は、拿捕漁船、抑留船舶の損害賠償の問題です。これも実は何回となくこの委員会で論議をされてきたのです。  そこで、私が外務大臣にお尋ねをしたいことは、先ほど農林大臣がわが党の委員に対してこう答弁しておる。私は、重大ですから、これは書きとめておきました。拿捕漁船と抑留船舶の損害賠償の請求につきましては、これは農相会談だけで解決されないので、首席会談に一任をいたしました、こういうことなんです。首席会談に一任ということであれば、これは当然外務大臣の責任になってくる。そこで、私は外務大臣にお伺いいたしますが、この拿捕漁船や抑留船舶の問題は、李ライン侵犯と称して、国際法違反の海賊行為による損害です。たいへんな損害なんです。単なる簡単な不法行為ということじゃない。国際法違反のこれは海賊行為によって生じた損害でございますから、この損害というものは、私は絶対にこれは賠償してもらわなければ困る。もし、この賠償の要求を日本がいいかげんにごまかすということになりますと、李ラインそのものがこれは問題になってくる。李ラインの不法性というものが問題になってくる。私はそういう点で絶対にこの損害賠償の要求は譲歩することがあっては相ならぬと思うのでございますが、外務大臣の御決意やいかがですか。
  485. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御指摘のようなラインに沿うてただいま考究中でございます。
  486. 野原覺

    野原(覺)委員 ところが、あなたはきょう田中大蔵大臣とこの問題で会談をされましたね。その中身を御説明願いたい。
  487. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いろいろ打ち合わせる事項がございましたが、この問題につきましても話し合っております。
  488. 野原覺

    野原(覺)委員 その田中大蔵大臣との会談が、私がいまここに持っております夕刊に実は載っておる。田中大蔵大臣の談話がすでに新聞に出されておるわけです。私は外務大臣から正式に正確なところをお聞きしたい。どういう中身ですか。
  489. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御質問の個所はどの点でございますか。
  490. 野原覺

    野原(覺)委員 日本の船舶が拿捕された、その損害賠償の請求をどうするかということについて、あなたは大蔵大臣と会談をされて、そうして大蔵大臣が談話を出しておる。李ライン侵犯と称して、日本の漁船が数百隻拿捕され、百八十二隻は未返還、大臣、そうして八人の船員が死亡しておる。大臣、この損害賠償は、これは断じて譲歩することは相ならぬと言ったら、あなたはそのとおりだとお認めになった。ところが、あなたが譲歩することは相ならぬというこの損害賠償の請求について、実はなかなかこれは問題がこじれてきておりますので、何とか解決しなければならぬというので、きょう田中大蔵大臣とあなたは会談したと新聞に載っておる。朝日の夕刊に田中大蔵大臣の談話が出ておるわけですよ。だから、その中身をひとつここで御答弁願いたい、こういうことです。
  491. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まだ新聞を読んでおりませんし、それから、この問題については、韓国側との折衝もこれから始まるのでありますから、その点を詳しくここで申し上げるわけにはまいりません。はなはだ遺憾でございますが……。
  492. 野原覺

    野原(覺)委員 韓国の船舶請求が日本に対して続けられてきておる。いわゆる置籍船と置水船の問題です。日本に対する韓国の船舶請求と相殺をするということを田中大蔵大臣とあなたは話を取りつけたのだ。新聞を読んでみましょう。あなたが御答弁ならなければ読んでみます。「終戦韓国籍であった船舶に対する韓国側の対日請求権と李ライン水域で捕えられた日本漁船についての日本側の請求権とは相殺するよう交渉することになった」、大蔵大臣が発表しておる。これを見てください。その事実があるのですか。
  493. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 協議の中にはこの問題もございました。
  494. 野原覺

    野原(覺)委員 そうすることになったと断定をして発表をしておりますが、そうする方針にきまったのですか。いかがです。これは。大蔵大臣の談話は書いているじゃないか。新聞に発表していることなんだ、これは。何を言っているんだ、書いているじゃないか、新聞に。
  495. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その点につきましては、いわゆる大平・金了解が、この二人の間の了解が異なっておる。それで、すでにこの軍令三十三号によって日本の在韓財産というものが米軍政府に移りまして、米軍政府がこれを韓国政府に委譲した、この事実を平和条約において日本が承認をしておる、こういう事実があったのでありますが、在韓置籍船というものは、その米軍の接収以前に韓国の港を脱して、そうして他の地点に移った。もしそういうことがなければ、そのまま韓国にこれは委譲されたものであったのであるから、つまり、いわば失われた財産である。そういう性質のものでございます。でありますから、郵便貯金がそのままになっているとか、あるいは賃金の未払い分であるとか、そういうようなすでに財産権が発生しておったというのではない。いうのではないけれども、もしそういうような脱出がなければ韓国に帰すべきものであった。それを失われたのだから、それに対する請求というものは他のものと区別して別に存在するのであるということが金鍾泌側の了解するところである。しかしながら、日本側は、いや、それも含んですでにそういう請求権というものは随伴的効果として消滅しておる、こういう解釈上の違いが出てきておるのでありまして、この問題につきましてはまだ終結を見ておりませんが、関係方面とせっかく折衝をしておりまして、大蔵大臣と私とはかなり近い意見を持っておるのでありますが、すべての関係者間においてはっきりとまだきまった問題ではございません。
  496. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、大蔵大臣韓国日本に対する船舶請求権と相殺することになるというこの談話は、これは事実を伝えていない、外務大臣、大蔵大臣のこの談話は事実とは違う、こう受け取ってよろしいか。朝日新聞の夕刊記事は事実とは違う、こう受け取っていいのですか。
  497. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 正確に言いますと、相殺ということばは必ずしも当たっていないような気がいたします。俗に言う相殺なのでしょうが、とにかく、しかしそれははっきりした表現ではないような気がいたします。
  498. 野原覺

    野原(覺)委員 それはどういうことなのです。委員長、お聞きのとおり、ああいう御答弁なんです。じゃ、あなたが大蔵大臣相談をしたことはどういうことなんだ。大蔵大臣はきまったといって結論を談話で出しておるじゃないですか。これはどういうことなのです。それをあなたはここで答弁できないのですか。
  499. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういう観念も含めて処理したい、こう考えております。
  500. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、私どもが予算委員会、外務委員会で池田内閣から、特に当時の外務大臣大平・金メモの一方の当事者である大平外務大臣から聞いてきたことは、これは完全にくつがえることになる。私どもは、無償三億ドル、有償二億ドル、民間供与は一億ドル以上、これが出たときに、予算委員会では相当これを問題にしたのです。そうして、これは船舶請求はどうなるのだと聞いたら、船舶請求も含めて有償・無償で解決をするのだということが政府の方針であった。ところが、今度は、拿捕船舶の損害賠償と相殺だ、こう来たのです。これは全く従来の政府の方針とは違っておる。私はこういうことは断じて承認できない。同じ自民党の内閣じゃありませんか。国会では無償三億、有償二億をきめるときにはそう言って私どもを説得しておきながら、今度は、拿捕船舶の損害賠償の要求が難航いたしますと、また一歩も二歩も後退してこのような方針を打ち出すというこのやり方が、私は断じてこれは承服できない。いかがですか、あなた。これは一体、大平外務大臣がそう答弁したことを、あなた、田中大蔵大臣は、これは否認する形になるのですよ。これは私は承知できない。あなたの所見を承っておきたい。
  501. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 われわれは同じ日本側でございまして、あくまで日本側の解釈を信じたいのであります。でありますから、これはいわゆる大平・金了解のあの問題が実行されれば随伴的に消滅する債権の中に当然含まるべきものである、かような解釈をいたしておるのでございまして、ただ先方がそれと全く異なった了解に基づいて主張しておるのでありまして、その間の調整をいろいろ考究したいと考えております。
  502. 野原覺

    野原(覺)委員 調整じゃありませんよ。田中大蔵大臣の談話が事実だとするならば、これは後退じゃありませんか。これは大平外相のわれわれに対する答弁の変更じゃありませんか、この点は。調整じゃありませんよ。何を言っているのです。あなた。  そこで、これはついでにお尋ねしておきますが、置籍船、置水船、つまり韓国日本に対する船舶請求権と称するその船舶の隻数、これは何隻だと日本は確認しておりますか。韓国の船舶請求権の船舶の隻数及び金額、これは一体どのように日本は確認をしておるか。
  503. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 政府委員をして答弁させます。
  504. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御承知のとおり、置籍船につきましては、先方から数百隻にのぼる要求がございます。こちらで、数年前から船舶小委員会で向こうと照合いたしましたところが、なかなか向こうと数字が合わない。先ほど大臣が申されました法律論上の意見の差のみでなく、そういう事実につきましても意見の差がございまして、全然折れ合っておらない、そういう状況でございます。なお、金額については先方は出しておらないと聞いております。
  505. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、相殺をすると言うから、これは金額の確認を求めたのです。このやり方を私は承認して聞いておるわけじゃない。念のために、参考のためにお尋ねをしておるのです。マッカーサーが日本を占領しておるときに、日本の石炭船が五隻朝鮮の港で抑留をされました。これはその後何らの損害の補償も日本側は受けていないのです。この点は、相殺をされるという場合にはどういうことになるのか。問題が難航したから相殺だといって、簡単に政府は事を進めようとされておりますけれども、一切のものを相殺するならば、一切のものを、その数量、金額というものを出して相殺しなければならぬ。実にこの日韓会談というものはわけのわからぬ会談になってきてしまっておる。だから、この石炭船五隻は一体どうなっておるか。
  506. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 当時たしかマッカーサー司令部の命令で国有船舶が数隻、韓国側に行きまして、そのまま帰ってきてない事実がございます。で、それも従来の船舶小委員会で返還交渉の対象になったと承知しております。また、その問題につきましては、今般はまだ折衝段階にのぼっておりません。
  507. 野原覺

    野原(覺)委員 外務大臣、いま折衝段階にのぼっていないというのだが、当然この問題は折衝段階にのぼせるべきである。これは財産請求権の形になるのか、あるいは船舶請求のところでのぼせるのか知りませんが、のぼせるべきだ。石炭船が五隻抑留されて、そのままなんですよ。これはアジア局長も認めたんです。どうなんですか、外務大臣
  508. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 交渉の最終段階までにはこの問題の処理をいたしたいと思います。
  509. 野原覺

    野原(覺)委員 私は同僚議員がたくさんあとに控えておられますから、私一人で長時間とっても申しわけありませんので、なお領域の問題その他たくさんありますけれども、一応質問を終わっておきたいと思います。  最後に申し上げておきますが、この日韓会談というのは、私ども頭を突っ込んで調べていけば調べていくほど奇々怪々であります。そして、このことは全く国民を目隠しにして事を進めようとされておる。これは私どもは断じて承服できません。このことを申し上げまして、私の質問を終わっておきます。
  510. 松井誠

    松井(誠)委員 この十二海里の専管水域の問題について、これからあとこの十二海里というのが日本の国際漁業における原則になるのか例外になるのかという点について、きのうの農林大臣の御答弁ときょうの外務大臣の御答弁とが明らかに食い違っておる。その点をいま取り寄せました議事録でひとつ確かめてみたいと思うのです。楢崎委員が、「それでは、専管十二海里ということを今度初めて日本政府としては具体的な協定でとられるわけですが、今後ずっとその線で国際漁業に対処されるわけですか。」、それに対して赤城農林大臣は、「それぞれの国で専管水域を設けたいという話がありまするならば、それに応ずるつもりでございます。」、こういう速記録になっておる。これは私の記憶と一致をしておる。この質問答弁とをすなおに率直に読めば、私がさっき申し上げましたように、やはり、これからあとは十二海里というこの専管水域の申し出があればそれに応ずるつもりでありますということは、それを原則にして話をしていくという、そのことを意味しておる。率直に読めば、それ以外の解釈のしようがないと思う。大臣、いま私の読んだのをお聞きになって、そうはお思いになりませんか。
  511. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 漁業水域、専管区域の問題を、向こうの申し出に応じて協議をしていく、こういうことであろうと思いますが、それは私は基本的にはその態度でしかるべきものであろうと考えます。
  512. 松井誠

    松井(誠)委員 私の言っておるのは、話に応ずるか応じないかという、その前提として何を考えておるかということです。もう一度読みましょうか。つまり、十二海里ということを今度初めて日本政府としては具体的な協定でとられる、今後ずっとその線で国際漁業に対処されるわけですか、こういう質問でしょう。それに対して、「それぞれの国の専管水域を設けたいという話がありまするならば、それに応ずるつもりでございます。」、この十二海里という問題を離して専管水域を設けたいというならば応じますという、そういう意味ではないわけですよ。そういうようなことなら、あたりまえのことです。そうじゃなしに、十二海里というこの線で国際漁業に対処していくかということについて、そういう申し出があれば応ずるつもりでございます。そうでしょう。ですから、ケースバイケースでやるというのとは違いますよ。
  513. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 その申し入れに応じて話し合いを進める、こういうふうに私は解釈いたします。
  514. 松井誠

    松井(誠)委員 これをそのように、ケースバイケースというように読めるという頭脳が、私は率直に言っておかしいと思うのですよ。何べんも言うように、専管水域の申し出があれば応じますかという、そういう抽象的な質問じゃないのです。そうじゃなしに、今度初めて十二海里という線を設けた、その線に沿って進めていくのか、こういうふうに具体的に十二海里という問題を出して質問をしておるわけです。それに対して、それに応じますというのですから、当然十二海里の線に応じますということでしょう。その大事な点を抜かして、話に応じますなどという、そういう答弁であるはずがないじゃないですか。問題は十二海里ということが重点にあったわけでしょう。そうじゃないですか。
  515. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 申し入れに応じて話し合いを進めるということであると私は解釈いたします。
  516. 松井誠

    松井(誠)委員 申し入れによって話し合いを進めるなら、あたりまえのことですよ。そうじゃなしに、この十二海里という線で話を進めるかどうかということに質問の重点があったわけです。虚心たんかいに言えば当然そうでしょう。ですから、それに対して話に応ずるというのは、ただ抽象的に、専管水域を設けましょう、よろしゅうございますという、そういう答弁ではないわけです。赤城さんはそんなとぼけた答弁しませんよ。正面切って答弁しますからね。ですから、これは十二海里というものを原則として認める、そういう答弁だとすなおにお答えになったほうがいいんじゃないですか。私は、むしろその不一致を不一致として明らかに認めて、外務大臣の先ほどの御答弁じゃありませんけれども、各機関で意見が違うのはあり得るという話ですから、これからあとでもいいけれども、その意見を統一するというならば、話はきわめてわかりやすい。しかし、そうじゃなしに、この明らかな日本語をそういうねじ曲げて御答弁をされるということになると、これは当然承服するわけにいかない。どうです。
  517. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 事柄は専管水域、漁業水域でありますから、もちろん赤城農林大臣考え方を基本として外交行動を進めてまいるのであります。
  518. 松井誠

    松井(誠)委員 赤城農林大臣考え方を基本としてと言われる。それはそれでいいでしょう。だから、赤城農林大臣考え方は何かということを聞いておるわけです。あなたの御答弁と違うのか同じなのかということを聞いておる。われわれの解釈では、赤城さんはさっきのあなたの御答弁とは違う。とすれば、その赤城さんの十二海里という線でやっていくという、そのことにあなた自身も同調をするというように、いまの御答弁は理解していいですか。
  519. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 申し入れに応じて受けて立つと、こういうことだろうと思うのであります。
  520. 松井誠

    松井(誠)委員 繰り返しますけれども、申し入れがあれば話に応ずるなどというのはあたりまえのことなんです。われわれがこの問題をこういう形で取り上げておるのは、いろいろな理由があります。一つは、先ほども言いましたけれども、この十二海里説というものが一九六〇年に出た。そのときに日本は棄権をした。その案は六マイルが領海、六マイルが専管水域というアメリカ、カナダの案だ。日本は三海里という説をとっておるから、あるいは十二海里という専管水域が広過ぎるからということで、ほんとうは反対をしたい。しかし、アメリカさんが言うことだから反対もできまいということで、おそらく棄権をしたのだろうと思う。どっちみち、十二海里というその考え方は、いままで日本政府はとらなかった。それを今度とったというのにはそれ相当の重大な理由がなければならぬ。つまり、ここで方向転換をするのかどうかということがはっきりきまっていなければならぬわけです。それは日本のこれからのあとの漁業に非常に大きな影響を持つ。ですから、私は、どっちにしろと言うのじゃない。問題は、不一致が一番問題だと思う。なぜかというと、こういう重要な問題について、日韓交渉で不一致のままに話が進められるという、きわめて不自然なやり方自体、やはり問題にしたいと思う。そういう大事なこともきめないで、話がどんどん進んでいくという、まさに怪談、怪しい話ですね。そういう形の日韓交渉の性格というものをわれわれは問題にしたいから、これをはっきりしてもらいたい。一致しないけれどもこれから一致させようというなら、それでもいいし、どっちかはっきりさしてください。
  521. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日韓会談の従来のいきさつを見ましても、この十二海里の線に落ちつくまでは、相当な紆余曲折と申しますか、双方の間の主張が激しく対立したもののようであります。今後第三国からそういうような申し入れがありますれば、もちろん主管大臣の意見を尊重して会談を進めてまいりたい、こう考えております。
  522. 松井誠

    松井(誠)委員 この十二海里というのが、これからあと日本の国際漁業に対処をする原則だということになれば、それはそれで日本の漁業あるいは日本のそういう外交の問題として大きな問題になる。逆にまた、先ほど条約局長がいみじくも言われたように、李ラインというものがあるために、十二海里という現在国際慣行的に認め得る最大限のものをやった、したがってこれは今後の原則とはむしろならないということならば、それはそれで答弁ははっきりしておると思う。しかし、そうならば、なぜそうまでしてこの日韓交渉というものをいろいろな例外をつくって、いろいろな異例をつくってやらなければならぬのかという問題になってくる。ですから、このあなた方の二人の考え方が一体どうなのか。いまの、農林大臣の御意見に従ってということですけれども、その御意見というものをどう理解をしておるのか。もう読みませんけれども、さっきの議事録をそのまま頭に入れる限りにおいては、先ほどのあなたの御答弁とは違いますよ。その違うということを前提にして、主管大臣の意向に沿いますというならば、それはそれでけっこうです。しかし、あくまでも農林大臣と私とは考え方が基本的には違いませんという強弁をされるということになりますと、これは簡単にはいそうでございますかというわけにはいきません。くどいようですけれども、御答弁を願いたいと思います。
  523. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 主管大臣の意向を尊重して処理していきたと思います。
  524. 松井誠

    松井(誠)委員 その主管大臣の意向を尊重すると言うのですけれども、いまその主管大臣の意向というのは、この議事録にあらわれておる限りにおいては、外務大臣の御意見と違う。ですから、この漁業交渉というものがいつ仮調印の運びになるか知りませんけれども、それまでには政府考え方というものをきめる、十二海里というものはこれからあと日本の外交でどういう位置を占めるかということをはっきりさせる、そのことはできますか。
  525. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この日韓会談におきましては、もちろん、具体的な問題でありますから、農林大臣のこれに関する意向を十分に尊重して会談が進められつつあるのであります。
  526. 松井誠

    松井(誠)委員 先ほどからいまの御答弁は三回ぐらい繰り返されましたけれども、私の質問はしょっちゅう変わっておるのですよ。ですから、テープレコーダーかなんかで同じ答弁を何回でもやっていればいつかは時間がたってというようなことを考えておったら、大間違いなんです。ですから、もう非常にくどいようですけれども、正面からひとつ御答弁をしてくださいよ。いまこの十二海里というのが農林大臣の意向に従って進められておるというあなたのお話だった。そうしたら、農林大臣は少なくともそういう将来の国際漁業についての見通しを持ってされておるということが、あの答弁でわかる。つまり、やはりここで転換をするんだ、この十二海里というのはほんとうに確立された国際的な慣行かどうかは別として、ともかく相当多くなってきておる、ここで日本はやはり転換をするんだ、そういうちゃんとした位置づけの意識を持っているわけです。それを外務大臣はさっぱりわけがわからない。ですから、農林大臣がいま話を進めておる基本的な考え方というものは、私が言ったように、はっきりしておると思うのです。ですから、その線に沿ってやるということになれば、農林大臣の線に沿って恩恵を統一するという趣旨にいまの御答弁は理解をしていいですね。
  527. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 具体的に問題に当面した際には、農林大臣主張を基調にいたしまして、そして関係閣内の統一をして当たりたい、処理したいと考えております。
  528. 松井誠

    松井(誠)委員 今度の日韓交渉に関する限りは、十二海里という線では、外務大臣も農林大臣も意見は一致しているんでしょう。しかし、私がいま聞いておるのは、そういうことじゃないわけです。つまり、これを原則にするのか、あくまでも李ラインという人質政策によられた例外とするのかという態度を、いまの態度は分裂をしておるから、それを一致させるという意向はないかということを聞いておる。何べんでも聞きますよ。
  529. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 具体的にその事態に当面した場合には、農林大臣の意向を尊重して処理をいたします。
  530. 松井誠

    松井(誠)委員 農林大臣の意向を尊重してというのは、四、五回聞きました。私は、農林大臣のどういう意向を尊重するのか、農林大臣の意向は  一体何なのかということを聞いておるわけです。それについての御答弁がないわけです。御答弁がないから、私のほうでかわって、農林大臣はこの十二海里という原則をこれからとるというように考えておる、だからそれに合わせるという意味ですねということを聞いておる。それについて正面切ってお答えがないじゃないですか。
  531. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 速記録を拝聴しましても、十二海里を原則としてやるということは農林大臣は言っていないようであります。それで、十二海里の申し出があった場合にはどうするか、それに応じていこう、こういうことでございますから、その話し合いを尊重して、会談なり話し合いに入っていこう、こういうことだろうと思うのです。私の申し上げることとそうたいした違いはないと思います。
  532. 松井誠

    松井(誠)委員 もうこの議事録は読みませんけれども、私が何度も言うように、十二海里というものに質問の重点があったわけです。この質問は、十二海里にきめたということに質問の要点があったわけです。そして、その十二海里の線で対処するのかという質問なんです。それに対して、専管水域の話があればこれに応ずるつもりです。日本語として当然じゃないですか。その十二海里というものを原則にするという、その前提でお答えになったということは当然じゃないですか。やはりそれでもそうお考えになれませんか。
  533. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私は、十二海里主義でいくとか十二海里を原則としていくんだというところまでは、赤城農林大臣は話してないと思います。十二海里で話し合いが持ち込まれた場合にはどうするか、それに応じてやってまいるということは、それをすなおに受けて、それで話し合いに入るということであろうと思うのであります。それを将来十二海里主義でいくとか十二海里を原則としていくというところまでとるのは、少し行き過ぎじゃないか、そういうことを思うのであります。
  534. 松井誠

    松井(誠)委員 これは果てしがありませんから、いずれ農林大臣とお二人に来ていただいて、その意見が一致しているのかしていないのか、あらためてお尋ねをいたすことにいたします。  そこで、この十二海里の問題というのは、いろいろな意味で問題がありますけれども、先ほど言ったように、この十二海里というのは、専管十二海里がきまっただけで、その中で領海がどれだけかということはきまっていない。領海が六海里ならば専管水域は六海里、領海が三海里ならば専管水域は九海里、そういう相関関係があるわけですね。  そこで、これは条約局長にちょっとお尋ねをしたいのですけれども日本は一九六〇年に棄権をした。その当時日本はやはり三海里説をとっておった、それが棄権をした最大の理由でしたか。
  535. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 日本は米加案がもとの形で出た段階においてはこれに賛成しておりました。その最後の段階におきまして、南米から修正提案が出まして、十二海里の外にまた何か沿岸国の権利を認める場合があるかのような追加条項が入ったわけでございます。そこで、従来米加案を支持していたのを改めまして、最後の南米によって修正された米加案には棄権いたした、こういうことでございます。
  536. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、十二海里のうちで領海六海里ということにひっかかったわけではない、必ずしもそうではない、領海三海里という立場から棄権をしたというのではない、そういうことですね。
  537. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 米加案の線までは一度踏み切ったことがあるということでございます。
  538. 松井誠

    松井(誠)委員 その案が否決をされた限りにおいては、もとの原則の三海里に戻る。これはアメリカもそう言っておる。おそらく日本もそのとおりに言うのでしょう。だとすると、その三海里という線がやはりいまでも日本の原則、領海を認める原則になっておる。  そこで、さっきのように議事録をもう一ぺんひっくり返さなければならぬということになっては困りますので、大臣、ひとつ最後にお尋ねをしたい。それは領海の問題です。領海の問題について先ほど条約局長からいろいろ言われた。その言われたことを要約して、ひとつそれだけを確かめて、これからあとのお尋ねの基礎にしたい。この領海の範囲というものをなぜ一体漁業協定が終わるまでにきめないのか。領海の範囲をきめないということが、これからあと韓国が、たとえば李ラインなら李ラインというものを領海だと主張する、あるいは十二海里の専管区域そのものが全部領海だと主張する、何海里を主張するかわからないような不安定な形でこの漁業協定ができたのでは、ほんとうの最終的な解決にならない。ですから、この領海というものは漁業協定ができるまでにはどうしてもやはりはっきりさせるべきだと思う。それについて、条約局長お話ではこういうことです。一つは、従来も漁船以外の問題について領海が不明確であったということを理由にする紛争というものはなかったし、これからもないであろう、それにプラスもう一つ、相手は何海里説をとっておるのかさだかでない、われわれの三海里と一致するかしないかはっきりしない、その三海里をとっておると思われる節もあるけれども、なまじっかそれを出して寝た子を起こしたということではまずいという理由が付随的に述べられた。そのとおりのことばを言えばそういうことでしたね。そういうように局長は言われたのですけれども大臣はどうです。やはりそのとおりですか。
  539. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私……   〔「大臣大臣」と呼び、その他発言する者多し〕
  540. 安藤覺

    安藤委員長 ちょっとお静かに願います。
  541. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私が申し上げた内容が若干表現においてずれておると思いますので、まずその点をお断わりいたします。領海の範囲をなぜきめないのかというふうに問題を提起されましたけれども、領海の範囲というものは国際法上きまっておるべきはずのもので、ただ各国がまちまちの主張をしておるという現状でございまして、これを二国間の合意でかってにきめるとかなんとかいうような性質の問題じゃないわけでございます。日本は三海里説をとっておる。韓国は何海里説をとっておるのかというのをいままでに対外的に公にしたことはない。ただ推定として三海里説をとっているのではないかと思う、こういうことを言っているのでございまして……   〔発言する者あり〕
  542. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  543. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 合意によってきめるきめないという問題ではないという点をまずちょっと申し上げておきたいと思います。
  544. 松井誠

    松井(誠)委員 そういうことは、領海はどういうあれできまるかという問題は、私も知っておりますよ。ですから、問題は、韓国の意向が何海里を領海と考えておるかということを確定をしないでいいのかという、そういう問題として質問をしたわけです。それに対して、先ほど私自身が要約したような答弁が局長からあった。大臣、あなたにお伺いをいたしますけれども、領海というものをきめない、あるいはきめる必要がないというよりも、ほんとうはきめることができない理由として、いま局長が述べられた二つの理由、一つは消極的な理由ですし、一つは積極的な理由なんですけれども、そのことをひとつ確かめておきます。
  545. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただいまのところ、確かめる必要はないと考えております。
  546. 松井誠

    松井(誠)委員 そうなりますと、私は最後のつもりでしたけれども、もう一ぺん聞かなければなりませんが、なぜ確かめる必要がないかということを私は聞いたわけです。その確かめる必要がないという理由を、条約局長は二つ言われたわけです。一つは、必要がないということ。一つは、へたをすればどうなるかわからぬからという、それが付随的だと言うのですけれども、ほんとうはそれが最大の理由だと私は思う。しかし、ともかくそれは別として、理由を二つ言われたから、そのとおりと考えて間違いないか。
  547. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 領海は、私の知るところによりますと、かってにきめるものではないのであって、領海というものは国際的におのずからきまっておるのではないかと考えておるものであります。
  548. 松井誠

    松井(誠)委員 押し問答をしておりましても、あとにつかえておりますので、もうこれでやめますけれども、しかし、領海をきめなくていいという考え方が私はどうしても承服できません。いずれまた機会を改めてお伺いすることにいたしたいと思います。
  549. 安藤覺

    安藤委員長 小林進君。
  550. 小林進

    小林委員 私はもろもろのことを大臣にお伺いいたすのでありまするけれども、どうもあまり時間がないということで、私は非常に残念なんでございまして、まあきょうはそういうあわただしい質問をやめようかと思ったのでありまするけれども、やはり何かのやりくりで必要だそうでございまするから、若干のことをお伺いいたしまして、それからまた、最後には、いま言われた領海問題で、この領海に関する裁判権やらあるいは警察権行使の問題がございまするから、そういうこともひとつお伺いいたしたいと思うのであります。  第一番に、一体この日韓会談政府がなぜこんなにお急ぎになるのか、国民の側から私はお尋ねしたいと思うのです。国民大衆は、政府がこんなむちゃくちゃなこの促進をおやりになる根底には三つの原因があるのだと思っている。第一番目には、アメリカのアジア、中国包囲作戦の大陸の基地を一つつくるための、それをアメリカの身がわりに日本政府にやらせようという要請なんだ、アメリカの要請、強力な要請に基づいてやっている。第二番目は、韓国はいわゆる日本の防衛の第一線であるから、いわゆる軍の防衛論から来た戦略路線として、いわゆる軍事的要請、これに基づいて、ひとつ日韓会談を早く促進しなくちゃいけない。第三番目は、いわゆる日本の独占ですよ。もはや利権屋が非常に右顧左べんをいたしておりますが、それが韓国の経済を、夢よもう一度で、支配したいという、こういう経済的な日本の独占の要望、これが強力に政府を押し上げております。こういう三つの理由で政府がこんなむちゃな日韓会談をお急ぎになっているのであるという、これが国民の世論です。  私はこの世論を裏づけする証拠をあげながらひとつ政府に御質問していきたいと思うのでありますけれども、第一番目には、今春吉田元総理大臣がこういう談話を新聞に発表せられている。アメリカで大統領から、日本はアメリカの援助でこれだけの繁栄を来たしたのであるから、今度はアメリカのかわりに日本の隣国すなわち韓国や台湾のめんどうを見るのがあたりまえではないか、なぜそれをやらないのかと責められるのが何よりもつらかった、そこで、これに対して、今度は池田君がこの辺をうまくやってくれるだろうからということを私は約束をしてきた、こういう状況にあるんだということを吉田さんが発言をせられておる。私はここら辺にアメリカから強く要請をせられて日韓会談を進めている正体を見たというふうな感じを受けたわけでございまするが、この点は一体いかがでございますか。現在アメリカは、南ベトナムにおいてもまさに孤立化してきて、大いに失敗をいたしております。もう南ベトナムはアジアにおけるアメリカの基地となり得ない。さらにあせって、この韓国を大陸包囲作戦、大陸侵略作戦のアメリカ帝国主義の基本の足場にしよう、こういう形で日本にこの日韓会談を促進せしめている、あなた方はアメリカの手先になってそれに踊っていると私ども考えているのであります。いかがでございますか。この点はひとつ外務大臣お答えをまず願いたいと思います。
  551. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私はこの数カ月、日韓会談の推進に当たってまいりましたし、その間にアメリカにも参りましたが、この私の任期の間において、日韓会談に関しましてアメリカが干渉がましいことを言ったことはかつて一度もなかったのであります。さような次第でありまして、アメリカの指図によって日韓会談が行なわれておるという事実は、全くこれは当たらない所論であると考えております。日本は、この韓国とは、御承知のとおり長い間の関係がございます。これが、承認はしたけれども全く国交は正常化されておらないという現状は、この両国にとって、政治的にもあるいは経済的にもまことに不幸なことでございまして、さような見地から、十数年前から日韓会談というものが日本の朝野によって要望され、その線に沿うていろいろ努力してきたのでありまして、この際急いでやるというような、そんなことではないのであります。十数年の懸案であります。幸い時期が到来して、だいぶ進捗しておるような状況であります。
  552. 小林進

    小林委員 私は、吉田元総理がそういうことをアメリカからしばしば言われているという話をあなたはお聞きになったかどうかということをお尋ねしているのでありまして、韓国日本と特殊な関係にあるなどという、そういうことをお尋ねしているのではない。もし特殊な関係にあるとすれば、北朝鮮は何ですか。日本と特殊な関係にないとあなたはおっしゃるのか。台湾はどうです。韓国日本と一つになって戦争をしたといえば、台湾もまた、いまの蒋介石の逃げていった亡命の二百万は別でありますけれども、台湾に在住いたします一千万はやはり日本と一緒に戦争をした。特殊な関係は、台湾においてしかり、北鮮においてしかりですよ。あに韓国のみならんや。その韓国だけを日本と特殊な関係にあるという、あなた方は、そういうへ理屈、そんなことを言って、素朴な国民を、韓国だけ特別な関係にあるようなことでごまかそうとするのでありますけれども、そんなことに国民は踊りません。特殊な関係といえば、北鮮も言いなさい。台湾省における一千万の住民のことも言いなさい。なぜ、その人たちのことはそのままにしておいて、韓国の問題だけやるのですか。一体、この韓国の問題を政府がアメリカからけつを押されてこれをやらなければならぬということは、歴史的に私どもが掘り下げていけば明らかだ。私はこれを歴史的に掘り下げていくことの時間がないのが残念でありまするけれども、そもそも、アメリカがこの韓国を自分たちの植民地化して権力の支配下に置いて、そしてここに一つアジアの拠点を置こうとした、その決意をしたのは一体いつであるかを私は明らかにしてみたいと思うのであります。  まず、そこで大臣にお伺いいたしますけれども、台湾省にあるいまの蒋介石政府ができ上がったのは一体いつでありまするか、お聞かせを願いたい。何年ですか。そんなことわからんのか。そんなことわからないのかい。恥ずかしくて言えぬだろう。言えないんですよ。言えない理由があるんですよ。いつできましたか。台湾政府が台治にできたのはいつだかというのですよ。あなた方恥ずかしくて言えないんでしょう。言いなさいよ。
  553. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 正確に言うと台湾政府というのはないのです。あそこへ蒋介石政権が移ってまいりましたのはたしか一九四九年だと思います。
  554. 小林進

    小林委員 四九年だと思われるなんて言わないで、もう少し正確なことを言いなさい。亡命して逃げてきたのが四九印。それから、同じくいまの北京における中華人民共和国が成立したのが一九四九年の十月です。そのできた約三カ月後の一九五〇年の一月の五日にトルーマンは台湾についてこういうことを言っておるのです。いいですか、条約局長アジア局長も聞きなさいよ。間違ったら間違っていると言えばいいのですから。カイロ宣言とポツダム宣言とに基づいて台湾は中国に引き渡された、以来四年間アメリカや他の連合国は台湾に対する中国の統治権の行使を承認してきた、——トルーマンが言うのですよ。アメリカは台湾あるいは中国領土のいかなる部分についてもそれを略取する企図を持っていない、アメリカは今日台湾について特殊な権利や特権を獲得したり軍事基地を設置したりする意思を持っていない、またアメリカは現在の状況に干渉するための米軍を使用する企図を持っていない、アメリカ政府は中国の内紛に巻き込まれる結果になるような進路を進めるつもりはない、同様な趣旨でアメリカ政府は台湾の中国軍隊に軍事援助や助言を与えることはしない、こう言っておる。このトルーマンの言明していることは、台湾は中国に帰属をする、そうでしょう。第二番目には、この場合台湾が中華民国すなわち国府と中華人民共和国すなわち北京政府とのどちらかに帰属するかは内紛だ、内政に属する、内紛に属する内政問題であるから、これに対してはアメリカは干渉しない、こういうことを言っているのであります。一九五〇年の一月の五日にトルーマンが言っている。この主張は、このトルーマンの話は知ってますか。条約局長、間違いありませんでしょう。承認しなさい。言ってごらんなさい。間違いないでしょう。
  555. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 大体そういう種類の声明があったことを記憶しております。
  556. 小林進

    小林委員 大体じゃない。正確に私はトルーマンのことばを一言も間違えないように言っておるのだ。それを受け継いで、アチソン国務長官が同日、一月の五日に新聞記者会見をして、同じ日の新聞記者会見で、アチソン国務長官はさらに次のように述べている。台湾は過去四年間中国人の管理下にあった、中国人のこの権限、この占拠に疑問をはさむようなことは、アメリカも他の連合国も行なったことはない、台湾が一九四五年に中国の一省として編入されたとき、これに対して法律家じみた疑問の声を上げた人は一人もいなかった、だから、一部の人々の意見によれば、今日では事情は変わったのである、つまり、その人々によれば、今日中国本土を支配している勢力、それは近々のうちにかなりの諸外国によって承認されることは疑いがないが、アメリカに対して友好的でない、だからわれわれは対日講和条約ができるまで手を引かないほうがよいと言いたいわけである、だが、われわれは朝鮮の処理について講和条約を待ったわけではない、千島の処理についても講和条約を待ったわけではない、わが国の信託統治下に置かれた島々についても講和条約を待ったわけではない、こう言って、要するに、ここでアメリカ政府は、対日講和条約の有無のいかんにかかわらず、台湾が中国に帰属することには事実上疑いの余地がないということを判断している。一体このアチソンの新聞談話を承知しておりますか。御存じですか。事実なら事実と言いなさいよ。
  557. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そのアチソン談話のことは記憶しておりません。
  558. 小林進

    小林委員 こうやって、アメリカのトルーマンもアチソンも、台湾は大陸の一省である、われわれは内紛の干渉をしないと言って声明しているものが、一九五一年、一年もたたないうちに、講和条約が結ばれるころからこのアメリカの態度がぐるっと変わった。がらりと変わった。講和条約では、台湾の帰属先は未決定である、こういう論拠で、台湾をなるべく中国本土から切り離そうとする議論がアメリカにおいて出てくるようになった。確かに講和条約では台湾の帰属を明示しない。それは、アメリカが北京政府の承認と台湾本土の統合を拒んだ、その帰属先を明らかにしなかったからである。要するに、台湾と本土とは一体で不可分である、本土に共産主義の政権ができたからといって台湾分離のために外国が介入干渉することは正当ではないというのが一九五〇年一月五日までにおけるアメリカの態度であった。トルーマンの態度であった。それが一体なぜ変わったか。なぜ変ったかというと、すなわち朝鮮戦争なんだ。そうでしょう。あなたはいま了承されたから、時間もないから言うが、朝鮮戦争だ。朝鮮戦争で一九五〇年十月下旬以降中華人民の義勇軍が国連軍と戦闘状態に入った。特に十一月下旬には朝鮮における米軍は全面的に中国の義勇軍に追われた。それからアメリカの態度というものがぐるっと変って、台湾政策と中国政策というものが、積極的に中国に干渉し台湾に干渉し、そうしていままで自分たちが言った不介入の方針を全部やめて、台湾を軍事的・政治的・経済的に支配するという、こういう悪らつな政策を打ち出してきたわけです。そうでしょう。そのときに、しからばなぜ一体朝鮮戦争を原因にしてアメリカがこれくらい変化しなければならなかったかという、その根本の理由は何ですか。どうしてアメリカの態度がこう変ったんですか。条約局長わかりますか。アジア局長わかりますか。なぜ変わったんです。言いなさい。何で変わったんだか言いなさい。これはいまの韓国問題の中心問題だから。これが中心なんだ。何でアメリカが変わったんです。それで飯を食っているんだから、知らぬことはないだろう。返事ができないのか。
  559. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 結局、米国とそれから中共との間の政策上の相違から来たものと存じます。
  560. 小林進

    小林委員 そんな甘っちょろいものではないよ、君。アジア局長にでもなったら、いま少し具体的な答弁をしなさい。何です。あなた。中国の周恩来総理が、一九五〇年の九月の二十五日だ、いいですか、外務大臣、あなた頭が悪いのだからよく聞きなさい。
  561. 安藤覺

    安藤委員長 小林さん、あなたのお時間もあまりないのですから、なるべく要点だけにして、できるだけあまりかかずらわないようにしてください。
  562. 小林進

    小林委員 要点だけです。  一九五〇年の九月の二十五日、もし米軍が三十八度線を越すならば中国は戦争に介入せざるを得ない、三十八度線を越えて、そして中国の近隣まで攻めてくるような侵略行為があるならば、一九四九年十月一日にでき上がったばかりの新しい北京政府ではあるけれども、このアメリカと国連軍の侵略を黙視するわけにはいかぬから、われわれは受けて立つ以外にはないから、おやめないという警告を発した。ところが、その周恩来の警告にこたえて、国連の中では北進すべきかすべからざるかというところの議論がなされた。ところが、その議論の最中に、一九五〇年の十月の一日に、国連軍の一翼をになっているいまの韓国軍がまず三十八度線を越えて北鮮に侵入していった。そこで、当時の国連軍とアメリカ軍の軍司令官はマッカーサーだ。マッカーサーが直ちにそのあとになだをうって北鮮に飛び込んでいって、そして北鮮軍に降伏をせよといういわゆる布告をしたわけだ。そうして、同時に十月の二日には国連軍がだんだん態度を大きくしていった。いまのベトナムなんかにおけるようなまだほんの遠慮がちの飛び石的な爆撃ではなくて、戦線を拡大して、鴨緑江を越えて満州までも占領しようという。これは、当時のマッカーサーはトルーマンからそのために首になったのだから、皆さま方もよく知っているだろうと思う。そういう侵略の方針を求めて鴨緑江まで行ったから、そこで、十月の二日再び周恩来首相が警告を発した。おやめなさい、これほど言うにもかかわらずなおあなた方は北鮮からここに侵略してくるならばもはやしんぼうできないからおやめなさいと言うにもかかわらず、了承しないで一笑に付したから、十月の七日ついに中国の義勇軍が鴨緑江を越えて、そこでついに米軍と相対する。十月の十六日北鮮への介入を中国が始めたわけだ。やがて全面的に武力衝突となった。すなわち、そもそもこの朝鮮に対するアメリカの政策が今日日本を苦しめている。韓国とこの早期の会談を進めなければならないのは、アメリカのこの横車のときから始まっているのだ。こういうようなアメリカの北鮮侵略という不純な動機に基づいてわれわれはいまやられておるんじゃないですか。だから、このひずみを直さなければ、日韓会談というものを契機にしてだんだんだんだんわれわれはアメリカの中に深入りさせられて、引っぱり込まれていくだけじゃないですか。  椎名外務大臣、あなたは外務大臣としてこういう経緯を知っていられるのでしょう。歴史上のこういう経緯を知っていられるのでしょう。アメリカが無理をして韓国を占領し、それを動機として中国包囲作戦をつくった。そして今度は自分たちの野望を達するために日本にそのエージェント、代理をやらせようとすることは、この歴史的な事実に明らかじゃありませんか。なぜあなたは、アメリカのそういうよこしまないわゆる韓国の政策、この政策を反省せしめるような忠言や警告をおやりにならなかったのですか。日韓会談のそもそもの中心はここでありまするから、日本政府にもし自主外交があるとするならば、ここからお始めになるのがあたりまえでございましょう。おやりになりますか。こういう歴史的な事実を御存じですか。外務大臣、私の言うことにうそがありますか。
  563. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 よく拝聴した次第であります。
  564. 小林進

    小林委員 拝聴じゃないです。私の以上の説明のとおり、あなた、北鮮への侵入は、あくまでもアメリカの行動は正当でなかった、それはお認めになりますか。
  565. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 少しあなたと見解が違うようでございます。
  566. 小林進

    小林委員 どういうように違うか。この問題は、私としてはまあ序の口でございまして、自来長くひとつあなたと論争していきたいと思いまするが、まあ時間もございませんから、いまも、うしろのほうから指令がまいりまして、少し基本論争をあと回しにして政策論争をやれということがありましたけれども、そういうように、あなたたちは全部国民をごまかしておる。そうして、そういうアメリカの不当なる侵略、北鮮侵略に基づいて、そして日本がつっかい棒にされているという、こういうふうな外務官僚のあり方だ。条約局長、あなた、歴代局長の中で、答弁を聞いておるとあなたが一番まずいよ。まだまだ、フランス大使もやった西村君なんか、あなた方の先輩は、それでもいま少しは勉強をしていました。君、何にも勉強してないじゃないか。だからだめなんです。  そこで、時間が八時までだそうだから、それじゃいま一つぼくは聞いておきます。
  567. 安藤覺

    安藤委員長 小林さん、なるべくお急ぎ願います。あなたの時間はあと七分しかありません。
  568. 小林進

    小林委員 いま一つ、戦略論争ですが、私は高杉さんのことをお伺いするのですが、高杉さんは一体代理の全権大使だそうですけれども、いま何をおやりになっているのですか。
  569. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日韓会談を進めております。
  570. 小林進

    小林委員 その高杉さんは、大臣がこの前も言ったけれども、あなたごまかした。これは「エコノミスト」という雑誌なんです。この中の四六ページに、「国交の正常化こそ急務」という、高杉普一の「この人と一時間」という中に彼の論談が入っておる。そのとき何と言っているか、読みましょうか。「日本はできるだけ韓国のため尽くすということの責任があるように思うのですね。三十八度線に六十万の兵隊をくぎづけにしておいて、そうして国費の三二%をそれに費やしているのだから、これはたいへんな仕事です。アメリカも多大の犠牲を払っているのだが、それが、自由の防衛、ひいては日本の防衛にもなっているんです。ぼくはあそこで日本の安全を保障していると見ていいと思うのですがね。日本には平和憲法があって軍備に多額の金をかけられない。国防費がわりあい少なくて済んでいる。これが日本の産業発達の大きな原動力になっているのじゃないかと思うのですね。だから、そういうことを考えると、いま韓国の払っている、共産主義の防壁となっているところの大きな犠牲に対しては、日本は感謝をし、その責任を分担しなければいかぬと思うのですがね。」、どうですか、これは日本のいわゆる全権大使の公式に発表せられた主張だ。韓国の三十八度線は日本の防衛線だ、韓国は六十万の軍隊で三十八度線で日本の国防を守っていてくれるのだ、そのおかげで日本の今日の繁栄があるのだから、韓国の防衛費を分担しなければならぬのは当然であるという、これが高杉さんの発言です。あなたもこの三十八度線をそういうふうにお考えになっておやりになっているのですか。これが日本政府考え方ですか。椎名さん、あなたに聞いている。こういう考え方で日韓会談を進めておいでになるのですか。三矢怪談とみな内容は同じじゃないですか。
  571. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 韓国はその独立と自由を守るためにかなりの国費を国防に注いでおるという状況を、私は見てまいりました。
  572. 小林進

    小林委員 韓国の軍隊は日本の安全を保障していると言っているじゃありませんか。六十万の軍隊が日本の安全を保障しているということを高杉全権大使は言っているじゃありませんか。あなた方はこういうことで日韓会談を進めているのでしょう、椎名さん。
  573. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日韓会談は、歴史的にまた地理的にきわめて近接した朝鮮半島と日本本土との間に、いろいろの政治上の情勢で長い間隔てるものが存在しておったのでありますが、これはやはり、今日の国際情勢から見まして、共存共栄の体制をつくり上げて、そして有無相通じ、長短相補って両国の繁栄を来たすべきであるという基本的な考え方のもとに進められておる、こう理解しております。
  574. 小林進

    小林委員 私は時間もありませんから言いませんけれども、あなた方支配者は、日本政府は、自衛隊の三矢研究も同じだ、みんな、三十八度線を日本の国防線だ、赤い軍隊が北から攻めてくる、こういう全部一貫した考え方です。これこそ、あなたがかつて東条の時代米英鬼畜と言ってわれわれを教えたときの思想の裏なんです。こういうようなことでは、私はきょうだけでは済まされませんから、期日をあらためてまた徹底的にひとつやりますけれども、これは序の口にしておいて、先ほどの政策問題の領海問題に移ります。  領海の問題については、先ほども松井君からしばしば論議をせられたけれども、漁業の専管水域あるいは共同水域の問題は、これはさまった。専管漁業の範囲として十二海里以内ですね。これは決定をせられたけれども、領海に対する規定はないとおっしゃった。領海については、日本は三海里説をとっている、あるいは韓国のほうは一体何海里説をとっておるか不明であるとあなたおっしゃった。現在ある李ラインは何ですか。李ラインはそのままにしておいて、あと韓国は何も言わないということは、李ラインをそのまま存続せしめるということでないか。あれを防衛ラインとするという言い分じゃないですか。私は毎日韓国側のラジオ放送を聞いております。日韓交渉は進められているけれども李ラインは守られていると韓国放送は盛んに言っていますよ。季ライン、平和ライン、あるいは防衛ラインというものはちゃんと守られていると言っているじゃありませんか。どうです。そこに、あなたたちは、日本国民に対する、われわれに対する言い方と、韓国に対する言いわけと、二つの道を使い分けしている。私はこの領海問題についてお伺いしますけれども、領海問題は単に魚だけの問題ではございませんよ。漁船だけの問題じゃないですよ。あなたも条約局長なんだから、お聞きしますけれども、その領海内部における国家の権能というものは一体だれが持つのです。まず漁業権の問題があるでしょう。警察権の問題があるでしょう。裁判権の問題があるでしょう。沿岸国は沿岸の海域、領海内で警察権を行使する、それはそのとおりでしょう。領海内で警察権を行使する。主として税関です。関税、衛生、安全、国防、そのための警察権を沿岸の国が持っているのですから。特に密輸入等を防止するために、疑いのある船には、領海内においてはその沿岸国は停船を命ずることもできる。臨検や捜索をすることもできる。船や貨物を拿捕することもできる。衛生について言えば、伝染病防止のための検疫を行なうこともできれば、必要な措置を船をとどめてやることもできる。領海の問題は単なる魚だけの問題じゃないのですよ。船を押えたり、臨検をしたり、拿捕したり、あらゆることをやる警察権を持っているじゃないですか。だから、いまの日韓会談において領海線をどこに置くかということは、船を一隻や二隻多くするや少なくするだけのそんな問題じゃないのだ。その一番重大なポイントの領海問題について話し合いがつかないとは一体何ですか。はっきり言いなさい。
  575. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 今度の協定では、お互いの領海に関する立場には影響がないものということを、何らかの形で明らかにするようにしたいと考えております。  なお、領海につきましては、私が申し上げました趣旨は、韓国政府は……   〔発言する者多し〕
  576. 安藤覺

    安藤委員長 お静かに願います。
  577. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 これまでに公に対外的にはっきり領海の範囲を言ったことはない、ただし、三海里説をとっているのじゃないかと思われるような事実が過去にあった、そういう推定をしておる、こういうわけで、日本としては三海里説をとっておるわけでございます。三海里説をとるということは、世界じゅうの国が三海里の領海をとるべきである、そういう国際法上の主張でございまして、その点は韓国との関係においても変わらないわけでございます。  なお、領海内における沿岸国の主権の行使につきましては、これは国際法上の制限に服するだけで、いまおっしゃったような広範なことができる権能を持っておるということは、私きのうこの委員会で答弁いたした次第でございます。
  578. 小林進

    小林委員 答弁したらなおさらじゃないですか。三海里にするか六海里にするか……
  579. 安藤覺

    安藤委員長 小林さん、あなたのあとまだ帆足さんもなさるということになっておりますから……。
  580. 小林進

    小林委員 六海里にするか十二海里にするかということは、国際法上議論があることはわかっていますよ。わかっているから、なおさら危険なんだ。李ラインがいままで存在していても、国際法においてだれが日本のためにこれを撤廃してくれたか。われわれはその李ラインのために毎日泣かされてきたじゃないか。その李ラインを今日に至るまで韓国側は撤廃なんてしないのだと言って国際放送しているじゃないですか。しかも、あなた方はここに来て、李ラインは撤廃しますという確約を韓国側がしたということは一つも明らかにしたことがない。十二海里に領海の線を引くのか、三十海里に領海の線を引くのか一つも約束していないという陰には、裏を返せば、李ラインの存在をそのままあなたたちも認めたことになるじゃないか。それでは、李ラインの中における日本の船の警察権は一体だれが持つのだ。韓国が持つ警察権の距離は沿岸から何キロなんですか。
  581. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 今度の漁業に関する協定では、(「漁業じゃない」と呼ぶ者あり)専管漁業水域内においては沿岸国が管轄権を持つ、共同規制水域におきましてはそれぞれの旗国の管轄権に服する、こういうふうになっておるわけでございます。
  582. 小林進

    小林委員 私は、魚が十二海里の中に入ったときに、その魚をとる船をどこの国が押えるか、そんなことを聞いているのじゃないのです。いまも言うように、いわば一つの裁判権、その裁判権の問題だってそうだろう。沿岸を中心にして、いわば航行をする船の外における事件、船の内部における事件等も裁判管轄権の問題がみんな出てくる。いいですか。船内におけるどろぼうがある、あるいは人殺しがある、その航行している船も、いわば領海の中に入るかあるいは公海の中にいるかによって裁判権はみんな違ってくるのだ。その裁判権は一体韓国日本の間に何海里の中で韓国が持つのか、あるいは国際法上の公海の処理を受けるのかということを聞いているのだ。魚のことを聞いているのじゃないのだ。君はまあいいわ、大臣に聞きますから。
  583. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 条約局長から答えます。
  584. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 大韓民国政府は、漁船以外の一般の船舶につきましてそういうような権限の行使を公海上で行なったことはございません。
  585. 小林進

    小林委員 委員長、これで答弁になりますか。私は、大韓民国だか小韓民国だか知らぬけれども、その国が一体領海内部においてどんな警察権や裁判権を持つかどうか、そんなことはさっきから一回も聞いたことありません。委員長、聞いたことがないのです。何です。いまの答弁は。一体、日本韓国とのこのいまの日韓会談の中で、その国の権益の及ぶ、裁判権の及ぶ、司法権の及ぶ、警察権の及ぶこの領海の範囲をこの沿岸国から何海里におきめになりましたかということを聞いているんだ。きめてないならば、いままで存在した李ラインを認めたことになるんじゃないですか。李ラインが向こうのいままでの領海、その領海をそのままにしておいて、新たなる領海を認めなければ、依然として存在しているあの不法なる李ラインをそのまま認めたということになるじゃありませんか。
  586. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 李承晩ラインは領海の線であるということは韓国側でもこれまで言っておらないのでございます。
  587. 小林進

    小林委員 そこで私は聞いているんだ。だから、韓国側は何と言っていらっしゃいますか。何海里から領海にしますかということを聞いているんだ。それを答えてください。
  588. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 領海につきましては、先ほど申し上げたとおり、公然と言ったことはないけれども、三海里説をとっていると推定される事実があるということを申し上げておるわけでございます。
  589. 小林進

    小林委員 三海里説は、先ほども言うように、日本が三海里説をとっているだけの話であって、韓国側は三海里説をとっているという確かな証拠があるならばいま言ってください。はっきりしなさい。
  590. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 はっきりしたことは、対外的に公に言ったことはないということは、先ほどから申し上げているとおりであります。ただ、日本の巡視船が何か二海里半のところに入ってきたといって文句を言ったことがあるわけでございます。わがほうは三海里半か四海里だと主張したのに対して、二海里半だと言うことは、そこから考えると、韓国も三海里説をとっているんじゃないかと思われる、こういうふうな考え方でございます。
  591. 安藤覺

    安藤委員長 小林さん、時間が来ますから簡潔にひとつ……。八時になりましたら散会しますから、御承知ください。
  592. 小林進

    小林委員 委員長、あなたの苦労はわかりますけれども、一国の条約局長が、漁船だか船だか知らぬけれども、いつの話か一隻ちょっと二海里半まで入った一つの例があるという、こんな愚にもつかないような理屈を述べて、この国会の中で答弁するとは一体何事です。こんなものが領海を三海里にする六海里にするという向こう側の言い分の裏づけになりますか。子供だましもほどほどにしなさいよ、あなた。大臣、そんなことで一体韓国側の領海を三海里にするなんという材料になりますか。笑うべき話じゃないですか。しゃんとしなさい。その国の領土、その国の領海の地域を規制するということは、国際法上における何よりも一番重要なポイントだ。あなた方は、そのポイントをきめないで、船がどうの、イワシがどうの、するめがどうの、何を言うんだ。委員長大臣、一体何海里から領海にきめるつもりなんです。はっきりそれをきめなさい。同時に、李ラインは明らかに撤廃するのかどうか、明確に言いなさい。
  593. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 他国の領海をこっちがきめるわけにはまいりません。これは国際法で自然におのずからきまるはずのものでありますが、それを明らかにしておらないというのが現状でございます。それで、おそらく従来の事実から三海里説をとっておるのではないかということを条約局長が申し上げたので……。
  594. 小林進

    小林委員 そんなばかにした理屈がありますか。いいですか、いま国際法上、私もしろうとではないのですよ、三海里説あり、四海里説あり、六海里説あり、十海里説あり、十二海里説あり、国際法上にもこれくらい多くの種類がある中なんだから、そこで、その中で両国が話し合って何海里説をとるかということは、おのずからの話し合いの中できめていかなければならないではないですか。自分の国の領土をきめる根本問題ではないですか。その一番中心問題を、国際法上でおのずからきまるとは何だ。しかし、提案するがごとく、将来六海里にきまる、六海里有効だというならば、おのずからそこに落ちつくという答弁も、あるいは私は譲って聞いてもいいけれども、今日三海里から十二海里まで何種類もある中で、おのずからきまるとは何事です。こういう重大問題だからこそ、何をおいてもこの問題をきめなければならぬ。委員長、こういうふまじめなことはいけません。私はもっと明確な答えを出すまでは動きません。だめです。そんな人を小ばかにしたようなことではだめです。国家百年の大計、これは重大な問題だ。これは千島を取られたより大きな問題ですよ。沖繩を取られたよりも大きな問題ですよ。
  595. 戸叶里子

    戸叶委員 議事進行。いま皆さんお聞きのように、領海といえば非常に重要な問題でございます。主権の及ぶ範囲ということで、その領海ということは非常に重要であるにもかかわらず、しかも、韓国のほうでは何と言っているか。李承晩ラインまで主権が及ぶ範囲であるということを言っている。だから、政府はそれが言えないで、三海里だろうと思います。——何ですか、日韓の交渉をやっているときに。向こうはそう考えているらしいですなんということで、そんな形で私たちは条約の審議に応ずることはできないと思うのです。この領海の問題一つを取り上げても、非常に重要です。しかも、私はこの際はっきり申し上げたいことは、この二日間にわたりまして私たちはいろいろな角度から各大臣質問をいたしました。ところが、一人の大臣で少しわかりかかったと思いますと、次の大臣が来て違う答弁をして、その答弁の間に食い違いがあるわけです。その中でも一番重大な問題は入り会い権の問題ですが、この入り会い権の問題につきましては、この委員会でしばしば、責任ある大臣が、日本には入り会い権があるということを答弁してまいりました。ところが、きのう初めて赤城農林大臣が入り会い権の権利はないというふうにはっきり答弁をされました。しかも、一体総理大臣はそのことを理解しておるのかどうかということを問いただしましたところ、漁業の問題は私にまかされているから大体わかってもらえると思うというようなまことに不明瞭な、そしてまたたいへんな答弁をいたしました。そこで、私たちは統一見解というものを出してもらいましたが、この問題は統一見解を出す出さないで片づく問題ではございません。国の利益を放棄するという重要な問題でございますから、私たちは理事会におきまして、この漁業協定に調印する前に必ず総理大臣に出席をしてもらって責任ある答弁をもらいたい、これは私たちは確約をいたしました。ところが、けさの理事会におきましては、努力をいたしますということだけで、いまだに御返事をいただいておりませんが、一体どうなったのでしょうか。まず第一に伺いたいと思います。
  596. 安藤覺

    安藤委員長 その点につきましては、理事の間において政府との間にいろいろ折衝なさっておられるようであります。現在まだそれについての回答を得ておりません。残念ながら以上申し上げます。
  597. 戸叶里子

    戸叶委員 理事の間でいろいろ折衝しておられるということでございましたが、私たちの約束は、漁業協定に調印する前に必ず所信を述べてもらう、こういうことでございました。したがって、まさかあしたやあさっては調印はされないだろう、こういうふうに思いますけれども、必ず調印前にここで委員会を開いていただきたい。そして、もしも火曜日に調印するということになりましたならば、月曜日に委員会を開いて、総理がここに出てきて所信を表明するということをはっきり約束していただきたい。これが一つ。  もう一つは、各大臣の食い違いの答弁でございますが、大蔵大臣とそれから外務大臣答弁の食い違い、野原委員に対する答弁の食い違い、あるいは農林大臣外務大臣との答弁の食い違い、こういうものをそのままにした上で日韓の条約を調印したということになりますと、私たちは必ずあとで問題にされると思います。この国会に籍を置いておる者がなぜあんなものに黙っていたのかといって、将来禍根を残すことになりますので、その点も、ここに大臣が並んで、そして、誤解のないようにその答弁の食い違いをはっきりただしてからでなければ、日韓の条約に調印することは絶対許すことができない、この国会の権威にかけてもそう思うわけでございますが、委員長理事会の約束を必ず果たすことを、もう一度御明答いただきたいと思います。
  598. 安藤覺

    安藤委員長 理事会におかれては、折衝政府といたしておられまして、現在の段階においてはまだ何らの回答を得るに至っておらないようであります。そこで、この回答を、与党の理事とされては社会党の理事諸君にお話しなさることと存じます。
  599. 帆足計

    ○帆足委員 議事進行。もう時間になりましたから、きょうの論議が尽くされていないことは、公平な委員長は十分御承知だろうと思います。私もまだ一分間も話ししていません。しかも国際情勢はベトナムを中心として振古未曽有の危機に迫っておることも御承知のとおりであります。その極東戦略の一環として日韓会談がいま進行しつつあるわけでありますから、委員長におきましては、公平に善処されるように、ただいまの戸叶議員の提案をいれられまして善処されんことを切望いたします。
  600. 安藤覺

    安藤委員長 この点につきましては、いままで二日間にわたって審議を尽くしてまいりました。なお、この間、両党の国会対策委員長の間においてもお話し合いがあったりして、ここまでやってまいりました。そこで、このお約束の時間がまいっておりまするので、委員長としては、これをもってこの委員会は散会……(「委員長、議事進行」「何を言うんだ、そんなばかな話がある」かと呼び、その他発言する者あり)これをもって散会することとし、次会は公報をもってお知らせいたします。    午後八時二分散会