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1965-03-24 第48回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十四日(水曜日)    午前十時十一分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 高瀬  傳君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 毛利 松平君    理事 戸叶 里子君 理事 帆足  計君    理事 穗積 七郎君       宇都宮徳馬君    菊池 義郎君       鯨岡 兵輔君    竹内 黎一君       福井  勇君    増田甲子七君       三原 朝雄君    森下 國男君       黒田 寿男君    河野  密君       西村 関一君    松本 七郎君       永末 英一君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安川  壯君         外務事務官         (欧亜局長)  北原 秀雄君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房外務         参事官)    西堀 正弘君         外務事務官         (経済局外務参         事官)     内田  宏君         通商産業事務官         (通商局輸出振         興部長)    宮城 恭一君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 三月十九日  千九百六十四年七月十日にウィーンで作成され  た万国郵便連合憲章万国郵便連合一般規則、  万国郵便条約及び関係約定締結について承  認を求めるの件(条約第一二号)  日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国との間の郵便為替交換に関する  約定締結について承認を求めるの件(条約第  一三号)  日本国とインドとの間の国際郵便為替交換に  関する約定締結について承認を求めるの件(  条約第一四号) 同月二十二日  米国原子力潜水艦寄港反対に関する請願(石橋  政嗣君紹介)(第一八〇九号)  同外三件(平岡忠次郎紹介)(第一八一〇  号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一八三九号)  ILO条約第百号の即時批准に関する請願(五  島虎雄紹介)(第一八四五号)  同(五島虎雄紹介)(第二〇〇二号)  同(五島虎雄紹介)(第二一四五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(日中及びヴィエトナム問  題等)      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 内外とも認めておるように、アジアアフリカ地区がいま東西南北交差点の激流の中に立たされて、われわれ自身の安全と独立あるいは世界の平和のためにやはり一番重要な地点になっております。したがって、そのちょうど交差点に立っておるわが国政府、これはアジア外交中心に自主的な立場日本独立と平和のために努力したいということです。当面は、そのことに関連をして、ベトナム問題、日韓問題、対中国問題等、重要な問題が出ておりますけれども、きょうは実は大臣の御都合で一時間足らずということでございますから、日韓会談につきましては、関係大臣そろっていただいて、ひとつ時間も十分とっていただいた上でわれわれまとめて質問をいたしたいと考えております。したがいまして、きょうの質問は、あと他委員からもございますので、なるべく簡潔にいたしますが、そういう意味で前もって申し上げておきますと、一つは、例の吉田書簡にからむ日中の貿易に関するプラントの問題、それから、もう一つは、ベトナム情勢が非常にアメリカの一方的な侵略行為によりまして戦争挑発の危険が出てきております。それについての外務省考え方について、われわれいささかまだ納得のできない点が多々ございますから、その二点についてきょうは私から大臣にお尋ねをいたしたいと思っております。それで、あなたの御都合で実は予定の時間が足りなくて、時間もありませんから、どうぞ御答弁も明確に簡潔にお願いをいたしまして、相互の理解と問題の前進をはかりたいと考えておりますから、そのこともあわせてお願いをいたしておきたい。  そこで、第一でありますが、日中貿易関係いたしております吉田書簡なるもの、これは実は国際関係から見ますと単なる私信にすぎないわけです、吉田さんのこの形式は。ところが、これは単なる私信ではない状態になって、特に日本外交並びに貿易に重大な影響を持つ公文書的性格を持ちだしておる。インフルエンスを与えておる。そこで、私は、局長がおられないので何でありますけれども、第一に委員長を通じて要求をいたしたいと思いますのは、この吉田書簡の全文をわれわれ外務委員に配付していただきたい。これは御用意がございましょうかどうか、この際大臣から一言、当然のことでありますけれども、念のために伺っておきたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 吉田書簡というのを資料として出すことは、これは個人私信でございますから、政府としてこれを出すことはどうもできないと思います。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 委員長、どうお考えになりますか、いまの御答弁。私は、いま理屈を言って時間を食うのはわれわれにとっても不利だし、委員会のためにも何ですけれども、はなはだ不当な、独善的、官僚的、秘密的態度だと思うのです。委員長、どう思いますか。われわれ外務委員は、そんなに非常識な要求をしたり、そのあげ足をとるような態度ではなくて、わが国の平和と外交前進するように、できるだけ一致点を見出すように、われわれの議論いたしましたことがどういう政治的結果を及ぼすかという結果についても配慮をいたしましていつも質問いたしておるつもりです。どうもおかしいよ、そういうことは。
  6. 安藤覺

    安藤委員長 穂積さんからの資料要求でございますが、ただいま外務大臣から、私信にわたることであるので提供いたしたくない、こういうおことばでございました。これが秘密的、官僚的、独善的な考え方であるという穂積さんの御意見は御意見として承りますが、でき得ればこの種のものも了解を得られて提供されるようにいたしていただきたいとは思います。しかし、政府としてそういう考え方のもとに立っておられては、これをさしずめ私からどうこうするというわけにはまいりませんので、そこで、後ほどまたこの点については理事会等でよく御懇談申し上げて、外務当局の御意向もさらにいろいろとただしました上善処するようにお話し合いいたしましょう。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことでわれわれ引き下がるわけにはまいりません。何も大きな声を出したくないわけですけれども、大体、あれが問題になったときに、佐藤総理は、あれは私信ではない、公的な性格を持っておから無視することはできない、こう言った。それで、反撃を食らって、しようなしになって、今度は、この問題については、あれは単なる私信で、政府関係ないとは言わないけれども、貿易その他のことについては政府自主的判断において行なう、こういうことで肩すかしをしようとしておるわけでしょう。ところが、外務省はどうですか。外務省黄田次官は当時談話を発表されて何と言いましたか。外務省を代表して、あれは単なる私信ではない、形式私信であるけれども、あの文書を出すときには外務省がこれにタッチして、そうして協議の上、納得の上で出しておるから、あれは単なる私信として取り扱うわけにはいかぬ、すなわち、外務省は、あの内容について、台湾に対して何もオブリゲーションがないということは困るということを言っているではないですか。そうしたら、これは明らかに、この問題は公的文書性格を持ったものになる。  続いてお尋ねいたしましょう。この文書に対しまして外務省コミットを与えておりますか。私信といえども、前またはあと政府コミットをすれば、これは同時に公文になりますよ。当然なことだと思います。そういう意味で、コミットをした事実があるかないか、これを大臣にお尋ねいたしましょう。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いまコミットしておりません。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 していなければ、黄田談話というものは、これは誤りでありますね。外務省としては取り消しますか。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 当時の外務省政策方針というものに合致しておるというだけのものでありまして、これはあくまで私信であります。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 黄田談話誤りですね。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 黄田次官がどういうことを言ったのか私はよく存じませんが、あくまでこれは私信でございまして、外務省とは関係がない。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 外務省関係がないというならば、それでは佐藤総理並びに黄田次官外務省を代表する談話というのは、これは誤りなんですか。誤りなら取り消しますか。それならわれわれは黄田次官出席を求めて、ここで——あなたは談話を聞いておらぬというのはおかしいですよ。そんなばかばかしいことを言っちゃ困りますよ。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 とにかく、これはあくまで私信でありまして、外務省公文書ではありません。ただ、内容がたまたま外務省方針なりその当時の政策というものと一致しておるということであります。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃ何らさしつかえない。秘密にすべきものではない。外務省意見と一致しておるなら、参考文書としてぜひお出しください。外務省では見ているじゃないですか。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私はこの書簡を全部読んでもおりませんし、存じません。見る機会ももちろんない。個人私信でございますかち、これはかってにどっかに持ってきて出すという性質のものではないのです。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 椎名さん、あなたは人をばかにしたことを言われちゃ困りますよ。あなたは私の先輩ですから、礼を尽くしながら論理正しく冷静にお伺いしているわけです。にもかかわらず、あれだけ問題になった書簡、しかも、佐藤総理政府を代表して、あれは公文に等しい、われわれ日本政府はそれにオブライジされておるんだということを国会において答弁されたときに、黄田次官は、あれは相談をしてつくったものだから外務省は無責任ではあり得ないという談話を発表している。それを、所管のあなたが、その文書なるものを暮夜ひそかに私宅でごらんになるにしても、役所でごらんになるにしても、いまさら、読んでおらぬから知らぬ、何のことが書いてあるかわからぬとはどういうことですか。何のことを書いてあるか、あなたは御存じないのですか。そんな子供だましみたいなことを言われては、私どもは、質問は簡単にしておこうと思っておったけれども、これじゃ引き下がれないのです。そんなばかばかしい答弁は前代未聞だ。総明なあなたがそんなことを言って、部下を押えるのにはそれで通るかもしれないけれども、われわれは国民の代表として責任を持ってお尋ねしているのですから、そんなことで引き下がったらわれわれの責任を果たせませんよ。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 輸銀を使わないということに関しての内容趣旨は聞いておりますけれども、私はその書簡を読んだことはないのです。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 中華週報というのは台湾政府宣伝文書でございますが、吉田書簡の問題について向こう向こう立場理解意見を発表している。こういうものは全然ごらんになっておりません。この書簡関連して最近昼に夜に在日台湾大使館から外務省に強い意見を述べておるはずだ。それを知らぬということでは、われわれはやめろと言われても下がれませんよ。そういうばかばかしいことを言われる大臣はいままでにおられませんでしたよ。それで、説明して、出せませんなんていうことでは、われわれ野党のみならず、与党委員長はじめ、この委員会自身納得できません。全く国会の、国民の世論、意見というものをネグレクトしておるじゃありませんか。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 個人私信でございまして、私がこれを手にして読んだことはないということは別にふしぎでも何でもないわけであります。ただ輸銀に関する内容が書いてあって、それは云々、その趣旨だけは聞いておりますけれども、その書信を読んだことがないということを、その事実をそのとおりお答えしているだけの話でございます。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 私はきょうは実はこんなことで議論するのが目的でないのです。それで政府に何かいやがらせしたり与党を窮地に追い込んで選挙を有利にしようなんというさもしい根性で言っているのではない。そうではなくて、最近のアジア情勢全体、日韓会談にしても、ベトナム問題にしても、この問題にいたしましても——私は日本経済自身の分析は今後国連憲章改正の中でお尋ねいたします。経済委員会へ参加する以上は、どういう方針をもって、どういう見通しでやるかということは。私は深刻だと思うのです。重大な転換期に来ていると思う。そういう意味で、実ばこの問題は、与党野党、ものの考え方は多少違いましても、これはぜひ前向きに、日本経済アジアの共栄のために話し合って進めたいという考えをもってお尋ねしているわけです。ところが、いまのようなことでさっぱりやらぬから、それじゃ何かうしろで目に見えないものにとらわれているのだろう。そういうことなら、まず第一に出てきているのが吉田書簡オブリゲーションの問題だから、それは外務省は一体どういうことになっているのだ。そんなことすなおにお答えになったらどうですか。もう十五分近く空転して時間を空費している。それであなたは時間が来たら参議院に呼ばれてさいならで途中で逃げていこうというのでしょうが、そういう態度ではいけませんよ。  委員長、お聞きのとおりだ。これじゃ、相談しますと言っても相談しようがないのです。絶対に出さぬのか、相談に乗るのか、それを大臣相談してください。あなたのほうから出している大臣ですよ。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 個人書信をかってに政府が一体出せるわけがない、その承諾なしに。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 それなら、そんなことを言わなければいいじゃないか。黄田次官は、あの文書外務省は無責任であり得ない、佐藤首相国会においてすら、あれは政府をオブライジしているものだと言っておいて、そんなばかなことを言えますか。個人的なラブレターだから信書の秘密上そういうことに云為することはできないとか、おかしいでしょう。国の政策を縛っている文書ですよ。縛っているとみずからが、政府が、外務省が言っているのだ。そんなことであなた、委員長のせっかくのとりなしにかかわらず、出すことはできませんと言うならば、きょうはやめましょう。そういうことで押されるなら、相談したって意味ない。委員長、どうお考えです。そんな態度を容認しておいて理事会相談するといって、何を相談するのですか。所感を委員長からまずお尋ねしよう。とぼけたこと言っちゃ困るよ、ほんとうに。憤慨にたえない。
  24. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 総理も、吉田書簡内容とするところがたまたま政府方針であるがゆえにこれを尊重し、これを無視するわけにいかぬ、こういう趣旨のことを言われたものだと考えておりますし、それ以上のことは言えるはずのものではない。でありますから、吉田書簡そのものに拘束されると言われるけれども、ただ政府方針なり政策というものがたまたま合致するから、この内容に拘束される、個人書簡に拘束されるということではない、たまたま内容が同じだからこれを尊重せざるを得ない、こういうわけであります。それはどうぞ誤解のないように。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 私は前へ進もうと思っているけれども、あなたがそういうことをおっしゃるから進めないのですよ。たまたま一緒だといっても、見ていないのに、私信でわからぬと言っているのに、一緒であるかどうかわからぬじゃないですか。だれが判断するのですか。あなたは見ていないのに、政府方針と一致していると言うのはどういうことでしょうか。見ているけれども政治的な理由で発表できないというならまだわかるけれども。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 中共に対するプラント輸出については輸銀の資金を使わないということだけは、これはもうそれに書いてあるらしい。書いてあるようです。見たわけではない。これはおそらく書いてあるでしょう。それは政府方針と一致するから、これを尊重し、この趣旨に従って政府がやっている。あとは、前後にどういうことが書いてあるか、そんなことは見たわけじゃないから知りませんけれども。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 それなら政府方針はかくのごとしとだけ言えばいいじゃありませんか。あの問題は野党から言ったものじゃなくて政府からおっしゃったのですよ。吉田書簡はこの問題に関連をし、しかもそれに対して政府は無責任ではない、オブリゲーションを感じております。したがってあの書簡を無視するわけにはいきません、こう言ったから初めて問題になった。おかしいじゃありませんか。そういう御答弁でいいでしょうか、いまのような。これはさまつなことですから、私は、コミットしているかどうかということを知りたいということと、それがいつ発効していつ失効しておるか知らぬけれども、一体、外交政策政府政策に関する吉田さんの個人的な責任の問題ですけれども、それを外務省が追いかけて、あれは無責任ではない、相談に乗ってやったんだ、それから、今度は総理大臣があれはわれわれが責任を持たなければならぬ文書である、こう言われたんです。そしたらそれが問題になった。それならその内容は一体どういうものですか。国民にお示し願いたい。拝啓とか、また会いましょうというようなことは、われわれは何も要求していない。その部分に関する限り、少なくともこれは政治的コミットをしていないと言うから、公文書という形式にはなっていないけれども、内容においてはこれは明らかに政治的公文書ですね。それがなければわれわれはどうも進むわけにはいかぬから言っているわけです。  ちょっと委員長、これはひとつ、あなたの良識ある民主的な国会の精神から、この点は大臣相談をして締めくくりの御答弁をいただきたい。これは絶対出せませんということでは引き下がれないわけですよ。
  28. 安藤覺

    安藤委員長 これは、先ほど申しましたとおり、この委員会散会後御相談に乗りまして、各方面の意見を聞いて結論を出しましょうか。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 わかりました。委員長態度はわかりました。  そこで、大臣に聞きますが、委員長はそう言っておられる。だから、あなたが絶対出さぬということを前提としないで、そして委員長とお話し合いになる意思がありますか。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 個人書信でございますから、政府がいま出す出さぬということをきめるわけにはいきません。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 委員長会談に応じますね。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 委員長からこの問題について何か御相談があれば、それはもちろん応じます。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 時間の関係があるから先に進みましょう。その問題はそれとして、資料提出と、それからコミットしているかどうかという事実でございます。  そこで、今度は政府方針について、それに関連してお尋ねいたしますが、御承知のとおり、中国側配慮によりまして、この造船のネゴシエーション期間というものが三月末まで延期になっている。われわれは、このことについては、政府良識、特にあなたには経済外交の促進という意味世間期待しておった。そして通産省はむろん貿易拡大国際経済情勢というものを判断して、これはどうしてもやらなければいかぬ。ヨーロッパ並みというか、ヨーロッパ並みで全部やっておるわけだ。これ以上にさらに有利な条件でやっておるわけだ。そして、向こう側日本に対して提案いたしました二十幾つかのプラントというものは全部ヨーロッパに取られておる。それで日本はドルの危機に追い込まれておる。外務大臣経済官僚出身であるにかかわらず、それに対して何らの理解を示していない。努力をしていない。しかし、われわれはその良識期待いたしまして、そして、あまり要らぬことを申し上げるよりは、あなた方の自主的な御結論を静かに、しかし熱烈な期待を持って待っておったわけだ。時すでにもう数日にいたしまして月末になります。聞くところによりますと、通産省大臣に至るまでこの問題についてはすでに踏み切っておる。ところが、外務省一つアメリカ一つ台湾に気がねして、特に、月末が近づきますと、われわれはおとなしく、そうして良識判断を待っている間に、外務省の主体性がないために、台湾側からの夜を日に継いでの逆攻勢にかかって立ち往生しているではないですか。これは好ましくないとぼくは思う。そんなことを国会で言わなくても、もう世間周知の事実ですよ。どうなりましたか、どうされるつもりでしょうか、内容についてお尋ねしましょう。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、従来のビニロンプラントの問題もございますし、きわめて慎重に取り扱わなければならぬと考えております。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 慎重に検討して期日までに間に会いますか。慎重に検討しているなら、われわれはせっかく御努力期待いたしましょう。そしてあなたの聴明な良識ある経済的な判断というものを含めた外交方針、処置をわれわれは期待いたします。もうこれは漫然と検討中ということで済まされる問題ではなくて、もうすでに期限が切れているのを、向こう側特別配慮で実は三月末日まで延びているわけですね。それがもう迫ってきておる。いかがでしょうか。
  36. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 慎重に検討いたします。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 だから、慎重検討期待して、私は御努力期待いたします。それを疑ったりけなしたりはいたしません。  そこで、お尋ねしたいのは、もうこれは日中の関係で、向こう側の譲歩で実は三月末まで延びている期間が来ようとしている。そういうわけですから、それに対して三月末までに何らかの結論期待さるべきだと、これは国民常識からあたりまえではないでしょうか。国際的にもそうでしょう。それまでに間に合わなかった、あるいはまた期待を裏切った決定をしたということによって、この際ますますベトナム問題にプラス日本中国中国アメリカ関係絶縁状態になる。これは単なるニチボーのプラントの問題ではないですよ。一取引の問題ではないですよ。外交上の問題だから問題になっておる。周総理は、御承知のとおり、初めあの交渉の最中に、わが国民間で今度はやらなければならない、輸銀は使えないかもわからぬ、そうなるとヨーロッパよりは利子がずっと高くなる、そうなると約十億円の損失になるといったときに、それはかまいません、そういうことはお国の国内事情ですから、そのときは五億・五億で私のほうも片棒をかつぎましょうという話までできて、実はネゴシエーションが進んでおったわけだ。だから、あの答弁がなければ——ないないといっていま逃げておる。吉田書簡というものがなくて、台湾との関係ではなく、アメリカとの関係ではなく、日本中国との関係で、日本国内経済事情によるものであるならば、値段が高かろうが、民間融資であろうが、そんなことは問うところではない。経過は御承知ですね。そういうことで、ひとつそれにこたえる日本政府の前向きの態度、これは佐藤内閣の重要な施政方針の一端でしょう、中心ではないですか、アジア外交は。期限は三十一日まで、それから、結論としては、それに逆行するものではなくて、前向きの前進結論をわれわれは期待いたしますが、それに対する大臣御所感を伺っておきたい。
  38. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 とにかく、慎重に検討いたしまして、自主的にこれを決定したいと思います。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 それで、どうですか。そんなことはもうわかったんだから、次の質問をしているのです。質問に答えてください。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ですから、慎重に検討して、自主的に決定するということであります。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 だから、期限を聞いているのです。なぜ私がこういうことをくどく言うかというと、実は、外務省は、もう一月なり二月なり、三月末というのを再度延長させたい、そのためには、粘っておればベトナム情勢をにらみ合わせながら何とかなるだろうというようなお考えでしょう。おかしいですよ。これでは自主外交も何もないじゃありませんか。吉田書簡関係ない、われわれ自主的にやるんだと言い切って、台湾にも中国にもそれを言っておりながら——大臣をベンチコーチしているアジア局長、ちょっとこっちを向いてください。あなたの個人的な聴明さと謙虚な態度については、われわれは誠意を疑っていない、期待いたしておりますけれども、しかし、これでもしあなたがミスジャッジ、ミスリードされたら、これは一外務省の問題じゃないですよ。ベトナム問題、日韓問題とからんで、中国とはこれで事切れですよ。金の問題じゃないのです。金の問題なら、次の日立からの交渉を、十億高くなろうが二十億高くなろうが、民間融資でいいんですよ。吉田書簡関係がない、台湾の介入がないということを示そうとするならば、ニチボーでやりさえすればそれで一切解決です。私信だから見せられなかった、中身を見せたことがない、そういうことを言うなら、なぜ一体とらわれているのですか。日立ができてニチボーができないという理由を明らかにしてもらいたい。ニチボーならできないが日立ならできるということは何ということだ。ひきょうだ。しかも、吉田書簡にオブライジされていない、自主的にやる、台湾からもアメリカからも文句は言ってきておるが、おれはそんなことは聞かぬと言っておる。その国会答弁が事実であるというなら、吉田書簡を無視して、ほかは民間でもよろしい、逆なんだ話は。問題になったニチボーの融資だけでも輸銀でやらなきゃ証明にならない。吉田簡書にオブライジされていないという、大臣、御答弁ください。それから局長
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 行政の問題でございますから、お考えだけは伺っておきますが、慎重に検討して自主的に決定するということであります。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 わが愛するアジア局長、何とか御所感をひとつ。大体あなたが震源地だろう。
  44. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 別に責任を回避する次第ではございませんが、この問題は省内では経済局が所管しております。非常に政治的な含みの多い問題であることはよく承知しておりまして、それで、大臣の言われましたとおり、あらゆる面から慎重に検討しているのでありますが、主管の責任経済局でございますので、そちらから答弁させていただきます。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 しからば、同じ佐藤内閣の中で——しかし、いまの答弁、満足しておるわけじゃない。時間がないからあれですが、私の期待に対して、あなたは私を裏切っておる。  そこで、通産省局長お見えになっていらっしゃいますか。通産省は一体どういう決定をしているのです。
  46. 宮城恭一

    ○宮城説明員 通産省といたしましては、貿易拡大の見地から大いにやりたいと考えておりますが、これは佐藤内閣において自主的決定すべき問題だと考えます。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 つまり、やりたいというのは、輸銀の融資によってこの問題を打開して、そして全体の貿易の拡大をやりたいという意味でございますね。
  48. 宮城恭一

    ○宮城説明員 そういう意味でございます。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 大臣、お聞きのとおりだ。そこで、アジア局長にお尋ねしましょう。事務当局同士は一体今後これをどういうふうにスケジュールに乗せていくか、三月末をまさか日韓会談で目がくらんでお忘れになっているんじゃないと思うのだが、どういうふうにするのか、その程度のことを示してもらわぬと、いまのようなひょうたんなまずみたいな椎名さんの御答弁では、これはちょっと締めくくりにならない。
  50. 内田宏

    ○内田説明員 お答え申し上げます。外務省経済局といたしましても、関係各省と協議いたしまして、慎重自主的に決定したいと思っております。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 それは、慎重はいいけれども、目的に向かって進むように打開してもらいたいと思う。大臣はいま外務大臣ですけれども、私も通産省にはちょっとおったことがあるし、あなた方の先輩だが、こんなことを言う大臣だとは実を言うと思っていなかったのだ。一般政治外交はやらぬでも経済外交だけは熱心にやっていただけると思っておったら、この大臣はとんでもないことになっちゃった。だから、通産省、あなたひとつ、この後宮さんに遠慮せぬで、もう少しベンチコーチしてもらわなければ、ほんとうに困ると思う。内面指導を私は大いに期待いたしますから、役所に帰ったら大臣に報告して——櫻内君だって、省としてもう結論は出ていると思う。ぼくは櫻内君とは日中関係で昔から、同志とは言わぬが、いろいろ話し合っているが、理解できないはずはないのだ。そこで、最後はトップ会談総理の決断か知らぬけれども、そういうことを努力されることを約束できますか。通産省どうです。
  52. 宮城恭一

    ○宮城説明員 できるだけの努力はいたしたいと思っております。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 それから、外務省どうですか。サボタージュするつもりか、努力するか、はっきりしなさい。
  54. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さっきお答えしたように、慎重にに検討して自主的にこれを決定する、こういうことでございます。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、われわれ仄聞するところによると、まだ外務、通産、大蔵並びに総理との間の十分な相談ができてないということで、はなはだ時期おそきに失しておりますけれども、そういうことも漏れ伺っておるものですから、きょうはこの程度にしますが、国際経済は特にたいへんだとぼくは思うのです。あなた方どう見ているか知らぬが、役人のための経済ではありませんよ。山陽特殊鋼の倒産にいたしましても深刻な問題だと私は思うのです。国際的な連鎖反応がことしから来年にかけて必ず起きますよ。いわば国際経済の情勢は昭和四年の段階だと思うのだ。それだけちょっと注意しておきます。この問題の処理のしかたは、経済問題でなくて、しかも日本中国アジア全体の平和に関係する問題であるというふうに思います。アメリカはベトナムで武力で戦争している、侵略をやっている。日本経済で、中国を仮想敵国として、これに協力しておる、敵視政策じゃありませんか。そんな誤ったことをやったら、後宮局長、あきませんぞ。  続いて、ちょっと時間が延びたようですし、あと川上委員が御質問があるようですから、簡潔にいたしますが、これはアジア局長または条約局長のアドバイスを得られて外務大臣から御答弁をいただきたい。  まず第一に、アメリカの最近、昨年八月以後の特にベトナムにすわり込んでの軍事行動というものは、これはもう明らかなる侵略です。明らかなる挑戦、挑発でございます。昨年私はIPUの帰りにアメリカへ渡りました。さすがに東部地区はややインテリ水準というものが、われわれほどではないが、われわれに近い。西部のごときは、これは無学文盲の地帯で、国際情勢などわからない、経済もわからない、感情的な反共論を言っておるだけのことなんだ。これはもう日本全国どんないなかへ行きましてもこれより低い認識を持っておる国民はおりません。さすがに、高くはないけれども、ニューヨーク州地帯におきましては、昨年のトンキン湾事件の問題が出たら、これは、かつて日本が柳条溝、盧溝橋事件を起こしたが、それ以上にアメリカの良心の恥ずべき行為であったということを、学者またはインテリあるいはジャーナリストの人々はわれわれ日本人の質問に対して率直に答えておる。最近の行動は何ですか。そんなことを一々私は説明するいとまがありませんから、そういうことで第一お尋ねいたしたいのは、日本政府のいままでのこの問題に対する声明というものは一体何でしょうか。これは一体平和を愛する政府あるいはアジアの戦争を防止しようとする政府態度でしょうか。政策問題に入る前に私はお尋ねいたします。アメリカがあそこへすわり込んでああいう戦争行為をやっておる国際法上の権限は一体どこから生まれておるんでしょうか。それを第一にお尋ねしたい。
  56. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 単独または集団的に自衛の行動をするということが国際法に認められております。この趣旨が国連憲章五十一条にたしか明記されております。すなわち、北からの継続した侵略に対して南ベトナム政府及びアメリカが南ベトナムの独立と自由を守るために自衛の行動をしておる。これはもう国際法に、あるいは国連憲章に明記されておるところでございます。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 ジュネーブ協定との関係はどうですか。ジュネーブ協定並びにジュネーブ宣言。これは一般じゃない。ベトナム問題、インドシナ問題についてのあれがあるわけでしょう。大臣、そんな子供だましみたいなことは、ほかの委員会は通っても、ここは通りませんよ。ばかばかしい。五十一条が何だというのです。
  58. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 法律的に申しますと、御承知のとおり、このジュネーブ協定は、米国、ベトナムともに当事国でございませんので、まず条約上の厳密な意味におけるジュネーブ協定に縛られるという関係はないわけでございます。それと、先ほど大臣から御答弁がありましたように、北越からの継続的な浸透行為、これに対して防除するためにベトナム政府から援助を求められたので、その要請に応じて米国は出動した、そういうことになっております。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 時間があれば、そんな誤った大臣並びに局長の認識に対して、私はここで日本のために、日本の運命のために実は抗議をしたいと思う。五四年のジュネーブ協定は一体何だというんだ。そのときにおける十四カ国共同宣言の内容を見ていますか。アメリカはこの中立ベトナム協定を促進してフランスを追い出しておきながら、あとになって何するかと思ったら、中立宣言があるからこれは思わしくないというので直ちに反対声明を出して、単独声明を出した。内容ごらんになっていますか。どこに書いてある、そんなこと。局長大臣、そんなことどこに書いてある。  それから、五十一条、五十一条と言うが、五十一条のつくられるときのいきさつだ。これはなかったんだ、初め原案に。それをダレスがチャプルテペック協定の関係でこれを無理やりに押し込んで、そして世界じゅうに武力干渉ができる条項をつくった。この条項が差し込められたときに彼は何と言ったかというと、これでアメリカの国際的な支配力が維持できる、これはもう非常に尊重すべき非常な収穫の一条であると。これを、いま大臣が言った、この規定にのっとって、そんなばかなことを言って、いまのあれが侵略でないなら、それでは一体柳条溝事件盧溝橋事件はどうなるのです。リットン報告のありましたときのあんなものは間違っていたことになります。あのときには日満議定書がありますよ。あのときにリットンが出て何と言いましたか。これはアメリカを含んでいるわけです。これは明らかな侵略行為である、それで国連を脱退したじゃないか。これがいいならリットン報告というものは根本的に誤りです。間違いです。しかも五十一条というのはアームドアタックです。どこにアームドアタックがあるか。南ベトナムまたは南ベトナムに駐在する米軍に対して北ベトナムからどんな武力攻撃がありましたか。あなたは五十一条を読んだでしょうか。何が侵略行為ですか。
  60. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 具体的な特定の攻撃に対してこれを排除するために反撃を加えるという場合もありますが、しかし、ただいまの状況は、絶えず北方から人及び物資による侵透が行なわれ、これに基づいていろいろ国内でテロ行為その他の事件が絶えず継続して行なわれている、これを総括して北からの侵略がある、これを排撃するためにやっているのだ、こういうことでございまして、その事実にして誤りなくんば、われわれは、これはやむを得ざるいわゆる自衛の行為である、こう考えております。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 ばかばかしいことを言っちゃいけません。ジュネーブ協定の厳守、停戦と撤兵と、それからあとは武器、兵力、軍需物資、基地その他の撤廃。それをやっておらぬのはアメリカですよ。ジュネーブ宣言、ジュネーブ協定の精神を、アメリカは参加はしないが重視すると書いてある。そういう立場におりながら、この協定をじゅうりんしているのはアメリカなんです。それを実行していないのは全部アメリカなんだよ。どこに一体五十一条の解釈による武力攻撃がありましたか。自衛権、集団自衛権を行使できるのは武力攻撃に対してですよ。それは武力攻撃に対する武力行動ですよ。何をあなたは言っているのですか。経済援助をしたものを武力をもってたたくことができるなんということが五十一条のどこに書いてあるかと言うのだ。ふざけたことを言って、戦争中の国会ならいざ知らず、いまの国会をこれで通れるなんて思ったらとんでもないことですよ。この五十一条をお読みになりましたか。条約局長相談して御答弁ください。いまのあなたの言ったことが五十一条に当たりますか。
  62. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 五十一条は読んでおります。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 いまの物資の援助があるかないかの事実は、西村委員がこの間視察をしてこられたから、この次に関連してやっていただきたいと思いますが、たとえあったとしても五十一条に当たりませんよ。五十一条は、緊急にして急迫した実害の伴う武力攻撃、これがあったときに、実はそれは国連安保理事会が取り上げなければならぬけれども、国連安保理事会が取り上げるまでの最小必要限度の自衛行為、それだけしか許されていない。南ベトナムどころか、ベトコンがどこにあるやらわからぬで、何かがあるらしいということで、それはまるで、満州事変をやってみたら、その次は北支だ、北支の奥は中支だ、中支の奥は武漢だ、その奥は東南アジアだ、その奥はアメリカだといって世界じゅうを敵にするようになったのと同じ姿じゃないですか。
  64. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 国連憲章の第五十一条は、公然たる軍事行動の場合のみならず、いわゆる間接侵略のような場合でも、それに成員、武器等の潜入とかいうような武力的な要素が加わっておる場合には、ここにいう武力攻撃に該当する場合があり得るということは、前から政府の見解として明らかにしておるところでございます。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 ばかばかしいことを言っちゃいけません。そんな五十一条の解釈は、外務省の解釈として前代未聞ですよ。歴代の条約局長でそんなことを言ったのはあなただけですよ。五十一条というものと自衛権並びに集団自衛権、これは実は今度国連憲章の改正のところで私は議論しようと思っていたのです。国連憲章の改正の第一はこの集団自衛権というものを削除することだ、五十一条を。だけれども、いまはあるのだから、自衛権というものは国際法上一応認める。その場合に、行使については、これは自衛、集団ともにもう非常に限られた状態においてのみ最小限度認められるのであって、いまみたいな拡大解釈でやったら、世界じゅうどこへでも、気に入らぬところは侵略戦争できますよ。条約局長、私はあなたとは同窓だけれども、もう個人的なことは別にして、あなたがいまのような答弁をされて、それで外務大臣の誤った判断を支持し、アメリカのごきげんをとろうとするなら、日本外務省局長としてわれわれは認めるわけにいかない。しかも条約解釈というものは客観的でなければならい。公正でなければなりません。そんなばかばかしい解釈が成り立ちますか。これは黙っておれない重大な問題で、きょうは実はそれを中心に、最近の行動の法的根源と、それから彼らの行動の限界と自衛権の限界を——これは明らかなる侵略です。明らかなる挑戦です。すなわち、満州事変当時における日本関東軍の行なった以上に恥ずべき、しかもおそるべき侵略行為です。そいつはやはり認識の違いだというから、私は条約上根拠を明らかにして誤りを指摘したいと思っておった。それはできないで、川上委員もぜひきょう質問をしたいということですから、これからあと川上委員に二十分ばかり時間をおさきいたしまして、これは理事会の結果ですから、決定どおりに私は従って途中で切ります。切りますけれども、次はやりますから、あなたのほうもしっかり用意して、統一解釈をもって臨んできていただきたいのです。前とあとと横と全部違うんだから。
  66. 安藤覺

    安藤委員長 川上貫一君。ちょっと川上さんに申し上げます。委員長は先ほどあなたに大臣の退席時間は十一時三十分と申しましたが、委員長誤りでございまして、十一時二十分が外務大臣の退席時間になっておりますので、さよう御了承の上御質疑をお願いいたします。
  67. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣にお尋ねします。  御承知のように、ベトナムにおいて狂暴きわまりのない強盗戦争を続けておるアメリカは、ついにベトナム人民に対して毒ガスを使用することになった。外務大臣はベトナムにおけるアメリカの行為は正当なものであると繰り返して答弁しておられます。彼らがこのたび毒ガスを使用することを、これもまた正当なものであると外務大臣はお考になりますかどうですか、これについて。
  68. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 毒ガスを使用しておるという事実につきましては、私はまだ何も事実を存じません。そういう仮定を置いた論議は差し控えたいと思います。
  69. 川上貫一

    ○川上委員 これはアメリカの各新聞がトップに書いておる。アメリカのモース上院議員は非難の演説をしている。日本の各新聞も全部書いておる。それを知らぬと言うのですか。むちゃな答弁ではありませんか。
  70. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 残虐なる毒ガスを使うということは、これはもうもちろんやめなければならぬことでございますが、そういったような事実はまだはっきりしておりません。一体どの程度のガスであるか、催涙程度のものであるか、あるいはそれ以上のものであるか、さらには残虐な毒ガスに該当するものであるか、その点まだはっきりしておりません。
  71. 川上貫一

    ○川上委員 日本政府は、一九〇七年のへーグ条約、これは毒ガスの使用を禁止しておるのですが、これを尊重し守る意思があるのですかないのですか。
  72. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 日本はこの条約の当事国でございますから、この条約の規定に従って行動すべきことは当然のことであります。
  73. 川上貫一

    ○川上委員 アメリカは毒ガスを使用しておると言うておるじゃないですか。アメリカそれ自身が発表して、否定してない。それをわからぬと言う。それなら毒ガスの使用は賛成しますか賛成しませんか、外務大臣
  74. 安川壯

    ○安川政府委員 ガスを使用したということは新聞紙上で承知しておりますし、それから、アメリカ政府当局がある種のガスを使用したということは確認しておりますから、これは間違いないと思います。ただ、どういう種類のガスでありますか、その点は正確に私ども把握しておりません。ただ、新聞に報ぜられましたアメリカ政府の発表をそのまま引用さしていただきますと、通常暴徒の鎖圧に使用される無力化を目的とするガスに匹敵するものである、こういう説明でありまして、それ以上私どもとして正確に、どういう性質のものか、はたしてこれが毒ガスと言えるかどうかという点は、はっきりいたしません。
  75. 川上貫一

    ○川上委員 毒ガスじゃないガスを使っておるというのですか、どうですか。嘔吐を催し皮膚に影響を与え、少なくとも数時間は活動ができないこのガス、これは毒ガスでないガスなんですか。
  76. 安川壯

    ○安川政府委員 毒ガスの定義の問題だと思いますが、その程度の説明ではたしてこれが国際法上禁止されておる毒ガスの範疇に入るかどうかということについては自信を持って申し上げられないのであります。
  77. 川上貫一

    ○川上委員 毒ガスの使用を支持しますか。これも正当だと言いますか。これは外務大臣に聞いておる。毒ガスはいけないというのですかどうですか。
  78. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ガスがすべて毒ガスだと言えるかどうか、国際条約に定めておる毒ガスに該当するものであるかどうか、まだはっきりしません。それがはっきりすれば、これは申し上げられると思いますが、(川上委員「はっきりすればどうする」と呼ぶ)はっきりして、それがいわゆる条約に該当する毒ガスであるならば、これは抗議しなければならぬと思います。法律上の問題でございますが、この件につきましては条約局長から申し上げたいと思います。
  79. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 実定国際法上の問題としてお聞き取り願いたいのでありますが、一般国際法規として、すべての人体に有害なガスが使用を禁止されておるということまでは確立しているとは言えないと思います。なお、毒ガスその他のガスについての国際約定が三、四ありますけれども、いずれも現在ベトナムにおいて適用のあるものはございません。したがいまして、実定国際法上の問題として申し上げれば、法律的に違反という事態は起こっておらないわけでございます。
  80. 川上貫一

    ○川上委員 現在起こっていないというのですか。
  81. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 さようでございます。   〔「それは調べたのですか」と呼ぶ者あり〕
  82. 安藤覺

    安藤委員長 ちょっと待ってください。速記が困りますから、御起立の上、委員長とお呼びくださって、その許可のもとに御発言願いたいと思います。
  83. 川上貫一

    ○川上委員 いま毒ガスか何かわかっておらぬからというのですか。よくわかりません。
  84. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私は現実に起こっておる事態についてとやかく評価を申しておるわけではございませんで、一般的な国際法規として、一切のガスの使用が禁止されておる、そういう規則が国際法上確立されておるとは申し上げられないという点が一点。それから、第二に、国際協定、条約類で、アメリカもベトナムも拘束し、したがって現在の事態に適用があるようなガスの使用禁止を含む条約、協定はありません。その二点を申し上げておるわけでございます。
  85. 川上貫一

    ○川上委員 これはいいかげんな答弁です。外務大臣は毒ガスの使用であるならば抗議をするとおっしゃった。へーグ条約は守ると言った。答弁は要りません。これはまたぐずぐず言われたら困る。こう言うておる。これは一つ政府考え方を明らかにしたものだと思うのです。毒ガスの使用であることは間違いない。ごらんなさい。数日のうちにもつともっと明らかになりますよ。その時分に、外務大臣、どういう形で抗議しますか。
  86. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約の当事国であるならば当然これは拘束されるのでありますが、アメリカは当事国じゃないようであります。でありますから、残虐な毒ガスを使っておるということがはっきりした場合には、何らかこれに対して適当な外交行動を起こすべきである、かように考えております。
  87. 川上貫一

    ○川上委員 この問題は、こういう形で押し問答しても結論はつきません。一応政府考え方を聞きました。  もう一つ聞きます。ベトナム人民はもちろん、世界諸国の人民は、この無法きわまりないアメリカ帝国主義の東南アジアからの無条件即時撤退を要求しております。この要求は当然であり、正当な要求です。あなたはこの要求を支持するつもりですか、支持しませんか。
  88. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北ベトナムは、ベトナムの問題はベトナム人にまかせろ、であるからアメリカは直ちに軍隊を撤退すべきである、こういう要求をしております。しかし、アメリカは南ベトナムの要請に基づいてその独立と自由を守るために軍事介入をしておるのでありますから、それで、アメリカのほうとしては、まず北からの侵略をやめろ、それがはっきりしたならば軍事行動を中止する、そして話し合いに入る、こういうことを言っております。この二つの主張を見比べてみまして、北ベトナムの、ただアメリカが軍隊を撤退すればそれで片づくのだ、そういうことはどうもわれわれは同意できない、こういう態度でこの問題に対処しておる次第でございます。
  89. 川上貫一

    ○川上委員 時間を食いますから、時間を節約しますが、いまの答弁は、その中にはきわめて重大な問題がたくさん含まれておると思う。これは、私は一口に言いますが、あなた方はいよいよますますアメリカの手先になり、もっと率直なことばで言えば、アメリカのかいらいになって、日本政府アメリカのために日本をほんとうにアジアのみなしごにしようとする方向をとっておると思う。これは、世界の平和についてはもちろん、アジアの平和、民族の将来にとってきわめて重大な問題だと思う。この点については私はもっと十分に質問をしたい。しかし、きょうは時間が非常にない。私はきょうは日韓会談質問したかった。しかし、もうほとんど時間が切迫して、二十分には外務大臣は退場するという。そういう考え方であるから日韓会談をしゃにむに推し進めておられると私は思うのです。  そこで、外務大臣にちょっとお聞きしたいのですが、外務大臣はこう答弁しておるのです。日韓基本条約について、その適用の範囲は、同条約第三条に援用した国連決議によって休戦ライン以南である、これが答弁です。しかし、同決議によって条約の適用範囲を規定することはできないと私は思うのです。すなわち、同条約の第三条に援用されておる一九四八年十二月の国連総会の決議、これは、第一に、その当時の国連臨時朝鮮委員会が観察した朝鮮の部分に支配と管轄権を持った政府ができた、こう言うておるだけで、その政府の管轄領域を決定したものではありません。第二に、国連には他国の管轄領域を決定する権限はありません。したがって、一九四八年の国連決議によって韓国の管轄領域をきめることは絶対にできない。第三に、その国連決議はいわゆる朝鮮戦争以前の決議であって、この当時には、休戦ラインなど、そんなものは何にもない。  そこで外務大臣質問したい。以上明らかにしたような国連決議によってどうして日韓基本条約の適用範囲がきまりますか。絶対にきまらぬじゃないですか。
  90. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約の解釈でございますから、条約局長答弁させます。
  91. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 一九四八年の国連決議ができた当時から、仰せのように朝鮮動乱があって事態に若干変化があり、管轄権の及んでいる範囲に出入りがあったことは事実でございますが、これは、私どもは、国際連合決議の趣旨に根本的な変改を加えなければならないような事態ではない。これは国連総会自身もそう認めておるわけでございまして、年々の総会でこの一九四八年の決議を確認してまいっておる次第でございます。  なお、この条約の適用範囲ということを仰せになりましたけれども、この条約ごらんのとおりの非常に基本的な関係だけを規定した条約でございまして、たとえば通商貿易関係の規定を持った条約のように地域的に適用範囲を限定しなくちゃならないような種類の条約じゃないわけでございまして、第三条によって、日本政府としては大韓民国政府というものをこうこうこういうものとして確認する、その内容は国連決議にうたわれておるとおりであるというのが第三条の趣旨でございまして、適用範囲という問題とは直接関連がないのでございます。
  92. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば、基本条約は適用範囲はないというのですか。
  93. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 条約上の用語で申します適用範囲に関する規定はございません。
  94. 川上貫一

    ○川上委員 休戦ライン以南が適用ラインであると外務大臣が言うたのは、あれは何ですか。
  95. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約の及ぶ範囲が三十八度線または休戦ライン以南であるということを申し上げたのであります。
  96. 川上貫一

    ○川上委員 それは条約のどこから来るのですか。いま条約局長条約からは来ないと言った。
  97. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 引用されておる国連決議の内容から来るのです。
  98. 川上貫一

    ○川上委員 条約局長条約上適用範囲がきめてないと言った。外務大臣の言うのと違いますが、私はこの答弁なり論争を繰り返す必要はないと思う。これは、条約局長外務大臣、全くごまかしておる。これは重大な問題だ。あなた方は適用範囲は明文化しなければならぬくらいのことは初めから知っておったのです。現に外務大臣は適用範囲をきめるという原案を持って韓国へ行ったはずです。ところが、韓国はそれを拒否した。そこで、えたりかしこしと、あなた方は明文化しないこの基本条約に仮調仰した。ここに重大な問題がある。そもそも韓国の憲法の第三条は、韓国の領域を、朝鮮半島全部、それに付属する島々と規定しておる。しかも日本政府はその憲法を尊重するとたびたび答弁しておるのです。その上、基本条約では、その韓国を朝鮮唯一の合法政府と、こういうことを言った国連決議を援用しておる。朝鮮唯一の合法政府と確認したのです。これは何を意味するか。これこそ条約の適用範囲をわざわざごまかしておる。わけのわからぬものにしておいて、実際にはその適用を全朝鮮に及ぼす下心がきわめて明瞭だ。これが日韓基本条約の本性だ。ここに危険がある。  そこで、私は時間の節約上外務大臣に聞きますが、韓国の李外務部長官が、二月の二十七日の韓国の国会野党代表の質問に対して、椎名外相が条約の適用範囲を休戦ライン以南であると言っておるのは、それは大韓民国の管轄権がいまのところでは休戦ライン以北にまでは及んでいないという物理的な事実を述べたのにすぎない、こう答弁しておる。同時に、二月二十六日の記者会見でも同じことを言明しておる。これは韓国政府の正式見解です。すなわち、韓国政府は、適用範囲を休戦ライン以南などとは言ってない。限ってない。これは外務大臣どう思いますか。
  99. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 引用されておる国連の決議の内容から先ほど申し上げたのでございますが、そのとおりであります。
  100. 川上貫一

    ○川上委員 それでは、外務大臣日本国会では日本向けの答弁、韓国の国会では韓国政府は韓国向けの答弁、気脈を通じてこれをごまかしている。ここにこの基本条約というものの重大な落とし穴がある。ここに重大な点がある。これこそ国連決議では条約の適用範囲がきまらないという証拠なんです。休戦ライン以南でも何でもない。私はここにこの条約の落とし穴があると思う。  ここで、私はもう少し続けて言いますが、一体外務大臣は、基本条約第三条にいう一九四八年の国連決議なるものはどんな決議だと考えておりますか。この決議は、その後朝鮮戦争のとき、すなわち一九五〇年の六月及び一九五〇年の十月の国連決議に援用されました。この援用された決議であるが、この決議こそ、アメリカとそのかいらいの当時の李承晩政府、これが朝鮮戦争を起こし、三十八度線を突破し中国へ侵入しようとしたあの無法な行動を合法化する根拠となった決議である。これが一九四八年の十二月の決議である。いまから十七年も前の決議である。このような決議をいままたそのまま基本条約に援用する、わざわざ条約の適用範囲をあいまいにしてしまう、このことは、現に韓国が全朝韓を領域とする憲法を振りかざしておる事実と相まって、彼らが再び三十八度線を突破していわゆる北進統一の陰謀を実行するための根拠を提供するものである。これがこの基本条約である。同時に、その条約日本を巻き込む根拠を与える条約である。こういう条約だと言わなければならぬ。これは単なる条文の解釈ではありません。外務大臣、これをどう考えるか。こんな条約アジアの平和と日朝両国人民の友好親善に役立つと考えますか。友好親善をぶちこわし、朝鮮の南北統一を破壊してアジアの平和を撹乱するこの条約じゃないですか。これをどう考えますか。
  101. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 遺憾ながらあなたと見解を異にするわけであります。南北の統一を、この日韓会談が妥結いたしましても、決してこれをそこなうような、統一に支障を与えるようなものは一切何もない、むしろ将来の統一を促進こそすれ、これを妨げるものではない、かように考えております。
  102. 安藤覺

    安藤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午前十一時二十九分散会