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1965-02-24 第48回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十四日(水曜日)    午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 高瀬  傳君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 毛利 松平君    理事 戸叶 里子君 理事 帆足  計君    理事 穗積 七郎君       菊池 義郎君    鯨岡 兵輔君       佐伯 宗義君    竹内 黎一君       福井  勇君    森下 國雄君       黒田 寿男君    河野  密君       西村 関一君    松本 七郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房外務         参事官)    西堀 正弘君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 二月十六日  委員岡田春夫辞任につき、その補欠として小  松幹君が議長の指名で委員に選任された。 同月二十四日  理事古川丈吉君同月一日委員辞任につき、その 補欠として毛利松平君が理事に当選した。     ————————————— 二月十六日  千九百六十三年十二月十七日に国際連合総会決  議第千九百九十一号(XVIII)によって採択され  た国際連合憲章の改正の批准について承認を求  めるの件(条約第二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国際情勢に関する件(日韓問題)      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任についておはかりいたします。  去る二月一日理事古川丈吉君が委員辞任されましたので、一名理事が欠員になっております。この際その補欠選任を行ないたいと存じますが、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 安藤覺

    安藤委員長 御異議なしと認め、委員長は、理事毛利松平君を指名いたします。      ————◇—————
  4. 安藤覺

    安藤委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  椎名外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。椎名外務大臣
  5. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 本大臣が出発前に予算委員会で申し上げましたとおり、私の今回の韓国訪問親善目的としたものでありました。すなわち、日韓間の個々懸案解決のためにではなくて、日韓関係全般友好親善増進目的としたものでありました。  私は、李外務部長官と三回にわたってきわめて友好的な雰囲気のうちに会談をいたしました。われわれは、日韓両国間の諸懸案について隔意ない意見交換したのみならず、両国が共通の関心を有する国際間の諸問題についても十分話し合いました。そのほか、朴大統領をはじめ李国会議長丁国務総理及び張副総理にも表敬訪問し懇談をいたしました。私はこれによって韓国政府首脳考え方をよりよく理解するようになり、また韓国側日本政府考え方をよりよく理解するようになったと信じています。特に、私は韓国政府首脳日韓友好への熱意がきわめて強いことを深く印象づけられました。  私の滞在中に基本関係条約案イニシアルされる運びとなりましたことは、日韓間の友好雰囲気増進する上でまことに時宜を得たものでありました。この条約案は、十数年に及ぶ日韓交渉において初めてイニシアルされた条約案であるという意味において、今後の日韓間の諸懸案全面解決への重要な一歩であると考えます。基本関係条約交渉妥結によって、われわれは、他の諸懸案のすみやかな解決のためにさらに努力を続ける勇気を得、かつ決意を固めた次第であります。  また、私は両国間に健全で相互に利益のある貿易関係を維持する問題についても話し合いました。日韓間の健全な貿易の拡大は、単に経済的意義のみならず、日韓両国民間の友好信頼関係増進する意味においてきわめて望ましいことでありますので、両国はそのために今後さらに努力を払うことになりました。  私は、今回の訪問により、韓国民気持ちに直接に触れることを得まして、韓国民が過去の日韓間の関係についてどのような感情を抱いているかを身をもって知りました。かかる感情日本に対する友好気持ちにまで持っていくためにも、われわれは、誠意をもって日韓交渉妥結せしめ、日本国民の真の友好感情韓国民の胸に伝える道を開くことが現在のわれわれの使命であるということを痛感した次第であります。  総じて今度の訪問は非常に意義深いものでありました。両国政府首脳人的交流は、相互理解のためにも、また両国親善を深める上でも、きわめて有意義であり、かつ必要であることを痛感いたしました。今後朝野の各分野においても両国間の人的交流増進していきたいと思います。  以上簡単ながら訪韓の感想をもって報告といたします。
  6. 安藤覺

    安藤委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。野田武夫君。
  7. 野田武夫

    野田(武)委員 私はこの際日韓問題について外務大臣にお尋ねしたいと思っております。  日韓問題は現下わが国外交の焦点の一つでありますが、両国は、その歴史的、地理的関係においても、また、極東の平和、アジア民族の幸福という観点からいたしましても、すみやかに善隣友好関係を打ち立てて共存共栄の道を開くことは最も喜ばしいことだと思うのであります。しかるに、十数年来両国交渉は進められてまいりましたが、一進一退、今日までその成果を見ていないことは、きわめて遺憾に思うのであります。しかるに、今回椎名外務大臣は、個々懸案解決ということよりも、両国親善増進目的として韓国訪問されたというただいまの御報告でありますが、その結果において、外務大臣韓国首脳部としばしば会談をいたしております。しかも、ただいまの御報告にもありますように、両国間において特に国際間の諸問題について十分話し合った、その結果は、外務大臣韓国側考え方を十分理解することができた、また、韓国側日本政府意向理解することができたと自分は信じておるというおことばがあったのであります。今日激流しておりまする国際語問題について十分突っ込んだ話し合いがあったと思いますので、できますならばその会談内容について具体的にお話し願えればけっこうだと思いますが、その点についてお尋ねしたいと思います。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 主として国際間の問題はアジアの問題について意見交換をしたのでございまして、その要点は、要するに、アジアの平和と繁栄をもたらすために、現状に即してこの緊張をいかにして緩和することができるかといったような問題について、双方の考え方を話し合ってみたのであります。きわめて友好裏に、しかも、どの首脳者とも大体において意見の一致を見たような次第であります。特に、日本といたしまして軍事的な方面アジアに協力するということは不可能だから、日本立場からいたしますと、平和建設、そういう方面に主として日本が、この緊張緩和、政局の動揺というものを静める意味において、もしできることならあらゆる努力をいたしたいという考え方に対しましては、十分な理解を得たと考えております。
  9. 野田武夫

    野田(武)委員 アジアの平和、民族の幸福のために、両国が今後手を握ってその促進をはかるという趣旨を中心としてお話しになっておると思いますが、一部では、北東アジア機構の問題、さらに進んでは軍事体制というものを何かつくり出そうとするのじゃないかというような臆説が出ているようでありますが、これらについて何かお話し合いがあったのでございますか。
  10. 安藤覺

    安藤委員長 ちょっと外務大臣に申し上げます。少し声を大きくしていただきたいという委員からの御要望がございましたので……。
  11. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北東アジア情勢に対処して何か軍事的な話し合いでもしたかという御質問でございましたが、さような問題については寸毫も触れておりません。
  12. 野田武夫

    野田(武)委員 私も当然そうあるべきだと思っておりましたが、いまの外務大臣の御説明で了承  いたしました。  なお、いまの御報告中に、親善訪問であったけれども日韓両国の諸懸案についても隔意のない意見交換をしたということでございましたが、その結果、ただいま御報告になりました両国基本条約案仮調印という問題も起こったのでありますが、総じて、今度訪韓された結果において、今後の日韓会談見通し、その交渉妥結の時期というものについての見通し等についての御意見を承りたいと思っております。
  13. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今後この日韓会談全面妥結に到達するためにはいろいろな問題があることは御承知のとおりであります。請求権の問題もまだ十分な話し合いがついておりませんし、在日韓国人法的地位の問題あるいは漁業の問題等、いろいろあるのでございまして、この全面妥結見通しということにつきましては、相手のある問題でもありますので、その見通しなりあるいはまたいわんやスケジュール等においては、全然まだ立っておらないのであります。ただ、全般的に申しまして、先ほど申し上げたようにきわめて友好的な雰囲気のうちに基本条約案イニシアルをかわす段取りまで運んだというこのいきさつから言いまして、今後この数点に関する話し合いの決着がわりあいに順調に進むのではないかということを考えておる次第であります。
  14. 野田武夫

    野田(武)委員 諸懸案個々の問題につきましては、時間がありますればあとでお尋ねしたいと思いますが、ただいまの御答弁を聞いておりますと、今回の韓国訪問両国友好親善の上において相当効果があった、友好のうちに話が進められたということでございますが、新聞その他で報ぜられるところによりますと、外務大臣がソウルに着かれたときから帰国されるまでに、韓国野党民政党その他学生関係等によって、いわゆる交渉反対闘争の集会が相当激しかったようでございましたが大体韓国国民の対日感情というものはどうであったか、どう外務大臣は感じられたかという点につきまして、率直にひとつ御見解を披瀝していただきたいと思います。
  15. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 対日感情は、従来かなりきびしいものがあったということを私はしみじみと感じたのでございますが、今回の私の訪韓によりまして、非常にその点については感情がほどけてきたということを、私はどうも身にしみて感ぜざるを得なかったのであります。
  16. 野田武夫

    野田(武)委員 外相訪韓によって、韓国国民の対日感情が相当ほどけてきたということは、これは何よりけっこうなことでございまして、今後もやはり、できるだけ政府韓国の対日感情に対して心を配っていただきたいと思う次第でございます。  さらにお尋ねいたしたいと思いますが、椎名外務大臣韓国訪問にあたりまして声明を発表されております。また、帰国にあたっても、両国外相によっての共同声明が出されておりますが、その中に両国間の長い歴史の中には不幸な期間がありましたことはまことに遺憾な次第でありまして、深く反省するものでありますということばが入っております。これは、日本政府といたしましては今日まで初めて使ったことばでありまして、その真意について、国民の中にはいろいろの解釈をしているようであります。この点につきまして、いわゆるこの外相のステートメント、共同声明に盛られたことばにつきまして、外相真意をお伺いしたいと思います。
  17. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日韓の間の過去に不幸な期間があったことを深く反省しつつ、将来の日韓友好親善関係を築いていきたいという決意意味するものと御了承願いたいのであります。すなわち、なお申し上げますれば、一民族が歴史的・文化的な伝統を持った他の民族支配するというそのこと自体において、支配された民族民族感情の点から見ても、また国際政治観点からいたしましても、正当なことではない、かように思われる次第であります。
  18. 野田武夫

    野田(武)委員 ただいまの御説明で大体了承しましたが、いまの支配者と被支配者といいますか、支配国と被支配国、これらは非常にデリケートな感情も含まれます。また、その会談経過におきましても、これらのものが感情があらわれてまいりますと、なかなかむずかしい点もございまするので、いまのような外相の心がまえでおやりになれば、大体韓国国民も了解すると思っております。次に、訪韓中に基本条約案イニシアルをしたことにつきまして、野党声明や、また昨日の外相不信任決議案賛成演説の中にも、しばしば出されたことばは、いわゆる国会を無視しておる、また、はなはだしきに至りましては、憲法第七十三条三号に違反するものであるというように解されるような御意見が出ております。私といたしましても、政府国会を無視し、さらに憲法違反をあえてするということにつきましては、断じて許すことはできないと思うのであります。これらにつきましては、きわめて重要な問題でございますから、この際ひとつ明快なこれらにつきましてのお答えをいただきたいと思います。
  19. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 イニシアルは、あるいは仮調印であるとか、あるいは仮署名であるとか、あるいはかしら字署名などと言われておることばでございますが、これは、交渉の過程において、交渉当事者当事者同士で合意した部分につきまして交渉者限りにおいてこれを確認し合う、こういう意味の、いわば交渉中の事務的な手続でございまして、いわゆる条約署名とは全く異なるものであります。その効果は、イニシアルによって国または政府が対外的に法的に拘束されることとはならないのであります。そこで、今回イニシアルされた条約案は、批准されなければならない条約案であります。正式署名の後に憲法第七十三条三号ただし書き規定に従って国会承認を求めることとなるものでございまして、イニシアルそれ自身、行なったことは何ら憲法規定に抵触するものではございません。
  20. 野田武夫

    野田(武)委員 いわゆるイニシアルは、直ちに政府並びにまた今後の交渉その他についての拘束力を持たない、いわゆる純事務的なものである、こう解釈されておるようでございますが、いかにも委任状を持たない事務当局イニシアルをしたということで、これについていろいろと論議があるようでございます。これらのことはやはりできるだけ多くの機会においてはっきりしていただくほうが今後いいと思います。大体いまのお話で、お答えで私は了承いたしました。  次に、日韓交渉はもう十数年になりますが、その交渉会談内容につきましては別といたしまして、韓国の態度の上に私は非常に遺憾に思っておる点が一つあります。それは、今日まで韓国日本代表部を置きましてその折衝に当たっているのでありますが、日本は幾たびか韓国代表部設置を要求いたしましたけれども、韓国日本代表部設置を今日まで拒否しております。今回外務大臣訪韓されるにあたりましては、当然この問題についても触れられたと思いますが、この日本代表部設置の問題について何か具体的なお話し合いでもありましたかどうですか、お尋ねしたいと思います。
  21. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 代表部をお互いに設置することについての話し合いは実はできておるのですが、一本が韓国代表部を置くことにつきまして、すみやかに国交を回復した後にそのいわゆる大使館の設置をするということにして、まずもって国交の回復を急ぐということを先にしてもらいたいという向こう理由で、遺憾ながら代表部設置の実現を見ることができなかったのが現状までの経過でありますが、基本条約案イニシアルをして、これを交換したという今日の段階において、全面妥結に至るまでの間、代表部設置して、そうしてこれをむしろ促進するという意味において、設置を認めらるることのほうが、日本としては望ましいことを申し出ております。これにつきましては、従来のいきさつもあるのでひとつ研究さしてもらいたいというような意向でございましたので、向こうの研究の結果を待つ、こういうただいま考えでございます。
  22. 野田武夫

    野田(武)委員 私は、日本代表部設置問題というものは長い間のこれはやはり交渉をたどっておりますが、別に感情的で申すわけではなくて、いま外務大臣が言われましたとおり、交渉促進という意味からいたしましても、これは日本代表部韓国設置すべきことは絶対必要だと思っております。ことに、先ほどの外務大臣お答えにありましたとおり、今後交渉は順調に進むであろうが、まだいつごろそれが妥結するかということは、もちろんこれは相手のあることでございますから今日予測はできないというおことばでございますが、私もそのとおりだと思っております。そうすれば、国交正常化すれば外務省の公館を置く、これは当然のことでございまして、やはり、できますならば、いまお話しのとおり、交渉促進意味からいたしましても、やはり、この際すみやかに日本代表部韓国に置くように、一段のひとつ御配慮と、それから先方に対する交渉を続けてもらいたいということを希望しておきます。  時間の関係がございますので、あと二、三お尋ねいたしますが、今回イニシアル仮調印を終わりました基本条約案につきましての内容でございますが、第二条の、一九一〇年八月二十三日以前に締結された旧条約がもはや無効であることを確認する。これは、サンフランシスコ平和条約締結によって旧条約は一切無効であることは明瞭であります。そこで、これは国際慣例上、新条約締結の際にはこういう条文を入れるものであるか、また、他に何らかの理由があってことさらにこの条文を入れたのかということ、この点をひとつお尋ねしたいと思っております。
  23. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、御指摘のとおり、すでに旧条約はもはや存在しないのでございますけれども、この際、両国国交を新たに開くというこの際において、これを、政治的な意味においてでございましょう、向こうのほうからそういう申し出がございましたので、その申し出を受けてかような表現になった次第でございます。
  24. 野田武夫

    野田(武)委員 したがって、日本政府としては、当然サンフランシスコ平和条約で旧条約は一切無効になっておるという立場であるから、その事実を根拠として、向こう要望があるから入れたんだというように解釈してよろしゅうございますね。
  25. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようでございます。
  26. 野田武夫

    野田(武)委員 次に、第三条でありますが、韓国政府朝鮮における唯一合法的政府であるその確認。これはすでに一九四八年の第三回国連総会決議の一九五号において明瞭になっております。その点は明瞭でございますが、特にこの際お尋ねしたいと思いますことは、この条約案の中には、大韓民国政府管轄権、つまり支配している地域、これは国連総会におきましてはいわゆる三十八度線以南となっておりますが、今回の基本条約案には、この管轄権範囲の問題が明示してございません。これはきわめて重要なことでございまして、将来北朝鮮との関係その他においていろいろ重大な支障を生ずるのではないか、こう考えます。政府としてはいかなる見解をとっておられるか、この点はひとつ明瞭にしておいていただきたいと思います。
  27. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 第三条は、大韓民国政府が、同条に引用されておる国連決議意味において、朝鮮における唯一合法政府であるということを確認したのでありまして、その国連決議は、申し上げるまでもなく、朝鮮人民の大多数が居住する部分支配する一つ合法政府が樹立されておる、この政府は、国連監視下に行なわれた自由選挙に基づくものである、かつ、この政府朝鮮における唯一のこの種の政府であるということを宣言いたしまして、各国が大韓民国関係を設定する場合にあたってはこの事実を考慮するように勧告されておるのでございまして、おのずから韓国支配する部分というものはこれによって明瞭になっておると考えております。
  28. 野田武夫

    野田(武)委員 この問題はいまの外相の御説明さわめて明瞭になったわけであります。しかるに、現在大韓民国政府が統治しておりますのは、いまのお話にありますとおり三十八度線以南になっておりますが、休戦ラインというのがありまして、これは東のほうで三十八度線から少し出ております。この点は、今度の話し合いで、いわゆる支配区域と申しますか、管轄地域と申しますか、これは具体的に何かお話が出てまりましたか、お尋ねしたいと思います。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 休戦ラインが三十八度線と必ずしも一致しておらない。そこで、その結果、大韓民国政府支配の及ぶ範囲に多少の出入りを生じたことは事実でございます。しかし、これは韓国政府基本的性格に影響を与えるものではない、かように考えております。
  30. 野田武夫

    野田(武)委員 これらのこともきわめて重要な今後の残された問題と思っておりますから、いまの外務大臣の御答弁のとおり、やはり政府としては外務大臣のお考えどおりひとつ進めていっていただきたいと思います。  時間の関係がございますから、あとは簡単にお尋ねいたしますから、外務大臣も簡単にひとつお答え願いたいと思います。  大体、政府日韓交渉基本は、諸懸案一括解決、これが基本線でございます。もとより政府もこの方針に基づいて今後も交渉を進めていかれるものだと信じております。したがって、その懸案一つとして基本条約案は一応のイニシアル両国でいたしましたのでありますが、その他の問題は、たとえば李ラインの問題とか漁業問題とか、あるいは請求権の問題、あるいは在日韓国人法的地位の問題、これら幾多の懸案が未解決であります上に、さらに、外務大臣が言われた貿易問題等も残されております。また、いま外務大臣は触れられなかったのでございますが、一括解決というたてまえからいたしますと、竹島領土問題等も、やはりその一環として、未解決のままに交渉妥結を見るということは許せないことだと思っております。私は、時間の関係で、もう社会党の人たちがお待ちのようでございますから、この程度でやめますけれども、これらにつきましては、もちろんその不安はないと思いますけれども、やはり、日韓問題は全面解決ということが基本ということを重ねて私は要望し、また、その点についてひとつ深く留意されて善処されたいと思うのであります。これらにつきまして外務大臣見解をお述べくだされば、けっこうだと思っております。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 われわれは、一括解決方針はあくまで実行しようと思っておるのでありまして、種々の懸案につきまして、その一部の問題の解決を他の問題と切り離して実施するということはいたしておりません。諸懸案解決のための諸協定を同時に実施する方針でございます。  竹島の問題につきましては、少なくともこれを終局的に解決する方法をきめたい、かように考えております。
  32. 野田武夫

    野田(武)委員 ただいまの外務大臣の御所見を承りまして、当然なことでございますが、いろいろ困難もございましょうが、これらにつきまして十分御検討の上善処されたいと思っております。今回の椎名外相訪韓によって、少なくとも日韓会談は一歩も二歩も前進したと思います。この上は、両国共存共栄を主眼として、最も合理的に、しかもできるだけすみやかに交渉妥結を見て、両国友好親善の実をあげるよう、外務大臣の一そうの御健闘を希望いたしまして、私の質問をこれで終ります。
  33. 安藤覺

  34. 穗積七郎

    穗積委員 日韓交渉問題点並びに日中問題について、重要な点を二、三お尋ねしたいと思っております。  お尋ねに先立ちましてちょっと委員長にも申し上げ、同時に外務省にも要求いたしますが、本日日韓基本条約に関するメモ程度のものが資料として配付されておりますが、これははなはだ不届きだと私は思うのです。全文この際なぜ一体国会報告し、かつ資料として提出にならないのか。これはわれわれ非常に不満に思っております。不当に考えております。ぜひこの際、委員長の御理解もいただいて、委員会として外務省に要求をして、交渉経過を添えて全文文書として提出をしていただくことを、まず第一に要求いたします。委員長、おはかりください。
  35. 安藤覺

    安藤委員長 ただいまの穂積君の御発言については、政府の格段の御努力を希望いたします。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 大体不届きなんです。なかなか返事がないのは、一体どうなんだ。——何ですか、ちょっと聞えるように言ってください。出すのか出さないのか。
  37. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 承知いたしました。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 大体、アジア局長条約局長もおりながら、きょうこんなものだけ出して平気でいるのは、神経がどうかしているよ。しかも、さっきのようなわけのわからぬような経過報告で、いささか得意になって、とんでもない話だ。  これから質問に入りますが、椎名外務大臣は、今度の基本条約仮調印をしたことに対していささか得意になっておられるようですが、私どもは、これを政治的に判断をし、かつ取りきめの内容から見ましても、はなはだしくあなたは誤った外交措置をして帰られたというふうに考えます。したがって、いまからでもおそくありませんから、今後われわれ野党あるいは院外の多くの良識のある国民意見要望を聞いて政策の転換をしていただきたいことを求める趣旨で、以下質問をしたいと思っております。  今度の取りきめについての内容と、それの意図する、あるいはそれの背景となっておる政治的なねらいについてお尋ねをいたしたいと思いますが、きょうは時間も十分ありませんので、まず基本条約内容について御質問をいたし、政治的な影響につきましては後段でお尋ねをいたしたいと思いますから、簡潔に、再質問しないで済むように御答弁をいただきたいと思います。  まず第一にお尋ねいたしますが、今度の基本条約基本的なレールとして、第三回国連総会決議の一九五というものがここに大きく援用され、レールとして敷かれておる。この政治的理由は一体何でございますか。すなわち、これは現在の韓国政府が南朝鮮の領土だけを支配管理しておるという、地域的な限定政府であるということを確認するためのごまかしである、煙幕である、こう理解せざるを得ないわけでありますが、それ以外に何か政治的な理由目的がございましたでしょうか。このばかばかしい前例にまれに見る国連の一片の決議を、基本条約基本的なレールとしてここへ敷いたということは、これははなはだしく奇怪に思うわけです。私がいま解釈しました以外に何か政治的な目標、理由があったのかないのか、その点第一に明確にしていただきたい。
  39. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ここに書いてある以外の点について、政治的なあるいはその他の目的があったわけではございません。この条約の適用範囲をここで規定しておるわけであります。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、韓国政府というものが地域的な限定政府であるということを確認するために、この一九五決議を援用した、こういうわけですね。
  41. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約の適用範囲規定する目的をもって書かれたものであります。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 そうではなしに、韓国政府支配または管理権の範囲を示すものでございましょう。適用範囲とは何ですか。適用範囲とは、管理権の範囲と区別して言っておられるのかどうか、そしてまた、その範囲とは一体どこを示しておるのか、地域的にはっきりしてもらいたい。
  43. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約の適用範囲、すなわち韓国政府支配しておるいわゆる管轄権の及ぶ範囲であります。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 それは具体的にどの範囲を示しますか。質問したいことは、一九五の決議地域を明確にしてないのですよ。統一されてないという事実を指摘しておるだけであって、範囲を示していない。これでは範囲の確定になりません。外務大臣が折衝したんだから、あなたがやりなさい。
  45. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約局長答弁いたさせます。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 いやいや、そうじゃありません。条約解釈で聞いているんじゃないんだ。あなたが折衝の当事者じゃありませんか。終始あなたは中心になってやったんだ。それで、その目的をもって話し合いの結果、一九五というものを援用したわけだから、その政治的なねらいとあなたの理解、どういう理解でこのようなことをやったか、あなたの理解を言えばいい。条約解釈のことを聞いているのではない。
  47. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国連決議には韓国政府支配する地域ということになっておりますので、ただいまは三十八度線といわれておりますけれども、休戦ライン以南の地域である、かように解釈しております。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 これは非常に不明確であって、しからばお尋ねいたしますが、貴国の管轄権は三十八度線または休戦ライン以南に限るということを、あなたの交渉相手である李並びに朴政府は了承いたしましたか。その点は確認をとった上でこういう取りきめをされましたか。それを承っておきたいのです。あなたのかってな解釈ではだめです。取りきめですから。
  49. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ここに書いてあるとおり、の決議一九五(III)以下に示されたとおりであるということを両者の間で確認して取りきめた次第であります。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 それでは条約局長にちょっと聞いておきましょう。この一九五というものはこう書いてあるのだ。これはどういうふうな解釈になっておるのか、局長にまだ伺っておりませんから、念のためお尋ねしておきます。そうでないと、外務省はそのつど、人がかわり時が変わることにより解釈を違えておりますから、この際重要でありますから、その背景になる基本レールですから、解釈を聞いておきます。「臨時委員会報告中に記述された」云々の次に、「及び特に朝鮮の統一が未だ成就されていないという事実を念頭におき、」となっており、これが問題なんです。これがすなわち南朝鮮韓国政府というものが地域的な限定政府であるということを確認するものである。これを援用するために、実はこの表現でやると交渉がぶつかって、そうして、韓国政府の領土権あるいは管轄権の及ぶべきところは全朝鮮半島であると主張するいまの韓国政府との間で話し合いがつかないので、かってに解釈をやって、わけのわからない一片の国連決議をこういうように煙幕として両方に都合のよいように援用したわけです。したがって、私は聞いておきますが、朝鮮が統一されていないという事実を念頭に置きというこの文書、この決議の解釈は、一体現在の三十八度線または休戦ライン以南の地域管轄権意味するのか、管轄の範囲意味するだけであるか。南朝鮮すなわち韓国政府の領土は三十八度線ないし休戦ライン以南に限るというその意味をこの文書は残しておるのか。領土と管轄権の問題、これはあとでお尋ねしますが、領域と管轄権範囲とについて、この決議は一体どちらを示しておると外務省はお考えになっておられるか、その解釈を伺っておきたいと思います。
  51. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 御質問の御趣旨が私に十分了解できたかどうかちょっと疑問にも思いますけれども、特に朝鮮の統一がまだ成就されていない、朝鮮とここで言っておるときは朝鮮半島全域をさす、これは明瞭だろうと思います。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことを聞いているんじゃないよ。あんた何を言っておるのか。そうじゃなくて、韓国は全朝鮮を管理していないと書いてある。すなわち、三十八度線以南朝鮮半島の一部並びに、全朝鮮人民でなく大多数と書いてあるが、一部の朝鮮人民支配管理しておる政府、それがしかも民意による合法的な政権として成り立ったので、この地域において唯一の合法政権としてこれを認めると、こう書いてある。したがって、私が聞いておるのは、韓国政府管轄権並びに領土権、領域というものは、これは理論的には区別すべきだと思います。しかし、現在は一致しておるという解釈なのか。この解釈については、いままでの韓国の主張は違うわけですから。われわれは全朝鮮半島の唯一合法政権であるというように言い切つておるわけでしょう。そうでしょう。それが今度の一九五で援用されて意見が一致しておると大臣は言うから、一致しておるならば、この解釈が問題になるわけだ。すなわち、北の領域というものは、かつて支配せず現在も支配しない、したがって、これは韓国政府管轄権範囲でもなければまた領域でもない、この文章はこういう意味なんですよ。そう解釈すべきだと思うが、外務省はどう解釈しておるかということを聞いている。そうであるならば、このたびの交渉によって韓国は従来の主張を全面的にひるがえし、そして日本に根本的に全部譲歩して、南朝鮮に限る限定政府であることを確認して今度の基本条約に調印したということになる。そうではなくて、韓国はそういう解釈をしていないのにきまっている。あとで言いがかりをするときは、われわれとしては従来どおり全朝鮮がわれわれの全領域である、その全領域における唯一合法政権がおれである、こういうことを主張するにきまっている。だから、この文章の解釈が問題になるわけだ。それを外務省がどう解釈しておるかということを聞いている。
  53. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 国連決議の趣旨が、今度のイニシアルされた条約案で確認されていることは明瞭でございます。国連決議のこの字句がどういうふうにはっきりしないかという点をもう少し明確にお尋ねいただきますと、私もお答えできるのですが、決議自身は私は明瞭だと思います。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは、わざわざ時間を延ばすために老獪なことを言っているのか、私の質問の妨害のためか、あるいは頭が悪くてわからないのか。それでは後宮アジア局長答えなさい。あなたは今度の交渉のサポーターの主役の一人だったのですから。あなたはどう考えておられますか。
  55. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 これは条約論でございますので、条約局長答弁にまかせたいと思います。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃ、あなたはどう理解してこれに調印したのですか。こういう文章はどうせあなたがつくったのにきまっておる。あなたはどういう理解でこの文章を書いたのですか。いいですか、従来、池田内閣までのわが国の保守党内閣といえども、韓国政府というものは三十八度線ないし休戦ライン以南に限る限定政府である、したがって、北の政府のオーソリティー並びに対日請求権その他の外交上の権限というものはあくまで残っておるのだという解釈であったわけなんです。ところが、韓国政府は、そうじゃない、それは誤りだ、われわれは全朝鮮地域を領土とし、そこにおける唯一の合法政権である、ただ、いま北に何がしかの政権がおこることは、これは不当な侵略をしておるにすぎない、こういう解釈だったのです。それは今度の基本条約の一番中心の問題です。すなわち、南朝鮮政府管轄権並びに領土権の範囲、これについてやれば両立するはずがないのです。両立するはずがないものをあえて一緒にしたために、こういう幽霊みたいな一九五決議を持ち出してきて煙幕を張り、これによって成約をしてきたのだと言うのでしょう。内容を読めば、そんな成約は成約にならぬのです。したがって、外務大臣自身がわけのわからぬことを言っているじゃないですか。それで聞いているのです。だから、ここが問題になる。これを援用したのなら、この文章の解釈が問題になるのだ。日本はどう解釈し、向こう側の政府はどう解釈したか、その点の確認をとったかどうか、それを聞いておるのです。
  57. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 国連決議の字句上は、国連がどういうふうに考えているかということは明瞭だと私どもは考えております。どこが明瞭でないかということをもう少し具体的にお示しいただければ、もっと明確なお答えができるかと思います。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 アジア局長、政務次官もおられるから、大臣と四人でちょっとそこで相談しなさいよ。一体何を言っているのです。ばかにしてはいかぬ。二へんも三べんも、小学校の生徒にかんで含めるように説明して、まだわからぬと言っておる。
  59. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 日韓両国が次のことについて合意したということになって、この第三条が書かれておるわけでございます。ですから、日韓両国に関する限り、少なくともこの国連決議一九五号の意味における唯一合法政府であるということが同意された。それだけを規定しているわけです。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 そのとおりです。そうなると、従来は日本政府韓国政府との管轄権並びに領域の問題については基本的な意見の食い違い、対立があって話がつかなかった。それが今度ついたという。ついたのは何かといえば、この一九五号援用によってついたのだ。それで、一番大事なことは、限定政府であるか限定政府でないかということについては、この文章の解釈が問題になっておるから聞いているのです。あなたはそのことはわかっているのだ。私の質問の中にありますよ。ちゃんとあなたの言ったことは理解しておる。その上で、いまだ統一されてない事実、その内容の解釈について聞いておる。これは、はっきりしなければ、何のことやら、あなた、わかりませんよ。こんな取りきめはかえってあとに紛争を来たします。わからぬようなつらしてごまかしては困る。外務省の秀才たちが何を言っているんだ。外務大臣、答えてください。あなたが折衝したんだ。
  61. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この総会の決議において、朝鮮人民の大多数が居住する部分支配する一つ合法政府、こう書いてあります。朝鮮人民の全部が居住するということは書いてない。大多数が居住する部分支配する政府、こうなっておりますから、これで明瞭じゃないかと思います。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 そういう理解でごまかそうというならあなたが得意になっているこの基本条約の解釈について私の意見を申し述べますから、それに誤りがあれば意見を述べてください。間違いないなら、それによって確認をしてもらいたい。すなわち、こういうことです。  今度確認をした相手政府というものは、三十八度線またはいままで管理したことのある、現在管理しておる休戦ライン以南に限る限定政府である、したがって、それ以北の朝鮮半島の領域というものは、今度の政府の管轄または領域としては入らない、そして、従来の池田政府の解釈によれば、北の地域朝鮮民主主義人民共和国という政府があって、その権威を認め、それが支配管轄する地域である、こういう解釈のもとにこの一九五号を理解し、そういう意味でこの基本条約前文並びに三条に援用したのだ、これが正しい解釈であると私は思います。これは、日本政府のみならず、相手国はもとより、第三国に対しましても客観的に正しい一九五号の解釈であり、今度の基本条約の解釈であると私は理解をいたします。そのとおりでよろしゅうございますか。あなた方答えないなら、私がいま申しましたことに対して、それでけっこうならけっこうであると言い、間違いならどの部分が間違っておるか説明してもらいたい。
  63. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約案でございますから、両国の合意した表現にあくまで従うべきものと私は考えておりますので、ただいま申し上げたように、国連決議というものを引用しておりますから、その決議の中に朝鮮人民の大多数が居住する部分支配する一つの合法政権、これでもうはっきりしている。これを合意したのですから、それ以外の表現を軽々に使って、これとこれとは同一であるというようなことは、われわれとしてはただいまのところお答えするわけにいかないのです。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、それでよろしい。それにつけ加えますから、お答えください。その大多数の朝鮮人民のおる範囲というものは、三十八度線ないし現に支配しておる休戦ライン以南である、これでよろしゅうございますね。
  65. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私が何べんも申し上げたとおり、朝鮮人民の大多数が居住する部分
  66. 穗積七郎

    穗積委員 その地域はどこだと聞いているのだ。あなたは法律を学んだ秀才だ。人民だけじゃない、統治権と人民と領域が明確にならなければ国家は成立しない。大多数がおると称しておる、韓国政府支配しておると称しておる人民の住んでおる地域、すなわち支配権の及んでおる地域並びに領域は三十八度線以南に限る。
  67. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あくまで、両国の間で合意された表現は、私が繰り返して申し上げるとおりであります。それを、あなたが、大部分が居住する部分とは三十八度線または休戦ライン以南である、そういうふうに解釈する、それでいいか、こういうお話でございますが、それが違っているということは申し上げません。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 そんな、三つも四つもあるわけじゃないから、違っていなければ正しいのだ。一つか二つだ。椎名さん、そんな子供だましみたいなことはよしなさいよ。あほらしい。日本国会の権威にかかわりますよ。政府の権威にかかわりすまよ。あなたはおかしい。そんなことを言って。反対をしないならそうでしょう。従来の解釈はそうであり、先ほどからもそうである。どうですか。ちょと四人で相談して明確に答えなさい。三つ、四つあるのなら、それは間違いだとは言わぬと言えば、何かまたほかにあるということだが、二つしかないのだから、相談するまでもないじゃないか。
  69. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そう解釈されてよろしいだろうと思います。ただ、両国の間で合意された表現は、あくまで、私が再三申し上げたとおりの表現で両方とも確認した。この事実は曲げることはできません。
  70. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣、われわれも外国へ行っていろいろな折衝をしたり文章を書いたりした経験がありますけれども、また条約も読んで学んでおります。そのときに、問題は、文章の先に具体的な問題の解釈について両者の合意が達した上で、それでは文章の表現をどういうふうにしようかということになって、文章は初めてできるわけです。したがって、この文章になる前に、いまの南朝鮮韓国政府管轄権並びに領土範囲についてはこういうことにしようということに話がついて初めて文章化ができるわけでしょう。だから、あなたと李外務部長官との間で合意に達した、それの話し合いはどういうことですか。中身を聞きましょう。文章だけで議論しておると子供じみた印象を与えてはいけませんから。今度の基本条約の重要問題です、日韓会談内における。
  71. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 この表現のもとになっております了解は、いま大臣が繰り返して申され、また穗積委員の御質問の趣旨を肯定されましたように、おおむね三十八度線以南、それから休戦ラインをちょっとズレがありますけれども、休戦ライン以南、そういうふうになっております。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 一部は私の解釈が違っているのです、おおむね当たっているというのは、何を言っているのだ。
  73. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 おおむねと申しますのは、三十八度線と休戦ラインとちょっと違っていますので、主十八度線以南……。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 それはどうですか。一番大事な点ですよ。そうでないと、私が最初に言ったように、この第三回のいままで前例のないような一九五決議というものは、国際的な拘束力はないものです。一時的なものです。単なる願望または忠告にすぎない決議です、こんなものは。文章としての法律的地位は。そういうものをこんなところで援用してきて、しかも、この表現は、いまわれわれが聞いてもあなた方答えられぬごとく、あるいはどうでも解釈がつくごとく、非常に不正確な文章になっておるわけです。いまだに統一が成就していないという事実を念頭に置くということになっておるわけです。これだけが限定政府ということの根拠になるわけです。そうであるなら、さっき言ったように、韓国側は、われわれの解釈はこうだといって、かってな解釈をして国民を欺瞞する。それから、日本は、かってな解釈をして、いまの三十八度線以南に限るという解釈だといって、かってに説明して国民をごまかす。そして両者の意見は一致していない。いざというときになって、これから北朝鮮との問題が出てきたときに、今度はこの不明確な基本条約をたてにして、それで韓国が必ず文句を言ってくる。それはきまっておるんだ。禍根をあとに残すとはこのことだ。したがって、今度の一九五号の決議案の援用というものは、両国民を欺瞞し、両者の不一致をごまかし、そしてむりやりにアメリカの強要とアドバイスによって日韓会談を軌道に乗せようとする全く欺瞞をした無理な取りきめなんです。そうじゃないということを証明するなら、はっきりしなさい。そして、三十八度線以南に限定する、これは領域についても同様である、そのことに対して相手の確認もとってある、だから文章はこうしたんだ、文章の解釈はそれでよろしい、こういうことでなければ、われわれこんなものに賛成も反対もできやしない。そんなばかばかしいごまかしで、われわれの前を通ろう、うまいことやってきたなと思ったら、大間違いです。日本国民はそんな低能じゃありません。アジア局長、しっかりしなさい。こっちを向いて答えてください。
  75. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 いま穗積委員が申されましたような相互理解に基づいてこういう規定案になりました。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 それは、大臣、この問題はいまの解釈で相手の了解をとってあるということであるならば、両政府間における解釈上の食い違いはありませんね。
  77. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国連決議の趣旨をあくまで援用することに両国が明確に確認し合ったのでございまして、さらにこの解釈をいろいろな角度から解釈されるということは、必ずしも私は排除するものじゃない。ただ、きまったことは、この国連決議内容です。これを確認し合ったのでございますから、これを今度は現実に、大多数が居住するその部分支配する、こういうことになると、きわめて現実的だと思うのです。その支配する部分というのは、結局いまのあなたの言われるような三十八年度線または休戦ライン以南ではないかと言われるのでございますが、それについては、私はこの文句について両国の間で確認したわけじゃないけれども、しかし、事実においては同一であると云えると思います。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 同一であるということでよろしい。あとになって韓国から異議が出たときに周章ろうばいしたり責任を回避しないように、注意しておきます。  そこで、ちょっとお尋ねするが、これは条約局長でもアジア局長でもけっこうです。そしてあと大臣から確認をとっていきたい。この決議は、先ほど言いましたように、国連憲章でもない。あるいは日本をも拘束しており国際条約でもないわけだ。一九五決議というものは単なる願望にすぎない。したがって、こういうものを基本条約のレールとして援用することは、はなはだしく不適当だと思うのです。ごまかしのために使っているとしか思えない。そのことが、いまの答弁の結果から見ても、いささかそのにおいが証明されておると思うのです。  そこで、時間がないから前に進みまして、もしこの四八年の決議と全然違った新たなる決議、取りきめが国連中心において行なわれた場合には、一体この基本条約の効力はどうなりますか。外務省はどう解釈していますか。
  79. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 一九四八年の決議は、その後年々の総会で確認されてきておることは、穗積委員御存じのとおりであります。これがどういうふうに変更するような決議ができるか、できた場合にどうするかということは、そのできた決議内容によって判断すべきことだろうと思います。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは、そんなでたらめなことを言っておってはだめですよ。条約の解釈、法律の解釈というものは、現にいままで起きた具体的なケース並びに今後起きることの予想されるすべてのものを包含して、条約、法律というものはできておる。条約の解釈もそうあるべきなんです。仮定のことであるからお答えができませんということは政治のことです。外交措置においては、場合によってはそういうことが言えるかもしれぬ。そうじゃなくて、条約とかあるいは取りきめとか、あるいは国内においては法律というものは、現に起きておる、いままでの過去の事実並びに今後想定される事実すべてを包含して、適用の基準、解釈というものはあるわけです。それを聞いておる。こういう取りきめ方をしておいて、それでその取りきめ方とそのレールになっておる一九五決議と根本的に違い、または一部修正された決議国連において行なわれた場合には、一体この条約前文並びに三条は、効力はどうなるかということです。それを聞いている。そんなことはいまからやっておかなければ、たいへんですよ。
  81. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私も国際法論として申し上げておるわけでありまして、事情変更の原則を援用できるような事情変更とはどういうものかということは、その変更した事情の内容を見ないと判断はできないわけであります。どんな軽微な修正でもすぐ事情変更の原則を援用し得るものではないわけでありますから、現実の変更がはっきりしてから判断すべきことだろうと申し上げたわけであります。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 すなわち、現在の韓国政府唯一政府ではない、または合法政府ではない、いずれかが否定された場合です。答えてみなさい。
  83. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 現在の段階においてそのような仮定に立っての議論をすることは慎むべきではないかと思います。
  84. 穗積七郎

    穗積委員 ばかなことを言っちゃいけない。流動する今日の国際情勢だから、将来そういう事実が国連において起きたときに、この国連決議はどうなるかということを確かめないで審議をしておいて、われわれ責任が果たせますか。あなたは何を言っているんだ。
  85. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 いま現在条約締結交渉をしており、これから条約を結ぼうという相手国の政府国連から否定された場合にはどうなるかというようなことに対しては、私から御答弁申し上げることは差し控えたいと思うのです。
  86. 穗積七郎

    穗積委員 それはおかしいでしょう。この条約というものは過去じゃない。これから将来について効力を問うものでしょう。将来について規定するものです。その将来について、そういうことが起きた場合にどういうことになるかということの事前のあれがなければ、こんな不明確な文章はやめたらいいということになる。やめるべきです。あなた方外務省は、この一九五決議というものを、すべてオーソライズする条約基本にこれをいままで援用してきたわけだ。だからこんなものをごまかしに持ち込んだのでしょう。こんなものは一片の決議でしょう。何の拘束力もないし、将来もまたない。いつか他の決議によって取りかえられるかわからないものでしょう。しかも、最近の国際情勢は、その可能性が非常に多くなっておる。だから、それを聞いているのです。そうでなければ、ちゃんと交章にしたらいいじゃないですか。  この一九五決議のわけのわからぬようなこんなところでだいぶ時間をとったようだけれども、三条に「されているような」と書いてある。これもまた非常に不明確です。「ような」ということですから、類似なということでしょう。そのものずばりではないということを言っている。こんな不明確な文章で、あと両国間の国際関係規定しようなんでいっても、規定できませんよ。不見識きわまると思うのだ。それで、いま解釈できないじゃないか。何のつもりで、何を交渉してきて、何の文章を一体書いてきたのだ。証文の意味もわからないで、めくら判を押してきても、しょうがないじゃないか。
  87. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 この条約案では、国連決議の趣旨にのっとるということが明瞭に規定されておるわけでありまして、国連決議の趣旨も、これはそれとしてはっきりしておると思います。そして、この趣旨によって外交関係を設定する場合にはやるようにという勧告の趣旨がこの決議には含まれておるわけであります。国連加盟国の多数がそういうことをやってきておるわけでございして、日本がいまここで何か珍しいことをするわけでも何でもないのでございます。
  88. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだしく不満です。私が不満なだけじゃなくて、客観的に見れば笑うべきことなんです。そんなばかばかしい条約をよくも国会へ出して相談ができましたね。キツネとタヌキのばかし合いみたいなことをやって、かってに解釈をやろうといって李と椎名とやってきて、それで日本国民がごまかされると思ったら間違いですよ。国会を軽視してはいけませんよ。きょうは、時間がないから、前に進んで、この問題は留保しておきます。大事な点ですよ。  その次にお伺いをいたしますが、管轄権と領土権、領域については、これは一致するものと解釈しておるか、別のものと解釈しておるか、どうですか。まず理論的に……。
  89. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 問題の国連決議では、領域ということばを使っておりません。管轄権ということばで表現しておりますが、これは、先ほどから御指摘のように、将来朝鮮は全体として統一されるべきものであるという観念から、そういうふうに用語を注意していることだろう、かように考えます。
  90. 穗積七郎

    穗積委員 いやいや、この条約について聞いているのではないのだ。管轄権という国際法上の、法律上の概念と、ある国の領域、領土権との概念と一致するのかしないのかということを聞いておるのだよ。外務省はどう解釈しておるかということを聞いておるんだ。
  91. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 朝鮮の場合を別にしまして一般論として申し上げますれば、管轄権という観念には、地域管轄権と人的管轄権がありますが、地域管轄権は、一般の場合にその国の領域と合致する、これは一般論として言えることだと思います。
  92. 穗積七郎

    穗積委員 いや、それは違うでしょう。ぼくは法律的に違うと思うのだ。すなわち、日本は、領土としては沖繩、小笠原を持っているけれども、現在管轄権にはそれが及んでいない。違う。権、すなわち統治権の及ぶ範囲と、それから領土の範囲、領域というものとは、大多数の場合は一致するのが実情であるけれども、理念としても、例外的な事実としても、一致しない場合があり得るということです。それを聞いておかぬと、管轄権として相手理解しておって、管轄権は三十八度線以南だが、領土については鴨緑江の国境まで領土を持っているのだという管轄権と領土権との分離した解釈を立てられると、これは客観的に成り立つね。日本が現にそうだろう。沖繩は日本の領土だと主張しながら、管轄権が及んでいない。これは、管轄権と領域というものとは、理念としては当然別個のものであると私は解釈すべきだと思う。椎名外務大臣並びにアジア局長はどういう理解でこの交渉をなさいましたか。一九五の決議支配並びに管轄権とちゃんと書いてある。書いてあるけれども、その管轄権というのは領土を意味しておるのか、そうではないのか、その点はどういう理解であなた方は条約をお進めになりましたか、伺っておきたい。まずアジア局長から聞きましょう。それから大臣から聞いて、それに対する解釈をあなたもう一ぺんやりなさい。
  93. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私の先ほどの答弁に関連しての御質問ですから、私からまず答えさしていただきますが、私もさっきちょっと一般論としてはというふうに制限的に申し上げたつもりでございまして、いま穗積委員が御指摘になったようなことは、私も全くそのとおりだろうと思います。この問題の国連決議では領土、領域とかいうようなことばを避けまして管轄権ということばを使っておる、かように最初に御答弁いたしたのも、そういう趣旨から来ておるわけでございます。
  94. 穗積七郎

    穗積委員 先ほどの三十八度線の以南の地域に限るというのは、管轄権範囲と領土権の範囲をどう解釈してこの協定をお結びになりましたか。相手にはその点のコミットがとってあるのかどうか。これは椎名外務大臣にお伺いいたします。領土権も三十八度線の以南に限るという点はちゃんと確認をし、そして相手の了解確認をとっておりますね。当然そうあるべきだ。
  95. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 朝鮮半島全体を領域とする統一政府が将来できるということを前提においての決議でございまして、したがいまして、現在の段階におい七は領域ということばを使わないでやっておるわけであります。それを私どももそういう趣旨を今度の条約で取り入れて規定いたしておるわけであります。
  96. 穗積七郎

    穗積委員 大臣、どうですか、いまの条約局長のは解釈の話だ。交渉の事実をお伺いいたします。管轄権についてはそういう話だったそうでありますが、これはちゃんと書いてあるのかね。これは「有効な支配管轄権を及ぼす合法な政府」、「及ぼす」と書いてある。領土とは違うのだから、領域について話をしたかどうかということです。領土は三十八度線以南に限りますよ、われわれはそういう立場でこれから国交を回復し交渉をしたいということですか。シチュエーションについてはちゃんと規定しているのだから、それについては領土はどうなっておるのかということを聞きたい。
  97. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 いま条約局長から答弁いたしました趣旨を前提として話し合いをつけました。
  98. 穗積七郎

    穗積委員 それで、具体的にどうですか。三十八度線以南ですね。領土もまた三十八度線以南ですね。
  99. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 国連決議の趣旨によりまして、領土には直接触れることなく、管轄権という前提で話をしたわけでございます。
  100. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃ、領土条項についての話し合いは今後別にされるわけですか。実は、私はこの点非常に奇異に感じたのです。北は三十八度線あるいは休戦会議の領土権の問題、こちらは竹島を含むわが国との領土権の問題、これは、韓国の場合は、特に北朝鮮政府日本政府との間の領土条項というもの、これは明確にしておかぬと将来紛争が起きます。中国の場合とは違いますから。だから、今度の基本条約の中に入れないのは奇怪しごくだと私思っておるのです。さっき伺うと、これは別途やるのだということですから、竹島問題その他の領土条項についてはこれから別に交渉する、これは不当ではあるけれども不法ではないから、われわれは、この際は、一括解決という前提さえくずさないならば、交渉のお手並みを拝見しましょう。だけれども、この際北朝鮮との関係が問題になるから、そこで、私は最初に、三十八度線の国境線、つまり領土の分界線というものを聞いておる。これは管轄権の分界線ではなくて両政府の領土の分界線であるということを確認をとってあるのかどうか。大臣並びにアジア局長交渉の事実を言えばいいんですよ。解釈はあとで……。率直に言ってください、正直に。——そんなことが答えられないのか、交渉してきて。何を話してきたんだ。
  101. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 先ほど御答弁申し上げましたとおり、領土の問題には直接触れることなくと申しますのは、この国連決議でも、全朝鮮に統一された政権ができた場合にこの領土、領域ということが直接問題になるという前提に立って、直接領土、領域という問題は決議には触れておりませんので、その決議の趣旨を踏まえまして、この管轄権というたてまえに基づいて交渉いたすわけであります。
  102. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、領土問題は今後竹島問題も含んでの北のほうのこともこれから交渉し明確にし確定するわけですね。その上でなければ解決をしない、日韓会談妥結しない、こういうことで理解してよろしゅうございますね。はっきりしておいてくださいよ。
  103. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 竹島の問題につきましては先ほど大臣から御答弁がありましたとおりでございますが、北との間の領土の問題につきましては、現在の大韓民国基本条約を結ぶ場合には直接触れることはない。また、実際上の必要もない、そういうたてまえでやっております。
  104. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことはありませんよ。それじゃ続いて聞きましょう。関連いたしますから前に進んでその問題を明らかにしたい。従来、池田内閣までは、朝鮮人民民主主義共和国の存在を認め、その権利を尊重し、それとの間における外交上の日本との権利義務関係は消滅しない、したがって、将来先方からまたはこちらからその問題の交渉妥結の提案のあった場合には、これを両方とも拒否することはできない、したがって、向こうが言おうと、あるいはこちらからやる必要が生じた場合には、これは、請求権問題、漁業問題、貿易問題、国交問題、すべてこれらについては北の政府と話し合うというのが正しい原則でありますということを確認しております。このことは当然変っておりませんね。大臣からお答えをいただきたい、重要な点ですから。というのは、いまの管轄権の問題は、さっきから、文章の上でも不明確になっておるし、御答弁をお伺いしても、もぞもぞしておる。そこに何か非常な不明朗なものがあるわけですから、念のために、この点は重要な点で、将来の最も重要な紛争の種になる点でありますから、この際直接大臣から伺っておきたいと思うのです。
  105. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さような事実があったことは聞いておりません。
  106. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことはおかしいでしょう。そんな事実とはどの事実ですか。北朝鮮政府の権利並びにそれと日本国との権利義務関係の存在というものも認めてないということですか。どういう意味です。池田内閣の方針というものを否定するわけですか。椎名外務大臣、そんな事実とはどういう事実ですか。
  107. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 聞いておりませんから、アジア局長からお答えいたします。
  108. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御承知のとおり、従来池田内閣時代から、北のほうの問題は白紙であります、こういう言い方で答えておられるわけであります。それで、現在問題になっておる国連決議第九項には、御承知のとおり、国連「加盟国その他の国に対して、大韓民国関係を設定するに当って、本決議第二項に記述した事実を考慮に入れるよう要請する。」ということをうたっております。これに従って現在の段階においては日本大韓民国と必要な折衝をする、そうして北のほうの問題は白紙、そういうたてまえでございまして、将来あそこの情勢がどう平和的に統一されるかしれませんけれども、いろいろな事態がはっきりとわからない段階におきましては、池田内閣以来の、北のほうのことは白紙、この解釈と申しますか方針に立っているわけでございます。
  109. 穗積七郎

    穗積委員 うそ言ってはいかぬよ。そんなのは答弁になっていませんよ。あなた、もう一ぺん読みなさい。われわれはちゃんと何べんか多くの委員によって多くの委員会において確認しておる。北朝鮮人民民主主義共和国の存在とその権威は認める、そしてわが国とその政府並びに人民との間の権利義務関係というものは残るのです、はっきりしていますよ。何を言っておるのだ、あなた。そんなことを言うから、今度のことが大体北にまで及ぶようなことをあいまいにしておいて、そうして同じ政府の中から三矢計画なんというものが出ておる。北朝鮮というものは否定をし、平和共存じゃないのだ、これは仮想敵国として抹消しようとしておる。そういうものが出ておるやさきであるから、この際は率先して合理的ないまの池田内閣の態度というものは継承すべきです。これはむしろ私の質問なくして、政府のほうから誤解なきように内外に向かって宣明すべきことなんです。何だ、いまの答弁は。そんなことは通りませんよ。アジア局長、もう一ぺん研究して答弁し直しますと言いなさい。
  110. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 白紙と申し上げましたのは、これは、ほおかぶりをしてしまうとか、ネグってしまうという意味で従来政府は答えていたわけではございません。北鮮に一つのオーソリティーがあるという事実を認めておることも、そのとおりでございます。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 権利義務関係は。
  112. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 権利義務関係というのも、いわゆる実定法上の権利義務関係ということは別といたしまして、いろいろな懸案になるべき事項が残っている。これをどういうふうに解決するかということは、いつの時期にどういうふうに解決するかということが白紙になっておるということで、決して、ほおかぶりで済ますとか、韓国との関係だけで北のほうはほおかぶりで過ごすとか、あるいはネグってしまうとか、そういう意味ではございません。
  113. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ不十分、不満な御答弁で、これで終わるわけにはいきません。したがって、留保いたします。  実は、だいぶ残りまして、最初に予定したことの後半半分くらい残っちゃったのですが、最後に一つだけこの際外務大臣にお尋ねいたします。  今度の交渉報告並びに文書の中にあらわれませんでしたが、ある権威ある報道機関の現地報告によりますと、李東元外務部長官からあなたに対して政治的な提案があった、——四つの提案。一つは、東南アジア外相会議に対して日本の支援を求める点。第二は、第二回AA会議等をはじめとして、その他の国際会議における日本の協調の態度を求める。第三は、韓国の労働力と技術を日本に移出したい、これを承認をしてもらいたい。第四は、東南アジア防衛条約を補充するために、すなわちベトナムがくずれそうになっておるから、軍事的な安全保障体制の樹立をお互いに話し合い、お互いの協力によって確立しようではないか。以上四つの重大な政治的発言が行なわれ、これに対してあなたは、その問題については今後中国あるいは北朝鮮政府に対するわが国の政策の変化に対応して十分事前に協議をしたいという、提案そのものについては拒否しないで、そして四つの提案を一括して、あたかも基本的には同意であるかのごとく、具体的なものは今後も事前の協議にいたしましょうという回答をしたということが深刻に報道されております。この事実を明らかにしていただきたいと思います。
  114. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 全く私は思いもよらないことでございまして、ただ、そのうちわずかに、アジア外相会議韓国が提唱しております。この問題について日本は参加しないという方針のようだけれども、何とか思い直して参加するように考えてみる余地はないかということだけは、確かに李外務部長官の口から私の耳に伝わりまして、それに対しては、方針を変えるというわけにはなかなかいくまいと思う、しかし考えてみましょう、せっかくのお話だから、それだけは言いましたが、あとの三点は全然聞いたこともにおいをかいだこともない。これはまっかな流説でありますから、その点はっきりとお断わりしておきます。
  115. 穗積七郎

    穗積委員 アジア局長にお尋ねします。大臣は、耳にもしない、においもかがなんだと言われるが、事務当局のベースで、うわさにしても、あるいは懇談の中の茶飲み話程度でも、そういう話があったかなかったか。
  116. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 いま大臣が申されましたとおり、そういう話は全然出ておりません。
  117. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、きょうは、はなはだ遺憾でございますが、あと公用だそうですから、敬意を表してやめておきます。またやりましょう。
  118. 安藤覺

    安藤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、散会いたします。    午後零時六分散会