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1965-03-25 第48回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十五日(木曜日)    午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 岡  良一君    理事 菅野和太郎君 理事 佐々木義武君    理事 中曽根康弘君 理事 前田 正男君    理事 田中 武夫君 理事 原   茂君    理事 三木 喜夫君       秋田 大助君   小宮山重四郎君       藤尾 正行君    山内  広君       内海  清君  出席政府委員         科学技術政務次         官       纐纈 彌三君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   小林 貞雄君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         運輸技官         (船舶局長)  芥川 輝孝君         海上保安庁次長 有田  毅君  委員外出席者         原子力委員会委         員       駒形 作次君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  中川理一郎君         運輸技官         (船舶局原子力         船管理官)   高田  健君         参  考  人         (日本原子力船         開発事業団理事         長)      石川 一郎君         参  考  人         (日本原子力船         開発事業団専務         理事)     甘利 昮一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(日本原子力船開  発事業団に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 岡良一

    岡委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  まず最初に、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  日本原子力船開発事業団に関する問題調査のため、日本原子力船開発事業団理事長石川一郎君、同専務理事甘利昮一君参考人として、意見を聴取いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 岡良一

    岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 岡良一

    岡委員長 この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  それでは、日本原子力船開発事業団による原子力第一船の建造に関し、受注者問題等で難航していた模様でございますが、その間の事情及び今後の事業運営方針等について、どうか忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  それでは、石川参考人よりお願いをいたします。
  5. 石川一郎

    石川参考人 いまのお尋ねと少し違ったことを申し上げたいと思います。  それは、事業団の成り立ちにつきまして、あるいは御存じの方もあるかも存じませんけれども、一言申し上げて御参考に供したいと思うのです。  事業団は、御承知のとおりに、九年間の時限立法でございます。九年間にすっかり仕事をして解散をすることになっております。その初めのうちは設計をいたします。設計ができましたら、今度は船の監督をするという制度になっております。それからまた、それができましたら、今度は試運転をやる、あるいはまた人員の養成をする。この九年間でいろいろ変わった仕事をすることになっておりますので、各方面から事務員あるいは技術者をいま拝借しておりますけれども、そういう方々は一年あるいは二年でもってかわることになっております。現在は各官庁のほうとしては、原子力局あるいはまた運輸省、大蔵省等もおられますが、民間会社から相当大ぜいお見えになっております。大体一社から二人くらい、特に三菱重工一業のほうは合併をなさったものですから、五、六人来ていらっしゃる。それがすでに一年半とか二年とかの年限がくるものですから、もうお帰りになっているというような状況で、かわっております。  それは要するに、われわれのほうの仕事はガラス張りでやるということ、常に民間あるいは官庁方面と一々連絡をとってやるということ、こういう意味におきましてやっておりますので、その見積もりその他につきましても、実は昨年の暮れくらいまでには、見積もり合わせその他ができるような仕様書をつくりまして、契約書案をつくりまして、お願いを申し上げるつもりでおったのです。少しおくれまして、ことしの一月二十日に、皆さん方に来ていただいてつくった仕様書等ができ上がったものですから、それをいままで事業団のほうに来ていただいている方々にお配りいたしまして、でき得ればこれをもとの会社のほうにお配りを願って、大体こんなふうに進むぞというようなことをあらかじめお知らせ申し上げておくほうがいいだろうというのでお知らせ申し上げておいて、そして二月の一日かに正式に見積り書並び契約条件を示される、こういう段取りをつけてまいったのでございます。こういうことがありましたということを、また、現在の事業団の構成がどうなっておるということをお承知おき願いまして、きょうのいろいろ御質問に対するお答えをいたすということを頭の中に置いてお聞き取りを願いたいと思います。  なお、入札以後のことにつきましては、甘利専務理事も参っておりますから、甘利専務理事から詳しく申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
  6. 岡良一

    岡委員長 次に、甘利参考人
  7. 甘利昮一

    甘利参考人 いま理事長からお話がありましたが、私から、もう少し詳しく入札前後、それからその後の措置についてお話し申し上げたいと思います。  御承知のように、昨年の二月から基本設計に取りかかりまして、ことしの一月ようやく見積もり合わせができるような仕様書作成段取りに至りましたので、二月の一日に造船七社を適格者として選定し、仕様書説明並びに契約条件を提示いたしまして、その後約一カ月たって、三月一日に入札いたしたのでありますが、御承知のように応札者がございませんでした。二月一日に説明はいたしましたが、いま理事長がおっしゃったように、仕様書等についてはそれ以前から皆さんにお配りして十分検討していただくようにしてありますし、また、その基本設計そのものあるいは仕様書等についても、事業団で計画されたものを皆さんの、技術委員会とかその他の委員会を通じて十分関係各社方々意見を徴しておりますので、その間で各社ももう大体内容は御存じだろうと思いますが、特にいま申し上げましたような方法をとりまして、十分検討していただくようにお願いしてやったわけであります。しかし、入札の結果は不調に終わりましたので、さらに見積もり範囲を縮小いたしまして、翌日さらに再入札にかけたのでありますが、その結果も不調に終わりました。  したがって、事業団といたしましては、関係の両省庁並びに造船工業会等協力を得まして、その後鋭意、相手造船所と申しますか、契約当事者の選定を急ぎまして、造船工業会におきましても特にこの問題を重要視しまして、石川島播磨重工をあっせんするということで、会長から話がありまして、去る二十三日に石川島播磨重工交渉相手として応ずることを受講いたしましたので、二十四日から石川島、それからかねてから炉のほうは三菱原子力工業を中心として製作することに内定いたしておりましたので、三菱、炉のメーカーも入れまして、昨日から契約を急ぐようにいろいろ打ち合わせをいたしております。  今後、われわれとしましても、契約を取りまとめることが最も重要な事項と思いますので、積極的に条件を示して交渉いたしまして、早急に契約を取りまとめたい、こういうふうに考えております。
  8. 岡良一

    岡委員長 以上で参考人からの御意見の聴取は終わりました。
  9. 岡良一

    岡委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。三木喜夫君。
  10. 三木喜夫

    三木(喜)委員 この問題につきましては、前の委員会のときに科学技術庁のほうにお伺いしたのです。しかし、責任者の方がおいでにもなりませんでしたし、さらに大臣もおられなかった。きょうはこうして責任者おいでいただきましたので、私たち心配しておる点を申し上げて、よく御答弁いただきたい、こういうように思っております。  そこで、幸い原子力船開発事業団責任者のお二人に来ていただいておりますので、つぶさにこの間の事情を、私たち心配する立場に立ってお伺いしたいと思います。  心配の第一は、こういう極限の科学といいますか、こういうものを利用して、そうして開発していく仕事であります。これを請け負うところの造船界あるいは各企業において難色を示すようだったら、非常に危険を伴いますので、その心配が一つあるのです。  それから第二は、いまもおっしゃいましたように、こういう事業をやるためには十分造船界あるいは関係省庁連絡をとって、十全の対策を立てた上で造船工業会にこれを提示していく、だからその間の手抜かりはないかということですが、手抜かりがなければ、造船界としてもこれに応じてくるのが常道ではないかと思うのです。また、これが、こういうような世紀の事業といいますか、日本がやりかけた以上、これにやっぱり協力してくる態度を示すことこそ、日本の国のこうした産業界のあり方でないかと思うのです。これが第二の心配の点です。  それから第三の心配の点は、なるほど入札価格というものにおいてだいぶ食い違っておるようです。その食い違いの点も明らかにしていただきたいのですが、なぜこのように造船界は、いよいよどたんばになってきたらここまで来いというような態度になられるのか。私はやっぱり日本国民として非常に不愉快にも思いますし、疑問にも思うわけですね。その点ひとつ明らかにしてもらわなければいけないと思うのです。  これは日本国民のためにも、当委員会としてもその責任があると思いますので、そういう立場から、いまお伺いしました三つについて解明していただきたい。
  11. 甘利昮一

    甘利参考人 いま先生からおっしゃったこと、まことにごもっともでございまして、私たちも同感なんです。  事業団として、こういう事態になるについては、工業会並び造船所側十分連絡をとっておったかどうかという問題ですが、これは先ほど申し上げましたように、政府の示された基本計画にもありますように、関係業界協力を得てとか密接な連絡をとってということが示されておりますので、われわれとしましては、そういう方々委員としたいろいろな委員会を通じて最後の案をまとめておりますし、また、それらの図画とか資料というものはすべて公開いたしておりますので、皆さん方には十分意思の疎通ができておると思っております。また、業界のほうからも、もう少しこういう点についていろいろ聞きたいとか、質問があるというようなことについては、われわれとしても積極的にお知らせしてありますので、こういう入札事態になって皆さんが辞退されるというようなことは、非常に意外には思っております。  ただ、いろいろ造船所側にも会社事情があります。特に最近においては相当多量の輸出船を受注しているというようなこと、しかも、造船所自体があまり利益にならないような船を相当とっておるようですから、何とか合理化して、これらをうまく回転して利益を上げたいというような、企業内部のいろいろな準備もありましょう。また、本船については何分にも未経験分野ですから、そういう点については造船所側としても非常に危惧の念を持っている点もよくわかります。  ただ、こういう初めてのものですから、将来の造船企業のことを考えますと、やはりこの時点においてそういうものに対する開発並びに経験を得ていくことが必要であることは、造船業者も十分承知いたしておりますし、現時点におきましても、むしろこれを伸ばすべきじゃないか、促進すべきであるというふうなことを、皆さん一致して言っておられます。そういう点から見ますと、まことに奇妙な感じがいたしますが、いろいろな事情があってこうなったのだろうと思いますし、事業団としましても、過去においてもう少しまたやるべき方法もあったのじゃないかということで、反省はいたしておりますが、いずれにせよ、今後それらの点について鋭意対象造船所とざっくばらんに話し合いまして、業者のほうの言うことも十分聞いてあげて、お互いに話し合うことによって契約ができるのじゃないかと考えております。  また、船価の点につきましても、確定部分と申しますか、そういう部分については長年経験をいたしておりますので、十分わかるのでありますが、たとえば船の中に炉を装備して、そのあといろいろ運転する、それ以降のことについてはほとんど未知の分野ですから、そういう点について順調にいった場合にはこの程度のコストでいくが、しかし、もしいろいろ事故があった場合、あるいは予測せざる技術的障害、そういうふうなものがあった場合には一体どうなるかということについて見当がつかない、そういうふうな考えを持っておるのではないかと思いますので、われわれとしましても、そういう不確定部分については、今後折衝を通じまして、つくられる方が安心してと申しますか、やれるような証し合いをして条件をきめたい、こういうふうに思っております。  したがって、船価そのものについては、皆さんからどれだけあればできるのだという正式の船価の提示があれば、またそれについていろいろ議論の余地もありますが、ただそういう業界からの船価の確定的の値段もいまだ示されておりませんので、われわれとしましては、一応従来から算定いたしました船価をもって、順調にいった場合はできるのではないか。あるいはまた、そのときに予定されたこと以外の事項がそれに加わっていく、あるいは事業団としていろいろな安全の見地その他から、こういうふうな装置をしたほうがさらによくなるのではないか、あるいはより安全になるのではないかというような事項がありますが、これらの事項については当初の予算とまた別に考えなければならないのじゃないか、こういうふうに考えております。  いずれにせよ、今後努力することによって、多少の時間はかかっても契約にこぎつけることができると私たち考えております。
  12. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私は、こういう問題はメンツとか、あるいはまた世間ていというよりなことを考えて、そうしてつじつまを合わすというだけでは済まされぬと思うのです。なぜかといいますと、さきがたから申し上げておりますように、これは危険が非常に伴うところの問題ですから、いまもあなたのほうでおっしゃっておりましたように、事業団としてより安全になる方法はあるのではないか、こういうことで、船価の面である程度妥協していってもいい、こりいうふりなお語なんですね。それは、科学というものは日進月歩ですから、またその上につけ足していかなければならぬ面もあると思うのですけれども、しかし、事こういう重大な問題になれば、十分の設計と十分の配慮とをやられておったはずだと思うのです。いまの御答弁の中でも、もし事業団、ないしは石川傷のほうでかなり上回った船価を提示してきたときに、それに応ずる口実のように私には聞こえるのです。そういうことで安全性をもてあそんでもらったら困ると思うのです。口実安全性をもてあそんだら、これはたいへんなことになると思いますので、その点一つ心配いたします。船価が上がる、上がらぬという問題は次に申し上げるとしまして、いまおっしゃる中にもそういうことばがある、それで心配します。  それから、造船工業界のほうで入札を拒んだということの裏には、いまもおっしゃいましたように、非常によく連絡協調をとっておったし、そういう設計仕様書も見せておった、官庁とも連絡がとってあるというのに拒んできたというのには、私はそれ相当理由があるのではないかと思うのです。それは、外業団のほうでやはり過酷な条件を付したのではないか、こういうことを私は心配いたしますし、なおまたもって、世間でもそういううわさがある。  この二つについて、ひとつお答え願いたい。
  13. 甘利昮一

    甘利参考人 いま私の申し上げたことについて、多少あるいは誤解があったかもしれませんが、私は安全性というふうなことであれしたのですが、船価と比較して安全の問題を云々ということは毛頭考えておりませんし、また特に本船については安全を最重点に置くように指示されております。安全に対しては万全の措置を請じておるつもりであります。また、これは安全審査のいろいろな関係もありますので、われわれとしては安全審査段階においていろいろ御要望があれば、それには当然こたえるつもりです。ただ、それ前においても、自分たちとしても、できるだけ安全の面について、直接安全でなくても、操縦性がよくなるとか、性能がよくなるということによりまして、間接に安全が増すということもありますので、そういう点についてできるだけの措置をとりたい、あるいは万全を期したい、こう考えておるつもりであります。安全の問題と船価をいろいろ比較したわけではございませんです。  それから、造船所にいろいろ過酷な条件があったのではないかというお話ですが、われわれとしましては、一応造船工業会なり、あるいは業界の今回応募された方々にも十分話ししまして――各社によっていろいろ条件が違うと思うのです、設備だとかその会社技術によって。それを抽象的に表現したのが造船工業会からの要望だろうと思いますが、それには十分こたえておるつもりでおります。しかし、結果から見ますと、各社のあれによってはまだ十分でない点もあったと思いますので、今後交渉を進めますについては、その点は十分相手方条件等を取り入れ、あるいは検討いたしまして、できるだけそういう条件に無理があってつくるということのないようにいたしたいと思っております。
  14. 三木喜夫

    三木(喜)委員 安全性の問題については、いまのお話では私は解決がついていないと思います。  と申しますのは、さきがたお話しになりました中にも、相手方の拒否された理由として、初めてのものであるから、開発あるいは経験、こういう問題を考えに入れると非常に危惧の念を持っておる。それから特に私は、重要なことばとして――いまおっしゃったことばじりを拾うのではないのですけれども、重要なことですから私は申し上げるのですが、相手方は予想しない事故があった場合のことを心配しておる、こういうようにおっしゃったわけです。しかし、予想しない事故というようなものは、それはもう人間でありますから、もちろん考えに入れなければいかぬですけれども、その事故に対するところの万全の対策をしいての設計であり、あるいはいま審議いたしておりますこの法律案も、そのことをたてまえにしていま審査を進めておるわけでありまして、その予想しない事故というようなことが考えられるというならば、何かやはり不安があるのですね。設計に不安があるのですか、それとも、もう全然自信がないということで不安を持っておるのか。相手側が非常な不安を持っておるのですから、それをひとつ。――きょうは造船工業会からも来てもらっておきたかったのです。しかしおいでになっておりませんので、そんたくして答えていただかなければならぬということで、申しわけないのですけれども、しかし、これは交渉されたたてまえで、相手側からもいろいろ意見が出たでしょう。そこでお聞きしておるわけです。
  15. 甘利昮一

    甘利参考人 いま不確定要素とか、それから予想できない事故というようなことを申し上げた、これは決して技術的と申しますか、設計上とか、そういう問題ではございません。よく安全審査の場合にもありますように、市大事故だとか仮想事故だとかいうものを想定されて、いろいろそれに対する対策を講ぜられるようにしておりますが、いま御質問技術だとか設計とかそういうものについては、全然そういう御心配は要らないと思います。  それから、仮想事故と申しますか、非常に不安だ、何となく不安だということについては、いろいろその不安の要素を一応考えまして、それに対する対策も一応は十分講じてございます。  ただ、今後、これは一般問題として、各造船所意見はいれているつもりでございますが、先ほどから申しましたように、個々の造船所ですとまたそれ以外に、いろいろその造船所技術的能力とかそういうものでまたそういう不安の点が出てくるかもしれませんが、それについては話し合いで十分そういう不安のないようにやっていきたいと考えております。
  16. 三木喜夫

    三木(喜)委員 不確定要素につきまして明確にしていきたい、どういう点を明確にされますか。予想しない事故ですけれども、そういう予想しない事故とかあるいは不確定な要素について明らかにしていきたい、いまこういうようにおっしゃったのですが、しからばどういう点が心配なんですか。
  17. 甘利昮一

    甘利参考人 いま不確定要素と申し上げましたが、この中にはいろいろあると思うのです。私の申し上げましたのは安全審査関係仮想事故とか、そういう問題もありますけれども、むしろ現在は見積もり段階といいますか、契約段階ですから、そういう点は、たとえば臨界以降のいろいろな造船所仕事量とか、その中の工数についても、たとえば順調にいけばこれだけの工数でいくけれども、しかしそれをまたもう一ぺんやり直すとか、あるいは政府なり委員会の許可が得られなかった、そういうことで予想できないような工数がかかるということが船価の問題としては一番関係すると思うのです。見積もりについてはそういうことでありますし、それからそれ以外の一般の不確定要素については、これは安全審査のほうで、そういう事故を予想されて、そこでそれに対する設備はどうなっているか、対策はどうなっているかということを一応審査されて、それに応じた対策をわれわれは講じ、設備をするつもりでおります。大体審査を受ける前から、われわれとして、過去のいろいろな例もありますから、そういうものを参考にして、できるだけそれに沿うように設計なり対策を講じております。
  18. 三木喜夫

    三木(喜)委員 この問題について、村田原子力局長はどういうようにお考えになりますか。
  19. 村田浩

    村田政府委員 ただいま三木先生の御質問で、原子力船をわが国の造船所で建造します場合に安全上の心配があるのではないか、そのために造船所側で非常に入札を渋っておったんじゃないか、こういうことに御質問の要点があったかと思います。  先ほど来事業団のほうから御説明ございました新しい要素といいますか、不確定要素といわれておりますことは、ただいまも甘利専務理事から御説明がございましたように、私どもの了解しておりますのは、主としてというより、むしろもっぱら工数の問題、ひいては価格の問題、そういうことにあるわけでございます。――工数マンアワーでございます。普通の船でございますと、その総トン数によりまして、あるいはその使用目的によりましてあらかじめ正確に工数を見積もることも可能なわけでございますけれども、初めてつくります原子力船でございますので、船体のほうはともかくといたしまして、原子炉を積みまして、非常に限定された船の区画、場所でこれを動くように持っていく、こういったような点につきましてどのくらいの工数マンアワーを見ていけばよろしいかという点については経験がございませんので、外国の例などを見て造船川が考えるわけでございます。外国の例と申しますのは、先生承知のとおり、ただいまのところはアメリカのサバンナ号あるいはソ連のレーニン号というような例しかございません。レーニン号の場合には詳細な工数等はよくわかっておりませんので、結局はサバンナ号というのが一つの有力な例になるわけでございます。サバンナ号も、私どもの得ておるところでも、これまた契約方式等が、だいぶ日本とは違っておるせいもございますが、だいぶそういった点で時間を食っているというような面もあったわけでございます。  そういった事例もございまして、一応事業団のほうでお考えになっております工期、つまり引き渡し時期までの工期あるいは船価、そういったような点で新しい要素をどの程度入れてそこに落ちつくだろうかという点について不安があった、あるいは自信が持てなかった、そういうことが先ほど来出ております不確定要素の主たるもの、あるいはもっぱらその部分で不安を感じる、こういうことでございます。  事故の問題につきましても、甘利専務からお話がございましたように、事故のことにつきましては、実際建造に着手いたします前に、事業団のほうから設置の許可を求めてまいります。総理大臣にそのような申請が参りまして、総理大臣はその安全性につきまして原子炉等規制法の規定に基づき原子力委員会意見を聞くことになっております。原子力委員会は安全専門審査会にかけまして、船の方ばかりでなく原子力関係の専門の方々多数の御検討の結果、非常に実際にはあり得ないそういう仮想事故を想定した場合の安全性についてチェックされた上、初めて設置の許可が出るわけでございますから、実際建造に着手しますときにはその面での確認はいたされておることになります。  さらに、造船所側にとりまして、建造しましたもの、あるいは建造中に万々一何か原子力関係の災害が起こって、そのことから造船会社等に補償要求等のことがあるのではないかという御心配がかりにあるとしますと、その点は、これまた、昭和三十六年に成立いたしました原子力損害の賠償に関する法律によりまして、事業団が所要の賠償措置を講ずることになっております。そういった面につきましての責任は、すべて事業団が無過失集中責任を負うことになっております。そういったことで造船会社側がいろいろ心配されるようなことはないような手配になっております。  したがいまして、事故からきますそういった点の心配といいますか、不確定要素ということは、この間、造船会社等が入札に応じなかったということの主たる原因ではないと思います。
  20. 三木喜夫

    三木(喜)委員 いまの御答弁を聞きますと、さきがたおっしゃったのと多少違っておるように思います。  そこで、原子力委員会からもおいでいただいておると思いますので、駒形原子力委員にお伺いしたいのです。これについては事業団責任を負うのだ、当然設置の許可を申請してくる、したがって、それについては、原子力委員会としては審査をする、そしてあらゆる条件が具備されておるということで、このことが発足していたと思うのです。  ところが、いまの甘利参考人お話によりますと、そういうことも心配だった、こういうことでございますので、これは村田原子力局長にもお伺いしておきたいのですが、そうした諸般の心配甘利さんはそういう不確定な事故に対しても、こうだこうだという心配があったとおっしゃるのですが、そういうものについては原子炉安全専門審査会の意向も付して相手側造船界に御提示になったのかどうか、そういう心配点についてお答えになったのかどうか。そのことがやはり問題になると思うのです。あなたはそうじゃなかったからとおっしゃっておるわけですから、当然提示になっていないと思うのです。しかしながら、原子力委員会としては、そういう審査をなさっておるのですから、甘利さんはそういうことも心配であったとおっしゃいますし、造船工業会のほうにもそれを提示せぬことにはやはり受諾する決意にならぬわけです。そういうことから、ひとつ駒形委員からも答弁をいただきたいと思います。
  21. 駒形作次

    ○駒形説明員 お答えいたします。  原子力委員会といたしましても、安一全性の問題につきましては、最も重要に考えておるところでございまして、第一船の基本方針ということにおきましても、この、安全性の問題に対して特に意を用いるようにという基本方針を打ち出しておるわけであります。  先ほど局長からお話がありましたようなことをもって、原子炉安全専門審査会におきましてこれを検討するということになっております。その場合、もし安全上においてこういうことが欠けておるというようなことがあれば、当然それは直すということでやるようなぐあいにしなければならないものと考えております。  安全専門審査会におきましても、従来比較的陸上炉に対しての専門家というようなものの構成でございましたけれども、最近船舶用の原子炉に対する専門家も加えまして、船の原子炉に対して、それの安全性審査する上に支障のないような形にこれを構成いたしておる次第でございます。
  22. 村田浩

    村田政府委員 先ほど私が御説明申し上げましたことで少し不明確な点があったと思いますので、少し補足させていただきます。  私、原子力委員会の安全専門審査会で安全審査をいたす、こう申し上げたわけでございますが、その時期の点でございます。ただいま石川島播磨並びに三菱原子力工業原子力船開発事業団とで交渉を始めておられます。そこで、交渉の結果一応契約ができました段階で、原子力船開発専業団のほうから設置の許可申請が出てまいります。したがいまして、まだ現段階では安全審査はしておらぬわけであります。  安全審査に関連して、かりにメーカー側でやや不安があるとしますと、そういう契約を一応してから中請いたしますから、そのときの契約の内容によって造船会社は児積もりをいたしておるわけでございます。ところが、安全審査会にかかりまして、安全審査の結果――たとえば、そういうことはあまりないとは思いますけれども、厳重慎重に審査の結果、こういうところはこのようにさらに改良すべきである、あるいはこういう装置をさらに付置すべきである、このような条件が出ることがあり得るわけであります。そういたしますと、そういう条件を満たさなければ建造はできないわけでございますから、造船会社にとりましては、その点はプラスアルファみたいな形になることもあり得るわけであります。原子力船事業団のほう並びに協力されました造船会社としましては、私ども承知するところでは、安全審査会にかかりましても、そこで十分に安全性については御確認いただけるという考えでいま用意されておる、こういうふうに承知はしておりますけれども安全審査会は御承知のとおり独立の機関でございまして、独立の立場から自主的に審査いたしますために、万々一多少とも不安といいましょうか、不十分と思うところが審査会でございましたら、その点の改善等は当然条件として出てまいりますから、それをやることに相なるわけでございます。そういたしますと、先ほど申しました工数あるいは価格というものにも若干はね返ってくることがあるかもしれない、こういう意味では現段階におきましては一つの不確定要素であるということは申せるかと思います。
  23. 三木喜夫

    三木(喜)委員 かなりはっきりしてきたわけです。私の頭がぼうっとしておるせいもあるかもしれませんが、現段階では原子炉安全審査会はこれについてまだ審査をしていないということですね。駒形さんの話を聞いておっても、そういう点を審査された気配はないような御答弁でした。村田局長の話ではっきりいたしました。  しかしながら、この安全性の問題は幾多の段階でやらなければならぬと思うのです。まず設計段階。そしてこれを発注するにいたしましても、相手側は、いまもおっしゃったように、それに危惧の念を持ってもらうのでは私は困ると思うのです。安全性については非常に心配して心配して、十分心配してもまだ足らぬくらいだと思います。まだいまは図上戦術の場合だから、いよいよ実質にかかるというときに安全性ということを考慮に入れなかったらたいへんなことですから、この段階においても、原子力委員会としては、こうだというはっきりした提示を安全審査会からなさっていただく必要があると思うのです。事業団のほうも、そういう手配をされた上でメーカーに提示をされておると思うのです。だから、メーカーは、それに対していろいろな点で危惧の念がある、こういうふうに安全性だけをいま取り出しているわけですが、心配があるということでこれが受注されなかった、こういうようにさきがたのお話だと承っております。  そこで、次に話を進めていきたいと思うのです。  さきがた村田さんのお話では、安全性の問題よりもむしろ工期とかあるいは船価とか、こういうことが問題で協議した、こういうふうにおっしゃいますが、先般の新聞にはこういうことが書いてある。造船界にしても、今後やってもらう石川島にしても、その点は十分考えてもらいたいと思うからこういうことをくどく言うわけですが、こういうことを言っております。「原子力船の発注すらできない、その理由は、造船界の言い分としては、船炉一体発注方式では技術的に自信がない。一造船会社が全責任を負わねばならぬというのでは困る」、こうなっている。ここにも、ただ船価とか、工期とか、原子力船の航続力とか、そういうようなことが理由でなくて、やはり安全性というものを非常に大きく考えておられるように思うのです。こんな自信がないということでは困ったことだと思うのです。  そうすると、今度は二社にいたしますと――現実には二社になるわけです。炉は三菱、船体等は石川島播磨、こうなってくるんですね。三社にすれば、責任が分散されこそすれ、責任が非常に果たしやすいということになる理屈が私はわからない。責任分担すれば責任が稀薄になりこそすれ、非常に責任を持ったという形にはならぬと思うのです。しかし、これは専門専門があります。原子炉三菱が専門だから、そこでやれ。しかし、その前提としては、全責任を負わねばならぬということの中には、やはり安全性の問題があると思うのです。それは造船工業会に対しましても、石川島に対しましても、原子力委員会、特に安全専門審査会、それから科学技術庁原子力局長、原子力船開発事業団、ここから十分納得さしておく必要があると思うのです。こんなものでなかったというようなとらえ方は私はあぶないと思います。くどくこの点を言っておきますけれども、この点はどうですか。これは村田さんでも、事業団でも。さらに、船舶局の高田原子力船管理官もおいででおりますが、管理官ですから、そういう点も十分管理の中で通られたと思うのです。そういうところを通らぬとあなたの職責はつとまらぬと思いますので、そういう点はあなたからでもけっこうですから、違った角度からひとつおっしゃっていただきたい。
  24. 村田浩

    村田政府委員 ただいまの新聞記事についてでございますが、私どもは直接メーカーと話し合う立場にございませんので、実際にメーカーのほうでどういうような話がありましたか、その点の確認方法はございませんが、しかし、ただいま三木先生御指摘の、炉と船体を一緒に受注するのでは責任が持てない、こういうことをもし言っておったといたしますと、私どもの理解では、主としてそれは性能保証の問題である、このように考えておるわけであります。従来船をつくりますにあたりましては、ディーゼル船もございますし、タービン船もございますが、そういったエンジン部分を含めまして造船会社に一括発注しておる、こういうのがしきたりのようでございます。原子力船も船舶の一種でございますから、そういう意味では、一体で発注するというのは決しておかしくないとは思うのでございますが、ディーゼルエンジンとかあるいはタービン等に比較いたしまして、原子炉というものは、新しい技術を必要とする新しい施設でございますし、そのための専門メーカーというものが日本でようやく幾つか育ってきておるところでございます。そこで、原子炉関係の出力が、設計されたとおりにもし出ないといたしますと、船といたしましては、与えられた保証、要求されておるような性能はとうてい確保できない、こういう手順に相なります。そこで、原子炉を直接自分の手でつくるわけではない。造船会社原子炉の出力、それから軸馬力、さらには船の速度、そういったような性能を一括して保証するという点に責任が持ちにくい。こういうことが一番大きな理由として申しておるのだろう、このように理解いたしております。  分離すればかえって責任が稀薄になるじゃないか、こういうお話でございますが、分離の趣旨は、むしろ事業団を入れまして、船につきましては事業団造船会社、炉につきましては事業団原子炉メーカー、いわばこの三者の間の契約の形にいたしまして、炉の性能は炉のメーカー対事業団の附で保証し、その保証された炉の出力をもとにして、今度は事業団造船会社との間の契約で船速等の保証を行なう、こういうような形でいけば造船会社としては性能保証についての責任を果たしやすい、こういうことを分離論では言っておる、このように考えております。
  25. 高田健

    ○高田説明員 船としての安全と原子力の安全ということについては非常に密接な関係でございますので、私どものほうも、船の安全ということで原子力船をとらまえて、いろいろ勉強しております。そのことにつきましては原子力局のほうともよく御相談申し上げておりますし、事業団に対しても、私ども考えは十分にお伝え申し上げておると私どもとしては存じております。  にもかかわらず、造船会社心配をしたということにつきましては、ただいま村田原子力局長がおっしゃいましたように、はたして所期の性能が出せるかどうかということ、それを工期内に十分達成することができるかというところに造船会社が不安をお持ちになる。それは普通のエンジンを積んだ船でありましたら、造船会社としては船としての性能を出せることは自信がございますが、原子炉が所期の性能を出してくれるかどうかという前提をもって船が完全な性能を出し得るか、そういう点に不安を持たれたと思います。その点につきましては、村田原子力局長と私は全く同感に存じております。
  26. 三木喜夫

    三木(喜)委員 村田さん、私もさきがたからずっと言っておるのですが、性能の問題だというようにあなたは普通いままでの造船の常識で言われておりますけれども原子力船は、私は専門家じゃないからわかりませんけれども原子力船というものの出力とか、軸馬力とか、速度とかいうことがうまくいかないという陰には必ず反対の要素があると思うのです。これは安全性の問題に連なってくる問題です。ただ普通の船の感覚で造船工業会並びにメーカーがとらえておるとしたら、ここも問題ですし、あなたもそういうようなとらえ方だけが先行しておるところが問題だと思うので  同じように、監理官である高田さんも、いままでの普通船舶的な考え方じゃなくて、あなたの立場とすれば、もしそういうことが起これは重大な責任があると思いますので、これは原子力委員会ないしは事業団に対しましては、いまにおいて強い要請をしておかぬことにはいかぬのじゃないかと思うのです、監督賞の立場として。  船舶局長おいでになっておりますが、私はそういう立場ではないかと思うのですけれども、全体のとらえ方がどうもその点が素通りしてしまっておる。にもかかわりませず、事業団のほうでは、話し合いの中でそういう心配があったのだ、こうおっしゃっておる。片方、原子力委員会のほうは、そんなことではないんだ、まだ何にもしていないんだ。ペーパープランの間の審査はしておるけれども、そういう心配に対しては何も答えてない。事業団は、そういう心配を持っておるのだ、こういうぐあいにおっしゃいました。そこで、船舶局のほうは、やはり出力だとか、軸馬力とか、速度とかのことが心配だったのだ、あなたのほうにはそういう心配はありませんか。船舶局長おいでになっておりますので……。
  27. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 私は、船舶局長になりましてまだ日が浅くて、原子力について勉強しておりませんので、ただいまの三木先生のお尋ねに対して当を得た御答弁を申し上げられるかどうか非常に疑問でございますが、運輸省がただいま原子力関係しておりますのは、原子炉規制法につきまして科学技術庁からいろいろ御相談があった場合に、差しつかえなければこれを同意する、そういう立場でございます。  そこで、その中の一番問題は、ただいま御指摘の安全の問題であろうかと思います。われわれのほうで、船をつくる側の者もしくは船をつくるということを監督しておる者から申しますと、当然安全に合格した図面によってこの製造が行なわれる。そしてその合格した図面どおりのものができていくかどうか、それを監督していく立場におると考えております。ただ、開発段階にございますので、ここに安全基準があって、これによってメーカーはつくれというところまではいっておりませんし、これはいかないのが当然ではないかと思っております。したがいまして、図面をつくりながら逐次権威ある安全審査を経て、そして十分国民全体の安心のいく原子力船をつくり上げていく、そういうふうな仕事の進行をするものであるというふうに考えておる次第でございます。
  28. 三木喜夫

    三木(喜)委員 くどくて申しわけないのですけれでも、法的に原子炉安全性がどうだこうだということは、今度新たに海上に原子炉を浮かべるのですから、これについては規制法を一部改正するというような動きがあるわけなんです。これは一般的な問題でいいのですけれども、船舶行政をやっておられるその中の最たるものが今度は原子力船になるわけです。それであなたの足元に火がついてきた。  そこで、業者としては、そういう不確定な問題もあるけれども、そういうことも心配の一つだと言われておりますから、私は、各方面からその心配のないようにしてあげることがいいのじゃないかと思うのです。あなた方も、そういう心配を持っておられる業者に対しまして接触を持たれたかということが問題になってくるわけです。これは当然今度はあなたの責任に帰一してくるわけなんです。はね上返ってくるわけです。そこで、原子炉安全性に対するところの規制法という一般的な問題ではもうないのですね。いよいよつくるという段階で、注文を受けよう、しかしながら、やはりいろいろなことが抵抗になってきた、今度の入札が進まなかったのは。  しかしながら、その中には、事業団の中にも言われておるように、安全性の問題について非常に心配しておるということをおっしゃっておられた。村田さんは、そうではない、こうおっしゃる。私は、そういうように心配してもらわなければ困るし、そこであなたのほうにも火がついてきておるわけですから、よく話してもらいたい、こういう希望を持っているわけなんです。だから、一般的な段階でいろいろな段階審査されるからそれでいいんだというているものではないのです。いま受けようか受けまいかという段階にきて、いまこれは私は憶測で非常に悪いのですけれども、もうこうなれば予算が流れメンツがないからどうぞ受けてくれという、こういう三拝九拝のかっこうじゃないかと思うのです。あまり権威のない話なんですけれども。これはいいですよ、しかし、そういうことをやれるときには、えてして、いまおっしゃるようなことがすうっとみな棒引きされてしまう。そんなところを素通りしていってしもうたら、これはたいへんなことになるから言いよるわけなんで、皆さん責任を感じるという立場でこれに対処してもらいたいと思うから、申し上げておるわけなんです。  その点もう一度、原子力船管理者もおられ、船舶局長もおられるのですから、いよいよあなた方の責任分野に入ってきたのですから、その点を明確にしていただきたい。
  29. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 船舶をつくります場合に、原子力船につきましては、先ほど事業団のほうから御説明ありましたように、基本図、これは造船所に与えられております。したがいまして、その華本図につきましては、安全性につきましては十分これを確保する見通しがある、そういう技術的な裏打ちのある基本図だろうかと考えております。そういう原子炉を船舶に使います場合の大体のあら話は基本図ですでに済んでおる。それを御提示になったのじゃないかと思います。  ただいま私が申し上げましたのは、それから先の問題でございまして、しからば、その基本図を十枚なり二十枚の図面にブレークダウンして実際に品物をつくってまいります場合には、これはなかなか造船所のほうの一存でいかない面がたくさんあると思いますので、そういう図面も逐次、そのうちの主要なものにつきましては、権威のある機関、すなわち原子力委員会なり何なりの安全審査を受けて、そうして安全を積み上げていけば十分な安全が確保できるんじゃないか、そういうことを申し上げた次第でございます。
  30. 三木喜夫

    三木(喜)委員 もう私、これはくどく申し上げるのは済まぬと思いますから、安全性の問題はこのくらいにしておきたいと思いますけれども船舶局長、これはひとつしっかり把握してもらいたいと思うことは、さっきから何べんも言っておるように、あなたのところとしてはもう、日本としてはいままでにない船が監督下に置かれるわけなんです。そうでしょう。そうして、いま事業団のほうから言われておるように、予測しない事故があった場合が心配で、不確定な部分については明確にしてもらいたい、明確にせなければ心配だという、こういうお話がありますから、あなた方のほうもそういう心配で逡巡しておるとすれば、そこについては、積み上げだけではいけない、オーソドックスなものだけではいけない。そこについては絶えず積極性を持って、どこが問題点であるかということもとらえておいていただかなかったら、今後の監督行政に影響してくると思うのです。このつくる段階においても、あるいは就航して運航の段階においても、やはり問題は起こってくるわけです。そんなことは私は知らぬ、あなた方は責任を持つというからやったんだということでは、これは困るのです。どうぞつくってくださいということで三拝九拝してつくったということになれば、そういうことが抜けてきているということを私は心配しておる。オーソドックスな筋書きどおりにいけば、それはそれでけっこうなんです。そういう点をひとつ心配しますから、今後十分そういう点については御留意いただいて、造船界とも接触を持っていただかなければならぬと思います。  それから次に、あと質問者もありますから、船価の問題です。  この船価が、石川島の要求しておるのは三十五億の予算に対して六十億近いのじゃないか、こういわれておるのです。これはまたべらぼうな差ができたものだと思うのです。国鉄新幹線じゃないですけれども、これはどういうぐあいになさるのですか。いままで長い間あなた方も研究なさったでしょうし、当委員会でもそのことは非常に注目しておったし、科学技術庁においてもこれは十分検討した上での三十五億ということだと思うのですけれども、それが六十億と、こういうことになってくると、これまたべらぼうな話だと思うのです。どちらがずさんなのか。あるいはまた、ここまで故意に言う造船界企業者の倫理をわきまえぬやり方といいやすか、採算がとれなければそれはしかたがないですけれども、またこれについては考えなければならぬですけれども、しかし、ある程度こういう産業界の一つの倫理というものをわきまえていただかなかったら困ると私は思うのです。その点について事業団、それから科学技術庁、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  31. 甘利昮一

    甘利参考人 いま石川島から出されたとおっしゃいましたけれども、まだ造船所からそういう船価については出ておりません。いま六十億とおっしゃったのは、私も新聞で見たのですが、三菱かなんかの社長が言われたということで六十億という船価が出たことがありますけれども、われわれのところにはまだどの造船研からも、船価について正式なそういう価格を示した例はございません。
  32. 中川理一郎

    ○中川説明員 三木先生船価の御質問でございますが、巷間伝えられておる数字というものについては、科半技術庁も事業団も関知しておりませんことはただいま甘利さんが申し上げましたとおりでございます。  今回、石川島播磨が造工のあっせんによりまして事業団と折衝を開始することになりましたから、これからむしろ原価項目の一つ一つにつきまして、双方で突き詰めたものをディスカッションをいたしまして、幾らの価格が適正であるかということが折衝に入ってもらうわけであります。いままでのところのうわさ話というのは、私どもも全然承知しておりませんので、これは何かのうわさだというように聞いていただけばよろしいかと思います。  それから、予算額として計上いたしました三十六億円の根拠につきましては、科学技術庁といたしましては、大筋において誤りのない数字だといまだに確信をしておるわけでございます。これは私どものほうが全く恣意的に目の子で計算した数字ではございませんで、三十六年の六月に原子力船専門部会という部会、これは大屋敷先生が部会長をなさいまして、メンバーの中に造船会社、海運会社原子炉メーカー舞々の学識経験者を網羅いたしました専門部会をつくりまして、第一船の方針、第一船の構想、それから船価に至るまでこまかく審議をしていただきましたものが、ただいま申しましたように三十六年の六月に委員会あての答申で出ております。その船価見積もりは三十三億ないし三十四億でございます。私どものほうではこれに若干の安全率を見まして、先ほど三十五億円とおっしゃいましたか、三十六億円ですか、三十六億円ということで予算を計上いたしておりますので、いまのところ私どもはこれがそうやみくもの数子だとは考えておりません。事業団と、石川島播磨のほうでも今回のあっせんを快く受けられまして、前向きに契約を円満に締結できるよう積極的に交渉を開始するということをおっしゃっていただいておりますので、十分な原価的な計算をいたしますならばこの予算の中で入るもの、ただいまのところ私どもはさように期待をいたしておるわけであります。
  33. 三木喜夫

    三木(喜)委員 積極的にこれについて賛意を表して前向きに進んでいくからには、私はこの船価の問題が提示されていなかったらいかぬのじゃないかと思いますね。その間にどんどん値をつり上げていくということになれば、もう世間往々にある、船価をつり上げるその中に非常に国民の疑惑も出てまいるでしょうし、また汚職があるといけません。汚職というようなにおいも出てくるということになれば、ほかの船ならいいですよ、原子力船でないような船ならいいですよ、それならまあ一つの汚職だったということで済まされますけれども、これは世間注目の船でもありますし、さらにまたもって安全性ということに非常に関係のある船でしょう。いま船舶局長にも申し上げましたように、そういう重大な使命を痛感してもらいたいという立場にあるのに、前向きにしてよろしい、それなら引き受けましょうというからには、そういうものが提示されていなくて、唯々諾々とこれに応じておられるわけが私はわからぬ。  それであなたのおっしゃるように、三十六億で固定させる自信があるならば、その話はちゃんとついておるならば、それでよろしい。あなたがおっしゃるように、六十億というべらぼうな数字はこれは単なるうわさ話にしておいてください、これでけっこうですけれども、しかし、こういう数字が、これは朝日新聞ですから、私はいいかげんなところから出ておるとは思わぬ。うわさ話程度じゃないと思うんですね。希望的観測を石川島のほうから出したか、それは何か根拠がありますよ。  そういたしますと、それはうわさ話でけっこうですが、あとどんどんと値がつり上がってきて、三十六億でおさまればいいのですけれども、つり上がってくる場合、一体その予算措置はどうなんですか。その責任は一体どこが負うのですか。これについては、十分自信を持ってあなた方やられたのですか。そうすると、私は、造船界のやり方に無理があるか、あなた方の見積もりに無理があるか、どっちかだと思うのです。そういう問題も含むわけなんです。一般的な船の受注関係という上に立っても問題がありますし、しかし、こういうたらい回しをしてきたからには、一番安全性の問題にひびが入るおそれがあるわけですね、安く押えていくと。そういう点が抜ける。どこを押えてみても私は問題だらけだと思うんですよ。何でこんな不細工なことを、いままでたくさんお役人、事業団、専門家も入っておってこんなことをやられたか非常に不可解なんですよ。
  34. 中川理一郎

    ○中川説明員 先ほども申しましたとおり、ようやく事業団石川島播磨のネゴシエーションが始まろうという段階であります。原価的なすり合わせ等一切これから開始せらるべき事項であります。私ども考え方といたしまして、当時の三十六億円という数字でおさまることを期待しておりますけれども、これは甲乙の間で一つ一つの原価項目につきまして、先ほど原子力局長が御答弁申し上げましたような、やや先の工数の見方というようなもの、あるいは手戻し、手直しがどれくらい出てくるかというようなアンノーンなファクターにつきましても、双方で想定してどらだろうかということを真剣に、また具体的に詰めていただきますならば、三十六億円の予算内で原子力船がおさまることを私どもは期待しておるわけであります。  もちろん第一船の目的からいたしまして、三十六億円におさめることが第一義ではございません。先生がおっしゃいましたように、安全でかつ基本方針に示された目的に沿う第一船をつくるということが目的でございますから、かりに三十六億円云々ということではおさまらないという事態が出てまいりましたときに、そこをどうするかは、そのときにそれまでのネゴシエーションの過程における両者の原価の見方の相違につきまして、監督官庁といたしましても十分にその食い違いがどちらにあるか、どちらのほうの理屈が正しいと判断すべきか、これは推定の原価計算でやる仕事でございますので、いずれにしてもでき上がった場合の結果を正しく読むということはできないわけでございます。それを突き詰めてまいりますと、実績主義のコスト・プラス・フィーというような契約方式をとって、その間に十分な建造監督を置きまして仕事をやるのが一番正しいわけでございますが、ただいまの予算制度では、幾らになるかわからないというところで仕事を開始するわけにはいかない仕組みになっております。十分に見通しのできる予算を計上いたしまして、その中で可能な努力をする。おさまらなかった場合には新たなる問題として新たなる対処方針をきめるべきだ、こう私は考えております。
  35. 三木喜夫

    三木(喜)委員 もちろん、予算が決定しなくて造船に着手することはできない。それはもちろんですけれども、いまからそんな事態が始まるということはおかしいと私は言いたいのです。いままで造船界と接触を持ち、そのために事業団があり、そのために原子力委員会があり、そのために科学技術庁がこれに関与しておった。だから、下打ち合わせの中でそういうものができておらなければならぬはずなのです。いまから始まるというような、そういう言い方は不見識きわまりないですよ。こういうところに私は非常に疑問を感じる。今度のことの不手ぎわさを感じる。こういうことでどんどん値をつり上げられる公算もあるのですよ。あなた方は、三十六億でおさまると思っております――おさめたいという希望的観測ですよ。いままで何をしておったかということも言われるわけなんです。これはしかし、幾ら言っておっても、いままできかかっておることですから、むち打つのはあまり賢明でないと思いますので、この程度でおいておきたいと思います。  さて、昨年九月でしたか、原子力委員会の報告書を国際原子力平和利用会議日本から提出しております。そのいろいろな報告の中に、原子力海洋調査船の造船計画などについても報告されております。こういう計画があるのか。さらにこういうような事態をまた繰り返していただくと、これはもう日本造船界の恥になるだけではなくて、原子力委員会の恥にもなると思います。そういう報告書が出されております。そういう予定はあるのでか。
  36. 中川理一郎

    ○中川説明員 ただいま先生おっしゃいましたのは、おそらくジュネーブ会議原子力委員会が提出いたしました日本原子力平和利用の状況について、もしくは将来の展望についての報告書だと思います。そこで海洋観測船といっておりますのは、いま御審議願っております第一船がつくられましたときのおもなる使用方法の目的として、公式的なものについてはまだ用途は言っておりませんけれどれも、内々関係者で考えておりますのは、設計もそれに従って進められましたのは、海洋観測に使おうという考え方でやっておるわけであります。したがいまして、それは第一船そのものでございまして、第一船のほかにまたそういう構想を持っておるということではないのでございます。
  37. 三木喜夫

    三木(喜)委員 せっかく有田海上保安庁次長おいで願ったので、ここで話は別になりますが、このようにしていま原子力船は難航状況でございますけれども、いずれこれが就航する、そういう時期が必ずこなければならぬわけです。それからまた、近くサバンナ号の入港も考えられる。  したがって、私は端的に申し上げますが、これから港長の責任もかなり重くなってくると思うのです。先般の委員会でも私はその点を指摘したのですが、これはやはり専門家を港々に配置していかなければこういう仕事は果たせないのじゃないかと思うのです。そこで、予算的にもそうした人員の増加ということも今後考えられると思うのです。これだけ安全性の問題について日本は慎重にしなければならないという立場に立っておりますし、原子力の平和利用の立場からいたしましても、こういう方面に人を使い金を使うことは、私は使い過ぎではないと思うのです。また、心配し過ぎではないと思うのです。そういう立場から、どういうようにお考えになっておりますか。
  38. 有田毅

    ○有田政府委員 最初に、海上保安庁の職責につきまして申し上げたいと思うのでございます。私ども海上保安庁は、海上におきまする人命、財産の保護をもって任務といたしております。  したがいまして、今般の御審議中のかような原子力船が本邦の諸港に入港する、かような一般的な場合におきましても、もとよりかような原子力船は十二分に安全性は担保されておる前提でございまするが、念には念を入れる、万全を期するという意味におきまして、私ども港長業務を非常に重視しております。したがいまして、現在の港則法等にも若干の改正をお願いいたしまして、かような原子力船が入港いたします際には万全の措置のとれるようにいたしたいと思う次第でございます。  私ども海上保安庁は、運輸大臣の指揮下にあります外局でございますもので、このただいま御審議中の原子力船に関しましても、原子力船の入港届けがございましたようなときは、内閣総理大臣から運輸大臣のほうに御連絡がございまして、それにつきまして運輸大臣は海上保安庁長官を通じまして港長に対しまして指示をいたすことになっております。ただいまも全国の特定港につきましては、一般商船については安全上のもろもろの措置をいたしておりまするが、さらにかような原子力船につきましては、いかなる場所におきましても所要の措置を、たとえば停泊場所を指定いたしますとか、遠隔の投錨地を準備させるといったことにつきましてもいたしたいと思っております。  それから、先生ただいま御指摘の原子力船に対しまする要員、運航者としての技量、技能等についての訓練はどうかというお尋ねでございまするが、私どもといたしましても、先ほどお話が出ましたような本船を海洋観測船に将来あるいは使用いたすやもしれないというようなことでございまするが、さような時期が到来いたしましたときは――もちろんそれまでは当原子力委員会の管理で、その安全性を十分担保するまでかような運航をなさるとか伺っておりまするが、その際にも、希望といたしましては、私どもの要員何がしか、かような業務に習熟させていただくことができればと思っております。
  39. 三木喜夫

    三木(喜)委員 港則法等の関連においてまだいろいろ問題点があろうと思いますが、これはいずれまたこの法案の審議のときにお伺いしたいと思います。  以上、質問を終わりたいと思います。
  40. 岡良一

    岡委員長 内海清君。
  41. 内海清

    ○内海(清)委員 時間が迫っておりますので、ごく簡単にお尋ねしたいと思うのであります。  原子力商船の建造につきましては、私もかつて当委員会で、できるだけ早く建造すべきである、すなわち造船海運国といたしましてはできるだけ早く実績を確保することによって、わが国の海運造船国としての今後の発展に一そう寄与すべきである、ということを常に申してまいったわけであります。ところが、幸いにして事業団もできまして、いよいよ発注の段階になりまして、先ほどお話がございましたようなことに相なった。まことに遺憾に存ずるのであります。  先ほど来のお話をいろいろ承りますと、これについては十分、原子力関係委員会なり、事業団なり、さらに監督の運輸省の船舶局関係等ともいろいろ連絡を密にし、メーカー関係に対してもできるだけの連絡をとってやってきたということでありますが、それがこういう結果になったということにつきましては、はなはだ遺憾に思いまするし、同時に、その準備が十分できておらなかったのじゃないかということも考えるわけであります。もちろんこの原子力船の建造につきましては、先ほど来いろいろ議論がございましたが、確かに安全性の確保ということは、まず優先的に検討されなければならない。しかし、すでに建造の段階に相なるということになりますならば、設計に入りますまでにそれらのすべての準備が完了し、最も安全なというその基準の上に立って設計され、それが発注されるものだ、こう思うのであります。もちろん未経験でございますから、建造の過程においてなお今後多くの検討を要する問題が出てくることは当然だと思います。  そこで私は、いま時間がございませんから、それらの問題はまた他の機会に譲るといたしまして、今回の造船所側入札に応じなかったという原因はいろいろあると思うのです。私は要約いたしまして、まず四つくらいになるのじゃないかと思うのであります。一つは発注方式に対する問題である。いわゆる船炉一体の形式で発注されたということであり、いま一つは、これは予算措置とも関係してまいりましょうが、原子力船開発事業団ができまして、そうしてこれは民間出資もあるわけで、この民間出資の出資問題、こういう問題も内部に包蔵しておるのじゃないかということであります。これは予算措置とももちろん関係あるわけでございます。それからいま一つは、先ほど来原子力局長が言われましたようないわゆるこの性能の保証の問題であります。最後に、いわゆる船価の問題と、大きく分けまして私はこの四つくらいの問題じゃないかと思うのであります。  こういう問題でわが国の建造がおくれるということは、はなはだ遺憾でありまして、私、かつてここで申し上げたのでありますが、わが国で原子力船の建造が論議されて、その後においてドイツではこれが問題になった。しかも、ドイツではすでに昨年進水いたしておるのであります。さらにアメリカにおいては、もう太平洋に二万トン級の原子力船を四隻くらい就航させようというような計画もあるし、これに関連してアメリカではすでに御承知のようなガーマッツ法案というものが議会に提出されて審議されようという段階である、これはいただきました資料の中にも出ております。  こういうときに、わが国がいよいよこの建造の段階に至ってかような姿になることは、これはきわめて残念なことだ、かように考えるのであります。こういう点から考え、先ほどあげました四つの問題を考えますと、事前にすべての方面と十分連携、連絡したというお話でございますけれども、この点に不十分があったんじゃないかと私は考えるのであります。特に甘利さんは、かつての役所のあれもございまして、造船所関係は十分御承知のことであろうから、それらの点でそごはないと思いますけれども、そういう造船所側のこれに対する今日までの態度なり考え方というものが十分理解できておらなかったんじゃなかろうかというふうに考えるのであります。  そこで、私はまず、この発注方式について、何と申しましても、これは原子力商船の問題を検討いたしますときには、原子炉の工事というものが決定的な要素になるわけでございます。船体をつくることは、これはわが国の造船技術から申しますならばきわめて簡単なことであります。結局は、原子炉工事というものが決定的な要素に相なるのであります。ところが、今回の発注方式は、それを含めた全体の主契約者に造船所を持っていった、こういうところに問題があるのだと思うのです。しかも、その工期とかあるいは工費の全般についても造船所責任を負わせようとしたところに問題がある、私はかように考えるのであります。この点につきましての事業団のほうの今日までのお考えと、昨日来交渉段階だそうでありますから、今後の方針はちょっとむずかしいかもしれません。むずかしいかもしれませんが、可能な範囲において御所見を承りたい。
  42. 甘利昮一

    甘利参考人 いま御指摘の点については、炉の方が一番重要事項ですから、炉の責任まで船のほうに負わせるということはいけないんじゃないか、そういう御意見でございますが、これはいろいろ考え方があると思うのです。たとえば炉をある業者に発注して、それを片方でつくっている造船所に持ち込んでくる。そのときに炉をつくったその会社の工員かなんかがそこに入り込んでいろいろごたごたやる、これは従来からも非常に問題の起こるもとですから、そういうことはやはり造船業者としても避けたいし、われわれも避けたいと思っております。  ただ、そうかといって、それらの全責任を船会社造船所に負わせるということについては、また造船所も炉についてはあまり経験がないものですから、その責任を負うということは非常に困難だろうと思いますが、そういう点では、炉メーカーがある程度性能なり納期について造船所に対して保証する。もしそれが保証しがたいということであれば、これは事業団ももちろん責任者ですから、事業団と炉のメーカーが組んで造船所に対してそれを保証してやる。そういうことで炉のほうさえ保証できれば、船のほうは従来からの経験がありますから、炉の出力が保証できると自然に船のスピードも当然保証できるということでいけるのじゃないかと思いますので、これは各造船所と炉メーカーとの組み合わせによってもいろいろ違うと思うのです。そういうところをやかましく言うところと、やかましく言わないところがあると思うのです。ですから、船、炉を分離しなければならぬとか、あるいは一体にしなければならぬとかいうような形式的な問題には現在こだわっておりませんし、今後も相手方事情や何かをいろいろあれしながら、それはそのときの状況に応じてまとめていくつもりでおります。
  43. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいまのお話では、今度はそういうことにこだわらぬということでありますが、そういうことであるならば、これは発注の方式においても十分お考えになれば、まずこの問題は一つはそのときに片づいておったと私は思うのです。これはそれぞれの側の立場でものを言うのであって、それ以前において十分なる連絡なり打ち合わせなりが必要であったのではないか、こういうふうに私は思うのであります。この問題はすでに過ぎ去ったことでございます。  さらに、予算に関係いたしまして、出資問題でありますが、これは最初の原子力船研究協会から事業団に変わるそのときからの問題があると思うのです。しかし、これも私はいま申し上げる時間がございません。いずれにいたしましても、この問題というものは、いま確かに民間企業間ではくすぶっておる問題だ、私はこう見ております。最初の六十億という予算で民間が四分の一持つというその際に、十分なる了解が取りつけられてあるかどうか。一応は形式的にはあるだろうけれども、内部にかなりの問題があったということも御承知の上でその後の問題が進められなかったのではないだろうか。これはざっくばらんに申し上げて、もしこれが一つのメーカーあたりにいきますれば、当然そこの負担が多くなるというふうな一つの危惧企業側にはある。その辺のところが十分解明できていなかった、ここに一つの大きな問題があると私は思うのです。  この問題はもちろん予算措置にも関係してくるわけでありますが、今度の三十六億という予算そのものを見ましても、これは私どもはどうかと考える点もあるのであります。たとえばこれは、私もあるアメリカの造船協会の雑誌で見たものでありますけれどもサバンナ号の建造の場合にも、大体最初においては四千万ドルであった。それが実際は八千三百万ドルかかっておるわけです。こういうわが国よりもこの面で進んだところにおいても、かようなことがある。しかも、スクラム回数にしても三十回もやっておる、こういう問題があります。あるいは試運転でも約二十回ぐらいやっておる。私は専門家でありません、そういうもので見ただけでありますが、これは専門の方面では十分御承知のとおりだと思う。こういうわが国より進んだ国においてもそういう形が現在まで出てきておるのに、もちろんこれは船の仕様によって予算は変わってくるわけでありますが、今度のわが国の河津観測船の六千トンというものが、はたして三十六億でできるかどうか、こういうことに対する検討というものが十分行なわれたかどうかということです。この点はいかがでございますか。
  44. 村田浩

    村田政府委員 船価の三十六億円というものの妥当性についてでございますが、前にも二度御説明申し上げたかと記憶いたしますが、約六千総トンの海洋観測船が原子炉を含めてどのくらいの価格でできるだろうかという点につきましては、先生ただいま御指摘の原子力船研究協会当時からいろいろと国の委託費で試設計を行なったりいたし永して、専門家の意見を聞きまして検討していただいてきておりましたが、昭和三十六年に原子力船専門部会というものを原子力委員会に置きまして、具体的にわが国として原子力第一船を建造する計画そのものを御検討いただきました。三十七年の六月まで一年余り御検討いただいたわけでありますが、その際にもさらに専門家の方々お願いしまして、一応の基本的な要目に基づき船価をはじいていただいたわけでございます。そのときに原子力委員会に出てまいりました答申では、船価はいろいろ炉まわり等の設計の詳細によって違ってはくるが、大体三十億五千万円から三十四億五千万円くらいの間であろう、このような答申が出てまいっておったと記憶いたしております。そこで、この専門部会の答申に基づきまして、第一船の計画を原子力委員会で御検討になり、その結果がただいまの事業団法の成立、事業団による第一船の建造というふうに進んでまいったわけでございますが、事業団に話がいきますときには、大体三十四億五千万円という船価を一応の基礎といたしまして、総事業費六十億円というものをはじいておったわけでございます。事業団が成立いたしましてからは、これは甘利専務理事からも後ほど御説明があるかと思いますが、三十九年度の予算に関連しまして、事業団から船価見積もりをあらためてお出しいただきまして、その線に沿って大蔵省と折衝いたしました結果、現在ここにございますような三十六億円という一応の見積もりが出てきたわけでございます。もちろんこの三十六億円の内訳としまして、船体が幾ら、機関が大体どのくらい、原子炉まわりがどのくらいということは見積もりいたしてあるわけでございますし、当然のことながら、これを受注いたしましました会社側の利益といいますか、妥当な利益というものも見込みまして、大体三十六億くらいのところでおかしなものではないだろう、こういう判断によりまして今日の船価が一応計上された、こういうことでございます。  先ほどサバンナ号お話がございました。確かにサバンナ号の場合は、当初計画から比べまして非常に大幅に船価が上がっております。このようなことが日本の第一船に絶対にないか、こう言われますと、それは私はあながちそうは言い切れないものではないかと思います。たとえば、先ほど申し上げましたが、これから安全審査を行ないまして、安全審査の際の条件等がもしございますと、その条件を満たすための新たなる支出もございましょうし、あるいは建造の途中におきましても、重要なる設計の変更ということも、その後の実験開発等によりましては出てくるかもしれません。そういった点は、またあらためて安全審査を受けましてそのように変えていく。こういうものはまた新たなお金を必要とするわけでございますけれども、それがどのようなものであるかということは、ただいまの段階では全然わからない要素でございまして、今後はっきりしてまいりますにつれて考えてまいらなければならないと思っております。サバンナの場合につきましても、いろいろ要素はございますが、私ども承知している範囲でも、たとえば制御系の問題で大幅の改造を行なっております。こういった問題は当初の船価に当然見込んでございませんので、新たなる支出を必要とする。試運転なども、御指摘のとおり何十回もやるとは思っていなかったと思うのですが、そういうことが必要になれば船価にそれだけのはね返りがある、こういうのが事実であろうと思います。私どもの場合は、幸いにしてこのサバンナのアメリカにおける経験ということもございますけれども、これらの情報も漸次入ってきておりますので、そういったものを十分参考にしてできるだけ円滑にやっていきたい、このように考えております。  それから、民間出資の問題でございますが、昭和三十七年の米に、原子力船開発事業団を設立するにつきまして事業計画をつくりまして、これは当時船価三十四億五千万ですか、これを含め総額六十億ということで大蔵省といろいろ折衝いたしました。その際に、この事業団政府民間の総合的な協力によってつくる、そういう趣旨から民間出資も入れた特殊法人である、このたてまえで折衝いたしたわけでございます。法律もそのようになっておるのですが、そこで、当初原子力船を実際に建造してまいることについて非常に積極的な意欲を持たれ、折衝してこられておりました造船工業会のほうでも、民間出資のことについてはある程度のことはこれを持っていかなければならぬということで、いろいろ役所のほうにもお話があったわけでございます。そのころのことは担当者もかわっておりますのでなんでございますが、私ども聞いておりますのでは、たとえば総額の一〇%から十数%というようなものは民間で持っていかなければならぬだろう、こういう話があったと聞いておるのでありますが、実際に大蔵当局との交渉段階におきまして、これは当特大臣折衝まで持ち上がったわけでございますが、大蔵省側としましては、新しい特殊法人というものが続々できていくという一般的傾向に対処しまして、必要不可欠のもの、しかも民間との協力ということが非常に重要なもの、そういったようなものに限って認めていく、こういう方針もあったようでございまして、そういった点から話し合いの結果、総額の四分の一、二、五%を民間出資をもって充てることに努力する、このような了解線で一応事業団設立を見るような経緯があったわけでございます。最初の、昭和三十八年八月に設立しましたが、そのときの予算は総額一億五千万円でございましたが、そのうちの三分の一、五千万円を民側が出資され、三十九年度、今年度は民間出資約一億七百万でございましたが、先般御報告ございましたところでは、約九千九百万程度の民間出資をもって充てられたと聞いております。  しからば今後このような割合でいけるかどうかということでございますが、この点につきましてはただいま事業団からもいろいろ御相談がございます。造船、工業会のほうからも御相談がございます。せっかく運輸省とも協議いたしまして、いろいろと考えておるところでございます。
  45. 内海清

    ○内海(清)委員 民間出資の問題もいろいろな見方が出てくるし、考え方が出てくると思います。これは原子力商船を建造するという場合に二つの考え方があるのではないかというふうに私は思うのであります。一つは、船全体を早く完成して、そしてわが国の海運、造船国として建造及び運航の実績を早く確立したいという考え方と、それから、次には、日本が特におくれておりますところの船舶炉、この国産の開発に重点を置こうという考え方、この点はちょっと矛盾するわけでございます。しかし、わが国の現状からすれば、この建造にあたってその二つを満たさなければならぬのではないか、こう考えるのであります。  そういうことになりますと、わが国の、特に二番目の船舶炉の国産開発、これに重点を置くとするならば、一そうこの民間出資という問題との関連が出てくるわけであります。これを十分生かすような方途を講じられれば、少なくとも各企業もこれには最も関心を持っているところであります。しかも、過去において相当の投資をして、研究もしてきているところであります。でありますから、この点は、もう少しそういう関連から考えるならばうまくいったのではないかということが考えられるのであります。その点に少し今日までの行き方に遺憾の点があったのじゃなかろうか、こういうことでございます。これは第一の方法をとるならきわめて簡単で、船舶炉を輸入して船体だけつくればすぐ動くということでございます。しかし、今回の、原子力船の建造ということでは、それでは相ならぬということでございます。ここらに一つの問題があると思うのであります。  それから、予算の問題ですが、日本官庁の会計制度では現状はむずかしいと思いますけれども、アメリカあたりでは、こういうときにはいわゆるコスト・プラス・フィー方式というもの、いわば出来高払い、こういう方式をとっている。ところが、日本ではそれができていない。したがって、受けるほうも、予算の範囲内で受注すれば、あとで確定の部分が出ればこちらのほうから今後考えるということであっても、これはいろいろな杞憂が起きるのは当然である。したがって、そういう点を十分お考えになって、こういう特殊のものでありますから、そういう会計制度にも何か一考あってしかるべきではなかったか。いわゆる未開発のものを開拓していくのでありますから、そこには実際その仕事に携わる者からいえば大きな心配があることは当然なのであります。それは、やはり発注する側においてはっきりめんどうを見て、理解さしてやるということが、特にこの原子力船の場合においては必要ではなかったかと私は考えるのであります。その点に対しまするお考えがありましたら承りたいと思います。
  46. 甘利昮一

    甘利参考人 お話のとおり、何ぶんにも政府予算でやっていることですし、いろいろむずかしい点もありますが、ただ、業界のほうでも、いまの状態では十分検討されていないというような点もあったのじゃないかと思うのであります。理想的なことを申せば、やはりこういう開発段階原子力船については弾力性のある――そういうことはできないと思いますが――予算措置を講じていただくのが一番いいと思います。あるいはそれにかわるような措置と申しますか、予算のことですから弾力的な運営はできませんが、われわれもいろいろ業界との話し合いで、できるだけそういう点ではめんどうを見てあげたいと思っております。  ただ、いまお話しのように、それじゃこの次の予算でこういうものをあれするというふうなことになっても、はたしてそういう予算がとれるかどうかというようなことについては、民間のほうでもいろいろ疑問は持っておりますが、しかし、われわれとしても、これは単なる非業団の船ではなく、業界とも一緒になって出費してつくられる船ですから、業界のほうからもいろいろ要望されて、できるだけそういう予算措置を十分講じて民間の不安をなくするように、こういうことをする以外に現段階では方法がないと思います。  根本的には、やはりそういう弾力性のある予算措置を講じていただくのが理想的だろうと思います。これはサバンナの場合でも、外国の例を見ましても、特にそういうことを注意されましたので、私たちとしましてもそういう方法がとられれば一番よろしいと思いますが、現段階では無理だと思いますので、それにかわる方法なり、あるいはくめんをいたしまして完成したい、こういうふうに思っております。  国産化の問題は、いまお話しのように、われわれとしても基本計画としてできるだけ国産ということで、現段階において刻々と新しい舶用炉が進んでいる場合に、どの時点のものをもってわれわれの理想とするかということ、いろいろ問題がありますが、われわれとしましては、いまわれわれの選んだ炉をもって、一応現段階では国産化できる可能性のある炉として選んだわけであります。しかし、この炉をつくっております間にも刻々と新しい舶用炉が開発されていきますししますので、われわれ事業団以外の場所と申しますか、事業団はいろいろな法律や定款でそういう舶用炉についても研究開発ができることになっておりますが、一応基本方針では第一船に限られておりますので、われわれも当然その問題については興味を持ち、いろいろ研究はいたしますが、やはり政府の委託費なりあるいは補助金等によって、民間においてそれと並行して新しい舶用炉を開発されていくことを特に希望いたします。また、これについてはできるだけの資金を投じていただいて、われわれの第一船ができて、いろいろな運航経験とか建造経験を得たときに、第二船がその新しく開発された舶用炉によって、より経済性及び安全性を増した船ができるように切望しております。
  47. 村田浩

    村田政府委員 内海先生御指摘の、こういう新しいものを開発していきますにあたって、現在のわが国の予算制度というものが不適切ではないか、こういう御意見でございますが、この点につきましては全く同感でございます。これは原子力船に限らず、新しい科学技術というものを開発していきます際には、どうしてもある程度の不確定要素がございまして、数年間にわたります計画を最初から克明に、一円の違いもなく予算を見積もるということはとうてい不可能なことでございます。  しかしながら、現在のわが国の財政法によりましては、この計画全体を、先生ただいまおっしゃいましたようないわば実費主義といいますか、コスト・アンド・フィーといいますか、そういう形で契約を結び、計画を進めていくということはできません。取り得る最大のところといたしましては、おそらくは同じ計画の中でも、たとえば原子力船で申しましても、価格の推定の点でかなり確実に言える部分がございます。また、たとえば炉まわりのように比較的不確定の要素の多い部分もございましょう。建造のプロセスから申しますと、船体をつくり炉を据えつけろといいましょうか、そういったようなことまでかなりはっきりしたことが見積もれるのじゃないかと思うのでございますが、現実に燃料を中に装荷いたしまして炉の出力をしていく、試運転をやる、こういったような段階は、確かに国産炉を使っていきます限り、現在においてまだまだ不確定のところもあるかと思います。こういった点を十分検討いたしまして全体の計画を取りまとめていくということも、これは検討を要することだと考えております。  それから、原子力船をわが国で第一船をつくります際において、早くつくるということと、できるだけ国産でいくということ、この二つの要素をどういうふうに折り合わせていくかという点でございます。  先ほど駒形委員からもお話がございましたが、原子力船開発事業団が設立されましたときに、どういうもくろみで仕事を進めていくかということの基本的な線を原子力委員会で御決定いただきまして、基本計画としてそれを出してあるわけでございますが、その際にも、全体の工期については、原子炉が臨海に達するまで約五年、それから習熟運転といいますか、それを含めて約二年、最後に実験航海に約二年、このようなおおよその工期を定めると同時に、可能な限り国産するということを一つの基本計画として与えてあるわけです。このことは、日本原子力船開発事業団法が当委員会で御審議いただきまして御了承いただきます際にも、たしか附帯決議として、できるだけ国産化していくように、その趣旨を強く言っておられたと記憶いたします。そういったことも取り入れまして、この二つの要素のうちでは、原子力委員会並びに科学技術庁考えといたしましては、せっかくの機会でございますから、ただ原子炉を積んだ船をつくるというだけではございませんで、できるだけこれを国産でつくる、こういうことに大きなポイントを置きましてこの計画は進められてきた、このように申して差しつかえないと思います。  そういう観点からいたしまして、原子炉そのものをどういう炉を積むかという点につきまして特別配慮いたしまして、舶用原子炉といたしましては今後またいろいろと新しい炉も開発されていくと思いますし、原子力船が経済性を達成するためにはもっと高能率の原子炉開発されなくてはならぬと思いますけれども、先ほど三木先生お話のございましたまず安全性の問題、それからその安全性を満たしつつ国産化していく、こういった問題から、現在世界的に見渡しましても最も安全性において確認されており、しかも多数舶用炉――これは原子力潜水艦を含みますけれども――舶用炉としての実績を持っているもの、全部合わせますと、世界で建造中のものを含めますと軽水型炉というのはたしか八十基ぐらいあると思いますが、その大部分がまた動いておるわけです。そういう実績を持っておる炉を、これは買ってくるのではなくて国産化する、こういったことで考える。  他方、工期の点につきましても、普通、原子炉でございますと、たとえば舶用炉に規模としてほぼ近いものに原子力研究所の効力試験炉JPDRがございますが、これあたりの工期を見ますと大体三年というような見当でございます。そういったことを考えて、これを多少国炭のために時間はかかると見込んで、設立からではございますが、先ほどのように原子力委員会基本計画では五年という余裕を見た期間を与え、さらに習熟運転という意味において二年の予備をとった、このようなことで、完成までには実に七年という非常に長い時間をとりましたのも、国産ということをできるだけ可能にしてもらいたいという趣旨を生かすための一つの何といいますか、譲歩であった、こう思うわけでございます。  先ほど甘利専務からお話がありました第一船に積む、すでに外国開発されたような軽水炉というものとは違う、もっと進歩した炉の開発という点につきましては、これは原子力船事業団がおやりになるものとはまた別に、国といたしましても委託費なり、補助金なり、あるいは国立の試験研究機関等にお願いして研究を進めていく、開発を進めていく、こういうふうにやってまいりたいと考えております。
  48. 内海清

    ○内海(清)委員 やはり皆さん方お話を聞きましても、さっき申しました二つのうちの後者、すなわち国内産業の育成ということ、これは可能な限りというあれがついておりましても、いわゆる国内産業の育成ということには間違いないと思うのであります。そういうことから考えて、国内産業を主契約者に選ぶことは当然かもしれませんが、しかし、これは未経験者に経験をさすということであると思うのであります。これが主眼でなければならぬ。そういうことからいけば、発注の際にコストや工期を保証せしめるという、こういう行き方は一つの問題が私はあると思う。これはもちろんさっきの予算の問題とも関連いたすわけであります。甘利専務も、これはできるだけ弾力性があればいいということであります。当然そうあるべきだと思いますが、現在のわが国の会計制度からいけば、それが困難だ。だから、今後のものについては何とか考えてやるといっても、だれがしからばそれを保証するのか。企業側からいえば、これは保証されなければなかなか受注が困難な問題が出てくるわけであります。そこらに私は、この発注方式と関連もありましょうが、そういう観点からいえば、コストや工期あるいは性能をこれで保証せしめるということに一つの問題があると思う。しかし、そういうことであるならば、さらにこの工期の点においても今後いろいろな問題が起きてくることが予想されるのであるから、これはだれが保証するのかということがおのずから明らかになってこなければならぬと私は思う。ところが、これはなかなか困難だと思うのです。その辺のところは今後どう対処されるつもりか、お伺いいたしたいと思います。
  49. 甘利昮一

    甘利参考人 一応発注するのでありますから、発注者のほうに納期と申しますか、あるいは性能等については保証を求めなければならぬと思います。その保証という文句ですが、あるいは達成の目標とかいうふうな文句のほうが的確と思いますが、われわれとしては一応そういう保証とか納期ということばを使っておりますが、実際問題として、いままでもそういう問題については、受注者と申しますか、造船所の人々、あるいは諸メーカーに対しましても、非常に弾力性のある説明をいたしております。たとえば納期についても、一応四十三年度末ですか、そういうことで基本方針がきめてありますから、そういうことは書いてありますが、しかし予想せざるいろいろな技術的な障害その他のことによって納期が延びる場合には、これは専業団が責任を負うとか、あるいは性能についても、初めての舶用原子炉ですから、一応三十六メガワットというような出力が書いてありますが、これが一応出なくてもそういうものについては受け取りますとか、いろいろそれを緩和する措置はできるだけ講じております。  ただ、事業団がそういうものについて、それじゃ保証するといいましても、結局やはり業者から見れば、金の問題とかそういう問題になりますし、あるいはまたそういう時期になって予算が十分講じられないというような心配もあると思います。しかし、われわれとしては、必要なものについてはできるだけ予算要求をするとか、あるいは工期についても一応メーカー側の責任に帰さない。中には材料だとか、あるいは工作において当然メーカー側が負うべき責任もあると思いますが、それ以外のもの、あるいは責任の所在が不明なものについては、こういう新しいものですから、事業団として全部責任を負う、こういうことにしております。したがって、そういう点については受注先の業者とよく話し合えば了解がつくものと思っております。
  50. 内海清

    ○内海(清)委員 今後十分、すでに交渉段階ですから、その段階で、皆さん方と折衝の過程で十分理解がいき、了解できて、予期したものが予期した期間で、予期した工費でもってできていけば私は問題ない、こう思うのでありますが、いま申しましたようないろいろな杞憂が生まれるわけであります。したがって、この面につきましては、今後十分ひとつお考えいただきたい。  特にこの性能の問題につきましては、わが国でも原研の二号炉などではかなり経験しておられるはずなんです。これは時間がありませんから、いまさら申し上げるあれもないと思います。皆さん方よく御存じだと思うのですが、確かに二号炉におきましても、初めは予期した出力の十分の一くらいしか出なかったという経験があると思うのであります。その後におきましていろいろやって、大体性能が保証されたということもある。  そういうふうに、わが国におきましても、しかも外国でつくった炉を入れてもこういうあれがあるわけでありますから、まして国内で生産する場合におきましては未経験でありますから、より以上のいろいろな問題が起きるということは予測しなければなりません。これが予測が杞憂に終わればまことにけっこうでありますが、一応予測しなければならぬ問題だと思うのであります。こういう問題からいたしまして、未経験であるだけに、企業業者のほうにおきましてはいろいろな心配をするのは当然である。その心配を解明してやることこそあなた方の責任だ、私はかように思うのであります。その点につきましてひとつ今後に対しまするお考えのほどをお伺いしておきたいと思うのであります。
  51. 甘利昮一

    甘利参考人 十分お市の趣旨はわかっておりますし、またきょうここでいろいろと説かれましたので、私たちも深く心に刻んでそういう御趣旨に沿ってやっていくつもりであります。もちろん従来もそういう方針で進んでおったのですが、こういう事態になりましたので、今後は特にまたそういう問題については十分配慮しながら交渉を進めていくつもりであります。
  52. 内海清

    ○内海(清)委員 もう時間がずいぶん過ぎましたから、いろいろ申し上げたいこともございますけれども、すでにいま折衝の段階であります。折衝の結果がどういう問題が出てきまするか、私どもがいままでいろいろ心配しておりますような問題が出てこなければ幸いである。今後十分見守っていきたい、かように考えておりますので、いろいろ申し上げましたが、これらを十分御勘案の上で、この原子力商船というものが、これはいま世界の注目の的だと思うのです。はたしてこの日本で、造船海運国でどういうものができるかということはひとしく注目しておる。これらを十分お考えいただきまして、万遺漏のないようにお願いをいたしたい。  特に私ども、やはり心配いたしますのは船価の問題でございまして、いまの日本の会計制度からいえば非常にむずかしい問題であります。しかし、これは、当然業者に対するものは保証してやらなければならぬことであります。これは政府においてやられなければ、また民間出資のほうにこれが転嫁されるのではなかろうかというふうな杞憂さえ生まれてくるのじゃなかろうかと思うのであります。これらの点につきましては、ひとつ今後十分お考えいただいて、所期の目的が達せられるように最善の御努力を願いたい。  時間がまいりましたので、また他の機会をとらえましていろいろお尋ねする機会もあるかもしれませんが、きょうは一応これで終わります。
  53. 岡良一

    岡委員長 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。本日は長時間にわたり貴重な御意見を伺って本問題調査のためたいへん参考になりました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後零時四十分散会