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大屋参考人 私は
経団連の
宇宙平和利用の
委員長をやっておりますけれども、
専門家ではありませんので、私の申し上げたいことはお二方がもうすでに大体触れておられるように思いますので、もう少し別の見地から
宇宙開発というものについての私の
意見を申し上げたいと思うのであります。
ちょうど一年ほど前と思いますが、ここで私が
参考人として呼ばれまして、当時
宇宙開発審議会の
委員でもありましたものでございますから、
宇宙開発審議会が内閣の
諮問に対する
答申が非常におくれて一年もかかって、三十九年度の
予算の大体きまったころに初めて
総理大臣の
諮問に対する
答申を出したというような不手ぎわがあったことにつきまして、今日の
委員長の岡さんからえらいしかられたことを私記憶しておるのであります。それほど
宇宙開発というものについての考え方が、まあ認識とでも申しますか、まだはっきりすることがむずかしい
時代であったのでありまして、その
時代がいまも続いておるのであります。
その
答申の主眼は、いま
お話のありましたとおり、やはり
日本の力で
人工衛星を上げようじゃないか、またそれに必要な大型の
ロケットの
開発もやろうじゃないか、それから
実用人工衛星に対する
開発も進めよう、
科学衛星のことも、また
宇宙のいろいろの
観測の
問題等につきましても、大いに国として力を入れようじゃないかというふうな、きわめて普遍的な
答申をしたわけであります。いま五年後に
人工衛星という
お話がありましたけれども、当時も、私の記憶しておるところでは、実は五年という字を使わなかったのでございまして、近い将来というような字で発表したのでありますが、それは、まだ周囲の情勢がどこまでこの問題に
協力してくれるかということの
見当がまるでつかない時分でありましたから、一例をいえば、
予算等につきましても、当時はまあ五年間に三百億円くらい、あるいは五百億円くらいというふうなことで、先の
予算も全く
見当のつかない
時代であったものですから、なるべく近い将来に
人工衛星を上げよう、そういうことになっておったのであります。しかし、最近では五年という数字がいつの間にか、まあやや具体的な問題のように取り扱われるようになったのであります。
そのときに一番問題になりましたのは、
東大の生
技研がやっております現在の内之浦の
ロケットの
研究、これはある
意味において八、九年前から
東大の生
技研というものがほとんど独力で、わずかばかりの
予算をやりくりして今日までのところ持っていった、この
実績については十分尊重しなければいかぬ。それであるから、
東大の
計画というものを、ただ理論的に、これをみな御破算にして一元的な
機構にしたほうがいいというふうな議論はやるべきものじゃない、というふうな考えがありまして、当時の
審議会の
委員もみな、現にやっているものは、そのところでやれる限りはやっぱりやらせようじゃないか、しかしながら、
目標は
一元機構にあるんだから、先々はそういう
一元機構に統一をすべきものであるけれども、現在のところは、いままでやっているものはそのまま進めたらいいじゃないかというような
意見が多数でありました。しかし、それにはまあ
条件とでも申しますか、いまもそのことにちょっと触れておられますけれども、
大学がやるということにつきましてはおのずから
事業に
限度があるわけでありますから、その
限度の
範囲において
大学が現在の
ロケットの打ち上げというものの
研究を大いに
推進していく。もっと具体的に申しますと、当時
ラムダの
ロケットも打ち上げておられましたけれども、
ラムダから
ミューにまでいくことはどうだろうかというような
意見もあったのでありますけれども、せっかく
大学が力を入れてやっておられるんだから、
ミュー・
ロケットの
研究というものは、従来
どおり生技研にやってもらおうじゃないかということになったのでありますが、しかし今後は、それぞれの
機関の
研究の
成果をみんなお互いに発表交換して、あまり遠くないうちにこれをできるだけ一元的なものに持っていこう、こういうことであったのであります。
何ゆえにその一元的ということがいわれておったかと申しますと、申すまでもなしに、
人工衛星というものは
国際協力ということが非常に大事でありますし、
日本みたいに
予算の乏しいところは、ばらばらにやっておるというわけにはいかぬ事情もありますから、その点から考えても、
日本の
宇宙開発というものは一本でいく。具体的にいえば、
事業団というふうなものをこしらえたらどうかというふうな説もあったのでありますけれども、いま
お話ししましたような、現在の
段階では生
技研がやっておるあの
研究をいくところまでいかせる、それからまた
科学技術庁のほうも、
研究すべきことがあればそれでもってやらせる、それが適当の時期に
一緒になるように、ふだんから
目標を
両方とも了解し合おうじゃないかというようなことであったのであります。これが、どちらも国でやっておるものですから、国の
予算ということになれば、自然、
大蔵省が
両方へ
予算を出すということが、
大蔵省としていろいろ困るわけでありますので、なかなか
予算面でそういう
理想論が思うようにいかなかったのが実情であります。
しかし、この
二つの
研究を、私が仄聞しておるところによりますと、
大学のほうはもともとこれは
宇宙開発の
基礎研究でありまして、いまも
お話のありましたように、IGY、
国際地球観測年というのですか、そういうような国際的の行事に参画しようということが
目的で始まったのでありまして、今日に至るまで、あくまで
宇宙空間の
観測ということであったのであります。それで、そのときに私は個人的に、そうむやみに高いところへばかり
ロケットを打ち上げてもつまらぬじゃないか、やはり究極はもっと広い
スペースに
観測を伸ばすためには
人工衛星という問題も考えなければいけないのじゃないか、
ロケットの打ち上げだけでは不十分じゃないかというふうなことを、
しろうと論を言ったことを記憶しておるのでありますが、いま
お話ししましたように、当時としては、
大学は一応まっすぐに打ち上げる。当時は高度百キロまで行っておったと思いますが、それが最近の
ラムダの3型では千キロを越すということになりましたし、
ミューまでいけば、一万キロとかあるいは一万五千キロというところまで
ロケットを打ち上げるということの大体の見通しはつかんだようであります。しかし、それはあくまで垂直の線に沿うての
観測でありますから、
目的は全く
観測だけであります。いま
谷参考人から、そういう
観測では不十分であるから、ほんとうの精密の
人工衛星ではなくとも、その
観測を少し広げまして、
科学衛星を先にくっつけて、もっと幅広く
観測をするというふうにいくべきだという
お話がありましたが、それも私まことにごもっともだと思います。
ミューの
ロケットを上げる
時代には、その
ミューの
ロケットを基本にいたしまして、
科学衛星を打ち上げる、その
科学衛星によって
スペースとしての
観測をする、こういう御
方針は、もしも
大学の機能が許せば、そういう
方向へ進まれるということは、私は
最初の
審議会での打ち合わせと矛盾をしておるとは思っておりません。
それなら、もうそれだけで
日本の
宇宙開発はいいのかというと、それはだいぶ違うのでありまして、ことしの一月でありますか、もう皆さん御
承知と思いますが、
ジョンソン大統領が
宇宙教書というのですか、発表しましたときにも、
宇宙の
征服というものは平和に連なるのだ、それで、この機会に
各国がこれに参加してもらうことを大いに歓迎する、こういうことを言っておるのでありまして、
宇宙の
征服という字を使っておりますけれども、
宇宙の
開発というものは、一国の問題じゃなくて、
各国がみな
協力してやるべきものだというふうに
アメリカも自認をしておるのであります。
日本のような力の弱いところが、はたしてどこまでお役に立つかわかりませんが、そういう
体制にはどうしても入っていかなくちゃならぬ。それから、その
体制に入るためには、
人工衛星なり
ロケットに対するいろいろの資材を供給する、あるいは機械、
計測器と申しますか、そういうものを供給する
日本のメーカーの
仕事からいいましても、そういう新しい
仕事に移っていってもらわなければならぬ、われわれのほうの
仕事を恒久化するという面からいってもそれが
希望である、こういうのが
経団連のメンバーとしての
希望であります。
それで、
宇宙の
開発という広い
意味の問題に
日本がだんだん参画していくということになりますと、いま
お話のあった、ただ
宇宙空間の
観測という問題だけでは済まないのでありまして、いろいろな
種類の
人工実用衛星を打ち上げるという
段階にどうしてもなっていく。いまの、たとえばテレビの中継にしましても、
アメリカの打ち上げている
シンコム衛星を使ってやっておるのでありますが、そういうような
通信衛星にしましても、
気象衛星にしましても、そのほかいろいろな
実用衛星を
日本としては打ち上げて、そして
国際協力に入っていくということになるに違いないと思っておるのであります。そういう場合には、いまの
固体燃料を使っている
ロケットを使っては
——これも私は
専門家でありませんからわかりませんけれども、
アメリカあたりの例から見ましても、むずかしくても
人工衛星の進路を精密にコントロールすることのできる
液体燃料の
ロケットを
開発していく必要が、どうしても当然起こってくるのであります。それで、いま
科学技術庁が、小型ではありますが
液体燃料の試験もやっておられるようでありますが、そういうものが母体になりまして、
日本も相当大きな
ロケットというものは
液体燃料で
推進するということでなければ、
世界の
宇宙開発のお仲間入りはできぬということがかりに事実であるとするならば、私は、
大学にそれまで
一緒にやれということは無理でありますから、それはひとつ
科学技術庁がやっていこうじゃないかということは、非常にうまく考えた
方法であって、片方だけでやらせるというようなことにきめないほうがいいのだ。しかしながら、先は一本になるのだという頭を持っておることは前に申し上げたとおりでありまして、そういう
意味合いで、いまの
科学技術庁のやっております
液体燃料を使っての打ち上げは、ほかにもいろいろ
目的はありますけれども、その一事だけを見ましても、そういう
研究は等閑視してはいかぬ、こういう考えを持っておるのであります。おそらくいま
東大で
開発しております
ミューであるとか
ラムダとかいうものと、
液体燃料で
開発したものとをコンバインしまして、そういうコンバインしたものでもって本式の
宇宙衛星を打ち上げるということに先々はなるだろうと思っておるのであります。それで私は、国の
予算等の
関係で制約は受けておりますけれども、進み方については、いまの進み方は間違いないんだというふうに信じておるのでございます。
日本の
宇宙開発というものは、
東大がやっておりますいろいろの
観測の結果を新聞等で見まして、いかにももう
日本の
宇宙開発は
世界に誇示すべきものであって、あれだけでもうお仲間入りができるというふうにあまり得意になってはいかぬと思っておりますのは、大体いま
アメリカでやっております
ロケットの大きさと、
日本でいま試験しております
ロケットの大きさというものは、ほとんどもう問題にならぬほど大きさが違うのであります、これは、
高木先生はじめおられるところでそういうことを申し上げるのはどうかと思いますが、
ロケットの大きさにしましても、
日本の
ロケットは、何トンですか、六トンとか七トンとかいうものでありますが、
アメリカの
ロケットは六百トンとか、つまり百倍のスケールの大きなものであります。したがって、長さも三倍も長いというふうな巨大な
ロケットを使っていく状態でありますから、
日本の
宇宙開発というものは、
固体燃料を使っての
東大の
研究というものが、即
日本としてあれが
目標だというふうに考えるのはどうかと思いますので、どうか、先の問題はわかりませんけれども、そういう
段階まで
日本の
宇宙開発を持っていくということが、これは国として国際問題から必要であるばかりでなしに、
日本の電子工学とでも申しますか
——日本の電子工学というのはこれからも非常な大きな将来を持っておるのでありますけれども、
日本の電子工学というものを
世界並みに持っていこうというのには、やはりそこまで
宇宙開発というものを進めてくれなければ、
外国とは同じレベルにはいかはい。こういう点から考えましても、いま申し上げましたような、いまの
宇宙開発の進め方というものは適当のものである。
今年、
政府案は幾らでありますか、二十六億でありましたか二十八億でありましたか、昨年は二十二億でありましたので、
関係各省全部合わせまして二十八億とかなんとかという、それでもほかの
仕事よりは幾ぶん増加率は高いようでありますが、もう少し
日本の財政当局者もその事情をよく了承をしてもらって、そして
科学技術庁の考えている
宇宙開発というふうなものと並行的に進めていくということが望ましいと思うのであります。
以上でございます。