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1965-03-18 第48回国会 衆議院 運輸委員会中小私鉄振興対策に関する小委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十八日(木曜日)    午前十時十七分開議  出席小委員    小委員長 關谷 勝利君       小渕 恵三君    大西 正男君       田澤 吉郎君    田中 彰治君       西村 英一君    勝澤 芳雄君       肥田 次郎君    矢尾喜三郎君       山口丈太郎君    竹谷源太郎君  出席政府委員         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      佐藤 光夫君  小委員外出席者         運輸委員長   長谷川 峻君         運 輸 委 員 田邉 國男君         運 輸 委 員 久保 三郎君         運輸事務官         (鉄道監督局民         営鉄道部長)  岡田 良一君         参  考  人         (私鉄経営者協         会理事)    織田 憲吾君         参  考  人         (静岡鉄道株式         会社取締役社         長)      川井健太郎君         参  考  人         (私鉄経営者協         会専務理事)  古谷 善亮君         参  考  人         (日本私鉄労働         組合連合会中         央副執行委員         長)      三橋 幸男君         専  門  員 小西 真一君     ――――――――――――― 三月十八日  小委員小渕恵三君同月十六日委員辞任につき、  その補欠として小渕恵三君が委員長指名で小  委員に選任された。 同日  小委員木村俊夫君同日小委員辞任につき、その  補欠として田澤吉郎君が委員長指名で小委員  に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  中小私鉄振興対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 關谷勝利

    關谷委員長 これより運輸委員会中小私鉄振興対策に関する小委員会を開会をいたします。  中小私鉄振興対策に関する件について調査を進めます。  去る三日及び十日の本小委員会において中小私鉄の現況とその振興対策について参考人より意見を聴取したのでありますが、本日も私鉄経営者協会理事織田憲吾君、静岡鉄道株式会社取締役社長川井健太郎君、私鉄経営者協会専務理事古谷善亮君、日本私鉄労働組合連合会中央執行委員長三橋幸男君を参考人として御出席お願いいたしておりまして、私鉄経営実情及びその振興対策について貴重な御意見を承ることにいたしました。  参考人方々には御多忙のところ、本小委員会に御出席下さいまして、まことにありがとうございました。どうか御忌憚のない御意見をお述べいただければ幸いと存じます。  なお、織田参考人古谷参考人、三橋参考人には、再度御意見を承る次第でありますので、対策一等についてより具体的な御意見をお述べ願えれば幸いと存じます。  なお、御意見の開陳時間はお一人十五分程度お願いをいたします。  それでは、参考人方々の御意見お願いをいたします。まず川井参考人
  3. 川井健太郎

    川井参考人 私、ただいま御指名下さいました静岡鉄道株式会社取締役社長川井健太郎でございます。  本日はこの席上でわれわれ中小私鉄窮状を諸先生お話し申し上げる機会を得ましたことを心からお礼を申し上げます。  まず、中小私鉄に対して経営者協会が今日までとってまいりましたことをあらかた簡単に申し上げますると、実は第一回の委員会において、中小私鉄に対する対策というものを経営者協会はあまりやっておらなかったのではないかというような御意見があったように拝聴いたしております。決してそうではないのでありますが、ただ、その際、古谷参考人からもお話がありましたとおり、中小私鉄百三十一のものがピンからキリまでございまして、なかなかその最大公約数的な意見というものを集約することは非常に困難である。それのみならず、さらに地方にばらばらと散らばっておりまして、同一の目的で、たとえば大都市におけるところの人口の集中に対してどういう対策をとるかというような、大私鉄のように一致協力してやる場面というのがなかなかないのであります。その点は多少おくれておったということはいなめない事実でございまするが、しかし決してほっておったわけではございませんで、これは中小私鉄のための部会というのが去る三十五年の四月に出発いたしております。自来今日まで五年間、いろいろと調査研究をしてまいりました結果、昨年の六かには御承知のとおり中小私鉄の大会というのを開かせていただきまして、衆参両院の諸先生方においでを願いまして、いろいろと激励、御同情あるところの御援助を賜わった次第でございます。ちょうどそのときに――この中小私鉄の問題をわれわれが皆さまに直接お話し申し上げることももちろん必要でございまするが、私どもは実は公正なるところの第三者のいわゆる経営診断を受けて、そうして実態をある点まで把握することが必要でなかろうかというような意見がわれわれの部会の中にもございまして、昨年の五月に運輸調査局にその経営診断お願いすることにいたしました。もちろんお願いするにいたしましても、各会社内部事情がございまして、全部の会社に一々御承諾を得るということはなかなかめんどうでございまするので、御希望の会社を募りましたところ、約五十社の会社からそう申し山山があった次第でございます。ところが幸いにも、九州地方におきましては別に運輸調査局以外のコンサルタントから経営診断を受けられた会社もございまして、それではまず最初に九州のほうからひとつ手をつけようじゃないかということで、九州と関東と東北の三地区におきまして、十二社につきまして経営診断を受けたわけでございます。  ところがその結論は、はなはだ口はばったいことを申すようでございするが、われわれ部会において調査研究いたしまして結論に達したこととほぼ同じでございます。そこでわれわれも大いに力を得たわけでございます。  そこで本日は、「中小私鉄経営分析結果の大観」というものを皆さま方のお手元に差し上げてございますので、それによりましてお話を申し上げたいと思う次第でございます。  実はこれにつきましては、経営診断でございますので、各会社のこまかい事情まで全部入っておりますが、それは会社のお立場がございますので、全部抜いております。また先ほど委員長からのお話で十五分ということでございますので、これを全部お話する時間がないと思いますので、おもなる点、第四ページの「人件費増加について」という点からお話を申し上げたいと思う次第でございます。  まず、「全経費中に占める人件費のウエイトが大きいだけに、毎年のべースアップとこれに伴うハネ返り経費増が、中小私鉄経営者の大きな苦悩のタネになっている。根本は、私鉄バス運賃公共料金なるが故に、政策的低料金制度を強要しているところに問題がある。しかし、企業上の立場から、労働生産性の向上が期せられないにかかわらず、賃金の急増をしいられている中小私鉄はその急増について行けないと訴えている。」企業上の立場と申しますのは、御承知のとおり鉄道は大きな資本を要するとともに、また人員も普通の製造工場のようにオートメ化できませんので、人員もやはりそれ相応に要するわけでございます。ところが最近求人難時代がまいりまして、大都会中小都会との格差というものがだんだんなくなっておりますし、また格差をなくさないとなかなか求人ができないというところに、われわれの非常に困っておる点があるわけでございます。そこでここに書いておりますように、また熟練従業員が他産業に引き抜かれる現象を阻止することはできない。運賃制度中小私鉄助成制度など、あわせて政府みずから採択し、検討すべき重大問題であるというふうにいわれております。  それからこれは人件費のことでございまするが、第四の「国会及び行政官庁に対する要望事項」として、「経営上の苦悩にあえいでいる中小私鉄運賃値上げにブレーキをかけている政府の方針は、早急に改むべきである。」これはもともとその原因は何かというと、国鉄運賃低位に押えておるというところに問題があるのだ。したがってバス運賃値上げについても常に抑制しようとするところにも問題がある。これにつきましては、ちょうどこの経営診断をやられましたところの運輸調査局馬場経営管理室長が「運輸経済」の三月号の中でこういうことを言っておられます。「由来、運賃原価を償うものでなければならないのであって、国鉄運賃法にはその旨が明記されている。原価を割る運賃は単に企業の存立をおびやかすのみでなく、交通機関の分野をゆがめることになるのである。私鉄運賃といえどもその理においては変りはない訳であるが、鉄道運賃公益的理由から低位に抑えられがちであり、認可を得るにも長期間を要する実情である。私鉄に対するこのような規制は鉄道事業か独占的な公益事業であったことによるのであるが、自動車との競争にさらされている今日もなお旧態が持続されているのである。すでに諸外国では鉄道運賃に対する国家の現制を緩和し、運賃適用についてある程度の自由を付与し、あるいは申請後一定期間を経過すれば認可があったものとするなどの制度が行なわれるようになっている。」このことにつきましては、ここに本日参考の資料を差し上げておきましたので、外国の例につきましては、時間の都合上私の説明を省きたいと思う次第でございます。  そこで、さらに今度は、「国鉄私鉄バス運賃政府がバラバラに検討するところに運賃調整上、輸送調整上にも不合理性がある。」第三に、「通勤、通学客大幅運賃割引制度は極端に不合理であるが、一挙に現行運賃を二倍や三倍に引き上げることは事実上不可能に近い。それならば、その公共負担については早急に国家補償制度を確立すべきである。」第四に「現在の国鉄が、鉄を競争機関とみて、助成ないし協力すべき交通機関であるとみる創業時代国鉄考え方が次第に薄れている。現状は、今一度再検討すべきである。」第五に「バス路線認可又は既設バス路線運行回数増加等について、運輸省鉄道監督局自動車局は、緊密な連絡をとり、永年陸上交通に貢献してきた私鉄を最優先的に待遇すべきであろう。」この国鉄私鉄関係につきましては、これはこの前にも申し上げましたとおり、いわゆる地方鉄道補助法というものがございまして、これでいわゆる国鉄のフィーダーラインとしての地方鉄道国鉄予算のうちから補助を出しておったというのが戦前の例でございます。その他いろいろと国鉄私鉄関係については、戦前は唇歯輔車の関係にございまして、お互いに非常にその点で仲がよかったのが、今日のような状態になっておることは残念であるということを運輸調査局も申されておる次第でございます。  それから第六に、「陸運局鉄道管理局交通事業者などで、地域別連絡協議会を設置して、中小私鉄対策について連絡を緊密にする必要があるように見うけられる。」これにつきましては、はなはだあれでありまするが、実は、静岡県の実例をここで申し上げまして御参考に供したいと思います。静岡県には、静岡総合開発審議会というものがございまして、交通・通信・エネルギー部会中間検討報告というものがここに出ておりまするが、その中にこういうことが書いてあるのであります。「県内にみられるいわゆる中小私鉄は、人工の離散と自動車輸送のいちじるしい進出から第7表にみられる如く、その経営維持は苦難の度を加えている。すなわち、本県においてはさきに沼津、三島間、静岡市内線、秋葉線、奥山線大手線、駿遠線の一部など合計六十五・三粁が廃止された。戦後における日本経済の刮目的な成長発展運賃などの公共料金低位に押えることによって成し遂げられたと一般に指摘されている。今日、民鉄輸送力輸送需要とかけはなれている根本原因は、その低位運賃から施設の拡張、再生産ができなかったことがあげられる。新時代に適応した輸送サービスを償うに足る原価主義運賃制度を早急に確立することは国家的な問題とされるが、当面する問題点としてこの辺の事情を理解し、鉄道輸送手段の特質を認識して、地方鉄道保護育成を図るためには地方自治体として出末得る範囲努力を傾注することが必要である。」飛ばしまして、さらにこういうことを言っております。「地域開発における交通戦略的役割から処置されようとする整備計画については、たとえ交通企業の採算にのらない場合でも、その整備事業地域経済全体として利益をもたらすという見通しを得るならば、地方公共団体としてはこれを強力に推進せしむべきと考える。」こういうことで、さらに「私企業財政的支援をあたえる例として、線路施設、隧道などの建設費はすべて関係地方公共団体負担とする等の考慮がなされてしかるべきではなかろうか。」ということをうたっておるわけでございます。こういうようなことでありまして、非常に理解あるところのこの中間報告を出しておる次第でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、第七は、これは説明を省きますが、以上のごとき運輸調査局経営診断によりまして、この部会の中に四つ分科会を設置した次第でございます。  第一は、自動車に関するところの分科会、第二に、国鉄に対する対策としてどういうことをやるかという分科会、第三に、補助制度に関する分科会、第四に、地方経済分科会、いまのような地方一自治体との関係でございまして、この第四の地方経済分科会におきましては、要するに新産業都市における中小私鉄輸送についての地方自治団体との関連について、こういうようなことで、研究としては、施設の拡充に必要な資金を地方庁の財源に仰ぐことができるかどうかということ、国鉄がこれに投資することについて、それができるであろうかということ、それから固定費屋税の減免についての具体的方薬ということができるであろうかどうであろうかということ、この四つ分科会をつくりまして、すでにその分科会は二、三回ずつ分科会を開いておるような次第でございます。  以上、私はこの運輸調査局経営診断大観お話し申し上げまして、そしてわれわれの窮状というものが、やはり第三者が見てもこのように言うておられるのであるからして、どうぞ諸先生方のお力によりまして、この難局を切り抜けるように、ぜひひとつ御指導、御支援を賜わりたいということをここに申し上げまして、私の陳述を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  4. 關谷勝利

    關谷委員長 次に、古谷参考人お願いをいたします。
  5. 古谷善亮

    古谷参考人 ただいま実際に業務を経営しております静岡鉄道社長参考へとして申しましたので、私は当協会におきまして取りまとめました意見を申し上げたいと思っておるわけでございます。  要するに、まず私鉄は何ゆえに振興しなければならぬはめにおちいったかということでございますが、これは申し上げるまでもなく、私鉄社会経済におきます輸送国鉄と通し輸送をいたすことによりまして、園児経済に寄与しておる重大な意義があるからであります。この対策につきましては、ただいま川井参考人が申しました説明の中で大体尽きておるのでございますが、その根本的の問題は、先ほど述べましたように、運賃をいかに合理化するかということがまず第一点だろうと思います。第二点は、これに伴います助成の問題であろうかと思います。第三には、その他の関連いたします問題があるのでございまして、この詳細につきましては、追って担当の織田理事から御説明いたさせますが、私はこの項目の要点を羅列的に、時間の許します範囲におきまして、きわめて簡単に陳述いたしたいと考えております。  そこで中小私鉄がどうしてこういう窮状におちいったかと申しますと、要するに正常な経営ができてなかったのではないかという点がまず考えられるわけでございます。これは必ずしも会社の当務者努力が足りなかったとか、あるいは経営能力に欠けるところがあったとかということではないと思うのでございまして、事業が現在のような不況におちいっておりますことは、長らく不合理な運賃制度に置かれ、また増加いたします利用者が、安い定期客だったということに根ざしていると思うのでございます。この事業不振のガンであります定期運賃は、元来は常時利用されますお客に対するサービスでございまして、運賃制度といたしましては、従属的な性格を持ったものだと考えます。ところが、それが現在では、運賃制度構成上、大きな割合を占めております事業者収入源を左右いたします結果になっております定期運賃が、かように低額に押えられておるということ、まあ国鉄との関係もあろうと思いますが、国鉄運賃構成におきます定期の占める割合は一一%でございます。これは御承知のとおり、国鉄運賃は大体半分が旅客運賃、またその半分が貨物運賃でございます。その旅客運賃のうちでまたわずかなものが定期運賃、こうなっております。簡単に申しますと、旅客運賃のうちで大体四百億程度のものが定期運賃ではないかと思います。かようなわけでございますが、私鉄の場合は三八%が定期運賃割合でございます。先ほどちょっと申しましたように、国鉄の場合はそれが一一%でございます。こういうふうに定期運賃負担私鉄にとっては非常な電圧になっておるということがいえるのでございます。これは何といたしましても、国鉄も同じことでございますが、定期運賃というものにつきまして将来大いに研究せねばならぬ余地があろうと思います。  かように運賃の点が不合理になっておりますということは、政治の貧困であるとか、あるいは行政の怠慢であるとかいうようなこともいえぬこともございますまいが、要するに社会情勢の変化によりて長い間にゆがめられまして、ゆがみだんだん深くなってまいった、こう考えますことが常識的ではないかと思います。したがいまして、一挙にこれを合理的なものにするということは事実上なかなか不可能であると思います。そこで何か年次計画によりまして、順次にこれを是正していくことがまず常識上考えられる問題ではないかと思うのでございます。また運賃と申しましても、各種の事情に制約される場合がございますので、必ずしも合理的な運賃ができますかどうかも疑問でございます。そこでこの間の収支の調整をはかりますために、必要な事業につきましては政府の手厚い保護を必要とするわけでございます。この補助につきましては、後刻織田参考人から説明いたさせますので私は申し上げませんが、結論数字だけ申し上げますと、三十八年度の六十四社の赤字総額が三十一億に達しておりますのに対しまして、補助は三十九年度は千六百九十八万九千円にすぎません。四十年度の予算も七千八百四十八万一千円を計上されておる趣でございます。これを戦前補助額に比しますと、きわめてわずかなものなのでございます。御参考に申し上げますならば、戦前最盛期におきましては、予算といたしまして七百五十万程度のものを計上しておりました。これを大体四百倍と換算いたしますと、三十億前後に該当いたします。ちょうどふしぎにも六十四社の赤字総額と一致するような数字になっております。  かように申し上げましても、事業者赤字解消に対する努力ということは申し上げるまでもないことでございまして、めいめい努力いたしております。どういう点でこの努力が払われておるか、これがやはり中小対策になりますので、その点を項目だけ申し上げます。  第一は、自動車事業兼営でございます。もうこれは特に詳しく申し上げることはございませんが、ただこの点で申し添えたいことは、先ほど川井参考人説明の中にもありましたように、運輸省内におきまする運輸行政自動車行政との十分緊密な連絡というものが要望される次第でございます。なおこの際、自動車運送事業以外の兼営収入というものも考えられますが、これは中小私鉄の存します地域はきわめて貧弱な地域でございますので、特殊のケースを除きましては期待薄でございます。  第二に申し上げたい点は、国鉄との関連をはかりまして、増収をはかりたいということでございます。これにつきましても、先ほどちょっと川井参考人も触れておりましたので、私はあまり深く申し上げませんで、項目だけ申し上げるにとどめておきたいと存じます。  ただ一つ申し上げておきたい点は、国鉄との関連におきまして、将来さらに新線を連絡のために引くとか、あるいはそれがために改良工事をするといったような場合に、国鉄同様に鉄道建設公団工事お願いするようなことができないであろうかという問題でございます。これは現法律を改正しなければいけないことだろうと思いますが、もしできますならば、これも一つの方法かと思われますので、申し添えた次第でございます。  それから三番目は関係産業援助でございます。中小私鉄はある産業のそれぞれ専用線的の性格を持っておりまして、原料、製品の輸送に従事しておるのでありますが、この中には親会社と特殊の関係に立つものもございますので、一がいには申されませんが、親会社が何分の援助を与えますならば、中小私鉄振興にまた役に立つのではないかと思います。  最後に四番目でございますが、これは積雪寒冷地帯中小私鉄でございます。四十年度には防雪補助といたしまして一千百四十万の予算が計上されておりますが、この地域特殊性にかんがみまして、さらに補助金の増額を要望いたすわけでございます。  かように種々考えられますが、その効果の著しくない場合には廃止ということもまたやむを得ないのではないかと思います。もうすでに使命の大半を失ったようなもの、また近く大半を失うであろうと思われるような私鉄につきましては、残念ながら私鉄廃止という二とも辛、えられます。たとえば国鉄の開通によりまして私鉄廃止するというようなことがその一例でございますが、この場合におきまして、地方鉄道軌道整備法補償規定がございますが、この補償規定は前の地方鉄道法の三一六条の規定をそのまま移したものでございますけれども、実際の施行にあたりましては、相当補助金の計算に均衡を失する結果になっております。国鉄建設線がだんだん着工されて、その工事も進んでおりますので、買収事案補償事案に予定されますところが出てまいります。ぜひともこの点を至急御検討をいただきたいと思うわけでございます。  以上をもちまして、対策の一斑についての考え方を申し上げたのでございますが、中小私鉄振興につきまして特に関心を寄せていただきたい点が四点ございますので、それも項目だけにいたしますが、お聞き取りを願いたいのでございます。  一つは、金融措置でございます。簡単に申しますが、これにつきましては、事業者として何か特殊の措置を必要と考えております。中小企業基本法というものはございますが、この適用範囲には入らないのでございます。御承知のとおり、資本金が五千万以下、使用従事員が三百人以下と申しますと、小なりといえども実は中小企業ではございませんために、これに入りません。したがって、中小企業関係法律によるところの保護は受けられないのであります。したがって、何か金融の面におきまして特別の指貫を考えたいと思って研究しております。  第二は、府県の問題でございます。先ほど府県との関係につきまして川井参考人から申しましたが、これも簡単に結論だけ申し上げますと、固定資産税のようなものはできるだけひとつ中小私鉄につきましては非課税当の措置をとっていただきたい、端的なことを申し上げましておそれ入りますが、さようなことを考えておるわけでございます。もともと私鉄地方交通機関でございますので、地方庁で十分ひとつ御配慮願いたいと思うわけでございます。  第三番目は踏切の問題でございます。踏切につきましては、これも多言を要しません。今回の予算では二千五百四十一万七千円を計上されておりますが、踏切の数か多うございます。人命尊重の点からこの補助をさらに増額していただきたいと思うのでございます。この補助の基本法になっておりまする踏切道改良促進法は時限法でございますので、四十年で自然に消えてしまいます。このお取り扱いにつきましては、国会におきまして十分御配慮を願いたいと存じます。  最後は交通企業の統合の問題でございますが、これは私どものような事業者団体が申し上げるようなことではないのかもしれませんか、輸送の秩序を正して、利用者の利便をはかり、かつ企業の安定をはかりますためには、場所によりましてはこういったようなことも考えられないではないと思います。近ごろのように交通範囲が広くなってまいりますと、よけいそういう点を感じるわけてござごいます。いつか申しましたが、大国鉄と申しますけれども、その七八%は赤字路線であり、中小なんでございます。国鉄は大手と中小を一緒にして大きな組織になっておりますので、その組織の中でもって収支の均衡をされております。した、かいまして、広域の経済になり、交通範囲も広くなっておりますならば、中小という狭い範囲の中に泳いでいないで、もう少し広域にわたって、何か一元的経営ができるような企業の運営をいたすことが肝要ではないかと思うのでございますが、これにつきましては目下研究中でございまして、ここで結論を持っておりません。要するに私どもお願いしたいことは、政府におかれましても、国会におかれましても、ひとつ交通の基本問題に取り組んでいただきまして、将来の中小私鉄のみならず、バスその他を含めまして交通のあり方について基本対策を立てていただきたいと存ずる次第でございます。それにつきましては、場合によっては、何か審議会のようなものを必要とするのではないかとも考えまして、当私鉄経営者協会といたしましては、昨冬、年末に運輸省に対しましてかような趣を書面をもって意見を具申したということでございます。  以上、たいへん時間をとりまして恐縮いたしましたが、何とぞ私鉄振興のためにお力添えを願いたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  6. 關谷勝利

    關谷委員長 次に織田参考人お願いをいたします。
  7. 織田憲吾

    織田参考人 御指名を受けました織田参考人でございます。さっそく運賃助成の具体策につきまして申し上げます。お手元に青いデュプロで刷ったものがございますので、これをごらんいただきまして説明いたします。  運賃といたしましては、まず第一に、私鉄事実の健全な発達を前提として、交通政策の見地から運賃改定をすることとし、運輸大臣専管の本旨を貫かれたいということでございます。実情を申しますと、法律的にはこういうふうな運輸大臣の専管になっておりますけれども、手統は経済企画庁にかけられ、またさらにつぶれそうな中小私鉄についても経済閣僚懇談会にかける、値上げしようとしてもなかなか時間がかかるし、削られるし、延ばされる、場合によっては認められない、こういうようなことは、結局企業の健全性というものが無視されているものだと思うのでございます。これは考え方公共料金を物価抑制のきめ手としているところに問題がございます。実は、私鉄運賃――国鉄でも同じですか、ほかの物価か上がってやっていけないために運賃を値上げするのでなくて是正しているのでございまして、運賃を上げるからほかの物価に響いてくるというふうにやるのは逆な見方でございまして、この点はぜひ改めていただきたいと特にお願いしたいのでございます。  これがどうして無理でないかと申しますと、一、二外国の例を申しますと、アメリカとかフランスなんかの例でございますが、運賃の申請事案につきましては、認可の期間を法律で定めております。値上げの申請をもし政府が否決する場合には、値上げによって得べかりし増収分だけを政府が補償するということが明文にうたわれております。それを法定期間までに政府認可も許可もしない、つまり不作為である場合には、当然鉄道会社の中市が有効となるような法的措置か講ぜられておるのでございます。ところが日本ではこういうものがない。せめて運輸大臣専管の本旨を貫いていただきまして、健全な事業運営かできるようにお願いしたいと思います。これが一番大きな問題でございます。  第二、第三を申しますと、第一の考え方は、結局交通基本問題調査会の考え方利用者負担の原則、実費式運賃体系の確立、そうして鉄道事業が社会に貢献できるような体制をつくろうというところに木曽があるのでございますが、これがなかなか物価の見地から抑制されて、ほかの物価が四百倍、五百倍になっているのに鉄道は百五十四倍に押えられているという点で非常な無理がしいられておりますが、一ぺんにやることはなかなか困難だか、このような原価を償う運賃制度が急速に実現できない場合は次のような措置を講じてもらいたいのであります。  第一は、通学定期券の文教政策的割引分については、国または地方公共団体において全額を補償されたい。これは別紙にもございますように、アメリカ初め諸外国でもこういう制度をとっておるのでございます。  第一は、通勤定期券のいわゆる社会政策的割引率を一挙に引き下げ、またはこれを廃止してしまうことは国鉄私鉄を通じてなかなか困難と思われる実情でございますので、五ヵ年間くらいの期間内に毎年定期的にこれを下げていき、利用者に一半に負担が過重にならないような措置を講ずべき段階にきていると思われるのでございます。  第三は、通学定期分の補償と、通勤定期割引率の累年低下方式という方法が認められないならば、次の措置をぜひとってもらいたい。それは運賃を物価にスライドする方式を採用してもらいまして、年一回所定の期日に自動的にこれを改定する権限を運輸大臣に付与してもらいたいということをお願いしたいのでございます。物価は年々上がっており、人件費も大体年々きめられている。ところが運賃は、申請しても思うようにいかないし、時間がかかって、二年か、三年に一ぺんしかできない。ところがほかのものは、毎年毎年変わっていく。こういうことが国鉄私鉄を通じて非常にしいられて、鉄道バスが今日の苦境におちいっているものと思うのでございます。  それから次は、社会的に存置せざるを得ない私鉄が小採算路線でございまして、運賃値上げが限界点に達している私鉄につきましては、別途赤字補償の制度を確立していただきたいのであります。  もう一つの資料に、中小私鉄助成策案というのがございますので、これについて御説明申し上げますと、この助成策の第一は、欠損補助の大幅な増額をお願いしたいのでございます。さらに私鉄のうち、経営面に相当な努力を払い、経営合理化を行ない、しかも赤字に悩みながら運賃改定だけでは経理面の改善ができない、こういうような私鉄がございます。しかも社会的には鉄道存続の必要があるものについては、全面的に赤字補助制度を確立していただきたい。  備考として、地方鉄道軌道整備法は、法律の体系といたしましては一応りっぱに整っております。ところが従来は予算上の制約を受けまして、補助の条件として、たとえば二年以上赤字でなければいかぬとか、三年以上赤字でなければいけないとか、補助率にまた制限をつけるというような措置が講ぜられております。これは予算の面からやむを行ないことということは、理解はできますけれども、こういうような助成制度では私鉄振興に万全を期することができないと思うのでございます。なお赤字会社の赤字分の三十一億円をどうして穴埋めするかという方法は、一部は運賃の是正によってこれができる範囲もございます。しかしながら、少なくとも運賃改定によって補てんできない赤字につきましては、外国の例もございますように、国または地方公共団体において全面的に補助できるような特段の御配慮をお願いしたいのでございます。  次に踏切道改良促進法に基づいて踏切道格上げのため政府指定の措置が講ぜられた分につきましては、次の条件によって全面的に国家補助措置を講じていただきたい。  第一は、赤字会社につきましては全額補助していただきたい。それから一州未満の配当会社につきましては、会社負担分の少なくとも三分の二ぐらいは補助してもらいたい。次に固定資産税関係でございますが、赤字会社に対しましては固定資産税を免除してもらいたい。これは、当該私鉄はその地域社会に貢献しているものでございますから、その地域社会の地方自治体は、これを免除してもらいたい。法制的には不均一課税を課することにたっておりまして、やろうと思えばできると思いますけれども、なかなかこれが実施されていないというところが問題でございます。その他の会社に対しましては、国鉄と同一の負担にせられたい。提供する輸送サービスは、企業の形態が、国鉄であろうが、会社でありましょうが、営団のようなものでございましょうが、みな同じでございます。同一な輸送サービスに対しては、同一の条件のもとに適正な企業運営ができるようにお願いしたいのでございます。その他の地方税につきましても、中小私鉄に対しては減免の措置を講じていただきたい。  以上でございます。  なお、運賃、と物価のことにつきまして、静岡鉄道社長さんのほうから御意見があるようでございますから、一応御説明いただいてよろしゅうございますか。
  8. 關谷勝利

    關谷委員長 どうぞ。
  9. 川井健太郎

    川井参考人 それでは御指名によりまして、私ちょっとつけ加えさしていただきます。  中小私鉄の現状の中で、私鉄運賃が、昭和八年を一としました場合に百五十四倍になっておる。米が五百五十四というふうに十七ページにございますが、これを逆に昭和八年当時の料金を調べてみましたところが、私鉄の基本賃率は二銭八厘六毛でございまして、それに対して床屋が大体三十銭、それが昭和三十九年になりまして床屋さんが二百六十九円でございますのに対して、私鉄が四円三十九銭になっております。それは表を差し上げてあると思いますが、昭和八年を一とした場合の指数はそこに第三番目に書いてございますが、もしもこの私鉄の基本賃率によるところの倍数の百五十四というものを物価、いわゆる消費者物価と仮定した場合に、ほかの物価はどうなるかということをここにあげてみますと、二百六十九円の昭和三十九年の床屋さんが四十六円になる。それから米が九百七十五円でありますものが二百七十一円になるのだ、こういうことでございますので、いかに私鉄運賃というものが安いかということを、これで御推察できることと思いますので、これをつけ加えさしていただきました。
  10. 關谷勝利

    關谷委員長 次に三橋参考人お願いをいたします。
  11. 三橋幸男

    ○三橋参考人 私鉄総連の三橋でございます。  私は、すでに三月三日の当小委員会におきまして、当面する中小私鉄経営難を打開し、従業員の生活不安、労働不安を解消し、交通事業に課せられた公益性を実現するために必要な国家助成策についての私どもの一般的見解を申し上げましたが、今回重ねて参考意見を述べさせていただく機会を得ましたことを深く感謝いたすのであります。  その際の私どもの見解に対しましては、当日経営者側の参考人からも、ほとんど大部分が全く同意見であるという趣旨の表明がされておりますし、今日聞きましたところによりましても、大体同じような状態でございます。  そこで、もともとこの種の経営問題は経営者側の責任範囲に属する問題でございますので、重複を避けまして、この点については全部省略申し上げたいと思います。ただ、せっかくの機会を得ましたので、この際、私ども交通労働者の立場からいたしまして、ぜひとも強調しておきたい原則的な諸問題について、二、三参考的な御意見を申し上げたいと思います。  それを申し上げる前に、すでに経営者側の参考人からも明らかにされておりますし、また先日肥田先生からも御指摘がありましたけれども、今日、中小私鉄という名前あるいは概念というものが、ごく限られた一部の専業会社、これは非常に少ないわけでございまして、大部分はバスを兼業いたしておるわけであります。したがって、中小私鉄という観点や概念から見ますと、実は性格が把握できがたい、そう思っておりますし、またバス事業自体も最近は非常な過当競争の中に置かれまして、赤字会社に転落していくという状態がふえておるということを考えていただきました場合に、これらについてはやはり一本のものとして行政的な指導なりあるいは今後の振興策について御討論をぜひ賜わりたいと思うわけであります。  それではまず、私どもがこの種の問題に取りかかります前の原則的な諸問題について申し上げたいと思いますが、その第一は、前回すなわち三月十日の当小委員会におきまして、きわめて明瞭に明るみに出ましたところの今日の運輸行政交通政策の貧困という問題であります。すなわち今日の運輸行政は自由競争によるサービスの向上、一見非常に耳ざわりのよい口実ではありますが、実は国鉄経営のあり方をもとに、公営や民営各交通企業体相互の無秩序、無制限な、まるで百鬼夜行の過当競争があおり立てられておるというのが実態でありまして、このことにつきましては、すでに前回、中小私鉄各社の各参考人から数々の具体的な事例が述べられ、まことに驚くべき事実さえ報告されました上に、勝浦先生からも鋭く御指摘のあったところでありますから、重ねて多く申し上げる必要もないと存じます。  ただ一言申し上げておきたいと思うのは、このような無秩序な過当競争をあおり立て、あるいは放任しておりますところの今日の運輸行政が、いかにばく大な社会的な損失を伴う過剰投資を生み、あるいはまた弱小企業経営危機に追い込んで、その結果、私ども交通労働者の賃金や労働条件の無差別な切り下げあるいは劣悪化をもたらし、また利用者である国民の立場や利害を無視した運賃値上げとかあるいは路線の廃止をはじめ、単なるもうけ本位の経堂に走らしめて、交通事業本来の公益性を破壊しているという事実であります。このような運輸行政交通改築の貧困は、いやしくも国家の政策としてあるまじき反社会的、反国民的な役割りさえ果たしていると申し上げても過言ではないと思います。このような運輸行政交通政策の貧困を再検討し、これに対して抜本的な政策を樹立し、無秩序あるいは無制限な弱肉強食の過当競争に対する国家的な調整と規制措置を講ずることを抜きにしては、中小私鉄バス経営へのいかなる助成策も意味をなさないと思うのであります。したがって、私どもは、この際、早急に国家としての正しい交通政策のビジョンを各地方の実態に即して具体的に示していただきまして、その中で国鉄私鉄バス、都市交通などの冬輸送分野を明確化されるよう是非とも御努力を願いたいと思うのであります。  第二番目に申し上げたいと思いますことは、大手私鉄の系列化が中小私鉄バス経営経営難を打開してその近代化を促進し、公益性実現に役に立っているかどうかという問題であります。これにつきましては、前回私どものほうから「大手私鉄の系列化が中小私鉄経営および労働条件等におよぼしている影響」と題する簡単な資料をお手元に提出しておきましたが、その資料は、単に「大手私鉄の系列化が中小私鉄経営労働条件などにどのような変化を及ぼしているか」という観点から、最近大手私鉄の系列下に入りました中小私鉄の実態につきまして、当該労働組合から若干の具体例をそのまま集録したにすぎません。したがって、私ども私鉄総連としての見解は特に付してないわけでございます。しかしながら、私ども立場からこの問題を考える場合、何を申し上げましても、賞金や労働条件にどういう影響を及ぼしているかということが大前提になるのでありまして、この観点から各組合の報告を調べてみますと、当初、従業員は系列化やあるいは大手の資本を導入することによりまして賃金や労働条件が改善され、向上するのではないかという大きな期待を抱きまして、たとえば定山渓鉄道の報告にもありますように、いまによくなるから、という会社のことばを信じ、当面の賃金や労働条件の劣悪さをがまんしてきたものでありますが、この期待が完全に裏切られているというのが各社共通の実態であります。また、経営者側参考人から提出されました資料を拝見いたしましても、「系列化は中小私鉄振興または救済の本道ではない」と明記されておるところでありまして、大手は再建と振興の見通しのない中小私鉄や、利潤が上がらないような中小私鉄を系列下に入れるものとは全く思われない、こういうふうに書かれております。これは、あくまでも大手私鉄資本の利潤追求の目的から系列化や導入を行なうものがありまして、独占集中化の姿そのものと断定せざるを得ません。ましてや、それによって賃金や労働条件の向上が期待できないばかりか、定山渓、上田丸子、常総筑波の各実態報告にありますように、かえって大きく悪化の傾向を深め、あるいは組合既得権のはく奪、労働条件の切り下げを含む全面的な労働協約改定案の提示すら行なわれているという事実に照らしましても、私どもはこの際、大手私鉄の系列化を促進することによって、中小私鉄、あるいはバス経営振興し、その近代化をはかられるということは絶対に誤りであり、今日の交通矛盾をむしろ上塗りするだけであるということを強調したいと思うのであります。  また、公益性を実現するという上からいたしましても、私どもは大手私鉄の利潤追求本位の系列化の結果、不採算路線は沿線利用者立場や利害を無視してまでこれを撤去したり、あるいは荒廃、老朽化するままに放置しておきなから、もうかるところだけに資本投下をはかっていく、そういうやり方が行なわれております事実を数多く指摘することかできるのでありまして、これでは全く、あるべき交通政策を求めるという当面の課題に逆行しているものと断ぜざるを得ないと思うのであります。  第三番目に申し上げておきたいと思いますことは、国家がその交通政策上、中小私鉄バス経営に対しまして、振興助成のためのしかるべき経済補助を行なう場合、これに従事する交通労働者の生活安定、労働不安をまず第一に考慮に入れ、これを保障することを出発点としていただきたいということであります。ただいま経営者協会からの御指摘にありましたように、たとえばアメリカやフランスやその他ヨーロッパ諸国におきまして、国家か赤字を補てんしたり、あるいは公共負担分を補てんしておるという、こういう事実はあるわけてありますけれども、それはすべて労働者の最低条件を考慮に入れておる。たとえば、フランスの場合には、全国一律最賃の上に産業別の最低賃金が獲得されたり、あるいは熟練度別の最低賃率が保障されておる。こういう上にこれらの保障なりあるいは補てんが行なわれているという事実であります。特に私どもが従事しておりますところの交通事業は、とうとい人命輸送、それも大量に、迅速に、安全にという不可欠な条件を付した人命輸送であります。今日私どもの仲間の中には人身事故の責任を問われて獄中につながれておる者も現実におるのでありまして、私どもはその一人一人が、日々このようなきびしい刑事上の責任を問われ、単なる不注意のみによって犯罪人にされてしまうような、きわめて重大な社会的使命と責任を負わされた労働に携わっているのであります。この労協が長時間にわたるきわめて高い緊張の持続をしいられる仕事でありますことは、当小委員会に私どもの先輩が数多くおられて、現実に体験してまいられたところからもお察しいただけるものと確信をするのであります。  ところが、このような重大な使命と責任を負わされている私ども交通労働者の置かれている経済的、社会的地位、とりわけ、その賃金や労働条件はどうでございましょうか。私は、先回、中小私鉄バス労働者の賃金、労働条件がいかに劣悪であり、世間並み以下のいかにみじめな状態に置かれているかを幾つかの事実に基づいて御説明申し上げました。また、経営者側からも、世間並みの賃金や労働条件を保障しなければ、今日の労働市場の売り手傾向からいたしまして必要な労働力の確保が困難であり、熟練労働者はどんどん他産業に流れていっておる。これは黒字倒産とか赤字倒産ではなしに、いわゆる労務倒産といわれるような状態が今日私鉄の中に起こりつつある。これは今日、もうすでに私鉄バスのあらゆる職場が非常な人手不足に悩んでおりまして、それが極限に近いまでの非常な労働強化をもたらし、これが事故の主要な原因になっておるのでありまして、このことは交通労働者に対する、その使命と責任度にふさわしい世間並みの賃金や労働条件の保障が、いかに交通事業の公益性実現にとって大切であるかという立証にもなるかと存ずるのであります。何のために助成をするのかという目的に照らして、中小私鉄バス事業の公益性実現と結びつかない助成、したがって、その根幹でありますところの中小私鉄バス労働者の生活安定、労働安全と結びつかない助成は、あたかもざるの中に水を注ぐようなものでありまして、百害あって一利なしと言わなければならぬと思います。その意味で、世間並みの賃金や労働条例の保障は、当然中小私鉄バス経営における必要経費でありまして、国家が一定の助成を行なわれるにあたっても、標準営業費の算定あるいは赤字算定の場合に当然保障されるべき前提条件でなければならぬと思うのであります。同時にこのことを法的制約をもって助成基準の基礎に据えることによって、賃金・労働条件の無差別な切り下げの上に立つ過当競争を防止することができると思うのでありまして、いずれにいたしましても、私どもは世間並みの賃金や労働条件の保障なしの無定見な国家助成には絶対に賛成いたすわけにはまいらないわけであります。強くこの立場を申し上げまして、本日の私の基本的な態度に立つ陳述を終わりたいと思います。
  12. 關谷勝利

    關谷委員長 これにて各参考人の御意見の開陳は終わりました。
  13. 關谷勝利

    關谷委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。肥旧次郎君。
  14. 肥田次郎

    ○肥田小委員 古谷さんにお伺いしますが、中小私鉄という概念については、これは概念であって、中小私鉄、中小バス、こういうふうに、名称はともかくとして、理解をするということについては、あなたもその条件は同じだというふうにお考えになっている、こう理解をしてよろしいですか。
  15. 古谷善亮

    古谷参考人 中小私鉄範囲につきましては、第一回に申し上げたとおり、大手と公営と営団とを除きましたものを一応中小私鉄の部類に入れております。これは統計その他の形式的の問題でございますが、私どもは、やはり私鉄部門というものを対象といたしましてあらゆる施策をとっております。したがって、ただいま仰せになりましたバス部門につきましては、おのずから別に考えておりますが、その対策につきましては、バスを込めて考えなければ効果のある対策ができないではないかと存じますので、現状につきましてはあくまでも中小私鉄を対象としてやっておりますけれども、その対策につきましては、バスのことを常に念頭に置いてやっております。かように分けて考えていただきたいと存じます。
  16. 肥田次郎

    ○肥田小委員 私鉄に対して日乗協というのがありますね、この日乗協というものの中で、いわゆるバス、これはもちろん大手も入っているところもあると思うのですが、バス、それから中小バス、それからいわゆる中小私鉄もこれに参加しているでしょうかな。
  17. 川井健太郎

    川井参考人 それはそのとおりでございます。大手もそれから中小私鉄もほとんど入っております。
  18. 肥田次郎

    ○肥田小委員 それではまあ日乗協というものがあるけれども、実態は古谷さんのおっしゃるように、私鉄経協という立場ですると、これらはもう常に念頭に置きながらものごとが考えられておる、こういうことですね。
  19. 古谷善亮

    古谷参考人 仰せのとおりでございますが、この際、特に一言つけ加えさせていただきたいことは、バスにつきましてはバスの専業者がございます。それで中小私鉄はほとんど全部と申してもよい程度会社バス経営しておりますが、しいて申し上げますならば、地下資源の輸送を主としてやっております会社及び山を登ります登山鉄道の中の大部分というものがバス経営しておりません。ほかは全部バス経営していると考えてよかろうと思います。  それて二十年ばかり前には、事業者の数で約半数、車両の数で約三分の二が私鉄経営バスでございました。両数のほうが事業者の数より多いのは、市電でございますとか、大手の会社が持っておりますバスの数が多いためにそういうような結果になっております。しかし、現在におきましては、先ほど申しましたように全部がバス経営しておりますので、バスの問題を離れまして中小私鉄の将来を考えることは、私は効果かないものだと思います。
  20. 肥田次郎

    ○肥田小委員 もう少しお伺いしますが、これは私鉄総連の三橋さんにも、これはお二人から聞きたいのですが、バスというものに対する概念というもの、これは鉄道と応じような範囲で考えるべきものなのか、それともバスについては鉄道というものよりはもう少しいわゆる公共性の少ないといいますか、自由企業的なものだというふうにお考えになるのか、この点はどうなんでしょう。私は、いろいろ話を聞いておる間に、バス企業というものが、最近では非常に内容か変わってきておるので、これに対してやはりいろんな規制が現在行なわれておるなら、これらに対する運輸行政上のものの考え方というものは、これは当然現在の中小私鉄と同じような範囲でものを考える必要があるんじゃないか。そうしなければいろいろ都合の悪いことがたくさん出てくるように思うので、その点についてちょっとお二人の御意見を聞いておきたいと思います。
  21. 川井健太郎

    川井参考人 私、事業経営しておりますので申し上げまするが、いわゆる鉄道は敷設に非常に金がかかりまするが、バスは手っとり早くできるというところで、まず道ができますると、その村のはずれまでバスが行くというふうになる、そういう便利な点はございます。ただ問題は、ある路線を持っておりまして、その路線から枝になっていくような路線が開設されました場合に、必ずしもその路線がペイする路線ではない場合があるのであります。したがいまして、私ども経営いたしておりますところの路線は、約千三百八十キロございまするが、そのうちの約六割は不採算線であると申し上げて差しつかえないのじゃないか、こう思っております。
  22. 三橋幸男

    ○三橋参考人 公益性の問題につきましては、これはく今日沿線の住民やその他に与えておる影響、つまり一般の国民の足としての公益性という意味においては、鉄道といえどもバスといえども変わりないと思います。ただ危機深刻の度合いについてどうかというふうなことでございましたら、ただいま経営者のほうも申されましたように、鉄道のほうは固定資産を膨大に要するし、もともとそういう採算を度外視して最初からつくり、国家助成を仰いでおった鉄道等もありますから、その点では危機の深刻の度合いは違っておると思います。ただ、バスについて私どもが強調いたしたいのは、最近の非常な過当競争です。これは国鉄を中心にして、あるいは鉄道バス、公営、これらの目まぐるしい過当競争が百鬼夜行のごとき状態で行なわれておる。このことから、バス企業というものがだんだん赤字に転落しつつある、そういう実情がそれぞれの地域の条件によっては起こっておる。したがって、こういうものも含めてぜひ御検討を賜わりたいものだ、こういうことを申し上げたいと思います。
  23. 肥田次郎

    ○肥田小委員 これは静岡社長さんにお伺いしたほうがいいと思うのですが、大体最近ではバスというものが、一般の理解としては、どこへでも簡単に持ってこられるといったような理解からして、地方自治体の中でもバスの運営委員会とかなんとかいうものが相当できておるようですね。そうしていわゆる地域要求といいますか、こちらへ引っぱってこい、あちらへ引っぱってこいというようなたいへんな注文があるようです。私がお向いした意味は、そういう点でお伺いしたのです。バスの公共性というものは、欲しようと欲せざるとにかかわらず、大衆の要求でいろいろと路線延長をやらなければならぬ、こういう点があるのじゃないか。そうすると、それらに対する公共性というものは、従来のように、バスというものが限られておった範囲で任意に営業しておった、路線免許したその範囲で営業しておったという以外に、新しい使命というものを負わされてくる傾向が非常に強いのじゃないか、こういうふうに私は感じたので、その点をもっと詳しく知らしてもらえれば非常にいいと思います。
  24. 川井健太郎

    川井参考人 いま肥田さんから御指摘のありましたことは、ほとんどさようでございます。したがいまして、実は先ほど申しましたとおり、村のはずれまで道路ができた、あと一キロ延ばしてくれ、あと二キロ延ばしてくれということの陳情が非常にあるわけでございます。私のほうとしては、できるだけその御要望に応じたいとは思っておりまするが、何しろそれをやりますとやはりその路線がだんだんと赤字に転落してまいるということがございます。また一方において、たとえば市町村の自治体が合併をよくやります。合併をやりますと、同一市内になったのだから市内にあるところのバスをそこまて動かせ、こういう御要求はしばしばございますので、それで実は、その点についてはごもっともな御要求ではありまするけれども、実際問題としてそれをやるということはやはりその路線が赤字に転落するという可能性が多いものでございますので、非常に苦慮いたしておる次第でございます。私のほうの会社といたしましては、しからばそういう点をどういうふうに扱っておるかと申しますると、各地域にモニター制度をとっております。モニター制度を各地域にとりまして、その地域地域におきまするところの交通については、随時、どういうふうにこれから持っていったらよろしゅうございましょうかということをバス路線については御相談また御意見を承っておる次第でございます。  これはごく最近あった例でございまするが、ある地点において、私のほうの会社とほかの会社とが路線を持っておるわけでございます。ところがその地方において、あるところまでどうしても路線を延長しなければ困るという問題が起こりましたんで、それを両方の会社に口をかけたわけでございます。両方の会社に口をかけると、おそらく会社はお互いに競争するんだから、それじゃ私どものほうでやるというふうになるだろうということを想像されたんではないかとこちらは想像いたしておるんてありますが、ところが実際問題として、いま三橋参考人からもお話しございましたとおり、だんだんと物価が上がり、それから人手不足であるということで、そういうところに路線を動かすということがマイナスを食うものでありまするからして、両方の会社が期せずして、それはとうていできませんということでお断わりをしたという実例がございます。それだけ申し上げます。
  25. 織田憲吾

    織田参考人 肥田先生から鉄道バスの公共性の程度が第一点、第二点は鉄道バスの存在理由、こういう点で御質問があったようでございますが、公共性の点では今日では鉄道バスも同じでございますが、内容はちょっと違っておりまして、鉄道のほうは朝夕の通勤・通学客というのが非常に大きなウエートを占めているという点が特徴でございます。ここに存在理由と関連してまいりますが、鉄道の採算がやっていけないから廃線にしてやめようといたします場合にひっかかってくるのが通勤・通学輸送でございまして、これをどうしてくれるのか。  ところが、もう一つ問題がございますが、はずしてしまった場合に、その地域社会がだんだん人口ふえていくようなところがございました場合、バスだけで二分間アヘッドで動かしても運び切れないのが出てくるわけですね。そういう点で廃止するのも、いわゆる通勤・通学の大量輸送という面から速急に廃止とかなんとかきめにくいような情勢もございまして、公共性は強いけれども、大量輸送のできる鉄道と、それから端から端までどこまでも投下資本が少なくて済むというところに違いがございまして、この具体的な対策を立てる上にも、非常にそういうきめのこまかい措置を考えて措置していただかなければいかぬじゃないかと思っておるわけでございます。
  26. 肥田次郎

    ○肥田小委員 もう少しお伺いしておきますが、これは若干余談になるんですが、この際あなたのほうから何か意見があればお聞きしておいたほうがよかろう、私もそういうふうに感じたのでお伺いすることが一つあるのです。それは、例の、最近非常に道路工事が盛んになりましたね。最近だけではありませんが、とにかく道路工事が盛んになる。これは道路が破損する率が多いから当然そういうことにもなると思うんですが、そうすると、静岡社長さん、バスの運行の際に道路が通れなくなるものだから、通行止めになるものだから、別な迂回道路を通って、とにかく旅客を運ぶ。そうすると、運賃上の問題も出てきますね。それから聞くところによると、そのたびに陸運局のほうへ路線変更というんですか、手続は詳しく知りませんが、そういう手続をやりながらそのバスを動かしておる、こういうことを聞いたんです。非常に手数が繁雑で、そしてめんどうくさくて、そのために常時、人がとられるのだ。したがって、バスなんかの場合には、ほとんど事務系統の人が少なくて、ほとんどの人は運転手と車掌、こういう配置になっているようで、どうも不自由で困るんだというふうな意見を聞いたことがあるのです。これは、できればそういう措置はもっと簡略にして、事後一まとめにして出しても差しつかえないんだというようなことも考えるのですが、あなたのほうではそういう問題については何かお考えありますか。あったらこの際お述べになっておいたほうが都合がよかろうと思います。
  27. 川井健太郎

    川井参考人 ただいまのお話はそのとおりでございます。ただ、迂回しました場合には、運賃を一々それによって改定するということができません。それはやりませんから、結局迂回しますとそれだけ多く運転費がかかるわけでございますが、これはやむを得ませんから、そのままにいたしております。ただ、迂回する場合において認可を得ることは必要でございます。そこで、行政調査の審議会というのがございまして、あれに許認可を省略してもいい中にこういうものは入るんじゃなかろうかということで、こういうものは届け出でよろしいということにしてほしいということは申し出ております。
  28. 勝澤芳雄

    勝澤委員 関連して。――先ほどの問題に関連してちょっとお尋ねしたいのですが、バス私鉄の公共性という問題で先ほど話が出ました。そこで、今度は公共性と企業性をどう調和をして行なっているのか。この問題が、今度は企業性を無視し公共性というものを負担すればするほど赤字になるなり、あるいはそれについての円あるいは地方助成というものが問題になるわけですね。ですから、そういう点についての取り扱いはどういうふうに現状はなっておるのでしょうか。
  29. 川井健太郎

    川井参考人 これは、私の会社の例で申し上げますると、いま勝澤先生のおっしゃいましたとおり、結局運賃というものが、いわゆる実費主義でなければならぬという制度が貫かれておりまするならば、公共性というものはある点までわれわれは守ることができると思うのでありまするが、いわゆる企業というものでございまして、反面において株主がある。その株主は、われわれの事業を信頼しまして、その金をわれわれに信託しておるような次第でございまするので、やはりそれに見合うところの利子というものは差し上げなければなりません。したがいまして、企業性というものは度外視するわけにはいかない。そこで、これは大手の場合においては、つとに兼業でそれをカバーしてまいったというのが実情でございます。  で、私のほうではしかるべき兼業があるかとなりますと、きわめてささいな前業がございまするが、それがまだ兼業でささえ得るほどの大きな兼業にはなり行ないのがわれわれ中小私鉄の悩みでございます。したがいまして、その点については、結局いまのところ泣き泣き何とかやり繰りをしてやっておるという状態でございまして、もうすでにこの昭和三十九年の三月の決算期をどうして過ごしたらいいだろうということを、よくわれわれ集まりますとみんなで話をするのでございますが、この三月期は何とかやったとしても、四月になってまたべースアッブでもされたならば、今度は完全に、いままで五分でも六分でも配当しておったところの会社が無配の会社に転落するぞという話を実はしておるような次第でございます。
  30. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そこで、企業利潤だけ追求いたしておりますと、公共機関の役刷りというものがなくなるということもよくわかるわけであります。しかし公共性ばかり追求していけば企業が成り立たないという点でなかなかやりにくい点もよくわかるわけですが、この二つを見た場合、国のような場合ですと、全国一律に一応国民という連なりがあるわけでありますけれども地域地域にまいりますと、たとえばこの村で路線をこうやってくれ、この町で合併したからこう延ばしてくれ、ということによって、それが必然的に会社の赤字になってくるというならば、逆にいえば地方の開発といいますか、その地元民の利便、こういうような形で中小私鉄というものが地方地方特殊性によって赤字が生まれてきているということになるとするならば、今度は国としては、運賃問題だけの対策でいいのか、あるいは運賃問題以上に何か全体的にこの路線は地域開発のために国が必要なんだ、この路線は一級の路線で、こっちは三級から四級の路線、道路みたいにたりますが、そういうものの考えをすべきである。その辺はどうなんでしょう。どういうふうに考えたらよろしいのでしょうか。
  31. 古谷善亮

    古谷参考人 ただいまの公共性と企業性の問題はむずかしいのでございますが、公共性の問題が、行政の面ではどう反映しているかと申しますと、公共性あるがためにそれぞれの監督法規がございまして、企業性に走る結果、各事業者がかってなことができませんように、許可、認可で押えておるわけです。したがって、各事業者といたしましては、その制約されました範囲事業経営を行なわなければなりませんが、その収入源はやはり運賃でございます。したがって、少なくとも一方において許可、認可でもって公益性を確保するならば、その運賃も何か基準があってほしい。道路運送法第八条には、一定の収益をあげるようにこまごまと認可の基準が書いてありますが、中小私鉄の監督法規の基本であります地方鉄道法は大正八年の法律でございまして、その制定の趣旨、その他につきましても、その当時の社会情勢を反映しておりますものですから、そこまでのことが出ておりません。したがって、やはり会社経営できまするような、何と申しますか、監督のみに走らないで、一方会社助成するような意味の面を差し加えまして制度を改正する必要があるのじゃないか。認可事項等のようなものは、最初こそ事業が小さかったのでございますが、現在のように大手私鉄を初め、中小といえども世間の中小企業よりは大きいのでございまして、一応自主性を持っておりますので、会社の責任にある程度まかしてもいいようなものもあろうかと思います。幸いに、内閣におきましても許認可事項の整理というようなことも考えておる際でございますので、許認可事項は一方においては整理し、一方においては会社の立ち行きますような助成措置なりあるいは運賃の基準といったようなものを法律に織り込むことによって、この公共性と営利性との調和をはかっていくという手があるんではないかと思っております。
  32. 關谷勝利

  33. 山口丈太郎

    ○山口(丈)小委員 簡単に一、二の点でお伺いをしておきたいと思います。  この「中小私鉄経営分析結果の大観」を中心に川井参考人からいろいろ御説明がありました。そこで私はこれを中心に、一、二御質問を申し上げたいと思います。  この中でまず最初に人件費増加について強く苦衷を訴えられております。私も私鉄の従業員として三十年も過ごしてまいりましたので、その実態については十分承知いたしておるつもりであります。その実質的な経験から見まして、他の生産部門の従業員の給料に比べて交通従業員は常に低位に置かれておる。これはここに報告にあり、説明されておる、そのとおりと私は思います。しかしその低い賃金に置かれておりますのは、いろいろのいわゆる現実的な障害があるからであります。そこで低位に置かれているために、せっかく養成した従業員が他産業に流れていく、したがってここに重大な問題をはらんでいる、こういうことが言われておるのであります。  他の産業は、他人の生命、財産に責任を持つというようなものはありませんが、われわれ交通従業員というのは、直ちに人命、財産に対して全責任を負わなくてはならぬという職務であります。でありますために、給料が安いからといって他の産業にどんどん流れていってしまう、せっかくの養成された熟練工がどんどん流れていって、新しく入ってきた未熟な従業員が現場で従事することになれば、これは生命、財産を完全に輸送する責任を持つことができない事情になり、そこに他産業との間において均衡のとれた賃金の策定が必要になり、同時にその安定策というものが必要になる。こういうように私どもは考えるのであります。ところが、それは今日では、特に中小企業においては、とうてい望むことができないような状態にあり、これはまことに遺憾に思うのであります。したがって、これについては根本的にやはり考え直す必要があり、その施策について私どもは重大な関心を持ち、この国会の運輸委員会の中においても常にこれの理解を求めてその実現のために努力してきたのでありますけれども、今日においてなおその実現を見ないのは、はなはだ遺憾に思うのであります。そこでこれについて経営者側として忌憚のない御意見を伺っておきたいと思います。  第二には、それと関連いたしまして、この従来員の職種別養成費にどれくらいおかけになっているか、たとえば運転手、車掌あるいは駅務員については、従業員一人を養成するにあたって職種別にどのくらいの経費が見込まれているか、これもわかっておりましたら、ぜひひとつお示し願いたいと思います。
  34. 川井健太郎

    川井参考人 いまのお話一つ一つごもっともでございますが、ことにバスの運転手につきましては、御承知のとおり、やかましい法律規定がございまして、いわゆるトラックに乗ったからといってすぐにそのトラックの運転手を持ってくるわけにはいかないのでありまして、三年なら三年以上やらなければならぬというようなことがございます。したがいまして、バス運転手につきましては、大都会中小都会との賃金の差はございましょうが、これはまず大体そう無理のない賃金を与えていると思っております。ただ、車掌につきましては、女の子供さんが近ごろでは車掌になりたがらないで、みなほかのほうの事業に参りますので、やむを得ずとってまいりましたところの制度がワンマンカー・システムでございます。ところが、このワンマンカーは、踏切があるとか、それから非常に狭い道で曲がるのに困難する。そういう個所とか、そういうところの路線を通る場合には御許可にならない。したがいまして、やはりある最低の人数は確保しなければなりません。したがいまして、私どものほうでは女子の寄宿舎を、鉄筋コンクリートの約百人収容することのできる三階建てのものを五つ持っております。これはどういうことかと申しますと、いままでは、実は静岡県は人手がほかの県よりも非常に不足する県でございましたので、三、四年前までは東北地方からだいぶ参りました。そういう人が来ました場合には、やはりそういうりっぱな施設をしてそこに入れてやるということでみんな来てくれたものです。したがいまして、ほかの県から来ておる女の子供さんがバスの車掌の中に約百五、六十名おるのです。あと、いなかのほうへまいりますと、自分の家から通えるものですから、そういう人はまた別でございますか、そこで結局車掌の数は、いま私のほうは大体六百両のバスを持っておりますが、六百両のバスを全部女の車掌を乗せてやるだけの人数はないのでございます。したがいまして、ワンマンカーをその間に採用しているというようなわけでございます。  それから一人当たり一体どれだけ金がかかるかということになりますと、これはちょっといま計算したものを持っておりませんが、会社にございますから、あとで差しつかえなかったら差し上げてもいいのですが、いまここに資料を持っておりませんので、大体の数字だけ申し上げたのではかえって間違うと失礼に当たりますから、あとから申し上げてもいいのでありますが、要は、何と申しましても、交通に従事するところの従業員諸君は人命を扱うという意味におきまして、われわれは非常にその点をいろいろと心配をいたしまして、何とか休養でもとってやれるようなりっぱな制度にしたいということで、男子の独身の者のためにも今度寮をつくり、それから世帯持ちの運転手にも寮をつくるというようなことをやってまいっておりますれども、何しろそうそう金が回りませんので、この点は十分の施設をやるということには、ここで申し上げるだけのあれはございませんが、何とかやれることはやっておるつもりでございます。
  35. 山口丈太郎

    ○山口(丈)小委員 私思うのに、バスの運転手等は免許をとるために会社で養成をされているところもありますけれども、大体自分で学校に通って、あるいは現場で習得をした技術によって免許をとって会社へ入ってくる、こういう者が多いと思うのです。鉄道などに至ってはそういうものは全然ありません。これは間違っておるかもわかりませんか、私の記憶しておるところでは、新しく採用をしてそれをたとえば車掌または改札に仕上げるためには百万ないし百二、三十万、車掌または運転手ということになりますと多少の在社経験を要する。したがって、それらの人々を一人前に養成いたしますためには、ぐっと経費が上がりまして百五十万ないし二百万の金がかかる、こういうように私は聞いておるわけです。こういうように金をかけたものが賃金が安いために、どんどん他社に行ってしまう。そうして新陳代謝が非常に激しいということになりますと、さっき申したように、人命財産を安全に保護することができない。しかも事故を起こせば、それはその従業員の全責任であることはもちろんでありますが、その責めをのがれようというのではありませんけれども一つは社会的な責任、社会が負わしておる責任というものも、これを看過するわけにまいらぬ。そこで経営者のほうでもこれに対しての責任は持てなくなる。これでは公共性というものがいずこにありやということになるので、したがってこれらについてはもう少し政治的にこれは解決して、やる無意がなくてはならぬ、このように私は考えておるわけです。  経営者協会のほうにお願いいたしますか、バス鉄道と分けまして、それら従来負の養成等に必要な経費調査資料かありましたら、ひとつお送りを願いたいと思います。  第二に、先ほどから問題になりました企業性と公共性の問題についてでありますが、ここに出されておりますように、そもそも日本国有鉄道は、鉄道法によって私企業を国有にいたした、これはいわゆる国家産業の発展、文化の開発等に必要な動脈である交通機関国家調整しようとしてできたものだと私は思うのであります。したがって、その戦前国鉄国家的要請に基づく公共性はきわめて尊重せられていい。国鉄のそういった使命を果たさせる培養線として私鉄が認められた。私鉄はその意味において多額の助成金あるいは補助金を交付されて、かろうじて生命を保っていた。こういうことになっておると私は思う。  ところが今日の国鉄は、終戦後公社となり、その性格は全く一変した。そして国鉄といわず都市交通といわず、すべてが特別会計もしくは独立採算制によって企業的な性格をしいられることになった。私企業においても、占領政策のためにそういった助政策は全部打ち切られた。にもかかわらず、通勤・通学等のいわゆる公共性のある運賃設定については、なお国家的使命を強制されておるといって過言でない、私はこう見ておるのであります。これでは私企業が成り立つわけがありませんし、都市交通もしたがって私企業のほうに向けて国鉄も同様競争を激化させる結果になっておる、こう見て差しつかえないと私は思います。  一体私企業である私鉄あるいは私営のバス経営者が、これだけの国家的使命を背負って、なおかつ公共性を維持するということは、私は無理じゃないかと思うのですけれども、いかがですか。さっきからも陳述がありましたけれども、ひとつ明確に見解を示してもらいたい。
  36. 川井健太郎

    川井参考人 たいへんごもっともな御意見でありますが、その御回答を申し上げるのは非常にむずかしい問題でございます。  それで、これはちょっと余談になりますが、ほかのことから申し上げますと、実は強制賠償保険というものが自動動車にございますね。あれが昨年の二月から――改正前は両八千五百九十円であったものが三万七百七十円、三・六倍に上げられたわけでございます。私のほうの会社といたしますと。それによって、いままで払っておったところの金が三十八年度では三百三十二万五千百四十一円であったものが、千八百十八万五千七十円に一挙上がりました。そこで、実はこの強制賠償保険というものが制定されました当時におきまして、私どもはトランクとかタクシーをバスと一緒にすることはおかしいじゃないかということで、当局にだいぶ迫りました。と申しますことは、ひき逃げがあった場合にも、やはりそのひき逃げに対するところの金を出さなければならぬ。それで、そのひき逃げの金が、その当時の金で、いまから七、八年前、あるいは十年になりますか、ひき逃げの金は一両当たり約二円何ぼでしたか、それが入っておったわけでございます。私はそのときに、これはおかしいじゃありませんか、バスにはひき逃げはないのです、ひき逃げをバスがやるようだったら、そのバス業者はその仕事はやれないのです、なぜわれわれからこれを取るのですかと言ったら、それは、大きな事業者からまとめてプールにしなければ、金が払えぬ、このようなお話で、これは運輸省のほうと大蔵省のほうとのいろいろのお話で、結局どうしてもそうせざるを得ないということで、われわれは目をつぶったのであります。さらにそのときに私どもは、バスは出した保険料以上に上回ることは絶対ありませんよ、だからしてバスバスだけで集まって、日乗協で自家保険をやって、そうしてその自家保険で得たところの金でバス事業振興のために使うようにやらしてもらおうじゃないかということで、だいぶ働きかけたのですが、大蔵省はがんとして聞かずに、今日日までに至っておるのであります。しかもそれがさらに八千九百五十円のものが一挙三万円に上げられてしまった。そこで、ことしはそれじゃわれわれのほうでこれから幾ら返ってきたかといいますと、大体四割五分は持っていかれてしまったのです。それはやはりそれで、ゆうべもちょっとテレビを見ますと、佐藤総理大臣との話で、いわゆる百万円という話をしておりました。百万円じゃ安いと申されますが、確かに、安いかもしれませんけれども、われわれからこんなに持っていかれまして、百万円以上も出されたのじゃ、ますますもってわれわれのほうの事業がやれなくなるわけでございます。どこの保険でもたいていリベートという割り戻しがあるのです。ところがこれには割り戻しも何にもない、十年以上金を払って、それをみんなトラックとかダンプカーとか、そういうものの保険のあれに持っていかれておるというのがこのバスの実態でございます。  そういうわけでございまして、公共性ということから申しますと、その点もやむを得ないのでありますが、そういうふうに、いわゆる税金でないところの税金を取られているようなかっこうの状態のものが非常に多いのでございます。そういう点につきましては、ちょっと余談になりましたが申し上げまして、それでいまの山口さんのお話にお答えになるかならぬかわかりませんけれども、そういうことにもう少しきめのこまかい行政をやっていただいてやるならば、われわれといえども何とかそういう共同の組合でもそれによってつくって、何か従業員のための福利施設全般のほうにあれするとかなんとかいうのはできるのじゃないかということを考えておる次第でございまして、いまの山口さんのあれに対しましてあまりむずかし過ぎて私一経営者として意見はございますけれども、ちょっと申し上げにくいので、これだけでごかんべん願いたいと思います。
  37. 古谷善亮

    古谷参考人 簡単にお答え申し上げます。  結局、公共負担を課せられておることは非常に重圧ではないかというお話でございますが、これは制度的に考えますと、結局国鉄は一番最初の鉄道国有法によって、また私鉄は免許によって独占事業ということになっております。その独占性が与えられました反面において、公共負担を受忍しなければならぬ義務があるというのが制度的の解釈だろうと思います。これはひとり定期通貨が安いということばかりでなく、いろいろの公共負担かあります。たとえば郵便物を安く送るとか、そういったようなこと全部がやはり公共負担だろうと思います。しかし、その独占性がいま失われまして、不完全独占とでも申しましょうか、かつての時代と違ってまいりましたく今日におきましては、それをやはり根本的に考え直してみる必要があるのではないか。したがって、あるいは極端なことを申しますれば、もう免許とか、あるいは免許があっても運賃認可は自由にやるというようなことまでいえるのであろうかと思いますけれども、要するに、問題は運賃の合理性ということがまず先決でありまして、合理的な運賃をやりまして、かつなお足りないものにつきましては、公共負担の部分について補償をいたしますなり、あるいはそういうことを抜きにして全般的について補助を要補するということになってまいろうかと思うのでございまして、やはり問題の基本といいますか、先決は、合理的な運賃制度のもとにおいて正常な経営ができるということを確保する、制度的にも確保するということが私は先決の問題だと思っております。  以上、お答えになったかどうかわかりませんが、考えの一端を申し上げます。
  38. 川井健太郎

    川井参考人 ちょっと補足させていただきます。  いまの公共性云々ということにつきましては、地方鉄道と国有鉄道関係、これは昔からいわれておりまして、明治三十九年に私鉄国鉄の倍近くあったわけです。私鉄が五千四百キロに対しまして、国鉄は二千何百キロしかなかった。それが要するに小さなものが大きなものをのんだわけです。そういうような意味におきまして、いわゆる枝線だけとられたものですから、国鉄とあれとが親子のような関係でずっと戦前までやってまいったというのが実情でございます。そこで、そういうようなわけで、その他いろいろの恩典がございましたので、たとえば通勤の割引とか通学の割引とかいうもの、ことに昔は中学校、いわゆるいまの高等学校ですが、中学校というものは県内に五つか六つしがなかった。そこで、いなかの子供さんがそれに通うためには、どうしても文教政策上、それを割り引かねばならぬ、割引をしてそこに通わしたというのが実情でございます。ところが、それが戦後におきましては、そういう一切のいわゆる恩典というようなものはみんなとられて、義務だけ残されてしまった。ことに、運賃が、インフレーションのために上がるたびに、割引率をだんだんと上げられていった。したがいまして、今日、国鉄のように九割八分というような何だかわけのわからぬ、これは運賃じゃない、そうなると、ただでございます。ただで運ぶ、ような、そういうばかな割引制度ができてしまった。  そこで、さらに通勤のことを申し上げますと、現在通勤をしておられるところの大会社、大企業、それから官庁はどうですかよく知りませんけれども、大体みんな福利厚生施設で、御本人は払っておいでにならぬのです。全部がほとんど会社並びに大企業負担になっておる。そうしますと、われわれのような中小私鉄が、大企業のそういう厚生福利施設になぜ公共割引をしなければならぬかという理由がどうにもわれわれには納得がいかないのです。これは私どもはいつも申し上げてあるのでありますが、いや、それは全体の七割五分しかなくて、あとの二割五分は自分で出しておるのだから、その人たちに迷惑をかけるからというようなお話がちょいちょいあるのでありますが、どうもそういう点でわれわれどもは割り切れないような感じを持っておるというのが実情でございます。
  39. 山口丈太郎

    ○山口(丈)小委員 時間がありませんから、もう一点だけ。  いろいろ私もあちらこちら聞いてみますと、こういう声があります。国の補助または融資等を受けたいのだが、それを受けると国の監査がきびしい、いわゆる経営の自主性がそれによってそこなわれることが憂えられる、こういうことで補助あるいは国の融資を忌避するといいますか、そういう傾向があるのではないか、こういうように思われるのです。そういうことをちょいちょい耳にすることがあります。しかし、これは主として大企業に多いのだと私は思います。中小企業ではそういうことは言っておれないだろうと思うのです。そこで私はこの私鉄整備法等ができますときにも、いろいろと監査の強化等についてここで激論をいたしました。けれども、ある程度国の助成措置を受ける場合には、投資に対する配当すなわち利益の分配寺についてある種の制限を受けることもやむを得ない、あるいはその補助または融資を受けた場合に、その業務監査というものが多少国の手によって行なわれることも、これもいわゆる国民の金を使うのでありますから、したがってこれも業界としてはある程度了解をすべきではないか、このように考えておるわけです。こういうことがないとどうしても国の助成策を積極化することが困難ではないかというふうに私には思われるのですが、これについての見解をお聞かせ願いたいと思うのであります。  それから、ついでですからもう一点伺っておきますが、先ほどから非常に私の質問がむずかしかったようでありますが、少なくとも私企業といえども、いま申し上げたように、重要な公共性を持っておるのでありますから、しかし一方においてはそれは私企業であり、さきに申したように国鉄あるいは都市交通においても、戦前とは全くその性格を一変して独立採算性による企業性を強調せられ、しいられておる、こういう相矛盾した交通行政というものが今日行なわれておるといって過言でない、したがって、これらを解決していくということは、これはあまりにも今日までまいりましては現行の運輸行政というものがいかに時代錯誤のものであるかということを端的に物語っておるものと思うのですけれども、だからといって、それを急に戦前のような行政に返せということもこれまた非常にむずかしい問題だ。しかしながらこれを組合側からいいますと、私鉄総連等は少なくともさきの第一回のこの委員会において三橋参考人から具体的にその対策を示されましたように、やはりこれは単なる労働組合の見解というよりも、むしろ進んで労使間においてこれをいかに具現していくかということに努力を払うべきではないか、こういうように考えるわけです。  そこで全体的に言いますと、どうも苦しい、現在の経営立場をのがれようとするのあまりでありましょうか、ことさらに経営者によっては組合のそういった建設的な意見をも、内面は取り入れるにしましても、表面上腹を削って協議をして、少なくともその企業の前進確保のために努力をするという傾向が見られないのじゃないかというようなことを私は思っておるのでありますけれども、さらに経協なり、いま社長お見えになっておりますから、川井さんからどういう見解かひとつお聞かせを願いたい。  それから総連の三橋さんにお伺いしますが、もし経営者側のほうで具体的の経営についてそれをどうするかということについて、そういう提案がされた場合、どういう態度をとっていかれるか、この点だけひとつ双方から聞かせていただきたいと思います。
  40. 古谷善亮

    古谷参考人 私のお答えできます範囲につきまして一点お答えいたしますが、補助等を付与せられました場合に、監督官庁が監査をいたしますことは、これは当然でございまして、これを拒む何らの理由もございません。また会社もそれをおっくうがりまして、補助をいただくのを渋るような態度はおそらくないと信じます。またこれは私の過去の経験から見ましても、そういう事例は一件もございませんでしたから、はっきり申し上げられると思います。  その他の点につきましては、私か申し上げるのが適当であるかどうかわかりませんが、交通事米はほかの産業と違いまして、製品に当たりますものがストックがきかないで、その場で消費されるものでございます。したがって、いわゆる機械化でありますとか、オートメイション化がきかないのでございます。つまりよく言われますが、自動車一台、バス一台ふやしますと人手が二人要るわけでございまして、どうしても従業員諸君に依存しませんければ、完全な、有効な輸送ができない性格のものでございますので、それは労使協調しまして、事業の伸展に努力しなければならない性質の事業だと私は思います。有効な案が提示されますならば、双方とも誠意をもってこれを検討すべきがほんとうだと思います。具体的の問題につきましては、私よく現状をつまびらかにいたしませんので、当事者の方からお答え願うことが適当だと思います。
  41. 川井健太郎

    川井参考人 これは私の会社のことを申し上げるのでございますが、私の会社では、組合定期的に協議会を開きまして、今度会社はこういうことをやろうと思うが、諸君の考えはどうかというようなことを一々聞いております。したがいまして、労使間におきまして、おれはそんなことは知らなかった、何で会社はあんなことをやったんだというようなことは全然ございませんことを申し上げます。
  42. 三橋幸男

    ○三橋参考人 ただいまの御質問に関連しまして、若干企業性と公益性の問題について触れておきたいと思います。  経営者の現状のほうは申されましたが、私ども労働者側の立場から申しますと、やはり株式会社をつくり資本を投下して経営する以上、経営者としては企業性を重点に経営をせざるを得ないと思うのです。ところが、私ども従業員として、また一般国民として見た場合に、今日公益性というものが非常に阻害されておる。たとえば競争が非常に多いわけですから、最初は少々の赤字も克服して赤字路線もやっておったが、しかしそういうところについても公益性を離れて企業性を考えざるを得ないということになりますと、結局最小限度のダイヤを組み、最小限度のサービスしか行なわれない、こういうことが今日具体的に指摘できると思います。そこで運賃を上げ収入を上げることによって公益性か実現できるようなものになるかと申しますと、決してそうは相ならぬと思う実情があるわけです。もちろんこれは地域の条件や状態によって違いますけれども、特に公益性はあるが採算がとれないというようなところは、むしろ運賃を上げたら逆に利用者が減ってしまう。それは自転車に流れたり、バイクに乗ったり、そういうことから収入が滅になるという事実さえあるわけですから、何よりも、公益性があるが採算がとれない、こういうものについては、国家助成というものがやはり前面に立たなければならないと思うのです。  また、最終的なお答えとして申し上げたいのは、これは経営者協会のほうもそう申しておりますけれども地域地域企業の立地条件が全部ばらばらで違うわけです。特に運賃の問題等につきますと、地方の沿線の産業の状態は、地域住民の状態、特に低所得者層が地方には多いわけですから、財政負担能力がどの程度あるかというようなことも十分に勘案したものが考えられないと、助成法をつくるにしても、やはり問題があるところだと思います。したがって、運賃の限界というものは必ずそこにあると思いますから、そういった点についても、地域住民の、利用者の代表者の意見、これは静岡鉄道ではモニター制度を利用しておると言われましたけれども、これはもう少し検討していただいて、ある程度権限を持つような、そういった民主的な状態の中で、たとえば沿線の利用者代表の意見、あるいはそこに働く労働者の代表の意見、こういうものを十分にひとつ民主的な機関に瞬間をしていただいて、そういった上に立って行政官庁の的確な御判断をいただく、そういうことをぜひお考えいただかないと、せっかくつくった法律が、実際には何の用にもならない、こういったものになりかねない危険を持っておるのではないか、こういうことを申し上げておきます。
  43. 關谷勝利

    關谷委員長 この際、参考人方々に、小委員会を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、貴重な御意見を承り、まことにありがとうございました。本問題の今後の調査の上に非常に参考になりましたことと存じます。ここに厚くお礼を申し上げます。次会は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時二十二分散会