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1965-03-10 第48回国会 衆議院 運輸委員会中小私鉄振興対策に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十日(水曜日)    午前十時十六分開議  出席小委員    小委員長 關谷 勝利君       浦野 幸男君    小渕 恵三君       大西 正男君    勝澤 芳雄君       肥田 次郎君    矢尾喜三郎君       山口丈太郎君  出席政府委員         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      佐藤 光夫君  小委員外出席者         運輸委員長   長谷川 峻君         運 輸 委 員 久保 三郎君         運 輸 委 員 泊谷 裕夫君         運 輸 委 員 内海  清君         運輸事務官         (鉄道監督局民         営鉄道部長)  岡田 良一君         参  考  人         (長崎電気軌道         労働組合執行委         員長)     木戸 力雄君         参  考  人         (北陸鉄道株式         会社社長)   柴野和喜夫君         参  考  人         (加悦鉄道労働         組合書記長)  中島 邦雄君         参  考  人         (北陸鉄道労働         組合書記長)  平田  宏君         参  考  人         (上田丸子電鉄         株式会社専務取         締役)     古橋喜久雄君         参  考  人         (長崎電気軌道         株式会社社長) 脇山 勘助君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小私鉄振興対策に関する件      ————◇—————
  2. 關谷勝利

    關谷委員長 これより運輸委員会中小私鉄振興対策に関する小委員会を開会いたします。  中小私鉄振興対策に関する件について調査を進めます。  去る三日の当小委員会において、中小私鉄現況とその振興対策について参考人より御意見を聴取したのでありますが、本日は経営者側組合側から、それぞれの立場から御意見を承りたいと存じます。  この際、一言小委員会を代表いたしまして、私よりごあいさつを申し上げます。  参考人方々には御多忙中のところ、わざわざ御出席くださいまして、まことにありがとうございます。どうぞそれぞれの立場から、私鉄経営実情及びその振興対策等について忌憚のない御意見を拝聴することができれば幸いと存じます。  本日御出席参考人は、北陸鉄道株式会社社長柴野和喜夫君、上田丸子電鉄株式会社専務取締役古橋喜久雄君、長崎電気軌道株式会社社長脇山勘助君、長崎電気軌道労働組合執行委員長木戸力雄君、加悦鉄道労働組合書記長中島邦雄君、北陸鉄道労働組合書記長平田宏君、以上六名の方々であります。  なお、御意見の開陳時間はお一人十五分程度お願いをいたします。  それではまず北陸鉄道株式会社社長柴野和喜夫君からお願いをいたします。
  3. 柴野和喜夫

    柴野参考人 石川金沢市上胡桃町五十二番地北陸鉄道株式会社取締役社長柴野和喜夫でございます。  本日は、われわれ中小私鉄のいろいろの実情についてお聞き取りをいただき、まことに感謝にたえない次第でございます。  われわれの会社状況につきましては、時間の関係もございましたので、お手元へ簡単な数字を差し上げてございますので、それにより御判断いただきたいと存ずるのであります。  われわれの会社は、石川県全般を受け持っておるのでございますが、この会社は、戦時中にいろいろの会社を強制的に合併してでき上がった会社でございますので、鉄道その他当初から計画的に敷設されておらないために、いろいろの不合理な点があるのでございます。  現在、従業員数は約三千六百人、鉄軌道許可キロ数は約百二十七キロ、自動車免許キロ数は千三百五十キロ程度になっておるのでございます。車両は鉄軌道が百七十九両、自動車が四百七十一両で、最近一年間——スプリントがございますが、鉄軌道走行キロ数が五百七十一万一千キロ、自動車が二千百七十三万一千キロで、合わせまして、約一億人ほどの人を運輸しておるような現状になっておるのであります。  当社は、いろいろ戦後被災都市でございますがどちらかと申しますれば、裏日本現状というものは、御承知のように、年々人口が減っていっておる。われわれの県におきましても、ここ二十年間くらいほとんど人口増加がないのでございます。また、積雪その他によりまして非常な災害を受けておりますために、この積雪地帯における私鉄状況は、三十九社のうち、細々ながら配当ができるのは五社で、三十四社が無配の現状になっておるのでございます。したがいまして、当社におきましても、現在までのところいろいろの努力はいたしております。また政府にもわれわれの五カ年の合理化計画というものを提出しまして、その線に沿うてやっておりますが、それらの内容等については時間がかかりますので省きますが、現在のところ、四十年度で完全に償却をいたしたといたしますれば、おそらく八億五千万程度赤字が出るのではないかと考えておるのであります。これらの赤字の大きな原因は、裏日本がいろいろの災害に見舞われておること、また副業その他を大手のように何らすることができない、ほとんどすることができない。他の、運輸収入以外に依存することが困難であるというような点であるのでございます。そうしてまた現在の線を見ますと、公共事業でございますので、ただいま申しましたように、二千キロにわたる自動車等もやっておりますが、自動車路線につきましても百三十路線ございますが、そのうちの百一路線は不採算路線であるのでございます。また別表にございますように、各線別営業係数を出しておりますが、三十九年の推定でも百円の収入に対して百五十七円の支出をしなければならないほど全部の鉄道赤字になっておるのでございます。このような大きな原因一つは、やはり収入人件費のバランスがとれないところにあるように思う。ただ労働賃金等につきましては、高いとか安いとかいうことは相関的な問題でありまして、全国平均二万二千円の中小私鉄のものよりは幾らかわれわれのほうが高いのでございますが、三十四年に私が就任して以来、ほとんどうちの従業員ベースアップ全国平均または全国平均以下のベースアップしかしておらない。たとえば三十九年を申しますと、三千三百円の全国統一闘争によるものに対して三千百五十円しか上げておらない。このようにいたして、いろいろと組合とも協力していただきましてやっておりますが、何分にも裏日本というものは収入源が非常に少ないということから、ただいま申しましたようにほとんど七、八割が不採算路線鉄道は全部が不採算であるという現況内において公共事業としての使命を全うしようということは容易ならぬ現状にあるのでございます。  御承知のように、昔は国鉄と関連してある程度損失補償をいたしたのでございますが、現在においては、鉄道整備法によります規定というものはほとんど有名無実になっておるような現況になっておるのであります。先般自民党の政調会雪寒地帯特別委員会において、政府側中小私鉄等に対する対策についての御意見を拝聴いたしておりますと、一つ鉄道に関してのお話でございましたが、第一に、運賃を適正な運賃に上げてやろう、そして第二にどうしてみても不採算路線についてはこれを撤去して他の交通機関にかえることはやむを得ないので、そのような考え方をしておる、言いかえますれば、国土開発その他特殊な関係のない地方鉄道については、鉄道の維持が困難である場合においてはバスを代行することはやむを得ないという考え方を持っている。第三には国土開発その他の関係から保存しなければならない鉄道については、これに対して鉄道整備法による補助金を出してやろうということになっておるのであります。現在までのところ、運賃の問題については、運輸省もきわめて積極的にやっておりますが、われわれの現状から見ますれば、先般二割五分程度運賃を値上げいたしましたが、おそらくは、現在の運賃を五割、六割上げましても、採算線にとうてい達することができない現状になっております。しかしながら、ある程度その重みをバスのほうにかけるように順次転換を進めておりますので、私が就任いたしましてから——ただいま四百七十両のバスがあると申しましたが、この間約二百両ほどふやして、鉄道の分野よりは収入の源をバスのほうに求めておるのでございます。したがいまして、バス収入鉄道のほうに若干回して、ようやく今日糊塗してまいっておるのでございますが、これらもおのずから限度に達しておるのであります。この運賃についても一つ大きな問題がございますのは、道路運送法によりますと適正の運賃ということが書いてございますが、いま運輸省方針から申しますと、自動車自動車鉄道鉄道運賃の策定をいたしておるのでございます。  ただ経済企画庁におきましては、会社全体を見て、赤字であり経営の困難なものはやはり運賃の更正を考えなければならないという考え方をいたしておりますが、運輸省のほうはまだばらばらな考え方に立っておられるように考える。それらについては、たとえば大手あたりがあるいは百貨店をやっているとか、いろんな点から見てばらばらにしなければならないいろんな理由はあるのでありますが、中小私鉄については全体としてある程度政治考慮をいただかないと、この運賃等については、鉄道がいかに赤字であるからしでいまの運賃を倍、三倍にするわけにはいかない。どうしても全体として、地方交通というものを維持していかなければならぬとすれば、バスであるとかあるいは鉄道であるとかいうようなことを区別せずに考えていただかなければならない点が、ことに積雪地帯中小私鉄にあるのではないか。いま運輸省当局お話でも、鉄道がどうしても維持困難な場合には、バスその他に転換する指導方針をとるということを言っておられる以上、その間に有形無形関係をつけて御判断をいただかなければならぬ、こういうふうにわれわれは考えておるのですが、現在のところ、これらについてかなり政治的な考慮はしていただきつつありますが、まだその点について隔靴掻痒の感があるのを免れないという現状になっておる点について特段の御関心をお示しいただきたいと思うのであります。  鉄道撤去という問題につきましては、われわれは先般一つ撤去いたしました。また国土開発上やむを得ないものについては社会の流れに沿うて撤去もやむを得ないという考え方をして、われわれの合理化計画というものを進めております。いまどの線をどうはずすかということについては、きわめて刺激的な問題でありますので、ここで申し上げることははばかりますが、大体運輸省方針に従って、国土開発上必要なものについては赤字であってもどこまでも維持するが、その他のものについてはわれわれとしてはやむを得ない場合があるんじゃないかという考え方をいたしておりますが、鉄道撤去というものは、労働組合の問題は一応おきまして、地方から相当な抵抗をこうむっておるのでございます。この点について、従来の運輸省の態度は、その困難な問題について地方同意書を持ってこなければなかなか運輸審議会にかけていただけなかった。これではいつまでたってもできないのであります。ある程度運輸省が策定して、これは国土開発上、地方交通上支障がないという考え方にお立ちになったときには、大局的な御処理お願いできないと、この問題についての処理は非常に困難である。御承知のように、五年、十年もこの問題にかかり果てている会社があったような現状で、この点についても、順次運輸省の御当局の御指導方針も変わりつつはありますが、一般の御考慮お願いいたさないと、実行できないのではないかというふうに考えるのであります。  第三の地方鉄道の残っておるものに対して補助金を出す、現在各社合計いたしまして約三十一億ほどの赤字を累積しておりますが、もちろん赤字であるから補助するということは、これは困難であります。やはり国民のお金でありますからある程度合理化をし、やむを得ないものについて補助金を出すということにいたさなければならぬと思いまして、今般四十年度の御審議をいただいておる予算の中にも、私の社に対して三千二百五十万程度赤字補助予算が計上されておるのでございますが、その際に運輸省大蔵当局の間の内規と申しますか、実はアンタント条項が非常にじゃまになっている。その大きなものは保有財産保存費ということばを使っておられるようですが、要するに線路補修費等につきまして全国平均の三分の二を割るものでなければ補助をしないというアンタントがあるのでございます。全国平均が千三百九十八円、約千四百円でございますが、うちのほうは人件費だけでも千四百円になっておりまして、われわれの一番根幹であり石川線というのはこの補助の対象からはずされたような結果になっておるのでございます。こういう点については、ことばをかえて申せば、補修をよけいやったものについては補助金をやらない。赤字であってもやらないというようなきわめて不合理な点があるのでございますが、この点について大蔵当局運輸当局との間のお話し合いがまだ十分ついておりませんので、この点等についての御改正をいただかなければ地方鉄道整備法のこの条項が十分に運用できないのじゃないかというふうにおそれておるのでございます。  以上、運輸省方針で申された点について、若干われわれの私見を申し述べて実情を申し上げたのでございますが、根本は、このような鉄道整備法であるとかその他であるといったような法律は非常にいい法律でありますが、もっと根本的な対策を立てなければならないのじゃないかということを私は痛切に感ずるのであります。  その対策等につきましては現在私鉄経協その他でいろいろな点をやっておりますが、たとえて申しますれば、石川県なら石川県の交通秩序をどうするか、どの線が国土開発上必要なのであって、政府としてもこれはこの方面の保存を命じなければならないのではないか、あるいはその他をバスにするのか。また、いま申しましたように、たとえばわれわれの石川県について、他の会社から新たにバス路線免許申請がある。いま申しましたように、約七八%からの不採算線で二二%だけが採算路線なんだ。その採算路線のところへ他の社が食い込んでまいりまして、不採算路線のところへはだれも手をつけるものはおらぬ。そうすればどうしても現在やっているものがやっていかれなくなる。しかしながら、運輸大臣は、先般の予算委員会分科会におきましてサービスのためにある程度の競争というものはやむを得ないということを申されておりますが、その点等につきましても中小私鉄現状というものを御考慮いただきまして、十分な御配慮をお願いいたしたいのであります。  その根本は、やはり政府として交通秩序をどうするのか、石川県の交通はどういうふうに持っていくのか、全国交通はどう持っていくんだというふうな一つの信念と計画のもとに免許が行なわれ、あるいはいろいろなことが行なわれなければ、われわれ交通事業に携わっている者は、いま七十何%の路線を捨てようといっても捨てられません。これは地方状況上そんなことは許されません。であるとすれば、そこに一つの全般的な政治計画というものがなければならないというふうに考えておるのでございます。  私たちはいま北陸三県を見ておりまして、おそらくはこの三県の各会社は合併くらいをして合理化をはからなければならないのじゃないかと私は痛切に感じておるのでございます。しかしながら、これらはいまの民間の現状からいきまして、あるいは船舶等における先般の統合をおやりになったように、何か政府に確固たる国策を制定されまして、その方針に基づいてある程度の干渉その他が行なわれなければ、現状においてはほとんどこれが不可能でございます。そういったような根本的な点について、私鉄経協を通してわれわれの意見をまた十七日の当委員会に陳述させることにいたしたいと存じております。どうかそういう根本的な問題について御考慮を賜わりたい。  繰り返して申しますが、ともかくわれわれはまゆに火がついているほどいま痛切に会社経営することに困難を感じております。ことに積雪地帯においては痛切な考え方をいたしておりますので、いま時間の関係で非常にはしょった説明を申しましたが、一応会社現況はお手元に差し上げてございますので、それらによって御判断を賜わり、特段の御考慮を賜わるようお願いいたしまして陳述を終わりたいと思います。
  4. 關谷勝利

    關谷委員長 次に、古橋参考人お願いをいたします。
  5. 古橋喜久雄

    古橋参考人 上田丸子電鉄専務取締役古橋でございます。  本日、私どもが平生非常に困っている問題について諸先生の前でその実情を訴え、かつ対策についての意見を述べさしていただきますことを非常に感激いたしております。ただいま柴野社長が申された要点については同意見でございますので、重複を避け、かつ諸先生には、全国いろいろな私鉄の様相は呈しておりますけれども、中小が行き悩んでいるということの御研究と御認識をいただいているものと思いまして、私は上田丸子電鉄のデータを基礎にし、また取り巻く環境を御報告申し上げ、これに対する対策について十五分の間に申し上げたいと存じます。  上田丸子電鉄上田市を中心といたします三方向合計三九・四キロの地方鉄道と五十六両の路線バス並びに観光バス、六十六両のタクシー、これを営んでおりまして、六百五十人の社員と一億六千万の会社でございます。周辺事情上田市が七万二千、丸子町が二万五千、塩田町が一万六千、真田町が一万一千、合計約十二万六千という地方住民でございますが、先ほどのお話にもありましたように、三年間に千人ふえただけでございますから、人口の異同はございません。観光地といたしまして古くから別所温泉といわれておりますが、あまり発展はいたしておりません。最近スキー・ブームに乗りまして菅平スキー場発展が著しくなってまいりました。いずれにいたしましても、年間それぞれ二十万程度観光客でございます。  沿線状況といいますと、鉄道沿線には全部国鉄バスあるいは他社のバスが入っておりまして、非常に環境的に競合の場でございます。営業成績は三十八年度年一回三月決算でございますが、鉄道業収入一億七千九百万に対しまして三百七十九万九千円の赤字を出しております。路線バス貸し切りバスタクシーその他によりまして千四百五十九万五千円の黒字、これを五分の配当に振り向けたのでありますが、これは鉄道利益でないばかりか、前年廃止によって撤去いたしました八・六キロの部落線の電線、レール等を売却した金額が八百九十二万ありましたのと、前年度若干の利益を持ちながらゼロ配にしたこと、あるいは株主優待パスの二百株を五百株に上げたこと等を勘案いたしまして株主に五分の配当が可能であったと思います。本年の予想は一月末現在で鉄道線で千二百四十五万の赤字を予想しておりますが、合計事業で三百九十三万円の赤字を予想しております。これも先ほど申し上げました八・六キロの廃線敷レール売却益その他踏切道補助金等によって七百六十二万という営業外収入があったためにできたのでございます。これらはいずれも決算減価償却は一〇〇%見ておりますけれども、大事な社員退職引き当て金というものは全然見ておりません。  鉄道営業の趨勢と申しますと、五年間のデーダを詳しく調べますと、八百八十九万人の鉄道乗客の中で、五年後の三十八年にはわずかに八百六十万、九七%に当たる姿でありまして、二十八万人の減少を来たしております。この内容を見ますと、一〇%の定期客増加、二六%の定期外減少となっております。乗客の面では定期外の三六%が二八%に減少している次第でございます。  収入面では定期外昭和三十四年に六六%を占めたものでございますが、三十八年には五〇%、定期外定期も同じ。ところが定期のお客というのは全乗客の七二%を占めておりますので、これは鉄道は、結局全部朝晩のラッシュの客のみであるということになります。  どうしてこういう移動があったかということにつきまして、まずパス増加、これによってバスに移行した。これは一般客バスに移行することは当然でございます。これは道路の拡幅、舗装等によってますます増大する傾向にありまして、交通機関進展革命とも思って、やむを得ないことと思います。  一方、通勤客がどうしてそれほど人口がふえないのにふえたかということになりますと、農業構造改善を叫ばれる今日、働き得る主力の農民というのは全部通勤に向けられ、あるいは高校のほうに通学するものが多くなったというふうに感ぜられます。  観光地のほうの開発にも力を注ぎ、ずいぶん進展はいたしておりますが、これらはいずれも観光バスあるいは路線バスのほうに移行して、一般客には影響は及んでおらない次第でございます。なおかつ国鉄バス相互乗り入れによりまして、菅平行きの真田線のごときは、全く三十二年間連帯運輸を打ち切られ、観光客のルートは地方鉄道では影をひそめつつある。また最近の情勢によりますと、丸子線も、美ケ原方向に、信越本線並びに中央東線をつなぐ道としての地方鉄道連帯運輸を打ち切られる運命も近いことと思います。  これらの状態にあって、では上田丸子は必要かどうかという問題でございますが、先ほど申しました西丸子線と称する八・六キロのごときは、災害のために復旧困難で、ついに廃止を御許可願った次第でございますが、現在運びつつある乗客は、当社バス鉄道時代よりも多く運んでおります。貨物がございませんので、そういうことで移行できたわけでございますが、その他の鉄道線路方向は、いずれも五十年の歴史を持って地方産業や文化に貢献いたしてまいりました。また現在輸送しております七二%のラッシュ時の乗来六百万の人間は、これをバス代行しますと九十両のバスが必要となってまいります。上田丸子電鉄路線バス四十四両、稼働三十二両でいまやっているバス事業でさえなかなか経営困難で、九十両を動かすということは、二百十六人の社員をふやし、年間一億五千五百万の金が要るようなことになりまして、とうてい朝晩のラッシュの充当、バス代用ということは困難と思います。  また、国鉄貨車輸送網全国にありまして、菅平高原清浄野菜が一万八千トン、あるいは信州みそが一万トン、リンゴその他いろいろな重要物資輸送十六万三千トンというものが、上田丸子電鉄国鉄貨車をおもに使って全国に運び、また運び来たっているところでございまして、これが地方産業に決定的な重大要素を持っております。しかし、これは当社収入にとってみましては一五%にすぎない収入源ではありますが、地方産業について欠くべからざる使命をになって貢献していると自負いたしております。そういうわけで鉄道は必要である。また、これをトラックに置きかえた場合、バスに全部置きかえた場合、現在残念ながら長野県の二級国道並びに県道の状態は、現在の交通でさえも支障し、あるいは事故を起こしつつある状態でございまして、この何倍かの鉄道の持つ大量輸送の特典をバスに切りかえた場合の輸送状況などというものは、単に交通事故の倍加のみならず、交通麻痺を起こすことは現在の道路状況では必然でございます。そういう観点に立ちまして、地方産業交通のためにも、また道路運送交通のためにも鉄道というもりは損益にかかわらず存置さるべきものと私は確信しております。なお、これの振興対策には運賃適正化、これはいうまでもありません。国鉄国策鉄道運賃に右にならえということは、私企業である鉄道には経営上成り立たない問題だと思いますし、最も人命を大事に運べという苛酷なる監督あるいは指導を受けているものが、世の物価よりも低賃金で働けというようなことは、およそナンセンスだと思っております。輸送機関の協調の必要性、これは国鉄バスが乗り入れをして、四原則の先行、連結制等を破って、わざわざ本線同士を乗り入れて地方鉄道を全く無用化しているというようなことが大体一ついけないことと、鉄道本業においてもコーポレーションになったための独立採算制から貨物の集中駅制度をやって、私鉄がどんな連絡貨物があろうとも、それは打ち切るというようなことを言い出しておるようなこともいけませんが、これはいわゆるトランスポーテーション・コンビナートともいうべき意味から国鉄私鉄とはもっとタイアップしなければならないものと思います。  なお、地方私鉄沿線の他社のバスの場合、これは道路運送法六条の規定によってどんどん許可され、あるいは運行回数は地方鉄道業に何らの監督権を持たない陸運事務所が任意に許可、認可を与えておりますが、これによって地方鉄道の減収、たとえば上田丸子丸子線においては千曲バスの十住復増加によって月五十万の減収をしております。こういうことの、いわゆる同一地区における同一目標、同一輸送需要に対する交通機関の統制というものは先ほど柴野社長さんのおっしゃられたとおり、もう少し高い次元に立って統制あるいは指導、統合、融合さるべきものと思います。  また公共事業としては、課税というようなことは、およそ地方産業のため国策上の代行機関としてやっているためにこれは課税は免除さるべきものと思いますが、ことに赤字鉄道を運営する場合などは当然と思います。  踏切道整備法によって踏切道の施設をしいられておりますけれども、これも重大なる負担でございます。およそ開闢以来スピードはアップせず、貨物はあまり増加しない私鉄が、何がゆえにそういう世の中の交通あるいは交通事故防止のために尽くさなければならないか、要するに道路運送の道路交通のほうの原因者負担であるべきものと私は考えております。  国有化の問題も、一つの問題として鉄道建設公団が企画されて、必ずしも採算路線でなくとも地方開発のためにいま建設しよう、現在ある私鉄は、少なくとも五十年の歴史を持つものはそれだけの意義と必要があったわけでございます。あるいは経営不振でどうにもならぬ、助けもできないというものはどんどんと廃止許可をお願いいたしたいと存じます。  どうか諸先生におかれましては、この際深い御理解と決然たる御判断によって、国策の、地方交通の同一平面における交通機関はいかにあるべきかを御指示願いたいと思います。それによって私どもは善処いたします。  終わります。
  6. 關谷勝利

    關谷委員長 次に脇山参考人お願いをいたします。
  7. 脇山勘助

    脇山参考人 脇山勘助でございます。お手元に公述書として書類を出しておきましたが、突然の御命令でありましたので、書類が十分でないことをおわびを申し上げたいと思います。  第一ページのところに書いてありますように、会社の概要及び環境の状態だけを一応申し上げたいと思います。  私の会社は、長崎市内におきましてすでに三十年半ほど営業をしておるのでございまして、終戦後バス事業を始めたいと思ったのですが、いろいろな事情でなかなか許可もとれませんで、二十八年からバス事業を開始いたしました。現在やっと資本金が一億五千百二十万円ということになっております。市内でございますので、営業キロは十一・二キロ、これの車両が七十一両、それからバス路線が三十二・八キロ、車両数が九十五両、従業員が現在八百七十人でございまして、長崎市内におきまして乗客輸送に従事するとともに、一般貸し切りバス営業を行なっております。  長崎市の地形が、周囲が山に囲まれておりますその上に、細長い形をしておりますために、軌道は、長崎県営バスあるいは長崎自動車、及び弊社のバス等に狭撃されまして、いわゆる競争状態に置かれております。県営バス、長崎自動車というものは戦争前から郊外路線でございましたのが、終戦後市内の路線を獲得いたしまして、われわれと競争状態に置かれまして、いよいよ経営が苦しくなったので、以下、いろいろな統計書類等もございますから、よくごらんを願いたいと思います。  輸送実績を次に申し上げますと、軌道及びバス輸送実績は別表の一のとおりでございまして、三十六年十一月に電車の運賃を十三円から十五円に上げていただいたのでございますが、バス運賃が一区間十円というのが残っておったために、そのハンディのために、お客は微妙なもので、そちらに相当流れまして、早くバス運賃を上げていただかなければどうにもならないということでございまして、三十七年の早々上げていただくものと思っておりましたものが、三十八年の二月になりましてやっと認可になった。この一年あまりのために一億円以上の赤字をかかえたようなことになったわけでございます。  この赤字というものは結局借り入れ金でまかなっているもので、運賃を上げていただいたけれども、それは当時の収支のバランスがとれるだけで、この一億円という赤字はだれも補償してくれないので、土地を売るなり何なりして今日までやってきておるような状態でございます。次に掲げてありますように計算上はいろいろめんどうなことになりますが、結局退職給与引き当てとかあるいは償却というものを十分にいたしませずに今日まできておる次第でございまして、会社といたしましては、退職引き当て金にしましても一億九千万円という大きな、帳簿上に載ってない負債をかかえておる次第でございます。こんなのを計算しますと、この過去四年半を一応とってみたのでございますが、表には三十五年から載せておりますので、四年半の赤字が大体二億六千万円というようなことになっております。  ついでに申し上げておきますが、当社の終戦当時の借金は当時の金で十五万八千五百五十円、これをかりに物価指数を四百倍といたしまして換算しましたところで六千三百四十二万でございますが、現在幾ら借金があかると申しますと四億三千四百万、正味の借金があるわけでございます。御承知のとおり長崎は原爆でやられまして、終戦後、公共事業である以上は一日も早く復興しなければならないということで、いろいろな点においてやってまいりましたが、何ぶん赤字会社で、資本金をふやすというわけにもなかなかいかないので、やっと昨年無理して一億五千百万円に資本をふやしたような次第でございますが、現在正味四億三千四百万、時価で換算いたしまして約七倍くらいの借金がふえておるような状態でございます。当時当社の資本金が六百万円でございますので、これは少なくとも六億くらいの資本でなければならないというのが現状でございます。ところが、実際はそれができないので、借金が四億三千四百万というような大きな赤字をかかえておる次第でございまして、しかもその借金の内容と申し上げますと、取引銀行と申しますか、地元の銀行でわずかに九千三百万、一億足らずの融資でございまして、ほかは商工中金とか、あるいは、私のところはお恥ずかしいお話でございますが、労働金庫あるいは相互銀行等、金利の高いそういうところから借りてやっとつじつまを合わせているような次第でございます。  人件費のことでございますが、先のほうに表がございますが、当社ベースアップは、組合が非常に会社に協力いたしてくれますので、別表の七に出ておりますように、三十五年でベースアップを千百七十八円、三十六年で二千二百円、三十七年で二千円、三十八年で二千二百円、昨年も二千二百円で組合はしんぼうして、会社の窮状に協力してくれたのでございますが、先ほど申しましたように、収支は非常に悪いのでございます。  それで、借金が多くなるために支払い利息が年々非常にふえております。この利息も、表にございますように年々相当の利息を払うということは、会社としては実に苦しいのでございますが、いま申しましたようにバス運賃の値上げがおくれたために、それだけでも一億一千六百万円という大きな数字があります。そういうようなのはだれも見てくれないのでございまして、経営者であるわれわれが何とか切り抜けなければならないという苦しい状況になっておる次第でございます。会社経営につきまして、企業の近代化というようなことも、表にございますように相当いろいろなことをやりまして、組合とも企画委員会なんか設けて次から次と新しい制度を設け、また施策をやっておる次第でございまして、書類にございますから、後刻ごらん願いたいと思います。  要望事項といたしまして第八ページに書いてありますが、運賃のことでございます。当社は市内電車をやっておりますが、戦前の運賃が六銭でございます。これを物価指数を四百倍といたしますと二十四円、約二十五円が現在の運賃でなければならぬのが、いまやっと十五円ということになっておる次第でございまして、これだけでもどうしてもそろばんがとれないということは御想像願えると思います。なお私、もうすでに当社の整理に入りまして責任者として三十五年半やらしていただいておるのでございますが、やっと立ち直ったかと思うと原爆でやられて、今日はバス等の競争路線のためにどうにもならなくなったという次第でございまして、運賃を適正運賃に早く引き直すということができるようにお願いを申し上げたいと思います。政府の施策上どうしても運賃を押えるというならば、それに対する補助金を出してなおかつ押えるということならば意味がわかりますが、ただわれわれの小さな会社にしんぼうしろ、しんぼうしろということで押えられることは、私らとしましては、また責任者の私としては、株主に対してももう無配当をずいぶん長くやって、ごく最近、この書類にも書いておりますが、金融業者の指導によりまして二割の無償を出してやっと一億五千百万にしたような次第でございます。どうか運賃を押えるということならばそれに見合うだけの——経営が悪ければ別でありますが、内容を見ていただくとわかると思いますが、そういうところは十分考慮を願いたいと思います。  なお先ほど柴野さんと古橋さんから申されましたように、今後の方針としましては、私は実はもう五、六年前から、将来は陸上交通というものは整理統合しなければ成り立たないのだということを叫んでおりますが、あいにく、御承知のとおりに公営企業がある場合は、長崎にはさっき申しましたように長崎県営自動車がございますが、その公営があるために、整理統合と申しますか、いろいろなことをやる上においてなかなか歩調を一緒にやってくれないのでございます。これを何とかしなきゃならないというのでありますが、現在の政治のやり方と申しますか、そういうことにはまだ耳を傾けでいないようでございますので、ぜひこの点も十分御考慮くださって、ことに公営企業、九州で申しますと、長崎県に県営がございます。鹿児島市営、熊本市営あるいは若松の市営というようなものがございますが、いずれも大きな赤字をかかえて弱っているのでございます。われわれの私鉄の苦しいということもございますが、どうかそういうことも勘案いただきまして、整理統合するということが一番大事じゃないか、何か施策をやっていただきたいと思うのでございます。長崎県におきましても、民間業者はすでにそういう機運になっておりますが、なかなかそこまでいきません。お聞き及びでございましょうが、大分県はすでにその点を打ち出しまして近く整理統合する、一県一社にするということで段階が進みつつあるやに聞いております。  これに加えまして、先ほども柴野さん等からも申されましたように、どうか運輸省におきましても基本方針というものをはっきりさしていただきたいと思うのでございます。一例を申しますと、長崎−博多間を国鉄はディーゼルカーを運転していただきまして、非常にわれわれは喜んでおる。そこにもって今度はバスの申請が出ておる。それがもうすでに三年近くなるのでございますが、そのままになっておる。私らに言わせますと、せっかく国鉄がそこまでやってくれれば、また実際問題といたしましても、そういうものなんかははっきりすればすぐ片づくのではないかというふうなことを思いまして、私なりの意見関係者のほうにも申し上げたこともございます。なお国鉄運賃を一年間ストップしたというようなことがございますが、これは私の会社ではございませんが、私鉄におきましても国鉄と並行しておるというところが相当ございます。国鉄運賃は、御承知のとおり急行券とか特急券でカバーしておりますが、民間ではなかなかそれができない。定期券は一般乗客運賃ではじき出す、そのために国鉄の割引率に呼応した安い平均運賃で非常に苦しんでおるのが、これは九州におきましても相当にあるのでございます。国鉄の計算は全体的にはある程度しんぼうができるかもしれませんが、それによって私鉄運賃が法外に安くならざるを得ないというようなことになっておる点を、どうか諸先生方においても頭に入れていただいて、少なくとも国鉄の割引率なんというものをもう少し適正に直してもらうようにやっていただかなければ、私鉄が全体的には立ち行かないということになるのではないかと思うのでございます。  いろいろ申し上げたいこともたくさんございますが、一応公述書の中に大体私のほうの経営困難の状況、苦しい点も申し上げておいたのですが、なおこのうちでちょっとつけ加えて先ほど前の参考人からも申されましたのですが、長崎市内の私のほうの軌道、バスの、別表1にもございますように、一番しまいに書いてございますが、走行キロが三十九年の上期で百六十二万五千キロ、それがバスの走行キロも一緒でございますが、輸送人員というものは約倍、電車のほうが運んでおるわけでございます。この点はすでに御承知かもしれませんが、長崎におけるようなああいう四十万そこそこの都市でも、バスに乗りますと会社につとめるのに遅刻をするというような問題がすでに起こっておるのでありまして、定期券のお客さんが多いということがこの数字の大部分でございます。どうかそういう点なんかも十分御考慮願いまして私の経験から申しますと、中小都市におきまして路面電車というものはやめられない、やめられないとすればどうしたらこれが立つかということを先ほどいろいろ申し上げましたのですが、どうか十分御賢察くださいまして、今後そういう市内電車というものは残すべきかどうか、いわゆる基本方針をきっちりして、それを残すとすればどうすればいいかということを十分御研究願いたいと思うのでございます。  以上をもって私の公述を終わりたいと思います。
  8. 關谷勝利

    關谷委員長 次に平田参考人お願いをいたします。
  9. 平田宏

    平田参考人 私は先ほど公述されました北陸鉄道柴野社長関係にあります労働組合の書記長であります。私の公述申し上げる資料がお手元にありますので、御参照の上、お聞き取りを願いたいと思います。  先ほど柴野社長が申しましたように、北陸鉄道地方鉄道軌道自動車運送を主たる事業とした石川県下における主要な交通会社で、従業員数は三千六百五十名であります。私たち北陸鉄道労働組合は、部課長など非組合員を除いて従業員三千五百七十一名をもって組織しております。  そして北陸鉄道労働組合の主たる目的は、北陸鉄道の全従業員の職場と生活の安定、労働条件の維持改善、交通労働者としての安全輸送の確保の使命達成にあります。  ところで、私どもは、その目的達成の活動は、何といっても北陸鉄道の企業経営の動向と関連なしには何一つ考えられないのであります。したがって、私ども北鉄労組は、常に北陸鉄道の企業経営の綿密な研究と実態の正確な把握につとめてきております。このような立場から北鉄労組がながめている北陸鉄道の企業経営の実態について、まず述べさしていただきます。  まず、収支実績について御検討賜わりたいと思いますが、一ページの第一表は、昭和三十七年度から昭和三十九年度の収支実績であります。もちろん、この数字は会社から提示された資料でありますが、私どもの調査内容とさして狂いのないことを付言申し上げておきます。  第一表を御検討賜われば御理解いただけるとおり、全従業員がせっせとかせぎながら、三十九年度の決算だけでも三億一千百万の赤字、前年度よりの繰り越し赤字二億二千三百万円を加えますと、三十九年度における累積赤字は五億三千四百万円となっております。これに三十九年度償却不足累計八億四千八百万円を合わせ考えますと、異常な企業経営と言わざるを得ないのであります。  それでは、これまで、このような実態でどのようにして企業活動を続けてきたかという会社からの意見を聞きますと、まず、負債状況でありますが、二ページの第二表は、三十八年度から四十年の一月末までの実績を示すものであります。  第二表を御検討賜われば御理解いただけると思いますが、四十年一月末で、負債総額が二十一億七千百万円からになります。北陸鉄道経営者は、現柴野社長まで戦後八回も更迭をしておりますが、このような経営実態ですから、経営陣の更迭の際、どの経営者からも、企業経営難を理由に、その犠牲はすべて全従業員の労働条件の切り下げや人減らしに転嫁されてきたのであります。そのため、そのつど労使間の激突がたびたび起きてきたのであります。しかし、そのつど北鉄労組側が、会社に対し条件を譲らされざるを得ない結果になってきております。  さて、企業経営のこのような実態が、従業員の労働条件や諸待遇に与えている影響について、これから述べさしていただきます。  現在、北陸鉄道では、労働時間だけは他の労働組合並みの拘束八時間制は実施しておりますが、賃金については、三十五年には、他社解決千五百円アップの半分以下で解決させられています。三十八年では、他社解決二千二百円アップを百六十円を下回る二千四十円で、三十九年では、他社解決三千三百円アップを百五十円下回る三千百五十円で解決させられているのであります。その結果は、三ページの第三表を御参照賜わりたいのですが、北陸鉄道従業員の賃金は、全国的に最も底辺にあるといわれている繊維産業を除けば、石川県下の下位に位するといっても過言ではないと思います。  次に、北陸鉄道の福利厚生面でありますが、一ページの第一表の中の厚生費を御参照賜われば御理解いただけると思いますが、各年度とも、わずかに一億円前後でありまして、各年度の総支出の三%程度にしかならないと思います。しかも、そのほとんどは従業員の法定福利費、すなわち社会保険料だけでも七千万円から八千万円になっております。その他の問題は業務上必要欠かせざる費用でありまして、従業員の厚生事業費や厚生施設費は皆無にひとしい状態であります。たとえば従業員の寮にいたしましても、三千六百五十名の従業員割りに、わずかに三十名程度の収容力しかない単身寮なるものがたった二つあるだけであります。ふろ場にいたしましても、本社周辺の従業員の利用するもので、最も大きくて一度に二十名前後収容可能なものがありますだけで、せいぜい二、三人入れば満員といったふろ場が、自動車の百名から三百名近い従業員の在籍する職場に限ってある程度で、鉄道線においてはいずれも皆無であります。さらに鉄道線においては、飲料水の井戸、水道もないというのも珍しくありません。給食施設にいたしましても、市内電車従業員詰所に一カ所あるだけでありまして、また従業員の休憩所にいたしましても、市内電車職場、自動車職場では設備はあるけれども、近年の急激な路線の増強による人員増にその施設が伴わず、文字どおりイモの子をたるに詰め込んだも同様の始末であります。鉄道線に至っては、保線、検車・電路職場にはありますけれども、運輸職場には休憩所は皆無であります。また鉄道自動車を問わず、乗務員の勤務明けあるいは勤務前の仮泊設備などは皆無にひとしい状態でありますが、一昼夜交代勤務者の宿泊設備はあるとはいえ、極端な場合二畳に三人の従業員が就寝しているというところさえあります。これだけ申し上げても御想像賜わると思いますが、こういう状態ですから、もちろん女子従業員の育児施設もなければ、教養施設、娯楽施設設備も全く皆無の状態であります。  さらに、三十九年十月に至りまして、会社は、政府の金融引き締め政策による資金難を理由に、昭和三十九年六月、私どもが私鉄総連の統一闘争の中で協定した年間臨時給の各季分の支給について、その支払い期日の延期と支払い額の分割、すなわち年内五割、昭和四十年四月までに五割支払いするという申し入れをしてまいっております。組合は直ちにこれに反対し、支払い期日のおくれはしかたないとしても、年内一括支給はまげるわけにはいかないということで、最大の努力をさせて、やっと十二月二十二日になって八割の支給をいたしました。しかし、そのあとの二割に相当する五千万円については、組合が労金の融資を受けて支払わざるを得ないという結果になったのであります。しかも、会社は、いまだにこのあとの二割の支給を行なっていないというのが現状であります。  ここまで御説明申し上げたついでに、さらに第二表を御参照賜わりたいと思いますが、負債状況の中のその他の欄にあります四十年一月、六億八千二百万円の中身は、社内預金四億円、組合立てかえ七千万円、そのほか、いま申し上げました一時金の立てかえ五千万円を加えますと、会社の運用資金として、従業員が五億二千万円余りも拠出をしているということに結果としてなるわけであります。  これでも、会社経営危機を叫びながら、昭和三十九年十月末、三ページから十五ページに記載しております第四表を御参照願いたいと思いますが、十一項目にわたる合理化案を組合に提示してまいっております。第四表の第三項以降は、まだ具体的提案がありませんが、第一項の鉄道片山津線二・七キロは、全部廃止してバスに転換する、そしてこの線に働いている従業員十九名の配置転換をしたいということであります。第二項の鉄道能登線については、貨物取り扱いの廃止と駅員のいる駅を無配置駅にしたい、そして十五名の人員の配置転換をしたいということであります。これらの問題は、現在労使間において協議中でありますが、十六ページの第五表を参照願えれば御理解いただけるとおり、北陸鉄道鉄軌道全線はすべて赤字経営でありますから、会社もすでにことばの上で漏らしておりますが、想像されることは、こうなると、全線にわたって路線廃止あるいは駅員無配置駅という合理化案の提案をすることは必至であると思います。また、いま具体的提案のある片山津線、能登線の合理化で浮き出す人員については、現在のところ三十四名程度でありますから、会社は終始、首切りはしないと強調していますけれども、今後における合理化を考える場合、首切りなしに合理化をするどのような手があるのか、全従業員のきわめて大きな不安になっているところであります。  以上述べましただけでも御推察賜わると思いますが、このままの状態が続く限り、三千六百五十名の全従業員とその家族の働く条件の低下と生活水準の低下、労働不安、不満の累積は、労働者の生活を圧迫するだけではなく、交通労働者の使命である安全輸送の確保の面から見ても、はなはだ危惧を感じさせられるものであります。その上、雇用条件の低下と施設設備の不備、企業の不安定から全国的に新中卒の求人難のおり、それに輪をかけるように大量の退職者があっても新規採用にこと欠くという結果を招いてきており、そのため欠員の多い職場では二重、三重の労働強化を課せられる結果になっているのであります。  そもそも北陸鉄道は、戦時中、地方交通機関統合の国家的要請に基づき、北陸鉄道株式会社ほか鉄道会社八つ、自動車業者十九の統合合併会社で構成されてきたものでありまして、各鉄道路線営業キロは最長のもので石川総線が五十・二キロ、最短のものでは片山津線の二・七キロであります。そしてこれをささえる株主沿線のきわめて零細な株主であり、したがって戦後の輸送の近代化の急速な発展に資金面からも技術面からも即応できなくなったことと、大手地方進出のテンポの進展の当然の帰結として、昭和三十六年以降名鉄資本の系列に入ることになりました。しかし名鉄資本は資本投下はしたとしても、余分に資金投下は行ないません。むしろ企業の独算制を至上命令とした合理化の促進以外にはありません。それでは利潤追求のみの経営にとらわれるのではないか、利用者の利便や公益性が完全にそこなわれることになり、従業員の犠牲もまたますます増大していくことは明らかであります。そこで私たちは、今日の北陸鉄道の企業経営難の原因について、私たちの側から意見を述べさしていただきたいと思います。  さきにも若干触れましたように、北陸鉄道は、戦時中、地方交通機関統合の国家要請に基づく零細企業の統合合併会社であります。そして鉄道の各路線はいずれも個々に分断され、相互の連係を欠いており、かつ国鉄の培養的性格が強く、その効率はきわめて悪く、加えて石川県の立地条件及び人口の動態の悪条件が重なっていたのです。したがって戦後の輸送の近代化に即応した経営政策がとらるべきであったにもかかわらず、資金面や技術面も伴なわなかったとはいえ、この重要な時期に経営陣が八回も更迭しているという事実が示しているように、およそ私鉄経営に縁の遠い政治家や古役人などによって無責任、無方針のまま、悪くいえば寄生的経営者が多年にわたって企業経営に追随して矛盾と無策を押し隠し、企業の根底をむしばんできたと言えます。そしてそのことは、企業の好転の時期を完全に逸してきたといっても過言ではないと思います。その結果が十六ページの第五表に示すように、今日鉄道線の全面的な不採算をかもし出すことになった一つの要因としてあげられると思います。  さて、そのことよりも北陸鉄道採算の最も大きな要因は、北陸鉄道鉄道路線はすべてが客貨の輸送による企業的採算を予想して敷設したものではありません。採算を度外視して敷設されてきたものでありますから、敷設当時から企業採算がとれなく、すべて国家の経済的援助を得てきたものと聞いています。その補助が戦後打ち切られてから、鉄道線経営が決定的な打撃になっていることはいなめない事実であると思います。  次に、北陸鉄道当局と、県市町村との関係でありますが、近年、沿線市町村における学校の統廃合と、工場、事業所等の経済活動の活発化、集団化と、県下随一を誇る北陸鉄道交通政策との有機的な関連と結合が見られず、従来鉄道線利用の通勤通学客がバスに移行し、鉄道利用度が減少し、鉄道各線の経営難を引き起こしていると同時に、朝夕ラッシュ時における通勤通学の輸送は、スクールバスの運行や通学通勤バスの増発などで車両の運用効率を大きく低下させておるのであります。また、県市からは何一つ経営に対する援助策がないことを指摘しておきたいと思います。  次に、私鉄に課せられている公共負担もまた北陸鉄道の企業経営を悪化している要因であることを指摘したいのであります。十六ページの第六表は、昭和三十五年から三十八年までの鉄道定期客定期外の客の推移をグラフで示したものであります。同じく十六ページの第七表は、定期客定期外輸送人員と収入をそれぞれグラフで示したものでありますが、これは、輸送人員については、定期客が六一%とはるかに定期外旅客三九%を上回っているにもかかわらず、収入面で見ますと、逆に定期客収入が三六%で、定期外収入六四%をはるかに下回っておるのであります。その原因は、鉄道の場合でありますが、通勤定期客については最高七割、通学定期客については最高八・二一割の割引率が設定されておるのでありまして、これらは当然公共負担ともいうべきでありますが、私鉄企業経営にこれが課せられ、この不合理がまた北陸鉄道の企業経営を圧迫しているとも言えるのではないかと思います。  最後に、私は、交通機関の過当競争が北陸鉄道に与えている影響について述べさせてもらいたいと思います。もちろん北陸鉄道は、石川県下における独占的企業という条件のもとに、独占にあぐらをかいた経営政策が長年とられてまいったことについては、過去の経営陣に対し責任を追及したいのでありますが、それよりも県下における唯一の大量輸送機関を一手にあずかっている北陸鉄道の実態は、鉄軌道線については、先ほどの第五表で示したとおり、全線にわたって不採算経営であります。さらに自動車路線については、総数百三十路線のうち、不採算路線が百一路線で七八%といわれており、わずかに二十九路線二二%で補っているのが現状であります。しかるに企業競争の結果として、関西大手会社をバックとした自動車専業のバス会社及び国鉄バスの競願競合で常に北陸鉄道の企業経営を脅かしてきております。しかもその競願競合の免許申請路線は、北陸鉄道採算路線といわれる中でも最もドル箱路線をねらってきていると聞いております。常に場当たり的な経営を続けてきた北陸鉄道経営者は、そのつど資金的な裏づけも顧みることなく、余裕もないまま、致命的な競願競合を防止するため、ダイヤの増強、路線の新免を行ない、大量に車両を購入する、その結果は、ますます負債を拡大し、その返済と金利支払いの負担を増大してきていると言ってよいと思います。  以上、北陸鉄道の企業経営の実態、従業員の労働条件、企業経営難の原因について概要を述べさせていただきましたが、以上の現状を十分参酌賜わり、さきに私鉄総連本部から提出しております地方鉄軌道整備法の改正と中小私鉄の助成、同党資産税、事業税など諸税の減免、民主的運賃決定制度の設置、公共負担、特に運賃の通学割引分の国家補償、バス事業への転換に要する資金融資などの要求事項について十分御審議の上、今日の中小私鉄救助の適切な措置をとっていただくよう強く御要請申し上げまして、私の公述を終わらせていただきます。
  10. 關谷勝利

    關谷委員長 次に、中島参考人お願いをいたします。  時間の関係がありますので、公共負担の関係とか、あるいは競合輸送の調整あるいは新免に対する考慮とかというような、他の参考人が陳述いたしましたところで重複するような点はなるべく避けていただきたいと思います。
  11. 中島邦雄

    中島参考人 御指名によりまして、中小私鉄の最も小の部に属する加悦鉄道従業員立場から参考意見を申し上げます。  京都府の北端部に位置する加悦地方は、絹織物で名を知られておりますところの丹後ちりめんの本場でございます。加悦鉄道は、この地方産業発展地方住民にとって必要欠くべからざる唯一の輸送機関でありまして、加悦町を起点に野田川町を経て国鉄の宮津線の丹後山田駅に結んでおりますが、その営業キロはわずか五・七キロという、日本にもまれに見る零細私鉄であります。そして大正十四年に地元民の熱意と零細な出資によって創設されたものであります。  当時はすべての輸送機関が会社営利のみを目的に建設されたものではありませんが、当鉄道は、地元民が生活上必要であることを第一条件として建設したものであります。したがって、営利企業としては当初より期待されていなかったとも言えるわけですが、しかしただ五・七キロの鉄道路線だけでは経営不況におちいるのは当然でありまして、このため、その後乗合い自動車事業及び貸し切り事業も開始いたしました。  しかし実情を申し上げますと、これとても他のバス専業者もあり、したがって採算のとれない実態でございます。これはお手元に配付しました決算内容を見ていただいたら理解いただけると思います。  このような実情から、危険なまでに老朽化した施設車両を使用しているのでありますが、これでも黙殺せざるを得ないような経営状態の苦しみを味わっているのが現状であります。現在使用している機関車及び車両は、明治時代の東海道線をも思わせるもので、その企業に従事する私ども労働者は、企業の不況を理由に、不当にもそのしわ寄せを負いかぶされ、低賃金にあえいでおります。これは地域における賃金の実態を見てもわかっていただけると思いますが、私どもの賃金は、地域の中でも最低であり、地域の他の最低水準の生活をするにも、まだ一万円の収入が必要とされています。そのためにやむなく時間外労働で不足分を幾らか補っておる現状でございます。  その中でも、消費者物価の値上がり、公共料金の値上げ等で、私どもの生活はますます不安がつのるばかりであります。最近においては、経営困難であるがゆえに、経営合理化が徐々に推し進められているばかりでなく、罪のない地方住民の利用旅客にまでそのしわ寄せを及ぼそうとしております。例をあげますと、合理化人件費の節減に求められ、そのため駅員配置訳が無配置駅となり、また中間駅の終業時間が早くなり、その後は列車車掌扱いとなったりして、乗客並びに荷主に不便を与えていること、また配置駅でも当然掛員の減少となり、乗客、荷主にむだな時間待ちをさせていること、車両線路における保守状態が悪く、列車の振動が激しく、乗客に対し不愉快な感じを抱かせていること、乗効率の最も悪いダイヤの間引きといった状態の中で、未開発の僻地に住居する沿線における、通勤、通学をするいわゆる低所得者住民の唯一の輸送機関として、ぎりぎりの必要性だけにたよって、かろうじて営業を続けているものの、企業に携わる私どもは低賃金で労働過重をしいられ、はたしてとうとい人命をあずかる公共事業としての安全輸送が遂行できるかどうか、不安でなりません。  それにつけても、私どもは、戦前における国家的経済援助を思い起こすのでありますが、今日の民主時代に、政府の政策における経済的援助すら皆無という状態で、このままでいくならば将来どうなるかあまりにも明白であります。このばく大な借財と資本金を有するこの赤字企業を一体だれが運営するのでしょうか。企業を運営するものがなければどういうことになるのでしょう。しかし地域の地元民、すなわち利用旅客とその一員である企業に働く私たちは、権利と生活を守るため、あくまで赤字企業であるところの零細鉄道を守らなければなりません。したがって、当然政府の政策によって社会的富である零細鉄道を存続させる義務があると考えます。その観点に立って、今後地方住民の利便にこたえるためにも、また零細鉄道に従事する私どもの不安定な気持ちを取り除いて、公共事業としての輸送機関の使命を遂行できるような状態にするためにも、この際、政府の政策によって早急に零細鉄道を救済する経済的補償制度を設け、実施していただくようお願いする次第であります。  以上です。
  12. 關谷勝利

    關谷委員長 次に、木戸参考人お願いをいたします。
  13. 木戸力雄

    木戸参考人 御指名を受けました長崎電気軌道木戸でございます。  ただいまから、私は、中小私鉄のうち中位にある長崎電鉄の従業員立場から、中小私鉄経営難をめぐる諸問題について、参考意見を申し述べたいと思います。  長崎電鉄は、御承知のとおり、原爆によりまして長崎駅から北側の路線、車両その他の施設が全壊いたしまして、当時の営業路線の四〇%が運転不能となりました。特に、当時の従業員は四百八十名だったのですが、そのうち百二十名が爆死をいたしまして、それと変電施設が壊滅いたしましたことは致命的な打撃であったわけでございますが、人的、物的に再起不能寸前の事態におちいったわけであります。  このような状況下でありましたにもかかわらず、終戦と同時に、当時の長崎市内の唯一の交通機関といたしまして、市民の足を確保することが戦災都市復興にとって必要不可欠の要素でありましたために、会社はほとんど借り入れ金をもちまして多額の資金、資材を重点的に軌道関係事業の復旧に投入いたしました。このため、バス事業につきましてはその発足が他社よりもかなりおくれ、その経営規模についても現在もっぱら軌道の防衛とその培養路線の域を出ていない状況でございます。  したがいまして、このような状況から、会社経営の苦境が終戦当時から累積してまいりまして、会社参考人からも御説明申し上げましたとおり、三十九年九月末決算赤字がほぼ一千万円に達しているほか、二千万円にのぼる償却不足をかかえ、また法定限度額にして年間三千万円にもあたる退職給与引当金も皆無の状態でありまして、この点特に従業員立場にある私どもとして憂慮にたえないところであります。沿線利用者でありますところの長崎市民の足として、その通勤通学をはじめ、生活安定、生活向上、産業と文化の開発にどのように貢献し、公益事業としての使命を果たしていくかという面につきましても、上述のような経営難ではいかんともいたしがたく、路線や諸施設の補修、近代化は思うにまかせず、その分を私ども従業員の犠牲的サービス労働にたよっている状態であります。ちなみに、いずれの都市におきましても同じかと思いますが、長崎市におきましても、郊外に続々と団地が建設されております。またその周辺に個人住宅が次々と建設されるという傾向にありまして、これは言いかえますと、今日まで住宅難に悩んできた旧市内の旅客、つまり電鉄の利用者が、当社路線網の外に続々と転出しているということを意味するものでありまして、そういたしますと、ここに当然二つの問題が生じて参るのであります。その一つは、会社がこのまま現在の路線網を維持しているだけでは、収入の源は徐々に枯渇していくばかりであり、会社経営またますますじり貧の一途をたどるばかりであるということであります。その二つは、郊外に転出していく旧市民は、新たに交通上きわめて不便な地域からの通勤通学等を余儀なくされるのでありまして、これらの旧市民に対して便利な交通網を提供することは公益事業たる当社の当然の社会的義務であると考えるのでありますが、この課題にこたえる上での最大の困難が、上述してまいりましたような事情からする経営難、資金難ということであります。  会社路線延長あるいは事業拡張計画につきましては、会社参考人からお聞きのとおりと思いますが、私ども従業員といたしましても、これらの資金捻出がともすれば従業員の賃金や労働条件の切り下げに求められがちな昨今、これ以上の経営難の犠牲になることはたえられないという立場からいたしまして、これらの路線延長、事業計画拡張資金等につきましては、この際ぜひとも国家助成によってこれを補い、現状打開をはかっていただきたいと願うものであります。  私は、いま、これ以上の経営難の犠牲になることはたえられないと申し上げましたが、私どもの労働組合は、このような会社経営の苦境を黙視してはいられないという立場から、世間並みの賃金、労働条件を保障させる道に通ずるという立場から、会社経営の再建にはできる限りの協力をしてまいった次第であります。  一例を申し上げますならば、三十八年八月と翌三十九年七月の二回にわたりまして、これは一見世間の常識からはずれたことといえるかもしれませんが、組合側から積極的な機構改革案を提案をいたし、労働条件の切り下げを伴わない合理化を推進すべく三年来の努力に取り組んでまいった次第であります。またその一環といたしまして、昨年の春闘におきましても、九州管内の各私鉄バス組合がいずれも三千円ないし三千五百円台という妥結を見ておりましたが、私どもは企業再建の立場から、あえて全国最低の二千二百円で妥結いたしたのであります。この他社に比べての一人当たり千円の開きというものは、従業員八百人分に換算いたしまして年間九百六十万円に当たり、さらにその基準外へのはね辺り分を入れますと、年間一千五百万円もの開きになるのでありますが、これほどの犠牲を承知会社再建に協力をいたしておりますにもかかわらず、もはや従業員の単なる犠牲だけでは今日の長崎電鉄の経営難の現状を打開することは不可能であることをこの際御明察いただきたいのであります。  最後に、会社のこのような資金難のために、従業員の生活保障に必要不可欠の人件費につきましてさえ資金繰りが極度に困難しております関係上、三十八年二千五百万、三十九年三千五百万円の越年資金の支払いに充てるために、私ども労働組合が保証人となり、先ほど会社側からも申しておりましたとおり、長崎県労働金庫からその資金の借り入れをいたしましたという実情を御報告申し上げ、このような現状を早急に打開するために、この際ぜひとも抜本的な、実態に即したしかるべき中小私鉄助成の方途を講じていただきますようお願いいたしまして、私の参考意見の口述を終わります。
  14. 關谷勝利

    關谷委員長 これにて参考人各位の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  15. 關谷勝利

    關谷委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。勝澤芳雄君。
  16. 勝澤芳雄

    勝澤小委員 北陸鉄道の柴野さんにお尋ねいたします。  先ほどのあなたのお話の中で、大手の場合と中小私鉄の場合、運賃の調整の問題をばらばらにやる、あるいは総合的に検討すべきだという意見がありましたが、その点もうちょっと詳しく御説明願いたいと思います。
  17. 柴野和喜夫

    柴野参考人 実は経済企画庁等におきましては、私直接話してみますと、会社全体として、バスといわず鉄道といわず、全体の経営が困難であれば、それぞれ適当な社会的な判断において、たとえばバス運賃鉄道を補っても一つにして見ていかなければならぬという考え方を持っておりますが、運輸省のほうは、これは私の想像も入りますが、たとえば大手その他については百貨店をやったり土地問題をやったり、いろんな収益の源泉がたくさんありますから、それでみなもうけているから、お前のところ、鉄道運賃を上げなくてもいいじゃないか、バス運賃を上げなくてもいいじゃないかと言われるのはかなわぬものですから、バスバス採算で、鉄道鉄道採算で見ていくという原則を打ち立てている。ところが中小私鉄についてはそういう原則でやられますと、中小私鉄、たとえば私のところを申し述べましても、茨城県その他のところでも、会社経営ができなくなる。また全体としての地方交通の責任が持てなくなるというような現況が露骨に中小私鉄に出てきております。したがいまして、これに対する従来の考え方に若干の政治考慮を加えなければならぬという段階にきております点を御指摘申し上げたわけであります。
  18. 勝澤芳雄

    勝澤小委員 次に引き続いてお尋ねいたしますが、鉄道関係営業係数は出ておりますが、自動車路線のほうは大体どういう営業係数になるのでしょうか。採算路線と不採算路線を書いてありますが、どのくらいの営業係数になるのですか。
  19. 柴野和喜夫

    柴野参考人 全体としては比較的北陸鉄道はよろしいのでございますが、地方——先ほどわれわれのところの書記長が申しましたように、あるいは中学を統合するとか、何かの地方的な事情から、われわれの会社の存立のためにやむを得ず引き受けるようなものがたくさん出ますが、いまお尋ねの路線別の営業係数そのものはいまちょっと手元に資料を持っておりませんが、要するに、支出と収入とバランスとりまして、約七八%のものは支出のほうが多い、二十九線でその赤字をまかなっておる、こういう現況を申し述べた次第でございます。
  20. 勝澤芳雄

    勝澤小委員 自動車だけの収支は大体どういうことになりますか、かりに計算しますと。
  21. 柴野和喜夫

    柴野参考人 三十八年まではほぼとんとん程度にまいるかと存じますが、三十九年から四十年を策定しますと——もちろん退職積み立て金その他実は完全にやっておりません。二割程度しかやっておりませんが、いまそこに出しましたのは法律に求められておる全部を償却したとして、積み立てしたとしてやっておりますので、若干現状とは違ってまいっておりますが、相当な合理化自動車部門においても行なわなければ。たとえば例を申しますと、われわれのところには自動車の基地が十四、五カ所ありますが、人件費合理化のためにその基地を統合するとか、いろいろな点を今後行なわなければ、自動車そのものも行き詰まりつつあるという現況になっております。
  22. 勝澤芳雄

    勝澤小委員 それから三つの会社の方にお尋ねしたいのですが、副業は大体どういうことをおやりになられているのですか。もしやっていないならいいのですが。
  23. 柴野和喜夫

    柴野参考人 地方によって違いますが、主としてやっておりますのは、観光事業に関するもの、団地の造成といったようなものが地方においても細々と行なわれておるというのが現況かと存じます。
  24. 古橋喜久雄

    古橋参考人 上田丸子の本業が鉄道でございますから、副業と申しますと路線バス二百十四キロ、貸し切りバス十二両、タクシー六十六両、学校、これは高校卒の女生徒をおもに夜間でございますが、花嫁学校といいますか、洋裁、和裁、食物等の教育をやっております。その他三年前から不動産売買業というのを定款に入れて始めつつございます。  以上でございます。
  25. 脇山勘助

    脇山参考人 私のほうは先ほど申し上げましたとおり、電車、バスをやっておりますが、その他の副業としては宅地造成を少しやっておるぐらいで、終戦当時昔の土地会社を合併しておったために、相当土地を持っておりましたが、先ほど申し上げましたように、会社赤字のために売り食いで、ほとんど売ってしまったというようなことで、新しく経営することはごく最近わずかにやっているだけで、大したことはございません。この大きな赤字を埋めるだけのことはなかなか容易じゃございません。まだ土地は少しは持っておりますので、それによって幾らかいままで赤字をカバーしたということだけで、新しい事業としてはやっておりません。
  26. 勝澤芳雄

    勝澤小委員 北陸鉄道にお尋ねしたいのですが、営業外収益というのが三十七年から三十八年、三十九年、四十年予想、ずっと落ちているのですが、これはどういう収入ですか。いま言った副業と関係はないのですか。これは別会社になっているのですか。
  27. 柴野和喜夫

    柴野参考人 不動産の先ほど申しました宅地造成その他による利益とか、そういったようなものが出ております。
  28. 勝澤芳雄

    勝澤小委員 それで今度は長崎電鉄の脇山さんにお尋ねしたいのですが、あなたのさっきの御説明の中で、バス運賃と軌道との関係で十円対十三円のときがあり、十円対十五円というのもあった。これは結局陸運局が、あなたのところ、それからその他のバス会社との調整をせずにこういうことをやったから、こういう結果が出た、こういうことなんでしょうか。
  29. 脇山勘助

    脇山参考人 そのとおりでございまして、先ほど柴野さんからも申されましたように、運輸省運賃の係は、自動車と軌道とは全然別な人がやっておる。また局長さんも別というような関係でございますが、その間の調整はなかなかやっていただけないのです。それで許可されるときに電車は電車、バスパスというように許可されるから、こういう問題が起こってくる。先ほど申しましたように実は十三円を十五円にするときに、バスのほうも近くそういう運賃値上げができるだろうというような、われわれの憶測が間違ったのかもしれませんが、そういう話があったものでございますから、実施を始めたのです。ところが、先ほど申しましたように、一年以上もバス運賃の認可がおくれたために、約一億一千六百万くらいの減収といいますか、そういうことになり、赤字をかかえ込んだような形になりまして、非常に困ったわけです。だから、先ほど柴野さんも言われたように、今後何とか一緒に、そういうことのないようにしていただきたい。  実は、つけ加えて申し上げますが、そのことは、運輸省の指示でございましょうが、地方の陸運局である程度調整はしてやるということになっております。ところが、これを調整するにしましても相手方がありますので、相手方が承知しなければなかなかそういかないので、一例をいま申し上げますと、島鉄が調整してもらえるものと思って鉄道運賃を上げていただいた。ところが、競合路線の県営バスは賛成しない。そのために、汽車のお客さんが三割減ってしまった。それで収入でも、運賃値上げしましたけれども、結局一割そこそこ全体で歩どまりのような状態で、もちろんバスに流れた関係もありましょうが、そういうことで、相手方がありますので、相手方のないものだったらよろしゅうございますが、相手方のあるものは、陸運局が中に入りましてもそう簡単にいかないのです。それでたとえばいま運賃申請して——お聞きでございましょうが、早く認可していただきたいと思いますが、これもうっかり電車だけを認可していただいて、そのまま実施したとすれば、たいへんなことになる。これは市内でございますので、市内の県営バスと長崎自動車が下話をして調整していただくということに話し合いが大体できておるから、電車の運賃を早急に、一員も早く認可していただきたい、こういうふうに考えております。そういうことで、調整ということはそう簡単にいかないと思います。
  30. 勝澤芳雄

    勝澤小委員 バス運賃がおくれたために一年で一億一千六百万も赤字になったというのですから、もしこのときに鉄道のほうを値上げしなければ、赤字の率は一億一千六百万よりももっと少なかったわけですね——そうしますと、陸運局があなたのところが運賃の申請をして、それを審査をして、営業収益からこまかい、やかましいことをいって運賃値上げを許可したわけですから、これは役所の責任ですから、運輸大臣相手に訴訟を起こしたらいいでしょう。これはやはりそうしないと、いま日本の政治の中で一番弱いところはどこかというと運輸省なんです。運輸省が過当競争をやらしておるわけです。ちょっと話が脱線しますけれども、運輸省の悪口をちょっと言っておかなければいけませんが、いま新幹線が東京−大阪を四時間か三時間、今度は飛行機に競争させて、飛行機会社に金をくれて三十分で走らしておるわけです。しかし東京−大阪間は何時間でもって走ればいいということをきっちりきめて、あまり競争させないほうがいいと思うのです。結局、鉄道にもあるいは飛行機にもあるいは飛行場にもあるいは船にも、全部自分のところで管理していながら、ばらばらにやらしておるわけです。ですから、いまここで一番いい例は一億も損したあなたの例なんですから、これは運輸省が悪いわけです。こういうのは、方々でやはりやらないと、運輸省自動車鉄道が別、国鉄私鉄が別、それ以外に自動車路線免許が別、こういうばらばらな行政を一つの省でやっておるところは運輸省だけです。代々運輸大臣がいままでは参議院だから力がなかったからこういうことになったのですが、最近は衆議院が運輸大臣になっているから力があって、いまの大臣も最近の大臣もみな力がある大臣だからいいですけれども……。  そこでもう一つ自民党の悪口を言いますけれども、關谷先生もちょっと聞いておいてもらいたい。自民党の考え方の中で適正な運賃と不採算路線の代行、鉄道整備法補助金、これだけでは問題は解決しない。やはり総合的な交通機関の統合整理というのが抜けているわけです。ですから、これだけを幾らやっておったって、同じことを繰り返しておるだけですよ。ですからその意味で、關谷先生が小委員長になって、この小委員会をつくられたわけですから、ほんとうにやる気でおやりになっておると思うのですが、われわれも野党ですから当然むだな交通機関の競争というのはやめさせなければいけませんから、そこでこの交通機関の調整というのをいまの中でどういう形にやったらいいのでしょうか、あるいは新しい法律をつくらなければならないか、あるいはいまの形で運輸省がもう少しやる気になればできるのでしょうか、その辺について会社側の皆さんのほうからひとつ何か御意見を聞かせていただきたいと思うのです。
  31. 柴野和喜夫

    柴野参考人 私が先立って申し上げるのは恐縮でございますが、これはむずかしい問題で、われわれも役人をしておりましたが、法律が適当かどうか存じませんが、ともかくその前提としてどういうふうな交通情勢にするかという思想だけは少なくとも持たなければ、法律も何もつくれるものではないわけですから、その思想がいまないわけであります。いま申したように比較的ばらばら、ただしこれは私の口から言うと変なんですが、非常に悩んでおられるのです。悩んで、政治的考慮をしようとしていま非常に努力しておられることは認めるのですが、いま申したように、運輸大臣予算分科会での答弁を見ましても、速記録を見ましたのですが、競争させてサービスをよくしなければいかぬというふうに言っておられます。そのものずばりでよろしいのですが、いま申したように、われわれのほうの二十二路線しかプラスでない、七八%というものが赤字だ、その七八%について何らかの政策をとりながらサービスの向上ということを言われるならいいのですが、ただ部分的にある会社が出したからどうのこうのといって処理されるのは非常に迷惑だ。それから鉄道バスとの関係についても、あるいは中小都市における鉄道をどうするとかというふうな一応の思想というものがなければならぬ。また私が先ほど申しましたように、極端に言えばこういう人口の少ない北陸地方等については、場合によっては県境なんかは無視して一つに合併するぐらいの勇気のある考え方をやはりお立てくだすって、この考えについてくるものについては補助金をやるとか、低利資金を出してやるとかなんとかいったような一つ考え方、はなはだ恐縮ですが、その低利資金を出すについては法律が要ります。預金部資金から金を出すためには法律が要りますから、その思想を統一してつくってやらなければ何をやるにしてもできない、部分的にしかできないわけでございます。こう私は判断いたしております。
  32. 古橋喜久雄

    古橋参考人 いまの法律の相いれない中で、当然法律を守らなければならない運輸省の担当の方々が別々のことをやるのは必然だと思います。ですから、私が当初本小委員会出席させていただきました感激というものは、実際そういう国立法下にわれわれは生きていながら立法上の矛盾だらけの中で営業しているということがまずあげられます。それは甘木国有鉄道法とか、地方鉄道法とか、地方鉄道軌道整備法とか、どれを見ても運賃の問題はこうあるべきだということはないと思います。ただ道路運送法の八条以下に、バスについてはこういう運賃をきめろと書いてあるようなことで、ですから毎回のことでございますが、同じ会社の同じ需要に応ずる系統の運賃も、鉄道運賃バス運賃とはまちまち、あるいは時期的にずれている、もう一年ピリオドのオシレーションをやっているのが上田丸子実情です。  それから補償につきましても、国で営むものの民営への圧迫についての補償は、例の鉄道軌道整備法の二十四条で国有鉄道私鉄レールに影響したものは補償すると書いてありますが、道路運送法の七十七条には、国有バスが民営バスに与えた場合は補償する、そうでない鉄道に与えたって補償しない、こういうように明らかに精神と実際とが合わない法律のもとに、運輸省のお役人さんはしいられておるということが一つあげられると思います。  それから先ほど先生お話にもありましたように、運輸大臣私鉄を監督し、運賃免許し、許可し、あるいは営業を監督するということになっておるが、今日経済企画庁長官というのはどんなえらい方か存じませんが、立法下の日本において、なぜ運輸大臣の行政を制肘し得るか、ここらの矛盾が大体なっておらぬと私は思います。  それから同一地区の需要、つまり通勤したい、通学したい、あるいは物資を運びたいというものに対する機関がこういう立法下にあっては、先ほど私が申し上げましたようにまちまちです。あるいは地元民にとりましては倒れる企業が幾つあったって、東京池袋のとうふ屋の問題と同じで、企業が成り立つまいとどうあろうと、便益向上のためなら賛成だということになりますから、画然たる同一地区の同一需要に対する運輸行政はこうあるべしという方針運輸省はつくるべきもの、あるいはつくれないなら、全く自由競争にして適者生存、弱肉強食の世にすればこういう問題はなくなると思います。  以上、私の考えはそういうことですが、先生方にどうかそういう根本の国の政治のあり方をきめていただきたい、こう思うわけでございます。  それから統合云々の問題ですが、国有鉄道国策上の問題として、配当は考えないというものの、固定資産税は半額とか、営業税は要らない、あるいは民生安定のためのことはよくわかりますが、私企業というものを許す以上、その私企業の限度を、いまの統制下にあるならば、公共料金だといって押えるならば、企業自体を統制する運びというものがあってしかるべきだと思います。みんなおらが天下で、私は前に越後交通の専務を一年四カ月やりましたが、これはちょうどただいまの大蔵大臣の御発案と承っておりますが、長岡を中心とする三社が、私鉄二社バス業者一社が争っていては結局共食いで成り立たぬということから、越後交通という合併会社をつくられたというふうに承って、その後一年四カ月、災害の多い年に引き受けましたけれども、そのように同一需要にあって、地方鉄道バス業をやるならば、あとは話し合い、運輸省方々に訴えて内部的の操作ができるはずでございます。これはただいまの私の会社でございませんで、越後交通の話になりますが、私がいるときに災害によってくずれた寺泊というところが運営困難になって、わずかのキロ数の廃止——私のおりましたとき営業休止を願い出、今日廃止を願い出ているのですが、地方住民の賛成がなければというので、法律上どこの個条にもそういうことが書いてないのに、それが運輸当局としては賛成が得られなければなかなか問題だということで、保留されているということをせんだって越後交通の専務から聞きまして、まことにどうも行政とはあまりに力のなきものだということを私は慨嘆し、要するに諸先生のお力によりましてその方針だけ確立していただきますならば、われわれはその方針に従って善処し、統合もいたします、国有が一本化してやるから、民営も一本化してやるべきだとか、あるいはサービス向上のために二社私企業が必要だというならばその方針を立てていただけばそれで事足りると思います。いま上田市は人口七万五千ありますが、その上田駅に五社のバスが入っております。鉄道はわが社と大国鉄さんというようなわけでございまして、東京ならば手のひらに入るくらいの人口密度ぐらいしかないところに五社も六社も入って、その上長距離バスが二社入っております。まことにどうも自由競争、統制ある自由競争とはどういうことかわからぬと思っております。
  33. 脇山勘助

    脇山参考人 私は交通事業は公益事業であるということはもう長年大いに認識しておるつもりであります。わが国の原爆後、いかにしたらば早く復興するかということに対して相当努力してまいったのでありますが、かねて考えることは、公益事業というものが自由競争であるべきことはどうも矛盾しておると私は思うのであります。たとえば電気にしろ、ガスにしろ、公益事業だからほとんど一本でやっておる。それにもかかわらず、公益事業である交通事業に対して競争をさせる。競争をさせるくらいならば運賃なんてほうりぱなしにしていただいたらいいじゃないか。そこに非常な矛盾を感じておるわけであります。  それから先ほど申しましたように、整理統合するということは、私に言わすと、今日は御承知のとおりに広域経済、九州なんかでも盛んにやっておりますが、これもわれわれの交通事業に引き直しますと、理想としては九州一本でいいのじゃないか、そうしたならばあるいはいまの通貨でどうやら持ちこたえができるのじゃないかというふうなこともそろばんが立つわけであります。しかしながら、その間に公営であります市営の電車とか、あるいは市営のバスとかが北州に相当ございます。これがいずれも先ほど申しましたように、赤字を年々重ねておる。この辺でひとつ当局におきましても、これをどうすればいいのか、まあ簡単に申しますと、九州一本になればなおけっこうでありますけれども、それができなければ、長崎県を一つにする。長崎の例を申しますと人口わずか百八十万しかない。それに島を除きまして、六社ある。平均しますと三十万の人口に一社があるような勘定になります。これで交通事業を成り立たせるのは根本的に間違っておるのじゃないかというふうに考えておりまして、先ほど申しましたように、まず長崎県を北と南二つに一応したらどうかというふうなことを私は数年前から唱えておりますけれども、その間先ほど申しました公営企業、北のほうには佐世保市営が、南のほうには長崎県賞がありまして、なかなかそういう話には乗ってまいりません。これはやはり法の力といいますか、先生方のお力で何かそういう大きな手を打たなければ、整理統合というようなことはなかなかむずかしいのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  34. 勝澤芳雄

    勝澤小委員 最後に一つだけ柴野さんにお尋ねしたい。海の問題というものは曲がりなりにも少しずつまとまってきておるわけです。それから空の問題も一応だんだんの調整がされておるわけですが、陸の問題というのは、いままで極端な言い方をすればほったらかされてきた。しかし大手大手なりに自分でやりくりできるからいいわけですけれども、いま当面中小私鉄というものが大きな問題になっておるわけです。こういうことを考えてみますと、当面する問題というのは、いま皆さんから言われました、簡単にできるような気がするのもありますし。われわれがここでお互いに話し合っていればまとまるものもあると思うのですが、これからの恒久的な交通政策というのは、陸の中でもう少し調整、整理をしていかなければならぬ。そうした場合に、交通政策をこれからどういうふうにつくるか。当然政府でいうならば審議会なりそういうものでまた検討されると思いますが、そういう交通政策をまとめようとする場合に、やはり私鉄全体的にものを考える場合もあるでしょうし、地域的にものを考える場合もあるでしょう、そういうものをつくろうとするならば、一体どういうところに重点を置いて考えるのがいいだろうかという点で、あなたのお考えをちょっと聞かしていただきたいと思うのです。国がやりますと、どうしてもやはり全体的には見ますけれども、きめのこまかい対策というのは落ちこぼれになると思いますが、いまの問題はどういうふうに御希望されるのでしょうか。特に中小私鉄立場でものを考えた場合ですね。
  35. 柴野和喜夫

    柴野参考人 いまのお尋ねは非常にむずかしい問題で、正確なお答えができぬかと存じますが、元来私は鉄道育ちではなくて、農林省で二十数年育った人間で、よそから入りまして、県知事をしておった関係からお引き受けをしたものですから、どちらかというと批判的に見る面が幾らかあるかと存じますが、私の経験から申しますと、中小私鉄と申しましても、ピンからキリまでありまして、たとえばまゆに火のつくわれわれのようなところもあれば、何とかのほほんといけるようなところもないとはいえないと思うのです。したがいまして、いま私鉄協その他で意見をまとめておりますが、やはり政府が本腰にならないとものごとがまとまらぬような感じが私はいたします。たとえば私が痛切に感じたのは、おととしあの北陸にひどい大雪が降りました。河野さんが出てきて非常に采配を奮ってくださったのですが、われわれから言えば、ああいう非常時においては、運輸大臣私鉄といわず全部自分が指揮権を持って、国鉄だけでなく全部総合的に地方の治安の維持その他に当たらなければならないと思いますが、私鉄についてはほっぽらかしなんです。こういうものの考え方では残念だということを、ああいう非常災害に際して私は痛切に感じました。  一方だんだんそういう空気にはなってまいりましたが、運輸省が積極的な意図をお示してくだされば、民間も相寄っていくかと思います。したがって、そういう空気の中でこの小委員会というものができたということにはやはり敬意を表し、われわれが期待をしておるゆえんでございます。
  36. 關谷勝利

    關谷委員長 肥田次郎君。
  37. 肥田次郎

    ○肥田小委員 勝澤委員のほうから私の尋ねたいと思っていることもだいぶ聞いていただきましたので、私はその先にわたって若干お伺いしておきたいと思うのです。  先ほど資料で見た加悦鉄の場合には、資料を見ただけでも、まことにどうもよく企業の経営がやっていけるものだと思うのですが、現在あなたのほうは、貨物は主として硫化鉄鉱を運んでいるのですか。  それからもう一つ、御承知のように石炭関係鉄道、こういうものについては、現在まである程度助成金というものが出ておったのですが、あなたのほうはそれはいま打ち切りになっていますか。戦前はどれくらいもらっておりますか。
  38. 中島邦雄

    中島参考人 戦前昭和十一年に、当時の金額で一万七千円の補助をいただいておったわけなんです。その後いわゆる鉱石運搬というかっこうになってから、それは打ち切られておる現状です。したがって、戦後鉱石のほうは廃鉱になりまして、それはもう全然収益が上がならない。ただ専用線において生産された品物を運搬する程度で、それしかないと思います。
  39. 肥田次郎

    ○肥田小委員 それから本日参考人としてお見えになっておる北鉄、上田丸子さんも、これはいままで鉄道という関係補助金が出ていましたね。これはそれぞれ将来われわれが最終的な意見をまとめる上で参考になりますから、あとで私鉄関係で一括して示してもらいたいと思いますが、この打ち切られたのは例のシャウプの税制勧告のころからですね。ですからそれまでにどういう数字で中小私鉄に対する助成金、補助金が出されておったのか、その数字をひとつ示してもらいたいと思いますが、これはよろしいですね。  それからその次にお伺いしたいのは、われわれが常識的に知っていたことは、数年くらい前までは、大体バスはほとんどが黒字で、そして、少々鉄道赤字があっても、そのバスの黒字で補えておった。こういうことを常識的に知っていたんですが、最近、バスが非常に赤字になってきておる。その赤字になってきた要因というものはいろいろあると思うのですが、これの要因を一つ、二つ聞かしてもらいたいと思います。これはどなたでもけっこうです。
  40. 柴野和喜夫

    柴野参考人 いま肥田さんの御指摘のとおりでございますが、われわれのところのバスの支出を見ますと、やはり一番大きなものは、人件費の増が構成分子としては一番多うございます。その他、支出としては、あるいはガソリンの値上がりであるとかいろいろございますが、一番多い分野はやはり人件費でございます。
  41. 肥田次郎

    ○肥田小委員 もうちょっとお伺いしたいのですが、これは私が申し上げたほうがいいんですが、はっきりいってもらったほうがいいと思うのですが、人件費というものは、バスの料金が押えられていることにも影響していると思うのです。  それからもう一つは、大都市においては、バスの稼働率が非常に悪い。これは交通混雑のために稼働率が悪い。したがって、平常なら——平常な状態なんといったら表現がちょっとおかしいですが、大体百台で運行系統が立てられるところが、百五十台なかったら実際にどうにもならない。結局、稼働率が悪いものだから走れない。走れないけれども動かしている、ていさいと、それからいろんな関係からですね。とにかくそのために車と人の準備が要る。そういうものが人件費増、それからいろいろな施設増、こういうものになっている。こういう二とおりあると思うのですが、それはそのとおり理解していいですか。
  42. 柴野和喜夫

    柴野参考人 われわれの県で見ますと、大体、一車の走行キロが一日百三十キロくらいです。地理的関係で、いま御指摘のように、ところによりますと、能登地方とかその他にいきますと、どうしても走行キロが上がらないわけです。したがいまして、どうしてもそれだけ人件費のパーセンテージが多くなる、そのように御理解いただいてけっこうかと存じます。
  43. 肥田次郎

    ○肥田小委員 これは古谷さんがお見えになっておるから、そういう関係の新しい赤字の要因というものが人件費以外にあると思うのですが、これは、一般的な常識として、バスタクシーはもうかるものという常識がずっと、ここ三十年ごろから非常に強くなっておるので、この点については、やはりそういう関係の資料といいますか、示していただきたいと思います。  それから、いろいろとお聞きしたいこともあるのですが、またの機会がありますから、その次にお聞きしたいことは、これは勝澤委員も触れられておりましたけれども、その内容で、大体柴野さんの交通行政に対する基本的な考え方というものはわかりましたが、そのうち、もう一つ交通機関の料金の決定の問題の中で、もちろん、運輸省のやり方というものが、いろいろな面で時代的な変遷から今日では大きな矛盾を生じてきておるということもわかりますが、先ほどから、ある程度はっきりした意見を聞かしてもらったので、私もさらにこの点についてはっきりした意見をお聞きしたいのは、大体何もかもいわゆる免許という形の中で料金決定が最終的にはされておる。このあり方というものがいいのかどうか。先ほどから政策に矛盾があるということをおっしゃっておりましたが、たとえば、料金のような問題でも、自由競争なら自由競争でほっておけばいいじゃないか。何も一々免許免許ということで料金の決定に対して指示を仰がなくてもいいじゃないか。こういう方法も確かにあると思います。それから、現在のような形で、なおいろいろな面でいわゆる過当競争になっても困るからということで、もしその中で解除される面があるとするならば一体どういうことなのか。たとえば、私が考えるのは、都市におけるところの路線の料金を荒らされないような処置を講ずれば、観光目的のものなんかについての料金を運輸省が直接認可しなければならぬというような、そこまでおせっかいをしなくてもいいじゃないかという考えがある。特に観光が主体であるところのロープウェーだとかケーブルカーだとか、観光船、こういういろいろなものがある。プロペラ船とかなんとかあります。観光バスも大体入ると思うのですが、そういうものについては、運審、ああいうものじゃなしに、もっと別な何か調整機関のようなものがあって、そこで総合的な立場で調整をはかりながら最終決定をしていく。これは私の一つ考え方ですが、こういうような一つの方法に対して何かお考えがあったら参考のために聞かしておいてもらいたい。
  44. 柴野和喜夫

    柴野参考人 先ほど答弁いたしました中でいま注意がありましたのですが、われわれのところで人件費の増ということを申しましたが、定期客の非常な増と学校輸送の増が非常に大きなパーセンテージで経営の悪くなる一つ原因バスにおいてもなっておる点がございます。  いまのお尋ねの問題は非常に微妙でございますが、少なくとも逆な言い方をいたしますれば、定期路線について自由奔放な政策をとられたら、おそらくいまの会社、ことに地方会社は立ちいかぬような状態になると思いますので、ある程度の企業の交通行政上の規制というものは必要かと思います。  賃金についても、これは政府考え方で全体の物価政策をある程度コントロールするという考え方があれば、経済企画庁その他で合議することもやむを得ないと思いますが、いずれにいたしましても非常に手続が長くかかるという点、いま観光バスその他の点等については、お示しのようなことも十分考え得るんじゃないかと思いますが、これらは、いまここで右か左か明確なお答えするのはいかがかと存じますが、逆な御答弁を申し上げて御参考に供したわけでございます。
  45. 關谷勝利

    關谷委員長 これで質疑は終了いたしました。  この際、参考人方々に小委員会を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見を承り、まことにありがとう存じました。本問題の今後の調査の上に非常に参考になることと存じます。ここに厚くお礼を申し上げます。  次会は、来たる十八日に開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時二十九分散会