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1965-03-03 第48回国会 衆議院 運輸委員会中小私鉄振興対策に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和四十年二月十二日(金曜日)委員 会において設置することに決した。 二月十六日  本小委員委員長指名で次の通り選任され  た。       浦野 幸男君    小渕 恵三君       大西 正男君    木村 俊夫君       關谷 勝利君    田中 彰治君       西村 英一君    勝澤 芳雄君       肥田 次郎君    矢尾喜三郎君       山口丈太郎君    竹谷源太郎君 二月十六日  關谷勝利君が委員長指名で小委員長に選任さ  れた。 ————————————————————— 昭和四十年三月三日(水曜日)    午前十時十三分開議  出席小委員    小委員長 關谷 勝利君       浦野 幸男君    小渕 恵三君       大西 正男君    西村 英一君       肥田 次郎君    矢尾喜三郎君       山口丈太郎君    竹谷源太郎君  出席政府委員         運輸政務次官  大久保武雄君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      佐藤 光夫君  小委員外出席者         運 輸 委 員 田邉 國男君         運 輸 委 員 山田 彌一君         運 輸 委 員 久保 三郎君         運 輸 委 員 内海  清君         運輸事務官         (鉄道監督局民         営鉄道部長)  岡田 良一君         参  考  人         (私鉄経営者協         会理事)    織田 憲吾君         参  考  人         (私鉄経営者協         会専務理事)  古谷 善亮君         参  考  人         (日本私鉄労働         組合連合会中         央副執行委員         長)      三橋 幸男君         専  門  員 小西 真一君     ————————————— 三月二日  小委員勝澤芳雄君二月二十四日委員辞任につき、  その補欠として勝澤芳雄君が委員長指名  で小委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小私鉄振興対策に関する件      ————◇—————
  2. 關谷勝利

    關谷委員長 これより運輸委員会中小私鉄振興対策に関する小委員会を開会いたします。  中小私鉄振興対策に関する件について調査を進めます。  本日は、中小私鉄現況とその振興対策について、参考人より意見を聴取いたしたいと存じます。  この際、一言小委員会を代表いたしまして、私よりごあいさつを申し上げます。参考人方々には、御多忙中にもかかわらず、御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  申すまでもなく、中小私鉄は、地方における輸送機関として重要な役割りを果たしているのでありますが、現在これらの私鉄経営はきわめて苦しい状態にあります。本日は参考人各位の御出席を得まして、それぞれの立場から、私鉄経営実情及びその振興対策等について忌憚のない御意見を拝聴いたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  なお、本日お呼びいたしました参考人は、私鉄経営者協会理事織田憲吾君、私鉄経営者協会専務理事古谷善亮君、日本私鉄労働組合連合会中央執行委員長三橋幸男君、以上の三人の方々であります。  なお、御意見の開陳時間は、お一人十五分程度お願いいたします。  それでは古谷参考人からお願いをいたします。
  3. 古谷善亮

    古谷参考人 参考人古谷善亮でございます。中小私鉄現状につきまして御説明をさせていただきたいと存じます。  ここに、中小私鉄と申しますのは、制度上そういう観念があるわけではないのでございまして、一応慣用といたしまして、大手私鉄十四社、帝都高速度交通営団及び公営企業を除きましたものを、総括いたしまして中小私鉄と呼びならわしております。運輸省のお出しになる統計資料もこの観点で作成されておるのでございます。  その大体の概要は、本日委員長の御許可を得まして、「中小私鉄現状」と申します小冊子を持ってまいりましたので、お手元に配付いたすようにお願いいたしてございますので、おそらくお手元に配付されておることと存じますが、これに基づきまして、要点を申し上げたいと存じております。  その二ページに総事業者数営業キロが出ております。それは、三十八年度の数字でございまして、事業者数が百三十一社でございます。営業キロは三千六百八キロになっておりまして、一社平均二十七キロ余の対象のものでございます。この数字は、三十八年度末の数字でございますので、現状といささか違っております。試みに三十九年度に入りましてから、廃止いたしました路線が若干ございますので、中小私鉄の分だけ拾ってみますと、約百四十一キロございます。したがって、この数からそれだけお引きいただきますと、大体現状営業キロとなろうと思います。この営業キロは、大体大手営業キロと一致するのでございまして、その第三欄日に「全私鉄に占める割合」というところがございますが、その欄でも御承知のように、四九%になっております。大体半分が小さい鉄道、半分が大手並びに公営企業である、こういうふうに御承知を願いたいと存じます。  この表で、大体ごらんいただきますように、中小私鉄は、格差が非常に著しいのでございまして、俗語で申しますピンからキリまでのものを含んでおるわけでございます。私どもが大体準大手と考えておりますようなものは、横浜付近にございます相模鉄道及び神戸市の近郊にございます山陽電気鉄道というようなのが大きな部類でございます。それから中小になりますと、まことに千差万別なのでございまして、まあ試みに申し上げますならば、常業キロの小さいものといたしましては、北海道十勝鉄道でございますとか、あるいは和歌山県の御坊臨港鉄道などが小さいほうの部類に入ろうかと思います。これは営業キロが三キロ・四でございます。また資本金の小さいものになりますと百五十万円というようなものがございまして、これは政府から補助をいただいておりまする北丹鉄道というのが、このような小さいほうの部類に入る鉄道でございます。かように非常に格差がございますので、中小私鉄対策といたしましては、一つのルールでなかなか解決しがたいむずかしさがあると思うのでございます。  そこで次に、中小私鉄性格及び機構について申し上げますと、私鉄地方交通目的としておるものであるということは、制度上から申しますと、古い沿革があるのでございまして、明治三十九年に鉄道国有法ができましたときに、幹線は国で経営する、地方民間に免許して、地方交通を担当させるという思想が、この法律にあらわれておるわけなんでございます。御参考にこれもお手元に、その条文の刷ったのを差し上げておくように委員長お願いいたしてありますので、お手元に渡っておることと存じますが、それでごらんいただきましてもわかりますように、地方民間鉄道でやる。したがって枝線的の性格があるとお考えいただいていいと思うのであります。  そこで地方鉄道法の三条にも、地方鉄道に関しまして規格を定めております。国有鉄道と同じゲージ、すなわち軌道の間隔を同じにいたして、貨車その他の車の直通運転が可能なようにいたしてございます。おそらくいまの時代ならば、電圧なども一諸に考えるべきかもしれませんが、当時のことでありますので、まず線路を共通できるような状態に置いておく、こういうことで発足いたしております。またいずれこういう地方のものは、ただいまも昔も同じだと思いますが、交通量が少ないので、最初から予期しておりますような利益をあげ得ないというようなことを懸念いたしまして、これも古くから補助制度ができておるわけでございます。すなわち軽便鉄道補助法というのが明治四十四年にできまして、戦後までこの思想が続いておりました。昭和十二年にこの補助制度が改正されましたが、それも地方鉄道軌道整備法ができましたときに、またその制度が変わっております。これらの事情を申し上げますと時間がかかりますので、いずれこの補助というようなことも、中小企業対策の一環として申し上げねばならぬ場合があろうかと思います。そのときに譲りまして、とにかく補助まで与えて、国鉄私鉄を通じまして、地方経済及び国の交通計画というものをつくったという点だけ申し上げておきたいと思います。  そこで次に私鉄機能でございますが、機能といたしましては、ただいま申しましたように千差万別でございます。  まず第一に申し上げたい点は、何と申しましても、ただいま申しましたように国鉄及び他の私鉄接続いたしまして、地方交通及び国の交通の一翼を担当いたしておるということでございます。その点を特に申し上げたいと思います。したがいまして、全部接続しておると見てよろしいのでございますが、しさいに見ますと、若干接続を欠いておるようなものもあろうかと思います。これらは、たとえば淡路島の中にあります鉄道でございますとか、あるいはこの近くでは江ノ島電車、たとえば江ノ島鎌倉観光と申しておりますが、鎌倉の駅では築堤の下のほうから始発する、こういうようなことで、ああいうふうに若干、約十ばかりの鉄道接続を欠いておりますが、他は地方鉄道としては接続するのが本命になっておるのでございます。  第二番目に申し上げたい点は、したがいまして貨車直通等国鉄と通し輸送をやっておりますので、産業上どうしても必要な線路になっております。その最も著しい例といたしましては、地下資源輸送をやっております。北海道に存しまする美唄でございますとか、釧路、雄別、夕張、三井鉱山、羽幌というようなものは、いずれも石炭輸送に従事しておる次第でございます。そのほか、なお全国を見渡しますというと、小坂の銅でございますとか、あるいは片上の硫化鉄鉱でございますとか、あるいは秩父のセメントでございますとか、そういう例はたくさんあるわけでございます。これがやはり地方鉄道一つ機能と申しますか、機能一つとして申し上げなければならぬ点だと思います。  次は都市交通を担当いたしております。それで、都市交通を担当しておりますのは主として公営軌道があるのでございますが、民営のものにつきましても、たとえば長崎でございますとか、広島でございますとか、高松、岡山、富山というふうに例をあげますれば、大きな都市民営都市交通をやっておるところは随所にあるわけでございます。  そのほか、これは次に申しますことはやや特殊な例になるのでございますが、登山用鋼索鉄道でございますとか、あるいは最近できました羽田に参りますモノレール、あるいは関西電力が大町から入っております無軌条電車、あれらも全部地方鉄道として取り扱っておりますので、こういったような特殊の目的を持つものがあるわけでございます。いずれにいたしましても、その使命の存する限りその存続ははかりたいのでございまして、地下資源の開発でございますとか、民生の安定、向上の達成上、必要な交通機関であることは申し上げるまでもないと存じます。  そのほか、一般使命を有するものにつきましては、最初に申し上げましたとおり、枝線的の存在でございますとか、あるいは積寒地帯におきましては冬場は積雪が多うございまして、バス交通が非常に困難になる地方が多いのでございまして、これらにつきましては、やはりレール運送が必要ではないかと存じます。  また平時、普通のときにおきましても自動車事業と一体となりまして、地域交通に従事しておるというのが一般的の鉄道使命でございます。  そのほか、営業現状につきましては、同伴いたしてまいりました織田理事から説明させていただきますが、地方交通量の稀薄であるというような点、その他最近の地方事情によりまして、中小私鉄経営はかなり困難になっておるのでございます。それらの事情は追って申し上げますが、それらの補いといいますか、あるいは地方交通補いと申しましたほうが適当なんでございますが、自動車運送事業経営を兼ねてやっておりまする中小私鉄が多いということは、この際申し上げておいたほうがよろしかろうと存じます。バスの問題につきましては、これは申し上げますと相当時間がかかりますので、またいずれ別の機会に申し上げたいと存ずるのでございますが、中小私鉄だけで兼業いたしておりますバスが約六十八社くらいあると計算しております。中には兼業いたしておらないものもございます。これは鉄道性格上兼業は必要のないものもございまして、たとえば先ほど申しましたような鉱山の輸送を主としておりますようなもの、あるいは山登りのケーブルカー、鋼索鉄道でありますが、これらの中にはパスを兼業しておらぬものが多いのでございます。  以上が、簡単でございますが、中小私鉄のあり方の現状を申し上げた次第でございまして、どのくらいの輸送をしておるのか、どのくらいの欠損額があるのかということにつきましては、織田理事から申し述べさせたいと存じますので、お聞き取りを願いたいと思います。ありがとうございました。
  4. 關谷勝利

    關谷委員長 次に、織田参考人お願いいします。
  5. 織田憲吾

    織田参考人 参考人織田でございます。  それでは引き続きまして、中小私鉄現況につきまして申し上げますが、これはお手元に「中小私鉄現況」というガリ版印刷ものがございます。それと青表紙の「中小私鉄現状」という冊子、これを中心にして要点を申し上げたいと思います。  古谷理事から利用者数その他のお話がございましたが、それを省きまして、三十八年度の輸送量をとってみますと、旅客中小私鉄で十億人運んでおります。それから貨物が三千万トン、収入が二百八億円で、これは旅客収入でございます。貨物収入が六十三億円、計二百七十一億円になっておるわけでございます。  この輸送事情はどうなっているかと申しますと、四ページのほうをごらんいただきましてわかりますとおりに、定期外の客というのは三十一年以来大体同じ数字をたどって、ふえても減ってもいないという大観でございます。ところが定期旅客のほうはふえてまいっております。それでローカル輸送を見ますと、バスのほうに定期外一般客が移っていって、定期客のほうはふえていく、ここに中小私鉄問題点が第一にあると思います。比率から申しますと、定期の六に対して定期外が四、これは戦前は全く逆でありましたが、こういう上昇になっております。これが定期客定期割引というような問題とも関連してくるものでございます。それから貨物輸送トン数でございますが、これはわずかながら上昇の過程をたどっております。品目別に見ますと、セメントとか硫化鉄鉱とか石炭とかその他の物資が地方産業または国家的に見ても重要な輸送というものを担当しておるのでございます。それからこういう輸送をやっていきます場合に設備投資でございますが、これは大手十四社ばかりではなく、地方におきましても、安全運転を確保するため、踏切改善するため、それから輸送施設を近代化するため、こういうような三つの立場から三十八年度で大体八十二億の投資をいたしまして、三十九年度で、これはまだ終わっておりませんが、大体百五十一億程度投資というものが必要になっておるのでございます。  次に、収支状況を見ますと、九ページにございますが、中小私鉄全体を見ますと、十九億五千万円の赤字になっておるのでございます。このうち、赤字会社だけにとって見てみますと、大体六十四社、これは鉄道部門をとっての赤字でございますが、これが三十一億という赤字になっておるわけでございます。それでこの問題については、経費が上がる、一方においては収入が伴わないというような点で、運賃の是正という点をお願いしているような事情でございます。  次は、こういうような苦しい中小私鉄状況でありますが、戦前戦後の私鉄助成のための補助金というものを見てまいりますと、「中小私鉄現状」の一八ページのところでございますけれども、戦前貨幣価値が非常に大きいときで、大体七百五十万円という補助金をもらっておったわけでございます。これを現在の物価指数によって換算いたしますと、大体三十億円になる、こういう補助金が大体赤字会社戦前は出ておったのでございます。ところが占領行政の当時、補助打ち切りというような方針で、その後運賃は一方において抑制され、それから他方において支出はふえる、こういうような苦しい中におきまして、補助打ち切りというような点が中小私鉄経営を非常に困難にしたわけでございまして、これはすでにもう改善していただかなければならない問題で、いまだに占領行政の残滓が残っているといえるのではないかと思われます。幸いこの点につきましても、運輸省御当局におかれましても、大蔵省関係方面へ御尽力いただきまして、いままでの千七百万円の補助金を大体赤字補助とか踏切補助を含めまして、一億をこす補助をこのために御尽力願うように、国会のほうにもお願いしておるわけでございますけれども、これは前年に比較いたしましては六倍、七倍になる補助の増額でございますが、三十一億の赤字に対しての一億の補助、こういう比率先生方も御理解いただきまして、今後の助成という点に特段の配慮を願いたいと思っております。  それから中小私鉄のこのような収支の悪化した原因を申しますと、まず第一は、戦前戦後の物価指数運賃指数との格差が非常にアンバランスになっている、物価は大体卸物価消費物価とございますけれども、大体において、一般的に見て四百倍くらいになっております。ところが運賃は百六十倍前後、こういうような情勢で半分以下に押えられている。ところが他方におきまして、定期客だけふえるということは、定期については文教政策的、社会政策的な責務を、独占企業から離れて、現在は競争時代にありながら、こういうような社会的な負担がございます。ここにもまた中小私鉄の苦しいところがございますので、こういうような点の施策につきましては、また次の機会などにおきまして御説明いたしたいと考えます。  それから次は、人件費の問題でありますが、三十一年度を基準にいたしまして、三十八年度の指数を見ますと、収入一六四に対しまして、人件費は一八八、こういうふうになっておりまして、内容を見まして、支出項目の多いのではやはり人件費が百六十一億、経費が七十五億、減価償却費の三十二億、支払い利子の三十一億、諸税の七億、営業外支出の九億、こういうふうになっておりまして、人件費の占めるウエートが非常に大きいのでございます。ところがこの人件費の問題につきましては、これはすでに御存じのとおり、所得倍増ムード的なものがここ数年来ございまして、それで私鉄といたしましても、従業員の生活の保障が必要でございます。世間並みの賃金を出さなければいけない、押えておきますと、従業員新規採用ができない、それから五年、六年たって、手ごろになってなれた連中が他企業その他に逃げていく、これをどうするかというような非常に経費増に悩みながら収入が伸びない、こういうところに中小私鉄の非常な問題があると思います。結局人件費につきましても、これは安過ぎても経営上に非常な支障、困難が出てくる。ところが高過ぎて木の幹を枯らすようなふうに上がっていっても、これは幹それ自身が枯れてしまいますから、こういうような措置はとるべきでない、これをどうするかというような問題が中小私鉄の現在におきまして非常に困難な問題でございます。それからちょっとさきにも申しましたが、現行法におきましては、地方鉄道軌道整備法、それから踏切道改良促進法というようなものがございます。これは本日の委員長先生にも非常に御尽力願いまして、制度的にこういうふうな措置をとっていただいておるということは感謝にたえないのでございますが、結局法律をつくりましても、予算の範囲内という一語で大蔵省からもらいにくい。運輸省から非常に熱心にやっていただきましても、地方自治財政状況、国家の財政状況とかいろいろな点でこれが思うようにいかない。幸い本年度におきましては助成という点で非常な画期的な御努力をいただいたのでございますが、この点は今後特にもっともっと皆さん方の御支援をお願いしたいと思っております。  次の問題は、中小私鉄に対する体質改善のための融資でございますが、これはひとつのブランクがございまして、中小企業基本法というものがございますけれども、資本金従業員の数から申しまして、中小私鉄中小企業に入らない。もっとそれよりも大きい。大企業中小企業中間になりまして、この中間空白地帯に対する融資制度がなかなか困難である。中小企業金融公庫に持っていきましてもぐあいが悪い。市中銀行に持っていきましても、やはり会社償還能力返済能力というものがなかったら銀行というものは金を貸さないのでございます。これについても何らかの措置を、これは政策の面でお願いいたしたいと思っておるわけでございます。  それからバス事業ローカル輸送に進出してきておるのでございまして、これが収入が思うように伸びないという点もございます。もっとも私鉄の中には大半がバス事業をやっておりますけれども、バスの一路線営業主義というものが複数制になってきて多少便利になりましたけれども、過剰投資という点で、従来の私鉄の客が奪われる。ここに一つ問題点がございまして、自動車行政の面につきましても、中小私鉄皆さんからは非常ないろいろな御要望があるわけでございます。こういうような実情でございまして、赤字倒産するものも相当出てきております。ところが残さざるを得ないというような会社も相当ございますので、これをどうやるかというのが今後の非常に重大な問題と思います。  もっとも、こういうような状況でございますが、中小私鉄はこの間コンサルタントにかけまして、中小私鉄経営分析というものをやったのでございますが、自主的に経営改善するための経費節減措置というものは、とるだけのことはほとんどとる、打つべき手は打っておるという実情がわかったのでございます。内容を申しますと、支出を減らすために、一年に二回やっている決算は一回に減らす、事務簡素化や冗費の節約をはかるとか、保守作業を外注したほうが安くつくので自分のほうの修理場をやめてしまう、それから計算事務とか構内作業を機械化するという点、新たな増員というものを押えてしまってそうして人員の削減を考える、それから無人駅を設けるとか、閑散駅を廃止いたしまして経費改善をはかる、それからまた株主等に対しまして優待パスを出し過ぎている、これを制限して収入の増をはかる、それから管理部門の職員を現業のほうに回すとか削減するというような方法をとる、あるいは閉塞区間の併合を行なう、いろいろありとあらゆる措置をとって今日まで耐え忍んできておるわけでございます。  増収のための具体策にいたしましても、鉄道並行線培養線代行線に対しましてはできるだけバス事業でやりたい。実現しているところもありますが、これがうまくいっていないところもございますが、この点に進出をはかっていく。それから国鉄への乗り入れというものをいたしまして、収入改善をはかっております。たとえば九州の島原鉄道その他でございます。それからトラック、ハイタク事業というものを兼営して赤字をカバーするとか、旅客誘致施設を整備するとか、それからコンサルタントによるところの経営分析によって、合理化増収措置をとる、こういったようなありとあらゆる切り抜けの措置をとっておるわけでございますが、何ぶん経営をやっていくのは、第一は輸送需要があるということと、それから運賃収入がふえるということ、それから経費支出ができるだけ少なくなる、この三点が必要でございまして、どれもこれも非常にむずかしい問題に逢着しているのでございます。  時間があまりないようでございますが、最後に、中小私鉄の構造的な問題点がここにあるからだと思われます。それで、賃金が上昇いたしますと、賃金コストが上がってくる。中央地方の賃金格差という問題が出てきておりますが、さっき申しましたように、大幅な賃上げというものは会社自身にとっては自殺行為にひとしい。しかしながらある程度の値上げをやらなければ会社経営はうまくいかない。これは必要経費として見るべきものである。ところがその必要経費を出していこうとしても、経営が苦しい。ここは運賃の面、助成の面で御配慮をお願いいたしたいという気持ちでございます。それから従業員一人当たりの低生産性を改善しなければいかない点がある。それから資本効率が低下してきておりますので、これも改善しなければならぬ。資本構成も悪化している。こういうように中小私鉄は非常に苦しい立場でございますが、そうかといって、支出の面では、新規採用従業員その他を採るためには、やはり落ちつかせるために宿舎をあてがうとか、いろいろな厚生施設をやらなかったら落ちつかない、こういう、苦しい実情でございます。それから労働を節約しまして設備に投資しようとしても、資金難で困っている。問題点は付加価値生産性を向上するということが問題でございますが、こういう点について御配慮を願いたいと思います。
  6. 關谷勝利

    關谷委員長 次に三橋参考人お願いをいたします。
  7. 三橋幸男

    ○三橋参考人 三橋でございます。私は、中小私鉄従業員が主体となってつくっております労働組合の上部団体の私鉄総連を代表いたしまして、今日の中小私鉄の経常難が従業員の労働条件の劣悪化をもたらしておる、したがってそれが現在及び将来にわたっての生活不安あるいは労働不安をもたらしておる、そういう実態に基づきまして、これらの中小私鉄経営の振興をはかるために要する国家助成について意見を申し上げたいと思います。  さて私どもが今日の中小私鉄経営難の原因について考えてみますと、およそ次のようなことがあげられると思います。  その第一は、国鉄経営中小私鉄経営上との立地条件の根本的な相違があると思います。一口に申し上げまして、国鉄経営ローカル線の赤字をも主要幹線とかあるいは都市近郊線の黒字によってカバーできる全国的規模の統一された巨大な経営体であるわけでありますが、これに反しまして、私鉄経営は相互に孤立した経営体でありますとともに、大手私鉄都市及びその近郊という最良の立地条件に依存した経営でありますのに対し、中小私鉄は、国鉄の場合赤字が常識とされておるようなローカル線、それと大同小異の恵まれない立地条件に依存した経営であることであります。これは客貨の輸送による企業的採算を度外視しまして、たとえば沿線における地主の利権とかあるいは特定産業の便宜、そういう他目的によって敷設されたケースが非常に多かったということ、つまり企業の成立動機に最も大きく原因を発していると考えるのであります。にもかかわらず、それが私企業として成立をしてきましたわけは、何よりもまず戦前の国家が、地方産業地方の経済の発展、国民生活の安定という国家的見地に立っての手厚い経済的援助を施してきたからだということは、いま私鉄経営者協会方々が申されたとおりであります。この国鉄経営とは条件を全く異にする中小私鉄経営の国家的見地に立っての経済的援助というものが戦後は全く断ち切られたということにあります。  第二番目には、わが国の地勢が災害、特に風水害や地震、こういうものによりまして多発の条件を持っておるのに引きかえまして、これが災害防止のための国家施策が実に不十分である。しかもこれらの災害は通例局地的に起こるものでありますが、一たび中小私鉄がその被害をこうむりますと、そのために固定資産の大部分を失いまして、再建不能の状態になってしまう、こういうことがしばしばあります。この点すでに述べました理由によりまして、国鉄の場合には災害をこうむる危険率が非常に分散をされておるわけでありますが、中小私鉄にあっては全く事情を異にしておりますから、一そうその経営難の深刻化という問題が起こってくるわけであります。  第三番目には、本来鉄道業には線路や車両など多額の固定資産があるわけであります。しかもこれらの資産の物理的な耐用年数が非常に長いという関係から償却期間は長期にわたります。これがために資本の回収がおそくなる。そうすると、その間に設備の陳腐化という問題が生じまして、技術革新による生産性の向上という点でいかにしてもその限界があるわけであります。そういうことから中小私鉄では、最少の輸送力を予定して単線の鉄道として敷設したケースが通例でありますけれども、その場合でさえ輸送需要ははるかに輸出力を下回り、設備が十分に稼働しないという関係から、客貨単位の輸送費が割高になるということは避けられない状態であります。この点はローカル線における同様な事情を無視して、全国同一賃率を採用できる国鉄との運賃決定上の重要な相違であるとも考えられるわけであります。  反面、しかし地方における経済的負担力の劣弱さに強く制約されておりますために、割高な輸送費を割高な運賃にそのまま反映することが必ずしもできないということが、中小私鉄経営の困難さをますます深くしていると考えられるのであります。  第四は、以上に申し上げましたような中小私鉄の本来的な要素、そしてそれなるがゆえに国家的見地から当然にも施されてきたところの経済的な援助が、戦後は全く断ち切られたという事情に加えまして、もう一つ戦後における中小私鉄経営難を深刻化させた決定的原因として発生したのが、申し上げるまでもなく道路輸送の飛躍的発達であります。これがために中小私鉄の地域的独占性は大きく失われつつあるのでありますが、にもかかわらず安全に迅速にしかも大量に輸送するという鉄道業本来の任務は、依然として地方産業の発達、地方の国民生活の安定向上のために、中小私鉄に負わされておる課題は非常に大きいということを強調しなければならぬのであります。  さて、今日におきます中小私鉄経営難の原因は一般的にいって以上のようなものでありますが、この現状を打開し、格別の国家的援助を復活するなどによる助成策を講じて、中小私鉄経営を働者の立場から申し上げますと次のとおりであります。  第一に、冒頭に申し上げましたとおり、今日の中小私鉄百三十一社に働く労働者の総数は三万二千余名であります。これらの中小私鉄労働者の賃金、労働条件は、その経営難のしわ寄せを受けまして、大手私鉄公営に比べてあまりにも劣悪であります。たとえば三十九年十一月分実績による大手の一人平均基準賃金を見ますと、東急の場合には二万七千三百七十四円、小田急は三万三百四十五円、京阪神は三万九百十二円、阪神は三万二千四百五十円という水準に達しておるわけでありますが、中小私鉄の例を申し上げますと、たとえば北海道の寿都鉄道、これは一万六千五百七十五円という平均賃金であります。また青森県の弘前電鉄は一万七千五百八十四円でありまして、秋田県の代表的な民間交通機関であります秋田中央交通を見ましても、一万七千六百十円という状態であります。こういった状態を見てみますと、大手中小私鉄の賃金に大きな格差があるということはおわかり願えると思いますが、さらに労働時間の問題についても、たとえば大手につきましては戦後いち早く拘束八時間、実働七時間制をとって、今日ではさらに一日二十分短縮をして、一週実働四十時間制をやろうということで労使が相談をするというような段階にまで至っているのに引きかえまして、中小私鉄の場合におきましては、いま述べましたような低賃金に加えて依然として非常な長時間労働が行なわれております。  これも一例でありますけれども、たとえば北海道の旭川電軌では最長拘束時間が十一時間、同じく北海道の夕張鉄道では列車乗務員の昼間の最長実働時間が十二時間、先ほど述べましたような状態を考えてみました場合に、こういう低賃金と長時間労働というものは今日中小私鉄には非常に多いわけであります。したがって、中小私鉄労働者の経済生活をはじめとする家庭生活は不安定の極に達しておりますのに加えまして、企業経営の危機的な様相のゆえに現在及び将来にわたっての各種の不安がとみに増大している実情であります。  第一に、今日の時点での低賃金なるがゆえの経済生活上の不安あるいは長時間かつ変則的な勤務なるがゆえの私生活上の不安定、これらがともに原因となる子弟教育上の不安。第二に保安設備の補修や改善が十分になされていないということから発生する労働災害への不安、これと関連して人命輸送をあずかる者としての交通事故に対する責任上の不安、また低賃金と労働市場の需給関係から招来いたしまして人手不足のために生まれるこれらの不安の倍化。そして第三には、経営危機が深まるにつれてますます表面化しつつあります路線廃止とその後の就業や生活がどうなるかという問題に結びつく不安であります。特に路線廃止に結びつく将来への不安は、最低賃金制や失業保険制度あるいは職業再訓練制度などの社会保障がきわめて不備な今日、非常に深刻なものとなっているのであります。中小私鉄労働者のこのような切実な生活不安や労働不安を解消し、人手不足を解消して大量の人命輸送をあずかるに足る鉄道本来の社会的使命を全うするためには、この際ぜひとも抜本的な国家助成策が講じられなければならないと考えるのであります。  第二は、中小私鉄における今日の経営危機を必然化せしめましたところの、先ほど申し上げました創業以来の種々の事情にもかかわらず、結果において中小私鉄の敷設とその今日までの営業は、沿線産業や文化の開発をもたらし、あるいは沿線住民の利益を著しく増進してまいりました今日といえども、その存在がこうした地域社会の利益とか発展と離れがたく結びついていること、特に通勤や通学については言うに及ばず、沿線の低所得階層の住民にとっては欠くべからざる交通機関であることは何人といえども否定できないと思うのであります。まして、さきにも触れましたように、戦後道路交通がいかに発達したと申しましょうとも、わが国の地勢その他種々の関係に制約されまして、それは必ず一定の限界に逢着し、安全、迅速、大量の人命、貨物輸送という使命は依然として鉄道業本来のものであることを御明察いただきたいと思うのであります。  以上のような原因に基づきまして、私は今日の中小私鉄における経営難を打開して、その振興をはかるに要する国家的助成策につきまして参考意見を申し上げたいと思います。  第一に、現行地方鉄道軌道整備法についてでありますが、その法の助成の対象となる地方鉄道軌道の認定または承認はすべて運輸大臣が直接その権限をもってこれを行なうこととなっており、またその運用は中小地方軌道の実態に照らして余りにきびし過ぎるために、実際上は空文化している状態であります。したがってこの際社会的富でありますところの中小私鉄を存続、振興させるという観点からいたしまして、この法は根本的に改正をし、既存の中小私鉄につきましてはすべてこれを助成の対象とし、その運用にあたりましては従来の条件を全面的に緩和させる立場に立ちまして、しかるべき標準営業費を設定し、それと収入との差額は国家がこれを補償することにされたいのであります。  同時に、このような運用にあたりましては、経営者、学識経験者あるいは中小私鉄に働く従業員の代表者あるいはまた通勤などのために中小私鉄を常時利用している沿線住民の代表者を含めました民主的な審議機関を設置していただきまして、その答申に基づいてこれを行なうというような運営をぜひはかられたいと思います。  第二に、固定資産税や事業税などの諸税減免についてでありますが、現行でも地方税法第六条によって「公益等に因る課税免税及び不均一課税」なる法的措置はあるのでありますけれども、実際上は各地方自治体の財政との関係におきまして、大災害をこうむるなどの特殊な場合を除いては、ほとんど適用されておりません。この際中小私鉄が自治体住民の生活に占める少なからざる役割に照らしまして、右のような法的措置が大幅に適用されるような措置を早急に講じていただきたいと思うのであります。  第三に、中小私鉄運賃決定についてでありますが、さきにも触れましたように、本来中小私鉄、あえていえば、私鉄そのものの運賃決定にあたって考慮されるべき事情は、国鉄のそれとは全く事情を異にしておるわけであります。にもかかわらず、今日までの運賃値上げの実態を考えてみますと、私鉄そのものの条件からは離れて、国鉄運賃政策に従属して政治的に中小私鉄運賃がきめられてきた、こういう点が私どもは非常に不満に思うわけであります。これらの点につきましては、私鉄経営の矛盾とかあるいは原因とかあるいは実態等を十分にひとつ勘案をしていただきまして、第一に考慮に入れなければならないのは、沿線住民の生活上の必要性との関係であると考えますが、今日のように全国単一の国鉄運賃率に従属させて、これに若干私企業としての採算な加味したような見地からの決定、こういう非民主的決定につきましては、ぜひ排除していただいて、さきに申し上げましたように、第一には民主的に決定をしていただくこと、第二には、私鉄企業の実態に即して運賃が決定されるような制度にぜひ改めていただきたいと思うわけであります。  第四番目に、運賃の公共負担分の国家補償の問題であります。危機にある中小私鉄経営に対して、何らの国家的な助成がなされないままに、本来国家が補償すべき社会政策上の見地からの通勤とか通学などにおける高率な運賃割引が、私企業に義務づけられ、過重な公共負担を課せられているということは、全く不合理だと思うのであります。その意味で、私どもは直ちに通勤の問題について云々するというようなことについては、国家か企業かいろいろな問題があろうと思いますのでこれは避けますが、当面少なくとも中小私鉄における通学運賃の割引分については、これはもっぱら教育政策上の公共負担分であることは明らかでありますから、国または地方自治体の教育予算にぜひ計上していただいて、これを補償するよう汁措置が早急に講ぜられるべきものだと考えるわけであります。  また、道路交通の発達に伴いまして、もはや鉄道業として地域住民の生活の実態から遊離して、採算がとれない、したがっていちはやくバスに転換したいけれども、それがための転換資金がない。こういうものにつきましては、ぜひ早急にこれらの資金を国家から融資し、かつ採算が可能になるまでは利子補給等の方途を講じまして、私どもがバスヘの転換を容認する最低条件としては、少なくとも労働条件に影響がない、こういう状態を確保した上でこういった条件を確保してもらいたいと思うのであります。以上、参考意見として申し上げました諸点につきましては、よろしく御審議の上、早急に中小私鉄振興のための国家助成を実現していただけるようお願い申し上げまして、私の意見を終わりたいと思います。
  8. 關谷勝利

    關谷委員長 これにて各参考人の御意見の開陳は終わりました。
  9. 關谷勝利

    關谷委員長 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。山口丈太郎君。
  10. 山口丈太郎

    ○山口(丈)小委員 各参考人からきわめて私どもの参考になる意見を開陳願いまして恐縮でございます。私は私鉄経営者協会に対しましても再三、こういう機会を持たれるように要請もいたしておったわけでありますが、今度初めて衆議院の運輸委員会内に私鉄対策のこういった小委員会が持たれて、關谷委員長をこの小委員会委員長に迎えたことは非常にけっこうなことであると思うのであります。どうもいままでの経過を見ておりますと、いま組合側から述べられましたように、私鉄全体の経営改善のためには、それぞれ国から国家的にいろいろと助成を仰がなければならないような事態にあるにもかかわらず、積極性が見られない。本日の参考意見を拝聴いたしましても、どうも経営協のほうには、いま組合側が述べられたような積極的な御提案が見受けられないで、ただその内容の説明に終わっておるということは、何かそこに遠慮をされておるのではないかと思う。いま、組合側から述べられましたような幾つかの提案の中には、私は経営者としてももっと積極的に進められる必要があると思うのですけれども、これはいかがでしょうか、組合とまず経営者側、協会側との意見の相違というようなものがありますれば、お聞かせ願いたい。また、経営協として、それになお付加して国家的見地から助成策について意見がありますれば、それをお聞かせ願いたいと思います。
  11. 古谷善亮

    古谷参考人 ただいま三橋参考人の御意見を伺って、大体におきまして私ども賛成なのであります。同じようなことを考えておる次第なのであります。本日は大体現状の説明を申し上げまして、時間もいろいろ考えなければならぬと存じましたので、また機会を改めまして対策等についてお話を申し上げたいと思っておった次第でございます。  いまお話がありましたように、私鉄経営者協会といたしましては、中小私鉄の問題に非常に関心を持っております。決して放任いたしておる次第ではございません。先ほども申し上げましたように、中小私鉄には非常に格差が多いものでございますから、一応頭の中で考えましたような対策はできましても、これの裏づけ資料でございますとか、あるいは実態を十分把握いたしませんと、責任を持って部外に対しまして発言いたしかねるものでありますので、私どもといたしましては、昨年から実態把握に専念いたしました。もちろんわれわれの能力にも限界がありますので、運輸調査局に正式に依頼をいたしまして、そこで経営の分析をいたしてまいりました。また、部内の機構も拡充いたしまして、中小対策に取っ組んでまいったのであります。その結果、考えられますような事項は二十数項目に実はわたっておるのであります。先ほど三橋参考人から申されましたことは一々ごもっともでございまして、私どもも同様に考え、同感いたしておる点が非常に多いのであります。二十数項目ございますけれども、これを分類いたしますと、やはり二、三の項目になろうと思います。その一つは、先ほど三橋参考人も申しましたとおり、自動車の問題もございます。それからもっと国鉄との緊密な連絡をとらねばならぬと思っております。先ほどもお話が出ましたように、国鉄はその組織の中において赤字線と黒字線とを調整しておる。しかし、中小私鉄は、各国鉄赤字線が分離されたような状態において各地でもって営業しておる。ここに中小私鉄の非常な弱点がある、こう申されました。そのとおりでございまして、国鉄の七八%は中小私鉄と同じような状態に置かれた線路だと思うのです。国鉄は二二%は黒字線で、七八%は中小私鉄のような線路経営しておるのでございます。でございますので、私どもは私鉄と申しましても、国鉄と一体になって国の交通経済に寄与し、また地方の開発に寄与しなければならぬだろう、こういう見地からいろいろの考え方を持っております。具体的なことになりますと話がこまかくなりますので申し上げませんが、ただいま申し上げましたとおり、国鉄との関係もございますし、それから地方庁との関係——これは固定資産税の関係もございましょうし、あるいは災害等の関係もございましょうし、いろいろあるのでございまして、これらの項目を整理いたしまして、そうして申し上げたいと思っておりますので、その時期等がまた与えられますならば、喜んで詳細申し述べたいと存じます。
  12. 山口丈太郎

    ○山口(丈)小委員 この「中小私鉄現状」というパンフレットの中で、収入面で見ますると、輸送人員の中で定期旅客の占める割合は五九%、六億人とされております。定期外旅客は四一%で四億人、これに対して収入面を見ますると、定期旅客運賃収入は総収入額の三四%、七十一億円、定期外旅客収入は百三十七億円、六六%。いま私どもも当委員会において常に主張をいたしておるのでありますが、これは何を物語るかといえば、一つはこの定期旅客の中には社会負担、もう一つはいわゆる学生輸送等によります公共負担、この二つの要素が定期旅客の大多数を占めるものであり、そしていずれもそれは、一つには日本の学術振興、社会振興のためであり、一つは生産に従事するもののための運賃の特典である。こういたしますと、それは私鉄経営者の責任に帰すべきものではない。それほどに余裕のあるものではないことは、これはどなたもが認められておるところだ〜思うのです。しからば、これは国民全体が、生産に従事するものがその交通機関を利用するにいたしましても、それによって生産を上げるとうことは日本経済に対して大きな貢献をなしておるものである。学生等の高額の割引を実施いたしておるということは、日本の文化、社会の向上のために必要欠くべからざるものであるという理由によってやられておるのでありまするから、したがって、当然、これは、その全額とは申さなくても、少なくともそれに対応する国家の施策というものがなくてはならぬ。ところが、これについてももう少し私は遠慮なしに積極的にその助成策について意見を推進していくべきではないか。今日まであまりにも自分を犠牲にしてもいくということは、いいことではありましょうけれども、少なくとも、それに対していま組合側からも言われますように、今日、中小私鉄の平均賃金ははなはだ低い賃金である。そのため従業員は他産業より安い賃金で働けといいましても、従業員もそれだけ社会奉仕をすることはできないのでありますから、したがって、当然賃金の要求をすることは、これはあり得るのでありまして、当然のことだと思う。これに対処するためには経営者においてももう少し積極性を持たれるべきではないか、こう思うのでありますけれども、御意見はいかがですか。
  13. 織田憲吾

    織田参考人 ただいま山口先生から御質問がございました。まずその前に、労働組合を代表されました三橋参考人の御意見を拝聴いたしまして、実は私としてもほとんど大部分は全く同意見でございます。本日は、いま山口先生から御指摘になりましたような具体的施策ということについても用意は一応いたしてきておりますが、本日は現状を一応述べまして、次の機会にこれに対しての具体的な施策をどうすべきか、これは具体的に強力に皆さんお願いいたしたいと思います。これにつきまして立法的な措置も相当ございます。それから行政的な措置もございます。これは着々準備中でございます。ただいま御質問のありました公共負担の問題と思われますけれども、文教政策的、社会政策的なことをやっていくということは、これは国家や地方なんかの公共負担とすべきじゃないか、こういう御意見でございます。これも一応実費を償う運賃が先決じゃないかと私は考えております。どうしてかと申しますと、一般物価指数昭和十一年に比較いたしまして四〇〇になっております。ところが運賃指数は一六〇しかなってない。ここに原価を償う運賃制度が、さっき三橋参考人もおっしゃったように、国鉄との関連において抑制されておる。これは企業として、公共的な企業でありましても、いわゆる経済的に成り立つような実費を償う運賃体制を確立することが、日本ばかりではなく、欧米でもこの点は持ち上がっておりまして、資本報酬を含めたフェア・リターンという適正報酬というものを加味したところの運賃体系でやるべきだと思います。この点につきまして、公共負担は全部地方その他で持つべきだ、持ったらどうかという御意見もあります。外国では地方の自治体が持っておるところがあります。国が赤字を補償しておるところもございますけれども、今日の実情を見ますと、地方の公共団体それ自身の財政規模が期待できない。これを直してもらって、われわれの要望を受け入れできるような体制が整うことが先決じゃないかと思っております。  次に、運賃体系の面から申しますと、鉄道をはずさなければやっていかないというような地方におきましては、運賃は、地方で高くてもいいから、ある程度上げてくれ、それで残してくれという要望の会社がございまして、百三十社のうちこれが大体三分の一くらい、三、四十社ございます。個々の運賃賃率の基本賃率についてみますと、東海道沿線の太平洋に面した部面のキロ当たり賃率が大体三円から四円、五円、こういうふうな上昇ですけれども、そういうふうな僻地においては、キロ当たりの賃率が八円、九円、はなはだしきは十円になっておる。こういうことは、運賃それ自身が限界点に来ておるところが四分の一か三分の一ございます。ここの点は、かりにこれに公共負担がありましても、基本賃率が高い。これ以上は国鉄運賃バス運賃との関係で上げられない。地方民としてもお困りになる。だから、こういう面については公共負担という名目も考えられますが、もう一つはそういうものはフランスのように赤字を補償してやるというような制度でいくべきじゃないかと思っております。それで、なお具体的な措置につきましては、経協といたしましては、古谷さんが中心になられまして、従来の中小部会というものを中小委員会に格上げいたしまして、昨年でございます、そうして、ここの中に国鉄の小委員会、自動車の小委員会融資委員会その他地方経済、自治省との関係の委員会、こういうものをつくりまして、具体的に立法行政措置についてお願いしたいと思っております。そういう点を本日触れなかったために、山口先生は何だか非常に消極的なようにお受け取りになったのではないかと思いますが、次会またはその次の機会に具体的に私たちの要望を申し述べたいと思います。大半は諸先生方の御賛同を得られるのじゃないかと思っております。
  14. 山口丈太郎

    ○山口(丈)小委員 私一人で質問をしても何ですからこれでおきますが、きょうは運輸省から民鉄部長、鉄監局長、大久保政務次官がおいでのようですけれども、参考人だけの御意見を拝聴することにして、政府側との質疑は次会にすることにいたします。  そこで一点だけお伺いをいたしたいのですが、私も終戦後、私鉄組合にありまして地方の責任者もいたしたこともございます。しかし私は、いま三橋参考人からの意見を聞きまして、やはり私ども私鉄の労働組合の結成に参画をして進めてまいりました、その結成当時からの建設的な方針というものは、みじんも変わっておらぬ。そして特に企業の発展、推進に対して、これは労使で同一意見をもって臨もうとしておるその基本的態度というものは、本日の陳述において如実に示されたと思いまして、非常に私は心強く思っておるわけであります。  そこで経営者協会側並びに組合側にお伺いをしておきたいと思うのですが、いま具体的に総連からは中小私鉄が今後経営を堅実にし、進めていく、もちろんその中で利益の分配、賃金についての意見の相違が生ずることもままあることは当然であります。しかし企業を推進していくという経営者側から言われました幹を枯らさないというたてまえにおいて真剣にこの提案をされておるということは、私は認めていいと思うのです。これは組合だけの力によっては推進することはできないし、経営者だけで従業員たる組合員がそっぽを向いていたのでもこれはうまくいかない。でありますから、その幹を枯らさないというためには労使一体となってこれが解決に向かって進まなくてはならない、こう私は考えるわけでありますが、その用意が経営者協会にあるかどうか、また労組側にもいま私が申し上げたような精神というものが変わらないであるかどうか、そしてこれを推進するための何らかの具体的な労使関係の、労使で推進していくための機構というものが、協議会といいますか、そういうものでも持って推進するだけの熱意があるかどうか、これをひとつ最後に承っておきたい。
  15. 古谷善亮

    古谷参考人 非常にごもっともな御意見だと思って拝聴しております。問題は、ことにこういったような公益事業におきましては労使が協調をいたしてやらなければいけないことだと存じております。そこで現在の状況におきましては、私は実情をつまびらかにいたしておらぬ節もございますが、要するに各社とその社の労組との関係でございまして、ここがやはり基本となって、その間の協調を得られますことが何より肝心だろうと思うのでございます。すでに私鉄経協の中におきましても、御承知のとおり労務委員会というのがございまして、いろいろ労務の問題を検討しておりますが、大手の関係は、これは大手として別にやっておりまして、中小の関係につきましては、特に中小の方もおいでを願って、その間の意思の疎通、情報の交換あるいはその後の進め方というようなことにつきまして御協議申し上げておりまして、私鉄経協といたしましては、できるだけの慎重な態度でこのことに臨んでおるはずでございます。昨年におきましても、私鉄経協といたしましては十分その責を果たしておることと存じております。目下問題がこれから回転いたしてまいりまするような機運にございまして、それぞれの地方におきまして、それぞれの事業者と労組との間で御協議されておることと思いますので、それらの御決定につきましては、こちらのほうからあまり差し出がましいことは申し上げられないのではないかと思っております。要は、労使できるだけの協調的な態度でこの公益事業の推進と中小私鉄の健全化ということのために、ひとつ手をにぎってまいりたいと存じております。
  16. 三橋幸男

    ○三橋参考人 私どもは中小私鉄の危機が今日このような状態になるであろうということは、もう五、六年前からはっきりと見通しをつけておったわけであります。そういう意味で経営者協会に対しましても、何回となく今日の中小私鉄の危機を打開するために一体経営者はどうするのだ、一人前の賃金を払ってなおかつやっていけないようた企業に対しましては当然国家にその保障を求めるべきではないか、こういうことで私たちは何回か要求しました。たとえば団交のときでもいろいろ問題点を出しましたけれども、やはりいまの私鉄経営者協会というのが失礼ながらやはり大手中心に運営をされておって、中小私鉄経営者の意見がなかなかいれられない、そういう実情があるということは、私どもが地方に参りますと、地方中小経営者からは非常にそういう不満が投げかけられておったわけであります。そういうことを考えてみましても、この種の問題についての取りきめが、やはり私鉄経営者協会として非常に落ち度がある、こういう点を非常に強調してまいったわけであります。いよいよどん詰まりにきましてから、私鉄経営者協会も若干最近は本腰を入れてこの問題に取り組んでいただけるようになったわけでありまして、この点は私たちも非常に喜んでおるわけであります。少なくとも私どもは一人前の社会人として、特に公益事業の労働者として、一朝事あれば多数の人命にかかわる、こういう重大な仕事の関係から、いまの賃金や労働条件では公益事業のほんとうの意味での使命を果たすことが困難である。そういう意味で私どもは一人前の賃金を取り、一人前の労働条件である限り、その他の問題については全面的な協力も惜しまない、こういう態度を傘下組合の基本的な態度にしておりますから、そういった意味で今後も努力を続けたいと思っておるわけであります。
  17. 山口丈太郎

    ○山口(丈)小委員 希望を申し上げておきますが、私ども外部から見ておりますと、私鉄経協は中央において私鉄総連との間で、この労使問題、あらゆる問題を交渉によって解決していくために設けられておるのでありますけれども、どうもその後見ておりますと、ただ賃上げその他のときに主として労働組合に対抗する私鉄経協という意識が非常に強過ぎるのではないか。もっと私は幅広く、ただそういう関係の機関としてだけではなくて、労働組合にイニシアをとられるとか、とられないとか、あるいは経営者がすべてそのイニシアをとっていくんだとかとっていかないんだとか、そういう経営権がどうだ、そういうことを主張している時期ではないと私は思うし、経営協というものの性格というものはそういう世間狭いものであってはならぬ。少なくとも労使の関係におきまして協議をする場というものは幅広いものである。その経営をどうしていくかということをもっと相談づくでやっていくべきである。これは中小私鉄に限らず、大手についてもそれが言えると思います。そうでなければこれはせっかくつくった私鉄経営者協会、それに対抗するといいますか、対して私鉄総連、こういう企業全体の労使のまとまったものが、その両雄が一つの土俵へ上がっていき、もっと土俵を広げて、ただ賃金問題やそういうことに限定されるのではなくて、もっと広い土俵にして、その上で強力に進めていかれることが望ましいのではないか、かように考えるわけです。せっかくこの衆議院においても理解のある運輸委員の与野党ともの協力によってこの小委員の会もできて真剣に私鉄の問題に取り組んでいこうではないかというところまできたのでありますから、それを十分に理解されて、今後ひとつ積極性を持ってやっていただくように期待したい、このことを要望して私の質問を終わります。
  18. 關谷勝利

  19. 肥田次郎

    肥田委員 私も同僚の山口委員と同じように地方交通企業が初めてこうして運輸委員会で取り上げられたということにつきましては、關谷委員長に敬意を表している次第であります。  そこで私は、きょうはもう時間もだいぶたっておりますから、質問ということではなしに、若干の資料をお願いしたいのですが、まず一つは、大都市においては、最近ようやく電車による輸送——これは地上、地下を問わず、こういうものに対して自信を持ち直してきたようであります。いわゆる大量を早く安全に輸送する、これに対して自信を取り直してきておりまして、ようやくその施設も本格化してくる。巨大な資本を投下しながら、そういう方面に対して強力な動きを示すようになってきました。ここで問題になるのは、地方都市におけるところの、その対象になる中小私鉄が、これと同じ概念に立たれる条件があるのかないのか、この点について、これは御意見を聞くことになりますと長くなりますから、これはひとつそういうものについて、大都市と小都市とは同一の論じゃない、こういう御意見なら、そういう関係の意見をあとで資料で聞かしてもらいたいと思います。  というのは、今日この中小私鉄の事業の主体というものは、先ほど双方から言っておられたように、鉄道というものは、実は名ばかりで、大多数は、事業の主体というものが乗り合い自動車になってきておる。ですから、地方鉄道というこの概念でものを考えるということはすでにもうピントが合わなくなってきておる。ですから、ただ単にわれわれは呼称上、地方私鉄中小企業とこういっておりますが、表に字に書いてみると中小私鉄になるけれども、中小私鉄の大部分はバスを主体にして、そして実際にはいわゆる鉄道事業の数倍の人員をもってバスの事業をやっておる、こういう状態でありますから、そういう点についてこれからの時代的な一つの見通し、こういうものについての関係について、意見を添えられた資料をお願いしたいと思います。  それから次には、これははなはだなんですが、大都市におけるところのいわゆる大手筋の企業、これが逐次地方の対象になるところの中小私鉄といいますか、私はかりに表現をそういうふうに言っておきますが、中小私鉄に対して資本の系列化という動きが相当進められています。こういうことが、実際にこの中小私鉄に対しての問題点であるところの、中小私鉄企業内容に対して、プラスになるのかどうか。もっとわかりやすく言うと、中小私鉄の大資本の系列化に入るということ、これが問題点の解決になるような何か利点でもあるのかどうか、こういうことについてひとつ資料をいただきたいのです。これは事実われわれが議論してみても、この国の助成策というものがそういうところに及ばない。そうすると、資本がただ単に地方におけるところの系列化——地方の少々の競争は過当競争によって排除しても、とにかく系列化というものが進められておる、こういう事情です。それで、この系列化を進められるということの中で起こるところの過当競争、こういうものが必ずしも収入増の原因にはなっておらない。こういう相矛盾したものが行なわれておるのです。それでもなおかつ資本の系列化というものは相当強く進められていっておる。ですから、この問題を——きょうお見えになっておるのは、中小企業と申してもいわゆる私鉄経協の選手であるところの織田さんや古谷さんがお見えになっておる。それから三橋さんは労働者代表ということであるけれども、これは私鉄総連という立場でお目えになっておる。ほんとうのところが聞きたいのは、古谷さんのような立場におられるものではなしに、ざっくばらんに言うと、当該のこの中小企業の代表の意見をさらに聞く。それからまた、当該の中小企業従業員立場にあるところの人々の意見も聞く。こういうことが、より問題の真組を把握しやすいだろう、こういうことも考えるわけでありまして、したがって、そういう点についてそういういろいろな複雑な事情を持っておるところの資本の系列化という問題と、いわゆる中小私鉄に対する振興というものとの関係がどのような関係になるのかということについて、これはひとつ三橋参考人のほうから、それから私鉄経協の古谷参考人のほうからもこの関係については御意見を資料にしてひとつ承りたいと思います。  もう一つ、これはささいなことでありますが、先ほど言いましたように中小私鉄という表現をいいかげんにやめたらいいのじゃないかという気が私はするのです。もっと何かいい名前があるのじゃないか。私鉄中小私鉄、こう言いますと、全く実体はないのに、中小私鉄と言っておる。そして中小私鉄に対して国のほうでは手が及ばないのに、これらに対して地方鉄道軌道整備法の適用をもっとこまかくやれ、いわゆる金を出ししぶらずにもっと出しなさい、こういうこともいっておる。ところが実際には概念がもう変わってきておりますので、こういうものも適当な呼称を新しくつけて整理するという必要があるのじゃないかというようなことも考えまするので、この点についてもひとつ御意見を付されたものを一緒にいただきたいと思うのです。いままで各参考人からお述べになったことは、あと不十分なところは記録もよく調べて、そして検討していきたいと思います。私のお願いするのは以上です。
  20. 關谷勝利

    關谷委員長 この際、参考人方々に、小委員会を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、貴重な御意見を承り、まことにありがとう存じました。本問題の今後の調査の上に、非常に参考になりましたことと存じます。ここに厚くお礼を申し上げます。次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会をいたします。   午前十一時四十一分散会