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久保委員 いまのお話では、二百二十九万トンの建造規模で、そのうち積み荷保証のないものが二十二万トンである。だから、十分
審査の結果これは積み荷保証も確実である、船会社にとっても不利はないということから、無理がない、こういう御意見であります。なるほど積み荷保証のあるものとないものでは、積み荷保証のあるものが堅実であります。しかし、積み荷保証をするところの荷主の経済の実態というものは、今後十年間このままで伸びていくのかどうか。企業によっても、最近のように、たとえば山陽特殊綱でありますか、そういうものを一つとっても問題が出てくるのですね。そういう際に手放しで、積み荷保証があるから、荷主の要請に基づいて建造するのだから問題ないということは、はたしていかかがと思います。
それからもう一つは、今日あるところの
海運助成政策の上に乗って、未来永劫これが続くものという前提において建造することが、はたして国民的要求であるかどうか、これも考えなければいかぬ。
それからもう一つは、
海運収支の問題でありますが、この
海運収支の
赤字解消というか、
赤字を全然なくすということは不可能事にひとしい。いまの御答弁でも、
大臣がおっしゃったところの三千四百万総トンにしても、これは現在の
赤字幅を
横ばいにしていくためだ、こういうことなんですね。だから、この
横ばいというか、いまの日本の貿易構造からいくならば、当然
海運収支が未来永別、
赤字としてつきまとうのであります。貿易構造を変えていく、そういう意欲がない限りは、船を幾らつくっても
赤字は解消できない。と同時に、その船をつくることがはたして
海運企業の体質の
強化になるか。
強化にならぬ。いわゆるいまの制度の上に乗っていく限りはそうでしょう。自己資本で建造していくということになるのなら、これは別です。ところが、他人資本によって大半をまかなっていくということになれば、船はつくればつくるほど、いわゆる自己資本の比率というのは御案内のとおり下がっていく。下がっていけば、当然のごとく企業体質は弱くなっていく。しかも、
海運はいわゆる波動性の多い産業であります。いま、
海運市況が好転しているからというその前提に立ってものごとを判断するのは当然危険なんですね。だから、この辺でもう一ぺん政策の目標というものをもう少しきちっとすべきであろうと私は思う。
国際収支の
改善をこれによってはかっていくということも、国策上必要であります。しかし、これは貿易構造を変えていかない限り絶対に
改善ができない。とするならば、貿易構造を変えるという、私が年来申し上げておるような
方向を外交政策上とるべきだ。これが一つ。
もう一つは、いわゆる
海運の今日の政策は、ます第一に最小限——大きなことを望むことはできませんが、ならば、国民の協力によってできたところの
集約の
方向は、いわゆる体質
改善というものに焦点を合わせてのみ処理すべきものであって、いわゆる
船腹拡充と体質
改善と、二つを追うがごときは断じてこれをやるべきでないし、できるはずがないのであります。だからこの辺で、もはや一年間の実積はある
程度わかったとするならば、これは今年度一ぱいかけて、来年度は
海運政策のあり方について再検討すべきであると私は思うのですが、どうですか。