○
和田参考人 全日本海員組合の
和田でございます。
これから
お話申し上げる
内容を理解していただくために、
海員組合の
立場について最初に申し上げておきたいと思います。
海員組合は、御承知のように、
日本においては他の一般の
労働組合と違いまして、
会社別の
労働組合ではなく、
船員が
個人で直接加盟をいたしております
わが国唯一の
横断的組織であります。したがいまして、
海員組合は単なる
労働組合という
立場のみではなく、
船員の
職業団体としての責任も背負うという
立場に立っておりますし、
組合員につきましては、全体としても、また
個人個人についても代表する
立場にあるわけであります。そういう
立場で今回の
ベトナム方面におきまする諸般の問題について
対処をしてきております。さらに私
たちは
世界のいかなる
地域であろうとも、
航行は自由に行なわるべきであるという
立場に立っておりますから、
相手の国の
政治形態の差異や
立場の違いによって、
船舶運航を云々するということはなく、いずこの港、いずこの
地域にでも自由に
航行するということを、一貫した主張として持っております。もちろんその場合には乗り組んでいる
船員の
安全確保ということが大前提であることは申すまでもございません。
そういうような基本的な
立場におきまして
対処をしてまいりました問題は、整理をすると三つに分かれるわけであります。
一つは先ほど来議論になりました
北ベトナム方面に対する就航の問題であります。
一つは南
ベトナム方面に対しまする一般商船の就航と、これの
輸送する品物、たとえば危険品
輸送等に関する問題であります。もう
一つは最近新聞紙上をにぎわしておりますLST、つまり米軍に雇用され、米軍の
輸送に従事している船の乗り組み員の問題であります。この三つに整理をいたしまして、それぞれについて私
どもの
立場と処置してきたこと、並びに
意見を申し上げたいと思います。
北ベトナムの就航について、最近におきまして一番最初に問題になりましたのは、新聞にも出ました第三日邦丸の事件であります。この第三日邦丸は岡田
海運の所有船でありまして、日正汽船が用船をいたしまして、さらに日正汽船はこの第三日邦丸を中国租船公司、中共の
船舶を扱う機関に再用船をさせたわけであります。御承知かと思いますが、共産圏、特に中共の場合には、一般の自由諸国と違いまして、通信はかなりきびしい規制がございまして、われわれが刻々に船の動静をつかむということは困難でありまして、この船についてもどういうことをしているのかということ一が、実はわからなかったわけでありますけれ
ども、いろいろな苦労をいたしまして、たまたま同じ港に停泊をした他の船に、第三日邦丸の船内
委員長が詳しい手紙を託しまして、
海員組合に送ってまいりました。その手紙によって何をしようとしているかという事実が判明をいたしました。それによりますと、中共の命令によりまして、ガソリンを塔載をして
ベトナム方面に
輸送をするということで、はなはだ危険で、不安でしかたがないけれ
ども、この問題については乗り組み員は困っている。
海員組合が何とか
措置をとってもらいたいという訴えであったわけであります。
一般には弾薬は軍需品、危険品であり、ガソリンは危険品であるけれ
ども、普通の商品のように思っておられる人が多いわけであります。けれ
ども、戦争事故に直面した場合には、ガソリンの塔載をしている場合に万一被弾等いたしますと、弾薬を塔載しているよりもはるかに悲惨な結果になることは、私
どもも戦争中の経験を通じて知っているわけでありますから、万一の災害に対する
船員の不安が高まるのは当然であります。
そこで直ちに
船主に
交渉いたしまして、この再用船を破棄をして、本船を
日本に帰せという
交渉をしたわけでありますけれ
ども、
船主は言を左右にして、なかなか帰そうとしなかったわけであります。
組合はどうしても
船主がやらないというならば、最後の手段として
航海中直接本船に無線で指令をして本船の行く先を変更させるという強硬
措置をとらざるを得ない。したがって、そういうことになる前に
船主の責任で危険回避の
措置をとれということを要求をいたしましたけれ
ども、
船主はそういう
組合の要求に基づきまして中共側と
交渉したのでありますが、中共側はその
交渉を受け付けない。そういう形でこの船はガソリンを積んで
北ベトナムに参りました。その結果、私
たちの危惧したことが実現をいたしました。ハイフォンの近くの郊外のソングリーの港に入港しているときに
北爆にあいまして、これを迎え撃つ高射砲の地上砲火等もありまして、特に船長と司厨長は食料の問題で上陸中
爆撃によって防空壕に避難をするという事件が起きたわけであります。幸いにして本船は無傷でございましたけれ
ども、全く危機一髪の危険な
状態に直面をいたしました。そういう経過がございましたので、この船がハイフォンから出航いたしまして、公海、十分地理的な条件を考えて安全度を判断をされたところで船に
電報を打ちまして、一方的に
契約を破棄して
日本に帰らせた次第でございます。
私
どもは、金もうけになるのならば何をしてもいいということではないと思っております。特に一般の商船に乗る乗り組み員は、そういう戦争危険をおかすということを前提にしていないわけでありまして、平和な
状態で平和な
輸送に従事をするということを前提にしているわけでありますから、それをくずすようなことは絶対に許せないという
立場をとっております。その後さらにバクロン島の
爆撃等いろいろな事件がございまして、
北ベトナム一帯が非常に危険な
状態になってまいりましたので、先ほど
米田さんから
お話がございましたように、
船主協会に申し入れまして、十七度線と海南島の南端部を結ぶトンキン湾に対する
配船を中止するように
要請いたしました。幸いにして
船主側でもこの
要請を入れて、
組合が就航拒否をする等の
措置をとるに至らずして、
船主側の判断において就航を中止されるようになりました丁第一中央汽船の用船しております上海丸以下七隻の船がいままでのところ具体的な予定を立てていたところを就航を中止をするという形になりました。
この点につきまして、先ほどちょっと
お話を伺っておりますと、
日本船が就航しなくなったので、
貿易に打撃を受けて
契約不履行で
損害を受けるかもわからない、われわれの調査によると、
英国、
フランス、西ドイツ等の船が行っておるのであるからというような御
説明がございましたが、私
たちは
日本人
船員を代表するものとして、
日本人の自主的な
立場において安全を判判をいたします。したがって、
日本船が行かなくて
外国船が行っているからというのであれば、御商売をするならばそれらの
外国船を御自由に御利用なさればよろしいのでありまして、私
たちがそのことに関して何らの責任を感ずるものではありません。私
たちは
組合員の安全に対してのみ責任を感じておる次第であります。
次に、南
ベトナム方面に関する、これは主として米軍ということになろうと思いますが、軍需品を一般商船が
輸送するという場合についてであります。この事件が
一つ起きましたのは泰通
海運の無難丸という船であります。これはやはり日正汽船に用船をされておりまして、そういう軍需品を
輸送するという予定ではなく、一般の商船の扱いで用船
契約を結んでおりました。ところがこれまた木船から
海員組合に
電報による連絡がございまして、沖繩から
アメリカ軍の弾薬七百トン等の軍需危険品を
輸送して
ベトナム方面に
航海をするということである、これは非常に危険を感ずるので困る、
船主にそのことを言ったところ、
船主は、
海員組合はこれを了解をしているから
輸送をしていけということを乗り組み員に言ってきたが、どうもそういうことは疑問である、そういう連絡がございまして、沖繩に入港して
海員組合の沖繩支部から電話で本部に連絡がございました。
船主が
海員組合が了解をしたというのは全くうそでございまして、
海員組合の本部はそのようなことを了解した事実はございません。ところがそういう一方的な
措置で進められたために、沖繩の那覇の港において
アメリカ軍からは弾薬を積めということを強制というとおかしいのでありますが、強硬に命令をしてきたわけであります。これに対してどうするかということになる。本部は直ちに沖繩支部に指令を出しまして、電源を切って荷役の機械をとめてもいいから積み荷を拒否をしろという指示をいたしました。その結果積み荷をしないならば、岸壁から離れてもらいたいという形で岸壁から離れたわけでありますけれ
ども、われわれはいかに運賃によって金もうけといえ
ども、そういうことを了解をしていない。本船の乗り組み員にうそまでついて弾薬を運んで戦争
地域に持っていくということは許しがたいことである。したがって断じてそういうことは認められない
立場を貫きまして、この
輸送は破棄をさせまして、弾薬を積まずに出ていったわけであります。これもまた一般商船の乗り組み員の安全、こういうことの見地からとった
立場でありまして、われわれの基本的な方針に立っておる次第でございます。今後もこの種の類似問題が出てまいりました場合には、ケース・バイ・ケースで、先ほど申し上げましたような基本的
立場に立って
措置をしていくつもりでございます。
最後に、問題はいわゆるMSTSが
運航しておりますLSTについてであります。この点につきましても、多少
委員長の制限されました十五分の時間をこえるかと思いますけれ
ども、長い
経緯がありまして、過去の
経緯を御理解願えないと、現在生じている
事態について十分な理解ができませんので、若干さかのぼって申し上げてみたいと思います。
終戦直後
アメリカ政府からLSTが
日本政府に貸与されまして、これは
日本船員の手で動かされまして、主として海外におる軍人あるいは邦人の引き揚げ
輸送に従事をいたしておりました。しかし、これがだんだん終了をいたしまして、さらにこのLSTの
運航については
船舶運営会、商船管理
委員会、米船
運航株式
会社というようないわゆる
日本の機関によって
運航をされてきたわけでございます。しかし、その後そういう任務も一切終わりまして、もっぱら
アメリカ軍の
輸送に従事するという、こういうことになってまいりまして、米船
運航会社における
運航をとりやめて、当時残っておりましたLST十七隻については
アメリカのMSTS——海上
輸送司令部でありますが、これが直接管理をして
運航をするということが昭和三十七年の一月に発表された次第でございます。これに対しまして従来
日本の
船主機関の手によって
運航されておりました
海員組合は労働協約を結び、
船員の労働条件をきめておったわけでありますが、
アメリカ軍の直接雇用に切りかわりますと、すべての点で変わってくるわけであります。そこで、これらの
船員の
組合員の利益を守るために
海員組合は次の
措置を要求をいたしました。
一つは全然
立場が変わるわけであるから、おりたいという者は下船の自由を認めて
契約を解除して、これらは
日本の
船主に雇用をせしめる、そうしてなおそういう機会を与えられたにもかかわらず、引き続いて従来の仕事、LSTに乗っていたいという者については、
海員組合が団体
交渉をして労働条件をきめる。この場合の労働条件は、
日本の
船主機関が運用するのと違うから、
外国船に労務提供をしている労働条件を基準にいたしまして特殊性を加味をして決定をする、こういうことであります。
ついででございますが、
海員組合の
組合員は、
日本船だけではなく、
外国の
船主の
船舶に対しましても
船員が乗り組んでおります。これは
組合がそういう
外国船主と団体
交渉を行なって団体協約を締結をいたしてやっておるわけでありますが、それらは大体現在のところ二十五隻、
船員数にいたしまして約五百名が
外国船主に雇用されておりまして、この労働条件につきましては
日本の国内とは違いますから、
英国の
船員の労働条件の一〇%以上割り増しをした金額で協定をいたしておりまして、船長の月額六百十ドル、最低が月額百四十ドルというスタンダード・レートを
組合できめまして、これに満たない場合には
船員を提供しないという
立場でやってきているわけであります。今回米軍の場合におきましても、いわば
外国船主に雇用されることになるわけでありますから、そういう
日本の労働条件とは違った国際的なレートというものを基礎にしてやっていきたいという形で折衝をいたしてまいりました。ところがこの間
アメリカはいろいろと理由を立てまして、
海員組合との
交渉に応じようとしない。また
日本の
政府機関もこれについて何ら積極的なあっせんをしない。そういう形で一向に
事態が進展をしませんので、最終的に
海員組合は全部ストライキをやると同時に、
船員を総下船させるという態度を決定をいたしまして、通告をいたしました。その結果、局面が打開をされまして、
組合と
交渉をいたしまして、これらの乗り組み員の労働条件その他について妥結をいたしまして、そしていろいろな細目を取りきめたわけであります。これは三十七年の六月のことでございますから、すでにいまから約三年前であります。以来これらのLSTに乗り組んでいる
船員の労働条件につきましては
海員組合が
交渉をいたしまして、二回ほど改定をしてまいりました。
ところがこれと関連して
ベトナムの問題が起きてきて、LSTが現地に就航をして戦争危険に直面するという問題がつけ加わってきたわけであります。もともとLSTは、先ほど申し上げましたような
経緯で切りかわったときから、
アメリカ軍が直接に管理運用して、
アメリカの軍事
輸送に従事するということが前提になっているわけでありまして、このLSTになお継続して残って船を
運航するという
立場をとった
組合員船員の諸君は、そのことを承知の上でこの
契約に参加をしているという
立場でございまして、これは
アメリカから強制されたものでもなければ、
組合から強制されたものでもなく、やめたい者はやめて
日本船に帰るという
立場を与えられた上での選択に立っているわけであります。しかし
組合は、いかなるところに働こうとも、
船員の労働条件については責任があるわけでありますから、そして残った諸君の安全の
確保と労働条件については最大限の努力をしてまいりました。
なおこの間、
日本船主が使っている場合には
船員手帳を身分証明の材料として各
船員が持っておるわけでありますけれ
ども、
外国船に
船員を提供する場合にはパスポートに切りかわるのが従来からの慣行でありまして、先ほど申し上げました二十五隻、約五百名の
外国船主に雇用されている
海員組合員については、すべてパスポートが発給されているわけであります。
船員法に基づく
船員手帳は
日本船の
船員に適用されるわけでありますけれ
ども、先ほど申し上げましたような
経緯で切りかわったため、暫定的にLSTの
船員については
船員手帳を従来のままかりに使うという便法が講ぜられておったわけであります。ところがたまたま
南ベトナムにおきまして、このLSTのうちの一隻の乗り組み員が夜間外出禁止
地域に外出禁止時間に上陸をして、
南ベトナムの軍人からベトコンと間違われて射殺をされるという事件が発生をいたしまして、これがマスコミにも報道されて問題になったわけであります。これについては
海員組合は、
乗船中の事故であるから職務上の死亡として十分な
補償をせよということを
アメリカ軍に対して要求をいたしておりますが、軍側は外出禁止令のしかれている
地域に外出禁止の時間内に上陸をして射殺されたのであるからそうはいかぬというような形で、まだ最終的に決着をいたしておりませんけれ
ども、再々にわたる
組合からの申し出によって、何らかの
補償をするという方向で検討をする、こういう態度をとっておりますけれ
ども、まだこれは解決をいたしておりません。そういうような問題が出てきておりますので、
組合といたしましては、
安全確保ということに最重点を置きまして、
アメリカ軍当局と
交渉をしてまいりました。もちろん軍の命令によって軍需品を
輸送するということは任務かもしれないが、そういう戦争
地域に就航するということ自体が直接の任務という形には理解されないのであるから、何よりも
安全確保を第一にしなければならぬということを申し入れまして、再三にわたる折衝の結果、本年の二月でございますけれ
ども、十分ではございませんが、基礎的な
安全確保について米軍当局と
組合の間で了解に達しております。
その
内容についてかいつまんで申し上げますけれ
ども、まず
日本人
船員の
安全確保については、万全を期することにして、このための予算は制限しない、LSTを危険な港には寄港をさせないようにして、
人命安全を第一として、
輸送は第二とするように配慮する、キノン港は危険地帯であるので、昼間のみ入港させるが、夜間は公海へ避航させる、
安全確保に関する般長の権限を
関係者に再
確認させるための
措置をとる、船長の判断資料として行く先港の治案情報を提供させるように
アメリカ軍側は指示をする、船長が危険と判断したときには出港は拒否できる、そういうようなことがやりやすいような
措置をとる、危険物の積載または取りやめ、積み荷の制限については、
アメリカのコースト・ガードの安全基準による
内容を守るようにする、メコン川のデルタ地帯への
配船は危険であるので取りやめることを検討する、大体以上のような
内容につきまして合意に達しているわけであります。もちろんこれではまだまだ不十分でございまして、
組合はさらに安全について折衝をいたしておりますが、同時に万一のことがあった場合の
措置について、
船舶が至近弾を受ける場合にはびっくり
手当と申しますか、そういう
手当を一人につき五十ドル、直接攻撃の対象の場合になったときは一人について七十五ドルを、いわゆるアタック・ボーナスとして支給をさせる、これを協定いたしておりますけれ
ども、これは昨年の八月からすでに協定をして実施している
内容でございまして、最近問題が起きてからきめたわけではございません。
大体そういうようなことできておりましたところ、最近さらにこのLSTのうちの一隻が爆弾をしかけられまして、爆発するという事件が起こりました。その際
船員の一人が逃げ出そうとするときに手をはさまれまして、指を三本ほどけがをしたという事件があったわけであります。これが台湾の新聞等に非常に誇大に報道されまして、
爆撃で死傷を受けたような印象を与えるような記事が出たそうでございまして、その現物は見ておりませんが、この時限爆弾をしかけられまして、爆破をいたしまして、舷側とスクリューを少しやられたわけでありますけれ
ども、この際指を三本、直接爆弾によってけがしたわけではございませんが、けがをした乗り組み員につきましては、
組合が米軍と
交渉をいたしまして、傷害
補償として百四十万円を
日本金に換算して支給をさせているわけでございます。
なおこの報道が非常に誇大に一部台湾等で報道されましたために、びっくりして二名の
船員が逃げ出しまして、台湾で下船をして強制送還をさせるという事件が起こりまして、これについても、やはり戦争危険に関連しているのであるから、米軍のほうとしては何らかの懲戒に当たるのではないかというような
意向もあるようですが、一応本人がいやでやめたのだから自発的退職にして扱えという形でありますが、
組合としてはできるだけこれらの
組合の身分を保障すると同時に、自分
たちの判断が間違いであったという形で、もし本人
たちが再
乗船を希望するならば、再
乗船をさせるという
措置をとってもいいのではないかということで話し合いをしておりますが、これはまだ結論に達しておりません。
さらにこういう事件が起きましたために、
組合としては
危険手当の支給と
安全確保に対するさらに一段の完全な
措置を要求いたしまして、現在折衝中でありますけれ
ども、さらに
組合の判断をしてどうしてもこれらのことについて
組合としては責任を持てないという
事態が発生をいたしてまいりますならば、これらの乗り組み員について
組合としてはもはやこれ以上責任を持てない
事態になるから引き揚げる、そういうような
措置をとらなければならない
事態がくるかもわからないと思っております。しかし、現在のところは本船の乗り組み員側のほうからも、そこまでのことではなくて、危険がだんだんふえてきておるので、いわゆる安全の保障と
危険手当、そういう危険に対する保障、そういうことを米軍に要求して
交渉してもらいたいという
要請が来ておりまして、その
立場に立って
交渉をしているわけでありますけれ
ども、何ぶんにも米軍
相手でございますから、
日本船主と
交渉するように、すみやかに運ばないという点では遺憾な点がございます。その点では船に乗っている
組合員の諸君もいろいろと不安を強く感じている面があるんではないかと思います。
さらに最後の問題といたしまして、このような
状態になってきて、LST乗り組み員の交代と、さらに
船舶を増加するための要員募集の問題が起きてまいりました。これについて
アメリカ軍当局から協力をしてもらいたいという
要請がございましたけれ
ども、積極的に
船員を提供するという意味における協力は私
どもはお断わりをいたしております。といいますのは、いま言ったような非常にむずかしい
事態に来ているわけでありまして、今後ともこの職場について
海員組合が安全その他に責任を持ち得るかどうかという問題についてはいろいろ問題のあるところでございますので、われわれとしては応募する
組合員については十分そういう実情を
説明をする、それでもなおかつ行くということになれば、これは拒否することはできないわけでございますから、それらの諸君の
安全確保についてできるだけの
措置をとってやりたいと思っておりますが、そういう
状態にあるぞということだけは十分応募する
組合員には徹底をするという基本的な
立場をとっております。協力といいましても、
船員の場合に、一般的に募集をするということについて、一々
海員組合が
組合員を差し出しているわけではございません。これは雇用主の責任においって雇っているわけでありますが、この場合の、われわれは協力をしないというのは、
組合員に、いい職場だから行きなさいと言って進んですすめるようなそういう協力はできません。これは現実においてできないわけであります。しかし、
アメリカ軍と
契約を結んで雇用されるというものについて、われわれは、それはやめろとか拒否をするという妨害はいたしません、こういう
立場をとっているわけであります。
なお、ここで問題になりますのは、
海員組合以外の一般から
船員を募集する場合でありますけれ
ども、これについて私
どもはこういう考え方を持っております。先ほ
ども申し上げましたように、
職業団体としての責任を確立する
立場から、
船員としての素質の向上と規律の保持ということについては特に厳重な
立場をとっておりまして、これに反するような場合には
組合から除名をされているわけでありまして、私
どもは現在
海員組合の
組合員以外の、
組合員でない者の中に、いわばまともといいますか、正常な
船員ももちろん若干はおりましょうけれ
ども、過去の
船員経歴を持っておってなおかつ
組合員でないという者は、
海員組合員に比べて質が劣るということをはっきり申し上げて差しつかえないと思いまするし、全く新しい未経験の者が乗ってくるということは、船という職場において、限られた一部の職種以外ははなはだ危険であると考えております。同時に
海員組合は、規約によりまして、
組合に加入する者についてのきびしい条件を設けておりまして、かつて
船員であったが失業している者、これは
組合員になりますと、失業いたしましても
組合員の資格は失わないのであります。ところが、そうではなくて、
船員であったけれ
ども、
組合員でもなく失業している者、あるいは
組合をかつて脱退したことがある者、あるいは全く経験のない者がこれから新たに
船員となろうとする者というものについては、資格審査をしなければ
組合に加入をさせない、こういう
立場をとっているわけであります。したがって、一般から広く募集してLSTの乗り組み員になったからといって、これらの諸君を
海員組合に無条件に受け入れるという
立場はとりません。そういう資格審査によって
日本船員として適格であるという判断をされた者については、
組合員として私
たちはできるだけのことをやりたいと考えております。それにもかかわらずなお外部に出て行く、
日本の
政府がパスポートを発給をするという場合には、これはあげて
日本政府の責任でございまして、われわれ
海員組合の関知せざるところでございますが、私
たちは
組合員に限ってはあくまで
組合員とともに責任を分かっていきたい、そうして安全
航行に対してできるだけの努力をしていきたいという
立場を貫いていくものでございます。
以上のような実情を適正に判断をされまして、今日の問題について、民間の団体である
海員組合では手の及ばない問題でございます。われわれは考え得るベストを尽くしたつもりでございますけれ
ども、なおかつ不十分でございますから、国会、
政府等におきまして十分の
措置をとられんことを希望いたしまして、私の公述を終わりたいと思います。