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説明員(
石田礼助君)
お答えいたします。二兆九千七百二十億、この内容につきましては、経営基本問題懇談会及び
調査会のほうで詳しく
説明してあるのでありますが、要するに、その半分というものは大阪、
東京付近の通勤の問題でございます。この輸送力の増強、それから安全装置の問題ということでありまして、あとの半分は幹線における輸送力の増強、これによって過密ダイヤの緩和をはかる。それから、踏切その他いろいろ交通安全の問題に関して等いろいろありますが、要するに、半分は借金をしてはとてもこれはどうにもならぬ。
東京、大阪
付近における交通問題なんというものは、大部分が通勤者であります。非常な大きな割引をもって輸送しておるのでありますので、利息のつく金をもってしては、とてもこれは国鉄としてはやりきれぬ。安全装置の問題にしてもまたしかりであります。こういうものはひとつ自己資金をもってするか、あるいは
政府の出資をもってやるか、これ以外には方法がない。少なくとも国鉄というものは独立採算でやっている以上は、これは借金をもってやることはできない。そこにおいて、それではどうするかということなのです。
まず私は第一にはだ、
政府が出資しろ。国鉄の現在の資産というものは、貸借対照表によれば、まず二兆と言っております。しかし、実際はこれは新たにつくったら非常な金です。それに対して
政府が
一体いま幾ら金を出しておるか。実にみみっちいものである。たった四十億です。しかも、それは戦前の四十億ではなくて、戦後の四十億なんだな。それで、たった四十億の金を出して、そうして国鉄というものは国有
鉄道なんというのは、国有
鉄道ではなくて民有
鉄道なんだ。そうしてわがもの顔をして、一番いけないことは、第一に運賃というものをめちゃくちゃに安く押えている。それから、さらに
公共負担というものをやらしておる。これが計算してみたら数千億になる。そういうことをやっておるので、ぼくは
政府はあえて過去における罪の償いをしろというのじゃないのだ、私は。
とにかく国鉄というものはこういう状態で、いまや通勤の問題にしても全く交通地獄ですよ。そのほかの幹線の輸送にしたって、にっちもさっちもいかないところに来ている。
日本の経済のためにしても、通勤者のためにしでも、何としてもこれは思い切ったことをやらなければならぬ。とにかく終戦後、戦争でもってぶちこわれた
鉄道というものに対して、進駐軍なんていうのはアメリカ式の頭で、これはもう
鉄道は斜陽
産業だという頭だ。それから、
日本の国の、一般の国の空気も、これからは自動車の時代でもって
鉄道の時代じゃない、こういうようなことで、あげて国鉄に対しては実にもう冷々淡々だ。一向修理なんというのは思い切ってやりはせぬ。少なきはわずかに一年に二百億を、多きにおいて五百億かそこら、かくのごとくにして
昭和三十一年まで来た。これがゆえに修理もろくすっぽできぬ。いわんや輸送力の増強なんというものは全然できぬ。
そこで、三十二年になって初めて第一次五カ年計画というものを立てたのですが、とてもそんなものじゃ追いつかぬということで、第二次計画を立てたのだが、ところが、一向資金がない。それがために今度はどうしても修理はせっちん詰めになっている、いま国鉄は。そこで、第三次計画というものを立てて、思い切ってこの際ひとつやろうじゃないか。要するに、過去における過小
投資の累積というものと、国なり議会、いや国会——あなた方じゃない、過去における国会ですよ。(笑声)これがだな、とにかく国鉄というものを酷使して、そうして安い運賃で押えつけてきた結果が、今日におけるこの交通地獄、都市
付近の交通地獄であり、幹線における輸送過密ダイヤ、もう一歩誤れば非常な大きな事故が起こる、こういうところに来たのです。だから、これは、この資金の問題については、
政府は一ぺん熱い煮え湯を飲まにゃだめですよ。そうして助けてくれなかったら、これはもう国鉄というものは生きる道がないのだ、これはそういうことでひとつ……。
この今度の二兆九千七百二十億の半分以上というものは、
東京、大阪における都市
付近の交通緩和の問題、それから安全の問題というものにかかっておるのだから、とても独立採算の国鉄としてはできないのだから、これはやはり利息のつかない金、それには
政府は出資しなさい。みみっちい四十億なんというのじゃ、国有
鉄道なんていばったってだめなんだ。そうしてもう
一つは、運賃の値上げをひとつさせてくれ。
御承知のとおり、国鉄の運賃というのは世界で一番安い。こんな安い運賃なんか、天下にありはせぬ。物価というものは三百五十倍とか四百倍とか、国鉄の運賃というのはいま何倍です。百六十一倍だ、旅客運賃は。貨物運賃だって二百二十倍ぐらいでしょう。電話なんていうのは、過去において敏腕な社長がおったがゆえに、
昭和二十八年においてすでに二百三十三倍まで上がっている。国鉄は三十二年と三十六年に約三割上げて、なおかつそれで旅客運賃なんていうものはわずかに百六十一倍なんです。要するに、われわれ国鉄陣、これは国鉄にも非常な私は欠陥があったと思う。弱かったのです、国鉄自身が。要するに、愛のないおやじが、ろくすっぽめしも食わせないで子供をこき使ってきた結果というものが、現在における国鉄の状態だ。だから、この罪の償いというものは
政府は一ぺんやらなければいけないのじゃないか。そういうことで、ひとつ国会なり
政府なりというものが今度はぜひともひとつ熱湯を飲む覚悟において助けていただきたい、こういうことが私の希望です。