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1964-12-10 第47回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十二月十日(木曜日)    午前十時二十一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺尾  豊君     理 事                 大谷藤之助君                 仲原 善一君                 平島 敏夫君                 村山 道雄君                 藤田  進君                 山本伊三郎君                 鈴木 一弘君     委 員                 植垣弥一郎君                 植竹 春彦君                 江藤  智君                 太田 正孝君                 草葉 隆圓君                 木暮武太夫君                 後藤 義隆君                 佐野  廣君                 櫻井 志郎君                 田中 啓一君                 館  哲二君                 豊田 雅孝君                 鳥畠徳次郎君                 稲葉 誠一君                 木村禧八郎君                 北村  暢君                 瀬谷 英行君                 戸叶  武君                 豊瀬 禎一君                 羽生 三七君                 浅井  亨君                 中尾 辰義君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 林   塩君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  高橋  等君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        厚 生 大 臣  神田  博君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大 臣  櫻内 義雄君        運 輸 大 臣  松浦周太郎君        郵 政 大 臣  徳安 實藏君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  小山 長規君        自 治 大 臣  吉武 恵市君        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  河野 一郎君        国 務 大 臣  高橋  衛君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        公正取引委員会        委員長      渡邊喜久造君        防衛庁長官官房        長        小幡 久男君        防衛庁防衛局長  海原  治君        防衛庁人事局長  堀田 政孝君        防衛庁経理局長  大村 筆雄君        防衛庁参事官   麻生  茂君        経済企画庁調整        局長       高島 節男君        経済企画庁総合        計画局長     向坂 正男君        科学技術政務次        官        纐纈 彌三君        科学技術庁原子        力局長      村田  浩君        法務省刑事局長  津田  實君        外務省政務次官  永田 亮一君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省アメリカ        局長       竹内 春海君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長事務代理   滝川 正久君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        大蔵省主計局次        長        中尾 博之君        大蔵省主税局長  泉 美之松君        大蔵省関税局長  佐々木庸一君        大蔵省理財局長  吉岡 英一君        大蔵省証券局長  松井 直行君        文部省初等中等        教育局長     福田  繁君        水産庁長官    松岡  亮君        中小企業庁長官  中野 正一君        自治省選挙局長  長野 士郎君     —————————————    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君    説明員        日本国有鉄道総        裁        石田 礼助君    参考人        日本銀行副総裁  佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十九年度一般会計補正予算(第1  号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計補正予算(特第1  号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  昨日、市川房枝君が辞任され、林塩君が選任されました。     —————————————
  3. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 昭和三十九年度一般会計補正予算(第1号)、昭和三十九年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和三十九年度政府関係機関補正予算(機第一号)、以上三案を一括して議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。  この際、おはかりいたします。木村君から、本日の同君の質疑日銀総裁出席が要求されましたが、参考人として、佐々木日銀総裁出席を認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  5. 寺尾豊

  6. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は当委員会で、十年以上も、前池田総理財政経済に関して論戦を行なってきましたが、池田総理病気のため退陣され、好論敵を失ったことは残念でもあり、心さびしさを感じます。個人としましては、池田首相病気退陣に対し、まことにお気の毒に思いますし、病気の一日も早く全快されることを心からお祈りする次第でございます。しかし、公の立場で見た場合、池田首相高度経済成長政策失敗あと始末をすることができず、みずからまいた種をみずから刈ることなく退陣されたことにつきましては、政治的責任があると思いますし、遺憾であると考えるわけであります。しかし、考えようによりましては、池田首相退陣は、池田式高度経済成長政策誤りを反省し、池田政策の誤ったこの基本的な考え方方針をここで思い切って清算、転換させるよい機会を提供したのではないかと思うわけであります。したがいまして、佐藤首相の使命は、人間不在とか、繁栄の中で貧困をもたらしたとか、あるいはひずみをもたらしたとかいわれる池田首相高度経済成長政策基本理念とその基本方針を、思い切って転換させることにあると思うのであります。そのことが国家国民に対しての責務であると私は信じます。  ところが、佐藤首相は、池田路線池田政策を継承、踏襲するのだ、こう言われているわけであります。かような態度は、これまでの高度経済成長政策失敗あとを顧みますと、また現在わが国の置かれている客観情勢に照らして見ましても政局担当基本的姿勢としては間違いではないかと私は思います。で、まずこの点につきまして佐藤首相の所見をただし、池田政策の転換がなぜ必要であるかを、佐藤首相はじめ閣僚諸君、ひいては国民の皆さんに十分認識してもらうために、これから物価問題を中心として質疑を行ないたと思うわけであります。で、まず佐藤首相に、先いほど述べました点につきまして御答弁をいただきたいと思うのであります。
  7. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 木村さんと池田総理がしばしば論戦を交えたことは、私も閣僚席におりまして伺ったのでございます。しこうして、その相違点、お二人のお話を聞いてみまして、たいへん木村さんは、高度経済成長の弱点ということがもたらす欠点を大きく取り上げられた。しかしながら、私が考えてみますると、池田総理が言われたこと、高度経済成長そのものは、確かにりっぱな成績をあげたと思います。生産性の向上あるいは国民所得の増大、さらにまた、完全雇用を実現した、こういう点におきまして、高度経済成長は確かにりっぱな成績をあげたと思います。しかしながら、御指摘のように、高度経済成長からかもし出された幾多の欠点が今度は露呈してきた、そういう意味で、ただいまひずみの是正ということに真剣に取り組んでおるわけであります。後ほど論戦を展開されようとする物価問題もその一つだろうと思います。しこうして、佐藤にかわったらそれを直ちに直すべきではないか、かように言われること、これも一理あることだとは思います。しかし、よく考えていただきたいのは、経済成長が進行しておりますし、また、そのひずみを是正しようとしておる、そうして、急にそのかじを変更するということは、これは必ずしも得策ではないだろう、いわゆる角をためようとして牛を殺すことになってはこれはたいへんだ、かように私は思います。私のねらいとするところは、どこまでも、高度経済成長もけっこうだが、健全な安定成長こそが真に幸福をもたらすゆえんのものだ、この安定健全成長、そういう方向へ今度は経済あり方を直していきたい、かように思いますが、その道筋の手段等はしばらく時間をかしていただきたいというのが私の基本的な態度でございます。この点で、私の考えていることがおわかりがいただけたと思いますので、私はそういう意味でしばらく時間をかしていただきたい、かように申し上げておきます。
  8. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこの池田政策経済成長政策に関する基本的理念、それから基本方針、こういうものをやはり変える必要があるということを言っているのでありまして、佐藤首相のただいまのような御答弁は、一方において高度経済成長成功した、そういうお話なんです、評価をすると。しかし、ためにひずみが出た、マイナスがある、したがって、これからはマイナスのひずみを直す、こういうお考えなんです。しかし、基本的な考え方がそれではいけないのだということを私は認識していただきたいと思う。と申しますのは、高度成長というものとひずみとを区別して考えてはいけないのであって、最初所得倍増計画、御承知のようなあれは二つ内容をもっていて、高度成長格差是正を同時に達成する、こういう内容になっておったのです。だから、これは高度成長はプラスであった、ひずみはマイナスであった、だから、今度はそのひずみはアフター・ケアで直すという考え方ではいけないのであって、これは同時に成長格差是正を達成する、こういう基本的な考えに立たなければいけないと思うのです。池田政策誤りは、これははっきり私は文書等で確認したわけではありませんけれども、まあ世間の評論等を見れば、いわゆる下村理論に基づいたといわれており、下村君の考え方は、基本的に、生産設備をどんどん拡大していく、高度成長していけば、その過程においてその格差が自然に是正されてくるのだ、こういう考え方であった。そこで投資は押えてはいけない、設備投資は押えるべきではない、日本経済は昔と違って成長期にあるのだから。そこで設備投資をほとんど野放し的に許したわけですよ。その過程において、じゃひずみは直ったかというとそうじゃない、ひずみは拡大した。だからそういう考え方ではいけない。この点基本的に考え方を直さなければいけないのだ。成長というものとひずみ、いわゆる格差是正というものは同時達成として考えなければいけない。首相のいう社会開発というものは成長政策と区別するのではなくて、成長は片方やっておいて、あとはひずみが出たからそれを直す、そういう考え方ではだめだ。こういう点を池田政策失敗から、誤りから学びとらなければいけないじゃないか。そうしないと何ら前進がないじゃありませんか。ただ池田政策を踏襲するというのではいけないのであります。ただ現象面ではなく、基本的な考え方基本理念、この点をやはり思い切って清算すべき時期にきているのではないか、こういう御質問をしているわけです。
  9. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお答えいたしましたように、経済健全安定成長、これが望ましい、かように思います。しかしながら、ただいままで所得倍増計画で、あるいは設備投資が旺盛に行なわれておる、あるいは非常な事業の膨張を来たしておる、こういう状態で進行しております。これを昨年末以来、十一月以来、金融引き締めの方法によりまして正常化しようとしておる、その方向で今日まで努力が払われておる。これもいわゆる時間をかしてもらって、そして順次正常化方向へもっていこうということであったと思います。ただいままで十分その効果があがっているとは思いません。しかし、ものごとは、動いておるもの自身これを急激にブレーキをかけたり、あるいは方向変更するということ必ずしもいいことではないと思います。私ども内閣をつくりまして、そして経済成長あり方正常化あるいは健全成長、こういうことを申しておりますのも、こういう点についての考え方のあらわれであります。しばらく時間をかしていただきたいというのはそういう意味でございます。
  10. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 佐藤氏はしばらく時間をかしてくれと言いますけれども、三十九年度の設備投資政府見通しは四兆一千億であったのですよ。ところが、最近改正して四兆七千億となっているじゃありませんか。しばらく、しばらくなんといっても、そんなしばらくでは問題は解決しません。ますます格差はひどくなり、設備過剰、供給過剰がひどくなってくる、もう現になっているのですよ。引き締めをやっておりながら、どうして設備投資——最初目標は四兆一千億と押えた、それが四兆七千億になっているじゃありませんか。生産はどんどんふえているじゃありませんか。金融引き締めながら、ただしばらく、しばらくといったんではいけない。特にこの点について私は総理に聞きたいと思ったのですが、総理所信表明の中で、一番重要な政策の点にくると、長期的な観点に立って、あるいは長期的な展望に立って、長期的な視野に立って——みんな長期的な、長期的なと言っている。前に私は池田総理質問して、池田さんが答弁につまりますと、長い目で見てくれ、現在は矛盾があるかもしれない——長い目というのはいつまでなんですか。やはり政策には長期政策短期政策二つあるのだ。ちゃんとく別して考えなければいけない。いま、長い目といっても、もうすでにことしは六千億も設備投資はふえておるのですよ。一向変わらないじゃないか。やはり投資優先の型の経済の性格になつている。ただ、ことばだけで言われても、いま実態があなたの答弁とは違っておるのですよ。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 所得倍増計画がよろしくない、こういう観点に立っておられますが、われわれの考え方は、自民党内閣として考えておりますのは、所得倍増計画を進めていこうという考えでございます。その過程におきまして、第一の段階、前段の段階が九・二%ないし七・二%というものが、九%ないし七%というものがその倍に近い超高度の成長になった、その過程において各種のひずみが出ましたので、第二の段階においては中期経済見通しを立てて、これが調整を行ない、より安定的な経済成長をはかってまいろう、その目標としては、国際収支の長期安定、物価の安定、経済安定成長、俗にいわれる三安定政策目標にして中期経済計画を立てようということをいまやっております。でありまするから、通じて十年の間に所得倍増計画の実をあげて、その間において各種のひずみ等は当然解消しようという考え方でありますから、基本的な路線が誤っておるとは考えておりません。この高度成長政策ではなく縮小生産的な健全な考え方、これはもう健全というよりも多少デフレ的なものの考え方でありますが、そういうことを現在の過程においては、少し行き過ぎましたから、比較をしてそのような議論をされますが、いまから考えますと、五年前、七年前、少なくとも三十四、五年ごろからそういう政策を立ててきた場合に、いまの日本状態がどうなっているのだろうかというと、そういう政策であるならば、設備投資過剰もないでありましょうし、またひずみの是正問題もいまほどは大きくはなかったかもしれませんが、しかし・もっと大きな問題があったと思うのです。それは何かというと、国際的に日本の輸出が一体こんなに伸びたであろうか。それだけではなく、国内的に社会保障はこんなに一体先進国に追いつくようにスピーディに伸びるだけの実績があった一であろうか。いろいろな面から考えまして、過去の成長政策の中でいろいろな利点があって今日を築いてきておるのであって、倍増政策全体の中でこのひずみの部面が是正をせられ、吸収をせられたとすれば、所得倍増政策は明らかに結果的に成功ということになるわけであります。でありまするから、自民党考えておりますものは、超高度、いわゆる九%ないし七%が実質一五、六%にも伸びたような場合は、確かに行き過ぎはあったけれども、これをほんとうに当初考えた九%ないし七%にしよう一でありまするから、中期経済計画平均成長率実質八・一%であります。こういうところまで締められるとしたならば、その過程においてあなたがいま御指摘のいろいろな問題が吸収されるとしたならば、成功であるし、また吸収し得る、こういう見通しに立っております。でありまするから、佐藤総理も引き続いて長期的視野に立って十カ年の計画過程を通じての実績を見ていただければ、わが党の政策は間違いではない、間違いでなく唯一無二の道だったということを御了解いただけると思いますと、こう申し上げておるわけでございます。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理の「長期的」というのはどういう意味ですか。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 「長期的」というのは、いわゆる長期的でございますが、これを来年度予算にどういうように盛られるかとか、あるいは今日の段階でいかにするか、こういうことでなくて、しばらく時間をかしていただきたい。少なくとも二、三年は模様を見ていただきたい。今日までの経済成長、これは別な言い方をすれば、ただいま大蔵大臣からご説明しましたように私どもは、高度経済成長失敗しているとは思いません。しかしながら、この欠点が累績されておる状態である、かように私は見ておりますので、しばらく——来年度予算ではどういうように直ると、こういうような非常な、気持ちをいら立たれないで、しばらく模様を見ていただきたい。長期的観点に立っていただきたい、こういうことを申したのであります。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これにこだわっていると時間がなくなりますけれども、いまの御答弁は重大だと思うのですよ。というのは、所信表明演説で、「住宅、生活環境施設等社会資本整備地域開発促進社会保障拡充教育振興等」と、長期的な展望のもとにやる、あるいは、「社会保障については、長期的な観点から、所得保障医療保障内容充実と体系の整備につとめる」と、こういう点についてしばらく模様を見るというのはどういうことですか。いまの緊急の問題じゃありませんか、そういうような考え方では。だから私は、この予算が十分じゃないかと言われると、長期的な展望、長い目で見る、そういうことでこの場をしのいでしまうと、それでは実際いけないのだということを私は質問しているのですよ。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 所信表明に出ておりますものは、これは政治的な基本的姿勢でございます。それが直ちに今日、あるいは来年度予算に全部具体化するとか、こういうようにお考えになりますと、それは誤解があります。そういう点こそ、その所信表明で申し上げておりますように、いわゆる長期的展望に立ってこれこれをやっていくということを申したので、全部をお読みになるとよくおわかりだと思います。もちろん来年度予算におきましても、それらの申し上げた事柄が、あるいは金額的には不十分でありましても、そういう意味のそれぞれの施策は出てまいる、かように必ず取り上げてまいりますが、そういうものであることを御了承願いたいと思います。ことに、政府自身がただいま取り組んでおります中期経済成長計画、こういうものと真剣に取り組んでおりますので、これができ上がりますれば、ただいま申し上げるような、また、御批判を受けるような、そういう事柄もよほどなくなってくるのではないか、かように考えております。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この中期経済計画は、われわれに配付されましたこの資料、大体これに基づいておやりになるのですか。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中期経済計画は、いま政府答申をせられました。一月政府から諮問をしてつくってもらいたいというものでございますが、この問題はいま内閣としては答申を受け取ったということでありまして、この答申内容をつまびらかに検討いたしております。また、与党である自由民主党におきましても、この問題を党の政策の関連においてこまかく逐条検討をいたしておりますので、しかし、目標としましては、(「これは大蔵大臣所管ですか、所管はどこなの、大蔵大臣やっぱり考え答弁しなさいよ」と呼ぶ者あり)四十年度の予算編成中心にしての経済質問をしておるのでありまして、その基底になるものは中期経済計画でありますと、こう指摘をせられておりますので、当然私がお答えをすべきであります。そういう意味で申し上げておるのでありますが、現在政府及び与党検討いたしておるわけでありますが、少なくとも四十三年までの目標年次を定めて政策を進めていくということであります。
  18. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 木村さんにお答え申し上げます。御承知のように、今年の一月に経済審議会に、三十九年度から四十三年度に至る五カ年間に対するところの中期経済計画について、諮問をしたわけであります。その答申が先月十七日に出てまいりました。ただいまお読みのとおりでございます。しかうして、政府といたしましては、この答申は約二百名にのぼるところの各界の第一流の専門家に慎重に検討していただきまして、ずいぶんと論議を重ねて出てきた答申でございますので、この答申趣旨をどこまでも尊重いたしまして、そうして具体的には、あの答申の中にも書いてありますが、そのときどきの国際的な情勢とか、またはその他の条件を考えて弾力的にこれを行なうべきであるということが書いてありますが、まあそういうふうな点も勘案いたしまして、ただいま政府としては、具体的にこれをどう政府方針とするかということを検討中でございます。しかしながら、もとよりあの中期経済計画答申趣旨は、木村さんも御承知のとおり、四十三年度において国際収支経常収支においてバランスをとるということ、もう一つは、物価を安定的な基盤に持っていくと、この二つの目的を達成するということを前提にして、その他、たとえば農業、中小企業におけるところのひずみの是正、または労働の流動化促進、または立ちおくれているところの社会資本充実、さらには社会保障制度拡充、そういうふうな各種政策目標を重点的に織り込んでみた場合に、この五年間の姿はどうなるべきであるかということについて答申が行なわれたような次第でございます。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あんまりこの問題質問していると、物価の審議の時間がなくなりますから……。ただ一言、この旨を尊重すると言いますけれども、この特徴は、答申内容を見ますと、大体やはり投資優先型になっております。国民生産の中で個人消費支出はだんだん下がっていく。つまり昭和四十三年では五0%ですよ、昭和二十八年は六一・四%、だんだん下がっていくんです。投資のほうは、昭和二十八年の一一・三%が一九・九%、約二〇%になるのです。やはり投資優先型です。いわゆる高度経済成長の性格と、性格が似ているんですよ。個人消費支出を減らして投資支出をふやすと、これが基本的性格であるとすれば、高度経済成長政策の型と、型は似ているのですし、性格が似ている。これでどうして国際収支の改善、あるいは物価の安定、ひずみを是正できるか。ここが非常にポイントだと思うのです。この点については、趣旨を尊重するということは、こういう一番大事な点、これを尊重するのかどうか。これを、この点をそのとおりやるとすれば、非常に問題です。
  20. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 御指摘のように、個人消費の構成比が五0%程度に減っていることは御指摘のとおりでございますが、しかし、同時に個人の住宅をそれにお加えくださいますれば、個人の住宅を加えた構成比においては、相当増加していることもまたごらん願えると思います。同時に、設備投資につきましては、昭和二十九年度から三十八年度に至る十年間の実績は、設備投資の増加比率が二0%でございまして、それが九%台になっておるということは、設備投資先行型という過去の実績よりも相当安定的な基調になっているということが御了解願えるかと思うのであります。
  21. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連してお伺いしますが、この三十九年度の当初予算の審議の際に、私、大蔵大臣に最近の予算の硬直性——弾力性のない予算、それから税の自然増収が期待ほど伸びない、当然増経費はふえている。そこで、一体新規事業はできるのかどうか、どれだけ新規事業を期待し得るのかということを申し上げたことがあります。ところが最近見ておると、税の自然増収と、それから明年度の所定のおよその予算を想定してみて、ほとんど新規事業はできない。できても五百億とか六百億という小幅なものではないかといわれております。そこで、社会開発というこの題目を掲げられても、実際には既定経費の呼び方を変えたり、名前の呼び方を変えたりするだけで、新規事業として社会開発に充当し得るものは一体幾らあるのか、非常にこれは問題じゃないかと思います。それが第一点。  ついででありますからもう一点お伺いしておきます。  もう一つは、一般会計予算が非常に窮屈になるので、自然ウエートが財政投融資にかかってくると思います。今度その財政投融資が、資金コストが高くなるために——利子補給その他で——これもなかなか所定の効果をあげることができない。だから、そうだとするならば、一体こういう窮屈な状態から脱却して、この予算上、財政上政府がかなり新規事業等に計上し得るような余裕のある財政状態にいつなれると思うのか。今日の困難な状況からいつ脱却できるのか、そういうことが想定できなければ、いろいろな政策を掲げてもほとんど新規事業は不可能だと思う。この二点についてひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  22. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 年度の予算がだんだんと硬直性を帯びてきて新しい政策等を取り入れる余地が少なくなってきつつあるということは、御指摘のとおりでございます。それはまあいろいろ原因がございますが、一つには、五カ年計画という長期計画を定めてこれを法律できめる、また閣議決定を行なうというようなことで、非常に先食いといいますか、先の計画まで拘束を受けているということが一つございます。もう一つは、合理化をはかろうとしても、すべてのものが大体法定主義ということでありまして、国会の議決を求めなければ、なかなか上げたり下げたり弾力的な運用ができないということで、非常に行政の硬直性を帯びておるということも一つ事実でございます。  こういうことをずっと考えてまいりますと、確かに昭和三十九年度の一般会計の姿とそのままに四十年度を比較をしてみますと、相当高い伸び率、理想的にいえば十七、八%ぐらいの伸び率がないとなかなか理想的なものはできないというような姿であることは事実でございます。ところが、税収というものはそんなに一体あるのかといいますと、そうではございません。これは税収が非常に伸びなくなったと、こういうのですが、いままで伸び過ぎたということも言えるわけでございます。これは高度成長ではなくて超高度成長ということで、年率九%ないし七%の成長率が実質一六%の成長率があった、実質二0%に近い成長率になったために、年度間において二千億余の自然増収を補正財源として組めるというような状態があったわけでございます。でございますから、今年度の税収は六千八百二十六億という相当大きなものでございますが、しかも、そのうちの二千億は三十八年度の下期に自然増収があったものだ、こういうことで非常に大きな増収があったわけでございますが、今度は、いつでも国会で御指摘になっておりますように、安定成長になってまいりましたので、来年からはそう伸び率がない、ちょうど理想的な伸び率とも言えるわけでございます。でございますが、予算の状況から考えると、いままで年率対前年度比二四%も二二%も一般会計がふえてきたものを、一二、三%、一0%程度で押えたい、こういうことになるとこれはなかなかたいへんであるということは事実でございます。が、しかし、木村さんが言われたように、第一予算の伸び率が大き過ぎるのだ。これは一般会計、財投を通じて一0%、八%、六%ぐらいに、とにかく非常に均衡財政を貫かなければ物価の問題等は片づかないんだ、こういう考え方からいいますと、これはだんだん理想的な姿に入ってきた、こういうことが言える。ですが、なかなか政治的に考えると非常にむずかしいことでございます。でありますから、社会開発というようなキャッチフレーズのもとに新しい政策を、少なくとも一般会計の対前年度比一0%しか伸びないものを、積極的にその面を重点的にやるとすれば倍の二0%にしなければいかぬ。こうなると財政的には相当苦しいということは言い得ます。しかし、一般会計の金がふえるということだけではなくて、一般会計ももちろんでありますが、財投も民間資金の活用も、また税制上も、まだまだ現在の三兆二千五百億、三兆三千億という一般会計の合理化の中からどれだけしぼり出せるかということも重要な課題でありますので、もうすでに政策目的を達成したものがあるならばそれを転換して新しいウエートのかかった社会開発に重点を置くと、こういういろいろな知恵を出しますので、際限はございますが、その中で可能な限り最大の努力をしたいというような考え方でございます。  それから社会開発の問題は、そういう意味で硬直性を持ってはおりますが、できない相談ではないし、当然これをやらなければならないという考え方に立っているわけでございます。
  23. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまの点もう一点だけ。それで社会開発の経費というものですね、それは既定経費の何か名前を変えてこれが社会開発だというような形になるのか。新たに何らかの構想を持って臨まれるのか。その辺はどうですか。
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ社会開発というのは人間生活を中心にしてのことを考えるわけでありますから、これはいまの教育の問題も、また社会環境整備の問題も、また環境衛生の問題も、医寮の問題、社会保障の問題、あらゆる問題がこの社会開発というものに含まれるわけであります。いままで社会保障費ということに集約されて議論をせられておったものを社会開発という新しい考え方より広くものを考えたいと。でありますから、現在の科目の中でも、社会開発に入るものはそれはもうほとんどが入りますし、そのほかにも、社会開発という看板を掲げた以上、また、この超高度成長過程において出たひずみは特に是正をしなければならないのでありますので、これらの面に対しては新しい施策も可能な限りあわせて盛るという考え方であります。
  25. 藤田進

    ○藤田進君 関連してお伺いいたしますが、中期経済計画についての大蔵大臣の御答弁、所見は、ことに経済成長八・一%ということを指摘されつつ展開された御答弁は、少なくとも経済成長率においてはこれを肯定しての御答弁のように思われます。はたしてそうであるかどうか。そうして昭和四十年度予算にこの中期計画としてどのように組み合わせができるのかについて、お伺いをいたします。  企画庁長官につきましては、次のことをお伺いしたいと思うのです。  中期期経済計画については、その本旨を尊重しつつ現在検討中である。しかし、これは昭和三十九年度ないし四十三年度という五カ年の指標としている以上、すでに昭和三十九年度もやがて終わろうとするこういうときに、少なくとも四十年度予算案の編成とはもう密接不可分の関係にあるのではないか、ことに財投計画その他ですね。こうも考えてまいりますと、この結論というものをどのようにいつの時期にお出しになろうとするのか。あのままはのめないからなしくずしに尊重していくということで、あの答申というものはうやむやになる形が出てくるのではないだろうかというふうに私は予想するが、はたしてどうなのかどうか。ことに、その中で大蔵大臣肯定せられるところの八・一%という、このことを考えてみても、また物価二・五%を押えている点から見ても、少なくとも三十九年度物価においてはかなりこれを上回るものであることは、すでに企画庁長官言明しているとおり、だとすればあと四年間、昭和四十年度以降四カ年間にこれを平均の二・五%に少なくとも持ってこなければならぬ。今度の中期計画というものが、むしろ外貨なり物価なりにポイントが置かれていると言われてまいりましたが、だとすればこの物価の関係ということにおいて、はたして中期経済計画そのものが政府でのめる自信があるんだろうか、私は問題があろうと思う。与党の中でも議論が出ているように思われます。ことに八・一%といわれるこの経済成長は過去の実績から見て低いのだからと大蔵大臣おっしゃるけれども、私は八・一%、なるほど計量経済学の権威者がはじいたとおっしゃいますが、企画庁長官は。私はやはり池田内閣当時にできたもので池田さんの政策を何とかこれを肯定し、合理化、正当化するためにはじかれたにおいが強い。このことを忘れて佐藤さん、あれを尊重と、こうおっしゃいますが、必ずしも私は安定成長所信表明というものは、これは池田高度経済成長といったようなものよりはニュアンスが違うと、私は受け取っていたし、またそうなければならぬと思う。世界的に日本的に設備過剰、生産過剰の中に入ろうとする。そんなに無制限に、南北問題だといって予定されているほどの貿易、輸出量がふえるとも私は考えられない。とすれば、物価並びに外貨問題の危機というものは、これは必ずあの答申自体の中に含まれていると言わなければなりません。私も現在これを検討中でございますが、少なくともそのように思う。ましてや、いままでの惰性というものがあり、自由主義経済とおっしゃるその政策で、単にこれは絵にかいたもちの計画であるかもしれない。現に過去における所得倍増計画なるものが、一年にして十カ年の目標達成度にすでに来てしまう、あるものは二年目にそれを突破するというようなものなんでしょう。計画自体がうまくいかない。それが下回ってはいない。むしろ行き過ぎている、いずれも。こういう事態でありますから、企画庁長官に自信のあるところをひとつお伺いし、中期経済計画の結論をしからば検討中ならいつ出すのか、予算案との関係はどうなるのか明確にしていただきたい。
  26. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 藤田さんも御承知のとおり、中期経済計画におけるところの八・一%という実質成長率は過去三カ年が一〇・八%でございましたので、それよりも相当に下回った成長率だ。また同時に過去十カ年間の平均成長率実質において一0%近い。それよりも相当に低いという点から、相当安定的な基調になっているということはおわかり願えると思います。ことにこの中期経済計画の目的が初めからの前提が、昭和四十三年度において経常収支でバランスをとる、それから消費者物価をある程度安定せしめる、この二つを目的としてそれを前提としてでき上がったところの計画であるということも、おわかり願えるかと思うのであります。  しこうして来年度の見通しでございますが、この問題はただいま政府部内でそれぞれこまかく検討中でございまして、まだ申し上げられる段階ではございませんが、しかし、この中期経済計画の精神を十分に尊重いたしまして、たとえば来年度においてやはり国際収支につきましては、総合収支においてバランスをとる。御承知のとおり昭和三十九年度におきましては、当初見通しにおきましては総合収支で一億五千万ドルの赤字ということに相なっておったのでございますが、四十年度においてはわれわれといたしましては、国際収支に総合収支においてバランスをとる。それから物価もでき得るだけ安定的な基調に持っていきたい、こういうふうな前提のもとに、来年度の経済見通しをただいま鋭意検討中でございます。
  27. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 来年度の成長率を、中期経済見通しのとおり八・一%にするのかということでございますが、いま経済企画庁長官から述べましたように、まだこれは答申になったものだけでございまして、政府としては、これを政府で了承し、天下に、政府としてこれを採用するという態度はきめておりません。しかし、まあ非常にこまかい基礎の上に立って答申をされたものでありますから、おおむね四十年度の予算をきめるときには、この中期経済見通し平均八・一%という数字も考えながら、政府部内で十分今年度の成長率とも比較をしてきめたいという考えでございます。ただこの成長率八・一%、五カ年間をとりますと、もうすでに今年度が実質一0%を大体こすということでございますから、そうしますと、あとの四年間は平均しても七・七%ぐらいにしかならぬわけであります。七・七ないし七・八、今年度においてもまだ不況感があるといわれているような状態、一0%こしました、確かに。それから平均あと四カ年間七から七・五%、七・七、八%、少なくとも八%以内でやるか、ずっと五年目を一番低い状態でもって計算できるか、非常にむずかしい問題でございます。これは構造上の問題ございますので、これをただ一律に計画経済的数字でもってもしやり得るとしたなら、それはえらい恐慌を受ける。しぼりのかかる部分も出てくるわけでございますので、こういう状況を十分考えながら、中期経済見通しにつきましても、慎重にその状況を検討いたしておりますと、こう申し上げておるわけであります。少なくとも八・一%の平均成長率をこすというようなことは絶対にないという考えでございます。
  28. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと答弁漏れ、いまの企画庁長官。あなた、私のポイントの点はずしてしまっているのですよ。それは自信がないならないでいいんですが、物価についても三十九年度——四十三年度五カ年で平均の二・五と、これがあなたも指摘するように、これを絶対のポイントとしている。とするならば、物価について言えば、その中期経済計画に沿ってあなたは施策する自信がありますかと、これが一つです。それから外貨については、ことし一億ドルとおっしゃいますが、私はそういう数字の指摘そのものを非常に危険に思う。私は輸出関係メーカーなり商社なり、実際に大学の学生が勉強するように当たって見ておりますが、これにはそれなりの、まことにいまの政策のしわ寄せとしての苦しい輸出努力というものがあるけれども、これが今後中期経済計画のいうあと四カ年続くというふうな考えで安易に思われると、私は危険が非常に増すと思います。そこで、物価問題についての以上のお答えがほしいし、外貨についてもほしいし、そして中期経済計画というものを検討中はわかった。その検討と四十年度予算の関係が当然出てくるのだから、中期経済計画答申案に対する経済企画庁ないし内閣の結論を、どこら辺にいつごろ求めようとするのか、年内に予算編成は終わろうという大蔵大臣の意欲のように伺っている、それが私のポイントなしです。
  29. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 御承知のとおり、今年度輸出環境が非常に好況でありましたことと、もう一つは、引き締め体制を続けてまいりました。その双方の原因からいたしまして、非常に急速な伸びを示しております。おそらくは今年度の輸出は、前年度比較において二割二分以上を示すのじゃなかろうか、増加を示すのじゃなかろうかと、かように見ておるわけでございます。  ところで、中期経済計画におきましては、世界貿易の伸びを大体六・一と見て、それに対して輸出の、日本の輸出の伸びの成長を大体二程度に見るという程度でございます。したがって、今年度実績よりははるかに低いところの実績を、中期経済計画では一応予定いたしておるのでございます。しかしながら、この世界貿易の伸びなりまたは日本の輸出の伸びということは、国際の経済環境がどう変動するか、動くかということによって大きく変わる性格のものでございます。したがって、先ほども答弁申し上げましたが、来年度の見通しを立てる際において一番むずかしい問題は、来年度はたしてどの程度輸出を伸ばし得るかという点でございます。今年度は、御承知のとおり、貿易の伸びが大体いまの見通しでは一0・六ぐらいになるのじゃなかろうか、こう見ておりますが、そういう状態が来年も続くということを予定することは非常に危険であろう。しかしながら、それが一体どの程度に落ちつくかという問題は、これは非常にむずかしい問題でございます。もちろん相当安全を見て日本の輸出の伸びを考えざるを得ないかと、かように考えておるのごごいます。しこうして、先ほど大蔵大臣からも御答弁申し上げましたように、今年度の当初の実質成長率は七%という見通しを立てておったのでございますが、実質は、おそらくは一0%に近くなるのじゃなかろうか、かように考えられます。またいま一つは、消費者物価というものは、必ずしもその年度の経済の原因だけでは、なかなか全部きまってこない、むしろ前年度におけるところのいろんな経済の動きがおくれて反映するという面もございます。これは実績に示すところによりますと、昭和三十七年度があのような低い成長率であったにかかわらず、やはり消費者物価は六%おくれるところの上昇を示しておる。これはその前年度におけるところの影響が、その後の年度においても大きく影響してまいったということと説明するほかに道がないかと思うのでございます。そういうふうで、今年度において、今年度自体が実質成長率が予想を上回る。また、前年度におきましても、六%台の実質成長率を考えておったのでございますが、実績は御承知のとおり、昭和三十八年度は実質において一二・一でございましたか、名目では一八%の伸びを示している。その影響が今年度にずれ込んでおるということは、これは認めざるを得ない。もちろん政府といたしましては、今年当初物価対策というものを十四項目定めまして、これを忠実に実行してまいって、その成果も相当上がっておるとは思いますが、しかしながらそういった影響がだんだん残ってきておるということも、これまた認めざるを得ないという状況でございます。したがって、ただ算術的に、今年度四・何%消費者物価が上がるから、これを五カ年間の総体の数字から引いて、あとは、たとえば一%程度の上昇で済むのだという考え方は、なかなか現実には尽くし得ないのじゃなかろうか、かように私ども考えておるわけでございます。  また、その次のお尋ねでありまするところの中期経済計画を、一体いつ政府方針とするかということにつきましては、これは政府部内におきましても、また自由民主党の政調会のほうともいろいろと討議を重ねてまいっておるのでございますが、できるだけ早く、すみやかにこれを政府方針といたしたい、かように考えておる次第でございます。
  30. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいまの中期計画に対する御答弁は、非常に不満足ですが、これにこだわっていますと時間がなくなりますから、また次の機会に質問するといたしまして、物価問題に入る前に、佐々木日銀総裁が見えましたから、何か時間をお急ぎのようですから、先に質問いたします。  まず第一の質問は、共同証券に対する直接の融資を日銀がやるようになりましたが、これは日銀法の何条に基づいてやるのか。共同証券は、御承知のように、純然たる普通の証券会社です。国民間証券会社に直接日銀が融資をするということは、日銀法の何条に基づいてやるのか、まずこの点について伺いたい。
  31. 佐々木直

    参考人佐々木直君) ただいまの共同証券に対する日本銀行の貸し出しの問題でございますけれども日本銀行が証券会社を取引先にすることは、いまの日本銀行法に認められております。決して証券会社を取引先としてはいけないというような法律の規定はございません。ただ、現実にいままでに日本銀行が証券会社を直接な取引先にはしてこなかったという事実はございます。
  32. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、なぜいままで実際やらな  かったのをやったのか。それから、認めているのは日銀法の何条に基づいてそれをやっているのですか。
  33. 佐々木直

    参考人佐々木直君) いままで証券会社を直接な取引先といたしておりませんでしたことは、市中の金融機関を通じて、証券会社に対して資金を供給するべきだと考えておりましたからでございます。  それから、いまの日本銀行法の規定の問題は、特定なものを取引先にしてはいけないというような規定がないのでございます。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、日本銀行は金融機関の銀行ですね。いままで特定の、特に証券会社に融資をしたことはない、今度は初めてですよ、初めてですね。しかも共同証券は純然たる普通の証券会社と同じです、定款を見ましても。何らそこに公共性はありません。そこにばく大な資金を供給するわけです。そうして株価の操作をするわけです。この操作は、これは証券取引法の百二十五条の違反になるわけです。そういうものに対して日銀がばく大な融資をするということは、これは日銀の性格からいって私は不適当ではないかと思うのです。いままで日銀が純然たる民間の証券会社、株屋さんにこういう金融をするということはなかったのに、今度に限ってばく大な融資をする、しかも直接融資をするということは、日銀の性格からいって私は不適当ではないか。また、もしこれが証券取引法の百二十五条の違反であるということになったら、百二十六条によって損害賠償の請求を受けることができるのですよ。これは重大な問題ですが、その点について慎重に考えられたか。今後はどういうふうに、さらにもっとこの融資を続けていくのかどうか。この点について伺いたいです。
  35. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 最初に申し上げますが、共同証券というものは、御承知のようにことしの正月に証券界、金融界の自主的な発意によりまして、証券市場の安定をはかるためにできた証券会社でございます。したがいまして、いままでの証券会社と目的が違っておる点が一つございます。  それから次に、日本銀行といたしまして、いままで市中の金融機関を通じまして共同証券に資金を供給してまいりましたことは、いまのような証券市場の不安人気を除き、その安定をはかるという趣旨でやってまいったのでございまして、決して株価を特定の水準に維持するといったような目的ではございません。不安人気を除去するということが目的でございまして、その結果としてある程度の相場が維持されることが、不安人気の除去に役に立つという判断が共同証券にあって、いままでのことが行なわれてきたというふうに考えております。  それから、日本銀行が直接、共同証券に融資をいたしますことは、まだ全くきまっておらないことでございます。新聞紙上あたりでは、そういうような報道がなされておりますけれども日本銀行がその問題を正式に決定しておるという事実は全くございません。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 佐々木さんにもう一問だけして、あと大蔵大臣に伺いますが、佐々木君は急ぐようですから、その前にもう一つついでに……。いまの御答弁では不満足です。これは非常に問題はあとに残りますが、しかし、これはまだきまったわけじゃないのですね。しかし、もう新聞にはそう報道されておる。じゃ、今後はやらないかもしれないのですね。やっぱり日証金を通じてやるということを続けておやりになるのか、あるいはいままでのように市中銀行を通じておやりになるのか。これは必ずしも直接融資をするのじゃない、そういうことですか。直接融資はおやめになるということもあるのですか。
  37. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 当面は日証金を通ずる融資でやっていけると思っております。ですから、いまの直接融資の問題は、将来そういう問題を考えなければならないような事態が起こればという  一つの仮定の問題であると私ども考えております。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その場合私は問題があると指摘しておきたい。  それから、ついでですから、預金準備率の引き下げの問題がいま問題になっているのです。新聞によると、預金準備率をどうも引き下げるのではないか、あしたあたりきめるのではないか、こういうことが新聞には伝えられています。これはいままでの金融引き締め政策の転換ではないか、これがまず第一歩。それからだんだん、窓口規制の緩和、預金金利の引き下げと、こういうふうにいくのではないか、こういうふうに見られておりますが、その点についてはどうなんですか。
  39. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 準備率の問題はまだ全くきまっておりませんことでございますので、これをいまお話しのように明旦云々というようなことの前提で問題として取り上げることは私としてはいたしかねますので。ただ、いまの準備率の変更ということの意味するものがどういうものであるかということにつきましては、心理的な問題と、それから金額的な問題と、二つございます。金額的にはそれほどいまの資金の需給に大きな影響を与えるものではないと思います。ただ、心理的にこれをいろいろ外部のほうで解釈される、その影響は否定はできないかと、こう存じております。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣に伺います。  証券取引法の百二十五条に相場操縦の禁止という項目があります。これによりますと、その2です。「何人も、有価証券市場における有価証券の売買取引を誘引する目的を以て、」「単独で又は他人と共同して、当該有価証券の売買取引が繁盛であると誤解させ、又はその相場を変動させるべき一連の売買取引又はその委託若しくは受託をすることが」できないことになっておりますね。それから「何人も、単独で又は他人と共同して、政令で定めるところに違反して、有価証券の相場を釘付け、固定し、又は安定する目的を以て、有価証券市場における一連の売買取引又はその委託若しくは受託をしてはならない。」、このように株式相場操縦の禁止の規定が百二十五条であります。共同証券は実際には、大体いまダウ千二百円、これに安定化させる、いわゆる固定化させる操作をやっているわけです、現実にもうやっているわけです。それで、少し下がると、すぐに買い出動して千二百円でくぎづけをやっております。これは明らかに百二十五条に抵触するのではないか、この点大蔵大臣に伺います。
  41. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 証取法百二十五条第三項に基づく操作の禁止は、現在の共同証券が買い出動等をやっていることとは別なことを意味していると解しております。それはもう、法律の形態から考えましても、個々の銘柄に対しまして株価の操作を行ない、行なうことによって株式の発行を容易にしたり、株価を操作してはならない、こう規定しているのだと解しております。そういう意味で、共同証券が買い出動する結果、旧ダウ平均千二百円が維持をされるということとは、この法律の規定は違う、こう解しておるのであります。これは電波法や他の法律にもこういう条文がございます。一定の地域に対して一つのものが独占をしてはならない、こういう規定がございまして、この問題と、いまのテレビ、ラジオ等の免許と新聞社の関係に対して法律的に議論があったときもございますが、この問題に対しては、明確にある一つの地域に対して新聞社、ラジオ、テレビ等を一つのものが独占をすることがこの規定に反するものであると、こういうことであって、他の五大紙、六大紙というものがキー・ステーションを持ち、それから全国にネット網を持つということは、電波法の精神に違反をしない、こういう考え方、これは正しい法律解釈でありまして、百二十五条第三項の規定と共同証券の現在の行為は背反するものではないと、こう考えております。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはおかしいのですよ。この証券取引法の精神からいきまして、百二十五条は相場の操縦を禁止しているのですよ。なぜ禁止するか。それは、株式相場がその経済の実勢あるいは需給関係を反映して自然の価格にきまることを規定しているものなんですよ。いろいろな人為的操作でこれをくぎづけしたり安定しちゃいけないという規定なんです。それで、百二十五条の三項は、それをやってもいい特別の規定なんです。特認規定なんです。これ以外はやっちゃいけないことなんです。百二十五条の三項は、募集とか、あるいは売買とか、そういう特定銘柄について、これもいわゆる安定操作ですか、その認可を——認可書ですね、これを大蔵大臣に三通、取引所に一通出す、そういう場合はいいというのですよ。しかし、それ以外はいけないということなんですよ。特にそういうくぎづけしたり安定している場合は、これは許す。しかし、全般から言って、そういうことはいけないという規定に解さなければおかしいじゃありませんか。証券取引法の精神に反するじゃありませんか。しかも、個々の取引につきましても、全体のお客さんは、個々の銘柄だけの問題でなく、全体のダウの傾向を見るでありましょうし、それとの関連でやはり取引をするわけです。個々はいけなくて、全体がどうしていいのですか。これだって明らかに株価の操作じゃありませんか。しかも、これは、共同証券は純然たる普通の証券会社ですよ。この定款を見ましても、何ら公共的な性格は全然持っておりませんよ。そういうところを通じて株価を操作し、それによってもうけたり損したりする。共同証券は約四億幾ら欠損していますよ。あとでどうなりますか、日銀がどんどん貸して。また、うんともうかったときにどうするのですか。株価を操作して百億も二百億ももうかったら、どうなるのですか。日本銀行がばく大な融資をして、株価を操作して百億、二百億もうけて、そして特定の——これは着通の株屋さん、株式会社です、証券会社です。そういうところで不当にもうけさして、これで一体いいと思いますか。それは証券取引法の禁ずるところなんです。もし共同証券に融資するならば、共同証券の性格をもっと公共的な性格にしなければ、これは私は問題だと思います。もうかったときにどういうふうにこれを処分するか。損したときにどうするか。日銀が回収不能になったらどうしますか。どんどんこんなに融資しまして、ものすごく下がっちゃって、どうします。これは国民に対して重大な責任がありますよ。しかも、百二十六条では、そうした場合に、ほかの第三者に損害を与えた場合、第三者は損害賠償を請求することができるのだという。損害賠償を請求されたらどうします。いま大蔵大臣の言われたのは、これは全くいいかげんの答弁ですよ。これは証券取引法上の精神から言って、百二十五条は株価操作を禁止する規定なんです。この点について、もっと明確にしてください。
  43. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も国務大臣ですから、いいかげんな答弁はいたしておりません。証券取引法の百二十五条の第三項は、「何人も、政令で定めるところに違反して、有価証券の相場を安定する目的を以て、有価証券市場における一連の売買取引をしてはならない。」、こういうことでございまして、これは、いまあなたも申されましたし、私も先ほど申しましたとおり、一定の銘柄に対して、個々の銘柄に対してこういうことをしてはならないということをきめてあることは、もう先ほどから申し上げておるとおりでございます。共同証券が買い出動することによって旧ダウ平均が千二百円というところに維持されたとしても、これはこの証取法の規定しておるものに反する行為では全然ない。もちろん、共同証券に金を融資するという日銀がこの法律に違反をするというようなものでは絶対にない、こう解すべきだと思います。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは重大な発言ですよ。千二百円維持されたとしても違反ではないということは、重大ですよ。千二百円にくぎづけ、安定するということは、株価操作じゃないですか。千二百円が適当な水準かどうかということが問題じゃありませんか。自然な相場であるかどうか。人為的なくぎづけ、この精神からいきまして、それじゃ何条によってやるのですか。共同証券は何条に基づいてそういうことができるのですか、株価操作を。
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 共同証券は株価操作をやっておるのではございません。特に証取法に規定をしております有価証券の募集または売り出しを容易ならしめるため行なっておるものでもございませんし、そういう目的をもってつくられたものではありません。証券市場の不振、不安人気をいうものに対して、これを正常な状態にしなければならないという公の目的を持って設立をせられ、公に準ずる考え方で設立された会社でありまして、こういうものは、いままで株式会社というようなものは金もうけだけと考えておりましたが、これからはそうではなく、社会的に金のある人が株式会社組織をつくって社会開発のために大いにやろうというようなことだってあり得るのでありまして、共同証券というものは、産業人、それから金融機関、その他あらゆるものが出資をして、資本市場の育成強化のために資したいという目的を持って設立をされたものでありまして、これは他の法律でかかることをやってはならないという制限規定がないわけでありますから、またいま、あるとすれば百二十五条だと、こういう御指摘でございましたが、百二十五条第三項とは抵触をいたしませんという観点に立っておりますから、商法に基づく行為であります。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 共同証券の公共性をもっとはっきりさせるようにするお考えはないのですか。
  47. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう御質問であれば、よくわかります。これは共同証券というものが、非常に大きな株を、市場にある株をどんどんと肩がわりをする。それだけでなく、投信等の株さえも相当肩がわりをしなければならぬ。しかも、ある一定期間塩づけにするということでありますから、少なくとも一年以上、しかもこれが逆に今度市場が安定をしてもうかるときに、あなたが先ほど指摘されましたが、もうかるときに、これをどんどん売り払って大きく利益をあげたらどうするか——確かにそういう問題がございます。そういう問題がございますので、先ほど佐々木日銀総裁が言われたとおり、日銀が直接これに融資をするというようなことになれば、当然これの持つ公共的な使命ということを評価をしてそういう道が開かれると思いますので、共同証券の実態の推移によりましては、このものを一体どうするか、法律をもって裏づけをしなければならぬのか、またどういう法律でこれを規制し、保護をするということになるのか、規制の面もまた保護の面も両方あるわけでございまして、そういう意味で推移を見ながら十分にひとつ検討してまいりたいという考え方でございます。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 十分検討をするじゃ済まないと思うのです。公共性を持たせないで、単なる証券会社と同じですよ。定款をごらんなさいよ。株式の売買を目的にしている証券会社の場合は……、これは私は時間がなくなりましたから大蔵委員会でなお十分に質疑いたします。これは非常に不明朗です。世間ではこれが自民党のドル箱になるんじゃないかということもまたうわさされているのですよ。そういうことは、こういう日銀がばく大な融資をして、株の操作をやって、そしてもうけることがでるような機構になっているのですよ。これ問題ですよ。確かに百二十五条の株価操作、ダウ千二百円くぎづけにする操作をやっているのですから、現実に。結果じゃないのですよ。それを目標にしてやっているのはもう事実じゃありませんか。問題です。  私は次に物価の問題に進みますが、時間が非常に制約されてきましたので、簡潔にお聞きしたいと思います。私は、政府が来年一月一日から消費者米価を平均一四・八%上げる。医療費を九・五%上げる。これをきっかけとして消費者物価が再び上昇をすることになるわけですが、これからの物価問題は、第一に国民生活の面から見て、暮らしの面から見て、第二に経済動向なり政治動向の側面から見て、第三に中央、地方を通ずる財政の面から見て、その三つの点から見て、私は新しい重大な段階にきていると思います。したがいまして、この点について、私は今後の最も緊急かつ重大な問題と思われますので、佐藤首相にまず、これから三つの側面、国民生活、経済動向あるいは財政の面から質問してまいりますが、その前に総理大臣に、現在の物価問題をどう評価しているか、どう判断しているか、つまり現在の物価問題に対する首相の問題意識ですね、これについてまず伺いたいと思います。どういうふうに評価するのですか、これを判断しているのですか。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 現在の物価問題は、先ほど来議論がありましたように、経済構造変化に対処する十分の考慮が払われていなかった、こういうことだと私は思います。したがいまして、その原因についてはいろいろな見方があるように思いますが、一つ例をあげてみましても、御承知のように、経済成長した、その過程におきまして、必ず労働の偏在を来たし、したがって、その若年労働を確保するためには、各方面でそれぞれみんな賃金が上がってくる。こういうことがやはりサービス料金その他の面に出てきていると思いますが、こういうことを広く取り上げてみれば、構造変化に対しての対応が十分できていなかった、こういうことであると思います。この原因はいろいろの見方がありますが、私はさような見方をしております。しかし、物価問題自身が、ただいま御指摘になりますように、国民生活に関連を持つ、あるいは経済の今後の動向にも非常な影響を来たす。したがいまして、これはまことに重大な問題であります。したがって、一日も早く物価を安定さすことが、もう絶対に必要なことだと、かように考えますので、政府としては、物価の安定についてあらゆる努力をいたして、今日までも各方面にわたっていろいろ計画をし、またその線を強力に推進しておることは、すでに御承知のことだと思いますので、その説明は省略さしていただきますが、あらゆる力を出して、そうしてできるだけ早くこの物価正常化、安定をはかっていきたい、かように考えております。問題の要点、主たる点はどこであるか、これはやはり経済自身安定成長への道をたどらない限り、この物価問題だけをつかまえてとやかく言っても、処置がなかなかできない、かように思いますので、その経済安定成長への方策としては、あらゆる面を総合的に働かして、そうして安定成長への道をたどっていく、そのときに初めて物価は安定し、また鎮静を来たす、かように私は考えております。しかし、そういう長期的な目標を立てての働きだけでは足らない、かように考えますので、物価問題自身も随時適切な対策が講ぜられるのじゃないだろうか、そういう意味で、部分的ながらも、ただいま申し上げるような個々の物価対策、これもそれぞれの担当省に真剣に取り組ましておるような次第でございます。
  50. 戸叶武

    戸叶武君 関連。経済成長下におけるこのひずみの是正から安定成長への道を歩む、その場合に、特に農業の問題でいま首相はことばを触れ、若年労働確保のためにはこの面を配慮しなければならないと言っておりますが、高度経済成長のもとにおける被害者は日本だけでなく、各国が、経済成長率二・八%程度の低いところにある農業、他産業から見れば、三分の一にも足りないというような成長率と所得の低さ、そういうところをどうするかというのが一番大きな問題になって、ソ連圏でも、西欧でも、EECの間でも問題になっているので、それを簡単には、若年労働に対してばかりでなく農業生産に携わっている農民に対しても、賃金面の保障、所得面の保障というものがついていないので、なだれを打って農業から他産業へ若年労働が流れ込んでいる。それを食いとめるために、模範的と言われたデンマークですら、農業生産に従事する人々の賃金を保障するために、その配慮の上に立って、国の予算六%の補助政策をやっているのです。イギリスも五%から六%に上げたんです。そういうふうにしなければ、日本でも三ちゃん農業というのは是正できないのです。それなのに、政府はかけ声だけは、農業基本法以来、他産業との所得の格差是正していくと言っているけれども、米麦以外に、ほとんど価格支持七%程度やっているなんて農林大臣言っているけれども、農民の所得というのは低いのです。いまも、たばこの問題で専売公社の総裁に会ってきましたが、とにかく、ああいう専売事業でも、益金——たばこのもうけを吸い上げるだけが重点になってい三たばこ耕作者に対して妥当な収入というものを保障しないのです、米以外のものは。こういうような国の専売事業で、しかも利益をあげていて、しかもいそれが米に準ずるような生産費所得補償方式が保障されないということは、私はまことに冷酷むざんなやり方だと思うのです。こういうようなところから、しかも専売事業で、契約栽培で、それで米をつくる以上の過重労働であるたばこのようなものに対して、米に準ずるような生産費所得補償方式が確立されなければ、私は、ほんとうに農民の今日の困った状態というものを救うことはできないと思うのです。具体的には、そういうようなところから一歩でも前進していかなければならないと思うのですが、いままで農民をほどんぎだまして農業基本法のあのつづり方を出して以来、だましぎりで来ているのですが、ことしあたり、いろいろとひずみの中においても、中小企業の倒産が音を立てていま響いておりますが、それ以上に農民の抵抗というものが激しくなってくるのじゃないかと思いますが、あなたは池田さんのそういう点を、池田さんの政策欠点というものをいままで指摘して、良心的にやってきたんだから、池田内閣を踏襲するという、から念仏じゃなくて、ごまかしじゃなくて、この辺から、私は、具体的に、農民なら農民のほんとうにいまの気持ちに対応するような具体政策が出なくちゃいかぬと思うのですが、いま触れましたから、その面において私は具体的に述べていただきたい。
  51. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 農業あるいは中小企業等に対して、いままでひずみの是正ということばで、いろいろひずみの是正計画し、また、それを実行に移していることは御承知のとおりでございます。しかして、ただいまお話しになりましたたばこの問題、これにつきましては、大蔵大臣も伺っておりますので、よく専売当局とも話し合いがつくように、双方が理解のもとに価格が安定されるように、そういう道を、講じてまいりたいと、かように考えます。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理大臣に伺いますが、これまで政府が何回も物価対策を国民に公約してまいりました。三十五年十月以来、ずっと何回もやってきた。それがどうして効果を奏しなかったか、その評価につきまして、これは十分に効果を私はおさめなかったと思う。率直に反省すべきだと思うのです。その根本の原因はどこにあったか。
  53. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) お答え申し上げますが、木村さんはよく経済理論に通じておられまして、百も承知でお聞きになっていると思いますが、つは、総需要が非常に大きくなったということ、需要と供給の関係、もう一つは、コストの関係で、双方の関係から消費者物価がこのように高騰してきたと考えられます。と申しますのは、たとえば、サービス料金について見れば一番簡単でございますが、一般に労働の需給がタイトになうてまいりますにつれまして、御承知のようにへ最近は若年労働者につきましては、中小企業と大企業間におけるところの賃金の差はほとんどなくなりました。そういうことで、どうしてもそういうようなサービス業におけるところの所得の平準化と申しますが、賃金の平準化のことが行なわれるためには、結局、料金を引き上げるという方向でいかざるを得ないという結果に相なっているわけでございます。また、中小企業等におきましても、御承知のとおり、賃金の格差が漸次狭まってまいりました。その狭まってまいりました場合におきまして、同時にこれに見合うところの中小企業における生産性の上昇がございますれば、価格に転嫁せずともいけるわけでございますが、実情は、結局、価格に転嫁せざるを得ない、そこまで生産性の上昇が見られなかったという現実の姿があると存じます。また、農作物につきましては、先ほど御質問もございましたが、米については生産費所得補償方式という方式によっておるわけでございますが、これは農業におけるところの、米作におけるところの生産性の上昇がどの程度であったかということが、もちろん関係はございますが、それが低いということにかかわらず、都市の勤労者の賃金というものを一つの標準として、これを時間的に給与において補償するという考え方から、生産費所得補償方式というものがとられ、それに大体準拠いたしまして、米の生産者価格がきめられてまいります。それが自然、食管制度を維持するというような観点から、消費者米価に及ばざるを得ないという形をとってきた、そういうふうになっておると存じます。  したがって、先ほど来お答え申し上げておりますとおり、中期経済計画におきましても、いわゆるひずみの是正と申しますか、そういうような生産性の上昇の立ちおくれた部門に対して、十分に政治的な努力をいたしまして、重点を置いてこれが生産性の上昇に力をいたすということによって、そういうような、価格にいかなければならぬという面をできるだけ軽減していく、そうして物価による影響を少なくしていこうというのが、一つの目的であろうと思う次第であります。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは物価の上がった原因を説明しているのであって、いままで政府が何回か物価対策を出したけれども、それがどうして物価を安定させることができなかったか、根本の問題を聞いているんですよ。総理大臣になぜ答弁を求めたかと言いますと、物価問題懇談会の、最近の物価問題に関する報告の中で、いままで何回も物価対策を講じたけれども、それが十分に効果がなかった根本の原因は、物価問題がきわめて政治的な問題なんだ、それにもかかわらず、いままで、高度成長のもとでは、物価が上がるのはしかたない、しかたないでやった、そういう態度をとってきたことが一つなんです。第二は、政府は決然たる、政策の基本に対して努力をしなかったこと、そのために、第三には、国民がこれに協力しなかったこと、できなかったこと、この三つにあるんですよ。ですから、これはきわめて政治的な問題なんです。政府物価安定策を何回も出して、ほんとうにこれは作文としてはみんな政策ができている。やるかやらないかの決意なんですよ。物価問題はきわめて政治的な問題だ、はっきり書いてあるじゃありませんか。総理はそう思いませんか。ですから、物価問題が新しい段階に来たので、ここで認識を新たにしなければいけないというので、いま物価問題に対する評価と判断を伺っているのですよ。そんな技術的な需給関係、そんなことはわかっていますよ。政治的な問題になっている。政治的な問題どころか、社会問題になってきている。この点について総理のはっきりした、今後の物価対策について、いままで何回もやってどうして安定できなかったのか、決意を伺いたい。
  55. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 物価問題が政治的問題だと言われる。しかし、これはやはり経済的問題であることは、木村さん百も御承知だと思います。ただ、その経済的問題をいかに解決するか、そこに初めて政治的な手腕があり、政治的な問題があるのだと、かようにお考えだろうと思います。もちろん、もとの経済的問題であることを無視して政治的な問題を言うわけにはいかない。だから、いま声を大にして申されておりますが、あなたはそんなことは百も御承知だ。問題は、いかにして国民の協力を得るか、また、いかにして物価を鎮静させ安定させるか、こういう意味の問題だと思います。だからこそ、これは十分だとは申しませんが、池田内閣の時代におきましても、公共料金を一年間ストップをした。しかし、これだけでは十分の効果をあげ得なかったと思います。たいへんこの問題が政治的な問題だという、その態度だけで取り組むわけにはいかない。やはり経済の問題は経済の問題として対策を立てていかなければならない。だからこそ、たとえば台所のものにつきましての流通機構を整備するとか、あるいはまた、サービス料金その他によるものであれば、これはその他の方法でこれの対策を立てるとか、あるいは金融の面からやはり物価が上がっているということもございましょうから、そういうものもやっぱり対策を立てていかなければならない、こういうように私は考えるのです。  ただ問題は、その場合に政府がはっきりした考え方を持つことが絶対必要だ、これは御指摘のとおりでございます。そういう意味で、政府の決意というものは、これはたいへんな問題だ。国民生活を脅かし、同時にまた、経済自身を場合によっては一歩誤れば破壊するようなおそれすらあるのでございますから、そういう意味で、決然たる態度をもってこの物価問題に対処する、このことを申しているわけでございます。これはおわかりがいただけるだろうと思います。
  56. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はつい声が大きくなりましたが、方々に行って家庭の奥さんに聞いてごらんなさいよ。最近ほんとうに生活が苦しくなってきているんですよ、物価値上げによって。だから声が大きくならざるを得ない。これはひとつ御無礼をしましたが、そういうあれでして、そこで、この懇談会のこれをお読みになったと思いますが、あるいは総理読みになっていないかもしれませんが、非常に適切な意見をここに出しております。これをほんとうにおやりになるということは非常に重要だと思います、だから、もちろん、経済問題無視するということじゃないでしょう、総理の言われるとおり。十分にそれを分析して、最後の結論として、政治的決意が重要だ、物価問題はきわめて政治的な問題なんだ。だから、政治的決意がないと国民に協力を——総理所信表明で協力を求めたでしょう、消費の節約とか、むだの排除とか、貯蓄とか。決意がなければ協力求められないんですよ。まず政府が決意すること、この点ひとつはっきりここで——協力を求めるについても必要ですよ、その点ひとつはっきりされる必要があると思う。もう一度これは、総理のそういう決意は、政治的な問題じゃないか。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 物価問題と真剣に取り組み、同時に決意をもってこれに対処するということをしばしば申し上げておりますから、さようにお考え、お聞き取りを願いたいと思います。
  58. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこで、これから決意し真剣に取り組むと言われましたが、具体的な問題は、卸売り物価一つ問題があると思う。卸売り物価が安定していればいいという議論がありましたが、総理は、この消費者物価値上げと卸売り物価との関係、卸売り物価が、いままで池田内閣では卸売り物価が安定していればいいと言われておりましたが、どうお考えですか。
  59. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 物価の動向を見るのは卸売り物価だと思います。しかし、われわれ国民生活を落ちつけていく上においては卸売り物価ではなくて小売り物価だと、かように考えております。その二つを区別して私は見ております。したがいまして、物価自身が上がるとか、いろんな議論がございますが、卸売り物価を見ておれば、大体物価の動向はわかっておる。そうして、小売りにおいてその価格が非常に高いという場合において、どういう原因によるのか、それが先ほど来申すような、場合によると流通機構の問題であったり、あるいは品不足の問題であったり、いろいろするだろうと思います。また、場所的にもこの問題はあるように思いますので、これはやはり需給関係での辺が現出されている、あるいは最近の労働不足からサービス料金がかさむ。こういう意味で小売りが高くなっておる。ことに私どもは、この小売り価格で生活しておる。そういう実情を忘れてはならない、かように思います。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理は、その点はよくまだ理解されていないのですよ。一般に消費者物価を非常に問題にしておりますけれども、消費者物価が上がる一つの大きな——全部じゃありませんが、大きな要素は、卸売り物価が下がらないという点にあると思うのです。これはあると思うのです。いかがですか。
  61. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) お答え申し上げます。  御承知のとおり、設備投資が非常に旺盛に行なわれるときには、生産性の上昇が相当期待されるわけでございますが、そういう場合において、それらの生産性の上昇が急速に行なわれる企業においては、その得られた上昇を単に利潤と賃金に分けるだけじゃなしに、物価の引き下げという方面にも振り向けていくということができれば、物価全体として非常に安定的な傾向にまいるわけでございまして、生産は、木村さんも御承知のとおり、ヨーロッパの諸国においては、その意味で所得政策ということが先年から強く唱えられて、そういうことが論議されてまいっておる次第でございます。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 公取委員長、あなたは前にエコノミストに、みんな、消費者物価の高騰は問題であると一般に言われているけれども、御売り物価が横ばいである、卸売り物価の硬直性に問題があるということを言われている。これはいわゆる管理価格、独占価格、カルテルと、こんなものと重大な関係があるのです。ですから、公取委員長は、いまの卸売り物価の問題と、カルテル、それから卸売り物価の硬直性についてどう考える。それで、これまで、いまどういう実態をお調べになって、今後これをどうされようとするか。物価対策いろいろございます。ありますけれども、その対策の中で非常に大きなウエートを占めているのは、いま企画庁長官言われましたように、非常な設備投資をやり、近信設備をやって、コストがうんと下がっているのです。ある化学工業の会社では、労働者が半分に減って、生産は二倍、三倍にふえているのですよ。それで、コールド・ストリップミルによる薄鉄板なんか考えましたときに、コストが著しく下がっているのです。それで、どうして価格が下がらないか、そこが問題なんだ。非常に大きな問題なんだ。今度はそれがまた独占の問題にぶつかってくる、政府がよう手をつけられない。だから、政治的決意が必要なんですよ。真剣に取り組むと言われたでしょう。これも独占価格の問題と真剣に取り組まなければ、政府のほんとうの物価対策はできないのです。これはもう佐藤内閣の試金石ですよ。試金石になると思います。公取委員長、その間の最近の事情、それから、卸売り物価の硬直性と消費者物価との関係等について、どう調査され、判断をされたか。
  63. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 私のほうにおきましても、物価の問題と、われわれのほうの直接の仕事であります独禁法の問題という関連の重要性は十分認識して、その面においてのいろいろ調査をしております。それで、考え方としましては、いま木村委員の御指摘になりましたように、生産性が非常に上がって生産もふえている。ところが、案外その値段が下がっていないというようなものが、一体どんなふうな状態であるか。それが一体、日銀の調査の卸売り物価との関係において、どういう関連があるか。特に昨年におきましては、三十七年を中心にしまして過去八年間において、日銀の卸売り物価においてほとんど値段が変わってないというものについて、ずっと調べてみまして、それが百六品目ありました。で、その後につきまして調べてみますと、いろいろ日銀の卸売り物価指数のとり方が変わりましたので、調査の連続性がつかめないものが七品目ありますが、しかし、その当時まで硬直していたものの中でも、下落したものが約三十七、それから変わらないものが二十九、上昇しているものが三十三、こういったような姿になっております。で、われわれのほうとしましては、結局、一応物価指数にあらわれた数字だけでなくて、さらに具体的に、一体値段はどうかと、もう一歩突っ込んで調べてみる必要があるのじゃないかということで、一応、日銀でどういう値段をとってこの物価指数を調べているかという点まで現在調べております。で、いわゆる市場価格といわれているものと、日銀の物価指数でもってとっているものとの間では、ある程度の違いがあるようであります。総括的にいえば、日銭のほうの物価指数にあらわれる数字は、いささか硬直性を持っているのじゃないかという点が幾つかあります。鉄鋼について言いますと、たとえば公販価格というものを七割ないし八割持っている。われわれ現在見るところでは、あまり広販価格というのは意味がないと思いますが、しかし、市場価格は相当下がっているものとありますが、これは二割とか三割とか反映されている。こういったようなこともいろいろございまして、日銀の物価指数そのものを批判するつもりはありませんが、現実に経済の実態をつかまえていく上においては、もう一歩進んだものをやはりつかんでいかなければならないのじゃないか。そこで、そういったものにつきましてわれわれは検討しておりますが、結局、私のほうで問題にして取り上げなければならぬものは、いわゆる表に立ったカルテル、あるいは地下カルテルというものによって価格そのものが維持されているというものがあるとすれば、これは独禁法上当然取り上げなければならぬ問題である。そういう面におきまして、そういった表にあらわれたところから一応手がかりをつかみまして、その裏にそういったようなものがあるかないかということについて、絶えず調査を進めております。現在の段階におきましては、そういったものについて、裏にそうしたものがあるという証拠があがり、それによって事案として取り上げるといったようなことは、まだ出てまいりません。しかし、こうした問題につきましては、今後とも調査を続けていく。で、卸売り物価がわりあいに上がっていないことの理由には、いまのような点もありますが、また片方で、生産性はあまり上がっていないけれども、賃金が、労力不足とかその他の関係で上がっているがゆえに、コスト的には上がっているというふうなものもかなりありまして、彼此相殺されている現状でありますが、とにかく、少なくとも生産性が上がっているものにつきましてコストの下がっているものについては、その価格が当然下がっていいものじゃないだろうかというような気持ちを裏に持ちながら、それが実際の市場価格にどうあらわれているかという点を中心に、われわれとして調査を続けております。
  64. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと公取にですね、いまの機構で、公取からいろいろな調査を出されています、これを見ますと、独占度の強いものほど硬直性が強いですよ。これは非常に詳細な調査がありますよ。こういう調査がありながら、なぜもっと独占価格、管理価格なり、あるいはカルテル、これにはっきりした手を打てないのですか。いまの機構じゃ非常に不十分じゃありませんか。
  65. 渡邊喜久造

    政府委員渡邊喜久造君) 現在の人員、機構をもってしまして、われわれの受け持っております仕事が十分果たされているかどうかという点につきましては、私も必ずしも十分とは思っておりません。ただ、われわれとしましては、与えられた予算、与えられた人員におきまして、それを十二分に活用しまして、重点的に考えながら、とにかく、一応われわれの与えられた人員、予算において、できるだけこれを活用しながら、その使命を達成しよう、かような点で大いに努力しております。
  66. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理大臣に……。今後の物価対策のきめ手の一つは、私は、やはり卸売り物価の硬直性、いわゆる管理価格、独占価格ですね、ここにあると思うのですよ。だから、これとどう取り組むか、これは一つのきめ手になるんですよ。総理の決意のほどを伺いたい。
  67. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 卸売り物価がどうして硬直したか、これはよく考えなければならないと思います。品物によりましては、現実に非常な生産性向上の結果、大衆消費者にその利益を還元する方法をとっておりますから、そういうところでは、現実に価格が安くなる。ただいま渡邊君からの説明でも、品物にして三十数品目、現実に安くなっている、こういうことであります。しかしながら、ものによっては、それが依然として今度は高くなっているものもある。その理由が、会社の経営上から見まして、価格がどうして高くなったか、その点もよく検討してみなければならない。ただいま御指摘になりますような寡占的な事業、そこの製品、そういうものが管理価格を形成している、こういうものにつきましては、私ども考え方も比較的はっきりしていると思います。こういうものをもっと下げろということが言い得ると、かように考えますけれども、やはりこれも、会社内部において、価格形成の条件がすべて非常に順調に整備されているかどうかということも考えないと、これはただ、どうも管理価格だから、かってに価格をきめているのだ、そうして、それが硬直しているのだと、こう言ってしまうことは、経営者や、あるいは労働者の立場に立って、私は不十分じゃないかと、かように思います。  しかし、とにかく、いずれにいたしましても、御売り物価について十分考慮を払えと言われている、このことは、私が冒頭に申しますように、卸売り物価があまり動いておらないということ、これは物価自身そう心配しなくてもいいということでもあるだろう、かように私は思いますが、物価の大体の動向、これを示すものだ、こういうことを冒頭に申しましたが、そういう意味で理解していただきたいし、ただ、その卸売り物価を硬直さしておるその原因は、那辺にあるのか。非常に生産性が向上しておるが、それは一体、それが卸売り物価として出たときに硬直しておるその原因を十分考えて、そうして政府が対策をとれと、かように仰せられるなら、私はしごくもっともな話だと思います。もちろん、この卸売り物価、これで経済の動向がきまるように思いますから・よく考えてまいりたいと思います。
  68. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはよく調べてみると言うけれども、もうかなり公取でも調べてありますし、経済企画庁長官もさっき言われたように、これはかなりはっきりしている。卸売り物価が下がらないというところに問題がある。いままでは、消費者物価ばかり問題にしたけれども——これは一つの着眼でありますし、今後もその点はどうしてもはっきり認識していただきたい。もう一度確認していただきたい。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 木村さんのお説を十分検討してみたいと思います。
  70. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 高橋長官御答弁になる前に、さっき所得政策と言いましたが、あなたは就任早々、所得政策が非常に重要だということを強調されました。あなたの所得政策は、一体どうゆう内容のものか、はっきりさしてください。
  71. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) その前に木村さん、日本では卸売り物価が非常に硬直的である、それは独占価格のせいだ、こういうふうにお話がございましたが、日本の独占度と申しますか、企業の集中度というものは、ヨーロッパとかアメリカ等に比べます、非常に集中度が低い状況であることは、木村さんよく御承知のとおりだと思います。したがって、つまり、一般的にいって、そういうふうな独占価格であるから硬直だという考え方は私どもはとりにくいと、かように考えております。ただ、生産性が非常に上昇したにかかわらず価格が硬直的なもの、具体的に各個の物資について考えられますが、そういうものについては、公取とも連絡いたしまして、絶えずこれに注意を向け、突っ込んで調査をしていきたいと、かように考えておるわけでございます。同時に、卸売り物価が下がらないという一つの原因として申し上げられますことは、なるほどここ数年前までは生産性の上昇が相当急速でございました。しかし、昭和三十六年度から昭和三十八年度までぐらいをとって見ますと、生産性の上昇と賃金の上昇率を比較してみますと、生産性の上昇が大体単年度合計で十六%程度でありますのに対して、賃金の上昇度が二三%台であったと確かに私記憶いたしております。まあそういうような点からのつまり価格を下げにくいという要素も十分に考慮しなければならぬかと、かように考えておる次第でござい  なお尋ねの所得政策につきましては、どうしても物価全体を完全に安定せしめますためには、んだんと完全雇用の形態に移ってまいります。つまり、西欧型の経済に移行してまいりますると、所得の平準化の作用は当然起こってまいります。したがって、そういう場合におきまして、生産性の上昇がどうしても伴わないという部面が出てまいります。そういうものについては、先ほども御説明申し上げましたとおり、どうしても価格によってそれをカバーせざるを得ぬという部面が生ずるわけでございます。ところで、一方において生産性の上昇が非常に急速だというものにつきまして、それが消費者に配分されずに、企業と労働のみに配分されて、価格が下がらないということになりますと、全体としての価格のつまり安定というものがとうてい期待できない。そういうところから、そういう生産性の上昇の急速なところにおいては、賃金と利潤に分けるだけじゃなしに、消費者価格にそれを分けてもらいたい。そういうことのためには、そういうことが行なわれるようなふうにすることが所得政策の目的であろうかと思うのであります。西欧の諸国におきましては、そのためにガイド・コストをつくるとか、ガイド・ラインをつくるとかいうような企画が行なわれておりますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、なかなか実効をあげるということは、国民各層のほんとうに心からなる協力を得られなければできないことでございますけれど女経済の仕組み自体が、つまり相互連関的に、全体としてそういうような方向に認識を持ち、そしてお互いに協力的であるということでなければ、なかなか物価の安定ということもできにくい。そういうような面から考えまして、やはりそういう経済の仕組みがこういうものであるという観点を十分に各層、各界の方々が認識していただいて、そしてたとえば物の値段をきめる場合におきましても、または決算をする場合、または賃金のべース・アップを考える場合においても、そういうことを念頭に置いて考えていただくということがぜひとも必要だと、こういうふうな考え方から、所得政策についてまず検討しようじゃないかと、こういうことを申し上げておったわけでございます。
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私、時間がなくなりましたので、これから順次質問いたしますので、それぞれ大臣に御答弁してもらいたいと思います。  いまの所得政策につきまして、これは高橋長官の御意見を伺いますと一欧米欧米と言いますが、インカム・ポリシーなのかインカムズ・ポリシーなのか問題なんです。賃金だけを押えたのではほんとうの所得政策と言えないんです。ですから、諸外国ではインカムズですよ。複数ですから、利潤も押えるということが対象になってくるんです。しかも、日本の場合、所得政策をやりますと、賃金の分配率が非常に開いているんです。これは労働大臣も関係があると思うんです。非常に分配率が低い日本の場合で固定化しちゃったら、これは重大な問題でしょう。それからまた、賃金格差がこんなにあるとき、これを固定化しちゃったら、これは重大な問題ですよ。ですから、そういう点も十分に踏まえてこの所得政策考えませんと、欧米と非常に事情が違うんです、日本の場合は。また、今度は労働者のほうを押えても、自由業者が非常に日本には多いですから、そっちのほうを押えないで労働賃金だけ押えてみても、これは所得政策にならぬのです。ですから、日本の場合には特殊性があるから、そう簡単にいかない。問題は、所得の生ずる一番基本ですよ。基本に一ついての所得政策考え、これはいいですよ。必ずしも反対するわけじゃない。所得そのものをすぐ押える考えじゃなく、所得の出てくる基盤が非常に不均衡なんですよ。そこに賃金格差あるいは所得分配率が非常に低い、こういう点があるのですから、そういう点は十分踏まえて、今後所得政策考える場合も、ただ賃金をすぐ押えるような、そういうふうな所得政策ではいけないのだ。この点を認識してもらいたいことが一つ。それから、あと総理大臣に一つ総理大臣は、国民協力を所信表明の中で物価対策について求めました。その中で、貯蓄増強、むだ排除、あるいは消費の健全化を言われました。しかし、いま国民の生活実態がどうなっているか。貯蓄増強——中央委員会でこれ出しました。これを見ましても、物価が上がって、もう主食、副食まで節約しなければならないという人まで出てきているのです。それから、物価が上がったために、あらゆる消費をいま切り詰めているのです。それから、’そのために貯蓄ができなくなった人、貯蓄が減った人、非常に多くなっています。そういう実態のもとで、単に貯蓄増強や、あるいは消費節約や、そういうものを協力を求めても、私困難だと思うのです。困難です。ですから、もうぎりぎりの線までいままで節約し、節約して、しかも教育費が非常に社会保障が不十分であるために、貯蓄が多いのです。教育費。そのために栄養が十分にとれない。こういう実態のもとで、また消費者米価を上げる、医療費を上げるという、もうぎりぎりの線のところへきているのに、また上げるから、これはもう経済問題であり、社会問題である。国民生活の面から日本物価問題は新しい段階にきているということ、この点をひとつ認識していただきたいのです。  それから、労働大臣には、これはいままで幾ら物価を押えても押えても上がっているでしょう。そうすると、賃上げをやっても、物価が上がってしまう。この現実を踏まえた場合、賃金スライドをとるべきじゃないか。労働基準法の中で賃金とは名目賃金じゃない。実質賃金にする。そうして消費者物価指数をもとにしてやるべきだ。前に昭和電工がやっていたのです。現在岩波書店でもってやっています。これを労働大臣指導する必要があると思う。幾ら押えても上がってしまえば、賃金スライドにしておけばその分はけんかしないで済むわけです。それは賃上げじゃありませんよ、それ以上は賃上げですが。これは賃金スライドを、諸外国ではどうなっていますか。やっていると思うのです。その点。  あと全部私質問してしまいます。時間がないものですから、失礼ですけれども。それから厚生大臣についても、これは社会保障関係で、こんなに物価が上がっているのですよ。昭和三十五年を一〇〇として、現在では消費者物価指数一二九・七、大体三割上がっている。ですから、社会保障費をふやしたって、諸物価がどんどん上がってしまえば、これは実質的な充実になりません。今度の補正予算でも、生活保護費を少しふやしています。しかし、これだけでは不十分ですよ。価格が上がらないでも、実際には量が減ったり何かして、実際には上がっているのですから、ですから厚生行政を考えるときに物価の問題をどういうふうに考えておるか。消費者物価の問題を、これが安定なくしてどうして消費者行政と言えますか。その点について、やはり年金なり厚生年金なりのスライド制につきましてどうお考えになりますか。これをやらなければ、それは非常な罪悪だと思うのですよ。  それから、大蔵大臣に最後に伺います。消費者米価の値上げというものは、それによってどのくらい節約になりますか。これは大衆課税だと思うのです。大衆課税ですよ。一種の大衆の間接税ですよ。そうみなしていいと思うのです。所得税を収めてない人も払わなければならないのですよ。そうして一方で消費者米価によってそれでうんと購買力をとって、これは増税ですよ。そして片一方では減税をやる、その減税も企業減税で、この点につきましても、総理あるいは大蔵大臣は、配当の分離課税を主張されています。消費者米価の値上げという大衆課税をとって、そして配当の分離課税で企業減税をやるという、こんな不公正なことはないでありましょう、これは一種の増税ですよ。その点と、そうやって購買力をうんと吸い上げると、もうすでに供給過剰、生産過剰になってきています。一そう供給過剰、生産過剰を促進します。弱電関係では売れないで困ってるのですから、生産過剰の不況をこれは促進しますよ。これが物価の問題が新しい段階に入ってくる第二の問題ですよ。第三には、そうやって、供給過剰、不況がひどくなれば、今度は税収が減ってきますよ、中小企業が倒産する、そして法人税が減収——本年度六百五十億取り切れますか税収は。法人税は減収になっているのですから、三十九年度六百五十億財源確保できますか、来年度の見通しについても伺います、一税収について。そうなるとそう自然増収というもめは困難になって、これは非常に財政がますます困難になるでしょう。これは第三に物価問題が新しい段階にはいってきている。これは第三の問題ですよ。  もう時間がありませんから、この点について伺いますが、それから最後に農林大臣がお見えになっていますから……さっきお話ししたように、勤労者の生活はぎりぎりなんです。主食、副食は切り詰めなければならない、貯蓄ができなくなってる、こういう状態で一消費者米価は実質十六%、名自は十四・八%、実質は二八%ですよ、これを引き上げて、そしてどうして家計を安定せしめることになります。家計を安定せしめることに、どうして消費者米価を上げてなりますか、絶対になりませんよ。家計を不安定ならしめる、そうすれば、食管法四条二項の違反ではありませんか。政府は、いま食管法四条二項がある以上は、どうしたって違反ですよ。消費者米価を上げて家計を不安ならしめることは明白でありますから。政府は違反してよろしいか、改正しない以上は違反です、の点について御答弁願いたい。  私は時間がたいへん経過いたしましたので、あと質問できませんから、どうか十分誠意をもって御答弁を願います。
  73. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) お話しのとおり、私の申し上げておるのは、インカム・ポリシーじゃない、インカムズ・ポリシーでございます。しこうして、所得を生む基盤についても考慮すべし、こういう御質問まことにごもっともでございまして、したがって、われわれは生産性の上昇の立ちおくれておるところの農業、中小企業等にこれから施策の中心を重点に置いていきたい、かように申し上げておる次第でございます。とにかく物価の問題は、これは総合的な経済各元の、諸元の結果としてあらわれる問題でありまして、どうしても社会連帯約な経済倫理観から各方面の御協力を得られなければ、なかなか解決できない問題だということを申し上げておきたいと思います。  なお国民の消費の健全化ということを総理が申されておるのでございますが、御承知のとおり昭和三十六年度、七年度、八年度と引き続いて三年度間、個人の消費は十五%をこえておるのでございます。今年度もまた見通しにおきましては一一・七という増加を見ておるのでございますが、これが実績においては、おそらく二、三%上昇するだろうという、ただいま見当をつけておるような次第でございます。もちろん、国民生活の内容充実するために個人消費がだんだん多くなるということは、これは好ましい状況ではございますが、その中にも不健全なもの、あるいは浪費が相当あると私ども見ておりますので、実質的な国民生活の内容充実という面に、合理的な生活向上をやっていきまして、そうしてむだを排除していただくということが、やはり全体の物価安定ということに大きな貢献をなし得ると、かように考えておる次第でございます。
  74. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 消費者米価の改定が物価に及ぼす影響ということに対して十分政府部内でも検討いたしました。その結果、当初二〇%引き上げが絶対に必要であるという考えに立っておったわけでございますが、一四・八%という低い水準に押えたわけでございます。これはしかし、御承知の過去二年間にわたって生産者米価が引き上げられており、それによって一般会計からの補てん額が倍増する、こういうことになるわけでございまして、食管会計の維持のためにも、また消費者米価と生産者米価の関連の上においても、消費者米価の一部引き上げを行なわざるを得なかったということでございます。との消費者米価の引き上げに伴いまして、影響があるのであろう低所得者に対しましては、予算上の処置をいたしておるわけでございます。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どういう予算上の措置ですか、低所得者に対して。
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 低所得者に対しては三億ばかりの処置をいたしております。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その内容は何ですか。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 生活保護世帯に対してでございます。  それから減税はどうなるかということでございますが、減税は、いま税制調査会の答申待ちでございますが、よくやったなというようなひとつ減税案をつくって御審議をいただきたいと、こう考えております、どの程度やれるかということでございますが、これはいま答申待ちということでございます。答申を基本的に尊重するというたてまえをとっておりますので、いまの状態で減税をするということは、はたして可能なのかというくらいに財源は苦しいことございます。今年度の補正に対しては、既定経費の節約を行なわなければならなかったという状態でございますが、しかし減税政策は、わが党内閣のずっと過去十年間減税に次ぐ減税をやっておりますので、来年度もしかるべき減税政策をつくりまして御審議をいただきたいと、こう考えております。  それから第三点の企業減税ばかりやっておって、そうして大衆課税はいわゆる所得税の減税はやらないということでございますが、これはもう過去においてももう毎度申し上げておりますように、一兆千億のうち九千億は所得税減税でございますが、来年度も所得税減税をよくやったなと思われるくらいなことを、いま検討をいたしておりますから、もう少しお待ちいただきたいと思います。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 分離課税は。
  80. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 分離課税につきましては、分離課税ということになるか、またどういう態勢になるかは別としまして、資本蓄積それから貯蓄増強という政策物価抑制の意味からいたしましても、またこれから安定的産業政策の上におきましても、またいつも御指摘を受けております。日銀信用によるいわゆるオーバーローンの解消、金融正常化、こういう面から考えましても、資本蓄積や貯蓄増強に対しては、何らかの的確に効果の上がるような税制上の処置をひとつやりたいという考え方で、いま検討をいたしておる段階でございます。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや分離課税を聞いておる。
  82. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) だから分離課税になるかどうかはわかりませんけれども、最も効果のある方法を考えております。こういうように申し上げておるわけであります。何分にもあと二、三週間でございますから、お待ちいただきたいと思います。
  83. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 消費者物価の上昇と賃金とをスライドさせることを考えたらどうかという御質問と、諸外国はどうなっておるかという御質問であります。諸外国の例でございますが、第二次世界大戦中ヨーロッパ諸国でそういう制度をとった国が相当ございました。日本に関係するところでも、これは木村委員、私在任中に上海においでになりましてよく御存じだと思います。上海においてそういう賃金体系をとったところがかなりございました。しかし戦後はほとんどそれはやめられまして、また現在フランスにおきまして生計指数が二%上がった場合は、最低賃金を改定するという法律がございますほかは、法制的に実施されておるところはございません。わが国におきましても、戦後一時そういうことが非常な議論の対象になりまして、昭和二十六年ごろには若干出てまいりました。しかし、それでも千七十五件くらいの団体契約の中で、スライド制をとったのはせいぜい十以下、たしか七つくらいだと思います。きわめて少ないのであります。そしてその中で、たとえば日本化薬とかあるいは昭和電工、日本化薬は昭和三十一年、昭和電工は去年廃止いたしました。日本化薬が廃止をいたしました理由は、消費者物価の上昇の幅が狭くなってきますと、他の産業との間の賃金のアップ率が開いてまいりまして、そして中止をして、べースアップ一本になりました。昭和電工はこれは昭和三十八年でありますから、そういう理由ではないと思うのでありますが、結局べースアップ一本に改定された。現在実施されておりますのは、岩波とたしか東宝映画で実施されておるように思います。東宝映画では二本立てになっておりまして、一本は、他の一般産業のベースアップ率を基準とする、他の一本は、いま申しました消費者物価指数とスライドする、完全な意味で、そういうことを長期賃金安定策とでも申しますか、安定協定とでも申しますか、そういうようなものとして考えられておるのは東宝だけだと思っておるのであります。こういう経過にかんがみますと、なかなか法制的に実施するということは非常に困難である。同時に、賃金決定に対して法律がどの程度関与すべきものかといり問題もございます。現実に労使間の協定や団体交渉等によって賃金のベースアップ率がきめられる場合に、その有力な要素として消費者物価指数が入っておるわけであります。十分検討に値することだと思うのでありますが、現在の趨勢がそういう状態にありますと同時に、それだけにむずかしい要素を含んでおりますので、検討はしたいと思いますけれども、なかなかむずかしい問題があると御理解いただきたいと存じます。
  84. 神田博

    国務大臣(神田博君) 物価の上昇につきまして、この影響が、特に低所得階層が受ける打撃が強いのでございまして、この点について十分配慮するようにということでございますが、もとよりこれは当然のことでございまして、できるだけそのような考えを持っております。特に今回の米の値上げにつきましてお尋ねでございましたが、米の値上げにつきましては、お説もございましたように、低所得階層の基準改定による増額、それから妊産婦、乳幼児に対するミルクの供給も、来年度考えております。また、児童手当と福祉年金も増額いたしたい。それからまた、福祉施設に入所しております方々の処遇改善もいたしたい、こういうふうに考えておるのであります。  なおもう一つ、年金をスライド制にしたらどうかというお尋ねでございました。これは私もそのような考えを持っておりまして、目下検討いたしております。これは各種年金共通の問題でございますが、できるだけそういうことにしたいと・こういうような考えをもちまして検討を加えておる次第であります。
  85. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 消費者米価の値上げが食管法の違反になりやせぬかというお尋ねであります。御承知のように、家計費の中に占める米価の割合が年々低下してきております。でありますので、昭和三十五年あたりの率でいきますと、一九・四ぐらいの限度まで家計米価として上げても差しつかえないような計算も出ているようなわけでございます。でございますから、いま家計に占める米価の比が七%ですが、これが一四・八%上げたということは、家計を妨げる、家計の安定を阻害するということにならぬというような計算が立つわけでございます。そういう意味におきまして、家計の安定をめどとして経済事情をしんしゃくして消費者米価をきめるという趣旨には違反していない、こういうふうに考える次第でございます。
  86. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 各省大臣からお聞き取りいただいて全貌はよく御理解いただいたと思います。確かに物価問題は経済問題でございますが、一歩誤まるならば、これが社会問題、また政治問題にも発展しかねないのであります。そういう立場でございますので、政府は非常な決意をもちまして真剣に物価問題と取り組んでいく、こういう態度をとっております。その意味においてまた国民の各界の協力をお願いしておるわけであります。一部におきましては、物価、それは賃金との悪循環だ、それを断てという声もございますが、私はこの単純なる意見には必ずしも賛成はいたしません。特に私どもは、そういう意味で賃金のあり方にも注意しなければならない、また、いわゆる便乗値上げというものがございますが、そういうものも厳に戒めたいと思う。そこで私が国民にお願いしたいことは、国民各階各層と申しますが、たいへん恵まれない階層の方があるし、比較的恵まれておる階層の方がある。こういう方々が、あるいは老人、あるいは病弱者、あるいは婦人、あるいは身体障害者、あるいはまた恩給生活者、こういう者まで含めての恵まれない階層がある、こういう方々が物価の高騰に悩んでおられることは、私どもも身にほんとうにひしひしと感じておるのであります。こういう方々に対してのあたたかい気持もを持たなければならない、これがいわゆる社会保障充実によりまして、幾らかでもこれを、こういう方の苦しみを軽減することができればたいへんしあわせだと思います。  もう一つは、やっぱり恵まれた階層の方々が依然としてレジャーを楽しまれる、これは場合によればいわゆる生活の向上である、こういう表現ができるかわかりませんが、私は、その意味ではやはり健全消費ということを、心がけていただきたい。これがやはり物価をつり上げることになり、そうして恵まれない階層にも非常に御迷惑をかけておる、かように思いますので、消費節約、かようには申しませんが、いわゆる健全消費、これをねんがけていただくならば、ただいま当面している物価もだいぶん様相が変わってくるのではないか、かように思います。いずれにいたしましても、政府が真剣にこの問題と取り組んでおることを御承知願い、また各界、衆参両院の皆さま方にも御協力をいただきたい、かように思います。
  87. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 木村君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分から再開することといたし、暫時休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      —————・—————    午後一時四十七分開会
  88. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。中尾辰義君。
  89. 中尾辰義

    中尾辰義君 私は最初金融問題につきましてお伺いをいたします。日銀総裁にお伺いするのが当然かもしれませんけれども、本日はお見えにはなっておりませんので、総理並びに大蔵大臣にお伺いいたします。金融引き締め政策がとられましてからほぼ一年になりまして、最近に至りましては引き締め政策の本来のねらいであった国際収支もかなり好転をしてまいりました。しかし、その反面におきましては中小企業は倒産のレコードを毎月毎月更新をし、証券市場は極端な不振であります。公債発行の見通しもむずかしいし、極端な金詰まりの様相を呈しておるわけでありますが、国民は年末を控えまして非常に不安感におびえておりますが、今後の対策をどうするか、まず金融の面からお伺いをいたしたいと思います。
  90. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小企業金融対策につきましては、本年の下期の貸し出しワク等につきまして、できる限りの配慮をいたしたいと考えております。まず、中小企業関係三機関の融資ワクにつきましては……。
  91. 中尾辰義

    中尾辰義君 全般の金融問題について…….
  92. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小企業の問題は後ほどにいたしまして、全般の金融問題について申し上げます。  御承知のとおり、昨年十二月から、ちょうど一年に調整期間がなったわけでございます。御指摘のとおり、国際収支も好転にいたしておりますが、なお、輸入水準も依然として高い状態で横ばいを続けておりますし、国内における生産水準も高いわけでございます。その意味金融を直ちに緩和すべしということにはなりません。でありますから、基調といたしましては、金融緩和を行なえるような状態とは思わないけれども中小企業その他ひずみが出ている面につきましては、弾力的に、きめこまかぐ配慮することによってまいりたいということでございます。でございますので、証券市場に対し出しては、共同証券その他に対して貸し出しを行なったり、また、中小企業に対しては特別な配慮を行なったりということを続けているわけでございます。
  93. 中尾辰義

    中尾辰義君 引き締め政策の基調には変わりはないけれども、そこは弾力的な運営をしていこう、こういうことでございますが、確かに現段階におきましては金融政策はむずかしい。英米等の公定歩合の引き上げによりまして、国際収支の前途もそう楽観は許さないし、また、設備投資の見方につきましても、片方は、設備投資生産力を増大させる、しかし、輸出がふえるからというような長期的な見方、片方は、設備投資は需要増加させ、輸入がふえるから、こういったような短期的な見方があるわけでありますけれども、現実におきましては、御承知のどおりに、中小企業があのように毎月毎月倒産のレコードを繰り返しておる。また、企業間信用が非常な膨張をしておる。また、株式市場は不振で崩壊にいく手前でありまして、そのほかコール・レートの暴騰とか、都市銀行の経理混乱化と、こういうような現象をみてみますと、運転資金がいかに過度に欠乏しているか、こういうことを深刻に物語っているように思うわけでありまして、どこか金融引き締めのやり方、考え方、そういう点に的がはずれているのではなかろうか、こういうような気もするわけです。この点につきまして大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  94. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現在、一年間続けておる金融調整のやり方が的はずれではないか、こういうことでございます。一部にそういう御批判もございます。それは、あなたがいま二、三御指摘がございましたように、金の必要なところに金がない、必要ならざると思うところに案外金がある、金が偏在をしておるということ、また、その偏在をしておる金がコールに回って、コールでは三銭五厘、四銭という高いコールになって、それを重要産業が使わなければならないようになっておる。でありますから日銀が引き締めを行なっても、適当に高い金を使って貸し出しが行なわれておる。それによって生産水準は依然として高い。そうでなくても金利の重圧にあえいでおる産業が、やむを得ざる状態とはいいながら、より高い金利の金を使う。でありますから、金融引き締めのしわが自由市場に寄っておるという見方もある。そのために金融正常化を前提としながら、金融調整を強めれば強めるほど資本市場は逆に参ってしまう。こういうようなやり方が一体正しいのかという御指摘でございます。非常にむずかしい問題でございますので、その間の調整をとっておるわけでございますが、景気の過熱を防ぎ、また物価の問題や国際収支の問題に対処する場合、財政、金融合わせて調整的な姿勢をとらざるを得ないどいうことがいままでの状態でございます。でありますが、新しい考え方としては、ただ画一的な一律的な引き締め政策ということではなぐ、基調は引き締め基調にありながらも、その間において弾力的といいますか、きめこまかい配慮といいますか、そうする施策をあわせて行なうことによって、調整過程中といえども、ひずみの解消をあわせ行なうという考え方調整政策を進めておるわけでございます。でありますので、これ以外にいろいろの手がないのか、ないわけでもありません。しかし、あまりに新しい手を次々にというわけにもまいりませんし、引き締め調整の浸透過程を十分見ながら実情に合った施策をとっていくという考え方でございます。
  95. 中尾辰義

    中尾辰義君 ただいまの答弁でございますが、今回の金詰まりは、三十六年、三十七年のときの金融引き締めのときとは若干異なっておるんじゃないか、そういう見方もあるわけです。三十六年当時は設備投資の進行中であった、したがって、運転資金を食い込んで設備投資を続行したので、その結果、運転資金が欠乏したというような見方。今回は三十六年度以降のあの巨額な設備投資が大かたでき上がったために、そのために運転資金が非常に増大しておる、それと賃金がべースアップをいたじまして、人件費がふえておる、また、経済成長に伴って個人消費支出が著しく増大をして通貨の所要量が増大をしでおる、こういうようなことも言われておるわけです。そこで、資金の需要ということでありますが、これは国民経済運営上の必要な資金でありまして、ただ設備投資の行き過ぎの資金需要だけではないのではないか、今回はこのようなことも考えられるわけです。これは一つの参考でありますけれども、通貨の増加率を経済成長率と比較をいたしまして、三十三年度は通貨の増加率は前年度に比しまして一五・五%、三十七年度二〇%それぞれ経済成長率を上回っておる。三十九年度は成長率を下回るか、若干上回る程度ではなかろうか、こういうようなこと心予想されておるわけでありまして、こういうような面から見て経済成長に相応するところの資金が不足し、そうしてまあ今日の金詰まりがあらわれておるんじゃないか、こういうことで金融当局の理解が少し足らないのではないか、こういうふうにも考えられるわけでありますが、大蔵大臣の御所見をお伺いしたい。
  96. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 過去のような、設備投資が過大に進んでおるために金詰まりであるということではなく、また、全く構造上の問題としていままで考えたことより以外のものがあるんじゃないかということでございます。これは確かに私たちも、過去の金の流れ、信用膨張の状態等から比べてみまして、別な要因が相当存在をするということは認めております。的確にこれを把握できるかということになりますと、たいへんむずかしい問題でございますが、経済成長率、また設備投資の率よりも、通貨量も大きくなっておるし、企業間信用は非常に大きく伸びておるということを考えますと、この実態を十分つかみながら.これに適応する調整政策をとらなければならないんじゃないかという第一の問題との関連がここに出でくるわけでございます。  これは設備投資も当初考えた一兆四千億が一兆七千億程度になるということでございますし、また成長率も当初考えました年率七%が実質一〇%にも近くなる、一〇%こすかもしらぬ、また輸出も六十二億ドルが六十七億ドルないし八億ドルになりますけれども、輸入自体も非常に高い水準になるというような現象がございます。ございますが、そういうだれでも知る要因以外に、非常にむずかしい問題があるのではないかというふうにこのごろ考えております。それは現在在庫指数が非常に低いのでありますが、製品在庫も低いのです。それは一体そのくらい購買力があってものが売れているのかといいますと、購買力は確かに高い、国民消費は確かに高いのですが、それ以上ものをつくり、ものを売ったということになっております。でありますから、決算の上その他で見ますと、数字の上では相当大きな記帳がございますが、これはほとんどが非常に長い延べ払いというような、いままでかつて考えられなかったような、割賦販売とかいろいろな問題で売ったことになっておる、事実は一年も二年もかからなければ回収できない、こういうような特異な状態がございまして、企業間信用が雪だるま式に大きくなっていく。  その中に、金繰りの上から融通手形という商取引と関係のない手形が相当入っておる。中には一割ともいい、二割ともいい、企業間信用の三分の一は融通手形ではないかというような議論さえありますことは、健全な実態ではございません。こういう問題に対していま実態の把握につとめながら、金融正常化、通貨量の正常なあり方というものに対してメスを入れながらおるわけであります。でありますから、基本的な金融調整をいま緩和をするには時期が早いという基本的な姿勢をとっておるわけであります。
  97. 中尾辰義

    中尾辰義君 一面、しかし、国民の立場ですね、一企業者の立場から申しますというと、大蔵大臣国際収支さえ健全であればそれでいいのか、やはり国民経済中小企業や零細企業はそれじゃ少しぐらいぶっ倒れてもよろしいのか、こういうような感情があるわけですね。そこで、いずれにいたしましても、今日このような中小企業がかつてない倒産をした。これはもう倍増計画失敗。まあ総理大臣は失敗じゃなしにそれはひずみである、こういうふうにおっしゃるわけでありますが、こういった中小企業の倒産、こういう面から抵抗が起こってきて、先々引き締め政策というものの続行がむずかしくなるんじゃないか、こういう心配もあるわけですね。  そこで、私が申し上げるのは、金融の緩和とか手直しとか、そういいましても、何も野放しに緩和政策をとれと、こういう意味じゃないのでありまして、一企業倒産の現状を見て、当面あまりにも窮屈な日銀の信用供与の態度にもう少しゆとりを持たせたらどうであろうか。きょうあたりの新聞を見ましても、日銀が預金準備率を下げるような気配もございますけれども、銀行の金繰りだけを緩和いたしましても、やはり貸し出しのワクというものが押えてありますから、したがって部分的あるいは重点的な緩和ということもむずかしいように思うわけであります。  そこで、その次に考えられることは、窓口規制の緩和ということになるわけでありますが、これも全面的に大きく緩和しろということではありませんが、ここら辺について若干の手心を加えるような気はないか、これをお伺いするわけであります。
  98. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げておりますとおり、金融調整の機能の運用は日銀の政策委員会でやるものでございますから、私がお答えをするものでもございません。先ほど副総裁もことばを濁しておられましたが、私たちがいま政府・日銀の間で十分意思の疎通をはかりながら金融政策の遺憾なきを期しておりますのは、いまあなたが御指摘になったように、基調としては変えませんけれども、弾力的に、まあ弾力的にということが弊害があれば、その部面に対してはきめこまかく配慮をするということでございまして、先ほどもちょっと申し上げておきましたが、簡単に申し上げますと、中小企業につきましては、特に中小三公庫の資金量を増したり、また下期年末に対する民間資金のワクをふやしたり、財政資金による買いオペレーションを五百億行なったり、金融調整下においては引き締め緩和ではないかと言われながらもそのような具体的な施策はとっておるわけでございます。
  99. 中尾辰義

    中尾辰義君 私が申し上げたいのは、なるほど大蔵大臣の意向もよくわかりますけれども、あまりにも倒産等が続いておるので、国民が不安がっている。これからまた十二月もおそらく、年末金融はありますけれども、倒産が起きるのじゃないか。そうして一月、二月と続きますと、こういう面から引き締めというような措置ができなくなるのじゃないか。まあ、こういうことを心配して私は聞いているわけです。  それで、ただいま年末の金融につきましてお話がございましたが、政府と民間の金融機関を通じて中小企業向けの年来金融をどのくらい準備をしてあるか、政府、民間を通じてひとつお答え願いたいと思います。
  100. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小企業の年末金融を具体的に申し上げますと、政府関係中小三機関に対しまして年末資金として八百億の資金を追加をいたしております。先ほど申し上げたとおり、第三といたしまして、資金運用部の資金で市中金融機関の金融債の買い上げ、買いオペレーションを五百億やることにいたしております。それから、民間金融機関に対しましては、特に協力を求めま・して、第三、第四四半期の中小企業向け貸し出し目標額の増大をはかっております。それから、中小企業金融の信用補完の拡大をはかるために、中小企業信用保険公庫に新たに三十億円の貸し付けを行ないまして、信用保証の拡大をはかっておるわけであります。そのほかに、日本銀行が十二月に買いオペレーションを二千二百億行なうということをきめております。なお、都市銀行に対する貸し出し限度額を、十二月に限りまして第二、第四四半期の限度額よりは約三〇%多くしよう。これは大体貸し出し額を九千億としますと、三〇%で三千億近い金でございます。日銀関係だけでも、二千二百億の買いオペレーションと合わせれば五千億、こういう金融調整下においては相当思い切った処置というように金融的には措置をいたしております。この日銀の行なう三〇%の限度額を、昨年の十二月に比べてどうかというと、昨年度は二〇%でございます。今年度は三〇%、このくらい思い切った処置をとろうというふうにいたしておるわけでございます。
  101. 中尾辰義

    中尾辰義君 大蔵大臣はサービスをいたしたつもりでいらっしゃるでしょうけれども、確かにそれは昨年よりか倍近くなっておりますけれども、問題はやはりその内容がどうなっておるか。特に金融の八割というのは民間の金融機関でありまして、まあ私どもが聞くところによりますというと、予定どおりの中小企業向けの金融というのがはなはだむずかしいのじゃないか。選別融資によりまして、結局弱体企業というものがしわ寄せされてくるのじゃないか。  そこで、考えられることは、銀行におきましては、信用保証協会の保護がなければ、まずこれはむずかしい。さらに、相互銀行や信用金庫におきましては、まだ中小企業の倒産も続くでありましょうし、そうすると、どうしても選別融資を強化していかなければならない。結果的には融資の比率というものが目標よりかうんと減る。ですから、その余った金は——余るというほどでもありませんが、安全確実な日歩の高い三銭ないし三銭五厘のコール市場に回される可能性もある。また、中小企業金融公庫のほうは、これは担保や保証人等の調査期間が非常に手間どりますので、なかなかそうすぐ簡単に間に合わない、こういうような事情もあるわけですが、その辺のところは大蔵大臣よくご存じであろうかと思いますが、お伺いをしたいのです。
  102. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 中小企業金融につきましては、非常に毎年毎年努力をし、皆さんもこれは超党派、政府も党もなく、中小企業金融という問題と取り組んでおるわけでございますが、どうも年末等になるといろいろ問題が起きて、これでもまだうまくいかぬ、これでもかということでございます。しかも、本年はまた倒産が非常に多いということで、私たちも万全に近い態勢をとりながらも、そういうことでは万全でないというおしかりを常に受けておるわけであります。  ただ、ここで率直に申し上げたいのは、問題が幾つかございます。その中の一つを申し上げますと、確かに中小企業金融に対しては、政府関係三機関の資金量を増大すること、信用保護の方法またはワクを大きく拡大すること、中小専門金融機関の内容、いわゆる健全経営のたてまえから、貸し出し比率その他に対して制限をいたしておりますが、そういうために、その余った金というのではなく、制限をされておるワク内の金は、全部コール市場に出してしまって、資金量が相当集まっておる中小専門機関から中小金融ができなくて、それがコール市場に放出をされておるので、もう少し財務比率の問題その他に対して考えたらどうかというようなふうに、運用上の問題が確かにございます。こういう問題に対しては大蔵省といたしましても十分検討をいたしております。  もう一つの面は、中小企業金融というものの実態、これでございますが、まず中小企業というのは確かに、きょうでも月給を取っておった者が、われわれもすぐ議員をやめても、看板をかければ中小企業になるわけでございますが、零細企業、中小企業というもの、これは非常に数も多く、たくさんなものでありまして、全世界に例のない特殊な状態でございます。この金融を最も合理的にやるためにはどうするのかということで、お互いにこれはもう検討しておる問題でございますが、なかなか全く百点というものに逢着をせぬわけでございます。  これはどういうことかと申しますと、率直に申し上げますと、政府金融機関は少なくとも対前年度比二〇%ないし三〇%の資金量を増しておるわけでございます。で、また中小専門の金融機関も中小企業向けの貸し出しというものは、少なくとも、一〇%とか一二、三%という増しではなく、相当高い率で貸し出しが行なわれておることは事実でございます。そうして政府が当初見通します経済成長率は実質七%でございます。名目で九・七%、これが平均しまして一〇%に近くなっておる。ですから、中小企業に対しましては、二〇%ないし三〇%の金融を絶えず増しておりながらも、中小企業というものの倒産は依然として減らない。中小企業金融は依然として逼迫しておる。  それで、倒産をした内容など、私もこまかくいま見ております。ところが、まあこういうことを前提としてはなかなか金融はどこまでいっても追いつかないなと思うのは、倒産をした会社の一つの例をとりますと、年間の水揚げが一億である。そして倒産をしたときの負債は五億である。そして金融というものはちゃんとついておるのです。長くやはり事業をやっておりますから、ところが、どうしてこれが倒産したかというと、一年間の金融量の倍くらいものが一ぺんに必要となって倒産をする。これが関連倒産であり、それからもう一つは融通手形という全然関係のないものの倒産であります。事業が一年間に全産業の成長率の平均一〇%の少なくとも倍くらいの程度である二〇%程度のものであると、金融はついておるようであります。三〇%増しでも金融はそうむりではないようです。ところが、一年間に倍増ししてしまうということでは、これは金融はついていかない。ここに非常に中小企業金融のむずかしさがあるわけであります。  でありますが、しかし、これに対しましては、政府国民を一体としながら、やはりそういう実態であるならば、中小企業の合理的な経営、合理的な成長率、金融の合理性ということは当然お互いが考えるべきことでありまして、政府自身ももっとこまかい問題に配慮をし、もっと実態をつかむということにならないと、中小企業金融の合理性というものは確立されない。確かにおしかりを受けておりますが、こまかいところまで手を出しまして研究をし、実態を把握し、何とかおしかりを受けないで、おしかりどころではなく、中小企業は倒産しないように、こういうことをまじめに真剣に取り組んではおります。こういうことを申し上げておきたいと思います。
  103. 中尾辰義

    中尾辰義君 中小企業がなぜ倒れるのであろうか、これは政府に責任のないような御答弁であります。それはかってに放漫経営をやったんだとか、私はやはりそのお答えを予算委員会で何べんも聞いておるのですが、根本はやはり所得倍増計画の旗の振り方が早過ぎた、ここにあるわけです。やはりここまで中小企業が来た以上は、もっとあたたかい目でもって対策を講じてしかるべきじゃないかと思うわけです。  そこで、先ほどからお伺いをしておるわけでありますが、そこで、それならば、中小企業対策として政府は何をやっておるのか、これを考えてみますと、歩積み・両建ての自粛とか、あるいは金融危機緩和のために若干の資金の対策を講じたとか、この程度でありまして、そのほかにやりましたのはまだ多少ありますけれども、あまり御自慢なさるようなことはないじゃないか。本年度の中小企業対策の予算を見ましても、百六十五億円でございまして、中小企業の近代化、高度化がどの辺まで進んでおるのかということも、私もはなはだ疑問に思うわけであります。  そこで、今後政府としては、中小企業の対策をどのようにして前進をさせるのか。通産大臣、お見えになっておりますか。もしお帰りになったのであるならば、これは総理にお伺いをしたいと思います。通産大臣がおいでにならなければ、総理並びに大蔵大臣……。
  104. 中野正一

    政府委員(中野正一君) 来年度の中小企業対策でございますが、御承知のように、開放経済体制下に入ってまいりましたこの事態に即応しながら、均衡のある成長発展を遂げますために、中小企業について思い切った近代化、合理化の対策を進めたいというのが基本の考えでございます。この観点から、中小企業対策を従来から非常に力を入れておりますが、最重点項目の一つとしまして、一般会計面、税制面、金融面、あらゆる施策を拡充して、来年度におきましても、昨年できました中小企業基本法の定めます路線に従いまして、設備の近代化、事業の共同化、経営管理の合理化、技術水準の向上、中小商業の経営の近代化、また小規模事業の振興、さらに下請取引の適正化と、各方面にわたりまして大幅な施策の拡充をはかるべく目下政府部内で交渉中でございます。特にやはり中小企業設備近代化資金を大幅にふやしますとともに、政府関係三金融機関の機能の強化、信用補完制度の充実、強化というふうに、中小企業金融の質、量、両面からの円滑化をはかってまいりたい。また工場の集団化あるいは中小商業の店舗の共同化、商店街ぐるみの近代化というようなふうな、いわゆる共同化、中小企業の協業々というようなことを大いに進めてまいりたい。税制面につきましても、小規模事業者の税負担の軽威、自己資本の充実に必要な措置を強力に講じてまいりたい。さらにこれは一番基本的な大事なことでありますが、何といっても中小企業の経営の管理を合理化し、また同時に技術水準を上げていく。また労働力不足に対応して、福利厚生施設等の労働環境を整備していくというようなことをやりまして、今後さらに、従来からやっております中小企業の診断指導、技術指導というような方面の政策をさらに力を入れてまいりたい。特に来年度につきましては、小規模企業の振興ということにつきまして、まだこれは政府案がきまっておりませんが、従来からやっておりまする小規模企業経営の指導事業を拡充するほか、金融面、あるいは税制面等々につきまして、小規模企業の施策の大幅な強化をはかってまいりたい、これがいまわれわれの考えております中小企業対策の内容でございます。
  105. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中小企業庁長官から詳細に対策を説明いたしました。ただいま、政府は何にもやらないではないか。いろいろやっておる。しかし、これはいわゆる中小企業基本法に某づついてやっておる、かように思います。先ほど来大蔵大臣に対する質疑応答を通じて伺うところ下は、中尾さんは、主として金融の面から中小企業の倒産をいかに扱うか、こういう点を質問されたように記憶いたしております。私は、これはただ単に、中小企業倒産問題は経済問題だけではないのだ、これは大きな社会問題にも発展するのだ、誤ればまことに重大な意義を持つ重大な問題だ、かように実は考えておりまして、先ほど来、総合的な対策を当局においてはこれを推進しております。同時にまた金融の面では、先ほど大蔵大臣出説明いたしましたように、金融の基本的態度はとっておりますものの、やはりきめこまかな、そのときどきに応じての弾力的な運営をして、そして社会的問題にまで発展しないように十分注意しておるわけであります。中小企業と一口に申しますが、その中小企業の中にも形態がいろいろまちまちでございます。ことに小企業の問題になってくると、零細企業をも含めていろいろ問題が多いと思います。これこそきめこまかな、あたたかい態度でこの問題に対処していかないと、十分その効果をあげることはできない、かように私は考えます。
  106. 中尾辰義

    中尾辰義君 中小企業庁長官の御答弁にしても、総理の御答弁にいたしましても、総花的でありまして、どうもどこに中小企業対策の重点があるのやら、私もつかみにくいのでありますが、いずれまた予算面に出てくるでありましょうし、この次の機会に譲ることにいたしまして、一点だけ不渡り融通手形の乱発の問題でありますが、これも、去年、おととしあたりから、大蔵大臣が口を大にして言っていらっしゃるわけでありますが、その後どういうふうになったのか。聞くところによりまするというと、法務省等のほうがあまりうまくいかないのじゃないか、こういうこともありましたので、この際お伺いをいたしておきます。
  107. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 不渡り手形等が出ておりますために金融が不正常になり、また経済の混乱を来たすおそれもありますので、手形法、小切手法等の改正につきまして、法務省にお願いをいたしております。非常に技術的にむずかしいということでございますが、これは時期がたってしまって、やっと不渡りでございますということでありまして、うまく渡っているときには不渡り融通手形にはならないわけでございます。これがうまくなくなったときに商手ではございません。こういうところに問題があって、捕捉しがたきものであります。こういうことがなかなかむずかしい問題であります。がしかし、捕捉しがたいということであっても、事実これは公知の事実でございます。でありますので一何かひとつやろうということでお考えになっていただいているようでありますが、私どもも手形法の改正の問題だけにかかってはおれませんので、手形の用紙そのものを、銀行も入れるとか、場合によっては大蔵省印刷局でひとつ印刷してやってもよろしいというところまでこまかく考えながら、これが融通手形等の悪い制度はできるだけ早い機会になくしたい、ただこれは悪いからといって、いますぐなくしてしまうと、これは大混乱を来たします。そこに金融上のむずかしさがある。だから融通手形というのはこれはやむを得ざる状態で出したのです、こう言いますが、これはやむを得なくても出しちゃいけないのです。でありますので、やはりいま出ているものは半年、一年の間に回収して、正常な状態になるまでは多少金融でめんどうを見てやる。しかし、ある一定期間を過ぎた場合には、これは新しい状態において措置されるということにならないと、これは永久に解決できないというふうに考えております。
  108. 中尾辰義

    中尾辰義君 時間がありませんので金融問題はこれだけにいたしまして、補正予算関係につきましてお伺いをいたします。  公務員給与が七・九%引き上げの人事院勧告によりまして、九月にさかのぼって実施することになったのであります。そこで、不足財源といたしまして百五十億円を大蔵省資金運用部資金から借り入れることになったのでありますが、初年度の不足財源の内訳と、これが平年度化した場合にはどのような数字になるか、自治大臣にお伺いをいたします。
  109. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 今度の地方公務員の給与ベースの財源措置といたしましては、全体としては六百億でありまして、不交付団体が百五十億でございますから、それを引きました四百五十億の交付団体についての財源措置を講じたわけであります。このうち国の国税の自然増に伴ないまする地方交付税の分が百五十九億でございます。それから固定資産税、住民税等の地方税の自然増が六十一億、そうして節約八十億を差し引きました残りが百五十億ありまして、これを地方交付税特別会計に政府資金から借り受けをいたしまして、これが先ほど申しました地方交付税の自然増百五十九億と合わせまして三百九億を交付いたして財源措置を講ずることにしたわけであります。それから平年度になりますと、これが約千百億くらいになると思います。これは来年度の問題になるわけでございますが、目下地方財政窮乏の折でもございますし、平年度で、ベースアップだけで一千億の増になりますので、目下この点についてどうしたらいいかということで苦心をしておるわけでございます。
  110. 中尾辰義

    中尾辰義君 実はどうしたらいいであろうか、その問題につきまして私は大蔵大臣にお伺いをしたかったわけでありますが、百五十億円の借り入れを、五カ年で、毎年これは三十億円ずつ交付税交付金から控除される。つまり交付金の先食いということになるわけでありますが、ただいま自治大臣のお答えのように、来年度の地方公務員の給与はまた一千数百億ふえるということになるわけです。自治省といたしましては三〇%に交付税を引き上げていただきたい、こういうような意向らしいんでありますが、私どもも交付税は三〇%以上に引き上げるべきではないかと、こういうふうに思うわけです。それで大蔵大臣の御意見をお伺いしたいわけです。
  111. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは自治省からそういう考え方があるようなことを聞いておるだけでございまして、いまの国家財政の状態では、なかなかそのような要求を入れられるような状態ではございません。非常にたいへんな状態です。それともう一つは、端的に申し上げますと、今年度までは国家財政が大きいですが、四十年度になりますと、国家財政よりも地方財政のほうが大きくなる、このような状態でございます。また、公務員のベースアップは地方財政のほうにも大きくひびきますが、一般会計、特別会計の上でも同じように、ベースアップが平年度化されるために相当なものであるということだけつけ加えて申し上げます。
  112. 中尾辰義

    中尾辰義君 自治大臣の御意見につきまして、ただいまの大蔵大臣答弁考え合わせてお伺いをいたしたいと思います。
  113. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) ただいま大蔵大臣から御答弁がありましたように、来年度の予算につきましては、自然増収も非常に少ないようでございまするので、相当窮屈だと思います。それは承知しておりますが、地方財政もいま申し上げましたようにたいへんな問題でございまして、これが今度の通常予算、来年度予算につきましては非常に苦労するところだろうと思いますが、何とかひとつ解決をしていきたい、かように存じております。
  114. 中尾辰義

    中尾辰義君 次に、総理の御意見をお伺いいたします。
  115. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大蔵大臣と自治大臣とが十分話し合って、適当な結論を出すだろうと、かように考えております。
  116. 中尾辰義

    中尾辰義君 もう一点ですね、来年度の地方交付税交付金から先食いをするということが財政法違反ではなかろうか、こういうようなことを大蔵委員会でも話になっておるわけなんですが、このように借り入れるということになりますると、どうしても年度間調整というのが初めて認められてくるわけでありまして、ですから、財政法の第四条あるいは第十二条等に引っかかる疑義もあるわけです。この点につきましての大蔵大臣の御意見をお伺いをいたしたいと思います。
  117. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 特別会計で資金運用部から五十億を借り入れるということにつきましては、現在財源が確保されておるわけでございますし、財政法の違反というようなことはない。いまあなたが言われておる年度間の調整にすぎないと、こういう考え方でございます。
  118. 中尾辰義

    中尾辰義君 時間がありませんので、次お伺いいたします。  来年度の予算編成でありますが、これは税調の答申待ちであると、こういうことでありましょうが、大体大蔵大臣の腹のうちはほぼ固まっているんじゃないかと思いますので、来年度の経済見通し成長率、財源規模、自然増、こういう点につきましてお伺いをいたしたいと思います。
  119. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) さだかに申し上げられる段階ではございません。ございませんが、新聞等に出ておるものもございますので、常識的な立場で、答えられませんというわけにまいりませんから、その意味でお答え申し上げます。  大体長期経済見通しにおきまして平均年成長率が実質八・一%でございます。本年度一〇%に近く、また一〇%以上になるかもわかりません。そういう意味で平均いたしますと、もう先食いというふうに、三十九年度で成長率が上がっておりますから、平均いたしますと七%から八%の間ということになると思います。名目成長率を一〇%程度と押えますと、税収は約四千五百億近くということになるわけでございます。その中で当然増等がございますので、減税財源は非常に乏しいということは皆さん御承知のとおりでございます。ちなみに今年度の税収を申し上げますと、今年度の税収の自然増収額は六千八百二十六億でございます。このうち二千三百億は三十八年度の税収ということでございます。でありますから、また三十九年度に行なった減税の平年度化ということで財源が減るわけでございます。そういう意味からいたしまして、減税財源も非常に苦しいということは御承知のはずでございます。しかし、いま税制調査会は、またちょうど時がいいか悪いかいずれにいたしましても、ちょうど三年目で、最終答申を行なうときにぶつかっております。このときに相当の自然増収があれば相当思い切った減税もできるわけでございますが、財源としては非常に乏しいという状態でございますが、税調の皆さんが努力をせられて、答申をきょうの新聞では十二日ごろお出し下さるということでございます。答申を見ましてから、乏しい財源の中にあっても何とかやりくりをしながら長いこと、十年も十年余も続けてまいりました減税に対しては、できるだけ答申尊重ということで対処をしてまいりたいと、こう考えておるわけでございます。
  120. 中尾辰義

    中尾辰義君 そこで簡単に、時間の関係もありますからお伺いをいたします。  税制調査会の長期税制のあり方、この答申案につきまして、減税は所得税を重点すべきである、重点を置くべきである、法人税は外国に比べて必ずしも高くない、こういうことが出ておるわけでありますが、これは田中大蔵大臣の持論でありますところの企業減税優先論と若干意見が異なるように思うわけでありますが、この点についてお伺いをいたします。
  121. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も内閣も、所得税優先論者でないという断定はちょっとおかしいわけであります。所得税優先論者でございます。でございますから、過去においても、わが党内閣は十年間で一兆円のうちその九千億の所得減税をやっておりますから、いかに税調の皆さんと同じように所得税中心主義者であったか。ただ所得税のみではなく企業課税も重大である、必要である、こういう考え方を合わせ持っておるのでございまして、税調の皆さんが言っておることと私たちの考え方と違うということはございません。政府は高い立場であらゆることを検討しながら、また財政との関係、財政投融資との関係、また金融との関係等、十分関連的に考えながら、国民各位のためによりよき方向を見出だすということにすぎないわけでございます。
  122. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは来年度の予算編成の重点政策についてお伺いをいたします。
  123. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはいま各省から概算要求が出ておりますが、これの事務査定をやっておる段階でございます。でございますから、法律に基づいて大蔵大臣が対案をつくりまして閣議の議に付すわけでございますが、まだ対案を完成しておる段階ではございません。ございませんが、党でもいま重点施策を準備中でございますので、これらと合わせながら検討をいたしておりますが、やはり社会保障拡充とか、これも佐藤総理就任直後、社会開発という大きな看板が上がりましたので、社会保障を含めた社会開発が重点的な一本の柱になると思います。そのほかに文教の刷新拡充とか、また中小企業対策とか、いままた申しておりますが、地域開発とか、住宅施策とか、こういう問題、いままでの年次計画をやっておりますものに新しいものを加味しながら新しい予算をつくって、御審議をいただきたいと、こう考えておるのでございます。
  124. 中尾辰義

    中尾辰義君 来年度は余剰財源がありませんので、なかなかむずかしいようでありますが、そこで、ただいまもお話に出ましたが、社会開発の問題でありますが、これに関連いたしまして、私は住宅問題につきまして、この際、総理にお伺いしたい。  それは、毎日毎日の労働のいこいの場であるところの住宅、これが非常に不足をいたしております。現在でも七カ年計画で七百八十万戸を建設すると、こういうような方針も出ておるようであります。確かに不足しておるわけです。しかも、このような住宅難の七〇ないし八〇%が月収の二万あるいは三万の低所得者である。これにつきまして、建設委員会におきましても、前の河野建設大臣は、従来道路に力を入れたけれども、今後は住宅に力を入れようと、こういうことで建設委員会もこれを了解したわけでありますが、ぜひこの点につきまして来年度の重点政策に取り入れてもらいたい。また、ひとつは、建設大臣はどういうふうに考えていらっしゃるのか。建設、大蔵、総理各大臣にお伺いをいたしまして、時間がありませんのでこれで終わります。
  125. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 建設省のほうの要求に対しては建設大臣からお答えがあると思いますが、建設省は、四十年度予算要求に対しまして、重点施策として住宅政策の遂行ができるようにということで予算要求いたしております。これに対して大蔵省もいま査定中でありまして、対案をつくりたいと、こう考えておるわけであります。  ただ、ここで申し上げたいのは、住宅政策に対してはひとつの転機にあるとも考えておるわけであります。これは、建設大臣と少し意向が違うかもしれませんが、これは法律に基づいて大蔵大臣の対案をつくる立場において申し上げるわけでございますが、住宅政策につきまして、公共投資としていわゆる税金をもって住宅をつくることが一番いいんだ、これが一番の道だ、こういう考えでは住宅対策というものは大きく推進ができない。これは当然——昭和二十年のあの爆撃のさ中のときには、これはどうにもならない状態でございましたので、公営住宅法が議員提案によってつくられて、今日の公営住宅の基礎をなしたわけでございます。これは当時、政府提案がなぜできなかったか。一般国民からの税金で住宅を、特定の人の住宅をまかなうことが一体いいのかどうかということの議論がありましたときに、議員提案の方法がやむを得なかったということも、いまやはり静かに考えておるところでございます。先進国はどうやっておるかといいますと、不良住宅の改善、不良地区、スラム街の解消とか、それから特殊なものに対しては公共負担の道を開いておるところもございますが、住宅は大体において、原則として民間資金によって建てるもの、ただそれに対しての——それだけではならないので、民間が住宅投資を行なえるように、しかも低家賃住宅ができるような施策をあわせて行なう。それには税制上、特に固定資産税や不動産取得税の措置等に対しては十分な配慮が行なわれております。それであるからこそ、戦後のハンブルグなどは二年か三年で非常に早く復興いたしましたし、またイタリヤの労務者住宅がなぜできたかということは、すべて財政資金をもとにしたものではない。税制をもとにして建てられておるということもやはり検討しなければならないと思っております。でありますから、国民投資をその住宅に立ち向かわせるためには、施策の上ではどうあるべきかということもあわせて考えないと、税金でもってすべての国民の家を建てるということは、それは考えても不可能なことでございますので、戦後二十年たった今日、公営住宅法を議員みずからがつくって今日に及んでいる。住宅は確かにいま千万戸を建て、七十万戸の計画といっておりますが、ここで政策の焦点をどういう方向にあてるべきかということをやはりまじめに考えて、積極的に施策を行なう必要がある、こう考えておるわけであります、かと言って、公営住宅をすぐやめるのか、そんな考えじゃありません。これは住宅公団が行なうもの、公営住宅として金融公庫が行なうもの、また府県、地方が住宅公社を制度化して行なうもの、要するに国自身が生保の資金等をもって、いまから三十年前に耐震火のアパートができて、今日でも日本の永久住宅となっているようなものをもっと制度的に前進をせしめたいという熱意を持っておりますので、あわせ御了解願いたいと思います。
  126. 小山長規

    国務大臣(小山長規君) お答え申し上げます。  住宅が大事であるということについては、しばしば総理も本会議で申し上げているとおりでありますが、政府としては、長期対策としてどの程度不足しているかということは検討いたしましたところでありますが、昭和三十九年度から四十五年度まで見まして、七百八十万戸の住宅を建設すれば、一世帯一住宅が完成できる、こういう結論を得まして、そのうち一体政府あるいは地方公共団体、これがどの程度のものを建てるか。大体三百万戸以上というものを政府あるいは地方公共団体が建設をしたり、あるいは資金の援助をしたり、こういうことでいこう、こういう考え方なのであります。で、来年度のことでありますが、来年度は従来と同じようにやはり公営住宅に重点を置いていきたい。いま大蔵大臣の意見を承りましたけれども、まだ日本国民の所得、そういう点から申しますと、よほど家賃は低家賃でないと、生活に困る人たちが相当多いわけでありますから、この重点はやはり公営住宅に置いていきたい。また公団住宅などに入りまして、さらにもう少し高い家賃を払える人々がいるのでありますが、そういう人たちのために公団の住宅についてもやっていこう。そうしてまた自分の力である程度できるけれども政府が少し援助してくれればというのは、いわゆる住宅金融公庫からやっていくわけであります。そのほかに、この資金については、御承知のように政府資金あるいは郵便貯金や簡易生命保険からきますところの資金と税金、これでまかなっているわけでありますが、そのほかに、やはり住宅を持とうとする人たちが、自分でも積み立てをして、そうしてある一定の積み立てができた、そうして政府の公庫——住宅公庫からも融資をして、そうして自分の持ち家を持とう、持たせたい、持たせるべきではなかろうかという考え方で、来年からはさらにそういう趣旨で公庫融資制度をつくりたい、こういう考え方で進んでおるわけであります。
  127. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一口に国民生活、かように申しますが、よくこれを衣食住、この三つに分けて説明をするようであります。私は日本国民の衣食住、この三つの生活をつぶさに考えますと、衣食のほうは外国に比べましても、そう見劣りがするようには思いません、現状におきまして。しかし、住の生活は、まことに今日におきましては、日本は諸外国よりおくれている。ことに勤労者住宅という点におきまして、まことに不十分だ、かように考えますので、特に勤労者住宅に力を入れて、この整備をはかっていきたい。それで大体に見まして、いまの国民生活の負担もいろいろあるようでありますが、現状におきましては住居費が非常にかさむ、家賃がいかにも高い、こういう不平をしばしば伺うのであります。同時にまた、住宅問題に関連しての土地の問題、これなども非常な問題が多いようであります。したがいまして、私特に社会開発意味からも、ただいまの住居を整備することが、これが刻下の、ただいまの急務である、かように考えております。しかして、先ほど来、建設大臣、大蔵大臣等の所感がございましたが、これはひとり政府資金のみによってその目的を達するわけではございません。十分民間の協力も得る、民間資金も生かしていく、こういうことが望ましいように思います。ことに四十年度の予算編成等におきましても、なかなか財源は苦しいようでございますが、この計画だけはぜひとも続けていきたいし、そういう意味最初計画はこれを維持していく。同時にまた、民間資金をもこれに動員し得るようなそういう方策もあわせて考えていきたい。大へんぜいたくな考え方のようですが、この住宅問題、そういう際に同時に土地の問題にも触れることができれば大へんしあわせだと、かように私は考えております。
  128. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 中尾君の質疑は終了いたしました。
  129. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 次に、瀬谷英行君。(拍手)
  130. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 佐藤総理が衆参両院におきまして所信表明、あるいは質疑を通じて表明をしてまいりました外交方針の基調を要約をしてみますと、自主平和外交の積極的推進ということが一つ。中国問題については、中国を敵視せず、中国を封じ込めない立場をとるということ。それから、二つの中国という立場をとらず、あくまでも一つの中国という考え方であるということ。以上の立場をとって、慎重かつ真剣に対処していくということに尽きるような気がいたしますが、概要以上のように解釈をしてよろしゅうございますか。
  131. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりでございます。
  132. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 以上のとおりならば、従前に比較をしてかなり前向きの印象を受けるのでありますけれども、一方、椎名外務大臣の答弁は、国民政府の国連の議席確保ということと、中共の国連参加を阻止をするという考え方から一歩も出ていないような気がするのであります。もちろんいろいろな釈明はございましたけれども、重要事項指定方式支持ということの結果が、国連参加を阻止をするということになるのを万々承知の上で、なおかつ、いま申し上げたような立場をとっておられるような気がするのでありますが、私の申し上げたことに間違いがないかどうか、外務大臣の御答弁を願いたい。
  133. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国連におけるアルバニア側の提案は、中共の代表権問題を承認することの意味においては、同時に国民政府の国連追放ということが必然的につながってくるわけであります。そういう提案に対しましては、われわれといたしましては、国府の国連からの追放は極東の平和と安全の上からいって同調しがたい事柄でありますので、従来これに反対をしてまいったのであります。  そこで、一方この国連代表権の問題は、世界及びアジアの平和に至大の関係を有するものであります。したがって、これは重要事項指定方式によって国際世論というものの十分な背景のもとに決定せらるべき問題であるということを主張してまいったわけであります。そういうわけで、重要事項指定のそれ自身の目的は、中共の排除という目的を持つものではございません。重要事項であるがゆえに重要事項としての取り扱いをせいと、こういうことをいっておるのであります。それが直ちに中共排除の手段ではないと、そういうことを申し上げまして、従来の言葉の足りなかった点を補正いたしました。そういうわけでございますので、この点を御了承を願います。  ただ、一方において、国府の国連からの排除、これは力のバランスをくずし、極東の平和と安全を乱すことになるので、従来どおりこれは同調できない、こういう態度を、今回の総会においては態度をとってまいる、こういうことを申し上げて御了承願います。
  134. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 アルバニア提案のように、国府の排除ということであればこれには同調できない。しかし、重要事項指定方式を支持したという意味は、中共排除を目的とするものではないという意味の御答弁でありますが、それならば、中共の国連加盟ということが国府の、国民政府の排除ということとは別個であった場合には、これを認めるという立場でありますか、どうですか。
  135. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは仮定の問題でございまして、現実問題としては、われわれの当面する問題ではない。でありますから、仮定の問題にはこの際お答え申し上げられません。
  136. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 近い将来中共の国連参加は避けられないという一つ見通しについて、佐藤総理が意見の開陳をしたことがあるように覚えておるのでありますが、総理の見解はどうでありますか。
  137. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、近い将来において中共が国連加盟するだろうというようなことを申した覚えはございません。何かそういうことがございますか。私自身記憶がないのでございますが、ただ、最近中共問題が非常に各方面で論議されておる、この事柄は、おそらく中共問題の解決への進展であろう、そういうことを期待すると、かような意味のことは申しましたが、近く国連に加盟すると、こういう具体的な話はしてないように思いますが、いかがでしょうか。
  138. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 解決への進展ということは、具体的には何を意味しておるのでありますか。
  139. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはその意味するところはどういうことかわかりませんが、国際的に各国が了解がいくような方法ということでございます。
  140. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 どういうことかわからないということを首相自身がおっしゃっておるというのは、これはわからぬのでありまするが、いまおっしゃったばかりなんですよ。解決への進展をということをいまおっしゃったばっかり。その意味はどうかと、こう言ったら、どういうことかわからぬと、これじゃ困るんですね。具体的な内容なしにそういうことを言われたら困るのです。じゃあ、時間の問題があるという意味だったか、あるいは近い将来だという意味だったか、その点は記憶にありませんけれども、ともかく中共が現状のままでいるということはないだろうと、ともかく解決への進展というのは何らかの変更を来たすであろうという意味に解釈をしてよろしいのですか。そのように解釈をされておったのでありますか。
  141. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、先ほど外務大臣から申しておりますように、また、私がしばしば申し上げますように、中国につきまして、私ども一つの中国、しかも、私ども国民政府と条約を締結しておる、こういう状況で一つの中国というものを考えておりますが、事実は二つの政権がある。この実際あるところの二つの政権、その間にいつも問題が起こっておるわけであります。ただいまの国際連合への加入、それが同時に中国代表権の問題とも関連を持ってくる、こういう状態でございます。この状態は、瀬谷さんと私も同じように、その事実を認めるだろうと思います。その問題をめぐりましていろいろな議論がされておる。ある者は中国の代表権に触れた解決もしておるだろうし、ある者はまたその代表権に触れない意見を述べておる。私は、これらの意見について、一々いずれがけっこうだとか、いずれがどうかということは申しません。申しませんが、いずれにいたしましても、この中国の二つの実際にある政権、それからかもし出されておるアジアの平和、こういう点を考えたときに、まことに重大なる意義を持つということで、日本政府自身は重要問題という問題を——これは重大な事項だと、かように考えておるわけであります。また、外国におきましても、国際的にもこれが重要問題であるということについては、今日までのところは意見が一致しておる。しこうして、今年になりまして新しい議論がいろいろと発展しておる、そういうことが何らかの落ちつきをみるのではないか、そういうことは言えると思います。この事態がいつまで続くか、それまた別でございますが、これは近き将来か、あるいは直ちにか、さようなことは私どもはわかりませんが、私ども態度は、どこまでも重要問題としてこれと取り組んでおる。今後は一体日本政府はどうしようか、そういう意味で各国の考え方も十分聞いてみたいし、また、国内においてもいろいろの意見がある、そういうことにも耳をかして今後の態度をきめようと、こういうことを何度も報告申し上げておるところでございます。それでただいま御疑問、なさいました点に私は触れたと、かように思いますが、さような意味でございます。
  142. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 確かに何度も聞きました。何度聞いてもわからないので、私があえてまた質問したくなったわけでありますけれども最初に私の質問に対して、自主平和外交ということをお認めになりました。ところが、いま現状の変更ということを総理自身が言っておるわけです、中共についてですね。何らか変わってくるだろうということを言っておるわけですよ、これは。外務大臣は何も言いませんけれども、とにかく総理は何か変わってくるだろうということを言っておる。しかし、それは各国の状況を見て各界各層の意見を聞いてということなんです。各国が態度をきめる場合には、それぞれの国は自分の判断できめるわけです。ところが、日本ばかりは、これはよその国の状況を聞いてからきめるということであれば、これは自主外交と言うのですか。他主外交じゃないですか、これは。そういう点が自主外交というのだったならば、私はちょっと理解しかねるのですが、総理の見解をもう一度伺いたい。
  143. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国際関係その他の動向を見きわめる、そうして私自身がきめていく、これが自主外交でございます。別に何にも情勢を把握しないでめくらめっぽうに飛び出すことは、必ずしも、これは勇敢かもわかりませんが、自主外交ということじゃないと思います。また、十分情勢を見きわめるということが他主外交だと、私は絶対にさようには考えておりません。
  144. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いままでの日本の外交方針実績というのがちっとも自主的じゃないから、私はあえて申し上げるのです。  まず、中国は一つであるという考え方を堅持するということでありますが、それでいままでの御答弁のようであれば、先ほど私が申し上げたように、従来に比べて確かに前向きのように聞こえる.しかし、実質的にはちっとも前を向いてない。首だけは前を向いておるけれども、首から下はうしろのほうを向いておる、こういうかっこうになるわけです。それはことばだけの問題になりますけれども、そういうふうに総理の前向きというものは解釈するほかないのですが、どうでしょうか。
  145. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはたびたび申し上げたのでございますけれども、現状においての態度、これは今日までも池田内閣がとってきたそれと同じ態度でございます。これまた池田内閣も敵視しないということを申しておりますし、また、事実二つの政権があるということは池田内閣も認めております。しこうして、今後の処置につきましては、私は何にも申し上げておらないのであります。この点を区別していただけば、私の態度自身には少なくとも誤解はないだろう、かように思います。
  146. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今後の問題についての一つ見通しというものを立てておかないことには自主外交の確立ということは私はできないと思う。で、すぐに隣の中国のことでありますから、人ごとじゃないわけであります。中共の場合は育ち盛りのハイティーンのようなもので、日増しに強大になってくるわけですね。ついこの間は核実験という火遊びまでやってのけた。片方、国民政府のほうは老衰をして自由がきかなくなっておる、台湾に居そうろうして、アメリカの注射でもって生きておるといったようなかっこうになっておるわけです。これを比較をしてみた場合には、好むと好まざるとにかかわらず、私は、中共が国際社会に復帰をするということを想定しなければならないと思うのでありますが、その必要なしとお考えになるのかどうか、総理の見解を伺いたい。
  147. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、国際社会に復帰を拒むというような考え方は持っておりません。すでに御承知のように、政経分離の方法で貿易も拡大をしておりますし、また、文化交流もいたしております。こういう事柄と、ただいまのように、国際社会に復帰することを拒むのだ、かような考えでは毛頭ないことを御理解いただきたいと思うのであります。
  148. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それならば、そのときが遠くないということも考えて、その場合に日本がどうするかということをあらかじめ考えておくべきではないか。単に中国問題を傍観をするだけでは、これは外交不在の政治ということになりはしないかという気がするのでありますが、総理の見解をお伺いいたします。
  149. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 所信表明その他で申しましたように、まことに重大な問題でございますから、あらかじめどうすると、かように考えない。十分動向を見きわめた上で慎重に決定したい、かようなことをたびたび申しておりますので、今日はそういう段階でございます。
  150. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それでは、自主外交ということを重ねて申されましたので、グロムイコ・ソ連外相が七日の国連総会の本会議で軍縮に関する覚え書きを提出をしておりますが、このような提案に対して日本が一体どういう態度をとるのか。自主外交のたてまえからするならば、総理としても、いいのか悪いのか、賛成するのか、あるいは横を向くのか、こういうことは当然日本政府態度として明らかにしてもいいことではないかと思うのですが、どうですか。
  151. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) グロムイコ・ソ連外相が十二月七日の国連総会で、一般討論において十一項目にわたる個別的軍縮措置を提案するとともに、軍縮交渉の場といたしましては、非同盟諸国会議において提案された全世界の軍縮会議が適当であろうという主張をし、及び、核兵器の使用廃棄のための世界首脳会議を開催すべしとの中共の提案は考究に値する問題である、こういうことを言っている。この十一項目の個別的軍縮措置には、軍事予算の削減であるとか、外国の駐留軍の撤退、核兵器拡散防止、在外基地の撤廃、核非武装地帯の設置等々、重要な問題を含んでいるのでございます。これらの提案は、すべて本年の一月以来、ソ連が十八カ国の軍縮委員会において覚え書きを提出いたしまして、現にその委員会が九月十七日休会に入るまで、引き続き審議を行なってきたものでありまして、言うならば新しい提案ではないと、かように考えているのであります。この提案は、過去軍縮討議が十数年にわたって真剣に行なわれたにもかかわらず、ついに全面完全軍縮は一向進展しなかったということになっておりますが、要するに、大国間の相互の間の不信頼感がその根底にある以上は、なかなかこういったようなことがアイデアとして提案されましても、実際のこうした大国間の不信頼感、そういう国際環境が基本的に改まらない限りにおいては、なかなか実を結ばないものであるということが事実によってすでに明らかになっているのであります。わが国といたしましては、かような国際環境の改善のために努力を行ないつつ、長年の審議の結果、最上のものとして設置されましたジュネーブ十八カ国軍縮会議、この場において一歩一歩地道にこの方向に向かって建設的に、たとい時間がかかっても歩んでまいるという以外にはこの問題の解決の方法はあるまい、かように考えまして、せっかくの提案でありますけれども、一向目新しいものではなく、従来の経験にかんがみても実効があがるものではない、かようにみている次第であります。
  152. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 目新しい提案であるかないかということよりも、日本自体が、この提案に対して、これを推進をしようという立場をとるのかとらないのか、その必要がないのか、その気がないのか、もしないとするならば、効果がないだろうという推定に立ってそういうふうにおっしゃっているのか、その辺はどのような判断で基づいているのか、そのお考えを明らかにしていただきたい。
  153. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいま申し上げたように従来の経験にかんがみまして、軍縮十八カ国会議、この場において一歩一歩前進する以外にない、かように考えております。
  154. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 これもたいへんに自主性に欠けた答弁であるような気がするわけであります。どうも物事をきめる場合には、自分だけではきめかねる、アメリカに聞きにいかなければならぬといったようなことが日本の外交の基調になっているのじゃないかというような心配が国民にあるのです。だから新しい問題としてグロムイコ外相の問題を私がここに提起してみた。外相の態度は、うかつにそういう問題にはさわれないという、敬遠しておられた態度であります。これもうしろ向きと言わざるを得ないのであります。  次に、「政府の窓」というパンフットがありますけれども、このパンフレットに科学技術庁の名前で、原子力潜水鑑の安全性についての記事が載っております。この記事によりますと、原子力商船サバンナ号とか、あるいはソ連のレーニン号とか、こういう船がすでに動いているということを引き合いに出しまして、だから原子動力を備えた外国軍艦が入港をしてくるのに、いたずらにこれを不安がって大騒ぎするということは、この科学技術革新の時代に生きるものの態度として恥かしいことと思うと、こういうことが書いてある。この書き方は、原子力商船と原子力潜水艦というものを全然同列に置いているわけです。まことに非科学的な認識と言わざるを得ないのでありますけれども、科学技術庁としては、原子力商船も原子力潜水艦も同じように見ているのかどうか、この認識のほどを伺いたい。
  155. 纐纈彌三

    政府委員(纐纈彌三君) 私から答弁申し上げます。  科学技術庁といたしましては、もとより商船に原子力を利用する問題等は、軍艦のほうの問題とはもちろん別個な考え方を持っているわけでございまして、ことに、今回の原子力潜水艦の入港等に対しまする問題としましても、御承知のように、原子力安全保障の専門委員会等にかけなかったというような議論もありますが、これらにつきましては、国際法上軍艦でございますので、それらに対しまするいわゆる設計あるいは操作の技術方面については、軍の秘密ということで、とうていこれを国内におきます原子力利用のように審査をするわけにはいきませんので、今回の措置といたしましては、原子力委員会におきましてアメリカと折衝の結果、一年八カ月の日時を要してあれいたしたわけでございますが、御指摘になりました  「政府の窓」につきましては、もとより御承知のように、今日原子力の問題も非常にりっぱにだんだん発展をし、また、民間にも浸透してまいっておりますが、わが国といたしましては、世界唯一の最初の原爆の被害者でございまして、そういう意味からいきますと、国民は非常な不安を持っておりますることは御承知のとおりであり、科学技術庁としても、そういうような点も十分に考えておりますが、今日といたしまして、いたずらに原子力の害をおそれるということも、これは一応考慮に入れていただかなければならぬじゃないか、ことに「政府の窓」はPRを主としたわけでございまするので、あるいはことばの使い方において不十分な点はあったかもしれませんが、一応原子力の仕事をいたしておりますものといたしましては、あまりにこれをおそれるということでなく、もう少し科学的に検討いたしまして、真におそるべきものであるかどうかということを理解していただきたいという意味合いにおきましてあの「政府の窓」に記事を載せたというような次第でございます。
  156. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 内応がよくわからないけれども、アメリカの言うことをそのまま引き移して安心してもらいたいと、こういうことなんでしょう、結論としては。まことに私は非科学的だと思うんです、こういうことは。潜水艦の役割りというのは、戦争の功撃力の最も中心的な部分をなしている、かつての戦艦、航空母艦にかわる主力艦隊であるというのは、この前予算委員会で防衛庁長官から私はここで聞いた覚えがあります。その潜水艦の役割りということを考えたならば、商船と対比して安全性をことさらに強調する必要がどこにあるのか、どこから頼まれてそういうことを言うのか、アメリカのためになぜ科学技術庁がそこまでRPをしなければならないのか、その点をもう一度お伺いしたいと思います。
  157. 纐纈彌三

    政府委員(纐纈彌三君) お答えします。  先ほどもちょっと申し上げましたように、わが国民が非常に原子力の問題についておそれているというようなことでございますが、先ほども申しましたように、軍艦に対しましてこまかい調査ができておりませんので、そこで、原子力委員会といたしましては、国民のそうした不安を除去し、ほんとうに安全であるかどうかということを確保する意味合いにおきまして米国と折衝したのでございます。米国は、御承知のように、相当進歩しておりまして、そうしてそれに対しましても、向こうの保障によりますと、商船と同じように、十分の安全の装置も措置もしておるわけでございまするし、また、操作の点につきましても安全に行なわれておるわけでございます。しかも、それもアメリカにおきまする原子力の安全保障専門委員会の審議等も経ましてやったものでございまするので、そういうことの保障ができれば国民に安心がいくであろうという意味合いにおきましてあの調査をいたし、そうして「政府の窓」にその内容をあれしたわけでございまして、しかも、原子力委員会といたしましては、その資料を一年八カ月いろいろの角度から検討いたしまして、そうして外務省を通じてアメリカと折衝し、ある程度の保障、また、約束等も取りつけたわけでございまして、これで原子力委といたしましては、尽くすべきことをやり、それがはたしてアメリカを信頼することができるかどうかという点になりますれば、これは原子力委員会の権限外でございますので、その結論は原子力の資料によりまして政府が決定すると、こういうことを、そのいきさつを明らかにしたわけでございまして、私は、この手続については決して非科学的の問題はない、こう考ております。
  158. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連。ちょっとお伺いしたいのですが、これは横須賀の実情です。横須賀の市会でも問題になったのですが、基地の施設としてモニタリングがなされている。自動測定器が据えつけられた。そこで、このモニタリングによりまして五千カウントをこえると消防署のベルが鳴るそうです。で、ベルが鳴ったらどうするかということが問題になった。そうすると、消防署は、ベルが鳴ったら政府に報告する、さて政府に報告したらどうなる、そのあとは全くどうなるかわからない、こういうことなんです。これは非常に横須賀の市会で問題になった。私も現地を調査に行ってその実態を聞いて、安全性安全性ということを言っていますが、しかし、実態はかくのごときものなんだ、これでは話にならないじゃないですか、これに対する政府の対策が少なくともなければ、科学技術庁において、少なくともこの点で国民を安心させるはっきりした対策というものがあるんだと、こう議会を通じて明らかにしておくということが必要だと思うんです。これはどういうふうに——一体、消防署から政府に通知があった場合に対策をとるのか、この点にについて、いまの問題と関連して伺っておきたい。
  159. 纐纈彌三

    政府委員(纐纈彌三君) ただいまの問題は事務的になりますので、事務当局からお答えいたさせます。
  160. 村田浩

    政府委員(村田浩君) 御答弁申し上げます。  ただいま御質問のございました横須賀港における放射能の監視装置、モニタリング・ポストと申しておりますが、これは御承知のとおり、横須賀港におきます空気中の放射線のレベルと、それから海水の放射線のレベルを自動記録装置で測定いたすものでございます。御承知のとおり、空気中にも海水中にもそれぞれ自然の放射能がございます。そこで、ただいま現在でもその自動記録装置には、たとえば千五百カウントとか千カウントとかいう数字が出ております。これはその日その日の状況によりまして、あるいは九百になり、あるいは千二百になりというように記録いたしておるわけでございます。空気中に降ってまいりますいろいろの放射能等にその日その日の変化があるからでございます。たとえば先般中共が核実験いたしましたときにも、そのときはまだ横須賀のほうは記録装置ができておりませんでしたけれども、佐世保のほうにございます監視装置につきましても、中共の核実験後雨が降りますと記録装置の針は振れております。このように、そのときどきの四囲の放射能状況を的確に科学的に記録しておる装置でございます。ただいま五千カウントになると警報が出るというお話でございましたが、これはその装置に、同時に一つの回路を組み込みまして、ある程度のレベルの放射能がそこに記録されましたときは、これは一体いかなる原因でその程度の放射能がそこの記録装置にかかったかということを確かめたほうがよろしいと、こういう趣旨で一応五千カウントのところにこの警報の回路をセットしてあるわけでございます。この記録装置によりますと、たとえば私どもが腕時計などにつけております夜光塗料等をそばに持ってきますと、たちまちはね上がりまして、夜光塗料にもよりますけれども、たとえば近くまで持ってきますと、一万カウントというような数値にも相なるほど敏感な装置でございますが、したがって、五千カウントとなりましたときに直ちに海水あるいは空気中の放射能が非常な害があるという、こういうことは申せないわけでございますけれども、これまで記録いたしました数値等から見まして、一応五千カウントというような数字が出ましたときには、ただ放射能をグロスでカウントとりますほかに、たとえば海水を採取しましてそれから分析して、どういうものが入っておってそのような放射能のカウントが出てくるのかというような精密な検査をいたすことが科学的であろう、こういう考えでただいまのような装置を設けてあるわけでございます。したがいまして、たとえば五千カウントになりまして、警報回路が働きまして、横須賀市の消防署のほうでそのことがわかりますときには、専門家のおります科学技術庁のほうに御連絡願う。科学技術庁のほうは、資料の採取、分析等で御協力いただいております海上保安庁あるいは水産庁と御相談しまして、資料の採取等を臨時的に行なう、この分析を臨時的に追加して行なう、こういうふうに考えてただいまの装置を動かしておるわけでございます。
  161. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いまの答弁は、こまかい調査はできないが、国民に安心をさせるためにこういうパンフレットを出したんだということに尽きるわけなんです。そうすると、こまかい調査ができないということは、内容はよく知らぬということです。中身はよくわからないということです。ところが、わからないにもかかわらず、原子動力を備えた軍艦が入ってくるのに、これに反対するものは恥ずかしいことと思う——野党が反対していることに対して、科学技術庁のどういう人間が書いたか知りませんが、恥ずかしいことと思うというふうに書いて政府の刷りものにして発行するなどということは、私は役所の態度としては少し思い上がっているのではないか、こういう気がいたします。こういうようなあつかましさがあるから、前の政務次官みたいに、アメリカの大統領選挙にゴールドウォーターの応援に行くと、こういうことになるのかもしれません。しかし、これは非科学的であり非常識であるというふうに私は思う。この点についての弁明をしていただきたいと思う。
  162. 村田浩

    政府委員(村田浩君) 政府の窓に出ました科学技術庁のほうで用意しました文の中で穏当を欠くのではないかという御質問でございますが、ここで書きました趣旨は、決して平和利用の原子力商船と軍事利用の原子力潜水艦とが同じものだということで書いておるのではございません。この点はよく御承知のとおりであります。そこで、申しておりますのは、推進力として原子動力を使っているという点において技術的に同じような利用のしかたをしておるものである、そういう趣旨から問題を取り上げたわけでございまして、たとえば今日大部分の大型旅客機はジェットエンジンで動いておりますが、同じようなジェットエンジンが軍用機の推進力にもなっている、こういう意味で推進力として原子力商船も原子力潜水艦も原子炉の動力を使っております、こういうことを明らかにする意味で書いたわけでございまして、まあ科学技術が発展いたしますと、いろいろ推進装置につきましても新しいものがあとからあとから出てまいります。そういう新しいものに切りかえていく動向になっておることは皆さまよく御承知のとおりでございまして、そういう歴史的発展の方向から見まして、そのような傾向が現に起こっておるということを申したまででございまして、それ以上の他意はございません。その点、そのように御了承いただきたいと思います。
  163. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 了承できません、そんなことは。他意がないというけれども、野党が問題にしておりますことは、原子力潜水艦そのものの戦略的価値を問題にしておるわけでございます。移動する核兵器として、あるいはまた原子力潜水艦そのものの戦略的な、あるいは役割りというものを問題にしておるわけなんです。そういう問題について  一切ほっかぶりをして、動力の問題だけだ、しかもわざわざ原子力商船と対比をして人をごまかすようなことを書いておる。この書き方がすでに非科学的だというふうに私は指摘しておるんです。私はもう少し気をつけてこういうことは書かなければいかぬということをあえて申し上げたいと思います。  次に、日韓問題について質問したいと思います。朴大統領が日韓会談は必ず成功させるという決意を表明したということを言っておりますが、それには日本が誠意と努力を示せばというただし書きがついておる。今日までそうすると妥結しなかったのは、日本政府に一片の誠意もなかったからであるというふうに受け取れるわけでありますが、一体日本政府としては横車を押して日韓会談をつぶしてきたんだという覚えがあるのかどうか、外務当局にお伺いしたい。
  164. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日韓会談は、過般きわめて順調に進行いたしまして、すでに請求権問題を大体終えて、漁業交渉に移って、これをもう八分どおり解決をして、もう少しというところでとうとう中断のやむなきに至ったのは、御承知のとおり、韓国内の政情の変化に基因しておるのでございまして、いまお話のあったように日本のせいであるというようなことは毛頭ないのであります。
  165. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 ところが、朴大統領は、日本が誠意と努力を示せばということを言っておりながら、李承晩ラインの撤廃とか竹島の返還ということについて何ら約束をしておりません。この態度でもって日韓会談が成功するんだということを言っておることは、日本側の全面的な譲歩というものを見込んでおるかのような印象を受けるのでありますけれども政府としてはこういう重要な問題については譲歩する用意が一体あるのかどうか、その点について重ねてお伺いしたい。
  166. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 譲るべきは譲り、譲るべからざるものは譲らない、あくまで相互平等の立場に立ちまして誠心誠意折衝を重ねてまいるつもりであります。
  167. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 譲るべきは譲りと言うけれども、私が問題にしておるのは、李承晩ラインの撤廃であるとか、竹島の返還というようなことは、いままでの委員会で何回も総理以下答弁しておりますけれども、ああいうものは認められないと言っているんですよ。認められないと言っているが、朴大統領のほうは何とかなりそうなことを言っておるんです。そうすると解決をするということは、日本が譲歩をするということを意味するようにとれるわけなんです。一体李承晩ラインの撤廃という点について譲歩するといったようなことがあってよいのかどうか。私はあり得ないと思うんですが、その点はどうですか。
  168. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 李承晩ラインとも言いますし平和ラインとも言われておりますが、これはただいまの国際法上から見ても、あるいは国際慣行から申しましても、まことに不法不適当なものでありまして、絶対にかようなものを認めるという考え方はわがほうとしては持っておりません。
  169. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 漁業問題が難航した場合には、漁業問題をたな上げしてでも解決をする用意があるということも言っておりますけれども政府方針は、あくまでも一括解決ということを、これはまたしばしば言明しております。一括解決ということであり、李承晩ラインの問題も譲歩しないということであり、竹島の問題もあくまで返還を前提とするという解釈をしてよいかどうか、重ねてお伺いしたい。(「大臣、大きな問題じゃないですか」と呼ぶ者あり)
  170. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 大きな問題だからちょっと……。  竹島の問題でございますね。これは少なくともはっきりした解決のめどがつかないうちは全面会談を打ち切る考えはございません。終了する考えはございません。
  171. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 いまのところ、もう一回ちょっと言ってください。
  172. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 竹島の帰属問題につきましては、少なくともはっきりした見通しがつかないうちは全面会談を終了いたしません。
  173. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 はっきりした見通しというのはどういう意味なんですか。その点を明らかにしていただきたい。
  174. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 法制上の問題ですから、政府委員から……。
  175. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 大臣がはっきりしためどと申されました意味を技術的に補足さしていただきます。  従来、竹島の領土権を実質的に韓国のものとか日本のものとか解決することについては、まだ両方意見が一致していないわけでございます。そこで、日本のほうからいま出しております案は、少なくとも国交正常化のときにこの問題の解決方法、これが先がどうなるのかわからないようなルーズなかっこうじゃなしに、確定的な解決ができるという方法だけはきめておきたいという見地に立ちまして、外交交渉でどうしても片がつかないときは、国際司法裁判所に付託するということを韓国側が同意するようにということを要求しております。これですと司法手続でございますから、必ず白とか黒とか決定的な結果が出ることになるのでございまして、これがこの確たる解決のめどをつけるというこちらの腹であるわけであります。これに対しまして、韓国側は、まだ最後は国際司法裁判所に持っていくということを同意するに至っておりません。今後の交渉問題になる一思いますが、日本側に関する限りは目下その方針を堅持しておる次第でございます。
  176. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうしますと、朴大統領がいま言明しておるような態度では日韓会談が妥結をするという可能性はないというふうにわれわれは解釈をせざるを得ないのでありますが、そのような解釈でよろしゅうございますか。
  177. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) われわれはさように考えておりません。あくまで誠心誠意をもって、条理を尽くして、すみやかな妥結を期待、かような期待を持ってただいま進行いたしておる次第であります。
  178. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 昨日の新聞によりますと、韓国の警備船が日本の漁船を追跡をして、まあつかまらなかったけれども、海上保安庁の巡視船が中に割って入って、ようやく日本の漁船を逃がしたといったような記事が載っておりました。ここ二、三日、そのような事態があったとすれば、日韓交渉を行なっておる最中に、まことに不穏当な問題だと思うのでありますが、これらの点について、所管の運輸大臣等から実情がわかりましたならば御報告を願いたいと思うのであります。
  179. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 政府委員答弁させます。
  180. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 御指摘のとおり、ここ数日の韓国の監視船による済州島方面における日本の漁船の追跡のケースが数件起こっております。日韓交渉が再開されましたときにこういう事態が起こることは、まことに遺憾なことでございます。万一拿捕等のことがございますと、会談のムードをすっかりこわしますので、海上保安庁、農林省等からの連絡に基づきまして、外務省といたしましてはすぐにここの代表部に対して厳重に注意を喚起するとともに、きのうの漁業委員会の席上におきましても、特にわが代表から注意を喚起いたしまして、その善処を求めておるところでございます。
  181. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと関連。日韓問題解決のわがほうの条件については、小坂外相以来、予算委員会でも私どもいろいろ実体を明らかにしてまいりました。ところで、竹島を中心に領土問題に関する点は、これはわがほうの領土であると、確たる歴史的なものを持っているということで、強力にこの点は解決の条件で、はっきりとわがほうにというのが、当初の小坂外相時代の議会答弁でございます。その後だんだんと移り変わって軟弱さを示され、あるいはアメリカの仲裁——あっせんと韓国は言う一というようなことで、いま承りますと、大平外相当時と同様、国際司法裁判所の判決を求めるということに変わってきたように思われます。この意味するところは、いろいろ韓国と交渉を持って見ると、確かにわがほうとしても主張するにその根拠が薄い、向こうの主張を聞いてみれば、なるほどと思うものがある、とすれば、公正であるかどうか、この国際司法裁判所の判決を求めざるを得ないと、真にそういう立脚で御判断になろうとしてこうなったのかどうか。私は、なるほど小さい島であろうけれども、重大な領土問題であると解するわけであります。しかも、韓国はすでに一時はこれに上陸し警戒体制に入り、現在も領土の標識を立ててやっているということ、しかもこれがもう相当長年月にわたっております。こうなってくれば、非常に国際司法裁判所に持っていかれると言われるこの態度自身が、大きく国際的にも裁判の上にも影響をもたらすのではないだろうか。なぜ確たる自信がなくなったのか。あるとすればそのような手段を、相手側がまだ実際そうではない、わがほうののだと言っているさなかに、韓国側が了解していないというときに、そこまで譲らなければならないのか。国民感情としては、私は了解に苦しむものがあると思います。この点は特にこの際明確にしていただきたい。
  182. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 御承知のとおり竹島の帰属につきましては、歴史的の事実問題等についても、韓国側の主張と日本側の主張と、正面から対立しておるわけでございます。これをですから実質的に権利関係を解決することを求めますと、なかなかこれはいつになったら片がつくかわからない。一方、日韓国交正常化をするにあたって、やはりこういう領土問題というようなものは、はっきりきれいに片づいていることが一番望ましいことでございますから、その国交正常化のタイミングと、それから竹島問題の解決が長引くというそのタイミングの問題を両方考え合わせまして、一つの妥協案ということで、この国交正常化のときには、少なくともこの問題を野方図にほうっておくのではなく、終局的な締めくくりの解決の時期についてのめどをつけておく、そういう趣旨で提案したものでございまして、この実質論について日本側が弱みを感じてきたとか、そういう点は全然ございません。最近におきましても、フィリピンとマレーシアとの領土問題については、やはり両方の片がつかないで、国際司法裁判所にかけることをフィリピンのほうでは主張をしておりますし、先般御承知のとおり、タイとカンボジアとの国境紛争も国際司法裁判所で片がついたわけでございまして、領土問題について、どうしても実質論で片がつかないときに国際司法裁判所という世界の法廷にかけて、それで片をつけたらというのが一つの最近における解決方法になっておりますので、それも考えまして、そういうことにいたしましたわけで、実質論についてこちらが最近弱みを感じてきている、そういうことは全然ございません。
  183. 藤田進

    ○藤田進君 いま例示された領土問題と——そういう引き合いに出されるが——竹島の問題とは、議会における答弁においても、事情が違うのです。領土を妥協の産物としてあしらっていくという態度が、一体現政府態度なのですか。政府の、総理の、私は御答弁を承りたい。確たる自信があると、歴史的にもこうだ、当該自治団体においても強い議会に対する要請がある。これを第三者にまかせるというような領土観を持っている現政府なのかどうか。私は重大だと思います。そして、あわせて、これは技術的には事務当局でよろしいが、いま竹島はどうなっているか、竹島の現状はどうなっているのかお伺いしたい。
  184. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 竹島は、御承知のとおり日比谷公園ぐらいの面積の無人の岩山でございますが、この領土問題がやかましくなりましてから、御承知のとおり韓国側があそこへ警官を二十名近く常駐させておる、そういう状況でございます。
  185. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府態度は、もうすでに御承知のとおり、わが国の固有の領土だということをかねてから、主張しております。しかして、私どもはこの解決をいわゆる力による解決はできない、やらない、こういう態度でございます。ただいま申し上げるように、相手方も同じように韓国の領土だと、かように言っているわけでございます。そうすると、この解決の方法、力によらない解決の方法は、ただいま申し上げましたように、国際司法裁判所というのが一つのきめ手ではないか、かように私は思います。
  186. 藤田進

    ○藤田進君 それは非常にポイントが違う。それは単独に、何ら係争関係のないときであればいざ知らず、いま諸外国のを例示されたが、現在、日韓の交渉、この国交正常化といわれる交渉というものの一環として考えられている。これは国内における法的地位の問題もあり、あるいは李ラインの問題もあり、経済援助あり、そういう一環としてこれを自民党政府は扱ってこられたわけであります。この一貫せる態度というものが、途中でこれだけは切り離し、しかも現状は、わが領土といわれているのに、すでに警官隊が上陸し、これを占拠している。こういう現状に何らの手も打たないで、私はすぐ自衛隊を回わせということを言っているんじゃない。回わさなくても、あるいはワク外の援助だといって、きのう来議論になっているように、そこまでして領土を切り離し、占領されていて、わが固有の領土と総理も言うにかかわらず、なぜそこまで他の条件も譲りつつ、急がずあせらずと言いながら、かなりあせりをなぜ示さなければならないんですか。私は、警官隊の占領等についても、どういう手を打たれているのか、あわせてお伺いしたいと思います。
  187. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 先方の不法占拠に関しましては、すでに数次にわたって文書をもって抗議を申し込んでおります。最近の場合も、新聞で御承知の竹島問領について、韓国語で書かれました「今日の日本」というパンフレットの中に、竹島が日本領であるということを書いたということで、地図が出たということで問題になりまして、そのときにも、はっきり文書をもって日本側の立場を主張しております。
  188. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 日本側の立場を主張したのに対して、韓国は一体どういう態度をとっているんですか。
  189. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 先方も文書をもちまして、やはり従来の韓国側の主張を維持しているのでございます。
  190. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連。この問領は私は重大な問題だと思うんです。私も当予算委員会において、池田内閣のときに池田総理、大平外務相に数回質問したんです。その際に、竹島の領土問題を含む法的地位、漁業権の問題、その他請求権問題、一括これを解決する方針は変わらないということを、たびたび言われておったのですが、その方針が変わったのかどうか、これだけ聞きたい。その点だけ聞きたい。政府のほうです、外務大臣。
  191. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 変わっていないと承知しております。
  192. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 変わっていないということは、同時解決という意味だと思うのでありますが、これは竹島の帰属をあいまいにしたままじゃなくて、これは疑いなく日本の領土であるというふうにわれわれは考えていいのでありますから、竹島は返還をする、帰属を明らかにするということが同時解決の中に入るのじゃないかと思うのでありますが、そう解釈をしてよろしいのですか。
  193. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 少なくとも、先ほどから申し上げるように、帰属問題の見通しあるいは手順を確実につけた上でということは、現内閣においても変わらない方針であります。
  194. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 農林大臣が都合があるようでありますので、農林大臣に先に一つだけお聞きしたいと思うのです。漁業交渉が始まる前に、ともかく韓国が日本の漁船を抑留をしているという状態では話にならぬ。漁船並びに船員の釈放ということが漁業交渉の前提にならなければならぬということを日本政府態度として表明したわけです。その方針が今日でも変わっていないとするならば、たとえ拿捕しなくても、追っかけ回わしているという事実があれば、ここでもって漁業交渉はストップさせるという態度をとってしかるべきではないかと思うのです。それから竹島に韓国が駐留をしているということは、漁船の捕獲と同じような領土の侵略ということになるのでありますが、これらのことも考えてみるならば、やはりこういう問題は片をつけてから交渉に入るというのが私は常道ではないかと思うのでありますが、農林大臣の見解を伺いたい。
  195. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私どもは漁業のほうに関係を持っております。竹島の領土の問題と漁業とは関連せず交渉を進めてきたわけでございます。そこで漁業問題につきましては、拿捕をするというようなことがあっては漁業交渉の再開ができない、いまお話のように、追いかけてきてあるというようなこともありますので、それぞれの委員会を通じて厳重に抗議を申し込んで、そういうことがないように、そういうことがもし続くということならば、この漁業の交渉も中断せざるを得ないじゃないかというふうな話し合いをしておるわけであります。
  196. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それじゃ農林大臣けっこうです。かと言ってこの問題を打ち切ったわけじゃないのでありまするから。  この漁業交渉に際して日本が抗議をしたというのでありますが、その抗議に対して韓国がどういう態度を示しておるのか、その点をお聞かせ願いたい。外務大臣。
  197. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) お答え申し上げます。韓国側も漁船を追いかけ回すと申しますか、安全操業の妨害と申しますか、これが会談のムードを傷つけるに至ることは代表部もよく承知しておるのでございますが、御承知のとおり、先方は先方で李ラインはこれは合法的なもので、それを日本漁船が侵犯しているという、これもまた全然日本側と対立した立場をとっておりますので、お互いにこの会談——そのたてまえ論とは一応離れてお互いにこの刺激的な問題が起こらないように、できるだけ自制してやってほしいというのが先方の希望でございます。
  198. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 先方の希望というのは何ですか。
  199. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 補足申し上げますと、法律論では両方とも対立してしまって動きがつかない。そこで自分の韓国側のほうも傘捕とか追い回しとかいうことをできるだけ押えるようにしたいし、日本のほうもあまり沿岸近く、たとえば三海里までは日本側としては、権利としては入れるということでございますけれども、あまりに近づいて韓国側の漁民等を刺激しないように、政治的にと申しますか、自制的に行動してくれないかということを、そういう希望を表明しているわけでございます。
  200. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 日本側が韓国の漁船を追っかけ回したり捕獲したということはないでしょう。漁船を追っかけ回されたり捕獲されたり、船員が抑留されるというのは日本の漁船だけじゃないですか。何かその対等の、この問題についてお互いに五分々々のような話のように聞き取れるのはちょっと不可解なんです。あくまでも公海上においてよその国の船を追っかけたり拿捕したり、船員を拉致したりというようなことはしないというのが、これは文明国の常識じゃないかと思うのでありますが、この常識がいまだに守られないにもかかわらず、経済援助等の話はそのまま続行しているのかどうか。漁業交渉等も続行しているのかどうか。現状についてお伺いしたいと思います。
  201. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 李ラインの問題については、漁業会談が終結すれば、その場合にはこれの撤廃に向こうは応ずるのでありますけれども、ただいまその過程においてはいまだに平和ラインと称してこれが撤廃に応じない、こういうような状況でありまして、向こうが、わが領海であるというたてまえのもとにその態度を変更しようとしない。ただ会談中は問題がこれ以上悪化するというようなことが会談の進行に非常な支障を生ずるので、お互いとにかくその点は手心を加えようじゃないかということになっております。これが譲歩すべき場合でないのに譲歩しておるというようにおとりになることは、これはまあ一つの理屈でございます。従来、李承晩ラインと称して、長年の間、先方が自分の領海あるいは準領海のごとくに思い込んできておるというような事実に徴しまして、ある程度はこれはやむを得ないと申しますか、こちらもしんぼうをしなければならぬという事実状態でございます。そういうわけで、漁業会談もそれから他の経済上の問題につきましても進行中でございます。
  202. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 お互いに手心を加えるというけれども日本は別に韓国の船をつかまえたり何かしているわけじゃないでしょう。一方的に韓国が不法行為をやっておるわけです。それを、お互いということはないと思う。やむを得ずしんぼうしているという話でありますけれども、そういう軟弱な態度でもって会談を続行するということは、結局日本が譲歩をしなければ妥結へいかないということになっちゃうんじゃないですか。そのような態度で一体いいのかどうか。まことに私は心もとないと思うのです。もっとき然とした態度がとれないのか。骨のある態度がとれないのかどうか。現在進行中であるだけにその点について外務大臣の決意をはっきりさしていただきたい。
  203. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 骨はあるのですが、多少弾力性を持ってしんぼうして、そうしてより大きな問題の解決に一刻も早く進みたいと、かように考えております。
  204. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 骨があるということになりませんよ、そういうのは。塩をかぶったナメクジみたいなものです。私はナメクジのような骨のない外交をやられちゃ困る。そういう外交方針でもって、底なしに譲歩をしたのでは、日本国民が納得できないということを考えるからあえて申し上げたわけです。
  205. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと。しんぼうしてと、こう簡単に言われますが、これはいま舞台は展開しつつあるときだと思うので、議会がそれを認めていくわけにはまいりません。李承晩ラインと称する、平和ラインと称するものは依然としてわがほうは認めていない。しんぼうできないのです。だからこれに関連する傘捕等についてはすみやかに釈放しなければ会談に入れないと赤城さんはがんばっていたんでしょう。この点はひとつ再考、御答弁をいただきたい。そして総理にお伺いをいたしたいのであります。  国際司法裁判所にわが固有の領土として確たる自信のあるものをゆだねるとかりにされるとしても、私どもはこれはまことに外交技術としても全体交渉の中でいまの時点における態度としては適当でないと思う。しかし、それにしてもお互い日比谷くらいの大きさだから、小さいからいいというそういう観念でない以上、固有の領土に占領ということで警官隊が、御答弁によると上陸占領している。ここにはちゃんと標識も石でつくられて立ててあるということだし、私も写真で見ました、行ってはいない。せめてそういうものは原状回復するという絶対的なものがなきゃならないのじゃないですか。占領され、ちゃんと韓国領土としての標石も立てられていて、それを認めつつ、どうも向こうの資料もさることであるからといったようなことでいいでしょうか。この交渉の中においては少なくともそのようなことは原状回復によって撤退させていくということが百尺竿頭一歩を——譲ったとしても当然そうあるべきだと思う。いかがでございますか。
  206. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 全く李承晩ラインを前提にする向こうの態度は不法、不適当きわまるものでございまして、この際勇気百倍いたしまして、き然たる態度をとって今後この会談に臨みたいと思います。
  207. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 竹島問題についての現状を日本政府が承認しているわけではございません。もちろん、数回にわたって書面による抗議を続けておることはすでに御承知のとおりでございます。今日もこれが続いておる。にもかかわらず、こういう事態が起きているということはまことに遺憾であり、残念なことである。これを解決する方法として、先ほど来お話をしているような国際司法裁判所に訴えて、その問題としてこれを取り上げる。そういうことを一応、一つの方法として考えておる。そういう問題があるならば少なくとも警官を引き揚げさすべきではないかという御意見であるように伺っております。しかし、相手方がなかなかそれを引き受けてくれないというのがただいまの状況でございます。もちろん、日韓交渉を早期に妥結したい、そういう立場でございますので、問題が国際司法裁判所に移るという最終決定をいたすにいたしましても、両国国民が納得のいくようなことが必要だと思います。したがいまして、先ほど来藤田委員の関連質問として御意見を述べられた点などは今後の交渉の資料に私はしたい、かように考えます。
  208. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 両国の国民が納得ということでありますが、われわれは、日本の国会としては、日本国民が納得がいかないような妥結は絶対にこれはしてもらって困るということを重ねて総理に申して、この問題の質問を終わりたいと思います。  この間、総理はラッシュの国電の視察で新宿駅に見えたようでありますが、いまの国有鉄道の輸送状況というのは一体どうなっているのか。飽和点に達しているというように聞いておりますが、現状は一体どのような状況にあるのか、今後利用者がますますふえて、過密ダイヤというものはますます逼迫するという態勢にあるのか、あるいは緩和するという方向にあるのか、以上の点について国鉄総裁からお伺いしたい。
  209. 石田礼助

    説明員石田礼助君) お答えいたします。  国鉄の輸送状態につきましては、場所にもよりますが、東海道線のごときは新幹線ができましたので一部は多少余裕が出てきた。しかし、大体において何らの余裕はない、ということは弾力性が一つもない、弾力性がないということは輸送機関としての十分任務が尽くせないということが国鉄の現状なんであります。
  210. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 国鉄と並行しておりますところの私鉄の輸送力等がはたして現在ゆとりがあるのかどうか、弾力性があるのかどうか、国鉄と同じような状態であるのかどうかということを運輸大臣にお伺いしたい。
  211. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) まず東京を中心にする大手十四社についての輸送力増強のことについて申し上げたいと思いますが、昭和三十六年から三十八年度までに千二百七十億の設備投資を行なったのであります。その結果、輸送需要の激増、大体二一.一%ぐらい激増したのでございますが、まあ最も混雑時間の混雑度合いは三十六年度においては定員の二倍、二・〇六倍であったのに対して、三十八年度は二・〇八倍と、わずかながら増加したにとどまっております。しかしながら、今後の需要増強の予想から見ますと、まことに輸送需要が多いのでありますが、四十一年度においては最高三・五倍、平均二・六倍、現在の二・六倍に平均なるであろうと思っております。これに対処するために、大手私鉄十四社においては、三十九年度から四十一年度までに二千二百億以上の輸送力増強のための設備投資を行ない、昭和四十一年度におきましては混雑度を最高は二・四倍、平均二・二倍ぐらいにとどめたいと思っております。これに要する資金については、もっぱら融資に待つこととなるのでございますが、政府においては開銀融資のあっせんにいま努力をいたしたいと思っておる次第でございます。  前述のようなわけでございまして、輸送力の増強工事はもっぱら通勤、通学の定期客のために行なうものでありまして、昼間は遊休施設となってしまうのでございます。また、定期客は高率の運賃割引を受けておりますために、今後は新規設備投資に伴う資本費の増加に見合う収入確保の問題が非常に困難であります。会社の経営状態はきわめて悪化するものと思っております。この点が非常に、投融資であるとかあるいは融資機関の長期低利融資でありましても、金利に追われて経営が困難になってきているということは争われない事実でございます。それは込む場合の客のふえ方は、全部高率の割引によるものが多いものであることに基因いたしておるのでございます。
  212. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 過密ダイヤ解消ということは緊急の問題だと思うのでありますけれども、この原因並びに当面の対策としてはどうしなければならないか、総理自身が先般体験をされたことであると思うのでありますが、総理方針としては、実際に体験してどのようにしようというふうにお考えになったのか。また、技術的な面で、国鉄としては原因は何であり対策は何であるか、財政的にはどうしたらよろしいというふうにお考えになっておるのか、あわせてお伺いしたいと思います。
  213. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 先にお答えいたしまして、あとから総理に……。原因はやはり都市集中による現在の諸政策によるものであると思います。人口の一割以上も一カ所に集まる、この行き方があらゆる問題に困難な状況を呈しておると私は思っております。したがいまして、これを除去するために過密都市解消の法律案をつくろうということでいろいろいたしておりますし、また、これに対して専任大臣も決定いたしまして、それぞれ努力いたしておる最中でございます。また、これらの輸送に対する問題に対しましては、昨年の十二月予算編成の際におきまして、鉄道輸送増強に対する委員会をつくろうということで国鉄輸送問題懇談会という委員会をつくりまして、各界の権威者を集めまして、そこでいろいろ相談いたしました結果、六年計画におきまして二兆九千七百二十億という資金をもって、まず第一過密ダイヤの解消、第二には全国の幹線を複線並びに電化あるいは支線でありましても、都市付近における支線の複線並びに電化あるいは明治時代につくりました鉄道の近代的改良あるいは過密ダイヤをつくっております地方における複々線の問題あるいは私鉄の地下鉄に乗り入れというような五つか六つの大きな項目によりまして、これを継続的にこのとおり進めていくという考えで立案いたしておるのでございますが、これらの計画は十月中に一応懇談会のほうから政府の閣議に中間報告がせられまして、支出については一応中間報告を認めたのでございます。最終十一月二十七日に全体の支出及び収入に対する計画が閣議に中間報告せられたのでございますが、目下問題になっておりますのは、これらの事業はすべて行なわなければならない、けれども、これに対する資金をどういうふうに求めるかということが今日の問題でございます。これを大局的に見るならば三つに分けることができるのであります。  まず第一には、財政投融資と、いわゆる利用債あるいは縁故債、つまり借金によることが第一であります。第二は、公共企業体でございますから、政府が一般会計から投資を願うというのが第二であります。その財政投融資と政府投資によりましてこれらの資金が年度々々ごとによって計画された資金がまかないがつかないということでありますならば、やはり自己資金が必要であると思います。この自己資金というのは、別に蓄積がないのでございますから、やはり国民生活が非常に困っておる際ではございますけれども、この仕事を仕上げるためには背に腹はかえられませんから、やはり運賃の値上げをさしていただくよりほかに道はないということが現実の姿でございます。しかも運賃の値上げ等その他いろいろの財政事情がございますので、六カ年計画を一年延ばして七カ年計画といたしまして、最初四カ年は三千七百億の資金、あとの三カ年は五千億ということに変更いたしまして、いま政府部内におきまして、総理大臣のいろいろごあっせんによりまして、企画庁長官並びに大蔵大臣の御協力を願うべく努力の最中でございます。
  214. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 問題は過密都市にあるということを、いま御答弁がありました。過密都市対策としてはどうかということでありますが、今日まで本会議の代表質問あるいは委員会等における議事録等を参照してみましたが、この点は非常に大ざっぱであります。総理答弁は産業、文化、人口の地方分散への努力をしております、真剣に問題と取り組んでおります、というだけです。通産大臣と建設大臣からそれぞれ答弁がございましたけれども、問題を思い切って解決をしようというふうに考えた場合には、これでは不十分だと思うのでありますが、一体過密都市並びにそこから引き起こされました土地価格の異常な高騰に対して勇断をふるって解決をするという気がまえがあるのかどうか、総理大臣からお伺いしたいと思います。
  215. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いわゆる過密都市対策これはそれぞれの省で担当しておりますが、私、こういう各方面にいろいろなそごを来たしておる、それをつぶさに感じますが、過密都市自身が悪いわけでは実はない。だが、もっと総合的な計画が樹立されることが必要ではなかったか。あまりにも戦後の経済発展、これが急激でございまして、しかもそれが非常に大きい規模においてやられておる。そういう意味から、ただいま申し上げるように、各般の計画、総合的な施策という点でどうしても怠りがちである、抜かっていた、そういうものが今日出てきている、かように私は解釈するのが正当ではないかと思います。たとえば一つの例をとって見れば、最近住宅団地が非常にできております。しかもその住宅団地では大きいものは三万の都市、あるいはまた、各地に工場が誘致されておる、産業が興っておる、そういう場合に当然輸送が考えられなければならない。しかしながら、輸送の面がこのために特に増強されたということはあまり見てない。これなどはその総合性を欠いてきたということを非常に如実に説明するものだと思います。あるいは都市中心におけるいろいろの事務所その他の所在にいたしましても、最近の都市集中の傾向がこれはもう都市人口の非常な膨大なる増加であります。これに対応するだけの輸送機関がなかなか整備されておらない。全部が総合的に解決されることが必要である。いままで経済企画庁がそういう意味のあっせん、努力をしております。また、建設省もそういう立場においてまた考えている。あるいは運輸省は運輸省で、最近膨張するものに対していかに対処するかという考え方を持っておりますが、やはり総合的に見ていくことが必要である、かように思います。したがいまして、今日交通の整備、足を確保するという問題にいたしましても、いま急速にそういう増強ができるものではございません。したがいまして、一つの五カ年計画あるいは七カ年計画そういうものをもって、そうして、これの予算化をはかってまいりますが、とにかく今日の現状に対しての応急的な処置も必要だろう、こういう意味で私はせんだっての視察を生かしておるつもりでございます。それは申すまでもなく時差通勤というような手で、まことに消極的なことであるが、これもやむを得ないのではないか。同時に、重ねて積極的にその総合的施策としての輸送力増強方法をとる。あるいはまた、もう一つ大きい意味においては、もうこれより以上の過大都市はつくってはならない、この過大都市についての終止符を打つ、こういう意味からもいろいろの制約を編み出して、たとえば都市における文化の中心である研究所あるいは学校等を郊外に持っていく、あるいは遠隔の地にこれを疎開するとか、あるいはまた、産業の地方への分散をはかるとか、かような方法をとりまして、いわゆる過密都市、これの今後の発展が非常に鈍ってくるような処置をとっていく。いままでのような急速な増加率でなく、少なくともこれをとめることができなければ、少なくともその率の高進をできるだけ押える、こういうような措置をとっていくというようなことをただいまやっておるわけであります。もちろんこういうところにいわゆる社会開発の必要があるのであります。私はそういう意味で総合的施策の樹立ということを特に強く要望しておるような次第でございます。
  216. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 池田内閣の踏襲ということをしばしば総理は言われましたけれども、従前どおりの方法を講じてきたのならば問題は解決しっこないと思うのです。今日、こういう事態になったのは、物価の問題でもそうでありますけれども、それは原因があるから結果があるわけですね。そうすると、その原因を確かめないことには病状の診断も治療もできないと思う。ところが、佐藤さんのお話には、従前どおりということをしばしば言われておる。血圧が上がったような状態なんですからね、いまの病状は。酒飲んだから血圧が上がる、こういうことであれば、その酒をやめなければ血圧は下げられないということになる。従前どおりということになると、酒はやめないと、しかし、血圧は下げたいと、こういうふうに、非常に虫のいいように聞こえるのでありますけれども、従来の池田内閣の踏襲をしてきた、どちらかというと、その場限りのばんそうこうを張るようなやり方では、私は、問題は解決しないと思うのでありますけれども、思い切って、従来とは変わった方式、いま、建設省のほうから、ことしの六月に、新首都の構想といったようなものも出ております。これなんかも、ずいぶん期待な問題だと思うのでありますけれども、思い切った飛躍とか決断ということが、今後の政策に期待できるのかどうか、その決意が総理におありになるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  217. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。池田内閣の踏襲だと、かように申しましても、いわゆる大筋はこれを踏襲してまいります。が、しかし、それによって生ずる幾多の事象に対しましての考え方、これは、やはり私なりの考え方がございます。ただいま申し上げるような総合的施策の必要を今日説いておるのも、その一つではないかと思います。そういう意味で、このひずみを直すという表現もさることでございますが、産業構造の結果から生じておる事象に対しましては、積極的に取り組んでいくと、そしてそれが統合的施策という形においてあらわれていく、かように御了承いただきたいと思います。ただいまお話しになります土地の問題も、その地価の問題も、その一つの問題でございます。これなどは、住宅問題とあわせて、また過大都市をいかにして防ぐかというようなことからも、こういう点の解決の端緒を見出したい、かように考えております。
  218. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 瀬谷君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  219. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 次に稲葉誠一君。
  220. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 要点を中心にしてお尋ねをいたします。  池田内閣を踏襲する以外をいまのところは出ていないと、こう言われるわけですが、あなた自身の、いわゆる佐藤色といいますか、そういうようなものは、いつごろ出すつもりなんでしょうか。
  221. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 来年度予算は私の内閣によってつくらざるを得ない。先ほど来、お話がありますように、来年度予算は、なかなか財源がむずかしいと、困難だと、豊富でないと、こういうことを田中大蔵大臣が申しておりますが、したがいまして、いわゆる佐藤色が全部出てくるとは私も期待いたしておりませんけれども、少なくとも、来年度予算を編成した際、私の考え方は、漸次にじみ出ると、かように考えております。
  222. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、佐藤色は、来年度予算でだんだん出てくると、しっかりとした形で出てくるのは、やはり来年度予算が通ってからといいますか、結局、参議院選挙の前あたりと、こういうようなところで、あなた自身の持っておるいわゆる佐藤色というものをしっかり出していきたい、こういうようなことにお聞きしてよろしいでしょうか。
  223. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の所信表明の表現をもってすれば、急ぎつつも、あせらずということでございます。
  224. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 池田内閣の踏襲ということで、これは池田さんのときの方々をずっと引き継いでおられるわけですけれども、そういうようなことで、あなた自身佐藤色というようなものを出すのに、何かこう不便があるのじゃないか、こういうように国民はだいぶ思っているようですがね。そこのところはどうでしょうか。
  225. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この点は別に問題はないのでございます。私をはじめ全部が自由民主党員でございまして、そういう意味では、政党のあり方から見まして、御心配なく、また私自身も心配なしに私の感じを出していくようにいたしております。
  226. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 これは内政干渉ですからね、この程度にしておきますが、内閣改造やれと私のほうから言うわけにはいきませんしね、ここら辺にしておきますが、あなたとして引き継ぎで、お古ではなかなかやりにくいのじゃないか。これは失礼ですけれども、いまことばはちょっと悪いから訂正しますけれども考えるのですね。あなた自身の色を出すということならば、やはりそれにふさわしいというスタッフをそろえていく行き方がいいんじゃないか、こう思いますけれども、内政干渉ですからその程度にしておきます、まあ日本政府の問題ですけれども。  それから別のことをお聞きいたしますが、あなたが十一月九日に首班になられた。その前が八日で、七日、六日の日に、あなたがアメリカの大使館にライシャワー大使を訪問された、三時半ごろ。これは事実でございましょうか。
  227. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) よく御存じのようですが、私、その前の月から約束をいたしまして、たしか前の二十日ごろに約束をして、六日に日取りをきめたのでございまして……。
  228. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 二十日にお約束があったというのは、たいへん失礼ですけれども、あなたがまだ閣僚でもないし、総理でもない前ですが、それは向こうのほうからあなたに来てくれというふうにお話があったのでございましょうか。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たしかその時分に向こうからも会いたいというようなことがあった。かように思っておりますが、私がしばしばライシャワー大使とも会っておりますので、別にそのときがどういう都合でしたか、向こうも会いたい、こちらもたいへんけっこうだというようなことで気軽に会った、約束をした、かように思っております。ただその後になりまして、二十五日に池田総理が辞職を決意された。たいへん時期が悪くなった、かように思いましたが、前からの約束でありますので、そういう問題に触れなければだいじょうぶだ、かように思ってその約束を遂行したということであります。
  230. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 しかし、約束かは知りませんけれども、十一月六日というのは非常にあなたにとっては、首班になるかならないかで忙しい時期だと、こういうふうに私ども考えるわけです。その中で三時半から夕方ごろまであなた大使館へ行かれて、ライシャワー大使にお会いになっておる。それだけの時間的余裕があったのは、もう私ども不思議に思うのですが、そのお話内容というのは、差しつかえなければお漏らし願えないでしょうか。これはいろいろな問題ですね。いろいろな疑惑で問題が起きているから、私お聞きするわけです。
  231. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あまり御参考になるような話はしたように思っておりません。ことに当時もうすでに政局が動き出しておりますので、つとめてそういうことには触れなかった、かように考えております。
  232. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、その前後において、藤山さんなり、河野さんなりが、やはり大使館をたずねて、ライシャワー大使に会ったと、こういうようなことは一体あるのでしょうか。
  233. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 全然私は知りません。
  234. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 私がなぜこういうふうなことを聞くかと、あなたのほうでも疑問に思われると思います。それはあなたと最も仲のいい派閥の、あなたの党の方々が私のところへ来られまして、あなたがライシャワー大使のところへ、あの忙しい中、首班になる二、三日前に行ってあることを頼まれたのだ、ライシャワーに頼まれたのだということを言われたわけです。あなたと最も仲のいい派閥の、ある人々です。自民党の中の人たちです。うちの親分はそういうことをやらなかった、だから総理大臣になれなかったのだという話をされたわけです。これは笑い話かもしれません。しかしあなたの党内にそういうふうな動きがあったことは事実です。それが非常な疑惑を呼んでいるのです、それがあなたの党内で。だから私はわざとお聞きしたわけですが、いずれにいたしましても、あなたがそういうことを言われるなら、それ以上のことをここで追及いたしましても結論は出ないことですから、この程度にしておきますが、私は、どうも疑問を持つと思います。これはまあ、疑問を持つのがおかしいと言えばおかしいかもしれませんが、あなたの仲間でそういうことを盛んに言っているのですから……。
  235. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それはおかしい。
  236. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 おかしいと言っても、ほんとうですよ。名前言いませんけれども、ほんとうですよ。こんなことを私が知っているわけはないですよ。それでは、話はそれにしておきますが、あまりこういうことを追及するのも私もあれだと思いますから。  そこで、問題は憲法改正の問題についてお尋ねをしたいのです。それは自由民主党の憲法改正に対する態度、これは一体どういう態度なのか、これを資料に基づいて御説明願いたい。
  237. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 前段について、ちょっと私自身に関することですが、いろいろなことが言われているとすれば、さような点は御心配がないように願っておきます。ことに当時は三木幹事長並びに川島副総裁がその後継首班を選考しておる際でございまして、一切、党は独自の立場できめておる、こういうことでありまして、何だか、アメリカ大使に会ったことが、外部からの援助あるいは示唆でも受けたかのように聞き取れるお尋ねがありますので、そういうことは全然、ないということだけ明確にしておきます。
  238. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 あなたの党の人が言っているのです。
  239. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それで私自身は、先ほどから申しますように、そのときの話はあまり記憶に残っていない程度でありますから、これはたいした問題でなかったと、かように思います。また、いわゆる消息通なるものがどういう話をしているか、これは私の関知することではございませんが、もしそういう話があれば、同時にいい御注意でございますから、十分注意してまいりたいと思います。  さて、次に党の憲法の問題、これについての資料で説明しろ。三十九年十一月「憲法関係資料」というものが自由民主党憲法調査会から一つ出ております。もう一つは、自由民主党として三十九年七月憲法資料第一集「日本国憲法はどのようにして作られたか」、こういう二つの資料があるように思いますが、まだ私も全部に目を通しておりませんけれども、これ以外にあるいは資料があるかどうか存じません。ただいま私の手元にありますのは、この二つの資料でございます。今日まで、自由民主党は態度を決定したということは聞いておりません。いわゆる憲法自身につきましては、もちろんこれは国憲でございますし、また、政党としても一番大事な基本法でございますから、絶えずおそらくこの憲法問題についての、憲法についての研究は続けていることだと思いますが、今日、結論がどうなったかという話は全然伺っておりません。
  240. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 あなたのほうの憲法調査会の資料のことを総理に聞いているのではないのです。例をあげますと、あなたの党ができたのは昭和三十年十一月十五日、このいわゆる党の政綱、「独立体制の整備、」ここに一体どういうふうに書いておりますか、憲法改正についてそれを具体的にお聞きしているわけです。
  241. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自由民主党におきましては、立党以来、平和主義、民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、占領下に制定された現行憲法の自主的改正をはかることをその政綱として掲げてきたのでありまして、ということを私どもが今日までしばしば申し上げておりますが、この立党の精神というものはそういうところにある、その点についての釈明を必要とする、こうでもお尋ねなんでしょうか。
  242. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 釈明を求めておるのではなくて、その昭和三十年十一月十五日の保守合同のときの結党大会で政綱がきまったでしょう。政綱そのものを一応ひとつ読んでいただけませんか。総理、あなた変えて読んでおるのではありませんか。
  243. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは結党大会において「独立体制の整備」というところに、「平和主義、民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う。」、こうあります。
  244. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、あなたの党の憲法に対する態度は、現行憲法の自主的改正をはかるということが基本的態度ではないんですか。そうとれるのではないですか。
  245. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政党の態度もさることでございますが、憲法問題はもちろん国民がきめる問題でございますから、政党としても国民の意向と違った方向で取り扱うわけにはいきません。ただ、私が総裁になりまして、この基本綱領その他におきましては、いかにもこれは古いものだ、したがって、もう一度ひとつ読み直してみようじゃないかということを過日幹事長とも相談をいたしまして、ことに、これは国連加入前の基本綱領でございますので、もうそういう点は少し直していかなければ、この憲法問題について、変わるか変わらないか、これは別でございますが、少なくとも国連加盟前の綱領がそのまま残っておることは、党の近代化から見てもあまり好ましいことではないんじゃないか、こういう話をしたことがございます。おそらく党におきましても、今後この問題の扱い方については慎重に検討するものだと、かように思います。
  246. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それでは、昭和三十九年度の自由民主党の運動方針、この中で憲法はどういうふうにしようと書いてありますか。
  247. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が一にこれを読み上げるよりも、もう少し関係資料を研究してしかる後にお答えしたほうがいいと思います。あるいは、いまいろいろお尋ねになることは、私が今日考えていることとやや違っているかもしれませんが、あまり内政干渉にならない程度にお向いを願いたい、かように私は思います。党の問題でございますので、そういう意味からいまの内政干渉ということを申したのですが、どうぞ御了承をいただきたい。
  248. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、自由民主党の憲法に対する考え方といまの内閣の憲法に対する考え方は違うということですか。それならそれでもいいですよ。それならそれで私も聞きますよ。
  249. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法問題の国民的解決という問題がただいま議論になっておると思います。拾い読みをいたしますと、「わが党は、昭和三十年十一月十五日結党と共に制定した党の政綱、第六章独立体制の整備の項で、「現行憲法の自主的改正をはかり」と規定し、憲法改正をその重要施策の一つとして公約してきた。」。この二行ちょっとの問題だろうと思います。それは先ほど申しましたように、この「三十九年党運動方針」でございますが、昭和三十年十一月十五日の結党と、そのときの綱領自身では、やや古くさいんじゃないか、もう一度よく検討してみろということを幹事長に話したということは、先ほども申したとおりでございます。
  250. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 古くさいか新しいかは別ですけれども昭和三十九年度というとことしでしょう。ことしは三十九年度なんだから、その運動方針の中で、結党のこのときの政綱をあなた援用しているんじゃないですか、そのまま。そして、「憲法改正をその重要施策の一つとして公約してきた。」と、はっきり言っているじゃないですか、ここで。だから、自由民主党の憲法改正に対する態度は、憲法改正をするんだというのが党是じゃないんですか。それならそれではっきりしたらいいじゃないですか、隠す必要ないんじゃないですか。
  251. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはこのとおりの党の態度でございますし、で、先ほど私がお答えいたしましたように、しからばどういう中身を持っているか、あるいはいつこれを改正するか、それはまだきまっておらないということをはっきり申したのです。
  252. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 中身はきまっていないとか、いつどうするかということは別として、憲法を改正するということは自民党の党是だと、こういうこと認められるのでしょう。
  253. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん了承しております。私も、そういう意味ではいままで私自身が発言したこともございますから、それは間違いはございません。
  254. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、はっきりしてきたのは、自由民主党は、ことにあなたは憲法を改正する考え方だということになりますね。その内容とか時期は別ですよ。そうじゃないですか。そこはどう違うのですか。
  255. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私自身国民とともにこの問題を研究もしてみるし、同時に、最終的には国民がきめると、こういう考え方でございます。
  256. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 最終的には国民がきめるのは当然なことですけれども、自由民主党としては憲法改正をその重要施策の一つとして公約しておると、これは三十九年度の運動方針でもはっきりしておるということじゃないですか。具体的内容をいま聞いているわけでは私はないわけです。
  257. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この運動方針に、先ほどは二行とちょっと読みましたが、さらにその次の項に、「憲法問題の処理については、政党や学者がその見解を一方的に国民に押しつけることは避けなければならない。憲法のような国家の根本規範、とくに占領中異常な事態のもとに制定された現憲法の改正問題のごときは、これを国民共同の事業として全国民の手で解決するという措置がとられなければならない。」、かように運動方針でも申しております。誤解のないように願っておきます。
  258. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、いまの憲法は「占領中異常な事態のも)とに制定された」ということは認めるわけですな。
  259. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりでございます。
  260. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、あなたとしては憲法の自主的改正を具体的にどういうふうにして進めていきたいと、こういうふうに考えるわけですか。
  261. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 社会党におかれても、異常な占領下において制定されたということはお認めだろうと思います。それは私どもが承認しておる、また認めておることでございます。今日憲法調査会の報告が出ております。そうして問題の所在はいろいろ指摘されておる。あるものは改正反対あるものは改正すべきである等々、いろいろの議論が出ております。また、この調査会自身が始まる前にもいろいろ資料を集めたものもございますし、また、この憲法調査会自身もその資料を集めたものがございます。相当こうかんなものになると、かように伺っておりますが、こういうような事態になってまいりましたので、その点を国民とともに十分検討していただく、憲法に関心を持っていただくということがまず第一に必要なことだと、そうして最終的にはこれをいかにするかということをきめるべきものだと、かように私は考えております。
  262. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 問題の所在を明確にする必要があるのですけれども、一体どういう点に問題があるのですか。総理大臣わかっている範囲でけっこうですよ、わかっていると言うと悪いけれど。
  263. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この憲法調査会の報告は、たしか国会にも提出されておると思います。政府だけではない、かように考えております。おそらく国会の皆さま方も御研究していらっしゃることと、かように私は理解しております。
  264. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 憲法調査会の報告書が出たときに自民党が声明を出しております。昭和三十九年七月三日に出しておるわけですけれども、その中で、「したがってわれわれは、これら現行憲法の問題点を検討し、自主的な国民憲法をもつことは民主国家の主権者たる国民の基本的権利であり、また義務であることを確信する。」、こういうふうに言っておられますね。そうすると、自由民主党としては、とにかくいまの憲法ではない自主的な国民憲法、これを持たなきゃならないということを中心考えておられるわけですな。
  265. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 党の基本方針はそのとおりだと理解しております。
  266. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 党の基本方針は自主的な国民憲法を持つことだと、自由民主党の総裁としてはそれに従うのは当然である、これはあたりまえのことですね。
  267. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 時期あるいは具体的内容等につきましてはまだ全然きまっておりませんので、総裁としては基本方針を無視はしないということ、これは間違いございません。
  268. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 大体私の理解するところでは、時期とか方法、内容についてはこれは別個の問題だけれども、とにかく自主的な憲法をつくるということは間違いない、ならば、あなたが、だれがどう言おうと、憲法改正論者であるということはもうわかり切っているのじゃないですか。それをあなたが認めたような認められないような行き方をされておるわけですが……。  そこで池田さんとあなたとの間で憲法についての考え方が違うというようなことが、何かこの前問題になりましたね。そこはどういうふうなんですか。
  269. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 池田総理の時代には、まだ憲法調査会の報告がまとまっていないと思います。私になりましてこの憲法調査会の報告がまとまって出た、その事態だけが違う、かように私は理解しております。そういう事態においてのものの考え方ということであります。
  270. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは勝間田さんの質問に対する答えと違うのじゃないですか。あなたは勝間田さんの質問に対して、池田さんの言っていることは、「いかにもあの表現では、国民とともにきめるのだ、こういうようなことでは、ちょっと中途はんぱだったように思うのです。」とはっきり言っているのじゃないですか。勝間田さんの質問にそう言ってますよ。
  271. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはお尋ねがあるというので、勝間田議員に対する答弁を私はもう一度読み直しておるのですが、この中に、ただいまのような点では……一応全部読んでみましょうか、たいしたことはないのですから。  「先ほど来申しておりますように、いまの憲法が国民の血となり肉となっておる、それらの点については、あなた方と私どもも同じだと思う。憲法調査会がああいう報告を出しておること、そうしていろいろな論議をかわしておること、これも)御承知のとおりであります。その段階において、ただ国民とともに、あるいは国民が好めばと、こういう程度でなしに、こういう事態になってきておるのだから、あらためて憲法問題を取り上げてみようじゃないか、——取り上げると言わないで、国民の一人々々とともにもう一度読んでみようじゃないか、こういうことを私は申しておるのです。それが積極的に改正の意欲ありと見られたり、あるいは、調査会の問題も出たが、これは改正をしないという、そういう積極的な意図を持っておるのか、そういうこととは関係がないのであります。」、大体以上でただいまの点は明らかかと思います。
  272. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 やっぱりあたなはあなたの都合のいいようなところばかり、ちょっと引っぱってきて読むわけですけれどもね、その前のところの、これは議事録でいいますと四ページの上のほうで、佐藤国務大臣と書いてありますが、「申し上げるように、ことばが足らないのです。ことばが足らないからまた誤解を受けるようですが、どうも前総理も必ずしもそういう意味でもなかったろうと思うが、この自由民主党の立党の精神から申せば、この点ははっきりしていたのじゃないだろうか。それがいかにもあの表現では、国民とともにきめるのだ、こういうようなことでは、ちょっと中途はんぱだったように思うのです。」、こう言っているんじゃないですか。
  273. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろやりとりの議論がございましたが、最後にただいま私が読んだような表現になっておると、かように御了承願います。
  274. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 まあ、なかなかあなたの、こうずうっと巧妙に逃げていくのがうまいですね。なかなかうまいですよ。そうだけれども、あなたはっきり言っているんですよ、池田さんとは違うのだということをね。国民とともにきめるのだということではなくて、もっと党が主導権を持ってきめるのだという意味のことを言っているのじゃないですか。そうとれるんじゃないですか。何が中途はんぱなんですか、池田さんの言っているのは。前に書いてあるでしょう。
  275. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろ議論があるようですが、ただいま読んだのが最終的な話の詰めでございますから、その途中どういうことがございましても、その最終の詰めのところで御了承いただきたいのであります。
  276. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それじゃ最終的な詰めのところで、あなたの読まれたあとで、「私は、どこまでも、近代政党の姿としては、それは国民とともに歩んでいかなければならない。しかし、問題はやはり現に提供されておる、その提供されておる問題と真剣に取り組んでみて、それで初めて国民の動向がわかるのです。私はその点をうったえたいのです。」、こう言っておられますね。国民の動向を憲法改正についてわかるためには、一体、どういうふうにしたらいいんですか。
  277. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお読みになったとおりでございますが、国民の動向は、まあ、いろいろな方法でわかってくるのであります。これは世論の支持もございましょうし、また、その他の場合にもはっきりするだろうと思いますが、とにかく国民の動向をつかむということ、そういうことに対して私が十分努力しなければならないと、かように思っております。
  278. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 だから、国民の動向をつかむために一体どうしたらいいんですか。何をするんですか。ここに書いてあるからぼくは聞いているだけですよ。
  279. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはよほど慎重にやらなければならないのでございます。お互いに政党ともなれば、しばしば国民はかく思っているとか、この国民の動向をつかんで行動するとか、しばしば申します。それがときどき国民の動向でない場合もありますから、これはよく注意してまいりたいと思います。
  280. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 一番はっきりしているのは、選挙のときにあなたの、憲法を自主的に改正をするんだ、だけれど時期とか方法は別なんだ、こういうようなことをはっきり訴えて、国民の審判を待つのが正しい行き方ではないですか。それで初めて国民の動向がはっきりつかめるんじゃないですか。あなたはいつも選挙のとき、憲法問題逃げているんじゃないですか。
  281. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 選挙のときが一番はっきりするのではないか、これも一つの方法かと思います。しかして、ただいま憲法改正だとかということを打ち出しておるわけじゃございませんので、ただいま申し上げるような、ただちに選挙につながると私は思いませんが、一般的にこういうような重大な問題は選挙に訴える、かようにおっしゃるなら、これも一つの方法と思います。
  282. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 時間がないものですからね。  しかし、あなたのこの内閣の閣僚の中に、あなたの派の前の領袖ですが、「憲法改正の方向」と題する書面を憲法調査会に出して、起草委員になり、その中でこういうふうにはっきり言っている人がありますよ。「つぎに現行憲法の第九条を廃止して、日本の防衛をはっきり規定することは、独立主権国家として当然の権利であり義務である。」と、こうはっきり言っているのですよね。これは愛知揆一さんですよ。そうすると、あなたの内閣の中に、憲法九条を廃止しろ、そして憲法を改正しろ、こういう人がはっきり入っているんじゃないですか、しかも文部大臣をやっていて。それに対してあなたどういうふうにお考えですか。
  283. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 個人的な意見をとやかく言うことはいかがかと思います。ことに憲法調査会の委員として、これは自分の意見を拘束されないで発言しているところにこの調査会の意義があるのだと、私はかように思います。したがいまして、今日さらに話が進んで、どういうような方法をとるか、いついつ改正するとか、こういうような問題になれば、それはたいへんだと思います。もちろん愛知文部大臣にしても、さような意見までは踏み切っておらない、かように思いますので、ただ憲法調査会自体で自分の所信を表明しておること、それが個人の意見だ、特に憲法調査会は各個人個人の意見を紹介しておる、そこに意義があるのだと、かように私は信じております。
  284. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、愛知さんがですね、総理大臣、いま、「第九条を廃止して、」、こういうようなことを言っておられますが、これはあなたの意思には反しないんですか。
  285. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が、血となり肉となると、憲法はすでにそうなっておると申しますのは、民主主義、あるいは平和主義、あるいは基本人権、こういうような問題がほんとうに国民の間に消化されて血となり肉となっておる、かように思うのでございまして、私はこの点はどこまでも守られるべきだと、かように考えております。(「愛知さんの趣旨と違わないかというのですよ、ポイント」と呼ぶ者あり)  愛知君とこういう点で一度お話したことがございますが、愛知君自身も、ただいま申し上げるような三つの主義、これが国民の血となり肉となっている、これは十分承知し、またそれを認めておるように私は理解しております。
  286. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 三つの主義ではなくて、「憲法の第九条を廃止して、」云々と、こう言っているのでしょう、愛知さんはっきり。これはあなたの意思に反するのかと言っているんですよ。あなたもこういうふうにお考えになるのかと、こう言うのですよね。
  287. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの第九条を廃止するという具体的な問題でございますが、こういうことについては私はとやかくただいま申しません。しかして、愛知君自身のその所論を弁護するわけじゃございませんが、愛知君自身も確かに戦争放棄、平和主義ということにはこれは徹底しておると思います。したがいまして、ただいま愛知君のそういう所論がどこから出ているかまだ十分話し合っておりませんけれども、私はかように信じております。
  288. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 まあ、あなたが信じることは自由ですけれどもね。どうも少し話が理解できませんけれども、何か総理が時間の関係だとかおっしゃいますので、ではあなたがお考えになっておるいわゆる政治の近代化とか、自由民主党の近代化というのですか、政党の近代化というのですか、よく政治の近代化ということを言われますが、それは具体的にどういうふうなことを言われておるのでしょうか。
  289. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 昨日市川委員にお答えしたとおりでございまして、私は政党もやはり組織活動ができるように組織化すべきだ、また党内の派閥はこれは解消すべきだ、また、その政策等におきましても、たえず国民とともに進む、そういう態度政策綱領をきめるべきだ、まあいろいろございますが、ただいまのところ、党の運営は機関主義というようなこともそのうちの一つでございますが、どこまでも一番大事なことは、党の組織活動ということに最も重きをなしたい、かように思っております。
  290. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、政治家は選挙のときよく公約などしますが、ああいうのはやはり守らなければならない、こういうふうにお考えでしょうか。
  291. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 公約事項はもちろん忠実に守らないと国民から批判される、かように思います。
  292. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 あなたが七月の総裁公選のときにどんな公約をされましたか。
  293. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろ公約をしておりますが、とにかく、これはこれから私が続けていく政治の姿勢でございますし、また、具体的な問題もございまするから、これなどもこれからやっていきたい、かように考えております。
  294. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いろいろ公約していると言ったって、それはだからどういうのを公約しているのか。あなたの記憶でいいです。決してあなたのことを責めているわけじゃないんです。あなたの記憶でいいから、あなたがどういうような七月公選のときに公約されたかということをお聞きしているのです。忘れちゃったというならば、それはしようがない、それでいいです。
  295. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへん御記憶がいいようですが、どの点が問題かと思いますが、ただいまいろいろ申し、あるいは寛容と調和だとか、あるいは人間尊重だとか、あるいは社会開発だとか、同時に減税論だとか、あるいは国民を富ます方法だとか、いろいろ申し上げたようですが、どういう点が御記憶に存しておるか、具体的にお尋ねをいただきたいと思います。
  296. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは国民に公約したのか、あるいは自民党の党員に公約したのか議論はあると思います。しかし、いずれにしても、あなたが言われたことをあなたとしても僕はある程度やっぱりしっかり覚えていて答弁いただけたらと思っていたのですが、何かどうもはっきりしないのですが、あまり聞いても失礼に当たるし、私のエチケットでもないですからあれしますが。そこで一つ質問は、そのときあなたは、アメリカに出かけてジョンソン大統領に対して沖繩の返還を積極的に要求するのだと、こういうようなことを言われたじゃないですか。ソ連に対しても千島の返還を要求するので、場合によってはソ連を訪問してもいいと、こういうようなことを言われたじゃないですか。
  297. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本の領土問題について私のはっきりした主張を申したことはそのとおりでございます。それが今回またいついつまでにとは実は申しませんが、あらゆる機会をとらえて私の主張をはっきりきしたい、こういうことを念願しております。したがいまして、来年一月ジョンソン大統領に会えば、もちろん沖繩の問題は話題にするつもりでございます。
  298. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いや、沖繩の問題を話題にするということじゃなくて、沖繩の返還を要求すると、こういうのじゃないですか。
  299. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 当時の公約はそのとおだったと思います。
  300. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、公約どおりにジョンソン大統領に会って沖繩の返還を要求する、こう承ってよろしいですね。
  301. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、祖国に復帰する、沖繩島民百万のこれは悲願でございますが、熱願でもあります。また同時に、私どもこちらにいる日本国民の念願でもあります。これの実現に最善を尽くしてまいります。
  302. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それから、あなたはその公約のときも言ってますが、税金が非常に重いと、それで初年度と言ったか言わないか別として、とにかく三千億円の減税を実行すると、特に国民の過重負担になっている地方税、住民税の軽減を強力に行なうと、こういうふうなことを所得税と一諸に言っておられると思いますね。それから、衆議院で井出さんの質問に対して十一月三十日に、国民負担はほんとうに高いように思いますと、こういうふうに言っておられますね。これは具体的にどうしようとされるわけですか。
  303. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 減税につきましては、かつて私が大蔵大臣時分に、この予算委員会であったと思いますが、どの程度の国民負担が適正なりや、いかように思うか、こういうお尋ねがございまして、私は当時、国民所得に対して少なくとも二割程度にはしたいと、かような発言をした。いまなお記憶しております。おそらくその記憶が残っているだろうと思います。もちろん、これもそのときの事情によって減税の可能な場合もありますし、減税のできないときもありますし、十分そのときの情勢を勘案してやるべきだと思いますが、少なくとも、私はただいま申し上げるような方法においてこれを努力してまいりたい、かように考えておるのでありまして、別に来年度できないからといってそう私は公約に反するとは、さように考えておりません。
  304. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、あなたは国民負担がほんとうにいま高いと、こういうふうに思っておられるわけですか。
  305. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、高いように思っております。
  306. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 国民負担が高いというのは、原因がどこから来ているのでしょうか。
  307. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろの理由があるだろうと思います。
  308. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 まああなた、大蔵大臣に聞いているのじゃないから、あなた副総理のようなつもりでおられるかもわからぬけれども、ちょっと待ってください。総理に聞くと、いろいろないろいろなで、そればかり出てくるのですが、そうすると、義務教育は完全国庫負担に近ずけたいと……。
  309. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。いまの税負担の問題ですが、いまの稲葉君の問題、それから先ほど公明会の中尾委員へのお答えにもありましたが、大蔵大臣はうんと所得税を軽くすると言われましたね。できるだけ税制調査会の答申を尊重すると言われた。そこで三十九年度当初予算の際の質問のときに、国民所得に対する税負担率は二二、三%と読みかえるものと御理解いただきたい、こう言われましたが、今度の税制調査会の答申はちょっと表現の方法は変わってくるようでありますが、その前年度に比べて、前年度の換算方式でいって、国民所得と税負担率は軽くなるのか、重くなるのか。それから、二二、三%と読みかえるものとすると言われたことは、その結果撤回されるのか、その辺の見通しを。
  310. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 減税につきましては、現在税制調査会で答申案作成中のようでございますので、いま答申を受けておりませんので、結果的にどうなるかということは数字的には申し上げられません。しかし、現在の税負担と税制調査会が考えております適正だと思われる税負担との問題に対して申し上げますと、二、三年前に税制調査会は国民所得に対する税負担率は二〇%程度が望ましいと、こういうことでございました。だから、私たちもその答申を受けて、できるだけ国民の税負担を軽減したいという考えでおりましたが、昭和三十九年度当初の見通しでは二二・二%でございました。二二・二%と二〇%の間に相違があるじゃないかと、こういうことでございましたが、現在のところ、二〇%程度ということは二二、三%までは同一のものだとお考え賜わりたいと、それは税負担の軽減もこうして二千億減税ではかっておるのでございますが、歳出要求も非常に強いのであって、これ自身も先進国に近ずけたいというような立場で社会保障その他をやらなければならない。国民に対する財貨サービスを行なうことでございますから、当分の間二二、三%とお読み願いたいと、こういうことを申し上げた。ところが、その後の計算をしますと、国民所得が上がりましたので、私が申し上げた二二・二%は二一・七%という数字だと思います、現在。でございますから、少なくとも当初申し上げた二二、三%以上になるようなことはない。少なくとも税制調査会の答申を尊重しながら減税案を——苦しい中にも総理の意向をくみながら公約実現という意味でもって減税政策を掲げるとすると、少なくとも二二・二%よりも低い率になるだろうということは想定されます。大体そうなると思います。
  311. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、もう一つ、義務教育費を完全国庫負担に近づけて、児童手当制度を諮け、義務教育児童の最低生活費を保障すると、こういうふうにいわれておりますが、これはいますぐできるという意味じゃなくて、こういうふうな方向に進みたいと、できるだけ進みたいということは事実ですか。
  312. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そういう方向へ進みたいということは事実でございます。
  313. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 具体的な計画はないのですか。
  314. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、具体的な計画は持っておりません。
  315. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 あなたはなくても、文部省にも一ないのですか。
  316. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 文部省の事務当局から説明さしていいと思いますが、今回、給食制度につきましても工夫をこらしておるようでございますから、こういうこと、あるいは教科書の一部無償をもうすでに実施しておりますが、順次そういう方向に向かいつつあるものだと、かように思っております。
  317. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 総理がいるうちに尋ねておきたいんですが、例の中国代表権の問題が非常に問題になっているわけですが、そこで、お聞きしたいのは、一九五五年から一九六〇年までの間に国連の中でどういうふうな形で中国代表権の問題が取り上げられてきたのですか。そうして、それの賛成、反対はどういうふうな形になっていたんですか。これは外務大臣でもいいですよ。あなたが答弁すると非常になごやかになるから、あなたでもけっこうですがね。これが問題だから聞いているんですよ。これが中国の代表権問題の一つのポイントになるんですよ。
  318. 滝川正久

    政府委員(滝川正久君) 手元に詳しい資料をいま持ち合わしておりませんけれども、十六総会、つまり三年前に重要事項指定方式ができます前におきましては……。
  319. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 どういう形で出ていたの、この問題が。出し方が違うでしょう、問題の出し方が。
  320. 滝川正久

    政府委員(滝川正久君) そうでございます。単純に中共を国連に入れろ——中共に代表権を与えよと、したがって、国府を排除するという趣旨の重要事項指定方式前の形で争われてきておった、これが当時の実態だったと存じます。
  321. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 だから、このときは国連総会で中国代表権問題たな上げ案という形で出てきたのじゃないですか。たな上げのほうに日本は賛成していたのじゃないですか。
  322. 滝川正久

    政府委員(滝川正久君) そのとおりだったと思います。
  323. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そこで、一九六一年に重要事項方式になったなら、一九六〇年までの変化はどういうふうになっていたんですか。一九六〇年は、代表権のたな上げ問題、これは日本側が提案した。これに賛成しているのが四十二で、反対が三十四、棄権が二十二、こういう形じゃなかったんですか。棄権が非常にふえてきて、反対もどんどんふえてきたんじゃないんですか。
  324. 滝川正久

    政府委員(滝川正久君) 各会期におきまする票数の数字、何票何票という数字はいまちょっと手元にございませんけれども、大体の傾向といたしまして、そういうふうなかっこうでございます。
  325. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それで、外務大臣ね、一九六一年になってどうして重要事項方式にするようにしたんですか。なぜそこのところで特に重要事項方式にしなきゃならない理由がそこに出てきたんですか。これはあなた答えてくださいよ。政府委員じゃなくて、あなた答えてくださいよ。
  326. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 過去の事実でございますから、政府委員からお答えいたします。
  327. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いやいや、過去の事実ですけれども、私の言うのは、なぜ一九六一年に重要事項になったのかというんですよ。一九六〇年にはならなくて、一九六一年になったのは、そこに何か理由があるのじゃないですか。それをお聞きしているわけですよ。重要だから重要だということでなくて、特にそのときなぜそういうふうなことをしなきゃならない理由がそこに生じたのかというんですよ。ちょっと待ってください。それは外務大臣と連絡してあなたが答えてくださいよ。大事なことじゃないですか、ポイントですよ、この問題の。
  328. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この経過については、私いま資料を持っておりませんので、政府委員からお答えいたします。
  329. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 資料じゃないですよ。ちょっと待ってください。こまかい数字は、これは資料にならなきゃ答えられないかもわかりませんけれども、数字ではなくて、一九六〇年ではなくて、六一年になってどうして事情が変わって重要事項方式というものを日本が提案しなきゃならないようになったのかというその特段の理由はどこにあるかというんですよ。
  330. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは経過でございますから、その経過については政府委員からお答えいたします。
  331. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、外務大臣はその経過は御存じないというんですか。そんなら、ないでいいんですよ。御存じないならないでいいんですから、これは。これは一番大事なことじゃないですか。外務大臣から答えてください。
  332. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 六一年までは、手続上これを取り上げるかどうかというものがいわゆる議題であったんです。ところが、初めて六二年に至って内容検討してそしてこれを審議するということになりまして、これは重要事項であるということになったのだそうであります。
  333. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それじゃね、それじゃ外務大臣、重要事項方式というのは、どこの国が一体提案したのですか。それはあなたが御存じでしょう。そんなのを政府委員が答えるという手はないですよ。それをあなたが知らないというのは、それはあなたを責めるわけではないけれども、それはちょっといかぬですよ。それはいかぬな、外務大臣として。外務大臣、知らないなら知らないでいいですよ。あなた、知らないなら知らない、忘れたんなら忘れたんでけっこうですよ。それをまず答えてからにしてください。
  334. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府委員より答弁させます。
  335. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 あなたわからないんですか。知らないんなら知らないでいいと言っているでしょう。あなたを責めないですよ、忘れたなら忘れガで。五つの国じゃないですか。
  336. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカ、日本、豪州、イタリー、コロンビア、この五カ国でございます。
  337. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうそう、そのとおりです。そこで、問題は、一九六〇年においては反対が三十四になり、棄権が二十二、これはアフリカが非常に独立したときです、一九六〇年。その次の年になってくるというと、六一年になってきて、このまま過半数でいけば中国代表権問題というのはたな上げ案が否決されて、中華人民共和国が入ってくるような情勢がここに生まれてきていたんじゃないですか、数字で。出ているでしょう、数字で。そこはどうですか。じゃ、一九六一年には一体どういうような数字でこの中国代表権問題が解決したんでしょうか。
  338. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 数字の経過は詳しくいたしませんが、結局、中共を国連に——中国代表権問題を承認するかどうかという問題が、きわめて世界全般の平和あるいは安定に至大の影響をもたらす重要事項である、であるからして、この問題は重要指定方式によって審議すべきものである、かように取り上げられたわけであります。
  339. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは何回も聞いているわけですが、私の聞いたのは、一九六一年になってどういう特段の事情がそこに生じたのかと、こう聞いているんですよ。それが一つと、いいですか、一九六一年で過半数でいったならば中国代表権問題は一体どうなったのか、このことを聞いているわけですよ。これに関連をして、じゃその一九六一年の重要事項方式のときの採決はどういう形に数字がなっているか、これを見ればこれはわかるわけです、その意図がはっきり。過半数でやれば、そのまま中国代表権問題はたな上げ案ですから否決される、中国が入ってくることはわかっている。三分の二でやったからこそはじめて中国代表権という問題をオミットすることができた。こういうことで六〇年と六一年とで数字があらわれているんじゃないですか。一九六一年の数字の結果を発表してごらんなさいよ。全然もう納得できないですよ、あなたの説明は。はっきりしているのですよ、客観的事実ですから。
  340. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) かような問題はきわめて重要であるからして、国際的な世論、国際的な大多数の世論によってこの問題はきめるべきものであるということは、これはもうだれが考えても当然の帰趨でありますから、その帰趨に従ってさような結果になったものと承知しております。
  341. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 総理がお帰りになるそうですから、お聞きしますけれども、じゃ、一九六一年になってこの重要事項方式になった特段の理由——六〇年にはならなくて六一年に特段になった理由というのは一体どにあるのか、これをひとつお聞かせ願いたいと、こう思うわけです。私どもの見解では、そのときに、たな上げ案というのが、賛成が四十二、反対が三十四、棄権が二十二。これは、棄権が反対側に回ってまいりますと、中国代表権問題というものの解決はアメリカ側の意図に反したものが出てくる。このために三分の二の重要事項方式というものを次の年度でとった。その結果として、加盟国が百一で、三分の二が六十八、過半数が五十一だった。この重要事項方式の賛成は六十一であったわけです。ですから、三分の二が六十八ですから、そこに達しなくて重要事項方式は否定されたわけです。過半数の行き方でいけば、当然中国代表権問題は加盟ということで解決をしておったわけです。それを、重要事項方式を特段にとったから、日本がアメリカと一緒になってとったから、中国代表権問題は否決の方向に行ったわけです。これは事実じゃないでしょうか。これはお調べになってお答え願いたいと思います。
  342. 滝川正久

    政府委員(滝川正久君) ただいま、十六総会においてもし中共に代表権を認める決議案が採決されたならば当然そのほうは通ったであろうというようなお話でございましたが、ソ連決議案が当時出ておりまして、これに対しまして賛成、反対の数字を申し上げますと、賛成三十七、反対四十八、棄権十九、こういう数字が出ておりまして、ただ一いま先生のおっしゃいましたことと多少当時の状況は違うようでございます。これを重要事項にしましたのは、実質的な審議に入ったのであるから非常にこれは慎重に検討しなければならないというような意見が関係国から出まして、たとえばニュージーランドから出まして、ただいま大臣が申されたような経過になった次第であります。
  343. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 あなたの説明を聞いておったのでは、なぜこの年度で特段にこういうふうなことをしなければならなくなったかという理由は全くわからないんですよ。これは数字の上からはっきりしてきて、アフリカが独立してきて、その国がどんどん反対側に回るから過半数をとっちゃうからというのでこういうやり方をとったのじゃないですか。そういう以外に考えられないのじゃないですか。まあその点については、総理もまだそこまでの御研究がなければ、これはまたあとでけっこうですけれども
  344. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、数字の上から、こういうことがあるから重要事項というものをとったんじゃないか、こういう御意見でございますが、これはすなおに、先ほど来聞いておりまして、すなおに重要事項問題であるということに気がついたんじゃないか。とにかく自分たちだけがきめるものじゃない、国際連合に加盟している全体の国がこの問題をいかに扱うか、かような事態に立ち至ったことに気がついたんじゃないか。これはしばしば申し上げますように、二つの中国、二つの政権がある。そういう立場で、それを入れることが代表権の問題にも必ずかかり合ってくる。そうすると、二つの力がただいま台湾海峡をはさんで現存している。そういうことは確かに平和に対する脅威でもあると、たいへんに緊張を来たすだろう。だからこれはたいへんなことになるのだ。これこそ重大な案件として扱うべきだ。それで国際連合に加盟しておる全体の意向を決定しようじゃないか。こういうところで重要事項問題として取り上げられたと、かように私はすなおに解釈するのでございますが、ただいま申し上げるように、おそらくそういういきさつではないかと、かように私は理解をしております。
  345. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それでは、その問題はまた別の方から別の機会にもっと追及されると思います。  そこで、総理のおられるときにお聞きしたいのですが、党の近代化といいますか、政治の近代化の一つの問題として、山梨県の大月の市長の選挙の問題で、自民党の中で、市長がかわるというようなことで、一千万円を保証したとか、こういう話がございましたが、それについて総理としてはどのように事実を調べられ、どのような断を下されるのか、こういうふうにお聞きしたいと思います。
  346. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大月市長候補の問題につきましては、衆議院予算委員会でも質問を受けました。私は、かような誤解——かような事態が言われておるようなその当時のまあ週刊雑誌その他にも伝えられておりますし、それも事実だろうと思いますが、それぞれ警察当局におきましてもその事実をいろいろ取り調べておると、こういうことでございます。いずれにいたしましても、この選挙は公明さを欠くように思いますので、私どもはこの選挙に候補者を自民党の公認はもちろんしない、こういうことでこの態度をはっきりさせておるつもりでございます。われわれこういう事柄に関係を持たない、これがもう事実そのとおりでございまして、党の選挙対策委員会などに対しましてもこういう意向を伝えておいた次第でございます。
  347. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 国家公安委員長といいますか、自治大臣といいますか、この問題に関して、いまどういうふうな取り調べの状況になっておるか。きょう、任意で六人ばかり大月の警察に呼ばれておりますね。その間の経過などを明らかにしていただきたいと思います。
  348. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 大月の市長候補にからまる問題でございますが、いままでわかっておりまするところによりますと、十一月の十六、十七日に、現在の井上武右衛門氏と落合熊雄氏との候補の間で話がつかないで、党でこれが調整に当たりまして、どういうふうな調整になったのかはっきりいたしませんけれども、井上武右衛門が来年の選挙に出る、そうして一年後において落合熊雄氏が立つ、こういうふうな話し合いになったようでございます。しこうして、その際のいろいろの事情があったようでございますが、判明いたしておりまするのは、十一月の十九日に大月の信用金庫に一千万円の定期預金が預けられておる、この点はわかりましたが、その間のいきさつにつきましては、目下取り調べ中でございまするので、それ以上はわかりません。
  349. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 その取り調べの事実関係ですよ。取り調べの事実はいまどういうふうになっておるか。
  350. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) それは、ただいま申し上げましたように、その点まではわかっておりますが、それ以上の点は、目下捜査中でございますので、わかりません。
  351. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 もう時間がございませんので、ほかにもまだ聞きたかったところもありますけれども、それでは、いまの問題については、公職選挙法違反ですでに取り調べが開始されておることもいわれておるわけですが、これは国家公安委員長なりあるいは法務大臣なりも、これは見方によっては自民党の各相当な方々が関係しておられるようにもとれる事件ですから、ひとつ厳正に、しっかりとした形でこの事件を捜査をやっていただきたい、こういうことを特に法務大臣と国家公安委員長にお願いといいますか、要請をいたしまして、私の質問を終わります。
  352. 寺尾豊

    委員長寺尾豊君) 稲葉君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総括質疑通告者の発言は全部終了いたしました。よって、三案の総括質疑は終了したものと認めます。  明十一日は、午前十時に委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十四分散会