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国務大臣(田中角榮君) 私は、今回成立しました新
内閣におきましても、引き続き
大蔵大臣を拝命することとなりましたが、任務の重大さを痛感し、微力を尽くして職責を全うする覚悟を新たにいたしております。本
国会は、新
内閣発足後初めての
国会でありますので、
補正予算の御
審議をお願いする機会に、
財政金融政策について
所信の一端を申し述べたいと存じます。
申すまでもなく、一国の
政治の理想は、
国民が真に生きがいを覚え、働きがいを感ずるような国家
社会を築き上げることにあります。このような理想を達成するためには、
経済面において、
国民経済の健全かつ着実な
発展をはかってまいることが肝要であります。したがいまして、今後とも、
財政金融政策の
基本的な
課題は、
国際収支の
均衡と物価の安定を確保し得る範囲内で、適度な
経済成長をはかることであり、また、その
成長の過程において、
経済社会の各
分野における
合理化、
近代化を行ない、いわゆる「ひずみ」を是正しつつ、
国民経済全体としての効率を一段と高めていくことであります。
本年は、
わが国が開放体制に本格的に移行した意義深い年であり、今後は、
国際経済の波動に対処しつつ、
国際収支の
均衡を確保し、安定
成長の路線を固めてまいらねばなりません。この際、最も大切なことは、
国民経済のあらゆる
分野において、性急な量的
拡大に走ることを避け、じみちに
内容の
充実を心がけ、今後の
発展への足場を固めるという堅実な
態度であると思うのであります。昨年末以来、
国際収支の
均衡回復と
経済成長の安定化をはかるため、
調整政策を進めてまいりましたのも、
基本的にはこのような局面に対処しようとするものであります。
さて、
わが国経済の最近の
動向を見ますに、
調整の効果は、漸次
経済の各
分野に浸透しつつあるものと認められます。すなわち、
国際収支は、輸出が海外
経済環境の好調を背景に、国内
産業の競争力の
強化、輸出意欲の
増進によって、順調な伸びを示している反面、
輸入が高水準ながら落ちつきを示していることにより、本年七月には
貿易収支の
均衡を回復し、続いて八月には、経常収支においても黒字に転じ、その後も好調な
推移を示しております。また、卸売り物価が軟調を続けているほか、鉱工業生産、
民間設備投資等の
動向にも、ようやく鎮静化のきざしが見られるに至っております。
しかしながら、
国際収支につきましては、輸出の面におきまして、
世界景気の
動向や、今回の英国の緊急
措置等、なお不確定な要素もあり、
他方、現在の
輸入原材料在庫の低水準から見て、生産、投資の
動向によっては、今後再び
輸入が増加するおそれもなしとしないのであります。したがいまして、開放体制下にふさわしい安定的な
基調を固めていくためには、
経済全般がさらに落ちつき、
経済界に慎重かつ合理的な経営
態度が行き渡るとともに、
国際収支の持続的
改善の方向が確実なものとなることを見きわめるまで、現在の
政策基調を維持することが、新
内閣としても必要なものと
考えられるのであります。
今回の
調整過程において、種々の摩擦が生じていることは事実でありますが、
調整政策の意図するところは、
経済の安定化にあり、いたずらに
経済活動を縮小せしめようとしているものではないのでありますから、これらの摩擦的現象に対しましては、個別にきめのこまかい配慮を加え、かりにも無用の混乱や不安を引き起こすことのないよう、臨機に万全の
措置を講じていく
所存であります。
これに関連いたしまして、当面、
中小企業の年末
金融対策として、
政府関係金融機関の資金量の増加、資金運用部資金による買いオペレーション等、所要の
措置を講ずるとともに、
民間金融機関に対しましても、
中小企業向け融資の円滑化について細心の配慮を行なうよう強く要請いたしておるのであります。
次に、当面の
財政金融政策上の若干の問題について申し述べたいと思います。
まず、来年度の予算編成にあたりましては、さきに述べました
経済の
動向にかんがみ、引き続き健全
均衡財政の
方針を堅持し、
経済に過度の刺激を与えないよう、
財政面からも安定
成長を確保してまいることが肝要であります。したがいまして、租税その他歳入の伸びにあまり多くを
期待することはできませんが、その限られた財源の中にあって、
経費の
重点的、効率的配分につとめ、農業・
中小企業の
近代化、
社会資本の
整備を
推進するほか、
社会保障の
充実、
住宅など
生活環境施設の
整備、教育
文化の
振興等を効果的に進めてまいりたいと
考えておるのであります。
また、税制につきましては、
わが国経済及び
国民生活に及ぼす
影響の
重要性に顧み、かねてから最近の
社会・
経済の進展に即応した新しい税制のあり方について
検討を進めているところでありますが、来年度におきましても、本年度に引き続き、さらに
国民生活の
向上と
企業の
国際競争力の
強化をはかるため、
財政事情の許す限り、租
税負担の
軽減合理化につとめる
所存であります。
次に、本格的開放体制下において、長期安定資金を確保し、
企業の資本構成の是正をはかるため、貯蓄の増強と資本市場育成の
重要性は、ますます高まりつつあります。したがいまして、今後とも貯蓄の増強のため積極的に配意するとともに、
企業、投資者及び証券業者を通ずる総合的な
見地に立って、資本市場の育成
強化に一段と
努力してまいりたいと存じます。
現在、証券市場における株式の需給の不
均衡を
改善するため、増資
調整等の
措置がとられておるのでございますが、今後とも、資本市場の健全な
発展をはかり、将来の安定
成長に必要な
産業資金を確保するため、各般の
施策を積極的に
検討してまいりたい
所存であります。証券業界においても、みずからその体質の
改善に一段と
努力することが望まれる次第であります。
次は、国際
金融並びに
関税政策の問題であります。
先般、
東京で開催されました
IMF、
世界銀行等の年次
総会は、百をこえる
世界の国々から、
財政金融に関する指導者多数の参集を得て、非常な成功裏に終了いたしましたが、これは、
関係者の
努力はもちろんのこと、広く
国民の皆様の御
協力によるものでありまして、御同慶の至りであります。この
東京総会の機会に、
世界各国の指導的地位にある人々が、
わが国の実情に関する
理解と認識を一段と深められましたことは、
国際経済社会における
わが国の立場に多大の好
影響を及ぼすものと確信をいたしておるのであります。私は、この期間中、国際機関及び
各国の指導者と親しく会談をしたのでありますが、その際、
わが国が開放体制に本格的に移行したことに伴って、その国際
金融上の
役割りと
責任が重きを加え、いわゆる南北問題に関しましても、
先進国の一員として、積極的に対処しなければならないことを、身をもって実感したのであります。
わが国としては、国際
協調の線に沿って、今後とも
国際収支の健全化に一そう
努力するとともに、
国力の許す範囲において、低
開発国援助についても貢献してまいりたいと
考えるのであります。なお、ガットにおける関税一括引き下げ
交渉がいよいよ本格化する運びとなっておりますが、
政府といたしましては、国内
産業に対する
影響を十分配慮するとともに、
わが国の受ける利益と
交渉相手国に与える利益との
均衡を確保することに留意しつつ、今後の
交渉に臨む
所存であります。
次に、
昭和三十九年度の
補正予算につきましては、近く
国会に提出いたしますが、その大綱に関しまして御説明いたしたいと存じます。
御承知のとおり、本年度は、新潟地震をはじめ、春から夏へかけて各
地方を襲った豪雨等のため、災害復旧に要する
経費が多額にのぼることとなったこと。人事院勧告による国家公務員等の給与
改善が昨年度のそれを上回るものであったこと、及び
昭和三十九年産米の買い入れ価格が当初予算における見込みを上回って決定されたこと等のため、
補正予算に対する
財政需要は例年同様に巨額なものとなったのであります。しかしながら、財源面におきましては、昨年末以来の
景気調整策が漸次効果をあらわしてきたため、租税収入において、法人税の減収が見込まれる等の要因により、例年のような規模の自然増収を
期待することができず、
補正予算を編成するにあたっては、まことに困難な状況にあった次第であります。
政府といたしましては、このような財源事情にもかかわらず、人事院勧告を尊重するたてまえから、例年よりも一月繰り上げて、本年九月から国家公務員等の給与
改善を実施することといたしましたが、その他の
財政需要につきましては、極力緊急を要するものにしぼって補正計上することといたしたわけでございます。その財源につきましては、租税及び印紙収入の自然増収約六百五十一億円のほか、税外収入の増約二百億円を補正計上するとともに、なお不足する分を捻出するため、既定
経費の節減を実施することといたしておるのであります。
この結果、近く
国会に提出いたします
補正予算の概要は、すでに資料として配付してございます「
昭和三十九年度一般会計予算補正(第一号)等について」に示してありますように、
一、公務員給与の
改善を本年九月から実施することに伴い必要となる
経費、
二、公共土木施設等の災害復旧等
事業に必要な
経費
三、農業被害に対する再保険金の支払い財源等に充てるための農業共済再保険特別会計への繰り入れ、
四、診療報酬改定に伴う増加
経費、
五、食糧管理特別会計への繰り入れ、
六、消費者米価改定に伴う
生活保護費等の増加
経費、
七、義務教育費国庫負担金等の義務的
経費の精算不足額補てん、
八、所得税収入等の追加計上に伴う
地方交付税交付金の増加
の八項目でございまして、これらの歳出の追加額総額は千六十四億円となるのでありますが、
他方、既定
経費につきまして二百十三億円の節減を行なっておりますので、
補正予算の規模は八百五十一億円と相なるわけであります。
以上、一般会計予算について申し述べましたが、特別会計予算及び
政府関係機関予算につきましても、ただいま申し上げました補正項目等に関連をして、所要の補正を行ないますとともに、特に本年度の
地方公務員の給与
改善の財源につきましては、交付税及び譲与税配付金特別会計において、借り入れの道を開くことといたしておるのであります。なお、
財政投融資計画におきましても、災害復旧等に関連して、
地方公共団体、日本国有鉄道等についてそれぞれ所要の
措置を講ずることといたしております。
以上、当面の
財政金融政策の
考え方と本年度
補正予算の大綱について申し述べました。
補正予算が提出されました場合には、何とぞ
政府の
方針を了とせられ、すみやかに御賛同あらんことをお願いする次第であります。(
拍手)
〔相澤重明君「さっきの三
演説の中で、
外務大臣の
発言は、これは重大な問題である。なぜ衆議院なり参議院の予定時間をおくらしたことがわからないのか……」と述ぶ〕