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1964-12-14 第47回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十二月十四日(月曜日)    午後一時四十一分開会     —————————————    委員異動  十二月十一日     辞任         補欠選任      佐野  廣君     津島 壽一君      森部 隆輔君     鈴木 万平君      川野 三暁君     吉武 恵市君      横山 フク君     宮澤 喜一君      山崎  斉君     中山 福蔵君  十二月十二日     辞任         補欠選任      津島 壽一君     増原 恵吉君  十二月十四日     辞任         補欠選任      迫水 久常君     佐野  廣君      大谷 贇雄君     江藤  智君      増原 恵吉君     井川 伊平君      吉武 恵市君     田中 啓一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         木島 義夫君     理 事                 後藤 義隆君                 稲葉 誠一君     委 員                 井川 伊平君                 江藤  智君                 佐野  廣君                 鈴木 一司君                 鈴木 万平君                 田中 啓一君                 中山 福藏君                 宮澤 喜一君                 岩間 正男君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  高橋  等君    政府委員        法務政務次官   大坪 保雄君        法務大臣官房司        法法制調査部長  鹽野 宜慶君        法務省民事局長  平賀 健太君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       関根 小郷君        最高裁判所事務        総局総務局長   寺田 治郎君        最高裁判所事務        総局総務局第一        課長       長井  澄君        最高裁判所事務        総局人事局長   守田  直君        最高裁判所事務        総局人事局給与        課長       宮崎 啓一君    事務局側        常任委員会専門        員        西村 高兄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案  (内閣提出衆議院送付) ○検察官俸給等に関する法律等の一部を改正す  る法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 木島義夫

    委員長木島義夫君) それでは、これより法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  増原恵吉君、吉武恵市君、迫水久常君、大谷贇雄君辞任され、その補欠として、井川伊平君、田中啓一君、佐野廣君、江藤智君が選任されました。     —————————————
  3. 木島義夫

    委員長木島義夫君) 次に、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  両案はすでに提案理由の説明を聴取いたしておりますので、これより質疑を行ないます。両案に対し質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  4. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ことしの八月に臨時司法制度調査会意見書が出たわけですが、これに対してどういうふうな形で内容を実現するといいますか、そういう方向に向かうのか、これを最初に大ざっぱに、これは法務大臣ですか、お伺いしておきたいと思います。
  5. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 御承知のように、臨時司法制度調査会答申内容は非常に多岐にわたっております。したがいまして、ただいまこれを法文化すべきものは法文化する準備を始めておりますし、また、実際の運用でやれるものはその精神に沿って運用していくというようなことで進めておるのでありますが、きょう御審議を願います裁判官検察官給与改正法律案も、大体におきましてその答申趣旨にのっとりました改正を織り込んでおるようなわけでございます。その他、いま、司法試験制度の問題とか、あるいはまた簡易裁判所事物管轄の問題だとか、いろいろ検討を要する問題を検討いたしております。その中には、在野の法曹団との関係調整を要するむずかしい問題も含んでおります。そんな問題については十分な調整をいたしましてこれの実現を進めてまいりたい、こういうつもりでおります。
  6. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのお話の中にありました法文化準備の問題ですが、これは具体的にどういうふうなものを法文化したいという程度のことはいまの段階でも大体の目安はついておるわけですか。
  7. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 臨時司法制度調査会意見を実施いたしますためには、法律改正を要しますものと、法律改正によらないで運用によってこれを実施するということのできるものとございますが、そのうち、法律改正を要するものといたしましては、臨時司法制度調査会意見を見ますと、裁判所法関係するもの、それから裁判官職権特例法関係するもの、それから下級裁判所管轄に関する法律関係いたしますもの、それから司法試験関係では司法試験法改正を要するものというふうな、いろいろの関係法律があるわけでございます。
  8. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 きょうの問題ではありませんから、それはその程度にしておきますが、臨時司法制度調査会答申を実現するというか、そういうふうなものは、これはいまの場は法務省でやるわけですか。いま言われたものはこれはほとんど裁判所関係のものなんですが、これは裁判所のほうとの関係はどういうふうにしてやられるわけですか。
  9. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 法律改正するということになりますと、裁判所には法案提案の権限がございませんので、主として法務省で所管いたしまして提案の手続をとる、かようなことに相なるわけでございます。
  10. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、いまの裁判所法その他の関係提案するときに、裁判所提案権がないのはこれはわかりますが、だからといって法務省裁判所との連絡が十分な形でできておらないという問題は困るわけですが、その間の何か恒常的な裁判所との連絡というか、調整機関みたいなものはあるのですか。
  11. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 最高裁判所法務省とは常時連絡をとっておりますが、連絡協議会というような正式の連絡機関はただいまございません。
  12. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判官検察官給与について、給与制度改善合理化を中心としてどういうふうにしていったらいいかとか、あるいはどこにその給与制度問題点があるかと、こういうふうなことで臨司で問題になったところはどういう点とどういう点なんでしょうか。これはあまりこまかい点はけっこうだと思いますが。
  13. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 臨時司法制度調査会におきましては、裁判官及び検察官給与の問題につきまして慎重に調査審議されました結果、数点について提案をされているわけでございます。  まず最初に、裁判官検察官職務責任にふさわしい独自の給与体系を樹立すべきものであるという提案をされているわけでございます。しかしながら、この点につきましては、二年間の調査審議の結果、これが独自の給与体系であるというものを具体的には示されなかったのでございます。これは将来の研究問題として提案されたというふうに考えられるわけでございます。  そこで、臨時司法制度調査会におきましても、その独自の給与体系が樹立されるまでは現行制度を基本にして所要の改善を施すべきであるということで、具体的には幾つかの改善方策提案しているわけでございます。その改善方策に簡単に触れますと、まず、初任給引き上げということを提案しております。それから経験豊富な判事検事待遇改善のための給与引き上げ、号の上積みといいますか、そういう提案をいたしております。それから号俸の刻み簡素化するということ、それから管理職手当本俸組み入れるということ、それから簡易裁判所判事の号を上積みすべきものであるということ、それから副検事の号をやはり上積みすべきである、かような具体的な提案をしているわけでございます。
  14. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いまの裁判官及び検察官給与についてはこれにふさわしい独自の体系を樹立すべきであると、こう言われておって、その結論はまだ出ていないわけですが、法務省当局としてはこれを今後どういうふうな形で独自の体系というものを樹立する方向に行かれるでしょうか。同時にまた、裁判官検察官給与について、これにふさわしい独自の体系というのは一体何なのかということについては、ある程度研究というか、それは進んでおるわけですか。
  15. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 独自の給与体系でございますが、先ほども申し上げましたとおり、調査会自体で二年間の調査審議の結果、何が独自の給与体系であるかというところまで線を見出すことができなかった次第でございまして、法務省といたしましても臨時司法制度調査会の御意見に従いまして今後研究いたしていきたいということでございまして、現在法務省といたしましても何が独自の給与体系であろうかということにつきまして具体的な案までは到達しておりません。
  16. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、一般国家公務員給与制度との対比において裁判官検察官給与考えるという行き方ではないのだということは言えるわけですか、独自という意味は。
  17. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 独自の給与体系と申しますのは、結局、裁判官職務責任、それから検察官職務責任にふさわしいそれぞれの独自の給与体系があるべきだという考え方でございますが、ここで裁判官検察官について独自という表現をいたしましたのは、やはり一般公務員とは違ったという趣旨が含まれておるものと考えます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ここら辺は非常に議論があるところですけれども、進みますと、いろいろ改善をすべきだということで具体的な案が臨司から出ておる。これをいま鹽野さん読まれたのですが、それは今度の改正案の中にはどういうふうな形で生かされているわけですか。また、生かされておらないところがあれば、どういう点が生かされておらないのですか。
  19. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) まず、独自の給与体系につきましては、先ほど申し上げましたとおりでございます。それから独自の給与体系ができるまでの具体的改善方策、その内容は先ほど申し上げたとおりでございますが、今回改正案として提案いたしました法案につきましては、この臨時司法制度調査会の当面の改善策のうち経験豊富な判事検事待遇改善という点を除きまして、その他の点は意見趣旨に沿って改正法案を組み立てたというわけでございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 判事補必要数を確保するため判事補初任給を増額すると、こういうふうになっているわけでして、そして三万二千円というような数字が一応出ているわけですが、これは最高裁のほうにお尋ねしたいのは、判事補必要数を確保するというその必要数というのはいまどういうふうな形でつかまれているわけですか。どの程度今度これが上がれば必要数が確保できるというのか、そこら辺のところはどうなんですか。あるいは、一般的にこれだけの判事補が必要だというようにお考えになっておるのですか。
  21. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 判事補の数の算出は、結局、キャリア制度をとるか、あるいは、中間にそれぞれ弁護士さんからあるいは検事から何名採るかといったような問題のかね合いからしまして、たとえば大学をストレートで入ってきまして司法修習生二年を終えますと二十五歳になります。六十五歳で定年になります。そうすると、四十年間ぐらいあるわけです。その四十年間におけるところの減耗率その他のことを考えながら判事補の数を何名にするという問題になろうかと思います。その点は、今度は臨司意見書にもありますように、まあできるだけ経験豊富な判検事からも裁判官を採るということになりますというと、そこのところは毎年何人ずつ補充していけばいいかという非常に長期計画的な数字というものがなかなかつかめない。そこで、いままでの実績から申しますというと、なかなか弁護士さんからも検事さんからも来てもらえない。そこで、現在のところはさしあたりやはり現在におけるところの必要数というものを考えざるを得ない。それを私どもは大体九十名程度考えております。来年度採用数は九十名程度考えております。
  22. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 九十名程度判事補必要数、これは司法修習生から上がっていくものだと思いますが、いままでのここ四、五年間はどういうふうになっているのですか。平均どのくらい、まあ平均というか、毎年どのくらいですか。
  23. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 年次によって出入りはありますが、大体八、九十名ないし七、八十名というところでして、ある場合には八十八名もありますし、ある場合には七十五名もありますし、ことしは五十五名、そういった状況でございます。
  24. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 八十名くらいのときもあるし、いろいろありますが、ことしは特に少なくて五十五名ですか、六十名近かった……
  25. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 五十六名であります。
  26. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それを九十名まで確保するとなると、なかなかたいへんなんじゃないですか。具体的には九十名が毎年確保されないとすると、全体の計画として裁判官充足というものは非常に困難を来たすわけですか。九十名を確保されてもなおかつやめたりする人があるから、非常に困難なわけですか。これは大ざっぱなことでけっこうです、こまかいことは無理ですから。
  27. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 判事補の数は、結局、ただいま申し上げましたように、四十年間の減耗率考えて、判事補十年を経験して判事に任官しますその判事の数を何名にすればいいかという問題と常に関連してくる問題でありまして、そうしますというと、それを常に判事補ばかりから埋めるということになりますというと、それはある程度計画が立つのですが、しかし、同じく減耗率を見ましても、昔の減耗率と、修習生から採用した人たち判事になってまだ五年くらいですが、そうした人たち減耗率とを比較いたしますと、非常に違いますので、すぐにもその減耗率採用できない。そういったことと、ただいま申し上げましたような事情で長期計画というものがすぐには立ちにくい。それで、現実必要な数という方向になるわけであります。ずっと一貫してキャリアでいきますならば、大体七十名程度採っていきますと、いまの判事の充員は減耗率考えていきましても充足できる、四十年間でございますのでできるというようなふうに考えております。
  28. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 七十名程度充足できるというのは、簡易裁判所事務管轄を広げたり何かして簡裁判事をうんとふやすということが前提なんでしょう。そうでなければ、七十名で全体の充足ということはむずかしいのじゃないですか。簡易裁判所判事の増加ということは関連して考えているわけですか。
  29. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 九十名と申し上げましたのは、判事補三年以上になりますと簡易裁判所判事資格を持ってくるわけです。したがいまして、簡易裁判所判事に切りかえて簡易裁判所判事仕事もさせる、そういうふうなことを考えまして九十二名と申し上げたわけであります。だから、一方においては簡易裁判所判事欠員充足しながら、一方においては将来の判事必要定員を確保するという面からの現在の必要性に基づいて大体九十二名くらいの判事補採用するというのがいま私ども考えている計画でございます。
  30. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私が何か十分に了解しておらなかったんで恐縮かもしれませんが、七十名といういま言われたのは何でしょうか。
  31. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 七十名と申し上げましたのは、かりに判事定員は大体何名が相当か。これは、裁判事務合理化その他といろいろ関連いたしますので、何名が相当かということはにわかに言い切れない。で、現在の千二百五十名ほどの判事定員なんで、これは判事補ではございません。その千二百五十名ぐらいの定員を常に確保しておくためには毎年判事補を何名ずつ採っていけばいいのか、そこに減耗率との関係からいきまして考えますというと、大体七十名ぐらいずつ補充しておけば常時千二百五十名程度判事は確保できるだろうというふうな意味から七十名と申し上げたのであります。しかし、それも、減耗率自身が、実は司法修習生から判事補になりそして判事になった者が、判事になってからまだ五年間しかたっておりませんので、そこの減耗率と昔の減耗率とは必ずしも一致しておりません。そこで、その減耗率が正確でないために、その七十名程度というのもやはりそこには多少のニュアンスの相違があると思います。
  32. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの七十名程度充足というようなことを言われますと、今度は簡易裁判所判事をうんとふやすという形をとっていって、地裁判事や何かの仕事簡裁判事に移してそちらのほうで拡充するということが含まれているんじゃないかというふうにちょっととれたのですが、これは私の誤解かもわからない。ちょっと話が混雑してきてしまったような印象を受けるのですが。
  33. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 現在も判事補資格を持っている簡易裁判所判事が二百名ぐらい簡裁にいるわけです。それから……
  34. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 特任判事をうんとふやすという考えじゃないですか。
  35. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) そういう考えを特に持っているわけではありません。それからその関連はまた後ほどお聞きになってくだされば……。
  36. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あまりこまかいことですから進みますけれども検事必要数を確保するというふうになると、検事としてはどの程度の人数の確保を毎年したいというふうに一応法務省としては考えているのですか。それからいままで四、五年間はどの程度になってきたのですか。
  37. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 現在の採用状況は、過去数年間の経過を見ますと、大体四十名ないし五十名を新たに採用しております。毎年このような状況でほぼ充員できておりますので、こういう状況が続けばまず現在員は充足できる、かように考えられるわけであります。
  38. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ここのところ、ことにことしになって、だいぶ検事がやめた人が多いのじゃないですか。中堅クラスがだいぶやめたのじゃないですか。
  39. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 御指摘のとおり、本年になりまして中堅クラス検事でやめた者もございます。現存のところ、十一月一日現在で検事欠員が三十八名ということになっております。
  40. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判官欠員はいまどのくらいですか。
  41. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 裁判官の全部の欠員は六十一名であります。その内訳は、判事三十五、判事補十、それから簡易裁判所判事十六、こうなっております。それでこれが来年の三月の終わるころになりますというと、判事のほうでは定年退官その上でだいぶやめますので、それを今度は判事補十年の経験のある者から埋めていく、そういたしますというと、判事補欠員が相当できる、その欠員を補充するという関係になっております。
  42. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 俸給刻み簡素化することを考慮しようと、こう言われているわけですけれども、これは将来の研究課題で、現在のところでは別に簡素化はしてないわけですか。裁判所関係ではこれはいろんな議論があるのじゃないですか。
  43. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 現在におきましても、裁判官報酬体系は、一般行政官吏報酬体系よりは非常に簡素化されて、独自の形になっております。しかしながら、御承知のように、裁判官管理職手当というものが一部につくようになりまして、大体三号以上の者についておるわけでございますが、その各号の中で、ある者は一八%、ある者は一二%、ある者は〇%といったような形になるわけでございます。そういったようなのを合計いたしますと、やはり実質上十六段階ぐらいになるわけであります。そこで、今回の改正にあたりましては、そういった管理職手当を全部本俸の中に組み入れて、その組み入れが同時にまた簡素化されてくるという実質的の意味を持ってくるわけであります。
  44. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その管理職手当組み入れというのは、これは四月一日から施行したいと、こういうことになるわけですか。
  45. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 九月一日から実施したいということでございます。
  46. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの管理職手当は、どういうふうな経過から設けられたんですか。これは元来裁判官になじむ性質のものであるかどうか非常に議論があると、こう言われていたのですね。どういう経過から管理職手当が設けられたわけですか。いつごろからですか。
  47. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 管理職手出が設けられましたのは、昭和三十二年からでございます。で、もともと第二国会昭和二十三年でございますか、第二国会におきまして裁判官報酬法が制定されたわけでございますが、その際には一般行政官吏におきましては管理職手当なんかはなかったわけであります。もっぱら超勤であったわけであります。ところが、昭和二十七年ごろになりまして、超勤管理職手当というような形で支給し得るようになった——これは政府職員でございますが、そういうふうになったわけでございます。その結果、裁判官給与は、名目においては高かったけれども実質においてはトータルにおいては相対的に下がってきた。そこで、裁判官につきまして、やはり裁判官報酬優位性を保たしめるために管理職手当を支給するという形になったわけでございます。しかしながら、まあ管理職手当というのは正式の名前ではなくて、俸給特別調整額裁判官でいいますと報酬特別調査額というのでございますが、これは管理職というようなポストにつけるような形になるわけでございます。そういう関係で、裁判官のあるポストにつけるというような一応の形になってきて、たとえば所長あるいは裁判長甲号支部長、そういったポストにつけるようになったわけでありますが、どうも運用上はあまり適当でないというふうに考えられるものですから、それがその意見書にもあると思いますが、裁判官には必ずしも好ましくないというふうに言われるゆえんになったわけでございます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その管理職手当というものは、特別調整額ですか、これはどの程度の人がいままではもらっていたわけですか、裁判所では。検察庁ではどの程度の人がもらっていたのですか。
  49. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 裁判所では、地家裁所長、それから高裁裁判長、それから地裁の三号以上の裁判長、それから高裁の三号以上の代理裁判長、そういった人たち、それからさらに甲号支部長などに支給しておるわけであります。
  50. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの裁判長というのは、正式な名前ですか。部の統括主宰者という形になっているのですか。
  51. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) それをわかりやすく言いますと、いまは部の事務総括者でございます。
  52. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その部の事務総括者というものは、具体的にはどういうふうな形できめるわけですか。裁判官会議をやってきめるわけですか。それがたてまえになっているわけですか。
  53. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 部の事務総括者は、恒年地方裁判所それから高等裁判所でそれぞれ裁判官会議も開くと思いますが、案をつくりまして最高裁判所へ上申する、最高裁判所におきましてはそこで部の事務総括者を発令する、そういう形になっております。
  54. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 形はそうでしょうけれども裁判官会議を開いてきめるということがたてまえになっているのですか、あるいは、所長が任命するというたてまえになっているのですか。そこはどうなっているのでしょうか。
  55. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) たてまえは、最高裁判所下級裁判所の長の意見を聞いてきめるわけであります。
  56. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 前は、私は、長は裁判官会議を開いてそこで部の統括主宰者をきめて、それを所長を通して申請をしていたと、こういうふうに聞いているのですがね。ところが、だんだんと変わってきちゃって、裁判官会議というものを開くのをいやがっているというか何というか、開かないで、所長なら所長の権限で事実上指名するというふうな形に変わってきたというふうなことを聞いているわけです、特に東京高裁なんかは。ですから、裁判官会議なんかを開いていたときには、号俸の低い人が場合によっては部の事務統括主宰者になっていたと思うのです。現在でもあるかもしれませんがね。ところが、所長の任命ということになってきてから変わってきたと、そういうふうに聞いているのですが、そこはどうなんでしょうか。
  57. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいまの御指摘の点でございますが、現在の制度といたしましては、下級裁判所事務処理規則の第四条五項というものがございまして、これで、部の事務を総括する裁判官は、高等裁判所長官とか地方裁判所長等が属している部ではその者、つまり、これは指名も何もなしに当然その者が総括裁判官になるわけでありますが、それ以外の一般的な部におきましては、「毎年あらかじめ、最高裁判所が、当該高等裁判所の長官又は当該地方裁判所若しくは家庭裁判所所長意見を聞いて、指名した者とする。」と、こういうことになっているわけでございます。したがいまして、現在の制度としては、制度の上では最高裁判所が指名権を持っているわけでございますし、それについて意見を聞きますのは、あくまでも高等裁判所長官あるいは家庭の所長意見でございます。ただ、それぞれの裁判所におきまして、その所長がそういう意見を出すにつきまして、あるいは常任委員意見を聞いたり、あるいは裁判官会議意見を聞いたりするということは、それは内部規定でないわけではございませんが、制度といたしましては、長の意見を聞いて最高裁判所で指名する、かようになっているわけでございます。
  58. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判官会議というものは、法的なものとしては制度として確立しているものではないですか。裁判官は独立なので、いわゆる裁判をすることについては——いまの問題は行政の問題かもしれませんけれども裁判そのものについては上下はないのだ、独立なんだ、平等なんだということから、裁判官会議でその部の総括主宰者をきめるべきだというふうなことがいままで強く言われていたのじゃないですか。特に東京高裁なんかにおいてはそういう意見が強かったのじゃないですか。それが変わってきちゃったのじゃないですか。
  59. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは御指摘のとおり司法行政の問題でございますが、司法行政は基本的には憲法上最高裁判所の権限であるわけであります。したがいまして、最高裁判所がこういう問題をきめることになるわけでございますが、それにつきましてはむろん現地の実情等も十分聞かなければなりませんので、そこで長官や所長意見を聞いて現地の事情を十分反映させるということになっておるわけでございます。下級裁判所そのもの自体の司法行政ということになりますれば、これは当然当該裁判所裁判官会議の権限であるべきでございますけれども、こういう何と申しますか最高裁判所で指名をするということにつきましてそれにどの程度協力するかという問題になりますれば、これは必ずしも下級裁判所裁判官会議のプロパーの権限というわけではございませんので、現在としては先ほど申し上げましたようなシステムをとっておるわけでございます。
  60. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっとわかりにくいのですけれども、特に下級裁判所などで裁判所長の権限とそれから裁判官会議というものの権限の関係ですね、これはどうもよくわからないのですが、そこはどういうふうに分かれているのですか。
  61. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 御指摘の点は、確かに非常にデリケートな問題も多々ございますので、なかなか割り切って言うことがむずかしいわけでもございますけれども、しかし、ごく一例でございますが、たとえば何人を長官や所長にするか、これも当該下級裁判所の問題で、それなら裁判官会議でその中から選べばいいじゃないか。たとえば、現在、大学の法学部長を選ぶのに、その大学の学部長会議でやるというような制度もあるように聞いております。そういうような制度もかってあったように聞いておりますが、そういうふうに長官や所長もそこで選ぶということも考えられないわけではございませんけれども、しかし、現在ははっきり裁判所法の制度といたしましても最高裁判所が定めるということになっているわけでございます。そうして、そういうふうにして構成されましたその裁判所のその中においていろいろな事務を処理する、これは当該下級裁判所裁判官会議の問題でございますが、どういうふうにその裁判所を構成するか、つまり所長を何人にするかというようなことは、それはその裁判所のプロパーの問題ではなくて、最高裁判所の司法行政権できめればいいではないか、これがいまの裁判所法の精神ではなかろうか、かように考えるわけであります。そういう意味合いから、その部の事務総括者というものも、最高裁判所の権限として最高裁判所が指名することになっているわけでございますが、むろんこの辺はいろいろ議論のあるところでございます。
  62. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判官会議というものは、裁判所法なり裁判所規則なりそういうようなもので明記されておるのですか。権限とか何とか、そういうものは全然ないのですか。
  63. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) それは明記されておるといえば明記されておることでございましょうが、きわめて抽象的な表現で司法行政事務ということになっているわけでございます。
  64. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判官会議ですよ。
  65. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 裁判官会議の権限は、たとえば高等裁判所につきましては、裁判所法の二十条で「各高等裁判所が司法行政事務を行うのは、裁判官会議の議によるものとし、」、こういう表現でございますから、その限度においては、裁判官会議の権限はつまり当該裁判所の司法行政事務と明記されておるわけでございますが、当該裁判所の司法行政事務とは何かということになりますと、これは裁判所法の解釈問題になろうかと思います。
  66. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 地裁の場合はどうなんですか。地裁の場合も同じですか。
  67. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 地裁も同様でございます。
  68. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこは非常にむずかしいところで、私もよく研究しなくちゃわからないところですが、問題を変えますと、検事のほうはいわゆる特別調整というのはどういう人がもらっているのですか、いままでは。
  69. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 検事のほうで現在特別調整額すなわち管理職手当をつけております職を並べて申し上げますと、高等検察庁の次席検事、それから高等検察庁の部長、それから地方検察庁の検事正、同次席、同じく部長、それから支部長というようなところでございます。
  70. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、裁判所なり検察庁が、たいへん失礼な言い方ですけれども、どの程度のものが管理職手当として出ているのですか。ちょっと例をあげますと、どの程度の金額として出ているのですか。
  71. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 号によって違いますから、わかりません。俸給月額の一番多いのが一八%、その次が一二%であります。
  72. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それが今度本俸へ繰り入れになるわけですか。なった場合、現在の状態と比べて、金額的にはどうなんですか、不利はないのですか。税金がふえるわけですか。
  73. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 税金の点については、別に何の関係もありません。それから金額的にもふえるわけであります。繰り入れられてマイナスになるような報酬額の定めではないということでございます。
  74. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 管理職手当組み入れの問題でございますが、先ほど守田局長からもお話のございましたとおり、管理職手当はパーセンテージがいろいろあるわけでございまして、裁判官検察官につきましては一二%と一八%とあるわけでございます。そこで、現在管理職手当をつけておりますのは、現行の号数で申しますと、一号、二号、三号というところであります。そこで、これらの管理職手当を受けている者いない者、これを機械的に管理職手当本俸組み入れますと、一八%つけている者は今度のスライドで高い金額になる、一二%の者は中間になる、管理職手当を受けていない者は現在同じ号俸でも少しそれより下のところにスライドされる、こういうことになりまして、たとえば一号で申しますと、いままで一つの号であったものが、機械的に切りかえますと、三つの号になってしまうという結果になるわけであります。同じような状況が二号、三号についても起こるということで、機械的な操作をいたしますと、号俸の刻みが非常に複雑になってしまう。こういうことになりますので、今回の改定にあたりましては、これをまとめまして切りかえたわけでございます。そこで、現在の一号、二号、これを管理職手当を含めましてまとめて十五万円という新しい三号に切りかえたわけでございます。それから現在の三号につきましては、管理職手当のあるものもないものもございますが、これをまとめて新しい四号ということに切りかえたわけでございます。したがいまして、非常に増額率の高いもの、あるいはそれほどでないもの、こういうふうな状況が生じておるわけでございます。
  75. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、一般職の公務員の場合でも、同じ特別調整額本俸組み入れるということになったのですか、今度は。
  76. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 一般職につきましては、管理職手当は従前どおりでございます。従前どおりと申しますか、管理職手当の廃止ということはございません。ただ、今後パーセンテージその他が変わるかもしれませんけれども裁判官検察官のように廃止する措置はとっておりません。
  77. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判官の場合にこれを廃止するということはよくわかるのですけれども検察官のほうは元来行政なんですから、これを特に一般の公務員と区別をして取り扱うというのはちょっとよく理解できないのですがね。検察官職務の性質上からいっても管理職手当もあっていいのじゃないですかね。裁判官とちょっと違うのじゃないですか。
  78. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 検察官管理職手当につきましては、御承知のとおり、一般職につきまして管理職手当がつきましたのは昭和二十七年のことでございます。そのときに、管理監督の職にある者に対して特別調整額をつける。ただ、そのときに、従来の予算の実績の範囲内でというふうな考え方があったわけでございます。そこで、その当時、元来裁判官につきましてはもちろん、検察官につきましても超過勤務手当というものはなかったわけでございます。そこで、そういう事情がございましたので、当初は裁判官につきましてと同じように、検察官につきましてもやはり管理職手当はないということできたわけでございます。ところが、その後、先ほど守田局長からもお話がございましたが、管理職手当がだんだんついてまいりますと、号俸の額面では裁判官検察官は上であるけれども管理職手当のあることによって一般職のほうが実質収入が上回る、こういう事態が生じてまいりましたので、そこで、それをカバーするために昭和三十二年から裁判官検察官について管理職手当をつける、こういうことになってまいったわけでございます。そこで、今回、裁判官につきまして、臨時司法制度調査会の御意見もございまして、これを廃止して本俸に加味するという措置をとりましたので、この際検察官につきましても同じような方針をとりまして、やはり本俸のほうに組み入れていきまして、管理職手当は全廃する、こういう措置をとったわけでございます。
  79. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判官検察官初任給が、いままでも同じで、今度もまた同じなわけですか。それで、これはずっと同じような昇給期間といいますか、ずっと上がっていくわけですか。そこはどうなっているのですか。裁判官優位の原則ということがよく言われますが、途中になってきて裁判官俸給のほうが上がるのですか。その辺はいまどうなっていますか。
  80. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 優位の原則というのは語弊があったかと思いますが、御承知のように、裁判官報酬につきましては、昭和二十三年の第二国会の当時に一般政府職員よりは優位に定められておったわけであります。そういたしまして、それから多少の紆余曲折は経ましたけれども裁判官報酬法第十条の規定に基づきまして対応金額スライドでスライドしてまいってきたわけでございます。検察官の場合におきましても、同じように裁判官に準じて上がってきたわけだと思います。そういう点から見ますと、その場合場合によって異なってはいます。たとえば、政府職員の上級の部分が非常に高く上がって、いわゆる上厚下薄といったようなベース・アップが行なわれますと、裁判官の上のほうは上がるが、下のほうは上がらないというような形で、その各号につきますというと、一般行政官吏が大学を卒業して何年目になった者と勤続年数的に比較いたしますというと、その率というのはずっと変わってきております。変わってきておりますが、大体においていつも裁判官のほうがある程度優位になっておる、そういうことでございます。検察官においても同様であると思います。  なお、御質問の趣旨が、検察官裁判官との比較を言っておられるならば、これは、この表をごらん願いますとわかりますように、同じく認証官でありましても、東京高裁長官は二十五万円、東京高検検事長は二十四万円になっており、それからその他の高裁長官は二十四万円で、その他の検事長は二十三万円になっております。それから下級裁判所の認証官以外の裁判官では、一番上が、十五条の改正によりまして二十二万円になっております。検察官におきましては二十一万円から始まっており、二十二万円がない。そういう意味におきまして、やはり一段だけ裁判官優位性を認めておるということになっております。
  81. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはずっと上のほうに行った場合の話で、出発点は一緒なんでしょう。それが昇給していく期間とかそういうようなことから考えていって、裁判官検察官とにどこら辺で開きが出るのですか。ずっと同じようにいって進むのですか。私の質問の意味がちょっとおわかりにならないかと思うのですけれども、私の言うのは、裁判官の昇給期間というのは、これは最高裁判所が昇給基準というのは自主的にきめるのですが、それと検察官の昇給期間とか昇給のしかたというものの間に差があるというのですか。
  82. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 裁判官の場合におきましては、ただいま御指摘のように、最高裁判所は独自に定めるということになっておりますので、裁判官の特殊性に応ずるような定め方にしてあるわけであります。検察官のほうは、御承知のように一つのピラミッド型になっておりますので、これはまた検察官独自の昇給の形があろうかと思います。だから、検察官の昇給がどうなっておるかということをもってすぐに裁判官に当てはめるわけにはいかない。裁判所裁判官職務の特殊性から裁判官にふさわしいような昇給をさせていって、その結果、あるいは同期の検事が早く検事正になったといったような場合に、あるいは早く検事長になったといったような場合に、高くなる場合もあろうかと思いますが、これは検察庁におけるところの一つのピラミッド型になっておりますので、そこはお互いに幾らにしようじゃないかといったような相談なんかしませんので、よくわかりません。
  83. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務省のほうにもお聞きするのですけれども、いまの検事正になった場合とかいうのは、これは検事のほうは全体に数が少ないわけですから、裁判官の半分くらいですから、それでいわゆる検事正と所長と比べれば、数は同じくらいなんですけれども、早く検事正になるパーセンテージは検事のほうが多いのですから、それは話は別なんで、そうでなくて、出発点は同じなんですけれども修習生から判事補になり、判事になったときに、それが裁判官の昇進する期間とそれから検事のほうの場合の昇進の期間とが違うのかどうかというのですよ。その点をお聞きしているわけです。片方が一年で上がるところを片方は六カ月で上がるとか、そういうような差があるのかないのかということなんですがね。ここはどうなんですか。これは法務省でもどこでもいいです。
  84. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 検事の昇給の段取りの問題と思いますが、これは法務大臣と大蔵大臣が協議して定める準則によってきまっていくということでございまして、今回給与改定が行なわれますと、またあらためて準則ができることと思います。それに従って検察官のほうは昇給いたすわけでございます。先ほど来お尋ねの裁判官との対比の問題でございますが、これは、裁判官のほうは、先ほど来御説明のございますように、最高裁判所のほうでおきめになった手続で運営していく、こういうことでございますので、必ずしも一致していないだろうと存じます。私も最高裁判所のその昇給の手続のことが実際どのようなものであるかということは具体的にこまかく存じませんが、大体のところは均衡がとれて昇給しているのじゃないかと考えております。
  85. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはお互いに秘密にしておいて、内幕を明らかにしないのですか。変な質問でしょうが、そこはどうなっているのですか。私の言うのは、号俸は一つ一つ上がるのでしょう、それが何カ月くらいたって上がるとかいろいろな方法があると思うのですが、それは裁判官の場合と検察官の場合と違うかということを聞いているのです。ある程度まで行くとこれが違っていくのじゃないかと思うのですがね。
  86. 守田直

    最高裁判所長官代理者守田直君) 裁判官検察官は庁舎が同じようなところもありますが、別別の庁舎もありますけれども、当事者がよく知っておりますので、検察官のほうが早ければ早いと言ってまいりますし、おそければ検察庁のほうの検事が突き上げるかもしれませんし、まあこれは同じような程度で行っていると見て差しつかえないと思います。
  87. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 よくわからないのですが、あまり内部のことは裁判所としてもあるいは検察庁としても外部に発表すべきものでもないだろうという意向があるのかもわかりませんから、ここでそれ以上追及しませんが、今回の報酬なり俸給改正案を見てきたときに感じますのは、現行のものと比較しての増率、ふえ方、これが上のほうはうんとふえているわけです。二割以上ふえているところもありますね。まん中は三分くらいしかふえていないところもある。下のほうは二割以上ふえている。初任給ですからかもしれませんけれども、これは一体どういうことからそういうふうになってきているのですか。増額の率ですね、増率、これはどうなっていますか。
  88. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) ただいま御指摘のとおり、今回の報酬俸給の改定案によりますと、上のほうの増率が高く、中ほどが低く、下のほうが高くという形になっております。上のほうの増率の高いのは、先ほど御説明申し上げましたように、ベースァップのほかに管理職手当の分を組み入れたという措置をとっておりますので、それだけの分が加算されているわけでございます。それから一番下の初任給並びにその二段階くらい上のあたりまで、これが増率がかなり高くなっておりますが、これは臨時司法制度調査会の御意見に従いまして、初任給引き上げを考慮いたしました結果上がっているわけでございます。それから中ほどの比較的上がりの少ない部分、これは今回対応金額スライドを柱にいたしましていまのような操作を加えましたが、そのほかに、従来の対応金額スライド方式で何回か改定を重ねておりますために、給与の号俸の問差額が非常にまちまちになっております。そこで、今回、その問差額をなるべく適正なものにしたい、その際に金額をまるめるために切り上げ、切り捨て等の措置を加えたわけでございます。その結果、まん中辺が多少増率が少ない、こういう結果になっております。
  89. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 まん中辺が増率が少ないというのは、具体的に言うとどこら辺が一番少ないわけですか。大体任官してから十年間前後のところは少ないわけですか。
  90. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 御指摘のとおりでございます。
  91. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務大臣がお見えになったので、大臣に聞いていただきたいと思うのですが、今回の号俸の上がり方を見て、いま言われたように上のほうは非常に上がり方が管理職手当が入った関係もありますけれども大きいので、たとえば法務省関係で見ると検事正クラスについては五万円くらい上がっておる。管理職手当のあれがあるから、実質的にはあまり上がっていないけれども、二十一万か二十二万になってきているわけですが、中堅の検事クラス、法務省あるいは裁判所でいえば判事補から判事になる十年クラスの人は二千九百円ぐらいしかふえないのですね。そういう点で非常にアンバランスになっておるわけなんです。私はいろいろ裁判官検察官と今度の案を持っていって雑談なんかしたんですがね。そうしたら、検察庁の検事人たちは、検事正やなんかがこういうふうに上がったんじゃ検事正はまたやめなくなっちゃうぞという話ですよ。これはほんとうの話なんでしてね。検事正クラスというか、そこらへんのところが、非常に長くやっている人が多いですよ。これは大臣お調べになってみるとわかるんですが、そこで、検事正クラスで非常に長くやっている人があって、検察庁内部というか法務省内部でもっと新陳代謝をしなければならぬという声が中堅クラスに非常にあるんですね。これは法務大臣のほうにまで上がってこないかもわかりませんが、そういう関係がありまして、ことに上のほうが今度うんと上がったものですから、これだけ上がったのでいいからというのでずっと長く続いて、検事正クラスはさっぱりやめなくなっちゃうというので若い検事クラスは不平を漏らしている、こういう点がありまして、人事の刷新はあなたのほうのことですけれども、そういう声があることはひとつお認めを願いたい、こう思うのです。  そこで、大臣にお聞きしたいのは、大臣そこまで御存じかどうか知らぬですが、いま一番新しい検事正はどこら辺の年度の検事正が一番新しいのか御存じでしょうか。
  92. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) ただいま検事正になっております一番新しい年度は、昭和十三年に司法官試補になった者でございます。
  93. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 十二年の人が札幌の検事正になったわけですね。前の人事課長の神谷さんが。今度高橋正八氏が横浜の地検の次席から、これは十三年で徳島の検事正になったでしょう。十二年、十三年、十四年クラスが非常に多いんですよ。非常に人数が多いんですよ。そこが非常にたまっちゃいまして、それで早くほかに出て検事正クラスになりたいんですけれども給与がうんと上がっちゃったもんだから検事正クラスがやめないというのでだいぶ心配している。これは変な話ですけれども、話はこれは話としてぜひお聞き取り願っておきたいと思います。それ以上のことを私のほうから言うとよけいなことですから言いませんけれども、そういうことがあることだけひとつ気にとめておいていただきたい、こう思います。  そこで、話は別になりますけれども、前に言われました「経験豊富な判事及び検事の処遇を適正にするため、」というのがこれが未解決だということを言われましたが、そうでしょうか。ちょっとはっきりわからないんですが。
  94. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) ただいま仰せのとおり、経験豊富な判事及び検事の処遇を適正にするために号俸を上積みせよという提案につきましては、今回の改定案には取り入れてございません。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 経験豊富な判事及び検事というのは、これは何をさしているのですか。ちょっとはっきりしませんが。
  96. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 在職年数の比較的長い判事検事のことをさしていると思います。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは経験豊富だから在職年数が長いんでしょうけれども、どの程度のことをさしているんですか。
  98. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) いろいろの考え方がございますと思いますが、大体三十年くらい在職したというあたりから上のことを考えているのではなかろうかと思います。
  99. 木島義夫

    委員長木島義夫君) 現在審議中の二法案について、ただいま衆議院から送付され、本委員会に付託されましたので、御報告いたします。
  100. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 衆議院のほうが可決されてこちらに送付されたそうですから、質問はこの程度にして、ちょっとこれに関連をするので法務大臣なり民事局長にもお聞きしたいのですが、裁判官なり検察官報酬俸給の改定は一応ここに出ているのですが、現実に法務省の中で働いておるたくさんの職員があるわけですね。その職員の待遇ということについて、これは一般職ですから、そこで改善されるのでしょうけれども、非常に仕事が過重であって労働強化である。しかも、労働強化でありながら、それに対する十分な支払いがされておらないという例があちこちにあるように聞いておるわけです。一つの例として取り上げたいのは、ことしの暮れの札幌の地方法務局の臨時執務態勢ということで、これは第一次、第二次、第三次、第四次に分けているのですが、たとえば、日曜日についても全部やる、土曜も晩の五時までやる、普通の月水金の日は午後九時までやる、火金は午後八時までやるという、こういうふうな形で札幌なんかは執務態勢をつくっておるのですね。こういうふうなことをやっておるのは、これは人数が足りないからでしょうけれども、ほかでも相当あるのですけれども、今度札幌の場合はいま言ったような形でやっているわけですか。
  101. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいま御指摘の札幌法務局の件でございますが、札幌は、札幌法務局の本局におきまして、札幌市の周辺地区の開発が非常に活発になっております関係で、登記事件が非常にふえておるのでございます。この登記事件の増加は全国的な現象でございまして、ひとり札幌ばかりではございませんけれども、札幌は特にこの傾向が顕著であるようでございます。この関係で、年末になりましてほかの局に比べまして札幌は特に繁忙度が高まる情勢にございまして、札幌の本局におきましては、ただいまちょっとお話がございましたように、一日平均いたしまして約三時間ぐらいの超過勤務をしなくてはこの年末までに申請がございます登記事件の処理ができないのではないかということで計画を立てておるようでございます。法務省におきましても、そういう状況でございますので、超過勤務手当の予算の留保額が多少ございますので、これを追加配賦するというような方法を講じなくてはならぬのじゃないかというふうに考えております。ただ、この現象はひとり札幌だけではございませんで、ほかの法務局管内におきましても多かれ少なかれ同じような現象がございます。
  102. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま超勤一日三時間と言われましたけれども、もっと時間的に多いのじゃないですか。日曜はまる一日出るし、土曜は五時まで、普通月水金が九時まで、火金が八時まで、こういうのじゃないですか。三時間以上になるのじゃないですか。
  103. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいまお話しの点は、十一月の十六日から始めまして、御用納めの十二月二十八日までを一応のこの非常態勢と申しますか、計画されているようでございます。これを通算いたしますと、大体百四十時間になるようでございます。この日数で割りますと、大体一日平均三時間ぐらいの超勤になるという計算でございますが、私どものほうに報告が来ておりますのも、ただいま稲葉委員の仰せられたのと大体同じような報告が参っております。
  104. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、これだけ超過勤務をさせておいて、これは局長が命令してさせるわけでしょう。当然全額支払わなきゃならない債務が政府にあるわけでしょう。これはどういうふうに考えますか。
  105. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 超過勤務はそれぞれ所管の長が命ずるたてまえになっておりますが、法務省の方針といたしましては、実際超過勤務いたしますれば、それに対応するだけの手当を出さなくてはならぬという方針でおるのでございますけれども、何ぶんにも予算で認められております法務局付けの超過勤務手当の総額の予算が必ずしも十分でございませんので、実働に対応する手当額が十分に支給できないというような実情にございます。これは私どもといたしましても年々努力をいたしておりまして、その増額方につとめておるわけでございますが、遺憾ながらいまもって十分というまでにはいっていない状況でございます。
  106. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 十分にいっているとかいっていないかということよりも、私いつも問題に思うのは、超過勤務を命じた場合に、これは人事院規則によって命令簿に記載すればそこに債務が発生するんだ、こういう考え方をしているわけですね、いまのところ。そうすると、現実に札幌法務局のような場合は、こういうような実働百四十時間で超勤をしているわけですから、その全体に対して国としては法務局の職員に対して債務がそこで発生しているのじゃないですか、債務として。そこはどうなんですか。ただかってにやっているわけじゃないでしょう、超勤を。
  107. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) それは理論的には仰せのとおりであると思うのでございますが、実際はやはり予算の額で縛られます関係で必ずしもそうはいきませんで、このことはひとり札幌の法務局だけではございません。本省などはもっと忙しい現状でございまして、仰せのように非常に遺憾なことだと思っておりますけれども、現状ではこれはいかんともしがたい、予算の増額について努力するほかないというのが実情でございます。
  108. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 現実に予算がない場合に超過勤務を上から命ぜられた場合には、その場合にはどうなんですか、それに従わない場合、一体どういうふうになるんですかね。債務としては国が責任があるわけですから、すでに債務としては発生しているわけですから当然支払わなければならないのに、ある部分だけ払わないということになってくれば、その部分についてはこちらのほうとしては勤務をしなくてもいいんじゃないですか。そういう議論も出てくるのじゃないですか。これは理屈かもしれませんけれども、そこはどうですか。
  109. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 理論的にはまさしく稲葉委員の仰せられるとおりだと思います。ただ、法務局の予算の実情を申し上げますと、職員一人当たり一ヵ月十二時間ということで予算が入っているのでございます。本年度の予算の総額を申し上げますと、二億五千二百万円ということになっておりまして、これを昨年度に比較いたしますと、昨年度は十二時間までになっておりませんで、十一時間とちょっとであったのでございます。でありますから、本年度におきましては少しばかり増額になっておるのでございます。私どもの希望といたしましては、この十二時間をせめて二十時間程度に持っていきたいということでここ数年来努力をいたしておるのでございますけれども、まだ所期の目的を達することができないという状況でございまして、今後ともこの予算の増額につきましては従来以上の努力をしたいと考えておる次第でございます。
  110. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その点については法務大臣にお聞きするわけですけれども、その前に、現状の状態の中で超勤を追加配賦したいという話がありましたね。この前何か言ったらば、主計局の方ですか、法務省超勤を追加配賦する余裕なんか全然ないのだといって断わられたという話を聞いているわけです。あなたのほうでは、札幌の法務局の職員がこういうふうに第一次態勢から第四次態勢までやって、毎日毎日おそくまで働いて日曜まで全部出てきて働かされる、これについて超勤が足りない、足りない分は最大限に追加配賦をするということですか。この前言ったら、追加配賦する財源がないからだめだと断わられた。話が違うのですか。
  111. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 現実に札幌の法務局から超勤手当の不足額について追加配賦の上申が来ております。私どもとしましては、できる限りこの要望に沿うように善処いたしたいと思っております。ただ、全国各地からも同じような上申が来ております関係で、全く希望どおりというわけにはまいりませんけれども、それぞれ繁閑の差がございますので、その実情を見まして実情に応じた配賦をいたしたいと考えております。
  112. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務大臣に終局的にお尋ねしたいのですが、いま民事局長の言うように、これは一つの例ですけれども、各地から超勤手当の追加配賦の要請が来ており、しかもこれは現実に命令が出て働いているのにもらえないというものばかりですね。そうなると、政府としては、当然人事院規則によって超過勤務の命令簿というものがある。あそこに所属の長が記載をして命令すれば、そこで支払わなければならない債務が発生する。それを払わないということになるわけですから、ただ予算がないということだけで払わないということでは、責任回避以外の何ものでもないと、こう思うのです。現実にあなたの下に働いておる法務局の職員が、日曜も全部出勤する、土曜も夕方まで、その他の日は晩の九時まで働いているのですから、当然全額に見合う超勤手当を支出するように法務大臣としても全力を尽くして大蔵省に交渉するなり何らかの形でやっていただきたい、こういうふうに私は思いますが、これに対して法務大臣の所見といいますか、あるいは約束といいますか、そういうようなものをひとつお聞かせ願いたいと、こう思います。
  113. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 何といたしましても非常に事務量が御承知のようにふえております。そこで、根本的問題は、人をふやすということが問題でございます。ことしも設置法が通れば二百人また増員になりますが、それは焼け石に水のようなことで、なお増員につきましてことしも法務局は特に大蔵省と十分話し合っていきたい、こう考えております。ただいま御指摘の超過勤務手当を私もこのあいだ説明を聞きましたところ、一人一ヵ月十二時間ということになっておるそうでございます。これはあまりに現実と遊離し過ぎておる。仕事はどうしてもこなしていかなければなりません。しかし、こなしていく上において政府が借りをつくっていくということは私たちとしまして残念と思いますので、できる限り努力を払っていって、皆が超過勤務をやります場合も気持ちよくやってくれるように努力をいたしたい、こう考えております。
  114. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの問題は、法務大臣が二百名を増員するくらいでは焼け石に水だというふうなことを言われたわけですね。よく御存じでそういうことを言われているわけですから、ぜひ大幅な増員なり、それから超過勤務をするときには働いたものには全額支払うような形で大臣が全力をあげて努力されたいということを要望を特にして、私はきょうの質問を終わります。
  115. 中山福藏

    中山福藏君 私はこの際法務大臣に一つお聞きしておきたいと考える問題は、判検事給与制度に関する長短厚薄について私はお尋ねするのじゃない。しかし、給与問題が取り上げられておりますから、これに付帯してお尋ねするわけですが、実は私はすでに四十五年ばかり在野法曹として法律事務にいろいろと関与した者でありますが、その間に私が最も関心を持ったのは、重大事件の捜査ですね、それから重大事件の判決、それを担当する人々の心労というものは並み並みならぬものがあると私は在来から考えておりまして、その実例といたしまして、仙台の地方裁判所でしたか、判決をいたしました裁判長が朝な夕なに脅迫を受けて、北陸に転勤した後もいろいろな脅迫状が舞い込んで、子供が学校に行くのにも非常に困るのだ、そして結局神経衰弱というようなことになりかねないということを私は実際その人から話を聞いております。また、捜査に当たる検事が、数年前のある事件に関しまして、担当検事が、私どもの政策審議会の場に参考人として出席を求めましたときに、私に対してこう言いました。この私の頭をごらんください、このとおりしらがになっております、これはある疑獄事件を調べて、そうしてあらゆるデモ、あらゆる脅迫を受けてこのとおり一年の間にしらがになりましたと、こういうことをその検事が私に言った。私は裁判の公正をたっとび、社会の安寧秩序というものが法の厳守によってはじめてそれが躍如として面目というものを発揮するものと考えておる。判事検事も人間ですから、安心して自分の職務を完遂するという立場に置かれなければならないという点から私はお尋ねをしておきたい。そういうふうな事柄に関与した判検事を優遇する特別の措置を講ずる必要はないか。たとえば、特別の慰労休暇をやるとか、あるいは特別の手当を出すとか、あるいはまた何らかの特別の措置を講じて、安心して職務に当たれるというような措置を講ぜられることがこれは当然だと私は考えます。しかるに、いま、普通の月給で、そうして非常な心労におちいっておると、こういうふうなことを間々私どもは体験するのであります。そういうふうなことについて特別な何かお考えはないものでしょうか。これは私は現在裁判の公正をたっとぶというわれわれの見地からこういうことをお尋ねしておきたいと思うのです。これは私は非常に必要な重大問題だとふだんから考えておる。一点だけお尋ねしておきます。
  116. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 判検事が崇高な使命を遂行していく上におきまして、ただいま御指摘のような外部からのいろいろな脅迫、あるいはまたそれがないにいたしましても、非常な心労をいたしておる例は多々あります。一般的に言いまして、判検事の労というものはわれわれの一般人の想像に及ばないところがあると私は考えております。特にただいま御指摘のような人々につきましては、十分御指摘のようなことを考えてやることが必要であると考えますので、直ちに検討に着手をさすことにいたしたいと思います。御了承を願います。
  117. 木島義夫

    委員長木島義夫君) それでは、他に御発言がなければ、両案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 木島義夫

    委員長木島義夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  119. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私は、日本社会党を代表して、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案に、後に述べる附帯決議を付して賛成の意見を表明する者であります。  この両法律案は、第一に、人事院勧告の趣旨にかんがみ、すでに提出されている特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案並びに一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案のそれぞれの例に準じて、裁判官報酬及び検査官の俸給等を増加改善すること、第二に、臨時司法制度調査会意見趣旨に従い、判事補検事初任給の増額及び現行の簡裁判事、副検事の最高の報酬または俸給額をこえる額の報酬または俸給の号を新設すること、第三に、一般政府職員の例に準じ、特定の裁判官及び検察官について、暫定手当のうち一定額を報酬または俸給の各月額に繰り入れる措置を講ずること、等を骨子とするものであります。  ところで、さきに、臨時司法制度調査会は、内閣に対し、裁判官検察官給与制度改善合理化について、これらの者の職務責任の特殊性にかんがみ、これにふさわしい独自の給与体系を樹立すべきこと、及び当面の措置として、生計費及び一般賃金事情の変動による一般国家公務員給与改善に伴う裁判官検察官報酬または俸給の額の改定に関しては、現行のいわゆる対応賃金額スライド方式を維持するとともに、特に(一)判事補及び検事必要数を確保するため、判事補及び検事初任給を増額すること、(二)経験豊富な判事及び検事の処遇を適正にするため、現在の判事及び検事の特号の報酬または俸給の額をこえる額の新たな報酬または俸給の号を設けること、(三)右(二)の措置に伴い、高等裁判所長官、次長検事及び検事長の報酬または俸給の額を増加すること、等の意見を具申しました。しかるに、このたびの裁判官検察官給与改善に関する二法案においては、わずかに右(一)及びその他若干の趣旨が控え目に実現されたのみであって、十分な改善が行なわれたものとは言えない状態であります。政府は、裁判官検察官の任用制度並びにその運用の実情等にかんがみ、すみやかに右意見趣旨の具体化をはかるべきであると考えます。  そこで、この給与関係法案に対し、次の附帯決議を付してこれに賛成する次第であります。なお、この附帯決議案は、自由民主党、日本社会党及び第二院クラブの共同提案によるものであります。    裁判官報酬等に関する法律の一部を改正    する法律案及び検察官俸給等に関する法    律等の一部を改正する法律案に対する附帯    決議(案)   政府は、臨時司法制度調査会意見趣旨に  したがい、裁判官及び検察官職務とその責任  の特殊性等にふさわしい独自の給与体系の樹立  をはかると共に、現行の裁判官及び検察官の任  用制度並びにその運用の実情にかんがみ、当面  の措置として、右両者の給与の一層の改善に格  段の努力をすべきである。   右決議する。  以上であります。
  120. 木島義夫

    委員長木島義夫君) 他に御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 木島義夫

    委員長木島義夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案を一括して問題に供します。両案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  122. 木島義夫

    委員長木島義夫君) 多数と認めます。よって、両案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、稲葉君が討論中に述べられました自由民主党、日本社会党及び第二院クラブの共同提案による附帯決議案を議題といたします。  本附帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  123. 木島義夫

    委員長木島義夫君) 多数と認めます。よって、自由民主党、日本社会党及び第二院クラブの共同提案による附帯決議案は、多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、高橋法務大臣並びに最高裁関根事務総長からそれぞれ発言を求められておりますので、この際これを許可いたします。高橋法務大臣
  124. 高橋等

    国務大臣高橋等君) ただいまの決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、これが実現について努力いたすことといたします。
  125. 木島義夫

    委員長木島義夫君) 最高裁判所関根事務総長。
  126. 関根小郷

    最高裁判所長官代理者(関根小郷君) 最高裁判所側といたしましても、裁判官にとりまして非常に御理解のある決議を賜わりまして、厚くお礼を申し上げます。われわれといたしましても、できる限りこの決議の趣旨に沿いますよう努力いたしたいと存じ上げます。
  127. 木島義夫

    委員長木島義夫君) なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 木島義夫

    委員長木島義夫君) 異議ないものと認めます。よって、さよう決定いたしました。  本日はこれをもって散会いたします。    午後三時十二分散会      —————・—————