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1964-12-15 第47回国会 参議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十二月十五日(火曜日)   午後一時五十四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。    委員長          梶原 茂嘉君    理 事                 赤間 文三君                 上原 正吉君                 近藤 信一君                 向井 長年君    委 員                 植垣弥一郎君                 大谷藤之助君                 川上 為治君                 岸田 幸雄君                 剱木 亨弘君                 前田 久吉君                 阿部 竹松君                 椿  繁夫君                 藤田  進君                 鈴木 一弘君    国務大臣        通商産業大臣   櫻内 義雄君    事務局側        公正取引委員会        事務局長     竹中喜満太君        法務省民事局長  平賀 健太君        通商産業政務次        官        岡崎 英城君        中小企業庁長官  中野 正一君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞壽君    説明員        大蔵大臣官房財        務調査官     塩谷 忠男君        通商産業省重工        業局長      川出 千速君        通商産業省重工        業局製鉄課長   木寺  淳君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○連合審査会に関する件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査中小企  業問題に関する件)     —————————————
  2. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ただいまから商工委員会開会いたします。  まず、委員長及び理事打ち合わせ会協議事項について御報告いたします。  本日は、国際博覧会関係条約について、外務委員会に対して連合審査会開会を申し入れることを議決いたしました後、中小企業問題に関する件の調査を行ない、次回は明後十七日開会することとなりましたから御了承願います。     —————————————
  3. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 連合審査会に関する件についておはかりいたします。  国際博覧会に関する条約及び千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名された国際博覧会に関する条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について、外務委員会に対し連合審査会開会を申し入れることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 御典儀ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  6. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 次に、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、中小企業問題に関する件の調査を進めます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  7. 近藤信一

    近藤信一君 ことしは、特に上半期におきましての倒産は非常に繊維関係に多かったのでございまして、ところが一月から二月、三月、四月、五月と、倒産件数が毎月記録を更新した、こういう状況でございまして、特に下半期に入ってからは金属関係にも相当倒産が出てきておる、こういうふうにも報じられておるわけでございまするが、今日のこの不況ムードの中で、いわゆる不況業種といわれているものの筆頭にあげられておりますのが、特殊綱業界でございます。業界でも戦後最悪の事態であると言われていることもまた当然であると思います。これはここ数年間にわたる設備投資の行き過ぎから、過剰設備をかかえて、激しい過当競争を行なってまいりました。その反面、その最大の需要先でありまするところ自動車メーカーの買いたたき等があって価格がコストを割っている、こういうふうな状況も出ているのです。さらに金融引き締めの浸透で中小問屋筋が大きく在庫調整をしたことなどの要素がからみ合っているようでもございますし、ついに十一月の三十日には特殊綱業界におけるしにせとも言われている日本特殊綱経営行き詰まりから会社更生法適用を申請する、こういう事態が発生したのでございます。過去一年にわたる金融引き締め影響というものが、中小企業段階からこれが中堅企業のほうにだんだんと広まっていることも御承知のとおりだと思うのです。特に不渡り倒産が相次いで行なわれておりまして、十一月の倒産件数は五百十八件、それから負債総額が五百九十億円という、こういうふうな記録をまた更新しているようなことも言われております。これまでのめぼしい倒産会社を拾ってみましても、この春から今日までにかけて東京発動機、それから山口自転車亜細亜製薬山城製薬品川製作所東京電機、それから不二越、般若鉄工、こういうように幾つもあげられるわけでありますが、これがこのたび日本特殊鋼に及んで、ついにこれが大企業にも倒産というものが波及してきているというような状況でございますが、産業界全体に及ぼす影響もきわめて私は大きいと言わねばなりませんが、これらの問題をいろいろな観点から検討する必要があるが、時間の関係もございますので、きょうは倒産という現象を中心として、そうしてその影響等について政府に若干伺いたい、こう思うわけであります。  まず、日特鋼会社更生法適用を申請するに至るまでには、社長の北耕二氏は金融について非常に奔走していたこともこれは事実でありますが、最後には大蔵大臣をたずねたり、それから金融あっせん方を依頼したりいたしましたけれども、結局は金融による救済は非常にむずかしいので、この際に会社更生法適用を受けるべきだ、こういうふうな結論から会社更正法が今度は適用されると、会社に対する債権は一応たな上げにされることになります。このことから、この法律はしょせんこれは従業員と無担保関連中小債権者を犠牲にして金融資本を擁護する法律であると言われてきているのでございますが、このことはまあ別といたしまして、日本特殊鋼経営内容金融措置で立ち直れないほど悪化してきた事実、こういう事実を通産当局としては事前に察知できなかったかどうか。特殊鋼業界に対する全般的な不況対策一つとして、日特鋼問題を事前に防止する業界対策というものは一体あり得なかったかどうか。この点についてまずお尋ねいたします。
  8. 川出千速

    説明員川出千速君) ただいまの御質問についてお答え申し上げます。  私はなるべく事前に情報をキャッチいたしまして、できるだけの政府としての努力をすべきである、また現にその努力をしておるつもりでございますが、この具体的な日本特殊鋼の問題につきましては、実は直前まで知らなかったわけで、その点はなはだ申しわけないと思っております。
  9. 近藤信一

    近藤信一君 このように日本特殊鋼倒産をする寸前まで通産当局はあまり内容については知らなかったといま局長は答弁されましたけれども、やはりこの特殊鋼の問題は本年の通常国会のときにいろいろと問題があったんじゃないかというふうに私どもは思うのです。というのは、この特殊鋼は、この通常国会でも流産いたしまして三たび流産いたしたわけでありますが、特振法の成立に対しては非常に熱心に陳情もあったわけなんです。そういたしますと、特振法の対象業種となっていたこの特殊鋼は、特振法がつぶれたけれども、もしあの特振法が通常国会成立をしていたといたしますならば、今日のこの不況というものが特殊鋼として回避できたかどうか。ひいては日本特殊鋼の問題というふうなものが発生しなかったんじゃないかというふうにも考えるわけですが、この点はどうですか。
  10. 川出千速

    説明員川出千速君) 法律が通っておれば回避できたかどうかという御質問でございまして、これは通っていない現在でございますので、何ともその辺明確に御答弁するわけにはいかないと思いますが、かりに通っておりますれば、これは当然業界も希果しておりましたので、指定業種になったでございましょうし、指定業種になれば、業界のいろいろな合理化計画政府だけではなくて、産業界あるいは金融機関を入れて、これは個々の具体的な問題というのではなくて、一般的な問題になろうかと思いますが、いろいろ具体的な手段も講ぜられたかと思います。しかし、それによって今回の事態が回避できたかどうかということは、ちょっと私には答弁しかねるのでございます。
  11. 近藤信一

    近藤信一君 日本特殊鋼といたしましては、私は特振法が成立すれば、何とかなるんじゃないかというふうにも一つの期待をかけておったようなきらいがあるんじゃないかというふうに思うのです。それは私どもに対するところ特殊鋼業界のしばしばこの特振法成立に対するところ陳情があって、なかんずく日特鋼が一番熱心のようにも私受け取ったわけですが、その点はどうですか。
  12. 川出千速

    説明員川出千速君) 日本特殊鋼企業数は約六十ございまして、それは各国に比べますと非常に数が多いわけでございます。そのために競争が過度に行なわれておりまして、市況悪化さしておるという点が強いものですから、業界をあげて実は法律成立を望んでおったような次第でございまして、ただいまの話は実は私は昨今特に強く聞かされておるわけでございます。しかし法律は通らなかったわけでございますから、それを議論してもこれはやむを得ないことでございますので、法律がなくてもいろいろ協調体制といいますか、業界ともよく懇談、意思の疎通を通じてできる点もあるわけでございます。そのような方向で現在努力をしておるわけでございます。
  13. 近藤信一

    近藤信一君 特殊鋼業界では、昭和三十六年の山陽特殊鋼大阪特殊鋼合併がございまして、それ以来、本年の七月大同製鋼、それから関東製鋼合併と、こういうふうな業界の再編成が進められてきております。日特鋼とまた三菱製鋼、これの合併問題も進められていたことはこれは事実でございます。日特鋼経営内容が予想以上に悪化しておるために、三菱製鋼のほうがこれは合併してもあまり望みがないんじゃないかと、こういうふうなことから手を引いたというふうなことも言われておりますし、また日特のほうは、三菱と合併すれば将来性が十分あるんだと、こういうふうなことをしばしば従業員諸君にも言ってきたことは事実でございまして、そのために従業員には賃金の切り下げを押しつけてきておりますし、さらにまた人員の整理という面でもその間にいろいろと会社側から言われていることも事実でございますが、こういうふうに合併動きがございましたけれども、それが御破算になってしまいまして、どうにも動きがとれなくなった、そこで会社更生法適用申請ということになったようでございますが、一体日特鋼の場合、このように想像以上の経営内容悪化を来たしたということは、あげてこれは経営者責任というふうに認められるかどうか、そうでなくてもやはり現在の金融引き締め、それから業界過当競争等が大きな原因として見ておられるのか。そうであるとするならば、これは業界体制がこのままだと第二、第三の日特鋼が発生するおそれがあるというふうにも私思うのですが、今後の見通しについてその対策等通産当局としてはどのように考えておられるのか、この点はどうですか。
  14. 川出千速

    説明員川出千速君) 日本特殊鋼倒産と申しますか、更生会社適用になりました原因は、御指摘のように特殊鋼市況が非常に悪くなったこともあずかって力があると思いますけれども日本特殊鋼自体の問題としまして、たとえば子会社投資をした、特殊製鋼子会社がございますが、それに投資したのがうまくいかなかったということも大きな原因一つになっております。それから設備合理化がほかの会社よりも若干おくれておったということも事実のようでございます。そういうような原因がいろいろと重なった結果であろうかと思います。しかし、特殊鋼業界全般として、非常に不況の状態にあることは、これは争えない事実でございまして、現に無配会社も出ておりますし、欠損会社も出ているわけでございます。現状のまま推移いたしますと、これはやはりいつまでも続くということもむずかしくなる会社が出てくるかもわかりませんので、これは緊急の問題として、市況を立て直すことが私は先決かと考えます。
  15. 近藤信一

    近藤信一君 当面の問題として、まず取引会社債権たな上げによって、関連中小企業連鎖倒産というものが行なわれるのじゃないかということを危惧するわけなんですが、これには下請原料供給会社、この両者があるわけでございます。一体それに関連する数というものはどのくらいあるのか。また、その代表的なものはどういうものであるかということを、中小企業庁長官は把握しておられると思うのですが、これをひとつお示し願いたいと思います。
  16. 中野正一

    政府委員中野正一君) 一本特殊鋼倒産に伴いまする関連企業についての影響の問題でございますが、まず第一に下請関係と申しますか、外注関係でございますね、これが百十四社ございます。これに対する債務が約十億円ございます。それから原材料関係が六十九社ございまして、これが三十五億円、債務がそういうことになっております。
  17. 近藤信一

    近藤信一君 いま示されました数はおよその数でありますが、さらにそれの下請といいますか、孫請といいますか、これらの関係もあろうかと思うのでございますが、そういう点は把握しておられませんか。
  18. 中野正一

    政府委員中野正一君) いま関連企業影響等につきまして調査中でございますが、いま申し上げました外注関係会社のさらに孫下請というような関係影響は、日本特殊鋼の場合には比較的ないのじゃないかと思います。
  19. 近藤信一

    近藤信一君 会社更生法適用によりまして、日特鋼自体はおそらく立ち直りができるだろうというふうに思うのです。しかし、そのあおりを受けた多くの関連中小企業というものが非常に迷惑をするということは、これは長官も御承知のとおりだと思うのです。特に中小企業にしわ寄せがまいりまして、ただでさえ苦しい経営というもの、特に金融引き締めのもとにあって、おそらく今後関連倒産が相次いでくるのではないかというふうにも考えられるわけなんですが、政府ではこうした問題につきまして、きめこまかく金融面で処置して、倒産の波及というものを防ぎたい、こう言っておられるようでございますが、きめこまかい対策といっても、はたして具体的にどのような手を打ってこの関連した連鎖倒産を防いでいかれるか、こういうものに対するところ対策というものを中小企業庁では立てておられると私は思うのですが、この点はどうですか。
  20. 中野正一

    政府委員中野正一君) 日本特殊鋼倒産に伴いまして、これの関連企業連鎖倒産を及ぼさないように、さっそく通産省、これは中小企業庁あるいは重工業局中心にいたしまして、ごく具体的には東京の通産局におきまして、さっそく関係金融機関、特に政府関係機関、それから信用保証協会、それから関係民間機関等に集まっていただきまして、金融の面のめんどう十分関連企業に対して見るように強い要請をいたしております。  具体的に申し上げますというと、中小企業金融公庫、それから商工中金ですね、それからいま申し上げました信用保証協会に特にいま申し上げました下請け関係の約百社ですね、これに対して十分援助するように措置をいたしております。そのうちで、これは前の東京発動機が倒れるときに非常に困ったのですが、下請組合がなかったのであります。今度の日特の場合は、幸いにいたしまして下話の協同組合がございまして、これに三十六札入っております。したがって、これについては商工中金を通じて十分めんどうが見れる体制ができている。それから中小公庫も、取引のある会社相当ございますので、そういうところが十分に市中金融機関連絡をとって、つなぎ融資をもう相当すでに行なっております。具体的に申し上げますと、商工中金でございますが、これは経営困難に直面しておるが、再建が可能である、で市中金融機関にも十分協調でき得るというようなものが西社、それから再建がやや困難であるものが四社、それから今月の二十日から二十五日の資金需要に応じまして、信用保証協会の了解のもとに一年以内の無担保貸し出しということも行なうように決定をいたしておりまして、今後とも商工中金のワクの拡大ということについて十分努力していきたい。また、中小企業金融公庫も同様でございまして、市中銀行と協調いたしまして支援体制を確立しておりまして、影響があると見られた十三社のうちで九社について、すでに危機切り抜けの、金融面めんどう見た結果見通しがついておるわけでありまして、政府関係金融機関と直接の関係のない企業につきましてもいま調査中でございまして、これらについても市中銀行との協力を仰ぎながら、政府関係金融機関でできるだけのめんどうを見るように手配をいたしております。
  21. 近藤信一

    近藤信一君 中小企業公庫でそれぞれ対策を練っておられるようでございますが、日特鋼及び系列等にある在庫の換金売りというふうなことがもし行なわれるとするならば、これは現在非常に苦況に立っておるこの特殊鋼が、特殊鋼市況を、市場というものをさらに悪化させるというふうな結果が生まれてくるのじゃないか、そういたしますると、日特だけの問題じゃなく、今度は特殊鋼業界全般の問題に拍車をかけてくるようなことになるおそれが私ばあるのではないかということを心配するのですが、この点はどうですか。
  22. 中野正一

    政府委員中野正一君) いま近藤先生の御指摘のとおりだと思います。この点につきましては、私のほうとして市工業局、担当の局のほうと十分連結をとって、市況をそのために、今度の倒産の問題を契機にしてそういう投げ売りというようなことの起こらないように十分気をつけてまいりたいと考えております。
  23. 近藤信一

    近藤信一君 そのほかに当面の影響といたしまして、通産当局はどのような問題の派生というものを予想しておられるか、そうして、これから対処していく措置というものはどういうふうな対策があるのか、この点はどうですか。
  24. 中野正一

    政府委員中野正一君) いまの御指摘につきましては、先ほど重工業局長も申し上げましたが、やはり特殊鋼業界全体の一日も早い立ち直りということについて、相当思い切った対策なり手段というものをこの際講じていただくことが一番私は大事だと思います。ただ、中小企業方面でこの関係で今度は実際に仕事がなくなっていくというような面がありはせぬかということをいま調査中でございまして、そういう点が懸念される場合には、個々にまた仕事あっせん転換等について、さらにきめこまかく対策をいたしていくつもりでございます。
  25. 近藤信一

    近藤信一君 そこで、親企業の経常の行き詰まりによりまして、下請企業関連中小企業は何ら自分の責任でなく、全くこれは他律的な関係から連鎖倒産、こういうことに見舞われるわけでございますが、これは非常に同情に余りあるものがあると思います。また国家的にこれを見ても、これは決して放置できないものであろう、こういうようにも考えますし、この際、抜本的にこういう場合の救済制度、たとえば保険制度とか、その他政府で何らかの措置を講ずるようなことがなければならぬと思うのですが、こういう点について何か中小企業庁としては検討されたことがあるのかどうか、この点はどうですか。
  26. 中野正一

    政府委員中野正一君) 先ほど申し上げましたように、今度の問題に処しては、産業全体の立ち直り策というものを一日も早くやっていただくということが一番大事だと思います。しかし、岡寺に倒産はやはり続いておりまして、最近はまた非常に心配しておりますのは、サンウェーブという会社が倒れまして、これは非常に下請関係が多いのです。非常に心配しております。ただ、これに対して何らか特別の措置が要るかどうかということは、もちろんこれはわれわれは研究いたしております。しかし、いままでのところでは従来からやっておりまするいろいろの措置金融的な措置あるいは仕事あっせん等下請関係適正花等のいろいろの措置を現在やっております。特にやはり何といっても金融面でこれはつないでいくということがさしあたりの問題でございますので、そういう意味におきまして、政府関係金融機関融資の拡充あるいは貸し出し条件の緩和、それから市中金融機関というものが、これはややもすると、御承知のようにこういう問題が起こるとすぐ逃げ腰になります。あぶないところに近寄らぬというようなこともよくあるようでございますので、こういう点につきましては、先般来大蔵省とも十分話をしておりまして、きつく金融機関に申し上げておるわけでありまして、実はサンウエーブが倒れたことに関連いたしまして、実はきょうサンウエーブの出した手形を割り引いてもらった方が、相手が倒れたためにきょう買い戻しせなければならぬという事態がまいりまして、昨日来私のほうで全部一々関係金融機関連絡をとって、この買い戻しについて、買い戻しを強行されますとまた倒れなくてもいいものが倒れるということになりかねませんので、そういう措置も昨晩来講じておるような次第でございます。やはりきめこまかく個々の問題についてやる。もう一つはやはり事前にこういうことが起こらないように措置をする。この両面にわたって具体的に措置をしていきたい。もちろんこれに並行いたしまして、事態の推移に応じまして、いままでだけの措置でいいかどうか、その点については十分検討中でございます。
  27. 近藤信一

    近藤信一君 私が聞くところによりますると、何か中政連では中小企業のこの倒産に備えて、何か総合的に救済するような法律案、そのようなものを考えておるやに聞くのですが、その点どうですか。
  28. 中野正一

    政府委員中野正一君) 中政連の考え方につきましては、今度の倒産に関連してそういう案を出したということは、まだ私は附いておりません。前から中政連の考えておられる案は、そうではなくて、中小企業従業員事業主家族等を含めた一種共済退職金、あるいは年金、あるいは生命保険、こういうようなことをあんばいしました一種共済制度というようなものをつくりまして、これを一定の積み立てができれば、それを還元融資する、こういうような構想を打ち出しておりれるように聞いております。それから通産省のはうでは、これに関連しましては、御承知かと思いますが、主として小規模事業者ですね、基本法に申しております小規模事業者でありますが、これの共済事業国というものをつくって、これも皆さんが掛金をして、そうして相当の金がたまれば、これを還元融資する。その還元融資のときには、いま言った連鎖倒産等のために中小企業皆さんか困っておるというようなものとか、災害の場合に融資するとか、そういうことを相当優先的に還元融資したらどうかと、こういう案を研究しまして、いま政府の中で折衝中でございます。
  29. 近藤信一

    近藤信一君 大企業経営者は、その企業活動から派生する社会的責任に対する認議を私はもっと深めるべきでないかというふうに考えるわけです。ただ生産第一主義に走って、地域住民の福祉をそこなうような公害の対策をおろそかにしている傾向もみられるようにも考えますし、企業経営行き詰まりにつき当たると、早速会社を投げ出して——というふうなことも、私は経営者として非常に無責任もはなはだしいと言わなければならぬのでございますが、またこの会社更生法適用を受けることによりまして企業再建をはかることも、これは法律に基づく処置ではございまするけれども、そこに至らないだけの経営者責任を感ずるべきだと私は思うのです。多数の従業員下請、関連企法に対する責任というものを、非常に安易な考えを抱いておる。こういうふうにも見受けられます。大企業経営者は、この際あらためて企業社会的責任ということについて大いに反省しなければならないというふうに私考えますが、それから経営者企業社会的責任の反省と並行いたしまして、この際大企業、それから親企業の立場にあるものの経常内容をもっとガラス張りにいたしまして、そうして世間に公表するために通産省では何か大企業の診断制度、いま中小企業の診断法というものはありまするけれども、大企業に対して同じような診断法というふうなものをつくって、そうして診断結果を公表すると、そういうふうなことも一つ倒産に至らないようにする一つ対策であるとも私考えるのですが、こういう点について通産当局としてはどのような見解を持っておるか。大企業は大企業で、これはもうつぶれる際にはやむを得ないのだ、幾ら手を加えてもだめですというふうに思っておられるのか、その点はどうですか。
  30. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ただいま御指摘の点については、私ども就任以来非常に関心を持っておるのでございます。大企業が野方図な経営をいたしまして、その結果が倒産をして、従業員下請企業に迷惑をかける、あるいは無責任経営のために災害など起こして地域住民に迷惑をかける、こういうようなことがあってはならない、こう思います。しからば、ただそういうことだけをいっているのか、こう申しますと、私も就任以来、親企業あるいは大企業というべき諸団体と会談をいたしたことがございまして、そのおり、そのつど注意を喚起しているわけでございますが、たとえば経理面につきましては、御承知のように公認会計士のようなものがございまして、そしてそれが決算ごとに詳細調べております。まあなかなか経済は機微に触れるところがございまして、あまり現在のような不況情勢下にありまして、極端にやり過ぎてそれによって影響が起きてもいけないと思いますが、今回のサンウエーブの場合なども、公認会計士の調査の結果が、どうも会社の態度がおもしろくないのじゃないか。そして他面、会社の沢田商事ですか、これが倒れてその影響を受けて、そしてついに行き詰まったというようなことでございますが、こういう公認会計士制度などを十分実情に適して活用していく必要があろうかと思います。しかしそれよりももっと根本的なことは、いままでも当然ある、べきでございますが、これからの経営者は御指摘のとおりの責任を痛感いたしまして、よく私は申し上げている新産業道徳ともいうべき、もっと高度のモラルを持って経営をしてもらいたい、かように存ずる次第でございます。
  31. 近藤信一

    近藤信一君 特に最近は中小企業倒産が問題になっておりますが、一つの例をとれば、春の東発の倒産の場合を見ましても、これは計画倒産ではないかということで、衆議院の商工委員会ではいろいろと追及をしておったようでございますが、やはりこのように中小企業倒産のあおりを受けてまいりますると、大企業の計画的倒産が次々なされるのではないかというふうにも考えられる向きがあるわけです。なぜかと申しまするならば、やはり手形をできるだけ乱発しておきまして、そして下請からできるだけ多くの納品を入れて、その上で倒産を発表する、こういうようなケースが多いようにも私思うし、そういうことでは実際関連業者といたしましては、これはたまったものじゃないわけですから、こういう計画的な倒産、比較的規模の大きいものがこのごろやっているようでもございますし、またそういう大きなものでなければこういうことは実行できないと思うのです。そしてこの倒産のあおりを食うのはいつの場合でも弱い企業、すなわち中小企業であり、特に零細企業であると私思うのです。計画的に倒産したものは、これは全部会社責任にして、そして私有財歴は完全に保有し、これを元にして第三会社というものを作って、それからまた会社を買収する、そしてまた新しい企業を発足する。こういうケースもあるわけなんですが、これはまあ一つの背任行為のように私思うのですが、今度の倒産の中にこういう例というものが見られないかどうか、この点はどうですか。
  32. 中野正一

    政府委員中野正一君) 大企業がまあ計画的に倒産をして、ほかに非常に迷惑をかけるというようなケースにつきましては、これは個々の問題として取り上げて、厳重に監督していかなければならないし、また会社更生法に移った場合に関係の官庁として意見を申し上げることができるようなことになっております。そういう点については今後も十分気をつけてまいりたいと思います。それから心ずしも大企業などに限らずに、御指摘のあったような不渡り手形を出しておいて、すぐまた何日かして別に会社をつくって、そうして仕事をやっていく、こういうケースも中にはあるようにわれわれ聞いております。この点につきましては、予算委員会におきましても、大蔵大臣がお答えになったかと思いますが、不渡りを出した場合に、三年間御承知のように取り引き停止ということになるわけでありますが、すぐまた別の会社をつくって、それで取り引きをするというようなふうな、脱法行為であろうと思いますが、そういうこともあるということで、この点については罰則の強化等によって、これはまあ手形のサイトを法定したらどうかというようなお話も、国会方面からございまして、手形法の改正等含めて、手形を無責任といいますか、やたらに出す、あるいは融通手形というふうなものを起こさせる、こういうふうなものは何とかして防ぐ手はないかということで、これは主として大蔵当局で相当研究をしていただいておりますので、通産省といたしましてもこれに協力をして、何らかの改善策を考えていかなければならぬと思います。
  33. 近藤信一

    近藤信一君 倒産会社下請をしている者は納品の代金が未回収になるばかりではなく、今後の仕事を失うことにもなるわけなんです。これはもうどう健全な経営をいたしましても、関連倒産していくというふうな結果になるわけなんです。そこで納品代金の回収が一種のモラトリアムになりますれば、それは今度はその下請業者が、原料と賃金に関してもモラトリアムをやる、そういうことができれば、先ほど来言われておるような立ち直れるというようなことも、ひとつ考えられるわけなんですが、これを一時金融機関等によって特別に融資させる、それから金繰りをつけてやるというふうなことも、私は一つ救済の道でもあろうかというふうにも思っております。もしそれが不可能な場合には、支払い猶予等をあっせんしてやるような機関というふうなも一のができるならば、救済していくこともまた考えられるのじゃないかというふうにも考えるわけなんですが、こういう点について考えている点があるかどうか、また今後そういうふうなことをひとつ考えていきたいというふうなお気持ちを持っておられるか、この点どうですか。
  34. 中野正一

    政府委員中野正一君) いま御指摘のあったような点が、具体的に関連企業倒産を防止するための非常に重要なきめ手になると思います。現在のところでは主としてこれは政府関係金融機関信用保証協会というものの運用によりまして、相当程度そういうものはやっていけていると見ております。この前の北九州のいわゆる鉄鋼関係連鎖倒産が、相当ございましたが、そのときには、県と市で保証協会に出損と融資、それから中央にあります中小企業金融公庫から特別融資をするというようなことで、いわゆる関連倒産を防ぐための特別保証制度というものをつくりましてやったわけであります。これが非常に効果がございまして、このために金融機関からも非常に金が出やすく、いま御指摘があったような意味合いの金も融通がついたわけであります。したがいまして、今後もいままでの制度だけで足りるかどうかという点は確かに問題でございますので、もう少し情勢の推移を見て対策をきめてまいりたいと思います。
  35. 近藤信一

    近藤信一君 今度の日特鋼の場合は、私は会社倒産寸前まで、日にちを言いますならば十一月の二十六、七日ごろまで、この日特会社は、三菱と将来合併するのだ、非常に将来性があるのた。で、ひとつ社内預金をどんどんやってもらいたいと、こういうことで社内預金を奨励しているわけです。そして、それから五日ほどたった十二月の一日に不渡りを出して、倒産するというふうな結果になっている。それで従業員があわてて、社内預金を払い戻せと会社のほうに要求をしますると、今度は会社では、更生法の申請をするから社内預金はいま払えない、こういうことで支払いをいま停止しているというふうにも聞いておるのですが、一体こういう行為が許されるとするならば、私はこれはもう違法行為じゃないかというふりに考えるのですが、こういう点はどうですか。
  36. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 日本特殊鋼倒産について詳細実情は調べておるのでありますが、社内預金を倒産寸前まで奨励をいたし、そうして現にその支払いを停止しておるという事実につきましては、遺憾ながらまだ私どものほうでそういう話を聞いておりません。しかしながら、もし現実にそういうようなことが行なわれておったとするならば、まことにこれは徳義上容易ならぬ問題だと思いますので、なお詳細調べさしていただきたいと思います。
  37. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  38. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 速記を始めて。
  39. 木寺淳

    説明員木寺淳君) その件につきましては、会社におもむきまして調査いたしましたが、社内預金は日特の場合には約二億二千万円程度あるそうで、ございますが、これは共益債権といたしまして、優先順位は、給与と同じ順位で支払うべき性質のものでございます。で、会社としては、いまのところ資金の余裕がないので一応支払いを待ってくれという要請を組合にいたしておりますが、もちろんこれは支払うべき問題でありまして、現在その資金手当てを会社として検討中のような報告を受けております。会社としては、もちろん再建計画の別ワクといたしまして支払いをする予定のように聞いております。
  40. 近藤信一

    近藤信一君 私が聞くところによると、社員が支払いを請求しても、会社のほうで、いま更生申請をしているからいま支払うわけにはいかないと、こういうことを言って、当然支払われるべき預金を会社のほうが押えておる。こういうことなんだが、これは違反行為になると私は思うのですが、どうですか。違法行為にならぬですか。
  41. 川出千速

    説明員川出千速君) 実際問題としまして、金繰りができないものだから、猶予してくれということを言っておるわけでございます。これは支払わないということになれば、当然違法行為だと私は思います。もうちょっとかんべんしてくれということを会社は言っておるようでありまして、これは私のほうとしましても、いつまでもそういうことで払わないというわけにはいきませんから、これは何とか金のくめんができるように、私のほうからも金融機関その他に要請したいと思っております。
  42. 近藤信一

    近藤信一君 これは一日に不渡りが出るということがわかっておって、四、五日前まで会社が社内預金せい、社内預金せいといって、社員には社内預金を奨励しているわけなんです。会社の首脳部はもうここ一週間後なり五日後には不渡りが当然出るということはわかっていると思うんですよ。そういうことを会社は重々知りながら、なお従業員、また社員に社内預金をやれということは、そういう点はまことにけしからぬと思うのですが、そんなことが許されるのだったら今後私はたいへんなことになるのじゃないかと思うんだが、この点はどうお考えですか。
  43. 川出千速

    説明員川出千速君) 全くその点は御指摘のとおりであろうと思います。
  44. 近藤信一

    近藤信一君 じゃもう一つ今度は角度を変えまして、般若鉄工の問題について若干お尋ねをしたいと思うのですが、産業界全般の不況ということは先ほど来言ってまいりまして、特に倒産が続出しておるこういう中で、工作機械の有力メーカーでございました般若鉄工倒産問題も、これは多くの問題をかかえておるわけなんです。これはなぜかと申しまするならば、般若鉄工は去る三十六年の十一月、九千万円の不渡りを出しまして倒産をした。そうして三十七年の三月会社更生法による更生手続というのが開始されまして、そうして今日に及んできたわけでありますが、去る九月の三十日に、更生法による会社更生の申請中に、また四千万円の不渡りを出した。そうして十月には更生手続廃止を申請しているわけです。十一月更生手続廃止の決定があり、現在のところでは破産手続というふうなものが進められているというふうに、もう非常にこれは悪化した事態に追い込まれているわけなんです。聞くところによりますと、般若鉄工行き詰まりというものは、産業界全般の不況影響もさることながら、経営者経営態度というものに非常に遺憾な点が多くあるのではないかというふうに考えます。たとえば富山県、それから銀行、こういう点もからまっているように聞くわけなんです。で、内容としては非常にこれは複雑なようでもございますが、それは別といたしまして、多くの従業員とその家族の賃金、それから退職金、こういう生活に必要なものが未払いになっている。そうしてまた中小企業下請というものが犠牲になっていることは、ここの場合でも同じことでございますが、従業員の賃金が七月以降ずっと未払いになっているというふうにも私は聞いている。この賃金の未払いということは、これは基準法の第二十四条違反であると思います。労働省は本件についてどの程度把握しておられるのか。そうしてそれに対するところ対策というものをどういうふうに考えておられるのか。この点まず基準局長から。基準局からだれか見えているんですか。
  45. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 御指摘般若鉄工における賃金未払いの状況でございますが、七月分の賃金から不払いの状況が発生いたしまして、その後十一月まで累計一億五千万円、約千八百人に対します賃金不払い事件が発生いたしました。ただいま申しました金順は、いわゆる定期給与でございまして、これ以外に退職金の未払い金額が約二億八千万円と相なっております。般若鉄工の賃金不払い問題につきましては、七月この不払いが発生いたしますと同時に、会社に対しましては、賃金支払い計画を提出させまして、八月以降引き続き監督を実施してまいったのでございますが、八月三日から九月二十六日までの間におきまして、九回に分割し約二千三百万円を支払わせております。以後支払い方につきまして監督を継続いたしておりますが、その後支払いの見通しが立たないという事態に立ち至りましたので、従来のような支払いの実行監督というような処置では十分でないと考えまして、労働基準法違反として十月十九日に富山地検に送検いたしたのであります。ただいま申しました賃金未払い分の追加支払いという形で処理いたしました二千三百万円のほかに、労働組合が使用者との間に事実上の了解のもとに物件の売却をいたしておるようであります。約千三百万円の金額に達しておりますが、これを不払い分に充当するものであるか、あるいは会社側の貸し付け金とするかという点については、労使になお紛議があるようでございます。われわれといたしましては、単に送検したということをもって能事終われりとすることは——現実に支払いが可能でありますよう、今後も引き続き監督を継続いたしたいとかように考えております。
  46. 近藤信一

    近藤信一君 いま御説明がありましたが、ことしの倒産後、あの後の労働者の未払い賃金請求に対しまして仮処分の命令を裁判所は出しておる。その仮処分の命令を出して賃金の優先権を認めるということでございましたが、それが会社のほうではスクラップの売却をいたしまして、その代金はこの賃金のほうに振り向けず、共益金だということで会社のほうがほかに使っておる。こういう点は非常に疑問があるのではないかと思うのですが、命令を出しておいて、そうしてスクラップを売ってしまってこれは賃金に充てない、これは賃金に充てるために仮処分をしたわけですが、これは一体どこですか、法務省か……。
  47. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 私どもが事務的に承知いたしておりますのは、労働組合従業員の身分保全のための仮処分を申請いたしました。それについての決定があったやに聞いておりますが、ただいまのスクラップを売却してそれを賃金に充てる云々については、遺憾ながらいま私承知いたしておりません。ただ賃金不払い用に充当すべしという決定がありましたかどうか、ちょっといま私は存じておりませんので、そういった筋のものでありますならば、決定と事実とは違うというような問題が生じてまいるかと思われます。ちょっと事実を私は確認いたしておりませんので、いま遺憾ながら申し上げかねる次第でございます。
  48. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいま労働省からお答えございましたように、どういう内容の仮処分か、私ども全然承知いたしておりませんので、何とも申し上げかねます。
  49. 近藤信一

    近藤信一君 知っておらぬと言われますけれども、賃金請求に対して仮処分の支払い命令を裁判所は下しておる。そうして賃金の優先権というものを認めて支払い命令を下しておる。仮処分にしておりまするスクラップを会社は売り払って、その代金は当然従業員は賃金未払い、または退職金のほうでもらえるというふうに考えておったところが、今度はよそのほうに、それを共同弁済のほうに回してしまった、こういうふうなことが言われておるのです。般若鉄工の場合、これはことしになってからの問題なんですが、そういうことは法的に差しつかえないということかどうか。
  50. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 具体的にどういうことが行なわれましたか、私ども全然承知いたしていないのでございますが、労働者の賃金につきましては、更生手続開始決定前六ヵ月分の賃金、それから更生決定がございまして、更生手続開始後の賃金は、いずれもこれは共益債権ということになっておりまして、更生手続によらないで弁済ができるということになっておるわけであります。したがいまして、会社が管財人のほうにおきまして会社の財産を処分しまして、その売り上げで弁済することもできるわけであります。それからまた更生手続によらないでやれるわけでありますから、労働者のほうで強制執行なんかすることもできると思うのでございますが、ただ、管財人が財産を処分しましたその売り上げの代金、それを必ずその賃金に充てなければならぬということはないわけでございまして、実際問題としまして、その具体的ケースにおいて裁判所がどういう処分をいたしましたのか、これはなお現地のほうに照会してもいいと思いますが、いまお話のような仮処分も、ちょっと普通の事例ではないように思うのでございます。仮処分の内容を見てみませんと何とも申し上げかねます。
  51. 藤田進

    ○藤田進君 関連して。労働省からも聞きたいのだが、会社更生法適用団体の場合として運用すべきだとわれわれは理解しておるのだが、この具体的事案については実は私も詳しくは知りません。いわゆる賃金の先取り特権ということについて実定法上、労働省はどういう解釈をしておるのか。最近しばしば退職金の範疇においてもいろいろ問題がある。これは退職金についてはどうも及ばないという議論もあるし、あるいは会社更生法の決定を見た以前あるいはそれ以後などは、もちろん生活というものを、生命というものを持っている、いわば賃金とその他のものが、これが混淆されて管財人の自由にどちらでもなるということでは、社会秩序からみても、法の精神からみても、私は少しその解釈は無理があるのじゃないか。労働省はどういう解釈をして法の運営をしておるのか聞きたい。
  52. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 御承知のように、労働基準法上の賃金に関する保護規定といたしましては、二十四条——二十六条の規定があります。これについての違反がありました場合には、御承知のように刑事罰を科せられるわけであります。ただ、一般の先取り特権の問題になりますと、御承知のように二種類ございまして、会社の総財産に対する先取り特権と、それから労働の結果得た製品について、いわば動産に対する先取り特権がございますが、御承知のように、いずれも民法または会社法等によりまして特設せられました先取り特権でございます。しかも、共益費用については賃金債権に優先するということに相なっており、また動産の先取り特権としましては、第三者に引き渡された以後は追及力を失う、こういうことに相なっておるわけであります。また、いわゆる国税等に準じますものにつきましては、そういった私法上の債権に優先いたしまして先取りが行なわれる、こういうような形で労働基準法上は支払い方法等につきまして規制をいたしておるのでございますが、私法上の他の債権との優劣関係につきましては、民法または会社法等の法律によりまして取り扱われておるという関係にございます。道義的にははなはだ遺憾には存じまするけれども、なお私法上の他の債権との優劣をいかにしてき出るかという問題につきましては、これは私がお乞えするのはいかがかと思いますけれども、私法の権利保護の制度といたしまして、非常に基本的な問題があろうと存じます。かつて社会労働委員会等におきましても、この問題が論議され、私どももいささか研究したことがございまするけれども、他の法益との均衡をどう保つかという点については、いろいろ御意見があるようでございまして、遺憾ながら十分な結論を得ておらないという状況でございます。
  53. 藤田進

    ○藤田進君 そこでそういうことなので、過去にも問題になったが、なるほど現内閣に至る保守内閣の多年にわたる立法なり行政というものが資本主義である。けれども近代資本主義政党におかれては、私は憲法も示すように、基本的権利の財産権、生命といったようなものばその序列の中においても最も大切としなきゃならぬ。いわんや今度の佐藤内閣は人間尊重を打ち出しているのです。そこで、いまのような法益権衡論でもって、いつまでもこれを労働省は逡巡するのじゃなくて、労働省は労働者のサービス省としてのたてまえから、もちろん他の財産権との法益権衡は考えられているけれども、これは無視せよとは言わないけれども、現在の政治における位置づけとして、特に生活というものを基本とする賃金に先取り特権というものがさようにケース・バイ・ケースであるべきものかどうか。私は労働省として一つのものをまとめていかれる立法措置を心要とし、改正を必要とすれば、その面もおやりになるべきじゃないだろうか。単に民法上、商法上のといったようなことじゃなくして、労働法の特別法としての立場からも考えられなきやならぬと思う。私はこれはきょうの間に合いませんけれども、基本的な方向としてその考えがあるのかないのかお伺いしたい。
  54. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 私からお答えするのはちょっと問題が大き過ぎると思いますけれども、二点の点から申しますと、御指摘のように賃金は労働者の生活の直接のかてでございまするから、これが払われないということは労働者の生活を直接脅かすものであるので、何らか手厚い保護をいたしたいという気持においては、おそらく大かたの異存はないと思うのでございますけれども、さて、それを法律的にどう制度化するかという点につきましては、単に資本主義であるかいなかということではなくして、外国の法制もかなり研究をいたし、私も個人的に法律をやっておりますので、十分調べましたが、なかなかかっこうな法律制度というものがない。外国でも賃金債権をすべての他の債権に、公租公課まで優先いたしまして、特別に保護するという例はほとんど私は知らないのでございますが、これは同じような法律制度上の悩みといたしましては、各国とも共通しておるのじゃないかと憶測いたしておるような次第でございますが、一方におきましては、単に法律論としてでなくして、実体論として、はたして労働者にあらゆる債権に最優先しまして先取り特権を認めた場合に、会社の運営なり、労働者の賃金債権の保護について、はたして十分であるかどうかという点につきましては、実体の面からも問題が多々あると思います。すなわち、銀行といたしましては、倒産するかどうか——運転資金が若干でもほしいという会社があります場合に、つぶれる可能性のある会社に対しまして、賃金債権が最優先するというような状態において金を貸すかどうかということになりますと、一般的にはどうも銀行も消極的になりまして金を貸さぬじゃないか。そうすると、持ち直す会社もみすみす運転資金の獲得が困難になり、そこで立ち直れるべきものも倒れてしまいやしないかといったような実体論的な問題もございまして、私ども精神としてはわかるのでございます。しかし労働省なり、あるいは政府としての基本方針としてはどうか、法律制度をどう考えるかということになりますれば、いま申しました法律制度上の問題として、あるいは金融の実体論といたしまして、まだまだ問題があると考えておるわけであります。しかしながら、われわれは賃金不払い問題については労働基準審議会におきまして、賃金不払い部会を特設し、ここ数年ずっと継続研究いたしておるところでございまして、遺憾ながら般若鉄工、その他最近におきましては、各種産業におきまして賃金不払い事件が起こっておりますが、過去長期間にわたります不払い事件といたしましては、建設業、特に出かせぎ労働者の賃金不払い事件が、件数として過半数を占めておるというような状況にかんがみまして、出かせぎ建設労務者に関連した賃金不払い事件を、現在は監督行政を最重点として指導いたしておる、事実上その問題を解消していきたい、かように考えておる次第でございます。
  55. 藤田進

    ○藤田進君 結論としては、立法上あるいは行政上の措置として、緊急的なものかどうか、どうも僕は答弁の中からつかめなかったわけです。いまかりに、ドイツにしても考え方としては共同決定法といったようなことで、労働者側の利益配分に関する発言の機会、執行する機会というものがあるという一つの考え方が、芽ばえておる。あるいはアメリカの場合を見ても、資本主義であるけれども、労働事案に対する労働裁判という制度は日本と違った形のものが出てくるといったような、全体の中でやはりこれは労働省としては見なければならぬと思う。それから、いまの内閣に社会主義政策をとれとか言わないけれども、かりに参考にすれば、社会主義制度のもとにおいて、むしろこれは租税国家というよりも、いわば企業国家と称せられる中のものも考えられる必要があると思う。あなたのことばじりではないが、どうも銀行が金を貸しやすいように、何ものにも先んじて銀行は債権だ、これは債務履行するということを入れなければならぬようにも響くわけで、それは少し誤りじゃなかろうか、いまの社会のすべての銀行から見ても、その点をひとつ考え直す必要があると思う。いわんや労働基準局長が銀行側に立ってくれたのじゃ困ると思う。  以上のことを私は申し上げて善処をわずらわしたい。
  56. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 私は法律論と金融の実際論につきまして、俗に言われている先取り問題を申し上げたのでございまして、労働者の賃金債権はできるだけ保護いたしたい。こういう点については繰り返し気持を申し上げておる次第でございます。ただ、いわゆる先取り特権の問題として、他の債権に最優先させるという法律制度については適当な立法例も私ども遺憾ながら見当たりませんし、また私法上の権利のぶつかり合いを調整いたしたとしましても、国税とか、たとえば労災保険料、失業保険料の先取り特権をどうするか、こういうような問題、公法上の権利とのぶつかり合いを調整するということになりますと、先取り特権という観点から問題をとらえてみて相当研究いたしましたけれども、なかなか結論を見出しがたい、また労働省の所掌の範囲をはるかにオーバーするものでございまして、困難を感じておるということを申し上げた次第でございます。ただ、直接支払い方法等につきまして、いまの労働基準法上の制度で十全であるかどうか、いささかも改正の余地がないかどうかといったような点、あるいは運用上さらに行政措置として研究に値する問題があるのじゃないかというような点については、今後さらに先生仰せのとおり広い立場から検討いたしたいと考えます。
  57. 近藤信一

    近藤信一君 通産大臣は、中小企業団体の関係で、そちらに出席せられると、こういうことですから、まず通産大臣に二点ばかりお尋ねしますが、工作機械業界全般がこのところ設備過剰と受注減で非常に不況状態にあったことば私も承知しておりますし、また会社更生法による再建が不調に終わり、それから更生会社が再度倒産するという、そういう異例な現象は一体どこに原因があっただろうか、それがもし最初更生できると考えたのが甘かったのか、それとも更生会社として運営していく方法が適切を欠いておったのではないか、その点はどうですか。
  58. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 私は詳細は存じ上げないのでありますが、更生会社になりますときに、十六億円に達する負債の切り捨てを行なわずに、またいまから考えてみますれば、そのときによく従業員組合とも協議の上、ある程度の規模の縮小をはかって、ことばが十分でありませんが、分に応じた再建方針を立てたらばよかったのではないかと、これはいまになって申すことでございますから、そのときにどうして気がつかなかったかと言われればそれまでのことでございますが、省みて考えてみますと、そういうような点がございます。また、いまお話がございましたとおりに、工作機械の業界の全般的な不振が当時予想したよりもきびしかったというようなことが重なってこういう事態に至ったのではないか、かように想像をするわけでございます。
  59. 近藤信一

    近藤信一君 般若鉄工の更生計画は昭和三十八年三月これは認可されまして、それで更生手続中再建合理化資金ということで開銀の融資を希望したわけです。通産省は開銀に対して融資の推薦を行なっておるようでもございますが、推薦にあたっては、通産省として経営内審やそれから工作機械の業界における般若鉄工の位置、それから将来の見通し、こういう点について詳細にわたって御検討をされて、そうして開銀の資金を投入するだけの資格といいますか、そういうようなものが実際に価値あるというふうに判断して通産省は推薦されたことと私は思うのですが、私の聞いているところでは、会社経営者経営態度というものには相当遺憾な点があったように思われるのでございます。通産省はどういうようにそのときに判断をされたのか、それから融資推薦の検討をされたときに、会社が今日のように更生会社の再倒産といいますか、再度倒産をして破産をしなければならぬ、こういうふうなややっこしい、またダブルプレーとでもいいますか、こういうふうなことで破産をしていく、こういうことを一体予想されておったのか、それともこれは立ち直るのだというふうに考えておられたか。それから開銀の融資が実現しておれば今日の事態というものが妨げたというふうに考えておられるのか、この点はどうですか。
  60. 川出千速

    説明員川出千速君) 開発銀行の融資あっせんの経緯でございますが、これは開発銀行に地方ワクというのがございまして、地方開発ワクでございます、名古屋の通産局が間に入って、結局重工業局で取り扱ったわけでございますが、いろいろ問題がございましたので、実は開銀に推薦するまでに相当な期間を要しております。その経常の問題ももちろん中に入るでございましょうし、それから技術の問題、高度の技術能力があるかどうかというような問題もございましたけれども重工業局が最後に推薦に踏み切りましたのは、何とかして般若鉄工を立ち直らせたい、そのためには設備合理化が必要である、またそれによって輸出も可能になるという見通しのもとに、相当の困難はあると思いましたが、実は推薦をしたわけでございます。それが本年の七月でございますけれども、まあ開発銀行のほうでそれを審査中に、本日問題になっておるような更生会社の取り消しというような事態にまで発展をしてしまったわけでございまして、私といたしましては、この件についてははなはだ残念に思っておる次第でございます。開発銀行の融資があったならば、いまのような事態になったかならなかったかという御質問でごさいますけれども、これはこの点何とも——それじゃだいじょうぶだったと言うほどの自信もないというのが実際のところでございます。
  61. 近藤信一

    近藤信一君 じゃもう一つ、大臣が中座されますのでお尋ねしておきますが、富山県の高岡地区というところは新産都市の指定がございましたのですが、あったですね。これは不二越、この地方には不二越とこの般若鉄工、こういうのがございますが、御承知のように不二越、これは非常に不振を今日きわめておるのです。この新産都市における機械工業の将来性について考え、機械工業などの将来性についてどういうふうに考えておられるのか、特にこの地方は機械工業に向かないというふうなこともいわれております。しかし、富山を中心として金沢にも機械メーカーがあり、これは小松製作所がございますし、少し上がれば新潟に新潟鉄工がある、津上がある、こういうふうに機械メーカーがずらっとあの地方にはあるわけでありますが、そこで、この富山県における新産都市として将来機械関係で発展する見通しがあるのかどうか、これはまた、先ほども新聞にもちょっと出ておったわけですが、もしこれは機械メーカーとして、新産都市としての将来性がないということになれば、新産都市をまた富山県として受け入れる体制というものがなければならない。ところが、先日の新聞を見ますると、そういう体制が現在ないと出ております。それならば一体新産都市に指定したという意味はなくなるし、むしろ取り消したほうがいいんじゃないかというふうに私は思います。この点について大臣はどう考えておられますか。
  62. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ただいまおあげになりました不二越の業績不振、あるいは般若鉄工会社更生がうまくいかなかったというようなことから、新産都市の前途はどうかというふうに結んで考えていきますと、お話のような御心配も起きるかと思います。しかし、先ほども御答弁申し上げましたように、工作機械業界の不振というものが大きく影響をいたしております。その工作機械の不振はどういうところで打開していけばいいのか、こういうふうになりますと、これはやはり輸出の振興をせしめなければならないかと思うのであります。あるいは国内需要の喚起につとめなければならないと思うのであります。で、現在引き締め下におきまして、一般的な不況態勢がかような思わしくない状況を呈したと思うのでございまして、私として、それだからといって一がいに高岡市周辺の新産業都市の指定が、これが前途おもしろくない、指定を取り消したらどうか、そこまで考えるのはどうも早計に失するのではないか、また、せっかく新産業都市になったのでございまして、ただいま手元にその詳細の計画は持っておりませんが、最近全国十三の産業都市のそれぞれ業務計画などが出されておるということも聞いております。もしその計画の中に、通産省から見まして前途思わしくない点がございますれば、よく注意をいたしたいと思いますが、いまの情勢下で新産都市の見込みはないのだというようなことはいかがかと思うのであります。
  63. 近藤信一

    近藤信一君 法務省へちょっと二つばかりお尋ねしますが、会社更生法適用を受けて更生手続が開始されると、その段階から一般債権はすべてたな上げにされるわけなんですが、そして更生手続開始後の会社従業員の賃金は、これは共益債権として二百九条で、更生手続によらないで随時弁済される。また更生債権、更生担保権に先立って弁済を受けられるように規定されております。ところが、更生手続中の会社が再度倒産して更生手続を廃止した。そして今度は破産手続に移行した場合ですね、更生手続中の未払い賃金、それから退職金は、会社更生法と破産法の関係ではどういうふうな扱いを受けることになるか、この点はどうです。
  64. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいま仰せのような場合には、更生手続におきましては共益債権になっておるわけでありますが、破産手続に移行いたしますと、それは財団債権ということになりまして、破産手続によらないで随時弁済をするということになるわけであります。
  65. 近藤信一

    近藤信一君 そうすると破産法の関係は、これはもうどうなりますか。今度更生手続中に破産申請がありますね、破産申請になった後におけるところの今度は賃金なんか、どういう関係になっているのですか。
  66. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) その点は破産法に規定がございまして、やはり破産手続移行後賃金もこれは財団債権でございます。もっとも破産骨財人のほうで労働契約の改約ということはできるわけでございますが、引き続いて雇用関係が続きます場合には、これは財団債権だけであります。
  67. 近藤信一

    近藤信一君 給料や賃金については、先ほど労働基準局長からも御説明がありましたが、労働基準法に基本原則の定めがございまして、民法、商法上でもこれは先取特権というものが認められているように思うのです。労働者にとって基本的な権利であるわけですが、般若鉄工はことしの清算後の十月に更生手続廃止の申請をして、そしてその十月に廃止の決定があり、破産ということになったわけなんです。更生手続廃止になると今度は破産手続がとられたと、そうすると今度は労働組合側から抗告が出まして、裁判所で審議しておりまするわけでございますが、破産手続は中断されておると、こういうふうに受け取れるようでございますが、聞くところによりますと、抗告が出される前に裁判所は財産処分の代金は未払い賃金と更生決定以後の一般債権とをこれを平等に分配せよというふうな決定を出しておるようにも聞いておるのですが、破産に移行しても賃金の優先権というものの見解をとっているやに承っているのですが、こういう点はどうですか。さらに、民法や商法でさえも認めている賃金の先取特権の観念というものが否定されてしまうというふうにも思われるわけなんですが、これは法律的に見まして、労働者の権利というものは非常に不安定なことになるのじゃないかというふうにも思いますが、この点はどうですか。
  68. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいま申し上げましたように、この更生手続におきまして共益債権になっております賃金債権は、これは当然破産の手続に移行しますと財団債権になりますので、破産手続によらないでやはり順次ほかの一般の破産債権に優先して弁済していくということになるわけであります。それからたとえば未払い賃金債権、更生手続開始決定前六ヵ月、それ以前の償金未払いなんかでございますと、これは一般の破産債権になるわけでございますけれども、これは優先的な破産債権ということで、一般の債権よりもやはり優先してこれが払われるということになります。
  69. 近藤信一

    近藤信一君 それから更生会社を管轄する立場の裁判所というものは、もし会社の幹部に不正、腐敗というものがあれば、それを正していくと、それから労使の紛争があった場合は、その調停の任務を果たすというふうなことも考えられるわけなんですが、いわゆる更生会社を何とか立ち上がらせて発展させようという裁判所の立場だと思うのですが、ところが、逆に労使の紛争を大きくするようなことを般若鉄工の場合には裁判所は行なっておる。たとえばロック・アウトをやれというようなことを裁判所が会社側に言って、ロック・アウトを許可したというようなこともいわれておるのですが、高岡支部の、これは裁判長の名前まではっきりと出ておるわけですが、そういうことが一体許されるかどうか、この点はどうですか。
  70. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) そういう事例は私初めてでございますが、更生手続を主宰しております裁判官が、会社側にロック・アウトをやれなどという示唆をするなどということは、これは出過ぎたることであると思います。
  71. 近藤信一

    近藤信一君 いろいろと更生会社になりますと、労使の紛争もそこへ出てきているし、それから下請関係法律的な問題も出てくるでしょう。いろいろとそこにむずかしい問題が出てくるけれども般若鉄工の場合には、そういうような、全部県当局までひっからんで何かごたごたしておるようでございますが、やはり裁判所は、私は公正な立場からいろいろな問題に対処していく、こういうことでなければいかぬというふうに思うのですが、そういう点について法務省としてはどういうふうな監督をしておられるか。
  72. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 裁判所の立場は、ただいま仰せのとおりであると思います。あくまで公正中立な立場をとるべきじゃないかと思います。どちらか片一方に味方をするようなことをやるべきことでは絶対にないと思います。
  73. 近藤信一

    近藤信一君 次に、中小企業庁長官にお尋ねしますが、般若鉄工下請、それから関連中小企業の数というものはどれくらいあるか、あなたのほうで把握しておられますか。
  74. 中野正一

    政府委員中野正一君) 般若鉄工下請関連企業は、約六十社ございまして、これら企業の必要資金につきましては、富山県及び高岡市が商工中金、北陸銀行を通じまして、これは金を預託しまして、信用保証協会の保証によりまして、ことしの六月に一億六千万円、さらにその後三千万円の融資を実行いたしまして、倒産防止につとめておるのでございます。特に名古屋の通産局と富山県関係の市というところが全力をあげてこれの処理に当たっておると思います。
  75. 近藤信一

    近藤信一君 いま、長官から下請関係六十社と発表されまして、それにはいろいろと中小企業公庫やらと話をして対策を立てておられるようでございますけれども、やはりもう長い期間で、般若鉄工の場合いままでもだいぶつぶれていった中小企業もあるんじゃないかと思いますが、当面残っておる債権者といいますか、中小企業関係、こういうものに対する立ち上がりに対して金融面だけでなく、何か救済の方法というようなものをあなたのほうで考えておられるかどうか。
  76. 中野正一

    政府委員中野正一君) 六十社のうちで、四社ほどが大体もうほとんど般若鉄工にまる損したというような状況であって、これは私も非常に心配をいたして、先般来名古屋の通産局に指示をいたしまして、これらについて十分金のめんどうだけでなくて、仕事の面についても考えるように指示してございます。まだ具体的にどういうふうにやったという報告は受けておりませんが、さっそく調査をいたしまして、この面の対策を考えていきたいと思います。
  77. 近藤信一

    近藤信一君 会社更生法適用いたしますのは、一時たな上げした債務を、その後会社が更生して全債務を支払うことにあると思うのです。ところが、実際にはそこまで更生する前に、債務を支払わないで帳消しにするというふうなことが従来しばしばあったわけですが、たとえば借金の二、三%ぐらいでこれを棒引きしたり、まあ多くて四、五%なんですが、私どもいままで聞いていると、たいてい三%ぐらいだということを聞いているのです。これでは更生会社に対して下請債権などは実際三%や四%で切られて、じゃその後において下請関係が立ち上がれるかというと、これはもうなかなかむずかしい、一緒に倒れて心中しなきゃならぬという例が多いわけなんです。で、下請業者などは会社更生法による場合、それからまた破産による場合、親会社の破産は、結局のところ債権者の破産ということにもなってくるわけなんですが、こういう例がことしの倒産には多かったと、このことは長官も御承知のとおりだと思うのです。こういうふうに見てまいりますると、この会社更生法というのは、名目は非常にりっぱなような、またきれいなようにも考えられる。が、実際は、これは倒産をして借金を全部整理して、そうしてまた立ち上がるという例も多いわけなんです。結局下請関係だけが泣かされて、更生会社はまたりっぱに立ち上がっていく、こういうケースというものが会社更生法というものでないかというふうに思うのですが、こういうことで、いままで実際この会社更生法による会社が更生して、下請中小企業がその後に立ち上がったというふうな例ですね、そういうものはあるかどうか、あるとするならば、一体どれくらいあるか。
  78. 中野正一

    政府委員中野正一君) いま、中小企業倒産に関連いたしまして、下請関係あたりが非常に犠牲を負って、そうしてまあ一番いい例は、銀行はこれはもうほとんど無傷で、みんな担保を押さえておりますから、それ以外の債権者が泣いてその犠牲で立ち直るというような、これは会社更生法は私もよく勉強しておりませんが、いろいろ最近のケースにぶつかってみまして、もう少し通産省としても勉強していかなきゃならぬというふうに私も感じております。  それからいま御指摘の、会社更生法適用を受けてその後立ち上がり、関連の企業も浮き上がっていっているという例は、これは相当ございます。北九州のこの間の連鎖倒産、ございましたね。あれなんかもこれの中核になった鉄工所あたりは、会社更生法適用を受けまして立ち直って、その関連の企業仕事が続いておりまして、工合よくいっております。そういうケースは相当ございます。ただ、一番心配するのは、いまの般若鉄工のように、会社更生法適用を受けていろいろとやっていたが、まただめになって会社が今度は破産、解散、従業員を首切って全部やめてしまうということになると、従業員の方もお困りと思いますが、そこへ依存しておる下請のほうも困った。これはどうしても、先ほど申しましたように、仕事の世話というか、あっせんというか、そういうことをしなければいかぬわけです。ただいままでの倒産の例では、これは、先ほどもちょっと申し上げましたが、幾ぶんかっこうを変えて、一般の犠牲において会社の名前を変えてやはり仕事を続けるというような、いわば少し悪質なケースもあるのじゃないかと、私も少し調べさしておりますが、まあ大部分のものは、仕事は続けていっております。したがって、そこに失業問題とか、大きな関連の企業仕事がなくなるということは比較的いままでのところはない。したがって、そこに十分立ち直る見込みがございますから、金融面のお世話を主としていかなきゃいかぬ、こういうことだと思います。しかし、今後これはこういう情勢が続くということを申し上げておるのじゃなくて、それは今後の事態は心配しておりますが、いままでのところは比較的そういうケースが多かったのじゃないかと思います。
  79. 近藤信一

    近藤信一君 不二越鋼材と般若鉄工ということは、富山県における二大メーカーと言われておるところなんですが、さきには不二越がちょっと失敗があった。それから今度は般若鉄工破産という事態が起こってきた。北陸地方におけるところ中小企業者は、これは非常に苦境に立たされるのじゃないかというふうにも思うのです。特に、私どもが向こうに行きました場合にも、そういう点でいろいろと陳情も受けたこともあるわけなんですが、下請対策について、これは当然大きなメーカー、こういう不二越、般若というようなメーカーがこういう状態になりますると、下請は直ちに仕事の転換か何かしなきゃならぬのじゃないかと思うのですが、それに対するところのあなたのほうの指導といいますか、またあなたのほうから県当局に対してもいろいろと、管轄は名古屋通産局ですか、これらに対してもいろいろと指示もあろうかと思うのですが、何かそういう考えを持っておられますか。
  80. 中野正一

    政府委員中野正一君) これは、いま御指摘のように北陸の不二越の問題、これはもちろんいま再建途上というか、そういう、会社更正法じゃなくて、相当金融機関の協力も得て、いま再建中でございまして、特に下請関係等については、十分めんどうを見るように再々会社の首脳者に強く警告をしております。しかし、そうは言いましても、いまおっしゃったように、やはり仕事の転換というか、受注先を早めに変えていくということもやらなきゃなりませんが、この点につきましては、名古屋の通産局も中心になって、すでにやっております。名古屋地区の自動車関係仕事等にだんだん転換さしていく、そういう状況でございます。相当うまくいっている面もございます。なお、来年度はひとつ下請あっせん機関というようなものをぜひ半官半民というような形でつくったらどうかということで、いま予算要求をいたしております。それで名古屋、大阪地区あたりは比較的いまのところ御熱心でございますので、そういうところにそういうものをつくろうというようなことで、そういう対策もあわせて検討しておるのでございます。
  81. 近藤信一

    近藤信一君 まだありますけれども、同僚議員も何か御質問があるそうでございますから、最後にひとつ、これは意見になるかもわかりませんが、会社経営者の破産整理によりまして再建をもくろんでおりますが、中小企業下請ですね、債権者やそれから従業員というものが非常に苦境に立たされることは、先ほど来いろいろと言われておるとおりでございますから、これらの救済方法、こういうことに対しましては、ひとつ中小企業庁としても十分に考えて、あたたかい手を差し伸べていく、こういうことでなきゃならないと思うのですが、そういうこともひとつあわせて注文して私終わります。
  82. 赤間文三

    ○赤間文三君 近藤委員の質問に関連をいたしまして、三、四質問をしたいと思います。  まず第一に承りたいのは、われわれが実際見ますと、相当不況ムードと申しますか、不況が激しいように私は考えるわけです。不況というと、物が安くなって売れないというのが普通の状態であるが、一方においては、金の値段がそれほど高くない、一種の何といいますか、インフレめいたような不安も産業界の一部には確かにあります。一部においてはインフレめいたものもあり、それから一部にまた大きな不況という好ましくない二つの私は面があると思う。まず第一に尋ねたいのは、やはりこの不況をできるだけ早く切り抜けなければならない。このためには、このたびの不況はいかなる原因からきたか。経済界のことでありますから、幾多の原因があろうと私は思う。あなた方が政府として見られて、不況が今日きた一番大きな原因といいますか、重要な原因についてのお考えをまず第一に承りたい。
  83. 中野正一

    政府委員中野正一君) これは非常に赤間先生の御質問むずかしい御質問でございますが、やはり中小企業庁におりまして私は考えるのでございますが、高度成長ということは非常に必要なことでございますが、このムードに乗りまして成長ムードというようなものがありまして、民間の設備投資というものがシェア競争に走り過ぎた、もちろん、これはそういういい意味の競争ということは非常に必要でございますが、これによって設備投資をやる、合理化の効果は大いにあがっていくわけでございますが、そこに自分の相応の力以上に背伸びし過ぎたということがあるのではないか、しかし、これは何も民間だけの責任というのではなくて、政府を含めて全体の問題だろうと思います。その結果、今度は国際収支に悪い影響を与える、物価面にも悪い影響を与えるというようなことで、今年の初めから金融引き締めに転ぜざるを得なかった、これもいろいろの見方がございます。金融引き締めということだけでこういうことが十分目的が達せられるかということになると、私は、非常にむずかしい問題である。特に日本の場合は、日銀の窓口による量的な規制ということが中心になって引き締めが行なわれますので、そこにもいろいろ問題があると思いますが、そういう結果、需要面に今度は相当影響が出てきたというのが最近の情勢ではないか。したがって、従来の設備投資の結果かとも言えますが、シェア競争の行き過ぎというようなことから、生産過剰、需要の動向にやや不安が出てきた。その結果、生産過剰というようなことから、だんだんこういう問題に移ってきたのではないか。中小企業の問題についていいますると、これもやはり借金によりまして設備投資をやり過ぎた、最近御承知のようなサンウェーブの倒産がございましたが、ここらを見ましても、やはり非常にいままで業績が伸びたために、その伸びた勢いで今後も需要が伸びるという想定をいたしまして、大きな新工場をつくる、そのために今度は資金繰りが悪化する、しかも一方、需要というものは、競争者があらわれて、頭打ちの状況になってくるというようなことから、非常に経営が苦しくなってきました。それ以外に、倒産に至った理由はいろいろございますが、そういうようなことが各方面に起こってきているのではないかというように私は見て心配をしております。
  84. 赤間文三

    ○赤間文三君 いま聞くと、非常な増産をやっており、しかも、国際収支の幾ぶんアンバランスというやつを、金融引き締めでカバーする、国際収支をよくするというためには、金融の引き締めをやった、この引き締めが長く続けば不況というようなものも、まだ相当先まで伸びるかもしれないというような意味にも憶測するととれるのですが、私は、国際収支のアンバランスというか、好ましくないのは、金融の引き締めだけを、非常に言いやすいからこの点さえ言えばいいというような安易な考え、また、引き締めをとったところが、国際収支はよくなったが不況がひどくなったから、ちょっと引き締めをやめたらいいだろうという、そういう不徹底な考え方というものは、これはぐあいが悪い。私は、やはり生産増強をやるならば思い切って通産省本来の使命である輸出の振興——生産増強ということよりも、好むと好まざるとにかかわらず、思い切った輸出振興を、国をあげての政策をとって、あわせて金融措置と両方が相まって不況対策なりいろいろのものができるのであって、私は、五、六年前から通産省に要望しているのは、輸出の振興を国策としてやってもやり過ぎはない、どこまでやってもこれで困るようなことは起こらない、思い切って輸出振興策をとったらどうかということを私は多年言ってきたのです。毎年相当な予算もされておりますが、この際私の意見としては、不況対策一つとして思い切った輸出振興対策を講じられることが一つの大きな問題じゃないか。これは私の意見ですからお答えは要りません。  次にお尋ねしたいのは、関連して倒産をするというのが非常に多くあります。近藤さんから詳しく関連倒産についての御質問がありましたが、これはもう私は、罪とがもないのに関連して倒産するというのは非常に気の毒な、馬にけられたようなもので、自分の責任じゃなしで関連して、悪いところは何もないのに関連して倒産をする、これが相当現在起こっておるが、非常にこれは何よりも気の毒に思う。まあ露骨に言うならば、本人の責任で、本人が経営がまずくて、本人の努力が足らなくて倒産するのはあれですが、何も責任がないのに関連的に倒れるというのは、これはもう徹底的に救済をしなければならぬ、こういうふうに私は考えております。こういう関連で倒産するものについては、大蔵省としては特別の金融ぐらいのことは考えて、倒産を最小限度に食いとめるということが、私は現在一審大事なことと思う。これはしょうがないというのであきらめられては困る。また、倒産しかかったらしょうがないからあとから徐々に考えるということでは困る。こういうものに対して特別の金融というものをおそらく大蔵省は考えておられると私は思う。どういう方策を大蔵省は考えているか。少なくとも倒産を最小限度に食いとめるためには、関連して倒れるものについて特別の金融制度というものを考えるべきものである、こういう私は考え方を持っている。特に市中金融機関で、先ほど中野長官が何か言われたこと、私は非常に残念に考える。何かというと、何やら調子が悪くなって倒れかかってくるようなときには、市中銀行なんかむしろ逃げ腰のようになって、損害を最小限度に、ひっかからないように逃げ腰になっているというような意味のお話を聞いて、非常に私は残念に考えておる。常にそう金融機関が親切でなくても、やはり倒産かどうかという重大なる業界不況時においては、私は銀行局を中心として倒産を最小限度に食いとめるために努力をしなければならないと思う。それがいよいよ倒産とか会社経営がおもしろくないということになると、われ先にと逃げんとするがごときいま長官の御説明があったのだが、もしそういうことであれば非常に、何をやっているやらわからない。私は、連鎖倒産を国をあげて一つでも少なくするという意味におきまして、また、すべての関連倒産というものを救えとまでは言わない。しかし、その関連倒産の中には救えるものも相当ある。その中にはちょっと救いにくいという運命のものもあるかと思う。そういうものに対して、大蔵省の銀行局はどういう方針をとられるか。もうだいぶ不況も続いて倒産もあった。どういう事項をされたか、美辞麗句は要らぬ。具体的にどういう措置をいたしたか、どういう考えを持っているかということを簡単直明にお答えを願いたい。
  85. 塩谷忠男

    説明員(塩谷忠男君) ただいま御指摘ございましたが、連鎖倒産の問題によりまして健全な経営をやっている企業倒産の羽目に追い込まれるというような事態は、まことに不幸なことでありまして、これを何とか防止いたしたいということにつきましては、赤間委員のお説と全く同意見でございます。この防止の対策につきましては、倒産が起こって後これを救済するというのでなくて、倒産が起こりそうな場合に、事前にどういう手を打つかということが非常に重要な問題であろうと思います。  もう一つは、倒産を起こすような、そういう会社取引をいたしている金融機関がお互いの連絡を密にするということが必要なことでございまして、従来ともすれば金融機関は自分の取引先にけがが起こらないように、相互の連絡はともすれば不円滑であるというような事例が間々見受けられたのであります。  そういうことをいろいろ考えまして、先般十一月の十三日付の銀行局長通達をもちまして、各地の財務局長並びに各金融機関の諸団体に対しまして、中小企業倒産防止に関する通牒を出したのでございます。その内容は、ただいま申しました二点を処理するためであります。  一つは、各財務局が中心になりまして、各通産局あるいは各金融機関、商工会議所、そういうものと緊密に連絡をとりまして随時金融懇談会、これは実は従前からこの制度はあったのでありますが、十分に活用されていなかったのでございますが、この制度を活用いたしまして、何か倒産が起こりました場合に、連鎖的にいろいろな倒産が起こることを防止するために、具体的にその原因及び対策について協議するということをやるようにということをきめたのであります。この懇談会を活発に開きまして、その間各金融機関からそれぞれの情報を受けますと同時に、倒産を起こしました企業に対する事後の処置に遺憾ないようにという趣旨を盛り込んだのであります。その後、この通達の後、各地の財務局は通産局その他と連絡もとりながら現に活動いたしておると存じております。そういうようなことで、できるだけただいま御指摘のような連鎖倒産が起こらないように、あるいは起こりました場合も、その波及をできるだけ防止したいというように考えております。
  86. 赤間文三

    ○赤間文三君 御趣旨の点はよくわかるのですが、具体的にそういうことについて金融の道をはかったというのを寡聞にしてまだ一ぺんも聞いたことがない。みなあげて倒産をできるだけ少なくしようというお話があったということば、お説のとおりであります。そのために、特別に関連倒産を防ぐために金融の道をはかってもらったという事例を一つも聞かない。何か一つでも二つでも、事例を御存じならば御説明願います。   〔委員長退席、理事上原正吉君着席〕
  87. 塩谷忠男

    説明員(塩谷忠男君) 具体的な事例と申しますと、はなはだお答えにくいのでございますが、そういう場合の特別の融資制度というものは格別ございません。私どもは、金融機関に申しておりますのは、健全な経営をやりながら、たまたま連鎖的な影響を受けて倒産に追い込まれると、そういうことがあります場合には、通常の金融のルートに従って、できるだけ親切に金融めんどうを見るようにと、こういうふうに申しておるわけでございまして、これは、今回の通達を出しました以前から、機会のあるたびにそういうことは申しておるのでありまして、ただいまのところは格別の融資制度ということでやっておりませんが、各取引金融機関が、それぞれの趣旨に従って金融をつけておると、かように思っておるわけでございまして、具体的な事例をここで申し上げられないのは、はなはだ残念でございますが、気持ちといたしましては、健全なものはできるだけ通常の金融のベースで救済する、こういうように考えております。
  88. 赤間文三

    ○赤間文三君 それをなぜしつこく尋ねるかといいますと、実際になると、あなたのここでのお話しと現実は反対になっている。調子のいいときは、金が余っているようなときには、銀行は金を借りてくれ、むしろ積極的に頼みに来るくらいの熱意がある。いよいよ調子が悪くなってきますと、幾ら頼んでも、中野長官のおっしゃったような、もう親切よりはむしろ逃げ腰になる。そういうところにはあまりさわらぬほうがいいというふうな空気が過去において非常に多い、事例としては。そういう事例ならば、私は幾つでも御説明ができる、具体的に。ある会社が左前になった。長い間の取引銀行がにべもなく相手にしてくれぬために倒産をする、こういう例はぎょうさんある。われわれから言うときば、そのときに親切にしてくれれば倒産せぬでも済むのに、長い間のお得意の銀行さんが、いよいよ左前になると、いまのお話しとうらはらで親切心がない、見向きもしないために倒産する。そういう事例のほうが多いように思う。私は、まあ研究を願っておきたいのは、その大事な、こういう不況はめったに、私は少ないと思う。しかも、まじめにしっかりした経営をやっておるのが、自分の全然関係のない関係で倒れる、これはもう実に気の毒。率先してこういうことについては、そういう特別の融資制度というものを、むだなことはできますまいが、特別の融資制度を常々から研究願っておくことは、倒産防止の一番有力なものじゃないかと、こういうふうに私は考えております。その点御研究を願いたいと思います。  その次にお尋ねしたいのは、例の、この商工委員会におきましても、またあらゆるところで、今日のような不況にならぬときから、非常にわれわれがおもしろくないと思って質問し、また御努力願っておったのは、例の歩積み、両建ての問題なんです。これは今日のような中小企業倒産が見られないときにおいても、これをひとつやめさしてもらいたい、これはみんな商工委員会一致の強い意見です。たびたびあったと思う。今日は驚くべきほどこの倒産がふえるような気がし、不況になっておる。こういうときこそ、さらにまた、歩積み・両建というものは私は取りやめていただきたいという念願に燃えておる。ここにも公正取引委員会の拘束預金に関する調査結果が出ておりますが、これを見ても、たとえば名古屋相互銀行、あるいは信用金庫、あるいは大阪の都市銀行あるいは信用金庫、信用組合、こういうところを見てみますと、われわれが長い間かかって陳情し、また質問をしておったにもかかわらず、拘束預金の比率が、いま言った名古屋、大阪は高い、表に出ておる。これは普通のときでもわれわれは困ると言うのです。まして、こういうような倒産のときに、こういう結果が出ておると、これは非常におもしろくない。われわれ議員が命がけで中小企業の振興のために熱烈に、まじめに、しかも長い間かかって陳情しておったことが、何も一向現実に移されない、非常に残念なことだと私は考えております。それを大蔵省は、たびたび、方針で、それは白粛させるようにする、何べんも私は聞いた。また、公取の方針としても、いろいろな考えを持っておる、あるいは独禁法の特殊指定をするというようなことまで説明を聞いた。それをいつおやりになったか考えても、いまだに、私勉強が足りぬかしらぬが、一向独禁法による特殊指定ということも、話だけで現実に行なわれておらぬというように思う。まあわれわれから見ますと、あれほどお願いをしたけれども、一向実現をされていない、こういう点について、ひとつ大蔵省並びに公取のそれに対する見解を承りたい。特に時節柄真剣にこの問題は御答弁を願いたい。こういうことをお願いします。
  89. 塩谷忠男

    説明員(塩谷忠男君) ただいまお話しのございました歩積み・両建ての自粛問題につきましては、本年の六月に衆議院の大蔵委員会におきまして、不当な歩積み・両建ての規制に関する決議というものをいただきました。その後この自粛の具体的な自粛方法を検討いたしました結果、都市銀行及び地方銀行につきましては、来年、つまり四十年五月までに、それから相互銀行、信用金庫につきましては、四十一年の五月までに、自粛の対象となる拘束性の預金を全部やめるということにいたしました。その後、五月及び十一月末の時点をもちまして、各金融機関から自粛の進行状況に関する報告を徴しておるわけでございます。十一月末の数字は、この十二月中に私どもの手元に集まってまいります。それを受けまして、来年早々に、大蔵省及び日本銀行の共同によりまして、各金融機関の特別検査を実施する予定にいたしておるのでございます。ただいま御指摘のありました公正取引委員会の報告は九月の時点でございまして、若干の改善は見ておりますが、まだ自粛が始まりましてから時日の経過が浅かったものでありますから、その後十一月の数字を見ますれば、おそらくかなり改善されておると、かように思っておるわけでございます。私どもは御指摘を待つまでもなく、不当な歩積み・両建てを全廃したいということにつきましては、長らく懸案といたしておりまして、日常の行政指導の際にも、あるいはそのつど、強くその自粛を求めてきたのでありますが、いろいろ商慣習その他の関係もございまして、従来あまり実効があがらなかったのでございまして、はなはだ申しわけない次第でございますが、このたびは国会の御協力も得まして、相当強くこれを申しておりますので、現在は各金融機関とも、従前とは全く異なった心がまえでこの解消に努力いたしておると存じております。来年五月には、いわゆる普通銀行につきましては、全部自粛措置が行なわれるわけでございまして、その結果を十分ごらんいただきまして、いろいろまた御指導をお願いいたしたいと思うのでございますが、目下のところは、そういう自粛措置が進行中であるということをお伝えいたしたいと思います。
  90. 竹中喜満太

    政府委員竹中喜満太君) 歩積み・両建ての問題につきましては、先ほども質問がございましたように、公正取引委員会におきましては、昨年来これを検討いたしまして、要すれば、この不公正な取引方法をなくしてまいりたい、かように思っていままでやってまいりましたが、本年三月末、約二千五百の中小企業につきましては、歩積み・両建ての状況調査いたしました。また、九月末で四千ほどの中小企業につきまして状況等の調査をいたしました。これを比較してみますと、多少はよくなっているというような印象は受けておりますけれども、これは対象の数あるいは対象が違っておりますので、厳密には比較ができないのではないかと思います。それで、先ほどお話しございましたように、大蔵省のほうは、衆議院の大蔵委員会の決議もございまして、行政指導によってこの改善につとめるというような動きがございますので、私どものほうもその結果を見ておるのでございますが、それと同時に、要すれば、いつでも不公正な取引方法としてこれを処断できますように、公取の特殊指定を検討しておりまして、その規制の案が最終段階にまいっておるというような状況でございます。
  91. 赤間文三

    ○赤間文三君 この問題は、われわれ非常に重要に考えておりますので、来年の五月とか言わぬで、今日でも中小企業のための政策を思い切ってやらないといかぬと思うので、能率のあがるように努力をいたしてもらいたいと考えております。  次にお尋ねしたいのは、下請代金の支払い遅延でございます。これは何度も議論はされたのですが、私の見るところでは、あれほど何べんも議論があったが依然として改まらない。むしろこういう不況時代になってくると、改まるどころの騒ぎじゃなくて、ますますその反対の方角に行くのじゃないか、こういう心配をしておる。われわれは、たびたび下請代金支払い遅延防止を強化する、こういう方針をとっておりますが、これについて中小企業庁あるいは公取のほうで、今日のような不況時代に対してどういうふうな方法を講じるか、ざる法と言われておるだけにむずかしい。しかも、こういう不況のときにおいては、なおさら私はむずかしい問題だと考えておるが、このむずかしい問題を、企業庁、公取はどういうふうにあざやかに御処置願っておるのか、御答弁を願いたい。
  92. 中野正一

    政府委員中野正一君) ことしの三月の国会におきまして、やはりこの問題の御指摘がありましたように、下請代金支払遅延等防止法の厳格な運用をやるべきじゃないか、必要があれば法改正をやるべきだという御意見がございました。ちょうど三月の公定歩合の引き上げがございまして、その影響もあって、ますます下請代金支払い遅延の状況がひどくなるのじゃないかということが憂慮されました。それまでは、中小企業庁におきましては、下請のほうの子供のほうの関係から状況を調べて、そうして親に及ぶ、こういうやり方をやっておりまして、公正取引委員会のほうで親のほうを調査する、こういうふうに仕事を分けてやっておったのでありますが、そういうやり方ではどうも不十分である、むしろ中小企業庁がみずから乗り出して親工場のほうの調査をすべきじゃないかという御意見が出まして、さっそくこの問題を取り上げまして、本年の四月から調査を始めまして、これはそういう状況で予算もなしに始めまして、私は自分で言い出したことで途中でやめるわけにいきませんので、非常に困っておるのです。予算は流用をもちましていままでやってきたのです。来年は人と予算を相当要求いたしております。十分旅費等の金もつけて調査を十分にやりたいと思っております。大体一年間に八千の親企業につきまして、これを四回に分けて調査をするということで四月——七月と調査いたしまして、いま七月——九月の分について調査をやっております。その結果、ざっと申し上げますと、二千近くの工場を調べて、大体八割近く回答が来まして、そのうちの下清代金支払遅延等防止法違反の疑いが濃いというものが、第一回の調査でも三百数十件、第二回の調査でも三百数十件出ております。さっそくこれを現地におきまして通産局が中心になって呼び出しまして、ヒヤリングをやりまして、そうして第一回の調査については、七十件ばかりの改善の計画を出させまして、しかも、それを出させただけじゃなくて、立ち入り検査をやりまして、具体的に支払いの状況等の指示をいたしまして、いま改善の方途を実行中であります。それでどうしても聞かないのは、これは公正取引委員会に突き出すということをきつくやるつもりでおります。初めて中小企業庁のほうで親企業のほうを調べて、そうしてそれの関連の下請企業に及ぼす従来のやり方と逆のやり方をやりまして、これは相当企業からは少しきつ過ぎるのじゃないかという問題も起こっておるくらいでございますが、これは今後ますます、最近のかような情勢でございますので、きつくこれをやりたい。むしろ下請代金支払遅延等防止法の適用がない分野に、いま非常に支払い状況が悪くなって問題が起こっておる状況と見ております。しかし、これは現存のやり方で十分だというのじゃなくて、法の改正そのものにつきましても、並行いたしまして、いま中小企業政策審議会の下請小委員会におきまして、専門の方々に集まっていただいて研究をいたしておりまして、これは公正取引委員会とも十分連絡をとりながらいま研究いたしております。
  93. 竹中喜満太

    政府委員竹中喜満太君) 公正取引委員会といたしましては、御承知のように、年間二千の親事業者に対しまして検査をしておりまして、あるいは法律に基づく勧告をし、あるいは行政指導による改善計画を提出させて指導しております。これにつきましては、先ほど中野長官からお話がありましたように、両方がダブることがないように連絡を密にいたしましてやっております。しかし、何ぶんにも親事業者の数が非常に多いものでありますから、相当数をこなさぬ限りには、なかなか所期の目的を達することができないのじゃないかと思います。私どもといたしましては、来年度の予算では人員その他を要求しております。それとあわせましてこの法律を改正する必要があるかどうか、あるいは改正をするとすれば一体どういう点を改正するか、ただいま検討しております。
  94. 赤間文三

    ○赤間文三君 もう時間が過ぎましたので最後にお願いだけして引き下がることにいたします。  私は、中小企業の問題は重大なときにきておるから、中小企業庁長官はじめ命がけで働いておられますことを感謝しております。しかしながら、私はやっぱり中小企業企業庁だけでなく、むしろ銀行局あたりも大いなる援助を願うということが、やっぱり倒産を防止する上に大きな問題ではないか。なお、露骨に言うなら、おもしろくないときには金融機関は貸さないというような態度がもしあるとするならば、非常に中小企業の問題はこれはうまくいかないと思います。中小企業金融も、三つの専門の機関が一生懸命になっている。やはり何としても、主銀行が、思い切って、こういう企業への協力精神がどれだけあるかということが、この倒産をあるいは半分に食いとめるか六割に食いとめるか、あるいは必要以上に——必要以上と言っちゃおかしいが、食いとめ得るにかかわらず、なお倒産がある。金融機関の私は態度に非常にかかるところが多いと思う。残念ながら今日まで見るところでは、どうもそういうところの御協力が足らないというふうに私は思う。どうか、以上述べた点はいずれもこれは前からの問題でありまするが、金融機関が今後のこの中小企業の御産防止に一そうひとつ努力する、こういうふうにひとつ主銀行その他を督励して、最小限度にどうかひとつ、特にこれは銀行局のほうに。  それからもう一つ通産省にお願いしたいのは、この不況が何できたかというやつを徹底的に、やはり倒産原因を、この複雑な経済状態、これをやはり徹底的に調べて、それに対する、何というか、対策を講ずるというのも私は一つの問題じゃないかと思う。ただ金融だけでどうこうするというだけでなくて、願わくは、思い切って、通産省あげて、ひとつ不況対策の一助として輸出の振興、世界への輸出の振興を、好むと好まざるとにかかわらず、私は期してもらう。そうすれば、増産しておっても、あと輸出がきけば、これは不況解除の一つのあれになるのじゃないか。由来、どうも通産省は、輸出振興について、絶えずやっておられるが、なお私らから見ると、日本の国は輸出振興しなければならぬ国のわりには、力が足らぬ。どうかひとつ、輸出振興を一つ不況打開、中小企業の倒れるのを防ぐ国の方策としても採用してもらうことをお願いして、私の質問を打ち切ります。ありがとうございました。
  95. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) 今度私この席から、次に四、五分質問したいのですが、幸い大蔵省の財務調査官が見えております。公取も見えていますから、二、三ひとつお伺いしたい。  先ほど赤間委員が述べられたように、現在、不渡り手形は続発するわ、倒産は相次ぐわということで、不況の様相が非常に濃くあらわれているように見えるのです。ところが、一方物価はどんどん上がるわ、人手は相変わらず不足するわ、求人難であるわ、こういう現象で、これは好景気をあらわしている現象なんですね。そこで、これは全体大蔵省は、財務当局は、現在の時点でこれを、産業界は好況なのだと見ておるのか、不況なのだと見ておるのか。まずそれから伺いたいわけなんです。
  96. 塩谷忠男

    説明員(塩谷忠男君) たいへんむずかしい問題でございまして、一言でお答えいたしかねるわけでございますが、お話しのように経済指標を統計的にながめておりますと、生産指数もかなり高い水準に動いております。消費需要も依然として根強い、あるいは物価は、消費者物価を中心にして、かなり強調である、日本銀行券の発行高の推移を見ましても、前年よりかなり高い水準で動いているといいましたように、普通の常識でいえば、非常に好況のような状態を呈しているわけでございますが、しかし他面、会社の業績は軒並み悪くなっておりますし、中小企業等を中心にいたしました倒産も増加いたしております。いろいろ摩擦的な現象も出ておりまして、経済の実体面におきましては、結論的に申しますと、かなり不況の現象が強いと、かように判断をいたしております。
  97. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) 伺っておりますと、やはり好況なのか、不況なのかわからない。好況でもあれば不況でもある、こういうお答えに聞こえるわけなんですが、あるいはそうかもしれないと思うんです。そこで私は、現在は、あらゆる事態が示しているように、好況でもあれば不況でもある、こう理解するのですが、つまり非常な好況から、だんだんと好況の程度が下がってきた。そうして、下がってくるという事態の推移が不況という形をとってあらわれている、こう思うわけなんで、日本銀行券の発行高から見ても、徹底的な不況とも考えられない。生産指数が上がっている。生産過剰と言いながら、年産指数が上がっていくというのは、これも不況だとは考えられない。そこで、これはこういうものじゃないかと思うのです。つまり現在の事態の示すとおり、物価がどんどん上がっていくわ、人が幾ら集めても集まってこない、この事態が示すとおり、好況なのである。その好況さが、一時から見ればだいぶ下がってきたが好況なのである。しかし、これくらいの好況ではもちこたえられない中小企業がたくさんある、こういうことじゃないかと思うのですが、財務調査官、どうお考えですか。
  98. 塩谷忠男

    説明員(塩谷忠男君) その点につきましては、お話しのとおりでございまして、従前の景気循環の過程におきまして、国際収支が悪くなる、それに対しまして金融の引き締めによって対策を講じて、ほぼ一年ぐらいで国際収支がよくなるというような場合におきまして、好況、不況などというのは、いわば景気循環のひとつの流れとして起こっているように判断できるのでございますが、今回の場合は、単なる景気循環の動きというほかに、かなり構造的な問題を含んでいるように思います。全体の経済構造と申しますか、そういうものが背後にあるものでありますから、表向きの経済指標とは別に、経済の個々の部面においていろいろな困難が起こっている、こういうようにまあ判断ずべきじゃないかと思うのであります。したがいまして、その対策も、従前のように単に金融を締めて、それによって経済の行き過ぎにブレーキをかけるというようなことでは、十分効果があがらないわけでありまして、やはり構造的な部面に対するいろいろな配慮を加えていかないと、基本的な改善ができないのじゃないかと、かように思っております。
  99. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) 構造的な事象に対して、基本的な配慮ということは、具体的にどういうことをやっておりますか。
  100. 塩谷忠男

    説明員(塩谷忠男君) 私もその経済の専門家でございませんので、全般についてお話し申し上げる立場でございませんが、多少私見を交えましてお答えいたしますれば、やはりこの数年来の経済の高度成長の過程におきまして、非常に成長した産業の陰に、やや成長のおくれたものがあるとか、あるいは近代化、あるいは合理化が進んだものの背後に、やはりそういう近代化の波についていけないものがあるとか、あるいは大企業中小企業との間に若干の格差が生ずるとか、あるいは労働力が若年層において非常に不足しているとか、そういったような問題が相当からんでいるように思うのでございます。
  101. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) まあこれは議論になりそうですから、やめるといたしまして、一方、金融を引き締めながら、他方では中小企業のために何百億かの金を出す、あるいはまた、いろいろ金融を緩和するということが行なわれております。一方を引き締め、一方では緩和している。そうして一方で緩和することは、金融引き締めの効果を減殺すると私は思うのです。そこで、つまり物価の騰貴にも関係ないし、人間の求人難も緩和できない、こういうことになると思うのですが、根本的には財務当局は、総体的に見てもう少し金融を引き締める、つまり通貨の量が多過ぎると考えているのか、あるいはもう少し通貨を増発して、金融を楽にしなければいかぬ、こう考えているのか、その根本的な理念を承りたいと思います。この点は、どうですか。
  102. 塩谷忠男

    説明員(塩谷忠男君) ただいまの経済の動きと通貨量の関係につきましては、これは昔からいろいろ議論がございます。ただ最近の事例について申し上げますれば、日本銀行券の発券高の推移を見ますと、大体前年の同期に比べまして一六%程度高い水準で例月発行されているわけであります。以前の引き締め時におきましては、やはり引き締め効果が浸透するに従いまして、日銀券の発行高というものは落ちているのが例でございます。物価問題につきましても、従前の例から申しますれば、卸売り物価は大体引き締めとともに下降に入りますが、消費者物価も、時間のズレを別にいたしますれば、やがて下がるという傾向をたどっているわけでございますが、今回はそういう動きがあまり明瞭にあらわれておらないわけであります。しかし、通貨の発券高が非常に高いといいましても、これがはたして一体現在の経済活動に対して十分であるのか、足りないのかということになりますと、これは学問的にもいろいろ問題がございます。ただ最近の日銀券の発券高が多いのは、一つには、やはり消費部面における需要が相当強い、たとえばレジャーブームその他によりまして消費需要が非常に強い、あるいは賃金を中心にした人件費の上昇によって現金払いが多くなるというようなことによりまして、単に発券高の推移そのものだけで経済活動全体の動きを判断するということには、多少問題があると思うのですが、しかしいずれにしましても、現在の引き締めが発券高の状態によって強いのか弱いのかというような見方は、非常にむずかしい問題でありまして、私ども断定的に、発券高の推移をもって、あるいは通貨量の現在の水準をもって引き締めの効果を云々するということは、やや危険じゃないかと思うのでありまして、むしろ金融市場全体の資金の需給の逼迫度合いとか、あるいは各企業の資金繰りの状態、そういったものを見まして、引き締め効果の度合いを判断をしたほうがいいのじゃないか、かように思います。
  103. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) そこで、いま金融の話が出たわけなんですが、中小企業に豊富に金融をいたしますと、その中小企業へ行なった金融はそのまま親企業へ、大企業に流れ込むという現象がしばしば起こるのですね。ほとんどそうなるといっても過言でない。というのは、中小企業は金がゆっくりあるようになると、手形の日限を私のところでは、じゃ半年でもいいとか、八ヵ月でもいいとか、そういう競争をする、こういうような事態が起こってくる。下請企業が苦しめば、親企業は幾ら抑えても払わなければならない。払わなければ下請企業がつぶれちゃう。そうすると、親企業が品物をつくると、下請企業でつくるよりも高くつくのです。親企業がつくると高くつく。だから、日本下請企業というものが非常に多いのです。だから、不請企業金融が潤うと、その金で今度は下請同士が大騒ぎをして親企業競争を演ずる。それが下請企業がどうやっても浮かび上がれない一番大きな原因なのです。そこで、これは、幸いきょう公取の方々が見えておるからお伺いしたいのですが、中小企業、零細企業下請企業、こういうものの不況は、ほとんど過当競争原因なのです。日本人式のめちゃくちゃな過当競争をしゃにむにやるのが原因なのです。こういう下請企業、零細企業、ことに商業などを救うのは、金を出すよりも、予算をたくさんつくるよりも、彼らに価格の協定をやらして、そして国家権力でその価格の協定を保護するということが私は何より大事だと思うのです。そういう独禁法の改正を公取は考えたことがないか、やるおつもりはないか、お答えをいただきたい。
  104. 竹中喜満太

    政府委員竹中喜満太君) 中小企業の問題につきましては、これは中野長官も御説明でございますけれども、御承知のように、中小企業団体の組織に関する法律という法律がございまして、この法律に基づいて協定ができることになっております。そのほか、中小企業協同組合法、環境衛生法等があり、中小企業については相当大幅に独禁法の適用除外が認められています。これらは、独禁法それ自体による適用除外ではなしに、別に中小企業に関する法律があって適用除外されているわけです。
  105. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) おっしゃるのは、それは実効が一つもあがってないのです。というのは、加入、脱退が自由だから実効がちっともあがらない。加入、脱退が自由でないのは輸出入取引法による組合だけなのですね。だから、ああいう組合法を中小零細の企業者につくってあげるということが何より大事だと思うのですが、そういうお考えはあるかないか、それだけ承ってやめましょう。
  106. 竹中喜満太

    政府委員竹中喜満太君) 公正取引委員会は、御承知のように独占禁止法を実施している立場でございまして、これの適用除外を私のほうが考えるというのはちょっと筋からいいますとおかしなことでございまして、むしろそういう必要があるということと、独占禁止法を励行するというバランスの問題でございまして、もし必要であるということならば、その理由を十分納得させてくだされば、私どものほうで独占禁止法の厳守といいますか、励行というか——励行ということのバランスでいけると思います。
  107. 藤田進

    ○藤田進君 非常に勉強にもなり、また機会を改めて私も質疑を行ないたいと思うのですが、まあ現在、党の筆頭総務であり、通産大臣、大蔵大臣クラスが事務当局に質疑をなすっておるような感じがするわけです。きょうのところはこれでどうでしょう。
  108. 上原正吉

    ○理事(上原正吉君) もしほかに御発言もなければ、本日はこれをもちまして散会いたします。    午後四時三十七分散会      —————・—————