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国務大臣(
高橋衞君) 御
承知のとおり、
物価はいわば結果でございます。経済活動の相関
関係において出てきた結果でございます。したがって、経済の諸元というものは、それぞれ海外の
情勢もございます、国内の
情勢もございますが、いろいろな条件によって変動いたしますので、これをきちっと押え込むとか、またはこうするというふうなことは、非常に困難なことでもあり、また自由主義経済においてはなし得ざることかと存じますが、しかし経済運営の基本的な
態度としては、経済の成長というものを安定的な基調に持っていく、これが
一つの基本的に大切な事柄であろうと存ずるのでございます。そのほかに
物価に
影響する
ところのいろいろな問題がございますが、最近の
物価上昇の原因等を調べてみますと、たとえば
中小企業関係または農業
関係に
相当大きな原因がございます。それで、なぜ
中小企業関係、農業
関係の産物について
物価が上がってくるかと申しますと、そこにおける
ところの生産性の
上昇が他の部門よりも非常に立ちおくれておる、わずかな生産性の
上昇しか見込まれないという
ところに根本的な原因があろうかと存じます。したがって、本日
経済閣僚懇談会において御決定を願ったものにも、農業、
中小企業等における
ところの生産性の
上昇が立ちおくれたために、
物価上昇のコスト画からくる
ところの原因になっている。そういうふうな原因を除去するために、これは他の面、ひずみ是正という面からも当然に重点にならなければならぬのでありますが、
物価安定という面からもここに
相当大きな
ウエートを置いて、
政策の重点をここに指向して
予算の編成をすべきであるということを強調いたしておる次第でございます。
なおまた、現在の
物価上昇の
一つの原因は、所得の平準化の作用から、大
企業と
中小企業の間における
ところの、少なくとも新卒、若年労務者については完全に賃金が同じになったということは、
大倉さんも御
承知のとおりでございます。そういう、つまり、所得の平準化の作用から、生産性の
上昇がないにもかかわらず、賃金だけは上げざるを得ない、それが結局
物価にはね返らざるを得ないという面もございます。
ところが、中高年令層においては、なお十分に自分の能力ほどに働く機会を持っていない方々もございますので、労働の流動性を
促進するというふうな施策も当然に必要になってまいります。また、農産物等につきましては、流通過程、つまり生産者の手取りは非常に少ないが、にもかかわらず
消費者の手に渡った場合には
相当高い値になるという現象がございますので、ここに
おきましては流通過程の
合理化ということがどうしても
促進されなければならない。輸送その他の連絡も必要でございましょう。または、ここ二、三年の
実績の示す
ところでございますが、たとえばカンラン等において、今年の春の
ごときはほとんど腐りまして、ただでいいから持っていってもらいたいというような
状態、その反動として作付面積が減るということで、そのために今年の秋は、そういうふうな
野菜が暴騰したという結果を来たしておる。こういうものについては、主産地によりまして部分的に価格安定
制度が行なわれておりますが、こういう
制度をもう少し
地域的にも品目的にも拡大していくと、こういうふうな努力が必要である。そういうことで、各方面から
物価を安定させる施策を講じていこうといたしておる次第でございます。
なお、いま
一つ最後にこの点について申し上げて
おきたいことは、御
承知のように、
物価を
引き上げるやはり
一つの原因は、
国民総需要の点にあるわけでございます。しこうして、個人消費の伸びが、過去三カ年間毎年一五%台を示しておるのでございます。前年に対して一五%台の増加を示している。これが
国民総需要を非常に大きく押し上げてきていることは、これはもう否定すべからざる事実でございます。そういう意味で、個人消費の健全化という面で、さらにこれは
国民の御協力を得なけりゃならぬ問題でございますが、私
どもは
国民に消費を節約しようと申し上げるんじゃないのでございます。
国民生活の内容を、着実に、調和のあるように向上していくことは、これは
政治の目的であろうかと存じますので、それはいいのでございますが、個人消費の中にも
相当なむだがございます。また不健全な要素が
相当あるという点から、そういうふうな点を何とか健全な方向に向けていただくということによって、個人消費のむやみな伸びというものがある
程度堅実な
態度に変わってくれば、これがまた大きく
消費者物価にいい
影響を及ぼしてくる、かように
考えまして、そういうふうな努力を
政府は呼びかけて
国民の協力を得たい、かように
考えておる次第でございます。