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1964-12-07 第47回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十二月七日(月曜日)    午前十時七分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 青木  正君 理事 植木庚子郎君    理事 中曽根康弘君 理事 野田 卯一君    理事 松澤 雄藏君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    井出一太郎君       井村 重雄君    今松 治郎君       江崎 真澄君    小川 半次君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       上林山榮吉君    小坂善太郎君       重政 誠之君    正示啓次郎君       田澤 吉郎君    登坂重次郎君       灘尾 弘吉君    西岡 武夫君       西村 直己君    橋本龍太郎君       古井 喜實君    古川 丈吉君       保科善四郎君    松野 頼三君       水田三喜男君    湊  徹郎君       山本 勝市君    淡谷 悠藏君       石野 久男君    岡田 春夫君       加藤 清二君    川崎 寛治君       五島 虎雄君    河野  密君       田中織之進君    多賀谷真稔君       中井徳次郎君    中村 重光君       安井 吉典君    山花 秀雄君       横路 節雄君    今澄  勇君       小平  忠君    永末 英一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣         外務大臣臨時代         理       佐藤 榮作君         法 務 大 臣 高橋  等君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 愛知 揆一君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  櫻内 義雄君         運 輸 大 臣 松浦周太郎君         郵 政 大 臣 徳安 實藏君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 小山 長規君         自 治 大 臣 吉武 恵市君         国 務 大 臣 小泉 純也君         国 務 大 臣 高橋  衛君         国 務 大 臣 増原 恵吉君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府総務長官 臼井 莊一君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房公務員制度         調査室長)   岡田 勝二君         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  竹中喜満太君         防衛庁参事官         (長官官房長) 小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  堀田 政孝君         防衛施設庁長官 小野  裕君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (経済局長事務         代理)     加藤 匡夫君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局長         事務代理)   瀧川 正久君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         文部事務官         (大臣官房長) 西田  剛君         中小企業庁長官 中野 正一君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 十二月七日  委員赤澤正道君、稻葉修君、保科善四郎君、多  賀谷真稔君、堂森芳夫君及び安井吉典辞任に  つき、その補欠として西岡武夫君、湊徹郎君、  橋本龍太郎君、横路節雄君、田中織之進君及び  中村重光君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西岡武夫君、橋本龍太郎君、湊徹郎君、川  崎寛治君、田中織之進君及び中村重光辞任に  つき、その補欠として赤澤正道君、保科善四郎  君、稻葉修君、多賀谷真稔君、堂森芳夫君及び  石田宥全君議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  閉会中審査に関する件  昭和三十九年度一般会計補正予算(第1号)  昭和三十九年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和三十九年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計補正予算(第1号)、昭和三十九年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和三十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、締めくくり総括質疑に入ります。  辻原弘市君。
  3. 辻原弘市

    辻原委員 ただいまから社会党を代表いたしまして、補正予算審議の際にあたって本会議予算委員会を通じて行なわれましたそれぞれの質疑についての最後の締めくくりをいたしたいと思うのであります。  私は、当委員会で、また本会議総理はじめ関係所管大臣お答えをじっと聞いてまいりましたが、佐藤内閣の発足にもかかわらず、まことにわれわれとしてはおっしゃっている点がきわめて不明確であって、今日国民が待望しておる佐藤政策というものについて、その全貌を今日までつかむことが非常に困難であるということを私ははなはだ遺憾に思っておるのであります。したがいまして、この機会総理をはじめ関係大臣からひとつ率直かつ具体的にお答えを賜わりたいと思うのであります。  私は、きょうは外交をはじめまた当面する経済の問題、また若干の内政問題について特にこの機会に明らかにしなければならぬ点をお尋ねをいたすわけでありますが、本論に入りまする前に一点お尋ねをいたしておきたい。それは、佐藤内閣の政治の姿勢にも関する問題であります。  お尋ねいたしますが、去る四日の閣議で、ただいま来日中と伝えられる米空軍ガーチス・ルメー参謀総長に対して、わが国から勲一等旭日大綬章が贈られるということをきめられた由伝えられておりますが、これは事実でありますか、お伺いをいたします。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 事実であります。
  5. 辻原弘市

    辻原委員 これはどういう理由でもって贈るということを、あえて閣議が決定せられたのか、承ります。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ルメー空軍大将が戦後におきまして、わが国自衛隊建設につきまして非常な功労があった、こういうことであります。
  7. 辻原弘市

    辻原委員 いまの総理お答えではどうもはっきりいたしませんが、私はこう思う。ルメー参謀総長は、これは言うまでもなく、終戦当時グアム勘にありました米第二十空軍司令官として、わが国に対する空襲攻撃の直接の責任者指揮官であったということは隠れもない事実であります。しかも単なる攻撃部隊の直接指揮官というばかりではなくて、今日わが国の裁判所があえて国際法違反であったと判決をいたしております広島長崎に対する原爆投下に対する指揮官であった。同時にその投下方法をくふうをしたその人であったわけです。そういう今日の最も重要な問題である原水爆反対という国民悲願に水をさすような叙勲行為というものを、なぜ一体政府はおきめになったのか。私には、また国民の大多数には非常に不可解な点だろうと思うので、もう少し総理から詳しく事情なり政府見解というものを私は伺いたいと思うのであります。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 戦時中の問題につきましてはいろいろ議論があると思います。ただいま日米両国友好関係を続けております。戦争時代の敵国であったアメリカ友好関係を続けております。その方が戦後におきましてわが国自衛隊建設につきまして非常に功績があったといえば、過去は過去、もうすでにそのことを忘れて、新しい事態について私どもがその功をねぎらうというか、報いるというか、これは当然のことだと思います。私は、大国の国民というものはいつまでもそういう事柄にとらわれないで、真に今後のあり方、またその後のわが国に対する功績、それを十分考えて処置する、これはあたりまえのことだ、かように思っております。
  9. 辻原弘市

    辻原委員 そういう総理見解は、私は決して今日の国民感情は許さないであろうと思います。私もそれぞれ功績のあった人、ないしは国際慣習として勲章を贈るということについて、あえてこれを否定するものではありません。またそういう行為を傷つけ、けちをつけるという考え方はございません。しかしながら問題は事と次第によるのであります。戦争のことはさっぱり忘れて、その後における功績だけをたたえましょう——私は単なる戦争行為をやったそれぞれの当事者の問題と、原爆をあえて国際法違反をして投下をし、その投下方法のくふうをこらしたというそのこととには、非常に大きな隔たりがあると思うのであります。根本的に違うと私は思うのであります。いまなお広島において、長崎において、いかに多くの原爆被災者が苦しんでおるか、それゆえにこそ、今日日本国民はそれぞれ思想を越えて、それぞれの階層を越えて原水爆を禁止しようというのがこれが悲願じゃありませんか。そういう国民感情に水をさす行為が、今度のこのルメー叙勲の問題であろうと思います。この機会に、総理お答えがありましたが、防衛庁長官からもその見解を明らかにしておきたいと思います。
  10. 小泉純也

    小泉国務大臣 ルメー大将に対する勲章授与の問題につきましては、先ほど総理大臣からお答えがあったとおりでございまするが、私ども考え方におきましては、ルメー大将の戦後のわが航空自衛隊に対する顕著な数々の貢献に対する勲章授与でありまして、これは戦時中の問題とは別個に考えるべきものであるという観点に立っておるのであります。なおまた、先ほど辻原委員がお述べになりました中に、日本に対する原爆投下の直接の責任者ルメー大将であったというおことばがございましたが、この点について私ども調査参考まで申し上げますると、当時日本原爆投下を行なったのは、アメリカの第二十航空軍に所属する第三百九十三飛行隊でございました。投下が行なわれたのは、御承知の一九四五年八月でございまするが、ルメー大将は、その前の七月十六日付で他に転任をいたしておるのでございまして、直接部隊責任者ではその当時なかったのであります。さらにまた、原爆投下アメリカトルーマン大統領が直接これを指揮したということが、アメリカの戦史に詳細述べられておるところでございまして、この点も御参考までに申し添えておきます。
  11. 辻原弘市

    辻原委員 そういう防衛長官なり、さっき総理がおっしゃったそういう無感覚さに、私は残念に思うのであります。国民感情を無視するというその無感覚さ、これが私は問題だと思う。佐藤内閣というのは、これは総理もしばしば言われておるが、国民とともに施政をやっていくのだ。ところがいま一番国民悲願としている原水爆反対ということにあえて水をさすような行為——いま防衛庁長官からルメーさんが当時の直接の指揮官でなかった、日付が若干違っておったというような釈明がありましたが、終戦当時の七月、八月に、これを企画したのは明らかに二十空軍司令官、その当時のルメー団令官なんです。だから幾らそのことについて戦時中のことは戦時中のこと、その後の功績をと、こう言いましても国民感情が許さない、現にこのことを伝え聞いて、もうすでに報道関係等の中に、被災者から盛んに投書がきているじゃありませんか。何ということをしてくれるのか、こういう投書がきているじゃありませんか。この辺でそういう国民感情十分そんたくをされて、できればあらためて検討されるようなことをお考えになったほうが、今後の佐藤内閣施政としてはよろしかろうと私は思います。しかし、これは本論ではございませんから、それ以上申し上げませんが、ひとつぜひ総理大臣にもお考え直しを願いたいと思います。総理大臣、いかがですか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私は、先ほどの防衛庁長官お話でおわかりのような事情もございましょうし、またそういうことを資料にいたしまして決定いたしたのでありまして、私はこれを変える考えはございません。
  13. 辻原弘市

    辻原委員 外交の問題についてお尋ねをいたします。政府の発表によりますと、総理訪米が一月の十二日にきまったようでありますが、何かその間の事情について、新聞の伝えるところによりますと、アメリカ都合もいろいろあったようであります。それをも押して総理がぜひ訪米したい、しかもきまったのは、ジョンソン大統領との会談はわずか一日のようでありますが、そういう短い日にちにもかかわらず、あえて一月の先方の忙しい時期に訪米を求められた総理のお考えというものは一体那辺にあるか、このことをこの機会におっしゃっていただきたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私が訪米することにつきまして、事前にいろいろアメリカ側とも打ち合わせをして、ジョンソン大統領も非常に一月が忙しい時期だ、こういうことであります。私のほうも、一月の後になってまいりますと、国会が開会されますし、国会召集中ではあるが、自然休会に入っておる時期、それが当方としても都合がいい、こういうことで、双方都合のいいときを打ち合わせをしてみますと、ただいまの一月の十二日、こういう日にちがきまったわけであります。それほど緊急な用務があるのか、こういうお尋ねだと思いますが、私は、アメリカ大統領も再選されたばかりだし、私自身池田総理あとを継いで政局を担当するようになった、こういう際に、両国間におきまして話し合っておくことの必要なものが幾つもあるようであります。その機会を早くとらえたい、こういうことでようやく一月十二日のこういう日にちをきめたわけであります。
  15. 辻原弘市

    辻原委員 いま日本にとっても、また日米両国にとってもぜも解決しなければならない重要な外交問題が山積していることは、これはもう総理からお聞きするまでもないと思います。私ももちろんそのことについて同様の考え方を持ちますが、そういう重要な多くの問題をかかえている中に日米間で話し合って解決をしなければならぬという、それがわずか十二日一日というようなことで事足りるのかどうか、非常に私はその点に不安を感じます。これは一体どういうふうにお考えになっておりますか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま日米間に解決すべき問題の多いことは私も承知しておる、こういう辻原さんのお話でありますが、私は、今日出かけて直ちにそういう問題を解決する、こういう考え方ではございません。ただいま申し上げますように、世界は流動しておる、そういうさなかにおきまして、当方考え方、またアメリカ側考え方、そういうものを明確にし、そうしてその線において外交を進めていき、そうしてそれが解決への道は外交交渉でたどっていく、こういうこと、そのきっかけといいますか、その基本的な態度をきめていきたい、これが私の考え方であります。
  17. 辻原弘市

    辻原委員 私の言うのもその点であります。基本的な考え方双方話し合い、その糸口をつけるにいたしましても、わずか一日ではたしてそういうことができるのか、往々いままで保守党内閣がかわりますと訪米をされる。しかし、どうもその訪米が、悪口を言う人は、何かどうもアメリカに対する参勤交代じゃなかろうか、こういうことで、実際訪米の結果日本立場が強調せられ新しい前進があったということは非常に少ないのであります。だから、また今度の佐藤さんの訪米も、わずか一日だ、いわば顔見せ興行じゃないか、こういう批判があるのであります。参勤交代だ。しかし国民は、過去のことはいざ知らず、少なくとも現時点においてわが国総理アメリカに行かれるということは、単にそういう儀礼的なもの、慣習的なものであってはならない、国民の待望する基本的問題について、少なくとも日本としての正しい姿勢を示してその糸口をつけるべきである、こういう見解なんです。そういう私のただいまの見解総理は同意を表されますかどうか、伺いたい。
  18. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまお話しのように、私の耳にもアメリカへ出かけることはかつての参勤交代ではないか、そういう批判のあることも聞いております。私の耳にも入っております。しかし、私はただいま申し上げますように、池田路線を継いではおりますが、池田内閣あと政局を担当しておる。   〔委員長退席松澤委員長代理着席〕 ことに皆さん方もしばしば指摘されるように、大きく流動しておるこのさなかにおいて、基本的な考え方に相違があってはこれはたいへんだと私は思う。日米間の友好関係はぜひとも持続していきたいのだし、また私ども自由主義陣営の一員として活動いたします場合に、これは最も大事なことだと思います。そういう意味で、わずか一日ではありますが、その事前事務当局同士折衝もございますし、またその事後におきましても、大統領直接ではありませんが、ラスク長官とも会う機会を持つようになるのでありますので、私は日にちの長い短いではなく、ただいま取り組んでおる問題としては一日で十分だ、こういう感も実はしておるのであります。ただいま申し上げますように、そういう意味で、いわゆるいままで行かれたようなオフィシャルのことでなしに、今度は純事務的な立場で出かけます。したがいまして、私は非常に短い期間、しかもその用務だけでございますので、在来のような形のものは今回はやらないつもりで、たとえばアーリントンの墓地に参拝するとか、こういうような正式な儀礼的なものは今回はしないつもりであります。したがいまして、出かけましてどんな話し合いがつくか、これは事前折衝の問題があり、短い期間でありますから、できるだけ問題を整理して、そして主要な問題だけに限って話し合う、これで目的を達するのじゃないかと思います。たいへん問題が多いようでありますから、これはまた、日米経済合同委員会等の場に譲るものもありますし、その他の国際的会合の場に譲るものもあるだろう、かように思いますが、責任者としての態度で話をしていく。それには、一日であることはいかにも短いというような印象を持たれるようでありますが、ただいま私は、その時間中に話が十分効果をあげ得るような処置をしたい、事前にできるだけの準備をしたい、かように思っております。
  19. 辻原弘市

    辻原委員 非常に問題が多いので、重要な問題に限定をして、日本側代表として話し合いをしてきたい、こういうお気持ち、その重要な問題としていま総理が提起をされようとお考えになっているのはどういう問題でしょうか。この点・・。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 経済交渉の問題はしばらく預かりといたしまして、当方から申し上げたいのは沖繩の問題、さらに中国の問題、さらにアジアの問題、さらにまた大きくしては国際環境問題等等、重要な問題だけをあげましても幾つもあるわけであります。
  21. 辻原弘市

    辻原委員 いまあげられました問題は、主として外交に限っておるようであります。先般の本会議でわが党の成田書記長が申し上げましたように、本年秋以来の国際情勢は、われわれは激変をしておると見るのであります。政府はこれを流動しておる、こうおっしゃっておりますが、特に中国の問題、あるいはまたインドシナの問題、まさにアジアにおいては重要な、台風の目として問題をはらんでおるわけでありますから、これらについて密接な関係にあるアメリカ総理が話し合われるということも、私は決して日本の今後にとって意味のないことではなくて、この機会にこそわが国立場というものを大いに強調をして理解をアメリカ側に深めさすべきじゃないか、こういうような考え方を持つのであります。したがって、それだけの重要問題を掲げていかれるのでありますから、この機会に、さらに私はそれぞれいま総理が述べられました中国の問題、沖繩の問題、さらにはひっくるめてアジア全体の問題等について、もう少しはっきりしたお考え国民にお示しになる必要があるんじゃなかろうか、こういう感じがいたすのであります。何となれば、本会議予算委員会を通じて、日中問題に関しましても、どうも総理のおことばでは非常に重要な問題としてこれを考え、しかも前向きにやるんだとおっしゃっているけれども、一向具体的なものが出てきておらない。そういう中に、はたして日本国民が望んでいるような中国問題に対する態度総理の口からアメリカ側に的確に伝えられるか、われわれは非常に疑問に思うのであります。そこで、まず中国問題について、もう少し総理のはっきりしたお考えをこの機会に承りたいと思います。
  22. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 中国問題についてお答えをいたしますが、ただいままで中国一つだ、かように国民政府北京政府も申しております。この立場に立ちまして中国問題を考えたときに、私ども国民政府との間に国際条約があり、そうしてこれと交渉し、折衝を持っておる。この状態が今日はっきりいたしておるのであります。したがって、国民政府との友好関係は続けていきたい。また中国自身大陸自身政権のある実情でもございます。したがって、それとの交渉は一体どうなるのか。これは、ただいままで政経分離の方策でこれと折衝を続けていく、こういう態度をとっておるのであります。御承知のように中国一つだ、この観点に立っておりますが、現実の問題では中国に二つの政権のあることも確かであります。したがって、これは事実上の問題であります。そういう意味政経分離立場でこれと折衝していく、ただいままで池田内閣もそういう方針でやってき、今日私もその方針でやってきておるものでございます。また、ただいま申しますように、中国国民政府との間に条約のあることは、国民大多数の方も御存じであります。そうして大陸との交渉政経分離方法でやっている。どうも政府は、そういう形で貿易も額が増加し、また文化的にも人的交流も行なわれておるということをよく承知であり、その政策国民大多数は支持しておる、かように私は思っております。
  23. 辻原弘市

    辻原委員 大体いままで述べられたことと変わりはないようであります。  いま差し迫った中国の問題の重要な一つは、国連における代表権の問題であろう。この間、国連総会椎名外務大臣中国問題について述べられた稿を見ますると、一つは、激しく核爆発実験についての非難をされておる。同時に、一方においては、この代表権の問題に触れては、第十六回総会における重要事項としての指定を想起して慎重に扱うというのが、政府代表してのこの代表権に対する問題であったように私は見ました。そのとおりですね、総理。ところがこの代表権の問題について、今度の十九回国連総会においても依然として重要事項の指定問題だと言うのは、何か総理ことばをかりて言わしめるならば、どこかずれているような私は印象を受ける。現に、年が明けますると二月の総会においては、現実にこの代表権の問題が、好むと好まざるとにかかわらず、従来の日本態度とは違った方向に行きそうな今日形勢にある。そのおりに、従来のようなそういう態度でもって終始しておって、はたしてそれが総理の言う前向きの姿勢であるのか、現実に即するわが国中国問題に対する処理の方策であるのかということに、現に多くの日本国民は疑問を抱いております。この点についての総理見解はどうでしょう。
  24. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 多くの日本国民は、先ほど来私が申し上げたとおりのことを支持し、またそれを支援しておられる。これは社会党の辻原君の見られるところと私の見るところは、これは不幸にして別でございます。私は大多数の方が日本の行き方を支持しておる、かように思っております。  しこうして、ただいまの代表権の問題になりますが、これは国際的に見まして、いわゆる中共支持派、それらの方々は、代表権中国一つだという立場に立って、そうして国府の代表権を中共政府北京政府に置きかえろ、こういう主張をしておられる。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕 これが一つ考え方であり、そうして非常にはっきりした言い方をしておられる。しかし国府は、御承知のように国連の最初からの加盟国でありますし、また同時に、五十数カ国がこれを承認しておるし、また安保理事会の常任理事国でもあります。それがそういう状態で中共政府に置きかえられるという、そういう事実が重大問題である。ただいま申し上げるようにアジアの平和にも関連してくるだろうし、たいへん重大な問題だ。こういう意味で、外務省はいままで重要問題としてこれを取り扱うのだ、こういう態度を堅持しております。椎名外務大臣は、十六回以来同じような考え方であるから、今回もこの処置については十分慎重に扱ってくれろ、こういう演説をしたはずであります。また、ただいままでのところ、国民政府並びに北京政府も、中国一つという以上の他の説に対しては絶対反対をしておられる。これはいわば一部でいわれておるような、中国大陸とあるいは台湾とこれを分離することが可能かどうか、こういうことの議論でございますが、それには正面を切って反対しておられる、こういう状態であります。したがって、中国一つだと私が何度もここで繰り返して申しておりますのは、中国国民自身がきめておる中国一つという、それを他国がとやかく言うべきではないだろう、その一つという立場に立ってこれを処理していく、ここにむずかしさがあるのです。最初からの国連の加盟国、これを除名にもひとしいような形で片づけることがはたしていいのか悪いのか、そういう点を十分考えていただきたい、こういうのであります。私は、ただいまそういう点について、皆さま方の御意見も聞くし、同時にまた、国民の中からもいろいろな声がございます。そういうのを伺い、あるいは国際的には一体これをどういうように見ているのか、たとえばイギリスなどは、はっきりしておるように、北京政府を承認しました。承認したけれども、これはやはり重要問題である、かようにイギリス自身も言っておる。だから、国連の表決の場におきましては、重要問題としての取り上げ方にイギリスも賛成しておるわけです。それほど重要な問題であるということを繰り返し繰り返し申し上げておるのであります。ただいま申し上げるように、中共と国民政府、これに対する説をそれぞれ分けて説明いたしましたので、よくおわかりができるだろうと思います。私はただいま申し上げますように、今日の状況においては、また今日までの状況においては、ただいままで日本政府がとってきたこの考え方は正しい、またそうあるべきであった、かようにいまなお思っております。
  25. 辻原弘市

    辻原委員 いま最後に総理が言われましたように、今日までとってきた態度については正しいと思います。ある程度総理のおっしゃったような点について是認される向きもあったかもしれません、国内、国際的にも。しかし私は、ただいまの時限においては、これは変わっておる。たとえば中国を承認しておるイギリスが、代表権の問題にあたっては、重要事項指定の手続の中に賛成をしていったではないかと総理は申しましたね。しかし私は、はたして二月の総会の時点に、労働党首班を抱くイギリスがそういう態度をとるか、これは大いに疑問のあるところだ。ここにわれわれは、国際政局は大きく動いていくぞ。すでに代表権の問題がカンボジアから約一カ月前に決議案として提案されておる。いやがおうでも、二月の時点においてはこれらの問題を総会の議に付さなければならぬ。このときに、はたして昨年あったような、十六票差というようなかなりの差でもって同じように処理されるかというと、ことしの見通しは必ずしも私はそうではない。もし私がいま申し上げていることに、いやそれは君の考え方が間違っている、情勢の判断が違うとおっしゃられれば、総理なり政府のいま申し上げました問題についての見通しを私にお聞かせを願いたい。一体総理はどういうふうにお考えになっておりますか、どうですか。具体的にお答えいただきたい。
  26. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 見通しはただいまのところわかりません。辻原さんは、必ず一、二票で勝つだろう、こうお考えかもわからないが、私どもはまだ見通しを立てておりませんし、わからない、こういう状況であります。
  27. 辻原弘市

    辻原委員 少なくとも昨年よりはこの問題が前進していることは事実なんです。総理はそのことはお認めになりますね。
  28. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 最近椎名君が帰ってまいりますので、最近の国連の中の動きがどんなに変わっておるか、最も新しいものは、椎名君が帰ってから報告するだろう。きょうあすでございますから、その上で、私は、ただいま言われるように前回と違っているかどうか、十分検討したいと思います。
  29. 辻原弘市

    辻原委員 その程度のことは、外務大臣が帰ってこなくても、これは政府としては最も重要な問題なんだから、判断をしておかなければならぬはずなんです。私も、しかし椎名さんが今日この席上に帰ってきておられないということをたいへん残念に思う。おれば、かなりはっきりしたことをお聞きしたいし、また、この委員会にしばしば誤ったことを答弁されておる、それらについても訂正をしてもらいたかったのですが、まだ帰っておられぬということをまことに残念に思う。しかしながら、椎名外務大臣国連で演説をされたその内容は、これは、どうも私は新聞あるいはラジオ、テレビその他でいろいろ聞きましたけれども、率直に言って、各国の評判があまりかんばしいとは言えません。特に私は、こういう批評をしておった点、まことに当たっておると思うのです。それは、特に中国問題について椎名さんが激しく核実験を非難をされた。これは日本の国としては当然でありまするが、ところが、代表権の問題についてのみしか触れず、いわば、日本中国に対して、核実験もやめろ、あるいは経済的取引、貿易量もふやせ、あるいは日中の国交回復、航空機の乗り入れの問題等々、いろいろ要求をしておるが、ところが日本側は、中国に対していまの時限で何も与えようとしておらぬではないか、これではアジアにおける最も重要な、また最も関係の深い日本としてのとるべき態度としてはきわめて傍観的、消極的ではないか、こう言っておるのです。私はまさにそうだと思うのです。総理の所感はいかがでありますか。
  30. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 外務大臣が出かけていろいろお話をしておる。社会党さんはどういう方面から材料をとられたかわかりませんが、評判が悪いと言われる。私は、必ずしも評判は悪いわけでもないだろう。こういうことも、あわせて椎名君が帰ってきたらよくわかることであります。ただいま言われておりますように、今日までの段階とこれからの段階というものは、これは変わり得るのか、あるいは変わり得ないのか、私自身考えがないわけではございません。しかしながら、ただいま申し上げるように、それぞれの国にしても、国民政府北京政府等の主張と必ずしも合わないというか、そういう意味で、非常にむずかしい段階に来ているのじゃないか、かように私は思いますので、いましばらく事情調査して、しかる上で私の態度をきめたいと思います。  問題でありますところは、私自身がそれでは二つの中国論を持っているのか、こういうことを疑問にされるようでありますが、私は、それはとっておりません。どこまでも国民政府並びに北京政府が言っておるような、中国一つだ、この原則を墨守しておる。その立場において、ただいまのような結論しか出てこないじゃないか。これから発展する方向にしても、これが骨子であろうということはただいま言い得ることであります。したがいまして、その事柄を一体皆さん方はどういうようにお考えなのか。これは、中国は二つであるなら非常に扱い方が楽でしょう。しかしながら、ただいま申しておるように、中国一つだ、そうして、その考え方に立ってこの事態をいかにまとめていくか、こういう問題でありますから、ここに困難さが出てきておる。そうして、最初からの加盟国であり、五十数カ国が承認もしておる、また安保理事会の常任理事国でもある、そういう国を除名にも等しいような処置をとるわけにいかないじゃないか。ことに日本としては、ここに条約問題もございます。条約でちゃんと締結した相手方は国民政府であります。そういうことを十分考えて、しかる後でないとなかなかうまくできないのだ。(「それじゃ前向きじゃなくてうしろ向きだ。いままで言ったことは全部うそだ」と呼び、その他発言する者あり)ただいまうしろ向きだと言われるけれども、この主張をどこまでも続けている限り、ただいま申し上げるような状況であること、これは当然のことだ、かように私は思います。したがって、それらの点について、今後国際的に、また国連の場においてどういうような議論が出てくるか、これは十分拝聴するつもりではございますが、もちろんそういうものもよく見きわめて、しかる後に私ども態度をきめるべきではないか。したがって、前の大平君の話をしばしば出してまいりますけれども、中共の国連加盟も、中共が祝福される形においてあるべきだ、この態度は依然として変わらない、かように私は思います。
  31. 辻原弘市

    辻原委員 国連におけるいろいろな情勢その他も見きわめた上できめたい、こうおっしゃる。ところが私がさっきから申し上げているように、代表権の問題一つを取り上げてみても、時期はすでに差し迫ってきておるわけです。そのときに各国の出方を見て日本態度をきめようというのでは、これは日本の自主的立場はどこにもないし、それではおそ過ぎるというのです。そうではなくて、いま日本は、この状態の中でどういう決断を下していき、非常に悪化をしておる米中関係についてどういう役割りを果たすことが日本の将来にいいか、こういう点を判断をして、すでにその決断を下すべき時期に差しかかっているんじゃなかろうか。そうしなければ、少なくともいまの国際政局の動きから見て時期的におそいのではないかということを申し上げたい。たまたま総理アメリカに行かれて——アメリカとしても考え方があるでしょう。あるいは暗中模索をしているかもしれない。そのときに日本が何らの確固たる考えなしに行った場合に、私が最初申し上げたように、あなたの訪米は、中国問題については結局何ら該心に触れずに帰ってくる。場合によれば、依然として強硬策をとろうというアメリカ政府考え方を、あなたはうのみにさせられて帰ってこなければならぬかもしれない。そういうことをおもんばかるのである。だから、さっきからあなたがおっしゃっておるようなことは、われわれは前内閣からしばしば聞いておる。あるいは前内閣でもうちょっと先のことも聞いた。ところがそれ以上のことはあなたは触れられておらない。ここにわれわれは、前向きだと口でおっしゃるあなたの中国問題に対する具体的行動、あるいは新たなる政策というものが何ら発見されぬということを非常に残念に思うし、訪米を前にしてそれではいかぬ、こう思う。もう一ぺんお答えを願いたい。
  32. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 辻原君の前半についての御意見はよく伺っておきます。私も拝聴していたわけでございますが、今日ただいま言い得ることは、先ほど来何度も繰り返して申し上げますように、いままでの態度を皆さま方にも申し上げ、同時にまたこの委員会を通じて国民の諸君にも伝えるだけであります。しかし私は、あなたの言われた事柄につきましても十分耳をかしておるというその事実だけを申し上げてお答えにいたします。
  33. 辻原弘市

    辻原委員 どうしてもその点について一歩足を踏み出したお答えがないようであります。私は時間の関係もありますから、少し角度を変えてみたいと思いますが、一体、十六回の国連総会で決議された中国重要事項指定というのは、これはいまでも生きておる、こういうふうに政府としてはお考えになっておるかどうか、その点を確かめておきたいと思います。
  34. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 十六回総会でかような処置をとったこと、その後日本政府自身は変わったことを申しておりませんから、これはそのとおりだということは言えるのかと思いますが、しかし、国際社会の問題でございますし、国連総会の問題でございますから、この点は私も外交的にどういう効果があるか十分でございませんから、条約局長  にさらに補足さして説明させます。
  35. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 この決議は、いままで先例もございませんし、規定もございませんので、国際的にはっきり認められた見解というものはございませんが、日本政府としては依然として生きていると  いう立場をとっております。
  36. 辻原弘市

    辻原委員 私は、この憲章十八条の解釈をめぐってきょうは論争をやるのが主体ではありません。したがって、いまの政府見解にはいささか異論がありますけれども、それは今日申し上げないでおきますが、かりに政府見解をとるにいたしましても、十六回の決議が十九回総会でも生きておるんだ、あるいは今日ずっとこれが生きておるんだ、こういうことでありましても、これを取り消す決議、これは可能ですね。そのときの表決というのは、これは私の考えでは過半数でよろしいと思うが、どうですか。
  37. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 その点についても規定はございません。日本政府としましては、一たん重要事項に指定された以上は、その重要問題がもうすでに重要問題でなくなるということも、重要問題に関する決議でございますから、やはり三分の二の多数を要すると考えるのが至当であろう、こういうふうに考えております。
  38. 辻原弘市

    辻原委員 それは、珍妙な解釈を私は初めて承る。それなら、昨年アルバニアから決議案が出た、これはいまの重要事項と同一の内容のものじゃありませんか。冗談じゃないですよ。
  39. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 アルバニア決議案は、中共の国連代表権を認めて国府を追放するという趣旨の規定でございます。重要事項指定決議と申しますのは、中国代表権を変更する決議は重要問題である、そういう意味の決議でございまして、両者は全然別個でございます。
  40. 辻原弘市

    辻原委員 そういうことはもうだれでもわかり切っておる。いま私はこの手続の問題についてお尋ねをしたが、これはきょう私が初めて尋ねるんじゃないんですよ。この間勝間田委員から念を押してなかったので、私は、総括締めくくり意味で、これは念を押しておる。ところが、勝間田さんの質問の際にも、やはり二分の一で、いわゆる過半数で取り消しができるじゃありませんかということは、すでに問題として提起しておる。外務大臣は、それに対して、これは肯定をされておるんです。これは一体どうなんですか。総理大臣、どうお考えになりますか。
  41. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 重要事項問題についての決議の取り消しが過半数で行なわれ得るかどうかという問題は、この委員会では、私、これまで提起されたことはなかったと存じます。
  42. 辻原弘市

    辻原委員 政府見解は、重要事項に指定をする手続と、それから、重要事項であるというその重要事項としての取り扱いそのものと少し混同しておるようです。重要事項として、重要事項であるかどうかということを取りきめたのは、これは過半数でしょう。その点はどうなんです。
  43. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そのとおりでございます。
  44. 辻原弘市

    辻原委員 それならば、はっきりしているじゃありませんか。だから、そのことを取り消すわけだから、それは過半数でいいというのは、これは当然なんです。これは国際通念なんです。だから、それと類似の——だから同じことなんです。そうじゃないですか。
  45. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私も、そういう考え方一つ成り立ち得るということは否定はいたしません。過半数でできたものならば、過半数で取り消せるはずじゃないか。しかしながら、国連憲章第十八条第三項でわざわざ重要事項を追加指定することができるという制度が設けられた趣旨からいいますというと、一ぺん重要事項になったものを、いつでもそれを過半数で取り消すということができますというと、そんな指定をわざわざした趣旨が全然没却されるわけでございます。そういう条理を踏まえてそういう解釈をすべきである、かように考えるわけでございます。
  46. 辻原弘市

    辻原委員 これは私は、だれが聞いてもおかしいと思うし、実際国連においてはそういうことを現にやっておらぬ。内容的に、昨年のアルバニアの提案がやはりほとんど同趣旨の内容であると私は思うけれども、これが二分の一で取りきめられておる。おそらく、本年提出されるカンボジアの問題についても、これは過半数できめられることは、火を見るよりも明らかであろう。だから、日本政府がいかに無理な解釈をしようといたしましても、それは国連の場では通らない。このことを私ははっきり申し上げておきたいと思います。しかし、この問題だけで時間を食うわけにはいきませんから、この程度にいたしたいと思いまするが、とにもかくにも、先刻から私が申し上げておりまするように、二月の国連総会における代表権の問題は、そういったささたる日本側の解釈はありまするけれども現実にカンボジア提案というものが表決に付される、このことは、私は、代表権の問題が終止符を打つということだと、こう考えておるのであります。事態がどう進展するかは予断を許しませんけれども、大方の常識をもって考えたならば、ここで終止符を打たれる。昨年とは非常に情勢が違うんだ。その際に処する日本態度というものが少なくとも今日なければいかぬということを、先刻から強調をしておるわけなんです。  したがって、最後に私は、この問題について総理に、アメリカに行かれるわけだから、せめて日本立場というものを十分アメリカ側に納得をさし、さらには、与党の松村さんあたりが言われておるように——アメリカも決してばかじゃないはずだ。核実験が行なわれた後における中国のウェートというものが国際政局にどうこれが影響するかということは御存じだろうと思う。しかしながら、大国アメリカとしてのメンツもある。あるいは台湾に対する義理もあるであろう。そこらにアメリカ側としても踏み出し得ない苦悩があるんじゃなかろうかと私は見る。そういう中に立って、日本こそが、この米中の関係を調停し得るアジアにおける唯一の国だというくらいの自負心を持って当たるべきじゃないか。そういう決意があって初めて佐藤内閣は前向きだと、こう言われると思うのです。最後に私はもう一つ総理の決意を承って、代表権問題についてはおしまいにしたいと思います。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私の外交路線は、自主、平和外交、こういうことをしゃんと申しております。自主外交ということは、わが国の置かれている立場において本来のみずからの外交を進める、こういうことでございます。他からもいろいろ拘束を受けることなく、その点はその主張をはっきりさしてくる、これが私の考え方であります。ただいま社会党からも激励を受けましたが、そういう意味で、この自主外交を強力に展開してまいる考えでございます。
  48. 辻原弘市

    辻原委員 中国問題に関して最後に一点、これまた別の角度で聞いておきたいのでありますが、たまたま佐藤内閣が発足と同時に、そうでなくとも——私は率直に言いますから、ひとつ気を悪くせぬようにしてください。あんまり評判のよくない佐藤さんが——中国にですよ、評判のよくない佐藤さんが内閣と組織された時点で、またまた問題が起きたのは、彭真北京市長の入国の拒否、それから、一方においては、台湾において、きょうあたり着かれたようでありますが、一億五千万ドルに上る台湾に対する借款の問題の話し合い、まあこういう問題が重なって、いま非常に日中関係は暗い関係にある。ようやくLT貿易だけが少し動き出したようだと、こういう段階なんですね。おそらくこれは、だれが考えてみても、何とかこの現実を打開しなければならぬ、こう思っておるに違いないと思うのですが、たとえば夢更氏の入国を拒否された。彭真さんといえば、これは中国においては重要な人物、首都北京の市長なんです。それはだれだっておこりますよ。何らかの形でひとつこの問題を打開しよう、こういうことをお考えになっておるか、検討されておるか、この点をひとつ最後に承っておきたいと思います。
  49. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 彭真氏の入国を拒否したことは、法務大臣から詳しく当時の事情を申し上げたはずでございます。国会において政府の所信、その態度を明確にしております。しこうして、ただいまお尋ねになりました点でございますが、こういう事柄は、政府自身が自主的にきめる問題でございますので、彭真氏個人の問題でないことははっきりしております。また、共産党自身——日本共産党ではありませんが、共産党自身の問題でもない。この点もはっきりしておる。いわゆる共産主義者だということでとやかくしておるわけではございません。したがいまして、その点の誤解のないように願いたいと思います。また、台湾に出かけておる日華協力委員会の問題、一億五千万ドルということがいま言われております。もちろんこれは政治借款ではございません。政治的なものでないこと、これをはっきりしておきますが、これはコマーシャルベースで貿易をすること、それは今後の折衝の問題になるだろう、かように私は思いますので、一部何らかこれが政治借款であるかのような印象を持たれたことは、まことに私残念だと思います。これは政治借款ではございません。したがいまして、こういう問題でとやかく誤解のないように願いたい、かように私は思います。
  50. 辻原弘市

    辻原委員 私はもう少し総理にそれこそ前向きで実はお尋ねしたのです。そういうような問題が積み重なってパイプが詰まったから、何らか打開をする方法をお考えになっておるかと、こう申し上げたのです。
  51. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 北京政府との関係におきましては、在来どおりの方針をとっております。今回の誤解があれば、誤解は解くような方法をとりたい。誤解でなしにかようにお考えになっておるならば、これはその点が間違いである点を十分説明するつもりでございます。
  52. 辻原弘市

    辻原委員 伝えられるところのもの、これはあるいは総理はあずかり知らぬところだとおっしゃるかもしれぬ。しかし、日中の関係から言うと、やはり彭真氏入国拒否というのは、これはまさにアウトであった。だから、今後の経済交流あるいは文化交流その他航空機の問題にいたしましても、国交回復以前にもいろいろやらなければならぬ問題がある。しかし、そういういままで俗に言われてきた積み上げ方式がさっぱり積み上げられぬという事態は、これは保守党の人といえども困った問題だとお考えになっておる。財界の人といえども、これは困った問題だとお考えになっておる。だから、彭真氏が日本共産党大会に出席するということは、もうこれは不可能だが、しかし、別の形で、たとえば民間団体があらためてひとつこれを招聘しよう、あるいは——かつてニチボーのプントが台湾の抗議でもってつぶれた。いましかし逆に台湾に対して、いま総理のおっしゃったコマーシャルベースであろうが、政治借款であろうが、そういうことは別にして、何らかの形において台湾に援助しようと、こう言う。そうするならば、中国としては、これは当然快からずに思うのはあたりまえなんです。とすれば、中国に対しては何らかの形で解決の方途を見出さなければならぬ。そういった配慮ですね、そういった解決策、当面の問題について何かお考えになっておりますかと私はお聞きしている。
  53. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 彭真氏が、北京市長が他の機会にあらためて入国をしたい、こういうことがあるとか、あるいは当方で呼びたいとか、こういうことがありますならば、これは前回の入国を拒否したこととは全然別問題でございます。したがいまして、そういうことは差しつかえないものだとただいまから予想してもいいのではないか、私はさように思います。  また、ニチボー・プラント輸出の問題、これは長い懸案であります。長い懸案でありまして、在来からしばしば関係者には申しておるのでありますが、民間ベースで出ていくことについてはちっとも差しつかえない、こういうことを申しておりますから、その基本的な方針はただいま変わっておるとは思いませんが、どういうような事情になっておるか、政府自身がその間の事柄を詳細に聞いてもよろしい、かように思います。何か調整を要することがあるかどうか、そういう点は、ニチボー・プラント輸出については私は明らかにしておりませんので、そういう点がなお残っておるとすれば、研究はいたしてみたいと思います。
  54. 辻原弘市

    辻原委員 要するに、その二つの私がお尋ねした問題は前向きでひとつ解決をしよう、こういうお考えがある、こう受け取ってよろしゅうございますね。  次に、インドシナの問題について若干承りたいと思います。  この間、二十四日、成田書記長がこの問題についてお尋ねをいたしました際に、再質問までいたしました。ところが、総理は、インドシナについては十分研究をしておらないからということで、お答えがなかったのです。なお、この予算委員会でも、この問題についてほとんど触れられておらない。そこで、私はあらためて伺ってみたいと思うのですが、そのお伺いをいたすについて、一つの具体的問題について政府見解をただしておきたいと思います。  それは、この間、加藤委員でありましたか、ちょっと触れておりましたが、こういう新聞記事を私は拝見をいたしました。それは、去る十一月の四日に、南ベトナムの港町ダナン、ここで米軍のLSTに乗り組んでいる日本人船員の斎藤賢三さんという人が射殺されたという事件、これが載っておりました。この事件については政府も御存じでし上うね。
  55. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 斎藤賢三という方が射殺されたということ、まことに斎藤さんに対しまして心から御同情申し上げておりますが、この委員会におきまして当時事務当局からそれについて説明をしたはずであります。私はそれを聞いておりますので、この機会お答えするわけであります。
  56. 辻原弘市

    辻原委員 総理、これはほとんど詳しい報告が行なわれておらないのです。では、あらためて私は伺いますが、この事件の概要、それから同様米軍LSTに現在どの程度の日本人が乗り組んでおるか、また、射殺されたりなくなったりした人は斎藤さん一人ではないという事実を私どもは知っておるが、それらについての補償は一体どうなっておるのか、こういう点について政府調査の結果の報告を願いたい。
  57. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 まず外務当局のほうから斎藤賢三氏の事故死事件の実情について御説明申し上げます。  御指摘のとおり、十一月三日の午前零時半、このダナン港におきましてLST一一七号の乗り組み員の斎藤賢三氏が私服警戒中のベトナムの官憲によって射殺された事件が起こったわけでございます。当夜斎藤氏は後藤氏その他二人と飲食店で飲食の後、同店を出ましたところでこの事件が発生したわけでございます。この事件発生後におきまして、こちらのほうの同行しておりました後藤氏等の陳述とベトナム官憲の説明とに非常な食い違いがあるわけでございます。こちらのほうの陳述によりますと、先方のほうがまずなぐりかかってきたということになっております。ベトナム側は、まず日本側と申しますか、斎藤氏のほうが突然襲いかかってモーターバイクを奪おうとしたので、これを捕縛しようとしたところが逃げたので発砲した、こういうふうに言っておるのでございます。外務省といたしましても、自来サイゴンにおきます日本大使館を通じ、さらに東京におきますベトナム大使館を通じて、この問題について至急実情調査の要求をするとともに、もし先方に責任がある場合は、遺族に対する賠償要求権を留保している次第でございます。  先方も、御承知のとおり、日本側がこのベトナム緊急援助をしたりしていた段階においてこういう事件が起こったことについて、非常に遺憾の意を表しまして、できるだけ早く誠意をもって調査をし、もしサイゴン側に責任のある場合には遺族に対しても十分の措置をとることを考慮すると申し述べておる次第でございます。  LSTに使用されておる日本人船員の数、それから従来起こりましたそういう事故死の問題につきましては、運輸当局のほうで詳しい数字を持っておりますから・・。外務当局でわかっている限りの情報を申し上げますと、LST乗り組み員の日本人船員につきましては、昭和三十七年に全日本海員組合を窓口といたしまして米国側と直接雇用契約を結んでおりまして、米軍の輸送業務に従事していると承知しているのでございますが、現在約八百名くらい雇用されている、そういうふうに聞いております。
  58. 辻原弘市

    辻原委員 正確に。それはちょっと明確に願いたい。運輸当局が来ましたから、これはもう一ぺんはっきり私のほうから言います。どういう雇用形式をとっておるか、それから、乗り組み員総数は正確に何人か、それから、事故死をしたのは、さっきも言ったように斎藤さん一人じゃないのですから、従来そういう形で事故死をした件数、それから、それについての補償の取り扱い、それをきちっと一ぺん御報告を願いたい。
  59. 小泉純也

    小泉国務大臣 防衛庁の防衛施設庁の関係もございますので、私から承知しておる範囲お答え申し上げまするが、先ほど後宮局長から八百何十名と申し上げたのは、昭和三十七年度、三月三十一日の直接雇用に切りかえた当時の人数でございまして、現在のLSTの船員は約百五十名でございます。そのうち、大体船が八隻ほどこれに従事しておりまするが、八隻のうち三隻が東南アジア方面の輸送を担当いたしておるのでありまして、東南アジア方面の輸送に乗り組んでおる日本人の船員は約六十名程度でございます。
  60. 辻原弘市

    辻原委員 それは、防衛庁長官、正確ですね。間違いありませんね。
  61. 小泉純也

    小泉国務大臣 大体正確でございます。
  62. 辻原弘市

    辻原委員 いやいや、大体じゃいけない。これは、私は所管大臣からお伺いをしようと思ったのですが、防衛庁からお答えを願ったので、自後の質問がまことに都合がよろしい。   〔「防衛庁が知っているのに」と呼び、その他   発言する者あり〕
  63. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 ちょっと御静粛に願います。岡田君、御静粛に願います。
  64. 小泉純也

    小泉国務大臣 防衛施設庁長官から詳細にわたってお答えをいたさせます。
  65. 辻原弘市

    辻原委員 ちょっと待ってくれ。いまあなたも言われたでしょう。当時は、これはいわゆる間接雇用で調達庁が所管をしておった、そのくらいのことは私も知っておるのだ。ところが、いまは、さっき言ったでしょう、間接雇用で関係ないとこの間答弁しておる。関係ないのが何で防衛庁が答えるのです。何で施設庁が答えるのか。関係ないのがどういう資格で答えるのか。   〔発言する者あり〕
  66. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御静粛に願います。  防衛庁長官は国務大臣でありますので答弁をいたしたのでございます。
  67. 辻原弘市

    辻原委員 施設庁の長官は国務大臣じゃない。
  68. 小野裕

    ○小野政府委員 ただいま小泉防衛庁長官から申し上げました御説明については、若干お考え違いの点がございましたので、その点……。
  69. 辻原弘市

    辻原委員 いま、防衛庁長官の答えは違うという答弁なんだ。どうなんだ、一体これは。あなたが指名した施設庁の長官は、防衛庁の長官は考え違いだという。よう相談してから答弁しろ。
  70. 小野裕

    ○小野政府委員 私、先ほどのお答えが簡単でございましたので、誤解がありますと申しわけございませんので訂正をいたしますが、先ほど防衛庁長官がおっしゃいましたことは、昭和三十七年、従来私どもがあっせんをいたしましたころの数字は八百数十名である。その後は、当時の調達庁、今日の防衛施設庁は、そのほうの関係と手を切りましたので、そのLSTの関係については、今日どういう状況になっておるか存じないわけでございます。  なお、ただいま大臣が申し上げましたのは、LST以外、私どものほうで一般の船員を若干提供いたしておりまするので、その数字が百五十、そういうようなことを申し上げたわけでございます。
  71. 辻原弘市

    辻原委員 ちょっと待ってくれ。防衛庁長官、あなたが答えられたやつは、それでは一体何ですか。お答えになったのは何ですか。施設庁の長官は、それは違うと言うんだ。
  72. 小泉純也

    小泉国務大臣 御承知のとおり、いまは直接雇用になっでおりまするが、三十七年以前は防衛施設庁が間接雇用で関係がありましたので、その当時の情勢からの引き継ぎといたしまして、私はそういうふうに聞き及んでおりましたので、運輸省関係その他から答弁がないものでございますので、政府として申し上げたようなわけでございます。
  73. 辻原弘市

    辻原委員 だから、私は、防衛庁長官お答えになったので、これは防衛庁にも関係のあるいわゆる軍事的な意味も含まれる、そういう関連を持つものだから防衛庁がお答えになったと実は受け取って、黙って聞いておった。しかも、当時間接雇用で八百何人というのは、これはもう私もわかっておる。その後形が変わって減ったということも知っておる。ところが、いまあなたは、八隻で百五十名、LSTで南方に行っておるのが六十名と、実に詳しいのです。ところが、施設庁の長官は、直接になったからそういうことについては全然つかんでおらぬと言う。あなたは一体どこでそれをお聞きになったのですか。私は、施設庁の長官からお聞きになって答えられたと思っていたのだが、そうではないんですね。だから、私が尋ねた範囲のあれについては、はっきりしておらぬ。このはっきりあなたがお答えになったのはどの部分か、一体どこからそれを聞かれたんですか。
  74. 小泉純也

    小泉国務大臣 先ほどから申しますとおり、防衛施設庁が関係した当時の事柄から、現在における情報として私は記憶しておりましたので、さように申し上げたようなわけでございます。
  75. 辻原弘市

    辻原委員 質問の本論でありませんから、これは政府として明確にして、私並びに当委員会にはっきり文書によってお答えを願いたいと思います。したがって、いずれにいたしましても、LSTに乗っておる日本船員があり、しかも南方に向かって戦略物資の輸送に従事しておるということも、これは事実なんです。それは、運輸大臣、防衛庁長官、その事柄はお認めになりますね。
  76. 小泉純也

    小泉国務大臣 戦略物資の輸送に当たっておるということは関知いたしておりません。ただ、安保条約のたてまえ上、非戦闘的な業務には日本人船員が従事して差しつかえないものであると心得ております。
  77. 辻原弘市

    辻原委員 いま防衛庁長官は安保条約を持ち出されましたので、それでは一ぺん、安保条約の何条でそれは許されておりますか、それをお聞かせ願いたい。
  78. 小泉純也

    小泉国務大臣 政府委員から詳細にわたって答弁をいたさせます。   〔「いまあんたに言ったじゃないか、自分で答えろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  79. 小泉純也

    小泉国務大臣 安保条約は、御承知のとおり日米の協力体制、極東の平和と安全というたてまえから日本アメリカに協力をしておる。そういう大きな前提のもとに、国内におきましても日本の労務者が米軍の業務に従事しておるのでありまして、そういう非戦闘的な問題について船員も海上において協力、従事をいたしておるという意味でございます。  なお、小さい規定その他につきましては、施設庁長官から説明をいたさせます。
  80. 小野裕

    ○小野政府委員 ただいまお尋ねの問題はLSTの関係が中心であったと思うのでございますが、その点につきましては、防衛庁あるいは防衛施設庁におきまして、本日ただいまのところ直接の関係がございませんので、そうした関係の業務については…(「安保条約の何条かを聞いておるのだ」と呼ぶ者あり)その点につきましては、特に御所管のところからお答え申し上げるのが適当であると考えます。
  81. 辻原弘市

    辻原委員 いま、そういう物資を輸送するについては、もっと詰めて言えば、いわゆる米軍の作戦行動に協力するということについて労務を提供する行為は安保条約によって許されておる、これは小泉防術庁長官の答えなんです。だから、一体安保条約のどの根拠によって行なわれておるか、それを私は明確にしていただきたいと思います。安保条約の第何条に基づいてやっているか。
  82. 小野裕

    ○小野政府委員 米軍の明らかな南方あるいはその他の地域に対する戦略物資を輸送することを主たる任務とする輸送、そういうような任務に日本人を当てるということはございません。その点は大臣のおことばが足りない点があったかと思うのでありまするが、軍需物資を運んでおるかどうかということ自体も、これは想像でございます。そうした点について私ども承知しておらないわけでございます。  それから、さらに、主としてその任務を…(「大臣と話が違うじゃないか、説明にならぬ」と呼び、その他発言する者多し)その任務を遂行しておるのは主として米軍のLSTでございまして、LSTの関係については私どもは詳細を存じません。   〔「話が違う」と呼び、その他発言する者多し〕
  83. 辻原弘市

    辻原委員 私は、防衛庁長官のそういう軍事協力について、安保条約によってできるということをお尋ねしているのです。だから、事務当局に、一体それは何条か——これは重大な問題なんです。軍事協力がそういう形でできるということはきわめて重要な問題なんです。
  84. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ちょっと、安保条約なり地位協定に関連がございますので、一応私から御説明申し上げたいと思います。  地位協定によりますと、間接雇用の規定として十二条の4項というのがあることは御承知のとおりだと思いますが、要するに、合衆国軍隊の需要を日本国の当局の援助を得て充足される、これにつきまして、ある種の船舶につきましては日本国が間接雇用の形で労務を提供しているということはございます。これは私もあまり詳しくは存じませんが、MSTS等の貨物船はそうであるように聞いております。ところが、LSTのほうは、間接雇用の十二条の4項の規定が働いているのではなくして、直接雇用でその労務をみずからアメリカ合衆国が調達をしているというものでございます。したがって、それは実はLST特有の問題ではございませんで、むしろ一般的に外国の船舶が労務を調達するのと、実は本質的には変わりがないのでございます。
  85. 辻原弘市

    辻原委員 そうすると、いまの高辻さんの御答弁によりますと、LSTによる軍事輸送というものはこれはできないんだ、安保条約によってはできないんだ、こういうお答えじゃないですか。そうすると、防衛庁長官お答えとも違う。それと、高辻さんの話もおかしいよ。たとえば、いまLSTの場合には直接雇用だと、こう言うのですが、間接雇用でやっていた時期もあるわけなんですからね。だから、その解釈も非常に私はおかしいと思う。どうも、この問題について政府の解釈が、どなたに聞いてもはっきりいたしませんね。それから、施設庁の長官が言われていることは、当初から防衛庁の長官のおっしゃっていることをまるっきりこれは否定されているのです。全部否定しているのですよ。だから、こんな質問を繰り返しておったって、さっぱりこれはらちがあかない。だから、この問題については、ひとつこの辺で、はっきりした法的解釈、これをひとつ政府としてはまとめてもらいたい。 同時に、もう一つ私はお尋ねしておきましょう。もし防衛庁長官の解釈をとったとするならば、私は次にこういう問題をそれではお聞きしたい。とするならば、あなたの言うように、大きな意味で安保条約によって間接的軍事協力として労務の提供があり得るんだということならば、当然これは日米合同委員会の議題にならなきゃならぬ。それでは何かそういう具体的な取りきめが合同委員会において行なわれているか、こういう問題が出てくるのです。長官、どうですか。やっていますか。
  86. 小泉純也

    小泉国務大臣 私の説明にもことばに足らなかった点が多いと思いまするが、安保条約ということを申しましたのは、その全体的な精神、解釈をば申し上げたのでありまして、その点を訂正をいたしておきます。
  87. 辻原弘市

    辻原委員 そういう答弁はおかしいのだ。これは、そういう大ざっばな答弁をされると、われわれ質問できないですよ。なぜかといえば、安保条約というのは、ぼくらはあの条約審議の際に実に詳細に質問をしているのです。だから、私は、時間があればいまの問題、今度の南ベトナムの問題について安保条約との関係がどうあるかということを実はお尋ねしたかった。これは、われわれは、安保条約審議の際に、一体極東の範囲の中で紛争が起きた場合にどういうふうに日本が協力するのか、日本がどういう形に基地として使用されるのか、こういうことを議論しているのです。しかし、それらには一々条約上の根拠がなければならぬのです。それを、長官の言うように、安保条約というものは何か知らぬが精神上アメリカに協力するものだ、だからアメリカのやることならば何かの形で協力していいのだというような大ざっばなことは、安保条約でわれわれは考えておらぬ。だから、そういう大ざっばな答弁であるならば、われわれは質問するわけにいきませんぞ。これは、長官どうですか。法的根拠によらざる行為条約上できないのですよ。総理大臣、その点はどうですか。
  88. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私先ほど御答弁申し上げましたことは、現状についてお話を申し上げたつもりでございます。そのほかに大正が仰せになりましたことは、過去の取り扱いについて仰せになったのだと私は思っております。  ところで、ただいまの御質問でございますが、その条約上定められたところに従って日本国は義務を負い、またその他の権能を持つということに相なることは当然のことでございます。
  89. 小泉純也

    小泉国務大臣 法的解釈のことにつきましては、ただいま法制局長官が申したとおりでありまして、私の安保条約云々のことばは、ここに取り消さしていただきます。
  90. 辻原弘市

    辻原委員 この問題についてまだいろいろお尋ねもいたしたいこともありますが、政府の解釈もさだかではありませんから、私は本論に入りたいと思います。  ただ、最後に要望しておきたいことは、こういうような間接的軍事協力ということが紛争の際に行なわれるということは、きわめて重要な問題ですから、これについての取り扱いの解釈は政府としても統一されて、この点については後刻明らかにしていただきたいと思います。  そこで、南ベトナムの問題について総理にお伺いをいたしたいと思いますが、私はけさほどのラジオを聞いておりますると、テーラー大使がきのうサイゴンに帰任をされたようであります。その帰任をいたしました空港におけるステートメントですかが発表されておりましたが、その内容はきわめて重要な問題を含んでおりました。というのは、一つは、南ベトナムの軍事強化についてジョンソン大統領と全く打ち合わせを完了した、さらには、他の地域に対する紛争の拡大があり得るということを申されておる。私は、いろいろな情報から、あるいは年末から年頭にかけて南ベトナムの北への進攻ということが行なわれるのじゃないか、アメリカはあるいは限定作戦というような名のもとにせとぎわ的な軍事行動を起こすのではないかと、非常に心配をしておるのであります。このことは、アジアの有力国としてわが国も決して無関心、また無関係でおられる問題ではないと思うので、これに処する日本政府としての態度について、ひとつ総理から明快に承っておきたいと思います。
  91. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私は、何度もお話し申し上げましたとおり、東南アジア諸地域が政治的に安定することを心から願っております。政局の安定なくしてその地方の住民の幸福もございませんし、また、自由を守り抜くこともできないと思います。そういう意味の基本的な態度をとっておるのでございまして、わが国が積極的にただいまの憲法のもとに行動するというようなことはもちろんございませんが、ただいま申し上げるような心からの願い、これを実現すべくあらゆる面で協力したいし、また、発言をしてまいるつもりでございます。
  92. 辻原弘市

    辻原委員 願うだけではなくて、いま総理もおっしゃいましたが、あらゆる機会を通じて発言をしていきたい、主張していきたいとおっしゃるその内容を私は聞きたいのです。先般わが党の成田書記長はこういう提案をしておるのであります。それは、ベトナム問題についてフランスのドゴール大統領がまことに示唆に富んだ構想を示されておる、俗にいわゆるドゴールの中立化政策と言う。また、もう一つ解決方法は、これしかないのだ、それは、ジュネーブ協定に基づくところの十四ヵ国関係会議を開いて、ここで解決する以外にしか道はないのだ、武力によっても、あるいは安保理事会においても、そういう解決方法では根本策にはならない、こういうことを提案し、こういうことを総理に申し上げておるのでありますが、冒頭にお話しいたしましたように、総理は、研究不十分で答えられないとおっしゃる。しかし、時日もたっておりますし、いまや問題は火がついておるのでおります。しかも、渡米にあたって、アジアの問題をあなたはジョンソン大統領話し合いたいとおっしゃっておられる。ぜひともここで具体的にどうすべきかのその対策を示してもらいたいし、われわれのこの見解に対してどうお考えになるかもこの機会に明らかにしていただきたいと思います。
  93. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 前半についてのジュネーブの十四ヵ国会議、これを開催するのが一つ方法だ、これは、確かにそういう御意見もありますので、その御意見には敬意を表しておきます。ただいま佐藤内閣はどういう方針でこれと取り組むか、これは、抽象的に先ほど来申し上げたとおりでありまして、あらゆる機会にこれを発言する、ただいまこの席で具体的に、かくかくの処置をとる、かようには申せませんが、その点はしばらく実情をごらん願いたい、かように思います。
  94. 辻原弘市

    辻原委員 それで、私は時間がございませんので、日韓の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  新聞の伝うるところによりますと、五日、韓国の朴大統領は新聞記者の問いに対してこういうふうにお答えになっておる。詳細な記事がありますが、それはおくといたしまして、要するに、いまようやく始まった漁業問題の進展は、前途まことにむずかしいのではなかろうか、基線の引き方、あるいは漁獲高、あるいは李ライン、国防ラインの問題等々、なかなか解決ができない、とするならば、一体国交回復をどうするか、こういう点について答えられて、朴大統領は、漁業問題をたな上げにして国交回復をとりあえずやるということも考慮するかのごとき発言があったが、これは、わが国の一括解決とは私は非常に違うと思う。政府は、よしんばそういう向こうの提案があろうとも、一括解決方針は今後とも曲げないということを明言できるかどうか、あらためて承っておきたいと思います。
  95. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 日韓交渉については、一括解決の方式をとっておりますし、その点では十分韓国側にもその意向が伝えてありますので、ただいま御指摘になりましたような、今朝の新聞ですか、これなどのようなことは、もっと実情を明確にしないと、これが事実なりやいなや、私もちょっと疑問にしておるのであります。したがいまして、ただいま第七次交渉が始まったばかりでありまして、この一括方式の方向でわがほうの態度をはっきりさしたい、かように思っております。新聞の伝えるところでは、その他の部面、たとえば大平・金メモはそのまま生かして、ただ漁業問題だけたな上げするかのような印象を持たれておりますが、この点はどうもはっきりしないのでありまして、私何だか、この漁業問題がたな上げされれば、全体が動かないという、そのことはよく朴大統領も御存じなのではないか、かように思います。
  96. 辻原弘市

    辻原委員 要するに日本側としては、先方の出方いかんにかかわらず一括解決方針は曲げない、こういうことですね。
  97. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そういう事情でございます。
  98. 辻原弘市

    辻原委員 一括解決方針は変えない、わかりました。  次に大蔵大臣、あなたはこの間政府代表されて、いわゆる大平・金メモの請求権に関する政府の統一解釈を発表なさった。それについて、私はあらためて後刻いろいろこれを読み返してみましたが、いろいろ疑問があるのです。それで、あらためてひとつ伺ってみたい。  まず、これを読んでみると「先ほどの御質問にかかる政府答弁を統一をいたして申し上げます。大平・金了解事項の(ハ)項は、民間コマーシャルベースによる通商を可能にする友好的宣言条項であります。」こういうわけですね。友好的宣言条項という意味は、これはどういう意味なんですか。
  99. 田中角榮

    ○田中国務大臣 両国の通商友好的基盤に立って通商を拡大していこうという考え方を宣言的にあらわしたもの、こういうことであります。これは自民党と社会党との間でも、これから仲よくしようということを書かなくてもいいけれども、書くじゃありませんか、それと同じことであります。
  100. 辻原弘市

    辻原委員 そうすると、これは(ハ)項についてだけでしょう、宣言的条項というのは。(イ)(ロ)はどうなんですか。(イ)(ロ)(ハ)とありますね。
  101. 田中角榮

    ○田中国務大臣 当時の質問、答弁を十分お聞きになっておれば、その間の事情は明らかにされております。
  102. 辻原弘市

    辻原委員 いや、私は読み返してみたのです。読み返してみて、あらためて伺っておるのです。だから、ここに明らかに統一解釈として宣言的条項、友好的宣言条項と、統一解釈としてあるからです。
  103. 田中角榮

    ○田中国務大臣 このところだけをお読み返しではなく、もう少し私が答弁した全部のことばをお読み返しをいただければ、いまのことに対しては明確にしてございます。
  104. 辻原弘市

    辻原委員 それでは、私はこういうふうに受け取ったのですが、これでよろしいですか。  それは(イ)(ロ)、すなわち二億・三億については、向こうと明確に約束をした、これは、総理はこの間お答えになりましたね。法律的、権利的に日本側が責任を負うべき事項、(ハ)項は友好的宣言事項、言っただけじゃ違う。いわゆる権利義務、道義的にも権利的にも何ら負い目を持たない言いっぱなし。もっと極端に言うと、もっと俗なことを言うと、ここに書かなくても書いてもいい条項というが、しかしながら、やはり友好的に進めるためには、世の中に絵にかいたもちということばがある。かかないよりも、食べられぬでもかいたほうがよろしい、そういう場合はある。そういう意味と私はあなたの、また総理お答えから受け取った。それでよろしいですか。
  105. 田中角榮

    ○田中国務大臣 なぜそういう御質問をされるのかよくわかりません。外交はいわゆる二国間の国際的な立場における外交であって、両国の友好親善を増すために、不自然な国交を正常化せんとするために行なっているのでございます。私もいまのような御質問に対して、何か相手を刺激して、いやがらせのような御質問はなさらなくてもいいじゃありませんかとさえお答えをしているのであります。国際法上はっきりしておりますのは、日本と韓国が条約を締結した場合、お互いが拘束を受けるものは何であるかというと、(イ)項と(ロ)項でございます。(ハ)項に対しましては、お互いがこれから親善友好の関係を持続するということを宣言的に行なったものでございます。こう言っておるのであって、国際法上そういうものはたくさんございます。それを、ただ書かなくてもいいものを書いたにすぎないのですかというようなことまで言うようなものではないと思います。お互いが日本アメリカとの間に友好親善条約を結ぷ場合には、友好親善を行ないましょうという宣言条項があることは、これは国際法上の二国間交渉にはあたりまえにある条項で、こういうものは全然日本も拘束を受けない——私は拘束を受けると思います。(イ)項と(ロ)項に対しましては、明らかに数字で拘束を受けるわけであります。二億ドル、三億ドルの有償、無償をお払いいたします。こういう金額で制約を受けます。そのかわりに向こうは、李ラインの撤廃の問題とか、いろいろな日本が要求している問題が一括解決をせられた場合、日本が拘束を受け、向こうもその問題に対しては拘束を受けるわけであります。  第三の(ハ)項に対しましては、両方が友好親善のために通商を行なおうという場合に、こちらと韓国との間にいろいろな通商を行なう状態においてこの宣言条項があるのでありますから、より延べ払いの条件が有利になりませんかとか、いろいろ向こうのほうも言うでありましょう。しかし、こちらもあえてそういう友好宣言条項をつくった以上、両国の友好親善、いわゆる通商拡大のために努力をするということで、両方とも精神的拘束を受けるわけでありまして、これは何らあるもないも同じことだというような立場に解すべきでないことは言うを待ちません。
  106. 辻原弘市

    辻原委員 大蔵大臣、だいぶかっかされているようですが、私は、もちろん両国の友好親善を何もこわすためにそんな質問をしているのではないのですよ。あなた方のほうでは日韓交渉についての一つ考え方があるでしょう。同時に野党たるわれわれ社会党も日韓交渉、日韓会談については政府とは違った態度をとっている。その立場において、少なくともその交渉がゆがんだ形、誤った形、誤解を生ずるような形で進められてはいけぬから、少なくともこれは統一解釈として政府が明確にされたものだから、私は後日誤解の生じないようにあらためてお尋ねをしているのです。しかし、大蔵大臣がいろいろ言われました。私もいろいろ申し上げようと思ったら、これについていろいろある。だが、詰めたところ一体どうなんだ、こういうことをいま伺った。ということは、こういう心配があるからです。これが統一解釈でなかったらいいのですよ。統一解釈であるならば、当然このことは韓国にもわかるのです。そうすると、韓国では、この友好的宣言条項とは何じゃ、向こうでね、いまあなたが言われたように、あってもなくてもいいものじゃなしに、精神的に拘束されるぞよという、はたして向こうはその程度に理解をしておるのか。(イ)(ロ)(ハ)とあるから、あるいは向こうは(イ)(ロ)(ハ)のそのランクはそう変わらないと受け取っているかもしれない。そこなんだよ、問題は。だから、あらためて私は、これはあなたに質問していいのか、外務大臣にお尋ねしていいのか、むしろ外務大臣でしょう。一体この(ハ)項については先方はどう了解されておるのか、どういうように了解されておるのか。いま大蔵大臣が言われたように友好的宣言条項として理解をされておるのか、その点を明確にしておいてもらいたい。
  107. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 当時の記述を申し上げますと、金・大平会談のとき、最後の(ハ)項に該当します項目につきましては、友好的な宣言的な条項だということは了解がついております。
  108. 辻原弘市

    辻原委員 それじゃ明確にしておきますが、いま後宮局長が答えられ、大蔵大臣がお答えになったことは今後間違いないと断定してよろしいですね。先方も、この項については友好的宣言条項と理解をして完全に了解がついておる、明確に言われた。この点は間違いありませんな。総理大臣、もう一ぺんその点は確かめておきたい。
  109. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 その点については、先方も日本側立場をよく了解しております。
  110. 辻原弘市

    辻原委員 ということが明確になりましたので、私は他の問題は後日に譲りたいと思います。  総理訪米をされるときに先方に提起をしたいという重要な外交問題の中に、先刻のお話だと沖縄の問題が含まれております。これは、当委員会におきましてもかなり議論がされておりますから、私はここで沖縄問題についての法的ないろいろな問題は議論をいたそうとは思いませんが、ただ総理に伺っておきたいのは、沖縄の問題についてどういう主張をおやりなさるつもりか、具体的な内容をこの機会にひとつお聞かせ願いたいと思います。
  111. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 沖縄の問題は、岸内閣以来数次にわたって主張してまいっております。これは、潜在主権というような形で今日一応当方の主張を了承しておる、かように理解しておりますが、問題は、施政権返還の問題が実現しない限り問題は依然として残るということであります。施政権返還の問題は、ことばは非常に簡単でございますが、両者が完全な理解の上に立たないと、現状におきましてはなかなか困難だ、かように私は思っております。したがいまして、今日私が沖縄の問題を取り上げるということを申しましても、これは日本の基本的態度を向こうをして了承さすことであり、それが在来の池田内閣よりもさらに進んで具体化するということを今日期待することはなかなか困難ではないか、かように思います。また、島民の方々が祖国復帰を非常に念願しておりますが、ただいま松岡主席あたりと相談してみますと、何とかして自治権を拡大するような方法はないか、こういうような点にも触れておられます。私は、この問題は比較的小さな問題のように思いますが、現状におきましてこの施政権をアメリカが持っておる限りにおいて、なかなか簡単なことではないだろう、しかし、基本的な了解を取りつける、その内容にはこういう点をも含めて話し合うことは必要だ、かように思っておるのでありまして、先ほど来、出かけたら一体どういう話をするのかという点、それがただいま申し上げるような事柄ではないか、かように思って、この点の努力をするつもりでおります。両国の沖縄についての基本的態度がもっとはっきり明確になること、さらにそれについての相互理解を深めること、これなどは最も効果のある方法ではないだろうか、かように思います。
  112. 辻原弘市

    辻原委員 これは、事務当局でもけっこうですが、沖縄に対する米国のいわゆる援助費の総額はどの程度になっておるのか、またいま予定されておる援助費はどの程度になっておるか、これをちょっとお答えを願いたい。
  113. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 アメリカ側の沖縄に対する援助は、三十九年で総額合わせて約八十億ドルになっている、かように考えます。もっとも、この半分くらいは例の高等弁務官の沖縄における、日本でいうと余剰物資を処分したその費用なのですが、沖縄高等弁務官の自由裁量で援助に使える、それを含んでであります。
  114. 辻原弘市

    辻原委員 そこで、あまり時間がありませんので、私は一点だけ伺っておきたい。というのは、いまも総務長官からお話しになったように、この援助費の八十億ドルというものの中には余剰物資なんかの処分した問題が入っているのですね。そうすると、かつて日本にあったガリオア、エロアなどとやや性格の似たような、そういう感じもするわけです。私はさだかにはわかりませんが。そこで心配になる点は、一体将来施政権が返還されたときにこの種の沖縄援助費というものは——これはいまアメリカ施政をやっているのですから、そのもとにおいて使われている金なのだから、私どもの観念からいうと明らかに行政費なのです。経済援助費と言おうが、あるいは余剰物資を処分してそれを沖縄の復興に使おうが、いずれにしてみても、私はそれは行政費だと思っている。ところが、その間の解釈が違って、将来施政権が返ってきたときに、その施政権と一緒にくっついて、これは援助費なんだ、あのガリオア、エロアがそうだったでしょう。われわれが余剰物資のあれでもらったときには、だれもあれは贈与だと思って、日本国民の借金だなんと考えた者は一人だっておりはせなんだ。ところが、それがとうとうあれだけ膨大な日本側の借款、借金となった。そういうおそれはありはしないか。だから、一体これはどういうことなんだ。その心配はありませんなら、ありません、これをひとつこの機会に明確にしておいていただきたい。幸い総理が向こうに行かれるのですから、もし懸念があるなら、これは総理からお答えを願いたいと思うのですが、明確にしていただきたい、これを要求しておきます。
  115. 臼井莊一

    ○臼井政府委員 ただいま総額八十億と申しましたが、そのうちの約二分の一、四十億ドル近く、正確に申し上げますと、アメリカのプライス法によりますと千二百万ドルまでが沖縄に援助として出せる。本年度においてもそれは一ぱいに千二百万ドル出ました。そのほかにいま申し上げたような約四十億ドル、その解釈につきましては、私も法律的な専門家でございませんから何ともお答えできませんけれども、やはり援助の一部と私のほうでは一応心得ておるわけであります。——ちょっと訂正いたします。私八十億ドルと申し上げたそうですが、これは八十億円の間違いでございます。ですからアメリカの援助は、正確にドルで申し上げますと、千二百万ドルがプライス法、あとやや同額がいま申し上げたような高等弁務官の自由裁量で使える費用、こういうことになっております。
  116. 田中角榮

    ○田中国務大臣 沖縄が日本に返還された還に、米国の沖縄に対するガリオア援助の返済を求められるのではないか、こういう明確な御質問に対してお答えをいたします。  米国は沖縄に対するガリオアの返済は期待していない、米国側は出したものに対して返ってくるというふうには期待しておらないと承知をいたしております。それは何によって承知をするかと言いますと、米政府側の議会における証言等によって申し上げておるわけでございます。  第二の問題を申し上げますと、沖縄は一九四六年一月のスキャップの行政分離指令以来、わが政府施政権下にはないわけでありますが、このように米国がみずから施政を行なっていた沖縄に対するガリオア援助につきましては、米国はわが国に返還後も返済を求めることはない、こういう考え方に立っておるわけであります。
  117. 辻原弘市

    辻原委員 この問題に関する限り、田中さん、日本側考え方ではだめなんですよ。これはもう同じことなんですよ。この前のガリオア・エロアのときも、上院における証言があったのです。それからやはりスキャップのはっきりした記録もあったのです。あったのだけれどもだめだった。だから、ずいぶんわれわれここでやったはずなんです。ああいう証言があったじゃないか、スキャップのあれもこうだったじゃないかということをやったのだがだめだった。だから、日本側だけの考え方ではだめだから、ひとつこれは総理、あなたの訪米機会に明らかにしておいてもらいたい。米国に日本側の意思を伝えて、米側の現時点における考え方をただしておくべきだと思うのだが、どうなんですか、これは。
  118. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今日までの考え方は大蔵大臣から説明されたとおりであります。ただいま、訪米した際にそういう点を確めろ、こういうお話でございますが、御意見はよく伺っておきます。
  119. 辻原弘市

    辻原委員 時間がございませんのではしょりましたが、以上で外交を終わりまして、経済の問題で少しお伺いをいたしたいと思います。  ひとつ端的な聞き方をいたしましょう。大蔵大臣、いろいろ大蔵委員会予算委員会で、あなたは経済に対する所論を述べられておる。一体いまの日本の、わが国の景気、廷折というのはどう把握をされるのか。これまで述べられていますね。中小企業の倒産、手形の不渡り、株価、法人税収の減収、こういう面から見れば不況だ。ところが、ごく最近発表された三十九年度の経済見通しの修正、改定でしたか、あれを見れば、指数を見る限り企画庁長官、成長率は一〇%です。投資を見ましても、決してこれは下がったというふうな印象を与える数字ではない。こまかいのは省きますが、この日本の景気というものを、これは一体不況なのか不況ではないのか、国民はこれを聞きたい。それから今後一体どうなるか、こういう明快な考え方を示されておらぬ。この機会にひとつわかりやすくお答えを願いたい。
  120. 田中角榮

    ○田中国務大臣 大ざっぱに申し上げますと、いま御指摘されたとおり、一部において不況感もあります。しかし一部において、指数から見ますと、輸入も非常に高い高原横ばいの状態でございますし、それから経済成長率も実質一〇%をこすということでございます。でありますから、いまだにまだ生産が高いと言われる面があるわけでございます。それからもう一つは、御指摘になりましたように、資本市場、中小企業、物価の面その他にひずみが出ておりますので、このひずみを早急に解決しなければならぬ事態である。現象論から申しますと、こう三つ大きく申し上げられるわけでございます。  いまの経済の状態がどうだかと言いますと、昨年の十二月から約一年間調整過程を続けてまいりまして、四月一日からIMFの八条国に移行いたしまして、いわゆる開放経済体制に突入いたしたわけでございます。  〔委員長退席松澤委員長代理着席〕 その開放経済体制下におきまして、国際経済の波動に対処し得るように、徐々に国際経済に向かう体制をつくりつつある、こういうことが前提でございます。それから一年間にわたる調整はおおむねこまかいところまで浸透いたしまして、相当引き締まりぎみになったというふうに考えられます。その結果、国際収支も安定的な方向に向きつつございます。ただ引き締めの前提として考えました三つの要素、国際収支の長期安定、物価の抑制及び経済の安定成長確保ということのあとの二点、いわゆる物価に対しましては、多少七、八月ごろから全都市における消費者物価が上がりぎみであるということ、それからもう一つの成長率につきましては、安定成長の確保、いわゆる中期経済見通しにおいて実質八・一%平均と答申されておりますが、初年度である今年度は実質一〇%にも及ぶということでありますので、その面からは多少当初われわれが見込んでおりましたものよりも実効があがっておらない、多少高い指数にある、こう表現せざるを得ないのではないかと思います。でありますから、この年未、昭和四十年度の予算編成に際しましては、あくまでも財政が経済を刺激をするようなことのないように、健全均衡の姿勢をとりながら経済の安定成長を確保する、いわゆる八・一%の中期経済見通しの平均よりも多少下回る程度の安定成長率を目標としての政策を進めていかなければならない段階だと思います。最終的には財政のみならず、財政、金融の一体化をはかっていかなければならないというのが財政経済に対する大ざっぱな現状観察であり、見通しであり、政府の基本的姿勢であります。
  121. 辻原弘市

    辻原委員 いま大臣が述べられた経済情勢の中で、やはり基本になるものは金融対策、金融政策だと思うのです。従来政府のとってきた金融政策は、長期的には低金利政策をとられておる。そうして過剰投資の結果引き締めが行なわれて、短期的には公定歩合の引き上げを三月以来やった、こういう状況なんです。そこでいま一応短期的には国際収支のめどがつきかけた、ひずみができた。だから、ここらで何か金融政策の手直しがあるのじゃなかろうかとみな考えておる。一体大臣が言われる、これから佐藤内閣がそういう方向に持っていこうと施政方針で示されている安定成長の中で、長期的な金利政策はどう考えるのか、また当面、いまあなたの言われた経済状態の中における短期的な金融改発の振り扱いはどうするのか、この点をひとつ承っておきたい。
  122. 田中角榮

    ○田中国務大臣 まず現状論から申し上げますと、先ほども申し上げましたように、もら一年にわたって金融引き締め政策をとっておるわけでございます。私はあえて引き締めと言わず、調整政策と言っておるわけでありますが、調整政策を進めてございます。公定歩合も二厘引き上げて約十ヵ月になるわけでございます。金利の問題については、日銀政策委員がこの操作等に対しては考えておるわけでございますが、私は、先ほども申し上げましたように、世界の情勢は、イギリスの公定歩合の引き上げ、アメリカ、カナダの引き上げ等によって、高金利政策をとっておるのではないかとさえ言われておる状態ではございますが、といって、日本が一年間の引き締めを続けてきた今日、この上になお長期引き締めを強行しなければならないというような状態ではない、こういう考えを持っております。これは確かにアメリカやカナダ、イギリスにおきましても、半年前くらいからいろいろな問題がございましたが、日本はもうすでに一年前から開放体制に向かう準備として、予防的な考え方も含めて金融調整段階に入っておるわけでございまして、一部には、もう少し早く引き下げろ、緩和しろという議論が起こるときに、イギリスが公定歩合を引き上げてくれたので、日本もちょうどいいからこのまま長期姿勢で引き締めを続けるべきだという純金融議論としてはあるのでありますが、私どもは、事実の数字をつかんで実際の状態を見ますときに、あなたが先ほど指摘をされたように、一部には非常に不況感もあります。またひずみを是正しなければならない、特に中小企業や農村問題、そういう面に重点を置かなければならないことを考えますと、このままで棒締め政策をとるべきでない。私は、やはり金融は、緩和ということには問題はございますが、実際に合うようにきめこまかい配慮——これはひとつよくお考えいただきたいのは、私が金融引き締めと言わず、あえて調整と言っておりますことと、金融綬和というよりも、基本的姿勢においては金融を緩和する状態ではないが、これはもちろんあと戻りができない開放体制でございますから、そういう基本的姿勢をとっております。同時に、ある意味において高い調整率のある面もございますので、そういう意味で、基本的に引き締め態勢を堅持すべきではあるが、その過程においてきめこまかくひずみの解消に対処すべきである、場合によっては金を出しても一向差しつかえない、こういう考え方をとっておるわけでございます。  それから、金利論から申し上げますと、日本は原材料のない国でございますから、原材料のある国と原材料のない日本が自由市場において競争しなければならぬ宿命に立っております。その上国際的に金利が高いということになれば、日本人は外国人に比べて体力がそのように大きいわけではありません。体力が小さくて高い金利で原材料のない日本、こういう場合に国際金利にさや寄せしなければいかぬ、金利の重圧から脱して国際競争力をつけてやらなければいかぬことは当然でございますが、これも棒締め政策の逆に、金利は幾らでも下げればいいのだ、短兵急に下げればいいのだという議論に立っておるわけではございません。ある場合には調整的に上げたり下げたりということは当然ございますが、少なくとも金利の高い日本の産業、特に中小企業等を金利圧力からは解放してやらなければならぬことは言うをまたぬと思います  第三点を簡単に申し上げますと、そういう基本的な政策姿勢の中にあって、実際的な問題はどうかというと、日本は低金利政策と言いながら、実質金利は高い。歩積み両建てなどで実質的には高い。中小企業の金利負担は大きい。また公定歩合等から見ますと、金利は高い、こういう二つの面がございます。いまのちょうど金融引き締め過程における経済に対する見通しと同じように、両極端の面があったわけでございます。これはなぜかというと、金利の弾力性が失われておったということでございます。でございますから、オーソドックスなものの考え方、究極の金利体系においては国際金利にさや寄せするという議論を進めていかざるを得ません。いまでさえも金の需要がございますから、金利は高くていいのだといって、金融機関が野方図になることが許されるはずはないのであって、当然金利は下げていかなければなりませんが、しかし、その過程において弾力性を失っておる金利の弾力性というものに対してはできるだけ合理的なものにしていきたいという考えでございます。
  123. 辻原弘市

    辻原委員 私は、いろいろいまの金利対策の問題、あるいは国際金利との関係ないしは中期経済計画の問題等々、経済問題としてなお予算委員会としては尽くしておらぬ問題がずいぶんありますので、それをお聞きいたしたかったのでございますが、時間の関係もございますから、これらについては別の機会にいたしたいと思います。  最後に、これは全然別の問題ですが、自治大にひとつ一点だけ承っておきたいと思うのです。  それは、いま問題になっておる地方公務員の年末手当の問題で、実は私、きょうの新聞を見て、私が質問をいたそうと思ったまるきり逆のことが出ておったので驚いたのですが、何かそれぞれ地方でやっておる年末資金のあれについて、中央からとかくの干渉をしよう、そういう記事が出ておりました。時間がありませんから私から申し上げますが、いま地方公務員については、問題は、はたして百五十億というあの措置額で十分地方がまかなえるのかどうか。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕 これは大いに疑問のあるところです。この点について自治大臣の見解をひとつ……。資金運用部から百五十億補てんをしましたね。これで十分まかなえるのか、それが一つ。それから地方の実情を見ますと、国家公務員の場合には、大体法律が通りますると、すぐさま実施できる態勢にあると思いますが、地方ではなかなかそう簡単にうまくいかない。あるところでは、どうもおれのほうは国が十分財源を見てくれないから十二月か一月しか実施できないというようなところもある。こういう私は実施時期をずらすなんということは、国家、地方両公務員の均衡からいってまことに好ましくないと思う。したがって、そういう点について自治大臣としてはどういう行政指導をされようとするのか、これらをひとつ明確にしておいていただきたい。
  124. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お答えをいたします。今回の地方公務員の給与改定に伴う財源措置として百五十億で十分かというお尋ねでございます。これは先日も申しましたように、地方公務員全体としては六百億でございまして、不交付団体百五十億を除きまして四百五十億要るわけでございます。これは人事院の勧告自体をとりますと、四百二十五億ぐらいでございますけれども、そのほかいろいろの手当等も考慮いたしまして、私どもは四百五十億と踏んだわけでございます。その財源措置として、国税の伸びに伴う地方交付税の財源が百五十九億、それから地方税の伸びが六十一億、そうして節約が八十億、を差し引きまして百五十億、これで私はまずだいじょうぶだと思っております。これは御心配は要りません。  それから支給の時期でございますが、これは私ども、国に準じて地方公務員もすぐ支払えるような手はずをいたしておりますから、先ほどお尋ねの点がございましたが、おそらくそう一月に伸びるということはない、このように存じております。なお、もしそういうことがございますれば、さらに指導をするつもりでございます。
  125. 辻原弘市

    辻原委員 それで、私ははっきり承っておきたいと思いますが、自治大臣のお答えによりますと、要するに六百億の必要財源については完全に措置ができたのだから、地方では財源の不足を理由にしての実施時期の延伸は許されない、こうですね。もしかりにそういう理由でもって九月実施を十月とか十一月とかに延ばそうとする地方団体に対しては、適当な行政指導によって、自治大臣の責任において地方公務員、国家公務員の均衡をはかります、こういうことですね。
  126. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 さようでございます。
  127. 辻原弘市

    辻原委員 その問題はそれでけっこうです。あなたの責任ですよ。  最後に私は、総理に、いささか失礼ではありまするが、一言苦言を呈して私の質問を終わりたいと思います。  それは、委員会が始まって以来、総理は、また総理のみならず、いま外務大臣がおられませんが、実に重要な問題について誤った答弁をされたり、ないしはそれをつかの間を置かず訂正をされたりいたしております。私は、訂正することは、あやまちを改めるにはばかることなかれと言いますから、そのこと自体を責めようとは思わないのです。それは当然率直でよろしいというほめ方もあるでしょう。しかしながら、きょうの何かの新聞にも皮肉っておりましたが、いやしくも一国の外務大臣であり、一国の総理大臣であるわけなんです。その言はきわめて重いといわなければならぬと私は思う。それが軽々にすぐさま取り消しをされたり、あるいは補足をされたりというようなことは、事重大な問題だと思うのです。だから、そういう点において、私は決して訂正をするなということを申し上げているのではない。人間というものは舌足らずの場合もありましょう。思い違いもありましょう。記憶違いもあります。しかし、今委員会において訂正をされたり、されようとしたことは、これは単なる思い違いや何かの問題でない。椎名外務大臣のごときは実に明快に言っておる、国連における代表権の問題を日本が支持することは、これは中国国連加盟を阻止することである、明確なんです。だから、国連加盟の事態というものは最悪の事態だということも明確に言っておる。こういうことは言い違いだとか記憶の誤りの問題ではない。だから、そういうことを軽々に訂正されるなんということはこれは国会における発言としては、政府国会軽視だと言われてもやむを得ない。だから、どうかひとつ、その点については慎重に発言をなさる。そうして、もちろん誤りがあれば改めてもけっこうだけれども、しかし、そのつどつど口先で便宜的にごまかしていこうというような考え方でもし処しておられるということならば、これはとんでもないことだ。だから、そういうことは今後ないように政府としても十分善処していただきたいということを私は最後に要望いたしまして、私の締めくくりの質問を終わりたいと思います。(拍手)
  128. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 以上をもちまして辻原弘市君の質疑は終了いたしました。  これにて締めくくり総括質疑は終了いたしました。  以上をもって昭和三十九年度補正予算三案に対する質疑は全部終局いたしました。     —————————————
  129. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 引き続き、これより昭和三十九年度補正予算三案を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。  五島虎雄君。
  130. 五島虎雄

    ○五島委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました政府昭和三十九年度補正予算、すなわち第1号、特第1号及び機器1号に対し、反対の討輪を行ないます。  私は、まず本補正予算案に対する反対の理由を申し上げる前に、何よりもその背景となっているわが国経済がいかなる事情のもとに置かれているかを指摘しなければならないと思います。  現在わが国経済を取り巻く情勢はきわめてきびしいものがあります。インフレと借金政策を柱とした所得倍増政策はいまや完全に破綻し、高度成長の結果もたらされた見せかけの繁栄は、その矛盾が爆発的にあらわれており、単なるひずみ是正ではどうにもならないところに追い込まれているのであります。不況の中での過剰生産要因の増大、物価の高騰、中小企業の倒産、農業の荒廃、事故や災害の頻発、産業公害や都市公害、住宅難等々、その矛盾は社会生活のあらゆる分野に拡大しております。とりわけ物価の高騰は、政府の消極性と無能を暴露しているのであります。消費者物価は昭和三十五年から三十八年までに平均二一%も上昇し、本年度も政府のいうところの四・二%の値上げに押えることはとうてい困難であるのであります。しかも、これは平均数字の詣でありまして、値上がりの実態をつぶさに検討するならば、低所得層にいけばいくほど値上がりの影響は大きく、かつきびしく響いているのであります。さらには、開放体制への移行と金融引き締め政策の中で中小企業切り捨て政策が浸透してまいりました。近代化の立ちおくれた中小企業を一そう圧迫し、倒産件数は、その負債額一千万円以上を取り上げてみましても、本年四月に戦後最高の記録を記録いたしましたけれども、その後毎月これを書きかえてまいりました。十一月には倒産件数は何と五百十八件、その負債額は五百九十億円と急増してまいりました。一月以降の総倒産件数は実に三千六百十六件に及んでおります。これはまさに中小企業の危機といわなければなりません。また、農業におきましても、構造改善政策は勤労農民を犠牲にいたしました。出かせぎ農民は急増の一路をたどっております。農業もまた危機に瀕しているといわなければなりません。  現在の政治の急務は、いわゆる倍増計画によってもたらされたところの経済のひずみと、国民生活の困窮を緊急に是正するための責任ある措置をとるとともに、それらを打開するために、経済政策の根本的な転換を行なわなければならない時期に到達しているのではありますまいか。しかるに政府は、経済危機を打開して政策を転換するだけの能力も決断力もなしに、あまつさえ消費者米価の一四・八%の値上げ、さらには医療費、公共料金、国鉄運賃など、大衆生活に直結し、経済に重大な影響を与えることが明らかである各種料金等を次々に値上げしようといたしております。日本経済をあずかる者としてまさに無責任きわまりないものであると断ぜざるを得ません。  さて、今回の補正予算は、補正を要する歳出追加所要額合計一千六十四億円、修正減少額は二百十四億円、その差し引き予算規模は八百五十億円であり、そのおもな項目は人事院勧告に伴う公務員給与の改定、災害復旧費、食糧管理特別会計への繰り入れ、地方交付税交付金等の八項目となっております。しかし、その内容は、どれ一つをとりましても、その無原則と無責任ぶりは目をおおわしめるものがあるのであります。  まず第一点は、公務員給与についてでありますが、去る八月十二日人事院は公務員給与に関する勧告を行ない、民間給与との格差を是正するために給与改定を五月一日から実施するよう勧告し、すみやかに適切なる措置をとるように切望したのであります。この勧告は、物価政策の破綻の中で民間給与との格差を是正するための最小限度の措置でありました。しかるに政府は、勧告を、尊重する立場から例年によりも一ヵ月繰り上げて本年は九月から実施すると、まるで鬼の首をとったかのごとく宣伝し、あるいは恩典がましく説明してまいったのでありますが、このことはいかに政府が人事院勧告を尊重していないかの証左となっただけであります。勧告無視もはなはだしいと言わなければなりません。むしろ九月にさかのぼらざるを得なかったその最大の理由は、もはや例年の十月実施では公務員の不満を押え切れなくなった、それがおもなる原因であったと言わなければなりません。  さらに今回の給与改定が地方財政の欠乏と弾力性に欠ける実態の中で、地方財源に十分な財源措置を行なうことなしに実施されていることは重視すべきことであります。政府は、当初地方公務員の給与引き上げ分は自主財源でまかなうべきだと官房長官談話を発表いたしました。ところが、これに対して全国知事会などは猛烈なる反発をいたしました。これは皆さんの御承知のとおりであります。しかしながら、本予算案においてもこの方針は変わっていないのであります。確かに財源の約百五十億円は地方交付税及び譲与税配付金特別会計に一括借り入れをするという措置がとられているのでありますが、これらの措置は、交付税の先食いのほか何ものでもありません。地方公務員の給与改定に要する財源は、国が地方公共団体に対して全額交付すべきが当然であるということをわれわれは主張いたします。  第二に、災害対策に対する取り組みと、その予算措置についてであります。ことしもまた新潟地震に始まり、山陰、北陸の豪雨、台風十四号と二十号、北海道や青森の冷害等の引き続いた災害は、これからの寒さの中で深刻な事情を引き越こしております。とりわけ政府の災害復旧事業が遅々として進まない。そういう災害から二ヵ月以上も経過した今日、ようやく予算化され、その予算額の金額もわずかに百八十八億円にすぎないのであります。申すまでもなく、今日の災害は、いかに台風日本、災害国日本とはいえ、あまりにも多発的であり、その被害もまた甚大であります。とりわけわが国の災害は、単に天災というにはあまりにも政治行政の措置が立ちおくれておりはしませんか。人災そのものであるということが言えると思うのです。この際すみやかに災害復旧と被害者の生活救済のための抜本的措置をとるとともに、融資等につきましても、原資の確保、災害に応じた貸し付け条件の改善、あるいは過年度繰り越しの固定負債の整理の措置等をすみやかにとるべきが至当ではありませんか。とりわけ個人災害は、現行法では救済できないのであります。災害の悲惨の中で、生活に落伍をしていく例も決して少なくなしとしません。罹災者援護法の制定など、総合的な災害対策を急がれなければなりません。  第三の点は、医療費値上げについてであります。現在の医療の実態から見まして、中央医療協議会の答申を尊重し、当面十一月一日より来年の三月三十一日までの間、医療費を八%引き上げることは必要とわれわれも認めます。しかしながら、これは最近の物価動向から見まして、また国民負担の立場から見て、国庫負担を増額して、患者負担の増大を防ぎ、医療保険料を据え置きにして、さらに低所得層の医療費負担を軽減できるように措置を講ずべきでありました。この措置と並行して、明年四月一日以降に診療報酬支払い体係の抜本的改定を実現できるように、中央医療協議会をはじめとする社会保険関係諮問機関の審議を経て措置を決定すべきであります。しかるに政府は、これらのことを何ら考慮することなしに、保険主義による低医療費政策の矛盾をたな上げにいたしまして、診療報酬を九・五%引き上げ、その負担を患者にしわ寄せしようとする態度は、医療行政と国民の健康管理を放棄するものでありまして、これは許し得ざる問題であります。  第四に、食管会計への繰り入れの措置についてでございます。政府は、内閣改造のごたごたに便乗いたしまして、十一月九日、突如として池田内閣最後の持ち回り閣議で、消費者米価を平均一四・八%引き上げることを決定しました。佐藤総理は、物価安定に慎重に対処するという施政演説もいまだその舌の根のかわかないうちに、組閣最初の仕事として、消費者米価引き上げがお年玉であったことは、まことに皮肉であるといわなければなりません。この補正予算を通じて、佐藤内閣の本質を暴露したものであるといわなければならないと思います。消費者米価の値上げが、他の諸物価の値上げに口実を与えまして、物価高騰の重大な契機となることはもはや否定し得ないところであります。かつて昭和三十七年の消費者米価値上げが、その後の半年間に五%も消費者物価値上げをもたらした事実を想起するに、今度の値上げはまさに物価上昇に重大な転機をつくったというべきでありましょう。とりわけ消費者米価は、国民の主食であり、食糧管理法第四条第二項の趣旨からいっても、国民生活の基本を守るためにこれを管理統制するのは国の義務であり、政府の義務であります。いわゆる逆ざや現象は、それ自体が社会政策費としての要素を持つものであります。政府は、さきの閣議決定をすみやかに撤回されまして、消費者米価を据え置くとともに、食管会計の赤字については、行政費及び社会政策費として一般会計から補てんすべきであるということを主張するものであります。  さらに公営バス料金等につきましても、これを据え置きにし、累積赤字は地方自治体の一般会計から漸次補てんをいたしまして、これに該当する金額は政府が地方自治体に対して交付すべきであります。政府が声を大にして物価値上げ抑制を百万べん叫ぶことよりも、以上のような措置をとりまして、まず政府みずからが値上げを行なわないことによって、所得倍増計画の破綻の結果として再び燃え上がろうとする物価上昇の火の手を鎮静せしめなければならないということを、声を大にして主張をいたしておきます。  第五に、深刻なる倒産に見舞われている中小企業対策に何らの措置がとられていないことであります。冷酷な中小雰細企業の切り捨て政策によって、中小企業の倒産は急速に、かつ底知れず拡大しております。高度成長政策のしわ寄せによりましてもたらされた中小企業の未曽有の倒産、不渡りを救済し、年末融資の資金の需要にこたえるために、財政投融資の大幅な拡大、ことに零細企業に対する配慮など、緊急に措置しなければなりません。また、中小企業信用保険公庫に対するところの出資追加の措置が強く要請されるのであります。しかるに、政府はこれらの点に関して熱意を見せておりません。このような状態を放置するならば、単に中小零細企業の危機と切り捨ての進行のみならず、日本経済を重大な恐慌に巻き込む情勢をつくり出していることを知るべきではないでしょうか。  最後に、財源措置について一言触れます。補正財源の中心は勤労所得税の自然増収にその中心を置いていることであります。今回の租税の自然増収性、勤労者に対する課税が生計費にまで食い込んで行なわれている実態の中で、物価高による名目賃金の上昇に伴いまして、擬制的に所得が向上した結果生じた増収であります。勤労者の生活の実態からははるかに遊離した税の取り過ぎであると言わなければなりません。財源難を云々される中で、勤労者の税金のみが相変わらず高額課税されるということは、基本的には防衛費や大企業の産業基盤づくりに奉仕するところの公共投資、物件費等の増大と、政府みずからが招いた物価高によって、皮肉にも財政そのものが圧迫されてきているという、それ自体がおもなる原因になっているのであります。これらの費用こそ徹底的に削減することによって財源を捻出すべきではなかったか。それが当然ではなかったかと思います。この意味で、本年度の自然増収についても実態に即した再検討を行なうべきであるということを強く主張いたすものであります。  以上六点にわたって本補正予算案には致命的なる欠陥のあることをここに明らかにいたしたのでありまするが、政府がこのような欠陥を有する補正を選出しなければならなかったその怠慢と無責任を強く指摘いたしまして、本補正予算案に対する反対討論を終わるものであります。(拍手)
  131. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次に仮谷忠男君。
  132. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 私の討論時間は五分間に制限されております。十分意を尽くせないのはまことに残念ですが、ただいまより自由民主党を代表して、昭和三十九年度一般会計補正予算外二案に対し、賛成の討論を行ないます。  本案については、さきに大蔵大臣の説明もありましたように、補正の主たる要因は公務員給与、消費者米価、診療報酬等の改定及び災害復旧等に伴う所要経費の追加並びに不足財源補てんのため既定経費の節減等でありまして、一般会計、特別会計、政府関係機関において、それぞれ所要の補正を行なっているのでありますが、私は以下二、三の点について、簡単に所見を申し述べて賛意を表明いたしたいと存じます。  まず第一点は、公務員給与改善費三百九十一億円であります。公務員給与の改善は、昨年度もその引き上げを行なったのでありますが、その後の民間給与の上昇に伴い、政府は過般の人事院勧告を尊重して、本年九月よりこれを実施することといたしたのであります。改定の内容では、高校、大学卒ともに初任給を引き上げ、また下位等級の引き上げ率の優遇、大学教官、研究職員、医師などに対する特別な配慮等、まことに時宜を得た措置と思われます。ことに本年度は、従来のごとき大幅な税の自然増収も見込まれず、ここ数年来まれに見る財源難であり、加うるに災害復旧費の大幅な追加にもかかわらず、その実施を従来よりもーヵ月繰り上げられましたことは、まさに政府の英断であり、率直に認めるべきであると思います。また、地方公務員の給与改善をも考慮して、その財源確保のため所要の措置が講じられたことに対しても、われわれの敬意を表するところであります。  ただ、ここで私の一言いたしたいことは、給与改善と業務能率の向上ということであります。申すまでもなく、賃金の上昇は常に生産性の向上と見合うものでなくてはならないことは、経済運営の大原則であり、しかして高能率、高賃金こそ、近代福祉国家の理想像として、わが党経済政策の大眼目でもあります。今回の給与改善にあたりましても、公務員諸君の一そうの職務能率の向上を私国民とともに期待してやまないものであります。  なおこの際、給与に関する人事院の勧告の時期、その実施方法等についても、政府及び人事院においてはさらに十分なる検討を加えられるよう要望をいたしておきたいと思います。  第二点は、消費者米価改定に伴う諸経済でありますが、いずれも改定による生活保護費等の増加であり、当然ながら妥当な措置と考えられます。消費者米価の値上げについては、世論の一部に強い反対意見のありますことは申すまでもありませんが、しかしながら、ここ数年聞における生産者米価は四四%の値上げを行なっており、これに対して消費者米価は一二%にとどまり、その差額は逐年拡大されて、いまや全国的に大幅な逆ざや現象を呈しておるのであります。このまま放置すれば、食管制度そのものをもくずすおそれなしとしないのみか、財政上の負担もまた巨額の増加を来たしているのでありまして、現に食管制度については一部批判の生じておることも事実であります。元来消費者米価は、家計の安定を害しない範囲で経済状況等を勘案して改定することとなっておるのでありますが、ここ数年来の国民所得の上昇などを勘案するときに、今回の上げ幅がその家計支出に与える影響は〇・六%の微増にとどまっているともいわれ、またこれと並行して行なわれる徳用米の質的改善、配給の合理化等、一連の措置をあわせ考えるときに、政府の低所得層に対する慎重な配慮もうかがえるのでありまして、われわれもまたこれを了承するにやぶさかではございません。  しかしながら、なお一言申し加えますならば、消費者物価の動向は引き続き上昇的ムードを醸成しており、強力な対策を期待す声は本委員会における論議を通しても明らかなところであります。政府の一そう積極的な努力を要望してやまない次第であります。  最後に、災害復旧費追加百八十六億円でありますが、さきに発生した新潟地震をはじめ、山陰、北陸地方の豪雨による大規模な災害の復旧等に対処するものであり、また北海道等の冷害及び二十号台風の被害に伴う再保険金支払い財源の追加等、それぞれ所要の措置を講じ、被災者の救済に万全を期していられますことはまことに適切であり、賛意を表するものであります。  このほか、診療報酬改正に伴う経費、義務的経費の精算不足額の補てん、地方交付税交付金等、いずれも当然の補正として賛成の意を表明し、簡単ながら私の討論を終わることにいたします。                  (拍手)
  133. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次に永末英一君。
  134. 永末英一

    ○永末委員 私は、民主社会党を代表し、政府提案の昭和三十九年度一般会計補正予算特別会計補正予算政府関係機関補正予算三案に対し反対いたします。以下、その理由を申し述べたいと存じます。  今回の補正予算は、例年とは異なり、佐藤内閣成立後第一回の予算であるというところに最も大きな特色を持っております。したがって、われわれは、この予算案の審議を通して佐藤内閣の性格と方針が何であるかについて慎重に検討いたしてまいりました。ところが、佐藤新首相は、その就任にあたって、池田路線の踏襲というくつわをかまされたとかで、本年七月の自民党総裁選に際して佐藤氏が立候補した際の公約の重要な諸点をみずから否定ないし取り消し、ついに国民に対し佐藤路線の何ものであるかについて明確な印象を与えずに終わりましたことは、まことに遺憾であると言わなくてはなりません。イギリスの労働党ウイルソン新首相が、就任後百ヵ日の間にその施政方針の骨組みをつくり上げるために全力投球している姿と比べて、日本の政治の前進のために佐藤首相の勇断を望んでいた国民は大きな失望を感じております。  池田内閣の退陣は、池田前首相の不慮の病気によるものであったとはいえ、池田路線に対してその変更を迫る声は国内に満ち満ちております。この状況を洞察して、国の進むべき道を国民に示すのが佐藤首相のとるべき態度であったはずであります。一体、寛容と調和を政治の基本的な姿勢にするというのでありますが、佐藤首相自体に何らかの方針があって初めて寛容と調和が存在し得るのであって、もし首相自体が無内容であるならば、寛容と調和は憶病と混乱を招く結果になるのでありましょう。内閣の命は短く、日本の政治の命は長い。佐藤首相がこの自覚の上に立って日本人の歴史の上にりっぱに責任を遂行されることを国民は望んでいるのであります。私は、この際、国民が何を望んでいるかについてわれわれが把握したところを明らかにして、予算審議を通じて判明した佐藤路線のあいまいさの払拭を強く要求したいと存じます。  まず、外交の問題を取り上げてみたいと存じます。池町式経済外交はすでにその役割りを果たし、日本外交はいまや大きな転換期に立っております。たとえば第一に日米関係について見ましても、アメリカわが国をもはや十二歳の仲間とは見ず、むしろ競争者として見詰めている面があることを忘れてはなりません。昨年来の金利平衡税問題の経過一つを取り上げても、このことは明らかであると言わなくてはなりません。  第二は、共産圏貿易についてであります。政経分離の原則は、アメリカに対しては通用するかもしれませんが、共産圏に対しては通用し得なくなりつつあるという事実であります。たとえば中共の核爆発に対して、右手で対決ムードをあおりながら、左手で経済的交流をというような自民党のやり方では、共産圏の共感は得られないということであります。  第三は、南北問題についてであります。かたくなな経済的合理主義に立って日本の対新興国態度をきめていきまするならば、その態度は、すでに本年のジュネーブにおける国連貿易開発会議において新興国側から強く批判されたことは御承知のとおりであります。日本がAA国の一員として行動していく立場佐藤内閣はとろうというのであるならば、何よりも池田式経済合理主義の立場を、より高い国際政治の理念から修正していかなければ、南北問題についても日本は国際的に孤立する結果になるという認識に立つべきであります。  第四は、対自由圏関係についてであります。ガット三十五条の対日援用撤回、関税一括引き下げ交渉への参加、OECDへの加盟など、いわゆる先進国グループヘの参加が目的であった池田内閣の時代と、加入したグループの中でどう適応、対処するかを考えねばならぬ佐藤時代とに大きな違いがあることは当然であります。いずれにしろパックス・ルッソ・アメリカーナ、ソ連とアメリカによって保たれている平和に日米安保体制によって依存し、外交とは経済外交だと考えてきた池田路線から、いまや国際政治の多元化の現実を前にして、外交が何よりも日本の平和と安全のために考えられなければならない本来の姿に立ち帰らなければならない段階に立ち至っておるのであります。たとえば中国国連加盟問題、ベトナム紛争を取り上げても、いまや、まず日本方針を定めて現実解決すべき段階になっているではありませんか。 次に、この予算案が取り扱っております国内経済についても、池田路線は変更されなければならぬ事態に立ち至っているということであります。池田内閣がとってまいりました高度経済成長政策は、すでに行き詰まりの状態に立ち至っております。その端的な表現は物価の値上がり、株価の暴落、中小企業の記録的倒産、農業人口の激減などとなってあらわれております。池田路線、すなわち、高度経済成長政策をとりながらひずみを是正しようなどということは、酒をじゃんじゃん飲ませておいて血圧を下げようということにひとしいことであります。いま佐藤内閣にとって必要なことは、高度成長路線から安定成長路線へ切りかえることを国民に明示することであります。安定成長路線とは、OECDも指摘するように、個人消費需要を柱とする発展であります。それは設備投資の増加を推進力とした高度成長路線のようにはでなものではありません。しかし、いまこの変更を行なわなければ、わが国経済は恐慌かインフレかいずれかの道をたどらざるを得ないのであります。われわれはこれに対する対策として次の諸点が必要であると考えます。  第一は、財政の膨張を許してはならぬということであります。財政を経済成長促進の起爆装置として使おうという態度は一てきされなければなりません。現時点における財政の任務は、経済成長から生まれてきた諸柔盾、特に増大する格差の解消のために用いることであります。そして経済成長率という空予測数字に見合って膨張されてまいりました放漫予算を引き締め、効率的に資金使用ができますように財政整理を行なうことが必要であります。今回既定経費の節減を行ないましたが、それは施設費、事業費、旅費、庁費などに三%の節減をしたにとどまり、全既定予算に対してはわずかに〇・七%弱の即減にしか過ぎません。財政の総ワクを押えるという点に対する心がまえとしてはきわめて不徹底であると言わざるを得ません。さらに法人税の減少を予測しながら、同じ立場にある個人事業者の申告程の増加を財源確保の観点から見込んでいることは、中小企業の倒産の現状から見て賛成し得ないところであります。安定成長の税制面におけるアプロ−チは所得者減税であり、中小企業に地力をつけることであります。これに背を向けた歳入見積りには賛成するわけにはまいりません。中小企業、農業に対する緊急対策が予算面であらわれていないこともまたわれわれのきわめて遺憾とするところであります。  第二は、池田内閣時代顕著にあらわれた一般会計と財政投融資との混淆の問題であります。一般財政でやるべきことを財政投融資に回し、資金運用部資金などの零細な大衆資金をこれに充て、さらに一般財源を産投会計につぎ込んで税金の使用を硬直化させるなどのやり方は、安定成長路線においてはとるべき方策ではありません。ところが、今回も地方公務員の給与改定のために資金運用部資金を、法律を改正して交付税及び譲与税配付金特別会計に借り入れるなどの異常措置をとっております。このような便宜的な措置は許さるべきことであるとはわれわれは考えません。  第三は、金融に関する問題であります。本年三月、日銀公定歩合引き上げ以来の景気調整は企業間信用の増大を来たし、それがいま中小企業の倒産となってあらわれております。補正予算は金利引き上げと預金準備率引き上げによる日銀納付金を受け入れておりますが、いま必要なことは、安定成長のためには日銀のオーバーローンをやめ、金利の景気調整機能の復活を目途とする公定歩合操作に関する佐藤内閣方針を明らかにすることであります。ところが、政府はこれに関する方針をあいまいなものにし、さらに政保債の発行を行なっておるのであります。国債は発行せずと言いながら政保債の発行を続けることは、民間資金の圧迫になるか、またはインフレ要因をつくるか、いずれかであります。景気調整の総仕上げ期と年末とが重なっているむずかしい時期に、性格のはっきりしない予算案を出しているやり方にはわれわれは賛成するわけにはまいりません。  第四は、安定成長のためには何よりも物価の値上がりを押えなければならぬということであります。佐藤首相は、池田前内閣の決定だからということで消費者米価の値上がりをうのみにして予算案に盛り込みました。さらに診療報酬の改定にあたっては、国民に薬代の負担をさせるというのであります。財政の都合のために国民に迷惑をかけてもいいという態度では、安定成長などできるわけはございません。取りやめるべきであります。また財政の都合のために人事院勧告の完全実施を値切るやり方は許さるべきではありません。  以上申し述べましたように、今回の補正予算は、国民が要望するものとはおよそかけ離れた危険な性格を持つものであり、このような予算編成方針がもし明年度予算においてとられるならば、国民佐藤内閣に対して人間尊重の文字を返上し、もはや寛容ではなくなるということを警告して、反対討論を終わります。(拍手)
  135. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  昭和三十九年度一般会計補正予算(第1号)、昭和三十九年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和三十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  136. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 起立多数。よって、昭和三十九年度補正予算三案は、いずれも原案のとおり可決いたしました。(拍手)  なお、委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。   〔報告書は付録に掲載〕   ————————
  138. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  先ほどの理事会の協議に基づき、予算の実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。   ————————
  140. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 次に、閉会中審査に関する件につきましておはかりいたします。  予算の実施状況に関する件につきまして、必要ある場合は議長に対し閉会中審査の申し出をいたしたいと存じます。その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。   ————————
  142. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、一言ごあいさつ申し上げます。  今次臨時国会における最重要案件たる補正予算は、ここに慎重審議の結果、円満に委員会の審査を終了いたしました。これひとえに委員各位の御熱心な審査のたまものでありまして、委員会の審査に御精励くださいました委員各位の御苦労に対し、探く敬意を表します。なお、また、終始委員長に対し賜わりました御協力に対し、ここに厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。   午後一時十分散会