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1964-12-04 第47回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十二月四日(金曜日)    午前十時八分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 青木  正君 理事 植木庚子郎君    理事 中曽根康弘君 理事 松澤 雄藏君    理事 井手 以誠君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    井出一太郎君       井村 重雄君    今松 治郎君       小川 半次君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    上林山榮吉君       正示啓次郎君    登坂重次郎君       西村 直己君    古井 喜實君       保科善四郎君    松野 頼三君       水田三喜男君    山本 勝市君       淡谷 悠藏君    石野 久男君       岡田 春夫君    加藤 清二君       川崎 寛治君    久保 三郎君       河野  密君    多賀谷真稔君       滝井 義高君    堂森 芳夫君       中井徳次郎君    芳賀  貢君       武藤 山治君    山花 秀雄君       今澄  勇君    小平  忠君       玉置 一徳君    永末 英一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣         外務大臣臨時大         理       佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣         通商産業大臣臨         時代理     田中 角榮君         文 部 大 臣 愛知 揆一君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         運 輸 大 臣 松浦周太郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         自 治 大 臣 吉武 恵市君         国 務 大 臣 高橋  衛君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (欧亜局長)  法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局長         事務代理)   瀧川 正久君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (関税局長)  佐々木庸一君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         社会保険庁長官 大山  正君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      久宗  高君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         農林事務官         (畜産局長)  檜垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  林田悠紀夫君         食糧庁長官   齋藤  誠君         林野庁長官   田中 重五君         通商産業政務次         官       岡崎 英城君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      川原 英之君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君  委員外出席者         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐成 重範君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 十二月四日  委員滝井義高君、武藤山治君、芳賀貢君及び玉  置一徳君辞任につき、その補欠として多賀谷真  稔君、安井吉典君、久保三郎君及び小平忠君が  議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計補正予算(第1号)  昭和三十九年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和三十九年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度一般会計補正予算(第1号)、昭和三十九年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和三十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。  なお念のため申し上げますが、佐藤外務大臣臨時代理は本日の午前は三十分間出席いたしますので、さよう御了承願います。玉置一徳君の外務大臣に対する質疑は、冒頭の三十分間にお願いをいたします。  玉置一徳君。
  3. 玉置一徳

    玉置委員 佐藤外務大臣臨時代理に御質問をいたします。  総理は、去る十一月二十一日の就任初所信表明におきまして、自主外交を展開し、世界の福祉の向上に貢献することをわが国外交基本姿勢にしたい、こういうように表明されたのであります。なお、軍縮や南北問題、あるいは植民地及び人種差別問題等解決が恒久的世界平和の実現に不可欠の要件であることを強調して、国連こそこれらの問題の総合的かつ秩序ある解決を促進するための主たる役割りを果たすべきものである、この見地に立って今後国際連合においてわが国世界平和維持のため一そう積極的に貢献するよう努力することを表明されたのであります。このことは、歴代内閣が掲げてこられました国連中心外交方針を、佐藤内閣も踏襲するとともに、さらに積極的にこれを通じて世界平和に寄与することを明らかにせられたものと思います。特に中共核実験でやがて数年後には核戦力保有国となることを約束づけられておる今日、わが国安全保障の問題についても真剣に取り組まなければならない時期にきておるやに思います。以上の総理所信表明に関連いたしまして、国連外交中心にいたしまして、具体的に総理外相代理に御質問をいたしたいと思います。  まず第一に、総理は、世界平和の実現国連の大きな役割りを認め、国連においてわが国世界平和の維持のため一そう積極的に貢献するというように申されておりますが、国連の平和と安全保障機能強化に対しまして、具体的にはどのような協力体制をとろうとしておいでになりますか、お答えをいただきたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 国連平和機構としていろいろ努力しておることは、玉置君ももう御承知のことだと思います。そこで私どもは、国連憲章の持つ目的、原則、こういうものを尊重して、そうして平和機構としての強化をはかっていく、またそういう意味でこれに協力していくというのが基本的なたてまえでございます。
  5. 玉置一徳

    玉置委員 非常に抽象的でございますけれども、次に移ってみたいと思うのですが、具体的に申してまいりますと、御承知のとおり、定められました拠出金によって財政的に国連維持に寄与する、こう申しましても、御承知のとおりわが国はわずかに二・数%の義務費しか負っていないわけでありまして、しかも先般コンゴ紛争処理のための臨時費用五百万ドルの公債の購入問題が起きましたときにも、これを購入されたのでありますけれども、その決定が非常におくれてあまり喜ばれておらなかったように承っております。ただいま申しましたように、義務費拠出は当然といたしまして、こういった臨時的に自発的に拠出をするような、国連安全保障機能強化する面についての協力というような点につきましてはどのようにお考えになりますか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 国連担当の参事官から説明させたいと思いますが、ただいま問題になりますのは、常任理事国の間の意見が一致しない、そういうことに基づきまして、いろいろ機能を十分発揮することができないような事態が次々に起こっておると思います。ただいまの玉置さんの御指摘もそういう点に触れるわけで、これが国連機能を高めていく上において当面一番の問題である。これをいかに調整していくのか、そういう場合に日本などは立場上積極的に意見を発言し得るのじゃないか、むしろその当事国でないだけに話がしいいんじゃないか、かようにも思います。なお現状についての説明は、分担金あるいは安全保障としての国連が負担すべき支出、それなどもソ連アメリカとの間に意見が食い違っておることも、新聞で数次伝えられておりますから御承知のことだと思いますが、これがただいまどういうようになっているか、詳しく説明させたいと思います。
  7. 瀧川正久

    瀧川政府委員 ただいま御質問がありました点につきまして、事務的に御説明申し上げます。  まず経費の問題でございますが、憲章第十九条によりまして、国連経費分担をしない国は、二年間滞納をいたしました国は投票権を失う、そういう規定がございます。これに関連いたしまして、ソ連等七カ国は、現在十二月一日をもちましてこれに該当するような事態になっております。アメリカその他の国は、この規定上当然ソ連滞納分を支払うべきである、こういう立場をとっておるわけでございます。一方ソ連は、その分担金の中には国連総会決議等に基づきまして行ないました平和維持活動経費が含まれておるのであって、これに対しては当然義務として支払う必要はないのであるという態度をとっております。したがって十九条が適用いたされますと、ソ連等数カ国は投票権を失うという事態国連総会劈頭に想像されたわけでございまして、これに対してソ連側は非常な反対をしております。このために総会冒頭から波乱が予想されたのでございますけれども、幸いにいたしまして、事務総長等の奔走によりまして、一応この問題をたな上げしたような形におきまして、総会は御承知のように予定どおり開れた次第でございます。
  8. 玉置一徳

    玉置委員 私の聞いておるのは、そういう事務的なことではなくて、佐藤総理所信表明に述べられておりますとおり、わが国国連外交中心にして世界の平和に寄与することを積極的にやっていく、こういうことでありますので、国連維持強化にも相当な努力を払わなければならない、これにたよって、安全保障のみを依頼するけれども義務は履行しませんというのではあまり感心した話じゃない、こういう意味で、義務費拠出のほかに、自発的にそのときに安全保障に要るような費用を積極的に拠出していくようなお気持ちがあるかどうか、こういう意味をお伺いしたのでありまして、さらに続いて、かつてレバノン事件が起こりましたときに、国連監視団として数名の将校が紛争監視だけのために国連から派遣を要請されたわけであります。このことは松平国連代表が言い出されたことでありまして、これを日本が断わったために、松平大使国連で非常に悪い立場に追い込まれた、これが松平発言問題となって騒がしたのは御承知のことだと思いますが、こういうような自発的な拠出金とか、あるいはレバノン事件におきます監視団派遣というようなときには、佐藤総理はどういうようにお扱いになるか、その考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  9. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまその点につきましては条約局長から説明させます。
  10. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 レバノン状態、そのときどうだったかということですから、その経過を御説明いたします。  レバノンの場合には監視のために若干の国からの兵力拠出国連として求めたわけでございます。日本としても、軍事行動をとるものじゃないから、これには協力してもいいじゃないかという意見松平代表は持っておられたわけでございますが、日本法制上は自衛隊をそういうことに隊として差し向けることには若干疑義がある、一人一人の隊員の海外出張ならばどうかというような話がありまして、結局結論が得られないままにこの国連の呼びかけには応ぜられなかったわけでございます。しかし、日本としましては、いままで国際連合安全保障のためにとっておりましたいろいろな行動には協力してまいっておるわけでありまして、一番大きな行動であった朝鮮動乱の際の行動には、もちろんこれの軍事行動のいわば基地として協力いたしておりますし、その後の行動にはすべて財政的には経費を負担しておる。また現在サイプラスでやっておるのには拠金をいたしております。
  11. 玉置一徳

    玉置委員 こういう問題について総理がどういうようにお考えになるかを聞きたかったのでありまして、事務的なものはわかっておるわけでありますが、もう少しあとでまとめてわかりやすくひとつ総理にお伺いをしたい、こう思います。  そこで、問題を移していきたいと思いますが、戦後十五、六年間、つまりここ数年前まではアメリカ及びソ連中心とする東西二大陳営対立で、その勢力のバランスによりまして世界の平和が保たれておったということも言えると思うのですが、いまやフランス及び中共等の台頭を見まして以来、この国際情勢の二大陳営対立当時よりは一そう複雑化してまいったわけであります。そのうちにあって、アジア、アフリカ等小国紛争が相次いで起こりまして、これらの小国紛争の中に大国の利害がからみついて非常に複雑な様相を呈しておるのは総理も御承知のとおりであります。この紛争をでき得れば小事変の間に未然に防ぐことによりまして、大国衝突にまでいくということを食いとめることが当面世界の平和を保つ最も必要なことだ、こう思うのでありますが、このことに関しましては国連警察軍あるいは国連軍がたびたびその実証をいたしておるのでございます。こういうような現象をとらえまして、佐藤総理はこの国連軍並び国連警察軍世界平和維持に対する当面持っております役割りと貢献をどのように評価されるか、お伺いしたいと思います。これは事務局じゃちょっとぐあいが悪いと思います。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 国連軍あるいは国連警察軍、こういう呼び方をしておられますが、この国連軍あるいは国連警察軍といわれるものが、ただいままでのところその性格、さらにまたその目的がなかなかはっきりいたしかねております。しかしながら、ともかくも国連という名前がつくことによって、あるいは警察軍と言おうが、あるいは国連軍と言おうが、それが国際的な平和維持働きをするであろう、こういう期待はみんな持っておるわけです。ただわが国の場合におきましては、わが国憲法というものがございますので、この憲法と矛盾しないという意味でいろいろ研究もし、またそういう立場から積極的にこれに参加していない、かような実情にあるのであります。ただいまも国連内部におきまして、いかにあるべきか、どういう性質のものであるべきか、こういうことが研究されつつある。これは国際的な平和機構としてそういう働きをすべきではないか。これも一理あることであります。先ほど来申しますように、くどく申しますが、わが国憲法との関係でいろいろ問題がありはしないか、こういうことで検討を続けておるわけであります。
  13. 玉置一徳

    玉置委員 そこで、先ほど申しましたように、当面大国衝突が起こらないように未然小国紛争処理のために活躍しております国連軍の評価を非常にけっこうだと思われるのか、あんなものはたいしたことではないと思われるのか、それを一言でけっこうでありますから・・。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 とにかく国連軍あるいは国連警察軍、それはそれなりに機能を発揮しておる、かように思います。私は、必ずしも力だけでこういう国際紛争解決されるものではない、かように思いますから、現状においてはやむを得ない状態か、かように思います。
  15. 玉置一徳

    玉置委員 やむを得ないということが少しわかりにくいのですが、国連警察軍並び国連軍というものも、北鮮に参りましたようなアメリカを主体にしたものもあれば、中立国小国が集まりまして事務総長のもとに兵力を提供してやっているものもあれば、いろいろあると思うのですが、そこで、先般わが党の天田参議院議員参議院の本会議におきまして、ソ連提案国連軍創設構想に対する日本政府見解並びにカナダ及び北欧三国の国連軍創設に対する日本政府見解質問いたしましたのに対しまして、椎名外相は、国連警察軍については各国とも賛成しており、けっこうなことだと思う、日本がこれに参加する法的問題については現在法制面検討中であるというように、賛意を表されたのであります。なお橋本官房長官も二十三日の記者会見で、佐藤首相も趣旨においては外相と一致しておるというように述べておるのでありますが、この際、この二提案に対する日本政府見解総理から率直にお答えをいただきたい。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この二つの提案、これは確かに研究課題ではあると思いますが、わが国態度をまだきめる段階にはなっておりません。したがいまして、椎名外務大臣も向こうに出かけ、何らかほしい、こういう気持ちはあるようであります。それが仕事の内容というか目的、そういうものを明確にして、しかる上でわが国態度を決定しよう、こういう態度でございます。
  17. 玉置一徳

    玉置委員 そういうものに国連警察軍がきょうまでに果しておる役割り——若干ぐあいの悪いものもあると思いますけれどもカナダ北欧三国が申されておるような、中立国小国が集まりまして、国連総会もしくはその他の機関の御要請によって国連軍を創設していこうというような提案については、いまのところいろいろな問題はあると思います。佐藤総理は、積極的に国連協力していくんだという一大外交方針を宣明されたのでありますから、一言でけっこうでありますから、はっきりした考え方をお述べいただきたい。
  18. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この問題のむずかしさは、国連警察軍あるいは国連軍の実態をつかまないでそれぞれみな自分の頭の中で描いて、それに合うか合わないかということも検討しないできめてかかっておるところに一つの問題があるのです。したがいまして、この際に、いままで話し合われておる、提案されておるその内容はどんなものであるか、これも一応事務当局からお聞き取りをいただきたいと思います。
  19. 玉置一徳

    玉置委員 時間がありませんから、事務当局からのお答えはまたゆっくりやっていただきます。  私の申し上げておりますのは、佐藤総理は、国連中心外交を、歴代内閣方針を踏襲して、より積極的にやっていくのだ、それで世界の平和と日本安全保障を求めるのだ、こういうことだと思うのです。それにつきましては、国連維持というものに相当な協力をしないで、自分のところだけはいい子になりながら、やってもらうことだけはしてもらうというのが従来の態度だったと思います。先ほどお話がありましたけれども日本外交は、口にはそういうことを唱えますけれども、実質上ほとんど何らの協力を積極的にやっていないということで、共産圏外交からは非常に冷たい目で見られ、中立諸国からは冷笑と一つの軽侮をもって見られているのじゃないかというように私たちは心配いたしております。  かような意味におきまして、国連の場で、いろいろの日本国家的利益世界の平和の問題について、イニシアチブをとってどんどん日本立場を主張していくのだというように常に池田さんもおっしゃり、今度は佐藤さんがそれを強く宣明されておるわけでありますので、国連軍内容がどうであろうとも、国連軍というようなものを創設してやっていくという考え方は好ましいのかどうか、こういうことを聞いておるわけであります。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この国連自身平和的機構だ、かように私は申しました。その立場から警察的な機能を発揮し得るようなものができること、これが各国協力のもとにできるということは望ましいことだと思います。  ただ、私がことばを慎重に申し上げておりますのは、私のほうの憲法問題もありますから、望ましいことだと、かように申しましても、直ちにそれが具体化できるかどうかという問題があるわけであります。精神的な面におきましては異存のないことであります。
  21. 玉置一徳

    玉置委員 精神的な面では異存がないというように、異存がないということはけっこうだ、こういうことをお答えになったわけでありますが、先ほど申しましたように、世界の平和と安全の確保に対する加盟国義務を履行しないでは、その他のおっしゃっているようなことがなかなかしにくいのは当然だと思うのです。  そこで、国連憲章規定によりましても、あるいは安保の条項によりましても、兵力援助、あるいは便益を供与する——国内法関係がありますし、憲法の問題がありますので、兵力をどうするということはにわかにでき得ないのは当然であります。これはまたそうなければならないと思います。そこで、現在その国連維持強化のために、日本政府としてでき得る最大限のものは具体的にどんなことであって、どういうことをしようと思っているか、このことを総理から率直にお伺いをしたいと思います。
  22. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 抽象的には先ほど来私が申し上げたとおりで、国連協力するというその態度に変わりはございません。現実にどういうことをしておりますか、外務事務当局から説明いたさせます。
  23. 玉置一徳

    玉置委員 簡単にひとつ、時間がないので・。
  24. 藤崎萬里

    藤崎政府委員 日本安全保障の上で協力義務をやっていないじゃないかと言われますけれども義務はすべて履行しているのでございまして、勧告の形で行なわれている決議に基づく平和維持活動にも協力しておるのであります。
  25. 玉置一徳

    玉置委員 勧告の場合の協力はありがたくないほうの協力でありまして、もう少しいいほうの協力をしていただきたい。便益及び援助の供与ということにつきましては、たとえば兵力の提供は国内法及び憲法疑義がありますからできない。そういたしますと、結局看護婦を送ることはかまわぬのか、医療機関のあれはかまわぬのか、あるいは輸送機関はかまわぬのか、こういう問題につきまして、総理にかわって事務当局で責任をもって・・。
  26. 高辻正巳

    高辻政府委員 御指摘のように、国連協力という場合にも憲法その他の法律の規定がございます。したがいまして、それにはおのずから限度があることも当然でございます。その限度いかんにつきましては、国連協力の態様というものがまことにさまざまでございますので、その辺につきまして私どもはむろん検討いたしておりますけれども、いまのところは、この場合についてはどうというような議論の段階を出ないような状況でございますので、もう少し私どもも勉強さしていただきたいと思います。
  27. 玉置一徳

    玉置委員 それでは総理、先般、これは二十七日でありますが、官房長官が、国連警察軍警察行為にとどまるならば参加してもいいのではないかというように言明されておりますが、この点はどうでありますか。
  28. 高辻正巳

    高辻政府委員 憲法九条には、国際紛争解決する手段として武力を行使する、あるいは武力で威嚇というようなことがございますので、そういう場合でない場合については、一応憲法との説明はできるのではないかというような気がいたします。しかし、警察行動といいましても、世界に起こるいろいろな事象というものはいろいろ複雑な要素がからみ合っております。したがって、一口にそういうことも断定的に申し上げるのはどうかというような気もいたします。しかし、憲法九条との関係であっさり申し上げれば、そういうことも言えそうだ。しかし、やはり具体的にはその警察行動なるものの本質、性格、そういうものを無視してやるわけにもいかぬだろうというような現実問題があることを御承知願いたいと思います。
  29. 玉置一徳

    玉置委員 ただいまのは総理お答えになったもの、こういうようにみなして、時間がございませんので、最後に、国連中心に、国連強化し、国連安全保障機能強化することによってわが国安全保障を求めていく、そして世界の平和を希求する、これがまた逆にわが国の安全を求めるゆえんだ、こういうようになると思うのですが、したがって、国際法は国内法に優先する、ましていわんや私たちは国連憲章に書いたことを忠実に履行するという意味で入ったのだと思う。そういう意味で、国内法の自衛隊法、それから憲法国連憲章との矛盾、ということは変ですが、これをどういうように調和してお行きになるか。  それからもう一つ、これは法制局長官の問題でないと思いますが、国際連帯義務を果たすためには、将来佐藤総理は自衛隊法を改正するような研究をなされるのかどうか、される意思があるのかどうか。この点につきましてお伺いしたいと思います。
  30. 高辻正巳

    高辻政府委員 前段は法律問題でございますので、私からお答えさしていただきます。  日本憲法の九十八条だったと思いますが、確立された国際法規というものは誠実に遵守しなければならぬという規定が特にございます。確立された国際法規、いわゆる国際慣習法といいますか、そういうものは実は憲法との間に抵触関係はない。憲法は一国の最高法規でございますが、その一国というものは実は国際社会に存立しておるわけでございますから、その国際慣習法ともいうべき確立された国際法規とは抵触を生ずるはずはないという考えでございます。ただし、一国と一国が結ぶような特別の条約、御指摘の部分はそういうものが含まれているのだと思いますが、そういうものにつきましては、憲法はやはりそれに優先する。ただし、憲法以下の法律は、条約に矛盾すれば条約のほうが優先するという考えでございます。したがって、現実には何が確立された国際法規であるかという解釈問題に結局変わってまいります。
  31. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのところ、自衛隊法を改正するという考えは持っておりません。
  32. 玉置一徳

    玉置委員 時間がございませんし、総理もおなれになっていないようなようにもお見受けいたしますので、あまり突っ込んだことにも至らないわけでありますが、いずれにいたしましても、国内法国連軍、そういう問題、及び国連中心外交と言いながら、国連維持強化に積極的に協力をしているとは思えないのが今日までの歴代内閣国連中心外交であります。中国に前向きにやるとおっしゃいましたが、このごろ頭打ちをしておるというのと同じような関係であると思うのです。こういう意味で、ひとつ積極的にこの問題の取り扱いにつきまして御研究をお重ねいただきたい。  これで私の質問を終わりたいと思うのですが、最後に、話が変わりまして恐縮でございますが、外務大臣としてお答えをいただきたいのは、日本の漁業の様子、御承知と思いますけれども、このごろはほとんど遠洋並びに海外基地の漁業に変わりつつあります。その比重が非常に大きくなっております。西アフリカ海岸のラスパルマスのごときは年間八千人、常時一日平均三百人がその島に集まっておるというのが現状でございまして、そこに何らの慰安施設、あるいは指導施設もございません。ましていわんや領事館その他の設置がないわけであります。かような関係で、現地人といろんな紛争を起こしたりするようなことがございまして、将来わが国の海外基地の漁業が伸びていくという問題につきましても、いろんな支障を来たしておりますので、すみやかに領事館を設置してもらいたい、あるいはそれにかわるべき措置をしていただきたいというのが業界全部の願いでございます。ことしはラスには領事館を設置するように外務省では非常に努力をしていただいておりますが、横におすわりになっておる大蔵省のほうでどういうようになっておるのか。総理としては、海外漁業基地をどうしても守っていくために、あるいはこれからますます伸ばしていくために、そういう必要な施設はつくっていくのかつくっていかないのか、ひとつお答えをいただきたい。
  33. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大西洋岸のラスパルマス、あるいは太平洋のサモア、こういうところは日本の漁業基地でございます。ことに大西洋に進出している現状から、いままでも大使館が出かけて一カ月ばかりそういう事務をお世話している、こういうことですが、これだけではどうも足らない。最近各方面の方が行ってごらんになりまして、総領事館の設置の必要を説いておられます。外務省はもちろんその立場上から大蔵省と折衝している次第でございます。ただいままで、はっきり総領事館を設置するという結論はまだ得ておりません。できるだけ早く総領事館を設置するように、また、もし万一できないならば、季節的にでも総領事館にかわるようなものでお世話ができるように、そういう措置をとりまして、実際には困られないようにしたいと思っております。サモアにつきましても同様な考え方でございます。
  34. 玉置一徳

    玉置委員 総理はお忙しいらしいので、この辺でとどめまして、農林大臣への質問に移りたいと思います。  農林大臣に日本農業の諸問題につきまして御質問を申し上げたいと思います。農業基本法が約五年前に成立いたしまして、日本の農業の向かう道を、線を引いたわけであります。その後今日まで五年間近くたっておるわけでありますが、一向に思ったような構造にはなっていないというのが現状でございます。その上、選択的拡大を要求されました農畜産物も、価格政策の欠除のために、農家の生産意欲を少しも刺激しなかったわけです。輸入の自由化は時代の要請だとはいいながら、何らの準備も整えないままに推し進められていったのでありまして、多くの農民は、日本の農業の将来に対して希望を失い、青年層の多くは農村を離脱し、わが国農家総数の三分の二は農業外収入で息をつくという、兼業形態に転落いたしておりますのが現状でございます。したがって、農業基本法が目標といたしました他産業との所得格差は、縮まるどころか、ますますその差を開いていく傾向にあるのは、農林省の報告によっても明らかなところでございます。これは、所得倍増計画の欠陥だといたしましても、あまりに痛ましい現実でございます。この現実を謙虚に直視いたしまして、真に農業基本法が示すような、他産業との所得の格差がなくなるような農業にするために、党派をこえて、私はみなで研究をしなければならない、かように思うのです。  そこで、農業基本法制定当時の政府の考え方のどこに誤りがあったかといいますと、今後の農業生産の成長率が三%、その他鉱工業生産が年率七・三%、こういうことで、農業労働力がそちらに非常に多く吸収されるだろうということで、農民一人当たりの所得が十年間で都市の労働者と大体つり合うのじゃないだろうかというような考え方に立っておったことが一番間違いの根本だった、かように思うのです。しかしながら、農業人口の減少というものが既存耕地の再配分にそのままつながっておるのではなしに、したがって経営の拡大にも直接寄与するということもなかった。農業人口は減るけれども、農家戸数は微少しかしていない。それから、肝心な経営規模の拡大も、わずかに二畝くらいしか伸びていないというのが事実でございます。こういうような現状から見まして、離農対策、最低賃金制等の社会保障制度、あるいは就職あっせん等、そういうような農業外の社会機構の成熟も十分でなかったということが問題だと思うのです。  そこで、農林大臣にお伺い申したいと思うのは、これまでの農政の行き詰まりをひとつ打破いたしまして、思い切って構造政策を推し進めまして、経営の拡大に寄与し、近代農業の基礎をつくるのには思い切った手を打たなければならないと思いますが、どういうようなお考えをお持ちになっておるか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  35. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農業の問題は、農業基本法の指向する方向で進めてまいりましたが、それが思うようでないことはお説のとおりでございます。  そこで、基本的な問題としましては、やはり農業の体質改善だと思います。ことばをかえてみれば、農業の構造改善対策だったと思います。ところが、構造改善の実際に行なっていますことは、まず土地基盤の整備ということと、主産地形成上からの共同施設というようなところに重きを置いておった。これは決して間違いではないと思います。間違いではないが、もっと根本的な問題があったのじゃないか。いま御指摘のとおり、何といたしましても、他産業と比べて競争力が弱い、国際的な競争力が弱いということは、日本の農業の経営規模が零細だというところに大きな原因があると思います。  一方、現状を見てみますと、三十七年に七十一万ぐらいの農村から他産業に就業する人がある、三十八年も同じくらいある。こういう現状から見まして、やはり労働力は減ってきますが、少ない労働力で大きな経営規模でやっていけるような体制に整え直す必要があるのじゃないか。こういうことから、これは世界的にもそうでありますが、特に日本で痛切に感じまするのは、経営規模の拡大——資本装備の必要もありますが、経営規模の拡大に資していこうじゃないか。そういう意味から、すでに新聞その他で申し上げておると思いますが、離農者の人々に対しましては、離農の対策を講じていく。強制的に離農をすすめるとか、そういう考えは持っていません。いま出ている事実を踏まえて離農対策を相当講じていく。優秀な後継者、残った者に対しましては、経営規模を拡大する。これを自由にしておったのでは促進されないじゃないか。いま六万町歩ぐらい、年々土地が移動しております。その移動を経営規模の拡大のほうに向けていこうじゃないか。それには公的機関のようなものがあっせんするといいますか、仲に立ちまして、その方向へ持っていくことがいいのじゃないか。こういう構想で、まだ確定はいたしておりませんけれども、農地管理事業団というようなものが土地を買い上げて、そうしてこれを経営規模の拡大のほうへ売る。また経営規模の拡大のほうの人にとりましては、相当長期の低利の金でなければ将来の経営が十分いきませんから、そういう資金を回すことによって経営規模の拡大に資していこうじゃないか。こういう構想を持っておるわけでございます。
  36. 玉置一徳

    玉置委員 ただいま御説明のございました農地管理事業団、あるいは離農者に対する手厚いいろんな措置、こういうものは、従来に比べまして、とりあえず前向きの姿勢で真剣にお取り組みいただいておることは非常に労を多とするものでございますが、  私は、ただ、この構想でも若干心配になりますのは、離農の希望者の多いのは、ほんとうは土地の買い手のない僻村だけになるのじゃないかということが心配なんです。  それから、思い切った土地改良の整備がされてない以上、点在しておりますいろんなものは、経営の拡大にはほんとうはなかなかなりにくいというのが実情でございます。これは、農地信託の場合においても同じことが原因であったというように感じております。それで経営拡大の意欲が起こらないのじゃないかということを心配いたします。  それから、時価で買い入れて、農地としての適正価格の売り渡しという二重価格制度を取らない限り、これもなかなか高い土地を買いまして、幾ら長い年賦といいましても、無理ができるのじゃないか。私も、三年ほど前に農業基本法のときには、二重価格制度の問題につきましてお願いしたことがあるわけであります。農林省も初めはそういう意気込みだったらしいのですが、財政当局との関係でうまくいかなかったように承っておりますが、この点も心配いたします。  その次は、離職者の就職あっせんとか、中高年齢者の就職あっせんを非常に政府は御努力しておいでいただいておりますけれども、こういう不景気にぶつかってまいりますと、この点もそううまく着々と運ばぬのではないかというような点について心配をするわけでございます。  これらの点のうちで、もしうまくいかなかった場合、将来は二重価格制度も考えざるを得ないようなところに来るんじゃないか、こういうように思うのですが、この点はいかがでございましょうか。
  37. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 端的に言えば、二重価格制度がいいのでございますけれども、これは公的機関が仲に入ってやる場合に相当の財政的負担にもなりますし、それから土地の価格を上げるということにもなろうかと思いますので、この点は十分検討してからでないと手をつけられないと思いますので、とりあえずは低利、長期の資金でやっていこうということを考えておるわけでございます。  それから、いま御指摘のように、確かに土地改良がされて、集団化してないところにおいては効果が、といいますか、そういう希望が出てこない面がありますし、効果が薄いと思います。その点も考えまして、従来の土地改良も十分進めていきたいと思いますが、ことに去年から特に力を入れた圃場の整備、それからことしは農道と林道に相当力を入れて、農道、林道を貫くことによってその周辺の土地の圃場整備をする、交換分合をしていくという機運を醸成していこう。そういうものと相まって事業団の運営がよくいくようにしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  38. 玉置一徳

    玉置委員 ただいまお話しの農道、林道の整備というようなときに、思い切って周辺の圃場整備をするような場合には、特別の恩典を与えていただくような構想も非常にいいのではないか、かように思うのです。  次に、このことにつきましてもう一つ気にかかりますのは、一生懸命やっていただく管理事業団の構想でございますが、これとても、十年間たちまして五千三百億と推定される投資をいたしましても、わずかに十カ年で三十三万二千ヘクタール。北海道を除きまして一ヘクタール以上の農家だけにこれがいくものといたしましても、〇・五ヘクタール経営規模が拡大するだけだ、こういうような計算ができるわけでありまして、こういうようなぐあいでは、いまでも危機のどん底におちいっておりますものが、十年たちましてもまだその程度にしかいかない。その時分には、二町五反歩の自立経営規模がさらに三町五反歩になっておるのじゃないかということを心配するのでございます。したがって、この問題のお仕事の趣旨は非常にけっこうでございますが、これと同時に、どうしても作地のままで経営規模を拡大する手をともに打っていかなければ、計算上成り立たぬのじゃないか、こういうように考えるんですが、将来このことも並行して御検討いただくお気持ちがあるかどうか、お伺いいたしたいと思います。   〔委員長退席、青木委員長代理着席〕
  39. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは一つの推進役をするモデルでもございませんが、そういう方向づけでやっていこうと思いますので、それでない面においての資本装備を強化するとか、経営面積を拡大するという方向には進めていきたいと思います。たとえば、酪農方面におきまして、いま日本の酪農が非常に不振だということは、飼料が自給飼料を使っておらぬということと、経営面積が少ないので、御承知のように、二頭半くらいの平均でございますから、そういう関係で草地の造成等も大々的に推進いたしまして、これが経営規模の拡大等に資していこうということも考えております。それから、その他共同的な考えで経営規模を拡大していこうということも考えております。
  40. 玉置一徳

    玉置委員 さらにこれに関連いたしまして、もう一つは、今日までいわゆる農業構造改善事業として各町村長の責任においてやっていただいております構造改善事業でございますが、これはかなり農業が進歩した地帯におきましては相当な成績をあげておることは事実であります。しかも、今日まで当たっておるのは、大体何かでもって日本的にひいでたところが多かったと思います。ところが、これからはそうじゃないところが当たってくるわけでありますが、これはまだ農業構造改善事業の前夜の問題が非常にたくさん控えておる。こういう意味で、画一的にきょうまでやっておりますこのやり方では少し無理がいくのじゃないか。これが証拠に、なかなかうまくもらい手がないというのもそういうことを物語っておると思います。  もう一つは、価格政策がありませんときには、多収穫が必ずしも多所得にはなりませんものでありますから、どうしても借金だけは確実に何千万というやつが残りますけれども、元金と利子をまかなうだけの収入が必ずしも得られる保証がないというような現状でございます。  したがって、管理事業団その他におきましてこういう構造政策を推進せられる今日、ちょうどこういう機会にもう一度これを再検討して、いわゆる今日までの農業構造改善事業を再検討する時期に来ておるのじゃないか。いままでの実績とこれからの皆さんのいろんな御意見をお聞きなすって、もう一度検討を加えてみてもいい時期じゃないかと思いますが、これに対する御所見をお伺いいたしたいと思います。
  41. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 確かに構造改善も三年やっておりますが、非常によくやっているところと、非常におくれておるといいますか、十分でないところがありますので、検討する必要があると思います。昨年度におきましても、単独融資の額なども増しましたが、それよりも、まだ実態に即していない、少し形式的に流れておったような傾向がございます。そういう点は実態に即してやっていかなくちゃならぬということを考えなくちゃならぬ。  それからもう一つは、いままでわりあいに進んだところが構造改善に手をつけましたが、進まない山村地帯とか僻地、離島の構造改善は手をつけておりません。これは、また別途に山村振興法的なものでもつくっていこうかという案もありますが、そういうところの構造改善等につきましては、より以上実態に即した考え方で進めませんとよくいかないと思いますので、いろいろ意見も聞いておりますので、この構想につきましてはなお推進して、よりよい構想のもとにやっていきたい、こう思っております。
  42. 玉置一徳

    玉置委員 次に、日本農業の自給体制と農産物の貿易の自由化の問題でございます。  いかに農業基本法が制定されましても、経営の確立を申されましても、日本農業のなし得る限りの主要農作物はなるべく自給していく、こういうのが一つの心がまえでなければならないと思うのです。いろんな国際的な情勢もありますから、極端にはまいらぬこともあるかと思いますけれども、できるだけ自給していくという考え方でなければならないと思います。ことに昨今の米の需給の逼迫、あるいは麦作の著しい減少、こういうものを見てましても、こういう感を非常に深くするわけでございます。  そこで、時間の関係で問題を飛ばしまして、自由化の問題に入っていきたいと思います。  日本の農産物は、御承知のとおり、国際競争力の弱いものが非常にたくさんございます。これの基盤を整備しまして、生面性を高めて、そうして外国の農産物にも競争力を持つというところまで高めていこうというのが、農業基本法のねらいの一つでもあると思うのでありますが、そういう準備のいとまもなしに、いろんな事情はあったとは思いますけれども、非常にたくさんの自由化をされた。しかもこれは、先ほどの原則を歴代の農林大臣あるいは総理大臣がしばしば本議場においても言明されておりますにかかわらず、突如としてやられたわけであります。砂糖のごとき、あるいはバナナのごとき、あるいはレモンというようなものはみなこれであります。バナナの自由化は直ちは青森のリンゴに著しい影響を与えましたし、広島のレモンのごときは、農林省と広島県で構造改善の基幹作物に指定をしたところでございましたので、農民のショックは非常に大きかったと思うのです。こういうようなことでは、日本の農政に対する農民の不信というものはぬぐい去ることができませんし、不安というものが非常にあるのじゃないか。酪農製品についても、一体いつどうなるかわからぬ。思い切った成長をしていただかなければいかぬ選択的拡大の最たるものである酪農品の伸びないのも、そういうところにも問題があると思います。  こういう意味で、今後の日本の農業の貿易の自由化には、必ずそういう体制を整備した後やっていく、あるいはそういう体制が整わぬでも迷惑をかけないようにして必ずやってまいりますということを、この際あらためて赤城農林大臣、並びに一番自由化のほうに推進をされておるのだと思いますが、財政当局の大蔵大臣からお答えをいただきたい、こう思うのです。
  43. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 開放経済下に入っておりまするし、国際的に自由化を全然拒否し得るということでないことは御指摘のとおりでございます。しかしながら、これが国内に及ぼす影響は非常に大きいのでございます。従来とも慎重にはやっておったのでございますが、そのテンポが追いつかなかった面もありました。  しかし、米麦等を含め、酪農品とかあるいはでん粉等につきましては、これはもう自由化することはなかなか困難なものでございますが、その他のものにつきましても、やはり国内に及ぼす影響というものを十分考慮しつつ、また考慮してやりたいと思っています。従来ともそれは考えておったのでございますが、なかなかそれにマッチしなかった点も現実にあったと思いますが、なお慎重に対処していきたい、こう考えております。
  44. 玉置一徳

    玉置委員 これに関連しまして、OECD及び国連貿易開発会議におきます後進国の農産物の買い付けに対する要望ですが、こういうことも、実際は無視し得ない問題だと思います。そこで、ただいまお話しの日本農業の保護とこういうものとの調和をどこで求めていくか、どういうくふうをしていくか、一くふうがなければならないところだと思うのです。  その次に、農産物輸入市場を——米国その他の先進国からずいぶん買っておるわけでありますが、これも直ちにはでき得ないことでありましょうが、こういう要請にかんがみまして、徐々にその輸入市場を転換していくというような配慮も必要だと思うのですが、大蔵大臣、お答えをいただきたいと思います。
  45. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、国際的な方向としましては自由化の促進、それから関税一括引き下げ、いわゆるケネディ・ラウンドの推進ということになっておるわけであります。なお、国際的な問題が東西問題から南北問題に移った、こういわれておるように、先進国と後進国の間の貿易の自由化という問題、農業一次産品に対する制限の撤廃、また関税の引き下げ及び撤廃という問題が、経済問題、二国間交渉というよりも世界的な政治問題にさえ発展をしておる、こういうことは御指摘のとおりでございます。  日本は、特にその上に四五%に近い輸出が後進国向けになされておる。この後進国と日本との輸出、輸入の状況を見ますと、相当な片貿易であって、日本の出超でございます。でありますから、いまの状況から言いますと、後進国と日本との間にはいろいろな問題があるわけでございますが、特に他の先進国よりも強い関税の引き下げとか撤廃とか、一次産品の輸入の増大という問題が要求せられております。おりますが、農をもって立国の大本となしておる日本であり、また日本の農水産品、特に農業産品は、これら低開発国の産品と比べますと、まだなかなか国際価格には遠いという問題がございますので、国際的な要請もありますし、また日本政府としても前向きな姿勢ではございますが、日本の農業の実態等を十分説明をしながら、政策としては、国際競争力に耐えるような合理化を政策として進めながら徐々に自由化の方向に参る。しかし、その自由化にも大きな要求が海外からございますけれども、そう一ぺんに自由化に踏み切れるような状態ではない。国内の農業の方々と国際的な要請のちょうど仲に入りまして、政府が非常に困っておるというのが実情でございます。ですが、この調整を十分とりながら、やはり国内産業を無視して自由化を強硬に進めるわけには参りませんので、国内産業の国際競争力に対応するような政策を十分進めながら、国際的要請に対応していくということを原則といたしております。
  46. 玉置一徳

    玉置委員 時間の関係もございますので、以下自由化に関しまして簡単にお伺いいたしますので、農林大臣から一つずつ簡単にお答えをいただきたいと思います。  大豆関税免税につきまして、業界から非常に要請があるように聞いておりますが、これは、大豆、なたね等の油脂作物、いわゆる裏作物に非常に大きな影響を与えると思いますが、右の要請に対します政府の態度をお聞かせいただきたいと思います。
  47. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 大豆油脂の自由化を行なう場合におきましては、原料大豆関税の免除をも含めて、大豆関税をどうするかということにつきましては慎重に検討しておるところでありますが、大豆、なたね等への悪影響が生じないよう十分配慮した上で対処してまいる考えであります。  なお、御承知のように、大豆、なたねについては、大豆なたね暫定措置法という国内法もございますから、こういう法律等とも関連して検討していきたいと考え、ます。
  48. 玉置一徳

    玉置委員 その次に、トウモロコシの自由化によりまして、コーンスターチの生産が非常に増加してまいりましたので、反面バレイショでん粉がずいぶんと減少してまいっておりまして、農家の方々は困っておいでになるわけであります。この際、こういう実情にかんがみまして、トウモロコシ関税を上げるべきではないか、かように思いますが、農林大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  49. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 トウモロコシの関税を上げるということには参らぬと思いますが、トウモロコシにつきましては、御承知のように、昭和三十年四月に完全自由化されております。コーンスターチは、昭和三十七年以降イモでん粉の需給の逼迫を契機としまして年々増産されておるような状況であります。コーンスターチの用途が、主として繊維とか製紙用ののり加工でん粉原料等でありますので、バレイショでん粉と競合する分野が多いのでございますが、現在のところは、それほどバレイショでん粉がこのために減少をもたらすほどの影響はございませんが、今後はコーンスターチの生産が増大する見込みがありますので、影響するところがないというわけには参らぬと思います。トウモロコシに対する関税も含め、コーンスターチの生産分野の調整につとめる、そういう方向で行きたい、こう考えます。
  50. 玉置一徳

    玉置委員 大蔵大臣にお伺いしたいのですが、バナナの自由化は、国内産の果実に非常に大きな影響を与えてまいりました。先ほども申しましたとおり、リンゴ、カキ、こういう果実が非常に圧迫をされて、値段を下落さしておるわけです。そこで、七五%の関税を順次下げるように初め予定されておったわけでありますが、ここ当分七五%を堅持しておいたほうがいいように、またそうなければならないと思うのでありますが、御所見をお伺いいたしたいと思います。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 バナナの自由化が青森等のリンゴその他に影響を与えたということにつきましては、影響がないというふうには考えておりません。相当の影響はあっただろうと思います。しかし、七五、五〇、三〇というふうに税率を引き下げるということはもうきまっておったわけでございますが、これらの問題もございましたので、一時税率引き下げを中止をしたということも御承知のとおりでございます。しかし、これはその関連を十分考えながら——また、一部専門家に言わせますと、バナナとリンゴというものは違うものであって、そう影響があるわけはないのです、こう言うのですが、なかなか、農民の方々の意見等を聞きましてもそう簡単でもないようでありますので、一時ストップをしておるような状態でございます。しかし、将来の問題としては、十分この間の事情を考えながら、やはり五〇、三〇の方向に持っていくべきだというふうには考えております。     —————————————
  52. 青木正

    ○青木委員長代理 ちょっとお待ちください。  質疑の途中でありますが、ただいまインド下院議員のレディー君、同じくパトナイケ君が本委員会に傍聴に見えておりますので、御紹介申し上げます。   〔拍手〕     —————————————
  53. 青木正

    ○青木委員長代理 質疑を継続いたします。玉置君。
  54. 玉置一徳

    玉置委員 時間の関係もありますので、かためて一括して農林大臣にお答えをいただきたいのです。  今年度のカンショでん粉の基準価格決定の際の騒ぎにかんがみまして、これが自由化は当分行なうべきでない、かように思いますが、御所見を承りたい。  その次は、酪農製品及び畜産物の自由化でございます。来年度の予算の御要求を見ますと、非常に前向きの姿勢でお気張りをいただいておりますのは、よくわかるわけでありますが、ここで問題になるのは、輸入乳製品の一手買い入れ機関の創設というような構想もございます。このことは乳製品の自由化を前提としたものではないかどうかということを、農民は非常に不安をもって見ておるわけでありますが、政府としては、乳製品の自由化は考えておらないのかどうか、そういう前提じゃないのかどうか、この点を明らかにしていただきたい。  その次は、糖価の安定構想でございます。あの時期が一番いいのだというので、突如として思い切って砂糖の自由化を断行されたわけでありますが、その後の国際市場等の価格その他の関係で、国内の事業界から、ひいては生産者が非常に不安定で困っておるわけでありますが、糖価の安定構想としてどういうようなものをお持ちになっておるか。  なお、バナナ、ナチュラルチーズ、あるいはその他の農産物も同じような考え方でやっていくことができないかどうか。  この四点につきまして、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  55. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 外国産でん粉の輸入でございますが、この輸入は、国内産イモでん粉の需要の安定を期する意味から、染色とか、のり用等で国内産のでん粉で充当できない特殊用途と、輸出向けグルタミン酸ソーダ等の加工貿易用のみについて外国産でん粉の輸入割り当てを行なっておったり、あるいは内需用には輸入を制限しております。でありますので、これは自由化をしませんで、現在のところこの方針で進みたい、こう思っております。  それから、酪農品の一手買い受けをしていこうということは自由化の前提ではないかということでございます。そうでございません。御承知のように生牛乳ですと国際競争力はあまりありません。しかし、乳製品ですと、日本の乳製品は倍くらいの平均値段でありますから、自由化すると非常に影響が大きいのでございます。しかし、これがどんどん入ってくるということになりまするというと、やはり日本の酪農を相当侵害しますから、一手買い入れしてその差額を酪農振興のほうへ回そうじゃないか、こういう考え方でございますので、自由化の前提ではございません。  それから第三に、砂糖の問題でございます。糖価が非常に下落しておりますので、国内のいろいろな砂糖原料の問題に影響が来ておりますので、この糖価の安定をはかる必要があるのじゃないか。これにつきましては、影響するところが大きいものですから、いろいろ検討中でございます。一つの案としては、さっきの酪農品の一手輸入のような案も持っておりますが、まだ案は固まっておりません。何らかの方法を講じてこの糖価の安定を講じていきませんと、国内の砂糖原料の農産物等に影響が大きいのでございます。それをも考えまして糖価の安定をしていきたい、こう考えております。  ナチュラルチーズは、自由化しておると思いましたが、乳製品でございますから、やはり乳製品の一手買い入れの中には入れていくということに相なろうかと思います。
  56. 玉置一徳

    玉置委員 酪農振興についてでございますが、せっかくの成長農産物として注目され、期待されておるにかかわらず、もう一ついろいろな事情で伸び切っておりません。来年度はかなり思い切った施策をお講じになるように見受けておりまして、心強く思っておるわけでありますが、ひとつこれは、生産者だけが合理化を要求されるのじゃなしに、流通の形態、ことに工場から出てからの販売経路につきましてもかなり研究しなければならない問題があるのじゃないか、かように思うのです。  そこで、学校給食を思い切ってひとつ拡充していく。それともう一つは、大都市の事業場等に、一合びんの配給じゃなしに、一斗カン、もしくはもっと大きなやり方で飲ます方法を考えてみたらどうか。そうすることによって、現在でも十一円くらいでは入るわけでありまして、それによって非常に大きな伸びを来たしていくのじゃないか。それから、大メーカーは大都市へ、学校給食は農協その他の中小メーカーが地域的にやるような方向にこれもなっていくのじゃないか、かように思いますので、学校給食一本やりというくらいに思い切ってそこに重点をひとつ置いていただきたいと思います。厚生省の関係もございますけれども、このごろ殺菌その他ができないはずがないと思いますし、その大きなカンを毎日取りかえていけばいいと思うのです。そういうような形で、集団飲乳というものを工場、事業場等に設置する構想、こういうものについて御検討いただいたら非常にけっこうだ、こう思うのですが、この点につきまして農林大臣の御所見を承りたいと思います。
  57. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 確かに御説のとおり、生産のみでなく、消費の拡大ということがやはり酪農を振興していく大きな要素だと思います。  そこで、一般の消費も拡大したいのでありますが、とりあえず学校給食の方面に去年の倍だけは少なくともことしは回そう、四十三年くらいまでには全部生牛乳にかえたいということでございます。それにつきましては、いまの殺菌の方法とか、設備とか輸送がまだ十分でありませんので、こういうものと相まって学校給食のほうへ大きく転換していこう、こう考えております。  それから、工場等につきましても集団飲用ということは望ましいことで、工場等におきましては、生産者から直接に工場へ入れておるところもございます。容器と、それから殺菌の方法等も考えまして、工場等にもっと安く、そして多量に入るということになれば、生産者のほうも消費者のほうも非常に利益するところが大きいのでございますから、御説のような方向も十分考えていきたい、こう考えております。
  58. 玉置一徳

    玉置委員 ぜひとも集団飲用のことにつきまして御検討いただきい、かように思います。  先ほど忘れたのでありますが、農林大臣、離村の問題のときに、どうしても現在の国民年金に積み足しました特別の離村の年金制度を、フランスのように考えをいただいたほうがいいのではないか。   〔青木委員長代理退席、委員長着席〕 こう思いますのと、こういうふうに非常に窮迫いたしました農村の後継者というものが非常に少なくなってきた。昨年から後継者対策をとりあえずやっていただきましたけれども、まだまだこれも痛いところに手の届くというところまで行っていないと思いますし、実態をどうしたらいいか、これからもまだまだ研究中だと思いますが、構造政策がほぼ行き渡って、日本の農民の数その他もほぼここらが一定されるところだというところに行くまで当分の間、十年かかりますか二十年かかりますか、若い青年諸君に後継者対策の費用のうちからひとつ臨時の、そういった農業の専業農家に従事する青年諸君のために構造政策が十分に行くまでの間、年金と申しますか、何らかの励みになるような措置をひとつ御検討していただくようなお気持ちがないかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  59. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほど学校給食を四十三年までに全部かえたいと申しましたが、四十五年くらいを予定しておりますので、訂正しておきます。  それから、離農につきまして、いわゆる国民年金とか養老年金の上に上積みして、六十歳以上なら六十歳以上の人になおプラス年金を出すような方法でやったらいいじゃないか。確かにこれはいい構想だと思うのであります。あるいはまた後継者の励みのための何か奨励年金ということも、これは考えられることだと思います。  離農の問題につきましては、いろいろフランスの例等もあり、実際に人も派して現状等も調べてみましたが、まだ実施後間もないのでその効果はわかりません。また、国内におきましても、これは厚生省ともいろいろ研究し、年金制度全般との関係もありますので、いいことだとは思いますが、いますぐに踏み切るというところまでは行っておりません。その考え方は、私は適当な考え方ではないかと思っております。
  60. 玉置一徳

    玉置委員 農業の税の問題でございますが、大蔵大臣にお伺いいたしたいと思います。ガソリン税の免税につきましては、ここに私のほうの農協の組合長から要請が参っております。  農業経営の近代化において機械化は欠くことのできない要件でございます。しかし、これら農機具に使用するガソリンに対し揮発油税や地方道路税が課せられておりますが、道路を走らない農機具に道路整備財源確保のため目的税を課せられることは不合理であると思います。なお、昨年末大蔵大臣が不合理であることをお認めになって、四十年以降において必ず免税をするということを言明されておりますが、いまだその実現を見ないことはまことに残念でたまりません。よって農機具用ガソリンに対する揮発油税及び地方道路税についてすみやかに免税措置を確立せられるように大蔵大臣に頼んでくれといういやつが来ておるわけでありますが、大臣、昨年の言明もございますので、困っておる農家のために、わずかに百億くらいのあれだと思いますけれども、この際ひとつ思い切って断行していただきたい。事務的になかなかむずかしい点もあるやに承っておりますが、これはもう大臣の決意いかんだと思いますので、この際ひとつ農家の方々に喜んでもらえるようなお答えをいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。
  61. 田中角榮

    田中国務大臣 御質問にございました農業用ガソリンの問題に対しては、いま事務当局をして検討せしめておるわけでございます。事務当局の答弁によりますと、非常に技術的にむずかしい、こういうことでございますが、私は去る国会で四十年度から前向きで検討いたします、こういうことを申し上げてもおりますので、むずかしいといっても、できるのかできないのかひとつ詰めてみなさいということでいまやっております。しかし話を聞けば聞くほど、これはなかなかやるとむずかしい、とこういうことでございます。しかし、方法はないのか。方法としては、キップ制を考える以外にない。キップを消費者に渡しておきまして、このキップを、ガソリン業者が納税をするときに、その分だけを精算をして、引いて納めてもらうというようなことをする以外にないのじゃないか。これを税務署でもって一々やるということになりますと、何か約二千人くらいの人間をふやしてもらわなければいかぬ、これで計算をしますとたいへんなことになるというような報告でございますが、いずれにしても検討いたしておることを申し上げておきます。
  62. 玉置一徳

    玉置委員 事務的には非常に困難だと思いますけれども、理屈の合わぬことでありますので、やはり事務的に困難を克服して断行していただかなければぐあいの悪い問題だと思いますので、ぜひとも実現いたしますように御努力いただきたい。  それから株式の暴落に伴いまして、源泉分離課税の問題もちらほらいたしておりますが、ましていわんや農外収入でもってようやく生活をしております農家の諸君の、兼業農家の方々の税の源泉分離課税をぜひとも考えていただきたい、かように思いますが、ひとつ簡単にお答えをいただきたい。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 あとのほうをもう一度ちょっとお願いします。
  64. 玉置一徳

    玉置委員 農家の所得税の源泉分離課税であります。兼業農家が非常に大きくなりまして、ようやく農外収入で生活を立てておるというのが現状でございますので、この点について御配慮をいただきたい、こういうことであります。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 御趣旨は十分わかりますが、御承知のとおり、所得税はその者に帰属するすべての所得を総合して、累進税率を適用して課税することが基本的になっておりますので、農外収入を分離するということは、なかなか税のたてまえ上むずかしい問題でございます。あなたの御発言は承知をいたしておきますが、たてまえ上非常にむずかしいということも理解していただきたいと思います。
  66. 玉置一徳

    玉置委員 石田労働大臣にお願いをいたしたいと思います。長らくお待たせいたしまして、まことに恐縮でございます。  御承知のとおり、近年農業がだんだんと機械化いたしてまいりましたので、農民諸君にも労働者と同じように労災保険の任意加入の制度を認めてやっていただきたい、これが全国の農業協同組合の切なる願いでございます。ぜひともこの希望をかなえてやっていただきたいと思いますが、そういう方向に向かって御検討いただけるかどうか、ひとつこの際御所信をいただきたいと思います。
  67. 石田博英

    ○石田国務大臣 農業労働者諸君でも、雇用関係にある人々につきましては、現在任意加入の道が開けておるのであります。明年、労災保険の五人未満の事業所に対する強制適用を中心といたしまして、さらにまた保険の年金支給というような支給方法の改善をも含めて、労災保険法の改正案を提出して御審議を願う予定になっております。その場合におきましては、これを農業にも拡大する方針でございます。したがって、農業に従事している人でも、雇用関係にある人々については、これは強制適用になることに相なります。ただ小規模の事業主あるいは一人親方とでも申しましょうか、そういう人々については、特別加入の方法を認めるようにいたしたいと思って、目下検討中でございます。
  68. 玉置一徳

    玉置委員 どうぞよろしくお願いします。  その次に、運輸大臣にお願いいたしたいと思います。これまたお待たせして申しわけなかったのですが、先ほど佐藤総理に申し上げておりましたように、現在日本の漁業は、いずれも遠洋もしくは海外に出かせぎをいたしておるのが実態でございます。さような意味におきまして、小さい船でもって大洋を航行いたしますものでありますので、人命の安全につきまして非常に不安があるわけでありますが、御承知のとおり、許可は水産庁でやっておる、航行の監督は運輸省でおやりいただいておる、こういうような関係もございまして、なかなか思うようにいかないところも多いかと思いますが、船舶と人命の安全を守るために、第四十三回国会におきまして、船舶安全法の一部改正に際して附帯決議がなされておったわけであります。また第四十六回国会におきましても、小型船海運業法及び小型船海運組合法の改正の際にも附帯決議がなされております。いずれも船舶と人命の安全を守るために満載喫水線の表示範囲の拡大とか、救命設備の充実とか、あるいは無線設備の強制範囲の拡大とか、検査体制の強化等につきまして早急に措置を講ずべきであるという決議がなされておるわけであります。さらにまた十一月の二十日に運輸省は、行政管理庁より、船舶安全に関する行政勧告をお受けになったように承っております。こういうような再々の要請でございますので、事態の緊急性をお認めいただきまして、大臣から事務当局に、すみやかにこれが実施に移すように御配慮いただきたいと思いますが、この際御所信を承りたいと思います。
  69. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 人命尊重は政治の基本でございますから、お説のような問題に対しましては、絶えずわが省で研究をいたしております。  まず、御指摘になりました小型船舶の満載喫水線の表示範囲の拡大に対しましては、船舶安全法及び内航二法案の御審議の際におきましても附帯決議がついておるのでございますから、これによって三十九年度におきましては、予算上その措置に四十万円いただきまして、第一は内航船舶の運航実態の調査解析をいたしております。第二は日本沿岸の気象、海象の調査解析を終わったのであります。第三点は、小型鋼船に対する満載喫水線の基本的思想の検討中であります。これらについて一応その作業を終了し、結論を取りまとめ中の段階にあります。よって、できる限り早い機会においてこれが周知徹底を行ない、積極的に行政指導を進めてまいりたいと存じますが、これらは四十年度中には行ないたい、かように思っております。  なお、太平洋の波浪の状況、漁船の調査等に対しましては、四十年度に千七百八十万円の予算の要求をいたしております。来年度の日本沿岸及び太平洋の海域の気象海象の統計解析を行ないまして、小型船舶について詳細な技術的な研究を行ないまして、満載喫水線の表示の義務範囲を拡大いたし、法の改正の準備を現在進めておる次第でございます。  また、船舶安全法の設備の強化について行管云云のお話がございましたが、これに対しましては、来年度、五月二十六日、一九六〇年海上における人命安全のための国際条約が発効することになりますので、この際におきまして、国内航行船舶を含みすべての船舶につきまして安全設備の飛躍的な向上をはかるべく、目下これが省令の改正を行ないつつある状況でございます。  以上、答弁いたします。
  70. 玉置一徳

    玉置委員 時間の関係で一瀉千里にやりますから、ひとつお許しをいただきたいと思います。厚生大臣に簡単にお伺いしておきます。  医療制度を近代化いたしまして、しかも保険財政の強化をはからなければならぬ、二つの非常にむずかしい命題があるわけでありますが、先般いろいろと御苦労なすっていただいたわけでありますが、その際、健保財政強化のために、将来被保険者に医療費の一部分、ことに承っておりますのは、薬価の一部分を負担させるような意思があるやにいろんなところから伝わるわけでありますが、これに関しましては、せっかくきょうまで持ってまいりました社会保障制度、いろんなむずかしい問題があると思いますけれども、そこまで若干でも後退することは、ますます次々といろんな方法が講じられるもとをつくるおそれがありまして、これこそ日本のすべての人々がひとしく注目をし、心配をいたしているところでございます。こういうことにつきましてどういうようにお考えになっておるのか。そんな心配は要らぬのだ、こういうのか、ひとつお答えをいただきたいのと、将来医療の近代化とまた保険の充実をはかるために、調査会というようなものを御設置なすって検討されるようなお考えがあるかどうか、この二点をお伺いしたいと思います。
  71. 神田博

    ○神田国務大臣 お答え申し上げます。  保険財政が近年とみに悪化してまいっていることは、もう御承知のとおりでございます。この立て直しをやる、どうしてどういうふうにやるかということが問題でございまして、ただいまのところは標準報酬の改定とか、あるいは保険料の増徴、また国庫負担の投入、それからいまお述べになりました被保険者の一部負担の改正等のことも一つの案件としていま検討を加えておる際でございまして、そういうように御承知願いたいと思います。  それから第二のお尋ねでございますが、現在医療の近代化と保険の充実のために調査会を置くかということでございますが、これはただいま社会保険制度及び医療制度に関する審議会としての社会保険審議会、それから中央社会保険医療協議会、それから医療審議会と、こう三つございます。そのほかに社会保障制度審議会というものがございまして、これらが十分機能を発揮できれば特に新たな医療審議会をつくる必要はないのじゃなかろうか、こういうふうに考えております。
  72. 玉置一徳

    玉置委員 簡単に一括して御質問いたしますから、簡単にお答えをいただきたいと思います。  経済成長に対応する社会保険診療報酬の緊急是正につきましての諮問にこたえまして中医協が行なった答申を勘案いたしまして、今回厚生大臣は九・五%の医療費の引き上げを行なおうとしておいでになるわけですが、これは総額について押えているわけでございますので、その配分は各種団体に相談しておきめになるのかどうか、これが第一点であります。  第二点は、緊急是正が物価の上昇に対しまして必要があると考えられたものでありますが、歯科医師会が要望しております問題につきまして所見をお伺いしたいのですが、歯科用金属材料の値上がりは、前回の決定時に比しまして六〇ないし五〇%の値上がりを示しておるものがございますが、これらについては九・五%のワク外としてお取り扱いになるのかどうか。  第三点は、先進国レベルの医療を想定しての緊急是正といわれますが、そのためには制限診療の撤廃が必要であると思います。中医協の答申にあたりまして、公益側委員は薬価基準の改定と歯科制限診療撤廃を行なうよう意見書に取り上げておりますが、薬価基準の改定は厚生省は実現しようとしておるが、歯科制限診療撤廃を行なう意見があるのかどうか。歯科独特の問題として、ラバーダムの使用を採用する意見はないかどうか。  最後に、歯科疾患の発生時を考えますと、乳幼児時期に早期治療を行なうことが非常に必要でありますことは、学界の主張するところでございます。ところが乳幼児治療が時間をとりまして、しかも点数がおとなと同じであるために、診療状況はきわめて悪い。これを是正するためには、六歳以下の乳幼児に対する主要処置、手術につきまして、加算点数を設定されるような意見はないか。すでにこのことに関しましては、医科では静脈注射、輸血につきまして加算を認めておるのが現状でございますので、これを参考にして御答弁をいただきたい、かように思います。
  73. 神田博

    ○神田国務大臣 お答え申し上げます。  第一点の九・五%についてのことでございますが、これは中医協の審議を経て実施したい、こう考えております。  それから第二点の九・五というのは歯科医については非常に金属材料その他が値上がりしているから、その範囲内でやるのか、範囲外にするのかというふうに承りましたが、これはその範囲内で見ていく、こういう考え方でございます。  それからその次、乳幼児に対する診療は、その特殊性にかんがみて何か点数を増加する必要があるんじゃないかというお尋ねのように承りましたが、これは昭和三十六年と思いましたが、その改定で、たしか五点ほど追加いたしております。いまお説のような議論のあることは十分承知いたしておりますが、これも将来中医協等との相談によって考えていきたい、こう考えております。
  74. 玉置一徳

    玉置委員 時間がございませんので、大蔵大臣に一括して御質問いたしますのでお答えをいただきたいと思います。  中小企業の倒産、ことに関連倒産の防止についてでありますが、御承知のとおりのウナギ登りの倒産を示しておることはまことに遺憾な点でございます。ことに自分の責任じゃなくて、他人の倒産のために倒産をするというようなことは、まことにお気の毒のきわみでございまして、これらはこの年末もしくは年度末を控えまして、どういうところが倒れたらみんな倒れるんじゃないかというような心理的な影響というものも実に大きいものがあると思うのです。これらの中小企業の倒産防止のためには、思い切った手を打たなければなりませんが、どのような具体策をお持ちになっておるのか。  それから、親企業の倒産の場合ですが、下請企業に与える影響は、もう全く致命的というよりもそのままでありますが、この原因の一つに、大きな信用膨張をあげなければならないと思うのです。この信用膨張を正常なところへ戻すということはなかなか至難なことだと思いますが、これについてはどうお考えになっておるか。  それから関連倒産、連鎖倒産を防止するために、これは他人の火事だというわけにはいかないので、悪いやつが火事を起こしましても、ほっとけば全部が火事になっていくわけでありますので、いい悪いは別にして当面これを防がなければならないと思うのです。かような意味におきまして、国民金融公庫その他商工中金等に特別の融資ワクを設けられまして、そうして関連倒産を防ぐ方法、たとえばその倒産したものに対して債権を持っておる下請業者がございますが、これに更生法を適用されますと一年間たな上げになります。こういう際も、しばらくの間債権を金にかえてあげるような方法がありはしないかどうか。これはもちろん長期低利の、災害並みの金利、条件でなければならないと思うわけであります。  それから、関連倒産をいたします、あるいはこれを未然に防止いたしました場合に起こりますのは、在庫の問題が必ず起こると思います。前にも違った意味で問題があったわけでございますが、在庫商品の金融をするようなお考えをこの際ぜひとも御考慮いただきたいのですが、そういうお考えがあるかどうか。  それからもう一つですが、関連倒産を未然に防止するのには、どうしても一つの協同組合と申しますか、業界全部の協力が必要だ。ことに事前に察知することがなおこのことに効果があると思うのですが、かような意味におきまして、各ブロックごとと申しますか、経済圏ごとに大体中央の出先機関が大蔵省、通産省等にございますが、これに地方公共団体、金融機関、業界、こういうものの官民共同の対策機関を持つことが非常に好ましいのじゃないか、こういうふうに思うのですが、どういうふうにお考えになっておるか。  最後に、行政措置だけでは満点にやっていけるかどうか。民社党が考えておりますような立法措置も伴わなければ、この問題を乗り切っていくことができないのじゃないかということを心配するわけでありますが、これに対する御所見はどうか。  以上、一括してお答えをいただきたいと思います。
  75. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業の倒産が引き続いて起こっておりますことに対しては、はなはだ遺憾でございます。しかし中小企業の倒産が起こらないようにできるだけの措置はいたしておるわけでございます。  まず第一番目の御質問としてございました、倒産に対してどういうような措置をしておるかということでございますが、地方通産局及び地方の財務局等を通じまして、あらかじめ倒産が出ないようにできるだけの措置を行ないなさい、こういうことを言っております。同時に、日銀及び金融機関の出先機関に対しましても、なぜ倒産に踏み切らざるを得ないのか、なぜ不渡り処分にしなければならないのかということに対しては、通産省及び大蔵省にも報告ができるような、責任を持ってここまでやってきたのですが、いかんせん、どうにもなりませんというように、明らかにその事情を説明するくらいな責任を持っておやり願いたいということで金融機関も指導いたしております。でありますから、私たちもいままで倒産が行なわれましたものに対しては内容的に、なんで一体倒産をしたのかということがつまびらかにできるような状態になっております。ただ、倒産をしたものの内容だけがあとからよくわかるというのではどうにもなりませんから、つなげるものはできるだけつなぐように、特に関連倒産によって、その中小企業は黒字であるにもかかわらず倒産をするということは、これはどうしても避けなければいかぬということで、特に配慮いたしておるわけでございます。  それから第二点の信用膨張の問題、確かにきのうもおとといも御指摘がございましたとおり、生産指数よりも信用膨張の指数のほうが非常に大きい。その中には日銀等がいろいろな資金を見過ぎたというようなお話もございますが、私はそれよりも、このごろ生産が高い生産が高いということで、割賦販売とか、そういうものでどのようなものでも全部分割販売ということになっておって千円、二千円の手形までが流通をしておるということが一番大きな問題だと思います。それからもう一つは、融通手形の問題もございます。でありますので、数字の上から見た企業間信用の膨張、これはひとつ大きくメスを入れて、こういうことであっては困るので、金融の正常化というものを十分はからなければなりませんし、特にこの信用膨張の内容をひとつ究明して正常化しなければ、商業手形であるといいながら、一体商業手形なのか融通手形なのかの見分けがつかないわけであります。でありますから、倒産をしたものをいよいよ最終的に詰めてみて、初めて一部が融通手形でございましたというようなことではどうにもならないわけでありまして、融通手形というものを出さないで普通の商業手形だけであるならば、これは倒産に導かなくても何らかの処置がとれるわけであります。こういう問題に対しても、信用の状況、内容の正常化というものに対してはひとつ強力に進めてまいりたい。これは、ある意味においては強い行政指導も含めて強力なものをやりたいという考え方でございます。ただ恒久的な問題としては、御承知のとおり、小切手法とか手形法とかその他の改正まで急いでおるわけでありますし、さしあたりはひとつ手形用紙を金融機関所定のものを使うとか、場合によっては大蔵省印刷局で印刷したものを使わせるということも、これは冗談ではなく、その程度のことを考えなければいかぬだろうとも考えておるわけでございます。  それから、関連倒産にあいました中小企業に対して、その手形を持っているわけですが、これが不渡りになる、これも中小企業金融公庫、国民金融公庫で特別ワクを設けて割り引かぬか、資金手当ができないか、これはいろいろなお話が前からあるわけでございますが、これはやはり中小企業金融公庫に特別ワクを——特設ワクといいますか、特設手形を持っていってこれで金を貸せといっても、なかなかそう全部割り引けるわけではありません。ただ政策としてはそういう機関を設け、そういう制度を設けましたよということにはなるが、実際中小企業の関連倒産後の処置になるかどうかはわからない。私はそれよりも、いまやっておりますように、やはりその倒産した中小企業の親企業、中小企業、関連企業等の状態を知っておる、企業に関連のある金融機関というものが特別めんどうを見るということがより合理的だということは論をまたないわけであります。ですから、考え方によっては中小三公庫などにすぐ設けるということが考えられますが、実際的にはむずかしいということであります。ですから、やはり私は、いままで関係をしておった金融機関に特別にこれを見させるということのほうが合理的だということで進めておるわけでございます。  それから在庫商品の金融、これもいまの不渡りをつかんだ、倒産会社の手形をつかんだ中小企業の金融と同じことでありますから、一括関連金融としてめんどうを見ていくべきだろうと考えます。  それから倒産を未然に防ぐために、倒産の事前に調整できるような金融機関とか、いろいろな官民の相談所をつくるということ、これは御指摘のように、確かにアイデアとしては考えなければならない。しかし、ところが相談所をつくってありましても、倒産をする会社というのは、倒産をしてしまわなければ持ってこないのです。ですから、新聞を見ましても、新聞にどうもあれはおかしいぞ、こういう新聞が三日くらい出るのですが、社長は、きまったように、さようなことはございません、金融不安もありませんし、倒産も絶対ありません。これは、信用の問題ですからやむを得ないのですが、なかなかつぶれてしまわないと——ここまで大火事にならないうちにやればいいのにと思うのですが、火の手が上がってどうにもならなくて、拠点をほうり出して逃げてしまうというまではなかなか実態をあかさない。しかし私は、こういうものはいけないということを知っています。ですから、もう少し合理的に未然にお互いが努力をし、お互いが情報を交換し、お互いがてこ入れをすることによって防ぎ得る、こういうケースもたくさんありますから、相談所といいますか、診断所といいますか、特に関連金融機関中心にしたそういうものはぜひ必要だろうということは考えております。相談所というような御提案に対しては、お互いにひとつ検討してまいりたい、こう考えます。  最後に、倒産をしたものをただ行政措置だけでというよりも立法せよと、民社党の方々が中小企業関係に対していろいろな立法を考えておられますことに対しては、民社党の中小企業対策の雑誌も読んでおりますし、また各種基本法の法案大綱も読んでおります。中にはこういう方向で検討しなければならないというものもございますし、非常にりっぱだし、アイデアとしてはいいのですが、どうもやってみると、ネコの首に鈴をつけるというものも幾らかあるようであります。しかし、これは非常に御研究になっておることでございますので、私たちも党とかイデオロギーとか、そんなことではなく、日本の持つ中小企業の特殊性、この問題を解決するということに対しては真剣にひとつあわせて検討させていただきたい、こう考えております。
  76. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて玉置君の質疑は終了いたしました。  午後は一時から再開することといたします。  午後の質疑者は、滝井義高君及び芳賀貢君であります。  滝井君の出席要求大臣は大蔵大臣、文部大臣、厚生大臣、通産大臣、労働大臣、自治大臣及び経済企画庁長官であります。芳賀君の出席要求大臣は大蔵大臣、文部大臣、農林大臣及び労働大臣であります。  暫時休憩いたします。    午後零時三分休憩      ————◇—————    午後一時十二分開議
  77. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十九年度補正予算三案に対する質疑を続行いたします。  滝井義高君。
  78. 滝井義高

    滝井委員 池田内閣は、高度経済成長政策に始まって、ひずみの是正で終わってしまったわけです。それが終わると、今度は新しく佐藤さんが登場をしてきて、演説のたびごとに、社会保障のニュアンスを含んだ社会開発というものをしばしば口にするようになった。いわば社会開発というのが政治の本番に登場することになった。そこで、政府はこの社会開発というものについて一体その柱を何にするのかということを、私まず冒頭に尋ねておきたいのです。だんだん調べてみますと、日本で社会開発というものを行政上一番先に取り上げたのは厚生省のようであります。これは、人口問題研究所あるいは人口問題の審議会等で取り上げておるようでございます。そして、厚生省が昨年の夏ごろぐらいから、これの地域開発あるいは新産都市等と関連をして相当学問的な研究もやっておるようでございますが、この社会開発を佐藤さんがどこで聞いてきて自分の本番に打ち立てるようにしたかはよくわかりませんけれども、何かEECの委員長のハルシュタインですか、何か委員長あたりから聞いてきたというような話も聞いているのです。しかし、どこで聞いてこようと、この構想というものは非常にいい要素を含んでおる構想だと私たち社会党は考えております。したがって、これを本番にするからには、何か柱を立てなければいかぬわけです。社会開発の中心的な柱としてはどういうものを一体お考えになっておるのか。これは、長期の経済計画の中の中期の経済計画を担当する企画庁、あるいは予算編成の責任を持つ大蔵省、いずれかがやはり考えなければならぬところだと思うのです。そこで、大蔵大臣あるいは経済企画庁長官のどちらかから、一体どういう柱を社会開発というものは持っておるのか、それをまず御説明を願いたい。
  79. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 お答えいたします。  社会開発ということばは、滝井先生よく御承知だと存じますが、もともとことばの起こりとしては、低開発国におけるところの経済の開発の基本となるところの教育とか、またはその他工業能力とか、そういうものを引き上げるための意味で使われたのが最初である、かように考えておりますが、その後だんだん先進国におきましても経済開発と並んだ意味において社会開発ということばが使われるようになってまいった次第でございます。しこうして、これを非常に広い解釈で扱うということになれば、たとえば生産性上昇の非常に立ちおくれた農業とかまたは中小企業等の、つまりいわゆるひずみの是正の部分まで含める考え方もあるようでございますが、まだ政府としてこの点について統一した定義をきめたわけではございませんが、私どもとして考えておりますのは、一つは住宅及び生活環境の整備、これが第一の柱になろうかと思います。第二の柱が社会保障制度の拡充、さらに第三の柱が教育の問題、大体そういうことになるかと考えておる次第でございます。
  80. 滝井義高

    滝井委員 田中大蔵大臣、いまのをお聞きになったと思うんですね。佐藤内閣としてはこういうことなんですから、したがって住宅及び生活環境の整備、社会保障の充実、教育の向上、こういう三点が社会開発の柱だ。私どもとしては、まず土俵を一つにして議論を進めていかなければいかぬですから、これは一応内閣として確認をしてもらって質問をしていいですね。
  81. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 ただいまも申し上げましたとおり、いまだ確実に政府の見解として統一したものにはなっておらないのでございますが、大体私ども、いままで社会開発ということばを総理の施政方針演説においても申し上げたわけでございますが、そういう場合に、大体そういうふうな内容を想定して申し上げておるのでございます。
  82. 滝井義高

    滝井委員 田中さんもその点異議はありませんね。
  83. 田中角榮

    田中国務大臣 社会開発とは、いま経済企画庁長官が述べたことでございます。技術とか経済とかが巨大な進歩を進めてまいりますと、ともすれば人間性が忘れられる、また、人間の住む環境がそれに比例をして整備をされておらないということで、経済の高度の成長に焦点を合わせるだけではなく、人間環境の整備という側面にも焦点を当てなければならないという考え方で、社会開発という考え方を強く取り上げてきたわけであります。でありますから、いま申し上げた三点、社会保障とか教育とか環境の整備とかはもちろんでございますが、そのほかに、国内均衡をはかる、不均衡是正、過密都市、大都市に人口、産業、文化等が過度に集中したものを地方分散をはかるとか、地方低開発地の開発促進をはかるとかいうような国内環境の整備、不均衡の是正、こういうものも含めて社会開発を進めてまいるという考えに立っておるわけであります。
  84. 滝井義高

    滝井委員 大体同工異曲でございますから、内閣としては大体意思統一ができておるようであります。昨年でございましたか、二兆一千億の道路の計画が、実力大臣と言われる河野さんが建設大臣に就任をして田中さんと三分間か五分間話したら、道路五カ年計画が四兆一千億になってしまった。そのことは、すなわち池田内閣のもとにおける高度経済成長政策のもとにおいて公共投資というものが異常に伸びていった、たんたんたる道路はできたけれども、そこには歩行者優先がなかった、今度は、もちろん道路もやりますが、しかし、経済の力学の推移にまかせずに、そこではやはりとぎすまされた人間の英知がある程度まかり通っていきますよ、いわば道路もできるが、同時にそこには歩行者優先の原則がある、人間尊重の精神が政治に躍動をする、こういうことだと思うのですね。そこで、そういう精神だというので縦に頭をみんな振るからお尋ねをしたいのは、新しく中期経済計画ができたわけです。この中期経済計画を見ますと、その中で、社会保障の所得再分配効果の大きいことを非常に強調しているわけです。この中期経済計画における振りかえ所得、三十八年度は九千六百十億円ですね。それから目標年度、これは四十三年ですね。四十三年になりますと二兆一千百億に高めることになるわけです。この結果、国民所得に対する振りかえ所得の比率は、三十八年が五・三%です。四十三年の目標年次になると七%に引き上げられることになるわけです。中期経済計画を読んでみますと、これでは十分でない、しかし国とか企業とか被保険者の費用負担能力等を勘案をして、まあこれは妥当なものだと思うということを書いているわけです。この中期経済計画と、三十七年の八月二十二日に内閣の社会保障制度審議会において大内兵衛先生等を中心として政府から資料を出してつくっている計画があるわけです。この関係というものは一体どうなるのかということです。
  85. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 御承知のとおり、中期経済計画は、今年の一月に内閣総理大臣から諮問されまして、約十カ月間非常に大ぜいの専門家にお願いいたしまして、各経済諸元またはその他の社会開発関係の問題等、広い視野に立ってこの計画をつくられて、そして先月の十七日に答申を得た次第でございます。   〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 社会保障制度審議会の結論との関係は、私まだよく検討しておりませんが、それだけ長い期間、しかも専門家を網羅して検討された結果でございますので、私どもとしては、この中期経済計画の答申を政府としては尊重いたしまして、そしてそれぞれこれから政府において検討し、党とも連絡の上、政府としてこの中期経済計画をどのように実現していくかということをこれからきめたいという段階でございます。
  86. 滝井義高

    滝井委員 相当長期にわたって中期経済計画を検討してつくったというけれども、社会保障制度審議会の答申も三年かかってつくっておるのです。この両者の関係を明らかにせずして、中期経済計画だけを——これは、同じ保守党の内閣が、中期経済計画をつくったから社会保障制度審議会の計画というものは知りませんということでは、それはあまりにも権威がなさ過ぎるですよ。この両者の関係というものは一体どうするのですか。
  87. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 経済審議会に社会保障関係の分科会がございまして、その分科会にはそれぞれ社会保障制度審議会において御検討願った方々も御参加を願って、そしてこの分科会において十分この御答申も検討した上、その趣旨も織り込んでこの答申になった、こういうふうに伺っております。
  88. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、厚生大臣にお尋ねしますが、これはあなたのほうもそういうことを御了承の上でしょうね。両者の間にはたいへんな違いがあるのですよ。
  89. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。  私のほうも社会保障制度審議会の答申のことをよく承知いたしておりまして、それに近いものをひとつ入れていただきたいという要望でございましたが、なかなかそこまでいかなかったということについても承知いたしております。
  90. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、そこまでいかなかったというけれども、同じ保守党の内閣において、答申をしたものに非常な食い違いがあって、しかも一体どちらをとるのか、われわれ国民にしたら迷うのです。大臣が答え切らなければ事務当局でけっこうですが、社会保障制度審議会の国民所得に対する振りかえ所得は、昭和三十八年には幾らで、昭和四十三年には幾らになるのです。
  91. 神田博

    ○神田国務大臣 担当の者がまだ見えておりませんので、まいり次第説明させます。
  92. 滝井義高

    滝井委員 担当の者が来ておらぬそうですか、これは非常に重要なところなんです。すでに振りかえ所得の国民所得に対する比率というものは、中期経済計画では、三十八年度においては五・三%になっておる。四十三年は七%になっておる。そうしますと、一体内閣の同じ諮問機関である社会保障制度審議会というのは、日本における社会保障の最高の権威者が集まっておるところですよ。そこが三十八年に幾らを出し、四十三年に幾らを出しておったかということを当然厚生省としては明らかにして、そして議論をした上でこの賛否の態度を明らかにしておかなければならぬわけですよ。これは係の者をひとつ私の質問中に至急呼んでもらいたいと思うのです。実はここからが問題の発展をしていくのですけれども、いないからやむを得ぬから、あとでけっこうです、答弁してください。  そうしますと、まず、そういう振りかえ所得の中において、中期経済計画では、無拠出の年金とか拠出制の年金というもの、あるいは児童手当というものは非常に強調されている。しかし、もはや疾病とか失業というような保険制度というものはすでに相当発展しているので、これにはあまり力を入れなくてもいいという観念が中期経済計画には出てきている。そこで、あまりにも力を入れないものをここでひとつ私は質問してみたいと思う。  それは、世間では、厚生省が隠しておるかどうか知らぬけれども、まだあまり知られていない。しかし、たいへんな火の車の状態になっている特別会計がある。それはすなわち保険財政です。いまや、中期経済計画では、そういう疾病保険については比重を置かなくてもいいということになっている。ただ格差を是正すればいいという形になっている。その比重を置かなくてもいい実態をまずお尋ねするのですが、一体、いまの日本にはいろいろたくさん保険があります。しかし、何といっても一番典型的にわれわれが検討しなければならぬものは政府管掌の健康保険と、それから、零細な日雇い労働者諸君のよっておる日雇労働者健康保険と、地田内閣のひずみを最も受けた農民と中小企業がその疾病を治療してもらうためにつくっている国民健康保険、この三つです。この三つの見通しさえつけば、他の保険の見通しというものはおのずからついてくる。  そこで、時間の関係がありますから、私はこの三つにしぼってまず政府の見解をお尋ねしたいのですが、まず第一に、健康保険に対する当初予算における収入見込みと、それから保険給付の見込みというものがどうなっておったか、それが、現段階において、三十九年度末には一体どういう方向になっていくのか、どういう見通しになるのか、それをまず先に説明をしてもらいたい。それから、その次は、日雇労働者健康保険における、同じく収入見込みと保険組付の状態、そしてそれが年度末にはどうなるかということ。国民健康保険についても同じです。まずそれをさっとひとつ簡にして要を得た答弁を願いたい。
  93. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 ちょっとただいまの御答弁の前提になる問題として、一応中期経済計画の性格をひとつ申し上げておきたいと思います。  御承知のように、いままで所得培増計画の実績をみてみますと、その間国際収支にもときどき不安が生じたり、また現に消費者物価が非常に高騰したというふうなところから、ことに今年から開放経済体制に入ったというような事柄も考え合わせて、四十三年度において国際収支においては経常収支でバランスをとるということ、同時に消費者物価は年率二・五%の上昇にとどめる、その二つを前提条件として、経済の仕組みを各経済諸元をバランスをとって構成すればこういうふうになるというのが中期経済計画に相なっておるわけでございます。したがって、過去三カ年の実質成長率が一〇・七%でございますが、それが中期経済計画では八・一というふうに相当低く押えられてまいっておる。したがって、それに応じて財政収入も自然縮小せざるを得ぬ。そういうところから一つのワクの中でものを考えざるを得ぬという点があったことをひとつ御了承おきを願いたいと存じます。
  94. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。  健保財政の収支でございますが、三十九年度の歳入の見積もりは二千百三十三億でございますが、最近年度内の歳入の見込みを検討いたしました結果、二千一億ぐらいじゃなかろうか、賃金の伸びが少し甘かったと申しましょうか、強かったと申しましょうか、そういうふうに見ております。それから、歳出におきましては、予算が二千百三十三億、支払い見込みが二千三百三十九億でございますから、三百三十八億の赤字を予想されます。しかし、この中に積み立て金の残額が百十九億円ございますから、これを取りくずしますと、約二百二十億となります。それから日雇健保のほうでございますが、三十九年度の歳入予算が二百十五億、このほうは少し伸びておりまして、二百十七億の歳入見込みでございます。歳出は二百十五億でございますが、このほうもだいぶ大幅に伸びまして、二百七十六億の見込みでございますから、約六十億の赤字、こういうことに考えております。  国保は、ちょっと市町村でございますので、後ほどまた概数を申し上げます。
  95. 滝井義高

    滝井委員 一番大事な国民健康保険がわからぬようなことでは、財政対策は立たぬですよ。国民健康保険の事務当局はどうしているのですか。
  96. 神田博

    ○神田国務大臣 いま調査を進めておりますが、御承知のように、全国の市町村が対象になっておりますから、ちょっと正確な数字がつかめません。つかめ次第・・。(滝井委員「概算でけっこうです」と呼ぶ)ちょっと係が来ておりませんので、もう少しお待ち願います。
  97. 滝井義高

    滝井委員 厚生省の事務当局はわかっておるでしょう、こんなこと。もし国民健康保険の実態がこの予算編成のまぎわになってまだわからぬなんということだったら、そんな役人は一体何をしておるのだということですよ。何をしておるのですか。これだけ全国的に市町村長が、国民健康保険は赤字で困っておると言って、かねや太鼓でみんな東京に押し寄せてきているじゃないですか。その実態の中で国民健康保険の概算もここで言えないのですか。
  98. 神田博

    ○神田国務大臣 担当者がまいりましてからお答えいたさせますから・・。
  99. 滝井義高

    滝井委員 大事な要点になると、社会保障のまず基礎計数がはっきりしない。しかも国民健康保険のような大事なところの全国的な歳入歳出もわからぬというのでは、処置ないですよ。これでは質問が進められないですよ。
  100. 青木正

    ○青木委員長代理 すみやかに担当者が出席するようにしてください。
  101. 滝井義高

    滝井委員 通告しているのですからね。財政を尋ねるから、歳入歳出を用意してきてくださいよと言っておるのです。大臣にちゃんと答弁のそごのないように頼みますと、むしろこっちのほうがしりを押して頼んでいるわけですからね。たががゆるんでいる。できたての内閣がそんなたががゆるんだようなことでは処置がない。佐藤さんに申しわけない。——それではちょっと待ってみます。
  102. 神田博

    ○神田国務大臣 たいへんお待たせいたしました。概数がわかりましたので、申し上げます。  昭和三十九年度の当初予算では二千百六十七億というものが、歳出の見込み額が二千五百二十八億、大体三百六十億ほど赤字が想定されております。  なお、目下調査を進めておりますから、なお正確なものは後ほどにでもお答えいたしたいと思います。
  103. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと大蔵大臣がいなくなったのですが、健康保険が二百二十億の赤字、日雇労働者健康保険が六十億の赤字、国民健康保険が概算三百六十億、それで約六百億をこえる赤字が出ておるわけです。こういうことは、かつて日本の社会保険財政史上見なかった状態なんです。これを大蔵大臣に今度は尋ねることになるのですが、大蔵大臣がいないから、これはちょっと大蔵大臣来てから尋ねるのですが、一体どういうことが主たる原因で保険経済がこういう状態になったのか、それをまずひとつ御説明願いたいと思う。
  104. 神田博

    ○神田国務大臣 医療費の伸びが急増しているということが第一の原因だと思っております。
  105. 滝井義高

    滝井委員 医療費が伸びていってこういう状態になった、いわば医療の需要というものが非常に増加をした、しかし保険制度なり医療制度というものが昔のままで、この医療の需要というものに応ずるだけの供給の体制ができていない、こういうことになるわけです。そこで、それならば、あなた方としてはこういう異常なマイナスの状態が出ている火の車の状態にどう一体対処しようとするのかということですね。この具体的な対処のしかたを伺いたい。もうはっきりしてきたのですから、マイナスの面が非常に軒並みに保険に出ているわけですから、それに対処する具体的な方針をひとつ御説明願いたいと思う。
  106. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。  いまお述べになりましたように、膨大な医療費の伸びでございまして、この内容検討しますと、薬価代と申しますか、薬に負うところが多いようでございます。医療が向上してまいった面ももちろんございますが、薬の使用が非常に膨大にふえているということも一つの大きな要因でございます。そこで、どういうふうにしてこの急増を押えるか、押えるということばが悪いのでございますが、医療を向上させながら、しかも薬の使用を検討する必要があるのじゃなかろうか、こういう考え方。同時に、保険財政の立て直しということをやはり根本的には考えなくちゃならぬじゃないか、それにはただいま諸般の観点に立ちまして検討いたしておるわけでございます。
  107. 滝井義高

    滝井委員 原因は、医療費が伸びたこと、特に薬代に対する支出が非常にふえた、そこで医療の向上をさせながら薬剤の使用の抑制の方策をとりたいと言う。これだけでいまのマイナス面の解決ができますか。
  108. 神田博

    ○神田国務大臣 それも大きなねらいでありますが、それだけでは通りません。やはり料率の引き上げとか、その他、あるいは保険の根本的な問題になると思いますが、患者の一部負担というようなこともいま検討を加えている最中でございます。
  109. 滝井義高

    滝井委員 少し、あなた方がこれだけのものを実施したいとお考えになっているものを述べていただきたいと思うのです。同時に、やりたい政策がどの程度財政に寄与するか、その財政に寄与する額ですね。たとえば、薬によって何億したい、いまあなたの言われる料率の引き上げでどの程度引き上げて、どういう程度の額を歳入の上に貢献をしたいという、あなたが佐藤内閣としておやりになりたい財政対策をここに述べてもらって、そしてその歳入歳出に寄与する額を述べていただきたいと思うのです。
  110. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。  ただいまいろいろの案を検討中でございまして、いまこれでこうするというような具体的なところまでいっておりません。検討いたしておる、こういう事情でございます。  なお、政府委員もまいりましたから、必要によりましては政府委員からも答弁させることにいたします。
  111. 滝井義高

    滝井委員 政府委員がまいったから政府委員に答弁させるそうでございますが、財政対策として現在佐藤内閣考えておる諸点を述べていただきたいと思います。
  112. 小山進次郎

    ○小山政府委員 いろいろの方策については現在研究をしておりますが、まだ佐藤内閣としてこうしようというようなものは決定しておりません。
  113. 滝井義高

    滝井委員 それは大臣の答弁で、大臣がすでに、薬剤の使用の抑制とか、料率の引き上げとか、患者の負担とかということを言ったわけです。したがって、あなたが大臣みたいな答弁をしちゃいかぬ。大臣はもう先に具体的なことを言っているのだから。いま言ったような、三つも四つもおもなものを述べているのですよ。したがって、それは一体どの程度の、たとえば料率を引き上げるならば引き上げて、この程度の歳入の増加をはかりますならはかりますということを聞いているわけであって、それをここで言えぬはずはないわけです。もうあなた、予算編成のぎりぎりに来ているじゃないですか。
  114. 小山進次郎

    ○小山政府委員 先ほど大臣が申し上げました施策によってどの程度の財政効果を政府管掌健康保険にもたらすことができるか、こういうような趣旨で申し上げたいと思います。  一つは、標準報酬の等級区分を改定することについていろいろと検討しております。これを妥当に行ないますならば、およそ年間で七十億強の収入増加を来たすことができます。  それから、もう一つの問題としては、現在把握漏れになっておりまする賞与等を、標準報酬とともに保険料を課する対象に取り入れるということについていろいろと検討しておるわけであります。もしこういうような施策が行なわれるようなことになりますと、年間でおよそ三百億をこえる財政収入を期待することができるわけであります。  それから、支出を適正化する方策というようなものについていろいろと検討を加えているのでありますが、根本の考え方としましては、どうも現在医療保険における被保険者の給付が全くただになっておって、自分の医療費がどのくらいかかっているかということについてこれを知って反省する機会がないということが、思わず知らず支出を放漫化させる傾向があるということについて、この際何か考えなくちゃいかぬじゃないか、こういうような問題意識からいたしましていろいろ考え方が出ておるわけでありますが、これはもう文字どおりたとえばのことでございますが、そういうような考え方からいたしまして、たとえば被保険者の医療費について一割程度の自己負担をもし考えるというようなことになるとすると、支出面において少なくとも二百億以上の節減ができるというような計算になっております。  また、現在の医療保険における医療費の増高が、受診率あるいは受診日数という点においてはほとんど国民健康保険を除きましては動きがないのにかかわらず、医療費が非常にふえている、こういうような原因が、薬剤をやや使い過ぎると思われる傾向にあるということに注目をいたしまして考え、これも全くたとえばのことでございますが、たとえばそういう場合の被保険者の医療に使われる薬剤の費用についてだけ半額を負担するといたしますと、年間でおよそ二百五十億をこえる経費の節減ができる。  大体、いろいろ検討の際に整理されつつある基礎的な数字は、以上申し上げたとおりであります。
  115. 滝井義高

    滝井委員 保険料の引き上げは。
  116. 小山進次郎

    ○小山政府委員 保険料の引き上げは、いまのところ、先ほど申し上げました従来把握漏れになっているものを対象に取り入れるということが徹底して行なわれるならば、必ずしもあわせて考えることが適当ではなかろうという考え方が強いのでありますが、これもかりに現在の保険料を引き上げるといたしますと、およそ千分の六十三になっておりますものが千分の七十程度に引き上げられたとすれば、これは二百六十億程度の収入増になるという計算はできておりますが、まあ一応計算をしてみているという程度のことでございます。
  117. 滝井義高

    滝井委員 厚生省で、一、二たとえばがついたけれども、大体考えられる財政対策を述べていただきました。  そこで、これは田中さんにお尋ねするのですが、新聞報道によると、最終的に医療費を引き上げるときに、田中さんと神田さんと自民党三役との間の了解事項として、保険料の引き上げ最低一割、薬価の被保険者の患者負担二分の一という了解事項がついて医療費の緊急是正を了承することになったという新聞報道があるのですが、いまなかなか煙幕を張った保険局長の政治的な答弁があった。まさにこれは政治的答弁ですが、その二事項があったのかないのかです。これはいろいろ公の団体からもそういう文書が出ているわけです。新聞にも、天下の公器に報道しているわけです。そういう了解事項があったのかないのか。
  118. 田中角榮

    田中国務大臣 まあ、ただいま御指摘になったようなことを私のほうからは強く要請いたしました。党及び厚生大臣と私とで、これだけのアップをする以上、制度の上でいろいろ是正すべきものがあるということを確認し合ってきめたということでございます。
  119. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、厚生大臣にお尋ねいたしますが、明らかに保険料率を最低一〇%引き上げる、それから薬価については被保険者の薬価の中から負担分は二分の一になるという申し合わせがあったということになると、この二項目については、紳士的な協定だから、実施しなければならぬという政治的な道義的な責任がおありになるんじゃないですか。いま小山君がいろいろお述べになりましたけれども、そういう二つの条件はあるけれども、二つの条件と同じようなものができれば、いろいろと財政対策は転換をしてもいいという了解もあるのかどうか。
  120. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。  いま大蔵大臣もお答えしましたとおり、保険財政の立て直しをひとつ約束しよう、保険財政の立て直しについてはこういうことも考えられるという項目であって、それを一部負担というようなことばを使っておりますが、五割負担だとか、あるいは一〇%上げるとかいう、そういうことではなく、保険財政の立て直しはどうしてもしなければならぬ、これは言われるまでもなく厚生省としても十分考えているわけです。その方向を、一応何といいますか、薬価の一部負担もひとつ考えてみようじゃないか、あるいはその他述べられたことも考えてみようということであって、数字の具体的内容については別に申し合わせはしておりません。紳士的な、何と言いますか、その場における協定でございまして、もちろんこれはその方向に考えていくことは当然でありますが、他にいい案があって、ベターなものがあっても、それはそれでいくのだというようなことではなく、保険財政というものは、とにかくいま滝井さんもお話しになりましたように、全体として膨大な赤字になる。このままでは医療の継続ができないから、何とか打開しなければならぬ。その打開するについては、これらのことも考えられる。他に名案があれば、これはいま滝井さんのお話のとおりだと考えてよろしいと思います。
  121. 滝井義高

    滝井委員 最低一割の保険料率の改定と、被保険者の薬価の二分の一を負担をするというのは了解事項でありますということを田中大蔵大臣は証言をしておるわけです。そこで、その二点については絶対やらなければならぬのか、それとも、二点と同じような財政効果のあがる政策があれば、それは自由にすりかえることができるのかどうかということをお尋ねしておるのです。
  122. 神田博

    ○神田国務大臣 お尋ねのとおりに御了承願ってけっこうだと思います。
  123. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、最低一〇%程度の料率の引き上げと、それから薬価の二分の一の被保険者負担という財政効果と同じような政策があれば、これはかえ得るということ、大蔵大臣、だいじょうぶですね。これは今後の健康保険法の審議の——健康保険法の改正を出さなければならぬですから、その審議の上に重大な影響を及ぼす問題点ですから、これは確約しておいてもらわぬと、あとになって大蔵省がしりをまくってだめだなんていうことになったらたいへんだから、大蔵大臣・・。
  124. 田中角榮

    田中国務大臣 医療費の是正のときに、とにかくお互いの責任で、また皆さんの御了解や御協力も得ながら、新しい角度で制度改正ということと取り組まざるを得ないよということで、御指摘になったようなことをやったわけであります。いまちょうど四十年度の予算編成期でございますので、この問題と取り組んでおるわけですから、厚生大臣とも十分相談をし、また、われわれのほうにも党の対策委員会もございますから、そういう意見も十分徴しながら、最も的確にかつ合理的なものをやろう、こういう考えでございます。
  125. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、いまの二項目にはこだわらぬ、了解はしたけれども二項目にはこだわらぬ、これと同じような財政対策ができれば党と相談してもやり得る、こういう弾力のあるものだと考えてよいのですか。
  126. 田中角榮

    田中国務大臣 いろいろ考えたが、それが一番いいな、こう思ってやったことでございますが、もっといいことがあれば、それを採用してもいいと思います。思いますが、なければそういう方向でいくということになります。
  127. 滝井義高

    滝井委員 大体、一割と薬価の二分の一というものは、大蔵省としては、やはり最低の線として、これは相当確実な財源だ、これより以上のものがない限りこれを固執する、こういうことだと理解をしたわけです、いまのは。  そこで、これは大臣がわかれば大臣に答弁してもらいたいのですが、田中さんのおらぬうちに、こういうことがはっきりしてきたわけです。保険は、今年の当初予算をもとにして現実の状態から推定をしていくと、年度末には二百二十億の赤字になる、——医療費の引き上げなしでですよ。それから、日雇健康保険が六十億、国民健康保険が三百六十億の赤字になる、こういうことがはっきりしてきたわけです。そうすると、これは医療費の改定なしにこういう状態ですから、そこで、医療費の改定なしに四十年度の推計は一体どうなるのか、この医療費の改定なしに、財政措置もせずに、いまのままでいくと、四十年度の健康保険の赤字は幾ら、日雇健康保険の赤字は幾らになり、国民健康保険の赤字の累積は幾らになるということをひとつやっていただきたい。これはもうやっておるはずです。
  128. 神田博

    ○神田国務大臣 ちょっと申し上げますが、先ほど私がお答えしましたのは、九・五の引き上げ率を入れたのを申し上げてあります。だから、国民健康保険のほうはあるいは入ってないかもしれませんが、これはいま整理しておりますから、国民健康保険のほうだけ一つ違いますが、政府管掌のほうと日雇のほうは九・五を上げたのを入れたつもりで・・。
  129. 滝井義高

    滝井委員 日雇健康保険の歳出二百十五億が二百七十六億になって、六十億の赤字というのは九・五を入れてないはずです。これは入れていますか。入れてないはずです。
  130. 大山正

    ○大山(正)政府委員 お答えいたします。  先ほど厚生大臣から申し上げました数字は、一月からの九・五%引き上げ分を入れて赤字を計算しております。入れない場合について申し上げますが、三十九年度は、政府管掌健康保険におきまして、一月からの引き上げ分が三十三億でございますので、それを差し引きました百八十六億が、一応緊急是正を入れない場合の赤字の推計額でございます。
  131. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。そうしますと、一月一日からの九・五の引き上げを入れると、健康保険が二百二十億で、日雇が六十億、それから国民健康保険の三百六十一億というのはそれを入れていない、こういうことになっておる。そうすると、国民健康保険の三百六十一億は、それを入れたら幾らになりますか。
  132. 小山進次郎

    ○小山政府委員 先ほど国民健康保険の数字について申し上げることをあとに延ばしていただきましたが、その点から申し上げたいと思います。先ほど申し上げました約三百六十一億という数字は、今年度の予算を組むときにその見込みを立てる基礎になった国民健康保険関係の医療費の増加額でございます。それが、その後の推移において、おそらく今年度において医療費の引き上げがなくとも三百六十一億程度ふえているであろう、こういうことでございます。したがって、この三百六十一億というものを国民健康保険のそれぞれの財政でどう受けとめるかということが問題で、それをどうするのか、こういうお話、(滝井委員「九・五を入れた場合はどうなりますか」と呼ぶ)いや、そこまでまだいかないわけなんですが、その場合にはすでに大部分を保険料を増徴することによって市町村が吸収する施策を進めております。各市町村平均いたしまして二七%足らず今年度すでに保険税または保険料を上げております。したがって、残る施策といたしましては、これに見合う国庫負担分の足りないものをできるだけ早い機会に補正措置をして補給をするということをすればよいわけであります。  それから、医療費の引き上げがありますというと、これから先本年度においておよそ五十一億七千万円の支出増になるわけであります。そのうち国が当然負担すべき額は十九億でございまして、これはもう当然負担をいたしますが、このほかに、普通でありまするならば保険料または保険税の負担になりまする十一億九千万については、今回は特にさようなことなくして事態解決いたしますために、国がこれに見合う補助金を特別に出すことにいたしまして、両方を合わせました費用を今回御審議をいただいている補正予算の中に組んでおるわけでございます。
  133. 滝井義高

    滝井委員 国民健康保険の赤字は当初予算に比べてどうなりますかということをお尋ねしているので、いまの赤字が幾らになるということは何も答えがないのです。国民健康保険が全然赤字なしでいっているはずはないわけです。
  134. 小山進次郎

    ○小山政府委員 ただいま申し上げましたことは、五十一億七千万円だけ赤字要因がふえますけれども、そのうち保険者が負担すべき分の全額について国が当然の負担あるいは特別の対策として負担をする、したがって、保険財政の上においては赤字がないということに、もしいま御審議をいただいておる補正予算をおきめいただけばなるわけでございます。
  135. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、さいぜん私が申し上げました三百六十一億という数字が、当初予算を基礎にすると出てくるわけです。出てきますが、三百六十一億をそのまますなおに、何らの財政措置もやらずにすなおに見ていくとどういうことになるかというと、二百十億が保険者の負担で、百五十億が患者負担になるわけでしょう。そうすると、その二百十億の保険者負担のうち、当然国が負担しなければならぬものが百三十一億程度になって、保険料で措置しなければならぬものが七十九億程度になるわけです。これをお認めになるのですね。そういう説明は何もないわけです。そうしますと、ここで問題になるのは、七十九億の保険料の引き上げと百五十億の患者負担というものが起こるということはどういうことになるかというと、これは私があとからつきたい点なんですが、池田内閣の高度経済成長政策でひずみを受けたのは農民と中小企業です。その農民と中小企業の諸君が二十歳から五十九歳まで百円ないし百五十円の国民年金料を吸い上げられていく。そうして、この金はいわゆる資金運用部に入って、あるいは一部積み立て金等の運用になっていく。また今度は医療費の改定その他によって百五十億の患者負担ができ、しかも七十九億以上の保険料の改定が行なわれていく。あなたの言うように、二十何%の改定が行なわれたわけです。そうしますと、一体どういうことが起こってくるかということです。小山さんも知っているように、あるいは大臣にも聞いてもらわなければならぬが、いま日本の経済で一番ひずみが出ておるのは農業と中小企業でしょう。農業と中小企業のひずみを直しますというのが佐藤内閣の社会開発、あるいは池田さんがやろうとしてやり得なかった点なんです。これは、それを直さずして負担が先行していくわけです。そうしますと、統計的に見るとどういうことになっておるかというと、貧乏な人ほどよけいに病気を持っているのです。有病率が高いのです。貧乏なほど有病率が高くて、国民健康保険でも健康保険でも見てごらんになると、受診率が低いのです。貧乏な農業や中小企業ほど有病率が高くて受診率が低い。そうすると、病を持っているということなんです。罹病じゃない。病を持っている率が高くて、医者にもかからないのですから、だれがかかっているかというと、中以上の人。これは罹病率は少ないですよ。有病率は少ないのに受診率は高いのです。ここにいわゆる社会保障の倒錯が行なわれておる。さか立ちが行なわれておるわけです。こういうところをもう少しく考えてもらわなければならぬ。見てごらんなさい。かつて日本の農業というものは三ちゃん農業と言った。じいちゃん、ばあちゃん、かあちゃんの三ちゃん農業と言っておったんだが、いまは三ちゃん農業じゃない。一ちゃん農業です。じいちゃん、ばあちゃんは年をとって、もはや働けぬようになったんです。かあちゃん一人で働くという状態でしょう。全般的に見ると財政力が非常に脆弱になっている。そうして東北地方では百万人以上も出かせぎに出ていくのですから、経済基盤ががらりと変わってきてしまっている。そういう国民健康保険に、いま小山さんの言うように赤字はありません。それは保険料を二割何分も上げた。国は五十億程度持ちました。なるほど今度の予算にも精算——これは去年の精算ですよ。それは五十億七千二百六十九万九千円出していますよ。今度の医療費の改定というものは、三十一億程度国民健康保険に出すことは知っております。しかし、現実に医療費の負担がふえた、保険料の改定で負担が増加しているということは事実なんです。そうすると、ますます農村はかかれなくなっちゃう。現金で家族は五割でしょう。もちろん貧乏なところは四十年の一月一日から七割給付をやりますけれども、ここに日本の社会保障のさか立ちがあるのですよ。そこで、財政対策をやるときに、私は、特に中小企業の労働者、すなわち平均したら一事業所二十三人の中小企業の労働者の負担をしている、中小企業の労働者が加入している健康保険の問題と、石田さんのほうの政策で、賃金は五百一円九十銭しか一律に払わないこの日雇い労働者と、そしてひずみを受けている農業と中小企業の問題を取り出しておる。ここの財政問題が片づけば日本の社会保障の、少なくとも医療保障の問題は片づくのです。  そこでお尋ねをしたいのは、二百二十億の——これは九・五を加入してけっこうです。二百二十億の政府管掌の健康保険は、四十年度においては、財政対策をしなかったら一体幾らの赤字になるか。日雇いは幾らの赤字になるか。国民健康保険はいまのように措置しなければならぬものがどの程度出てくるのか。これをひとつ、推計しておるはずですから御答弁願いたいと思うのです。
  136. 大山正

    ○大山(正)政府委員 来年一月から緊急是正が九・五%行なわれたものといたしまして、昭和四十年度の単年度の赤字額の見込みでございますが、政府管掌健康保険におきまして八百四十億円、日雇健康保険におきまして九十六億円ほどと推計いたしております。
  137. 滝井義高

    滝井委員 大蔵大臣、お聞きのとおりでございます。財政対策をやらずに、いまのままの二百二十億の赤字をずっと延ばしていくと、四十年度八百四十億、日雇い労働者は九十六億、これと同じ形で三百六十一億、ぼくが国民健康保険は赤字だと言いましたが、国民健康保険はさらにこれが三倍、四倍の赤字になってきますよ。そうでなければ、もうみんな医者にかからないということです。赤字でなくなるとすればかかれない、こういう実態だということです。しかも、いま言うように零細な中小企業、農民を対象にする保険ですよ。あるいは日雇い労働者諸君を対象にする保険ですよ。だから、国としては、こういう赤字の状態になっているものをどう一体根本的に処置しようとするのか。いま言ったような対策で一体この八百四十億になる保険がまかなえることになるのですか、いま小山さんが説明をしたようなもので・・。これで八百四十億の赤字がまかなえるだけの財政的なものは出てくるのですか。
  138. 小山進次郎

    ○小山政府委員 先ほど申し上げましたような対策をいろいろ総合し、なおかつ当然やはり相当程度国から金を出すということがないと、なかなかできないであろうというのが厚生省当局の考えでございますが、別にまだそれで決定したわけではございません。
  139. 滝井義高

    滝井委員 そこで田中さんになるわけです。だから、さいぜん佐藤内閣の表看板の社会開発というものはどういうところに重点を置きますかと——私はきょうは人間の、人間中心の問題しか質問しないのです。社会開発というものは人間尊重、人間優先の原則ですから、歩行者優先ですから。そうしますと、住宅を中心とする生活環境の整備、社会保障の充実と教育、文化の向上、こういうことが問題になってきたわけです。そこで社会保障の中における医療保障の中心であるこの保険財政の問題というものが当然これは問題になってこなければならぬ。そうしますと、政府管掌健康保険だけをとってみても、いま一体国は幾ら出しておりますか。千百万人の中小企業の労働者が加入する政府管掌健康保険に医療費の国庫負担として、神田さん、幾ら出しておると思いますか。幾ら出しておりますか。それを神田さん知らぬようだったら、もう処置ないよ。
  140. 神田博

    ○神田国務大臣 約五億でございます。
  141. 滝井義高

    滝井委員 田中さん、このとおりなんです。いいですか、三兆二千五百億のことしの予算をお組みになって、これは施政演説その他の質問でもよく出たのですが、中小企業のために実際に組んだ予算というものは百十八億程度で、〇・五%以下だということをよく言われた。千百万人の中小企業の労働者が加入をしておる政府管掌健康保険に国が出しておる金は、医療費については五億円しか出してないですよ。あとは全部一事業所二十三人しか働いてない零細中小企業の労働者諸君のいわゆるふところから出る。事業主がそれに見合うものを半分出す。これでまかなっておるのです。そうすると、四十年度になったら八百四十億の赤字の出るものに、一体国がこれをやらずしていけますか。当然大幅なものを出してこなければ話にならぬ。いわんや、日雇労働者健康保険は、もはや保険のていをなしていないんですよ。二百十五億の金が要るのに借り入れ金が百三億もある。借り入れ金でまかなっておるのです。そして保険料は幾らだ、当初予算では保険料の見積もりは四十九億か五十億ぐらいしかないのです。保険のていをなしていないですよ。二百十五億の金が要るのに、保険料では五十億やそこらしかまかなえぬというのだったら、保険のていをなしていない。しかもあとは借り入れ金。したがって、もはやこれらの社会保険は抜本的に国が肩入れをしてやらなければだめなんです。そうすると、田中さん、もう数字ははっきりしてきた。数字はもうほんとうに真実を語りますよ。真実は一つしかない。もはやこれらの政府管掌の健康保険にしても、国民健康保険にしても、患者負担、被保険者負担は限界にきておる。そうすると、一体国はどの程度の金を出すつもりなのかということなんです。今年はなるほど三十一億円を国民健康保険に出しておるけれども、補正予算には政府管掌健康保険については一文の計上がないでしょう。一文も計上しないです。こういうことで一体社会開発を言い、人間尊重を言い、ヒューマニズムを言うことができますか。一文も出してないじゃないですか。いまあなたがお答えのとおり五億円ですよ。かつて岸さんや池田さんや一萬田さんが大蔵大臣のとき、あるいは総理大臣のとき何と言ったかというと、当時三十億金をとっていた。滝井君、おれたちの目の黒い間は絶対にこれは削ることはないと言ったけれども、黒字に転化するやいなや、直ちに削ってしまったのです。だから、今度は赤字になったときには当然もらわなければならぬのです。どうですか大蔵大臣、八百四十億の赤字、いまいろいろ政策を言うたけれども、それは三百億や四百億の金は出るかもしれませんよ。しかし八百億の金は出ない。断じて出ない。さかさまにしても農業と中小企業からは出ないですよ。そうするならば、国がここに三百億なりと負担をしなければ保険というものはやっていけないのです。どうですか、それだけの負担をする覚悟がありますか。
  142. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、財政再建というためにも、制度上いろいろな手を加えていかなければならないという考えでございます。保険制度でございますから、国がただ出すというようなことでは保険のりっぱな制度としての発達は期せられないわけであります。予算は、五年前、四年前の二二%も対前年度比増大したような一般会計も、だんだんと詰まってまいりまして、四十年度は一〇%余というような状態でございます。このような中においてさえも、社会保障費は相当高い比率で組んでおるのでありますが、その上に財政の状態から国がこれを補助をする、いわゆる保険制度というよりも財政負担の扶助制度に変わるというふうなことでは、保険制度そのものが発達をするわけはないのでありますから、重大な問題ではありますが、医療費の引き上げに際しましても、先ほど指摘がございましたように、四十年度の予算編成を契機にして制度改正をやる必要がある、こうお互いが申し合わせたような状態でございますので、重大な問題でありますが、積極的に制度改正を検討しなければならないと考えます。
  143. 滝井義高

    滝井委員 制度改正はわかるのです。私もやらなければならぬと思うのです。しかし、少なくともこれが社会保障の重要な柱である限りにおいては、相当国もこれに肩入れをしなければならぬという認識をお持ちなんでしょうね。五億円ですよ。いま千百万人の中小企業に対して五億円しか出してないのですから。だから、これは相当いままでの考えを改めて、相当の国庫負担を覚悟しなければならぬということの認識は、田中さんお持ちでしょうね。これはもうそれ以上言いませんから、ここだけ共通の認識さえ持っておけば、それから佐藤さんの言うように調和をし、話し合いをすればいいのですから、調和をはかればいいのですから。調和ができていない。保険経済がアンバランスになって、貴族と平民の状態になっておるのですよ。だから、これはやっぱり調和をしなければいかぬですよ。少なくとも平等に持っていかなければならぬ、ある程度均衡のある。お互いに命のなくなろうとするときには、お金持ちの命も、貧乏人の命も同じなんですよ。したがって調和をとらなければいかぬ。あなたの言うように均衡をとらなければいかぬですよ。そうすると、国が五億円しか負担していない。中小企業対策の意味においても、これは相当出さなければならぬ。当然のことですよ。相当覚悟があるのでしょうね。全然出さぬというのじゃ話にならぬ。これは破産ですよ。それじゃ神田さん、腹を切らなければならぬ。とにかくこの認識だけは持ってもらわなければならぬが、その認識を持つのかどうかということです。全然国庫負担を、いままでの五億円しかやらぬということでは話にならぬ。国庫負担についても相当考えるということでないと、これは話にならぬですよ。
  144. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、いま保険制度でございますから、しかも財政が非常に多端な状態でございまして、扶助制度のように変わるというようなことではいかぬと思います。でありますから、制度自体としてこれがりっぱに発達をしていくような方向で進めるのが本義だと思います。そのためには各種保険の統合の問題とかいろいろな問題がございます。いままではあまり手をつけないでまいったわけでございますが、保険がここまで財政上大きな問題にぶつかったら、やはりこういうものとまっ向から取り組んで、いままでやってみた保険財政に徴して、将来どうあるべきかということをやはり具体的に検討し、また大蔵省としましても、厚生省側の意見を十分聞きながら、最終的に態度をきめてまいりたいと、こう考えるわけであります。
  145. 滝井義高

    滝井委員 よくわかりますけれども、とにかく異常な状態になっていることは明らかです。しかもひずみを受けた階層の保険というものは、軒並みに赤字であるということも明らかです。それだとするならば、やはりそれぞれのところにも泣いてももらいます。しかし泣いてもらうかわりに、国もやっぱりある程度泣くところはある。これでないと調和はできないですよ。それでは不均衡というものです。だからそういう点では、検討していただいてけっこうですが、やはり最終的に負担しなければならぬときは負担するというくらいの言明を得ておかなければ、そういう御答弁では、われわれとしては了承できないです。もう一回ひとつ。
  146. 田中角榮

    田中国務大臣 政府部内で十分検討して、将来よりよき保険制度の確立に邁進をしたいと思います。
  147. 滝井義高

    滝井委員 神田さんにお尋ねしますが、いま九・五%を入れて、ずっと八百四十億になってきたわけです。そうすると今度問題は、九・五%の配分が問題になるわけです。これはどういうふうに配分するつもりですか。
  148. 神田博

    ○神田国務大臣 九・五%の引き上げ率の配分につきましては、いま検討しております。その方向としては、中医協の答申の線がございますので、この答申の線に沿って、しかも、私のいわゆる神田構想と申しますか、いわゆる八%を上回るものについての内容もございますので、それらの点もしんしゃくしながら、いま作業を進めております。これは、成案ができますれば中医協に諮問いたしまして、そして実施をいたしたい、こういう考えでございます。内容の点は政府委員から御説明いたさせます。
  149. 小山進次郎

    ○小山政府委員 内容は、いまいろいろ整理検討しているのでございますが、中医協の答申にいわれておりますように、この九・五%という引上げが一般の医科にも歯科にも、また薬剤の調剤関係にもやはり平等に適用されることが必要であろうということを一つ考えております。それから医科につきましても、とにかく世間の目につきやすいのは、病院の経営が非常に苦しいということからいたしまして、この配分を病院にというような意見も一部にはあるようでございますが、やはり事の性質から見まして、病院にも診療所にもほぼ同じ程度の結果としての配分になるように考慮すべきものだと思っております。そういうふうにいたしまして、項目としては技術を尊重するという意味で診察料を基本にして配分を考える。それから病院の問題を解決いたしますために、あわせて入院料の引き上げを考える。歯科につきましては、これは診察料を重視して考えることはもちろんでございますが、このほかに歯科固有の問題として補綴、充てんインレーというようなものについて、材料費の食い込みということによって技術料がそれだけへこんでいる部分を十分に回復させ、しかもほかの技術料部分のふえ方に見合う程度にまでこれを引き上げるというようなことを考えております。大体そういうふうな考え方でいま作業を急いでおります。  神田構想と通称されておりまするのは、上げ幅を八%よりやや上回ったところに置くということ、それからもう一つは、診察料を重視するという考え方の中に、いまの診察料が初診の際に初診料として支払われたきりで、どうも診療期間が長くなってもそれが十分報酬体系の上にあらわれていないので、一カ月たったならば、できれば基礎診察料とでもいうべきものを考えてみたい、こういうふうな二点を骨子としておったのでございます。  それで前段の点は、八%を現在の財政力のうちで許されるぎりぎりのところまで引き上げることになりましたので、これはりっぱに実現ができたわけであります。後段の問題は、これはやはり引き上げの幅と関連がございますので、いろいろ検討しておりますけれども、あの当時大臣が頭に考えられたような形で生かすということは、そういう技術的な制約から見て非常にむずかしくなっている、こういう状況でございます。
  150. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、大臣の答弁と局長の答弁は食い違っておった。大臣は神田構想の線でやりたいと言う。局長は神田構想の線は財源の問題ぎりぎりでできそうにない。食い違っておったじゃないですか。もう少し意思統一しておかなければ・・。
  151. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。少しことばが足りなかったのでございますが、上げ幅が御承知のように一・五でございますから、全部採用するわけにいかない。いま局長が言われたとおりの趣旨でございます。局長が答弁したとおりに考えております。再診料のことは、なかなかむずかしいというふうにいまの段階では計算上なるようでございます。
  152. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、はっきりしたことは、神田構想の後段の基礎診察料というものを今度の配分でやることは困難になっておる、こういうことですね。わかりました。  そうしますと、三%の薬価の切り下げによって財源を出しますね。あとだいぶ質問がありますから、この額は一体幾らかということと、この配分の重点は技術料に持っていくというが、技術料はいかなる技術料に持っていくのか、それから薬剤師の調剤技術料にもこの三%を配分するのか、これを一つ答弁してもらいたい。
  153. 小山進次郎

    ○小山政府委員 三%といわれておりまするのは総医療費の三%、こういう意味でございますので、総医療費にそれをかけた程度のものが一応議論の対象になる。したがって、社会保険の各制度に関するものについては、社会保険の各制度に関する総医療費をもとにした三%、こういうふうになるわけでございます。  それから振かえの項目については、目下いろいろ検討しておりますけれども、現在薬価基準と実際の薬の仕入れ価格との間の差によって経営を多く助けられている方面が、内科、小児科というような、比較的薬を科の性質上多く使うところでございますので、配分は、当然そういう方面に多くのものが向くような配分でなければならぬと思っております。それで、一つ考え方としては、かつて昭和三十六年の十二月に緊急是正というのが行なわれましたけれども、あの緊急是正は、当時七月の医療費の引き上げが内科、小児科にやや薄かったということを補正する意味で行なわれた事情がございますので、おおむねああいったような項目に着目しつつ選ぶことが適当であろうというような一応の考えを持っておりますけれども、これはまた別の機会にもいろいろ御批判がありまするように、あの緊急是正の項目というのは、実際に診療する人からみると、いろいろまた技術的にややこしい点があってぐあいが悪い、こういうようなこともございますので、そこいらの点を十分考えて、従来得ておった収益というものがほぼそのまま技術料の形で得られるような項目を選んで行なうようにいたしたい。これは九・五と別に項目を立てて処理をする、こういう考えでございます。  それから薬の調剤の問題については、これは現在でも多少その値幅に、調剤関係の人が依存しているという事実がありまする以上、ある程度考えるべきものだと思っております。
  154. 滝井義高

    滝井委員 自治大臣がいらっしゃっていますけれども、いまのように保険経済というものは非常に赤字です。さきに公営企業制度調査会が公営企業全般が非常に赤字であるということを言っているわけなんです、水道にしてもバスにしても。ここでちょっと明らかにしておいていただきたいのは、あなたの所管する公営企業に所属する病院の現在の赤字、黒字の実態をちょっと御説明しておいていただきたいと思うのです。
  155. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お答えを申し上げます。公立病院の経営状況は昭和三十八年度末において約四割の病院、すなわち七百九十四事業のうち三百三十事業が赤字になっております。このうち地方公営企業法を適用しておりまする病院の累積赤字額は、六十六事業で二十六億円でございます。法を適用しない病院の実質赤字額は二百六十四事業で六十億円であります。赤字の総計は合わせて九十二億円、年間営業収益の約一割となっております。  以上でございます。
  156. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、九・五%のアップをやると、七百九十四のうち三百三十の赤字は解消する可能性はありますか。
  157. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 公営企業としてやっている分について申し上げますと、大体収入総額は百二十五億でございまして、九・五%アップしますると約十二億の増になりますが、公営企業の適用を受けておりまする単年赤字は九億でございますので、若干浮かび出ます。しかし、それは現状についてでございますので、ベースアップをしていきまするというと、若干まだ赤字が残るような見込みになっております。
  158. 滝井義高

    滝井委員 大蔵大臣、いまお聞きのとおりでございます。とにかく保険財政は火の車です。そうして、その保険に所属する農業、中小企業、日雇い労働者、あるいは健康保険の被保険者というものは、その負担能力が限界にきているということです。病院は、いま言ったように九・五%を引き上げても、なお看護婦の不足を充足することができないし、あるいはそれらの職員のベースアップを順当にやれば一挙にまた赤字に転化する。全部赤字ですよ。これがいまの日本の社会保障の所得保障と医療保障における重大な問題点。どうにもならなくなってきておる。したがって、これは抜本的なメスを入れなければどうにもなりません。実は、私自身の抜本的な対策があるのですが、石田さんがちょっと急いでおるようですから少しあと回しにして、先に石田さんに教育の問題を少し尋ねたいのですが、石田さんにお尋ねをしたいのは、三池の一酸化炭素中毒患者の処理です。現在入院が三百四人、そうして通院が四百四十八人おります。災害は忘れたころにやってくるというが、すでに三池の人たちは一年たって忘れられかけつつある。現在四百四十八人の通院者の中で相当入院を必要とする者があるわけです。同時にそれらの諸君の中には、通院をしておる病院に専門医がいない。精神科とか心臓の専門医がいない。特に精神科の専門医がいない。したがって、ただ通院をして休業をしている証明だけをもらうかっこうになる。これについては、非常に通院の一酸化炭素中毒患者の中に不満が起こっておるのです。こういう点は労災患者ですから、当然積極的にその処置をしなければならぬが、そういう点、一体どうやっておるのか。  それから入院をしなければならぬ者で通院をしておる。これはベッドが足らない。さらに通院をしておる人の中にも、職業訓練というか、職業補導をやって、そうして新しい職場に、あるいは元の職場に帰す体制をとらなければならぬが、そういう中間病院がない。こういうことを考えると、すでに一年前にあれほど天下を聳動さしたこの問題が、いつの間にか火の消えるように忘れられようとしておることは非常に問題です。そこで、それらに対する対策を一体どう考えておるのか。  それから、これらの諸君というものは、御存じのとおり三井の三池炭鉱は第一組合と第二組合ができて、差別の問題が起こっておった。これらの人の中に非常に賃金が低い人がおるわけです。平均賃金の八割しかもらえないわけです。したがって、一カ月の所得が一万二千円以下で五人世帯を養わなければならぬという状態がある。これは当然労災保険法で二〇%の上下があれば改定することになるが、これは法律があるからしかたがないかもしれぬけれども、何らか対策を講ずる必要がある。こういう問題についてどう考えるか。  いま一つは、これらの遺族の諸君、たとえば奥さま方が働きに出ている。われわれはその驚くべきことを発見をしてきた。それは、これらの遺族を食いものにする誘致企業が出てきているということです。たとえば、ここに賃金の表を持ってきたのですが、この遺族なりあるいは入院をしている患者の奥さん方が誘致された企業に働きにいって、そうして八時二十分から五時五分まで昼食四十五分の休憩で働く。そうして十七日満勤のうち三日欠勤して十四日出勤をして、そうしてもらう賃金は千七百六十一円。これから健康保険を引かれ、厚生年金を引かれ、失業保険を引かれると、これが三百八十四円引かれて、千三百七十七円にしかならない。十四日働いて千三百七十七円、こういう賃金が白昼公然とまかり通っておる。しかも、三池の炭鉱における遺族の奥さま方にこういう賃金が支払われておる。そればかりではない。あの社宅の中で内職をやっておる諸君が、造花その他の内職をやっておりますが、十時間働いて一日三十円から五十円です。これではいかに池田内閣に続いた佐藤内閣が社会開発を唱え、人間尊重を唱えたって、人間を冷遇されておる、踏みつけられておる。しかも遺族です。こういう実態ですよ。こういう点についてあなた方は一体知っておるのか、知らないのかということです。これは、私は歴然とした賃金、給料の明細書を持ってきております。  これらの点について、ひとつ一括して、時間が急ぐのですからお答え願いたい。
  159. 石田博英

    ○石田国務大臣 三池の罹災者の方々の中で入院を必要とする人については、全部入院をさせておると私は聞いております。詳しい実情については、あとで担当者からお聞き取りをいただきたいと存じます。それから、しかしなお、あとで職場に復帰するための中間病院とでも申しますか、リハビリテーションをやりますための中間病院の設置は決定いたしております。すみやかにやりたいと思っております。それから専門医等につきましては、近くの九州大学の病院その他の御協力を得まして、でき得る限りのことをやっておるつもりでございます。それから八割給付になりました結果、非常に低い賃金層になる問題については、研究をいたしたいと存じます。また最後に御指摘の問題は、たいへん寡聞で、私はいま初めて聞いて非常に驚いておる次第でございます。早急に適宜の処置をとりたいと思っております。
  160. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ至急に専門医を派遣をし、これらは労災保険の被保険者ですから、労働省の労働基準局の労災補償部長のところでひとつぜひすみやかにやっていただきたいと思うのです。それから中間病院も、機構その他設置の位置もきめてやってもらいたい。それから賃金もぜひひとつ検討してもらいたいと思います。石田さんけっこうです。まだあったのですけれども、急ぐようですから。  それでは三池の問題にきたから二点ばかり・。あの三池の災害が起こったときに、炭鉱の保安というものについては、これは抜き打ちに坑内に入って検査をしなければいかぬということを再三再四にわたって福田通産大臣から述べた。ところが、それが現実にわれわれの聞く範囲では行なわれていない。一体政府としては、今後石炭山等における保安を確保するために抜き打ち検査というものをほんとうにやる腹を固めておるのかどうかということが一つ。  それから組夫についてでございますが、現在、三十九年に十六万六千八百人の炭鉱労働者のうちに二万二千五百十八人も組夫がおるのです。しかもその組夫の罹災率を見ると、千人について常用労働者が一・九一に対して組夫は二・九六人死亡と、常用労働者の二倍になっておるわけです。こういう実態は、明らかに組夫を一時的な臨時な企業的な仕事以外に使っているということが歴然としているわけです。こういう点について、一体通産当局はどういう処置を今後とろうとするのか、ほんとうに腹をきめてやる意思があるのかどうかということです。
  161. 田中角榮

    田中国務大臣 抜き打ち検査を中心にやっております。しかも、これからも抜き打ち検査を中心にしてやろうと考えておりますが、ただ、検査の内容によりましては、あらかじめ通知をしておいてやることがより合理的な場合もございますので、これらを併用しながら、しかし重点的には抜き打ち検査をやるということでまいりたいと思います。  それから請負夫の問題につきましては、これは通産大臣が認可をするということになっておりまして、一般の採炭の仕事はやらしてはならないということで、閉山等でやむを得ざる、閉坑に伴う採炭というようなもの以外は許可をしておらないわけでございますが、これらのこまかい実情に対しては政府委員をして答弁させます。
  162. 滝井義高

    滝井委員 時間がないですから、けっこうです。  とにかく組夫についてはひとつ厳重な、約束どおり、法律に書いているとおりにやってもらいたいということです。  それから抜き打ち検査についても、やったら、これからはひとつ国会に報告をしてもらいたいと思うのです。どういう山とどういう山を抜き打ち検査を何日にやりましたと。われわれもこれからもう一ぺん質問をいたしますから。保安局長、ぜひひとついまの田中臨時通産大臣の答弁を忘れぬように心に銘記しておってください。  次は、この産炭地の教育の問題についてでございます。御存じのとおり、産炭地においてはいまや失業と貧乏が渦巻いているわけです。そして不良児、問題児、長欠児、それから虞犯少年、そういう者が続発をしております。私は校医をやっておるのですが、最近体格検査をしてみると、栄養状態が非常に下がっています。それから知能も、全般的には下がっていないけれども、局部的にはだんだん低下の傾向が出ています。厚生省の栄養調査を見ても、最近は非常に栄養状態がよくなってきておりますけれども日本において、なお成人で二千五百カロリー以下しかとっていないというのが六二・七%世帯の中にあるのです。いわんや、全国的にもこういう状態なんですから、炭鉱地帯においては非常に深刻な状態です。そこで、一体こういう状態の中で、文部省は、質問をすれば、産炭地については学校の先生の配置というものは十分考慮しております。こういうことなんです。私調べてみた。炭鉱がつぶれて一番貧しい状態が典型的に出ておるのは、筑豊で言えば嘉穂郡というところです。それから田川郡、こういうところです。これは小学校が二十四と中学校が十四ありますが、小学校二十四になるほど四十七配分しております。しかし、これは一校に二人ないですね。それから田川の小学校二十五について四十七ですから二人ない。中学校は嘉穂十四、田川十四ですが、一つもない、こういう状態なんです。したがって、こういう実態で、一体このままで虞犯少年なり問題児というものが出ておるのにいいのかどうかということです。これをまず愛知さんからひとつ御答弁願いたい。
  163. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 産炭地の教育対策については、前々にも申し上げておると思いますけれども、文部省としても、最近にも二回にわたって現地の調査を詳しくいたしました。そして要保護児童、準要保護児童の就学対策費をはじめ、できるだけの措置をとりつつありまするし、また四十年度におきましても所要の予算の概算はすでにいたしておるようなわけであります。その中で、いま教員の問題を御提起になりましたが、これは御案内のように、いわゆる標準法に基づく政令の運用等によりまして、三十九年度におきましても約六百人くらいの教職員の定員を確保しておるわけでありますから、その中で福岡県教育委員会と十分連絡をとりつつ、教育上教員の配置について遺憾のないような措置をいたしておりますが、なお今後におきましても、十分配慮してまいるつもりでおります。
  164. 滝井義高

    滝井委員 御存じのとおり、小学校はいまあるのです。ところが、義務教育の中学校には一つもないのですね。これは一体どういうことなのかということです。これは、福岡県が配分しなかったのだといえばそれまでかもしれないけれども、しかし、これは小学校のほうが問題児その他が多いから配置をしておるだろうと思うのです。実はこういう実態です。生活保護世帯というのは、全国千について十七くらいです。ところが御存じのとおり、愛知さん、筑豊地帯は百とか百二十はざらです。私一つの学校を調べてみた。私の卒業した学校もそうなんですが、昭和三十三年のころは生活保護児あるいは準要保護児というものは六・六%で五十四人しかいなかったんです。ところが、三十九年は五七・三なんです。五百七十四人です。千人近くのうち半数以上は生活保護という家庭の子供なんです。そうすると、こういうところは一体どういうことになるかというと、たとえばこの五百七十四人については、まず教育委員会がこの子供は生活保護あるいは要生活保護という決定をするわけです。そうすると、あの文部省の方針によって、いわゆる教育の援助が行なわれる。学用品とか衣服とかズックとか帽子とかの援助が行なわれます。運動会のときのはち巻きという援助が行なわれるわけです。そうしますと、この子とこの子とこの子とは準要保護児童だ、あるいは保護児童という決定がありますと、それに基づいて今度は先生は、その子供に言って、君、一体何と何という品物がほしいのかと、こうなるのです。たとえば二千円の配当がきていれば、その子供の欲望と、この二千円の品物が合致するように品物を買わなければいかぬわけです。そしてその先生は店に行って、その子供に合致する頭の大きさをはかり、ヒップをはかって、そして買ってくるわけだから、買ったらどういうことになるかというと、今度それを子供にやる。先生ありがとうと、こうなる。そうすると、親のところに行って、子供に渡したんですよという受領書をもらわなければならぬ。そして受領書をもらって、同時に今度は商店に行って、品物を買ったのですから、受け取りをもらうわけです。そして受領書と受け取りを教育委員会なり市に提出するわけです。そうして、これは監査があるわけです。この事務を全部先生がやるんですから、千人の学校に五百七十四人も生活保護、準要生活保護児がおってごらんなさいよ。先生は、福祉事務所の、神田さんのやらなければならぬ仕事を全部先生がやっているんです。こういう実態ですよ。これは中学校でも同じです。小学校でも同じです。そうしますと、中学校は配置せぬ、小学校だけというわけにはいかないわけです。それはなるほど六百人も配置してくださったことは非常にありがたいです。ありがたいですけれども、この現場の実態を見たら、やはりもう一歩、二歩の前進というものをやってもらわなければならぬ。なるほど法治国家ですから、私も法律は守らなければならぬと思うのです。しかし、法律というものは、また役人がいい手を教えてくれているのですよ。省令、政令でけっこう法律を制約してしまうことになる。それである程度変えることができるのです。だから、そこはひとつ、佐藤内閣における田中、愛知というのは両知謀でしょう。二人でよく相談をしてやってもらう必要があると思うのです。これはそんなによけいに金がかかるわけじゃない。財政がつぶれるほどかかるわけじゃないから、そういう形をつくった上で——たとえば石炭産業の合理化というものは四十三年までいきます。石炭鉱業の保安の臨時措置という法律は、いま通産省は、ことしで切れるのを四十三年の三月三十一日まで延ばしてください、こうきている。やっぱり石炭鉱業の合理化が進行する間は、特殊の地帯なんですから、貧乏が渦巻いておるんだから、やっぱり私は、できれば特別立法でもやってそういう措置を講ずべきだと思うのです。こういう先生の苦労というものは、神田さんがやらなければならぬことを文部省がいまやってやっておる。だから、むしろあなたのほうから福祉事務所の金を少しぐらいこっちに回してもいいのです。そうすると、しかしこれは身分が関係してくるのです。学校の先生でなくなる、あなたのほうの金をもらうと。そこでもらいたいんだけれども、これはもらえぬところがある。そこで田中さんを中にはさんで、神田さんと両者がやっぱり話し合って、この問題を解決すべきだと私は思うのです。そして、やっぱり先生の身分のままでそういう仕事をやって、かわいい子供のために先生が教師として生きる道を講ずべきだと思うのですが、その点どうですか。
  165. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまも御指摘がございましたように、福岡県に例をとって申しますれば、福岡県の産炭地帯の三十九年度の状況を概観してみますと、要保護、準要保護で約三割を占めております。したがって、いま御指摘のように、今度はその中のある小学校や中学校をとってみますと、半分あるいはそれ以上の保護家庭があるということになるわけでございます。そこで、先ほど中学校については配慮していないではないかというお話がございましたが、中学校にも、たとえば福岡県における産炭地におきましては、全部には行き渡っておりませんが、いわゆるカウンセラーを配置いたしております。  それから、これでどうするかということでございますが、まず教職員の問題からいえば、四十年度につきましても、もちろん産炭地につきましては特別の配慮をいたします。それから就学児童生徒の関係におきましては、これは実は四十年度の問題にもなるのでありますけれども、できれば就学費その他につきましては十分の八の補助率に、特定のこうしたものについてはしてもらいたいということで、これはこれから大蔵省と折衝を要することでございますが、文部省としてはそういう心づもりでおります。  なお、最後にお触れになりました点については、実は私も承知しておるのでありまして、この点については厚生省と十分ひとつ御相談、御協力を願うことにいたしたいと思っております。
  166. 青木正

    ○青木委員長代理 滝井君、時間も超過しておりますので、結論をお願いいたします。
  167. 滝井義高

    滝井委員 いまのような実態があって、先生は教育どころでなくて、母親のかわりに、父親のかわりに非常に骨折っておるということです。いま御答弁のあったように、三割も生活保護と準要生活保護児が普遍的に学校に在学しておるのですから、したがって福祉事務所のやらなければならぬ仕事を全部学校の先生がやっておるというこの点は十分配慮をして、私はカウンセラーあるいは教師をやっぱり配置をする努力を厚生省も文部省にすべきだと思うのです。文部省もひとつ考えていただきたい。  それから特殊学級についてでございます。これは、私はうかつでございましたが、調べてみましたところが、養護学校については小学校一・五と中学二の教員を配当をしておるのです。そして、これを私、養護学校についていろいろ聞いてみました。ところが、その養護学校の生徒というのは、御存じのように知能が低いのです。そして学校を卒業して職業につくとなると、やっぱり気が少しときどき不安定になるものですから、職をかわりやすいのです。そのために先生は、職についてからも絶えず行って訪問をして世話をしておるわけです。そこで、この養護学校について小学校一・五と中学二についても非常に不満がある。これでさえ少ないというのに、産炭地に特殊学級をつくったときに、それを特殊学級は一だということです。一ではどうにもならぬと思うのです。そこで、私は産炭地には少なくとも二と言いたいところだが、二とは言いません。やはり一・五くらいの養護学校と同じくらいのものは考える必要があるのではないか、こういう点。  それから立ったついでですから、これでやめますが、最後に学校のことです。最近学校の下を炭鉱がどんどん掘り始めておるわけです。学校の鉱害が非常に多い。しかもその炭鉱が無資力になったときには、御存じのとおりその鉱業権者の負担する分の半額を自治体が負担しなければならぬことになるわけです。そこで伺いたいのは、一体現在学校のこういう無資力、有資力の鉱害はどの程度あるかということ。それから無資力鉱害は全体としてどの程度あって、通産省としては学校に対する対策をどう考えておるか。それから無資力鉱害全体を一体どう推計をして、その対策をどう考えておるか。  この二点を御答弁願いたいと思うのです。
  168. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま学校の一般鉱害における加害炭鉱業者の不明または無資力のものの負担率のお尋ねがございましたが、これについては、全体でいま十分の七に負担がなるようになっておりますが、これで引き続きやってまいりたい。なお研究を要する点があれば、研究をいたしたいと思っております。現在は全部で十分の七になっておるはずです。  特殊学級につきましては、特にこれも福岡県に例をとりますれば、福岡県の産炭地帯におきましては、特殊学級をひとつこの上とも増設をしたい。これは教職員やカウンセラーの配置の問題と関連いたしますけれども、しかし、そういう細部の点まで文部省でなかなか具体的な計画ができませんので、福岡県教育委員会にわれわれの考え方を申しまして、早急に善処いたしたいと考えております。
  169. 田中角榮

    田中国務大臣 無資力鉱害は、増大いたしておることは御指摘のとおりでございますが、御承知のとおり、鉱害復旧事業団をして事業を行なわしめておるわけでございます。どうしてやっておるかといいますと、事業量の拡大、無資力認定手続きの迅速化、農地の暫定補償金等に対する財源の確保等、いろいろ考えて進めておるわけでございます。どのくらいの事業があるか、どのくらいの鉱害があるかというようなこまかい問題については、御必要があればあとから申し上げます。
  170. 佐成重範

    佐成説明員 石炭鉱業の合理化に伴います無資力鉱害が累増いたしまして、三十八年度末現在におきまして、七十一億円という額に達しております。  それからただいま滝井先生御質問の学校関係の鉱害でございますが、現在約二億三千万円というふうに推定いたしております。これに対処いたしまして、三十九年度におきましては四千八百七十万円、七校でございますが、このうち有資力四校三千九百三十万円、それから無資力三校九百四十万円というものを復旧する計画で、これはすでに基本計画の認可も終えまして、着々と復旧の工事を進めておる次第でございます。なお四十年度におきましては、この四千八百七十万円という三十九年度の事業量に対しまして、倍額以上の八千九百六十八万八千円という復旧業事を必要とするというふうに考えておりますが、これが予算の確保につきましては、なお通産省内部あるいは政府部内におきまして予算の確保につとめたいというふうに考えておる次第でございます。
  171. 滝井義高

    滝井委員 社会保障の数字を説明しないままですから、これはひとつあとで私のほうに持ってきてもらいたいと思います。  これで終わります。
  172. 青木正

    ○青木委員長代理 これにて滝井君の質疑は終了いたしました。  芳賀貢君。
  173. 芳賀貢

    芳賀委員 まず農林大臣にお尋ねしますが、先般の佐藤内閣総理大臣の本会議における所信表明演説を聞いたわけでございますが、特に佐藤内閣における農政の姿勢と、池田前内閣時代の農政の姿勢について、これを比較した場合に、留任されました赤城農林大臣として、どのような判断の上に立って今後強力な農政を進められる所存であるか、その点をまずお尋ねします。
  174. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 私は、池田内閣佐藤内閣において農政に対する認識及び農政をどう推進していこうかということについて、変わりはない、むしろ強化しようという気持ちじゃないかと思います。ただ表現の上では、池田内閣におきましては、格差是正等において革命的な施策を施したい、財政金融の多くを投じてこれをやっていきたいという非常に張り切った面がありましたが、佐藤内閣におきましては、そういう面を社会開発という面でふんわりと包んだようなかっこうで、強くは打ち出してはおりませんけれども、やはり農政の基本あるいは農業政策の推進等につきましては、熱意を持って格差を是正し、食糧の供給を確保していく、こういうことにおいて変わりはない、熱意においてもより一そうの熱意を持っておる、こういうふうに考えます。
  175. 芳賀貢

    芳賀委員 池田内閣の場合に、たとえば昭和三十六年には農業基本法を成立させまして、内容は、われわれが見れば非常に不十分でありまするし、また基本法の指向する諸問題に対しましても十分の成果をあげないで終わったことは御承知のとおりであります。また、昨年の通常国会においては、特に農業及び中小企業については格差是正のために革命的な政策を進めるというような発言がありましたが、これも不発に終わったわけです。しかし、ことばの上だけでも農業の問題あるいは中小企業の問題に対して熱意を示したという点は、今度の佐藤総理大臣の所信表明と比べた場合に、佐藤内閣における農政の姿勢というものはむしろ後退するのではないか、消極化するのではないというような不安が国民の中、あるいは農民の大部分の中にはあるわけです。この点は農林大臣としてどうお考えになるか。特に佐藤総理大臣は、人間尊重とかあるいは社会開発を抽象的に唱えておるけれども、その農政の進路に対しては何ら具体的なものを示していないわけです。これは総理自身が最高の政権担当者としてまだ充実しておらない点です。質的な充実感がまだ足りないという点もあると思いますが、特に重要な農業の諸問題に当面している場合に、農林大臣としては、やはり総理大臣が相当信念の上に立って農政に対してひずみ是正をやるという確信がなければ、十分仕事をすることができないと思うのです。ですから、この点について、人間尊重あるいは社会開発に関連して具体的にどのような特徴的なものが佐藤内閣のもとにおいて期待できるか、その点を述べてもらいたい。
  176. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほど申し上げましたように、確かに焦点をひずみ是正というようなところに合わせないで、社会開発というようなことから農業問題を論じておりますから、少し焦点がぼけておるように思います。しかし、客観情勢が農業を放てきしておけるような状況じゃございません。したがって、佐藤内閣においても、これに対しては十分熱意を持たなくちゃならぬし、もし熱意を持たぬようでありますれば、私も総理を助けて、熱意を持って農業政策を推進するように努力をいたすつもりでございます。
  177. 芳賀貢

    芳賀委員 たとえば総理大臣の所信表明の中において、総理は、農林漁業の構造改善事業、農林水産物価格の安定対策の強化、自立経営の育成のため農地の流動化に配慮して経営規模の拡大を進める、これだけ述べたにすぎないわけですね。これでは前進とか前向きということには全然ならないと思うわけです。こういう内容が空疎な農政に対する認識を持った総理大臣をいただいて、赤城さんとしても、非常にこれは仕事がやりづらいんじゃないかと、老婆心ながらわれわれは考えておるわけなんです。ですから、特に昭和四十年度の予算編成期を前にした今日、今度の農政の向こうべき方向について、こういう点は佐藤内閣として特徴を持ってやる、こういう問題はひずみ是正の具体的な施策として行なうということが、たとえば一つでも二つでも、そういう具体的な解決をしなければならぬという重点的な問題があれば、この際明らかにしてもらいたい。
  178. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 従来、構造改善を中心として、もちろん農業基本法の方向に従っておるのでございますが、やってきました。そういう面におきまして、不十分でございます。また、いろいろ改めていかなくちゃならない面もある。しかし、農業は、そう短日月に効果を発揮するものではございませんから、土地基盤の整備あるいは主産地形成で共同施設等を農業改善でやっていますが、その基本になる問題は、やはり日本の農業の零細性を脱却せしめて、他産業と対抗できるような経営に持っていかなくちゃならぬじゃないかというような関係から、土地の基盤を整備すると同時に経営規模を拡大していこう、こういう新たに取り上げた面。それから御承知のように、日本農業の選択的拡大を言っておりましたが、酪農の方面、畜産の方面が思うようでございません。こういう方面に一段と力を入れていかなくちゃならぬというような面、その他あらためて一つの方法で、これでもって農業が革新的によくなるという方法は、実際お互いなかなか見出せないと思います。でありますので、従来の方向に沿うてそれを強化していくと同時に、いま申し上げたような点には特に力を入れなくちゃならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  179. 芳賀貢

    芳賀委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、十一月十七日に、経済審議会から佐藤総理大臣に対して、中期経済計画に関する答申が出されたわけです。これはあくまでも答申でありますが、内閣としては、この答申というものを十分検討して、中期経済計画を閣議決定と定める時期は、おおよそいつを予定しておるかです。
  180. 田中角榮

    田中国務大臣 中期経済計画は、御承知のとおり政府に答申をされておりますが、政府ではこれを検討いたしておりまして、閣議といたしましては、答申をされたということだけが報告されたわけでございます。これをそのまま了承をして政府の決定にするのか、また、少し手を加えなきゃならぬのか、党でもいま検討いたしておりますし、現在、これを直ちに政府の決定とするというところまでは確定をいたしておらないわけでございます。
  181. 芳賀貢

    芳賀委員 いずれにしても閣議決定をする時期はくると思うのですね。それは来年度予算編成の前提にもなると思うのです。ですから、いつかわからぬというものじゃないんですね。おおよそいつごろにそれは閣議決定となるかです。
  182. 田中角榮

    田中国務大臣 中期経済計画に対して諮問をしまして、答申を受けたわけであります。受けましたので、いま検討しておるということであって、これを直ちに政府の決定にするということには、諮問のときからなっておらないわけでございます。でありますから、先般もこの委員会で申し上げましたとおり、政府に提出をせられた中期経済見通しを見ますときに、まあおおむね妥当な数字が出されておると、こう考えられますというふうに答弁しておるのでございまして、これを政府見通しとして正式に決定をするということもまだきめておらないわけでございます。
  183. 芳賀貢

    芳賀委員 いずれにしろ、これは所得倍増計画の残年度のうちの、昭和三十九年から四十三年までの五カ年間における中期的な計画ではあるが、これは当然倍増計画の手直しということになるわけです。この際、この答申の内容を詳細に検討するいとまはありませんが、ただ問題は、総理大臣のいうひずみ是正を重点にして経済政策を進めていくかどうかという点であります。答申の内容は、やはり依然として高度成長を維持していく、高度成長を持続しながら、一方においてひずみの是正を行なう。ですから二面的な性格がこの中期経済計画の中には盛られておるわけですね。そうなると、一体高度成長を維持するというところに重点があるのか、この際積極的にひずみ是正を行なうというところに重点があるのか、二兎を追うということはできないと思うのですよ。ですから佐藤内閣としては、人間尊重、社会開発のたてまえから、いずれを重点として柱として取り組むか、この方向というものはおよそあると思うのです。   〔青木委員長代理退席、委員長着席〕
  184. 田中角榮

    田中国務大臣 いま御指摘になりました中に、高度成長を続けるということとひずみ是正ということは全く別なことであって、二兎を追うことになるというふうに論断せられておりますが、政府は、必ずしもそう考えておらないわけでございます。ひずみの是正というものは一体どうすればできるのかということを考える場合、当然、ある程度の成長率を維持しなければひずみの是正ということもできがたいわけでございます。でございますので、その意味におきまして、ある程度——いわゆる超高度というような過去における成長率を維持しようという考えではなく、安定成長を確保しつつ、その過程においてひずみ是正に重点を当てて施策を推進してまいろうということでございます。でございますから、あの中期経済見通しの中で各般の施策の方向を明示せられておりますが、これを具体的に予算の中でどう具体化していくかということは、限られた財源の中でいろいろいい知恵をしぼって、これからの施策を行なってまいるわけでございまして、率直に申し上げると、ある程度の安定成長というものと、その安定成長によって得られる財源によって、各種のひずみ是正政策を行なうということで、まさにこん然一体のものと考えておるわけでございます。
  185. 芳賀貢

    芳賀委員 倍増計画では十カ年の年率成長、基準成長率を七・二に押えておる。これは実質とは相当差があったわけですが、今回の場合には、三九年−四十三年の五カ年間を見れば八・一%、三十九年を除いたあとの四カ年平均の場合には七・七という成長率を見通しとして持っておるわけです。そうすると、倍増計画の七・二%が実情に合致しなかったといえども、今回の七・七%というものは、やはり相当高度な成長率というものを持続するというところに判断があると思うわけです。ですから、高度成長とひずみ是正というものが異質なものであるということは私も考えておりませんが、たとえば平均八・一、あるいは来年から七・七を目標とする場合、その高度成長の中で一体大きなひずみをもたらしておる農業や中小企業の場合特に農業の生産部門における、農業生産の分野における成長率というものを一体どのくらいに期待して、そうして格差是正をやるかということは、やはりこれは問題になる点だと思うわけです。ですから、この点について財政担当の立場から、農業生産の分野における今後の成長率というものをひずみ是正というものを前提にした場合には、どの程度の期待成長を上げるかということを政策的に進めていく必要があると思うわけです。この点を大蔵大臣から明らかにしていただきたい。
  186. 田中角榮

    田中国務大臣 いま御指摘になりましたものは、二つの問題がございます。  所得倍増政策の年率が七・二%であるにもかかわらず、今度の中期経済見通しの中において考えられる成長率の平均が八・一%であるから、非常に高いじゃないか、こういうことでございますが、確かに数字の上で見ますと、年率七・二%に比べて八・一%実質成長率は高いということでございます。しかし、七・二%の成長率ではなかったわけでございます。昭和二十九年からの成長率平均を見ますと、九・七%ぐらいになっております。同時に、昭和三十六年以後の成長率の平均は、それをはるかにこした十何%という高いものでございます。でありますから、超高度といわれ、各種のひずみを生じたわけでございます。でありますので、ひずみの是正政策を強力に推し進めるためには、一体その中期見通しの期間、すなわち三十九年から四十三年までの間の平均成長率はどうあるべきか、こういうふうに機械にいろいろなデータを入れて機械的にはじき出したものが八・一%と、こういうふうになったわけでありまして、八・一%の成長率を続けてまいる中においてひずみの是正をやらなければならないし、またそうすることによってなし得るのだという結論を中期経済計画は示しておるものと考えます。  農業政策につきましては、いま四十年度の予算編成中でありますので、さだかに申し上げられる段階ではございませんが、少なくとも農業基本法という農業に対する憲法が明示をしております線に沿って、農林省の意向も十分お聞きをしながら、政府としてのいままでより以上積極的な、健全財政の中にも、また限られた財源の中でも、農山漁村政策というものに対しては画期的といいますか、積極的な姿勢を出さなければならない、こう考えておるわけであります。
  187. 芳賀貢

    芳賀委員 結局ひずみ是正をやるという場合は、産業構造の中でおくれた生産の分野の成長を促進させるということでなければ是正ができないわけですね。現在までのところは、倍増計画の中においても格差が拡大しておる。ですから、今後ひずみ是正というものを重点に置くという場合は、従来に比べて農業の成長率というものをどの程度に政策的に高めるか。後進性の強い第一次産業の農林水産業自身の自力では、成長力を高めることはできないわけですからして、結局政策の力を加えて成長させるということが当然なことになるわけですからして、具体的には農林水産業の成長率というものをどの程度高める努力をするかということは、これは明らかにできると思うのですよ。池田内閣の場合は、経済の問題、数字の問題は池田内閣総理大臣が担当しておったが、今度は、佐藤総理は経済に対しても少し粗雑な判断に立っておるようであるし、数字は全く自信がないように見受けられるので、この際、やはり大蔵大臣から具体的な見通しあるいは数字にわたった問題等については、責任のある説明を願いたいわけです。
  188. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、中期経済見通しにつきましては、政府は現在この内容を答申を受けただけでございますので、この内容に対して検討をいたしておりますという段階でございます。  それから四十年度予算につきましては、現在予算編成の進行中でございまして、まだ仮定の段階でございますので、四十年度にどのような数字を盛るということをさだかに申上げられる段階ではないということも、事実申し上げたわけでございます。  しかし、農業政策に対して一体何を考えるのかということにつきましては、農業基本法を中心にしまして、ひずみ是正ということに重点を当てて積極的な姿勢でいま予算編成に当たっております。そうしますと、今度あなたが最後に残されておる御質問の部面は、一点でございます。予算規模が一体何%になるのか、その中で農林に投下されるものは一体その倍なのか、五〇%増しなのかということになるわけでございますが、これはもうちょっとの間で来年度の予算編成ができるわけでございますので、またでかさなければならないという段階でございますので、しばらくの間時間をかしていただければ、佐藤内閣として、また自由民主党の新しい内閣として、農業政策にどの程度のウエートを置いたかということは御審議いただけると思います。いずれにしましても、大きくほめられないにしても、まあよくやったなというくらいにひとつ積極性を出したいという考えでございます。
  189. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、中期経済計画の答申の内容検討が相当ひまがかかるとすれば——しかし、経済企画庁からは昭和四十年度の経済見通しというものはもう発表になっておるわけですからして、中期経済計画が来年度の予算編成上材料にならぬとすれば、当然企画庁の出した四十年度の経済見通しというものを一応の根拠にして予算編成に取り組むと私は考えるわけです。その場合、たとえば国民所得の分配所得の中において、一体農業と他産業との所得の格差是正をどのようにやるかということもやはり重要な点だと思うわけです。たとえば農業白書によっても、昭和三十八年の分配所得は、農業従事者の場合の所得は、一年間一人当たり十一万円であります。農業以外のいわゆる非農業従事者の年間一人当たり所得は、三十五万円であります。そうすると、農業従事者一人当たりの分配所得の十一万円に対して非農業では三倍以上、三・二倍の三十五万円ということになっておる。これがひずみの姿だと思うわけです。ですから、やはり明年度の予算編成の中において、このような格差是正を農業政策の面において、あるいは財政計画の面においてどうやるかということが、構想としていまから明らかになる必要があると思うわけです。もう少し具体的な説明を願いたいわけです。
  190. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいま御指摘になりましたが、確かに、ひずみの面を見ますときに、一次産業と二次産業、三次産業を比較して農林漁業の所得が非常に低いということは、事実でございます。これを一次産業も二次産業も三次産業も、大企業も中小企業も全部一つにできるかということは、これは高い理想ではございますが、なかなかすぐそれができるというものではございません。また、事の性質上、どこまでいっても第一次産業部門が第二次、第三次に匹敵する、同じ数字になるということが不可能な面もございます。しかし、そういう場合でも、農家経済とか漁家経済とか、そういう面において合理化をはかって所得の向上をはかっていかなければひずみの解消にはならないわけでございます。でありますので、先ほどから申し上げたとおり、数字でどのような数字を盛りますということは申し上げられませんが、わが党内閣ももう長いこと農山漁村政策においては相当努力してまいっておる実績もございますし、またお認めいただける状態でございます。しかし、中期経済見通しで農山漁村がひずみの面を露呈しておりますように、他の産業が非常に超高度に伸びたという過去の姿を見ますときに、どうしても農業政策等に対してはより重点的に配慮をしなければならないということは自覚をいたしておりますので、先ほども申し上げましたように、政府の基本的な姿勢をひとつ御認識賜わりまして、四十年度の予算を見ていただきたい、こう考えるわけでございます。
  191. 芳賀貢

    芳賀委員 とにかくいまの状態では、自民党政府の農政のもとにおいては、農業あるいは農民は不毛の状態になるということは明らかであります。  次に、消費者米価についてお尋ねしたいわけでありますが、政府は一月から消費者米価を一四・八%上げるということをすでに決定になっておるわけです。この消費者米価値上げというものは、これは一つには、消費者物価抑制の政策に逆行することになると思うのです。政府はできるだけ消費者物価を抑制したい、中期経済計画では、五カ年間の消費者物価の値上げ率を大体二・五%、三十九年度の四%を除けば、残り四年間の場合二・一%の値上げに押えるということが計画の中に盛られておりますが、消費者米価を一五%も上げた場合の影響、単に家計費に対する影響だけでなくて、消費者物価全般に対する直接の影響、あるいは反射的の影響というものは避けることができないと思うわけです。そうなると、結局物価抑制の方向にこれは逆行することに当然なるわけですね。それからもう一つは、食管法に明記されておるいわゆる生産者価格と消費者価格の二重価格の精神に、これはまた背反するということに当然なると思うわけであります。ですから、この点については、担当の農林大臣はもちろんでございますが、この食管特別会計を直接見ておられる大蔵大臣としても、この重要な逆行する二つの路線というものに対して一体どのように解明するかということは、国民の非常に関心のある点であります。どうですか。
  192. 田中角榮

    田中国務大臣 一つ立場は財政上の問題でございます。非常に一般会計からの繰り入れが多額にのぼる。また、あなたが先ほどから御指摘になりましたように、農政政策費というものは重点的にやりたいと思いますが、食管に対する繰り入れの費用も、農政費の一翼をになっておるわけであります。これをもっと別なほうに使うことが、より効率的なひずみ是正になり得るという面も多々あるわけでございます。そういう意味で、少なくとも生産者米価を二年にわたって大幅に引き上げて、一般会計からの繰り入れが非常に大きくなりますので、財政上の理由としてどうしても消費者米価を上げていただきたい、こういう考え一つございます。しかし、財政上の理由だけで物価問題等相当影響のある消費者米価を、公共料金ストップ令解除第一号と言われるような状態で取り上げたわけではございません。これは食管制度そのものを守るためにも、こういう必要性がございます。無制限に——まあ無制限といいますか、いずれにしましても二年も三年も引き続いて生産者米価を上げておって、消費者米価と生産者米価というものは全然関係がなく処理さるべきだというふうに断定をする場合、私はやはり食管制度そのものに対しての維持が困難になるという問題もありますし、そういう意味での考え方にも立っておるわけであります。  第三番目の問題をしいて申し上げれば、まあ生産者米価は一万五千一円、非常に大幅に上がっております。これは、生産者米価を上げることがひずみ是正とは考えておりませんが、しかし、いまさしあたりやはり農家経済というものに相当影響のあるものは生産者米価でございます。でありますが、生産者米価と消費者米価というものは無関係だといって消費者米価を押えておると、生産者米価も上げられない。これは理屈は全然別なんだから、生産者米価をうんと上げろ、消費者米価を下げろ、減税をしなさい、これは理想的なことでございますが、やはり無関係でものを考えるわけにはいかない。私はある意味において、やはり消費者米価の引き上げ、食管を守るということが一つの農業政策、農業のひずみ解消、いわゆる生産農民に対する一つの施策であるということも、これは事実だ、いろいろな考え方に立って、全く上げたくないものを慎重かつ広範な立場検討した結果、まさにやむにやまれず引き上げたわけでございますので、この事情を御了解賜わればはなはだ幸いであります。
  193. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 食管制度は二重価格制度になっているから違反じゃないか、こういう御質問でございます。初めから二重価格制度というものじゃございませんが、結果においては二重価格のようなふうになっておるのが食管の制度でございます。もちろんその制度はとっておりますから、いま生産者米価と消費者米価との間におきましても、政府で千億からの負担をいたしております。でございますので、これが二重価格的でないとすれば、全部消費者が負担するということになれば、いまの一四・八%どころの値上げではないわけでございます。でございますので、食管の制度は、これはいま堅持されておると思います。最も私どもが心配しておるのは、この制度はやっぱり生産者にとっても消費者にとっても堅持していきたい、健全に堅持していきたい。あまり生産者米価と消費者米価との間に差ができてきて、そうして財政の負担——これは国民の税負担でございますが、税負担が多くなる、千億が二千億なり三千億になるということでは、これはやはり食管制度を健全に維持していくということには支障を来たすのじゃないか。そういうことから考えますならば、やはり生産者米価も労賃等の上昇に従って上げざるを得なかったのでございますから、その一部分はやはり消費者にも負担してもらっていいのじゃないか。米価審議会等におきましては、初め二〇%くらい——コスト価格でいきまするならば二三%くらいということでございますが、二〇%くらいという案もあったのでございますけれども、いろいろ意見も聞きまして、一四・八%ということにいたしたわけであります。それで、これは食管制度からいいましても、家計の安定をそこなわない程度で経済事情等をしんしゃくして消費者米価をきめるということになっておりますので、家計における消費者米価の位置、ウェートというものも勘案いたしましたが、最近におきましては、家計における消費者米価の地位というものはだんだん少なくなってきております。〇・七%くらいでありましたので、これをかりに二〇%上げるとしても、一・四%くらい家計においては影響する、こういうところでありまするから、二〇%でなく、一四・八%ということにしたらもっと家計に影響は少ない。物価に対してはどうかということでございますが、いろいろ検討いたしまして、〇・一%くらいの影響ということでございます。もっとも、これをきっかけとしてベースアップをする。そのベースアップをし、それがまたほかに影響するということになって他の物価に影響するということになりますれば、いまの〇・一%という率よりももっと多くなるかと思います。心理的にいろいろこれをきっかけとして物価を上げていこうということになれば、影響は免れない、こう思いますけれども、そうでない、たとえば公共料金等も極力上げないということで、米価審議会の決定の一四・八%を認める——米価審議会の決定でございませんが、米価審議会の議を経て一四・八%ということにきめたわけでございます。でありますので、この程度は私はがまんしてもらいたい。公共料金を、あるいは米価を下げたからほかの物価が下がるというわけでもございませんので、まあこの辺のがまんはしてもらってもいいのじゃないかという程度に考えて措置をしたわけでございます。
  194. 芳賀貢

    芳賀委員 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、来年一月からの消費者米価値上げに伴って、明米穀年度、いわゆる端境期までの値上がり分に対する消費者の負担は、大体今年度の生産者米価の値上げ分を相殺する程度の数字になると思うのです。そうすると、大体消費者の負担増が一応八百億円としますと、その場合もう一つの問題は、消費者米価の値上がりによって米自身が上がった分だけの消費者の負担でなくて、それが波及する、消費者物価全体に対する値上がりの度合いというものは、これは軽視できないと思うのです。その何倍に及ぶと思うわけなんです。その場合、消費者米価を上げて消費者に負担してもらう分と、それが悪作用をして物価値上げに波及していく値上がりの割合というものは、金額に計算した場合にどのぐらいになるかということは、これはやはり財政的にも計算してみる必要があると思うわけです。そこにいわゆる財政の効率的な運用というものの妙味があると思うわけなんですが、そういう計算はどういう答えが出ますか。純粋の米価の値上がり分と、影響するところの物価値上がりの金額というものの差はどういうことになるんですか。
  195. 田中角榮

    田中国務大臣 消費者米価を値上げをしたために、一般財政から、いわゆる国民皆さんからの税金で負担をしないで済む額は六百六十何億でございます。これはもう数字がきちんと出るわけでございます。ところが、それが悪循環につながって、われわれ国民が損をするものは一体どのくらいかという計算は、まだしてございません。してございませんが、これは少なくとも非常に厳密にこまかく慎重に配慮をしました結果、一四・八%の値上げに踏み切ったわけでございますが、必ずしもあなたが言うように、これが悪循環を続け、その国民の税金負担を六百六十数億円合理化するために、負担軽減をするために、その何倍も何十倍も悪循環につながるというよう判断は、最終的にはしなかったわけでございます。あまり慎重過ぎて——米食民族が米価を上げるということは、これは確かにたいへんなことであります、それが及ぼす影響は。過去においてもそうでありますが、あまりにそういうことのみに重点を置いて米価を押え過ぎておった。それから鉄道運賃もしかりであります。そういうことでもって、絶対的に生きるために必要なものであるだけに非常にきびしい態度で押えておったために、消費とかその他いろいろなもののほうがかえって発達し過ぎたというようなことも考えられないわけではないわけであります。でありますから、われわれも、物価対策ということがこの四十年度からの一番重要な問題であると考えておりますので、しかも国際収支やいろいろな面から見まして重要に考えましたので、消費者米価を引き上げたことによって他の値上げの要因になっては困るということで、ほんとにあらゆる知恵をしぼって総力をあげて検討してみたのですが、必ずしもこれが消費者物価の悪循環につながる、こういうふうには考えないで、ただ消費者物価のウエートとして一・何%は数字的には影響がある、こういうふうな結論になったわけでありますので、あなたからいま御指摘のありましたように、国民がえらくこれがためにマイナスをこうむるという計算はしておりません。
  196. 芳賀貢

    芳賀委員 この問題は、もう来年一月になれば直ちに現象面に出てくるわけですからして、私の指摘した点が単なる危惧で終わればいいわけですが、この予言は狂いがないと思うわけです。  特にこの際農林大臣にも申し上げたいことは、生産者米価が上がれば直ちに消費者米価も上げる、いわゆるスライド制をとるということは、現在の食管制度を守るという立場から見ると、これは非常に危険な考えだと思うわけです。言うまでもなく、食管法の第三条では、生産者米価をきめる場合には「政令ノ定ムル所ニ依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」、つまり現在の生産費所得補償方式がこれであります。それから第四条では、消費者米価をきめる場合には、「家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ消費者ノ家計ヲ安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」ということになっておるので、この精神に基づいて従来消費者米価というものはきめられてきておるわけであります。   〔委員長退席、松澤委員長代理着席〕 これがいわゆる二重米価の制度であります。これをスライド制に移行させるということになれば、この食管法の精神が破壊されるということに当然なると思うわけですね。農林大臣は先日の本会議において、生産者の米も消費者の米も同じ米であるということを言われましたが、これは食管法の精神に当てはまる表現ではないと思うわけです。だから、大蔵大臣も現在の食管制度は守るということを明らかにされたわけでございますから、この第三条の精神、第四条の精神というものを政府としても十分尊重して、生産者米価の決定、消費者米価の決定に臨むという態度をこの際明らかにしてもらいたいわけです。この態度が明らかになれば、来年一月からの消費者米価値上げは無謀である、行なうべきでないという答えがそこから出ると私は思うのですが、この点は両大臣においてどうお考えですか。
  197. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 生産者米価は生産質及び所得補償方式に従って決定する、消費者米価は家計の安定を旨として経済事情等をしんしゃくして決定する、これは、私はそのとおり守っていかなければならないと思います。が、スライドしていないという考え方は私はどうしてもできない。家計の米の価格をどうして決定するか、これは生産者の米の価格が幾らだということが基準になっていなければ、消費者米価をやみから持ってきて幾ら幾らだときめるわけにはいきませんから、生産者米価が幾らくらいだから、これは家計の安定を考えて消費者米価というものはどれくらいにしたらいいじゃないか、こういう根本的な基礎が当然スライドしておるのでありますから、私があえてスライドと言わなくても、生産者米価と消費者米価との間に関連がないというわけには参らぬ。消費者米価を決定するのに、生生産者米価がわからないで決定のしょうがない、こういうことから見ましても、私はスライドしていると思います。ただ、それをどれくらい消費者が負担するか、あるいは政府が負担するかという、この方式をスライド制にするかしないかという問題は、よほど検討しませんと、どのファクターが、どの費用が消費者が持っていいか、政府が持つべきか、こういうことはなお検討を要すると思いますが、これが関連なしだ、スライドなしだ、そうして決定されるということはあり得ない。ものの価格の決定からいいましても、かりに統制の価格の決定でありましても、これはスライドしているということは前提だ、こういうふうに私は考えています。
  198. 芳賀貢

    芳賀委員 私の指摘しておる点は、生産米者価はことし一四%上げたわけですね。だから、この値上げ幅というものは、さらに消費者米価を据え置きした場合においては、食管会計に対する一般会計の負担が相当大幅にふえる。これを避けるために消費者米価については一四・八%上げるというやり方が今回の消費者米価の決定の方針です。そうでしよう。生産者米価が一四%上がったから消費者米価を一四・八%上げなければならぬというこの思想は、食管法の精神を無視したいわゆるスライド制ということになるじゃないですか。生産者米価は、当然第三条の規定に基づいてきめるのがあたりまえであって、たとえば一四%上がって、これは当然のことでしょう。しかし、消費者米価の場合には、生産者米価が上がったから直ちに上げなければならぬというものではないのですよ。国民生活というものを十分配慮した上において、据え置きすべきかどうすべきかということを判断すべきであって、スライド方式を直ちにとるということは、食管制度に対する違反の態度であると私は考えるわけです。この点を間違いのないようにのみ込んでもらわぬと、皆さんに政治をまかしておくことはできないのですよ。  それからもう一点申し上げたい点は、来年度の予算編成にあたっては、従来と趣を変えて、一般会計から負担する食管の分については、その数字が直ちに農林予算の数字に合算されるということを避けて、二重米価制のたてまえから見た場合に、三十九年度おおよそ一千二百億、これが一般会計からの負担になっておるわけですが、これがすべて農業保護のための国の負担ということにはならぬと思うわけです。家計の安定を旨としてきめる消費者米価の根拠というものに対して、その裏づけとして一千億なら一千億という国の財政の負担がそこに置かれておるわけですからして、決してこれは抽象的に言われるような農業保護のためにこの食管の赤字は生じたとか、あるいは補てんを行なっておるというものではないと思うのです。(「米を食うのは貧乏人だけじゃないよ」と呼ぶ者あり)結局、金持ちも貧乏人も一様に米は食っておる。税金を納めておる国民も納めておらない国民も一様に米は食っておる。そういうことになれば、これは減税による国民に対する配慮よりも、すべての国民に同一な低廉な価格で米を提供するということは、やはり社会政策上から見ても当然これは取り得べき道だと思うわけです。それを主張しないで、全部これは農業保護の費用である、だから、消費者に全部転嫁しなければならぬというようなことは、これは間違いです。従来からわれわれはこの点を主張しておるわけですが、農林大臣としては、農林大臣と直接お会いして話をすれば、なるほどそうであるということをあなたは繰り返して言われるわけでございますが、この際佐藤内閣の出現を機会にして、こういう予算の編成は、これは技術的な問題にすぎないわけでございますが、やはり一応この繰り入れ分というものは社会政策として計上して、それを食管会計に移しがえするという、そういう予算技術上の方針を採用することも必要でないかと私は考えるわけでございますが、この点については、両大臣はどうお考えですか。
  199. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 冒頭の御質問というか、御指摘の、生産者米価が上がったから消費者米価を上げる、こういう考えではございません。それと引き離してみまして、家計における消費者の米価の負担、先ほど〇・七%と言いましたが、七%の誤りでございました。七%でございますが、そういう点から見て、これを家計米価で負担すれば、値上げ率は一九・四%かなにかにもなるわけです。それと経済事情をしんしゃくしますから一四・八%になったので、生産者米価が上がったから消費者米価を上げるというのとは独立して、家計米価から考えても、家計米価は当然上がらなくちゃならない段階にきている。まして生産者の米価が上がっておりまするから、それとの見合いにおいても考えたわけでありますが、それと切り離しても上げるべき時期にきておる、こういう考え方から消費者米価の改定を行なった次第でございます。  それから、これが生産者米価にとっては一つの価格支持制度だと私は思います。実際自由価格にすれば非常に不安定になりまするから、価格安定制度の費用として、ことしの予算で見まするならば、千二百億から出ておると思います。  それから消費者の米価については、社会保障的なところもございますが、これは社会保障的なものも幾分ありますけれども、社会保障制度とは考えられません。たとえば、富裕な人も、あるいは困っておる人も、一斉にその恩恵に浴しておるのでありますから、富裕な人に国が費用を税金で払っていくということは、ほんとうは当を得てないわけでございますけれども、しかし、一般の主食でございますから、これは家計の安定をそこなわない、低所得者に重きを置いてそういう制度を設けておくということでございますから、それはそれとして意義あるものと思います。  で、こういう会計をほかへ移して、農業政策費でないほうの会計に移したらいいじゃないかと言われる。私も、できればそういうことが望ましいかと思います。しかし、これが農業政策費ではない、価格支持制度ではないとは言い切れない。農業の生産、米の生産者に対しては相当の支持をしておるわけでございますから、農業政策費では全然ないということは言い切れない。しかし、でき得ることならば、そういう前向きの政策費等は別にしたいという考えは持ってますけれども、ほかへ移すということもなかなかむずかしいと思っておりますので、現状のままで進んでおるわけでございます。
  200. 田中角榮

    田中国務大臣 食管法のたてまえからいいまして、三条、四条の精神から見て、消費者米価の値上げは法律違反である、こういう考えは、これは芳賀さんもそうお考えになっていると思わないのです。やっぱり法律は時代の変遷とともにその時代に適合するようになるわけでございます。でございますから、確かに食管制度がつくられた当時は、米も不足でございましたし、たいへんな時代でございましたから、この三条、四条は非常に厳密に読まれたということは事実でございます。しかも現在においてなお食管制度は、そのままの条文ではありますが、現在の事態でそのままこの制度が置かれるというときには、いまも農林大臣が言われたとおり、中には、もう当時のような状態ではなく、非常に豊かな人まで国民の税金でもってまかなうべきではないという、確かにそういう事情があることは御承知のとおりでございますから、そこはひとつもう少し弾力的なものである。弾力的なものでなく、その当時の考えのとおりにその条文を読むならば、現在の状態においては、食管法のその条文は改正せらるべきだとさえ私は考えておるわけであります。ですから、精神は十分私たちもこれを順法しておるわけでありまして、消費者米価を引き上げたからこの食管法の三条、四条に背反する、このような狭くは解釈しないのであります。  それからもう一つは、これは社会保障費だから社会保障費の中に入れろ。これは入れろというなら入れてもけっこうです。私は、いま農林大臣が言ったとおり、これは少なくとも価格支持政策であって、農政費である、農業政策費である。これはしようがないと思うのです。しかし、昔もそういう議論がありました。それは、失業対策費というのをやりましたときに、失業対策費は社会保障費の中にも読んだのです。もう一つは、公共事業の中にも二枚鑑札でもって読まれたときがございます。ですから、一般会計はそんなに伸びないけれども、両方に書いてありますから、失業対策費はよけい出した。それでまた、それが二枚鑑札でもって公共事業の中にも入っておりましたから、その部門も非常によけいふえたというので、両方に使われたことはございますが、そう使えといえばそれは使われないことはございません。しかし、この引き上げた消費者米価のうちの何十%は社会保障費に向くべきものであって、何十%は農政費だと、これはなかなかできにくいものでございます。社会保障的な確かにそういう性格も加味してはおりますが、おるからこそ第四条があるわけであります。しかし、あくまでも食管会計というものは、厚生大臣所管のものでもなし、共管のものでもなく、これはやっぱりおかしいです。どう考えても大蔵、農林共管の域を出ないということが常識でございますから、いまの状態でいいのじゃないか。いいのじゃないかじゃなく、これがやはり正しいのじゃないか、こう考えます。
  201. 芳賀貢

    芳賀委員 私の言っているのは、たとえば本年度の農林関係の予算額は、食管会計の繰り入れを入れると総予算に対して約一〇%ということになるわけです。この一〇%のうち大体三%程度が食管からの繰り入れの数字になるわけですね。だから、食管の赤字を入れて、総予算に対して農林予算が一割である。食管の繰り入れを除けば、純粋の農業政策に用いる予算の金額はわずか七%しかないということになるわけです。ここに政府のインチキがあるわけです。これは農業政策費であって、三%加算して一割ことしはとれたということを宣伝されておるが、その三%を引けば、農業政策関係の予算は、総体のわずかに七%しかない。まことにこれは貧弱きわまるものであるので、こういう点は良心的に考えてもらいたいわけです。  次に、文部大臣にお尋ねしたいわけでございますが、三十八年の農業白書にも出ておりますが、昨年の三月全国の中学校、高等学校を卒業して、中学の場合には高校に進学した者、あるいは就業した者のうち農業に従事した者の数、それから高等学校を卒業して就業した者のうち農業に従事しておる者の数、特に本年三月卒業した中学校あるいは高校卒のうち、農業にどの程度現在就業しておるか、前年度と今年度に対する実情を明らかにしてもらいたいと思う。
  202. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま数字を持ってまいりませんですから、さっそく取り寄せてお答えいたします。
  203. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は、文部省の担当の役人が、どういうことを文部大臣に質問するかということを事前に照会に来ておるわけです。私は、農村の後継者の問題あるいは学校給食の問題等についてこういう質問をするということを、好意的にあらかじめ質問の要旨は説明しておるわけです。突然どうだと言われれば、いかに明敏な文部大臣も即座の答弁はできないかもしれぬが、一日も二日も前に、私は質問の要旨を伝えてあるのですよ。それを勉強も用意もしないで、いま数字がわかりませんなんというのは、ちょっとおかしいじゃないですか。
  204. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 御質問の要旨は承っておったのでありますけれども、この数字については、私、実は受け取っていなかったものですから、失礼いたしました。そういうわけでございますから、ここに申し上げますことだけで御満足いただけるかどうかわかりませんが、とりあえずお答えいたします。  中、高卒業者の農業への就業状況は、三十七年、三十八年を申し上げてみますると、三十七年におきまして、中学卒業生が五万五千人、高校卒が二万六千人、三十八年度になりまして、中卒が六万四千人、高校卒が二万六千人、合計で比べてみますと、三十七年の八万一千人が、三十八年は九万人という数になっております。  なおもう少し前を申し上げますと・・。
  205. 芳賀貢

    芳賀委員 前はいいですよ。ことしのを。
  206. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 三十八年度でございますから・・。
  207. 芳賀貢

    芳賀委員 もう三月も過ぎて、卒業して就業しておるでしょう。
  208. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 三十八年から九年にかけて、九年に卒業した者をいま申し上げたわけです。
  209. 芳賀貢

    芳賀委員 これは違うじゃないですか。愛知さんの言われたのは、昨年三十八年度の卒業生のうち、農業に従事した者が中、高卒と合わせて九万人、一昨年の場合は八万一千人と言われたわけですからして、すでにことしの三月卒業した中学卒のうちで、高校進学を除いて、就業したうちのどの程度が農業に残っておるか。年度じゃない、ことしの三月卒業しておるでしょう。
  210. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その点は、まことに申しわけありませんですが、その御質問が出ると思わなかったものですから、これは調べてすぐ御返事いたします。もう少し全般的な、たとえば農業教育の面についてどういうことを考えておるか、あるいは学校給食についてどういう状況であるか、この二点が御質問の要旨と承っておったものでありますから・・。これは数字でございますから、調べればすぐお答えできることですから、しばらく御猶予願います。
  211. 芳賀貢

    芳賀委員 では労働大臣にお尋ねしますが、農業の後継者対策は、雇用政策あるいは就業対策から見ても非常に重要な問題だと思うわけです。特にいま文部大臣が言われたとおり、中学校、高校を卒業したいわゆる若年労働者が、将来農村をになってあと取りとして十分活躍するためには、質的にも量的にも一定の適正な若年労働力人口というものを確保しなければならぬことはおわかりだと思うわけです。ところが、最近の傾向を見ますと、全国で一年間に八万人ないし九万人が農村にとどまっておるにすぎないわけです。それも一年、二年たった場合には、この数はまた相当減少しておるわけです。現在、全国で農家戸数が五百八十万戸あるわけですね。これは、兼業農家が全体の七五%にもなっておるわけですが、いずれにしても、今後農業の自立経営を政府としては推進するというような場合においても、中堅となる農家の後継者というものは、農業政策、あるいは労働政策、文教政策の分野からも真剣に配慮してもらわなければならぬと思うわけです。こういう点については、労働大臣としてどういうようなお考えでおられるか、お尋ねします。
  212. 石田博英

    ○石田国務大臣 私の労働大臣としての所管は、雇用労働者に対する政策でありまして、これが農村との関連におきましては、農村から他の職業へ雇用労働者として出ていく場合の職業の訓練、保護、職業のあっせん、労働条件の維持ということに相なるわけであります。したがって、農業において必要労働力を確保するのは農業政策の問題であると思いますので、農林大臣からお聞きをいただきたいと思うのでありますが、しかし、私も農村出身の議員の一人といたしまして、適正労働力を確保するためには、農業政策上の諸条件を整えて、他の産業へいくより以上とは言わないまでも、他の産業と劣らないような生活その他の条件が得られるような条件を整えていくことが先決であろうと考えております。
  213. 芳賀貢

    芳賀委員 たとえば、先ほど取り上げました中期計画の答申の内容を見ても、農村における昭和三十九年の農業従事者、農業労働力人口は、大体千二百六十万人であります。これが中期計画によると、昭和四十三年には大体一千五十万人にこれを減少させる——するであろうという見通しの上に立っておるわけです。そうしますと、毎年新鋭の若年労働力が全国でわずか八万ないし九万人しか供給されないというような状態の中で、毎年毎年、また相当数の農村からの精鋭な労働力が流出するということになると、結局、今後の日本の農業というものはどういう状態になるか、これは、単に農林大臣の所管であるといってまかしておる問題ではないと思うのですよ。総合的な労働力の調整の問題とか流動化の問題、効率化の問題等を考えた場合においては、やはり雇用関係に置かれておらない日本の自営農業の従事者の問題等についても、これは同じ農業労働に従事しておるわけですから、質的には変わりはないと思うのですよ。こういう点についても、労働大臣として特に十分な配慮が必要であると思うわけです。そうして四十三年に、たとえば中期計画の答申が指摘するように、一千万人程度の農業労働力人口、これは若年労働力が全然なくて、ほとんど婦女子あるいは老年者が過半数を占めるような、そういう農村の就業構造というものが望ましい姿であるかどうかというような点についても、所見を聞かしてもらいたい。
  214. 石田博英

    ○石田国務大臣 経済の近代化に伴って農村から労働力が他産業へ流出していくという現象は、これは一般的であります。そうして農村の生産性を上げて農家の収益を高めていくためにも、適正な農地の規模、経営の規模というものを維持するために、そのこと自体が必ずしも悪いことだとは私は思いません。しかし、その構成の内容が、やはり老年ばかりになるということは困るし、婦女子になるということは困る、こういうふうに考えます。これは一つの農業政策の問題でありまして、私の個人的な意見を言えと言われれば、それは個人としての意見はむろん持っておりますが、労働大臣としての所管は、これは雇用労働者であります。したがって、農村から出てくる雇用労働者、他産業に行く人々に対しての諸条件の整備、これが私の所管でございますので、隣に農林大臣がおいででございますから、私がここで個人的な意見を申し上げるよりは、所管大臣からお聞き取りをいただきたい、こう申し上げたのであります。
  215. 芳賀貢

    芳賀委員 ありふれた労働大臣がいまのような答弁をされる場合、これはやむを得ぬと言えるが、石田さんともあろう人がそれでは、労働省というものは農村から労働力を引き抜く仕事しかしないというのですか。あと農村が荒廃しても、それは所管外だから、農林大臣の分野であるというような態度で臨まれるとすれば、これは相当問題になると思いますよ。
  216. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は、他廃業に労働力が足りないから、積極的に農村に残ろうとしている人々まで好餌をもって引っぱってくるということまではやろうとしているわけではございません。農村からの出身の人々が他産業へ移っていく場合、その移っていく人々の労働条件を維持し、またいい労働条件が得られるように職業の訓練をし、適職をごあっせんするというのが私の責任でありまして、別に決して引き抜いておるわけじゃないのであります。そこで、一般的にどうかといわれれば、一般的な議論は私も持っております。しかし、農村に必要な労働力をどうやって維持、保存するかということは、これは農業政策の問題であるということを申し上げたのであります。総理大臣でございませんので、どうぞひとつ・・。
  217. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、これはどなたでも差しつかえありませんが、現在のいわゆる一千二百万人ある農業従事者の就業の構造が一体どうなっておるか。たとえば年齢別にこれを見た場合、四十歳以上の従事者と四十歳以下の従事者がどういう割合になっておるか。あるいはまた、性別に男と女の就業割合というものは一体どうなっておるかというような点については、これは労働大臣が認識されておればそれでもいいし、おわかりにならなければ、担当といわれる農林大臣から御説明を願いたいと思います。
  218. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 数字で具体的に説明は申し上げられませんが、一千二百八十万からの就業者、五年後には一千五十万ぐらいになりますが、構造から見れば、だんだん若い青少年が少なくなって、年とっておる人が多いということである。あるいは男女関係からいえば、現状等を見ますれば、婦人の労務のほうが多く農業労働に提供されているということであることは、もう申し上げるまでもないと思います。数字的にその率がどれぐらいになっているかということは、いま資料を持ち合わせませんが、概観してそういうことになると申し上げるよりほかないと思います。
  219. 芳賀貢

    芳賀委員 こまかい数字までいいですが、おおよそ割合にして、四十歳を区切って、四十歳と六十五歳までの間が全体の何割か、あるいは四十歳以下の就業者がどのくらいの割合になるか、あるいはまた男女にこれを区分した場合の就業割合がどうなっておるか、このくらいのことは一国の大臣として常時頭におさめておかぬと政策は進まぬと思うのですね。
  220. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 数字のことでございますので、政府委員から答弁させます。
  221. 中西一郎

    ○中西政府委員 簡単に申し上げます。男女で申し上げますとほば半々でございますが、三十年ごろからの経過を見ますと、男性の構成比が五四%三十年にはございました。その後逐次減りまして、最近では五一%というふうになっております。現在ではほぼ半々ということでございます。それから年齢別に申し上げますと、二十歳未満のウエートは三十年ごろは五・三%、それが現在ではほば半分になりまして、構成比としては二・七%、二十歳から三十五歳の間で申しますと、三十年が四一%、現段階で三三%、三十五歳から六十歳未満が、三十年が四五%でございます。現在ではウエートが高まりまして五七%、六十歳以上は三十年が九%、このウエートはだんだん減ってまいりまして、三十七年では七%ということに相なっております。
  222. 芳賀貢

    芳賀委員 三十八年度政府が出しました農業白書によると、年齢については、四十歳以上の就業者が全体の五五%になっておるわけですね。したがって、四十歳以下が四五%、これが現在のように、年間八万ないし九万人ぐらいしか学校を卒業した従事者が農村に残らないということになると、これは非常に憂慮すべき事態になると思うわけです。それから男女別の場合は、三十八年では、女子の就業割合が全体の五四%、男子が四六%ということになっておるわけです。この性別の就業割合を、たとえばアメリカ、イギリスの例をとれば、アメリカ、イギリスの場合には、女子の就業割合が全体の一割である。九割は男子が農業に従事しておるということになっておるわけです。フランス、イタリアの場合は、女子の就業割合が三〇%で、男が七割働いておる。日本の場合には、すでに婦人の農業労働が半ば以上を占めておるという、こういう実態になるわけであって、これを佐藤総理が言う人間尊重のたてまえからいった場合、過重な農業労働というものを婦女子や年寄りだけにまかせるというようなやり方は、一体人間尊重の精神に照らした場合に、これは妥当な状態であるか、適当な状態であるかどうかということは、どのようにお考えになるのですか。
  223. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、ずいぶん農業労働は重労働でございました。しかし、最近におきましては、土地改良も進み、また機械も入りまして、重労働から逐次解放されてきております。でありますので、実は理想的にいえば、女子でもやっていけるくらいの農業にほんとうは持っていって、重労働から解放していきたい、こういうふうに考えているわけでありますが、現状はまだそれまでにいっておりません。女子の労働が過重であるということも認めないわけではございませんが、だんだんそういう重労働から解放していくように農業政策も進めていきたい、こう考えております。
  224. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、具体的な問題について二、三お尋ねします。  第一の点は、甘味政策ですね。砂糖類、あるいは甘味資源、あるいは国内産のでん粉対策の問題等について、政府としては非常な大きな誤りを犯しておるわけですが、その第一は、昨年の八月末に池田総理みずからが発言して、砂糖の自由化を農林大臣も十分知らぬ間に断行したわけです。この自由化政策の失敗が今日甘味全体の施策の上に大きな混乱を招いておることは、大臣御承知のとおりであります。既往は別として、今後佐藤内閣になったことを機関に、砂糖に縁があるわけでございますけれども、甘味全体の今後の総合対策というものを、でん粉を含めてどのように進めていかれるお考えか、具体的な構想があれば、この際示してもらいたい。
  225. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 最近に見られますような国内糖価の著しい変動と低迷、これは基本的には世界粗糖市況の著しい変動に基因するものであると思います。それに加えまして精糖業内の過当競争、こういうこともありますし、金融引き締め等によって金繰りが悪化しているということも影響しておると思います。そのために、国内甘味資源の保護につきまして、甘味資源特別措置法があるので、これに基づいててん菜糖とか甘蔗糖とかブドウ糖を政府買い入れを行なうということで事態に対処しておるわけでありますが、根本的には、いまのお話のように糖価の問題があると思います。これにつきまして、これは影響するところも大きいものですから、慎重に対策は講じていかなければならぬと思いますが、粗糖等を一手に買い入れるような何らかの機関を設けて、そうして糖価を安定していくということが根本でないかというふうな案を持っておりますが、まだ具体的にこれをどうこうというところにまでいっておりません。各方面の考え方を聴取したり、研究を続けておる段階でございます。
  226. 芳賀貢

    芳賀委員 政府においても、自由化の失敗にある程度反省されて、このままではいけないということでいろいろな考えを持っておられると思いますが、われわれもそうした点では、農林大臣が中心になって事業団構想を進めておられるというふうに考えておるわけですが、これについても、また精糖業界からいろいろな形で反撃があれば日の目を見ないで終わる場合もいままで多々あるわけですから、どの程度に芽を出すかどうかわかりませんが、しかし、いまの状態ではいけないということは、農林大臣も大蔵大臣も判断されておると思うわけです。だから、新たなる構想をこの際すみやかに打ち出して、少なくとも現在の砂糖の自由化を是正するという姿勢は、これは政府としても一致した見解だと思うわけでございますが、その点はいかがですか。大蔵大臣にお伺いいたします。
  227. 田中角榮

    田中国務大臣 事業団構想もあるようでございますが、これは一つ考え方だとは思いますが、いずれにしましても糖業界の合理化とかいろいろな問題があることは、御承知のとおりであります。ですから、事業団とか、またその割り当て制度をやるとか、タリフクォータ制度をとるのだとかいって、絶えず糖価を高い水準に置くことによって安易なことを考えるというのじゃだめだと私は思う。ですから、やはり相当砂糖の再製糖の問題、黒糖の問題、精製業者もたくさんございますし、またてん菜糖の問題に対してもいろいろな問題がございますから、やはり合理化は十分やる。そうしていつでも合理的な機構の中で国民には安い砂糖をひとつ使ってもらう。また同時に国内の問題にも対処していき、国外の変動に対しても対応できる、こういうことをやはり前提として考えるべきであって、いま私はここですぐ事業団を採用するとか、事業団が非常にいいとか、そういうことではございませんが、いずれにしましても糖業界の再編成とか、前向きの合理化、みんながそういう方向に向かう、その中でひとつよりいい道を求むるということは考えていくべきだと思います。
  228. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、現状においては成り行きまかせにしていく、具体的な構想はないということですね。そこで問題は、十一月二十日に農林大臣の告示によって甘味資源特別措置法に基づいて国内産のてん菜糖の政府買い入れ価格、甘蔗糖の価格、ブドウ糖の価格あるいはサトウキビの原料価格等が一斉に告示されたわけでございますが、てん菜糖についてはキロ当たり百十円、粗糖については九十二円という価格でありますが、現在の糖価事情は、大体卸価格で百十円程度ですからして、これをもってすれば、本年生産されたてん菜糖、甘蔗糖あるいはブドウ糖等については、現在の市況が百十円程度を維持する限り、全面的な買い入れが必要になる事態は避けがたいとわれわれは考えておるわけです。今回の補正措置の中にもある程度増額が見込まれておりますが、これに対して具体的な対策を持たないで、現在甘味資源特別措置法があるからして、政府が買い入れ価格を発表して全量買い上げをするということだけでは問題の解決にはならぬと思うのです。ですから、私は具体的な今後の対策というものをどう考えておるかということをお尋ねしたわけでございますが、これについても考えはないのですか。
  229. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまの補正予算は三月まででございます。これは全面買い入れの予定でございます。その後の問題につきましては、その間、いろいろ先ほど申し上げましたように対策等も考え、合理化等も考えていきたいということでございますので、しばらくその時間をかしてもらうということで対策を講じていきたいと思います。
  230. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、三十九年度補正によると、てん菜糖については生産総量の大体六〇%の買い上げができる、甘蔗糖については七〇%程度の買い入れができるという、そういう補正の内容であると思いますが、これはあくまでも三十九年の買い入れの予定であって、四十年度になっても現在の糖価というものは依然として百十円台であるということになれば、さらに残量についても政府が全面的な買い入れ措置を講じなければならぬという事態になる。その場合には明年度予算で措置するという、そういういまの御答弁ですか。
  231. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまのところ、いろいろ対策を講じて考究しておりますので、その考究した対策ができ上がればまた別途やろうと思いますが、その対策が確立しなければ、来年度にまた考えなくちゃならない、こう思っております。残余の分については、来年度考えなくちゃならぬと思っております。
  232. 芳賀貢

    芳賀委員 大蔵大臣・・。
  233. 田中角榮

    田中国務大臣 農林大臣の言ったとおりです。
  234. 芳賀貢

    芳賀委員 どうも不明確な答弁で、三十九年度は、補正によって先ほど言った割合の買い入れはできるわけですね。来年の四月以降になって、年度が変わっても糖価事情が変わらないということになれば、現在の甘味資源特別措置法の規定によると、全体の何割しか買わないという規定はないわけですからして、結局事態によっては残りについて買い入れする予算的な措置をしなければならぬということになると思いますが、そうであるかどうか、ここは明らかにしてもらいたい。
  235. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そういう必要が生ずれば、そういう措置をとるということでございます。
  236. 芳賀貢

    芳賀委員 明確になりました。  次に、でん粉問題についても、特にカンショでん粉については、いまだ政府の支持価格を下回っておるような状態であります。この原因はいろいろあるが、最大の原因は、やはり最近コーンスターチの生産が急激にふえて、今年度はおおよそ国内におけるコーンスターチの生産が二十四、五万トンに達するという見通しであります。そうなると、コーンスターチの原料であるトウモロコシは自由化で入ってくるという状態で、農産物価格安定法によって国内生産のイモ類あるいはカンショでん粉、バレイショでん粉を保護するということは、非常に困難な事態になると思うわけです。ですから、原料が自由化されておるいわゆるコーンの輸入に対して、何らかの輸入制限あるいはこれを原料とした国内におけるコーンスターチの生産規制を政府の責任で何らかの形で行なわないと、どんどんコーンスターチの量産が行なわれた場合においては、競合する国内のでん粉類は非常な圧迫を受ける。その圧迫は、農産物価格安定法の運用だけでは守り切れないと私は考えるわけでありますが、この点についてはどうお考えですか。
  237. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 コーンスターチの製造がふえております。しかし、これは特別の用途でありますので、いまのところでそれほどの競合はないと思いますけれども、これは追ってだんだん競合していくと思います。でありますので、これについては生産調整をしていきたい、こういうふうに考えております。
  238. 芳賀貢

    芳賀委員 それはコーンスターチの国内における生産の規制をやるということですか、原料のコーンの輸入を何らかの形で規制するということですか。
  239. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 カンショでん粉のほうのコーンスターチとの見合いにおいて調整をしていく、こういうことであります。
  240. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、原料はいま自由化されておるのですからして、これを規制するということになれば、自由化を是正するということをやらなければならぬわけですね。あるいは原料が自由化で入ってくるとしても、これはえさにも用いられているわけですからして、コーンスターチそのものの国内における生産を規制する、制限する、いずれかの措置を講ずる必要があると思われるわけですが、大臣の御答弁はその両者のいずれを言われておるか。   〔松澤委員長代理退席、委員長着席〕
  241. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お答えいたします。  ただいまお話がございましたように、コーンスターチの生産がだんだん増加する傾向になっておりますが、現在のところまでは、まだバレイショでん粉がそれによって減産するというふうなところまでの影響は出ておりません。いま農林大臣からお話がありましたように、だんだん今後において競合するという可能性もありますが、おのおのそれぞれの分野がございますので、できれば生産分野の調整をはかるように指導してまいりたい。現在におきましても、そういう方向で業界の指導はいたしておりますけれども、なおこれを実効があがるようなことにつきまして、生産分野の調整を積極的に講じてまいりたい、こういうふうに現在考えております。
  242. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、その具体策として、原料の輸入規制をやるのか、あるいはコーンスターチの生産そのものを規制するのか、両方やるのですか。そのいずれをやるか。
  243. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 コーンスターチ自身につきましては、その原料がコーンで自由化されておるわけです。したがって、この輸入の規制自身は直接的には困難だと思います。しかし、業界自身の中におきましても、過剰設備に伴う過剰の生産につきましては抑制していきたいという機運もありますので、自主的にできれば分野調整をはかるようにし、さらにまた生産についても自主的に調整をはかるように指導してまいりたい、こう思っておるわけです。
  244. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣が消費者の米も生産者の米も同じ米であると言われたが、たとえばカンショを原料にしたでん粉も、バレイショを原料にしたでん粉も、コーンを原料にしたでん粉も、でん粉にこれは変わりはないのですよ。これが二十五万トン、三十万トンも原料が自由化で入ってきて量産されるという場合、カンショでん粉のことしの大体の生産見込みは六十七万トン、バレイショでん粉は十六万トンで、八十三万トンが国内の生産である。これに対して二十五万トン、三十万トン、コーンスターチが生産されるということになれば、でん粉全体の需要の分野において影響がないということは言えないですよ。そういうでたらめな自由化政策を進めて、農安法だけででん粉やイモ類の保護をするということは、これはできないですよ。だから、一体どうするか。自由化をやったのは政府でしょう。その政策が明らかに失敗しているわけだからして、その失敗に対して政府は責任を感ずべきですよ。それが、自由化を一たんやればどうしようもないということは、これは無責任きわまることだ。一体どうするかということが明確にならぬ限り、問題の処理はできないのではないですか。
  245. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 でたらめの自由化をしているわけではございませんで、でん粉等につきましては、相当価格支持をしてでん粉の価格を維持していくことは、御承知のようにやっている次第であります。
  246. 芳賀貢

    芳賀委員 時間が残り少ないですから、残った問題をこちらから申し上げまして、それに対して所管大臣からお答えを願いたいと思うわけです。  まず、学校給食の関係でありますが、文部大臣、農林大臣にお尋ねしますが、昭和四十年の学校給食の中のいわゆる牛乳給食に対しては、どういう計画でこれを進めるかという点であります。特にアメリカの脱脂粉乳に依存したミルク給食というものを、この際徹底的に切りかえる必要があるのではないかと思うわけでありますが、その理由は、最近のアメリカのCCCの脱脂粉乳の放出価格は、今年春の価格のポンド当たり六セントを非常に上回って、大体今度は商業ベースでCCCは日本に出したいという希望を持っておるわけです。そうなりますと、これは、アメリカの放出価格が大体十五セントぐらいになるであろう。それに運賃が大体二十セントかかるわけですから、これを加算すると、CIF価格で大体三十五セント、日本金に換算すると約百二十六円ということになるわけです。ところが、国産のこれに対応する脱脂粉乳の価格は、現在市況が百三十円程度であります。そうなると、わざわざ粗悪なアメリカの脱脂粉乳を輸入してきても百二十六円くらいにつく。国産の場合で百三十円そこそこということになれば、従来アメリカの余剰脱脂粉乳は非常に安上がりであるから、一部家畜のえさ用が含まってあっても安上がりだからこれを使うという政府の主張というものは、これは根拠を失うわけですね。こういう事情の上に立っておるわけですからして、それよりもむしろ国内で生産されたなま牛乳をミルク給食に全面的に充当すべきではないか。これが質問の要旨でありますが、これに対する文部大臣の給食に対する計画、それから農林大臣としてこの国産牛乳の給食を進める場合のそれに対する用意、かまえ等について明確にしてもらいたいと思うわけです。  それからもう一点、これは直接の関係はありませんが、特に労働大臣あるいは農林大臣にお尋ねしたいわけでございますが、最近失業保険制度の改正に端を発して、改正問題は労働大臣が議会においていまのところ改正の意思はないということを明らかにされたわけであります。しかし、一方失業保険法の運用を通じて、相当従来と変わった形で強い圧力が及んでおるということも、われわれは承知しておるわけです。失業保険問題全体に私はいまわたろうとは思いませんが、特にこの際国有林事業に直接従事しておる、国有林から見ればいわゆる定期作業員、あるいは月雇い作業員、あるいは日雇い作業員が、人員からいうと大体年間常時四万三千人程度、これは労働力を国有林事業をやるために確保しておるわけです。これと失業保険制度の運用に関連を持って考えた場合に、一体農林大臣としては、国有林の事業の特徴から見て、一年間通年的に就業できない、稼働できない事情にあることは言うまでもないわけでございますが、その場合、現在のままでそれを失業保険の給付、あるいは政府職員の退職資金の給与という形でいつまでも処理されていく考えであるか。あるいはやはり通年雇用、国有林野事業の中における直営生産、あるいは雇用の直営化、直用を進めることによって相当量の、四万三千人以上に及ぶこの定期的作業の状態というものを安定化させる、継続化させるというようなことで、やはり前進的な、近代的な制度というものをこの際打ち出す必要があるのでないかと私は考えておるわけであります。これについては労働大臣としても関心を持っておられると思いますが、昨年の通常国会に、社会党は国有林野労働者の雇用安定に関する法律案を参議院提案しておるわけです。こういうようなわれわれの構想もあるわけでございますが、この点に関して特に影響力の一番多い国有林の定期作業員、あるいは季節労働者に対する考え方というものを、雇用政策あるいは雇用安定の角度からどういうふうに今後運用されようとしておるか、この点をお尋ねしたいと思うわけです。
  247. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 学校給食の牛乳の問題について、私から先に答弁申し上げます。  CCCの脱粉価格の動向いかんはともかくといたしまして、酪農の振興をはかるために、飲用乳の比率を高めて輸入脱脂粉乳をできる限り生乳に切りかえることが望ましいので、学校給食のための計画的増量をはかる考えであります。昭和四十年度におきましても、大体本年度の倍額の供給をいたしたい、四十五年度には牛乳で全部やっていきたいという計画を持っております。なお、CCCの脱脂粉乳の日本の学校給食向け輸出価格は、前年度までは一ポンド当たり五セントでありましたが、本年七月以降は六セントになりました。なお、現在アメリカの脱脂粉乳の一般輸出価格は漸騰しておりまして、九月現在一ポンド当たり一四・一一セントになっております。しかし、日本の学校給食向け価格は、明年六月末までは現行の六セントを維持することとなるものと考えられます。明年度は、アメリカにおける脱脂粉乳在庫量が減少いたしておるようでありますし、市場価格の堅調が見込まれますので、日本の学校給食向け価格も若干上昇するのではないかと思われますが、御質問のような価格上昇になるかどうかは、今後の推移を見なければ判明しないと思います。ともかく四十五年度には全部牛乳で給食するように変えていきたい、こういう方針でございます。  なお、国有林の季節労務者について、現状のままではいけないじゃないか、ごもっともでございます。これは年間を通じてできるだけ雇用できるような方法を講じていきたい、こう考えております。
  248. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 学校給食につきましては、いま農林大臣から御答弁いたしましたとおりで、これは文部省といたしましても、農林省と全く意見を同じゅうしておりますので、来度年は少なくとも八十万石、これを漸次向上していきたいと思っております。  それからたいへん恐縮でございますが、先ほど失礼いたしましたので、数字を申し上げたいと思います。  三十八年三月の中学卒の就職者は七十六万三千人、うち農業が六万四千人、パーセンテージにして八・四%、高校卒の就職者六十二万六千人中農業が二万五千人、パーセンテージにいたしまして四・二%、それから三十九年三月、本年三月の卒業生で申し上げますと、中学卒の就職者六十九万七千人、このうち農業五万人、パーセンテージにいたしまして七・二%、それから高校卒の就職者五十五万七千人、うち農業が一万八千人、パーセンテージにいたしまして三・二%、こういう状況でございます。
  249. 石田博英

    ○石田国務大臣 失業保険法の問題についての私の考え方は、本会議でも申しましたし、先日淡谷委員の御質問に対してもお答えをいたしましたので、これはもう重複をいたしません。  御指摘の林野関係、いま農林大臣から御答弁がございましたように、農林省林野庁としてお考えのようであります。たてまえとしては、失業保険法のたてまえは、失業した人で、しかも就業の能力と意思を持っておって、さらに就職の機会のない人の生活を保障するというのがたてまえでありまして、失業保険法によって必要労働力を確保するというのが、失業保険法のたてまえではございません。したがって、その面から、また雇用関係はできる限り通年的な雇用に切りかえていくべきものだという原則からも、林野庁のこの問題に対する善処を希望いたしておったのでありますが、おおむねその方向に動いていると報告を聞いております。
  250. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの答弁は、私の言っておるのは、国有林野事業をやる場合、やはり直営生産を進める場合、どうしても通年的に一定の労働力を確保していく必要があるのです。これができなければ事業の遂行はできないわけですね。ただ、林野事業の特徴からいって、どうしても一年じゅう作業を継続することができない。一年間のうちある一定期間は事業を休止しなければならぬという、そういう特徴を持っておるわけです。だから、それを年間の事業の中で一時季節的に事業が中断されるということは、これはその従事している従業者の意思ではないわけですね。しかし、一定の時期がくればまた事業が再開されるということが連続的にこれは繰り返されていくわけですね。したがって、どうしても事業が継続できないという期間については、次の事業再開の時期まで待機してもらう、休業してもらう、この期間に対して現在は大体失業保険の給付という形で負担しておるわけでございますが、そういう半失業的な状態をいつまでも温存させるということは、これは雇用政策上からも好ましいことではないわけですからして、もう少しこれを近代的に扱って、やはり将来にわたって持続的に事業が行なわれるということは明らかになっておるわけですからして、一定の休業期間については、むしろ失業保険の給付という形でなくて、休業手当とかあるいは待期手当というような形で、それを事業者が負担して、次の事業にあたっては経験者がさらに安定した雇用状態の中で就労できるようなことを、この際国自身がまず考えてその制度を進める必要があるのではないか、この点を私がいま申し上げたわけでございまして、労働大臣としては相当理解を持っておられるようにも私は聞いておりますので、特にこの点は明確にお考えを述べておいてもらいたいと思うわけです。
  251. 石田博英

    ○石田国務大臣 お答えをいたしますが、失業保険というものは、本来が偶発的に生じた失業の状態に対して保障するのでありまして、毎年々々繰り返されて、当然予定せられるものに対して保障するものではないのであります。これがまず第一点。しかし現状は、確かに国有林野の場合はそういう形が行なわれております。これはたてまえに反します。反するからというて、この間からお答えしているように、急激な変化を与えるというような措置はとらない方針でございますが、しかしながら、失業保険法のたてまえからいいますと、そういう場合は他の職業をお出話する——保険で保障するよりは他の職業をお世話するという形をとらざるを得ないのであります。そうすると、必要労働力が確保されないという問題になってくるのであります。そこで、そういう種類の場合、そういうことを一特定の業種にやるわけにいきませんし、全般的に普及をしたら失業保険はたちまちくずれてしまいます。元来雇用というものは通年雇用にいくべきものであり、したがって、そういう事態の場合は、休業手当なり、休業補償なり、あるいは待期手当なり、そういうようなもので補償していくべき性質のものだと私は考えております。そういう労働省の考えは林野庁当局にも伝えておりまして、漸次改善しつつあると承っております。
  252. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて芳賀君の質疑は終了いたしました。  次会は明五日午前十時より開会いたします。  明日の午前の質疑者は久保三郎君、午後の質疑者は安井吉典君であります。  なお、明日午前の久保君の質疑の際、佐藤外務大臣臨時代理は、午前十時三十分から十一時まで三十分間出席いたしますから、さよう御了承願います。  久保君の出席要求大臣は、外務大臣、大蔵大臣、運輸大臣、防衛庁長官及び経済企画庁長官であります。安井君の出席要求大臣は、大蔵大臣、文部大臣、厚生大臣、農林大臣、通産大臣、自治大臣及び北海道開発庁長官であります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会