○松平忠久君 私は、
日本社会党を代表し、主として経済問題を
中心として、
総理並びに
関係各大臣に
質問を行なわんとするのでありますが、ただいまの成田
議員に対する
総理の
答弁は、まことにお粗末でありまして、
記者会見とこの
国会とを混同しておるのではないかと思うのであります。(
拍手)したがって、私の
質問に対しましては、まじめに、真剣にお答えを願いたいと存ずるのであります。(
拍手)
総理は、去る七月の
総裁選挙において高度成長
政策を批判し、独自の
政策を掲げて総裁に立候補いたしました。すなわち、
所得倍増政策は生産第一
主義であって、人間性の尊重が忘れられている、経済のひずみは倍増計画のアフターケアなどというなまぬるい手段で
解決できるものではなく、このひずみのよって来たるところは、経済開発計画そのものに欠陥があるとしかいえないと断言し、経済至上
主義に対決して、人間尊重あるいは愛情のある
政治の確立を提唱したのであります。したがってその
政策も、生産第一
主義からの転換、
社会開発計画の
立場からの総合的なひずみの是正、総合的物価
対策、
所得税中心の大幅な
減税と公債の発行、それらの施策を通じての貧困の追放を強調し、
池田政策に対決したのであります。このような
池田政策の強烈な批判者が後継者になって
池田路線を引き継ぐことは、重大な
矛盾といわなければなりません。世間では、
佐藤は
政策の
理由をもって
首班候補に指名されたのではなく、大きな派閥の頭目であったために指名されたのであるといわれております。ただいまの御
答弁を聞いておると、この世間の批評が当たっておるようにも思うのであります。(
拍手)また、財界から支持されたことも指名を受けた大きな
理由で、たがをはめられておるのではないかと受け取っておる人も多いようであります。
総理の
所信表明を聞きましたが、
池田対策の批判者が
池田路線を引き継いだ、このジレンマの姿がそのままこの中に
あらわれておるように思うのであります。
そこでお伺いしたいことは、
総理のほんとうの心境はどうであるのか。七月の
総裁選挙の際に、天下に公約したあの
考えをいまでも持っておるのかどうか。ひずみの是正は、アフターケアのごときなまぬるい手段ではなく、総合的施策をもって、勇断をもって臨む
考えであるのかどうか、まずその点を明らかにしていただきたいと存じます。
さて、このような
矛盾の中で
政治の
責任を負うこととなった
総理は、
所信表明で、国内も変動と転換の時期にあるとの認識を明らかにし、さきに総裁争いの際に公約した経済のひずみ是正は、
社会開発計画に基づく総合的な方法によらなければならないという思想を少しずつ出しております。
総理は、本年七月からすでに
社会開発という耳新しい
ことばを用いて、物価問題も二重構造も
社会開発の
立場から取り組むべきであるということを言明しましたが、
一体これはどういうことを
意味しておるのか。
そもそも
社会開発計画には、狭い
意味に使われる場合と広い
意味に使われる場合とがあります。故ケネディ大統領が、不況
対策として、一連の
社会政策を加味して
地域再開発計画を立てたときに、
反対党は、この
社会開発の思想は
社会主義の思想を導入しており、資本
主義に対する重大な挑戦であるとして攻撃をしたのであります。また、
国連においても、ユネスコやエカフェでこのような意見が出され、南北問題がクローズアップされるにつれて
社会主義思想を取り入れ、総合的見地に立つ
社会開発の計画が議題にのぼっていることも見のがすことはできません。
われわれ
社会党がかねてから
提案しておる
所得倍増政策の転換、さらには国土の総合的かつ根本的開発計画、及びこれを推進するための
政治、経済の最適の体制確立に関するわが党の
方針に、
佐藤政策の発想が幾ぶんでも近づいてきておるとするならば、若干の意義があります。
総理の
構想が、はたして
世界の進歩的
学者や
政治家が描いておるところと同じようなものであるのかどうか。
総理の言う
社会開発の当初の
構想は、金融や税制をも含めた広義の、広い
意味のような印象を与えたこともあります。ところが
所信表明では、
社会開発と経済開発との
調和をはかると述べて、狭い用語として取り扱っておるようにも受け取れるのであります。したがって、その具体的
内容がはっきりいたしませんので、ここにほんとうのところ、どういう
内容の
社会開発であるのか、またこれを実行するためには財界からの反撃も覚悟をしなければなりませんので、その覚悟のほどをもここであわせて披瀝していただきたいと存じます。
次に、このような見地に立って
質問の各論に移りたいと存じます。
第一は、二重構造の問題についてであります。
わが国の経済の構造は、大
企業と
中小企業との間に大きなみぞがあり、
中小企業の不振、停滞は、この構造的欠陥によるものであります。二重構造が問題となりました当時の経済白書、すなわち、三十二年の経済白書には、今後十年くらいは零細規模の経営までを対象として二重構造を積極的に解消することはむずかしい、したがって、この間の非
近代化部門の
近代化方策としては、特に中規模の経営を採算のとれるようにし、育成強化に
重点を置くべきであろう、こう述べております。すなわち、経済白書は、二重構造の存在を認め、これを解消することはむずかしいから、
中小企業の上のほうのものを
近代化しようというのであります。ところが、その後の高度成長
政策の結果は、大
企業と
中小企業との間のあらゆる格差を広め、二重構造のみぞはますます深く大きくなっているのであります。
総理は
所信表明で、最近国内経済が落ちつきを取り戻してきたと言っておりますが、国内でも、
中小企業の倒産は、本年に入ってから十月までに三千件以上に及んでおります。オリンピック
開催の最中から今日におきましても、毎日二十件内外の
中小企業が倒産し、落ちつきを取り戻すどころの騒ぎではございません。(
拍手)その上、この直接の
原因は、高度成長
政策の
失敗からきているのであるが、根本的
原因は、実にこの構造的欠陥にあるのであります。
総理が、
社会開発の見地から、ひずみの是正を主張している以上、当然この二重構造を解消するための
努力をしなければなりませんが、この点に関する所信を承りたいと存じます。(
拍手)
次に、倍増計画の第二ラウンドとして、低生産性部門の
近代化、
中小企業と農業の
近代化に
重点を置くべきであるとの
見解が、いまから一年数九月ほど前に、当時の宮澤経済企画庁長官等から大々的に述ベられたことがあります。そうして
池田総理は、本年度の
予算編成にあたって、
中小企業に革命的施策を行なうと言明したものであるが、事実はどうであるか。
中小企業の予算は全体の千分の四であり、
中小企業の倒産は史上未曾有の激増を、示しておるのであります。
池田政策はまさに羊頭狗肉であったことを証明しておるのであります。(
拍手)ところが、さらに驚くべきことは、三十九年度の経済白書に示された
中小企業に対する注目すべき冷酷な
見解であります。白書には、開放体制下では、生産性の低い産業をそのままの形で残すことはできない、体質を変えていかなければならないと述べて、さらに、
日本では
中小企業が他に転換していく能力は、
世界的にも非常に高いと述べております。これだけではその真意が必ずしもはっきりいたしませんが、この白書をめぐって座談会において、まずこの白書の起案者は、東大の大内教授との
質疑応答の中で、
中小企業も賃金を上げないと人が集まらないという形で、二重構造は解消に向かっている、それに耐えられず整理淘汰されていくことはやむを得ないではないか、こう発言をしております。その他多くの経済
学者の意見では、現在の財界と、その上に乗った
政治勢力は、古い地盤に立つ
中小企業は没落するが、これは没落しても差しつかえないという
考え方だと見ており、いまや
中小企業は整理と淘汰と転換が
中小企業政策の重要な
課題となってきたと結論を下しているのであります。
さらに、世間をいたく刺激しておるのは、経団連発行の雑誌九月号に掲載されている、お歴々の無遠慮な座談会における大胆不敵な発言であります。彼らは異口同音に、経済のひずみなんてたいした問題じゃないじゃないか、
日本はやはり重化学工業
中心の施策を進めるべきであるとの趣旨を述べて、
中小企業の問題などは歯牙にもかけておりません。最近発表された
中期経済計画は、この経団連のお歴々の
考えと全く同じであり、ただこれをお役所風に書き直したものとしか思えません。ここに今日までの
池田政策は、ついに
中小企業切り捨て
政策であったことを暴露するに至ったのであります。(
拍手)
すなわち、経済企画庁の
見解では、二重構造の上のほうの構造一本とし、下のほうの構造はそのままに放任するというのであります。ところが、放任されていくこの構造の
もとに、勤勉な経営者、労働者及び家族を含めて約二千万人をこえる同胞が没落の運命を背負わされているのであります。整理淘汰されていくのであります。このような血も涙もない
政策が
一体どこにありますか。人間尊重の
政治を主張し、きめのこまかい配慮を主張するあなたは、まさかこの冷酷無比な
中小企業の切り捨て
政策には賛成なさるまいと思いますが、
中期経済計画を再検討すると言い出したあなたには、いささか別の
考えがあるようにも受け取れますけれども、真意のほどをお聞きしたいと思います。(
拍手)
なお、これに関連して、金融の二重構造についてもお伺いいたします。
大
企業の設備過剰投資は日銀のオーバーローンによりましたが、
中小企業の
設備投資にはオーバ一ローンはございません。相銀、信金、信組等はかたく預貸率の厳守を命ぜられております。しかも、これらの金融機関は、一、二の例外を除きほとんど全部が日銀との取引を認められておりません。親銀行はないのであります。ここに明らかに二重構造が見られます。しかも、大銀行向けに盛んにコールが行なわれ、これらの
中小企業向けの金融機関を含めて都市銀行に回されているコールは、東京、大阪を合わせて一兆円をこしております。本来
中小企業に向けらるべき金が、預貸率の名の
もとに
中小企業に貸し出すことは禁ぜられ、これがコールによって大
企業に回されている金が一兆円もあるという奇現象を呈しておるのであります。これをいままで
政府は袖手傍観しておられるが、これでいいのかどうか、これらの金融機関と日銀との取引の問題をも含めて
総理並びに大蔵大臣より
考えをお聞かせ願いたいと思います。(
拍手)
なお、これに関連して、
中小企業倒産に対する緊急措置と年末融資についてであります。
政府は二千五百億円の買いオペを行ない、資金量を増すという計画であり、これは
もとより賛成でありますが、実際には銀行に金があっても選別融資を強化しているために、かゆいところに手が届かないのであります。この問題を
解決するには、保証協会の保証率と信用保険公庫のてん補率の画期的
引き上げを断行し、他方、
政府系三銀行の貸し出し基準を大幅に緩和することが当面緊急に行なわるべき措置であります。あわせて、かねてから問題となっている手形決済の長期化の傾向は、
常識の範囲をはるかに逸脱しており、
中小企業の金融を著しく困難にしているのみならず、不渡り手形も、その枚数も金額も毎月レコードをあらためております。真剣に手形法の改正を
考えなければなりません。また、下請
企業の下請代金も、六十日を過ぎればその手形の利息は親
企業が支払うように法改正ができておりますが、実際何らの効果もあがっておりません。以上の問題について、所管大臣や公取委員長は何をしているのか、何を
考えているのか、ここで明らかにしていただきたいと思います。
二重構造の中で苦しんでおる
中小企業を救うためには、これらの利益を擁護する強力な行政機関が必要であることは言うまでもありません。わが党が去る四十六
国会において、
中小企業省設置法案を提出した
理由もここにあるのであります。またこの
考えは、全国の
中小企業関係の諸団体が一致して要望しているところであるのみならず、実は与党
議員の中にも賛成者があるのであります。
自民党の
中小企業関係の
責任者は、去る十一月十一日の
中小企業団体全国大会において、
自民党を代表して発言をし、
中小企業省設置について賛成している
自民党の衆参両院
議員は三百名をこすという発表をいたしました。三百名もの賛成者がおるならば、当然
中小企業省ができていなければならないはずであります。(
拍手)これはどういうわけでできないのか。なぜわが党の
中小企業省設置法案を審議未了にしたのか。この際
総理の
考えを明らかにしていただきたいと存じます。(
拍手)
質問の第二は、物価についてであります。
池田内閣の
政治の最大の罪悪は、物価
対策を放棄したことであります。
所得倍増政策の数々の欠陥の中で、
国民大衆に最も不安を与えているのは物価の値上がりであります。
池田内閣の
施政四年間に、物価は三割上がりました。この根本的
原因は、言うまでもなく、
池田内閣の財政
金融政策にあったのであります。すなわち、大型予算によって経済の高度成長を促し、それによって租税の大幅な自然増収が生み出され、その上に立ってさらに積極
政策を打ち出して、高度成長
政策を刺激するという財政運営の方式にあったのであります。また
金融政策がさらにこれに拍車をかけました。すなわち本年十月の鉱工業生産指数は三十五年に比べて一・七倍であるにもかかわらず、日銀の貸し出し残高はこの期間において二・九倍にふくれ上がっております。すなわち物のほうは丁七倍であり、金のほうは二・九倍になっておるのであります。この数字を一べつするとインフレであり、貨幣価値の下落であり、物価騰貴の根本的
原因がそこにあることが判明いたします。
総理は勇断をもって事に当たると表明しましたが、いままでの財政
金融政策そのものに根本的
原因があるという認識に立って、物価の抑制に当たるつもりであるのかどうか、基本的な
考え方を伺いたいと思います。(
拍手)
今日の物価騰貴は、すでにあらゆる消費の分野に波及し、さらに重大なことは階層別消費の格差が格大していることであります。これに追い打ちをかけるように
消費者米価、
医療費を上げ、さらに公共料金、運賃等の
値上げを強行するならば、それはたちまちふろ代、理髪代等のサービス料金に波及し、他の一般物価にはね返り、加速度的に家計に圧迫を加え、収拾ができなくなるでありましょう。(
拍手)
総理が七月
総裁選挙の際の公約や
所信表明を真剣に実行する
考えであるならば、ただいま
総理は真剣そのものであるというような
答弁をなさいましたが、少なくともさきに
池田内閣が決定した公共料金一年間据え置きのこの
方針、これを延長しなければなりません。その覚悟があるのかどうか、本院を通じて
国民の前に明らかにしていただきたいと思います。(
拍手)
次に、物価
政策の
あり方についてであります。
国鉄基本問題調査会では来年四月から国鉄運賃を三二%上げる案をまとめました。
自民党の担当部会においても三二%の
値上げを是認したようであります。これは第三次六カ年計画のためとありますけれども、いままでの第二次計画があの新幹線のたび重なる予算増額に見られるようにずさんをきわめて、そのしりぬぐい的計画が実はこの第三次計画の中に穴埋め的に押し込められている印象が強く、国鉄の無
責任さを暴露しておるのであります。真に必要な計画であるとするならば、国家資金や財投に求むべきであります。なお、国鉄は貨物輸送の赤字を旅客運賃によってカバーしていますが、大口独占物資の赤字輸送が八〇%も占めておるのであります。大衆の生活を向上しようという
政治の
姿勢とは逆な現象ではありませんか。
次に、公営
企業たる電車、バス、水道等の料金でありますが、
政府はさきの公共料金一年間据え置きを決定したときに収支の悪化が予想されていたのであるから、当然地方公共団体に対して財政措置を行なうベきであったけれども、それを怠り、融資の措置すら私鉄に遠慮して行ないませんでした。そもそも公営
企業は営利の追求を目的とせず、
国民の生活に利便と福祉を提供することを目的としている事業であって、これに対して強く独立採算制をしいることはこの事業の性格に相反する
態度といわなければなりません。(
拍手)
私鉄、私バスの場合においても、その公営的性格は同一であって、
企業の
社会性をさらに強めるような措置を講ずるとともに、その反面、財政、金融、税制について特別の措置を行ない、公私営を問わず一貫した
政策を保持していかなければなりません。私鉄大手十四社の料金
値上げの動きも出ており、公私営を問わずこれらの料金は
国民生活に重大な
関係がありますので、据え置きの延長を申し上げておるのであります。
以上の問題に関し、
総理、経企庁長官、運輸大臣、自治大臣の
答弁を求める次第であります。
物価問題の最後として、
管理価格について公取委員長に一お伺いします。
今日、不況を背景として、たとえばセメント、鉄鋼等の業界が、通産省の行政指導という隠れみのの
もとに価格操作を行なっている様子が見えます。これは、これらの大
企業が不況の肩がわりを消費者に転嫁させておるものであって、明らかに独禁法の
精神に違反する行為といわなければなりません。公取は昨年末、板ガラス等三品目に対して、わずかではあるが
管理価格を下げさせ、消費者からは多少見直されたのであります。今日においても独占、寡占物資の中には、値下げ可能のものが皆無とは言えないと思います。そういうことはなさらずに、逆に不況の肩がわりを消費者にさせて黙っているのはどういうわけであるのか、この際、物価に対して
一体公取は何をしてきたのか、ここで明らかにしていただきたいと思います。(
拍手)
質問の第三点は、過密都市の
対策についてであります。
今日まで首都圏、近畿圏及び新産都市等の
政策がありましたが、何らのきめ手となっておりません。加うるに、無軌道な高度成長
政策のために、住宅難、交通地獄、水飢謹、工場災害、汚水、ばい煙、悪臭の公害等々、われわれの生活と生命を脅かす環境ができ上がり、もはやこそくな手段をもってしては
解決できないまでに悪化したことは、
自民党政府の無策として強く糾弾されなければならないところであります。(
拍手)この
解決こそ全国的規模における総合的な
社会開発計画を立て、強力にこれを実施しなければなりません。これを
解決する前提として、まず土地
政策を確立することが急務であります。
政府は、今日まで、地価の暴騰に対して何らの抑制策をとらず、
政府みずからが地価の安いところをさがして、だんだんと遠いところに公営住宅などを建設し、東京の周辺に衛星都市をつくる等の安易な方法を続けて、地価の騰貴をますます周辺に広げてまいったのであります。この
やり方は交通、教育、し尿処理等あらゆる面ですでに行き詰まっております。また、新産都市についても、
自民党の選挙
対策に利用されたことと、地価の急騰をもたらしたという結果に終わらんとしております。
総理の言うような
社会開発の計画を立てるにしても、住宅問題の
解決をはかるにしても、まず地価の騰貴を押え、地主の不労所得を規制するのはもちろん、国有地の拡大と開発をはかる等、画期的かつ強力な施策を進めなければなりません。イギリスのランド・コミッティのような強力な土地管理機関の設置が必要と思うが、このような
構想を研究したことがあるのかどうか。
総理が建設大臣に指示したような中途はんぱな
対策ではとうてい
解決することは不可能と思いますので、この際画期的な
構想をお出しになることを期待しつつ、
総理並びに建設大臣の所感を承りたいと存じます。(
拍手)
新産都市については、地方公共団体が自腹を切って受け入れ態勢を整備したところもありますが、工場は一つも出来なくて、ペンペン草がはえているようなところもあります。そもそも新産都市のような
構想は、経済の計画化を前提とすべきものであって、イギリスの工場配置法のような
構想を伴わなければなりません。過密都市
対策の一環としても、工場の再配置と新設工場の指定の制度を設け、かつ、その
企業がその地点で成り立つように、金融、税制その他の優遇措置をあわせ講ずる立法措置が必要でありますが、この点について通産大臣、経済企画庁長官の
見解を承りたいと存じます。
高度成長
政策の落とし子として、緊急
対策を要するものの一つに、工場災害と公害の問題があります。この
根本原因もまた生産第一
主義にあることは否定できません。国鉄の鶴見
事故のごとく、スピードアップと過密ダイヤのために
事故防止の措置をとっても間に合わず、人間の能力を越えた運行が行なわれておること、昭電川崎工場の
事故のごとく、低圧ガスはそれ自体危険であるにもかかわらず、取り締まり法規の対象になっていないこと、品川宝組倉庫に野積みにされた硝化綿の爆発は法律違反であるが、従来、火薬の原料として使われた硝化綿が、近来塗装の原料としても大量に使われることとなり、年々需要が増大しておるにもかかわらず、これを保管する危険物保管の指定倉庫の拡張は不急なものとして
あと回しにされておること等、いずれも高度成長
政策の行き過ぎとアンバランスがこれらの災害の最大の
原因となって、働く人たちの生命を脅かしておるのであります。(
拍手)ことに遺憾なことは、取り締まりの
責任の主体が労働省、通産省、運輸省、消防庁等ばらばらであり、また、これらと警察との
関係も不明確であります。至急強力な行政委員会等を設置して、
抜本的対策を講ずる必要がありますが、まず、
総理の人間尊重の
立場からの
見解を承り、次いで労働、通産、自治各大臣の具体的な
考え方について伺いたいと思います。(
拍手)
次に、汚水、ばい煙、排気ガス、悪臭等の公害は、工場地帯を
中心としてますます住みにくい環境をつくり、いまや重大な
社会問題となりつつあります。過般通産大臣は、雑誌「エコノミスト」に掲載された対談の中でこの問題を取り上げ、新産業道徳論なる意見を発表し、道徳によって公害問題を
解決しようと言っております。
企業に
社会連帯意識を持たせることは
もとより必要でありますが、しかし、道徳でこの問題が
解決できるものかどうか、道徳による具体的な
解決方法を、ここに明らかにしてもらいたいと思います。(
拍手)
なお、通産省の事務当局は、
企業の国際競争力を重視する
立場から、公害を大部分
社会資本によって
解決しようとする意図があるようにも受け取れます。もしそうだとすれば、
企業はますます
社会道徳の観念を持たなくなり、大臣の意図とは反する結果になります。
企業から出てくる公害は
企業の
責任で
解決させるというたてまえであるのかどうか、
政府としての根本的
姿勢とその
具体策について明確な
見解を承りたいと思います。
時間の
関係がありますので、国際収支や経済協力についての
質問を割愛いたしますが、最後に一言申し上げたいことがございます。
総理は
所信表明の中で、
世界が流動し、変転しつつあることを認めました。しかし、問題は、先進国の
社会、経済の
流れの
方向がいかなる
方向にあるかということを把握することであります。
アメリカにおいてさえ、古い
勢力は、新しいレジームの行き方を、
社会主義の導入であり、資本
主義に対する挑戦であると言って攻撃したけれども、
流れはまさに新しい
方向に向かっております。イタリヤやフランスでは、
社会主義政策を多く取り入れた混合経済が現に行なわれております。イギリスでは、技術革新からくるマイナス面の
解決のために、
企業の
社会性の強調と
社会化の
方向に向かい、すでに鉄鋼の国有化を断行しました。これはいずれも国内における貧富の差を縮小せんとする
政策であります。しかるに、
日本の財界には、これらの
流れに目をつぶり、古い思想で古い方法に固執しておる者があり、これに頭の上がらない保守党
政治家も圧倒的に多いということであります。(
拍手)はなはだしいのは、このような十九世紀的思想の持ち主に共鳴し、外国に出かけてまでも選挙の応援をするという風変わりな
政治家もあなたの党にはおるのであります。(
拍手)
IMF総会やオリンピックの
開催を自画自賛するのもけっこうでありますが、その前に、このような
世界の
流れを十分に把握し、国際的貧富の差の縮小に寄与したいと言っておる
総理の
決意を、まず国内における貧富の差の縮小に向けなければなりません。かくすることによって、初めて共通の広場も生まれ、
国会の正常化もできるでありましょう。
以上のことを特に申し上げて、私の
質問を終わりたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君登壇〕