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1964-12-17 第47回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十二月十七日(木曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 唐澤 俊樹君 理事 小金 義照君    理事 小島 徹三君 理事 坂本 泰良君    理事 細迫 兼光君 理事 横山 利秋君       草野一郎平君    四宮 久吉君       田村 良平君    赤松  勇君       神近 市子君    山田 長司君       竹谷源太郎君    志賀 義雄君  出席政府委員         法務政務次官  大坪 保雄君         検    事         (民事局長)  平賀 健太君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁警備局         警備第二課長) 後藤 信義君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木信次郎君         判    事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      寺田 治郎君         判     事         (最高裁判所事         務総局民事局         長)      菅野 啓蔵君         判     事         (最高裁判所事         務総局刑事局         長)      矢崎 憲正君         専  門  員 高橋 勝好君     ――――――――――――― 十二月十二日  委員森下元晴君辞任につき、その補欠として渡  辺美智雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員渡辺美智雄辞任につき、その補欠として  森下元晴君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員森下元情君辞任につき、その補欠として渡  辺美智雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員渡辺美智雄辞任につき、その補欠として  森下元晴君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員田村良平君及び田中織之進君辞任につき、  その補欠として根本龍太郎君及び山田長司君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員根本龍太郎君及び山田長司辞任につき、  その補欠として田村良平君及び田中織之進君が  議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月十一日  改正刑法準備草案第三百六十七条に関する請願  (亀山孝一紹介)(第五八九号)  同(濱田幸雄紹介)(第六七一号)  更生保護会に対する国の委託費及び補助金に関  する請願外十件(上村千一郎紹介)(第六七  〇号) 同月十二日  改正刑法準備草案第三百六十七条に関する請願  (瀬戸山三男紹介)(第一〇三三号) 同月十四日  保護司に対する実費弁償金増額等に関する請  願外十四件(上村千一郎紹介)(第一一四三  号)  同(江崎真澄紹介)(第一四六九号)  同(小澤佐重喜紹介)(第一四七〇号)  仙台高等裁判所秋田支部存置に関する請願外  一件(鈴木一紹介)(第一一四四号)  同(田澤吉郎紹介)(第一一四五号)  同外二件(佐々木義武紹介)(第一五六六  号)  改正刑法準備草案第三百六十七条に関する請願  (橋本龍太郎紹介)(第一一四六号)  同(野田卯一紹介)(第一四七一号)  更生保護会に対する国の委託費及び補助金に関  する請願外二百九十九件(上村千一郎紹介)  (第一四六八号) 同月十五日  仙台高等裁判所秋田支部存置に関する請願  (根本龍太郎紹介)(第一六九一号)  更生保護会に対する国の委託費及び補助金に関  する請願外三件(上村千一郎紹介)(第一七  七九号)  同外一件(四宮久吉紹介)(第一七八〇号)  改正刑法準備草案第三百六十七条に関する請願  (壽原正一紹介)(第一七八一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月十五日  外国人登録事務委託費全額国庫負担に関する陳  情書  (第五八〇号)  改正刑法準備草案第三百六十七条に関する陳情  書  (第七五〇  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  裁判所司法行政に関する件  法務行政及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件  請 願   一 領置目録または領置証書の交付に関する     請願中川一郎紹介)(第二八一号)   二 改正刑法準備草案第三百六十七条に関す     る請願亀山孝一紹介)(第五八九     号)   三 同(濱田幸雄紹介)(第六七一号)   四 更生保護会に対する国の委託費及び補助     金に関する請願外十件(上村千一郎君請     願)(第六七〇号)   五 改正刑法準備草案第三百六十七条に関す     る請願瀬戸山三男紹介)(第一〇三     三号)   六 保護司に対する実費弁償金増額等に関     する請願外十四件(上村千一郎紹介)     (第一一四三号)   七 同(江崎真澄紹介)(第一四六九号(   八 同(小澤佐重喜紹介)(第一四七〇     号)   九 仙台高等裁判所秋田支部存置に関する     請願外一件(鈴木一紹介)(第一一四     四号)  一〇 同(田澤吉郎紹介)(第一一四五号)  一一 同外二件(佐々木義武紹介)(第一五     六六号)  一二 改正刑法準備草案第三百六十七条に関す     る請願橋本龍太郎紹介)(第一一四     六号)  一三 同(野田卯一紹介)(第一四七一号)  一四 更生保護会に対する国の委託費及び補助     金に関する請願外二百九十九件(上村千     一郎紹介)(第一四六八号)  一五 仙台高等裁判所秋田支部存置に関する     請願根本龍太郎紹介)(第一六九一     号)  一六 更生保護会に対する国の委託費及び補助     金に関する請願外三件(上村千一郎君紹     介)(第一七七九号)  一七 同外一件(四宮久吉紹介)(第一七八     〇号)  一八 改正刑法準備草案第三百六十七条に関す     る請願壽原正一紹介)(第一七八一     号)      ――――◇―――――
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  まず請願審査に入ります。  今国会において本委員会に付託されました請願は十八件であります。  請願日程第一より第十八までを一括議題といたします。  まず審査の方法についておはかりいたします。  各請願内容については文書表で御承知のことでありますし、また先ほどの理事会検討願ったところでありますので、この際、各請願について紹介議員よりの説明聴取等は省略し、直ちに採決に入りたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 濱野清吾

    濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  これより採決いたします。  請願日程第一ないし第一八の各請願は、いずれも採択の上内閣に送付すべきものと決したいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 濱野清吾

    濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 濱野清吾

    濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  6. 濱野清吾

    濱野委員長 なお、本委員会に参考送付されております陳情書は、外国人登録事務委託全額国庫負担に関する陳情書及び改正法準備草案第三百六十七条に関する陳情書の二件で、お手元に配付してありますとおりであります。この際御報告いたしておきます。      ————◇—————
  7. 濱野清吾

    濱野委員長 次に、閉会審査申し出の件についておはかりいたします。  すなわち、裁判所司法行政に関する件、法務行政及び検察行政に関する件、国内治安及び人権擁護に関する件、以上の各案件につきまして、閉会中もなお審査を行ないたいと存じますので、この旨議長に対し申し出たいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 濱野清吾

    濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  暫時休憩いたします。    午前十時四十八分休憩      ————◇—————    午前十時五十六分開議
  9. 濱野清吾

    濱野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを許します。横山利秋君。
  10. 横山利秋

    横山委員 先日の委員会におきまして、本委員会において附帯決議を付しましたものの取り扱いについて質問いたしましたところ、政府側からきわめて簡潔な関連措置等概要の提出がされました。これをずっと見てみましたが、どうも私の考えておりますように、附帯決議に対する実行についてきわめて不十分な点が多いと思うのであります。きょうは同僚委員のたくさんの質問がありますから、私は、根本的にまず附帯決議がどういうふうに政府部内において考えられるのか。どうも私ども見るところでは、附帯決議というものは、まあまあ法案を通すときに与野党の顔を立てるということだけに理解をして、あと実行状態についてはきわめて誠意がない。あるとしたならば、自分の都合のいいところでは運用をしておるけれども、あんまり都合のよくないものについては、調査研究中として逃げている部面が非常に多い、こう痛感をされるのであります。いやしくも国会の権威にかけて附帯決議をつけたのでありますから、ほんとうならば、次の国会あるいはその次の国会等で、附帯決議についてかく順守をし、実行しておるというような報告書政府側から自発的に出てもいいようなものだ。それを、伺うところによりますと、私が附帯決議についての実行状況を出せと言うたところ、あまりいい顔をしなかったような雰囲気がある。言語道断だと私は思うのであります。政務次官にひとつ所信をただしたいのですが、附帯決議の精神というものは、どういうふうに理解をし、政府部内においてこの附帯決議をあなたはどういうふうに念査をし、実行をさせておるか、そのあなたの誠意ある御返事をまず伺いたい。
  11. 大坪保雄

    大坪政府委員 附帯決議につきましては、もとより決議のなされたときに、大体主管大臣がその御趣旨を十分体してすみやかに実行を期するようにいたしますというお約束をいたしておるのが例だと存じます。そしてそのとおりの気持ちであると私は信じます。附帯決議は、ただいま横山先生のお話しになりましたように、非常に大切な院議でございますが政府側からいたしますと、むしろ非常に御同情のある委員会意思表示だというように了承しなければならぬと思うわけでございます。したがいまして、附帯決議でおきめいただいたことが、政府にとって非常に快くないというような事柄はないわけでございます。特にその主管省では、その附帯決議の御趣旨は、ただいまも申し上げましたように、おおよそその主管省が欲してでき得ておらないところ、かゆいところに手が届いていないことを国会側から御指摘くださっているということでございますから、非常にありがたくちょうだいをいたしておるわけでございます。ただし、それを実行いたしますにつきましては、いろいろ予算を伴わなければならぬ事柄等もございます。そうなりますと、国全般財政事情等々の関係から、大蔵省方面との折衝を必要とするし、そういうことに手間どるというようなこと等もございまして、附帯決議に盛られた内容実行がともすればおくれがちになっているということは、まことに遺憾ではございますが、それが現状の事実であろうかと存じます。基本的な心がまえといたしましては、附帯決議決議されたとおり、大臣が申しますとおりに、私どもはこれを十分尊重すべきものとして拝承をいたしておるし、そのつもりでこれにこたえるように平素部内にも督励をいたしておるのでございますが、ただいま申し上げますように、いろいろの事情がございまして、実行が非常におくれつつあるということは遺憾のきわみに存じます。しかしながら、今後は御注意もございますから、さらに一そう督励をいたしまして、実行のできるものから片っ端から片づけてまいるようにいたしたい、かように考える次第でございます。
  12. 横山利秋

    横山委員 次官は、この附帯決議及びその政府関連措置概要ごらんになりましたでしょうね。
  13. 大坪保雄

    大坪政府委員 見ました。
  14. 横山利秋

    横山委員 ごらんになったとするならばお気づきだとは思うのですけれども、指摘をしておきたいのであります。  第一に、二十六国会における裁判官並びに検察官に対する報酬並びに俸給等に関する附帯決議につきましては、先日本委員会においてまた附帯決議が出てきた。要するに二十六国会における附垂決議がいまなお十分に行なわれていない。第二番目に、二十八国会売春防止法の一部を改正する法律案に対する裁判所調査官制度調査検討に関する附帯決議についても、これまた実行がされていない。同じく二十八国会刑法の一部を改正する法律案に対する「斡旋収賄罪については将来いわゆる第三者供賄に関し、十分検討すべきである。」という点については、刑法準備草案に逃げておる模様がある。それから三十一国会司法試験法の一部を改正する法律案については、「大学の学制改正と照らし合せつつ、たえず検討すること。」について、まだ検討不十分な点がある。「司法試験管理委員会委員は将来これを相当数増員し、」という点についても不十分一きわまるところがある。同じく三十一国会裁判官報酬についても、これは先ほどと同様である。同じく三十一国会検察官俸給についても同様な点がある。それから三十八国会訴訟費用等臨時措置法の一部改正の、証人、参考人の日当は、なお低きに失するものと思考せられるから、来年度予算において増額を、というのが、わずか四百円から六百円に、このあとでありますか、なっただけで、これで十分だとはとうてい考えられない。同じくそのときに執行制度根本的改善を勧告したわけでありますけれども、これがやはり調査会に逃げておって、独自の検討、独自の提案というものが十分でない。執行制度がきわめて不満足きわまる状態にあり、汚職の根源にもなっておるという点について強く指摘しておいたところでありますが、何らの解決がされていない。四十六国会裁判所職員定員法改正につきましての附帯決議においては、五人か十人くらいの増員がそのあとになされたくらいであって、とうてい附帯決議に沿っているとは思われない。四十六国会刑事補償法の一部を改正する法律案について、「今後さらに経済情勢の推移に鑑み、冤罪者に対する補償改正をはかるべきである。」と附帯決議を付したのでありますけれども、これらは御承知のように、吉田石松事件、それから松川事件等にも関連をして、不十分きわまる状況であるが、その後の経緯が全然出ていない。四十六国会下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議におきましては、簡易裁判所のうち未開庁のまま十数年放置されているものが十数カ所もあるという指摘に対しましても、この経過を見ますと、早急に結論を出す考えであるということだだけで放置されておる。同じくそのときに、「裁判迅速化を阻害している要因として、「有資格者を可及的すみやかに判事、検事に採用して運用に遺憾なきを期すべきである。」と言っておるのであるけれども、これが実行されたということを私は聞かない。四十六国会民事訴訟法の一部を改正する法律案につきましては、来年四月一日が施行でありますから多くを言いませんけれども、かくのごとく本院の附帯決議については、どうも口と実行とは違うような気がしてならない。参議院における附帯決議実行状況を私自身もずっと見てきたわけでありますが、これまた同様な状況にある。  こういう状況のもとで、政務次官がひとつこれから一生懸命やりましょうと言いましても、どこか欠けたところがあるのではないか。ここで附帯決議をしたら、もうそれは知っておるというわけで、あなたは全然その後の督促なりあるいは検査、念査をしていないのではないか。附帯決議がされておることは、ここに出ておる役人が知っておるはずだから、それはいいじゃないかということに置かれているのではないか。当面する予算編成に際しても、あるいは法律案を立案するときにしても、あるいは審議会において議論をするときにも、関係者の前に附帯決議がきちんと置かれて、これは国会意思だから優先的に実行しなければならぬのだという政治的の作業を政務次官はなされておられるのでしょうか、どうでしょうか。
  15. 大坪保雄

    大坪政府委員 まことにどうもおしかりをこうむりましたが、附帯決議に対して誠意を持って実行するという基本的な態度につきましては、ただいま申し上げましたとおりでございます。ただ、なかなか運び得ておらぬということの御指摘でございまして、弁解がましくなるわけでございますけれども、予算を伴うものについては、先刻申し上げましたとおりでございます。しかしながら、たとえば裁判官検察官等の待遇の改善というようなことにつきましては、先般御審議をいただいたような俸給法改正等もいたしておるようなことでございます。ただ法務省関係法律改正というようなことは、これはほかの省の主管法律改正も似通ったようなものではございますけれども、何と申しましても、人権に関する、身分に関する、あるいは財産に関する国民の基本的な権利に関する事柄でございますから、法務省内だけで改正案等を起草したり、立案したりするということでは足りないというので、多く調査会等調査審議を御委託申し上げておるというのが従来の例でございます。そういうことからして、自然手間どっているというところが相当あるということは、横山委員も御了承いただかなければならぬと思うわけであります。しかしながら、そういうことに籍口して怠慢のそしりを免れるようなことはいたさないつもりでございますが、この点はひとつ御了承を願いたいと思います。
  16. 横山利秋

    横山委員 本日は大臣がお見えになりませんので、機会をあらためて大臣にも十分に御注意いたしたいと思うのでありますが、附帯決議は、重ねて申し上げるまでもなく、院議でございます。本委員会が超党派で、満場一致で決定をしたものがほとんどであります。その附帯決議というものがなおざりにされておるような状況では、何をもってわれわれが誠心誠意審議に当たるかという気がいたします。もしそれ、あなた方が法律案を一つ通すために、与野党の顔を立てるために、このくらいはしようがないだろうというお気持ち附帯決議に対せられて、そのときにていさいよく尊重いたしますというような雰囲気がもしありとすれば、今後われわれとしても審議に対して十全を期さなければならぬ、別な角度でしなければならぬ。その点を強く指摘いたしまして、将来なおまた附帯決議実行状況を促進をすることにいたしまして、私の質疑を終わることにします。
  17. 濱野清吾

  18. 坂本泰良

    坂本委員 近江絹糸代表取締役丹波秀伯氏の政治献金問題は、先般池田内閣の退陣が予想されたときになって突如として不起訴処分にされたのでありますが、この問題は、近江絹糸丹波秀伯氏が一億二千万円を横領した、この大阪地検に対する告発が、その取り調べの結果、五千数百万円の政治献金をした、こういうことでありますから、この政治献金問題は、それは重大な問題であるというので、日本社会党綱紀粛正特別委員会が二カ年にわたって調査して、その真相の究明に最大の努力を傾けてきた事件であります。その目的は、近時選挙費用もばく大な額に達し、これが調達のため政党及び政治家財閥とのくされ縁が生じ、上は政党の総裁の選挙から、村会議員選挙に至るまで、選挙費用の多寡によって候補者の当落が左右せられる。こういう現象を呈しておるから、金を集めることの上手な者は一国の総理になり、国会議員となる。金を提供する財閥は、権力にある者との結託によって、直接か間接か、現在か将来かに何らかの利得を得る目的であることは言うまでもないのであります。かくして金権政治がとうとうとして行なわれ、その弊害きわまるところを知らない。いまやその極に達した感があるから、この政界の腐敗と並行して、通産、建設等の各関係省の上級、中級クラスの公務員が綱紀紊乱をする。この綱紀紊乱はすでに末期的の症状にあり、したがって、昨年の選挙においては、建設次官であった山本幸雄君がいわゆる橋梁事件で数百万の金を取って選挙に当選しておる。これはいま裁判に付されておる。こういうことでありますから、この政治献金問題については、重大な問題として綱紀粛正委員会で取り上げて、その究明について大阪地検に対して数回われわれは激励し、さらにその真意をただし、徹底的な究明を要求したわけです。また、当委員会におきましても、刑事局長からその捜査経過等も承りました。そしてその究明に当たったわけであります。ことに大阪地検検事正並びに特捜部長主任検事には、先般更迭のうわさがあったから、当委員会において、この重大な捜査が終わるまでは更迭しなくてひとつ捜査を続けてもらいたい、早く捜査をしてもらいたいということを大臣に質問しまして、大臣もそういうことのないようにするという答弁をしながら、間もなく検事正並びに特捜部長主任検事はその前にかえる、こういうことであったのであります。したがって、そう更迭がなりましたから、われわれ綱紀粛正委員会としましては、山田委員長以下われわれも大阪に参りまして、そうして徹底的の究明をしてもらいたいというので、当時は検事正も、さらに強制捜査あるいは家宅捜索をもその場合においては実行して、徹底的にこれを究明する、こういうことであったわけであります。すでに数回調査団を派遣してやったわけであります。  われわれ社会党綱紀粛正委員会が最も関心を持ちましたのは、近江絹糸社長たりし丹波秀伯が五千八百万円余の政治献金検察官に自白した件であります。政治浄化のために、司法の正義の剣をこの際ふるてっもらわなければならない。ことにこの五千八百万円の政治献金の中には、池田元首相の夫人に一千万円近くの金が渡されておるという情報が流されている。これは容易ならぬことであります。丹波秀伯は五千八百万円の政治献金を認めながら、その献金先は黙して語らずとのことであります。普通黙秘権を使う被疑者に対しては、証拠隠滅のおそれありとして、身柄を拘束して捜査するのが常であります。何ゆえか、検察当局丹波に対してはこの手段をとらないで放任しておいて、丹波はこれを奇貨として、本件は不起訴になるにきまっていると広言している。こういうような点がわれわれの不審の第一であるわけであります。  丹波に対しましては、近江絹糸の株主である境野氏から、昭和三十七年十月、先ほど申しましたように一億数千万円の業務上横領ありとして告発して、自来二年を経過している。なお、昭和三十八年の十一月には、近江絹糸の現社長の高見氏に対して、商法第四百八十九条違反、すなわち俗に言うタコ配の事実がありとして告訴している。この商法違反は、また半面税法違反が伴うものであります。こういう点についても徹底的に究明をしてもらいたい、こういう激励と要望を社会党綱紀粛正委員会の名のもとにおいて、その代表調査団を派遣し、さらに激励と要望をしてきたわけであります。こういうような事件が、突如として池田内閣退陣の予想されるという時期になって不起訴処分をした。こういうあらましを申し上げたわけですが、そこで、その不起訴の理由を見ますると、その使途について捜査を尽くしたところ、その使途は多方面にわたっているが云々とありまして、使途について捜査を尽くした。しかし、それは多方面にわたっておる。こういうことが言われましたから、ここにお聞きしたいのは、多方面はどういう方面に、丹波がこの金の処置をしておるか、この点をひとつ、まず先にお聞きしたいのです。
  19. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねの件につきましては、被疑者丹波秀伯に対する業務上横領被疑事件並びに被疑者高見重雄に対する商法違反被疑事件でございますが、この事件につきましては、御指摘のとおり、いずれも去る十月二十三日不起訴処分にしております。告発事実の要旨は、第一は、近江絹糸紡績株式会社の元社長丹波秀伯が、同社元取締役西村貞蔵と共謀の上、同社資金中から合計一億二千万円を横領したというのであります。第二は、同社の前社長高見重雄が、同社の三十六年十一月一日から三十七年四月三十日に至る第八十四期の決算に際しまして、買い掛け金等の勘定科目を粉飾して二億四千五百万円の架空利益を計上した。これに基づき利益処分案を作成しまして株主総会にその承認を求め、会社の財産の一部を利益として配当したという事実でございます。  これに対しまして大阪地方検察庁におきましては、捜査を遂げました結果、第一の業務横領の事実については、先ほどもお話がありましたが、丹波らが右告発状に記載されておるいわゆる告発の要旨に該当する金員を同会社の資金のうちから引き出したことは認められたわけであります。しかし、その使途につきまして捜査をいたしましたところ、その使途は、ただいま御指摘のように多方面にわたっておるわけでありますが、丹波個人の利益のために費消したと認め得るものがなく、丹波自体も会社のために使用したと弁解をいたしております。その弁解をくつがえすに足りる証拠がないのであります。したがいまして、右の容疑事実につきましては、結局犯罪の嫌疑不十分でありまして、これを不起訴処分にした次第であります。また、第二の商法違反につきましては、一応の嫌疑があると認められましたが、近江絹糸株式会社におきましては、各期におきまして計上された架空利益をカバーして余りある含み資産が存します上、その後の事業年度では、すでに正常決算に復しておりまして、会社経理も漸次健全に向かっております等の諸般の事情、情状を考慮いたしまして起訴猶予の処分といたした次第であります。これが本件の経過でございます。  ただいまお尋ねの多方面にわたってということでございますが、多方面ということを申し上げるのは、もちろんいろいろな方面で、期間も長うございますし、それから額も相当の額にのぼっておるわけでございますから、その使途につきましては、もちろん多方面にわたっておりますが、その使途の内容について申し上げることは捜査の密行の原則に反しますので、差し控えたいと存じます。
  20. 坂本泰良

    坂本委員 不起訴処分前であるならばそれは別としまして、われわれも捜査の進展を阻害することもできないし、また、捜査の機密上も、その点、保っていかなければならぬと思うのです。しかしながら、ここに指摘しましたような情報、うわさが出ておる。出ておるなら、それを不起訴にしたら、その内容は明らかにしなければならぬ。捜査の秘密の問題じゃないと思う。それを明らかにしなければならない、そういうふうに考えるのですが、いかがですか。
  21. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまこの席で申し上げましたような事実も、本来いえば、密行と申しますか、捜査の秘密の内容に入るわけでございますが、この程度につきましては申し上げることを相当とするというふうに判断いたしまして、それまで申し上げておるわけでございます。しかしながら、犯罪の捜査には、およそ御承知のように多数の関係者がございまして、その関係者の協力が不可欠でありまして、この協力なくしては、とうてい適正な検察権を行使するということ、もちろん犯罪の捜査をするということはできないわけであります。今日まで検察庁の捜査関係者の信頼と協力を得ておりますゆえんのものは、やはりその捜査の過程におきまして知り得た関係者の秘密ないし名誉に関する事項を、当該事件に関して以外は、原則として公にしないという立場をとっておるからこそ、多数の参考人がみずからの不名誉あるいはみずからの秘匿したい事項を検察庁に述べておるわけです。したがいまして、さようなことをたてまえとして堅持しておるわけであります。したがいまして、不起訴処分に付したからと申しまして、捜査の密行の原則に反しまして、捜査の過程において検察庁に関係者がどういうことを言ったか、どういうことを検察官が知ったかということを公にいたすことは、差し控えるのが相当である。またこれを差し控えませんと、将来検察官に協力をして事実を明らかにしてもらえなくなるおそれが多分にありますので、これは検察権の行使に重大な支障を来たすものと考えております。したがいまして、検察官の職能、刑事司法の公正妥当な運営に好ましからざる影響を与えるものと考えますので、事案に対する内容についての公表は、ただいま申し上げた限度で差し控えたいというのが法務省の考えておる趣旨でございます。
  22. 坂本泰良

    坂本委員 いま言われたようなことは、破廉恥罪等の問題についてはそういう点もあるでしょうが、事、政治献金の問題については、こういううわさが出ておるということになれば、その点についてどういう捜査をしておるのか、あるとか、ないとかいう点は、これは捜査の秘密どころではなくて、公正な捜査をしたという検察庁の立場から、法務省は、この国政調査権に基づく委員会においての質疑に対しては発表してしかるべきである。そうしたほうが、私は、捜査が公正にやられたということがはっきりすると思うのです。ですから、池田元首相夫人に一千万円近くの金が出ておるといううわさがある。この点は、大阪地検調査団が行った際にも、検事正特捜部長にも話をして上申書の書面も出しておる。そうしてその捜査に協力して、捜査してもらう、激励をしてきておる。その点いかがですか。捜査しないのですか。
  23. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお話しのような事実があったように、大阪検察官から承知いたしております。したがいまして、いろいろ各方面の御協力はもちろんいただいておると思うのでございます。しかしながら、この件に関しまして、議院におかれまして国政調査権に基いて御調査されることはもちろん当然であるかと存じますが、それで法務省といたしましては、もちろんこの国政調査権を十分尊重申し上げることは当然でありまするけれども、したがいまして、国政調査の実効が上がるように、できるだけ御協力いたしたいというわけでありまするけれども、先ほど申し上げましたように、将来の検察権の行使、刑事司法の適正な運用に悪影響を及ぼす事項につきましては、検察権を行使いたします法務省、検察庁といたしましては、やはり申し上げることを差し控えさせていただくというほかないと思うのでございます。
  24. 坂本泰良

    坂本委員 池田元首相夫人に一千万円近くの金が渡されているといった情報が流れておる。この点について捜査をして、そうしてそれがなかったか、あるいはあったか、その点を発表するについて、これは捜査の点を発表しないことにはよけいに疑問を生ずる。中正、公平に検察庁が調べたかどうかということがわからないと思う。この点について捜査をしたかどうか、その捜査の結果はどうだということを発表するのが捜査の機密にどういう点で触れるか、その点を明らかにしてもらいたい。
  25. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま最初に御説明申し上げましたとおり、約一億二千万円の資金を会社から引き出したということについては、申し上げたとおりで、その事実は認まるわけでございますが、その点が業務横領になるかどうかという点につきましては、そのものが丹波個人のために、いわゆる会社のためでなく費消されたかどうかということに帰着すると思います。したがいまして、その一億二千万円の使途につきまして、詳細の検討捜査をいたしたことは事実でございます。その内容も詳細に判明いたしておりますが、その内容の個々にわたって申し上げることは差し控えさせていただきたい、こういうことでございます。
  26. 山田長司

    山田(長)委員 関連して。  実は私、党の綱紀粛正委員長という立場において、この事件を最初から調査に当たった一人でございます。顧みますると、二カ年の歳月を費やしてこの事件調査に当たったのでありますが、ただいまのお話でも、一億二千万円の金子の行くえにつきましては、ただいま認められてお話があるわけでありますが、政治献金の五千八百万という問題につきましても、当時大阪地検特捜部長から、このことについてはお答えがございました。しかるに自治省において五千八百万円の政治献金の問題をつぶさに調べてみますと、その政治献金なるものは二回にわたって百万円ずつ会社の名目による献金しかなされておらない。そうすると、この事件一つを見ましても、五千六百万円というものの行くえが当然追及されなければならない筋合いのものであります。こういう状態から考えてみて、たよりにしておる検察当局が、多方面にわたってこれが消費されておるということは明らかにしておりながら、この使途について検察当局の機密に属するということで明らかにされぬということであるとするならば、これは実に不可解しごくですよ。なぜ私がそういうことを申し上げるかというと、この捜査中に、当時の担任の検事も、それから特捜部長検事正も、何回か行って、これが糾明をいたしておりました。最初のときには、この事犯はまことに政界浄化のためにゆゆしい問題であるということで、これが糾明にはかなり本腰を入れておったと私は思います。しかるに日がたつに従ってだんだん薄らいできて、しかも一年半だったらば、この三人の関係者は全部——これは当局では時期がきたので動いたなんて言っているけれども、どうも三人が同時に転勤になったというような事態は、これはしろうとのわれわれが見ては何とも不可解で理解に苦しむところです。こういう不可解で理解に苦しむ上に持ってきて、これは政界浄化のためにどうしても明らかにしなければ、私は政治家の端くれとして気が許さないのです。しかるに献金された金額は二百万しかない。あとの五千六百万というものはどっかにいっていてわからぬ。横領であるのか、政治献金しているとするならば、この金額はもっと明確にしなければならぬ筋合いのものだと私は思うのです。この政治献金についての五千六百万円は、しからばあなた方は政治献金ではなかったのか、政治献金だったのですか、明らかにしてください。
  27. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまも申し上げましたとおり、一億二千万の資金が引き出されたということはまさに事実でありますし、その各金額の行くえの詳細は捜査の結果出ております。しかしながら、その内容政治献金であったかどうか、あるいはその他のいかなる種目であったかということ、並びにその詳細については、これは申し上げることを差し控えたい。したがいまして、政治献金があったということも申し上げられませんが、なかったと申すわけでもございません。
  28. 山田長司

    山田(長)委員 そんな不明確なことが許されるものであるとするならば、われわれは何としても納得できない。それで、これは不起訴になったのですが、何ともいうことができないからこれを不起訴にするというのですか。私は、たよりにしておる検察当局がこんなずさんな捜査で、しかもわれわれとしては、これが政界浄化に何とかして役立たせようと思って調べておった結論が、こんな結論で終わりを告げるということについては何としても納得できない。一体そんな姿であなた方はこれを葬ってしまおうという意図なんですか。
  29. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま来申し上げておりますように、一億二千万円の使途については十分糾明をいたしまして、その内容はここにわかっておるわけであります。ただ、ここでその内容がいかなる種目に該当するものかということは申し上げることを差し控えさせていただきたいと申し上げておるのでございまして、不明確であって、不明確なまま不起訴にいたしたということではございません。
  30. 山田長司

    山田(長)委員 五千八百万は政治献金であるということを特捜部長が当叶われわれに言っておるのですよ。ですから、検察当局が五千八百万の政治献金ということについては、これは本人も認めたと言っておるのです。ですから、われわれは政界浄化のために明らかにしなければならない筋のものであるから、これを究明をしておるわけですよ。それでは、あなた方が出先機関の大阪地検特捜部で調べた五千八百万は、本人からも政治献金と言っているけれども、政治献金ではないということなんですか、そうでないというのですか。どっちですか。これは明らかにしなければ困るのですね。どっちなんです。これも明らかにしないというのですか。
  31. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま来申し上げましたように、一億二千万円につきましては、その資金から引き出したという事実は明らかであると申し上げました。その一億二千万の個別の使途の内容も明らかになっておると申し上げたわけです。しかしながら、五千八百万円という数字については何ら申し上げておりませんし、また、それを申し上げて、内容として認めるかどうかということも申し上げられないわけでございます。
  32. 山田長司

    山田(長)委員 検察当局の取り調べというものはどうもそんなずさんなものであるかということを、私はここに危惧を持ちますよ。少なくとも小さな詐欺事件でもあるいは窃盗事件でも、これが糾明のためには、どういう配慮をして窃盗したのかというつぶさにわたる窃盗の捜査というものがなされると思うのです。ところが、一億二千万の使途については、当局は認めておりながら、その内容については、これはどこでどういう使い方をし、だれに渡したかということが言えないというのは、幾らこれが捜査の秘密に属するといっても、もう不起訴になった今日においては、明らかにして差しつかえないものと私は思うのです。どうしてこれが明らかにされないというのか、もう一ぺんここで明確にしてもらいたい。
  33. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま来申し上げましたように、その一億二千万円の使途につきましては、個別詳細に捜査を遂げてありますから、結論は出ておるわけです。しかしながら、その内容については申し上げられないし、その内容の種別についても申し上げられないというふうに申し上げておるわけでございます。したがって、これにつきましてずさんな捜査をしておるというふうには私どもは考えておりません。むしろ年月をかけて十分捜査をいたしました結果、その一億二千万円についての使途が完全に明らかになったからこそ、不起訴処分にいたしたわけでございます。
  34. 山田長司

    山田(長)委員 関連でありますけれども、どうもふに落らないので伺うわけですけれども、大阪地検捜査当局は、五千八百万は政治献金であるということを、丹波自身も言ったというのです。ですから、五千八百万についてはこれは究明してくれろという依頼を、われわれはさらに何べんとなく言って頼んだ結果、これは黙秘権を使っておって言わない、こう言う。それじゃ犯罪が、黙秘権を使っておれば、これは検察当局は調べられぬですかと聞いたところが、黙秘権を使っておってなかなかこれは容易ならないことではあるけれども、本人は五千八百万は認めておるんだ。だから黙秘権を使えば、専門家のあなた方もこれを調べることができない状態なのかと聞いたらば、黙秘権を使っておるとなかなか調べられないんだ。年齢も七十を過ぎておりますので、間違いでも起こると、これが責任をわれわれは感じなければならないような事態になったのでは困るから、なかなかこれが調べられないが、しかし、いずれにしても、この五千八百万の問題については明らかにするつもりであるという覚悟を漏らしたのです。ですから政治献金であることだけは、これは間違いないのです。もしあなたが、そういうことで政治献金ということの金額が分離できないとするならば、これは大阪の当局の調べに間違いがあったことになるのです。この点はどうなんです。
  35. 津田實

    ○津田政府委員 捜査をいたしまして、その内容は明らかになっております。御承知のように年数の間が相当長いものですから、一億二千万という額も相当な額にのぼっておりますので、丹波秀伯自身が供述いたしておるかどうかという内容は申し上げかねますが、少なくとも関係者多数について捜査をしなければならぬことは事実です。非常に多数の関係者を取り調べをいたしました結果、一億二千万の内容は明らかになったわけです。明らかになりましたが、先ほど申しましたように、犯罪の嫌疑は不十分であるわけでありますから不起訴にいたした、こういうことになるわけです。
  36. 山田長司

    山田(長)委員 私の伺っておることと、ちょっとピントをはずさないでください。大阪地検で調べた五千八百万というのはうそだったのか、ほんとうだったのかを聞いておるのです。
  37. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま数字についてお尋ねでございますが、大阪地検が申したかどうか私は存じませんが、数字の内容については申し上げることを差し控えたいと思います。
  38. 山田長司

    山田(長)委員 それでは政界浄化のために少なくとも——ここで前の刊事局長は、何としてもこれは明らかにする、数字的にも明確な、たんのうの士をこの事件には依頼してあるということを答弁しておる。私もその当時、そういう数字的にたんのうの士を選ばれておると思って、この間、すばらしい結論が出て政界浄化に大きな役割りをするであろうという期待をかけておったのです。ところが、数字の点については明らかにすることができないというふうなことでは、これは政治献金もされておったと、われわれは当時の捜査の人たちから聞いてそう思っておったのです。やはりこのことは浄化する一つの糸口になるだろうと思っておるので、これが調査に当たっておったわけでありますが、金額についても、現地からの報告は全然なかったものですか、この点をお伺いいたしたい。
  39. 津田實

    ○津田政府委員 本件につきまして国会における国政調査があることは予想されておりましたし、すでに承っておりましたので、詳細大阪の検察庁につきまして本省といたしまして調査をいたしております。その結果、ただいま申し上げました一億二千万円の内容については、ことごとく明らかになっておりますが、その内容について申し上げることを差し控えたいということでございまして、内容が明らかになっていないのに不起訴処分にしたということはとうてい許されないことでありますし、これは検察庁につきましても上級検察庁まであるわけでございます。ことごとく話を通じておるわけでございますから、さようなことはございません。
  40. 坂本泰良

    坂本委員 それでは池田夫人に一千万円近くの金がいっておるという、その点どうですか。どうです、言えないのか。
  41. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま申し上げましたように、さような事実があったかどうかについては、何も申し上げることを差し控えます。
  42. 坂本泰良

    坂本委員 どういう理由で差し控えるのですか。理由を明らかにしなければ、こういうふうに調べたことが何もならないじゃないか。あったのをわざと、もう理由は発表しないでもいいから不起訴にした、そういうようにも考えられるがどうですか、その点。
  43. 大坪保雄

    大坪政府委員 坂本先生、山田先生のだんだんのお尋ねでございますが、ただいま刑事局長が明快にお答えいたしましたように、検察庁では、相当の時日をかけてとくと捜査をいたしてあるけれども、約一億二千万の金額に対してその使途を明らかにして、しかしながら、これが告訴されたような業務上横領というようなことにはならない、刑罰法令に触れないということで不起訴処分にいたしたわけでございます。ただ、ただいま山田先生のお話しになるような、五千数百万円のものが政治献金になっているそうじゃないか、それを聞いてきた、その内容を一々言え、特にかりに池田前総理夫人にいったということもうわさに聞いておるが、それを言えということでございますと、かりにそれが五千六百万でありますか、三千万でありますか知りませんが、その内容をやはりすべて明らかにしなければならないということになると思うわけでございます。そういうことがここで明らかになりますと、検察当局の将来の犯罪捜査ということは、これは国民一般の御協力を得るということにならないおそれがあるので、それはここで明らかにすることはひとつお許し願いたい、それが刑事局長が言っておるところでございます。将来の検察の公正にして強力なる執行ができ得まするように、その点はひとつ御了解をいただかなければならぬ、かように考えるわけでございます。
  44. 坂本泰良

    坂本委員 どうも政務次官はおかしたことを言うですね。国民の側は、政界浄化のために詳細に調べた、一千万円も献金された、こう言っておるから、それを言えないというのはますます不可解に思うわけです。まだほかにもございますよ。それを捜査のために言わないというなら、どういうわけで言わないか、その点がわからない。詳細に調べてわかっておるけれども言えないという、それだけ。不起訴処分にしたというのは、そのおもな点を言って、これはこういうふうに正当に使われておるのだから不起訴にしたなら不起訴にした、こう言うべきじゃないですか。それを言わぬと言う。しかもこの政治献金を——われわれはほかのことは追及するのを第二にしまして、政界浄化のために政治献金について言っておるのです。でなければ、参議院選挙も控えておるけれども、あるいは事務次官なんかも、やめて全国区に出るような準備もしておる人もあるらしいが、去年の選挙の際に、事務次官だった者がやめて、衆議院選挙に出て当選して、それが建設省のあの中で数百万円の金をもらったということで選挙違反起訴されて、いま裁判に付されておるんじゃありませんか。それをいま局長が言われるように、あるいは政務次官が言うように、自分のほうには全部わかっておる。しかしながらそれは言えない。それは五百円とか、一万円か十万円くらいの問題ならそれでいいでしょう。五千八百万の問題です。政治献金の届け出は二百万しかない。近江絹絲の献金が百万円というのが二度ある。それはあるかないかくらい、重大な問題だから、私どもは項目をあげてやっているのです。どうしてそう言うかというと、池田総理が病気で入院して、やめると予想がついた時分に不起訴処分にしているから、ますます疑惑が国民の間に出ている。それも言えないですか、どうですか。捜査の公正じゃないでしょう。
  45. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま申し上げましたように、上級検察庁もあることでございまして、捜査内容に至っては逐一明らかにされておりますし、明らかにされないものを不起訴にすることは許しておりませんから、これはそういう事実はないわけです。ただ、その使途の中に政治献金があったかどうか、その政治献金があったとすれば内訳はどうかというような内容につきましては、この席では申し上げかねるということでございます。
  46. 山田長司

    山田(長)委員 政治献金したという金額については、丹波秀伯なる者は五千八百万円したというのは大阪でも自白しているのですよ。あなた方のところにきている知らせでは、丹波の自白した金額についてはどういうことが書いてありますか。
  47. 津田實

    ○津田政府委員 丹波秀伯がそのことを供述しているかどうか、あるいはその供述内容のいかんということにつきましては、先ほど来申し上げております理由によりまして申し上げることを差し控えたい。
  48. 坂本泰良

    坂本委員 しかし、政治献金について、そういうだらしがないことであっては、かえって今後そういう問題が続出するのじゃないかと思うのです。検察庁に頼んで、あるいは権力によって、そうして事実があっても不起訴処分にする。それを検察庁は国会の国政調査権によっても発表しない。そういうことを発表することにおいて、国民は検察庁に信頼を置いている。そうして公正な調べをしてもらって安寧秩序が保てる、そう考える。それを、調べているけれども言えない。こっちから一つの項目をあげて聞いてもそれはわからぬ。そういうことであったら、ますます捜査の不信任が出てくると思う。少なくともこういう重大な事件について、不起訴処分にした以上は、その大まかなことくらいは、それは特に名前をあげるようなことはしなくてもいいでしょう。しかし、政治献金にどれだけやって、それが届け出してあるかどうかとか、それだから必要がないとか、それくらいのことは、ここに国政調査権で発表してもらわなければ、ますます検察庁に対するところの信頼が置けなくなる。また、われわれとして、数回も聞き込んで、そうして調査もして、激励し、要望しておるこの問題については、各個人の名前はこれは別にして、幾らの金額がどういう方面にいっておるか、特捜部長その他検事正から聞いた内容がもっとありますね。そのくらいは、不起訴処分にしたという責任者たる検察庁は、名前を秘して、その名前の人には関係がないようにして、金額くらいは、どういう方面に幾らくらいいっておる、そのくらいは明らかにすべきだと思うのですが、どうですか、政務次官は。
  49. 大坪保雄

    大坪政府委員 ただいまの点は、最初に刑事局長が申し上げましたように、将来長きにわたって検察の犯罪捜査の公正を期するためには、国民の大方の協力を得なければならぬわけでございます。それが結局、だれに金がどこから幾らいったということをかりに明らかにするとしますと、それはどういう事情でそうなったかということ等も明らかにしなければならぬということになりまして、犯罪捜査内容をやはりことごとく明らかにしなければ、結局御納得もいただけないし、国民も納得しないだろうと思います。そういうことでございますと、国民が、自分としては秘密で協力したのだというつもりのものが明らかになることによりまして、将来非常に支障を来たすということになると私どもは思うわけでございます。でございますから、検察当局としては相当長い年月をかけて慎重に捜査をいたして、その結果、法律上の判断をいたして不起訴処分にいたしたのでございます。そこのところは御了承いただかなければならないので、その使途について一々申し上げるということは、将来の検察について支障を来たすということを私どもは深く考えるわけであります。
  50. 細迫兼光

    細迫委員 告発容疑は横領ですね。被告は横領はしていませんという弁解をしたに違いない。だから当然捜査は、被告が弁解している先へお金がいっているかどうかということに手を伸ばしたに違いない。一体その多岐にわたっているお金の行く先から、はたして受け取っているかどうかという領収書を徴収した形跡がありますか。
  51. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお話のような点につきましては十分捜査をいたしておりまして、その事実は明らかになっております。
  52. 細迫兼光

    細迫委員 政治献金をしたという弁解があるのですが、政治献金をしたと言って、ああさよかでは、ふところへ入れているかもわかりません。政治献金の行く先についても捜査なさったのですか。
  53. 津田實

    ○津田政府委員 先ほど申し上げましたように一億二千万円の使途につきましては、もちろん全部その関係者について取り調べをいたしております。しかし、その中に政治献金があったかどうか、あるいはほかの費目であったかどうかという点につきましては、申し上げることを差し控えたいと思います。
  54. 小島徹三

    ○小島委員 これは幾ら議論したって水かけ論だと思いますが、ただ一つだけ聞いておきたいことは、一億二千万円を会社から個人が引きずり出していることははっきりしているということをいま当局でおっしゃっている。そうすると、個人が会社から引きずり出した金を個人が使ったにかかわらず、それが横領にならない。普通なら会社から個人が引きずり出せば横領になるはずのものが、ならないということについては、その使途というものが何らか会社のために使ったということでなければならぬが、自分自身のために使ったのなら横領になると思うのです。その辺のことはもちろんここで当局から聞く必要も何もないと思う。思うけれども、個人が会社から引きずり出した金が、ただ会社のために個人が使ったのだとか、そういうことによってこれが横領罪として成立しないのだということになってくると、その判断というものは非常に重大な影響を将来に及ぼすと思うから、その辺につきましては十分検察当局においても考えていただくということにしたい。この議論は先ほどから聞いておって水かけ論にすぎないと思います。私は、元来捜査の秘密は保つべきものだと思いますから、その具体的内容についての詳しいことはこの際やめたがいいと思う。国政調査といっても、具体的内容について当局は言うことは無理だと思う。しかし、これに含まれている問題というものは非常に深刻なものがあると思います。個人が会社から引きずり出している金の使途というものについて、そう簡単に、それが会社のために使われたのだというようなことで、ただ一片の通りことばでこれを見過ごすということのないように、十分今後してもらいたいということだけ私は希望して、この質問はもう打ち切ってもらいたいと思います。
  55. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま小島委員のお話がございましたので、若干申し上げたいと思うのでございますが、丹波個人が引き出したというふうに確かに私は表現いたしたと思いますけれども、それは、丹波は当時役員で、役員が会社の金を会社の経理の形式に従って引き出すということにつきましては、役員が会社の窓口で金を払ったというのではなくて、個人が仮払いなら仮払いとして、それを一時払い出して使った、あるいはそれを返したというような事実の連続なんで、したがいまして、会社の窓口で、なるほど事務員が支払ったというような事実ではございませんが、会社のために使われたものというふうに考えるわけであります。したがいまして、それは個人がかってにふところに入れておったというような意味の金ではないというふうに申し上げたいと思います。表現としては、個人がというのは、つまり会社の窓口から出したのではない。結局は会社の経理から出ておるわけですという意味でございますから、これは会社の役員としては当然できる事柄でございますから、そういう意味の表現として用いたわけでございますから、その点を誤解ないようにお願いしたいと思います。
  56. 坂本泰良

    坂本委員 この問題は、一億二千万という金が丹波個人に対して仮払いで出ているのです。その仮払いを出すについては、会社が相当の金額を出す場合は、その目的を明らかにして、そうして仮払いをしなければならない。その点でお聞きしたい第一は、その仮払いの目的に使っているものということです。政治献金を仮払いで、目的を言うて会社は出しておるのです。二百万は会社の名義で資金の届け出がありますが、いかに代表取締役といえども一億二千万という金を、これは数回にわたって出ておるそうですが、数回にわたって出す以上は、目的がはっきりしなければならぬ。ただ仮払いで出しているなら、その出したこと自体、それだけで背任罪を構成すると私は思うのです。  それからもう一つは、調べておるけれども発表できないと言うから、そこに一番疑問が起きるわけです。裏を返して言えば、検察庁は、どんな事実があっても、調べたけれども不起訴にする、かってなことができる、こういうことになるわけです。政治資金の問題については、これはかっては、いまの佐藤総理の場合に指揮権の発動をして、そうして天下に汚名を流したことがある。それと同じで、政治献金の問題は、その内容、金額くらいは明らかにして、そうして届け出をしているのかどうか、そこまで捜査をしなければならぬ。そこまで捜査をしないと、これはやはり検察庁はかってなことができる、こういうことに国民は判断せざるを得ないのです。それじゃ、名前も言えなければそれでいいけれども、五千八百万という金を政治献金したと自白しているんだから、その調べはどうなったか。ことに池田元総理夫人に対しては一千万をやった、こういうようなことがいわれておりますから、それをここで明らかにして、そうして検察官のその処置についての解明をしなければ、いまのようにほおかぶり主義で、不起訴にしたのだ、不起訴の理由は十分あるんだ。それは検察庁の中だけの考えであって、ことに事、当時の総理大臣に関する問題なんだから、これを明らかにしなければ、総理大臣の権力に押されて、そうしてそういう事実があるけれども発表できないというので不起訴にした、こういうふうな考えを持つ。そういう意味でもう少し内容を明らかにしたらどうですか。その点の所見を聞きたい。
  57. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまの最初の御質問の仮払いと申し上げましたのは、私は会社には往々ある例を申し上げたのです。本件の内容が仮払いで出されておるかどうかということについては、申し上げることを差し控えたいと思います。  それから政治献金があったかどうかというような問題につきまして、ここに内容を申し上げられないと申しますのは、先ほど来申し上げましたように、関係者につきましては、自分の秘密あるいは自分の名誉に関する事項についても、進んで検察官に協力いたしておるわけであります。したがいまして、その内容が明らかになるとしますと、将来の検察運営に差しつかえを来たすという意味において検察権、したがって国の刑政の公正を維持するために必要だという意味において明らかにいたさないと申し上げておるのでございます。
  58. 濱野清吾

    濱野委員長 坂本君に申し上げますが、何か勘違いをしているんじゃないかと思うのだが、仮払いというのは商法の実際の経理の運営上、唐突の場合とかさしあたりというような、とにかく出しておけということで仮払いをして、後日使用目的をはっきりして、振りかえ伝票を切るわけなんです。ですから、仮払いで出したことが違法とかなんとかいうことには相なりません。  それからもう一つ、社会党山田君もあなたも、議事進行上非常に困るから、私から申し上げて協力を願いたいのでありますが、一億二千万は役所のほうでも認めている。あなた方のおっしゃっているうち、ぼくがちょっと納得できないのは、五千八百万円は丹波がその会社の役職を持っている当時、政治献金としてそれを支出した、こういうのがあなたのほうの論点なんでしょう。ところが、政治献金をしたということは、一体あなたのほうで絶対の信頼を持てるのか、持っているのか、また特捜部長捜査中こういうものを国政、審議権の行使であっても言うはずがない、私はこう思うのですが、これは言っているのかどうか、あなた方はほんとうに確信を持って外部にも言えるのか、院内は言論の責任をとられませんけれども、一般民間に行ってまでもこうしたことを堂々と言えるのか、その責任を負えるのか、私の考えでは、検察の機密は、やはり人の信用とか名誉とかいうようなものに関連いたしますから、捜査中は少なくとも言えない。捜査後であっても言えないのがあたりまえだ。ですから、いわんや、捜査中の案件について五千八百万円の政治献金をしているという自白をしたとかなんとかいうことをどなたかおっしゃったかわからぬが、私は、普通の常識のある検事なら言うはずがないと思う。ところが、あなた方は、それは言っていると言って、ここで押し問答をしているが、一体ほんとうに信頼できるのでしょうかね。私は、常識から見れば言えるはずがないと思うが……。
  59. 坂本泰良

    坂本委員 この問題は、社会党綱紀粛正委員会で決定をして、法務委員会でこの問題を追及するということで出たわけなんです。基本的に一億二千万仮払いで出ている、その使途も明瞭になっている、しかしそれを不起訴にしている、その内容は言えない。これでは現在の検察制度として、いかに捜査の機密ということであっても納得できない点がある。この点は、社会党としての問題でありますから、この基本の問題を含めて、いま委員長の言われた問題もあわせて委員会でかけて、そうして次の法務委員会でやってもらいたい。
  60. 濱野清吾

    濱野委員長 そうしてください。これは長らくの問題で、いつまでもこの委員会で継継しておくというのも迷惑ですから……。あなたのほうの五千八百万円の政治献金をしたという事実がなければしょうがないので、真実あなたのほうは社会に向かって責任を負える、そういう五千八百万円の支出があるのだという確信を持ってやっているのかどうか。社会党の特別委員会が決定したからといって、それが真実でない場合は非常に迷惑なんで、ですからもうこの審議は、あなたのほうも慎重な態度で将来臨んでもらう、そういうことにしてくださいよ。
  61. 坂本泰良

    坂本委員 次会までに慎重に、基本の問題が違っているから……。
  62. 濱野清吾

    濱野委員長 そういう基本の問題はみんなが納得できるのだが、あなたのほうで言っている五千八百万円が……。
  63. 坂本泰良

    坂本委員 党の問題として、次の委員会まで留保いたします。
  64. 濱野清吾

    濱野委員長 次の質疑に入ります。坂本君。
  65. 坂本泰良

    坂本委員 去る十一月五日の夜、午後七時の問題でありますが、八王子駅北口にある喫茶店のフランク、ここで小松刑事——これは八王子警察か、あるいは警視庁本庁のほうか、それについていま……。その小松刑事が警察手帳をなくしたというような事件関連するわけですが、小松刑事が、横須賀の原子力潜水艦寄港反対に社青同として参りました佐藤というのに、労働組合や社青同は原子力潜水艦寄港反対闘争を今後どのように進めていこうとしているのか、社青同の内部情勢は横須賀集会に行くのか、あるいは十四日から始まる社青同の全国大会に行くのか、こういうことをフランクで聞きまして、ぜひいろいろの印刷物、それから主として社会新報、それから「のろし」という社青同東京地方本部の機関誌、それから「青年の力」、こういうのを郵送してほしい、これに協力してくれれは前回の問題については——前回に何か逮捕された問題か何かあったわけですが、前回の件は起訴しないでやる、また謝礼を出す、こういうスパイの強要をした事件がある。このスパイ事件に対して、これを糊塗するために警察手帳の強奪事件というのをでっち上げて、そうして合計七名の検挙をして、さらにこの国会図書館の七階にある社青同の事務所に警官二十名ぐらい押し寄せて家宅捜索した。その家宅捜索令状は、見せろと言ったら見せない。本庁にはあるけれども持ってきていないと言って見せない。それをやった。あとで捜索令状を見ると、警察手帳強奪事件についての家宅捜索になっている。そういう事実が、私がいま言ったような事実があったかどうか、まずその点を承りたい。
  66. 後藤信義

    ○後藤説明員 いまお尋ねの点は、お話にありましたように、去る十一月五日の夜起こりました事件でございます。これは警視庁の公安第二課に勤務いたしております小松という巡査でございますが、この巡査が、日本社会主義青年同盟東京地区本部三多摩分室の実態を知りたいということで、その状況を聞くために、八王子駅の近くのただいまお話しのフランクという喫茶店で、この社青同の一員でありますいまお名前が出ました佐藤君に会ったわけでございます。そして約一時間ばかり話をいたしまして、午後八時三十分ころに店を出ましたところが、数名の者に取り囲まれて、そしておまえはスパイであろう、あるいはスパイを強要したというようなことで詰問されましたが、その過程でこれらの者の包囲を脱しようとしましたが、小松巡査はついにこれを果たしませんで、腕をとられたりあるいは引っぱられたり、あるいは背中を押したりこづいたりされまして、暴行を受けたのでございますが、最後には持っておりました警察手帳を奪取されたのでございます。その警察手帳を奪取されましたのは、おまえはスパイであろう、警察官ならばその身分証明書である手帳を見せろというようなことであったようでございます。最初は、自分は警視庁の警察官であるが、そういうものを見せる必要はないということで突っぱねたようでありますけれども、こういう状態で包囲の中に置かれ、そして集団で暴行を受けましたために、最後には警察手帳を出して見せております。それを最初は表紙を見せておる。その次には、中を見せなければいけない、中まで見せる必要はないというような問答を重ねておるようでございますが、ついに、数人の者が両わきから小松巡査をかかえておる、そのうしろからやってまいりまして手帳を奪って逃走した、こういう事件でございます。  このうち一名はその晩九時ごろに現行犯で逮捕いたしております。それから残る六名は、十一月七日から二十五日までの間にそれぞれ通常逮捕をいたして、いずれも身柄つきで検察庁に送致をいたしております。被疑者はいずれも勾留がつきましたが、少年の一名を除きましてはそれぞれ起訴となりまして、現在保釈中でございます。  なお、お尋ね中に社青同の本部を捜索したというお話かございましたか、これはおそらく——九月二十七日の原子力潜水艦寄港阻止の集会デモが横須賀でございましたが、その事件関連いたしまして被疑者が三名逮捕されておるのでございます。その証拠品を押収するための捜索が行なわれたのでございまして、これは十一月五日のこの事件とは全然関係がないのでございます。そうしてまた、令状を持たなかったというお話でございますが、これは間違いでございまして、令状ははっきりと責任者に示しております。場所が場所でございますので、これは国会の事務当局、それから国会図書館側の責任者、それからお話のようにこの一室は社会党の議員さんの御使用になるということでお貸ししておるそうでございますが、実態は社青同がこれを使っておるということでございましたので、念のために私どものほうでは社会党の方にも連絡をし立ち会ってもらい、それから社青同の本部、それから東京の地区本部の方にも立ち会っていただくというわけで、合計五名の方に立ち会っていただいておりますし、また令状ははっきりとこれを呈示しておるのでございます。その際、これを写させろという要求があったようでございますが、これを拒否しておるのでございます。あるいはその点が間違って、先生御指摘のようなことになったのじゃないかと考えておるわけであります。
  67. 坂本泰良

    坂本委員 時間がないから、こまかい点は後日に譲りますが、フランクで佐藤に対して協力してくれ、そうすれば前回の事件起訴しない、謝礼も出す、こういうことを言ったとすれば、これは起訴、不起訴は一刑事がやるべきものじゃない。これは検察庁がやらなければならぬ。一刑事がこういうことを言って、起訴しないという非常に権力的な圧迫をして、それから謝礼も出す、これは明らかにスパイをしろということになる。こういうことはやるべきものじゃないと思うのです。この点どうですか。
  68. 後藤信義

    ○後藤説明員 いまお話しの点は、私のほうで状況調査いたしましたが、事件につきまして起訴をしないようにしてあげるというような話は出ておりません。これはその相手になりました、先ほど名前が出ました佐藤君は、なるほど十月十六日にデモ行進の際にジグザグデモの指揮をいたしましたために現行犯で逮捕されておりますが、その後家庭裁判所に送致をされまして審判開始のまま釈放になったのでございまして、これはそういうことを言う立場にもございませんし、また小松巡査がそういうことを言ってはおらぬということでございます。それから謝礼の問題につきましても、この点は全然触れなかった。と申しますのは、詳しく申し上げますと、実は社青同の内容、これは最近いろいろ社青同の関係の人々が至るところで不法行為をやっておる、そして警察につかまるという事件もひんぴんとして起こっているということで、その状況を知りたかったのでございます。そのために佐藤君に状況を聞きたいということで、そのつとめ先でありますところに電話をして会いたいということを申し入れたのでございます。それに対しまして佐藤君のほうから、それじゃ場所はここにしよう、時間はこうしようということで指定をしてきております。それが八王子駅の北口のほうでございますが、そこの食堂が当日休みであったために、その指定されました時間に小松巡査が落ち合いましたけれども、二人連れ立って近くのフランクに行ったのでありますが、これは佐藤君のほうからそういうふうに持ちかけてフランクに行ったのであります。そして喫茶店に入りましてお茶など飲みながら話をかけたのでありますが、冒頭に、ただいまお話の機関紙などが入るまいかという話をしましたところが、それはむずかしい、そういうことをすればスパイになるのじゃないかというようなことで、佐藤君の態度が拒否する態度でありましたので、これ以上頼んでもむだであるというようなことで、もうその話は打ち切りまして、しかし、いますぐでなくてもいいんだ、将来また何か協力をしてくれる、内容を聞かしてくれるようなことがあったならば、ここに電話をしてくれということで、警視庁の電話番号と自宅と自分の名前とを書いた紙切れを渡しておるのでございます。したがいまして、あと一時間ばかりおったということでございますが、最初にそういう話を切り出して、途中で警察官ならば身分証明書を持っているであろうというようなことで、警察手帳を呈示するというようなことがありましたので、時間としては総計一時間程度でございましたけれども、初めに拒否される態度に出ましたために、立ち入った話にはなっておらぬのでございます。大体は最近の社会情勢と申しますか、そういう世間話などで、そうして八時半ごろになって出た、こういうことでございますので、事件について手心を加えてやるとか、あるいは協力をしてくれれば謝礼を出すというようなことで、そういう誘導したようなかっこうは全然ないというふうに私どもは承知しておるのでございます。
  69. 坂本泰良

    坂本委員 それは小松刑事としてはそう弁解しなければしょうがないでしょう。しかし、事実はそうじゃないのです。これは全国にわたる今後の大きい問題ですから、一応あなたの答弁を聞いたから、これに対する究明は次会に譲ることにいたします。ただ、少年院送りで恩を着せて、そうしてこのフランクというところに行って、こういうようなことをやることは、これは現在の警察官として絶対やっちゃならぬと思うのです。それで、そういう問題もありますから、これは次会に、私の調査した点がまだたくさんありますから、究明することにして、この程度にしておきます。  そこで刑事局長に、この問題に関連してお聞きしたい点があるわけですが、これは七名が逮捕されて弁護人が面会に行く、その際に接見を許すが、弁護人の接見を許す場合は検事の自由である、だからなかなか接見の日時を指定しない、しかもそれは二日も三日も先に指定する。こういうような事実が本件に関連して八王子の検察庁であるわけです。これは刑事訴訟法三十九条に違反するものであって、弁護人の選任あるいは面会は、防御準備の不当な制限をしてはならないとの規定違反じゃないか、こういうふうに考えるわけでありますがどうかという点が一つと、それから、これは警察庁にもあわせて聞きたいのですが、勾留前の七十二時間の拘束中は弁護人は自由に接見できる、こう思うのです。三十九条の一項が全体規定として自由に接見できるというふうに解釈するわけですが、検察当局はこの七十二時間は接見させなくてもよい、こういう考えをとっておるかどうか、この二つの点についてお聞きしたいと思う。
  70. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまの第一の御質問の点でございますが、さような事実があるかどうかも存じませんが、検察庁といたしましては、刑事訴訟法どおりにやっておるというふうに考えておるわけであります。  なお、ただいまの第二のほうのお話につきましては、やはり接見については指定をしておるというふうに思っております。
  71. 坂本泰良

    坂本委員 その指定をするのが、これは防御権の問題であるからその日にしなければならぬと思うのです。それを故意に二日とか三日とか先に延ばす。これはまた参議院選挙もありますから、選挙違反の場合でも検察官は乱用すると思うのですが、これはやはり七十二時間内においても自由に接見させなければならない、こういうのが憲法の立場であり、多少取り調べ等には関係するでしょうけれども、弁護人が被告人と接見をするということは、いわゆる憲法が許しておる被疑者の防御権のための弁護人であるから、これは直ちに許さなければならぬ。ところが、現在実際の刑事訴訟法どおりと局長はおっしゃったけれども、実際の現場の取り扱いというのは、接見は二日も三日も先にやっておる。それなら何日ならいいでしょう、きょうはだめです、そういうことは原則から考えても許されない問題であると考えますが、その点いかがですか。
  72. 津田實

    ○津田政府委員 三十九条の第三項の問題と思いますが、原則として御趣旨はそのとおりだと思いますが、ただ捜査の必要上指定日時をきめておるわけです。したがいまして、その指定が不当であるかどうかという問題は、具体的事件について判断いたすほかはないと思います。原則論としてはお話のとおりだと思います。
  73. 坂本泰良

    坂本委員 そこで問題は、やはりその日に接見しなければ、二日も三日も先に指定するというのでは接見の効果もないし、防御権の準備もできない、そうしなければ公平じゃないと思うわけです。少なくともその日行ったらその日の、やはり午前に行ったら午前中、午後行ったら午後、夕方行ったら夕方、食後に行ったら九時ころまでに接見をさせなければ、きょうはだめです、あしたです、あさってだというのでは、これはいろいろそこに行く交通上の関係等もあって、結局面会させないという結論になるわけですから、そういう点についてはひとつ全国的に周知徹底して乱用のないようにしてもらいたいと思うのですが、その点いかがですか。
  74. 津田實

    ○津田政府委員 刑事訴訟法にも「被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならない。」というただし書きがついております。したがいまして、もちろんそういう趣旨によって運用する必要があることは当然であります。ただ、日時の指定がその日でなくてはならぬというふうに解釈すべきかどうかという点については、私どもは必ずしもそうは考えていないわけですけれども、防禦の権利を不当に制限しない限度において、捜査との必要等をにらみ合わせて指定をいたすというのが穏当である、こう思っております。
  75. 坂本泰良

    坂本委員 あなたがおっしゃるのだと、あさってしかだめだということになるのです。少なくともその日にさせるというようなことでなければ乱用になると思うのです。その点は非常に重大な関係がありますから、具体的問題として全国的にそうなりがちなんです。特に公安事件とか選挙違反については、それは面会させないという結論になってしまうのです。あした来い、あさっての午前何時からということで指定する。せっかくそこへ行ったら、それは捜査、取り調べの関係で一時間、二時間の時間を待つようなことは、これはやむを得ないでしょう。しかし、少なくとも午前中行ったら、十時に行うたら十二時までくらいには、わずか十五分か三十分ですから、これはひとつ指定してくれてしかるべきである。それは午後でもという場合にも多いでしょう。少なくともそうしないと、翌日にするとか、三日後にするというのでは、これは七十二時間内の問題ですから乱用になるし、防御権を制圧する、そういうことになりますから、その点はぜひひとつ善処してもらいたいと思うのです。
  76. 濱野清吾

    濱野委員長 坂本君、それは検察庁のほうから言わせれば、捜査上のことに関係するだろうし、それからあなた方の商売からいけば、そうでなければいかぬだろうし、しかし、実務家の弁護士会あたりはどう考えているのですか。
  77. 坂本泰良

    坂本委員 弁護士会からそう言って……。
  78. 濱野清吾

    濱野委員長 弁護士会の、実務家のほうはそういうことをおやりになったほうがいい。それは立場立場で価値が違うものだからいつもこの議論ができるんだ。だから、やはり実務家である法曹界の意見をまとめて、そうして陳情でもしてきたほうがいいでしょう。
  79. 坂本泰良

    坂本委員 委員長、それは簡単な問題ではないのです、人権の問題ですから。
  80. 濱野清吾

    濱野委員長 これはなかなか問題だから一向に片づかない。片方は検察当局だし、あなたのほうは防御権を行使するほうだから、やはり価値が違うのだからしようがない。
  81. 坂本泰良

    坂本委員 委員長と議論するわけではないから、それは……。
  82. 濱野清吾

    濱野委員長 これはこの程度で、ひとつ次に進んでください。
  83. 坂本泰良

    坂本委員 だから善処するかどうか、七十二時間の問題だから、それが一番大事なところなんです。
  84. 濱野清吾

    濱野委員長 その点はわかるのだ、わかるのだけれども、お互いがビジネスの問題だから……。
  85. 津田實

    ○津田政府委員 乱用にわたることはもちろんできないことは当然でございますので、そういう意味で運用すべきことはもちろんでありますが、捜査の必要ということももちろん無視できません。そこのつり合いの問題だと思うのであります。したがいまして、即日とか即刻とかいうことはとうていできない場合もあり得るということを御了承願います。
  86. 坂本泰良

    坂本委員 大体いままでは、普通の事件はすぐその日、ああそうですか、というのでやらしてくれた。公安事件とか選挙違反については、わざとあしたにしろとかなんとか乱用する。だから私は、そういうことのないようにもっと善処してもらいたい、そういう希望なのです。  なお、この問題については七名がいま起訴されておりますが、令状その他の問題等がありますから、これは次回に留保します。
  87. 濱野清吾

    濱野委員長 それからついでに御相談ですが、その他君は三件を質疑しているが、これは次回にして、志賀君の問題を片づけようじゃないか。君はいつでもやれるのだから。
  88. 坂本泰良

    坂本委員 人権の問題をちょっと……。
  89. 濱野清吾

    濱野委員長 それではそれは簡単にしてください。
  90. 坂本泰良

    坂本委員 愛媛県の学力テストの問題で、会で問題になり、またこの問題については地方行政委員会、文教委員会で問題になっておる点ですが、結局、この問題が起きて愛媛県が四十何位の学力テストの結果がことしは二位に上がった。それはどうして上がったかというと、学力テスト前の三カ月間はそのテストの科目だけの練習をやらせて、ほかの勉強はちっともさせないということがはっきりしてきた。それから右に成績のいい者を置いて、左に成績の悪い者を置く。そしてその幅も十センチとか二十センチ縮めて、左の成績の悪いのは右の成績のいいのを見れる、いわゆるカンニングを推奨する。その結果が四十何位から第二位まではね上がった。学力テストのよくない点がはっきりこの問題で出たわけです。  それに関連して、もう一つあるのは、成績の悪い子供は学力テストの日は受けさせぬ。お前はテストの日には出てこないでいいといって欠席をさせる。それだから成績の悪い子は欠席をするし、またあまり悪くないのでもカンニングをやる。また、全般の学問をさせずに、学力テストの点数を上げるためのその科目だけをやるというようなまことに嘆かわしい教育の方法をやって、ただ学力テストの点数を上げる、成績をよくするというようなことがここに出ておるのですが、私がここにただしたいのは、その成績の悪い子供が学校の近所であった。そこでその日に出て行った。ところが先生が、定木を忘れた、普通定木を忘れたならば学校にあるのを貸してやるのを、取ってこいと、取りに帰したわけです。そうして取りに帰って、持って行ったら、試験が始まっておったから、とうとうその試験は受けなかったということで、その子供と父兄が人権擁護委員のほうに申し出ましたから、人権擁護委員がそれを連れて法務省の愛媛の人権擁護課に申し出をしたわけです。そこで、大体人権擁護には人権擁護委員が協力しなければなりませんから、これは超党派的に協力をしておるわけなんです。そこで、そういう人権委員申し出があれば、それを擁護課に連れて行って、そうして申し出をして、その委員が主になっていろいろな調査をするということが慣例上できている。そうしてその人が、委員の中にも熱心なのと不熱心なのがおりますが、非常に熱心にやる、成績も上がっておる、そういうことであったのを、この問題については、高松の人権擁護部、それから松山は人権擁護課ですか、そこで、これは松山の次長が来て、そしてこの事件はいわゆる官僚が調べる、人権擁護委員は調べぬでもいい、関与してもらっちゃ困るというようなことで、暗に排除をしておる。こういう事実があるわけですが、この点について私、松山の人権擁護課に行って、この点についてはまことに不可解であるから、本省のほうにもその理由等を報告しておいてもらいたい、こういう要望をして、もうすでに一カ月以上になるわけですが、その点について局長、どういうことになっておるか、承っておきたい。
  91. 鈴木信次郎

    ○鈴木説明員 ただいまお尋ねの点につきましては、本年の九月七日に、松山市立素鵞小学校六年生の福角力という子供の母親福角フジ子さんから、松山地方法務局に申告がありまして、同局において現在調査中であります。その内容は、大体御指摘のようなことでありまして、結局、福角力の教育を受ける権利を侵害した、こういう申告事実であります。これに対しまして、現在なお調査中でありまして、結論的なことは言えないのでありますが、現在までに判明したところによりますと、大体次のとおりであります。  すなわち、御指摘のような受験妨害の事実につきましては、相手方、これが酒井という先生でありますが、酒井教諭は、同日午前八時十分ごろ教室に入り、掃除の状況等を見た後、掃除当番の生徒全員に、これには被害者も含んでおるわけでありますが、みんな、先生が昨日注意しておいたテストの道具は持ってきていますかと尋ねましたところ、福角力が、忘れました、ぼく取りに帰りますと言いましたので、被害者の家が学校から往復十五分くらいのところにあり、テスト開始までに時間があると判断しまして、八時五十分までには席に着いていないといけないから、それまでに帰ってくるように指示して、被害者の家に帰ることを許したと申し述べており、申告の事実を全面的に否定しておるのであります。そこで、その場に居合わせた生徒全員について調査しましたが、福角力が酒井教諭に忘れものを取りに帰された問題について明確に記憶しておる者がなく、福角力が述べているように、酒井教諭が同人に対し十時半まで学校に来なくていいというようなことを言ったということは、現在までのところ認定することはできないというのであります。  そこで、第二の御指摘の点でありますが、本件につきましては人権擁護委員の黒田義清という方がいらっしゃったわけでありますけれども、この黒田委員にその調査をすることをお断わりしたという点につきましては、事件調査につきましては、御指摘のように地元人権擁護委員の関与を求める場合もあり、またそのほうが適当な場合ももちろんございますが、人権擁護委員執務規程の七条によりますと、事件の性質、地方の民心、事件関係者との親族関係その他の事情により調査の公平を害するおそれがあるというような場合には、その委員は当該事件調査処理を回避すべしというふうに規定があるのでありまして、本件の場合に、もちろん黒田委員としては公平な取り扱いをされるものと信ずるのでありますけれども、この事件の性質上、黒田委員が関与することは一般に対しまして公平を疑わせる懸念があるので、御辞退願ったのであります。すなわち、同事件の性質上同委員が関与されることが公平を疑わせるおそれがあったということは、これは坂本委員承知のとおり、愛媛県におきましては、かねてこの学力テストの実施をめぐりまして、県教組とそれから県の教育委員の間に対立があり、今回の事件につきましても、すでに県議会において社会党の岡本博議員が取り上げたことから問題とされたものであります。そこで労働組合の役員であるところの黒田委員が直接この事件調査に関与されるということは、相手方すなわち担任の教諭及び学校側に対しては対立当事者間の調査を受けるという感じを与え、また公平な調査ではないという感じを与え、調査目的を達し得ない。こう判断いたしましたので、同委員には御辞退願った、こういう経過になっております。
  92. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、この七条の回避の問題とは、だれが認定してやられたことかという点が一つ。それから、いままですべての案件に対して非常に協力をしてきた黒田委員に対してこれを排除する、しかも高松の法務局からいって排除をした。だから、これは考え方によっては、そういう対立があるから、反対の側の委員を入れて、あるいは自民党側の委員を入れて、委員を二人にしてやるというような公平の点もあろうかと思いますが、これについては局のほうでやる、官僚的にやるということ、官僚がやるとかえって不公平になるおそれがあると私は思う。そういう点についてもっと善処ないと——これは九月ですから、十、十一、十二でもう二カ月半になります。これを私がこの法務委員会で聞くのも、いろいろの都合で延びたわけですが、二カ月半にもなってまだ調査中というのは、これはどういうものか。ことに法務局は早くこれをしなければならぬ、やっているかどうかわからない。まずその点を承りたい。
  93. 鈴木信次郎

    ○鈴木説明員 第一のだれが認定するかというお尋ねでございますが、これは客観的に認定できると思うのであります。実際の運用といたしましては、まず第一に当該事件を担当いたしました地方法務局長、それから御本人がそういうふうにお考えになりまして、進んで回避されるということ、これはもちろんでありますが、さらに地方法務局長で判断がこれはむずかしいと考えます場合には、監督官庁でありますところの法務局長、四国で申しますと高松の法務局長、さらに私のほうにもこれが事案に応じて相談がある、それによって決定する、このような順序であります。  それから、せっかく熱心な委員がいて担当するというのに、それを回避してもらったのはどういうわけかという第二の点でありますが、これは先ほど申しましたように、黒田委員が現在労組の役員をしていらっしゃるということは、御本人がそのことから不公平な調査をなさるというふうには、私ども毛頭考えませんが、やっぱり客観的に見ました場合に、すなわち第三者が見た場合にどうだろうかということ、これも事件の公平な解決という点からは考慮すべきことだろうと考えたので、この際は黒田委員に御辞退願って、役所側でこれを調査するのが適当であろう、このように考えたのであります。もちろん、御指摘のような、それでは反対側のたとえば自民党側の委員も入れたらいいのではないかという御指摘でありましたが、そのような方法もこれは考えられますけれども、この場合には役所側でやるのが私どもは適当である、このように考えたのであります。  それから第三番目に、事件の申告があってから二カ月以上にもなるのに、まだ結論が出ぬのはおかしいじゃないかという御指摘でありますが、二カ月以上くらいならそうおそくはないのじゃないか。私ども一応三カ月以内にできるだけ事件の処理をするようにという一応の目標を置いており、現にそのように努力中でありまして、この事件につきましても、おそらく近い将来に結論は出せるだろう、かように考えておりますから、御了承をお願いしたいと思います。
  94. 坂本泰良

    坂本委員 そこで、これは子供と子供の母親から人権の申告をしたというので、あわてて学校の素鵞小学校ですか、一色校長と担任の酒井という教師の二人が法務局に行った。そういうことを聞いておるわけですが、どういう用件でどういうことで行っているか、その点については調査はしておられるかどうか。
  95. 鈴木信次郎

    ○鈴木説明員 二人が御指摘のようにあわてて法務局にいらっしゃったかどうか、そういった点につきましては報告を受けておりませんが、本年の九月十二日付で、担当の酒井若栄という先生とそれから校長の一色豊重という方から、それぞれ反対に、本件につきまして事実無根のことを一般に言われたのは逆に人権侵害であるという申告が出ております。
  96. 坂本泰良

    坂本委員 そうすると、九月十二日に逆に人権侵害だという申告が出ておるわけですね。
  97. 鈴木信次郎

    ○鈴木説明員 そうです。
  98. 坂本泰良

    坂本委員 そうすると、これに対する調査はどうなっておりますか。
  99. 鈴木信次郎

    ○鈴木説明員 並行して進めております。
  100. 坂本泰良

    坂本委員 いろいろ聞きたいことがありますが、ことにこれは学力テストの関係できょうは初中局長がおいでになるので、これの調査内容、それから調査の出発点等の二点について、それと関連しますから、局長にもっとただしたいところもあるわけでありますが、時間がかかりますので、きょうはこの程度で留保しておきたいと思います。
  101. 濱野清吾

    濱野委員長 志賀君。
  102. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 去る十二月二日の官報に「人権侵犯事件・最近の傾向」という題で、法務省からの記事が載っております。それによりますと「本年度の侵犯事件の受理件数は、昨年度に比し相当大幅な増加が予想されるようになった。すなわち、本年九月現在における受理件数は五千十七件で、すでに昨年度の総受理件数に近い数字を示しており、年度内にはおそらく六千件を上回わるものと思われる。」なお、「公務員の職務執行に伴う侵犯事件」の新受理件数は四百五十四件で、昨年同期に比べ六十七件増加している。その増加の大部分は、「警察官によるもの」であることは注目に値する(昨年同期に比べて四八件増)。」なお、」処理の面から見ると、「公務員の職務執行に伴う侵犯事件は」、処理件数四百五十七件の四七・九%に当たる二百十九件に侵犯の事実があるものと認定され、それぞれの処理がなされている。その処理のうちに、勧告五件、説示八十一件の含まれていることは、「公務員の職務執行に伴う侵犯事件」に比較的重要案件の多いことを意味している。」かように出ております。  それで私自身の経験でありますが、ことしの五月十五日の核停条約の賛成投票以来、警察のほうから左右双方の暴力に対して十分留意されたいという警告がありました。事実私の家の回りにはそういうこともかなりあったのでありますが、最近になりますと、どうもどちらとも見当のつかない者が絶えず私どものほうの身辺をつきまとうのです。先日、どうもどっちがやってくるのかわからないというので、途中で市をとめたら、つけて来た者があわててあき地に入った。聞いてみますと、どちらでもないというのです。じゃ、どちらだと聞いたところが、とうとうその先生ことばに窮して、警察手帳を出したのであります。じゃ名刺をくれと言ったら、名刺だけはかんべんしてください、こういうことでありました。そういう事件もありました。  特に去る十一月二十七日の千代田区町村会館で行なわれた、警察庁警備局当面の諸問題について、全国警備担当課長会議が開かれ、席上江口警察庁長官は、私どものことを含んで大いに鼓舞激励されて、国際情勢から説き起こし、「わが国内治安にも少なからざる影響を及ぼしつつあり」と言い、「特に御留意を願いたいのであります」と言い、最後には「警備情勢は、いよいよ重大な時期を迎えようとしております。このような情勢に対処するため、諸君におかれては、部下の士気を高め、また、警備警察の運営体制についていっそうの創意工夫をこらし、警備警察をさらに強力なものにするよう切望するしだいであります。」というこの江口警察庁長官の訓示以来、そういう現象が特に多くなってまいりましたが、警察庁ではどういうふうにしておられるのでしょうか。
  103. 後藤信義

    ○後藤説明員 私は、実はいわゆるボデーガードのほうの職務を担当しておりますので、先生がお話しの点は私のほうの事務の中に入っておるわけでございます。先生いまおっしゃいましたように、先生個人につきましては、実は右翼のみならず、それ以外のほうからも注意をしなければならぬということで、私のほうではその影響するところが大きいということで、実は先生の身辺の保護ということにつきましては十分に考えておるのでございます。ただしかし、いまお話しのように先生自身が非常に迷惑にお考えになる、あるいはお感じになるというのでございましたならば、これは私のほうのいわば出過ぎたことでございます。ただしかしながら、状況によりまして、先生御自身が安心であるとお考えになりましても、なおやはり警察の目から見ると不安であるという場合には、御迷惑ではございましょうけれども、こういう情勢でありますということを申し上げることはございます。しかし、いまお話のように、自動車があとからつけてきて、手帳は出したけれども、名刺はかんべんしてもらいたいということは、私どもそういう指導はいたしておりませんし、また、何らやるべからざることをやっているような印象を与えるということは、以後一切やめるように申し渡すつもりでございます。ただ、おそらくこれは先生をつけるということではなくして、先生をお守りするという考え方から出ていることに間違いはございませんので、御了承願いたいと思うのでございます。  それから第二点の十一月二十七日にちょうど全国の警備課長会議がございました。長官からいまお話しのような趣旨のお話もございました。しかしながら、それによりまして一段とそういう活動をやりだしたということじゃございませんで、これはいろいろな情勢を見まして、要人その他の方々の身辺の安全を期していくということは従来とも変わりないのでございます。
  104. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 たとえばことしの夏の原水禁大会のころは、私は大臣以上の警備をつけられまして、まことに光栄に存じているのでありますけれども、実際私のほうが、ついておりますということを言っていただきませんと、どっちともわかりません。たとえばこれは御苦労にもボデーガードがついておってくださるのだと思っていて油断をしたら、とんでもないことになることがございますからね。そうでしょう。名刺を出すのはかんべんしてくれと言った人が、これは警視庁には絶対に報告しませんよ。自分の落ち度になりますからね。ですから、そういう点はお考えいただきませんと、こういう考え方が出てくるのです。これは「日刊警察」という新聞に江口長官の訓示が出ているのでありますけれども、「国内外の留意事項は多し。備えよ、さらば治められるべし。」これじゃ戦前の警察とちっとも変わらない。この調子でやられては迷惑しますから、そういう点は十分御留意願いませんと、先ほど読み上げましたような——法務委員の私ですから遠慮はなさっているのでしょうが、ちっとどうかと思います。まだまだたくさんありますが、これはそのうちまたここで御披露いたしますけれども、方々にこういう人権侵犯事件が起こるのでございます。それで人権擁護局から留意した中には、最近は警察で凶器を持っている者とは絶対に思えないような人たちを、婦人を裸にする、ズロースを下までおろせ、これは官報にまでちゃんと出ているからうそじゃない。人権擁護局がちゃんとそれについて説示したということが出ている。兵庫県に一件、東京に二件、表面に出ただけでもあります。だんだんこういう行き過ぎが、統計数字上からも法務省人権擁護局自体がお出しになるような状況にあるのであります。  そこで最近十二月十四日の朝日新聞夕刊で「自動車強盗の徳本事件」「正式に再審を請求」日本弁護士連合会が特別委員を総動員という記事が出ているのでありますが、この事件は「七年前、神戸市内で起った三人組自動車強盗事件の犯人の一人として、終始否認のまま有罪判決が確定、神戸刑務所(便宜上現在は神戸拘置所)に服役中の同市生田区楠町一ノ一八建築業徳本吹喜雄(二八)は、日弁連徳本事件特別委員会和島岩吉委員長らを弁護人として、十四日午前十時半神戸地裁に再審を請求、同地裁はこれを受理した。」こういうふうになっております。「ところが、徳本は神戸拘置所にいた三十二年九月上旬、自分と人相、体格、年齢がそっくりの運送店員A(二九)と同室になり、問いただした結果、問題の自動車強盗はAと仲間の自動車助手B(一八)C(二七)の三人組の犯行で、自分がAと間違えられたらしいと疑うようになった。」その徳本は病気で保釈、出所すると、神戸市生田区の大塚義一私立探偵に真犯人の捜査を頼む一方、三十六年七月十四日神戸弁護士会に助けを求めた。「同年十月、徳本とその家族らはついにA、B、Cの三人を見つけ出した。そして、大塚探偵が三人から「問題の自動車強盗の真犯人は自分たちだ。徳本さんにはすまない」との供述を録音テープに収めることに成功した。」ところが、三十七年一月、兵庫県警並びに神戸地検が動き出し「録音は強要によるもの」として徳本や大塚探偵ら八人を監禁、強要罪で一斉に検挙、同年二月九日起訴した。」こういうことになっておるのであります。弁護団の話では、「徳本の有罪判決が確定したのは目撃者の証言だけだ。しかも検察側がAら三人のアリバイ固めにつとめ、三人がこの問題では無罪だと主張してやっているのは検察の態度としては異例のことといえるし、不思議な感じだ。徳本の無実の訴えが必ず認められると確信している。」こういう事件でございます。これは政治的には何らの関係のないことでございますが、この事件について刑事局長、報告が参っておりますか。
  105. 津田實

    ○津田政府委員 一応の報告はきておりますので承知しております。
  106. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それではそれについて検察側の態度を御説明願いたい。
  107. 津田實

    ○津田政府委員 この事件に関しては、かなり複雑でございますので、概要を一応御説明いたします。  この徳本吹喜雄に関する強盗傷人事件と申しまするものは、昭和三十六年九月四日の最高裁判所の上告棄却判決をもって確定を見たわけでございます。犯罪事実の要旨は、徳本吹喜雄は、外二名と共謀して自動車運転者から金員を強奪しようと企て、昭和三十三年三月十日、神戸市兵庫区荒田町より稲村清の運転する自動車に乗客を装って乗り込み、有馬街道付近において同人の背後からその頸部を手で締めつけ、あるいはその身体を殴打し、さらに車外にころがり出た同人を手拳及びげた等で殴打し、同人を道路からがけ下の川中に転落させる等の暴行を加え、同人に全治約三週間の傷害を与えた上、同人の自動車一台及び売り上げ金六百五十円を強奪したという事実が要旨になっております。  なお、徳本につきましては、右事件の公判審理中であります昭和三十三年六月十六日、神戸地方裁判所庁内におきまして、この事件の証人として出頭いたしました岩城春夫が自己に不利益な供述をしたとして、これを脅迫したという事実についても、あわせて裁判が行なわれております。なお、強盗傷人事件のほか二名と申しますか、共犯者についてはいまだ検挙をされておりません。  この事件は、当初神戸地方裁判所におきまして、昭和三十三年九月八日、徳本を懲役七年に処する旨の判決を言い渡しまして、これに対して被告人が控訴をいたしました。昭和三十五年三月二十九日、大阪高等裁判所で控訴棄却、さらに被告人から上告を申し立てて、いまのような最高裁の判決があり、それは三十六年九月十四日確定しておるわけでございます。  三十六年の十二月二十三日、日本弁護士連合会から、大阪高等検察庁に対しまして、人権侵犯事件として調査を開始するという通知がありました。次いで三十七年の二月十四日、右徳本から、この事件の真犯人としては小林ほか二名であるとして、同人等を強盗傷人罪で告発してきたわけです。しかし、大阪高等検察庁及び神戸地方検察庁において捜査を行ないました結果、右の小林成司ほか二名に対する容疑の有無を徹底的に追及した結果、小林ほか二名については犯罪の嫌疑がないことが判明いたしましたので、同年三月十三日不起訴処分に付しているわけでございます。  そこで、日本弁護士連合会におきましては、どういう調査をされたかは承知しておらないのでありますが、去る十二月十四日、徳本吹喜雄から神戸地方裁判所に対しまして、同裁判所がただいま申し上げましたように昭和三十三年七月八日いたしました判決に対しまして、有罪判決に対しまして、再審の請求をしている。現在その再審の請求事件が同地方裁判所において審理中であります。その内容につきましては、この際申し上げることを差し控えたいと思います。  なお、これに関連しまして、この真犯人が告発されていることに関連いたしまして、別件がやはり徳本吹喜雄について起こっております。それは徳本吹喜雄は強盗傷人及び脅迫の罪で懲役七年の刑が確定いたしましたのは、先ほど申しました昭和三十六年九月十四日でありますが、その後、その刑の執行開始前であります三十七年一月十九日、監禁罪で再び逮捕されまして、同年二月九日監禁強要罪で神戸地方裁判所起訴されておりますが、その公訴事実の要旨は、徳本は、ほか数名と共謀の上、強盗傷人事件によりまして神戸拘置所に在監当時、徳本と同房でありました小林成司ほか二名をして、同人らが右強盗傷人事件の真犯人であるという旨をしいて供述させ、その証拠を得ようとして昭和三十六年十月ごろ小林らを脅迫して連れ出し、これを徳本の自宅等に不法に監禁した上、右小林等から意思に反した自白をさせ、これを録音テープ及び口供録取書に録取したという事実でありまして、この事件につきましては、目下神戸地方裁判所で審理中であります。  なお、徳本につきましては、昭和三十七年三月一日から前記の確定いたしました刑につきまして、刑の執行を受けて、目下服役中であります。
  108. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 人権擁護局長は他の委員会から出席の要求があるようでございますから、ここでちょっとお願いしておきますが、これはとにかく一応刑が確定している問題であります。本人が終始否認のまま、いま刑事局長からも御報告があったような事件でございますから、少なくとも、これまでも当法務委員会で取り上げた例の吉田がんくつ王といわれるような人の場合にも、ついに無罪がはっきりしたというような事件もございますので、事件の審理中のことも、裁判のことまでは別としまして、先ほども公務員による人権侵犯事件が本年は非常に多くなろうとしているときでありますから、少なくともこれまでの事件について人権擁護局のほうでも一応お調べになっていただきたいと思いますが、そのことをお願いしておきます。いかがでしょうか。
  109. 鈴木信次郎

    ○鈴木説明員 まだ事件内容の詳細は私どものほうでは承知していないわけでありますが、相当マスコミ等でもかつて取り上げた問題であり、また日弁連の中の人権委員会でも取り上げまして、すでに再審の手続を開始するかどうかという訴訟手続上の問題にもなっているわけでありますから、私どもといたしましても事態の推移につきまして十分注意いたしまして、必要な措置をとりたい、かように考えております。
  110. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それでよろしゅうございます。ただいま刑事局長からのお話では、不法に監禁して自分たちが真犯人であるということを述べさせることを強要した、そういう罪の嫌疑でもって検挙、起訴しているのでありますが、そうしますと、弁護団の言われることについては全然考慮の余地なしとお考えになっておるのでございますか、検察側は。
  111. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま申し上げましたように、この録音テープに関する事件について起訴いたしておるわけですが、その内容については、もちろん確信を持って起訴いたしておると思うのであります。しかしながら、弁護士連合会のほうを中心とした調査によって再審の請求がなされておるということでありますので、もちろんこの事件内容については慎重な検討をいたしているものと存じますけれども、事件そのものは、いま再審事件として裁判所で審理の対象になっておる。したがいまして、その裁判所の審理の経過に従いまして検察側として必要な措置をいたしていくことになろうと思うのであります。
  112. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 録音テープは押収されましたか。また何本押収されましたか。
  113. 津田實

    ○津田政府委員 録音テープはおそらく押収されておると思いますけれども、その内容あるいは本数その他の点については、中央では承知いたしておりません。
  114. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 これはどうも少しうかつですね。たしか六本押収されております。それらについて弁護団側については、弁護権からしてその聴取は許可されておりますかどうか。
  115. 津田實

    ○津田政府委員 この事件につきましてお尋ねがあることを承知いたしまして調査をいたした限度におきましては、先ほど申し上げましたように、この事件は神戸地方裁判所で審理中である。その審理の過程において、さようなことになっているかどうかの点は、いま承知いたしておりません。
  116. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 と申しますと、検察側はその録音テープ、検察側が押収したその録音テープは裁判所に提出されておりましょうか。まだ検察庁側にありますか、これを伺っておるのであります。
  117. 津田實

    ○津田政府委員 その点はただいまの報告では明らかでございません。
  118. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 前もって私から、きょう何を質問するかということを申し上げております。刑事局としてはそういう点も調査なさいませんと、これまでもいろいろ事件が起こっているときに、検察側のほうで出されるべきものを出さない。こういうことが松川事件その他でございました。あろうことか、最高検察庁の検事が、この法務委員会で雑音が入ってうるさいから、こういうことまでも福島地方裁判所裁判長の質問に対して最高検察庁の検事が答えておられる。しかも副検事が福島から宮城県に転任されるときにも、その人が個人でふところに入れて歩いておる。弁護団から請求しても、その所在さえ不明であったというような不祥事件もあったのです。一番肝心な点は、それを検察庁で再審請求があったことに対して裁判所へ進んで出すことを協力されたのか、その点はいかがですか。
  119. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま申し上げましたように、具体的の訴訟活動の内容については承知しておりませんので、その点はただいまは申し上げることができません。
  120. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ただいま申し上げることができないというのは、私からいまこのように質問いたしますについては、お調べ願えるのですかどうですか。あらかじめ調査をしてくださいとまで申し上げた。ここで不意打ちの質問をしておるのではないのですから、その点はいかがでしょうか。
  121. 津田實

    ○津田政府委員 この徳本事件につきましてお尋ねがあるということはもちろん承知しておりますが、訴訟手続の経緯全般にわたってまで、まだ調査が行き届いていないという意味でございます。
  122. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あなたも政府委員としてこれまでここに出ておられるのだし、そしてこれまでの私どもの質問がどういうものであるかということは十分御承知でしょう。そういう点についてまだ承知していないと言われるなら、私のいま質問しているのは、今後その点についても御答弁願えますかどうか。また、それについていままでのような、転任する人に持たせて証拠になるものを隠しておくというような不祥な事件もあったが、そういうことでなく、積極的に協力される意思があるのか。事実の経過は、いままでそういう点の証拠物件についてどういうふうになっておるのか、その点を御答弁願いたい。きょうここで調べていないと言われるならば、次会にその点をはっきりしていただけるかどうか、この点を伺っているのであります。
  123. 津田實

    ○津田政府委員 訴訟の経過に伴いまして明らかになる事実につきましては、もちろんここで御報告できると思います。しかしながら、訴訟の将来の推移に関していかなる証拠を出し、いかなることをするかという点については、将来のことに属するわけですから、これは予想もつかないこともあります。あらかじめ申し上げることはできないのであります。しかしながら、訴訟の経過に従いまして、訴訟手続に従って明らかになったことは、御報告申し上げることはできます。
  124. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 弁護団によりますと、録音テープの内容は決して強要によったものとは思えない、真実性が十分にある、かように言っているのであります。そういうものについて訴訟の経過云々ということでなくて、弁護団がそういうふうに言っているくらいなものなら、先ほどあなたはそれを強要とか、あるいは監禁したとか言われているのでありますが、内容も問題であります。そういう点について、検察側あるいは警察側に不利なものはなるべく隠す、検察側に有利なものだけは出す、こういう態度をとられるのか、進んで公平な裁判になるように協力される方針なのかどうか、その点を伺っているのであります。いまのお話では、出そうと出すまいと、審理の経過いかんによってこっちのかってだというふうにも聞こえるのですが、検察側はそういう態度をとられるのかどうか、その点をはっきりしていただきたいのであります。
  125. 津田實

    ○津田政府委員 検察官としては、もちろん公益の代表者として公益の点を重視して訴訟活動を行なうわけでございます。でありますが、しかしながら、対立当事者としての訴訟の推移という点については、重大な関心を持つわけでございます。したがいまして、検察官の手持ちの証拠というようなものについては、従来からいろいろ御議論がありますが、これは最高裁判所の判例によっても一応趣旨が示されておるわけであります。検察官としてはそういう趣旨のもとに行なうわけでございますが、ただいま御指摘の本件の問題は、録音テープの内容が強要に当たるかどうかというような問題でありますから、私ども常識としては、おそらくその当該事件——つまり当該事件というのは監禁強要事件において明らかになるはずのものだというふうに考えております。
  126. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ただいま公益の代表ということを言われましたが、公共福祉の維持という点のみでなく、刑事訴訟法第一条にもはっきりと「この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。」こういうようになっております。個人の基本的人権の保障という問題で、現在服役中の徳本の個人の基本的人権の保障についても十分配慮をされる意思があるのかどうか、その点はいかがですか。
  127. 津田實

    ○津田政府委員 もちろん、先ほど申しました公益というのは、個人の人権の擁護という点も公益の一つであるというふうに私どもは考えております。もちろんその点を考えての上であります。しかしながら、確定判決に基づいておる事件につきまして、再審その他の請求があった場合に、直ちにそれに従って再審の趣旨を尊重するかどうかという点については、これはやはり一応再審が確定判決をくつがえすものであるということでなければ、裁判の必要は成り立たないと思うのであります。したがいまして、そういう意味におきましての配慮の上に立って、なおかつ公益の点を考えての、もちろん人権擁護のことも考える、こういうことになるものと考えます。
  128. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そこで一つ重大な問題があるのです。私は新聞に従って特に名前を秘匿しておきましたが、あなたのほうから小林成司という人間の名前をあげられました。神戸拘置所にいるうちに、三人の真犯人が別におり、その中のAだったですか、間違えられていることを認めた。そうすると、これはまだ判決が確定しない前のことですね。神戸拘置所にいた、そのとき徳本から、自分はこういう者と間違えられているんだ、この者を調べてくださいということを請求したのが、検察庁の記録の中に残っておりますか。あるいは裁判所の記録の中に残っていることを検察庁側でお調べになったかどうか。ここが根本の問題です。これをお調べにならないで、ただ将来の審理の推移ということだけでは、検察庁として重大な点を見のがすことになる。本人がそういう申し立てをする、上告するまで否認し続けた。別にこういう者と間違えられているということを言ったかどうか。そしてそれについて検察庁が調べられたかどうか。その点をはっきりしていただきたい。
  129. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお尋ねの点は、この控訴判決を詳しく精査しないとはっきりとは申し上げかねますが、ただいまのような主張があったことについて、控訴判決の内容において、小林成司そのほかの者が恐喝、詐欺の本件を敢行したとはとうてい考えられないという判断をいたしておりますので、おそらくは御趣旨のようなものは当然取り調べたものであろうと想像しておるわけでございます。
  130. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それは判決ですね。そうしますと、検察側でその三人も調べられた。検事は、公判廷に立てば論告をされますね。その論告にも言及されているのかどうか。本人がそのように繰り返し述べ立てたことについて、その三人の真犯人と徳本が思っている者、これについてのどういう取り扱いをされたか、その点はいかがですか。判決だけでなく検察庁側として……。
  131. 津田實

    ○津田政府委員 これは先ほど申し上げたことになると思うのですが、三十七年の二月十四日、徳本から真犯人は小林外二名であるとして告発があったわけでございます。したがいまして、その告発事件捜査する過程において当然取り調べをいたしたわけであります。
  132. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そこで問題が起こるのです。判決でそういうふうになった。検察庁も告発があったから調べた。不起訴にされたのですか、どうですか。取り上げられなかったのかどうか。
  133. 津田實

    ○津田政府委員 先ほど申し上げましたように、犯罪の嫌疑なしとしまして、三十七年三月十三日不起訴処分にしております。
  134. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私どもの見るところでは、判決でそういうことが出、その判断の基礎になるものに検察庁側からそういうことがあったとしますと、これは後日弁護団の——検察庁側がいわゆるアリバイ固めに出てきたというような場合には、それはどうしたってそれをよりどころにして否認しがちなものです。だからテープ録音の内容が問題になってくるのであります。今日伺いましたところでは、そういう点が私どもにははっきりしません。少なくとも検察庁側からもう少しそういう点について——いま事件の審理中の、裁判に属することは別として、これまでもここで検察側の態度については、進行中の事件についてもずいぶん伺いましたし、それはまた法務委員会として当然してもよいことでありますから、きょう伺いましたところでは、私どもどうも納得いきません。もう頭からそういうふうにきめてかかって、言うなれば検察陣の体面を維持するために、逆に監禁、強要さえこれをかぶせていると疑われてもしかたがないような面が多々あるのであります。私どもは従来主として政治犯をでっち上げる事件について取り上げてまいりましたけれども、こういう極端にひどい事例が起こりますと、最初に申し上げたようなことで、ボデーガードや何やらわからないようなことと関連しまして、公務員自体でさえどうもあぶなくなってくるような感じがするのであります。そういうことですから、きょう私が取り上げた件について、これは裁判内容、そのことを伺っているのではありません。検察のことについて伺っているのでありますから、きょう私が取り上げたようなことについて次会にまた質問を保留することにして、刑事局長に対する質問は終わります。  大坪政務次官に伺います。このように人権侵犯事件がことしは特にふえている。その中でも公務員に関するものがふえておるし、しかもその中の半数近いものが理由のあるものとして法務省人権擁護局からいろいろと注意が出ております。こういう事件でありますから、法務省のほうでもこの問題について特に御留意を願いたいのでありますが、いかがでございましょう。
  135. 大坪保雄

    大坪政府委員 最近の人権侵犯の状況は、ただいま志賀先生がお読み上げになった法務省の報告に掲げてあるとおりでありまして、特に公務員による人権侵犯の事象が相かわらず相当数あるということはまことに残念だと思っております。もともと戦後人権擁護の制度を設けたのは、公務員による一般国民の人権侵犯が旧憲法時代のようにあってはならないという考え方から出発いたしておるのでありますから、この制度を立てた、法律を設けた趣旨が公務員に十分徹底していくようにしなければならないというように考えるわけでございます。私どもは、検察庁が今日全国でいたしております犯罪捜査内容について、そう検察官を疑うような事態があるとは思いませんけれども、しかし、いずれにいたしましても、これは人間のやることでございますから、あとで考えて間違いも絶無だということは申し上げられないことであろうと思います。しかし、そういうことが今後はなるべく絶無になりますように、ともに戒慎をしてまいりたい、かように思うわけでございます。人権侵犯のことについては、いろいろ事態が御承知のようにあるわけでございますが、私どもの立場としては、公務員のそういう問題は特に戒慎をしなければならぬ。こういうように考えて、常に法務省内の同僚相戒めておるようなことでございます。
  136. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それではこれで終わります。
  137. 濱野清吾

    濱野委員長 本日はこの程度で散会いたします。    午後一時三十六分散会