運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-12-04 第47回国会 衆議院 地方行政委員会地方公営企業に関する調査小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和三十九年十二月二日(水曜日) 委員会において設置することに決した。 十二月二日  本小委員委員会において次の通り選任された。       大西 正男君    武市 恭信君       登坂重次郎君    藤田 義光君       森下 元晴君    和爾俊二郎君       佐野 憲治君    重盛 寿治君       華山 親義君    門司  亮君 十二月二日  藤田義光君が委員会において小委員長選任さ  れた。 ————————————————————— 昭和三十九年十二月四日(金曜日)    午後一時三十九分開議  出席小委員    小委員長 藤田 義光君       大西 正男君    武市 恭信君       登坂重次郎君    森下 元晴君       和爾俊二郎君    佐野 憲治君       華山 親義君    安井 吉典君       門司  亮君  出席政府委員         自治事務官         (財務局長)  柴田  護君  小委員外出席者         地方行政委員  亀山 孝一君         地方行政委員  阪上安太郎君         地方行政委員  千葉 七郎君         地方行政委員  細谷 治嘉君         地方行政委員  栗山 礼行君         自治事務官         (財政局公営企         業課長)    近藤 隆之君         参  考  人         (地方公営企業         制度調査会会         長)      北野 重雄君         参  考  人         (大阪交通局         長)      今岡 鶴吉君         参  考  人         (日本都市交通         労働組合連合会         中央執行委員         長)      鈴木 富司君         参  考  人         (東京都水道局         長)      扇田 彦一君         参  考  人         (全日本水道労         働組合書記次         長)      小倉  悟君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 十二月四日  小委員盛寿治君同日小委員辞任につき、その  補欠として安井吉典君が委員長指名で小委員  に選任された。 同日  小委員安井吉典君同日小委員辞任につき、その  補欠として重盛寿治君が委員長指名で小委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方公営企業に関する件      ————◇—————
  2. 藤田義光

    藤田委員長 これより地方行政委員会地方公営企業に関する調査小委員会を開会いたします。  地方公営企業に関する件について調査を進めます。  去る十一月七日地方公営企業制度調査会から自治大臣に対し、地方公営企業財政再建についてとるべき当面の方策に関する答申がなされたのでありますが、本日はこの答申及び地方公営企業の基本的な問題について、参考人から意見を聴取することになっております。参考人として大阪交通局長今岡鶴吉君、全日本水道労働組合書記次長小倉悟君、地方公営企業制度調査会会長北野重雄君、日本都市交通労働組合連合会中央執行委員長鈴木富司君、東京水道局長扇田彦一君、以上五名の方々が御出席されております。この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、御多忙中のところ御出席いただきましてまことにありがとうございました。地方公営企業制度調査会答申及び地方公営企業の基本的な問題について、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べ願えれば幸いと存じます。  なお、議事の整理上、初めに御意見をそれぞれ大体十分程度に取りまとめてお述べ願い、次に委員諸君からの質疑に対してお答えをいただけたら幸いと存じます。発言の順序北野参考人今岡参考人鈴木参考人扇田参考人小倉参考人順序でお願いいたします。  それでは、最初に北野参考人
  3. 北野重雄

    北野参考人 地方公営企業制度調査会は、本年の七月に自治大臣から二つ諮問を受けたのでございます。一つ地方公営企業の健全な発展をはかるためのあり方、第二は地方公営企業再建方策、この二つでございます。それ以来十数回総会を開きまして、去る十一月五日の総会におきまして、出席委員全員の一致をもちまして、地方公営企業財政再建について当面とるべき方策につきまして、中間答申決定いたしまして、同月七日に自治大臣答申いたしました。  これから、この答申決定するに至りました経過並びに答申内容につきまして、簡単に申し上げたいと存じます。  いま申しましたように、自治大臣諮問には、地方公営企業制度に関する基本問題、それから財政再建のための方策、この二つの問題がございまして、これらを調査審議いたしますために、この調査会は四十一年の三月三十一日まで設置されているのでございますが、最近における地方公営企業経営状況はきわめて悪化いたしておりまして、すみやかにその再建をはかる必要がございますので、自治大臣からも、特に地方公営企業財政再建方策につきまして当面とるべき措置については、ことしの秋までに答申をしてもらいたいという御希望があったのでございます。  そこでこの調査会といたしましても、とりあえず地方公営企業財政再建方策につきまして調査審議を行なってまいったのであります。  ところで、地方公営企業が今日のように多額の赤字を生ずるに至りました原因を検討してみますると、そこには地方公営企業の基本的なあり方と関連するものがたくさんございました。それだけに地方公営企業再建方策を検討するにつきましても、地方公営企業の基本的なあり方と切り離して結論を出すということは非常にむずかしいのであります。委員意見も、まず基本問題についての討議を十分に尽くすべきであるという意見が多かったのでございます。しかしながら、それにはどうしてもかなり時間もかかるわけでございますので、基本問題全般にわたって慎重な審議をいたしておりますのでは、その間さらに赤字が累増してまいりまして、ついには地方公営企業再建不能に陥るおそれもないでもございません。さようなことになりますと、地域住民の生活に不可欠なサービスを提供しておるこの地方公営企業の機能が、著しく支障を来たすということも心配されるというような状況でございましたので、そこで、地方公営企業制度に関する基本的な問題についてもできるだけ考えをめぐらしながら、一応これとは切り離して、とりあえず地方公営企業財政再建について当面とるべき措置について審議を進めることにいたした次第でございます。そして、基本問題と一応切り離して実施することが可能な措置というものは、これは直ちに実行に移してもらいたいということで、その内容がお手元に配付されておると思いますが、この中間答申となって決定を見たわけでございます。  そこで、この内容を簡単に申し上げてみますと、第一は、今後赤字を生じさせないためにとるべき当面の措置、第二が、答申の一四ページに出ておりますが、過去の赤字に対する措置でございます。  第一の措置といたしましては、少なくともこの昭和四十年度におきまして収益的収支の均衡をはかるということを目途といたしまして、料金適正化、それから経営合理化、それから企業会計一般会計との負担区分明確化、こういうふうに三つに分けて答申しておるのであります。  このうち料金適正化につきましては、この調査会といたしましては、料金は少なくとも適正な原価を償うに足る水準まで是正すべきであり、原則として政策的にこれを抑制すべきではないという考えに立っておるのであります。万が一、政府のほうで政策的にこれを抑制されるというふうな場合がありましたならば、政府としてはこれに対して適切な措置をとられるべき、あるということをはっきりと書いておる次第でございます。また経営合理化に関連いたしまして、地方公営企業みずから、または地方団体が努力しなければならぬ点は少なくないのでございますが、その内容がかなり詳しくこの答申にも出ておりまして、とりあえずの措置としても、この経営合理化の徹底というものは、料金適正化と並行して同時に行なっていく必要があるという考え方でございまして、この経営合理化につきましては、九ページ以下に出ておりますので、これは便宜上省略いたしたいと思います。  それからこれに関係いたしまして特に触れておりますのは、十二ページのところで地方団体あるいは公営企業みずからが努力されることのほかに、国としても措置すべきことがある、各種の許可手続を簡素迅速化すること、あるいは企業債の量を確保する、またその企業債の貸し付けの条件を改善する、特に地方公営企業金融公庫資金の充実をはかる、あるいは借りかえ債の発行といったようなことに触れておるのであります。こういうことは政府として責任を持ってすみやかに実施されたいという考えでございます。  第二の過去の赤字に対する措置が十四ページ以下に出ておりますが、これは実は基本問題と密接に関連する問題が少なくないのでございます。それだけにいますぐにこの過去の赤字解消方策ということについてはっきりと意見を出す段階には、いっておりません。しかし地方公営企業赤字につきましては、国なり地方公共団体一般会計あるいは地方公営企業のそれぞれが責任を持っておるということから考えまして、それぞれがとりあえずすぐ実施すべき措置と、それから地方公営企業の財源を確保するための措置を書いたわけでございます。  最後に、以上申し上げましたように、この答申におきまして示しております措置というものは、地方公営企業財政再建に関する方策のうちで、特に緊急に措置しなければならないものについてだけでございますので、これにつきましては、政府ではすみやかに措置をされますように調査会として強く要望いたしておる次第でございます。かねがね地方公営企業に深い御理解をいただいております委員皆さまにおかれまして、今後この点につきまして格別よろしくお願いを申し上げたいと存じます。また、これに関連いたしまして、国でも予算あるいは財政投融資計画を通じて措置してもらうべきものにつきましては、これは四十年度予算案の編成におきまして十分措置されるように希望する次第でございますが、これにつきましては、特に委員皆さま方に御理解と御支援を賜りたいと存じます。  なお、調査会といたしましては、引き続きまして基本問題を中心に今後の審議を進めることになっておりまして、すでに十一月二十六日からそれに着手いたしました。今後は地方公営企業範囲と限界、経営原則あるいは企業の形態、経営の規模及び組織、職員の身分、それから労働関係及び給与料金企業会計一般会計との関係会計制度といったような地方公営企業あり方に関する基本的問題と、これを前提といたします根本的な財政再建方策につきまして検討することにいたしておりまして、明年の秋までには検討を終えまして、自治大臣に最終的な答申をいたしたいという予定で、鋭意審議の促進につとめている次第でございます。  以上でございます。
  4. 藤田義光

    藤田委員長 次に大阪交通局長今岡鶴吉参考人にお願いします。
  5. 今岡鶴吉

    今岡参考人 大阪市の交通局長でございます。  まず第一に本年度予算の始まりますころに本委員会で非常に御配慮をいただきまして、本年度短期融資の三十億と、それから長期改良資金としまして三十億のお手当てをいただきまして、これはこの席をかりまして、厚くお礼を申し上げます。ただこれにつきましても、私どもが非常に力が弱いと申しますか、ちょっと歯に衣を着せないで申し上げますので、まずいところがあったら、御注意をいただきたいと思いますが、短期融資の三十億というのは、何しろ赤字を二、三年続けておりますので、すでに借りておりまして、いわゆるこのお手当ての前に借りかえておりますが、本年度になって借りかえた金はこの三十億の中に含むのだというような強い御意見がございまして、実際は三十億の融資を受けることができておりません。たとえば神戸市のごときは、本年度三億予定ということになっておったようでありますけれども、すでに前年度の借りかえが四億あったために、この三十億の融資については全然新しくちょうだいができなかった、こういうことになっておりまして、委員会で申し上げることではないかと思うのでございますけれども、非常な御配慮をいただきましたが、どうも実情はなかなか苦しいということを、お礼と同時に申し上げさせていただきます。  それからいまの北野会長中間答申に対する御報告でございますが、これにつきましては、私、交通局長としては、背に腹が変えられませんものですから、委員会にも毎回おじゃまをいたしまして、傍聴させていただく、いろいろな機会に意見を述べさせていただく、陳情をするというようなことで、制度調査会委員の皆さんにも、あるいはもううるさいというところまでいろいろと申し上げに行って、御迷惑をかけました結果、答申としては非常にお上手にできている、どの角度から押してもよくできていると私としては思うのでありますが、ここ三年ほどこの問題で実際的なお手当てをしていただけませんでした交通局長といたしましては、この御答申では、はたしてどうであろうかということを非常に心配いたしております。失礼なことを、隣りに会長を置いておいて申し上げるのですが、これはお許し願いたいと思います。  それで四十年度必ず黒字にしなければならぬということは、これは私たちもう四十年度だけではなく、三十九年度も三十八年度もそういう努力をしてまいりました。ここにきて四十年度をはたして収支償える健全な形にできるだろうか、少なくとも六大都市の交通局長連中はこの点に不安を持っている。それはとりもなおさず料金改定でございますが、この答申が出ますとすぐに経済企画庁のほうでは、三十七年度東京都の車キロ当たり人件費がどうだというような資料をもって反論をされたようでありまして、これを聞いて、この問題は非常にむずかしい。あるいは新聞などで見まして、料金改定がはたして制度調査会答申に盛っていただきましたような、収支償う——原価をはじいて、物価値上がりその他適正利潤というようなことを見ての料金をお考えいただけるだろうかと、この点非常に心配するわけであります。これは非常に大きな問題点であります。  それから、いままで持っております赤字につきましても、調査会では、適切な処置ということになっておりまして、私ども非常にお願いいたしました料金を抑制されたために減収した分は、補てんをお願いしたい。これはいまから料金で穴埋めすることも困難でありますので、補てんをお願いしたいと申し上げたのですけれども、補てんという明快な字句になっておりませんので、どういう処置をお願いできるかと、この点も非常に心配いたしております。  それから、そういう補てんをしていただくわけにいかない、たとえば路面電車のごときは、いろいろな関係で、赤字覚悟で申請いたしましたので、その関係でたまった赤字というようなものは、これは財産を売ってでもお返しいたしますからたな上げをしていただきたい、こういうふうにお願いするわけでありますけれども、どうも交通事業というのは、大きな赤字をこしらえておって、よう返さぬだろう、そんなものに金を貸すわけにいかぬというような御意見があったようでありまして、この点は絶対理屈のない金を借りてお返ししないなんということはいたしませんので、一応たな上げ処置をしていただきたい。  こういった点、答申の中で最も私ども不安を感じますところを二点ばかり申し上げさせていただきたいと思うのであります。  最後に、いまの経企庁反論、これはどういうところへなされましたかわかりませんし、正式に出ておるのかどうかわかりませんけれども、そういったお話を伺いまして、車キロ議論あたりで、あるいは三十七年の実績あたりで、反論をされるというのは、あまりにも不合理きわまる、こんなふうに考えておりまして、寄り寄り、そういったものが世間に出るようなことになれば、どういうふうにこれは反論を申し上げようかと用意をいたしております。これはそういうことのないようにお願いしたいと思うのであります。経企庁におかれましても、もう少し現状を、三十九年度の現在の収支状態あたりを御検討いただきたいのでございますけれども、それは別といたしまして、非常にこの問題はむずかしかろう、答申内容をそのままお取り上げいただきますなら非常にありがたいのでございますけれども、なかなかむずかしいのではなかろうか、こんなふうに考えております。  当委員会では、とりあえず長短期の資金援助をしておいてやるから、制度調査会において中間答申が出たらその上で考慮してやろうというふうに、五月の終わりでしたかおまとめいただいておりますので、引き続き何らか具体的な処置をお願いしたいと思います。いまのところ四十年度交通局予算はどうしても形をなしません。体をなさない。こういう状態にありますので、早急に何らかの具体的な処置をお願いしたいと思います。
  6. 藤田義光

  7. 鈴木富司

    鈴木参考人 都市交通鈴木です。  あらかじめ前提に御了解をお願いしたいことば、予定された時間十分ということに委員長から言われましたけれども、若干この点過ぎるかと思いますので、あらかじめ御了解をお願いしたいと思います。  制度調査会中間答申に対する私の意見を申し上げます。  私はまず衆議院地方行政委員会が、地方公営企業現状を正しく理解し、深く憂慮されて地方公営企業に関する小委員会を設置し、地方公営企業の問題に対し積極的な対策を進められていることについて心から感謝し、敬意を表するものであります。と同時に、深刻な経営危機に直面しております地方公営企業に対して、窮状打開のため努力される貴委員会に対して大きな期待を持って見守っております。  このような立場から私は、去る十一月七日自治大臣に対して答申されました地方公営企業制度調査会の、いわゆる中間答申であります地方公営企業財政再建についてとるべき当面の方策に関する答申について意見を申し上げます。  まず第一点といたしまして、地方公営企業制度調査会に対する意見を申し上げます。  地方公営企業制度調査会設置については、さきの国会におきまして慎重に審議されたことは御承知のとおりであります。そして審議の結果、特に委員選任については、労働者の代表を入れてほしいということを強く要請いたしました。しかし、私たちのこの希望は実現できませんで、労使関係当事者の参加を認めないいわゆる第三者機関ということで、学識経験者のみによる構成となりました。そして学識経験者の人選については、何人も十分納得できる公正妥当な第三者選任するということも、国会審議の中で明らかとなりました。また、労使関係を無視して結論を出しても、うまくいかないことを理解しているので、参考人として関係者意見も十分聞くということも言明されました。私たちは、国会におけるこのような審議経過を見聞し、若干の不満と不安を抱きながらも、強い期待をもって制度調査会審議を注視してまいりました。そのため、制度調査会委員に対しいろいろ資料をお送りし、また参考人として呼ばれました際も誠意を尽くして意見を申し上げました。ところがこの答申は、これから意見を申上げますように、私たち期待を裏切り、学識経験者をもって構成する第三者機関としての公正妥当な答申として理解できがたいものであることを非常に残念に思っております。このことは同時に、今後の基本問題の審議に対しても、私たちは大きな不安と深い疑惑を持たざるをえないことになり、非常に残念に思っておりますし、期待が強かっただけに、その反動から不信の念を押さえることができません。国会審議の過程でいわれましたように、労使関係を無視して結論を出してもうまくいかないということが正しく理解され認識されるとするならば、この答申はまずその面において、重大な一つのあやまちを犯したというべきではなかろうかと思います。  次に、答申内容に対する意見でございますが、第一に申上げたいことは、財政再建方策であるというのに、経営赤字原因についてほとんど究明されていないことであります。いやしくも学識経験者をもって構成される権威ある機関が、当面の赤字をどうするかという結論を出すのに、赤字原因究明をないがしろにしてはたしてよいでしょうか、この点非常に疑問に思います。地方公営企業の置かれている現状を客観的に正しく判断し、公営企業の持つ本来の使命である公共的役割りを認識することなくして、財政再建方策について結論を出すことは、あたかも診断の結果を明らかにしないままに医師が病人に薬を与えるということにひとしいと思わざるを得ません。これは非常に危険なことだと思います。そこで、一体なぜこのような危険なことがあえて行なわれたのでしょうか。少しく、うがった見方をするならば、初めから答申結論が用意されておったのではないかという疑いが生じてまいります。それは、経営赤字原因について徹底的に追及した場合、権威ある諸先生をもってするならば、赤字の主要な原因が、私たちの従来主張しておりますように、路面の混雑による非能率性地下鉄建設元利金償還の過重な負担公共負担問題等に示されているように、企業外の要因によるものであることが明らかだと思います。もしこの事実を明らかにするならば、たとえ中間答申という性格であっても、政府が努力すべき具体的な事項がより明確になってまいります。このことを避けるために、赤字原因を追及し、明らかにすることを避けたのではないかという疑問を生じます。  私がなぜこのような疑問を持つに至ったかについてその事情をさらに明らかにするために、一つの例を申し上げます。  本年の春から夏にかけて、東京交通局再建案をめぐって労使の紛争が生じました。中央労働委員会調停が行なわれまして、この調停案において、中央労働委員会は次のような見解を述べております。  「都市交通事業は、営業範囲陸上交通事業調整法に基づいて限定されてきたこと、適正運賃決定が国の政策によって押えられており、特にバス料金昭和二十六年以来据え置かれていること、及び公共性を理由に不採算路線の維持が強いられていることによって、その収入が制約されている。  さらに、最近における路面の渋滞は、電車及びバス乗車効率を悪化せしめており、その傾向は今後ますます著しくなるものと予想される。他方、営業費は諸物件費及び人件費増加によって増大してきた。しかしながら、過去四ケ年における交通局職員給与上昇率約三八%は、一般的な賃金の上昇傾向、同期全産業三八%、私鉄大手筋三〇%、都一般職員三九%に比して、特に不合理であったとは考えられない。  都市交通事業の今日における収支のアンバランスは、人件費を含む営業費用増加——東京の場合過去四ケ年に四八%に対し、営業収入増加−同じく二三%、なお私鉄の場合は七七%が伴わなかったことに直接原因しており、さらに、地下鉄建設のため、及び累積赤字補てんのための借入金に対する利子の急増が財政悪化の他の原因となっている。  したがって、首都圏交通事業の一元化ないしは再調整などに関する国の交通政策、合理的な運賃政策都交通事業に対する国及び都の財政的援助地下鉄事業特別会計設置、不採算路線の改廃などにつき適切な措置がとられない限り、都交通事業赤字問題を根本的に解決することは期待できないであろう。  これは三十八年度赤字百三十億に対し、合理化を一〇〇%実施しても、十億から十三億になるということを指摘しておるわけであります。  今回の答申合理化の徹底、特に人件費削減を中心とする合理化の徹底と料金上げによって調停委員会は、都交通事業再建のためには、前記外的要因の解決が第一の要件であることをまず指摘したい。」と言っております。この例で明らかなように、まず赤字原因にメスを入れ、しかる後に解決の方向を指摘しております。これはきわめて当然なことであり、常識的なことだと思います。そしてさらに中央労働委員会は、「当局提案の合理化案のすべてを組合が了承しかりに実施したとしても、赤字解消のための効果は部分的かつ一時的なものしか期待できず、全体的な再建にはならない」と言っております。昭和四十年度赤字を解消し、進んで累積赤字の解消をはかることが望ましいと述べていることと全く対照的であります。私は、このように対照的な見解が、いわゆる学識経験者を主体として構成される第三者機関によって、ほゞ同一時期に出されたところに重要な問題があると思います。そしてこのことの追及だけでも重要な一つの問題であると考えますが、時間の制約がありますので、ただ一つだけ申し上げます。それは、労使双方の関係者に正しい発言の場が与えられ、しかもその発言を第三者機関が正当に取り扱うということの有無が、このような相違を招く結果になった最大の原因であると思います。  第二の問題は、「過去の赤字にたいする措置」として示している対策が具体的でないということであります。先ほど大阪の局長さんも申されましたが、合理化料金上げについては非常に具体的であり積極的でありますが、政府や自治体に努力をお願いする点になるときわめて抽象的であります。どうしたらいままでの累積赤字の過重な負担が解決できるかという、当面の切実な問題に対しても具体的な解決の方進が示されておりません。私たちを含めた関係者が強く要請していた累積赤字のたな上げ、利子補給、低利かつ長期の起債の借りかえ等について、すみやかに具体化されたいという切実な要請があいまいな形で処理されております。にもかゝわらず、赤字企業については、合理化料金上げの計画を誠実に実施することを条件として融資するとか、もしその努力を払わない企業に対しては起債を制限すべきだと言っております。  このように見てまいりますと、この答申はどこか重大なことが欠けているように感じます。それは、国会審議にあたって、当時の自治大臣である早川さんが、地方公営企業はその数及び規模が増加拡大し、地方行政のサービス部門で重要な位置を占めていると言い、地域住民の福祉向上に深い関係のあることを指摘しているにもかゝわらず、制度調査会審議においては、この面に対する考慮が軽視され、経済性の追及にのみ終始したのではないでしょうか。もしそうであるとするならば、制度調査会設置の目的にも反することになると言わざるを得ません。  次にこの答申は、給与改定の問題について、「確実な財源の見通しのないままに、安易に給与改訂を実施すべきではない。」と言い切っております。地方公営企業職員は、地方公務員であるという理由に基づき、労働基本権の最大要件である争議権を否定されております。したがって、給与の改善は、人事院勧告を基準にして実施されております。このような現状にあるとき、給与改定の財源がない場合は改定を実施すべきでないということは、地方公営企業の深刻な経営事情では給与改定を否定されたことになります。  一方では労働基本権を制約し、他方では経営悪化を理由に賃金引き上げを拒否するということを、私たち地方公営企業に働く労働者は一体どう受けとめればいいのでしょうか。物価高騰に苦しむ現状の生活実態からして、このようなことを甘んじて受けられるでしょうか。これでは、地方公営企業関係労働者を無理に争議行為に追い込む結果にならざるを得ないと考えます。  いま一つ理解できがたいことは、財政悪化原因は、制度の基本そのものに根ざすものも少なくないと言いながら、地方公営企業再建にあたっては、根本的な対策についても、当面の措置についても、独立採算制の原則でやるべきだと言っております。そしてさらに、合理化料金上げ昭和四十年度赤字を解消する方策を立て、進んで累積赤字の解消にも努力せよと言っております。この三点を一体どのように結合させるのか、矛盾を感じ納得ができません。  最後に特に申し上げたいことは、地方公営企業再建にあたり、地方公共団体の長及び議会は、地方公営企業の最終責任を負うべき地位であることから最大の努力が必要であるということを言っております。と同時に国も協力すべきこと。地域住民の協力も大いに必要であることを指摘しております。この指摘については、具体性に乏しいのでその真意は十分理解し、把握できませんが、しかしきわめて重要な問題提起であると思います。この重要な問題提起を具体的に進めて、今後地方自治体の条例等によって、公営企業審議会を設置し積極的かつ具体的な施策を講ずる等の努力が行なわれることを強く希望します。  公営交通を中心とする地方公営企業再建に対する意見最後に申し上げます。基本的な対策を明確にしないままに当面の対策を述べることには問題がありますが、基本的な方向に沿って焦眉の急を要する当面の問題についていま申し上げましたような若干の疑問もありますが、この機会に特に申し上げたいと思います。  まず初めに、国や自治体が努力を必要とする諸問題をあいまいにしながら、合理化料金上げのみによって財政再建をはかろうとすることはあやまちであり、これでは公営企業の真の再建期待できないことを申し上げます。そこで、料金上げの実施や合理化の徹底化の前に、政府を中心に、自治体を含めて、次の事項について実施を願いたいと思います。  まず第一点として、企業債償還期間のたな上げもしくは延期、利子の免除もしくは引き下げ。第二といたしまして、政府資金融資の拡大、公営企業金融公庫に対する政府資金の増額、これらの利子の引き下げと据え置き期間の延長。第三といたしまして、去る第四十三通常国会において、地方公営企業法改正の際、附帯決議として決定されました地方公営企業中、その事業の態容及び企業経営現状から、地方公共団体一般会計において、その赤字の一部を補てんすることを適当する場合等においては、国においても、その地方公共団体に対し、必要な財務援助の措置を講ずることの積極的な実施をはかること。第四といたしまして、東京都議会が満場一致で決定した意見書に基づく首都交通の一元化を公営の原則に基づいてすみやかに実現すること。第五といたしまして、地下鉄建設に対する財政援助、軌道の維持補修、学生割引等、いわゆる公共負担に対する適切な措置。第六といたしまして、公共輸送優先の原則で交通規制を実施すること。さらには、地方公営企業法の改正をすすめること、この場合、公共性を維持するたてまえに基づき第十七条の改正をすること。第二条第三項、第二十二条及び第二十三条について前向きの方向で再検討をすすめること。特に地方公営企業法の改正については、すみやかに貴委員会で御審議願うことを強く希望します。  終わりに、特にお願いしたいことは、従来から地方公営企業について深い御論議をいただいております貴委員会が、制度調査会中間答申に対して冷静な判断と批判を行ない、権威ある国会審議を通じて、地域住民のための地方公営企業が、正しい方向において再建し得る方策を御明示願いたいことであります。私たちも、そのような方策が明らかになるならば、謙虚な気持ちになって懸命に努力し、協力することを申し添えて私の意見を終わらしていただきます。
  8. 藤田義光

    藤田委員長 次に、東京都水道局長の扇田彦一参考人にお願いします。
  9. 扇田彦一

    扇田参考人 私、東京都水道局長でございます。  最初に、本委員会におかれまして、私ども水道事業当局者に意見を述べる機会を与えていただきましたことにつきまして感謝申し上げる次第でございます。  去る七月に発足いたしました地方公営企業制度調査会におきます検討の結果が、早くも今回、中間答申の形で発表されました。財政再建に関する当面の措置についての処方せんをお示しいただいたわけでございまして、私ども水道当局者にとりまして、何はともあれ時宜を得たものとして受け取り、感謝の意を表するものであります。  次に、今回の中間答申内容につきまして感じましたことをごく簡単に申し述べてみたいと存じます。まず初めに総括的な事項について申し上げまして、次に各事項について触れてみたいと存じます。  総括的事項について見ますと、第一には、総体的に見まして答申内容地方公営企業の基本的事項を解明するものといたしましてはいささか核心に触れていないと申しましょうか、総括的に割り切ったものではないというように感ぜられるのでございます。たとえて申し上げますと、地方公共団体におきます地方公営企業立場あるいは大きな発展を要請されております水道事業の資本調達の方法について、おおむね現行制度を中心に考えているように見受けられる点、さらには、当面の水道事業の公営化につきまして触れられていないということなどでございます。しかし今回のものは中間答申であるということでございますので、やむを得ないことであるわけでございまして、私ども、事業当局者といたしましては、最終答申期待申し上げるということにとどめたいと存じます。  第二には、答申はまことに公平な立場に立って行なわれているというふうに見受けられるのでございます。たとえば、私どもに対する経営合理化の問題なり、あるいは政府に対する適切な指導を要求しておられることなのでありまして、まさしく私どもが当面いたしております主要事項の一端につきまして、抽象的ではありますが忌憚のない指摘をされたものと考えております。  以上で総括的な意見を終わりまして、次に各事項につきまして概略触れることにいたします。  第一に、今後赤字を生じさせないためにとるべき措置についてでございます。答申は少なくとも昭和四十年度における収益的収支の均衡をはかるため、料金適正化企業合理化の徹底をうたっておるわけでございます。このことは地方公営企業法第二十一条の独立採算の趣旨から申しまして、きわめて当然のことでございますが、水道事業におきまして独立採算が諸般の事情から維持できなくなっておりまする現状におきまして、あらためて基本方針を明示されたことにつきまして、これはまことに適切なものであったと考えておるわけでございます。  ただ申し上げるまでもなく、料金問題というものは、事業経営の基本的な事項でもございますので、もっと具体的な答申でなければならないというような感じを持つわけでございます。たとえば適正な料金とはいかなるものであるか、これを具体的に申し上げますと、水道料金の適正水準、それから全国水道料金の格差の問題、あるいは料金の構成要素の問題などでございます。したがいまして、私どもといたしましては、これらの問題につきまして、先ほど総括のところで申し上げましたとおり、最終答申に大いに期待しておるものでございます。なお経営合理化につきましては、経営に携わる者といたしまして、常々最も留意しなければならない点でありますので、答申の趣旨に沿いましてなお一そうの努力を払ってまいる所存でございます。  答申人件費の節減を強調しておられますが、これは公務員の給与制度全般と関係してまいりますので、対比すべき公務員、それから適正な給与水準、これが明確にされる必要があると思われるのでございます。  これと同時に、これまた基本問題に触れるわけでございますが、私どもは企業の経済性というものは高能率を強く要求されるところでありまして、給与制度はこの高能率を高めることに大いに関係を持っておると思っておるのでございます。したがいまして、この点基本的にどのように考えておられるのか解明していただきたいと考えております。  また経常経費の節減に関しましては、交通事業におきますところの不採算路線、これと同じような問題がやはり水道事業にもあるのでございますが、この点に触れられておりませんことは残念に存じます。  第二には過去の赤字に対する措置でございますが、答申は、一つ、まず経営合理化を徹底することを大前提といたしまして、二つとして、適正な原価を償うに足りないものは料金適正化により解消する、三つといたしまして、さらに本来一般会計負担すべき経費を、一般会計負担しなかったことによりまして生じた赤字の解消財源は、一般会計において負担すること、この三点を内容とするものでございますが、過去の累積赤字は巨額にもなっておりますので、これらを事業自体だけで短期に解消することは、なかなか困難なものと考えております。したがいまして、国におかれましても、これらの解消に適切な援助なり措置なりをあわせてとっていただきたいものと考えておるわけでございます。  以上、ごく概括的に中間答申につきまして感じました点を、率直に申し上、げた次第でございます。  最後に、特に申し上げたい点は、答申のうちで地方公共団体の側におきまして実施すべき事項につきましては、私ども最善の努力をいたす必要がありますことは当然でございますが、政府が行なわなければならないと指摘されました諸点につきましては、答申の趣旨に沿いましてその実現を期していただきたいということでございます。もしこれらの点につきまして、今後の処理が的確に行なわれないようなことがありますと、この中間答申そのものが竜頭蛇尾に終わってしまうばかりでなく、水道事業界はますます混乱を来たしますし、さらに来たるべき最終答申についての信頼にもつながるものがあると考えるのでございます。  特にこの点を申し上げまして私の意見といたします。
  10. 藤田義光

    藤田委員長 ありがとうございました。  最後に、全日本水道労働組合書記次長小倉悟参考人、お願いいたします。小倉参考人
  11. 小倉悟

    小倉参考人 全水道の小倉でございます。私は全国の公営水道に携わっております労働者立場から、中間答申に対する意見を申し上げたいと思います。  私ども全水道の労働組合は、日ごろから水道事業の民主的な発展と、住民サービスの充実を目ざして努力をしてまいっておりましたが、今回の制度調査会委員諸氏が、私どもと同じ立場で非常な御苦労を願ったことに対しましては、あらためて敬意を表したいというふうに考えます。しかし出されました中間答申内容には、私ども率直に申し上げまして不満でございます。中間答申地方公営企業現状を次のように指摘をされております。何らかの方策を講じなければ赤字が累積し、企業は再起不能におちいり、住民生活に不可欠なサービスの提供に支障を来たすことも憂慮されるとあります。水道事業の現状はまさにこの指摘どおりだというふうに私どもも考えております。しかるに答申内容では、この現状を打開する解決策が何ら具体的に示されていない。このことを私は率直に消し上げたいというふうに考えます。  私どもが今回の中間答申に対して不満と反対の意を表明する理由は、基本的な問題点二つあります。  まず第一に、水道事業の独立採算制の問題でございます。答申では根本的対策も当面の措置についても、独立採算制の原則に立って施策を講ずることが必要であるというふうに断定をされています。この断定は、基本的な制度の問題は今後の検討事項とされている中間答申の性格と全く矛盾するものであり、私どもも非常に理解に苦しむわけでございますけれども、いずれにいたしましても独算制の原則に立った施策が根本的に必要だ、このように答申が明らかにされていることについては、私どもはどうしても納得することができません。現状の水道事業でも独算制でやっているわけでございます。その結果はことしの東京を中心にして見られたように、全国的な水不足、さらに料金上げの繰り返しという状態がいまの水道事業の現状であります。そしてこの積み重ねが公営企業制度調査会の設置としてあらわれたのだというふうに考えています。独算制による水道事業の経営は莫大な建設資金を必要といたしますだけに、赤字を大きくするか料金上げをするか、二つの道しかないということがすでに明日になっておる現状の中で、今回の答申料金上げのみに解決策を見出して、政府やあるいは自治体のなすべき施策が明らかにされず、むしろ避けて通られておることに私たちはどうしても反対をせざるを得ません。  しかも中間答申では、地方公営企業経営原則である公共性と経済性の関係が明らかにされていませんでした。経済性の問題では、独算制による収支適合をはかりなさいと断定をされていますが、公共性の問題では、住民に対して料金上げ理解と協力を求めなさいと、このように言っております。これは非常に片手落ちもはなはだしいというふうに考えます。私ども全水道は、政府に対しましてもあるいは制度調査会の中におきましても、独算制の改定の問題を主張してまいりました。給水人口と使用水量の増大がますます予想されておるときだけに、水道法に明記をされております精神に基づいて、豊富で安い料金による水道事業の経常原則が、独算制の改定によって早期に実現されることを私たちは強く希望をいたします。  基本的な第二の問題は、先ほどの指摘にありましたとおり、赤字原因が究明されていないことであります。答申では「地方公営企業の財政が悪化するに至った原因は、たとえばコストの高騰に伴って適切な料金の改訂が行なわれなかったこと、経営合理化が徹底を欠いていたこと等公営企業の運営面において遺憾な点があったことのほかに制度の基本そのものに根ざすものも少なくなく、したがって、その財政の再建のための根本的な方策は、これら基本問題についての考え方を明らかにしたうえで結論を出すべきものである。」と言っております。中間答申が今後の赤字を出さないためにとるべき処置そのものを明らかにするのに、赤字がどんどんふえ、しかも巨大化していく原因を明らかにしないままに、どうしてその結論が見出されるかということについて、どうしても私たち納得することができません。  あえて申し上げますならば、あらかじめ予定された料金上げ合理化という結論を導き出すために、故意に避けて通られたとしか考えられないわけでございます。政府の経済政策と水道事業との関係あるいは自治体行政との関係、起債政策との関係等、正しい追及が制度調査会において行なわれましたなら、もっと違った赤字解消策が生まれ出たというふうに考えます。  以上、申し上げましたとおり、独算制の問題と赤字原因究明という基本的な問題で、制度調査会中間答申は重大な誤りを犯しておるというふうに考えますので、ここから導き出された料金上げ合理化には、私どもとして絶対に容認できるものではございません。  次に、個々の具体的な問題について若干の意見を申し上げたいというふうに考えます。  今回の答申は、料金上げと同様に人件費の削減には不当な積極さを示していらっしゃいます。最近における人件費の増大が経営悪化の最大の原因一つであると指摘をされておりますが、私たち労働組合側にとっては、全くもって迷惑な言いがかりであります。自治省が制度調査会に提出いたしました資料の中でも、水道事業における人件費の費用構成は三三・九%にすぎません。昭和三十年度以降の伸び率が三・三%にすぎないことを見ても、このことの言いがかりであるということは明らかであろうというふうに考えます。しかもここ数年間の給与改定があったとはいえ、常に民間労働者給与よりも低く置かれ、最近の激しい物価高騰にも追いつけないのがわれわれ公営企業職員の実情であります。最近人事院や政府ですら、私ども企業職員給与水準の基準になっている国家公務員の給与改定を実施しようとしているときに、経営悪化を理由にした人件費削減には何としても了承できるものではありません。特に答申では、確実な財源の見通しのないままに安易に給与改定を実施すべきでないといっていらっしゃいますが、それでは逆に、経営の良好なときには高い給与が支給されるべきであるかどうか、このことをお聞きしたくなるのが実情であります。  さらに、地方公務員との給与水準の問題あるいは特殊勤務手当の合理化等、すべてこの答申では明確な根拠が示されておりません。また実情を全く無視した言いがかりでございます。料金上げ地域住民に納得してもらうために職員人件費をこのように節減しなさい、このような答申内容では、自治体に対する指導では、私たち労働組合側にとってまことに迷惑千万と言わざるを得ません。  次に、過去の赤字に対する措置の問題ですが、答申では何ら具体性がなく、一体どうしたらいままでの累積赤字を解決できるかという水道関係者の当面する最も切実な問題が示されておりません。ここでは何よりも政府責任を明確にして、累積赤字をたな上げにするとか、当然なされるべき利子補給の問題あるいは低利かつ長期の起債の借りかえ等、具体的な方法を述べるべきであったのではなかろうかというふうに考えます。この点がぼかされているのでは、制度調査会がいまの時点で中間答申を出されたことの性格も薄れ、全く意味がなくなっていると言わなければならないと考えます。  以上、基本的な立場から二点、具体的な問題として二点をあげて私ども全日本水道労働組合の立場から意見を申し上げましたが、総括的に言えることは、今回の中間答申による内容では、現状の水道事業の再建を期すことは困難であるというふうに考えます。すでに全国的に見ても京都が料金上げ決定をいたしました。さらに多くの都市で料金上げが準備をされているようであります。しかも、その値上げの幅は、ほとんどの都市が五割をこえているということ、さらに値上げの後に五年を待たずして再度値上げをしなければならぬ事実、さらに三十七年に値上げをいたしました神戸等では、すでに三十八年度決算で赤字が出ているという事実、これらの事実は、現在の水道事業の置かれている本質的な問題をいまの時点で明らかにしなければならない、解決策を示さなければならないということを証明しているというふうに私たち考えております。  いずれにいたしましても、今回の答申内容では拡張工事と料金上げの追いかけ合いを続けなければならないわけですから、本質的な解決策と申せません。  私ども全日本水道労働組合が特にお願い申し上げたいことは、政府と本委員会制度調査会答申内容を越えて、現状の水道事業に対する抜本的な具体的な解決策をお示し願いたいというふうに考えるわけであります。前回も本委員会で申し上げましたけれども、次の諸事項の実現なくして水道事業の民主的、あるいは公共的な発展の道はあり得ないというふうに考えます。  それは一つに、現行の地方公営企業法を改正し独立採算制を改定すること、同時に国もしくは自治体の公共負担についての条項を明らかに設けることが必要だというふうに考えます。さらに、水道事業における建設拡張事業等については、その莫大な資金と長期な固定資産という関係からも国庫補助制度を設けることが至当だというふうに考えます。さらに起債の対象範囲を拡大し、起債制限を撤廃するとともに、償還期間の大幅な延長と利子の引き下げということをはかり、利子補給等を行なうことが重要です。第四に、電気税の需用者に対する二重課税の不合理等を廃し、免税措置をとることも重要な問題であります。  以上申し上げました諸事項が、早期に実現いたしますことを強く要望いたしまして私の発言を終わりたいと思います。
  12. 藤田義光

    藤田委員長 ありがとうございました。  以上で各参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 藤田義光

    藤田委員長 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので順次これを許します。  なお、小委員外地方行政委員から発言の申し出がありました場合には、小委員長において適宜これを許すことにいたしますので、御了承願います。  この際、一言申し上げておきますが、北野参考人はやむを得ない用務のために中座されますので、なるべく当初に北野参考人に対する質問をまとめていただきたいと思います。  それでは最初に安井吉典君。
  14. 安井吉典

    安井委員 調査会が長い間かかって労作をおまとめになったことに敬意を表します。  しかし、きょうは四人の他の参考人の方からたいへん手きびしい批判も出まして、被告が一人であとみんなが批判者の側ですから、その点北野会長さんは不利かもしれませんが、しかし私も、実はその四人の方のおっしゃっていた御意見に、たいへん同感する点が多いわけです。ですから、むしろその四人の方の御意見に、一つずつ北野会長から御答弁願ったほうが早いのかもしれませんけれども、その中で、あるいはまたそのほかになるかもしれませんけれども、私まだ他の委員の方の御発言もあると思いますので、二、三点だけ伺っておきたいわけであります。  先ほど、大阪交通局長さんから三十九年度料金抑制、これについては一体制度調査会はどう考えたのだ。一年間政府がストップしろ、こういうふうに言ったわけです。赤字で非常に困ってどうにもならない事態にあってそう言われたのだから、政府は当然補てんすべきでないか、こういうような所論がずっとあったわけです。この問題について、調査会はどういうふうに反論をお示しになったか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  15. 北野重雄

    北野参考人 まず委員皆さまに御了承を得たいのでございますが、調査会会長立場という点を申し上げる必要もございませんけれども、これはあくまで議事の進行係というとなんでございますが、多数の委員の皆さんの御意見を取りまとめ、あわせて審議の進行をはかるという立場でございますので、その会長といたしましては審議に終始参画しておりました立場で私が御説明できる範囲のことを申し上げるということで御了承いただきたいと思います。  それと、もう一つ申し上げたいことは、先ほどもちょっと申し上げましたが、これは元来御承知のように自治大臣諮問機関でございまして、諮問された事項が二つございます。本来その基本問題を十分に検討して、その上でとりあえずの措置と恒久対策というふうなものを出すべき筋合いのものではないかと思うのでございます。したがって調査会審議の過程におきましても多数の委員、むしろ全部に近い委員の方が、もっと時間を与えてもらって、そして十分基本問題から、そもそもその地方公営企業の目的なり意義なり、そういうものから入っていくべきではないか、そうしてその上で財政再建方策というようなものもできるだけ具体的に答申すべきではないかということであったのでございますが、どうしても時間的な制約がございますし、かつまた目先の赤字をどうしていくか、早くやりませんとますます赤字がふえてくる、こういう状況で、しかもことしの秋までに一応の応急策を答申いたしませんと、事態はますます悪化するということで、特に自治大臣からも、応急策についてまず答申してもらいたい、中間答申の形でいいから答申してもらいたい、こういうことでやむを得ずこれになったのであります。したがいまして、先ほど来他の参考人のほうからいろいろ御不満等もございましたが、その中にはかなり基本問題に関係した問題が多いようでございます。赤字原因一つにいたしましても、本来ならばもっともっと基本的に掘り下げていくべきでございますけれども、とにかく急ぐ関係からいたしますれば、その原因の中で一番顕著なのが、コストの高騰に伴って本来適切な料金改定が行なわれるべきものが行なわれなかったことと、それから経営合理化が徹底を欠いておった、この二つが一番赤字企業に共通な、しかも顕著な原因だ。これはだれしも認めるところであろうと思うのであります。そういうことから、中間答申といたしましても、料金適正化経営合理化の徹底、これを直ちに並行的に行なうことが必要だ、こういうことを言っておるわけでございます。それでいま安井先生から御質問のございました過去の赤字の問題につきましても、この中間答申としては、はっきりしたたな上げということになっていないのでございます。実際たな上げとなりますればあとの処置をどうするか、これには国としても、あるいは地方公共団体としても、それぞれ負担区分明確化いたしまして、それに対する措置を講じなければならぬわけでございますが、これも基本問題に入らなければそういった具体的な措置考えられませんので、ほんとうに急場しのぎの応急措置として、ここに書いたようなことが出ておるわけであります。したがいまして、この十五ページの(3)というところに、バス事業等の料金につきましては、公共料金一年間ストップということで押えられておりますので、もうそれだけでも一年間の赤字が積もっておるわけでありますが、これについては「国において適切な措置を講ずべきである。」——この「適切な措置」というのは、きわめて抽象的でございますが、これは国において当然損失補償をするべきだという意見もございましたが、委員の皆さんといたしましては、そこまで割り切って結論を下すには法律的ないろいろな問題もあるだけに、これは国のほうで理解を持ち、そして同情を持って適切な財政的な措置を講じるべきである、こういうふうに抽象的にならざるを得なかったわけでございます。これでお答えになりましたかどうですか。
  16. 安井吉典

    安井委員 いま、いろいろお答えがあったわけでありますが、私、特にお尋ねをしていたのは、三十九年の一月一日から一年間料金ストップというおふれを政府が出したわけです。その問題に限定して、どうも料金ストップなどを政府が言うのはいけないというような書き方だけをされておりますけれども、ことしそういう問題について、料金ストップをしたところの政府は、赤字で困っておる企業に何か手を打つべきじゃないか、そういうふうな相関関係においての政府の施策の要求、こういうような形で問題は出なかったかどうか、そういう点でございますが……。
  17. 北野重雄

    北野参考人 一部の公営企業についてとりあえず三十九年度資金的な援助をなさいましたが、それで十分でない面もございますから、そういう点はあれに類似したような方法を考えるべきではなかろうか、こういう程度でございます。
  18. 安井吉典

    安井委員 次にお伺いいたしたいのは、この答申の中で、認許可のすみやかな実施だとか、——これは料金だけですか、そういったいろいろな表現がございますけれども、民間企業地方公営企業との比較において、地方公営企業の優先性といいますか、たとえばバスの認許可なんかの場合にそういう問題が出てくると思うのですが、そういう点については、まだ結論にはなっていないかもしれませんが、調査会の空気としては、やはり地方公営企業を優先的に扱うべきだという御意見が強いようですか。それとも逆でしょうか。
  19. 北野重雄

    北野参考人 一部の委員には、バスなんか民営にしたほうがいいんじゃないか、こういうふうな御意見もございますし、反対の御意見もございます。結局そういった問題は、これはやはり公営企業の性質と大都市、中都市、小都市それぞれの地域の状況によっても違っておりますし、この中間答申としては、そこまで掘り下げるのは無理だから、ひとつ基本問題に入って十分掘り下げていこう、こういうことになっております。
  20. 安井吉典

    安井委員 この答申の中に「適切な」とか「適正な」というふうなことばが一ページに三つか四つぐらい書いてあります。そういうことばで全体が貫かれているから抽象的だというふうな批判が出てくるのだろうと思います。したがって、適切もけっこうだし、適正な方向でなければいけないのですが、その内容がわからない点がたくさんあるわけで、たとえば賃金の問題についても先ほど来いろいろお話がありましたけれども、賃金についてはどうも適正な賃金というふうな形ではっきり問題が出されてないような気がするわけです。というのは、給与改定の場合には、赤字企業においてはできるだけ切り詰めていくというふうな言い方をなさっておる。しかし続いて、他の地方公務員の水準よりも上がっているものは下げるようにしろ、そういうことのわけですね。そういたしますと、これは一般の他の地方公務員の給与水準というのが適正な水準というふうにお考えになっているのか、その点をひとつ伺いたいわけです。別のところにいきますと、民間の賃金ベース云々ということで、そこでひとつバランスをとろうというようなお考えもあるようですね。その点どうもぴんとこないような気がいたします。私どもこの公営企業における賃金問題についていろいろ論議していたら、こういう意見も出てきているわけです。つまりこの答申の中では、赤字企業なんかはあまり賃金を上げるなというのがはっきり出ているわけですね。賃金はむしろ下げろ、合理化もしろ、こういうふうに言われておりますが、元来地方公営企業というものは金もうけをする事業じゃないので、むしろ黒字がどんどん出るような状態になれば、料金のほうを下げろ、こういうことです。黒字がどんどん出れば、先ほどからの参考人の御発言にもございましたけれども、賃金をどんどん上げてもいいというわけじゃないわけで、むしろ料金のほうにいくべきである。だから賃金の問題については、黒字になってもやたらに上げるわけにはいかぬ、赤字になったら下げなさいということになったら、これは地方公営企業に働いている人はいつになったって適正な——何が適正かわかりませんけれども、適正な水準に上がる可能性はないのじゃないか。黒字になっても上げてはいかぬ、赤字になったら下げなさい、こういう仕組みになれば、どうも理解しにくいのじゃないか、こういうふうに思うのですが、この適正な賃金といいますか、そういうふうな点についてどういうふうな論議が行なわれたか、その点をひとつ……。
  21. 北野重雄

    北野参考人 御質問は大体十一ベージのところだと思うのですが、「特に諸手当を含む給与水準が、地方公務員の適正な給与水準を上回っている企業にあっては、」これが少しあいまいな表現になっておりますが、たびたび国家公務員の給与改善につきまして、人事院の勧告の線に沿って引き上げが行なわれてはおるわけでございますが、地方公務員にむきましては、国家公務員の給与水準をすでに上回っておるというのもあるそうでございます。それで、しかもそういった場合に、その中にかなりいろいろな手当が入っておる。ですから、具体例はそうたくさんないかもしれませんが、そういうような企業では他の公務員の——今度はおそらく国家公務員の給与改定に応じてある程度の引き上げがあるのでございましょうが、その際できるだけ、この次の「イ」に書いてありますような、特殊勤務手当の廃止というようなこともあわせ考えながら、この際企業そのものが赤字であるだけに考えてもらいたいということです。特に委員の中に強い発言がありましたのは、いつも国家公務員につきまして七・何%とかいうふうに上がった場合に、地方公務員の給与水準がすでに国家公務員の水準よりも高い、その場合にも、それに同じ七何%というふうに上げていかれる。これはやはり絶対額の水準としてのバランスというものを考えるべきじゃないか、こういう意見がかなりあったわけでございます。そういうようなことで、何しろ赤字も多い関係もございますし、しかも住民としては、やはり料金が上がるにしても、できるだけ小幅であってほしいという考えもある時期でございますし、これが民営企業であれば、当然職員の整理とか、あるいはそのベース・アップを小幅にするという問題も起こるだけに、その赤字の特に大きい企業では、ここで考えてもらうべきじゃなかろうかというのが委員意見で、それがこういう形になって表現されているわけであります。
  22. 安井吉典

    安井委員 この点は私まだ反論する余地を持っておるわけなんですが、あとのお方の御質問もあるし、深く入りませんけれども、いずれにしても適正な賃金——賃金問題については非常に消極的な態度が全体にあらわれているような印象を受けるわけです。しかし適正な料金というふうな問題、あるいはまた国に対するいろいろな財政措置等の要求、そういうような基礎にやはり賃金の問題が出てくるわけです。いずれにしてもからんでくるわけです。やはり別の個所では、料金その他の場合に、「適正な原価」という表現も出ておる。その原価の中の非常に重要な部分は、やはり賃金なわけです。そういうような賃金についての考え方が非常にあいまいだというふうな感じで、この点はさらにまた次の段階で、もう少しこれを御論議願いたい点ではないかと思うわけです。  最後一つ料金の問題でありますが、最近の国民的な大きな関心はそこに注がれているような気がいたします。ところで全体的な、あるいは恒久的な対策は先を待つけれども、とりあえず昭和四十年度だけの収支バランスをはかれ、そのために料金も値上げしなさい。適正な料金という言い方は、値下げしなさいという要素はほとんどなくて、値上げしなさいという言い方だと思うのです。もう一つ合理化もしなさい。もう一つ、あまり声は大きくないのですが、政府のほうにも施策を要求すべきだ。三本建てになっているわけです。しかし最近のように物価のどんどん上がっている情勢の中で私ども考えてみると、料金の値上げというようなものは好ましいものでないと思います。ところでその三つの問題は私はこれは相関性があると思うのです。その料金の値上げ合理化と国の施策。だから国の当然やるべき施策、たとえば一年間料金ストップという国の政策的な見地で押さえてみたり、あるいはまた地方公営企業制度そのものをもう少し違った形で運営しておれば、これまで赤字が出なかったかもしれません。たとえば独立採算制などという問題についても、たとえば地下鉄に独立採算制を強制したってたいへんですよ。大阪交通局長さんもいらっしゃるけれども、たいへんなことですよ。だから、そういうようないまの制度自体の中にもずいぶん問題があるわけです。そういうふうな全体的な施策ができていないのだから、そういう施策が十分にきっちりできれば料金の値上げも要らない。合理化も−合理化というのは永遠の理想ですから、いつでもみんな努力していかなければならないことですけれども、そういうようなこともそう力を入れなくたっていいじゃないか。つまり三つは相関関係にあるわけです。だから、きっちりした国の施策ができれば、料金の値上げなどというものはそうしなくてもいいじゃないか、こういう言い方もできると思うのです。それがこの答申の中では、料金の値上げが最初にきて、合理化がきて、最後にちょっと声が小さくなって国の施策というような、置き方のバランスが逆になっているような気がするのですが、どうでしょうか。
  23. 北野重雄

    北野参考人 御指摘のとおり、基本問題でいろいろ検討しなければならぬ問題があります。例としてお示しになりました多額の建設資金を必要とする水道事業とか、地下鉄事業というような問題について、負担区分といいますか、国として考えるべき問題ではないかというような話も出ております。これは基本問題でよく検討しまして、とりあえずの措置は、そういったものについての企業債の償還年限の延長とか、利率の引き下げというようなことだけうたっているわけです。それから、何といっても地方公営企業というものは、その経営、経理の主体が料金収入によってまかなっていく。これについては、独立採算制の本質について本質的な議論はございますが、委員の皆さんとしては、基本問題でまたそういうものはもちろん検討いたしますけれども、現在の段階では、やはり企業経営に伴う収入をもってその経費をまかなっていくという原則に立つべきである。そういうことになれば、一方料金のほうは、いわゆる政府の物価対策という大きな政策的な見地からストップされてきた、それが赤字の多いという原因になっておりますだけに、やはり応急措置としても当然適正料金まで持っていくべきじゃなかろうか。そうして、もし引き続いて政府が物価政策の見地から政策的にこれを押えられるならば、押えっぱなしにはしないで、それに対してやはり政府として財政上その他何らかの措置を講ずべきじゃないか。過去一年間のやり方は、どうもあまりに不合理だという点を特に指摘いたしまして、八ページのまん中から下のほうにも「万一政府が」云々、こういうふうに言っておるわけでございます。
  24. 藤田義光

    藤田委員長 阪上委員
  25. 阪上安太郎

    ○阪上委員 またいずれあす開かれます委員会でこまかく質問を申し上げますので、きょうは簡単に一、二点伺っておきたいと思います。  北野参考人にお伺いをいたします。料金適正化をうたっておられますが、何が適正料金であるかという点については、これはたいへん、いろいろ問題が出てくると思います。この場合ひとつ伺っておきたいのは、これは料金、こう言っておられますが、この中には運賃も含まれておると私は思うのであります。運賃と料金とは明確に区別してお考えになっておるのでありますか、そういった点はどうですか。
  26. 北野重雄

    北野参考人 この料金といっておりますのは、非常に広い意味でございまして、公営交通事業の場合の運賃、これを料金の中に含めているわけでございます。
  27. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで、適正料金なんですが、これは基本的な問題に入っていかなければなかなか結論は出てこないと思うのですけれども、一応大ざっばに言って、適正料金を立てるたてまえとして、柱があるはずだと思うのです。どんなものをお考えになっておられますか。
  28. 北野重雄

    北野参考人 この七ページのところに出ておりますが、「少なくとも企業の健全な経営を維持する場合必要な適正な原価を償うに足る」ものでなければならぬ、こういう考え方でございます。なお、この場合にできるだけ今後における賃金、物価の推移、これは特に四十年度のことだけ言っておりますから、目先の問題でございますね。たとえば公務員のべースアッブで賃金が上がる、それから物価ももうはっきりしているもの、それから累積赤字負担というようなものもにらみ合わせてという意味で、これはどうもどの程度にらむか、にらみ方の問題でございますが、そういうものもできるだけ考えてもらいたいという意見でございまして、たとえば来年早々料金の引き上げを認めるにしても、もうすぐ目先に人件費物件費の値上がりというものは目に見えておる。結局、それじゃ四十年度年度収支の均衡も得られないというようなのじゃ困るよ、こういう趣旨を加味しているわけでございます。
  29. 阪上安太郎

    ○阪上委員 まことにぶしつけな質問ですけれども、そうしますと、適正な原価を償うに足るという考え方は、原価主義なんでございまして、もしこういうことで、一切がっさい料金によってこういったものをまかなっていくという考え方に立脚するならば、先ほどちょっと話が出ましたけれども、それじゃもう一切がっさい民営に移せばいいじゃないか、こういう結論に導くことになってくるんじゃないか。原価を償うに足るだけの適正料金、逆にひっくり返せば、適正料金というものは、そういうものであって、それによって独立採算のたてまえをとっている。これはあなたの委員会では、そういうようにお考えになっているでしょう。それなら公営企業なんというのはこの際存在価値がないんじゃないか。いっそ民営に移せばいいじゃないか。しかし公営企業における適正料金とは、そういうものじゃなかろうと思うのであります。そうでなければ、一般の経済性を追求しましても、独立採算でもって原価を償うんだ、これじゃもう公営企業をやる必要はないということになりますが、その点はどういうふうに御検討になっておりますか。
  30. 北野重雄

    北野参考人 阪上先生のいまの御質問は、多分に基本問題に入っていくような気がいたしますのですが、特に調査会というものは一つ諮問機関でございますし、結局はバス料金改定にいたしましても、これは運輸省の許認可にかかっておるわけでございますし、われわれとしてはそう具体的に、たとえば六大都市のバス料金は幾らに上げればいいのだというようなところまではもちろん入る気はございませんし、あとは関係官庁が政府一体としての考えで、この趣旨をくんで適正な料金はいかにあるべきかということを判断して、早くこれを認可してもらいたい、こういう気持ちなんでございます。
  31. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それらの問題は、いずれお教え願いたいと思いますが、次にちょっとお伺いしておきたいのは、国の許可を要しないような水道料金で適正な原価を償うに足りないものは是正すべきである、国が抑制してはならない、こう規定しておりまして、それから同時に、もしそういう場合があるならば、それはやはり国で何らかの補てん策を考えるべきだ、こういうことになっておるようでございますが、これは過去のことだけ言っておられるのですか、将来のこともやはり頭に置いておられますか。原価を償うに足る料金上げ考えているが、先のことは考えていない、こういう意味でございますか。
  32. 北野重雄

    北野参考人 たびたび申し上げますが、とりあえず四十年度措置というような形になっておりますので、将来の問題は基本問題で掘り下げて研究していきたい、それで、この九ページにございます水道料金の問題は、御承知のように今年の一月に、水道料金についても地方の水道当局に対して料金の引き上げの自粛を呼びかけておるわけでございます。それが一応まだはずれてないというかっこうなんでございます。ですから、そういったことは、そういう自粛というような非常にはっきりしない形ではございますけれども、事実はそれがかなりきいているようでございまして、一部自粛の呼びかけにかかわらず、お上げになったところもあるようでございますけれども、自粛を呼びかけていることもこの際考えてもらわなければならぬ。これは一つの抑制的な措置だ、こういうように考えておるわけであります。
  33. 阪上安太郎

    ○阪上委員 またこれは基本問題に入るわけなんですが、諸外国では一時水道料金、ことに家庭用水道料金みたいなものは無料にするというような、思い切った、公共性を非常に高く掲げた政策を打ち出しておる。ところが日本で論ぜられる場合に、ことに水道などの場合においては、これは公営企業のワク内に入れてしまえ、それで独立採算でやっていかねばならぬというような考え方が支配している。水の問題というのはたいへんな問題でございまして、空気と水は、なくては生きていけないのですから、そういった水道企業というようなものについて、もう少し何か大きな高い次元の配慮というものがあってしかるべきじゃなかろうか、ところが、ここに出てきた状態を見ますと、認許可を要しない水道料金だから、そんなものは抑制するのはおかしいじゃないか、早く解きなさいというような逆な方向が出てきている。こういうところに私は一つの解せないところがあるのですが、もし何でしたらちょっとこれをお答えいただきたい。
  34. 北野重雄

    北野参考人 いま御指摘になりましたような問題についても、大ぜいおられる委員の中にはいろいろな御意見もございまして、それが出ておりましたが、結局これは基本問題でよく検討していこう、こういうことになっております。それで、このとりあえずの措置としては、地方公共団体で条例改正なんかおやりになるについても、それぞれの地域住民の代表である議会の決議を経てやられることでございますから、それには住民の意思というものを十分反映している、こう見ていいわけで、市当局が提案されたものが決定になるまででも地方では非常な大問題で、この間も京都市では大騒ぎで、それで自民、社会、民社三党の共同修正で決定した、こういうようなことでございますから、そういうものは、地方公共団体でさんざんもみにもんでおきめになったものならば、あえてそれを押えるというふうなことはやめていいんじゃないか、こういう考えでございます。
  35. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私、お二人の方に一括して一点だけ聞きたいと思うのです。  大阪交通局長今岡さん、東京都水道局長の扇田さんにお伺いしたいのですが、どうでしょうか。先ほどああいうふうにおっしゃいまして、今度の答申に対して基本的には納得できないし、この程度の施策ではとても四十年度の単年度赤字すら解消することはできない。したがって、基本的な問題の将来の答申期待をしたい、こういうふうにおっしゃった。よくわかります。その場合、現在問題になっている水道料金の値上げ等について、その答申案を待って実施するというような考え方をお持ちでしょうか。それともそれに関係なく、先ほど言ったように値上げの問題を頭に置かれて、その時期が延びれば延びるだけマイナスになるんだから早くやりたいんだ、こういうふうなお考えをお持ちなんでしょうか。どちらなんでしょうか。
  36. 今岡鶴吉

    今岡参考人 交通事業を担当しております者といたしましては、いろいろ理想的な形があるかと思います。しかし現在の公営企業法をもとにして事業をやっております限り、収支をバランスさせる、この答申にもございますように、水害だとかその他の非常に大きな災害があった場合には、一般会計からの援助というようなことも考えてもよかろうが、料金でまかなっている状態のときには収支をとんとんにせい、これが一応いまのところ原則ではなかろうかと思います。したがって交通を担当しておりますものとしては、毎年何としても収支がバランスするような料金に改正するという方向で機会を待っているわけです。そう申しましても、年々改定するということは、いろいろな事情がございましてできませんので、適当な時期におはかりして、利用者の皆さんの御理解を得て、納得の上でやる、こういうことで健全経営に持っていきたいと思っております。  私の考え方では、交通は水道とは多少違いまして、大阪に市民税を納めておられない方が、大体日々七、八十万の方が乗りものを利用して市内に入って勤務されます。したがって、いま出ております赤字公共負担だからということで、どこかへお願いしようかといいますと、市民の方は、その七、八十万の市民税を納めてない者が利用しておるじゃないかということになって、これは不合理ということになろうかと思うのです。それからもう一つ赤字が出たからひとつ国にお願いしたい、こう申しますと、——もうすでに大阪でも、堺だとか高槻あるいは隣の兵庫県伊丹というようなところは、賃キロ当たり四円の料金バスを御利用になっております。大阪市の交通だけがいろいろな御都合で二円六十銭になっておった。その赤字を市民が負担するのはいやだからもうちょっと広げてと申しますと、尼崎にお願いしたら、おれのところはもうすでに高い料金で乗っておるから……。大阪だけがぼやぼやしておった、こういうことになろうかと思うのであります。さらに国にという言い方をいたしますと、——いま二円六十銭で二十六年から料金を押えられておるというようなところは六大都市だけしかございませんので、ほかのところは四円とかあるいは北海道は五円五十銭というような賃率でおやりになっておりますので、国の費用で穴埋めしていただきたい、こういいますと、なぜそんなことは早く利用者負担で片づけなかったか。おれのほうはとっくにそういうことで片づけておるんだから……。北海道が納めた税金を大阪赤字に使うのはいやだ、こういうふうにおっしゃるのではなかろうかと思うのであります。ですから、これは根本的なところで変更をいただいて、国の費用でこれだけは持ってやるとか、そういうことができますと、それに応じて料金決定ができるのではなかろうか、現在のままでは企業担当者としては絶対に赤字のない料金に一日も早く上げたい。そして機会の来るのを待って改定したい。  それからもう一つ申し添えさせていただきますと、現在大阪市がやっておりますバス料金が問題になっております。梅田から天王寺まで乗っていただいて十五円、これはもうどんな物価と比較していただきましても不当に高いことはございません。いまお願いしております二十円にいたしましても、決して高くありません。ふろ賃と比べていただきましたって、二十五円にしていただいても、まだおかしいことはなかろうかと思うのであります。それくらいにして、御不便をかけております満員バスというようなものを解消するという方向へ進むのがいいのではないだろうか、バス料金のようなものを、十五円でいままでがまんせいといって赤字を出しておるというのは、公営企業担当者としては、これはもう間違っておるというふうに思っております。
  37. 扇田彦一

    扇田参考人 今回は中間答申だけでございまして、基本問題が明らかでございません関係もございまするし、また東京都の水道におきましては、東京だけの特殊事情がございますし、私どもといたしましては、財政措置を今回の答申においては必ずしも考えておらないわけであります。東京都独自の考えで必要な時期にお願いしたいと思うわけでございます。
  38. 藤田義光

    藤田委員長 門司亮君。
  39. 門司亮

    門司委員 時間がございませんし、先ほど参りまして、皆さんのお話をよく承っておりませんのですが、せっかく答申されたことではありますけれども、何か当面の問題であって、基本的な対策には触れないんだというお話でございますので、きょうは私はあまり聞くことはないと思うのです。それで当面の問題として聞いておきたいと思いますことは、この答申に書いてありますように、現在の次元で内部の構造といいますか、合理化をはかったところで、それでは実際はどうにもならぬと思うのですが、そういう感じはされませんか。これは答申だからやむを得ぬから内部の合理化を書いたんだ、そういう御趣旨でございますか。
  40. 北野重雄

    北野参考人 この書いてあるところでひとつ御理解いただきたいのでございますけれども、これは委員の多数の御意見でこういうふうに表現されておるのでございます。やはり何といっても合理化というものは、御指摘のとおりそう急速には行なわれないものでございますけれども、企業経営者として合理化への努力、いままでもおやりになっておりますけれども、一段と御努力願う、そして企業の管理者も、また職員の方も、それに御理解を願うという、この二本立てで、しかもそれを並行的にやっていく、こういう考えでいきたいわけでございます。それで政府の一部、特に経済企画庁あたりは、かつてはまず経営合理化をやってみて、それでもいけない場合には料金の引き上げを見てやろう、こういうような態度をとっておられましたので、それは不適当だ、この際直ちに料金適正化経営合理化の徹底、この二つをやってもらいたい。ただ経営合理化はそう一挙にやれるものじゃございませんし、ことに職員数の合理化というようなことはこれはやはりある程度時間をかけてやらなければならぬことでございますので、方法としては、こういうことを企業の管理者も職員の方も理解を持って御努力願いたい、こういう趣旨でございます。
  41. 門司亮

    門司委員 私が聞いておりますのは、合理化とよく言われますが、問題は非常に大事なことでありまして、交通機関に対する人間が、極度に——極度にということばは行き過ぎでありますが、ある程度減ってまいりますと、一般の利用者にきわめて大きな迷惑、事故を起こす原因なんでありまして、当面それが公営企業として成り立つような形を示しましても、社会的には非常な大きな損失を来たすということは、しばしば例のないことではございません。水道の問題にしても同じことであります。やはり検針あるいは漏水をどうするかというようなところまで、目に見えないところに、ただ考えればあの辺は少し人間を減らしてもよくはないかというように考えられるところが案外非常に大事なところであって、そういう面が、どうも人間を減らせばいいのだ、合理化すればいいのだというようなことだけでは、私は今日の段階において問題を検討すべき時期が少しおそ過ぎるというような気がするのです。それでここまで聞いてもさっきの答弁と同じことだと思いまして、それから先はこれから御答弁になろうかと思いますが、その辺のところをひとつ調査会のほうでお考えを願いませんと、往々にして合理化という線が出てくるとすぐ人間に頭をかけていく。私は今日の合理化というものは、人間を減らすとかふやすとかそういうことでないと思う。企業自体をどうするかということであります。  御承知のように、わが国の水道にいたしましても、明治十七年にできた横浜水道が一番古いのであります。それから一体何年たっているかということであります。それから、したがって古い都市の長い間の施設が、十分に監督されておらない。東京都の漏水などはロンドンの漏水の何倍という漏水をしておるということが言われておる。それをまず直さなければならぬ。同時にまた、半面には非常に急速に伸びております都市構造の中からくる、結局施設の先行投資ということばを使いますが、これは非常に問題がある。これは両方から責められて、そしてにっちもさっちもいかないのが今日の公営企業だと思うのです。水道だけじゃない、電車、みなそうだと思う。責任を持って考えようとすれば、まず政府料金上げなくとも済むような一つ処置として、外国並みに——私は決して破天荒なことをやれとは言いません。たとえば外国並みに起債の償還年限を長くするとか、あるいは例の利息を安くするとか、アメリカでは、御承知のことと思いますが、公営企業でなくて公共企業といって、私企業にすら政府はかなりのめんどうを見ておるはずであります。そして公共性を保っておるはずであります。同じように、ここで一方において合理化をしいるというなら、一方においてそれが立ち直ることのできる財政的な基本をこの際与えなければ、これはどんなことをやっても私はだめだと思うのです。料金を幾ら上げたって、料金上げただけで問題が解決できるなら楽なことであります。料金上げただけでは解決つかぬので、その辺の見通しはどうですか。  そこで、結論的に申し上げておきますが、結論的には、結局都市計画との関連性がありまして、私まだはっきりした意見をまとめておりませんが、少なくとも都市計画の一環として、そして上水も下水も、あるいは交通というものも、その中に一応含める。そして公営企業のほうは公営企業として、採算ベースに合うところだけを公営企業一つの採算性のワクの中でこれをやっていくというような、一つの先行投資については先行投資だけを切り離していくという姿が現在の日本には望ましいのじゃないか。そうしませんと旧来の旧観念、私どもの苦しいときの観念のように、都市が大きくならないだろうという観念でやっておっても私はしょうがないと思う。私は横浜に住んでいるが、横浜は百万人の人口になるのはよほど先のことだと思っておったが、戦後七十万の人口が現在百六十八万、わずかこの間に百万に近い人口がふえている。これではどんなことをしたところで先行投資はなかなかたいへんな金がつぎ込まれなければならない。それが直ちにペイするかというとなかなかペイするわけにはいかない。そうして今日の公共企業の行き詰まりがきておる。だからぜひ調査会にお願いしたいのは、そういう基本的な問題を早く解決していただいて、そうしてそのワクの中で合理化をせざるを得ないというたてまえでないと、合理化のほうが先だ、それをやってみろ、そういってもそれだけではやれないだろうから賃金も上げてもよかろうという消極的なことでは、この問題は解決つかぬと思うのです。この辺で思い切った施策が必要だという感じがするので、そういう点、もしお漏らしができるならば、委員長として言いにくいという点もあろうかと思いますけれども、もしお考えでもありましたらひとつ聞かせていただきたいと思います。
  42. 北野重雄

    北野参考人 たいへん有益な、また適切な御意見と伺ったのでございます。いままでもこの中間答申決定する段階におきましても、委員方々からいろいろないまのようなお話も出ておりました。いよいよ基本問題に入りましたので、他の委員の方にも御指摘の点などよく通じるようにいたしまして、今後の審議で十分検討していくように取り計らいます。
  43. 藤田義光

    藤田委員長 栗山君。
  44. 栗山礼行

    ○栗山委員 北野先生に、たいへんお時間の制限がございます中に恐縮でございますけれども、非常に重要な今後の課題の一つとして伺ってまいりたいと思っておるわけであります。  私は、自治大臣答申二つの示し方にも問題があろうかと承知をいたしております。しかも学識経験者の皆さんによって、御調査審議をしていただくその作業の内容にも、私は当面というものと基本的な問題と不可分の問題を、やはり当面にウエートを置かれて、そのことが事務的な一つ答申作業の内容というふうに発展した観があるのではないか。たいへん失礼な申しようでありますけれども、いわゆる今日の公営企業の置かれておる悩みの本質につかずして、現象的にながめて、それについての路線の合理化であり、適正料金、こういうような自治体の健康体や病体に沿わざる一つ結論を出されたというところに、この公営企業の問題のあり方をどう進めていくかということを混迷化する内容がここに潜在いたしておる、こういうふうに私はずばり考えを持つわけであります。これはやはりこの問題をもし当面に重点を置かれるということならば、もう一つの欠けたものがあったのではないか。やはり公営企業というもののこういう財政事情の悪化という一つの方向に持ってきたことが、国の公営企業へのあり方、あるいはそれの補助育成の方向づけ、こういったようなものや、それから経済の性格からくる公営企業の置かれた条件の大きな過重負担、こういうようなものも含めて、やはりこの公営企業というものの大きな財政事情の圧迫と困難をもたらしてきた。これをどうするかということが根本じゃなくて、当面する公営企業の方向づけだけをやろうとする。私はこの点に一つの大きな混迷があると思う。この点が基本問題だと思う。客観的に見て、この問題を解決せずして、やはり当面の解決にはならない。そうでなければ多くの問題点を残す。料金適正化で値上げするか、あるいは乱暴な、いわゆる純然たる資本主義経済的な法則による一つ合理化で、弱肉強食の方向をもたらす、そういう公営企業の性格変改の問題より処置がない。こういうふうに発展するのではないか。こういう点は十分知りつついろいろお運びになったと思うのでありますが、しかしこの問題をはずれて、個個的な答申作業というものについては、私は非常に疑問があるのじゃないかと考える。せっかくの御検討と期待する問題について、誤った方向づけに進路を変えるのじゃないか、こういう危惧をいたしますので、この点については私ひとつ、そういう大きな不信と疑惑と、何か見落とされたような大きな問題がありはしないか、こういうことについてひとつ会長の所信を伺っておきたい、こういうことにとどめたい。
  45. 北野重雄

    北野参考人 たいへんどうもお答えしにくい問題でございますが、先ほど来たびたび申し上げておりますように、諮問事項はここに出ているように二つありまして、今度の中間答申この諮問の第二号のその中で、しかも応急対策、こういうふうになっているわけであります。したがいまして、まず地方公営企業の今後のあり方をどうするかという問題を、もっと掘り下げていきませんといけないわけでございまして、それについてやはり赤字原因なんかも、もっともっと追究いたしまして、国家自身も考えなくてはならぬ問題があったのじゃないか。委員の一部の方にも、国自身もここで大いに反省すべき問題があるんじゃなかろうかというようなお話も出ているわけでございまして、そういう点も今度の中間答申に一部は出ておりますけれども、そういう点も掘り下げて委員の皆さんに御検討をいただくようにしたい、こう考えております。どうもいまの段階で、はなはだこれは急いだ応急措置ととりあえずの四十年度の対策という程度で、皆さんの御不満もよくわかるのでございますけれども、この調査会としても時間的な関係でもうやむを得ずこういうことになったわけでございまして、それでもやはり中間答申を出したほうが、公営企業の累積赤字を早く食いとめるという意味で将来の再建にもそれだけプラスになるんじゃなかろうか、こういう気持ちで答申をしているわけでございます。
  46. 藤田義光

    藤田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  本日は参考人方々には長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、当委員会審議並びに結論の作成に多大の示唆と成果をおさめさせていただいたことと確信いたします。まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十二分散会