運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-12-15 第47回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十二月十五日(火曜日)    午後二時十九分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    濱田 幸雄君       福田 繁芳君    渡辺 栄一君       卜部 政巳君    岡  良一君       佐藤觀次郎君    田中 武夫君       只松 祐治君    日野 吉夫君       平林  剛君    松平 忠久君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (主計局次長) 鳩山威一郎君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         国税庁長官   木村 秀弘君         農林事務官         (農林経済局         長)      久宗  高君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    吉國 二郎君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    塩谷 忠男君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      赤羽  桂君         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 十二月十二日  バナナ輸入関税引き下げに関する請願外一件  (小笠公韶君紹介)(第八八〇号)  企業組合に対する課税適正化に関する請願(田  中伊三次君紹介)(第八八一号)  同(大倉三郎紹介)(第九一九号)  同(辻寛一紹介)(第九二〇号)  同(小川半次紹介)(第一〇三四号)  同(加賀田進紹介)(第一〇三五号)  同外一件(春日一幸紹介)(第一〇三六号)  同(菅野和太郎紹介)(第一〇三七号)  同(田中伊三次君紹介)(第一〇三八号)  同(保科善四郎紹介)(第一〇三九号)  旧令による共済組合等からの年金増額に関する  請願中川一郎紹介)(第九二一号)  バナナ輸入関税据え置きに関する請願(野原  正勝君紹介)(第九二二号)  税務職員不当配転反対等に関する請願(小林  進君紹介)(第一〇四〇号)  輸入生鮮果実類簡易通関制度適用に関する請  願(山花秀雄紹介)(第一〇四一号)  バナナ輸入関税引き下げに関する請願山花  秀雄紹介)(第一〇四二号) 同月十四日  企業組合に対する課税適正化に関する請願(宇  野宗佑紹介)(第一一四七号)  同外三件(久保田鶴松紹介)(第一一四八  号)  同(栗山礼行紹介)(第一一四九号)  同外二件(小山省二紹介)(第一一五〇号)  同(佐々木義武紹介)(第一一五一号)  同(永末英一紹介)(第一一五二号)  同(穗積七郎紹介)(第一一五三号)  同(宇都宮徳馬紹介)(第一四七四号)  同(内田常雄紹介)(第一四七五号)  同外二件(江崎眞澄紹介)(第一四七六号)  同(小澤佐重喜紹介)(第一四七七号)  同(福田繁芳紹介)(第一四七八号)  同(藤枝泉介紹介)(第一四七九号)  同外二件(愛知揆一君紹介)(第一五六七号)  同(砂田重民紹介)(第一五六八号)  同(田中武夫紹介)(第一五六九号)  バナナ輸入関税引き下げに関する請願(今松  治郎君紹介)(第一一五四号)  同(春日一幸紹介)(第一一五五号)  同(藤山愛一郎紹介)(第一四八二号)  同(田口長治郎紹介)(第一四八三号)  バナナ輸入関税引き下げに関する請願(中嶋  英夫君紹介)(第一一五六号)  同(江崎眞澄紹介)(第一四八〇号)  同(藤山愛一郎紹介)(第一四八一号)  バナナ輸入関税据え置きに関する請願(竹内  黎一君紹介)(第一一五七号)  同(塚田徹紹介)(第一一五八号)  同(橋本龍太郎紹介)(第一一五九号)  輸入生鮮果実類簡易通関制度適用に関する請  願(藤山愛一郎紹介)(第一四八四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農業共済保険特別会計歳入不足をうめるた  めの一般会計からの繰入金に関する法律案(内  閣提出第四号)  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  参考人出席要求の件についておはかりいたします。  来たる十八日、証券取引に関する件について、日本銀行副総裁佐々木直君、日本興業銀行頭取中山素平君、日本証券業協会連合会会長福田千里君、日本証券金融株式会社社長谷口孟君及び日本共同証券株式会社社長三森良二郎君に、それぞれ参考人として委員会出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 吉田重延

    吉田委員長 農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案を議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。有馬輝武君。
  5. 有馬輝武

    有馬委員 経済局長にお伺いしたいのでありますが、三十五年の四月に農林省にこの農災制度に対する改正協議会がつくられまして、各界代表を加えて年余に及ぶ真摯な論議がかわされまして、現時点ではきわめて公正な、しかも農家の期待にある程度こたえ得る案がつくられました。そして各界代表もまとまったものに対しては、それぞれの意見があったにいたしましても、責任を持ってみずからの所属する団体に対する理解を深める努力を続けたのであります。わが党から出ておりました委員にいたしましても同様でありまして、非常に問題の多い、特に農協との関係その他で非常に問題が多かったにもかかわらず、御承知のように責任を持って努力をいたしたのであります。ところがこの公正な結論に対しまして、その後政府は、農林省は、三十八国会、三十九国会ずっと続けまして、この協議会で出された案をまるきり無視した。二十二年以来たびたび改正が行なわれましたが、そのつど微温的な、びほう的な改正に終始してきたその態度を、この協議会結論が出たあとにおいてもやはり同じような態度で臨んでまいりました。私がこの際あらためてお伺いしたいと思いますのは、そういう微温的なものを出された背景といいますか、農林省のものの考え方について、この際明らかにしておきたいということが第一点であります。このことからお答えをいただきたいと思います。
  6. 久宗高

    久宗政府委員 御指摘のように、共済制度の問題につきましては二十七年ころから問題がございまして、再三いろいろな案の試みがございまして今日まで経過しておるわけでございます。保険的な設計災害に対処しようという構想でございますので、御承知のとおりああいう膨大な機構を持って実施いたしました場合、いろいろな難点があるわけでございます。そこで先ほど御指摘がございましたような三十五年以来の最終的な審議会におきまして、やはり基本的には少し上のほうへ片寄っておりました保険設計をもう少し地についたと申しますか、農家に近いほうにウエートを置いた形で運用してみようということで、保険責任区分を大きく変えたわけでございます。その結果といたしまして、まだ実施に入りまして第一年度でございますが、私どもといたしましてはその反応といたしまして、従来この制度農家が必ずしも熱意がなかったために、共済金額選択いたします場合にでも非常に低い選択のしかたをしておったわけでございますが、さようなものが相当上のほうを選択して、その制度運用に参加しようという形が出てまいったというふうに考えておりますので、やはり現在の機構運用してまいります場合には、今回の改正がこの制度を軌道に乗せます一番基本的な行き方であるというふうに考えたわけでございます。もっともこれらの運用にいたしましてもまだいろいろな難点があるわけでありますが、一番大事な点は、やはり単位組合が本気でこの問題にお取り組みいただけるような最小限度必要な制度改正は、今回の制度改正で一応果たし得たものと考えておるのであります。
  7. 有馬輝武

    有馬委員 私がお伺いしておりますのは、局長も御承知のように現在の農災制度に対しまして全国的に、特に災害が頻発する地域においてさえも非常な不満を持っておる。そして事業を停止したりあるいはその他の形での抵抗が起きておることは御承知のとおりであります。問題はなぜそのような不満というものが起きるか。その点について私は改正協議会でいろいろ論議をされてあのような結論が出たと思うのであります。私が微温的と言ったのはいまおっしゃったようなことだけにとどまっているから微温的だと申し上げたのです。少なくともこれは農家自体におきましてもまた政府におきましても、それこそ明治どころじゃなくて大宝の昔から備荒貯蓄という点についてはこれはみんな考えてきたことなんです。それが観念ではわかっておりながらも現実ではそれに抵抗を示す。それに改正の際に根本的にこたえる態度がなければ、この制度は崩壊に瀕すると思うのです。問題はそれに対する農林省指導性というもの、これがなければいかぬと思うのです。それが行政だと思うのです。政治だと思うのです。ただ単に農家不満を持っておるからこれを何とかまあなでてというような形ではなくして、ほんとう農家不満がどこから来ておるかということを正確に把握して、そしてそれにこたえる改正というものが行なわれなければ、これはもう問題にならないと思うのです。その意味改正協議会意見というものは、先ほど申し上げましたように少なくとも現時点においては公正なものであった。しかしその改正協議会意見というものはほとんど無視されておったのがこの前の改正です。そうでしょう。そこら辺についてどう考えておられるかということをお伺いしておるわけです。
  8. 久宗高

    久宗政府委員 共済に対する農家の御不満というのは、いつかこの問題が出ました場合に御指摘のあった不満があるわけでございます。ただ先ほどもお答えいたしましたように、私どもといたしましては協議会で整理して出しました問題の中でやはり大事な点は共済でございますので、文字どおり地域の農民の方たちがみずから相寄って助ける。それを各段階に分けまして、国も相当大きな負担をいたしましてバックしようという制度でありますが、従来とかくこの制度を説明いたします場合にはわかっても、実感としてどうしてもわかりにくいという点は、やはり単位組合の実質的な保険制度上の意義を、先ほど申しましたようにやや上のほうに責任を上げてしまいまして、上のほうから操作するような全体の設計であったのでありますが、今回は御承知のとおり各単位組合そのもの相当大きな財源をみずからそこにとどめまして、若干それによって責任は重くなるわけでございますけれども、とにかく相当保有金をもちまして共済制度運用に当たるというようなことで、いままでの段階から申しますと連合会から一段下問題点を下げたわけでございます。したがって財源がそこへ相当できてきますと、単位組合といたしましても相当共済的な機能が果たせることになります。ただこれがまだ運用されて第一年目でございますので、そういう形になりました場合に、いままでの制度と今回の制度と同じ村におかれましてもどのくらい恩恵が違うのか。そういう点について実感がわいておらないと思うのであります。幸いにして今回におきましても被害がなかったところはなかっただけに相当財源がたまって、将来に対応できるという見通しを持たれるでありましょうし、また今度不幸にして災害をお受けになったところは相当思い切った共済金選択の上のほうを選択しておられますので、従来と異なりまして相当厚い共済金を手に入れるというようなことで、いま実験の過程と申しますか、新制度をいま農家の方がみずから経験を通じておわかりになっている段階だろうと思うのです。さような意味におきましては、決して私どもはいまの制度があの改正で万全とは考えませんが、最も大きな欠陥であった浮き上がった体制というものが少なくとも地について動き出したというふうに理解しておるわけでございます。またそれを伸ばしてまいりたいという気持ちを持っておるわけでございます。
  9. 有馬輝武

    有馬委員 私はいつでも言うのですが、委員会の審査というものはただぼくらが質問をして、それにあなた方が適当に答えられてという性格のものじゃないと思うのです。局長も御承知のように、これは現行の共済制度に対しては数多く問題点があるわけです。支払い時期の問題があり、基準反収量の問題があり、賦課金の問題があり、掛け金率の問題があり、数えあげれば切りがないのです。改正というものはそういうものに対してメスを入れることじゃないのですか。その基本的な面からお伺いしたいと思います。
  10. 久宗高

    久宗政府委員 それはおっしゃるとおりでございまして、個々の問題についてそれぞれ改善策をつくりまして実施していくのが本来だと思います。ただ私も二十七、八年に一度この制度関係いたしまして十年たっているわけでございますが、当時すでに問題であった問題で、今日まで実はまだ残っておる問題がございまして、御指摘を受けてまことにじくじたるものがございますけれども、ただ今回と前と非常に違います点は、前の二十七、八年、つまり旧改正におきましては、かりに一つ一つ農家不満におこたえしようと思いましてもあのような設計関係、特に単位組合の位置づけというものがああいう形であったのでは、農家の方々が実感を持ってこれは直ったというふうにお考えになれる筋ではなかったというふうに思う。それを十年かかりまして、相当論議論議を経まして、相当これは保険設計としては大胆な切りかえをいたしまして、単位組合に重きを置いた改正にやっとなったわけでございます。  これからの問題といたしましては、そういう新しくウエートを持ちました単位組合をバックにいたしまして、いま御指摘のような位置の問題につきまして、逐次直していくめどがついたというふうに考えておるわけであります。これには相当期間がかかると思いますけれども、少なくともいまのような組合改正、また保険設計になれば相当いままで出ておりましたような御不満について具体的にお答えできる一つの目安がついたというふうに感じておるわけであります。
  11. 有馬輝武

    有馬委員 それではお伺いしますが、三十五年に設けられましたような協議会を再度持たれる考え方があるかどうか、この点についてお伺いいたします。
  12. 久宗高

    久宗政府委員 むしろ問題点は三十五年の委員会までにもいろいろございましたし、三十五年の委員会はほとんど網羅的に全部の問題を御指摘だったと思う。その中で最も必要なもので、他の条件を満足していきますのにぜひ必要だという面をまず今回の改正でやったと私は考えております。したがいまして、その三十五年の委員会で御指摘だった問題で、これから手をつけていくべきものが相当ございますけれども、あらためて現在の段階でもう一度別途の審議会を設けてということは実は考えておらないわけでございます。と申しますのは、御指摘のありましたような改正の一歩を踏み出したわけでございますので、その実施過程を中止いたしまして、その中でさらに私どもが手をかけようとしておる問題がございますので、そういう問題をもう少し浮かび上がらせてから、他に必要があれば全般的な制度改正という問題が起こるかと思いますが、少なくとも私ども改正内容は三十五年に御指摘をいただいた問題に逐次取り組んでいく方向で制度改正をいたしてすでに踏み切って動き出しておりますので、若干の時間をいただいてもよろしいのじゃないか。ただ若干の問題、たとえば家畜の問題でございますとか、さような問題についてすでに御指摘があって、まだ私どもの準備ができませんために本格的な検討に入っていない問題がございます。これは来年度におきましてすでに私どもも決意いたしまして本格的な検討入ろうと思っているわけでございますので、全般的な改正と申しますよりは全般的な改正方向づけはすでにございますので、その中で特に問題とされておりますものを若干個別的に現在の改正のベ−スの中で考えてまいりたい、そういう気持ちでおるわけございます。
  13. 有馬輝武

    有馬委員 そうすると、前向きで改正に取り組んでいきたいということでありますが、私どもも時間がかかる大事な問題であることは、むずかしい問題であることはわかっておりますが、それを先ほど私あげましたようなプログラムについて何年にどのようなというものを示していただかないことには、現在までの農林省態度の中からは、ただ、いまおっしゃるような取り組み気がまえでありますということしか出てこないので、取り組み気がまえがいままでの計画を見ておりますと、ただ口でおっしゃるだけで、あろうとは思えない。ですからいまおっしゃることを具体的にいつどのような形でという点をお示しください。
  14. 久宗高

    久宗政府委員 いままでたびたび御議論の出ました中で、私どももいつか本格的に手をつけなければいかぬと思いながら、実はまだ手をつけない問題に家畜共済の問題がございます。これははっきり来年度におきまして正式に御予算もいただくことになりまして、本格的な検討入ろうというふうに考えております。  また、これは若干各論になりますが、今回の災害その他でもいろいろ御指摘のございました果樹共済でございますとかあるいは畑作共済につきましても、逐次データの整備と関連いたしまして、どのような形でこの問題を取り上げるべきかという組み立ての段階入ろうとしているわけでございます。先生がおっしゃるように、別にプランを持っていないというわけではないのでございます。ただ一番基礎的な農作物共済につきましては、先ほど申しましたような大きな方向づけが出ておりますので、しかもこれは非常に大きく従来の制度を変えておりますので、その実施第一年でございますし、いま直ちにこの改正という問題は考えておらないのでありまして、その中で各論的にるる御指摘の点はもちろん新制度の中で研究は進めてまいりたい、こういう段取りで考えております。
  15. 有馬輝武

    有馬委員 そうおっしゃいますけれども、たとえば果樹の問題でも取り上げられたのは去年、おととしではないのであります。検討いたしておりますということで現在まできております。たとえば果樹にしぼっていつ結論を出しますか。
  16. 久宗高

    久宗政府委員 果樹の問題につきましては、データはややそろってまいったわけでございます。ただ、たびたび申しますように、打ち出しといたしましては、共済制度果樹をということから入ってまいったわけであります。検討もそういうようにやってまいったわけでございますが、たびたび申し上げますように、あれも非常に価格関係に大きなフレがあるわけでございまして、米なり麦なりのような形で運用しておりますものとはたして同じような形で、しかも共済という形でやったほうが妥当かどうかという問題が出てくるわけでございます。つまり物理的な災害経済変動、主として価格変動というものをどう組み合わすべきかということで、これは実に非常にむずかしい問題でございまして、私どもも素材がそろいましたので、ややそういう吟味も含めた検討を質的にすでに検討角度を変えてきております。おそらく最終的には共済という形がいいのかあるいはもっと違った価格関係をその中に入れました場合に共済という方式がいいのかどうかという問題も起こってくるのではないかと思います。いずれにいたしましても、果樹なり畑作につきまして何らかの意味のさような救済措置が必要だということはそのとおりに考えておるわけでございますが、その点につきましては、必ずしも共済という形に限定すべきかどうか、最後に組み立てられるかどうかというぎりぎりのところをいま検討しているわけでございます。畑作のほうは品物も多うございますので果樹ほど進んでございませんけれども、これもやはり考え方としてはいまのような問題点がそこに出てまいりまして、これをぜひ進めたい、こういうふうに考えております。
  17. 有馬輝武

    有馬委員 共済の対象の問題が出ましたので、畑作についてはどう考えておりますか。
  18. 久宗高

    久宗政府委員 畑作と申しました場合にもちろん麦が入るわけでございますが、麦はいわば現在の体系では農作物共済の中で扱っておりますので、先生の御質問はおそらく畑作共済で問題にしているものはどうするかということだろうと思いますが、これも実は私どももだいぶ前から手がけておりまして、品目にいたしましても相当品目を実は洗ったわけでございますが、地域差でございますとか、また品目特殊性という問題はほぼ資料的には洗えたように思うのであります。一番困難な点は、先ほど申しましたようなこれが非常にある地域に限られておりまして、また作物の量から申しまして、非常に価格変動が大きいわけでございます。したがいまして、単に物理的な損害でそれをおおうといたしましても、全く逆な価格関係の介入を排除できませんので、この二つの組み合わせをよほどうまくやりませんと、共済という形をとりましても、非常に大きな掛け金負担をしなければ組み立たないという問題が一方にございますのと、そういうやり方をいたしましても、物理的な減収と価格関係とは非常に関係が大きい、それがまた逆に響きますので、はたして経済的な補てんとして意味があるのかどうか、この両面から実は非常にむずかしい問題にぶつかってしまいまして、場合によりますと、いまの共済という積み立て以外の方法のほうが、むしろ畑作農家が現在ある災害が起こった場合に物理的な災害が当然経済災害に換算されるわけでございますので、ほんとう意味の軽微な負担で大きな補償が得られる、こういうところから、はたしていま考えておりますような共済という形式がよろしいかどうかという吟味もいたさなければならぬという段階に来ておるように思います。
  19. 有馬輝武

    有馬委員 その根本的な日本農業の把握のしかたという点に問題があるのじゃないかと思うのです。日本農業を考える場合に、地域農業という視野からとらえなければ、日本農業なんというものはとらえようがないですよ。それくらいは局長も御存じのとおりです。わが党の現在までの農業政策にしても、そういう点で私は非常な欠陥があったと思っています。いまおっしゃるような意味で、局部的なということばを使われましたけれども、局部的な農業というものが日本農業実態なのです。そこでその中で共済制度をどのようにして入れていくかという角度からとらえていかなければ実態に即応し得ないのではないか。畑作についてもやはりそういったとらえ方をしてほしい。ですから、どのような品目について共済制度をという点については、これはもう私が申し上げなくても十二分に御承知のところだろうと思います。ですから、私はやはりそれに真正面から取っ組んでいただきたい。たとえば私のところの九州で考える場合の米に対する概念、東北で考える場合の米に対する概念というものはまるっきり違うのですよ。主幹作物がどのようになっているかということを見ていただけば、それぞれの地域農業についてはもう十二分におわかりいただいておるので、そういった視野からせびとらえていただきたいというのが私のいまの主張なのです。その立場から畑作というものについても考えてほしい、こういうことなのです。これは要望にとどめておきます。とにかく本委員会はその農業共済制度のあり方を根本的に掘り下げることではなくして、この今度の特別会計の処理に限定さるべきだと思いますので、これ以上は触れません。  次にこの共済制度の運営の問題といたしまして、いま申し上げましたように、米一つを取り上げてみましても、私は早場の問題等を考慮に入れないところの共済制度というものがおかしいと思っております。特に今年のように、十二号台風なり十四号台風というようなものに見舞われた場合に、この感をなお深くするわけです。そういう点で、私は十月にならなければまとまらないから、あるいは十一月にならなければまとまらないからというようなことで全国の米を一緒にしてしまう、その考え方はわからぬわけです。やはり早場は早場として処理すべきではないかと考えておりますが、この点についてはどうですか。
  20. 久宗高

    久宗政府委員 おっしゃるとおりだと思うのです。私どもももしそれができるならば一番いいと思います。そういうことが可能であるべきだと思うのでございますが、残念ながら損害評価というような問題がございまして、統計調査部の数字を少なくともあるワクといたしまして考えざるを得ない現在の仕組みでございます。さような問題がありますために、適宜に早場の問題にその時点でお答えするという形に現在の仕組みはしにくいわけでございます。これはやはり全国的に取り上げている問題でございますのと、損害評価の限界と申しますが、さような問題がございますために、早場とその他の作物を切り離してそれ自体だけで処理するということが困難でございますので、まことに残念でございますけれども、そのことはいま損害評価の方式を変えない限り手がつかないということのように考えております。
  21. 有馬輝武

    有馬委員 困難であるということとやる意思がないということと、これは区分けしてお伺いしたいと思うのですが、その損害評価がなぜできないのですか。
  22. 久宗高

    久宗政府委員 本来でございますれば、共済制度でございますれば、メンバーがそれぞれの損害を評価いたしまして、それがそのまま個人の被害になるというのが理想の形だと思うのでございますが、いままでのやりました経験から見ますと、それぞれの団体の自主的な評価だけでは、災害が現実に起こりました場合に、実査してみますと、非常なアンバランスが組合単位にもできますし、また個人単位にもできますし、また大きく分けますれば、地域単位にもできてまいっているわけでございます。これは本来ならば、そういうことはおかしいのでございますけれども、それは現実問題といたしまして、アンバランスが地域ごとにも出てまいりますので、これはどうしてもできるだけ客観的な尺度で公平を期しませんと、これにつきましては、関係者の負担だけではございませんで、国庫からも相当負担が出ておりますので、一般的な公平を期さなければならぬということで、やむを得ず統計調査部の資料に基づきまして、この査定がはなはだしく地域的にアンバランスが出ました場合に、そういうことがないように調整いたしますのには、どうしても国みずから調査をいたしましたものを一つの限度といたしまして、損害評価の最終的なけじめをつけざるを得ないという問題があるわけでございます。したがいまして、おっしゃるとおりそれは不可能ではございません。単位組合の方の全部の御認識を得て、そうしてそういうようなある尺度で評価をいじらなくても、これでもって完全に各方面が御満足いただけるような公平な評価ができるという理想的な状態におきましては、これはいまのような時期別の差というものは排除できるわけでございますが、遺憾ながら現在までの運用におきましては、このワクをはずしますと、ほとんどめどがなくなる実情でございますので、私どもとしてはやりたくない問題でございますが、やむを得ずそういう形の損害評価をとっているわけでございます。
  23. 有馬輝武

    有馬委員 局長ははしなくも農林省の評価に対するものの考え方をいまの答弁で漏らされたように私は受け取るわけです。といいますのは、これはもう基本的な共済制度に対する農民の不満の出るゆえんでもありますが、とにかくいまあなたはアンバランスが出るということをおっしゃった。それはもちろんいま三者で評価しているところにも問題がありましょう。その中で私はやはり統計の数字というものに信頼を置いていきたいということもわかります。しかしそのアンバランスが出るのだ、あるいはめどがなくなるのだというそのことがわからぬわけです。というのは、現在まで農林省がとってまいりました態度というものは、災害がどの程度起こったからどの程度の賠償金が要るんだという考え方じゃなくて、賠償金はこれだけだから損害はこれだけになるべきだという、まるきり逆になった考え方が流れておるんじゃないのですか。それを、はしなくもあなたのいまおっしゃったことばの中にふえんしているように思えてしかたがないので、その点お聞かせいただきたい。
  24. 久宗高

    久宗政府委員 あるいは誤解があったかもしれませんが、たとえば金額のワクというようなものは全然ございません。あくまで損害の実態でございます。損害の実態につきまして、国の統計にあらわれてまいりますものと、個々に組合なり連合会でお調べになったものの間に、残念ながら相当大きなギャップがあるわけでございます。そこで先ほど申しましたようなことで調整をせざるを得ないわけでございますが、お話の中に、何か総ワクの金額を頭に置いておいてそれを割り付けたのではないかといったようにお考えのようなおことばがありましたが、それはございまいません。そういうことではございませんで、あくまで損害の実態の評価そのもので調整をいたしております。
  25. 有馬輝武

    有馬委員 私の申したことがまるきり架空のことだ、言いがかりだと思われますか。そういった不満がないと断言できますか。
  26. 久宗高

    久宗政府委員 少なくとも最初に出てまいりますデータにつきまして、総ワクの金額のワクというようなものを私どもでは全然予定しておりません。ただおそらく連合会単位で調整が非常に大きく国と違いました場合、バランスをとるという場合に、すでに金額がそこに計算上出てまいりますので、あるいはそれを調整なさいましたときに、実は減収量の調整でございますけれども関係者の方がそれを金額の調整だと受け取っておられる場合があり得るかと思います。しかし組み立てといたしましてはあくまでそれは金額の調整ではございませんで、損害量そのものの調整でございます。
  27. 有馬輝武

    有馬委員 この点は相当議論の存するところであります。私はとにかくじかに常に農家の声をこの問題については聞いて歩いて、実際の評価その他についても具体的に一筆ごとに私は聞いて歩いておるのです。あなたのところまで屈かないかもしれませんけれども、この点について非常に多くの問題点を残しておることをひとつ記憶にとどめておいていただきたいと思います。  さらに私がお伺いしたいと思いますことは、この支払いの時期の問題であります。これもまた大きな不満一つになっておると思うのです。とにかく忘れたころに補償金はくるものだ。この点について事務的に改善の余地はないのかどうか、連合会なり単位組合なりに対して現在のところどのような指導をしておられるか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  28. 久宗高

    久宗政府委員 支払いの時期につきましては、前回私どもがまだ保険課長をしておりましたときからずいぶん問題がございました。そこでできるだけ支払いを早くしませんと意味がございません関係上、できるだけ調整する措置をとりまして、まあ水稲で申し上げれば年内に支払えというようなことで、ずいぶん努力したこともございます。ただ先ほど申しましたように最終的な、米で申し上げますと実収高の計数が出てまいるのがどうしても十二月の後半になるわけでございます。そこで全部の府県につきまして年内の支払いをするということは相当困難でございますので、相当損害の大きいところでは、早期支払いの御要望の強いところについてはさような方法をとっておりますし、あるいはそういうことでは非常に時間がおくれてしまって、概算でも早く払ってもらいたいというところにつきましては概算払いを適用することにいたしまして、実際問題としては現在のところ従来に比しまして支払いは相当早くなっておるわけでございます。ただ単位組合相当の事務を強制するかっこうになりますので、私どもといたしましてはいつも大きな災害が起こりますと、それぞれの県に、おたくのところは、ぎりぎり待っても最終的な数字が固まっての早期支払いにするか、あるいはそれが相当時間がかかるとすれば概算払いでいくかという向こう側の意思をよく聞きまして、それによって支払いのきめ方をやっておるわけでございまして、現在のところ損害評価の時期という問題がやはり依然としてネックになりますけれども、それを除きましては事務的に、私どものほうはもちろんでございますが、単位組合なり連合会においてもほとんど徹夜作業までして支払いには努力しているわけでございます。しいて申し上げればやはり統計調査部の行ないます損害評価の時期、この問題がネックになって、それ以上に早くできぬという問題であろうと思います。
  29. 有馬輝武

    有馬委員 その、概算払いに関連してですが、本年度御承知のように災害が頻発したわけでございますが、どの程度全国的に概算払いが行なわれているか、これをお聞かせいただきたい。
  30. 久宗高

    久宗政府委員 概算払いの県でございましょうか、金額でございましょうか。
  31. 有馬輝武

    有馬委員 金額です。
  32. 久宗高

    久宗政府委員 ことしの災害で支給した保険金の概算払いの御要求がございましたところは、四、五月の長雨関係で申しますと、長崎、熊本、愛媛、高知、福岡、鹿児島、佐賀、宮崎の八県でありまして、総額にいたしまして七億二千四百万円が出ております。それからその後の凍霜害関係でございますが、宮城、福島の両県に対しまして総額で一億六千万円が出ております。それから新潟地震のときでございますが、これは千三百八十八万七千円というものが出ております。いままでの概算払いをいたしましたものは以上でございます。
  33. 有馬輝武

    有馬委員 次に、農民の不満である賦課金の問題についてお伺いしたいと思いますけれども、三十五年の協議会結論と現在の制度をどのように把握しておられるか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  34. 久宗高

    久宗政府委員 賦課金の問題につきましては、従来保険自体につきましての国庫負担農家負担の問題がございまして、相当被害の少ない県におきましては国庫負担がいわば少ないわけでございますので、それとの関連もございましょうか、全体といたしまして保険そのものに払う費用といわゆる賦課金の率、まあお払いになります農家の感じから申しますと非常に大きくなるということで御不満があったわけでございますが、これはやはり共済におきます被害の程度によりまして、本体でございます共済負担について、どうしても国の負担地域的に、被害の多いところと少ないところでは当然これは違ってくるわけでございます。そういう関係で、ある場合におきましては共済の掛け金のほうで、農家が御負担になるものと、事務費として要るものについての賦課金、この感じが何か逆になって、つまらぬじゃないかという御批判が一応あったと思うのでございますが、これはやはり制度の仕組みとしてはいたし方がないと思うのでございます。ただ農家の御負担ができるだけ少なくなりますように、私どもといたしましても団体関係の事務費の負担につきまして、毎年相当困難な折衝をいたしながら、制度といたしましては被害のあるなしにかかわらず全国的に一つ制度として運用してまいる必要がございますので、特に制度全体の設計がどこかからくずれましてもこれは大問題になりますので、財務当局にもずいぶんその実情を話しまして逐次改善をして今日に至っておりますから、現在の程度の賦課金でございますれば、一応農家の方には御満足いただかざるを得ないのじゃないかというふうに考えております。もちろんこれの改善につきましては今後といえども力を注いでまいりたいという気持ちでございます。
  35. 有馬輝武

    有馬委員 賦課金の問題は私は保険制度の基本的な問題に触れてくると思うのです。ここで基本的な問題についてお伺いしたいと思うのですが、私は農業共済制度というものを、いうところの保険として純粋にとらえていくかどうかということが分かれ目になると思うのです。私は純粋にとらえていく場合には、少なくとも現在日本農業が置かれておる立場からいたしまして、おのずからそこにはリミットがあるのじゃないか、やはりそこに農業という特殊の問題として把握しなければならないのじゃないか、このように考えておるわけです。この基本的な点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  36. 久宗高

    久宗政府委員 御質問意味は実はつらいほどよくわかるのでございますが、もちろん設計といたしましては保険的な設計をいたしております。しかし相当あれで国庫負担もしておりますように、そういう形で年々の支出というものにおよそのめどを立てていきたい、かつ個人に全部個別な被害を割りつけたいということでああいう仕組みをとっておりますので、形の上におきましては保険という構想に基づいておりますけれども、非常に特殊なものであろうかと思います。したがいまして、普通の場合におきます保険賦課金というような考え方とは若干違って適用を当然考えていくべきだろう、またそういう意味で今日やっておるように私どもは理解しておるわけでございます。
  37. 有馬輝武

    有馬委員 そうであるとするならば、また現在そういう認識の上に立っておられるから国庫の負担分がある、そういうことであるとするならば、私はやはり連合会あるいは単位組合の事務人件費についてもそういう視野からとらるべきではないか、このように考えておりますのでこの点についてどういうお考えかということと、事務人件費が四十年度はどの程度になるか、その額だけでけっこうです。
  38. 久宗高

    久宗政府委員 三十九年度は五十七億八千七百万余でございますが、四十年度に要求いたしておりますのは六十六億二千五百万余でございます。  事務人件費についての考え方でございますが、これは基幹的な事務とそれ以外のものとにおよそ分けて考えるべきだろうというように考えられるわけでございます。そこで現在の基幹事務費につきましてはこれはフルに見るという考え方で、その他の事務費につきましては三分の二見るという計算によりましてやっておるわけでございます。
  39. 有馬輝武

    有馬委員 その賦課金の問題について、とにかくいまおっしゃった事務人件費を全額国で見るというところからまず手がけるべきではないかと思うのですが、その点について現在まで検討されてきた経緯、今後の考え方についてお聞かせをいただきたいと思います。
  40. 久宗高

    久宗政府委員 事務人件費の中にはいわゆる基幹的な事務で当然国がフルに見るべきものというものとそうは必ずしもいえないものとあるわけでございます。それを仕分けいたしまして、先ほど申しましたように、基幹事務費につきましては一〇〇%、それからそうでないものにつきましては三分の二ということで一部に自己負担を残しておるわけでございます。
  41. 有馬輝武

    有馬委員 私はいまの問題について、賦課金を掛け金一本にしていくという立場から、将来の方向としては全額国で見ていくという方向にぜひ進めてもらいたいと思うわけです。これについてさっきおっしゃったような意味で障害がありますか。私は農業共済制度を御答弁のような趣旨でとらえるとするならば、これは一つの筋道だと思うのですけれども……。
  42. 久宗高

    久宗政府委員 この点は冒頭に申し上げましたように、制度実態から見ますと事務費についても相当大きく国が見ておりますし、あるいは掛け金の国庫負担までいたしまして、また別に再保険を引き受けたりいたしまして、相当な金を使っているわけでございますが、何と申しましてもこの制度の一番大事なめどは、基礎は農家が相互に助け合うというベースがあって、それを国が援助するというのがこの制度のたてまえだろうと思いますから、その一点がくずれますとめどがなくなりますので、やはり全部国が見てしまうということではないのじゃないだろうか。もちろん実際の農家負担を考えますと、できるだけ軽減するように努力はしてみます。また仕事の中でも先ほど申しましたように補助の考え方を仕分けいたしましてやっておりますのもさような考慮に基づくものでございますので、負担の必要な軽減にはもちろん努力いたしますが、何もかも国が見てしまうというところまでは考えておらないわけでございます。
  43. 有馬輝武

    有馬委員 この点も私は問題として農林水産委員会の場で再度論議をいたしたいと思うところであります。  次に評価の問題でありますが、その基本的な考え方として、生産費補償か所得補償かという問題が出てくると思う。これも論議になったところでありますが、私は現在は生産費補償方式というところにウェートがかかっているのじゃないかと思うわけです。これを所得の補償という形にウェートを持っていくべきではないかというぐあいに考えておるわけですが、この点について基本的な考え方をお聞かせいただきたい。
  44. 久宗高

    久宗政府委員 災害に対処しますのにいろいろな施策が組み合わされて出ているわけです。農業災害補償制度におきましては、すでに投下したものを損害が起こった場合にどの程度カバーするかということがたてまえになりますので、どうしても生産費におきます現金支出部分といったようなものから全然離れて考えるわけにいかないのではないかというふうに考えます。
  45. 有馬輝武

    有馬委員 そこにまた問題があるわけですよ。御承知のように農業技術というものは非常に改善され、これは米の収穫にしてもそうですが、とにかくそこに農家努力というものが所得という形であらわれてきておるわけです。また農林省農業の施策の根本は所得をふやしていく、集約化の問題にしても何にしてもそういった立場から進めておられる。とするならば、いまのお答えはその方向が逆じゃないのですか。どうなんです。
  46. 久宗高

    久宗政府委員 必ずしもそうではないだろうと思うのでございます。もとになります共済金額をきめます場合に、もちろんこれにも農家の御選択が入りますから一般的には申し上げかねると思いますけれども、いずれにいたしましてもいわば平均の概念がそこに入ってくるわけでございます。そこでその方はそれ自体のお払いになります生産費を一々調べてやるわけではございまませんので、共済金を選びます場合に、高低はありますけれども、その基礎になっておりますものは、やはり基本的には平均的なものだろうと思います。したがいまして、そういうものについての補償がございます場合、実際に非常に経営の合理化をしておられて、現実にはその方の経営費が平均以下でございます場合には、相当十分な補償がむしろ逆に得られるということではないだろうかというふうに思います。
  47. 有馬輝武

    有馬委員 私はそのほか評価の問題なりあるいは無事戻し制度の問題なり、いろいろお尋ねしたい点が残っておりますが、大臣がおいでになりましたので、いずれまた機会を改めまして、この制度の根本的な問題についてお伺いしたいと思います。  先ほどの質問でも私の考え方はおわかりいただいただろうと思うのですが、いうならば、農林省はやっかいな制度があるものだというような消極的な態度でしかこの農業共済を見ておられないように受け取れてしょうがないのです。そうじゃないとおっしゃっても、実際には毎年の皆さん方の仕事ぶりを見ておりますと、そのようにしか思えませんので、これは機会あるごとにやりますから、ひとつぜひそういった消極的な態度ではなくて、積極的に取り組むという態度で御善処いただくように要望いたしまして、私の本日の質問はこれで終わりたいと思います。      ————◇—————
  48. 吉田重延

    吉田委員長 国の会計、税制、金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。只松祐治君。
  49. 只松祐治

    ○只松委員 まず最初に、前回有馬委員のほうからもお尋ねがあったと思いますが、今年度の補正予算を通すにあたって、大蔵委員会を一回も開かないで予算を通す、こういうことは、私も昔のことはあまり知りませんが、ほとんど前例がないだろうと思います。これは一言にして言うならば、たいへんけしからぬことでありまして、大蔵大臣だけの責任というわけでございませんけれども委員会全体としても責任があるわけでございますが、今後こういうふうに、自民党内部の問題であるとはいえ、国民の代表として存在する大蔵委員会財源一つも審議しない、こういう形で予算を通すということはきわめて悪い慣行をつくる。私は絶対に今後そういうことがないように強く要望をいたすとともに、大蔵大臣の所見も承っておきたいと思います。
  50. 田中角榮

    田中国務大臣 大蔵委員会の問題につきましては、先般総理大臣も出席をしまして申し上げましたとおり、十分気をつけてまいりたいと思います。
  51. 只松祐治

    ○只松委員 それから、まず最初に、今朝来の新聞を見ますと、昨日の参議院あるいは大臣の談話発表で、金融引き締め緩和の方向への政策をとられる、こういうことをお述べになっておられます。いままで大体金融引き締めの方策をずっととってきて、本年三月には公定歩合の二厘引き上げ、こういうことまで行なわれたわけでございますが、確かに年末に向かいまして、池田高度経済成長政策の失敗から、中小企業の倒産が続出をいたしております。そういう面から見て、金融の何らかの方策を打ち立てるということは必要になってきているわけでございますが、どういう観点からこの引き締めをゆるめていく、こういうふうにお考えになっているか、お聞かせを願いたいと思います。
  52. 田中角榮

    田中国務大臣 きよう三時に頭金準備率の引き下げを発表いたすということでございます。預金準備率の引き下げそのものが、昨年の十二月からとってまいりました金融引き締めの思い切った解除であるというふうには考えておりません。いつも申し上げておりますとおり、確かに国際収支の問題等、解決に向かってはおりますけれども、一——三月の輸入期も控えておりますし、またイギリスのポンド防衛に対して一連のアメリカ、カナダ等の公定歩合の大幅引き上げというような問題もございますし、これがアメリカその他の経済にどら影響し、また日本の貿易収支等にいかなる影響を持つかという問題に対しては、慎重に配慮しなければならない国際情勢にあることも事実でございます。また一面、中小企業の倒産等、また証券市場の不振等、いろいろなひずみの面もございますので、金融調整下にあってもきめこまかく配慮をし、弾力的に金融政策をとるということは常々申しておるわけでございます。そういう考えのもとに現段階を考えるとき、現在の調節というものは四つの方法でやっております。一つは準備率でございますし、一つは窓口規制でございますし、一つは買いオペレーションの制度でございますし、もう一つは公定歩合操作でございます。こういう四つのものの中で、準備率の引き下げということは、特に日銀との関係を持っておる都市銀行を中心にして、資金事情等も非常にいろいろ問題もございますし、もろもろのことを考えまして、その結果預金準備率をちょうど一年ぶり、昨年の十二月十六日でございますので、ちょうど一年ぶりに引き下げを行なったということでございます。
  53. 只松祐治

    ○只松委員 これはいまちょっと大臣のほうから触れられましたように、国際的な高金利政策といいますか、そういう方向に向いていっておるわけでございますが、それに若干反してくる、こういう形になってまいりますが、そういう関連をどういうふうにお考えになっておられますか。これは当然に輸出入貿易その他全般的に対外問題と関連をしてくるので、ひとつお聞きをしておきたい。
  54. 田中角榮

    田中国務大臣 ポンド防衛を中心にいたしまして、イギリス、アメリカ、カナダ三国が公定歩合を引き上げた、しかもイギリスの公定歩合は日本よりも高い、七%という最高の公定歩合であるということから考えて、日本に対していろいろ影響があるだろうということがいわれるわけでございますが、これらの世界的な動き、国際的な金融情勢等、十分考えながらわが国の金融行政を行なっておるわけでございます。アメリカ、イギリス、カナダ等の友国が公定歩合を引き上げていくというときに、日本が引き下げを行なうというような状態で一体いいのかという問題もございますが、これは先ほど申し上げたとおり、国際的な考え方、国際的な動きも十分見ながら金融行政を行なっております。同時に、その中心となる経済的影響でございますが、アメリカも史上空前の景気のいい状態でございます。その意味で、対米貿易も非常に伸びておるわけでございます。これが、アメリカの景気が今度の公定歩合の引き上げ等で制約を受ける、だんだんと不景気の方向になる、それが対米貿易等に大きく影響しないか、ひいては国際収支に影響しないかという問題ですが、少なくとも今度のポンド防衛にとったアメリカの施策、それによってアメリカの景気が後退をし、日本の貿易に影響が及ぶというようには、いまのところ考えておらないわけでございます。それからイギリスを中心にしたヨーロッパ市場の問題でございますが、これらの諸国に対する貿易は近年倍増しつつございますが、これは対米貿易等に比べて非常に小さいウエートを持っております。でありますから、いままでのように一年間に倍増するようなスピードで伸びていくかどうかは別といたしまして、日本の国際収支に影響するというような状態を考える必要はないというふうに考えております。
  55. 只松祐治

    ○只松委員 もう一点だけお尋ねしておきます。この中に、確たる談話としてはありませんが、公定歩合の一厘引き下げかというようなにおいのする大臣の談話も出ておるわけでございますが、近い将来公定歩合を引き下げる、こういうお考えなのか。あるいはその前にも言われた窓口規制その他を漸次ゆるめていく、こういうお考えなのか、当面の金融政策についてひとつお伺いしたい。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 公定歩合及び窓口規制等の問題は日本銀行の権限でございますので、私がとやかくここで意見を申し上げることはできないと思います。しかし一年間の調整過程を経てきておるわけでございますし、日本の国際収支も安定的な方向に向かいつつございます。また金融引き締めの過程における現象にもきびしいものもございます。そういう意味で、直ちにすべてのものを解除するという方向にはもちろんないわけでございますが、日銀当局は事態の推移に対処しながら適切に措置していかれるであろうということを信じておるわけであります。
  57. 只松祐治

    ○只松委員 結論的にはそうだと思いますが、日銀だけがそういうことをしないことは大臣も御承知のとおりでございまして、大臣としてのお考えをお聞きしておるわけでございます。大臣はどういうふうに考えておられますか。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 もちろん金融政策につきましては、日本銀行当局との間には緊密な連絡をし、意思の疎通もはかっておりますので、政府、日銀は一体の姿勢でございます。しかし、公定歩合を一体下げるときか、据え置くときか、また上げるときかという問題を私から申し上げるというようなものではないということも、只松さん十分御承知だと思います。ただ一年間を続けてまいりまして、もし公定歩合を一厘引き下げるような事態があったとしたら、それは全然時代逆行とか、実態に反する方向なのか、こういうことを理論の上で解明するとすれば、私は必ずしもそう考えておりません。国際的に公定歩合を引き上げるような状態にある、その中で日本は引き下げるような逆な方向をたどる、こういう理論に対しても、日本はもうすでに一年前から世界的な情勢を十分考えながら、八条国移行ということを現実的な基盤として、その上に調整政策を進めてまいったわけでございますから、国際的な方向と一部違うような見方の政策が行なわれても、必ずしも間違いであるというふうには考えておりません。同時に、引き締めをやるときにすべてのものを一律的に引き上げる、引き下げるときも、一つ引き下げたらばたばたと引き下げるというような過去のやり方を必ずしもとらないで、実態を注視しながら弾力的に行なうべきものである、こういう考え方もとっております。また公定歩合を引き下げられるような状態になっても、他の弾力的な施策の運用よろしきを得れば、これ自体が実態に逆行するものになるというふうには考えておらないわけであります。
  59. 只松祐治

    ○只松委員 こういう政策の大きな転換というのは、経済基盤の大きな変更というようなことを当然お考えだろうと思います。そういう点についていろいろお伺いをいたしたいところでございますが、先ほど申しましたように、補正予算を通しても本委員会が一回も開かれておりませんので、私たちもいろいろ聞きたいことがたくさんだまっておりまして、そういう点を御質問いたしたいと思いますので、ひとつ以上でその点は終わっておきます。  なお、そういうものに入る前にまだ大きな問題として、明年度予算の編成方針についても、新聞その他では、ときどき大臣談話なり、あるいは大蔵事務当局の考え方というものが流されるわけでございますが、本委員会の審議が全然この臨時国会で行なわれておりませんので、ひとつお聞きをしておきたい。  まず、佐藤内閣になりましてからいろいろPRされておりますし、基本的な諸政策が述べられております。その中におきましても特に田中さんは、大蔵大臣というだけではなくて、事実上佐藤内閣の副総理といいますか、ふところ刀として力を持っておられる、こういうふうに言われておるわけでございます。したがって、この佐藤内閣のいう諸政策がいろいろ述べられておりますが、社会開発を中心としたひずみ是正はどういうものを重点にお考えになっておりますか。まず財源とのかね合いからお答えをいただきたい。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 佐藤内閣になりましたからといってすべてが急旋回するというものではございません。自由民主党によって世に明らかにせられております宣言、綱領、政策を基本にいたしまして、この中から緊急の順序をつけながら乏しい財源の中で効率的な投資を行なう、こういう基本的な姿勢でございます。また大きな基盤となるものの考え方は、国際収支の長期安定、物価の抑制、国内的に見ては経済の安定成長確保、こういうことを目標にしながら予算を組んでまいるわけでございます。特に佐藤総理が社会開発ということばを大きく取り上げました。これは池田内閣の場合でも、高度成長が行なわれた結果ひずみが起きましたので、これらのひずみを解消し、特に国内均衡をはかろうということを政策的に明らかにいたしておったわけでありまして、これに引き続いて、そのひずみ解消、人間を中心としたものの考え方を政策的に実現するには、社会開発という看板を掲げて、この中に合理的な施策を計画的に組み立てていこうという姿勢をとったわけでございます。社会開発ということに対して、いままでも一般会計の予算の伸び率よりもより以上に社会環境の整備が行なわれてきたことは事実でございます。来年度は、いままでのように高い一般会計の伸び率、財政投融資の伸び率を期待することはできない状態ではございますが、その中においても、いわゆる社会開発の範疇に入るもの——教育の振興、社会保障の充実、住宅の建設促進、下水道や上水道のような生活環境施設の整備、都市の再開発及び過密都市の解消、地方開発、こういう問題にウエートを置きながら可能な限り最大の努力を続けてまいりたい、こう考えております。
  61. 只松祐治

    ○只松委員 そういう諸政策を遂行されるのに明年度の当初予算あるいは財政投融資、新聞では三兆六千八百億とか六百億とか、あるいは財投が一兆六千億とか、いろいろ書き立てられておるわけでありますが、おおよそ大蔵当局としてはどの程度の予算を目標として明年度のそういう諸政策を進めていくのか、どういうふうにお考えですか。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 いままだ政府部内において来年度の経済成長率を検討いたしておりますので、来年度一体何%になるのかという数字ができておりません。おりませんので、基礎的な数字未定のままで税収をはじくわけにはまいりません。また税収をはじけないので、自然増収の中で減税規模をさだかにきめるわけにもまいりません。そういう意味で四十年度の予算規模がどうなるであろうということはここで申し上げられる段階ではございませんが、大ざっぱに申し上げますと、大体実質成長率は七%ないし八%の間だと思います。名目成長率は一〇%を幾らかこすであろう、こういうふうにおおむね想定せられるわけであります。そうしますと、税収は今年度に比べて大体四千四、五百億、まあ四千五百億というふうに見るのが正常な見方ではないかと思います。せいぜいよけい見込んでも四千五、六百億、六、七百億まで一体見られるのかどうかという問題は、これは成長率との関係もございます。まあ、そういう状態でございまして、今年度の六千八百二十六億というような大きな税収というものに比べると、安定成長期に入りましたので、いままでのように大きな税収を期待できないということでございます。同時に歳出のほうは五カ年計画等、いろいろ歳出要求が大きくなっておりますので、自然増収の中で新規政策費に回し得るものは非常に限られたものであるということが想定できるわけでございます。
  63. 只松祐治

    ○只松委員 国民の経済成長率を実質七%から八%とおっしゃいましたが、ついでに国民所得の上昇率あるいは物価の上昇率、そういうものもおわかりでしたら御説明いただきたいと思います。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 そこまでこまかいことを申し上げられる段階ではございません。そこまで申し上げられればいろいろな数字をべらべらと申し上げられるわけでございますが、いま大蔵、経済企画、通産省、そういうところでもって今年度の数字を詰めながら、中期経済見通しの四十三年までの状態も比較をしながら検討中でございますので、もう少しお待ちをいただきたい、こう考えます。
  65. 只松祐治

    ○只松委員 あなたの手元までは決定的なものが来ておらないかもしれませんが、新聞その他にはどんどん書かれておるわけですね。だから、たとえば常識的にいろいろなところで話が出る場合に、国会では確たることが言えない。あるいは私たち代議士でもいろいろなことを聞かれても、いや知らない、こういうことになるわけですが、しかし、新聞ではどんどんこうやって書かれておる、こういうことになるわけでございまして、決定的な何・何%というところまでは知っていなくても、おおよそ予算編成期に入りまして、来年度はこういう程度にしようということの想定は当然つくはずでございますが、その程度もなかなかわかりませんか。そういうものが全般わからないと、なかなか予算を組んでいくという構想というものが立たないんじゃないですか。初めての大臣なら別ですが、何期もやられておる田中さんですから頭の中にあるんじゃないですか。
  66. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたもいまいみじくも申されましたが、大臣の手元までは来ておらないだろうけれどもということでございまして、これは私もよく新聞の数字を見まして、一体どこから出たのかということで調べてみますと、これは事務当局でもまとまっておるわけではございませんが、大蔵省の財政研究会の諸君などは非常に専門家でございますので、大体数字を昨年度は何%、今年度は幾らということで試算をして、相当正確な数字を持っておるようでございます。私たちはいま申し上げたとおり成長率を一体どうするか、これは中期経済見通しの中で四十三年までは八・一%という数字が出ておりますが、今年度もすでに九%から一〇%をこすかもしれないという情勢、これは金融引き締めを続けていくのか、金融引き締めでもって今度準備率をきょう引き下げて、一体これが何かに結びついておるなどということは考えておりませんが、いずれにしてもこれからまだ一−三月を見通さなければなりませんので、一〇%をこすとか一〇%以内でおさめ得るかということはなかなかさだかには言い得ない状態であります。今年度の経済成長率を差し引いて、残り四年間で一体八・一%ずつ五カ年間をかけて、そのうち今年度分を、初年度分を差し引いてあとどういうふうに一体持っていくのかという作業もいま進めておるわけでございますので、どうしても成長率を七・三とか七・八とか、こういうことが最終的にきまらないわけでございます。でありますので、税収をどうはじき出すかということはなかなかむずかしい状態でございまして、わずか二、三日後には出るのではないかと言いますが、この二、三日間というものでもってすべてのものが積み重ねられて詰められる、こういうことでありますので、私がいま申し上げられるとすれば、大ざっぱに名目成長率を一〇%とすれば三兆円の弾性値をかけまして、そうして四千五百億、これは大体動かない数字、少なくとも、四千四百億か四千六、七百億、こういう数字は、これはいまあなたが申された三年もやっておってわからないのか、三年もやってわかるのがせいぜいそういう数字でありますから、そこはひとつ御理解をいただきたいと思います。
  67. 只松祐治

    ○只松委員 その場合国民として一番問題になるのは特に物価の上昇率でございますが、これを幾らくらいに想定されておられますか。
  68. 田中角榮

    田中国務大臣 物価は今年度は四・二%、こういうことでございます。この六月、七月くらいまでは消費者物価は安定してまいりました。三%ないし三・五%程度でおさまるのではないかというふうな見通しもございましたが、七、八月、九月、十月になってから都市の消費者物価が上がっておる。しかしまた十二月に入りましてからは生鮮食料品等の値下がりもあるということで、年度間を通じましては大体四・二%程度で押え得るかということでございます。これは四十三年までの中期経済計画では二%、二・五%という非常に低い数字をとっておりますが、あと四カ年間を通じまして、一体四十三年度に経常収支がバランスをし、そのときに二・五%程度の物価になるためには、一体来年度どういう施策をやって、物価をどの程度に押えるのかということもいま作業中でございます。少なくとも五%をこしてはいけない、中には来年度は六%になるぞと言って、先ほども参議院で六%くらいにはなりますぞ、そうすれば人事院勧告もありますぞ、そうすると地方財政をどうするのですか、こういう御質問がございましたが、私たちは六%にしてはならない。五%以下、四%以下というなるべく低い数字ということを目標にしながらそういうふうに物価を押えるためにはどういう施策を行なわなければならないか、どういう財政姿勢をとらざるを得ないのかということを考えておるわけでございます。
  69. 只松祐治

    ○只松委員 そういうところまで時間があればほんとう論議したいわけでございますけれども、先ほどから言いましたように、いろいろ聞きたいと思いますので、きょうはそういう点をお聞きするだけで話を進めてまいりたいと思います。  そういたしますと、税収が、約四千五百億円くらい自然増収にいろんな減税措置その他を講じてなる、こういうことでございます。その場合予算の自然増加率というのは大体何%で、どの程度とお見積もりになっておられますか。大体三千三、四百億円くらいが、物価上昇その他によって、あるいは人件費その他の増加によって自然増加をしていくだろう、こういうことが言われておるわけです。そうすると、四千五百億、差し引くと、一千百億か二百億くらいになってしまう、こういう形になる。そういたしますと、一番最初にお聞きいたしました佐藤内閣になって、新年度いろいろ目標を掲げておられますけれども、とても一千百億か二百億程度ではなかなかそうたいしたこともできない、こういう三段論法じゃございませんが、結論になってくるわけでございます。まずどの程度本年度予算が膨張していくか、自然増加率をひとつお聞きしたいと思います。
  70. 田中角榮

    田中国務大臣 なかなかさだかには申し上げられませんが、もちろん減税規模をどうするかという問題もございますので、なかなかむずかしい問題でございます。しかし、少なくとも例年のように高い対前年度比、高い率で予算を組むことはできないということは事実であります。三十六年は二二・六%だと思います。三十七年は二二・四%だと思います。三十八年は一七・四%、三十九年は特別会計に移したものも入れると、一五・一%、特別会計をはずしますと一四・二%、今年度はせいぜい一三%程度しかならないんじゃないかというくらいに考えます。でありますから、三カ年間で対前年度当初予算比率、約五割五分くらいに押えなければならぬということでありますから、相当健全財政、健全財政という面から言うと、相当なものだと思いますが、同時に新しい施策を歳出面でまかなっていくということになりますと、非常に苦しいということは、これは言い得るわけでございます。ただ社会開発とかいろいろな新しい施策というものは歳出の増だけではなくて、健全財政をとることによって、物価が安定し得るということも一つの政策であります。また、健全財政の姿勢を堅持するということも政策であります。また歳出の増加率は非常に小さく押えられるけれども、減税を行なうということも大きな政策でございます。またひずみの解消になるわけであります。でありますから、またそのほかに財政、また財政投融資、民間資金、財政金融一体化をなし遂げることも政策であります。そういう意味から考えまして、一般会計の規模が非常に低く押えられるということで、予算編成の技術面から見ますと、たいへんな困難であるとは思いますが、その乏しい中でもいろいろなことを合理的に組み合わせることによって、よりよい予算の姿とし、その中で政策を行なうということでございますので、自信があるかというと、なかなかたいへんでございますというふうにお答えをしなければなりませんが、可能な限り最善の予算をひとつ組んで政策を進めてまいりたい、こう考えます。
  71. 只松祐治

    ○只松委員 そういう新規予算の事業の中でも特に社会開発の中で大量の庶民住宅という、あるいは勤労者の住宅ということをあげられておりますが、具体的に一つだけお聞きいたしますが、それではそういう労働者の住宅にどの程度くらい予算をさく、こういうふうな見通しを持っておられるか、まだそういうところまで進んでおらないで、ただスローガンとしてそういうことを掲げているんだ、この段階でございますか、どうでございまますか。
  72. 田中角榮

    田中国務大臣 これは総ワクもきまらないわけでございますから、中身を申し上げるということはむずかしいことでございます。しかし、少なくとも住宅建設促進十カ年計画というものは、進めてまいるということは考えております。同時に勤労者住宅というものに相当ウエートを置かなければいかぬということも考えております。ただ住宅政策というものが一般の財政すなわち、すべて国民の税金をもって建てるということだけが、住宅政策ではありません。戦後イタリアがどうしてあのりっぱな労務者住宅をつくったか。イタリアは財政資金をもってつくっておりません。イタリアは税制及び国有財産の活用ということによってあのような大きな勤労者住宅政策を遂行したわけであります。この中には法律によって生命保険会社を保護したというようないろいろな施策をかみ合わせて、住宅というものは民間資金の導入、活用によって建てるということをりっぱに立証しております。同時にまた戦前戦後を通じまして、西ドイツが勤労者住宅に対して大きな成果をあげております。このようなものも一体何でできたのか、これは法律でもって勤労者住宅の規格化というものを行なった。ちょうど日本が団地といういいことばで言って、どこへでも団地を持っていってつくる。鉄道や下水や水道に関係なくまず団地をつくるというようなやり方ではなく、在来の市街地を開発しながら、ある一定の高さを制限して、空間利用ということで土地問題も解決しながら、民間資金の導入をしながら、りっぱな住宅政策をやっておるというようなこともやはり十分検討して、財政のウエートを少なくするというのではありませんが、もっと知恵をしぼって、ほかの国がいろいろやっているのでありますから、こういういろいろなわが国に導入できる制度も十分導入をしながら、これから五カ年、十カ年の計画を繰り上げても実施できるというような状態を望みたいという姿勢でございます。
  73. 只松祐治

    ○只松委員 そういういろいろな知恵を使う中で、一つ御参考までに申し上げて考えていただきたいと思うのは、いま労働者の間に労働金庫というのがあります。この労働金庫を通じて、実は私きょう出てくるときにそのデータを忘れてきたわけでございますが、全国各県に金庫があり、大きなところに出張所が置いてあります。この労働金庫を通じて労働者がいま住宅を建てているのは非常にばく大なんです。ただ単に一ぺんに借りるだけではなくて、毎月幾らか積んで、月掛けをやりまして、それで一定限度に達すると家が建つ、こういうことをやっております。これは政府の補助や何か現在までのところほとんどないわけでありますが、今後いわゆる労働金庫だから敵視はされてないと思いますが、こういう労働金庫がみずからの力で、労働者自体がみずからの貯蓄の中で、また必死になって自分の家をつくろうとしておる。こういうことに対してはあたたかい施策をもって、直接あなたのほうで予算の中から、あるいは財政投融資の中から、何らかの形で、それこそいろいろな知恵を出してめんどうをみてやる、こういうことが必要ではないか、これは社会開発あるいは大量の労働者住宅、庶民住宅を建てるという佐藤さんの政策に一番マッチする方法だと思いますが、具体的にこういうことをやられる意思があるかどうか、お聞きしたい。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 労働金庫の資金を使ってやるという問題は、いま突然の御指摘でございまますので、私も具体的な考え方を明らかにできませんが、その労働金庫に労働者自身が積み立てておって、これを住宅資金として活用したいという考え方を、これは私はすなおな意味でりっぱなことであり、こういう考え方、こういう資金の使い方ということに対しては、やはり国はそういう方向で施策を行なうということが正しいことだと思います。先ほどから申し上げるとおり、これはスラム街の解消とか、それから引き揚げ者の住宅とか、こういう一般国民の税金をもってやらなければならない——どうしてもやらなければならない災害者の収容住宅とかそういうものは別でありますが、やはり自分の住宅というものは自分でもってつくっていくんだ、こういう考え方を国民自体が持ってくる。またそういう思想に対して国がそういう考え方を助長するような政策を行なう、これが正しい住宅政策の行き方であります。そういう意味で、特に個人の金が幾らあった場合には、これに対してどういうふうに融資の道を講ずるか。また財政資金をあわせて行なう道があるのか。特に税制上の問題があると思うのです。土地を取得する場合とかまた勤労者住宅をつくる場合、木造でもって安かろう悪かろうというものよりも、土地の問題も片づけながら合理的な高層住宅をつくっていくというような場合に対して、これに対して税制上どうあるべきかというような問題こそ真剣に考えていくべきだというふうに考えます。
  75. 只松祐治

    ○只松委員 いまの問題、またいずれデータを持って詳しく御質問いたしたいと思いますが、率直に言って、自民党の政府でございますから、労金は主として労働者の闘争資金や何かによく使われている。そういうことで、そういうところに金を保管したりするのはあるいはけしからぬという意見も出るかと思いますが、しかしこれは法律に定めたり、また県あたりも若干の金を労金に預託いたしておりますし、それから労金の中でも住宅の金だけは全然別個のものを使っておるようです。だから政府から出しても、それは特別ワクを設けて、争議とかそういうものには使うことができない。住宅なら住宅だけのものに明確に使われるような知恵をしぼればこれはできると思う。だから、ただ単に抽象的に大量の庶民住宅、労働者住宅をつくるということでなしに、具体的にそういう住宅をつくるなら、あるいは直接の監督その他は、いまいろいろの場合県をお使いになっているが、今度の場合は各県ごとにそういう住宅公団みたいなものをつくる構想もあるようでありますし、これはその中の一定のものを労金に回して県あたりに監督させる、こういうことだってできるわけです。とにかく一生懸命自分だけで家を建てようとしている労働者に政府があたたかい手を差し伸べる、こういうことはすなおな意味において非常に大事なことだと思うので、ぜひひとつ来年度の予算としてお考えをいただきたい、こういうふうにお願いしたいと思います。  それからいま一つ、本年度の補正予算の編成の中でできた問題として、二百十三億の政府経費の節約を要望されました補正予算を組まれたわけでございます。これを年間当初予算に引き直しますと、おそらく六百億以上の金になると思いますが、まあ節約といえば節約ですが、別な面から見ればむだ使いといえばむだ使いがあった、しなくてもいいものもあった、こういうことがあるわけです。そういうことと関連いたしまして、さらにもっと悪いのは三十八年度でも二十三億円、六百十六件の国費のむだ使い、不正なものがあった。こういうことを検査院が摘出しておるわけでございます。国の予算そのものの使い方、特にこういう犯罪になるようなもの、こういうものをもっと政府は規制をしていく、それからそういうむだづかいをなくしていく方法を講ずる必要があるのではないか、いやそういうことはできないので、各省にまかしてあるんだといえばそれまででございますが、こうやってしぼり出せば半期足らずで二百十三億ですか、しぼり出せるわけですから、現にこういう実績が出てきたわけですから、何と言おうと、やはりしぼり出せる状態が日本の財政の中にある、いわば放漫財政が行なわれておる、国税がある点ではむだづかいされているということが言えるわけです。こういう点に対して、もっと具体的に予算を有効に使う方法は何かお考えにならないかどうか、まずお伺いいたしたいと思います。
  76. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘になりました二つのものの中で国費のむだづかい、いわゆる会計検査院から批難されたような事項に対してどうか、これはもちろん問題でございまして、かかるものは絶無を期さなければならないというふうに考えます。この問題はいつでも決算委員会でおしかりを受けるのでございますが、どうしても年々批難事項が絶えないということははなはだ遺憾でございます。特に財政当局としては、かかる問題に対して国民の血税の行くえということで、国民各位の指弾を受けるということに対してははなはだ遺憾でございまして、かかるものの絶無を期しておるわけでございます。  これはいろいろ戦前戦後を通じて、かかることのないようにいろいろな施策を行なっておりますが、絶無にならないわけでございます。特に、この中で法律が新しく改正を絶えずされるというために、旧法によってこうであったと思ったというようなことで支出をして批難を受けているものもございますし、いろいろなものがございますが、いずれにしても、かかるものはなくするようにしなければなりません。ただ、しなければならぬというだけではなくて、具体的にどうだというので、結局各省の中で監察官とかいろいろなものをつくっておりますが、それでもあります。これは私は、会計検査院の機能を拡充して——会計検査院はただ違法性を指摘するという法制のたてまえになっておりますが、何か批難されそうなもの、法律上どうも疑義がありそうなものの支出をするときは、あらかじめ会計検査院の意見を聞く。そういうことになれば、政策の方向としては悪いことではないが、現行法律から見ると、遺憾ながら違法であるということの指摘を受けておるものもございますが、こういうものはいま会計検査院に事前了解を得る、事前判断を求めるというような措置は行なっておりますので、こういう場合の批難事項が非常に減っております。あとはとにかく刑事問題とか、一般的刑法犯罪になるようなものがまだ絶えないことに対しては非常に困っておるのでありまして、これはとにかくなくするように全力をあげて努力をいたしますということで御理解をいただきたいと思います。  それから第二の、節約ができるような水増し予算を組んだのかというような意味、そうばかりお思いではないと思いますが、これは少し酷な御発言でございます。これだけのものをしぼり出すのはたいへんな反対でございます。これはえらい反対でございましたが、人事院勧告を実施するかしないかのせとぎわでありますから、もうこれがなければできないということになるのです。ですから何とかして、ひとつ節約をしてもらいたい。こういうことで、やむにやまれず節約したものでございまして、これは余ったもので節約したというのではございまいません。この間も予算委員会でもって、国鉄の二百億にも及ぶ仲裁裁定の原資を移流用でできるじゃないか、これだけの水増し予算をわれわれに説明したのか、こういう御発言がございましたが、そうじゃない。これはもう普通だったら三月三十一日までに払わなければならない退職金なんです。しょうがなくて四月一日に払おう、そういうことをしてでも、とにかく金を移流用して仲裁裁定を守ろう、こういうことでありまして、これは地方財政、一般会計、特別会計を通じて移流用をした、いわゆる予算の組みかえを行なって節約をしたというものは、これは水増し予算——あらかじめ水増しをしておって、これを削減したものではない。これはもう全く違うものでございますので、前段のものと分けてひとつお考えいただければ幸いであります。
  77. 只松祐治

    ○只松委員 まあ、ことばは重宝ですから、水増しではないと言えばなんすが、しぼり出せると言えばしぼり出せるわけなんですから、ひとつそういうものはできるだけ冗費がなくなるように新年度予算においてはそういうものをなくして、ひとつほんとうの国民のための予算を組んでもらいたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。  それから、後段申しました刑事事件になっておるのは別でございますけれども、そうでなくて、六百十六件も不正事件があるというその点から、いわば常にこれが新聞や何かに解説される場合、これは氷山の一角であるということは、これはことしも新聞に書いてありますが、毎年書かれておる。検査院としても全部が全部これを調査しておるわけではないわけですから……。この場合によく日本では親方日の丸ということばがございます。親方日の丸というのは、これは別な意味では無責任だ、こういう意味にも通じておるので、とにかく政府のことだから、あるいは県のことだから、少々のことをやっても別に責任を問われることはない。ある面では少々のことがあっても、とにかくその金をむだづかいといいますか、うんと使い切るやつは、むしろ度胸がよくて、多少能のある官吏だ、こういうふうにもとられているわけです。したがいまして、この不正というものの中にはそういう意味も含まれておりましょうし、あるいはこの六百十六件の中——それではここに何件か刑事事件になり、あるいはその中の不正になった責任者が、あるいは担当官が、どう処分されたかというようなこともほんとうはお聞きしたいわけでありますが、時間がないからきょうは聞きませんけれども、やっぱりこの責任の所在が明らかになっていない、別に責任をとられていない、こういうことがほとんどだろうと思います。したがって、時間があればまたいずれ聞きますけれども、ぜひこういうものの責任を、やはり国民の血税でございますから——使ったものは使ったやつが度胸がいいんだ、こういうことではないし、あるいは親方日の丸ということではなしに、やはり不正が摘発されたならば責任を明らかにしていく。これは民間会社では当然に行なわれているわけです。官庁でしたらそういうことはほとんどないわけですから、これは何といっても会計検査院よりも、そういうことがあったところは少なくとも大蔵大臣が、明年度予算にはそれだけ減ずる、あるいは罰則としてそこには出さない、このくらいやれば、これはもっと予算の組み方もよくなるでしょうし、責任も持ってくる、こういうことになると思います。ただ刑事罰を加えるだけがそういうことをなくす道ではないと思いますので、大蔵省の予算編成方針、それらとも関連をしてこういうものの責任を明らかにしていく、こういうことをひとつお考えをいただきたいと思います。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 批難事項がございました案件につきましては、各省に決算委員会の議決せられましたものをそのまま流しまして、末端まで徹底をするようにしております。同時に、かかる批難事項のあった科目に対しては、予算上措置しますよということも言っております。言っておりますが、どのようにして削ったか、こう言われるとなかなかむずかしい問題でございますが、いずれにしましても注意を喚起しながら、かかるものが、しっかりやります、ないようにいたしますと、ただおざなりの答弁をしておるだけで、また同じことを繰り返すということのないように、各省庁とも末端まで徹底いたしますように措置はとってございます。
  79. 只松祐治

    ○只松委員 次に、証券問題について若干お聞きをしたいと思います。  申すまでもなく証券市場というものは資本主義経済の中で金融機関とともに最重要の位置を占めておるわけでございます。ひとつ、ここであらためて、株式市場とは大体どういうものであるか、そこの中における共同証券とは一体どういうものであるか、御高説を拝聴いたしたいと思います。
  80. 田中角榮

    田中国務大臣 株式市場とはいかなるものか、こういうことになりますとなかなか時間の制約もございますが、一般的に申し上げて、最も端的な表現になるかもわかりませんが、産業資金調達の場であります。産業を動かしていくためには当然資金が必要でございます。この資金は二つの方法によって調達をせられております。その一つは間接的な資本市場から、その二つは直接的な資本市場からということでございます。その他第三の道もあります。社内預金とか、重役がそのまま金を出すというようなこともございますが、いずれにしましてもオープンな議論としては、この直接、間接の両資本によってまかなわれておるということでございます。間接資本は金融機関から融資によって金を借りる、金融でございます。もう一つは、公社債市場、いわゆる社債によって社債市場から長期安定的な資本を得て、これをもって設備投資等に充てる。もう一つは、株式を発行しまして株式市場から産業資金を得るということでございます。この証券なるもの、また社債なるものが流通を必要といたしますので、この流通市場、こういうものが生成発展をしてまいりましたものが証券市場であり、公社債市場である、こういうふうに考えられているわけですが、これは公的な、また不特定多数な人を相手にしてのものでございますので、証券取引法という準拠法を設けまして、これに対して適当な規制を行なっておるということでございます。  それから共同証券は、法律的に見ますと証券取引法に基づく証券会社でございます。ですから、四社とか投信十社とかいろいろいわれますが、また地方の証券業者と同じように証券取引法に基づく法人でございます。ただ、一般の証券会社と違うのは、この設立せられた時期が証券市場の不振の時期でございまして、なぜ設立せられたかというと、これは個人的意思によったものではなく、金融団、いわゆる銀行、信託とか、また経済界とかそういう人たちが集まりまして、不振をかこちつつある証券市場の長期安定をはかるために共同証券会社をつくって、そしてこの証券会社が適当に株式市場にある余剰株を買い上げることによって市場の信用を回復しよう、長期的に見て安定市場の拡大に寄与したい、こういう公的な目標をもって設立をせられたものである。また、株主も、これは社長が独断でもって金もうけをやろうというのでなく、こういった日本の機関投資家ともいうべきほとんどの人たちが株主であり、半公的な機関として大いに検討し、大いに施策を行なう、こういうことが行なわれております。そういう意味で、日本銀行もただ単なる証券取引法に基づく私法人のたぐいではない、こういうことでこの共同証券の行なっておる業務に対しましても非常に関心を持っておると同時に、これが融資等につきましても特別な配慮を行なっておる、こういう会社でございます。
  81. 只松祐治

    ○只松委員 明快な御答弁を拝聴したわけでございますが、この資本主義というのは自由、放任—まあ放任ということばがだんだん弱くなってきて、自由のほうが強くなってきておるわけでもありますが、とにかく自由であることが資本主義経済の原則です。これを否定した場合にはこれはもう資本主義経済ではなくて、ほかの経済へ移行する。だからたとえば、この共同証券の問題だけとると、これはすでに自民党も資本主義経済をやめられて、これは修正資本主義経済でもおやりになっておるんではないか、こういうふうに思うわけです。そこまでいわれると、自民党もこれは困っちまうだろうし、大蔵大臣も立場がなくなるだろうと思いますけれども、この自由をモットーとする、生命とするこの資本主義経済、そのメッカである証券市場に、こうやって人為的に、しかも民間的な人為的じゃなくて政府の力をもって——日銀というのは、一番最初私の質問に答えられましたように、とにかく政府と一体になって、大蔵当局と一体になって金融政策を遂行しておる。この日銀が直接に融資してくるということは、すでにこれは資本主義経済を放てきされた、こういうふうに考えてもよろしゅうございますか。
  82. 田中角榮

    田中国務大臣 政府も自由民主党も自由主義経済を基盤といたしておりますが、放任のほうは、それはないのでございます。実は二十世紀における感覚で自由経済思想を基調といたしておりますが、適当な計画性を持ったものである。また社会党の皆さんも、社会主義経済ではあるけれども、その中に個人の尊重や自由主義的な自由主義思想に基づくものの存在も許されると同じことに新しい立場でございますから、これはひとつお考えいただきたいと思います。ただ、証券市場というものは特に自由を必要とするということはお説のとおりでございます。人為的なものがあってはならない、これは確かにそのとおりでございますが、ただ現実的に見まして証券市場があまり活発でない。しかも一時期のように国民のごく少数が投機の場として証券市場に対しておるのではなく、国民の中の相当数が証券投資を行なっておる。その中には零細な所得の方々も、また全財産ともいうべきものさえも証券市場に投資をしておる、こういう現実的な姿を見ますときに、証券市場が不振である、しかもケネディショックというような外的な大きな事件を契機にして不振をかこつようになったのでございますので、その意味でも、やはり証券市場に対して政府やその他のものが無関心でおり、政策なしでいいのかということではないわけでございます。でありますので、証券市場の根本的な問題である市場の自由性というものはできるだけ守って——できるだけというよりもこれは原則的に守ってその機能を侵さないようにしながら、なるべく安定的な市場の発展に資したいという考えを持っておるわけであります。
  83. 只松祐治

    ○只松委員 証券市場は国の産業経済のバロメーターであって、その経済の動向によって物価が上がったり下がったりするわけです。これを横から支えるというのは、よく例が出されますように、病人があって病気が出た。しかし根本的な治療をしないで、そこで下熱剤かなんか飲まして熱だけ下げる、こういう形のものだろうということをよくいわれる。大臣は、そうじゃなくて、いやそういうことをやっている間に徐々にからだの調子も直ってこれはよくなるんだ。そこで安定経済が成功していくと証券市場もちゃんと平常に戻るんだ、こういうことを繰り返し前から御説明になっておる。私たちはそうではないということをいろいろ言っております。そういう論争は、ここは予算委員会でもございませんし、それほどしようとは思いませんけれども、とにかく最も自由であるべき証券市場に人為的操作を加えなければならぬということは、少なくとも社会主義とまでは申しませんけれども、とにかく完全な自由主義経済というものはくずれ去ってきておる、こういうふうに私たちは確認していいだろうと思います。少なくとも国家権力とまでは言わないけれども、国家に重要な関連を持つ日銀がそこに関与してこなければならぬというのは、すでに日本の資本主義経済というものが変質を逐げてきておるんだ、こういうふうに私たちは見ております。こういう点についても、大蔵大臣、というよりも自民党として経済のあり方というものについてひとつお考えをいただきたいと思うのであります。  そこで、具体的に突っ込んでさらにお聞きをいたしますけれども、二、三日前から参議院でも木村さんがいろいろと論議をなされまして大臣も答弁をされております。その中で証取法の百二十五条の三項に関連して大臣はいろいろ答弁をされております。そこで証取法は個々の銘柄に対する操作の禁止と解釈している、こういうふうに百二十五条三項をいっておられるわけであります。で、私もあまり詳しくは知りませんで、あとでベテランのほうから関連質問でもしていただきたいと思いますけれども、ほかの関連法案をちょっとくってみましても、ほかの条項には当該ということばが使ってあります。いわゆる大臣がいっておる個々の銘柄、いわゆる当該というものを操作してはならない、こういうことがうたってある。百二十五条の三項というのはそのことが何もうたわれなくて、一般的にその証券市場そのものをそういうふうに人為的にくぎづけをしてはならない、こういうふうに解釈するのが、この法律の一番妥当な解釈だろうと思います。  それから先ほどから私が多少繰り返しておりますように、資本主義経済のメッカである自由経済の証券市場が、その他の力によって、それは千二百円が正しいかあるいは千百円が正しいか、妥当であるかということは別にして、とにかく千二百円にくぎづけをする、こういう操作が行なわれておることは事実なんです。で、この百二十五条三項の解釈と、それからいまほかの条項との——当該ということを全部ほかの条文にはつけてありますけれども、これは、いやたまたまその条項に当該というのがなかったんだ、こういうふうにお考えになっておられますか。私は、そうじゃなくて、やはりそういうふうに証券市場は人為的に操作することはできないんだ、こういうふうに規定をしたものだと解釈します。そうすると木村さんに対する大臣の答弁というのは訂正をしていただかなければならぬのではないか、こういうふうに思いますが、いかがにお考えですか。
  84. 田中角榮

    田中国務大臣 私も絶対的な法律論を展開できるほど自信もございませんが、しかし、証券取引法と、それから共同証券が行なっておる現在の行為、これとの関連において御答弁を申し上げますと、共同証券が買い出動を行なうことによって、その結果旧ダウ平均千二百円が証取法の百二十五条の違反にはならないという考え方を明確に持っておるのであります。何か、とにかく自由市場であるから自由操作をしちゃいかぬ、こういうことでありますが、そういうことで、いわゆる共同証券のような行為をさすものではないということはやっぱり言い得ると思うのであります。そうでないと、会社の実態が悪いんだ悪いんだ、株はいま下がるよ、こういうことを言うのも同じことに解釈をされるわけであります。そうではなくて、その取引法の中でいろいろな条文がございますが、特に百二十五条は特定の銘柄を操作をすることによって、個人が利益を追求するような行為を禁止しておるのでございます。これはずっと関連した条文を読んでみますと、そういうことでございます。でございますので、共同証券というものが特定の銘柄を買いあおったり、特定の銘柄を売りたたいて、それで国民大衆に迷惑をかける、みずからそういう行為によって利益を得る、こういうことではないのであります。共同証券自体が不振な証券市場に対して余剰株というものを一応塩づけにしたほうがいいのではないかという、そういう姿勢に立って設立をせられたものでありますし、これが何十回か、五十何回、六十回の買い出動を行なった結果、旧ダウ平均千二百円が維持された、こういう結果的な現象を静かに見るときに、この条文のここから違反である、また、ここから違反である、この条文そのものはかかる行為を禁止しておるんだ、こういうふうには私は解釈すべきではない、すなおな考えでそういうふうに考えております。これはほかの条文でも、法律というものの禁止条項を置いた場合、国民の権利を制約する、憲法は、より自由な基本原則を掲げておりますから、こういう法律によって制限をする場合に、やはり国民が制約を受けるというものに対しては、ある一定のものに狭義に解釈をするというのが法律の原則でございます。そういう意味から考えても、百二十五条は、共同証券の現在の行為を規制したものというふうにはどうしても解釈できない、こういうことを申し上げておるのであります。
  85. 只松祐治

    ○只松委員 これがたまたま大臣が説明されるような趣旨から、しかも日銀というものが政府とうらはらになってこうやって千二百円を買いささえておるからそういう説明ができると思います。ところが、私なら私が二千億なら二千億の金を持ってきて株式市場を操作するということになって、千二百円を千三百円に上げたり何かして操作する、あるいは外国資本が——これは証券取引法からはなかなかできませんけれども、想定としては、ほかのものがそういう意図を持ってするということもあり得るわけなんです。だから百二十五条の三項というのは、ほかのものは個々の特定銘柄をいま大臣が説明されたような形で禁止をしておると思うのです。しかし百二十五条の三項は、やはりそういう意味で、いままで前例もございませんけれども、しかし、今度の日銀の融資というのも前例がないみたいに、前例がないからといって、そういう立論ができないわけではございませんから、そういうものを含んで百二十五条の三項というものは禁止をしておる、こう解釈するのが、これは百二十五条三項の法律上の妥当な解釈だろうと思います。そういうことになれば商法の先生でも呼んできてまたこの次のときでもやらなければならぬことになりますけれども、そういたしますならば、これは政府、日銀の買い出動というのは、木村さんが言っておるように証券法の違反になる、こういうふうに解釈するほうが私はむしろ妥当だろうと思う。木村さんの場合はそこまでの突っ込み方というと失礼でございますけれども、そういう角度から質問がなされていないので、大臣はうまく切り抜けた答弁になっておりますけれども、やはりここでは私のような解釈のほうがすなおな——私も多少法律を学んでおりまして、そうひねくれた解釈をしておるわけではないのでありますが、そういたしますと、証券取引法違反になる、これはまあ政治的にいろいろやっておるわけですから、違反になるからどうこう責任をとれということまで言いませんけれども、法律上の解釈としてはそういうふうに解釈するのが正しいのではないかと思いますが、どうでしょうか。
  86. 田中角榮

    田中国務大臣 どうもその解釈は、この百二十五条の条文を読んでいると、共同証券の行為はちょうどひっかかるなというふうな前提でお考えになるとそういうことになるかもしれませんが、私は証取法そのものの精神、性格を見てまいりますと、百二十五条に関連をする条文もございますが、そう解釈をすべきではない、判例を求めても、私の解釈が正しくて、いまの共同証券が百二十五条違反であるというふうにはどうしても考えられません。それは実際において個人的に何千億ということを仮定論として申されましたが、何千億の金を出して、いわゆる証券市場を混乱せしめて、みずからだけが巨利を得るというようなことは、それはあり得ないことでございます。ですから、実際の証券市場の実態から見まして言い得ること、あり得ることは、特定な銘柄に対して、この発行を容易にするためにそういう条文もございます。容易にするために、真実はそれほどのものでないにもかかわらず自分で売って自分で買いあおる、こういうようなことをしていろいろな問題が起きる。実際において上場されて一週間もしないうちに実はこうであったといって暴露される。そういう事実を知りながら、その事情を知りながら、そういうものを糊塗しながら、隠蔽しながら、発行を容易にするために買いあおっておる、売りあおっておる、こういう行為を禁止しておるのでありまして、この種の条文はほかの法律にもたくさんございます。そういうことから考えて、先ほども申し上げましたように、これは憲法で言う自由な権利を相当制約しているのです。こういうことをやっちゃいかぬよ、幾ら好きでもやっちゃいかぬ、こう憲法の自由な権利を制約しておるのでありまして、そういう場合でも、少なくとも公の立場でやっておる共同証券の行為そのものが百二十五条に抵触する、どうしてもそう解釈すべきではない、これは法律のすなおな解釈、常識的な解釈からしてもそう解釈すべきではない、私はそう思います。
  87. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。田中武夫君。
  88. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの只松君の質問に対する大臣答弁で若干わかりにくい点があるので関連してもう一度お伺いをいたしたい。  先ほど只松君の質問に対して共同証券の性格を大臣はおっしゃいましたのですが、もう一度共同証券の性格を……。
  89. 田中角榮

    田中国務大臣 共同一証券は、法律上の性格は、証券取引法に基づく一般の証券会社でございます。が、しかし、この会社が設立をされ今日に至っておる特殊な事態を明らかにいたしますと、つくられたのは金もうけ、いわゆる商法の規定に基づいて金をもうける、利益を追求する、そういう目的をもってつくられたものではありません。証券市場の不振の現況を見て、市場にある余剰株を一時塩づけにしたい、たな上げにしたいという目的をもって設立をせられたものであります。そうしてその行為は、この中の内規、運営基準のようなものをつくっておりますが、これによって明示をしてございます。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 証券取引法によるところの証券業者なんだ、こういう答弁なんですね。そうすると、取引法第二十八条の業者ですね。
  91. 田中角榮

    田中国務大臣 条文はどうかわかりませんが、証券取引法に基づいて大蔵大臣に届け出て承認を得た業者でございます。
  92. 田中武夫

    田中(武)委員 商法に基づく株式会社ですね。
  93. 田中角榮

    田中国務大臣 そのとおりです。
  94. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたは先ほど準公益というような印象の答弁をせられた。利益追求ではない、こう言われた。この種の会社は特殊法人ではありませんね。民法による公益法人ではありませんね。商法による株式会社ですね。そうですね。
  95. 田中角榮

    田中国務大臣 御説のとおりでございます。
  96. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣がおっしゃるような公益性のあるものならば、株式会社でなくて、他の方法による法人じゃないですか。株式会社とは私益追求、利潤追求の府ですよ。定款には何と定めてありますか、証券取引法の定款を見せてください。定款は何と定めてありますか。
  97. 田中角榮

    田中国務大臣 どうも田中さん、どこへ話を持っていこうとしておるのかわかりませんが、私がお答えいたしましたのは、証券取引法に基づく一般の法人でございます。四社や十社と同じものでございます。がしかし、現実的には、これは利益追求を目的としてつくられたものではなく、ちょうどその時期には証券市場が悪かったので、何とかこの余剰株を買い入れるという目的をもってつくられたものであることは天下周知であります。同時にいま余剰株の買い上げを行ない、塩づけを行なっておる行為も、これはいまに上がるだろうから、これをひとつ持っておって一もうけをしようというような意図にいずるものでないことも世間周知でございます。そういう意味で法人格としては一般の法人でございますが、彼らが企図し、この法人が行なっておる事業の内容というものは半公共的な仕事をやっております、こう答えたのですから非常に明確なんです。
  98. 田中武夫

    田中(武)委員 明確じゃないです。あなたは先ほど証券取引法第二十八条による証券業者だと言われた。それは法律によって株式会社となっておる。したがって共同証券も株式会社です。ならば定款があるはずです。定款の目的を読んでください。
  99. 松井直行

    ○松井政府委員 「第一章総則、第一条本会社は、日本共同証券株式会社と称する。目的、第二条本会社は、次の業務を営むことを目的とする。イ、株券の売買、ロ、前号の業務に附帯関連する一切の業務」となっておりまして、およそ証券業社がやっている幅広い業務はやっておりませんが、まさに証券取引法に申します証券業者の仕事をやっておることになっております。
  100. 田中武夫

    田中(武)委員 その定款に公益のためということがどこかに一字でも書いてありますか。あるいは証券市場安定のためとか、そういったようなことが一字でも書いてありますか。
  101. 松井直行

    ○松井政府委員 定款の文言には見当たりませんが、設立の趣旨なり運営の基準を明確にしたものといたしまして、設立の発起人一同が発表いたしました日本共同証券株式会社設立趣意書、業務運営基準というものをつくっております。その内容を少し御紹介申し上げますと趣旨がわかってまいります。
  102. 田中武夫

    田中(武)委員 そういうものは法律的にどれだけ効果がありますか。法人登記にそんなことを書きますか。法人登記にはこの定款が載るだけですよ。公益法人だということに、どこに法律的な保証がありますか。
  103. 松井直行

    ○松井政府委員 法律的には、証券業者といたしましては、先ほど読み上げましたとおりの純粋な証券業者でございますが、その運営の実態を見るときには、やはり発起人がつくりました設立の趣旨なり運営の基準というものを考えまして、その実態を判断するのが適当であろうと思います。
  104. 田中武夫

    田中(武)委員 そんなことは法律的な意味をなさないのです。どんな株式会社でも利益を追求するためにやりますとは言わない。薬屋さんなら国民の保健のために貢献するとか、あるいは電気会社なら文化のために貢献すると言うでしょう。やはりその法人の性格を知るためにはその定款ですよ。自然人に戸籍があるごとく、法人には法人登記がある。その法人登記に出るのは定款ですよ。定款以外に法律的にその法人の性格を認定する方法がありますか。どうです、大臣、定款に、あなたのおっしゃるような準公益的なとか、利益を目的としないとかいうようなことはうたってないのです。また法律のたてまえから、そういうことをやるものは大体民法法人あるいはもっと大きな社会的、国家的立場でやるならば、あなた方がよく出してくる特別立法による特殊法人であります。あくまでもこれは株式会社です。株式会社である限り、趣意書がどうであれ運営基準がどうであれ、それは内部の問題である。それを判断するのは定款以外に何がありますか。定款以外に性格を判断するのは何で判断するか。
  105. 田中角榮

    田中国務大臣 田中さんはどういうことをおっしゃっておられるかわかりませんが、この共同証券会社が半公的な仕事をしておるのは事実であります。国会議員が守らなければならぬことは法律でございますが、しかし各党間には申し合わせがございまして、法律的にはどうこうの問題はありませんが、その申し合わせというものは法律以上に権力を持つこともございます。ですからこの会社が第三者に対抗する場合に一体どうかということになって、この会社は公益的な目的をもって設立したものでございますが、金もうけができないとは定款には——一般の会社でございまから金もうけができる。そういうことをやったときに、いままでとにかく買ったものがうんともうかるようなときがきてばあっと売った、こういうことになったら、君が答弁したときと違って、全く一般の法人と同じ商行為をやったのではないか——これは定款がそうなっております。一般の法人でございますから、そのときになれば言い得ることでございますが、現在の状態においては、定款はどうあろうとも、少なくともこの業務運営基準によって、また設立趣意書にも明らかになっておるように、金もうけを本義としてつくられたものではない。ただこの法人も商法による法人でございますから、金もうけを禁止してはおらぬというだけでございまして、やっておる行為は明らかに趣意書及び業務運営基準に基づいて、公の気持ちをもって業務を運営しておるということであって……。
  106. 田中武夫

    田中(武)委員 趣意書だとかあるいは業務運営基準というのは内部のものであります。趣意書はもちろん株式を公募するために出しただろうと思います。しかしいまあなたも言っておるように、私益を追求してはいけないということではないと思う。そうでしょう。したがって性格は普通の株式会社と何ら変わりはないでしょう。しかもあなたはいま重大な発言をされました。各党間における話し合いは法律以上の場合もあるとおっしゃいましたね。これは大蔵大臣としてはちょっと慎んでもらいたいと思う。なるほど申し合わせというのはその当事者間においては効力がある。だが法律的に一般的な拘束力はありませんよ。ところが共同証券は純公益的なものだと言っても私はそうではないと言っているのです。純公益的なものであるというなら法律的に説明してくれ、こう言っておるわけです。
  107. 田中角榮

    田中国務大臣 純法律的には私は公益法人である、法律に基づく法人である、特殊法人と言ったのではありません。一般証券取引法に基づく法人でございまして、四社や投信十社と同じものでございます、法律的には。しかしこの設立趣意書にもございますとおり、また現在余剰株式を買い上げておる行為そのものは反公益的な仕事をしております。こういう事実を申し述べたのでありまして、法人的には特殊法人であると私は言っておるわけではありません。しかしあなたが御指摘のように、これは少なくとも株式会社としてこの株式会社を拘束するものは定款だけである。まさにそのとおりであります。ですから営利追求の事業をやらないとは保証できない。それはもちろんそのとおりでございます。しかしこれはこの会社がやる気持ちがあるのかないのかというと、少なくとも定款は何でも利益追求の行為をできることは事実でございますが、少なくとも設立趣意書、この業務運営基準をつくっておりまして、会社自体は大蔵大臣のところへ来まして、この設立趣意書によって設立をしました。この業務運営基準によって運営をいたしました。いやしくも金もうけはいたしません。こう明らかに言っておるのでございますから、定款の上ではそれは利益追求の行為を封じてはおりませんけれども、そういう利益追求の事業はやらないでありましょうということは明確に申し上げられます。
  108. 田中武夫

    田中(武)委員 法律的には普通の株式会社である。これは明確になりました。ただ現在やっていることが反公益的である。あるいはその動機が反公益的であったからという。ならば普通の株式会社が公益のために事業をするときは日本銀行は融資しますか。たとえば何々電気株式会社、融資しますか。
  109. 田中角榮

    田中国務大臣 やっとわかりました。そういういわゆる公益的な仕事をしておっても、性格が一般の法人であるにすぎないものに対して日銀はなぜ直接融資の道を開くか、こういうことであるということがわかれば、これはよくわかりました。これは日銀法から見ますと、田中さん法律の専門家でございますからよくおわかりになるとおり、日銀法はこの種のものに直接融資をしてはならないという規定はございません。ございませんが、いままで全くの法人に直接融資をするというようなことはあまりなかったということは事実でございます。ただ戦前は横浜正金銀行のようなところには相当な金を出して、いまの金で何千億、何兆円になるかわかりませんが、そういう大きな金を無利息だと思いますが出しておるというようなこともございます。それから現在でも銀行法に基づく銀行は日銀の判断によって取引を行なっております。相互銀行も成績のいいもの、あるいは一定の基準に達したものはだんだんと日銀と取引をやっております。信用金庫その他だんだんとやっていくわけであります。これは参議院でも御質問がありましたが、銀行法に基づく銀行、相互銀行法に基づく相互銀行、また信託銀行法に基づく信託銀行、こういうものは常識的に考えても日銀はだんだんと拡大していく、これはあたりまえであります。証券会社にいままでやっておらないのに一般の証券会社である共同証券にだけやるということはこれは少し行き過ぎではないか、こういうことでこれは行き過ぎかどうかという議論でございまして、佐々木日銀副総裁もお答えになりましたが、いま融資をすると決定しておるのではありません。しかし融資を必要とするようなときが起こったならば融資するかもわかりません。もし融資をしたとしても法律的に融資してはならないという規定はございません。こういう答弁でした。それから私はもう一つ質問に対してお答えをしましたのは、結局共同証券という一般法人じゃ困るからこれを特殊の会社にしろ、こういう御意見ですが、こういうことになりますと、それがより好ましい、こういう考え方まで言いますと、それは理解できます、こういうことで、じゃあいまやるのかというと、いま共同証券会社が特殊法人にしてもらってもけっこうですとは言っておりません。おりませんので、いますぐやれるかやれないかは別にしまして、やはり日銀が融資をするような状態、それは好ましいことではありません。日銀が融資しないで済むような証券市場にしたいのです。ですが、ある過程において、ある時期にやらなければならないような状態が起こった場合に、共同証券会社をどうするかという問題は検討に値する問題でございます。こういうことであります。
  110. 田中武夫

    田中(武)委員 日銀法に禁止規定がないから法違反ではない。そうなれば必要ならばもっと公益のためといいますかあるいは国民福祉のために必要な事業、民間会社のやっているものに対して日銀は融資の道を開きますね。
  111. 田中角榮

    田中国務大臣 それは日銀が判断をすることでございます。日銀は日銀法を基準としまして、そうして日銀が判断をすることでありまして、相手の会社がさっき言ったように公益的な色彩を非常に帯びておるのだ、こういう認識によれば、法律はこれの道を閉ざしてはおらぬということは事実でございます。
  112. 田中武夫

    田中(武)委員 だから日銀が判断をするものを、いま申しましたような性格の共同証券に対して日銀が融資をするのをやむを得ないというか法違反ではないという上に立つ場合、一般民間会社に事公益のために必要な資金は出しますね。出すことを大蔵大臣として好ましいと思いますか、いかがですか。判断は日銀がやるとして大臣はどう考えられますか。
  113. 田中角榮

    田中国務大臣 どうもそういうケースがありませんからよく申し上げられませんが、一般会社であってもその過程において営利会社であった、こういうものであればこれは日銀はやらないでありましょう。また法律に禁止規定がなくとも、これはやらないでありましょう。しかし法律に基づく特殊法人ではなくとも、現実的に現在ある時点において共同証券のようなものに対して日銀が融資の道を開くということに対しては異論はありません。
  114. 田中武夫

    田中(武)委員 現在共同証券ならば、こういうことです。先ほど来の議論で法律的には何ら一般民間会社と変わらないということがはっきりしたんですよ。それじゃ一般の株式会社が、だれが見ても公益のためだと思われるような事業であるならば、金を出してもいいと肯定せられるんですね。日銀の貸し出しを肯定せられるんですね。
  115. 田中角榮

    田中国務大臣 日本銀行は通貨金融の調節を目的として設立せられておることは、日本銀行法の示すとおりでございます。でございますから、公益性があれば何にでも融資をするというのではなく、証券市場が大きな金融市場の一環である、こういうたてまえにおいて日銀が判断をせられて日銀が融資に踏み切られるということであれば異論はない、こういうことであります。
  116. 田中武夫

    田中(武)委員 広い意味における金融市場ならばいい、こういうことですね。
  117. 田中角榮

    田中国務大臣 それはあらかじめ議論として申し上げられる問題ではなく、共同証券のように明らかな事例が出てきたときに、日銀が判断でき得るものに対して申し上げるのはいいですが、原則論をいまここでもって展開するということは、例が出てこなければ申し上げられないということでございます。
  118. 田中武夫

    田中(武)委員 中央銀行の日本銀行の直接融資というようなことをそういった大原則なくして、そういう事例が出てきたときに検討しますということでいいですかな。それでいいですかね。  それからもう一つ——もう時間もないし、あと質問があるらしいから、私があまりやると気の毒ですが、共同証券的なものがいい悪いは別として、これがほんとうに言われるような公益のためにやるなら、民間会社はだめです。商法にのっとるところのものなら、税金の問題なりいろいろ出てくると思うのです。これは当然特殊法人にすべきです。そうでなくちゃいかないと思うのです。  それからもう一つ只松君の質問の中で疑問として残っておるのは、証券取引法百二十五条の解釈なんです。その三項は、現在やっているような証券取引所の行為も第三項の違反である、こう私は申し上げます。何とならば、あなたの言っているように一定の銘柄について云々ということは、この条文ずっと見てごらんなさい、一項、二項については当該証券といことばを使うてある。三項には当該証券ということばが使ってない。ということは、あなたの言うように個々の銘柄を意味しているのではないという解釈です。いいですか、ほかのところは全部当該証券ということばが使ってある。三項には当該ということばは使ってないのですよ。
  119. 松井直行

    ○松井政府委員 法律の解釈の問題ですから、私からちょっと補足説明をさせていただきます。  第三項は、「何人も、単独で又は他人と共同して、政令で定めるところに違反して、有価証券の相場を釘付け、固定し、又は安定する目的を以て、有価証券市場における一連の売買取引又はその委託若しくは受託をしてはならない。」こうあります。これを受けまして、実は安定操作に関する規則には、「有価証券の募集又は売出を容易ならしめるため、有価証券の相場を釘付けし、固定し、又は安定する目的を以て有価証券市場における一連の売買取引又はその委託若しくは受託をしようとする者は、」左に掲げる事項を記載した安定操作通知書三通を大蔵大臣に提出し、かつ、安定操作を行なう市場にその旨を申し出てやりなさい、こう書いてあるわけでありまして、これはこの百二十五条全般が、仮装売買とか相場操縦、安定操作を一般的に何人もという形で規定した形でございますが、この三項は、この政令でおわかりになりますとおりに、一般的に安定操作というものは、すでにこの二項の精神から申しましても違反する場合がございますが、特に第三項は、政令できめる条件に従ってやった場合には安定操作がいいということを申しておるわけでございます。この立法の趣旨は、非常に淵源にさかのぼりますと、実はアメリカの一九三四年法をそのまま採用した法律でございまして、一定の有価証券を大量に一挙に売り出しする、募集するという場合には、先ほどから自由な市場価格が一番いいのだというお説がございましたし、証券市場というのはそれを精神にしておるのですが、一度に大きな有価証券の募集だとか売り出しが行なわれますときには、大きな売りがありますから、正常な価格よりも一時不当に下がるおそれがある。そういう場合には、一般大衆に安定操作をやっておりますぞということを通知してやるならば、買いささえをやることによって有価証券の発行会社の資本調達を容易にしよう、非常に厳格な例外を置きまして、例外的に承認しようとした条文であるとわれわれは現在この三項を読んでおります。したがって、これは有価証券の売り出しとか募集とかに関連した場合に、売り出そうという有価証券について安定操作をやろう、非常に厳格な条件、しかも大衆に知らしてやるならよろしい、一般的に安定操作というものは、これは大衆をごまかすものであるからというので、一項、二項の趣旨はもうおっしゃったとおり全面的に禁止しておるわけでございますが、証券市場の特殊事情によりまして、この道を特に三項で開いておる、こうわれわれはいま読んでおりますので、共同証券の行為とおよそこの三項は関係のない事項であるというように読むのが正当であろうと思います。
  120. 田中武夫

    田中(武)委員 その百二十五条三項に基づく政令を資料として出してください。それであらためて論議をいたします。  そこで、百二十五条各項に、「当該有価証券」と書いてあるところと、ただ単に「有価証券」と書いてあるところがあるが、なぜ「当該」とうたったか。  それから、あなたがいま読んだ第三項に基づく政令の中の「者」、これは共同証券をも含むわけです。「者」というのには例外はありません。そうですね。その「者」は一体何を意味しておるのですか。
  121. 松井直行

    ○松井政府委員 「者」は、一般の法律を読む原則に従ってわれわれ読んでおりまして、法人、個人とも含むというふうに解釈をいたしております。  それから、相場操縦とか、こういうものは特定の銘柄について行なわれる場合が多いわけでありますので、特に二項なんかは、ある種の銘柄について相場操縦をやろうという目的を持ってやるわけでありますので、銘柄が特定する。一項の場合のように仮装売買というものについては、そういう仮装売買についても、やはり特定するものについては当該有価証券、いじろうとする株のその目的が最初からあるものについては、当該有価証券というようなことばが使ってございます。
  122. 田中武夫

    田中(武)委員 関連質問でもあるししますから、きょうはこれでおきますが、大臣、何か十八日に証券問題あらためてやるそうですが、百二十五条を中心として、それからいまの共同証券の性格の問題、そういうことについて、純法律論を展開しますから、あなたもひとつ勉強しておいてください。
  123. 只松祐治

    ○只松委員 いまの問題に総括的に……。いまのいろいろな論議の中からも、いわゆる解釈によってはいろいろ解釈ができるし、特に共同証券の定款そのものにきわめて不備があるということも明らかになったわけです。さらにまた具体的な問題として、要するに純白紙的なものはこの世の中になかなか存在しないわけで、共同証券はもうかるときも損するときもあるわけです。こういうような場合にどうするかという具体的な問題がいろいろ出てくるわけでございます。当然この証券法を改正するか、あるいはこの共同証券の定款を改正するか、いろいろな問題が出てくると思いますが、そういう不備な点を今後補っていく意思があるかどうか、大臣から最後にこの問題についての御答弁をいただきたいと思います。
  124. 田中角榮

    田中国務大臣 日銀が共同証券に対して直接融資をやった場合、現行の商法に基づく、また証券取引法に基づく法人格そのままではいけないという御指摘でございますから、本件に対してはそういうことがあり得ると思いますので、会社の当局の意向も聞いたり、私たちも勉強をいたします。
  125. 只松祐治

    ○只松委員 たいへん欲ばったようですが、次に税の問題を若干お聞きしておきたいと思います。  毎年毎年減税、こういうことを政府のほうではおっしゃるわけでございますが、しかし税の率は毎年上がって、本年は二二・二%になりました。これを明年度も本年と同じように二二・二%の税負担率にしようとするならば、私は税調でも論議がありましたように、少なくとも自然増収の四分の一を減税にしていく、二五%をしていかなければならない、それ以上をしなければならない、こういうことが明らかになってきております。しかし本年度はとても、税調でもそこまでの答申案は出しておりませんし、大臣の答弁なんかも聞きますと、とてもとてもそこまで財源が苦しくてということで、なかなかそういうことではない。したがってこれはいわゆる減税ではなくて、私たちはいつも税の調整ということを言っておるわけなんですが、今後まあひとつ減税ということばをやめて、税の調整ということばでお使いをいただきたいと思うのです。そして実際は、これは国民に対しては二五%ずつ自然増収の減税をしないことには増税になるんだ、こういうことだと思いますが、そのようにわれわれは考えてよろしゅうございますか。
  126. 田中角榮

    田中国務大臣 減税は調整である、減税ということばを使わないで調整ということばを使ってくれということでございますが、減税は減税でございます。これは世界的通用語でございますから、これはひとつ名目的に、減税をする場合に名目でこたえていきたいということはそのとおりでございます。気持ちを吐露しておられることは理解できます。  昨年の税負担率が二二・二%であるということでもって私はたいへん当委員会でもおしかりを受けましたが、実際はもう少し低かったようであります。私もそういう事実を知っておればもう少し楽にお答えができたと思いますが、当時国民所得は上がっているという数字だけが不確定でございまして、当時の想定では二二・二%になると思っておりましたのが、その後国民所得が相当上がった数字が出ましたので、実際は二二・二%は二一・七%であった、こういうことのようでございます。これは主税局長から私にそういう報告がございましたので、そういうことでございます。とにかく税調は二〇%程度が好ましいという答申でございます。私は、その二〇%程度を二二・三%とお読みかえいただきたい、こういうことでだいぶおしかりを受けましたが、まあ税調が考えておられるような減税をしたいという考え方はよく理解できます。しかし税調が考えておりますように、二五%ずつを確実に減税ができるかどうか、これは少なくとも税の問題だけではなく、一般会計の歳出をもって国民の要請にこたえなければならないという面もございますし、またその他のいろいろな財政上の施策を任務といたしておる私といたしましては、税調の考え方を十分慎重に考慮をしてまいりたいということは事実でございますが、税調が言われるとおり二五%ずつどうしてもやるんだ、やらなければいかぬのだ、やります、こういうことは申し上げられない段階であるということは御理解いただきたいと思います。
  127. 只松祐治

    ○只松委員 それからまあこれも所得税か企業減税かはたびたび論議されておるわけでございますが、時間がございませんので詳細には申し上げませんが、この所得税のきざみ方、その他そういう具体的な内容についてもひとつ御考慮をいただきたい。たとえば国民所得が七%上がった場合に所得税そのものは三五%上がってまいります。国民全体の経済成長が一〇%ふえるときに所得税全体のふえ方は二五%になる、こういうふうに、これは近ごろずっと産経や毎日やなんかに全部の新聞が税の特集をいたしました。こういうものを全部ごらんになりましても——ほんとうは時間があれば、せっかく木村長官もおいでをいただいておりますので、私が前国会でいろいろ長官にお尋ねをいたしましたそういうパーセンテージと、こういうパーセンテージとだいぶ数字の違いもございますから、そういうことを順次ただしていきたい、こういうふうに思っておったわけでございますが、きょうは時間もございません。ぜひそういう企業減税、それから所得税減税、こういう問題だけではなくて所得税の中の税の、非常に低額所得者と高額所得者と中間層と、わずか上がれば、たとえば二万九千九百九十九円までは幾ら見当、三万円になればぽんと七%上がって、実際の収入よりも税金のために実収が下がる、こういう状態のところもいろいろございます。そういう問題についてもいずれまた他日論議いたしたいと思いますが、そういうことを含んで、ここでは所得税についてひとつもっと慎重に減税の方法をお考えいただきたいと思います。  それから木村長官に一点ここでお伺いをしておきますが、わが国では大法人が三八%、小法人が三三%の課税率になっております。この前私が聞いたときも実調率は大法人が三一%余、中小法人は三〇%、こういうふうに答えられました。しかしほかの調査によれば、国税だけで実際の納税は大法人で二五・一八%、小法人で二七・〇八%、事業税や住民税を含めまして、地方税を含んで大法人で三七・三%、中小法人で三九・六%、実際上はとにかく百億円の会社よりも百万円の会社のほうが納税率そのものは高い、こういうことをあらわしておるものもあるわけです。いずれが真偽であるか、ひとついずれまた日をあらためてしたいと思いますが、こういうことがあり得るかどうかということをお聞きしておきたいと思います。  それからいま一つは諸外国の例、たとえばアメリカでは大法人は五四・三%だけれども小法人は三三・六%というように、非常に大法人と中小法人とは課税率が違っております。日本ではこれがほとんど近似して、逆に実調率の場合には中小企業のほうが高い、こういう状態も出てきておりますが、そういうことはあやまった数字だ、そんなことはないのだというふうにお考えでございますか、ひとつお聞きをいたしたいと思います。
  128. 木村秀弘

    木村政府委員 昭和三十八事務年度の実績で申しますと、大体資本金五千万円以上の会社、五千万円以下の会社とに分けて申し上げますと、実地の調査割合は五千万円以下の会社が三八・六%になっております。それに対しまして、資本金五千万円以上の会社については五六・七%というふうになっております。また一軒当たりの調査日数は五千万円以下の会社については三・九日、以上の会社につきましては十九・五日というふうになっております。その結果更正決定の割合は五千万円以下の法人につきましては三三・五、以上の法人につきましては八二・一%ということになっております。  それからまた、中小法人と大法人との間で大法人よりも中小法人の税額が重いことがあるかというお尋ねでありますが、これは場合によってはそういうことはございます。収益の状況等によりまして必ずしも資本金の大小によって課税額がきまらないので、そういうことはよくあることでございます。
  129. 只松祐治

    ○只松委員 それから中小企業の問題でついでにお尋ねしておきますが、中小企業者の関係団体から、こんなに金繰りが苦しいから、ひとつ手形で納税を認めてくれないか、こういうふうな要望がありますが、そういうことを考慮する余地がある、こういうふうにお考えでございますか。若干の滞納は考慮しておられるようでありますが、むしろそれをもっと明確な形で、手形というような形で払っていくということのほうが国税当局としてもあるいはもっと安全ではないか、こういうふうに思われる節もある、これは一考に価する問題であると思います。
  130. 木村秀弘

    木村政府委員 法律の規定では、税務署長が確実と認めた証券を受け取ることはできるようになっておりますが、一般的に手形でもって納税をしていただくということは、現在のところ考えておりません。
  131. 只松祐治

    ○只松委員 それからたいへん残念なことに今度の補正予算の税収の内容を、委員会が一ぺんも予算が通過する前に開くことができなくて、その内容を明らかにすることができませんでした。しかしいろいろなこの税調その他のどれを見ましても、所得税の伸びというものが一番多いわけなんです。来年度四千五百億あるいは四千八百億自然増収するならば、想定されておるいわば私たち労働者や農民、中小企業者の所得税、あるいは中小法人あるいは大法人、こういうもののいわゆる来年度の税収の内容というものが現在明らかになりましたならばひとつお知らせいただきたいと思います。明らかでないならば後日資料として提出をしていただきたい。
  132. 吉國二郎

    吉國説明員 ただいまお尋ねございました来年度の所得税の自然増収のことでございますが、先ほどからお話のありました四千五百億という数字を大臣が申し上げましたように、一応来年度の経済成長を名目一〇%に押えまして、従来の弾性値一・五を適用して計算をすると四千五百億になる。また実際の数字もそれに近いであろうという推定をしておりますが、また来年度の経済見通しが確定しておりません。また来年度の給与の伸び率等がまだ明らかに見通しとしてきまっておりませんので、現在のところ確定した数字を申し上げる段階ではないわけであります。
  133. 只松祐治

    ○只松委員 確定した数字はないことは当然でございますけれども、試算する場合にそれを想定してするわけですから、どの税がどれくらいでということで決定するわけですから、その想定のものでも私たちとしてはいろんな論議をするたてまえ上必要なわけで、われわれとしてそんなに詳細なものが、データが出るわけはないわけですから、試算でもひとつできたら資料として出していただきたい、こういうふうに思うわけです。それもできませんか。
  134. 吉國二郎

    吉國説明員 御承知のとおり先ほど大臣申しましたように、ここ二、三日うちに数字が確定するわけです。近く数字を申し上げる段階に立ち至ると思います。その際にはひとつよろしく。
  135. 只松祐治

    ○只松委員 最後に大臣にいままでいろいろ税調あるいは来年の予算その他についてすべて論議があったときに、企業減税も所得減税も、こういうことをたびたび繰り返されております。この企業減税、特に証券の分離課税その他に力を入れられるということについて、たいへんこれは言いにくいことばでございますけれども、佐藤内閣の問題や何かについていろいろ疑惑も私たちは聞いて、なぜあんなに証券やなんかに力を入れなければならぬか、あるいはそういう減税をしなければならぬかという巷間の流布さえ聞くわけです。たいへん私たちは残念なことでございます。したがってこの際、大臣のほうから明確に企業減税も所得減税もではなくて、これだけ一般の世論もあるいは税調も所得税を中心に減税をしろ、こういうことを言っておるわけでございますから、ひとつ名大蔵大臣としてこの際所得税を中心に減税をしていく、こういう明確な御答弁をいただきたいと思いますが、いかがでございますか、伺いたいと思います。
  136. 田中角榮

    田中国務大臣 私は前からるる申し述べておりますように、所得税減税は過去においてもやってまいりましたし、また将来もやってまいりたいという姿勢は全く変わっておりません。同時に、国際競争力をつけたり、また企業減税も必要であるという考え方に対しても変わっておりません。  それからいま証券税制に対して何か巷間うわさがあるようなお話でございますが、あったらひとつお述べをいただいてもけっこうです。私はそういうことを聞いておりません。毎日毎日、新聞を見て倒産会社があるときには、あとは大蔵大臣が税調の答申をどうさばいてどう一体やるのかという一点にかかっておるということは、新聞にも報道されておることは承知しておりますが、こんな何か奥歯にもののはさまったようなことは聞いたことはございませんから、もしあったら明らかにしていただきたいと思います。そういう関係は私にはございません。
  137. 只松祐治

    ○只松委員 いや、大蔵大臣といっているのではなくて、巷間いろんなことを、俗説といいますか、それはいわば政治仲間で、大臣もお聞きのように新聞記者の間やなんかにいろいろ話が出るわけであります。そういう意味の俗語として言っておるわけですから、正規のどうこういうことで言っているわけじゃないのです。私もそういうことを言ったわけでございます。田中さんがどうと、こういうことではございません、誤解のないようにしていただきたい。そういうことを含んで、いまも繰り返し企業減税と所得減税ということを言われたわけでございますが、ぜひ所得減税を中心に、これだけの強い国民の要望ですから、所得減税だけやって企業減税をやるな、こういうことは社会党といえども一つも言っているわけではございません。ただウエートをいずれに置いていくかということで、どちらもというような話になると国民としてはあるいは二千万をこす所得税を納めている勤労者としては、また給料は若干上がったけれども、これまた税金が上がるのかということに暮れを控えてなるわけですから、できればここで所得減税を中心という大蔵省事務当局案さえもそうでございますから、できればそういうおそらく本年度の国会で、あとでお聞きになる方もあると思いますが大蔵委員会としてこういう形のものはあるいは最後かと思いますので、ひとつそういう御答弁をいただきたい、こういうふうに思います。
  138. 田中角榮

    田中国務大臣 税制調査会がいよいよあした答申をいただくようでございますが、初めは四千五百億の二〇%九百億はどうしても減税をやりたい、こう言っております。しかしなかなか財源豊かならざる状況から見るとこれはできないだろう、一般みなそういう風潮でございましたが、今度答申されるのは所得税だけで八百九十億のようでございます。これはできるかできないか、これから詰めるわけでございますが、これをもしやったとしたならば、これは所得税中心などということではなくて、全く所得税だけでございます。私は、いつかこの席でも御質問がありましたが、所得税と企業減税とフィフティー・フィフティーにせいという新聞記事に対してどうか、それは財源があれば所得税減税も大いにやる、しかる後企業減税も大いにやりたいと思っておりましたが、今日この段階に来ましたら決していまとてもできないということは事実でございます。そういうことになると、これは所得税減税中心ということになります。要は八百九十億、これは少なくとも九百億にすべきでもって、九百億できればいい、それはできまいと思ったときに八百九十億、わずか十億残すだけでもってこんなことであるならば、九百億と出していただいたほうがかえってきれいさっぱりしたと思いますが、これの答申がもし尊重できれば、これはよくやったなという税制になるだろうと私も思っておりまして、いま真剣に取り組みたい、こう考えております。
  139. 只松祐治

    ○只松委員 ぜひ努力をお願いいたします。
  140. 吉田重延

    吉田委員長 次会は、明十六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十分散会