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1964-12-12 第47回国会 衆議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和三十九年十一月九日)(月曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 山中 貞則君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    宇都宮徳馬君       奥野 誠亮君    鴨田 宗一君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    纐纈 彌三君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    濱田 幸雄君       福田 繁芳君    藤枝 泉介君       毛利 松平君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    ト部 政巳君       岡  良一君    小松  幹君       佐藤觀次郎君    田中 武夫君       只松 祐治君    野原  覺君       日野 吉夫君    平林  剛君       松平 忠久君    春日 一幸君       竹本 孫一君 十二月七日  山中貞則委員長辞任につき、その補欠として  吉田重延君が議院において委員長に選任された。 ――――――――――――――――――――― 昭和三十九年十二月十二日(土曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 有馬 輝武君 理事 堀  昌雄君    理事 武藤 山治君       天野 公義君    岩動 道行君       宇都宮徳馬君    奥野 誠亮君       鴨田 宗一君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       齋藤 邦吉君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       濱田 幸雄君    福田 繁芳君       藤枝 泉介君    森下 元晴君       渡辺 栄一君    岡  良一君       小松  幹君    佐藤觀次郎君       田中 武夫君    只松 祐治君       日野 吉夫君    平林  剛君       竹本 孫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (主計局次長) 鳩山威一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         国税庁長官   木村 秀弘君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      赤羽  桂君         大蔵事務官         (国際金融局総         務課長)    今泉 一郎君         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      堀口 定義君         大蔵事務官         (国税庁調査査         察部長)    志場喜徳郎君         自治事務官         (財政局交付税         課長)     石川 一郎君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 十一月十三日  委員纐纈彌三君辞任につき、その補欠として齋  藤邦吉君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員木村剛輔君辞任につき、その補欠として島  村一郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員島村一郎辞任につき、その補欠として木  村剛輔君議長指名委員に選任された。 十二月十二日  委員渡辺美智雄辞任につき、その補欠として  森下元晴君が議長指名委員に選任された。 同日  委員森下元晴君辞任につき、その補欠として渡  辺美智雄君が議長指名委員に選任された。 十二月十二日  理事吉田重延君十二月七日委員長就任につき、  その補欠として山中貞則君が理事に当選した。     ――――――――――――― 十一月九日  国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律  案(安宅常彦君外九名提出、第四十六回国会衆  法第五号)  酒税法の一部を改正する法律案有馬輝武君外  十二名提出、第四十六回国会衆法第三〇号)  製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律  の一部を改正する法律案有馬輝武君外十二名  提出、第四十六回国会衆法第三一号)  入場税法の一部を改正する法律案有馬輝武君  外十二名提出、第四十六回国会衆法第三二号) 同月二十八日  農業共済保険特別会計歳入不足をうめるた  めの一般会計からの繰入金に関する法律案(内  閣提出第四号) 十二月二日  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第六号) 十一月二十六日  地震等災害保険制度の確立に関する請願田中  彰治君紹介)(第四七号)  政府金融機関融資額増大等に関する請願(森  田重次郎君外三名紹介)(第五二号)  蒲郡港開港に関する請願福井勇紹介)(第  九一号)  ガス器具及び石油器具物品税減免に関する請  願(天野公義紹介)(第一一三号)  バナナ輸入関税引き下げに関する請願(原田  憲君紹介)(第一一四号)  たばこ専売法災害補償規定改正に関する請願  (湊徹郎紹介)(第一一五号)  公衆浴場業に対する所得税法人税及び相続税  減免に関する請願増田甲子七君紹介)(第一  二六号)  バナナ輸入関税据え置きに関する請願(井出  一太郎君紹介)(第一七七号)  同(小川平二紹介)(第一七八号)  同(吉川久衛紹介)(第一七九号)  同(倉石忠雄紹介)(第一八〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第一八一号)  同(下平正一紹介)(第一八二号)  同(中澤茂一紹介)(第一八三号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第一八四号)  同(増田甲子七君紹介)(第一八五号)  同(松平忠久紹介)(第一八六号)  ガス器具一定率改正に関する請願天野公義  君紹介)(第二九五号)  ガス器具及びちゅう房用器具物品税減免に関  する請願天野公義紹介)(第二九六号)  旧令による共済組合等からの年金増額に関する  請願外一件(押谷富三紹介)(第二九七号) 十二月五日  バナナ輸入関税据え置きに関する請願(唐澤  俊樹君紹介)(第三三三号)  同(原茂君紹介)(第五〇〇号)  旧令による共済組合等からの年金増額に関する  請願松山千惠子紹介)(第三五四号)  同(小山省二紹介)(第三九五号)  同外一件(辻寛一紹介)(第四七七号)  国民金融公庫名瀬支所設置に関する請願山中  貞則紹介)(第三六一号)  バナナ輸入関税引き下げに関する請願田中  榮一君紹介)(第四〇六号)  同(堀昌雄紹介)(第四四七号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第四七九号)  同(始関伊平紹介)(第四八〇号)  同(山口シヅエ紹介)(第四八一号)  同(井谷正吉紹介)(第五一七号)  同(板川正吾紹介)(第五一八号)  生鮮果実輸入関税の使途に関する請願田中榮  一君紹介)(第四〇七号)  輸入生鮮果実類簡易通関制度適用に関する請  願(田中榮一紹介)(第四〇八号)  葉たばこ耕作者窮状打開に関する請願(足鹿  覺君紹介)(第四七八号)  公衆浴場業に対する所得税法人税及び相続税  減免に関する請願鴨田宗一紹介)(第四九  三号) 同月十一日  旧令による共済組合等からの年金増額に関する  請願中川一郎紹介)(第五五九号)  同(中曽根康弘紹介)(第七三七号)  同(濱地文平紹介)(第七八八号)  中小企業に対する課税減免等に関する請願外三  件(森義視紹介)(第五九三号)  バナナ輸入関税引き下げに関する請願(今松  治郎君紹介)(第七一二号)  同(田口長治郎紹介)(第七一三号)  同(長谷川四郎紹介)(第七一四号)  同(本島百合子紹介)(第七八六号)  バナナ輸入関税引き下げに関する請願(荒舩  清十郎君外四十名紹介)(第七八五号)  企業組合に対する課税適正化に関する請願(小  笠公韶君紹介)(第七八七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月二十六日  勤労者及び低所得者税負担軽減に関する陳情  書(第一三三号) 十二月四日  政府関係金融機関金利引き下げに関する陳情  書  (第三四四号)  農耕用揮発油税の軽減に関する陳情書  (第三四五  号)  音楽、演劇、舞踊及び映画の入場税撤廃に関す  る陳情書(第三  四六号)  昭和四十年度税制改正に関する陳情書  (第三四七号)  同(第三四  八号)  同(第三四九  号)  国の会計年度暦年度改正に関する陳情書  (第三五〇号)  揮発油税等市町村還付に関する陳情書  (第三五一号)  金融機関経営合理化に関する陳情書  (第四六二号)  宅地造成のための国有財産無償払い下げに関す  る陳情書(  第四九二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  農業共済保険特別会計歳入不足をうめるた  めの一般会計からの繰入金に関する法律案(内  閣提出第四号)  交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第六号)  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  私はこのたび皆様の御推挙により当大蔵委員会委員長に就任いたしました。もとより不敏、非才のものでございまして、皆様の御協力により職責を全うしてまいりたいと念願いたしておる次第でございます。皆様の御指導と御鞭撻を心からお願い申し上げまして、ごあいさつといたします。(拍手)      ————◇—————
  3. 吉田重延

    吉田委員長 理事補欠選任についておはかりいたします。  ただいま理事が一名欠員になっておりますが、その補欠選任につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉田重延

    吉田委員長 異議なしと認めます。  それでは、委員長において山中貞則君を理事指名いたします。(拍手)      ————◇—————
  5. 吉田重延

    吉田委員長 国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  国の会計に関する事項税制に関する事項関税に関する事項金融に関する事項証券取引に関する事項外国為替に関する事項国有財産に関する事項専売事業に関する事項印刷事業に関する事項及び造幣事業に関する事項の各事項につきまして、本会期中国政調査を行なうため、議長に対し国政調査承認要求を行なうこととし、その手続きにつきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  7. 吉田重延

    吉田委員長 農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案及び交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。     —————————————
  8. 吉田重延

    吉田委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。大蔵政務次官鍛冶良作君。
  9. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 ただいま議題となりました農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案外一件につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  昭和三十九年度におきましては、低温、長雨等により、水稲、麦等の被害が異常に発生し、これに伴い農業共済保険特別会計農業勘定における再保険金支払いが増加し、同勘定支払い財源に約十八億八千三百万円の不足が生ずる見込みでありますので、一般会計から同金額を限り、同勘定に繰り入れることができることとしようとするものであります。  なお、この繰入金につきましては、将来、この会計農業勘定におきまして決算上の剰余が生じた場合には、再保険金支払基金勘定に繰り入れるべき金額を控除した残額を一般会計に繰り戻さなければならないことといたしております。  次に、交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。  政府におきましては、今般、地方公務員給与改定に要する経費の財源に資するため、昭和三十九年度限りの特別措置といたしまして、地方団体交付すべき地方交付税の総額を百五十億円増額することとし、今国会昭和三十九年度分の地方交付税特例等に関する法律案提案いたしたのであります。  この措置に対応いたしまして、交付税及び譲与税配付金特別会計におきまして地方交付税交付金を支弁するため必要があるときは、昭和三十九年度において、予算の定めるところにより、借入金をすることができることとし、右の金額については、昭和四十年度以降五カ年度間にわたり返済が行なわれるよう措置いたしますとともに、利子の支払いに充てるため、必要な金額は、予算で定めるところにより、一般会計からこの会計に繰り入れるものといたしますため、交付税及び譲与税配付金特別会計法につきまして、所要の改正を行なおうとするものであります。  以上が農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案外一法律案提案理由であります。何とぞ、御審議の上すみやかに御賛同下さいますようお願い申し上げます。
  10. 吉田重延

    吉田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  11. 吉田重延

    吉田委員長 引き続き質疑に入ります。  通告がありますので、これを許します。武藤山治君。
  12. 武藤山治

    武藤委員 ただいま政務次官から提案趣旨説明されましたが、三十九年度限り交付税及び譲与税配付金特別会計法の中で、今度大蔵省預金部から百五十億円の金を借りる。そういう措置地方公務員給与改善をしようというのでありますが、なぜ従来やらなかったこういう借り入れ金措置をしなければならなくなったのか。その理由をまず最初に明らかにしてほしいのであります。
  13. 赤羽桂

    赤羽説明員 …………。
  14. 武藤山治

    武藤委員 ちょっと要望があります。私はけさ突然通告をして質問に立っておるのでありまして、実は大臣が十一時半から入ってくるというのですが、他の通告者との関係上、次官大臣を代理して答弁をするという気持ちで私は尋ねておりまして、したがって非常に常識的なことを尋ねております。ですから、権威ある次官として、あなたからひとつ御答弁願いたい、こう考えます。
  15. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 あまりこまかいことを存じ上げぬものですから、御遠慮申し上げようと思ったのですが、そういうことでしたら、知っておる限り申し上げます。  要するに、財源がございませんでしたから、特別の方法で、何というか苦肉の策であろうかと思いますが、本年に限ってかような手段をとったわけでございます。
  16. 武藤山治

    武藤委員 政務次官、戦後二十年の歳月を経過いたしますが、こういう措置は従来とったことはありますか、ありませんか。
  17. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 かような措置は初めてだそうです。ただし、これに似たようなことはやったことはございます。
  18. 武藤山治

    武藤委員 先ほど政務次官は、財源が足りなくなってきて、財源が窮乏したためにこういう措置に出たのである。そこで私は聞きたいのは、戦後二十年間に一回借り入れ金をしたことはあるが、こういう法改正までやって処置をするということは今回が初めてだ。なぜそんなに財源が窮乏してきたのか。毎年こういう措置が行なわれたならば、私はそういう質問をしないのですが、なぜそれほど財源が苦しくなってきたのか。いろいろ原因があると思うのです。政務次官の考えておる財源が窮乏した最大の理由幾つかあげてみてください。
  19. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 いろいろの理由がございましょうが、一番大きな理由は、税収入が思ったほどなかったということであろうかと思います。
  20. 武藤山治

    武藤委員 きょうは政務次官のメンタルテストをやっておるわけじゃありませんが、少しは政務次官も、やはり日本財政のかなめである大蔵省担当次官なんでありますから、少々はひとつ認識を深めてもらうという意味からも、私は、もう少し進めてみたいと思います。  この補正予算を見ても、なぜ財源がああいう形に、たとえば専売益金を二十億円、あるいは国有財産払い下げ収入見積もり二十五億円、こういう予算措置をしなければならなくなったかということは、私は、やはり従来の予算編成と比較して、どこかに狂いが出てきている。それは見通しの誤まりということもあるでしょう。あるいは歳出が非常にオーバーに組まれたということもあるでしょう。だから、あなたの考えている財源が特に苦しくなったというその原因を、やはりただ財源が足りないからこういう特別措置をやるんだというだけでは答弁にならないのですよ。だれかの責任があるわけですね。あるいは、だれかの見積もりの間違いなり、狂いなり、どういう原因でそういう狂いが出てきたのか。もしこれが政務次官で御無理でございましたら、事務当局の見解をひとつ明らかにしてください。
  21. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 いまおことばのとおり、私も大蔵省に入りました以上は、少しは財政のことを知らなければならぬというので、目下、私としては一生懸命勉強中でございますが、まだ自信を持って答弁するほどに至っておりません。その点について、間違ったことを言っちゃいけませんから、鳩山次長からひとつ答えてもらいます。
  22. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 どうもたいへんおくれてまいりまして、まだ御質問のいろいろな前のを聞いておりませんものでございましたので、あるいはたいへん見当違いなことを申し上げるかもしれません。  本年度税収の面で、特に法人税を中心として、非常に税収予想より伸びないというようなことが、直接的には非常に補正財源が苦しい。地方のほうにとってみますと、あるいは事業税のほうの収入がそう伸びないんじゃないかというような予想が立っていたのでございます。これは広く言えば、経済界動き自体、あるいは、金融の調整というようなことが大きく影響があらわれてまいった、あるいはまた、いわば自由化と申しますか、そういった国際経済の中に日本経済がというか、従来と非常に違った自由化の波が寄せてきたというような、いろいろな原因があるかと思います。しかし直接的には、この法人の収益が伸びないというのが、一番の補正財源が非常に苦しいという大きな理由だと思います。その経済の動向につきまして、これはいろいろ原因が多々あると思いますが、まあ、これから私どもの見通しとしては、従来が、経済伸び予想より非常に過度に伸びたと申しますか、そういった原因のために、従来は、こういった補正財源というのが非常に豊富にあったと思います。しかし、これから毎年度、翌年の税収見積もりを立てまして、それで目一ばいの予算が組まれるというような状況になってまいっておりますので、これが予想外伸びるということは、今後あまり期待し得ないんじゃないか。そういたしますと、ことしのような状況が、ことしは特に非常に補正が苦しいということでなしに、大体こういうことが平常の状態になってまいるのじゃないか、こういうような懸念もいたすわけでございます。  非常に御質問ととんちんかんなことを申し上げたかと思いますが、御了承願いたいと思います。
  23. 武藤山治

    武藤委員 そういたしますと、やはり法人税が今度百六十億円も減額補正されている。あるいは、物品税も減額補正されている。結局、こういうような財源に事欠くようになったという原因は、それは積極面、消極面いろいろな理由があります。私は、この間予算委員会で、その理由幾つかあげたのでありますが、しかし端的に言うと、大蔵省経済見通し、それが間違ったんですね、誤差を生じたわけでしょう。すなわち、企画庁作成経済見通しというものに基づいて弾性値をはじき税収を見積もったところが、それに狂いを生じてきた、これが一つ。もう一つは、歳出予想以上に多く要求されてきた。それには、いろいろ圧力団体や、あるいは選挙目当ての公約や、いろいろな弊害から、歳出が無理に増大されたいという面もあるでしょう。しかし、経済見通しが的確でなかった、誤差を生じた点については、いかがですか。絶対誤差は生じていない、見通しは誤っておらない、そう考えますか。その点は政務次官、どうでしょう。政務次官がわからなかったら担当でけっこうですが、どうですか。
  24. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 私は、どうも経済企画庁の見通しというものを知らぬもんだから、確かなことを言われないのですが、多少は見込み違いではあったようですが、所得税のほうが伸びなくて……(「所得税伸びたよ」と呼ぶ者あり)まあ、ほかの方面で伸びなかった。それと、歳出が非常にふえたのですが、そのうち特に大きなものは、災害が大きかったということであるようでございます。
  25. 武藤山治

    武藤委員 どうも政務次官は、われわれより勉強するために手当てをふやしてもらっておるんですから、もう少し勉強してもらわぬと困りますな。  そこで、質問の観点を変えて、鳩山さん、現在地方交付税交付税率は何%ですか。
  26. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 二八・九%でございます。
  27. 武藤山治

    武藤委員 二八・九%という基準をつくったのはいつで、どういう根拠で二八・九になったか。その策定当時、いろいろ理由があって算出をしたと思いますね。その二八・九%にした理由をひとつ説明してください。
  28. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 交付税率につきまして、これは当初制度ができました——昭和二十九年度交付税法ができましたのですが、そのときは大体当時の平衡交付金という制度で、いわば地方財源、収支を予想いたしまして、大体必要な額を平衡交付金ということで交付をしてまいっておりましたのでございますが、そのときはこの所得法人、酒の大体二〇%に従来の平衡交付金が近いような形でございましたので、おおむねこの二〇%ということでスタートいたしたわけでございます。ただ若干端数がありまして、端数所得法人のほうにいきまして一九・六六%というのが所得税法人税に対する割合でございます。その後たびたび交付税率引き上げが行なわれたのは御承知のとおりでございますが、これはそのときどきの国と地方税収伸びとか、あるいは需要伸びというようなものを見まして、そういった率の引き上げが行なわれました。特に警察制度改正というようなことも行なわれまして、相当大幅に率が動いたこともございます。ただいまの二八・九%というものは昭和三十七年からずっとそういった率になっております。そういったことで、いわばそれは国と地方の税源あるいは需要というようなものを総合勘案した、そういった国税と地方との従来の実績的なものがこういうふうな率になっておるというふうに考えております。これが非常に理論的に出てきた数字であるというようなものであるかということよりも、むしろ従来のそういった税収の分配というようなことからこういう率にきまっておるというふうに私は考えております。
  29. 武藤山治

    武藤委員 いまの鳩山さんのお話から明らかなように、地方自治団体というものを充実するために、いまは基準財政収入基準財政需要というものの算定を各地方団体にさせて、その差額をできるだけ国が埋めていこう、めんどうを見てやろうという趣旨でできておるのですが、基準財政収入なり基準財政需要との開きが地方団体に大きくなってくれば、当然国で措置しなければならぬのです。それを百五十億円大蔵省預金部から金を借りさせて五年間で返せというような、こういう処置のしかたというものは、私は従来のこの基準財政需要基準財政収入の算定の法律から見ても、こういう措置をすることはどうも筋違いのような気がするのです。筋が違っておりませんか、この点いかがですか。
  30. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 ただいま御質問の中の、基準財政収入基準財政需要と比べて足りないという問題がございます。しかし本来交付税制度はなぜ税率に直結してあるか。その前の制度はいわば平衡交付金ということで、これは税率とは無関係なものとしてあったわけでございます。したがってその当時は、要するに基準財政収入需要と、そこで余るか足りないかという問題が非常に決定的であったわけでございますが、そういうことをしてまいりますと、一体幾ら足りないのか足りるのかということが、そのときどきのいわば決定的な根拠というものがないわけです。したがってそのときどきの国の財政が苦しかったりなんかいたしますと、これは無理に圧縮されるとかいろいろなことになりまして、そういうことではかえって財源が確保されないじゃないかというようなことから、国税のうちできわめて伸びのいい税収——所得税法人税あるいは酒税といった種目に直結をいたしまして、そういった伸びのいい税収が国税において伸びるといった場合に、その一定割合を地方へ還元するというのが、この交付税制度の趣旨かと思います。いわばこれは昔の国税に対する付加税というような形のものであろう、そういうものに観念をして、国で一括して徴収をして、一定割合を地方に還元するのである。したがって基準財政収入基準財政需要というものは、一定の財源をいかに合理的に配分するかという根拠であろう、そういうように私どもは考えております。したがいまして、その配分の方程式をどういたすかということは、これは配分にあたります自治省のほうの責任で一番合理的に配るという方程式をつくっておられるわけであります。その際に、たとえば税収の見方をどうするかということにつきまして、実際の税収をとりましたのでは、これはあまりにも画一的な行政になるというので、これは税収はきわめて低く押えております。その低く押えた中でそれぞれの行政にいかにその需要を見るかということでございますので、したがって基準財政収入基準財政需要を計算上見ますと、そこに若干の赤が出たり黒が出たりということはこれは避けられないのでございます。それを集計いたしてみましても、およその傾向としてはこれは財源が非常に足りないじゃないかというようなことになるかと思いますが、しかし考え方としては、これは一定の所得税法人税の一部分である、これを地方に還元するのであるというのが問題の考え方でございます。そういう意味で、私どもは現実の地方団体の赤字というものと基準財政収入需要との差額というものとは、直接的な結びつきはないものというように解釈をいたしております。なおそういったことから交付税率を上げなければおかしいではないか、こういう御趣旨かと思いますが、今回のこの措置は、いわば年度間の調整を行なうべきであるという考え方に立ってこういった借り入れ金をしておるわけでございますが、これは過去におきまして御承知のように自然増収が非常に多額に出ましたときは、これはなかなか配分ができない。急にそういった補正で多額に出ますと、これを基準財政需要収入に分けましてもとても配分ができない。したがって特別交付税で多額なものを配分するかといたしましてもこれは非常に問題であるということから、相当な金額を繰り越して翌年度にそれを使うというような措置を、過去において四回ばかりとっております。したがいまして今回の百五十億の借り入れというものは年度間の調整という意味で、これは過去に一度借り入れの例はございますが、今回のような百五十億を借り入れましてそれを将来五年間で返すというようなことは、これは今回が初めての措置だと思います。しかし元来非常に弾力性の強い税種目が選ばれておるわけでありまして、これは非常に景気が沈滞をいたしましたときは、急激に減ると申しますか、あるいは伸びが急にとまるというようなものでありますし、また景気が上昇いたします場合には、これはまた非常に伸びる可能性のある税でございます。したがって将来景気の動向によりましては、過去におけるような増収が出るという可能性はきわめて強いわけであります。そういったことから、それを単年度で必ず勝負しなければいかぬということはいささか無理がありまして、長期的に見てこの問題を解決しよう。  今回の給与費の問題でございますが、これが地方財政上困るということは、年度が大半を過ぎまして、この補正の時期になりまして、過去にさかのぼりまして支出をしなければいかぬ。総体で五百億以上の金額になりますが、こういった金額が当初からかりにそれが完全に予測できたならば、地方におきましてもそれに相応した財政措置をとったはずでございます。それも可能であったと思うのでございますが、すでに年度がこれだけ経過いたしまして、余すところあと四カ月というような状況になりますと、もうすでに自然増収の相当部分は事業に使っておるというような状況でございます。そういうようなときに急に節約もできないというような状況がありますので、本年限りこういった特別な措置が必要である。これがもう明年度から平年度化いたしました場合には、これは当初からその気になって予算措置をいたしますので、十分そういった措置がとれるというのが、私ども並びに自治省の考え方であったわけでございます。将来この三十億円ずつ五年間返すということは、それだけ地方財源を食うことになるのじゃないかというような御意見もあるのでございますけれども、何分にも来年度は七千億に及ぶ交付税財源でございます。その三十億というものは、これは当初からその気になって財政運用をすれば、たいした影響を与えないというふうな考え方から、五年間に分割をするという措置をとったのでございます。そういうような意味で、私どもは今回の措置はきわめて合理的な制度であろうというふうに考えておる次第でございます。
  31. 武藤山治

    武藤委員 鳩山さんには政治的なことを聞いても御無理でございますから、現在の二八・九%の交付税率を三〇%に引き上げた場合、一・一%ふえる場合、額にして幾らになりますか。
  32. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 ことしの交付税を前提といたしますと、約二百七十億程度かと思います。
  33. 武藤山治

    武藤委員 政務次官にお尋ねいたしますが、個人の企業でも、給料を払うのに銀行から借り入れてきて給料を払って、一体企業がどうなるかということは、これはわかりますね。大蔵政務次官でなくても、一般の国民でも、判断がつくわけですね。今度は、地方自治団体は借金をしてとにかく給料を払いなさいということなんですね、政府措置は。おそらく各県や各市町村からわっさわっさといま陳情に来ていると思うのです。おそらく次官のところにも、各県からだあっと文書で来ていると思うのです。この百五十億円の資金運用部資金からの借り入れで処理するということは、どうも地方自治団体としては筋が通らぬし、はなはだ迷惑だから、とにかく三〇%にしてくれ、こういう要求が非常に強いと思うのです。そういう要求があなたのところにあるかないか。あった場合に、次官としてどう答えていますか。その陳情の知事や市町村長にあなたとしてどう答えていますか。あなたの政治的見解をこの辺で聞いてみたいと思うのです。
  34. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 ことしのべースアップによって地方のほうで困るという陳情は、最初にずいぶんございました。それがよかったか悪かったか、苦肉の策であるか知らぬが、これでどうやら払えるのでしょう。現在はその陳情はございません。ただいまあなたの言われるように、来年度からはもっと歩合いをふやしてやってくれ、こういう陳情は確かに現在ございますが、これはどうも私自身では答えられぬから、よくひとつ研究して、できるだけ趣旨に沿うようにしたいものだという答えはしておりますが、目下これから研究して答えを出そう、予算を組むときにやるべきことなんですから……。
  35. 武藤山治

    武藤委員 では政務次官、百五十億円地方財政が借金をしてとにかく措置をする。それを五年間で払わせるのですよ。次官地方自治団体からいわせれば、五年間先食いするわけですよ。こういう借金で給料を払わなければならない。おまけに五年間でその借金を埋めなければならぬというこういう措置が、財政運営上好ましいと考えますか。妥当だと考えられますか。どうですか。
  36. 鍛冶良作

    鍛冶政府委員 個人の事業から考えましても、なるべくそういうことでなくて、手持ちのもので出せればいいに違いありませんが、どうしようもないのだからこういう措置をとったのです。問題は今後このような法律で実行できるかどうかということだろうと思います。これらの点を勘案して、来年度予算のときまでにいまの問題はひとつ解決すべき問題だ、かように考えております。
  37. 武藤山治

    武藤委員 それから先ほど鳩山主計局次長は、年度間調整のために一応資金運用部資金を貸すのだ、そうして年度間の問題は年度間で片づけようと、苦肉の策のような、しょうがないということでこういう処置になったのだ、しかしこれは合理的なんだという結論をあなたは下しているのですが、私は一つも合理的じゃないと思うのですよ。給料というのは恒常的にずっと支払われるのですから、年度間だけの問題じゃないのですよ。地方自治団体にすれば、本年支払うものから、来年その分だけ上積みされて歳出がふえていくのですから、それを片方では五年間返済をしていく。来年、再来年、その次というふうに五年間は恒常的に払わなければいかぬのですよ。地方自治団体は経常支出としてずっと上積みされてふえていくのですから、それをこういう返済させる資金でまかなわせるという財源措置は好ましくない、妥当ではない、合理的でない、私はこう思うのです。合理的ですか。
  38. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたのは、要するに税収というものは、年度によりまして非常に伸びるときもあり、そうでない年もあるわけであります。そういう意味で、過去におきまして非常に余った年が最近四年間あったわけです。それを申し上げますと、三十五年度では二百六億円ばかり、これは翌年度に特別な措置をとりまして繰り入れをしております。それから三十六年度には九十八億円、三十七年度には百億円、三十八年度には百三十七億円、これだけの原資を翌年度に繰り入れております。そういうことをいたしておりますのは、やはり特に補正時期におきまして当初の見込みに対しまして非常に多額の自然増収が出ておる年でございます。本年はそういったものが、先ほど申し上げましたように経済界の動向によりまして非常に少ない、むしろ法人税のごときは減収であるという事態に立ち至ったのでございます。そういったことは毎年そういったことになるわけではなくて、ことしは特に経済界の動向からしてそういうふうに考えられるのでございます。そういった意味で、そういった税収の弾力性というものが年によって違いますので、そういったものをならして地方措置も弾力的な措置をとるということがより合理的だということを申し上げたのであります。ただ、私どもはこういうことをやらないで済めばそれに越したことはないということは、先ほど政務次官がおっしゃいましたように当然でございまます。本年はそういったことができない。そういったのはやはり全般の経済界の動きというものからこうなっておる。そういったときにじゃどういう措置をとるかということでございますが、従来そういった事態に対処いたしまして地方で起債を認めて起債で処理をしたことが終戦直後は数回あったのでございます。地方団体にいたしますと、自分のところで借金をいたしましてそれでそれを返していくというのはまことにつらい。これは先ほど御質問のありましたように、人件費というものは毎月払わなければいけないのでございますから、過去に何カ月分かの人件費を借金で払う、そういったことは一般の企業ではなし得ないことであります。これが公務員でございますから、そういった過去の何カ月分かの給与を遡及して、支払い能力がなくても払わなければいかぬ、そういうようなことから財源措置が要る。そういったときに、それでは地方で借金をしてお払いなさいということは、これは先ほどおっしゃったように、地方団体にとっては非常につらいことであります。その利子がどんどんかさんでいくということにもなるわけでありますから、そういったことは将来のためによくないから、少なくともその給与の財源については交付税で払えるというだけの額を地方交付すべきだということになったわけでございます。しかし先ほど申し上げましたように、税収のほうはそういった自然増収をまかなうだけのものがございませんので、したがって次善の措置といたしまして、将来の交付税を借りて払うということにいたしたわけで、現状においては合理的な措置であるというふうに申し上げたわけでございます。
  39. 武藤山治

    武藤委員 鳩山さんのいまの考え方の、伸びるときがある、余ったときがあった、だから今度は足りないときは地方自治団体は借金でやりなさいという。余ったとき、伸びたとき、足りないとき、これはだれの責任かといえば、政府財政運営の責任なんですよ。責任は政府にあるのです。ですからそういう足りないときには政府措置をしなかったらだれが一体措置してくれますか。そういう無責任な財政運営は私たちは許すわけにいかぬと思うのです。  しかし、私はここでいま大臣質問をする約束の時間が与えられておりませんから、この交付税の問題についてはあとでゆっくり大蔵大臣出席の上で議論をして政治的な処理のしかたについては追及をしたいと思います。一応委員長、私の約束の時間が終わりますからやめます。      ————◇—————
  40. 吉田重延

    吉田委員長 税制金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。佐藤觀次郎君。
  41. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大蔵大臣質問いたしますが、佐藤内閣の大黒柱である田中さんが今日ずっと大蔵大臣をやっておられるわけですが、しかしせっかくあなたの大将の佐藤さんが総理大臣になられましても、どうもはっきりした態度がない。一体消極政策をやるのかあるいは積極政策をやるのか。私は池田路線を貫くというようなあれじゃなくて、佐藤内閣ができればやはり佐藤内閣らしいことをやるのがいい。ちょうどそういうやさきにいろいろ社会党からも質問が出たのでありますが、佐藤さんは野党におられるときにやはり佐藤色のいろいろな政策を出しておられる。特に経済政策については確固たる信念を持っておやりになるということでございましたが、その後一カ月になりますけれども、佐藤内閣らしいような政策も打ち出されておらぬし、一体減税をやるのかやらないのか、それともどういうことをやるかということがさっぱりわからぬというのが私一人の意見ではなくて、世評にあるわけですが、私は、そういうこと全般について、田中さんが総理大臣でないですから問う必要はありませんけれども、しかし、少なくとも大蔵大臣田中さんは池田内閣以来ずっと長い間大蔵大臣をやっておりますから、その点について一体どういう方法で経済政策を打ち出されるのか、まず概論的でけっこうですから最初にそのことを伺っておきたいと思います。
  42. 田中角榮

    田中国務大臣 佐藤内閣が誕生いたしましたが、自由民主党内閣でございまして、総裁総理がかわったからといって右から左に政策が変わるものでないということはもう御承知のはずでございます。議院内閣制であり、政党政治のたてまえからいいましても、政策の基本をなすものは党の政策、綱領を基本にいたしまして内閣は党との十分の合意のもとに政策を推進しておるわけでございます。でございますから、急に池田色から佐藤色へ、こういうことを期待されるお気持ちはわかりますが、これはどうも社会党の内閣になっても、そう党首がかわったからといって政策が全く変わってしまうのではたいへんなことでございまして、政策はやはり世に明らかにせられておりますものを中心にしていくということをまず基本にお考え願いたいと思います。  第二の問題は、佐藤現総理が野党のときは、ということでございますが、野党ではございません。これは閣外にあったときのお間違いだと思いますが、いずれにいたしましても、自由民主党の党員として一つの政策に対してある過程において個人的な意見を述べるということはあるわけであります。いまも自由民主党の党員諸君と私の間には議論の違うことはたくさんございます。それは、どうしても農地に対する事業団をつくれという人があるのと、農地の事業団をつくるよりもパイロット事業をよけいにしたほうがいいですよというような意見の相違は絶えずあるわけでございます。政策減税を絶対やるべしという党員の方もございますし、いやそれはやはり所得税減税にウエートを置くべきだ、こういう議論は絶えずあるわけでございまして、こういう議論があってしかもそれを煮詰めてきて、最後にはきまったものに対しては一糸乱れずというところがわが党のいいところでもございますし、これはわが党のみならずどこの政党でもそういうものでございますので、それは十分御了解いただけると思います。しかし、いま佐藤さんがお述べになりましたとおり、いろいろひずみ是正という問題に対しては、一日でもいっときでも早くよりよい生活をしたいという国民各位の気持ちをあらわすものであると思いまして、かかるものに対してはひとつ大いに努力いたしましてできるだけ国民の期待に沿いたいという考えでございます。佐藤内閣としても、来たる通常国会には四十年度予算編成を行ないまして国会の審議を経るわけでございますから、同じ自由民主党の党員でありますが、内閣の看板がかわったという程度のものはひとつ一月ぐらいには佐藤さんにも御審議をいただけると、こういうことで御鞭撻を賜わりたいことをお願い申し上げます。
  43. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 一応ごもっともな意見でありますが、実は最近経済のひずみをなくするということでいろいろ議論がありましたが、十月、十一月の中小企業の倒産の件数あるいは中小企業の倒産の金額も、これは戦後最高ばかりでなく、史上最高の数字を示しておることは大臣御存じだと思うのです。少なくとも年末を控えて中小企業の倒産ということが非常に暗い面を与えておると同時に、おそらくこの情勢は来年の二、三月ごろまで変わらないだろうといううわさもあるし、あるいは三月の経済危機というような話が出ておるわけですが、大臣はどのようにこれを対処される御意思があるのか、その点の根本対策をお持ちであるかどうかということをお伺いしておきます。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 金融調整は、御承知のとおり昨年の十二月の十六日からだと思いますが、預金準備率の引き上げを第一といたしまして、次には窓口規制を行ない、また三月十八日には公定歩合の二厘引き上げを行ないまして、約一年間、今日に至っておるわけでございます。当初調整に入りましたものは、第一番の理由は、四月一日から八条国に移行するということを前提といたしまして、国際収支の長期安定、物価の安定、経済の安定成長の確保の三点を目標にして調整期に入ったわけでございます。一年間というと非常に長い調整期でございますが、八条国に入ってから、あと戻りができないという予防的な意味もありまして入った調整期でございますので、慎重に今日までまいったわけでございます。その結果は二つの極端な見方がございます。一つは、一年間引き締めをやったけれども、どうもまだ引き締めを解除するとあと戻りをしそうだ、それは現象からの論でございます。引き締めはしたけれども、輸入も高い水準である。原材料在庫も非常に低い。成長率も当初想定をした七%が実質一〇%にも及ぶ状態である。また一年間の引き締めを行ないながら、倒産が一部に出ておるにもかかわらず、却売物価も横ばいよりもよくはならない。消費者物価はこの八、九月に対して全都市において上がりぎみである。こういう状態から考えると、どうも引き締め解除を行なった場合はまた戻る危険が十分ある。引き締めは続けなければならないという見方でございます。  しかし、もう一つの見方は、非常に各分野に浸透をした。この浸透をじんぜんながめておると企業倒産というものに拍車をかける可能性が出てまいる。その事例としましては、中小企業の倒産は一番高い数字を示しておる。ですから金融緩和に踏み出すべきだ、こういう考え方でございます。  政府は日銀との間に十分な意思の疎通をはかりながら金融政策を考えておるわけでございますが、基本的には金融緩和に踏み切るには時期的には早い。しかし調整下といえども必要な部面に対してはきめこまかく、しかも相当思い切った措置をしなければならない。しかも金融緩和の中で一律画一の引き締めを排して、あるものに、特に中小企業や証券のような特殊な部面に対しては、角をためて牛を殺すというようなことのないように、思い切って金を出す。特に十二月、年末に対してはそういうことをすることが調整下におけるしり抜けでもなく、調整の方針に反するものではないという考え方をとって、中小企業その他の年末金融対策に対しては十分なる配慮をいたすつもりでございます。  なお、金融緩和に踏み切るときではないと言いながらこれを五月、六月、七月、来年まで続けるというのではなく、七、八月に貿易収支や経常収支がバランスをいたしまして国際収支は確かに堅調な方向に向きつつございますが、一——三月の輸入期を見たほうがより効果的ではないかという考え方を前提にいたしておるわけであります。
  45. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大臣は、金融緩和によって中小企業の倒産もある程度までやむを得ないというような御意見でありますが、当初そういうような、今日のような中小企業の倒産がこれほど目立ってひどいというような予想をされておられたかどうかということが第一点。  それから物価値上げ阻止の問題は、これはいま当面の一番大きな問題だと思うのでありますが、これと同時にこの不況対策をどのようにして打開されていくのか。これは金融緩和の問題と関連して大きな問題になると思うのでありますが、この点について大臣はどんなような見解を持っておられるのか。この点、二点を伺いたいと思います。
  46. 田中角榮

    田中国務大臣 引き締め過程におきましてある時期においては大きく倒産などが起こると思ったか、こういうのですが、思ったとは申し上げられません。これはそういうことが絶対起こらないように、起こらないようにしながら調整を進めなければならないということで、非常にこまかく配慮をしてまいったわけであります。でありますから、金融引き締めを始めましたときには、通産局及び財務局を通じまして、今度は金融引き締め過程においてどういうような現象が起こるか——起こってから、統計上数字を見てからなどという在来のやり方ではだめだ。起こらないようにあらかじめ十分な配慮をしなければならぬ。なぜならば、国際収支が悪くなったから為替管理を行なうというような、十四条国における状態のように、ちょっと引き締めてちょっとはずせるというような状態でないのだ。八条国に入ってくると、今度は引き締め政策をやる場合には相当思い切って引き締めをやりながら長期安定路線の確保に資さなければならないのであるから、とにかく黒字倒産等は起こさないようにということで、相当事前に配慮をしてかかったわけであります。ところが、その結果なおこうして倒産が非常に多い。ですが、この倒産の内容に対しては、数字もさることながら、また倒産の件数もさることながら、内容は一体どういうものか、こういうことで内容は相当調べております。いままでのように件数とかそういう統計数字だけではなく、内容を非常にこまかく調べております。これは金融調整の結果倒れたのか、また金融調整がなくても倒れるような運命にあったものか、第三には金融を緩和したら倒産は防げるか、こういう問題を分類をしまして、非常にこまかく調べておることは事実であります。その意味で金融調整、いわゆる金融引き締めの影響がないということは言えませんが、倒産したもののすべてが金融引き締めのあおりであるということは遺憾ながら言えないのではないかと思います。それは戦前等の倒産とか、また戦争が終わった直後の倒産状況とは相当違うようであります。一つには融通手形という特殊な問題がございます。二つには、経営者がよく自分の経営の実態、実際の数字をつかんでおらない、第三には、長い歴史と伝統による営業面の圧迫ではなく、全然新しく考えた、また始めた部門の圧力によって経理が非常に混乱をした、こういういままで考えられなかったものが相当あるようでございます。それでなお第四点にしいて言えば、どうも一年や二年、三年のものではなく、十六、七年間のしわがみんな寄ってきたのではないかというような面もございます。これは池田成長政策の五、六年のしわが寄ったのだろうとすぐ言われるかもしれませんが、そうではなく十五年間タコ配をやっておったのです、こういうようなものもございまして、なかなかそう簡単ではございません。ですからこういうものの実態を十分考えながらできるだけ倒産というものを避けたい。しかももう一つ申し上げにくいことでございますが、何かこのごろの風潮として、更生会社にしたほうが簡単に立て直る、何かどうも私も遺憾な発言でありますが、そういうような風潮もなくはない。いままで非常にがんばってきたのですが、あすこも倒れたんだから、神経衰弱になるほど苦しんできたんだから、ここでひとつ表にさらけ出そうか、これはもう全く企業責任の欠如というようなものも遺憾ながら指摘しなければならない面もございます。私は政府がこういうものに対して責任を回避するためにいろいろなことを並べたてておるのではございませんが、こまかく配慮をして、その倒産を未然に防ごうと思っていろいろなことをやってまいりますと、どうも金融調整ということでちょうど時期がよくて整理に入ったというものもなくはないようであります。一年間の水揚げが一億である、しかも資本金は千万円である、倒産のときに五億の負債を持っておる、これはどういうことか私にはわからないのでございます。しかも在来の定款の主軸をなす事業はずっと黒字を続けておるのだが、機械会社がホテルを経営したために、ホテルに投資をした金で、最後の一割が調達できないために開店ができない。開店はしたが、二、三年間というものはこの種の事業はどうしてもペイしないものでございます。その二、三年間の赤字に耐えられない。定款以外にいろいろなもうかる仕事は何でも兼業するのだというこのごろの思想のようでございますが、どうもそういうものも大きく作用しておるようでありまして、将来長い期間を考えるときには、こういう問題に対してやはり正すべきものは正していかなければいかぬ。また経営責任の明確化、責任の所在を明らかにするようなことに対しても十分考えなければならないといろいろ考えておるわけでありますが、いずれにしましても金融機関が助け得るものを金融調整の結果つぶしたということのないように、金融上の配慮は可能な限り最大にいたしておるわけであります。
  47. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ説明を承りますと一部では理解ができることもありますけれども、しかし政府としてはやはりいろいろな現在の企業的な考え方の中に不純なものが出てきた、いわゆる世相が悪いという一面も私たちは理解ができないわけではありませんが、しかし少なくとも直接の原因は、この一昨年以来の高度成長の問題で急激にストップをかけたり何かしたようなことが、その原因がこうなったのではないか。これは仕事をやっておる、事業をやっておる中小企業の人は、いわゆる政府の高度成長とか所得倍増というような声に踊らされてやってきたので、そういう観点から私たち選挙区でも非常にいま暗い感じを持って企業をやっておるわけです。特に繊維業者が私どもの選挙区には多いのですけれども、非常に明るい感じがない。いつまでこれが続くのだというような焦燥の気持ちがあるわけですが、しかし政府としては中小企業の倒産に対する対策とか、あるいはいま不渡り手形が非常にたくさん出ておりますが、これもみんな戦後最高と言われております。こういうようなことに対してやっておる人が悪いのだ、政府には責任はないような、こういうような答弁をされておりますけれども、田中さんは佐藤総理大臣と違いまして前から大蔵大臣をやっておられましたから、私はこの点についての多少の責任なしとは言えないと思うのです。そういう点について過去のことはやむを得ないとしても、今後非常に危機に見舞われると言われております来年度の前半期などにおいての対策があるかどうかということもこの際伺っておきたいと思います。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 いろいろなことを申し上げましたが、先ほどもるる申し上げておりますように、経営者が悪いから、また経営の方法が悪いから政府に責任はないのだというようなことはごうも考えておりません。こういうことのないように私どももあらゆる努力をしてきたわけでございますが、遺憾ながら倒産が相次いでおるということでございます。でありますから、まず先ほども申し上げましたように、金融調整の過程ではございましても、中小企業の倒産というようなことに対しては、未然に防げるものに対してはあらゆる努力をいたします。それから融通手形というものが出ているということが事実であっても、これをいますぐ出たものをどうするかといってもどうにもなりませんから、融通手形というのは、私ももう一週間でつぶれそうですという会社の責任者に、融通手形がないのですかと、こう聞いてみても、ないのです、一週間たつと、実は一割融通手形がありました、こういうことで、なかなか信用に関する問題ですから、最後のどたんばで倒れてしまわぬと言わない。相談所をつくっていろいろ事前に調整する機関をつくったらいいじゃないかという議論もございまして、私も民社党さんの例の不渡り手形の処理の事業団とか、いろいろな法律案をいただいておりましたので、いろいろ研究してみました。これをつくって事前に中小企業の諸君が相談するかというと、信用に関するのでなかなかそういうことはできないとか、いろいろな問題がございまして、ついに追い込まれていく。ですから、私は過去のものを言うよりも、まず現在の金融措置をどうするか、またこれから三カ月、一——三月の処置をどうするか、来年度の第一・四半期にはどの程度一体めんどうを見るか、そうしてやっぱり融通手形等に対しては企業の責任者がみずからの責任のもとに発行しなければならぬわけでありますから、この問題についてはやはりある一定の期限を区切りまして、この程度には回収をしない、これはなかなか金融はめんどうを見きれませんよというようなことを、通産省も通じまして企業家の責任ということもよく喚起をしなければならない。またそれだけではなく、中小三公庫の資金量をふやしたり、それから下請に対する支払い遅延防止法のほんとうに徹底をはかったり、歩積み、両建てに対しても、これはやはり一つの節度−歩積み両建て制度があって非常にわれわれは困るのですというのですが、しかしこれは資本金の一体何倍なのか、また資本金の何倍までは金融にたよなければならぬのか。私はただ無制限に金融も見得るものではありませんので、ここらで金融の正常化はただ日本銀行のいわゆる日銀信用の問題だけを議論しておらないで、まあ一つには世銀方式を去年出しましたが、猛反対にあってだめになってしまいましたが、やはり正常な中小企業、正常な企業というものが金融でまかなえるのは大体どれだけあるのかというめどはやはり政府と業界との間で、民間との間でもって一つのめどを定めないと、幾らでも仕事を大きくして、これに金融がつかないのは政府の責任だ、こういうことではどこまでいっても自転車操業になりますので、ここらでひとつ民衆化——民衆化とは野放しではないということをこのごろしみじみと感じてまいりました。そういう意味では政府も姿勢を正すという勇気をもって一つのめどを国民の前に明らかにする、また国民各位もそのめどを十分消化をしながら、そのめどの中で成長率をみずからセーブをするというような、あらゆる施策をひとつ考えて、これから半年くらいの間には、少なくとも金融緩和の最終段階といえば、まあ来年の三月くらいだと思います、四月、五月、六月まで金融調整を続けるということはでき得るものではないのでありますから、その間にはまた半年たって締めなければならぬということのないように、あらゆるものをさらけ出して、あらゆるものを討議して、遺憾なき施策を明らかにしてまいりたい、こう考えております。
  49. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点伺っておきたいのは、先月の末私どもの井手委員に対して、選別融資という問題を大臣が発言されておりますが、一体そういう具体的な案があって、そういうような大口の融資の問題についての方針があるのか、その問題と、もう一つは年末融資も大体手配が済んであると思っておりますれけども、おそらく例年以上の金融の逼迫ということでありますから、この二つの問題をどのようにお考えになっておられますか。
  50. 田中角榮

    田中国務大臣 非常にむずかしい問題でございますが、私はある意味で選別融資が必要であるということはわかりますが、一体だれがどういう方法でやるのかというと、なかなかむずかしいぞ、こういうことでございまます。これは、むずかしいぞというのは何かというと、資金統制を行なったり、そういうことをやらないで民主的に、自主的にやらせることが原則である。それを調整するにはやはりクレジット・ラインとか、そういう画一、一律的な制度上で調整をする以外に、個別に調整をすることは行き過ぎだという議論を全体にしておりますと、選別融資はできないということになります。しかしこれは、調整のやり方は日銀で政策委員会の意見を聞きながらきめる問題でありますから、私はあえてこまかいことに対して意見を言うわけではありませんが、画一、一律的な引き締めということはやはりしわが寄り過ぎる、犠牲が大きい、だからあらかじめ設備投資に対しても何らかの基準があって、お互いがその基準に対して自制をし合う、調整をし合うということがどうしてできないんだろう、これは私はおかしいと思うのです。とにかく三兆七千億というときに、あけてみたら三兆五千億だった。ことしも四兆一千億で抑えておったら、四兆七千億です。四兆七千億の設備投資ができておりながら、非常に不況感があって、この不況をどうします、こういうことでございます。ですから私は設備投資に対しても——いま銀行局長うしろにおりまして、あとから銀行局長として答弁するかもわかりませんが、いまの制度の中では農協とか信託とかそれから中小企業専門機関、はっきり申し上げますと、相互銀行とか信用金庫には金は比較的よけい集まっております。集まっておってどうして中小企業に金はいかぬのか、こういうことでございますが、これは財務比率の問題やいろいろな問題で制約をしております。そうするとどうしても一部余分の金はコールに流す、これを基礎産業が都市銀行から借りる、都市銀行は三銭五厘でとったコールを表向き二銭三厘で貸せるのですから、どうもそうはいかないので、半分は歩積み、両建てだよ、実質の金利は三銭だ、ですから三銭も払って使っておるんだから、下請に対しては六カ月の手形にしよう、これでは悪循環はどこまでいっても断ち切れないわけでありますから、こういうものをやはり調整をする。ですから日本銀行も場合によれば、私はもう前から言っておるのですが、信用金庫や相互銀行に対しても窓口を開く、開くかわりにいまコールに回しているような金があるなら、これはもう少し政府保証債を持てないかとか、もう少し財投、それから都市銀行その他の金融機関の資金がより合理的に流れを変えていくという方法はなくはないわけであります。私は戦前にやったような強いことをやろうとは全然考えておりませんし、そんなことができるとは思いません。しかし戦前興銀を中心にしてあれくらいうまく設備投資の調整ができたのに、いまなぜできないか、やはりこういうものに及び腰ではどうにもならないので、思い切ってメスを入れていくという考え方を持っておるわけでありまして、資金の統制とかそういうことは簡単に考えられるとか、法制上政府が統制するなんという考えはありませんけれども、いまのままでいいという考え方は持っておらないわけであります。
  51. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 この問題は他日またお伺いしたいと思います。  時間がありませんので、もう一点伺っておきたいのは、最近イギリスが御承知のようにポンドの危機で、ポンド防衛のために公定歩合の引き上げ、同時にまたそれに関連してアメリカのドル防衛のためにそういうような措置がとられました。そこでいわゆる外資の導入がむずかしくなってくると同時に、日本の国際収支のことも、御承知のように中共の問題などもせっかくいいところまできましたが、ちょっとした問題でつまづいて、中共貿易の前途が明るくないというような問題等がありまして、日本の円の問題あるいは外資の導入の問題、また日本の円の維持のような問題が起きはしないか、ポンドのようなことはないけれども、日本の円の防衛ということもやらなければならないような事態が迫ってくるのではないかというような感がするのでありますが、この点について大臣はどのようにお考えになっておりますか、まずお伺いしたいと思います。
  52. 田中角榮

    田中国務大臣 日本の公定歩合が一番高い、こう考えておりましたら、日本よりも高い七%の公定歩合が世の中に出現をいたしました。しかもそれは世界を二分するとさえいわれたイギリスの公定歩合であるということを考えると、いろいろな議論が生まれるのはこれは当然でございます。同時にポンド防衛ということに対しては、アメリカ、カナダも引き続いて公定歩合を引き上げるということでございます。特にアメリカなどは百億ドルの減税さえやって一か八かとさえいわれるような政策だといわれながら、景気の上昇をはかってきたのでありますから、イギリスの公定歩合を引き上げさせまい、またもちろん自分も上げまい、こういう世界的世論でございましたが、総選挙の結果政権が交代をしましたら、直ちに課徴金問題を取り上げ、同時に公定歩合を思い切って引き上げた。アメリカもこれに追随をした。カナダまでやったわけであります。そういう意味から言いますと、いままでのように安易に世界の景気がよくなる、相手がいいから日本の輸出が伸びるということを前提にいつまでも考えられない。また起債市場を考えましても、確かにフランスや西ドイツも口ではいろいろなことを言っております。国際流動性の問題に対しては全然意見が違う、ポンドやドルだけではない新しい通貨をつくれというフランスでさえも、やはりポンドの不安は全ヨーロッパの不安になるということで、議論は議論としまして、ポンド防衛に対しては思い切った援助をしております。そういうことになると、やはり世界的にある意味においては金利が上がるのではないか。また日本がヨーロッパ市場でもって外債を調達しておりましたが、これも思うようにならないのではないか。ますます公定歩合をアメリカが引き上げるような状態になると、利子平衡税も来年の十二月で切れるのではなく、これは恒久法に転換されるのではないか。そうすると日本の輸出も伸びるということではない。同時にまた外債市場も非常に困難になる。そういうことから考えると、日本も国際通貨に初めてなった円価値を確保するためには、よほどのことを考えなければいかぬ、こういうことはもう当然考えられることです。しかしそうかといって、一年前からもう引き締めをやっておるのでありまして、これ以上もっと引き締めるということは可能かというとなかなかむずかしいので、まず健全財政、こういうことを考えておるわけです。ですから、新しく内閣がかわっていろいろ政策はやりたい、また将来やりますとは言っておりますし、来年は参議院選挙などで少し国民に対する公約を実現したいという気持ちは与野党を問わずございますが、国際環境から見るとやはり健全均衡財政を貫かなければいかぬ、こういう考え方になっておるわけであります。でありますから、財政金融を通じまして全般的に健全な姿勢を堅持をしてまいって、やはり輸出の伸張に対しては第一義として取り上げて、国際的な経済波動に対して対応できるような体質をつくっていくということを前提として考えておるわけでございます。
  53. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 時間がありませんからあと二、三点だけ伺いますが、不景気な話ばかりして自分ながらいやな気もしますが、その中でも証券界の不況というものは、いろいろ政府も手をつけられておりますし、それから日証金の融資なんかの問題も日銀などがやっておるというような状態で、非常にいろいろなことがありましてもなかなか人気が出ない、株価が上がらないという現状にあるわけですから、その一つの方法として、分離課税を今度は何とかして、証券界をもう一度明るい見通しにしよう、そういう声もあるわけですが、分離課税の問題は前から非常に問題になっておりまして、銀行の利子の分離課税の問題とからめて大きな問題になっておりますが、この点については大臣はどのようなお考えを持っておられますか。通常国会にもお出しになるのかどうか、この点をひとつ伺っておきたいと思います。
  54. 田中角榮

    田中国務大臣 分離課税がいいか悪いかは別といたしまして、証券市場対策、いわゆる直接資本市場の育成強化のために税制上の措置を必要とするということは事実であります。これは何人も当然考えられることだと思います。これは端的にひとつ申し上げてみたいと思いますが、いままでの間に、まず金融に対してはオーバーローンの解消をやれ、それからオーバーボローイングの解消をやれ、こういうことをすぐ言うわけであります。金融の正常化をはかれ——金融の正常化をはかるということは一体どういうことか、こういうことでございますが、これはもう日銀信用を少なくしろということでございます。日銀信用を少なくするには二つしか方法はありません。それは、必要な金は預金で吸収される範囲においてまかなうということができるだろうが、できなかった場合はどうか。日銀からは貸せない、預金も集まらない、そのときには金を使わぬということであります。成長率を下げろ、これ以外にないわけであります。どっちかでございます。  ところが、いままでは年率九%、平均して後年度においては七・二%。七・三%の成長率を遂げるには、資本の状態から、わずか十五、六年間でもって経済がこうなったのですから、金はどこから持ってくるという資金計画のない会社は、設備計画をやっても事業計画をやっても、これはもうどうにもならないわけでございます。初めから、国民から幾ら金を吸い上げるのか、調達するのか、外国人から幾ら借りるのか、やむを得ざる場合は日銀から幾ら借りるか、こういうことの計画をはっきりとしないで今日までずっとやってまいりまして、結局その九%が実質一六・七%も高い成長率を遂げたこともございます。ですから、昭和二十九年から十カ年間を考えて実質九%以上成長率があるわけであります。ところがその間に、直接国民から金を調達する資本市場も、また公社債市場も、それほどよくなりませんでしたので、やはり日銀信用によってやらざるを得なかったわけであります。  そこでオーバーローン問題が起きてきたのです。ですからオーバーローンの解消をやるというならば、私が先ほど言ったとおり成長率をうんと下げるか、別に金を調達する方法を考える以外にないわけであります。ですから、今度も中期経済見通し年率八・一%であります。八・一%で昭和四十三年になりますと、そのとおりにいっても国民総生産は幾らになり、国民所得は幾らになり、またその状態において産業資金の全必要量は幾らという数字はもう明らかになっているわけであります。ですから、一体これを間接資本によって幾ら得るのか、直接資本によって証券市場から幾ら得るのか、また長期固定資産としての投資をする長期安定的な資金は公社債市場から一体幾ら得るのかという計画がおのずから立てられなければならぬことは言うを待ちません。こういう現状にありながら、戦前六一%の自己資本比率は現在二三%を割っておるということであります。しかし、そういう状態であっても、市場では株はだぶついておる。それも国民大衆が持っておらないで、機関投資家によってまいりましたから、持っておるものは銀行と大企業が持ち合いをやっておる。持ち合いをやっておりますから、法人間の配当に対しては益金不算入をやっておるわけです。これをやめてしまうとどうなるか。当然銀行は持てない、保険会社も持てない、大企業も相互持ちができない。できない場合には、これを一般国民が吸収するだけの力があるのか、非常に大きな問題があります。そういう意味で絶対的な株式は非常に少ない。増資をどんどん促進しなければならないというような自己資本の比率の低い状態にありながら、余剰株を共同証券に買わせなければいかぬ、それも日銀が直接融資さえしなければまかなえないという状態にあることは事実でありますから、これから成長率を下げられるなら別でありますが、そうではなく、少なくとも八・一%の平均成長率を維持していくというならば、やはり資本市場の育成強化ということに対しては施策を行なう必要がある、こういうことであります。でありますが、しかし、税制上はいまちょうど、きょう長期税制の答申をいただきまして、十六日ごろには来年度の答申をいただくそうであります。これは答申尊重ということでございますから、税調の答申を待ちながら、その上来年度税収を算定をしまして、その間においてどの程度これを尊重することができるのか、またそれにプラスをできるような状態にあるのか、これは予算編成の最終段階において十分慎重に検討してまいりたい、こう考えます。
  55. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 証券の問題についてはあとで堀委員からも質問があると存じますから、他日を待つことにしますが、いずれにしても、大臣が言われたように、非常に暗い影がさしておるわけであります。いまちょっと大臣から出ましたが、きょうちょうど新聞に税制調査会の答申案が出てきたが、減税の問題についていろいろ議論もあるし、同時に佐藤総理大臣が野にあったときに、減税問題を大きく取り上げて、三千億の減税というようなことがいろいろ問題になっておるわけですが、田中大蔵大臣は、減税の税調からの話も出ると思うのですが、あなたの御意思としては、どのくらいの減税をおやりになるか、この問題について率直な御意見を承りまして、私の質疑を終わりたいと思います。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 佐藤さんが総理大臣にならない前に、三千億減税ということを言ったようであります。私も新聞を見て少しはでだな、こう感じたことは事実でございます。しかし、この人がもし総理大臣になることがあったとしても、このくらいの減税論者であれば好ましいことだ、こう考えたことも事実でございます。でございますが、とにかく早くなり過ぎたといいますか、思わざることで思わざる時期に……。(笑声)いやこれは私の気持ちでございますから……。そういうことからいいまして、とにかく私も引き続いて大蔵大臣を拝命いたしましたので、この三千億減税が一体できるのかどうか考えてみましたら、少なくとも初年度三千億は無理だ、こういうことは感じましたので、直ちに総理大臣に申し上げておきました。これはあなたもいかに減税が大切であるかという政治の基本姿勢を明らかにしたことであると思います。しかし、とても三十九年度から四十年度を通じて、物価問題から言えばある意味においては増税さえ必要とするという理論的な見方もあるのですが、そんなことを言っても、とにかく現に物価が上がっておる状態から考えると、どうしても減税は必要とするし、十年続いてやってきたものを内閣がかわって減税しないなどというわけにはいかぬ。もちろん税調はちょうど最終答申の年次にぶつかっておりますので、苦しい中から可能な限り最大の減税はやろうと思うが、遺憾ながら初年度三千億はひとつごかんべん賜わりたいということは言っております。本人も承知をいたしておりますから、そういう意味では、国民もその姿勢はやはり了とせられて、三千億と言ったのだから、少なくとも三年間に三千億くらいやるのだとか、いろいろな期待をつないでおるようでございます。でありますから、乏しい財源の中からでございます、とにかく税調の答申を十分見まして、わが党の税制調査会もございますし、また政府自体も一般会計でやれないものを一般会計財政投融資、税制、また外資、その他いろいろなものを組み合わせて政策の実現をやるということでありますので、ここで幾らやりますと言うには少し時間が早いと思いますが、しかし、税調の答申を尊重しつつ、合理的な可能な限り最大の減税をやるということでひとつ御了承賜わりたいと思います。
  57. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ伺いましたが、これは閣議との関係もありますし、これ以上申しませんが、ただ野党というのは、他の党もそうでありますが、思ったよりも早く政権をお握りになった佐藤さんにも苦労はありますが、あまり実現されないことはなるべくひとつお控え願って、国民がそれにつられないように、これだけ申し上げまして、私の質問を終わります。
  58. 吉田重延

  59. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいま大臣もお触れになりましたけれども、本日税制調査会から「「今後におけるわが国の社会、経済の進展に即応する基本的な租税制度のあり方」についての答申」というのが総理大臣あてに出されております。ここにも書いてありますように、これは単なる単年度の問題ではなくて、基本的な租税制度のあり方でありますから、その点私この答申というものは最近の税調の答申の中で非常に重要な答申だと考えておるわけでありますが、先ほどすでに佐藤委員質問にお答えになって、分離課税の問題について少しお触れになっておりますので、私きょうはこの問題を中心に少し前段で論議をさしていただきたいと思います。  この答申の二十四ページで、「当調査会としては多数に上る租税特別措置のすべてについてはその適否の判定は行なわなかったが、そのうち、利子配当課税の特例等資産所得に対するものは、当調査会が税体系の中心として考えている所得税の本質的なあり方に関連する問題を含んでおり、その影響するところがきわめて大きいと考えられるので、特にこれを取り上げて検討を行なった結果、下記のような結論を得た。利子の配当課税の特例等資産所得に対する租税特別措置は、一部の高額資産所得者を著しく優遇するものであって、この措置に伴って生ずる弊害が大きく、しかもその弊害を償うに足るほどの政策的効果も実証し難いので、これを廃止すべきものと考えられる。なお、これを廃止する際には、何分にも長年にわたる措置であるだけに国民に与える心理的影響等を考慮して、経過的措置を設ける等の配慮が必要であると認めた。」こういうふうな答申がされております。私どももかねて当委員会におきましてこの点についてはたびたびと論議をしてまいりました。今回、先ほども大蔵大臣、税調の答申は尊重いたしますというお答えでありますから、私もたいへんうれしいと思うのでありますけれども、この点について、ひとつこの部分についての税調の答申に対する大蔵大臣のお考えを承りたい。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 私はいまこれをいただきまして、まだ読んでおらないわけでございますが、御指摘のところ、いま主税局長に指摘をせられて読んでみました。確かにこの原則だと思います。ですから、将来税負担の公平が行なわれるようにこの趣旨を尊重するということは言うを待たないと思います。ただ、先ほどから申し上げましたように、物価問題から考えても、また産業資金の調達とかいろいろな面から考えましても、現在資金の需要ということは貯蓄に待たなければならないという現実的要素も無視できないわけでありますので、将来の基本姿勢はこの税調の答申のとおりでいいと思いますが、現状、やはり現実的なものに対しては処置しなければなりません。これは私企業に対しては国の税金を出さないことがいいのだという理論はこの答申に書いてあるとおりでございます。しかし、私企業であっても、石炭が国に及ぼす影響、国のエネルギー政策の根幹をなすものである石炭産業がつぶれることによって他に及ぼす影響、しかも、石炭の五千五百万トンのエネルギーを外貨に換算した場合日本の国際収支が立ち得るかという場合には、税制上の優遇も行ない、税金をもってさえやるのでございますから、その政策的ウェートに対しては、十分現状把握を誤らないで緩急をつけていかなければならないことは、これまた論を待たないところであります。でありますから、後段に「これを廃止する際には、何分にも長年にわたる措置であるだけに」−長年にわたる措置であるだけにという理論的なものだけではなく、現状も十分把握しながら、こう書いてあればなおいいと思いますが、これは答申に書いてないだけのことでありますから、政府が政治的な責任の上に国民の幸福をより合理的に、より積極的に支持するにはどうすべきかという判断に立つべきものであります。でありますから、この答申の基本的な線は十分熟読玩味をしながら、また現状に対処して遺憾なく合理的な施策を行ないたいと考えます。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 本日の新聞の伝えるところによりますと、この利子の所得の課税の改正によりして初年度三百三十五億円、配当所得の課税の改正によりまして百六十億円、都合四百九十五億円というものの増収が実は見込まれておるわけです。もしあなたのいまのお話のように、中身がどうなるかわかりませんが、これはいまのこの税調の答申をもとにして試算がされておることだと思いますから、どういう処理をされるかは別としても、あなたがいまおっしゃるような形で何かのそういう分離課税的なものが存続をする、あるいは新たなものができるのかどうかわかりませんが、もしそういうことになると、現在のこの答申案の土台になっておる計算というものは根底から非常に狂ってくるのではないか。それも十億、二十億が狂うというなら話はわかりますが、四百九十五億、約五百億の狂いがここに出るということは、これはほかの減税に非常に大きな影響をもたらすことになるのではないか。そこでちょっとここではっきりいたしておきたいのは、所得税の減税のほうへ過去においてもいろいろと食い込む場合が多かったわけですね。今回は、こういう仕組みが立てられておるところでもしあなたのおっしゃるようなことが行なわれれば、そうでなくても不十分な所得税の減税というものがまたもや削られるということになるのではないか。これはさっきからのお話の佐藤さんが総理大臣として最初にやる税制としては、政治的な責任のある重大問題だと私は思う。所得税を大いに減税をするというのがかねてからの佐藤さんの考えですからね。そうしてみると、その点いまの発言というのは具体的に非常に重大な問題を含んでおると思うのです。どうですか。所得税のほうに触れずして処理をするということなのか、やはりここをさわれば所得税も減税を減らすのだということになるのか、ここのところをちょっと少し。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 ことしの所得税の減税の平年度をいま主税局長に聞いておりますが、ことし二千億減税をやりまして七百三十億減税でございます。非常に財源不足をしてたいへんなときであるにもかかわらず、平年度千億の所得税減税案が出そうであります。新聞をけさ見ましたが、十六日ごろ私はいただくということのようであります。きょうは長期税制の基本的な問題だけ答申をいただきまして、あとの問題は総会にかかってきっと私のところにいただくと思うのです。非常にいい、好ましい答申をいただくのだなと思いますが、財源の上から考えますと、私のほうでも、これだけの財源をこのまま調達し得るかということに対しては相当大きな問題がございます。問題がございますが、いずれにしても、新聞をけさ読みながら、答申をいただけば答申尊重ということを国会でもたびたびしゃべっておりますし、また私も言行一致のほうでございますから、これはいただきましたらひとつ十分検討して、なるべく国会でおしかりを受けないようにしなければいかぬということを心に期したわけでございます。まあしかしきょう初めてあの数字をいただきましたから、主税当局に、これだけの財源が一体あるのか、これ以上また何かできるのかというようなことはひとつこまかく聞きまして最終的判断をきめたい、こう考えます。中には、どうせ財源はないだろうから、インベントリーを取りくずしてでも減税をやるべきだとか、減税の場合こそ公債を出すべきだとか、いろんな議論がありまが、私は現在の段階において、四十年度予算編成に際して公債を出したり、またインベントリーを取りくずしたりはしないという考え方、これも明らかにしております。そういう特殊な財源は少なくとも健全均衡——在来の基本的な財源からというのではなく、在来の基本的姿勢とワクをくずさないで、その中で可能な限りの減税をやるという場合に、一体どのような具体的な最終案ができるか、これは党でも専門家を網羅して税制調査会をつくっておりますので、党の意向も十分聞きながら最終的に判断をしてまいりたいと思いますので、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私少しこの問題に入ります前に、どうも分離課税というものが一面でいろいろと所得の把握上の問題にも影響を持ってくるということを実は痛感をしておるわけであります。これから申し上げますことは善意なる納税者について申し上げるのではなくて——善意な納税者はたくさんおられます。ですけれども、納税者の中には必ずしも善意でない方もあることは、これははなはだ遺憾でありますけれども、現実の姿でありますので、その点を念を押して少し伺っていきたいと思います。  国税庁にお伺いをいたしますけれども、皆さんのほうが査察その他の事案によって出てきた脱税ですね、その脱税をした場合の金、そういうふうなものはどういう形で置かれておるのか、大体のことでけっこうですが、たとえば預金であるとか、証券であるとか、いろんなかっこうでおそらく置かれておるのではないかと思うのですが、皆さんのわかる範囲でけっこうです、そのウエートはどのくらいそういうものの中で占めておるのか、特にいまは分離課税というのは、投資信託がありますけれども、預金だけでありますから、そういう点についてちょっとお伺いをしたい。
  64. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 ただいま査察のお話が出ましたので、私の所掌しております査察関係だけにつきましてとりあえず申し上げますと、三十八年度におきまして査察立件をいたしました件数の中で、起訴すべきものと考えまして告発いたしました件数が六十三件あったわけでございますが、その中でただいま御指摘の預金の形におきまして脱税所得を留保しておったという件数の割合は約七六%、つまり四分の三程度の脱税者が預金の形で留保しておるということでございます。  なお、金額的に申し上げますと六十三件の告発、これは法人の場合でございますが、それの留保金額が、つまり脱税しました、期中の増加しました額のトータルが二十一億八千二百万というわけでございますが、そのうち約五五%に当たります十一億九千万円が、預金の形態で留保されておるということになっております。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話でもわかりますように、脱税として結果が出てきたものについても、留保されておるものというのは、一番多いのは預金の形のようであります。これは特にそのものがどういう形でいくかというと、この預金は大体架空名儀もあり、実際の名義で置いておるものはないわけですから、何らかのかっこうで他の名義になります。これは動かすといろいろわかるものだから、これは裏預金のかっこうで固定をされて、両建てのこれが原資になって、そして借り入れられておるというのが一般的な事実関係のようであります。私どもはいま分離課税の問題というのは、確かにここで指摘をされておりますように、一面的には高額所得の上積み制限を軽減するという非常に大きな問題点があると思いますが、もう一つは総合をされないというために、所得の把握を非常に困難ならしめているという点に実は私最近非常に大きな関心を持っているわけであります。ですから、私どもはいまの分離課税の問題というものは、これは別の角度なんですけれども、要するに預金でも証券でも何でもいいから、あらゆるものがはっきりとその所在が明らかになる、要するに架空の名義であるとか、その他の処置はできないのだ、要するにその源泉は明らかになるのだという点が一本はっきりしてくるならば、私は、この分離課税の問題というのは、弊害はありますが、弊害の点においてはやや救われる道もあり得るのではないかと思うのですが、残念ながらそういう措置ができないために、これはあげてそういう脱税の手助けというと少し行ぎかもしれませんが、しかし手助けになるような措置として現在有効に働いているということは、これは間違いのない事実ではないか。この点について大臣はどういうふうにお考えになるか。
  66. 田中角榮

    田中国務大臣 分離をすれば、結果的に見まして脱税がやりやすくなるということが理論的に言い得るということはそのとおり認めます。しかし同時に、いまの査察部長が申した例を簡単に、すなおに聞いてみますと、大体脱税した金額を普通は消費してしまったとか、こういうのは一番筋が悪いと思いますが、このまま使わないで預金にしておった、こういうことは中小企業なんかにはよくあります。これは実際、預金の制度がありますので、実際は脱税があるらしいということになりまして、一千万以上ということになりますと、裁判所の令状を持って、検事と話をして同時に入りますから、入ると、帳簿をこまかく突っついていきますと、どこかにあるのじゃないかということは、取引銀行を押えて架空名義のものはないか、取引金融機関でもって架空名義らしきものがあるならば、その中からさがすか、さがされるのがいやだったらどろを吐きなさいというと、金融機関がさっと出す、こういうことで数字が出ておることは、これは明らかでありますから、堀さん十分おわかりだと思うのです。ですから結果から見まして、分離課税の制度があるから脱税が助長されておるのだとは私は考えないのです。がしかし、その脱税というようなものを、少なくとも分離課税というものがあるので、いろいろな架空名義でもってやっておれば脱税ができると錯覚を起こして——私は考えれば、銀行にあるのですから、徹底的にやればつかまるので、脱税としては実際においては、へたな幼雅なかっこうだと思うのです。ですから私はそういう意味から考えまして、必ずしもあなたがいま言っているような考え方にウエートは置いてはおりません。私たちがいま政治的に考えるのは、国民がより貯金をしてもらうためにはどうするかという一つの政治目的、政策目的もございますので、そういうものから考えるときに、ただ理論的な面からだけは私は判断しておりませんが、あなたが言うことがないというふうには考えておりません。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 私はやはり税の問題というのは、一番の根本は所得のある者が税を払うということでなければならぬ。これでは私は率直に言って、税というものは一つも前へ進まないと思うのです。そこでちょっと主税局長にお伺いしますが、いま給与所得を受けておる者は、昭和三十八年度でもいいですが、何%税金を払っているのか、それから営業所得のある者は一体何%税金を払っておるのか、農業所得は何%、商業所得は何%、ひとつ、所得のある者に対する納税者割合をちょっとお答えをいただきたい。
  68. 泉美之松

    ○泉政府委員 三十九年度の当初予算見込みで申し上げますと、納税者の割合は、給与所得者のうちの六二%が納税者になっております。農業所得者のうちでは六・一%、農業以外の事業所得者は二二・七%という割合になっています。しかしこれは、結局所得の階層別の構成がどうなっておるかということによる点が多いわけでございまして、この納税者の割合が低いから、すぐにその所得の者が脱税しておるとかということには、直ちになり得ない、これはもう堀委員の御承知のとおりでございます。結局所得構成のいかんによる点が非常に多いだろうと思います。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの泉さんのお答えは、先ばしってこの割合が低いから脱税しているとか、私何もそんなことを言ってないのです。そこで、お伺いをしたいのは、これは三十九年度見込みでありますから、一体過年度には、三十年度くらいのところはどういう率だったのか。
  70. 泉美之松

    ○泉政府委員 三十年の状況で申し上げますと、給与所得者は総所得者のうちの五〇・六%農業所得者の場合は一九・九%、農業以外の事業所得者の場合は二一・一%でありました。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 ここでわかりますことは、要するに給与所得者というものは、ともかくも所得のある者のうちで税金を払うものが次第にふえつつあるわけですね。そこで農業だけは、これは生産性が低いからこういうことになっているというふうに理解をいたしますが、しかしこれは率直に言うと農業所得も少し抜けている部分があるだろうと私は思います。それはどこに問題があるかというと、米のようなものは非常に把握が簡単でありますけれども、その他の蔬菜とかいろいろなものを何回もつくっては植えかえたりすることは、なかなか所得の把握が困難でありましょうから、これは特に都市近郊の農家については、かなり私は問題のある点もあるのではないかと思いますが、それはしかし農業の生産性が低いという点で理解ができるのでありますが、大体事業所得は少し全体から見ると低過ぎるのではないかという感じがいたしてなりません。特に営業所得は、この所得者の人員の変化を見てみますと、昭和三十一年を一〇〇として見ると、三十八年は一〇九・一で、ちっともふえていませんね。ところが寸実際はその他のほうを見ると、農業所得が減るのは当然でありますけれども、商業所得なんというものは、これは大体ふえていますね。少しではありますけれどもふえている。そのふえ方から見て、どうも私は、ややこの営業所得というものが、個人所得の場合でも、何か把握が少し不十分なのではないか、こういう感じはします。感じがしますが、いま私は、脱税しているというふうには言わないです。一番大きいのは、私は、個人事業所得の問題よりも、中小法人所得のほうに少し脱漏が多いのではないかという感じを持っておりますが、どちらにしても、いまこうやって並べてみると、給与所得者だけは、全部、所得があれば税金は払っておりますね、この点は間違いがない。そうすると、いま国民の中で、一千六百万人ですか、税金を納めて——給与所得者でそのくらいあると思うのですが、その一千六百万人もが非常に正確に払っているときに、片や、やや脱漏のある部分があるということは、私はやはり制度上の問題として、なるたけそういうものが起きないような制度にするということは、これは私は、脱制の大綱としては、公平を旨とする以上は非常に重要な点なのではないかというふうに思うわけなんです。  そこでちょっとお伺いをしたいことは、いろいろなことにあっちこっち飛びますけれども、国税庁で特別調査班というのをつくっていただいて、いろいろと調査をしていただいておると思います。これが、私は、非常に調査能力のある方が処理をしておいでになるから、非常に正確なものが出ておるのだと思います。多少これがその他のものを類推する一つのめどにはなるんじゃないかと思いますのでちょっとお伺いをいたしますが、特別調査班の税務署所管の法人分についての最近の調査件数なり、それから調査所得金額、増差所得金額、増差割合というようなものを国税庁のほうでお答えをいただきたい。
  72. 堀口定義

    ○堀口説明員 お答えをいたします。署の特別調査班の調査事績でございますが、三十八年度分を申し上げますと、これは実調件数で八千百九十九件、それから調査所得金額として約九百二十億、それから増差所得が二百四十二億ということになっております。増差割合は三五・七%というふうになっておるわけでございます。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 いまので、これは特別調査班の調査でありますから、非常にきめのこまかい調査が行なわれて、まず私はこの調査班の行なわれた結果というものは、所得のあるところでは税を納めるという、私がさっき申し上げた原則に合った結果が出ておると思うのです。それで見ますと、遺憾ながら三五・七%という増差が出るということは、もし特別調査班がやらないで普通の状態のままで処理をされていれば、三五・七%はまあ脱税分として脱漏をしておったということになるのではないか。これだけの特別調査班が活動をしていただいたおかげで増差金額が二百四十二億出てきた。法人税を約三〇%と見ましても、これはおそらく約七十億の税収に相当するものでしょうね。それにいろいろ加算税等がつけばこれは別の問題でありますけれども。ですから相当の金額のものが、件数が八千百九十九ということでありますから、全体の件数から見ればごく一部分のものであるとは思いますが、それですら精査をするならばこういう状態であるということは、現在私は、こういう形のものが、さっき国税庁のほうからお答えがあったように、相当にやはり裏預金のようなかっこうに流れておるということを私どもは推計せざるを得ない、こう思います。大臣どうですか、その点。
  74. 木村秀弘

    木村政府委員 先ほどの査察関係、またただいま御指摘になりました税務署における特別調査の関係の数字から見てもわかりますように、隠されておる資産の相当大きな部分が預金の形で隠されておるということは、これは事実でございます。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでこれは私銀行局長にひとつ伺いたいのですがね、銀行、金融機関等は、大いにやはり日本銀行から借り入れをして、そのおかげで絶対に倒産をしない銀行——世界でまず絶対に倒産しないのは、私は日本の銀行だと思っているんですね、それほどに国家的恩恵を受けておる銀行が、国家が正当にその所得を把握をしようというときに、さっきもお話が出ておりましたが、架空名義の預金などをつくって、その国家目的に反する方向に協力をしておるということは、銀行局長の立場としてどうでしょうか。こういうことであっていいのかどうか、その点をひとつちょっとお伺いいたします。
  76. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 国税のために便宜な制度になっておるという御趣旨かと思いますが、その点、そういった弊害が一面にあるということは、私どもの認めるにやぶさかではございません。ただ、御趣旨のとおり、すべてをいまガラス張りにした税の制度にするということになりますと、ただいま五十万以下免税措置がございますが、これは非常に主税局は厳格でございまして、一々税務署に申告をしなければならない、と同じような預金をする者がすべてその住所、氏名を明らかにして、いやしくも無記名も許さぬ、偽名も許さぬ、税務署にそのまま通じてもそう困らない、そういうふうにすれば、まことに税の面から申しますと申し分ないことになるのであります。問題は、戦後十数年——戦前においても同様な点もあったかと思いますが、何らかの形である種の資本蓄積に対しては税の面から支援的な措置をとる。貯著をしやすいようなことをある程度妥協的につくっているという事実は当然なわけでございます。いま分離課税になっておりますが、戦後の状態から申しまして、非常に急角度の成長を遂げる場合に、銀行の資金に依存するところが非常に大きなので、そういうものを、できるだけオーバーローンを少なくする意味において税の面からも資本蓄積を促すようなことに、非常にそういう注意が深く払われていた。これを直ちに、そういうガラス張りの制度に置きかえたならばどういうことになるだろうかということを考えなければならぬわけであります。非常に潔癖な、制度としてはけっこうなんですけれども、それが預金の増強を非常に不利な状態に追い込み、そうしてそれよりも値上がりの確実な土地を取得するとかというふうに、資金の流れがそっちにいくということになりましたならばいかぬのでして、やはり土地、その他のいろいろな投機的なものに流れないという措置を確立し、さらに消費そのものについても何らかの、貯蓄をすると損であるから消費してしまうというふうな——そんなことは日本人はあまりございませんけれどもやはり傾向としては資本蓄積を税の面からきびしく監視されるということになると、そういう弊害も出てくるんじゃないかと思うのです。その辺の政策的な、つまり純経済からの判断と税の公平ということと調和ということをお認め願うほうがいいんじゃないかと思います。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで大臣にお伺いをしたいんですけれども、それじゃあなたのほうの分離課税をするという一番の重要な点というのは何なんですか。要するに、それは分離課税にするから税金を安くするということが目的なのか、要するに名前もわからないようにして所得の把握を楽にして税金ののがれやすいようにするということが目的なのか、ちょっとそこのところをひとつ、先に整理をしていこうと思うのです。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 これは前提となることを一つただしておきたいと思いますが、これは堀さん、いわれたとおり、確かにいまの分離課税をやっておりますために、脱税等をするということに便利だ。ある意味においては脱税ほう助的なそういうことを銀行でやれるじゃないかということでありますが、確かに結果論からみますとそうです。しかしこれは消費したものと違って、銀行預金になっておる場合に、これをただそうと思えば法律上できるんです。これは銀行や金融機関に預金をしてあるものであるならば、これを徹底的に調査をすれば事実、ただせます。ですからただせないというのでない。とにかく銀行に対してたえずこういうものがあるからという投書に基づくとか、これは内ていしてわかっているとか、どうも届け出た決算を見るとこれはおかしい。ですから確かに取引銀行を捜査をすれば必ず出てくる、こういうことで金融機関を徹底的にやれば確かに捕捉できないものではないと思います。しかし、いま銀行局長も端的に申し上げましたが、分離課税をなぜ必要とするかというのは、他の一つの政策目的があるわけです。一つは、税は公平でなければいかぬ。当然脱税をしてはならない。これは法律は罰することになっております。そういう一つの目的と一つの理論の上に立った要請と、もう一つは、なぜ分離課税をしなければならないかというと、結局貯蓄を増強しなければならない。これが一つの消費抑制でもあり、また資金を吸い上げなければならぬ、必要とする、こういう考えから貯蓄増強という政策をやるためには、これは脱税がしやすくなる、捕捉しがたくなるということの面からだけでなく、人間性の本能からも、財産の取得は、これは当然全世界であらゆることで考えておることなのです。ですから、金を必要としない、また消費の抑制を必要としない、こういうのであるならば別ですが、これは政府として当然そのように誘導しなければならないし、またそうすることによって貯蓄増強になるという別な政策目的から考えて必要なものとしての分離課税制度ということでとっておるわけであります、学問的にもちゃんと分離課税の制度はあるのでありますから。ですから、これは全然財産を隠し、ただ脱税をするに容易なためにだけ分離課税を認めたものではなく、より貯蓄に国民の金が流れてくるように、そういう目的を持った一つの方法である、こういうふうにお考えになっていただきたい。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 貯蓄増強の目的はいいのですよ。だからその点は認めますが、じゃひとつ大臣に私提案があるのですが、それじゃ分離課税になるかならぬか別問題として、分離課税というものの考え方をとる場合のことを言っておるわけですが、私が一番いやなのは、架空名義の預金。問題はここです。そこでひとつ預金については、預金を一時封鎖預金で引き出したりなんかするときにはちゃんといろいろの証明が要ったようなふうに、とにかく配給通帳でもいいのですが、実在している人間以外には預金させない、会社なら会社でもよろしい、何でもいい、法人なら法人として実在するということが証明のでき得る何らかのもの、個人なら個人として実在するという何らかのものを出させ、それを認めるならば、私は大きな脱漏の問題についてはかなりはっきりしてくると思います。だから、少なくともそういう考え方、要するに所得のあるものはどういうかっこうで分散しても、どっかで調べればわかるわけです、今度は実在しておる人間ですから。だから、何とかそういう面についてひとつ政府は真剣に考えてみる気持ちがありませんか。貯蓄増強についての点は私はあまりメリットはないと思っておりますけれども、しかし、立場が達いますから、あなたはメリットがあると思っていらっしゃるらしい。しかし、私はメリットよりもデメリットのほうが非常に大きく、いかんともしがたいという強い気持ちを持っておりますから、この点はいまのようなかっこうで、実在の預金以外はいけない、もし、架空のものが出た場合には、次にひとつ銀行法の改正をしたときには、何らかの問題をそこへ挿入してもらいたいと思っていますが、ともかく銀行のほうはこういった名前で貯金しますと言われたら、それはいけませんと言えないでしょうが、少しそこらについて前向きに検討する余地があるんじゃないかと思います。
  80. 田中角榮

    田中国務大臣 堀さんの言うことは非常によくわかります。私もそう考えておるのであります。とにかく、いろいろな問題があります。財産を隠すつもりであって、元も子もなくするようなものもあります。この間私のところに陳情に参りまして、某一流銀行の支店に三百万円の定期預金をしてある。これを会社が倒産をしたら、会社のために自分のうちも担保にとられたから、せめてその三百万円の定期預金だけは返してもらわないと私の娘が嫁に行けない、そう言ってある支店に行ったら、これはあなたであるかどうかわからないから返しません、こういうことを言うという。少しおかしいじゃないか、あなたであるかないかどうしてわからないのか、それは別の名義になっているのでしょう、こう言ったら、別の名義です、こういうことです。別の名義になっておっても、それを証すべき同じ筆跡鑑定をつけて、同じ印鑑を持った者であれば、向こうは金を払い出さなければならない。銀行のほうは架空ではないということを知っておる。銀行に対しての保証債務がありますから、それと関連をつけて、これは別の名前になっておるけれどもAの所持のものであるということを知っておりますから、うちだけではなく、債務の清算が全部つくまでは払い戻しをしないと、こう言っては悪いから、あなたであるかないかわからないから払わない、こういうことを言っておるわけです。私は銀行に対しても口をかけませんし、銀行局長にも言わなかった。言わなかったけれども、この一事を見ても——私は脱税した金であるとは思いません。相当な収入もあり、税金も払っておる人で有名な人、というくらいにしっかりした人ですから、そういう脱税した金だとは思いませんが、何のためにそういう名前をつくったのか、まあ、娘さんの名前に似た名前でもって出しておった、こういうことで元も子もなくなる。こういう意味からいっても明らかにしておいたほうがいい。それは外部からうかがい知れないように、金融機関の秘密財産秘匿権というものは守らるべきであると私も考えます。そこまでは堀さんと同じですが、もう一歩進みますと、無記名定期預金制度はどうしてつくったのか、これもやはり必要があって当時つくったわけです。ですから、無記名定期預金の制度、それからもう一歩進んで、無記名定期預金というよりも、全く架空の名義を乱用しておる。いまは小額免税に対しましては、米穀通帳かなんか持って、本人でなければやらない。しかも、それは税務署へまっすぐに通知がされるということになっておるのですが、万全の上にも万全と、こういっても、法律にもやはり盲点があって、新しいもの、新しいものが出てきまして、なかなか万全にはならない。そうであれば、結局すべてのものを明らかに実在の人物にするということが一番好ましい。好ましいですが、その過程においてなかなかむずかしい問題もありますので、無記名定期預金の問題、架空の預金名義者に対して将来どうするのか、その場合には、もっと免税点を上げていこう、少なくとも小額免税というものに対してはもっと手厚いことをやってもいいというようなこと、こういうものも全部合わせて検討する。より合理的に一部の人から非難を受けたりそういうことのないように   また財産が架空名義になっているために、おやじさんが死にまして、子供さんの財産争いに対してとても問題なんです。私はこの間ある銀行で一つ片づけた。それは、子供さんが全部来なければ銀行は払い出しません、こういうことであります。それで私が立ち会いになって財産分けをしたという例がございます。それは、その中でもってどうしても会いたくないという子供さんもあったということで、非常に問題を私は深刻に感じました。何かもっと合理的なものがないかということも感じておるわけでありまして、これからひとついろいろな面から検討をいたします。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 田中さんはものわかりのいい人だから、話はいつもわかった、わかったと、こう言う。話がわかってもやらなければ、これはわかったうちに入らないのですよ。大臣いいですか。だから、ものの道理というものがわかったら、その道理を進めるところに価値があるので、ともかくいまの答弁は価値ないですよ。私がいま言っていることは、国民だれが聞いたってもっともだと思うと思うのですよ。そうじゃないでしょうかね。ともかく片方では、苦しい暮らしをしていても税金まるまる取られている者がある。片方は、多少余裕があって——税金を払った後なら私は何にも言いませんが、そうでないのがややあるではないかということを、すでに前段でやってきたはずですから、その部分に利用されるところぐらいは防ぐということは、私は大蔵省が一体となって、そうして——そんなむずかしいことじゃないのですよ。いまの実在の人間に預金をしぼるぐらいのことはあたりまえだと思うのですよ、率直に言って。これについては、ともかく分難課税をやるかどうかわからない段階であるからといえばそれまでですが、あなたのさっきの答弁では、何らかのかっこうでやりそうな気配が十分察しられますから、私は声を大にして、何とか正直者がばかを見ない−要するにきちんと納税しておる者がばかを見るような政治をやるということは、佐藤さんの言う人間尊重にならぬですよ。人間尊重というのは、やはり正しくやっている人間が一番尊重されるようにならなければ、人間尊重なんということばにならぬのです。まずその点は十分考えてもらいたいと思う。  その次に、さっき証券分離課税等の問題について御意見がありました。池田総理がやめると言ったときに、私の一番最初にピンときたのは、何かといいますと、池田さんは当委員会と本会議において、私に対して、配当の分離課税をいたしませんと約束をしておりましたから、池田総理在任中はこの問題は動かないという確信を持っておりましたけれども、佐藤さんはかねてから分離課税賛成のようなことを言っておられますし、田中大蔵大臣に至っては大いにこれを鼓吹してこられておりますから、まことに微妙な段階にきたと思うのです。そこで、私はこの点については問題を明らかにしておかなければならないのは、私も証券界の諸君と同じ考えを一つ持っておるのは、預金と配当が全然別個な扱いを受けておるのは適当じゃないと思うのです。ただ、配当の場合にはちょっと性格が違う点があります。配当所得控除等の問題が多少ありますから、必ずしも預金と配当が同じだとは言い切れない党があるかもわかりません。しかし、少なくともほぼ似た条件の中で、片方が分離になって片方が総合というのは、なるほどこれは、証券関係の諸君から見ればまことに不公平なことだという感じを持つのは、私も認めます。そうすると、問題はどうなるべきかというと、証券のほうに分離課税をするというのは、船があって、片方が水が入って傾いてきたときに、もう一つのほうに穴をあけて、水を入れてバランスをとろう。バランスをとったのはいいが、船はこの場合沈むのです。だから、この場合船を正常に起こすためには、穴をふさいで、入った水をかい出さなければならない。ところが、いまあなた方がやろうとしていることは、反対のほうに穴をあけて船を沈めようという、こういう方向は私は困ると思う。バランスをとることはいいのですが、バランスをとるのは、やはり廃止の方向でとるべきだと思います。  それから、証券界の人がいま一生懸命、何かわらにもすがりつきたい気持ちでこの分離課税にすがりついて、声を大にして言っておられますが、私はこれは反対だと思っております。もしかりに分離課税ができたら証券市場に金が入ってくるかといったら、絶対に入ってこないのです。なぜ入ってこないか、ここなんですが、もしほんとうに入ってくるのなら、投資信託はいま分離課税になっていますね、この分離課税になっている投資信託のいまの姿というのは、大臣御承知のとおりです。いまの資本市場を荒しておる最大の問題は投資信託の改悪なんですから。この間の九月、十月と委員会で私は議論をしてきたとおりであります。だから、もし分離課税になったらそっちへ金が流れるということを考えるなら、投資信託のほうにはもっと金がきていいのに逆流しているのですね。ここに一つ問題がありますし、もう一つの問題は、預金というやつは、架空名義であれ何であれ、ここへ利子がつくのですよ。ほっといたって利子がつく。配当を取ろうと思ったら、全然架空の名義では配当が取れないのですよ。配当というのはちゃんとその株主のところへ郵送するのですからね。配当を取るものに送るのですから、架空の名義にして配当を取ろうとしたって、配当は取れないですよ。だから、分離課税にしてみたところで要するにさっき私が言うように、片方は実在の人間にしかならない。架空の人間になるか。なりっこないですよ。片方は架空になるのですよ。だから私は、証券界の人が実際にそういうことを知ってこういうことを言っているのかどうか疑問に思っているのは、証券分離課税にしたって、同じように預金の分離課税がある限り、預金にいっておる金が証券へはそのことによっては流れてこないのです。これは重大な問題です。いま証券市場を立て直らせるために証券界の人が一番望んでいるのはこの分離課税。しかしこまかく分析してみると、分離課税は効力はありません。そこで、もしあなた方が何かのかっこうでやってみても上がらなかったときに、証券市場はどうなるかと言ったら、最後の頼みの綱のこれもだめだということになれば、これはまたがさっとくるのですよ。ここは重大な問題ですよ。だから私は、証券界の皆さんも、もし真剣に運動をするのならば、いま銀行の金を借りているから、銀行の分離課税反対とは言えないかもしれないけれども、しかしやはり銀行の分離課税をやめてください、そうしたときにはじめて私たちと対等になりますから、資金の流れがもっと自由になるのであって、いまともかく預金に行く金がこっちへ流れてこなくて、一体どこから金が出てくるのか。預金のほうがいまの条件のようにメリットがあるときに、過去の昭和二十六年当時の個人資産の増加額の中身を調べてみるならば、投資信託と証券にどさっときたときは、都市銀行、地方銀行その他を含めて銀行預金は下がっているわけですよ。ともかくわれわれ国民の貯蓄できる総体というものはやや減りつつあるけれども、一五、六%内外になるわけですが、これは可処分所得がふえるかなにかしない限り、そんなに耐乏生活をやりましょうというようなことにいまはなっていないんです。そう考えてくると、私たちは、もし証券問題、資本市場対策としての税制ということを考えるときに、一番効力のある分離課税——分離課税問題というのは、預金の分離課税をやめることなんですよ。大臣、どうですか。
  82. 田中角榮

    田中国務大臣 堀さんのお考えはよくわかりました。私の考えのほうも少しわかっていただきたいと思います。それは預金、証券に金を入れようとするときには預貯金からしかいかないという考え方よりも、より深く考えておるわけです。先ほどから申し上げておりますように、可処分所得がふえないとは言っておりますが、少なくとも所得はふえておるんです。所得がふえておるから、名目所得とは言いながら、ふえておるから、所得税は増収になっておるんです。ですから、物価問題はいろいろ言いますけれども、物価問題の中で公共料金のストップは確かに重要な問題であります。しかし、物価問題は公共料金のストップだけで片づけられるかというと、一体フランスやイタリアがどういうかっこうでやって物価問題に対処したかといえば、これは言うまでもなく所得政策をやっております。賃金ストップをやったり、国民の消費抑制をやったり、増税をやったり、もちろん長期健全均衡財政をやっております。デフレ政策さえとっております。そうしないと実際の物価問題は片づかない。しかしそう極端にできるものではありません。第一政治が持たないという考えもあります。ですから、結局国民の協力を得ながら、消費というものも多少セーブをしてもらいながら、しかもその消費抑制をしたものが貯蓄に回り、貯蓄に回ることによってオーバーローンの解消をはかろう、金融の正常化をはかろうとしておるのです。同時に、貯蓄によっただけでは産業資金がまかなえないということでありますから、その産業資金を資本市場から直接調達をする、こういう考え方をとっておるわけであります。でありますから、もう二一%になったときに、貯蓄性向は世界で最高であって、これ以上はいかぬのだという考え方から言うと、私は、そのポイントは違うんだ、ですから一応何千億になっている社内預金というものは一体いいものかというと、私はそうは思わない。社内預金というものは非常に危険性があります。そういう意味から言っても、少なくとも社内預金そのものさえも、私は、合理的にするならば、正式な金融機関に貯蓄せられるべきだと思うのです。同時に、自分が一生を託しておって、闘争しておっても、本体をくずしたらどうにもならぬのですから、少なくとも自分が社内預金ができるような余力のある者は、みずから株主になって、会社の経理を明らかにみずからつかむ。自分が労働をやって一生を託しておる企業の内容はどうか、十五年間も無配、タコ配をやっておって、ようやく十五年目にそれを出して、その総額は十五億だった。しかもその結果は、賃金はストップになる、首切りはやられる、社内預金というものは返るのかどうかわからぬ、こういう事態を一つずつ解明していかなければならない。私は、そういう意味からいいまして、少なくともいま預貯金に対する源泉分離をやめることによってバランスはとれますという考え方にはならない。それはいまでさえも貯蓄増強政策はもっとやらなければならないのです。ですから、私は、今度の新生活運動に対しても、オリンピックが終わったから新生活運動を何かするというなら、貯蓄増強というような消費抑制をなぜ新生活運動でやらせないか、こういうことをほんとうにやることによって健全な国民の生活ができるんだ、こういう考えでありますから、貯蓄増強が必要であるというために源泉分離制度をとっておるなら、その上になお直接資本市場に国民からの金の流入を求めるとしたならば、これは私は永久にやれるとは考えておりません。三年でも五年でも必要とするとき−少なくとも、西ドイツが海外投資を促進するために特別な法律をつくるほどになっておるならば別でありますが、アメリカの利子平衡税問題が一つ落ちても株価が暴落するような日本の脆弱な資本市場であることを考えるならば、やるだけのことはやらなければならぬ。ただ、私はそれだけを考えておるのではありません。資本市場の健全化に対しては、これからやはり企業の責任というものも明確にしなければならないし、取引所の制度や上場というものに対しての基準も明らかにしなければいかぬし、それから証券会社に対してもみずから正すようにしなければいけませんし、あらゆることを相当手きびしい施策を要求するときに、やはり税制上も、こういう処置もしてやるかわりに、すべての者が努力し合って、犠牲も払い合って、新しい政策要請に応じよう、こういう姿勢をとらないでいままでやっておって、銀行のものを下げればむずかしいかもしれぬ。そうしてそれに対しては、業者に対しても相当強い規制を行ない、場合によってはとにかく十年でも十五年でも一割配当をしておりながら、実はタコ配だったなどということは、いままでの制度の中で、証券局ができて、このままでいいなどということは少なくとも考えておりません。不特定多数の国民に証券を発行して、しかも会社の内容はこうですと表示をしておって、タコ配をしておって、タコ配をした人は明らかにその間月給ももらい、期末には配当をしておったのですから、堂々と退職金ももらい、期末賞与ももらっておった。それを一体吐き出すのか。税金の問題ではありません。そんなことをそのままにしておって日本の産業基盤がつちかわれようはずはないと私は思う。そういう各般の施策を一挙にやるときに、税制上の問題も全然やらないほうがいい、どうしてもそうはならないと思います。そこがやはり政府、大蔵大臣として毎日毎日資本対策などを考えていると、考えが違うということになるのであります。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 それは皆さんもいろいろやっておられると思うのですが、私はやはり、いま国民が非常に注視しているのは、率直に言ってこの分離課税問題というものはある面でみんなが非常に注視をしておると思うのであります。さっき申し上げたように、一千六百万の給与所得者のように公平に税を負担している者はあるわけですから、その人たちの立場から見るならば、やはり税というものは公平でなければならぬし、いま累進税率というものは一体何のために設けられているのだということを一ぺん真剣に考えてみなければいかぬと思うのであります。給与で入ってくるのはみんな累進税率で、片方は累進税率は全然動かないということは正直者がばかを見ているわけでありますから、ここらは十分御検討いただきたいと思います。時間がありませんから先へ進みますが、確かにこの点は十分話がわかったとおっしゃるのだから、わかった部分についてはひとつ十分検討してもらいたいと思います。ひとつその点は強く要望しておきます。  その次に、実はいまお話がちょっと出ておりましたが、十一日の新聞に企業経理を定期検査証取法改正に含めるという、こういうお話が出ております。もう新聞に出ておりますからはっきり申しますけれども、一部上場会社であるサンウェーブ会社が公認会計士から不実の記載があるという問題が提起をされておるのです。私はかつてここで公認会計士問題を約二時間にわたって論議をしました。私が指摘したことに対して、このサンウェーブの公認会計士に敬意を表したいと思います。きわめて勇気があり、日本の公認会計制度のために今回この人のとりました処置は私は目ざましいものがあると思うのです。この人がほんとうに勇気を持ってこれをやらなければ、実は善良なる大衆はいまの監査報告をもとにしてわからないことによって株を買ったかもわからない。ですから私は前回そのことについては二時間にわたって論議をしましたから、非常にりっぱな行為だと思って私はほんとうに表彰に値すると思うのでありますが、しかし同時にそのことについてここで大臣が主として述べられておるのは、会社の経理等についてもこれは証券取引所だということになっておりますが、検査をしたらどうかというような点まことに私は適正だと思いますので、この点についてのお考え、新聞に出ております点はどういうかっこうでおっしゃったかわかりませんが、その点についてひとつ……。
  84. 田中角榮

    田中国務大臣 私が新聞記者会見をきのうやりまして、いろいろ閣議で問題になった銘柄等につきまして一体分離課税だけやることによってうまくいくものじゃないのじゃないか。今度二面において不安と称されておる会社の内容、まず新聞で大体三日前くらいに金融不安だ。そうすると経理担当常務は、会社は不安はございませんと言いながら、その翌日は株価は半分になる。三日前には更生会社申請を行なう。こんなことをしておって一体どうなるのだ。これは国民の大多数がやはり考えておるものだと思う。私も先ほどちょっと申し上げましたが、それは結局最も重要なものは、前に共同証券をつくりましたときに経団連とか産業人は出資しない、たがために一体共同証券ができたのだということをもっと考えなければいかぬということを、私は相当勇気を持って発言をしたつもりであります。正すべきは正す、こういう考えで申し上げたわけです。これは会社が国民から公のオープン・マーケットにおいて資金を調達して、うその書類を公示して、そしてそれで金を集める。金が全部集まり終わったら、実はタコ配でございました。タコ配を埋めるために、自転車操業するために増資をしておった。増資をするために必要だから株価を維持しておったというに至っては、これはいかんともなしがたい。いかんともなしがたいというけれども、現行法においては法律上の制度があるのだ。だから一体これをどうするかといえば、これは大蔵省が手きびしく検査をすれば一番いいけれども、しかも税と一緒になってやればこんな的確なことはないが、そんなことはなかなかできるものじゃないけれども、しかし証券取引法、公認会計士法、この強化というものはやはり避けられない。私はやはり第一には企業の責任者の自覚の問題である。少なくとも自分たちが重役であって、その川長い間配当したときには必ず期末賞与をとっておりますから、そしてまたその期間において役職員を退職した人もある。それも相当の退職料をもらっているでしょう。一割、一割五分も配当をしたのですから、実際これはタコ配、詐欺じゃないか。それが責任を追及せられない。こんなことで証券市場の育成強化ができようはずがないのだ。私はまじめにそう考えた。ですからそういう短い時間ですが、少し手きびしい、激しい、こんなにやっているのに一体相手は何でこたえないのか。こういうつもりで多少激しい言明であったかもしれませんが、その裏には上場審査基準、それから審査基準の強化とか資本金基準引き上げとか、それから取引所の上場会社に対する権限強化とか、経理報告についての会社の責任の問題とか、それから有価証券届け書の真実記載の確保、こういう問題に対して、これはいま証券取引法の改正案をつくりつつある。ですから、これだけの問題を見ながら全然入れないというわけにいかぬ。これは少なくとも非常にむずかしい問題でありますので、特に商法との競合とか、いろいろな問題がありますので、私たちも第二段の改正に譲らざるを得ないかとも思いましたが、これはやはりやれるものはもう少しでも前進させる。それが相当反対があっても当然のことであります。銀行に要求するようにやはり上場されておるという株式会社等に対して多少いまの法律規制は手ぬるい。これでは大衆の利益、権利を擁護することはできないという考え方で前向きに検討し、検討するだけではなく適切なる措置をとらざるを得ない。とるつもりであります。こう申し上げたわけでありまして、そういう考えであります。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に、いま議題になっております議案に関連のあることでありますけれども、地方交付税交付金が現在二八・九%程度であります。ともかく現在地方自治体はかなり赤字がふえてきて非常にやりにくいというところにまいっておるわけでありますが、今度いまのような法案で財源を先食いをするようなことで処理をされようとしておるのですが、私どもはやはり国の財政ももちろん重要でありますが、やはり地方財政との権衡がとれておらなければ、国だけよくて地方財政はどうでもいいんだという考えには、私はならないと思うのです。その点では、やはりこの際地方交付税交付金の率はもう少し引き上げなければならないのではないか、こういうふうに考えるのですが、この点はいかがですか。
  86. 田中角榮

    田中国務大臣 私は将来とも二八・九%を、絶対引き上げないという考えではございませんが、四十年度予算編成の時期に地方交付税交付は反対であります。これはしかしまだ大蔵大臣が対案をつくっておるのでございまして、閣議で最終的にはきまるわけでございますが、大蔵大臣の現在の立場はそうであります。なぜかと言いますと、私も地方開発論者でありますし、もちろんそうあるということに対してもいろいろ考えてはみました。現在のままでイージーゴーイングだということを考えるわけではありませんが、いまここでもって金が少なくなったから財源確保のために一・一を上げるということにはどうしても賛成できない。というのは、国の予算は三兆二千五百億であります。ですから今年度予算地方財政が小さい。ところが来年度になりますと地方財政が多くなる。健全財政だけ言っておっても、地方財政というものは国より大きくなるものがただ必要であるからというゆえをもってこのままはやれない。しかも同時にある地方公共団体は、まだ総経費の七〇%は人件費だというものもございます。東京都のように二七・八%というものもございますが、平均するとまだ六〇%に近いというような状態、これは人件費そのものに対して私は言っておるのではありません。所得政策のような考えで言っておるのではありませんが、もっと効率的にするためには、国と地方との行政配分の問題もいろいろな問題を考えなければなりません。少なくとも地方財政の中で何判というものは投資でなければいかぬとか、そういう問題を完全に解決しないでいまただちに百五十億にからんで引き上げるということは、これは健全財政だという考え方からして、はなはだどうもいま踏み切れない、こういうことでございまして、これは地方財政の諸君もおりますし、自治大臣との間にも議論が存するところでございますので、これは国民にも明らかになるような状態で結論を出したい、こう思います。でありますから、いまのところで三〇%に引き上げることが一番安易だ、一番イージーだ、こういうような考え方になっておらない、こういうことだけ理解していただきたいと思います。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。     —————————————
  88. 吉田重延

  89. 有馬輝武

    有馬委員 私は、佐藤総理に一問だけお尋ねをしたいと思います。  それは国会運営の問題についてであります。この大蔵委員会は現在まで税制金融財政委員会といたしまして常に適時適切な審査、法律の制定を通じて、国民各階層の期待にこたえてまいりました。たとえば例年の税制調査会の答申を受けまして各税のあり方を検討し、よりよい結論を出す、あるいは歩積み、両健ての正常な金融に及ぼす悪影響を克服するなど枚挙にいとまがないのであります。特にこの第四十七回国会は打ち続く災害問題、公務員の給与問題、また中小企業の倒産に対処するなどきわめて重要な国会であると同時に、佐藤内閣として初めての国会でありますし、政府の施政方針を明らかにして国民に訴えられると同時に、野党であります私ども日本社会党といたしましても、このあらゆる問題についてこれを究明し、また明らかにする責任と抱負をもって臨んでおったのであります。ところが当委員会は、この国会が召集されました十一月九日から一カ月有余、本日まで全く開かれないまま国民に大きな失望を与えてまいりました。その原因は野党であります私どもには十二分にうかがい知れないところでありますけれども、ただ私どもが聞いておりますところでは、前山中委員長提出されました委員長の辞表の取り扱いについて漫然と日を過ごしてなすところを知らなかったところにあることはまぎれもない事実であります。総理は与党の総裁としてこの問題を処理し得る最高の能力をお持ちであります。ただ単に国会法あるいは衆議院規則、こういう問題で片づけられないところに今度の問題があったはずでありまして、これを処理し得るのは総理であったはずであります。その総理が先ほど申し上げましたような大蔵委員会、ひいては国会の機能が完全に麻痺して、災害はもとより史上未曾有の中小企業の倒産、これらの問題に対処する機会が与えられないことをそのまま見過ごしてこられた点についての御見解を伺いたいのであります。あるいはこのような事象というものは、中小企業の倒産が幾らあろうがそれはとるに足らないことだ考えられたのか、あるいは国会の問題で、実質的な大蔵委員会国会の審議の停滞は自分の責任ではない、そう考えられたのか、そうでないとするならば、一カ月有余も放置してこられたその理由を明らかにされなければならないと思うのであります。国民生活の安定のために常に国政、審議に真摯な態度で臨んでまいりました私どもといたしましては、当然このことを明らかにしておかなければならないと思うのであります。このことは、私どもだけでなくて、民主社会党でもまた与党の当委員会委員の各位も、全く同感であろうと存じます。  その意味で、今後の当委員会の運営にも重大な影響を持つ問題でありますだけに、総理のこの問題に対する所信を、この際明らかにしていただきたいと存じます。
  90. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  私も大蔵大臣をした経験がございますので、大蔵委員会がどういう働きをしていらっしゃるか、よく承知いたしております。ことに最近の経済状態等につきまして、各方面でいろいろの批判がございますので、それらの問題と真剣に取り組んで、まことに日夜を分かたず活発な御論議、また調査を続けていらっしゃる、このことをよく承知いたしております。  しこうして、長い間当委員会が開かれなかった、このことにつきましてただいまおしかりを受けましてまことに私も恐縮しておりますが、御承知のように私、山中委員長——かつては私のもとで大蔵政務次官をした仲でございます。彼は確かに、私情云々ではございませんが、有能な委員長であった、かように私は考えます。かねてから辞意を漏らしておりました。何とかこの委員長を慰留することはできないだろうか、かような意味で党幹部等とも相談をしてまいったのであります。そういう事柄がついにじんぜん一カ月に及んでそうして何らなすところなかった、当委員会の機能にも支障を来たした、かように言われるのでありますが、私は何とかして名委員長を残したい、こういうことで慰留し、ことに臨時国会でございますから、審議の案件も非常に限られておる、こういうことで、当委員会を別に軽視したわけでもございませんし、また委員長の職責を軽視したわけでもございませんが、ただいま申し上げるような次第で、できるだけ慰留したい、こういうことで今日までまいったのであります。しかしながら、山中委員長の辞意はまことにかたいのでございます。私どもその当初のねらい、目的を達することができないで、今度吉田委員長にかわっていただいた、かような次第でございます。その点でただいま言われるごとく、一カ月も長期にわたって当委員を開催することができなかった、これは私どももちろんまことに遺憾に思う次第でございます。今後ともに当委員会は大事なお仕事をしていらっしゃるのでございますし、ことに最近の経済事情など反映し、またそれを考えてまいりますと、まことに皆様方のお気持ちもさることだ、かように考えますので、この種の事柄が再び起こらないように十分注意してまいるつもりでございます。
  91. 有馬輝武

    有馬委員 私も山中君とは同じ選挙区でありまして、昭和二十八年以来選挙は争っておりますが、最も尊敬すべき人間であります。彼の能力についても、また委員長としての仕事のしっぷりについても佐藤総裁同様に私もよく知っております。が、しかしその山中君が辞表を提出したその理由はわかりません。が、問題はその期間の問題であります。少なくとも衆議院規則の六十七条、あるいは三十八条にはそれぞれ委員長の任務というものが書いてあります。しかし国会法の二十五条では、ただ委員長の互選についてだけで、今回の場合のような規定というものがないのであります。しかも委員長が辞表を出してその代理を置くとするならば、委員長の権限を十二分に果たし得るような代理を置いて、いま総理も認められたような国会の機能を停止させることのないようにすることが私は筋ではなかろうかと思うのであります。こういうこともやらないで、代理の人が委員会を六十七条に基づいて開こうとするとそれもできない。これでは何のための委員会国会かわからない。それを処理するのは私はやはり議長であると同時に、与党のその間の調整については与党の総裁が十分に、そのような、総理がいま述べられたような事態があるとするならば、これを処理するのがそのつとめではなかったかと思うのであります。それには私は一週間もあればその事態は明瞭になるし、またそれに対処する手段、これは最高の総裁としての力をお持ちなんですから、それができなかったはずはないと思うのです。そこら辺についていま一度お聞かせいただきたい。
  92. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま私の所見を表明いたしましたようにたいへん長くかかった、この意味でおしかりを受けていると思います。私はその点はまことに遺憾なことだ、残念だったと私は申しておるのであります。過去のこの種の事柄が二度と繰り返されないよう今後十分注意してまいりたい、どうか御了承をいただきたいと思います。
  93. 有馬輝武

    有馬委員 今後このような事態がないようにということでございますので、私どももこの総理のおことばをしっかり頭の中にとどめておきたいと存じますから、どうぞよろしく願いたいと思います。  私は終わります。
  94. 吉田重延

  95. 竹本孫一

    竹本委員 時間がありませんので、結論的な点を二、三大蔵大臣に伺いたいと思います。金融引き締めの問題でありますけれども、これはいろいろ最近になって当初の目的が変わってきたかあるいはプラスされたように思いますけれども、私の理解するところではドル不足ということが中心であって、あるいは国際収支の問題が中心であって、これに対する一通りの見通しがつけばいまの金融引き締めというものは方向を転換すべきものであると思うのでございますけれども、金融引き締めの直接的、基本的目的というものは一体何であるか。国際競争力の強化とかあるいは過剰生産の問題とかいっておる問題は、これは別途に考えるべき問題ではないかと思いますが、その点をまず伺いたいと思います。
  96. 田中角榮

    田中国務大臣 昨年の十二月十六日に預金準備率を引き上げましてから約一年間になる金融調整でございますが、この金融調整の当初にあたりまして、なぜ引き締め政策を行なうかということを明らかにいたしております。その第一は、国際収支の長期安定でございます。その第二は、物価の安定であります。その第三は、国内の経済成長を安定的に確保したい、こういう三点でございます。そういう意味では一年間の調整を通じまして、まず第一の国際収支の問題につきましては、七、八月に貿易収支及び経常収支の均衡をはじめとして、大体十二月までにはおおむね国際収支は安定的方向に向かいつつあるということでございます。
  97. 竹本孫一

    竹本委員 いま大臣のお話にありましたように、国際収支につきまして大体一通りの見通しがついた、しかも今後の問題につきましても悲観する人も、悲観的な意見もありますけれども、大体のところにおいては一通りの見通しがついておるのじゃないか。したがいまして中小企業の破産、倒産の多い今日の段階においては、金融引き締め政策を転換すべきであると私は思うのでございますけれども、大臣のお考えではなお引き締めを続けなければならぬ理由として、特に国際収支の面において、もっと具体的に申しますならば、一月から三月の期間について特に非常な心配とか不安な条件をお考えになっておるのでありますか。どうですか。
  98. 田中角榮

    田中国務大臣 国際収支は大体十二月までを考えますと非常に好調でございます。大体当初六十二億ドルで貿易が均衡するといっておりましたが、六十八億ドルくらいを見通せるわけでございまして、十二月までは貿易収支も経常収支も非常に好転をしております。一−三月は輸入期でございますすので、この一−三月を見たいという気持ちもございます。  これはなぜかといいますと、イギリスの公定歩合の引き上げ、アメリカ、カナダの引き上げ等に対して一つの考えがございますのと、輸入水準が高いという問題がございますので、一−三月をもう一段見ることがいいのではないかというように考えております。しかし結果的に見まして三月末の総合収支じりを想定いたしますと、大体一億五千万ドルの赤字と予定をいたしておりましたが、おおむね総合収支でとんとんとなる、バランスをとるというような状態ではないかと想定されます。
  99. 竹本孫一

    竹本委員 いま大臣の御答弁にありましたように、一−三期輸入シーズンにつきましてもある程度楽観的とまではいかないにしても見通しはついた、こういう情勢になりますと、国内経済の諸情勢も考えてやはりこの際引き締め政策を転換すべきである、それをはっきり打ち出すべきであると思うのでございます。その意味で預金準備率の引き下げだとかいろいろいわれておりますけれども、次に私は方向を転換すべきであるという立場に立ちまして、転換する今度は具体的な方法についてお尋ねをいたしたいと思うのでございます。  この前、金融引き締めのときには預金準備率の引き上げ、先ほどお話のありましたように、昨年の引き上げを十二月にやりました。それから窓口規制に入りまして、それから公定歩合を引き上げたのが三月の十何日、こういうことでございます。大体今度はその順序を逆にして預金準備率の引き下げから金融をゆるめるという方向に入っていかれるのであるか、あるいはこの前のときも私自身の意見といたしましては公定歩合のほうに先に手をつけて、経済界全体の空気を転換することのほうがより効果的ではないか、かように私は考えております。そういう意味で引き締めの場合にも公定歩合のほうを先にすべしという意味はございました。今度は緩和する場合におきましても、預金準備率よりも先に公定歩合のほうに手をつけてこれを一厘、中には二厘の引き下げ論を言う人もおりますけれども、私は一厘程度の引き下げをやるべきではないかと思います。大臣金融緩和についての今後の段取りについて預金準備率から手をつけていかれるのか、あるいは公定歩合を先にやられるつもりなのか、ゆるめるとしてもその方向はどういう形で転回していかれるのか、お伺いしたいと思います。
  100. 田中角榮

    田中国務大臣 その前に一つ申し上げますと、確かに一——三月を想定をしましても国際収支の収支じりにおいては当初の考えよりも一億五千万ドル程度よくなるという見通しでございますが、しかし輸入は高原横ばいでございますし、もう一つ原材料在庫率が非常に低い。また特に第三点としては国内企業の中に非常に不況感もあり、倒産もあると同時に成長率が非常に高いという面が一つございます。これは当初七%、名目九・七%と考えておりましたが、現在の指数では大体年間を通ずると実質一〇%をこえるという見方もございます。そういう指数でございますので、ここで引き締めの基調を緩和に転じますと、どうもまだ過熱をするおそれなしとしないという考え方もございますので、先ほども申し上げましたように一——三月を考えまして金融の引き締め基調は転換をしないが、しかしその過程においてきめこまかく配慮をしてまいりたい。また特に十二月、年末の資金対策等につきましては十分な配慮をしてまいりたい、こういう基本的な考え方を持っております。特に金融調節機能である準備率の引き上げ、引き下げ及び公定歩合操作等、これは日銀政策委員会の議を経て日銀で決定する事項でございますので、私が現在ここで申し上げられる事項ではございません。しかし金融政策及びいろんな問題に対して政府及び日銀間にも十分意思の疎通をはかっておりますので、実情に即応いたしまして遺憾なき施策をとってまいりたいと考えておるのであります。
  101. 竹本孫一

    竹本委員 時間もありませので、結論ばかりで残念でございますけれども、成長率が高いという問題は、この上金融引き締めという手段だけでコントロールすべき問題ではなくて、日本の産業構造内部の構造的矛盾に手をつけるという基本的な手を打たなければ問題は解決しないのであって、まあ一つ覚えに金融であらゆるものをみな目標をねらっていこうということ自体が非常に無理があって、そのためにまた中小企業の倒産等の矛盾も出ておりますので、やはりこの辺で金融政策は——いまの大臣の御答弁ではきめこまかくというこうことだけで、方向を転換するというところまで言われないのでございますれども、私は逆にこれは年末を、この辺で転換するということをはっきり述べなければ、通産大臣も閣議か何かでそういう意見を述べられたようでございますけれども、いまや事業体の中を見ると、もううっかり商売はできない、売りたくても売れない、手形はもう信用ができない。企業者相互間、あるいは金融機関と企業者の間の信頼感というものが全面的に崩壊しつつある。したがって、これを打開するのでなければ、経済全体のスムーズな運営ができなくなったということを通産大臣も言われているように新聞で見たのでありますけれども、私は地方の業界の実情を見ますと全くそのとおりだ思うのです。そういう意味で年内に少なくとも預金準備率を下げるなら下げる、また来年早々には公定歩合を一厘下げる、あるいは少なくともそういう具体的なものでなくても、いま業界で言っていることは、三月危機が叫ばれておる、六月になればもっと悪いんじゃないか、これではいよいよ事業の計画はできない、こういうような非常な恐怖感に襲われていると思う。そういう意味でその空気を転換させるということが第一で、そのためには預金準備率なり公定歩合という基本的なものの手を打たなければならない。さらにいまお話のありました成長率の問題とか過剰生産の問題というものは別の手を打つべきであると思いますが大臣のお考えを承りたいと思います。
  102. 田中角榮

    田中国務大臣 私も必ずしも金融調節機能だけでこれらのすべての問題を解決できるものではないと感じておりますし、同時にまた、そうあるべきではないという考え方を持っております。また認識といたしましては、十二月だけの問題ではなく、一——三月の問題、また四——六の問題、こういうことに対して実情を十分把握して遺憾なき措置をとるべきであるということも十分承知をいたしております。ただ先ほどから申し上げておりますとおり、この金融調整の手段は、これは私が申し上げる事項ではなく、日銀の事項でございますので、これはひとつ御了解いただきたい。特に私が先ほどから申し上げておりますとおり、日銀との間にも十分に意思の疎通をはかりながら事態に対処して遺憾なき処置をとれるようになっておりますと、こう申し上げておるのでございますから、そこはひとつ御専門なあなたでございますから、お考えいただいて御了解賜わりたいと思います。
  103. 竹本孫一

    竹本委員 時間がありませんから結論的に伺いますが、大臣のお考えでは、日本金融をゆるめるという方向にはいつごろからどういう形で展開するようなお考えであるか。これはもう一番みなが心配しておると思いますので、やや具体的に、年が越せる——業界としても来年はどうなるかということに対して不安感ばかりであります。これに対してもう少しやはりはっきりした見通しを与える親切でなければならぬと思いますが、御答弁を願います。
  104. 田中角榮

    田中国務大臣 大きな問題から申し上げますと、イギリスが公定歩合を引き上げ、アメリカが追随をいたしましたけれども、私は必ずしもこの問題と日本金融政策と同一に論じなくてもいいという基本的な考えを持っております。それはもうすでに今年の四月一日からの八条国移行に対処しまして予防的措置も兼ねながら一年前に金融調整に入っておるのでございますし、また生産が高いとはいっておりますが、構造的な問題もまた十分ございます。金融調整だけで片づく問題ではないというふうにも認識をいたしておりますので、日本といたしましては国際情勢に目をはせながら、その実態の把握にもつとめながらも適切な金融施策を行なってまいるという自信でございますから、ひとつそういうことで御理解いただきたいと思います。
  105. 竹本孫一

    竹本委員 これで最後にいたします。最後に、公社債市場の育成の問題と関連しまして、これはまあ政府の公社債政策の問題もあらためていろいろ論議を重ねたいと思いますが、いずれにしましても公社債市場育成ということが今日非常に大きな課題である。しかもこの際公定歩合を下げるというようなことは最もいい具体的なチャンスであると思いますけれども、このチャンスをただ、きめこまかくというようなことで逃がしてしまえば公社債市場育成ということはまたこれも口頭禅に終わってしまいはせぬかと心配をいたすのであります。その点について、公社債市場育成と公定歩合の引き下げの問題について大臣のお考えを承って最後の質問にいたしたいと思います。
  106. 田中角榮

    田中国務大臣 公社債市場の育成が非常に急を要請されておるということはもう事実でございまして、政府もそれがための施策を急いでおるわけでございます。公社債市場の育成、またオープン・マーケットを確立するための施策に対しては日銀と私たちの考え方に対しても差異はございません。チャンスだということを仰せられましたが、チャンスであるならば、日銀も専門家でございますからそういうことに対しては十分理解をしておると思います。
  107. 竹本孫一

    竹本委員 それでは大臣に対する質問を終わりまして、最後に資料をひとつ要求しておきたいと思います。それは、私はやはり低金利政策の立場でございますので、特にお願いをしておきたいんですけれども、各重要な会社の金融費ですね、その金融費の率をおもな会社十社なり十五社なり、適当なところでけっこうですから、この関係における金融費をひとつ出してもらいたい。さらにそれの国際的比較をひとつ示してもらいたい。たとえば八幡製鉄の場合なんかには、これは私のまあ想像、目見当でございますが、二五%くらいに当たっておると思う。それとアメリカのUSスチールとの関係はどうなっておるか。日立の場合でも日産の場合でも全く金融におけるコストの面が非常に達いますので、その点が一つ。それと国際的比較。もう一つは具体的な商品につきまして、鉄鋼、石炭、船、電力、それぞれのものにつきましてどのくらい金融のコストが違っておるか。これで国際競争力強化ということをいろいろ言われますけれども、私ば、労働コストのことはコスト・アップ、コスト・インフレということで言われますけれども、資本費のコストについては割合に見のがされておりますので具体的な資料をお願いして質問を終わりたいと思います。
  108. 吉田重延

    吉田委員長 ただいま竹本委員の資料請求につきましては、相当多種にわたっておるようでございますから、後刻理事会で話し合いまして、そうしてできるものはぜひ提出していただくということにいたします。    ————◇—————
  109. 吉田重延

    吉田委員長 再び交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。   —————————————
  110. 吉田重延

    吉田委員長 これより討論に入ります。通告がありますので、これを許します。武藤山治君。
  111. 武藤山治

    武藤委員 私は日本社会党を代表して、ただいま上程された交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論をいたすものであります。  その反対の理由を箇単に申し上げてみたいと思います。  第一は、先ほど総理大臣がここで釈明をいたしましたとおり、本委員会が十分審議する期間があったにもかかわらず、自民党の与党内の党内情勢から、今日まで委員会を開くことができず、十分この重要なる法案を審議することができずに経過をしたということであります。したがって、われわれはこの問題について十分議論をし、地方自治体の今日の窮状を明らかにして、これらに対する手当てを考慮しなければいけないという時間的余裕が持てなく、本日これを直ちに採決に付さねばならないということに対しては、非常な不満を持っております。こういう点が第一点であります。  第二は、財政窮乏のおりから、やむを得ず預金部資金を流用して百五十億円の借り入れで経常費である公務員の給与を手当てするというこの処置のしかた、一体財政が窮乏した責任はだれにあるのか究明するならば、財政運営をつかさどる政府、大蔵当局にその責任はあるのであるのであります。かように財源を窮乏せしめ、地方自治体の経常費の補てんすら、従来は戦後今日まで続けたにもかかわらず、今回からこのノーマルな慣行を破って国が財源補てんをしないというやり方に対しては、全く納得できません。政府の責任で窮乏したのでありますから、当然政府の責任においてこれらの地方自治団体に対しても手当てをすべきである。これが第二の反対の理由であります。  第三は、三十九年度に限るとしてありますが、一年間に限ってこういう処置をするというならば、これを五年間で返済させようというこそくな手段はまことに財政運営上けしからぬ処置である。しかも重ね重ね申し上げるように、これは地方自治団体の経常費に当たるものであります。これを五年間交付税の先食いをするという措置は、まことに納得がいきません。私どもが先ほど質問を通じて明らかになったことは、交付税が余ることがある、あるいはよけいに配賦されることがある、だから一年くらいはこういう措置をしても非合理的でないという主計局の答弁でありましたが、私はこの答弁はいただけないのであります。地方自治団体にとって、戦後政府が公務員の給与財源として手当てをしてきたのが慣行でありますから、この慣行を打ち破るということは大きな変化であります。地方自治団体の計画を狂わせ、地方自治団体が今後ますます財源措置に困るという情勢を生み出した責任は重いのであります。こういう点からも、政府財政運営が誤ったということを指摘しなければなりません。  第四の点は、明年度から、交付税率を三〇%に引き上げて約二百七十億円の財源が出るわけでありますから、地方はこれによって給与の財源に充てることができる、したがって、われわれは交付税率を三〇%に明年度から引き上げて、これらのこそくな手段を解消すべきであると考え、政府に要求をいたしても、大蔵大臣は、ただいまこれを四十年度から引き上げる気持ちはないという答弁をいたしました。いまや各府県、市町村自治団体は、政府をはじめ国会議員各位に猛烈な三〇%への引き上げの要求をいたしております。今日の地方自治団体の窮状を見るときに、むべなるかなと私どもは察するのであります。  かかる観点から考えても、政府財政当局、特に大蔵大臣の血も涙もない地方自治団体に対する今回の措置に対しては、日本社会党としては断じて許すことはできません。  以上、簡単でありますが、本案に対する反対の理由を申し上げて私の討論を終わります。
  112. 吉田重延

    吉田委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決に入ります。  本案を原案のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  113. 吉田重延

    吉田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  115. 吉田重延

    吉田委員長 次会は来たる十五日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時四分散会