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蕪木参考人 ただいままで
中野長官並びに
中小企業金融公庫総裁、商工中金
理事長の方々から、
企業倒産につきまして概略の
お話もございましたのですが、私
どもは全国六十一カ所の支店と一千三百人の従業員をもちまして信用
調査という部門から各
企業の個々の実態を調べまして、その中に発生しているもろもろの
倒産、そういったものを私
どもの立場から見まして、いまどのような形で
推移しておるのかということを簡単に御
説明を申し上げたいと思います。
確かに
企業倒産はことしの四月が一応山場だといわれまして、それから大体
小康状態といいますか、一時
倒産は減ったのでございまいます。ところがこの八月から九月そうして十月、十一月と大幅に
倒産件数並びに
負債総額を更新しておるわけでございますが、これらの
問題を一口に申すならば、いわゆる
金融引き締めが現在最高調に達しておるということはすでに皆さま御
承知のとおりだと思いますが、それにいわゆる構造的要因といいますか、
中小企業の構造欠陥がプラスされておる。ですからどちらが先かということになると、確かにその
設備投資の最中において
金融引き締めに遭遇したとするならば、これは
設備投資が中途はんぱになりますから、当然
企業の
資金繰りが
影響しまして
資金の固定化を招き、
運転資金が不足を来たすということが
倒産に結びつくかもしれませんけれ
ども、ただ
先ほども申しましたように現在
金融が非常に詰まっております。しかしながらこれを緩和したからそれではすぐ
倒産が減ってくるかということにはならないのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。
昨年の十一月に預金準備率の引き上げをやっておりますし、本年の初頭におきましては大体において大
企業が
中心になりまして傘下
会社あるいは系列
会社に対する支援打ち切りという形で支援を打ち切ったわけでございます。そこで支援を打ち切った
企業に対しては、投融資現額がなくなってくるわけでありますから結局は
倒産だ。しかもそれが大商社の支援打ち切りあるいは大
企業が支援を打ち切ったということは、やはり傘下
会社あるいは系列
会社の内容の悪い不良な
会社に対しまして本年は相当強力な
金融引き締めが来るのではないかという予想のもとに、
金融引き締めがもし来るとするならば、業績の向上、拡大
政策もさることながら、この際不良債権あるいは赤字
企業の
問題を検討しなければならぬのではないか。そうして不良債権はできるだけ発生しない、収益性をその面で守ろうじゃないかということが、たとえば名前を申しますと、木下座商が大成物産の支援を打ち切ったということがあります。それで大成物産が
中心になりまして六社あるいは七社前後の
会社がいわゆる
連鎖倒産を発生いたしております。そういうことは一例でございますが、そのほかにも富士電機の東発への打ち切りがございます。もちろんその東京発動機は支援を打ち切られたといいましても、完全にオートバイ生産でシェアで敗北しておりますから、本田とかヤマハとかいった
会社等とも対抗できない。そこで赤字
経営の連続でございましたので、これもやはり
経営の利益管理の面から見ますれば、当然そこで何らかの手を打たなければならなかったということが、大体四月前後におきまして非常に
倒産がふえてきた
一つの大きな
問題だろうと思います。
それから四、五、六、七月ごろに入りまして大体
小康状態になったのじゃないか、あるいは
企業倒産も一巡したのじゃないかということが言われておりましたけれ
ども、その間においても、いま言った小さな
資本金、大体百万から五百万に至る
企業が
倒産の大体五一%前後を占めておりますから、そういった階層においてやはり
倒産が発生しておった。ところが従来のたとえば二十九年あるいは三十二年、そして三十六年の
金融引き締め下におきましては、大体
金融引き締めは
公定歩合の引き上げを
中心として行なわれておりますが、その段階においても、三カ月あるいは四カ月前後には一応
企業倒産の
件数もふえたのでございますけれ
ども、今回の場合非常に引き締め
政策が長引いたということは、大
企業が大体昨年の十二月ごろから−預金準備率の引き上げをやりまして、
公定歩合を引き上げるまでの期間が約四カ月近くございますが、その前からもありますけれ
ども、手元流動性を非常に高めておった、いわゆる事前借りだめが相当行なわれておったというふうに見られまして、やはり
金融引き締めの
影響というものはそう急に発生しなかったわけでございます。ところがこの九月ごろになりまして、それが本格的に引き締めの段階に入ってきたということで、
企業倒産がここに続発しておるわけでございますが、そういった中にも特に
企業倒産を内容的に見ますと、融通手形という新しい
問題がここに発生しております。これも北
九州の関連
倒産は大体において
倒産会社五十五社、融通手形の発行高約二十五億前後で、
負債総額六十五億といわれておりますが、このように大きな関連
倒産が発生しておるということで、いわゆる
企業倒産も東京はじめ大阪、名古屋、北海道、東北という形において全国的にいま発生しております。
それでこの
倒産の
原因でございますけれ
ども、外部的
原因と内部的な
問題がございます。
先ほどの話の中に赤字
経営というのがございますが、赤字
経営はやはり絶対的に
影響がございます。それから
在庫状態の
悪化、あるいは
設備投資過大、放漫
経営、あるいは
売り掛け金の
回収難、過小資本、そのほかに支援打ち切りあるいは関連
倒産というものが発生しますけれ
ども、また最近では労働者不足からくるところのいわゆる遊休施設、遊休機械、あるいはせっかく
設備投資はしたけれ
ども工場が運転しない、機械が運転しない、あるいはせっかく機械を入れたけれ
ども人手が足りないということで、採算性が赤字になるという
企業も発生しまして、これらは労務
倒産あるいは人手不足の
倒産ということばでもあらわされておりますが、こういったものも発生しておるわけでございます。それで業績不振は一応いろいろの
会社におきまして違いますけれ
ども、赤字
経営が何年も続く、これは大
企業においても同じことが言えるのでございますが、いま大
企業の場合は救済融資あるいはつなぎ融資とか、滞貨の場合には滞貨融資という形のものを考えられますが、
中小企業の場合、苦しい場合にはそういった救済
資金というものがほとんど受け入れられないというところに
企業倒産が非常に発生する理由もあるのではないか。それから
在庫状態の
悪化でございますが、これは生産過剰あるいは最近のように膨大なる
設備投資をやりますと当然そこには生産が上がってまいります。ですから販売
会社を通じて個々に売るわけでございますけれ
ども、そういった場合において調整部門が
資金的に非常に弱いということになりますと、ここにやはり在庫
問題によって
企業倒産という形で、最近は
中小企業の場合には在庫過大による
倒産というものもばかにできない数字がございます。それから
設備投資過大は今回の
金融引き締めの大きな
原因の
一つになっておりまして、生産が
先ほど申しましたように、
設備投資のさなかに
金融引き締めに遭遇したという例もございますし、それから
設備投資をしたためにむしろ
企業の採算性を低下させたという形の
企業もたくさん発生しておりまして、今回の
倒産の現象では、過去の
倒産件数にはない新しい数字になっております。それから放漫
経営でございますけれ
ども、放漫
経営は非常に放漫な
経営、ことしの三月ごろまでには放漫
経営の
企業が
倒産した例が非常に多かったのでございますが、そういった
企業の放漫
経営というものは、だれが考えてもずさんな
経営だ、当然これは
倒産するのではないかというような
企業もございます。それから
資本金が非常に少ないために、
運転資金あるいは外部
負債が過大であるために
倒産する。たとえば日本の場合には外部
負債が非常に高いということ、借金
経営をやっておるということが
企業倒産をした場合に
負債総額が非常に多くなっておるいうこと、アメリカにおいても一九六三年には一万四千社近くの
倒産がございますけれ
ども、それらと対比いたしまして、非常に
金額が高いということは、外部
負債が多いということになってくるのではないかと思います。それから
売り掛け金の
回収難でございますが、これは現在発生している
倒産件数の中の顕著なものでございます。ということは、
企業間信用が非常に伸びておるということが、
手形サイトあるいは
売り掛け金の回収が非常に長くなっておるということになるのではないかと思います。そういうわけで、この
倒産はいろいろな
原因もございますけれ
ども、大体このように分類して、
企業倒産を数字的にあげておるわけでございます。
それで今後この
企業倒産がどんな形になるだろうかということが
問題になると思いますけれ
ども、たとえばいま申しましたように、今回
金融緩和、三
公庫を
中心として信用金庫あるいは
相互銀行、
都市銀行から年末
資金手当てということも考えられておりますけれ
ども、この段階において、
金融を緩和することによってたとえ
倒産はある程度防止できるにいたしましても、今後発生するところのいわゆる
設備投資の行き過ぎからくるところの過当競争、あるいは採算性の低下、それから雇用者、労働者不足の
問題からくるところの損益分岐点の上昇、そういった
問題もたくさんございますので、
企業倒産はこの構造変化あるいは構造要因とからみ合っております
関係上、容易にその水準が減らないのではないかというふうにも考えられるわけでございます。ですから、
金融の
対策はもちろんでございますけれ
ども、
中小企業は全国で三百二十何万ございますが、そういった中における階層的分化あるいは
中小企業の共同化とかいろいろな
問題が出てくるし、あるいは廃業、転業を余儀なくされるクラスも当然出てくるのではないか。そして
企業倒産だけを取り上げてみましても、容易にその特効薬がいま発見されないのではないか。たとえば
金融の緩和あるいは総合的な行政指導の
問題もございますけれ
ども、ただ、たくさん全国に散らばっておりますところの
中小企業の市場というものが大
企業との競争下においてどの程度耐えられるかということもございますから、なかなかむずかしい
問題だろうと思います。
現在発生している
中小企業の
倒産についてはこの程度で……。
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