運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-12-04 第47回国会 衆議院 商工委員会 第1号 公式Web版

share
  1. 会議録情報

    国会召集日昭和三十九年十一月九日)(月曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君  理事 中川 俊思君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 板川 正吾君 理事 久保田 豊君    理事 中村 重光君       内田 常雄君    浦野 幸男君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       小沢 辰男君    海部 俊樹君       菅野和太郎君    黒金 泰美君      小宮山重四郎君    佐々木秀世君       田中 榮一君    田中 龍夫君       田中 正巳君    田中 六助君       竹下  登君    中村 幸八君       長谷川四郎君    三原 朝雄君       南  好雄君    村上  勇君       大村 邦夫君    加賀田 進君       桜井 茂尚君    沢田 政治君       島口重次郎君    楯 兼次郎君       藤田 高敏君    森  義視君      米内山義一郎君    麻生 良方君       伊藤卯四郎君    加藤  進君 ――――――――――――――――――――― 昭和三十九年十二月四日(金曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君  理事 中川 俊思君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 板川 正吾君       内田 常雄君    浦野 幸男君       小笠 公韶君    海部 俊樹君       田中 六助君    中村 幸八君       長谷川四郎君    三原 朝雄君       南  好雄君    加賀田 進君       桜井 茂尚君    沢田 政治君       島口重次郎君    藤田 高敏君       森  義視君    麻生 良方君       加藤  進君  出席政府委員         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         通商産業政務次         官       村上 春藏君         通商産業事務官         (大臣官房長) 熊谷 典文君         中小企業庁長官 中野 正一君  委員外出席者         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    徳宣 一郎君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         二部油脂課長) 宮地 和男君         中小企業金融公         庫総裁     舟山 正吉君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事長)  北野 重雄君         参  考  人         (株式会社東京         商工興信所専務         取締役)    蕪木 重二君         専  門  員 渡邊 一俊君     ――――――――――――― 十一月九日  委員竹下登辞任につき、その補欠として齋藤  邦吉君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員齋藤邦吉辞任につき、その補欠として菊  池義郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月九日  消費者基本法案春日一幸君外一名提出、第四  十六回国会衆法第一号)  官公需中小企業者に対する発注確保に関す  る法律案松平忠久君外二十八名提出、第四十  六回国会衆法第二五号)  中小企業組織法案松平忠久君外二十八名提出、  第四十六回国会衆法第二六号)  鉱業法の一部を改正する法律案内閣提出、第  四十六回国会閣法第五三号) 同月二十八日  中小企業者産業分野確保に関する法律案  (麻生良方君外一名提出衆法第一号)  官公需中小企業者に対する発注確保に関す  る法律案麻生良方君外一名提出衆法第二  号)  百貨店法の一部を改正する法律案伊藤卯四郎  君外一名提出衆法第三号)  スーパーマーケット法案麻生良方君外一名提  出、衆法第四号)  中小企業者に対する資金確保等に関する特別  措置法案麻生良方君外一名提出衆法第五  号) 同月二十六日  新産業都市建設事業促進に関する請願外一件  (湊徹郎紹介)(第四三号)  同(田中彰治紹介)(第四四号)  同(齋藤邦吉紹介)(第一二〇号)  同(湊徹郎紹介)(第一二一号)  国立東北工業開発試験所早期設置に関する  請願森田重次郎君外三名紹介)(第六〇号)  九頭龍ダム建設に伴う移転補償に関する請願(  田口誠治紹介)(第九二号)  電気工事業法制定に関する請願齋藤邦吉君紹  介)(第一一九号)  公衆浴場業に対する特別融資並びに電灯、電力  の料金軽減に関する請願増田甲子七君紹介)  (第一二八号)  新産業都市建設に伴う国の財政措置に関する  請願井出一太郎紹介)(第二三七号)  同(小川平二紹介)(第二三八号)  同(吉川久衛紹介)(第二三九号)  同(倉石忠雄紹介)(第二四〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第二四一号)  同(下平正一紹介)(第二四二号)  同(中澤茂一紹介)(第二四三号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第二四四号)  同(増田甲子七君紹介)(第二四五号)  同(松平忠久紹介)(第二四六号)  中小企業近代化資金助成法国庫負担率引き上  げに関する請願井出一太郎紹介)(第二四  七号)  同(小川平二紹介)(第二四八号)  同(吉川久衛紹介)(第二四九号)  同(倉石忠雄紹介)(第二五〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第二五一号)  同(下平正一紹介)(第二五二号)  同(中澤茂一紹介)(第二五三号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第二五四号)  同(増田甲子七君紹介)(第二五五号)  同(松平忠久紹介)(第二五六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月二十六日  電源開発株式会社による長浜沖の埋立に伴う漁  業補償金の配分に関する陳情書  (第一九三号)  水質汚濁防止に関する陳情書  (第一九七号)  離島振興に関する陳情書  (第一九八号)  九州地方開発促進に関する陳情書  (第一九九号)  国立東北工業開発試験所設置に関する陳情書  (第二〇〇号)  同  (第二〇一号)  中小企業対策強化に関する陳情書  (第二〇二号)  建売工場団地事業実施に関する陳情書  (第二〇三号)  中小企業設備近代化資金貸付業務の一部代行処  理に関する陳情書  (第  二〇四号)  広域公害防止対策に関する陳情書  (第二〇五号)  消費者物価及び公共料金値上げ抑制に関する  陳情書  (第二〇六号)  近畿地区万国博覧会誘致に関する陳情書  (第二〇七号)  同  (第二〇八号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  中小企業に関する件(企業倒産に関する問題  等)      ――――◇―――――
  2. 二階堂委員長(二階堂進)

    二階堂委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求の件についておはかりいたします。  今国会における委員会の活動を円滑ならしめるため、従前どおり議長国政調査承認要求をいたしたいと存じます。  調査する事項といたしましては  一、通商産業基本施策に関する事項  二、経済総合計画に関する事項  三、公益事業に関する事項  四、鉱工業に関する事項  五、商業に関する事項  六、通商に関する事項  七、中小企業に関する事項  八、特許に関する事項  九、私的独占の禁止及び公正取引に関する事項  十、鉱業一般公益との調整等に関する事項以上十項目とし、調査の目的といたしましては  一、日本経済総合的基本施策樹立並びに総合調整のため  二、通商産業行政の実情を調査し、その合理化並びに振興に関する対策樹立のためとして、議長承認要求をいたすことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 二階堂委員長(二階堂進)

    二階堂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  速記をとめてください。   〔速記中止
  4. 二階堂委員長(二階堂進)

    二階堂委員長 速記を始めてください。      ————◇—————
  5. 二階堂委員長(二階堂進)

    二階堂委員長 中小企業に関する件について調査を進めます。  まず、おはかりいたします。  企業倒産に関する問題等について、株式会社東京商工興信所専務取締役蕪木重二君並びに商工組合中央金庫理事長北野重雄君の両君を参考人として御出席を願うことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 二階堂委員長(二階堂進)

    二階堂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  7. 二階堂委員長(二階堂進)

    二階堂委員長 それでは、まず中小企業庁長官より本問題について説明を聴取いたします。中野中小企業庁長官。   〔委員長退席小川(平)委員長代理着席
  8. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 それでは最初に、最近におきまする中小企業倒産の現況、並びにこれについて政府としてとっておりまする対策について申し上げます。  御承知のように昨年の末から始まりました金融引き締め、これがだんだん浸透してまいりまして、中小企業をめぐりまする金融情勢というものは、ごく最近に非常にきびしさを加えてまいりました。資金繰り急迫によりまする倒産件数というものが、ことしの初めから増勢をたどりましたが、御承知のように四月が一つピークでございまして、四月に三百三十二件、負債総額、これはきょうお見えになっておりまする東京商工興信所の調べによるものでありますが、三百六十四億ということで、御承知のように三月に日銀公定歩合が引き上げられまして、非常に情勢がきびしくなってきたわけでありまして、ちょうどそれと軌を一にしまして四月が一つピークでございます。その後五、六、七とやや小康状態を保ったわけでありますが、また八月以降再び倒産件数増勢に転じまして、戦後におきまする倒産件数記録を更新をしたのでございます。そうして九月、十月、十一月に至りまして、これも御承知と思いますが、件数におきまして五百十八件、負債総額五百九十億、六百億に達する勢いを示して高水準を示しております。特に最近は負債金額小口のものが増加をしておりまするが、同時に大口のもの、中堅クラス企業倒産が相当出ておることが一つの大きい特色であります。そういう関係でいわゆる連鎖倒産——中小企業中堅企業、どっちかというと大企業に近いものが倒れたために連鎖倒産をするということが増加をする、こういうのが一つの大きな特色でありまして、非常にわれわれとして心配をし、事態推移を見ておるわけであります。たとえばことしの十一月の件数を見ますと、全体が五百九十億でございますが、そのうちで第二市場上場会社が二件倒産しております。それから負債総額十億以上の大口倒産が続出しておりまして、柴田ゴム——神戸でございますが、これらは資本金七千万円でありますが、何と六十億の負債を負って倒産をする。そのほか、これは特殊な事情でございますが、九州大正鉱業が閉山をするというようなことで、十億円以上の倒産総額が二百億以上に達しております。五百九十億円のうちで十億円以上の大口倒産というものが二百億以上になっております。これが一つ特色でございまして、その関係中小企業相当影響を受けつつあります。  企業倒産原因につきましては、これはあとでまた興信所専門家の方からお話があると思いますが、業種業態によりましていろいろまちまちでありまして、非常にいろいろな要因が重なり合っておりまして非常に複雑でございます。設備投資の行き過ぎによります資金繰り悪化、また経営の不手ぎわによります行き詰まりと、いろいろな原因があるのでありますが、最近におきましては、特に金融引き締め浸透に伴いまして売り掛け金回収難が加わってくる、あるいは売れ行き不振によりまして在庫状態悪化する、こういうふうな事態を契機といたしまして抵抗力の弱い中小企業倒産をする。これは中小企業だけには限りませんが、倒産する場合が多くなっております。  この中小企業倒産防止対策でありますが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、当面金融面対策によりまして中小企業に不当にしわ寄せが行なわれ、健全な経営を行なっております中小企業倒産事態に追い込まれないようにわれわれとしては努力しておるつもりでございます。しかし同時に、最近よく世間でも言われておりまするけれども金融問題だけを解決しても、中小企業のこの困難な状態というものは解決できないわけでありまして、これはどうしても長期的にいわゆる中小企業体質改善近代化政策を大きく進めていかなければならぬと私は考えております。同時に最近の事態を見ますと、単に中小企業のところだけにいろいろな対策をやりましても問題は片づきません。これは産業全体、日本経済全体の体質改善、特に不況事態に対処する全体的な対策というものを講ずる必要があるというふうに考えて、通産省でも、大企業中小企業を含めた業種別不況対策というものにいま取り組んでおるわけであります。  ただ、ここで当面の金融対策としてどういうことを考えておるかということについてお話しを申し上げますと、ことしの初めから金融引き締めが行なわれましたので、これに対応して中小企業に不当にしわ寄せをやらないようにというきめのこまかい配慮をする必要があるというので、ことしの一——三月、一月から三月の間に政府関係金融機関に対しまして、例年にないことでございますが、百二十億円の資金追加貸し出し規模追加を行なっております。それから買いオペを百億、一月——三月に特別買いオペ、いわゆる財政資金によりまする中小企業向け特別買いオペでございますが、これを百億実施いたしました。三月に公定歩合の引き上げがございましたので、そのショックを避けるために四——六月にも政府関係機関に前年に比べて三〇%アップの貸し出し規模を決定いたしました。これは年度当初でございましたが、特別にこういう配慮をいたしたのでございます。また四月、六月各月におのおの二百億ずつの財政資金によりまする特別買いオペ実施しております。それから七——九月になりましてからも、ようやく今度はまた金融引き締め影響が相当下部にまで浸透してまいるという情勢に対処いたしまして、政府関係機関に対しまして百億円の金を繰り上げて貸し出し規模追加するということを実行しております。  それから十——十二月の問題でございますが、これにつきましては十月の二十三日に閣議におきまして私のほうの大臣から発言してもらいまして、いろいろ対策をやっておるわけでありますが、新しい内閣になりまして十一月の二十日に経済閣僚懇談会に、当時の情勢悪化ということも考慮いたしまして、私のほうの大臣から情勢報告をされました。それを簡単に申し上げますと、引き締め効果浸透に伴う不渡り倒産等摩擦現象を回避するため、中小企業の年末資金需要に備え次の対策を講ずるということで、第一が、政府関係の三金融機関貸し出し計画を八百億追加する。国民金融公庫が二百四十億、中小企業金融公庫が二百四十億、商工組合中央金庫が三百二十億、合計八百億であります。また中小企業金融の疎通をはかるため、資金運用部資金によりまする市中金融機関保有金融債を五百億買い上げる。これがいわゆる特別買いオペでございます。それから次に、何と申しましてもやはり市中金融機関中小企業の年末金融協力してくれるということが資金の量からいって最も大事でございますので、民間の金融機関に対しまして中小企業の年末金融円滑化について協力を求めた結果、次のとおり貸し出し純増目標をきめまして、その達成に努力してもらうことになっております。全国銀行が三千億、相互銀行が千六百五十億、信用金庫が二千百億、信用組合が四百億、合計七千百五十億でございます。  それから次に大事なことは、やはり何といいましても地方公共団体が年末金融に相当従来から努力をして、制度金融としてやっておられますので、地方公共団体に対しましても、地元の金融機関に対する中小企業向け資金の預託を増額するなど、中小企業向け年末金融対策を充実するように通産大臣名でお願いをしてございます。  また、最近の金融市場の動向にかんがみ、日銀としてどういう手を打ったかといいますと、これも御承知のとおり買いオペ一般対策として二千二百億実施する。それから都市銀行十行に対する貸し出し限度額、いわゆるクレジットラインでありますが、これを十二月に限って、第三・四半期限度額よりも三〇%引き上げるということをやっております。  以上のような量的な金融対策に加えまして、質的措置といたしまして、健全な中小企業大口倒産影響連鎖倒産におちいることを極力防止するために、通産省大蔵省、それぞれ通達を出しておりますが、大蔵省におきましては、銀行局長通達をもちまして、地方にありまする各財務局長それから金融機関団体の長にあてまして倒産防止具体策の検討を要望し、中小企業倒産防止について遺憾のないように期しております。また通産省におきましては、通産局に対して管内の中小企業金融情勢の常時把握、倒産防止等に関する緊急対策実施の際の関係機関との協力体制の確立につとめるよう再度通達をいたしておりまして、これは金融懇談会等を開きまして、影響の大きい事態が発生したときには常時措置をいたしております。また、金融引き締め浸透に伴いまして、手形サイト長期化下請取引条件悪化が目立ってきておりますので、下請代金支払遅延等防止法運用を一そう強化することといたしまして、通産局に対して取り締まり、指導体制を一そう強化するように通達をいたしました。同時に、親企業団体に対しまして、通産大臣及び公正取引委員会委員長の連名によりまして、支払い条件改善協力するよう要請をいたしております。なお、今後とも金融情勢推移を注視し、適時買いオペ等、必要な措置を講ずることとしたいというのが経済関係閣僚懇談会の決定でございます。  以上が、簡単でございますが、最近の倒産状況と、政府としてとってきた措置でございます。
  9. 小川(平)委員長代理(小川平二)

    小川(平)委員長代理 次に、舟山中小企業金融公庫総裁並びに参考人より、本問題について説明並びに意見を聴取することにいたします。舟山説明員
  10. 舟山説明員(舟山正吉)

    舟山説明員 最近の不渡り倒産状況、特に中小企業中心といたしましての一般的状況は、いま中小企業庁長官からお話がございましたので、それと重複を避けることを旨といたしまして、中小企業金融公庫窓口から見た所見というものを中心として御説明申し上げたいと思います。  中小企業につきましても、金融引き締め政策長期にわたる施行に伴いまして金融が窮迫しておることはあらためて申し上げるまでもないことでございますが、これを私ども窓口から見ました一例を申し上げてみたいと思うのであります。今年度の上半期の借り入れ申し込みは、前年に比べまして大体二割四分くらいのふえになっておりますけれども、その中で、設備資金需要というものは例年に比べて増勢がにぶっておるのでありますが、この設備合理化近代化というような要請がございまして、そちらのほうの資金需要も相かわらず強いのであります。これを設備資金についてみますと、前年同期に比べまして一割くらいの増加でありますけれども、これに比べまして、運転資金需要というものは、前年同期に比べまして約倍になっておるというような状況でございます。これは、とりもなおさず中小企業資金繰りに非常に困りまして、運転資金借り入れに移りたいとしておることを端的にあらわしておると思うのでございます。  そこで、この中小企業倒産事例でございますが、これがまた、先ほども御説明がございましたが、金融引き締めの当初におきましてはいわゆる中堅企業大会社系列下にある企業等倒産した事例が顕著であったわけでありますが、漸次この倒産する会社小口化と申しますか、小さいところに波及してまいる。また、特定の地域以外に全国的にびまんしてきたということが、最近の特色でございます。倒産原因は、当初は経営の不手ぎわと申しますか、あるいは設備を身分不相応に拡張して、その結果債務のかたになるといったような事例があったのでございますけれども、最近の事例といたしましては、連錯倒産といった事例が同じくらいのウェートでふえてきております。もう一つ顕著なのが経営不振ということでありまして、金融問題以外にその企業自体の採算というものが悪くなってきたということによる倒産も出てくるのであります。ただいまのところはそういうことで、経営の不手ぎわ、やり過ぎといったようなことと、それから企業自体の不振ということ、それから連錯倒産といったようなことが大体同じようなウェートを占めるようになってきたのでございます。  そこで、この倒産対策といたしましては、これまた長官より先ほど説明がありましたように、今年の初めから政府方針を体しまして鋭意この対策に努力してきているのでございまして、私どものほうの資金繰りから申しましても、第四・四半期、つまり来年の一——三の資金を、本年度の第一・四半期、第二・四半期、つまり四月から九月までの資金繰りに繰り上げて使おうという措置ども認めていただきまして、それからまた特に重要な段階に入りました第三・四半期、十月から十二月におきましては政府から再度の追加割り当てもございまして、資金ワクを大幅に増加していただきました。その金額を御参考までに申し上げますと、第三・四半期中小公庫貸し付けワクは五百六十億、前年の実績が四百三十六億でありますから、二八%強の増加でございます。この資金をもって私どもといたしましては善処してまいりたいと思うのでございますが、その資金の使い方といたしましては、中小企業からの資金需要運転資金重点が置かれておるという点にかんがみまして、公庫としては代理店の活用ということに重点を置いていく。増加ワクをできるだけ多く代理店貸し付ける。と申しますのは、中小企業資金需要に対しまして直接貸し付けによって救済する道ももちろんあるのでございますが、新しい企業公庫にお申し込みになりましても審査に時間も若干かかるといったようなこともございます。それよりも常時企業の実態を把握しておられます代理店、これがまた一般金融引き締めによりまして手元が非常に苦しくなっておりますので、そういう代理店企業を判断いたしまして、資金の必要な場合には中小公庫代理ワクを多く差し上げる、こういう方針でやる。この方法によりますれば、迅速に需要に応ずることもできるのであります。そういう方法をとっておるのでございます。それから、特に私どものほうといたしましては代理店に、この運転資金貸し出しにつきましては企業倒産、特に連錯倒産ということのないように注意していただきたい、そのかわりワクは差し上げる、こういう御連絡をしておる次第であります。それから、すでに倒産が起こりました場合には、先ほどお話がございましたように、地方通産局の結論もございまして、現に倒産あるいはその寸前に至っております企業を拾っていただきまして、それを救うべく市中金融機関と緊密に連絡いたしまして適宜の措置を講じておる次第でございます。最近はまた政府も、この銀行局長からの通達がございまして、倒産を未然に防ぐという意味で、財務局単位政府機関市中金融機関との金融懇談会という集まりがございますが、これを活用いたしまして、事前の情報交換といったようなことをつとめて、何と申しましても倒産が起こってしまってからは波及する影響も大きいのでございますから、未然に防ぎたいというふうに努力しておるような次第でございます。  まだほかに申し上げることがあるかとも思いますが、なお足らざるところは後ほど補足させていただきます。
  11. 小川(平)委員長代理(小川平二)

    小川(平)委員長代理 次に北野参考人
  12. 北野参考人(北野重雄)

    北野参考人 大体、不渡り倒産状況はいままでお話があったとおりでございますが、商工中金は、御承知のようにいわゆる組合金融でございまして、所属の組合並びに組合員に対する融資をいたしております。ただ中小公庫、国民公庫と異なりますことは、両公庫は主として長期資金をお扱いになっているわけでございますが、私どものほうは長、短ともにやっておりまして、特に短期資金につきましては、相当そのウェートも高いわけでございまして、現在すでに貸し出し総残高三千八百億のうち約六割強が短期資金でございます。したがいまして、手形の割引等もいたしております。それだけに金融引き締めの際には、特に資金需要も多くなってくるわけであります。  倒産状況を私どもの取引先の関係について見ますと、これまた五月以降、先ほどお話があったように四月がちょっとピークでございましたが、五月以降を取り出してみましても、毎月毎月、取引先の倒産件数がふえてきております。ただいままでのところ、数字といたしましては、五月から十月までの取引先の倒産件数は、累計いたしますと百四十一件でございます。十一月はまだ的確な数字はつかんでおりませんが、おそらくこれが記録を更新しておるのではないかと考える次第であります。  その発生いたしました倒産につきまして資本金を見ますと、五百万円以下のものが過半を占めております。また、月商におきましては五百万円から三千万円までのものが過半を占めておるわけでありまして、総じて、小さな規模の倒産がかなり多いわけでございます。その原因等を見ますと、これは東京商工興信所のほうで後ほどお話があろうかと思いますが、なかなか原因を総括的に話すことはむずかしいのでございますが、東京商工興信所原因別に出しておられます項目とは別な見地から私ども検討いたしますと、赤字の発生につながるものがかなり多いわけでありまして、それは受注が減少した、あるいは製品あるいは取り扱い商品の価格が低下した、あるいはたまたまつくった品物が不良のために返品になったといったような、赤字の発生につながるものが約三分の一でございます。それから資金ショートにつながるもの、内容といたしましては、売り上げ代金の回収不能におちいった、あるいは設備投資の過大であるとか、あるいは在庫が過剰であるというようなことからどうにも金繰りがつかなくなって倒産したというものが四割強でございます。それから系列企業の選別が強化される傾向にありまして、親会社からの、あるいは親商社からの支援の打ち切り、あるいはまた単価の切り下げというようなものによるものが一二%、そのほか銀行取引が不円滑であるとか、あるいは放漫経営とも見られるもの、さらに近ごろはいわゆる労務倒産というようなものも出てきておりまして、そういったものをひっくるめまして約一二%、こういうように見られるわけでございます。なお、総じて申しまして金融引き締めの直接影響があらわれておるのはもちろんでございますけれども、その遠因をたずねてまいりますと、企業自体の体質がだんだん弱ってきた、しかもその弱ってきた原因が経済の高度化に伴いましての構造変化に起因するものも少なくないように思うわけでありまして、したがいまして後に申し上げたいのでありますが、将来の対策といたしましては、先ほど中小企業庁長官がお触れになりましたように総合的な対策が必要でございまして、単に金融だけで処置できないものもだんだんふえてくるんではないかという感じがいたしております。これに対しまして商工中金といたしましてどうしておるか。幸い政府配慮によりまして、三十九年度下期金融対策として、かつてない財政資金追加投入もいただきまして、商工中金といたしましては第三・四半期、十月から十二月にかけまして、貸し出し純増規模におきまして五百五十億の貸し出しができることになりまして、すでに十、十一月は経過いたしましたが、十二月だけを取り出しましても三百四十億の貸し出し純増ができることになりました。これは前年の十二月の実績と比較いたしますと四割四分の増になるわけでございます。  具体的な方法といたしましては、こういう際でもございますから、特に倒産影響を最小限度に食いとめるということを一番の主眼にいたしておるのであります。十一月早々全国の支店長を集めまして、特に年末倒産防止のための、さらに引き続きまして来年一——三月にかけての三十九年度下期の金融の実行におきましてきめこまかく弾力的な措置をするように十分の打ち合わせをいたしたわけでありまして、その後も絶えず本支店間連絡をとりながら、ケース・バイ・ケースでできるだけ措置をとってきておるわけでありまして、その方法といたしましては、もちろん経営そのものが堅実に行なわれておるにもかかわらず連鎖倒産の心配のありますものにつきましては積極的な貸し出しをいたしておるのであります。また、相手先の状況によりましては、すでに貸し付けております融資の貸し付け条件を、期限の延長その他によりまして条件を緩和する、さらにまた、私どものほうはいま申しましたように組合金融でございますので、組合の力によりまして、相互扶助の精神で組合を中心に、その組合員の一部に起こる倒産を防止するというような措置も特に講じてもらっておるようなわけであります。そういうような状況で、まず年末までには私どもの取引先、特に融資対象につきましてはあまり大きな悪影響も来たさずに、どうやらこうやら越年もしていただけるんじゃないかというふうに観測いたしておりますけれども事態は日々深刻の度を加えてまいっておるようでございますので、これから先も非常に心配でございまして、かりに年末をどうやらこうやら過ごしましても、引き続きまして来年の一月——三月が心配になってくるのであります。どうもいつもこういう場合には若干影響がずれて起こってくる傾向がございます。引き続きまして来年の一月——三月に対する措置を十分講じていかなければならない。絶えず支店と連絡をしながら、さらに一−三月の状況等をできるだけ早目につかみまして、その状況いかんによりましてはさらに政府御当局とも御相談をいたしまして、万一の場合には財政資金の第二次の追加もお願いしなければならないんじゃないか。そういうようなことにならないことを希望するわけでございますが、状況によりまして十分弾力的に措置できるように政府でも御配慮いただきたいと考えておりますので、委員の皆さま方におきましても、この上ともよろしく御配慮をお願いたしたいと思います。  なおつけ加えて申し上げたいことは、先ほども一言いたしましたように、いままでの倒産原因というようなものも決して十分徹底的にこれをきわめておりませんけれども、私どもが総体的に感じますところでは、かりに金融がゆるみましても、倒産件数が激減するかというようなことになりますと、その点まだ心配があるのであります。といいますのは、何といっても日本の高度成長、さらには開放経済というような関係からいたしまして、産業構造が大きく変わろうとしております。まず労務者不足という、この労働需給の関係だけを考えましても、中小企業に大きく影響してくるのでありまして、特に従来から力の弱い中小企業の体質がなかなか改善できないままに、しかもじりじりその収益状況悪化してきておる。それだけに、金融対策を強力に打ち出していただくことのほかに、やはり全体的な、総合的な中小企業対策というものを強力に推し進めていただきまして、この構造変化に中小企業者が十分対応できるような御措置を講じていただきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  13. 小川(平)委員長代理(小川平二)

  14. 蕪木参考人(蕪木重二)

    蕪木参考人 ただいままで中野長官並びに中小企業金融公庫総裁、商工中金理事長の方々から、企業倒産につきまして概略のお話もございましたのですが、私どもは全国六十一カ所の支店と一千三百人の従業員をもちまして信用調査という部門から各企業の個々の実態を調べまして、その中に発生しているもろもろの倒産、そういったものを私どもの立場から見まして、いまどのような形で推移しておるのかということを簡単に御説明を申し上げたいと思います。  確かに企業倒産はことしの四月が一応山場だといわれまして、それから大体小康状態といいますか、一時倒産は減ったのでございまいます。ところがこの八月から九月そうして十月、十一月と大幅に倒産件数並びに負債総額を更新しておるわけでございますが、これらの問題を一口に申すならば、いわゆる金融引き締めが現在最高調に達しておるということはすでに皆さま御承知のとおりだと思いますが、それにいわゆる構造的要因といいますか、中小企業の構造欠陥がプラスされておる。ですからどちらが先かということになると、確かにその設備投資の最中において金融引き締めに遭遇したとするならば、これは設備投資が中途はんぱになりますから、当然企業資金繰り影響しまして資金の固定化を招き、運転資金が不足を来たすということが倒産に結びつくかもしれませんけれども、ただ先ほども申しましたように現在金融が非常に詰まっております。しかしながらこれを緩和したからそれではすぐ倒産が減ってくるかということにはならないのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  昨年の十一月に預金準備率の引き上げをやっておりますし、本年の初頭におきましては大体において大企業中心になりまして傘下会社あるいは系列会社に対する支援打ち切りという形で支援を打ち切ったわけでございます。そこで支援を打ち切った企業に対しては、投融資現額がなくなってくるわけでありますから結局は倒産だ。しかもそれが大商社の支援打ち切りあるいは大企業が支援を打ち切ったということは、やはり傘下会社あるいは系列会社の内容の悪い不良な会社に対しまして本年は相当強力な金融引き締めが来るのではないかという予想のもとに、金融引き締めがもし来るとするならば、業績の向上、拡大政策もさることながら、この際不良債権あるいは赤字企業問題を検討しなければならぬのではないか。そうして不良債権はできるだけ発生しない、収益性をその面で守ろうじゃないかということが、たとえば名前を申しますと、木下座商が大成物産の支援を打ち切ったということがあります。それで大成物産が中心になりまして六社あるいは七社前後の会社がいわゆる連鎖倒産を発生いたしております。そういうことは一例でございますが、そのほかにも富士電機の東発への打ち切りがございます。もちろんその東京発動機は支援を打ち切られたといいましても、完全にオートバイ生産でシェアで敗北しておりますから、本田とかヤマハとかいった会社等とも対抗できない。そこで赤字経営の連続でございましたので、これもやはり経営の利益管理の面から見ますれば、当然そこで何らかの手を打たなければならなかったということが、大体四月前後におきまして非常に倒産がふえてきた一つの大きな問題だろうと思います。  それから四、五、六、七月ごろに入りまして大体小康状態になったのじゃないか、あるいは企業倒産も一巡したのじゃないかということが言われておりましたけれども、その間においても、いま言った小さな資本金、大体百万から五百万に至る企業倒産の大体五一%前後を占めておりますから、そういった階層においてやはり倒産が発生しておった。ところが従来のたとえば二十九年あるいは三十二年、そして三十六年の金融引き締め下におきましては、大体金融引き締め公定歩合の引き上げを中心として行なわれておりますが、その段階においても、三カ月あるいは四カ月前後には一応企業倒産件数もふえたのでございますけれども、今回の場合非常に引き締め政策が長引いたということは、大企業が大体昨年の十二月ごろから−預金準備率の引き上げをやりまして、公定歩合を引き上げるまでの期間が約四カ月近くございますが、その前からもありますけれども、手元流動性を非常に高めておった、いわゆる事前借りだめが相当行なわれておったというふうに見られまして、やはり金融引き締め影響というものはそう急に発生しなかったわけでございます。ところがこの九月ごろになりまして、それが本格的に引き締めの段階に入ってきたということで、企業倒産がここに続発しておるわけでございますが、そういった中にも特に企業倒産を内容的に見ますと、融通手形という新しい問題がここに発生しております。これも北九州の関連倒産は大体において倒産会社五十五社、融通手形の発行高約二十五億前後で、負債総額六十五億といわれておりますが、このように大きな関連倒産が発生しておるということで、いわゆる企業倒産も東京はじめ大阪、名古屋、北海道、東北という形において全国的にいま発生しております。  それでこの倒産原因でございますけれども、外部的原因と内部的な問題がございます。先ほどの話の中に赤字経営というのがございますが、赤字経営はやはり絶対的に影響がございます。それから在庫状態悪化、あるいは設備投資過大、放漫経営、あるいは売り掛け金回収難、過小資本、そのほかに支援打ち切りあるいは関連倒産というものが発生しますけれども、また最近では労働者不足からくるところのいわゆる遊休施設、遊休機械、あるいはせっかく設備投資はしたけれども工場が運転しない、機械が運転しない、あるいはせっかく機械を入れたけれども人手が足りないということで、採算性が赤字になるという企業も発生しまして、これらは労務倒産あるいは人手不足の倒産ということばでもあらわされておりますが、こういったものも発生しておるわけでございます。それで業績不振は一応いろいろの会社におきまして違いますけれども、赤字経営が何年も続く、これは大企業においても同じことが言えるのでございますが、いま大企業の場合は救済融資あるいはつなぎ融資とか、滞貨の場合には滞貨融資という形のものを考えられますが、中小企業の場合、苦しい場合にはそういった救済資金というものがほとんど受け入れられないというところに企業倒産が非常に発生する理由もあるのではないか。それから在庫状態悪化でございますが、これは生産過剰あるいは最近のように膨大なる設備投資をやりますと当然そこには生産が上がってまいります。ですから販売会社を通じて個々に売るわけでございますけれども、そういった場合において調整部門が資金的に非常に弱いということになりますと、ここにやはり在庫問題によって企業倒産という形で、最近は中小企業の場合には在庫過大による倒産というものもばかにできない数字がございます。それから設備投資過大は今回の金融引き締めの大きな原因一つになっておりまして、生産が先ほど申しましたように、設備投資のさなかに金融引き締めに遭遇したという例もございますし、それから設備投資をしたためにむしろ企業の採算性を低下させたという形の企業もたくさん発生しておりまして、今回の倒産の現象では、過去の倒産件数にはない新しい数字になっております。それから放漫経営でございますけれども、放漫経営は非常に放漫な経営、ことしの三月ごろまでには放漫経営企業倒産した例が非常に多かったのでございますが、そういった企業の放漫経営というものは、だれが考えてもずさんな経営だ、当然これは倒産するのではないかというような企業もございます。それから資本金が非常に少ないために、運転資金あるいは外部負債が過大であるために倒産する。たとえば日本の場合には外部負債が非常に高いということ、借金経営をやっておるということが企業倒産をした場合に負債総額が非常に多くなっておるいうこと、アメリカにおいても一九六三年には一万四千社近くの倒産がございますけれども、それらと対比いたしまして、非常に金額が高いということは、外部負債が多いということになってくるのではないかと思います。それから売り掛け金回収難でございますが、これは現在発生している倒産件数の中の顕著なものでございます。ということは、企業間信用が非常に伸びておるということが、手形サイトあるいは売り掛け金の回収が非常に長くなっておるということになるのではないかと思います。そういうわけで、この倒産はいろいろな原因もございますけれども、大体このように分類して、企業倒産を数字的にあげておるわけでございます。  それで今後この企業倒産がどんな形になるだろうかということが問題になると思いますけれども、たとえばいま申しましたように、今回金融緩和、三公庫中心として信用金庫あるいは相互銀行都市銀行から年末資金手当てということも考えられておりますけれども、この段階において、金融を緩和することによってたとえ倒産はある程度防止できるにいたしましても、今後発生するところのいわゆる設備投資の行き過ぎからくるところの過当競争、あるいは採算性の低下、それから雇用者、労働者不足の問題からくるところの損益分岐点の上昇、そういった問題もたくさんございますので、企業倒産はこの構造変化あるいは構造要因とからみ合っております関係上、容易にその水準が減らないのではないかというふうにも考えられるわけでございます。ですから、金融対策はもちろんでございますけれども中小企業は全国で三百二十何万ございますが、そういった中における階層的分化あるいは中小企業の共同化とかいろいろな問題が出てくるし、あるいは廃業、転業を余儀なくされるクラスも当然出てくるのではないか。そして企業倒産だけを取り上げてみましても、容易にその特効薬がいま発見されないのではないか。たとえば金融の緩和あるいは総合的な行政指導の問題もございますけれども、ただ、たくさん全国に散らばっておりますところの中小企業の市場というものが大企業との競争下においてどの程度耐えられるかということもございますから、なかなかむずかしい問題だろうと思います。  現在発生している中小企業倒産についてはこの程度で……。     —————————————
  15. 小川(平)委員長代理(小川平二)

    小川(平)委員長代理 本問題について質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。島口重次郎君。
  16. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 ただいま説明のあったとおり、破産、倒産が激増しておる。それで破産、倒産状況をただいまの報告だけでなく、もっと掘り下げて聞いてみたい。さらにそれに対する、年度の初めからいま来ようとしている三十九年の年末の金融対策についてお尋ねしたいと思います。  そこでいろいろ破産、倒産の数字を教えてもらいましたけれども、実際問題としてはもっと多くあるのではないか、こう考えます。商工興信所調査によりますと、一千万以上の負債のあるものだということを前提にして書いておるけれども、それ以下のものは、推定で検討いたしますと、どういうような結論が出てくるかという問題、それから商工興信所の方にお聞きしたいけれども、一千万という数字の積算ですね。これは銀行だけからの借り入れがそうであるか、それとも、お互い融手を交換する、あるいは友人等から借り入れをしておるという金も相当あると思うのです。特にただいま説明のあったとおり、中小企業におきましては金融機関の救済資金というものが容易でない、そういう面から民間同士なり友人同士なりの借財が相当あるものだと考えておりますけれども、その際、一千万以上ということに限定しておりまするが、そのとり方がどうなっておるか。  それから、通産省村上政務次官、中小企業長官にお尋ねしたいけれども先ほど来の報告を聞いておりましても、本年に入りましてから予想以上の破産、倒産者があります。私の記憶によりますと、戦後の最高記録が昨年の十一月、本年四月におきましてはさらにそれを更新いたしまして、五月におきましては昨年十一月の二、五倍に値するような破産、倒産が出てきたのであります。したがいまして、先ほど来皆さんの説明を総合的に聞きましても、金融対策だけでは解決ができないという面から、破産、倒産原因等を検討いたしまする機関というものを設置しなければならない段階ではないだろうか、こう考えておりますが、どう考えているか。これを単に商工興信所だけに依頼して、出してきた統計を全面的にそのとおりだということでは、若干軽率であり、遺憾な面があるのじゃないか、その対策をどう考えておられるかをお尋ねしたいと思います。
  17. 蕪木参考人(蕪木重二)

    蕪木参考人 ただいま御指摘の一千万以上の負債総額は、これは大体銀行借り入れ、そして買い掛け金その他一般負債全部を総合して一千万以上のいわゆる負債総額という数字であらわしております。大体中小企業の場合には、一千万以上の場合は、銀行借り入れ、長短期割引は総額の二、三割じゃないかと思いますが、あとは一般負債ですね。そういう形に分類しております。
  18. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 東京商工興信所調査というものが、現在ある倒産関係についての調査機関としては最も信頼が置けるのじゃないかと見ておりまして、われわれのほうも興信所と十分連絡をとっていろいろ調査を進めておるわけであります。政府のほうで何か機関をつくってそういうものを調べたほうがいいのじゃないかというお話、前々からございますが、その問題も研究はいたしております。しかしいまお話がありましたように、東京の興信所でも千三百人以上の人、さらに委嘱の人も相当おられるようであります。これは相当企業の実態に入って、企業の秘密にまでわたることを調査するわけでありますから、たとえば商工会議所あたりでそういうものをやってみたらどうかというふうな相談もやっておりますが、とてもそういうことを商工会議所あたりでやっておったのではえらい目にあってやられてしまう。それこそそれはメンバーから、信用問題になってくるというようなことで、どういう機関でやったらいいかということは、もう少し研究しなければいかぬと思います。ただ、そうはいってもほっておくわけではございませんで、来年度予算としても、これは一々の典型的なケースをとって掘り下げて研究をする、ケース・スタディといっておりますが、そういう方面の予算をとって勉強はしていきたいというように考えております。   〔小川(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  19. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 興信所の方にお尋ねいたしますが、個人の借財も含む、こういうことになってくると、調査の条件と申しますか、非常に困難になってまいると思います。そういう点の問題から申し上げますと、地方におきましては相当破産、倒産者があるのでありますが、その面における調査というものは、どうも完全にいきがたいような憂いがあると思うのですが、そういう点はどうなっておるか。それからおたくさんのほうの発表で、ただばく然としてどこの地方は幾らとこう言いましても、われわれが資料としてとってこれを見て、どこの県のどこの地方がどうだというような点がなかなか検討ができないと思いますけれども、そういう面の調査もやっておられるかどうかをお尋ねしたいと思います。
  20. 蕪木参考人(蕪木重二)

    蕪木参考人 個人の借り入れ金の問題についてお話がございましたが、個人の借り入れにつきましても再検討して、債権者名簿あるいは債権者会議、そういったものに計上されるものもございますし、これは全く計上されないものもございます。そういう段階におきまして、われわれが知り得た範囲内でこれを負債総額に計上することにしております。  それから第二の御質問でございますが、大体におきまして地方都市にはみんな支社がございまして、そこで倒産あるいはそういった会社の資料は絶えずとっておりますから、その中でどこどこの会社はどれくらいでどうだという数字は、各支店ごとには、特に名古屋とか北海道あるいは仙台とかいう大都市におきましては地方新聞にも発表しておりますけれども、そういった形である程度こまかく収録はされております。
  21. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 実は私は青森県なんですが、青森県にも破産、倒産がある、私も実際に見ておるのであります。そこで、実情の破産、倒産状況から、あなたのほうに出てくる統計が事実とマッチしておるかどうかを調査したいと思いまして、あなたのほうの青森支所に行きまして、どういう状況なんでしょうということでお尋ねをしてみたのです。ところが、答えていわくには、これは本社のほうには報告をいたしますけれども、外部に対しましては一切発表しない、こういうことなんで、県内の破産、倒産の実情と、あなたのほうのデータにあがってくる実況がどうなっておるかということが比較検討できなかったわけでございます。そうなってくると、あなた方の統計を信頼しないというわけではないけれども、全面的に信頼するほどの価値があるかどうかということも考えざるを得ないのであります。こういう点が一点。  それから、先ほどの質問でまだ答弁をもらっておらない、一千万以下の破産、倒産者の推計があなたのほうでできるかどうかということを答弁願いたいと思います。
  22. 蕪木参考人(蕪木重二)

    蕪木参考人 青森の問題でございますけれども先ほど申し上げましたように地方都市にも、仙台あるいは北海道、名古屋とかいう大都市におきましては興信所がございまして、そういうところで収録はしております。それから地方の場合、もしそういう場合には私どもに事前にお話しになっていただければ、青森支所のほうに連絡をとりまして、こういう方がいらっしゃるから資料を公表してほしいということで——この倒産資料の扱いに関しましては私ども非常に慎重に扱っております関係上、あるいはそういう問題もあったかもしれないと思いますが、そういう場合にはやはり一応本社のほうに連絡をしていただければ、全部調査を公表できると思うのでございます。  それから、第二の一千万以下の負債総額企業倒産につきましては、これは非常にたくさんございまして細分化されておりますので、残念ながら現在の実働人員をもってしては収録は不可能に近い。ただ、たとえば不渡り手形が何十万とか、十万とか八万とかいうようなことになりますと、要するにその不渡り手形の件数を詳細に分類することによって、あるいはある程度の一千万以下の企業倒産もつかめるかもしれませんけれども、個々に、二百数十万の中小企業の一千万以下の場合の倒産の資料収集は、いまの私どもの内容では収録不可能であるという二とをお答えせざるを得ないと思います。
  23. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 これはただいまのお答えにもあるとおり、一千万以下の破産、倒産者を推計いたしますのにも、とり方で相当異なる結論が出てくると思います。ただ常識的にいきまして一千万以上というと、都会なればともあれ、いなかにおきましては事業会社としてはA級のほうでしょう。そういうものですら破産、倒産しておるのですから、おそらくはあなた方のほうの統計から考えてみますると、一千万以下の破産、倒産者というのは一千万以上の三十倍か四十倍くらいあるのじゃないか、こうも憶測をしているのであるが、残念ながら、しからばその算定基礎がどこにあるかという積算の方法論がないということであります。そういう面からも、これを単なる民間企業だけではなくて、通産省みずからがそういうこまかなところに手の届くところの中小企業、零細企業対策をやってもらいたいと思うのである。私はなぜこれを強調するかと申し上げますると、からだの悪い病人にたとえましても、第一番には診断が必要であります。いかにお医者さんが治療しようといたしましても、破産、倒産にも原因がたくさんあるとおりに、胃の悪いのに心臓の治療をしてもだめなんですよ。肝臓の悪いのに胃腸の治療をしてもだめなのであります。原因、結果というものを正しく判断して把握して、その上に適切な中小企業対策をとらなければ、ほんとうの中小企業の期待するような中小企業対策が出てこない、こう考えるのであるが、そういう面から、先ほど中小企業庁長官の答弁によりますると、研究するための予算は来年度つける、こういう話でありますけれども、これは単なる商工委員会における答弁、その場限りのものではなくて、ぜひとも速急に、私がただいま申し上げましたように、全国の三百二十万から三百五十万あると称する中小企業、零細企業者の期待にこたえるような機関を一日も早くつくってもらいたいことを要望申し上げたいと思います。  そこで、先ほど来破産、倒産問題原因等の問題でいろいろ説明があったのであるが、そこで金融引き締めが大きな影響をしたということは争う余地のない問題であります。設備の過大におきましても、あるいは購買力の減退にいたしましても、最後に具体的に出てくるのが、金繰り操作ができなくなってくるから破産、倒産につながるというのですから、これは問題ないと思うのです。ただ、この中小企業の破産、倒産を解消するには、先ほど説明を聞いておりますると、中野中小企業庁長官は、中小企業近代化以外はない、こう言っております。確かにそれも真理の一面であるが、ところが先ほど来皆さんの説明にもあるとおり、中小企業の過当競争も破産、倒産の大きな理由の一つなのであります。おそらくウエートから申し上げましたら、四〇%なり五〇%かになる。よってくる原因はともあれ、過当競争が大きな理由だと思いますが、そこで近代化いたしますると大量生産化する。しかも中小企業近代化いたしましても、大企業との近代化を比較いたしますると問題にならない。そこで中小企業の救済される道は近代化というけれども、この近代化と過当競争の問題をどう処理するのか。このことの構想がない限りは、単に近代化中小企業が救済されると言うことは軽率だと思います。そういう点をどう考えておりますか。
  24. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 いま先生から御指摘ありましたように、確かに中小企業の過当競争ということが一つの大きな問題でございます。ただ考えなければならぬことは、これは中小企業だけが過当競争をやっているのじゃなくて、御承知のように日本産業全体が非常な過当競争、シェア獲得競争ということで、設備投資を急いで今日の結果を招いた一つの大きな原因があるということは皆さん方御指摘になっているとおりでありまして、そういう面から過当競争の問題は、やはり一つには安定成長の政策をとっていく、そのもとで各企業がお互いに自分の企業体質改善、しかもそれは業界全体の協調体制のための正しい意味の競争ということに皆さんが認めていただく。また政府としてはしかるべき指導をする。もちろん業界のことでございますから、いわゆる官僚統制的なやり方は絶対避けなければいけませんが、そういう体制をとるということが、私は一番大事なことじゃないか。どちらかというと、中小企業の立場から言えば、むしろ大企業の方々にもう少しお行儀をよくしていただくということがまず根本じゃないかと思います。しかし同時に中小企業自身にとりましても、従来から過当競争ということを言われております。これにつきましては、やはり近代化と言っても必ずしも設備を増大させるということを私は言っておるわけではなくて、やはり企業全体の経営面、技術面、設備面、要するに経営全体の近代化ということによって各企業がそれぞれ自分の企業の体質をよくしていく、政府政策的にこれを応援をする、こういうことであるかと思います。同時に各企業業種別にはやはり協同組合あるいは商工組合というようなものをいまつくっておられますが、こういう組織化、これによります共同化ということを進めることによって、過当競争を避けるような体制に持っていくべきだと思います。
  25. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 なるほど近代化いたしましても、資本主義の原則である自由競争、弱肉強食と申しますか優勝劣敗と申しますか、その制度でありますから、当然不可避である。ところが長官も御承知のとおり日本の中小企業というのは大メーカーにどうしても圧倒される。日本経済の特徴というのは二重構造であるが、そういう面から、ただいま長官が申し上げましたとおり大メーカーの方が相当謙譲の美徳を出してもらいまして産業全体を生かしていくというような協力体制がない限りは解決ができないであろう、こういう意味の答弁だと私は理解したのであります。私も同様であります。ただ協力的な、商業道徳的なことを求めましても、大メーカー、大財閥の諸君はそのとおり期待するような協力はしてくれないと思う。もっと政治の大局から、政治問題として中小企業を、日本の産業界、商業界に高いウェートの座を与えてやらない限りは、この問題は解決されないと思う。一つ政治問題としてこれを解決しなければ解決の方法がないと思う。そこでうちのほうの社会党では、中小企業庁を中小企業省にしなさい、もっと政治力を強力にして、その上で中小企業の保護育成対策をやりなさいということを再三強調してきておるのであるが、そういう面から私はこの際中小企業庁長官通産省政務次官に、中小企業庁を省に昇格せしめる意思がないかどうかを伺いたい。これがない限りは中小企業の解決はないと思う。
  26. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 御承知のように私は事務官僚でございますので、そういう大きな政治的な面にはお答えする能力はないのであります。ただ私はいつも申し上げておるのですが、やはりこれはいま先生の御指摘になったように、中小企業政策の貧困から省をつくれという問題に発展してくるのではないか。したがってそこに考えをいたして、大いに中小企業政策の画期的拡充をはかるべきであるというのが私の考え方であります。将来の問題については、この間本会議で何か御質問があったように聞いておりまして、速記録は見ておりませんが、総理大臣は、いますぐこれを設置するということは考えていない、今後大いに研究をしようというふうな意味のことをお答えになっておるように聞いております。
  27. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 ただいまの長官の話を聞きますと、中小企業対策が貧弱であるからこういう議論が出てくる。それではなぜ貧弱か。なぜ貧弱なんですか。やはり中小企業庁にしておくから貧弱なんだ。省にして、大臣みずからの責任において中小企業対策をとりますれば、もっと大きい政治力も出てくるのです。解決も出てくるのです。この問題長官に聞くのは酷だと思いますから、通産省の政務次官にお尋ねいたします。
  28. 村上(春)政府委員(村上春藏)

    村上(春)政府委員 いまのお尋ねですが、長官中小企業対策が貧弱だという意味じゃなくて、そういうように受け取られるので、結局省に昇格せいという御意見のように思います。これはなかなか大きな問題でございまして、私どもの段階でこれを昇格するとかせぬとかいうようなことの発言を私どもは与えられていない問題のように思いますので、まあ十分先生の御趣旨を私ども検討しまして、そうしていきたい、こう考えております。
  29. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 政務次官に対する答弁を要求いたしましたけれども、これまた残酷なようですから、櫻内通産大臣が帰りましたらその旨を伝えまして、いずれかの機会に答弁をしてもらいたいと思います。  大蔵政務次官が来ているので、大蔵政務次官にもお尋ねしたい。どうも自民党の諸君は、防衛庁は省に昇格するような熱心な運動があり、予算の裏づけもやるような姿勢を示しているようでありますけれども中小企業庁の昇格にはさっぱり熱意を示しておらぬ。こういう点では、中小企業対策で自民党の皆さんにはこれを救済してやる情熱、ファイトがないのじゃないかと言ったら恐縮でございますから、足らぬじゃないか、こう思いますが、どうでしょう。
  30. 鍛冶政府委員(鍛冶良作)

    ○鍛冶政府委員 先ほど来、原因その他について参考人のほうで述べられたとおり、そうたやすい問題じゃありませんが、先ほど中小企業庁長官が述べられたように、現在ではまあ最も有効な、これ以上はないと思うほどの金融対策をやっておるのでありますが、決しておろそかにしておらぬつもりでございます。この上とも、また気がつきまするならば大いにひとつその点、力を入れてやりたい、かように考えております。
  31. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 ここでどうも先ほど説明を聞きましても、金融引き締めが破産、倒産の大きい誘因をなしているということは事実ですけれども、それ以外の総合的な対策も完備しなければ中小企業が生きないということも皆さん異口同音の説明であるが、そういう面から総合的な対策をやるためにも中小企業省をつくりまして強力に推進してもらいたいと思います。これをいろいろの角度から質問申し上げたいけれども、私の与えられておる時間の関係もありますから、若干角度を変えましてお尋ねしたいと思います。  確かに先ほど来申し上げましたように、中小企業の破産、倒産というのは金融引き締め問題その他たくさんある。私も小なるけれども一つ企業をやっておりまするが、借金があることはおそれないのですよ。事業さえ順調にいっているならば、黒字が出てきているならば、何年かの後にはその借金を返済するという計画で事業はやるのですから、赤字自体はおそれないのですよ。そこで、それを取り巻くところの諸条件の問題、特にただいまのような高度成長政策、開放経済、国家経済の支配力が大きいときには、国の政策によってその業界は興亡いたしまするような場合が多々ある。たとえば貿易の自由化の具体的方法論につきましてそうであります。これはあらゆる業界にあるけれども一つのテストケースを私は油脂業界、食用油の業界で例をあげたいと思います。食糧庁の方、来ていますね。——大豆の自由化が一昨年の四月からだと記憶しておりますが、大豆かすの自由化はどうしてやらないかということをお尋ねしたいのであります。そこで、なぜこの質問をするかと申し上げますと、ただいまの油の市況は非常に悪い。そこで大豆油を安く売りまして大豆かすを相当高く売っておる。原料である大豆の貿易の自由化をやりまして、大豆かすをなぜ自由化しないのであるか。私の考えるところによりますると、大豆を搾油いたしまする設備というものは豊年だとか日清、昭和、味の素、吉原というような大メーカーでなければ持っておらない。あるいは持っておりましても能率度の問題で他の連中が対抗できない。そこで大豆かすを高く売っておる。油脂課でありますからおそらくは相場がわかっておると思いますけれども、ただいま一千八百五十円で三十七・五キロのものを売っていると思います。これが輸入いたしますと、おそらくは千五百五十円から千六百円程度で入ってくると思う。日本の全国の畜産を営んでおられる農民にいたしましても輸入の自由化を要望しておると思います。それをやらないのは、大メーカーの諸君に高い大豆かすを売らせて油の値段を安くしておる。油の値段を安くしておくということがどういうことに影響するかと申し上げますると、なたね搾油の設備を持っておるのは山工場と称する中小企業、零細搾油工場であるが、大豆かすを売るためにたくさん大豆を輸入しておる。おそらく私の記憶によりますると、FA制度のときには百万トン内外の輸入だと思っておるが、おそらく三十八年度、三十九年度におきましては百五十万トンから百六十万トンの輸入じゃないか。もし私の記憶に間違いがありましたら訂正してもらいたいと思いますが、そこでたくさん入れて高い大豆かすを売る。そのために日本全国の畜産をやっておられまする農民は一俵につきまして二百五十円高いものを買っておる。こういたしますると、おそらくは三十九年度に入りましてから毎月大豆が十二万トンくらい輸入されておると思います。そうすると約九万トンが大豆かすになります。これを三十七・五キロにいたしますと約二百五十万俵。二百五十万俵でその集計をいたしますると六億円。一月の間に畜産農民が六億円の高い大豆かすを買っておるのであります。なたねを生産いたしまする農民はどうかと申しますると、たくさん大豆が入ってきて安い油が出てくる、それに制約されましてなたねも値上がりをしない。そこでなたねの耕作をいたしますることを放棄いたしまして、大豆の自由化後においては約四割減の耕作反別になっておる。それほど大豆かすの自由化をやらぬということがなたねを生産いたしまする農民をいためつけておるのであります。中小零細業者のほうからいうとどうであるかと申し上げますると、大豆搾油の設備をいたしまするには少なくとも五億、六億、理想的にやりますると十五億から二十億の金がかかる。いわゆる山工場と称するなたね工場では、せいぜい二千万円程度の工場設備、小規模なところにおきましては百万から八十万あるいは五十万の設備でやっておる。この零細業者の諸君が、大豆の安い油のためになたね油が圧倒されて、採算コストがとれない。そこで工場が次から次へと休業やら破産やら倒産をやっておるのであります。この例を申し上げますると、三十七年度におきましては約六百の中小企業工場がありましたけれども、ただいまは三百五十軒、半分弱の減少をしております。その以前におきましても、生産の集中が行なわれまして、三十二年には三千工場ありましたけれども、三十六年から三十七年にかけて五百五十になった。これほど生産の集中というのが零細企業を破産、倒産に追い詰めているのであります。そういう面から、大豆の自由化をやって大豆かすの自由化をやらぬというのは、大メーカー保護対策でそれをやっておると思いますけれども、そういう点はどう考えるのか、お尋ねしたいと思います。
  32. 宮地説明員(宮地和男)

    ○宮地説明員 お答えいたします。大豆自由化後の大豆かすを自由化しないという点が、最近の油脂関係でいろいろな問題を起こしておるという御指摘の点でございます。実は大豆を自由化いたしましたあとの大豆の価格の関係が非常に変化がございまして、具体的に申しますと、当時トン当たりアメリカで百ドル程度いたしておりました大豆が、その後百十ドルないし百十五ドルと、かなり急激に上がりました関係で、製品の自由化を行なうということにつきまして問題が生じまして、目下その点をいろいろ検討をしているわけでございます。実は農林主管関係産業の中でも製油産業といいますものは輸入原料に依存する面が非常に多い関係がございまして、他の部門に比べますと自由化の関係も比較的進んでおるわけでございますから、対外関係影響を強く受けるような事情がございます。このためにどうしても、さらになおこれからの開放経済の進展という面に対処するためには、大企業中小企業にかかわらず、企業合理化をする必要があるのでございますけれども、食糧庁といたしましても、特に、単に大企業のみならず、製油企業の中の大部分を占めているのは中小企業でありますが、中小企業につきましては、御指摘のとおり、国内産のなたねの関係との問題もございますので、非常な関心を持って、経営基盤の改善をする必要があるというふうに考えておる次第でございます。ただこれは、一般論としまして、先ほど企業長官からもお話がありました共通の問題、要するに大企業の過当競争あるいは中小企業の過当競争というものがあるわけでございますけれども、これからの開放経済の進展というものはなかなか避けられないということで、いろいろ準備を進めるということで、中小企業対策といたしましては、やはり現状の中ではどうしても中小企業経営合理化あるいは共同化というようなものが必要であるということで、すでにそういうふうな経営指導あるいは技術指導を行なっておるわけであります。そこで、先ほど御指摘もありましたとおり、確かに中小企業につきましてはかなり工場も減っております。これは、私のほうでは、主として油の生産をやめて油の販売業に専念をするというふうに転換をしておるというのが相当あろうというふうに考えております。一応基本的に申しますと、大豆かすの関係が、御指摘の、かすを高く売って油を安く売っておるのではないかという点につきましては、最近の事情は若干異なっておりまして、現在非常にアメリカの大豆価格が上がっておりますので、かすは、実は一部そういうかなり高い——千八百円ですか、相当高いものもございますけれども、えさ関係需要にこたえるためには特に安く供給するということもやっておりますので、かすを高く売って油を安く売るというような事態は、かすの関係でそれが出ているということは、現在の段階ではむしろあまり出てないのじゃないかというふうに考えております。これはやはり、去年アメリカの大豆の価格が非常に上がりまして、それをいま処理する量が非常に多いものですから、油価格は若干総体的に安くて、大企業も含めまして非常に困っておる。その状況は、若干最近国際価格の関係も変わっておりまして、最近は若干持ち直しておりますけれども、やはり基本的には……(「聞いたのは、大豆かすをどうして自由化しないのかと聞いただけだ」と呼ぶ者あり)という状況でございます。  大豆かすの自由化の問題は、大豆の処理の問題、大豆の国際価格が大豆の自由化したときに比べて上がっておりますので、その関係について何らかの措置をしないとすぐには自由化できないというふうに考えております。  以上でございます。
  33. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 さっぱり要領を得ないけれども、もう一回質問いたします。  大豆かすをなぜ自由化しないか、相場の変動というのはいつでもあるのですから、自由化をしておきまして、日本にプラスするときに輸入いたしますると、商社のほうももうかる。相場の理由で自由化しないということはあり得ない。基本原則をきめておきまして、あとは商社がそろばんで商売をやるのですから……。あなたの説明だけでは大豆かすの自由化をやらぬということの理由はちょっと理解されないと思います。さらに、これはあなたに質問いたしましても無理だと思いまして、きょうは食糧庁長官要請いたしましたのですが、長官が来ておらないので、あとで伝えておいてください。あなたから答弁でさましたらあなたでもよろしい。それほど大豆かすの自由化をやれないなら、大豆もFA制度にしたらどうですか。  それから、あなたは過当競争で大企業も苦しいと言う。なるほどそうであります。ところが、大企業で休業なり破産、倒産した例やら比率を考えてください。中小企業とは問題にならない。おそらく、私先ほど申し上げましたが、六百軒から三百五十軒になっている。特に私のほうの青森県では、日本一のなたねの生産県であります。そういう面から零細工場がたくさんある。貿易の自由化、大豆の自由化をやる以前におきましては約四十五くらいの工場がありましたけれども、ただいまなたねを搾油している工場というのは三軒ほどよりないのであります。あとはいずれも休業なり転業しているのであります。このとおり現実の姿において零細企業中小企業が破産、倒産している、あるいは休業している。大メーカーも苦しいというけれども、大メーカーの中にそういう破産したところがありますか。軒数が少なくなっておりますか。そういう点、もう一度答弁願います。
  34. 宮地説明員(宮地和男)

    ○宮地説明員 大豆かすを含めまして大豆製品の自由化の問題につきましては、現在原料の大豆関税の免税問題を含めて大豆関係関税をどうするかというようなことを慎重に検討しておりますので、大豆、なたね等への悪影響の生じないように十分考えてやっていくというふうに考えております。  それから、確かに御指摘のとおり数が大企業は少ないということもありますので、倒産をした例というのは聞いておりませんけれども経営につきましては非常に困離なものも幾つか出ておる状況であります。
  35. 二階堂委員長(二階堂進)

    二階堂委員長 島口君に申し上げますが、時間の関係もございますので、ひとつ簡潔にお願いします。
  36. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 油脂課長さんにもう一問だけ。どうも課長さんの答弁では了承できないけれども、これ以上やってもしょうがないからもう一問だけ。やはり中小企業の諸君が企業の合同なり共同化をやって生きる道を考えなければならないということを中小企業庁長官油脂課長も言ったのであります。ところが油脂業界では、それをやってもさっぱり金を貸してくれないじゃないか。おそらく全国の業界で一番早く共同化を目ざしまして日本油糧株式会社ができているはずです。金を借りに行きますと、こうだからだめだ、ああだからだめだと言って貸してくれない。少なくともなたねの搾油設備をいたしますために一億二千万か一億五千万の金が必要だ。そうすると商工中金やら中小企業庁へ行きますと、私のほうの最高限度はこれよりできないからだめだといって断わられておるのです。口では共同化をやりなさい、資本の共同化をやりなさい、こう言っているけれども、やっておらぬじゃないですか。そういう点はどうなんですか。中野長官のさっきの答弁とこういう事実が食い違っているわけであります。そういうことに対して中野長官はどう考えるか。
  37. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 いまの先生の御指摘のあった具体的問題は、後日農林省のほうとも打ち合わせをしたいと思います。また、商工中金にも行ったというお話でございますが、どういう話になっておるのか、私具体的内容を知りませんので、この共同化の計画がいいものであれば中小企業庁としても応援をしたいと思います。
  38. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 それじゃ時間がないようですから、年末金融問題を急ぐから一度にまとめて質問申し上げますけれども、第三・四半期と第四・四半期における政府の財投、中小企業金融公庫、商工中金、国民金融公庫がどうなっておるか。  それから中野長官先ほど説明によりますと、民間融資の純増という説明でありましたが、あれは純増でなくて年度末の融資の需給計画だと思いますよ。純増だとするならば、昨年に比較して全部それをオーバーしなければならない。全国銀行協会が三千億、相互銀行が一千六百五十億、信用金庫が一千二百五十億、信用組合が四百億、純増と年末の需給計画と大違いですよ。中野長官中小企業庁の長官をしておられながらそんな大間違いをするとはどういうことなんだ。
  39. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 三十九年度の下期の追加財投は五百二十億でございます。先ほど八百億と申し上げましたのは各機関の自己努力というか、回収努力といいますか、そういうものを含めまして貸し出し規模としては八百億ふえる、しかしそのうちで政府が金を出す分は五百二十億、こういうことでございます。  それからもう一つの最後の点は貸し出し純増分でございまして、九月末に対して七千百五十億ほど年末にかけて貸し出しをふやす、こういうことでございます。
  40. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 いまの後段の七千百五十億が純増だということに間違いないですか。これは私が間違いであるか、あなたの間違いであるか、中小企業公庫の総裁さんはわかっていると思いますから、どっちが間違いかはっきりしてください。
  41. 北野参考人(北野重雄)

    北野参考人 私の理解しておりますところでは、大体民間の金融機関は短期資金が多いのでございます。すでに貸し出しておるものが返ってくるものもございます。それをまた貸し出しに充てるわけでございますから、いまの数字は九月末中小企業向けの残高にプラスして、中小企業向けに各民間金融機関が貸し出す一つの目標でございます。実は昨年は目標どおりにいっておりませんが、本年度は目標どおりやるという意気込みでやってまいる、こういうわけでございまます。
  42. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 それでは私の言ったとおり需給計画じゃないですか。一回返済したものをまた貸すのでしょう。純増と称するのは年末の需給計画じゃないか。例年貸したものを回収してそれを貸すのが貸し付けなんですよ。それ以外に増を加えたものが純増でしょう。そうじゃないですか。たとえばこれは何も本年に限ってやったことじゃないですよ。昨年度は計画において六千六百八億やっております。ところが、実際全国の銀行協会では計画よりもオーバーしてやっているが、信用金庫と相互銀行ははるかに下回りまして、計画の九〇・七%よりやっておらない、毎年やっておることなんです。純増じゃないですよ。年末の需給計画ですよ。もう一度答弁してください。
  43. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 いま先生が御指摘のように、昨年末にもこれと同様のことをやっておったのでございます。その点は御指摘のとおりでございます。ただ申し上げることは、民間の金融機関については年末にかけて幾ら貸し出しの純増をやるかということで目標を立てる。これは九月の末に比べての貸し出し残にプラスして年末にかけて約七千億円貸し出しをふやすということでございますから純増ということで、これは先生の解釈が間違ったとかなんとかいう意味じゃございません、常識的に昔からそういうふうに言っておるわけですから、それに従って私は申し上げたわけです。これは金融機関の常識でございます。
  44. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 純増がそうだとすれば、それと一般的な貸し付けとプラスして幾らになるのですか。年度末の需給計画は幾らになるか。
  45. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 これはもし正確な答弁を御要求であるならば、大蔵省のほうにひとつお願いしたいと思います。先生の言われる数字は計算がちょっとむずかしいのではないかと私は思いますので、ひとつ専門家のほうに……。
  46. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 それじゃ長官先ほどあなたの説明に、第二・四半期、第三・四半期において貸し出し額を増額をした、こういう説明があったわけですね。これは年間計画から繰り上げて貸し出し増をつけたものじゃないか、こう思います。そこでわれわれは政府の財投から追加をしたものが純の増だ、こう考えたい。そこで本年度が国民金融公庫のほうでは百二十億と三十五億、それから金融公庫のほうでは二百四十億、こうなっておりますけれども、この程度なら、昨年とのパーセンテージからいきますと、ほとんど変わりがないじゃないですか、財投から追加をした額と称するのは。
  47. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 ことしの財投の追加は五百二十億でございます。去年は年末に三百億だったと思います。
  48. 島口委員(島口重次郎)

    ○島口委員 昨年度の当初計画では一千二百七十七億、今年度は一千六百七十七億ですよ。それから比率を出していくと、財投から出したのはたしか五百二十億という、数字では大きいけれども、この金融切迫をしたときに、しかも破産、倒産の多いときにこれでは少ないのではないか、こう考えます。  それで、あとの質問者も控えておりますから結論を申し上げますが、商工会議所の意見書といたしましては、五百二十億では足らない、そこで九百億を財投から追加投資をしてもらわなければ、年末金融対策を完全に乗り切ることができないのではないか、こういう意見書を出してありますが、ただいま政府のとっておる五百二十億の財投で年末の金融対策が完全であると考えておるかどうか、この点が一点。  それから先ほど来、皆さん方はあらん限りの金融対策をやってきたというけれども、破産、倒産が逆に激増しつつある、この矛盾はどこからきているか。こういたしますと、総合対策の面でも立ちおくれをしておりますけれども、やはり金融対策の面でも立ちおくれがあると考えております。先ほど商工中金あるいは中小企業金融公庫総裁のお話によりますと、積極的な態度でこれを解決したいというような意欲的なことを申しておりますけれども、これをもう少し掘り下げて質問したいのですが、時間がないから省略をいたします。  私の考えでは、いかに政府の三金融機関が努力いたしましても、このベースに乗れない階級がたくさんあるのであります。たとえば銀行の信用度というものは、例を申し上げますと、三百万なら三百万、あるいは小さい方なら五十万しか銀行の信用度がない。それ以上は保証協会の保証を求めてきなさい。保証協会に行っても、これは五十万か百万であります。そうなりますと、担保がなければ、保証機関の信用がなければ、いかに政府機関が情熱をもって対処するといっても、そのベースに乗ってこない。そういう方々の対策をどう考えておられるのであるか。あるいは民間銀行に行きましても、一定の信用度はあるけれども、それ以上は貸してもらえない、別個な新しい角度から対策をとらない限り、この問題は解消できないと思いますが、それらを考えた総合的な年末金融対策をひとつお聞かせしてもらいまして、よければそれで質問を打ち切りたいと思います。
  49. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 年末金融対策につきましては先ほど詳細に申し上げたとおりであります。この対策で何とかこの年末は切り抜けられるのではないかというふうに考えております。御指摘がありましたように、商工会議所からは三機関の年末金融資金源として九百億の財投からの追加の要望が出ておることは承知いたしております。そういうものもいろいろ含めまして折衝して、政府で貸し出す規模として八百億、そのうち財投の追加が五百二十億、こういうことで決定いたしたわけであります。先ほど商工中金の理事長さんからもお話がありましたように、三機関としては何とか年末の需要についてはかつかつこれでやっていけるのではないかというふうに見ておられるようであります。ただ私が心配しておりますのは、十二月はひょっとすると倒産件数も、金融とかなんとかで手当てをいろいろしますから、件数はある程度落ちつきを示すのではないかと思いますが、むしろ年が明けてからの情勢というものを非常に心配している。したがいまして商工中金の理事長が御説明になったように、来年の一——三月の情勢というものをよく見て、必要があればまた適切な手を打たなければいけない。それから年末につきましても、先ほど中小企業の年末金融対策についてということで一番最後にも申し上げましたが、なお今後とも金融情勢推移を注視し、適時買いオペ等必要の措置を講ずるようにしたいということを経済閣僚懇談会で決定いたしておりますから、その線に沿って措置をしていくつもりでございます。  なお、小規模事業者等についての金融難を打開するために特別措置をすべきではないかという点につきましても、来年度予算としてぜひ何らかの措置を考えていきたいというふうに考えて、いま政府部内で折衝中でございます。
  50. 二階堂委員長(二階堂進)

  51. 森(義)委員(森義視)

    ○森(義)委員 先ほどから中小企業庁長官をはじめ参考人として御出席をされた方々から、今日の中小企業倒産は容易ならぬ事態に入っておるということについて概略御説明を聞いたわけですが、東京興信所の資料が唯一の中小企業倒産の実態を報告しているように、中野長官からもそれを参考にしておるということがございましたが、東京興信所調査を見ますと、ことしに入りまして、五、六、七月の横ばい状態を除きまして、毎月新記録を更新している。この状態ですと、ことしの年末一ばいで大体倒産件数は四千件をこすだろう、負債総額も大体四千億をこすだろう、こういうふうにいわれておるわけですが、これは三十一年以降漸増し、慢性化してまいりました中小企業倒産の中で、特に上昇してまいりました三十七年、三十八年の二カ年分をことし一年で凌駕してしまう、こういう状態なんですね。今日物価の値上がりによる国民生活の不安と中小企業倒産というのは、私はもう大きな社会問題になっている、こういうふうに思うわけなんです。  そこで、具体的な倒産問題に入ります前に、通産省、きょうは大臣がお見えになっておりませんから、政務次官あるいは中小企業庁長官にかわって答弁していただいてけっこうでございますけれども、まず中小企業政策に対する基本的な姿勢ですか、あるいは方針というものについて、もう一回この辺でただしておかなければならないのではないかと思うわけです。巷間、中小企業倒産はもうほったらかされておる、ただ自民党の票田として、あまりおくらすと選挙に響くから、その程度のお手当てはするけれども、それ以上はやらないんだ、こういうふうに言われております。そこで昨年の十二月に提出されました経済審議会の国民所得倍計画中期検討報告、これを読んでみますと、この三十七ページに、中小企業対策は単なる保護政策におちいってはならない。したがって経済的に中小企業が成り立たないような分野については、それはもう温存するのではなく、転換や移動を援助するとともに、転出困難なものについては、社会保障等を通じて十分な生活の安定が得られる対策を講ずる必要がある。このことはすでに、中小企業の転換と整理というものが、消極的でございますけれども、公式に登場してきた第一の意見だと思う。引き続いてこの七月に発表されました経済白書にもやはり同じようなことを言っております。開放体制のもとでは、生産性の低い産業そのままの形で残すことはできない。したがって中小企業や農業のように生産性の低い産業は、体質改善をするなり、あるいは転換をする必要がある。特に今日ならば労働力が不足しておるので、中小企業の転換は容易である、こういうふうな言い方をしているわけです。さらに先日発表された経済審議会の中期計画の原案、これによりましても、今後の産業構造の高度化の方向としては、成長期産業中心とした重化学工業を推進する。これを根幹として、これについていけない生産性の低い中小企業に対しては、転換あるいは廃業そのものの資金政府が出す必要がある。こういうふうな一連の経緯から見てみますと、今日政府は、中小企業政策中心あるいは基本的な考え方というものは、すでに整理と転換の段階にその重点を置いている、こういうふうに実は見られるわけです。ところが昨年来公式の場で総理なり経済企画庁長官がしゃべっておる内容は、いわゆる所得倍増の第二ラウンドに入った大企業は、すでに高度成長政策の恩恵を受けて、世界で冠たる発展を遂げておる、生産性のおくれたところの中小企業と農村に対してこれから経済政策重点を指向するんだ、こういうふうに言っておるわけです。そうしますと、先ほど申しましたような、いわゆる中小企業政策の転換あるいは廃業、こういうものに中小企業政策重点が指向されておるのか、あるいは政府が言っておるような、第二ラウンドに入ったんだから中小企業あるいは農業の飛躍的な拡大発展に重点を指向しようとしておるのか。そういう点について、最近のものすごい倒産を見ておりますと、どうやら第二ラウンド説は消えてしまって、中小企業の転廃業のほうに中小企業政策重点が指向されているような感もするわけです。だからこの際、倒産問題の具体的な内容に入ります前に、ひとつその点について政務次官なり、あるいはかわって中野長官でもけっこうですから、今時点における政府中小企業政策をはっきりとただしたいと思うわけです。
  52. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 いま先生から御指摘のあった問題でございますが、通産省、特に中小企業庁としての考え方でございますが、これは前々から申し上げておりますように、大企業中小企業の生産性の格差というものが、高度成長の過程においてむしろ開いてきておるわけです。御承知のように賃金のほうは格差は縮まってきておる。しかも片方では労働力不足というようなことで、中小企業の存立基盤が非常に変わってきておる。一方では開放経済体制に入って、技術革新、流通革命、あるいは商品需給構造の変化、それからいま森先生のおっしゃった日本経済産業構造そのものが重化学工業——これは重化学工業だけじゃないと思います。軽工業についても、品質をよくするというようなことで成長のある分野はたくさんありますから、重化学工業と言うと非常に誤解を招くと思いますが、経済企画庁でもそういうふうに言っておらないと私は思っております。そういう意味で成長性の高い産業に全体の構造が変わっていく。この問題中小企業がいま当面をして、これほど激しく流動する変化に中小企業がついていけない、適応できないというようなものがあって非常に困っておるということだろうと思うのであります。したがいまして、やはり政策重点は、中小企業がその本来の経済性を十分に発揮できるように、政府政策はこれを応援し、助け、そして中小企業の生産性を大いに向上させる。その向上させる過程において、もちろん一部、特に零細企業等について、最近の情勢からいえば、もう人手不足というようなことで、自然にこいつは転廃業せざるを得ない、こういうようなものも出てくると思います。したがいまして、そういう分野についても政府としてもっとあたたかい気持ちで政策をやらなければいかぬじゃないかということは御指摘のとおりだと思いますが、これは私は中小企業対策は大体二つに分けて、一つはいわゆる中小企業の中の中堅企業というものを大いに育てていく、片方は零細企業、小規模企業に対する——これはどちらかと言うと生業的なものでございますから、これを企業らしいものにできるだけ金融面あるいは経営の指導面、税制面等でこれを育成していかなければいかぬじゃないか、こういうふうに考えております。もちろんこれはことしの二月に出しました中小企業白書にも書いておりますように、ここ十数年来の高度成長の結果、中小企業全体のウェートというものは下がっております。特に零細企業ウェートというものは雇用面等から見ても下がってきておることは事実でございます。しかし、それでもなお日本の場合には中小企業ウェートというものが非常に高いし、またわが国の産業経済の中に占める重要性は非常に大きいわけでありますから、先ほど指摘しましたような中小企業近代化の立ちおくれと生産性向上の立ちおくれということは、単に競争から脱落するとかあるいは経営悪化というふうな中小企業内部の問題だけではなくて、これが日本産業経済の全体の問題、たとえばそれによってわが国の産業全体の国際競争力の強化をおくらせる、あるいはいつも言われることでありますが、消費者物価上昇の一因になるというふうな国民経済全体の問題になってきておるわけです。したがってこの中小企業問題に真剣に取り組まなければわが国の経済全体の均衡のとれた発展ができないのじゃないか、その発展を制約をしておるのじゃないかというような観点から政策を進めてまいっておるわけであります。
  53. 森(義)委員(森義視)

    ○森(義)委員 中野長官からいま中小企業問題について、政府方針はいままで実は経済白書を見てもそういう趣旨のものじゃない、こういう説明があったわけです。私が読むと、いわゆる採算性の合う中堅企業の発展にはかなり力を入れる、それから採算性の合わないと申しましょうか、いわゆる生産性の低い企業に対しては転廃業を積極的に進めていくという方針が貰かれているように思うわけですが、これは財界なんかでも同じような方針を打ち出しております。自民党政府というのは財界の大御所の発言には非常に弱いわけなんですが、たとえば経団連会長の石坂さんあるいは岩佐富士銀行頭取、こういう方々が、ともかくこれから日本の開放経済下においては重化学工業の強化というのですか、そういうものを進めていかなければならない、そういう段階に、農業団体中小企業団体の圧力に屈して、自民党が政治配慮からこれらの競争力の全然ない企業にも金を出していく、そういうものはどしどし打ち切っていけ、これから開放経済の中で日本経済が発展する方向である重化学工業化にもっと金を出せ、こういうことを公然と言っているわけです。先ほどおっしゃったように、中小企業が経済性を発揮するような方向に中小企業庁としては指導していきたい。これは経済同友会のあの提言の中にも載っておりますように、中小企業が経済性を発揮するように指導していくとなれば、あの中には専門化か系列化か共同化か、こういう三つのスタイルしかない、こういうことを言っているわけです。今日中小企業の中で独立したメーカー、こういうものの倒産が最近特に多くなってきているわけです。これはもう系列化の道を選ぶか、あるいは専門化のあれでも、どんどんと大企業に入ってこられてつぶされていっておる。こういう状態を見ておりますと、財界の大御所あたりが言っているような方針がどんどん現実的に進められてきておる。こういうように私どもは見るわけです。そこで、あれだけ前の宮澤経済企画庁長宮あたりがはっきりした姿勢で、第二ラウンドの中小企業と農業のひずみを是正するのだ、それには自民党政府はこれから経済政策重点的指導をするのだということを言っておりながら、やはり具体的な面については、ほんとうに自民党の票田としての、世間で言われているようなカバーくらいしか出ておらない。その証拠に、この一年間、北野理事長が四十六国会で大体六月がピークだろう、こう言っておられた。ところが五、六、七はなるほど横ばいだけれども、八月以降の倒産の激増ぶりというのはほんとうに、先ほど申しましたように、過去二年分が一年で倒産をしているというような増があらわれてきておるわけです。したがって、どうも中小企業庁長官の立場からは、そういうことは言えないかもわかりませんけれども、しかし結果として、具体的に中小企業のこのような大きな倒産があらわれてきておれば、私はやはり政府中小企業政策というものは、結局この際だめなものは整理してしまう、はっきりとそういう形が出ておるのじゃないかと思う。そこで採算の合わぬものは転換あるいは廃業してもらわなければいかぬ、こうおっしゃるわけです。先ほどの答弁にあったわけです。やむを得ない、転換、廃業するという。今度新しくなった櫻内大臣ども、会合ごとに転換転換と言っておる。櫻内大臣は転換大臣だと言っているわけですが、そんなに簡単に中小企業が転換できると思っているのですか。それじゃ転換資金をどれだけ準備しているのですか。いまの政府の財政難の中で、これほど多くの中小企業が十分転換できるような資金を準備する余裕があるのかどうか、私は非常に疑問を感ずるわけです。石炭産業の場合、あれだけ強力な財界のバックがあり、強力な組合があっても、あの転換の内容を見てみればわかるのです。中小企業なんかそんな金のバックがあるわけじゃなし、従業員自体にそんな強力な組織があるわけでなし、政府に対して、ただ選挙のときに、おまえらあまり締めたら今度は自民党をたたき落とすと、票をもってぐらつかすくらいの、そのくらいの脅迫くらいではとても転換資金は十分にまかなわれるめどが出てこないと思うのです。そこで中小企業庁長官に申し上げるのですが、生産性の低い中小企業の転換に対して、どういうふうな具体的な措置通産省として考えているのか。あるいはそれに対する転換資金をどのくらい考えておるのか、そういう点について、具体的な内容をお聞かせ願いたいと思います。
  54. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 いま転換の話が出たのですが、これは具体的にはいままででも、たとえば中小企業金融公庫なり商工中金なり、あるいは国民金融公庫、こういう政府関係機関でも、事業の転換、あるいは業種の転換、そういうようなことについて、もちろん転換するものが十分やっていけるものでなければ、金融ですから、補助金じゃございませんから、いけないと思いますが、そういうことはやっておると思います。したがって、そういう面の今後の方策は、さらにもう少しきめこまかくやっていかなければならぬと思います。ただ私は中小企業の切り捨て論とか、転換をするのは上のほうから指導するとか、進めなければならぬとか、そういうことは少なくとも考えておりません。大臣も、この間御注意がありまして、私が申し上げましたら、そういうことはない、自分の言い方が悪かったのじゃないか、これは外でそういう発言をしておりますので、そういうふうにおっしゃっております。しかし政策としては転換ということも今後十分考えられるから、そういう点も含めて政策は進めていきたい。しかし特別に救済資金であるとか、あるいは転換資金というものをこしらえて、それでおまえたちどしどし転換をするのだという政策は、私はとるべきじゃないと思います。
  55. 森(義)委員(森義視)

    ○森(義)委員 大臣が転換転換と言われるのだけれども、私はそういうことは考えておらない。それは中小企業庁長官は直接中小企業担当の最高責任者でありますから、大臣があたかも、中小企業で採算の合わぬやつは切り捨て、あるいは転換さしていくのだという印象を国民に与えるような発言をされていることについては、そういうことを軽率に言ってもらっては困る、そういうことを大臣がおっしゃるならば転換資金を十分に準備してから言ってもらいたい、こういうことをあなたからはっきり言ってもらいたい。大体新聞には中小企業庁長官の意見は出ません。大臣が座談会に出て、大臣の意見発表が載るわけですから、そういう問題については省内で、はっきりと統一してもらわないといけないわけです。われわれはいま、中小企業のこういう未曾有の倒産の危機で、とにかく地元へ帰りますとどんどん相談を受けるわけです。中小企業倒産問題については金融の相談が一番多い。しかし先ほどおっしゃったように、金融の引き締めが倒産一つの大きな原因にもなっている。しかしそれよりもなおかつ構造的な要因が中小企業倒産をこういうふうに大きく拡大した要因になっている、こういうことを言っておられるわけです。構造的な要因とは何か。中小企業庁長官先ほどの答弁では、いわゆる中小企業近代化、こういうことが当面中小企業のこれからの総合的な対策の中で十分取り上げられていかなければ、金融面の手当てだけでは長期の見通しに立った倒産対策にはならない、こういうようにおっしゃっているわけです。それでは中小企業近代化とか体質改善とか、こういうものを具体的にどういうふうな点において今日しなければならない要因を持っているのか、あるいは中小企業近代化とはどういうことなのか、そのために政府は積極的な中小企業の援助のため、どういう財政的な準備をしているのかということについて、先ほど説明がなかったわけです。先ほどは当面の倒産対策に対する金融的な施策の問題についてだけ、われわれは非常に不十分だと思いますけれども、大体説明があった。私は中小企業が持っている構造的な要因について、もっと具体的な内容に触れた、政府のきめのこまかい答弁をこの際お願いしたいと思うわけです。長官のほうから、非常にきめのこまかい中小企業体質改善近代化問題についてどういうように考えているかということについて、御説明願いたいと思います。
  56. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 御指摘の点でございますが、これはもう先生よく御承知のことだと思いますが、先ほど申しましたように、わが国経済が開放経済体制に移行するという事態に即応して、均衡ある経済の成長発展、これをやるためにはどうしても中小企業の急速な近代化が必要であるということは、先ほどるる申し上げたとおりであります。これをどういうようにするかということは、去年の七月に制定されました中小企業基本法というものがございますから、その線に沿って所要の財政、税制、金融的な措置をとってまいる。もちろんこれは先生方のほうからおっしゃれば、基本法でうたってあることはまだちっともやっていないじゃないかとおっしゃると思います。その点は私も全面的に否定するものではございません。しかし基本法で述べられた方向に従ってこれをやるわけでございますから、その一項目一項目について説明をしなければならぬことになるわけですが、大体のお話を申し上げますと、第一には設備近代化、事業の共同化、それから技術水準の向上、商業関係については特に中小商業の経営近代化、これは小さい金でございますが財政資金を出しているわけです。それから小規模企業の施策、これがいままでのところ一番おくれているのではないかということを御指摘いただいているのですが、そのとおりだと思います。それから下請取引関係の適正化、こういうような各般の問題にわたって、財政的な措置、法制的な措置、税制面の措置金融面措置等を総合的にやっていきたいというふうに考えております。特に設備近代化問題については財政資金で四十五億、御承知のとおり中小企業近代化資金というものがございますから、これが大体府県ベースに直しますと、貸し出しのベースに直すと百四十五億円くらいになります。こういうものを来年はさらにふやしたい。  それから政府関係機関の機能の強化。  それから信用保証協会、これの活用による——これは中小企業信用保険公庫へ来年度は九十八億円の出資、これは要求でございまますから、全部そのとおり通るかどうかということはまた別問題でございますが、通産省としてはぜひ確保したい。それによってこの金を地方にある保証協会に低利長期貸し付けて、そうして中小企業の信用保険を大いにやらせようということでございます。そういうふうにやって、中小企業金融全般についての質量両面にわたって、この円滑化をはかってまいりたいというふうに考えております。  それから先ほど申し上げました事業の共同化の例として、工場の集団化の問題がございます。これも工場等の集団化、事業の共同化も強力に推進するということで、特に中小企業の高度化資金を大幅にふやしたい。ことしから見て九十億の貸し出しベースでございますが、これを大いに上げて、しかもこの貸し付けの条件がいまのところ非常にシビアでございまして、中小企業の方から非常にこの貸し付けの条件を緩和してもらいたい。たとえば現在は一年据え置きの四年償還でございます。これをもっと償還期間を延ばしてくれ。  それから土地なんかの取得について。土地の取得の予算の単価が実際は非常に低いのです。そうすると結局所要資金の半分を無利子で貸すということになっておりますが、実際いろいろやってみると二割か三割くらいしかいままでの金は出ないということになるのが、一つは予算単価が低過ぎる。そういう点は是正してもらいたいというような要望が出ておりますので、そういう貸し付け条件の改善ということに力を入れて、金も大いにふやしたい。  それから特に近代化のおくれております商業部門等につきましては、ことしから予算をとりました商店街ぐるみの近代化、それから店舗の共同化、これは例の寄り合い百貨店、それから共同スーパーというようなものについて小売り商の方々が五軒以上集まってそういうものをやる場合には、そのかわり計算は共同でやっていただくという条件がございますが、本年度で約六十件以上の件数がございます。小売り商の店舗共同化の助成金、こういうものも大いにふやしたい。  また流通機構の合理化、たとえば共同仕入れ機構に対する助成というようなものも考えてまいりたいというふうに考えております。  なお、税制面につきましては、小規模事業者の税負担の軽減、あるいは自己資本の充実に必要な税制措置を進めてまいりたいと思いまして、せっかくいま大蔵省当局と折衝中でございます。さらに技術革新の伸展に応じました技術の向上、あるいは労働力不足に対応する、やはり労務節約的な機械というか、そういうやり方にだんだん中小企業を切りかえていかなければならぬ。そういうものに対応する経営合理化というものがどうしても必要でございますので、中小企業の従来から府県、五大都市等を通じてやっております診断指導事業というものは大いにやっていく。あるいは技術指導、これも相当各府県等でやっておられますが、そういうところの施設を増強するというようなことをやりまして、中小企業の技術水準の向上に資してまいりたい。  それから最後に小規模事業につきましては、特別に小規模事業経営改善普及事業の拡充、そのほか信用保証協会等を通ずる小口金融というものも円滑化するという方策をぜひ考えてまいりたいというのが、大体のいま考えております中小企業対策の趣旨でございます。
  57. 森(義)委員(森義視)

    ○森(義)委員 いま中小企業庁長官、そういう答弁をするだろうと私は思っておったのです。近代化あるいは体質改善について、これは中小企業基本法を中心にしていろいろなことが羅列されております。長官がいま言われたようなことは、全部形式的にはそれぞれ必要な、重要なことなんですが、その一つ一つを分析してみますと、皆欠陥だらけなんです。私はいろいろな下請関係問題あるいは救済資金問題、税制の問題等について一つ一つ具体的な欠陥について、今日の倒産の大きな原因になっている問題について指摘し、改善してもらいたいと思って、これから具体的な質問に入りたいと思うのです。  まず下請関係について、下請代金支払遅延防止法という法律がある。ところがこれはいつも商工委員会で、二カ月の支払いが実際は八カ月に延びておる。こういう問題について十分な監督をお願いしているのですが、中小企業の下請に対する代金の支払いが、手形サイトが延びるだけではなくて、今日二割くらい据え置きされるという、代金支払いのたとえば百万円の品物を売ると、八十万円が八カ月の手形で渡されて、二割天引きされる。こういう支払い方法をやっておる。そうすると手形を八カ月でもらいまして、その八カ月の手形を日証あたりへ持っていって割りますと、日歩十銭、そうすると八カ月の二割四分です。二割四分の金利をとられるわけです。それでは中小企業の今日一割から一割五分のマージンのある商品が、手形を割る金利だけで二割四分とられる。そういうことで中小企業がいま手形サイトの延びることによって苦しんでおるわけです。ところがその手形は、しかも納入商品の代金に対してすでに二割据え置きされた金しかもらっておらない。こんな形で下請関係の一例をとりましても、中小企業は成り立っていくはずはないわけです。こういう問題について下請代金支払遅延防止法ができているのだから、こういうふうにこういう法律だけ出して、それができているから下請と中小企業との関係については改善されておる。これは代金だけの問題ではなくていろいろな問題があるわけです。それはたとえば現金で払うからその五%まけろとか、あるいはマージンの中でそういう親企業会社からのいろいろな圧迫があるわけです。私は単に下請代金の支払遅延防止法を行政審議会等から法が生かされてない、厳重にこの法が生かされるように指導しよう、こういうことが出ているようでございますけれども、それだけではなくして、大企業との取引関係の調整、こういうもっとシビアなものを出す必要があるのじゃないか、下請代金支払遅延法防止の監督、こういう問題は公取でやっているのですか、ところがその公取のいまの陣容で事実問題をぼくは把握してないと思う。把握してもそれを公取が監督するだけの能力を持っていない。こんな法律ができているから大丈夫だ、こういうことでは実際われわれが末端に行って中小企業の事情を聞いておりますと、そんなものは出しっぱなしだ、こういう言い方なんです。そういう問題について先ほど出された具体的な近代化あるいは体質改善のための政府当局の施策というものが、法律の出しっばなしではなくして、それが実際どう運営されておるかという問題について、法律を出した以上はそれを守らせなければいかぬと思うのです。そういう問題について、たとえば公取委員会をもっと強化をして、そうして監視、監督を厳重にさせるというふうな意図があるかないか、あるいは通産省の出先機関を督励して、そういう問題についての監視、監督を厳重にする、こういう意図があるかないか、あるいはそれを含んだところの、私が申し上げましたように、大企業との取引関係の調整法、こういうものを出す意図があるかないか、これは大企業との取引関係の調整法というのは、先ほど長官が技術の開発の問題について中小企業に対する話をされましたけれども、たとえば中小企業が技術開発をやりましても、いつの間にか大企業、親会社にとられてしまって、親会社から注文がないと思っておると親会社がつくっている。三年間もかかって機械部品関係ですが、自分のところで技術の開発をした、そうすると親会社がつくっておる。それはどんどん親会社に大きな仕事をとられてしまうわけです。それだから技術開発の援助をされてもこれを保護するあれがなかったらだめなんです。だからわれわれが四十六国会中小企業者の事業分野の確保に関する法律案を出したわけです。ところがこんなものは全然審議されずに消えてしまったわけです。中小企業がいかに独自な技術開発をし、努力をしても、できたとたんに大企業にとられてしまう。こういう関係を何か調整する法律を出さなかったら、いわゆる下請代金の支払い遅延防止の問題も重要だけれども、そういう大企業中小企業、下請と親会社との関係、こういう問題の調整法を出さなかったら中小企業はたまったものじゃないと思う。何といったって大企業中小企業に対する収奪性といのは、一貫してきびしいものですね。こういう状態の中で単に下請関係問題についてこういう法律を出して、政府はその適正化をはかっておるというだけでは困ると思う。  いま申し上げましたようなことについてひとつ長官の具体的な考え方をお知らせ願いたいと思う。
  58. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 下請代金支払い遅延防止法につきましては、この前の通常国会以来もう少し運用を強化し、適正化しなければいかぬじゃないかというお話がございまして、いままでは公正取引委員会だけがこの法律を運用して、中小企業庁はどちらかというと、親のほうでなくて子供のほうからいろいろ調査をして、ちょっとぐあいの悪いところを今度は公取へ審査を請求するというふうなやり方をしておった。それだけでは不十分じゃないか。子供のほうを聞いてもなかなかほんとうのことが出てこないんじゃないかということから、本年度に入りましてから中小企業庁で、これは法律に権限があるわけですが、親企業調査するということで、一年間で約八千の親工場の調査をしております。それで、先般四——六月の分について調査をいたしました結果、ちょっと概略を申し上げますと、いま先生もちょっと御指摘になりましたが、支払い滞留の月数、これが二カ月以上を越えておるものが全体の八・六一%となっております。特に鉄鋼、金属機械、電気機械、こういう関係は悪いですね。窯業、土石製品等は一〇%以上あります。最高は金属関係の一四%。  それから手形、現金の割合でございますが、これは手形支払いの割合が大体六割近く、そしてだんだん現金支払いが減るという傾向にございます。それから支払い手形のサイトでございますが、これは百五十日を越えたものは、手形をもらっても御承知のようになかなか金融機関に行っても割り引いてくれないわけです。法律では御承知のように六十日以内に支払わなければいかぬ。したがって市中金融機関で割り引き得るような手形でやりなさい、こういうことにしておりますが、百五十日を越えるものは一応法律違反の疑いがあると見まして、そういうものを調べましたら、これが全体の一三・九%ございます。それから支払い期間六十日となっておりますが、支払い期間が六十日を越えるものが全体の一四・八%と相当高い比率を示しております。それから支払い期間の非常に長いものも目立っておりますが、これは電気機械等、化学、大体そういうことで、この調査の結果、いま申し上げましたようないろいろの法律違反の疑いのある条項を拾い出しまして、それに該当するものが三百四件あります。この調査は千九百六十四やりまして、千七百五十の回答−回答率は相当いいのです。したがって、これから地方通産局をして、この違反の疑いのあるものを一々呼び出してヒヤリングをやりまして、そしてさらになかなか改善の見込みの薄いものとか、あるいは法律違反の疑いの濃いものは通産局の人間が立ち入り検査をやる。そういうふうにして、われわれのほうとしては相当厳重に始めておるのですが、実際のところはいま人が足りませんので非常に弱っておるのです。それから予算も——実はこれは予算なしに始めた。国会の皆様方におしかりを受けてこれはいかぬというので私が命じたのですが、予算なしで始めた。そういう関係もございますが、来年度は相当人員もふやすし、いろいろな調査費、旅費ですね、そういうものも十分確保したい。それから公正取引委員会のほうには、われわれのほうで調べた結果、どうしても言うことを聞かぬというものは公取にこれを突き出す、こういうことにして相当シビアな運用をしていきたい。それから最後におっしゃった大企業との取引関係の調整法の問題は、ちょっと中身がどの程度のものであるか、またお示し願った上で十分に検討してみたいと思います。
  59. 森(義)委員(森義視)

    ○森(義)委員 この問題だけをやっておっても、だいぶ時間がかかると思うのです。たとえば中野さん、今年八千件の調査通産省でやった、大体公取が今年じゅうに千件やるというているわけですね。大体親会社と称せられるものは約八千社ある。その親会社中小企業庁のほうは下からやったのか上から……。それは公取では年内じゅうに千社を調査するといっておるのですが、たとえば親会社が払い出す手形に払い出し期日を書いてない手形が最近多いのです。そうすると手形サイトが何日かわからない。あるいは検収期間、これは検収期間を何日に置くかという問題も、検収期間を終えた日から換算して六十日なのか、あるいは検収期間を含んで、現品が届いてからの六十日なのか、こういう問題調査の中から出てきておると思うのです。この下請代金の問題だけでも、これはたいへんな問題ではないかと思う。それからいわゆるメーカーと代理店の間の融手がものすごく多いわけです。それをほかへ回転している。ひっくりかえると一ぺんですね。これは直接親会社と下請という関係ではないけれども、親会社代理店関係問題、親会社というか、メーカーと代理店問題、こういう問題も含んで大企業との取引関係の調整的な法案を一ぺん検討してもらいたい。特に先ほど申しました、わが党が出している中小企業者の事業分野の確保に関する法律案、あの問題ですね。これは私は技術の窃盗罪だと思うのです。とにかく苦労してやっとつくる。研究費も何もないのにやっとつくったものを出したら、もう大企業が出している、こういう窃盗に類した問題をチェックする方法を考えないと、中小企業の立っていく道はない。そういうものを含んだ中小企業と大企業関係問題——取引関係だけではなくて全体的な問題を含んだものを何らか考えてもらいたい。これは私どものほうでも考えますけれども、ぜひお考え願いたいと思う。  それから下請関係のことを今度は出そうと思っておりますが、下請受注あっせん機関——今度大阪と名古屋につくられるとか聞いておるのですけれども、フランス等でやっている下請受注あっせん機関、これのもっと広範囲なものをつくって、下請機関との円滑化と調整をはかっていくということをやられる意思があるかどうか、あるいはいま考えているものをもっと広範囲に——東京なんか倒産が一番多いのでしょう。こういう問題もお考え願いたいと思う。  それから税金の問題から、近代化資金問題——近代化資金問題も、一年間据え置き、四年間で返済ということですが、いま中小企業資金を借りても、そんな条件で返済して採算が合う企業はない。金がないから借りているわけです。これは、政府中小企業近代化のためにこれだけの資金を出しているんだという一つの宣伝材料に使われたようなものですよ。やはり十年くらいの返済期間に延長してもらう。金額も三百万で押えられるという形では——中小企業近代化するのにどれだけの金が必要であるか、これはいろいろ業種によって違いますけれども、金属関係、鉄鋼関係ですと、そんな三百万くらいで買えるような機械はないです、現在。何千万円というような機械ですね。こういう機械を入れたらこういうふうになるということを考えておっても、政府が考えておる近代化資金のあれではとても買えない。しかもそれが一年据え置き四年間で返済せねばいかぬ。そんな短期で償却できるような利潤は中小企業にない。そういうことになりますと、結局、近代化設備資金という名前で借りておるけれども、実際は、それはどういう方面に使われておるかわからない。全体の金融操作の中で一つの手当てをされる、こういう役割しか果たしておらないわけですね。これは長官のほうでも、そういう設備近代化資金の返済期間の延長という問題について考えておられると思いますけれども、これは中小企業の利潤から考えていって、今日、それだけの期間で償却できるような企業というのはほとんどないという見地に立って、ひとつこれの期間の延長というものをぜひ考えていただきたいと思うわけです。  それから、労働力の不足という問題ですね、これは先ほどどなたかおっしゃっていました労働倒産、労働力が足らない、労働力が足りないから賃金が上がる、それでコストが高くつく、こういうことは、労働力の不足と、それから不足するために賃金が上がる、こういう問題で特に問題になっているわけですね。特に輸出雑貨の問題なんか、低賃金に依存しておったものが、労働力が不足して、その低賃金が得られなくなってきたので、圧倒的な被害をこうむっていますね。開放経済の当初には、日本の輸出雑貨なんというのは、開放経済の中ではどんどんと伸びていくんだという見解をとっておったけれども、低賃金に依存しておったそのことが、今度は、労働不足の中で依存できなくなってきて、逆にもっと低賃金の香港だとかフィリピンだとか台湾とか、ああいうところの低賃金に切りかえられている、そういうことなんですが、そこで、中小企業の労働力確保問題について、これは中高年労働層の確保だとか、こういうようなことを言っておられますけれども、私は、商工委に最初に出席したときに、池田総理に、そういう問題について、これは高度経済成長政策のほんとうのしわ寄せなんだ。いわゆる大企業に対する設備投資ということでどんどん企業が拡大していく。若年労働力がどんどんと大企業に吸収されていく。したがって中小企業では人手不足になる。やむを得ず中小企業は賃金を上げて大企業並みにする。それだけでは追いつかないから厚生設備をどんどんと改善しなければいかぬ。中小企業資金難ですが、人を雇うのに遠いところまで雇いに行かなければならぬ。いわゆる民度の低いところまで雇いに行かなければならぬ。それで、奈良県あたりでは四万円かかる。それを連れてきたら、寄宿舎をつくらなければいかぬ。そういう形で、大企業と非常なハンディがあるのです。人手不足、労働力不足ということでものすごくハンディがあるわけですね。ここらあたりで、中小企業の労働倒産という問題ですね、そういう問題一つの要素になっておる段階で、中小企業の労働力の確保問題について、通産省、特に中小企業庁としてはどういうふうに考えておられるか、その対策があれば、ひとつお聞かせいただきたい。
  60. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 いま御指摘ありましたように、中小企業にとって、労働力不足、確保の困難ということは非常に問題でございます。われわれのほうも、再々、労働省のほうにも要求いたしまして、これは職安の窓口のところからもう問題があるわけなんでございます。特に最近は、中小企業の皆さん方が行って直接に新規卒業者を勧誘したりするようなことを禁止するような通達を労働省で出したりして、非常に問題が複雑化しております。結局は、中小企業経営合理化をして、福利厚生施設その他の環境というものを中小企業がりっぱにしなければ根本的には解決しないわけでございます。しかし、さしあたりのそういういろいろな問題もございますので、福利厚生施設の拡充その他環境の整備、そういう方面にも努力していくことと、それから、今度は、実際の職安の窓口の指導等をもう少し中小企業に有利というか、不利にならないように——いまの現実の姿は不利になっているように私は思いますので、そういう点は労働省に申し入れをいたして、相談をいたしておるところでございます。
  61. 森(義)委員(森義視)

    ○森(義)委員 中小企業の労働力不足の問題について、いつもこれは職業安定局長も、そういう厚生設備の完備、大企業に劣らないようにする、賃金は大企業並みにしておるから、今度は厚生設備の完備だ。ところが、厚生年金の貸し付け金で中小企業の厚生設備をやろうとしたところ、あれだけの申し込みがあって、あれじゃとっても厚生年金の貸し出しのあれでは、実際問題として厚生設備はできませんよ。だから、厚生設備をよくするといわれたって、その厚生設備を充実するために、政府はどういうふうに具体的に、中小企業の厚生設備に対する金の手当てをしておるのか。こういう問題をはっきりさせないと、申し込みをされて、あすこでばさっと切られてしまって、とってもそれは事実問題としてはできないと思うのですね。だから、協同組合あたりで総合の宿舎を建てる。たとえば木材なら木材の協同組合が総合の宿舎を建てて、そこで総合のまかないをやる、あるいは給食設備を一緒につくる、こういう方法で業者は業者なりの配慮と苦労をしておるわけであります。ところが、政府政策というのは、そういう問題については絶えず、厚生設備をよくし、中小企業に労働力を集めるのだ。それはだれでも知っています。それに対してどうしたらいいかという手当てがないわけです。そういうところには、金繰りに困っている中小企業は、金がなかなか回らない。そうすると、結局、労働力が来ない。だから労働倒産というような形になっていくわけです。だから、一歩手前の措置というのが非常に重要だというのは、そういう法律を出しただけじゃなくて、それに具体的な裏づけをはっきりしなければいかぬ。そういうきめのこまかい指導が今日、中小企業倒産の中では行なわれていない。あとは、何ぼ倒れたんや、それと、どんな状態だったものが倒れたか、どういう形で倒れたか、原因はどこにあったかを調べるだけで精一ぱいです。おそらくは通産省の大阪の通産局中小企業課長の井川さんは目を回していますよ。私が行ってみたら、とにかく事情調査するだけで精一ぱいなんです。それに対する手当てというところまではとても手が伸びないわけです。先ほどおっしゃったように陣容が足らない。しかし私はこの機会に、中小企業に対するそういう具体的な政府の考えておる政策が、ほんとうに生きた政策として浸透しておるかどうかということ、そのことをぼくはやはり十分に監督してもらわないと、ほんとうに中小企業のあれにはならない、こういうふうに思うわけなんです。  それから、歩積み両建ての問題なんですね。これはずいぶんと私も実際に中小企業に当たってみて、こんなにひどいものかということを身をもって痛感した実例があるわけです。これは四十六回国会の商工委員会で、歩積み両建ての問題がやかましく言われて、大蔵省銀行局としても、これは六月から一年以内に打ち切るように、あるいは、前の福田通産大臣は、一五%ぐらいはまあ何とか良心的なものとして認めなければいかぬというような意見があったのですが、私の調査したあれでは、相互銀行関係ですね、これは名前を出していいですが、近畿相互。二千万円両建てしておって、二千五百万円しか貸し出ししない。それで、経営者に話してみると、何というか、銀行のほうではそれ以上の融資は全然しない。そうすると、五百万円実際借りて、それに対して二千五百万円の金利を払って、その預金利子とそれから借りている利子の差額を見ますと、やはり五銭以上になっているんですね。こういう五銭以上の金利で中小企業が成り立っていくようなあれは今日ないんですよ。この問題についてはおそらく、大蔵省銀行局のほうで厳重なあれをやっておられると思いますけれども、私のほうでも、調査したやつはどんどんと突き上げていきますから、具体的な事例に対してはやはり間髪を入れずに警告を発するなり何らかの処分をするなり、そういうことをやることを考えてもらわないと、銀行局のほうでいま調査をしておる、それで、よくなってきておるというような形では、問題の解決にならないと思うんです。相互銀行に行きますと、そんなことを言うたら相互銀行は成り立つかい、そういう態度ですね。いままでだったら、どんどん借りてくれ、借りてくれ、それで実に手続は簡単なんですね。先に金を貸してくれるし、手続はあとや、そういう形なんです。ところが、いまこういう状態になってきたら実に冷淡な態度です。そういう問題について、特に歩積み両建て問題については常に通産省大蔵省当局との連携をとってやってもらっておるのだと思うけれども、具体的な事例において即刻何か処置をするようなことをぜひ考えてもらうのが、今日の緊迫した中小企業倒産——これはまたどんどん出ますよ。そのときに対する一つの大きな対策ではないか、こういうふうに思うのですが、その点どうですか、中小企業庁長官。われわれがここの銀行はこういう両建てをやっておる。これを何かと援和する方法大蔵省あるいは通産省あたりからなにしてくれといった場合に、直ちに効果ある政策が指示できるかどうか。そういうことをわれわれが事実を持っていきますね、そうした場合に、それを直ちに大蔵大臣方針に基づいて、これはいかぬということで改めよという指示ができるかどうか。銀行局長来ていますか。
  62. 二階堂委員長(二階堂進)

    二階堂委員長 量行局長は見えておりません。大蔵省から徳宣特別融課長出席されておられますから。
  63. 森(義)委員(森義視)

    ○森(義)委員 それじゃ大蔵省特別融課長ですか、そういうことができるかどうか、ひとつ御答弁願いたい。
  64. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 われわれのほうでも中小企業の側に、いままである程度聞き込み程度のものはやっておったのですが、特に中小企業庁としても統一的にこの問題中小企業の側から、これはヒヤリングになると思いますが、やってみたいと思っていま準備をしております。  それから銀行局のほうは、確かに十一月の末で半分に、一年間で過当な歩積み両建てをなくして、その半分を十一月か何かでなくしていこう、こういうことで、そのことで相当厳重な銀行検査をやるというふうに私は聞いております。あとで銀行局のほうからお話しがあると思います。  それから公正取引委員会のほうでも、ことしの三月にやって、九月にもう一度アンケート調査をやっておりますので、いまその結果を集計中と聞いております。そういうものを聞きまして、いろいろ対策をやっていきたい。  それからいまの具体的な事例がございましたらぜひお聞かせ願いたいと思います。ただそれを銀行局にいって、それを銀行局が一々つかまえてやるかどうかということは、そこまではちょっと行き過ぎのような気がしますが、しかしわれわれのほうでは聞いたら聞きっぱなしじゃなくて、それは当然大蔵省に連絡をとる。ただあとの処置をどうするかというところまでやれるものかどうか、その辺のところは研究問題だと思っております。
  65. 徳宣説明員(徳宣一郎)

    徳宣説明員 ただいまの具体的な事例お話しがございました。相互銀行は実は私特別融課長の担当外でございますので、さっそく帰りまして局長に復命したいと思うのでありますが、具体的な事例がございましたらやはりお教えいただいて、適当な措置を講ずる必要があると思います。局長に申し上げまして御指示に沿うようにいたしたいと思います。
  66. 森(義)委員(森義視)

    ○森(義)委員 最後に一言だけ、中野長官に。倒産の事前措置、こういう問題先ほど考えなければいかぬ、倒産対策として、こうおっしゃった。それの具体化を促進してほしいと思うのです。これは通産省政府の出先機関、それから金融機関、それから業界、それから地方自治体の商工課とか、こういうものとの共同の相談所を、実際中小企業のおやじさんというのはなかなかわからないのです。どないにしたらいいのか、不渡りもらっても、それで頭にきてしまって、走り回って、どこにいっていいのかわからないのです。どこへ相談持ちかけていいのかわからない。だからそういう事前相談の窓口をわれわれは早急につくってほしい。そうすると、そういう機関が集まって窓口をつくりますと、かなり事前に防げるあれがあるのですよ。ぼくらが聞いても、こういう手を打ったら防げるというのがあるのですね。だからその専門家機関設置されたら、ぼくはある程度防げる問題があるのじゃないか。だからそういう相談の窓口を、範囲はどういうかっこうにするか、私は政府の出先機関金融機関、それからその企業の組合、地方自治体の機関、こういうことでいいと思うのですが、それをひとつぜひ早急に設置をしてほしいと思うのですが、いかがですか。
  67. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 いまちょっと聞きましたら、予算委員会でも質問がありまして、大蔵大臣はいま通産大臣を兼任しておられますので、どっちの資格でおっしゃったのかよくわかりませんけれども、いま提案されたそういう窓口の相談所の設置問題ですけれども、十分検討するということを言われたそうであります。私としても同じ趣旨で、早急に……。
  68. 二階堂委員長(二階堂進)

  69. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 時間がございませんから参考人に先に一、二伺います。  参考人の御意見を承っておると、こういう戦後空前の倒産というのは、金融引き締め政策ばかりが原因じゃない、構造的な要因に基づいた倒産がある、こういう考え方に立っておられるようであります。それでたとえば金融引き締めを緩和したところでこの倒産状況を解消するというわけにはいかぬだろう、だからこれに対する対策というのは総合的な対策が必要じゃないか。中小企業庁長官もそう言われたし、参考人の方々もおそらくややその説に近いのじゃないかと思うのです。しかしこの金融関係者として原因金融引き締め政策以外にあるんだと言うことは、一種の責任を回避するような形にもとられる。そこで私はその具体的な政策を、特に北野さんのところでは倒産に対してかけ込み相談なりに応じて日夜奮闘されておって御苦労さまと思うのですが、窓口としてこの倒産原因というものをもうちょっと私は分析して検討してほしいと思うのです。そしてその原因をつかまえたら、商工中金という、こういう中小企業金融機関窓口として、こういう対策が必要ではないか、こういうような積極的な対策があるかどうか。総合対策にまつほかはない、金融をゆるめただけでもだめだというだけでなくて——もちろん総合対案あったところで倒産がゼロになるというわけにはいきません。この倒産相次ぐ社会的な不安をできるだけ小さくして鎮静をするというペニシリン的効果が、皆無にする、倒産をなくするというような効果でなくても、少なくとも半減し四半減するというような具体的な考え方というのを、この機会に御意見があれば承りたいと思う。  それから、時間の都合上質問をさらに続けますが、あとで一括して答えてもらいたいのですが、商工中金あるいは中小企業金融公庫といっても、全金融機関のうちのウエートというものは三%、両方合わせて六%に満たないのですね。全金融機関の中で、三・五と二・五くらいですから、合わせてわずか六%に満たない程度の非常に金融規模の小さい機関ですね。ですからこれでは、当面政府金融機関によって意欲的に倒産対策を打ち出そうとする政府が幾ら注文してもなかなかそれはやっていけないと思うので、そういう意味で政府に対する要望なりというものもあるのじゃないかと思うのですが、この機会にその二点について伺います。  それから興信所蕪木さんに伺いますが、この資料をいただくと、実際何月にどういう規模で倒産があったということも必要であります。しかし、われわれが最も必要としておるのは、何が原因倒産したかということなんです。その倒産原因がはっきりつかめれば、おのずから対策の道もわかるわけであります。ところが、この倒産原因が六つか七つあるが、できればこの原因をもっとこまかく分析をしてほしい。これはどうもよその調査に注文をつけるわけじゃありませんが、日本でとにかくこういう全国的な信用調査をするのはお宅一つしかない。政府へ注文しても、これは東京興信所の資料ですということしかないので、ぜひひとつ倒産原因についてもっとこまかく分析してほしいと思う。たとえば地方の業績不振といっても、地方の業績不振の中にどういうケースがあるのだろうかと思うのです。それから放漫経営という中にも、どういう種類のものがあるのだろうか、労務関係問題が放漫経営の中に含まれているのかどうか知りませんが、そういったものはどうかな、こう思うわけでありますが、ひとつ注文申し上げたい。  それから、この一千万以下の負債をしょった倒産者、破産者——島口君は一千万円以上の倒産者に対して二十倍か三十倍か、こういうような見当も言われておりますが、興信所調査はしておりませんから正確にはわからないにしましても、直観として、勘として、一千万円以下の負債をしょって倒産したものは、一千万円以上に対してどの程度の割合にあるのだろうか。もちろん勘でけっこうですから、ぜひそれを教えてもらいたい。  それから、通産省倒産原因について調査がなかなかできないと言っておるのですが、こういうことができませんでしょうか。たとえば一定期間、ことしの十一月なら十一月、それからそれを東京都では東京都、大阪では大阪、名古屋では名古屋、こういう幾つかの特定地域にしぼって、これで一千万円以上は出ていますからいいのですが、一千万円以下の詳細な調査政府が依頼したらできるでしょうか。政府はやる気はありませんけれども、しかしまああるいは興信所という形で調査をされるほうが調べいいということもあるかもしれませんが、政府からそういう依頼があれば、一千万円以下のものをある時期、ある区域限定して詳細な調査ができるかどうか、こういう点を参考人に伺って、あとは長官とそれから各次官に伺います。
  70. 北野参考人(北野重雄)

    北野参考人 先ほど倒産原因につきましていろいろ大ざっぱなことを申し上げたのでございますが、私の御説明が少し舌足らずで、あるいは誤解をお抱きになったのではないかと思うのであります。その点まことに申しわけなかったと思います。  私ども窓口を通じていろいろ観察しておるところから申しまして、もちろん倒産原因の直接原因は金詰まり、それだけに金融引き締めが、いよいよ下部まで浸透してきた、これが一番大きな原因だと思います。しかし、そのよって来たるゆえんをずっとトレースしていきますと、中には金融引き締めが契機にはなっておるけれども、早晩長もちしないでお手あげになるであろうというような倒産企業もあるわけでございます。結局その原因はやはり構造的な要因が相当働いておる。不幸にして金融引き締めがほんとうに浸透してきたために、あるいはもう少し長生きしたものがここでお手あげになった、こういう感じがいたします。何といっても、先般来お話に出ておりますように、構造的な要因としては労働需給構造の変化ということが一番大きいわけでございます。労働力の不足に伴って賃上げをしなければならぬ、しかも人がななか入らない、これが一つの大きな原因。それから最近は、経済高度化とか国際競争力の強化の関係で、大企業が系列を強化し、あるいは選別を強化しておる。そのために系列から脱落する、あるいは打ち切られるというようなことの影響がございますし、それから技術革新によりまして、従来中小企業分野であったものを大企業がより安くいいものがつくれるというような面から、やっていけなくなる。それから一般の国民生活の水準が向上し、かつまた生活様式が変わるというようなことから消費構造の変化、これによりましていままで売れたものが売れなくなるというふうなことで、その面からの原因が大きく働いておる。それから先ほども森先生から御指摘がありましたが、貿易自由化と後進国の工業製品の進出というような関係で、先進国と後進国の板ばさみになって、もう事業が継続できないというふうなものが特に軽工業、雑貨関係なんかにあるわけであります。  それで、そういう点をやはり考えていきませんと、ここでかりに金融がゆるんだと仮定いたしましても、そうすればもちろん倒産件数なり金額は相当減ると思いますけれども、構造的な要因という問題があと尾を引くだろう。それだけに金融対策と並んで総合的な恒久対策をいまから打ち出していただく必要がある、こういうふうに考えるわけでございます。  それで、何といっても目先に控えております倒産をできるだけ少なくし、そして中小企業に悪影響を及ぼさないようにする即効薬は金融しかないと思います。それだけに、特にわれわれ金融機関としては、政府におかれましてもできるだけの措置をとっていただきたい。  それに関連いたしまして申し上げたいことは、倒産防止のための金融の際には、担保力が非常に足りないという問題が出てくる。どうしても信用補完制度をもっと拡充していただいて、これによって措置しなければならぬ。ところが、残念ながら、現在の信用保証協会の保証限度というものはその高くないのでございます。ところが、この間の北九州連鎖倒産措置をするにあたりましても、信用保証協会の保証限度七百万円、あるいは組合の場合には三千万円とか一千万円とかそういうものでつかえてしまいまして、ほんの一部しか倒産防止のための金融ができないというようなことになりまして、これではどうにもならぬというような問題があるのでございます。それから信用保証協会の保証をかりに上げるといたしましても、信用保証協会の基盤の関係がございまして、そう急速に上げられません。そういう点をどうするかという問題がございます。  それで、御質問のありました将来の対策、これは中小企業庁なり通産省大蔵省でお考えいただくことで、私のような者がそういうことを申し上げては口幅ったいのでございますが、かりに私見を申すことをお許しいただくならば、やはり将来に向かいましては、手前みそではございますが、組合による共同化ということをもっともっと進める必要があろうと思います。たとえばこの間の東京発動機の倒産の場合におきましても、私どものほうで手を尽くそうといたしましても、残念ながら組合もできておりません。急いで組合をつくっていただいて、それで何とか間に合わせる、これもなかなか急場の間に合わないということがございます。それだけに、中小企業庁におかれましても、下請の対策の一環としても、また倒産対策の一環としても、組合の結成を非常に強く呼びかけておられるわけでありまして、これが今後も特に重点を指向して、共同化、協業化、集団化という組合組織の強化——組合をもっとつくらせるということと、できている組合の内容を強化すること、これが第一の政策ではないかというふうに考えております。  それから、金融面におきましても、私どものほうは、御承知のように政府系の金融機関で、政府政策に即応してやっておるわけでございますが、特に金融面におきましても、お客さまの御相談に親切に応じられるような体制にしていきたい。少し口幅ったい言い方ですが、指導金融と申しますか、もっと事業の内容にもわれわれ自身も勉強いたしまして、御相談しながら、たとえば設備投資の場合でも、全体的に見ましていまその設備投資をすることが必ずしも適当でないというふうな場合には、もっと堅実な体質改善のための合理化投資に重点を置いておやりになるように、御相談に応じていくといったような面が必要だろうと思いまして、不十分ではございますが、内部でもお互いに勉強しようじゃないか、そして人を教えるならばよほど自分が勉強してかからなければならぬから、これをきめこまかく業種別に勉強してやっていこうじゃないか、こういうようなことを言っておるわけであります。  それから、信用補完制度の拡充強化をもっと思い切ってやっていただきたい。それには信用保証協会の保証限度を引き上げることだけでなく、信用保証協会の保証限度をいかに高めても、近ごろはもう組合単位になりますと、億というのはすぐ出てくるのであります。その場合に信用保証協会の保証限度一億あるいは三億なんということは、とうてい考えられません。そこでそういう融資については、できれば信用保険公庫が直接保険をしてくれ——かってございました融資保険に似た形になりますけれども、あれは逆選択でいけないといわれたのでございますが、今度は信用保険公庫が審査をいたしまして、そして金融機関が持ち出したものを、場合によっては一億、二億でも保険にかけてくれるというふうな新しい制度をお考えいただく必要があるのではないかというように考えております。大体そのようなことでございます。  それから、もう一つの大きな問題は、御指摘のように政府系の金融機関、これは中小公庫総裁からもお答えがあろうかと思いますが、三機関合わせて約八%でございます。いかにわれわれが努力いたしましても、中小企業向け金融の九兆に及ぶうちのわずかに八%であります。これではどうにもなりませんので、これも私一個の希望でございますけれども、いかに補完金融機関と申しましても、全体の八%はあまりにも少な過ぎるじゃないか。少なくとも全体の二割くらいを出せるようにならなければ、ほんとうの補完金融機関とは言えないじゃないか。これも私見でございますが、それにはどうしても財政投融資その他政府資金をもっと三機関のほうに思い切って投入していただく必要があるのではないか、こういうように希望いたしておるわけであります。
  71. 舟山説明員(舟山正吉)

    舟山説明員 中小企業問題金融面から見ますと、いま北野さんからお答えになりましたのと共通する点は多いと思うのでございますが、政府機関と申しましてもそれぞれ役割りも違いますので、私から一言だけ説明さしていただきたいと思います。  冒頭の私の説明は、意識的に問題を年末対策ということにしぼったのでございますが、そしてそのためには、健全な、まじめにやっている企業が連鎖反応によりまして連鎖倒産するということを、極力これは一義的に救わなければならぬということで、資金をそちらのほうに出すというつもりであることを申し上げたわけでありますが、そのときに、倒産原因といたしまして、連鎖倒産のほかに業績不振による倒産が相当なウェートを占めておるということを申し上げました。これはほかの方のおっしゃいましたいわゆる構造的な問題に関連するのでありまして、じみちに経営をやっておりましても、構造的な客観情勢の変化によりまして業績が不振になって倒産するという例も相当多いのでございます。これらは単に年末のみならず、来年にわたりましても、これは中小企業の根本的問題として解決をはかっていかなければならぬ問題であろうと考える次第でございます。  問題が広範になりますからその点は省略させていただくといたしまして、さしあたっての金融といたしましても、この公庫の金をできるだけ応急的に使うようにしておるのでございますが、市中金融機関の側におきまして、どうもどの企業を見ても過大に不安を抱きまして、おびえて金を出さぬという傾向もあるように思うのであります。金融機関経営者としては、さしあたって自分の貸し出しの安全確実をはかるということで、この企業はなまじっか貸し出しをするよりか手は出さぬほうがいい、こういったような心理もあると思いますので、これを直さしていかなければならないと思います。また企業者の側におきましても、先ほど何か相談機関が必要であるとおっしゃいましたことは、まことに適切な御意見であると思うのでありまして、すぐに町の金融機関等に借りにいかれますほかに、私どものような政府機関に御相談していただきたい。そうすれば及ばずながらできるだけの御助言を申し上げたいというふうな気持ちであることを申し上げます。  それから、構造的な問題となりましても、中小企業近代化合理化をはかる、あるいはやむを得ずして転換をはかるといったようなことにつきましても、先立つものは資金でございますから、私どものほうも資金ワクを大幅にふやしていただきたい。特に来年度の予算編成の時期にあたりまして、この点を強く希望しておるということを申し上げておきたいと思います。
  72. 蕪木参考人(蕪木重二)

    蕪木参考人 先ほど御指摘の企業倒産原因について、もっと詳細に分類してほしいということでありますが、これは私ども現在の企業倒産原因を六つに分けておりますのは、数年前からやってきております。実は今日のように構造的欠陥が金融引き締めとともに倒産を激発させておるということになりますと、多分に内部要素が変わってきておるということも事実でございます。そういった関係で、これは来年の一月を基準といたしまして全面的にこの分類方法を変えて、詳細にもっと深く掘り下げてみようかということを決定しております。  それから、現在一千万以下の企業倒産がどのくらいあるかという御質問でございますけれども、これは私ども簡単に数字のとりようがございませんし、いままでもずいぶん考えておりました。それで一千万円といいますと、現在企業経営をやっておる会社でございましたら、倒産した場合には、十人でも、あるいは五人で経営しておっても負債整理は大体もう一千万以上になる。月商大体百万の場合といたしまして、大体倒産するときは負債総額は平均五百万くらいになりますけれども、百万といたしましても、その利益率が一割にしても十万しか出ないということになれば、二、三人の従業員を使ったら、もうそれだけの経営がやれないという計算になりまして、いまの問題から見まして、いまの一千万以上の集計でも、大体日本のいまの経済界の倒産状況という大部分の数字はある程度とれているのじゃないかと考えられる面がございますし、今度やるとすれば、五百万以上まで細分化してみたいということも考えております。これは先ほど御指摘の、地区的に分類してやってみてはどうかというので、いま名古屋あるいは神奈川県地区は東京より企業規模も小そうございますから、そういう方面から最初取り上げてみようかと思います。ただ東京あるいは大都市の場合の負債総額一千万以上になりますと、地方都市にまいりますと——大都市で一千万以上といったら地方都市では五百万くらいの業容じゃないかと思いまして、地方都市の場合は、あるいは小さな企業であって、月商あるいは業容がそれほど大きくないというようなことで、相当経済的な問題になるかもしれませんので、こういう点も十分研究せなければならぬと思います。それから五百万までは私どもの力でもやっていけるのじゃないか。そしていま申しましたように、手始めに五百万、地区的には一応つけてみようかという考えを持っておりますので、これでひとつ御了解願いたいと思います。
  73. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 もう一つ、たとえば一千万以下を政府から依頼されて——もちろん有料で、金を出しますよ。政府がやれないって言うんですから、依頼されて、ある時期実態調査を深く掘り下げてみたいというときに、ある地域に限って全部倒産状況を上から下まで調べてみる、こういうことを依頼された場合に、恒常的にずっと調査するのじゃなくて、ある一カ月調査ができるだろうか、こういうことです。
  74. 蕪木参考人(蕪木重二)

    蕪木参考人 たいへんむずかしい御質問でして、いまの私どもの組織と力だけでは、おそらくとうていできないのじゃないか。あるいはこれは政府機関協力して私ども企業——いま相当数の資料が保管されておりますが、そういうことを参考にしても、二百数十数万という企業数の中のまた一部の企業倒産なんでございますけれども、それが小さな、たとえば五十万、十万でもやはり倒産倒産だともしみなすとすれば、個人企業の場合は大体におきまして銀行取引が中止になる、また普通の企業の場合でも取引停止になるということが、大体倒産の数字となってあらわれてきますし、個人の場合でしたら、おそらくは個人でもあるいは三百万、あるいは五百万、あるいは二百万という整理があるかもしれませんが、その場合銀行の取引は停止になったとしても、やはり個人でなおかつ家族の名義や何かで普通預金取引もできますから、倒産という限界を見定めることがたいへんむずかしい問題になってきますし、この段階ではむずかしいのじゃないか、こういうふうに申し上げたいと思います。
  75. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 その問題で、私が言うのは、一定時期、特定地域、そうして法人でもいいのですが、なかなかできないようです。できないようだとすれば、どうでしょう、中小企業庁か大蔵省で、金融関係ですから、そういう調査を一回やってみる必要があるのじゃないかと思うのですが、大蔵省中小企業庁かどこかで、その問題をもっと掘り下げて原因を究明してみるつもりはありませんか。大蔵次官あるいは金融関係のどなたか……。
  76. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 これは前にも何べんも申し上げておるのでございますが、ちょっと役所でそういう調査をやるということが実際できるかどうか。いま言われたように、興信所でもむずかしいということを、われわれ役人が労力の問題もありますし、実際そういうものに一々行って、特に個人は、銀行取引停止とかそういうものが表にあれば、倒産とつかまえられるけれども倒産の実態が何かということもやはり研究してかからなければいけませんので、勉強はしますが、ただ原因調査は、先ほどちょっと申し上げたのですが、過去の例について相当ケース・スタディというような形で勉強はしておりますけれども倒産そのものを政府機関で統一的に調査するということは、ちょっと困難じゃないかと思います。
  77. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 税務署か銀行かそういうところで調査はできませんか。毎年、毎日やれという意味じゃないですよ。ある時期を区切ってそういう調査はできませんか。そうでないと、なかなか原因がつかめないのじゃないですか。それから実態も……。一体企業倒産戦後最大が毎月毎月繰り返されて、大きな社会不安をかもしておるのに、この問題に対する対策を立てるところ——責任を持ってその対策を立てるところはどこですか。大蔵次官も通産次官も中小企業庁長官も考えてもらいたい。どこが中心になってこの問題に取り組んで対策を立てるのですか。
  78. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 いま中小企業問題がほとんどでございまして、中小企業に一番影響が大きいわけですから、中小企業庁でいままでもやっておるわけであります。ただ金融関係問題がありますから、私どもだけのところでは問題が片づきませんから、いまは財務局と通産局中心になって地方でやっておるわけですね。それだけでもだめなんです。たとえば御承知の東発の連鎖倒産ですね。あのときもやりましたように、通産局と私のほうと、それから原局である重工業局、これが三者一体になって下請の業種転換のあっせんとかいうことをやりまして、これは相当効果があったわけです。そういうふうに通産省全体としてあるいは政府の中では関係大蔵省等に協力していただいて、みんなでやる。しかし、それの中心窓口中小企業庁、地方通産局というふうにお考えになっていいのじゃないかと思います。
  79. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 窓口中小企業庁でしょう。倒産の大半が大体五百万以下の資本ですからね。だから、これは当然中小企業庁ですが、あなたのさっきの意見は、この倒産状況は、金融ばかりでなくて総合的な対策が必要だ。では総合的な対策というのは一体政府のどこの部署で立てるのですか。中小企業庁は関係がありますか。あるのでしょう。大体原因がつかめないのに対策が立たぬというのは、あたりまえだと思うのですよ。だから、私は、この倒産に対する対策を立てたから、毎月五百件もあったものが、あるいは三百件もあったものが、立ちどころにゼロになるという対策じゃないですよ。それは失業者がないといったって、三%や五%あるのはある程度しょうがないことなんです。これは構造上の変化に応じた必要なものなんでしょう。ですから事業転換なりあるいは倒産なりというのは、この資本主義の社会から完全になくしてしまえということを私どもは考えているわけではない。しかしいまこういうふうにたいへんな数になって社会的な不安をかもしているものを、三分の一に減らす、五分の一に減らすという対策はないのだろうか、こう思うのです。その対策はどこかといえば中小企業庁だ。中小企業庁長官はどうもこれは総合的な対策が必要だと言う。じゃ総合的な対策はどういうのかといえば、これは中小企業庁じゃない、こういうことになるのでしょう。だからそういったことも結局は倒産の実情というものを把握しないために対策の立てようがない。みんななすり合いだ。ということは、さっき森君も言いましたように、政府中小企業の切り捨て政策を意識的にやっておる、こういうことになるのじゃないですか。中小企業庁長官は、基本法の精神だ——基本法は格差是正と不利補正というのを最大の目的にしているでしょう。しかし、不利補正なり格差是正なりというのは、中小企業庁が当面取り上げているのは、百分の一しかない五千万以上の大企業、それとそれに接近したわずかの中小企業の中の上の部分の対策しかいまでは考えていませんが、それが格差是正なり中小企業の不利を補正するというなら、一番不利がはっきりしているのが当面問題になっている倒産でしょう。これは大部分は五百万以下の中小企業者倒産しているのでしょう。こういう問題に対して不利を補正してやるような対策を立てなければならぬじゃないですか。それに対して、どうも原因がつかめないから対策もなかなか立てようがない。実はわれわれは、資料がないからなかなか対策が立てようがないと思って苦心惨たんしているのだけれども、しかし、責任は政府にあるんじゃないですか。だから政府がそういう原因をはっきりつかめるような調査をひとつ根本的にやってみる必要があるんじゃないですか。歩積み、両建てだって、ある時期を区切ってやっているでしょう。倒産も日本じゅうさがしたって五百カ所でしょう。あるいは何十倍にはならないでしょうが、何倍あるか知りかせんが、それ以下のものをある時期徹底的に調査して、原因等を究明することがあっていいのじゃないでしょうか。じゃなくちゃ対策が立たぬじゃないですか。これはどこで立てるのか。
  80. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 中小企業倒産原因等の分析は、先ほど来申し上げておるように、東京の商工興信所で詳細なものをつくっておられますから、われわれはそれを毎日もらって分析しておるわけであります。したがって、原因は、総合的には先ほど北野理事長が大体おっしゃいました。これはだれが議論しても、大体そういうところに落ちつくわけなんです。だから原因がわからぬから対策が立てようがないということはない。大体筋道の原因というものはわかっているわけですね。金融引き締めともう一つはいわゆる構造的原因、私は、構造的ということばは何を持ってくるか非常に不明確ですから、それはあまり使いたくないのですが、金融以外のもろもろの原因というものがそれぞれの企業についてあるわけですね。それを総合してみると、いわゆる世間で構造的といわれているような、先ほど北野理事長もおっしゃったように、一つは労力の問題、労力不足ということから特に賃金がどんどん上がる。片方でやはり高度成長のあれに沿って、大企業からの要請もあったりして、設備投資はやった。ところが途中で受注のほうがぽんと打ち切られた。かりに受注は打ち切られなくても、今度は大企業の支払いが非常に悪くなった。これは金融だけの問題じゃありません。そういう問題がある。そこへかけて、大企業のほうが自分のところの業績が悪くなるもんですから、系列を強化する、選別を強化する結果、脱落するものが出てくる、こういうふうないろいろな原因が重なっておるわけです。したがって、それを解決するのには、私が言っているのは、これは中小企業対策も必要ですが、中小企業だけじゃなくて、大企業を含めた日本の産業、経済の態勢の建て直しの対策が必要である。それをいま通産省は研究して、これは主として業種別——今度特殊鋼がああいう問題が起こりましたね。これについてどうするかということで、毎日通産省のほうは、あげてこの問題に取っ組んでおるわけであります。そういった問題が起こればそのつど処理するし、長期的な問題長期的な問題として、来年度予算なりに関連して、われわれとしては対策を立ててやっているわけであります。板川委員 それはそれぞれの機関で、金融機関金融機関政府政府でやっているでしょう。やっているけれども、現実に倒産はふえている。だから、それじゃ国として、またお互いに国会としてやっているからしかたがないのだということじゃならぬと思うのです。それは一生懸命やったことが成果をあげて、倒産がずっと減った、経済的に社会的に落ちついてきたというなら、そういう主張もいいでしょう。しかし、実際は、倒産は毎月毎月戦後最大を繰り返しているじゃないですか。こういうことをどうしたらいいのかということです。これは倒産してきたものを相談してできるだけやる、それも一つの仕事ですよ。しかし、いまこういう倒産のあらしの中で、ひとつある時期徹底的に調査をして、そうして将来こういうことがあってはならないような予防的な対策をやはり考えるべき時期じゃないでしょうか。ただ出てきたものを押えて適当につじつまを合わせている、いつになっても倒産は減らないという状況じゃならぬ。そういう気持ちを持つから、ひとつどこかで根本的に対策を練るための調査をやったらいいじゃないかな、こう思っておるのです。  それで、あげ足をとるわけじゃないけれども長官は、さっき、大企業中小企業をひっくるめてこういう不況対策なりを考えておる、こう言うのですね。しかし、倒産しておるのは実際は中小企業ですね。大企業をひっくるめている場合もありますよ、たとえば下請なんかは両方の立場ですから。しかし、倒産という状況から考えると、これは半分以上が大体五百万以下の零細企業ですよ。これは興信所の調べもありますが、とにかく五百万以下程度の零細企業が大部分。経済企画庁が総理から下問されたのはどういうのでしょう。経済企画庁に対して、総理がこの倒産原因をもうちょっと研究しろと言った。それは九月期の決算を見ると、非常に増収になっているが減益になっている。また現在の景気に対してある一つの見方は、これは企画庁なんかもそう言っているらしいのだけれども、生産は高水準になっている、失業者はいない、不景気じゃないじゃないか、こう言っているのですね。そういうような見方も持っている。ところが、この倒産について、総理大臣は経済企画庁長官に検討を命じているのですね。これは経済企画庁が検討することも、総合的な立場からいえばいいでしょう。しかし、当面は私は中小企業庁にそれを言いつけるのがほんとうじゃないかと思うのです。ところが、経済企画庁が、十一月二十七日に、金融引き締め下における中小企業という検討をまとめまして、金融問題倒産問題については、中小企業庁より経済企画庁のほうが何か先に進んでおるような気がするのです。それでその中にこう言っているのです。大企業は比較的金融引き締め下においても苦しくない、比較的高い生産水準を維持している、こう言っているのです。ただ十人から二十九人の中小企業、零細企業の間が非常に生産が停滞あるいは下降している、こう言っているのです。金融引き締め状況についても、大企業は比較的引き締めの圧迫を受けていない。ひどく受けておるのはやはり中小企業、零細企業、こういう検討もしておるのです。そういうように経済企画庁なんかで、中小企業のいまの不況の原因倒産等の及ぼす影響等を検討しておるのに、経済企画庁がやっておるのに中小企業庁はどうも手に負えないようなかっこうをしておるのでは、どうも責任を果たさないように思うのです。どうですか。
  81. 中野政府委員(中野正一)

    中野政府委員 あれは経済閣僚懇談会か何かでおっしゃったのじゃないかと思いますが、私はまだ聞いておりません。うちの大臣が御承知のようにいまヨーロッパに行っておられませんので、大蔵大臣が兼任しておられますので、それがほんとうなら、企画庁にも言われるし、うちの大臣にも言われたのではないかと思うのですが、企画庁は月例報告をやっておりまして、そして毎月の経済情勢、これは当然中小企業問題がその中で非常に大きな−中小企業の動向はどうだということが、経済政策を変えたり前進させたりするときに大きな問題になるのですね。その意味で、当然これは私が経済企画庁におるときからやっておるのですから、何もいま始まったわけではない。特に引き締めの影響を見る場合には中小企業問題をよく見ないといかぬという意味で、企画庁としてはこれは当然のことだと思うのです。またその詳細については、実はわれわれのほうからお手伝いをしてやらしたという形になっておるのでありまして、決してわれわれのほうがこれをおろそかにしておるというようなことはございません。
  82. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 時間もありませんから、せっかく大蔵次官がおいでになっていますから、大蔵次官に二、三質問しましょう。この中小企業倒産の事情を見ますと、やみ金融機関、この影響が相当あることを実は私も体験上知ったのです。これはつぶれた会社、私の知っている会社がつぶれて、いろいろ聞いてみたら、日歩五十銭のやみ金利を払ったというのです。そういうこともあるのです。きょうの新聞には出なかったけれども、きのうのラジオかテレビかの放送で、何か検察庁がやみ金融に手入れをした。日歩五十銭じゃないのです。日歩何円というのをとったりしておったといっています。経営が苦しくなる。まともに行っては銀行が貸さない。そこで金融機関、それもまとものところでなく、やみ金融にたよる。金利が膨大。だから金利を払うために、毎月の売り上げの中から金利をとられてしまって、償却も何もできなくなってやがて破産、倒産、こういうかっこうになるのが多いのです。やみ金融は、私はいまの制度で届け出でいいというだけではいかぬと思う。金融業者の、金融を業とするものに対しては私はもっと監督を強化して、認可制か何か知らぬけれども、ただ届け出すればいいだけではいかぬので、やみ金融業者に対する、取り締まりを強化する必要があると思うが、次官はどう考えておりますか。
  83. 鍛冶政府委員(鍛冶良作)

    ○鍛冶政府委員 お説のとおりだと思います。しかし、管轄、その取り締まりは法務省のほうでやっているのではないかと思いますが、それは大いにやらなければいかぬと思います。ただ倒産のところからおっしゃるのですが、やみ金融にかかるようになったのでは、大体がもはや倒れるときがきているのではないですか。それを一時何とか押えられるかと思ってやってみるのだが、それがついに押えられないでいくので、金融取り締まりのほうは大いにやらなければいかぬと思いますが、倒産の方面についてはまた大いに深く考えなければならぬ時期ではなかろうかと存じます。
  84. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 取り締まり法に基づいて法務省ですが、金融業者をいまの制度、要するに届け出すればやれるという制度、これだけではどうもいかぬように思うのです。だからこれをもっと私は強化して、大蔵省の監督権が下までいくような、そして不正な方法をやったらばこれを取り消す、こういうようなことまでいったらどうかと思うのです。  もう一つは、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、金利取り締まり法という法律があります。御存じと思いますが、これは日歩の最高限をきめております。日歩三十銭まではよろしい、それ以上はいかぬ、こういうふうに制限をされております。この法律ができたのは昭和二十七年だと思いますが、その当時は、戦後のインフレが立ち直ったといえども、まだ全体としてはインフレ下、それと日本経済の回復期でもありましたから、早く資金を借りて物を生産した後、価値がなくなった後に金を返せばいいのです。そういう時期がありました。ですから、そういう時期は、金利が多少高くても、先に借りたほうが実質的にはもうかるのです。ですから三十銭というのは、ある程度やむを得なかったと思うのです。しかし、貨幣価値が安定しておる今日においては、日歩三十銭というのはやや高過ぎるのではないか。私はこの間銀行局長を呼んだら、最初はしかたがないということを言っておりました。しかし、金融機関の歩積み、両建てをいかぬと大蔵省は言っているじゃないか、歩積み、両建て問題については経済的な強者が、弱者に対して優越した地位を利用して、こういう条件でなくては金を貸さぬといってやるのはいかぬといって、大蔵省や公取がにらみをきかしているわけですね。だからこの金融業者の金利も、金を貸す立場が強いのだから、三十銭でなければなかなか貸さぬということでは、それを当然だと言うのではおかしいじゃないか、歩積み、両建てを解消しようという大蔵省方針としておかしいじゃないか、だからできるだけ避けるほうが望ましいというほうがほんとうではないかと言ったら、そうだと言った。そこで私は、日歩三十銭というのをせめて二十五銭程度まで引き下げてやる、金利取り締まり法を改正して引き下げるのが、いまの社会的な経済的な情勢下においては妥当ではないか。そうすれば、このやみ金融業者に対して一つの規制を加えるほかに、そういう金利の最高限を下げることによって、中小企業者に与える影響というものはやや軽減されるのではないか、こう思うのです。こうした問題についてどうお考えですか。
  85. 鍛冶政府委員(鍛冶良作)

    ○鍛冶政府委員 私、前は法務委員でございましたから、いまあなたのおっしゃる法律をつくるときには、私は関係いたしましたから詳しく知っておるのですが、金利制限法がまず第一番にあります。金利制限法では、この間もやかましく言ったように、いままた新しい判例で制限以上のものをとったらみないかぬのだということで、これは非常に徹底している。ところが、利息制限法があるのに、それ以上のものをとっていいとは何ごとだというので、いまあなたがおっしゃったような議論をしたことがあるのです。そうすると、取り締まりのほうでは、そうは言えないと言う。利息制限法で、それ以上のものは制限法上無効にする、けれども罰するときには、三十銭以上とったときには罰するぞというようなことを言っているので、その趣旨はそれでいいと言うのです。いまおっしゃるように、時代が変わってきておりますから考えなければならぬというのは全くそのとおりで、現にいま大蔵省と法務省とで協議する必要があるということを聞いておりますから、その点は十分検討いたしたいと思います。
  86. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 わかりました。  それからもう一つ融手ですが、これはちょっと新聞等に出ておりますが、お互いに商取引で手形払いをして、お互いに出したり返したりした、結果は事志と違って倒産して不渡りになった、こういうことは商行為の中であるいはやむを得ないという場合もあるでしょう。しかし、融通手形で、先ほども言われました商行為が伴わない架空の商行為をでっち上げて、お互いに手形を交換し合うという融通手形は、一つの詐欺行為だと思うのです。これで他人に迷惑をかけた場合には、私は刑事罰になったってしかたがないのじゃないかと思うのです。この融通手形の規制について検討したことがありますか。
  87. 鍛冶政府委員(鍛冶良作)

    ○鍛冶政府委員 これは前からずいぶん問題になっておるので、現に研究中でございます。融通手形というだけじゃなく、不渡りになったときに何らかの制裁を加えなければいかぬのじゃないかというので、検討中であります。この間もどのように進んでおるか聞いてみたら、なかなか容易じゃないようです。それからいまおっしゃるように、支払う意思なくして手形を振り出したということがわかれば、現行法においても詐欺罪で罰せられるのです。ところが、手形を出すときには、払えると思っておったところが、親会社からこないものだから払えぬので、払う意思はあったのだと言うものですから、なかなかこれを刑事罰にまで踏み切ることはできないという現状だと思います。  それから、先ほど来質問がないものだから、私よけいなことは言うまいと思って黙っておったのですが、私は冨山県ですが、富山県に行ってもたいへんひどいのです。私が大蔵省に入ってから行きますと、中企業、小企業がつぶれたのは、おまえがおってこういうことをさせたのかと言われて迷惑しごくなんですが、その一番大きな例は、私の県で最も大きな新会社が二つつぶれました。それで片方がつぶれましたから、出しておった手形がみな不渡りになって、片方も、先ほどから議論がありましたが、三カ月の手形が六カ月になり、六カ月の手形が十カ月になり、そして六カ月のものが十カ月になったものを持ってきたってだれもとる者がいない、それでつぶれるというのが実際の現状であります。そういうようなことで連鎖反応でつぶれる。やはりどこか金融機関でてこ入れしてやって、そういうことのないようにすることが——私は理論はあまり知りませんが、実際においてそういうことが一番手っとり早い方法じゃなかろうかと考えております。
  88. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 手形の問題ですが、大蔵大臣が前に刑事罰を考えたらどうか、ところが事務当局で検討すると、なかなかそれは実行不可能のようです。そこで現在の法律をそのままにしておいて、手形の発行を、手形帳を銀行で発行したり、銀行名を入れたり、一カ月ごとに発行した手形について銀行に報告するようにしたり、あるいは不渡りを出した場合には、従来はすぐ会社名を変えて別な法人をつくれば、すぐ取引ができたが、今度はそれができないように、不渡りを出した会社の役員、責任者等が別な会社経営するとしても、三年間その取引を停止する、こういうようなことを考えておるというのですが、これはやるとすればいつごろからやる予定ですか。銀行関係と相談した上でということですが……。
  89. 鍛冶政府委員(鍛冶良作)

    ○鍛冶政府委員 聞いてみたのですが、いろいろ研究しているが、なかなかそこまで具体的に進んでおらぬようです。それより、私の友人で具体論を持ってまいりましたのは、不渡りをなくするために、支払い銀行並びに金額はその銀行で入れさせ、本人が書かないようにしろ、こういうことを第一番に持ってまいりました。それで銀行局はどうかと聞いたら、それはいいには違いないが、現在の手形の効用から見たらうんと減るでしょう。しかしそのかわりに間違いはございません。銀行が自分で金額と銀行名を入れるのだから、私の銀行で払います。そのかわりに何十万円より出せませんと書くのだから、間違いはありません。しかしいままでのようなことはできない。もう一つ方法は、手形を出すときにある程度の保証金を何%かずつ積んで、そうして不渡りの場合の保険をつくったらどうかという案も出ております。そういうようなことも現に研究してもらっておりますが、ここで申し上げるほどの具体的のものはないようです。しかし研究中であることは間違いないです。
  90. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 この間ある新聞の座談会でこういうことを言っておるのです。非常な不景気、不況下にあって企業倒産が相次いであるが、ただしこの中で二つほどほくほくのところがある。どうも興信所の専務を前に置いて悪いのですが、いま非常にいんしんをきわめておるのは興信所である。それからもう一つは信用金庫だと言っておる。相互銀行や信用金庫は中小企業金融を担当しておる。ところが不景気になったから、中小企業に貸すよりコールに出したほうがもうかるということで、信用金庫なんかはコールで非常にもうけておってほくほくだというのです。私は、こういう中小企業優先の金融機関がコールに金を出してみずからの使命を果たさないということについては、規制を加える必要があるのじゃないかと思うのですが、大蔵当局としてはどうですか。
  91. 鍛冶政府委員(鍛冶良作)

    ○鍛冶政府委員 そういうことは十分聞いておりますので、規制ということならよろしゅうございますが、何かやらなければならないと思っております。
  92. 板川委員(板川正吾)

    板川委員 ひとつそういう声があったということで相談して、とりあえず私は行政指導なりでそういうことを厳重に注意するようにしてもらいたいと思います。それから、やみ金融の実態等についてもひとつ調査をしてもらいたいと思います。それによってわれわれも考えてみたいと思います。  以上をもって終わります。あとは大臣が来ましたら月曜日に……。
  93. 二階堂委員長(二階堂進)

    二階堂委員長 参考人におかれましては、御多忙中のところ長時間御出席をいただき、まことにありがとうございました。  次会は、来たる七日月曜日午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時九分散会