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寺田最高裁判所長官代理者 ただいまお尋ねいただきました点、まことにごもっともでございまして、先ほど来お話のございました件数の統計、これは私
どものほうで調べておりますところ、まさしくいまお話しのあったとおりでございます。また実感といたしましても、戦前と戦後とで
裁判官の負担がやや重いような感じを持っておる、これも事実でございます。ただこの際ちょっとこの数字についての御
説明が必要ではないかと考えるわけでございますが、それは、戦前と戦後では必ずしもすべての
手続その他が同様であるというわけでもないわけでございます。むろん一方では、たとえば戦前にございませんでした労働
事件であるとか、あるいは行政
事件であるとかいうような非常にむずかしい
事件が入ってまいりまして、同じく一件といっても、戦前よりははるかに戦後のほうが手間がかかる、負担が重くなるという要素のあることも事実でございます。しかしながら、また他の一面におきましては、たとえば
地方裁判所においては戦前はすべて合議で取り扱うことになっておったわけでございますが、戦後は
単独で取り扱うことができる、むしろ
単独を
原則ということにしておるわけでございます。そういうことになりますと、やはりそこで合議をやるよりは
単独でやったほうが能率的にいくということは確かでございます。また
高等裁判所の
関係につきましても、これはたとえば刑事のほうでは戦前は覆審制であったのが、戦後はいわゆる事後審制であるというような
関係もあるわけでございます。そういうようにいろいろ
手続が変わっておるわけでございまして、その中にはやや負担を加重するような要素もございますけれ
ども、負担をいわば軽減と申しますか、合理的に処理できる面もあるわけでございます。そうして私
どもとしては絶えず
裁判官の増員等をはかりまして負担の軽減をはかりますとともに、あわせて
手続面におきましてもできる限り合理化していきたいということでくふうをしておるわけでございまして、たとえばこれはすでに
承知いただいておるかと存じますけれ
ども、大都会では手形部というようなものをつくりまして、手形
事件は全部そこでやる、あるいは
東京、大阪等では交通
事件の処理部をつくりまして、そこでやる、こういうことになりますと、特定の
裁判官がいろいろな
事件をやる場合に比べまして、同じ負担が重くてもいわばそれほど感ぜずして処理できるという面があるわけでございます。先ほど御
指摘いただきました統計の中で、審理数が倍になっておるばかりではなしに、既済も倍近くなっておるという面があるわけでございますが、これは決してその
事件を粗漏に扱って、あるいは
裁判官が不当に忙しく無理な仕事をして処理したというよりは、やはりそういういろいろ
手続の合理化というような面で能率があがっているという面もあるわけでございます。しかしながら、またそういう意味におきまして、先ほどちょっと触れました
臨時司法制度調査会でも、
裁判官の増員をはかると同時に、また
手続の合理化をはかれという
意見が出ておるわけでありまして、今後ともそういうことを十分考えて
努力してまいりたい、一般的にはかように考えておるわけでございます。