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1964-03-26 第46回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十六日(木曜日)    午前十時二十一分開会   ―――――――――――――   委員異動  三月二十六日   辞任      補欠選任    下村  定君  塩見 俊二君    米田  勲君  稲葉 誠一君    村尾 重雄君  向井 長年君   ―――――――――――――  出席者は左のとおり。    主査      村山 道雄君    副主査     須藤 五郎君    委員            植垣弥一郎君            太田 正孝君            杉原 荒太君            稲葉 誠一君            木村禧八郎君            戸叶  武君            鬼木 勝利君            向井 長年君   国務大臣    外 務 大 臣 大平 正芳君    大 蔵 大 臣 田中 角榮君    通商産業大臣  福田  一君   政府委員    外務大臣官房長 高野 藤吉君    外務大臣官房会    計課長     谷  盛規君    外務省経済協力    局長      西山  昭君    外務省条約局長 藤崎 萬里君    大蔵政務次官  齋藤 邦吉君    大蔵大臣官房長 谷村  裕君    大蔵大臣官房会    計課長     御代田市郎君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局次    長       中尾 博之君    大蔵省関税局長 佐々木庸一君    大蔵省為替局長 渡邊  誠君    国税庁長官   木村 秀弘君    通商産業大臣官    房会計課長   金井多喜男君    通商産業省通商    局長      山本 重信君    通商産業省重工    業局長     森崎 久壽君    通商産業省鉱山    局長      加藤 悌次君    通商産業省石炭    局長      新井 眞一君    特許庁長官   佐橋  滋君   説明員    大蔵省関税局総    務課長     上林 英男君    文部省大学学術    局審議官    村山 松雄君    自治省財政局財    政課長     岡田 純夫君    会計検査院事務    総局第二局長  樺山 糾夫君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○副主査補欠互選の件 ○昭和三十九年度一般会予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 村山道雄

    主査村山道雄君) ただいまから予算委員会第二分科会開会いたします。  まず、分科担当委員異動について報告いたします。昨二十五日、瀬谷英行君及び岩間正男君が委員を辞任され、その補欠として米田勲君及び須藤五郎君が選任されました。また、本日、下村定君、村尾重雄君及び米田勲君が委員を辞任され、その補欠として塩見俊二君、向井長年君及び稲葉誠一君が選任されました。  以上でございます。   ―――――――――――――
  3. 村山道雄

    主査村山道雄君) 次に、副主査補欠互選につきおはかりをいたします。  ただいま報告をいたしました委員異動に伴いまして、現在、本分科会の副主査が欠員となっておりますので、この際その補欠互選を行ないたいと存じます。  互選は投票の方法によらないで、主査にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 村山道雄

    主査村山道雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、副主査須藤五郎君を指名いたします。  速記とめてください。   〔速記中止
  5. 村山道雄

    主査村山道雄君) 速記をつけてください。  これより審査に入るわけでありますが、大蔵省所管は昨日審議する予定でありましたが、大蔵大臣出席がなかったため審査に入ることができなかったわけでありまして、まことに遺憾でありました。
  6. 戸叶武

    ○戸叶武君 昨日、予算委員会の本分科会におきましては、大蔵大臣出席のもとに審議が続けられる予定でございましたが、大蔵大臣無断欠席のため、われわれの審議というものがストップになって、結局何ら審議を行なうことができなくなってしまったのであります。参議院のいままでの予算審議運営の中において、このような不祥事ともいうべきことはないと思うのです。これは両院制度を肯定する上におきまして、予算委員会というものを政府がもっと重視してもらいたいと思うのです。いかなる理由によって大蔵大臣が昨日本委員会出席しなかったか、その理由を明らかにし、また、この予算委員会分科会運営にあたって、主査がこれにどら対処したかということは、将来問題が当然起きるでしょう、起きたときに、これは一つの参考になることでありますから、明らかにしておいてもらいたいと思います。
  7. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) きのう出席できなかったことははなはだ遺憾でありまして、おわび申し上げます。私たち政府といたしましては、予算委員会開会中は、予算委員会が最重要なものであるという考え方に立っておるわけであります。また、従来も各党とそのような申し合わせのもとに運営せられてきておるわけであります。でありますから、予算委員会開会中、他の委員会出席を求められた場合は、各党理事間において、特に予算委員会理事の承認がなければ、他の委員会には出席しないというのが恒例になっておることは、御承知のとおりであります。私もそれを守っておるわけでありますし、きのうも午前中に大蔵委員会出席を要求せられてまいりまして、一時からは通告を受けておるのでありますから、参議院予算分科会出席をする、こういうことを強く委員長にも、また社会党、民社党の諸君にも、私から申し入れたのでございますが、これは各党国会対策委員会でいま話し中であるから、話がつくまでこちらにおるべし、こういうことであって、私の意思ではいかんともなしがたかったわけであります。私はこういろ問題に対して、各党で同時に開いて、同時に出席しろといったところで、できるものではないわけでありますから、一日は相当長い時間であり、きのうなどは十時過ぎまで通して審議が進められておったわけでありまして、その間、予算委員会出席できるように、各党間で十分ひとつ話し合いをしていただきたい、また両院においても、これらの問題につきまして特にお願いを申し上げたい、特に期末で、三月三十一日などは、各委員会からの出席要求がたくさん出ておりますけれども、身は一つでありまして、代理を認めないということであれば、どうすることもできないということでありますから、三十一日等は、両院において本会議が開かれる、こういう場合の問題等も考慮して、十分ひとつ私たちが動けるようにしていただきたいということを申し入れてあるわけでございます。私としては本意でないことでございましたが、両院との連絡、また各党間の連絡等のために出席をできなくて、ついにきょうまで延会をしていただいたということに対しては、非常に遺憾であるという考え方でございます。私たちもよきルールの上に立って、皆さんの御審議協力をいたしたいという考えでございますので、皆さんもどうぞひとつ両院とのお話し合い、党内におけるお話し合いというような問題に対しては、格別な御配慮をいただきたい、心からお願いを申し上げます。
  8. 戸叶武

    ○戸叶武君 大蔵大臣のとられた態度は、そのよしあしは別として、あるところまで理解できたのでありますが、議院内閣のもとにおける二院制度において、衆議院を経て、そうして参議院予算が送り込まれたときに、参議院にウエートが、特に予算委員会にかかってくることは当然であり、いま大蔵大臣が述べられましたように、優先的に予算委員会出席するというのが原則であり、いままでの慣例であって、昨日のようなことは、いまだかつて参議院の歴史においてはなかったと思うのであります。そのときに不審なのは、各党理事がいま国会対策委員会で話し中であるからと言いますが、この二院制度のたてまえからして、各党政党としてありますけれども、国会機能はおのずから異なると思うのです。参議院運営に当たっては、参議院の議長並びにこの予算委員会においては予算委員会委員長そのもの各党国会対策委員会に優先すると思うのです。その踏むべき機能というものを無視して、手続を無視してそういうことが一つの談合的な方式によって処理されるということそのことが、これは議会主義というものはルールの上に立つのです。ルール無視の、一つボス政治への現われだと思うのであります。私はそういうことは今後改めてもらいたいと思うのです。  そこで主査にお聞きするのですが、主査を通じて予算委員長並び参議院における予算委員会理事連絡をして、報告あとでもしてもらいたいと思うのですが、大蔵大臣は、参議院予算委員会出席できないような状態衆議院において導いたというのは、衆議院独自の立場かもしれませんが、衆議院衆議院でそういう場合もあるかもしれませんが、少なくとも衆議院から参議院予算委員長なり予算委員会理事なりに連絡があって、そういう筋は通すべきことが、これは議院内閣制におけるたてまえであると思います。それを無視されたら参議院が軽視されたということになるのです。また、そういう手続大蔵大臣の周囲の者が、いままでの慣例を知らないはずはないので、それを十分連絡しないで、今日、田中大蔵大臣をしてこのような窮地に立たしめ、われわれをしてこのような参議院の権威のために、あえて私たち主査を通じてなり、大蔵大臣を通じて、一つルール確立のために一つの時間を取らなければならないような事態になったのですが、これは今後における参議院運営の悪慣例になっては困るのであるし、今後再びこのような事態が起きないようにするためには、やはりしっかりとした記録を残しておかないといけないと私は思いますので、主査にそういう手続を踏んだ上で、後日でもよろしゅうございますが、この問題を参議院としてはどういうふうに処理するかということを、いますぐに主査に御返答というのも無理でしょうが、そういう手順を踏んでいただきたいと思いますが、いかがなものでしょうか。
  9. 村山道雄

    主査村山道雄君) 私からお答え申し上げます。  ただいまお話の点につきまして、十分、主査といたしまして委員長等相談をいたしまして、後刻お答えをいたしたいと思います。
  10. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一言つけ加えて申し上げますが、きのうは、こちらの理事の方が何回かおいでいただいて御連絡いただきました。私も御連絡はなくても、恒例から言いましても、当然、本会議開会せざるときは予算委員会が最優先されるということは知っておりましたので、私自身参議院出席をすることを何回も申したわけでございます。同時に、私の官房長また文書課長その他皆何時間もお願いをしたわけでございますが、ついに出席できないような状態になりましたことは非常に遺憾でございます。いろいろなことを知っておる大蔵省のまわりの者が手を尽くさなかったということではないわけでございます。いま両院で話しをしておるとか、各党でいま国会対策委員会で話しをしておるので、迷惑はかからぬということでついに出席できなかった。まことに遺憾でありまして、まことにこういう問題に対しては私たちも誠意をもって努力をいたしますから、議院運営の上においても、私たち審議に御協力できるような態勢をつくることができますように御高配をいただきたい、このように考えるわけでございます。
  11. 戸叶武

    ○戸叶武君 これは心得ておいてもらいたいのは、いままでの参議院国会運営の上でいろいろな問題が起きたのにかんがみて、自民党でも国会対策委員会は独立して委員長を設けています。参議院においても社会党国会対策委員長を、やはり委員会を独立して設けております。それはやはり院の自主性を守らないと衆議院の波動がそのまま参議院にまいってきて、国会の終末にいつでも幾多の乱闘や何かの問題を起こした苦き経験によって、自主性を保とうという形からそこまできていると思います。ほかの会派においてもそうだと思います。それから衆議院参議院の場合に、院の政治的な政党政派の分野が異っておりまして、参議院においては自民党社会党というだけでは話し合いができかねる問題がずいぶんあると思います。そういう関係においてこの問題が、たとえば自民党社会党理事間で話し合ったという形だけでは済まないので、他の会派と私たち協力して、参議院というものの民主的な運営というものにつとめておるのでありますから、そういう場合において逸脱したと思われるような印象を他に与えるということは、私たちとしても今後の国会運営の上において非常にまずいのでありまして、そういうものを十分心得た上で、今後、政府当局におきましても、また事務当局におきましても、この問題に対してはもう少し慎重に対処してもらいたい、これを希望だけを申し上げておきます。
  12. 村山道雄

    主査村山道雄君) 昭和三十九年度総予算中、大蔵省所管議題といたします。  時間の都合上、説明はこれを省略して、お手元に配付してあります資料をごらん願うこととし、なお、説明資料は、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 村山道雄

    主査村山道雄君) 御異議ないと認めさよう決定いたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村君。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣に三点お伺いいたします。  時間の制約がございますので、私もなるべく簡潔に質問をいたしますので、大蔵大臣いつも非常に御丁寧に御答弁いただき、これは実際ありがたいわけです。ですけれども、なるべく時間内に私の質問いたしたいことを十分に質問したいんで、その点も大蔵大臣御了解いただきまして、なるべく簡潔に、簡潔といって失礼な言い方ですけれども、時間の制約がございます。その点御了解願ってひとつ能率的に進めたいと思いますので、質問の要点について御答弁をお願いしたいと思います。  まず第一点は、二十四日の閣議で、大橋労働大臣から春闘状況について報告をいたしたが、そのあと春闘対策閣議で検討した、これは新聞の報道でございますから、もし事実でなかったら大蔵大臣御訂正願いたいと思うのですが、その席で、田中大蔵大臣賃上げ問題に関連して、人事院公務員給与改善に関する勧告の取り扱いについて、政府はこれまで人事院勧告完全実施にとらわれ、安易に賃上げを認める傾向があったが、今後は勧告扱いについても政府部内で慎重に検討する必要がある、こういうふうに述べたといわれておりますが、こういうふうな趣旨のことをお述べになったかどうか。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ただいま御指摘のございましたことを述べた覚えはございません。私からは述べておりません。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それではどういう御発言をなさったのですか、この春闘につきまして。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 閣議の席上で、大橋労働大臣から春闘のスケジュールその他に対して例年のような発言がございました。それに対して各閣僚の間でいろいろな意見が出たわけでございますが、新聞に書いてある、いまあなたがお読みになられた、何新聞かわかりませんが、私はその記事は見ておりませんでしたし、そのようなことを閣議でどなたも発言したということは私は記憶しておりません。そのときの話は、こういう閣議の話は、これは表へ出ないということになっておるわけでございますが、これはひとつ御了解いただいて、あとで責任が残らないように願いたいと思いますが、春闘に対していろいろ労働組合その他が言うこともわかるし、また例年のことでありますし、八条国にも移行するのであるし、これからほんとうに一本立ちにならなければならない日本であるという事実、また物価抑制国際収支の安定というような問題も十分考えながら、労働大臣は適切な措置をとられたいというような意味お互い発言だったと思います。しかし、労働大臣はこういう問題に対しては労使間においてやることでありますし、いまこういう時期に政府が何か相談をしたり話をすることは時期としては適当じゃない、待つほうがいいのではないかというような意味のことを発言されたと思います。私たちはそれに対してそう深く――非常に短い時間でございますので、しかも法律案が一院を通った場合、準備をしなければならない書類だけでも四十分くらいかかったということでありますので、幾つか各大臣議題にないことを発言せられた中の一こまであるということで、その新聞に報道せられておるほど確定的な問題を、相当な時間をかけて発言したというような記憶はございません。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これもきょうの毎日新聞ですけれども、社会党成田書記長横路国会対策委員長が、きのう黒金官房長官をたずねまして、この春闘を控えて労使対等で、話し合いできめるべき賃上げの問題について、政府統一見解発表するということは干渉めいたことになるから発表を取りやめてもらいたい、こういうことを申し入れたら、そういう政府統一見解発表は取りやめられない、こういうふうに言明されたというんですが、前に労働大臣も、この委員会で私の質問に対して、春闘を控えて労使対等話し合いできめるべきものを、政府が干渉めいたことをきめたり発表したりすることは好ましくないということも言われたわけですよ。大蔵大臣はこの点についてどうお考えか。それから政府として統一見解を実は発表されるのかどうか、この二点について伺いたい。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) すなおな考え方から言うと、労使は対等な立場でやるのでありますから、何か制肘をするようなことを言わないほうがいいという考え方は私もそう考えております。それから統一見解発表するということは私はないんじゃないかと思います。そういうような議題ではなかったし……。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういうふうに閣議できまったわけじゃないんですね。
  21. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうことではありません。官房長官どういう立場発言をしたのかわかりませんが、私たちはそのように理解をしておりません。私は少なくとも労使の問題がいま話し合いが行なわれているときでありますから、政府が言うとすれば、より高い立場から大きな意味物価抑制国際収支の安定とか、そういう中で賃金物価の問題もありますから、とにかくお互いに、こういう時期に際してすなおな気持ちで、将来のためにあらゆる角度から物価抑制等ができますように考えることはいいと思いますし、また、そういうことを私は発言することはいいと思いますが、労使間でいまやっておるものが何パーセントでなければならぬとか、そういうことで押えなければいかぬとか、これは全然出せないところもあるし、またよく出せるところもあるわけでありますから、そういうものを拘束するような政府統一見解などは私は出ない、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 また先のことになりますけれども、政府はこれまで人事院勧告完全実施にとらわれているという御発言があったように新聞には書いてありますが、しかし、われわれからすれば、政府完全実施するということは前に言っておりましたが、実際には完全実施されていないのですね。たとえば五月に実施するのを十月に延ばしたり、まあ趣旨は尊重すると言っていますけれども。ですから、大蔵大臣ははっきりと、さっき私が申したように、これは読売新聞ですが、読売新聞に報道されているように、今後の人事院勧告扱いについては従来の扱いと違うような発言をされておりますが、そういうことを発言された事実はない、これははっきりしておりますね。この席で言明していただきたい。
  23. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 人事院勧告に対して、人事院勧告が出ても従来の尊重するというたてまえをくずして、今度は認めないんだというような考え方は持っておりませんし、そういう発言をしたとは思っておりません。私自身がしたいということを明らかにいたしておきます。
  24. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから賃上げに対して政府が、特に春闘労使が交渉している段階政府統一見解発表するということは、これはもう行き過ぎでありますし、これは干渉であるし、賃金ストップとか賃金統制というような感じを与えるのですから、これはあくまでも避けるべきだと思いますが、その点については大蔵大臣もおそらく同意見ではないかと思います。それに対する見解と、それからもう一つ、今後の開放経済体制に入っていくに際しまして、ここではっきりと賃金物価生産性についてもっと科学的な調査をしてみる必要があると思うのです。いままでこれがなされていないのですね。これは非常にむずかしいのです。これはアメリカでも非常に問題になって、ヨーロッパでも問題になっていて、賃上げ物価値上げ原因であるかどうかについては、そう軽率にまだ断定し得る資料がないのですね、実際問題として。それから生産性との関係ですね、生産性上昇よりも賃金上昇率がこれまでずっと下がっているのですよ。三十七年になって、初めて不況段階に入って生産性が落ちて賃上げの率が上がったんですけれども、いままでは大体生産性のほうが賃金値上げよりも上回っておったのであります。こういう点について、ただ賃上げを押える。いままで物価が上がってきた原因は何であるか、はたして賃上げによって上がったのか、賃上げというのは物価値上がり原因で、賃上げあと追っかけている、こういう証明もできるわけなんです。ですから、その辺はあまり単純に物価値上がり原因賃上げにあるかのごとき印象を与えるような政府発言とか、あるいは方針というものは軽々に出すべきじゃなくて、もし出されるならもっと科学的にはっきりした調査に基づいて出すべきである、こういうふうに思うのですが、その点はいかがですか、この二点について。
  25. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 法律に基づいて労使の間で話をしているものに対して何か統制をする、規制をするようなニュアンスのものは時期としては避けなきゃいかぬだろうという考え方は私も同感でございます。これはもう労働賃金に対する中立性というものに対してでございます。  それから第二点の賃金物価との問題等に対しましては、過去においては賃金物価との悪循環ということを議論されたこともあります。また、生産性の中で生産性労働賃金アップ率だけを検討するだけではなくて、生産性の上がった部分の三分の一は労働賃金に、三分の一は資本蓄積その他に、また三分の一は大衆に対する物価引き下げという面に対してというような、世界においていろいろな議論がございますが、むずかしい問題ではありますが、絶えず議論になる問題でありますから、私は何らかの機関をつくってお互いに検討して、何かお互いが言い合いをするということよりも、常識的なものさしになるようなやっぱり検討が進められることが好ましいことだというふうに考えておるわけであります。
  26. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あまり名前を言うのは悪いんですけれども、経済企画庁の専門調査官調査したものによりますと、消費者物価は、これまでの日本実態調査によって、消費者物価が一%上がっていて、それに対して賃金は〇・四か〇・五しか上がっていないんですよ。ですからおくれているんですよ。   〔主査退席、副主査着席〕 そういう調査もあるわけです。ですから賃金値上げ物価値上がりという悪循環説、これがコストインフレとか賃金インフレとかという、これはもう少し慎重に扱う必要があるんではないか、こう思われますが、大蔵大臣専門ではないかもしれませんが、ところが労働省では比較的そういう点については専門ですから調査しているようですが、そう簡単にコストインフレ論とか賃金インフレ論は言っていないわけですが、これはしかし政府全体としても、そういう御認識でないと、これはもう財政経済金融政策全般に対して大きな関係があるものですから、そういう点についてやはり慎重に検討され、御発言もされるように希望するんですが、こういう点についてはいかがですか。
  27. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 賃金のアップというものが物価上昇一つ原因であるということは言われております。しかし、絶対的なものではないと思います。これは戦後の状態をずっと見ましても、新しいものに対する非常に急激な消費という問題もありますし、また生活状態そのものが変わっておりますので、それに急速に移行するために物価上昇を来たしておるということもありますし、また大都会に人口や産業や文化が過度に集中しておる、こういう問題も大きな原因でありますので、一律に言い得るもりではないわけであります。でありますから、先ほどからお話を承っておりますし、やはり何か合理的に、私もあなたもそういう議論が納得できるというような、結論が出るような機関というものは私はやっぱり必要だろう、いろいろ斯界の人たちに入っていただいて、広範な立場から検討して、賃金物価の問題、また物価上昇原因探求はどうすれば一体いいのかというような問題も、やはり私は将来の問題としても非常に必要な機構だろうというふうに考えておるわけであります。
  28. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあわれわれの立場からいうと、池田内閣の超高度経済成長政策に、やはり物価値上がり原因があったと思うのですけれども、そういう政治的責任を回避する意味で――正確に物価値上がり原因を分析し、その原因をつきとめることがなく、回避するという態度は好ましくない、そういう政治的な態度、これは意見でございますが、そう思います。  で、時間がございませんから次の問題に移りますが、それは国際収支改善の問題です。きょう私は質問する予定にしておりましたが、大蔵大臣出席がおくれたのは、経済閣僚懇談会で国際収支改善対策をお話しされたやに聞いたんでございますが、これは前に経済企画庁長官にこの問題を質問したときに、やはりこの経済閣僚懇談会で、総合的に国際収支対策が検討しなければならぬということを言明されまして、そしてその段取りをつけなければならぬと言っておられましたが、おそらくそのことからきょう懇談会をお開きになったんじゃないかと思うのですが、きょうはどういうふうな結論になりましたか、その点お伺いします。
  29. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まだ予算の御審議を願っておるのでありますから、予算を変更するようなことを申し上げられるわけではありません。きょうは国際収支の長期安定に対して第一回の会合を開こうということでありまして、第二回、第三回と、これから真剣に取り組んでいこうという考え方を前提にいたしておるわけであります。結論といたしましては、長期安定を、長期的に国際収支の見通しを立てるためには、やはりこれからの経済成長率も考えなければならぬわけであります。それがきまらないと、輸入、輸出というものもきまりませんし、そういう意味で、中期五カ年計画というものを諮問しおりますので、最終的な結論が出るのはやはり秋ごろになるだろうという考えでございます。しかし、当面する問題は前向きに対処しなければならないという考え方に立ちまして、第一の問題は、貿易外収支、特に船賃や港湾使用料、そういうものに対して、ひとつどうあるべきかという問題に対して検討いたしました。その結果、現在御審議願っておる開発銀行の関係予算では、三十九年度六十四万二千トンの建造を考えておるわけでございます。で、この問題について、百万トンがいいか、百五十万トンがいいかという問題があるわけでございますが、予算審議中に百五十万トンにするというわけにもいきませんし、そういうふうな的確な結論が出ておるわけではないのであります。まず、さしあたって検討しなければならないのは、開発銀行が六十四万二千トンの今年度分の建造に対しては四月一日から早急に受け付ける。そうして、建造意欲のあるものに対してはこれをひとつできるだけ早く受け付けるということ。それから十カ年間の積荷保証の問題がございますが、こういうものに対しても拡大をして、こんなテンポの早い時に十カ年がはたして妥当であるかどうかということにつきましては、そんな無理を言ってもできるはずはないので、こんな問題に対しては拡大をするという考え方、それから、通産大臣から、自社船の建造というものに対し一体どうするかという問題も出ました。この自社船の問題も含めて、できるだけ早い機会にひとつ結論を出そうということであります。自社船は今年の建造予定二十万トンでございますので、六十四万二千トンに加えると八十四万二千トン程度になるのでございますが、このような状態でいいのかどうか。また、それを百万トンに上げると考えた場合に、財政上の見通しが一体つくのかという問題については、大蔵省も前向きで検討いたしましょうということでございます。それからもう一つは、通産大臣から、輸出所得控除の問題がございましたので、これは三月三十一日で打ち切られる輸出船及びブラント輸出の問題等に対して、何らか大蔵省考えられないかということでございます。これは税上法なかなかむずかしい問題でございまして、税額法定主義でありますので、非常にむずかしいことでありますが、行政の運用によって一体できるのかどうか。こういう問題、最終的に大蔵省でもう一ぺん検討しましょうということになったわけでございます。あとは、これらの基本的な考え方を中心にして二回、三回と開いてまいりたいというのが、きょうの結論でございます。
  30. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体きょうのお話し合いで、いつごろまでに国際収支の均衡をはかるか、そのめどですね。それについて何かお話はありませんでしたか。
  31. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これも非常にむずかしい問題でございまして、先ほど申し上げたとおりに、考え方としては中期五カ年計画の大体の経済成長率がきまりまして、それによって大体輸入、輸出がどうなるかということがきまれば、そこで国際収支の問題が出てくるわけでございます。でありますが、それが未確定な現状においてなかなか想定するわけにいかないわけでありますが、そういう問題に対しては、第一段においてはひとつ中期五カ年計画の答申を待ちながら、それまでは各般の状態を想定して検討しましょうということになっておる。一つの目標としては、私がお答えしておるのは、四十五年くらいに経常収支のバランスをとりたい。四十三年にとる場合にはどうするかという想定数字があるわけでございます。でありますから、そういう趣旨でいま検討をいたしておるわけでございます。しかし、まあここで非常に明らかになりましたのは、戦前は日本は海運収支は非常に黒字だったというふうにわれわれも考えておったんです。で、まあこの問題に対して、戦前の状況を調べますために、各省で検討したのですが、あまりない。大蔵省にあるだろうということで、まあ大蔵省あらゆる書類を検討したら、昔のものがあるわけでございます。それを基礎にして調べてみましたら、戦前も私たち考えておるほど黒字じゃなかったわけです。まあそういう事実が判明したわけです。なぜかというと、その輸入に対する外国船の運賃等も全部その輸入の費用の中に入っておるということでですね。いわゆるその貿易外のこまかい問題に対して、現在のようにしっかりとした計算方法をとっておらなかったわけであります。でありますから、輸出の場合だけが帳面に載っておって、輸入の場合は全然ぶち込みだったということでありまして、よく計算してみますと、あまり海運収支も黒字じゃなかったということが出てきたわけでございますが、まあしかし、海運収支も黒字になることが好ましいわけでありますし、経常収支のバランスをとることが一番いいことでありますので、こういう新しく発見された事実も全部ひとつ検討しながら、将来の日本国際収支はどうあるべきかという問題に対して、ひとつ検討を進めようという結論になったわけであります。
  32. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまの貿易外収支の戦前の計算、これは新聞等でちょっと拝見しましたが、しかし、それを今度は貿易外でなく貿易のほうに、輸入のほうに含めると、今度は貿易収支のほうが問題になってくるのですね。同じことだと思うのですが、そこで伺いたいのは、もう三十八年度ですね、八・二%くらいの成長率が大体みられていますね。で、三十六年が実質で一四・四、名目で二〇%以上の成長率で、三十七年度に五・九まで落としたわけですね、金融引き締めで。それが予想外に早く回復して八・二%、八コンマ台に回復した。八%台に回復して、今度はこの国際収支の問題が起こってくると、こういう点から考えて、やはり成長率については、かなりこのいままでの八%の成長率ではむずかしいという、この三十八年だけで結論するのは早計かもしれませんけれども、かなり成長率を落とさないと、今度は貿易もボリュームは大きくなる、港湾費もまたかさんでくる。そこでですね、国際収支の均衡というのは非常に困難である。ですから一番先決は、成長率をある程度落とさなきゃならぬということが問題、どの程度落とすかということが問題になってくる。それについて、まあ四十三年ぐらいで均衡をとるか、四十五年くらいで均衡をとるかによっていろいろ違うでしょうけれども、とにかく大勢としては成長率を落としていかなきゃならぬというふうに感じられるのですが、その点いかがですか。
  33. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げましたとおり、まあ四十三年、四十五年という数字をつくります。想定しますときには、経済成長率を大体きめなきゃいかぬわけでありますから、まあこれから慎重に検討するわけでありますが、八%、九%というようなものは非常に高い数字であるということは大体言い得ると思います。まあ私たちが、三十八年度実質七%、名目九・七%ということでありますから、大体七%程度という、まあ所得倍増計画の年率七・二%、私はやはり七%ないし七・二、三%というようなものが正常なものになるのではないかということ、まあこれは確定した基礎数字をもって申し上げておるわけではありませんので、大体その程度ということが正しいのではないか。これは六%に落とす、五%に落とすということが、これが一つの理論としては考えられても、この場合、国内的な混乱も相当なものでございますし、こういう高度の成長を続けてきた事実に徴して、将来三カ年、五カ年を想定しますときに、大体七%、七・二%という数字がはじかれてくるのではないか。これは全く想像で申し上げるわけでございますが、政府予算審議に関して七%の成長率でお願いしておることは大体いいのじゃないかというふうな感じであります。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、まあ今後の中期五カ年計画というのですか、国際収支改善と関連して、それをきめるに当たりましてね、こういう検討はやってないのですか。昭和三十年から三十五年ごろまではやはりかなり高度に経済成長しましたですね。しかし、その間においては物価はあまり上がらなかった。かなり生産も伸びた。国際収支の問題も、昭和三十二年ごろに問題ありましたけれども、この最近の国際収支の赤字と性質が違うわけですね。在庫投資とか、あるいは設備投資とか、そういうものであって、それは一応外資導入により調整はいたしましたが、三十六年度以後あらわれてくるような国際収支の赤字の問題と性質が違うわけですよ。そこで、三十年から三十五年ごろまで、なぜ物価が上がらないで――賃金もかなり上がりました。鉱工業生産もかなり上がった。国際収支の問題も、構造的な、三十六年以後のような赤字の問題は起こらなかったですね。   〔副主査退席主査着席〕 なぜ三十年から三十五年までそういうことが可能であって、三十六年以後それと反対の現象が出てきているわけですか。それはなぜそういうことが可能であったか、そういうこともやはり検討する必要があるんじゃないかと思うのですが、こういう点については……。
  35. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 十分慎重に検討すべき問題だと思います。これは当然こういう問題も、構造的な要因である点も、十分検討が必要だと思います。しかしこれ、なかなかむずかしい問題でありまして、この問題に対して、先ほど木村さんが言われたとおり、三十六年の引き締めが必要だったわけでありますが、今度比較的に早く回復をして調整段階に入ったと、こういうことで、まあいままでは経済が小さかったので、ある意味においては、長い時間が間にあったわけでありますが、これからは経済が大きくなってまいりますので、やはり波動というものに対しては、随時注意をしていかないかぬということであろうと思います。で、前に、急激に三十五、六年から物価が上がったことに対して、三千円のベ-スアップというのがございまして、あの一律三千円ということが相当響いたんじゃないかと、政府もそう考えた。同時に、一部の国民の方々も考えられていたわけであります。そのときに、ちょうどオリンピックという大きな仕事が始まったわけです。これは総額約四年間に三十億ドル、一兆円を上回るオリンピック対策費がつぎ込まれておるわけです。これは拠点的につぎ込まれておる。こういういろんな問題があると思いますから、一体この原因探究ということは、将来のためにも私は必要であろうと思います。これは立場議論ということではなく、実際に振り返ってみて、将来の資にするために、私はそういう原因というものを十分ひとつ検討する必要があるということも考えておるわけであります。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この問題については、もう時間の制約がありますから、もう一つだけ伺いますが、これまで、三十九年度の予算編成に関連しまして、三十八年あるいは三十九年度の経済見通しにつきまして、政府はミス・リードしたと思うのですね。見通しが誤っていたんじゃないかと思うのです。というのは、ずっと予算の、衆参両院そうですが、国際収支なり経済見通しについていろいろ伺いまして、外貨の保有の問題について伺ったのです。総理も大蔵大臣も、日本銀行の金利を二厘引き上げる以前は非常に楽観的であったのですよ、正直にそうでしょう。心配ない、心配ないと、みんな言ってきた。ところが二厘引き上げてから、態度ががらっと変わってきちゃった。そして国際収支については慎重にしなきゃならぬとか、経済見通しについても、鉱工業生産がなかなか落ちない。かなり慎重に国際収支の問題というのを真剣に取り組むと、こうなってきて、日銀の金利を二厘引き上げる以前と以後においては、非常に経済の見通しについて政府は変わってきたんではないかという印象を強く受けるんですがね。その点いかがですか。
  37. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私はそうは考えておらないわけでございます。これは二四・三%から一七・四%に落とし、私の代に、一七・四%から一四・二%に落としておるのです。ですから、そういう姿勢、やはり八条国移行、OECDに加盟するという前提に立って調整政策を進めてきておるわけでありますから、これは議院内閣制のうちではなかなかむずかしい問題でございます。選挙の直後に予算を組むということでありますから、これはひとつ理解いただけると思うのです。そういう中で、二年間に二四%から一四%に、約一〇%引き下げたのであります。二千五百億以上、三千億に近い金を一般会計で占めておるわけでありまして、十二月には、大蔵大臣の認可事項である準備率の引き上げをやっておるわけであります。それから一月に窓口規制をやっておるわけであります。それで私も、臨機応変に弾力的な措置をとりますと、こういうことを言っておったわけでありますから、公定歩合の引き上げということが、日本人的な感覚で、窓口規制とか準備率の引き上げよりも、非常に大きなウエートがあると思います。いままでの歴史から考えて、日本人に対しては特にあると、こういうふうに考えますけれども、私や池田総理の考え方が、公定歩合の二厘引き上げをやるから、国際収支はたいへんなんだ、経済を締めなくちゃいかぬという考え方ではないわけであります。私自身予算審議お願いしておるのでありますから、そういうことは申し上げられないと思いますけれども、ということを前提にしながら、予算の執行に対しては、特に弾力的に十分配慮をいたしますということを申し上げておったわけです。ですから、今度のこのように、なお予算の執行を弾力的にやるという、ようなことまでは、なかなかむずかしい状態でありますので、私たち考え方が全く変わったというふうに、木村さんのお立場からいいますと、どういうふうにおとりになるかわかりませんが、私たちは、ただ、公定歩合の引き上げを一体なぜやらぬのかと問われても、いや近くやると思いますということも申し上げられないわけでありますし、いろいろ苦衷はあったわけでございますけれども、国際収支や、国内経済の状態等に関しては、非常にしさいな観察をしておったということは、ひとつ理解いただきたいと思います。ただ私が、あなたの御質問にそのまますなおにお答えすれば、日本人というのはたくましいなということだけはほんとうに感じました。十二月に準備率の引き上げを行ない、一月になって窓口規制をやっておるのですから、私は、相当日本人もと思いました。経団連などは、自分で借りておって、自分で輸入しておって、公定歩合を引き上げたほうがいいという議論が散見したときには、たくましいものだと、これはよほどしっかりしなければいかぬということになったことは事実でございますが、そうかといって、三カ月並と、五カ月前と今日と、日本の経済、国際収支に対する考え方が変わっているということはないわけであります。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 議論していると時間がたちますから、端的にもう一つ国際収支の問題で関連しまして具体的に伺いたいのですが、三十九年度の財政規模ですね、これについては予算委員会でも議論がありまして、時間が十分なくてできませんでしたが、国、地方、国の予算及び地方財政計画、財政投融資ひっくるめますと、これはわれわれ数字で計算してみると、はっきりと前年度より膨張しているのですが、この点いかがですか。ただそう言っただけではわかりませんから計数的に申し上げます。一般会計では、三十八年度は一七・四%の前年度に対する膨張率であった。それが三十九年度は一四・四といいますけれども、国立大学とか、自動車検査等の特別会計、あれを調整しますと、一五・一%になる。それから地方財政計画、これは三十八年度は一二・九%の膨張になっているのです。ところが、三十九年は二〇・五ですよ、両方合わせまして。そうして重複勘定を差引きますと、純計において国、地方合わせまして、三十八年度は一五・九%の膨張です。これに対して三十九年度は一六・八%の膨張ですよ。私は膨張がいい悪いという議論はまた別なんです。そうしているのじゃなくて、政府は、前年度よりも財政規模は縮小しているのだ、伸び率が減少しているのだと言いますから事実に反しているのです。もう一つ、財政投融資は三十八年度は二〇・二%の増加です。ところが、私の計算ですと三十九年度二七%の増加、なぜそうかというのです。国鉄に対する国庫債務負担行為四百億がある。これを加えてみなければいかぬのです。国庫債務負担行為は、これは財政ベースじゃないのですけれども、これは金融ベースになりますけれども、政府が国庫債務負担行為をお認めになれば金は借りられますから、やはりこれは形式的になりますよ。それから三十八年度の補正ですよ。補正で二百億、国鉄の改良費百億、それから輸銀に百億でしょう。六百億加えてみなければいけないのですよ。そうなりますと二七%の増加になります。そうすると、財政投融資においても膨張しています。国及び地方財政計画、両方合わせて計算しても膨張しているのですよ。ですから、金融を引き締めざるを得なくなってきているのです。これから金融を引き締めざるを得ない、また。ですから、政府の言われている、なかなか大蔵省は計数的に、さっきの貿易外収支じゃないですけれども、何か有利になるように計算をして、いろいろ操作するのも巧みでございますが、国立大学や自動車の検査特別会計を操作して、それで財政規模が小さくなるように見せかけをやりましたけれども、そういうことをやってもなおかつ地方財政計画がこんなにふくらんでいるのですよ。これを私はあわせて考えなければいけないと思うのです。そうなりますと膨張ですよ。これは私は計数的にはっきり計算したのですから、そうでないとおっしゃるなら反証していただきたい。いかがですか。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一般会計につきましては先ほど申し上げたとおり。まあ前年度対比二四・三%も伸びておったものが三十八年には一七・四になり、三十九年度は特別会計を移した分を入れて一五・一%になっているのですから、相当思い切ってやったな、戦争直後にしてはなかなか相当なものだということはひとつ御理解いただけると思うわけであります。それから、財政投融資に対して国鉄の債務負担行為まで入れればということでございますが、これはまあこれからの問題でありまして、いま御審議を願っておりますものを使うのは四月一日からでございますので、そういう問題に対しては、国鉄の四百億の国庫債務負担行為までも三十八年度で補正しろというような強い御意見もあるわけでありますので、まあこれは事情やむを得ないのでございます。問題は地方財政なんです。地方財政は私も確かにそう考えたんです。これはもう国の財政が一五%になり、一四%になり、一〇%になっていても、地方財政がだんだん膨張する。しかも、膨張率が一八%になり、一九%になり、二〇%になったわけです。これはひとつ考えなくちゃいかぬということで、私も事実あの住民税等の減収補てん債につきましても、これくらい大きいのでありますから、これはぜひひとつ地方税の中でやってもらいたい。そういうことをしないと地方税はどんどん膨張していきますよということであったのですが、ついに地方開発とか、東京、大阪に過度に集中をしておるので、そうでなくても地方を開発しないとどうにもならない、こういう財政的な要請もありまして、ついにやむを得ざる処置として減収補てん債に踏み切ったわけであります。そういう意味で、地方財政が膨張しているということは確かに御指摘のとおりでございますが、あまりにも豊かならざる地方との所得格差の解消という大きな政治目的もございますので、まあ、ある意味では地方の予算規模を押えたいという気持と、同時に、地方には幾らでもやらなければいかぬという問題がありまして、まあこれはひとつこの程度でやむを得ないのだという考え、御理解いただきたいと思います。しかし、地方財政も含めた財政支出につきましては、やはり金融調整の段階とも相まちまして、弾力的な運用ということは、やはり常に心していかなければならぬ問題だということは考えておるわけであります。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、私は率直に、政府が三十九年度は財政規模の伸びが前年度より縮小しているのだという言い方が間違いである。これは事実問題ですから。これは財投もさっきお話ししたとおりです。ですから、そういう事実の認識が間違っておったのでは議論にならぬわけですよ。ですから、私が計数的にはっきりいまお示ししたのですから、地方財政計画も含めて考え、財投も、国庫債務負担行為等を考えると財投だって膨張しているのです。ですから、前年度よりは国、地方財政合わせ、財投を合わせた規模は前年度の伸び率よりは伸びているのだ、伸び率は前年度の伸び率よりは膨張しているのだということを認められればよろしいのですよ。
  41. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一般会計においては前年度よりも減っております。それから財政投融資につきましても、前年度二二%、今年は二〇%でありますから減っておるわけであります。地方財政に関しましては、先ほど御指摘がございましたように、これは前年度よりもふえておるということは、これは事実でございます。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総計して、総合して考えなければならぬわけですよ。一般会計だけで論じたって……。
  43. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私のほうでお答えをすれば、あなたのお尋ねに対してそういうお答えをするわけでございまして、大体国民もわかると思いますし、あなたももう何かことばの上で、合計すればどうだというようなことばよりも、私が申し上げた一般会計は対前年度比、三十八年度は一七・四%、今年度は一四・一%、特別会計に移したものを入れても一五・一%でありますから、比率においては減っております。それから財政投融資もそのとおりでございます。それから地方財政だけの面を見ますと、確かに前年度よりもふえておるということは事実でございます。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は別々に離して聞いているのじゃないのですよ。総合的に考えなければいかぬ。これは大蔵大臣、当然そういうお立場でやらなければ、これはみんな国の全体の国際収支にも、物価にも、全体に関係のあることで、事実認識を間違って国民に知らしてはいけないのだと思うのですよ。それで、確かに一般会計の伸び率は特別会計の増加を考えても、これは前年度より伸び率は確かに低いのです。一七・四%、三十八年度の伸び率。三十九年度は一五・一%、それでも低い。しかし、財投についてはぼくは意見ありますよ。財投はやはり景気刺激的でない、ないと言われておるのですが、それは、いい悪いは別として、事実問題としてやはり伸び率は二七%ですよ、私の計算では。前年度は二〇・二ですけれども、だから事実認識が違うと、全体の経済金融政策についても、それから賃金対策、物価対策にしてもみんな違ってくるのですよ。その事実認識が政府は間違っている。このことをお認めにならなければならない。総合的に見て間違ってないとおっしゃるならば、間違ってないという、数字的に総合的に国、地方財政、それから財投合わせて考えるのが至当でしょう。まず前段の財政が経済に対して刺激的であるかどうか、その影響を考える場合、これは国、地方も合わせ、財投を合わせて考えるがほんとうじゃないですか。
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあそういう議論もございますが、やっぱり国会政府が申し上げることは、一般会計は国会の議決がなければ使えないのでありますから、これは一般会計は一般会計として申し上げ、財政投融資は参考書類ではございますけれども、政府関係機関その他の予算関係がございますので、当然、御審議をいただいておるわけでございます。財政投融資で二七%になるというお話しでございましたが、それはきっと三十八年度の追加分をそれに加えておるわけであります。そうすれば、三十八年分には三十七年の追加をしたものを、石炭にやったようなものをみんな加えなければならぬわけでありますから、そういう数字にはならぬと思う。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは国庫債務負担行為は。
  47. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国庫債務負担行為は今年度に出すわけじゃございませんし、これは一般会計の中においても船艦に対しても国庫債務負担行為をやっておりますし、こういう問題は相当緻密に調べないと、あなたがいま言われた二七%そのまま、四百億の国鉄に対する国庫債務負担行為を入れて対前年度比の比率が多くなった、こうは申し上げられないと思う。これはやはりいま御審議を願っております二〇・何%ということで御比較にならないと。これは数字が必要であれば私のほうでひとつあとから調べまして、三十七年から三十八年の、いまあなたと同じような計算にすれば、そういうものとか、それから債務負担行為は幾らあったということはひとつ調べて申し上げますが、私たち考え方としては三十八年度よりも減っておると、こういう考え方をとっておるわけであります。地方財政計画までというならば、特別会計の数字も入れなければならぬ、いろいろどんどんふえていくわけでありますが、地方財政計画は御承知のとおり、一般会計と違いまして、一応こうして御審議お願いしてございますけれども、これは一つの見積もりであります。これは実際において相当違うわけであります。違うというよりも、地方財政のほうは一般会計と違いまして、何千億も行ったり来たりすると、こういう事実に徴しましても、この数字を出すために地方財政で、いまお出ししております地方財政計画と一般会計とあわせて、そして対前年度比が違うじゃないかといえば、今年度の計算見込みがどのくらいになるかという問題もございます。地方財政計画非常に大きく狂っておるということは、これは御承知のとおりでありますので、こういう問題でもって、もし必要があれば大蔵委員会ででも御審議資料になるように、ひとついままでの実績その他検討しまして御報告を申し上げるようにいたします。私は地方財政計画そのものから見ますと、三十八年度に御審議を願ったものと三十九年度に御審議を願っているものに対しては相当なアップになっておると思いますが、一般会計やその他総体的に計算をしますと、三十八年度に比べては、対前年度比、相当引き締め基調になっておるという考え方でございます。それだけじゃなく、御承知のとおり、もう前年度剰余金の繰り入れが千八百億も減っておりますので、これは対民間出資との間には相当な引き締め基調になるわけでありまして、そういう問題もみんなバランスをとって考えると、三十八年よりも相当引き締め基調にあるというふうに申すべきだと考えておるわけであります。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、あとで計数的に作業をして、国と地方財政と財政投融資、そういう実質的に景気刺激的になるような要素を全部ひっくるめて、なるべく作為的に成長率が低くなるというように出すような作業でなく、やはりこれは事実問題ですから、実際に前年度と比べてどうなるかということをもっと具体的に出していただくと。これ、よろしゅうございますね。
  49. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) けっこうです。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから第三の質問ですが、三十九年度の予算の中で国立高専の用地費の予算が組んであるかないか。
  51. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 文部省からも要求もなく全然組んでありません。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 用地費が組んでなくてどうして国立高専は建設できるんですか。
  53. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国立高専につきましては、大蔵省考え方としては、国有地を提供しようという原則的な考え方を持っておるわけです。国有地のない場合は、国有地と公有地とを交換したり、そういうことをして、なるべく国有地でひとつめんどうを見ようと、こういう考え方でございます。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国有地。――それは全部そうなっておりますか。
  55. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 原則的なことを申し上げたわけでありまして、国有地のあるところは国有地、国有地のないところは県有地等と国有地を交換してやるということでございます。まあ大体そういう考え方で文部省にもいかがかと、こう言ったら、はいよろしゅうございますと、こういうことでございますので、大蔵省としましては、文部省の考え方をいれて、そのまま予算計上を行なわなかったわけでございます。
  56. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国有地と交換というのは、実際にこれは三十六年からそういうことが行なわれてきておるのですか。
  57. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今年度は、三十九年度国立高専は、新設予定の十二校を含めまして三十六ある。この土地は国有地の使用が六校であります。地方公共団体及び設置期成会等からの無償借用が二十校あります。国有地との交換予定が五校であります。それから民間の寄付予定が五校、計三十六校というところでございます。
  58. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから国立高専ばかりでなく、三十六年度以降、この行政財産で寄付を受けているものがあるかどうか。三十六年度以降ですね。
  59. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと事実問題でありますので、政府委員からお答え申し上げます。
  60. 中尾博之

    政府委員(中尾博之君) お答え申し上げます。行政財産及び地方公共団体から寄付を受けました事例は、昭和三十六年度に十七件、三十七年度及び三十八年度はいまだ報告を整理いたしておりません。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまこの国立高専の用地につきましては三つのやり方がある。一つは国有財産ですね、国有地供。もう一つは地方公共団体からの無償供与といいましたね。それから第三が国有地との交換と言われましたがね。この地方団体からの無償供与、これは寄付になるわけですけれどもね。これは地財法、地方財政再建促進特別措置法第二十四条の二項の違反とならないかどうか。地方公共団体の無償供与というのは、これは寄付ですよね。
  62. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 地方公共団体から寄付をさせたり、あるいは不当に寄付金等を地元住民等に割り当てることはしないという原則でありますので、地方財政法の規定もありますから、そういうことを厳密にやっているわけでございまして、法律違反にはならないと、こういう考え方でございます。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、どうして違反にならないか。それは何も強制的に寄付さしているのじゃないということがその論拠ですか。
  64. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 地方財政法の規定につきましては、国が直接寄付金等を受けてはならない、寄付を受けてはならない、こういうことでございます。この高専につきましては、期成同盟会その他のものが地方公共団体との間に入りましてやっておることでございますので、法律違反の事実はないわけであります。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは期成同盟会等から提供さしていますけれども、それからまた、それは強制ではないということで、この地方財政再建促進特別措置法の二十四条の違反にならないと、こういうことでございますが、その期成同盟会等をつくって寄付させる、寄付さしておるということは認めたわけですが、それは強制であるかないかという事実問題はこれは非常に重要なんですよ。ただ、政府が何か強権をもって強制的に寄付させる。そんなことはあり得ない。そんなことをしたらこれはたいへんなことなんですけれども、しかし、すでに昭和二十三年一月三十日の閣議決定で、各官庁に対して寄付金の抑制について一応の準則がきまっているわけですよ。それはこういうことなんです。「財政の緊迫化に伴い、最近諸官公庁(学校を含む。)において、その経費の一部を諸種の寄附に求める傾向が著しいが、寄附者の自由意思によるといわれる場合においても、その性質上半強制となる場合が多く、或は国民に過重な負担を課することとなり、或は行政措置の公正に疑惑を生ぜしめる虞れなしとしない。よって極力かかる傾向を是正するため次の方針によるものとする。」として、「公共施設の寄附(適正賃借料を下廻る借入の場合を含む。)」と、こうなっておりまして、したがって、期成同盟会をつくって、それが無償提供したから、これは強制でないとは言えないのです。だから、昭和二十三年の一月三十日の閣議でそういう寄付に関する一応の基準を定めているわけなんですよ。本来なら、地方財政は、この間の地方財政白書を見ても、三十七年度地方財政は決して楽ではないと、こう言われておるのですね。それは本来なら賃貸契約にすべきであって、地方団体にそれだけ国が払わなければならぬものなんですよ。払わなければならぬものだと思うのですがね。したがって、そういう期成同盟会等をつくって無償提供させるということも、これは自主的にはやはり強制の中に入ると思うのですよ。入るからこそ、昭和二十三年一月三十日の閣議決定のこういう準則があるのでありまして、これは私は違法だと思うのですよ。違法と思いますが、いかがですか。
  66. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 違法ではないという考え方でございますが、妥当性の問題につきまして御発言があるわけでございます。まあ妥当性の問題につきましては、衆議院でも、また参議院でも、いろいろ御発言がございました問題でございますが、私も初めちょっとおかしいと思ったのです。よく調べてみましたら、明治初年からずっとこういうことになっているのだと、こういうことでございます。しかし、いま御指摘になったように、昭和二十三年の閣議決定もありますし、またその後地財法の制限規定もございます。税外負担の国民負担を軽減するようにという考え方が常識になっておるわけでございますので、まあそういう問題に対してなぜかかる措置をとったのか、なぜかかる措置をとるのかということで十分検討してみましたが、これは国と地方公共団体との利害が全く一致をする。それだけではなく、こういうものの設置に対して地方が非常に激烈な要望を持っておるわけであります。そんな要望があるなしにかかわらず、私は、高い立場で、独自の立場でもって、敷地を求めてかかる国立の施設は行なうべきであるという考え方が一番合理的でございますが、期成同盟会等が先行しまして、こういうことをひとつやりますので、何とかぜひということで、国は、五校ぐらいのところを八校、八校ぐらいのところを十校認めてくれというようなことでありましたので、特に国も財政力豊かならざる状況でございますし、他にも財政支出の要望がたくさんございますので、法律に違反しない限り、しかも地元の住民の要望にこたえるという立場でかかる措置をとっておるわけでありまして、これはひとつ将来の問題としてまた私も十分検討してまいりたいという考えでございますが、現在の段階でこれが違法であるという考え方はとっておらないわけでございます。事情をひとつ十分御承知のはずでございますので、歴史的な事実もございますし、まあそういうこともひとつ含めて御理解をいただきたいと思います。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま大蔵大臣は、国立高専の建設については、もう各地方で競争的に設置してくれという要望が非常に多いと。それだからこそ、これは実質的な強制と同じことになるのですよ。無償で提供するからこっちへ来てくれと、競争をやるのでしょう。そうすると、そういうことのできるところだけに行っちゃうのですよ。そういうことができないところはどうするのですか。一番そういう立地条件の悪いところ、あるいはそういう負担力のないところは。それも期成同盟会というのは、そういう期成同盟会が土地を買って、そうして提供するということになる。そうすると、そういうあれができないところは一体どうなるのか。  私は、会計検査院に――会計検査院の方は見えていますね。会計検査院として、これは私は財政法第十条にも違反すると思いますし、また地財法の十二条にも違反すると思いますし、それから地方財政再建促進特別措置法二十四条の二項にも違反すると思うのです。会計検査院はこれについてどういう見解をとっているか。そうしてこれに対していままで昭和三十六年からやってきているのですから、そういうことを会計検査院で検査をして国会報告したことがあるかどうか。
  68. 樺山糾夫

    説明員(樺山糾夫君) お答えいたします。三十七年度、三十八年度の設置校について申し上げますと、期成同盟会等から敷地について寄付の申し出のあるものはございますが、文部省はまだこれについて寄付の採納をしていないというのが現状でございます。  同盟会から寄付を受けることが脱法行為であるかどうかということにつきましては、同盟会の実情を十分調査しまして、また裏面の事情等を十分検討した上でないと、一がいには申されないと思いますが、文部省側がまだ未処理の段階でございますので、会計検査院といたしましても、なお今後検討いたしたいと思います。ただ、このように長期間にわたりましてペンディングの状態で、当該の土地を借り上げる、あるいは使用しておるというような事態に対しましては、会計検査院といたしましても、好ましい事態であるとは考えておりません。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 会計検査院の考え方はいま言われたとおりなんです、好ましくないと。しかし、会計検査院も私は怠慢ではないかと思うのですよ。これは会計検査院の検友会から出ていますね、会計法規辞典というものが。その中で寄付について書いておるわけです。それで、いまのような性質の寄付は、これは「法律の規定に反する違法なものであることは、論をまたない」、こういうふうにここで書いておりまして、「近時においては、当局者が事実上これを行いながら、後援会等の団体の名義にかくれたり、又官庁が寄附金の実際使用をしながら、現物寄附の形式をとったりする脱法的なものも多く、会計検査院においても、その違法を指摘しているのであるが、いずれも、実質的には、国民の負担において行うもので、右の閣議決定にも明らかな如く、厳に注意を要するのである。」、こういうふうに言っておる。国立高専に対する地方公共団体の無償の寄付というものは、明らかにこれは、国は地方自治体に不当な負担をさしてはいけない、こういう地財法十二条、あるいは財政法十条、それからいま言いました地方財政再建促進特別措置法の二十四条に、明らかに違反しておるですよ。会計検査院、もう一度もっとはっきり御答弁願いたい。はっきりこれは違反しておるのですよ。それに対してもっと私は事実の資料をたくさん持っておりますよ。なぜ会計検査院はもっとこれははっきりと検査して、その違法性について、決算の場合、国会になぜ報告していないか。
  70. 樺山糾夫

    説明員(樺山糾夫君) 先ほど申し上げましたように、文部省としましてはまだ未処理の問題でございます。したがいまして、会計検査院がこれに対して、いろいろ検討はもちろんいたさなくちゃならぬわけでございますが、寄付を受けるかどうかきまりましてから意思表示をするということにいたしたいと思います。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 おかしいじゃないですか。三十六年から寄付を受けるか受けないかわからない、未処理のままで用地を提供されて学校も建っておるのでしょう。未処理のままで建っておるのですか。それはおかしいじゃないですか。
  72. 樺山糾夫

    説明員(樺山糾夫君) したがいまして、先ほど申し上げましたように、このように権利関係が不確定なままに使用されておることは好ましくないということは申し上げたつもりでございます。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは好ましいことじゃない、会計検査院はそういう考えです。私は明らかにこれは違法行為だと思う。ですから、これは政府ははっきりとこれを有償の賃貸契約に振りかえて、その分の費用を予算化しなければならない。前に田中大蔵大臣に対して篠田自治大臣がそういうことを申し入れて、大蔵大臣予算化するということを話されたやに聞いているんですが、どうなんですか。
  74. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう事実はないようであります。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま会計検査院は、これは好ましいものじゃないと言われているんですが、予算化する意思はないかどうか。
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、このようなむずかしい問題でございます。純粋に考えれば、私も会計検査院の言うことはわかります。わかりますが、これはどうも金があってやるのではなく、国民の税金を使ってやっているわけでありますから、少なくとも違法でなくとも議論のあるものはなるべく正していくということは正しいことでありますし、そうあらねばならぬわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、財政多端のおりからでもございますし、やはり国民の金を預かっているわけでございますので、これは法制もないものでもあるし、地元の熱意にこたえるという考え方もあるわけでありますので、これをいま直ちに予算化して借地に切りかえるというような考え方を出すことは非常にむずかしいのではないかというふうに考えます。しかし、将来の問題としては十分検討に値する問題だろうとは考えるわけでございます。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、今後どうなんです。いままでの問題も私はあると思うんです。これは適正な賃貸料によって契約を結んで、そうして予算化すべきだと思うんですけれども、今後の、来年なり再来年の予算においては予算化する意思はないですか。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ、こういう問題は非常にむずかしい問題でございますので、大蔵当局としましても、文部当局の意見、また自治省の意見等も聞きながら、政府としての見解を何か考えなければならぬだろうということは考えます。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 文部省はどういう意見なんです。文部省はこの予算化を要求したんですか、それともしないんですか。いままでしてきていないんですか。
  80. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 文部省としましては、高等専門学校の設置につきましては、すべて関係地元と協議の上で、用地を国有地の転用あるいは地元有志の寄付によって、法律に触れないで取得できる見込みのあるものにつきまして、設置の概算要求をしたわけでございまして、したがいまして、用地の取得費あるいは借用費につきましては、予算の要求をいたしておりません。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 法律に触れないで、そうして用地の寄付をし得るものについて予算化を要求しないできたと、こういうのですが、この問題は衆議院予算委員会でもわが党の安井委員から質問しまして、最後としましては、この具体的な資料の裏づけがないものですから、結論を得ないまま押し問答になってしまっているんです。ところが、実際にこれまで、これは国立高専だけではないんですよ。その他法務省におきましても、あるいは郵政省、文部省、労働省等におきましても、そういう寄付等によって地方公共団体がその用地を取得しているのがあるわけですよ、具体的なね。それから、国立高専についても、これは文部省大学学術局から出してもらった資料があるわけです。これを具体的に一々検討してみますと、なるほど寄付のように見えておりますけれども、これは結局、さっき言いましたように、昭和二十三年の一月三十日の閣議決定で、各官庁に対して寄付の抑制について一応の基準を定めたと、この方針に当たるようなものばかりなんですよ。だから、実質的には、表面は強制でないようですけれども、客観的な情勢からいって強制みたいになってしまうんです。そうでなければそこに行かないということになれば、どうしたって、こっちに誘致したいとなれば、そういう寄付という形になってくるんです。これは不当に地方自治体に、また地方住民に負担をかけるものであると思うんです。  この点は、文部省も、いわゆる地財法の十二条とか、あるいは財政法の十条、あるいは地方財政再建促進特別措置法の二十四条二項ですね、こういうものを十分検討された上でそういうものを予算化を要求しなかったのかどうか。ただ学校さえ建てばいいという見地ではいけないのであって、文部省、もう一度答弁していただきたいと思います。当然予算化を要求しなければならないのです。
  82. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 国立学校の用地につきまして、まあ国有地や転用や民間からの寄付は別にいたしまして、公共団体の所有するものを使用することにつきましては、地方財政法あるいは地方財政再建特別措置法の趣旨に照らして望ましくないという旨の申し入れは自治省からもございまして、文部省といたしましても検討いたしましたが、まあ法律趣旨からいたしますと、そういう御指摘もあろうかと思いますけれども、そのものずばり違法であるとは必ずしも解せられないということからいたしまして、まあ地方の熱望等もありまして、用地取得費の予算措置をせずに今日まで至っておる次第でございます。
  83. 村山道雄

    主査村山道雄君) 木村さん、七十分たちましたから。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 自治省にひとつ。
  85. 岡田純夫

    説明員(岡田純夫君) 自治省の見解といたしましては、あくまでも国と府県、府県と市町村間の財政なり行政なりの秩序をはっきりするというような見地からいたしまして、先ほどの財政再建特別措置法第二十四条二項によりまして、国等に対して寄付等はしてはならないというふうに、地方団体のほうにいわば戒めますとともに、ただ、政令で特に規定した、自治大臣が承認した場合はこの限りでない。その内容は、等価交換の場合でありますとか、原因者負担の場合でありますとか、制限いたしております。したがいまして、等価交換は法律上可能でありますし――それも自治大臣の承認が要りますけれども、それ以外は寄付等をしてはならない。一方、地財法十二条のほうで、これはそもそも国の機関ということで国立高専の問題は考えられておりますので、私どものほうでも寄付は受け入れられないものというふうに判断いたしております。表裏相まちまして、そういうものがあってはならない、また、してはならないものというふうに考えております。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に、それでは、憲法の七十三条の一項ですか、まあ一番最初にこういうふうに書いてあります。「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」、その第一に、「法律を誠実に執行し、国務を総理すること。」、こういうことになっていますね。で、この問題は、これは時間がございませんから、この資料はあるのですけれども、私は十分に論証する時間がないのは残念でありますが、どういう点から検討しましても、これは違法だと思うのですよ。昭和二十三年一月三十日のこれはなぜ出したかといいますと、いまの国立高専の用地の寄付の例に見るようなことがあるから、こういうことが出ているのですよ。これが非常に具体的な一つの例だと思うのです。  で、政府が強制的に、寄付せい、こんなことを言ったらたいへんですよ。国が地方に対してそんなことできっこないのです。しかし、事実としては、大蔵大臣が先ほど言われた――大蔵大臣は事実をよく御存じですよ。方々で競争的に、おれのほうに来てくれといえば、実態としてはそういうことにならざるを得ないのです。政府がそれを予算化しておりませんから、地方自治体の負担において。国立高専ですよ、国立のね。これは当然国が負担すべきですよ。そうしなければ地方自治体について、そういうことができないところには行かない、そういう条件のあるところに行くということになるでしょう。しかも、地方住民の負担になるのですよ、これは。明らかにこれは地財法の十二条ですね。それから財政法十条……。  そこで、私は最後に伺いたいのですが、財政法十条によれば、国が地方に負担させる場合には法律に基づかなくてはこれはできないとなっているのですよ。そういう法律がございますか、そういう法律が。地方公共団体が国に国立高専を設置する場合に用地をただ寄付する、それは地方団体に対して負担をかけるわけです。財政法十条によれば、そういう場合は法律に基づかなければできないことになっているのですよ。そういう法律があるかどうかです。ございますか、そういう法律
  87. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 道路、国道であっても、法律に基づいて地方の負担を規定いたしております。でありますから、それと同じように、国立高専学校がこのようなことをする場合には法律でもって規定をしたほうがいいという考えでございます。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いいではない。規定がなければできないのですよ。
  89. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 規定がなければできないのでありますが、これは強制をしたり地方団体になさしめておるのではないのであります。地方団体と期成同盟会等が自発的にお話しになられて、私たちがこれを国立高専の敷地に使用する場合には、地方団体ではないのです、全然別な人格であるところの期成同盟会というものと話をしておるのでございますから、その条文を引用せられて、法律がなければこれは違法だということはないわけであります。違法ではないのであります。政府は違法ではないという考え方に立っております。  ただ、妥当性の問題に対しては、あなたが先ほどるる申し述べられるように、国のものは国がやったほうがいいという考え方、それは私も常識的に考えればわかりますけれども、そこには今度財政負担の問題が出てくるわけであります。でありますから、これは金があり余っておるのではなく、他にもたくさんの仕事がございますし、また国民の税金であるということから考えまして、なかなかそうも参らないという事情があることは、これはもう十分御承知のことでございます。そういう意味で、いまも会計検査院も言われたとおり、好ましいことではないということはわかります。自分の家は自分でつくったほうがいいということはよくわかるのですけれども、しかし、金が足りない場合には人から借りるということもあるのでありまして、そういうことは事実の問題でありますから、将来国力が回復して、だんだんとこういうことがなくなることは非常に好ましいことであります。しかし、いやしくも政府法律違反を犯しておるということに対しては、これは法律を犯さないという立場に立っております。憲法にも御指摘のとおりでございます。政府はいやしくも法律違反を犯してはならないということでありまして、これらの処置は違法性はない。妥当性の問題とか、将来の問題としては慎重に検討いたしてまいりますと、こういうことを申し上げておるわけであります。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に一つ。財政法十条ですね、私は妥当性より違法性を問題にしているのですよ。財政法十条は、「国の特定の事務のために要する費用について、国以外の者にその全部又は一部を負担させるには、法律に基かなければならない。」、これは期成同盟会だって反対しますよ。「国以外の者にその全部又は一部を負担させるには、法律に基かなければならない。」、これを受けて地財法十二条というのがあって、地財法十二条では、国が地方団体に経費を負担させてはならないということになっているのですよ。だから、国立高専を建設する場合にはその用地については、これは地方公共団体あるいは期成同盟会から寄付さしてもよろしい、こういう法律があるのならいいんですよ。法律がないのですよ。ですから、どこから見てもこれは違法なんです。
  91. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 法律はもう私よりもずっと木村さんのほうが専門ですから、そんなことは私は申し上げることはないと思いますが、この財政法の十条の規定の「国の特定の事務のために要する費用について、国以外の者にその全部又は一部を負担させるには、法律に基かなければならない。」、これは強制的なものでございます。税法は法律によらなければ税を取ることはできないということと同じであって、これは強制義務、強制的な問題に対して法律はこう禁止規定をつくるのであります。でありますが、これは憲法に対して全然、逆に今度憲法の基本的な条章、自由の原則、自由の原則によって、政府に寄付をする、私が政府に寄付をする、私が自分の家を東京都に寄付する、これは憲法の原則でありまして、こういうものをこの財政法上十条の規定が犯すということはできないわけでございますから、そういう問題に対しては、単に寄付を受けてもいいというような条文がなくても、準拠法がなくても、当然一般的な国民からの寄付は受け得るということは、これは御承知のとおりでございます。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に、会計検査院の意見を聞きたいのです。いまの点は、会計検査院は、違法性のある場合は国会報告しなければならないのですよ。その点について指摘して、なぜ三十六年からこういうことをやっているのですかと、そういう決算報告をしていますか、違法性を指摘して報告をしておりますか、どうですか。
  93. 樺山糾夫

    説明員(樺山糾夫君) 財政法第十条は、私の記憶に間違いがなければ、まだ施行されていないと思います。  それから、寄付を受けるというお話がございましたが、文部省当局が寄付を受けるという行為があって初めて検査院の問題になるのがございます。その点はひとつ何とぞ御了承をいただきたい。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは、財政法十条はまだ施行期日はない。これは前から質問して、しかしそのかわり。大蔵省の答弁は、施行されていないけれども、その精神を受けて法律をつくっておる、その法律で実際にはやっておる、ただ地財法なら十二条というのがある、そういうところでまかなっておるということです。それを、なぜ財政法の十条の施行期日はないのですか、まだ。だから、おかしいと思って聞いたんですけれども、しかし、それは実際に法律によってまかなっておるから、別に特にこの施行期日をきめなくてもいいという答弁であった。そうすると、地財法がこれを受けることになるのですね、法律によってやっているということになると。そうすると、地財法違反にもなる。それでは、施行期日をなぜはっきり……。そういうことをのがれるために、施行期日を延期しておるのかどうかということ、これは私は納得いかない、大蔵大臣、どうして施行期日をきめないのですか。
  95. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 法律家がたくさんおられますし、木村委員もその権威者でございますから、私が申し上げるまでもなく、法律でもって禁止をすることは、憲法は自由の原則をうたっておるわけでございます。その自由の原則を、国が国の行政事務を行なうために必要でありとしても、制限を行なうという場合には、法律によらなければならない。これは税法が法定主義ということであるということと同じことでございます。でありますから、国が地方公共団体及び一般国民に対して自由の原則を犯すような法律的な処置をしてはならない、こういうことであります。でありますから、これは未施行でございますが、多目的ダムとかその他いろいろなものが、たとえば道路をつくる場合に地元の負担をきめる場合、地元は三分の一負担しなければならないということは、法律によらなければならないということ、こういう規定であるということは間違いない。だから、国立高専をつくる場合に、期成同盟会をつくることを禁止するという法律はありません。憲法に認められている、また同時に、憲法上の自由の原理に基づいて国にこれを提供する、こういう憲法上の大原則もあるわけでございますから、だから、いま政府がこの期成同盟会から供与を受けて、それに対して無償で借りておっても、憲法に背反しないのみならず、その財政法十条にも違反していないという考えでございます。  しかし、この十条を受けて立った地方財政法二十四条の問題に対しましては、これはもう税外負担を禁止するという規定でございますので、こういう問題に対しては、私たちもこの法律に違反しない。また、政府が強制するようなことは、絶対にないわけでございまして、これは憲法の自由の原則とあわせてこうお考えいただいて、少なくともこういう問題に対して違法性はないということだけは、認めていただきたい。  ただ、国のつくる学校だから、せめて財政が許せば土地を買いたい、みんなこういう議論が出ないようにということは、好ましいということはわかります。好ましいという裏に、会計検査院が言う、こういうやむを得ざる措置であるとしても、議論の存するところは好ましくない、こう会計検査院はうらはらに言っておるだけでありまして、違法性がないということは、そういう考えは間違っておりません。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つ。最後に、国が事業をやるときに、国会の議決を経た予算の範囲内でやらなければならぬととは明らかですね。そういう場合、任意に寄付を募集して、各官庁でこれをもって事業を行なうことは、事実上予算をこえて事業を行なうことだ、こういうふうに理解されないだろうか。これはもしそうでないとすれば、一定の賦課準則もなくて、それから法定の権威を破壊して会計経理上も歳入歳出を混同を来たすおそれがあるということにないほしないかということなんです。  それと、もう一つは、違法性ではなくても、脱法ですね。脱法行為ではないか。
  97. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは違法でもなく脱法行為でもございません。明らかにいたしております。これは国の予算、税金を財源とする予算を執行するにあたっては、法律に基づき、いわゆる国会の議決を必要とする、議決のないものの支出は許さぬ、こういう規定でありまして、寄付を受けたものさえも、これを禁止するという規定ではございません。国会を整備するのは国の予算でやっておりますが、お互いひとつ庭に桜を植えようという場合、そういうものといまの条文が競合するものではないということは、これは御承知のとおりでございます。
  98. 村山道雄

    主査村山道雄君) 速記をとめて。   〔速記中止
  99. 村山道雄

    主査村山道雄君) 速記をつけて。
  100. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 大体、いまの寄付の問題ですが、これは従来こういう慣習が長く続いておったのだと。私はかつて、現在の高等学校、以前の旧制の中等学校、今日の高等学校ですが、これに三十年ほど、校長も長いことやりました。たびたびこういう家を建てたり、建築したりりすることを十分研究している、体験している。それで、大蔵大臣としては、それは国の責任者として、これは違法であるといったようなことは言いにくいと思う。おっしゃりにくいと思う。しかし、あなたのお気持ちは十分わかっていると思うのですがね。それで、二十三年ですか、昭和二十三年に閣議決定した。見るに見かねて、私はそういうことを閣議決定されたのだと思う。国がそういうことをやるから、県立の学校としましても必ず、学校建築する場合には寄付を見込んでやる。寄付を見込んで、国家の補助、国庫補助の場合でも三分の一の補助ということが、建築費の総額の三分の一の補助でなくして、すでにその中から寄付を見込んだものを差し引いたものに対する補助であったのです。そういうやり方をして、いま大蔵大臣がおっしゃった、なるほどそのとおり父兄同盟期成会なんていうものをつくって、これは事実上強制なんです、過去は。だから、みな迷惑しているのですよ。割り、当て幾ら幾らと割り当てる。それを徴収するのにたいへんだ。私らは校長として、どれだけ市会議員に頼みに行くやら、県会議員のところへ頼みに行くやら、もうそれは校長は頭下げて回るのが、それが毎月の仕事だ、家が建つまでは。そうしてどこどこで文句が起きている、割り当てじゃないか、ふざけるな。じゃまあ、そこをひとつなだめにいこう。それじゃと、わが家を出ていく、こういうととが校長の仕事。そうすると、市議会で何か文句を言う、あるいは県会でどうだこうだと言う。そうすると、そちらのほうの政治工作を校長がやらなければならぬ。そういうことで、大蔵大臣は現地の実態はあるいは御存じない、下情にはお偉い方だから通じていらっしゃらぬかもしらぬけれども、実情はそういうことなんです。  だから、なるほど、財政法等の、法的にはいまあなたのおっしゃるように、同盟期成会のほうから差し上げますと自発的に持ってきたのだ、こうおっしゃるけれども、自発的に持ってくるように誘導している。それでこうこうこういうふうにひとつ建てるからやってくれ。あるいはまた、県立あたりで、県立の高校あたりを建てる場合に、いま木村先生もおっしゃったとおり、非常に貧渇な市町村なんかはできません、その寄付ができないものだから。これを地元負担と言っておりますが、そういうものができないものだから……
  101. 村山道雄

    主査村山道雄君) 簡潔に願います。
  102. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それができないから、だから都市に偏重する。いい学校は全部都市にできる。それはいま大蔵大臣が先ほどからるる申し述べられたごとく、期成会、同盟会、父兄会、後援会、そういうのがどんどん金を出すから、都市はいい学校ができる。そうすると、貧しいところにはできない。そういうことをずっと従来までやっているわけで、そこでやはり二十三年にそういう閣議決定をして、それを見かねてやられたのだと私は想像するのだが、またそういうあれが今日まで残っている。だから、実態はよくわかっていらっしゃるのだと思うのだ、大蔵大臣も。ただ、その違法であるか、違法でないか、これが脱法行為であるかということを、大蔵大臣がここではっきりおっしゃりにくいということは、それはよくわかります。しかし、実態はそうです、実態は全部。これは間違いない。明らかにこれはやはり法を犯したようなやり方なんです。あなた方はそういうふうに指導なさっていないと思うけれども、実情はそういうことなんです。だから、こういう問題をいま木村先生が出されたのだと思うのですから、そこで、ここらで将来はそういうことが断じて、絶対にないようにと、こういうふうに大蔵大臣がおっしゃれば、木村先生もおさまられるのだと思うのですが。
  103. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 実情はよく知っております。私のところへも毎日参りますから、よく知っております。しかし、これ、なるほどそういうことをしないでもってやれば一番いいです。やれれば一番いいのですが、なかなかやれない事実があるというのは、いま皆さんが御承知になっておる警察のゴーストップなどは、あれは地元で出しておるものもあるわけです。こういうのはやめてくれということで、これは確かに、税外負担というものを無制限にやってはいかぬ、しかもこれが乱に流れておるということに対しては、国民の利益を守るために政府はかかることを禁止する方向でもって、この財政法十条の規定をつくったのもその精神に出ずるものであって、前向きであるということは事実でございます。しかし、全然自発的に寄付をしてくるものまでこれは制限するのかというと、少し潔癖に過ぎる、こういうことにもなるのでございます。  これは憲法によって、堂々と、何びとが寄付を言ってきても、それを受け取らぬということにもならぬわけであります。こういう点において、実情に合って、しかも理論的にうまくいくというところに持っていくのが政治の妙でありますから、いまのお二人の御発言等がこういう事実をだんだんと理想的なものにしていくためには相当効果があるだろう。また、私もこうして長いことおしかりを受けておりますから、こういうことに対してはひとつなるべく財政の限りでよりいいものをつくっていくという方向で、ひとつ努力をいたしたいと思います。
  104. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 一音。ただいまあなたのおっしゃったことで私もよくわかりましたが、個人の寄付はこれをいなむわけにはいかぬじゃないか、そういうことは、私は、木村先生おっしゃっているのではない。私もそうです。これは私もかつて学校に、一人で、洋行したから記念にというようなことでちょっと何か記念品を学校に寄付するとか、あるいは子供が卒業した、おかげでありがたいというので、何か個人的に寄付するとか、あるいは先ほどあなたがおっしゃったように、記念樹で、学校に樹木を一本持ってきたとか……
  105. 村山道雄

    主査村山道雄君) 箇潔に願います。
  106. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 そういうことは、それはもう常識問題で、それを私ら申し上げておるんじゃない。そういう教育の外郭団体が大きくPTAを動かすとか、期成同盟を動かすとかいうような点に難点があるんだということを申し上げておるんです。
  107. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) よくわかっております。
  108. 戸叶武

    ○戸叶武君 四月一日から開放経済体制に入るのであり、もう四、五日後から日本の経済体制というのはいままでと変わってくると思います。それだけに国の金融政策というものがきわめて重要だと思うのでありますが、この段階における大蔵省と日銀当局との関係というものは、いままでのようなやり方でなく、もっとすっきりとした関係をつくり上げなけりゃならないと思いますので、その問題を中心として、これから質問を行ないたいと思いますが、その質問に入るのに先立って、まず日本銀行の納付金及び造幣局特別会計について、政府側から御説明を願いたいと思います。
  109. 中尾博之

    政府委員(中尾博之君) ちょっといま資料を調べております。
  110. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本銀行の納付金二百八十億五千二百万円、それから造幣局の特別会計、歳入百三十九億三千七百万円、歳出百二十八億八千五百万円、差し引き十億五千二百万円の歳入超過ですか。特に造幣局のほうの歳出において、前年度予算額に比し十三億九千二百万円の増加、これは何によるものですか。
  111. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ちょっと……。
  112. 戸叶武

    ○戸叶武君 この説明書によると、日本銀行券の製造量の増加に伴う経費及び工場施設を整備するために必要な経費の増加となっておりますが、その日本銀行券の製造量の増加というのは、どういうぐあいになっておりますか。
  113. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 事実問題は政府委員から答弁せしめますが、御承知のとおり、補助貨幣が非常に少ない、こういうことでありまして、私が大蔵省に参りましてから、実情調査をいたしまして、大幅に三十八年度も一円玉、それから五円、十円、五十円、百円という硬貨の製造量を非常に大きくしたわけでございます。三十九年度もその意味で、百円だけでも約八千万枚というふうに考えておるわけでございまして、そういう費用を計上いたしておるわけでございます。
  114. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本銀行券の発行高について、三十八年の四月には一兆五千七百五十億円、三十七年の四月には一兆一千七十億円というふうに、これは若干古い統計ですが、そういうふうに三四・二%も一年間に伸びておりますが、現在はどういうふうな発行高になっておりますか。
  115. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日銀の発行限度額でございまして、その一兆二千億台のものは、相当長い時期があったわけでありまして、去年一兆五千余億に限度額を引き上げたわけでございます。今年の二月末現在の発行高は一兆七千二百五十億でございます。
  116. 戸叶武

    ○戸叶武君 一月二十九日の日銀の佐々木副総裁の当初の金融部会では、日銀の貸し出しが、三十七年の一兆七千億円が、三十八年度に三兆にふくれ上がっているというふうな報告をしておりますが、これと通貨の問題はどういうふうに関連しますか。
  117. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日本銀行券の推移を申し上げますと、三十八年一月が一兆四千五百三十五億、六月になりますと一兆六千億、十二月が二兆円でございます。それから、いまの三十九年二月が一兆七千二百五十億という数字でございます。  それから、貸し出しの問題を申し上げますと、三十七年の四月で申しますと一兆三千二百十三億、三十九年二月で申し上げますと一兆二千三百四十二億と、ふえておらないわけであります。
  118. 戸叶武

    ○戸叶武君 私は、去る三月九日参議院予算委員会で、日本銀行法の改正の急務についてお尋ねしたのですが、その際、山際日銀総裁が、全面的検討を早い機会に行なって、日銀法の改正をやりたいということを言明した。また田中大蔵大臣も、早い機会に成案を得たいと答弁しておりますが、過去にいろんないきさつがあるにしても、この開放経済体制のもとにおいて、いままでの日銀法ではいけない、抜本的に変えなければならないということは、もうはっきりしておるのですが、問題は、いつまでにこれを変えていくかということでありますが、大臣としてはどういうお考えですか。
  119. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日銀法の改正につきましては、御承知のとおり、金融制度調査会で三十五年に答申をいたしたわけでございます。この答申後、もうすでにまる三年間もたっておるわけでございますので、開放経済に向かっておる現実を考えますと、できるだけ早い機会に改正案をつくりまして、国会の御審議を得たいという考えでございます。そうかといいまして、これだけ重要な問題に対して、あまり急いだためにまた議論沸騰ということでもたいへんでありますので、この御議論を中心にしまして、各界の意見がぼつぼつ出つつありますので、これらの状況も見ながら、慎重かつ迅速にという考え方でございます。この国会に出せるかということになりますと、この国会にはむずかしいのではないかという見方でございますが、できるだけ早い機会にという考えでございます。
  120. 戸叶武

    ○戸叶武君 四月一日からIMF八条国に移行し、開放経済体制に入る。この開放経済体制のもとにおいては、貿易・為替の自由化が進むのにつれ、為替管理の面からの調整ができなくなってくる。したがって、景気調整手段として、財政金融政策による間接的手段が重要な地位を占めてくるのでありまして、金融政策の面での日銀の果たす役割りというものが、私はいままでよりも一そう重くなってくると思います。これは大蔵大臣も正しく御認識のことと思いますが、そこで、やはりこの日銀法改正の問題でも中心になってくるのは、日銀の中立性の問題、その問題が中心課題になると思うんですが、大蔵大臣はどのように考えておりますか。
  121. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり、日本銀行は中央銀行でございますので、金融政策の大元締めとしての日銀の中立性というものは守っていかなければならぬと考えております。同時に、私は、現在の日銀に対する観点からいたしますと、現在でも守られておるという考えに立っておるわけでございます。
  122. 戸叶武

    ○戸叶武君 日銀が金融面から景気調整を行なっていくためには、金融を引き締めたりゆるめたり、資金の流れを量的に調整していかなければならない。その代表的な手段が、この間やったような公定歩合の操作を中心とする金利政策、準備預金制度、オープン・マーケット・オペレーションでありますが、この金融政策の中で通貨調節手段として最も重要なのが公定歩合の上下操作だと思うのであります。この間の公定歩合の二厘引き上げの問題をめぐっても、政府と日銀との間には長い間意見の相違があったようでありますが、この相違点はいかなる点でありましたか。
  123. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私もたびたび申し上げておりますように、日銀との間に意見の相違はなかったのでございます。新聞等を見ておりますと、何かあったように書いてありますが、これは事あれかしというふうに私どもは理解しておったのでございます。また、その後、予算委員会に日銀総裁が参考人としておいでになりましたときも、御承知のとおり、政府との間には完全に意思の一致を来たしておりますということで、私の考えと同じことを御答弁になっておるわけでございまして、公定歩合引き上げに対して、大蔵省日本銀行との間に意思の疎通を欠いておった、また意見の大きな違いがあったというふうには理解しておらぬのであります。
  124. 戸叶武

    ○戸叶武君 私が予算委員会質問したのは公定歩合を引き上げる数日前のことでありますが、私はそのときにも、イギリスが本年二月二十七日に公定歩合を四%から五%に引き上げた、このことは、単にイギリスだけの問題でなくて、ベルギー、フランス、オランダ、スエーデンに次いで行なった措置であって、これはアメリカが昨年七月に行なった利子平衡税の問題よりも影響するところが大きいというふうに尋ねたのは、当然公定歩合の引き上げはされるべきであった、されるというよりは、常識的には一月の段階、イギリスが公定歩合の引き上げをやる前ぐらいに当然行なわれるべきであったのが、いままで引き延ばされていたのは、やはり政府の圧力に屈して山際日銀総裁が自主性を持ていなかったからだと思うのです。予算委員会に出てきての答弁を見ても、何だか屠所に引っぱられた羊のようにおどおどしておった。日本は、もとは、占領政策を背景にしたからでありましょうが、一萬田さんなんかの時代には、日銀総裁は法皇だといわれた。法皇どころの騒ぎじゃなかったと思うのです。  そこで、問題は、今後政府が財政金融政策においても政治的責任を最高的には負わなければならないと思いますが、やはりこの中央銀行の金融政策の自主性なり独立性というものがどこまで認められるか、その調整の具体的問題というものは非常に重要だと思うのですが、いままでもできていると言うが、いままでにできているような無性格な形でもって日本銀行法というものがっくり上げられたら、たいへんなことになるのじゃないか。これはイギリスのやり方なりアメリカのやり方なり、国によってそれぞれ異なっておりますけれども、いままでも十分研究が尽くされており、問題の焦点はしぼられてきたと思うんですが、問題となる焦点はどういうところですか。
  125. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金融制度調査会から答申を得ましたものの中で一点問題がございます。この問題は、日銀に対する大蔵大臣の指示権ありなしの問題でございます。この問題が、日銀というものは中央銀行として中立性は絶対的であるという考え方から考えますと、大蔵大臣などの指示権は不必要であるという考え方でございます。それからまた、そんなことはなくとも、日銀は十分金融の元締めとしてやっていけるという考え方がございます。ところが、指示権ありという考え方、指示権を規定すべしという考え方は、これはやはり最終責任は政府が負うのでありますから、日銀の絶対的中立性というものはあり得ない。これはもう事実、あり得ない、こういう考え方に立っておるわけであります。これは検察庁法の規定もこういう考え方でございます。検察庁に対しては、個々のものに対しては絶対に指示をしてはならない。しかし、最終責任は政府が負う以上、十四条の規定を置いたということは、検察庁においてさえもそうであって、金融の元締めであるという考え方から、大蔵大臣の指示権さえもないという考えは、これはあり得ないのだ、こういう考え方。しかも、検察庁と同じように指示権ありとしても、もちろん個々のケースに対して指示するわけじゃないのであって、これは検察庁法十四条のような考え方で書かれたものだというふうに考えておるのであります。このわずか一点にしぼられた問題に対して議論が存するところでありまして、今日その成案を得ないということであります。
  126. 戸叶武

    ○戸叶武君 これは今後において、金融政策をめぐっての大きなトラブルが必ず起きると私は思っておるんです。それは一九二九年の世界経済恐慌のあの波濤の中においても、一九三二年デトロイトの銀行が二つほど破産したことから引き起こされた世界的な金融恐慌の波濤の中において、イギリスでもイングランド銀行のあり方というものに対して非常にきびしい批判が出て、その後国営が断行されたのであります。イギリスにおいては、御承知のように、政府の指示権があります。あるけれども、中央銀行の中立性が慣習的に確立せられておりまして、金利政策の自主的な弾力的な運営というものが現実においてなされておるんです。日本日本銀行の実態というものにもっとメスを入れなければならないと思いますが、これはやはりいま大蔵大臣がばく然と説明されたような大体のワクにまでは来ておると思いますが、それを掘り下げて、具体的にこの際やはり結論づけておかないと、何か、いまのところでは、日銀の中立性なんかほとんどない。全く池田さんと田中さんのベースに引きずられて、日銀が腰を抜かしてあとからついていくような形で、みすぼらしくて見ておられない、こういうのが私はいまの日銀の実態だと思うんです。  ところで、いま、こういうような問題に対して直接手をつけておるのが、アメリカにおける連邦準備率の改正が下院の銀行通貨委員会で取り上げられておりますが、パートマン委員長は、やはり銀行家によってコントロールされ、彼らによって金融が引き締められたり金利を上げられたりして、かってに金もうけされるやり方、これじゃかなわないから、抜本的な改正を求めようというところに、かなり現在の運営というものに不満を表明して、単刀直入に突っ込んでいると思うんです。アメリカの場合と日本の場合と違うにしても、この間のもたもたしたやり方を見ると、あの株界に対するいろいろな波動やら、日銀の公定歩合の手ぎわのまずさなんか、全部、見ていると、何かすっきりしないものを感じる。まあ、あか抜けないというのか――あか抜けないというよりは、こんな調子でどじを年じゅう踏んで金融政策をやられていたのでは、これはかなわないなという感じが一般に持たれたと思うのです。これが私は、今後金融政策をやっていく上におけるやはり大蔵大臣のやり方なり日銀総裁のやり方に対する国民感情として不信感というものが必ず起きてくると思うのです。見てごらんなさい、この間あの程度で国民はまだ黙っておりますけれども、あの問題をめぐって掘り下げていったときに、ずっと見て日本ほど手ぎわの悪い金融政策はやっている国はないと思われると思うのですが、あのようなぶざまな調子の金融政策でも、あれでもこれは一番いいのだといまでも田中さんは確信しておられますか。
  127. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) おしかりを受けておるわけでございますが、金融の最終責任は私にあるわけでございます。てまえみそのようにこれは一番いいんだというほど自信がございませんけれども、しかし、外国のものと比べてみても大体うまくいっているんじゃないというふうには言い得るわけでございます。外国も今度の公定歩合の引き上げに対してタイムリー・ヒットと、こうも言っておりますし、まあそうだと、外国からほめられるほどとは考えておりませんけれども、国民に対する影響も非常に多いことでありますので、非常に慎重かつ適切妥当な金融政策を行なうべきだというふうには考えております。  日銀が非常に何か自主性がないようにお考えになられておるようでございますが、私は日銀の自主性というものは厳に保たれておるという考えであります。日銀もなかなか一生懸命でやっておるということを考えておるわけでございます。公定歩合に対しましては、政策委員会が決定して大蔵大臣に届け出るということになっております。それから、準備率の引き上げ等に対しては大臣が認可するということになっておりますが、それ以上に日銀を制肘したり、また引き回したりというようなことはないわけでありまして、これはひとつ、すなおな立場で日銀の業績というものに対しても御批判を賜わりたいと、このように考えます。
  128. 戸叶武

    ○戸叶武君 政府は三月十七日に公定歩合の二厘引き上げを断行したのですが、私が質問したのはあの八日前だったと思いますが、イギリスでは二月二十七日に公定歩合を金利四%から五%に一%引き上げたのですけれども、あの公定歩合一%の引き上げというのは日歩三厘弱の引き上げでありますから、当然日本においてもこれは常識的に二厘程度の引き上げをしなければならないというのは、もうわかり切っていたことと思うのです。それがあそこまでやはり何といいますか、のんびりと延びてしまったのには、やはり田中大蔵大臣が一月中旬に新聞記者会見において自分の所見を明らかにしておりますが、あなたは、第一は、金利の引き上げはそれだけ商品のコストを高め国際競争力を弱化することになる、第二は、金融引き締めで中小企業の倒産者がふえてきているおりから、金利の引き上げはこれに追い討ちをかけることになるから、好ましくないと断言しております。この断言についてはどのような感想をお持ちですか。
  129. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり、日本は貿易依存の国でございます。この貿易の実態を見ますと、原材料のない日本は、原材料のある国と世界の自由市場において競争しなければならない運命に立っておるわけでございます。こういう原材料においてハンディががついておるのでございます。戦前もそのとおりでございましたが、これをカバーしたのはたくましい日本の労働力であったのでございます。日本国民のたゆまない労働的な犠牲でこれをカバーしておったわけでございます。しかし、戦前はそれに対して金利は非常に安かった。公定歩合は一銭を割ったわけでございます。ところが、戦後は原材料のないことは同じことです。それから、金利は国際金利よりも非常に高い。戦前以上にわれわれの国民の努力というものがこれをカバーして今日を築き上げてきておるわけであります。でありますから、第二のハンディであるところの金利の高いということを低くしなければいけない。これは日本国民だれでも考えておると考えます。私は、そういう意味において、国際金利にさや寄せをしていかなければならないという政策を変えるべきではない。これは絶対正しい政策であると、かように考えております。  しかし、その過程において、一挙に引き下げ得るものではないわけであります。でありますから、その過程において景気の動向というものを十分見ながら、この波動に対処していろいろ金融調節の手段があるわけであります。もうすでに十二月から認可権限があるところの準備率の引き上げを行なっております。一月に窓口規制も行なっております。同時に、公定歩合の引き上げに対しては、二十二年当時など一週間もおくれて、非常にその間に二カ月分も飛び込み輸入があったということでありまして、今度は同時に輸入担保率の引き上げを行なっておるわけでありまして、この金融調節の手段は引き上げ、引き下げということであって、私の考えておる国際競争力をつけるために、また中小企業育成強化のために金利水準を下げなければならないという根本方針も、今度の金融調節手段と相反するものではない。これは私の国際金利さや寄せという考え方は、将来ともこの線に向かって努力をしていきたい、こういうふうに考えるわけであります。
  130. 戸叶武

    ○戸叶武君 原則はだれでも田中さんと同じだと思うのです。問題は、タイムリーに公定歩合の引き上げなり引き下げをやって、そうして国際収支のアンバランスを是正するなり、いろいろな形のやはり金融操作があると思うのですが、田中さんはあのような意見発表していて、現実に公定歩合が二厘も引き上がったじゃないですか。商品のコストはこれによって高まり、国際競争力が弱化し、金融引き締めによって中小企業の倒産者がふえるような場合に、こういうことはすべきことじゃないという御意見と、この二厘引き上げとは、どういう結びつきがありますか。
  131. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公定歩合を引き上げるのか、なぜ引き上げないのかという議論がございましたけれども、公定歩合に対しては、どこでも近く引き上げますということを言い得る立場にないわけであります。これはもう株価の問題に対してもいろいろな影響がありますし、こんなことを言っておったら、飛び込み輸入もありますし、いろいろなことがありますので、こういうことはごく隠密裡に日銀政策委が行なうべきものでございます。  私が、ただ、十二月、一月、二月と、この公定歩合をいまにも引き上げろというような、こういうふうな御質問がございました当時、私が引き上げたのは、少なくとも一律画一的な引き締めということもさることながら、中小企業の現状、それから企業間信用が非常に膨張しておるというような事態を十分考えて、これにできるだけ細心の注意を払い、万全の施策を行なうということが当面の重要な問題でありますと、こういうことをお答えしておるわけでございまして、公定歩合の引き上げということは、私は総理大臣国会における発言その他と全く相反したものであるということを言われることはどうかと思います。私たち自身が、大臣の認可事項である公定歩合の引き上げもさることでありますが、大臣認可事項になっておるところの輸銀準備率の引き上げというものも公定歩合と何ら劣らない重要なものだと考えておるわけでございます。こういうことをやっておるわけであります。しかも、国会においては、引き締め基調にあり、随時機に応じて適切な措置をとりますと、弾力的に考えますと、こう言っておるのでございますから、どうも私たちが全然公定歩合を引き上げないと言っておって、手のひらを返したように上げたというふうにはお取りいただかないようにお願いいたします。特に公定歩合に対して日銀の自主性が非常に守られてきたということも、その意味では申し上げられるわけでございます。
  132. 戸叶武

    ○戸叶武君 田中さんが心配した点で当たっておる点は、やはり中小企業の倒産が続出してきておる点であります。去年の十一月から始まって、一月、二月、三月と、もうひどくなっておりますが、それは具体的に田中さんが予見したような問題は、どういうように具体的にあらわれていますか、数字を示してもらいたい。
  133. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昭和三十八年の数字で申し上げますと、十月が百五十九件、百十六億、十一月が二百九件、二百十六億であります。十二月が百九十四件、二百三十九億であります。三十九年の一月が百九十八件、二百八十二億であります。三十九年の二月が二百三十八件、三百五十一億という数字でございます。三十九年の三月は、第一旬約五十件に対して、第二旬もそのような数字を続けていると思います。
  134. 戸叶武

    ○戸叶武君 毎日の新聞を見ていると、きのうあたりも、神戸あたりで大きなところが二つつぶれております。やはり三月危機説というものは無視できないほど、私は深刻に中小企業の中にかぶさってきておると思います。このほうは田中さんが予見したとおり当たっていますが、さらに、田中さんがもう一つ心配した国際収支の面でありますが、三十八年度の輸出は五十四億五千八百万ドル、輸入は五十六億六千五百万ドル、為替ベースによる貿易収支は、三十八年は二億七百万ドルの赤字、貿易外収支の赤字を含めると、同年中の経常収支の赤字は五億七千二百万ドルに達するというような話もありますが、政府側ではどういうふうに見ておりますか。
  135. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 三十八年度の政府見通しにおきましては、貿易収支におきましては二億五千万ドルの赤、貿易外収支におきまして四億一千万ドルの赤、合計いたしまして、経常収支で六億六千万ドルの赤ということになっております。また、長期資本収支につきましては四億ドルの黒、短期資本収支につきましては、二億七千万ドルの黒、合計いたしまして、資本収支で、六億七千万ドルの黒という見込みでございます。そして、誤差脱漏で千九百万ドル減りまして、したがいまして、総合収支では九百万ドルの赤というのが、十二月ごろの政府の見通しでございました。なお、別に、この前の外貨危機の際にアメリカの銀行から借りました借金の返済で、四月から七月の間に九千万ドル支払っておりますから、したがいまして、それを含めますと、総合収支で約一億ドルの赤字になるという見通しでございました。  これに対しまして、その後輸出、輸入ともかなりふえてまいっておるのでございまして、貿易外収支につきましては、大体政府見通しと同じでございます。したがいまして、経常収支全体につきましては、政府見通しの六億六千万ドルよりも、かなり上回る見込みでございます。しかしながら、長期資本の受け取り及び短期資本の受け取りが、これもまた政府の見通しより上回りまして、総合いたしますと、大体、特別借款の返済も含めまして、先ほど申し上げました政府見通しよりも若干総合収支においては赤字が減る見通しでございます。
  136. 戸叶武

    ○戸叶武君 それから、もう一点伺いたいことは、高度成長による経常収支の赤字を海外からの借金によって穴埋めをしてきたいままでのやり方でありますが、昭和三十五年から三十七年までに外国からの資本の純輸入額は十六億三千百万ドルにのぼり、三十八年度の七億ドルを加えると、四年間に二十三億ドルの巨額に達するというような指摘もありますが、大体このようになっておりますか。
  137. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 昭和三十五年から申し上げますと、長期資本の受け取りは一億五千四百万、三十六年が三億七千五百万、三十七年が四億七千三百万、いま年度の申し上げておりますが、三十八年度の四月から十二月までが六億一千四百万ドルになっております。それから、支払いについて申し上げますと、三十五年度の支払いが六千三百万ドル、三十六年で八千九百万ドル、三十七年八千百万ドル、三十八年度の四月から十二月までが一億二千万ドルにのぼっております。
  138. 戸叶武

    ○戸叶武君 それは長期だけですか。
  139. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 長期だけです。
  140. 戸叶武

    ○戸叶武君 長期、短期入れると、年々の支払い元本の返済だけでもこれからたいへんだと思いますが、この問題に対しては政府はどういうふうにお考えですか、見通し。
  141. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 元利の支払いが一億ドルをこすわけであります。そのほかに御承知の技術導入に対するロイアルティーの支払い等、二億ドルをこすような状態であります。こういう問題は、日本の経済発展に資するような状態で導入されておるわけでありますので、将来のこれが返済に対しましては、日本の経済の発展により輸出の伸長をはかって、その国力の中から返済をいたしてまいるというような考え方でございまして、十分長短期の借り入れに対しては、これを返済していけるという考え方に立っておるわけであります。
  142. 戸叶武

    ○戸叶武君 山際日銀総裁も、今度の金融引き締めは特に貿易収支の均衡回復に重点を置いている、貿易収支がいつごろから均衡するかはまだ見通しはわからないが、という談話を発表しておりますが、いずれにしても、いま田中大蔵大臣が言ったように、貿易の問題で、あるいは貿易外収支の改善対策で、今後この行き詰まりを打開しようと政府考えているのだと思いますが、先ほど木村さんも質問しましたけれども、政府は二十六日に経済閣僚懇談会を開いて、国際収支改善対策を検討するということになっておったはずですが、そこで論議せられ、そこでまた打ち出さた具体的対策はどのようなものですか。
  143. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど木村さんにお答えをしたわけでございますが、きょうは第一回の会合でございまして、第二回、第三回と引き続いて検討してまいりたいという考え方でございます。きょう出ましたものにつきましては、長期の見通しにつきましては、いま中期五カ年計画を策定すべく諮問いたしておりますので、長期の見通しを申し上げるわけに参りませんけれども、さしあたり三十九年度で考えなければならない問題に対しては、ひとつ積極的に考えてまいろうという基本的な観点に立って会議を行なったわけでございます。具体的な問題については、海運収支の改善ということに対して、船を一体六十四万二千トンでいいのか、また一体幾らまで建造すればいいのか、それに対して財政当局としての一体財政原資の問題がどうであるかというような問題を、これから検討しようということでございます。さしあたり、開発銀行では六十四万二千トンの三十九年度の建造につきましては、四月一日から受け付けて、しかも二十カ年の長い積み荷見通しというような条件があったものに対しては、これを大幅に緩和をするというようなことをきめたわけでございます。そのほか通産大臣からは、輸出造船及びプラント類等の三十一日の期限の来るものについて、税法上の特典は打ち切られるわけでございますが、消滅するわけでございますが、いま契約しておるものの資金等に対して特段の措置ができないかというような発言がございました。そのほか観光その他貿易外収支の改善に役立つものに対しては、これから各省で十分検討して積極的な姿勢をとろうということで、きょうの会議は終わったわけであります。
  144. 戸叶武

    ○戸叶武君 貿易外収支の改善対策といいましても、構造的欠陥の問題点というものは、海運収支の二億六千万ドルの赤字よりも、特許料の支払いや商社の支店経費などの赤字のほうが五億五百万ドルも出ているので、このほうが多いので、いま大蔵大臣は、ウエートをこの造船のほうに、船のほうに置いておりますが、船も一つの問題でありますが、さっき言ったように、長期及び短期の外資導入、これに対するいろんな対策というものが、やはり相当大きなウエートになってきておるのだと思いますが、その問題に対してはどういうふうに考えておられますか。
  145. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 良質長期な外資は、これを取り入れていくという基本的な考えでございますが、どこまでも借金政策でやっていくという考え方を、いつまでも続けられるわけではありませんので、ここらでひとつ開放経済に向かうことでありますので、国内自己資本の充実という面も大きく考えていかなければならないだろうというふうに考えておるわけでございます。その意味で、税制上等も、投資信託の問題に対して、分離課税等の措置を行なったり、これからはひとつほんとうに真剣に国内資本の調達充実という問題と取り組まなければならんだろう、こういうふうに考えるわけでございます。
  146. 戸叶武

    ○戸叶武君 田中大蔵大臣はかつて私が質問したことに対して、本年度は開放経済に対処するために、第一に国際収支の安定をはかり、第二に物価抑制をはかるということを断言しておりますが、いま一番国民が不安感を持っているのは、やはり政府が楽観説をやたらにまき散らしておりますが、国際収支はきわめて不安定であるということと、やはり物価の問題もなかなかおさまってきてないということで、こういうようなことからのしわ寄せが、今日、特に中小企業の面にしわ寄せが、金融面その他できて、倒産者が続出しているという状況ですが、特に最近経常取引の自由化の面で、貿易の面で一月の経常収支は、貿易一億三千二百万ドル、貿易外二千六百万ドル、計一億五千八百万ドルの赤字で、過去の最高赤字記録、三十六年六月の一億四千五百万ドルを一千三百万ドルも突破しております。二月には貿易収支は六千五百万ドルの赤字、貿易外収支は四千万ドルの赤字、計一億五百万ドルの赤字、三月も同様に一億ドル程度の赤字が見込まれるのではないかと言われておりますが、三月以降における見通しはどういう見通しですか。
  147. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 三月は新聞にも報道されておりますように、十二月の相当大幅な輸入増加の反動もあって輸入は減っておるわけでございます。輸出は御承知のとおり好調でありますので、私は政府が当初企図いたしておりますように、三十九年を通じまして輸出、輸入六十二億ドルというような問題は確保できると思いますし、またそれを確保していくように努力をしてまいりたい、このように考えております。
  148. 戸叶武

    ○戸叶武君 私らのいなかのほうでも、労働賃金の安いところで、いままで造花やらあるいは木製品がずいぶんアメリカその他に輸出があって、ばかにならなかったのですが、このごろは香港あたりでもっと安い労賃でつくられているというので、この二、三カ月急激に向こう側に移っているのです。もうチープレーバーでもって輸出を盛んにするということは、ほとんど不可能になってくる。そうすると、日本においてはやはり外国からの特許を買ったり何かして技術革新をやって、そうしてその波に乗って輸出を盛んにしなければならないということが、精密機械あるいは化学製品等の面で出てくるのはやむを得ないと思うのでありますが、そこで問題は、やはり貿易面の戦いの中で、外国でみな輸出に対して延べ払い方式が確立しておるのでありますが、やはり輸出を盛んにしていくのには、国内の市場のごときも、市場を拡大して、そこに安定的な基盤というものを持たなければ輸出を伸ばすことはできないので、輸出の問題におけるところの延べ払い方式だけじゃなく、国内における延べ払い方式をしなければ、中小企業や何かが大企業におけるいままでの設備投資のやり方のようなはでなやり方ができないので、機械一つ買うのにも、なかなかそこに問題があると思うのですが、政府としても昨年の四月から、この国内における延べ払い方式に対して施策を行なっておりますが、それはどの程度の成果をあげておりますか。これは通産からお答えを願い、大蔵省はいいでしょう。ここで一番問題なのは、やはり大蔵省というのはいつでも恨まれるるのだが、通産省のほうで話がわかるが、大蔵省はいつも渋くて、とにかくあそこへいくと締められてしまうのだという、これは大蔵省機能の点から、ファンクションからしてやむを得ないのだと思いますが、昨年の七月からこれが開始されまして、もう本年の一月までに二百六十六件、五十八億八千万円ですか、それからこのうち工作機械が五〇%通産省の推薦のうち百六十二件、二十八億円、申請額の五〇%、それから貸付融資実行状況は、昨年八月から本年一月までに五十一件、六億二千万円という状況ですが、たしか二十九年度の予算は四十億円程度でしたでしょうか、この程度のことでは、なかなかやはりこれは金融面につきましては、私はたいした成果はあげられない、要請の半分にも満たない状況なんですが、これは言うとおり何も出せないというのでしょうか。今後においてもチープレーバーの造花だとか繊維だとか、やはり木製品とかというのは限界が出てきて、高度な輸出品を出さなければならないところにきていると思うのですが、この切りかえがおくれてしまうと、いままでの大企業は、設備投資はもう行き届いた、しかし資金面の、金融引き締めで、中小企業はそれに見習うことができない。しかし、これの下請もできない。これに対応していくのにどうしようかというもがきは、一番大蔵省金は貸してくれない、税金とればきびしい、とにかく大蔵省というのは鬼の住むようなところだというふうな恨みというものが、いきなり大蔵省のほうへ全部向かっていくと思うのです。これは私はまじめな中小企業は一番苦労する問題だと思うのですが、田中さんは苦労人ですが、こういう問題についてはどういうふうに考えておりますか。
  149. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大蔵省はいつでもいやがられるのは、これはやむを得ないことでございます。まあたての両面になりまして、通産省や農林省は日の当たるところでございますし、大蔵省は日の当たらないところでございますが、しかしそういう意味で甘んじておるところに、日本の健全財政もあり、また戦後のこのような経済発展も、また社会保障の拡充等もあるのでございますから、私たちは甘んじてこのお責めを負っておるわけでございます。これからの輸出の振興ということに対しても、多様化だけではなく高度の製品でなければならぬということは、お説のとおりでございます。これがチェコとかそれからスイスとか西ドイツとか、こういうところで非常に成績をあげておるわけであります。日本は特に原材料はないのでありますから、重い原材料をもってきて、安いものをつくって多量に出すということになると、いままでは、戦前はそうでありましたが、私はそれではやはり大きく輸出が伸びない。その小さな原材料を輸入してそれを精巧なものにして、高いもの、良質なものを出すというふうに、だんだんと私は転化していかなきゃならぬと思いますし、日本人にはそういう素質は十分あるというふうに考えておるわけでございます。そういう意味で、いろいろ技術革新も行なわれておるわけでございます。  中小企業に対する問題については、これはもう先ほどから御指摘がございますとおり、私が公定歩合を押えたわけではございませんけれども、中小企業の実態を考えると、なかなかそう統一、画一的なものに飛びつくわけにはいかないわけでございます。そういう意味で、回り道であっても、中小企業のたゆまない努力に対しては何かこれに報いていくように、十分サポートしていけるような態勢こそ望ましいというふうな考えを前面に出しておったわけでございますし、また将来もそうあるべきだと考えます。  もう一つは、財政金融の問題でございますが、これはもう確かに四十億とか六十億でもっていいとは考えておるわけではありませんので、これからの資金の事情によって、できるだけその資金量を拡大していかなければならぬと思います。これは外国の金なんか安いものですから、日本よりも長期に貸せるということで、金利も安い、長期に貸せる、日本で間に合う機械を外国から入れるという弊害があることは御指摘のとおりでありまして、こういう問題に対しては、ひとつ産業人の自覚にも訴えるとともに、やはり政府が金融制度上これに対応するような措置を考えてやらないと、これはできないことでございますので、これらは国際収支の改善というだけではなく、日本の産業基盤を強化にするという意味でも前向きで積極的に取り組んでいきたいという考え方でございます。
  150. 戸叶武

    ○戸叶武君 はなやかな裏にはわびしいものもあるというお話ですが、日本の産業の石油産業の中で、石油産業のメーカーは大体アメリカ資本のような巨大なものが日本にのしかかってきております。かつてアメリカが中南米をコントロールしたように、石油が日本をコントロールする時代が来たと言われるほどコントロールされております。そういうところで一番みじめなのはこの過当競争の中でもって、中小企業のあのスタンドや何かを経営している石油製品の販売業者です。結局はメーカーと消費者との間にはさみ打ちになって、過当競争の中でもって、いろいろの犠牲者的立場にあるようです。税金の問題も、結局は消費者へ転嫁するのはなかなか困難で、はさみ打ちになって、ここでいろいろのもがきがありますが、徴税の実務代行を、事実上このガソリンスタンドや何かの中小企業がやっているにもかかわらず、そのほうの恩恵はどっちかといえば、メーカーのほうに流れていってしまうというような、具体的な事例もあるのですが、これは外国資本が大部分ですが、これに押されてきている日本の中小企業の実態というものを十分に把握して、そうして減税措置という形よりも、たとえば、いま目的税としてガソリン税というものにおける徴税の実務代行をやっているのは彼らでありますが、彼らの一番困っているのは、やはり運転資金の問題です。こういう金融措置なり何なりをしないと、やはり私はガソリンスタンドに火がつくときはたいへんなことになるので、これは私ははなやかな産業の中におけるひとつの暗い穴じゃなかいと思うのです。こういう点に対して、これは実態をよくお調べになって、ひとつ田中さんあたりが手を打つことが、望ましいのではないかと思いますが、どうですか。
  151. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 実態を十分調査をいたしまして、中小のスタンド等が非常に苦境であれば、こういう問題に対しても十分検討してまいりたいと、このように考えます。
  152. 村山道雄

    主査村山道雄君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  153. 村山道雄

    主査村山道雄君) 速記を始めてください。
  154. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 時間が、これは制約をされてしまいまして何ですが、大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、公定歩合引き上げについてのいきさつについて、私も詳しくお尋ねしたいと思いましたが、大体お話があったのでこれは省きますが、結局日銀の中立性ということに対して私は問題があると思う。かねて委員会等において、あるいは国会において、金利を引き上げるべきではないか、ところが大蔵大臣は窓口規制とか、あるいは預金準備率の引き上げをやって、十分金融引き締めをやっているからという御自信があった。われわれはさように了解しているのですが、ああいうふうに、抜き打ち的に公定歩合を引き上げられた。一番あの時期が、三月十七日がやはり一番いい時期だと大蔵大臣もお考えになっておるかどうか、その点は。
  155. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 議論はあると思いますけれども、公定歩合というものは、やはり抜き打ち的にやらないと効果がないわけであります。これが漏れたなどということになると、たいへんな問題が起こるわけでありまして、これに対して公定歩合を上げろと言われても、なかなか、十二月にはもう準備率を上げております。一月には窓口規制をやっております。また機に応じて適時適切な措置をとりますという中に含まれておるのでありまして、公定歩合を全く抜き打ち的ということに対して、いままでの制度上全くいかんともなしがたいのです。これからの公定歩合をいつ引き下げるかということを言われれば、引き下げる状態がくれば引き下げます。もっと上げないかと言われれば、上げるような状態が来ないことを期待いたします、こういうことしか言えないのが、公定歩合の特性でございます。そういう意味で公定歩合の問題に対しては御理解をいただきたい、こういうふうに考えます。
  156. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 先ほど日銀としては、早く引き上げたいという意向があったのではないかと私は思いますが、それを大蔵大臣は押えておったという事実はないですか。
  157. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 全然ございません。
  158. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 これはもう私もずっとお聞きしたいのだが、時間がありませんので……。そこで、大体私らが解釈しておるのは、日銀は早期に公定歩合を引き上げたいという意向があった。それを押えておったということは、そういう事実はないと、いま大蔵大臣がおっしゃいましたが、まあそれでは見解が違っておったということで、一段と国際収支の悪化を来たしたんじゃないかと、そういうふうにわれわれは考えますが、大蔵大臣はその点いかがですか。
  159. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあそういうことはないと思います。これはもう預金準備率を引き上げて、一月窓口規制等を行なっておりますから、かりに国際収支の悪化ということを急激にもたらしたのが、公定歩合の引き上げ等が漏れておったためだということでもあれば別でございますが、そういう事実もなかったわけでございますし、私はこの引き上げ等を行なったことによって、国際収支はより安定の方向へ向かうであろうという見解でございます。
  160. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 先ほどもお話であっておりましたが、これは公定歩合の引き上げによって、あるいは窓口規制とを預金準備率の引き上げとかいうことのみとは思いませんけれども、非常に中小企業の倒産が多い。逐次多くなっている。私の調べた範囲内においても、先ほど大蔵大臣の御答弁になったのと一致しておりますが、なお、私は今回の公定歩合引き上げによって、やはりそのあおりを食らって、中小企業の倒産はもっと多くなるんじゃないか、こういうふうに私は思いますが、そういう点のお見込みといいますか、大蔵大臣どういうふうに考えになっておりますか。
  161. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公定歩合の引き上げは、御承知のとおり、直接的に日銀の貸し出しの大半を受けております都市銀行、大企業向けの資金を押えようということがねらいでございます。これによって高度の成長も押えられるわけでございますし、輸入等も低水準に安定的なものになるということがねらいでございます。でありますから、公定歩合の引き上げが、直接中小企業に対して金融の引き締めになるということは言えないわけでございます。しかし、実際は、公定歩合を引き上げますと、大企業は下請代金の支払い等を延ばすということが過去にありましたので、その意味で、もう十一月、十二月、一月、二月と、下請代金支払遅延防止ということに対しては、万全の措置をとってきたわけでございます。立ち入り検査も行なう、こういうことを言ってきておるわけでございます。それだけではなく、中小企業に対しては、実質金利負担が多いということに対して、歩積み、両建て問題に対しましても、昨年の下半期から、政府も積極的にこれに取り組んでおるわけでございます。また公定歩合の引き上げが行なわれますと、普通からいいますと、金利は日銀に関係する金融機関の金利だけではなく、一般的にも金利は上げられておったのが例でございますが、今度それはどうかと思って、ずっと過去の状況を調査をしましたら、これは非常に金融機関が自粛をしておると思います。日銀の公定歩合が引き上げられても、過去において中小企業に貸し出しております金利は、ほとんど引き上げておらないということでございます。まあ金利の弾力性からいって、私たちが押えることはできませんけれども、公定歩合の引き上げ等によって、中小企業の金利がかさむということはないように、協力を願っておるわけでございます。日銀も特に総裁談話で、おいおい、そういうあらゆる手段を通じて、中小企業金融の円滑化をはかっておりますので、私は公定歩合の引き上げが原因で、中小企業の倒産がふえるということはないと思いますし、あってはならない。そのためには、弾力的に機に応じて敏速な処置をとるべきであるという考えを持っておるわけでございます。
  162. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それは、あなたそうおっしゃいますけれども、今回の公定歩合の引き上げによって、市中の銀行等は、やはり自主規制、最高金利の日歩二厘引き上げ、あるいはさしあたり貸し出し金利を軒並みに一厘ずつ引き上げるとか、あるいは貸し出し審査をきびしくするとか、いろいろなそういう面があらわれてきておると私は思う。あるいは従来の系列融資拡大主義から、一変して今度は選別主義を打ち出すとか、そういう点、しわ寄せが中小企業にくると私はそう思うのですが、そういう点はあなたくろうとだから、もう少し納得するように説明していただきたい。
  163. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうことがあってはならないということで、慎重にあらゆる配慮をしてきたのでございます。いままでとしては、私は事前によくやったなと思われるくらい、御承知のとおり下請代金支払遅延防止法の運用に関しては、立ち入り検査を行なうというところまでいっておりますし、歩積み、両建ての排除に対しても非常に強くいっております。中小三機関に対しては、第四・四半期の資金ワクの増大、融資ワクの増大等に対して、財政資金の投入を行なったり、いろいろのことを何回かにわたって行なっております。同時に公定歩合引き上げの前日に、御承知のとおり、四月に対する買いオペレーション二百億ということもやっておるわけであります。また四月に期日のくるものの中に、百五十億も期日を延長しろ、その上になお、昨年の十二月から一月にかけて、御承知の国税長官通達を出しまして、中小企業に対しては税制上のいろいろな配慮をする、公定歩合を引き上げた直後においても、あらためてまたできるだけの税制上の優遇をするようにということを言っておりまして、私といたしましても、過去に例を見ないほど、あらゆる問題に対して、相当前向きに中小企業の問題に対処したつもりでございます。私がいままでいろんな発言をしてきたことに対して、中小企業に対して大蔵大臣は積極的過ぎる、荒っぽい発言があるではないかと、こういうことを言われたが、過去五、六カ月間に、中小企業対策に万全を期してまいったのでございます。しかも、今度金融機関に金が日銀から出る場合、その金融機関から大企業に金が出る場合は、そのうちどれだけがどの中小企業に払われるかということまで、こまかく報告を求めるというように、金融の流れに対しても相当な措置をいたしておるのでございます。いままでの公定歩合引き上げ等の事態に対処して、政府がとった手の中では、最もこまかく、また慎重な配慮を続けてきたのでありますから、私が公定歩合を引き上げた原因で、倒産がふえるということはないというように考えます。またあってはならないと考えておるわけであります。
  164. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 たいへん大蔵大臣の自信は満々で、池田さんの、経済のことはおれにまかせておけという、だいぶそれが田中さんに移っておるようだが、その点は、私はもう少し考えてもらいたいと思うのですが、なるほどそれは、あなたがおっしゃるように、私も聞いております。先刻の、国税局長さんか知らんけれども、取り過ぎた税金はすみやかに還付する、それはあたりまえのことです。あるいは延べ払い、企業の実情に応じて税の延べ払いを認める、売り掛け金の回収が著しく悪いような場合は、あるいはまた事業を一時休廃止するという場合には、一年あるいは二年以内の延納を認めるとか、その場合の延滞料は日歩二銭とかいうことを、これは事実かどうか知りませんが、そういう点は御配慮願っておるということは漏れ承っておりますが、しかし、私は、もっと、そういうこそくな手段でなくして、消極的な手段でなくして、あなたがたの党の方針としても、中小企業の育成振興というようなふうに近ごろだいぶ話が変わってきておるのだ。所得倍増が農業方面に、農業の振興というような面に、最初は忘れておったのだけれども、だいぶ所得倍増路線が急に変わってきたように思われますが、もう少し私は中小企業に対する追加減税の前向き対策をとっていただいたらどうか。大幅な減税、そういう点をひとつお伺いしたいと思います。
  165. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 平年度二千二百七、八十億にのぼる減税の中で中小企業六百億以上というような減税を行なっておるわけでございます。しかし、これからの問題といたしましても、農業、中小企業等に対しては、中小企業基本法、農業基本法の命ずるところ、基本的にこの線を守りながら、より積極的な施策を行なってまいりたいと考えておるわけであります。
  166. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 どうも時間がなくてあまりよく聞かれないが、先ほど申しました市中銀行の貸し出しに対する何と申しますか、あなた方の取り締まり、あるいは中小企業がやみ金融にたよらなければならないそういう市中銀行やあるいはやみ金融に対する大蔵省としての、あなたとしてのこれに対する取り締まり指導方針、その点をひとつ……。
  167. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。簡単ですから……。やみ金融ですね。両建て、歩積みを取り締まっていく。これは一番強く取り締まっていくのは信用金庫とか相互銀行ですね。ところがあそこへ強くいきますと、それは取り締まらなければならないと思いますけれども、そうすると、そこはあまり信用力のないものに貸せば損するから、危険であるから、そこで両建て、歩積みというひとつの保証になっているわけですね。それをどんどん追い詰めていきますと、いま鬼木さんが言われたやみ金融に走るのです。そういう状態があらわれておるということをわれわれ聞くのですが、これは非常にデリケートな問題ですし、非常に重大な問題ですね。その点いまやみ金融に関連して、両建て、歩積みをあまり追い込んでいくと、これは大銀行のほうを追い詰めるのと、中小企業金融の相互銀行とか信用金庫を追い詰めるのとはちょっと違うんだと思うのですよ。その点をひとつあわせて……。
  168. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 確かに歩積み、両建ても一気かせいにこれをやろうとすると、なかなか弊害が出てまいります。もう信用力を持っていないものには貸せないということも起こってまいりますし、同時に銀行でありながらコールに流して都市銀行と地方銀行の間、相互銀行との間のコールの資金源になってさっぱり中小企業にいかぬ。こういうことでは全く困りますので、歩積み、両建ての問題に対しましても、不当であり、中小企業の実質金利を高からしめておるものに対しては、やはり時間をかげながらも究極の目的を達成せしめるように、しかも実際金融機関がコールに流しておったり、いろいろな問題ではこれは困りますので、特に農中のように相当千何百億もコールに流しておるという事実があるわけでありますから、そういう問題から考えますと、やはり金融機関の貸し出し実績というものに対しては、十分こちらも調べまして、そういうものに対しては、私のほうでもいま売りオペレーション、買いオペレーションの制度がありますので、財政資金によるそういう問題に対しては相当配慮しますぞというくらいに、強くそういう行政指導をしているわけでございます。やみ金融に走るということも、確かに私はそういう事実は知っております。ですから、少なくとも税金を払うためにやみ金融に走らなければいかぬというようなことは、国税庁は絶対やっちゃいかぬというたてまえに立っておりますし、やみ金融というのはどこでも、いつの時代にも存在するものでございますが、現在のようなこれはどうも困ったことであります。日歩三十銭が制限でありますが、日歩三十銭などということを聞いただけでもびっくりするくらいなものであります。だからやみ金融に走らなければならない。また一ぺん入ると、なかなか抜けない。自転車操業になるということでありますので、そういう意味ではなかなか……。なるべく入ってもらわないように、入ってもらわないためには、中小企業に対してどうしてもやっぱり金融機関から資金を確保してやらなければ、求め得てできないことでありますので、そういう意味に対しても、ひとつ中小企業自体も健全な経営方針に徹せられると同時に、中小企業に対してはできるだけの配慮をいたしておるわけであります。  ところが、一つだけこの機会に申し上げたいのは、倒産した例は、いまこまかく私は調査をいたしておりますが、これは将来金融引き締めによって中小企業の倒産が起きた場合にはどうなるのか、責任はないのかという問題もありますし、それだけでなくて、私は一つでも内容を調べたいということでやっているわけであります。いままでの常識では考えられないことがあるわけであります。千万円程度の資本金であって十何億も手形を出しておる。こういうのが一体救済できるのかどうか、非常にむずかしい状態があるわけであります。私は、去年十月とか十一月のそういう事情をよく見ておって、一律画一に引き締めをやるとたいへんだから、よほど万全の措置を講じなければならないということを考えて、各般の施策をやっております。とにかくわれわれの常識では考えられない状態があるわけでありますが、そうかといって、それは自分の行き過ぎた経営だからやむを得ないというわけにもいかないので、政府も金融機関もあげて可能な限り万全の対策をとりたいというのがいまの感じでございます。
  169. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 そこでやみ金融の問題も、歩積み、両建ての問題ももっと聞きたいのですが、ますます私は中小企業にしわ寄せが来て、資金不足というような面が著しくなってくる、こういうふうに私は観測するのですが、中小企業に対する資金不足と、こういう面は大蔵大臣は御考慮の中に入っていませんか。
  170. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 実際問題から考えますと、中小企業に対する金融がどうなっているかということをずっと調べてみますと、近来急速に中小企業向けの資金量は大きくなっております。大きくなっておるのですが、とにかく大企業で設備投資をするような場合には一割とか二割とか三割とか、こういうことでありますが、中小企業というものはそう長いことつちかってまいりましたものを一ぺんにこわして、新しい設備にすると、いままでの何倍になってしまう。こういうことで倒産したような実例を見ますと、新しく大きなとんでもないりっぱな工場をつくらなければ堂々とやっていけるものが、思い切って三倍、五倍にしようというために、どうにもならなくなってくるというようなものがあるわけであります。私はやはり、いまいろいろ考えておるのですが、信用さえあれば幾らでも借りられるという制度になっているわけでありますが、やはりある時期に健全な経営、他人資本によって経営するものに対しては限度が、ある意味で必要ではないか、それはいわば何かと言えば責任方式というのがあるわけであります。自己資本比率に対して幾らと、私は少なくとも千万円程度の資本金、個人の犠牲でその十倍ではなくて、百倍も手形を出しておるというような経営がそのままで一体いいのかということは、これは一つの国民的な問題として考えていかなければならぬ問題だろうと、こういうことも考えられるわけであります。過去においてこのような事態に対して株式会社法の改正を、抜本的なものをやろうとか、中小企業に対してもっと大幅にやらなければならぬとか、いろいろの議論があります。商法に対して抜本的改正を必要とするという議論があるけれども、なかなか実情と理論が合わないということで今日に至っておるわけでありますので、まあそういう根本的な問題も検討しながら、まず当面正常な問題になっていくまでの間、やはり金融的に努力しなければならないわけでありますので、政府としましても、でき得る限り中小企業金融対策に対しては努力をいたしておるわけであります。
  171. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 どうも大蔵大臣は御自分だけでおわかりになっていて、抽象的ではっきりわからないのですが、いずれにいたしましても、輸出総額の六〇%を占めている中小企業に対する対策、私はそれに対する対策があまり微温的ではないかということを、先ほどから申し上げておるわけなのですが、開放経済下の今日において、非常な激烈な国際競争にたえ得るところの中小企業、それにはやはり私は体質改善という意味を根本とした、あらゆる観点からこれに保護育成をしなければならない。それにはあまり政府のお考えが非常に微温的で、積極的でないように思う。たとえば今回の公定歩合引き上げにしましても、これは中小企業に対しては非常に大きな金融面における打撃になりますけれども、大企業に対しては単なる警告程度で、そうたいして私は響きはしないと思うのです。こういうふうに私は思うのですが、そういうところはどうですか、大蔵大臣
  172. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げておりますように、日銀の公定歩合の引き上げでございますから、日本銀行から金が出ているのは都市銀行でございます。都市銀行の大半は大企業にいっておるわけであります。大企業が詰められるのであって、日銀から金を借りておらない中小企業面が大企業よりも直接影響がないということは、もう制度上当然のことであります。しかし、実際、下請企業というのは非常にたくさんありますので、大企業の水みちを締めれば下に行くところの手形のサイトが伸びたり、いろいろな問題が起こるだろうという問題に対しては、先ほど申し上げましたように、下請代金支払遅延防止法の活用とか、それから日銀から金を流す場合でも、下請に早く金が渡るようにと、そのために、昨年いろいろな議論があるにもかかわらず、手形法の改正さえも考えまして、あらゆる意味の体制をとっておるわけであります。私自身が中小企業の出身でありますから、中小企業に対しては非常に深刻な考え方を持っておりますので、いろいろなことを言われながらも、昨年の十一月、十二月、一月、二月、三月と、あらゆる体制を整えてきたわけであります。私は当事者といたしまして、できる限りの改良をしておるということが言えると思います。
  173. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 その点はわかっております。私だってそのくらいのことはわかっている。だがしかし、大企業に対する影響というものはそれは信用もあるし、力もあるし、だから公定歩合の二厘引き上げというようなことは、むしろおそきに過ぎたのだというような考えを私は持っているのですけれども、実際直接しわ寄せを、直接あるいは間接ですか、受けて非常に金融面で苦境に立つのは、これは私は中小企業だと、こういう論法で申し上げているのです。その点はいいでしょう。  それでは、その次にひとつお尋ねをしたいのですがね。輸入増加を押えるという点から公定歩合の引き上げと同時に、今回輸入担保率を引き上げられた。原材料とかあるいは生産用の機械の輸入の場合に一%から五%に上げられた。消費物資は五%から三五%に引き上げると、こういうふうにしているようだが、消費物資の三五%に引き上げるということに対しては、私は別にどうだということはいま申し上げませんが、原材料の輸入担保率を一%から五%に引き上げるということは、これは生産コスト上昇によって結局卸売物価がこう高くなる。そうすると、わが国産業の国際競争力を制約するというようなことになりはしないか。政府物価を押えるのだ、物価上昇を押えるのだといいながら、一面こういうような矛盾が起きてきはしないか。そういうことを詳しくいろいろ話したいんだけれども、時間がないから。
  174. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 輸入担保率の引き上げにつきまして、特に原材料の引き上げについては、少し高過ぎるのじゃないかという問題がございますが、これは、御承知のとおり、公定歩合が引き上げられる場合は、機を移さずにやらないと、取り込みに終わるわけでございまして、昭和三十二年、三十六年等は、ぐずぐずしているうちに二カ月もたってしまった、こういうことがありますので、午後五時を期して公定歩合の発表と同時に通産大臣も引き上げたわけでありますが、一々品目についてこまかく当たっているひまもございませんので、三十六年度の現在に戻すということで引き下げ以前の状態に戻したわけでございます。それによって、今度珍しく翌日の朝、為銀の窓口監査を行なったわけでありますが、今度は一切そういう不祥だというような事故は一件もなかったということでございます。それだけに輸入原材料の一%から五%に引き上げた分に対しては、品目別にこれが生産コストに響くというような問題に対しては、これはやむを得ずどうしても輸入しなければならない問題に対しては、品目別に検討しているわけでありまして、案ができれば、私と通産大臣の間で検討しようということでございます。
  175. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 そこで、三月十七日の大蔵委員会において、池田首相の答弁で、公定歩合の引き上げが十八日ですが、その前日の大蔵委員会で、急激な金融引き締めなどは私はやらない、そういう国内を不景気にすることはやらない、デフレ政策はとらない、こう言われたのでありますが、その翌日突如として上げられた。それは日銀が上げたとおっしゃればそれまででありますが、その午後ですかね。これは明らかに私はデフレ政策に、全面的にデフレ政策ということは言い得ないかもしれませんけれどもね。これは明らかに池田さんの所得倍増の失敗の一面だと思うんですが、そういう点はどういうふうにお考えになりますか。
  176. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公定歩合等につきましては、その寸前までは絶対に言わないということがもう前例でございます。この前引き下げましたときにも、その十分くらい前まで私は質問を受けておったわけでございますが、そういうことは考えておりません、こう言っておりましたが、日銀からの申し出がありましたので、引き下げを了承いたしましたと、こう申し上げているのであります。これは事柄の性質上、なかなか申し上げられないというわけであります。しかも、デフレ政策をとらないということと、今度の二厘引き上げというのは、全然違うじゃないかというんですが、私はそう考えておらないのであります。これは、いま御承知のとおり、鉱工業生産が非常に高い指数を示しておりますし、十二月には十億ドルに近い輸入が行なわれているわけであります。こういうことが一体正常であるかどうかということは、私はこれは正常ならざる状態である、いわゆる正常な成長を維持したい。超高度の成長を続けるおそれがあります事態に対して、それを正常のものに返さなければ国際収支の長期安定と物価抑制ができないと、こういうことでやったわけでございまして、これがデフレ政策というようなものではないということは、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  177. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 次に、とん税の税率の引き上げについてちょっとお尋ねしたいと思いますが、これはもう毎年赤字を蓄積している港湾経費の改善をはかろうということは、私はけっこうだと思うんですが、昭和三十年においては赤字が五千五百万ドルであったと聞いておりますが、最近年間においては貿易外収支の赤字が二億ドルをこえている、そういうふうな悪化状態になっておる。むろん、これは港湾経費は、外国の港湾経費と日本のとん税とはいささかそれは事情も違おうし、港湾の模様も違っておるから、これをにわかに比較するということはできないかもしれませんけれども、日本の港湾経費は非常に安い。それで、それを今回手直しをしようと、いままでそれを上げないで、今回それを引き上げられた。従来は赤字であってもそのままにして放置しておった、その点についてちょっとお尋ねしたい。
  178. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知のとおり、とん税及び特別とん税につきましては、大体わが国と諸外国を比べますと、わが国を一〇〇として向こうは二〇三、約倍でございます。しかし、これらの問題に対して急激にこれを全部是正してしまうというわけにもいきませんので、今回この程度の状態で法案を提出して御審議をいただいておるわけでございますが、将来かかる問題は各国の例も十分徴しながら、またわが国の業者に対する影響等も十分考えながらやはり引き上げていく方向にあると考えておるわけでございます。
  179. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 改正前は五百三十三ドルであったのが今度七百三十三ドルにするということですが、この引き上げで十分採算がとれるかどうか。もし、さらに赤字が出る場合には、どういう措置をとられるか、その点をひとつ伺いたい。
  180. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げたとおり、これで全部赤字が消えるというような考えではないわけでございます。しかし、あまりにも急激に引き上げというわけにもまいりませんので、今回のような改正にいたしたわけでございます。しかも、本邦船主にとっても負担増になるわけでございますので、別途外航船舶の固定資産税の非課税措置を講ずるというようなこともやりながら、かかる措置をやったわけでございまして、将来の問題については、諸外国の例等、また本邦船主に及ぼす影響も十分考えながら赤字の解消、また国際収支に寄与できるような方向に検討してまいりたいと、このように考えます。
  181. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 この入港ごとに支払われるところのとん税が十六円だと。今度一年分一時納入の場合は四十八円だと。これはどういう計算の基礎になっておるのか。同一外航船舶が一年間に何回同一港に入港するか、そういうことを前提にしてこれは計算されたと思いますが、十六円が四十八円というと、これは三回ということになるわけですが、その基礎の算定基準はどうなんですか。
  182. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政府委員をして答弁させます。
  183. 上林英男

    説明員(上林英男君) いま御質問ございましたように、とん税、特別とん税法とも、入港一回ごとに納めていただきますときにはとん税につきましては八円、特別とん税につきましては十円いただいておりますが、一年分一ぺんにお納めをいただくというときには、実質上その三倍でございまするおのおの二十四円及び三十円をいただくことにしております。これを定めましたのは、もちろん船によりまして入港回数が異なりますけれども、平均いたしてみますと大体三回くらい入っておるということで三倍、三回分一括してお納めいただくときはいわば何といいますか、定期券的な思想で一括の道を開いたわけでございます。
  184. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 八円と三十四円と言われるのは現行法が八円と二十四円でしょう。今度は十六円と四十八円でしょう。古い話をせんで今度の話をしなさい。
  185. 上林英男

    説明員(上林英男君) いま申し上げましたのは、御質問のとおりでございます。その辺を今回はおのおの倍額、すなわち入港ごとのとん税においては十六円、それから特別とん税につきましてはその倍額の二十円ということにして御審議お願いしております。
  186. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 今回のとん税の話をしているので昔のことを話しているんじゃない。――ところが私の計算では――三回ということにあなた方はおやりになったという点にちょっと疑問があるんだが、船はだんだん船足が速くなっているでしょう、昔のままじゃないんだから。だから私が計算したところによるというと、そうじゃないように思うんですがね。ニューヨーク航路あるいはカルフォルニア航路あるいはヨーロッパ航路という、カルフォルニア航路はロスアンゼルスからサンフランシスコを結ぶ定期航路があるんだが、これが一年間に六回、だから横浜に十二回入る。それからニューヨーク航路定期航路がこれは速力十八ノットが一航海三カ月かかるから一年間に四航海できる。そうすると年間八回だと。ヨーロッパ航路もそうなんですよ。そういう点で、どういうところで三回ということで計算されたんですか。明治時代の話か……。
  187. 上林英男

    説明員(上林英男君) 一年分を一ぺんに納めていただきますときに、幾らを一括して取るかという問題でございます。いわば定期券をどの程度割引するか、あるいはどのくらいにおのおのの船が何回入るであろうということを見込んでいろいろなことを考えてきめるわけでございます。この一年間一ぺんに納めていただくという制度をつくりましたのは、昭和三十二年でございます。そのときにも先ほど申し上げましたような思想から三回分を一ぺんに納めていただけば、一年分はかりにその船が一回で終わってもその分はお返しをしない、そのかわりに何回かよけいに入りましてもそれで十分である、こういうような制度をつくったわけでございます。いま御質問のように船によりましては、あるいは航路によりましては、たくさん入ることもあろうかと思いまするけれども、そういう考え方から、今回の制度におきましては三回分を一ぺんに納めていただけば、一年分はほかに費用を要しないでそのまま入れる、そういう制度を採用しよう、こういうことであろうかと思います。
  188. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 いま、あなた定期券の話をしたが、そんなことはもう言わんでもわかっているのだ。三回、十六円で四十八円、三回分ということに一律にきめたその根拠はどういうところにあるのですか。何ぼ入港したって三回分でいい、四十八円。二回入ろうが三回入ろうが九回入ろうが十回入ろうが、定期券のような、そんな子供だましみたいなことを言わぬでも、そんなことはわかっている。
  189. 上林英男

    説明員(上林英男君) 先ほど申し上げましたように、昭和三十二年におきまして一括納付金制度をつくりましたときに、平均の入港回数というものを算出いたしましたところ、それが大体三回、定期的に入港いたします船につきましては、一年間に三回程度入港するというようなことから、三回分をもって一年分の入港料というふうに算定をいたしたのでございます。
  190. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 だから私はさっきから言っているのですよ。三十二年にきめたのを、いま三十九年だもの、三十二年にきめたものをそのまままだ。三回、昔三回だったからいまも三回だ、それはおかしいじゃないかということを言っておるので、だから改正するのでしょう、今度トン税を。その点を聞いているので、それ以下追及したって定期券をまた持ち出されたんじゃ話にならぬから、だから私としては、この点にもう少し研究される余地があるんじゃないか。一年分を一時に納付するその税率をもうちょっと引き上げたほうがいいんじゃないか。そこから得る外貨によって、今回いま企図されておる国内の港湾施設の改善に寄与すべきである。その点は賛成です。そういうことを申し上げておるのに、もう少し研究していただきたいと思います。大蔵大臣どうですか、最後に。
  191. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 研究をいたしまして、また申し上げたいと思います。
  192. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 では、これで質問を終わります。
  193. 須藤五郎

    須藤五郎君 昨日の大蔵大臣の御出席がなかったばかりに、いろいろきょう審議が混乱して、外務大臣に対する質問がきょうできないような条件が生まれてきつつあるように私は思うのですが、これは後ほど主査のほうで適宜取り計らって、ぜひともこの外交の非常時に際して、外務大臣に対する質問をなくさないように十分に、外務大臣質問ができるような時間をおとりくださるように私はお願いしておきます。
  194. 村山道雄

    主査村山道雄君) わかりました。質疑をお急ぎください。
  195. 須藤五郎

    須藤五郎君 なお、大蔵大臣に対する質問も私は簡単にはしょってすることにしたいと思います。大臣大臣、私は専門が音楽なんです。私は音楽家なんです。だから芸術家が芸術をつくる、創作の上にどれほど精力を尽くしておるか、努力しておるかということを十分よく知っておるわけなんです。ところが、今度大蔵省は、今度の所得税法の一部を改正する法律案の中で、芸能法人等から税金を源泉徴収するように所得税法の一条の五項を改正しようとするのを私は知ったわけです。一体改正されればどういうことになるのか、なぜ改正をするのか、この点をひとつ大臣から伺っておきたい。
  196. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 技術的な問題は主税局長をして説明いたさせますが、まず私から申し上げます。現在、映画演劇等の俳優個人が受けられる報酬等につきましては一〇%の税率で源泉徴収をすることにしておるわけでございます。いわゆる芸能法人が受ける報酬等は源泉徴収の対象となっていないのでございます。したがって、出演料等の支払い者は、その支払いのつど源泉徴収の要否を検討しなければならないところから、源泉徴収義務者側からも、芸能法人が受ける報酬等、個人の場合と同様に、源泉徴収することとされたいとの要望があるのであります。また、芸能法人の中には、一般の営利会社に比べまして、設備等資産保有も少なく、その法人に所属する俳優の出演料等が基本的な収入源でありますので、設立、解散が非常に容易に行なわれるわけでございます。いわゆる泡沫会社とされるようなものも見受けられ、その課税にあたって、従来から問題があったわけであります。  そこで、今回新たに芸能法人の受ける報酬等につきましては、個人が受ける場合と同様に、源泉徴収を行なうことといたしまして、源泉徴収事務の簡素化を通じまして、源泉徴収制度の運営の円滑化をはかり、あわせて芸能法人の課税の適正化に資するということでございます。  なお、技術的な問題に対しては主税局長に答弁いたさせます。
  197. 須藤五郎

    須藤五郎君 団十郎事件というのが起こったのを大臣は御存じだと思います。そして、要するに団十郎がなぜ俳優協会を脱退したかという理由も、あなたは知っていらっしゃるはずだ。新聞の報ずるところによると、近く団十郎と会って、いろいろ芸術家の苦衷について話を聞かれるということも私も承知しておるんです。で、ひとり団十郎のみじゃないのです。芸術家というのは、非常に生活ははなやかに見えて、いかにも金が入るように思えますけれども、事実金は入るかもわからぬ、しかし出銭というものが非常に多いということですね。あなたたちの気のつかぬところに非常に出費がかさむんですよ。だから台所はそう楽でないということなんですね。だからそれを一方的に、公式的にこれだけ入ったらこれだけ課税するというのでは、芸術家というのは、ほかの月給取りよりは、非常に苦しい立場にあるということも、私は大臣はよく理解した上で団十郎君とも会って話をされると同時に、単に団十郎君だけの問題とせずに、日本の芸術家全般の問題として、いかに芸術家が税金のために苦しめられておるか、非常にもう作者、演劇人、音楽家、あるいは芸術家が、この税金のためにほんとうに頭を痛めておるということを、大蔵大臣はこの際よく理解していただきたい。そしてそれを政治的に解決していただきたい。そういう点を、私はこの際要望すると同時に、これに関して、入場税の問題についても同じことが言えると思うのですよ。大臣はその点もよく配慮して解決していただきたい。これを私は要望しておきます。中には、一人で劇団をつくっておるような人もあるのですね。だからこういうことが起こってきたのだろうと私は思うのですがね。しかし、それではおかしいと思うのです。ごく一部の例で大部分の芸能法人に拡張適用するということは、これは不当ではなかろうか、こう思います。実際の実情を見てやってもらいたい。一部の例は現行法で私はやれると思うのですね。一人で劇団を名のっておる人たちは、現行法で私はやれるのじゃないか、何で改正をするのか。
  198. 松井直行

    政府委員(松井直行君) お答え申し上げます。今回の趣旨の大綱は、いま大臣からお話があったのでございます、でございますが、御心配になる徴税強化とかなんとかいうこととは、全然関係ない問題でございまして、有名な演劇人といいますか、俳優といいますか、中には個人のほかに、有名人はたいてい何々文芸協会とか何とかいう名前をつけまして、法人組織になっている有名人も相当おります。その出演料、そういう人に来ていただいて出演料を払います側は、これは源泉徴収義務者になっておるのですが、一体個人なのか法人なのかによりまして、個人のときは源泉徴収をしなさい、法人のときには源泉徴収する規定がないということになりますと、その報酬、料金を払う者の側で、非常にややこしいといいますか、めんどうだといいますか、区別がつきにくいというところに一番大きな問題がございまして、たとえ演劇人が個人であろうと、それが法人を組織しておって、その法人との契約で役務を提供しておるという場合であろうと、一応報酬を払うところの段階で源泉課税をしたほうが、一そう払うほうの側にとって便宜であるというか、そういう要求が非常に強かったというところにあるのでございまして、したがって、その法人の場合で源泉徴収をいたしましても、これはあとで払います法人税のときに、源泉徴収された分だけは清算するということに相なっておるものですから、これによって徴税がふえるとか、強化という御心配は起こってこないものとわれわれは考えております。
  199. 須藤五郎

    須藤五郎君 法人に対する課税で源泉徴収するということは、私はおかしいと思うのですね。ほかにそんな例があるのですか、どうですか。
  200. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 端的に申し上げますと、利子です。これは銀行が払います場合は一切源泉で、いまは五%の源泉分離ですか、個人、法人を問わず、支払い金融機関がある段階で源泉徴収するという制度もございます。
  201. 須藤五郎

    須藤五郎君 それは銀行利子というのは一例にすぎないことだろうと思うのですがね。いわゆる法人を名のっておる団体で、演劇法人じゃなしに、ほかの法人でそういうようなことをやって、おる団体があるのですか。何で演劇法人だけやるのか。法人税の体系を私は破壊するものではないかと思うのです。
  202. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 法人で所得税を納める義務がありますのは、いま私が申し上げました預金、公社債の利子、それから合同運用信託の利益の支払い、それから投資信託の収益の分配というものでございましたが、今度特にこれが入りましたのは、源泉徴収義務者側の便宜というところが主体になったわけでございまして、芸能法人あるいは芸能法人に属しておる芸能人自身についての徴税の強化という観点では全然ございませんです。
  203. 須藤五郎

    須藤五郎君 時間がありませんから、あまり論議はこの際避けて、また次の機会に譲りたいと思いますが、この所得税の一部改正する法律案の中で、第一条の最後のほうに「報酬若しくは料金で命令で定めるものの支払」を加える。」という条項があると思うのです。この「命令で定めるもの」というのは、一体具体的にいったらどういうことになりますか。
  204. 松井直行

    政府委員(松井直行君) この「命令で定める」というのが二つ入っておりますが、あとの、命令で定める料金と申し上げますのは、映画もしくは演劇の俳優、芸能人の役務の提供に関する報酬または料金ということを書こうと思います。
  205. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうすると何ですか。私はこれだけの文句ではわからないのですよ。「命令で定めるものの支払」ということですね。「定めるもの」というのは、一体具体的に言ったら何なのかということがはっきりわからないのです、この法律を読んでも。それで質問するのです。
  206. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 政令にはいままで申し上げた程度のことを書く予定でございますが、さらに詳し、どういうものを予定しておるかということを考えますと、報酬、料金の範囲であろうと思いますが、これは法人に雇われておりますというのですか、雇用関係があります芸能人の出演料とか、専属料、それから芸能法人自身が、自分のところに属しております芸能人のあっせんとか、供給によって受ける報酬、あるいはテレビ、ラジオの中継をすることによって得ます報酬があります。中継料。それから、地方公演をいたしますときには、地方におります勧進元というのですか、その興行主から受ける報酬、あるいはその他そうした芸能法人が役務の提供に関して受ける報酬、たとえば雑誌の口絵とか、写真のモデルとか、そういうものが含まれるものと考えております。
  207. 須藤五郎

    須藤五郎君 この条項によって、将来拡張解釈されるおそれはないのか。まあたとえば法人の研究所、法人の経理事務所、それから法人の弁護士事務所で、その所員が、たとえばNHKに出演講演する。で、ギャラをもらう場合にはどうなるのか。政令に明記するのかどうか。
  208. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 法律研究所におります――それは芸能人でございますか。その前に、まず芸能人という概念で範囲がしぼられると思います。したがって、いま法律におります文句を読んでみますと、「又は映画若しくは演劇の俳優その他命令で定める芸能人の役務の提供、」そこはまた政令に委任をしまして、ここにいう芸能人というのは、いまあげました映画、演劇の俳優のほかに、映画監督、舞台監督、演出家、それから放送演技者、音楽指揮者、楽士というものまで政令に――でございまして、現在これらが、個人でやっていますときには、個人として報酬を受けておる際に源泉徴収を受けておる対象でありまして、範囲の拡張とか何とかということは全然考えておりませんです。現在源泉徴収を個人として受けておる対象でございまして、範囲の拡張その他ということは考えておりませんです。
  209. 須藤五郎

    須藤五郎君 いや、いまの法律事務所の人とか、弁護士などが、NHKへ頼まれて講演に行くでしょう。すると、源泉徴収されるわけですね。その場合、今度はいわゆる法律事務所の所員が行った場合は、今度は法人が、その所属しておる法人が課税の対象になるのかどうかということなんです。
  210. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 放送謝金等に対しましては、現在も源泉徴収の規定はございますが、今回入れましたのは、個人たる芸能人と、その個人たる芸能人が組織しておる団体、団体として役務を提供するということをその業務としておる法人であろうと、同じように源泉徴収の対象に加えるというところが今回の改正のポイントでございます。
  211. 須藤五郎

    須藤五郎君 いろいろ言いわけは立つようですが、皆さんも芸術家の苦しい生活、芸術家の燃えるような熱意はあなた方もよく知っていらっしゃると思う。先ほど私は大蔵大臣にもその点を話して、大蔵大臣もよく理解していると思う。それを法改正してわずかな税金をなぜしぼり取ろうとするんですか。
  212. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 本来、この種の芸能人の役務の提供をその業務の内容とする法人は、現在源泉徴収の規定がございません。利益がございましたら法人税として納付しておるはずでございます。ところが、役務を提供する際に、提供された人が料金、報酬を払う際に、一部源泉の過程で源泉徴収いたしますと、その部分はいままで払っておりまして、従来どおりと同じように法人税を払うわけですが、法人税から差っ引きますから、これによって国の増収というものは理論的には少しも起こってまいりません。法人税の一部前取りとして取られるという勘定に相なりまして、法人税はその額だけ、所得税として源泉徴収された額だけ法人税が減ってまいる勘定でございます。
  213. 須藤五郎

    須藤五郎君 かりに、ある芸術家が放送局へ行って放送する、そうすると、その芸術家の所属している法人が、十万円なら十万円の謝礼をNHKから受け取る。その中から芸術家に何万円かの謝礼を払う、その残りは法人の収入になるんでしょう。それに対して法人税をかけるというんならわかる。かりに芸術家に七万円払って、芸能法人が三万円の収入がある、その三万円に法人税をかける。ところが、今度は十万円もらったら、その十万円に対して天引きで一割取るんじゃないですか。そうすれば一万円というものが減っちまうわけですね、天引きで。
  214. 松井直行

    政府委員(松井直行君) おっしゃる御疑問はよくわかりますが、芸能法人がそれに所属しております芸能人に幾ら払うかは、その内部の規約といいますか、契約できまる問題であろうと思います。したがって、自分の会社に所属しております芸能人の役務の提供を外部の人と契約しまして受けます報酬は、すべて一たん芸能法人の収入に入ります。その中で、出演一回についてとか、あるいはどういう種類の演出については幾ら報酬を出すか、定額か、あるいは出来高払いか、その他はその法人と、法人に所属しておりますその芸能人個人の間の別個の契約で私はきまるものと思います。したがって、きまっただけを給料で払いますならば、むろん法人税を算出しますときには、それはいまも損金に落ちておるわけでございまして、それから、これによる改正法の場合でも、法人税の計算は変わるところはありません。外部から入ってきた法人の収入は、一切がっさい一本の法人の収入になって、この中からだれに幾ら上げるかは、法人と、法人の内部に属してみる人間との契約によってきまる問題であろうと思います。
  215. 須藤五郎

    須藤五郎君 もう一ぺん説明してください。要するに十万円入ってきたら、十万円の中から源泉徴収されちゃうんでしょう。これまでは法人の収入三万円とするならば、その三万円に対して税金がかかるわけでしょう、そこに不合理があるんじゃないですか。十万円に対して税金を取られてしまうと、三万円に対する税金と違うんじゃないですか。それでは法人自体が非常に苦しくなるんですよ。
  216. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 芸能法人が他の興行主に役務を提供します際に、受け取り料金について源泉徴収が行なわれますと、そのつどそのつどの総収入金が従来の金額より減るということはおっしゃるとおりでございますが、それによって法人税がふえることはありません。源泉徴入で先払いいたしました税金は、従来三万円として払っておりました法人税の中から差っ引きますから、法人税を減額して法人税として納額していくことになりますので、法人自身が負います法人税負担は変わりませんが、いまおっしゃいましたとおり、日々あるいは月々法人という会計へ入ってくる総収入金は、天引きされる前と天引きされたあとでは一割だけ変わってくるということは事実でございます。
  217. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうでしょう。私たちが不審にたえないというよりは、とにかく非常に大きな不満を持つのは、あなたたちは大企業に対しては租税特別措置法でどんどんやっていくと、それから今度の大蔵大臣の言う政策減税ですか、政策減税で要するに大企業に対する減税をどんどんやっていくという方針を片方で立てておりながら、片方ではこういうとにかく苦しい生活をしておる芸術家からも税金をしぼり取ろうということを今度も考えてきておる。こういう点に対して私は不満を感ずるわけですね。何で一体こういうことをやるのかという点で非常に不審な点がある。こういうふうなことが考えられる。私はこういうふうに考えておる。税務署の考えは、ほんとうは日本の芸術家、新劇人、映画俳優、これで今度この法律で一番迷惑を受けるのは、要するに新劇協会、そういう新劇団体、こういう団体が一番私は困ることになるのだと思うのです。こういう団体は伝統的に進歩的な演劇を追求して、そうして一生懸命やっておる団体です。それをNHKや民放は政府協力して、思想的に抑圧しておるということは皆さんよく御存じだろうと思うのです。進歩的な演劇を放送中止を命じたり、いろいろなことをやっておる「ひとりっ子」が放送中止になったというのもその事実の一つなんです。その上に、税金も、民主的税制度を曲げて、不当にNHK、民放などに徴収させ、思想弾圧と税金の巻き上げの二つを巧妙にやろうとしておる。さらに国税庁は、ますます膨大になる人民収奪、弾圧体制を節約しようとする一石三鳥をねらったものだと、こういうように私は考えるのですが、どうですか。
  218. 松井直行

    政府委員(松井直行君) 私個人といたしましては、新劇運動、その他新しい演劇運動等につきましては、それが芸術として十分の値打ちのあるものが多いし、かつ、そういうものの発展を期する必要があるということは、私よくわかるところであると信じております。しかし、税はそういうことに関係なしに、およそまあ利益と申しますか、課税所得のあるところに、ある程度、ことばは不穏当かもわかりませんが、非人情といいますか、不人情と申しますか、客観的な事実として利益があればそれに課税するというのでございまして、そうした思想だとかなんとか、そういうことにあまり左右されないというのが原則だろうと思います。今回のこの改正につきましては、意図されたそうした反芸術的な動きが根にあるという誤解がもしあるとすれば、それは私は誤りであると思います。何となれば、何べんも申し上げておりますとおり、法人組織にした場合に、それが労務を提供するときに前もって源泉徴収されましても、された額だけは法人税が減ります。法人税は払わなくてもいい、赤字の場合には。前に源泉徴収されたものは環付いたします。したがって、税負担の増加ということは少しもねらいにはいたしておりません。ですから、そういう御心配はないものと信じております。
  219. 須藤五郎

    須藤五郎君 取り過ぎたものを還付するとおっしゃいますけれども、還付されるんではこっちが困るのです。取り過ぎられては困るのです。だから源泉徴収なんということはいかないのです。いかなる場合といえども、源泉徴収というものはぼく反対だということは、水田さんが大蔵大臣のときに、源泉徴収違憲論で戦ったことはあなた御存じでしょう。それで水田さん答弁に困っちゃった。だから、これはやれないか、するためには法改正しなければならぬことは、あなた、水田さん認めておりますよ。速記録を見てくださいよ。だから、源泉徴収というのは非常に不公平なものなんですよ。源泉徴収というのは給金取りのわれわれだけです。法の前にはみんな公平でなくちゃならぬときに、ある一部の者が源泉徴収はされて、ほかの者は源泉徴収されない。それは不公平ですよ。だから、源泉徴収というものは、これは違憲ですよ。それを今度この芸術家の団体に及ぼそうというのですから、これはけしからぬ。これは何とあなたがいくら否定しても、私は、やられる側から考えたら、明らかなひとつの弾圧だと、こう考えるのです。昔陸軍いま税務署と、みんなそう言っていますよ。いま国民に一番いやがられ、おそれられているのは税務署です。税務署が、正当な税金を取るだけじゃなしに、思想弾圧にまで乗り出してはたいへんなことだと思うんです。  そこで、ひとつ、思想弾圧の一例を私は出して、国税庁長官にひとつ伺いたいと思う。あなた、最近大阪で起こった事件御存じでしょうか。
  220. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) はい。
  221. 須藤五郎

    須藤五郎君 御存じなら説明してください。
  222. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 最近大阪で起きました事件については、私も概略は存じております。  その概略を申し上げますと、大阪地区の民主商工会が、二月の下旬から、税務署の周辺に、一般の納税者の納税意欲を低下させるようなそういった内容の立て看板を立てた。それで、税務署としては、それを撤去してもらいたいということを民商側に申し入れたのでありますけれども、なかなか撤去に応じない地区がありましたので、三月の三日に、大商連、大阪の商工会の連合会に対しまして、局長名でもって、文書によって撤去要求をいたしております。大体そういう事実がございます。
  223. 須藤五郎

    須藤五郎君 これは思想弾圧じゃないですか。私大阪へ帰ってよく調べてみました。その立て看板もずっと調べてみましたよ。立て看板は七種類あるのです。一つは、税金は大企業から取れ、「生活費課税反対、年所得八十万円以下免税に。」、一つは「自家労賃をみとめよ、本人と家族の働いた所得を営業所得と区分せよ。」、「高物価、重税、不況の自民党池田政府の政治に反対し、すべての中小業者は団結せよ。」、「税金と営業の道しるべ、商工会に入会しよう。」、「諸物価をあげる固定資産評価替え反対、台帳を従覧し、不当な評価には異議申請しよう。」、「府・市民税は高い、条例改正でさげさせよう。」、「税務署の一方的おしつけ課税反対、納税者の計算した自主申告を認めよ。」、これは納税意欲を低下させる内容なんですか。こういうことは、私たちしょっちゅう演説で言っていることですよ。何でいけないのです、これが。
  224. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ただいまお読み上げになりましたような立て看板を、ちょうど二月の下旬から三月の中旬までの確定申告の時期に、それも、  一般の納税者の方がたくさん来集されます税務署の玄関の前の道路に立てられた。しかも、こういう大事な時期に、場所も場所でありますし、大体大阪地区におきます民商の従来の活動状況を見ますというと、非常に税務調査に対する妨害なり拒否なりというものが盛んでございまして、それらをあわせ考えて、民商側で意図するところは、やはり納税者の納税意欲を低下させるいやがらせと申しますか、悪意を持っておるものという判断をせざるを得なかったのでありまして、大阪の国税局長、また、当該署の署長といたしましては、税務の執行を円滑、かつ、適正に行なう職責を持っておるのでありまして、その職責を全うするためには、ただいま申し上げましたような立て看板の撤去要求をせざるを得ない、むしろするのが職責上当然の義務であるというふうに私は考えております。
  225. 須藤五郎

    須藤五郎君 納税意欲を喪失さしているのは民主商工会じゃないですよ、税務署ですよ。税務署自体が国民の納税意欲を喪失させるような行動に出ている。あなたたち、商工会は反税団体だと言っているらしい。商工会は反税団体じゃないですよ。商工会を反税団体だときめつけるところに、いわゆる税務署に、国税庁に問題があると思うのです。ファッショだといわれる原因がそこにある。決して商工会は反税団体などじゃない。適正な税金を納めようというのが商工会の主張なんだ。それを一方的に押しつけてくるから、だから抵抗せざるを得ない。大阪の商工会だってそう言っていますよ。私は商工会の連中に聞きました。私たちは決して反税団体じゃございません、適正な税金を私たちは払いたいのです、払います、と言っています。ところが、税務署が一方的に過酷な税を取り立てようとするから、どうしても抵抗せざるを得ないのです。生活権を守るためにわれわれは抵抗せざるを得ないのだ、こう言っていますよ。第一いま読んだこれは、何もいわゆる納税意欲を喪失させるような問題ではなく、こんなこと常識ですよ。ふだんだれでもが常識で言っていることだ。それを一方的に撤去せいなんて命じてくると、これこそあんた一官僚のなすべきわざじゃないじゃありませんか。これは公務員法に違反するのでしょう。いま告訴されているということをあなた御存じでしょう。
  226. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 民主商工会が反税団体であるかどうかということをわれわれは議論しておるのじゃなくて、いろいろニュアンスの違いはございますけれども、全国各地の民主商工会が従来とってきた税務に対する妨害、非協力の事例というものは枚挙にいとまがございません。そういえ意味で、民主商工会が反税的な行為を組織的に行なっておるという判断を私たちはいたしております。  第二に、大阪の国税局長が民主商工会の側から告訴をされておるということは私も知っております。それのみならず、東京の局長も、あるいは税務署でも、三、四署の署長が告訴をされております。大阪の場合におきましても、先ほど私申し上げましたように、公務員法違反ではなくて、そういう適切な処置をとらないほうが、むしろ公務員法に規定されておる公務員としての義務を果たさないものであると、大阪の局長としては当然の職責を果たしたものであるというふうに考えております。
  227. 須藤五郎

    須藤五郎君 あんた公務員法の百二条に何と書いてありますか。
  228. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 公務員法の百二条は、私読むまでもなく、政治的行為に関する制限でございます。この政治的行為というものは、一体それじゃどういうものかということは人事院規則に述べられておりまして、「政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対すること。」というような行為であろうかと思います。ところで、ただいま大阪の局長が行ないました要求書は、もっぱら税務の執行を円滑にするために公共的な目的でもってなした行為でありまして、それが公務員法にいう政治の方向に影響を与える意図を持っておるとか、そういう意図のもとに特定の政策を主張した、または反対したということではございません。
  229. 須藤五郎

    須藤五郎君 そうじゃないですよ。民主商工会はこういう立看板をした、これは民主商工会の言論の自由です。言論の自由をそういうたてまえでやったものを、それを撤去せいということは、民主商工会の政治活動を抑圧しようとしておる。明らかにその条項に触れるじゃないですか、私はそう思います。だから告訴しておるのです。私はおととい大阪に帰って、告訴の結果がどうなっておるかということを聞きました。そうしたら、民主商工会の会長が裁判所へ呼ばれて、それで検事の言うのには、これはひとつ取り下げてくれないか、こういうことを検事から言われた。なぜだと言ったら、こんなささいなことで将来ある人を傷つけることは気の毒だと思うから取り下げたらどうだろう、こういうふうな話が検事からあった。検事が見てもささいなこと、反税的な問題じゃないのですね。それを一官僚が自分の独断できめつけて、そうして公文書をもってその撤去を命ずる、それは公務員法に反することじゃないのですか、りっぱに政治活動じゃないですか。
  230. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 政治活動というものには私は入らないと思います。ただいまお話の、検察庁で民商との間にどういう話が行なわれたかは私は存じませんが、たとえばこの規則の中にもありますように「この規則のいかなる規定も、職員が本来の職務を遂行するため当然行なうべき行為を禁止又は制限するものではない。」、こういうふうに規則はうたっております。したがって、私は、大阪の国税局長が行なった要求というものは、先ほど申し上げましたように、納税者の納税意欲を低下させ、また、現行の税法に対する不満感をあふるというような内容のものでありますので、これを撤去を要求するということは、ただいま申し上げましたような本来の職務を遂行したものというふうに考えております。
  231. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は、この七つのスローガンをずっと見まして、納税意欲を減らすようなものは一つもないと思うのです。これは自分らの生活を守る当然の権利を主張している。国民が当然の権利を主張するときに、一官僚が、それはけしからぬから撤去せい、こんな権利が官僚にあるのですか。それこそ逸脱じゃないですか、官僚の。それこそ政治活動の禁止の条項にはまる行為だと私は思うのです。これはいま裁判中ですから、裁判所が決定するだろうと思いますから、私はこれ以上追及はしませんけれども、大阪の国税局長なまいきですよ。こんなばかなことをすべきじゃない。堂々と戦ったらいいじゃないですか。撤去を命ずるなんて権限は税務署にありませんよ。私はこの間、局長に会おうと思って行ったけれども、局長は留守を使って会わないので、会うことができなかった。こんなことはすべきことじゃない。これはあなたが指示してやったのですか、どうなんですか。
  232. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 私は具体的にこういう問題についてこういう要求をしなさいという指示はいたしておりませんが、一般的に、こういう場合には適切な処置をとるべきだ、黙っておっちゃいかぬという指示はいたしております。
  233. 須藤五郎

    須藤五郎君 それが適切な指示でない、と同時に、適切な行為でないと私たちは思うのです。こういうことはすべきじゃないですよ、官僚が。話し合ってすべての問題は解決すべきだ。こういう高圧的な態度に出るのは間違いだ、そう私は思う。さらに国税庁は出版界、言論界を弾圧している。その証拠があります。エコーミスト事件、これは御存じですか、ここに資料がありますが、こういう問題です。国税庁の時報――部内報ですね、これは二月十四日号、五十号です。見出しは、エコノミストの税務行政誹謗記事掲載に厳重抗議。内容は概略こうです。二月四日号エコノミスト、取ってしやまぬ徴税体制は、片寄った立場から故意に誹謗中傷したものである、当局は二月六日、毎日新聞社長に対し、木村長官が厳重に抗議した結果、同社長は深く陳謝し、今後このようなことのないように約束した、こういう部内報が流れているということ認めますか。
  234. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) そのとおりでございます。これは言論の圧迫でも何でもございませんので、私先ほど申し上げましたように、私の職責から見て当然抗議を申し込むべき内容だと思います。
  235. 須藤五郎

    須藤五郎君 これが言論の抑圧じゃなくてどういうことが言論の抑圧ですか。エコノミストがこういう記事を書いたことはけしからぬ、そうして社長にあなた抗議しているじゃないですか。官僚が一私設会社の社長に、おまえのところの記事はけしからぬと抑圧することこそ、それこそ弾圧じゃないですか、言論の弾圧じゃないですか。そうして事実そのとおりじゃないか、取りてしやまぬ徴税体制というのは実際そのとおりでしょう。
  236. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 私は言論を抑圧したというふうには考えておりませんし、また、言論を抑圧すべき権力といいますか、力は何も持っておりません。御承知のように、この取りてしやまぬ徴税何とかというこの記事は税務を誹誹しております。私はっきり覚えておりませんが、その一例を申し上げますと、税務職員の笑いは遊女の笑いだ、にっこり笑って金を取るのだというような文句も使っております。そのほかにもまだいろいろなことが書いてあったと思いますが、こういうのは、まさしく税務の組織なり職員に対する誹謗そのものでございまして、われわれとしては、そういう批判なり建設的な御意見は喜んで十分受けるつもりでございますけれども、こういう誹謗記事については、誹謗を目的とした行動については、やはり厳重な抗議を申し込まざるを得ないのであります。現に毎日新聞の社長も私の申し込んだのに対して、これを読んでいかにもこれは品がないといいますか、記事ということを認め、今後こういう記事は十分注意をしようということを申しているのでありまして、だれが読んでも、公平な目から見れば、との記事というものは非常に片寄った記事であると言わざるを得ないと思います。
  237. 須藤五郎

    須藤五郎君 社長は、聞くところによると、謝罪していないということを私は聞くのですが、どうですか。
  238. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 謝罪というのはどういうことになりますか、遺憾の意を表明して、そして今後こういうことがないように注意をしようということは、私が約束を受けております。
  239. 須藤五郎

    須藤五郎君 どういう記事が書いてあったか、私はその記事の内容は読んでいませんから、詳しくは知らないのです。しかし、税務署職員は完全無欠なものだと言っていばることはできないです。あなたそういう完全無欠だといばれますか。中には収賄罪に問われている税務署員だって出てきているじゃないですか。そういう人たちがある限り、そんな大きな口はたたけないはずじゃないですか。あなた完全無欠と言えますか。
  240. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 私は、税務署職員が完全無欠だということを申し上げておるのではありません。ただいま御指摘のように、中には非行事件に関連した者も過去において相当数ございます。完全無欠とは決して言っておりません。しかしながら、この記事そのものが非常に片寄った記事である。その第一点は、事実を曲げて載せておる部面がある。それから、もう一点は、ほんとうの冷静な批判でなくて、税務の組織なり職員を誹謗するような内容のものがある。もう一点は、なるほど国税庁でやっておることではあるけれども、その趣旨をひん曲げておる。実際われわれの考えておることは違ったふうにとっておるという、以上の三つの点、これがこの記事の内容の大部分でありまして、こういうものに対しては、やはりそれが毎日新聞という大きな日本の代表的な会社であり、また、エコノミストという相当の歴史と権威を持った雑誌である以上、これがとりたてて言うに及ばぬような雑誌でございますならば別でありますけれども、こういう権威のあると目されておる雑誌に載せられるということについては、やはりわれわれの立場としては抗議を申し込むのが至当かと思います。
  241. 須藤五郎

    須藤五郎君 あなたも、いま、税務署の中にも非行はたくさんあるということを認めた。内部にそういう問題があるのに、それをつつかれたからといって、それを誹謗だとすぐ判断するところに問題があるのじゃないですか。それが官僚主義です。みずから反省して、エコノミストというような、こういう雑誌すらこういう記事を書くのだ、だからわれわれは反省しなければならぬ。みずからを振り返って反省するのがあなたたち立場です。それをいきなり抗議するというのは官僚主義です。そういうことはすべきじゃないです。まだほかにもあります。三十八年十一月号月刊誌「政経ゼミナー」の座談会、テーマは「税理士法改正の中の受験制度について」の座談会。この記事は当局の意図を故意に曲げておるといって、国税庁は同編集長に抗議している。今後国税庁から資料は絶対渡さない、こういうふうに脅迫しています。そういうこと御存じですか。
  242. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) まず第一のエコノミストの記事は、そういう非行を申し上げてとかくの批判をしておるというのではありません。これは先ほど私が三点を申し上げましたが、大体そういう内容のものであります。  それから、第二の御指摘の点は、私ちょっと記憶にありません。
  243. 須藤五郎

    須藤五郎君 事実そういうことがあるのですよ。私はここに持ってきているのですよ。あなたないと言うのですか。
  244. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) ないと言うのでなくて、私の記憶にはないということを申し上げておるのです。
  245. 須藤五郎

    須藤五郎君 事実こういうことがあったらどうですか。
  246. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) かりにあったとしたならばというお話でございますが、特定の出版社が税務の誹謗記事を載せる。それに対して抗議を申し込むということは、私は先ほど申し上げたように、当然の処置と思いますが、もしその抗議に応じてそういう記事の取り消しをするなり、あるいは今後そういう記事は載せないという約束がとりつけられない場合には、国税庁としては、将来そういう出版社に対しては、税に関するいろいろな原稿と申しますか、そういうものを渡さないということも実はあり得ることだろうと思います。
  247. 須藤五郎

    須藤五郎君 それこそ官僚主義じゃないですか。たといどういうことがあろうと、国民にサービスするのがあなたたちの義務でしょう。そうしたら資料は渡さない、おまえのところがあやまってこなければ資料を渡さない、そういう高圧的な態度に出るということは、一種の脅迫的なことじゃないですか、こういうことはすべきことじゃないじゃないですか、そういう考え方こそは、私は旧憲法の考え方だと思います。民主憲法においては、そういう考え方は間違っております。あなたよっぽど反省しなければいけない。その証拠に、幾ら国税庁が押えても反対の声はやまない。石川達三、美濃部亮吉などという文化人がやはり反対しております。税務署のやり方に対しまして、また民商、労音、労演など、実際に行動で反対している人々もあるわけです。これらの意見は、いまの税制、徴税行政を憂慮して、真の民主的税制を発展させようとする批判の声だと受け取らなければいけないと思う。憲法は、言論の自由と批判を通じての民主主義の発展を国民全体の義務としている、これが今日の憲法の精神だと思います。納税意欲が減退するかいないか、そんな小さなことではないのです。税制民主主義の根本について国民が目をつけ始めたからこういうことになってきている。こうした一切の弾圧をやめて、国税庁の現在の考え方を撤回するかどうか、あくまでもやり通すつもりか、反省するかどうか。
  248. 木村秀弘

    政府委員木村秀弘君) 先ほど私が申し上げたのは、国税庁は、一般国民の納税者にとって必要な資料は積極的に公表いたしております。したがって、特定の原稿なり記事というものを、特定の出版社に対して渡すという義務はございません。したがって、そういう好意的な措置はとらないということでございまして、もちろん必要な資料なり、あるいは税法改正があれば、それの改正の要点なり解釈なりというようなことは、これは一般の新聞、雑誌、甲乙差別なく公表いたしております。  それから、特定の文化人の反対ということでございますが、これは私も新聞等で最近拝見いたしております。もちろん建設的な批判につきましては、先ほど申し上げましたように、われわれは喜んでこれを受け入れ、反省を加えるということは当然のことでございますが、先ほど話題になりましたような悪意を持った誹議、あるいは悪意を持ったやり方に対しては、やはり敢然として厳重な措置をとらなければならないと思います。したがって、従来国税庁がやっておりますやり方をこの際撤回する意思は持っておりません。
  249. 須藤五郎

    須藤五郎君 悪意を持った批判、そうじゃないのです、あなたたちの行動が悪いから批判するのです。批判の種をまいたのはあなたたちです。それを自分たちの都合の悪い批判は悪意を持った批判だと、その断定するところに問題がある。あなたはそれが官僚主義、それをやめろというのが今日の憲法の精神なんです。戦前の文化人、芸能人ならいざ知らず、戦後は違いますよ。文化人といえども黙っていませんよ。国民の声をよりよく聞き、深く反省する、そうでないといまにたいへんなことになってくるということを私は申し上げておきます。主査、終わります。
  250. 村山道雄

    主査村山道雄君) 以上をもちまして、質疑通告者の発言は終了いたしました。よって大蔵省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  ちょっと速記をとめて。   〔午後三時一分速記中止〕   〔午後三時五十六分速記開始〕
  251. 村山道雄

    主査村山道雄君) 速記をつけて。   ―――――――――――――
  252. 村山道雄

    主査村山道雄君) 次に、昭和三十九年度総予算中、外務省所管を議題といたします。  時間の都合上、説明はこれを省略して、お手元に配付してあります資料をごらん願うこととし、なお、説明資料はこれを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  253. 村山道雄

    主査村山道雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
  254. 戸叶武

    ○戸叶武君 いま日韓会談で大臣は非常にお忙しいと思いますが、この日韓会談に没頭しながらも、もっと客観的に日本の近隣外交というものを考えてもらいたい。だれが見ても、いま日本の外交政策としての中国政策なり、あるいは朝鮮に対する政策など、安保条約に制約を受けているかもしれませんが、アメリカの極東政策の中に巻き込まれて、そこにのめずり込んでいる感じが非常に強いのであります。これはジョージ・ケナンが、やはりキューバ、フィリピン戦争、あの十九世紀末におけるアメリカがとり出した帝国主義政策に対する自己批判をやっておりますけれども、あれ以来、やはりアメリカはアジアをろくによく知らないで、そしてアメリカの主観的なものの考え方でアジア政策をやっているところに非常に失敗がある。もうすでに戦後十九年の間に、私は、アメリカの中においても識者が反省を持っていると思うのです。マーシャル・プランのヨーロッパにおける成功はあったけれども、やはり中国におけるマーシャル政策というものは、かえって中国の混乱を起こしてみたり、ダレス以来のやはり封じ込め政策というものが、今日アメリカのアジア政策をどろ沼の中に私はおとしいれていると思うのです。いま私たちは、むずかしいけれども、政府の近隣の問題を片づけていかなければならぬという意気込みはわかると思うのでありますが、われわれの主観的な考え方だけでなく、民族にはその民族特有の私は悲願があると思うのです。悲願ということばを使うと、池田さんはすぐ、この間も予算委員会でごきげんが悪かったのですが、やはり一つの満足すべき状態に置かれていない民族としては、民族の胸底の中に民族の求める悲願というものがあるのです。特に朝鮮民族においては、統一の悲願というものは非常に強いわけです。ポーランド民族の執拗と思われるような悲願を見ればわかりますように、極東のバルカンとまでいわれる朝鮮問題を一歩誤まると、私は、日本がキューバに対してアメリカが手をやくよりも、もっと私は大きなやけどをするのじゃないか。このことが日本のためにならないばかりでなく、朝鮮のためにもならないのじゃないかと思うのですが、この間、予算委員会において、この朝鮮人の法的地位の問題に関して質問いたしましたが、どうも外務省、法務省当局の答弁というものは満足できませんでした。しかし、政府側において、時をかすならば、必ず統一的見解を持ってくるだろうと思いましたので、いままで待ったのでありますが、外務大臣から、ひとつ政府の統一的見解とも思われる朝鮮人の法的地位の問題に対する見解を承りたいと思います。
  255. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 法的地位の問題につきましては、討議が相当進んでおりまするけれども、まだ煮詰まった段階にはきておりません。在日朝鮮人が一般の外国人と違った立場を持たれているということにかんがみまして、御承知のように、永住権という実体を持ちました特権と申しますか、そういう地位を確保して差上げよう、その永住権を与える範囲の問題につきまして、まだ最終的な煮詰めに至っておりませんことを御報告申し上げます。  それから、永住権の内容でございますが、これは一般の外国人が日本で享受しているものよりは幅広い権利を認めようといたしているわけでございまして、まだ討議の最中でございます。したがって、いませっかくのお求めでございますが、政府統一見解を出すという段階には、たいへん遺憾でございますが、きていないのでございます。いずれ煮詰まりました段階におきまして申し上げたいと思います。
  256. 戸叶武

    ○戸叶武君 まあ永住権という実体を持った特権を確保して差し上げたいというと何でもなく聞こえますけれども、これはいま日本に住んでいる朝鮮人の人たち全体が、いろいろな形において、祖国は統一されていないので、苦悩していると思うのです。そういう場合において、政府が与えようとするところの特権というものは、韓国籍を持ったものに限られるのですか。
  257. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういう国籍を選択される問題は、この制度が確立いたしますと、底辺として出てくるわけでありまして、どういう様相になりますか、さだかに見通しがつきません。私どもといたしましては、このことがわが国におきまして、政治的な、ないしは社会的な禍根を残すことのないように、慎重に、かつ、親切にやってまいらなければならないと考えておるわけでございます。具体的なことを申し上げるまで問題がまだ煮詰まっておりませんことをお知りいただきたいと思います。
  258. 戸叶武

    ○戸叶武君 この間の政府当局の答弁の中におきましては、この問題が片づいたら、やがて中国のほうにも及ぶというふうな答弁が速記録に残っておるのでございますが、いままで中国人に対しては、一つの中国人として取り扱っていながら、今度朝鮮人を、韓国人と、それから国籍不明の外国人というふうな形で区別して取り扱うということになると、やはりいままでのしきたりできていた朝鮮の人々に対しまして、非常な私は心理的動揺を与えると思いますが、そういうことは配慮なしにあのような答弁は出てくるのですか。
  259. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私がいま申し上げておりますのは、そういう禍根を残さないようにやらなければならぬといま考えておるところでございまして、どういう姿のものになりまするか、いままで具体的に申し上げるまでまだ煮詰まっていないということでございます。御心配の御注意の点はよくわかりますので、私どもといたしましては、これが禍根を残すようなことがあってはならぬということを常時心配をいたし、慎重に処理いたしたいと考えております。
  260. 戸叶武

    ○戸叶武君 あのときの答弁では、在来からの関係によってそういう取りきめをする方針であるという方針の線まで答弁の中に打ち出されたのでありますが、朝鮮が日本に合併されたのは明治四十二年です。台湾、澎湖島が日本に帰属したのは日清戦争のあとです。台湾のほうが日本に編入されたのは古かったと思うのです。これが分離せられて朝鮮の独立となり、今日台湾、澎湖島の中国の一部となっている。いまその戦後処理といいますか、そういう問題で、そこに住んでいる住民、民族が非常に私は苦しんでいると思うのです。そういう場合において、朝鮮人に対しては韓国籍を与えるというようなことになると、それが中国人に対して、また、台湾、澎湖島に住んでいる者は国民政府の籍に入れといっても、中国人には第三勢力的なものの考え方、第三勢力というか、サード・ウェイ、第三の道を選ぼうとする人もある。中国にも、中華人民共和国にも行き切れない、台湾のいまの国民政府にも行き切れない、何かこの間に統一的なものができてくるのじゃないかというような一つの望みを持っている人がずいぶん海外にあります。私は十二年前にインドに行きましたとき、インドの諸大学には必ず一人、二人の中国人が教鞭をとっております。その人たちの大部分もそうでした。そうすると、今度は次の選択の問題や何かで、中国人もずいぶん私は苦しむと思うのです。これは私は、韓国側には韓国側の言い分があると思いますが、日本政府の受け取り方というものが軽々卒々な形においてこのことを行なうと、あとで私は手をやくことになると思うのです。日韓会談の妥結を急ぐということにはなっておりますが、漁業権の問題、竹島の問題、いろいろな問題が、もろもろの感情問題がひっくるんでありますが、その根底に流れているものは、やはり私はイデオロギーを別として、統一されたやっぱり朝鮮というものを望んでいることが、これは朝鮮民族としての大きな悲願だと思います。それを今度の日韓会談というものは、日本の意図がそうでないといっても、現実において二つの朝鮮に分裂させるという一つの政策というふうにこの若いゼネレーションあたりがとったところに、今日の私は朝鮮における学生運動が起きているのだと思います。万歳騒ぎの中における青年の犠牲というものを私たちは若きときに経験しておりますが、最近起きているところの朝鮮の学生運動というのは、私は根が深いと思います。一歩誤ると、これによってつまらないことを急ぎ過ぎて手をやいてひどい目にあったというような結果を招かないとも限らない。後進国におけるところの民族抵抗運動というものは、絶えずやはり近代組織がいろいろのところで整備されてないところにおいては、学生、青年若い軍隊、そういうものが一つの革命的な抵抗運動の原動力になると思うのでありまして、私非常にあぶない。日本も、朝鮮問題においては、日韓合併をやらした伊藤博文が安重根のためにハルピンで殺されております。日本のあそこの公使が傷つけられたことも、いまのライシャワーの非常に深刻な被害をこうむったこともあるので、この民族問題で一番むずかしいのは朝鮮の問題とポーランドの問題じゃないかとまで世界でいわれている。この朝鮮民族の民族的な悲願、民族的な心理、民族的な感情というのを無視して、簡単に考えて取っ組んでいくとえらいことになると思いますが、外務大臣は非常に慎重なお方ですが、まわりから吹き上げられて、だいぶ忙しそうに立ち回っているようですが、どういうふうな御心境ですか。
  261. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ひとり日韓交渉に当たってばかりでなく、まあ外交交渉に当たる場合に、相手国の民族感情、国民感情というものを終始頭に置いて慎重に対処しなければならぬことは当然でございまして、私といたしましては、その点につきまして神経質なまでに言動を慎重にいたしておるつもりでございます。  それから、日韓交渉でございますが、これは決して無理をしておるのではなくて、無理をしていない証拠に十二年半もかかっておるわけでございまして、これは私どもといたしましては、事実韓国と日本との間には事実上の関係がいろいろな面においてあるわけでございまして、これをかっこうのついたものにしようという、きわめてナイーブなつもりでやっておるわけでございまして、これに対してまだ十分理解が徹底していないことを遺憾に思っておるわけでございます。私どもは、私どもの気持というものを十分御理解いただくように努力してまいらなければならぬと思っております。先生が御指摘のように、相手国の国民感情というものは、これはあくまでもこれに対して対処する場合に、慎重にやらなければならぬということはいつも私は心がけておるところでございまするし、今後も十分心がけてまいるつもりでございます。
  262. 戸叶武

    ○戸叶武君 ライシャワーさんが日本の少年に傷つけられたということはまことに遺憾なことであり、池田さんもテレビを通して謝罪しておりますが、この前アメリカからケネディが殺されたことがテレビで写され、今度はライシャワーさんが傷つけられたことがアメリカにすぐに伝えられる、何か悪いことはすぐ、アメリカと日本との関係は偶然の機会かもしれないけれども、全国民に知らされるようにできておりますが、そこで、その問題はそれとして、韓国の学生運動の抵抗運動の中において、日韓合併を促進さしたその当時の総理大臣の李完用と今日の日本の総理大臣池田勇人さんの肖像画が焼かれているそうですが、これは政府も、若い人たちの抵抗運動があっても、とにかく痛いものにうっかりさわっちゃいかぬということで黙っているのか、あるいは国交が樹立されていないからしかたがないと思っておるのかもしれませんが、政府の責任でないといえばそれまででしょうが、もしこういうことが、たとえばアメリカなり何なりの大統領なんかの肖像画が、そういうことが日本ででも起こったらどうなりますか、こういうようなことがいま公然として行なわれている朝鮮の政情、韓国の政情というものは、私は、われわれの感覚で受け取るよりは、もっと深刻な一つの暗流というものが流れているのじゃないかと思いますが、この朝鮮の若いゼネレーションの抵抗運動に対して、他国のことには干渉しないという態度で、もっとおとなになって、そういうものには触れまいという政府の心がけかとも思いますが、こういう問題に対して政府はどういうふうに考え、あるいは対処しよとしておりますか。
  263. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ここ二、三日来、大規模の学生を中心にいたしました連動が展開されておるという報道に接し、また、それがどういう背景、どういう動機で行なわれ、どういう主張をされておるのか、そういう点につきましては、私どもといたしましてもできるだけ解明をしてみたいと存じて、つとめておるわけでございます。ただ、仰せのように、この問題に対してどう対処するかということは、韓国政府の問題でございますので、私のほうでとやかく申し上げる性質のものではない。ただ、日本政府としては深甚な関心を持っておるという以上に申し上げるわけにはまいらぬと思います。
  264. 戸叶武

    ○戸叶武君 これは韓国の問題だという形で、それでは日本の総理大臣なり外務大臣が外国でどんどんそういうことをやられても、日本人は寛容な国民で、並びに、日本政府というものは寛容であって、どこにも文句をつけないという、そういう寛容の習慣を、寛容と忍耐ということが池田内閣の唯一の看板で、高度成長というものがくずれてしまった以上、それだけがいま残っているのでしょうが、そういう形で今後も外交をおやりでございますか。
  265. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) まあこれは外交と申しますか、国と国との間の礼譲の問題なのでございまして、先ほど私が申し上げましたように、私どもといたしましては、この運動につきまして、いろいろ背景、動機等につきまして、目下勉強をしておる最中でございます。ただいまのところ、それ以上申し上げられませんのでございます。
  266. 戸叶武

    ○戸叶武君 まあ時間が、ほかの人も関係があるから、私は二十分ぐらいで、これでもう切り上げようと思いますが、やはりアメリカの中でも、いまのコンテインメント・ポリシーといいますか、この封じ込め政策というものに対しては、私はやはりいろいろな反省が出てきてよいときだと思うのです、ある意味において。ジョージ・ケナンのような人ですらも、ソ連に対してああ対処しながらも、ねらいはソ連と話し合って、そして融合できるという形の含みをもって一時的な方式として採用したにすぎないので、こん身の力というものは、ソ連を説きつけて、そうして今日米ソが話し合いによって歩み寄れたような方向へ悲願を持っていたのです。それが属僚になると、ダレスさんからして――ダレスさんは属僚じゃないでしょうが、軍部なら軍部、出先の者の受け取り方というものは、もっと硬直した形でいってしまうんです。これは武器を持つ者――軍部というものを前線に置くと、これはいつでも、シーザーのエジプト遠征の時代でもナポレオンの場合でも、異民族の中に軍部が入ったら、必ずとどまるところのない失敗というものが帝国主義的な政策のいつも末路ですが、アメリカはいまほんとうに危機に立っているんです。いまアメリカをほんとうに救うのは、日本がアジアにおける現状を認識し、そのばかげた浪費ではなくて、もっと対立の中にユニティを認めていくというだけの見識を持って外交的な展開を促すべき重大な時期に私はきていると思うんです。いま私たちが朝鮮問題、日韓会談というものを非常に心配するのは、一たびあそこに足をかけたときは、大化改新の前における日本の任那の壊滅と同じように、あの大化改新における日本の国内改革というものも、あのむだな、そして出先官僚や軍部の腐敗というものを切断していかなければ日本の国内体制ができないというので、思い切った一つの施策をやったのです。日本民族としては私は大きな経験だと思います。やはりジョージ・ケナンが、あのキューバだって、またフィリピンだって、アメリカがとろうと思っていたんじゃなかったが、あまりスペインをやっつけちゃったから、自分の自治能力のないあの人たちをどうすることもできないので、結局フィリピンもアメリカの領土にしてしまったり何かしたけれども、それがためにどれだけアメリカは大きな犠牲というか、損をしたかわからないということを告白しております。そのフィリピンの問題と韓国の問題は違いますが、アメリカが持っているところのこの封じ込め政策において、台湾なり韓国なり日本の沖繩なりというものを押し出して、そしてNEATO方式のようなほうへだんだん経済協力から防衛の協力というような形でいったときには、動きのとれない――ちょうど日本が、ソ連の革命の後において大陸に軍事的防波堤をつくって失敗したとまた同じ目にあうんじゃないかということを非常におそれるんです。もう古い十八世紀的なそういう権謀術策的な外交のやり方に対して、世界があげて反省しなければならぬときなんです。なぜ火中のクリを拾うのかという私たちは憂いを持っているんですが、そういう点において、私たちは野党だから反対するというんじゃない。心配だから、政府のいまの自主性のない外交、そうして安易にものを考えているやり方、こういうことが日本の将来の災いになるんじゃないかということでしているんですが、どうも政府の方針だと、日韓会談を促進していく、何に向かって促進するのか、鹿を追う者は山を見ずといいますが、鹿か馬かわかりませんが、とんでもないところに頭をぶっつけられちゃ困ると思うのですが、賢明な外務大臣はそのような愚はしないと思うのですが、大平さんどうですか、この辺でもっとじっくり考えてみることは。
  267. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) アメリカの外交政策に対する御批判でございましたが、アメリカの外交政策に対する批判は批判として、現に力を持って動いていることは事実でございまするが、わが国としましては、冷静に国際情勢を見まして、わが国の立場を守り、国益を守り、アジアの平和と安全を守っていくということに焦点を置いて、日本自身の量見で外交は進めていくべきものだと思います。そのために私どもも、乏しいながら苦悶もいたしてきているわけでございます。私どもの量見で割り出した外交政策に対する批判は、もとより十分御批判いただかなければいかぬと思いますが、私どもの立っている足場というものは、あくまで日本立場というものに立脚しておるものである、アメリカの政策というものは、一つの与件として十分私どもも考えながら、日本の量見で外交政策を割り出していかなければいかぬ、火中のクリを拾うとか、しり馬に乗るとか、そういう気持は毛頭私は持っておりません。
  268. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 時間が二十分しか与えられておりませんから、要点だけ質問いたします。  あなたが三月十九日、衆議院の本会議でこういう言い方をしたわけです、日韓会談に関連して。その中で、「在日韓国人の法的地位」云々と、こう言われておるわけですね。在日韓国人というのは何なんでしょうか、「在日韓国人」と、そうあなたは言っているのですよ、本会議で。私は非常にふしぎだと思って聞いていたのです。
  269. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは日本に在住している韓国人という意味でございます。
  270. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、あなたの説明は、そうするとあれですか、日本にいる韓国人――どうやって区別するのですか、そんなものはいるのですか。日本にいる韓国人というのは、いるのですか。在日韓国人と在日朝鮮人とどう違うのですか、同じなのですか。
  271. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは日韓会談に対する報告でございまして、韓国政府日本との間の取りきめを目的として交渉いたしているわけでございまして、在日朝鮮人の中で韓国籍を選ぶ方々、そういう方々の所遇という頭で考えております。
  272. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、日本にいるいわゆる在日朝鮮人ですね、韓国人も北朝鮮の人もいるでしょうけれども、それらの人々が国籍選択の自由を持つ、これは認めるわけですか。
  273. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) さようでございます。
  274. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国籍選択の自由を持てば、どういうふうにして国籍選択するのでしょうか。
  275. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 国籍選択という用語は、必ずしもこの場合に正確ではないかもしれません。と言いますのは、二つの国籍の一つを選ぶというわけでございまするが、日本としましては、北鮮人民共和国というものを認めておりませんので、結局……。
  276. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんな国はないですよ。
  277. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) いや、朝鮮人民共和国です。
  278. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんな国もないよ。朝鮮民主主義人民共和国というのだよ。だめだよ、そんなことじゃ。
  279. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) その政権を認めておりませんので、一つの国籍――そちらの国籍というものはあり得ないわけでございます。選択の自由というのは、結局何らかの方法で大韓民国の国民であるということの意思表示をする者に特定の待遇を与える、こういう意味でございます。
  280. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 時間がないから、これはもっと聞きたいのですけれども、じゃ、別の質問ですけれども、日本は一体韓国を承認しているのですか、どうなんです、外務大臣
  281. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 承認いたしております。
  282. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 じゃ、いつ、どのようにして承認したのですか。
  283. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 平和条約で日本は朝鮮の独立を承認しておりますが、独立という以上は、単に朝鮮半島が地理的に、日本から地域的に分離されるというだけでなしに、国家として独立するものであることを承認したわけでございます。国家である以上は政府があるわけでございまして、その政府としては、平和条約の締結前から国際連合によって合法政府として認められているものを日本は大韓民国の政府として認めたわけでございます。
  284. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 平和条約の韓国は当事者じゃないでしょう。
  285. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 当事者ではございません。
  286. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 国家の承認というのは、相手方のある意思表示で日本が韓国に対して直接するのが承認じゃないですか。当事者でないものを別なところで承認できるわけはないでしょう。現にこれは外務省と法務省とは見解が非常に違っているところです。法務省は、これは民事局長が法的地位の委員会のメンバーですね、正式な。私が質問した去年の二月五日の参議院法務委員会ですけれども、「日本政府が韓国政府というものを正式の政府として正式に承認したことにはまだならぬかと思いますけれども、とにかくその準備段階にあるということが言えるのではないかと思います。」と、こう言っていますよ。だから違うんじゃないですか、外務省と法務省の見解が。
  287. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) その場でどういう関連でそういう答弁をされたか知りませんが、承認というものは、別に明示的に行なわれなくてもよろしいのでございまして、日本政府は平和条約のときに大韓民国というものの独立を認めて、そうしてその代表部の設置も認めてきておるわけでございます。
  288. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ここで議論する時間がないので残念なんですが、当事者じゃないのじゃないですか。平和条約の当事者でないものに対し承認なんということはあり得ないですよ。別個の行為によって事実的に承認したなら、これまた見解があるのですけれども、これはちょっと議論が違うと思いますね。  それから、別のことになりますが、それじゃ一九四八年十二月十二日の国連の第三回総会決議というのをよく引用しますね。これは一体何をきめたんですか。
  289. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 決議の内容の詳細は省略いたしますが、要するに、朝鮮半島の三十八度線以南の地域、そこには大部分の朝鮮人が住んでおる。そこで、国連の委員会が監視しているところで、自由な民意によって行なわれた選挙で新しい政府ができて、これがこのような朝鮮半島における唯一の合法政府である。それで、要点だけ申しますが、加盟国が大韓民国政府と国交を開始する場合には、この事実を念頭に入れるように勧告する、こういう趣旨でございます。
  290. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 外務省は、国連に国家なり政府を承認する権限があるという見解をとっているのか、ないという見解をとっているのか、国連にですよ。
  291. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) そういう見解はございません。そういう権利はございません。
  292. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、中国が国連に加盟を認められたという場合でも、直ちにそれをもっては中国の承認にはならない、こういうわけですか。
  293. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 承認というのは国家と国家の関係でございまして、国際連合は国家ではございませんから、おのずから性質が違うわけでございます。
  294. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それじゃあなた、日本が韓国を承認したかしないかは、日本が韓国に対する独自の意思表示がなければならないじゃないですか。それはおかしいじゃないですか。
  295. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 独自の意思表示を……。
  296. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 したのかしないのか。
  297. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) したわけでございまして、それはサンフランシスコ平和条約を締結したことがその意思を表示しているわけでございます。その意思表示は、大韓民国政府に対して明示的に行なわれなければならないということはないのでございます。
  298. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 時間がないので、いまの問題は宿題にしておきますけれども、これはおかしいと思いますね。  別のことですが、外務大臣、私が質問した例のエコノミストの二月四日号に出ていることで聞きましたね。それに対してあなた答えていないのですが、アメリカが、日韓交渉もアメリカの意向にかなり敷かれているんじゃないかという声があるという質問に対して、あなたは、ぼくにもわからないのだ、アメリカがそんなに日韓関係に関心があるなら、平和条約のときに、朝鮮を独立させるときになぜちゃんとしておかなかったのか、こういうふうにあなた答えたことになっていますね、エコノミスト二月四日号に。これはどういう意味かと聞いたら、あなた本会議で答弁しなかったですがね、どういうことですか、これは。アメリカはあの朝鮮を独立させたときに、もっときちんとして、韓国にいわゆる親米反日の李承晩政権を樹立させて、そうして日本と争いになったのだ、ごたごた起きるようになったのだ、そういうアメリカのやり方がまずかったから結局今日の状態に至ったんじゃないか。あのときアメリカが親日的な政権を韓国に樹立させれば、そんなふうにごたごたしなかったんじゃないか、こういうふうな意味なんですか。
  299. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私の言う意味法律的でないかもしれません。私の感じといたしましては、これは日韓交渉というのは、二国間交渉としてはたいへんむずかしい交渉だと思っているのです。それは双方の当事者の立っている立場が特異なだけに、共通の理解の基礎というものが乏しいだけに、非常にむずかしい交渉だと思っておるのです。そこで、当時日本はアメリカの占領下に終戦後ありましたし、韓国はアメリカが管理しておったし、あの当時アメリカが、将来独立するであろう朝鮮韓国と日本との間の終戦時におけるいろいろな問題をその当時解決してくれておったら、大平の今日の苦労はないじゃないか、そういうことを言ったまでです。それで、それを言う意味は、つまりしょっちゅうアメリカの圧力を受けておるじゃないかという反論がありますから、それで私は、それに対して、そんなにアメリカが日韓の間の正常化をこいねがっておるなら、なぜそのときにやっておかなかったのだということも一つの反論になるのじゃないですかという私の常識論ですわね。
  300. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私も常識論で聞くのですけれども、そうすると、そのときにアメリカがどうしておけばこんなごたごたが起きなかったというのですか。
  301. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) だから、たとえば在韓財産というものは、まあ公私の財産一切没収されましたね。しかも、韓国側の対日請求権というのは残っているのですよ。それで特別の取りきめをせなければいかぬことは、平和条約のときからわれわれ請求権の問題といって苦労しておるわけですね。だから、請求権の問題というのは、もう全くこれは二国間交渉でむずかしい性質のもので、稲葉さんにもたびたび申し上げておるように、同じ法律解釈で行けない、実定法を認めるとか認めないとかいう問題もありまして、なかなかうまくいかない問題でございまするから、あの当時、そういう取りきめを将来両方で取りきめるということをしないで、あの当時、そういった懸案はアメリカの手で解決してくれておったらよかったのにと、まあ私のぐちかもしれませんけれども、そういうことを言っておるわけです。
  302. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 時間がないので、これ以上質問できないのですけれども、もう一つ、いま韓国の一月十日の朴大統領の年頭教書、これを私拝見しますと、韓国は非常に外貨が欠乏していて、軍に納める軍納用原資材、これの輸入を最優先するということがはっきり書いてあるのですよ。年頭教書、これは外務省ではお読みになったと、こう思うんです。そうすると、日本からいく無償、有償の供与というものは、当然韓国の軍事力の増強に役立つことになるんじゃないですか、だから、なってもかまわないと言われるのですか。そこんところ、どうなんですか。これ私質問したけれども、答えないんですよ。
  303. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは、経済協力の問題は、大綱で合意いたしておることは御承知のとおりでございますが、これをどのように実行していくか、細目の協定はまだやっておりません。打ち合わせやっておりませんが、私どもの気持といたしましては、これは経済協力で基盤の強化に韓国のほうで御計画されるものと思いますが、それに対して、日本の生産物というものを配していくということになりますので、その実行細目というようなものにつきましては、今後相談しなきゃいかぬ問題だと思います。
  304. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 結論は日本からいくいわゆる経済協力というのは、韓国で何に使われようと、これは日本としては関知しない、こういうことですか。
  305. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これは経済協力の協定を双方で、どのように取りきめていくかという合意をどのような姿でやるかということに帰着するかと思うのでございます。  それで私どもが念願いたしておりますのは、いまあなた方がしょっちゅう御指摘になるように基幹産業が弱い、電力も弱い、そして経済の再建に役立つように消費財というものでなくて、やはり生産財で韓国の経済の基盤が強化されていくように期待いたしておるわけでございまして、それは細目協定で打ち合わせしなきゃいかぬと思っております。
  306. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私が聞くのは、一月十日の朴大統領の年頭教書は、外務省に入っているわけでしょう。それにはっきり書いてあるじゃないですか。軍におさめるような資材を憂先的に配定するんだと書いてありますよ。それが韓国経済の再建の方途だと書いてあるのじゃないですか。だから当然、日本からいく経済協力というものは、韓国の軍事力増強以外に考えられないんじゃないですか。それは当然のことじゃないですか。
  307. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 経済協力ということは、韓国の将来の経済を展望いたしまして役に立つように考えるべきなんでございまして、したがって、そこは韓国政府としては、分別を出すだろうと思いまするが、私どもといたしましては、これは基本的に基幹産業というようなものの育成というものに充当されるということを期待いたしております。
  308. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その答えがはっきりしないんですけれども、そうすると、朴とラスクが一月二十九日ですか、共同声明発しましたね。あの中で、私が言ったように、これは外務省に入っていると思うのですけれども、韓日会談の早期妥結を要望するというか、希望するということをはっきり言っていますね、ラスク長官も。日本と韓国との間のできごとだというのに、アメリカと韓国と共同声明発して、韓日会談が早期妥結を要望するというようなことをラスク長官が共同声明の中で言うというのはおかしいじゃないですか。日本に対する介入じゃないですか、そう考えられませんか。
  309. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 希望することは自由だと思います。
  310. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 もう終わりますが、希望するのは自由ですね。自由ですけれども、では日本とアメリカとの共同声明の中に、それは入っておりませんね。韓国とアメリカとの間だけのその共同声明に入っているということはおかしいじゃないですか。どう見ても私は変だと思うんですがね。希望という形はとっておるけれども、それ以上のものが、そこにあると当然考えられるんじゃないですか、こう思うんですがね。  もう一点だけ質問しますが、時間がありませんので。それは、あなたも総理も朝鮮の統一を希望するというか、そういうことを言われましたね。日本としては、どういうような形の統一を希望されるんでしょうか。いま北と南の経済力、軍事力、あらゆる面において南が、韓国が劣勢なんだと、だから韓国の力が強くなってきて、韓国の主体的な力をふやして、特に軍事力でしょうね、それをふやした形で統一をされることが日本にとって望ましい、こういうようなことを考えているわけですか。
  311. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういうことでなくて、私どもが加盟いたしておりまする国連が、韓国の統一につきまして国連方式というものを打ち出しておるわけでございまして、それが成功することを加盟国として希望するのは当然だと思います。
  312. 須藤五郎

    須藤五郎君 お二人が日韓会談の問題で御質問なすったあとを受けまして、私も少し質問したいと思います。いま日本では、日韓会談妥結の政治工作のために金鍾泌氏が来日して、連日池田首相や大平外相、大野自民党副総裁、赤城農相、船田衆議院議長、前尾幹事長。黒金官房長官など、政府首脳と密談を重ねて、日韓会談妥結への舞台裏工作を進めておりますのは、あなたたちも御承知のとおり。  ところがきのう三月二十五日、南朝鮮のソウルの学生、新聞では約一万三千となっておりますが、実際は五万だと聞きます。五万名が屈辱妥結反対の大デモを起こしております。そうして陸軍部隊と衝突をした。学生は五万ですが、市民をまぜると十五万ぐらいの大デモンストレーションが行なわれた、こういうことです。このことはけさの日本新聞に写真入りで大きく報道されておりますから、大平外務大臣も御承知のことだと思うのです。いま南朝鮮では学生だけでなく、労働者も農民も、漁民も、知識人も、それから全野党、またアメリカにしばられておる韓国軍隊の中においてすら、朴政権のやり方に対して非常に複雑な動きを示しておると思います。これらの事態は一体何を示していると大平外務大臣考えられるか、全野党が対日屈辱外交反対全国民闘争委員会を設置したということも言われておりますし、また野党は、みな総辞職をしようではないかということで、すでに辞職願に署名をしたということも聞いておる。それからソウルのその他の各地で演説会をやると非常なたくさんの人が集まる。ソウルでは七万人からの人が参加した、こういうことも言われております。そうしてこの労働ストライキがいま非常に激化してきておるわけですが、その実力行使が絶頂に達するときは、今月から来月にかげて、いわゆる日韓妥結目標の時期に、労働争議の大きな波が起こる、こう言われております。  こういう事態の発展は、何を一体意味しているのか、何を示しておるのか、政府はどういうふうに考えておられるのか、これをまず伺いたい。
  313. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 韓国におきまして、日韓交渉というものの評価をめぐって、与野党の間におきましても、また一般の民間におきましても、いろいろな意見があることは承知いたしておりまするし、また、あり得ることだと思うのでございます。いま御指摘の学生のデモも、日韓会談についての一つの動きであると、こう思います。  ただ、それで私どもは、この問題に関心を持ち、解明もしてみなければならぬと思っておりますが、これに対する批評は差し控えたいと思います。ただ一つ、これはただいままでのところ、これは日韓交渉、日韓の国交正常化自体に反対というのではなくて、日韓の交渉のやり方等についての意見の表明であるというように考えております。
  314. 須藤五郎

    須藤五郎君 大平さんも、いま南朝鮮におけるあらゆる運動の激化、この点は認められたと思いますが、この激化の原因は、一体何なのか、何が原因で、こういう激化をしているかというふうに考えられますか。
  315. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) よく分析、解明してみなければわかりませんが、ただいままでのところ、いろいろ情報を承っておるところでございます。先ほど申しましたように、いろいろな見解表明があり得ることでございます。それの真相はどうなんだというところまで、まだ解明は進んでおりませんので申し上げかねます。
  316. 須藤五郎

    須藤五郎君 日本の外務大臣が、その真相を解明していないということは、はなはだ私は遺憾だと思うわけでありますが、激化の原因は、アメリカが南朝鮮を軍事的植民地として支配していることにある。これが最大の原因である。先ほども戸叶さんもそういう意味のことをおっしゃったと思うのですが、それが最大の原因なんです。すべての闘争が、そこにほこ先が向けられておる。これが激化の根源だと思います。現に事実がそれを私は示しておると思うのです。学生の掲げておるスローガンはどういうスローガンか。売国的日韓交渉を直ちに中止し、売国政治家は直ちに東京から帰国せよ、こういうスローガンです。また日本独占資本に再び踏みにじられるな、日本帝国主義打倒、親日資本家をなぐり殺せ、アメリカは日韓交渉に口出しするな等々が学生のデモンストレーションのスローガンです。  これで何が激化をさせておるかということは明らかになると思うのです。労働者の闘争はアメリカの植民地支配と剥奪、朴一派の収奪に向けられておりますよ。農民も漁民も同じことなんですね。これらすべての闘争が反米、反朴と結びつき、日本の独占資本進出反対に集中しておるというのが事実です。政府はことばでいかに否定しても、現実の事実は否定できないのです。どうですか。
  317. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 須藤さんと、そして須藤さんの属する政党一流の分析、評価というものを承っておきます。
  318. 須藤五郎

    須藤五郎君 これは私たちが冷静に判断した結果の結論ですし、事実なんです。学生デモンストレーションは、このスローガンを掲げて戦っておるじゃありませんか。ちゃんと戦いの目標を掲げて戦っておるのです。それをあなたたちは知らなくて、真実から目をおおおうとしたって、それはあなたのほうが無理じゃないか。私たちは独断で、こういう決定をしているのじゃないのです。事実に即して私たちは、こういう判断をしておる。こういう事実をあなた方は、どう見るかという点をもう一ぺん重ねてお聞きします。
  319. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) そういう事実を、どう見るかについてのあなたの御見解は承っておきます。私どもといたしましては、日韓会談、交渉というものについての評価が、いろいろ韓国内にもあり得ることだし、そういうことが、こういう運動に展開されておるということでございます。これが真相はどうかという点につきましては、まだ報道を受けたばかりで、十分な解明をいたしておりませんので、お答えいたしかねます。
  320. 須藤五郎

    須藤五郎君 南朝鮮の事態が、そういう日本政府考え方でやっていくならば、静まるどころか、ますます朴政権に反対する戦いが発展してくると思います。日本政府は、この事態をどう見ているのか。政府の今後の見通しはどうなのか。この戦いが静まっていくと見るのか、もっと激化すると見るのか、政府の見通しはどうなんですか。
  321. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私は予言者じゃありませんから、そういう点の見通しを、的確に、権威のある国会で答弁するような心臓は持ち合わせません。  問題は、私ども日本の態度でございますが、この問題は、こういう韓国における情勢というものの処理は、韓国政府が責任を持って処理することなんでございまして、私どもといたしましては、日韓会談に対して、既定の方針を変えるというようなことは考えておりません。
  322. 須藤五郎

    須藤五郎君 労働者、農民、漁民、学生、その他すべての勢力が、反米、反朴、反日の統一闘争を盛り上げていって、朴一派がつぶされることはもう明らかだと思うのです。そう遠くないと思うのです。目に見えていると思うのです。今日の事態は、まこまでいく内容と性格を持っていると思います。このことを政府ははっきりと知るべきだと私は思いますがどうですか。
  323. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) あなたの御見解として承っておきます。私が申し上げた、私の答えは、先ほど申し上げたとおりでございます。
  324. 須藤五郎

    須藤五郎君 いわゆる国連軍が南朝鮮に入ってから何年になりますか、それから数は、どのくらいおりますか。
  325. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 一九五〇年に朝鮮動乱が始まったわけでございますが、それ以来いるわけでございまして、現在は四万から五万ということだそうでございます。
  326. 須藤五郎

    須藤五郎君 この国連軍が、アメリカの南朝鮮軍事支配の道具にされておるんです。国連軍とは名のみで、これは国連軍を詐称するものであって、実は朝鮮に対する侵略軍隊だと私どもは思っておりますが、この南朝鮮の人民は、これにたまりかねて撤退を求めているんです。これが南朝鮮の今日の事態ではなかろうか、この期に及んで、まだいなければならない理由はどこにあるのか、アメリカ軍が、まだ朝鮮にいなければならぬ理由がどこにあるのか、それを聞かしていただきたい。
  327. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 国連の関係では、まだ朝鮮動乱の関係は処理がついておらないわけでございます。依然として国連でとられた決議に基づいて、国連の行動として駐在しておるものと了解しております。
  328. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は法律論などを聞いているんではないのです。なぜ南朝鮮の要求を押し切って居すわらなければならないか、南朝鮮は、アメリカ軍に帰ってくれと言っているんです。それを押し切ってまで、なぜ居すわらなければならない理由があるのか、こういう点です。
  329. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 大韓民国政府が、そのような申し出を国際連合に対して行なったという事実は承知いたしておりません。
  330. 須藤五郎

    須藤五郎君 いま朝鮮人民が立ち上がって、それを要求しているではないですか。アメリカ帰れと要求しているんじゃないですか。それになお、アメリカがしがみついている。こういうことでは朝鮮の問題は片づかないです。日本が、真に朝鮮人民の要求に、日朝両国の真の友好関係を確立することを望むならば、まず国連軍の名をかたっているアメリカ軍の撤退を、国連及びアメリカに求めるべきだと、そういうふうに考えます。この大前提さえ否定して、日韓会談を進めようとしているのは、日朝両国の友好親善関係を確立しようというのが目的ではなくてよく聞いておってくださいよ――アメリカに肩がわりして、朴を助け、アメリカの軍事支配を維持しつつ、日本独占の侵略的野望をも達成しようとしているものと考えなければなりません。こんなことは成功するものではない、現に韓国でも八一%が日韓会談に反対しているではありませんか、たくさんの人が立ち上がって血を流してまで日韓会談反対だと、日本帝国主義反対だと、日本独占資本支配反対だという運動を今日強力に進めておるではないですか。  それは何に原因があるのか。一番大きな原因は、アメリカ軍の韓国駐留ですよ。これが一番大きい。だから日本がほんとに朝鮮の統一を願うならば、南朝鮮からアメリカ軍の撤退を要求して、そうして朝鮮の統一を一日も早く達成する、これが日本のやるべきことではないか。大臣は、どういうふうにお考えになりますか。
  331. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 須藤さんの御意見はたびたび本委員会予算委員会等で拝聴いたしております。あなたの御意見は御意見として承っておきます。私どもと見解を異にいたしますることはたいへん遺憾に思います。私どもといたしましては、既定の方針を変えるつもりはございません。
  332. 須藤五郎

    須藤五郎君 もうこれで、時間が参りましたから私はやめますが、大平さん、この日韓会談反対の闘争は、日本でも大きく起こっておるのですよ。この間、私たちは大会を持ちました。三万の日本人が集まってますよ。それでこの運動は、ますます大きくなります。単に韓国、南朝鮮だけの反対運動ではない。相手国の日本でも、大きな反対運動が起こっておる。おそらく今後、ますますこの反対運動が大きく、あの安保条約反対の闘争のような、ああいう反対運動になろうとしておるわけです。そういう国民の反対、相手国の国民の反対、人民の反対、それを押し切って、なんで日韓会談をやらなきゃならぬか。これこそ私たちが、いつも口ぐせのように言うアメリカ帝国主義に従属する道じゃないですか。アメリカ帝国主義の利益に奉仕しようとする道以外に考えようがないじゃないですか、どうですか。そういうことはやめたらどうですか。
  333. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) あなたの分析の方法論、そういうものに私どもは同調できないわけでございまして、あなたの御意見は御意見として拝聴いたしておきます。
  334. 戸叶武

    ○戸叶武君 先ほど大平さんに、私が、日本自体が自主的にアメリカの極東政策を改めさせるような発言をすべきときでないかということを訴えましたが、きのうのテレビじゃないが、これに呼応するようにアメリカにおける良識者の一人であるフルブライト、アメリカの上院外交委員長が、きのう上院において大演説を行なっております。  それは、アメリカの極東政策は古い神話と新しい現実との離反により動きがとれなくなっている、もし米国が中共との関係で柔軟な態度をとる能力を導入することができるならばきわめて有益なことであろうと。その手始めとして、この中共に対して、すなわち中国は一つなのだから、しかもこれは共産主義者によって支配されており、今後無限の将来にわたって、この支配が続くであろう。けれども、この事実を受け入れて、大陸中国と比較的正常な関係に入るための諸条件について考慮することが可能となってくると。アメリカの中で、しかも上院における外交委員長の地位というものは非常に重いのです。その委員長であるフルブライトさんが、このような発言をアメリカの中でもしているというときに、アジアの問題は、一番わかる、アジアの苦悩の中に存在する日本というものが、この今日の中国問題に対しても、この朝鮮の問題に対しても、クリアーな回答をもって、そしてわれわれの自主的な態勢をつくることと、アメリカにも中国にも、あるいはソ連にもほんとうに与えるものがあって、その中に一つのユニティをつくり上げるような私は外交躍動がなされなきやならないときにきていると思うのです。もう少し、だからさっき外務大臣説明の中に、現実において動いているからと言っているけれども、現実において、アメリカの極東政策が苦悶しておるのです。動いているけれども、方向を失っているのです。壁にぶつかっているのです。そのときに私たち一つの見識を持って、アジアの声として、アメリカの極東外交政策に対する大きな反省を求める、反省を求めるというのじゃなくて、日本の外交姿勢はこうだということを打ち出すことによって、極東に新しい時代が生まれてくるのだと私は思うのです。  そういう意味において、いま日韓会談が一番大切なときに、アメリカ自体ですら極東政策は大きな転換期に直面しているときに、ずるずると奈落に落ち込んでいくようなこの行き方、のめずり込み方をしているのは、ほんとうに間違いだと思うのですが、これは一番、ほんとうに気の毒なほど苦悩しているのは大平さんで、大平さんの顔も、まともにはこのごろ見られなくなってしまったのですけれども、ひとつ大平さん、この辺で、これはほんとうに考えてもらいたいと思うのです。日韓会談は苦悩の中における転換の足がかりですよ。中国問題は大きな一つの極東政策の中心課題でありますけれども、こういう問題を足がかりとして、私はアジアの方向づけをやるということによって大平外交というものが残るならば、あなたがなくなっても、歴史の中には大平というのは、たいしたものだということが私は残ると思うので、これはほんとうに大きな転換期における外交というものが、いかに重要であるかということをよく認識してもらいたいと思うのですが。大平さん、これはひとつよく考えてみて下さいよ。大平さんのほんとうに胸をゆさぶるだけの発言が私はきょうできませんが、この民族の悲願というものをほんとうにすなおに受け取ってもらいたいと思うのですが、御見解を伺いたい。
  335. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) ひとりアメリカばかりではなく、友好国とはしょっちゅうあらゆる問題でコンサルテーションを充実してまいらなければならぬと思っております。特にアジアの問題、中国問題等は、世界の第二の問題でございますだけに、十分なコンサルテーションを進めてまいらなければならぬと存じておりますし、現に、そのようにいたしているわけでございます。私どもといたしましては、われわれの能力に許された力をふりしぼって、最善を尽くさなければならぬ問題であると心得ております。どこにも遠慮する必要は私はないと考えております。  それから、そういう状況のもとにありましての日韓会談でございますが、戸叶さんのおっしゃる意味は、退いてその状況に合わすということでございますが、私どもはできるならば、進んで状況にミートさしてまいるというふうに考えるべきじゃないかと考えております。
  336. 村山道雄

    主査村山道雄君) 以上をもちまして、質疑通告者の発言は終了いたしました。よって、外務省所管に関する質疑は終了したものと認めます。   ―――――――――――――
  337. 村山道雄

    主査村山道雄君) 次に、昭和三十九年度総予算中、通商産業省所管を議題といたします。  時間の都合上、説明はこれを省略してお手元に配付してあります資料をごらん願うこととし、なお、説明資料は、これを本日の会議録の末尾に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  338. 村山道雄

    主査村山道雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸叶武君。
  339. 戸叶武

    ○戸叶武君 政府は、二十六日に経済閣僚懇談会を開いて、国際収支改善対策を検討したということでありますが、国際収支改善対策の一番の問題点は、やはり日本自体における貿易及び貿易外収支の赤字においても見られるような構造的欠陥が内在していると思うのですが、その検討された問題点の中において、特に海運収入の問題及び特許料の支払い、商社の支店経費などの赤字、そういう問題に対して、どういう対策を講ぜられつつありますか。それをひとつ通産大臣から承りたいと思います。
  340. 福田一

    国務大臣(福田一君) 御説のとおり、本日の経済閣僚懇談会におきまして、貿易収支並びに経常収支等々国際収支の問題について、いろいろ閣僚間において意見を交換いたしたのでございますが、本日は、大体において造船問題が中心議題となりまして、御案内のように三十九年は六十四万トンの造船計画が予定されておるのでありますが、これは大体四十万トン計画造船を追加すると同時に、約二十万トンの自社船の建造をすることとして、ただし自社船の場合におきましては、計画造船とは違った融資の比率等の問題もございますし、それから自社船の場合には、どれだけその船を建造いたします会社が自己資金を調達するかというような問題等もございます。いろいろございますので、これは今後とも通産省と開発銀行、あるいは大蔵省等とが連絡をとって、なるべくすみやかにこの案をきめる。こういうことが話の中心になりまして、その問題は決定をみたわけでございますが、ただいま御指摘になりましたような特許料の支出でありますとか、あるいは商社の経費でありますとか等々の問題につきましては、こういうことが、一つの支出の大きなファクターになっているということで、一応経済企画庁から説明はありましたけれども、これを今後、どうしていくかということについては、まだ何ら決定をいたしておりません。ただしこの懇談会は、今後もそういうことを中心として二、三回は継続して開かれることに相なるかと考えておる次第であります。
  341. 戸叶武

    ○戸叶武君 この計画造船の問題ですが、計画造船のプランはよいけれども、いま船をつくるというのには非常な費用がかかるし、船腹増強には、いろいろな難点があるという意見もありますが、そういう点はどうですか。
  342. 福田一

    国務大臣(福田一君) お説のとおり、計画造船をやります場合には、資金がそれだけ開銀資金を費消することは事実でございますが、この点については、資金の問題までは、資金をどこからどうして出すということについては、具体的には決定はいたしませんでしたが、とにかくこの際、四十万トンはあくまでもこれを建造するのだという建前で、そういう資金の問題その他も進めていく、こういう方針に、きょうのところを言うと方針だけでございまして、具体的に、どういう資金計画で、どこでどういうふうにつくるかというところまでは話が進まなかったわけであります。ただし自社船については、資金計画について開発銀行のほうから、できるならば海外の銀行等とも協力をすると言いますか、要請をいたしまして、開発銀行が借款をするような形であると存じますが、そういうような問題も考慮をしたいと考えておる、こういう意見は述べられておりました。
  343. 戸叶武

    ○戸叶武君 貿易外収支に大きな問題点があるのですが、その中において海運収支の二億六千万ドルの赤字よりも、特許料の支払いや、商社の支店経費などの赤字のほうが五億一千万ドルもあって大きいと言われているのですが、まあ経済企画庁のほうから、そのような報告があったかと思いますが、その問題に対しては、まだ十分な検討はなされていないのですか。
  344. 福田一

    国務大臣(福田一君) 特許料の問題でございますが、われわれとしては、いままで技術の導入をいたします場合には、その導入した技術が日本の産業にどれだけ好影響があるか、またそれを入れた場合に、中小企業等に、どういうような影響があるかということをよく考えてみまして、そうして日本の産業に悪影響がないというものに限って、いままで認めてきたことは御案内のとおりであります。  しかしながら、それが相当な金額にのぼっておりまして、その支出が一億ドル余にのぼることに相なっておるということは事実でございますが、しかし、これによって日本の産業は、大きく合理化あるいは近代化が進んできておるのでございますから、まだ、それ自体が、あまり日本の産業に悪影響を与えておると考えておりません。要は国際収支の面において、赤字がふえるという悪影響があるわけでありますが、これはしかし、輸出を伸ばし、そうしてまた、輸入をできるだけチェックするという点から見れば、効果があると考えておりますので、われわれとしては、これをしいてチェックするというか、そういうような考えはございません。  それから海外支店経費の問題でございますが、これは戸叶委員もおわかりのように、日本は、いま方々に出て、だんだん商社が支店をつくっております。支店をつくれば、どうしてもそこに経費がふえる、あるいはまた、家を借りるとかいろいろな準備をするということで、どうしても積極的に仕事をいたしますというと、そういう経費がふえてまいりますので、この輸出を伸ばし、輸入もしたがって伸びるわけでありますが、輸出入をやります場合には、支店経費が伸びるのは、一種のやむを得ざる経費とも考えておるのであります。これはあまりチェックするわけにはいかない。ただし、不要な経費等を使っておるということでございますれば、これはいけませんので、あらゆる機会に商社等に対しましても、できるだけそういうことのないように、われわれとしても要請をいたしたいと思っておりますが、商社側からちょっと聞いておりますところでは、実を言えば、自分のところが商売をやって、そうして赤字が出るということではたいへんだ、できるだけ切り詰めて、商社によっては、行くだけの金は出してやりますけれども、あと向こうへ行ったら、そこらで、いろいろ仕事でも見つけて、そうして自分で経費をひねり出せというくらいにきびしく言うて出しておるというところも相当あるようであります、これは小さいところと思いますけれども、そういうようなわけでございまして、いま六十何億ドル、ことしは五十五億五千万ドルの輸出に相なると思っておりますが、輸入もまあ五十九億ドルちょっと切るようになるかとも思っておるのでありますが、それだけの、だんだんふえていく場合でございますから、このほうも必要な支出と認めざるを得ないのではないか。しかし、そういう支出は認めますけれども、どうしても、これは輸出をもっと大きくする、こういう努力はもちろんいたさなければならない、こう考えておるわけでございます。
  345. 戸叶武

    ○戸叶武君 その日本の輸出をお説のとおり盛んにするのには、とにかく中国なりソ連なりにも延べ払い方式を確立いたしましたが、今後ラテン・アメリカなり東南アジアなりあるいはアフリカというような後進地域に、その輸出を行なう場合においては、当然、この方法が、ある程度まで採用されなければならないと思いますが、それとともに私は、いわゆるここ数年来、設備投資の行き過ぎだなんといってみても、技術革新に伴う国内における産業態勢の大きな変革というものが大企業の面においては、ひとまず大体いったと思いますが、それにならって下請工場でも、中小企業でも、この機械を高度化していかなければならないというような生産性の向上を目ざしているのは、やはり一つの転換期に立っておると思うのです。  そのときに、今度はそれらの工場で、新しい機械を買おうとしても、銀行のほうで金融引き締めで、なかなか困難になっている。しかし、経営面において安全であり、将来の見通しがあっても、それでもって、つぶされていかなければならないような場合もあると思いますが、輸出を盛んにするという、この延べ払い方式とともに、国内における構造的な変化が、いま来ているときにおける延べ払い方式というものを相当確立しなければだめだというので、あなたは熱心に大蔵省を説いておるようですが、どうも大蔵省は石頭で、なかなか応じない。先ほども田中大蔵大臣に、このことを言ったのですが、もはや現実の問題として、私たちのいなかでも、たとえば不便なところでいままで造花をつくっていたりあるいは家具類や、輸出玩具類木製品なんかつくっていたものが、どんどんこの数カ月の間に香港なり、南のほうにとられつつある。それはやはり日本自体がチープ・レーバーの段階から脱出しようとしているので、いままでの軽工業なり、玩具なり、あるいは零細企業における造花というようなもので輸出を盛んにしようというような段階じゃなくて、逆に外国のパテントなり何なりを取るには協力するなりして、それから学びとって、精密機械なり、あるいは化学製品なりを、もっと高度化されたものを外国に輸出するという場合においても、その生産の基盤となるのは、外国ばかりじゃなくて、日本の国内における一つの受け入れ態勢というものがなければ、日本の産業の高度化への前進というものはできないと思うので、そういう点において、国内における延べ払い方式というものを昨年の七月から開始したということでありますが、大蔵省に聞いても、これはよくわからなかったようですが、あなたから、そのことを承りたいと思います。いまどうなっておりますか、精密機械か、何かの。
  346. 福田一

    国務大臣(福田一君) 延べ払いの問題につきましては、あとで事務のほうからも御報告をさせたいと思いますが、基本的な考え方について申し上げてみたいと思うのであります。  実は、戸叶委員の仰せになったところは非常に心配でございましたので、きょうの経済閣僚会議におきましても、私は、今度の公定歩合の引き上げというものが、中小企業に非常なやはり影響がある。特に中小企業の場合には、固定資産にほとんどかけておりまして、流通資本というものはないわけであります。そういうところへ、今度こういうような公定歩合の引き上げというようなことが行なわれますというと、これは非常な影響があるので、特にこの点は、金融的に考慮してもらわなければ困るということを実は強く要請したのでありますが、同時にまた、今後の日本の産業の構造を見てみますというと、お説のとおり、大企業は、ある程度近代化され、あるいは合理化されてきておりますが、中小企業は非常にこれが立ちおくれております。そのときに、そういう面におけるところの資金量が不足であるために、技術の導入がおくれたり、あるいは近代化がおくれるということになっては、これは中小企業は非常な困った事態に立ち至るのでありますから、こういうことについては、われわれとしても、その事例に応じてはできるだけ、いいものでございますれば協力をするような態勢で通産省としては、育成をはかっていく所存でございます。そういうふうにやってまいりたいと思っております。  なお、延べ払いの問題でございますが、これは機械類等において、相当国内の機械類についてやっておりますが、重工業局長も来ておりますから、事務のほうから御説明をさしていただきます。
  347. 森崎久壽

    政府委員(森崎久壽君) 国産機械の延べ払い条件の問題でございますが、輸入機械に比しまして悪い場合には、結局、国内のユーザーは輸入機械を使うということになるわけでございますので、数年前から、この問題について検討いたしまして、昭和三十七年からは、重電機につきまして、国内の延べ払いを実施しまして、さらに三十八年度からは、機械類につきまして、国内の延べ払いを実施いたしております。その実態につきましては、重電機関係につきましては、三十八年度で開銀の融資としまして三十億円、三十八年度で五十三億円を現在予定いたしております。  また、一般の機械類の国内延べ払いにつきましては、機種を指定いたしまして、外国から延べ払い攻勢がくるような機種に限りまして、その金融措置を考えているわけでございまして、三十八年度には興長銀債の資金運用部引き受けによりまして六十億円を予定し、三十九年度におきましては、現在、四十億円を予定いたしております。三十八年度に比べて、三十九年度が下がっておるような印象を受けるわけでございますが、実は、三十八年度に初めて出発いたしまして、出発が七月ごろにおくれまして、この六十億円が若干キヤリー・オーバーされるというかっこうになっております。現在の時点におきまして、いま推薦いたしております実績は四十億でございます。
  348. 戸叶武

    ○戸叶武君 その実績、四十億というのは、申請額のとにかく五〇%くらいしか満たしていないので、やっぱり一般のところから、そういうところに非常に苦情があるのですが、それは主として通産省というよりは、大蔵省のほうで出し渋っておるのじゃないですか、どういうのですか、いつでも見せ金だけをちらつかせて、それを消化しないやり方が非常に官僚的な行き方と思いますが、どうですか。
  349. 森崎久壽

    政府委員(森崎久壽君) 比較的われわれ、大蔵省との間は、うまくいっております。何ぶん七月から発足いたしまして、個々の機種につきまして、こまかく検討いたしておりますので、主としてこれは事務的な審査その他の関係でおくれておるわけでございまして、申請につきましては、申請を受け取りまして審査する時間につきましては、極力、短期間に進めていくというふうに考えております。いま推薦しておるケースが約四十億ということでございます。
  350. 戸叶武

    ○戸叶武君 たとえばアメリカ的な大型でなくて、最近は精密機械なんかスイスなり、あるいは西ドイツ、フランス、特にイタリア及びスカンジナヴィア諸国なんか、ずいぶん私は伸びていると思うのです。やはり日本が急速に伸びるのには、福田通産大臣は、かなり積極的な意図を持っておるようですが、やはりいままでのマンネリではいつまでたっても、あとを食っついていくだけであって、日本人の持っているいまの能力と技術においては、世界のやはり一流製品をオーバーして、外国から買わなくても、日本の国内の需要にこたえ、また、外国へも輸出できるような可能性のあるものがずいぶんあると思うのです。そういうものほど、私はパテント類や何か高いと思うのです。それは買うときのあれは高いが、その見通しや何かを総合的に検討していかないと、ただ、大蔵省に私は、相当渋いことを言ったのですが、大蔵省は金を出すまいとしている動物的本能といいますか、動物的と言っちゃ失礼かもしれませんが、そういう本能がありますけれども、それを引き出す力というものは、通産省になければならないので、どうも去年、カナダ、アメリカを回ってきて以来、かなり福田さんは信念的に、ひとつ積極的な前向きの姿勢を示しておるようですが、どうです、その辺のかけ引き、うまくいっているといいながら、事実上においてあらわれておる結果というものは、大蔵省にひねりつぶされているという印象のほうが強いのですが、どうですか、福田さん、大丈夫ですか。
  351. 福田一

    国務大臣(福田一君) 大いに激励をしていただいてありがたいのでございますが、実は、私はそういう面では、かなり努力をして、ほんとうに有効なものであるというものは、大体大蔵省のほうも話を聞いてくれておると思っております。まあしかし、意見が、いや大丈夫だ、大丈夫でないという意見の対立が、やっぱり起きる場合がある、非常に明確なものは、これは簡単であります。しかし、私は、これくらいのリスクがあっても、こういう時代には入れて、そうして技術革新をやりながら前向きに対処しなければだめだ、こういう考え方で、実は努力をいたしておるところでございます。
  352. 戸叶武

    ○戸叶武君 これはやはり、私はちょうどソビエトロシアを昔たずねたときには、一九三〇年、いまから三十四年も前でしたが、あの戦時共産制から資本主義の退却という形において、ドイツのインダストリアル・ナショナリゼーション、あるいはアメリカのインダストリアル・マネージメントを学びとって、そうして年次計画を受け入れて、さらにゴスプランに転換していくときの最後の努力といいますか、非常な柔軟性をもって、そうしてどうやって、かけ抜けていくかという必死の態勢というものを私たちは荒廃した中にも見せつけられて、これはやっぱり、やがて三十年後、ソビエトロシアは、たいへんなものになってくるぞということを感じましたが、いまの日本というものは、あの当時のソビエトロシアよりも、ずっと条件的には具備したものがあると思うのですが、問題は、政治において見通しをたて、計画性を立てて、そうしてそのでこぼこに対する政治的調整をやる、合理的な政治が躍動するかどうかということにかかっていると思うのですが、そういう点は、しっかりやってもらいたいと思います。  それと同時に、私は、いまのこの中小企業の問題で、前に大蔵大臣質問しましたが、うまく逃げられてしまいましたけれども、要するに、いまの高度経済成長政策をやっている政府が、公定歩合の二厘引き上げでも、イギリスがやった段階、あの前後に、当然やらなくちゃならないのをおそれたのは、あの金融引き締めのショックによって、中小企業が非常な倒産をするのではないか、それの波及というものをおそれているのではないかと思いますが、現実において中小企業は、いま倒産が続出しております。しかも、中小企業において、はなやかな面のその裏に涙ありというのは、私は日本の石油産業の小売り商だと思うのです。ガソリン・スタンドなんかをずっと調べてみると、掛け売りにもなるし、それから設備の資金も相当あります。しかし、大どころはほとんどアメリカのメーカーのほうは、大資本が伸びてきている。そうしてこのガソリン時代における過当競争がある。やはり少しでも安く売らなければ消費者が、そこに結びつかない。で、税金というものはメーカーのほうで払うようなことになっているが、実情においては、直接消費者に売りつけるところの、その中小企業のガソリン・スタンドのほうへ押しつけられているのが現実なんです。で、今度はその徴税によって、何らかの緩和をされ、恩恵を受けるのはメーカーのほうであって、メーカーはうまいことをやって、はさみ打ちになって、いま、はなやかな裏に涙ありで運転資金にもこと欠いているような始末でいるのです。この実態を、私は相当調べてもらわないと、これからのガソリン・スタンドの問題でもそうですが、今後における自動車産業でも、いろいろな形で日本政府は、外資導入というものをだいぶ黙認していますから、があっとくる。民族の中で額に汗して、まじめに働いているところの第一線の業者というものが、えらい目にあって、そうして困り抜いているということになると思うのですが、免税措置とか何とかということではなくして、そういう恩恵をもっと中小企業に現実的に押しつけられるような方法なり、そういうものに対して実態を把握して、やはり例産や何かをしないように、無理な高利を借りたり何かしないでも済むような金融措置というものを講じてもらわなくちゃならないと思いますが、そういう実態を通産省ではどのように把握しておりますか。   〔主査退席、副主査着席
  353. 福田一

    国務大臣(福田一君) 御説のように実は石油の問題というのは、非常にこれは、われわれとして重要な問題、特にエネルギーのうちでも、だんだんそのウエートが大きくなってくる問題でありますし、しかも、需要は年々ふえていくというのでありますから、これは、われわれ一番、エネルギーのうちでも、いま力を入れている一つでありますが、おっしゃるとおりでございまして、石油精製業というのは非常な過当競争をやりまして、実は私は、一昨年の十月にあまりに過当競争をやって、石油関係の会社が、全部株価が五十円以下になってしまった。全然もうからない。そういうことではいけないので、石油業であろうとも、これは、ともかくエネルギーを供給する事業でございますから、安いだけが能じゃない。安定していなければいけない。安定して、しかも安くというのが、これが一番理想でございますから、こんなことでは、とうてい安定しないじゃないかというので、実は基準価格というのを一応きめまして、そうして、それでどうやらこうやら、しばらくの間持ちこたえておった。そのときは、まあ販売業者のほうも、どうやら少し息をついておったのでありますが、その後また、日本の市場というものは、国際的に見て石油業者から見ると、非常に伸びが一五%、二〇%と毎年伸びていくのでありますから、非常にシェアを拡大しようという意図が強い。そこでみんながシェア獲得競争に乗り出しておりまして、これは民族資本といわずあるいは海外から来ている資本といわず、あるいは販売業者というのは、全部日本人を使っているわけです。その日本人の販売業者にも、そのしわ寄せが行っていることは事実であると思います。  そこで先般も、出光の連盟からの脱退問題等もございましたが、私は業者に対しては、そういうばかげた過当競争をするというのは、意味がないじゃないか、諸君はどういうわけで、そういうことをするのかと言って、いろいろ話をしました。全度も御案内のように四月からは、ガソリン税が上がる、税金が上がるのでありますが、これまた事業者が持つということになると、ますますこれは石油業者も困るが、販売業者も、ますますえらい目に会うということを心配いたします。実は鉱山局のほうにもよく連絡をしながら、何かそういうことのないように、ひとつ処置をしなければいかぬということを言っております。業界でも、いまいささか自粛しつつあると私は認識しておるのでありますが、しかし、いまおっしゃったような石油販売業者が非常に困っておられるということであれば、これは私は具体的に申し出てもらわないと、全部が全部困っているわけでもないわけでありますが、そういう場合には、場合によっては、親会社のほうが何らかの……、販売業者がつぶれれば、これは親会社が非常に私は恥になる、また、親会社にとっては非常なマイナスにもなりますから、そういう非常に困った事態になれば、たいてい親会社が販売業者を救済するというか、何らかの手当をなされると思っておりますが、もし、またそういう特殊の事情がございますれば、なんとしても格段の措置を考えてみたいものと思っているわけであります。
  354. 戸叶武

    ○戸叶武君 これは話を転じまして、私は、もう少し農林委員会でいろいろな資料を集めてから、えさの問題を質問しようと思っていたのですが、予算委員会関係で農林委員会にも出ていられないのですが、いま政府が、日本の農業政策をMSA協定を受け入れた昭和二十八年以降において米麦本位から酪農、果樹、特に酪農へ重点を置いて、そうして選択的拡大という政策を進めてまいり、この数年間においては、畜産が非常に伸びて、養鶏だとか乳牛だとか、そういうものが三倍以上にも伸び、豚の問題は、一時問題がありましたけれども、これも三倍近く伸びるというような急速な伸び方をやって、それに伴って、えさの問題があります。農業問題というと、昔は米の問題であった。米の値段を高くしろ、肥料の値段を安くしろと言えば、農林大臣はつとまったというような時代ですが、今日では、各単協の農協でも、肥料よりも、えさのほうが多く出るという段階になってきております。大ざっぱに言って二千二百億円くらい農家でもって、飼料を買うのじゃないかと言われていますが、去年からことしにかけて、ふすまを中心として飼料が暴騰いたしまして、一割くらいの値上がりになっております。そうすると二千二百億の一割といっても二百二十億からの農民の負担というものがふえてまいると思うのです。これは、いろいろな、外国からふすまなりあるいはトウモロコシなりコロイカルですか、コーリャン類なり、このカルシウム類のいろいろなものを買ったり、あるいは魚粉を買ったり、いろいろしておりますが、外国から買ったふすまに一番問題がありますけれども、ふすまにしてもトウモロコシにしても、それが末端にいくときには非常に高いものになって、その流通機構の中に一つの問題があるのじゃないかと思うのですが、通産大臣はこの実態をどういうふうに見ておりますか。
  355. 福田一

    国務大臣(福田一君) 飼料の問題は、御案内のとおりこれは私の所管ではございませんが、輸入の問題についてのことでございますが、しかし、私なりの意見を述べさしていただきますならば、飼料は、私は相当量輸入しておりますが、いまや国連の貿易開発会議等がございまして、低開発国との貿易をもっとやらねばいかぬ、こういうような時期になっております。こういうときにあたって、飼料等の買い先をある程度かえるというような、いわゆる貿易構造上の変化――たとえば日本が非常に輸入をよけいしておる、そして輸出は少ないというようなところから飼料を買っておるような場合は、一部これを低開発国に転換するというような問題も、構造的に考えてみていいのではないか、こういうことを考えております。  それからもう一つは、今度は飼料は非常に必要でございます、やはり必要であります、日本からいえば、畜産その他必要でありますが、これもある意味でいえば、私はいわゆる国内で生産でき得るものであるならば、相当程度保護政策というのがいいのかどうかしりませんが、海外へ金を出すくらいなら、国内資源だというような考え方で、いわゆる飼料がうまくつくれないものだろうかというようなことも、実は私なりにいろいろ考えておるわけでございます。それは私が農家の出身でもありますから、その気持ちもわかるのでありまして、何かそういう工夫がないものか。どうせ海外へ、いま外貨を節約せなければいかぬというような場合であったならば、国内でもって、ある程度飼料を生産するということに、少しぐらい金がかかっても、何かそういう工夫ができないものだろうか。これは非常にしろうと考えかもしれませんが、そういうことも私は実は考えておるわけでありまして、これは飼料の問題は、相当の輸入のウエートを占めておりますから、そういうような観点から考えてみて、買い付け先の転換というようなことを考えて、今度輸出振興のほうに持っていく、一方においては、国内でできるものならば、少しぐらい補助金といいますか、何らかの施設をしてもいいから、国内でつくる工夫ができないものだろうか、こういうような考え方をいたしておるわけであります。   〔副主査退席主査着席
  356. 戸叶武

    ○戸叶武君 濃厚飼料の輸入というものが大きくなってきておりますが、現状はどんなふうになっていますか。輸入は。
  357. 福田一

    国務大臣(福田一君) ちょっといま、データがないようでございます。
  358. 戸叶武

    ○戸叶武君 じゃ、あとで送ってもらいます。  福田さんのような農林大臣がいると、いまのようなべらぼうな飼料対策はなくて済むのだと思いますが、そのとおりだと思います。  実際、これは困った問題で、あの賠償問題をめぐってのタイの問題なんかのときでも、タイに行ってみてもおわかりのように、タイやビルマ、というのは新興国家だから、いろいろのものを望むけれども、段階的に、まず食糧生産国ですから、それに対応したような工業化が一番必要なのに、日本からだれが行っても――偉い人が行って、それがもうかると思ってでしょうが、石油精製工場を建ててやるからというような調子、態度で、ビルマには発電所をつくってやるからとか、これは日本の感覚であって、それは電気はないより、あったほうがいいので、ビルマのなんか、ある意味においては成功だといいますけれども、やはりトウモロコシの問題にしても、タイでもビルマでも、ああいうものでも日本に買ってもらわなければ、日本のものを買う、やはり資本の蓄積がないのです。やはりこういうような点においては、どんどん外務省やそれから農林省だけにまかしていないで、やはり総合的な経済閣僚懇談会なりで取り上げて、この貿易の問題の体制づくりをやらないと、それから賠償の問題もひっくるめてでありますが、今後の日本の貿易を伸ばす上において、いろいろな面で不利な面があるのじゃないかと思いますが、いま業界その他畜産関係の農家で心配している点は、どうも飼料が足りない足りないというので、大きな商社どころでもって、内々大きな買い付けをやっているらしいという面が出てきているのです。大体はアメリカでしょう。アメリカにおいては御承知のように、余剰農作物がありまして、もうアメリカの一番の悩みは、どこへ行っても、マンモス的なサイロといいますかが、突っ立って、処置に困っているような状態です。それなのに、いまソ連でも中国でも、いろいろなところで食糧が足りないという形で、まあ船も足りないなんといいながら、値段が上がってきて、日本では麦をつくったら損をするから、つくるなという政府の指導で、金までくれてつくらせなくなったのだが、日本でほんとうに、そういう、福田さんが言ったように、これは通産省とは関係がないかもしれませんから、これは農林大臣のほうに向かって、あとで言いますけれども、飼料自給体制というものが確立しないで、しかも貿易の面で、何か不健全な形の商社間における――おそらくは政府当局と結託してやっているのじゃないかといううわさが国民の間には流れています。ほんとうに税金でしぼられ、今度は飼料でピンはねやられ、あと肥料の問題でも、やはり痛めつけられるのじゃかなわぬじゃないかというのが一つの一般の声ですが、この飼料対策というものを農林省だけにはまかせないで、これは貿易関係と重大な関連があるのですから、こういう問題は、やはり合同会議なり経済閣僚懇談会なりやって、いままでの役所のセクト主義をよしてもらいたいと思うのです。最終責任は農林省にあるかもしれませんが、やはり通産省あたりの強力な発言というものがなされないと、このいまのゆがんだ飼料対策というものは是正できないのだと思いますが、経済閣僚懇談会というものがあるのですから、その場において、こういう問題がどういうふうに取り上げられているか、いままでに、どういうふうに取り上げられてきたか、そういうことを福田さんに承りたい。
  359. 福田一

    国務大臣(福田一君) 御案内のように、経済閣僚懇談会でいろいろの問題を取り上げておりますが、実を言うと、そのときそのときに、かなりまた、大きないろいろな問題がございまして、たとえばきょうあたりは、海運の問題をせっかく取り上げておりましたが、この前あたりでは、やはりそのほかのいろいろの輸出入関係の問題とか、いろいろそのときそのときの取り上げ方が違っておりますが、ただいま仰せになったような問題、ようやく具体的にこういうものを、こんなにふえてきて困るじゃないかということは、実は昨年の暮ごろから、ちょっとそういう話が二、三度経済閣僚懇談会でも出たわけでありますが、しかし、実際に、いま仰せになったような突き詰めたところまではいかない。私なども、もう少し飼料を国内でやる方法がないのかということを一ぺん発言したこともあったのでありますが、実はまだ、そこまで突き詰めておりませんが、まあお話、非常にけっこうなことでありますから、将来はやはり輸出並びに輸入の構造を見ながら対策を考える。こういうことで、今後大いに、そういう面の努力をいたしたいと考えておるわけであります。  なお、飼料の輸入先の転換等は、最近の低開発国の国連の会議等の問題が起きましたときに、これもひとつテーマになって出てきておるようなわけでありまして、今後、大いに研究をいたしてもらいたいと思っております。
  360. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本の今後における革命の中で、私は一番大きなのは食品革命だと思うんです。もう食生活の革命というものが、われわれが想像する以上に、大きないま転換期に入っていると思うんです。これは労働力の不足と相まって冷蔵庫というものが、各家庭にまで普及してまいりまして、そういう点からいっても、酪農というものは非常に伸びると思うんですが、せっかくの酪農が伸びかかってきたところに、貿易の自由化によって酪農製品あるいは学校給食の世界まで侵すような粉乳なんというものが、やたらに日本に殺到してくるという形においちゃ、せっかく伸びかかった私は日本の酪農というものを縮めてしまうんじゃないかと思いますが、これはやはり農林省所管のものであるが、このコントロールというものはやはり、こういう点の発言というものは、農林省だけにまかしてないで、あの余剰農作物の受け入れのだらしなさを見ていても、私たち非常に不信感を持っているんで、やはり通産省あたりで、こういう問題は、どういうふうに問題になっているか承りたいと思う。
  361. 福田一

    国務大臣(福田一君) 自由化の問題は、私のほうが最終窓口でございますから、これについては、もちろん発言をいたすチャンスがあるのでありますが、酪農の問題につきましては、御案内のようにまだ何も、自由化をそれほどやっておるわけではございません。しかし、いま自由化をしたとしたら、おそらくただいま酪農をやっておられる農家の方は、みんなお手上げになるだろう。それほど価格が違っておる。五割、六割、七割と違っておる。それの一番大きな原因は何にあるかといえば飼料の点にあるわけでありますから、そこら辺のことを考えながら、この問題も考えていかなきゃならぬじゃないだろうか、われわれは、そういう気持でおりますし、将来、そういう機会があれば――機会があればというのは、おかしいんでありますが、そういうような問題を取り上げて、農林大臣等ともいろいろ御相談をいたしてまいりたいと思います。
  362. 戸叶武

    ○戸叶武君 この酪農の問題にいたしましても、まあ、やっと四頭、五頭以上の乳牛を飼うような農家がふえてきている。中農程度におきましては、やはり五頭以上飼うようになると農家経営がプラスになるというところまできておりますが、問題はやっぱり、えさの問題と、もう一は、将来の見通しに対する若干の不安が貿易自由化に関連してつきまとっている点であります。それからやはり小農なり零細農においちゃ、日本では宅地が多いですから、これを利用して、うちの留守を守っている主婦なりなんなりが中心になって、やはり養鶏をやって相当な成績をあげています。これでもえさの問題で、ひどい目にあっております。これは、えさの問題は農林省の問題で、あとでやりますが、あなたのほうでも、気をつけてもらいたいのは、昔、大倉喜八郎かなんか、戦争のときに石のかん詰めを送って金もうけしたという昔の話ですから、昔の肥料屋は、ずいぶんひどいことをやった。このごろは、えさのほうで栄養価のないものをずいぶん売っている。で、抜き打ち検査というけれども、私ら知らないんで、一つの県に一人しか検査員がいないので、野放しです。農民の知識がないのに乗じて、こういう、不正が随所に行なわれているような状態ですが、これはひとつ、どうしても濃厚飼料というものは、相当外国から買わなければ、急に自給しろといっても、草資源を拡大するという形だけでは間に合わないほど伸び率が早いと思うんです。そういう点でひとつ、今後もっと強力な発言をして、安い飼料を日本の農家に供給するような体制をつくり上げてもらいたいと思います。  それから貿易自由化の問題で、やっぱり酪農製品の問題ですが、これはもうEECの国々においても、一つ問題ですが、EECに接続した、たとえばデンマークのような国でも、あれほど理想的に農業経営が酪農中心に行なわれておる国でも、一九五一年から六一年に至るまでの統計なりを見ましても、工業生産のほうは伸びちゃって、その所得なり賃金において三〇%のアンバランスがきている。しかもあそこのバターなり、チーズなり、 ハムなり、ソーセージなり、この加工品を外国へ送るというのが、なかなか競争が激しくなって、むずかしくなって、こういうようなところじゃもう国の予算の六%ほどの補助金をやっているのですよ。イギリスが五%を出したというので問題になっていますけれども、デンマークのような国でも、これだけの保護政策をやっているのです。貿易の自由化といっても、ほんとうに立ちおくれておる農業の面をやはり私は貿易関係とのにらみ合わせにおいて、相当のやはり保護措置というものが講ぜられないと、発展過程における日本の酪農の前進というものは阻害していくのじゃないかと思うので、いまは貿易自由化においても、この面は、そうあれなっていないと言っていますけれども、当然将来はなるんだと思いますが、そういう見通しはどういうふうに見ておられますか。
  363. 福田一

    国務大臣(福田一君) 私は、いま差しあたりこの自由化の問題が起きてくるとは思っておりません。御案内のように、いまやったらたいへんでございますから。したがって、この期間のうちに、できるだけいろいろの手を打って、そうして国内で、やはりそういうような畜産がペイしていくような、また海外からきても、大体立ち打ちできるようなところまで、何とかして努力を払わなければならない、こういう私は感じを持っておるわけであります。
  364. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本の将来、私は食料品で海外に伸びるのは、やはり果樹関係のかん詰めやなんかだと思います。みかんもそうですか。ところが、私はウイスコンシンの大学を出たカナダの有名な農民代表の人と一緒に、インディアナ、ミシガン、イリノイなんかの大学を視察したときにも、その人が言うのに、日本の北海道で、日本のみかんや落花生の非常な需要が多いと同じく、カナダなんかでは、非常に日本のみかんを歓迎するんだが、なかなか高くて手に入らぬと、これはそのカナダならカナダの消費者の手に届く間に、何らかの障害があるのじゃないかと思うのです。通産省は、そういう流れに対する検討も十分なされておると思いますが、日本の国ほど天候に恵まれている、自然的な環境において恵まれている国はないので、将来は、私は日本の国は麦なんか主要作物として特殊地域でつくるにしても、もっと今後、あらゆる果樹が伸びるんで、世界のやはり食品革命の波に応じて、日本の果樹のかん詰めなり、あるいはそういうジュース類なり、そういうものが海外にまで私は伸びていく一つのチャンスがあるのじゃないか。りんごだって、昔香港までが、いまシンガポールまで、ぐっと伸びていっているというような情勢なんですけれども、そういうところに、輸出の面において非常に何か難点があるようですけれども、そういう点は、どういうところにあるのですか。
  365. 福田一

    国務大臣(福田一君) 実は、そういうこまかい一つ一つの商品についても、輸出の経路、それから末端における価格、もし末端の価格が非常に高いようであれば、なぜそれが、そういうふうに高くなるか、こういうところまで、調べるところまでいかなければいけないのでありますが、いまのところ、まだ、そこまで詳しい調査はとっておりません。今後ひとつ御趣旨に沿って大いに、そういうような個々の商品が、どれぐらいで海外で手に入るようになっているか、もし高いということでありますれば、なぜ高くなるかというような理由等も十分研究いたしてみたいと思います。
  366. 戸叶武

    ○戸叶武君 最後に、私はやはりいろいろな、貿易においては人づくりの問題だと思いますが、アメリカでは、やはり一流の人物が、まずセールスマンになるというふうにいわれているように、前のインド大使をやってケネディを大統領にするために成功したチエイスター・ボールズなんかも、二十二、三のころセールスマンで非常に成功し、それから学者になり、外交官になり、政治家にもなった例もありますが、私はいま、海外旅行をして考えておるのは、味の素あるいは、ナショナルというようなところで、三十前後というような優秀な青年に自動車と奥さんをつけてやって、ほかのところの倍くらいの給料で、人をあまり使わないで、第一線でセールスマンとして活動している人たちが非常に成果をあげているという点を私らハンブルグにおいても、あるいは中南米のメキシコにおいても、あるいはブラジルにおいても見ているんですが、これからは、古い形の昔のいわゆる三井、三菱時代のような形じゃなくて、日本人というものは、チャンスを与えれば非常な能力を発揮できるのであって、国内でもって、いま若いエネルギーというものがうっせきして浪費されておるけれども、やっぱり私は問題は、第一線のセールスマンと、あとは製品のアフター・サービスの問題が、今後において問題になるんだと思いますが、そういう第一線にセールスマン、あるいは修理工場、そういうようなものを設けるために、積極的な配慮というものが講ぜられなければならないと思う。  それと同時に、外務省もずいぶん予算とったと思います。昔は、軍のアタッシェがおったかもしれないけれども、もう今度は通産関係、技術関係専門家が、各大使館、領事館に配置されるという体制にならなければ、もう十八、九世紀の宮廷外交の惰性でもって外交をやっている時代じゃなくて、もっとダイナミックな一つの経済外交というものが推し進められなくてはならない。西ドイツやスイスでは、それをやっておるんです。いまの日本のように、大きな商社を乱立させることよりも、そういうセンターをつくる、あるいは第一線に通産省の有能な若手の役人を、いまの第一線のセールスマンたちに負けないような形で、やっぱり自動車と奥さんくらいくっつけてやって、相当活躍できるような一つのチャンスを持ったらどうかと思うんですが、福田さんはどういうふうに思っておりますか。
  367. 福田一

    国務大臣(福田一君) 全くお説には賛成でございまして、われわれも、今後そういういま仰せになったような特に経済を中心にした外交、それからまた、アフターケアを中心にしたサービスの問題、それから、いま仰せになったような古い考え方ではなくて、若い有能な人たちが、どんどん海外に出ていくというような考え方で、今後大いに、ひとつ努力をいたしたいと存じます。
  368. 村山道雄

    主査村山道雄君) 以上をもちまして、質疑通告者の発言は終了いたしました。よって通商産業省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時五分散会    ――――・――――