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1964-03-27 第46回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十七日(金曜日)    午前十時五十五分開会   —————————————  出席者は左のとおり。    主査      鈴木 一弘君    副主査     山本伊三郎君    委員            草葉 隆圓君            館  哲二君            野本 品吉君            藤原 道子君            市川 房枝君   国務大臣    労 働 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    労働政務次官  藏内 修治君    労働大臣官房長 和田 勝美君    労働大臣官房会    計課長     鈴木 健二君    労働大臣官房労    働統計調査部長 大宮 五郎君    労働省労政局長 三治 重信君    労働省労働基準    局長      村上 茂利君    労働省婦人少年    局長      谷野 せつ君    労働省職業安定    局長      有馬 元治君    労働省職業安定    局失業対策部長 住  榮作君    労働省職業訓練    局長      松永 正男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 山本伊三郎

    ○副主査山本伊三郎君) ただいまより開会いたします。  昭和三十九年度予算中、労働省所管を議題にいたします。まず政府から説明を求めます。大橋労働大臣
  3. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 昭和三十九年度一般会計及び特別会計予算案中、労働省所管分につきましてその概要を御説明申し上げます。  労働省所管一般会計歳出は八百二十一億四千二百二十万二千円でありまして、これを前年度予算額七百三十三億五千五百九万八千円に比較いたしますと、八十七億八千七百十万四千円の増加となっております。次に、そのおもなる内容について概略説明いたします。  その一は、近代的労働市場育成労働力流動化促進に必要な経費であります。  経済拡大発展に伴いまして、労働力の需要は増大し、若年労働者技能労働者を中心とする労働力不足が顕著となっております。反面、産業構造変化等事情により中高年齢離職者が引き続いて多数発生しており、地域間、産業間、年齢間の労働力需給の不均衡は、種々解決を要する問題を惹起いたしております。  かかる情勢に対処し、昭和三十九年度におきましては、地域別産業別雇用計画を策定いたしますとともに、全国的な労働力流動化をはかるため、広域職業紹介業務処理体制改善し、需給調整機能を能率的に発揮できるよう労働市場センターを設置し、近代的通信網電子計算機システムによって全国労働市場の情況を迅速的確に把握し求人求職の結合を一そう促進することにいたしております。  あわせて移転労働者用住宅大量建設及び雇用促進融資拡大等措置強化し、労働力流動化を一そう促進し、その需給関係の不均衡の是正と労働力の有効適切な活用をはかってまいることとし、これらに必要な経費として百十七億一千百七十二万三千円の予算を計上し、さらに財政投融資計画雇用促進融資として六十億円を計上いたしております。  その二は、失業対策推進に必要な経費であります。  失業対策につきましては、昭和三十八年度において制度改正を行ない、鋭意、その推進につとめておるのでありますが、産業構造転換等による中高年齢離職者等に対しましては、その再就職の困難な事情にかんがみ、就職指導転職訓練実施など再就職促進措置を一そう充実強化し、労働力流動化促進措置と相まって、中高年齢失業者の再就職を強力に推進いたしたいと存じます。また、失業対策事業就労者に対しましては、就職支度金の貸し付けなど雇用奨励制度改善をはかる等、一般雇用への復帰を一そう促進し あわせて失業対策事業について、その事業費単価改善などを行なうこととし、これに必要な経費失業保険国庫負担金に必要な経費とを合わせまして五百九十九億六千四百九十六万六千円を計上いたしております。  その三は、炭鉱離職者対策に必要な経費であります。  石炭産業合理化進展等に伴い発生する炭鉱離職者に対しましては、引き続き就職促進指導転職訓練を強力に実施するとともに、住宅確保及び移住資金雇用奨励金の支給などの援護対策充実強化するほか、新たに、再就職奨励金制度を設け、広域職業紹介強化と相まって早期就職促進いたしたい考えであります。  また、炭鉱離職者緊急就労対策事業につきましては、就労者の再就職状況にかんがみ引き続いて事業実施してまいることとし、これらに必要な経費として六十六億六千四百四十四万二千円を計上いたしております。  その四は、技能労働者育成技能水準向上に必要な経費であります。  技術革新に伴う生産技術の進歩、企業体質改善などの進展につれて技術者技能労働者不足は、今後ますます増大する傾向にあります。  かかる事態に対処するため、学校における技術教育振興対策と相まって、公共職業訓練施設新設拡充訓練内容充実、並びに、事業内職業訓練助成強化をはかるとともに、就職の困難な中高年齢失業者に対する職業訓練拡大強化するなど職業訓練行政を強力に推進して技能労働者養成確保に努め、さらに、わが国の技能水準を一そう向上させるため、全国的な技能コンクール実施国際技能オリンピックヘの参加に対して援助助成を行なうとともに、技能検定技能コンクールとの連けい調整を行なうことによって、技能検定の大幅な拡大とその円滑な実施をはかることとし、これらに必要な経費として七十億二千八十一万二千円を計上いたしております。  その五は、中小企業労働対策推進に必要な経費であります。  経済成長発展を背景に、中小企業労働条件等は逐次改善されつつありますが、中小企業経常基盤強化のための諸施策と相まって、労務管理近代化労使関係合理化をはかるとともに、最低賃金制の実効ある拡充労働時間の漸進的短縮労働環境改善労働災害防止労働福祉増進事業内職業訓練推進従業員五人未満の企業失業保険への加入促進など、積極的な諸施策を総合的に推進いたしたいと存じます。特に、中小企業退職金共済制度につきましては、中小企業退職金共済審議会の答申の趣旨にのっとり、適用範囲拡大掛け金月額最高額の引き上げなどの改善を行なうとともに、新たに、資金還元融資及び建設業における期間を定めて雇用される者に対する退職金共済制度を創設することとし、これらに必要な経費として六億四千八百五十九万二千円を計上いたしております。  なお、中小企業退職金共済法の一部改正に関する法律案を本国会に提案いたしております。  その六は、近代的労働条件促進に必要な経費であります。  労働条件近代化を一そう強力に推進するとともに、最低賃金の実効ある実施賃金制度改善援助をはかるほか、技術革新地域経済開発等進展に伴い、産業災害が増加し、多大な経済的損失と、多数の人命損傷をもたらしている実情にかんがみまして、新産業防止五カ年計画を強力に推進し、特に安全に関する監督指導検査検定実施労働環境整備改善援助巡回診断実施、安全及び労働衛生研究等施策推進してまいったのでありますが、今後、これらの対策を一そう充実強化し全力をあげて労働災害防止につとめることとし、その一環として、かつ、これらの諸施策を実効あらしめるために、事業主の行なうべき労働災害防止活動体制整備と、これに対する積極的な指導助成を行なうこととし、これらに必要な経費として七億三千五百十九万八千円を計上いたしております。  なお、労働災害防止に関する法律案を重ねて本国会に提案いたしております。  その七は、合理的労使関係の樹立に必要な経費であります。  国民経済の繁栄と民主主義発展のため、自由にして民主的な労働運動発展と正常な労使関係の確立をはかるとともに、労使双方相互信頼を基調とした自由な話し合いを通じて問題の合理的解決をはかる体制をさらに助長し、あわせて、労働相談労働教育等指導啓蒙に意を用いるとともに、労働紛争議の予防と、その円満な解決につとめることとし、これらに必要な経費として五億百九十四万八千円を計上いたしております。  その八は、婦人年少労働者等対策推進に必要な経費であります。  婦人及び年少労働者身体障害者等の特性を配慮の上、その保護及び福祉増進をはかるため、婦人労働力有効活用に関する調査研究を行なうほか、内職相談施設拡充家事サービス職業訓練実施等中高年齢婦人労働者職業対策推進するとともに、働く婦人の家、勤労青少年ホーム増設年少労働者福祉員制度充実をはかり、特に年少労働者のための産業人事相談制度の普及につとめ、あわせて、勤労者家庭生活合理化婦人地位向上のための啓蒙活動を一そう強力に推進することとし、これらに必要な経費と、新たに、脊髄損傷者に対し、更生作業施設を主体とする特殊施設を設置することとし、これらに必要な経費とを合せまして、三億六千二百九十五万三千円を計上いたしております。  以上のほか、じん肺等長期傷病者補償費負担金等に要する経費及び国際労働行政充実強化行政運営刷新改善一般行政事務に必要な経費を計上いたしておるのであります。  次に、労働者災害補償保険特別会計につきまして御説明いたします。  この会計歳入歳出は、ともに九百三十三億六千百一万一千円でありまして、歳入のうち保険料収入は五百九十億五百万円、じん肺等長期傷病者補償費国庫負担金受入は十一億三千二十万八千円といたしております。  また、歳出のうちのおもなるものは、保険金四百六十三億三千百万円、保険施設費八億八千九百八十七万円、労働福祉事業団出資金二十五億五千九万五千円、業務取り扱い費等五十七億六百九十三万一千円でありまして、保険施設費のうちには、産業災害防止対策費が含まれており、また、労働福祉事業団出資金は、労災病院等施設整備充実及び脊髄損傷者特殊更生作業施設新設等に必要な経費であります。  最後に、失業保険特別会計について御説明いたします。  この会計歳入歳出は、ともに一千二百六億九千八百五十五万四千円でありまして、歳入のらち、保険料収入は八百七十二億五千九百万円、失業保険国庫負担金受け入れば二百三十四億七千三行万円といたしております。  また、歳出のうちのおもなるものは、保険給付費九百二十三億五千七百万円、保険施設費二十九億一千四百九十一万七千円、雇用促進事業団出資金百二十一億六千六百八十四万二千円、業務取り扱い費等五十八億二千七百六十九万六千円でありまして、雇用促進事業団出資金は、総合職業訓練所施設拡充及び移転労働者用住宅等建設に必要な経費であります。  以上、昭和三十九年度労働省所管一般会計及び特別会計予算につきまして、概略説明申し上げたのであります。  何とぞ、本予算の成立につきまして格段の御協力をお願い申し上げる次第であります。
  4. 山本伊三郎

    ○副主査山本伊三郎君) これより質疑に入ります。  質疑の通告がございますので、順次発言を許します。野本君。
  5. 野本品吉

    野本品吉君 私は、いまの趣旨説明のその八にあります婦人年少労働者等対策推進の問題のうち、特に年少労働者の問題につきまして二、三お伺いいたしたいと思っております。  そこで質問をいたします前に、この説明書きにあります事柄内容につきまして実情をまず承っておきたいと思うのです。十ページの終わりから二行目にあります勤労青少年ホーム増設についていろいろ御心配になっておるようでありますが、いままで勤労青少年ホームというのはどのくらい設置されており、どういう設備で、どういうふうにそれが利用活用されて、どういう実績をあげておるかということについて、一応お話し順いたい。
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 婦人少年局長からお答えさせていただきます。
  7. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 勤労青少年ホームにつきましては、とりわけ中小企業におきまして比較的労働条件にも恵まれませんし、また社会的にも労働者余暇の時間につきまして、活用条件の悪い年少労働者のために、特に地域におきまして、余暇時間を活用するために、昭和三十年に初めて一カ所だけ設置する予算を認めていただいたのでございます。その後毎年一カ所あるいは二カ所ぐらいずつ増設さしていただきましたのでございますが、最近におきましては、特に社会的な情勢も、年少労働者が都市に集中いたしておる傾向もございますし、また社会におきまして、比較的非行の問題などにつきましても、年少労働者就業後の生活におきまして人格形成機会としてのよりどころを設けることが必要であると存じましたので、とりわけ予算の際に大臣の御理解によりまして、昭和三十九年度の予算におきましては、昨年が四カ所の増設でございましたが、一躍倍増の八カ所の増設ということで、充実させていただくことになったのでございます。
  8. 野本品吉

    野本品吉君 青少年ホームの本年度、三十九年度は八カ所増設されて、その手を延ばしているわけですが、この勤労青少年ホーム利用者ですね、これは比較的大企業勤労青少年少年労働者が多くて、一般のごく零細企業なり、それから転々と町に入っております勤労青少年、そういうものの利用の度合い、それはどうでございましょうか。
  9. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) ただいま利用度につきまして、大企業零細企業の別の統計は持参いたしておりませんが、この施設趣旨は、とりわけ零細企業年少労働者利用していただく趣旨をもって設けられているのでございます。特に商店などにおきまして、住み込みの年少労働者は非常に毎日の生活が忙しゅうございます上に、使用者生活をともにいたしておりますので、気分的にも、労使関係で、むずかしい事情もございまして、早期に移動を誘発するような事情もございますので、特に婦人少年局といたしましては、中小企業零細企業、とりわけ商店等を含めまして、年少労働者福祉員制度を置いていただくことをお願いいたしまして、現在この福祉員が二万人ほどおられるわけでございますが、この福祉員方々は特に零細企業事業主の方がお引き受けいただいておりまして、この方々年少労働者問題に対する理解を進めることを私どもは講習会などを通しましてお願いいたしまして、福祉員方々の御理解の上に、零細企業に働いております年少労働者が、仕事が済みましたあと、あるいはまた休日などに、喜んでこの勤労青少年ホームにいらっしていただきまして、あるいは娯楽もいたしましたり、ピンポンをいたしましたり、あるいはまたクラスなどを設けまして職場での問題に関連した勉強を進めましたり、あるいはスポーツなどを試みたりいたしまして、余暇生活充実するようにつとめさしていただいているのでございます。
  10. 野本品吉

    野本品吉君 ただいまお話のございましたように、青少年ホーム利用活用の問題は、かかって使用者あるいは雇用打理解の問題に私はあると思う。行少年自体が快適な場所で愉快に生活をし、いろいろと話し合い、あるいは本を読むというようなことは、これはもうめいめい求めているわけですが、そういう機会を十分に与えるか与えないかの問題は、使用者雇用者の側にあろうと思うので、この点について、いまお話のような趣旨で十分力を尽くしていただくことを希望しますが、そのことと関連いたしまして、これは大臣にお伺いしたいと思うのですが、政府でも問題にいたしておりまして、いろいろとお考えになっているようでありますが、私は中学卒業生の卒業後の動向をしさいに調べてみますと、高等学校へ上がる者、それから定時制高等学校へ上がる者、通信教育を受ける者。ところがそれの既存の教育制度には何ら恩恵を受けておらない、働きながら学ぶ青年でなくて、働くだけで学ぶ機会を与えられていない年少労働者というものが非常に多いわけです。そこで、この働くだけで勉強機会を与えられない年少者がそのまま放置されているということになりますと、日本の国の青少年教育水準というものは戦前以下になる。戦争までは、いわゆる青年学校というものがあって、二十才までに強制的に就学させられました。いろいろ青年学校については批判もありましたけれども、そこで一般的な教養もいたしておりましたし、職業的な教育もいたしておったわけでございます。そこで、それにかわって生まれたものが定時制高等学校であり、通信教育でありますが、それに漏れている百万もの大ぜいの年少労働者というものをどういうふうに把握して、どういうふうにこれを教育していって、それらの人たちの人間的な育成をはかって、技能的にも職業的にも訓練していくか、これは大きな問題だろうと思う。要するに、後期中等教育の問題、今日非常に重大な問題として考えられているその後期中等教育の問題として考えられている対象に、それらの青年がならないということになると、これは大問題だと思うので、そこで、いつもその問題を考えているわけなんです。そこで、後期中等教育という観点からみた場合に、第一に問題になりますのは、年少労働者のための唯一の教育機関としての定時制高等学校に対して、これをどのように利用させるかということになってくるわけです。ところが定時制高等学校は、御承知のように夜間でございますから、職場からすぐ学校へというようなことで、本人も容易でありませんし、また特に零細企業等の場合には、雇用者のほうも使用者のほうも、小さな職場で、働き盛り青年一人の姿がなくなると、くぎが抜けたようになるというようなことで、非常な影響を受けるわけですが、しかし、何とかして青年の、若い人たち意欲を満たしてやるように考えてやらなければならぬ。すでに参議院の文教委員会には、社会党の皆さんが、使用者に対して定時制高校への就学を不当に妨げてはならないという内容を盛った法律議員提案を見ているわけなんです。そういうことについて、何とか考えなければならないと思っておりますが、大臣、この点について、何かお考えございますか。
  11. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 定時制高校勤労青少年通学するということに相なりますると、その労働時間でありますとか、また、健康でありますとか、あるいは生活環境でありますとか、こういった事柄につきまして、あらかじめ使用者の深い理解配慮を得るということが必要であると思いますので、労働省といたしましては、中小企業団体に設置されてあります、先ほど婦人少年局長から申し上げました年少労働者福祉員、この方々の御協力を通じまして、かつはまた、その他の方法、手段によりまして、使用者の啓発、宣伝につとめておる次第なのでございます。これは今後とも進めてまいりたいと思っておるのでありますけれども、大体現在の状況といたしましては、中学卒業後進学せずに直ちに就職する者が、昨年三月の状況では、六十九万人でございます。卒業総数が二百四十九万人、進学者数が百五十九万人、就職者数が六十九万人。で、このうち就職の上なお学校へ通う、主として定時制高校でございますが、それが七万人でございます。したがって、約六十九万人のうち七万人しか行っていないというような状況でございます。このうちには、やはり地理的な問題、学校配置の問題、そういう理由もございましょうが、いまなお事業主配慮が十分でないということによって通学が事実上妨げられておるという者もあるのではないかというふうに考えられます。今後とも、この点につきましては、極力通学の便をはかりますよう、努力をいたしたいと存ずるのであります。
  12. 野本品吉

    野本品吉君 お考えの気持ちはよく私にも了解できておりますが、実際問題として、かりに十人の従業員をかかえて仕事経営しておる、そのときに、その中から二人あるいは三人の働き盛りの者が、勤務時間内にいなくなる、こういうことになってくるというと、事業経営全体から見ても、歯車が欠けたようなぐあいになって円滑にいかないし、それから雇用者使用者に対しても、相当な経済的な影響と申しますか、それもあると思う。で、この年少労働者福祉員制度推進して、その趣旨理解して、雇用者使用者が、定時制高校に行こうとする意欲を持っておる青年に十分満足するような扱いをしていくということになるというと、相当な影響がある。私は、この制度推進して、それが使用者によって理解されて、青年が恵まれた条件において学校へ行って勉強ができる、こういうことになってくるというと、これはまあ何かの面で使用者雇用者のこうむる経済的な影響というものを見てやらなくちゃならないのじゃないか。たとえば税金の面とか、そこまでいかなければ、この制度というものはなかなか徹底してこないと、こう思うのですが、どうでございますか。
  13. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ただいまのところでは、先ほど申し上げましたるごとく、定時制高校そのものが全国的に十分に普及いたしておるとは考えられません。そして現在、後期中等教育の問題につきましては、文部省におきましても、せっかく審議会に御相談中でございます。その結果によりまして、今後、後期中等教育についての文部省方針もはっきりいたしてまいるでございましょうし、また、さようになりましたなら、それに対する通学ということについて法的措置を講ずる必要があるということにも相なろうと存ずるのでございます。労働省といたしましては、その段階におきまして、法的手段をとっていけるものならばとりたい。また、それに伴いまして、ただいま御指摘のような税法その他によって経営者を保護するという措置も必要であろうかと存じます。その際あわせて研究をいたしたいと存じます。
  14. 野本品吉

    野本品吉君 この問題は、私は、使用者雇用者のまあ犠牲においてやることは、最終的には無理がくるじゃないか。したがって、将来どういうふうにしたら年少労働者希望を満たすことができるかということについては、ただいま申し上げましたような角度からの御検討をぜひしていただきたいという希望を持っておるのですけれども……。
  15. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先ほど申し上げましたるごとく、後期中等教育についての国の確定の方針が決定いたしましたならば、それに合わせまして労働省といたしましても、労働条件全般につきまして検討すべきものと考えており、まするし、また、その結果いかんによりましては、事業主犠牲という面について、国家として考えるべき問題もいろいろあると存じますので、これを必ずあわせて検討することにいたします。
  16. 野本品吉

    野本品吉君 もう一つお伺いしておきますが、年少労働者の問題として私はいつも考えているのですが、少年福祉を存するような法律違反行為がいろいろな方面にあるわけです。そこで、労働関係労働基準法その他から見て、少年福祉を害するというような違反行為というものが大体どのくらいありますか、数字でけっこうですから.
  17. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 労働基準監督官監督をいたしまして、その監督実施状況からお答え申し上げたいと思います。  一番主たる違反が、労働時間でございます。次が休日でございまして、次に深夜業違反でございます。なお、危険有害業務就業制限に対する違反が、第四番目に当たっております。
  18. 野本品吉

    野本品吉君 その大体の数字はおわかりですか。
  19. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 労働時間の違反が八千三百九十円、休日違反が三千九百六十三、深夜業が千百五十、就業制限違反——危険有害業務に関する就業制限違反が六百七十六、これは昭和三十六年の実情でございます。
  20. 野本品吉

    野本品吉君 これは、労働省自体違反のそういうことに対する監督あるいは違反の摘発というような仕事はおやりになっておるんですか。
  21. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 年少者につきましては、御承知のごとく、まず、就業年令制限、それから労働時間についての規制、深夜業の禁止、休日労働についての制限といったような、各種の制限ないしは禁止があるわけでございます。で、労働基準監督機関といたしましては、各種の監督の中で特に年少者労働基準法違反の問題は最も重視いたしまして監督を行なっておるような次第でございます。その結果、先ほど谷野局長からお答えがありましたあのような数字になっておるわけでございます。
  22. 野本品吉

    野本品吉君 私は、最近まあ社会的にも政治的にも非常に大きな関心事であり、全くその必要を痛感させられておる青少年対策青少年問題という角度から見て、少なくも少年福祉を害するというような違法行為に対しましては、関係政府機関は厳重な監視をしていかなければならぬと思うんです。法律は、いろいろ未成年者の、たばこを吸ったらいかぬ、酒を飲んだらいかぬとか、いろいろなことがありますけれども、要するにそれらが充分に徹底していかないところにも、非行青少年等の激増の一つの原因があると思うので、ぜひ年少労働者に対するそういう福祉を害する違法行為に対しては、厳重な監督指導をお願いしたいと感じて、これを特に申し上げておきたいと思うんです。大臣もむろんこの点については相当お考えになっておられると思いますけれども、この機会大臣の御所見を承りたい。
  23. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 野木委員のお述べになりましたことは、私も全く同感でございます。そもそも労働基準の問題は、先進国におきましては、婦人及び少年労働保護ということが根本になりまして、今日各般の労働監督が発生したわけでございます。今日におきましては、労働基準法内容も広範になり、労働監督も各方面から行なわれておりますが、私は、やはり労働監督の根本は、何といっても婦人少年工の保護ということになると存じまして、これにつきましては、現在基準監督におきましても、重点を置いているところであり、将来もさようあるべきだと心得ております。
  24. 山本伊三郎

    ○副主査山本伊三郎君) 市川君。
  25. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま野本委員から、青少年勤労者の問題が出ましたので、そのことを最初にちょっと伺いたいと思います。  ちょうどいま年度末で、地方から中学などを卒業しました勤労者が東京へ出てきておりますが、それの数はどのくらいいますか。そうして、そういう人たちは住み込みだと思うのですが、それがどのくらい居つくか、その率など、おわかりになっておりましょうか。
  26. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 集団求人方式によりまして、中小企業就職をいたしておりまする中学卒業生の数の状況でございますが、三十七年度が一万三千六百十五名、三十八年度は一万七千五百九十一名、こういう状況になっております。  それで、住み込みの状況は、ちょっといま手元ではわかりませんので、大体まあ親元を離れて来ますので、住み込み、あるいは青少年ホームに居住するという形になります。
  27. 市川房枝

    ○市川房枝君 その一応の職安としては御紹介をなさいますね。そのあと、その子供たちが、そこに居ついているのか、あるいは、どこかへかわってしまったのかというか、あるいは行くえ不明になっているのか、そういう調査——まあ、そういうところまで目をおつけになっていますか。
  28. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 職安といたしましては、学卒の就職あっせんをいたしました後におきましても、いわゆる就職後の補導といたしまして、定着指導を重点に指導しておりますですが、中小企業におきましては、最近特に定着の状況がだんだん悪くなっておりますので、この点の原因をよく究明いたしながら、今後とも、定着の指呼をより一そう積極的に行なってまいりたいと、かように考えております。
  29. 市川房枝

    ○市川房枝君 私が聞いたところでは、これは確実な数字に基づいてはおりませんけれども、その中小企業者のところに住み込みで入った子供たちは、そこで満足しないといって——いまもだんだん定着の率が悪くなったとおっしゃっておりましたが、そういう子供たちが飛び出して、そうしてどこへ行くのかと、その行くところがないのだと、ことに中学卒業生ですというと、かりに職業があったとしても、収入は少ない、そこでですね、そういう人たちが、結局、男の子の場合には、そういうのがいわゆるチンピラの中間に入る、暴力団になる、それから女の場合ですと、それが流れて売春婦に転落してゆくと、こういうことになっている。で、そういう者に対して一体これはどうするのか。まあ青少年ホームというのはありますけれども、あれは、そういう子供たちに宿舎を与えて、そこに定着するというものじゃないのでしょう。だからやはり、そういう子供たちに、安くて安全で宿泊でき、そうして、そういう子供たちにやはり仕事を紹介するというか、そういう施設が必要ではないか、その出て来た子供に対して、あとまでやはりずっとどういうふうにいったかということを見ながらお世話をするということでないというと、これはわざわざ、家庭側からいいますと、東京へ子供をやった、出るときには非常に感激してといいますか、子供たちも来るのですが、さてそのあとどこへ行ったか、行くえ不明になっちまったというようなことでは、私は非常に申しわけないし、また国としても非常に困る、一つのここは盲点になっているんじゃないかと思うのですけれども、大臣はそういう点についてはどうお考えでございますか。
  30. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ただいまの市川委員の御心配は、私もまことにごもっともであると存じます。従来から労働省といたしましては、職業安定機関が就職先のあっせんをやっておりまして、そのためにできるだけ定着をよくするという意味でいろいろくふうをいたしましたのが、いわゆる集団求人方式であるわけでございます。これに伴いまして、受け入れ先の受け入れ態勢というものにつきましてもできるだけの指導をいたしてまいったわけなのであります。ただし、問題は、多く住み込みになっておりますが、最近住み込みというものについて子供がなかなかなじまない気持ちがあることは事実でございまして、この対策といたしましては、やはり少年の勤労者に対する寄宿舎というようなものが必要ではなかろうか、こう存じたのでございますが、何ぶん数もたくさん要りまするし、また経費等の面も考えなければなりませんが、しかし、とにかくわずかでもできるだけでもやってみようというので、昭和三十九年度におきましては一応建築の予算を取り、またそこに収容さして建物の維持管理をしていきたい、こういう考えでございまして、さしあたり試験的の意味もございまして、当初のことでもございまするので、全国を通じまして一千人分の寄宿舎の予算を準備いたしておるのであります。これができた上で、これを中心にして、先ほど来申してありまする青少年ホームであるとか、また協助員であるとか、そういうものを完備していくということが必要であろうと存じますが、ただいまの段階では、一応予算を御審議いただいております、これができました後に、実際のやり方を十分関係機関と協力いたしまして検討してぜひいいものにしていきたい。そうして将来は、雇用促進事業団のただいま申し上げました直営の寄宿舎だけでなく、地方の事業主の組合というものを主体にしてそういうものを経営させる、政府においては助成指導をしていきたいというような方向も考え得るのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。しかし、それにいたしましても、中小企業そのものの実情から申しまして、いろいろな誘惑を受けてやめていくというのがあると思います。そうなりまするというと、もはやこれは労働省仕事を逸脱して、他の機関の責任と考えなければならぬ面があろうと存じますので、これにつきましては、今後関係機関と協力いたしましてまた具体的な対策を考究するように、労働省もできるだけの協力をしてまいりたいと存じます。
  31. 市川房枝

    ○市川房枝君 つまり、低賃金で働いておる勤労者、これは男の場合も女の場合もですが、それは主として青少年になるわけですが、そういう人たちは、いまの東京、ことに東京なんかの事情では、普通のアパートとか部屋を借りては生活はできないわけです。そこで、安い宿舎を提供するということがそういう人たちを保護する上で非常に必要なんですが、東京でいいますと、ほんとうは私ども知っている限りでは四カ所しかないんでありまして、これは民間の団体がやっております。たとえば救世軍とか、あるいは矯風会とかいうような団体があって、初めて来年度に東京都がそれをつくることになっておりますが、ところが、そういう宿舎を経営しておるものに対して、一応その建物に対する税金はたしか免除されておるんですが、何らの補助もない、人件費だけでももし補助があれば非常に経営がやりいいんだと、こういうことで、一般にそういうものがほしいと思いながら、なかなか建てられないというような実は現状があるわけでございます。ですから、政府関係でもってそういものをおつくりくださると同時に、民間においてそういうものをひとつ奨励して援助する、補助するというような方向に持っていっていただきたい。これが一つの、私は、先ほど野本さんのおっしゃった非行を防止する一環でもある、また勤労者としての生産の能率を上げるゆえんでもあると思いますので、そのことをひとつお願いを申し上げておきます。
  32. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実を申しますると、いままでは婦人少年局におきましても、そういったことの必要性は十分に痛感いたしておったのでございますが、しかし政府予算青少年の寄宿舎を建てるというところまで乗り出しておらなかったのであります。で、寄宿舎ということになりますというと、御承知のように、住宅対策の一環でございますので、政府の職務分配から申しますと、建設省ということになっております。したがって、工場等の宿舎の資金につきましても、住宅金融公庫あるいは住宅公団等におまかせしておったのでございますが、しかし、いろいろ考えますると、やはり労働省としてもそういった方面に進む必要があろうというので、三十九年度から思い切ってそれをやることにいたしたのであります。そういった事情で、労働省も、直接関係の深い促進事業団にそういう仕事をやらせるわけでございますから、それを中心にして、いま御指摘の四団体と、あるいはこれから新しくつくる東京都などと常時会合して、経営の方法、運営の方法、こういったものをお互いに研究するように機会をつくるようにいたしてまいりたいと思います。その際にいまのようなお話の点等も十分議題にして検討してもらい、今後婦人少年局が中心になりまして、こういった仕事を積極的に展開するように計らいたいと存じます。
  33. 市川房枝

    ○市川房枝君 次に、せんだって来問題となっておりますトルコぶろで働いておりまする女子の勤労者、これはミス・トルコと申しておりますが、その労働状態について伺いたいと思います。トルコぶろは公衆浴場法によって設けられておりますが、そこで働いております女たちについては、厚生省並びにその厚生省の出先の監督機関であります保健所が全然関係していない、知らない、こういうことなんですが、これは当然労働省のほうの関係になると思うんですけれども、これはいかがでしょう。
  34. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 労働基準法の対象であると思います。
  35. 市川房枝

    ○市川房枝君 どんな労働状態か伺いたい。
  36. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) トルコぶろと俗称いたしておりますが、その実態に差があるようでございまして、具体的に申しますれば、労働基準法第八条の適用事業が列挙してございまするけれども、その中の十四号の娯楽場になる、あるいは接客業になる、十三号の保健衛生の事業になる、この実態によりまして差があるわけでございます。しかし、いずれにしましても、労働基準法の適用事業であることには間違いがございませんので、労働基準監督機関といたしましては、適用事業場であるという観点から監督実施しておるわけでございます。ただ、このいわゆるトルコぶろが労働基準法以外の法律——たとえば公衆浴場であるとか、あるいは風俗警察的な立場からどのように扱うかというようなことからして、法律が競合するというような状態もあるわけでございます。問題は、そういったトルコぶろの設立、設置認可の問題等から問題があるわけでございまして、労働基準監督機関といたしまして、こういった認可権を持っておる行政機関と連絡いたしまして、実態把握につとめておるわけでございますが、率直に申しまして、かなり出入りがございますので、その把握が完全であるかどうかという点も、御指摘を受けますと、まだ十分でない点があるようでございます。しかし、先般来国会  でもいろいろ御議論がございましたので、労働省といたしましても、特に注意をしてその後監督強化しておる次第でございます。
  37. 市川房枝

    ○市川房枝君 どこが監督していらっしゃいますか、基準監督署ですか。
  38. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) さようでございます。
  39. 市川房枝

    ○市川房枝君 私も全部を回ったわけでもないのですけれども、二軒三軒ぐらい調査に国会のほうから参っておるのですが、その子供たちは固定給というものはないので、そのサービス料だけが本人の収入になる、こういう事情のようです。それから深夜業が行なわれているというのですが、午前三時、四時ぐらいまで働いておるという実態もあるわけなんですが、私どもが見たところでは、まるで労働基準法なんかはあそこには及んでいないという、こういう印象を持つのですが、何か基準法違反でいわゆるトルコからあがった事件がどのくらいありますか。
  40. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) いわゆるトルコぶろとしては、先ほど申しましたように、保健衛生事業と見るか、娯楽事業と見るか、そこに判断の差がございます。実はそのことが深夜業が許されるのか許されないかということとも関連してくるわけでございます。その点、何分にも、トルコぶろと、こう稱しておりますれば、かなり保健衛生的な色彩を持ったものと、娯楽的な色彩を持ったものもございますので、基準法の適用につきましても、そのいずれかの事業に該当するかということによりまして、取り扱いが若干違ってくるわけでございます。そこに監督上の非常に困難な事情がございまして、別な法律から見ますると、それが保健衛生事業であるかのようにも受ける。また、別の法律から見ると、旅館業としての許可を受けておるというようなものもございまして、まず適用事業としてどの事業に該当せしめるかということにわれわれ苦心をいたしておるような次第でございまして、そこで、いわゆるトルコぶろについてどのような基準法違反があり、どのような件数になっておるかというお尋ねでございまするけれども、保健衛生事業として扱うか、娯楽事業として扱うか、そこら辺の実態判断が一定いたしておりませんので、数字的にトルコぶろについて何件という数字は、いま持ち合わしておらない次第でございます。
  41. 市川房枝

    ○市川房枝君 何だかよくわからないのですが、トルコぶろはいわゆる公衆浴場法の適用を受けているわけですね。風俗営業に入っておりません。だから、そういう保健所がこれを監督しておるし、保健所というのは風紀に関することはやっていない、保健衛生のことだけしか見ていないわけです。だから、法的に言えば一応はっきりしているのですが、それを監督署がどっちだかわからないというならば、それじゃ何もしていらっしゃらないことになるので、女たちが私たちは非常にかわいそうに思っているのでございます。
  42. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 一般にトルコぶろといわれているものを見ますると、公衆浴場としての許可を受けているもの、旅館業の許可を受けているもの、それからあんま師の免許を受けて実施しているもの、幾つかの種類があるようでございます。これは、それぞれの法律から見ますと、認可の問題でございます。ところが、労働基準法の立場から見ますと、あんまというような点を中心にして見ますれば、保健衛生事業に該当する場合が多い。そのようなことで、公衆浴場と見るか、旅館業と見るか、あるいはあんま師という立場から見るか、それぞれ別個の法律がありますので、実はわれわれが労働基準法上の適用事業としてどの事業に該当するかという場合に、非常に判断に苦しむのでございます。しかし、われわれとしては、そういった他の法律の認可の問題とは別に、労働基準法の適用という関係からその実態を判断いたしまして、あるものは保健衛生事業、あるものは娯楽事業といったように区分して扱っておるわけでございます。この問題は、取り扱いが区々だというだけではなくして、むしろ、トルコぶろと称しておるけれどもきわめて公衆浴場的ないわゆる健全なものと、娯楽場的な世の指弾を受けがちなものとがある、看板とは別にその実態が異なるというところに問題があるように思います。したがいまして、その点、法律適用上、トルコぶろという看板を掲げておりまして、保健衛生事業と思って監督しておりますと、内容がだんだん変わってきてしまって娯楽場のような実態を持ってくるというように、その営業継続中に変貌することもありますので、その点、監督実施上非常に困難を感じまするけれども、第一線の労働基準監督署におきましては、その点十分把握していきたい。ただ、御指摘のような、賃金の支払い形態が、固定給ではなくて、歩合といいますか、チップに依存するというものが多いじゃないかという御指摘でありますが、これも賃金の支払い形態はさまざまあるようでございますが、しかし、御指摘のような固定給を出さずにチップだけでまかなっておるという点につきましては、労働基準法上、一定の固定給を支払うべき旨の規定もございますので、そういった角度から監督を行なってまいりたいと考えております。
  43. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連。いま私初めて聞いたのですが、社労で、厚生でやったときには、公衆浴場法でやっている、こういうお話しでございましたが、いま旅館とかあんまの業態もあると、そこで、その公衆浴場法でやっているのがどのくらい、旅館でやっているのがどのくらい、あんまの認可を受けてやっているのがどのくらいということをお示し願いたいことが一つ。  それから、いままでトルコぶろに対して監督をしてこられた実情を伺わしてほしいのです。また、いかがわしきものも、旅館といったって野放しであるはずはない、あんま、だってもそうだろうと思うのです。結局、あんまでトルコぶろを経営しておるということは、私いま初めて聞いたのですけれども、それがどのくらいあるかをお聞かせ願いたい。監督された実情をまず伺いたい。
  44. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先ほど来申し上げておりますように、労働基準監督としてはトルコぶろということで監督はいたさないわけであります。保健衛生事業かあるいは娯楽事業という角度から労働基準法の場において監督するわけでございます。したがって、基準法上は、公衆浴場としての認可を受けておるか、旅館業としての認可を受けておるかということは、そうかかわりのないことでございます。しかし、私どもといたしましては、そういう観点からトルコぶろとしての実態調査をしておりませんので、数字も持っておりません。ただ、先ほど私が申し上げましたのは、警察方面におきましては、営業許可の観点から公衆浴場として認可をしておる、あるいは旅館業として、あるいはあんま師として免許を与えておる、こういうような数字については把握しておるようでございます。ただ、これは、私ども連絡をしてそういう数字承知しておるのでございますけれども、これは警察のほうの調査でございますので、その全数を申し上げていいかどうか、なお確認を要しますので、ここでは差し控えたいと思いまするが、大体のところを申しますれば、公衆浴場としての許可を受けておるものがこれが大部分でございます。次は旅館業の許可を受けておるもの、あんま師の免許を受けておるというものは、全国的に見ますとごく数が少ないのであります。私どもとしては数字を持っておりませんが、他官庁の調査したものを参考にしつつ、われわれ適用事業としての判断の資料にいたしておる、かようなわけでございます。
  45. 藤原道子

    ○藤原道子君 もう一回。それは端的にいえば、トルコぶろは野放しで、従来何ら監督はしていなかったということなんですか。もし監督していたとすれば、摘発されないはずはないと思うのです。端的に御答弁願いたい。
  46. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 労働基準法上はトルコぶろという概念はございませんので、トルコぶろとしての件数はどうかということになりますと、その数字を述べることは困難でありますが、もちろん労働基準法の適用事業であり、しかも社会的に非常に問題のあることでございますので、従来も監督をし、特に今国会におきましても、いろいろ先生方の御指摘によりまして非常に論議されておるところでございますので、監督に重点を置きましてやっておるわけであります。ただ、その場合には、労働基準法の適用関係としましては、娯楽事業として見るか、あるいは保健衛生事業として見るかということによりまして、女子、年少者労働基準法上の制限条項の適用に若干差が生ずるという問題もありますので、トルコぶろとしては扱っても格別な意味はない。保健衛生事業として見るか、娯楽事業として見るかということによって、女子、年少者労働基準法上の制限条項の適用に誤りなきを期していきたい、かようにしてやっておるわけであります。  ただ、そんなことを言うけれども、簡単に監督できてどんどん告発しているかという御指摘だろうと思いますが、監督実施上非常に困難な面があることは事実でございます。しかも、監督実施の際におきましては、保健所とかあるいは警察方面の連絡を十分にとる必要があるということからしまして、非常に困難はございますけれども、いろいろ御指摘もありますので、今後十分注意をいたしましてやっていきたいと考えております。結果的に申しますれば、トルコぶろの監督はやっておるかということに対しましては、やっておる、こういうお答えになろうかと思います。
  47. 藤原道子

    ○藤原道子君 わかったような、わからないような……。
  48. 市川房枝

    ○市川房枝君 簡単にいえば、何もしていらっしゃらないということ、監督していらっしゃらないということであって、あなた御自身もいわゆるトルコぶろの実態というものを御存じないと、こう結論せざるを得ないのです。問題は、トルコぶろとかなんとかいわないでも、私は、全国に約四百カ所、そこにいる女たちは七千人から八千人ある、そういう女の人たちが何らの法律の保護も受けないで放置されているという、その実態を私は伺っておるわけなんです。それでいいのか。実際いろんな基準法の——ほかのもう一つ具体的に申し上げますならば、たとえばあるところでは、女たちが月に十人指名のお客をとらないと首になるということが、ちゃんと紙に書いて張ってあるのです。一体、そういうことは労働法規の上で許されるのかどうか。だから、私は、まあいろいろおっしゃっていただいても、どうもよくわからないというか、結局私が結論したように、実態を何も御存じないし、何もやっておいでにならない、放置してあるのだと、そういう私は結論せざるを得ないのですけれども、これからどうするのか、もっとはっきりお答えを願いたい。
  49. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 労働省としましては、従来、労働基準法施行以来監督の重点は、いずれかと申しますと、いわゆる工業的事業に重点を置きまして監督実施してきたわけでございますが、五、六年前より特に御指摘のような非工業的な企業においてもかなり問題があるということが明確になってまいりましたので、非工業的職種といたしまして、先ほどのトルコぶろ的な、あるいはしばしば問題になりました病院とか、そういったような点につきましても監督の重点を移しまして、現在までやってきておるわけでございます。したがいまして、トルコぶろについて監督をやっていないか、野放しかという点については、監督をやっておるのであります。しかし、たとえばいま御指摘のような例を見ましても、ただ労働基準法上の問題として扱うか、その契約が公序良俗に違反するからとか、一般民法の問題であるか、いろいろ複雑な問題がからみ合っているわけでございますので、その間に処しまして労働基準監督官監督する場合には、労働基準法の各条章に照らしまして基準法違反であるかどうかという面から監督をいたすわけでございます。もちろん、監督官といたしましては、一応警察権の行使が可能でありますから、万般の配慮をすることが必要でございます。しかし、これは先生御指摘のように、非常に複雑な問題がからんでおりますので、基準法の適用だけで問題を処理しましても全部が解決できないという面もあるわけであります。トルコぶろの監督実施いたしておりますし、今後も十分監督していきたいと考えておる次第でございます。
  50. 市川房枝

    ○市川房枝君 監督しておいでになったら、結果はどういうケースがあってどうという数字的な御報告を願いたいのですが……。藤原さんからおっしゃっても答弁がないし、私も具体的にこういうふうに監督しているのだということをおっしゃってくだされば、なるほどそうかと納得するのですけれども、いまのような抽象的にやっているとただおっしゃるだけでは、ちょっとそれは信じることができないのです。
  51. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) トルコぶろという統計はとっておりませんので、資料はないと申しておるのでありまして、保健衛生事業として何件あるかということでございますれば、保健衛生事業のトータルはわかっておりますけれども、その中のトルコぶろ何件あるかという把握のしかたはいたしておりません。それは労働基準法上からは意味がないからであるというふうに言っておるわけでございます。
  52. 市川房枝

    ○市川房枝君 ますますもってわからなくなるのですけれども、全く。もちろん法に従って保護をされるわけですけれども、問題は、国としてそういう人たちを保護するということが一番基本の問題でありまして、そこに立って、やれトルコぶろという名前はないの、保健事業——保健事業総体でいったって、その中でもいろいろ種類が分けられますし、同じような種類のものはこれだけあるということだってあるわけなんでありまして、きょうすぐそれをあなたに数字をいただきたいと言っても、それは無理であろうと思います。これは私は、東京の基準監督署、そこでなければわからぬと思いますから、これはあとでよろしゅうございますから、監督しておいでになる実際の状態、数字的なもの、ありましたら、それをいただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  53. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 数字は努力いたしますけれども、問題は個々にあるわけでありまして、たとえば深夜業の六十二条の適用関係を見ましても、基準法適用事業としての十三号及び十四号については例外が認められておりますけれども、ただ十四号の旅館、料理店、飲食店、接客業、または娯楽場の事業になりますと、満十八歳未満の者については例外を認めないと、こういうぴしっとした規定があるわけでございます。ですから、保健衛生事業としての適用があるか、旅館、料理店、娯楽場としての適用があるかという、その判断の違いによって、六十二条の第四項ただし書きの適用関係の差が出てくるわけでありまして、そういう問題がございますので、トルコぶろという看板で調査いたしましても、労働基準法の適用関係につきましては意味がない、こういうふうに申し上げておるのでございます。  で、われわれとしましては、保健衛生事業にトルコぶろと称するものが該当するのか、あるいは旅館、料理店、飲食店、接客業または娯楽場の事業として扱うのかという点について、まず実体判断をする、そして御指摘のような張り紙をしておるというものでございますれば、これは十三号の適用事業じゃなくて十四号の接客業または娯楽場、これに該当しやしないか。そうすると、深夜業についても保健衛生事業の中に入れまして、よりきびしく厳格にしたい、こういう関係が出てまいりますので、せっかくの御趣旨でありますから、可能な限りその数字をまとめたいと思いますが、暫時期間的な余裕をいただきたいと思います。
  54. 市川房枝

    ○市川房枝君 それから、いまもまたおっしゃっておるのだけれども、これも保健事業と認めるかどうかという問題ですが、それはまだはっきりしていないわけですね。それはやっぱりはっきりしないと監督できないでしょう。
  55. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) トルコぶろが保健衛生事業に該当するか、旅館、娯楽事業に該当するかという抽象的な名称だけの形式的な判断でない、実体的な判断を下すよりほかないわけでございます。その点、基準局長はトルコぶろへ行ったかと言われますと、私まだ行ったことはございませんで、いろいろ監督官から報告を受けまして、研究をしておるわけでございますから、その第一線の監督官が非常に苦労いたしますのは、その適用事業をどっちにするかということに非常に苦労しておるようなわけでございます。  先生の御指摘のように、資料はどうかという点につきましては、全国的なものは格別といたしまして、東京その他問題の多い都市についての資料は、できるだけ早くこれを収集いたしたいと思っております。
  56. 藤原道子

    ○藤原道子君 関連。婦人少年局長に伺いたいのですが、トルコぶろはいま御指摘になっているとおりの実態なんです。それで、裸体の男性と、半裸体といいましょうか、ブラジャーさえしているかしていないかわからないような裸体に近い状態で、まあ約一時間も一つの個室に入っているわけです。しかも、そのいまわしいことは、いまおっしゃいましたように、固定給は何にもない。そして月に十万から二十万の収入がある。で、こういう業態が許されていいとお考えになるかどうか。結局、婦人の地位の向上が叫ばれて——先進国で男性と女性が一つの部屋で裸体の状態で労働している実態があるかどうか。私はそういう観点からいきましても、もっと真剣にトルコぶろに対して対処すべきではないか、こう考えますが、婦人少年局長としての御見解を伺いたい。
  57. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) ただいま先生からおっしゃられましたような、男子と女子との関係において、密室に女性が置かれるということは、まあほかの第三者が入ることができない環境でございますので、非常に女性にとって危険でございますし、また女性の品位の上からも、非常に恥ずかしい立場に立っている職業ではないかと思うのであります。私の立場から、女性の一人といたしまして、私は決してこれが、たとい職業であっても、それが認められていいかどうかということに疑問を持つものでございます。  ただ、私が婦人少年局長として、先生に率直に申し上げますが、たいへん申しわけないのでございますが、このトルコぶろの実態につきまして、私はほんとうに見たこともございませんし、また女性の職業あるいは労働の実態について、本来からいえば、婦人少年局は、労働基準監督局長に勧告をいたさなければならないたてまえにございますので、本来から申しますと、女子の労働の実態について調査を進めて、問題がございませば、勧告をする責任を持っているのでございますが、正面に申し上げまして、今日までトルコぶろに働いていらっしゃる女子の労働条件あるいは労働の実態、そのことについて調査をいたしていないのでございます。そのような事情におきまして、その職業がはたして女子の保護の上から適切かどうか、あるいはその職業が女子の地位向上にとってふさわしい職業であるかどうかという点について、なお調査を進めさせていただかなければならないのではないかと存じます。
  58. 藤原道子

    ○藤原道子君 先進国はどうですか。先進国ではおそらくそういうところはないと聞いているのです。いま、方々でいわれているのは、まあ週刊誌等でお読みになったかどうか知りませんが、日本に来た外人のどぎもを抜くのに一番いいのは、このトルコぶろに連れていくことだ、実にあわてて逃げ出していくと、こういうことが報ぜられている。私はまことに残念だと思う。  特にお願いしたいのは、国会におきましても相当論議され、世上でも問題になっている業態でございますので、ひとつぜひ御調査いただいて、それかまた基準監督局といたしましても、私はこの点は真剣に考えてもらわなければ、幾ら先進国だといっても、幾ら文化国家だといっても、この点だけはまことに恥ずかしいと思うし、放置できないように私は真剣に考えている。もし谷野さんが、諸外国の状態がそういう例があるかどうか御承知でございましたら、お聞かせいただきたい。
  59. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 私は諸外国のことをよくほんとうに広くは存じませんが、私の今日承知している限りにおいて、こういうことを伺っておりません。
  60. 市川房枝

    ○市川房枝君 谷野さんに伺いますが、婦人少年局婦人労働者福祉を目的として仕事をやっているわけですが、この婦人の勤労者というか、特に勤労者のいろいろな面での新しい職場婦人の進出といいますか、だんだん変わっている。そういう場合に、婦人少年局として、そういう状態を調査するといいますか、そうしてそれこそいまおっしゃったように、基準監督局長に対して勧告をする権限を法的にお持ちになっているわけです。この問題は、婦人少年局としていままでに調査してないというのでしたら、これは至急ひとつこれを調査をしていただいて、そうしてそれに対する勧告を婦人少年局長はお出しいただきたいと思うのですが、これはどうですか。
  61. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 婦人少年局といたしましては、従来から基準局長監督方針にもございましたように、工業的企業に従事する女子労働者の、あるいはそれに付随する事務的な職業に従事する女子労働者に、あるいは最近におきましては、看護その他の事業、病院その他の事業に従事する女子労働者の状態についての調査などを実施いたしまして、問題を発見いたしましたときには、基準局長に、書面ではございませんが、話し合いにおいて監督方針について意見を述べてまいっているのでございますが、ただいま先生方からおっしゃられましたトルコぶろにつきましてはまだ調査を実施いたしておりません。しかし、何かだいぶ問題もございますようでございますから、今後内部でよく検討いたしまして調査をさしていただきたいと思います。
  62. 市川房枝

    ○市川房枝君 その調査は、やはり予算にないと調査はできないのですか。
  63. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 婦人少年局予算の中には、女子の労働者の実態調査の予算が入っているのでございます。したがいまして、私どもがへ今日の事態において一番重要性のある問題から計画を立てて調査を進めていくわけでございますので、当面必要だと思うことについて調査を進めていたのでございますが、調査の規模は大きいことはむずかしいかと思いますが、婦人少年室の機能を通しましても、できる限り調査をさせていただきたいと存じます。
  64. 市川房枝

    ○市川房枝君 大臣がちょうどお帰りになりましたから、大臣に聞くのですが、いま、お留守の間に、いま問題になっておりますトルコぶろ通称トルコぶろというものに若い婦人が七千人、八千人くらい全国で働いておりますが、ところがその婦人人たちに対する保護といいますか、基準法によるところの保護が行なわれていないと、私ども実は実態を見てそう思って、基準局長にそれを伺ったのですが、何とかしているとはおっしゃるけれども、はっきりしていないのですけれども、そしてそれが保健事業であるかどうかによってまた違うのだとおっしゃるし、そういう、私は、問題になったから、これはひとつ、 そういうところに、それだけの婦人たちがずいぶん気の毒な状態で働いておるのだということが公になったわけなんですけれども、そういうことに対して、やはり国がそういう女たちを守っていただきたい、こういう私どもは、立場でお伺いしているわけですけれども、そしていま婦人少年局にその実態の調査をお願いをしているわけなんですけれども、それ、予算にも関係するらしくて、まだ調査するとはおっしゃらないのですけれども、大臣としてどういうふうにお考えになりますか。
  65. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 日本の労働基準法は、単に諸外国のごとく、工業的企業を中心とした基準ではなく、全労働者を中心といたした広範な法制でございます。したがいまして、国内のあらゆる労働について基準監督が行なわれておるということに一応はなっておるのでございますが、何ぶんにも産業の適用事業の範囲が広範でございまするし、労働者の数も非常に多い、おそらく五千万人に近いと思うわけでございます。そこであまり問題の平素ないところは自然、申しわけない次第でございますが、手抜きになっておるような事実は、否定できないと思うのであります。婦人労働の問題につきましても、繊維工業における深夜業その他、産業革命以来の労働問題の中心でございましたから、こういった面については相当力を入れておったのでございますが、その他の事業、ことにビジネス関係であるとか、あるいは商店労働であるとか、あるいは看護婦であるとか、家政婦であるとか、それからまたことにミストルコであるとか、あるいは料理飲食店の婦人労働者であるとか、こういった方面はありていに申しまして、いままでそこまで手が回りかねておったということは否定できないと思うのでございます。しかし、何と申しましても、若い労働者が、しかも婦人労働者が、六、七千人も従業しているということは、私自身もいまそれを伺ってびっくりしたのでございますが、トルコぶろも東京に二、 三軒、大阪に一、二軒もあるのかと思いましたら、たいへんなものだようでございまして、これらにつきまして、いやしくも、国会において問題がお取り上げになりました以上は、労働省といたしましても、取り急ぎ、この問題について何らかの考え方をはっきりさせる必要があると思います。したがいまして、調査ということになりますと、相当日数も要しましょうが、大体ある程度関係者を呼んで話でも聞けば、労働者の実態については、ある程度の把握はできるわけでございまして、私はそれに基づきまして、関係者集まりまして、法令の解釈を確定し、今後の取り締まりの方針についてはっきりした見解を、この国会が終わるまでにと申し上げるとよろしいのでございますが、国会中いろいろな用事もございますから、少なくとも六月くらいまでにははっきりした方針をきめまして、そうしてまた御批判をいただきたいと存じます。
  66. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま労働大臣からはっきりした御答弁を伺いまして、どうぞひとつそういうふうにお願いを申し上げたいと思います。  時間がだんだん過ぎますので、私はあともう一つだけ伺いますが、男女の同作の労働に対する同等の労働賃金に関するILOの第一〇〇号の条約の批准について、婦人団体からそういう希望も出ておりますけれども、いまどういうことになっておりますか。それをちょっとお伺いしたい。
  67. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は私も条約ははっきり知りませんので、婦人少年局長が平素研究しておりますので、お答えいたします。
  68. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 同一価値労働の同一賃金に関しまする国際条約につきましては、一九五一年の一〇〇号条約でございますが、この条約に該当する事項は、労働基準法の第四条に規定されているのでございます。この労働基準法の第四条の規定をもちまして国際条約の意図しておりますところに、原則的に差しさわりはないのでございますが、なおこの条約を批准するにつきましては、もう少し検討をさせていただきまして、婦人の賃金の実質的な向上などをはかりました上で批准をさせていただきたいと存じまして、まだ批准を進める段階には至っておらないのでございます。
  69. 市川房枝

    ○市川房枝君 そのなお調査をするとか何かまだそこまでおやりにならないその理由もちょっとおっしゃってください、調査をして、とか、何とかおっしゃっている……。
  70. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 労働基準法  に規定しております四条につきましては、「女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱をしてはならない。」ということで、日本の賃金制度の上におきましては、賃率について差がない限りにおいて差しつかえないわけでございますし、実際に今日まで監督実情から見ましても、違反がきわめて少なくなっているのでございます。しかし、もう少し検討させていただいたほうがいいかどうかというところに疑問がございます点は、国際条約の三条にございますこの条約が、同一価値の労働に対して同一賃金ということを言ってございますので、同一価値の労働体制としてこの法律理解してよろしいかどうかということについても、もう少し研究させていただきたい点もございますわけでございます。このような観点から、まだ進める段階には至っておらないのでございます。
  71. 市川房枝

    ○市川房枝君 まだよくはっきりつかめないのですが、いまお話しのように、基準法の第四条で男女の平等の賃金のことをはっきりと書いておるのだから、この条約を批准することの妨げは、何もないはずだと私ども思うのですが、したがって、できるだけ早くこれも批准をしていただきたい、こう希望しておるわけです。その御調査というのも、できるだけ早くそれをやっていただいてお進めを願いたいと思うのです。これだけで終わります。
  72. 藤原道子

    ○藤原道子君 たいへん時間もおそくなりましたし、私もいろいろ御質問したいと思っておりましたが、年少労働者等に対する問題は、すでに御質疑がございましたので、これは省略いたしますが、ただ年少労働者の問題で非常に気になりますのは、雇用条件とそれから雇用してからの仕事内容が一致しない、そういうことから不満を持って離職するものが多い。それからもう一つは、過日も炭鉱離職者のむすこが東京へ就職いたしまして、初めは定時制高校へ通っていたのですが、ところがそれもやめました。そのうちまたここをやめてほかへ移りたいというふうな話を耳にいたしまして、転々としてはいけないといって、うちへ呼んでいろいろお話ししたのです。いろいろ話ししてみたら、空腹でたまらないというのです。食事でございますしやはりまだ育ちざかりの子供でございますから、雇用した場合には、そういう点十分配慮してやるべきだと思います。ときどき私どもうちへ遊びにくる子には、そういう点、よくいろんな事情を聞いたり、なるたけ離職しないように協力はしているのでございますけれども、約束した労働条件と雇用されてからの内容の相違、これが純真な青少年に与える影響というものは非常に大きいと思うのです。こういう面についてはどういう御指導をしておいでになりますか。
  73. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 雇用条件就職後の労働条件が食い違っているというようなケースが最近までままございましたけれども、私どもとしましては、その点の食い違いがないように、供給地と需要地間の安定所の連絡を緊密にいたしまして、最近においてはそういった点の食い違いによる摩擦は、少なくとも安定機関が介入した場合においてはなくなってまいっております。ただ学卒はすべて安定所経由という原則を打ち立てておりまするが、やはり縁故就職という若干の抜け穴がございまして、最近は人手不足の事態になりまして、なおさらこの縁故募集方式が拡大していくというふうな傾向もございまして、その間にもぐりの周施屋その他の暗躍もございます実情もございますので、私どもとしましては、そういう縁故募集の弊害を、この際徹底的に是正をしてまいりたいと、そういうことを通じまして雇用条件と実際に就職後の条件が違っているというようなことのないようにしてまいりたいと思うのでございます。具体的に炭鉱離職者の子弟で定時制に通って、空腹で不満が生じたというふうな御指摘ございましたが、これも具体的なケースを後ほどお尋ねいたしまして善処してまいりたいと思います。   〔副主査退席、主査着席〕
  74. 藤原道子

    ○藤原道子君 それから、定時制高校の問題でございますが、先ほどいろいろ御答弁があったので時間の関係で省略しますが、とかく雇用者通学することを好まない、これが非常に多いようでございます。それから、その職場から学校へ、学校から家庭へ、東京では給食がたいへんいいようでございますけれども、やはり帰ってからおなかがすいて寝られないというようなことが、子供には食べものというものは切り離せないものでございますね。そういう点がございますから、私としては、やはりこういう点の御指導が願わしいということは、これは希望条件です。  もう一つ、特に私は夜間中学というものがあってはならないわけなんです。ところが現実にはあるわけです。それで、これをあまりやかましく言うと、これを夜間中学を禁止されては困るというような板ばさみになっておりまして、私のほこ先も鈍るわけでございますけれども、ここに働く子供たちの保護を、私はぜひお願いしたいと思うのです。そういうことの実態調査をされたことがおありになるかどうかをお伺いいたします。
  75. 谷野せつ

    政府委員谷野せつ君) 婦人少年局におきましては、従来から夜間中学に通っております年少者につきましては、非常に心配をいたしていたのでございます。したがいまして、婦人少年室長などを通しまして実際に、あるいは婦人少年局に付設されております地方の協助員の活動を通しまして実情を調査をいたしました結果、授業時間前に食事をいただくかいただかないかというような問題も、健康あるいは勉学などにも相当影響がございましたので、しばらく、数年前でございますが、文部省のほうに申し入れをいたしましてパンあるいはバターをつけたパンを何とか与えてもらうようにということの希望意見を述べてあるのでございます。それが地方の教育委員会を通しまして実施の段階に入っていると思うのでございます。
  76. 藤原道子

    ○藤原道子君 実はこの間も、その子供たちの書いたつづり方の中に、おぜんに向かって、お茶わんでめしをたべてみたいということがあるのですね。それほど非常な、職場からすぐ学校へ行く、この子は角屋さんに奉公しているのですが、朝早い買い出しに行くために立って御飯をかき込むらしいのです。そういうことで、そうして学校へ行くと、それで、そういうきびしい労働にありながら、学校へ来ておるときが一番楽しい。こういう、この間も私、ある夜間中学を訪問したのですけれども、私いまも涙が出ますけれども、涙が出るような実態で、それでもなおかつ働きたい、自立していくのだという気持でがんばっているのですね。年少労働者労働が身体に又ぼす影響などを考えると、禁止したいと思いますが、さればといって、禁止すれば実際に日本ではやっていけない、これも無視することができないわけなんです。したがって、私はこれをやかましくは申しませんけれども、こうした子供に対する保護という気持ちから、いま一段の愛情ある御指導を私は願いたい。この間、ある東京都内の学校へ参りましたが、卒業式の予行演習をしておりました。あとでいろいろ座談会をしてきましたけれども、自分は学校へ行ったけれども、いまの学校教育は非常にいびつになってきている。受験受験が重点にされて、教科書だ副読本だ、さらにそれに対して参考資料と、とても貧しい家庭では追っついていけない、格差ができてくる。学校でも就職組と進学組の差別的な教育が施されて、お友だちからばかにされるというようなことで、その子は学校をやめてしまったそうですが、いまあるところで働きながら夜間中学に来ている。夜間中学に来てから成績がよくなったということを言っておるのですね。そういうことで、私は、けなげな子供たちの気持ちもわかるし、保護の面から考えると、何を国はしているのだと、こら言いたくもなるし、私いまのところ板ばさみになっているのです。私自身が家が貧しくて、小学校五年でやはり夜間で、まあ義務教育、尋常六年を卒業したというような点もございまして、特別この間泣かされてきたのです。そういう点で、こういう子供もあるということで御監督を願わしいということを、特にこれは要望でけっこうでございます。この間、文部大臣の答弁を聞いておりまして、ひとつそういう点もお考えが願わしいということを申し添えておきます。  それから、身体障害者の雇用の実態はどういうふうになっているでしょうか。これもまあ身体障害者施設等へ行きますと、何よりも一番気になるつらい質問ばかり受けております。私、諸外国といっても、ドイツへ参りましたときに、ドイツでは、まあ足のない人を受付に使うとか、手のない人を、博物館へ行ったときでございますが、説明して歩く人は手のない人というように、残る機能を十二分に発揮させておる。しかも、国の援助でなく自立するという誇りを持たしている。それで、いろいろな点でまあ労働能力が若干劣っても、その人の人間として不自由しておるという、この何といいますか、犠牲は一生背負っていかなければならないのだから、残る能力を一〇〇%に生かしていくというようなことがなされておりまして、ありがたいなあと私は思ったのです。日本の身障者の雇用状況は、必ずしも満足にいっていないように考えておりますが、その実態をお聞かせ願いたいのです。
  77. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 藤原先生から御指摘いただきました身障者の雇用の問題でございますが、三十五年に御承知のような雇用促進法ができまして、法律上の雇用率を設定をいたしまして、この雇用率を目標に身障者の残存能力に応じた適職を安定所でさがしまして就職さしていく、こういう法律上の制度ができたわけでございます。その後三年間、いろいろと私どもも雇用主も努力をいたしまして、身障者の雇用につきましては相当の成果があがっておるわけでございますが、残念ながら、この三月末日までに達成すべき雇用率の達成は、民間の企業関係につきましては、大体一・一%が雇用率の目標でございますが、これに対して、昨年の十月現在で〇・九九%、ことしの三月末までのこれは見込みでございますが、大体一・〇一%ということで、一割見当達成率を下回っております。   〔副主査退席、主査着席〕  それから、官公庁の場合、これは非常に採用条件等に試験制度その他でむずかしい条件がございますので、若干言いわけになりますが、雇用率が一・五%を原則といたしまするが、現状におきましては一・三三%、これを年度末の推定に引き直してみましても一・三七%というふうなところで、民間よりもさらに雇用率の達成がなされていないというふうな見込みでございます。これはまあ促進法をつくりまして、三年間の実績を振り返ってみて、私どもとしましては、この際、ぜひこの雇用率の達成を、多少時期的には、ずれましても、民間においてはことしの十二月一ぱいには一・一%にしていこう。それから、官公庁におきましては民間よりも率先してやる立場にございますので、なおさらこの努力を政府機関各省にお願いいたしまして、ぜひ所定の雇用率の達成をはかってまいりたい。民間以上に官公庁の場合が率も高いとし、採用条件がむずかしいために、達成が非常にむずかしいわけでございますが、これは民間会社に率先をして官公庁が模範的に達成をしていきたい、かような考え方で今後各省を指導してまいりたいと思います。  なお、民間につきましては、昨日全国の課長会議におきましても、各県の職安課長に、身障者の雇用については、目標達成率以上の成果をあげるようにということを特に指示いたしましておりますので、必ず雇用率は達成できるものと確信をしております。
  78. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、非常に低いパーセントさえもこれが達成できない。しかも、官公庁がこんな低い状態では何とも言えない気持がいたします。私は、官公庁こそ率先して、採用基準がやかましいというけれども、もともと身体障害者を雇用するのでございますから、それの基準はまた別に定めるべきものじゃなかろうかと思うのです。定めてはいるでしょうけれども、それがきびし過ぎるんじゃないでしょうか。私どもが知っておる者がまあ市役所等に就職しておりますけれども、案外成績がいいというて喜んでおる。だから、使わないで、俗に言えば食わずぎらいというか、身障者を好まないというような考え方からこういう結果が出るんじゃないかと思いますので、まあドイツの例などは相当高い強制雇用のようでございまして、それが達成されておるということを考えますときに、一段の御努力を願わしいと思いますが、大臣の御所信をお伺いさせてほしいと思います。
  79. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 各省に対しまして、十分この点を注意を喚起いたしまして、すみやかに達成するように協力してまいりたいと思います。
  80. 藤原道子

    ○藤原道子君 どうももっと元気のいい確信を聞きたいんだけれども、たよりない。私はおざなりではいやなんですよ。いま非常に問題になっております。世界的に問題になっておる身障者の問題を、ぜひひとつこれが目標以上に私は上回って雇用が進められますことを要望いたします。
  81. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は私、いやしくも国会委員会におきまして発言いたしましたことを、おざなりとは心得ていません。私がここで発言いたしましたことは、皆さんに対する御回答であり、同時に、公約であり、また、政府委員その他の労働省の係官に対する職務命令と考えて発言をいたしておる次第でございますから、どうぞよろしくお願いいたします。
  82. 藤原道子

    ○藤原道子君 失礼な点あったら取り消しますから、その勢いでひとつどうぞよろしくお願いいたします。  それから、婦人労働の問題でございますが、男女の賃金差が若干縮まってきたというけれども、まだまだ非常に差があると思います。で、これらに対しまして、どうも私最近考えるのでございますが、女だから安くてもいいのだという慣習がとれないのじゃないでしょうか。女は間に合わせだというような気持ち、生活の中心でないから、まあこの程度でいいのだというような、長い間のそうした慣習が残っていて、女なるがゆえに低い賃金で働かせると、こういうことにどうも考えられるのですが、いかがでございましょうか。
  83. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 婦人の賃金が男子の賃金と同一かどうかということはしばしば問題になるわけでございます。一つには、統計にあらわれておる婦人と男子の賃金というものは、ほとんど倍半であるというような非常な格差が統計ではあらわれております。その理由につきましては、婦人労働者が結婚までの一種の期間的な労働者であるというような考えもありますし、また、事実結婚と同時にやめていくというような人が多いと思います。したがって、今日の日本の年功序列式の賃金体系からいきますというと、特に賃金の低い年少者が数が多い。そういう面から、年齢を無視して全般を平均いたしますと婦人労働者の賃金が安いということは、これはまあ当然だと思うのであります。それから、もう一つ適職の関係でございますけれども、男女の能力の差と申しますか、あるいは性質上の違いと申しますか、そういった理由で、婦人の従事する仕事と男子の従事する仕事はだいぶ食い違っておる面がございます。その仕事の面からの賃金の格差というものもかなりあるのじゃなかろうかと思うのであります。したがって、現在の統計だけでは、どういう理由によってどの程度違ってきておるかということがはっきりいたしません。これを明確にいたしまするには、もっとこまかい分類による賃金統計をつくっていく必要があるのじゃないかと、こう思うのでございます。私どもも、男女の賃金の区別という問題について、やはり一つの方針を打ち出していくということになりますと、現状について少し詳しい調査をいたしまして、それに基づいて説得するということが当然必要だろうと思います。従来この辺の統計が十分でございません。すみやかにそうした調査を整備いたしたいと思います。同時に、男女の賃金の格差の是正ということについては、この後とも努力をいたしたいと思います。
  84. 藤原道子

    ○藤原道子君 確かに結婚してやめていく人はあります。けれども、いまはすでに雇用者のほうから、就職のときに、結婚したらやめてくれというような条件で雇用いたしておる。あるいは定年が非常に引き下げられておる、あるいは、また、企業内の訓練からも女子は除外される。働きたくても働けないようにしむけておる状態に対して、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  85. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは一般使用者のそういった問題についての考え方が、必ずしもいまの時勢から見て適当でないという面もあると思います。それらの点をも含めまして、今後改善に取り組んでいきたいと思います。
  86. 藤原道子

    ○藤原道子君 私、女だから低く見ておるという気持ちがどうしてものかないのです。その理由として看護婦の問題がございます。あるいは保母の問題がございます。御案内のように、看護婦は高校を卒業して三年の教育を受ける。しかも、国家試験を受けておる。保母さんも高校を出て二年の保母の教育を受けているのです。それで一万二千円だとか一万四千円だとか、非常に低い賃金で働かされておる。これらに対してはどういうふうにお考えになりますか。
  87. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 保母、看護婦等の給与が不十分であることは私は承知いたしております。したがって、病院の予算、あるいは保母の給料に対する政府の補助予算等につきましては、長い間努力をいたしてまいったわけでございますが、労働省といたしましては、現在のところ、賃金の額そのものをかれこれ一々のケースについて論議をするということはいたしておりませんが、しかしながら、労働条件改善、ことに賃金についての男女の格差の是正ということは、これは当然考えるべきことでございまするので、従来そういった問題について立ち入っていなかったことは、はたしていかがなものであろうかという反省もあるわけでございまして、これらの点をもう少し労働省として真剣に研究をいたしまして、そうしてはっきりした考え方を打ち出してまいるようにいたしたいと思います。
  88. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、こういう点からいっても、看護婦も保母さんも女の職場なんですね。だから、女の人の職場だということで私は低く押えられているのじゃないかという考え方を持っています。さらに、労働条件が非常に悪いので、さっきから鉱工業面を重点にして基準監督が行なわれてきたからということを繰り返し伺っておりますが、従来はともかくといたしまして、私は、現在女子の深夜業を禁止していることはもう御案内のとおり、看護婦、交換手、あるいは保健衛生婦その他については特例が設けられておる。けれども、特例が設けられているということが、無制限に女子が深夜業をしてもいいのだということにはならないと思うのですが、それはどうなんですか。
  89. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘のとおりでございます。看護婦については深夜業の例外が認められておりますが、しかし、同じ看護婦でありましても、年齢制限を受けるものについては、さらに一定の規制があるというようなことでございます。ただ、看護婦の労働時間の、実態を見ますると、病院の規模によりまして若干の差があり、したがって、先ほど大臣がお答えいたしました賃金についても若干差があるというように思います。この問題につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、非工業的事業の中の特に監督を要すべき事業といたしまして、特に三年ほど前からいろいろ御議論がございましたので、監督の重点をこれに指向いたしまして監督をしておるのでございます。その間におきまして、看護婦問題は、御承知のように厚生省の所管でございます。厚生省と連絡をとりつつ監督の適正を期してきた次第でございます。しかし、今後も、なお問題があることは承知いたしておりますので、十分配慮をしてまいりたいと考えております。
  90. 藤原道子

    ○藤原道子君 女子の深夜業の、特別認められているということでございますが、その限界は、量と質は、どうあるべきかということを伺わしてほしい。
  91. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) その例外につきましては、労働基準法の四十条の規定に従いまして、「別段の定をすることができる」というふうに例外を認めておるわけでございますが、限度は九時間、一日九時間と限定されております。
  92. 藤原道子

    ○藤原道子君 ところが監督されたとおっしゃるのだから御承知でございましょうが、一カ月に半月、十五日から二十日くらい夜勤勤務をしている例がたくさんあるわけです。しかも、この夜勤の八時間の労働の中に、休憩時間が認められていない、ぶつ通し勤務なんです。こういう点については、私はもっときびしく取り締まるべきものだと思いますが、ほとんど野放し状態になっておりますが、これに対しては、労働基準局としては、どういう御指導がなされておるのかということをお伺いしたい。
  93. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) ただいま申しましたように、看護婦の労働時間は、一日について九時間というのが延長し得る原則ですが、それ以外に、時間外労使協定をいたしました場合には、延長ができるわけでございます。しかしながら、その場合におきましても、一日二時間、一週六時間、一年百五十時間をこえてはならないというふうに制限があるわけでございます。したがいまして、第一線の労働基準監督署におきまして監督をいたします場合には、まずこの労働時間の原則をただし、かつ時間延長いたします場合、はたして法定の労使協定がなされておるかどうかという点を十分確かめまして、労働時間の規制を行なっておるような次第でございます。
  94. 藤原道子

    ○藤原道子君 私、重ねて伺いたいのは、深夜業の女子の母体に及ぼす影響等を考えますとき、いまの深夜業はひど過ぎるのじゃないか、深夜業を認められているとしても。これに対して、その深夜業の回数と申しましょうか、その時間は、どの程度を適当と見ておられるか、最大限。
  95. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) いまお答えいたしましたのは、深夜業も含めましての一日の労働時間、その延長が、これだけ可能であるということを申し上げたわけでございまして、無制限なわけではないということは当然のことでございます。それが女子の健康に非常に有害だということは、深夜業の禁止のたてまえからして、当然なことでございます。  したがいまして、この点につきましては、数字的には、その影響度合いは把握いたしておりませんけれども、事柄内容は、十分に承知いたしておりますので、監督にあたりましては、あやまちなきを期したいと思っております。
  96. 藤原道子

    ○藤原道子君 どうもはっきりしないのですが、とにかく女子の深夜業は、例外的には認められているけれども、結局女子の健康、福祉に有害でないことを前提として認められていると思う。そうですね。——ということだから、例外的に認められているとしても、無制限に深夜業が可能であるということではない。そうでしょう。ところが、現実には、私たちは無制限にひとしいという考えを持っている。若い女性が、中には准看でございましたら十八才以下の者もいる。こういうものが、一カ月に十五日も二十日も、まるで、いま看護婦さんたちの間では、フクロウ勤務だ——夜勤が半数以上になっている。こういうことが妥当か、許されていいのかということを私は聞いている。
  97. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘の点、最近の人手不足と関連いたしまして、看護婦の不足と関連いたしまして、先生御指摘のような例がないでもないということを私ども心配いたしまして、監督しておるわけでございますが、御指摘のように一日九時間、協定によりまして二時間延長いたしましたとしましても、その時間の配分が、昼と夜と、どうなっておるかという点について、かりに時間数だけからみますと、法定内でございましても、その時間の配分について、いろいろまた問題があろうかと思います。そうして、また、その法定時間及び協定時間を守りつつも、その交代をどのようにするか、いろいろ問題があると思います。  また、一般的に申しますと、大きな病院、あるいは労働組合が結成されておりますような病院におきましては、比較的、そういう点についての基準と申しますか、制度が確立されているようでございますが、小さな病院におきましては、そういう点につきまして、非常に問題が起こりやすいので、労働省といたしましては、そういう点に特に着意をいたしまして、監督をしているような次第でございます。
  98. 藤原道子

    ○藤原道子君 私が問題にしているのは、大きな病院の例が、ほとんどそうなんです。東京第一国立病院あたりでも、一カ月に十二日から十三日、日赤病院の中で、二十日夜勤というところがあるのです。これが問題なんです。どういう御指導をしておいでになるか。
  99. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先ほど申しましたように、法定時間の順守、それを労使協定でやっております場合には、協定に基づく時間延長という点から、労働基準法違反ではないかどうかという点についての監督をしているわけでございます。しかしながら先生御指摘のように、かりに形式的にその時間を守っているといたしましても、その時間が深夜業と認められる面が多いとか、いろいろ片寄りがあろうかと思うわけでございます。で、そういう点につきましては、一つには労使間の協定の適否の問題もあろうと思いますが、しかし法の手続によって、適法になされております協定までも変更させるということは適当でないことはもちろんでございますので、指事面におきまして、違法の問題ではなくして、当不当の点から指導を加えるというような立場をとっているわけであります。
  100. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、ただいまは労働時間の問題よりも、深夜業の問題を取り上げている。それから労働協約に、そういうことがうたわれておる云々ということでなしに、いま人手がないからということで、協約を無視して、どんどん行なわれている。それから協約とか慣習でやっているところまでは云々というお話がありましたが、いつかも、法務委員会だと思いますが、日赤におきまして深夜業が多い、夜間の休憩時間がない、こういうことで、労働基準監督署に訴えて、基準監督署では、明らかにこれは、労働時間及び休憩については、労働基準法違反であると認めて送検したわけですね。ところが、これに対して、検察庁も違反事実を認めながら、諸般の事情を考慮してということで、これは不起訴処分になったんですね。  ということは、労働基準法で守られているといいながら、諸般の事情ということで、労働者の権利がじゅうりんされてもいいのか。看護婦さんは、人がいないから、やっぱりそういう不当な労働を押しつけられても、これはいたしかたないと泣き寝入りしなきゃならないのか。それでは母体保護ということは、一体何の役に立つのかという点で、あなたの御見解を伺いたいと思う。
  101. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) いまのケースは、労働基準監督機関といたしましても、法違反につきましては、厳正に処置すべきであるという観点から、送検をいたしたわけでございます。で、労働基準監督機関の判断といたしましては、違法であり送検すべきものであるという判断を下したわけでございまして、私どもの段階におきましては、手心を加えるとかどうかというような判断ではなくして、違法であり送検すべきものであるという決意をもって処置したわけでございます。  しかるに、労働基準監督機関の手を離れまして、検察当局の段階におきまして不起訴になった、こういう事案でございます。まあ行政機関と司法機関との、それぞれの立場があるわけでございますが、まあ結果については、いろいろ御意見があろうと思いますが、労働基準監督機関としましては、違法と認め、送検した、そしてあとは司法機関の判断にゆだねた、こういう措置をとった次第でございまして、その点、よろしく御了承いただきたいと思います。
  102. 藤原道子

    ○藤原道子君 それでは、病院関係で、労働基準法違反として、従来摘発されたといいますか、取り上げられた件数は、どのくらいございましょうか。
  103. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) ただいま手元に、全体の送検数しか持っておりません。病院、特に看護婦関係につきまして、何件送検したかという資料を、ちょっといま手持ちいたしておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  104. 藤原道子

    ○藤原道子君 それではあとで資料として、御提出を願いたいと思います。  時間がたいへんお急ぎのようでございますから、飛ばします。とにかくいま、きびしく監督していけば、ほとんどそうだと思う。最近看護婦さんの中には過労のために、もう病人続出なんです。そういうことで、非常に心配いたしております。したがって、人が足りないなら足りるような方法を、これは厚生省ですけれども、とらなきゃならない。これにさいふのひもを締めておる大蔵省としても、私は、人命を尊重する立場から、ただ単に、看護婦の健康状態だけでなしに、はね返ってくる病人の不安というふうなこともございますので、労働省としても、しっかり、ひとつがんばっていただき、内閣としても、そういう方面に特に力してほしいということを、大臣に特にお願いいたしておきます。
  105. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は看護婦の問題につきまして、過労におちいっておる者が多いということでございます。その原因は、労働時間の長さの問題並びに休日の配分、そういった点が問題であろうと思うのでございます。深夜業につきましては、業務の性質上、年少者は別といたしまして、成年者につきましては、もともと基準法で、特殊業務として深夜業を認めておるわけでございます。問題は、労働時間の点で、十分な保護を必要とするのじゃなかろうかという点なのでございますが、たびたび国会においても申し上げておりまするとおり、労働時間の短縮につきましては、労働省といたしまして、少なくとも八時間原則というものについてのILOの一号条約、この一号条約が批准で、きるような状態にまで、労働時間を短縮することが当面必要ではなかろうかということで、目下、その問題につきまして、着々準備を進めておるような状態でございます。  したがいまして、先ほど局長から申し上げましたように、労使の協約があれば、何時間でも延長が認められるというような制度は、これは私は基準監督という上からいって適当でないと思うのでございまして、これについても改めなければならぬと思うのでございます。しかし問題の性質上、この改正の問題につきましては、一挙に、そこまで持っていくわけにもいきませんので、相当、前もって準備をし、だんだんと準備を進めながら、改正に持っていくという必要があるわけでございまして、そうした準備のやり方なども含めまして、いまは、労働基準審議会において御検討をいただいておる次第でございます。できるだけ早く答申をいただきまして、その答申に従いまして、一号条約の批准も両三年のうちにできるような状態に進めていきたいという考えを持っております。それができますると、この問題も解決に近づくことと存じます。
  106. 藤原道子

    ○藤原道子君 特に深夜業の点につきましては、婦人少年局長としても、やはりもっと重大な関心をもって御調査になり、そして監督等に御協力が願わしいと思います。最近看護婦は流産がふえております。それから異常産が非常に多いことを私たちは非常に憂えております。この実態でまいりましたら、日本の医療は崩壊するのではないかとさえ、いま有識者の中では憂えられておる実態でございますので、この点、特にお願いしておきます。  それからもう一つは、看護婦と並びまして、社会施設に働く労働者が非常に最近不足いたしておりますので、いままでは、あまり監督もなされていなかったようでございますが、保母さんだけでなしに、社会施設に従事する人たち労働は、実に涙ぐましい労働が繰り返されております。こういうことで最近は、看護婦、保健婦、社会事業に従事する人、たいせつ職場で働いていただく人に不足をきたしているのみならず、志望者が減少しているということは、高度福祉国家を主張されておる現内閣としても、相当問題であろうと思います。この点についての監督、御指導等、特にお願いいたし、時間がございませんので、これは特に要望いたしておきます。  最後にお願いしたいと思いますのは、最賃法と家内労働とは切り離しては考えられないと思うのです。最近内職の搾取といいましょうか、それが非常に目に余るようなものがあるように思います。これに対して、どういう指導と、どういう対策をもって臨んでおいでになるか、これは一つ。  それからもう一つは、女子の職業病と言われましたときキー・パンチャーのその後の状態というもの、これをちょっと伺いまして、それで私、質問を終わります。
  107. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 最賃法の改正の問題は、いわゆる最低賃金の獲得の要求として、今次の春闘においても、大きな柱の一つとなっておる次第でございます。先般、春闘共闘の代表者が総理大臣に会われました際に、総理大臣も、この問題については、自分も同感である、せっかく労働者に、この仕事を進めるように言ってあるということでございました。労働省といたしましては、総理の指示によりまして、最低賃金法は、現在の業者間協定を主体としておるものから、まずさしあたって職権中心のものに改めていく必要があると思っておるのであります。法律改正に先立ちまして、現行法の運用としてそういう行き方をいたしたいと存じまして、すでに最低賃金審議会においてそのことが認められております。ただ、その運用にあたりまして、金額のめど、指定事業の種類等についての考え方をもう少し時間をかけてということで、いま最後の審議をしておられますので、その審議ができ次第そうした方向に進みたいと思うのでございます。それによりまして、できるだけ業者間協定を待たずに、最低賃金を全国的に普及するようにいたしたい。で、最低賃金ができ上がりました上で、各地の各産業別の実情を比較検討いたしまして、全国一律の最低賃金が可能かどうかという判断をいたしたいと思うのでございます。大体三年間にそのめどをつけるということに相なっておるのでございます。  家内労働の問題でございまするが、家内労働の工賃につきましても、現在の最低賃金法で業者間協定が主体になっております。これでは実情に適合しませんので、この最低賃金についての職権方式が進むように相なりましたならば、次には家内労働の問題に手を染めたいと思っております。
  108. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) キー・パンチャーの問題につきましては、労働省としましては、その疾病予防のために指導通牒を出したのでございますが、その指導通牒の基準につきまして、いろいろ御意見があるようでございますから、昨年来、専門の医師等のお集まりを願いまして、その指導通牒の改定につきまして検討いたしておりますが、ごく近い将来におきまして結論が出るのではなかろうか、そうしてそれが出ましたならば、労働基準審議会の中における労働衛生部会にはかりまして善処いたしたいと考えております。
  109. 藤原道子

    ○藤原道子君 時間がないようですから、いろいろ伺いたいと思ってきたのですが、きょうはあまりにも時間が不足でございますので、この問題と家庭労働の問題その他については、またいずれ社労が伺うことにいたしまして、本日はこれで終わります。
  110. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) ほかに御質問もなければ、労働省所管に関する質疑は終了したと認めます。  以上をもちまして、本分科会の担当事項であります昭和三十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省、厚生省、労働省及び自治省所管に対する質疑は終了いたしました。これをもって本分科会の審査を終了いたします。  なお、予算委員会における主査の口頭報告の内容及び審査報告書の作成につきましては、これを主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これにて散会いたします。    午後一時二十五分散会