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1964-03-26 第46回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十六日(木曜日)    午前十時二十分開会   ―――――――――――――   委員異動  三月二十五日   辞任      補欠選任    豊瀬 禎一君  亀田 得治君    市川 房枝君  山高しげり君  三月二十六日   辞任      補欠選任    亀田 得治君  豊瀬 禎一君    矢山 有作君  藤原 道子君    山高しげり君  市川 房江君   ―――――――――――――  出席者は左のとおり。    主査      鈴木 一弘君    副主査     山本伊三郎君    委員      草葉 隆圓君            小山邦太郎君            斎藤  昇君            野本 品吉君            吉江 勝保君            亀田 得治君            藤原 道子君            市川 房枝君            山高しげり君   国務大臣    厚 生 大 臣 小林 武治君   政府委員    人事院総裁   佐藤 達夫君    人事院事務総局    給与局長    滝本 忠男君    人事院事務総局    職員局長    大塚 基弘君    厚生大臣官房長 梅本 純正君    厚生省公衆衛生    局長      若松 栄一君    厚生省環境衛生    局長      舘林 宣夫君    厚生省医務局長 尾崎 嘉篤君    厚生省医務局次    長       大崎  康君    厚生省児童局長 黒木 利克君    厚生省年金局長 山本 正淑君    社会保険庁長官 大山  正君    消防庁次長   川合  武君   説明員    大蔵省主計局主    計官      船後 正道君    厚生省保険局企    画課長     広瀬 治郎君    厚生省年金局年    金課長     曽根田郁夫君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十九年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十九年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) ただいまより開会いたします。  分科担当委員異動について報告いたします。  昨二十五日、豊瀬禎一君及び市川房枝君が委員辞任され、その補欠として亀田得治君及び山高しげり君が、本日、矢山有作君が委員辞任され、その補欠として藤原道子君がそれぞれ選任されました。   ―――――――――――――
  3. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) 昭和三十九年度予算中、厚生省所管を議題といたします。  まず、政府から説明を求めます。小林厚生大臣
  4. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 昭和三十九年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算案概要について、御説明申し上げます。  厚生行政につきましては、日ごろ各位の御協力をいただき、逐年予算増額を見、厚生行政の進展がはかられつつありますことはまことに喜ばしいことでありまして、この際あらためて厚く御礼を申し上げたいと存じます。  さて、昭和三十九年度厚生省所管一般会計予算における総額は、三千九百八十九億七千六百三十二万六千円でありまして、これを補正第二号後の昭和三十八年度予算三千三百二十三億四千二百四十五万七千円に比較いたしますと、六百五十六億三千三百八十六万九千円の増加と相なり、前年度予算に対し一九・七%の増加率を示しており、また、前年度当初予算に対しましては二〇・四%の増加と相なっております。  なお、国家予算総額に対する厚生省予算の比率は、一二・三%と相なっております。  以下、特に重要な事項について、その概要を御説明申し上げます。  まず第一は、生活保護費関係経費であります。  生活扶助費につきましては、その基準額を一三%引き上げることとしており、また、教育扶助出産扶助及び葬祭扶助につきましてもそれぞれ基準の引き上げを行なっております。  このほか、保護施設職員待遇改善を行なうなど、生活保護費として総額九百十七億九千八百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、百九十六億一千六百余万円の増額となっております。  第二は、社会福祉費関係経費であります。  まず、児童保護費でありますが、収容施設等飲食物費日常諸費改善するほか、保育所及び収容施設職員待遇改善をはかるとともに職員の増員を行ない、また、新たに、生活指導訓練費を計上いたしております。  また、新たに家庭児童相談室運営費について補助を行なうとともに母子衛生対策並びに身体障害児結核児童及び重症心身障害児療育対策に必要な経費をそれぞれ増額するなど、児童保護費として二百十三億七千五百余万円を計上いたしております。  次に、重度精神薄弱児対策でありますが、重度精神薄弱児を養育する世帯に対し、新たに扶養手当を支給する制度を創設することとし、初年度として四ヵ月分に必要な経費一億六千五百余万円を計上いたしております。  また、保護施設児童福祉施設等各種社会福祉施設整備に必要な経費として二十五億四千万円を計上いたしております。  このほか、身体障害者保護費精神薄弱者援護費老人福祉費世帯更生資金母子福祉資金及び児童扶養手当経費をそれぞれ増額するなど、社会福祉費として総額三百七十二億一千五百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し六十四億四千三百余万円の増額となっております。  第三は、社会保険費関係経費であります。  まず、国民健康保険助成費についてでありますが、世帯主に対する七割給付完全実施に引き続き、昭和三十九年度以降四ヵ年計画をもちまして家族全員に対する七割給付の実現を期することとし、その引き上げた部分について四分の三相当額国庫より助成することといたしております。このため初年度分として四十年一月実施に必要な経費十一億二千余万円を計上いたしております。  また、新たに、僻地往診料特別補助金として一億円を計上するなど、国民健康保険助成費として八百四十四億四千二百余万円を計上いたしております。  次に、社会保険国庫負担金でありますが、厚生保険特別会計及び船員保険特別会計繰り入れに必要な経費として百五十三億一千百余万円を計上するなど、社会保険費として総額一千九億九百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、二百十億二千三百余万円の増額となっております。  第四は、国民年金費関係経費であります。  まず、拠出制国民年金につきましては、国庫負担金として百四十四億五千七百余万円を計上し、また福祉年金につきましては、新たに、障害範囲結核性疾患及び精神障害にまで拡大し、公的年金併給限度額を引き上げ、また、扶養義務者所得制限緩和をはかるなど、福祉年金給付費として四百十五億八千二百余万円を計上し、国民年金国庫負担金として総額六百二十七億一千八百余万円を国民年金特別会計繰り入れております。  第五は、保健衛生対策費関係経費であります。  まず、結核及び精神衛生対策でありますが、結核予防法及び精神衛生法に基づく命令入院の措置をさらに強力に推進するなど、結核医療費として二百六十二億九千七百余万円、精神衛生費として百三十四億一千四百余万円、計三百九十七億一千二百余万円を計上しており、前年度予算に比し六十億三千百余万円の増額となっております。  このほか、保健所運営費法定伝染病予防費等保健衛生諸費として六十四億九千七百余万円、原爆障害対策費として十三億一千百余万円、らい予防対策費として一億七千八百余万円、また、国立療養所に必要な経費として二百六十八億七千七百余万円をそれぞれ計上するなど、保健衛生対策費として総額七百八十五億円余を計上いたしており、前年度予算に比し百二億九千八百余万円の増額となっております。  第六は、遺族及び留守家族等援護費であります。  まず、戦傷病者戦没者遺族等援護費でありますが、新たに、公務傷病範囲の拡大、特例年金支給要件緩和年令制限の撤廃に伴う減額年金廃止等を行なうものとし必要な経費九十六億五千余万円を計上いたしております。  戦傷病者特別援護費については、新たに、再発患者に対し療養給付を行なうほか、援護の不均衡是正をはかるなど、これに必要な経費六億九千七百余万円を計上し、また、留守家族等援護費として一億五千百万円余を計上するなど遺族及び留守家族等援護費として総額百三億五千百余万円を計上いたしております。  第七は、環境衛生対策費であります。  明るい生活環境を実現するため特に環境衛生施設整備をさらに強力に推進することとし、し尿処理施設等清掃施設整備費補助金については前年度予算の約二倍に当たる四十二億六千六百万円、下水道終末処理施設整備費補助金については約四割増の二十四億四千六百万円を計上いたした次第であります。  また、簡易水道等施設費補助金として十九億八千八百余万円を計上するなど、環境衛生対策費として総額八十七億四百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し三十億六千四百余万円の増額となっております。  以上、昭和三十九年度厚生省所管一般会計予算について、その概要を御説明申し上げたのであります。  次に、昭和三十九年度厚生省所管特別会計予算の大要について、御説明申し上げます。  まず第一は、厚生保険特別会計についてでありますが、一般会計より百四十五億五百六十八万三千円の繰り入れを見込みまして、各勘定歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。  第二は、国民年金特別会計についてでありますが、一般会計より六百二十七億一千八百三十六万九千円の繰り入れを見込み、福祉年金勘定について、内容の改善をはかるなど所要の歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。  第三は、船員保険特別会計についてであります。  船員保険特別会計につきましては、八億六百十八万五千円の一般会計よりの繰り入れを行ない、歳入百六十三億一千七百十一万九千円、歳出百二十七億三千六百三十万一千円を計上いたしております。  第四は、国立病院特別会計についてでありますが、一般会計より三十二億一千二百十一万四千円の繰り入れを見込みまして、歳入歳出とも二百六十一億七千七百九十七万七千円を計上いたしております。  最後に、あへん特別会計についてでありますが、歳入歳出とも四億八千八百八万三千円を計上いたしております。  以上、昭和三十九年度厚生省所管一般会計及び各特別会計予算案につきまして、その概要を御説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算案の成立につきましては、格別の御協力をお願いいたす次第であります。
  5. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) これより質疑に入ります。  質疑の通告がございますので、順次発一.口を許します。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 私は、二つの問題についてだけ簡単にお尋ねいたします。一つは、厚生年金会館の問題、もう一つは、原爆被害者援護の問題であります。  最初厚生年金会館のほうをお聞きしますが、この厚生年金会館は、最初のものは東京ですでにつくられ、第二回目のものが大阪でつくられるというふうに承っておるわけですが、いろいろな事情等でこれがまだ最終的な結論が出ておらない。しかしながら、すでにその分の予算というものは昭和三十八年度に組まれておるわけですし、また地元大阪におきましても、どこでも問題になるこの建設敷地の問題ですね、こういう点はすでに解決して、きれいな土地というものが待ち受けておるわけで、いろいろ内部の事情がおありのようでありますが、この問題はどういうふうに現在なっておるのか、大臣からひとつ承りたいと思います。
  7. 小林武治

    国務大臣小林武治君) お話のように、この予算が、約四億円ですか、三十八年度に成立しておりまして、その場所決定についていろいろ検討をいたしております。それで、実は都会が非常に過密地帯あるいは交通が非常に複雑、重複いたしておるために、いろいろ人寄せの機関というものは、場合によったらそういう過密地帯を避ける、すなわち、いまあるこれらのいろいろの施設学校あるいは研究機関等地方に分散しよう、こういうふうな意見もありまして、このような大ぜいの人の集まる場所は、場合によったら、ひとつもう少しこういう交通の非常にふくそうする場所以外のところへつくったらどうかというふうな意見も行なわれておるのであります。それで、実は率直に申しまして、この問題はまだ内定の域に達しておりません。いろいろの検討をいま加えておりますが、結論的に申せば、もう今年度もじき終わる、したがって、この経費は繰り越しまして、なおひとつ、これらのいろいろな事情について検討いたしたい、こういう段階にありまして、いずれともはっきりきめかねておる、こういう状態であります。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 年金局長にお聞きしますが、この厚生年金法による被保険者数ですね、これは府県別にいいまして、多いほうから五番目くらいまで、まあ資料があるかどうか、突然でわかりませんが、東京なり、大阪ですね、どの程度になっておるのか、ちょっとお示しを願いたいと思います。
  9. 山本正淑

    政府委員山本正淑君) いまここに最近の、三十八年の九月末現在の資料でございますが、厚生年金の被保険者の総数が千六百五十二万人ということでございまして、一番大きい被保険者数、これはもちろん東京都でございまして三百六十三万人、それから第二番目が大阪府でございまして二百四万人、それから第三番目が愛知県でございまして百二十万人、それからその次が神奈川県九十万人、それから兵庫県がその次で八十万人。上から五番目までといいますと、そういうような数字になっております。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 この大阪の場合、二百四万という被保険者数があるわけですが、これは全大阪府下にこう散らばっておるわけなんです。したがって、この会館等の場合でも、当然こういう被保険者状態というものが一つの考慮すべき点であろうと私は考えるわけですが、その点はどうですか、大臣。被保険者分布状態……。
  11. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはまあ厚生年金からこういうものが設置されるのでございますから、被保険者の多くに利用される、こういうことが当然一つの条件になるのであります。被保険者が非常に多いということは、これらのものを設置する要素になるということは言えるのであります。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 それから、この会場需給関係ですね。問題になっておる地方における会場需給関係、こういうことも当然問題になろうと思うのです。たとえば大阪では、毎年春、国際フェスティバルをやってるわけですね。これはもうすでに、国内的にはもちろん、国際的にも相当年がたつにつれて有名な行事に、これはなってきているわけなんです。そういう場合一つとってみましても、会場がないということで、非常な苦労をしているのが現実の姿なんです。だからそういう点。  それからもう一つは、会館をおつくりになって、これは断然独立採算でおやりになるわけでしょうが、そういう経営面からの考慮ですね。こういうことも一つの大きな要素であろうと思うのですが、まあ当然なことかもしれませんが、ひとつ御所見をお聞きしておきたいと思います。
  13. 小林武治

    国務大臣小林武治君) こういう施設が多く利用される。すなわち利用率が高いということも一つ要素であろうし、また、できるだけ独立採算的の経営が必要であると、したがって、経営面のことも考慮さるべき要素であるということは、そのとおりでございます。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 大臣衆議院予算分科会で、年度末までにはできるだけきめたいというふうにお答えになっていたわけですが、結局いろんな事情がからんで、先ほどお答えになったようなことに延びておるんだと思いますが、ぜひこれはひとつ筋の通った御決定をお願いしておきたいと思います。どうしてもこういう問題が出ますと、まあ我田引水といいますか、お互いに取り合いすることになるわけですが、だれが見ても、東京が第一回につくられるということは、これはもう当然なことだと思うのです。しかし、その次はといえば、やはり被保険者の数なり、いろんな会場現状等からみたって、やはり大阪につくってやると。それはほかに持っていくということも、まあ一つの理屈をつけりゃ幾らでもついてくると思うのですよ。たとえば、さっき大臣がちょっとお触れになったような交通緩和といいますか、そういったようなことも、これは新しい一つの問題かもしれぬ。しかしこの問題にだけそういう問題をぽんと持ち出して、はたしてそれは筋が通るかどうかといいますと、それはやはり、ちょっと何か借りてきたような感じのする議論ということに、やっぱり常識的には感ずるわけでして、いろいろ背後の動きのあることも、私聞いておるわけですが、ひとつ筋の通った結論を、しかもできるだけひとつ早急に出していただきたい、大臣、並びに保険庁長官のほうは、ひとつ事務的な面からお答えを願いたいと思います。どういうふうに事務をはじかれておるのか、その筋の点ですね。ここであんまりざっくばらんにいろんなことを、あっちからもこういう要請がある、こっちからもこういう要請がある。一々御披露願うのもかえっておかしいということなら、そこまではやってもらわんでもいい。どういうふうに筋を追求しておるのか、事務的な面はひとつ長官のほうから……。
  15. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは、新宿等も非常に混雑をしておりますし、政府としましても、いろいろな学校とかああいうものを、東京あるいは大阪からできるだけ疎開させたい、こういう議論があるわけでありまして、そういう意見は、唐突のようでありますが、前々からそういう意見が非常に強く行なわれておりまして、大阪のこの問題は、一つの手始めと申しては何ですが、そういう意見が強くあるという、こういうことは特に申し上げておきたいのでありますが、しかし、いま亀田委員の言われたようなことが、これを設置する一つの大きな要素になるということは、当然考えなければなりません。御意見のほどは十分私ども参酌いたしまして、そして最終的な結論を出したい、こういうふうに思っております。もうしばらく間が要るかと思いますが、適当な解決をいたしたい、かように思っております。
  16. 大山正

    政府委員大山正君) 事務的な検討といたしましては、ただいまお触れになりましたような、被保険者の数の分布の問題でありますとか、あるいは採算的な面でありますとか、利用度面等を比較検討しておるところでございますが、いずれにいたしましても、候補地が二ヵ所ございまして、それぞれ地元の要望が非常に強いものでございますので、それらの点を勘案しながら、何らか円満な解決をはかりたい。かように考えまして、年度内には残念ながら決定できませんでしたので、事務的には、本年度予算を繰り越すように、いま大蔵省と手続をいたしておるわけでございます。繰り越しまして、明年度できるだけ早い機会に解決するようにしたいと、かように努力いたしております。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 時間があまりありませんから、この程度会館問題はとめておきます。  それでは次に、被爆者援護の問題でありますが、最初に、大臣にひとつ感想を承りたいわけですが、昨年の十二月七日に、東京地方裁判所で、例の原爆訴訟判決がおりたわけです。これに対して大臣はどういう感想を持っておられますか、お聞きしたいと思います。
  18. 小林武治

    国務大臣小林武治君) この問題につきましては、先般法務大臣から、予算委員会でもお答えになったことがありますが、一つ考え方としては、むろんああいうふうな見方もあり、感情の上では、できるだけの援護をするということは、当然国民として考えるべきことだ、こういうふうに思っております。医療とか健康管理につきましては、相当程度政府も力を尽くしてお手伝いをし、その面においては一応の御満足とまではいかないが、御納得をいただいておる、こういうふうに思いますが、その後、そういう医療とか健康管理面ではなくて、あるいは生活面援護の問題について考えるべきだという議論が、国会等にも出ております。この問題につきましては、政府立場としては、直ちにひとつ何とかいたしましょうというふうなお答えしかできないでおるのでありまして、一般戦災者、あるいはその他の戦争犠牲者等の横の権衡と申しますか、関連がありまして、これだけをとらえて、そして一般生活援護という方面までは考えあぐねておる。こういう状態でありまして、参議院におきましても御承知のように、この面についての決議等もなされようといたしておりますが、政府としましてはどうしてもやはり横の関係権衡を考えなければ、これだけを切り離してなかなかお答えはできない。こういうことで気持ちの上では十分の考えを持っておりますが、具体的の策としては、まだこうするというようなことの決心をつけかねておる。これは政府全体として考えなければならない、こういうふうに思っております。いまのところはそういう状態でございます。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 原爆被爆者生活実態といいますか、そういう点は政府できちんと把握されておるわけでしょうか。この原爆医療法がありますから医療関係に関する部分については一応の統計等をとっておられると思いますが、しかし医療関係だけじゃなしに、被爆者生活そのものが全体としてどうなっているのかという点についての実態の調査といいますか、把握といいますか、そういうものは科学的にきちんとなされておるわけでしょうか。
  20. 小林武治

    国務大臣小林武治君) お話のように政府の責任において医療健康管理は行なっておる。こういうことでありますから原爆手帖等も交付して、その面の把握をいたしておりますが、二十万人……二十六万人ですか、それに及ぶ全体の生活面把握、こういうふうなことは行き届いておらぬ。しかし医療そのものにつきましては、全国に散らばっておる方々についても一応の把握をしておると思います。しかし現実に、ほんとうの原爆被爆者としての医療関係全国で五千人くらいしかないということでありますので、多くの方々手帖は交付いたしておりますからして、数字的なそういうようなものは持っております。生活実態把握するというところまでは至っていないと思います。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 全国で二十万とかおっしゃったのですが、三十万くらいあるんじゃないでしょうか。
  22. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 二十六万です。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 二十六万ですか。そこで東京地裁判決で私の感ずることは、ともかく世界で初めて原子爆弾被害を受けた人たち立場というものは、訴訟としては国に対する損害賠償の請求という形で出されたわけですが、法律論としてはこれは却下されておるわけですが、しかし判決理由の中では、ともかく国の行動によってああいう悲惨な状態というものが起きたんだ、その国がそういう行動をとったについての遠因なり、そういったようなことは、これはまたいろいろ問題があるのでしょう。いずれにしても被爆者には関係のない国の行動によってそういう結果が起きておるんだ。したがって、これに対しては医療面保護だけじゃなしに、もっと真剣な対策というものが必要だ。これはもう判決の中にそういう趣旨のことを書くのは異例のことですよ。やはりいろいろ問題を検討した結果のそういう判決理由となっておるわけでありまして、これはだれでも私はその点は了解すると思うのです。したがって、医療面だけじゃなしに、被爆者生活全体をひとつ見るということは、これはもう当然の帰結じゃないかと、私考えるわけですが、そこの問題の考え方がきちんとしませんと、なかなか援護法といいましても、あるいはほかにもいろいろ困っておる人があるじゃないか。それとのつり合いをどうするのだとか、いろいろな問題が私は出てくると思うのです。そうじゃなしに、やはりとにかく国の行動によってこういう迷惑をかけておるのだから、ひとつ国のほうではその方々生活全体をひとつ見ましょうという割り切りが私は必要じゃないか。それをうやむやにしておるのでは、どうも何か特殊扱いするような感じになってしまいまして、思うようにいかないというふうに思っておるわけですが、その点、そういう根本的な問題としてはどういうふうに大臣はお考えでしょうか。
  24. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは私どもは、たとえば東京大阪その他において爆弾によってけがをした、あるいは死亡した、あるいは焼失したと、こういうふうな問題と私は関連してくるのじゃないかと。それも手がければ、むろんいいわけでありますが、そういう問題と――医療そのものについては私は、非常な特殊性があるからして、いち早く取り上げられて、健康管理等の問題は一応の措置がされておるのでありますが、その他の問題については私は、他の一般被爆者、それとやはり全然別個のものとして扱うことはどうかというふうにいま考えております。これは要するに、戦争犠牲者としていろいろの問題が出てきておりまして、これらはぼつぼつ在外資産の問題だとか、あるいは最近は農地問題であるとか、いろいろな戦争による犠牲者の処遇の問題が起きてきておりますので、私ども今後やはり全然放置し得る問題とは思っておりません。やはりどうしても被爆者生活の問題になりますれば、他の一般戦災者とある程度関連をして考うべきじゃないかと、そういうことで、いままだ決定しかねておる。ことに最近におきましては戦争の爆撃による死亡者に対して弔慰金を払えと、こういうようなお話も相当に出ておりましてそういうふうな問題について私は、やはり皆一応の横の関連と申しますか、権衡と申しますか、そういうものがありはせぬかと、また考え方によっては原爆被爆者をまずやって、あとから及ぼせばいいじゃないかと、こういう考え方もあるかもしれませんが、われわれ全体として見まして、どうしても横の権衡といいますか、戦争犠牲者全部の問題について関連せしめてからでないと、なかなかこれだけはきめかねるのじゃないかと、こういうことを考えております。たとえば亀田委員は、それはそれ、これはこれと、こういうふうなお考えかもしれませんが、一般生活問題になれば、他の爆撃を受けたものと全然別個に一体考えられる問題かどうか、こういうことについての多少の私どもはちゅうちょをいたしておると申しますか、考えをあぐねておる、こういう状態でございます。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、いろいろ財政支出が無限にふえていくといったようなことになると、これはなかなか財政当局としてもたいへんでしょうし、したがって当然お考えになることだと思いますが、しかしその間に、はっきりした一つの区別があると思うのですね。  一般の爆弾による被害者と原爆被害者と。まあ、この東京地裁の裁判でも問題になったのだが、一体原爆攻撃というものは許されるのかどうか。国際法上、こういうことがやはり問題になり、東京地裁のほうでは、これは国際法上からも違法だと、それから一般の常識的な感じとして、人道上そういう攻撃手段はやはりよくない、こういうことになっております。しかし、そのほかの爆撃といったようなことは、これもしないにこしたことはないでしょうが、ともかく現在の戦争手段としては一応みんなが常識的に考えておる点ですね。ですから非常に違うわけです。被害そのものが、許されない手段でやられて、しかもその結果というものがほかの爆撃等による被害よりもあとへずっと残る問題があって、結果としても非常に違う点があるわけです。ほかの被害も、これは国のほうで救済してあげるのは当然じゃないかと思うのです、戦争の結果のやつについては。しかし、それがあるから、ちょっと被爆者のやつに対して踏み切れないというのは、多少両者を混同し過ぎてはせんか。この二つの間には非常に違う点があるというふうに感ずるわけですが、もう一度そこら辺の見解をお聞きしたい。
  26. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いまのお話のように、両者がさい然として、常識的と申しましょうか、世間的の納得が得られるかどうか。こういう問題でありまして、いまのようなことは、世間  の考えからも、そういうものはもう区別して考えられぬのだ、こういうことになってくれば、まただんだん話も違ってくる。私どもいまそれを検討しておる。たとえばこれは全然別個のものだということでもってやれるものかどうか。それで世間も一応それはやむを得ないのだというふうに納得がいくかどうか。こういうふうな問題もありますので、お話のような向きは、われわれとしてもいろいろ検討しておる。こういうことでありまして、もう一切そういうことはおかまいしません、こういうことでなくて、他の関連のことを考え、そしていまのように、原爆は身体に対する影響というものが全く別個に考えられる。こういうことで、身体に対する問題は政府も取り上げて一応の措置をした、こういうことであります。したがいまして、私ども普通の爆弾と原爆とは、人の生命あるいは身体に対する影響が違ったと、その違った部分を取り上げて、これだけは措置ができるということでやったわけでありますが、その他の問題、社会的、経済的あるいは生活的の問題についても、一切さい然と区別できるものかどうか。こういうふうなことについて、まだ割り切れないでおる。しかし、お話のような御意見もありますので、そういうことを、検討を十分加えて、そしてまた結論を出したい、こういういま段階にあるというふうに御了承願いたいと思います。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 まあ一つ十分な検討をお願いしておきます。普通の爆弾等によってやられた場合、その場できまってしまうわけですね、大部分のやつはどういうけがをするとか、こういったような点が。しかし、原爆の場合にはあとにいろいろな問題が残る。これは当然結婚とか、いろんな就職とか、そういうことに響いていっておるわけですね。非常にみんなその点で悩んでおるわけなんです。だからあまりにも被害程度からみても、非常に気の毒だと私たち思うのです。たとえば一方で政府は例の旧地主補償、こういうこともいろいろ世論はこれに対してきびしいのですが、相当前向きな形で検討しておるわけですね。そんなものよりも私は、戦争によって一つ被害を受けたあの爆撃、あるいはいわんや残虐な原爆被害者などの救済というものは、もっともっと優先しなければならぬものだというふうに思うわけですが、その点はどういうふうに考えますか、優先関係をひとつ。
  28. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはもう私が申し上げたように、一番の相違は爆撃の身体的影響というものが全く相違をしておる。そうしてあとにまで影響を残す。場合によれば子孫にまで残す、こういうふうなことが一番端的に言って、どなたがお考えになってもこれははっきり区別がつくということで、政府はとりあえず身体的影響の問題を取り上げて処理をした。その身体的影響が今後、いまお話のように社会的にも生活的にもどの程度影響するか、こういうことを検討して、それが他の爆撃によるものと、こういうふうに違うのだというふうに分析しております。むろん、全体として戦争被害者は、ある程度、できれば政府が救済したらいいと思うのでありますが、これは御承知のように、国家の財政の都合もあるからして、なかなかこれも多数の人に及ぼすということはきわめて困難であります。したがって、できるだけ特徴を選ぶというと言葉は悪いが、特徴を見て、その特徴に応じたひとつ救済をしていかなければならぬ、こういうことでありますので、繰り返して申しまするが、そういう原爆の特殊性というものがどこまで及ぶか、どこまで世間の納得を得られるか、こういうふうな立場検討しなければならぬと思うのであります。お話のように原爆を受けたら――普通の爆弾のものは後年に大きな影響を残さない、ところが、このほうは後年に大きな影響を残すために、いろいろ社会生活の上においても支障が生じてきつつあるということは、われわれはよく存じております。そういう方面でできるだけ他の一般の方と切り離し得るような特徴をつかんで、そうしてできるならば何らかの措置をとらなければならぬ。こういうことになっておるのでありまして、その辺の分析がまだはっきりわれわれも把握するに至っておらないのです。しかし、いま申したようにそういうようなことをよくこの上とも検討をして、そうして行えていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 旧地主補償のような、ああいう大がかりな調査までしなくても実態はつかめると思うのです、特徴的におやりになれば。至急そういう生活全体の実態把握してみるという調査活動を願いたいと思うのです。これは特にそのための予算まで組まなくても何か適当な経費を使ってできるのじゃないかというふうな感じもするわけでございますが、その点どうでしょうか。
  30. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは昨年の予算委員会等におきましても、これの補償に関する調査会というものをつくったらどうか、こういう御意見がありましたが、われわれはそれも検討をいたしたのでありますが、調査会をつくるとかそういうことになると、ある程度見通しと申しますか、見当がつかなければ、そういうものもなかなかつくりにくいということで、それもいまつくらないわけでございます。しかし、お話のように調査は、何もそういうものはなくてもやれると思いますからして、できるだけひとつ手を尽くして、われわれの事務の手でもって調査をしてみたいと、かように思います。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ多少こまかい点を二、三、ついでにお聞きしておきます。  今度の新しい予算によりまして、医療法の中で新しくいままでよりも前進したという面は、どの点とどの点か、端的にひとつお示しを願います。
  32. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 従来被爆者の中でも一般被爆者と特別被爆者とで扱いが異なっております。特別被爆者につきましては、原爆症という病気につきましては全額国費で行なっておりまして、しかもその際にある程度所得の低い人に対しては医療手当を支給しております。そのような関係で、従来特別被爆者になれなかった人でも、たとえば原爆が落ちてから一定期間後に入市して患者の世話、死体の処理に当たった人、あるいはその当時その人の胎内にあった者も特別被爆者になれる道を開いたということでございます。その他は点数の増加、その他単価の増等でございます。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 いままでは医療手当には差別をつけておりまはしたね。今度それは廃止されたわけですか。
  34. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 現在は所得の制限がございますけれども、この制限については特に変更いたしておりません。所得制限の全廃ということになりますと、当然いわゆる生活費の補給という点がからまってまいりまして一般生活保護法の適用の問題と関連をしますので、先ほど来大臣お答えのように原爆患者の特殊な例、原爆被爆による身体的障害という点に重きを置きまして、生活自体の援護というところまでこの法律が及んでおりませんので、それまでの考慮はいたしておらないのでございます。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 物価なりいろんな関係で、所得制限の撤廃がたとえできないとしても、制限のしかたというものについては再検討の余地があるんじゃないかというふうに考えておるわけですね。それが一つ。  それからもう一つは、物価等の関係でやはり当然金額をプラスすべきじゃないかというふうに考えているわけですが、そういう点がいままでどおりだといたしますと、実際上は前年よりも悪くなる、中身はね。これは当然そういうことになるわけでして、非常にそういう手当てを受けなければならないという立場の人から見ますると、わずかのお金が非常に大きく響くわけですが、そういう点の研究、検討はどうしてできなかったのですか。
  36. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはいろいろ考えましたが、ことしは及ばなかった。所得の制限が四十二万だったのを四十四万まで緩和した、こういうことになっております。また手当ての二千円も、私どもはお話のような考え方があると思いますが、ことしの予算ではこれが及ばなかった、しかしこれはどうしてもいまの制限緩和あるいは金額の増額、こういうことは次の機会にはどうしても私どもは考えなければならぬと、こういうふうに思っております。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 そういう医療を受けられる人ですと、たいてい職業のほうも、その間の収入がまた犠牲になるわけですね、一方では。だからいろいろ考えますと、せめて五千円程度は差し上げなければ、実際的じゃないという感じがしているわけですね。どの程度の研究をされているのか、来年度は。次の年度には考えたいということですが。
  38. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これの出発が、生活の足しといいふうなことで出発してなかったものだからして金額が低く押えられている。したがって、あるいはある程度の慰安とか通勤とか、そんなことを考えて金額をきめた。こういうことでありますが、いずれにしましてもこの金額を引き上げたい。これをどの程度かということはいままだ結論的なものを持っておりませんが、御意見も参考にいたしまして考えたい、こういうふうに考えております。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 もう一点お聞きしておきます。病院に通う手当ですね、これも出るというふうに相当期待を持っておったようですが、どうしてこういうものがはずされたのか、交通費がなければ病院に行けないわけですから、そういう人たちにとってはたいへんな問題なんです。しかし金額としてはそう大したことでないと思うのですが、どうして大蔵省との折衝で通らなかったのか、明らかにしてほしい。
  40. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 現在交通手当は原爆被爆者が、年に一回ないし二回健康診断を受けにまいります場合に、健康診断を行なう場所が限定されますので、したがってかなり遠くから来なければならない患者がございます。そういう場合には交通費がかなり負担になりますので、これについては交通費を支弁する手当てをしております。しかし一般医療の場合には医療機関が非常にたくさん指定されてございまして、かなり近くで医療を受けられますので、それほどの経費負担にはならないという考え方で、一般医療の場合には特に手当ての支給を講じておりません。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 一般医療の場合はそうですが、特別原爆症に関係のある病院というと、そういう関係の治療のできるのは、これは数は限られておりますからね、そういう場合などには当然手当てのほかに交通費分というものを出して上げるべきじゃないかと思うのですが、私が申し上げたのはそのことを言っているわけなんです。それくらい出していいのじゃないですか。どうしてそんなわずかなものが消えてしまうのか、これは非常に期待を持っているわけなんです。どうですか。
  42. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 現在原爆医療を受けます患者は、広島、長崎等に非常に限定されておりまして、したがって件数ももう大部分がそこに集まっておりますので、そういうふうに考えているわけでございますが、たとえば北海道等の場合であればどうかということになると、多少問題もあろうかと思いますが、そこら辺は実情を少し検討してみたいと思います。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 それはあなた実態を、それこそやはりもう少し実情を調べてもらわぬといかんですね。そういう関係だけじゃないですから――私は大阪だけしかそういう具体的なことになると知りませんが、やはり原爆症という関連の直接の治療ということになりますと、日赤なり、阪大なり、やはり限られておる。そこへ相当遠くから行くという人もやはりあるわけでして、これは実態を調べて、それに合うようにこの程度のことはひとつ考えてもらいたいことをお願いしておきます。いろいろたくさんあるのですが、ひとつ基本的な問題と、そして最小限医療に関していろいろ出ておる希望という点についてだけ質疑をして、一応この程度にして終わります。
  44. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は、昨日来交通事故によって被害者の立場から見ましていろいろお聞きしたいことがありますので、きょうもそういう角度から御質問申し上げますが、なお、若干その他の問題にも触れたいと思います。  まず第一に、私はそういう被害者の立場から見てお礼を申し上げなければならぬことがあります。それは二月の二十日付で救急病院等を定める省令というものを出されまして、これを四月十日から実施されることになりました。従来被害者の立場から見て非常に大きな問題でありましたのは、救急車で収容された場合に、頭部に非常なけがをした者が運ばれて行った先の病院は小児科であったとか、産婦人科であったとかいうことで、手当が完全、迅速に行なわれないために、命をとりとめることのできる者が死んでおる。けがもそう大きくならずに済むものが予後が非常に長くなる。そういうようなことで、ぜひ救急治療に十分効果のあるような、役立つような病院を指定してほしいということを心から願っておったわけですが、今度の省令でその措置がとられましたことにつきましては、これは将来も相当起こるであろう、救急を必要とするような人たちにとりましては、非常に親切なあたたかい行政として心からお礼を申し上げたいと思うのです。そこで、その省令の個々の内容を検討してみますというと、この点はどうなっているのであろうかという点については一応の疑問も起こりますので、そのことについて若干お伺いいたしたいと思う。基準が四項目示されております。時間がありませんので簡単にいたしますが、この四項の一つを備えておる、あるいは二つを備えておるということならば、比較的そういう病院、診療所を見つけるのに困難ではないと思うのですが、私はこの四項目を総合してみますというと、この四つの条件を備えております病院診療所の数というものは、政府で期待されるほど数があるかどうかということについて疑問を持つわけなんです。そこでいま申しましたように、基準の四項目を具備しておる病院、診療所の数がどのくらいあるかということについてのお見通しをお伺いしたい。
  45. 大崎康

    政府委員(大崎康君) 基準に該当する病院がどのくらいあるかというお尋ねでございますが、実はこの省令、ただいま各所におきまして会議を開きまして、都道府県に通達いたしておる段階でございます。通達が都道府県で実施の段階に相なりますと、省令の規定によりまして各医療機関からそれぞれの申し出があるわけでございます。私どもで実はいま残念ながらその数を把握することができないような状態でございます。ただ、病院は御案内のとおりに、現在約六千六百程度でございまして、その中で外科というものを診療科名として標榜いたしておるものが四千三十四あるわけであります。したがいまして、その辺の数から考えまして、その全部が該当するとはとうてい考えられませんけれども、このうちのある程度のものがこの基準に該当するのではないか、こういうふうに考えております。的確なことがお答えできないのはまことに遺憾でございます。ここでお許しをいただきたいと思います。
  46. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は特に考えますのは、消防庁からいただきました資料によりましても明らかなのでありますが、三十七年の一月から一二月までの救急出動件数が十八万九千二百九十七ということになっております。このうち交通事故によるものが四〇%でありますから七万六千ということになる。そこで一日平均を考えますと、五百十件ということに全部ではなる、交通事故だけでも二百四十件ということになる。収容した者が、ちょっとばんそうこうでも張ってすぐ自宅に帰れるなら別ですが、その者が診療所、それからして病院等に滞留する場合が相当多くなってくると思う。そういうときに、はたして病院、診療所を確保することができるかどうかについて一応疑問を持つわけです。その辺のことはどうですか。
  47. 大崎康

    政府委員(大崎康君) 交通事故が起こりました場合の最初の救急機関は、省令にも書いてございますように、すべての医療機関すなわち病院、診療所としてあるわけであります。したがいまして、そこでいわゆるファースト・エイドというものが与えられるわけであります。その中で特に病院に収容してしかるべき者というものが省令で規定されました病院に分類収容されるといいますか、そういうことになるわけであります。その辺につきましては、実情を勘案いたしまして十分実情に沿うようにいたしたいと思いますが、現在の省令の基準程度でその辺の実情に合うと一応考えまして施行いたした次第であります。
  48. 野本品吉

    ○野本品吉君 特に交通事故の場合を考えますというと、頭部負傷それからして車で押し倒されて頭部に欠陥を生ずる。したがって、脳外科ということが非常に大事な問題になってくると思うのであります。将来、その問題については十分お考えのこととは思いますけれども、この四つの条件を整えた病院、診療所、特に脳外科というところに重点を置くべきではないかと私は考えるのですが、いかがですか。
  49. 大崎康

    政府委員(大崎康君) 救急病院で事故に対して診療に従事される方につきましては、これはある程度の専門的な知識と経験とが必要なわけであります。したがいまして、私どもにおきましては、今年度からそういう医師の研修を行ないたいというふうな考えを持っておりまして、予算といたしましては約九百万程度のものを研修会費として要求いたしております。これはすでにわが国の最高の各専門家の方々にお集まりをいただきまして、その研修の内容等につきまして詳細検討いたしまして、すでに都道府県においてそれぞれの措置をいたしているわけであります。その中で脳外科といいますか、脳神経外科といいますか、そういうようなものが一つの重要な分野になるということは先生が適切に御指摘になったとおりであります。これにつきましては将来とも、そのような分野の知識をこれらの救急病院の医師が身につけられますようさらに私どもとしては努力いたしたいと、かように考えます。
  50. 野本品吉

    ○野本品吉君 次に、この病院、診療所の指定については、病院、診療所側から協力の申し出をするということになっておりますね。そこで、いままでの大体の医療関係の方面の協力の申し出ということに対して、厚生省としては十分な期待がお持ちになれますかどうか、その辺。
  51. 大崎康

    政府委員(大崎康君) この点につきましては、各医療機関関係者、それから特に医師会等の諸団体を通じましていろいろお願いを申し上げているところであります。国立病院をはじめ、いわゆる公的医療機関と申しますか、そのようなものにつきましては、その事業目的に照らしまして、このような救急病院たる資格にふさわしいと考えます。その他の一般病院におきましても、それぞれ私どものほうでお願いといいますか、御協力を願い出ておりまして、その点につきましては十分な申し出があるというふうに私どもは考えております。
  52. 野本品吉

    ○野本品吉君 その協力の申し出をして、その後、人命を守っていくという非常に重大な使命を持っておるその協力病院、それから診療所等に対する国としての処遇はどういうことになりますか。
  53. 大崎康

    政府委員(大崎康君) これらの処遇については、実はいまのところ考えていないわけでございます。ただ、一般の民間機関につきましては、これは医療金融公庫等の貸し出しがございます。したがいまして、省令に定めたいろいろな器械器具につきましては、所要の御要求があれば医療金融公庫から貸し出しをいたしたい、こういうふうに考えております。
  54. 野本品吉

    ○野本品吉君 そうしますと、協力を申し出たと、厚生大臣からその指定を受けたということによる社会的な信用がつくとか、高まるとか、そういう点で満足していただくことにして、経済的な面、金の面等からは別に何らの処遇も与えられないということに了解していいわけですか。
  55. 大崎康

    政府委員(大崎康君) 救急医療につきましては、それぞれ患者自身あるいは保険等による負担がされるわけであります。したがいまして、いまのところ、私が先ほど申し上げました医療金融公庫による貸し出しという点を除きましては、目下のところ考えていないわけでございます。
  56. 野本品吉

    ○野本品吉君 これは、大臣、いま厚生省で御期待になっておりますように、順調にいくというはっきりした見通しがあれば私はたいしたことではないと思うんですけれども、ほんとうに協力機関としての病院、診療所の使命を遺憾なく国民のために果たすということになるというと、必要な場合には相当国のほうである程度のことを見てやらなければいけないということも起こるんじゃないかと思うんですけれども、それはどういうふうにお考えになりますか。
  57. 小林武治

    国務大臣小林武治君) まだ一応これからの推移を見たいと、こういうふうに考えておりますが、とにかく救急指定の指定を受けるということは、その機関の社会的信用が増すと、こういうことでございますので、これらのいまのようなやり方で差しつかえがあるということがこれからわかれば考えまするが、いまの状態では、そういうようなことで、国の指定を受けるということがその信用に非常な大きなプラスになる。こういうふうなことで一応様子を見たいと、こういうふうに思っております。
  58. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は、そういういろいろな点について考えますのは、非常に国民の幸福、特に生命を守るためにりっぱな線を打ち出していただいたことに対して敬意を表するだけに、この措置が十全の効果をあらわすようにということを念願しているから申し上げるわけなんです。  そこで、その次にお伺いしたいのは、これは消防庁の関係になるか知りませんが、先ほど申しましたように、十九万件も救急出動を全国的にしておる。そこで救急車と応急手当て要員の問題ですが、従来救急車は来たけれども、医者も看護婦もついてこないということが相当言われている。現在救急車一台について隊員三人、それから業務実施に必要な器材及び材料、こういうふうに規定されているようですね。そこで救急車の出動する場合に、救急要員というものは、いま十分に配属され、機能を発揮しておられるかどうか、実情についてお伺いをしたい。
  59. 大崎康

    政府委員(大崎康君) 現在の状況でございますが、現在も大体三名ないし四名の救急隊員が乗っているわけでございます。これはお話のように、救急隊員いわゆる消防吏員でございます。それに対しまして、日本赤十字社あるいはごく一部では自衛隊のお医者の関係学校というようなところに講習をさせて、最少限度の教養を身につけさせ、また経験を積ませている、こういう実情でございます。ただ御承知のように、現在までといいますか、四月九日までは事実行為で、消防機関がいわばサービス的に行なっているわけでございます。ただ昭和十一年からの長い歴史を持っているということでございますが、先ほどの厚生省令は四月十日からでございますので、それと歩調を合わせまして、四月十日から私どもの消防機関の救急業務も法律、制度化するわけでございます。お尋ねより少し進みまして恐縮でございますが、四月十日以降は、ただいま申しましたように、私のほうで実施基準を定めまして、そうして講習会も百三十五時間を予定いたしておりますが、お医者の知識――最少限度になりますが、十分なる最低限度の知識を与えるように、今度は法制化し制度化した以上は、われわれとしての範囲ではございますが、十分なる教養を身につけさせる。さらに将来は医師を搭乗させるということを実施基準といたしているのでございます。
  60. 野本品吉

    ○野本品吉君 厚生省令の前文にもありますように、消防法の第二条第九項の規定によって云々と、こうあるのですね。ですから、救急の仕事というものは、病院に収容して後のことは、厚生省が心配すべきことですが、それ以前のすべてのことについては消防庁は責任を持たなければならぬ、こういうことでしょう。そこで救急出動をする場合に、交通事故が起こってさあすぐ救急車を出す、そのときに車と一緒に一応最も初期的な手当てぐらいできるような看護婦なり、そういう者が充足されていないというと、せっかくのことが空になってしまう心配があるわけです。いままでそういう者は全部乗って出ているのですか。
  61. 川合武

    政府委員(川合武君) 応急手当てができると申しましても、ただいま申しましたように、救急の医療機関に運びますまでの最少限度の知識ということでございまして、具体的に申しますと、ざっくばらんに申しまして、止血、副木、包帯巻き、人工呼吸、この程度の応急手当てを消防吏員としての救急隊員はやっておるわけでございます。問題は、非常に容態の悪そうなときには動かしてはいかがかというような場合もございますから、そういうときには、運ぶ前にお医者さんを呼んでくる、至急呼んでくるというような、看護婦さんも連れてくるというような措置はいたしますけれども、原則として、私どもの現在やっておりますのは、ただいま申しました程度の応急手当てでございまして、早く病院へ運ぶということをやっておるわけでございます。
  62. 野本品吉

    ○野本品吉君 そこで、消防庁としては、いまの状態ではそういう要員が十分でない。したがって、要員の確保と、その要員に対する救急措置の訓練、指導、そういう点についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  63. 川合武

    政府委員(川合武君) 現在までもやってはおりましたけれども、くどくなりますが、現在までのは事実行為と言いますか、サービスでやっておりますわけでございます。今後法制化しました以上は、御指摘の点について十分注意をいたさなければなりませんので、消防吏員たる救急隊員が応急手当てと申しますか、医療行為みたいなことは、これはやりませんが、しかし、素養としては知っておかなければなりませんので、私どものことばでは衛生技術と言っておりますが、防疫、解剖生理、内科、外科、産科、看護等につきまして、大体百三十五時間の講習を経た者でないと救急隊員になれない。要するに、消防吏員でもそれじゃ間に合わせに非番の者が飛んで乗り込むというようなことでは、かえっていかがと思いまして、そういう講習を四月十日以後指導基準といたすわけであります。なお、将来は漸次医師、看護婦もそれに乗る。乗って救急車の中に搭乗してもらうという指導方針をいたして、各関係都市にさような指導をいたしておる状況でございます。
  64. 野本品吉

    ○野本品吉君 いまの救急要員の確保と、その教育訓練の問題とが厚生省のほうで救急の病院、診療所を指定するということとこれは一体になって初めて両方が完備されて、初めて私は身体生命を守ってやることの大事な目的が達せられると思うので、いまの要員確保の問題、教育訓練の問題につきましては、今後とも一段の御努力をひとつ願いたいということを強く要望いたしておきます。  大臣がおいでですから、時間もありませんから、一、二の点につきましてお考えをいただきたいと思うのです。それは現在の児童委員ですね。児童福祉法による児童委員というものは、児童福祉法の制定当時のいろいろな事情から言いまして、民生委員がこれに当たる、こういうことになっておりますことは申し上げるまでもありません。そこで、その民生委員が兼ねております児童委員というものは全国で現在どのくらいおりますか。
  65. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 約十二万名でございます。
  66. 野本品吉

    ○野本品吉君 私の理解するところでは、民生委員を児童福祉法に基づく児童委員にしたということは、当時の社会的な、社会の一般的な考えといたしましては、いわゆる不良児童、不良の児童は生活保護を必要とするような貧困家庭、低所得階層から出るものだという一つの先入観の上に立って、そういう制度が打ち出されたと思います。私は青少年の非行問題について深い関心を持っておるのですが、そこでいまの状態は児童福祉法の制定された当時の状態とは全く違っておると思うのです。そこでもう一つお伺いしたいのですが、その民生委員の平均年齢というのはわかりますか。
  67. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) いま手持ちの資料がございませんから正確ではございませんが、たしか四十五、六歳だと思います。
  68. 野本品吉

    ○野本品吉君 この点をひとつ大臣にお考えをいただきたいと思うのです。さっきも述べましたように、民生委員というものを児童委員にした当時の社会的ないろいろな状況と現在の状況とは全く違っておるといってよいほど違っておると思うのです、青少年問題を中心にして考えた場合にですね。そこで私は、そういう法律制度によって青少年の健全育成をはかっていくということもむろん必要でありますけれども、やはり青少年の問題を解決する最終的なかぎというものは、まじめな青少年によって青少年を守っていく、青少年の手による青少年の保護育成、これが最後のかぎ、最終的にはそう考えるべきだと思うのです。そこで、いまの民政委員の方が児童委員になっているということ――むろん民生委員という方はりっぱな方ばかり選任されておるのでありますけれども、社会的な諸条件の変化、それからその社会の中に生まれてくるいろいろな青少年を中心とする問題、それらに対処して、現在そういうものに対処して青少年の問題を扱っていくということになりますというと、できるだけ若い年齢の者、――年寄りを排斥するわけではありません、高い人格と豊富な経験を持っている年寄りも必要でありますけれども、青少年に接触するいろいろな制度上の要員を若い層からこれを手がけていって、そうして年寄った人とうまく結びついて活発な活動をする、こういうふうにもつていかなければいけないのじゃないかということをいつも考えております。これは法務省でやっております保護司の問題でも私はそう考える。要するに、青少年を青少年の手によって守る。青少年の手によって正しい方向へ指導していくというものの考え方に立って、保護司もそうだし、児童委員も若い者を相当数起用すべきである、こういうふうに考えておるのですが、民生委員を全部児童委員にするというたてまえからは、そういうことは現実問題として私は困難であろうと思います。その点について大臣何かお考えがありましたら……。
  69. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはもう野本先生のおっしゃるとおりで、民生委員というのは大体生活扶助あるいは低所得階層を対象として沿革的にできておる、こういうふうなのでありまして、いまの児童は、もうそういう低所得階層などに限定しないで、一般少年の健全育成、こういうところへも転化してきておりますから、私はいま民生委員が全部児童委員を兼ねるという制度は時代に合わない。これはどうしても私は改革をしなければならぬということで、お話のように、できるだけ若い者を別途に任命したらよかろう、こういう考え方を持っておりますので、その向きのことを私は事務当局にも指示をいたしまして、そうしていまの時勢に合わせるように児童委員の任命のしかえをしろ、一度にはできませんが、順次そういう方向にこれは直さなければならぬということで、御趣旨のとおりこれから進めたいと、こういうふうに思っております。
  70. 野本品吉

    ○野本品吉君 ぜひそういう方向でお進めいただきたいということを大臣にお願いを申し上げておきます。  もう一つこれもお伺いしたいのですが、いま青少年対策、青少年問題といいますと、この非行化した、火をつけたとか、強盗とか強姦とか、人を傷つけたとかいう、そういう凶悪粗暴の犯罪を犯した青少年に眼を奪われて、一番大事な点を見落としているのじゃないかという考え方を持っているのです。それはそれらの青少年よりも最も多数を占めておるのは、放任しておけば犯罪を犯すおそれのある虜犯少年の問題だと思う。この虞犯少年に対して、適切な有効な手当てが行なわれることによって青少年非行の源を断つことができるので、したがって、何年か後には非行を犯す少年という者が少なくなってくる。したがって、青少年対策の重点を虞犯少年対策に指向すべきではないかというのが私の一つ考え方なんです。これは児童福祉法に基づきまして、いろいろと子供の健全育成についてお骨折りをいただいております厚生省のいろいろな施策、活動、そういう面においても虞犯青少年に対する対策という角度から、厚生省の行政の各面においての配慮を必要とするのではなかろうか、こういうふうに、私は考えておるのですが、どんなものでしょうか。
  71. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはお話のとおりでありまして、私ども児童を対象にしていろいろなことをやっておりますが、いまでは就学前の児童を保育所というようなところでもっていろいろ手当てをやっておりますが、学校へ行っておる子供の、学校が済んだあとの問題が非常にいまやかましくなっております。特に都会等におきましては、せっかく家へ帰っても家へ入れない、両親が職場に出ておる、こういうようなものが非常にふえまして、近ごろかぎっ子なんということばまで出ておりますが、そういったものに対する対策が、まあ社会教育の面に属すると思いますが、文部省のほうでこれに手が及んでおらぬ、また校外指導と申しますか、そういうものも十分でないということで、私どもはこれらの子供に場所を与える、こういうことを強く考えておりまして、たとえば全国的にも児童会館をつくるとか、あるいは来年度からプールを全国的に公立のものも施設してやりたい。それから遊び場、児童遊園あるしは児童広場、こういうものもつくる、また、これらにも適切な指導員を置いてやっていきたいということで、また校外補導ということでなくて、要するに、子供にとっては遊びが非常に大事だ、そういう意味でその方面のことに力を入れております。それでいま場所によっては学童保育というようなことまで始めて、学校から帰ってきたものの行くところのない者は、保育所に一部入れて学童保育もしたい。そしてそのほか、いま私の申しましたいろいろの施設をつくって、集団的に仲よく遊ぶ、そして家に入れない者は夕方までそこでもって収容する、そこで遊ぶ、こういうふうなことを多く心がけて、全国的にいまさようなことを進めていきたい。特に東北方面においては、雪が降れば集まるところがないというので、これらの地域には児童館等もできるだけ普及させたい、こういうふうに思っておりまして、いまのような、もう悪くなった子供でなくて、悪くなることのないように、ひとつそういうふうないろいろの手だてを与えていこう、こういう考え方を持っております。お話のようなことをひとつ進めたいと思っております。
  72. 野本品吉

    ○野本品吉君 ただいま大臣からお話のありましたように、子供の快的なしかも清潔な環境を与えるということは、非常に大事なことで、児童遊園地その他の施設の充実に骨を折られていることも十分承知しております。そこで問題になりますのは、私はこれは文部大臣にも強く要請してみるつもりでありますが、現在東京の、大都市の中に住まっている子供が遊びに行くにも遊び場がないということで、自分の家は子供の生活の意欲を満たすだけの条件を整えておらない。といって遊びに行くにしても遊び場がない。やむを得ず広場といえばやはり駅前などになってくる。そこにはいろいろな者が集まってきて、類は友を呼ぶということで、だんだんおもしろくない方向へいくこともわかっているのですが、私は、農村は別として、大都市における学校開放の問題がある。どういうものか、最近学校を開放することに対して、教育委員会その他等が十分な協力をしてくれないという声を私は盛んに聞くわけです。そこで、厚生省が児童遊園地その他子供に快的な遊び場を与えることに努力はしているが、いまだそれが十分でないのです。そういう施設なり条件が十分整うまでの間でも、学校を開放しろということを、児童保護、児童福祉の立場から要請されてみてはどうか。これについて大臣、ひとつお考えはありますか。
  73. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはお話のように必要だと思います。学校管理上教育委員会等は非常にしぶっておりますが、これから少なくとも運動場とかプールとか、そういうものも、学校が授業が済んでから後も一定の時間まで使用できるようにしなければならぬ。特にお話の大都会には、われわれせっかくつくりたくてもなかなか広場もない、こういう事情でありますので、そういうこともひとつ正式に文部省にも要請をしたい、こういうふうに考えます。
  74. 野本品吉

    ○野本品吉君 実は東京の大学の学生、大学の数で九つ、それから高等学校で十二、三の学生諸君の中には、まじめにぼくたちの力で青少年を守ろうじゃないかという運動を実はやっているわけです。それらの諸君が学校へ借りにいっても、学校を開放してくれない。われわれが責任を持って子供と一緒に遊ぶのだからといっても、貸してくれない。それは、学生だから乱暴するので心配して貸さないのかと思ったところが、ほかからの要求に対しても教育委員会その他等でなかなかこれに応じてくれない。これは学校管理という一つの責任があるからでありますけれども、子供を守るという大きな教育的な立場から見れば、当然その要請には応じて、そうして学校の管理に対するある責任を要求し、ある条件のもとに学校を開放したら、東京全都内にたちどころに幾百の子供の遊び場ができるので、これは非常に子供のためにしあわせじゃないかと思うのです。ひとつ私は文部大臣にもそのことは要請するつもりでありますけれども、厚生大臣は、児童福祉の立場から、文部大臣とひとつお話し合いを願いたいということをここでお願い申し上げておきます。これで終わります。
  75. 山高しげり

    ○山高しげり君 私は、母子福祉について二、三お尋ね申し上げたいと思います。  その最初に、今国会に政府が母子福祉法案を提出しておられますことにつきまして、厚生当局いろいろお骨折りがございましたことと、その点いささかお礼を申し上げたいような気持ちでございます。承りますと、法案の提出に踏み切られるまでに、この母子福祉という問題は何か戦争のあと始末のような、戦争未亡人ということばがいまだに残っておりますけれども、したがって、ここで母子福祉も一つの法律にするということに対しても、もうそれは終わったのではないかという考え方が、政府の部内にもないでもなかった。ここであらためて法案にするということは、一種の母子福祉のリバイバルと申しますか、そんなことでお骨が折れたというようなことも聞いておることでございますが、世間には交通地獄ということばもございまして、交通事故による新しい母子家庭というものが今日相当発生しております。また、日本の経済の高度成長の陰に非常に多くの建設事業が行なわれておりまして、それが出かせぎの形になって、地方の家庭から夫が出てまいって、そうして都会における工事現場の事故死にあうといったようなことから、またあらためまして新しい母子家庭が相当数発生しつつあるというふうに、決して母子福祉は戦争のあと始末ではないというふうに私どもに考えているわけでありまして、このときにあたって、独立の法律ができようとしておりますことにつきまして心から喜ぶとともに、当局のお骨折りに対して一言お礼を申し上げたいと思うのであります。  そこで、その内容等につきまして幾つか伺ってみたいのでございますが、最初に、全国家庭福祉実態調査というものを本年はなされるようでございますが、これはいままではおそらく母子福祉の母子家庭の実態調査というような名称で行なわれてきたものの継続というようにも考えられるのでございますが、家庭福祉ということばはおそらく初めて出てきたのではないか。その家庭福祉ということばの定義と申しますか、その内容を厚生省御当局としてはどんなふうにお考えでございますか、これを承りたいと思います。
  76. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 御質問のように、母子家庭の実態調査は五年ごとにやるということで、いままで二回やったのでございますが、昭和四十年がその五年目になるのでございますけれども、昨年母子福祉資金等の貸し付けに関する法律案の御審議の際に、母子家庭の実態調査をもっと早目にやるべきだという御意見もありまして、三十九年度予算で家庭福祉実態調査というような名目でございますけれども、主として欠損家庭、中心は母子家庭でございますが、その調査を年限を早めまして、四年目に実施するということにいたそうと思っておるわけでございます。
  77. 山高しげり

    ○山高しげり君 そういたしますと、内容はよくわかりましたのですが、あらためて家庭福祉という名称をお使いになったのには特別な意味はないということでございますね。
  78. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 実は児童手当のいろいろな準備をやるために、三十八年度におきましては、家庭養育費調査というようなものをやりましたが、家庭対策をこれから強化するために子供を持った家庭の実態を調査してまいりたい。その一連の施策として母子家庭の実態も調査したいということで、単に母子家庭の実態調査だけを一回限り、あるいは五年目ごとにやるという意味でなしに、家庭実態調査の一環として来年は母子家庭、特に欠損家庭の実態調査をやるという趣旨でございます。
  79. 山高しげり

    ○山高しげり君 私どもちょっとこだわるようでございますけれども、たとえばほかに例を引きますと、婦人福祉ということばがあるのですが、これは厚生省ではおそらく最初は婦人の保護更生という意味にお使いになっていたように思います。狭い意味にお使いになっていたように思いますが、世上では女のしあわせというようなこと、すべて婦人の福祉というようなことばに解釈する向きも出ておりまして、したがって、家庭福祉という新しいことばを使われますと、これはまた世間がしろうと的にかってに内容を考え、幾らか概念の混乱というものが起こるのではないかと思いましたので初めに承ったわけでございます。  それでは次にお伺いいたしたいと思いますが、母子福祉の法案のこまかい御審議はまた別の機会にあると思いますが、その大きな内容になっております貸し付け金の問題でございますが、私どもは今回の母子福祉法案を拝見いたしましても、母子福祉の理念というようなものが打ち出されておりまして、必ずしも低所得階層の母子家庭だけを対象にはしていらっしゃらないという考え方はわかるのでございますが、さて対策という具体的なことになりますと、結局母子家庭の実情に合わせて対策というものが立てられます以上、母子家庭はほとんどいまだ低所得階層にとどまっているというその現実の上に立って仕事が進められるわけでございます。したがって、この母子福祉貸し付け資金というものは相変わらず新しい法律の大きな中軸の一つになっているように考えられるわけでございます。こまかい各種の貸し付けにつきましては、今後は政令によるとか、いろいろいままでよりも進んだお考えも打ち出されておるのでございますが、ここにひとつ非常に母子家庭が強く要望をしておりながら、三十九年度予算案の中でどんなふうな取り扱いになっているのか、どうも新しく貸し付けをお考えになっておいでにならないのではないかと思われるものが入学支度金というものでございます。これは前国会におきまして、衆議院におきまして附帯決議にもなった事項でございますので、当局としては入学支度資金というものをどんなふうにお考えになったか、これが思うように実現できないということであれば、その理由等も伺いたいと思います。
  80. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) この問題は御質問の中にありましたように、昨年の附帯決議にもございまして、厚生省としてはこれが実現のために努力をしたのでありますが、ついに実現ができなかったのであります。その理由は、財務当局の見解では、育英会の奨学金、世帯更生貸し付け金等に関連がある、ただ母子福祉の関係だけで入学支度金を認めるわけにはいかぬであろう。したがって、他の制度に波及するとすると、当然新規の所要財源が多額に上るというようなことから、財政上の配慮から認めることができないというような理由でございました。
  81. 山高しげり

    ○山高しげり君 このことは大臣に伺ってみたいのでございますが、昨年の国会でも母子福祉資金につきましてはいろいろ両院で御論議がございました。そうして、この母子家庭の実情から申しますと、子供にかけている母親の望みというのは非常に強いものでございまして、この子供をりっぱに育て上げて社会に送り出したい、その望み一筋に生きてくるわけでございますが、したがいまして、母子福祉資金の貸し付けの中で、就学資金の貸し付けを要望いたします母親が非常に多いわけでございます。最初のうちはそうでもなかったでしょうけれども、昨今はほとんど各県の貸し付けの一番上位に就学資金というものが位しているのではないかと考えるのでございますけれども、昨年の国会で子の就学資金は文部省が関係をしておいでになる日本育英会の奨学金と同じような性質の金であるから、将来はこれは一本にすべきではないかというような御意見も出たやに聞いておるのでございます。その点等につきまして、大臣はどんなふうにお考えでございましょうか。一本にしたほうがいい、あるいはすべきでない、その辺の大臣のお考えをこの際承っておきたいと存じます。
  82. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 実は私はこの問題に深く関与をしておらなかったために的確なお答えができないと思いますが、いまお話のように、母親が子供の成人あるいは教育ということに重点を置いていることは十分察しがつくのでございまして、母子の特殊事情といたしましても、奨学金そのものが一般的の問題でありますので、きめがこまかく手が届くかどうかということは、これはなかなか予側ができません。したがいまして、これらの問題は、母子の特殊事情としてやはり考えたほうが手が届き得るんじゃないか、こういうふうに私は考えております。
  83. 山高しげり

    ○山高しげり君 ただいまの大臣のおことばを聞きましてたいへん安心をしたわけでございまして、きめがこまかく行き届く、これが非常に大切な点だと思っておりますので、同じ学校へ行く金を貸すのだから、十ぱ一からげにはなさらないというお考えはうれしいと存じます。  そこで入学仕度資金でございますが、低所得階層に相変わらずとどまっている母子家庭の母親が、ようやく義務教育を終えまして、高校もしくは大学等に子供を進学させます場合に、今日入学仕度資金というものが必要になってまいった。数年前にこの法律が最初には持っておりませんでした仕度資金という貸し付けが新設をされましたのは、義務教育を終えて社会に働きに出ていく母子家庭の子弟のために、被服その他の就職の仕度資金が要るということでこの種目が新設をされたわけでございますが、今日では進学に際しての入学仕度資金の要望が非常に強くなってきたということでございまして、同じ仕度資金ではございますけれども、学校へ行く子供は働きに出る子供より、幾らか家計に余裕があるのだから、入学仕度資金のようなものは、不必要だという考え方もないではないようでございますけれども、今日の社会におきましては、上級学校に進学をさせるということが、子供の将来の就職にも直接関係をしてくるわけでございますので、入学仕度資金というものは将来ぜひとも新たに設けていただきたいと、われわれは強く思うわけでございますが、ただいま局長が仰せになりました育英会あるいは同じ厚生省御所管の世帯更生資金、みな一連の関係にあるということになりますと、大蔵省としては財政上の理由ということを強く打ち出されてくるのだと思いますけれども、大臣がお考えのように、母子家庭というものをこまかく、あたたかく行き届かせなければならないというお考えでございますれば、厚生省としては将来入学仕度資金というものをぜひ実現してみたいという意欲を持っていただきたいわけでございますが、その点もう一ぺん伺いたいと思います。
  84. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはもういま私があなたにお答えしたように、ここに局長もおりますから、さような努力を十分されると、そういうように思います。
  85. 山高しげり

    ○山高しげり君 努力をするというおことばを聞きまして、ぜひこれはひとつお約束を願い、将来に望みをかけたいと思います。  その次にお伺いをいたしたいのは、母子相談員の問題でございます。各種の資金の貸し付けを受けました母子家庭、経済的にまた精神的に多種多様の悩みを持っている人たちにしっかり子育てをするようにというので、この法律ができました最初から母子相談員の制度というのが設けられてまいっております。法律もすでに十年の上を経過をいたしまして、ほんとうに十年間一日のごとくこの母子相談員という人は母子家庭の友となって働いてきておるのでございますが、法の中に生まれました最初から非常勤という形でございまして、このためにこの人たちが非常な苦しみをいたしながら今日に参っておるわけでございます。そうしてこの人々の中から、ぜひひとつ制度を常勤にしてもらいたいという要望は非常に強いのでございますが、今度の法案の中には、常勤制に踏み切ってはいただいておらないのでございます。十年やってまいりまして、法がここに拡大強化をされるという場合に、なぜこの際常勤に踏み切っていただかれなかったのかということについて御説明を願いたいと思います。
  86. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 母子相談員を非常勤にいたしました当時の理由としましては、民間の未亡人の中から適当な人を随時採用をしたいというような趣旨もありまして、一般の公務員ですね、一般の任用制度によりまして、いろいろな資格、あるいは年齢等の制限がございますから、非常勤になったわけでございますが、その後、いろいろ相談員の方たちの御意見も聞きまして、もちろん、年齢が五十一歳から六十歳までの方が三六・二%、六十一歳以上が四・八%というようなことでございまして、常勤にいたしますと、一般公務員となりますから、五十五歳なり五十六歳で勧奨退職というようなこともございまして、いろいろ問題はありますが、大多数の皆さんが常勤を要望されておりますから、実は関係方面には常勤ということで折衝をいたしたのでございますけれども、他の厚生省の非常勤のいろいろな職制との均衡等がございまして、実現を見なかったのであります。しかし、将来常勤になれるようにひとつ努力をいたしてみたいと思います。  なお、非常勤といいながら、常勤的な非常勤と申しますか、形態をとっておりますものが五五・九%ございます。また、公務員として採用されております者も六・一%ございますから、こういうような勤務の形態を現状でもできるだけ進めるように地方庁を指導してまいりたいと思っております。
  87. 山高しげり

    ○山高しげり君 局長お話で、当局としては常勤制を実現したいと努力をなさったと、よくわかりました。ただし、同じ省内の他の似たような制度との均衡の関係もあって云々と、これも現実の問題としてはよくわかるのでございますが、そういうふうに横のつり合いをふだんお役所がそんなに横の連絡がよくおとれになっていないような場合が多いのに、このときだけはえらく横の連絡がよくおとれになったみたいでございますけれども、均衡、均衡ということだけをお考えを願っても、やはり現実に即した行政をしていただくということになりますと、あの程度これを踏み切るだけの強い熱意を、やはり当局にお持ちをいただきたいわけでございまして、将来は努力をするとおっしゃっていただきましたので、このことも私ども将来に期待をかけたいと思います。で、母子相談員の声をお聞きになったと、これは確かに正しい方法と思うのでございますが、現在の母子相談員の声も実はまちまちだと思います。いまおっしゃったように、民間の未亡人が採用されているというような場合には、仕事はまあしろうとでもできるのだから、非常勤の制度だから、毎日出てこないでもいいのだからというようなことで喜んでその任についた人たちは、お示しのとおり、もう高年齢でございまして、公務員ということにはなりにくいと、こういう事情もあると私どもにもその点よくわかるのでございますが、やはり大所高所から日本の社会福祉を進めていくという点から申しますと、ある段階にはお気の毒でも、あとに退いていただいて、前向きに制度を進めていかなければならない。もちろんそのときに、それについていかれない方たちに対しては、これまたあたたかい私はあと始末をしていただきたいということを切望するわけでございますけれども、将来に望みをかけさしていただけるというお答えに満足をいたしまして、母子相談員の問題は終わりますけれども、ついでながら申し上げますが、現在の母子相談員の処遇というものが非常に低い、高校を出てくる若い人よりもっと低いというような現実には、いま少しお考えが願いたいわけで、非常勤なんだから、何もこれで食べなければならない身分じゃないはずだからと、こういうことは今日言えないと思うんです。やはり一つの職業として、ことに母子家庭の出身者が多いとすれば、父のない家を経営しながら、未亡人としてその働きによって子供を育てているということにおいては、相談の対象者と何ら変わらない立場の人でございます。まあ大臣おいでになりますから、ついでながら申し上げますれば、この母子相談員を一つの前例として生まれてきたような売春防止法における婦人相談員でも、その点やはり非常勤ということで、いつでも同じ処遇で横の均衡をとってきているということがございますので、常勤にならないまでも、母子相談員の処遇には一段の御配慮が願いたいわけでございます。この点につきまして、ついでにこの際お伺いをしておきたいと思いますのは、この母子相談員というものが、予算のワクがございますから、福祉事務所単位に一応置かれている、新市等には置かれないというような現状もございますので、各府県におきまして随時補助機関のようなものが設けられております。これにつきましては御当局としてはその補助機関というものについてどうお考えでございましょうか。
  88. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 母子相談員の処遇の問題にからんで御答弁を申し上げすまが、御承知のように、処遇改善のためには資格の問題がからんでまいります。また勤務の形態に問題がございます。そのために、実は常勤にしたかったのでありますが、先ほど申しましたように、他の制度とのつり合いで実現ができなかった。しかし、母子相談員が最も実績をあげまた経験を経ておられますから、これを突破口にしてひとつ常勤制度というものを確立して、こういう専門家の制度というものを実現したいと考えておるわけであります。現在のところは平衡交付税の積算単価で、給与は一万二千円程度であります。これも勤務の形態が非常勤ということでこうなっておるのでありますが、実際は地方では一万四千六百円程度平均して支給しておるようでございますが、昨年もこの倍額を要求をしたのでありますけれども、結局他とのつり合いでだめになってしまったわけでございます。そこで、いろいろ勤務の条件を緩和するという意味もありまして、協力員制度というようなものも置いておるわけでありまして、これは将来とも続けてまいりたいという考えでございます。
  89. 山高しげり

    ○山高しげり君 母子相談員につきましては、常勤制が一日も早く実現をいたせば、処遇はそれに伴って改善ができる、そこに一番望みがかけたいわけでございますが、協力員という名称をいま局長がお述べになったのでございますが、これは厚生省が予算を少しつけていらっしゃる償還対策協力員のことでございましょうか。
  90. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 各地方で名称なりあるいはその身分等まちまちなようでございますが、私のほうでは国のこういうような措置としては、償還にからんでこういう制度を置いたわけでございますが、しかし、先ほど申しましたように、婦人相談員の勤務の条件をできるだけ緩和するというような意味におきましても、こういう制度を各県に進めてまいりたいという考えでございます。
  91. 山高しげり

    ○山高しげり君 私どもが知っております事実では、国が設けていらっしゃる償還対策協力員、そのほかに各府県が任意で設けておられる母子相談員の補助機関というものは相当あるのでございますが、これにつきましては厚生省として、何か積極的に調査をなさるとか、また指導をなさるということがあまりないように感ずるのでございますが、その点いかがでございますか。
  92. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 各地方庁で制度がまちまちでありますから、画一的な指導方針をきめまして指導はしていないのであります。各地の実情にまかしているというかっこうでございます。
  93. 山高しげり

    ○山高しげり君 おことばでだんだんわかってまいりましたのですけれども、各地方がまちまちに設けているということは、自然発生でございますから当然だと思うのでございますけれども、実際よく調べて見ますと、ただ置いてあるというにとどまるといったような事実も少なくないと思うのでございます。と思うのでなくて、事実をたくさん知っているわけでございます。そうしてこれは、よく問題になります民生委員さんなんかと同じような私は事情からくるかと思うのでございますけれども、大都市等に設けられておりますその協力機関の人選などにつきましては、政治的ないろいろな問題がからんでおりまして、最末端まで参りますと、なるほどその制度はある、母子家庭のために協力員がおって、何か働くことにはなっているけれども、実際はその人選が、何も困らないおうちの奥さんであって、だんなさんの社会的な地位等から、あそこの奥さんを選んでおけば云々というような事情で人選する、その結果が、一向その地域の末端におります母子家庭に対して、その制度が持っておりますような本質的な活動というものが行なわれていない、人は置いてある、しかし、ちっとも働いていない、だから母子家庭に対しては何もプラスされていないといったような実情が、相当あるのでございます。その点はどうお考えでございますか。
  94. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) この協力員の問題は今回の母子福祉法案にも規定すべきだ、こういう議論もありまして、そうなれば法令上の制度として、国からいろいろ指示もできるのでございますが、ただ地方の任意の制度でございますから、あまり画一的な指示はできにくいわけでありますが、しかし、母子相談員のための協力者、母子家庭の福祉のための制度でございますから、仰せのようなもし弊害があるとしますれば、是正するような措置は講じてまいりたいと思います。
  95. 山高しげり

    ○山高しげり君 局長お話でだんだんよくわかってきたようでございますが、私が申し上げた事実はあるのでございまして、その事実を何らかの形で、やはり調査をなさるなりなんなり認めていただいて、やはりこれに善処をしていただきませんと、地方がやっている任意の仕事だからというのでは、よいところはますますよくなる、それから問題のあるところは、そのまま放置をされますと、やはり母子福祉のお仕事にずいぶんでこぼこができてくるわけであります。現在でこぼこがございますから、その点を何ぶんひとつ、今後よろしくお願いを申し上げたいと思います。  そこでいま局長がおっしゃいますように、母子相談員の協力機関でさえも、立法のこの際その中に入れべきだ、こういう御意見も出たくらいでございますから、今度の法案の中に入っております児童委員協力という問題について、もう一ぺん触れさせていただきたいのでございます。先ほど野本委員お話になりました児童委員の問題について将来はという御答弁が出ておりまして、民生委員等の分離なども考えなければならない段階に来ているというふうに当局も御認識であるということがわかりまして、私も非常に喜んでおりますけれども、現状はともかくも児童委員そのものが非常に悩みを持っておいでになるわけでございますが、三十九年度予算におきましても、児童委員は年間五百円というような手当といいますか、お礼をもらい、そうして何らかの研修を受けるような予算の内容があるのでございましょうか。その点伺いたい。
  96. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 児童委員、民生委員予算は社会局で所管をいたしておりますから私からお答えするのもいかがかと思いますが、民生委員として児童委員に充てられておる人たちの中にできるだけ婦人の方たちを起用したいということで、昨年の改選では三分の一を婦人委員に推薦をしていただいたような次第でございまして、これらの人たちが主として児童福祉の面で子供の福祉の面に対する協力機関というふうに考えておるのであります。したがいまして、先ほど話に出ました協力委員というようなものとは性格が違うものでございまして、民生委員法等に規定し、あるいは児童福祉法等の規定がありますから、それを受けて母子福祉法案に児童委員協力規定を取り入れたというような次第でございます。
  97. 山高しげり

    ○山高しげり君 世間では児童委員のいただくものは児童局の御予算の中からいただくと思っている人がたくさんあると思うのでございます。同じ厚生省からお頼みになるけれども、民生委員は社会局、児童委員は児童局と、一人の人が兼ねて入るけれどもお仕事は違うのだから、それぞれのルートから御予算はとっていただいておると、こう思っている人が多いのでございますけれども、民生委員が児童委員を兼ねるというので予算の組み方は一本になっておるのでございますか。
  98. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) そのとおりでございます。
  99. 山高しげり

    ○山高しげり君 そういたしますと、なおさらここに表裏一体、表は民生委員で裏を返せば児童委員と、こういう成り立ちのようでございますが、いただくものも一本でいただいておりますと、これはやはり所管のほうの力が強く働くと、児童委員は悪いことばでいえば名前だけつけたりみたいになりやすいと、こういうふうに考えられるのでございますが、そういう身分といたしまして、そういうふうな予算のつけ方であるといたしまして、さてその児童委員に児童委員としての正しい活動をしておもらいになるのは児童局なんでございましょう。
  100. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) そのとおりでございます。
  101. 山高しげり

    ○山高しげり君 そうすると、児童局としては児童委員さんにこんなふうに仕事をしてもらいたいという児童委員に対する研修と申しますか、勉強をしてもらうような予算はお持ちなんでございましょうね。
  102. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 社会局、児童局それぞれ所管が分かれておりますけれども、児童委員、民生委員は裏表の関係でございまして、いろいろ社会局の民生委員の講習会あるいは児童委員の講習会等はあらかじめ協議をいたしまして児童局がいわば注文を申し上げましてそれでやっていただくというようなことを従来やっておるのであります。しかし、先生の御意見のような問題もございまして、児童局としては例年児童委員のいろいろな費用を児童局の独自の予算として要求はいたしておるのでありますが、それが実現していないという実情でございます。先ほど大臣も児童委員、民生委員の問題について検討しておるということをおっしゃいましたけれども、一つの案といたしましては、民生委員が児童委員に充てられますけれども、民生委員以外の児童委員というものも考えていいのではないだろうかというような意見、これは完全に分離するのでなしに、児童委員として適当な人を民生委員以外に委嘱をするというようなことも考えられるのではないかというようなことでいろいろないま案を考えておるのでございますが、先ほどおっしゃたように、児童局で児童委員関係予算をぜひ実現したいものだと考えております。
  103. 山高しげり

    ○山高しげり君 民生委員、児童委員が兼任になったのは、私の記憶では、いまここにお席を立たれましたけれども、藤原委員も私もその当時の社会事業審議会に出ておりまして、そこで児童福祉法の原案をつくりますときにその兼任という内容が出てきたわけですけれども、一番大きな理由は、当時占領下でございまして、GHQの御意見が、問題をかかえている過程に、朝に夕に入れかわりいろいろなルートの人が立ち入るというよりは、というようなお考えで、ぜひこれは一本にしなければならないといったようなふうに私ども言い聞かされたような記憶があるのでございます。すでにもうそれからずいぶん時は経過をしておりますので、やはりなまなましい現実に即して行政の改革というものも行なわれてしかるべきだと思うのでございますが、その兼任の時代でも民生委員そのものの中に事項担当委員、言いかえて専門委員というようなものが当初にはございまして、ただ民生委員としてではなしに、その中で特別のお仕事をする方があってもいいということがあった時代がございます。その場合に児童委員だけをやるような方もあっていいんじゃないか。専門事項として児童対象ということがあってもいいんじゃないか。そうしてそういうふうないままでにおいては青年層から委員の人選もできるのでないか、といったような論議も相当活発であった時代があるのでございますけれども、ひとつ、いろいろ承りましたが、新しい感覚でこの児童委員というものの再検討を願いたいと希望をいたしまして、この項目は終わらせていただきます。  最後に母子寮の問題でございます。先日、私が予算委員会で池田総理に家庭問題を取り上げてお聞きをいたしましたときにも、総理は開口一番、家庭の安定のためには住宅の確保であるということをおっしゃったのでございますが、母子家庭のために母子寮というものが今日存在をしております。これの沿革は私が申し上げますまでもなく、戦前にすでに存在をいたし、戦後において母子寮は非常に増大を見たのでございますが、そしてまた、戦後の母子寮というものが今日まであったわけでございますけれども、現在、児童局所管の母子寮と社会局所管のいわゆる浮浪母子寮というようなものと二本立ての姿を私どもは見るわけでございますが、これは一本化をして、当然母子福祉法の中にお含めを願うべきものではないかとこんなふうに考えられますが、いかがでございましょうか。なぜ法案には入っておりませんでしょうか。
  104. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 実は政府予算案を国会に提出しまして後に、この母子福祉法案の政府提案というものを決定をいたしましたので、予算書の中には母子寮の関係児童保護費として計上されておるわけでございます。したがいまして、母子福祉法の中に母子寮の規定を入れるためには予算の組みかえをしなくてはなりませんが、当時の情勢ではできないというようなことから、母子寮の規定をこの法案から除いたのでございます。これが一つ事務的な理由でございますが、もう一つは社会局で所管しております浮浪母子寮を児童局で引き受けることについては話し合いがついておるのでございますが、御承知のとおり、母子寮も浮浪母子寮も老朽の施設が多いものでございますから、まず社会局でこの浮浪母子寮の整備をして、そのあとで児童局で引き受けるというようなことを事務的に考えてみたのであります。それともう一つは、この浮浪母子寮なりあるいは現在の児童局で所管しておりまする母子寮なり、これを法令に取り入れた場合にどのような性格づけなり運営をするか。第一種母子寮、第二種母子寮あるいは第三種母子寮というようないろいろな形態が考えられます。現に神戸市ではいろいろなことを試みておるわけでございますが、その成果を見ていろいろな案を検討した上で、最もいい案ができましたときに法令の中に新しく取り入れたほうがいいんではないかというようなことから、今回は見送った次第でございます。
  105. 山高しげり

    ○山高しげり君 今回お入れにならなかった理由はよくわかりました。そこで、これも近い将来に実現をするというふうに考えられるので、その点は明るい見通しでございますが、いま局長が言われましたように、第一種、第二種、第三種と、たまたまそういうふうにおあげになったわけでございますが、母子寮そのものの性格というものについていろいろ御検討をいただいているらしく、この点もうれしいと思うわけでございますけれども、母子寮関係者の中にはやはり過去の母子寮の性格に幾らかこだわっておいでになるというか、そういうことばを使うと問題を起こすかもしれませんから表現は慎みたいと思いますけれども、関係者の方々とまた離れて第三者が見ておりますと、この激しく移り変わっていく社会の中で、ほんとうに木の葉のように大海の怒濤にもまれている母子家庭にとって、母子寮、母子住宅、その一連の住居の問題というのはやはり大きいように思うのでございます。そこで、今度の法案の中には住宅の問題もお入れをいただいているようで、うれしいと思いますけれども、住居の問題というものについていままで以上に母子寮も含めてひとつ御当局もお考えをいただきたいという要望を強く持つものでございますが、その点は局長としてはどんなふうにお考えでございますか。
  106. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 母子生活の安定も結局は住宅が基礎でございますから、母子住宅はこの機会にさらに活発に行政の上に取り上げてまいりたいと思います。その意味で今度の法案にも建設省の同意を得て住宅の特別配慮の規定を入れたのでありますが、お説のように、母子寮なりあるいは公営住宅なり、その他住宅対策につきまして母子家庭のために努力してまいりたいと思います。
  107. 山高しげり

    ○山高しげり君 先ほどのお話の中にございました神戸市の何か母子寮に対する新しい試み、それはどういう内容でございますか。
  108. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 神戸市で試みておりますのは浮浪母子寮と申しますか、住居のない、あるいは何か母子とも問題を持っている母子を収容する施設で、これを第一種とかりにいたしますか、この施設である程度社会福祉の専門家がいろいろ相談なり指導に当たりまして、社会復帰が近づいたというときに、現在児童局で所管しておりますような母子寮に入れる。ここにはやはり寮母と申しますか、社会事業の専門家、あるいはできれば保育所等を付置いたしまして強化をしてまいる。それから社会復帰の直前まで更生をした母子に対しましては、寮母というような専門の社会事業家でなしに、ただまあ施設の管理をし、あるいは場合によりましては社会復帰のための職業の指導あるいは授産、むしろそういう面の人たちにこれがかわるというような、社会復帰直前あるいは社会福祉をさらに有効にするための施設というような三段階を考えてやっておるようでございます。
  109. 山高しげり

    ○山高しげり君 承りましてなるほどと思うわけでございます。私どもが触れておりましても、やはりその三段階はどうもあるようでございまして、もしもこれが第二段階にだけとどまると、第三段階というものはすでにもう母子寮ではないのだ、単なる宿舎提供ではないかといったようなことばをよく聞くのでございますけれども、宿舎提供というように冷たく言いはなすと、ここにたいへんきめの荒い感覚が出てまいりますので、第三段階のものがむしろ将来はだんだんふえていく必要があるんじゃないか。その点御当局としてもお気づきで、神戸市の試みをあたたかく見守り、将来の施策の中に取り入れようとしていることを承りまして、けっこうなことと思うわけでございます。  最後に就労の問題でございますが、先ほど私が最初に申しましたように、新発生を見ている母子家庭というものは、概して母親の年齢は若いのでございます。そうかと申しまして、終戦後二十年足らずでは新しい日本の民主主義の中で男女同権のたてまえで育ちましても、若い未亡人がすでに一本立ちをするだけの経済的独立の力を身につけているとはまだ言えない段階だと思います。で、そういう新しい母子家庭の母親を念頭に置いていただいて、この就労の問題について今度の法案の内容になっております程度では、実は私どもまだ非常にもの足りないのでございます。労働省の御所管と横に手をつないで今度の法案は一応は貸し付け法を中心にしておりますようですけれども、住宅で建設省と、就労の問題で労働省と手を握っていただいたということは、実質的な総合法のほうに進みつつあるように感じられまして、お骨折りだったと思い喜んでおるのでございますが、その母子家庭の就労――子供の就労もさることながら、これは社会の偏見を打破していくということで、ある程度実現ができておると思いますが、母親の就労の問題についてもう少し積極的にお考え願えなかったでございましょうか。
  110. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 住宅の次には母子の生活の安定はやはり就職の問題でございます。そのために従来も貸し付け法等には公共施設内の売店の設置とか、あるいは技能習得のための貸付金の制度とか、あるいは母子福祉センターでいろいろ授産的なことも考えてまいったのでありますが、今回法案に新しく取り入れましたのは、厚生省としてはできるだけ職業安定所の中にこういう母子福祉のための、あるいは母子の就労のために係の者でも置いていただいて、身体障害者係と同じようなひとつ機構の整備までお願いしたのでありますが、これも今回は具体的な話し合いには至りませんでしたけれども、こういう努力を続けてまいりたいと思います。その他労働省方面ではいろいろホーム・ヘルパーとか、その他母子の母親向けのいろいろな職場を開拓し、また職業訓練をするというような計画がございますから、厚生省からもよくお願いをいたしまして、この法案ができました機会に、さらに母親の就労の問題について積極的に努力してまいりたいと思います。
  111. 山高しげり

    ○山高しげり君 今後積極的に努力をするという仰せでございますが、労働省としても中高年齢婦人の対策というものは、数年来非常に力を入れてやっておっていただくのでございまして、したがって、現在厚生省と労働省の間に一段積極的なお骨折りを見ますれば、私はもう少し具体的な成果があがるのじゃないか。世間の人たちが見ておりますと、これは戦後直ちに言われたことでございますけれども、西ドイツあたりのように、身体障害者もしくは未亡人等が、国がやっておいでになるお仕事の中で、強制雇用と申しますか、そういうようなことをやっていただきたいという叫びは強く上がっておったのでございますけれども、不幸にしてそういうことは実現を見ないで、日本は戦後もう何年か歩んできてしまったようでございます。戦争未亡人に限りませず、私どもが発生を望んでいないにかかわらず、この激しい世の中で新しい母子家庭がある程度出ているという現実を踏まえて、やはり日本では中高年齢婦人対策というものが就労の仕事の上で、まだまだ力こぶを入れていかなければならないかと思います今日に、この厚生省の御所管のたとえば病院とかいろいろあるわけでございますが、そういう事業所に中高年齢婦人を何人かは採用しなければならない――これは大臣がいらっしゃるうちにお願いをするべきであったと思いますけれども、そういう考え方というものは、成り立たないものでございましょうか。現実には、病院へ行ってみますと、お掃除やっているのは、たいていおばあさんでございまして、聞いてみると、みな後家さんでございます。で、まあ年寄りであっても、未亡人であっても、大きな病院の中で、それ相当な被服を与えられて、相当な労働条件で職場を持っているのですから、よかったわねと思えるのでございますが、これが何かもう少し国家の裏づけで、国としてはこういう人を何%か採用させているのだというような政策のもとに行なわれておれば、あのお母さんたちがそう肩をすぼめて、後家にならなかったらよかったと暗い顔をせずに、胸を張って私は仕事ができるのじゃないか、そんな点、局長としてどうお考えでしょうか。
  112. 黒木利克

    政府委員(黒木利克君) 確かにそういうようなお考えもあり得ると思いますが、身体障害者につきましては、御承知のような雇用促進法がございます。また、外国にもそういう例があるわけでありますが、単に母子家庭の婦人だという理由で、強制的に事業所が雇わなくちゃならぬというようなことは、法律的にもかなり問題ではなかろうかと思うのであります。現在、母子福祉資金の貸付等に関する法律に公共施設内での便宜供与について、公共団体にいろいろな義務を課しておりますが、この程度が現在のところでは関の山ではなかったかと思うのであります。しかし、法律的に規定をいたしませんでも、こういう母子福祉、先生のおっしゃったりバイバルのこういうブームのときに、雇用者側に働きかけまして、この雇用の促進をはかる、たまたま若年労働力が非常に激減してまいります、特に婦人の職場におきまして、若い婦人労働力が非常に足りなくなってくるのでありますから、雇用者側からも強制をしなくても中高年齢の御婦人でこれを埋めざるを得ないような事態が近づいていると判断をいたします。したがいまして、こういうような受け入れをしてもらう場合に、より有利なあるいはより受け入れやすいような状態に職業補導と申しますか、訓練と申しますか、そういうものを強化してまいりたい。労働省もそういう考えで中高年齢層の婦人の就労問題を取り上げておるのでありますが、厚生省もお説のような病院とか、社会福祉施設等で婦人労働力が足らなくてこれを必要とする時期が迫りつつありますから、そういう意味で、この機会に情勢に対応できるように努力をしてまいりたいと思います。
  113. 山高しげり

    ○山高しげり君 実は内職などの実情を見てみますと、大体母子家庭のお母さんというものは子供がまだ大きくございません場合には、家にいてできる仕事、何か内職はないかないかとおさがしでございますが、近来内職の実情は夫のある女の方が団地の住宅の中でたいへん盛んにやっていらっしゃるといったようなことに変わってまいっております。したがって、お母さん方、やむを得ないから内職に飛びつくという実情に変わりはないのでございますが、与える側からいえば、その辺もひとつ御考慮が願いたいわけでございまして、法によりまして、たとえばたばこ屋さんができる、あの道は母子福祉資金の貸付等に関する法律の制定の当初からお入れを願ったのでございますが、そして今日までに相当数の母子家庭の母親がその専売品を売っておるわけでございますけれども、たばこ屋を開店するとにきどれくらい骨が折れるかということを局長さんはきっと御存じないと思うのでございます。道は開いてある、それは確かにあるのでございます。その開かれた道を母子家庭の母親が進もうとするときにどんなにいばらがおい茂った道であるかということ、これは結局小売業になりたいという方がたくさんあるわけでございますから、法の上では優先されておりますけれども、法の力もそう強くはないわけでございます。ですから現実の生存競争にやはり打ち勝っていかなければならない。そこでその母子家庭の母親自身もさることながら、その周囲におります関係当局の方々がずいぶん苦労をしていただかないと、一軒のたばこ屋さんも開設ができないという現状、時間もございませんからただその程度申し上げておきますけれども、最末端の現状というものをできるだけやはりお知り願いたい。就労の問題につきましては仰せのとおりでございます。おそらくデパートなんかでも若い娘さんを減らして、外国のデパートのように中高年齢層の婦人が出てこなければならないような時期がそう遠くはないかもしれませんので、私どもも中高年齢婦人の就労をそう暗い見通しの上には立っておらないのですけれども、働くということは労働省なんだというふうに片づけてしまいますと、この問題は現実としてはなかなか解決しにくい。このほどだんだん厚生省が積極的に労働省にお働きかけになる、向こうからもいろいろありまして、横の御連絡がつきつつあるということを私は非常に喜んでおりますけれども、それからまた局長のおことばの中にもますますその方針を強化をしようと思うと、努力をしてみようというおことばでございますので、それを信じまして、どうぞ新しい年度におきましては、予算もさることながら、いろいろまた実際のお仕事の上で、きょう承りました御所信の裏づけになりますような実際のお仕事をお願い申し上げたいと思います。時間でございますからこれで私の質問を終わらせていただきます。いろいろどうもありがとうございました。
  114. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) 午前中の審査はこの程度にとどめ、午後は二時から再開いたすこととし、暫時休憩いたします。    午後一時休憩    ――――・――――    午後二時十二分開会
  115. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) これより再開いたします。  分科担当委員異動について御報告いたします。  本日、亀田得治君及び山高しげり君が委員辞任ぜられ、その補欠として豊瀬禎一君及び市川房枝君がそれぞれ選任せられました。   ―――――――――――――
  116. 鈴木一弘

    主査鈴木一弘君) 休憩前に引き続き質疑を続行いたします。質疑の通告がございますので、順次発言を許します。山本伊三郎君。
  117. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、ひとつ厚生省の大臣にあとで聞きますが、社会保険の関係一つだけ聞いておきたいと思います。おられますか。それじゃ、まだ法律案ができていないようでございますが、今度厚年の改正がやられるようでありますが、一万円年金ということでだいぶ宣伝が行き届いているわけですが、それに対して保険料率も若干上がると思うのですが、保険料率の上がる度合い、それと船員保険との関係、この点をひとつ簡単明瞭に先に御説明を願いたいと思います。
  118. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 最初の保険料の引き上げの程度のお尋ねでございますが、いまのところ保険料率につきましては、男子の場合だけ申し上げますと、現在千分の三十五、三・五%の料率でございますけれども、これを千分の六十、六%に引き上げる。なお同時に、標準報酬そのものの引き上げも具体的には行なわれますので、現在標準報酬の上限が三万六千円になっているのを六万円に上げることにいたしておりますので、この両者を勘案しますと、結局保険料負担の増としては大体二倍程度の増になっております。
  119. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 第一極だけ言われたが、第二種、第三種、第四種の関係はどうなるか。
  120. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 第二種の女子でございますが、女子は現在の千分の三十を四十五、それから第三種坑内夫につきましては現在の千分の四十二を七十六、それから第四種これは任意継続でございますが、一般男子と同じように三十五から六十、そういうふうになっております。
  121. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その料率をはじき出す財源計算書というものはできておりますか。もちろんそれがなければはじき出せないのですが、ありますか。
  122. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 一応部内の計算は済んでおります。
  123. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 済んでおることはわかっておりますが、そういうものを資料として、いまでなくてもいいのですが、いただけますか。それじゃ船員保険との関係は、もちろん船員保険もその均衡上、改正になると思いますが、この関係はどうですか。
  124. 広瀬治郎

    説明員(広瀬治郎君) 船員保険につきましては、大体陸上の坑内夫と受給条件を同じくしておりますので、今回の改正につきましては、坑内夫と同様に料率を千分の七十六というように考えております。
  125. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、一応そういう保険料率、そういう点はわかったのですが、いろいろ支給開始年齢それから最短年限、いわゆる受給資格年限、こういうものはやはり厚生年金の場合は十分の六十、それから坑内は五十五、第二種、第三種は五十五、それから船員の場合は五十五という、こういう点は前と同じ形で規定されるのですか。
  126. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) そのとおりでございます。
  127. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それではこの点につきましては、またいずれ法律案が出てくると思いますが、なおもう一つ聞いておきたいのですが、問題になった企業年金を調整年金としてこれを受け取るというその点はどういうぐあいになっておりますか。
  128. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 今回の改正におきましては、企業年金との調整につきまして一定の条件を設けまして、民間の企業年金で一定の要件を備えた年金制度を持った場合に、企業とは別個の特別法人をつくらせまして、その特別法人が一定の要件に該当する退職年金を行なう。そういう場合に、そのものに厚生年金給付のうちの老齢年金の報酬比例部分だけを代行させる。そういう方法によっていわゆる調整を行なうということを考えております。
  129. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、報酬比例部分は相当大きいウエートを持っているものですが、それでは参考までに聞きますが、いわゆる定額部分基準給付というのは前は二万四千円だったのですが、これは変わりますか。
  130. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 今度はそれを二十年で、基準年次で二十年で倍の四万八千円にすると同時に、二十年以降三十年の限度で一年につき二百円の年数加算を設けまして、結局二十五年では定額部分五千円、三十年では定額部分六千円、そういうふうに考えております。
  131. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それにしても報酬比例部分の持つウエートというものは相当大きいと思うのですが、これを企業年金、もちろん適格年金としていろいろあなたのほうで調べられてそれを認めるのですか。相当問題があると思うのです。特殊法人として認めるというのはどういうことになるのですか。その特殊法人がこの保険料なりそういうものを全部かってにこれは運用するというわけではないのですが、もちろん、銀行とか、信託銀行その他で運用するようになると思うのですね。その場合の資金の運用は、あるいは信託とか、そういうところで運用さしてしまうのですか。
  132. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いまのことは、特殊法人をつくって、そうして基金の管理をする。それで当然基金そのものの管理は保険会社、信託銀行、こういうものに限定してやろう。そうしてそれの運用をどうするか。これはまだ政府でもだいぶ問題にしておりまして、それだけの金が政府の手から離れてしまうということは困るのだという強い意見もありますので、それのどういう部分をどうするかというようなことはまだきまっておりません。これから相談しようと思っております。
  133. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはまあいまやっておくと、また法律案がかかったときにはやることが少なくなって困りますが、予備知識を得るために伺ったのですが、厚生大臣、相当それ問題があると思うのですがね。大体いま調整年金としてどれくらいの対象人員を予定されておるのですか。
  134. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これもまだ一応のわれわれのめどとしては、あるいは三百人とか、五百人とか、あるいはそれと資本金をどうするとか、こういうふうなことを考えておりますが、これもまだ的確な標準をきめかねておる、こういう段階です。
  135. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはわかります。わかりますが、そうすると、私たちは相当対象人員が多くなると見ておるのです。現在企業年金を持っている会社というものは、これは中小が多くて、大企業はまだひより見と申しますか、情勢を見ておると思うのですが、もしこれが調整年金として認められるとなると、相当これが対象人員が多くなると思うのです。そうすると、その資金量も相当多く出てくると思うのですが、この点につきましては、先ほど大臣言われましたけれども、まだ政府としては方針はきまっておらないのですね。
  136. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いま申し上げたように、これはもうどこにでもきめ方はあるわけです。たとえば千人にするとか、五百人にするとか、こういうきめ方がありまするし、人によってはなるべく大ぜいを使ったものに限定しろと、こういうものもありますし、これをもう少し引き下げろという議論もありまして、これらをどこに限界を置くかということはまだいまきめてない。したがって、金額としてどのくらいが一体積み立て金から出ていくかというのでありますが、私ども最初二〇%ぐらいを考えておったわけです。しかし、これはまあ最初そういうことを考えたということで、まだきまっておらない。そういうことでございまして、しかも、今度の法案の内容は、労使が意見が一致しなければやらないと、こういうことになっておるものだからして、一体適用がどのくらいあるかというようなこともいまのところ見当がつかないし、また相当反対が多くて、実施のできない企業が相当出てくるというふうに思うのでありまして、これをいま的確に概算するということはほとんどできない、こういう状態です。
  137. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 厚生大臣の言われたことは重要なちょっと要素が含ましておると思うのですが、もしこれが使用者側で調整年金が認められなければ反対だとなると、この法律案の日の目を見るということの見通しも非常に暗くなるように思うのですが、そうですか。
  138. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはまあそういうことになります。大体、ものは妥協の問題でありますから、両方がある程度譲り合わなければ話し合いがつかない。話し合いがつかない場合に、政府が強行するかと、こういうことを言われれば、まだそこまでの段階にならないと、できるだけ二か八か話し合いをつけてもらいたいということで、保険審議会なり制度審議会でいろいろいま話し合いをしていただいておる、こういうことでありまして、企業年金が全然認めない場合にはどうなるか、私は相当見通しが悪いと、こういうふうに思いますし、この法案が曲がりなりにも国会に提案されるためには、とにかくある程度両方ががまんができるというところで調和点を見出さなければならぬと思っております。
  139. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 どうも私、厚生大臣からそういうことを聞いたのがきょう初めてですが、日本の経営者は諸外国の経営者から比較すると、社会保険に対する認識というものはきわめて悪いと思うのですがね。現在の厚年――船員保険も若干優遇されておるけれども、厚年あたりは年金の機能というものはほとんどないという程度の低い給付なんですね。それを上げるためには労働者もそれだけの部分を折半で出すんだと、それを最低限一万円ぐらいに上げようというのに、それに協力しない。それならば、企業年金を認めて、自分のほうがかってに一応運用されるような方向に持っていきたいということは、あまりにも私は経営者の社会保険に対する認識がきわめて諸外国と比較して悪いと思うのですが、フランスあたりでは折半でなくて、むしろ経営者のほうが負担金が多く持ってやられておる実情でしょう。その点、諸外国の事情どうなんですか。率直に言ってください、議論にとどめておこうと思うから。
  140. 曽根田郁夫

    説明員曽根田郁夫君) 私どもの承知しております範囲では、やはり折半のところが一般的であるというふうに承知しております。
  141. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 厚生省のあなたのほうで発行している「主要各国の年金制度」という本には、フランスあたりは相当事業主のほうが負担しているということを書いていますよ。それでなくても、西ドイツあたりでも相当経営者が協力しているという実情があるのですが、まあそれはあまりそこで軽率なことを言うとあなたのほうも責任上困ると思いますから、これ以上追及しませんが、その点だけ、厚生省の厚生大臣はじめ皆さん方もひとつ勇気を持ってこれの改正に努力してもらいたいと思います。もちろん、私は調整年金ということは不賛成ですが、企業年金が付加年金として私は存在することがいいと思うのです。というのはどういう意味かと申しますと、これは月一万円の老齢年金にしても、いまの生活実態から見ると、これは必ずしも十分ではない。これですら老齢年金としての機能を達するためには十分でないと思っている。それを付加するために、別に企業が付加年金としてそれ以上持つということについては私はいいと思うのですが、一万円ぐらいにするそれに対して協力もできないということでは、これは政府もひとつ十分その点は勇気を持ってやっていただきたいと思うのですが、この点ひとつ厚生大臣の決意を聞いておきたいと思います。
  142. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは私がいま申したように、ものごとはある程度互譲といいますか、妥協の問題でありますので、しかも、私どもとしては、この調整年金については労使の協議がととのわなければやらないのだ、この非常に大きなワクをはめてありますので、そのまま行なわれるということは考えておりませんし、また報酬比例部分の調整年金にしましても、そのものが企業年金がないものよりか多い額において定められなければならぬ、こういうふうなこともうたっておりまするし、その付加年金に該当するような部分が、やはり相当部分これに含まれなければならないというふうなきめ方もしておりますので、この際のことであるからして、そういう大きなワクがあることをひとつ前提として被用者側も考えてほしい。繰り返して申し上げますが、これは一方だけの主張をいれてもものは成り立ちません。両方譲れるだけ譲って、そうして妥協の上に不満足ながらも出発させる、こういう考え方がなければできないと、こういうふうに思います。お話しのことは、私どもも十分心得ておりまするが、抽象的に申せば、いま申したようなことでございます。
  143. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この問題は一応これでおいておきますが、ついでに聞きますが、健保の標準報酬ですね、いま厚年の標準報酬はこの改正によって上限六万円に引き上げるというのですが、健保の標準報酬も、いまの給与の報酬といいますか、賃金の実態から見ると低きに失すると思うのですが、この点の改正については厚生省はどう考えておられますか。
  144. 広瀬治郎

    説明員(広瀬治郎君) 健康保険の標準報酬は、ただいま御指摘のように、従来から五万二千円でございまして、今回厚生年金を最高六万円にするという案に比べて、現在まだ改正案を出していないわけでございますが、これは最近の医療費の問題もありますので、これがどういうふうになるか、その結果を見た上で必要な引き上げをしたい。そういうことで、いまのところちょっと様子を見ているとそういう情勢で、そのままにしております。
  145. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これも実は現在五万二千円が三千円か上限らしいのですが、これも実際のところ公務員の場合は、これは十一万円ということに上限がなっているのですね。それでも短期間給付の経済が、いまきわめて医療費が上がってきているので困っているのですが、この上限が低いということは、一がいにはそう言えないけれども、低給者の費用で高給者が医療を受けているということに、特にそうは言えませんけれども、そういう見方もできます。報酬に比例して負担するという社会保険のいわゆる原則から見ると、やはり私は引き上げるべきだと思うのですが、その情勢を観望するということもわかるのですが、私は裏も知っておりますからわかるのですが、できるだけこれを早く引き上げるような形にやるべきじゃないかと思うのですが、この点どうですか。
  146. 広瀬治郎

    説明員(広瀬治郎君) できるだけ早く実態に即するように改正したいと思っております。
  147. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一つ、これはまた本会議でも質問されるようでございますが、被爆者に対する問題が、戦後相当年数もたっておりますが、なかなか十分でない。私も二、三件取り扱いましたが被爆者の家族も非常に困った人も相当あるし、本人もまだ問題が残っておりますが、この被爆者に対して厚生省として今後これに対して積極的に対策あるいは扶助と申しますか、そういうものについて考えておると思うのですが、その点少し御説明願っておきたいと思います。
  148. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 被爆者原爆のことを言われるわけですか。――これは午前亀田委員からいろいろ御質疑がありまして、私からもお答えしておきまして、原爆の特殊性というものが、まあおもなものは身体的障害が他の爆撃と違うと、こういうことをもとにしまして、いまも医療とか健康管理につきましては一応の措置がとられておるわけで、それを越えた一般生活援護等については、他の戦災者等の均衡もあって、まだ踏み切りがつかない状態にある。そして原爆というものが、おもにそういう身体的の事情からでありますが、生活援護等につきましても、原爆というものの特徴からこういうものが出る、したがって、これについて特別な措置が講じられると、こういうふうな点がまだ十分見きわめがつかない。したがって、他の戦災者との権衡上からちょっと踏み切るというところまで至っておらぬ。なお、そういう特徴の検討、あるいは現在の被爆者生活実態等も十分ひとつ調査したい、こういうことを申し上げておいたところでございす。
  149. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 ちょっと関連して。保険関係でだいぶいまの内容、すべての問題が進展してまいったと思いますが、幸いに厚生省では保険庁という新しい庁ができて、そして全般的な見方をしている。ところが、この取り扱いの内容はまことに兆に近い何千億円という膨大なもので、しかも各府県では保険課と年金課というようなごく百名ほどの事務官でやっておるという、地方の組織がつり合っていないのではないか。これはもうそろそろ地方整備をしていかないと内容の充実までいかないような段階になりはしないかと思うのですが、これに対する厚生御当局の御見解なり、あるいは御計画なりを伺いたいと存じます。
  150. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いまのその国民年金、あるいはいろいろの社会保障、国の直営のものもありまして、現在の地方機構がこれらの問題を変則的に、地方事務官というようなものを配置して、これを国の事務としての取り扱いをさせておる、こういうことでありますが、これらの事務は非常に複雑になり、また非常に量が多くなり、したがって、私どもは地方厚生局とか、あるいは地方保険局とか、こういうふうな独立機関を設けてやるほうが実態に合うのではないかというふうな考えをもって検討させておりますが、これは臨時行政調査会等の関係もありまして、私どものほうがいち早く結論を出しても、これはいろいろの困難な事情もありますので、そういう希望を申し述べて、その方面においても検討してもらいたい。すなわち、もうこれだけの国の大事な仕事になれば、知事の監督のもとに行なわせるよりか、厚生省の独立した出先機関をもってやるほうがいいんじゃないかということを厚生当局では考えておりますが、しかし、いま申し上げたように、調査会等の関連もありまして、そちらにも検討をお願いしておる、こういう段階であります。
  151. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま言われた問題も相当問題ありますが、もう時間もごくありませんので、それじゃ医療関係の問題を自後三問ほどお尋ねしたいと思うのですが、医療関係といいましても、私一般質問でも厚生大臣に聞きまして、相当厚生大臣の意向と私合っておりますから、ここで確認するという意味はございませんが、特に看護婦の問題でございますが、看護婦、保健婦、助産婦も関係いたしますが、特に公立病院あたりを見ますと、現在独立採算制とかいうような経営がとられているようであります。それがために、医療費がそこまで収入が上がらない。これは医療費自体も問題でありますから、そう市民が負担するわけにはいかない。ひいては従業員にそれがしわ寄せされている現状だと思うのですが、まず看護基準の問題ですが、医療法の施行規則では、十九条では患者四人に一人と、こういう規定があるのですが、実態がそうでないということを言われておるのですが、この点いわゆる医療上非常に支障があると思うのですが、厚生省としてはこれに対する対策をどうされているかということをひとつお聞きしておきたいと思います。
  152. 大崎康

    政府委員(大崎康君) ただいま医療法の看護婦の標準と申しますか、その標準の問題がございまして、これにつきましては、先生ただいま御指摘のように、種々の問題があることはおっしゃるとおりでございます。看護婦が現在足らないわけであります。これははっきりした事実でございます。これにつきましてはいろいろな原因がございまして、あるいは病床数の増加でございますとか、あるいは基準看護の普及でございますとか、あるいは看護婦の勤務条件の改善でございますとか、あるいは基本的には若年労働者の減少というふうな問題があるわけでございます。これに対する対策でございますが、この対策につきましては、私どもいろいろ苦心をいたしておりますが、まだまだ努力の足らない点があるわけでございまして、この点につきましては、さらに努力を重ねたいと思っておるわけでございます。ただ、養成計画そのものはすぐには御案内のようにできませんで、二年あるいは三年という養成期間が要るわけでございます。その辺は、私どもいろいろな予算上の方法を用いておるわけであります。たとえば、養成所の整備につきまして補助をいたしますとか、あるいはその生徒に対しまして貸費の制度を設けるとかいうような手を一応打っておるわけであります。それから、看護婦さんの免許を持っておられる方は、これは四十万をこえておるわけでありますが、そういうふうな方々がいろいろな理由で第一線を退いておられるわけであります。こういった方々のいわゆる潜在看護力といいますか、そういうものも引き出すということで、これもいろいろな手を打っておるわけでありますが、これもいろいろな困難な状況にあるわけであります。そのほか待遇等につきましても改善を加えたい、そうして、これによりまして看護婦さんという職業を魅力あらしめたい、こういうようなことも企図いたしておりまして、いろいろ苦心はいたしておるわけでございますが、いまだ努力は、先ほど申し上げましたように、足らないわけでございます。今後とも努力を重ねてまいりたい、かように存じます。
  153. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 若年労働者、特に婦人の若年労働者の需給関係が窮屈になったということは、それは言えますが、日本の場合にはきわめてぜいたくな、これは労働省関係だと思いますが、使い方をしておると思うのです。百貨店なんかに行くと、これはいつも言われるのですが、エレベーターに乗るときに、頭を下げておりますが、それはお客としては非常に感じはいいかもしれませんが、こういうのは、外国に行ったらそういうことはないようであります。というのは、何もその人が悪くない。やはりそこに待遇という問題があると思うのです。看護婦さんの仕事というものは、きわめて私は重要な仕事、と同時に、非常に神経を使う仕事、しかも、神経だけではなくして労働力も要るという仕事だと思う。私は女でないから、やったことはないからわかりませんが、私がやっかいになったときでも、つくづくそう思った。したがって、そういう人に対して、いまの給与は、私立、民間の病院については私は十分調べておりませんが、国立病院の看護婦さんの給与については、しょっちゅう内閣委員会で論議します。給与法がかかったときに、いつも医療職の別表の三表の問題で相当やりますが、政府もあまり考えていない。それで、なるほどいろいろ言われましたが、やっぱり根本原因はそういう希望者が少いというのは、処遇、待遇に私はつながっておると思う。これを私は考えない限り、もちろん養成機関を完備することも必要でしょう。しかし、根本の問題は私はそこにあると思う。いわゆる労働条件というものが悪いという一つの大きな原因を除去しなければ、私は解決しないと思うのですが、この点厚生当局はどう思っておられますか。
  154. 大崎康

    政府委員(大崎康君) 看護婦の待遇が、いわゆる看護婦さんを養成する上におきまして、あるいは看護婦の業務に婦人の方々を入らせるにあたりまして、非常に大きな要素であるということは、ただいま先生御指摘のとおりでございます。ただいま先生お話しのございました医療職俸給表、これは昨年四月人事院でお調べになったかと思いますが、それでいきますと、たとえば、俸給表の(一)でいきますと、公務員給与と民間給与との割合でいけば、民間給与のほうが四一%よくなっておる、こういうことでございます。医師につきましては、民間給与が実は非常にいいわけでございます。ところが、残念なことには、医療職の(三)につきましては、公務員給与が二万三千三百六十二円に対しまして、民間従業員の給与が一万九千六百四十九円、こういうふうになっておりまして、公務員給与の八四%に当たっておるわけでございます。私どもといたしましては、看護婦さんの医療職(三)の問題につきましては、さらに特段の努力をいたしたいと思います。また、一方におきまして、民間におけるところの看護婦の従事者に対しましては、でき得る限り公務員にさや寄せするような指導をいたしたい、こういうふうに考えておるのであります。ただ、指導いたしますにつきましては、やはり何と申しましても、看護婦さんの給与というものがいわゆる診療収入から支払われておるということは疑いのない事実でございますから、診療収入について格段の配慮をいたさなければならない。こういうふうなことが両々相まって行なわれなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  155. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いま言われた民間との比較、これはいつでも内閣委員会で人事院が説明するのです。これはもう日本の医療機関医療関係者の伝統的な悪いところですよ。戦後は、まだ若干看護婦さんの地位と申しますか、社会的地位は上がったようでありますが、昔はお医者さんの従属的な関係ぐらいにしか見ておらなった。開業医あたりにおいては、女中さんがわりをやらせて、看護婦の仕事もやらせておったというのが戦前の実態です。そういうしきたりの中から来ているから、民間の看護婦さんの給与はきわめて劣悪です。これはわれわれはいつも言うのです。それを比較して公立の看護婦さんがいいからこれでいいということにはならないと思います。厚生省はそう言っておらないのですが、人事院といつもけんかをする種でございますが、しかし、私はそういう民間の給与が低いというのは、そういう歴史的な経過を経ているということから、看護婦さんのいまの学歴、資格、労務内容、そういうものと考えて、厚生省は正当に看護婦さんの労働価値というものを判断をすべき段階に来ていると思います。いまあなたはそういうことを言外に言われていると思いますが、しかし、それの先べんをつけるには、国立あるいは公立病院の看護婦さんなり保健婦さんなり助産婦さんのものを考えなくちゃいかぬ。こういう点で、今後この問題については一そうひとつ厚生省としても強力な指導をしていただきたいと思うのです。  なお、いま言われました医療費、診療収入から出すのですから、診療収入が多くならなければ待遇がよくならない。これは私は一応は独立採算制という立場に立つそうですが、これはこの前の一般質問で厚生大臣にも質問したのですが、厚生大臣も私の意思に賛成するような意味の答弁があったと思うのですが、日本の公立病院の実態というものは、諸外国と違って、病院の設備あるいは建物、そういうものについては、いわゆる一応起債その他でやるけれども、すべて診療収入とか自己の採算でやらなくちゃならぬ。しかし、諸外国では、病院という公共性の強い事業においては、これは社会資本というような形で、政府なりそういうところから資金が出されてきて、ただ、経常経費だけが診療費と見合っているという経営ぶりですから、私は非常にうまく病院経営がなっていると思うのです。そういう点が私は日本の一番医療問題としての根本的な問題だと思うのですが、この点について厚生大臣はどう思われますか。
  156. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 国立病院は、お話しのように資本費がなくてやっているのは御無知のとおりだと思いますが、公立病院につきましても、全然資本費をただにというわけにいきませんが、できるだけ資本費がかさばらないようにつとめるのは当然のことだと思います。それで、お話しのように、日本の看護婦さんは沿革的というか、伝統的に、非常に社会的にも、また医療協力者としても低く認められておった。こういう沿革がありまして、これはいま医療が自由業である限りは、そういう内容に役所は干渉できない。したがって、私どもとしては、やはり国営の看護婦さんの給料を上げることによって、一般医療機関がこれにならう、こういう方法をとらなければならぬと思いますが、これは御承知のように一般の民間の中小企業等におきましても、このごろではもう相当な初任給を出さなければ若年労働力は得られない。こういうことで、最近中小企業の初任給が非常に大幅な値上がりをしている。病院あるいは私設の診療所についても同様な傾向が出てきているのでありまして、看護婦はみんな変なことばで言えば、病院へ逃げてしまう。すきさえあれば病院へ行ってしまう、こういうふうになりまして、むしろ私設診療機関が非常に看護婦の不足を来たしているということは、要するに、公営または国営に比べて待遇があまり悪いからして、そういう結果が出てきているのでありまして、私は、これから、自然的傾向として、私設医療機関においても当然ある程度の国または公共団体の経営にさや寄せをしなければ看護婦は集まらない、こういう事態が出てくると思うのでありまして、私どもは、それにつけても、国営の待遇をよくすることが、やはりそちらのほうに対して相当大きな影響を与えるということで、そういう努力をいたしております。それで、私ども私設の医療機関経営の内容についてくちばしをいれることはないと思いますが、何分にも医療そのものが従来の方法としてはある程度営利的要素も認めてきた。これからそういう姿であっていいかどうかということは、これは問題でありますが、営利的要素を認めてきたとすれば、どこからその営利のものをはじき出すか、こういう問題もあって、弱いところにしわ寄せがされてきたと、こういうことは歴史的にいなめない事実でありまして、これは実際問題としても、私は最近のうちに相当これらの問題がいや応なしに改善をされてくる。それにつけても繰り返して申しますが、できるだけ国の国営機関待遇をよくしておけば、それが大きな影響力を及ぼす。こういうことで私ども手の及ぶことでそういう改善の方向に進めたいと、かように考えております。
  157. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ基本的には賛成であります。しかし僕は、厚生省あたりが国立病院の看護婦さんなりそういう医療協力者――私は医療協力者というのはどうも納得ができないのですがね、医師も医療関係者であれば、私は看護婦さんも、薬剤師もその他の人も医療そのものの主体的な人だと見ておるのですが、まあことばの上はどうでもいいんですが、そういう方々に対してそういうことになってくると、自然に人が少なくなってくれば待遇をよくしなきゃならなくなってくるというようなことばに聞こえますが、私は、それだけじゃなくして、積極的にやはり厚生省としても指導してもらいたいと思うのです。待っておっては、私は看護婦さん自身もそれは生活に困るか知りませんが、その医療を受ける国民立場からしても、今日非常に私は医療上困っていると思うのです。したがって、医療行政を担当する厚生省としては、できるだけその指導をして看護婦さんの待遇なり、あるいは先ほど養成機関と言われましたが、養成機関も積極的にひとつ国の費用を出して看護婦さんの養成をする。いま各病院にも養成所は併立されておるけれども、すべては診療費なりそういうところの財源でやっておるので、十分な施設でない。特に満足な寄宿舎もない。せっかく地方から出て看護婦を志願してきたけれども、都会へ来てみると、もっとはでに生活できるような仕事があるから、せっかく医療機関の一員として協力をしようという看護婦さんを志望した人も、都会へ出てくるとほかに走ってしまうということが間々あると聞いておるのですが、この点について積極的に厚生省として三十九年度にやられた措置についてちょっと聞いておきたいと思います。
  158. 小林武治

    国務大臣小林武治君) いままあ医療が一種の自由業だと、こういう点からして、もうすでに就職した看護婦さんについてわれわれが力をもってどうこうということはできないのでありますが、それまでの過程はわれわれ厚生省の所管で処置できる問題だ。こういうことで、今度の国会でも実はやかましいほど私どもも答弁をしておりますが、これは御指摘のように、非常にこの点において欠陥といいますか、不十分な点はあった。それでたとえば養成機関をつくるについても、設備の補助をするとか、あるいは看護婦の修習生に奨学金を貸与するとか、いろんなことを言うていまして、項目を並べればきわめてりっぱな項目がありますが、その内容がきわめて貧弱だった。こういうことを十分私どもも認識をしたわけでありまして、もうそういう項目を並べることはいたしませんが、これはきわめて不十分だった。われわれの手の及ぶ範囲において、要するに、病院に就職するまでの過程においては、国としてできるだけの手だてをいたしたい。それでいまの設備の補助金にしましても、あるいは貸与の費用にしましても、また人数にしましても、もうお恥ずかしいような程度であった。またいまお話しのように、養成所の運営が全く施設医療費の収入からまかなわれている。こういうこともきわめて私は妥当でない、こういうふうに思いまして、もう次の機会にはこれらについても相当思い切った措置を講じなきゃならぬということをお約束申し、またここで表明をいたしておるのでありまして、そういう趣旨でこの際はまあひとつこれで御了承を願って、次の機会にはわれわれももう骨身にしみてこの問題には深い認識を持った。こういうことをひとつお答え申し上げておきます。
  159. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 では、この問題でもう一点だけひとつ聞いておきたいのですが、いまいろいろと言われておるのですが、こういう看護婦さんの不足ということから、養成課程をきわめて簡易にして、聞くところによると、六ヵ月くらいの養成ないしは一年ぐらいの養成で補助看護婦というような名称で――こういうことばは悪いのですが、看護婦の速成看護婦というようなことも伝えられておるのですが、これは私は全く医療そのものの本質を無視した考え方だと思うのですが、これに対して厚生省はどういうお考えでおられるか聞いておきたい。
  160. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 私も同様な意見を持っております。とにかく大事な職業でありまして、他のものとは違うんだ、したがって、慎重に、また十分な知識教養を持ってもらわなければならぬということで、ただ人が足りないから簡易養成というようなことは考うべきじゃないと、こういうふうに思っております、この問題は。まあ看護婦さんも最近相当増加の傾向にありまして、私どもおいおい充足されていくであろうと、たとえば昭和三十八年にしましても、予定では正看護婦さんが四千百五十、こういうふうな予定をしておりましたが、実績は四千八百五十幾つ、こういうふうになっておりまするし、また准看護婦にしましても、大体初めの予定は一万二千四百、こういうものが結果的には二万余の養成をしておる。こういうことでして、こういうことが、社会が、またわれわれが理解を示せばおいおい志願者もふえてきて、そうして目標はいま全体で十八万人、こういうことでありますが、われわれとしては昭和四十五年までには二十何万でありますか、そういう一応計画を立てておりますが、おいおいこの問題も解消していく。特にまた私どもは、この待遇とか身分とかいろいろなことを十分これから考慮する決心をいたしておるのでありまして、そういうことで役に立つようになると、こういうふうに考えております。
  161. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 関連。いま、看護婦さんに対する手当についてごもっともな御質問もあり、これに対してはむしろ民間のほうが安いので国のほうをある程度まで高めて、それに準ずるように持っていきたいとのこと、まことにけっこうなことだと思いますが、同じく医療に携わって、しかも重大で中心的使命をになっている医師の手当ですがね、聞くところ、国立はむしろ民間の医者よりも著しく低いという――それはすべてがすべてではないかもしれないが、それがために国立療養所経営の上に困難を来たしておるということを聞いておるのですが、実情はどうなんですか。しかりとすれば、これが対策はいかにすべきかお尋ねしたい。
  162. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 実際の医師の待遇等が国立が劣っておるという事実はありますが、そのために国立の病院の経営が非常に困難を来たしておる、こういうふうには認めておりません。大体の医師の充足はできておる。多少のでこぼこはあるが大体いいというふうに思っております。で、これらは特別の職でありますから、私どもほかの公務員とは違っていつでもよくしてありますが、一そう人事院等においても待遇を特別に考えてもらわにゃならぬということを強く主張しており、それから、なお民間との格差があるということは、これはもう全体として当然考えなければならぬ問題であり、待遇改善ということは特にまあ医師については十分ひとつ考慮をしなければならぬと思っております。
  163. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 民間との格差のあることをお認めの上、何かこれに対しては人事院とも十分に交渉してその向上をはかりたいという御意見でありますので、それに満足するのですが、どうかその実の早くあがるように御努力を願います。
  164. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 保健所の問題で一点聞いておきたいと思うのですが、戦後日本の予防医学と申しますか、公衆衛生の関係では、保健所というものが非常に私は重要な役目を演じてきたと思う。これによって、私はそれだけだとは言えませんが、日本の結核の患者というものはきわめて率が低くなったということは喜ぶべきことだと思うのですが、戦後だんだん保健所に対する見方が政府は軽視してきている。その内容を見ましても、あるいなかの保健所に行くと、医師すらも嘱託の医師であって、専門の医師がおらないというところも聞いておりますし、保健所の保健婦さんというものは、これは看護婦さんと違って、地域をかけめぐらなければならぬという、きわめて広範な範囲を受け持っているのですが、その保健婦の人数もますます窮屈になってきている。厚生省はおそらくそういう気持ちはないと思いますが、予算で締められてくるのでそうなってきていると思うのですが、保健所に対して、今後厚生省としてはますますこれに対して積極的に拡充していくという考え方があるかどうか。この点一つお聞きしておきたい。
  165. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはもうお話しのように、保健所が社会衛生保健のために非常な貢献をしてきたことはそのとおりでありまして、私どもも今後も十分これに力を入れてまいり、保健所の増設もはかりたい、内容の充実もいたしたいと、かように考えております。しかし、ほかの機会にも申し上げておるのでありますが、何ぶんにも公衆衛生に対する従事者というものがなかなかふえない。こういうことでありまして、どうしてふえないのだと、まあ沿革的な問題もありまして、公衆衛生のお医者さんは変なことばで言えば、年をとっても融通がきかない。停年でやめても困る。ほかの臨床の医者はいつまでも働ける。こういうふうな関係もありまするし、また、医者を希望する方が医者の子弟に多い。そうすると、どうしても公衆衛生に向きたがらない。臨床に向きたがる。こういうふうなことも考えられるのでありまして、私どもはこの公衆衛生に従事する医者の充足というものに非常に苦労をしておるのでありまして、現在でも地方には保健所の定員が満たないものが相当ございます。ここ数年これらのことを多少でも解決する道として、公衆衛生に従事する方には学資を貸与する。こういうふうな方法も講じて、そして保健所に勤務されれば、その貸与の返還も要らぬというふうな制度も導入をいたしてまいっておるのでありまして、まあ世間一般が臨床医家と公衆衛生、こういうものに対する認識とか理解というものに対しても相当私は大きな影響があると思いますが、なかなかそれが十分に得られなかったということであります。しかし、何をいたしましても、もうこれからの医療というものは、治療は大事であるが、さらに予防が大事だ。こういう見地からして保健所を拡充するということは国全体としての大きな私は要請でなければならぬと思うのでありまして、そういう方針はますます私どもは堅持をしなければならぬとこういうふうに思っております。
  166. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まだいろいろ保健婦さんなり看護婦さんについてあるのですが、第二分科会から何か連絡がありましたので、あとはひとつ藤原道子さんにお願いをして、もう一点だけ、実はこれは風土病の問題について、ぜひこれは聞いておきたいと思います。この点だけひとつお聞きしたいと思いますが、これはもう特殊なことですから、前に厚生省の医療関係の方に、医務関係の方に連絡しておいたのですが、実はこれは山梨県とかあるいは岡山、静岡、特に佐賀県の鳥栖市あたりにはびこっておる日本住血吸虫病ですか、言うだけでも舌がもつれるような名前でありますが、これは相当私は問題があるというよりも、非常に忌まわしい病気らしいのです。これに対する対策ですね。厚生省は、非常にまあ少ない対象だからというので若干閑却されておるのじゃないかと思うのですが、厚生省いままでこれに対する対策をどうされたか。
  167. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはもうわれわれのほうも決して軽視をいたしておりません。いまのその口のなかなかしゃべりにくい吸血何とかというのも、いまの地域に対して、これはまあ何とかいう貝から出るということで、その貝を撲滅するためにはどうしても水路その他をコンクリートに直さなければならぬということで、その補助金を毎年相当額、取ってやっておるのでありまして、非常な効果をあげております。まあやがて撲滅をされるだろうと思いますが、いまの方向をやはり推し進めてまいりたい、かように考えております。
  168. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 私も実は向こうへ行って鳥栖市長と会っていろいろ聞いてみたのですが、厚生省にある程度いろいろとやってもらっておるということを聞いたのですが、これは厚生省だけじゃない。建設省とも協力しなければならない。あれは建設省関係の直轄河川なんかの堤防をコンクリート化するためには厚生省独自じゃいけない。ところが、あれは筑後川ですか、どこか川を言っておりましたが、そこらに寄生するものが、これは宮入貝とかいう貝だそうでございますが、そういうところを根本的にやらない限りは、それから流れてくる溝渠なんかをコンクリートにしても、そこで繁殖するので、この点がまだ十分でない、こういうことを言っておりましたが、いま言われたように、溝渠をコンクリート化することは、これは一番いい方法らしいのですが、それの補助も十分ではないというので、少ない市の財政で持ち出しておるのだという窮状も訴えられましたので、この点ひとつ今後厚生省としても関係各省に連絡をして、こういうあまり世間では知られておらないけれども、これに罹病すると相当身体の発育その他に問題がある病気でありますので、これに対する今後積極的な方法をとってもらいたいと思うのですが、その点の所見を厚生大臣に聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  169. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 日本住血吸虫は、いわゆる地方病の中では最も重篤な疾患でございますので、厚生省は従来からこれに対してきわめて熱意を持って実施しております。特に昭和三十二年から特別対策実施しておりまして、十カ年計画で危険地域の全面的な溝渠化を完了したいという所存で着々やってまいっております。この溝渠に対する補助金にいたしましても、御承知のように、山梨、岡山、広島、福岡、佐賀の五県だけでございますが、これにつきまして昭和三十七年度は五千五百万円、それから昭和三十八年度は八千五百万円、三十九年度は一億三千百万円というぐあいに逐次増加をはかっておりまして、これにつきましては、県並びに国がそれぞれ三分の一、市町村が三分の一という負担割合でございまして、さらにこれを促進するために、起債の配慮とか、あるいは地方交付税の増額等も考慮いたしまして、積極的な援助をしてまいるつもりでございます。
  170. 藤原道子

    藤原道子君 私は順序を変更いたしまして、山本委員の看護婦の問題の御質問がございましたので、この点についてさらに深めてまいりたいと思います。  いま大臣は、いろいろ、何といいますか、有資格者を掘り起こす努力もしておるというようなお答えがあったと思いますが、これに対してどういう方法で有資格看護婦の掘り起こしをしていらっしゃるか、これをまず第一にお伺いしたいと思います。
  171. 大崎康

    政府委員(大崎康君) たとえば私どもで、神奈川県におきますこれらのいわゆる免許を有しておられる方の中から、一体どの程度の方においで願えるであろうかということをいろいろ調査したものがございます。それによりますと、神奈川県におきまして潜在看護力として判明いたしましたものが、看護婦四百五十名、準看護婦四十二名。で、そのうちの半数の二百五十一人が再就職を希望している、こういうふうなデータがございます。このように、いろいろな各団体あるいは所轄行政庁を通しまして、いろいろな調査なりお願いなりということをいたしておるわけでございます。
  172. 藤原道子

    藤原道子君 私も神奈川県を御調査になったことは伺っている。半数の看護婦さんがこれは働いてもいい、すぐにでも働きたいという希望者もあるにかかわらず、これが働けない原因はどこにあるかということをお考えになったことございますか。たとえて言えば、夜勤が、女子の深夜業は、言うまでもなく禁止されておる。看護婦とかあるいは電話の交換手とかいうものは、職種上特に例外が認められている。けれども、このことは無制限に夜勤をしてもいいということではないのです。ところが、現実状態を見ますと、年若い女性が、多きは一ヵ月に十五日から二十日も夜勤をしておる。これではいわゆる潜在看護力といたしましても、結婚している人が多いのです。こうして月半分以上が夜勤に費やされる。こういう場合に働けるでしょうか。さらにまた、病院の中に保育所を設けるとか、あるいは地域社会にそういうものがあるとか、働きいいような状態をつくらなければ、働きたくても働けないと私は思いますが、いかがでございますか。
  173. 大崎康

    政府委員(大崎康君) おっしゃるようなことは、確かに御指摘のとおり、あろうと思います。で、これらの方々がいろいろ働く。たとえば神奈川県の例で働くというふうなことがありましても、それぞれの御事情がございまして、病院側の事情と実は必ずしも合わないようなことがあるわけでございます。で、それにつきましては、先生がいまおっしゃいましたような、地域の保育所の充実でございますとか、そういうふうな特段の手段を講ずる必要があること、これは確かにおっしゃるとおりでございます。ただ問題は、要するに、深夜の夜勤というふうなものが御家庭を持った御婦人には無理であるというふうなことが確かにあると思います。でございますから、そこは努力をいたしまして、施設側の要求というものと再就職されようという御婦人と間の、まあ非常にむずかしいことでございますが、要求を一致させるように努力をいたしたい、私かように考えております。
  174. 藤原道子

    藤原道子君 どういう努力をしますか。もしも家庭を持っていらっしゃるからといって、この人が昼間だけの勤務ということになれば、結局常勤の看護婦さんたちの夜勤かもっとふえてくるのじゃないですか。結局、女子の深夜業の例外的な規定は、やはりあくまでも女子の健康福祉に有害でないことを前提としていると思うのです。ということになれば、無制限に深夜業が可能だということではないと思う。ところが、いま看護婦さんが足りない現在ですら、一ヵ月に約半数を夜勤をいたしております。これはあなた方が待遇がいいと言っておられる国立病院のデータです。ということになれば、もしも家庭持ちの人に夜業が妥当でないということになれば、家庭を持たざる看護婦さんたちの夜勤がもっと増大してくるということになりはしませんか。その点はいかがですか。
  175. 大崎康

    政府委員(大崎康君) 結局潜在看護力の利用の一番主眼点は、やはり。パートタイムということの利用が一番主眼点であろうかと思います。ところが、パートタイムといいましても、供給側といいますか、潜在看護力のほうから考えますと、たとえば午前、午後、あるいは日に何時間というふうないろいろの制約があるわけでございます。したがいまして、その制約というものが、需給側の病院なり、療養所側というものと合わなくては実はいかぬわけであります。それにつきましてはいろいろ各団体のお世話をいただきまして、その辺は合わしていくというような努力を続けてみたいと思います。
  176. 藤原道子

    藤原道子君 そういうふうに合わせてみても、私の頭の悪いところで考えると、どうも一方的に夜勤がふえるような気がして心配です。それから、いまひとつは、看護婦さんになりたがらない理由といたしましては、賃金の安いこともございますし、同時に、夜勤の回数が多いということと、そうして、また、年若い人が夜中に一人で夜勤をしている。一人夜勤のために非常に危害が起こっている例があるわけでございます。それから、夜勤帰りに襲われるという例もある。こういうことに対して、住宅の保証もなければ、それから夜勤が安全であるという保証もない。すなわち、二人以上の勤務ということの規定もないのです。さらに、労働基準法におきましても、規定されているにもかかわらず、休憩、休息、これらに対しての設備、時間の規定等がいまのところほとんど行なわれていないということになれば、一体これでも喜んで若い人が働くでしょうか。ここにも問題がございます。これに対していかがでしょうか。
  177. 大崎康

    政府委員(大崎康君) ただいまの御指摘の問題でございますが、一人夜勤というふうな問題、あるいは深夜勤の問題もありますが、看護婦のいわば業務の遂行上、夜勤というものはどうしても御指摘のように避けられない問題であろうかと思います。そこで、問題は深夜勤をやった場合に、何といいますか、看護婦さんが業務を遂行しやすいような態勢をとるということは、これは御指摘のとおりであります。しかし、現実の問題といたしましては、たとえば国立病院なり療養所というものだけを考えてみましても、一人夜勤ということを全部なくすということは、残念ながらできないような実は状態でございます。この夜勤の形態につきましては、いろいろ技術的に、たとえば看護単位というようなものを工夫をいたしまして、二人夜勤にするように、これは私どもも常々指導をいたしておるわけでございますが、その辺看護婦不足その他諸般の問題がございまして、現実といたしましては残念ながらできない、こういうふうな状態になっております。
  178. 藤原道子

    藤原道子君 ところが、それが悪循環しているのです。一人夜勤だ、夜勤の日数が多すぎる、労働過重、待遇が悪い、だから看護婦になり手がない。なり手がないから結局またそれがさらに労働過重になってくる。こういうことになっている。それはひとり看護婦さんの問題だけではなしに、われわれが入院したときに、非常にさびしさを覚えるわけです。要は国民全体の医療関係してくる。ここを私は考えてもらわなければ困る。と同時に、人が足りないからということですよ。労働基準法三十四条の規定、六時間をこえる場合は、四十五分の休憩。あるいは人事院規則の中でも、四時間ごとに三十分以上の休憩というような条文があると思います。あるいは労働安全衛生規則の中にも、労働者が有効に利用し得る休憩設備を設けること、あるいは、女子三十人以上使用するところでは、臥床し得る休憩室を男女別に設けなくてはならない。こういうふうな規定が法律であるんですよ。にもかかわらず、人がないからやむを得ないというので、弱いところにこれがしわ寄せになっていてもよろしゅうございましょうか。これが悪いからだんだん看護婦になり手がない。なり手がないから悪条件を押しつけていくというような悪循環になって、いまや医療は非常な危険なところにもう追い込まれている。これを打開するには、抜本的な対策が必要です。それには、それは予算はかかるかもわかりませんけれども、みんなが働けるような保育所を設けるとか、さっき国立の看護婦の平均給与はこれこれだとおっしゃったけれども、いま高校卒業者は初任給幾ら取っていますか、ちまたにおいて。それを高校からさらに三年勉強して国家試験を受けて、それでいまの待遇が妥当だなんて考えがあったとすれば、とんでもないことだと私は思う。こうした働き得るような条件を備える努力が足りないと思う。それに対していかがでございますか。
  179. 大崎康

    政府委員(大崎康君) 看護婦さんのいろいろな待遇の問題あるいは働き得る保育所等の設備の問題、いろいろ先生御指摘のとおりでございます。先ほど大臣からもお答えがございましたように、今後看護婦問題につきましてはいろいろ困難な問題ございますけれども、さらに検討を重ねてでき得る限り大臣の御答弁になりました趣旨に沿って私ども事務当局もやりたいと思います。
  180. 藤原道子

    藤原道子君 人事院見えていますか。――人事院が昭和二十八年十二月十四日に行政措置要求の判定として、厚生省は看護婦の休憩時間について各人別にあらかじめ明示することを各病院長に至急命ずべきであるというふうに判定していらっしゃる。ところが、それが今日十年間たなざらしになっているんですね。実行されていないんですよ。このことについて人事院総裁はどうお考えでございましょうか。あの判定は無視されてもしかたがない弱いものであるかどうか。さらに、厚生大臣としてはこの十年前の判定をどのように実行に移しておいでになったか。これを伺いたいと思います。
  181. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 御指摘の判定の結果につきましては、およそわれわれのやりました判定についても同様でございますけれども、判定しっぱなしというようなことでは決してやっておりません。常にその実施状況を心して注視を続けてまいっておるわけでございます。いまの項目につきましても、三十五、六年でございますか、人事院から厚生省のほうになお念のため確かめるような意味で伺ったこともあるように思いますのですが、最近も私どものほうで実地の調査をいたしましたのでありますけれども、たいへんこれは申し上げにくいことでありますけれども、完全に実施というところまではまだいっておらぬということで、その打開策をどういうふうに持っていくかということを目下検討しておる次第でございます。
  182. 藤原道子

    藤原道子君 大臣、判定について答弁してください。
  183. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 私ははなはだ恐縮ですが、判定の内容をいま存じておりませんで、関係者がお答えいたします。
  184. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) 現在までの看護婦さんの数及びその勤務体制によりまして三交替をできるだけ実行するというふうなことにこの数年間主力が注がれておりましたのですが、四十八時間制を四十四時間制に切りかえるということとあわせて努力をしておったわけでありますが、それもいまできましたので、さらに夜勤の人事院規則に従いましての休憩をとるというふうな点も実行いたしますように先般の総婦長会議において極力研究し、努力するように指示しておる、こういうような状態でございます。ここで一つのこういうような考え方をしてみたことがあるということを申し上げますと、勤務体制の現在の三交替制の瞬間を少し狂わせまして、かなりドラスティックな考え方をやれば、いまの勤務体制の人事院規則の適用自身は、実行できる考え方一つあるのでございますが、それをやること自体がかえって看護婦さんの勤務の困難性を増すのではないかというふうな考え方もございましたので、いまわれわれとしても何とか看護婦さんの勤務状態をよくすると同時に、法律を一〇〇%守るように努力していきたい、こういうふうに研究と申しますか、判定が出てから時間がたっているじゃないかというおしかりはこうむりましょうが、努力をしておるところでございます。
  185. 藤原道子

    藤原道子君 私は看護婦の問題については、毎年毎年自分ながらあきれるくらい繰り返している。ところが、一向に成果があがらない。やる誠意があるかどうかを疑わざるを得ないという気持ちになっているんです。ことに、夜勤をした場合に帰りがおそくなります、住宅がないために。それでこれは鳥取県の例でございますけれども、夜勤の帰りに看護婦さんが暴漢に襲われたという事件がある。ところが、それ以来病院側はそれの対策を立てるよりも、むしろ看護婦さん並びにその夫から誓約書をとっておる。そうして勤務した病院には迷惑をかけないとか、上司や同僚に迷惑かけないのみならず、常に明朗、正確、迅速を旨として、その勤務の重要なることを一認識して云々。夫のほうでは、やはりいささかたりとも病院には御迷惑をかけません。勤務中においても家庭を離れ看護業務に専念し、送り迎えも夫がするというようなことの誓約書をとっておる。私はこういうことで優秀看護婦を掘り起こすと言っても、夜の夜中にだんなさんが妻の送り迎えをするというようなことでは、看護婦の充足は言うべくして決して行なわれない。一体大臣、こういうことで看護婦さんが充足できるでしょうか。事は重大です。私たちはいま日本の医療が破壊寸前にあると言っても過言でない。これを私は強調するわけです。  さらにもう一つ、ついでに看護婦さんの問題でお願いしたいのは、日本では五年間に患者さんが約四割もふえておる。ところが、病院、診療所における一日取り扱い患者数は、人口千人当たり昭和三十二年を一〇〇とすると昭和三十七年は一四〇になっている。これは厚生省が出している雑誌あるいは国民衛生の動向等を資料として私は持っております。ところが、五年間に患者が四割もふえて、それで看護婦が減っているんです。それで看護婦さんに働け働けということではやっていけない。それは四割も患者がふえた反面、看護婦さんは約二割ふえております。差し引き二割は減員しておるわけです。それから医療法審議のときに、助看法によりまして看護婦さんたちは患者四人に一人というきめでございました。これは有資格者が四人に一人だったんです。ところが、今日では四四・二ですか、というようなことで、便法が講じられているから看護力は低下している。だから、このごろ病院へ行ってごらんなさい。患者さんたちはこのごろの看護婦さんは非常に不親切だ、看護婦さんは冷たい、こういう声がほうはいとして起こっているんです。ところが、看護婦さんにすれば、あたたかい看病をしておれば手が回らない。さなきだに現在でも保育器で死ぬとか、あるいは静注のときに、点滴注射のとき看護婦がいなかったため空気が入って患者さんが死んだとか、喀血してのどに詰まって窒息死したとか、入院していながらとうとい人命が医者も看護婦もいないところで失われている。看護婦は過重労働で次々に倒れて、医療に従事しながら流産が多い、異常産が多い、これでは看護婦になり手がいないのはあたりまえだと私は考えますが、これに対してのお考えを伺いたい。
  186. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) 看護婦さんの夜勤を終りまして帰られる場合に、日本の現在のそういうような状態、はなはだ残念だと思いますが、それは大部分の病院では看護婦さんの寄宿舎を相当設けておる。またそこへ泊られる場合には、仮泊所を設けるというようなことをある程度考慮さしておるようにいたしておるのでございますが、その至らないところがあってときどきいまお話しのような事故があったりすることはまことに残念なことで、さらに一そう改善につとめたいと思います。  なお、患者さんの増加の問題でお話がございましたが、病院のベット数は三十二年に五十九万八千八百九十二ベツトでございまして、約六十万床、それが三十七年度には七十五万二千七百十四床で、約十五万床の増加でございますから、この増加からいいますと、二十何%になっております。それに対しまして、病院において働いておられます看護婦さんの数は三十二年、九万九千九百四十九名が十四万五百七十一名に、約これが四割ちょっとふえております。で三十二年から三十七年までのこれはおのおの年末の数字でございますが、したがいまして、一人当たりのベット数は六・〇から五・四三までに改善せられておるのでございまして、病床の増加よりもそこに働いております看護婦、准看護婦さんの数はふえておるのであります。増加が大きいのであります。ただしこういうふうにふえましても、いまお話しのような労働時間の関係、また患者数がふえましても、患者に対します医療行為がふえる。また生活看護に対します要求がふえる。基準看護をとるところが多くなる。いろいろな条件でその看護婦さんの増加だけでは足らない。で、いまのおのおの不足が叫ばれる。特に大きな病院に看護婦さんが集中せられるため、中小病院なんかや診療所で困ってきておるというのがいまの状態であります。さらに、われわれといたしましては、看護婦さんの全体の増加に努力し、いま大臣からお話がございましたように、現在働いておられます看護婦さんが十八万くらいあって、これは診療所を入れますと十八万くらい、三十七年末でございますが、それを四十五年には二十五万くらいまでふやしていく予定で努力しておりまして、養成所の養成力をふやすというようなことで努力しておりますので、毎年一万くらいずつ看護婦さんの数はふえております。で、ことしもいまの看護婦さんの入学者、三十八年四月の入学者を、こちらが予定しておりました計画よりも上回って、先ほど大臣からお話がありましたように、上回って入学者があった。ことしの四月の状態はどうかという、こういうふうな点、われわれも注目しておるところでございますが、できるだけ待遇改善とか労働条件の改善につとめまして、看護婦さんのなり手がふえるようにわれわれとしても努力いたしたいと、このように私どもも考えております。
  187. 藤原道子

    藤原道子君 私は昭和三十八年の国民衛生の動向、これを参考にいたしております。これをここで押し問答をしておりますと、私次の質問の時間が制約されておるというようなことで、残念でございますが、この問題はあとに譲ることといたしまして、いまあなたのおっしゃったように、相対的には看護婦が減となって、しかも、医学と医療と看護内容は非常に複雑、高度になっておるということはお認めになっておりましょう。そういうことで、私たちは非常に不安を感じているわけであります。ところが、その対策というものは幾ら聞いても私たちの満足のいくようなお答えがいただけないわけであります。こういう点については保育所を地域でふやすなんということは、私はやろうと思えばできると思う。それから看護婦は夜は寄宿舎に云々とおっしゃいますけれども、寄宿舎は通勤の看護婦さんの場合はどうなっておるのですか。あるいはまた、家族持ちならうちに子供を置いてあるならば夜帰りたいのが人情ではないでしょうか。そういう機械的な考え方だから潜在看護力を動員することができないんですよ。あなたが家庭を持っていらっしゃると仮定しましても、奥さんが勤務が済めば戻ってもらいたいのはあたりまえじゃありませんか。そういうときにはやはり送り迎えの配慮なんということも私は考えなければならないと考えますが、それはいかがなんですか。
  188. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) 各外国のように看護婦さんの待遇がよくて、車でどんどん通勤せられるというようなことになればけっこうでございますが、現在の日本におきまして、いまの病院の経済状態から看護婦さんを全部、ことに各ほうぼうに散らばっている方を送り迎えするということまでができるかどうか。しかし、一つの方法としてそれくらいあたたかい気持ちを持ってやらなければなかなか通勤の看護婦さん、家庭をもっている、家庭の主婦として働いている看護婦さんの職場への動員はなかなか困難な問題があるというふうな点は私もお話のとおりだと思います。
  189. 藤原道子

    藤原道子君 それからさらに一つ伺っておきたいのでございますが、人が足りなければ法律は違反してもいいんですか、労働基準法なり人事院の勧告。
  190. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) 法律はできるだけ守るべきものだと思いますし、人が足らないから違反してよろしいということは決して思っていないのでございます。
  191. 藤原道子

    藤原道子君 それでは、とにかく次へ進まなければなりませんので、でございますが、せめて看護婦の休憩室くらいはできそうなものだ、たいした骨を折らなくても。それはどうなんですか。
  192. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) 多くの病院におきまして、看護婦さんがたとえば深夜の前に待っていられるときの休憩室、また深夜が終わりまして、帰らない方につきましての仮眠の部屋というようなところは十分考え出すように国立関係では指導しておるつもりでございますが、まだ至らないところがありますれば努力いたしたい。また、ほかの一般医療機関につきましても、その点は同じように指導していきたいとい思ます。
  193. 藤原道子

    藤原道子君 先ほどの看護婦の数ですがね。私はこれ非常に違っていると思うのですよ。それからもう一つ考えなければならないのは、看護婦が得られないためにお医者さんの奥さんとかお嬢さんが資格を取って、それでやっておられる。まあ、いいところだけやるんです。ということになると、それも就業看護婦の中に入っているんじゃないかと思うのですが、それはどうですか。御調査ございますか。
  194. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) ただいまの私の申しました数字は、これは医療施設の調査から抜き出した数字でございますが、これは病院についての数字だけで、診療所の関係はちょっと別にした数字でございます。病床数とそれに関連しての計算をやりましたので、病院についての数字を申し上げたのであります。
  195. 藤原道子

    藤原道子君 私は医療全般をとらえたのです。  最後にお伺いいたします。人事院にお伺いしたいのですが、准看の差別待遇とより考えられないのでございますが、なぜ准看だけが四等級でくぎづけにならなければならないか。
  196. 滝本忠男

    政府委員(滝本忠男君) 看護婦と准看護婦はそれぞれ資格も違いまするし、医療職俸給表の(三)におきまして、看護婦はその職務上三等級ということになっております。そこで准看護婦はそれでは三等級になぜしないか、やっておる仕事は大体同じようじゃないかという御指摘があろうかと思うのでありますが、准看護婦のほうは、やはり看護婦と職務内容が規定上違っておるということがございます。そこで准看護婦が正看になりますときに養成過程を経るわけでございますが、従来養成過程を経まして正看護婦になりますときに多少不利なような状況がございましたので、この点を改めまして、准看護婦が正看になりますための養成期間を経過しまして正看になったときに不利にならないように改めた次第でございます。そういうふうにいたしまして、本来の筋からするならば、やはり正看護婦になっていただきたい。そういう方々が看護するということが一番のねらいであろう、このように考えておる次第でございます。  なお、准看護婦につきましても、われわれのほうとしましては、やはりその俸給金額が十分でなくてはならないという趣旨から、心いたしまして、漸次増額をはかってまいっており、今後におきましてもそのような努力は継続してまいりたいと、このように考えます。
  197. 藤原道子

    藤原道子君 最後に大臣にただしたいと思います。とにかくこの前にも申し上げたかと思うのでございますが、看護婦の不足は実に深刻でございますし、特に死亡とか出産とかあるいは急救患者というのは夜のほうが多いわけなんです。昼間死亡するのは人間三〇%で、夜間のほうが非常に死亡率が高い。これは人事院にもその資料が出ているはずです。そうすると、死亡率の高い、出産が多い、こういうときに夜間勤務の看護婦さんがあまりにも過少なんです。一人で五十床、六十床、はなはだしきは八十床くらい一人の看護婦が受け持っておる。こういうことが責任の重大さにたえられない。非常にさびしい。つかれる、これが看護婦をやめていく大きな原因にもなっているのでございますから、その点を十分にお考えいただきまして、ことに急救患者などというのは十二時ごろが多いのですね。そういうときに非常におそろしくなってきた、こういう御意見の人が多いようでございます。ということは、ひいては非常に不安な医療に対して不安な感じを抱かざるを得ないわけでございまして事は重大でございますから、幾ら経済が高度に成長いたしましても人命が守られないということでは何のための経済成長か、何のための大国かと言わざるを得ないわけでございまして、いろいろ小林大臣がお骨折りいただいておることは私も承知いたしておりますが、やはりさらに御努力願いまして、看護婦が安んじて働けるような態勢、そして私たちの人命が大切に守られるような態勢をぜひおつくりを早く実現していただきたい。それから眠れる優秀看護力を掘り起こすことにつきましても、ちょっとした思いやりがありましたら私はできると思います。そういう点についても今後一段の御努力が願いたいと思いますし、人事院におきましても判定等の実現に対しましてはもっと強力に、国立の場合にはスト権も剥奪されておるし、結局この人事院の判定ということだけなんでございますから、そういう意味で、日本の医療を守るんだ、日本の人命を尊重するんだという大きな使命感を持って御努力が願いたい。かように思いますので、最後に御決意をひとつ伺わしていただきたいと思います。
  198. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 私は別の席で申し上げたことがありますが、自分で実験をする意味ではないが、相当長いこと入院して病院の中をいろいろ調べたことがございます。ただ、私の入っていたのは少し設備がよくて人が充足しておったということから、これは適用されないと思いますが、私は夜勤は二人でするものだと、こういうふうに思っておったところが、一人のものが多い。こういうことで、この点は私もきわめて不適当でないか、せめて夜勤はやはり二人でされるのが当然じゃないか、私はこういうふうに思っておるのでありまして、一方、また私も患者として見まして、どうも最近は患者がいばり過ぎる面が非常に多い。患者がどうもわがままで困る。私も患者として自分の同僚の患者がどうも少しいばり過ぎるぞ、もう少しわがままをやめろというような注意をしたことがありますが、そういう傾向が非常に多い。私は看護婦さんに気の毒だと思って、私は患者もやはり相当反省をしてもらわなければならぬ、国立病院等においても多少そういう注意をしてもいいぞということを私は申しておりました。これは非常な困難な仕事でありますから、患者自身も看護婦さんに協力するくらいな気持ちを持つのが私はほんとうであろうと、こういうふうに思います。いまお話しのように夜の勤務等につきましては、私は二人でやるのが当然である、こういうふうに思います。そういう方向に近づけるように考えなければならぬと思います。そのほかの問題につきましても同様でありまして、まあ私は前の国会は知りませんが、この国会においては、もう看護婦さんの問題は、私ども実は、変なことばで言えば、いやになるほど聞きもし、それだけわれわれも反省をいたしておるのでございまして、御期待に沿えるような努力をいたすつもりでございます。役所のものもよく身にしみておことばを承ったと存じますので、さようお答え申し上げておきます。
  199. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私どもも看護婦さん方の代表の方にはもうたびたびお会いして、涙の出るような話も十分伺っております。また、御承知のとおりに忙しい中でできるだけ手をさいて最近実地の調査をやりました。その辺の努力はしておるつもりでございます。何しろ、これは申すまでもなく、国民の生命に関する重大な仕事をされておる方々のことでございますから、私どもは従来以上の大きな熱意を持って問題を、微力ではありますけれども、少しずつでも改善していきたいという覚悟でおる次第であります。
  200. 藤原道子

    藤原道子君 次に、私は医療政策の問題について続いてお伺いしたいと思いますが、最近どうも医療の営利化を促すような政策をとっておるように思えるわけです。たとえていえば、差額徴収をしておる。そうすると、被保険者でありながら病気のときには差額を出さなければ入院ができない。差額を出さずに保険だけで入院しようと思えば、それこそ三ヵ月も半年も先でなければ入院ができない。こういう例がずいぶん多いのでございます。私もそういう立場からいろいろこれはたいへんだと思って調査してみましたけれども、差額を取ってない病院は大体逓信病院一つなんです。ほとんど差額を取っておる。こういうことで、特に国立病院あたりも最近は差額を取っておるということになれば、保険に入って――国民皆保険だと政府はいつもいばっていらっしゃいますけれども、その皆保険に加入しておりましても、金がなければ入院ができない。結局、これこれの差額がありますが、ようございますかと言われても、病気のときにはどうしても早く入りたいから、無理をしても差額の病院に入らざるを得ない。こういうことはいかがかと思いますけれども、これに対してのひとつお考えをいただきたい。差額がなければどこの病院も入れません。これはどうなんですか。
  201. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはまあ御承知のように、一定の負担をすればきめられた医療は受けられるということが原則でありますが、最近お話しのように、法律そのものでは部屋代の差額とあるいは歯科の金の合金でありますか、その差額は認められておる。形式的にはそういうことになっておりますが、今日のように部屋代の差額がほとんど多くの病室に及んでおる、こういう事実もあるようでありまして、これは私どもは適当でない。すなわち法律で許されておる範囲と、形式的でなくて実質的に私どもは違っておると、こういうふうに考えまして、最近、いろいろこれが問題になりますので、いま実態的な調査をいたしておりまして、これの行き過ぎというものはやはり是正しなければならぬというふうに考えております。
  202. 藤原道子

    藤原道子君 それも、公的医療機関といわれる日赤であるとか、特に国立あたりが一日に最高は国立第一病院でも二千百五十円取っているのですね。日赤病院でも二千二百二十円、こういうふうに取っている。ということになると、いまどきの傾向であるところの病院の独立採算制というものが、こうせざるを得ない方向へ押し込んでいくのじゃないか。結局、貧乏人は病気になっても医者にかかれない。保険に入っていても医者にかかれないという結果を招いておりますが、こういうことに対してはどういうふうに是正し、指導されるおつもりであるか。そしてまた、それが可能であるかどうか、これについて伺いたい。
  203. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) ただいま、大臣お話がありましたように、保険診療をやる上におきましては、大体の医療が保険の点数によってやられるというのが原則でございますが、部屋代について、差額徴収がある程度認められておると、それによりまして、個室の専用と申しますか、個室を自分でどうしても使いたいというような方とか、特殊な設備があります個室について、特に、またそれを使いたいという方があります場合、それを、全部平等にして、大部屋だけしか認めないというのもいかがかという立場から、いまのような室代の差額の徴収が出てきたのじゃないかとも私ども存じておりますが、その差額徴収といたしまして、たとえば、ほかの人も一緒に入れれば、同じスペースで二人入れると、それのほうが設備があるという、また特別な施設代がかかってくるというようなところ、そういうようなところから、その部屋代がいろいろ計算されておるところもあると思いますが、中には、行き過ぎた点、金額が高過ぎる点、またその差額徴収をします病院の数があまりに多いというところが出てきておるという傾向もないではないようでございます。国立病院につきましては、いまお話がございましたような大体の病院におきまして、そういうような差額をとる部屋は、五プロから七プロぐらい、病院によりまして、もう少し多いところもございますが、そういうような場合に、それが多くならないように、押えておるはずでございます。ほかに、その差額徴収のそれが半分以上になっておるというところもないでもないと思いますので、こういうようなところは、いまの大臣お話のように、行き過ぎではないかと私たちも考えますが、保険局とよく連絡をいたしまして、その是正につとめたいと思います。なお、国立関係では、病人の症状によりまして、たとえば御臨終に近い方とか、またいろいろの状態から、ほかの患者さんと一緒に入れておくのはぐあいが悪いというような患者さん方に対しまして、病院側で独立した部屋に入れるというような場合には、差額徴収はやらないようにいたしてきておるはずでございます。いろいろ、この差額の徴収の問題が、いまの病院経営の問題にからみまして、行き過ぎがありますようなことであれば、保険局の所管でございますが、一緒になりまして、是正につとめたいと、こういうふうに思います。
  204. 藤原道子

    藤原道子君 国立の第一病院でも一四%ですね。日赤中央病院も五六%差額がある。それから国立共済連合会虎の門病院は四七%の差額徴収、私は、これらは行き過ぎだと思います。ことに、保険の元締めのようなところで差額徴収四七%も取ると、こういうことは、私たちは、どうしても納得がいかない。はなはだしきは、シーツの色を変えただけで、それで百円取っておる。これは虎の門病院です。そういう点も保険局に十分連絡をとっていただきたい。国立病院なんかも、最近建てるものはみんな特別室というものをつくっているのですよ。ですから、私は、いろいろな療養の過程で、あるいはお偉い人が特別室に入りたいという人はいいですよ。ところが、そうでない、少しでも安く入院したいというような人は、これでは完全な医療は受けられないという傾向に漸次それがふえつつあるということを御注意を促し、さらに、この対策を要求する次第でございます。さらにまた、営利化しておるというような中の一つに、このごろ病院で下請方式をとっているのですね。ことに給食の下請ということが行なわれている。ところが、これ私の間違いか勘違いか知りませんけれども、一つ例があるのですが、一般食が二百三十一円、これが下請に出すときの単価は百七十二円、五十九円の差額を取って下請に出している。精神、結核が二百三十一円が百七十七円で、これは五十四円の差額が出ている。あるいは治療食が二百八十四円を百九十八円で出しているから八十五円の差額である。これは一体どういうことなんです。給食は点数制できめられておるので、もし下請に出す場合にもそのまま出すのが私は妥当だと思うのですけれども、これは私の間違いでございましょうか。
  205. 広瀬治郎

    説明員(広瀬治郎君) ただいま保険局長、中央医療協議会に行っておりますので、私企画課長でございますが、私の答弁できる範囲内でお答えいたします。  先ほどの差額徴収の問題につきましては、いま先生の御指摘のように、いろいろ問題がありますので、ただいま大臣が申しましたように、早急にその実態を調査いたしまして、それに基づいて適切な対策を立てる用意をしております。  それから、いまお尋ねの下請の問題でございますが、これもいろいろ問題がありまして、実情によっては病院長の厳重なる監督のもとに、場合によりましてはそういうことも認めたほうがいい場合もありますが、省内一般に、非常にルーズなものにつきましては、これは好ましからざる現象でございますので、そういうものは早急に取りやめさしたい、そういうふうに考えます。
  206. 藤原道子

    藤原道子君 おかしいですね。私たちにまでこうした差額徴収の資料が入るのに、あなたのところでこれはわからなかった、これから調査するということは、私には納得がいきません。  それから給食の問題でございますが、これは厚生省告示として、三十三年の六月三十日に告示百七十八号で、給食は各医療機関実施するものであるというふうなことがございますが、これは下請に出すということは違法ではないのですが、どうなんですか。
  207. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) その通牒は保険局からの通牒じゃないですか、どうでしょうか。
  208. 藤原道子

    藤原道子君 私はわからないから責任者から答えてください。
  209. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) 病院の管理関係から申しますと、病院の内部で給食その他のことが実施せられる、それが病院の監督のもとに行なわれることが一番望ましいのは言うまでもないと思います。特に給食に関しましては、治療食等、治療の関係とはなはだ密接なものでございますので、その関係が十分に密接に保たれますような態度といたしましては、自分のほうの直営方式が一番望ましいと思いますが、ただ請負等でやっても、それが医療法上はだめだというところまで言えるかどうか、その点ちょっと問題があると思います。  それから洗たく関係につきましては、やはりできるだけ病院で直営をやってもらうほうがいいと思いますが、特に伝染病関係の問題につきましては、絶対にこれは病院の中でやってもらいたい、こういうふうに思っております。ただあとこれを保険のほうのいまのお話は、点数等として、いろいろ基準看護だとか基準給食を認めるときにどうかというふうな問題にからんできた通達ではないかと私は思うのでございますが、その点は私のほうからちょっとお答えいたすのは適当でない、こういうふうに存じます。
  210. 広瀬治郎

    説明員(広瀬治郎君) ただいまの点は、私の所管外でありまして、責任あるお答えができませんので、いずれ局長が出席しますおりに責任のあるお答えをさしていただきたいと思います。
  211. 藤原道子

    藤原道子君 でも医務局長、この点は答えられるでしょう。病人には必要カロリーとしての給食費というものはきまっているのでしょう。それなのに下請に出す場合には差額を取って下請に出すということが許されるか。それは大きな建設の請負が下請に出すときは私はピンはねするのは、これは常識です。けれども少なくとも、病院の給食がピンはねがあっていいものかどうか。これについては医務局長答えられないはずはないと思います。
  212. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) いまのお話しの何カロリーを出さねばならないとか、原価の関係がどうとかという関係は、必ずしも医療法等によっては言っておりませんで、いまの基準給食を認めますときのスタンダードではないかと私は思うのでございますが、医療関係としましてできるだけいい食事を出してもらい、患者の病状病状に合った食事を出すことが医療機関としては当然のことでございますし、また、その運営が病院で直営せられることが望ましいというのは申すまでもないことであります。ピンはねの問題は、私はそこの数字の関係はわかりませんが、いまの給食費の中で、原材料費とか調理費、運搬、それから廃棄物の処理というふうなもの、いろいろ関連ありますので、それをどれだけまで請け負わしていくかというふうな問題もあるのではないかと思いますが、この金額の問題につきまして、どうならなければならないという基準はこれは保険局の基準給食の問題だと私は思うわけでございます。
  213. 藤原道子

    藤原道子君 この問題は次に譲ります。これは重大な問題だと思いますから、よく研究しておいてください。医務局長は苦しい答弁をしていらっしゃるけれども、病人の食費が削られるなんということは、常識からあってはならぬと私は思う。  それから、こんなふうにひとつひとつ考えてみると、どうももうからない病院はぶっつぶすという方針らしい。これは統廃合等のことばで言われているのですけれども、どうも医療機関がなければならないというようなところが、やはり赤字だからというようなことでつぶされていく。私は国立あるいは公企業体の病院でございましたら、もうからなくても、地域住民のためには存在すべきが医療機関である、こういうふうに考えておりますが、これに対してのお考えはどうなんですか。
  214. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 私はこの問題はよく申しておるのでありますが、いまの国立病院あるいは国立療養所というものは、一般の住民を相手にできた病院ではございません。これは軍隊の必要によってつくられた。したがって、住民を治療するということは初めから問題にしておりません。それを戦後の事情変更によって厚生省が引き受けて国立病院として経営した。したがって成立の事情からして、当然私はそのままでもって住民の診療に適当であるとは思いません。そういうことで、たとえば非常に山の中につくっておるとか、あるいはまた非常にへんぴなところにつくっておる。こういうものには、現在でももうたとえば療養所等には交通事情等によって非常にあきベットが出ておるということは、要するに、それだけの需要がない、こういうことなんでありまして、私どもは住民の役に立っておるものを整理統合しようなんということは考えておりません。しかし、医療機関といえども、これが効率的に運用されるということは、国家全体の資源とか施設からいくというと当然でありまして、そういう意味で多少いまのきわめて不適当な場所にある、あるいはきわめて近接した場所にあって、そうして   〔主査退席、副主査着席〕 これを両方そのまま置くよりも、一緒にしたほうが能率があがる、こういうふうなものは、いま少し考えられておるものがありますが、しかし、たとえば東京とか、あるいは名古屋とか、大阪とか、ごく近くにもう二つの、もとは陸軍、海軍とあったから、二つの施設がある。そういうものは一緒にすることはむしろ非常に私は適当じゃないか。こういうものについては、たとえ施設を一緒にしてもベッドを減らしたり、あるいは従業員を減らしたりするようなことは全然考えておらないのでありまして、そういう向きからの苦情はないかというふうに思っております。要するに、いまでは住民の治療を主目的にするけれども、しかし、できたときは全然そういうことが考慮されておらぬ、そういうふうな沿革的な事情からして、従来あったものをそのまま全部置けというようなことは、私はこれはしかるべき要求ではない、こういうふうに思います。あくまでも、私は病院は地域の住民の利益になるように運営されなきゃならぬというふうに思っておりますが、そういうふうな例外的の場合しか考えておらないというふうにひとつお考えを願いたいのであります。
  215. 藤原道子

    藤原道子君 私はびっくりしちゃったのです。できたときには、地域住民のことを考えてできたことじゃないことは私も承知しております。国立となって戦後やり出した以上、地域住民の福祉のために、医療担当のために国立というものが存在しておるものと、この理解はそれでいいですね。それで決して統合しても人員は減らさないと、こう言っていながら、私がどうしても納得いかないのは、大臣の答弁はそうなんです。ところが、地方の統廃合の場合には必ずしもそうなっていない。それからいま一つは、この間私質問したときには医務局長は、花巻の療養所の問題は、はるか離れたところでつくっているのだから、病人に影響はないはずだとおっしゃったけれども、私、その後いろいろ調べましたけれども、必ずしもそうじゃない。寝ちゃいられないというようなところでどんどん工事が始められておるじゃないですか。しかも、そうした近接のところで、結核療養所でありながら今度できるのは精神病棟、こういうことがやられておるのが妥当かどうか。あるいは世田谷の国立病院が今度小児医療センターですか、これとして発足する。私どもは日本に小児医療センターがなかったこと自体がおかしいのであって、この小児医療センターをつくることには全面的に賛成なんです。けれども、区議会で世田谷の国立病院は残してほしいという決議がなされて陳情がなされている。外来といい、入院といい、私はあすこはそれほど赤字じゃないと思う。そういうところへ小児医療センターをつくるのだというはなばなしいことを旗じるしとして、そしてじみな地域住民が要望しているものをつぶしてそこへ建てなきゃならないという理屈がわからないのでございますが、これは一体どういうわけなんでございましょう。
  216. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) まず花巻の問題でございますが、これは先生のお話は、結核病棟をこわして、そうして精神病棟をつくるというお話、御質問に対しまして、私は結核病棟をこわしてという計画は前にございましたが、それはやめまして、あいたところの土地に玄関、花巻の新しい病棟をつくっておりますのは、正面の、玄関と申しますか、正面のところでございまして、空地でございますと、先生の言われるところではないわけでございますと、こういうふうに言ってお答えして、病棟をこわすのではないというお話をあのとき申し上げておったわけでございます。それで、確かにいま建てておりますところの横に、結核病棟がわりあい近接してあることは事実でございますが、これはまあ患者さんたちがそこである程度音のするのはしんぼうをお願いするか、もしぐあいが悪ければ、ほかの病棟にお移り願ったら、こういうふうな考え方をしておるものでございます。それから世田谷病院につきましては、いまお話しのように、一般病院だったのを切りかえて小児病院にしておりますが、東京の都内にいろいろほかに医療機関はたくさんございますし、それはまあ医療機関が多いほどいいかもしれませんが、国として、そういろいろ同じような一般医療機関をあすこでなお存続し、さらに小児病院をつくるというようなことをするのかというふうな、いろいろ考え方の問題で、すぐ近くに東京第二病院もございますし、また三宿に病院もあったりし、方々にりっぱな医療機関もあるので、そこへ転換するというふうにしたわけでございます。
  217. 藤原道子

    藤原道子君 問題は、世田谷の人口からいきましたら、それほど多くはないと思うのです。ことにその病院なら病院としての歴史があるし、特徴があるのです。世田谷病院がどれだけの地域の役割を果たしているか、地域住民があれに対するどれだけの愛情を持っているかというようなこともお考えになれば、無理に、堂々と経営が成り立っておる病院をつぶして、しかも小児医療センターをつくり、そして看護婦さんたちはどうするんだというと、これはその方面へ使うんだと。ところが、小児医療センターの看護婦さんの使命というものはまた違うと思うのです。そういうことで、どうもやり方に対して私たちが心配をいたしておる、これはどうなんですか。
  218. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) いま日本で子供の病院がございませんので、やはり時代の進運と申しますか、それに伴いまして、日本で東京一つ国がつくる、大阪大阪市で子供の病院をまずつくっていただく、こういうような手だてをいたしますのに、いま世田谷病院の職員の方、これはたとえばお医者さん方につきましても、小児の専門の方に切りかえをせねばならない。国立の病院の全体の体系がございますので、そういうふうなところと話し合いによりまして、できるだけたとえば東京第二病院とか神奈川療養所というようなところで働いていただきますというようなことで話し合いをやっていきますし、看護婦さん方もそういうふうな近くの医療施設等に話し合いによりまして行って働いてもらって、その間に将来そこに帰ってくるという希望の方には子供の関係の看護の勉強をしてもらっていく。それから一部残っていただく方につきましても、子供の専門の病院になります準備をいろいろとやってもらう。こういうようなことをいまやっておるわけであります。
  219. 藤原道子

    藤原道子君 私はどうも質問とお答えが一致しないように思うのです。時間に追われて非常に残念ですが、では、もうけ主義からで、あるいは便宜的な方法でやっているのじゃないとおっしゃるのですね。みなその従業員は納得してそれぞれ移るのですか。それから地域の区議会等とはどういうふうなことになっておるのですか。
  220. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは実は私も世田谷の住民であるので、最近その起工式にも臨みましたが、その起工式には区長さんも出てき、区議会議員も出てきて御祝辞をいただいた。まあとかく人間というものはいまある姿を変えることには何でも反対しがちで、たとえいいことであっても反対するという傾向が非常に強いのでありますが、しかし、いまでは世田谷の区民も、おとなはさりながら、やっぱり子供については、子供の性格上からいって近いところに病院が非常に必要だ、近いほどありがたいということで、この間はむしろ区民からも非常にお祝いを言われて、よかったと、こういうことを言われております。あれを廃止するというまでは、現状を転換するということについては、何の問題についても反対がありがちでございまして、いまは十分な御理解をいただいて、区民からも感謝をされておるというふうに私は近ごろ見受けております。いずれにしても、日本にそういう施設がないということは非常に恥ずかしいことでもあり、非常に後進国的な形になっておりまして、ああいうものができることはむろん御賛成をいただいておるわけでありますが、あれを転換したことはどうかと、こういう具体的な問題になると、いろいろの御議論もあると、こういうことでございます。それで医務局長お話しになったように、あの辺には医療機関もあるし、また、世田谷の国立第二病院も相当整備をされておりまして、面目を一新しておりまするので、そうあの辺から距離が遠いということはないと思います。しかし、子供についてはできるだけ近距離に病院のあることが非常にありがたいということで、最近におきましてきわめて繁盛しておって、非常に区民と申しますか、それらの便宜がはかられておる、こういう状態であります。まああれができるまでにはいろいろいきさつもありましたが、落ちつきまして、そして先生あるいは看護婦さんたちも一応それぞれの安定の道がついたと、こういうことになっておりますので、ひとつ御了承願います。  なお、あとでまた御質問が出るかもしれませんが、結核病棟の病床の転換問題が起きております。一昨日の事件等も契機としまして、精神病が野放しじゃないかと、こういうことで非常なあらためて非難を受けておるのでありまして、この病床が何としても足りない。そしてこれは民間の施設にまつということもなかなか困難な問題でありますし、精神病というようなものはできるならなるべく公立、国立でやっていかなければならぬと、こういうことで花巻の問題も起きておりますし、そのほか全国あちこち非常に結核の需要の減ったところは精神病に転換したいと、こういう方針を進めておりまして、これについても方々に相当反対が出ておりますが、私どもは国策としてもこれをやはりある程度推進しなければならぬと、こういうふうに考えております。
  221. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 ちょっと関連して。ただいま大臣のおことばで、精神病についてはむしろ国家で施設を充実させたいとの御意見を承りましたことはまことにけっこうなことで、私はむしろ別に質問を申し上げたいと思ったんですが、すでに大臣意見がわれらの求むるところと一致しているので、率直に申し上げて治療施設の充実をはかりたい。すなわち、国立療養所結核病者のために非常な貢献をされたことはわれわれも認め、また、感謝をしておるのでありますが、このほうの治療は、近代、それぞれの薬物によりまして著しく治療の方法もまた変わってまいりましたのでございますが、精神病については、現にあなたの支配下にある精神衛生実態調査報告を拝見いたしましても非常に明るい感じをいたしたのでございます。それは、最近の進んだ医療によって、十二分に精神病学の上に立ってこれに治療を加え、そしてさらに懇切な指導を続けていくならば、大かたの精神病者がりっぱな人間となって、社会人としてそれぞれの能力に応じた働きができるということがこの調査によって明らかになっております。しかるに、それならば国立病院でどれだけの病床を持っているかというと、これはいま大臣の仰せられるとおり、大いにこれからやらなければいかぬという状態にある。そうして、しかも国立療養所の有する敷地面積は平均五万坪という大きなものを持っておりますから、あとは病床設置とこれに伴う予算さえあるならば問題は解決する。すなわち、先ほど大臣お話のあったとおり、看護婦さんやそれから医師のお力、加えてさらに心理学者や教育者など、いろいろの人の力を借りていきましたならば、時間はかかるでありましょうが、長い間病んでおる人はもちろん悩みも深いでしょうが、その家庭人にとってもまことに暗いことで、さらにまた社会的にもこれは放置しておけないという問題であるが、幸いにも力の入れ方一つで大部分の患者がなおり、本人はもちろん、家庭も社会も明るくなるというのですから、これは一段国の力を注ぐべき問題であって、幸いに大臣のいまのお話を伺って私は非常に満足するのですが、現在の予算程度では残念ながら満足ができない。  そこで、いまからあなたのひとつお声がかりで、来年度予算を目がけて思う存分拡大充実を期し得るように医務局並びに公衆衛生局を督励し御鞭撻をいただき、その促進をはかられたい。この希望をもちまして、幸いに力強い御返事をちょうだいすればなおけっこうでありますが、いかがありますか。これの問題だけで私の質問を終わります。
  222. 小林武治

    国務大臣小林武治君) お話のような趣旨で進めたい、かように考えております。
  223. 藤原道子

    藤原道子君 私どもこの施設をつくることに反対はしていないのですよ。小児医療センターはおそきに失したぐらいなんで、それは大賛成です。だから、皆さんが喜ぶのはあたりまえです。それから、そこにおいでになった人はお祝いに来たのだから、お祝いを言うのはあたりまえだと思う。けれども、問題が解決したとは私は思っておりません。ただ、時間がございませんので、それだけ申し上げまして、もうけ主義に走らないように、医療本来の目的達成のために御努力願いたい。  それからさらにお伺いしたいのは、今度の予算を見ますと、らい療養所を除いて国立療養所結核、精神、脊髄が一本化されたのですね。ということは、これが特会制への前提ではないかという不安を持つのですが、この点をひとつお伺いしたいと思います。
  224. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) 国立の結核、精神、それから脊髄損傷でございますが、これの予算を一本にいたしましたのは、特に精神とか脊髄関係療養所の数が少ない。精神関係が四ヵ所ですか。脊髄が一ヵ所。そうしますと、その一ヵ所だけの予算で縛られますと利用がなかなかできないので、運営上はなはだ団難をした例があるのでございます。一方のほうの結核療養所のほうには予算の余裕があるのに、脊髄関係のほうは何とも動かしようがないというようなことがあったりいたしましたので、三者を、同じ性格のものでありますので、一緒にまとめたほうが運営に便利だというのでまとめたわけでございまして、特別会計への前提というような意味ではございません。
  225. 藤原道子

    藤原道子君 では、しかとさように承ってよろしゅうでございますね。いいですね。  それで、結核の問題がだいぶ片づいたような宣伝なんです。ところが、昨年の十月二十八日に医療審議会に諮問されておる。その答申を待たないで少々先走っているようなふうに私は見受けます。その答申の中では、結核の死亡率は減ったけれども、なお先進国にはまだ及ばない。と同時に、結核問題は非常に重大だ。ことに感染源の問題等についての非常に不安がここに答申されているわけなんです。その答申の中では、結核病床は四十一年までは三十九年の一万当たり二十三床のままとする。なお、要望事項として、結核病床は漸減の傾向にあるが、わが国の結核の現状は、今後なお対策を強化すべき段階にあると考えられ、特に感染源対策については、さらに医療保障の拡充、施設、設備の充実等をはかる必要があると答申されております。ところが、政府のほうでは、結核はもう解決したんだというようなことをしきりに宣伝していらっしゃる。きめこまかい問題を申し上げればいろいろ資料も持っておりますけれども、時間の関係もありますし、もう優秀な国務局長ですからおわかりだろうと思うから、これだけで内容はよしますけれども、この答申を尊重するとするならば、結核病床を減らしていくということは私は危険だと思う。さらにまだ要入院患者が四十何万かあるというようなことから考えて結核病床が二十三万床ですか、それで要入院患者が四十何万あって、そして減らしていくということは考えられない。それからまたリハビリテーションですか、こういうものに対しての対策などほとんど見るべきものがないわけなんです。ですから、ほんとうに結核解決しようというならば、まだまだやらなければならないことがたくさんあるように思いますが、それはいかがでございますか。
  226. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) お話のとおりに、結核は総死亡が一時十五、六万から十七万ございましたのが、三十七年におきましては二万七千――十六、七万が二万七千というふうに減ってきておりますし、また、届け出患者も、六十万とありましたのが、三十七年は三十八万というふうに半分近く、半分とは言いませんが、だいぶ減っている。それから要入院患者数も二十八年では百三十七万ございましたのが、三十三年が八十六万、それが三十八年には四十六万というふうに、要入院患者の推定も減っている。こういうふうな状態で、いままで結核に対しましていろいろ努力いたしました効果があらわれてきているのではないか。しかし、いまお話のように、結核患者はまだ諸外国に比べまして多い。この成果は上がってきておりますが、ここでさらに追撃戦をやらなければいかん状態じゃないか、こういうふうにわれわれは感じ、それで公衆衛生局のほうでも命令入所等をどんどん強化してもらっていく、こういうわけでございます。ところが、お話結核の入院患者数は、要入院が四十六万ございましても、その中でやはりいろいろな事情で入院できない方もあったり、また気がつかずにおられる方が、これは推定でございますが、中にはあると思うのでございますが、いろいろな事情で、入院しておられる患者はそれほど実際に実現はできない。したがいまして、地域によりますと、施設によりますと、結核の病床がどうしてもあいてくる。そういうので、いまのお話のたとえば花巻などにおきましてはベッドが半分もがあいている。したがいまして、そこへ患者さんが入ってくればいつでも引き受けられるような用意があるのでございますが、あいたままで二年、三年、医者、看護婦も遊んでいる――遊んでいるとは申しません、失言でございますが、わりあいほかに比べればひまな状態であるというのではやはりもったいないのではないかというので、そういうふうな患者さんのわりあい入らない施設につきましては、将来を考えまして精神などへ転換する。特に結核と精神の合併症を持っておりますのは、これはほうぼうの施設でいやがられるという問題もありますので、そういうふうなことを考えまして、まず五十ベッド精神病床をつくろうというような考え方でやったわけであります。  そこでいまお話しの、答申に対して云々というお話でございますが、あの答申は、御承知のとおり医療法のこの前の改正によりまして、医療法の第七条の二によりまして、地域地域でいろいろ考えまして、そこでベッド数が多い、ある程度の数がある場合には、それ以上公的性格を持った病院をつくらさないという上限と申しますか、上の限界を定めているものでございます。その上限が、結核につきましては人口万当たり二十三という数字をここ数年間は使っていいのじゃないかということでございまして、これがこの数字を絶えず維持しておかなければならんという数字ではないわけでございます。また、それに対しましての要望事項には、いまお話しのように、追撃戦をやはり一生懸命やらなければいかん、それに対しますいろいろ施設等も整えなければならない、こういうことが書いてございますが、同時に、そのあと、先生お読みになりませんでしたけれども、なお書きで、将来やはり転換するというふうなときには一般病床のリミットにとらわれないで転換も許せというような、将来のこともやはり考えていかないと、結核の病棟で働きます医者、看護婦等の確保もなかなかむずかしい、将来の先行きの不安があってはむずかしいというふうな、いろいろ総合的な立場であの答申がなされているように私は承知しているものでございまして、いまの結核の追撃戦に備え、さらにその追撃戦の中核として基幹療養所を――大学等があまり結核に関心を持ってこないようになっておりますので、そういうふうな意味で、結核の追撃戦の中核としての基幹療養所を整備するというようなことと一緒に、われわれも、ほかの結核療養所につきましても、利用せられるところにつきましてはできるだけ整備をしていき、また利用度の見込みの少ないところはやはりかえていくというようなことを考え、いまお話しのリハビリテーション等への転用というふうなものも考えていく。また、転用だけでなく、必要なところでは増加をさしていくというようなことも考えていきたいと思います。
  227. 藤原道子

    藤原道子君 都合のいいことばかり言われては困るのですよ。結局、結核病床の利用率は八〇%であるが、しかし、在宅で死亡する患者が結核患者死亡数の四〇%近くを示しているのですね。そうしてまた、療養所あたりでは、看護婦が足りないことを口実といたしまして重症患者の入院を拒否いたしております。そういう病院の事例を示せとおっしゃれば私示します。ここに問題があるのですよ。在宅で結核患者が死ぬということは、最も感染源となる危険な状態で、患者がなお結核死亡の四〇%は家庭で死んでいるのですよ。入院できない事情というのはどういうことなんですか。家族が生活に困るとかいうようなことなんでしょう。それならば、なぜ生活保護をしてすべて結核患者が入院できるような対策をおとりにならないか。私は何とあなたがおっしゃっても、病床利用率は八〇%、在宅死亡率は四〇%、しかも最後まで医療を受けずに死んだというような数も相当数あるのです。こういう状態が、いわゆる社会保障、つまり高度福祉国家を主張する政府のとるべき道か、こういうことなんです。感染源を絶つということが結核対策としては一番大事なことでしょう。これを私は言っておる。入院できない理由を一つ一つ取り去って、すべての人が安んじて入院のできるようにするのが厚生当局のやるべき道だ、こう私は申し上げておる。  それから、答申はそういう意味じゃないとおっしゃるけれども、答申は尊重すべきものだと思うのです。答申はそうだけれどもこうですと言うなら、諮問する必要はない。ただいかにも民主的にやったようなカムフラージュのために諮問している。私は答申というものは尊重すべきものだと考えておりますが、いかがでございますか。
  228. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) いまの結核の入院に対しまして、いろいろ入院ができない方々事情は、お話のように、生活の問題等々ございましょう。それにつきましては、公衆衛生局のほうの命令入所、または社会局のほうの生活保護、いろいろ一体となりまして医療保障のほうをやっていただきまして、私たちのほうは患者さんの受け入れの施設の問題をやっておるわけでございます。  それにつきまして、いまお話しのように、なくなられる患者さんで入院してない方がおることは、はなはだわれわれとしては残念だと思いますので、できるだけ重症の方も受け入れるようにしなければならないと思います。  いまお話しのように、医者、看護婦の数の問題で重症者を受け入れないところがあるのじゃないかというお話でございますが、国立療養所のいまの看護婦さんの充足率は大体定員の九六%くらい充足してございますが、これは一月一日現在だと思うのでありますが、看護婦さんの定員についての不足ということでなしに、全体のやはり配置等で、重症病棟、軽症病棟としていろいろ病棟を区分して利用しております。そういうようなところで、重症病棟のほうでは患者さんが一ぱいで、今度軽症病棟のほうに受け入れるというわけにいかぬということが起こっておると思いますが、ほかの民間施設、あるいはそれ以外のいろいろな事情があるかもわかりませんけれども、できるだけ病棟の編成を重症病棟に切りかえるというようなことで、われわれとしてはできるだけ重症患者を収容するように努力をしていかなければならないと考えておるものでございまして、そういうふうに施設側にも要望しておるわけでございます。  なお、いまの答申でございますが、あの答申は、先ほど申しましたように、ベッド数の規制の答申で、二十三という数がオーバー・リミットと申しますか、上限をきめた答申をいただきました。それにつきましての要望事項があります。要望事項は、これはもちろん尊重するつもりでございます。ただ、その要望事項の全体の中の意味が、追撃戦に備えて努力を施設整備等もやらなければいかぬ。同時に、さらに将来の切りかえというようなことも書いてあるので、全体としての問題だということを申し上げたわけであります。決して答申の付属文書であるから要望書は無視していいなどと考えておるわけではないわけでございます。
  229. 藤原道子

    藤原道子君 いま生活保護の問題が出まして、命令入所を強化しているということを言われましたが、従来生活保護で入った人は、家庭が生活保護を受けている、受けられるのです。命令入所で入れた場合にはそれがないので、命令入所と生活保護がすりかえられ、だんだん生活保護で入る人が減って、命令入所のほうがふえている。それから命令入所の場合には排菌患者だけで、菌が出なくなるとどんどん出して病床の転換をはかっている。ところが、手術なんかして菌が出なくなってもまだ社会復帰は不可能だというようにわれわれが思うんでもどんどん出している。また無理をして再発するということによって悪循環をしている。結局、生活保護が命令入所にすりかえられて、そのために入院がなかなかいたしかねるという人がふえている。こういうことですが、もし生活が困れば、生活保護法を適用して、家族の生活を不安なからしめて入院せしめるということから、またこれが精神面からいって患者も安んじて療養できると思いますがそれに対してはいかがですか。
  230. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 命令入所でもって生活保護にすりかえるというような考えは毛頭でございませんし、ただ、生活保護一般給付は規定ということで、結核予防法結核予防に関する特殊法でございますので、取り扱いとしては予防法が優先するというのはこれはやむを得ないことだと思います。ただ、予防法を適用したから生活保護は受けられないということは全然ないのでございまして、これは当然生活保護を受けられるような家庭であれば、予防法とは無関係生活保護を申請され受給されるはずでございます。一時、命令入所制度を始めましたときに、生活保護であればたとえば日用品費をもらえるような患者、それが予防法ではそういう手続をしなかったということがございまして、しかし、そういうアンバランスを是正するために、当然そういうような状態であれば日用品費だけでも支給するというふうにして、その間のアンバランスをなくするように運用上つとめております。
  231. 藤原道子

    藤原道子君 それは大臣局長はそういうふうに答弁をするが、地方に行くとそうでないのです。あなた方の指導よろしくない。もしそれが事実であるとするならば、指導よろしくないと言わなければならない。地方の適用のきびしさ、特に生活保護適用のきびしさは、最近はぐっと締められております。そういうことも大臣にお願いいたしておきますが、十分に指導されて、いやしくも生活の困窮のために結核療養ができないということがないようにしてほしい。さらに、何といいますか、重症患者の入院を拒否している、こういう例はなくしてもらいたい。それから、要入院患者が四十六万もありながら入院ができない原因を追究されて、これがないように、家庭で死んでいく人が四〇%をこしているということは、直ちに調査して改めていただきたいことを強く要望いたしておきます。  それから結核問題で最後にお伺いしておきたいのは、答申は云々ということばがございましたが、答申のいかんにかかわらず、あなた方はぐっと結核病床を減らしておいでになる予定ですか。いまのような入院ができない人たちの入院を促進していけば、まだ四十一年までは現状のままでという答申の線で行くべきだと思いますが、いかがですか。
  232. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) これは私のところの国立療養所お話だと思いますが、国立療養所施設によりましてベッドのあいておるというようなところは、少しあいておるからというのでなく、五〇%も四〇%もあいているというようなところは、そのままここ二、三年あけたままで置いておくということはいかがかと思いまして、必要によりましてほかのものにやはり転換を考えていきたい、こういうふうに考えております。
  233. 藤原道子

    藤原道子君 私はそこがくせ者だと思うのです。問題は、病床のあくのは政治的にあける方法をとっているのですよ。入院患者を受け付けないのですよ。あるいは、退所していく、死んでいく。しかもそういう方針があるからそこに入院をさせないということになれば、その保健所に待機患者がいても言を左右にして入院させなければ、病床があいてくるのはあたりまえだ。そういう卑劣な手段が地方でとられているのですよ。ないと断言できますか。そういうことであいているから転換すると言われても、はいそうですかというわけに私は参りません。
  234. 尾崎嘉篤

    政府委員(尾崎嘉篤君) いまの重症患者を、相当入院率の高い病院で重症病棟が一ぱいだからというので断わっていることはあると思いますが、いまのお話のたとえば花巻のごときは病室が相当あいておりまして、患者さんを何とか入れるように努力しておるという状態でございまして、病床を人為的にむしろあけるということは、花巻とか福島では私は考えられないと思います。そのままほおっておくと、やはり全体としてはあいておる。定員が病床についてあまりにアンバランスなところは、かえって定員の削減是正というような手段すらわれわれとしては考えている状態で、必要なところに持っていくということから、各施設施設といたしましても自営上からできるだけ患者を入れるように努力しているわけでありまして、そういうような花巻等からは全然先生のお話は理解できないのですが、しかし、いまのお話がございますから、さらに一そう調査をいたしたい、こう思います。
  235. 藤原道子

    藤原道子君 この問題は押し問答でございますから、私どもも調査いたしますから、おたくのほうでも調査していただいて、いやしくもさようなことのないようにひとつやってもらいたいということを強く要望いたします。  次にお尋ねしたいのでございますが、ライシャワー大使を刺傷した少年が、これは精神薄弱であるとか、あるいは精神異常であるとか、いろいろに報道されているのでございますが、あの少年が精神薄弱であるのか、あったとすれば知能指数はどのくらいであるか、あるいは精神異常であったとすればどの程度の精神異常であったかということをちょっとこの際お伺いしたいと思います。
  236. 小林武治

    国務大臣小林武治君) それは、まだわれわれのほうでもって調査をしたわけでもありません。聞くところによりますれば、ことしの初めにもあの辺を徘回をしたりあるいは放火をしたということも事実らしく思われるのでございまして、精神異常、精神がある程度異常があるということはいわれておりますが、どの程度のものかということはわれわれもいま承知いたしておりません。しかし、いまの精神病者が野放しになっておる、こういうことが世間であれを契機としましてやかましく言われておるのでありますが、いまの精神衛生法の建前でいけば、自分を傷つけあるいは人に害を与える、こういう心配のあるものでなければ強制入院等もしない、こういうことになっておりまして、あの問題を契機としてわれわれもいろいろ検討をいたしておりますが、とにかく精神病者というものの登録管理と申しますか、そういうものがきわめて不十分である。ことに、われわれ保健所が精神病者の管理リストを持っておらない、こういう状態でありまして、精神病を感知するようになっても、この報告義務というものがいまでは警察官と検察官しかない。精神病を一番発見し得る機会の多い医療機関、あるいは学校の先生、あるいは家族等にも通報の義務を課しておらない、こういうことでありまして、その点がいわゆる野放しということばの裏をなしておるのでありますが、こういう状態は私どもはよろしくない、このままではいけないと思うのでありまして、やはりこれは通報をして、そうして保健所が管内の病者を登録すると申しますか、管理すると申しますか、そういうふうな事態まで持っていかなければならないというふうに考えておりまして、いま私ども保健所が承知しておるのは、全国でもってこの者は強制的に入れなければならぬというものは約五万三千ばかりある。これは私どもも承知をしておりますが、強制入院をさせた以外の任意入院のものが全国で十四万。そのうちで五万数千というものが強制入院のものである。したがって強制入院以外のものについては十分な資料を厚生省が持っておらぬ、こういうことになっておるのであります。  あの問題につきましても、前に一度これを取り調べた際に異常があったということは警察当局も認めておりますが、それをわれわれのほうには通告を受けておらない、こういういま事情になっておるのでございます。それにつきましても、程度問題――通報の程度がやはり問題になるのでありまして、どの程度というようなものがいまきわめて見解が明確でない。少なくとも強制入院をさせておるようなものは通報を受けてやっておると、こういうのが現状であります。いま知能指数その他については、われわれは的確な報告を受けておらない、こういうことであります。
  237. 藤原道子

    藤原道子君 いや、それは私おそるべき御答弁だと思うのです。このごろいろいろな犯罪が横行しておりまして、毎日の新聞を見るのがこわいような状態です。その中の相当数が性格異常者であったとか、精神病であったとか、あるいは精薄であったとかいうようなことが新聞に報ぜられておる。それが厚生省としては関係ないような御答弁なんですがね。私は精神異常であるとかあるいは精薄であるとかいうものは十分把握しておいでになる、こう思っておりましたが、そうじゃないのですか。
  238. 小林武治

    国務大臣小林武治君) 私は、それの善悪は別として、現状は私が申したような状態である、これが世間でいわゆる野放しになっておるということの内容であると思います。
  239. 藤原道子

    藤原道子君 それでは、あれだけ世間を騒がしてきたことに対して、厚生当局自体としては何らか手を打たなければならないというようなことはお考えにならなかったのですか。
  240. 小林武治

    国務大臣小林武治君) それをいま申し上げておるわけでありまして、たとえば通報義務等についても、医療機関とか、学校の先生とか、家族とか、そういう義務をいまの精神衛生法では課しておらない。これは非常に不十分な措置であり、そうして通報の義務のあるものは警察官と検察官、この二つしかない、こういうことになっております。したがって、現状として一般のわれわれが治療等を要するものが全国に二十七、八万人いる、こういうふうに一応の数をつかんでおるが、その内容をそれじゃ的確に知っておるかというと、内容は的確に知っておらない。非常に御不満と思いますが、現状はそうなっておる、こういうことを言わざるを得ないのであります。
  241. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 関連。いまの厚生大臣の御答弁の状態では、いまの日本の精神病あるいは精神……医学的なことばだから、なかなかむずかしいでしょうが、そういう関係のものの処遇処置、したがって、ある意味から言うと、現在の精神衛生法というのは、ずっと一番最初の精神病者監護法というものよりも退歩しておると思う。だから、やはり時代の要請に基づいて、精神衛生法の措置入院なりあるいは同意入院なり自由入院なりと言われておるやり方、それからこれに対する通報義務とか、そういうもの。あるいはまた、精神薄弱に対する処遇の問題、それから児童福祉法の問題、それから生活保護法の中の医療の精神患者の問題、そういうものを全体的にみて、いわゆる精神関係の疾病と申しますか異常と申しますか、こういうものに対する日本のやり方がたいへんおくれておるのではないか。したがって、精神病院と言われるようなものも、世界の情勢と日本とはたいへん違ったものがあって、外国は全部公的な施設が八割である、私的なものが少ないのに、逆な状態である。これは何かどこかに欠陥があるもとになっておると思う。したがって、これをこういう機会に言うとたいへん悪いですが、いまの藤原さんのお話もあり、こういう機会にひとつ全体的な検討をしていただいて、そしてそういう通報義務なり、ことに年齢関係というようなものでだいぶ制限を受けたりいろいろなものがあり、また、いろいろ窮屈なうまいこといっていないものがあると思うのです、立法上。これを検討してやっていく情勢に迫られておるときじゃないかと思うのですが、この点についてひとつ御見解を伺いたいと思います。
  242. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは私は現状を申し上げたのであります。それが非常によくない。しかし、日本の精神病に対する考え方が、日本全体の社会の理解というものが非常に間違いがある。それで、そういうことで、実はうちに精神病があっても隠しておく。また、隣の人が知っても黙っておる。医療機関が現に治療しても、それを公表しない。また、診断書まではっきり書かない。こういうのがいままでの社会の精神病に対する考え方、理解のしかたでありまして、これから変えていかなければならない。これがいまの精神衛生法にも反映しておるのでありまして、医療機関にも、家族にも、学校の先生にも、知り合いにも、通報義務を与えておらない。これは法律が間違っておるとか不十分であることはもとより、これはある程度社会の理解の反映、こういうふうに言わざるを得ないのでありまして、いまになって皆びっくりして、そうかと言ってやっておりますが、しかし、事実はそうである。この状態が私はよくないと思う。したがって、われわれが手簿なり立法論なりとしてこの問題をいま検討しなければならぬ、こういうことを申しておるのでありまして、私はいまの状態はよろしくない。したがって、社会の理解がそういうものであっても、それをある程度それに先んじてひとつ法律の改正もしなければなるまいということを考えておるのであります。  病床にしましても、二十数万の治療を要する患者があるということを認知しながら、現在ある病床は十四万に足りない。こういう状態でありまして、しかもこれらについては、従来はややもすれば日本では私立病院にこれをまかしてきたのが多いのでありまして、外国と反対だ、こういうことで、治療等においてもきわめて遺憾な状態であり、また、中には、私はこういうことを信じませんが、精神病院を扱えばもうかる、こういうような思想まで世間に行なわれてきておるのでありまして、これは非常に大きな間違いであります。私どもは、今後、これを機会に精神病棟というものはいまの国立をはじめとして公立の病院にこういうものをできるだけ付置して病床をふやしたい。そして相当部分をひとつ公立でもってこういうものは扱っていかなければならない。過去の問題を私は問いませんが、非常に日本においてはこの問題に対する対処のしかたが違っておった、間違っておった、こういうことでありまして、私がいまそういうことを申せば、藤原先生は全く驚いた、こういうふうに申されますが、私どもも驚いておるのでありまして、これを予算的に立法論的にぜひ直していかなければならぬ、こういうふうに考えておるのであります。
  243. 小山邦太郎

    小山邦太郎君 関連して。藤原委員からの御質問に対してきわめて明快な御答弁で、憂いは皆同じでございます。この際、この問題についてはひとつ主査には報告の際に全員一致の強い希望条件として抜本的にこの問題の解決を期するよう強い要望を明確にしてください。
  244. 山本伊三郎

    ○副主査山本伊三郎君) 小山委員の御趣旨は十分了解いたしました。
  245. 藤原道子

    藤原道子君 実は、私はこの精神衛生についてはずいぶんいままでも委員会を通じて質問をしてきているのです。いつかも、年を忘れたんですけれども、政府は、結核と精神は国の手で解決する、精神病だと無料で入院させるというようなことを宣伝されて、それがいまの命令入所だったのです。だから、いま大臣の言われたのを聞いて、大臣も驚いておると言うのだから、これ以上私は言いませんけれども、私は驚くよりも何ともあきれちゃうわけです。こういう点、ことに今度のライシャワー大使を刺した子供は、私の地元の沼津なんです。そうして、精薄といわれるけれども、あれは精薄ではない。なぜかというと、静岡県とすれば名門校です、沼商というのは。そのうちで、沼津で十番以内でなければ入学できないくらいの学校に入っておった。ですから、精神分裂症だとかなんとかならこれはわかる。ことに、沼津の精神病院へ入院していて、院長にすればもっと入院させておきたかった。ところが、自費患者であったから退院するというのをとめるすべがなかった。今後はしかし通院はぜひしてもらいたいということを親に話しておったけれども、遺憾ながらこれは外来で来なかったということを言っておる。そういうことが積もり積もって結局こういう重大な事態を起こす結果になり、性格異常者等を含めると、それらが犯す犯罪というのはまことにはだえにアワを生ずるようなものがあると思う。ところが、今度の事故でも、性格異常者だからあるいは精神病だから不可抗力であったということを発表していらっしゃる。私はこれは不可抗力とは言えないと思う。諸外国はすでにそれらに対する施策が十分行なわれている。十分までとはいかないまでも、国の力が非常に集中されている。日本はおくれていたことは大臣もはっきり認められたんでございますから、これ以上は追及しません、けれども、結局、私どもは、経済が高度成長しても、人命が軽視されていたら何にもならないと思う。ことに、予算がないから、精神病対策もあるいは重度心身障害者の対策も、皆さま考えていらっしゃるけれども、これを行なうことができなかった。結局、そうした予算予算と言っておるうちに、こんなに大事な外国の大使を傷つけるような結果になって、もうそれこそ国際的な信用を失墜したと思う。これを契機といたしまして私は十二分な対策を立ててもらいたいという気持も皆様と同様でございます。  これと同時に、過日御質問申し上げました重度精神薄弱児あるいは肢体不自由児、これらに対する施策を民間に委託するのじゃなくて、国が責任をもって施設を設ける、そうしてまた国の手でコロニーのようなものを設けて、子供のしあわせを守り、子供の不幸を排除して、ひいては社会が安心できるような対策をぜひ講じてもらいたいということを、私はとりわけ熱心に厚生行政を推進していらっしゃる小林厚生大臣にこの面について御要望申し上げます。特に重度の心身障害児をかかえた者はどんなにみじめであるかということを考えるときに、私は繰り返しこれを言わざるを得ないわけでございますので、ぜひ国際的信用を回復の上からいきましても、心あたたかい施策を私は要望いたします。  最後に、私は、もうこれで最後でございます。大臣のところへも陳情、請願が出されておりますが、らい病が、これは長い間の因習と偏見で、きょうまで監禁方針でやってこられましたが、これはもうすでに伝染病であるということが明らかになったのでございますから、多くは申し上げませんが、世間の偏見をなくする意味におきましても、この際ハンゼン氏病というふうに法律の名前を変えて、それを機会に、らい病は遺伝じゃないんだ、これは伝染病なんだ、すでに社会復帰が可能になっているんだということの宣伝をし、社会の理解を求めるためにもそういう法改正が必要じゃないかと考えるんです。  それとあわせまして、不治の病として多くの悲劇を与えてきた半世紀の歴史があるわけです。これらに対しましても、この際そうしたあたたかい思いやりのある改正が必要じゃないか。  伝染病と学説が一致して、しかもその感染力は非常に軽微なものだと言われておる。それで、社会と関係を断ってきた人たちがこれから相当数社会復帰をするわけでございますが、これに対しては一日も早く偏見を取り去って、社会があたたかく迎えるような施策が私はほしいと思う。それから、社会的復帰のために、結局生活基盤のない人々のために、生活資金であるとか、あるいは治癒者の更生福祉等に対しての対策というようなものをぜひこの際お考えを願いたいと考えます。  また、いままでは監禁して死ぬのを待つというような考え方――と言えば言い過ぎかわかりませんが、療養所へ行きますと、仏堂、礼拝堂ですか、これはものすごくりっぱだけれども、医療施設はまことに貧弱だと思います。したがって、これから早く治療にかかれば、早期発見なら一年か二年くらいで治癒すると言われておりますので、療養所の内容を治療に重点を置くというふうに改めてほしい。  あるいはまた、作業賃なども、いままでは、中に入れてやってあるんだから、働けるのは働くのがあたりまえだという考え方があったと思うんですが、この前の法改正のときの要望といたしまして、これは職員に切りかえるということになっておりますが、このごろは軽度の人が退院するものでございますから、残るのは重度の人が多くなっていく。ところが、その人たちが、なかなか労働作業というものが重労働になっておる傾向もございますので、一日も早く正規の職員に切りかえをしてあげてほしい、こういうことを私は申し上げまして、そのお考えを伺いたいと思うんです。それから、社会復帰の生活資金の支給などについてのお考えもこの際お伺いをしておきたい。
  246. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これはもう私一々藤原先生のおっしゃったことを繰り返すことをいたしません。大体において先生おっしゃるとおりです。したがって、いろいろな問題につきまして御趣旨に沿うように検討もし、実現させたいと、かように考えております。
  247. 藤原道子

    藤原道子君 私も、もうこれ以上申し上げませんが、あの人たちとすれば、寝てもさめてもこのことが頭から離れないわけです。事実、施設へ行って見ますと、みじめでございます。中には身体的な変形もございますので、社会復帰ということも相当困難が伴うと思いますので、あたたかい配慮をぜひお願いいたしまして、法改正ということについての大臣のお考えと、もしなされるとすればいつごろを予定されておるかということをこの際最後にお伺いをしておきたいと思います。
  248. 小林武治

    国務大臣小林武治君) この問題は、厚生省の事務当局も深い理解を持っております。ただ、私申し上げたいのは、さっきの精神衛生法の問題にしましても同様でございますが、一体法律と社会常識というものがどっちが先に行くか、こういうふうなむずかしい問題がありまして、法律によって引きずるか、あるいは社会理念を反映させるのか、 こういうふうな問題があるのでありまして、いまお話しの問題についても、そういう面で非常にむずかしい問題があります。なかなか社会の偏見というものは法律によって引きずられるような偏見ではないという部面もあるのでありまして、この調整と申しますか、この調和をどこに置くかということでやはり穏健な方法があろうと思う。一方、行き過ぎても、これは役に立たない。また、おくれても困る、こういう問題もある。これは両々相待っていかなければならぬ問題だと思うのでありまして、法律等につきましても順次ひとつ改定をしなければならぬと思っておりまして、いま検討しております。いつになるかをいうことは、いままだ申し上げられませんが、私はそういう方向に持っていくべきものだというふうに考えております。
  249. 藤原道子

    藤原道子君 確かに法律が先か社会の理解が先かとおっしゃるのですけれども、社会の理解を求めるために、らい病というと、非常に陰惨なものがつきまとっているのです。やはり遺伝だというので、地方の人は、らい病なんと言うと、ふるえ上がってしまう。ですから、あれは伝染病なんだということを知らしめる意味においても、名称を変更したほうが社会の考え方が非常に変わってくるのではないか、私はそう考えます。
  250. 小林武治

    国務大臣小林武治君) わかりました。
  251. 市川房枝

    市川房枝君 私は、公衆浴場法の運営について、大臣並びに関係の部局に簡単に質問を申し上げたいと思います。  大臣も御承知のように、先般の地方行政委員会で、風俗営業等取締法の一部を改正する法律案の審議の際に、トルコぶろの取り締まりについて、厚生省と警察庁の間で意見の対立がございました。すなわち、警察庁は、トルコぶろの取り締まりは公衆浴場法を担当している厚生省がすべきだと言い、厚生省のほうは、風紀に関することは警察庁がやるべきことだ、厚生省の所管は、公衆浴場法の第三条に「風紀」ということばを使っておりまするが、それは男女混浴を禁止する意味で、それ以外の風紀の取り締まりにあらざることという通牒が出ているのだ、だから厚生省ではできないのだ、こういう意見がございまして、つまり厚生省と警察庁両方ともトルコぶろの取り締まりについて逃げておいでになるというか、押しつけ合いという状態で、したがって、トルコぶろは無法地帯という状態があるわけであります。これでは困るので、ひとつ警察庁と厚生省の両方でお話し合いをしていただいて、そうしてこの状態を放置することのないようにしていただきたいということを実は私はお願いしたわけであります。  ところが、その後厚生大臣は間もなく実際を御視察になりまして、そうして後、警察庁と協議会をお開きになったようでございます。その御協議の結果が一体どうなりましたのか、その御報告をお願いしておきましたが、きょうこの場所で、ちょうど厚生大臣がおいでいただいておりますので、それはどういうふうにきまったのか、それをまずお伺いしたいと思います。
  252. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは、先般のお約束によりまして私も現場を視察し、やはり相当の弊害があるという推察もつきまして、即刻、厚生省、警察庁、警視庁、あるいは法制局、東京都の公衆衛生部、こういうもののお集まりを願って、両三度協議をいたしました。  結論的に申しますると、いま風俗営業法は一応今国会を通っている。そういうことで、私ども前の「風紀」とは何か、これは混浴などに限定して通牒を出しておった、こういうことを申し上げましたが、私どもの相談の結果は、「風紀」をもっと拡張解釈して、そしてあの浴場法によって取り締まろう。そして私どもからあらためてああいう通牒でなくて、もっと解釈を拡大をした通牒を出して、条件によってひとつあの取り締まりをしてもらおう。大体の話をそこまで持ってきましたから、これから具体的にきめたいということで、公衆浴場法で取り締まりをしようという方向はきめた。したがって、あとは具体的問題だけになっておる。近くそれも決定ができる、こういうふうに思っております。
  253. 市川房枝

    市川房枝君 厚生大臣がさっそくお取り上げくだすって、その対策をお立てになってくだすったことはたいへん感謝するわけですが、その「風紀」ということをもう少し広く解釈するというのは、どの程度広くということですか。それは局長から。
  254. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 前回の参議院の社会労働委員会の御質問の際にもお答え申し上げましたように、公衆浴場法は、本来公衆衛生を主目的としてつくられております法体系でございますので、第二条の施設基準に関する部分があるわけでございますが、ここの部分には保健衛生上の目的のための施設基準であるというようなことになっておりまして、風紀に対する措置というのは第三条になっておるわけでございます。その意味で、この法律によりましてただいま大臣からお答え申し上げましたトルコぶろの風紀規制をいたしますについて、どの程度それが具体的にできるかという点に問題があるようになるわけでございます。で、どの程度まで二の法律によってせい一ぱい規制をいたすといたしましてできるかという点をただいま法制局と詰めておるところでございまして、いまの段階でここまで行けるということが、まだ具体的に一々の条項で当たっておる最中でございますので、この席で申し上げる段階に立ち至っておらないわけでございます。  その具体的方針がきまりました際には、昭和二十三年に出しました厚生省のこの法律の基本解釈の第三条の「風紀」に関する部分は、男女混浴を原則として意味するものであるという部分を改めて、範囲を拡大して通達をいたし、これに基づいて都道府県において具体的な条例を出してもらいたい、かように考えておる次第でございます。
  255. 藤原道子

    藤原道子君 関連。そのときに、私繰り返し言うのですけれども、公衆浴場法だから、個室は要らないというのだ。いやしくも公衆浴場でしょう。それなのになぜ個室が必要か。個室を禁ずることはできないのですか。公衆浴場のたてまえからいえば、理屈からいっても個室というものは必要でない。私どもは、誤解されちゃ困るのですけれども、トルコぶろが必要でないとは言ってないのですよ。だけれども、その個室におけるもろもろの問題を問題にしている。だから、公衆浴場法だから、個室を禁ずるということはできないのか、どうでしょう。
  256. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 個室を禁止するという措置となりますと、構造設備基準に関する部分になりますので、現在の公衆浴場法をそのまま駆使いたしまして風紀の規制をする場合には第二条に関連した部分と考えざるを得ませんので、この第二条は、ただいま申し上げましたように、保健衛生上の基準であると明記してございまして、風紀に関する構造基準という表現になっておりません。その意味で、まあ前々から法制局と第三条でそこまで行けるかということを詰めておるところでございますが、第二条で明確に構造基準の規定がある限りは、第三条は構造基準を含まないと解せざるを得ないので、構造基準のかなり基本的な規制を第三条に基づいて行なうことは問題があるといういまのところの法制局の見解でございます。
  257. 藤原道子

    藤原道子君 法律というものは永久に不変のものであるというわけでないでしょう。だから、公衆浴場法として個室があるということがいいか悪いか。公衆浴場として個室が必要かどうかということだ。もしその個室なるものが公衆浴場法の中で横行して、それでそれが弊害を生んでおるとするならば、律法改正したっていいじゃないですか。だから、局長は個室必要なりとお考えになっているかどうか。
  258. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) そもそも、この前藤原先生の御質問にお答え申し上げましたように、公衆浴場法の当初におきましては、トルコぶろなるものはわが国に存在いたしませんで、多数の大衆が一つの湯舟に入るというような状態を頭に置いてあの法律ができ、また、そういう状態を頭に置いて保健衛上上の取り締まりということで規制しようといたしたわけでございます。そういう公衆衛生上の取り締まりという見地から考えまして、今日ありますトルコぶろのようにほとんど個室しかないというものが、ほんとうは公衆浴場法として衛生上の取り締まりが必要なのか、これはむしろ公衆浴場法の対象外として別個の取り締まりで考えるべきかという問題が基本的にあるように感ずるわけでございます。  公衆浴場法の見地からいって個室が衛生上どうかとおっしゃられますと、公衆衛生上の見地から、別に個室が悪いというようなことの規制はいかがかと思うわけでございまして、個室が必要か必要でないかといえば、これは国民一つの嗜好といいますか、慰安の場所の意味もございますので、私どもが単に公衆衛生という見地だけからその必要性を云々することはいかがかと思いますけれども、ただ、公衆衛生上いけない形かと申しますと、公衆衛生上別に個室が悪いということは言い得ない状況かと思っております。
  259. 藤原道子

    藤原道子君 だって、あなたは、最初説明では、公衆が一つの湯舟において云々ということを説明なさったのよ。それがあの法律をつくるときの状態だったのでしょう。ところが、現実は個室というものができているのです。だから、トルコぶろを公衆浴場として取り締まることが妥当かどうかということなら、これはわかるのですよ。けれども、いままであなた方は、国会の答弁で、公衆浴場法でやっていくのだという答弁をしてきていたのです。それならば、いまさらそんなことを言ってもおかしいのです。だから、大衆が一つ湯舟で云々と言うならば、それを逸脱している行為ならば、個室を禁ずるような条文を起こしてもいいのじゃないか。それとも、あなたのほうでトルコぶろは別個のものだとおっしゃるならば、それを明確にして、ほかの方法でやっていくということもあるのです。もとがこうだから、公衆浴場法による衛生上の立場で個室が衛生上害があるとは思えないと。それは、個室が衛生上害があるかどうか、そんなことを言っているのじゃない。法律の目的を逸脱してはいないか、こういうことなんですよ。
  260. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今日の公衆浴場法の趣旨は、不特定多数の人々が浴場に入る場合、その施設に対する衛生上の取り締まりの基準でございまして、その入り方が個室の入り方ではいけないというある方向づけの規定は、現在の法律の形では考えにくい点でございます。それが公衆衛生上害があれば、その形を禁止することになりますけれども、公衆浴場というものは大ぜいが一つのふろに入るべきものであるということを衛生以外の見地から規制するような形の法律になっておりませんので、お尋ねのような規制は、あり法律をそのまま使います限りは、規制できないと思います。
  261. 藤原道子

    藤原道子君 いや、だから改正ということを聞いているのじゃないですか。
  262. 小林武治

    国務大臣小林武治君) これは私が言うのもどうかと思いますが、一体それでは公衆浴場じゃありませんよといってああいうものをされたらどうしますか。私はいまでもあれが公衆浴場だといっておるから、一応法律の範囲に入るので、そして今度はそれの拡張解釈までして取り締まりをしよう。一度にこれは十全を求めることはできないのでございまして、取り締まりをするということだけでも私は非常に大きな効果があると思うのです。私が心配するのは、あれは公衆浴場でないとするなら、何だか知らぬがおれはああいうものをつくるのだといった場合にどうするか、こういう心配もあるわけなんです。いまでも、実は前々から地方行政委員会で問題になったように、警察ではなるべく私のほうの範囲じゃない、そうして公衆浴場でやってもらいたい、こういうのが警察のお考えでありまして、私はいろいろこれは考えたのでありますが、禁止することもけっこうであります。しかし、禁止して、そして、ああいう部屋をつくらぬものは公衆浴場になるのが、それでもああいうものをつくったものはどうなるか、これは別個の問題にならざるを得ないのでありまして、私はまあ次善の策として、いまはあれをとにかく取り締まるのだ、こういうことでひとつがまんができないかというふうに私はいま考えております。  それから、たとえば公衆浴場法に違反したらどうなるか。違反しても多少の科料とかこういうことしかできない。それでいまのあれの収入から見れば、違反したって、これは政府が自分の手で取りこわすことはできません。  そういうふうないろいろの事情もありますので、この際は、これを将来風俗営業として取り締まるという問題も起きてくると思いますが、さしむきの措置としては、この程度でもってやっても相当な効果があるのじゃないかというふうな考え方で、むろんお考えのような徹底した考え方もありまするが、いろいろ考慮した結果、いまはこの程度ではなかろうかというふうに遺憾ながら考えておる、こういうです。
  263. 市川房枝

    市川房枝君 いま環境衛生局長は、第二条には風俗ということは入っていない、風紀ということは入っていないのだから、個室は禁止できない、こうおっしゃいましたね。ところが、風紀というのが入っているのは第三条ですね。第三条は、「浴場業を営む者は、公衆浴場について換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。」この「風紀」ということを、拡張解釈をしてといいますか、文字どおりの風紀ともし今度解釈をお変えになるとしたら、ミス・トルコはここでは使えませんね。設備じゃない。個室はそのままでも、個室でもって女をサービスに使うということは、これは風紀上重大な問題だ。そうすれば、当然今度の厚生省当局としての指示の中にはそれは入りますね。いかがですか。
  264. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) ただいま検討いたしております問題の中の具体的な内容の中に、ただいま先生のお尋ねのような事項がございます。個室の中には異性たる従業員は入れないというような措置がこの条項でできるかというようなことも検討いたしておるわけでございますが、ただ、実体上、ふろ場はかりにそういうかなり風紀を避ける措置をいたしましても、マッサージをする部屋を別個につくるという場合もあり得るわけでございます。で、マッサージをする部分については、公衆浴場とは直接の関係はございませんので、公衆浴場法に基づいてそういう部屋を規制するところまでまいらないことになります。また、第三条の規制でそこまで行き得るか。現在、一般公衆浴場にもいわゆる三助といいますか、そういう今度は女湯に男のそういう流す人間が入るという実態もございまして、直ちに異性が入ることを禁止するというようなことがわが国の風俗上昔から行なわれてきているものを直ちに規制することもいかがかという点もいろいろ考えておりまして、いまの段階では、ただいまお尋ねのような点まで規制できるかどうかということはまだ結論に至っておりません。
  265. 市川房枝

    市川房枝君 個室も禁止はできない、異性もそれを禁止もできないというなら、何の風俗、風紀の取り締まりになるのですか。じゃあいまと同じじゃないですか。そんなものを私どもはそういう取り締まりを厚生省に要求はしてないというか、それじゃ何にもならぬですよ。あなたのおっしゃる、その個室を禁止をするというのは、この法律からいえばまあできないというのは、なるほど読んでみれば、二条ですからね。しかし、三条は明らかに「風紀」ということがあるのだから、そうすれば、異性がはいれば私どもは女の場合には男を入れてほしくないですよ。おふろの三助だって、いまもうそんなのはいないし、それも禁止してもらってけっこうですよ。それも前から問題になっているのであって、それすらはいらないというのはちょっと私ども考えられないのですが、それじゃどうも、厚生省に少しというか、厚生大臣に少し期待をしたのだけれども、それじゃまるで問題にならないということになるのですが、どうですか。
  266. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) まだ検討の段階でございまして、それができないと別に申し上げているわけではございませんのです。具体的な方法がまだきまっていない段階でございまして、ただいま先生のおっしゃいましたような問題も検討いたしておるわけでございますが、これに対してもいろいろ問題点があるということを申し上げたわけでございまして、なお今後検討いたしてまいりたいと、かように考えております。
  267. 市川房枝

    市川房枝君 このトルコの問題は、御承知のようにトルコ協会というのがあって、そこが自粛の何か会合をしたみたいなんですが、そういう協会の自粛というものをどういうふうにお考えになるのですか。
  268. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) もっとも、すべての仕事が、その衝に当たる人たちが法律の強制によらないで目的が達せられるように自粛してもらえれば、これにこしたことはないわけでございます。ただ、これは営業を主体とする方々でございまして、自粛というものもどこまで行き得るものか、もちろん私どもとしてはできるだけ自粛をしてもらって所期の目的を達することが最大の目標、むしろ目標であると申し上げたほうがいいかと思いますけれども、それだけにたよるわけにはいかないと、かように思っております。
  269. 市川房枝

    市川房枝君 自粛するようだからこれはこのままでいいなんていうことに私はなっては困ると思っていまのような質問を申し上げたわけなんですけれども、結局、業者はですね、そういう風紀の問題だとかいろいろそういうことでなくて、やっぱり金もうけを考えているわけなんです。世間はやかましいときだけは一時ちょっとのろしを上げるのだけれども、あともとのもくあみになりますから、業者の自粛もちろんけっこうなんだけれども、それを信じて手をゆるめてもらっては困るということを特に申し上げたいのですが、ことに、今度、トルコの取り締まりを、警察と厚生省で両方ともまあおっつけ合いをしておいでになって、風俗営業取締法からとうとう抜けちゃって、そうして公衆浴場法に押しつけられたといいますか、ということになったんですが、厚生省のほうも、どうもきょう伺ったところでは非常に私は悲観点な考えをいま持っておるのですが、たよりにならぬというような感情を実は与えられているのですけれども、そういう状態の裏があるのだ、この問題についてはずっとそういうことを思ってきたんですけれども、これはどうなんですか。厚生大臣に伺ってもちょっと御返事は無理かもしれませんけれども、トルコ業者の機関紙を私は読んだ。これは地方行政の委員会でほんとうは朗読もしたのですが、トルコ業者がこのトルコに対しての世間の風当たりが少し強くなって、そうして何らか規制をしよう、そういう情勢になってきたので、トルコ業界としては、高度の政治性を必要とする段階になった、こう書いてあるのですが、そうしてそのあとへもっていって、この際に高度の政治性をお持ちになっている自民党の副総裁の大野伴睦氏を名誉会長にいただいた。その意義はきわめて重大だなんて書いてあるし、そして、現に会報、公に出ているものですからかまわないと思いますが、会長と副総裁が握手をしておいでになる大きな写真なんかを出しているのですが、これが一つの政治的圧力になっているのじゃないか。トルコぶろがこういう状態で今度もとうとう逃げられちゃったかっこうになっておるのがそうじゃないかしら。少なくとも私は政治家として有力な政治家の方が、いかがわしい、そういう業界の会長におなりになるということは、国民の風紀の上からいっても、はなはだ望ましくないことだと実は考えるのですけれども、かりにもそういう政治的な圧力によってこの問題がうやむやになっていくのだということを国民に思わせるということは、非常な私は政治の不信になると思うのですが、それだけに私は少しやかましくやってもらいたい。法律に規定したって、それが励行されるかという問題になりますと、これはまた別の問題だし、いわんや保健所が監督をなさるというのじゃ、それは警察と違うし、どこまで監督していただけるかどうか。保健所はほかに重要な問題がたくさんあって忙しいから、これはなかなか期待ができない。これは善意に解釈して期待ができないと思うのですが、しかし、この問題にはそういう政治的な問題がかかっているので、その点を私は特によけい心配をするのですが、厚生大臣、もしお答えがいただけるなら……。
  270. 小林武治

    国務大臣小林武治君) この問題に関する限りは、政治的圧力はありません。これは市川さん御存じのように、私がそう簡単に圧力に屈するような性格でもありませんし、何らの私どもに対しては業者その他から運動はありません。これははっきり申し上げておきます。  これは、いま申したように、たとえば風俗営業で取り締まりをされても、現に風俗営業で取り締まりをして何をされておるか。たとえば旅館業者あるいはいまの料理飲食業者、これを取り締まるにも、それじゃ四畳半はいかぬから三畳はいかぬからどうしろなんていう問題はこれは起きておりません。しかも、その上に何を取り締まるかといったら、実際に売春とかその他の現行犯があったもの、これは問題になるわけでありまして、そのことは風俗営業になってもそう大きな差はない。ただ、少なくとも取り締まるということは、いつでも臨める、いつでも調べることができる、いっでものぞいて見られる、こういうことが行為そのものが秘密であればいつでも見られるというふうに取り締まられる。こういうことが非常な大きな影響を心理的にもいろいろな面において及ぼす。こういうことで、私は、いまの状態でなくて、われわれが取り締まるということは、それだけで非常に大きな内容である、こういうふうに思っております。これは警察の問題にならぬことはありません。これはやはりわれわれ保健所でこれを告発もできまするし、警察も関与もできるということでありまして、そういうこと自体を取り締まるということは、いままでとはやはり結果的には非常に大きく違う、こういうふうに思っているのであります。  それから業者自粛といいましても、東京で百五十幾つもあって、六十幾つもまだ要するに組合員以外のものがありますので、これらのものをするからわれわれはそれにまかせるという気持は全然ありません。私ども独自の考え方で取り締まりをしていきたい、こういうことで、いろいろ御不満はあろうと思いますが、することとしないことは非常に違うので、そして、たとえば部屋は開放的にしろ、いつでもだれでも見れるようにしておけ、それから保健所員がいつ行ってみるかわからぬ、こういうことはいまの状態より私は非常に違ってくると、こういうふうに思うのでありまして、不十分と言えば不十分、それは公衆浴場法にまかされるからして不十分であるということでありまして、しかし、それで精一ぱいの取り締まりをするということは、私は非常に大きな違いがある。ああいうふうに取り締まれと新聞に皆さんが言われただけでも、業者は、じゃ自分がひとつやるからというようなことを言い出す。これを現実にやるのだということになれば、非常に大きな結果的に影響がある。この際としては、不十分であっても、何もせぬよりかはるかに私は前進だと、こういうふうに思うので、私どものできる範囲においてひとつ十分な対策を講ずる。そしていま冒頭申しましたように、この問題について私どもとしては何らの政治的圧力もないし、業者からの牽制も全然ないということ、むしろないのが張り合いのないくらいに私は思っておるということをひとつ御了解を願いたいのであります。
  271. 藤原道子

    藤原道子君 そこで、局長、いま検討中だから、できないとは言っていないとおっしゃいましたね、さっき。私はこの間週刊誌だか何かで、外国人が来たときは一番どぎもを抜くにはトルコぶろへ連れて行く、びっくりして飛び出してくるというのですね。それは先進国には男と女と一つの部屋でサービスするなんということはないようだ。そういう意味から、これはそれだから興味があるから観光資源になるのだ、業者はそう言っております。けれども、国辱的なものだと思いますから、あなたはいま、ミス・トルコをやめても、マッサージをするときにはどうだというようなこともおっしゃったけれども、少なくとも、ミス・トルコは裸でやる。裸ですよ。それで裸体の男性のサービスをしている。しかも、チップは――固定給は全然ないのです。全部チップに依存している。そういうことは不健全なやり方だと思うのです。このごろ三助なんて女ぶろへなんて来るようなおふろはほとんどありませんよ。だから、それがもし来るとすれば、これは禁じてもよろしいから、少なくとも裸体の男女が狭い部屋に一つで入って、しかも男性のサービス、しかもいろいろな段階をもってサービスするというようなことは、やはり私はこの際お考えを願いたい。ミス・トルコがやめられれば相当変わってきます。マッサージする部屋は別個にすれば、そこは裸でやるわけじゃないです。それだけでもちっとは違います。とにかくそういう点も十分御検討いただきたい。個室はできない。しかも公衆浴場と言いながら全部個室のトルコぶろがどんどんふえているのですから、こういう点もお考えいただいて、よりよい結論を出してもらいたい。業者ですら個室は廃止するというようなことを宣言しているのですね。ただしこれは一ヵ年先だ。これじゃ、ごっそりもうけてその先というのだから、われわれの考え方とは相反するわけです。ぜひその点十分な御検討を願いたい。
  272. 市川房枝

    市川房枝君 大臣、けっこうです。条例にまかすということになりますと、それはいつごろになりますか。あなたのほうでの、条例にまかすということの、大体条例の案というものをお示しになっているでしょう。
  273. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 大体の考え方は示すことになります。
  274. 市川房枝

    市川房枝君 そのいまの重大なというか、私ども重大と考えるそういう問題についての指示をなさるわけでしょう。こういうことを入れろというか、少なくとも風紀というものに対する考え方ですね、これは別個に先へお出しになるのですか。
  275. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) いままでの第三条の解釈を次官通達で出しておりますので、やはりそれを拡張解釈といいますか、解釈したものを変えて条例等によって次のようなことを規制するようにという通達を出すことになります。その場合の、次のようなことにという部分で、かなり具体的な条例の内容を指示することになります。
  276. 市川房枝

    市川房枝君 そこの中で、個室云々とか、あるいはトルコ嬢がどうとかということが入るわけですね。
  277. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 入るとすれは入ることになります。
  278. 市川房枝

    市川房枝君 条例ではないけれども、たとえば東京で三業の協議会の内規というものがありますね。それでは、まあ個室はそのまま現在ではあるわけなんだけれども、そこの中で風紀を乱すような行為を一応避けるようにしていますね。たとえば、中からかぎをかけてはいけない、それからドアは人が通る廊下に面していなくちゃならぬ、そのドアには二十センチ平方メートル以上の素通しのガラス戸をはめなければならない、あるいは室には、ミス・トルコの個人のものを置いてはいかぬとかなんということを書いているのですけれども、それは単なる内規といいますかなんで、何にも強制力はない。で、実際歩いてみると、全然それに従っていないのをたびたび私ども発見をしたわけなんですけれども、そういうのを条例にはもっていけないのですか。
  279. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) そういうものが具体的に条例になるようになると思います。ただいまは、市川先生お話のとおり、許可の内規の形になっております。で、一たん許可した後においてその内規に違反したからといって直ちに法律の何らかの措置が適用されるということにはなりにくい形のものでございます。したがって、今回こちらの通達に基づきましてそういうようなものがいずれも条例として出されることになりますと、それに違反した場合は行政処分が行なわれるということになります。
  280. 市川房枝

    市川房枝君 そのあとの条例にもし規定されるならば、警察はそれを励行させるために警察が関与することができるのですね。
  281. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 直ちに警察が関与し得るかどうかには問題が実はございます。この第三条に基づきます条例が出ました場合、その条例を守らしめるために警察が関与し得るかどうかには問題がございます。なぜかと申しますと、第三条に対しまして刑事罰的な規定がないわけでございます。第三条に対しましては行政罰があるだけでありまして、その意味で警察の協力は得られますし、また、警察は売春禁止法等を目標とした取り締まりによって公衆浴場における風紀に相当程度加わっていただくことはできるのでございますが、直接に第三条の違反であるからといって警察が関与する形にはいまのところなりにくいように思っております。
  282. 市川房枝

    市川房枝君 オリンピックがくるわけなんですけれども、その条例が東京でいえば六月の都議会にかからないと、これは前には役に立たないわけですね。それで六月の都議会にかかるためには、それこそもうできるだけ早く通牒をお出しにならないといけないのでありますが、それはどうなんですか。
  283. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 私どももできるだけ急いでおります。先ほど来大臣が仰せのとおり、厚生省といたしましては、現在私どもに許される範囲の公衆浴場法を駆使いたしましてのこの業態の取り締まりには精一ぱい努力をいたしたいと考えております。ただ、前々から申し上げておりますように、この法律そのものが一定の範囲の規制しかできないという点、並びに先ほど先生が御指摘になられましたように、保健所では本来風紀を取り締まる訓練も受けていなければ、そういうこともいたしてきていないという実態もございまして、私どもとしてもかなりその問題は苦慮いたしておるところでございます。私どもとしては精一ぱい公衆浴場法で取り締まるとなれば、この法律の範囲で許される範囲を最大限度に活用いたしまして努力いたしたい、かように考えております。
  284. 市川房枝

    市川房枝君 私どもは、ほんとうはトルコはとりあえず風俗営業に入れるべきだ、そう考えるのですが、あるいはこれを公衆浴場法ならば浴場法を改正して、はっきりと個室を禁止するというか、設備に対してのはっきりしたものを法に入れるということを希望しているのですが、それはすぐには間に合わない。そこで、次善の策として、条例なら条例で大急ぎでやっていただくということは、この際としてはやむを得ないと思うのですが、しかし、この問題は、将来もう一ぺんこれを再検討して、間に合わせでなくてやっていただきたいという希望を持っております。  それからその条例のというか、風紀に関する通牒をなさる場合、実は私ども心配なんですが、どんなものが入るのかというか、結局いまと何も違わない同じようなものになってしまう心配が多分にあるのですがね。それは前もって私どもというか、特にこの問題は婦人議員が超党派でみんな心配をしておりますので、一応伺ってといいますか、あるいは具体的に私どもからひとつ意見を、注文を、おきめになる前につけさしていただくチャンスを与えてほしいと思うのだけれども、一応時間がだんだんおそくなりましたから、きょうはこの程度で終わります。
  285. 藤原道子

    藤原道子君 たいへん大蔵省の主計官に御迷惑をかけまして、お聞きのとおりに、山本委員の質問も、看護婦問題にいたしましても、私が質問いたしました看護婦の問題、あるいは結核の問題、精神の問題、非常に大事な人命がいま非常に粗末にされていると思う。厚生省は毎年いろいろ要求しておりましても、大蔵省でどうも一作に切られてしまう危険があるように私は考える。とにかく社会保障費は相当伸びたと大臣はおっしゃるのでございますけれども、伸びたといってももともとが悪かった。社会保障に対しての考え方がもう世界的に競争で高められているという時期に、お聞き及びのとおり、精神衛生等に対してはほとんど対策ができていない。これではまことに心配でございます。したがいまして、人命尊重という立場からも、社会保障は非常に重大でございますし、厚生行政というものが広範な問題をかかえておりますので、何かと予算を必要としなければできない問題が多々ございます。そういう点で、とりわけ社会保障に対して、またきょうの質疑に対しましても、われわれの意のあるところを十分お考えいただきまして、ひとつ社会保障に大幅な予算を盛って、そうして国辱、国際信用を失墜するような、ライシャワー事件等にいたしましても、やはり精神異常者ということになれば、これは私は不可抗力とは考えられない。予算があったならば、もっと対策が進んでいたならばと、非常に残念に思っているわけでございまして、そういう点についてあなたの御意見を一言だけ伺いますと同時に、大臣に十分御伝達を願いたい。たいへんお待たせをいたしましたが、一言だけお聞かせいただきたい。
  286. 船後正道

    説明員(船後正道君) 社会保障の問題は、どれをとりましても非常に重要な問題でございまして、特に本日当分科会で御審議されました問題は特に重要な問題でございます。財政当局といたしましても、最近特にこの社会保障は重要事項といたしまして特段の努力をいたしておるのでございますが、今後ともこういった努力は続けていきたいと存じます。  なお、藤原先生の仰せられました御趣旨につきましては、十分上司並びに大臣にお伝え申し上げたいと思います。
  287. 山本伊三郎

    ○副主査山本伊三郎君) 他に御発言もなければ、厚生省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十分散会